可溶性ピロリン酸第二鉄(SFP)の投与により、CKD−HD患者の絶対的及び機能的鉄欠乏をともに克服することができる。SFP−鉄がアポトランスフェリンに直接結合し、これによりSFP−鉄を直接骨髄に送達し、RESを回避する(Gupta et al.J Am Soc Nephrol 2010;21(Renal Week 2010 Abstract Supplement):429A,2010)。本明細書に、SFPが、ESAへの反応性が低下している透析患者を治療するために必要なESAの量を有意に減少させることを示している。本発明は、ESA治療への反応性が低下している透析患者を治療する方法を提供し、SFPを服用していないESAへの反応性が低下している透析患者と比べて少なくとも50%ESAの用量を減少させることを含む。
「ESA治療への反応性低下または耐性」は、特定のHgb範囲内のHgbレベルを維持するのに必要なESA用量が有意に増加している状態、または一定のESA用量でHgb濃度が有意に減少している状態、または150IU/kg/週超のエリトロポエチンまたは0.75mg/kg/週のダルベポエチン−αと等量であるESA用量にもかかわらず、目標の範囲にHgbレベルが上昇していない状態、または目標のHgbレベルを維持するのに高用量のESAが継続して必要である状態と定義される。例えば、CDK患者の約5〜10%が、ESAへの反応性低下を示す。これは、皮下経路により投与される1週間当たり300IU/kg超のエリトロポエチンまたは1週間当たり1.5mug/kg超のダルベポエチンを継続して必要としていると定義される(Johnston et al.,Nephrology.2007 Aug;12(4):321−30)。実施例1及び2に記載した臨床試験では、比較的ESAへの反応性が低下しているグループである試験患者の約20%は、試験の開始時に1週間当たり13,000単位超のESAを服用していた(注:ESA用量が1週間当たり45,000単位を越える患者は、試験から除外した)。
本発明は、ESAへの反応性が低下している透析患者を治療する方法であって、(a)前記患者にSFP組成物を投与すること、及び(b)前記患者にESAへの反応性が低下しており、SFPを服用していない透析患者が必要とするESAの用量より少なくとも50%少ないESAの用量を投与することを含む前記方法を提供する。
また、本発明は、ESAへの反応性が低下している透析患者のESAの用量を減少させる方法であって、(a)前記患者にSFP組成物を投与すること、及び(b)SFP投与後、前記患者にESAへの反応性が低下しており、SFPを服用していない透析患者が必要とするESAの用量より少なくとも50%少ないESAの用量を投与することを含む前記方法を提供する。
また、本発明は、ESAへの反応性が低下している透析患者の鉄欠乏を治療する方法、または、予防する方法であって、(a)前記患者にSFP組成物を投与すること、及び(b)前記患者にESAへの反応性が低下しており、SFPを服用していない透析患者が必要とするESAの用量より少なくとも50%少ないESAの用量を投与することを含む前記方法を提供する。
本発明のいずれかの方法では、SFPの用量は、筋肉内、皮下、静脈内、皮内、経皮、経口腔、経口、舌下、腹膜内からなる群から選択される非経口的経路を介して、透析液を介して、血液透析と組み合わせてまたは腹膜透析と組み合わせて投与される。SFPの用量は、鉄欠乏または貧血を効果的に治療または予防する用量とすることができ、例えば、目標のヘモグロビンレベルに達する、または維持するように透析患者を治療するのに必要なSFPの用量とすることができる。任意で、本明細書に記載したこれらの方法、使用または用いられる組成物のいずれも、静脈内に投与される鉄の用量を減少させるステップをさらに含むことができる。
「経口デリバリー」は、口によりSFPの用量などの治療薬剤を投与することを指し、消化器吸収される。「非経口的デリバリー」は、例えば、静脈内、皮下、筋肉内、皮内、経皮、経口腔、舌下または腹膜内経路を介して、注射または点滴により、SFPの用量などの治療薬剤を投与することを指す。非経口的デリバリーは、血液透析溶液に添加される(または組み合わせる)場合の血液透析を介した投与、腹膜透析溶液に添加される(または組み合わせる)場合の腹膜透析を介した投与、または非経口的栄養混合物に添加される場合の非経口的栄養混合物と組み合わせた投与も含む。
本発明は、エリトロポエチン刺激剤(ESA)への反応性が低下している透析患者の治療に用いられるSFPの組成物を提供する。この患者の部分集団の治療が、期せずして、一般の透析集団と比べてESAを減らす良い結果となった。
本発明は、エリトロポエチン刺激剤(ESA)への反応性が低下している透析患者を治療するのに用いられるSFPの組成物を提供し、SFPの用量は、ESAへの反応性が低下しており、SFPを服用していない透析患者が必要とするESAの用量より少なくとも50%少なくし、患者に投与するESAの用量を減少させるのに効果的である。
本発明は、また、ESAへの反応性が低下している透析患者のESAの用量を減少させるのに用いられるSFPの組成物を提供し、SFPの用量は、ESAへの反応性が低下しており、SFPを服用していない透析患者が必要とするESAの用量より少なくとも50%少なくし、患者に投与するESAの用量を減少させるのに効果的である。
本発明は、また、ESAへの反応性が低下している透析患者の鉄欠乏を治療または予防するのに用いられるSFPの組成物を提供し、ESAの用量は、ESAへの反応性が低下しており、SFPを服用していない透析患者が必要とするESAの用量より少なくとも50%少なくし、患者に投与するESAの用量を減少させるのに効果的である。
本発明は、ESAへの反応性が低下している透析患者の治療のための薬剤の調製のためにSFPの使用をもたらす。いくつかの実施形態では、SFPは、ESAへの反応性が低下しており、SFPを服用していない透析患者が必要とするESAの用量より少なくとも50%少なくし、患者に投与するESAの用量を減少させるのに効果的である。
本発明は、ESAへの反応性が低下している透析患者の用量を減少させるための薬剤の調製のためにSFPの使用をもたらし、SFPは、ESAへの反応性が低下しており、SFPを服用していない透析患者が必要とするESAの用量より少なくとも50%少なくし、患者に投与するESAの用量を減少させるのに効果的な用量である。
本発明は、また、ESAへの反応性が低下している透析患者の鉄欠乏の治療または予防のための薬剤の調製のためにSFPの使用をもたらし、SFPは、ESAへの反応性が低下しており、SFPを服用していない透析患者が必要とするESAの用量より少なくとも50%少なくし、患者に投与するESAの用量を減少させるのに効果的な用量である。
前記方法、使用または組成物のいずれかでは、SFPの用量が、ヘパリンなどの他の薬剤または非経口的栄養混合物もしくは透析溶液と組み合わせて投与される。
前記方法、使用または組成物のいずれかでは、SFP投与後、ESAへの反応性が低下している透析患者に投与されるESAの用量が、ESAへの反応性が低下しており、SFPを服用していない透析患者が必要とするESAの用量より少なくとも50%少なく、用量が、ESAへの反応性が低下しており、SFPを服用していない透析患者が必要とするESAの用量より少なくとも55%少なく、用量が、ESAへの反応性が低下しており、SFPを服用していない透析患者が必要とするESAの用量より少なくとも60%少なく、用量が、ESAへの反応性が低下しており、SFPを服用していない透析患者が必要とするESAの用量より少なくとも65%少なく、用量が、ESAへの反応性が低下しており、SFPを服用していない透析患者が必要とするESAの用量より少なくとも70%少なく、用量が、ESAへの反応性が低下しており、SFPを服用していない透析患者が必要とするESAの用量より少なくとも75%少なく、用量が、ESAへの反応性が低下しており、SFPを服用していない透析患者が必要とするESAの用量より少なくとも80%少なく、用量が、ESAへの反応性が低下しており、SFPを服用していない透析患者が必要とするESAの用量より少なくとも85%少なく、用量が、ESAへの反応性が低下しており、SFPを服用していない透析患者が必要とするESAの用量より少なくとも90%少なく、または、用量が、ESAへの反応性が低下しており、SFPを服用していない透析患者が必要とするESAの用量より少なくとも95%少ない。
また、前記方法、使用または組成物のいずれかでは、SFP投与後、ESAへの反応性が低下している透析患者に投与されるESAの用量が、ESAへの反応性が低下しており、SFPを服用していない透析患者が必要とするESAの用量より約50%〜約95%少ない範囲にあり、または、ESAへの反応性が低下しており、SFPを服用していない透析患者が必要とするESAの用量より約50%〜約90%少ない範囲にあり、または、ESAへの反応性が低下しており、SFPを服用していない透析患者が必要とするESAの用量より約50%〜約85%少ない範囲にあり、または、ESAへの反応性が低下しており、SFPを服用していない透析患者が必要とするESAの用量より約50%〜約80%少ない範囲にあり、または、ESAへの反応性が低下しており、SFPを服用していない透析患者が必要とするESAの用量より約50%〜約75%少ない範囲にあり、または、ESAへの反応性が低下しており、SFPを服用していない透析患者が必要とするESAの用量より50%〜約70%少ない範囲にあり、または、ESAへの反応性が低下しており、SFPを服用していない透析患者が必要とするESAの用量より約50%〜約65%少ない範囲にあり、または、ESAへの反応性が低下しており、SFPを服用していない透析患者が必要とするESAの用量より50%〜約60%少ない範囲にあり、または、ESAへの反応性が低下しており、SFPを服用していない透析患者が必要とするESAの用量より約60%〜約95%少ない範囲にあり、または、ESAへの反応性が低下しており、SFPを服用していない透析患者が必要とするESAの用量より約60%〜約90%少ない範囲にあり、または、ESAへの反応性が低下しており、SFPを服用していない透析患者が必要とするESAの用量より約60%〜約85%少ない範囲にあり、または、ESAへの反応性が低下しており、SFPを服用していない透析患者が必要とするESAの用量より約60%〜約80%少ない範囲にあり、または、ESAへの反応性が低下しており、SFPを服用していない透析患者が必要とするESAの用量より約60%〜約75%少ない範囲にあり、または、ESAへの反応性が低下しており、SFPを服用していない透析患者が必要とするESAの用量より60%〜約70%少ない範囲にあり、または、ESAへの反応性が低下しており、SFPを服用していない透析患者が必要とするESAの用量より約70%〜約95%少ない範囲にあり、または、ESAへの反応性が低下しており、SFPを服用していない透析患者が必要とするESAの用量より約70%〜約90%少ない範囲にあり、または、ESAへの反応性が低下しており、SFPを服用していない透析患者が必要とするESAの用量より約70%〜約85%少ない範囲にあり、または、ESAへの反応性が低下しており、SFPを服用していない透析患者が必要とするESAの用量より約70%〜約80%少ない範囲にあり、ESAへの反応性が低下しており、SFPを服用していない透析患者が必要とするESAの用量より約75%〜約95%少ない範囲にあり、または、ESAへの反応性が低下しており、SFPを服用していない透析患者が必要とするESAの用量より約75%〜90%少ない範囲にあり、または、ESAへの反応性が低下しており、SFPを服用していない透析患者が必要とするESAの用量より約75%〜約85%少ない範囲にあり、または、ESAへの反応性が低下しており、SFPを服用していない透析患者が必要とするESAの用量より約75%〜約80%少ない範囲にあり、ESAへの反応性が低下しており、SFPを服用していない透析患者が必要とするESAの用量より約80%〜約95%少ない範囲にあり、または、ESAへの反応性が低下しており、SFPを服用していない透析患者が必要とするESAの用量より約80%〜約90%少ない範囲にあり、または、ESAへの反応性が低下しており、SFPを服用していない透析患者が必要とするESAの用量より約80%〜約85%少ない範囲にあり、または、ESAへの反応性が低下しており、SFPを服用していない透析患者が必要とするESAの用量より約90%〜約95%少ない範囲にあり、または、ESAへの反応性が低下しており、SFPを服用していない透析患者が必要とするESAの用量より約90%〜98%少ない範囲にある。
本発明は、また、貧血の透析患者、好ましくはESAへの反応性が低下している透析患者、または貧血でない透析患者の鉄欠乏を治療及び/または予防することを意図する。これらの方法は、治療有効用量のSFPを投与することを含む。鉄欠乏貧血の患者では、治療有効用量のSFPが、血清鉄などの鉄状態のマーカー、トランスフェリン飽和度、網赤血球ヘモグロビン、血清フェリチン、網赤血球数、及び全血ヘモグロビンを増加または安定させ、同時に、患者がESA投与の候補者である場合、ESAの必要性を減少させる、または除去する。さらに、治療有効用量は、全血または赤血球濃厚液または代用血液の輸血の必要性を減少させる、または除去する。鉄欠乏の非貧血性患者では、鉄欠乏性貧血の患者と同様に、治療有効用量のSFPが疲労を減少させ、身体及び認知能力を増加させ、運動耐性を改善する。貧血の鉄欠乏患者または貧血でない鉄欠乏患者が、下肢不安症候群(RLS)を患っている場合、治療有効用量のSFPが、RLSの臨床症状を減少させるまたは除去する。
透析患者は、鉄欠乏となるリスクがあり、それゆえに貧血を発症するリスクがある。貧血性の対象がHgbレベルを減少させ、本発明の方法、組成物及び使用は、貧血を患っている、または、貧血を予防するために治療している透析患者のHgbレベルを増加させるのに有効な用量のSFPを投与することができる。例えば、投与されるSFPの用量は、対象の組織を適切に酸化させるのに十分となるようにHgbレベルを増加させる、または貧血性の対象の組織の酸化を改善する。好ましくは、投与されるSFPの用量が、対象のHgbレベルを9〜10g/dL以上に増加させる、または維持する。これにより、血液輸血の必要性が減少し、疲労が減少し、身体及び認知機能が改善し、心臓血管機能が改善し、運動耐性が改善し、生活の質が向上する。例えば、Hgbレベルを、9〜10g/dLの範囲の目標レベル、9g/dL〜11g/dLの範囲の目標レベル、9g/dL〜12g/dLの範囲の目標レベル、9g/dL〜14g/dLの範囲の目標レベル、10g/dL〜14g/dLの範囲の目標レベル、または12g/dL〜14g/dLの範囲の目標レベルに増加させる、または維持する。
前記方法、使用または組成物のいずれかでは、投与するSFPの用量は、少なくとも約9g/dL、少なくとも約10g/dL、少なくとも約11g/dL、少なくとも約12g/dL、少なくとも約13g/dL、少なくとも約14g/dL、約9〜11g/dL、約9〜12g/dLまたは約9〜14g/dLの目標レベルにHgbを増加させる、または維持するのに有効なものとすることができる。
本発明のひとつの態様では、前記方法、使用または組成物のいずれかのためのSFPの用量は、90μg/Lの透析液〜150μg/Lの透析液の範囲の鉄用量、または、90μg/Lの透析液〜140μg/Lの透析液の範囲の用量、または、90μg/Lの透析液〜130μg/Lの透析液の範囲の用量、または、90μg/Lの透析液〜120μg/Lの透析液の範囲の用量、または、90μg/Lの透析液〜110μg/Lの透析液の範囲の用量、または、90μg/Lの透析液〜105μg/Lの透析液の範囲の用量、または、105μg/Lの透析液〜115μg/Lの透析液の範囲の用量、または、105μg/Lの透析液〜110μg/Lの透析液の範囲の用量、または、105μg/Lの透析液〜120μg/Lの透析液の範囲の用量、または、105μg/Lの透析液〜130μg/Lの透析液の範囲の用量、または、105μg/Lの透析液〜140μg/Lの透析液の範囲の用量、または、105μg/Lの透析液〜150μg/Lの透析液の範囲の用量、または、110μg/Lの透析液〜150μg/Lの透析液の範囲の用量、または、110μg/Lの透析液〜140μg/Lの透析液の範囲の用量、または、110μg/Lの透析液〜130μg/Lの透析液の範囲の用量、または、110μg/Lの透析液〜120μg/Lの透析液の範囲の用量、または、110μg/Lの透析液〜115μg/Lの透析液の範囲の用量、または、112μg/Lの透析液〜150μg/Lの透析液の範囲の用量、または、112μg/Lの透析液〜140μg/Lの透析液の範囲の用量、または、112μg/Lの透析液〜130μg/Lの透析液の範囲の用量、または、112μg/Lの透析液〜120μg/Lの透析液の範囲の用量、または、112μg/Lの透析液〜118μg/Lの透析液の範囲の用量、または、112μg/Lの透析液〜115μg/Lの透析液の範囲の用量、または、115μg/Lの透析液〜150μg/Lの透析液の範囲の用量、または、115μg/Lの透析液〜140μg/Lの透析液の範囲の用量、または、115μg/Lの透析液〜130μg/Lの透析液の範囲の用量、または、115μg/Lの透析液〜120μg/Lの透析液の範囲の用量、または、120μg/Lの透析液〜150μg/Lの透析液の範囲の用量、または、120μg/Lの透析液〜140μg/Lの透析液の範囲の用量、または、120μg/Lの透析液〜130μg/Lの透析液の範囲の用量、または、120μg/Lの透析液〜125μg/Lの透析液の範囲の用量、または、130μg/Lの透析液〜150μg/Lの透析液の範囲の用量、または、130μg/Lの透析液〜140μg/Lの透析液の範囲の用量、または、140μg/Lの透析液〜150μg/Lの透析液の範囲の用量で、血液透析液を介して投与される。
本発明の例示的な態様では、SFPの用量は、前記方法、組成物または使用のいずれかのためのSFP−鉄の用量が1リットル当たり110μgまたは2μモルの血液透析液で投与される。また、本発明は、鉄SFPの用量が、約105μgFe/Lの透析液、約106μgFe/Lの透析液、約107μgFe/Lの透析液、約108μgFe/Lの透析液、約109μgFe/Lの透析液、約110μgFe/Lの透析液、約111μgFe/Lの透析液または約112μgFe/Lの透析液の用量で、透析液を介して投与される方法を提供する。
さらなる例では、ESAへの反応性が低下している透析患者に投与されるSFPの用量は、約105μgFe/Lの透析液〜約115μgFe/Lの透析液であり、SFP投与後、患者に投与されるESA用量は、SFPを服用していない同様の患者に投与されるより約50%〜85%少ない。
本発明のひとつの態様では、前記方法、組成物または使用のいずれかのためのSFPの用量は、1日当たり2.4mg〜48mgの鉄の範囲の用量で、1時間当たり0.1〜2mgの鉄の速度で、点滴を介して投与される。本発明のもうひとつの態様では、SFPの用量は、1日当たり2.4mg〜48mgの鉄の範囲の用量で、1時間当たり0.1〜2mgの鉄の速度で、静脈内注射を介して投与される。また、本発明は、前記方法のいずれかのために提供され、SFPの用量が、1日当たり2.4mg〜48mgの鉄の範囲の用量で、1時間当たり0.1〜2mgの鉄の速度で、循環に投与される。これらの方法、組成物または使用のいずれかでは、対象に投与される用量は、特定の投与経路を用いたSFPの生物学的利用度に基づいている。
さらに循環に点滴、静脈内注射またはデリバリーを介してSFP−鉄を投与するための例示的な用量範囲は、1時間当たり0.1〜2mgの速度で、1日当たり5mg〜48mgの範囲の用量、または1時間当たり.01〜2mgの速度で、1日当たり10mg〜48mgの範囲の用量、または1時間当たり.01〜2mgの速度で、1日当たり20mg〜48mgの範囲の用量、または1時間当たり.01〜2mgの速度で、1日当たり30mg〜48mgの範囲の用量、または1時間当たり.01〜2mgの速度で、1日当たり40mg〜48mgの範囲の用量、または1時間当たり1〜2mgの速度で、1日当たり2.4mg〜48mgの範囲の用量、または1時間当たり1〜2mgの速度で、1日当たり5mg〜48mgの範囲の用量、または1時間当たり1〜2mgの速度で、1日当たり10mg〜48mgの範囲の用量、または1時間当たり1〜2mgの速度で、1日当たり20mg〜48mgの範囲の用量、または1時間当たり1〜2mgの速度で、1日当たり30mg〜48mgの範囲の用量、または1時間当たり1〜2mgの速度で、1日当たり40mg〜48mgの範囲の用量、または1時間当たり0.5〜1mgの速度で、1日当たり2.4mg〜48mgの範囲の用量、または1時間当たり0.5〜1mgの速度で、1日当たり5mg〜48mgの範囲の用量、または1時間当たり0.5〜1mgの速度で、1日当たり10mg〜48mgの範囲の用量、または1時間当たり0.5〜1mgの速度で、1日当たり20mg〜48mgの範囲の用量、または1時間当たり.0.5〜1mgの速度で、1日当たり30mg〜48mgの範囲の用量、または1時間当たり0.5〜1mgの速度で、1日当たり40mg〜48mgの範囲の用量、1時間当たり0.1〜2mgの速度で、1日当たり2.4mg〜40mgの範囲の用量、または1時間当たり0.1〜2mgの速度で、1日当たり5mg〜40mgの範囲の用量、または1時間当たり.01〜2mgの速度で、1日当たり10mg〜40mgの範囲の用量、または1時間当たり.01〜2mgの速度で、1日当たり20mg〜40mgの範囲の用量、または1時間当たり.01〜2mgの速度で、1日当たり30mg〜40mgの範囲の用量、または1時間当たり.01〜2mgの速度で、1日当たり40mg〜40mgの範囲の用量、または1時間当たり1〜2mgの速度で、1日当たり2.4mg〜40mgの範囲の用量、または1時間当たり1〜2mgの速度で、1日当たり5mg〜40mgの範囲の用量、または1時間当たり1〜2mgの速度で、1日当たり10mg〜40mgの範囲の用量、または1時間当たり1〜2mgの速度で、1日当たり20mg〜40mgの範囲の用量、または1時間当たり1〜2mgの速度で、1日当たり30mg〜40mgの範囲の用量、1時間当たり0.5〜1mgの速度で、1日当たり2.4mg〜40mgの範囲の用量、または1時間当たり0.5〜1mgの速度で、1日当たり5mg〜40mgの範囲の用量、または1時間当たり0.5〜1mgの速度で、1日当たり10mg〜40mgの範囲の用量、または1時間当たり0.5〜1mgの速度で、1日当たり20mg〜40mgの範囲の用量、または1時間当たり.0.5〜1mgの速度で、1日当たり30mg〜40mgの範囲の用量、1時間当たり0.1〜2mgの速度で、1日当たり2.4mg〜30mgの範囲の用量、または1時間当たり0.1〜2mgの速度で、1日当たり5mg〜30mgの範囲の用量、または1時間当たり.01〜2mgの速度で、1日当たり10mg〜30mgの範囲の用量、または1時間当たり.01〜2mgの速度で、1日当たり20mg〜30mgの範囲の用量、または1時間当たり1〜2mgの速度で、1日当たり2.4mg〜30mgの範囲の用量、または1時間当たり1〜2mgの速度で、1日当たり5mg〜30mgの範囲の用量、または1時間当たり1〜2mgの速度で、1日当たり10mg〜30mgの範囲の用量、または1時間当たり1〜2mgの速度で、1日当たり20mg〜30mgの範囲の用量、1時間当たり0.5〜1mgの速度で、1日当たり2.4mg〜30mgの範囲の用量、または1時間当たり0.5〜1mgの速度で、1日当たり5mg〜30mgの範囲の用量、または1時間当たり0.5〜1mgの速度で、1日当たり10mg〜30mgの範囲の用量、または1時間当たり0.5〜1mgの速度で、1日当たり20mg〜30mgの範囲の用量、1時間当たり0.1〜2mgの速度で、1日当たり2.4mg〜20mgの範囲の用量、または1時間当たり0.1〜2mgの速度で、1日当たり5mg〜20mgの範囲の用量、または1時間当たり.01〜2mgの速度で、1日当たり10mg〜20mgの範囲の用量、または1時間当たり1〜2mgの速度で、1日当たり2.4mg〜20mgの範囲の用量、または1時間当たり1〜2mgの速度で、1日当たり5mg〜20mgの範囲の用量、または1時間当たり1〜2mgの速度で、1日当たり10mg〜20mgの範囲の用量、1時間当たり0.5〜1mgの速度で、1日当たり2.4mg〜20mgの範囲の用量、または1時間当たり0.5〜1mgの速度で、1日当たり5mg〜20mgの範囲の用量、または1時間当たり0.5〜1mgの速度で、1日当たり10mg〜20mgの範囲の用量、1時間当たり0.1〜2mgの速度で、1日当たり5mg〜10mgの範囲の用量、1時間当たり0.1〜2mgの速度で、1日当たり5mg〜10mgの範囲の用量、または1時間当たり1〜2mgの速度で、1日当たり2.4mg〜10mgの範囲の用量、または1時間当たり1〜2mgの速度で、1日当たり5mg〜10mgの範囲の用量、または1時間当たり0.5〜1mgの速度で、1日当たり2.4mg〜10mgの範囲の用量、1時間当たり0.5〜1mgの速度で、1日当たり5mg〜10mgの範囲の用量、または1時間当たり0.1〜2mgの速度で、1日当たり2.4mg〜5mgの範囲の用量、または1時間当たり0.5〜1mgの速度で、1日当たり2.4mg〜5mgの範囲の用量、1時間当たり1〜2mgの速度で、1日当たり2.4mg〜5mgの範囲の用量を含む。
前記方法、使用または組成物の方法のいずれかでは、投与されるSFPの用量は、透析患者のHgbレベルが、9g/dl以上、または少なくとも約10g/dL、または少なくとも約12g/dL、または少なくとも約14g/dLに達する、増加する、または、維持される。本発明の方法は、貧血性対象のHgbレベルを増加させる、または、維持する、その結果、血液輸血の必要性が減少する、または、なくなる。
本発明は、前記方法、組成物または使用のいずれかのために提供され、SFPは、ピロリン酸クエン酸キレートの形態であり、すなわち、シトレート及びピロホスフェートとキレート化または共有結合した鉄である。任意で、SFPは、7重量%〜11重量%の量の鉄、約14重量%〜30重量%の量のシトレート、及び少なくとも10重量%の量のピロリン酸を含む。さらに、SFPは、また、2%以下の量、または1%以下の量のホスフェートを含むことができる。
さらに、本発明は、前記方法、組成物または使用のいずれかのために提供され、SFPは、透析液を介して投与され、SFP投与後、静脈内に投与される鉄の用量は、SFP投与前の静脈内に投与される鉄の用量より少なくとも10%少なく、またはSFP投与前の静脈内に投与される鉄の用量より少なくとも12.5%少なく、またはSFP投与前の静脈内に投与される鉄の用量より少なくとも25%少なく、またはSFP投与前の静脈内に投与される鉄の用量より少なくとも30%少なく、またはSFP投与前の静脈内に投与される鉄の用量より少なくとも33%少なく、またはSFP投与前の静脈内に投与される鉄の用量より少なくとも50%少なく、またはSFP投与前の静脈内に投与される鉄の用量より少なくとも75%少なく、またはSFP投与前の静脈内に投与される鉄の用量より100%少ない。
本発明はまた、前記方法、組成物または使用のいずれかのために提供され、SFP投与後、静脈内に投与される鉄の用量は、SFP投与前の静脈内に投与される鉄の用量より少なくとも約10%少ない〜約50%少ない範囲にある、またはSFP投与前の静脈内に投与される鉄の用量より少なくとも約10%少ない〜約25%少ない範囲にある、またはSFP投与前の静脈内に投与される鉄の用量より少なくとも約25%少ない〜約50%少ない範囲にある、またはSFP投与前の静脈内に投与される鉄の用量より少なくとも約50%少ない〜約75%少ない範囲にある、またはSFP投与前の静脈内に投与される鉄の用量より少なくとも約75%少ない〜約100%少ない範囲にある、またはSFP投与前の静脈内に投与される鉄の用量より約10%少ない〜約100%少ない範囲にある、またはSFP投与前の静脈内に投与される鉄の用量より約25%少ない〜約100%少ない範囲にある。
本発明の前記方法、組成物または使用のいずれかでは、対象が、慢性腎疾患(任意でステージII、III、IVまたはV)を患っている可能性がある。
また、本発明は、前記方法、組成物または使用のいずれかのために提供され、対象が血液透析を受けている。
本発明はまた、前記方法、組成物または使用のいずれかのために提供され、対象が炎症による貧血を患っている。
本発明はまた、前記方法、組成物または使用のいずれかのために提供され、対象が感染、任意で慢性感染症を患っている。
さらに、本発明は、前記方法、組成物または使用のいずれかのために提供され、対象が、癌、心不全、自己免疫性疾患、鎌型赤血球症、地中海貧血、失血、輸血反応、糖尿病、ビタミンB12欠乏、膠原病性血管系疾患、シュワルツマン症候群、血小板減少性紫斑、セリアック病、エンドクリン欠乏状態、例えば、甲状腺機能低下またはアジソン病、自己免疫性疾患、例えば、クローン病、全身紅斑性狼瘡、リウマチ様関節炎または若年リウマチ様関節炎、潰瘍性大腸炎免疫不全症、例えば、好酸球性筋膜炎、低免疫グロブリン血症、または胸腺腫/胸腺癌腫、移植片対宿主病、前白血病、非血液学的症候群(ダウン症候群、デュボヴィッツ症候群、ゼッケル症候群)、フェルティ症候群、溶血尿毒症症候群、骨髄異形成症候群、夜間発作性血色素尿、骨骨髄線維症、汎血球減少症、赤芽球ろう、シェーンライン−ヘノッホ紫斑病、マラリア、タンパク質飢餓、月経過多症、全身硬化症、肝硬変、代謝低下状態、うっ血性心不全、慢性感染症、例えば、HIV/AIDS、結核、骨髄炎、B型肝炎、C型肝炎、エプスタインバーウイルスまたはパルボウイルス、T細胞白血病ウイルス、腸内細菌異常増殖症候群、真菌または寄生虫感染、及び/または赤血球膜障害、例えば、遺伝性球状赤血球症、遺伝性楕円赤血球症、遺伝性耐熱奇形赤血球症、遺伝性有口赤血球症、赤血球酵素異常症、脾機能亢進、免疫溶血または発作性夜間血色素尿を患っている。
また、本発明は、前記方法、組成物または使用のいずれかのために提供され貧血は、鉄貯蔵が枯渇している顕性鉄欠乏、または鉄貯蔵が適切または過剰である機能的鉄欠乏による。
本発明は、前記方法、組成物または使用のいずれかのために提供され、SFPが、血液透析中に血液透析溶液内で投与される。また、本発明は、前記方法、組成物または使用のいずれかのために提供され、SFPが、腹膜透析中に腹膜透析溶液内で投与される、または、SFPが、非経口的栄養により非経口的栄養混合物内で投与される。本発明はまた、前記方法、組成物または使用のいずれかのために提供され、SFP投与が、経口、静脈内、筋肉内、皮下、経口腔、舌下、腹腔内、皮内または経皮経路によるものである、あるいは、これらを血液透析または腹膜透析を受けている腎臓疾患患者の透析溶液と組み合わせる。
本発明また、前記方法のいずれかのために提供され、SFPが、i)血清鉄、トランスフェリン飽和度、網赤血球ヘモグロビン、血清フェリチン、網赤血球数、及び全血ヘモグロビンからなる群から選択される少なくともひとつの鉄状態のマーカーを増加させる、及びii)目標ヘモグロビンレベルに達する、または維持するのに必要なESAの用量、または、全血、赤血球濃厚液または代用血液の輸血の必要性を減少させる治療有効用量で投与される。また、非貧血性鉄欠乏を患っている対象で、前記方法、組成物または使用のいずれかを実施する場合、治療有効用量のSFPを投与すると、対象の疲労を減少させ、身体及び認知能力を増加させる、または運動耐性を改善する。
また、本発明は、前記方法、組成物または使用のいずれかのために提供され、SFPが、鉄欠乏と関連がある下肢不安症候群の臨床症状を減少させる、または除去する治療有効用量で投与される。
用量は、例えば、1時間当たり0.1〜2mgの速度で、1日当たり約1〜50mgのSFP−鉄を含み、いずれかの投与経路によって与えられ、または1日当たり約2〜48mg、または1日当たり2〜25mg、または1日当たり2〜10mg、または1日当たり3〜48mg、または1日当たり3〜25mg、または1日当たり3〜10mg、または1日当たり4〜48または4〜25mg、または1日当たり4〜30mg、または1日当たり4〜10mg、または1日当たり5〜50mg、1日当たり10〜50mg、1日当たり5〜45mg、1日当たり10〜45mg、1日当たり5〜25mg、1日当たり5〜10mg、1日当たり10〜25mg、1日当たり10〜30mgである。これらの用量のいずれも、1時間当たり0.1〜2mgの速度で、または1時間当たり0.5〜1mgの速度で、または1時間当たり1〜2mgの速度で投与することができる。
透析患者のESA治療と関連がある有害作用のために、血液輸血の必要性を減少させる、または除去するように、ESAの最も少なくすることができる用量を投与しなければならない。さらに、慢性腎疾患(CKD)の貧血が、患者の10〜20%にESA治療に対して耐性がある(Babbitt 及び Lin,J Am Soc Nephrol 23:1631−1634,2012)。このため、本発明は、治療有効用量のSFPを投与することによって、透析を受けている患者の目標Hgbレベルに達しながら、または維持しながら、透析患者の治療中のESA用量を減少させる方法を提供する。実施例1及び2に記載した臨床試験は、ESAへの反応性が低下している透析患者にSFPを投与すると、これらの透析患者のESAの必要性を有意に減少させることを示している。SFPの投与が、鉄貯蔵を増加させることなく、反応性が低下している患者のESAの必要性を減少させた。
また、静脈内に投与される鉄−炭水化物複合体の大用量が、Hgbを増加させ、ESAの必要性を減少させることができるが、血清フェリチンレベルの著しい増加によって示されるとおり、組織の鉄貯蔵及び炎症を著しく増加させる(BESArab et al.J.Am,Soc.Nephrol.11:530−538,2000)。一方、試験では、血液透析液1リットル当たり100〜120μgの範囲のSFP鉄の用量が、血清フェリチンレベルを維持するが、増加させないことを示した(Gupta et al.J Am Soc Nephrol 2010;21(Renal Week 2010 Abstract Supplement):429A 2010)。
それゆえ、本明細書に提供した実験的証拠は、組織の鉄貯蔵または炎症を増加させることなく、ESAへの反応性が低下している透析患者のESAの必要性を有意に減少させることを示している。このまったく予期しない結果は、SFPの作用のユニークな様相によるものと思われる。現在では、CKD患者の貧血の主な原因は、主にペプチドヘプシジンによって媒介される鉄の生理的平衡の異常による炎症による貧血であると次第に認識されるようになっている。ヘプシジンの過剰が、食事鉄吸収の低下及び網内系鉄貯蔵からの鉄の放出の低下の原因になっていると思われる。肝臓によって産生され、循環に分泌されるヘプシジンが、化合し、フェロポーチン、十二指腸腸上皮細胞に存在する鉄輸送体、網内系マクロファージ、及び肝細胞の分解を誘発し、これにより鉄が血しょうに入ることを抑制する。炎症細胞が、直接、侵入する病原体からのを封鎖する機序と考えられるヘプシジン転写を誘発し、鉄キレート化合物形成、低鉄血症、及びCKDを含む多くの慢性疾患の特徴である貧血を生じさせる。ヘプシジンが過剰なCKD患者では、鉄の多くが、肝臓によって急速に吸収され、封鎖され、血液に混合される残りが、効果なく再利用されるため、静脈内の大用量の鉄が、有効性を抑えると予測される。また、静脈内鉄が、さらにヘプシジンレベルを増加させ、この現象を悪化させる(Babitt & Lin,J.AM.Soc.Nephrol.23:1631,1634,2012)。SFPの投与により、炎症による貧血を悪化させることなく鉄を供給すると思われる。理論によって束縛されることなく、SFP鉄が、非経口的経路によって循環に直接送達される場合、循環している鉄輸送タンパク質アポトランスフェリンと直接結合し、これによりモノフェリックまたはダイフェリックトランスフェリンを形成し、その後、骨髄中の赤血球前駆物質に鉄を直接送達し、細網内皮マクロファージ及び肝細胞によるプロセシングを回避する。
これらの所見が非経口的経路によって送達されたSFPに当てはまることが推測される。効果的なSFPデリバリーのための非経口的経路としては、静脈内、筋肉内、皮下、皮内、経皮、経口腔、舌下、血液透析溶液に添加される場合、血液透析を介した経路、腹膜透析溶液に添加される場合、腹膜透析を介した経路、または、非経口的栄養混合物に添加される場合、非経口的栄養混合物と組み合わせる経路が挙げられるが、これらに限定されない。
赤血球造血刺激剤
赤血球造血とは、骨髄中の赤血球(RBC)の生成である。用語「赤血球造血」は、成熟赤血球の産生に至る造血性幹細胞(HSC)及び造血前駆細胞の増殖及び分化のプロセスを表すために本明細書に用いられる。「赤血球造血刺激剤」(ESA)は、新しい赤血球の産生を開始(intimating)及び刺激することができる薬剤である。
エリトロポエチン(EPO)は、RBC形成の主調節剤である循環グリコシル化タンパク質ホルモン(34KD)である。内生EPOは、血液中のO2の濃度に相当する量で産生され、主に腎臓中で合成されるが、また、肝臓及び脳などの他の組織中では、より低いレベルで生成される。
用語「ESA」は、エリトロポエチン受容体での直接または間接作用により赤血球造血を増加させる全薬剤に当たる。ESAとしては、内生ヒトエリトロポエチン(GenBank Accession No.AAA52400;Lin et al.(1985)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:7580−7584)及び遺伝子組み換えエリトロポエチン及びエリトロポエチン−様物質、例えば、EPOGENTM(Amgen,Inc.,Thousand Oaks,Calif.),EPREXTM(Janssen−Cilag.Ortho Biologics LLC)及びNEORECORMONTM(Roche),ARANESPヒト遺伝子組み換えダルベポエチン(Amgen),PROCRITTM(Ortho Biotech Products,L.P.,Raritan N.J.)及びMIRCERA(Methoxy polyethylene glycol−epoetin beta;Roche),PeginESAtideまたはOmontys(登録商標)(Affymax Inc.,Palo Alto,CA).という商品名のEPOETIN製品が挙げられる。
いくつかの実施形態では、ESAが、また、遷移金属の水溶性塩、例えば、マンガン(Mn)、コバルト(Co)、及びニッケル(Ni)を含む;及び、また、チタニウム(Ti)、バナジウム(V)、及びクロム(Cr)を含む。これらの遷移金属の水溶性塩のすべてではないとしてもほとんどが、in vivoで公的な濃度で投与される場合、赤血球の産生を刺激すると考えられている。例えば、当該塩としては、ハロゲン化物及び最も好ましくは塩化物塩;炭酸塩及び重炭酸塩;硫化物、亜硫酸塩、及び硫酸塩;窒素原子含有塩;酸化物;及び一般に生体親和性で、in vivoで有用な他の通常の塩の形態及び配合物が挙げられる。他の実施形態では、遷移金属の水溶性塩は、ESAの定義から除外される。
ESAを必要とする対象に投与される1日分の用量は、それぞれのESAで変えることができる。個々の患者及び患者群の用量は、1日分と定義した用量と異なることが多く、個々の特性(例えば、年齢及び体重)及び薬物動態学的留意点に必ず基づかなければならないということに留意するべきである。
ESAは、一般に貧血の治療に用いられ、血液透析を受けている対象に投与される。ESAは、赤血球の数及びHgbレベルの増加には有効であるが、ESA治療には多くの有害作用があり、FDAがRBC輸血の必要性を減少させる、または回避するのに十分であるESAの最少の用量を投与することを推奨している。
ヘモグロビン
本発明の方法では、対象のヘモグロビン(Hgb)レベルを増加させる、または維持するのに効果的なSFPの用量が投与される。Hgbは、4つの小単位、それぞれの外面にクレフトまたはポケットがある2組の同一ポリペプチド鎖からなる球状タンパク質である。クレフトは、酸素摂取及び放出の部位であるヘムまたは鉄プロトポルフィリン基を含有する。RBC中のHgbの主な役割は、O2をO2依存性組織に運ぶことである。RBC中にみられるHgbは、四量体ヘム鉄を含有するタンパク質である。貧血性の対象は、Hgbレベルが減少しており、本発明の方法は、貧血を患っている対象のHgbを増加させるために有効用量のSFPを投与すること含む。有効用量のSFPが、Hgbレベルを増加させ、好ましくは、Hgbレベルが、適切に対象の組織を酸化させる、及び/または血液輸血の必要性を減少させるのに十分なレベルに増加する。貧血性の対象に十分な例示的なHgbレベルは、約10g/dLである。ヒトの成人男性では、正常なHgbレベルが、14〜18g/dLの範囲であり、ヒトの成人女性では、12.0〜16g/dLの範囲である。しかし、ESAを服用しているCKD患者の目標Hgbレベルは、9〜11g/dLである。
ヘモグロビンレベルは、対象の全血のg/dLまたはg/Lとして測定される。ヘモグロビンレベルは、当技術分野で知られた任意の方法を用いて、測定することができる。例えば、ヘモグロビンレベルは、シアンメトヘモグロビンの光度検出、アジドメトヘモグロビンの光度検出、またはペルオキシダーゼ法(例えば、Crosby−Furth法)等を用いて、測定することができる。
SFP組成物
ピロリン酸第二鉄(Fe4O21P6)の分子量は、745.25である。これは触媒、耐火性合成繊維及び防錆塗料として用いられている。
食品グレードの可溶性ピロリン酸第二鉄(あるいは、「ピロリン酸第二鉄、可溶性」またはSFP)は、不確定な組成物の鉄調製物である。この構造の明確な式は、知られていない。一般に、これは、「ピロリン酸第二鉄及びクエン酸水素ナトリウムの混合物」または「4つの塩(ピロリン酸第二鉄及びピロリン酸ナトリウム及びクエン酸第二鉄及びクエン酸水素ナトリウム)の混合物」または「クエン酸水素ナトリウムによって可溶性になったピロリン酸第二鉄」として表される。可溶性ピロリン酸第二鉄には、表1に記載した特性があることが知られている。
TRIFERIC(商標)は、第二鉄がピロホスフェート及びシトレートに共有結合している医薬用途のGMPグレードのSFPである。Trifericは、特性が明らかになった構造を有し、食品グレードのSFPより可溶性が増し、安定した化合物である。
本発明は、非経口的デリバリーを介して貧血性の対象にSFPを投与する方法を提供する。米国特許第6779468号には、SFPの非経口的投与が記載され米国特許第6689275号には、SFP溶液を含む組成物が記載され、米国特許第7,816,404号には、水溶性SFPクエン酸キレート組成物が記載され、これらの米国特許のすべては、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
可溶性ピロリン酸第二鉄は、市販されており、入手することができる。食品グレードの可溶性ピロリン酸第二鉄(FCC−SFP)は、約10.5%〜約12.5%鉄を含有するアップル−グリーンの固体である。製造者によると、可溶性ピロリン酸第二鉄は、空気及び光への暴露から保護すれば3年間も安定している。
本発明の方法はいずれも、約7重量%〜約11重量%の鉄、約14重量%〜約30重量%のシトレート、約10重量%〜約20重量%のピロホスフェート及び約2重量%以下のホスフェートを有する水溶性ピロリン酸クエン酸第二鉄キレート組成物で実施することができる。当該キレート組成物は、約1.5重量%以下のホスフェート、または約1重量%以下のホスフェートを有することができる。本発明のひとつの態様では、当該キレート組成物が、約0.1重量%以下のホスフェートを有する。
参照によりその全体が本明細書に組み入れられる米国特許第7,816,404号では、GMPスタンダードに従ったSFP−クエン酸キレート組成物(GMP−SFP)を調製する方法が提供される。本発明の方法はいずれも、約7重量%〜約11重量%の鉄、少なくとも14重量%のシトレート、少なくとも10重量%のピロホスフェートを有する水溶性ピロリン酸クエン酸第二鉄キレート組成物で実施することができる。当該キレート組成物は、約1.5重量%以下のホスフェート、または約1重量%以下のホスフェートを有することができる。本発明のひとつの態様では、当該キレート組成物が、約0.1重量%以下のホスフェートを有する。
透析及び溶液
用語「透析」は、血液透析及び腹膜透析をともに含み、洗浄溶液(透析液)から患者の血液を分離する半透膜(透析器)を通した溶質及び水の移動と定義される。これは、透析膜を通過させることによって慢性腎疾患(CKD)の対象の血液から代謝副生成物、毒素、及び過剰輸液を除去する臨床的治療法である。透析は、合成膜が透析膜となる血液透析として、または、患者の腹膜の膜が透析膜となる腹膜透析として、従来から実施することができる。患者の血しょうは、経時的に透析液溶液と平衡する傾向がある。透析液の組成物により、患者から溶質を除去し、バランスさせることができ、または、患者に溶質を注入することもできる。電気化学的濃度勾配は、透析液及び患者の血液コンパートメントの間で受動拡散及び平衡させる推進力である。透析由来の鉄欠乏が、治療の6ヶ月までにCKD患者の約90%に影響を及ぼす。本発明は、CKDを患っている患者及び血液透析溶液または腹膜透析溶液内を含む非経口的デリバリーを介して透析を受けている患者に、SFPを投与する方法を提供する。
血液透析は、半透膜を隔てた溶質の濃度勾配によって血液から特定の溶質を除去するために血液透析器を使用することを指す。血液透析器は、また、人工腎臓と称され、血液透析が実施される器具であり、血液から特定の溶質の拡散を確実にするように、血液が半透膜によってかかる組成物の溶液から分離される。血液透析器は、輸液圧力の差により血液からタンパク質を含まない輸液が濾過される限外濾過のために用いることができる。血液透析は、急性血液透析及び維持血液透析を含む。
維持血液透析は、末期腎不全の治療のための長期血液透析治療を指す。維持血液透析の患者は、1年当たり約2〜3グラムの鉄を失うと推定され、これは全ソースからの1日当たり約6ml(1年当たり2リットル)の失血に相当する(Eschbach et al.Ann.Intern Med.87(6):710−3,1977)。
腹膜透析中、溶質及び輸液を血液コンパートメントと交換するために患者の腹膜の膜が用いられる。それゆえ、腹膜透析は、拡散力による水溶性代謝物質の動的輸送及び腹膜の浸透力による水の輸送を適用することによる尿毒症の治療である。腹膜は、身体の最大の漿膜である(成人で約2m2)。これは腹壁(壁側腹膜)及び内臓(内臓腹膜)の内側に沿って並んでいる。膜の壁側及び内臓部の間の空間は、「腹膜腔」と呼ばれている。当該腔(透析液)に注入される水溶液により、腹膜膜中の毛細管網を通る血液血管空間と接触する。腹膜腔に注入される溶液は、経時的に血しょう水と平衡する傾向があり、これは部分または完全平衡後の1つの交換の終わりに除去される。透析液の組成物により、患者から溶質を除去し、バランスさせることができ、または、患者に溶質を注入することもできる。電気化学的濃度勾配は、透析液及び血液コンパートメントの間で受動拡散及び平衡させる推進力である。
一般に、本発明の医薬組成物は、この分野の標準的な参考文献であるRemington’s Pharmaceutical Sciencesに記載されたとおり、従来の技術により調製することができる(Gennaro A R,Ed.Remington:The Science and Practice of Pharmacy.20th Ed.Baltimore:Lippincott,Williams & Williams,2000)。治療目的のために、本発明の活性成分は、通常、示した投与経路に好適な1つ以上の賦形剤と混合される。「透析液溶液または透析液」が、透析中に、患者の血液の膜の反対側で用いられる溶液である。透析液は、従来から腹膜透析(腹膜膜が透析膜となる)または血液透析(合成膜が透析膜となる)のいずれかに用いるために提供されている。血液透析液は、一般に、酸(「A」)及び塩基(「B」)濃縮物を含む2つの乾燥粉末濃縮物から調製され、使用前に処理した水中で、または2つの水性濃縮物から液体状に戻される。透析器中で、有機酸及び電解質及び重炭酸塩以外の浸透薬剤を含有するA濃縮物を、重炭酸塩及び処理した水を含有するB濃縮物と混合し、最終血液透析液を生成する。腹膜透析液は、さらに構成することなく透析で用いられる浸透薬剤、電解質、及び水の予混合溶液である。
現在、血液透析器では、自動混合装置を利用し、脱イオン水中で特定の割合で塩を混合し、最終透析液溶液を生成する。透析液濃縮物は、通常、使用する準備のできた溶液、または大きなリザーバー中の精製水に添加される予混合粉末のいずれかとして製造業者によって供給される。濃縮物は、透析器のチャンバに注入され、精製水と混合され、最終透析液溶液が生成される。
一般に、血液透析のための最終透析液溶液のイオン組成物は、以下のとおりである:Na+132〜145mmol/L、K+0〜4.0mmol/L、Cl−99〜112mmol/L、Ca++2.0〜3.5mEq/L、Mg+20.25〜0.75mmol/L、ブドウ糖100〜200mg/dL。代謝的酸性の補正は、透析の基本的目標のひとつである。透析では、血液からのH+除去のプロセスは、主に透析液から血液へのアルカリ当量の流束によって達成され、これによって、通常、緩衝作用の化学プロセスで利用される生理緩衝液を置き換える。透析の実施では、透析膜での塩基輸送が、酢酸塩または重炭酸塩を含有する透析液を用いることによって達成される。「重炭酸透析」では、透析液が、27〜35mmol/Lの重炭酸塩及び2.5〜10mmol/Lの酢酸塩を含有する。一方、「酢酸透析」では、透析液が、重炭酸塩を含まず、31〜45mmol/Lの酢酸塩を含有する。ピロリン酸第二鉄は、酢酸及び重炭酸系血液透析溶液と適合する。
腹膜透析輸液は、通常、Na+132〜135mmol/L、K+0〜3mmol/L、Ca++1.25〜1.75mmol/L、Mg++0.25〜0.75mmol/L、Cl−95〜107.5mmol/L、酢酸塩35mmol/Lまたは乳酸塩35〜40mmol/L及びグルコース1.5〜4.25gm/dLを含有する。
患者集団
本発明の方法は、ESA治療への反応性が低下している透析患者で実施することができる。「ESAへの反応性低下」は、目標Hgbレベルを維持するためにESA用量を有意に増加させる必要がある患者を指す。これらの患者は、貧血患者、または非貧血患者とすることができる。エリトロポエチンへの反応性低下、またはESA−耐性貧血は、以下の状態の少なくともひとつが存在することを指す:i)一定用量のESA治療でのHgbレベルの有意な減少、ii)特定のHgbレベルに達する、または維持するのに必要なESA用量の有意な増加、iii)150IU/kg/週超のエリトロポエチンまたは0.75mg/kg/週のダルベポエチン−αと等量であるESA用量にもかかわらず、目標の範囲にHgbレベルを上げることができない、または、目標のHgbレベルを維持するのに高用量のESAが継続して必要である。例えば、CDK患者の約5〜10%が、ESAへの反応性低下を示す。これは、皮下経路により投与される1週間当たり300IU/kg超のエリトロポエチンまたは1週間当たり1.5mμg/kg超のダルベポエチンを継続して必要としていると定義される(Johnston et al.,Nephrology.2007 Aug;12(4):321−30)。
実施例1及び2に記載した臨床試験では、比較的ESAへの反応性が低下しているグループである試験患者の約20%は、試験の開始時に1週間当たり13,000単位超のESAを服用していた(注:ESA用量が1週間当たり45,000単位を越える患者は、試験から除外した)。本発明の方法は、特に、ESAへの反応性が低下している透析患者及びESA−耐性貧血を患っている対象のHgbレベルを維持する、及び/または増加させるのに有用である可能性がある。
用語「貧血」は、赤血球中にみられる赤血球の数及び/またはHgbの量が正常以下である状態を指し、急性または慢性貧血とすることができる。例えば、用語「貧血」は、鉄欠乏性貧血、腎性貧血、慢性疾患/炎症の貧血、悪性貧血、例えば、太球性貧血、若年悪性貧血及び先天性悪性貧血、癌関連貧血、化学療法関連貧血、放射線療法関連貧血、赤芽球ろう、芽球が過剰な不応性貧血、無形成症貧血、X連鎖鉄芽球性貧血、溶血性貧血、鎌状赤血球性貧血、ESAの産生不全によって生じた貧血、骨髄異形成症候群、低色素性貧血、小赤血球性貧血、鉄芽球性貧血、自己免疫性溶血性貧血、クーレイ貧血、地中海貧血、ダイアモンドブラックファン貧血、ファンコニ貧血及び薬剤誘発性免疫性溶血性貧血を含むが、これらに限定されない。貧血は、低酸素症、慢性疲労、濃度不足、蒼白、低血圧、めまい及び心不全を含む重篤な症状を惹き起こす可能性がある。
ヒトの正常なHgb範囲は、男性では約14〜18g/dlであり、女性では12〜16g/dlであり、平均Hgb値は、男性では、約16g/dLであり、女性では約14g/dLである。貧血は、Hgbレベルが約12g/dL以下に低下していると考えることができる及び重度の貧血は、Hgbが約8g/dL以下に低下していると考えることができる。以下の表3に貧血のグレード評価系を提供している。
貧血は、赤血球(RBC)数を測定する全血球計算(CBC)試験、ヘマトクリット、Hgbレベル、白血球数(WBC)、白血球百分率数、及び血小板数などの当技術分野でよく知られるアッセイによって評価することができる。最初の3つのパラメータ、RBCの数、ヘマトクリット、及びヘモグロビンレベルが、患者が貧血を患っているかどうかを決定するのに最も一般に用いられている。
総鉄結合能(TIBC)では、血液中のトランスフェリンのレベルを測定する。トランスフェリンは、血液中の鉄を運ぶタンパク質であり、正常なTIBC値より高いのは、鉄−欠乏貧血の兆候であり、正常なレベルより低いのは、炎症による貧血、悪性貧血、または溶血性貧血を示している。また、貧血の試験としては、網赤血球数、血清フェリチン、血清鉄、トランスフェリン飽和度、網赤血球Hgb、低色素性RBCのパーセンテージ、可溶性トランスフェリン受容体、直接または間接クームズ試験、間接ビリルビンレベル、血清ハプトグロビン、ビタミンB12レベル、葉酸レベル、及び尿のHgbが挙げられる。網赤血球(未熟赤血球)の正常な上限値は、約1.5%であり、低い数は骨髄の問題を示唆し、高い数は溶血性貧血(例えば、患者の身体がRBCの減少を補おうとしている)を示唆している。
貧血性の対象は、癌治療(例えば、化学療法及び放射線)、骨髄移植、造血性幹細胞移植、毒素暴露、血液透析、腹膜透析、非経口的栄養による治療、胃切除外科手術を受ける可能性があるか、現在、これらを受けている、及び/または、妊娠する可能性があるか、現在、妊娠している。
炎症による貧血は、一般に、慢性、または長期の病気または感染により生じる貧血のタイプである。炎症により産生されるサイトカインが、鉄を吸収し、使用する身体能力を阻害し、貧血となる。また、サイトカインが、ことができるまた、エリトロポエチンの産生及び正常な活性を阻害する。ヘプシジンが、炎症による貧血の主要な伝達物質としての役割を演じると考えられている。本発明の方法のいずれの対象も以下の疾患状態のうちのひとつを原因とする二次的な炎症による貧血を患っている可能性がある:慢性腎疾患、癌、感染性疾患、例えば、結核、HIV、心内膜炎(心臓での感染)、骨髄炎(骨の感染)、肝炎、炎症性疾患、例えば、リウマチ様関節炎、及び紅斑性狼瘡、糖尿病、心不全、変性関節疾患、及び炎症性腸疾患(IBD)。また、クローン病を含むIBDは、病的な腸管による鉄の吸収不足を原因とする鉄欠乏、及び消化管からの出血を惹き起こす可能性がある。
フェリチンレベルの増加
CKD患者では、慢性出血、頻繁な瀉血及び透析器中に閉じ込められる血液のために鉄損失が増加する;及びこれらの患者では食事鉄吸収が低下する。それゆえ、一般に、食事吸収の低下のために血液透析患者に静脈内鉄が、投与される(Babitt & Lin,J.Am.Soc.Nephrol.23:1631,1634,2012)。CKD患者には、また、赤血球造血の要求を満たすことができない(細網内皮遮断)身体貯蔵からの鉄放出の低下を特徴とする機能的鉄欠乏がみられる。このため、CKD患者が、血清フェリチンレベルが正常または高くなる可能性があり、IV鉄による治療が、効果的でないと思われ、肝臓鉄過負荷、過剰鉄付着によるオキシダント−媒介組織損傷及び感染リスクの増加を含む有害作用となる可能性がある(Vaziri,Am J.Med.125(10);951−2,2012)。さらに、CKD患者では、全身鉄恒常性の維持を担う主要なホルモンであるヘプシジンが増加している。ヘプシジン過剰の患者では、鉄の多くが、肝臓によって吸収され、封鎖され(Rostoker,Am J.Med.125(10):991−999,2012)、残りが赤血球によって吸収され、効果なく再利用されるため、IV鉄の投与の効果は限定的であると予測される。さらに、IV鉄の投与によりさらにヘプシジンレベルが増加する(Babitt & Lin,J.AM.Soc.Nephrol.23:1631,1634,2012)。
本発明の方法は、ESAへの反応性が低下している透析患者を治療するために提供される一方で、これらの方法は、また、これらのESAへの反応性が低下している患者の静脈内に投与される鉄の用量を減少させる。SFPが、非経口的経路によって循環に直接送達される場合、循環している鉄輸送タンパク質アポトランスフェリンと直接結合し、これによりモノフェリックまたはダイフェリックトランスフェリンを形成し、その後、骨髄中の赤血球前駆物質に鉄を直接送達し、細網内皮マクロファージ及び肝細胞によるプロセシングを回避する。それゆえ、SFPは、患者の鉄貯蔵(フェリチンレベル)を増加させることなく、ESAへの反応性が低下している透析患者のHgbレベルを増加させる、または、維持する。SFPは、CKD患者にみられる貧血の主な原因である炎症による貧血の効果的な治療または予防となる。
静脈内鉄治療では、鉄の必要性を推定する及び治療への反応を測定するために、血清鉄、トランスフェリン及びフェリチンレベルを定期的にモニターしなければならない。透析患者の鉄過剰は、一般に500μg/リットル超または800μg/リットル超または1000μg/リットル超の血清フェリチンレベルを指す。過剰フェリチンレベルは、ESA耐性となる、またはESA耐性を悪化させる可能性がある。最終的に、また、鉄過負荷の患者では、感染リスク及び癌の可能性が増加するため、静脈内治療により鉄過負荷となる可能性と関係がある(Weinberg,Physiol.Rev.64(1):62−102,1984)。
実施例1に提供した臨床試験に示したとおり、SFPを投与すると、血清フェリチンレベルが増加することなく、貧血を患っている対象のHgbレベルが増加するまたは維持される。このため、本発明の方法は、ESAへの反応性が低下している透析患者に投与するESAの用量を減少させるのに有用であり、SFPは、また、実施例2に記載したとおり、透析患者に投与する静脈内鉄の用量を減少させる。
実施例1
血液透析液を介した可溶性ピロリン酸第二鉄(SFP)のデリバリーによるESRD対象の生理的鉄維持:PRIME試験
目的
この試験は、血液透析液を介して投与される可溶性ピロリン酸第二鉄(SFP)の規則的な投与が、維持血液透析(HD)を受けている末期腎性疾患(ESRD)対象が鉄欠乏を発症するのを安全かつ効果的に予防するという仮説を検討するために設計された。SFPを含有する透析溶液を用いて透析した対象と標準透析液を用いて透析を受ける無作為化した対象(プラセボ)を比較した。
当該試験の第1の評価項目は、鉄十分を維持するのにSFPが有効であり、これにより、ヘモグロビン(Hgb)レベルを維持するのに必要な赤血球造血刺激剤(ESA)の用量を減少させることを測定することである。また、第1の評価項目は、有害事象(AE)、身体的検査及びバイタルサイン、及び実験室試験(赤血球及び白血球特性、血液化学)を評価することによって透析液を介して送達されたSFPの安全性を測定することである。
当該試験の第2の評価項目は、以下のパラメータについて2つの試験群(標準対SFP透析液)を比較することである。i)鉄デリバリー、ii)処方ESA用量のベースラインからの変化の分布及びiii)必要な補足静脈内(IV)鉄の量、iv)経時的Hgbの安定性(95〜115g/Lの間にHgbを維持)、及びv)Hgbの変動性。赤血球系細胞への鉄のデリバリーは、エリトロポエチン(ESA反応指数[ERI]、ESA用量/Hgbとして計算される)に反応したHgbの生成によって推定される。また、ERIは、キログラムによる体重によって割られ、修正ERI(ERI/kg)が得られる。
方法
対象の数:CKD−HD対象は、どの透析セッションでも二重盲検法で、無作為化により、SFP−鉄(Fe−HD)を含有する透析液を用いた血液透析を受けている対象とコントロール鉄を含まない透析液(C−HD)(プラセボ)を用いた血液透析を受けている対象に1:1の比で割り付けた。当該試験の総持続時間は、36週に、最後の試験薬剤治療後、1週間の追跡期間を加えたものであった。治療期では、毎週、Hgbを測定し、1週おきに血清フェリチン及びトランスフェリン飽和度(TSAT)を測定した。これらの値を用いてESA及びIV鉄の処方を決定した。独立して、盲検化した中央貧血管理センター(CentralAnemia Management Center)(CAMC)では、全試験部位の全試験対象に対するESA用量調節アルゴリズムの適切な適用に関してプロトコル特異的貧血管理を一貫して遵守した。試験全体を通して、安全性パラメータを注意深くモニターした。
計画:100
実際:108(無作為化:108;試験薬剤服用:104)。
診断及び含まれる主な基準:当該試験では、ESRDである18歳以上の男性及び女性の対象が、動静脈(AV)ろうまたはグラフトを介して、1週間当たり3〜4回、維持血液透析(HD)を受け、平均Hgbが95〜120g/Lの範囲であり、平均フェリチンが200〜1000μg/Lであり、平均TSATが15〜40%であり、ESA4,000〜45,000のU/週エポエチンまたは12.5〜200g/週ダルベポエチンを処方した(安定したESA投与)。また、対象は、無作為化前6ヶ月の間に、IV鉄、適切な透析及び透析器血流を受けていた。
主な除外基準は、感染性プロセス進行中、無作為化前の6週間中の600mg超のIV鉄、無作為化前のESA用量の変化、AVろうまたはグラフト以外の部位からの活動性出血、外科手術または腎臓移植の予定あり、無作為化前の12週間以内のRBCまたは全血輸血、活動性炎症性障害及び試験全部を完了することができないと予測された対象である。
試験生成物、用量及び投与の方法:HDデリバリー系により当該試験対象に最終透析液中の2μM(110μg/L)SFP−鉄を送達した。試験薬剤は、重炭酸塩濃縮物中のSFPの予混合ジャグとして提供され、TRIFERIC(商標)として商業的に知られている。
参照治療、用量及び投与の方法:コントロール対象にプラセボまたは鉄を含まない標準溶液を送達した。プラセボは、液体重炭酸塩濃縮物として提供された。
治療群に対象を割り当てる方法:層化、ブロック無作為化スキーマを用いて治療に対象を割り当てた。13,000単位/週超のエポエチン(または40μg/週超のダルベポエチン)(層IIの指定)を服用している対象とは分けて、13、000単位/週以下のエポエチン(または40μg/週以下のダルベポエチン)(層Iの指定)を服用している対象で、ベースラインESA用量(無作為化時の毎週の用量)により無作為化を層化した。層IIの患者が、ESAへの反応性が低下していると考えた。各層内で、好適なブロックサイズを用いて無作為化によりSFPとプラセボの1:1の比に対象を割り当てた。無作為化時に、重複しない対象識別番号に対象を割り当てた。割り当てた数を置き換えまたは再使用することなく、小さな数から連続した順に数を割り当てた。
表6のデータでは、このアルゴリズムに基づいたIV鉄の投与前に、最初の値の後の1日以上及び2週間以内の任意の時の連続した反復値によってフェリチン及びTSATを確認した(表6のa)。また、対象のベースラインESA用量と比較して、Hgbが対象のベースラインHgbから15g/L以上減少した、または血清フェリチンが8週間以上100μg/L未満を維持した、またはESA用量に従ったESA用量が、50%以上増加した場合、鉄の新たな「投与」は、最後の「投与」の開始後4週間より早く、または1週間に1回の頻度として与えられるときに、開始することができた(表2のb)。
ESA用量調節:スクリーニング(週−2及び−1)中、及び予定される無作為化の前、計6週間、処方したESA(例えば、エポエチン対ダルベポエチン)のタイプ及び投与経路の変更を禁じた。無作為化の前の6週間に処方した用量より25%超多いまたは少ない無作為化時の処方されるESA用量であるのと同様に、無作為化の前4週間以内の処方されるESA用量の変更を禁じた。
当該試験の途中の腎性貧血のためのESA投与滴定は、アメリカ食品医薬品局(FDA)及びメディケアメディケイドサービスセンター(CMS)ガイドラインに一致していた。対象の安全性のため及び2007年11月8日に出されたFDAの警告及び指導及び2011年6月24日に出されたFDAの指導を認識して、Hgbレベルが、110g/Lに達した、または110g/Lを越えた場合、ESA用量を中断または減少し、Hgbレベルが120g/Lに達した、または120g/Lを越えた場合、ESAを中止した。これらの基準に基づいて治療期間の第1週〜第4週の間にESA用量を変更することはできたが、ESA用量、ESAのタイプ、及び投与経路の変更を禁じた。
第5週のはじめに、ESA用量を調節した。表7に従って、Hgbの変化率を考慮して、連続する2週間以上の対象の3つのHgb値の平均に基づいて、ESA用量を調節した。必要に応じて治験依頼者のメディカルモニターと治験担当者の考察に沿って、各試験部位の貧血管理者ともに作業している独立したCAMCの指示のもとで、ESA用量の全変更を決定した。
治療期間の第5週〜第36週中、Hgbが120g/L以上に上昇する場合を除いて、Hgbを上昇させる、または持続的に高Hgbを維持するために、2週間ごとにESA用量を減少させることができた。このような場合、最も最近の用量が変更されてもすぐにESA用量を維持することができた。ESA用量は、2つの例外はあるが、4週間ごとだけに増加させることができた。Hgb値が120g/Lを越えるためにESA治療を中止した場合、Hgb値が120g/L未満に減少したと確認され次第、ESA治療を再開することができた。また、Hgbが2週間前より1週間当たり7.5g/Lを越えて減少した場合、または対象が血液の輸血が必要となるリスクがあると考えられる場合、ESA用量は、2週間で増加させることができた。
ESA用量は、追跡期間中(第37週または途中中断の場合、最後の試験薬剤暴露後の第1週)、局所単位のきまりに従って調節することができた。
評価基準:
有効性:第1の有効性の評価項目は、目標範囲のHgbを維持するために必要であり、Hgbのために調節した処方ESA用量のベースラインからのパーセント変化であった。第2の有効性評価項目は、以下のとおりであった:i)補足IV鉄の必要な量。ii)エリトロポエチン(ESA反応指数、またはERI、ESA用量/Hgbとして計算される)に反応したHgbの生成によって推定したとおりの赤血球系細胞への鉄のデリバリー。また、ERIは、キログラムによる体重によって割られ、修正ERI(ERI/kg)が得られる。iii)95〜115g/Lの範囲のHgbの維持。iv)Hgbの変動性。v)治療終了時のESA用量のベースラインからの変化の分布(25%以上、10%〜25%、−10%超〜10%未満、−25%超〜−10%、及び−25%以下)。安全性:有害作用(AE)の発生率及び重症度、臨床検査測定値、及び身体的検査及びバイタルサインの臨床的に有意な変化によって当該薬剤の安全性及び耐容性を測定した。
統計的方法:
有効性:第1の有効性評価項目の統計的分析は、修正治療意図(MITT)及び有効性−評価集団の両者のために実施された。第1の分析は、反応変数としてのESAのベースラインからのパーセント変化、因子としての治療、及び共変量としてのベースラインHgbによる共分散(ANCOVA)モデルの分析を用いて、治療p−値によって評価した統計的有意により実施した。治療差異のp−値及び治療効果の試験は、両側5%有意レベルで実施した。
MITT集団を用いて第2の評価項目を分析した。記述統計を用いてERI、ERI/kgなどの連続変数、及び補足IV鉄の量をまとめ、ウイルコクソン検定を用いて分析した。各対象について25%以上、10%〜25%未満、−10%超〜10%未満、−25%超〜−10%、及び−25%以下に治療終了時の処方ESA用量のベースラインからの変化を分類し、ベースラインESA用量(13,000超または13,000U/週以下)によって層化したコクランマンテルヘンツェル(CMH)検定を用いて分析した。時点による記述統計を用いて、Hgbレベル(95〜115g/Lが含まれる)を維持した対象をまとめた。ベースラインESA用量を対照群とするCMHカイ自乗検定を用いて、治療群間でHgbレベルを維持している対象の割合を比較した。各対象について、ベースライン及びベースライン後の毎週のHgbの経時的結果を線形回帰モデルにフィットさせ、このモデルを用いて対象のHgbの一時的な傾向(回帰線の傾き)及び残差標準偏差によって評価したHgb変動性を定義した。また、平均絶対Hgb変化を用いてHgb変動性を評価した。
探索的分析としてのベースラインESA用量層によってMITT及び有効性−評価集団について第1及び選択した第2の評価項目を分析した。
安全性測定:有害作用(AE)がみられた対象の数及びパーセンテージをまとめた。対象要約の各レベルでは、器官別大分類(SOC)及び/または基本語レベル内で、ひとつ以上のAEを報告した対象をそのレベルで1回数えた。表形式の要約には、治療により発現した全AE、重症度別の治療により発現したAE、及び治療との関係別の治療により発現したAE、治療により発現した重篤な有害事象(SAE)、試験薬剤の一時的中断となる治療により発現したAE、及び永久試験薬剤中止となる治療により発現したAEを含んだ。データリストに全身体的検査結果を示した。リストに試験で起きた死亡をまとめ、示した。
治療群ごとに第1週〜第4週から第33週〜第36週の各4週間の間隔で、透析低血圧(IDH)のプロトコル定義に合う収縮期血圧(SBP)の低下に基づくIDH症状の発現及び低血圧による透析の未熟集結または中断に基づくIDH症状の発現をまとめた。事象の数及びIDHの各症状がある対象の数及びパーセンテージ、並びにIDHへの各介入が必要な事象の数及び対象の数及びパーセンテージをまとめた。治療群別にIV鉄またはSFPへの過敏性反応がある対象の数及びパーセンテージをまとめた。
記述統計を用いて各適切な試験日について、臨床検査パラメータ及びバイタルサインをまとめた。
結果の要約
対象の素質:試験薬剤を服用した対象103例(SFP群52例、プラセボ群51例)のうち、両群の大半が当該試験(SFP、対象41例、78.8%;及びプラセボ、対象40例、78.4%)を完了した。
有効性の結果:第1の有効性分析、ベースラインから治療終了までの目標範囲にHgbを維持するために必要な処方ESA用量のパーセント変化では、プラセボ群(4.9%対39.8%、p=0.045)に比べてMITT集団のSFP群の方が統計的に有意に小さい(図1を参照)。図2に示したとおり、治療終了時の補足IV鉄の平均用量(第2の有効性分析)は、プラセボ群(45.6mg/週)よりSFP群(23.5mg/週)の方が統計的に有意に少ない(p=0.028)。治療終了時、MITT集団のプラセボ群(20対象、39.7%)よりSFP群(11対象、21.1%)の方が補足IV鉄を服用した対象が少なかった。ベースラインから治療終了までのERI/kgの平均変化及びERIの平均変化(ともに第2の有効性分析)は、MITT集団のプラセボ群よりSFP群の方が、両変化とも小さかった;しかし、どちらの場合も統計的に有意な差ではなかった。
MITT集団の治療終了時、処方ESA用量のベースラインからの変化の分布では、処方ESA用量が25%増加した対象のパーセンテージ(SFP及びプラセボ群それぞれ30.8%及び39.7%)が、25%減少した対象のパーセンテージ(SFP及びプラセボ群それぞれ30.8%及び29.4%)とほぼ同じであることを示した。図3に示したとおり、治療終了時、プラセボ群よりSFP群の方が、網赤血球ヘモグロビン値が高かった。当該試験中、ほぼ同じ変動性を示しているMITT集団の両群ともHgb濃度が安定していた。Hgbレベルは、試験時間の80%超で、95〜115g/L範囲内に維持され、対象のパーセンテージは、MITT集団のSFP(57.7%)及びプラセボ(58.8%)群がほぼ同じであった(図4を参照)。
安全性結果:全体として、当該試験中に生じた有害事象のタイプは、維持血液透析を受けているESRDの患者にみられたものと一致しており、また、一般に頻度、重症度、及び試験薬剤との関係に関して2つの治療群でほぼ同じであった。当該試験中に死亡した対象は、5例であった:SFP群2例及びプラセボ群3例。プラセボ群のもうひとりの対象が、全試験日を終えた9日後に死亡したが、試験中の死亡として数えなかった。SAEの発生は、SFP(対象18例、33.3%)及びプラセボ(対象20例、40.8%)群であり、ほぼ同じであった。比較的少ない対象で、試験中止となった治療により発現したAEが報告され、SFP(4例、7.4%)及びプラセボ(1例、20.0%)群であった。対象の死亡に終わったAE、または試験中止となったSAEまたはAEのうち、試験薬剤と関係があると考えられるものはなかった。
感染の発症は、両治療群(SFP38.9%及びプラセボ49.0%)ともほぼ同じであり、及び透析低血圧の発症はまた、両治療群(SFP33.3%及びプラセボ40.8%)ともほぼ同じであった。アナフィラクトイド反応の発症は、いずれの治療群でも報告されなかった。
この試験の平均透析前血清鉄及びTIBC値は、ESRDなどの慢性炎症性障害に見られるものと一致していた。SFP及びプラセボ群の平均透析前血清鉄値が、ほとんどの時点で正常な範囲内であったが、正常な範囲のうち小さな値に向かう傾向があった。図5及び6に示したとおり、SFP群の平均透析後鉄値がプラセボ群の対応する値より有意に高かった。これは、SFP透析液を介した鉄の対象へのデリバリーを示してしている。透析前血清鉄値の変化のリスクがある対象では、SFP群のリスクがある対象の大きなパーセンテージが、透析前血清鉄が高い値へ変化し、プラセボ対象では小さな値へ変化する傾向があった。平均透析前TIBC(トランスフェリン)値は、また、プラセボ群では全時点でほとんど正常な範囲内であったが、SFP群ではほとんどの平均値が小さかった。血清フェリチンレベルは、当該試験の終了時に2つの群の間に統計的に有意な差があり、SFP群では比較的安定したままであったが、プラセボ群では有意に減少した(図7を参照)。定期的な1週間に3回のSFPの投与では、血清フェリチンレベルが増加せず、ゆえに組織鉄過負荷を誘発しなかった。
結論
血液透析液を介して投与されるSFPが、鉄十分を維持するのに有効であり、これにより成人のESRD患者がHgbレベルを維持するのに必要な処方ESA用量を減少させた。SFPの安全性特性は、プラセボの安全性特性とほぼ同じであった。
実施例2
SFPの投与は、ESAへの反応性が低下している患者のESA必要性を減少させる。
ベースラインESA用量に基づいて、実施例1の前記記載のPRIME試験の対象を2つの層に分けた:13,000U/週以下のESAを服用している患者(層I)及び13,000U/週を超えるESAを服用している患者(層II;ESAへの反応性が低下)。表9に層IIの人口統計を示した。
ベースラインから治療終了までESAへの反応性が低下している患者の目標範囲にHgbを維持するのに必要な処方ESA用量のパーセント変化は、プラセボ群に比べてSFP群の方が統計的に有意に小さく(−8.5%対65.9%、p=0.045)、全体の差が−74.4であった(表10を参照)。
当該試験中にHgb濃度は、両患者群とも安定しており、ほぼ同じ変動性を示した(表11を参照)。網赤血球Hgbレベルは、SFP群では安定していたが、プラセボ群では減少した(表12を参照)。プラセボ群に比べてSFP群の方が、血清フェリチンの減少が少ない傾向があった(表13を参照)。予想通りプラセボ群に比べてSFP群の方が透析中の血清鉄の増加がさらに大きかった(表14を参照)。プラセボ群に比べてSFP群の方が補足鉄の必要性が明らかに少ない傾向があった(第2の有効性分析)(表15を参照)。治療終了時、プラセボ群(対象5例、20%)よりSFP群(対象2例、8.3%)の方が補足鉄を服用した対象が少なかった(表16を参照)。
結論
ESAへの反応性が低下している対象へのSFPの投与が、プラセボに比べて平均差約74%だけESA必要性を減少させた。また、鉄貯蔵を増加させることなく、この患者集団のIV鉄の必要性が減少した。