JP2016537685A - 眼球デバイス - Google Patents

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Abstract

本発明は、潤滑剤に連結されたペプチドを含むコーティング組成物などの組成物に関し、ペプチドは、涙液中に存在する1つまたは複数のプロテイナーゼによって切断可能である。本発明はさらに、予備成形コンタクトレンズなどの、前記組成物を含む眼球デバイスに関する。【選択図】なし

Description

発明の詳細な説明
[発明の分野]
本発明は、コンタクトレンズなどの眼球デバイスと共に使用するための組成物、特にコーティング組成物と、本組成物を含む(例えば、本組成物が上にコーティングされた、または本組成物が中に取り込まれた)コンタクトレンズなどの眼球デバイスとに関する。また本発明は、本組成物、および本組成物を含む(例えば、本組成物が上にコーティングされた、または本組成物が中に取り込まれた)コンタクトレンズなどの眼球デバイスの調製方法に関する。
[発明の背景]
使い捨てコンタクトレンズは、コンタクトレンズの最も一般的なタイプになっている。これらは特定の期間着用され、その後処分され、新しいレンズに交換される。多くの眼科医(eye care practitioner)および消費者は、その健康および利便性のために使い捨てコンタクトレンズを好む。「使い捨て」という用語は、多くの場合、毎日交換することを目的としたコンタクトレンズ、1〜2週間ごとに交換することを目的としたコンタクトレンズおよび1ケ月または3カ月ごとに交換することを目的としたコンタクトレンズを指す。
コンタクトレンズに関する混乱の一般的な原因は、交換および取外し/着用スケジュールを伴う。交換スケジュールは、どのくらいの頻度でコンタクトレンズを廃棄および交換するかを指し、着用スケジュールは、コンタクトレンズが取り外される前にどのくらいの期間着用され得るかを指す。推奨される交換および/または取外しスケジュールを遵守しないと、沈着(deposit)、着用時の軽い不快感および視力を脅かす有害事象を含む合併症が起こり得る。
コンタクトレンズ関連の不快感(特に、日中の遅い時間または長期の着用後)は、多くのコンタクトレンズ患者にとって重大な問題である。コンタクトレンズ着用者の脱落率は、異なる研究で使用される基準に応じて12%〜28%であると報告されている(Miller,W.L,Contact Lens Spectrum,July 2013)。コンタクトレンズの着用を中止する人のうち、1日の終わりの特に高くなる乾燥によって生じる不快感のために中止する人は50%を超えると推定される(Abelson,M.A.,Review of Cornea and Contact Lenses,September 2012)。
従って、交換および取外しスケジュールの非遵守の効果を軽減し、1日の終わりの乾燥も改善し得る新しいコンタクトレンズが必要とされている。
[発明の概要]
本発明は、予備成形コンタクトレンズおよび眼球インプラント(ocular implant)などの涙液と接触する眼球デバイス(ocular device)と共に使用するのに適した組成物、特にコーティング組成物に関する。本組成物は、涙液中の1つまたは複数のプロテイナーゼによって切断することが可能なペプチドに連結された潤滑剤、例えばヒアルロン酸を含む。
本組成物は、予備成形コンタクトレンズなどの眼球デバイス上にコーティングされてもよく、またはその中に取り込まれてもよい。すなわち、コンタクトレンズは、本発明の組成物(例えば、コーティング組成物)を含むことができる。通常、これは、コーティング組成物が予備成形コンタクトレンズに共有結合されることを意味する。コーティング組成物が予備成形コンタクトレンズ上にコーティングされるか、またはその中に取り込まれ、およびそのコンタクトレンズが使用される(すなわち、眼球表面に適用される)と、涙液中に天然に存在する1つまたは複数のプロテイナーゼが潤滑剤をレンズポリマーに連結するペプチドを切断し、その結果、潤滑剤がコンタクトレンズから遊離される。眼刺激は涙液中のプロテイナーゼレベルを増大させる傾向があるため、より多くの潤滑剤が放出され、それにより刺激が相殺され、不快感が緩和されるであろう。
共有結合を伴わずにレンズに付加されるかまたは取り込まれた潤滑剤は、着用中に涙液内へ、または貯蔵中に無菌パッケージング溶液内へ急速に浸出する傾向があり、その結果、その潤滑活性の期間が制限される。しかしながら、その遊離した非固定化形態において、潤滑剤は、眼球表面を加湿し、鎮静化し、かつ保護するためによりよく適している。
従って、本発明のコンタクトレンズは、特に交換および/または取外しスケジュールの非遵守の効果を改善するため、および1日の終わりの乾燥を改善または克服するための手段を提供する。
本発明によると、従って、潤滑剤(例えば、ヒアルロン酸)に連結されたペプチドを含む組成物、例えばコーティング組成物などが提供され、ここで、ペプチドは、涙液中に存在する1つまたは複数のプロテイナーゼによって切断可能である。
本組成物は、コンタクトレンズの製造において使用するのに適したモノマー、マクロマーまたはプレポリマーに連結され得る。
本発明の組成物が高分子ヒアルロン酸を含む場合、高分子ヒアルロン酸の存在に起因して、ヒアルロン酸−ペプチド−モノマー(例えば、HEMA)結合体は、ヒアルロン酸の複数の電荷のために通常水に十分に溶解する。
また本発明は、重合性ビニル基と、潤滑剤(例えば、ヒアルロン酸)に連結されたペプチドとを含み、コンタクトレンズに共有結合的に取り込まれる組成物も提供し、ペプチドは、涙液中に存在する1つまたは複数のプロテイナーゼによって切断可能である。
また本発明は、涙液と接触する予備成形コンタクトレンズまたは眼球インプラントと、その上にコーティングされるかまたはその中に取り込まれた本発明に従う組成物とを含む、涙液と接触する眼球デバイス(コンタクトレンズまたは眼球インプラントなど)も提供する。すなわち、本組成物は、通常、眼球デバイスに共有結合される。
本発明はさらに、
涙液中に存在する1つまたは複数のプロテイナーゼによって切断可能なペプチドを潤滑剤(例えば、ヒアルロン酸)に連結するステップと、任意選択で、得られたペプチド−潤滑剤結合体を、コンタクトレンズの製造において使用するのに適したモノマー、マクロマーまたはプレポリマーに連結するステップとを含む、コーティング組成物などの組成物の製造方法と、
涙液中に存在する1つまたは複数のプロテイナーゼによって切断可能なペプチドを、コンタクトレンズの製造において使用するのに適したモノマー、マクロマーまたはプレポリマーに連結するステップと、得られたペプチド−モノマー、ペプチド−マクロマーまたはペプチド−プレポリマー結合体を潤滑剤に連結するステップとを含む、コーティング組成物などの組成物の製造方法と
を提供する。
また、予備成形コンタクトレンズを提供するステップと、本発明のコーティング組成物などの組成物を前記コンタクトレンズにコーティングするステップとを含む、コンタクトレンズの製造方法も本発明によって提供される。
コーティング組成物などの組成物が、コンタクトレンズの製造において使用するのに適したモノマー、マクロマーまたはプレポリマーに連結される場合、本発明は、このようなコーティング組成物の存在下で予備成形コンタクトレンズを調製するステップを含む、コンタクトレンズの製造方法を提供する。ヒアルロン酸は、予備成形コンタクトレンズの調製の前または後に添加され得る。
従って、本発明は、本発明の方法に従ってコーティング組成物などの組成物を調製するステップと、得られたコーティング組成物などの組成物の存在下で予備成形レンズを調製するステップとを含む、コンタクトレンズの製造方法を提供する。
また、本発明は、涙液と接触するコンタクトレンズまたは眼球インプラントなどの眼球デバイスの製造において使用するのに適したモノマー、マクロマーまたはプレポリマーと、涙液中に存在する1つまたは複数のプロテイナーゼによって切断可能なペプチドとを含む組成物を提供する。また本発明は、このような組成物を含む、涙液と接触するコンタクトレンズまたは眼球インプラントなどの眼球デバイスも提供する。
A)涙液(週末にかけて)、B)ヒト白血球エラスターゼ(30分間)、C)ヒト肺トリプターゼ(一晩)およびD)リファレンス(何も添加しないペプチド溶液)(週末にかけて)を用いて、リンカーペプチドGPLALLAQを25℃でインキュベートすることにより形成されたペプチド断片を示す。M+H+782.48Daを有するインタクトなGPLALLAQペプチドは右側に示される。涙液によるペプチドのインキュベーションは、エラスターゼおよびトリプターゼによるインキュベーションの際に形成される分解生成物と同様のいくつかの分解生成物(特に、GPLAL/LAQ)を示す。 上部パネルには、単一の個人のすすぎ液(rinsing fluid)と共に162時間インキュベートされたペプチドAAPVAARQおよびAAPRAARQが示される。下部パネルは、すすぎ液を添加しない同じペプチドを示す。データは、すすぎ液によるインキュベーションによって主にN末端Alaが除去されることを示す。AAPVAARQについては、他の低分子量ピークが観察されたが、544.32026のみがペプチド断片の1つ(VAARQである)と関連付けられ得る。この観察は、ペプチドAAPVAARQにおいて涙液によって開始される唯一のタンパク質分解性の切断が、ProとValとの間のペプチド結合の加水分解であることを暗示する。Valの切断C末端は生じない。AAPRAARQについては、単一荷電および二重荷電ペプチドの両方が観察され、いずれもN末端Alaにおける切断のみを示す。Arg(R)を含むペプチド結合の加水分解は観察されない。 ヒト白血球エラスターゼと共にインキュベートされたペプチドLeu−Leu−Leu−Ala−Ala−Gly(LLLAAG)の消化パターンを示す。上部パネルはエラスターゼを含まないブランクインキュベーションを示し、t=0hはエラスターゼを添加した直後に分析されたサンプルであり、t=0.5hは30分のインキュベーション後に分析されたサンプルであり、t=o.n.は一晩インキュベーションした後に分析されたサンプルである。データは、エラスターゼによるインキュベーションにおいてインタクトなペプチドLLLAAG、m/z557.3625がLLLA、m/z429.3045に完全に転換されたことを示す。 単一の個人の濃縮コンタクトレンズすすぎ液による結合体のインキュベーションにおいて、35℃で35時間のインキュベーション後に形成されたペプチド−HEMA断片を示す。パネルAは、濃縮すすぎ液を含まないコントロールインキュベーションの抽出イオンクロマトグラムにおいてペプチド−HEMA断片が存在しないことを示す。抽出イオンクロマトグラムの質量精度は10ppmに設定した。パネルBは、濃縮すすぎ液によるインキュベーションのペプチド−HEMA断片の抽出イオンクロマトグラムを示す。パネルCは、LAAG−HEMA断片の理論的な同位体パターン(上部)および測定された同位体パターン(下部)を示す。ペプチド−HEMA断片のそれぞれの同一性は、付加的なMS/MS実験によって確認した。
[配列表の説明]
配列番号1は涙液中に存在するプロテイナーゼによって切断され得るペプチド配列を示す。
配列番号2は涙液中に存在するプロテイナーゼによって切断され得るペプチド配列を示す。
配列番号3は涙液中に存在するプロテイナーゼによって切断され得るペプチド配列を示す。
配列番号4は涙液中に存在するプロテイナーゼによって切断され得るペプチド配列を示す。
配列番号5は涙液中に存在するプロテイナーゼによって切断され得るペプチド配列を示す。
配列番号6は涙液中に存在するプロテイナーゼによって切断され得るペプチド配列を示す。
[発明の詳細な説明]
本明細書および特許請求の範囲全体を通して、「含む(comprise)」、「含む(include)」および「有する(having)」という語、ならびに「含む(comprises)」、「含んでいる(comprising)」、「含む(includes)」および「含んでいる(including)」などの変化形は包括的に解釈されるべきである。すなわち、これらの語は、文脈が許す場合には、具体的に列挙されない他の要素または整数の包含の可能性を意味することが意図される。
冠詞「1つの(a)」および「1つの(an)」は、本明細書では、1つまたは2つ以上(すなわち、1つまたは少なくとも1つ)の冠詞の文法上の目的語を指すために使用される。例として、「要素(an element)」は、1つの要素または2つ以上の要素を意味し得る。
本発明は、コーティング組成物などの組成物と、前記組成物でコーティングされた涙液と接触するコンタクトレンズまたは眼球インプラントとを提供する。すなわち、本発明の涙液と接触するコンタクトレンズまたは眼球インプラントは、本発明のコーティング組成物がその上に配設(通常は、それに共有結合)されたものである。
本発明のコンタクトレンズは、通常、使い捨てコンタクトレンズであろう。コンタクトレンズは、一般に、交換される頻度に基づいて以下のカテゴリーに分類される。
・ 使い捨てレンズ:2週間ごとまたはそれよりも早くに交換
・ 頻回交換レンズ:1ケ月または3カ月ごとに交換
・ 伝統的な(再利用可能な)レンズ:6カ月ごとまたはそれよりも長期間で交換
本明細書では、「使い捨て」という用語は、通常、使い捨てレンズおよび頻回交換レンズの両方を指す。
通常、本発明のコンタクトレンズは、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ上にコーティングされた本発明のコーティングを含むであろう。コンタクトレンズは予備成形コンタクトレンズでよく、これは次に、本発明のコーティング組成物によりコーティングされる。あるいは、コーティング組成物は、コンタクトレンズの調製において使用される成分にカップリングされてもよい。コンタクトレンズの調製においてこのような成分(コーティング組成物がカップリングされている)を使用すると、その表面にコーティング組成物が配設された予備成形コンタクトレンズが得られる。
コーティング組成物はレンズの加工/貯蔵に対して安定であるが、涙液中に天然に存在する1つまたは複数のプロテイナーゼによって使用(すなわち、着用)中に制御された分解を受ける。本発明は、一部は、コーティング組成物中に存在するペプチドに作用する涙液中のプロテアーゼ活性の同定に基づく。涙液中のプロテアーゼ活性は非常に低いため、本発明の別の重要な態様は、存在する特定のプロテアーゼ活性に対するペプチドリンカーの感受性である。言い換えると、ペプチドリンカーのアミノ酸配列は最高の重要性を有する。コーティング組成物は、潤滑剤が遊離されるようにレンズの着用中にゆっくり分解される。
使用するペプチドリンカーのアミノ酸配列を変更することによって、潤滑剤の放出を特定の要求に適応させることができる。例えば、使い捨てレンズは、頻回交換レンズよりも高い潤滑剤放出速度を必要とするであろう。同様に、使用するペプチドリンカーのアミノ酸配列は、プロテイナーゼの種類、例えば、特定の個体群の涙液中で最も顕著であるセリンプロテイナーゼまたはメタロプロテイナーゼに対して適応され得る。さらに、使用するペプチドリンカーのアミノ酸配列は、特定の種類のプロテイナーゼによる切断を促進または抑制するように適応されてもよい。例えば、Kridel et al.,J.Biol.Chem.276(2)20572−2−578,2001、Rao et al.,J.Biol.Chem.266(15),9540−9548(1991)、Yasutake and Powers,Biochemistry 1981,20,3675−3679を参照されたい。
メタロエンドペプチダーゼおよびセリンエンドペプチダーゼは、涙液中で活性であり得る。ヒト角膜では、上皮細胞、間質細胞および好中球によって、いわゆるマトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)が分泌される。特に、MMP1、2、8、9および13が涙液中で検出されている(de Souza et al.,Genome Biology 2006,7:R72、Ollivier et al.,Veterinary Ophthalmology(2007)10,4,199−206、Balasubramanian et al.,Clin Exp Optom 2013;96:214−218、Zhou et al.,Journal of Proteomics 75(2012)3877−3885)。ドライアイを患っている個人に関して、MMP−9レベルの上昇が記録されることは注目すべきである(Acera et al.,Ophthalmic Res 2008;40(6):315−321)。種々のMMPは、Ala、LeuおよびPheなどの疎水性アミノ酸を含むペプチド結合を好んで切断するが、その基質特異性はかなり広範囲の位置で付与されると思われ、従って特定のMMPによる切断は予測するのが困難であることが分かっている。従って、本発明の組成物中のペプチドは、Ala、LeuおよびPheのうちの1つまたは複数を含み得る。
さらに、セリンエンドプロテアーゼが涙液中で検出されている。後者のエンドプロテアーゼ群は、トリプシン様およびエラスターゼ様活性に細分することができる。トリプシン様エンドプロテアーゼトリプターゼはマスト細胞によって放出される(Butrus et al.,Ophthalmology,1990,Vol97,No12,pp1678−1683)。エラスターゼ様活性には、白血球エラスターゼおよびミエロブラスチンが含まれる(de Souza et al.,Genome Biology 2006,7:R72)。
従って、本発明に従う組成物において、ペプチドリンカーは、涙液中に存在するセリンプロテイナーゼまたはメタロプロテイナーゼによって切断可能であり得る。
ヒアルロン酸は、硝子体液中、滑液中、および体内の多数の他の場所で天然に見出され、主に潤滑剤およびボリューマイザー(volumizer)の役割を果たす。近年、この天然ポリマーが眼球表面を潤滑、加湿、および保護する能力に対してかなりの熱意が高まっている。
研究によって、ヒアルロン酸の長期使用は、アレルギー反応を誘発することなく、ドライアイ症状を緩和し、眼球表面の損傷を低減することが実証された。この分子は、水と結合すると共に眼の上皮層に弱く吸着する(従って、眼球表面に保持される)ことが分かっている。そこで理論上、ヒアルロン酸の利益は、眼球表面に留まってそこに水分を保持する能力に由来する。
従って、ヒアルロン酸などの潤滑剤は、コンタクトレンズの着用者が経験する眼の乾燥(これは1日の終わりに特に高い)によって生じる不快感を改善し得る。また、ヒアルロン酸は、コンタクトレンズ着用者の間で、乾燥(これは1日の終わりに特に高い)により生じる不快感に寄与するレンズの非遵守の効果を軽減し得る。
従って、本発明は、涙液と接触するコンタクトレンズまたは眼球インプラント(特に、使い捨てシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ)などの眼球デバイスを提供し、これには、潤滑剤(ヒアルロン酸など)に連結されたペプチドを含むコーティング組成物などの組成物が上にコーティングされたシリコーンヒドロゲル材料から構成される予備成形コンタクトレンズなどの眼球デバイスが含まれ、ここでペプチドは、涙液中に存在する1つまたは複数のプロテイナーゼによって切断可能である。すなわち、本発明の組成物は、涙液と接触するコンタクトレンズまたは眼球インプラントなどの眼球デバイスに共有結合され得る。
本発明のコーティング組成物は潤滑剤を含む。潤滑剤は、粘滑効果を有する任意の物質である。
粘滑剤は、眼球表面(すなわち、上皮)の炎症領域または他の刺激された領域を鎮静化することができる任意の物質である。通常、潤滑剤は、その油性または粘液性の粘稠で粘膜を標的化および保護することによって、通常は膜上に薄膜を形成することによって、粘滑効果を有するであろう。
粘滑剤は眼球表面の潤滑性を高めることができ、まばたきの過程で眼瞼により発生される眼球表面の摩耗および断裂が緩和される。また、多くの場合粘液性である粘滑剤の性質は、粘滑剤に水結合能力を提供し、眼球上皮を水和状態に保つのに役立つことができる。
本発明のコーティング組成物は、ペプチドに連結された潤滑剤を含む。
適切な潤滑剤の非限定的な例は、
ヒアルロン酸、
セルロース誘導体、例えば、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロースおよびヒプロメロースなど、
デキストラン、
高分子アルコール、例えば、グリセリン、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリソルベートおよびプロピレングリコール、
ポリビニルアルコール、ならびに
ポビドン(ポリビニルピロリドン)である。
炭水化物ベースの潤滑剤は、例えば、実施例3でヒアルロン酸について記載される方法に従い、任意選択で適切なリンカーを介して、ペプチドのC末端カルボン酸官能基またはペプチドのN末端アミノ官能基またはそのアミノ酸残基の1つの側鎖官能性のいずれかでペプチドに連結させることができる。
PEGなどのアルコール性潤滑剤の場合、ペプチドのアミン官能基への連結を可能にするためにヒドロキシル部分の活性化が必要とされる。活性化方法の非限定的な例は、トリホスゲンまたは炭酸ビス−(2,5−ジオキソピロリジン−1−イル)による処理である。ペプチドのカルボン酸部分に対するアルコール性潤滑剤の取り付けは、エステル化によって達成することができる。これを達成する非限定的な例は、塩化ピバロイルまたはクロロギ酸イソブチルを用いる適切にN保護されたペプチドの活性化、およびその後の、潤滑剤のヒドロキシル官能基との反応である。あるいは、潤滑剤と適切にN保護されたペプチドとの間のカップリングは、標準ペプチドカップリング試薬、例えば、DCC、EDCl、T3Pを用いて達成することができる。
潤滑剤の分子量は、2つの因子によって決定付けられる。まず第1に、分子量は、必要とされる潤滑活性を保証するために十分に高くなければならない。他方で、分子量は、潤滑剤−ペプチド結合体(すなわち、本発明のコーティング組成物)の合成および特徴付けを可能にするために十分に低くなければならない。
約200Da〜約2MDaの分子範囲を使用することができ、より好ましくは、分子範囲は1〜20kDaであり、最も好ましくは、範囲は5〜15kDaである。
例えば、デキストランは約70kDaの分子量を有することができ、カルボキシメチルセルロースは250kDa〜約700kDaの分子量を有することができ、ヒドロキシプロピルメチルセルロースは約80kDa〜約100kDaの分子量を有することができ、PEGは約300Da〜約400Daの分子量を有することができ、ポリソルベートは約1310Daの分子量を有することができ、ポリビニルアルコールは約50kDaの分子量を有することができる。ポビドンは約1000kDa〜約1500kDaの分子量を有することができる。
ヒアルロン酸(ヒアルロナンまたはヒアルロナートまたはHAとも呼ばれる)は、結合組織、上皮組織、および神経組織の全体にわたって広く分布しているアニオン性非硫酸化グリコサミノグリカンである。ヒアルロン酸は硫酸化されておらず、ゴルジ体ではなく細胞膜内で生じ、かつ非常に大きいことがあり、その分子量が100万に達することが多いという点で、グリコサミノグリカンの中でも独特である。
本発明のコーティング組成物において、ヒアルロン酸は、上記のような分子量、例えば約1kDa〜約1000kDa、例えば約10kDaの分子量を有し得る。
本発明のヒアルロン酸−ペプチドコーティング組成物は、ヒアルロン酸が、任意選択で適切なリンカーを介して、ペプチドのC末端カルボン酸官能基またはペプチドのN末端アミノ官能基またはそのアミノ酸残基の1つの側鎖官能性のいずれかでペプチドに共有結合されるという事実によって特徴付けることができる。アミノ酸残基の側鎖官能性の例は、リシンのε−アミノ官能基またはセリンのヒドロキシル官能基である。
適切なリンカーの非限定的な例は、線状および分枝状脂肪族C〜C24ジアミン、アミノアルコールおよびアミノチオール;C〜C24脂環式ジアミン、アミノアルコールおよびアミノチオール、またはC〜C24芳香族およびアルキル芳香族ジアミン、アミノアルコールおよびアミノチオールである。
本発明のヒアルロン酸−ペプチドコーティング組成物は、当業者によく知られた反応条件下、カップリング剤の存在または非存在下におけるヒアルロン酸およびペプチドのカップリングにより共有結合または連結を形成することによって利用可能である。カップリング反応の非限定的な例は、直接(国際公開第2004/004744号パンフレット)または還元/制限された酸化方法(米国特許第4356170号明細書)による末端残基の活性化の後の末端還元性炭水化物の還元的アミノ化、およびラクトン化方法(欧州特許第0454898号明細書)またはエステル化により活性化された末端還元性炭水化物のアミド化である。
本明細書で使用される場合、「ペプチド」という用語は、ペプチド結合により連結されたアミノ酸残基を含み、3個以上の多いアミノ酸残基、例えば、4、5、6、7、8、9、10個またはそれよりも多いアミノ酸残基を含有する分子を指す。あらゆるアレルギー反応の発生を防止するために、ペプチドの長さは通常10アミノ酸未満、好ましくは8アミノ酸未満でなければならない。
アミノ酸は、1文字表記または3文字表記のいずれかによって特定される。「タンパク質」および「ポリペプチド」という用語は、本明細書で使用される場合、「ペプチド」という用語と同義である。従って、「ペプチド」、「タンパク質」および「ポリペプチド」という用語は互換的に使用することができる。本発明の組成物で使用されるペプチドは、任意選択で、官能性を付加するために修飾(例えば、グリコシル化、リン酸化、アシル化、ファルネシル化、プレニル化、スルホン化など)され得る。通常、ペプチドは酵素活性を示さないであろう。
先行する請求項のいずれか一項に記載の組成物であって、ペプチドは、アミノ酸残基Ala、Ile、Leu、Phe、Asn、Gln、Pro、GlyまたはValのいずれか1つを含む。ペプチドは、このような残基の1つまたは複数のみを含み得る。
好ましい組成物では、ペプチドは、Ala、Leu、Gln、ProおよびGlyのアミノ酸残基のいずれか1つを含む。ペプチドは、このような残基の1つまたは複数のみを含み得る。
好ましくは、コンタクトレンズなどの眼球デバイスの製造において使用するのに適したモノマー、マクロマーまたはプレポリマーにペプチドを連結するために、GlyまたはPro残基が使用され得る。
好ましくは、ペプチドは、ArgまたはLysなどの荷電塩基性残基を含まなくてもよい。またペプチドは、セリン残基を含まなくてもよい。
ペプチドの配列は、涙液中に存在する少なくとも1つのプロテイナーゼによって切断することが可能な任意の配列でよい。従って、本発明のコーティング組成物において、ペプチドは、中性pH値付近で最適な活性を有するエンドプロテアーゼのうちの1つまたは複数によって切断可能であり得る。国際的に認められたIUBMBの酵素の分類および命名スキームには、プロテアーゼが含まれる。プロテアーゼのEC番号についての最新のIUBMBテキストは、インターネットサイト:http://www.chem.qmw/ac.uk/iubmb/enzyme/EC3/4/11/において見出すことができる。
このシステムは、プロテアーゼをエンドプロテアーゼおよびエキソプロテアーゼに分類する。エンドプロテアーゼは、本明細書では、ポリペプチドのペプチド結合をエンド様式で加水分解する酵素であると定義され、EC3.4群に属する。エンドプロテアーゼは、触媒メカニズムに基づいて、サブ−サブクラスに分けられる。セリンエンドプロテアーゼ(EC3.4.21)、システインエンドプロテアーゼ(EC3.4.22)、アスパラギン酸エンドプロテアーゼ(EC3.4.23)、メタロエンドプロテアーゼ(EC3.4.24)およびスレオニンエンドプロテアーゼ(EC3.4.25)のサブ−サブクラスがある。エキソプロテアーゼは、本明細書において、末端α−アミノ基に隣接するペプチド結合を加水分解する酵素(「アミノペプチダーゼ」)、または末端カルボキシル基と最後から2番目のアミノ酸との間のペプチド結合を加水分解する酵素(「カルボキシペプチダーゼ」)であると定義される。
本出願の実施例1に提示されるデータによると、涙液中のプロテイナーゼ活性は、メタロエンドペプチダーゼ(IUBMB酵素クラスEC3.4.24)またはセリンエンドペプチダーゼ(IUBMB酵素クラスEC3.4.21)のいずれかである。いくつかの科学刊行物は、涙液中のマトリックスメタロプロテイナーゼおよびストロメライシンの存在を提唱している。頻繁に言及されるセリンプロテイナーゼには、白血球および好中球エラスターゼ、ならびにミエロブラスチンおよびトリプターゼが含まれる。
本発明の組成物中のペプチドは、これらの酵素のいずれか1つによって切断可能であり得る。
使用するペプチドリンカーのアミノ酸配列を変更することによって、潤滑剤の放出を特定の要求に適応させることができる。例えば、使い捨てレンズは、頻回交換レンズよりも高い潤滑剤放出速度を必要とするであろう。同様に、使用するペプチドリンカーのアミノ酸配列は、プロテイナーゼの種類、例えば、特定の個体群の涙液中で最も顕著であるセリンプロテイナーゼまたはメタロプロテイナーゼに対して適応され得る。さらに、使用するペプチドリンカーのアミノ酸配列は、特定の種類のプロテイナーゼによる切断を促進または抑制するように適応されてもよい。例えば、Kridel et al.,J.Biol.Chem.276(2)20572−2−578,2001、Rao et al.,J.Biol.Chem.266(15),9540−9548(1991)、Yasutake and Powers,Biochemistry 1981,20,3675−3679を参照されたい。
本発明のコーティング組成物などの組成物は、配列番号1〜6のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含み得るが、これらの配列のいずれかに限定されない。
本発明のコーティング組成物は、コンタクトレンズをコーティングするため、またはコンタクトレンズを含浸させるために使用され得る。
従って、本発明は、
コンタクトレンズ、通常は予備成形コンタクトレンズと、
前記予備成形コンタクトレンズの上または中にコーティングされた本発明のコーティング組成物と
を含むコンタクトレンズを提供する。
本発明での使用に適した予備成形コンタクトレンズは、任意の非シリコーンまたは好ましくはシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズであり得る。コーティング組成物は、現存の予備成形コンタクトレンズ上にコーティングされ得る。あるいは、予備成形コンタクトレンズの製造によりコーティング組成物が上に配設された(通常、少なくとも部分的にその表面上に)予備成形コンタクトレンズが得られるように、コーティング組成物は、予備成形コンタクトレンズの製造において使用される成分にカップリングされ得る。
適切な予備成形コンタクトレンズは市販されている。あるいは、予備成形コンタクトレンズ(好ましくは、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ)は、当業者に周知の任意の方法に従って製造することができる。例えば、予備成形コンタクトレンズは、例えば米国特許第3,408,429号明細書に記載されるような従来の「スピンキャスト成形」において、または米国特許第4,347,198号明細書、米国特許第5,508,317号明細書、米国特許第5,583,463号明細書、米国特許第5,789,464号明細書、および米国特許第5,849,810号明細書に記載されるような静的な形式のフルキャスト成形プロセスによって、または特注のコンタクトレンズの製造で使用されるようなシリコーンヒドロゲルボタンの旋盤切断(lathe cutting)によって製造することができる。キャスト成形では、コンタクトレンズを製造するために、レンズ配合物は通常金型に分注され、金型の中で硬化(すなわち、重合および/または架橋)される。予備成形シリコーンヒドロゲル(SiHy)コンタクトレンズを製造するために、キャスト成形もしくはスピンキャスト成形用、またはコンタクトレンズの旋盤切断で使用されるSiHyロッドの製造用のSiHyレンズ配合物は、通常、当業者に周知であるように、シリコーン含有ビニルモノマー、シリコーン含有ビニルマクロマー、シリコーン含有プレポリマー、親水性ビニルモノマー、疎水性ビニルモノマー、架橋剤(約700ダルトン以下の分子量を有し、少なくとも2つのエチレン性不飽和基を含有する化合物)、フリーラジカル開始剤(光開始剤または熱開始剤)、親水性ビニルマクロマー/プレポリマー、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの成分を含む。
ヒアルロン酸ペプチド結合体(すなわち、本発明のコーティング組成物)は、本明細書に記載されるモノマー/マクロマー/プレポリマーのうちの1つまたは複数にカップリングされ得る。このようなコーティング組成物−モノマー/マクロマー/プレポリマーを用いるコンタクトレンズの製造は、従って、予備成形コンタクトレンズおよびコーティング組成物(後者は予備成形コンタクトレンズの上部または内部に配設される)を含むであろう。
従って、本発明は、コンタクトレンズの製造において使用するのに適したモノマー、マクロマーまたはプレポリマーにカップリングされた本発明のコーティング組成物を含む。
シリコーンヒドロゲル(SiHy)コンタクトレンズ配合物は、当業者に知られているように、例えば、UV吸収剤、視認性色付け剤(例えば、色素、顔料、またはこれらの混合物)、抗菌剤(例えば、好ましくは銀ナノ粒子)、生物活性剤、浸出性潤滑剤、浸出性涙安定剤、およびこれらの混合物などの当業者に知られている他の必要な成分を含むこともできる。得られた予備成形SiHyコンタクトレンズは次に、当業者に知られているように、得られたレンズから非重合成分を除去するための抽出溶媒による抽出、および水和プロセスを受けさせることができる。さらに、予備成形SiHyコンタクトレンズは、着色コンタクトレンズ(すなわち、当業者に周知のように、少なくとも1つの着色パターンが印刷されたSiHyコンタクトレンズ)であり得る。
多くのSiHyレンズ配合物が知られており、本出願の出願日よりも前に公開された多数の特許および特許出願に記載されている。上記で特定したDkおよび含水量を有するSiHy材料をもたらす限り、これらはどれも予備成形SiHyレンズを得る際に使用することができ、これは次に、本発明のSiHyコンタクトレンズの内側層になる。lotrafilcon A、lotrafilcon B、balafilcon A、galyfilcon A、senofilcon A、narafilcon A、narafilcon B、comfilcon A、enfilcon A、asmofilcon A、filcon II3などの市販のSiHyレンズを製造するためのSiHyレンズ配合物も、予備成形SiHyコンタクトレンズ(本発明のSiHyコンタクトレンズの内側層)の製造において使用することができる。ヒアルロン酸−ペプチド結合体(すなわち、本発明のコーティング組成物)は、これらの組成物(lotrafilcon Bを除く)のいずれか1つとカップリングさせることができ、得られた結合体は、本発明のコンタクトレンズ(すなわち、本発明のコーティング組成物が上に配設された予備成形コンタクトレンズ)を製造するために使用される。
重合性ビニル基と、潤滑剤(例えば、ヒアルロン酸)に連結されたペプチドとを含む組成物は、市販のヒドロキシル官能基化ビニル化合物から出発して得ることができる。ヒドロキシル官能基化ビニル化合物の例としては、2−ヒドロキシエチルメタクリラート、グリセリルメタクリラート、メタクリル化シリコーン含有ヒドロキシル化合物(国際公開第2012104349号パンフレット)が挙げられるがこれらに限定されず、この化合物はコンタクトレンズに共有結合的に取り込まれ、ペプチドは涙液中に存在する1つまたは複数のプロテイナーゼによって切断可能である。この重合性組成物の例の調製方法は実施例4に記載される。
この上記の重合性組成物は、任意の非シリコーン、または好ましくはシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズのためのモノマー配合物成分として使用するのに適している。あるいは、コンタクトレンズ(好ましくは、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ)は、当業者に周知の任意の方法に従って製造することができる。例えば、コンタクトレンズは、例えば米国特許第3,408,429号明細書に記載されるような従来の「スピンキャスト成形」において、または米国特許第4,347,198号明細書、米国特許第5,508,317号明細書、米国特許第5,583,463号明細書、米国特許第5,789,464号明細書、および米国特許第5,849,810号明細書に記載されるような静的な形式のフルキャスト成形プロセスによって、または特注のコンタクトレンズの製造で使用されるようなシリコーンヒドロゲルボタンの旋盤切断によって製造することができる。キャスト成形では、コンタクトレンズを製造するために、レンズ配合物は通常金型に分注され、金型の中で硬化(すなわち、重合および/または架橋)される。シリコーンヒドロゲル(SiHy)コンタクトレンズを製造するために、キャスト成形もしくはスピンキャスト成形用、またはコンタクトレンズの旋盤切断で使用されるSiHyロッドの製造用のSiHyレンズ配合物は、通常、当業者に周知であるように、シリコーン含有ビニルモノマー、シリコーン含有ビニルマクロマー、シリコーン含有プレポリマー、親水性ビニルモノマー、疎水性ビニルモノマー、架橋剤(少なくとも2つのエチレン性不飽和基を含有する化合物)、フリーラジカル開始剤(光開始剤または熱開始剤)、親水性ビニルマクロマー/プレポリマー、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの成分を含む。SiHyコンタクトレンズ配合物は、当業者に知られているように、例えば、UV吸収剤、視認性色付け剤(例えば、色素、顔料、またはこれらの混合物)、抗菌剤(例えば、好ましくは銀ナノ粒子)、生物活性剤、浸出性潤滑剤、浸出性涙安定剤、およびこれらの混合物などの当業者に知られている他の必要な成分を含むこともできる。得られたSiHyコンタクトレンズは次に、当業者に知られているように、得られたレンズから非重合成分を除去するための抽出溶媒による抽出、および水和プロセスを受けさせることができる。さらに、予備成形SiHyコンタクトレンズは、着色コンタクトレンズ(すなわち、当業者に周知のように、少なくとも1つの着色パターンが印刷されたSiHyコンタクトレンズ)であり得る。
コンタクトレンズの製造のためのレンズ金型は当業者によく知られており、例えば、キャスト成形またはスピンキャストにおいて使用される。例えば、金型(キャスト成形用)は、一般に、少なくとも2つの金型セクション(または部分)または金型半分部分、すなわち第1および第2の金型半分部分を含む。第1の金型半分部分は第1の成形(または光学)表面を画定し、第2の金型半分部分は第2の成形(または光学)表面を画定する。第1および第2の金型半分部分は、第1の成形表面と第2の成形表面との間にレンズ形成キャビティが形成されるように、互いに受け入れるように構成される。金型半分部分の成形表面は、金型のキャビティ形成表面であり、レンズ形成材料と直接接触する。
コンタクトレンズのキャスト成形のための金型部分の製造方法は、一般に、当業者によく知られている。本発明のプロセスは、任意の特定の金型形成方法に限定されない。実際に、あらゆる金型形成方法を本発明において使用することができる。第1および第2の金型半分部分は、射出成形または旋盤などの種々の技術によって形成することができる。金型半分部分を形成するための適切なプロセスの例は、米国特許第4,444,711号明細書(Schad);米国特許第4,460,534号明細書(Boehm et al.);米国特許第5,843,346号明細書(Morrill);および米国特許第5,894,002号明細書(Boneberger et al)に開示されている。
金型製造技術分野で知られている事実上全ての材料は、コンタクトレンズ製造用の金型を製造するために使用することができる。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、PMMA、Topas(登録商標)COCグレード8007−S10(Frankfurt,GermanyおよびSummit,N.J.のTicona GmbHからの、エチレンおよびノルボルネンの透明アモルファスコポリマー)などの高分子材料を使用することができる。石英ガラスおよびサファイアなどのUV光透過を可能にする他の材料も使用され得る。
好ましい実施形態では、再利用可能な金型が使用され、シリコーン−ヒドロゲルレンズ形成組成物は、化学放射の空間的制限下で化学線により硬化されてSiHyコンタクトレンズを形成する。好ましい再利用可能な金型の例は、1994年7月14日に出願された米国特許出願第08/274,942号明細書、2003年12月10日に出願された米国特許出願第10/732,566号明細書、2003年11月25日に出願された米国特許出願第10/721,913号明細書、および米国特許第6,627,124号明細書(これらは、参照によってその全体が援用される)において開示されるものである。再利用可能な金型は、石英、ガラス、サファイア、CaF2、環状オレフィンコポリマー(例えば、Frankfurt,GermanyおよびSummit,N.J.のTicona GmbHからのTopas(登録商標)COCグレード8007−S10(エチレンおよびノルボルネンの透明アモルファスコポリマー)、Zeon Chemicals LP,Louisville,Ky.からのZeonex(登録商標)およびZeonor(登録商標)など)、ポリメチルメタクリラート(PMMA)、DuPontからのポリオキシメチレン(Delrin)、G.E.PlasticsからのUltem(登録商標)(ポリエーテルイミド),PrimoSpire(登録商標)などから作ることができる。
コーティング組成物は、予備成形コンタクトレンズ上にコーティングされる。すなわち、コーティング組成物は、予備成形コンタクトレンズの表面上に配設される。
コーティング組成物は、本発明のコンタクトレンズの製造において使用され得る。コーティング組成物は、任意の適切な手段を用いて予備成形コンタクトレンズ上にコーティングされ得る。少なくとも3つのアプローチが想定され得る:
(1)コーティング組成物は、予備成形コンタクトレンズ上のヒドロキシル官能性などを介して予備成形レンズ自体の表面に結合され得る。
(2)ヒアルロン酸−ペプチド結合体(すなわち、コーティング組成物)は、SiHyプレポリマー(反応性モノマー配合混合物)に添加され得る。このような配合物は、通常、遊離ヒドロキシル基を有するモノマーを含有し、従って、例えば、本発明のコーティング組成物のペプチドカルボン酸官能基にカップリングされる。予備成形コンタクトレンズを形成するための重合の後、コーティング組成物は予備成形コンタクトレンズの表面に配設されるであろう。
(3)あるいは、ヒアルロン酸−ペプチド結合体(すなわち、コーティング組成物)は、単一成分モノマーにカップリングされてもよく、得られる結合体はSiHyプレポリマー混合物に添加される。このアプローチは、化学工程中に他のプレポリマー成分との副反応が起こり得ないため、合成的に有利であり、全ての工程は分析的に高精度でモニターされ得る。
より詳細には、アプローチ(1)または(2)において、本発明のヒアルロン酸−ペプチド結合体(すなわち、コーティング組成物)は、ヒアルロン酸−ペプチド結合体のペプチド部分のC末端カルボン酸もしくはN末端アミノ官能基を介して、またはそのアミノ酸残基の1つの側鎖官能性を介して、任意選択で適切なリンカーを介して、予備成形コンタクトレンズ(十分に完成したレンズ、または予備成形コンタクトレンズの調製において使用するのに適したモノマー/マクロマー/プレポリマーのいずれかの形態)の表面に結合され得る。ペプチド部分の遊離カルボン酸またはアミノ末端基を、ポリマー中に存在する官能基にカップリングさせるための方法は、当業者によく知られている。
本発明の潤滑剤−ペプチドコーティング組成物によりコーティングされるコンタクトレンズは、当業者によく知られた反応条件下、カップリング剤の存在または非存在下で、潤滑剤−ペプチド結合体(すなわち、コーティング組成物)により予備成形コンタクトレンズを処理して、共有結合または連結を形成することによって利用可能である。
潤滑剤−ペプチド結合体のペプチド部分は、任意の適切な方法を用いてコンタクトレンズ表面に結合され得る。ペプチド上の遊離酸基、遊離アミノ基、遊離ヒドロキシル基などの化学基を、コンタクトレンズ表面に存在するヒドロキシ基、アミン基および酸基にカップリングさせることは、当業者によく知られている。
カルボン酸とアルコールの間の反応によるエステル形成は、当業者によく知られている。
予備成形コンタクトレンズは、潤滑剤−ペプチド結合体による処理の前に活性され得る。高分子の活性化のためおよびポリペプチドの結合のための方法および化学は、文献において集中的に記載されている。国際公開第97/30148号パンフレットおよび関連参考文献に記載される方法の非限定的な例は、本発明の一部として全体が使用される。非限定的な例には、ヒアルロン酸−ペプチド結合体の遊離カルボン酸基または遊離アミン基と、オキシラン官能基を有するコンタクトレンズ表面との間の反応が含まれ、活性化ヒドロキシル官能基は、エステルおよびアミンをそれぞれ形成して、潤滑剤−ペプチド結合体をコンタクトレンズ表面に連結するために使用され得る。潤滑剤−ペプチド組成物をコンタクトレンズ表面の官能基に連結するために使用することができるカップリング化学の付加的な方法は、E.S.Schante et al Carbohydrate Polymers 2011,85,p469−489に記載されている。本発明に従うコンタクトレンズはさらに、予備成形コンタクトレンズの上であるが、コーティング組成物の下方にベースコーティングを含み得る。換言すると、ベースコーティングは、コーティング組成物の下方で予備成形コンタクトレンズの表面上、すなわち予備成形コンタクトレンズとコーティング組成物との間に配設され得る。
このようなコンタクトレンズでは、コーティング組成物は、通常、ベースコーティングに共有結合される。ベースコーティングは、通常、高分子コーティング材料を含む。
以下のテキストは、代替の製造経路を詳述する。この経路では、ヒアルロン酸−ペプチド結合体は本質的に生じない。代わりに、ペプチド−モノマーが使用され、後の段階でHAが連結される。
上記に示されるように、潤滑剤−ペプチド−レンズアセンブリの代替の製造方法は、まず、共重合させてレンズ材料を生じることができるヒドロキシル基含有モノマーに、N保護ペプチドをそのC末端カルボン酸官能基により連結することである。このようなモノマーの一例は、ヒドロキシエチルメタクリラート(HEMA)である。このカップリングの後、得られたペプチド−HEMA結合体はN末端において脱保護され、続いて上記の化学を用いて、その遊離N末端により潤滑剤(ヒアルロン酸など)とカップリングされる。得られた潤滑剤−ペプチド−モノマー化合物は次にシリコーンプレポリマー混合物に添加され、これは他のモノマーと共重合されてレンズ材料を生じる。このような方法の利点は、化学工程中に他のプレポリマー成分との副反応が起こりにくいため、合成的に非常に容易であることと、全ての工程を分析的に高精度でモニターできることである。
本発明に従うコンタクトレンズはさらに、予備成形コンタクトレンズ上であるが、コーティング組成物の下方にプラズマコーティングを含み得る。換言すると、プラズマコーティングは、コーティング組成物の下方で予備成形コンタクトレンズの表面上、すなわち予備成形コンタクトレンズとコーティング組成物との間に配設され得る。
潤滑剤−ペプチドコーティング組成物を予備成形コンタクトレンズに連結するための付加的な方法には、コーティング組成物の下方で予備成形コンタクトレンズの表面上、すなわち予備成形コンタクトレンズとコーティング組成物との間に配設されるベースコーティングの取込みが含まれる。
ベースは、ヒアルロン酸−ペプチドコーティング組成物中に存在する遊離カルボン酸または遊離アミン官能基によって開環を起こしやすい環状複素環式環を含有する架橋ポリマーを含み得る。非限定的な例としては、アルコール、アミン、およびカルボン酸基などの官能基と反応して共有結合を形成する、エポキシド、環状炭酸エステル、および正荷電アゼチジニウム基が挙げられる。米国特許出願公開第20040236119号明細書および米国特許出願公開第20050113594号明細書には、環状炭酸エステルにおけるカップリング化学が記載されている。アゼチジニウム基を用いる架橋方法は、米国特許第55100014号明細書、米国特許出願公開第2011/071791A1号明細書、国際公開第2012/016098A1号パンフレット、および米国特許出願公開第2013/0148077A1号明細書に記載されている。
プラズマ技術は、官能性表面の製造のための重要な技術の1つである。プラズマ技術によってコンタクトレンズの表面に生成されるヒドロキシル、アミノ、およびカルボキシル基は、潤滑剤−ペプチドコーティング組成物を付着させるために使用することができる。化学反応性表面を生成するための方法は、K.S.Siow et al Plasma Process and Polymers 2006,3,p392−418に記載されている。
本発明はさらにコーティング組成物の製造方法を提供しており、本方法は、ペプチドを潤滑剤(本明細書において記載される)に連結するステップを含み、ペプチドは、涙液中に存在する1つまたは複数のプロテイナーゼによって切断可能である。任意選択で、得られるペプチド−潤滑剤結合体は、コンタクトレンズの製造において使用するのに適したモノマー、マクロマーまたはプレポリマーに連結され得る。
また本発明はコンタクトレンズの製造方法も提供しており、本方法は、予備成形コンタクトレンズを提供するステップと、前記コンタクトレンズに本発明のコーティング組成物をコーティングするステップとを含む。
コーティング組成物がコンタクトレンズの製造において使用するのに適したモノマー、マクロマーまたはプレポリマーに連結される場合、本発明は、コンタクトレンズの製造方法を提供し、本方法は、このようなコーティング組成物の存在下で予備成形コンタクトレンズを調製するステップを含む。すなわち、本方法は、前記コーティング組成物が添加された任意の適切な材料、すなわちコンタクトレンズ形成材料を用いてコンタクトレンズを調製するステップを含み得る。
本発明に従うコンタクトレンズは、パッケージング内に含まれていてもよい。ソフトコンタクトレンズをオートクレーブおよび貯蔵するためのレンズパッケージ(または容器)は、当業者によく知られている。任意のレンズパッケージを本発明において使用することができる。好ましくは、レンズパッケージは、ベースおよびカバーを含むブリスターパッケージであり、カバーはベースに取外し可能に密封されており、ベースは無菌パッケージング溶液およびコンタクトレンズを中に入れるためのキャビティを含む。
コンタクトレンズは、通常、使用者への販売の前に、個別のパッケージにパッケージングされ、密封され、滅菌される(例えば、約120℃以上で少なくとも30分間オートクレーブすることによる)。当業者は、レンズパッケージを密封および滅菌する方法を十分に理解しているであろう。
本発明によると、パッケージング溶液は、少なくとも1つの緩衝剤および1つまたは複数の当業者に知られている他の成分を含有し得る。他の成分の例としては、等張化剤、界面活性剤、抗菌剤、防腐剤、および潤滑剤(または水溶性粘度上昇剤)(例えば、セルロース誘導体、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン)が挙げられるが、これらに限定されない。
パッケージング溶液は、パッケージング溶液のpHを所望の範囲、例えば、好ましくは生理学的に許容可能な約6〜約8.5の範囲に保つのに十分な量の緩衝剤を含有し得る。既知のように、生理学的に適合性の緩衝剤を使用することができる。本発明に従うコンタクトレンズケア組成物の成分として適切な緩衝剤は当業者に知られている。例としては、ホウ酸、ホウ酸塩、例えば、ホウ酸ナトリウム、クエン酸、クエン酸塩、例えば、クエン酸カリウム、重炭酸塩、例えば、重炭酸ナトリウム、TRIS(2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール)、Bis−Tris(ビス−(2−ヒドロキシエチル)−イミノ−トリス−(ヒドロキシメチル)−メタン)、ビス−アミノポリオール、トリエタノールアミン、ACES(N−(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸)、BES(N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸)、HEPES(4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸)、MES(2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸)、MOPS(3−[N−モルホリノ]−プロパンスルホン酸)、PIPES(ピペラジン−N,N’−ビス(2−エタンスルホン酸)、TES(N−[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]−2−アミノエタンスルホン酸)、これらの塩、リン酸緩衝液、例えば、Na2HPO4、NaH2PO4、およびKH2PO4またはこれらの混合物などがある。好ましいビス−アミノポリオールは、1,3−ビス(トリス[ヒドロキシメチル]−メチルアミノ)プロパン(ビス−TRIS−プロパン)である。パッケージング溶液中の各緩衝剤の量は、好ましくは、0.001重量%〜2重量%であり、好ましくは0.01重量%〜1重量%、最も好ましくは約0.05重量%〜約0.30重量%である。
パッケージング溶液は、通常、約200〜約450ミリオスモル(mOsm)、好ましくは約250〜約350mOsmの浸透圧を有する。パッケージング溶液の浸透圧は、浸透圧に影響を与える有機または無機物質を添加することによって調整することができる。眼内で(occularly)許容可能な適切な等張化剤には、塩化ナトリウム、塩化カリウム、グリセロール、プロピレングリコール、ポリオール、マンニトール、ソルビトール、キシリトールおよびこれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。
本発明のパッケージング溶液は、通常、25℃において約1センチポアズ〜約20センチポアズ、好ましくは約1.5センチポアズ〜約10センチポアズ、より好ましくは約2センチポアズ〜約5センチポアズの粘度を有する。
好ましい実施形態では、パッケージング溶液は、上部コーティングを形成するために、好ましくは約0.01重量%〜約2重量%、より好ましくは約0.05重量%〜約1.5重量%、さらにより好ましくは約0.1重量%〜約1重量%、最も好ましくは約0.2重量%〜約0.5重量%の水溶性かつ熱架橋性の親水性高分子材料を含む。
架橋コーティングおよびパッケージング溶液の少なくとも1つがポリエチレングリコールセグメントを有する高分子材料を含有する場合、パッケージング溶液は、好ましくは、ポリエチレングリコールセグメントの酸化分解の感受性が低減するのに十分な量の[アルファ]−オキソ多酸(oxo−multi−acid)またはその塩を含む。共同所有の同時係属特許出願(米国特許出願公開第2004/0116564A1号明細書、その全体が本明細書中に援用される)は、オキソ多酸またはその塩がPEG含有高分子材料の酸化分解に対する感受性を低減し得ることを開示している。
例示的なα−オキソ多酸またはその生体適合性の塩には、クエン酸、2−ケトグルタル酸、もしくはリンゴ酸、またはその生体適合性(好ましくは、眼科的に適合性)の塩が含まれるが、これらに限定されない。より好ましくは、α−オキソ多酸は、クエン酸もしくはリンゴ酸またはその生体適合性(好ましくは眼科的に適合性)の塩(例えば、ナトリウム、カリウムなど)である。
本発明によると、パッケージング溶液はさらに、ムチン様材料(例えば、ポリグリコール酸、ポリ乳酸など)、眼科的に有益な材料(例えば、2−ピロリドン−5−カルボン酸(PCA)、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、マンデル酸、クエン酸、リノール酸およびガンマリノール酸、これらの塩、タウリン、グリシン、およびビタミン)、および/または界面活性剤を含むことができる。
本発明のコンタクトレンズが予備成形シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを含む場合、コンタクトレンズは、好ましくは、以下からなる群から選択される特性の少なくとも1つを有する:
少なくとも約40バーラー(barrer)、好ましくは少なくとも約50バーラー、より好ましくは少なくとも約60バーラー、さらにより好ましくは少なくとも約70バーラーの酸素透過性;
約1.5MPa以下、好ましくは約1.2MPa以下、より好ましくは約1.0以下、さらにより好ましくは約0.3MPa〜約1.0MPaの弾性率;
好ましくは少なくとも約1.5×10−6mm/分、より好ましくは少なくとも約2.6×10−6mm/分、さらにより好ましくは少なくとも約6.4×10−6mm/分のイオノフラックス(ionoflux)拡散係数D;完全に水和されたときに好ましくは約18重量%〜約70重量%、より好ましくは約20重量%〜約60重量%の含水量;またはこれらの組み合わせ。
従来技術として与えられる特許文献または他の資料に対する本明細書における言及は、その文献または資料が公知であったこと、またはそれに含有される情報が請求項のいずれかの優先日において周知の一般知識の一部であったことの承認であると解釈されてはならない。
本明細書に記載される各参考文献の開示は、参照によってその全体が本明細書中に援用される。
[本発明の実施形態]
1.潤滑剤に連結されたペプチドを含む組成物であって、ペプチドは、涙液中に存在する1つまたは複数のプロテイナーゼによって切断可能である組成物。
2.コーティング組成物である、実施形態1に従う組成物。
3.潤滑剤がヒアルロン酸、セルロース誘導体、デキストラン、高分子アルコール、ポリビニルアルコールまたはポビドン(ポリビニルピロリドン)である、実施形態1または2に従う組成物。
4.潤滑剤が200Da〜2MDaの分子量を有する、先行する実施形態のいずれか1つに従う組成物。
5.ペプチドリンカーが涙液中に存在するセリンプロテイナーゼまたはメタロプロテイナーゼによって切断可能である、先行する実施形態のいずれか1つの実施形態に従う組成物。
6.ペプチドが、アミノ酸残基Ala、Ile、Leu、Phe、Asn、Gln、Pro、GlyまたはValのいずれか1つを含む、先行する実施形態のいずれか1つに従う組成物。
7.ペプチドが、Ala、Leu、Gln、ProおよびGlyのアミノ酸残基のいずれか1つを含む、先行する実施形態のいずれか1つに従う組成物。
8.アミノ酸配列Leu−Ala−Leu−Leu−Ala(配列番号1)またはLeu−Leu−Leu−Ala−Ala−Gly(配列番号6)を含む、先行する実施形態のいずれか1つに従う組成物。
9.コンタクトレンズの製造において使用するのに適したモノマー、マクロマーまたはプレポリマーに連結される、先行する実施形態のいずれか1つに従う組成物。
10.重合性ビニル基を含む、実施形態9に従う組成物。
11.先行する実施形態のいずれか1つに従う組成物を含む、涙液と接触するコンタクトレンズまたは眼球インプラント。
12.予備成形コンタクトレンズと、
− その上にコーティングされた実施形態1〜8のいずれか1つに従う組成物、または
− 実施形態9または10に従う組成物と
を含む、涙液と接触するコンタクトレンズまたは眼球インプラント。
13.予備成形コンタクトレンズがヒドロゲル材料で構成される、実施形態11または12に従うコンタクトレンズ。
14.シリコーンヒドロゲル材料を含むシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズである、実施形態13に従うコンタクトレンズ。
15.予備成形コンタクトレンズの上であるが、実施形態1〜8のいずれか1つに従う組成物の下方にベースコーティングをさらに含む、実施形態11〜14のいずれか1つに従うコンタクトレンズ。
16.組成物がベースコーティングに共有結合される、実施形態15に従うコンタクトレンズ。
17.ベースコーティングが高分子コーティング材料を含む、実施形態15または16に従うコンタクトレンズ。
18.予備成形コンタクトレンズの上であるが、実施形態1〜8のいずれか1つに従う組成物の下方にプラズマコーティングをさらに含む、実施形態12〜17のいずれか1つに従うコンタクトレンズ。
19.使い捨てコンタクトレンズである、実施形態11〜18のいずれか1つに従うコンタクトレンズ。
20.涙液中に存在する1つまたは複数のプロテイナーゼによって切断可能なペプチドを潤滑剤に連結するステップと、任意選択で、得られたペプチド−潤滑剤結合体を、コンタクトレンズの製造において使用するのに適したモノマー、マクロマーまたはプレポリマーに連結するステップとを含む、組成物の製造方法。
21.涙液中に存在する1つまたは複数のプロテイナーゼによって切断可能なペプチドを、コンタクトレンズの製造において使用するのに適したモノマー、マクロマーまたはプレポリマーに連結するステップと、得られたペプチド−モノマー、ペプチド−マクロマーまたはペプチド−プレポリマー結合体を潤滑剤に連結するステップとを含む、組成物の製造方法。
22.潤滑剤がヒアルロン酸、セルロース誘導体、デキストラン、高分子アルコール、ポリビニルアルコールまたはポビドン(ポリビニルピロリドン)である、実施形態20または21に従う方法。
23.− 予備成形コンタクトレンズを提供するステップと、
− 実施形態1〜8のいずれか1つに従う組成物を前記コンタクトレンズにコーティングするステップと
を含む、コンタクトレンズの製造方法。
24. − 実施形態9または10に従う組成物の存在下で予備成形コンタクトレンズを調製するステップ
を含む、コンタクトレンズの製造方法。
25.− 実施形態20〜22のいずれか1つに従う組成物を調製し、および得られた組成物の存在下で予備成形レンズを調製するステップ
を含む、コンタクトレンズの製造方法。
26.コンタクトレンズの製造において使用するのに適したモノマー、マクロマーまたはプレポリマーと、涙液中に存在する1つまたは複数のプロテイナーゼによって切断可能なペプチドとを含む組成物。
27.モノマー、マクロマーまたはプレポリマーが重合性ビニル基を含む、実施形態26に従う組成物。
28.実施形態26または27に従う組成物を含む、涙液と接触するコンタクトレンズまたは眼球インプラント。
29.ペプチドを介してコンタクトレンズに潤滑剤が連結される、実施形態28に従うコンタクトレンズ。
30.− 実施形態26または27に従う組成物の存在下で予備成形コンタクトレンズを調製するステップと、
− このようにして形成された予備成形コンタクトレンズに、ペプチドを介して潤滑剤を連結するステップと
を含む、コンタクトレンズの製造方法。
本発明は以下の実施例によってさらに説明される。
[実施例]
[材料および方法]
[ペプチドの合成および精製]
ペプチドは、標準的な固相技術(W.C.Chan,P.D.White,Fmoc solid phase peptide synthesis:A practical approach,Oxford University Press,2000)を用いて合成した。トリフルオロ酢酸を用いて樹脂から切断した後、MTBE/ヘプタンにより溶液からペプチドを沈殿させ、続いて凍結乾燥した。室温で固定相カラム(Pursuit XRs、C18、10mm粒径、500×41.4mm内径)を用いるVarian PrepStarシステムにおける分取HPLCにより、ペプチドをさらに精製した。UV検出は、UV−VIS Varian ProStarスペクトロメータを用いて220nmおよび254nmで実施した。グラジエントプログラムは次のとおりであった:50mL/分の流速で、溶離液Bが5%から95%までの0〜25分の直線的なグラジエントおよび25.1〜30分の5%溶離液B(溶離液A:1mL/LのHO中のギ酸;溶離液B:1mL/LのCHCN中のギ酸)。注入容積は10mLであった。純粋な画分を貯蔵し、凍結乾燥した。凍結乾燥は、Zirbus technologiesからのVaCo5(II)凍結乾燥器において実施した。
[質量分析]
合成ペプチド基質から原液(5%アセトニトリル中1mg/ml)を調製した。原液は、任意選択で、インキュベーションの前にMilliQ水により10×に希釈される。エラスターゼ(Sigma#:E7885)、トリプターゼ(Sigma#:T7063)、または涙液を希釈基質溶液に添加し、25℃でインキュベーションを実施した。いくつかの時点で20μlのアリコートを採取して、基質の分解をモニターした。
分析の前に、50%アセトニトリル、0.1%ギ酸中でアリコートを10×に希釈した。LTQ−Orbitrap Fourier Transform Mass Spectrometer(Thermo Fisher,Bremen,Germany)におけるインフュージョンによって、質量分光(MS)分析を実施した。インフュージョンは、50%アセトニトリル、0.1%ギ酸の200μl/分の流量の中に10μl/分のサンプルを混合することによって実施した。MS分析は、200〜1600m/zの質量範囲を用いて分解能7500で走査するOrbitrapにおいて実施した。合成ペプチド基質の種々のインキュベーション中のタンパク質分解活性を、XCaliburソフトウェア(Thermo Fisher,Bremen,Germany)においてQualブラウザーを用いて、MSデータの手動検査により研究した。
[実施例1:涙液中のプロテアーゼ]
文献によると、炎症反応、アレルゲン暴露または物理的接触は、涙液中のタンパク質分解活性を誘発し得る。このようなタンパク質分解活性は、眼の潤滑剤、例えばヒアルロン酸と、コンタクトレンズの表面との間の短いペプチドリンカーを切断する際に適用可能であり得る。推定上最小限のタンパク質分解活性が生じることを考慮して、ペプチドリンカーのアミノ酸配列が関連のタンパク質分解活性に対して最適な切断部位を提供することが最も重要である。本実施例では、本発明者らは、9人の個人のコンタクトレンズ表面に存在するタンパク質分解活性の性質を分析する。2人の個人はハードレンズを着用しており、他は全てソフトレンズを使用していた。これらのソフトレンズの着用期間は1日から2年まで様々であった。
コンタクトレンズ着用被験者に、就業日の最後に参加するように勧めた。滅菌手袋を用いてレンズを取り外し、各レンズの内側表面を250マイクロリットルの滅菌水ですすいだ。次に、100マイクロリットルのすすぎ液のサンプルを、100μlの1.0mg/mlのBODIPY TR−Xカゼイン溶液(EnzChek Protease Assay kit‘Red fluorescence’;Molecular Probes,Eugene,Oregon,USA)と共に摂氏25度で一晩インキュベートした。インキュベーションを通して、EnzChekキットプロトコル(励起=590±10nm、発光=645±20nm)に従って、Tecan Infinite M1000マイクロタイタープレートリーダー(Maennedorf,Switzerland)を用いてサンプルの蛍光を続けて測定した(動力学的測定)。得られた結果は、全ての参加者のコンタクトレンズすすぎ液がタンパク質分解活性を示すが、存在するタンパク質分解活性のレベルに被験者間でいくらかの違いがあることを示した。
続いて、実験を繰り返したが、今回は、存在するタンパク質分解活性の性質を同定することを目的とした。これを行うために、メタロエンドペプチダーゼを阻害するためのEDTA(IUBMB酵素分類EC3.4.24)、セリンエンドペプチダーゼを阻害するためのPMSF(IUBMB酵素分類EC3.4.21)およびシステインエンドペプチダーゼを阻害するためのE64(IUBMB酵素分類EC3.4.22)の3つの異なる選択的プロテアーゼ阻害薬をコンタクトレンズすすぎ液に添加した。その非常に酸性のpH最適度のために、アスパラギン酸エンドプロテアーゼ(IUBMB酵素分類EC3.4.23)の著しいタンパク質分解活性があり得ないほど見られた。EDTA((Merck,Darmstadt,Germany)は5ミリモル/lの最終濃度で使用し、PMSF((Molekula,Munchen,Germany)は1ミリモル/lの最終濃度で使用し、およびE−64(Sigma−Aldrich)は10マイクロモル/lの最終濃度で使用した。上記のように、種々の阻害剤が添加されたすすぎ液をEnzcheck Proteaseキットと共に一晩インキュベートし、翌朝タンパク質分解活性を測定した。得られた結果によると、ほとんどのすすぎ液は、セリンおよびメタロエンドペプチダーゼ活性を取り込んでいた。単一のケースで、メタロエンドペプチダーゼ活性のみが記録された。システインエンドペプチダーゼ活性は全く存在しなかった。
[実施例2:涙液中のプロテアーゼは特定のペプチドを切断可能である]
涙液中では、491の異なるタンパク質が同定されており(de Souza et al.,Genome Biology 2006,7:R72)、これらの中の32の異なるプロテイナーゼが同定されている。以下の種類のエンドペプチダーゼが存在する:メタロペプチダーゼ(特に、マトリックスメタロプロテイナーゼおよびストロメライシン)、セリンペプチダーゼ(ミエロブラスチン、白血球エラスターゼ、トリプターゼ、プラスミノーゲーン(plasminogeen)、プロスタシン(prostacine)、およびカテプシンG)、システインプロテイナーゼ(カテプシンBおよびカテプシンZ)およびアスパルチルプロテイナーゼ(カテプシンD)。
実施例1では、涙液中で、これらの4つの種類のエンドペプチダーゼのうちの2つのみ、すなわちメタロペプチダーゼおよびセリンペプチダーゼのみが、存在するタンパク質分解活性の大部分に関与することが示される。従って、涙液によるペプチド切断を実証するために、試験ペプチドは、両方の種類のエンドペプチダーゼの代表によって切断可能なアミノ酸配列を提示しなければならない。さらに、えり抜きの潤滑剤に対する、またはコンタクトレンズ表面に対するペプチドの化学結合を複雑にする反応性側基を有するアミノ酸は回避されなければならない。このことを念頭に置いて、ペプチドGly−Pro−Leu−Ala−Leu−Leu−Ala−Gln(GPLALLAQ)(配列番号2)を合成した。
その精製の後、単一の個人のコンタクトレンズすすぎ液(実施例1を参照)と共にペプチドをインキュベートし、25℃で週末にかけてインキュベートした。次に、インキュベーション液のサンプルを質量分析にかけて切断を確認した。結果によると、同定された切断生成物には、GPLALおよびLAQ、GPLおよびALLAQ、ならびにGPLAおよびLLAQが含まれる。ヒト白血球エラスターゼ(Sigma Aldrich)によるペプチドのインキュベーションは、主要な切断生成物としてGPLALLおよびAQを生じた。ヒト肺トリプターゼ(これもSigma Aldrichから)によるペプチドのインキュベーションは、主要な切断生成物としてGPLAL/LAQを生じた(図1を参照)。後者の観察は、AlaおよびLeuのような脂肪族疎水性残基を取り込んだペプチドが、ヒトのトリプターゼ様およびエラスターゼ様酵素による切断を支持することを示す。
[実施例3:末端残基の還元/制限された酸化方法による多糖類−ペプチド結合体の調製]
適切な潤滑剤化合物のペプチドとのカップリングの実現可能性を実証するために、ヒアルロン酸とGly−Tyr−OHジペプチドとの結合体を調製した。
[A.還元]
ヒアルロン酸(Hyasis、Novozymes(China)Biopharma Co.,Ltd)をHCl水で処理して(K.Tommeraas,Biomacromlecules 2008,9,1535−1540を参照)、その分子量をおよそ10.000Daまで低下させ、5gを100mLの水中に溶解させ、1NのNaOHを用いて得られた溶液のpHを5に調整した。続いて、NaBH(0.3g、8mmol)を添加し、酢酸の添加によりpHを8〜9に調整した。反応混合物を周囲温度で5時間攪拌し、次に約10mLの容積になるまで真空中で濃縮した。エタノール(150mL)を添加し、沈殿した生成物をろ過により単離した。収量5.3gの白色固体。
[B.酸化]
前のステップで調製した還元ヒアルロン酸(5.3g、0.5mmol)を100mLの水中に溶解させ、次にNaIO(0.5g、2.5mmol)を添加した。反応混合物を20℃で1時間攪拌してから、約10mLの容積になるまで真空中で濃縮した。反応混合物にエタノール(150mL)を添加し、沈殿した生成物をろ過により単離した。単離収量:4.7g。H−NMR分析により所望のアルデヒドの形成を確認した。
[C.還元的アミノ化]
前のステップで調製したアルデヒド(4.7g、0.5mmol)を100mLの0.05Mホウ酸緩衝液(pH=8.5)中に溶解させた。この溶液にジペプチドGly−Tyr−OH(0.23g、1mmol)を添加した後、NaCNBH(0.2g、3.2mmol)を添加した。反応混合物を周囲温度で60時間攪拌し、次に真空中で濃縮した。得られた湿った固体材料にエタノール(100mL)を添加し、続いて粗生成物をろ過により単離した。透析膜(カットオフ3.5kDa)を用いて過剰のジペプチドおよび無機塩を除去し、精製した生成物を凍結乾燥により単離した。生成物は、400MHzのH−NMRによって特徴付けられた。HPLC分析により、非カップリングジペプチドが存在しないことを実証した。
[実施例4:多糖類−ペプチド−レンズモノマー結合体の調製]
ペプチドのレンズモノマーへのカップリング、およびその後の、このペプチド−レンズモノマー結合体の適切な潤滑剤化合物へのカップリングの実現可能性を実証するために、ヒアルロン酸と、Ala−Leu−Ala−Leu(配列番号3)テトラペプチドおよびHEMA(ヒドロキシルエチルメタクリラート)との結合体を調製する。
[A.Ala−Leu−Ala−Leu−HEMAの調製]
Fmoc−Ala−Leu−Ala−Leuは、標準的な固相ペプチド合成プロトコルを用いて調製される(W.C.ChanおよびP.D.WhiteによるFmoc Solid Phase Peptide Synthesis,Oxford university press,2004を参照)。Fmoc−Ala−Leu−Ala−Leu(2mmol)を、20mLのジクロロメタン中で、反応が完了に達する(HPLC)までHEMA(2mmol)およびジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)と反応させる。反応の後、Fmoc−Ala−Leu−Ala−Leuは、沈殿またはクロマトグラフィによって精製される。続いて、Fmoc基は有機塩基による処理によって切断することができ、得られるAla−Leu−Ala−Leu−HEMAはクロマトグラフィによって単離および精製される。
[B.還元的アミノ化]
実施例3のステップBで調製されるヒアルロン酸アルデヒド(4.7g、0.5mmol)を100mLの0.05Mホウ酸緩衝液(pH=8.5)中に溶解させる。この溶液に、Ala−Leu−Ala−Leu−HEMA(1mmol)を添加した後、NaCNBH(0.2g、3.2mmol)を添加する。反応混合物を周囲温度で60時間攪拌し、次に真空中で濃縮する。得られた湿った固体材料にエタノール(100mL)を添加し、次に粗生成物をろ過により単離する。透析膜を用いて過剰なAla−Leu−Ala−Leu−HEMAおよび無機塩を除去し、精製した生成物を凍結乾燥により単離する。生成物は、400MHzのH−NMRによって特徴付けられる。
[実施例5:涙液による他の合成ペプチドの切断]
実施例1で実証されるように、メタロエンドペプチダーゼおよびセリンエンドペプチダーゼは、涙液中で活性であり得る。ヒト角膜では、上皮細胞、間質細胞および好中球によって、いわゆるマトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)が分泌される。特に、MMP1、2、8、9および13が涙液中で検出されている(de Souza et al.,Genome Biology 2006,7:R72、Ollivier et al.,Veterinary Ophthalmology(2007)10,4,199−206、Balasubramanian et al.,Clin Exp Optom 2013;96:214−218、Zhou et al.,Journal of Proteomics 75(2012)3877−3885)。ドライアイを患っている個人に関して、MMP−9レベルの上昇が記録されることは注目すべきである(Acera et al.,Ophthalmic Res 2008;40(6):315−321)。種々のMMPは、Ala、LeuおよびPheなどの疎水性アミノ酸を含むペプチド結合を好んで切断するが、その基質特異性はかなり広範囲の位置で付与されると思われ、従って特定のMMPによる切断は予測するのが困難であることが分かっている。
さらに、セリンエンドプロテアーゼが涙液中で検出されている。後者のエンドプロテアーゼ群は、トリプシン様およびエラスターゼ様活性に細分することができる。トリプシン様エンドプロテアーゼトリプターゼはマスト細胞によって放出され(Butrus et al.,Ophthalmology,1990,Vol97,No12,pp1678−1683)、ArgまたはLysのような荷電塩基性残基を含むペプチド結合の切断を好むことが分かっている。エラスターゼ様活性は白血球エラスターゼおよびミエロブラスチンを含み(de Souza et al.,Genome Biology 2006,7:R72)、Ala、ValおよびSerのような小さい脂肪族残基の後のペプチド結合の切断を好むことが分かっているが、IleおよびLeuのようなより大きい残基の後の切断も可能である。
この実施例において、本発明者らは、2つのわずかに異なる合成ペプチドに対する涙液の切断活性を試験した。第1のペプチドは、トリプシン様エンドプロテアーゼによる切断を容易にするために、荷電塩基性残基としてArgを含む(Ala−Ala−Pro−Arg−Ala−Ala−Arg−Gln、AAPRAARQ(配列番号4))。第2のペプチドは、エラスターゼ様エンドプロテアーゼによる切断を容易にするために、Argの代わりに中間サイズの脂肪族疎水性残基Valを含む(Ala−Ala−Pro−Val−Ala−Ala−Arg−Gln、AAPVAARQ(配列番号5))。本質的に実施例2に記載される通りに実験を行ったが、この場合、4つの異なる個人の涙液を入手し、摂氏25度で165時間インキュベートした。この場合もインキュベーション液のサンプルを質量分析にかけた。
全く予想外に、2つのペプチドはどちらも、ArgまたはValの後のエンド型タンパク質分解性切断に由来し得る断片を生じなかった。ArgおよびLysのような見かけ上荷電した塩基性残基または中間サイズの脂肪族疎水性残基Valは、涙液による急速なペプチド切断を支持することに対する関連性が低いことが暗示される。それにもかかわらず、ペプチドは両方とも、タンパク質分解性の分解に対して感受性がある。図2に示されるように、Pro−Valペプチド結合のいくつかの切断が生じ、プロリン特異的エンドプロテアーゼの活性を示す。さらに、データは、使用される両方のペプチドから、インキュベーション中にN末端Ala残基が除去されることを示す。このようなエキソ型タンパク質分解活性は、涙液中のアミノペプチダーゼ活性(EC3.4.11)の存在を示唆する。しかしながら、潤滑剤−ペプチド−モノマー結合体において、ペプチドのアミノ末端は潤滑剤によってブロックされるため、この活性は本発明のために全く役に立たない。
[実施例6:多糖類−ペプチド−レンズモノマー結合体の調製]
ペプチドのレンズモノマーへのカップリング、およびその後の、このペプチド−レンズモノマー結合体の適切な潤滑剤化合物へのカップリングの実現可能性を実証するために、ヒアルロン酸と、NH−Leu−Leu−Leu−Ala−Ala−Gly(配列番号6)ヘキサペプチドおよびHEMA(ヒドロキシエチルメタクリラート)との結合体を調製した。
[A.Leu−Leu−Leu−Ala−Ala−Gly−HEMAの調製]
Fmoc−Leu−Leu−Leu−Ala−Ala−Glyを、標準的な固相ペプチド合成プロトコルを用いて調製した(W.C.ChanおよびP.D.WhiteによるFmoc Solid Phase Peptide Synthesis,Oxford university press,2004を参照)。40mLのN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)中のFmoc−Leu−Leu−Leu−Ala−Ala−Gly(2.0g、2.6mmol)、HEMA(3.20mL、25.0mmol)、4−ジメチルアミノピリジン(DMAP、0.04g、0.3mmol)およびジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC、0.60g、2.9mmol)の溶液を0℃で1時間攪拌し、周囲温度でさらに16時間攪拌した。その時間の間に、反応は完了まで到達した(HPLC、Fmoc−Leu−Leu−Leu−Ala−Ala−Glyの完全転換)。続いて、ピペリジン(4.0mL)を添加し、反応混合物を周囲温度でさらに1時間攪拌した。得られた反応混合物を激しく攪拌しながら160mLのn−ヘプタン/メチル−tert−ブチルエーテル1:1(v/v)中に注ぎ、生成物の沈殿を生じさせた。この生成物を遠心分離し、得られた固体を160mLのn−ヘプタン/メチル−tert−ブチルエーテル1:1(v/v)中で激しく攪拌し、もう一度遠心分離した。得られた固体を20mLのアセトニトリル/水4:1(v/v)中に溶解させ、凍結乾燥して、1.0gの粗NH−Leu−Leu−Leu−Ala−Ala−Gly−HEMAが得られ、これを分取HPLCにより精製して、0.11gの純粋なNH−Leu−Leu−Leu−Ala−Ala−Gly−HEMAを得た。H−NMRにより化合物の同一性を確認し、他の成分は見られなかった。
[B.還元的アミノ化]
精製したNH−Leu−Leu−Leu−Ala−Ala−Gly−HEMA(50mg、0.07mmol)を、10mLのTHFおよび10mLの0.05Mのホウ酸緩衝液(pH=8.5)の混合物中に溶解させた。実施例3のステップBで調製されたヒアルロン酸アルデヒド(0.5g、0.05mmol)をこの混合物に添加した後、NaCNBH(40mg、0.6mmol)を添加した。反応混合物を周囲温度で72時間攪拌し、続いて真空中で濃縮した。得られた湿った固体材料にエタノール(100mL)を添加し、次に生成物をろ過により単離した。LC−MS分析は、得られた生成物中にNH−Leu−Leu−Leu−Ala−Ala−Gly−HEMAが存在しないことを示した。生成物は、300MHzのH−NMR(DSMO−d)によって特徴付けた。メタクリラート(metacrylate)プロトン(6.1および5.7ppm)の積分、およびヒアルロン酸CH−アセチルプロトン(1.92ppm)との比較によって、得られた生成物は40%のヒアルロン酸−ペプチド−HEMA結合体および60%の未反応ヒアルロン酸からなることが推定された。
[実施例7:涙液に媒介されるヒアルロン酸−ペプチド−モノマー結合体からのヒアルロン酸の放出]
結合体のヒアルロン酸部分サイズが大きくかつ非相同的である結果として、ペプチド加水分解によるその放出は実証するのが困難である。この実験的な困難に対処するために、本発明者らは、適切なタンパク質分解活性へさらされたときにヒアルロン酸−ペプチド−HEMA結合体からの放出が予想され得るペプチド−HEMA断片の同定に焦点を合わせることにした。実施例2および5で蓄積されたペプチドの加水分解データに基づいて、ペプチドLeu−Leu−Leu−Ala−Ala−Gly(LLLAAG)を合成し、ヒアルロン酸−ペプチド−HEMA結合体(実施例6)を調製するために使用した。次に、ペプチド−HEMA断片の形成を実証する目的で、ヒトエラスターゼ調製物(実施例2を参照)と共に、かつ5人の個人の凍結乾燥したコンタクトレンズすすぎ液と共に、得られた結合体をインキュベートした。
[実験]
[すすぎ液の採取]
5人の個人(2人はハードレンズを着用、3人はソフトレンズを着用)から、複数日にわたって就業日の最後にすすぎ液を採取した。無菌ニトリルグローブを用いてレンズを採取し、Grace Bio−labs Press−to−SealシリコーンアイソレータNo PSA(Sigma Aldrich GBL664504−25EA)を含有する平面ガラス顕微鏡スライド(Thermo Scientific)上で、200μlのMilliQ水ですすいだ。Maxymum Recoveryピペットチップ(Axygen scientific)を用いて、すすぎ液をProtein LoBind Tube 2,0ml(Eppendorf)に移した。すすぎ液をできるだけすぐに−80℃で凍結した。各個人に対して1.5mlよりも多いすすぎ液を採取した場合は、すすぎ流体を一晩凍結乾燥した。
[エラスターゼによる純粋なLLLAAGペプチドの切断の試験]
LLLAAGペプチドを50mMの酢酸アンモニウム緩衝液1mg/ml中に溶解させた。この溶液を50mMの酢酸アンモニウム緩衝液中で100×に希釈した。エラスターゼ(E7885−5mg、Sigma Aldrich)を50mMの酢酸アンモニウム緩衝液0.3mg/ml中に溶解させた。10μlのこのエラスターゼ溶液を500μlの希釈ペプチド溶液に添加した。サンプルを室温で一晩インキュベートしてから、質量分光(MS)分析にかけた。
MS分析は、LTQ−Orbitrap Fourier Transform Mass Spectrometer(Thermo Fisher,Bremen,Germany)において100μlのアリコートのサンプルの10μl/分の注入によって時間内に実施した。MS分析は、150〜2000m/zの質量範囲を用いて分解能7500で走査するOrbitrapにおいて実施し、各実験の前に機器を較正して、2ppm未満の質量精度の正確な質量測定を保証した。XCaliburソフトウェア(Thermo Fisher,Bremen,Germany)においてQualブラウザーを用いて、MSデータの手動検査により切断を研究した。得られたデータは、ブランクインキュベーションにおいて、インタクトな前駆体ペプチドのみが検出され得ることを示す(図3)。エラスターゼによるインキュベーションにおいて、前駆体ペプチドLeu−Leu−Leu−Ala−Ala−Gly(LLLAAG)は断片Leu−Leu−Leu−Ala(LLLA)に変換され、これにより、エラスターゼが新しく設計されたペプチドを切断可能であることが確認された。
[結合体生成物のLC−MS分析]
ヒアルロン酸−ペプチド−HEMA結合体は質量があまりに非相同的であるため、MSにより直接検出することができない。また、ペプチドおよびペプチド断片の検出は、結合体の存在下では、抑制効果のために問題が多い。従って、残存する結合体および形成されたペプチド−HEMA断片の分離を可能にするためにLC−MS法を開発しなければならなかった。
結合体(実施例6)を50mMの酢酸アンモニウム緩衝液中に0.2mg/mlで溶解させ、LC−MSシステムにおいて25μlの注入により分析した。LC−MSシステムは、LTQ−Orbitrap Fourier Transform Mass Spectrometerに連結されたAccela UHPLC(Thermo Fisher,Bremen,Germany)で構成した。使用したカラムは、ZORBAX Rapid Resolution HT SB−C18、2.1×50mm、1.8μm(Agilent 827700−902)であった。オートサンプラーは、サンプルのインキュベーションのために35℃に設定し、カラムオーブンは50℃に設定した。サンプル中の分析物は、0.8ml/分の流量を用いて分離し、以下のグラジエントを使用した:0〜0.2分2.5%B、0.2〜2分2.5〜30%B、2〜2.5分30〜80%B、2.5〜3分80%B、3.01〜5分2.5%B。ここで、緩衝液Aは水中に0.1%のギ酸(Biosolve、LC−MSグレード)であり、緩衝液Bはアセトニトリル中に0.1%のギ酸である(Biosolve、LC−MSグレード)。MSは、分解能7500、m/z150〜800で走査した。インキュベーションはオートサンプラーにおいて実施し、ブランク注入は、各ランの合間に実施した。コンタクトレンズすすぎ液を少しも含まない結合体のブランクインキュベーションは、ヒトエラスターゼ調製物による結合体のインキュベーションと同様に、リファレンスとして一緒に実施した。
結合体をエラスターゼと共にインキュベートすると、予想されるAG−HEMA断片の形成が示され、AGは、上記のLeu−Leu−Leu−Ala(LLLA)断片に対する相補的なペプチド部分である(データは示されない)。
凍結乾燥したコンタクトレンズすすぎ液による結合体のインキュベーションは、種々のペプチド−HEMA断片の形成をもたらした。図4のパネルBは、単一の個人のコンタクトレンズすすぎ液によって生じるペプチド−HEMA断片の、その正確な質量に基づいたモニタリングを示す。MS/MS実験を実施して、これらのペプチド−HEMA断片の同一性を確認した。並行して実施した、凍結乾燥したコンタクトレンズすすぎ液を含まない結合体のブランクインキュベーションは任意のペプチド−HEMA断片が存在しないことを示し(図4、パネルA)、これにより、このような断片を形成するためにすすぎ液が必要であることが実証された。他の4人の個人のすすぎ液は、第1の個人のすすぎ液によって形成されるものと同一のペプチド−HEMA断片セットの形成をもたらし、種々のペプチド断片の比率のみが人によって異なることに気付くことが重要である。
総合するとこれらのデータは、ソフトまたはハードコンタクトレンズのいずれかから得られたコンタクトレンズすすぎ液が、ヒアルロン酸−ペプチド−HEMA結合体のペプチドを切断できることを示す。ペプチド切断の結果、ヒアルロン酸が結合体から遊離されるため、ヒアルロン酸は涙液内で自由に利用できるようになり、眼の不快感を軽減するのに役立つであろう。

Claims (30)

  1. 潤滑剤に連結されたペプチドを含む組成物であって、前記ペプチドが涙液中に存在する1つまたは複数のプロテイナーゼによって切断可能である組成物。
  2. コーティング組成物である、請求項1に記載の組成物。
  3. 前記潤滑剤がヒアルロン酸、セルロース誘導体、デキストラン、高分子アルコール、ポリビニルアルコールまたはポビドン(ポリビニルピロリドン)である、請求項1または2に記載の組成物。
  4. 前記潤滑剤が200Da〜2MDaの分子量を有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
  5. 前記ペプチドリンカーが涙液中に存在するセリンプロテイナーゼまたはメタロプロテイナーゼによって切断可能である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
  6. 前記ペプチドが、アミノ酸残基Ala、Ile、Leu、Phe、Asn、Gln、Pro、GlyまたはValのいずれか1つを含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物。
  7. 前記ペプチドが、Ala、Leu、Gln、ProおよびGlyのアミノ酸残基のいずれか1つを含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の組成物。
  8. アミノ酸配列Leu−Ala−Leu−Leu−Ala(配列番号1)またはLeu−Leu−Leu−Ala−Ala−Gly(配列番号6)を含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の組成物。
  9. コンタクトレンズの製造において使用するのに適したモノマー、マクロマーまたはプレポリマーに連結される、請求項1〜8のいずれか一項に記載の組成物。
  10. 重合性ビニル基を含む、請求項9に記載の組成物。
  11. 請求項1〜10のいずれか一項に記載の組成物を含む、涙液と接触するコンタクトレンズまたは眼球インプラント。
  12. 予備成形コンタクトレンズと、
    − その上にコーティングされた請求項1〜8のいずれか一項に記載の組成物、または
    − 請求項9または10に記載の組成物と
    を含む、涙液と接触するコンタクトレンズまたは眼球インプラント。
  13. 前記予備成形コンタクトレンズがヒドロゲル材料で構成される、請求項11または12に記載のコンタクトレンズ。
  14. シリコーンヒドロゲル材料を含むシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズである、請求項13に記載のコンタクトレンズ。
  15. 前記予備成形コンタクトレンズの上であるが、請求項1〜8のいずれか一項に記載の組成物の下方にベースコーティングをさらに含む、請求項11〜14のいずれか一項に記載のコンタクトレンズ。
  16. 前記組成物が前記ベースコーティングに共有結合される、請求項15に記載のコンタクトレンズ。
  17. 前記ベースコーティングが高分子コーティング材料を含む、請求項15または16に記載のコンタクトレンズ。
  18. 前記予備成形コンタクトレンズの上であるが、請求項1〜8のいずれか一項に記載の組成物の下方にプラズマコーティングをさらに含む、請求項12〜17のいずれか一項に記載のコンタクトレンズ。
  19. 使い捨てコンタクトレンズである、請求項11〜18のいずれか一項に記載のコンタクトレンズ。
  20. 涙液中に存在する1つまたは複数のプロテイナーゼによって切断可能なペプチドを潤滑剤に連結するステップと、任意選択で、得られたペプチド−潤滑剤結合体を、コンタクトレンズの製造において使用するのに適したモノマー、マクロマーまたはプレポリマーに連結するステップとを含む、組成物の製造方法。
  21. 涙液中に存在する1つまたは複数のプロテイナーゼによって切断可能なペプチドを、コンタクトレンズの製造において使用するのに適したモノマー、マクロマーまたはプレポリマーに連結するステップと、得られたペプチド−モノマー、ペプチド−マクロマーまたはペプチド−プレポリマー結合体を潤滑剤に連結するステップとを含む、組成物の製造方法。
  22. 前記潤滑剤がヒアルロン酸、セルロース誘導体、デキストラン、高分子アルコール、ポリビニルアルコールまたはポビドン(ポリビニルピロリドン)である、請求項20または21に記載の方法。
  23. − 予備成形コンタクトレンズを提供するステップと、
    − 請求項1〜8のいずれか一項に記載の組成物を前記コンタクトレンズにコーティングするステップと
    を含む、コンタクトレンズの製造方法。
  24. − 請求項9または10に記載の組成物の存在下で予備成形コンタクトレンズを調製するステップ
    を含む、コンタクトレンズの製造方法。
  25. − 請求項20〜22のいずれか一項に記載の組成物を調製し、および得られた組成物の存在下で予備成形レンズを調製するステップ
    を含む、コンタクトレンズの製造方法。
  26. コンタクトレンズの製造において使用するのに適したモノマー、マクロマーまたはプレポリマーと、涙液中に存在する1つまたは複数のプロテイナーゼによって切断可能なペプチドとを含む組成物。
  27. 前記モノマー、マクロマーまたはプレポリマーが重合性ビニル基を含む、請求項26に記載の組成物。
  28. 請求項26または27に記載の組成物を含む、涙液と接触するコンタクトレンズまたは眼球インプラント。
  29. 前記ペプチドを介して前記コンタクトレンズに潤滑剤が連結される、請求項28に記載のコンタクトレンズ。
  30. − 請求項26または27に記載の組成物の存在下で予備成形コンタクトレンズを調製するステップと、
    − このようにして形成された前記予備成形コンタクトレンズに、前記ペプチドを介して潤滑剤を連結するステップと
    を含む、コンタクトレンズの製造方法。
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