JP2017006044A - 果菜類の水耕栽培方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 培養液に含まれる成分が果菜類内に吸収されて該果菜類が生育する果菜類の水耕栽培方法において、果菜類は、該果菜類の第1花房に由来する第1の果実と第2花房に由来する第2の果実の結実までを栽培期間として栽培され、該栽培期間が、前記果菜類の水耕栽培開始から第1花房の開花までの第1の期間と果菜類の第1花房の開花から第1の果実と第2の果実の結実までの第2の期間に区切られるとともに、第1の期間と第2の期間は、それぞれの期間の開始点を基準として予め定められたタイミングで区切られた複数の区分期間で構成されており、前記培養液に含まれ前記果菜類内に吸収される所定の成分を対象成分とした場合に、それぞれの前記区分期間の開始時を契機として、前記区分期間に応じて前記対象成分の含有量を定められた培養液が前記果菜類に付与されており、前記区分期間に応じて、前記培養液における前記対象成分の含有量は、該区分期間内に前記果菜類1株が吸収しうる前記対象成分の吸収量として予め定められる推定吸収量と前記培養液で生育させる果菜類の株数との積算値にて定められる区分期間内推定総吸収量よりも小さい正値となるように定められている。
【選択図】 なし
Description
果菜類は、該果菜類の第1花房に由来する第1の果実と第2花房に由来する第2の果実の結実までを栽培期間として栽培され、
該栽培期間が、前記果菜類の水耕栽培開始から第1花房の開花までの第1の期間と果菜類の第1花房の開花から第1の果実と第2の果実の結実までの第2の期間に区切られるとともに、第1の期間と第2の期間は、それぞれの期間の開始点を基準として予め定められたタイミングで区切られた複数の区分期間で構成されており、
前記培養液に含まれ前記果菜類内に吸収される所定の成分を対象成分とした場合に、
それぞれの前記区分期間の開始時を契機として、前記区分期間に応じて前記対象成分の含有量を定められた培養液が前記果菜類に付与されており、
前記区分期間に応じて、前記培養液における前記対象成分の含有量は、該区分期間内に前記果菜類1株が吸収しうる前記対象成分の吸収量として予め定められる推定吸収量と前記培養液で生育させる果菜類の株数との積算値にて定められる区分期間内推定総吸収量よりも小さい正値となるように定められている、ことを特徴とする果菜類の水耕栽培方法、
(2)前記対象成分はカリウムであり、前記果菜類はトマトである、上記(1)に記載の果菜類の水耕栽培方法、
(3)全栽培期間において、前記培養液は、該培養液における対象成分の含有量と区分期間内推定総吸収量との比率が1/2以下且つ1/12以上を満たすように構成されている、上記(2)に記載の果菜類の水耕栽培方法、を要旨とする。
本発明の水耕栽培方法の栽培対象となりうる果菜類の種類は、特に限定されることはなく、トマト、メロンなどを挙げることができる。
本発明の果菜類の水耕栽培方法は、少なくとも水耕栽培工程を有する。本明細書においては、果菜類の栽培水耕方法が、栽培対象となる果菜類の種を適宜の培養基に播く播種工程と、種を発芽させる発芽工程と、種が発芽した状態からさらに生育させて苗となす育苗工程と、所定のタイミングで苗を水耕栽培装置に定植する定植工程と、水耕栽培装置で果菜類を生育させて結実させる水耕栽培工程とを備えてなる場合を例として、詳細に説明する。なお、これらの各工程をこの順に実施することによって果菜類の実が収穫されうる。
本発明の果菜類の水耕栽培方法で栽培される果菜類の株数は、特に限定されず、1株でもよいし、2株以上の所定の株数でもよい。
播種工程では、複数のセルを設けてなるセルトレイの個々のセルに播種用培地が充填され、各セルに果菜類の種が播種される。
発芽工程では、果菜類の種を播種されたセルトレイを発芽室に置き、発芽させる。また発芽工程は、播種から発芽するまで実施され、外光を遮断した暗環境且つ所定温度雰囲気下で実施される。通常、播種から所定日数経過するまで発芽工程が実施される。
育苗工程は、発芽した種をセルトレイから育苗装置に移して、芽の状態からさらに本葉4枚程度を展開させて苗となるまで所定の環境条件にて育てることで行われる。環境条件は、明環境下とする時間帯と暗環境下とする時間帯に1日を割り振り、育苗装置に移された発芽した種を明環境下と暗環境下に置くことを時間帯ごとに交互に繰り返す条件とされる。なお、明環境下に置く時間帯の温度と暗環境下とする時間帯の温度(周囲温度)についてもそれぞれ予め設定されている。育苗工程は、所定のCO2濃度の条件下で実施され、明環境、暗環境いずれについても同じCO2濃度で実施される。時間帯と暗環境下とする時間帯の割り振りは、果菜類の種類等や品種に応じて適宜選択可能であるが、たとえば、明環境とする時間と暗環境とする時間をそれぞれ12時間から16時間、8時間から12時間(明環境とする時間と暗環境とする時間の合計は24時間)とし、明環境下とする場合の周囲温度と暗環境下とする場合の周囲温度をそれぞれ20℃から30℃、15℃から18℃として、CO2濃度として800μmol・mol−1から1000μmol・mol−1の条件を選択することができる。育苗工程は、発芽した種の根を育苗用培養液に触れさせて根から育苗用培養液の成分を吸収させることで実施されてよいし、養分を含む土に発芽した種を植えて実施されてもよい。育苗用培養液としては、水耕栽培の用途で利用可能な培養用組成液を適宜選択することができ、たとえば、組成成分の種類及び各組成成分の含有量ともに園試処方の組成と同様に構成されたものが用いられてよい。また、育苗用培養液には、園試処方の組成と同様に構成された組成液を適宜希釈したものが用いられてもよい。
育苗工程で得られた苗は水耕栽培装置の所定位置に定植される。複数の苗を定植する場合には、隣り合う苗の間に所定の間隔をあけることが好適である。
水耕栽培装置は、水耕栽培工程を実施可能なものであれば特に限定されるものではないが、例えば、水耕栽培装置としては、薄膜水耕(nutrient film technique;NFT)装置、その他にも湛液水耕(deep flow technique)装置などを利用することができる。薄膜水耕栽培装置は、作物に酸素欠乏が起こりにくい点、培養液の冷却・加温コストが最小化できる点で好適である。
水耕栽培工程では、水耕栽培装置に培養液が付与され、培養液に含まれる成分が果菜類内に吸収されるとともに果菜類が生育し、やがて所定の時期に果菜類の花が開花し、その後花房に由来する実が結実する。水耕栽培工程の終了によって栽培が終了する。
本発明の水耕栽培方法では、果菜類の栽培期間は、該果菜類の水耕栽培開始を始期とし、果菜類の収穫時期となる果実の結実時期を終期とすることで定められる期間である。また、この栽培期間は、最初に該果菜類の花が咲くまでの第1の期間と該果菜類の花が咲いてから該果菜類の収穫までの第2の期間に区切られる。最初に該果菜類の花が咲く時期は、該果菜類についた蕾についてその蕾の状態から完全に花びらが開ききった状態となるまでの間から選択された所定の時期であり、その時期の到来は目視にて確認することができる。果菜類の収穫時期は、既述したように果菜類の果実が結実した状態となった時期として定められ、その時期の到来は、果菜類の品種に応じて目視や触診、香り等、五感にて確認することができる。
図2A、図2Bの例に示すように、第1花房Xは、果菜類5の主茎に付く花(または花群)のうち最下位置に開花するもの(最も根5a側に位置するもの)を示しており、第2花房Yは、主茎に付く花のうち高さ位置において第1花房の次に低位の位置に開花するものを示す。第1花房X及び第2花房Yを構成する花の数は、それぞれ1つに限定されず、それぞれ複数であってもよい。果菜類がトマトである場合、第1花房X及び第2花房Yを構成する花の数は、それぞれ独立に15個から20個程度である場合が多い。また、第1の果実Xa及び第2の果実Yaを構成する実の数は、通常、それぞれ第1の花房X及び第2の花房Yを構成する花の数に対応しているが、これより少ない数となっていてもよい。これは、第1の花房X及び第2の花房Yの一部が枯れることや落花して残りの花に基づき実が結実する可能性がありうるからである。
水耕栽培工程においては、栽培期間が、果菜類の水耕栽培開始から第1花房の開花までの第1の期間と果菜類の第1花房の開花から第1の果実と第2の果実の結実までの第2の期間に区切られている。第1花房の開花時期は、蕾の状態から完全に花びらが開ききった状態となるまでの間から選択された所定の時期であり、その時期の到来は目視にて確認することができる。果実の結実時期は、実が熟した状態となった時期として定められ、その時期の到来は目視や触診、香り等、五感にて確認することができる。たとえば、果菜類が成熟とともに赤く色づくトマトである場合には、花房内に最初に結実したトマトの色付き具合に基づき果実の結実時期を確認することができる。花房内に複数のトマトが結実する場合には、最初に結実した果実を基準として順次結実した2から3果のトマトの色づき具合に基づき結実時期を確認することができる。そして果実の結実時期は、果菜類の収穫時期となる。果菜類の水耕栽培開始は、水耕栽培工程開始時となる定植工程完了時を選択されることが好適である。水耕栽培工程開始時以降の時期が、第1の果実や第2の果実に含まれる後述の対象成分の含有量を左右する時期となっているからである。
第1の期間と第2の期間は、それぞれの期間の開始点を基準とした所定のタイミングで区切られた複数の区分期間で構成されている。たとえば、第1の期間についてみると、第1の期間の開始点を基準として1週間ごとのタイミングなど一定のタイミングで区切って区切られた各週を区分期間として構成されうる。このとき、第1の期間を構成する区分期間のうち最終の区分期間は、一つ手前の区分期間の終わりから第1の期間の終わりまでで特定される。この最終の区分期間は、その一つ手前までの区分期間が互いに同じ長さの期間であったとしても、それらの期間と同じ期間であることを必須とするものではない。また、第1の期間の開始点を基準として、第1の期間の始期から最初の所定日数については1週間ごとのタイミングで区切り、それ以降について第1の期間の終期まで2週間のタイミングごとで区切ってもよい。この場合、第1の期間の開始点を基準として1週間の区分期間が続きその後2週間の区分期間が続くパターンで第1の期間が構成されうることになる。こうした第1の期間についての区分期間の定めかたは、第2の期間についても同様であり、第2の期間についても、その第2の期間の開始点を基準として一定のタイミングで区切ったパターンで区分期間を構成してよいし、複数種類のタイミングで区切ってパターンで区分期間を構成してもよい。
水耕栽培工程においては、それぞれの区分期間の開始時を契機として培養液が前記果菜類に付与される。
第1の期間と第2の期間のいずれにおいて利用される培養液についてみても、水耕栽培工程に用いられる培養液に含まれる組成成分の種類は、水耕栽培に一般的に利用可能な培養液に含まれる組成成分と同じでよい。たとえば、培養液の組成成分の種類は、園試処方と同じ組成成分の種類で構成されてもよい。
培養液に含まれ果菜類内に吸収される所定の成分を対象成分とした場合に、それぞれの区分期間の開始時に付与される培養液は、その区分期間に応じて対象成分の含有量を定められている。
対象成分は、果菜類との組み合わせに応じて適宜選択可能であるが、果菜類がトマトである場合には、たとえば、対象成分としてカリウム等を選択することが好適である。腎臓病患者は、カリウムの摂取制限をかけられることが多く、トマトのようなカリウムの含有量に富むといわれるものを満足に摂取することができなかったため、トマトに含まれるカリウム成分の含有量が低くなるようにコントロール可能な水耕栽培方法が特に要請されているからである。
培養液における対象成分の含有量は、区分期間に応じて次のように定められる。すなわち、区分期間に応じて、培養液における対象成分の含有量は、該区分期間内に前記果菜類1株が吸収しうる対象成分の吸収量として予め定められる推定吸収量と前記培養液で生育させる果菜類の株数との積算値にて定められる区分期間内推定総吸収量よりも小さい正値(正の数)となるように定められている。
推定吸収量は、区分期間が第1の期間内にあるか、第2の期間内にあるかに応じてそれぞれ、次のように具体的に特定することができる。
第1の期間総推定吸収量は、第1の期間全体での果菜類1株が吸収しうる対象成分の吸収量として定められる値として定義される。
第1の期間総推定吸収量の部分値の特定にあたり、第1の期間推定吸収量測定単位期間の開始時に水耕栽培装置に適用されている全液量(A0)、第1の期間推定吸収量測定単位期間の終了時の全液量(A1)、第1の期間推定吸収量測定単位期間の開始時の対象成分濃度(Y0)、及び第1の期間推定吸収量測定単位期間の終了時の対象成分濃度(Y1)を測定する。
第2の期間総推定吸収量は、第2の期間全体での果菜類1株が吸収しうる対象成分の吸収量として定められる値として定義される。
まず、果菜類1株あたり、第1の期間における対象成分の吸収速度を特定する。第1の期間における対象成分の吸収速度は、上述の第1の期間総推定吸収量(Q1)を第1の期間で除することにより算出することができる。たとえば、第1の期間が21日であれば、Q1/21で特定される。次に、得られた吸収速度に区分期間の大きさを乗じることにより区分期間において果菜類に吸収されうる対象成分の吸収量が算出され、その算出値が推定吸収量となる。たとえば、吸収速度が、果菜類1株、対象成分1日当たりA(me/(株・日))であり、区分期間が1週間、すなわち7日である場合には、推定吸収量は7×Aとして算出される。そして、第1の期間における区分期間内推定総吸収量は、この推定吸収量に水耕栽培工程で育成される果菜類の株数を乗じることで、区分期間ごとの値として特定される。第1の期間において、それぞれの区分期間に付与される培養液は、対象成分の含有量がこの区分期間内推定総吸収量よりも少ない正値となるように構成されている。なお、meはミリグラム当量である。
果菜類1株あたり、第2の期間における対象成分の吸収速度を特定する。第2の期間における対象成分の吸収速度は、上述の第2の期間総推定吸収量(Q2)を第2の期間で除することにより算出することができる。たとえば、第2の期間が60日であれば、Q2/60で特定される。次に、得られた吸収速度に区分期間の大きさを乗じることにより区分期間において果菜類に吸収されうる対象成分の吸収量が算出され、その算出値が推定吸収量となる。たとえば、第2の期間において、吸収速度が、果菜類1株、対象成分1日当たりB(me/(株・日))であり、区分期間が1週間、すなわち7日である場合には、推定吸収量は7×Bとして算出される。
培養液は、該培養液における対象成分の含有量と区分期間内推定総吸収量との比率は、果菜類及び対象成分の組み合わせに応じて定めることが可能である。具体的に、果菜類がトマトであり、対象成分がカリウムである場合を例にすると、区分期間が第1の期間内にある場合についても、区分期間が第2の期間内にある場合についても、全栽培期間について、それぞれの区分期間に応じて付与される培養液は、該培養液における対象成分の含有量と区分期間内推定総吸収量との比率が1/2以下且つ1/12以上を満たすように構成されていることが好ましく、1/8以上1/4以下であることがより好ましい。該培養液における対象成分の含有量と区分期間内推定総吸収量との比率が1/2以下であることでカリウム含有量の低減という効果をより確実に得ることができ、1/12以上であることで植物体の成長可能な範囲でカリウム含有量のより一層の低減という効果を得ることができるようになる。
培養液の各組成成分の含有量に関して、対象成分を除く他の成分については、水耕栽培に一般的に利用可能な培養液に含まれる組成成分と同じでよい。ただし、培養液の効率的な使用の観点からは、それぞれの区分期間の開始時に付与される培養液は、対象成分を除く他の成分についても、上記した対象成分の推定吸収量の特定方法と同様の方法を用い、その区分期間内に前記果菜類1株が吸収しうる各成分の吸収量として予め定められる期間内吸収量の推定値に基づき定められていることが好適である。具体的に、それぞれの区分期間の開始時に付与される培養液に含まれる各組成成分の含有量は、上記期間内吸収量の推定値と培養液で生育させる果菜類の株数との積算値とされていることが好適である。このように培養液に含まれる各組成成分の含有量が特定されていると、その区分期間で必要となる量だけ各組成成分が付与されることとなり、無駄なく培養液を利用することができるようになる。
果菜類が、トマトなどのように1株に複数の花を咲くことが可能であり、且つ複数の実を結実させることが可能なものである場合、水耕栽培工程では、摘心が実施されることが好適である。摘心は、第2花房以降に開花する花が付くことを規制して第2花房以降の花に由来する実の結実が規制されるように花芽を取り除くことで実施されることが好適である。この場合、果菜類の第1花房に由来する第1の果実と第2花房に由来する第2の果実の結実を終期として果菜類を栽培することが、より確実に実現できることとなる。また、第1花房に由来する第1の果実と第2花房に由来する第2の果実の結実までの生育に必要な対象成分の量を予め定めて分配供与しているため、第3花房や第4花房等といった第2花房以降の花が開花して実を結実させないようにすることで、第3花房や第4花房等の生育期間中に、第1花房や第2花房に由来する果実へ該培養液における対象成分が蓄積する虞を抑制することが出来る。
本発明の水耕栽培方法で得られる果菜類は、味覚を構成する重要な甘味や酸味等を維持しつつも、対象成分の含有量を通常の水耕栽培で得られる果菜類よりも低めたものである。たとえば、果菜類がトマトであり対象成分をカリウムとして、本発明の水耕栽培方法が適用された場合、トマトとして、甘味や酸味等を維持しつつも、カリウムの含有量を通常の水耕栽培で得られるトマトよりも低く抑えたものを栽培することができるようになる。
(果菜類)
果菜類として、トマト(種類:ミニトマト、品種名:キャロル10(商標)(株式会社サカタのタネ))を選択して、その種を準備した。
水耕栽培工程において使用される培養液に含まれる成分のうち調整対象とされる対象成分として、カリウムを選択した。
128穴のセルトレイのそれぞれに、播種用培地を充填するとともに上記に準備したトマトの種を9月に播種した。播種用培地としては、スミリン農産工業株式会社製、商品名たね培土1号が用いられた。トマトの種を播種された128穴のセルトレイは、気温27℃、暗環境下の発芽室にて、種からの発芽が目視にて確認されるまで静置された。本実施例では、播種から3日目に発芽が確認された。
128穴のセルトレイにおいて発芽が認められた種は、閉鎖型苗生産システムの育苗装置の育苗空間に移された。ここに、閉鎖型苗生産システムは、育苗空間の環境条件を調節可能なシステムであり、具体的には暗環境と明環境を調節自在であり温度調節可能であり、且つ、CO2濃度を所定濃度とすることの可能なシステムである。なお、育苗空間は、外部と区画された閉鎖空間となっており、閉鎖空間内において種から出た芽が苗となるまで栽培された。苗は、本葉が4枚又は5枚形成されるまで成長したものとした。
育苗工程で得られた苗は、水耕栽培装置の栽培部に隣り合う苗株間の間隔が20cmとなるように間隔をあけて定植された。水耕栽培装置としては、図1に示すような薄膜水耕(nutrient film technique;NFT)栽培装置が採用された。
水耕栽培工程では、水耕栽培装置の栽培部に定植された苗は、その水耕栽培装置に付与された培養液の成分を吸収して生育し、花をつけ、実を結実する。
実施例1の水耕栽培工程では、果菜類は、10株栽培された。
水耕栽培工程において、果菜類の水耕栽培期間は、定植工程完了時を始期として果菜類の第1花房に由来する第1の果実と第2花房に由来する第2の果実の結実まで実施された。
第1の期間は、定植工程完了時を始期として第1花房の最初の花が開花する時期までとし、第2の期間は、最初の花が開花してから第1の果実と第2の果実の結実の時期までとした。第1の期間は、定植工程完了時を始期として1週間ごとに区切られてそれぞれの区切られた期間を区分期間とされた。本実施例では、第1の期間は、定植工程完了時を始期とした5週間であり、5つの区分期間で構成された。第2の期間は、最初の花が開花してから4週間については1週間ごとに区切られて、その後の4週間は第1の果実と第2の果実の結実の時期まで2週間ごとに区切られてそれぞれの区切られた期間を区分期間とされた。
培養液の組成成分の種類としては、園試処方を組成する組成成分の種類を選択した。
培養液に含まれるカリウムの含有量は、推定吸収量に基づき調整される。
培養液に含まれる対象成分以外の各組成成分の含有量は、その区分期間内に前記果菜類1株が吸収しうる各成分の吸収量として予め定められる期間内吸収量の推定値に基づき定められている。各組成成分についての期間内吸収量の推定値の特定方法は、対象成分の推定吸収量の特定方法と同様の方法が用いられた。そして、培養液に含まれる対象成分以外の各組成成分の含有量は、期間内吸収量の推定値と培養液で生育させる果菜類の株数との積算値にて特定された。
培養液は、それぞれの区分期間の開始時に水耕栽培装置の培養液貯留部に注入することで付与された。
本実施例では水耕栽培工程において、摘心が実施された。摘心は、第2花房の位置よりも上3葉を残してそれよりも上側の花芽を取り除くことで行われた。
カリウムの含有量(mg/100gFW)は、カリウムイオンメーター(HORIBA社製、商品名:コンパクトカリウムイオンメータ LAQUAtwin)およびICP発光分析装置(島津製作所社製、ICPE−9000)を用いて測定された。
甘味の強さは、果実の糖度を測定することで特定された。糖度は、具体的にBrix糖度計(Spittz社製、商品名:デジタル糖度計)を用いて測定されたBrix糖度の値(Brix%)として特定された。
酸味の強さは、実の酸度を測定することで特定された。酸度は、酸度計(ATAGO社製、商品名:ポケット酸度計)を用いて測定された。
実施例2,3,4では、第1の期間,第2の期間の各区分期間の開始時に付与される培養液として、推定吸収量のそれぞれ1/4、1/8、1/12となるようにカリウムの含有量が調整されたものが用いられた以外は、実施例1と同様にして、第1の花房及び第2の花房に由来する実を結実させて、それらの収穫を実施した。収穫された実について、果実の重量を測定するとともに、カリウム含有量、甘味、酸味の強さを次のように計測した。結果を表1に示す。
比較例1では、第1の期間,第2の期間の各区分期間の開始時に付与される培養液として、推定吸収量のそれぞれ1/1となるようにカリウムの含有量が調整されたものが用いられた以外は、実施例1と同様にして、第1の花房及び第2の花房に由来する実を結実させて、それらの収穫を実施した。収穫された実について、果実の重量を測定するとともに、カリウム含有量、甘味、酸味の強さを次のように計測した。結果を表1に示す。
実施例1から4については、水耕栽培工程に用いられた培養液について、それぞれの区分期間終了時に培養液に含まれるカリウム量を特定した。特定には、カリウムイオンメーターおよびICP発光分析装置が用いられた。実施例1から4について、区分期間終了時には供与した培養液のカリウムが消費されていることが確認された。
実施例1から4で収穫された実の果実重は,おおむね10g/個以上25g/個以下の範囲で推移しており、比較例1についても同様であり、大きく果実の成長が損なわれていないことが認められた。
実施例1から4で収穫された実におけるカリウム含有量は,表1から明らかに比較例1に対して低減されており、カリウムの含有量を規制されたトマトが得られたことが認められた。
実施例1から4で収穫された実における甘味は,表1から明らかに比較例1に対して糖度の点で大きな低減は認められず、むしろ、実施例1,2では高まっており、甘味の低下の規制されたトマトが得られたことが認められた。また、実施例1から4で収穫された実における酸味は,表1から明らかに比較例1に対して過剰な増加は認められず、むしろ、実施例1から4では酸味がやや弱まっており、酸味の過剰な上昇の規制されたトマトが得られたことが認められた。
2 栽培部
3 培養液貯留部
4 流路形成部
4a 往流路
4b 復流路
5 果菜類
5a 果菜類の根
6 培養液
7 ポンプ
Claims (3)
- 培養液に含まれる成分が果菜類内に吸収されて該果菜類が生育する果菜類の水耕栽培方法であって、
果菜類は、該果菜類の第1花房に由来する第1の果実と第2花房に由来する第2の果実の結実までを栽培期間として栽培され、
該栽培期間が、前記果菜類の水耕栽培開始から第1花房の開花までの第1の期間と果菜類の第1花房の開花から第1の果実と第2の果実の結実までの第2の期間に区切られるとともに、第1の期間と第2の期間は、それぞれの期間の開始点を基準として予め定められたタイミングで区切られた複数の区分期間で構成されており、
前記培養液に含まれ前記果菜類内に吸収される所定の成分を対象成分とした場合に、
それぞれの前記区分期間の開始時を契機として、前記区分期間に応じて前記対象成分の含有量を定められた培養液が前記果菜類に付与されており、
前記区分期間に応じて、前記培養液における前記対象成分の含有量は、該区分期間内に前記果菜類1株が吸収しうる前記対象成分の吸収量として予め定められる推定吸収量と前記培養液で生育させる果菜類の株数との積算値にて定められる区分期間内推定総吸収量よりも小さい正値となるように定められている、ことを特徴とする果菜類の水耕栽培方法。 - 前記対象成分はカリウムであり、前記果菜類はトマトである、請求項1に記載の果菜類の水耕栽培方法。
- 全栽培期間において、前記培養液は、該培養液における対象成分の含有量と区分期間内推定総吸収量との比率が1/2以下且つ1/12以上を満たすように構成されている、請求項2に記載の果菜類の水耕栽培方法。
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