JP2017006929A - 溶接システム - Google Patents
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Abstract
【課題】溶接作業中の音声による操作指令の入力の安定性を向上する。【解決手段】溶接システムの音声指令入力装置はマイク81、マイク81から出力される音声信号のノイズ成分を抑制するフィルタ部822、フィルタ部822から出力される音声信号の音声認識を行う音声認識部823、音声認識部823が認識した指令を操作指令信号に変換して出力する指令信号変換部824を備える。フィルタ部822は適応型フィルタ8224、溶接作業中の音声指令のない期間にマイク81から出力される音声信号の周波数スペクトルを解析する周波数解析回路8222、周波数解析回路8222の解析結果に基づきフィルタ特性を決定し、それに基づき適応型フィルタ8224のフィルタ係数を更新するフィルタ係数設定回路8223を備える。適応型フィルタ8224のフィルタ特性を変化させることにより音声信号から騒音による周波数成分を好適に除去することができる。【選択図】図3
Description
本発明は、音声による操作指令が入力可能な溶接システムに関するものである。
作業者が溶接トーチを操作して溶接作業を行う場合、一般に、一方の手で溶接トーチを持ち、他方の手で溶接面を持つ構成となるので、例えば、溶接作業中に溶接電流や溶接電圧を変更する操作が必要になった場合、その操作を容易に行うことができないという問題がある。このため、音声による操作指令が可能な溶接システムが要望されている。
従来、音声による操作指令が入力可能な溶接システムが提案されている。例えば、特許文献1には、作業者が音声による操作指令を入力するための耳掛け式のマイクを設ける一方、溶接トーチにそのマイクを接続するためのマイク接続部を設け、作業者が溶接作業をする際にマイクを溶接トーチのマイク接続部に接続する構成が開示されている。
特許文献1は、作業者がマイクに入力した音声指令を、マイク接続部と、溶接トーチを溶接電源装置に接続する接続ケーブルとを介して溶接電源装置内の制御回路に送信する構成である。
溶接現場は、アークの発生に起因する騒音を初めとして比較的高い騒音が発生する環境である。このため、作業者の発した音声指令(騒音が混入した音声指令)によって溶接システムの溶接電源装置を制御するには、音声指令を電気信号に変換した操作指令信号に対して騒音に基づくノイズを十分に抑制する必要がある。
従来、音声認識システムにおいては、環境騒音による誤認識や誤動作を低減する技術が提案されている。例えば、特許文献2には、環境騒音による誤認識や誤動作を低減する有効な方法として、音声用マイクと騒音用マイクを設け、音声用マイクで得られた音声から騒音用マイクで得られた騒音成分(ノイズ成分)を差し引く方法(ノイズキャンセラー)や、音声用マイクに指向性の強いマイクや骨伝導マイクを用いて利用者の音声だけを拾う方法が開示されている。
例えば、パルス溶接では、溶接電流がパルス周波数で小電流と大電流に交互に切り換えられるので、その溶接電流の変化に応じてアークの太さが変化し、これによってアークの周りの空気が振動して非常に大きな騒音が発生する。この騒音の大きさは、場合によっては80〜100dBの大騒音になることがあり、パルス溶接では一般的な工場騒音よりも大きな騒音やノイズが発生する。
溶接システムに搭載される、音声による操作指令が入力可能な音声指令入力装置においては、通常、音声認識回路の前段に、上記の騒音に基づく音声認識処理に悪影響を与える周波数成分を除去又は抑制するフィルタ回路が設けられる。
溶接作業中は、母材の溶接状況や作業者による溶接条件の変更(例えば、溶接電流や溶接電圧の変更)などによりアークの発生状況が変動するので、騒音の発生状況(例えば、騒音の大きさや周波数スペトルの分布波形など)も種々変化する。このため、フィルタ回路のフィルタ特性を固定的に設定していると、騒音の発生状況が変化した場合、音声認識処理に悪影響を与える周波数成分を十分に抑制又は除去することができず、音声認識処理で誤認識や誤動作が発生し、安定して音声指令を入力することができないという問題が生じる。
ノイズキャンセラーは、騒音を収音し、その騒音が重畳された音声から騒音によるノイズ成分を除去する方法であるので、上記の問題に対してノイズキャンセラーの方法を用いることが考えられる。
しかしながら、溶接現場では作業者の音声よりも非常に大きい騒音が発生するので、ノイズキャンセラーの方法は、音声用マイクと騒音用マイクの取り付け位置やマイクの収音方向などを適切にしなければ、上記の問題に対して有効な効果を得られない可能性がある。
また、音声から騒音によるノイズ成分を除去する構成として、音声用マイクとは別に騒音用マイクが必要になるので、コスト増に繋がり、溶接システムにおける音声用マイクと騒音マイクの取り付け構造や配線も複雑になるという問題がある。
本第一の発明の溶接システムは、マイクと、マイクから出力される音声信号に含まれるノイズ成分を抑制するノイズ抑制手段と、ノイズ抑制手段から出力される音声信号に対して所定の音声認識処理を行い、作業者が発した音声に対応する操作指令を生成する操作指令生成手段と、操作指令生成手段が生成した操作指令に基づいて、当該操作指令に対応する所定の制御動作を行う制御手段とを備えた、音声による操作指令が入力可能な溶接システムであって、溶接作業中の作業者の音声が入力されていない期間に、マイクから出力される音声信号の周波数スペクトルを解析する周波数解析手段と、周波数解析手段の解析結果に基づいて、ノイズ抑制手段の周波数特性を決定する周波数特性決定手段と、ノイズ抑制手段の周波数特性を周波数特性決定手段が決定した周波数特性に更新する周波数特性更新手段と、を備えたことを特徴とする溶接システムである。
かかる構成により、作業者が発した音声の操作指令から音声認識処理に悪影響を与えるノイズ成分を好適に除去又は抑制することができ、音声よる操作指令の安定性を向上することができる。
また、本第二の発明の溶接システムは、第一の発明に対して、マイクは、作業者の口元の近傍に配置される接話型マイクである溶接システムである。
かかる構成により、マイクに入力される作業者の音声のS/Nを向上させることができる。
また、本第三の発明の溶接システムは、第一又は第二の発明に対して、ノイズ抑制手段は、適応型デジタルフィルタで構成され、周波数特性決定手段は、適応型デジタルフィルタのフィルタ係数を決定する溶接システムである。
また、本第四の発明の溶接システムは、第三の発明に対して、ノイズ抑制手段は、適応型デジタルフィルタで構成されたローパスフィルタであり、周波数特性決定手段は、周波数解析手段の解析結果に基づいてローパスフィルタの遮断周波数を決定し、その遮断周波数を用いてローパスフィルタのフィルタ係数を決定する溶接システムである。
また、本第五の発明の溶接システムは、第三の発明に対して、ノイズ抑制手段は、適応型デジタルフィルタで構成されたバンドエリミネーションフィルタであり、周波数特性決定手段は、周波数解析手段の解析結果に基づいてバンドエリミネーションの阻止周波数帯域を決定し、その阻止周波数帯域を用いてバンドエリミネーションフィルタのフィルタ係数を決定する溶接システムである。
かかる構成により、第三から第五のいずれか1つの発明の溶接システムは、作業者が発した音声の操作指令から音声認識処理に悪影響を与えるノイズ成分を好適に除去することができ、音声よる操作指令の安定性を向上することができる。
また、本第六の発明の溶接システムは、第一から第五のいずれか1つの発明に対して、周波数解析手段は、所定の周期で周波数スペクトルの解析を繰り返す溶接システムである。
かかる構成により、溶接作業中にノイズ成分の周波数が変動した場合でも作業者が発した音声の操作指令から音声認識処理に悪影響を与えるノイズ成分を好適に除去することができ、音声よる操作指令の安定性を向上することができる。
また、本第七の発明の静止溶接システムは、第一から第六のいずれか1つの発明に対して、溶接電源と、溶接電源に有線又は無線で接続され、当該溶接電源に操作指令を入力するための遠隔操作装置とを備え、ノイズ抑制手段と操作指令生成手段は、遠隔操作装置に設けられ、制御手段は、溶接電源に設けられている溶接システムである。
かかる構成により、作業者が発した音声の操作指令から音声認識処理に悪影響を与えるノイズ成分を好適に除去することができ、音声よる操作指令の安定性を向上することができる。
本発明による溶接システムによれば、作業者が発した音声の操作指令から音声認識処理に悪影響を与えるノイズ成分を好適に除去することができ、音声よる操作指令の安定性を向上することができる。
以下、本発明に係る溶接システムの実施の形態について図面を参照して説明する。なお、以下に説明する実施の形態では、アーク溶接用の溶接システムを例に説明する。実施の形態において、同じ符号を付した構成要素は同様の動作を行うので、再度の説明を省略する場合がある。
図1は、実施の形態に係る溶接システムの構成を示すブロック図である。図2は、音声指令入力部の構成を示すブロック図である。
図1に示す溶接システム1は、音声による操作指令が入力可能な消耗電極式の半自動アーク溶接システムである。溶接システム1は、溶接電源装置2、ワイヤ送給装置3、溶接トーチ4、遠隔操作装置5、ガス供給装置6及びワイヤリール7を含む。遠隔操作装置5には音声により操作指令を入力するための音声指令入力装置8が設けられており、この音声指令入力装置8が本実施の形態に係る溶接システム1の特徴的な構成となっている。音声指令入力装置8の構成の詳細については後述する。
溶接電源装置2は、溶接ワイヤWと母材Bとの間に供給する電力(溶接用電力)と、ワイヤ送給装置3のワイヤ送給機構31に供給する電力(ワイヤ送給用電力)を生成し、ワイヤ送給装置3を介して溶接用電力を溶接トーチ4に供給するとともに、ワイヤ送給用電力をワイヤ送給装置3のワイヤ送給機構31に供給する機能を有する。
溶接電源装置2は、機能ブロックとして、電源部21、制御部22、操作部23及び表示部24を含む。電源部21、操作部23及び表示部24は、制御部22に接続されている。
電源部21は、溶接電源装置2の駆動電力を生成するとともに、ワイヤ送給装置3の駆動電力と溶接用電力を生成する。ワイヤ送給装置3の駆動電力は、主として制御部33や表示部36などを駆動するための電力と溶接作業中に溶接ワイヤWを溶接トーチ4に送給するための駆動電力である。溶接用電力は、主として溶接ワイヤWと母材Bとの間にアークAを発生させるための電力とアーク発生後の溶接作業用の電力である。
電源部21の電力発生動作は、制御部22によって制御される。ワイヤ送給装置3は、パワーケーブル(図示省略)と制御ケーブル(図示省略)とによって溶接電源装置2に接続される。溶接電源装置2の電源部21で生成されたワイヤ送給装置3の駆動電力と溶接トーチ4への溶接用電力は、パワーケーブルでワイヤ送給装置3に供給され、溶接用電力は、更にワイヤ送給装置3を介して溶接ワイヤWと母材Bとの間に供給される。溶接電源装置2の制御部22とワイヤ送給装置3の制御部33との間のデータ通信は、制御ケーブルを介して行われる。
電源部21は、溶接用電力を生成する溶接用電源211と溶接ワイヤ送給用の電力を生成するワイヤ送給用電源212とを有する。溶接用電源211は、三相交流の商用電源Pから制御部22の制御指令に基づく所定の溶接用直流電力又は溶接用交流電力を生成する。溶接用電力は、溶接中の作業者の操作指令や予め設定されたプログラムに基づいて変化する。
ワイヤ送給用電源212は、例えば、ワイヤ送給装置3のワイヤ送給機構31が直流モータで溶接ワイヤWを送給する場合、商用電源Pから直流電力を生成する周知の直流電源で構成されている。ワイヤ送給用電源212は、商用電源Pから直流電力を生成し、ワイヤ送給機構31に規定されている駆動電圧でパワーケーブルを介してワイヤ送給装置3に出力する。
電源部21は、電力の発生動作に同期してガス供給装置6からシールドガスを溶接トーチ4に供給する制御を行う。電源部21は、制御ケーブルによってワイヤ送給装置3内のガス電磁弁32に接続されている。電源部21は、電力の生成の開始に同期してガス電磁弁32を「開」状態に制御し、電力の生成の停止に同期してガス電磁弁32を「閉」状態に制御する。
制御部22は、操作部23による情報の入力、表示部24よる情報の出力、電源部21によるワイヤ送給装置3への電源供給などの各処理を統括的に制御する。
制御部22は、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及びMPU(Micro−Processing Unit)を有するマイクロコンピュータで実現されている。なお、制御部22は、FPGA(Field−Programmable Gate Array)などのPLD(Programmable Logic Device)で実現してもよい。
操作部23は、作業者がアーク溶接に関する各種の情報を制御部22に入力する操作を行うブロックである。操作部23は、例えば、溶接電源装置2の筐体面に配設された操作パネルに設けられている。作業者が操作する操作部材は、例えば、操作パネルに所定の項目毎に配設された1又は2以上の操作ボタンや電源スイッチなどで構成される。なお、操作部23は、タッチパネルやキーボードなどの他の種類の入力装置で構成してもよい。
作業者が操作部23の操作ボタンを操作すると、その操作ボタンに対応する所定の操作指令信号が制御部22に入力される。
作業者が操作部23から入力するアーク溶接に関する情報は、例えば、スタート方式や交流/直流の溶接方式などの方式に関する情報や、初期電流、溶接電圧、溶接電流、交流波形(パルス波形や正弦波波形などの波形)、交流溶接における周波数などの溶接条件に関する情報などである。操作部23から制御部22に入力されるアーク溶接に関する情報は、一旦メモリ(RAM)に保存され、表示部36に転送される。
表示部24は、アーク溶接に関する各種の情報を作業者が視認できるように表示する。表示部24は、例えば、LEDや7セグメントなどの表示機で構成される。表示部24は、液晶ディスプレイなどの表示装置で構成してもよい。表示部24は、制御部22から転送される情報を所定の表示態様で表示する。
ワイヤ送給装置3は、機能ブロックとして、ワイヤ送給機構31、ガス電磁弁32、制御部33、無線通信部34、操作部35、表示部36及び電圧/電流検出部37を含む。無線通信部34、操作部35、表示部36及び電圧/電流検出部37は、制御部33に接続されている。
ワイヤ送給機構31は、溶接作業中に溶接ワイヤWが巻き付けられたワイヤリール7から当該溶接ワイヤWを繰り出して溶接トーチ4に連続的に供給するための機構である。ワイヤ送給機構31は、ワイヤリール7から溶接トーチ4まで溶接ワイヤWをガイドするガイド機構と溶接ワイヤWを繰り出す駆動源であるワイヤ送給モータとを有する。ワイヤ送給モータは、溶接電源装置2から供給されるワイヤ送給用電力によって駆動される。
ガス電磁弁32は、ガス供給装置6から溶接トーチ4へのシールドガスの供給を制御するための弁である。シールドガスは、溶接面を空気から遮断するためのアルゴン(Ar)、ヘリウム(He)といった不活性ガスである。シールドガスは、ガス供給装置6に封入されており、作業者が溶接作業を開始する際にガス供給装置6の栓を開くことによって、所定の圧力で溶接トーチ4への供給が可能になる。
ガス電磁弁32は、溶接開始から溶接終了までの期間に流路を開いてガス供給装置6から溶接トーチ4にシールドガスを供給する。ガス電磁弁32の開閉は、上述したように、溶接電源装置2の電源部21によって制御される。
制御部33は、操作部35による情報の入力、表示部26による情報の出力、ワイヤ送給機構31による溶接ワイヤWの送給、無線通信部34による遠隔操作装置5とのデータ通信などの各処理を統括的に制御する。制御部33は、ROM、RAM及びMPUを有するマイクロコンピュータで実現されている。制御部33もFPGAなどのPLDで実現してもよい。
操作部35は、ワイヤ送給装置3の筐体面に配設された操作パネルに設けられている。作業者が操作する操作部材は、例えば、操作パネルに所定の項目毎に配設された1又は2以上の操作ボタンや電源スイッチなどで構成される。なお、操作部35もタッチパネルなどの他の種類の入力装置で構成してもよい。
作業者が操作部35の操作ボタンを操作すると、その操作ボタンに対応する所定の操作指令信号が制御部33に入力される。
作業者が操作部35によって入力するアーク溶接に関する情報は、基本的に、作業者が操作部23によって溶接電源装置2の制御部22に入力する情報と同じである。操作部35から制御部33に入力されるアーク溶接に関する情報は、一旦メモリ(RAM)に保存され、表示部36に転送される。
溶接トーチ4は、ワイヤ送給機構31で送給される溶接ワイヤWを保持するとともに、ガス供給装置6からガス電磁弁32を介して供給されるシールドガスを当該シールドガスが溶接ワイヤWと母材Bとの間に発生するアークAと溶接金属を覆うように出力する機能を果たす機器である。溶接トーチ4には、作業者が手元で溶接電流を調整するためのトーチスイッチ41が設けられている。
トーチスイッチ41は、制御ケーブル(図示省略)でワイヤ送給装置3の制御部33に接続されている。トーチスイッチ41は、例えば、押しボタン式のモーメンタリー・スイッチで構成される。制御部33には、例えば、トーチスイッチ41が「ON」になると、ハイレベルの信号が入力され、トーチスイッチ41が「OFF」になると、ローレベルの信号が入力される。
作業者は、トーチスイッチ41をONにした後、所定の時間tが経過してOFFにする操作をすることにより、制御部33にパルス幅tのパルス信号を入力することができる。制御部33には、トーチスイッチ41から入力されるパルス信号の波形を特定の操作指令に変換するテーブルが設けられている。
例えば、制御部33には、パルス幅tが所定の時間よりも大きいパルス信号となるクリック操作を溶接電流の通電又は遮断を行う操作指令に割り当て、パルス幅tが所定の時間以内のパルス信号となるシングルクリック操作を所定のステップで溶接電流を減少させる操作指令信号に割り当て、同パルス信号が所定の時間間隔内で連続して2回発生させるダブルクリック操作を所定のステップで溶接電流を上昇させる操作指令信号に割り当てたテーブルが設けられている。
作業者は、トーチスイッチ41を所定の操作パターンで操作することにより、溶接作業の開始、溶接中の溶接電流の変更、溶接作業の終了などの指令を制御部33に入力することができる。制御部33は、操作部35から操作指令信号が入力されると、その操作指令信号を溶接電源装置2の制御部22に送信する。
本実施の形態では、トーチスイッチ41をワイヤ送給装置3の制御部33に接続しているが、トーチスイッチ41を溶接電源装置2の制御部22に接続し、トーチスイッチ41の操作信号を制御部22に直接入力するようにしてもよい。
電圧/電流検出部37は、溶接ワイヤWと母材Bとの間の電圧(溶接電圧)と溶接ワイヤWと母材Bとの間に流れる電流(溶接電流)を検出する。電圧/電流検出部37は、電圧を検出する電圧センサと、その電圧センサから出力される電圧検出値をデジタル信号に変換して制御部33に出力する。また、電圧/電流検出部37は、電流を検出する電流センサと、その電流センサから出力される電流検出値をデジタル信号に変換して制御部33に出力する。
制御部33には、操作部35若しくはトーチスイッチ41から作業者によって入力されたアーク溶接に関する情報と、電圧/電流検出部37から溶接作業中の溶接電圧検出値と溶接電流検出値に関する情報が入力される。制御部33に入力されるこれらの情報は、制御ケーブルを介してデータ通信によりワイヤ送給装置3から溶接電源装置2に送信される。
表示部36は、例えば、LEDや7セグメントなどの表示機で構成される。表示部36は、液晶ディスプレイなどの表示装置で構成されてもよい。表示部36は、制御部33から転送される情報に基づいて、所定の表示をする。
無線通信部34は、例えば、無線LANにより遠隔操作装置5との間で無線通信を行う。無線通信部34は、無線LANアクセスポイント(図示省略)を介して遠隔操作装置5と無線接続を行い、無線通信により所定の情報の送受信を行う。無線通信部34は、所定の変調方式でキャリア信号を送信すべき情報で変調して無線通信信号を生成し、その無線通信信号をアンテナ34Aから放射する。
例えば、無線通信部34は、制御部33から溶接電圧と溶接電流の情報が転送されると、その情報を用いて無線通信信号を生成し、その無線通信信号を遠隔操作装置5に送信する。また、無線通信部34は、制御部33から溶接電圧検出値と溶接電流検出値の情報が転送されると、その情報を用いて無線通信信号を生成し、その無線通信信号を遠隔操作装置5に送信する。
また、無線通信部34は、遠隔操作装置5から無線通信信号を受信すると、送信された情報を復調し、制御部33に転送する。また、無線通信部34は、受信レベルを検出し、その検出値を制御部33に入力する。制御部33は、無線通信の通信状態を表示させるために、その検出値に基づいて、受信レベルに関する情報を生成し、その情報を表示部36に転送する。
遠隔操作装置5は、リモコンと呼ばれるものである。遠隔操作装置5は、機能ブロックとして、電池51、制御部52、無線通信部53、操作部54及び表示部55を含む。
本実施の形態の遠隔操作装置5には音声指令入力装置8が設けられている。音声指令入力装置8は、作業者が発声する指令用語を音声信号(電気信号)に変換するマイク81と、マイク81から出力される音声信号を音声認識により指令用語に変換した後、当該指令用語に対応する音声指令信号(制御部22が制御動作可能な信号)を生成する音声指令入力部82とで構成される。音声指令入力部82は、遠隔操作装置5内に設けられている。
電池51は、遠隔操作装置5の駆動電源である。電池51、無線通信部53、操作部54、表示部55及び音声指令入力部82は制御部52に接続されている。
制御部52は、操作部54による情報の入力、表示部55による情報の出力、音声指令入力部82による音声指令の入力、無線通信部53によるワイヤ送給装置3とのデータ通信などの各処理を統括的に制御する。制御部52は、ROM、RAM及びMPUを有するマイクロコンピュータで実現されている。制御部52もFPGAなどのPLDで実現してもよい。
操作部54は、作業者がアーク溶接に関する各種の情報を制御部52に入力する操作を行うブロックである。操作部54は、遠隔操作装置5の筐体面に配設された操作パネルに設けられている。遠隔操作装置5の操作パネルには、例えば、溶接電源装置2の電源部21の起動、溶接電圧の設定・変更、溶接電流の設定・変更などの操作ボタンが設けられている。
作業者が操作部54の操作ボタンを操作すると、その操作ボタンに対応する所定の操作指令信号が制御部52に入力される。
遠隔操作装置5では、作業者は、操作指令を操作部54と音声指令入力装置8のいずれかで入力することができる。このため、遠隔操作装置5の操作パネルには、操作指令を入力する装置を選択するための選択ボタンが設けられている。この選択ボタンは、例えば、モーメンタリー・スイッチで構成され、作業者がモーメンタリー・スイッチをオン状態にしている期間に音声指令入力装置8を用いて音声により操作指令を制御部52に入力することができる。
表示部55は、アーク溶接に関する各種の情報や電池51の残容量に関する情報やワイヤ送給装置3との無線通信状態などを表示する。表示部55は、例えば、液晶ディスプレイなどの表示装置で構成される。表示部55は、LEDや7セグメントなどの表示機で構成されてもよい。
表示部55は、制御部52から転送される情報に基づいて、所定の表示をする。例えば、表示部55は、制御部52から入力される電池51の電圧に関する情報に基づいて、電池51の残容量に関する情報を絵文字や記号や文字メッセージなどで表示する。また、表示部55は、制御部52から入力される受信レベルに関する情報に基づいて、無線通信の通信状態に関する情報を絵文字や記号や文字メッセージなどで表示する。
また、表示部55は、制御部52から転送される入力情報(操作部54又は音声指令入力部82から入力された情報や無線通信部53を介してワイヤ送給装置3から入力された情報)を表示する。
無線通信部53は、ワイヤ送給装置3との間で無線通信を行う。無線通信部53は、無線通信部34と同様に、無線LANによりワイヤ送給装置3との間で無線通信を行う。
無線通信部53は、無線LANアクセスポイント(図示省略)を介してワイヤ送給装置3と無線接続を行い、無線通信により所定の情報の送受信を行う。無線通信部53は、無線通信部33と同じ変調方式でキャリア信号を送信すべき情報で変調して無線通信信号を生成し、その無線通信信号をアンテナ53Aから放射する。
例えば、無線通信部53は、制御部52から溶接電圧と溶接電流の情報が転送されると、その情報を用いて無線通信信号を生成し、その無線通信信号をワイヤ送給装置3に送信する。
また、無線通信部53は、ワイヤ送給装置3から無線通信信号を受信すると、送信された情報を復調し、制御部52に転送する。また、無線通信部53は、受信レベルを検出し、その検出値を制御部52に入力する。制御部52は、無線通信の通信状態を表示させるために、その検出値に基づいて、受信レベルに関する情報を生成し、その情報を表示部55に転送する。
音声指令入力装置8のマイク81は、例えば、作業者の頭部に固定部材811を装着し、その固定部材811から作業者の口元までマイク81を伸ばしたヘッドセットタイプのマイクである。マイク81には、騒音の大きい溶接現場で作業者の発声する指令音を可級的に高いS/N比で収音するために、例えば、接話型マイクや単一指向性マイクが用いられている。
遠隔操作装置5には、マイク81を接続するための接続部56(通常、ジャック)が設けられており、マイク81は、音声ケーブル83を接続部56に接続して使用される。マイク81から出力される音声信号は、音声ケーブル83を介して音声指令入力部82に入力される。
本実施の形態では、作業者にマイク81を直接装着するマイクとしてヘッドセットタイプのマイクを用いているが、例えば、耳に掛けるタイプなどの他の装着方式のマイクであってもよい。
また、マイク81は、作業者が溶接作業時に使用する溶接面に取り付けてもよい。この場合、マイク81は、図2に示すように、溶接面9の内側の適所に当該作業者の口元に向けて取り付けられているとよい。図2の例では、溶接面9の内側の遮光窓91の下部にマイク81が設けられており、溶接面9の保持棒92の下部から音声ケーブルが取り出されている。
マイクの周波数特性(収音可能な周波数帯域)は、通常、人間の耳の可聴帯域を考慮して50[Hz]〜20[kHz]の広帯域に設定されているものが多い。マイク81から出力される音声信号の音声認識処理ではマイク81の周波数特性よりも狭い周波数帯域(例えば、50[Hz]〜6[kHz]などの周波数帯域)が重要になるので、マイク81には、50[Hz]〜7[kHz]の周波数特性を有するマイクを用いてもよい。
音声指令入力部82は、図3に示すように、A/Dコンバータ821、フィルタ部822、音声認識部823及び指令信号生成部824を含む。フィルタ部822は、スイッチ回路8221、周波数解析回路8222、フィルタ係数設定回路8223及び適応型フィルタ8224を備える。
A/Dコンバータ821は、マイク81から入力される音声信号(アナログ信号)を所定の階調のデジタル信号(例えば、8ビット(256階調)のデジタル信号)に変換する。スイッチ回路8221は、A/Dコンバータ821から出力されるデジタル音声信号の出力先を周波数解析回路8222と適応型フィルタ8224との間で切り換える。スイッチ回路8221の切換制御は、制御部52から出力される切換制御信号によって行われる。
切換制御信号は、例えば、ハイレベルとローレベルの2値信号である。制御部52は、選択ボタンが操作されると(オン状態になると)、例えば、ハイレベルの切換制御信号をスイッチ回路8221に出力し、選択ボタンの操作が終了すると(オフ状態になると)、ローレベルの切換制御信号をスイッチ回路8221に出力する。スイッチ回路8221は、切換制御信号がハイレベルであれば、デジタル音声信号を適応型フィルタ8224に出力し、切換制御信号がローレベルであれば、デジタル音声信号を周波数解析回路8222に出力する。切換制御信号のハイ/ローの論理とデジタル音声信号の出力先の論理は逆であってもよい。
スイッチ回路8221がデジタル音声信号を適応型フィルタ8224に出力している期間は、音声指令入力装置8が動作するので、制御部52に音声による操作指令が入力されるが、スイッチ回路8221がデジタル音声信号を周波数解析回路8222に出力している期間は、音声指令入力装置8が動作しないので、制御部52には音声による操作指令は入力されない。
周波数解析回路8222は、A/Dコンバータ821から入力されるデジタル音声信号の周波数スペクトルを解析する。周波数解析回路8222は、例えば、FFT演算処理を行ってデジタル音声信号のスペクトル解析データを取得する。
このスペクトル解析データは、例えば、マイク81の周波数帯域が50[Hz]〜10[kHz]の周波数帯域であるとすると、図4に示すように、その周波数帯域における周波数fと音の強度Dの関係を示すデータである。なお、図4では、作図の便宜上、各周波数fの音の強度Dを滑らかに繋いでスペクトル分布を曲線で示している。
周波数解析回路8222には作業者がマイク81に音声による指令を入力しない期間の音声、すなわち、溶接作業中における騒音が入力されるので、周波数解析回路8222は、溶接作業中に発生する騒音のスペクトル解析データを取得する。
アーク溶接作業では、マイク81の近くでアークAが発生し、そのアークAによってアーク放電に特有の非常に大きい騒音が発生する。図4は、アーク溶接中の主としてアークAによる騒音のスペクトル解析データの一例である。
周波数解析回路8222は、取得したスペクトル解析データを所定の閾値DTHと比較し、例えば、DTH≦Dを満たす周波数f又は周波数範囲Wを算出する。図4の例では、凡そ50[Hz]〜2.0[kHz]の周波数範囲W1と、凡そ6.0[Hz]〜7.0[kHz]の周波数範囲W2と、凡そ8.5[Hz]〜9.0[kHz]の周波数範囲W3の音の強度DがDTH≦Dを満たすので、これらの周波数範囲W1,W2,W3が算出される。
フィルタ係数設定回路8223は、周波数解析回路8222が算出した周波数f又は周波数範囲Wに基づいて適応型フィルタ8224のフィルタ係数を設定する。本実施の形態では、適応型フィルタ8224は、例えば、IIR(Infinite impulse response)ローパスフィルタで構成されている。
例えば、一次のIIRローパスフィルタのz変換表現による伝達関数H(z)は、
H(z)=(b0+b1・z−1)/(1−a1・z−1)…(1)
で表される。(1)式において、b0、b1、a1がIIRローパスフィルタの特性を決定するフィルタ係数である。従って、フィルタ係数設定回路8223は、周波数解析回路8222が算出した周波数f又は周波数範囲Wに基づいて、フィルタ係数b0、b1、a1を設定する。
H(z)=(b0+b1・z−1)/(1−a1・z−1)…(1)
で表される。(1)式において、b0、b1、a1がIIRローパスフィルタの特性を決定するフィルタ係数である。従って、フィルタ係数設定回路8223は、周波数解析回路8222が算出した周波数f又は周波数範囲Wに基づいて、フィルタ係数b0、b1、a1を設定する。
フィルタ係数b0、b1、a1は、ローパスフィルタの遮断周波数をfc[kHz]、サンプリング周波数をfs[kHz]とし、α=(2π・fc)/fsとすると、
b0=b1=α/(2+α)…(2)
a1=(2−α)/(2+α)…(3)
の関係がある。
b0=b1=α/(2+α)…(2)
a1=(2−α)/(2+α)…(3)
の関係がある。
フィルタ係数設定回路8223は、周波数解析回路8222が取得したスペクトル解析データを用いて遮断周波数fcを決定し、その遮断周波数fcと予め設定されているサンプリング周波数fsを用いて、(2)式と(3)式を演算することにより、フィルタ係数a1,b0,b1を設定する。サンプリング周波数fsは、適応型フィルタ8224がデジタル音声信号のフィルタリング処理を行う際のサンプリングの周波数である。サンプリング周波数fsは、適応型フィルタ8224の遮断周波数fcに対して、例えば、10倍の周波数に設定されている。
音声認識部823における音声認識処理では、周波数スペクトルで音素の判定が行われるが、その判定に使用される音響モデルの周波数スペクトルの範囲は、主に0〜6[kHz]の範囲にあることが知られている。また音響モデルの周波数スペクトルでは、エネルギーの大部分が低周波側に分布し、高周波側には特定の周波数成分が比較的小さいレベルで離散的に分布することが知られている。
一方、アーク溶接においては、アークAが発生すると、例えば、5〜10[kHz]の帯域にアーク放電に特有の高レベルの周波数成分が表れることが知られている。マイク81から出力される音声信号が作業者の音声にアークAに起因する騒音が混入したものである場合、その音声信号の周波数スペクトルは、5〜10[kHz]の帯域にアーク放電に特有の高レベルの周波数成分を含む。この周波数成分は、音声認識処理における音素判定に大きく影響し、音素の誤認識や認識不可の要因となる。
フィルタ係数設定回路8223は、例えば、5[kHz]以上の帯域でDTH≦Dを満たす周波数fのうち、最小の周波数fを適応型フィルタ8224の遮断周波数fcに設定する。すなわち、適応型フィルタ8224から出力されるデジタル音声信号の遮断周波数fc以上の周波数成分の音の強度Dが閾値DTHよりも小さくなるように、適応型フィルタ8224のフィルタ係数を設定する。
例えば、図4の例では、DTH≦Dを満たす周波数fのうち、最小の周波数fは凡そ6[kHz]であるので、例えば、サンプリング周波数fsを60[kHz]とすると、フィルタ係数設定回路8223は、fc=6[kHz]、fs=60[kHz]に設定し、(2)式と(3)式を演算することにより適応型フィルタ8224のフィルタ係数a1,b0,b1を設定する。
適応型フィルタ8224は、A/Dコンバータ821からスイッチ回路8221を介して入力されるデジタル音声信号の周波数スペクトルのうち、アーク放電に起因する所定の高周波領域の周波数成分を抑制又は除去する。適応型フィルタ8224は、例えば、(1)式に示す伝達関数H(z)を有する一次のIIRローパスフィルタで構成され、そのIIRローパスフィルタのフィルタ係数a1,b0.b1は、フィルタ係数設定回路8223によって設定される。
図5は、(1)式の演算処理を行う適応型フィルタ8224のブロック図である。適応型フィルタ8224は、加算器8624a、遅延回路8624f及び乗算器8624cで構成されるフィードバック回路と、乗算器8624d、遅延回路8624f、乗算器8624e及び加算器8624bで構成されるフィードフォワード回路を含む。フィードバック回路は、(1)式の分母の演算処理を行い、フィードフォワード回路は、(1)式の分子の演算処理を行う。
図5に示すブロック図において、u[k](k:離散時間を表すインデックス番号)は入力データ、x[k]は適応型フィルタ8224の状態データ、y[k]は適応型フィルタ8224の出力データである。乗算器8624c,8624d,8624eにそれぞれ入力される係数a1,b0,b1は、フィルタ係数設定回路8223によって設定される。
入力データu[k]、状態データx[k]及び出力データy[k]の間には、x[k]=a1・x[k−1]+u[k] …(4)y[k]=b0・x[k]+b1・x[k−1] …(5)の関係がある。適応型フィルタ8224は、予め設定されたサンプリング周期Ts=1/fsで(4)式及び(5)式の演算処理を繰り返す。
本実施の形態では、一次のIIRローパスフィルタを例に説明しているが、適応型フィルタ8224は、二次以上のIIRローパスフィルタであってもよい。また、IIRローパスフィルタとは異なる種類の適応型フィルタであってもよい。
音声認識部823は、フィルタ部822から出力されるデジタル音声信号の音声を認識し、作業者がマイク81に入力した音声指令を文字データに変換する処理を行う。例えば、作業者がマイク81に「アップ」という音声指令を入力した場合、音声認識部823は、フィルタ部822から出力されるデジタル音声信号から「ア」、「ッ」、「プ」という音素を抽出し、それらの音素の列を「アップ」という文字列のデータに変換して出力する。
音声認識部823は、音響モデル記憶部8631、言語モデル記憶部8632、音声信号分析部8633及び音声指令変換部8634を含む。音響モデル記憶部8631は、認識対象の音素の音響的な特徴をモデル化した音響モデルのデータを記憶する。音素の音響的な特徴とは、例えば、「あ」、「い」、「う」などの50音の音素の周波数特性における特徴(周波数スペクトルの分布波形の特徴)である。音響モデル記憶部8631は、音素毎に周波数スペクトルの分布波形の特徴点のデータを記憶している。
言語モデル記憶部8632は、予め設定された音声指令(文字列)のデータを記憶する。音声指令は、操作部54の操作ボタン又はトーチスイッチ41によって制御部52に入力される複数の操作指令の一部に対応する指令である。音声指令は、特に、作業者が溶接作業中に溶接電源装置2に入力する必要性の高い操作指令が選定されている。
音声指令には、例えば、溶接開始/終了、溶接電流のアップ/ダウン、溶接電圧のアップ/ダウンなどの指令が設定されている。言語モデル記憶部8632には、音声で制御部52に入力可能な指令の言語モデルが、予め決められた用語(文字列)のデータで記憶されている。
例えば、溶接電流のアップ/ダウンの場合、「でんりゅう あっぷ」の用語(文字列)のデータが言語モデル記憶部8632に記憶されている。溶接電流のアップの指令は、現在の溶接電流値に対して予め設定された単位電流値(例えば、1[A])で溶接電流を増加させる指令である。逆に溶接電流のダウンの指令は、現在の溶接電流値に対して単位電流値で溶接電流を減少させる指令である。
また、溶接電圧のアップ/ダウンの場合、「でんあつ あっぷ」の用語(文字列)のデータが言語モデル記憶部8632に記憶されている。溶接電圧のアップの指令は、現在の溶接電圧値に対して予め設定された単位電圧値(例えば、0.1[V])で溶接電圧を増加させる指令である。逆に溶接電圧のダウンの指令は、現在の溶接電圧値に対して単位電圧値で溶接電圧を減少させる指令である。
音声信号分析部8633は、フィルタ部822から入力されるデジタル音声信号を音素の区間に分離し、各区間の周波数特性における特徴のデータを抽出する。そして、音声信号分析部8633は、抽出した特徴のデータを音響モデル記憶部8631に記憶された音響モデルのデータと比較して各区間の音素を決定する。
音声信号分析部8633は、決定した音素の列を文字列のデータに変換して出力する。例えば、決定した音素の列が「で」、「ん」、「り」、「ゅ」、「う」、「あ」、「っ」、「ぷ」の場合、音声信号分析部8633は、「でんりゅう」の文字列と「あっぷ」の文字列のデータに変換して出力する。これにより、音声信号分析部8633から「電流アップ」の音声認識データが出力される。
音声指令変換部8634は、音声信号分析部8633から出力される音声認識データを言語モデル記憶部8632に記憶されている音声指令のデータと比較し、予め設定された音声指令に該当するか否かを判定する。音声指令変換部8634は、音声認識データが予め設定された音声指令のデータと一致する場合、その音声指令に対応する操作指令信号を生成し、制御部52に入力する。
例えば、言語モデル記憶部8632に「電流アップ」の音声指令のデータが記憶されていて、音声信号分析部8633から出力された音声認識データが「電流アップ」の場合、音声指令変換部8634は、音声認識データが「電流アップ」の音声指令のデータと一致するので、「電流アップ」に対応する操作指令信号を生成し、制御部52に入力する。
音声指令変換部8634は、「電流アップ」に対応する操作指令信号として、例えば、操作部54の「電流アップ」の操作ボタンを操作した場合に操作部54から制御部52に入力される操作信号と同一の信号を生成し、制御部52に入力する。音声指令変換部8634は、トーチスイッチ41によって入力される「電流アップ」に相当する入力信号と同一の信号を生成して制御部52に入力するようにしてもよい。
制御部52は、音声指令変換部8634から「電流アップ」の操作指令信号が入力されると、その操作指令信号を無線通信によって一旦ワイヤ送給装置3に送信し、ワイヤ送給装置3を介して溶接電源装置2の制御部22に送信する。制御部22は、ワイヤ送給装置3から「電流アップ」の操作指令信号が入力されると、電源部21の溶接用電源211が出力している溶接電流を所定の電流値(例えば、1[A])だけ上昇させる制御を行う。
一方、音声指令変換部8634は、音声認識データが予め設定された音声指令のデータと一致しない場合、制御部52には操作指令信号を入力しない。すなわち、音声認識部823で作業者が入力した音声指令が正しく認識できなかった場合や作業者が誤った音声指令を入力した場合は、実質的にその音声指令は受け付けられず、音声指令入力部82から制御部52には操作指令信号は入力されない。従って、制御部22にも操作指令信号は入力されない。
次に、遠隔操作装置5の音声指令入力装置8による音声指令の入力制御について、図6のフローチャートを用いて説明する。
以下の説明では、溶接作業中に作業者が操作部54で音声による操作指令の入力を選択し、音声指令入力装置8を用いて音声指令を制御部52に入力する場合について、説明する。また、溶接作業中に作業者が入力する音声指令として、溶接電流を所定の電流値だけ上昇させる溶接電流アップの音声指令を例に説明する。
また、溶接作業が開始されるときには、フィルタ部822の適応型フィルタ8224に遮断周波数fcoに対応するフィルタ係数a10,b00,b10(ディフォルト値)が設定されているものとし、溶接作業中の作業者が音声指令を入力していない期間に所定の周期でフィルタ係数設定回路8223がフィルタ係数a1,b0,b1を更新する場合を例に説明する。
制御部52は、操作部54から音声による操作指令の入力が選択されたか否かを監視している(S100のループ処理)。制御部52は、音声による操作指令の入力が選択されていなければ(S100:N)、音声指令入力部82のスイッチ回路8221にハイレベルの切換制御信号を出力し、音声による操作指令の入力が選択されると(S100:Y)、音声指令入力部82のスイッチ回路8221にローレベルの切換制御信号を出力する。
スイッチ回路8221は、ハイレベルの切換制御信号が入力されると、A/Dコンバータ821から入力されるデジタル音声信号を周波数解析回路8222に出力し、適応型フィルタ8224を無入力状態にする(S101)。これにより、音声指令信号が適応型フィルタ8224に入力されてないので、音声指令入力部82から制御部52に指令信号は入力されない。
周波数解析回路8222は、A/Dコンバータ821からデジタル音声信号が入力されると、FFT演算処理を行ってデジタル音声信号の周波数スペクトルの分布データを取得する。さらに、周波数解析回路8222は、予め設定された閾値DTH以上の音の強度を有する周波数f又は周波数範囲Wを取得する(S102)。
続いて、フィルタ係数設定回路8223は、周波数解析回路8222が取得したスペクトル解析データを用いて適応型フィルタ8224のフィルタ係数a1,b0,b1を決定する。フィルタ係数設定回路8223は、例えば、周波数解析回路8222が取得した閾値DTH以上の音の強度を有する周波数f又は周波数範囲Wのうち、例えば、5[kHz]以上の範囲で最小の周波数fを遮断周波数fcに設定し、その遮断周波数fcの適応型フィルタ8224の演算処理におけるサンプリング周波数fsを用いて、(2)式、(3)式を演算することによりフィルタ係数a1,b0,b1を決定する。
フィルタ係数設定回路8223は、決定したフィルタ係数a1,b0,b1を適応型フィルタ8224に出力し、適応型フィルタ8224のフィルタ特性を更新する(S103)。
周波数解析回路8222は、前回のスペクトル解析データの算出処理から所定の時間が経過したか否かを判定する(S104)。周波数解析回路8222は、所定の時間が経過していなければ(S104:N)、待機し、所定の時間が経過すると(S104:Y)、次回のスペクトル解析データの算出処理を行うべく、ステップS100に戻る。
ステップS100で、音声による操作指令の入力が選択され、制御部52から音声指令入力部82のスイッチ回路8221にローレベルの切換制御信号を出力されると(S100:Y)、A/Dコンバータ821から入力されるデジタル音声信号を適応型フィルタ8224に出力し、周波数解析回路8222を無入力状態にする(S105)。
適応型フィルタ8224は、A/Dコンバータ821からデジタル音声信号が入力されると、直前にフィルタ係数設定回路8223が設定されたフィルタ係数a1,b0,b1でフィルタリング処理を行う(S106)。このフィルタリング処理より、適応型フィルタ8224は、遮断周波数fc以上の周波数成分の音の強度Dを閾値DTHよりも小さい値に抑制したデジタル音声信号を音声認識部823に出力する。
例えば、適応型フィルタ8224に入力されるデジタル音声信号の周波数スペクトルが、図7に示すような波形である場合、適応型フィルタ8224は、例えば、図8に示す波形の周波数スペクトルを有するデジタル音声信号を出力する。図7,図8では、作図の便宜上、各周波数fの音の強度Dを滑らかに繋いでスペクトル分布を曲線で示している。
図7は、作業者が発生した操作指令の音声にアーク発生時の騒音が重畳されている場合のデジタル音声信号の周波数スペクトルの一例である。50[Hz]〜2.0[kHz]の周波数帯域と5[kHz]以上の周波数帯域に音の強度の高い周波数成分を有している。5[kHz]以上の周波数帯域の音の強度の高い周波数成分は、アークAが発する非常に高い騒音に起因するものである。
図8は、フィルタ係数設定回路8223により遮断周波数fcを6[kHz]として適応型フィルタ8224のフィルタ係数a1,b0,b1が設定された場合の適応型フィルタ8224から出力されるデジタル音声信号の周波数スペクトルの一例である。図8の実線は、周波数スペクトルの波形を示し、一点鎖線は、適応型フィルタ8224のローパスフィルタ特性を示している。
適応型フィルタ8224の遮断周波数fcは、フィルタ係数設定回路8223で6[kHz]に設定されているので、適応型フィルタ8224に入力されるデジタル音声信号の周波数スペクトルに対して、6[kHz]以上の周波数帯域の音の強度Dが非常に小さいレベルに抑制された周波数スペクトルを有するデジタル音声信号が適応型フィルタ8224から出力される。
音声認識部823は、フィルタ部822から入力されるデジタル音声信号の音声認識処理を行う(S107)。
具体的には、音声認識部823は、デジタル音声信号を音素の区間に分離し、各区間の周波数特性における特徴のデータを抽出する。次に、音声認識部823は、抽出した特徴のデータを予め用意された音響モデルのデータと比較して各区間の音素を決定する。例えば、決定した音素の列が「で」、「ん」、「り」、「ゅ」、「う」、「あ」、「っ」、「ぷ」の場合、音声認識部823は、「でんりゅう」の文字列と「あっぷ」の文字列のデータに変換する。これにより、音声認識部823は「電流アップ」の音声認識データを出力する。
続いて、音声認識部823は、音声認識データを予め設定された音声指令の用語のデータと比較して一致する音声指令の用語があるか否かを判別する(S107)。音声認識部823は、音声認識データに一致する音声指令の用語のデータがなければ(S108:N)、ステップS100に戻り、音声認識データに一致する音声指令の用語のデータがあれば(S108:Y)、その音声指令に対応する指令信号を生成し、制御部52に出力して(S109)、ステップS100に戻る。
例えば、音声認識部823は、「電流アップ」と同一の音声指令の用語があるか否かを判別し、同一の音声指令の用語がなければ、制御部52に操作指令信号を出力することなくステップS100に戻る。一方、音声認識部823は、「電圧アップ」と同一の音声指令の用語があれば「電流アップ」に対応する操作指令信号を生成し、その操作指令信号を制御部52に出力してステップS100に戻る。
以上、説明したように、本実施の形態に係る溶接システム1の音声指令入力装置8によれば、溶接作業中に作業者が音声による操作指令を入力していない期間に、アークAが発する騒音を含む環境音の周波数スペクトルを解析し、音声認識に悪影響を与える周波数成分を抑制するように適応型フィルタ8224のフィルタ係数を更新するので、作業者が音声による操作指令を入力する場合の当該操作指令の誤認識や誤動作などを低減することができる。
特に、溶接作業中に環境音の周波数スペクトルが変化した場合でも変化後の周波数スペクトルに基づいて適応型フィルタ8224のフィルタ係数を適切な値に変更するので、音声による操作指令の誤認識や誤動作の安定した低減効果を得ることができる。
上記の実施の形態では、操作部54に選択スイッチを設け、作業者が選択スイッチを操作して音声による操作指令を入力するようにしていたが、選択スイッチに代えてモード切換スイッチを操作部54に設けてもよい。
モード切換スイッチは、操作指令の入力モードを音声による入力モード(音声入力モード)と操作ボタン又はトーチスイッチ41による入力モード(手入力モード)とに切り換えるスイッチである。
作業者がモード切換スイッチで音声入力モードを設定すると、制御部52は、操作ボタン又はトーチスイッチ41による操作指令信号の受け付け制御を行うとともに、音声指令入力装置8からの操作指令信号の受け付け制御を行う。逆に、作業者がモード切換スイッチで手入力モードを設定すると、制御部52は、操作ボタン又はトーチスイッチ41による操作指令信号を受け付けるが、音声指令入力装置8からの操作指令信号を受け付けない制御を行う。
上記の実施の形態では、溶接作業中に適応型フィルタ8224のフィルタ係数を更新するようにしているが、作業者が溶接作業前に適応型フィルタ8224のフィルタ係数を設定し、溶接作業中はフィルタ係数の更新処理をしないようにしてもよい。
上記の実施の形態では、作業者の音声を収音するマイクと騒音を収音するマイクを1個のマイク81で共用しているが、マイク81は、作業者の口元近くに配置され、しかも作業者の発声源に指向性を有する接話型マイク又は単一指向性マイクを用いているので、騒音を拾うマイクとしては配置や指向性が必ずしも適切とはいえない。
このため、図9に示すように、作業者の音声を収音する音声用マイク81Aとは別に騒音を収音する騒音用マイク81Bを設けるとともに、A/Dコンバータ821を作業者の音声信号用のA/Dコンバータ821Aと騒音信号用のA/Dコンバータ821Bで構成してもよい。
図9の例では、音声用マイク81Aは、図1に示したマイク81に相当する。一方、騒音用マイク81Bは、例えば、無指向性マイクで構成され、溶接トーチ2に取り付けられてアークAが発生する騒音を収音する。また、音声信号用のA/Dコンバータ821Aと騒音信号用のA/Dコンバータ821Bは、制御部52から出力される切換制御信号によっていずれか一方が動作するように制御される。
すなわち、制御部52から手操作による操作指令の入力モードを示す切換制御信号が出力されると、騒音用のA/Dコンバータ821Bが動作し、A/Dコンバータ821からフィルタ部822の周波数解析回路8222に作業者のデジタル音声信号が入力される。この入力モードでは、適応型フィルタ8224のフィルタ係数の更新処理が行われ、適応型フィルタ8224から音声認識部823にデジタル音声信号は出力されない。
制御部52から音声指令の入力モードを示す切換制御信号が出力されると、音声信号用のA/Dコンバータ821Aが動作し、A/Dコンバータ821Aからフィルタ部822の適応型フィルタ8224に作業者のデジタル音声信号が入力される。この入力モードでは、適応型フィルタ8224で作業者が発した音声指令のフィルタリング処理が行われ、適応型フィルタ8224から音声認識部823にデジタル音声信号が出力される。
図9に示す変形例では、騒音を収音するための専用のマイク81Bを設けるので、周波数解析回路8222での騒音の周波数解析を好適に行うことができ、適応型フィルタ8224のフィルタ係数の更新を適切に行うことができる。
上記の実施の形態では、適応型フィルタ8224としてローパスフィルタを用いていたが、バンドエリミネーションフィルタを用いてもよい。例えば、図7の例で、6〜10[kHz]の帯域の音の強度Dを除去若しくは抑制したい場合、この周波数帯域を阻止帯域とするバンドエリミネーションフィルタを適応型フィルタ8224に用いてもよい。
適応型フィルタ8224にバンドエリミネーションフィルタを用いる場合も伝達関数H(z)がローパスフィルタの伝達関数H(z)と異なるだけで、バンドエリミネーションフィルタのフィルタ係数を決定する方法は、上述したローパスフィルタのフィルタ係数を決定する方法と基本的に同じであるので、詳細な説明は省略する。
適応型フィルタ8224にバンドエリミネーションフィルタを用いた場合でも、作業者が発した音声指令のフィルタリング処理で音声認識に悪影響を与える周波数成分を好適に抑制することができる。従って、この場合も、作業者が音声による操作指令を入力する場合の当該操作指令の誤認識や誤動作などを低減することができる。
また、溶接作業中に環境音の周波数スペクトルが変化した場合でも、好適に音声による操作指令の誤認識や誤動作の低減することでき、音声指令を安定して行うことができる。
1 溶接システム
2 溶接電源装置
21 電源部
211 溶接用電源
212 ワイヤ送給用電源
22 制御部
23 操作部
24 表示部
3 ワイヤ送給装置
31 ワイヤ送給機構
32 ガス電磁弁
33 制御部
34 無線通信部
34A アンテナ
35 操作部
36 表示部
37 電圧/電流検出部
4 溶接トーチ
41 トーチスイッチ
5 遠隔操作装置(リモコン)
51 電池
52 制御部
53 無線通信部
53A アンテナ
54 操作部
55 表示部
6 ガス供給装置
7 ワイヤリール
8 音声指令入力装置
81,81A,81B マイク
82 音声指令入力部
821,821A,821B A/Dコンバータ
822 フィルタ部
8221 スイッチ回路
8222 周波数解析回路
8223 フィルタ係数設定回路
8224 適応型フィルタ
823 音声認識部
8231 音響モデル記憶部
8232 言語モデル記憶部
8233 音声信号分析部
8234 音声指令変換部
824 指令信号生成部
9 溶接面
91 遮光窓
92 保持棒
A アーク
B 母材
W 溶接ワイヤ
2 溶接電源装置
21 電源部
211 溶接用電源
212 ワイヤ送給用電源
22 制御部
23 操作部
24 表示部
3 ワイヤ送給装置
31 ワイヤ送給機構
32 ガス電磁弁
33 制御部
34 無線通信部
34A アンテナ
35 操作部
36 表示部
37 電圧/電流検出部
4 溶接トーチ
41 トーチスイッチ
5 遠隔操作装置(リモコン)
51 電池
52 制御部
53 無線通信部
53A アンテナ
54 操作部
55 表示部
6 ガス供給装置
7 ワイヤリール
8 音声指令入力装置
81,81A,81B マイク
82 音声指令入力部
821,821A,821B A/Dコンバータ
822 フィルタ部
8221 スイッチ回路
8222 周波数解析回路
8223 フィルタ係数設定回路
8224 適応型フィルタ
823 音声認識部
8231 音響モデル記憶部
8232 言語モデル記憶部
8233 音声信号分析部
8234 音声指令変換部
824 指令信号生成部
9 溶接面
91 遮光窓
92 保持棒
A アーク
B 母材
W 溶接ワイヤ
音声認識部823は、音響モデル記憶部、言語モデル記憶部、音声信号分析部及び音声指令変換部を含む。音響モデル記憶部は、認識対象の音素の音響的な特徴をモデル化した音響モデルのデータを記憶する。音素の音響的な特徴とは、例えば、「あ」、「い」、「う」などの50音の音素の周波数特性における特徴(周波数スペクトルの分布波形の特徴)である。音響モデル記憶部は、音素毎に周波数スペクトルの分布波形の特徴点のデータを記憶している。
言語モデル記憶部は、予め設定された音声指令(文字列)のデータを記憶する。音声指令は、操作部54の操作ボタン又はトーチスイッチ41によって制御部52に入力される複数の操作指令の一部に対応する指令である。音声指令は、特に、作業者が溶接作業中に溶接電源装置2に入力する必要性の高い操作指令が選定されている。
音声指令には、例えば、溶接開始/終了、溶接電流のアップ/ダウン、溶接電圧のアップ/ダウンなどの指令が設定されている。言語モデル記憶部には、音声で制御部52に入力可能な指令の言語モデルが、予め決められた用語(文字列)のデータで記憶されている。
例えば、溶接電流のアップ/ダウンの場合、「でんりゅう あっぷ」の用語(文字列)のデータが言語モデル記憶部に記憶されている。溶接電流のアップの指令は、現在の溶接電流値に対して予め設定された単位電流値(例えば、1[A])で溶接電流を増加させる指令である。逆に溶接電流のダウンの指令は、現在の溶接電流値に対して単位電流値で溶接電流を減少させる指令である。
また、溶接電圧のアップ/ダウンの場合、「でんあつ あっぷ」の用語(文字列)のデータが言語モデル記憶部に記憶されている。溶接電圧のアップの指令は、現在の溶接電圧値に対して予め設定された単位電圧値(例えば、0.1[V])で溶接電圧を増加させる指令である。逆に溶接電圧のダウンの指令は、現在の溶接電圧値に対して単位電圧値で溶接電圧を減少させる指令である。
音声信号分析部は、フィルタ部822から入力されるデジタル音声信号を音素の区間に分離し、各区間の周波数特性における特徴のデータを抽出する。そして、音声信号分析部は、抽出した特徴のデータを音響モデル記憶部に記憶された音響モデルのデータと比較して各区間の音素を決定する。
音声信号分析部は、決定した音素の列を文字列のデータに変換して出力する。例えば、決定した音素の列が「で」、「ん」、「り」、「ゅ」、「う」、「あ」、「っ」、「ぷ」の場合、音声信号分析部は、「でんりゅう」の文字列と「あっぷ」の文字列のデータに変換して出力する。これにより、音声信号分析部から「電流アップ」の音声認識データが出力される。
音声指令変換部は、音声信号分析部から出力される音声認識データを言語モデル記憶部に記憶されている音声指令のデータと比較し、予め設定された音声指令に該当するか否かを判定する。音声指令変換部は、音声認識データが予め設定された音声指令のデータと一致する場合、その音声指令に対応する操作指令信号を生成し、制御部52に入力する。
例えば、言語モデル記憶部に「電流アップ」の音声指令のデータが記憶されていて、音声信号分析部から出力された音声認識データが「電流アップ」の場合、音声指令変換部は、音声認識データが「電流アップ」の音声指令のデータと一致するので、「電流アップ」に対応する操作指令信号を生成し、制御部52に入力する。
音声指令変換部は、「電流アップ」に対応する操作指令信号として、例えば、操作部54の「電流アップ」の操作ボタンを操作した場合に操作部54から制御部52に入力される操作信号と同一の信号を生成し、制御部52に入力する。音声指令変換部は、トーチスイッチ41によって入力される「電流アップ」に相当する入力信号と同一の信号を生成して制御部52に入力するようにしてもよい。
制御部52は、音声指令変換部から「電流アップ」の操作指令信号が入力されると、その操作指令信号を無線通信によって一旦ワイヤ送給装置3に送信し、ワイヤ送給装置3を介して溶接電源装置2の制御部22に送信する。制御部22は、ワイヤ送給装置3から「電流アップ」の操作指令信号が入力されると、電源部21の溶接用電源211が出力している溶接電流を所定の電流値(例えば、1[A])だけ上昇させる制御を行う。
一方、音声指令変換部は、音声認識データが予め設定された音声指令のデータと一致しない場合、制御部52には操作指令信号を入力しない。すなわち、音声認識部823で作業者が入力した音声指令が正しく認識できなかった場合や作業者が誤った音声指令を入力した場合は、実質的にその音声指令は受け付けられず、音声指令入力部82から制御部52には操作指令信号は入力されない。従って、制御部22にも操作指令信号は入力されない。
Claims (7)
- マイクと、
前記マイクから出力される音声信号に含まれるノイズ成分を抑制するノイズ抑制手段と、
前記ノイズ抑制手段から出力される音声信号に対して所定の音声認識処理を行い、作業者が発した音声に対応する操作指令を生成する操作指令生成手段と、
前記操作指令生成手段が生成した操作指令に基づいて、当該操作指令に対応する所定の制御動作を行う制御手段と、
を備えた、音声による操作指令が入力可能な溶接システムであって、
溶接作業中の前記作業者の音声が入力されていない期間に、前記マイクから出力される音声信号の周波数スペクトルを解析する周波数解析手段と、
前記周波数解析手段の解析結果に基づいて、前記ノイズ抑制手段の周波数特性を決定する周波数特性決定手段と、
前記ノイズ抑制手段の周波数特性を前記周波数特性決定手段が決定した周波数特性に更新する周波数特性更新手段と、
を備えたことを特徴とする溶接システム。 - 前記マイクは、前記作業者の口元の近傍に配置される接話型マイクである、請求項1記載の溶接システム。
- 前記ノイズ抑制手段は、適応型デジタルフィルタで構成され、
前記周波数特性決定手段は、前記適応型デジタルフィルタのフィルタ係数を決定する、請求項1又は請求項2記載の溶接システム。 - 前記ノイズ抑制手段は、適応型デジタルフィルタで構成されたローパスフィルタであり、
前記周波数特性決定手段は、前記周波数解析手段の解析結果に基づいて前記ローパスフィルタの遮断周波数を決定し、その遮断周波数を用いて前記フィルタ係数を算出する、請求項3記載の溶接システム。 - 前記ノイズ抑制手段は、適応型デジタルフィルタで構成されたバンドエリミネーションフィルタであり、
前記周波数特性決定手段は、前記周波数解析手段の解析結果に基づいて前記バンドエリミネーションの阻止周波数帯域を決定し、その阻止周波数帯域を用いて前記バンドエリミネーションフィルタのフィルタ係数を決定する、請求項3記載の溶接システム。 - 前記周波数解析手段は、所定の周期で前記周波数スペクトルの解析を繰り返す、請求項1から請求項5いずれか一項に記載の溶接システム。
- 溶接電源と、前記溶接電源に有線又は無線で接続され、当該溶接電源に操作指令を入力するための遠隔操作装置とを備え、
前記ノイズ抑制手段と前記操作指令生成手段は、前記遠隔操作装置に設けられ、
前記制御手段は、前記溶接電源に設けられている、請求項1から請求項6いずれか一項に記載の溶接システム。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2015121740A JP2017006929A (ja) | 2015-06-17 | 2015-06-17 | 溶接システム |
Applications Claiming Priority (1)
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JP2015121740A JP2017006929A (ja) | 2015-06-17 | 2015-06-17 | 溶接システム |
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JP2017006929A true JP2017006929A (ja) | 2017-01-12 |
Family
ID=57762258
Family Applications (1)
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JP2015121740A Pending JP2017006929A (ja) | 2015-06-17 | 2015-06-17 | 溶接システム |
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JP (1) | JP2017006929A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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CN111477223A (zh) * | 2020-03-04 | 2020-07-31 | 深圳市佳士科技股份有限公司 | 焊机控制方法、装置、终端设备及计算机可读存储介质 |
-
2015
- 2015-06-17 JP JP2015121740A patent/JP2017006929A/ja active Pending
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