関連出願の相互参照
本願は、以下の米国仮特許出願:2013年9月30日に提出された出願番号61/884,652、2013年10月10日に提出された出願番号61/889,432、及び2014年7月9日に提出された出願番号62/022,550に基づく優先権主張を伴うものであり、これらの開示内容は、参考文献により本願明細書に組み込まれる。
連邦政府により後援された研究に関する供述
本発明は、国家科学基金によって授与された契約CHE1012839の下、政府支援を伴ってなされた。国家は、本発明について一定の権利を有する。
発明の分野
本開示は、一般的に、金属触媒化された反応から、遷移金属及び遷移金属錯体を封鎖及び除去する分野に関する。
発明の背景
かなりの割合の、工業的に製造された化学製品は、それらの製造工程においていくつかの段階で触媒を必要とする。その有効性のため、数多くの遷移金属及び遷移金属錯体が、このような工程にて触媒として使用されている。これらがいたる所で使用されているにもかかわらず、反応後の混合物から、これらを除去し、回収することが主要な関心事となったままである。このことは特に、非常に厳格な制限が規制機関によって設けられている医薬品工業において明らかである。これらの毒性の結果として、このような触媒は、非常に少量が、最終の医薬品製品に存在していることしか許されていない。このような金属及び金属錯体の除去及び回収についての別の動機付けは、これらが比較的に希少で、しかも高価であるということである。クロマトグラフィー、活性炭、抽出、蒸留及び再結晶などの伝統的な除去方法は、決して理想的なものではない。なぜなら、これらの方法は金属不純物を効果的に除去しないか、あるいは、かなりの時間と手間を必要とし、大規模な合成方法の間に特にコストがかかるからである。溶液から遷移金属及び遷移金属錯体を除去及び回収するために効果的な方法に対する明らかな現在の必要性がある。
ルテニウムカルベンにより促進されるメタセシス(metathesis)は、高密度の有機官能性を有した分子中に炭素‐炭素二重結合を作り出すための確固とした方法である。結果として、これらの触媒は、全体の合成から、工業的規模で医薬的に関連性のある化合物の合成まで、化学の幅広い範囲での応用が見出されている。メタセシスは時間がかからず効率的であるが、精製の間にルテニウムを除去することは、困難な問題である。目的の生成物の分解又は異性化を潜在的にもたらすことがあるので、残留ルテニウムの除去が必要である。
現存するクエンチング(quenching)方法の多くは、長い処理時間や毒性のある金属を必要とするか、あるいは、高価な試薬を必要とする。これらの具体例としては、トリス(ヒドロキシメチル)ホスフィン、Pb(OAc)4の添加、過剰のDMSO又はトリフェニルホスフィンオキシド、又は過酸化水素、並びに、カラムクロマトグラフィーが後で行われる活性炭の添加が挙げられる。これらの方法のいくつかは、長い処理時間(12〜24時間)を必要とし、不確定な酸化機構により作用する。メソポーラスシリケートシステムが開発され、ルテニウムの除去を助けることも見出された。このシステムの利点は、比較的速く作用することであるが、費用がかかり、準備に時間がかかる。最終的に、我々のグループよりも前に開発された方法は、KO2CCH2NCを反応混合物に添加するものである(Org. Lett., 2007,9,12031206)。
現在、反応が完了した後のルテニウムを除去するのに用いられる方法には、いくつかの異なるものがある。これらの方法は大抵、2つの異なるアプローチ:(1)反応が完了したら添加物を用いて触媒を処理すること、(2)除去を助けるために特別に設計された化学名称を有した目的に合わせた触媒の使用、に基づいている。目的に合わせた触媒は市販されておらず、合成に長い時間がかかり、その使用が制限されることがある。
発明の簡単な要約
金属触媒化された反応混合物から遷移金属又は遷移金属錯体を除去するために、組成物及び方法が提供される。この組成物は金属封鎖材料を含む。ある具体例においては、当該金属封鎖材料は、担体、当該担体に結合したリンカー、及び当該リンカーに結合した少なくとも1つのイソシアニドを有している。
反応混合物から遷移金属を除去するために、金属封鎖材料を、当該金属封鎖材料に金属又は金属錯体が結合し得る条件下で、金属触媒化反応の反応混合物と接触させる。その後、金属封鎖材料を反応混合物から分離し、金属封鎖材料の分離後、反応混合物中の遷移金属の濃度を減少させる。ある具体例では、遷移金属は、分離後に金属封鎖材料から除去することができ、当該材料は、他の金属封鎖操作のためにリサイクルすることができる。
本発明の方法によって金属が除去可能な反応混合物は、グループ8の元素、グループ9の元素、グループ10の元素、グループ11の元素、又はグループ12の元素である遷移金属の1以上によって触媒化されるものを含む。例えば、この遷移金属は、Pd、Ir、Ru、Rh、Pt、Au、又はHgであってよい。いくつかの場合、この遷移金属は、金属封鎖材料と接触する前に、反応混合物中に配位リガンドを有していても良い。
図1.イソシアニド‐グラフトされたシリカゲルと撹拌する前(A)及び30分間撹拌した後(B)の、PdCl2(PPh3)2の溶液。
図2.左から右に0、5、15、及び30分の時点での、反応混合物から除去されたVaska錯体の一部。
図3.A)印のある開口領域(70×70mm)の中にあるシリカゲル2の単一粒子の光学的画像、B)イソシアニドの相対存在量を示すために統合された2の焦点面アレイ(FPA)画像、C)2の完全FT‐IRスペクトルで、イソシアニドのピーク(2147cm−1)が表されている、(D)それぞれ、2、改質シリカ2‐クエンチされたRu2、及び改質シリカ2‐クエンチされたRu3についてのイソシアニド領域。
図4.Ru2をクエンチした後のイソシアニド‐グラフトされたシリカゲルの反射モードIR、及び残存しているイソシアニドシグナルの強度のFPA画像。
図5.Ru3をクエンチした後のシリカ‐グラフトされたイソシアニドの反射率モードIR、及び残存しているイソシアニドシグナルの強度を示すFPA画像。
図6.スキーム1:a)シリカゲルに結合したイソシアニド(補助試薬2)の製造、及びb)いくつかの一般に使用されるグラブス触媒の具体例。
図7.スキーム2:時間のかかる反応における方法の評価
(a)収率、及びサンプル5mgあたりのμgで表したルテニウムの濃度。方法A:シリカゲルを除去するために濾過、反応物の濃縮、ICP‐MS分析の前にカラム精製(0.001ミリモルの触媒ごとに2.0gのシリカゲル)。方法B:中くらいの多孔性フィルターフリットを通した濾過によってシリカゲルの除去、反応混合物の直接濃縮、及びICP‐MS分析。
図8.スキーム3:活性触媒をクエンチし、溶液相からRuを可溶状態にとどめておくために、固体担持されたイソシアニドリガンドの使用の典型的な具体例。
図9.パラジウム捕捉剤として使用されるイソシアニド‐含有試薬。
図10.(a)はシリカゲル1;(b)はシリカゲル1‐Cl2Pd(PPh3)2及び(c)は、(a)と(b)からイソシアニド領域(2100−2300cm−1)について重ね合わせて拡大したもの。これらのスペクトルは、MCT検出器を用いて、80μm×80μmの領域、128スキャン、4cm−1分解能にて単一のシリカゲル粒子について得られた。2147cm−1におけるピークは、シリカゲル結合したイソシアニドによるものであり、2231cm−1における新たなピークは、Pd(II)に結合したイソシアニドによるものである。
図11.(A)トルエン溶液から、(B)スズキカップリングからのPd(0)及びPd(II)の除去。記載されている数字は、ICP‐MS測定によって記録されたPdのppm値である。(A)条件:撹拌しながら、室温で1(n当量)を用いて処理された、トルエン中の0.01M Pd(OAc)2又はPd(PPh3)4。(B)種々の方法によりPd(0)又はPd(II)プレ触媒(4h,rt)を用いた当量1にて示された、鈴木カップリングからのPdの除去。
図12.ダブルBuchwald‐Hartwigアミノ化の生成物からのパラジウムの除去。
図13.Pdイソシアニド錯体の文献例。
図14.鈴木、Heck及びBuchwald‐Hartwigクロスカップリングにより、ppm以下のレベルにまで残留Pdが除去されたイソシアニド試薬。
図15.シリカゲル1を用い、室温でトルエン中の0.01M溶液からのPd(OAc)2除去の詳細なプロット。示された時間で、シリカゲルを沈降させ、一部を取り出し、重量測定し、濃縮し、ICP‐MS分析の前に硝酸を用いて温浸(digest)させた。
図16.シリカゲル1を用い、室温でトルエン中の0.01M溶液からのPd(PPh3)4除去の詳細なプロット。示された時間で、シリカゲルを沈降させ、一部を取り出し、重量測定し、濃縮し、ICP‐MS分析の前に硝酸を用いて温浸させた。
図17.図式は、リンカーを示している。
図18.トルエン溶液からのPd(0)及びPd(II)の除去。条件:撹拌しながら、室温で1(n当量)を用いて処理された、トルエン中の0.01M Pd(OAc)2又はPd(PPh3)4。
図19a−19b.(a)シリカゲル1(図19a)、及び(b)シリカゲル1‐Cl2Pd(PPh3)2(図19b)の反射IRスペクトル。
図20.シリカゲル1を用い、室温でトルエン中の0.01M溶液からのPd(OAc)2除去の詳細なプロット。示された時間で、シリカゲルを沈降させ、一部を取り出し、重量測定し、濃縮し、ICP‐MS分析の前に硝酸を用いて温浸させた。
図21.シリカゲル1を用い、室温でトルエン中の0.01M溶液からのPd(PPh3)4除去の詳細なプロット。示された時間で、シリカゲルを沈降させ、一部を取り出し、重量測定し、濃縮し、ICP‐MS分析の前に硝酸を用いて温浸させた。
図22.イソシアニド‐グラフトされたシリカゲル1の反射モードIR。2147cm−1におけるピークは、シリカゲル結合したイソシアニドによるものである。
図23.イソシアニド‐グラフトされたシリカゲル1と撹拌する前(左)及び30分間撹拌した後(右)の、PdCl2(PPh3)2の溶液。
図24.Cl2Pd(PPh3)2の溶液を用いた処理後の、イソシアニド‐グラフトされたシリカゲル1の反射モードIR。2231cm−1におけるピークは、Pd(II)に結合したイソシアニドによるものである。
図25.2300−2100cm−1の領域を拡大したもの。2147cm−1におけるピークは、シリカゲル結合したイソシアニドによるものであり、2231cm−1における新たなピークは、Pd(II)に結合したイソシアニドによるものである。
図26−30.ICP‐MSによる分析。
発明の詳細な説明
本発明は、溶液からの遷移金属及び遷移金属錯体の除去のための組成物及び方法を提供する。この遷移金属錯体は、例えば、触媒として使用することができ、リガンドに結合した1以上の遷移金属を含むことができる。ある具体例においては、金属触媒化反応の反応混合物から、遷移金属及び遷移金属錯体を除去するための組成物及び方法が提供される。遷移金属、遷移金属錯体の一部、又は全ての遷移金属錯体は、ここに開示された具体例を用いて、反応混合物から除去することができる。
ある面では、本発明は、固体支持されたシステム、及び当該固体支持されたシステムを用いた、溶液から遷移金属及び遷移金属錯体を封鎖及び除去するための方法を提供する。この固体支持システムは、固体支持された、イソシアニド‐ベースの不均一な系を含んでも良い。例えば、ある具体例においては、このシステムは、固体担体に結合したリンカーに結合した1以上のイソシアニドを有する金属封鎖材料を含む。
ある面では、本発明は、金属触媒化反応混合物を含む溶液から遷移金属及び遷移金属錯体を除去するための方法を提供する。この方法は、金属が遷移金属である金属触媒化反応を準備すること、ここに記載される固体支持システムと反応混合物を、遷移金属又は遷移金属錯体の少なくともいくつかが、固体支持システムに結合するようにして接触させること、を含む。反応混合物から固体支持システムを分離することによって、反応混合物から遷移金属又は遷移金属錯体の除去がもたらされ、これにより、遷移金属又はその錯体が激減された反応混合物の生成物を含む反応混合物が提供される。種々の具体例においては、金属触媒化反応の反応生成物を含む混合物は、遷移金属又はその錯体を50〜85%、85〜99%、又は100%にまで減らすことができる。
ある面では、本発明は、遷移金属又は遷移金属錯体を含まない、又は実質的に含まない遷移金属触媒化反応の生成物を提供する。ある具体例においては、前記反応生成物を含む組成物は、遷移金属又はその錯体を1000ppm、100ppm又は10ppm以下しか含まない。ある具体例においては、遷移金属の97%、98%、又は99%以上が、遷移金属触媒によって触媒化された反応混合物から除去される。
ある具体例においては、前記の金属封鎖固体支持システムは、支持材料、当該支持材料に結合したリンカー、及び当該リンカーに結合した少なくとも1つのイソシアニドを有する。この金属封鎖材料は、金属触媒化反応の反応混合物と接触させることができる。この反応混合物は溶液中に、遷移金属と反応生成物を有する。遷移金属は、例えば、グループ8の元素、グループ9の元素、グループ10の元素、グループ11の元素、グループ12の元素、又はこれらの混合物であってよい。反応混合物から除去することが可能な金属の具体例としては、Pd、Ir、Ru、Rh、Pt、Au、又はHgが挙げられる。この遷移金属のうちのいくつかは、反応混合物中において少なくとも1つの配位リガンドを有していても良い。
適した固体担体としては、合成、半合成、又は天然に発生する物質を挙げることができ、これらは、有機又は無機、例えば、ポリマー、セラミック、又はメタリックであっても良い。リンカーと支持体との間の結合は一般的には共有結合であるが、必ずしもそうではなく、共有結合は直接的であっても間接的であっても良い。間接的な共有結合は典型的には支持体表面上の官能基によるものであるが、必ずしもそうではない。イオン結合もまた適しており、カチオン性基を含む支持体と結合した金属錯体上の1以上のアニオン性基の組み合わせ、又は、アニオン性基を含む支持体と結合した金属錯体上の1以上のカチオン性基の組み合わせを含む。具体例においては、イソシアニドは、カチオン性支持体とイオン対をなすアニオン性基と結合されても良い。
適した支持体材料の具体例としては、シリカ、シリケート、アルミナ、酸化アルミニウム、シリカ‐アルミナ、アルミノシリケート、ゼオライト、チタニア、二酸化チタン、マグネタイト、酸化マグネシウム、酸化ボロン、クレイ、ジルコニア、二酸化ジルコニウム、カーボン、ポリマー、セルロース、セルロース性ポリマーアミロース、アミロース性ポリマー、又はこれらの混合物が挙げられる。ある具体例においては、支持体は、シリカ、シリケート、又はこれらの混合物から成る。
ある具体例においては、有機固体支持体としては、いくつかの重合可能な基に結合した官能基(例えば、誘導体化可能であるもの)を有するものが挙げられる。この中には、ポリオレフィン(開環メタセシス重合によって通常製造される)、官能化されたポリスチレン、官能化されたアクリルアミド、官能化されたポリエチレン、ポリ(ビニル)アルコール、ポリ(エチレングリコール)結合したポリスチレン及びこれらのコポリマーが含まれる。
イソシアニドリガンドを有した最初に探究された固体支持体は、ある場合においてアルケンメタセシス反応からRuを除去するのに、ほとんど効果がなかった。特に、Wang樹脂及びポリ(エチレングリコール)グラフトされたポリスチレンは、ルテニウムカルベン錯体の除去に効果がなかった。固体相有機合成において最も一般的に使用された樹脂は、ポリスチレン又は、特定の溶媒中で溶解性を助けるように設計されたリンカーとグラフトされたポリスチレンである。これらは、支持されたイソシアニド試薬を製造するのに必要な化学変化によって、高いイソシアニド充填を可能にする種々の充填範囲にて得られるので、魅力的である。我々は、最初に、これらに戻った。最初のスクリーニングアッセイにおいては、Wang樹脂に結合したイソシアニドを、1.6ミリモル/g充填イソシアニドに調製した。20当量の変性ポリスチレン樹脂の使用は、25〜60℃の間の温度で、ジクロロエタン溶媒中0.5〜4hの範囲の処理時間では、標準ルテニウムカルベンのメタセシス活性をなくすことができなかった。これは、このような硬いポリスチレンの悪い膨潤特性によるものであったとの推論から、有機溶媒中での優れた膨潤特性を有することが知られているポリ(エチレングリコール)グラフトされたポリスチレンを使用した。このポリ(エチレングリコール)グラフトされたポリスチレンは、0.44ミリモルの充填レベルにまでイソシアニドで充填され、ルテニウムカルベンの20倍過剰にて使用された。しかしながら、イソシアニド変性されたWang樹脂について用いられたものと同様の条件を用いた、定性的な閉環メタセシス(RCM)試験反応におけるメタセシス活性は、かなりの量の残留Ruが残っていることを示唆しているが、その活性なカルベン形態で完全になくすことはできなかった。この樹脂は、溶液相ルテニウムを全て捕捉するのに効果的ではなかった。これらの固体支持体の予期しない欠点は、使用される高い当量(>20当量)、より可溶性のグラフト化されたポリスチレンにおける高い充填、長い接触時間、他の溶媒の使用、及び/又は、硬い固体支持体からイソシアニドを分離する異なる数のカーボンリンカーの使用のいくつかの組み合わせによって解消させることができる。Ruを除去する効果が小さくても、これらの支持体は、他の遷移金属に対して効果的であることがある。
前記支持体はまた、ヒドロキシル、シロキシ、シロキサン、アミド、尿素、エーテル、エステル、無水物、カーバメート、又はこれらの組み合わせから選ばれた官能基を含んでも良い。前記支持体及びリンカーに対する官能基の適した組み合わせは、結合の点をもたらすように選択されても良い。適した組み合わせとしては、シロキシとアミド、シロキシと尿素、シロキシとエーテル、シロキシとエステル、シロキシと無水物、シロキシとカーバメート、シロキサンとアミド、シロキサンと尿素、シロキサンとエーテル、シロキサンとエステル、シロキサンと無水物、シロキサンとカーバメート結合が挙げられる。この他の組み合わせは、当業者には自明であろう。
ある具体例においては、支持体材料は、官能基、不活性部分、及び/又は過剰のリガンドを包含させるために処理されたものが使用できる。ここに記載されている官能基はいずれも、支持体上に取り込むのに適しており、従来より知られている技術によって一般的に達成することができる。不活性部分もまた、支持体上の有効な結合位置を一般的に減少させるため、例えば、支持体に結合した錯体の位置又は量を制御するために、支持体上に取り込まれても良い。なお更に、支持体上の過剰のリガンド、特に過剰の活性なリガンドの添加も可能であり、ある場合においては、触媒の封鎖を改良するのを助けることができる。
ある具体例では、これら支持体材料の官能基(例えばHO‐)が、イソシアニドと直接的に官能化されても良く、又は、モノマー性シランを含有したイソシアニドが、均一な大きさ又は異なる大きさの官能化シリカゲルを製造するためにゾルゲル法又はStober法にて使用されても良い。シリカゲルは、不規則な形状であっても、均一な形状であっても良い。このシリカゲルは、大きな表面積又は、ゼロゲルやアエロゲル等の小孔を有して形成されても良い。ガラスの表面上のHO‐基は、変性されても良い。前記固体支持体は、有機溶媒中での浸透性及び/又は膨潤特性を高めるために設計された基で任意に置換されても良い。固体支持体の選択は、以下に基づく。1)溶液相と化学的に相互作用する能力、2)溶液相から分離される能力、3)イソシアニド被覆の程度(表面充填容量)。表面接近性、又は、シリカやアルミナ等の固体支持体の官能化された内部への接近性は、有効な捕捉試薬にとって重要であるが、イソシアニド基の最適な使用でなくても、内部にイソシアニド基を有した粒子でも金属除去に効果的である場合がある。例えば、化学反応において使用された場合、支持体の選択は、幾分、均質な触媒と、誘導体化された生成物とが溶解された溶液相と相互作用する能力、溶液から分離される能力(例えば、濾過による)、及び、理想的には1ミリモル/gを超える被覆の程度に基づく。別の実施例では、金属又は金属錯体の金属イオン封鎖のために使用された際、イソシアニドの被覆性の程度が高いことが、溶液又は溶出液からの効率的な金属捕捉にとって重要である。低い被覆性(1ミリモル/g未満の固体支持された試薬)は、運動的にゆっくりした捕捉と不完全な捕捉をもたらし、本発明の方法の実用性を制限する。低い表面充填又は、小孔を有した支持体を使用することも可能であるが、この場合には、方法の効率が低下することがあり、長い接触時間、加熱、超音波処理又は大過剰の固体支持されたイソシアニド試薬のいくつかの組み合わせが必要となる。複数の交換可能なリガンドを有した多価金属又は金属錯体の場合、高い表面接近性もまた重要である。なぜなら、1以上のイソシアニドリガンドが、金属又は金属錯体と結合することがあるからである。これらの場合には、金属が、よりしっかりと、浸出の可能性を減少させる固体支持体に保持される。ある具体例においては、固体支持体は、高い表面被覆性、結合されたイソシアニドの高い移動性、及び幅広い有機溶媒中での高い表面接近性の正しい組み合わせを有する。
ある具体例においては、イソシアニドは、シリカゲル粒子上にグラフトされる。特殊な具体例では、イソシアニドは、図6のスキーム1に示されるような1によって表され、固体支持試薬は、3つのメチレン基を有したカーボンリンカーを有するシリカゲル粒子(スキーム1において2で示されているもの)である。シリカゲルが固体支持体として使用されている実施例では、このシリカゲルは、比較的均一な粒子径(60Å、40〜63μm)であっても良く、又は、イソシアニドとSi(OEt)4等の他のシロキサンを含有したシロキサンを伴うゾルゲル法によって製造されたもののような、より不規則な形状の粒子から成っても良い。理想的には、シリカゲル上のヒドロキシル基の表面密度は、シリカゲル1グラム当たり少なくとも0.5ミリモルのイソシアニド充填となるように充分に高い。このシリカゲルが官能化されると、充填レベルを決定するために滴定することができる。
ある具体例においては、例えば、前記固体支持体が、官能化されたポリオレフィン(例えば、ROMPゲル)、ポリスチレン、及び/又はポリ(ビニル)アルコールを含む場合、イソシアニドの高い表面被覆性、結合されたイソシアニドの高い移動性、幅広い有機溶媒中での高い表面接近性、及び、固体支持体にイソシアニド基を結合させる強いリンカーが、システムの効力にとって好ましい。適した固体支持体はまた、リンカーと支持体が金属又は金属錯体の効果的な捕捉のための溶媒系との相互作用を最大化するために調整される水溶液から、金属が封鎖される用途のために選択されても良い。
ある具体例においては、前記のイソシアニドは、アリール又はアルキルイソシアニドであって良い。別の具体例では、イソシアニドは、アルキル基と芳香族基を含む脂環式であっても良い。
ある具体例では、固体支持体に結合した1以上のイソシアニドを含むことが望ましい。固体支持体に結合した複数のイソシアニドを含有させる目的は、溶液から金属を捕捉する速度と効率を高めるためである。例えば、Ru金属と金属錯体の最大効率及び効果的捕捉が要望される場合は特に、固体支持体に結合したモノマー性イソシアニドの好ましい濃度は0.5〜4ミリモル/gの間である。より高い充填は、ジイソシアニドが固体支持体上の普通の結合点に結合する枝分かれによって達成することができる。イソシアニドの充填が低い固体支持体は、例えば、長い接触時間(>12h)が可能な、ある種の用途において望ましいことがある。別の可能な用途では、例えば、固体支持体がリサイクル可能である場合、多量の固体支持体を使用することができる。ほとんどの場合には、固体支持体は高価であり、少量の固体支持された試薬の使用が魅力的で、より実際的である。例えば、化学反応物からルテニウム(Ru‐)ベースの触媒と副生成物を封鎖する際、溶液から使用された触媒を分離するだけでなく、触媒の活性なRu=C結合を消滅させることが望ましい。通常のアルケンメタセシスの間、触媒のいくつかの部分は活性化されたものではなくなり、活性を有していた触媒のかなりの部分が分解されて、特性の悪いルテニウム含有種となる。効果的な浄化方法は、このような状態のルテニウムを全て除去しなければならない。捕捉活性を完了させるためには、高濃度の表面接近可能なイソシアニドが好ましい。固体支持体として使用されるシリカゲルについては、表面充填は一般的には0.5〜4ミリモル/g樹脂の範囲である。シリカゲルの表面上に、安定な配位錯体を形成させるには、少なくとも2つのイソシアニドが好ましい。
いくつかの具体例においては、固体支持体(例えばシリカゲル)上にグラフトされたイソシアニドは、他の官能基(例えばチオール、ホスフィン、アミン)を用いて共グラフトされても良く、方法は化学文献において充分に確立されている。固体支持体としてシリカゲルが選択される、ある種の具体例では、炭素鎖又は、シロキサンに対する芳香族スペーサーによって結合されるモノマー性イソシアニドは、ゾル‐ゲル法によってシリカゲルを生成させるために使用することができ、異なる大きさのシリカゲル粒子が生じる。
1以上のイソシアニドを固体支持体に結合させるために適した化学作用としては、炭素ベースのリンカー、又は、アルコールやアミン等の先在する官能基の官能化を可能にする規定の数の原子を有したリンカーによるイソシアニドの結合が挙げられる。ベンジルハロゲン化物等の親電子的官能基を有する固体支持体を用いると、イソシアニドに結合した求核基(O,C,S,P)との反応により、官能化された固体支持体となる。イソシアニド基、又はイソシアニド基と、他の配位リガンド(エーテル、ヒドロキシル基、チオール基、三価のアミンやホスフィン等)との組み合わせの表面被覆を高めるために、固体支持体に結合した先在の官能基への数多くの化学反応を行うことも可能である。アミン又はヒドロキシル基等の適した官能基からの鎖の延長は、いくつかの原子により固体支持体へ結合される。例えば、アミンは、ホルムアミドを用いてジアルキル化することができ、引き続いて、固体支持体上へのイソシアニド充填を倍にするために脱水される。固体支持体上のアミンは、イソシアニドに変換できるように存在する2以上の官能基当量を有したアリールハロゲン化物を用いてベンジル化することができる。又、このような方法は、表面充填を更に増加させるために繰り返されても良い。これに代わって、固体支持体に結合したヒドロキシル基が、イソシアニドに変換できるように存在する官能基当量を有した2以上の腕を有したアルキル又はベンジルハロゲン化物を用いて官能化されても良い。この種のリンカーは、金属封鎖の効率を増加させ得るリンカー中の更なる官能性を特徴付ける。
ある具体例においては、イソシアニド官能基は、固体支持体(例えばシリカゲルマトリックス)からイソシアニドを分離するのに役立つ、強いリンカーによって固体支持体に結合されても良い。このリンカーは、通過する遷移金属及び/又は繊維金属錯体を捕捉、消失又は錯体化させるのに必要とされる濃度及び移動性で、固体支持体(例えばシリカゲル)の表面からイソシアニドを放出させるのに役立つ。このリンカーは、金属との結合が起こり得る溶液中で、固体‐溶液界面を更に超えてイソシアニドを配置するのに重要である。このリンカーはまた、イソシアニドが、金属との衝突を速めるのに役立つ複数の立体配座及び形を採り得るようにいくらか可撓性があり、これにより、金属イオン封鎖に含まれる化学反応の速度が高められる。
ある具体例においては、前記リンカーは、独立して、ヒドロカルビレン、置換されたヒドロカルビレン、ヘテロ原子‐含有ヒドロカルビレン、及び置換されたヘテロ原子‐含有ヒドロカルビレンから選択され、これらのそれぞれは、任意に1以上の官能基を含んでいても良い。好ましくは、このリンカーは、イソシアニドと、シロキシ、シロキサン、シラノール、アミン、アミド、イミン、アルコール、アルコキシド、フェノキシド、アセタール、アルデヒド、カルボン酸、尿素、エーテル、エステル、無水物、カーバメート、カーボネート、チオール、スルホニル、アミノスルホニル、ヒドラジン、ホスフェート、ホスファイト、ホスホネート、ホスホナイト、ホスフィネート、ホスフィナイト、ホスフィン、ホスフィンオキシド、又はこれらの混合物から選ばれた官能基を含む。特殊な具体例では、このリンカーは、イソシアニドを含み、しかも、シロキシ及び/又はシロキサン基と、任意に1以上のアミド、尿素、エーテル、エステル、無水物、又はカルバメート基を含むことが好ましい。このリンカーはまた、支持体へのイソシアニドの直接結合をもたらす、このような1以上の官能基だけであっても良い。
記載された前記リンカーが、図17に表されている。本開示のある種の点では、このリンカーは、構造−A Fnを有しており、この際、Aは二価の炭化水素部分(即ち、メチレン(−CH2−)nであり、この際、nは1〜24の範囲の整数である)で、アルキレン及びアリールアルキレンから選択され、この際、アルキレン及びアリールアルキレン基のアルキル部分は、直鎖であっても分枝であっても、飽和でも不飽和でも、環状でも非環状でも、置換されていても置換されていなくても良く、アリールアルキレンのアリール部分は、置換されていても置換されていなくても、アルキレン基、アリールアルキレン基のアリール又はアルキル部分のいずれかに、ヘテロ原子及び/又は官能基が存在していても良く、Fnは官能基である。この官能基は必ずしも限定されないが、適した官能基としては、シロキシ、シロキサン、シラノール、アミン、アミド、イミン、アルコール、アルコキシド、フェノキシド、アセタール、アルデヒド、カルボン酸、尿素、エーテル、エステル、無水物、カーバメート、カーボネート、チオール、スルホニル、アミノスルホニル、ヒドラジン、ホスフェート、ホスファイト、ホスホネート、ホスホナイト、ホスフィネート、ホスフィナイト、ホスフィン、ホスフィンオキシドホスフェート、ホスファイト、ホスホネート、ホスフィン、ホスフィンオキシド、又はこれらの混合物が挙げられる。
適したリンカーとしては、構造CN−A−Si(O(CH2)nCH3)3−x(O)x−を有するものが挙げられ、この式において、nは0〜3の範囲の整数であり、xは1〜3の範囲の整数であり、Aは、アルキレン及びアリールアルキレンから選択された二価の炭化水素部分であり、この際、アルキレン及びアリールアルキレン基のアルキル部分は、直鎖であっても分枝であっても、飽和でも不飽和でも、環状でも非環状でも、置換されていても置換されていなくても良く、アリールアルキレンのアリール部分は、置換されていても置換されていなくても良く、アルキレン及びアリールアルキレン基のアリール又はアルキル部分のいずれかに、ヘテロ原子及び/又は官能基が存在していても良い。
ある具体例においては、前記リンカーは、官能基Fnの他に、アルキレン及びアリールアルキレン基Aのアリール又はアルキル部分のいずれかに、ヘテロ原子及び/又は官能基を含んでいても良い。このようなヘテロ原子及び/又は官能基は、アルキレン又はアリールアルキレン基におけるいずれかの場所に位置していても良い。好ましい具体例では、このようなヘテロ原子及び/又は官能基は、リガンドに対するリンカーの結合点に位置される。これに限定されないが、このようなヘテロ原子及び/又は官能基の導入は、リガンド前駆体と、構造−A−Fnを有したリンカー(この式にて、AとFnは上述のものである)との間の反応によって達成することができる。このような反応によって導入される、適したヘテロ原子としては、O,N及びSが挙げられ、一方、リガンド前駆体とリンカーとの間の反応によって形成される代表的な官能基としては、アミド、尿素、及びカルバメート基が挙げられる。リガンド前駆体とリンカー上に存在する、適した官能基の選択に基づく他の組み合わせは、当業者には自明であると思われ、限定されないが、シロキシとアミド、シロキシと尿素、シロキシとエーテル、シロキシとエステル、シロキシと無水物、シロキシとカーバメート、シロキサンとアミド、シロキサンと尿素、シロキサンとエーテル、シロキサンとエステル、シロキサンと無水物、及び、シロキサンとカーバメート結合が挙げられる。
種々の具体例においては、前記リンカーは、有機基、又はヘテロ原子(N,O,P,S)と共に散在した、又はシリコン原子によって結合した有機基である。例えば、前記リンカーは、芳香族環又は脂肪族炭素鎖(ヘテロ原子を含む)、又はこの2つの組み合わせから成るものであって良い。このイソシアニド基は、1個の炭素原子〜50個の炭素原子の間、好ましくは2個の炭素原子〜10個の間の範囲の距離で、これらの有機基のいずれかによって、固定する固体支持体に結合させることができる。イソシアニドと固体支持体(例えばシリカゲル)との間の前記リンカーは、固体支持体(例えばシリカゲル)の表面上のイソシアニドの数を増加させる1以上の連結点の位置で、2つ又は3つに分岐されても良い。この2つに分岐又は3つに分岐されたリンカーは、対称的に配置されても良く、あるいは、各腕に等しくない数の炭素構成部、又は、各腕に異なる炭素リンカー(例えば、芳香族イソシアニドを有するものと、脂肪族イソシアニドを有するもの)を有した非対称であっても良い。濃度を高めると、金属への複数の結合を生じさせる遷移金属試薬に結合するイソシアニドリガンドの数を多くすることができ、これによって、固体支持体からの遷移金属の分離又は浸出の可能性が減少する。
固体支持されたイソシアニドを用いる、ある応用においては、分解可能なリンカーを有することが望ましいことがある。このリンカーは、光の作用によって、あるいは、化学試薬の添加によって切断され得る。分解可能なリンカーとしては、酸に反応しやすく酸化的に分解可能なリンカーが挙げられるが、これに限定されるものではない。これらの分解可能なリンカーは、再使用又はリサイクルのため、又は定量目的のために樹脂から金属が回収できる用途に利用される。
ある具体例においては、本発明の組成物は、支持体、当該支持体に結合したリンカー、及び当該リンカーに結合した少なくとも1つのイソシアニドを含む金属イオン封鎖材料である。このイソシアニドは、支持体1g当たり1.1〜1.6ミリモル存在することができる。この支持体は、500m2/g〜600m2/gの密度とすることができる。この支持体は、例えばシリカ、シリケート、又はこれらの混合物であって良い。
前記の固体支持されたイソシアニド‐ベースのシステムは、金属イオン封鎖のために使用することができ、遷移金属又は遷移金属錯体を溶液から取り除くことができる。ある実施例においては、前記遷移金属又は遷移金属錯体は、グループ8の遷移金属を含む。他の実施例では、前記遷移金属又は遷移金属錯体は、グループ9の遷移金属を含む。更に別の実施例では、前記遷移金属又は遷移金属錯体は、グループ10の遷移金属、グループ11の遷移金属、及び/又はグループ12の遷移金属を含む。
溶液からの金属の封鎖は、受動的な機構(例えば、リガンド交換)を経て起こり得る。例えば、このような受動的機構は、前記システムが、溶液からパラジウム及び/又はイリジウムを封鎖するのに使用される時に起こる。他の場合には、溶液からの金属の封鎖は、活性的な機構を経て起こる。この活性的機構は、アルケン及びアルキンとの化学反応性を抑制(クエンチ)するルテニウム触媒における化学反応を引き起こす。結果として、抑制された触媒はもはや、アルケンメタセシス、アルケン‐アルキンメタセシス又は、メタセシス‐関連触媒反応に基づく関連した相互依存又は連続的な方法を触媒化することができない。例えば、このような活性的機構は、溶液からルテニウムをイオン封鎖するのに使用される。このような活性方法は、反応の目的の有機生成物から生じる次に続く化学反応を防ぐのに役立つ。これらの生成物は通常、アルケン又は共役したジエン部分を含む。
ある具体例では、溶液から遷移金属及び/又は遷移金属錯体を除去するための方法は、(a)本発明の固体支持されたイソシアニド‐ベースのシステムを、当該固体支持システムに金属が結合できる条件の下で、遷移金属又は遷移金属錯体を含有するか、あるいは含有することが推測される溶液と接触させること、及び、(b)(例えば、濾過等によって)前記システムを除去し、これにより、溶液から遷移金属及び/又は遷移金属錯体を封鎖すること、を含む。種々の具体例においては、前記溶液の元になるものは、廃棄流水、医薬品反応、及び/又は工業的過程からのものである。ある具体例においては、この溶液は、遷移金属を含んでいる。別の具体例では、前記溶液は、遷移金属錯体を含んでいる。いくつかの実施例では、本発明の固体支持されたイソシアニド‐ベースのシステムの接触は、化学反応工程の間に起こる。他の実施例では、本発明の固体支持されたイソシアニド‐ベースのシステムは、化学反応工程が起こった後に溶液と接触される。この方法は、1以上の追加の精製工程(例えば、カラムクロマトグラフィー、濾過等)を更に含んでも良い。
固体支持体に結合したイソシアニドが、イソシアニドと同様に効果的に金属を封鎖できたことは驚くべき発見であった。一般的に、固体支持試薬は、均質な試薬と同様には作用しない。なぜならば、成功した衝突の頻度が低くなった溶液相/固体相界面位置の表面で化学反応が起こり、ゆっくりした反応となるからである。
ある点では、溶液から遷移金属(錯体)を除去するのに使用される本発明の固体支持されたイソシアニド‐ベースのシステムの当量数は、1〜500の範囲であり、この間にある全ての値が含まれる。いくつかの具体例においては、2つ又は3つに分岐したリンカー及び/又はより長い長さのリンカーを含み、そのいずれか/両方がより効果的に金属を捕捉する能力を有するイソシアニド支持体の使用は、少量(少ない当量の)固体‐支持されたイソシアニドの使用を可能にできる。例えば、表面密度がより高いために、少ない当量の試薬が必要とされることになる。
ある具体例においては、本発明のイソシアニド‐ベースのシステムは、遷移金属又は遷移金属錯体を含有する溶液と0.0167(1秒)〜600分の間、接触し、この間にある全ての値が含まれる。別の具体例では、このイソシアニド‐ベースのシステムは、24時間未満の間、遷移金属又は遷移金属錯体を含有する溶液と接触する。この接触時間は、遷移金属又は遷移金属錯体によって変えることができる。
本発明のイソシアニド‐ベースのシステムは、広い範囲の温度にて溶液から遷移金属(錯体)をイオン封鎖することができる。金属触媒化及び不整金属触媒化反応は一般に、室温以下の温度で行われないが、本発明のイソシアニド‐ベースのシステムは、非常に低い温度にて遷移金属(錯体)を除去することができる。ある具体例においては、前記システム及び方法が使用される温度は、少なくとも0,5,10,15,20,25,30,35,40,45,50,55,60,65,70,75,80,85,90,90又は100℃である。ある実施例では、このシステムは室温で使用される。別の実施例では、このシステムは反応温度で使用される。更に別の実施例では、このシステムは約50℃以下で使用される。低い温度(25℃以下)では、より長い接触時間を必要とすることがある。いくつかの遷移金属又は遷移金属錯体は、リガンド交換反応を起こすように加熱を必要とすることがある。
溶液相と前記支持体の表面との間で起こる化学交換及び化学反応は、溶液中で起こる化学反応よりも速度が遅い。例えば、KO2CCH2NCを含む均一なシステムを用いたルテニウムカルベンのイソシアニドクエンチ(quench)は瞬間に起こる。結果として、より長い時間が、溶液相‐固体相反応には必要とされ、典型的には、最適な結果のために30〜45分の間で、これよりも長い時間は、更なる利点をもたらさない。支持された試薬の量(30〜60当量)は、均一なイソシアニドの必要量(4.4〜8.8当量)に比べて約10倍過剰にて使用される。モル‐当量数は、使用される触媒に基づき、しかも、シリカゲルの充填レベルに基づく。Ruについては、この数は、典型的には1.1〜1.6ミリモル/gの間である。シリカゲル支持されたイソシアニドを用いたクエンチは、合成の便利さにより、メタセシス反応が行われるのと同じ温度で行うことができる。室温(25℃)か80℃のいずれかの温度が、同等の有効性で使用された。
ここに開示されている前記システム及び方法を用いた、溶液からの遷移金属(錯体)の除去率は85〜100%の範囲であり、この間にある全てのパーセンテージを含む。ある具体例では、溶液からの遷移金属(錯体)除去率は、少なくとも88%,89%,90%,91%,92%,93%,94%,95%,96%,97%,98%又は99%である。好ましい具体例においては、遷移金属(錯体)除去率は、少なくとも95%である。いくつかの具体例では、遷移金属(錯体)除去率は、接触(即ち、反応)時間、又は、シリカゲルを用いた処理等の追加の精製工程によって改良することができる。ある実施例では、30分の処置後、94〜99%のRuが、いかなる追加の精製を行わずに、本発明のイソシアニド‐ベースのシステムによって除去された。有機生成物は一般に、シリカゲルによるクロマトグラフィー等の技術によって更に精製される。別の実施例では、シリカゲルによる追加の精製により98%が除去され、サンプルからのRu残留物の除去が達成された。
ある具体例においては、ここに開示されている前記システム及び方法を用いた、溶液からの遷移金属(錯体)の除去率は、遷移金属(錯体)のppmにて測定することができ、この際、最終溶液(前記システムと接触させた後)のppmは、1ppm未満〜2000ppmの範囲であり、この間にある全ての値が含まれる。ある具体例では、ここに開示されている方法を適用した後の、溶液中の遷移金属(錯体)のppmは、0.5,1,2,4,6,8,10,20,30,40,50,75,100,200,300,400,500,750,1000,1500又は2000未満である。
前記の金属封鎖材料を反応混合物と接触させ、前記金属封鎖材料を反応混合物から分離した後、遷移金属は、その後、再使用又はリサイクルのために、金属封鎖材料から除去されても良い。ある具体例においては、金属イオン封鎖の後に、遷移金属及び/又は遷移金属錯体が、官能化された固体支持から回収される。このような回収方法は、従来技術において良く知られており、乾式冶金(例えば、製錬)方法が挙げられるが、これに限定されない。
ある点では、前記システム及び方法は、化学反応物から遷移金属及び/又は遷移金属錯体を除去するのに使用できる。これは一種の挑戦である。なぜなら、固体支持体上の結合リガンドは、接近可能でなければならず、金属に対する高い結合親和性を有し、しかも、固体相‐溶液界面での高い運動活性を有していなければならないからである。ここに記載したシステムは、溶液の外に金属錯体を効果的の引き出すことができ、これを支持体に強く固定できる。それゆえ、このシステム及び方法は、人間の健康に対する危険性のために活性医薬品成分における遷移金属不純物が厳しく規制されている化学品及び医薬品工業にて使用される反応から遷移金属触媒を除去するのに使用することができる。医薬品の製造において最もよく使用される反応の一つが、鈴木反応(Magano, 2011)等のPd‐ベースのクロスカップリングである。
ある具体例においては、本発明の方法及びシステムは、種々の遷移金属を除去するために使用できる。例えば、シリカゲル支持されたイソシアニドを用いたルテニウムの除去は、メタセシス反応からのRuのクエンチ及び除去に有効である。我々は、30分の処理時間で、94.14〜99.99%のRuが除去されたことを観察した。最も良好な場合には、精製されたサンプル中に2〜5ppmのRuが残った。RCM厳重テストを用いた最初のスクリーニングでは、シリカゲルは驚くべきことに、ポリスチレンベースのイソシアニド試薬に比べて充分に機能することがわかった。即ち、残留メタセシス活性がなく、完全なクエンチを示すことがわかった。従来の均一な方法を評価するために使用された同様の分析では、試薬2が、以前の方法と同等に機能し、サンプル5mg当たり0.66μgの残留Ru(132ppm Ru)であった。変性されたイソシアニドシリカゲルクエンチを用いた典型的なシリカゲル精製を組み合わせた場合、有機サンプル5mg当たり0.01μgのRuが測定された(<2ppm残留Ru)。
本開示にあるようなルテニウム触媒及びルテニウム副生成物の除去を容易とするクエンチ剤の添加は魅力的である。なぜなら、これらは、市販されている触媒のいずれかと共に使用することができ、それによって、クリーンアッププロトコルに一般的な解決法を提供するからである。このようなシステム及び方法は、以下に挙げたもののような、いずれかのRuベース触媒の除去に役立つが、利用可能なルテニウムカルベン触媒の具体例は、グラブス触媒として知られており、このシステム及び方法が除去できるものについては、以下に挙げられている。即ち、例えば、前記システム及び方法は、化学反応からルテニウム(Ru)を除去するために使用される。Ru触媒及び、溶液からの除去の実例となる実施例が、実施例4に提供されている。この全ての触媒は、Ru応用にて除去できる。この除去されたイソシアニド錯体は、その周囲に更に他のリガンドを有し、これらの2つ又は3つのいずれかがイソシアニドであるルテニウム錯体である。
除去可能ないくつかの例示的なRu錯体としては、0、+2及び+4の形式の酸化状態であるRu、中性及びカチオン性の錯体が挙げられる。一般式Iaのものでは、L1とL2が、C,N,O,P,S原子のいずれかの組み合わせによってRu原子に結合したリガンド基のいずれかの組み合わせであり、このリガンド基は、独立していても(一般構造Ia)であっても、アルキル鎖にある主に炭素原子から成る5原子以下から成る共有結合によって、又は、N,O,P,S原子を含むことが可能な、アリーレン環の一部として、相互結合されても良く、これらのキラルな組み合わせ(一般構造Ib)においては、X1とX2は、ヒドリド、ハライド、オキシアルキル又はオキシアリール、カルボキシレート、フェノレート及びアクリレート、SC(O)R,SC(S)R等のアニオン性リガンドであっても良く、あるいは、X1、X2は、CH2Cl2等の1又は2溶媒分子であっても良い。いずれかの可能な立体化学の一般式IIのものでは、L1,L2,L3,L4が、C,N,O,P,S原子のいずれかの組み合わせによってRu原子に結合したリガンド基のいずれかの組み合わせであり、このリガンド基は、独立していても(一般構造IIa)であっても、アルキル鎖にある主に炭素原子から成る5原子以下から成る共有結合(一般構造IIb)によって、又は、N,O,P,S原子を含むことが可能な、アリーレン環の一部として、相互結合されても良く、これらのキラルな組み合わせにおいて、L1とL2は、前記のものであるが、L3とL4は、アレーン基(式IIIa及びIIIbに示されるもの等)によって置き換えられ、L1基が無いか、あるいは、L1とL2基が無いこともあり、この際、X1とX2基は、ヒドリド、ハライド、オキシアルキル又はオキシアリール、カルボキシレート、フェノレート及びアクリレート、SC(O)R,SC(S)R等のアニオン性リガンドのいくつかの組み合わせであっても良く、これらのいずれかは、共有結合で一緒に結合されても、X2が無くても良く、あるいは、X基の一つを置き換えた対アニオンから成っても良い。一般式IVのものは、独立した基(一般式IVa)として、上記のリガンドL1とL2を有しているか、あるいは、上記のように相互結合されており(一般式IVb)、この際、X1〜X4は、ヒドリド、ハライド、オキシアルキル又はオキシアリール、カルボキシレート、フェノレート及びアシレート、SC(O)R,SC(S)であって良く、これらのいずれかは、2種の金属を用いた錯体中の他のルテニウム原子又は他の金属に結合するように架橋していても良い。
具体的なRu触媒としては、RuOAc2(R‐BINAP)又はRuOAc2(S‐BINAP)、キラルなジホスフィンリガンドを有したRuX2、CAS[192139‐92‐7]及び誘導体、[RuCl2(p‐サイメン)2(ホスフィン又はジホスフィン)RuCl(p‐サイメン)、DIOP、SEGPHOS、PHANEPHOS、DuPHOS配位されたRu(II)種及び金属カルベンオレフィンメタセシス触媒、例えば、Ru(II)ジクロロ(3‐メチル‐2‐ブテニリデン)ビス(トリシクロペンチルホスフィン)(C716);Ru(II)ジクロロ(3‐メチル‐2‐ブテニリデン)ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)(C801);Ru(II)ジクロロ(フェニルメチレン)ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)(C823);Ru(II)(1,3‐ビス‐(2,4,6‐トリメチルフェニル)‐2‐イミダゾリジニリデン)ジクロロ(フェニルメチレン)(トリフェニルホスフィン)(C830);Ru(II)ジクロロフェニルビニリデン)ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)(C835);Ru(II)ジクロロ(トリシクロヘキシルホスフィン)(o‐イソプロポキシフェニルメチレン)(C601);Ru(II)(1,3‐ビス‐(2,4,6‐トリメチルフェニル)‐2‐イミダゾリジニリデン)ジクロロ(フェニルメチレン)ビス(3‐ブロモピリジン)(C884);[1,3‐ビス‐(2,4,6‐トリメチルフェニル)‐2‐イミダゾリジニリデン]ジクロロ(o‐イソプロポキシフェニルメチレン)ルテニウム(II)(C627);[1,3‐ビス‐(2,4,6‐トリメチルフェニル)‐2‐イミダゾリジニリデン]ジクロロ(ベンジリデン)(トリフェニルホスフィン)ルテニウム(II)(C831);[1,3‐ビス‐(2,4,6‐トリメチルフェニル)‐2‐イミダゾリジニリデン]ジクロロ(ベンジリデン)(メチルジフェニルホスフィン)ルテニウム(II)(C769);[1,3‐ビス‐(2,4,6‐トリメチルフェニル)‐2‐イミダゾリジニリデン]ジクロロ(ベンジリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウム(II)(C848);[1,3‐ビス‐(2,4,6‐トリメチルフェニル)‐2‐イミダゾリジニリデン]ジクロロ(ベンジリデン)(ジエチルフェニルホスフィン)ルテニウム(II)(C735);[1,3‐ビス‐(2,4,6‐トリメチルフェニル)‐2‐イミダゾリジニリデン]ジクロロ(ベンジリデン)(トリ‐n‐ブチルホスフィン)ルテニウム(II)(C771);[1,3‐ビス‐(2,4,6‐トリメチルフェニル)‐2‐イミダゾリジニリデン]ジクロロ(3‐メチル‐2‐ブテニリデン)(トリフェニルホスフィン)ルテニウム(II)(C809);[1,3‐ビス‐(2,4,6‐トリメチルフェニル)‐2‐イミダゾリジニリデン]ジクロロ(3‐メチル‐2‐ブテニリデン)(メチルジフェニルホスフィン)ルテニウム(II)(C747);[1,3‐ビス‐(2,4,6‐トリメチルフェニル)‐2‐イミダゾリジニリデン]ジクロロ(3‐メチル‐2‐ブテニリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウム(II)(C827);[1,3‐ビス‐(2,4,6‐トリメチルフェニル)‐2‐イミダゾリジニリデン]ジクロロ(3‐メチル‐2‐ブテニリデン)(ジエチルフェニルホスフィン)ルテニウム(II)(C713);[1,3‐ビス‐(2,4,6‐トリメチルフェニル)‐2‐イミダゾリジニリデン]ジクロロ(3‐メチル‐2‐ブテニリデン)(トリ‐n‐ブチルホスフィン)ルテニウム(II)(C749);[1,3‐ビス‐(2,4,6‐トリメチルフェニル)‐2‐イミダゾリジニリデン]ジクロロ(フェニリンデニリデン)(トリフェニルホスフィン)ルテニウム(II)(C931);[1,3‐ビス‐(2,4,6‐トリメチルフェニル)‐2‐イミダゾリジニリデン]ジクロロ(フェニリンデニリデン)(メチルジフェニルホスフィン)ルテニウム(II)(C869);[1,3‐ビス‐(2,4,6‐トリメチルフェニル)‐2‐イミダゾリジニリデン]ジクロロ(フェニリンデニリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウム(II)(C949);[1,3‐ビス‐(2,4,6‐トリメチルフェニル)‐2‐イミダゾリジニリデン]ジクロロ(フェニリンデニリデン)(ジエチルフェニルホスフィン)ルテニウム(II)(C835);及び[1,3‐ビス‐(2,4,6‐トリメチルフェニル)‐2‐イミダゾリジニリデン]ジクロロ(フェニリンデニリデン)(トリ‐n‐ブチルホスフィン)ルテニウム(II)(C871)が挙げられる。
ある具体例においては、前記システム及び方法は、化学反応からパラジウム(Pd)を除去するために使用される。Pd触媒及び、溶液からのこれらの除去の実例が、実施例1及び2に提供されている。いくつかの例示的なPd錯体としては、以下の一般式PdX2L1L2(一般構造Ia)及びPdL1L2L3L4(一般構造Ib)の、Pd(0)及びPd(II)の両方の酸化状態にあるPdが挙げられ、上記式にて、Xは、ハロゲン化物又はカルボキシレート等のアニオン性リガンドであり、リガンドL1L2L3L4のいずれかは、以下のグループからの同じ又は異なるリガンドの4つと同じであっても、それ以下が同じであっても良く、ホスフィン(R3P,Ar3P又はRnP(Ar)3−n、この際、n=1−3);ホスフィナイト((RO)nPR3−n(n=1,2,3));ホスフィンイミン((RR’N)nPR3−n(n=1,2,3));アミンR3N及び脂肪族及び芳香族ジアミン;ジホスフィン(R2P(CH2)nPR2、この際、Rはアリール又はアルキル基であって良く、n=1−6;ビフェニル(一般構造II)、ビナフチル芳香族結合(一般構造III)又はフェロセニル芳香族サブユニットによって結合したジホスフィン;1,3‐ジアリールイミダゾリウムカルビル(一般構造IV);1,3‐ジアルキルイミダゾリウムカルビル;1,3‐アルキルアリールイミダゾリウムカルビル;1,3‐ジアリールイミダゾリジニウムカルビル(一般構造V);1,3‐ジアルキルイミダゾリジニウムカルビル;1,3‐アルキルアリールイミダゾリジニウム;1,3‐ジアリールベンズイミダゾリウムカルビル(一般構造VI);1,3‐ジアルキルベンズイミダゾリウムカルビル;アルキル;アリール及び、PdX2と上記のグループからのLとL’リガンドから成る、Pd2と(ジベンジリデンアセトン)3と上記のグループからのLとL’リガンドから成る、Pd(溶媒)2又は4と上記のグループからのLとL’リガンドから成るPdのその場での配合物が挙げられる。
更なるPd触媒の具体例としては、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド、[1,1’‐ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロリド、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)クロリド、ビス(トリ‐tert‐ブチルホスフィン)パラジウム(0)、パラジウムヒドロキシド、パラジウム(II)アセテート、パラジウム(II)ブロミド、パラジウム(II)ニトレート、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)、アリルパラジウムクロリドダイマー、ビス(アセトニトリル)パラジウム(II)クロリド、ビス(ベンゾニトリル)パラジウム(II)クロリド、パラジウム(II)クロリド、パラジウム(II)トリフルオロアセテート、テトラキス(アセトニトリル)パラジウム(II)テトラフルオロボレート、[1,2‐ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン]ジクロロパラジウム(II)、1,1’‐ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセンパラジウム(II)ジクロリドジクロロメタン付加物、ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウム(0)、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)アセテート、ビス[1,2‐ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン]パラジウム(0)、ビス[トリ(o‐トリル)ホスフィン]パラジウム(II)クロリド、ジクロロビス(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウム(II)及び、trans‐ベンジル(クロロ)ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)が挙げられる。
シリカゲル支持されたイソシアニドを用いたパラジウムの除去は、溶液からPd(0)及びPd(II)種の除去に効果的である。ある実施例では、1の4当量を用いると、24時間以内に99.9%のPdが除去された(<1.0ppm)。別の実施例では、1の8当量によって、たった1時間後に5.4ppmとなり、4時間後には1.4ppm(99.8%除去)となった。
別の実施例においては、前記のシステム及び方法は、有機溶液からイリジウム(Ir)を除去するために使用される。Ir触媒及び、溶液からのこれらの除去の実例が、実施例3に提供されている。いくつかの例示的なIr錯体としては、0、+1及び+3の形式の酸化状態で、一般式Iの中性及びカチオン性錯体であるIrが挙げられ、上式にて、L1とL2は、C,N,O,P,S原子によってIr原子に結合したリガンド基のいずれかの組み合わせであり、このリガンド基は、独立であっても、アルキル鎖にある主に炭素原子から成る5原子以下から成る共有結合によって、又は、N,O,P,S原子及び、これらのキラルな組み合わせを含むことが可能な、アリーレン環の一部として、相互結合されても良く;Xは、ヒドリド、ハライド、オキシアルキル又はオキシアリール、カルボキシレート、フェノレート及びアリレート等のアニオン性リガンドであっても良く、あるいは、Ir含有錯体が最終的に正の電荷を有する場合には、対アニオンから成っても良く、あるいは、Xは、エテンや1,5‐オクタジエン等のジエンのような1以上のアルケンであっても良く、あるいは、いずれかの可能な立体化学の一般式IIのものでは、L1,L2,L3が、C,N,O,P,S原子によってIr原子に結合したリガンド基のいずれかの組み合わせであり、このリガンド基は、独立であっても、アルキル鎖にある主に炭素原子から成る5原子以下から成る共有結合によって、又は、N,O,P,S原子及び、これらのキラルな組み合わせを含むことが可能な、アリーレン環の一部として、相互結合されても良く、L1基が無いことも、あるいは、L1とL2基が無いこともあり;X1,X2及びX3基は、ヒドリド、ハライド、オキシアルキル又はオキシアリール、カルボキシレート、フェノレート及びアリレート等のアニオン性リガンドのいくつかの組み合わせであっても良く、これらのいずれかは、共有結合で一緒に結合されても、X2が無いか、あるいは、X2とX3が無く、あるいは、X基の一つを置き換えた対アニオンから成っても良い。
Ir触媒の具体例としては、クロロ(1,5‐シクロオクタジエン)イリジウム(I)ダイマー、(1,5‐シクロオクタジエン)(メトキシ)イリジウム(I)ダイマー、(ペンタメチルシクロペンタジエニル)イリジウム(III)ジクロリドダイマー、トリベンジルホスフィン(1,5‐シクロオクタジエン)[1,3‐ビス‐(2,4,6‐トリメチルフェニル)イミダゾール‐2‐イリデン]、イリジウム(I)ヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルホスフィン(1,5‐シクロオクタジエン)[1,3‐ビス‐(2,4,6‐トリメチルフェニル)イミダゾール‐2‐イリデン]、イリジウム(I)ヘキサフルオロホスフェート、トリス(ジメチルフェニルホスフィン)(1,5‐シクロオクタジエン)[1,3‐ビス‐(2,4,6‐トリメチルフェニル)、イミダゾール‐2‐イリデン]イリジウム(I)ヘキサフルオロホスフェート、1,5‐シクロオクタジエン{[ジベンジル((4R,5R)‐5‐メチル‐2‐フェニル‐4,5‐ジヒドロ‐4‐オキサゾリル)メチル]ジフェニルホスフィナイトκN:κP}イリジウム(I)テトラキス(3,5‐ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボレート、1,5‐シクロオクタジエン{[ジベンジル((4S,5S)‐5‐メチル‐2‐フェニル‐4,5‐ジヒドロ‐4‐オキサゾリル)メチル]ジフェニルホスフィナイトκN:κP}イリジウム(I)テトラキス(3,5‐ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボレート、1,5‐シクロオクタジエン{[ジベンジル((4R,5R)‐5‐メチル‐2‐フェニル‐4,5‐ジヒドロ‐4‐オキサゾリル)メチル]ジシクロヘキシルホスフィナイトκN:κP}イリジウム(I)テトラキス(3,5‐ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボレート、1,5‐シクロオクタジエン{[ジベンジル((4S,5S)‐5‐メチル‐2‐フェニル‐4,5‐ジヒドロ‐4‐オキサゾリル)メチル]ジシクロヘキシルホスフィナイトκN:κP}イリジウム(I)テトラキス(3,5‐ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボレート、[Ir(COD)Cl]2,Ir/CaCO3,Ir/Al2O3及びIr/Cが挙げられる。
更に別に例においては、前記のシステム及び方法は、化学反応からロジウム(Rh)を除去するために使用される。Rh触媒の具体例は、以下のものである。L3RhX、この式にて、L=Ph3P、トリアリールホスフィン、トリアルキルホスフィン等で、X=ハロゲン化物、及びカチオン性変形体で、上式にて、X基は、正の電荷又は対アニオンで置き換えられる。カチオン性Rh触媒はいずれも、好ましくは、キラルなホスフィン又はキラルなジホスフィンリガンドを有し、[Rh cod(R)‐Phanephos]BF4,[849950‐56‐7],[Rh cod(R)‐PPhos]BF4[573718‐56‐6],[Rh cod((S)‐Binap)2]BF4[98302‐53‐5],(S)‐[Rh COD TCFP]BF4[705945‐68‐2],[Rh cod DiPFc]BF4[255064‐39‐9],[Rh cod(S)‐Xyl‐Phanephos]BF4[880136‐41‐4],[Rh cod(S)‐Phanephos]O3SCF3[200808‐74‐8],等である。タイプRh2L4及びRh2L3L’である、ランタンタイプ(Lantern-type)のジロジウム錯体においては、前記L基が、カロボキシレート、カルボキシアミドであり、キラルな置換基を有しているか、これらを有していないかのいずれかである。このような触媒のいくつかの例としては、ジロジウム(II)テトラキス[N‐テトラフルオロフタロイル‐(S)‐tert‐ロイシネート]、ジロジウム(II)テトラキス[N‐フタロイル‐(S)‐tert‐ロイシネート]、ジロジウム(II)テトラキス[N‐テトラクロロフタロイル‐(S)‐tert‐ロイシネート]及び、アミノ酸から誘導された(R)又は(S)‐立体配置を有するもの(この際、R基はPh,Me,iPr,アダマンチル等であって良い)が挙げられる。
別の具体例においては、前記のシステム及び方法は、化学反応から白金(Pt)を除去するために使用される。Pt触媒の具体例は、以下のものである。PtX2、この際、X=ハロゲン化物、PtX2L2、この際、X=ハロゲン化物、アセテート又は他のアニオン性リガンドで、Lはトリアリール‐又はトリアルキルホスフィン、Pt(PR3)2,X2Pt(1,5‐シクロオクタジエン)、この際、X=ハロゲン化物、X2Pt(NH3)2,X2Pt(NHR)2,PtX4,Pt(NH3)4,Pt(NHR)4、この際、R=アルキル又はアリール、及びLPtX、この際、LはN‐ヘテロ環状のカルベンリガンドを含む。
本発明の方法が使用できる金属触媒化反応にて使用される金属触媒の他の例としては、式(I)の構造を有したグループ8の遷移金属錯体であって良い金属カルベンオレフィン触媒が挙げられる。
式(I)において、Mは、グループ8の遷移金属であり;L1,L2,及びL3は中性の電子供与リガンドであり;nは0又は1で、L3は存在しても存在していなくても良く;mは0,1又は2で;kは0又は1で;X1とX2はアニオン性リガンドであり;しかもR1とR2は独立して、水素、ヒドロカルビル、置換されたヒドロカルビル、ヘテロ原子‐含有カルビル、置換されたヘテロ原子‐含有カルビル、及び官能基から選ばれたものであり、この際、X1,X2,L1,L2,L3,R1,及びR2のいずれか2つ以上は、1以上の環状基を形成するように一緒に考慮され、さらに、X1,X2,L1,L2,L3,R1,及びR2のいずれか1つ以上が支持体に結合され得る。
ここに開示されている反応において使用できる他の触媒としては、第1世代グラブス型触媒、第2世代グラブス型触媒、「グラブス‐ホベイダ(Grubbs-Hoveyda)」触媒、他の遷移金属カルビン錯体、グループ8遷移金属錯体、又は、シッフ塩基リガンドとのグループ8遷移金属錯体が挙げられる。これらの他の遷移金属カルビン錯体としては、形式的に+2酸化状態で、16の電子数を有し、5配位された金属中心を含有する、中性のルテニウム又はオスミウム金属カルベン錯体;形式的に+2酸化状態で、18の電子数を有し、6配位された金属中心を含有する、中性のルテニウム又はオスミウム金属カルベン錯体;形式的に+2酸化状態で、14の電子数を有し、4配位された金属中心を含有する、カチオン性のルテニウム又はオスミウム金属カルベン錯体;及び、形式的に+2酸化状態で、14又は16の電子数を有し、4配位又は5配位された金属中心を含有する、カチオン性のルテニウム又はオスミウム金属カルベン錯体が、それぞれ挙げられる。
他の触媒としては、水素化触媒(Ru,Ir又はRhを用いたもの等)、不整水素化触媒(Ru,Ir又はRhを用いたもの等)、ROMP反応において、及び/又は、閉環メタセシス、交差メタセシス、開環交差メタセシス、自己‐メタセシス、エテノリシス、アルケノリシス、非環ジエンメタセシス重合等の他のメタセシス反応において有用な触媒、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
更に、Schrockが充分に規定したモリブデン及びタングステン触媒もまた使用できる。これらとしては、Schrock, R.R.Chem.Rev. 2009,109,3211; Hartford, B. Chemical & Engineering News, “Z-Selective Metathesis of Macrocycles”, Volume 89, Issue 45, November 7, 2011, page 11; Yu,M., Wang,C.; Kyle, A.F.; Jakubec, P.; Dixon, D.J.; Schrock, R.R.; Hoveyda, A.H. Nature, November 3, 2011, 479, 88に記載されている触媒が挙げられ、これらのそれぞれが、参照文献として組み込まれる。
一般に、触媒としてここで使用される遷移金属錯体は、いくつかの異なった方法により製造することができ、Schwab等 (1996) J.Am.Chem.Soc. 118:100-110, Scholl等 (1999) Org.Lett. 6: 953-956, Sanford等(2001) J.Am.Chem.Soc. 123:749-750, U.S.Pat. No.5,312,940,及びU.S.Pat. No.5,342,909に記載されているもの等であり、これらのそれぞれの開示内容は、参照文献としてここに組み込まれる。Grubbs等によるU.S.Pat.Pub. No.2003/0055262、WO 02/079208,及びGrubbs等によるU.S.Pat. No.6,613,910もまた参照され、これらのそれぞれの開示内容は、参照文献としてここに組み込まれる。好ましい合成方法は、Grubbs等によるWO 03/11455A1に記載されており、この開示内容は参照文献としてここに組み込まれる。
金属触媒化反応から遷移金属又は遷移金属錯体を除去することによって、遷移金属又は遷移金属錯体を含んでいない反応生成物組成物が得られる。本開示に記載された前記の方法は、医薬品、薬候補物、サプリメント、生体活性化合物、又は診断薬を含む種々の反応生成物の合成において有用である。
ある具体例においては、本開示はまた、キットを提供する。このキットは、金属封鎖材料と、使用説明書を含む。この金属封鎖材料は、支持体、当該支持体に結合したリンカー、及び当該リンカーに結合した少なくとも1つのイソシアニドを有する。前記の使用説明書は、使用のための説明及び条件を含んでも良く、前記材料が適した金属触媒に関するリスト又は案内を提供しても良い。
本開示に記載された前記の方法はまた、溶出液から、廃棄物処理工程等から、遷移金属及び/又は遷移金属錯体を除去するために使用できる。これらの方法は、金属回収及び/又は、遷移金属を含有する溶出液の精製又は汚染除去に有用である。
本願を通じて、個別の形態は、単独及び複数の形態を包含でき、同様に、複数の形態は、単独及び複数の形態の両方を包含し得る。
以下の実施例は、本発明を更に説明している。これらの実施例は、説明の目的で提供されており、限定と解釈されるものではない。
実験の詳細
イソシアニドグラフトされたシリカゲルの合成
先に報告された方法に従って、オーブンにて乾燥させた50mLの丸底フラスコに、31.6mL(135ミリモル、30g1当量)の(3‐アミノプロピル)トリエトキシシラン(APTES)を入れ、この溶液を氷浴を用いて0℃にまで冷却した。その後、冷却された前記溶液に、10.9mL(135ミリモル、10g、1当量)の蟻酸エチルを30分かけて添加した。上記の添加後、氷浴から反応物を取出し、30分かけて室温にまで温め、その時点で、予め加熱したオイルバス中に60℃で2時間置いた。その後、この反応物をオイルバスから取出し、一晩、室温で放置した。次の日に、未反応の蟻酸エチルを全て、エタノール共生成物と一緒に蒸留除去した。このようにして得られた透明な油状物を、97%の収率で採取し、スペクトルを測定したところ、以前に報告されたデータと良く一致した。1H NMR(500MHz,CDCl3):δ(主な異性体)8.16(s,1H),6.23(br s,1H),3.81(q,J=7.5Hz,6H),3.30(q,J=6.5Hz,2H),1.69−1.63(m,3H),1.24(t,J=7.0Hz,9H),0.67−0.61(m,2H)。
先に報告された方法と同様にして、オーブンにて乾燥させた250mLの3つ首丸底フラスコに、窒素下で、100mLのTHFに、20g(80ミリモル、1当量)のホルムアミドS1と、55.6mL(400ミリモル、5当量)のトリエチルアミンを添加し、−78℃にまで冷却した。その後、この反応物に、45mLのTHF中の溶液として9.0mL(96ミリモル、1当量)のPOCl3を添加した。この溶液を30分かけて滴下して加え、−78℃で更に30分間、撹拌状態とした。その後、この反応物を氷浴の中に置き、1時間放置し、その時点で、この反応物に100mLの氷水をゆっくりと加えた。その後、この反応物を、多量のジエチルエーテル(3×100mL)で抽出した。この有機抽出物を一緒にし、3Åのモレキュラーシーブで乾燥させ、その後、真空で濃縮すると(ロータリーエバポレーター)、オレンジがかった赤色の油状物が得られた。その後、この油状物を、乾燥シリカゲルのショートプラグ(3×10cm)で精製し、ヘキサン中の20%ジエチルエーテルを用いて溶出すると、文献1にて以前に報告されたものと良く一致するスペクトルを有した透明なオイルとして、16.6g(89%)のイソシアニド1が得られた。1H NMR(500MHz,CDCl3):δ3.84(q,J=7.0Hz,6H),3.42−3.39(m,2H),1.82−1.76(m,3H),1.25(t,J=7.0Hz,9H),0.75−0.72(m,2H)。
この方法は、以前に報告されたもの1から適合され、250mLの丸底フラスコに、50mLの新しく蒸留したトルエン、3.5gの乾燥シリカゲル(48h,140℃)、及び0.7mL(5ミリモル)のトリエチルアミンを入れた。激しく撹拌された懸濁液に、9.7g(42ミリモル)のイソシアニド1を添加し、この反応物を、80℃に前もって加熱したオイルバス内に位置させ、12時間反応させた。その後、反応物をオイルバスから取出し、室温にまで冷却した。シリカゲルを中位の多孔性フィルターフリット上に収集し、新しく蒸留したトルエン100mLとジエチルエーテル100mLを用いて洗浄した。その後、このシリカゲルを、真空中で24時間乾燥させた。
実施例1−溶液からのPdの除去
方法。20ドラムのガラス瓶に、35mg(0.049ミリモル)のPdCl2(PPh3)2と10mLのTHFを入れた。この溶液を、完全に溶解するまで5分間撹拌した。錯体が完全に溶解して直ぐに、シリガゲルを含有した500mg(16当量)のイソシアニドを添加したところ、その直後に、明るい黄色から透明への色の変化が観察された。この溶液を室温で30分間撹拌し、その時点で、シリカゲルを中位の多孔性フィルターフリットを通して濾過することにより除去した。残りのシリカゲルを、更に10mLのTHFを用いて洗浄した。この有機フラクションを一緒にし、予め重量測定したガラス瓶内で、真空(ロータリーエバポレーター)にて濃縮した。濃縮された溶出物は、金属中心から置換されたトリフェニルホスフィン19mg(0.072ミリモル、1.5当量)を含有することが見出された。
実施例2−溶液からのPdの除去
我々は、イソシアニド‐グラフトされたシリカゲル1と、均一な(可溶性)イソシアニド2の両方を用いたPd除去を調査した(図9)。この実施例における化合物、中間物等の数字表示は、本願における他の場所で使用されているものとは意図的に異なっている。
固体‐支持されたイソシアニドの最初の評価として、Pd錯体の2つの異なる溶液をシリカゲルを用いて処理し、種々の時間間隔の後に、残留Pd濃度を測定した。それぞれ公知の濃度のPd(PPh3)4及びPd(OAc)2を含有した2つの溶液を、Pd(0)及びPd(II)種の除去を評価するために調製した。各溶液を、4及び8当量のイソシアニド‐グラフトされたシリカゲル1を用いて処理し、室温で撹拌した。イソシアニド‐グラフトされたシリカゲル1を沈殿させた後、イソシアニド‐グラフトされたシリカゲル1の添加後、1,4及び24時間の間隔で一部を取出し、温浸プロトコル及び誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP‐MS)を用いてPdについて分析した。
最初に、イソシアニド‐グラフトされたシリカゲル1を、1227.6ppm Pdの初期濃度を有したトルエン中のPd(OAc)2の溶液を用い、Pd(II)の除去について評価した(図10)。4当量のイソシアニド‐グラフトされたシリカゲル1を用いた場合、1.0ppm未満(99.9%のPdが除去)になるまでに24時間に時間が必要であった。5モル%のPd触媒が使用された反応については、20モル%のイソシアニド‐グラフトされたシリカゲル1が必要であった。8当量のイソシアニド‐グラフトされたシリカゲル1を用いた場合、より速くPdが捕捉された。たった1時間後に5.4ppmのPdとなり、4時間後には1.4ppmのPd(99.8%のPdが除去)に達した。いかなる理論に拘束されることなく、恐らく、少ない当量のイソシアニド‐グラフトされたシリカゲル1の使用においては、材料の表面上で少ししか利用できないイソシアニドの増加が必要となる。イソシアニドシリカゲルの高い充填が使用された場合には、いかなる理論に拘束されることなく、表面接近可能なイソシアニドの大きなフラクションが、Pd結合の速い速度の原因となり得る。
次に、トルエン中のPd(PPh3)4の保存溶液からのPd(0)の除去について、イソシアニド‐グラフトされたシリカゲル1を評価した。興味深いことに、イソシアニド‐グラフトされたシリカゲル1は、Pd(II)に比べてPd(0)に対してより速いPdレベルを減少した。更に、4又は8当量のイソシアニド‐グラフトされたシリカゲル1を用いたPd除去においては、劇的な違いは少なかった。4当量と8当量の使用の間の違いを説明するために、0〜100ppmの範囲を拡大したものが示されている。1227ppmのPdの出発値は、スケール外である(図10b)。4当量のイソシアニド‐グラフトされたシリカゲル1だけが、1時間後にPdの99.0%除去(11.9ppm)をもたらした。これより長い処理時間(>4時間)では、2ppm以下のPdレベルとなった。8当量のイソシアニド‐グラフトされたシリカゲル1の使用は、多少、より短時間でより効果的であったが、4及び8当量のイソシアニド‐グラフトされたシリカゲル1は両方とも24時間後に、>99.8%Pd除去に達することができた。
スクリーニングが将来有望な結果を示したので、前記のイソシアニド捕捉剤を、標準的な鈴木カップリングにて評価した(表4)。交差カップリングが完了した後、いくつかの異なる処理条件を調査した。基準を決めるために、未精製の反応物をセライトに通した(表4、エントリー1)。未精製物中に15965ppmという高いPdの潜在的濃度によって、セライト処理は、非極性生成物3からPdのかなりのフラクションを除去することが見出された。これらの場合の全てにおいて、表に報告されているppm Pdは、未精製の、蒸発された有機生成物(反応溶媒の除去後)において検出されたPdの量である。従って、ppm Pdは、分析測定のために作られた溶出物中のPdの濃度ではない。たった4時間後に、8当量(24モル%)のイソシアニド‐グラフトされたシリカゲル1が、シリカゲルを除去するための簡単な濾過(フリット化されたフィルター漏斗)後に99.998%のPdを除去した(エントリー2)。16当量(48モル%)のイソシアニド‐グラフトされたシリカゲル1は、より効果的であった(エントリー3)。4時間後、8当量のイソシアニド‐グラフトされたシリカゲル1は、シリカゲルを通すカラムクロマトグラフィーによって取り除くことができ、99.999%のPdを除去することが見出された(エントリー4)。エントリー2〜5では、高価な白金グループ金属のシリカゲルベースの回収に適したセライトを用いる前処理を行わなかった。シリカゲルを通すカラムクロマトグラフィーによる精製は、小規模の反応においては好ましいが、副生成物がほとんどない大規模な反応においては、濾過を伴うイソシアニド‐グラフトされたシリカゲル1上での撹拌が好ましい。
均一なイソシアニドKO2CCH2NCもまた、シリカゲルクロマトグラフィーと組み合わせた際に、鈴木反応からの残留パラジウムの除去に特に効果的であった(表4、エントリー5)。以前に(Galan等,2007‐参考文献2)、我々の実験室は、溶液ベースのイソシアニドが、メタセシス反応からのルテニウム金属の除去に効果的であったことを示した。このような溶液ベースの方法を用いる場合、生成され得られる極性の(イソシアニド)パラジウム錯体を取り除くのにカラムクロマトグラフィーを使用することが必要であった。エントリー5は、ppmレベル以下のPdが、5当量のKO2CCH2NCを用いて速やかに達成できたことを示している。我々の知っている限りでは、このような市販のイソシアニドが、交差カップリング反応からPdを除去することは、これまでには示されていなかった。
鈴木交差カップリングのより極性のある生成物からのPdの除去は、より困難であるが、イソシアニドを用いると可能である。フェニルボロン酸との3‐ブロモピリジンの交差カップリングにより、Pdに対して配位可能なビアリール4が生成した(表5)。この場合には、セライトは効果的ではなく、32.1%のPdしか除去されなかった(エントリー1)。この反応が完了した時点で、パラジウムのかなりのフラクションが、まだ溶解可能であり、セライトによって取り除くことができなかった。金属捕捉剤を添加しない直接カラムクロマトグラフィーでは、99.5%のPdが除去された(エントリー2)。しかしながら、94ppmの残留Pdはまだかなり高く、黄色の生成物が残った。イソシアニド‐グラフトされたシリカゲル1の添加と、8及び16当量のイソシアニド‐グラフトされたシリカゲル1を用いた濾過除去(中位の多孔性フリットを用いたフリット化されたフィルター漏斗)により、Pdの不純物レベルは23.29及び14.26ppmにまで減少した(エントリー3,4)。シリカゲルクロマトグラフィーと一緒に均一なイソシアニド試薬を使用すると(エントリー5)、16当量のイソシアニド‐グラフトされたシリカゲル1と同様の結果が達成された(エントリー4)。
極性の生成物では、イソシアニドは、異なるPd(II)プレ触媒が使用された際、Pdを効果的に除去した(表6)。セライトは効果的ではなく(エントリー1)、シリカゲルクロマトグラフィー自体では、470ppmまでPdを除去した(エントリー2)。8又は16当量のイソシアニド‐グラフトされたシリカゲル1を用いた処理では、39.56及び7.8ppmのPdとなった(エントリー3,4)。このデータは、Pd除去の有効性にいくらかバラツキがあることを示しているが、16当量のシリカ1を用いた未精製物の床濾過精製では、10ppm以下のPdレベルがもたらされた。フラッシュクロマトグラフィーを組み合わせた、溶液相試薬KO2CCH2NCは、効果が少なかった(エントリー5)。
同じ系列の処理条件は、前記のイソシアニド‐グラフトされたシリカゲル1が、Heck反応の生成物からのPdの除去において最も良好であったことを示した。この場合、プレ触媒としてPd(II)が使用され、反応は18時間にわたって行われた。セライトは、適度に効果的であることを証明した(表7、エントリー1)。イソシアニド‐グラフトされたシリカゲル1は、4時間の処理時間を用い、その後、シリカゲルを除去するために簡単な濾過を行うことによって、Pdレベルをかなり減少させた(エントリー2,3)。シリカゲルクロマトグラフィーの使用は、この場合においてわずかな改良しかもたらさなかった(エントリー4)。均一なイソシアニドKO2CCH2NCは、その後にシリカゲルクロマトグラフィーを行った際、99.95%のPd除去をもたらした(エントリー5)。
イソシアニド捕捉剤を用いたパラジウムの除去もまた、広く使用されるBuchwald−Hartwigアミノ化について適用した。我々は、広範囲にわたる用途のため、使用される独特なPdリガンド系であるため、高い反応温度のため、そして、Pdを結合して保持する、置換されたアニリン生成物の可能性のために、この反応の代表的なものを調査した。この後者の問題は、特に、極性及び/又は配位官能基によって多く修飾されたアニリンにおいて、精製を困難にし、Pd除去を複雑にすることがある。セライトを通す簡単な濾過は、効果的ではなく、高いレベルの残留Pdとなった(表8、エントリー1)。イソシアニド‐グラフトされたシリカゲル1は、4時間の処理時間と簡単な濾過を用いることにより、Pdレベルを3ppm未満のPdにまで減少させた(エントリー2,3)。カラムクロマトグラフィーと組み合わせたイソシアニド‐グラフトされたシリカゲル1の使用は、99.999%のPdを除去し、Pdレベルを1ppm以下にまで減少させた(エントリー4)。均一なイソシアニドKO2CCH2NCは、その後にシリカゲルクロマトグラフィーを行った際、0.5ppmのPd、即ち99.999%除去を達成した(エントリー5)。
前記イソシアニドは、Buchwald−Hartwigアミノ化によって得られた非常に極性のあるキレートジアミン生成物からPdを除去することができた(図12)。1,2‐ジブロモベンゼン上でのアミンの2倍のBuchwald−Hartwig反応は、ベンズイミダゾール及びベンズイミダゾリウム環系を作るためのキーとなる工程をもたらす。ヘテロ環合成において使用される中間物として、ジアミン7は、医薬品及び薬剤候補物の合成において遭遇し得る典型的な中間物である。1,2‐ベンゼンジアミン7は、Pdへの二座配位が可能であり、Pd除去をより困難にすることが予想された。この場合には、我々は未精製物7を分離し、これには、221ppmのPdが混入されていることがわかった。このように非常に難しい場合では、8又は16当量のイソシアニド‐グラフトされたシリカゲル1を用いて16時間、室温で未精製のジアミン7のトルエン溶液を混合した後に濾過を行うと、カラムクロマトグラフィーの追加工程なしに、ジアミン7中の残留パラジウムの同様の10倍減少が生じた。これらのより困難な場合においては、イソシアニド‐グラフトされたシリカゲル1の当量を高くすることが、Pd除去にとって最も望ましい。
Pd(II)及びPd(0)のイソシアニド錯体は、文献で証明されている。例えば、Angelici等(Inorg.Chem 1988,27,85)は、Cl2Pd(NCCH3)2から出発して置換反応によりcis‐Cl2Pd(CNR)2を製造した。伊藤と共同研究者は(J.Org.Chem. 1991, 56,1948)、Pd(OAc)2‐t‐オクチルイソシアニド触媒系を使用し、その場でPd(0)イソシアニド触媒を生成させることにより、アルキンの分子内ビスシリル化を達成した。Pd(II)錯体(Angew.Chem.Int.Ed. 1995,33,2445)では、イソシアニドは、Ph3Pリガンドを置換することができる。tert‐ブチルイソシアニドは、Pt(PtBu3)2から両方のホスフィンを置換することができ、三核種[Pt3(μ‐CNt‐Bu)3(CNt‐Bu)3]を生成する(J.Orgomet.Chem. 1981,214,405)。最近では、Figueroa等(J.Am.Che.Soc. 2009,131,11318)は、非常に嵩張った芳香族基を有するアリールイソシアニドを用いてモノマー性の(ArNC)2Pd(0)をうまく製造した。大部分において、Pd(0)イソシアニド錯体の製造では、多核種、例えばPd2(dba)3が生じ、ArNCは[Pd3(CNAr)6](この際、Ar=2,6‐ジメチルフェニル)を与えた(J.Orgomet.Chem 1983,259,355)。我々の知る限り、Pd(0)錯体からのホスフィンの置換は、Pd(CNR)nを生成させるための準備経路として使用されていなかった。図13には、いくつかの金属結合されたイソシアニドリガンドのIR伸縮周波数が、文献化合物を選択するために記載されている。
モデルのPd触媒Cl2Pd(PPh3)2を、イソシアニド‐グラフトされたシリカゲル1によって溶液から除去した。Cl2Pd(PPh3)2のTHF溶液を、25当量のイソシアニド‐グラフトされたシリカゲル1を用いて処理した。この黄色の溶液は、上記シリカゲルを数分後に沈殿させた際に透明で、無色となった。30分後、シリカゲルを除去するために濾過を行うと、溶出液にはトリフェニルホスフィンが含まれていることがわかり、これは、リガンド置換反応が起こったことを示していた。この捕捉シリカゲルは分離され、反射IR分光法によって確認された。
イソシアニド‐グラフトされたシリカゲル1とCl2Pd(PPh3)2との間に生成した生成物の反射IRスペクトルは、Pd(II)結合したイソシアニドと一致する新しいイソシアニド吸収を示した。このような一般に使用されるプレ触媒は、いくつかのX2Pd(CNR)2有機金属錯体が文献にて知られているので、分光学的な比較を行うことができるために選択された(図13)。特徴的なIR吸収は、パラジウム原子に配位したイソシアニドの直接的な証拠を示している。図10Aには、イソシアニド‐グラフトされたシリカゲル1の反射IRスペクトルが提供されている。2147cm−1における強い吸収は、シリカゲル結合したイソシアニドを示している(これに比べて、イソシアニド前駆体であるCNCH2CH2CH2Si(OEt)3のv(CNR)吸収は2150cm−1である)。PdCl2(PPh3)2を捕捉(THF中で30分、室温)した後に分離されたシリカゲルの反射IRスペクトルが、図10Bに示されている。2147cm−1における「フリーな」イソシアニドピークの他に、新たなIRピークが2231cm−1に現れた。このピークは、フリーなイソシアニドに比べて84cm−1シフトしており、これは、フリーなイソシアニドにおけるピーク周波数と、Pd(II)とPd(II)錯体の両方に結合したイソシアニドにおけるピーク周波数との間の、Angeliciが観察した違いと一致している。上記の新たなピークの幅の広さは、単一種又は異なる配位数を有した複合種によるものと思われる。1Cの2つの吸光度は15cm−1離れており、cis‐Cl2Pd(1)2による幅広いピーク内で区別できないことがある。又、文献には知られていない一座の種が存在しているか、あるいは、二座のtrans異性体であるtrans‐Cl2Pd(1)2が存在していることもあり得る。我々の知る限りでは、trans‐Cl2Pd(CNR)2種が公知であるとは思われないが、同種のものであるtrans‐Br2Pd(CNt‐Bu)2は、2224cm−1において吸光度を有しており、観察された伸縮周波数(J.Amer.Chem.Soc. 1971,93,6705)と良く一致している。この新たなピークは、少なくとも1つのPd‐(CNR)結合と一致している。前述の理論は、本開示を拘束しない。
結論として、イソシアニド試薬は、交差カップリング反応からの残留パラジウムの除去において効果的な手段をもたらす。シリカゲル結合した試薬は、Pdに結合したイソシアニド‐グラフトされたシリカゲル1を除去するのに必要とされる簡単な濾過を用いて、それ自体で溶液からPdを結合するのに使用できる。市販のイソシアニドKO2CCH2NCは、シリカゲルクロマトグラフィーと組み合わせた際、イソシアニド‐グラフトされたシリカゲル1の場合に匹敵する結果で。短時間のうちにPdレベルを減少させた。交差カップリングの非極性生成物を用いる場合、セライト及び未処理のシリカゲルは、Pdを除去するのにいくらか効果的であった。一般には、前記のイソシアニド捕捉試薬は、残留Pdを1〜10ppmレベルにまですることが可能であり、多くの場合、クロマトグラフィー工程を必要としなかった。反射IR測定は、Pd(II)に対する結合と一致した新たなイソシアニドの発現を示している。
材料及び方法
Pd(II)について。それぞれが、5mLのトルエン中に溶解された11.3mg(0.05ミリモル)のPd(OAc)2を含む2つの溶液を準備した。撹拌した前記溶液に、133mg(0.2ミリモル)又は266mg(0.4ミリモル)のシリガケル1のいずれかを添加した。この溶液の分液を、シリカゲルを沈殿させた後、トルエン溶液から〜1mLのサンプルを取り出すことによって、1時間、4時間、24時間の処理時間後に採取した。得られたサンプルの重さ(800〜1100mgの間)を分析天秤にて記録し、溶液中に残ったパラジウムの相対ppmを測定するのに使用した。取り出した各分液の重さを記録し、溶媒を蒸発させ、残留物質を2mLのTraceSelectグレードの硝酸を用いて温浸させた。これらのサンプルを、その後、50mLの最終容積となるように希釈し、ICP‐MSによって分析した。この値は、最初に取り除かれた分液中のPdのレベルを逆算するのに用いられ、分液が取り除かれた時の溶液中のPdの量を示している。
Pd(0)について。5mLのトルエン中に57.8mg(0.05ミリモル)のPd(PPh3)4が溶解された2つの溶液を準備し、撹拌した前記溶液に、133mg(0.2ミリモル)又は266mg(0.4ミリモル)のシリガケル1を添加した。この溶液の分液(0.880〜1.339mL)を、シリカを沈殿させてトルエン溶液からサンプルを取り出すことによって、1時間、4時間、24時間の処理後に採取した。得られたサンプルの重さを記録し、溶液中に残ったパラジウムの相対ppmを測定するのに使用した。得られたサンプルの重さ(763〜1161mgの間)を記録し、溶液中に残ったパラジウムの相対ppmを測定するのに使用した。取り出した各分液の重さを記録し、溶媒を蒸発させ、残留物質を2mLのTraceSelectグレードの硝酸を用いて温浸させた。これらのサンプルを、その後、50mLの最終容積となるように希釈し、ICP‐MSによって分析した。この値は、最初に取り除かれた分液中のPdのレベルを逆算するのに用いられ、分液が取り除かれた時の溶液中の残留Pdを反映している。
表S1に示されている以下のデータは、図11Aにおけるプロットを作成するために使用された。詳細なグラフは、図15において以下に提供される。
表S2に示されている以下のデータは、図1Aにおけるプロットを作成するために使用された。詳細なグラフは、図16において以下に提供される。
反応ワークアップのための一般的な方法
対照ワークアップ
反応物は、0.5gのセライト上で直接、精製され、等しい容積の反応溶媒を用いて溶離された。このサンプルを真空下(ロータリーエバポレーター)で濃縮し、回収された物質の重さが得られ、その後、目的の生成物を、12時間、室温にて2mLの濃硝酸中で温浸させた。
方法1
反応物を、いずれかの捕捉材料を用いて処理せず、単に真空下(ロータリーエバポレーター)で濃縮し、その後、使用された触媒1ミリモル当たり1gのシリカゲルによって直接、精製し、ヘキサン中の10%ジエチルエーテルの移動層を用いて溶離した。生成物を含有したフラクションをプールし、濃縮し、回収された物質の重さが得られ、その後、目的の生成物を、12時間、室温にて2mLの濃硝酸中で温浸させた。
方法2
反応物に、溶液として、1mLのメタノール中の5当量(使用されたPd触媒に対して)のKO2CCH2NCを添加した。この反応物中でイソシアニドを、反応温度にて1〜4時間、撹拌状態とした。その後、この反応物を、使用された触媒1ミリモル当たり1gのシリカゲルによって直接、精製し、ヘキサン中の10%ジエチルエーテルの移動層を用いて溶離した。生成物を含有したフラクションをプールし、濃縮し、回収された物質の重さが得られ、その後、目的の生成物を、12時間、室温にて2mLの濃硝酸中で温浸させた。
方法3
反応物に、シリカゲル1を含有する4〜8当量(使用されたPd触媒に対して)のイソシアニドを添加し、この反応物を、反応温度にて1〜4時間、撹拌状態とした。その後、この反応物を、使用されたPd触媒1ミリモル当たり1gのシリカゲルによって直接、精製し、移動層としてヘキサン中の10%ジエチルエーテルを用いて溶離した。生成物を含有したフラクションをプールし、濃縮し、回収された物質の重さが得られ、その後、目的の生成物を、12時間、室温にて2mLの濃硝酸中で温浸させた。
方法4
反応物に、シリカゲル1を含有する8〜16当量(使用されたPd触媒に対して)のイソシアニドを添加し、この反応物を、反応温度にて4時間、撹拌状態とした。その後、この反応物を、中位の多孔性フィルターフリット上で濾過し、この物質を等量(5mL)のCH2Cl2で洗浄し、溶出液を集め、真空下(ロータリーエバポレーター)で濃縮した。回収された物質の重さが得られ、その後、目的の生成物を、12時間、室温にて2mLの濃硝酸中で温浸させた。
交差カップリング反応
フェニルボロン酸と4‐ブロモアセトフェノンとの鈴木反応についての一般的方法
オーブンにて乾燥させた50mLのSchlenk管に、1.0ミリモルのアリールブロミド、1.5ミリモル(1.5当量)のアリールボロン酸、及び1.5ミリモル(1.5当量)の炭酸カリウムを入れた。その後、新しく蒸留したトルエン5mLを前記Schlenk管に加え、引き続き、0.03ミリモル(3モル%)のテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)を添加した。その後、この反応物を、予め加熱したオイルバス中に80℃で2時間、直接置き、その後、先に記載した方法:対照又は方法1〜4の一つに従い処理した。いかなる処理も行わないと、反応物の濃度及び温浸/ICP‐MS分析から、Pd濃度は15,959ppmPdであった。目的の生成物を、確認目的のために分離することが可能で、以前に発表された結果と良く一致したスペクトルデータが提供された。1H NMR(500MHz,CDCl3,ppm)δ 8.01(d,J=8.5Hz,2H),7.65(d,J=9.0Hz,2H),7.60−7.58(m,2H),7.44(t,J=7.5Hz,2H),7.39−7.36(m,1H),2.59(s,3H)。
フェニルボロン酸と3‐ブロモピリジンとの鈴木反応についての一般的方法
金属源としてテトラキス[トリフェニルホスフィン]パラジウム(0)を用いる際には、オーブン乾燥させた50mLのSchlenk管に、1.0ミリモルの3‐ブロモピリジン、1.25ミリモル(1.25当量)のアリールボロン酸、及び1.25ミリモル(1.25当量)の炭酸カリウムを入れた。その後、新しく蒸留したトルエン5mLを前記Schlenk管に加え、引き続き、0.03ミリモル(3モル%)のテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)を添加した。その後、この反応物を、予め加熱したオイルバス中に80℃で18時間、直接置き、その後、先に記載した方法:対照又は方法1〜4の一つに従い処理した。いかなる処理も行わないと、反応物の濃度及び温浸/ICP‐MS分析から、Pd濃度は20,103ppmPdであった。目的の生成物を、確認目的のために分離することが可能で、以前に発表された結果と良く一致したスペクトルデータが提供された。1H NMR(500MHz,CDCl3,ppm)δ 8.85(d,J=2.4Hz,1H),8.59−8.57(m,1H),7.87−7.83(m,1H),7.57−7.55(m,2H),7.50−7.32(m,4H)。
金属源としてパラジウム(II)アセテートを用いる際には、オーブン乾燥させた50mLのSchlenk管に、1.0ミリモルの3‐ブロモピリジン、1.25ミリモル(1.25当量)のアリールボロン酸、1.25ミリモル(1.25当量)の炭酸カリウム、及び0.12ミリモル(12モル%)のトリフェニルホスフィンを入れた。その後、新しく蒸留したトルエン5mLを前記Schlenk管に加え、引き続き、0.03ミリモル(3モル%)のパラジウム(II)アセテートを添加した。その後、この反応物を、予め加熱したオイルバス中に80℃で18時間、直接置き、その後、先に記載した方法:対照又は方法1〜4の一つに従い処理した。いかなる処理も行わないと、反応物の濃度及び温浸/ICP‐MS分析から、Pd濃度は20,103ppmPdであった。目的の生成物を、確認目的のために分離することが可能で、以前に発表された結果と良く一致したスペクトルデータが提供された。
2‐ブロモメシチレンとエチルアクリレートとの間のHeck反応についての一般的方法
オーブン乾燥させた50mLのSchlenk管に、1.0ミリモルのアリールブロミド、2.0ミリモル(2.0当量)のエチルアクリレート、及び1.5ミリモル(1.5当量)の炭酸カリウムを入れた。その後、新しく蒸留したトルエン5mLを前記Schlenk管に加え、引き続き、0.05ミリモル(5モル%)のPd(OAc)2及び0.2ミリモル(20モル%)のトリフェニルホスフィンを添加した。その後、この反応物を、予め加熱したオイルバス中に90℃で18時間、直接置き、その後、先に記載した方法:対照又は方法1〜4の一つに従い処理した。いかなる処理も行わないと、反応物の濃度及び温浸/ICP‐MS分析から、Pd濃度は23,571ppmPdであった。目的の生成物を、確認目的のために分離することが可能で、以前に発表された結果と良く一致したスペクトルデータが提供された。1H NMR(500MHz,CDCl3,ppm)δ 7.85(d,J=16.5Hz,1H),6.89(s,2H),6.07(d,J=16.5Hz,1H),4.28(q,J=7.5Hz,2H),2.33(s,6H),2.28(s,3H),1.34(t,J=7.5Hz,3H)。
2‐ブロモメシチレンとモルホリンとの間のBuchwald‐Hartwig反応についての一般的方法
オーブン乾燥させた50mLのSchlenk管に、1.0ミリモルのアリールブロミド、1.2ミリモル(1.2当量)のモルホリン、及び1.2ミリモル(1.2当量)のナトリウムtert‐ブトキシドを入れた。その後、新しく蒸留したトルエン5mLを前記Schlenk管に加え、引き続き、0.025ミリモル(5モル%)のPd2(dba)3及び0.075ミリモル(7.5モル%)の(+/−)BINAPを添加した。その後、この反応物を、予め加熱したオイルバス中に90℃で18時間、直接置き、その後、先に記載した方法:対照又は方法1〜4の一つに従い処理した。いかなる処理も行わないと、反応物の濃度及び温浸/ICP‐MS分析から、Pd濃度は25,110ppmPdであった。目的の生成物を、確認目的のために分離することが可能で、以前に発表された結果と良く一致したスペクトルデータが提供された。1H NMR(500MHz,CDCl3,ppm)δ 6.89(s,2H),3.89−3.85(m,4H),3.15−3.13(m,4H),2.39(s,6H),2.32(s,3H)。
反射IR測定
トルエン溶液からのCl2Pd(PPh3)2の除去
マグネティック撹拌バーを備えた20ドラムのガラス瓶に、35mg(0.049ミリモル)のPdCl2(PPh3)2と10mLのTHFを入れた。この溶液を、完全に溶解するまで5分間撹拌した。錯体が完全に溶解して直ぐに、シリガゲル1を含有した500mg(16当量)のイソシアニドを添加したところ、その直後に、明るい黄色から透明への色の変化が観察された(図1参照)。この溶液を室温で30分間撹拌し、その時点で、シリカゲルを中位の多孔性フィルターフリットを通して濾過することにより集めた。分離したシリカゲルを、別の10mLのTHFを用いて洗浄した。この濾液と洗浄液を一緒にし、予め重量測定したガラス瓶内で、真空(ロータリーエバポレーター)にて濃縮した。濃縮された溶出物は、金属中心から置換されたトリフェニルホスフィン19mg(0.072ミリモル、1.5当量)を含有することが見出された。
ICP‐MSによるPdの測定についての分析方法
標準曲線 校正曲線は、5%HCl中において1mLあたりPdが1000μgである高純度Pd標準の希釈溶液から作成した。校正曲線は、2.76%のTraceSelectグレードの硝酸溶液中においてPdが0.0,0.01,0.1,1.0,10,100,200,400,600,800,1000ppbの標準を用いて作成した。
分析用のサンプルを濃縮し、予め重量測定した50mLの金属フリーの遠心分離管に移し、その重量を記録した。その後、これらのサンプルを、2mLのTraceSelectグレードの濃硝酸(69%)を用いて温浸させた(12時間、室温)。前記の温浸時間後、これらサンプルを、蒸留脱イオンした水を用いて50mLの最終容積となるように希釈した。温浸後、全てのサンプルを引き続き、分析を行う前に0.45ミクロンのシリンジフィルターを通して濾過した。総パラジウム含量は、105Pd,106Pd及び108Pdをモニタリングすることによって測定した。これらサンプルについて3回実験を行い、3回の実験の平均を最終的な値とした。
対照 前記の有機サンプルの温浸についての適した方法を決定するために、2つの公知のサンプルを作成し、分析した。サンプルAは、固体のPd(OAc)2を10.8mg(0.048ミリモル)含有し、サンプルBは5.6mg(0.025ミリモル)含有していた。両方のサンプルを、2.0mLのTraceSelectグレードの硝酸(>69%)中に、室温で12時間溶解させた。その後、これらのサンプルを、ナノピュア水中に全容積が50mLとなるよう希釈し、0.45μmのシリンジフィルターを通して濾過した。
サンプルAは、0.0481ミリモルのパラジウム、即ち、50mL中に5.12mg、濃度としては1mLあたり1024μg、即ち1024ppmを含有していた。このサンプルの1mLを更に、100mLとなるよう希釈し、最終濃度を1.02ppmとした。その後、このサンプルを直接、分析し、標準曲線と比較した。このサンプルについて観察された濃度は、0.985ppmであり、3.9%の誤差であった。
サンプルBは、0.025ミリモルのパラジウム、即ち、50mL中に2.65mg、濃度としては1mLあたり530μg、即ち530ppmを含有していた。このサンプルの1mLを更に、100mLとなるよう希釈し、最終濃度を530ppbとした。その後、このサンプルを直接、分析し、標準曲線と比較した。このサンプルについて観察された濃度は、537ppbであり、1.3%の誤差であった。
代表的な温浸方法 (固体については0.1mgまで正確に、液体についてはmgまで正確に重量測定された)全てのサンプルの既知の量を、2mLのTraceSelectグレードの硝酸(>69%)中に、室温で12時間温浸させた。前記の温浸時間後、これらサンプルをナノピュア水中に全容積が50mLとなるよう希釈した。その後、サンプルを0.45μmのシリンジフィルターを通して濾過し、粒状物質を取り除いた。希釈したサンプルを、その後、直接、ICP‐MSにより分析した。
実施例3−溶液からのIrの除去
方法。20ドラムのガラス瓶に、10mLのトルエン中の30mg(0.038ミリモル)の(Ph3P)2Ir(CO)Cl(Vaskaの錯体)を入れ、この溶液を、錯体が完全に溶解するまで30分間撹拌した。錯体が溶解して直ぐに、最初の0.2mL分液を反応液から取り出し、1ドラムのガラス瓶に移した。この後、溶液に、シリガゲルを含有した500mg(20当量)のイソシアニドを添加した。反応中、撹拌バーを定期的に止めて、シリカゲルを沈殿させた。この際、シリカゲルを添加した後、5、15及び30分後に反応液から、等しい容積の分液を取り出した。この分液を真空(ロータリーエバポレーター)にて濃縮し、薄膜IRにより分析した。最初の分液は、Vaskaの錯体のカルボニルの特徴を示す1960cm−1に強い吸収ピークを含んでいた。残りの分液は、前記錯体が溶液相から除去されて、シリガゲルによって固体相上にあることを示す、いかなる吸収ピークも示さなかった。又、この時間の間、黄色から透明な溶液への色の変化も観察された。
実施例4−溶液からのルテニウム(Ru)触媒の除去
ここに、我々は、メタセシス反応からルテニウムを迅速に、かつ効率よく除去するのに適した、使用者が使いやすい濾過方法を開示している。固体支持されたイソシアニド試薬は、明確なBuchner反応によってルテニウムカルベン活性を消失させ、アルケン及びエン‐インメタセシスを促進させるのに現在使用されている、種々のグラブス触媒に適用可能である。
前記のイソシアニド‐変性シリカゲルは、以前に報告されている方法と同様にして合成された。イソシアニドモノマー1のグラフト化は、文献(Berry等、1986年)からも適応された方法で行われた。2(スキーム1)というポリマー結合されたイソシアニドは、反射ベースのIR顕微鏡法を用いて検出された。この方法の利点は、単一のシリカゲル粒子を分析することができることである。2147cm−1における吸収シグナルが見出され、これは、表面結合したイソシアニドに対応するものである(図3)。この値は、前記モノマーに対して見出された吸収バンド、2150cm−1と良く一致しており、以前に公表された結果(Berry等、1986年)とも一致していた。シリカゲル上でのイソシアニドの充填は、引き続き、滴定によって測定された。典型的に、前記イソシアニドは、シリカゲル1gあたり1.1〜1.6ミリモルの間であることが滴定された。
前記のイソシアニド‐グラフトされたシリカゲルは、グラブス触媒(Ru2)及びグラブス‐ホベイダ触媒(Ru3)を除去することが可能であった。これらの触媒は、ジエチルジアリルマロネートの閉環メタセシス(RCM)を促進するのに非常に効果的である。定性的な試験として、Ru2は、前記の変性されたシリカゲル2に曝された。30分間の撹拌後、溶液の色は、赤から黄色に変化した。その後、シリカゲルを除去し、溶出液を集めた。この溶出液に、50mgのジエチルジアリルマロネートを添加して2時間後、TLC又は1H NMRによって、反応は観察されなかった。Ru3を用いても、同じ結果が得られた。
シリカゲルの表面上にあるイソシアニドリガンドに金属が結合しているかどうかを測定するために、クエンチされたRu2及びRu3をIR顕微鏡法によって分析し、イソシアニドモノマーの溶液ベースの結果と比較した(図3)。以前の研究は、我々の実験室で行われ、1以上のイソシアニドが金属中心に配位することを示した。このモノマーを用いた場合、我々は、1以上のイソシアニドが金属中心に配位される可能性のあることを示す、2つの異なるイソシアニド吸収バンドを観察した(図3d)。Ru2及びRu3についての、シリカベース及び溶液ベースのイソシアニド配位された生成物のIR周波数は、互いに近く一致していた(表1、エントリー3〜6)。
残留ルテニウムの除去は、標準的な分析である、ジエチルジアリルマロネートの閉環メタセシス(RCM)にて評価された(表1)。残留ルテニウムは、誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP‐MS)にて測定された。対照としての、未処理のシリカゲルは、部分的にしかルテニウムを除去しなかった(エントリー1)。可溶性イソシアニドを用い、シリカゲルプラグを通過させる溶液処理(我々の以前の方法)は、ルテニウムの10倍減少をもたらした(エントリー2)。次に、30当量及び60当量のイソシアニド‐グラフトされたシリカゲル2の添加を試験した(エントリー3及び4)。60当量の2は、最も良好に作用したが、少なくとも30分が必要であった。より長い時間は不必要であることがわかった(エントリー5〜7)。最初の30分間の間、赤/茶色から明るい黄色への色の変化が示された。エントリー8は、2の量を2倍にして1g(120当量)としても、驚くべきことに、ルテニウムの残留濃度が減少しなかったことを示していた。この方法の限界を更に試験するために、触媒充填を増加させて反応を行った(エントリー9)。又、この方法は、2.5及び10モル%の触媒充填の時と同様の効率で、Ru3触媒を用いて作用することが見出された(エントリー10及び11)。
シリカゲル精製と組み合わせた際、ルテニウムは約1ppmにまで除去された。単一のRCM反応を用いると、シクロペンテン生成物の精製は、副生成物がエチレンガスだけなので大したことはない。より一般的には、目的の生成物を精製するのには、カラムクロマトグラフィーが必要である。エントリー12は、この方法をカラムクロマトグラフィーと組み合わせている。この反応物は、500mgのシリカゲルと共に30分間撹拌され、その後、直接濃縮され、予め平衡とされた1×10cmのシリカゲル床上に乾燥充填される。この生成物は、ヘキサン中の10%酢酸エチルを用いて溶離され、93%の収率で目的のシクロペンテン生成物を与える。この結果は、カラムクロマトグラフィーとの組み合わせにより、この方法が、最初のルテニウムの99.99%以上を除去することができ、最終のサンプル中に1.17ppmのRuが残ることを示している。
次に、我々は、より典型的な反応条件下で触媒について、この方法を評価することにした(表3)。
困難な閉環及び交差‐メタセシス反応を促進させるために、高温がしばしば使用される。高い反応温度は、触媒分解及びオレフィン異性化をもたらすことがあるので予備選択された。RCMにおいては、ルテニウムメチリデンは、二核ヒドリド種への熱的分解を示してきた伝播種である。我々は、活性なルテニウムカルベンだけでなく、触媒から生成した明らかでない分解生成物の「浄化」について試験したかった。使用された適用及び温度により、ルテニウムカルベンは、メタセシス反応の終了時点では、もはや存在していない。エントリー1及び2は、この方法が高温反応には等しくうまく作用したことを示した。又、これらの反応の浄化の間、赤(Ru2)、又は緑(Ru3)から黄色への色の変化が、ほんの数分で起こったことも示された。この処理の有効性が、温度によるものではなく、シリカゲルによるものであったことを確かめるため、2つの追加実験を行った。エントリー3は80℃にて室温クエンチで行われ、エントリー4は、クエンチを伴う室温反応は80℃にて行った。両方のエントリーは、残留ルテニウムの同様の値をもたらし、クエンチ操作の温度が決定的変数ではないことを示した。
最後に、この方法の有効性を、より難しいメタセシス応用にて評価した。三置換されたアルケンの合成では、より強制的な条件と、より活性な触媒が必要とされる。グラブス‐スチュアート触媒Ru4は、このRCMについて評価された(式3)。2つのサンプルが評価され、一つは、変性されたシリカゲルの除去の後に直ちに分析され、他方のサンプルは、分析前にカラム精製された。両方のサンプルは、ルテニウムの低いレベルをもたらした。次に、アルケノールとのエン‐インメタセシス反応を、触媒Ru2及びRu3を用いて評価した(式4,5)。この反応もまた、触媒分解を引き起こし、ルテニウムヒドリドの生成を促進することが知られている。この反応の間にいくつかの異なるルテニウム種が生成する可能性があるにもかかわらず、シリカゲル2を用いたクエンチングは、生成物中のルテニウム含量を減少させるのに効果的であった。最後に、最近報告されたZ‐選択的触媒Ru5もまた、メチル10‐ウンデセノエートのホモ二量化において評価した。この触媒もまた、独特な分解機構を有していることが知られており、ルテニウム触媒の初期の世代とは異なっている。シリカゲル2を用いたクエンチングは、ルテニウムのレベルをかなり減少させた。方法Aでは、Ruの量は、装置の検出レベル以下であった。
結論として、イソシアニド‐グラフトされたシリカゲル2を用いることは、メタセシス反応からルテニウムを除去する効果的な方法であることが見出された。この方法は、いくつかのこれまでに使用されてきたメタセシス触媒を用いる典型的な応用において効果的であることが見出された。又、この方法は、単に濾過を必要とするだけの独立型の方法として使用することもでき、あるいは、残留Ruのレベルを更に減少させるためにクロマトグラフィーと組み合わせて使用することもできる。
原料。グラブスのルテニウムカルベン錯体は、Materia Inc.(パサデナ、CA)から入手した。シリカゲル(60Å、40−63μm(230−400メッシュ))は、Sorbent Technologiesから入手し、使用する前にオーブン(24−48時間、140℃)内で乾燥させた。APTES(Alfa Aesar)、蟻酸エチル(Sigma Aldrich),POCl3(Sigma Aldrich),及びTraceSelect グレードの硝酸(Fluka)は、一般に認められたものとして使用した。トリエチルアミンは、使用する前に蒸留し、水酸化カリウム上で貯蔵した。他のすべての溶媒は、アルミナ(THF,ジクロロメタン)又はアルミナ及びQ5(トルエン)を通過させることにより乾燥させ、窒素下で貯蔵した。ルテニウム貯蔵溶液は、Millipore Milli‐Q水精製システムから高純水(18MΩ‐cm)を用いて調製した。ルテニウムは、2%HCl(高純度標準品)中の1000μg/mL(+/−5μg/mL)の標準溶液から得られた。ルテニウム標準品は、4%硝酸(サンプルバックグラウンド)中にて調製した。薄層クロマトグラフィーは、ガラスが裏面にあるシリカプレート(F254,250ミクロン厚み)上で行い、UVライトにて可視化するか、あるいは、KMnO4染料を用いて染色した。1H NMRスペクトルは、500又は300MHzにて記録した。1H NMR化学シフトは、内部標準テトラメチルシラン(δ=0.0ppm)に対するppmで報告されている。ICP測定は、Thermo Scientific X‐シリーズ2誘導結合プラズマ四重質量分析装置(ICP‐MS)にて行った。FTIRスペクトルは、焦点面アレイ検出器(FPA)又は、Vertexモデル70benchにインターフェース連結された単一元素MCT検出器を有したBruker Optics Hyperion 3000顕微鏡(15×対物レンズ)を用いることによって反射モードにて記録した。
クエンチされた触媒の薄膜FT‐IR確認
1ドラムのガラス瓶に、10mg(0.012ミリモル)のRu2と、1mLのCH2Cl2を入れた。触媒が完全に溶解したら直ぐに、8.4mgのイソシアニドモノマー1を添加し、溶液は速やかに赤から黄色に変化した。この溶液を真空(ロータリーエバポレーター)にて直接、濃縮した。残った残渣を、最小容量のCHCl3中に溶解させ、塩板上にスポットし、FT‐IR(薄膜)によって分析した。この錯体について観察された、前記イソシアニドに関連する周波数は、2143及び2184cm−1であった。
1ドラムのガラス瓶に、7mg(0.012ミリモル)のRu3と、1mLのCH2Cl2を入れた。触媒が完全に溶解したら直ぐに、8.4mgの前記イソシアニドモノマーを添加し、溶液は速やかに緑色から黄色に変化した。この溶液を真空(ロータリーエバポレーター)にて直接、濃縮した。残った残渣を、最小容量のCHCl3中に溶解させ、塩板上にスポットした。この錯体について観察された、前記イソシアニドに関連する周波数は、2133及び2174cm−1であった。
シングルビードFT‐IRによる、変性されたシリカゲルの確認
スペクトル解像度は4cm−1であり、128スキャンが典型的に平均された。MCT‐ベースのスペクトルは、単一粒子を捕捉するために不連続エリア(70μm×70μm又は、80μm×80μm)にて記録された。
典型的な閉環メタセシス及びICP分析方法
活性についての最初のスクリーン
蒸留された10mLのCH2Cl2中の、10mg(0.011ミリモル)のRu2溶液に、500mgのシリカゲルを加え、この溶液を室温で30分間撹拌すると、この間に、溶液は赤から黄色に変化した。このシリカゲルを、パスツールピペットによって濾過することにより除去し、蒸留された4mLのCH2Cl2を用いてシリカゲルを洗浄し、溶出液を全て、オーブンにて乾燥させた20ドラムのガラス瓶に集めた。その後、この溶出液に50mg(0.21ミリモル)のジエチルジアリルマロネートを添加した。その後、この反応物を2時間、撹拌状態とし、その時点で、反応物をTLC(ヘキサン中の20%酢酸エチル)により分析し、変化していないことが観察された。この反応物を濃縮し、1H NMRにより分析したところ、メシチレンに比べ、出発物質の変化がないことが示された。この実験は、10mg(0.016ミリモル)のHov2を用いて繰り返され、同じ結果となった。
方法の最適化
無水CH2Cl2中のジエチルジアリルマロネートの20.5ミリモル貯蔵溶液を、この溶媒中にて行われる閉環メタセシス反応のために調製した。以下は、使用された代表的な方法である。
窒素下で、オーブン乾燥させた50mLのSchlenk管に、125mg(0.524ミリモル)のジエチルジアリルマロネートを含有するCH2Cl2の貯蔵溶液25mLを入れた。その後、この溶液に、11.1mg(0.0131ミリモル、2.5モル%)のRu2を添加し、この溶液を室温にて2時間、撹拌状態とした。反応が完了した後、500mg(60当量)のイソシアニド‐グラフトされたシリカゲル2を添加し、30分間、撹拌状態とした。30分後、シリカゲルを中位の多孔性フィルターフリットを用いて除去し、別の10mLのCH2Cl2を用いて洗浄した。この溶出液を、予め重量測定した50mLの金属フリーの遠心分離管に集め、真空(ロータリーエバポレーター)にて濃縮した。濃縮されたらすぐに、サンプル重量を記録し、その後、このサンプルをTraceSelectグレードの濃硝酸2mLを用いて温浸させた(1時間、室温)。前記温浸時間後、サンプルを、蒸留脱イオンした水を用いて50mLの最終容積となるように希釈した。温浸後、全てのサンプルを引き続き、分析を行う前に0.45ミクロンのシリンジフィルターを通して濾過した。ルテニウムの校正標準(0.0,1.0,10.0,100.0,400.0,600.0,800.0,1,000.0,2,500.0ppb)を、ルテニウムの1000μg/mL標準溶液を希釈することにより調製した。総ルテニウム含量は、99Ru,100Ru及び101Ruをモニタリングすることによって測定した。これらサンプルは3回実験され、3回の実験の平均を最終的な値とした。
ルテニウム含量の測定について用いられた計算の具体例としては、表2のエントリー8からの代表例がある。表2は、標準メタセシス反応からのルテニウムの除去の最適化を示しており、(a)正規のシリカゲルを用いた場合、(b)この反応物が引き続いて5.2g(1×10cm)のシリカゲル上で精製された場合である。処理されたサンプルの総ルテニウム含量は、0.038ppm、即ち0.038μg/mLであった。それゆえ、50mLの溶液は1.91μgのルテニウムを含有していた。この反応物から最初に分離された生成物は109mgであり、1.91μgのルテニウムを含有していた。これは、87.6μgRu/5000mgサンプル、即ち、未精製の単離された有機生成物中17.5ppmRuとして表すことができた。
他のメタセシス例
変数としての温度の評価
窒素下で、オーブン乾燥させたSchlenk管に、新しく蒸留したトルエン25mLを入れ、引き続いて125mg(0.524ミリモル)のジエチルジアリルマロネートを添加した。その後、この溶液を、触媒を添加する前に、予め加熱したオイルバス中に80℃で30分間、置いた。この加熱された溶液に、11.1mg(0.0131ミリモル、2.5モル%)のRu2を添加し、この反応液を30分間、反応させた。30分後、500mg(60当量)のイソシアニド‐グラフトされたシリカゲル2を反応液に添加し、この反応液を80℃にて30分間、撹拌状態とした。30分後、反応物をオイルバスから取出し、シリカゲルを除去するために、中位の多孔性フィルターフリットを通して濾過した。残ったシリカを、別の10mLのトルエンを用いて洗浄した。この溶出液を集めて一つにし、予め重量測定したガラス瓶内で、真空(ロータリーエバポレーター)にて濃縮した。このサンプル重量を記録し、その後、上に概略を述べた方法に従って、サンプルを温浸させた。
窒素下で、オーブン乾燥させた50mLのSchlenk管に、156mg(0.9ミリモル、1.0当量)のブチニルベンゾエート、310mg(3.6ミリモル、3.0当量)の4‐ペンテン‐1‐オール、及び、新しく蒸留した1,2‐DCE15mLを入れた。その後、この反応物に、38.2mg(0.045ミリモル、5モル%)のRu2を添加し、反応物を、予め加熱したオイルバス中に60℃にて置いた。2時間後、TLCによって反応が終了していることを判断し、シリカゲル2を含有した570mg(30当量)のイソシアニドを添加してクエンチし、60℃にて30分間、撹拌状態とした。その後、10mLのCH2Cl2を用いて洗浄された中位の多孔性フィルターフリットを用いて、反応物からシリカゲルを除去した。この溶出液を一つにして、半分に分けた。この溶出液の半分を濃縮し、分析前に、3gのシリカゲル(使用された触媒0.01ミリモルあたり2.0g)上でカラム精製し、もう一方の半分を濃縮し、更なる精製方法を用いることなく、ルテニウム含量について直接、分析した。
ジエチル2‐アリル‐2‐(2‐メチルアリル)マロネート
窒素下で、オーブン乾燥させた100mLの3首丸底フラスコに、60mLのTHFと、鉱油中に460mg(12ミリモル、1.2当量)の60%のナトリウムヒドリド懸濁液を入れた。この溶液を氷水浴中で30分間冷却し、その時点で、2g(10ミリモル、1当量)のジエチルアリルマロネートを反応物に、ゆっくりと添加した。ガスの発生が終了したら直ちに、1.08g(12ミリモル、1.2当量)の3‐クロロ‐2‐メチルプロプ‐1‐エンを反応物に添加した。氷浴を取り除き、この反応物を1時間かけて室温にまで加温した。その後、この反応物を、予め加熱したオイルバス中に60℃にて置き、一晩反応状態とした。次の日に、反応物を熱源から取出し、塩化アンモニウム水溶液を添加してクエンチする前に、室温にまで冷却した。この反応物を、ジエチルエーテルを用いて抽出し、有機抽出物を一つにして、塩性溶液を用いて洗浄し、その後、硫酸マグネシウム上で乾燥させた。その後、この有機層を真空下(ロータリーエバポレーター)で濃縮し、黄色の油状物を、ヘキサン中10%の酢酸エチルの移動相を用いてSiO2上でカラム精製した。目的の生成物S2は、透明な油として86%の収率にて集められ、1H NMRスペクトルは、文献値と良く一致した。1H NMR(300MHz,CDCl3):δ 5.76−5.63(m,1H),5.11−5.05(m,2H),4.88(s,1H),4.76(s,1H),4.21−4.12(m,4H),2.70−2.66(m,4H),1.67(s,3H),0.89(t,J=7.0Hz,6H)。
窒素下で、オーブン乾燥させたSchlenk管に、新しく蒸留したトルエン10mLと、254mg(1.0ミリモル)のジエチル2‐アリル‐2‐(2‐メチルアリル)マロネートを入れた。その後、この反応物を、触媒を添加する前に、予め加熱したオイルバス中に60℃で30分間、置いた。30分後、この反応物に、40mg(0.05ミリモル、5モル%)のRu4触媒を添加した。2時間後、TLCによって反応が終了していることを判断し、500mg(30当量)の官能化されたシリカゲル2を添加してクエンチした。その後、この溶液を、前記反応温度で30分間、撹拌状態とし、その後、10mLのトルエンを用いて洗浄された中位の多孔性フィルターフリットを用いてシリカゲルを除去した。この溶出液を一つにして、半分に分けた。半分については直接、濃縮し、ルテニウム含量について分析を行い、もう一方の半分については、分析前に、5gのシリカゲル(使用された触媒0.01ミリモルあたり2.0g)上でカラム精製した。
メチル10‐ウンデネノエート
50mLの丸底フラスコに、25mLのメタノールと、12.4g(90.0ミリモル、3当量)の炭酸カリウムを入れた。撹拌させた反応液に、6mL(30.0ミリモル、1当量)のウンデク‐10‐エノイルクロリドを一滴ずつ滴下する様式にて添加した。この反応物を一晩、撹拌状態とし、その後、水を添加してクエンチした。この反応物をジエチルエーテルにて抽出し、有機抽出物を一つにして、水と塩性溶液を用いて洗浄し、その後、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、真空下(ロータリーエバポレーター)で濃縮した。未精製の油状物を、ヘキサン中5%の酢酸エチルを用いてSiO2上でカラム精製すると、生成物S5が、透明な油として87%の収率で得られ、以前に報告されたものと一致する1H NMRスペクトルが提供された。1H NMR(300MHz,CDCl3):δ 5.85−5.74(m,1H),5.02−4.90(m,2H),3.66(s,3H),2.30(t,J=7.8Hz,2H),2.05(q,J=7.2Hz,2H),1.64−1.57(m,2H),1.39−1.29(m,10H)。
オーブン乾燥させた50mLのSchlenk管に、新しく蒸留したTHF1.1mL中の990mg(5.0ミリモル)のメチル10‐ウンデネノエートを入れた。この反応物を、予め加熱したオイルバス中に35℃にて置き、この反応物に、16mg(0.025、0.05モル%)のRu5を添加した。この反応物を12時間放置し、その後、500mg(30当量)のイソシアニドグラフトされたシリカゲル2を添加してクエンチした。この反応物を35℃で30分間、撹拌状態とし、その時点で、中位の多孔性フィルターフリットを通して反応物を濾過することにより、シリカゲルを除去した。このシリカゲルを、10mLの蒸留されたCH2Cl2を用いて溶出させ、この溶出液を一つにして、半分に分けた。この反応液の半分については、直接、濃縮し、ルテニウム含量について分析を行い、反応液のもう一方の半分については、分析前に、2.5g(触媒0.01ミリモルあたり2.0gのシリカゲル)上でカラム精製した。
実施例5‐イソシアニド試薬を用いた交差カップリング反応からのパラジウム(Pd)の除去
交差カップリング反応における有用性のために、パラジウム(Pd)は、有機合成において幅広い応用が見出されている。有機合成においてPdが尊ばれている状況にもかかわらず、Pd‐媒介する交差カップリングに関連する問題が、実際に現存している。パラジウム触媒と、分解されたPd副生成物は、目的の生成物から除去することが困難となり得る。これは、特に、微量の遷移金属が好ましくない生物活性な化合物の合成に関係している。医薬品工業においては、すべての活性医薬品成分(API)中の残留パラジウムが5〜10ppm未満であることが必要とされる旨の規制標準がある。結果として、スクリーニング分析はしばしば、最も良い利用可能な捕捉剤を同定するのに役立つよう使用されたり、あるいは、精製が交差カップリング工程後に行われることを明らかにするのに役立つよう使用される。イソシアニド1と2は、いくつかの異なる交差カップリング反応において、Pd(0)及びPd(II)酸化状態の両方に対し、Pdを効率的に除去することが見出された(スキームB1)。
Pd(0)又はPd(II)酸化状態のいずれかにて存在する広範囲のPd触媒に対して効率的に作用する新規な捕捉剤が必要とされている。既存の捕捉剤材料としては、固体支持されたアミン及びチオールが挙げられるが、イソシアニドではない。例えば、トリメルカプトトリアジンは、パラジウム種を除去することが可能であることが確認された最初の試薬の一つであり、ポリスチレン支持体上に置かれた時に、反応生成物からパラジウムを除去することが可能であった。Crudden等は、チオール‐及びアミン‐含有シリカと、メソポーラスシリカ支持体の両方が、溶液からパラジウム(II)を効率良く除去したことを示した。従って、チオール‐グラフトされたシリカゲルが、パラジウムの除去についての工業グループによって使用されてきた。既存の試薬の欠点の一つは、金属の多酸化状態に対して強く結合するための能力である。使用された最初の触媒にもかかわらず、Pd(II)とPd(0)酸化状態の両方が、交差カップリング反応の終了時点で存在している。チオール‐ベースの系は、パラジウム(II)に対して最も良く作用し、ホスフィンリガンドは、パラジウム(0)に対して最も良く作用する傾向がある。結果として、存在する全ての異なる金属種を効率的に除去することができる単一の捕捉剤は現れておらず、このような欠点は、新しい金属捕捉剤の発展を妨げる方向へと押しやり続けている。
イソシアニドは、そのシグマドナー強度と弱いpi酸性度によって独特なリガンド特性を示す。極性のイソシアニド2は、以前に、溶液中でのメタセシス反応からルテニウムをクエンチして除去することが示されており、もっと最近では、シリカゲル上に支持されたイソシアニド1が、メタセシス反応から幅広い種類のグラブスルテニウムカルベンを、10ppm未満のRuにまで効果的に除去することが示されている。イソシアニドは、他の後期の遷移金属に対する良好なリガンドであり、交差カップリング反応におけるPdの重要性のために、我々は、独特のイソシアニドPd結合が、同様の有効性でPd(0)とPd(II)に結合するために必要とされる可撓性をもたらす可能性のあるイソシアニド試薬を用いてPd除去を調査した。
最初に、前記のイソシアニドシリカゲル1は、図18に見られるように、1227ppmPdの初期濃度にて、トルエン中のPd(OAc)2の溶液を用いてPd(II)の除去について評価された。この溶液には、4又は8当量の何れかの1を添加した。ある時間間隔の後、シリカゲルを沈殿させ、溶液の一部を取り出し、その後に誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP‐MS)を用いた分析を実施する温浸プロトコルを用いてPdについて分析した。4当量の1を用いると、1ppm(99.935%のPdが除去)未満に達するのに24時間が必要であった。5モル%のPd触媒を使用した反応では、20モル%のシリカゲル1が必要な量である。8当量の1を用いると、Pdの捕捉が速くなり、わずか1時間後には5ppmPdとなり、4時間後には1ppmPdに達した(99.886%のPdが除去された)。恐らく、少ない当量の1の使用においては、材料の表面上で少しは利用できると思われるイソシアニドを採用することが必要である。
次に、イソシアニド1は、トルエン中のPd(PPh3)4の貯蔵溶液からのPd(0)の除去について評価された。イソシアニド1は、Pd(0)についてより速くPdレベルを減少させ、4又は8当量の1の間の劇的な差は小さかった。4当量の1だけで、1時間後にPdの99.031%除去(12ppm)となった。より長い処理時間(>4時間)では、2ppm以下のPdレベルがもたらされた。8当量の1の使用は、より短時間で、いくらかより効果的であるが、4及び8当量の処理は両方とも、24時間後に>99.764%のPd除去に達することができた。
スクリーニングが有望な結果を示したので、標準の鈴木カップリングにおいて前記のイソシアニド捕捉剤を評価した(表B1)。交差カップリングが完了した後、いくつかの異なる処理条件を調査した。基準点を確立させるために、未精製の反応物をセライトに通した(表B1,エントリー1)。生成物中に16000ppmPdという高いPd濃度を用いると、セライト処理は、非極性の生成物3からPdのかなりのフラクションを除去することが見出された。これら反応の全てにおいて、報告されたppmPdは、未精製の、蒸発された有機生成物(反応溶媒の除去後)中にて検出されたPdの量である。わずか4時間後に、8当量(24モル%)の1は、シリカゲルを除去するために簡単な濾過(フリット化されたフィルター漏斗)を行った後に、99.999%のPdを除去した(エントリー2)。16当量(48モル%)のシリカゲル1は、より効果的であった(エントリー3)。4時間後、8当量のシリカゲル1は、シリカゲルを通したカラムクロマトグラフィーによって除去され、これは、99.999%Pdの除去をもたらした(エントリー4)。エントリー2〜5においては、高価な白金グループ金属の、シリカゲル‐ベース回収に都合の良いセライトを用いた前処理はしなかった。シリカゲルを通した精製は、小規模の反応には受け入れられるが、シリカ1上で撹拌し、引き続いて濾過を行うのが、大規模の反応においては好ましいであろう。
前記の均一なイソシアニドKO2CCH2NCもまた、シリカゲルクロマトグラフィーと組み合わせた時、鈴木反応からの残留パラジウムの除去に、非常に効果的であった(表B1,エントリー5)。以前に、我々の実験室は、前記イソシアニド2が、メタセシス反応からのルテニウム金属の除去に効果的であったことを示した。我々の知る限り、このような市販のイソシアニドが、交差カップリング反応からPdを除去することは、これまでには示されていない。
鈴木交差カップリングの極性を有した生成物からのPdの除去は、より困難であるが、イソシアニドを用いると可能である。フェニルボロン酸との3‐ブロモピリジンの交差カップリングは、2つの異なるPdプレ触媒を用いて行われた(表B2)。生成したビアリール4は、Pdに配位可能であるので、セライト等の受動的処理方法は、効果がないものと予想された。セライト単独は、いずれかのPd源を伴った悪い捕捉剤であることが見出された(図19)。シリカゲル精製は、Pd(0)について実質的な改良をもたらしたが、Pd(II)とでは、ほとんど改良は見られなかった。前記のシリカ1は、未精製の反応物を処理するのに使用され、引き続き、クロマトグラフィーを行わずに簡単な濾過が行われ、いずれかのPd源(4時間、室温)を用いた場合と同様の結果が得られた。シリカゲル精製と組み合わせた、極性を有した2の使用は、非常に良い結果をもたらした。セライトと、変性されていないシリカゲルは、Pdを除去するのに効果的ではなく、処理後に黄色のサンプルが残った。このような鈴木カップリングの生成物は、ピリジンの存在によって、精製することが困難である。前記のイソシアニド処理はそれぞれ、いかなる事前のセライト精製を行うことなく行われた。
パラジウムもまた、表B1及びB2に見られるものと同様の結果で、Heck反応から効果的に除去され得る。
イソシアニド捕捉剤を用いたパラジウム除去はまた、広く使用されるBuchwald‐Hartwigアミノ化にも効果的である。使用された独特のPdリガンド系、高い反応温度、及びPdを結合して保持するための置換アニリン生成物のポテンシャルは、Pd除去工程に難題をもたらすことが予測された。セライトを通す簡単な濾過は効果がなく、高いレベルの残留Pdのままであった(表B3,エントリー1)。対照的に、イソシアニドシリカ1は、4時間の処理時間と簡単な濾過を用いて3ppmPd未満にまでPdレベルを減少させた(エントリー2,3)。カラムクロマトグラフィーと組み合わせたシリカゲル1の使用は、99.998%Pdを除去し、Pdレベルを1ppm以下にまで減少させる(エントリー4)。均一なイソシアニドは、続いてシリガゲルクロマトグラフィーを行った時に0.5ppmPd、即ち、99.998%の除去を示した(エントリー5)。
最後に、より難しい場合までも、イソシアニド捕捉剤を用いたPd除去について検討した。高いPd触媒充填と高い反応温度を必要とする、二重のBuchwald‐Hartwigアミノ化を行った。1,2‐ジブロモアレーン上でのアミンの二重Buchwald‐Hartwig反応は、ベンズイミダゾールとベンズイミダゾリウム環系を形成するキーとなる工程を提供する。ヘテロ環合成において使用される中間体として、ジアミン7は、医薬品及び薬剤候補物の合成において遭遇され得る中間体の代表的なものである。更に、この1,2‐ベンゼンジアミン7は、Pdへの二座配位が可能であり、これは、Pd除去をより困難にする。ジアミン7は、分離され、シリカゲルクロマトグラフィーによって精製され、221ppmのPdを含有していた。1を用いて処理した際、Pdの10倍の減少が見出された(スキームB2)。特に、極性のあるキレートジアミンからPdを除去することは困難である。
Pd(II)及びPd(0)のイソシアニド錯体は、文献に示されている。例えば、Angelici等は、Cl2Pd(NCCH3)2から出発して変位反応においてcis‐Cl2Pd(CNR)2を製造した。伊藤と共同研究者は、Pd(OAc)2‐t‐オクチルイソシアニド触媒システムを使用し、その場でPd(0)イソシアニド錯体を生成させることによって、アルキンの分子内ビスシリル化を達成した。Pd(II)錯体においては、イソシアニドは、Ph3Pリガンドを変位させることが可能である。tert‐ブチルイソシアニドは、Pt(Pt‐Bu3)2から両方のホスフィンを変位させることができ、三核の種[Pt3(μ‐CNt‐Bu)3(CNt‐Bu)3]を生成する。Figueroa等は、非常に嵩高い芳香族基を有したアリールイソシアニドを用いて、モノマー性の(ArNC)2Pd(0)をうまく製造した。通常、Pd(0)イソシアニド錯体の製造は、多核の種を生成する。
Pd錯体Cl2Pd(PPh3)2は、シリカゲルによって溶液から除去された。Cl2Pd(PPh3)2のTHF溶液は、16当量のシリカゲル1を用いて処理された。シリカゲルを沈殿させて数分後に、黄色の溶液は、透明で無色になった。30分後、濾過によってシリカゲルが分離され、溶出液が、リガンド変位反応が起こったことを示すPh3Pを含有することが見出された。
シリカゲル1とCl2Pd(PPh3)2との間に生成した生成物の反射IRスペクトルは、Pd(II)‐結合イソシアニドと一致する新しいイソシアニド吸収を示した(図19)。いくつかのX2Pd(CNR)2有機金属錯体は文献において知られており、分光学的比較を行うことができるので、このような一般に使用されるプレ触媒が選択された。図19aでは、シリカゲル1の反射IRスペクトルは、イソシアニドを示す2147cm−1の位置に強い吸収を示している。PdCl2(PPh3)2を捕捉した後に分離されたシリカゲルの反射IRスペクトルが、図19bに示されている。2147cm−1におけるイソシアニドピークの他に、新しい吸収が、2231cm−1に現れた。この新しいピークは、フリーのイソシアニドに比べて84cm−1シフトしており、これは、フリーのイソシアニドにおけるピーク周波数と、Pd(II)とPd(II)錯体の両方に結合したイソシアニドにおけるピーク周波数との間の、Angeliciが観察した違いと一致している。この新しいピークの幅は、単一の種によるものか、あるいは、異なる配位数を有する多種によるものと思われる。又、文献において知られていない一座の種が存在しているか、あるいは、二座のtrans‐異性体、trans‐Cl2Pd(1)2が存在していることもあり得る。我々の知る限り、trans‐Cl2Pd(CNR)2種は、公知であるとは思われないが、同種のtrans‐Br2Pd(CNt‐Bu)2は、観察された伸縮周波数と同様の2224cm−1の位置に吸収を有している。この新しいピークは、少なくとも1つのPd‐(CNR)結合と一致している。
イソシアニド試薬は、交差カップリング反応からの残留パラジウムの除去についての有効な手段を提供する。イソシアニドは、交差カップリング反応からPdを除去するのに、これまで使用されていない。イソシアニド試薬は、その独特なリガンド特性のために、同様の有効性でPd(0)とPd(II)を効果的に除去することが可能である。一般に、前記のイソシアニド捕捉試薬は、多くの場合、クロマトグラフィー工程を必要とせずに、残留Pdを1〜10ppmレベルにまですることができた。Pd処理されたシリカゲルの反射IRは、Pd‐イソシアニド結合と一致する新しいピークを示す。
実験の詳細‐シリカゲル1
以前に報告されたようにして、1.1〜1.6ミリモル/gのイソシアニド充填レベルを有するものを製造した。
実験の詳細‐Pd(II)
それぞれ5mLのトルエン中に溶解された11.3mg(0.05ミリモル)のPd(OAc)2を含む2つの溶液を調製した。撹拌した前記溶液に、133mg(0.2ミリモル)又は266mg(0.4ミリモル)のシリカゲル1のいずれかを添加した。この溶液の一部を、シリカゲルを沈殿させ、その後、トルエン溶液から〜1mLのサンプルを取り出すことによって、1時間、4時間及び24時間の処理時間後に採取した。得られたサンプルの重さ(800〜1100mgの間)を分析天秤にて記録し、溶液中に残ったパラジウムの相対ppmを測定するのに使用した。取り出した各分液の重さを記録し、溶媒を蒸発させ、残留物質を2mLのTraceSelectグレードの硝酸を用いて温浸させた。これらのサンプルを、その後、50mLの最終容積となるように希釈し、ICP‐MSによって分析した。この値は、最初に取り除かれた分液中のPdのレベルを逆算するのに用いられ、分液が取り出された時の溶液中のPdの量を示している。
実験の詳細‐Pd(0)
5mLのトルエン中に57.8mg(0.05ミリモル)のPd(PPh3)4が溶解された2つの溶液を準備し、撹拌した前記溶液に、133mg(0.2ミリモル)又は266mg(0.4ミリモル)のシリガケル1を添加した。この溶液の一部(0.880〜1.339mL)を、シリカを沈殿させ、トルエン溶液からサンプルを取り出すことによって、1時間、4時間及び24時間の処理後に採取した。得られたサンプルの重さを記録し、溶液中に残ったパラジウムの相対ppmを測定するのに使用した。得られたサンプルの重さを記録し、溶液中に残ったパラジウムの相対ppmを測定するのに使用した。得られたサンプルの重さ(763〜1161mgの間)を記録し、溶液中に残ったパラジウムの相対ppmを測定するのに使用した。取り出した各分液の重さを記録し、溶媒を蒸発させ、残留物質を2mLのTraceSelectグレードの硝酸を用いて温浸させた。これらのサンプルを、その後、50mLの最終容積となるように希釈し、ICP‐MSによって分析した。この値は、最初に取り除かれた分液中のPdのレベルを逆算するのに用いられ、分液が取り除かれた時の溶液中の残留Pdを反映している。
表B4に示された以下のデータは、図18におけるプロットを作成するために使用された。詳細なグラフは、図20に提供されている。
表B5に示された以下のデータは、図18におけるプロットを作成するために使用された。詳細なグラフは、図21に提供されている。
パラジウムの除去のための一般的な方法‐セライト濾過
反応物を、0.5gのセライト上で直接、精製し、等しい容積の反応溶媒を用いて溶離した。このサンプルを真空下(ロータリーエバポレーター)で濃縮し、回収された物質の重さを得、その後、目的の生成物を12時間、室温にて2mLの濃硝酸中で温浸させた。
方法1
反応物を、何も捕捉材料を用いて処理せずに、単に真空下(ロータリーエバポレーター)で濃縮し、その後、使用された触媒1ミリモル当たり1gのシリカゲル上で直接、精製し、ヘキサン中の10%ジエチルエーテルの移動層を用いて溶離した。生成物を含有したフラクションをプールし、濃縮し、回収された物質の重さを得、その後、目的の生成物を12時間、室温にて2mLの濃硝酸中で温浸させた。
方法2
反応物に、溶液として、1mLのメタノール中に5当量(使用されたPd触媒に対して)のKO2CCH2NCを添加した。イソシアニドを、前記反応温度にて1〜4時間、反応物中で撹拌状態とした。その後、この反応物を、真空下(ロータリーエバポレーター)で濃縮し、その後、使用された触媒1ミリモル当たり1gのシリカゲル上で直接、精製し、ヘキサン中の10%ジエチルエーテルの移動層を用いて溶離した。生成物を含有するフラクションをプールし、濃縮し、回収された物質の重さを得、その後、目的の生成物を12時間、室温にて2mLの濃硝酸中で温浸させた。
方法3
反応物に、シリカゲル1を含有する4〜8当量(使用されたPd触媒に対して)のイソシアニドを添加し、この反応物を、前記反応温度にて1〜4時間、撹拌状態とした。その後、この反応物を、真空下(ロータリーエバポレーター)で濃縮し、その後、使用されたPd触媒1ミリモル当たり1gのシリカゲル上で直接、精製し、移動層としてヘキサン中の10%ジエチルエーテルを用いて溶離した。生成物を含有するフラクションをプールし、濃縮し、回収された物質の重さを得、その後、目的の生成物を12時間、室温にて2mLの濃硝酸中で温浸させた。
方法4
反応物に、シリカゲル1を含有する8〜16当量(使用されたPd触媒に対して)のイソシアニドを添加し、この反応物を、前記反応温度にて4時間、撹拌状態とした。その後、この反応物を、中位の多孔性フィルターフリット上で濾過し、この物質を等量(5mL)のCH2Cl2で洗浄し、溶出液を集め、真空下(ロータリーエバポレーター)で濃縮した。回収された物質の重さが得られ、その後、目的の生成物を12時間、室温にて2mLの濃硝酸中で温浸させた。
フェニルボロン酸と4‐ブロモアセトフェノンとの鈴木反応についての一般的方法
オーブンにて乾燥させた50mLのSchlenk管に、1.0ミリモルのアリールブロミド、1.5ミリモル(1.5当量)のアリールボロン酸、及び1.5ミリモル(1.5当量)の炭酸カリウムを入れた。その後、新しく蒸留したトルエン5mLを前記Schlenk管に加え、引き続き、0.03ミリモル(3モル%)のテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)を添加した。その後、この反応物を、予め加熱したオイルバス中に80℃で2時間、直接置き、その後、先に記載した方法の一つに従って処理した。いかなる処理も行わないと、生成物中の元素Pdの理論最大濃度は16,000ppmPd(0.03ミリモルのPdを含有する1ミリモル生成物サンプル中に3.19mgPd)であると計算される。これは、「除去されたPd%」を決定するのに使用される値であった。目的の生成物は、確認目的のために分離することが可能で、以前に発表された結果と良く一致したスペクトルデータを提供した。1H NMR(500MHz,CDCl3,ppm)δ 8.01(d,J=8.5Hz,2H),7.65(d,J=9.0Hz,2H),7.60−7.58(m,2H),7.44(t,J=7.5Hz,2H),7.39−7.36(m,1H),2.59(s,3H)。
フェニルボロン酸と3‐ブロモピリジンとの鈴木反応についての一般的方法
金属源としてテトラキス[トリフェニルホスフィン]パラジウム(0)を用いる際には、オーブン乾燥させた50mLのSchlenk管に、1.0ミリモルの3‐ブロモピリジン、1.25ミリモル(1.25当量)のアリールボロン酸、及び1.25ミリモル(1.25当量)の炭酸カリウムを入れた。その後、新しく蒸留したトルエン5mLを前記Schlenk管に加え、引き続き、0.03ミリモル(3モル%)のテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)を添加した。その後、この反応物を、予め加熱したオイルバス中に80℃で18時間、直接置き、その後、先に記載した方法の一つに従って処理した。いかなる処理も行わないと、生成物中の元素Pdの理論最大濃度は20,100ppmPd(0.03ミリモルのPdを含有する1ミリモル生成物サンプル中に3.19mgPd)であると計算される。これは、「除去されたPd%」を決定するのに使用される値であった。目的の生成物は、確認目的のために分離することが可能で、以前に発表された結果と良く一致したスペクトルデータを提供した。1H NMR(300MHz,CDCl3,ppm)δ 8.85(d,J=2.4Hz,1H),8.59−8.57(m,1H),7.87−7.83(m,1H),7.57−7.55(m,2H),7.50−7.32(m,4H)。
金属源としてパラジウム(II)アセテートを用いる際には、オーブン乾燥させた50mLのSchlenk管に、1.0ミリモルの3‐ブロモピリジン、1.25ミリモル(1.25当量)のアリールボロン酸、1.25ミリモル(1.25当量)の炭酸カリウム、及び0.12ミリモル(12モル%)のトリフェニルホスフィンを入れた。その後、新しく蒸留したトルエン5mLを前記Schlenk管に加え、引き続き、0.03ミリモル(3モル%)のパラジウム(II)アセテートを添加した。その後、この反応物を、予め加熱したオイルバス中に80℃で18時間、直接置き、その後、先に記載した方法の一つに従って処理した。いかなる処理も行わないと、生成物中の元素Pdの理論最大濃度は20,100ppmPd(0.03ミリモルのPdを含有する1ミリモル生成物サンプル中に3.19mgPd)であると計算される。これは、「除去されたPd%」を決定するのに使用される値であった。目的の生成物は、確認目的のために分離することが可能で、以前に発表された結果と良く一致したスペクトルデータを提供した。
2‐ブロモメシチレンとエチルアクリレートとの間のHeck反応についての一般的方法
オーブン乾燥させた50mLのSchlenk管に、1.0ミリモルのアリールブロミド、2.0ミリモル(2.0当量)のエチルアクリレート、及び1.5ミリモル(1.5当量)の炭酸カリウムを入れた。その後、新しく蒸留したトルエン5mLを前記Schlenk管に加え、引き続き、0.05ミリモル(5モル%)のPd(OAc)2及び0.2ミリモル(20モル%)のトリフェニルホスフィンを添加した。その後、この反応物を、予め加熱したオイルバス中に90℃で18時間、直接置き、その後、先に記載した方法の一つに従って処理した。いかなる処理も行わないと、生成物中の元素Pdの理論最大濃度は23,800ppmPd(0.05ミリモルのPdを含有する1ミリモル生成物サンプル中に5.32mgPd)であると計算される。これは、「除去されたPd%」を決定するのに使用される値であった。目的の生成物は、確認目的のために分離することが可能で、以前に発表された結果と良く一致したスペクトルデータを提供した。1H NMR(500MHz,CDCl3,ppm)δ 7.85(d,J=16.5Hz,1H),6.89(s,2H),6.07(d,J=16.5Hz,1H),4.28(q,J=7.5Hz,2H),2.33(s,6H),2.28(s,3H),1.34(t,J=7.5Hz,3H)。
2‐ブロモメシチレンとモルホリンとの間のBuchwald‐Hartwig反応についての一般的方法
オーブン乾燥させた50mLのSchlenk管に、1.0ミリモルのアリールブロミド、1.2ミリモル(1.2当量)のモルホリン、及び1.2ミリモル(1.2当量)のナトリウムtert‐ブトキシドを入れた。その後、新しく蒸留したトルエン5mLを前記Schlenk管に加え、引き続き、0.025ミリモル(5モル%)のPd2(dba)3及び0.075ミリモル(7.5モル%)の(+/−)BINAPを添加した。その後、この反応物を、予め加熱したオイルバス中に90℃で18時間、直接置き、その後、先に記載した方法の一つに従って処理した。いかなる処理も行わないと、生成物中の元素Pdの理論最大濃度は25,300ppmPd(0.05ミリモルのPdを含有する1ミリモル生成物サンプル中に5.32mgPd)であると計算される。これは、「除去されたPd%」を決定するのに使用される値であった。目的の生成物は、確認目的のために分離することが可能で、以前に発表された結果と良く一致したスペクトルデータを提供した。1H NMR(500MHz,CDCl3,ppm)δ 6.89(s,2H),3.89−3.85(m,4H),3.15−3.13(m,4H),2.39(s,6H),2.32(s,3H)。
ジアミン7からのPdの除去
オーブン乾燥させた100mLのSchlenk管に、トルエン5mL中の、0.105ミリモル(4モル%)のPd2(dba)3及び0.21ミリモル(8.0モル%)の(+/−)BINAPを入れた。このSchlenk管を窒素を用いて15分間、脱気し、その後、密封して、オイルバス中に140℃で15分間置いた。15分後、この溶液を室温にまで冷却し、その時点で、トルエン13mL中の、2.5ミリモルのアリールブロミド、12.5ミリモル(5.0当量)の前記アミン、及び10.0ミリモル(4.0当量)のナトリウムtert‐ブトキシドを添加した。その後、この反応物を窒素にて15分間、脱気し、その後、密封して、オイルバス中に140℃で90分間、直接置いた。この反応物を室温にまで冷却し、45mLのジエチルエーテルを用いて希釈し、10cmプラグのセライトを通過させ、その後、別の45mLのジエチルエーテルを用いて洗浄した。この溶液を濃縮すると、赤い油状物として未精製物が得られた。この物質を充分なトルエン中に溶解させ、溶液の最終容積が10mLとなるようにし、5つの等しいフラクションに分けた。各フラクションを更に、処理前に最終容積が5mLとなるように希釈した。対照は、いかなる処理も行わずに直接、分析し、残りのサンプルは、シリカゲル1を含有する8又は16当量のイソシアニドと、室温で16時間混合した。16時間の処理時間後、シリカゲルを濾過によって除去し、集められたシリカゲルのパッドを、等しい容量のジエチルエーテルを用いて洗浄した。その後、この有機フラクションを濃縮し、残留Pdについて分析した。この生成物7は、確認目的のために分離することが可能で、以前に発表された結果と良く一致したスペクトルデータを提供した。1H NMR(500MHz,CDCl3,ppm)δ 7.39(d,J=7.0Hz,4H),7.30(t,J=7.5Hz,4H),7.21(t,J=7.0Hz,2H),6.57−6.55(m,2H),6.45−6.42(m,2H),4.48(q,J=6.0Hz,2H),3.71(br s,2H),1.57(d,J=6.5Hz,6H)。
反射IR測定
シリカゲルの単一粒子を反射IR顕微鏡によって観察し、IRスペクトルを記録した。このスペクトル解像度は4cm−1で、128スキャンが平均化され、図22に示されている。
トルエン溶液からのCl2Pd(PPh3)2の除去
マグネティック撹拌バーを備えた20ドラムのガラス瓶に、35mg(0.049ミリモル)のPdCl2(PPh3)2と10mLのTHFを入れた。この溶液を、完全に溶解するまで5分間撹拌した。錯体が完全に溶解して直ぐに、シリガゲル1を含有した500mg(16当量)のイソシアニドを添加したところ、その直後に、明るい黄色から透明への色の変化が観察された(以下の図23参照)。この溶液を室温で30分間撹拌し、その時点で、シリカゲルを中位の多孔性フィルターフリットを通して濾過することにより集めた。分離されたシリカゲルを、別の10mLのTHFを用いて洗浄した。この濾液と洗浄液を一緒にし、予め重量測定したガラス瓶内で、真空(ロータリーエバポレーター)にて濃縮した。濃縮された溶出物は、金属中心から置換されたトリフェニルホスフィン19mg(0.072ミリモル、1.5当量)を含有することが見出された。
文献からのいくつかの金属イソシアニド錯体
いくつかのPd‐イソシアニド錯体が、文献において構造的に特徴付けられてきた。いくつかの関連性のある錯体が、以下にまとめられている。
ICP‐MSによるPdの測定についての分析方法
校正曲線は、5%HCl中において1mLあたりPdが1000μgである高純度Pd標準の希釈液から作成した。校正曲線は、2.76%のTraceSelectグレードの硝酸溶液中においてPdが0.0,0.01,0.1,1.0,10,100,200,400,600,800,1000ppbの標準を用いて作成した。
分析用のサンプルを濃縮し、予め重量測定した50mLの金属フリーの遠心分離管に移し、その重量を記録した。その後、これらのサンプルを、2.0mLのTraceSelectグレードの濃硝酸(69%)を用いて温浸させた(12時間、室温)。上記の温浸時間後、サンプルを、蒸留脱イオンした水を用いて50mLの最終容積となるように希釈した。温浸後、全てのサンプルを引き続き、分析を行う前に0.45ミクロンのシリンジフィルターを通して濾過した。総パラジウム含量は、105Pd,106Pd及び108Pdをモニタリングすることによって測定した。これらサンプルについて3回実験を行い、3回の実験の平均を最終的な値とした。
対照 前記の有機サンプルの温浸についての適した方法を決定するために、2つの公知のサンプルを作成し、分析した。サンプルAは、固体のPd(OAc)2を10.8mg(0.048ミリモル)含有し、サンプルBは5.6mg(0.025ミリモル)含有していた。両方のサンプルを、2mLのTraceSelectグレードの硝酸(>69%)中に、室温で12時間溶解させた。その後、これらのサンプルを、ナノピュア水中に全容積が50mLとなるよう希釈し、0.45μmのシリンジフィルターを通して濾過した。
サンプルAは、0.0481ミリモルのパラジウム、即ち、50mL中に5.12mg、濃度としては1mLあたり1024μg、即ち1024ppmを含有していた。このサンプルの1mLを更に、100mLとなるよう希釈し、最終濃度を1.02ppmとした。その後、このサンプルを直接、分析し、標準曲線と比較した。このサンプルについて観察された濃度は、0.985ppmであり、3.9%の誤差であった。
サンプルBは、0.025ミリモルのパラジウム、即ち、50mL中に2.65mg、濃度としては1mLあたり530μg、即ち530ppmを含有していた。このサンプルの1mLを更に、100mLとなるよう希釈し、最終濃度を530ppbとした。このサンプルを直接、分析し、標準曲線と比較した。このサンプルについて観察された濃度は537ppbであり、1.3%の誤差であった。
代表的な温浸方法
(固体については0.1mgまで正確に、液体についてはmgまで正確に重量測定された)全てのサンプルの既知の量を、2mLのTraceSelectグレードの硝酸(>69%)中に、室温で12時間温浸させた。前記の温浸時間後、これらサンプルをナノピュア水中に全容積が50mLとなるよう希釈した。その後、サンプルを0.45μmのシリンジフィルターを通して濾過し、全ての粒状物質を取り除いた。希釈したサンプルを、その後、直接、ICP‐MSにより分析した(図26〜30)。
本願において挙げられている引用文献は全て、参照としてここに組み込まれる。
先の説明は、本願の開示の特殊な具体例を提供している。当業者であれば、これらの具体例についての通常の改変が、本開示の範囲内であると意図されるものを作り出し得ることを認識するであろう。