JP2017001270A - 透光板 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】透光性の基材と前記基材上に形成されたセラミック被膜とからなる透光板であって、前記セラミック被膜は、C−Cの結合と、Si−Cの結合と、Si−Oの結合とが混在する非晶質のセラミック被膜であることを特徴とする透光板とする。
【選択図】図1
Description
本発明では、前記課題を鑑み、耐摩耗性、耐擦傷性などの機械的性能と、適度な遮光性、着色などの光学的性能に優れた、セラミック被膜を有する透光板を提供することを目的とする。
炭素どうしが単結合で結合すると、結晶の場合ダイヤモンドとなり、非晶質の場合ダイヤモンドライクカーボンとなる。いずれも強固な素材である。
一方、ケイ素は、炭素ほど互いに強固に結合できず、ケイ素の結晶は一部の結合が切断され、自由電子ができることによって金属光沢を有しているのでケイ素の被膜は光透過性に劣っている。しかしながら、ケイ素の結合間に、酸素を導入することによって光透過性を確保することができる。酸素はケイ素との結合力が強く、ケイ素原子の間に介在し、Si−O−Siの結合を形成することによって、強固で、無色透明なセラミック被膜を得ることができる。
このため、耐摩耗性、耐擦傷性などの機械的性能と、適度な遮光性、着色などの光学的性能に優れた、セラミック被膜を有する透光板を提供することができる。
本発明の透光板のセラミック被膜は、ラマン分光法で測定されるG/Dが、2.0以下であるので、黒鉛の性質である光の吸収性が抑えられ透明な被膜を得ることができる。また、黒鉛を構成する共役系結合は、結合する原子の数を減少させ、セラミック被膜を軟らかくする作用がある。G/Dが、2.0以下であることによって、炭素どうしが互いに絡み合った強固なセラミック被膜を得ることができる。
本発明の透光板のセラミック被膜は、ラマン分光法で測定されるG/Dが、1.0以上であるので、ダイヤモンドの構造に黒鉛の構造が混じり、適度に靭性を有し基材が変形しても、セラミック被膜を割れにくくすることができると考えられる。
本発明の透光板のセラミック被膜は、SiCのターゲットを用いたPVD法によって、ラマン分光法で測定されるG/Dが、1.0以上のセラミック被膜を得ることができると考えられる。SiCのターゲットを用いたPVD法であるので、ターゲットに水素が存在していない。このため、C−Cの結合と、Si−Cの結合と、Si−Oの結合で構成されるセラミック被膜でありながら、sp2構造をとりやすくなり、ラマン分光法で測定されるG/Dが、1.0以上のセラミック被膜を得ることができると考えられる。
また、本発明の透光板のセラミック被膜の厚さは80nm以下であるので、熱膨張差などが発生してもセラミック被膜と基材との間に発生する張力を小さくでき、剥離しにくくすることができる。
炭素どうしが単結合で結合すると、結晶の場合ダイヤモンドとなり、非晶質の場合ダイヤモンドライクカーボンとなる。いずれも強固な素材である。
一方、ケイ素は、炭素ほど互いに強固に結合できず、ケイ素の結晶は一部の結合が切断され、自由電子ができることによって金属光沢を有しているのでケイ素の被膜は光透過性に劣っている。しかしながら、大気開放によってケイ素の結合間に、酸素を導入することによって光透過性を確保することができる。酸素はケイ素との結合力が強く、ケイ素原子の間に介在し、Si−O−Siの結合を形成することによって、強固で、無色透明なセラミック被膜を得ることができる。
さらに、本発明の透光板のセラミック被膜は、大気開放によってケイ素の結合間に、酸素を導入するので、セラミック被膜を緻密化する作用があり、表面に圧縮応力を作用させ、セラミック被膜を強化することができる。
炭素どうしが単結合で結合すると、結晶の場合ダイヤモンドとなり、非晶質の場合ダイヤモンドライクカーボンとなる。いずれも強固な素材である。
一方、ケイ素は、炭素ほど互いに強固に結合できず、ケイ素の結晶は一部の結合が切断され、自由電子ができることによって金属光沢を有しているのでケイ素の被膜は光透過性に劣っている。しかしながら、ケイ素の結合間に、酸素を導入することによって光透過性を確保することができる。酸素はケイ素との結合力が強く、ケイ素原子の間に介在し、Si−O−Siの結合を形成することによって、強固で、無色透明なセラミック被膜を得ることができる。
このため、耐摩耗性、耐擦傷性などの機械的性能と、適度な遮光性、着色などの光学的性能に優れた、セラミック被膜を有する透光板を提供することができる。
本発明の透光板の実施の形態について説明する。
本発明の透光板は、透光性の基材と前記基材上に形成されたセラミック被膜とからなる透光板であって、前記セラミック被膜は、C−Cの結合と、Si−Cの結合と、Si−Oの結合とが混在する非晶質のセラミック被膜である。
炭素どうしが単結合で結合すると、結晶の場合ダイヤモンドとなり、非晶質の場合ダイヤモンドライクカーボンとなる。いずれも強固な素材である。
一方、ケイ素は、炭素ほど互いに強固に結合できず、ケイ素の結晶は一部の結合が切断され、自由電子ができることによって金属光沢を有しているのでケイ素の被膜は光透過性に劣っている。しかしながら、ケイ素の結合間に、酸素を導入することによって光透過性を確保することができる。酸素はケイ素との結合力が強く、ケイ素原子の間に介在し、Si−O−Siの結合を形成することによって、強固で、無色透明なセラミック被膜を得ることができる。
このため、耐摩耗性、耐擦傷性などの機械的性能と、適度な遮光性、着色などの光学的性能に優れた、セラミック被膜を有する透光板を提供することができる。
また、本発明の透光板のセラミック被膜の厚さは80nm以下であるので、熱膨張差などが発生してもセラミック被膜と基材との間に発生する張力を小さくでき、剥離しにくくすることができる。
次に本発明の透光板の製造方法について説明する。
前記課題を解決するための本発明の透光板の製造方法は、透光性の基材にセラミック被膜を形成する透光板の製造方法であって、前記セラミック被膜は、SiCのターゲットを用い、前記透光性の基材にSi−C結合を形成する臨界出力以上の出力で前記セラミック被膜をPVD法で形成したのち、大気開放し酸素を結合させる。
透光性の基材を使用する。透光性の基材とはガラス、樹脂などどのようなものでも利用することができる。樹脂としては、例えばポリカーボネート、シリコーン樹脂、ポリメタクリル酸メチル、塩化ビニルなどを利用することができる。本発明において、基材は樹脂により形成されることが好ましく、中でもポリカーボネートまたはポリメタクリル酸メチルは透明度が高く、高い強度を有しているので、好適に利用することができる。
上記基材上に、SiCをターゲットとしてPVD法によりセラミック被膜を形成することができる。セラミック被膜は、C−Cの結合と、Si−Cの結合と、Si−Oの結合とが混在する非晶質のセラミック被膜である。
PVD法あるいはCVD法などのドライプロセスでセラミック被膜を形成すると、ターゲットからSiとCの粒子が放出され、効率よくセラミック被膜を形成する。CVD法では、原料ガスに水素が含まれていると、水素がセラミック被膜に取り込まれることがあるが、拡散しやすく、セラミック被膜に取り込まれる速度はSi、Cより遅く、大部分はCVD炉の外に排出される。
本発明の透光板101は、基材上でSi−C結合を形成する臨界出力以上となるようPVDの出力を適宜調整して製造する。このため、本発明の透光板101は、C−Cの結合と、Si−Cの結合と、Si−Oの結合とが混在する。すなわち、本発明のセラミック被膜は、炭素どうしが結合した非晶質のカーボン被膜と、Si−Oの結合を有する非晶質のシリカ被膜とが、一部のCと一部のSiとが結合し、Si−C結合を形成している状態であると考えられる。また、Si−O結合は、Si−C結合と比較し、可視光域の光の吸収性が小さい。このため、Si−O結合とSi−C結合とを有する本発明のセラミック被膜21は、Si−C結合の比率に応じて遮光性を制御することができ、適度な遮光性を確保することができる。
神鋼精機製スパッタ装置SRV−4300を用いて基材にSiCのスパッタリングを行った。スパッタの電源は高周波電源を用いた。
サンプル/ターゲット間距離:100mm
出力 :300W
処理時間:16.7分
温度 :加熱無し
実施例1と同じ装置を用い、処理条件は下記のとおりとした。
サンプル/ターゲット間距離:100mm
出力 :500W
処理時間:16.7分
温度 :加熱無し
実施例1と同じ装置を用い、処理条件は下記のとおりとした。
サンプル/ターゲット間距離:100mm
出力 :100W
処理時間:5.6分
温度 :加熱無し
プラズマCVD法により、基板上にSiCからなるセラミック被膜を形成した。使用した処理条件は下記のとおりである。
原料ガス :モノシラン、メタン
キャリアガス:水素
プラズマCVD法により、基板上にダイヤモンドライクカーボンからなるセラミック被膜を形成した。使用した処理条件は下記のとおりである。
原料ガス :メタン
キャリアガス:水素
前駆体として荒川化学製前駆体(コンポセランE)を用い、ゾルゲル法でシリカよりなるセラミック被膜を形成した。なお、熱処理温度は、前駆体の推奨条件の100℃、30分の後140℃、90分であった。
得られた実施例1、2及び比較例1〜4のセラミック被膜に対し、以下の解析を行った。
X線電子分光装置を用い、各セラミック被膜のケイ素および炭素に関連する結合の存在比を解析した。また、実施例1のセラミック被膜に対しては、セラミック被膜の深さ方向の構成比を確認した。
なお、分析装置の条件等は下記のとおりである。
分析装置:アルバック・ファイ社製 QuanteraII
X線源:Al−Kα
X線源の印加電圧、電流:印加電圧15kV、電流1.5A
イオン銃のガス種:Ar
Arイオンスパッタ条件:500V,7mA,1.0min
測定エネルギー範囲:wide…0〜1100eV
narrow…C:278〜298eV,Si:94〜114eV
顕微ラマン装置を用いて、実施例1、比較例1、3、4のGバンド、Dバンドの強度比を解析した。なお、条件は以下のとおりである。
分析装置:顕微レーザーラマン(Jobin Yvon S.A.S LabRAM HR800)
測定条件
励起波長 :633nm
測定波数範囲:200〜2000cm−1
Grating:600gr/mm
対物レンズ :×100
積算時間 :60sec
積算回数 :4回
Hole :300
検出器 :CCD
試料調整:Osコートを行った後、FIBマイクロサンプリング法により断面調整し、FE−TEM観察および極微電子線回折測定を行った。
装置条件等は以下のとおりである。
FIB :HITACHI FB2200、加速電圧40kV
FE−TEM:HITACHI HF−2000、加速電圧200kV
極微電子線回折時の電子線プローブ径:φ1nm
各セラミック被膜の耐傷性を評価するため、ヘイズ値を測定した。アルミナの砥粒を有する磨耗輪を、サンプル表面で移動させ、移動の後に残される傷の痕跡による光の拡散透過で評価する測定方法であり、数値が小さいほど耐傷性がある。装置条件は下記のとおりである。なお測定はK 7136:2000に準じて行う。
光計測器
ヘイズメータ:日本電色工業製 NDH4000(A光源を使用)
光スポット径:7mm
磨耗試験
磨耗試験機 :taber社Model5135
サンプル回転数:1000回
回転速度 :72rpm
荷重 :500g
摩耗輪 :CS−10F
各セラミック被膜の全光透過率を測定した。装置条件は下記のとおりである。
ヘイズメータ:日本電色工業製 NDH4000(A光源を使用)
光スポット径:7mm
実施例1、2および各比較例の測定結果を表1、表2に示す。
PVD法である実施例1、2および比較例1では、XPSにより、C、Si、Oが検出され、ケイ素関連の結合の比率を比較すると、出力が100Wの比較例1のみが、Si−Cの結合が検出されなかった。すなわち、本実施例の装置条件では、100Wと300Wとの間にSi−C結合を形成される臨界出力があったことが確認される。
実施例1、2のPVD法による透光板のヘイズ値は、他のプラズマCVD法による比較例(比較例2,3)ゾルゲル法による透光板(比較例4)よりも低く、耐傷性があることが確認された。また、実施例1、2の全光透過率は、PVD出力の調整により、全光透過率の調整ができ、適度な遮光性に調整できることが確認された。さらに、実施例1、2の透光板は、茶色に着色し信号等の色を見えにくくする黄色などの偏った着色が出にくく、有害な着色が出にくいことも確認された。
21、22、23、24 セラミック被膜
31、32 ターゲット
44 前駆体
101、102、103、104 透光板
Claims (10)
- 透光性の基材と前記基材上に形成されたセラミック被膜とからなる透光板であって、
前記セラミック被膜は、C−Cの結合と、Si−Cの結合と、Si−Oの結合とが混在する非晶質のセラミック被膜であることを特徴とする透光板。 - XPS法で測定される前記セラミック被膜のケイ素に関する結合の存在比は、Si−Oの結合が30〜90%であることを特徴とする請求項1に記載の透光板。
- ラマン分光法で測定される前記セラミック被膜のGバンドとDバンドとの強度比であるG/Dは、1.0〜2.0であることを特徴とする請求項1または2に記載の透光板。
- 前記セラミック被膜は、厚さが10〜80nmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の透光板。
- XPS法で測定される前記セラミック被膜の酸素含有量は、表面から内部に向かって減少することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の透光板。
- 前記基材は、樹脂から形成されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の透光板。
- 前記樹脂は、ポリカーボネートまたはポリメタクリル酸メチルであることを特徴とする請求項6に記載の透光板。
- 透光性の基材にセラミック被膜を形成する透光板の製造方法であって、
前記セラミック被膜は、SiCのターゲットを用い、前記透光性の基材にSi−C結合を形成する臨界出力以上の出力で前記セラミック被膜をPVD法で形成したのち、大気開放し酸素を結合させる
ことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の透光板の製造方法。 - 前記基材は、樹脂から形成されることを特徴とする請求項8に記載の透光板の製造方法。
- 前記樹脂は、ポリカーボネートまたはポリメタクリル酸メチルであることを特徴とする請求項9に記載の透光板の製造方法。
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JP2018154872A (ja) * | 2017-03-17 | 2018-10-04 | 岡山県 | 膜形成部材、成膜装置、及び成膜方法 |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2010158832A (ja) * | 2009-01-08 | 2010-07-22 | Mitsubishi Plastics Inc | ガスバリア性フィルム |
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2015
- 2015-06-09 JP JP2015116925A patent/JP6594669B2/ja active Active
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