本発明は、歯車装置、歯車装置の使用、及び歯車装置用の歯に関する。
先行技術から、歯キャリア中に半径方向に変位可能に取り付けられた歯を備える歯車装置が公知である。例えばカムディスク等の、プロファイリングを有する駆動入力要素が、歯の駆動のために使用される。歯は、歯受部と嵌合し、歯を有する歯キャリアと歯受部との間に相対運動が生じる。歯受部と歯との間の相対運動は、この場合、プロファイリングを有する駆動入力要素の運動より少なくとも1桁以上小さい。このようにして、高い伝達比を実現することが可能である。上述のタイプの歯車装置の例は、独国特許出願公開第102007011175号で公開されている。
上記歯車装置の要点は、歯キャリアへの歯の取り付けである。典型的に駆動出力を構成し得る歯から歯キャリアへの力の伝達は、熱の発生を、状況によっては、歯の移動による材料摩耗を引き起こす。作業においてこれら2つは好ましくない。
本発明の目的は、先行技術から公知の歯車装置に関して改善された歯車装置又は歯を特定することであり、熱発生の低減又は摩耗の低減を達成しようとするものである。本発明の別の目的は、上述のタイプの歯車装置の使用を特定することである。
この目的は、請求項1に係る歯車装置及び関連請求項に係る歯車装置使用によって達成される。有利な改良及び実施形態は、従属請求項及び本明細書から明らかになるであろう。
本発明の一態様は、歯受部(5)と、それぞれ1つの歯根部開口と1つの歯先部開口とを有する半径方向に配向した誘導を有する歯キャリア(11)と、誘導に受容され、歯受部(5)と嵌合する歯(7)であって、歯キャリア(11)に対してその長手方向軸の方向かつ半径方向に変位可能に、誘導に取り付けられた歯(7)と、歯(7)の半径方向駆動のためのカムディスク(20)と、を有し、歯(7)が、それぞれの歯先部及びそれぞれの歯胴部の間にランイン領域、具体的にはコーンを有する、歯車装置、具体的には、同軸歯車装置又は線形歯車装置に関する。
本発明の更なる態様は、本明細書に記載の典型的な実施形態のうちの1つにおける歯車装置の使用に関する。
本発明の更なる態様は、本明細書に記載の典型的な実施形態のうちの1つにおける歯車装置用の歯に関し、歯先部と歯胴体部の間に、歯がランイン領域、具体的にはコーンを有する。
本発明の実施形態は、具体的には、同軸歯車装置に関する。本発明の歯車装置は、典型的には、駆動入力要素としてのプロファイリングを有する内部に位置するカムディスクと、内部に位置する歯受部を有する内歯車、又は内部プロファイリングを有する外部に位置する駆動入力要素と、内部の大歯車又は外部の駆動入力要素の場合に歯受部を構成する内部に位置するラック歯車と、を備える。実施形態の構成は、回転を直線運動へ変換するための線形歯車装置に関する。
歯受部は、典型的には環状歯受部である。歯受部は、歯又は歯の歯先部と嵌合し、歯は、典型的には、歯キャリアに対して半径方向に直線的に変位可能になるように取り付けられる。ここで、「半径方向に直線的に」とは、従来の意味において、歯の半径方向への運動のみを許す半径方向のガイドが設けられることを意味する。典型的には、ガイドによって、歯セグメントは、正確に1つの方向に直線的に変位させることができる。これは、例えば、歯が変位方向の特定長さの均一な断面を有することにより達成され得ることであり、歯キャリアは、同様に、均一な断面を有する歯セグメントのための開口部を有する。歯は、通常、いずれの場合にも正確に1つの方向に、典型的には、歯の長手方向軸方向に、変位可能になるように、歯キャリアに取り付けられる。さらに、典型的な実施形態では、歯キャリアに対する歯の回転自由度は、歯車装置の長手方向軸については、阻止される。これは、例えば、歯キャリアの半径方向への歯の直線ガイドによって達成することができる。このようにして、歯は、歯キャリアに対してではなく、歯キャリアと共に歯車装置の縦軸の周りを回転する。
本発明の歯車装置による典型的な実施形態では、少なくとも一部の歯は、屈曲剛性設計である。ここで、「屈曲剛性」という表現は、典型的には、専門的な意味で理解されるべきであり、すなわち歯の曲げは、歯の材料の剛性のため、歯車装置の運動学に関しては少なくとも実質的に有意でない程度にわずかである。屈曲剛性な歯としては、具体的には合金、具体的にはスチールもしくはチタン合金、ニッケル合金、又は他の合金から作製される歯が挙げられる。さらに、具体的には、次の部品のうちの少なくとも1つが同様にプラスチックから作製される歯車装置の場合、プラスチック製の屈曲剛性な歯を提供することも可能である:次の部品とはすなわち、内歯車又は大歯車の歯受部、歯キャリア、及び駆動要素である。本発明の典型的な実施形態では、歯キャリア及び歯が合金から作製され、又は追加的には歯受部が、もしくは更に追加的には駆動入力要素が合金から作製される。このような歯車装置は、ねじれに極めて強く、極めて高い負荷容量を有するという利点を有する。プラスチック製の歯車装置は、低重量という利点を有する。「屈曲剛性」という表現は、具体的には、歯セグメントの横軸に対する屈曲剛性を指す。これは、具体的には、歯セグメントを歯根部から歯先部の梁として考えると、歯先部と歯根部との間の曲げ変形を少なくとも実質的に防止する屈曲剛性が存在することを意味する。屈曲剛性のため、歯車装置の極めて高い負荷容量及びねじれ耐性が達成される。
典型的な実施形態では、歯とプロファイリングとの間に枢動セグメントが配置され、枢動セグメントは、回転軸受配置上に取り付けられ、プロファイリングに当接する。有利な実施形態は、プロファイリングを有する駆動入力要素の間に配置された枢動セグメントと、そのそれぞれに少なくとも1つの歯と、を備える。枢動セグメントは、プロファイリングに対して又は枢動セグメントに対して、歯を傾斜させることを可能にする。典型的には、少なくとも2つの歯が枢動セグメント上に取り付けられる。1つの枢動セグメント上に取り付けられる複数の歯は、典型的には、軸方向に相互に隣接して一列に配置される。
典型的には、歯セグメントは、枢動セグメントに緩やかに連結される。ここで、「緩やかな連結」とは、好ましくは、歯セグメントが枢動セグメント上に単に載置されること、通常その上に直接載置されることを意味する。好ましい枢動セグメントは、歯が枢動セグメントから滑落することを防止する、又は枢動セグメントの少なくとも1方向への滑りを防止する形状を備える。枢動セグメントは、このようにして、半径方向に直線的にガイドされる歯によって、歯キャリアに対する回転方向でその位置に保持されることが考慮されるべきである。このような形状は、例えば、窪みと嵌合するビーズ部であってもよい。このようにして、歯セグメントが枢動セグメント上で滑らないことが保証される。このようにして、枢動セグメントの歯の位置上での固定と、歯セグメントと枢動セグメントとの間の周方向での相対運動の防止と、が達成される。ここで、形状は、好ましくは、周方向の変位可能性が阻止され、周方向の滑落が防止されるように構成される。しかしながら、更なる実施形態では、枢動セグメントの歯に対する滑りを防止する球冠状、球状、又は他の隆起を設けることも可能である。
典型的な枢動セグメントは、セグメント化された軸受構成を実現することを可能にする。典型的な実施形態では、枢動セグメント又は平板等の他の軸受セグメントが、セグメント化された軸受構成を形成する。セグメント化された軸受構成は、駆動入力要素のプロファイリングに適合することができ、更に、半径方向への信頼性のある力伝達を可能にする、という利点をもたらす。
枢動セグメントは、好ましくは隆起及び窪み、例えば波形状又は鋸歯形状を有する相互に対向する縁部を有する。これは、枢動セグメント間の間隔が比較的広い場合においてさえ、枢動セグメントの下に配置される針状ころが枢動セグメントと駆動入力要素との間の空間内に確実に保持されるという利点をもたらす。
歯セグメントと枢動セグメントとの間の緩やかな連結は、構造の単純性という利点をもたらす。ここで、「緩やかな連結」とは、具体的には、歯の枢動セグメントからの離昇が防止されないことを意味する。歯の枢動セグメントからの離昇は、汎用の歯車装置の場合、一般に、歯が歯先部において歯受部によって誘導されることによって防止される。
本発明の典型的な実施形態は、プロファイリングを有する駆動入力要素を備える。プロファイリングは、好ましくは非円又は非楕円の円弧状の形状又は曲線を有する。非円又は非楕円の円弧状の形状は、例えば異なる伝達比を設定するために、任意の所望のプロファイリングを使用することができるという利点をもたらす。本出願においては、離心円も同様に円又は楕円の形状の定義に属するが、これは単に、離心円の場合、円形状が存在するものの回転軸が円形状の中心軸に対応していないにすぎないためである。典型的な実施形態では、歯キャリア又は歯受部は円形状である。これは、歯キャリア及び歯受部の幾何学的形状の単純性という利点をもたらす。典型的には、歯車装置のスロー側における力伝達は、歯受部と歯キャリアとの間で起きる。これは、力伝達の距離が極めて短く、極めて高い剛性を達成することができるという利点をもたらす。上記条件を満たす実施形態としては、駆動入力として内部に位置するカムディスク及び歯受部を有する外部に位置する内歯車を有し、かつ歯キャリアが内歯車とカムディスクとの間に配置された歯車装置や、半径方向に可動な歯を歯車又はラック歯車上に配置された歯受部に対して内側に駆動するための、内部に位置するプロファイリングを内歯車上に有する外部に位置するカムディスクが挙げられるが、これらに限定されない。
歯受部及び歯は、典型的には、湾曲した側面を有する。側面の湾曲の例は、円柱形湾曲又は対数螺旋形の湾曲である。対数螺旋形の湾曲の実施形態の可能性については、独国特許出願公開第102007011175号が参照される。湾曲面は、嵌合状態にある側面が単なる直線状又は点状接触ではなく、面接触を行うという利点をもたらす。このようにして、歯受部と歯との間の力伝達において極めて高い剛性が実現される。
典型的な実施形態では、半径方向に変位可能に取り付けられた歯の半径方向駆動のためのカムディスクは、2つの環状リムを備え、それらの間に軌道が構成される。このようにして、リム間に配置された回転体が確実に誘導される。典型的な実施形態は、回転軸受体上に環状に配置又は取り付けられ、それぞれ回転軸受面を介して回転体に当接する複数の枢動セグメントを備え、該回転軸受面の両側に、それぞれ1つのリム軸受面が配置され、それぞれの枢動セグメントの該2つのリム軸受面は、該リムに少なくとも部分的に当接する。このようにして、枢動セグメントの信頼性ある誘導を実現することができる。リム軸受面及び回転軸受面は、典型的には、枢動セグメントの同一側に、通常歯当たり側の反対に位置する側、すなわち歯が取り付けられる側に、相互に隣接して配置される。
典型的な歯キャリアは、半径方向に配向し、それぞれ歯根部開口と歯先部開口とを有する誘導を備えている。歯根部開口は、典型的にカムディスクの方向へ配向しており、歯先部開口は、典型的に歯受部の方向に配向している。これにより、歯が、歯車装置の半径方向において、歯の長手方向軸に沿って変位可能であるように取り付けられ、受容されることができる。歯の長手方向軸は、典型的には、歯根部から歯先部へ延びる。歯は、歯根部において、枢動セグメントに各々取り付けられ、次いで回転体によりカムディスク上に、取り付けられる。典型的な実施形態では、歯キャリアは円形又は環状の形状である。歯キャリア内での歯の典型的な誘導は、通路開口又は通路孔の形である。さらに、典型的な歯キャリアは誘導として長方形状の切削部又はスロットを備える。歯は、典型的には、歯先部が歯先部開口から突出する、又は変位可能であり、かつ、歯根部が歯根部開口から突出するよう、歯キャリアに受容されている。回転体及び枢動セグメントによって駆動されるカムディスクによって、歯先部側において誘導から歯が押し出されるように、歯へ半径方向の力を加えることができる。
典型的な歯根部開口は、各々ベベルを有している。ベベルは、典型的には、誘導の内側に、歯根部開口の入口に設けられる。典型的には、誘導の内部形状又は断面形状は、少なくとも歯先部開口と歯根部開口との間の領域の断面において、均一又は一定である。歯根部開口における典型的なベベルは、円形の開口の場合、円錐形状であってもよい。歯根部開口におけるベベルの典型的な角度は、誘導の長手方向又は誘導方向に対して、少なくとも1°、少なくとも3°、又は少なくとも5°、又は最大で55°、又は最大で45°、又は最大で35°である。
典型的な実施形態では、歯根部開口と誘導の中央部分との間のベベルの遷移は、ドーム形状である。中央部分は、典型的には、誘導の長手方向において均一な内部形状、又は均一な断面を有する。典型的には、均一な内部形状又は均一な断面は、歯先部開口まで延びる。
典型的には、歯には、それぞれ、歯先部及び歯胴体部の間にランイン領域を有する。典型的なランイン領域は、それぞれ歯先部及び歯胴体部の間に歯のコーンを備えている。ランイン領域の場合、「コーン」との表現には、平坦な歯に形成されたベベルも含まれる。典型的なランイン領域は平坦であってもよく、かつ、ベベルを有していてもよい。典型的な実施形態は、歯キャリア内において多角形の断面を有する誘導の内部で誘導される平坦な歯を備える。典型的な実施形態において、2本以上の平坦な歯が互いに隣接して配置されているか、又は、1本の歯が、歯車装置の回転方向における歯の厚さの少なくとも2倍の、歯車装置の軸方向における厚さを有する。更なる実施形態は、丸みを帯びた若しくは円形の歯、又は、平坦部分を有する円形の歯を備える。「歯胴体部」は、典型的には、潤滑溝等を除いて、均一な断面を有する歯の部分を意味する。
典型的には、それぞれの歯のコーンと歯胴体部との間の遷移はドーム形状である。これにより、歯は、誘導に沿って静かに摺動することができる。典型的には、歯は、歯キャリアのそれぞれの誘導に受容されており、歯受部の方向での歯の半径方向の最大ストロークにおいて、歯のランイン領域又は歯のコーンが少なくとも部分的に誘導の中に残るようになっている。更なる実施形態において、半径方向の最大ストロークにおいて、コーンは誘導から突出する。歯のコーンの角度は、少なくとも0.05°、又は少なくとも0.1°、又は少なくとも0.2°、又は、最大で10°、又は最大で5°、又は最大で3°である。
いくつかの実施形態における典型的な歯は、歯キャリアの誘導に対して、各々少なくとも部分的に異なる表面硬度を有している。典型的には、歯は歯キャリアに対して異なる表面硬度を有している。例えば、いくつかの実施形態において、歯の表面は、それぞれ歯キャリアの誘導の表面よりも硬い、又はより硬度が高い。典型的には、歯は、少なくとも部分的にコーティング及び/又は表面硬化されている。すなわち、例えば、歯の外側面に、又は歯の全体に、コーティング又は表面硬化することができる。典型的な実施形態において、歯キャリアはコーティングされていない、表面硬化されていない、又は、歯とは異なるコーティングが施されている。典型的な実施形態において、歯は異なる材料で構成されており、例えば、歯キャリアに対して、異なる合金、又は、異なる製造工程によって硬化される。
一実施形態において、歯のコーティングは、例えば、DLC(ダイアモンド状炭素)膜等の非晶質炭素膜、クロム膜、PVDコーディングにより定着された膜、結晶炭素膜、及び/又は、ダイアモンドコーティングを含んでいてもよい。本発明のいくつかの実施形態では、非晶質炭素膜は、a−C、ta−C、a−c:Me、a−c:H、ta−C:H、a−C:H:Me、及び/又は、a−C:H:Xを含んでいてもよく、ここで、Meは金属ドーピング元素を表し、Xは非金属ドーピング元素を表す。いくつかの実施形態では、他の実施形態と組み合わせることができ、PVDコーティングによって塗布された膜は、TiN、CrN、TiAlN、TiCN、TiSiN、ZrN、及び/又は、AlTiNを含んでいてもよい。
歯の典型的な実施形態は、それぞれ、歯胴体部の領域に1つの潤滑溝を備えている。潤滑溝は、周囲を取り囲む形状でもよく、断続的な形状であってもよい。典型的には、当該潤滑溝は、歯の長手方向軸に直角な平面上における周囲を取り囲む形状である。潤滑溝は、潤滑剤の分布を向上させることができる。更なる実施形態においては、歯に潤滑溝を備えておらず、歯キャリアの誘導内に潤滑溝を備えている。
以下、本発明について、添付の図面に基づいてより詳細に説明する。
本発明の第1実施形態を模式的に示す半割断面模式図である。
図1の実施形態の詳細を示す断面模式図である。
図1の実施形態の詳細を示す断面模式図である。
図3の詳細を示す断面模式図である。
図3の更なる詳細を示す断面模式図である。
以下、本発明の典型的な実施形態について、図面に基づいて説明するが、本発明は、例示的な実施形態に制限されるものではなく、本発明の範囲は、むしろ特許請求の範囲によって規定される。実施形態の記載において、一部の場合では、異なる図面中の又は異なる実施形態のための同じ又は類似の部分について、記載内容をより明確にするために、同一の参照記号が使用されている。しかしながら、これは、本発明の対応する部分が実施形態で図示されている変形例に制限されることを意味しない。
図1は、例示的な実施形態を示す半割断面模式図である。図1は、半割断面において、内部に位置する環状歯受部5を有する内歯車3を有する歯車装置1を模式的に示す。歯車装置1の残りの半分は、断面において、図示されている部分と類似の構造である。歯7は、歯受部5と嵌合する。一層の明瞭性のため、図1中の全ての歯部分7が参照記号7によって表されているわけではない。歯7は、歯キャリア11内に半径方向に変位可能に取り付けられる。この目的のために、歯キャリア11は、半径方向に配向された、ダクトのような円又は溝穴形状の開口部を有し、これが歯キャリア11内の歯7の半径方向への誘導を確保する。開口部における半径方向への誘導のため、歯7は、その長手方向軸沿いの半径方向のみに運動することができ、具体的には、歯キャリアに対して歯車装置1の長手方向軸周りの回転が抑制される。
歯の長手方向軸は、典型的には、歯根部から歯先部へと通る軸を指す一方、歯車装置の長手方向軸は、歯車装置の回転軸の方向を指し示す。これは、例えば駆動出力として使用され得る歯キャリアの回転軸、又はカムディスクの回転軸であってもよい。
歯7は、中空カムディスク20を備える駆動入力要素(図3参照)によって駆動される。カムディスク20は、歯7を半径方向へ駆動するためのプロファイリング22を有する。プロファイリング22の行路は、周囲長にわたって2つの隆起を有し、それぞれ対向して位置する歯7は、最遠部で歯受部5の歯溝と嵌合する。更なる実施形態では、カムディスクは3つの隆起を有し、更に別の実施形態では、カムディスクは1つだけの隆起を有し、更なる実施形態では、カムディスクは3つよりも多い隆起を有する。
図1に図示される歯車装置1では、歯7は、回転軸受と共に、駆動入力要素のプロファイリング上に配置されている。回転軸受は、回転体23を備え、回転体23は、この例示的な実施形態では針状ころの形態である。
図1の例示的な実施形態では、カムディスクは、内部に配置され、歯受部は、外部に配置されている。このような構成では、駆動出力動作は、歯受部を有する内歯車又は歯キャリアでピックオフされ、他の各要素は固定されている。更なる実施形態では、駆動入力要素は、外部、すなわち歯キャリアの外部に配置され、歯受部は、内部に配置される。今度は、駆動出力動作は、内部の歯受部において又は歯キャリアにおいてピックオフすることが可能である。歯キャリアは、その開口部と共に、歯ケージとも称され、半径方向に直線的に変位可能な様式で誘導されるように歯が受容される。
歯車装置1は、歯7のためのセグメント化された軸受配置を備える。セグメント化された軸受配置は、枢動セグメント24を備え、枢動セグメント24は、各々歯7に対向する側において丸みを帯びた歯当たり面(図2を参照)を有し、かつ歯7の歯根部又は典型的な実施形態では歯車装置1の軸方向に相互に隣接する2つ、3つ、又は4つの歯をその上に配置することができるビーズ部を形成する。ビーズ部は、それぞれの歯7の歯根部の対応する凹みと共に、枢動セグメント24上の歯7の滑りを防止する。
ビーズ部は、それぞれの歯7の底部接合部を形成するために役立ち、歯7は、制約のない誘導を確保するために枢動セグメント24に対して傾斜することができる。枢動セグメント24は、回転方向に相互に対して変位可能であり、枢動セグメント24の間の間隔は変化し得る。このようにして、枢動セグメント24の回転方向における自由度が抑制されない。これは、カムディスク20のプロファイリング22による、枢動セグメント24の実質的に制約のない誘導及び実質的に制約のない半径方向駆動を可能にする。プロファイリング22と枢動セグメント24との間の摩擦抵抗を最小限に抑えるため、回転体23は、針状ころとして提供される。更なる実施形態では、ボール又は他の回転軸受が、枢動セグメントの取り付けのために提供される。
図1から図5について、まとめて説明するが、全ての詳細について重複して説明するわけではなく、参照記号は、同一の部分については同一のものを使用する。
図2は、図1の歯車装置1の枢動セグメント24を図示する。枢動セグメント24は、歯車装置1において歯7に対向する枢動セグメント24側に、歯当たりを備える。枢動セグメント24の歯当たりは、それぞれ少なくとも1つの歯7のための丸みを帯びた面部分を備える歯当たり面28を備える。歯当たり面28の丸みを帯びた面部分は、この場合、円形状である。この円の中心点は、枢動セグメント24の回転軸受面30と一致する。このようにして、枢動セグメント24上に取り付けられる歯7について、回転軸受面30と一致するそれぞれの回転軸32が実現される。回転軸受面30は、本実施形態では、枢動セグメント24の歯から背けられた側、すなわち回転体23に又はカムディスク20に対向する側である。回転軸受面30は、回転体23がその面上で回転する面に対応する。
枢動セグメント24は、回転方向前方のセグメント縁部34と、回転方向後方のセグメント縁部36と、を備える。ここで、「前方」及び「後方」という表現は、運動の意味で意図されたものではなく、むしろこれらは、枢動セグメント24の両側を指す。典型的な歯車装置は、2方向に動作することができ、動作中、前方セグメント縁部が回転中に運動方向後方に位置し、それに応じて後方セグメント縁部が前方に位置することも可能である。
丸みを帯びたセットバック部分又はベベル38は、回転軸受面30から前方セグメント縁部34へ及び後方セグメント縁部36への移行部にそれぞれ設けられる。このセットバック部分又はベベルは、回転体23のランインを容易化し、それ故にそれぞれの枢動セグメント24の走行平滑性を増大させることができる。
更なる実施形態では、セグメント縁部の領域内で、回転軸受面とセグメント縁部の側面との間に丸みを帯びた移行部が設けられる。当該丸みを帯びた移行部は、丸みを帯びたセットバック部分とも称され得る。典型的には、ベベル又は丸みを帯びたセットバック部分は、少なくとも突起の領域内に、又は突起の領域内のみに設けられる。
典型的な実施形態では、枢動セグメントは、軸方向のガイドなしに形成される。リムが針状ころの誘導を行うため、枢動セグメントの誘導は、必ずしも必要ではない。典型的な実施形態では、突起は、点対称で設計される。更なる実施形態は、軸対称に配置された突起を有するよう設計される。
図2の枢動セグメント24は、図2において2本の破線の間に位置する、中央帯状部40を有する。この中央帯状部40は、歯当たり面28の下方に位置する。中央帯状部40の回転方向前方又は後方には各々突起が位置し、これら突起は、階段状、又はジグザグ状に平行に延びており、それにより回転軸受面の相互の嵌合が可能となる。
歯キャリア11内での歯7の誘導のために、一定量の遊びが不可避的に必要となる。そのため、荷重下での歯キャリア11内での歯7の支持には、「2点接触」が存在し、1つ目が誘導の歯根部で開口する領域であり、2つ目が誘導の歯先部で開口する領域である。本実施形態はこれらの位置における歯キャリア11及び/又は歯7の特別な設計を提供するものである。
図3は、歯7を拡大して図示したものである。歯7は歯胴体部45から歯先部47への遷移部においてコーン50を有している。コーン50はランイン領域の一部であり、歯7の長手方向軸に対して1°の角度を有している。コーンは、図4で更に拡大して示されており、図3と共に説明する。歯7のコーン50と歯胴体部45との間の遷移は、ドーム形状である。
これらの手段は、単独で又は共同で、誘導の歯先部開口における歯7と歯キャリア11の誘導との間の摩耗を減少させる。歯先部開口とは、図3の最上部に図示されている、歯キャリア11の誘導の開口である。誘導の歯根部開口は、歯先部開口の反対側に位置しており、図3の最下部に図示されている。
歯キャリア11の歯根部開口は、それぞれベベル70を有している。このベベル70は、図5において再度拡大されて示されており、図3と共に説明する。ベベル70は、歯7の長手方向軸に対して15°の角度を有している。歯7の長手方向軸は歯キャリア11の誘導の長手方向軸に相当するため、ベベル70は、誘導の円状開口の中央部分に対して15°の角度を有している。歯7は同様に円形であるが、他の実施形態においては、側面に平坦部分を有していてもよい。
歯根部開口のベベル70と、誘導の中央部分との間の遷移は、ドーム形状である。これにより鋭い角やバリが排除される。
これらの手段は、単独で又は共同で、歯7と歯キャリア11の誘導との間の接触領域における摩耗を減少させる。これらの手段は、接触領域が、歯キャリアにおいて可能な限り外側に、かつ可能な限り内側に位置するように、また、弾性変形により領域的に荷重がかかるように構成され、荷重が最小限となっている。互いに離れて位置している接触領域により、大きなレバーアームが得られる。ドーム状の遷移は潤滑膜の形成を促進させることができる。
さらに、歯は、歯胴体部45の中央部の周囲を取り囲むように配置された潤滑溝60を備えている。潤滑溝は誘導内における潤滑剤の分布を向上させることができる。
更なる摩耗の低減のために、いくつかの実施形態において、歯キャリア内の誘導が歯よりも硬い、又は歯が歯キャリアよりも硬い。より硬い部分は、例えばコーティングのような特に滑らかな表面で形成されることにより、更に摩耗が減少される。
比較的硬い歯の場合、固体摩擦の摩擦係数が低い耐摩耗性表面コーティングを比較的単純な方法で形成することができるという効果を達成することができる。このような歯上のコーティングは、歯キャリアとの接触領域だけでなく、歯受部との接触領域においても特に効果を有する。
図1から図5の例示的実施形態においては、歯7はDLC(ダイアモンド状炭素)コーティングを有している。
本発明は、上記の実施形態に制限されず、むしろ本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によって規定される。