しかしながら、特許文献1に記載のものでは、作動室の圧力が最大値となるまで待機する必要があり、水頭圧の推定を迅速に行うことができない。
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、液体の水頭圧を迅速に推定することのできる液体供給システムを提供することにある。
第1の手段は、液体供給システムであって、液体容器から供給される液体が流入及び流出するポンプ室と、作動気体が供給及び排出される作動室とを変動部材により仕切り、前記変動部材の変動による前記ポンプ室の容積の変化に基づいて前記液体を吸引及び吐出するポンプと、前記作動室に対して前記作動気体を供給及び排出する給排部と、前記ポンプ室へ前記液体を流入させる流入通路を開閉する吸引側弁と、前記ポンプ室から前記液体を流出させる流出通路を開閉する吐出側弁と、前記作動室を含む空間の圧力を検出する圧力センサと、前記作動室に対して流入出する前記作動気体の流量を検出する流量センサと、前記給排部、前記吸引側弁、及び前記吐出側弁を制御する制御部であって、前記吐出側弁を閉じて前記吸引側弁を開いた状態とし、前記流量センサにより検出される前記流量に基づき前記作動室の容積変化を算出し、前記容積変化が0となるように前記給排部を制御し、前記容積変化が0となった状態で前記圧力センサにより検出される前記圧力を前記液体の吸引側の水頭圧として推定する前記制御部と、を備えることを特徴とする。
上記構成によれば、ポンプにおいて、ポンプ室と作動室とが変動部材によって仕切られている。ポンプ室には、液体容器から供給される液体が流入及び流出される。作動室には、給排部により作動気体が供給及び排出される。そして、変動部材の変動によるポンプ室の容積の変化に基づいて、液体が吸引及び吐出される。
吸引側弁により、ポンプ室へ液体を流入させる流入通路が開閉される。吐出側弁により、ポンプ室から液体を流出させる流出通路が開閉される。また、圧力センサにより、作動室を含む空間の圧力が検出される。流量センサにより、作動室に対して流入出する作動気体の流量が検出される。
ここで、制御部により、上記給排部、上記吸引側弁、及び上記吐出側弁が制御される。詳しくは、制御部により、吐出側弁を閉じて吸引側弁を開いた状態とされるため、流入通路から液体がポンプ室へと流入する。そして、ポンプ室内の液体により変動部材が変動させられ、作動室の容積が変化させられる。このとき、流量センサにより検出される流量に基づいて、作動室の容積変化が算出される。例えば、作動室へ流入する作動気体の流量積算値(体積)は、作動室の容積増加量と等しいとみなすことができる。
さらに、制御部により作動室の容積変化が0となるように給排部が制御され、給排部により作動室に対して作動気体が供給及び排出される。これにより、作動室の容積変化が迅速に0とされる。吐出側弁を閉じて吸引側弁を開いた状態、且つ作動室の容積変化が0となった状態では、作動室を含む空間の圧力は液体の吸引側の水頭圧と等しくなっている。このため、作動室の容積変化が0となった状態で圧力センサにより検出される圧力が、液体の吸引側の水頭圧として推定される。したがって、液体の水頭圧を迅速に推定することができる。
第2の手段では、前記制御部は、前記吐出側弁を閉じて前記吸引側弁を開いた状態とし、前記給排部を制御して前記作動室を含む空間の圧力を変化させた際に、前記圧力センサにより検出される前記圧力に基づき圧力変化量を算出し且つ前記流量センサにより検出される前記流量に基づき流量変化量を算出し、前記圧力変化量及び前記流量変化量に基づいて、前記作動室を含む空間の圧力と前記液体の流量との関係を表す吸引側の関係係数を推定する。
上記構成によれば、制御部により、吐出側弁を閉じて吸引側弁を開いた状態とされ、給排部が制御されて作動室を含む空間の圧力が変化させられる。これにより、作動室を含む空間の圧力変化に応じて作動室の容積、ひいてはポンプ室の容積が変化し、ポンプ室に対して液体が流入出する。このとき、吐出側弁を閉じて吸引側弁を開いた状態において、作動室を含む空間の圧力変化量と液体の流量変化量とは、液体の吸引側の圧力損失を反映した所定の関係を有している。
そこで、制御部によって、圧力センサにより検出される圧力に基づき圧力変化量が算出され、且つ流量センサにより検出される流量に基づき流量変化量が算出される。そして、流量センサにより検出される作動気体の流量は、ポンプ室に対して流入出する液体の流量と相関を有している。例えば、作動室へ流入する作動気体の流量は、ポンプ室から流出する液体の流量と等しいとみなすことができる。したがって、作動室を含む空間の圧力変化量及び作動室に対して流入出する作動気体の流量変化量に基づいて、作動室を含む空間の圧力と液体の流量との関係を表す吸引側の関係係数を推定することができる。
第3の手段では、前記制御部は、推定された前記吸引側の水頭圧及び推定された前記吸引側の関係係数に基づいて、前記液体を吸引する際の前記作動室を含む空間の圧力目標値を設定し、前記圧力センサにより検出される前記圧力を前記圧力目標値とすべく前記給排部を制御する。
液体の使用に伴い液体容器内の液体の量が変化すると、液体の吸引側の水頭圧が変化する。また、液体供給システムの動作期間が長くなると、液体の吸引側の圧力損失、ひいては関係係数が変化する。そして、ポンプにおいて、作動室を含む空間の圧力と液体の吸引量との関係は、液体の吸引側の水頭圧及び吸引側の関係係数に応じて変化する。
この点、上記構成によれば、制御部により、推定された吸引側の水頭圧及び推定された吸引側の関係係数に基づいて、液体を吸引する際の作動室を含む空間の圧力目標値が設定される。そして、圧力センサにより検出される圧力を圧力目標値とすべく、制御部により給排部が制御される。したがって、液体の吸引側の水頭圧及び吸引側の関係係数が変化したとしても、液体の吸引量を正確に制御することができる。
第4の手段では、前記流入通路には、前記液体のフィルタが設けられており、前記制御部は、推定された前記吸引側の関係係数に基づいて、前記フィルタの劣化を報知する。
流入通路に液体のフィルタが設けられていると、フィルタの劣化度合に応じて吸引側の圧力損失、ひいては関係係数が変化する。この点、制御部により、推定された吸引側の関係係数に基づいて、フィルタの劣化が報知される。このため、適切な時期にフィルタの交換をユーザに促すことができる。
第5の手段では、前記制御部は、前記吸引側弁を閉じて前記吐出側弁を開いた状態とし、前記流量センサにより検出される前記流量に基づき前記作動室の容積変化を算出し、前記容積変化が0となるように前記給排部を制御し、前記容積変化が0となった状態で前記圧力センサにより検出される前記圧力を前記液体の吐出側の水頭圧として推定する。
第6の手段は、液体供給システムであって、液体容器から供給される液体が流入及び流出するポンプ室と、作動気体が供給及び排出される作動室とを変動部材により仕切り、前記変動部材の変動による前記ポンプ室の容積の変化に基づいて前記液体を吸引及び吐出するポンプと、前記作動室に対して前記作動気体を供給及び排出する給排部と、前記ポンプ室へ流入する前記液体の流入通路を開閉する吸引側弁と、前記ポンプ室から流出する前記液体の流出通路を開閉する吐出側弁と、前記作動室を含む空間の圧力を検出する圧力センサと、前記作動室へ供給される前記作動気体の流量を検出する流量センサと、前記給排部、前記吸引側弁、及び前記吐出側弁を制御する制御部であって、前記吸引側弁を閉じて前記吐出側弁を開いた状態とし、前記流量センサにより検出される前記流量に基づき前記作動室の容積変化を算出し、前記容積変化が0となるように前記給排部を制御し、前記容積変化が0となった状態で前記圧力センサにより検出される前記圧力を前記液体の吐出側の水頭圧として推定する前記制御部と、を備えることを特徴とする。
上記構成によれば、制御部により、吸引側弁を閉じて吐出側弁を開いた状態とされるため、ポンプ室から液体が流出通路へと流出する。そして、ポンプ室内の液体により変動部材が変動させられ、作動室の容積が変化させられる。このとき、流量センサにより検出される流量に基づいて、作動室の容積変化が算出される。
さらに、制御部により作動室の容積変化が0となるように給排部が制御され、給排部により作動室に対して作動気体が供給及び排出される。これにより、作動室の容積変化が迅速に0とされる。吸引側弁を閉じて吐出側弁を開いた状態、且つ作動室の容積変化が0となった状態では、作動室を含む空間の圧力は液体の吐出側の水頭圧と等しくなっている。このため、作動室の容積変化が0となった状態で圧力センサにより検出される圧力が、液体の吐出側の水頭圧として推定される。したがって、液体の水頭圧を迅速に推定することができる。
第1の手段及び第6の手段によれば、要するに、液体供給システムであって、液体容器から供給される液体が流入及び流出するポンプ室と、作動気体が供給及び排出される作動室とを変動部材により仕切り、前記変動部材の変動による前記ポンプ室の容積の変化に基づいて前記液体を吸引及び吐出するポンプと、前記作動室に対して前記作動気体を供給及び排出する給排部と、前記ポンプ室へ前記液体を流入させる流入通路を開閉する吸引側弁と、前記ポンプ室から前記液体を流出させる流出通路を開閉する吐出側弁と、前記作動室を含む空間の圧力を検出する圧力センサと、前記作動室に対して流入出する前記作動気体の流量を検出する流量センサと、前記給排部、前記吸引側弁、及び前記吐出側弁を制御する制御部であって、前記吸引側弁及び前記吐出側弁の一方である第1弁を閉じて他方である第2弁を開いた状態とし、前記流量センサにより検出される前記流量に基づき前記作動室の容積変化を算出し、前記容積変化が0となるように前記給排部を制御し、前記容積変化が0となった状態で前記圧力センサにより検出される前記圧力を前記液体の前記第2弁側の水頭圧として推定する前記制御部と、を備えることを特徴とするといった手段を採用することができる。
第7の手段では、前記制御部は、前記吸引側弁を閉じて前記吐出側弁を開いた状態とし、前記給排部を制御して前記作動室を含む空間の圧力を変化させた際に、前記圧力センサにより検出される前記圧力に基づき圧力変化量を算出し且つ前記流量センサにより検出される前記流量に基づき流量変化量を算出し、前記圧力変化量及び前記流量変化量に基づいて、前記作動室を含む空間の圧力と前記液体の流量との関係を表す吐出側の関係係数を推定する。
上記構成によれば、制御部により、吸引側弁を閉じて吐出側弁を開いた状態とされ、給排部が制御されて作動室を含む空間の圧力が変化させられる。これにより、作動室を含む空間の圧力変化に応じて作動室の容積、ひいてはポンプ室の容積が変化し、ポンプ室に対して液体が流入出する。このとき、吸引側弁を閉じて吐出側弁を開いた状態において、作動室を含む空間の圧力変化量と液体の流量変化量とは、液体の吐出側の圧力損失を反映した所定の関係を有している。
そこで、制御部によって、圧力センサにより検出される圧力に基づき圧力変化量が算出され、且つ流量センサにより検出される流量に基づき流量変化量が算出される。そして、流量センサにより検出される作動気体の流量は、ポンプ室に対して流入出する液体の流量と相関を有している。したがって、作動室を含む空間の圧力変化量及び作動室に対して流入出する作動気体の流量変化量に基づいて、作動室を含む空間の圧力と液体の流量との関係を表す吐出側の関係係数を推定することができる。
第8の手段では、前記制御部は、推定された前記吐出側の水頭圧及び推定された前記吐出側の関係係数に基づいて、前記液体を吐出する際の前記作動室を含む空間の圧力目標値を設定し、前記圧力センサにより検出される前記圧力を前記圧力目標値とすべく前記給排部を制御する。
ポンプ室よりも下流側の流路内に存在する液体の量が変化すると、液体の吐出側の水頭圧が変化する。また、液体供給システムの動作期間が長くなると、液体の吐出側の圧力損失、ひいては関係係数が変化する。そして、ポンプにおいて、作動室を含む空間の圧力と液体の吐出量との関係は、液体の吐出側の水頭圧及び吐出側の関係係数に応じて変化する。
この点、上記構成によれば、制御部により、推定された吐出側の水頭圧及び推定された吐出側の関係係数に基づいて、液体を吐出する際の作動室を含む空間の圧力目標値が設定される。そして、圧力センサにより検出される圧力を圧力目標値とすべく、制御部により給排部が制御される。したがって、液体の吐出側の水頭圧及び吐出側の関係係数が変化したとしても、液体の吐出量を正確に制御することができる。
第9の手段では、前記制御部は、前記容積変化が0となるように前記給排部を制御する際に、前記作動室の容積が縮小している場合に、前記作動室の圧力を上昇させるように前記給排部を制御し、前記作動室の容積が拡大している場合に、前記作動室の圧力を低下させるように前記給排部を制御する。
上記構成によれば、容積変化が0となるように給排部を制御する際に、作動室の容積が縮小している場合に、作動室の圧力を上昇させるように給排部が制御される。また、作動室の容積が拡大している場合に、作動室の圧力を低下させるように給排部が制御される。このため、作動室の容積が変化する傾向に合わせて給排部を制御することができ、容積変化を迅速に0とすることができる。
第10の手段では、前記制御部は、前記容積変化が0となるように前記給排部を制御する際に、前記作動室の容積が縮小する速度が高いほど、前記作動室の圧力を大きく上昇させるように前記給排部を制御し、前記作動室の容積が拡大する速度が高いほど、前記作動室の圧力を大きく低下させるように前記給排部を制御する。
上記構成によれば、容積変化が0となるように給排部を制御する際に、作動室の容積が縮小する速度が高いほど、作動室の圧力を大きく上昇させるように給排部が制御される。また、作動室の容積が拡大する速度が高いほど、作動室の圧力を大きく低下させるように給排部が制御される。このため、作動室の容積が変化する傾向と変化速度とに応じて給排部を制御することができ、容積変化をより迅速に0とすることができる。
第11の手段では、前記制御部は、前記吐出側弁及び前記吸引側弁を閉じた状態とし、前記給排部を制御して前記作動室を含む空間の圧力を変化させた際に、前記圧力センサにより検出される前記圧力に基づき圧力変化量を算出し且つ前記流量センサにより検出される前記流量に基づき流量積算値を算出し、前記圧力変化量及び前記流量積算値に基づいて、前記作動室を含む空間の現時点容積を算出し、前記液体を吐出する際に現時点で吐出可能な前記液体の最大体積を前記現時点容積に基づいて推定する。
上記構成によれば、制御部により、吐出側弁及び吸引側弁を閉じた状態とされ、給排部が制御されて作動室を含む空間の圧力が変化させられる。これにより、作動室を含む空間に対して作動気体が流入出する。このとき、作動室を含む空間に対して流入出する作動気体は、吐出側弁及び吸引側弁を閉じた状態では、作動室を含む空間の圧力変化に寄与する。流入出する作動気体による作動室を含む空間の圧力変化量は、作動室を含む空間の現時点の容積によって変化する。このため、作動室を含む空間の圧力変化量と作動気体の流量積算値(すなわち流入出量)との関係は、作動室の現時点容積を反映したものとなる。したがって、作動室を含む空間の圧力変化量及び作動室に流入する作動気体の流量積算値に基づいて、作動室を含む空間の現時点容積を算出することができる。
また、ポンプにおいて、作動室を含む空間の容積とポンプ室の容積との和は一定である。そして、ポンプが1回の吐出動作によって吐出可能な液体の最大体積は、現時点でポンプ室に吸引されている液体の体積、すなわちポンプ室の現時点容積によって決まる。このため、液体を吐出する際に現時点で吐出可能な液体の最大体積を、作動室を含む空間の現時点容積に基づいて推定することができる。
第12の手段では、前記制御部は、前記ポンプによる前記液体の吐出開始に際して、推定された前記最大体積が吐出を要求される前記液体の要求体積よりも小さい場合に、前記要求体積を吐出可能となるように、前記給排部を制御して前記液体を吸引させる。
ポンプが現時点で吐出可能な液体の最大体積が、吐出を要求される液体の要求体積よりも小さい場合は、現状態からの吐出動作において要求体積の液体を吐出することができない。この点、ポンプによる液体の吐出開始に際して、推定された最大体積が吐出を要求される液体の要求体積よりも小さい場合は、制御部により、要求体積を吐出可能となるように、給排部が制御されて液体が吸引させられる。したがって、現時点でポンプ室に吸引されている液体の体積が要求体積よりも小さい場合は、ポンプ室内の液体を補ってから要求体積の液体を吐出することができる。
第13の手段では、前記制御部は、前記給排部を制御して前記変動部材に発生する張力が所定値よりも小さくなる位置まで前記変動部材を変動させたことを条件として、前記水頭圧を推定する。
変動部材の変動量が大きい場合は、変動部材に発生する張力の影響が大きくなる。そして、変動部材に発生する張力が大きい場合は、その張力の影響により液体の水頭圧を正確に推定することができないおそれがある。
この点、上記構成によれば、制御部により、給排部が制御されて変動部材に発生する張力が所定値よりも小さくなる位置まで変動部材が変動したことを条件として、水頭圧が推定される。このため、変動部材に発生する張力の影響を小さくして、水頭圧を正確に推定することができる。
ポンプ室内の液体中に気泡が含まれている場合は、第11の手段を用いたとしても、液体を吐出する際に現時点で吐出可能な液体の最大体積を正確に推定することができないおそれがある。
そこで、前記制御部は、前記吐出側弁及び前記吸引側弁を閉じた状態とし、前記給排部を制御して前記作動室を含む空間の圧力を第1圧力に変化させた際に、前記圧力センサにより検出される前記圧力に基づき圧力変化量を算出し且つ前記流量センサにより検出される前記流量に基づき流量積算値を算出し、前記圧力変化量及び前記流量積算値に基づいて、前記作動室を含む空間の第1の現時点容積を算出し、また、前記吐出側弁及び前記吸引側弁を閉じた状態とし、前記給排部を制御して前記作動室を含む空間の圧力を第2圧力に変化させた際に、前記圧力センサにより検出される前記圧力に基づき圧力変化量を算出し且つ前記流量センサにより検出される前記流量に基づき流量積算値を算出し、前記圧力変化量及び前記流量積算値に基づいて、前記作動室を含む空間の第2の現時点容積を算出し、前記第1圧力、前記第2圧力、前記第1の現時点容積、及び前記第2の現時点容積に基づいて、前記第1圧力における前記ポンプ室内の気泡の体積、又は前記第2圧力における前記ポンプ室内の気泡の体積を推定するといった構成を採用することもできる。
上記構成によれば、第11の手段における現時点容積の算出が、第1圧力と第2圧力とでそれぞれ実行される。ここで、作動室内の作動気体について、ボイルの法則が成立する。このため、第1圧力と第1の現時点容積との積が、第2圧力と第2の現時点容積との積に等しいという関係が成立する。また、第1の圧力でのポンプ室内の気泡の体積と第2の圧力でのポンプ室内の気泡の体積との差が、第1の現時点容積と第2の現時点容積との差に等しいという関係が成立する。したがって、これらの関係を用いることにより、第1圧力、第2圧力、第1の現時点容積、及び第2の現時点容積に基づいて、第1圧力におけるポンプ室内の気泡の体積、又は第2圧力におけるポンプ室内の気泡の体積を推定することができる。ひいては、液体を吐出する際に現時点で吐出可能な液体の最大体積を正確に推定することができる。
第14の手段は、液体容器から供給される液体が流入及び流出するポンプ室と、作動気体が供給及び排出される作動室とを変動部材により仕切り、前記変動部材の変動による前記ポンプ室の容積変化に基づいて前記液体を吸引及び吐出するポンプと、前記作動室に対して前記作動気体を供給及び排出する給排部と、前記ポンプ室へ流入する前記液体の流入通路を開閉する吸引側弁と、前記ポンプ室から流出する前記液体の流出通路を開閉する吐出側弁と、前記作動室を含む空間の圧力を検出する圧力センサと、前記作動室へ供給される前記作動気体の流量を検出する流量センサと、備える液体供給システムを制御する方法であって、前記吐出側弁を閉じて前記吸引側弁を開いた状態とする工程と、前記流量センサにより検出される前記流量に基づいて、前記作動室の容積変化を算出する工程と、算出される前記容積変化が0となるように前記給排部を制御する工程と、前記容積変化が0となった状態で前記圧力センサにより検出される前記圧力を前記液体の吸引側の水頭圧として推定する工程と、を備えることを特徴とする。
上記工程によれば、第1の手段と同様の作用効果を奏することができる。
第15の手段は、液体容器から供給される液体が流入及び流出するポンプ室と、作動気体が供給及び排出される作動室とを変動部材により仕切り、前記変動部材の変動による前記ポンプ室の容積変化に基づいて前記液体を吸引及び吐出するポンプと、前記作動室に対して前記作動気体を供給及び排出する給排部と、前記ポンプ室へ流入する前記液体の流入通路を開閉する吸引側弁と、前記ポンプ室から流出する前記液体の流出通路を開閉する吐出側弁と、前記作動室を含む空間の圧力を検出する圧力センサと、前記作動室へ供給される前記作動気体の流量を検出する流量センサと、を備える液体供給システムを制御する方法であって、前記吸引側弁を閉じて前記吐出側弁を開いた状態とする工程と、前記流量センサにより検出される前記流量に基づいて、前記作動室の容積変化を算出する工程と、算出される前記容積変化が0となるように前記給排部を制御する工程と、前記容積変化が0となった状態で前記圧力センサにより検出される前記圧力を前記液体の吐出側の水頭圧として推定する工程と、備えることを特徴とする。
上記工程によれば、第6の手段と同様の作用効果を奏することができる。
第14の手段及び第15の手段によれば、要するに、液体容器から供給される液体が流入及び流出するポンプ室と、作動気体が供給及び排出される作動室とを変動部材により仕切り、前記変動部材の変動による前記ポンプ室の容積変化に基づいて前記液体を吸引及び吐出するポンプと、前記作動室に対して前記作動気体を供給及び排出する給排部と、前記ポンプ室へ前記液体を流入させる流入通路を開閉する吸引側弁と、前記ポンプ室から前記液体を流出させる流出通路を開閉する吐出側弁と、前記作動室を含む空間の圧力を検出する圧力センサと、前記作動室に対して流入出する前記作動気体の流量を検出する流量センサと、を備える液体供給システムを制御部により制御する方法であって、前記吐出側弁及び前記吸引側弁の一方である第1弁を閉じて他方である第2弁を開いた状態とする工程と、前記流量センサにより検出される前記流量に基づいて、前記作動室の容積変化を算出する工程と、算出される前記容積変化が0となるように前記給排部を制御する工程と、前記容積変化が0となった状態で前記圧力センサにより検出される前記圧力を前記液体の前記第2弁側の水頭圧として推定する工程と、を備えることを特徴とするといった工程を採用することができる。
以下、半導体製造ライン等に用いられる薬液供給システムとして具体化した実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、薬液供給システム10(すなわち液体供給システム)を示す回路図である。同図に示すように、薬液供給システム10は、回転板48上に載置された半導体ウェハWの中心付近に、薬液(すなわち液体)としてのレジスト液Rを先端ノズル47nから供給する。レジスト液Rは、半導体ウェハWの中心付近から、遠心力で半導体ウェハWの外縁まで広げられる。
薬液供給システム10は、ダイアフラムポンプ13と、ポンプ駆動部59と、薬液供給系統49と、吸入配管41と、吐出配管47と、吐出側バルブ46と、流量センサ71と、圧力センサ72と、位置センサ73と、コントローラ70と、等を備えている。
ポンプ13は、ポンプ室25と作動室26とを仕切るダイアフラム23を備えている。レジスト液Rが吸入配管41からポンプ室25へ吸引され、ポンプ室25からレジスト液Rが吐出配管47へ吐出される。作動室26に対して、操作エアが供給及び排出される。なお、図1では、ポンプ13の概略を模式的に示している。
ポンプ駆動部59(すなわち給排部)は、加圧された操作エア(すなわち作動気体)を供給する供給源53と、負圧を発生させる真空発生源61と、電空レギュレータ51と、等を備えている。
供給源53から供給配管52を通じて電空レギュレータ51へ操作エアが供給される。電空レギュレータ51から排気配管60を通じて真空発生源61へ操作エアが排出される。電空レギュレータ51は、電磁弁等を備えており、供給源53と真空発生源61とに接続を切り替える。そして、電空レギュレータ51からエア配管50(すなわち作動気体通路)を通じて、ポンプ13の作動室26に対して操作エアが供給及び排出される。電空レギュレータ51は、コントローラ70からの第1指令信号(例えば圧力目標値)に基づいて、操作エアの圧力を圧力目標値としての設定圧に制御する。なお、ポンプ駆動部59は、電空レギュレータ51を備えるものに限らず、作動気体の圧力を制御するその他の回路であってもよい。
薬液供給系統49は、レジスト液Rを貯留するレジストボトル42と、吸引側バルブ40と、加圧された操作エアを供給する供給源44と、圧力調整弁45と、切換弁43と、等を備えている。
レジストボトル42(すなわち液体容器)は、吸入配管41(すなわち流入通路)によりフィルタ41aを介して吸引側バルブ40に接続されている。レジストボトル42は、ポンプ室25よりも上にあっても、下にあってもよい。フィルタ41aは、レジスト液Rに含まれる微小粒子等の不純物を取り除く。吸引側バルブ40(吸引側弁)は吸入配管41を開閉する。供給源44から操作エアが、圧力調整弁45と切換弁43とを介して吸引側バルブ40へ供給される。圧力調整弁45は、供給源44から供給された操作エアの圧力を、吸引側バルブ40を操作するための圧力に調整する。切換弁43は、電磁ソレノイドを有する電磁切換部43aにより、流路の接続状態を切り替える電磁弁である。切換弁43は、コントローラ70からの第2指令信号(例えばオン指令又はオフ指令)に基づいて、吸引側バルブ40への操作エアの供給と大気開放とを相互に切り替える。そして、吸引側バルブ40が開かれることで、吸入配管41を通じてレジスト液Rがポンプ13のポンプ室25へ流入する。
ポンプ13のポンプ室25は、吐出配管47(すなわち流出通路)により吐出側バルブ46を介して先端ノズル47nに接続されている。吐出側バルブ46(吐出側弁)は、上記吸引側バルブ40と同様の構成を備えている。吐出側バルブ46は、コントローラ70からの第3指令信号(例えばオン指令又はオフ指令)に基づいて、開状態と閉状態とに相互に切り替えられる。そして、吐出側バルブ46が開かれることで、ポンプ13のポンプ室25から吐出配管47を通じてレジスト液Rが流出する。すなわち、吐出配管47を通じて先端ノズル47nへレジスト液Rが供給される。
流量センサ71は、エア配管50を流通する操作エアの流量、すなわちポンプ13の作動室26に対して流入出する操作エアの流量を検出する。
圧力センサ72は、エア配管50内の操作エアの圧力、すなわち作動室26及びエア配管50を含む空間の圧力を検出する。詳しくは、圧力センサ72は、エア配管50においてポンプ13と流量センサ71との間に設定された圧力検出点72pの圧力を検出する。
位置センサ73は、ダイアフラム23の位置を検出する。詳しくは、位置センサ73は、ダイアフラム23が中立位置よりもポンプ室25側(すなわち吐出側)へ変動している場合にオフとなる。そして、位置センサ73は、ダイアフラム23が中立位置にある場合及び、中立位置よりも作動室26側(すなわち吸引側)へ変動している場合にオンとなる。中立位置は、ダイアフラム23の変動によりダイアフラム23に発生する張力が、所定値よりも小さくなる(例えば張力が0となる)位置、すなわちダイアフラムに発生する張力を無視することのできる位置である。
コントローラ70(すなわち制御部)は、CPUや各種メモリ等よりなるマイクロコンピュータを主体として構成される電子制御装置である。コントローラ70は、ポンプ13によるレジスト液Rの吸引及び吐出の状態等を制御する。コントローラ70には、本システム全体を統括して管理する図示しない管理コンピュータから入力信号(例えば吸引指令信号又は吐出指令信号)が入力される。コントローラ70には、流量センサ71による流量検出信号、圧力センサ72による圧力検出信号、及び位置センサ73による位置検出信号が入力される。そして、コントローラ70は、入力される信号に基づいて、吸引側バルブ40と吐出側バルブ46との開閉状態、及び電空レギュレータ51(すなわちポンプ駆動部59)の状態を制御する。本実施形態では、コントローラ70は、レジスト液Rの吸引側の水頭圧及び関係係数、レジスト液Rの吐出可能量、並びにレジスト液Rの吐出側の水頭圧及び関係係数を推定する。
図2は、ダイアフラムポンプ13を示す断面図である。同図に示すように、ポンプ13は、一対のポンプハウジング21,22を有している。各ポンプハウジング21,22には、それぞれ対向する面の中央に断面円形状の凹部21a,22aが形成されている。ダイアフラム23は、フッ素樹脂等からなる可撓性膜により、円形状に形成されている。ダイアフラム23の外縁部は、ポンプハウジング21とポンプハウジング22とにより挟持されている。ポンプハウジング21,22は、複数のネジ24により相互に固定されている。
ダイアフラム23は、ポンプハウジング21,22の内部において両凹部21a,22aにより形成される空間を仕切っている。ダイアフラム23によって仕切られたポンプハウジング21側(図2においてダイアフラム23の左側)の空間は、上記ポンプ室25を構成している。ダイアフラム23によって仕切られたポンプハウジング22側(図2においてダイアフラム23の右側)の空間は、上記作動室26を構成している。ポンプ室25は、レジスト液Rで満たされる空間である。作動室26は、ダイアフラム23を変形(すなわち変動)させる操作エアで満たされる空間である。
ポンプハウジング21には、ポンプ室25に連通する吸入通路21b(すなわち流入通路)と、吐出通路21c(すなわち流出通路)とが形成されている。吸入通路21bは、上記吸入配管41に接続されている。吐出通路21cは、上記吐出配管47に接続されている。ポンプハウジング22には、作動室26に連通する給排通路22bが形成されている。給排通路22bは、上記エア配管50に接続されている。
図3は、薬液供給システム10の基本的な作動態様を示すタイムチャートである。薬液供給システム10は、ポンプ13の吐出と吸引とを含むサイクルを繰り返すことによって作動する。薬液供給システム10の作動は、上記コントローラ70によって制御される。
同図に示すように、時刻t1よりも以前では、吸引側バルブ40が開かれており、吐出側バルブ46が閉じられている。作動室26の圧力は、設定圧の負圧となっている。この状態では、ポンプ室25は最大まで拡張しており、作動室26は最小まで縮小している。
時刻t1では、吐出側バルブ46を閉としたままの状態において、吸引側バルブ40も閉状態とする。吸引側バルブ40を閉状態とした後に、電空レギュレータ51の設定圧を正圧に切り替える。その結果、電空レギュレータ51により、作動室26の圧力が設定された正圧に迅速に制御される。この状態では、吸引側バルブ40及び吐出側バルブ46の双方が閉状態なので、ポンプ室25は、ダイアフラム23を介して作動室26側から設定圧の正圧が印加された状態(詳しくは静止状態)となっている。
ここで、上記圧力検出点72pの圧力(すなわち作動室26の圧力)は、圧力センサ72によってリアルタイムで検出されている。作動室26に対して流入出する操作エアの流量は、流量センサ71によってリアルタイムで検出されている。そして、流量センサ71により検出される流量が所定値よりも少なくなる(例えば流量が0となる)時刻t2まで、上記の状態が維持される。なお、圧力センサ72により検出される圧力の変動が所定値よりも小さくなる(例えば圧力の変動が0となる)時刻を、時刻t2としてもよい。
時刻t2では、吐出側バルブ46を開状態とする。これにより、吐出側バルブ46を介してポンプ室25からレジスト液Rの吐出が可能となる。このため、操作エアによる作動室26側からポンプ室25側へのダイアフラム23の押圧に応じて、ポンプ室25からレジスト液Rの吐出が開始される。この状態を、作動室26を最大まで拡張させ、ポンプ室25を最小まで縮小させることのできる期間、すなわち時刻t2〜t3までの期間維持する。これにより、ポンプ13からのレジスト液Rの吐出が終了する。
時刻t3では、吐出側バルブ46を閉状態とする。時刻t3から所定期間後の時刻t4では、吸引側バルブ40を開状態とする。
時刻t4〜t5では、操作エアの設定圧を急激に変化させるのではなく、所定の変化速度で正圧から負圧に徐々に変化させる。これにより、ポンプ室25の圧力が急低下することによる発泡現象を抑制することができる。そして、操作エアの設定圧の低下(例えば負圧化)に伴って、ポンプ室25側から作動室26側へダイアフラム23が吸引される。この状態を、ポンプ室25を最大まで拡張させ、作動室26を最小まで縮小させることのできる期間、すなわち時刻t5〜t6までの期間維持する。これにより、ポンプ13へのレジスト液Rの吸引が終了する。その後、時刻t6において、時刻t1と同様の制御を実行する。
(吸引側の水頭圧推定)
図4は、吸引側(吸引側弁側、第2弁側)の水頭圧を推定する処理を示すフローチャートである。この一連の処理は、コントローラ70によって実行される。
まず、吐出側バルブ46(第1弁に相当)及び吸引側バルブ40(第2弁に相当)を閉じさせる(S11,S12)。すなわち、両バルブ46,40を一端閉じた状態とする。
続いて、ダイアフラム23を上記中立位置へ移動させる(S13)。中立位置は、ダイアフラム23の変動によりダイアフラム23に発生する張力が、所定値よりも小さくなる(例えば張力が0となる)位置である。この処理の詳細については後述する。
続いて、前回行われた処理における設定圧を読み込む(S14)。詳しくは、コントローラ70による前回の吸引側の水頭圧を推定する処理において、電空レギュレータ51へ出力された設定圧を読み込む。
続いて、S14で読み込んだ設定圧を電空レギュレータ51へ出力する(S15)。これにより、電空レギュレータ51は、作動室26の圧力を設定圧に制御する処理を開始する。そして、吸引側バルブ40を開かせる(S16)。すなわち、前回の処理において作動室26の圧力を設定圧に制御していた状態から、水頭圧を推定する処理を開始する。なお、前回行われた処理における設定圧を取得できない場合は、水頭圧を推定する処理を所定の初期設定圧から開始する。
続いて、作動室26の圧力を圧力センサ72により検出させ(S17)、作動室26に対して流入出する作動エアの流量を流量センサ71により検出させる(S18)。
続いて、吸引側バルブ40を閉じさせる(S19)。そして、検出された圧力及び検出された流量に基づいて、作動室26の容積変化を算出する(S20)。この処理の詳細については後述する。
続いて、算出された容積変化が0であるか否か判定する(S21)。詳しくは、算出された容積変化が判定値よりも小さいか否か判定する。判定値は、作動室26の容積変化が実質的に0である、又は略0であることを判定することのできる値、例えば0よりも若干大きい値に設定されている。
S21の判定において、算出された容積変化が0でないと判定した場合(S21:NO)、ダイアフラム23を上記中立位置へ移動させる(S22)。そして、設定圧を変更する(S23)。詳しくは、算出された容積変化に応じて、容積変化を0に迅速に近付けることのできる設定圧に変更する。例えば、作動室26の容積が縮小している場合は設定圧を上昇させ、作動室26の容積が拡大している場合は設定圧を低下させる。さらに、作動室26の容積が縮小する速度が高いほど、設定圧を大きく上昇させる。作動室26の容積が拡大する速度が高いほど、設定圧を大きく低下させる。その後、S15の処理から再度実行する。
一方、S21の判定において、算出された容積変化が0であると判定した場合(S21:YES)、吸引側の水頭圧を推定する(S24)。詳しくは、作動室26の容積変化が0となった状態における作動室26の設定圧、すなわち作動室26の容積変化が0となった状態で圧力センサ72により検出された圧力を、吸引側の水頭圧として推定する。その後、この一連の処理を終了する(END)。なお、この一連の処理が、液体供給システムの制御方法に相当する。
(ダイアフラムの中立位置への移動)
図5は、ダイアフラム23を中立位置へ移動させる処理(図4のS13)を示すフローチャートである。この一連の処理は、コントローラ70によって実行される。
まず、作動室26の設定圧を変更する(S130)。詳しくは、ダイアフラム23を中立位置よりもポンプ室25側へ迅速に変動させることのできる所定圧力に、設定圧を変更する。そして、変更された設定圧を電空レギュレータ51へ出力する(S131)。これにより、電空レギュレータ51は、作動室26の圧力を設定圧に制御する。
続いて、吐出側バルブ46を開かせる(S132)。なお、吸引側バルブ40は、図4のS12の処理において閉じられている。
続いて、位置センサ73がオフとなったか否か判定する(S133)。すなわち、ダイアフラム23が中立位置よりもポンプ室25側へ移動したか否か判定する。この判定において、位置センサ73がオフとなっていないと判定した場合(S133:NO)、S133の判定を繰り返し行って待機する。
一方、S133の判定において、位置センサ73がオフとなったと判定した場合(S133:YES)、吐出側バルブ46を閉じさせ(S134)、作動室26の設定圧を変更する(S135)。詳しくは、ダイアフラム23を中立位置に適切な速度で移動させることのできる所定圧力に、設定圧を変更する。この所定圧力は、ダイアフラム23を中立位置に確実に移動させることができ、且つダイアフラム23が中立位置よりも作動室26側へ大きく変動することのない圧力に設定されている。そして、変更された設定圧を電空レギュレータ51へ出力する(S136)。これにより、電空レギュレータ51は、作動室26の圧力を設定圧に制御する。
続いて、吸引側バルブ40を開かせる(S137)。
続いて、位置センサ73がオンとなったか否か判定する(S138)。すなわち、ダイアフラム23が中立位置へ移動したか否か判定する。この判定において、位置センサ73がオンとなっていないと判定した場合(S138:NO)、S138の判定を繰り返し行って待機する。
一方、S138の判定において、位置センサ73がオンとなったと判定した場合(S138:YES)、吸引側バルブ40を閉じさせる(S139)。これにより、ダイアフラム23は中立位置で静止する。その後、図4のS13以降の処理へ戻る(RET)。
(作動室の容積変化算出)
図6は、操作エアの圧力と流量とに基づいてポンプ13の作動室容積を計算する計算式である。この計算式は、図4のS20の処理で用いられる。図6中の式F1〜F4は、作動室26の圧力と容積の双方が変化する状態において、操作エアの圧縮性を考慮し、作動室26へ供給される操作エアの圧力と流量とを使用して作動室26の容積変化を計算するための計算式である。
式F1は、今回(n+1)における作動室26の容積を算出する計算式である。式F1は、前回(n)の作動室26の容積V(n)に、所定のサンプリング時間Δtにおける作動室26の容積変化Qv(n+1)・Δtを加算して、今回(n+1)の作動室の容積V(n+1)を算出する計算式である。すなわち、容積V(n+1)は、初期容積V(0)に所定のサンプリング時間Δt毎の作動室26の容積変化Qv(k)・Δtを加算して算出される。初期容積V(0)は、吐出過程や吸引過程の開始時における作動室26の容積の初期値である。例えば、ダイアフラム23が吐出側端部まで移動した状態や、ダイアフラム23が中立位置にある状態、ダイアフラム23が吸引側端部まで移動した状態での初期容積V(0)は既知の値である。そして、V(n+1)からV(n)を減算することにより、時間Δtにおける容積変化ΔVを算出することができる。なお、容積変化ΔVは、時間Δtにおけるレジスト液Rの吐出量と等しくなる。これは、ポンプ室25の容積変化は、作動室26の容積変化ΔVと符号が逆で大きさが等しいことによる。
式F2は、作動室26の今回の検出圧力P(n+1)における単位時間当たりの容積変化Qv(n+1)を、基準圧力P0における流量QM(n+1)から算出する計算式である。検出圧力P(n+1)は、圧力センサ72によって検出された作動室26の圧力である。ここで、単位時間当たりの容積変化は流量を意味する。これにより、基準圧力P0を想定して検出された流量を、圧力P(n+1)での流量に換算して利用することができる。そして、式F2により算出される容積変化Qv(n+1)を、式F1に代入する。
式F3は、検出流量QA(n+1)を使用して基準圧力P0における流量QM(n+1)を算出するための計算式である。検出流量QA(n+1)は、流量センサ71によって検出された操作エアの流量である。基準圧力P0における流量QM(n+1)は、検出流量QA(n+1)から圧力変化分流量QP(n+1)を減算して算出される。圧力変化分流量QP(n+1)は作動室26の圧力変化に寄与し、容積変化には寄与しない流量である。圧力変化分流量QP(n+1)は、圧縮流量とも呼ばれる。そして、式F3により算出される基準圧力P0における流量QM(n+1)を、式F2に代入する。
式F4は、圧力変化分流量QP(n+1)を算出するための計算式である。圧力変化分流量QP(n+1)は、操作エアの流量のうち作動室26の圧力変化にのみ寄与する流量である。圧力変化分流量QP(n+1)は、作動室26の圧力が上昇中には正の値となり、作動室26の圧力が下降中には負の値となる。圧力変化(P(n+1)−P(n))は、圧力センサ72による検出圧力のサンプリング時間Δtでの変化である。圧力変化(P(n+1)−P(n))は、実測値をそのまま利用しても良いし、あるいはたとえば一定の時間幅で平均化された値を使用するようにしてもよい。圧力変化分流量QP(n+1)の算出値は、その時の作動室26の容積V(n)とエア配管50の容積との合計である操作室容積Vに依存する値である。このため、圧力変化分流量QP(n+1)を算出する時の操作室容積Vが重要な意味を有する。例えば、ダイアフラム23が吐出側端部まで移動した状態や、ダイアフラム23が中立位置にある状態、ダイアフラム23が吸引側端部まで移動した状態での操作室容積Vは既知の値である。そして、式F4により算出される圧力変化分流量QP(n+1)を、式F3に代入する。以上により、式F1を用いることで、時間Δtにおける容積変化ΔVを算出することができる。
(吸引側の関係係数推定)
図7は、吸引側(吸引側弁側、第2弁側)の関係係数を推定する処理を示すフローチャートである。この一連の処理は、コントローラ70によって実行される。
S25,S26の処理は、図4のS11,S12の処理と同一である。
続いて、ダイアフラム23を上記中立位置へ移動させる(S27)。
続いて、作動室26の設定圧を変更する(S28)。詳しくは、ダイアフラム23をポンプ室25側から作動室26側へ適切な速度で変動させることのできる所定圧力に、設定圧を変更する。この所定圧力は、ダイアフラム23をポンプ室25側から作動室26側へ確実に移動させることができ、且つダイアフラム23を所定速度よりも低い速度で変動させることのできる圧力に設定されている。
続いて、S28で変更した設定圧を電空レギュレータ51へ出力する(S29)。これにより、電空レギュレータ51は、作動室26の圧力を設定圧に制御する処理を開始する。そして、吸引側バルブ40を開かせる(S30)。
S31,S32の処理は、図4のS17,S18の処理と同一である。
続いて、吸引側バルブ40を閉じさせる(S33)。そして、作動室26の容積変化速度を算出する(S34)。作動室26の容積変化速度は、図6の式F2により、作動室26の今回の検出圧力P(n+1)における単位時間当たりの容積変化Qv(n+1)として算出する。
続いて、複数点で作動室26の圧力及び操作エアの流量が検出されたか否か判定する(S35)。詳しくは、ダイアフラム23を所定位置まで移動させる際の複数位置、又はダイアフラム23が変動する際の複数時点で、作動室26の圧力及び操作エアの流量が検出されたか否か判定する。複数点は、最低2点でよく、数が増えるほど関係係数推定の精度が向上する。
S35の判定において、複数点で作動室26の圧力及び操作エアの流量が検出されていないと判定した場合(S35:NO)、ダイアフラム23を上記中立位置へ移動させる(S36)。そして、作動室26の設定圧を変更する(S37)。S28で変更した設定圧から、さらに設定圧を変更する。すなわち、設定圧を変更して、作動室26の圧力及び操作エアの流量を変化させる。その後、S29の処理から再度実行する。
一方、S35の判定において、複数点で作動室26の圧力及び操作エアの流量が検出されたと判定した場合(S35:YES)、吸引側の関係係数を推定する(S38)。詳しくは、例えばサンプリング時間Δtの時間間隔をおいた2点で作動室26の圧力及び操作エアの流量を検出した場合、以下の式により吸引側の関係係数を算出する。R(n+1)={Qv(n+1)−Qv(n)}/{P(n+1)−P(n)}。ここで、R(n+1)は今回の関係係数(すなわち圧力損失を反映する係数)であり、P(n)は第1点での検出圧力、P(n+1)は第2点での検出圧力、Qv(n)は第1点での作動室26の容積変化速度、Qv(n+1)は第2点での作動室26の容積変化速度である。なお、2点よりも多くの点で作動室26の圧力及び操作エアの流量を検出した場合は、検出圧力と容積変化速度との関係を表す近似直線を算出し、その近似直線の傾きから関係係数R(n+1)を算出する。
続いて、推定した吸引側の関係係数に基づいて、フィルタ41aが劣化したか否か判定する(S39)。詳しくは、算出した関係係数R(n+1)が判定値よりも小さい場合に、フィルタ41aが劣化したと判定する。判定値は、フィルタ41aの特性に応じて設定されている。
S39の判定において、フィルタ41aが劣化していないと判定した場合(S39:NO)、この一連の処理を終了する(END)。一方、S39の判定において、フィルタ41aが劣化したと判定した場合(S39:YES)、ユーザにフィルタ41aが劣化したことを報知する(S40)。詳しくは、フィルタ41aの交換を促す警告灯を点灯したり、フィルタ41aの劣化度合(例えば関係係数R(n+1))を表示したりする。その後、この一連の処理を終了する(END)。
薬液供給システム10において、レジスト液Rの使用に伴いレジストボトル42内のレジスト液Rの量が変化すると、レジスト液Rの吸引側の水頭圧が変化する。また、薬液供給システムの動作期間が長くなると、フィルタ41aの劣化等によりレジスト液Rの吸引側の圧力損失、ひいては関係係数が変化する。そして、ポンプ13において、作動室26及びエア配管50を含む空間(すなわち操作室)の圧力とレジスト液Rの吸引量との関係は、レジスト液Rの吸引側の水頭圧及び吸引側の関係係数に応じて変化する。
そこで、コントローラ70は、推定された吸引側の水頭圧及び推定された吸引側の関係係数に基づいて、レジスト液Rを吸引する際の設定圧(すなわち作動室26及びエア配管50を含む空間の圧力目標値)を変更する。そして、コントローラ70は、圧力センサ72により検出される圧力を設定圧とすべく、電空レギュレータ51(すなわちポンプ駆動部59)を制御する。例えば、レジスト液Rの吸引側の水頭圧が低下するほど、ポンプ13の吸引時の設定圧を低下させる(すなわち負圧を大きくする)。レジスト液Rの吸引側の関係係数が小さくなるほど、ポンプ13の吸引時の設定圧を低下させる。詳しくは、要求流量=R(n+1)×(水頭圧−設定圧)の関係を満たす(設定圧は負の値)。このため、設定圧=水頭圧−要求流量/R(n+1)、に変更する。
(吐出可能量推定)
図8は、吐出可能量を推定する処理を示すフローチャートである。この一連の処理は、コントローラ70によって実行される。
S41,S42の処理は、図4のS11,S12の処理と同一である。
続いて、作動室26の設定圧を変更する(S43)。詳しくは、吐出側バルブ46及び吸引側バルブ40が閉じられた状態、すなわちダイアフラム23が変動しない状態において、作動室26の圧力変化に伴う操作エアの流量変化を精度よく検出することのできる圧力に設定圧を変更する。例えば、設定圧を大気圧から所定圧に上昇させる。
S44〜S46の処理は、図4のS15,S17,S18の処理と同一である。
続いて、操作室の容積を算出する(S47)。詳しくは、図6の式F4を変形して、図6の式F5を導く。ここで、ダイアフラム23が変動しない状態であるため、その時の検出流量QA(n+1)は圧力変化分流量QP(n+1)に等しいとみなすことができる。Vはその時の作動室26の容積V(n)とエア配管50の容積との合計である操作室容積、QA(n+1)は今回の検出流量、P0は基準圧力、ΔP(n+1)は圧力変化(P(n+1)−P(n))、Δtは所定のサンプリング時間である。なお、検出流量QA(n+1)と時間Δtとの積は、流量の積算値に相当する。
続いて、算出した操作室容積Vに基づいて吐出可能量を推定する(S48)。詳しくは、ポンプ室25の容積と操作室容積Vとの合計から、操作室容積Vを減算することにより、ポンプ室25の容積(すなわち吐出可能量)を算出する。ここで、ポンプ室25の容積と操作室容積Vとの合計は、ポンプ13の設計により決まる既知の値である。なお、吐出可能量は、現時点(すなわち現在の状態)でポンプ13により吐出可能なレジスト液Rの最大体積である。その後、この一連の処理を終了する(END)。
ここで、ポンプ13の現時点での吐出可能量が、吐出を要求されるレジスト液Rの要求量(すなわち要求体積)よりも小さい場合は、現状態からの吐出動作において要求量のレジスト液Rを吐出することができない。したがって、コントローラ70は、ポンプ13によるレジスト液Rの吐出開始に際して、推定された吐出可能量がレジスト液Rの要求量よりも小さい場合に、要求量を吐出可能となるように、電空レギュレータ51を制御してレジスト液Rを吸引させる。例えば、ポンプ室25の体積、すなわち吐出可能量が要求量と等しくなるまで、又は吐出可能量が要求量よりも大きくなるまで、ポンプ13によりレジスト液Rを吸引させる。
(気泡体積と吐出可能量推定)
ポンプ室25内のレジスト液R中に気泡が含まれている場合は、上記の(吐出可能量推定)を実行したとしても、レジスト液Rを吐出する際に現時点で吐出可能なレジスト液Rの最大体積を正確に推定することができないおそれがある。
図10は、レジスト液R中に気泡が含まれている場合に、気泡の体積がポンプ室25内の圧力、すなわち作動室26内の圧力により変化する状態を示している。同図に示すように、レジスト液R内の気泡の体積は、作動室26内の圧力が高いほど小さくなる。
図11は、圧力P1(第1圧力に相当)におけるレジスト液Rの体積である吐出液体積VL1と、気泡体積Vk1と、作動室26の容積である操作室容積Vs1との関係を上段に示している。また、図11は、圧力P2(第2圧力に相当)における吐出液体積VL2と、気泡体積Vk2と、操作室容積Vs2との関係を下段に示している。
ここで、作動室26内の操作エアについて、ボイルの法則が成立する。このため、圧力P1と操作室容積Vs1との積が、圧力P2と操作室容積Vs2との積に等しいという関係が成立する。すなわち、P1・Vk1=P2・Vk2が成立する。また、圧力P1でのポンプ室25内の気泡体積Vk1と圧力P2でのポンプ室25内の気泡体積Vk2との差が、圧力P1での操作室容積Vs1と圧力P2での操作室容積Vs2との差(差の絶対値)に等しいという関係が成立する。すなわち、Vk1−Vk2=Vs2−Vs1が成立する。これらの関係を整理すると、Vk1={P2/(P2−P1)}・(Vs2−Vs1)という関係式を導出することができる。したがって、圧力P1、圧力P2、操作室容積Vs1、及び操作室容積Vs2に基づいて、圧力P1におけるポンプ室25内の気泡体積Vk1を推定することができる。同様にして、圧力P1、圧力P2、操作室容積Vs1、及び操作室容積Vs2に基づいて、圧力P2におけるポンプ室25内の気泡体積Vk2を推定することもできる。ひいては、レジスト液Rを吐出する際に現時点で吐出可能なレジスト液Rの最大体積を正確に推定することができる。
図12は、気泡体積と吐出可能量推定の処理を示すフローチャートである。この一連の処理は、コントローラ70によって実行される。図8と同一の処理については、図8と同一のステップ番号を付ことで説明を省略する。すなちわ、図12では、図8から以下の点を変更している。S43Aにおいて、1回目に設定圧を圧力P1に変更し、2回目に設定圧を圧力P2に変更する。S47の後に、操作室の容積算出を2回以上実行したか(第1の現時点容積及び第2の現時点容積を算出したか)否か判定する(S47A)。この判定において、操作室の容積算出を2回以上実行していないと判定した場合(S47A:NO)、S43Aの処理から再度実行する。一方、操作室の容積算出を2回以上実行したと判定した場合(S47A:YES)、上記の関係式に基づいて例えば気泡体積Vk2を算出する。続いて、図8のS48と同様に算出した吐出可能なレジスト液Rの最大体積から気泡体積Vk2を引いて、圧力P2における気泡を除いた吐出可能なレジスト液Rの最大体積を算出する(S48A)。したがって、レジスト液Rを吐出する際に、現時点で実際に吐出可能なレジスト液Rの最大体積(吐出可能な液体としてのレジスト液Rの最大体積)を正確に推定することができる。
(吐出側の水頭圧推定)
図4において、コントローラ70は、S16の処理に代えて吐出側バルブ46を開かせ、S19の処理に代えて吐出側バルブ46を閉じさせる。その他の処理は図4と同一の処理を行うことにより、S24において吐出側(吐出側弁側、第2弁側)の水頭圧を推定する。なお、この一連の処理が、液体供給システムの制御方法に相当する。
(吐出側の関係係数推定)
図7において、コントローラ70は、S30の処理に代えて吐出側バルブ46を開かせ、S33の処理に代えて吐出側バルブ46を閉じさせる。その他の処理は、図7のS25〜S29,S31,S32、及びS34〜38と同一の処理を行うことにより、S38において吐出側(吐出側弁側、第2弁側)の関係係数を推定する。
薬液供給システム10において、ポンプ室25よりも下流側の吐出配管47内に存在するレジスト液Rの量が変化すると、レジスト液Rの吐出側の水頭圧が変化する。また、薬液供給システム10の動作期間が長くなると、レジスト液Rの吐出側の圧力損失、ひいては関係係数が変化する。そして、ポンプ13において、作動室26及びエア配管50を含む空間(すなわち操作室)の圧力とレジスト液Rの吐出量との関係は、レジスト液Rの吐出側の水頭圧及び吐出側の関係係数に応じて変化する。
そこで、コントローラ70は、推定された吐出側の水頭圧及び推定された吐出側の関係係数に基づいて、レジスト液Rを吐出する際の設定圧を変更する。そして、コントローラ70は、圧力センサ72により検出される圧力を設定圧とすべく、電空レギュレータ51を制御する。例えば、レジスト液Rの吐出側の水頭圧が上昇するほど、ポンプ13の吐出時の設定圧を上昇させる。レジスト液Rの吐出側の関係係数が小さくなるほど、ポンプ13の吐出時の設定圧を上昇させる。詳しくは、要求流量=R(n+1)×(設定圧−水頭圧)の関係を満たす。このため、設定圧=要求流量/R(n+1)+水頭圧、に変更する。
以上詳述した本実施形態は、以下の利点を有する。
・コントローラ70により、上記電空レギュレータ51、上記吸引側バルブ40、及び上記吐出側バルブ46が制御される。詳しくは、コントローラ70により、吐出側バルブ46を閉じて吸引側バルブ40を開いた状態とされるため、吸入配管41からレジスト液Rがポンプ室25へと流入する。そして、ポンプ室25内のレジスト液Rによりダイアフラム23が変動させられ、作動室26の容積が変化させられる。このとき、流量センサ71により検出される流量に基づいて、作動室26の容積変化が算出される。
さらに、コントローラ70により作動室26の容積変化が0となるように電空レギュレータ51が制御され、電空レギュレータ51により作動室26に対して操作エアが供給及び排出される。これにより、作動室26の容積変化が迅速に0とされる。吐出側バルブ46を閉じて吸引側バルブ40を開いた状態、且つ作動室26の容積変化が0となった状態では、作動室26を含む空間の圧力はレジスト液Rの吸引側の水頭圧と等しくなっている。このため、作動室26の容積変化が0となった状態で圧力センサ72により検出される圧力が、レジスト液Rの吸引側の水頭圧として推定される。したがって、レジスト液Rの水頭圧を迅速に推定することができる。
・コントローラ70により、吐出側バルブ46を閉じて吸引側バルブ40を開いた状態とされ、電空レギュレータ51が制御されて作動室26を含む空間の圧力が変化させられる。これにより、作動室26を含む空間の圧力変化に応じて作動室26の容積、ひいてはポンプ室25の容積が変化し、ポンプ室25に対してレジスト液Rが流入出する。このとき、吐出側バルブ46を閉じて吸引側バルブ40を開いた状態において、作動室26を含む空間の圧力変化量とレジスト液Rの流量変化量とは、レジスト液Rの吸引側の圧力損失を反映した所定の関係を有している。
そこで、コントローラ70によって、圧力センサ72により検出される圧力に基づき圧力変化量が算出され、且つ流量センサ71により検出される流量に基づき流量変化量が算出される。そして、流量センサ71により検出される操作エアの流量は、ポンプ室25に対して流入出するレジスト液Rの流量と相関を有している。したがって、作動室26を含む空間の圧力変化量及び作動室26に対して流入出する操作エアの流量変化量に基づいて、作動室26を含む空間の圧力とレジスト液Rの流量との関係を表す吸引側の関係係数を推定することができる。
・コントローラ70により、推定された吸引側の水頭圧及び推定された吸引側の関係係数に基づいて、レジスト液Rを吸引する際の作動室26を含む空間の圧力目標値(具体的には設定圧)が設定される。そして、圧力センサ72により検出される圧力を圧力目標値とすべく、コントローラ70により電空レギュレータ51が制御される。したがって、レジスト液Rの吸引側の水頭圧及び吸引側の関係係数が変化したとしても、レジスト液Rの吸引量を正確に制御することができる。
・コントローラ70により、推定された吸引側の関係係数に基づいて、フィルタ41aの劣化が報知される。このため、適切な時期にフィルタ41aの交換をユーザに促すことができる。
・コントローラ70により、吸引側バルブ40を閉じて吐出側バルブ46を開いた状態とされるため、ポンプ室25からレジスト液Rが吐出配管47へと流出する。そして、ポンプ室25内のレジスト液Rによりダイアフラム23が変動させられ、作動室26の容積が変化させられる。このとき、流量センサ71により検出される流量に基づいて、作動室26の容積変化が算出される。
さらに、コントローラ70により作動室26の容積変化が0となるように電空レギュレータ51が制御され、電空レギュレータ51により作動室26に対して操作エアが供給及び排出される。これにより、作動室26の容積変化が迅速に0とされる。吸引側バルブ40を閉じて吐出側バルブ46を開いた状態、且つ作動室26の容積変化が0となった状態では、作動室26を含む空間の圧力はレジスト液Rの吐出側の水頭圧と等しくなっている。このため、作動室26の容積変化が0となった状態で圧力センサ72により検出される圧力が、レジスト液Rの吐出側の水頭圧として推定される。したがって、レジスト液Rの水頭圧を迅速に推定することができる。
・コントローラ70により、吸引側バルブ40を閉じて吐出側バルブ46を開いた状態とされ、電空レギュレータ51が制御されて作動室26を含む空間の圧力が変化させられる。これにより、作動室26を含む空間の圧力変化に応じて作動室26の容積、ひいてはポンプ室25の容積が変化し、ポンプ室25に対してレジスト液Rが流入出する。このとき、吸引側バルブ40を閉じて吐出側バルブ46を開いた状態において、作動室26を含む空間の圧力変化量とレジスト液Rの流量変化量とは、レジスト液Rの吐出側の圧力損失を反映した所定の関係を有している。
そこで、コントローラ70によって、圧力センサ72により検出される圧力に基づき圧力変化量が算出され、且つ流量センサ71により検出される流量に基づき流量変化量が算出される。そして、流量センサ71により検出される操作エアの流量は、ポンプ室25に対して流入出するレジスト液Rの流量と相関を有している。したがって、作動室26を含む空間の圧力変化量及び作動室26に流入する操作エアの流量変化量に基づいて、作動室26を含む空間の圧力とレジスト液Rの流量との関係を表す吐出側の関係係数を推定することができる。
・コントローラ70により、推定された吐出側の水頭圧及び推定された吐出側の関係係数に基づいて、レジスト液Rを吐出する際の作動室26を含む空間の圧力目標値が設定される。そして、圧力センサ72により検出される圧力を圧力目標値とすべく、コントローラ70により電空レギュレータ51が制御される。したがって、レジスト液Rの吐出側の水頭圧及び吐出側の関係係数が変化したとしても、レジスト液Rの吐出量を正確に制御することができる。
・容積変化が0となるように電空レギュレータ51を制御する際に、作動室26の容積が縮小している場合に、作動室26の圧力を上昇させるように電空レギュレータ51が制御される。また、作動室26の容積が拡大している場合に、作動室26の圧力を低下させるように電空レギュレータ51が制御される。このため、作動室26の容積が変化する傾向に合わせて電空レギュレータ51を制御することができ、容積変化を迅速に0とすることができる。
・容積変化が0となるように電空レギュレータ51を制御する際に、作動室26の容積が縮小する速度が高いほど、作動室26の圧力を大きく上昇させるように電空レギュレータ51が制御される。また、作動室26の容積が拡大する速度が高いほど、作動室26の圧力を大きく低下させるように電空レギュレータ51が制御される。このため、作動室26の容積が変化する傾向と変化速度とに応じて電空レギュレータ51を制御することができ、容積変化をより迅速に0とすることができる。
・コントローラ70により、吐出側バルブ46及び吸引側バルブ40を閉じた状態とされ、電空レギュレータ51が制御されて作動室26を含む空間の圧力が変化させられる。これにより、作動室26を含む空間に対して操作エアが流入出する。このとき、作動室26を含む空間に対して流入出する操作エアは、吐出側バルブ46及び吸引側バルブ40を閉じた状態では、作動室26を含む空間の圧力変化に寄与する。流入出する操作エアによる作動室26を含む空間の圧力変化量は、作動室26を含む空間の現時点の容積によって変化する。このため、作動室26を含む空間の圧力変化量と操作エアの流量積算値(すなわち流入出量)との関係は、作動室26の現時点容積を反映したものとなる。したがって、作動室26を含む空間の圧力変化量及び作動室26に流入する操作エアの流量積算値に基づいて、作動室26を含む空間の現時点容積を算出することができる。
・ポンプにおいて、作動室26を含む空間の容積とポンプ室25の容積との和は一定である。そして、ポンプが1回の吐出動作によって吐出可能なレジスト液Rの最大体積は、現時点でポンプ室25に吸引されているレジスト液Rの体積、すなわちポンプ室25の現時点容積によって決まる。このため、レジスト液Rを吐出する際に現時点で吐出可能なレジスト液Rの最大体積(すなわち吐出可能量)を、作動室26を含む空間の現時点容積に基づいて推定することができる。
・ポンプによるレジスト液Rの吐出開始に際して、推定された最大体積が吐出を要求されるレジスト液Rの要求体積よりも小さい場合は、コントローラ70により、要求体積を吐出可能となるように、電空レギュレータ51が制御されてレジスト液Rが吸引させられる。したがって、現時点でポンプ室25に吸引されているレジスト液Rの体積が要求体積よりも小さい場合は、ポンプ室25内のレジスト液Rを補ってから要求体積のレジスト液Rを吐出することができる。
・コントローラ70により、電空レギュレータ51が制御されてダイアフラム23に発生する張力が所定値よりも小さくなる位置まで変動部材が変動したことを条件として、水頭圧が推定される。このため、ダイアフラム23に発生する張力の影響を小さくして、水頭圧を正確に推定することができる。
なお、上記実施形態を以下のように変更して実施することもできる。
・フィルタ41aの劣化を報知する処理を省略することもできる。
・圧力センサ72は、作動室26の圧力を検出するものであってもよい。
・図9は、ダイアフラム23を中立位置へ移動させる処理の変更例を示すフローチャートである。この一連の処理は、コントローラ70によって実行される。
まず、作動室26の設定圧を変更する(S51)。詳しくは、ダイアフラム23をポンプ室25側から作動室26側の端部(すなわち吸引側の端部)まで移動させることのできる所定圧力に、設定圧を変更する。そして、変更された設定圧を電空レギュレータ51へ出力する(S52)。これにより、電空レギュレータ51は、作動室26の圧力を設定圧に制御する。
続いて、吸引側バルブ40を開かせる(S53)。なお、吐出側バルブ46は、図4のS11の処理において閉じられている。
続いて、ダイアフラム23が吸引側の端部まで移動したか否か判定する(S54)。詳しくは、ポンプ13の吸引動作開始後に作動室26の容積変化がなくなった場合に、ダイアフラム23が吸引側の端部まで移動したと判定する。なお、吸引動作開始後に操作エアの流量が0になった場合、又は吸引動作開始後に所定時間が経過した場合に、ダイアフラム23が吸引側の端部まで移動したと判定してもよい。この判定において、ダイアフラム23が吸引側の端部まで移動していないと判定した場合(S54:NO)、S54の判定を繰り返し行って待機する。
一方、S54の判定において、ダイアフラム23が吸引側の端部まで移動したと判定した場合(S54:YES)、吸引側バルブ40を閉じさせる(S55)。
続いて、作動室26の設定圧を変更する(S56)。詳しくは、ダイアフラム23を中立位置に適切な速度で移動させることのできる所定圧力に、設定圧を変更する。この所定圧力は、ダイアフラム23を中立位置に確実に移動させることができ、且つダイアフラム23が中立位置よりもポンプ室25側へ大きく変動することのない圧力に設定されている。そして、変更された設定圧を電空レギュレータ51へ出力する(S57)。これにより、電空レギュレータ51は、作動室26の圧力を設定圧に制御する。
続いて、吐出側バルブ46を開かせる(S58)。
S59〜S61の処理は、基本的に図4のS17,S18,S20の処理と同一である。ただし、S61の処理において、ダイアフラム23が吸引側の端部まで移動した状態からの作動室26の容積変化を算出する。
続いて、作動室26の容積変化が所定量となったか否か判定する(S62)。この所定量は、ダイアフラム23が吸引側の端部まで移動した状態から、中立位置へ移動するまでに、作動室26の容積が変化する量(既知量)に設定されている。この判定において、作動室26の容積変化が所定量となっていないと判定した場合(S62:NO)、S59の処理から再度実行する。
一方、S62の判定において、作動室26の容積変化が所定量となったと判定した場合(S62:YES)、吐出側バルブ46を閉じさせる(S63)。これにより、ダイアフラム23は中立位置で静止する。その後、図4のS13以降の処理へ戻る(RET)。
・図4のフローチャートにおいて、S13,S22のダイアフラム23を中立位置へ移動させる処理を省略することもできる。ダイアフラム23の径が、ダイアフラム23の変動量(すなわちストローク)に対して十分大きい場合等、ダイアフラム23に発生する張力の影響が小さい場合は、S13,S22の処理を省略しても問題ない。
・図6では、単位時間当たりの作動室26の容積変化Qv(n+1)を算出する際に、圧力変化分流量QP(n+1)を考慮した。しかしながら、簡易的には、圧力変化分流量QP(n+1)を0とみなして、容積変化Qv(n+1)を算出することもできる。その場合には、基準圧力P0における流量QM(n+1)は、検出流量QA(n+1)と等しいとみなすことができる。
・上記実施形態では、推定された吐出可能量がレジスト液Rの要求量よりも小さい場合に、要求量を吐出可能となるようにポンプ13によりレジスト液Rを吸引させた。しかしながら、推定された吐出可能量がレジスト液Rの要求量よりも小さい場合に、吐出可能量を増加させるようにポンプ13によりレジスト液Rを吸引させるだけでもよい。また、これらのレジスト液Rを吸引させる処理を、省略することもできる。
・吐出可能量を推定する処理を省略することもできる。
・上記実施形態では、コントローラ70は、推定された吸引側の水頭圧及び推定された吸引側の関係係数に基づいて、レジスト液Rを吸引する際の設定圧を変更した。しかしながら、推定された吸引側の水頭圧及び推定された吸引側の関係係数のいずれか一方に基づいて、レジスト液Rを吸引する際の設定圧を変更してもよい。また、推定された吐出側の水頭圧及び推定された吐出側の関係係数のいずれか一方に基づいて、レジスト液Rを吐出する際の設定圧を変更してもよい。
・図4のフローチャートにおいて、S12,S19の吸引側バルブ40を閉じる処理、及びS13,S22のダイアフラム23を中立位置へ移動させる処理を省略して、吸引側バルブ40を開いたまま、S14以降の処理を実行してもよい。
・上記実施形態では、コントローラ70により、水頭圧推定、ダイアフラム23の中立位置への移動、関係係数推定、吐出可能量推定等の処理を実行した。しかしながら、コントローラ70よりも上位のコントローラ(すなわち制御部)により、これらの処理を実行することもできる。
・上記実施形態では、作動室26に給排される操作エア(空気)を例に挙げて説明したが、空気以外にも窒素等の他の作動気体を用いてもよい。
・上記実施形態では、ダイアフラムポンプ13を採用したが、例えばベローズポンプを採用することもできる。一般にポンプ室と作動室とを仕切る変動部材(変形部材やピストンのような移動部材)を、作動気体の供給で駆動するポンプを採用することができる。
・上記実施形態では、液体としてレジスト液Rを半導体ウェハWに塗布する例を示したが、薬液やプロセスの種類はこれに限られず、液体の供給を行う液体供給システムに適用することができる。