以下、本発明の制御装置の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る制御装置1と、該制御装置1によって制御されるアクチュエータ100の概略的な構成図である。制御装置1は、例えば、アクチュエータ100を制御するための電子制御装置(ECU)である。制御装置1及びアクチュエータ100は、例えば、車両用自動変速機の電動シフトレンジ切替機構、又は車両の電動パーキングロック切替機構等の一部を構成するものである。
アクチュエータ100は、例えば、回転機としてのモータ101と、動力伝達機構102と、モータ位置センサ103と、出力軸角度センサ104とを備えている。モータ101は、制御装置1からの通電指示、具体的には、ドライバ回路4からの通電によって駆動され、励磁コイルへの通電によりロータ101aに回転出力を発生させる電動モータである。動力伝達機構102は、ロータ101aの回転動力を歯車やその他の構成部品を介して出力軸102aに伝達する機構であり、例えば、ロータ101aの回転動力を増幅して出力軸102aに伝達する複数の歯車を備えた減速機である。動力伝達機構102の出力軸102aは、該出力軸102aの回転を規制する規制部材200によって、第1の方向、例えば逆転方向の回転角度が規制位置までに制限されている。
より詳細には、規制部材200は、例えば、出力軸102aに固定されて出力軸102aと一体に回転する可動部と、出力軸102aに固定されず、可動部に当接して可動部の可動範囲を規定する当接部とを有する。すなわち、出力軸102aが第1の方向、例えば逆転方向に回転して可動部が当接部の一方の壁面に当接すると、出力軸102aの逆転方向の回転が規制される。また、出力軸102aが第1の方向と逆の第2の方向、例えば正転方向に回転して可動部が当接部の他方の壁面に当接すると、出力軸102aの正転方向の回転が規制される。なお、規制部材200の当接部は、出力軸102aの可動範囲の少なくとも一方に、可動部と当接して出力軸102aの回転量を規制することができるように設けられていればよい。
モータ位置センサ103は、例えば、各相のコイルに順次通電されて回転するロータ101aの位置を検出して制御装置1に出力するエンコーダであり、U相、V相、W相に設置されたホール素子であってもよい。出力軸角度センサ104は、例えば、動力伝達機構102の出力軸102aの回転角度を検出して制御装置1に出力する出力軸角度検出手段であり、リニアな特性を持ったインダクティブセンサであってもよい。
制御装置1は、例えば、マイコン2と、電流検出回路3と、ドライバ回路4と、インターフェース回路5a,5bとを備える。マイコン2は、例えば、インターフェース回路5aを介して取得したモータ位置センサ103からのロータ101aの位置情報と、インターフェース回路5bを介して取得した出力軸角度センサ104からの出力軸102aの角度情報とにより、ドライバ回路4によるモータ101への通電モードを切替えるなどの処理を行う。
マイコン2は、例えば、メモリ等の電子部品によって構成された記憶部2aと、CPU等の電子部品によって構成された演算制御部2bとを備える。記憶部2aは、例えば、モータ位置センサ103及び出力軸角度センサ104の検出値を記憶する。演算制御部2bは、記憶部2a、電流検出回路3、ドライバ回路4、及び、インターフェース回路5a,5b等を制御するとともに、後述する動力伝達機構102のバックラッシュ量BQ(図6を参照)を算出する。
電流検出回路3は、例えば、ドライバ回路4に流れる電流値、すなわちモータ駆動電流を測定する。ドライバ回路4は、マイコン2からの通電指示によりモータ101へ電流を通電することで、ロータ101aの回転及び停止を制御する。インターフェース回路5a,5bは、それぞれ、モータ位置センサ103、出力軸角度センサ104から出力された信号を処理してマイコン2へ入力する。
以下、アクチュエータ100が備える動力伝達機構102のバックラッシュ量BQについて、図2及び図3を用いて説明する。図2は、図1に示す動力伝達機構102に含まれる歯車の概略的な断面図である。図3(a)は、図2に示す歯車の拡大断面図である。図3(b)は、(a)のb−b線に沿う断面の矢視図である。
動力伝達機構102が備える複数の歯車、例えば外歯車102bと内歯車102cは、互いに噛合う歯の間にバックラッシュBを有している。また、動力伝達機構102が歯車以外の構成部品を有する場合には、当該構成部品の寸法公差等により当該構成部品間に僅かな隙間を有している。そのため、例えば、図2及び図3に示す例において、外歯車102bがモータ101のロータ101aに連結されている場合、ロータ101aの回転により外歯車102bが回転すると、外歯車102bの歯が内歯車102cの歯に係合し、ロータ101aの回転動力が外歯車102bを介して内歯車102cに伝達される。
そして、内歯車102cが動力伝達機構102の出力軸102aに連結されている場合、内歯車102cの回転によって出力軸102aが回転する。また、モータ101のロータ101aと動力伝達機構102の出力軸102aとの間に、他の歯車やその他の構成部品が存在する場合には、ロータ101aの回転動力がその他の歯車やその他の構成部品を介して最終的に出力軸102aに伝達されることで、出力軸102aが回転する。しかし、動力伝達機構102は、例えば、図3(b)に示すように、外歯車102bと内歯車102cとの間にバックラッシュBを有している。また、動力伝達機構102がその他の歯車や構成物品を有する場合には、その他の歯車間のバックラッシュBや構成物品間の寸法公差による隙間を有している。
モータ101のロータ101aが第1の方向に回転して、ロータ101aの回転動力が動力伝達機構102の出力軸102aに伝達されているときは、外歯車102bと内歯車102c及びその他の歯車や構成部品が互いに係合している。しかし、ロータ101aの回転方向が第1の方向と逆の第2の方向へ切り替えられると、例えば、図3(a)、(b)に二点鎖線で示すように、外歯車102bが内歯車102cとの間のバックラッシュBを詰めるように回転する。また、動力伝達機構102がその他の歯車や構成物品を有する場合には、その他の歯車間又はその他の構成部品間でも同様に、歯車や構成部品がバックラッシュBや隙間を詰めるように回転又は移動する。
このとき、外歯車102bと内歯車102cは、外歯車102bが内歯車102cに対して回転して互いに係合するまでの間は、ロータ101aの回転動力を動力伝達機構102の出力軸102aに伝達することができない。また、その他の歯車間、又はその他の構成部品間でも同様に、歯車や構成部品がバックラッシュBや隙間を詰めるように回転または移動して互いに係合するまでの間は、ロータ101aの回転動力を動力伝達機構102の出力軸102aに伝達することができない。
このように、モータ101のロータ101aを一方向に回転させたときにロータ101aの動力を出力軸102aに伝達可能な状態から、ロータ101aの回転方向を切り替えて再びロータ101aの動力を出力軸102aに伝達可能な状態になるまでの動力伝達機構102の遊びを、バックラッシュ量BQと定義することができる。例えば、図2及び図3に示す例において、外歯車102bがモータ101のロータ101aに直結され、内歯車102cが動力伝達機構102の出力軸102aに直結されていると仮定すると、外歯車102bと内歯車102cとの間のバックラッシュBが、動力伝達機構102のバックラッシュ量BQとなる。
また、動力伝達機構102がその他の歯車又はその他の構成部品を備える場合には、これらの歯車間のバックラッシュBや構成部品間の隙間の合計がバックラッシュ量BQとなる。バックラッシュ量BQは、例えば、動力伝達機構102の歯車やその他の構成部品の摩耗等によって継時的に変化するため、定量化が困難である。そこで、本実施形態の制御装置1は、動力伝達機構102のバックラッシュ量BQを定量化する定量化手段を備えている。
図4は、図1に示す制御装置1が備える定量化手段10の構成を示すブロック図である。本実施形態の制御装置1は、動力伝達機構102のバックラッシュ量BQを定量化する定量化手段10を備えることを最大の特徴としている。定量化手段10は、第1位置設定手段11と、第2位置設定手段12と、算出手段13とを備えている。
定量化手段10は、例えば、図1に示すロータ101aの回転及び停止を制御するドライバ回路4と、ロータ101aの位置を検出するモータ位置センサ103と、出力軸102aの回転角度を検出する出力軸角度センサ104と、モータ位置センサ103及び出力軸角度センサ104の検出値を記憶する記憶部2aと、これらを制御するとともにバックラッシュ量BQを算出する演算制御部2bと、を備えることができる。なお、定量化手段10は、モータ位置センサ103及び出力軸角度センサ104に替えて、これらを制御するインターフェース回路5a,5bを備えるようにしてもよい。
第1位置設定手段11及び第2位置設定手段12についても、定量化手段10と同様に、例えば、記憶部2a、及び演算制御部2b、ドライバ回路4、モータ位置センサ103、及び出力軸角度センサ104によって構成することができる。また、算出手段13は、例えば、記憶部2a及び演算制御部2bによって構成することができる。以下、定量化手段10によってバックラッシュ量BQを定量化する処理について、図5及び図6を参照して説明する。
図5は、図4に示す定量化手段10の処理フローを示すフロー図である。図6は、図3に示す外歯車102b及び内歯車102cの状態T1〜T5と図5に示す処理フローの各処理S1〜S10との関係を示す説明図である。例えば、制御装置1を車両の電動シフトレンジ切替機構又は電動パーキングロック切替機構の一部として使用する場合、車両の生産ラインでは、通常、組み立て完了後に始動確認を実施する。制御装置1は、例えば、始動確認時に、定量化手段10によって、記憶部2aに記憶されたプログラムに従って、動力伝達機構102のバックラッシュ量BQを定量化して記憶する初期学習処理を以下の手順で行うことができる。
定量化手段10の第1位置設定手段11は、図5に示すように、制御装置1の起動(IGNSW ON)後の処理S1において、演算制御部2b及び記憶部2aを用い、出力軸102aの第1の基準位置P1を記憶するための記憶領域を確認する。そして、第1の基準位置P1が記憶されているか否か、すなわち初期学習処理が完了しているか否かを判定する。記憶部2aの所定の記憶領域に第1の基準位置P1が記憶されている場合(YES)は、初期学習処理を終了する。第1位置設定手段11は、記憶部2aの所定の記憶領域に第1の基準位置P1が記憶されていない場合(NO)は、次の処理S2を実行する。
処理S2において、第1位置設定手段11は、モータ101のロータ101aを第1の方向、例えば、逆転方向RDに回転させる。具体的には、第1位置設定手段11は、例えば、記憶部2aに保存されたプログラムに基づいて、演算制御部2bによってドライバ回路4に対して通電指示を行い、ドライバ回路4によってモータ101へ通電することで、モータ101のロータ101aを第1の方向、例えば、逆転方向RDに回転させる。
これにより、図6の状態T1に示すように、まず、ロータ101aに連結された外歯車102bの歯が、内歯車102cの歯溝内で逆転方向RDの前方の隙間を詰めるように逆転方向RDに移動して、逆転方向RDの前方の内歯車102cの歯に係合する。その後、外歯車102bと内歯車102cが係合した状態で、さらに外歯車102bが逆転方向RDに回転することで、外歯車102bの回転動力が内歯車102cに伝達され、内歯車102cが逆転方向RDに回転し、内歯車102cに連結された出力軸102aが回転する。この状態で、第1位置設定手段11は、処理S3を実行する。
処理S3において、第1位置設定手段11は、突き当て制御を行う。すなわち、制御装置1の起動(IGNSW ON)の直後は、モータ101のロータ101aに連結された外歯車102bの位置が不明であるため、第1位置設定手段11は、ロータ101aを第1の方向に回転させて出力軸102aを制限位置P0まで回転させる突き当て制御を行う。
本実施形態では、出力軸102aの制限位置P0は、前述の規制部材200によって規定されている。すなわち、外歯車102b及び内歯車102cが逆転方向RDに回転して出力軸102aが回転すると、出力軸102aに固定されて出力軸102aと一体に回転する可動部が、可動部の可動範囲を規定する当接部に当接する。これにより、出力軸102aが制限位置P0に到達して回転が制限され、図6の状態T2に概念的に示すように、外歯車102b及び内歯車102cの逆転方向RDへの回転が規制される。すなわち、第1位置設定手段11は、規制部材200の可動部が当接部に突き当たるまでモータ101のロータ101aを逆転方向RDに回転させる突き当て制御を実施する、突き当て制御手段としての機能を有する。
処理S3において、第1位置設定手段11は、例えば、マイコン2の演算制御部2bを用い、記憶部2aに保存されたプログラムに従って、電流検出回路3によって検出された電流値に基づいて出力軸の回転角度が制限位置に達したことを検知する。具体的には、第1位置設定手段11は、電流検出回路3によって検出された電流値が所定の閾値以上であるか否かを判定する。第1位置設定手段11は、電流検出回路3によって検出された電流値が所定の閾値より小である場合には、出力軸102aが制限位置P0に到達していない(NO)と判定し、ロータ101aの逆転方向RDへの回転(処理S2)と、制限位置P0に到達したか否かの判定(処理S3)を繰り返す。第1位置設定手段11は、電流検出回路3によって検出された電流値が所定の閾値以上である場合には、出力軸102aに固定された可動部が当接部に当接し、出力軸102aが制限位置P0に到達した(YES)と判定する。
処理S3において、第1位置設定手段11は、例えば、記憶部2aに保存されたプログラムに基づいて、以下の制御を行うことができる。第1位置設定手段11は、演算制御部2bを用い、出力軸角度センサ104の検出値を参照し、検出値である出力軸102aの回転角度と制限位置P0との間の偏差が所定の範囲内であるときにドライバ回路4に通電指示を行う。そして、第1位置設定手段11は、ドライバ回路4によってモータ101のロータ101aを第1の方向と逆の第2の方向、例えば正転方向NDに回転させる。このような制御を行うことで、ロータ101aによって発生するトルクによって規制部材200が破損するのを防止できる。
処理S3において、出力軸102aに固定された可動部が当接部に当接して出力軸102aが制限位置P0にあるとき、図6の状態T2に示すように、ロータ101aに連結された外歯車102bの歯は、逆転方向RDの前方に位置する内歯車102cの歯に係合している。また、外歯車102bと内歯車102cとの間のバックラッシュBは、外歯車102bの歯の逆転方向RDの後方に位置している。第1位置設定手段11は、出力軸102aが制限位置P0に到達した(YES)と判定すると、処理S4を実行する。
処理S4において、第1位置設定手段11は、モータ101のロータ101aを、第1の方向と逆の第2の方向、例えば、正転方向NDに回転させて、出力軸102aを制限位置P0から第1の基準位置P1、例えば、目標のレンジ位置まで回転させる。より具体的には、第1位置設定手段11は、例えば、演算制御部2bを用い、記憶部2aに保存されたプログラムに基づいて、出力軸102aが制限位置P0にあるときのモータ位置センサ103の検出値を参照し、動力伝達機構102の入出力比によって出力軸102aを制限位置P0から目標のレンジ位置まで移動させるのに必要なロータ101aの回転角度を算出する。
さらに、処理S4において、第1位置設定手段11は、演算制御部2bを用い、前述のように算出したロータ101aの回転角度に基づいてドライバ回路4に通電指示を行い、ドライバ回路4によってロータ101aを正転方向NDに回転させる。これにより、出力軸102aが制限位置P0から目標のレンジ位置まで回転し、図6の状態T3に示すように、出力軸102aに連結された外歯車102bの歯が正転方向NDの前方の内歯車102cの歯に係合した状態になる。
なお、処理S4において、第1位置設定手段11は、演算制御部2bを用い、出力軸102aが制限位置P0にあるときの出力軸角度センサ104の検出値を参照し、出力軸角度センサ104の検出値が目標のレンジ位置に対応する回転角度に達するまで、ドライバ回路4によってロータ101aを正転方向NDに回転させるようにしてもよい。第1位置設定手段11は、ロータ101aを正転方向NDに回転させて出力軸102aを目標のレンジ位置まで回転させた後、処理S5を実行する。
処理S5において、第1位置設定手段11は、演算制御部2bを用い、出力軸角度センサ104の検出値を参照し、出力軸102aの制限位置P0から目標のレンジ位置までの回転角度を、第1の基準位置P1として記憶部2aに記憶する。すなわち、第1位置設定手段11は、出力軸102aを制限位置P0から所定の角度分、正転方向NDに戻した位置を第1の基準位置P1として認識する、基準位置認識手段としての機能を有する。また、処理S5において、第1位置設定手段11は、演算制御部2b、モータ位置センサ103及び記憶部2aを用い、出力軸102aが第1の基準位置P1にあり、かつ、外歯車102bの歯が正転方向NDの前方の内歯車102cの歯に係合した状態(図6に示す状態T3)におけるロータ101aの角度位置を、ロータ101aの第1位置p1として記憶する。
以上のように、第1位置設定手段11は、まず、モータ101のロータ101aを第1の方向である逆転方向RDに回転させて(処理S2)、出力軸102aを制限位置P0まで回転させる(処理S3)。その後、第1位置設定手段11は、ロータ101aを第1の方向と逆の第2の方向である正転方向NDに回転させて、出力軸102aを制限位置P0から第1の基準位置P1まで回転させ(処理S4)、そのときのロータ101aの位置を、第1位置p1として記憶する(処理S5)。定量化手段10は、第1位置設定手段11によって、前記処理S1〜S5を実行して出力軸102aの第1の基準位置P1及びロータ101aの第1位置p1を設定した後、第2位置設定手段12によって処理S6を実行する。
処理S6において、第2位置設定手段12は、記憶部2aに保存されたプログラムに基づき、演算制御部2b、モータ位置センサ103及びドライバ回路4を用い、モータ101のロータ101aを第2の方向である正転方向NDに所定の角度に亘って回転させて、出力軸102aを第1の基準位置P1から第2の基準位置P2まで回転させる。ここで、第2位置設定手段12は、演算制御部2b及びモータ位置センサ103を用い、ロータ101aの回転角度と記憶部2aに記憶された動力伝達機構102の入出力比に基づいて、出力軸102aの回転角度を算出し、出力軸102aを所定の角度に亘って回転させることができる。
すなわち、第2位置設定手段12は、演算制御部2bによってモータ位置センサ103の検出値を参照することで、出力軸102aを第1の基準位置P1から所定の角度に亘って回転させることができる。これにより、図6の状態T4に示すように、ロータ101aに連結された外歯車102bの歯が、正転方向NDの前方の内歯車102cの歯と係合した状態で、出力軸102aが第2の基準位置P2まで回転する。第2位置設定手段12は、ロータ101aの回転を停止させた後、処理S7を実行する。
処理S7において、第2位置設定手段12は、記憶部2aに保存されたプログラムに基づき、演算制御部2bを用いて、出力軸角度センサ104の検出値を第2の基準位置P2として記憶部2aに記憶する。すなわち、第2位置設定手段12は、モータ101のロータ101aを正転方向NDに回転させて出力軸102aを第1の基準位置P1から所定の角度に亘って回転させた位置を第2の基準位置P2として認識する、基準位置認識手段としての機能を有する。なお、第2位置設定手段12は、出力軸102aが第1の基準位置P1にあるときのロータ101aの位置と、出力軸102aが第2の基準位置P2にあるときのロータ101aの位置との差分から、出力軸102aの回転角度を算出することができる。
また、処理S7において、第2位置設定手段12は、演算制御部2b、ドライバ回路4及びモータ位置センサ103を用い、ロータ101aを正転方向NDに回転させて、出力軸102aを第1の基準位置P1から第2の基準位置P2まで回転させたときのロータ101aの回転角度を検出し、この回転角度を正転方向NDのロータ101aの回転角度NRとして記憶するようにしてもよい。処理S7の終了後、第2位置設定手段12は、処理S8を実行する。
処理S8において、第2位置設定手段12は、記憶部2aに保存されたプログラムに基づき、演算制御部2b、出力軸角度センサ104及びドライバ回路4を用い、モータ101のロータ101aを第1の方向である逆転方向RDに回転させ、出力軸102aを第2の基準位置P2から第1の基準位置P1まで回転させる。これにより、図6の状態T5に示すように、ロータ101aに連結された外歯車102bの歯が、逆転方向RDの前方の内歯車102cの歯に係合した状態で、内歯車102cに連結された出力軸102aが第1の基準位置P1に到達する。このように、第2位置設定手段12は、モータ101のロータ101aを逆転方向RDに回転させ、出力軸102aを第2の基準位置P2から第1の基準位置P1まで回転させる戻し制御を実施する。
処理S8において、第2位置設定手段12は、演算制御部2b、記憶部2a及びモータ位置センサ103を用い、ロータ101aを第1の方向である逆転方向RDに回転させて出力軸102aを第2の基準位置P2から第1の基準位置P1まで回転させたときのロータ101aの位置を、第2位置p2として記憶する。また、第2位置設定手段12は、ロータ101aを第1の方向である逆転方向RDに回転させて出力軸102aを第2の基準位置P2から第1の基準位置P1まで回転させたときのロータ101aの回転角度を、逆転方向RDのロータ101aの回転角度RRとして記憶するようにしてもよい。
以上のように、第2位置設定手段12は、ロータ101aを第2の方向である正転方向NDに回転させて(処理S6)、出力軸102aを第1の基準位置P1から第2の基準位置P2にまで回転させる(処理S7)。その後、ロータ101aを第1の方向である逆転方向RDに回転させて、出力軸102aを第2の基準位置P2から第1の基準位置P1まで回転させ、そのときのロータ101aの位置を、第2位置p2として記憶する(処理S8)。定量化手段10は、第2位置設定手段12によってロータ101aの第2位置p2を設定した後に、算出手段13によって処理S9を実行する。
処理S9において、算出手段13は、演算制御部2b及び記憶部2aを用い、ロータ101aの第1位置p1と第2位置p2との差分から動力伝達手段のバックラッシュ量BQを算出する。すなわち、ロータ101aの第1位置p1では、出力軸102aの角度位置が第1の基準位置P1にあり、歯車間のバックラッシュBやその他の構成部品間の隙間等が、図6の状態T3に示すように、ロータ101aの正転方向NDに詰まった状態になっている。一方、ロータ101aの第2位置p2では、出力軸102aの角度位置が第1の基準位置P1であり、歯車間のバックラッシュBやその他の構成部品間の隙間等が、図6の状態T5に示すように、ロータ101aの逆転方向RDに詰まった状態になっている。
したがって、ロータ101aの第1位置p1と第2位置p2との差分から動力伝達手段のバックラッシュ量BQを得ることができる。なお、算出手段13は、正転方向NDのロータ101aの回転角度NRと、前記逆転方向RDのロータ101aの回転角度との差分から、バックラッシュ量BQを算出してもよい。定量化手段10は、算出手段13によってバックラッシュ量BQを算出した後に、処理S10を実行する。
処理S10において、定量化手段10は、マイコン2の記憶部2aの所定の記憶領域に、処理S5で設定した出力軸102aの第1の基準位置P1と、処理S9で算出した動力伝達機構102のバックラッシュ量BQとを、学習値として記憶する。これにより、制御装置1の次回の起動時には、処理S1において、定量化手段10の第1位置設定手段11により、記憶部2aの所定の記憶領域に第1の基準位置P1が記憶されている(YES)と判定され、初期学習処理を省略することができる。
以上説明したように、本実施形態の制御装置1によれば、動力伝達機構102のバックラッシュ量BQを定量化する定量化手段10を備えることで、アクチュエータ100が備える動力伝達機構102のバックラッシュ量BQを容易かつ正確に定量化することができる。
一方、前記特許文献1に記載されたシフトレンジ切替機構を制御する装置では、電源が投入されてから、通常の制御状態へ移行するまでに、Pレンジ側(あるいはDレンジ側)の壁に当たるまで回転機を強制的に回転させている。そして、回転機の回転が停止した位置(PレンジあるいはDレンジ)を現在のレンジとしてメモリに記録する制御を行っている。しかし、電源が切られる度に、ロータ101aとステータとの相対位置を検出するエンコーダが初期化される。そのため、バックラッシュ量BQの算出を行う場合には、電源が投入される都度、その直後の初期学習制御において実施する必要がある。すなわち、電源が投入される都度、バックラッシュ量BQが算出されるまでは、初期学習制御を完了することができない。
これに対し、本実施形態の制御装置1によれば、最初の電源投入時に初期学習処理を行って第1の基準位置P1とバックラッシュ量BQの学習値を記憶部2aの所定の記憶領域に記憶することで、次回以降の電源投入時に、初期学習処理を省略できる。そのため、電源投入から制御対象であるアクチュエータ100を駆動させることが可能になるまでの時間を短縮でき、運転者の操作性を向上させることができる。
また、前記特許文献2に記載されたシフト切換機構では、図3において、アクチュエータが正転方向NDに回転する場合のシフトポジションを実線で示し、アクチュエータが逆転方向に回転する場合のシフトポジションを破線で示している。そして、実線と破線の縦方向のオフセットは、アクチュエータとディントプレートとの間にガタが存在するためである、としている。また、P壁位置及びD壁位置の検出完了時に、「ガタ量=D壁位置−P壁位置−設計可動範囲」の式によってガタ量を算出するとしている。しかし、この方法では、P壁位置及びD壁位置の検出が完了する都度、ガタ量を計算する必要があり、処理負荷が増大し、制御が複雑化する。
これに対し、本実施形態の制御装置1によれば、初期学習処理においてバックラッシュ量BQを記憶部2aに記憶し、以降の制御では記憶部2aに記憶したバックラッシュ量BQを参照することで、バックラッシュ量BQの算出による処理負荷の増大や、制御の複雑化を回避することができる。
また、前記特許文献3に記載されたシフトレンジ切替装置では、アクチュエータの制御において、P目標回転位置が定められる。このP目標回転位置は、非PレンジからPレンジへの切替時に、P壁がディントスプリングのころに衝突しない位置であり、P壁位置から所定のマージンをもって定められる。特許文献3では、前記マージンは、径時変化などによるガタを考慮して余裕をもって設定され、ある程度の使用回数であれば径時変化を吸収することができ、シフトレンジ切替時における非P壁ところとの衝突を回避することができる、としている。すなわち、特許文献3では、ガタが定量化されていない。
これに対し、本実施形態の制御装置1によれば、動力伝達機構102のバックラッシュ量BQを定量化する定量化手段10を備えることで、アクチュエータ100が備える動力伝達機構102のバックラッシュ量BQを容易かつ正確に定量化することができる。
また、定量化手段10は、第1位置設定手段11と、第2位置設定手段12と、算出手段13とを備えている。第1位置設定手段11は、モータ101のロータ101aを第1の方向に回転させて出力軸102aを制限位置P0まで回転させた後に、ロータ101aを第1の方向と逆の第2の方向に回転させて出力軸102aを制限位置P0から第1の基準位置P1まで回転させたときのロータ101aの位置を、第1位置p1として記憶する。第2位置設定手段12は、ロータ101aを第2の方向に回転させて出力軸102aを第1の基準位置P1から第2の基準位置P2まで回転させた後に、ロータ101aを第1の方向に回転させて出力軸102aを第1の基準位置P1まで戻したときのロータ101aの位置を第2位置p2として記憶する。そして、算出手段13は、第1位置p1と第2位置p2との差分からバックラッシュ量BQを算出する。
したがって、本実施形態の制御装置1によれば、モータ101と動力伝達機構102の組合せで高精度の位置決めを行うアクチュエータ100において、バックラッシュ量BQを、処理負荷の増大や、制御の複雑化を発生させることなく算出し、モータ101の回転位置を精度よく制御することができる。また、動力伝達機構102のバックラッシュ量BQを考慮してアクチュエータ100を制御することで、モータ101位置制御の精度を向上することができる。
また、本実施形態の制御装置1によれば、例えば、電制パーキングロックシステムのような、動作範囲を学習する初期位置学習が必要なシステムおいて、モータ位置センサ103と出力軸角度センサ104を備えたシステムを構築することで、高精度の位置制御が可能となる。したがって、アクチュエータ100の動力伝達機構102の機差バラツキ及びバックラッシュ量BQなどを吸収することができる。さらに、出力軸角度センサ104が有する直線性誤差と出力傾斜の誤差を吸収することができ、モータ位置センサ103で行うより精度良く位置制御を行うことができる。
また、動力伝達機構102のバックラッシュ量BQ、すなわちガタ量は、構成部品の噛み合わせや機差バラツキだけではなく、構成部品の経年劣化によっても発生する。しかし、本実施形態の制御装置1では、ディーラーにおける故障診断や故障による交換時に、再度、初期位置学習処理を実施することで、経年劣化による影響を低減することができ、ロバスト性を向上させることができる。
以上、図面を用いて本発明の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計変更等があっても、それらは本発明に含まれるものである。
例えば、前述の本実施形態では、制御装置の起動後に初期位置学習処理を実施する例について説明したが、制御装置の初期位置学習処理は、制御装置への電力供給が遮断されたときの終了処理において実施してもよい。また、制御装置が故障等により交換された場合、ディーラーなどで故障診断装置により基準位置の再学習を指示することにより、初期位置学習処理の一部を省略することができる。