JP2016533392A - カルジオリピン標的化ペプチドはベータアミロイドオリゴマー毒性を阻害する - Google Patents

カルジオリピン標的化ペプチドはベータアミロイドオリゴマー毒性を阻害する Download PDF

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Abstract

本開示は、芳香族カチオン性ペプチド及びその使用方法を提供する。本方法は、細胞外Aβオリゴマーの蓄積を遮断すること、Aβ媒介性オキシゲナーゼ活性を阻害すること、Aβ誘発性ミトコンドリア機能不全を減少させること、及び/またはAβ誘発性神経細胞アポトーシスを予防することを含む、毒性ベータアミロイド(Aβ)ペプチドの影響を減少させることにおける芳香族カオチン性ペプチドの使用を含む。【選択図】図1A

Description

関連出願の相互参照
本出願は、2013年9月30日出願の米国出願第61/884,722号の利益及び優先権を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
本技術は、概して、芳香族カチオン性ペプチド組成物、及びベータアミロイドペプチド(Aβ)オリゴマー毒性の影響の治療、予防、または改善における使用方法に関する。
読者の理解を支援するために以下の説明が提供される。提供される情報または引用される参照文献のいずれも、先行技術であるとは認められない。
Aβは、アミロイド前駆体タンパク質(APP)に由来する。APPは、神経可塑性及びシナプス形成などの多くの重要な神経機能に関与する不可欠な糖タンパク質である。APPの処理は、α経路及びβ経路の2つの経路を通して実行される。典型的には、APPは、Aβを産生しないα経路を通して除去される。
β経路は、アミロイド生成性経路である。β経路に進入するAPPは、β−セクレターゼ及びγ−セクレターゼによって開裂されて、Aβを産生する。産生されたAβのサイズは、アミノ酸36〜43個の範囲である。Aβの最も一般的なアイソフォームは、Aβ1-40及びAβ1-42である。これら2つのうち、Aβ1-42は、より疎水性であり、より凝集する傾向にあり、Aβ1-40よりも毒性である。Aβ1-42はまた、アミロイド斑中で最も一般的に見られる形態である。
一態様では、本技術は、治療有効量の芳香族カチオン性ペプチドまたはその薬学的に許容される塩を投与することを、それを必要とする対象に行うことを含む、ベータアミロイドペプチド(Aβ)毒性を伴う状態または疾患の症状を治療または予防するための方法を提供する。
本方法のいくつかの実施形態では、芳香族カチオン性ペプチドは、2′,6′−Dmt−D−Arg−Phe−Lys−NH2(SS−02)、Phe−D−Arg−Phe−Lys−NH2(SS−20)、D−Arg−2′,6′−Dmt−Lys−Phe−NH2(SS−31)、及びD−Arg−2′,6′−Dmt−Lys−Ald−NH2([ald]SS−31)からなる群から選択される1つ以上のペプチドを含む。
本方法のいくつかの実施形態では、塩は、酢酸塩、酒石酸塩、またはトリフルオロ酢酸塩である。
本方法のいくつかの実施形態では、疾患は、アルツハイマー病、レビー小体型認知症、封入体筋炎、及び脳アミロイド血管症からなる群から選択される。
本方法のいくつかの実施形態では、治療は、記憶喪失、興奮、気分変動、判断力の低下、認知症、抽象的思考が困難になる、慣れた作業が困難になる、認知的困難、見当識障害、コミュニケーション能力の減退、反復的な発話または動作、視覚または空間関係に関する困難、引きこもり、抑鬱、認知喪失、運動能力及び触覚の喪失、妄想、被害妄想、言葉または身体的攻撃性、ならびに睡眠障害からなる群から選択される、アルツハイマー病の1つ以上の症状を減少させるか、または改善することを含む。
本方法のいくつかの実施形態では、芳香族カチオン性ペプチドは、経口、非経口、静脈内、皮下、経皮、局所、または吸入投与される。
別の態様では、本技術は、治療有効量の芳香族カチオン性ペプチドまたはその薬学的に許容される塩を対象に投与することを含む、Aβ毒性を伴う疾患を患う対象におけるベータアミロイド(Aβ)誘発性オキシゲナーゼ活性を減少させるための方法を提供する。
本方法のいくつかの実施形態では、芳香族カチオン性ペプチドは、2′,6′−Dmt−D−Arg−Phe−Lys−NH2(SS−02)、Phe−D−Arg−Phe−Lys−NH2(SS−20)、D−Arg−2′,6′−Dmt−Lys−Phe−NH2(SS−31)、及びD−Arg−2′,6′−Dmt−Lys−Ald−NH2([ald]SS−31)からなる群から選択される1つ以上のペプチドを含む。
本方法のいくつかの実施形態では、塩は、酢酸塩、酒石酸塩、またはトリフルオロ酢酸塩である。
本方法のいくつかの実施形態では、疾患は、アルツハイマー病、レビー小体型認知症、封入体筋炎、及び脳アミロイド血管症からなる群から選択される。
本方法のいくつかの実施形態では、治療は、記憶喪失、興奮、気分変動、判断力の低下、認知症、抽象的思考が困難になる、慣れた作業が困難になる、認知的困難、見当識障害、コミュニケーション能力の減退、反復的な発話または動作、視覚または空間関係に関する困難、引きこもり、抑鬱、認知喪失、運動能力及び触覚の喪失、妄想、被害妄想、言葉または身体的攻撃性、ならびに睡眠障害からなる群から選択される、アルツハイマー病の1つ以上の症状を減少させるか、または改善することを含む。
本方法のいくつかの実施形態では、芳香族カチオン性ペプチドは、経口、非経口、静脈内、皮下、経皮、局所、または吸入投与される。
別の態様では、本技術は、治療有効量の芳香族カチオン性ペプチドまたはその薬学的に許容される塩を対象に投与することを含む、Aβ毒性を伴う疾患を患う対象における細胞外ベータアミロイド(Aβ)オリゴマーを減少させるための方法を提供する。
本方法のいくつかの実施形態では、芳香族カチオン性ペプチドは、2′,6′−Dmt−D−Arg−Phe−Lys−NH2(SS−02)、Phe−D−Arg−Phe−Lys−NH2(SS−20)、及びD−Arg−2′,6′−Dmt−Lys−Ald−NH2([ald]SS−31)からなる群から選択される1つ以上のペプチドを含む。
本方法のいくつかの実施形態では、塩は、酢酸塩、酒石酸塩、またはトリフルオロ酢酸塩である。
本方法のいくつかの実施形態では、芳香族カチオン性ペプチドは、経口、非経口、静脈内、皮下、経皮、局所、または吸入投与される。
本方法のいくつかの実施形態では、疾患は、アルツハイマー病、レビー小体型認知症、封入体筋炎、及び脳アミロイド血管症からなる群から選択される。
本方法のいくつかの実施形態では、治療は、記憶喪失、興奮、気分変動、判断力の低下、認知症、抽象的思考が困難になる、慣れた作業が困難になる、認知的困難、見当識障害、コミュニケーション能力の減退、反復的な発話または動作、視覚または空間関係に関する困難、引きこもり、抑鬱、認知喪失、運動能力及び触覚の喪失、妄想、被害妄想、言葉または身体的攻撃性、ならびに睡眠障害からなる群から選択される、アルツハイマー病の1つ以上の症状を減少させるか、または改善することを含む。
一態様では、本技術は、治療有効量のD−Arg−2′,6′−Dmt−Lys−Ald−NH2([ald]SS−31)またはその薬学的に許容される塩を投与することを、それを必要とする対象に行うことを含む、アルツハイマー病を治療することを必要とする対象においてそれを行うための方法を提供する。本方法のいくつかの実施形態では、塩は、酢酸塩、酒石酸塩、またはトリフルオロ酢酸塩である。
本方法のいくつかの実施形態では、治療は、記憶喪失、興奮、気分変動、判断力の低下、認知症、抽象的思考が困難になる、慣れた作業が困難になる、認知的困難、見当識障害、コミュニケーション能力の減退、反復的な発話または動作、視覚または空間関係に関する困難、引きこもり、抑鬱、認知喪失、運動能力及び触覚の喪失、妄想、被害妄想、言葉または身体的攻撃性、ならびに睡眠障害からなる群から選択される、アルツハイマー病の1つ以上の症状を減少させるか、または改善することを含む。
本方法のいくつかの実施形態では、D−Arg−2′,6′−Dmt−Lys−Ald−NH2([ald]SS−31)は、経口、非経口、静脈内、皮下、経皮、局所、または吸入投与される。
Cu2+イオンの存在下でのカルジオリピン及びAβ1-42オリゴマーのインキュベーションが、Aβ1-42媒介性オキシゲナーゼ活性を促進することを示す。各サンプルは、pH7.4の200μLの1倍PBS、50μMのAmplex Red、800nMのAβオリゴマー、及び30μMの1,1’,2,2’−テトラリノレオイルカルジオリピン(TLCL)を含有する。相対蛍光単位(RFU)/分として表されるオキシゲナーゼ活性を、H22の不在下で50μMのAmplex Red試薬の蛍光を監視することによってアッセイした。対照群と比べたオキシゲナーゼ活性の増加%、及び各実験実行についての連続経時変化データを示す。図1Aは、CuCl2活性がAβ1-42媒介性オキシゲナーゼ活性を刺激することを示す。図1Bは、Cu2+イオン(Cu(NO32及びCuCl2など)が、Aβ1-42媒介性オキシゲナーゼ活性の刺激に不可欠であることを示す。図1Cは、Cu2+イオンが、用量依存的にAβ1-42媒介性オキシゲナーゼ活性を増加させることを示す。 カルジオリピンアイソフォーム1,1’,2,2’−テトラリノレオイルカルジオリピン(TLCL)が、Aβ1-42媒介性オキシゲナーゼ活性のCu2+依存性の刺激に必要とされることを示す。図2Aは、異なるカルジオリピン(CL)アイソフォームの構造を示す。カルジオリピンアイソフォームは、それらの脂肪酸尾部において異なる程度の飽和を呈する。1,1’,2,2’−テトラミリストイルカルジオリピン(TMCL)は、飽和脂肪酸尾部を含有し、1,1’,2,2’−テトラオレオイルカルジオリピン(TOCL)は、各尾部において1個の二重結合を有する不飽和脂肪酸を含有し、1,1’,2,2’−テトラリノレオイルカルジオリピン(TLCL)は、各尾部において2個の二重結合を有する不飽和脂肪酸を含有する。図2B及び2Cでは、各サンプルは、pH7.4の200μLの1倍PBS、50μMのAmplex Red、800nMのAβオリゴマー、及び30μMのCuCl2を含有した。相対蛍光単位(RFU)/分として表されるオキシゲナーゼ活性を、H22の不在下で50μMのAmplex Red試薬の蛍光を監視することによってアッセイした。対照群と比べたオキシゲナーゼ活性の増加%、及び各実験実行についての連続経時変化データを示す。図2Bは、TLCL以外のリン脂質が、Cu2+イオンの存在下でAβ1-42媒介性オキシゲナーゼ活性を刺激することができないことを示す。図2Cは、TLCLが、Cu2+イオンの存在下でAβ1-42媒介性オキシゲナーゼ活性を刺激することができる唯一のカルジオリピンアイソフォームであることを示す。 TLCL及びAβオリゴマーが、用量依存的様式でAβ1-42媒介性オキシゲナーゼ活性を増加させることを示す。相対蛍光単位(RFU)/分として表されるオキシゲナーゼ活性を、H22の不在下で50μMのAmplex Red試薬の蛍光を監視することによってアッセイした。対照群と比べたオキシゲナーゼ活性の増加%、及び各実験実行についての連続経時変化データを示す。図3Aでは、各サンプルは、pH7.4の200μLの1倍PBS、50μMのAmplex Red、800nMのAβオリゴマー、及び30μMのCuCl2を含有した。図3Bでは、各サンプルは、pH7.4の200μLの1倍PBS、50μMのAmplex Red、30μMのTLCL、及び30μMのCuCl2を含有した。TLCL及びAβオリゴマーの用量依存的応答を、それぞれ図3A及び図3Bに示す。 図4Aは、D−Arg−2′,6′−Dmt−Lys−Phe−NH2(SS−31)及びD−Arg−2′,6′−Dmt−Lys−Ald−NH2([ald]SS−31)の化学構造を示す。図4Bは、D−Arg−2′,6′−Dmt−Lys−Phe−NH2(SS−31)(破線の棒で表す)及びD−Arg−2′,6′−Dmt−Lys−Ald−NH2([ald]SS−31)(実線の棒で表す)が、用量依存的様式で、Aβ1-42媒介性オキシゲナーゼ活性のCu2+依存性の刺激を阻害することを示す。相対蛍光単位(RFU)/分として表されるオキシゲナーゼ活性を、H22の不在下で50μMのAmplex Red試薬の蛍光を監視することによってアッセイした。対照群と比べたオキシゲナーゼ活性の増加%、及びD−Arg−2′,6′−Dmt−Lys−Ald−NH2([ald]SS−31)を用いた各実験実行についての連続経時変化データを示す。各サンプルは、pH7.4の200μLの1倍PBS、50μMのAmplex Red、800nMのAβオリゴマー、30μMのTLCL、及び30μMのCuCl2を含有した。 1μMのAβの存在または不在下でのアラダン及びD−Arg−2′,6′−Dmt−Lys−Ald−NH2([ald]SS−31)(1μM、λex=360nm)の蛍光発光スペクトルを示す。図5は、AβをD−Arg−2′,6′−Dmt−Lys−Ald−NH2([ald]SS−31)に添加したときの最大発光(λmax)の移行及び蛍光強度の増加を示す。 40μMのAβの存在下でのアラダン、D−Arg−2′,6′−Dmt−Lys−Phe−NH2(SS−31)、及びD−Arg−2′,6′−Dmt−Lys−Ald−NH2([ald]SS−31)の濁度データを示す。Aβオリゴマーのみを含有するサンプルを基準として使用した。図6は、AβをD−Arg−2′,6′−Dmt−Lys−Ald−NH2([ald]SS−31)に添加したときの、より高い濁度の指標である散乱光の強度の増加を示す。 図7Aは、Aβオリゴマーの電子顕微鏡写真である。図7Bは、AβオリゴマーをD−Arg−2′,6′−Dmt−Lys−Ald−NH2([ald]SS−31)と接触させたときのAβ原線維形成の異なる段階を示す。図7Cは、AβオリゴマーをD−Arg−2′,6′−Dmt−Lys−Ald−NH2([ald]SS−31)と接触させたときのAβ原線維の電子顕微鏡写真である。図7Dは、自然に形成されたAβ原線維の電子顕微鏡写真である。
本技術のある特定の態様、形態、実施形態、変形、及び特徴は、本技術の実質的な理解を提供するために、種々のレベルの詳細で以下に記述されることが理解される。本明細書で使用する場合のある特定の用語の定義が以下に提供される。別段の定義がない限り、本明細書で使用する全ての技術用語及び科学用語は、概して、本技術が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。
本開示を実践する際には、細胞生物学、分子生物学、タンパク質生化学、免疫学、及び細菌学の多くの従来の技法が使用される。これらの技法は、当該技術分野で周知であり、Current Protocols in Molecular Biology,Vols.I−III,Ausubel,Ed.(1997)、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Second Ed.(Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY,1989)を含む、いくつもの利用可能な出版物中で提供されている。
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用する場合、文脈が別途明確に指示しない限り、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」は、複数の指示対象を含む。例えば、「1つの細胞(a cell)」への言及は、2つ以上の細胞の組み合わせなどを含む。
本明細書で使用する場合、薬剤、薬物、またはペプチドの対象への「投与」は、その意図される機能を行うための対象への化合物の導入または送達のいずれの経路も含む。投与は、経口、経鼻、非経口(静脈内、筋肉内、腹腔内、または皮下)、局所、皮膚上、直腸内、皮内、経皮、吸入、動脈内、大脳内、骨間、髄腔内、イオン導入、経眼、膣内などを含む、任意の好適な経路によって実行することができる。投与は、自己投与、及び他者による投与を含む。
本明細書で使用する場合、「アミノ酸」という用語は、天然型アミノ酸及び合成アミノ酸、ならびに天然型アミノ酸に類似した様式で機能するアミノ酸類似体及びアミノ酸模倣体を含む。天然型アミノ酸は、遺伝コードによってコードされるもの、ならびに後に修飾されるアミノ酸、例えば、ヒドロキシプロリン、γ−カルボキシグルタミン酸、及びO−ホスホセリンである。アミノ酸類似体は、天然型アミノ酸と同じ基本化学構造を有する化合物、即ち、水素、カルボキシル基、アミノ基、及びR基に結合するα−炭素、例えば、ホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウムを指す。かかる類似体は、修飾されたR基(例えば、ノルロイシン)または修飾されたペプチド骨格を有するが、天然型アミノ酸と同じ基本化学構造を保持する。アミノ酸模倣体は、アミノ酸の一般化学構造とは異なる構造を有するが、天然型アミノ酸と類似の様式で機能する化学化合物を指す。アミノ酸は、本明細書では、IUPAC−IUB Biochemical Nomenclature Commissionによって推奨されるそれらの周知の三文字記号、または一文字記号のいずれかによって称され得る。
本明細書で使用する場合、「有効量」という用語は、所望の治療及び/または予防効果を達成するのに十分な量を指す。治療または予防用途の文脈において、対象に投与される組成物の量は、疾患の種類及び重症度、ならびに全般的な健康、年齢、性別、体重、及び薬物耐性などの個体の特徴に依存することになる。それは、疾患の程度、重症度、及び種類にも依存することになる。当業者であれば、これら及び他の因子に応じて適切な用量を決定することができるであろう。本組成物はまた、1つ以上の更なる治療化合物と組み合わせて投与することができる。
「単離された」または「精製された」ポリペプチドまたはペプチドは、薬剤が由来する細胞または組織源由来の細胞物質または他の汚染ポリペプチドを実質的に含まないか、あるいは化学的に合成されたときに化学的前駆体または他の化学物質を実質的に含まない。例えば、単離された芳香族カチオン性ペプチドまたは単離されたシトクロムcタンパク質は、薬剤の診断的または治療的使用に干渉するか、あるいはペプチドの伝導性または電気的特性に干渉する物質を含まない。かかる干渉物質としては、酵素、ホルモン、ならびに他のタンパク質性及び非タンパク質性溶質を挙げることができる。
本明細書で使用する場合、「ポリペプチド」、「ペプチド」、及び「タンパク質」という用語は、本明細書では同義に使用され、ペプチド結合または修飾されたペプチド結合によって互いに結合した2つ以上のアミノ酸、即ち、ペプチド同配体を含むポリマーを意味する。ポリペプチドは、ペプチド、グリコペプチド、またはオリゴマーと通常称される短鎖と、タンパク質として一般に称される長鎖との両方を指す。ポリペプチドは、20個の遺伝子コードされたアミノ酸以外のアミノ酸を含んでもよい。ポリペプチドは、翻訳後プロセシングなどの天然のプロセス、または当該技術分野で周知である化学的修飾技法のいずれかによって修飾されたアミノ酸配列を含む。
本明細書で使用する場合、「別々の(separate)」治療的使用という用語は、少なくとも2つの活性成分を異なる経路で同時にまたは実質的に同時に投与することを指す。
本明細書で使用する場合、「連続した(sequential)」治療的使用という用語は、少なくとも2つの活性成分を異なるときに投与することを指し、投与経路は、同一であるか、または異なる。より具体的には、連続した使用は、活性成分のうちの1つを、他の活性成分(単数または複数)の投与を開始する前に完全に投与することを指す。故に、活性成分のうちの1つを、他の活性成分(単数または複数)を投与する前に、数分、数時間、または数日かけて投与することが可能である。この場合には同時治療は存在しない。
本明細書で使用する場合、「同時の(simultaneous)」治療的使用という用語は、少なくとも2つの活性成分を同じ経路で同時にまたは実質的に同時に投与することを指す。
本明細書で使用する場合、「対象(subject)」、「個体(individual)」、または「患者(patient)」という用語は、個々の有機体、脊椎動物、哺乳動物、またはヒトであることができる。
本明細書で使用する場合、「相乗的治療効果」は、少なくとも2つの治療薬の組み合わせによって生み出され、かつ少なくとも2つの治療薬の単独投与から別途生じるものを超過する、相加を上回る治療効果(greater−than−additive therapeutic effect)を指す。1つの利点としては、医学的疾患または障害の治療における低用量の1以上の治療薬が、増加した治療有効性及び減少した副作用をもたらすことが挙げられるが、これらに限定されない。
本明細書で使用する場合、化合物の「治療有効量」は、疾患または障害の生理学的影響が最低でも改善される化合物レベルを指す。治療有効量は、1回以上の投与で与えられ得る。治療有効量を構成する化合物の量は、化合物、疾患及びその重症度、ならびに治療される対象の全般的な健康、年齢、性別、体重、及び薬物耐性に応じて変化することになるが、当業者によって日常的に決定され得る。
本明細書で使用する場合、「治療する(treating)」、または「治療(treatment)」、または「改善(alleviation)」という用語は、ヒトなどの対象における本明細書に記載の疾患または障害の治療を網羅し、(i)疾患もしくは障害の阻害、即ち、その発症の停止、(ii)疾患もしくは障害の緩和、即ち、疾患の退行の誘起、(iii)疾患の進行の減速、及び/または(iv)疾患もしくは障害の1つ以上の症状の進行の阻害、緩和、もしくは減速を含む。
本明細書で使用する場合、疾患または状態の「予防(prevention)」または「予防すること(preventing)」は、未治療の対照サンプルと比べて、治療されたサンプルにおける疾患または状態の発生を減少させるか、あるいは未治療の対照サンプルと比べて、疾患または状態の1つ以上の症状の発症を遅延させる化合物を指す。
また、記載されるような医学的状態の治療または予防の種々の形態が、完全な治療または予防だけでなく完全に満たない治療または予防を含む「実質的な」を意味するように意図されており、そこである生物学的または医学的に関連性のある結果が達成されることも理解されたい。
芳香族カチオン性ペプチド
本技術は、芳香族カチオン性ペプチドの使用に関する。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの芳香族カチオン性ペプチドは、ベータアミロイドペプチド(Aβ)の過剰発現を特徴とする症状、状態、または疾患の治療または改善に関する態様において有用である。加えてまたはあるいは、いくつかの実施形態では、少なくとも1つの芳香族カチオン性ペプチドは、脳内のAβ及び/またはAβ班の蓄積または過剰発現を特徴とする症状、状態、または疾患の治療または改善に関する態様において有用である。加えてまたはあるいは、いくつかの実施形態では、少なくとも1つの芳香族カチオン性ペプチドは、Aβオリゴマーの蓄積または過剰発現を特徴とする症状、状態、または疾患の治療または改善に関する態様において有用である。
芳香族カチオン性ペプチドは、水溶性かつ高度に極性である。これらの特性にも関わらず、本ペプチドは、細胞膜を容易に貫通することができる。芳香族カチオン性ペプチドは、典型的には、ペプチド結合によって共有結合した最低3個のアミノ酸または最低4個のアミノ酸を含む。芳香族カチオン性ペプチド中に存在するアミノ酸の最大数は、ペプチド結合によって共有結合した約20個のアミノ酸である。好適には、アミノ酸の最大数は、約12個、約9個、または約6個である。
芳香族カチオン性ペプチドのアミノ酸は、任意のアミノ酸であることができる。本明細書で使用する場合、「アミノ酸」という用語は、少なくとも1個のアミノ基及び少なくとも1個のカルボキシル基を含む任意の有機分子を指すために使用する。典型的には、少なくとも1個のアミノ基は、カルボキシル基に対してα位である。アミノ酸は天然型であってもよい。天然型アミノ酸としては、例えば、哺乳動物タンパク質中に通常見られる20個の最も一般的な左旋性(L)アミノ酸、即ち、アラニン(Ala)、アルギニン(Arg)、アスパラギン(Asn)、アスパラギン酸(Asp)、システイン(Cys)、グルタミン(Gln)、グルタミン酸(Glu)、グリシン(Gly)、ヒスチジン(His)、イソロイシン(Ile)、ロイシン(Leu)、リジン(Lys)、メチオニン(Met)、フェニルアラニン(Phe)、プロリン(Pro)、セリン(Ser)、トレオニン(Thr)、トリプトファン、(Trp)、チロシン(Tyr)、及びバリン(Val)が挙げられる。他の天然型アミノ酸としては、例えば、タンパク質合成と関連しない代謝プロセス中に合成されるアミノ酸が挙げられる。例えば、アミノ酸オルニチン及びシトルリンは、尿素の産生中に哺乳動物代謝において合成される。天然型アミノ酸の別の例としては、ヒドロキシプロリン(Hyp)が挙げられる。
本ペプチドは、任意選択で、1つ以上の非天然型アミノ酸を含む。最適には、本ペプチドは、天然型のアミノ酸を有さない。非天然型アミノ酸は、左旋性(L−)、右旋性(D−)、またはこれらの混合物であってもよい。非天然型アミノ酸は、生体における正常な代謝プロセスでは典型的には合成されず、タンパク質中に天然に存在しないアミノ酸である。加えて、非天然型アミノ酸はまた、好適には、一般的なプロテアーゼによって認識されない。非天然型アミノ酸は、ペプチド中の任意の位置で存在し得る。例えば、非天然型アミノ酸は、N末端、C末端、またはN末端とC末端との間の任意の位置に存在し得る。
非天然型アミノ酸は、例えば、天然型アミノ酸中には見られないアルキル、アリール、またはアルキルアリール基を含み得る。非天然型アルキルアミノ酸のいくつかの例としては、α−アミノ酪酸、β−アミノ酪酸、γ−アミノ酪酸、δ−アミノ吉草酸、及びε−アミノカプロン酸が挙げられる。非天然型アリールアミノ酸のいくつかの例としては、オルト、メタ、及びパラアミノ安息香酸が挙げられる。非天然型アルキルアリールアミノ酸のいくつかの例としては、オルト、メタ、及びパラアミノフェニル酢酸、ならびにγ−フェニル−β−アミノ酪酸が挙げられる。非天然型アミノ酸は、天然型アミノ酸の誘導体を含む。天然型アミノ酸の誘導体は、例えば、1つ以上の化学基の天然型アミノ酸への付加を含んでもよい。
例えば、1つ以上の化学基は、フェニルアラニンまたはチロシン残基の芳香環の2′、3′、4′、5′、もしくは6′位のうちの1つ以上、またはトリプトファン残基のベンゾ環の4′、5′、6′、もしくは7′位のうちの1つ以上に付加することができる。基は、芳香環に付加することができる任意の化学基であり得る。かかる基のいくつかの例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、またはt−ブチルなどの分枝または非分枝C1〜C4アルキル、C1〜C4アルキルオキシ(即ち、アルコキシ)、アミノ、C1〜C4アルキルアミノ、及びC1〜C4ジアルキルアミノ(例えば、メチルアミノ、ジメチルアミノ)、ニトロ、ヒドロキシル、ハロ(即ち、フルオロ、クロロ、ブロモ、またはヨード)が挙げられる。天然型アミノ酸の非天然型誘導体のいくつかの特定の例としては、ノルバリン(Nva)及びノルロイシン(Nle)が挙げられる。
ペプチドにおけるアミノ酸の修飾の別の例は、ペプチドのアスパラギン酸またはグルタミン酸残基のカルボキシル基の誘導体化である。誘導体化の一例は、アンモニア、または第1級もしくは第2級アミン、例えば、メチルアミン、エチルアミン、ジメチルアミン、もしくはジエチルアミンを用いたアミド化である。誘導体化の別の例としては、例えば、メチルまたはエチルアルコールを用いたエステル化が挙げられる。別のかかる修飾としては、リジン、アルギニン、またはヒスチジン残基のアミノ基の誘導体化が挙げられる。例えば、かかるアミノ基はアクリル化することができる。いくつかの好適なアシル基としては、例えば、アセチルまたはプロピオニル基など、上述のC1〜C4アルキル基のうちのいずれかを含むベンゾイル基またはアルカノイル基が挙げられる。
非天然型アミノ酸は、好適には、一般的なプロテアーゼに対して耐性または非感受性である。プロテアーゼに対して耐性または非感受性である非天然型アミノ酸の例としては、上述の天然型L−アミノ酸ならびに非天然型L−及び/またはD−アミノ酸のうちのいずれかの右旋性(D−)形態が挙げられる。D−アミノ酸は、通常はタンパク質中で発生しないが、細胞の通常のリボソームタンパク質合成機構以外の手段によって合成されるある特定のペプチド抗生物質中で見られる。本明細書で使用する場合、D−アミノ酸は、非天然型アミノ酸であると見なされる。
プロテアーゼ感受性を最小限にするために、ペプチドは、アミノ酸が天然型であるか非天然型であるかにかかわらず、一般的なプロテアーゼによって認識された5個未満、4個未満、3個未満、または2個未満の隣接L−アミノ酸を有するべきである。一実施形態では、ペプチドは、D−アミノ酸のみを有し、L−アミノ酸を有さない。ペプチドがアミノ酸のプロテアーゼ感受性配列を含む場合、アミノ酸のうちの少なくとも1つは、非天然型D−アミノ酸であることによりプロテアーゼ耐性を与えることが好ましい。プロテアーゼ感受性配列の例としては、エンドペプチダーゼ及びトリプシンなどの、一般的なプロテアーゼによって容易に開裂される2つ以上の隣接塩基性アミノ酸が挙げられる。塩基性アミノ酸の例としては、アルギニン、リジン、及びヒスチジンが挙げられる。
芳香族カチオン性ペプチドは、ペプチドでのアミノ酸残基の総数と比較して、生理学的pHにある正味の正電荷の最小数を有するべきである。生理学的pHでの正味の正電荷の最小数は、以下で(pm)と称される。ペプチドにおけるアミノ酸残基の総数は、以下で(r)と称される。以下で考察する正味の正電荷の最小数は、全て生理学的pHである。「生理学的pH」という用語は、本明細書で使用する場合、哺乳動物の身体の組織及び臓器の細胞における正常なpHを指す。例えば、ヒトの生理学的pHは、通常約7.4であるが、哺乳動物における正常な生理学的pHは、約7.0〜約7.8の範囲の任意のpHでもあり得る。
「正味の電荷」は、本明細書で使用する場合、ペプチド中に存在するアミノ酸が帯びる正電荷の数と負電荷の数との差を指す。本明細書では、正味の電荷は生理学的pHで測定されることが理解される。生理学的pHで正に帯電する天然型アミノ酸としては、L−リジン、L−アルギニン、及びL−ヒスチジンが挙げられる。生理学的pHで負に帯電する天然型アミノ酸としては、L−アスパラギン酸及びL−グルタミン酸が挙げられる。
典型的には、ペプチドは、正に帯電したN末端アミノ基及び負に帯電したC末端カルボキシル基を有する。これらの電荷は、生理学的pHで互いに相殺される。正味の電荷の計算例として、Tyr−Arg−Phe−Lys−Glu−His−Trp−D−Argペプチドは、1個の負に帯電したアミノ酸(即ち、Glu)及び4個の正に帯電したアミノ酸(即ち、2個のArg残基、1個のLys、及び1個のHis)を有する。したがって、上記のペプチドは3個の正味の正電荷を有する。
一実施形態では、芳香族カチオン性ペプチドは、3pmがr+1以下の最大数である、生理学的pHでの正味の正電荷の最小数(pm)とアミノ酸残基の総数(r)との関係を有する。この実施形態では、正味の正電荷の最小数(pm)とアミノ酸残基の総数(r)との関係は以下の通りである。
別の実施形態では、芳香族カチオン性ペプチドは、2pmがr+1以下の最大数である、正味の正電荷の最小数(pm)とアミノ酸残基の総数(r)との関係を有する。この実施形態では、正味の正電荷の最小数(pm)とアミノ酸残基の総数(r)との関係は以下の通りである。
一実施形態では、正味の正電荷の最小数(pm)及びアミノ酸残基の総数(r)は等しい。別の実施形態では、ペプチドは、3個または4個のアミノ酸残基、及び最低で1個の正味の正電荷、好適には最低で2個の正味の正電荷、より好ましくは最低で3個の正味の正電荷を有する。
芳香族カチオン性ペプチドが、正味の正電荷の総数(pt)と比較して、芳香族基の最小数を有することも重要である。芳香族基の最小数は、以下で(a)と称される。芳香族基を有する天然型アミノ酸としては、ヒスチジン、トリプトファン、チロシン、及びフェニルアラニンといったアミノ酸が挙げられる。例えば、Lys−Gln−Tyr−D−Arg−Phe−Trpヘキサペプチドは、2個の正味の正電荷(リジン残基及びアルギニン残基が寄与する)、及び3個の芳香族基(チロシン残基、フェニルアラニン残基、及びトリプトファン残基が寄与する)を有する。
芳香族カチオン性ペプチドはまた、ptが1である場合にaも1であり得ることを除き、3aがpt+1以下の最大数である、芳香族基の最小数(a)と生理学的pHでの正味の正電荷の総数(pt)との関係を有する。この実施形態では、芳香族基の最小数(a)と正味の正電荷の総数(pt)との関係は以下の通りである。
別の実施形態では、芳香族カチオン性ペプチドは、2aがpt+1以下の最大数である、芳香族基の最小数(a)と正味の正電荷の総数(pt)との関係を有する。この実施形態では、芳香族アミノ酸残基の最小数(a)と正味の正電荷の総数(pt)との関係は以下の通りである。
別の実施形態では、芳香族基の数(a)及び正味の正電荷の総数(pt)は等しい。
カルボキシル基、特にC末端アミノ酸の末端カルボキシル基が、例えばアンモニアで好適にアミド化されて、C末端アミドを形成する。あるいは、C末端アミノ酸の末端カルボキシル基が、任意の第1級または第2級アミンでアミド化され得る。第1級または第2級アミンは、例えば、アルキル、特に、分枝もしくは非分枝C1〜C4アルキルまたはアリールアミンであってもよい。したがって、ペプチドのC末端にあるアミノ酸は、アミド、N−メチルアミド、N−エチルアミド、N,N−ジメチルアミド、N,N−ジエチルアミド、N−メチル−N−エチルアミド、N−フェニルアミド、N−フェニル−N−エチルアミド基に変換され得る。芳香族カチオン性ペプチドのC末端に発生しないアスパラギン、グルタミン、アスパラギン酸、及びグルタミン酸残基の遊離カルボキシレート基も、これらがペプチド内に発生する場合にはアミド化され得る。これらの内部位置でのアミド化は、上記のアンモニアまたは第1級もしくは第2級アミンのうちのいずれかで行われ得る。
一実施形態では、芳香族カチオン性ペプチドは、2つの正味の正電荷及び少なくとも1つの芳香族アミノ酸を有するトリペプチドである。特定の実施形態では、芳香族カチオン性ペプチドは、2個の正味の正電荷及び2個の芳香族アミノ酸を有するトリペプチドである。
また別の態様では、本技術は、芳香族カチオン性ペプチド、または酢酸塩、酒石酸塩、もしくはトリフルオロ酢酸塩などのその薬学的に許容される塩を提供する。いくつかの実施形態では、ペプチドは、
1.少なくとも1個の正味の正電荷、
2.最低で3個のアミノ酸、
3.最大で約20個のアミノ酸、
4.3pmがr+1以下の最大数である、正味の正電荷の最小数(pm)とアミノ酸残基の総数(r)との関係、及び
5.aが1である場合にptも1であり得ることを除いて、2aがpt+1以下の最大数である、芳香族基の最小数(a)と正味の正電荷の総数(pt)との関係を含む。
いくつかの実施形態では、ペプチドは、アミノ酸配列Tyr−D−Arg−Phe−Lys−NH2(SS−01)、2′,6′−Dmt−D−Arg−Phe−Lys−NH2(SS−02)、Phe−D−Arg−Phe−Lys−NH2(SS−20)、またはD−Arg−2′,6′−Dmt−Lys−Phe−NH2(SS−31)を含む。いくつかの実施形態では、ペプチドは、
D−Arg−Dmt−Lys−Trp−NH2
D−Arg−Trp−Lys−Trp−NH2
D−Arg−2′,6′−Dmt−Lys−Phe−Met−NH2
H−D−Arg−Dmt−Lys(NαMe)−Phe−NH2
H−D−Arg−Dmt−Lys−Phe(NMe)−NH2
H−D−Arg−Dmt−Lys(NαMe)−Phe(NMe)−NH2
H−D−Arg(NαMe)−Dmt(NMe)−Lys(NαMe)−Phe(NMe)−NH2
D−Arg−Dmt−Lys−Phe−Lys−Trp−NH2
D−Arg−Dmt−Lys−Dmt−Lys−Trp−NH2
D−Arg−Dmt−Lys−Phe−Lys−Met−NH2
D−Arg−Dmt−Lys−Dmt−Lys−Met−NH2
H−D−Arg−Dmt−Lys−Phe−Sar−Gly−Cys−NH2
H−D−Arg−Ψ[CH2−NH]Dmt−Lys−Phe−NH2
H−D−Arg−Dmt−Ψ[CH2−NH]Lys−Phe−NH2
H−D−Arg−Dmt−LysΨ[CH2−NH]Phe−NH2
H−D−Arg−Dmt−Ψ[CH2−NH]Lys−Ψ[CH2−NH]Phe−NH2
Lys−D−Arg−Tyr−NH2
Tyr−D−Arg−Phe−Lys−NH2
2′,6′−Dmt−D−Arg−Phe−Lys−NH2
Phe−D−Arg−Phe−Lys−NH2
Phe−D−Arg−Dmt−Lys−NH2
D−Arg−2′6′Dmt−Lys−Phe−NH2
H−Phe−D−Arg−Phe−Lys−Cys−NH2
Lys−D−Arg−Tyr−NH2
D−Tyr−Trp−Lys−NH2
Trp−D−Lys−Tyr−Arg−NH2
Tyr−His−D−Gly−Met、
Tyr−D−Arg−Phe−Lys−Glu−NH2
Met−Tyr−D−Lys−Phe−Arg、
D−His−Glu−Lys−Tyr−D−Phe−Arg、
Lys−D−Gln−Tyr−Arg−D−Phe−Trp−NH2
Phe−D−Arg−Lys−Trp−Tyr−D−Arg−His、
Gly−D−Phe−Lys−Tyr−His−D−Arg−Tyr−NH2
Val−D−Lys−His−Tyr−D−Phe−Ser−Tyr−Arg−NH2
Trp−Lys−Phe−D−Asp−Arg−Tyr−D−His−Lys、
Lys−Trp−D−Tyr−Arg−Asn−Phe−Tyr−D−His−NH2
Thr−Gly−Tyr−Arg−D−His−Phe−Trp−D−His−Lys、
Asp−D−Trp−Lys−Tyr−D−His−Phe−Arg−D−Gly−Lys−NH2
D−His−Lys−Tyr−D−Phe−Glu−D−Asp−D−His−D−Lys−Arg−Trp−NH2
Ala−D−Phe−D−Arg−Tyr−Lys−D−Trp−His−D−Tyr−Gly−Phe、
Tyr−D−His−Phe−D−Arg−Asp−Lys−D−Arg−His−Trp−D−His−Phe、
Phe−Phe−D−Tyr−Arg−Glu−Asp−D−Lys−Arg−D−Arg−His−Phe−NH2
Phe−Tyr−Lys−D−Arg−Trp−His−D−Lys−D−Lys−Glu−Arg−D−Tyr−Thr、
Tyr−Asp−D−Lys−Tyr−Phe−D−Lys−D−Arg−Phe−Pro−D−Tyr−His−Lys、
Glu−Arg−D−Lys−Tyr−D−Val−Phe−D−His−Trp−Arg−D−Gly−Tyr−Arg−D−Met−NH2
Arg−D−Leu−D−Tyr−Phe−Lys−Glu−D−Lys−Arg−D−Trp−Lys−D−Phe−Tyr−D−Arg−Gly、
D−Glu−Asp−Lys−D−Arg−D−His−Phe−Phe−D−Val−Tyr−Arg−Tyr−D−Tyr−Arg−His−Phe−NH2
Asp−Arg−D−Phe−Cys−Phe−D−Arg−D−Lys−Tyr−Arg−D−Tyr−Trp−D−His−Tyr−D−Phe−Lys−Phe、
His−Tyr−D−Arg−Trp−Lys−Phe−D−Asp−Ala−Arg−Cys−D−Tyr−His−Phe−D−Lys−Tyr−His−Ser−NH2
Gly−Ala−Lys−Phe−D−Lys−Glu−Arg−Tyr−His−D−Arg−D−Arg−Asp−Tyr−Trp−D−His−Trp−His−D−Lys−Asp、
Thr−Tyr−Arg−D−Lys−Trp−Tyr−Glu−Asp−D−Lys−D−Arg−His−Phe−D−Tyr−Gly−Val−Ile−D−His−Arg−Tyr−Lys−NH2
(atn)Dapがβ−アントラニロイル−L−α,β−ジアミノプロピオン酸である、Dmt−D−Arg−Phe−(atn)Dap−NH2
Aldがβ−(6’−ジメチルアミノ−2’−ナフトイル)アラニンである、Dmt−D−Arg−Ald−Lys−NH2
Aldがβ−(6’−ジメチルアミノ−2’−ナフトイル)アラニンである、Dmt−D−Arg−Phe−Lys−Ald−NH2
(dns)Dapがβ−ダンシル−L−α,β−ジアミノプロピオン酸である、Dmt−D−Arg−Phe−(dns)Dap−NH2
D−Arg−Tyr−Lys−Phe−NH2、及び
D−Arg−Tyr−Lys−Phe−NH2のうちの1つ以上を含む。
いくつかの実施形態では、「Dmt」は、2′,6′−ジメチルチロシン(2′,6′−Dmt)または3′,5′−ジメチルチロシン(3′5′Dmt)を指す。
いくつかの実施形態では、ペプチドは、式Iによって定義され、
式中、R1及びR2は各々独立して、
(i)水素、
(ii)直鎖または分枝鎖C1〜C6アルキル、
から選択され、
3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、及びR12は各々独立して、
(i)水素、
(ii)直鎖または分枝鎖C1〜C6アルキル、
(iii)C1〜C6アルコキシ、
(iv)アミノ、
(v)C1〜C4アルキルアミノ、
(vi)C1〜C4ジアルキルアミノ、
(vii)ニトロ、
(viii)ヒドロキシル、
(ix)クロロ、フルオロ、ブロモ、及びヨードを含むハロゲンから選択され、
nは1〜5の整数である。
いくつかの実施形態では、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、及びR12は、全て水素であり、nは4である。別の実施形態では、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、及びR11は、全て水素であり、R8及びR12は、メチルであり、R10はヒドロキシルであり、nは4である。
いくつかの実施形態では、ペプチドは、式IIによって定義され、
式中、R1及びR2は各々独立して、
(i)水素、
(ii)直鎖または分枝鎖C1〜C6アルキル、
から選択され、
3及びR4は各々独立して、
(i)水素、
(ii)直鎖または分枝鎖C1〜C6アルキル、
(iii)C1〜C6アルコキシ、
(iv)アミノ、
(v)C1〜C4アルキルアミノ、
(vi)C1〜C4ジアルキルアミノ、
(vii)ニトロ、
(viii)ヒドロキシル、
(ix)クロロ、フルオロ、ブロモ、及びヨードを含むハロゲンから選択され、
5、R6、R7、R8、及びR9は各々独立して、
(i)水素、
(ii)直鎖または分枝鎖C1〜C6アルキル、
(iii)C1〜C6アルコキシ、
(iv)アミノ、
(v)C1〜C4アルキルアミノ、
(vi)C1〜C4ジアルキルアミノ、
(vii)ニトロ、
(viii)ヒドロキシル、
(ix)クロロ、フルオロ、ブロモ、及びヨードを含むハロゲンから選択され、
nは1〜5の整数である。
いくつかの実施形態では、ペプチドは、以下の式によって定義され、
また2′,6′−Dmt−D−Arg−Phe−(dns)Dap−NH2として表され、式中、(dns)Dapは、β−ダンシル−L−α,β−ジアミノプロピオン酸(SS−17)である。
いくつかの実施形態では、ペプチドは、以下の式によって定義され、
また2′,6′−Dmt−D−Arg−Phe−(atn)Dap−NH2として表され、式中、(atn)Dapは、β−アントラニロイル−L−α,β−ジアミノプロピオン酸(SS−19)である。SS−19は、[atn]SS−02とも称される。
特定の実施形態では、R1及びR2は水素であり、R3及びR4はメチルであり、R5、R6、R7、R8、及びR9は、全て水素であり、nは4である。
一実施形態では、芳香族カチオン性ペプチドは、芳香族アミノ酸とカチオン性アミノ酸が交互になったコア構造モチーフを有する。例えば、ペプチドは、以下に示す式III〜VIのいずれかによって定義されるテトラペプチドであってもよく、
芳香族−カチオン性−芳香族−カチオン性(式III)
カチオン性−芳香族−カチオン性−芳香族(式IV)
芳香族−芳香族−カチオン性−カチオン性(式V)
カチオン性−カチオン性−芳香族−芳香族(式VI)
式中、芳香族は、Phe(F)、Tyr(Y)、Trp(W)、及びシクロへキシルアラニン(Cha)からなる群から選択される残基であり、カチオン性は、Arg(R)、Lys(K)、ノルロイシン(Nle)、及び2−アミノ−ヘプタン酸(Ahe)からなる群から選択される残基である。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の芳香族カチオン性ペプチドは、全ての左旋性(L)アミノ酸を含む。
一実施形態では、芳香族カチオン性ペプチドは、
1.少なくとも1個の正味の正電荷、
2.最低で3個のアミノ酸、
3.最大で約20個のアミノ酸、
4.3pmがr+1以下の最大数である、正味の正電荷の最小数(pm)とアミノ酸残基の総数(r)との関係、及び
5.aが1である場合にptも1であり得ることを除いて、2aがpt+1以下の最大数である、芳香族基の最小数(a)と正味の正電荷の総数(pt)との関係を含む。
別の実施形態では、本技術は、
ミトコンドリア透過性遷移(MPT)を受けているミトコンドリアの数を減少させるか、または哺乳動物の切除された臓器におけるミトコンドリア透過性遷移を予防するか、またはAβ誘発性ミトコンドリア機能不全を特徴とする症状、状態、もしくは疾患を治療もしくは改善するための方法を提供する。本方法は、有効量の芳香族カチオン性ペプチドを切除された臓器に投与することを含み、この有効量の芳香族カチオン性ペプチドは、
少なくとも1個の正味の正電荷、
最低で3個のアミノ酸、
最大で約20個のアミノ酸、
3pmがr+1以下の最大数である、正味の正電荷の最小数(pm)とアミノ酸残基の総数(r)との関係、及び
aが1である場合にptも1であり得ることを除いて、2aがpt+1以下の最大数である、芳香族基の最小数(a)と正味の正電荷の総数(pt)との関係を有する。
また別の実施形態では、本技術は、ミトコンドリア透過性遷移(MPT)を受けているミトコンドリアの数を減少させるか、またはミトコンドリア透過性遷移を予防することを、それを必要とする哺乳動物において行うか、またはAβ誘発性ミトコンドリア機能不全を特徴とする症状、状態、もしくは疾患を治療もしくは改善するための方法を提供する。本方法は、有効量の芳香族カチオン性ペプチドを哺乳動物に投与することを含む、この有効量の芳香族カチオン性ペプチドは、
少なくとも1個の正味の正電荷、
最低で3個のアミノ酸、
最大で約20個のアミノ酸、
3pmがr+1以下の最大数である、正味の正電荷の最小数(pm)とアミノ酸残基の総数(r)との関係、及び
aが1である場合にptも1であり得ることを除いて、3aがpt+1以下の最大数である、芳香族基の最小数(a)と正味の正電荷の総数(pt)との関係を有する。
芳香族−カチオン性ペプチドとしては、以下の例示的なペプチドが挙げられるが、これらに限定されない。
H−Phe−D−Arg Phe−Lys−Cys−NH2、
D−Arg−Dmt−Lys−Trp−NH2
D−Arg−Trp−Lys−Trp−NH2
D−Arg−Dmt−Lys−Phe−Met−NH2
H−D−Arg−Dmt−Lys(NαMe)−Phe−NH2
H−D−Arg−Dmt−Lys−Phe(NMe)−NH2
H−D−Arg−Dmt−Lys(NαMe)−Phe(NMe)−NH2
H−D−Arg(NαMe)−Dmt(NMe)−Lys(NαMe)−Phe(NMe)−NH2
D−Arg−Dmt−Lys−Phe−Lys−Trp−NH2
D−Arg−Dmt−Lys−Dmt−Lys−Trp−NH2
D−Arg−Dmt−Lys−Phe−Lys−Met−NH2
D−Arg−Dmt−Lys−Dmt−Lys−Met−NH2
H−D−Arg−Dmt−Lys−Phe−Sar−Gly−Cys−NH2
H−D−Arg−Ψ[CH2−NH]Dmt−Lys−Phe−NH2
H−D−Arg−Dmt−Ψ[CH2−NH]Lys−Phe−NH2
H−D−Arg−Dmt−LysΨ[CH2−NH]Phe−NH2、ならびに
H−D−Arg−Dmt−Ψ[CH2−NH]Lys−Ψ[CH2−NH]Phe−NH2、
Tyr−D−Arg−Phe−Lys−NH2
2′,6′−Dmt−D−Arg−Phe−Lys−NH2
Phe−D−Arg−Phe−Lys−NH2
Phe−D−Arg−Dmt−Lys−NH2
D−Arg−2′6′Dmt−Lys−Phe−NH2
H−Phe−D−Arg−Phe−Lys−Cys−NH2
Lys−D−Arg−Tyr−NH2
D−Tyr−Trp−Lys−NH2
Trp−D−Lys−Tyr−Arg−NH2
Tyr−His−D−Gly−Met、
Tyr−D−Arg−Phe−Lys−Glu−NH2
Met−Tyr−D−Lys−Phe−Arg、
D−His−Glu−Lys−Tyr−D−Phe−Arg、
Lys−D−Gln−Tyr−Arg−D−Phe−Trp−NH2
Phe−D−Arg−Lys−Trp−Tyr−D−Arg−His、
Gly−D−Phe−Lys−Tyr−His−D−Arg−Tyr−NH2
Val−D−Lys−His−Tyr−D−Phe−Ser−Tyr−Arg−NH2
Trp−Lys−Phe−D−Asp−Arg−Tyr−D−His−Lys、
Lys−Trp−D−Tyr−Arg−Asn−Phe−Tyr−D−His−NH2
Thr−Gly−Tyr−Arg−D−His−Phe−Trp−D−His−Lys、
Asp−D−Trp−Lys−Tyr−D−His−Phe−Arg−D−Gly−Lys−NH2
D−His−Lys−Tyr−D−Phe−Glu−D−Asp−D−His−D−Lys−Arg−Trp−NH2
Ala−D−Phe−D−Arg−Tyr−Lys−D−Trp−His−D−Tyr−Gly−Phe、
Tyr−D−His−Phe−D−Arg−Asp−Lys−D−Arg−His−Trp−D−His−Phe、
Phe−Phe−D−Tyr−Arg−Glu−Asp−D−Lys−Arg−D−Arg−His−Phe−NH2
Phe−Tyr−Lys−D−Arg−Trp−His−D−Lys−D−Lys−Glu−Arg−D−Tyr−Thr、
Tyr−Asp−D−Lys−Tyr−Phe−D−Lys−D−Arg−Phe−Pro−D−Tyr−His−Lys、
Glu−Arg−D−Lys−Tyr−D−Val−Phe−D−His−Trp−Arg−D−Gly−Tyr−Arg−D−Met−NH2、
Arg−D−Leu−D−Tyr−Phe−Lys−Glu−D−Lys−Arg−D−Trp−Lys−D−Phe−Tyr−D−Arg−Gly、
D−Glu−Asp−Lys−D−Arg−D−His−Phe−Phe−D−Val−Tyr−Arg−Tyr−D−Tyr−Arg−His−Phe−NH2
Asp−Arg−D−Phe−Cys−Phe−D−Arg−D−Lys−Tyr−Arg−D−Tyr−Trp−D−His−Tyr−D−Phe−Lys−Phe、
His−Tyr−D−Arg−Trp−Lys−Phe−D−Asp−Ala−Arg−Cys−D−Tyr−His−Phe−D−Lys−Tyr−His−Ser−NH2、
Gly−Ala−Lys−Phe−D−Lys−Glu−Arg−Tyr−His−D−Arg−D−Arg−Asp−Tyr−Trp−D−His−Trp−His−D−Lys−Asp、ならびに
Thr−Tyr−Arg−D−Lys−Trp−Tyr−Glu−Asp−D−Lys−D−Arg−His−Phe−D−Tyr−Gly−Val−Ile−D−His−Arg−Tyr−Lys−NH2
(atn)Dapがβ−アントラニロイル−L−α,β−ジアミノプロピオン酸である、Dmt−D−Arg−Phe−(atn)Dap−NH2
(dns)Dapがβ−ダンシル−L−α,β−ジアミノプロピオン酸である、Dmt−D−Arg−Phe−(dns)Dap−NH2
Aldがβ−(6’−ジメチルアミノ−2’−ナフトイル)アラニンである、Dmt−D−Arg−Ald−Lys−NH2
Aldがβ−(6’−ジメチルアミノ−2’−ナフトイル)アラニン及びD−Arg−Tyr−Lys−Phe−NH2である、Dmt−D−Arg−Phe−Lys−Ald−NH2、ならびに
D−Arg−Tyr−Lys−Phe−NH2
いくつかの実施形態では、本技術の方法において有用なペプチドは、チロシン残基またはチロシン誘導体を有するペプチドである。いくつかの実施形態では、チロシンの誘導体としては、2′−メチルチロシン(Mmt)、2′,6′−ジメチルチロシン(2′6′Dmt)、3′,5′−ジメチルチロシン(3′5′Dmt)、N,2′,6′−トリメチルチロシン(Tmt)、及び2′−ヒドロキシ−6′−メチルチロシン(Hmt)が挙げられる。
一実施形態では、ペプチドは、式Tyr−D−Arg−Phe−Lys−NH2を有する(本明細書ではSS−01と称される)。SS−01は、アミノ酸であるチロシン、アルギニン、及びリジンが寄与する3個の正味の正電荷を有し、アミノ酸であるフェニルアラニン及びチロシンが寄与する2個の芳香族基を有する。SS−01のチロシンは、式2′,6′−Dmt−D−Arg−Phe−Lys−NH2(本明細書ではSS−02と称される)を有する化合物を産生するために修飾された、2′,6′−ジメチルチロシンなどのチロシンの誘導体であり得る。
好適な実施形態では、N末端のアミノ酸残基はアルギニンである。かかるペプチドの例は、D−Arg−2′,6′Dmt−Lys−Phe−NH2(本明細書ではSS−31と称される)である。
別の実施形態では、N末端のアミノ酸はフェニルアラニンまたはその誘導体である。いくつかの実施形態では、フェニルアラニンの誘導体としては、2′−メチルフェニルアラニン(Mmp)、2′,6′−ジメチルフェニルアラニン(Dmp)、N,2′,6′−トリメチルフェニルアラニン(Tmp)、及び2′−ヒドロキシ−6′−メチルフェニルアラニン(Hmp)が挙げられる。かかるペプチドの例は、Phe−D−Arg−Phe−Lys−NH2(本明細書ではSS−20と称される)である。一実施形態では、SS−02のアミノ酸配列は、DmtがN末端にないように再配置される。かかる芳香族カチオン性ペプチドの例は、式D−Arg−2′,6′Dmt−Lys−Phe−NH2(SS−31)を有する。
また別の実施形態では、芳香族カチオン性ペプチドは、式Phe−D−Arg−Dmt−Lys−NH2(本明細書ではSS−30と称される)を有する。あるいは、N末端フェニルアラニンは、2′,6′−ジメチルフェニルアラニン(2′6′Dmp)などのフェニルアラニンの誘導体であることができる。アミノ酸位置1にて2′,6′−ジメチルフェニルアラニンを含むSS−01は、式2′,6′−Dmp−D−Arg−Dmt−Lys−NH2を有する。
いくつかの実施形態では、芳香族カチオン性ペプチドは、(atn)Dapがβ−アントラニロイル−L−α,β−ジアミノプロピオン酸である2′,6′−Dmt−D−Arg−Phe−(atn)Dap−NH2(SS−19)、Aldがβ−(6’−ジメチルアミノ−2’−ナフトイル)アラニンである2′,6′−Dmt−D−Arg−Ald−Lys−NH2(SS−36)、Aldがβ−(6’−ジメチルアミノ−2’−ナフトイル)アラニンである2′,6′−Dmt−D−Arg−Phe−Lys−Ald−NH2(SS−37)、D−Arg−Tyr−Lys−Phe−NH2(SPI−231)、及び(dns)Dapがβ−ダンシル−L−α,β−ジアミノプロピオン酸(SS−17)である2′,6′−Dmt−D−Arg−Phe−(dns)Dap−NH2を含む。
本明細書で述べるペプチド及びそれらの誘導体は、機能的類似体を更に含むことができる。ペプチドは、類似体が記述のペプチドと同じ機能を有する場合に、機能的類似体と見なされる。類似体は、例えば、1つ以上のアミノ酸が別のアミノ酸によって置換される、ペプチドの置換変異体であってもよい。ペプチドの好適な置換変異体は、保存的アミノ酸置換を含む。アミノ酸は、以下のように、それらの物理化学的特徴に従ってグループ分けすることができる。
(a)非極性アミノ酸:Ala(A) Ser(S) Thr(T) Pro(P) Gly(G) Cys(C)、
(b)酸性アミノ酸:Asn(N) Asp(D) Glu(E) Gln(Q)、
(c)塩基性アミノ酸:His(H) Arg(R) Lys(K)、
(d)疎水性アミノ酸:Met(M) Leu(L) Ile(I) Val(V)、及び
(e)芳香族アミノ酸:Phe(F) Tyr(Y) Trp(W) His(H)。
同じグループ中の別のアミノ酸によるペプチド中のアミノ酸の置換は、保存的置換と称され、元のペプチドの物理化学的特徴を保存し得る。対照的に、異なるグループの別のアミノ酸によるペプチド中のアミノ酸の置換は、概して、元のペプチドの特徴を改変する傾向が強い。本技術の実施において有用な類似体の非限定的な例としては、表5に示す芳香族カチオン性ペプチドが挙げられるが、これらに限定されない。
表5.ペプチド類似体の例
Cha=シクロへキシルアラニン
ある特定の状況下では、オピオイド受容体作動薬活性も有するペプチドを使用することが有利であり得る。本技術の実施において有用な類似体の例としては、表6に示す芳香族カチオン性ペプチドが挙げられるが、これらに限定されない。
表6.オピオイド受容体作動薬活性を有するペプチド類似体
Dab=ジアミノ酪酸
Dap=ジアミノプロピオン酸
Dmt=ジメチルチロシン
Mmt=2′−メチルチロシン
Tmt=N,2′,6′−トリメチルチロシン
Hmt=2′−ヒドロキシ,6′−メチルチロシン
dnsDap=β−ダンシル−L−α,β−ジアミノプロピオン酸
atnDap=β−アントラニロイル−L−α,β−ジアミノプロピオン酸
Bio=ビオチン
オピオイド受容体作動薬活性を有する更なるペプチドとしては、Aldがβ−(6’−ジメチルアミノ−2’−ナフトイル)アラニンである2′,6′−Dmt−D−Arg−Ald−Lys−NH2(SS−36)、及びAldがβ−(6’−ジメチルアミノ−2’−ナフトイル)アラニンである2′,6′−Dmt−D−Arg−Phe−Lys−Ald−NH2(SS−37)が挙げられる。
ミュー−オピオイド受容体作動薬活性を有するペプチドは、典型的には、N末端(即ち、第1のアミノ酸位置)にてチロシン残基またはチロシン誘導体を有するペプチドである。チロシンの好適な誘導体としては、2′−メチルチロシン(Mmt)、2′,6′−ジメチルチロシン(2′6′−Dmt)、3′,5′−ジメチルチロシン(3′5′Dmt)、N,2′,6′−トリメチルチロシン(Tmt)、及び2′−ヒドロキシ−6′−メチルチロシン(Hmt)が挙げられる。
ミュー−オピオイド受容体作動薬活性を有さないペプチドは、概して、N末端(即ち、アミノ酸位置1)にてチロシン残基またはチロシンの誘導体を有さない。N末端のアミノ酸は、チロシン以外のいずれの天然型または非天然型アミノ酸であってもよい。一実施形態では、N末端のアミノ酸は、フェニルアラニンまたはその誘導体である。フェニルアラニンの例示的な誘導体としては、2′−メチルフェニルアラニン(Mmp)、2′,6′−ジメチルフェニルアラニン(2′,6′−Dmp)、N,2′,6′−トリメチルフェニルアラニン(Tmp)、及び2′−ヒドロキシ−6′−メチルフェニルアラニン(Hmp)が挙げられる。
表5及び6に示すペプチドのアミノ酸は、L−構成またはD−構成のいずれかであり得る。
いくつかの実施形態では、芳香族カチオン性ペプチドは、少なくとも1個のアルギニン及び/または少なくとも1個のリジン残基を含む。いくつかの実施形態では、アルギニン及び/またはリジン残基は、電子受容体として機能し、陽子共役電子輸送に関与する。加えてまたはあるいは、いくつかの実施形態では、芳香族カチオン性ペプチドは、SS−31中に存在するものなどの「電荷−環−電荷−環」構成をもたらす配列を含む。加えてまたはあるいは、いくつかの実施形態では、芳香族カチオン性ペプチドは、システイン及びメチオニンなどのチオール含有残基を含む。いくつかの実施形態では、チオール含有残基を含むペプチドは、電子を直接供与し、シトクロムcを還元する。いくつかの実施形態では、芳香族カチオン性ペプチドは、ペプチドのN末端及び/またはC末端にてシステインを含む。
いくつかの実施形態では、ペプチド多量体が提供される。例えば、いくつかの実施形態では、SS−20二量体であるPhe−D−Arg−Phe−Lys−Phe−D−Arg−Phe−Lysなどの二量体が提供される。いくつかの実施形態では、二量体は、SS−31二量体、D−Arg−2′,6′−Dmt−Lys−Phe−D−Arg−2′,6′−Dmt−Lys−Phe−NH2である。いくつかの実施形態では、多量体は、三量体、四量体、及び/または五量体である。いくつかの実施形態では、多量体は、異なる単量体ペプチドの組み合わせ(例えば、SS−31ペプチドと結び付いたSS−20ペプチド)を含む。いくつかの実施形態では、これらのより長い類似体は、治療用分子として有用である。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の芳香族カチオン性ペプチドは、全ての左旋性(L)アミノ酸を含む。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の芳香族カチオン性ペプチドは、アラダン、例えば、D−Arg−2’6’−Dmt−Lys−Ald−NH2([ald]SS−31)を用いて合成される。
ペプチド合成
本ペプチドは、当該技術分野で周知の方法のうちのいずれかによって合成され得る。タンパク質を化学的に合成するための好適な方法としては、例えば、Stuart及びYoungによって、Solid Phase Peptide Synthesis,Second Edition,Pierce Chemical Company(1984)及びMethods Enzymol.,289,Academic Press,Inc,New York(1997)中で説明されているものが挙げられる。
ペプチドを酵素分解に対して安定化する1つの方法は、開裂を受けているペプチド結合にてL−アミノ酸をD−アミノ酸で置き換えることである。芳香族カチオン性ペプチド類似体は、既に存在するD−Arg残基に加えて1つ以上のD−アミノ酸残基を含有するように調製される。酵素分解を予防するための別の方法は、ペプチドの1つ以上のアミノ酸残基にてα−アミノ基をN−メチル化することである。これは、任意のペプチダーゼによるペプチド結合開裂を予防することになる。例としては、H−D−Arg−Dmt−Lys(NαMe)−Phe−NH2、H−D−Arg−Dmt−Lys−Phe(NMe)−NH2、H−D−Arg−Dmt−Lys(NαMe)−Phe(NMe)−NH2、及びH−D−Arg(NαMe)−Dmt(NMe)−Lys(NαMe)−Phe(NMe)−NH2が挙げられる。Nα−メチル化類似体は、より低い水素結合能力を有し、向上した腸透過性を有することが期待され得る。
ペプチドアミド結合(−CO−NH−)を酵素分解に対して安定化するための代替的な方法は、それを還元アミド結合(Ψ[CH2−NH])で置き換えることである。これは、固相ペプチド合成におけるBoc−アミノ酸−アルデヒドと成長ペプチド鎖のN末端アミノ酸残基のアミノ基との間の還元的アルキル化反応を用いて達成することができる。還元ペプチド結合は、還元水素結合能力に起因して、向上した細胞透過性をもたらすことが予測される。例としては、H−D−Arg−Ψ[CH2−NH]Dmt−Lys−Phe−NH2、H−D−Arg−Dmt−Ψ[CH2−NH]Lys−Phe−NH2、H−D−Arg−Dmt−LysΨ[CH2−NH]Phe−NH2、H−D−Arg−Dmt−Ψ[CH2−NH]Lys−Ψ[CH2−NH]Phe−NH2などが挙げられる。
ベータアミロイドペプチド(Aβ)
ベータアミロイドペプチド(Aβ)は、アミロイド前駆体タンパク質(APP)に由来する。APPは、神経可塑性及びシナプス形成などの多くの重要な神経機能に関与する不可欠な糖タンパク質である。APPの処理は、α経路及びβ経路の2つの経路を通して実行される。典型的には、APPは、Aβを産生しないα経路を通して除去される。
β経路は、アミロイド生成性経路である。β経路に進入するAPPは、β−セクレターゼ及びγ−セクレターゼによって開裂されて、Aβを産生する。産生されたAβのサイズは、アミノ酸36〜43個の範囲である。Aβの最も一般的なアイソフォームは、Aβ1-40及びAβ1-42である。これら2つのうち、Aβ1-42は、より疎水性であり、より凝集する傾向にあり、Aβ1-40よりも毒性である。Aβ1-42はまた、アミロイド斑中で最も一般的に見られる形態である。
単量体、オリゴマー、及び原線維という、Aβに関係する3つのコア構造が存在する。Aβ単量体は細胞外に放出される。高濃度の細胞外Aβ単量体は、Aβモノマーのオリゴマー形成を引き起こして、種々のAβオリゴマー、例えば、二量体、トリマーなどを形成する。大量のAβオリゴマーが合わさって凝集する場合は、Aβ原線維が形成される。Aβ原線維は、アミロイド斑の主成分である。
いくつかの研究は、アルツハイマー病が、脳内のAβの蓄積に一部起因して引き起こされることを示している。Aβの蓄積は、Aβペプチドの均衡の変化が原因である。典型的には、Aβが産生されるとき、種々の分子、酵素が、それを脳から一掃している。クリアランス速度が産生速度と一致できないとき、Aβの過剰が生まれる。過剰なAβは、アミロイドカスケードの拡大を許し、これが、Aβ斑を伴う疾患状態につながり得る。
アミロイド斑は進行性アルツハイマー病と関連するが、Aβオリゴマーが主要毒性腫であることの証拠が存在する。細胞培養において、Aβ1-42オリゴマーは、同じ組成物のAβ原線維よりも10倍毒性である。理論に束縛されるものではないが、Aβ原線維と比較したAβオリゴマーのより強い有毒作用は、より小型の細胞外Aβオリゴマーが、大型の細胞外Aβ原線維よりも容易に細胞膜を貫通することができるという事実に起因し得る。
研究は、Aβのミトコンドリアとの相互作用が、ATPの喪失、電子輸送鎖の分断(特にCu2+を含有する複合体IVにて)、及び神経細胞死滅をもたらすアポトーシス因子の活性化につながることを示した。Aβは、ミトコンドリア中に蓄積し、そこでミトコンドリア内膜に局限化することが分かっている。
Aβはまた、毒性の酸化特性、例えば、ペルオキシダーゼ活性(過酸化水素を使用して酸化反応を触媒する酵素活性)を有する。ミトコンドリアペルオキシダーゼ活性は、電子輸送鎖を分断し、反応性酸素種(ROS)の形成を推進する。
脂質
アニオン性リン脂質であるカルジオリピンは、ミトコンドリア内膜の重要な成分であり、全脂質成分の約20%を構成する。哺乳動物の細胞において、カルジオリピンは、ほぼミトコンドリア内膜に限定して見られ、ミトコンドリア代謝に関与する酵素の最適な機能に必須である。
カルジオリピンは、グリセロール骨格と接続して二量体構造を形成する2個のホスファチジルグリセロールを含む、ジホスファチジルグリセロール脂質の種である。これは、4個のアルキル基を有し、2個の負電荷を帯びる可能性がある。カルジオリピン中には4個の個別のアルキル鎖が存在するため、分子は、相当な複雑性に対する電位を有する。しかしながら、ほとんどの動物組織においては、カルジオリピンは、18炭素脂肪アルキル鎖を含有し、それらの各々の不飽和結合は2個である。(18:2)4アシル鎖構成は、哺乳動物のミトコンドリアにおいて、カルジオリピンの内膜タンパク質への高い親和性に対する重要な構造的要件であると提言されている。しかしながら、単離酵素製剤による研究は、その重要性が、観察したタンパク質に応じて異なり得ることを示す。
分子中の2個のリン酸塩の各々は、1個の陽子を捕捉することができる。それは対象構造であるが、1個のリン酸塩のイオン化は、pK1=3及びpK2>7.5での両方のイオン化とは異なるレベルの酸性度で起こる。よって、正常な生理学的状態(約7.0のpH)下では、分子は、1個のみの負電荷を帯びてよい。リン酸上のヒドロキシル基(−OH及び−O−)は、安定した分子内水素結合を形成することで、二環式共鳴構造を形成する。この構造は1個の陽子を捕獲し、これが酸化的リン酸化につながる。
複合体IVによって触媒される酸化的リン酸化プロセス中、大量の陽子は膜の片面からもう一方の面に移動させられ、それにより大きなpH変化を引き起こす。理論に束縛されるものではないが、カルジオリピンは、ミトコンドリア膜内で陽子トラップとして機能し、陽子プールを厳密に局限化し、ミトコンドリア膜間腔中のpHを最小限にすることが示されている。この機能は、上記のように、負電荷を帯びながら陽子を二環式構造内に捕捉することができるというカルジオリピンの固有の構造に起因すると考えられる。故に、カルジオリピンは、陽子を放出または吸収してミトコンドリア膜付近のpHを維持するために、電子緩衝プールとして働き得る。
加えて、カルジオリピンは、アポトーシスにおいて役割を担うことが示されている。アポトーシスカスケードにおける早期事象にはカルジオリピンが関与する。カルジオリピン特異的オキシゲナーゼはカルジオリピン−ヒドロペルオキシドを産生し、これにより脂質が構造変化を受ける。酸化カルジオリピンは次に、ミトコンドリア内膜からミトコンドリア外膜に転位し、ここで孔を形成し、この孔を通してシトクロムcがサイトゾル中に放出されると考えられる。シトクロムcは、IP3受容体と結合して、カルシウム放出を刺激することができ、これが、シトクロムcの放出を更に促進する。細胞質カルシウム濃度が毒性レベルに達するときに、細胞は死滅する。加えて、ミトコンドリア外シトクロムcは、アポトーシス活性化因子と相互作用することで、アポトソーム複合体の形成及びタンパク質分解カスパーゼカスケードの活性化を引き起こす。
別の結果は、シトクロムcが、高親和性でミトコンドリア内膜上のカルジオリピンと相互作用し、電子の輸送においては非生産的であるが、カルジオリピン特異的オキシゲナーゼ/ペルオキシダーゼとして作用するカルジオリピンとの複合体を形成することである。実際に、カルジオリピンのシトクロムcとの相互作用は、通常の酸化還元電位が、無傷のシトクロムcの酸化還元単位よりも凡そマイナス(−)400mV負である複合体を生む。その結果、シトクロムc/カルジオリピン複合体は、ミトコンドリア複合体IIIから電子を受け取ることができず、不均化がH22を生むスーパーオキシドの強化された産生につながる。シトクロムc/カルジオリピン複合体は、スーパーオキシドからも電子を受け取ることができない。加えて、カルジオリピンのシトクロムcとの高親和性の相互作用は、結果的に、シトクロムcを活性化して、多価不飽和分子カルジオリピンの過酸化に対する選択的触媒活性を有するカルジオリピン特異的ペルオキシダーゼにする。シトクロムc/カルジオリピン複合体のペルオキシダーゼ反応は、酸化当量源としてのH22によって引き起こされる。最終的には、この活性は、カルジオリピン酸化産生物、主にカルジオリピン−OOH、及びこれらの還元産生物であるカルジオリピン−OHの蓄積をもたらす。上述のように、酸素化カルジオリピン種が、ミトコンドリア透過化、及びプロアポトーシス因子(シトクロムc自体を含む)のサイトゾルへの放出において役割を担うことが示されている。例えば、共に参照により本明細書に組み込まれる、Kagan et al.,Advanced Drug Delivery Reviews,61(2009)1375−1385、Kagan et al.,Mol.Nutr.Food Res.2009 January、53(1):104−114を参照されたい。
シトクロムcは、球状タンパク質であり、その主要な機能は、ミトコンドリアの電子輸送鎖において複合体III(シトクロムc還元酵素)から複合体IV(シトクロムcオキシダーゼ)への電子担体として働くことである。補欠分子ヘム基は、Cys14及びCys17でシトクロムcに結合し、2つの配位軸リガンドであるHis18及びMet80と更に結合する。Met80に結合する6番目の配位は、Feが、例えば、O2、H22、NOなどの他のリガンドと相互作用するのを予防する。
シトクロムcのプールは、膜間腔中に分配され、残りは、静電相互作用及び疎水性相互作用の両方を介してIMMと関連付けられる。シトクロムcは、静電相互作用を介してIMM上でアニオン性リン脂質カルジオリピンと緩く結合し得る、高度にカチオン性のタンパク質(中性pHで8+の正味の電荷)である。かつ、上述のように、シトクロムcはまた、疎水性相互作用を介してカルジオリピンと強固に結合し得る。シトクロムcのカルジオリピンとのこの強固な結合は、脂質膜からシトクロムc内部の疎水性チャネル中に伸長するカルジオリピンのアシル鎖の伸長に起因する(Tuominen et al.,2001、Kalanxhi&Wallace,2007、Sinabaldi et al.,2010)。これは、シトクロムcヘムポケットにおけるFe−Met80結合の破裂につながり、ソーレー帯領域における負のコットンピークの喪失によって示されるように、ヘム環境の変化をもたらす(Sinabaldi et al.,2008)。これは、ヘムFeのH22及びNOへの曝露にもつながる。
天然シトクロムcは、その6番目の配位が原因で不良なペルオキシダーゼ活性を有する。しかしながら、カルジオリピンへの疎水性結合の際に、シトクロムcは、Fe−Met80配位を破壊し、ヘムFeのH22への曝露を増加させる構造変化を受け、シトクロムcは、カルジオリピンを主な基質として、電子担体からペルオキシダーゼへと切り替わる(Vladimirov et al.,2006、Basova et al.,2007)。上記のように、カルジオリピン過酸化は、改変されたミトコンドリア膜構造、及びカスパーゼが媒介する細胞死滅を引き起こすためのIMMからのシトクロムcの放出をもたらす。
芳香族カチオン性ペプチドの予防的及び治療的使用
本技術は、芳香族カチオン性ペプチドの使用に関する。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの芳香族カチオン性ペプチドは、ベータアミロイドペプチド(Aβ)によって(少なくとも部分的に)引き起こされる症状、状態、または疾患の治療または改善に関する態様において有用である。いくつかの実施形態では、Aβに関する状態または疾患は、Aβの過剰発現、Aβ斑、またはAβ誘発性ミトコンドリア機能不全を特徴とする。
加えてまたはあるいは、いくつかの実施形態では、少なくとも1つの芳香族カチオン性ペプチドは、脳内のAβ及び/またはAβ班の蓄積または過剰発現を特徴とする症状、状態、または疾患の治療または改善に関する態様において有用である。
加えてまたはあるいは、いくつかの実施形態では、少なくとも1つの芳香族カチオン性ペプチドは、Aβ単量体(例えば、Aβ1-40及びAβ1-42)及び/またはAβオリゴマーの過剰発現または蓄積を特徴とする症状、状態、または疾患の治療または改善に関する態様において有用である。いくつかの実施形態では、Aβオリゴマーは、Aβの1つ以上の亜種を含む。例としてであって限定的ではなく、いくつかの実施形態では、Aβオリゴマーは、Aβ1-40、Aβ1-42、またはこれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、Aβオリゴマーは、Aβの単一の亜種、例えば、Aβ1-42のみを含む。
別の態様では、本技術は、細胞外Aβオリゴマーを減少させるための芳香族カチオン性ペプチドの使用に関する。加えてまたはあるいは、いくつかの実施形態では、芳香族カチオン性ペプチドを使用して、Aβ毒性(例えば、ミトコンドリア毒性)を減少させる。理論に束縛されるものではなく、芳香族カチオン性ペプチドのAβオリゴマーとの相互作用が、Aβ原線維の形成につながり、それにより、細胞への転位に利用できるAβオリゴマーの量を減少させて、Aβが細胞に転位するのを予防すると考えられる。
芳香族カチオン性ペプチド系治療薬の生物学的効果の実証。種々の実施形態では、好適なインビトロまたはインビボアッセイを行って、特定の芳香族カチオン性ペプチド系治療薬、及びその投与が治療に適応となるどうかを決定する。種々の実施形態では、インビトロアッセイを、代表的動物モデルを用いて行い、所与の芳香族カチオン性ペプチド系治療薬が、疾患の予防または治療において所望の効果を発揮するかどうかを決定することができる。治療で使用するための化合物は、ヒト対象における試験の前に、ラット、マウス、ニワトリ、ブタ、ウシ、サル、ウサギなどを含むがこれらに限定されない好適な動物モデル系で試験し得る。同様に、インビボ試験についても、当該技術分野で既知の動物モデル系のうちの任意のものを、ヒト対象への投与前に使用することができる。
予防方法。一態様では、本技術は、疾患または状態の開始または進行を予防する芳香族カチオン性ペプチドを対象に投与することによって、対象におけるAβ誘発性疾患または状態を予防するための方法を提供する。予防用途では、芳香族カチオン性ペプチドの薬学的組成物または薬品は、疾患の生化学的、組織学的、及び/または行動学的症状、その合併症、ならびに疾患の発現中に提示される中間病理学的発現型を含む、疾患の危険性を排除するかまたは減少させる、あるいはその発病を遅延させるのに十分な量で、疾患または状態に罹患しやすいか、あるいはその危険性のある対象に投与される。予防用芳香族カチオン性の投与は、異常の特徴である症状の顕現の前に行うことで、疾患または障害を予防するか、あるいはその進行が遅延するようにし得る。適切な化合物は、上記のスクリーニングアッセイに基づいて決定することができる。
治療方法。本技術の別の態様は、治療目的で対象における疾患を治療する方法を含む。治療用途では、組成物または薬品を、疾患の発症におけるその合併症及び中間病理学的発現型を含む、疾患の症状を治癒させる、重症度を減少させる、または少なくとも部分的に停止させるのに十分な量で、かかる疾患に罹患しやすいか、または既にそれを患っている対象に投与する。
一態様では、本開示は、Aβ誘発性ミトコンドリア透過性遷移(MPT)を受けているミトコンドリアの数を減少させるか、またはAβ誘発性ミトコンドリア透過性遷移を予防することを、それを必要とする哺乳動物において行う方法を提供し、本方法は、有効量の1つ以上の本明細書に記載の芳香族カチオン性ペプチドを哺乳動物に投与することを含む。
また別の態様では、本開示は、Aβ誘発性酸化的損傷を減少させることを、それを必要とする対象において行う方法を提供し、本方法は、有効量の1つ以上の本明細書に記載の芳香族カチオン性ペプチドを哺乳動物に投与することを含む。いくつかの実施形態では、本技術の芳香族カチオン性ペプチドは、Aβ誘発性ROS産生を減少させることを、それを必要とする対象において行う方法において有用である。
一態様では、本開示は、Aβ誘発性ミトコンドリア機能不全を治療、予防、または改善することを、それを必要とする対象において行う方法を提供し、本方法は、有効量の1つ以上の本明細書に記載の芳香族カチオン性ペプチドを哺乳動物に投与することを含む。
いくつかの実施形態では、本技術の芳香族カチオン性ペプチドは、Aβ誘発性の膜電位喪失を阻害することを、それを必要とする対象において行う方法において有用である。
いくつかの実施形態では、本技術の芳香族カチオン性ペプチドは、Aβペプチドとミトコンドリアとの間の相互作用を阻害することを、それを必要とする対象において行う方法において有用である。
いくつかの実施形態では、本技術の芳香族カチオン性ペプチドは、Aβ誘発性の細胞呼吸の減少を阻害することを、それを必要とする対象において行う方法において有用である。
いくつかの実施形態では、本技術の芳香族カチオン性ペプチドは、Aβ誘発性のATP合成速度の減少を阻害することを、それを必要とする対象において行う方法において有用である。
いくつかの実施形態では、本技術の芳香族カチオン性ペプチドは、Aβ誘発性ミトコンドリア損傷、例えば、稜形成の喪失を治療するか、改善するか、または逆転させることを、それを必要とする対象において行う方法において有用である。
いくつかの実施形態では、本技術の芳香族カチオン性ペプチドは、Aβ誘発性シトクロムcペルオキシダーゼ活性を阻害することを、それを必要とする対象において行う方法において有用である。
いくつかの実施形態では、本技術の芳香族カチオン性ペプチドは、Aβ誘発性シトクロムcへの損傷を阻害するか、または逆転させることを、それを必要とする対象において行う方法において有用である。
いくつかの実施形態では、本技術の芳香族カチオン性ペプチドは、Aβ誘発性のカルジオリピン過酸化を阻害することを、それを必要とする対象において行う方法において有用である。
故に、いくつかの実施形態では、本明細書で開示する芳香族カチオン性ペプチド(D−Arg−2′,6′−Dmt−Lys−Phe−NH2、Phe−D−Arg−Phe−Lys−NH2、D−Arg−2′,6′−Dmt−Lys−Ald−NH2([ald]SS−31)、または酢酸塩、酒石酸塩、もしくはトリフルオロ酢酸塩などのその薬学的に許容される塩など)を、それを必要とする対象に投与する。理論に束縛されるものではないが、芳香族カチオン性ペプチドは、(例えば、標的の)シトクロムc、カルジオリピン、またはこれらの両方と接触し、Aβ誘発性カルジオリピン−シトクロムc相互作用を妨害し、カルジオリピン/シトクロムc複合体のAβ誘発性オキシゲナーゼ/ペルオキシダーゼ活性を阻害し、Aβ性カルジオリピン−ヒドロペルオキシド形成を阻害し、外膜へのカルジオリピンのAβ誘発性転位を阻害し、かつ/またはIMMからのシトクロムcのAβ誘発性放出を阻害すると考えられる。加えてまたはあるいは、いくつかの実施形態では、本明細書で開示する芳香族カチオン性ペプチドは、以下の特徴または機能のうちの1つ以上を含む。(1)細胞透過性であり、ミトコンドリア内膜を標的とする、(2)ペプチドのシトクロムcとの相互作用を助長する静電相互作用を介してカルジオリピンと選択的に結合する、(3)遊離しており、かつカルジオリピンと緩く結合または強固に結合するシトクロムcと相互作用する、(4)シトクロムcの疎水性ヘムポケットを保護し、かつ/またはカルジオリピンがFe−Met80結合を分断するのを阻害する、(5)ヘムポルフィリンとのπ−π*相互作用を促進する、(6)シトクロムcペルオキシダーゼ活性を阻害する、(7)シトクロムc還元の動態を促進する、(8)カルジオリピンによって引き起こされるシトクロムc還元の阻害を予防する、(9)ミトコンドリア電子輸送鎖及びATP合成における電子束を促進する。いくつかの実施形態では、ペプチドが電子輸送を促進する能力は、ペプチドがシトクロムc/カルジオリピン複合体のAβ誘発性ペルオキシダーゼ活性を阻害する能力と相関しない。故に、いくつかの実施形態では、投与されたペプチドは、カルジオリピンとシトクロムcとのAβ誘発性の相互作用を阻害、遅延、または減少させる。加えてまたはあるいは、いくつかの実施形態では、投与されたペプチドは、シトクロムc/カルジオリピン複合体のAβ誘発性の形成を阻害、遅延、または減少させる。加えてまたはあるいは、いくつかの実施形態では、投与されたペプチドは、シトクロムc/カルジオリピン複合体のAβ誘発性のオキシゲナーゼ/ペルオキシダーゼ活性を阻害、遅延、または減少させる。加えてまたはあるいは、いくつかの実施形態では、投与されたペプチドは、Aβ誘発性のカルジオリピン過酸化の増加を阻害、遅延、または減少させる。加えてまたはあるいは、いくつかの実施形態では、投与されたペプチドは、Aβ誘発性のアポトーシスの増加を阻害、遅延、または減少させる。
本明細書に記載の芳香族カチオン性ペプチドは、疾患の予防または治療に有用である。具体的には、本開示は、Aβ誘発性ミトコンドリア機能不全、Aβの過剰発現、またはAβ班を特徴とする疾患の危険性がある(またはそれに罹患しやすい)対象を、本明細書に記載の芳香族カチオン性ペプチドを投与することによって治療する予防方法及び治療方法の両方を提供する。したがって、本方法は、有効量の芳香族カチオン性ペプチドを、それを必要とする対象に投与することによって、対象におけるAβ誘発性ミトコンドリア機能不全、Aβの過剰発現、またはAβ班を特徴とする疾患の予防及び/または治療を提供する。
酸化的損傷。本明細書に開示のペプチドは、酸化的損傷を減少させることを、それを必要とする哺乳動物において行うのに有用である。酸化的損傷を減少させることを必要とする哺乳動物は、酸化的損傷を伴う疾患、状態、または治療を被っている哺乳動物である。典型的には、酸化的損傷は、反応性酸素種(ROS)及び/または反応性窒素種(RNS)などのフリーラジカルによって起きる。ROS及びRNSの例としては、ヒドロキシルラジカル、スーパーオキシドアニオンラジカル、一酸化窒素、水素、次亜塩素酸(HOCl)、及びペルオキシ亜硝酸アニオンが挙げられる。酸化的損傷は、対象における酸化的損傷、切除された臓器、または細胞の量が、上記の有効量の芳香族カチオン性ペプチドの投与後に減少した場合に、「減少」したと見なされる。典型的には、酸化的損傷は、酸化的損傷が、ペプチドでの治療を受けていない対照対象と比較して、少なくとも約10%、少なくとも約25%、少なくとも約50%、少なくとも約75%、または少なくとも約90%減少した場合に、減少したと見なされる。
いくつかの実施形態では、治療される対象は、酸化的損傷を伴う疾患または状態を有する哺乳動物であり得る。酸化的損傷は、哺乳動物のいずれの細胞、組織、臓器においても発生し得る。ヒトにおいては、酸化的ストレスは、多くの疾患、例えば、アルツハイマー病などに関与する。
本方法はまた、任意の神経変性疾患または状態を伴う酸化的損傷を減少させることにおいて使用することができる。神経変性疾患は、中枢神経系及び末梢神経系のいずれの細胞、組織、または臓器にも影響し得る。かかる細胞、組織、及び臓器の例としては、脳、脊髄、ニューロン、神経節、シュワン細胞、星状膠細胞、乏突起膠細胞、及び小グリアが挙げられる。神経変性状態は、卒中または外傷性脳傷害もしくは脊髄傷害などの急性状態であり得る。別の実施形態では、神経変性疾患または状態は、慢性神経変性状態であり得る。慢性神経変性状態では、フリーラジカルは、例えば、タンパク質に損傷を引き起こし得る。フリーラジカルによる損傷を伴う慢性神経変性疾患の例としては、アルツハイマー病が挙げられる。
ミトコンドリア透過性遷移。本明細書に開示のペプチドは、ミトコンドリア透過性遷移(MPT)を伴ういずれの疾患または状態を治療することにおいても有用である。かかる疾患及び状態としては、組織もしくは臓器の虚血及び/または再灌流、低酸素症、ならびにある数の神経変性疾患のうちのいずれかが挙げられるが、これらに限定されない。MPTの阻害または予防を必要とする哺乳動物は、これらの疾患または状態を患う哺乳動物である。
カルジオリピン酸化。本明細書に開示のペプチドは、カルジオリピン酸化を予防、阻害、または縮小するのに有用である。カルジオリピンは、ミトコンドリア内膜、及び外膜と内膜とを接続している接触部位にほぼ限定して見られる、固有のリン脂質である。カルジオリピンドメインは適当な稜形成に不可欠であり、これらは、呼吸複合体を高次の超複合体に組織化して電子移動を助長することに関与する。カルジオリピンは、効率的な電子移動のためにシトクロムcを呼吸複合体の至近に保つためにも不可欠である。正に帯電したシトクロムcは、静電相互作用を介して、高度にアニオン性のカルジオリピンと相互作用する。
このカルジオリピン−シトクロムc相互作用は、カルジオリピン過酸化によって弱化され、この遊離シトクロムcのサイトゾルへの喪失は、カスパーゼ依存性アポトーシスを引き起こす(Shidoji et al.,1999,Biochem Biophys Res Commun 264,343−347)。脂質膜の再構築がアポトーシス中に発生し、ホスファチジルセリンは、原形質膜の内尖から外尖に移動する。類似の様式で、カルジオリピン及びその代謝産物は、ミトコンドリアから他の細胞内オルガネラへと、そして細胞表面へと移転し得る(Sorice et al.,2004,Cell Death Differ 11,1133−1145)。
本明細書に開示の芳香族カチオン性ペプチド(2′,6′−Dmt−D−Arg−Phe−Lys−NH2(SS−02)、Phe−D−Arg−Phe−Lys−NH2(SS−20)、及びD−Arg−2′,6′−Dmt−Lys−Phe−NH2(SS−31)、D−Arg−2′,6′−Dmt−Lys−Ald−NH2([ald]SS−31)、または酢酸塩、酒石酸塩、及びトリフルオロ酢酸塩などの薬学的に許容されるその塩などであるがこれらに限定されない)は、カルジオリピン過酸化を予防するのに有用である。カルジオリピン過酸化は、シトクロムcのペルオキシダーゼ活性によって主に媒介される。ミトコンドリアシトクロムcの約15〜20%は、疎水性相互作用を介してカルジオリピンと複合体中で強固に結合し、それにより、カルジオリピンの1つ以上のアシル鎖がシトクロムcの疎水性チャネルに挿入される。アシル鎖のシトクロムcへの挿入は、Met80とヘムFeとの間の配位結合を分断し、ヘムFeの第6配位をH22に曝露し、故に、この酵素を、カルジオリピンの酸化を選択的に触媒することができるペルオキシダーゼに変換する。
本明細書に開示の芳香族カチオン性ペプチド(2′,6′−Dmt−D−Arg−Phe−Lys−NH2(SS−02)、Phe−D−Arg−Phe−Lys−NH2(SS−20)、及びD−Arg−2′,6′−Dmt−Lys−Phe−NH2(SS−31)、D−Arg−2′,6′−Dmt−Lys−Ald−NH2([ald]SS−31)、または酢酸塩、酒石酸塩、及びトリフルオロ酢酸塩などの薬学的に許容されるその塩などであるがこれらに限定されない)は、細胞透過性であり、ミトコンドリア内膜を選択的に標的化しその中に集中する。芳香族カチオン性ペプチドは、カルジオリピン、ホスファチジルセリン、ホスファチジン酸、及びホスファチジルグリセロールなどのアニオン性リン脂質を選択的に標的化し、カルジオリピンは、いくつかのペプチドと最も高い親和性を有する。いくつかの実施形態では、芳香族カチオン性ペプチドはシトクロムcと相互作用し、この相互作用はカルジオリピンの存在下で強化される。いくつかの実施形態では、ペプチドは、ヘムの至近にあるシトクロムcタンパク質内に貫通することができ、この貫通は、カルジオリピンの存在下で強化される。
理論に束縛されるものではないが、シトクロムcのヘム環境中に貫通することによって、芳香族カチオン性ペプチドは、カルジオリピンとシトクロムcとの間の構造的相互作用に干渉し、Met80−Fe配位の破裂を予防し、シトクロムcがペルオキシダーゼとなるのを予防する可能性が高い。これらの芳香族カチオン性ペプチドはまた、ヘム領域におけるπ−π*相互作用を増加させ、シトクロムc減少を促進する。
本明細書に開示の芳香族カチオン性ペプチドはまた、ミトコンドリア呼吸を強化し、酸化的リン酸化能力を増加させ、ミトコンドリアの反応性酸素種を減少させることができる。その結果、これらは、ミトコンドリア機能を保護し、カルジオリピン過酸化を減少させ、かつ/またはアポトーシスを阻害することができる。
アルツハイマー病
本明細書に開示のペプチドは、例えばアルツハイマー病などであるがこれに限定されない、Aβ誘発性ミトコンドリア機能不全、Aβの過剰発現、またはAβ斑の存在を特徴とする疾患または状態を治療するのに有用である。
カルジオリピン過酸化及び酸化的ストレスの増加は、アルツハイマー病の病理において重要なプロセスであり得る。いくつかの実施形態では、ミトコンドリア中のオキシゲナーゼ活性は、Cu2+の存在下でAβ(例えば、Aβ1-42またはAβ1-42オリゴマー)によるカルジオリピン(例えば、1’,2,2’−テトラリノレオイルカルジオリピン(TLCL))の酸化によって増加する。したがって、本開示の芳香族カチオン性ペプチド(例えば、2′,6′−Dmt−D−Arg−Phe−Lys−NH2(SS−02)、Phe−D−Arg−Phe−Lys−NH2(SS−20)、及びD−Arg−2′,6′−Dmt−Lys−Phe−NH2(SS−31)、D−Arg−2′,6′−Dmt−Lys−Ald−NH2([ald]SS−31)、または酢酸塩、酒石酸塩、及びトリフルオロ酢酸塩などの薬学的に許容されるその塩)を使用して、対象におけるAβ誘発性カルジオリピン酸化、Aβ誘発性酸化的ストレス、Aβ誘発性オキシゲナーゼ活性、及び細胞アポトーシスを予防することによって、アルツハイマー病を治療することができる。
別の実施形態では、本開示の芳香族カチオン性ペプチド(例えば、D−Arg−2′,6′−Dmt−Lys−Ald−NH2([ald]SS−31)、または酢酸塩、酒石酸塩、及びトリフルオロ酢酸塩などの薬学的に許容されるその塩)を使用して、Aβ(例えば、AβまたはAβオリゴマー)の進入を細胞への進入から減少させることによって、アルツハイマー病を治療することができる。アルツハイマー病の症状としては、記憶喪失、興奮、気分変動、判断力の低下、認知症、抽象的思考が困難になる、慣れた作業が困難になる、認知的困難、見当識障害、コミュニケーション能力の減退、反復的な発話または動作、視覚または空間関係に関する困難、引きこもり、抑鬱、認知喪失、運動能力及び触覚の喪失、妄想、被害妄想、言葉または身体的攻撃性、ならびに睡眠障害が挙げられる。
レビー小体型認知症
レビー小体認知症、びまん性レビー小体病、皮質性レビー小体病、及びレビー型老年性認知症を含む種々の他の名称でも知られているレビー小体型認知症(DLB)は、パーキンソン病と密接に関連する認知症の型である。DLBは、脳全体にかけてのレビー小体と呼ばれる異常なタンパク性(アルファシヌクレイン)細胞質内封入体の発現を特徴とする。
一連の剖検により、DLBの病理がアルツハイマー病の病理に付随する場合が多いことが明らかになっている。つまり、レビー小体封入体が大脳皮質内で見つかる場合、これらは、老人班(沈着したAβペプチド)及び顆粒空胞変性(海馬ニューロン内の粒状沈着及び海馬ニューロン周辺の透明帯)を含む、海馬内で主に見つかるアルツハイマー病病理と共起することが多い。
DLBの中核症状は、日ごと及び時間ごとに注意力及び覚醒度における大きなばらつきを伴う変動する認知、反復性の幻視、複視、小股歩行、歩行中の腕の振りの減少、表情の幅の減少、動きの硬直、歯車様運動、低い発話音量、流涎症、及び嚥下困難である。示唆的症状は、PETまたはSPECTスキャンで検出される急速眼球運動(レム)睡眠行動障害及び異常である。DLB患者はまた、繰り返しの転倒、失神(気絶)、及び一過性意識消失を含む、起立性低血圧症に伴う問題を経験する場合が多い。
脳アミロイド血管症
コンゴーレッド親和性血管障害としても知られる脳アミロイド血管症(CAA)は、アミロイド沈着が中枢神経系の血管の壁に形成される、血管症の型である。コンゴーレッド親和性という用語は、アミロイドの異常な凝集の存在が、コンゴーレッドと呼ばれる特殊な染色剤の適用後に脳組織の顕微鏡検査によって示され得るために使用される。アミロイド物質は脳内でのみ見られるため、この疾患はアミロイド症の他の形態とは関係しない。
発散型のCAAは、大脳皮質毛細管におけるアミロイドβタンパク質(Aβ)の沈着に基づいて2つの型に更に特徴付けられている。全ての場合において、それは軟膜及び大脳皮質血管壁におけるAβの沈着によって定義される。アミロイド沈着は、これらの血管に不全を起こしやすくし、出血性脳卒中の危険性を増加させる。CAAによって損傷した血管から漏出した血液は、脳の周辺領域が適切な働きを突然停止することを引き起こし、結果として、四肢の衰弱もしくは麻痺、発話の困難、間隔もしくは平衡の喪失、または昏睡状態などの症状をもたらし得る。血液が脳周辺の繊細な組織に漏出すると、それは突然かつ重篤な頭痛を引き起こし得る。周辺の脳の刺激によって引き起こされる場合がある他の症状は、発作(痙攣)、または四肢もしくは顔の疼きもしくは衰弱などの一時的な神経症状の短期発作である。
封入体筋炎
封入体筋炎(IBM)は、腕及び脚の筋に最も顕著な遠位筋及び近位筋の両方の緩徐進行性脱力及び萎縮を特徴とする炎症性筋疾患である。散発性封入体筋炎(sIBM)と遺伝性封入体ミオパチー(hIBM)との2種類が存在する。
IBMの発病機序は、アミロイドベータ関連の変性過程を伴い得る。IBMの興味深い特徴は、sIBM筋線維中のアミロイドベータ(Aβ)及びリン酸化タウタンパク質の蓄積である。ベータアミロイドタンパク質がIBM発病に不可欠であるという仮説は、マウスモデルにおけるIBMに対して効果的であることが見出されたAβワクチンを使用したマウスモデルにおいて裏付けられている。
一般的な初期症状としては、つまずき及び転倒の頻発、階段を上ることにおける衰弱、ならびに指の操作の困難が挙げられる。片足または両足の下垂足も、IBM及び進行期の多発性筋炎(PM)の症状である。疾病の経過中、患者の可動性は徐々に制限されていく。多くの患者は、平衡障害を経験し得る。sIBMにより脚筋が衰弱し不安定になるため、患者は、つまずきまたは転倒からの深刻な傷害に非常に弱くなる。多くの患者は、特に大腿部における重篤な筋痛を訴える。存在する場合、嚥下障害は、IBMを患う患者における進行性の状態であり、誤嚥性肺炎からの死亡につながる場合が多い。嚥下障害は、IBM症例の40〜85%に存在する。IBMは、有酸素能力の減衰をもたらし得る。この減退は、IBMの症状(即ち、進行性筋脱力、可動性の減少、及び疲労レベルの増加)と関連することが多い、体を動かさない生活様式の結果である可能性が高い。
電子移動における芳香族カチオン性ペプチド
ミトコンドリアATP合成は、IMMの電子輸送鎖(ETC)を通して電子流によって引き起こされる。鎖を通した電子流は、一連の酸化/還元プロセスとして説明することができる。電子は、電子供与体(NADHまたはQH2)から、一連の電子受容体(複合体I〜IV)を通って、最終的には最終電子受容体である分子酸素へと通過する。IMMと緩やかに関連するシトクロムcは、複合体IIIとIVとの間で電子を移動させる。
ETCを通した電子の急速な入れ替えは、電子流出及びフリーラジカル中間体の生成につながる短絡を予防するために重要である。電子供与体と電子受容体との間の電子移動(ET)は、それらの間の距離と共に指数関数的に減少し、超交換ETは、20Åに限定される。長距離ETは、多段階電子ホッピングプロセスにおいて達成され得、ここで、供与体と受容体との間の全体的な距離は、一連のより短く、したがってより速いET段階に分けられる。ETCにおいて、長距離にわたる効率的なETは、FMN、FeSクラスター、及びヘムを含む、IMMに沿って戦略的に局限化される補因子によって支援される。Phe、Tyr、及びTrpなどの芳香族アミノ酸も、重なり合ったπ雲を通したヘムへの電子移動を助長することができる。好適な酸化能を有するアミノ酸(Tyr、Trp、Cys、Met)は、中間電子担体として働くことによって布石として作用することができる。加えて、Tyrのヒドロキシル基は、電子を運搬するときに陽子を喪失し得、Lysなどの付近の塩基性基の存在により、更により効率的である陽子共役型ETがもたらされ得る。
ミトコンドリア(mCAT)を標的とするカタラーゼの過剰発現は、マウスにおいて加齢を向上させ(例えば、症状を減少させ)、寿命を延長することが示されている。かかる例は、ミトコンドリアの酸化的ストレスを減少させ、ミトコンドリアの機能を保護することができる「創薬ターゲットとなり得る」化学的化合物を特定する。ミトコンドリアは細胞内反応性酸素種(ROS)の主要供給源であるため、酸化的損傷を、ミトコンドリアDNA、電子輸送鎖(ETC)のタンパク質、及びミトコンドリア脂質膜に限定するためには、抗酸化物質をミトコンドリアに送達する必要がある。いくつかの実施形態では、芳香族カチオン性ペプチドは、IMMを選択的に標的化しその中に集中する。これらのペプチドのうちのいくつかは、一電子酸化を受け、ミトコンドリア標的化抗酸化物質として振る舞うことができる酸化還元活性アミノ酸を含有する。D−Arg−2′6′−Dmt−Tyr−Lys−Phe−NH2ペプチドなどの本明細書に開示のペプチドは、ミトコンドリアROSを減少させ、細胞及び動物研究においてミトコンドリア機能を保護する。最近の研究は、このペプチドが、ミトコンドリアのカタラーゼ過剰発現で観察されるものと同等のミトコンドリア酸化的ストレスからの保護を与え得ることを示す。ラジカル消去が酸化的ストレスを減少させるために最も一般的に使用される手法であるが、電子移動を助長して、電子漏出を減少させ、ミトコンドリア減少能力を向上させることを含む、使用可能な他の可能性のある機構が存在する。
豊富な間接的証拠は、酸化的ストレスが、正常な加齢、ならびに心血管疾患、糖尿病、神経変性疾患、及び癌を含むいくつかの主要な疾患の多くの結果に寄与することを示す。酸化的ストレスは、概して、酸化促進物質と抗酸化物質との不均衡として定義される。しかしながら、増加した酸化的組織損傷を支持する大量の科学的証拠にもかかわらず、抗酸化物質を用いた大規模な臨床研究は、これらの疾患における著しい健康効果を示していない。理由のうちの1つは、利用可能な抗酸化物質が酸化促進物質の産生部位に到達できないことによるのかもしれない。
ミトコンドリアの電子輸送鎖(ETC)はROSの主要な細胞内産生者であり、ミトコンドリア自体は酸化的ストレスに最も弱い。ミトコンドリア機能を保護することは、したがって、ミトコンドリアの酸化的ストレスによって引き起こされる細胞死滅を予防するための前提条件である。ペルオキシソーム(pCAT)ではなく、ミトコンドリアを標的とするカタラーゼ(mCAT)を過剰発現することの利益は、ミトコンドリア標的化抗酸化物質が、加齢の悪影響を克服するのに必要であることの概念実証を提供した。しかしながら、化学的抗酸化物質のIMMへの十分な送達は未だ困難なままである。
1つのペプチド類似体、D−Arg−2′,6′−Dmt−Tyr−Lys−Phe−NH2は、内因性抗酸化能力を保有し、これはなぜなら、修飾されたチロシン残基が、酸化還元活性であり、一電子酸化を受けることができるためである。このペプチドは、H22、ヒドロキシルラジカル、及びペルオキシ亜硝酸を中和し、脂質過酸化を阻害することができる。ペプチドは、虚血再灌流傷害、神経変性疾患、及び代謝症候群の動物モデルにおいて卓越した有効性を示した。
ミトコンドリア標的化ペプチドの設計は、(i)過剰ROSの消去、(ii)電子移動を助長することによるROS産生の減少、または(iii)ミトコンドリアの還元能の増加という作用形態のうちの1つ以上を組み込み、強化する。ペプチド分子の利点は、ミトコンドリア標的化に不可欠である芳香族カチオン性モチーフを保持しながら、酸化還元の中心として機能し、電子移動を助長し、あるいはスルフヒドリル基を増加させることができる天然または非天然アミノ酸を組み込むことが可能であることである。
投与の形態及び有効用量
細胞、臓器、または組織を芳香族カチオン性ペプチドと接触させるための当業者に既知の任意の方法を用いてよい。好適な方法としては、インビトロ、エクスビボ、またはインビボ法が挙げられる。インビトロ法は、典型的には、培養したサンプルを含む。例えば、細胞を、容器(例えば、組織培養プレート)中に定置し、所望の結果を得るのに好適な適切な条件下で芳香族カチオン性ペプチドとインキュベートされ得る。好適なインキュベーション条件は、当業者であれば容易に決定することができる。
エクスビボ法は、典型的には、ヒトなどの哺乳動物から切除された細胞、臓器、または組織を含む。細胞、臓器、または組織は、例えば、適切な条件下で芳香族カチオン性ペプチドとインキュベートされ得る。接触させた細胞、臓器、または組織は、典型的には、ドナーに戻すか、レシピエント中に置くか、または将来的な使用のために貯蔵する。故に、芳香族カチオン性ペプチドは、概して、薬学的に許容される担体中に存在する。
インビボ法は、典型的には、上記のものなどの芳香族カチオン性ペプチドを、哺乳動物、好適にはヒトに投与することを含む。治療用にインビボで使用する場合、芳香族カチオン性ペプチドは、有効量(即ち、所望の治療効果を有する量)で対象に投与する。用量及び投薬レジメンは、対象における傷害の程度、治療指数などの使用する特定の芳香族カチオン性ペプチドの特徴、対象、及び対象の病歴に依存することになる。有効量は、医師及び臨床医によく知られている方法によって、前臨床試験または臨床試験中に決定し得る。
本方法に有用な有効量の芳香族カチオン性ペプチドは、それを必要とする哺乳動物に、薬学的化合物を投与するためのある数の周知の方法のうちのいずれかによって投与することができる。芳香族カチオン性ペプチドは、全身または局所投与し得る。
芳香族カチオン性ペプチドは、薬学的に許容される塩として調合してもよい。「薬学的に許容される塩」という用語は、哺乳動物などの患者への投与に許容される、塩基または酸から調製された塩(例えば、所与の投薬レジメンに対して許容される哺乳動物安全性を有する塩)を意味する。しかしながら、これらの塩は、患者への投与を意図していない中間化合物の塩など、必ずしも薬学的に許容される塩である必要はないことを理解されたい。薬学的に許容される塩は、薬学的に許容される無機塩基または有機塩基、及び薬学的に許容される無機酸または有機酸に由来し得る。加えて、ペプチドが、アミン、ピリジン、またはイミダゾールなどの塩基性部分と、カルボン酸またはテトラゾールなどの酸性部分との両方を含有するとき、双性イオンが形成され得、本明細書で使用する用語「塩」に含まれる。薬学的に許容される無機塩基由来の塩としては、アンモニウム塩、カルシウム塩、銅塩、第二鉄塩、第一鉄塩、リチウム塩、マグネシウム塩、第二マンガン塩、第一マンガン塩、カリウム塩、ナトリウム塩、及び亜鉛塩などが挙げられる。薬学的に許容される有機塩基由来の塩としては、置換アミン、環式アミン、天然型アミンなどを含む、第1級、第2級、及び第3級アミン、例えば、アルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N,N′−ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2−ジエチルアミノエタノール,2−ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N−エチルモルホリン、N−エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン、イソプロピルアミン、リジン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペラジン(piperadine)、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トロメタミンなどの塩が挙げられる。薬学的に許容される無機酸由来の塩としては、ホウ酸、炭酸、ハロゲン化水素酸(臭化水素酸、塩酸、フッ化水素酸、またはヨウ化水素酸)、硝酸、リン酸、スルファミン酸、及び硫酸の塩が挙げられる。薬学的に許容される有機酸由来の塩としては、脂肪族ヒドロキシル酸(例えば、クエン酸、グルコン酸、グリコール酸、乳酸、ラクトビオン酸、リンゴ酸、及び酒石酸)、脂肪族モノカルボン酸(例えば、酢酸、酪酸、ギ酸、プロピオン酸、及びトリフルオロ酢酸)、アミノ酸(例えば、アスパラギン酸及びグルタミン酸)、芳香族カルボン酸(例えば、安息香酸、p−クロロ安息香酸、ジフェニル酢酸、ゲンチジン酸、馬尿酸、及びトリフェニル酢酸)、芳香族ヒドロキシル酸(例えば、o−ヒドロキシ安息香酸、p−ヒドロキシ安息香酸、1−ヒドロキシナフタレン−2−カルボン酸、及び3−ヒドロキシナフタレン−2−カルボン酸)、アスコルビン酸、ジカルボン酸(例えば、フマル酸、マレイン酸、シュウ酸、及びコハク酸)、グルコロン(glucoronic)酸、マンデル酸、粘液酸、ニコチン酸、パモン酸、パントテン酸、スルホン酸(例えば、ベンゼンスルホン酸、カンフォスルホン(camphosulfonic)酸、エジシリック(edisylic)酸、エタンスルホン酸、イセチオン酸、メタンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ナフタレン−1,5−ジスルホン酸、ナフタレン−2,6−ジスルホン酸、及びp−トルエンスルホン酸)、キシナホ酸などの塩が挙げられる。いくつかの実施形態では、塩は酢酸塩である。いくつかの実施形態では、塩は酒石酸塩である。加えてまたはあるいは、他の実施形態では、塩はトリフルオロ酢酸塩である。
本明細書に記載の芳香族カチオン性ペプチドは、本明細書に記載の障害の治療または予防のための対象への単独または組み合わせでの投与のために、薬学的組成物に組み込むことができる。かかる組成物は、典型的には、活性剤及び薬学的許容される担体を含む。本明細書で使用する場合、「薬学的に許容される担体」という用語は、薬剤投与と適合性のある、生理食塩水、溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤及び抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤などを含む。補助活性化合物も組成物に組み込むことができる。
薬学的組成物は、典型的には、その意図される投与経路に適合するように調合する。投与経路の例としては、非経口(例えば、静脈内、皮内、腹腔内、または皮下)、経口、吸入、経皮(局所)、眼内、イオン導入、及び経粘膜投与が挙げられる。非経口、皮内、または皮下適用に使用される溶液または懸濁液は、注射用の水、食塩水、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、または他の合成溶媒などの滅菌希釈剤、ベンジルアルコールまたはメチルパラベンなどの抗菌剤、アスコルビン酸または重亜硫酸ナトリウムなどの抗酸化剤、エチレンジアミンテトラ酢酸などのキレート剤、酢酸塩、クエン酸塩、またはリン酸塩などの緩衝液、及び塩化ナトリウムまたはブドウ糖などの等張性を調整するための薬剤といった成分を含み得る。pHは、塩酸または水酸化ナトリウムなどの酸または塩基を用いて調整することができる。非経口製剤は、ガラスまたはプラスチック製のアンプル、使い捨て注射器、または複数回投与バイアル中に封入することができる。患者または治療する医師の簡便性のために、投薬剤型は、治療コース(例えば、7日間の治療)のための全ての必要な機器(例えば、薬物のバイアル、希釈剤のバイアル、注射器、及び注射針)を含むキット中で提供し得る。
注射可能な使用に好適な薬学的組成物としては、滅菌水溶液(水溶性の場合)または分散液、及び滅菌の注射可能な溶液もしくは分散液の即時調製のための滅菌粉末を挙げることができる。静脈内投与に対しては、好適な担体としては、生理食塩水、静菌水、Cremophor EL(商標)(BASF,Parsippany,N.J.)、またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)が挙げられる。全ての場合において、非経口投与のための組成物は、滅菌でなければならず、容易な注射針通過性(syringability)が存在する程度に流動性であるべきである。組成物は、製造及び貯蔵条件下で安定であるべきであり、細菌及び真菌などの微生物の汚染作用に対して保護される必要がある。
一実施形態では、本技術の芳香族カチオン性ペプチドは、静脈内投与される。例えば、芳香族カチオン性ペプチドは、急速静脈内ボーラス注射によって投与されてもよい。いくつかの実施形態では、芳香族カチオン性ペプチドは、定速静脈内注入として投与される。
芳香族カチオン性ペプチドはまた、経口、局所、経鼻、筋肉内、皮下、または経皮投与されてもよい。一実施形態では、経皮投与は、荷電した組成物が電流によって皮膚を通して送達されるイオン導入法によって投与される。
他の投与経路としては、脳室内または髄腔内が挙げられる。脳室内は、脳の脳室系への投与を指す。髄腔内は、脊髄のくも膜下の空間への投与を指す。故に、いくつかの実施形態では、脳室内または髄腔内投与は、中枢神経系の臓器または組織に影響する疾患及び状態に使用される。
芳香族カチオン性ペプチドはまた、当該技術分野で既知のように、持続放出によって哺乳動物に投与されてもよい。持続放出投与は、特定の時間をかけて薬物のある特定のレベルを達成するための薬物送達方法である。このレベルは、典型的には、血清または血漿濃度によって測定される。制御放出によって化合物を送達するための方法の説明は、全体が参照により本明細書に組み込まれる国際PCT出願国際公開第02/083106号に見出すことができる。
薬学技術分野で既知であるいずれの剤型も、芳香族カチオン性ペプチドの投与に好適である。経口投与に対しては、液剤または固形剤が使用され得る。剤型の例としては、錠剤、ゼラチンカプセル剤、丸剤、トローチ剤、エリキシル剤、懸濁剤、シロップ剤、オブラート剤、チューインガム剤などが挙げられる。芳香族カチオン性ペプチドは、当該技術分野の実践者によって理解されるように、好適な薬学的担体(ビヒクル)または賦形剤と混合することができる。担体及び賦形剤の例としては、でんぷん、牛乳、ある特定の種類の粘土、ゼラチン、乳酸、ステアリン酸マグネシウムまたはステアリン酸カルシウムを含むステアリン酸またはその塩、滑石、植物性脂肪または油、ゴム、及びグリコールが挙げられる。
全身、脳室内、髄腔内、局所、経鼻、皮下、または経皮投与については、芳香族カチオン性ペプチドの剤型は、当該技術分野で既知のものなどの、従来の希釈在、担体、または賦形剤などを利用して、芳香族カチオン性ペプチドを送達してもよい。例えば、剤型は、安定剤、界面活性剤、好ましくは非イオン性界面活性剤、ならびに任意選択で塩及び/または緩衝剤のうちの1つ以上を含んでもよい。芳香族カチオン性ペプチドは、水溶液の形態または凍結乾燥形態で送達されてもよい。
安定剤は、例えばグリシンなどのアミノ酸;スクロース、テトラロース(tetralose)、ラクトースなどのオリゴ糖;またはデキストランを例えば含んでもよい。あるいは、安定剤は、マンニトールなどの糖アルコールを含んでもよい。いくつかの実施形態では、安定剤または安定剤の組み合わせは、調合された組成物の重量の約0.1重量%〜約10重量%を占める。
いくつかの実施形態では、界面活性剤は、ポリソルベートなどの非イオン性界面活性剤である。好適な界面活性剤の例としては、Tween 20、Tween 80;約0.001%(w/v)〜約10%(w/v)でのPluronic F−68などのポリエチレングリコールまたはポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールが挙げられる。
塩または緩衝剤は、例えば、それぞれ、塩化ナトリウム、またはリン酸ナトリウム/カリウムなど、任意の塩または緩衝剤であってもよい。いくつかの実施形態では、緩衝剤は、薬学的組成物pHを約5.5〜約7.5の範囲に維持する。塩及び/または緩衝剤は、浸透圧を、ヒトまたは動物への投与に好適なレベルに維持するのにも有用である。いくつかの実施形態では、塩または緩衝剤は、約150mM〜約300mMのほぼ等張性の濃度で存在する。
芳香族カチオン性ペプチドの剤型は、1つ以上の従来の添加剤を更に含有してもよい。かかる添加剤の例としては、例えばグリセロールなどの可溶化剤;例えば、塩化ベンザルコニウム(「第4級物」として知られる第4級アンモニウム化合物の混合物)、ベンジルアルコール、クロレトン、またはクロロブタノールなどの抗酸化剤;例えばモルヒネ誘導体などの麻酔薬;及び本明細書に記載の等張剤などが挙げられる。酸化または他の腐敗に対する更なる予防措置として、薬学的組成物を、不透過性のストッパーで密封したバイアル中で窒素ガス下で貯蔵してもよい。
本技術に従って治療される哺乳動物は、例えば、ヒツジ、ブタ、ウシ、及びウマなどの家畜;イヌ及びネコなどの愛玩動物;ならびにラット、マウス、及びウサギなどの実験動物を含む、いずれの哺乳動物であってもよい。一実施形態では、哺乳動物はヒトである。
いくつかの実施形態では、芳香族カチオン性ペプチドは、MPTを受けているミトコンドリアの数を減少させるかまたはMPTを予防するのに有効な量で哺乳動物に投与される。有効量は、医師及び臨床医によく知られている方法によって、前臨床試験または臨床試験中に決定される。
芳香族カチオン性ペプチドは、全身または局所投与され得る。一実施形態では、芳香族カチオン性ペプチドは、静脈内投与される。例えば、芳香族カチオン性ペプチドは、急速静脈内ボーラス注射によって投与されてもよい。一実施形態では、芳香族カチオン性ペプチドは、定速静脈内注入として投与される。
芳香族カチオン性ペプチドは、例えば血管形成術または冠動脈バイパス術中に冠動脈に直接注射するか、冠動脈ステント上に適用することができる。
芳香族カチオン性ペプチド組成物は担体であることができ、この担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコールなど)、及びこれらの好適な混合物を含有する溶媒または分散媒であり得る。適当な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用によって、分散剤の場合には求められる粒径の維持によって、及び界面活性剤の使用によって、維持することができる。微生物の作用の予防は、種々の抗菌剤及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チオメラソールなどによって達成することができる。グルタチオン及び他の抗酸化剤を含めることで、酸化を予防することができる。いくつかの実施形態では、等張剤、例えば、糖、マンニトールなどの多価アルコール、ソルビトール、または塩化ナトリウムを組成物に含める。注射可能な組成物の持続的吸収は、吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムまたはゼラチンを組成物に含めることによってもたらすことができる。
滅菌の注射可能な溶液は、活性成分を、必要に応じて、上に列挙した成分のうちの1つまたは組み合わせと共に、求められる量で適切な溶媒に組み込んだ後、濾過滅菌することによって調製することができる。概して、分散剤は、活性化合物を、塩基性分散媒、及び上に列挙したものからの求められる他の成分を含有する滅菌ビヒクルに組み込むことによって調製する。滅菌の注射可能な溶液を調製するための滅菌粉末の場合には、典型的な調製方法は、活性成分に加えて、事前に滅菌濾過したその溶液からの任意の更なる所望の成分の粉末を得ることができる、真空乾燥及び凍結乾燥を含む。
経口組成物は、概して、不活性希釈剤及び可食担体を含む。経口治療薬投与の目的に対しては、活性化合物は、賦形剤と組み合わせ、錠剤、トローチ剤、またはカプセル剤、例えばゼラチンカプセル剤の形態で使用することができる。経口組成物は、口内洗浄液としての使用のために液状担体を使用して調製することもできる。薬学的に適合性のある結合剤及び/または補助剤物質を、組成物の一部として含めることができる。錠剤、丸剤、カプセル剤、トローチ剤などは、微結晶性セルロース、トラガカントゴム、もしくはゼラチンなどの結合剤;でんぷんもしくはラクトースなどの賦形剤;アルギン酸、Primogel、もしくはコーンスターチなどの崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムもしくはSterotesなどの潤滑剤;コロイド状二酸化ケイ素などの流動促進剤;スクロースもしくはサッカリンなどの甘味剤;またはペパーミント、サリチル酸メチル、もしくはオレンジ香味剤などの香味剤といった成分または類似の性質の化合物のうちのいずれをも含有することができる。
吸入による投与については、化合物は、好適な推進剤、例えば、二酸化炭素などのガス、または噴霧器を含む、加圧容器またはディスペンサーからのエアロゾル噴霧の形態で送達され得る。かかる方法はとしては、米国特許第6,468,798号に記載されているものが挙げられる。
本明細書に記載のような治療化合物の全身投与も、経粘膜または経皮手段によることができる。経粘膜または経皮投与のためには、浸透させるバリアに適した浸透剤を剤型において使用する。かかる浸透剤は、当該技術分野で概して既知であり、例えば、経粘膜投与のためには、洗剤、胆汁酸塩、及びフシジン酸誘導体が挙げられる。経粘膜投与は、鼻内噴霧器の使用によって達成することができる。経皮投与のためには、活性化合物は、当該技術分野で概して既知である、軟膏、膏薬、ゲル剤、またはクリーム剤に調合する。一実施形態では、経皮投与は、イオン導入法によって行ってもよい。
治療用タンパク質またはペプチドは、担体系において調合することができる。担体は、コロイド系であり得る。コロイド系は、リポソーム、リン脂質二重層ビヒクルであり得る。一実施形態では、治療用ペプチドは、ペプチド完全性を維持しながら、リポソーム中にカプセル化する。当業者であれば理解する通り、リポソームを調製するための種々の方法が存在する。(Lichtenberg et al.,Methods Biochem.Anal.,33:337−462(1988)、Anselem et al.,Liposome Technology,CRC Press(1993)を参照されたい)。リポソーム剤型は、クリアランスを遅延させ、細胞取り込みを増加させることができる(Reddy,Ann.Pharmacother.,34(7−8):915−923(2000)を参照されたい)。活性剤は、可溶性、不溶性、透過性、不透過性、生分解性、もしくは胃保持性ポリマーまたはリポソームを含むがこれらに限定されない、薬学的に許容される成分から調製される粒子中に充填することもできる。かかる粒子としては、ナノ粒子、生分解性ナノ粒子、微粒子、生分解性微粒子、ナノスフェア、生分解性ナノスフェア、ミクロスフェア、生分解性ミクロスフェア、カプセル剤、乳剤、リポソーム、ミセル、及びウイルスベクター系が挙げられるが、これらに限定されない。
担体は、ポリマー、例えば、生分解性、生体適合性ポリマーマトリックスであることもできる。一実施形態では、治療用ペプチドは、タンパク質完全性を維持しながら、ポリマーマトリックス中に埋め込むことができる。ポリマーは、ポリペプチド、タンパク質、あるいは多糖などの天然型、またはポリα−ヒドロキシ酸などの合成型であってもよい。例としては、例えば、コラーゲン、フィブロネクチン、エラスチン、酢酸セルロース、硝酸セルロース、多糖、フィブリン、ゼラチン、及びこれらの組み合わせから作製される担体が挙げられる。一実施形態では、ポリマーは、ポリ乳酸(PLA)または乳酸グリコール酸共重合体(PGLA)である。ポリマーマトリックスは、ミクロスフェア及びナノスフェアを含む、種々の形態及びサイズで調製及び単離することができる。ポリマー剤型は、長期間の治療効果につながり得る。(Reddy,Ann.Pharmacother.,34(7−8):915−923(2000)を参照されたい)。ヒト成長ホルモン(hGH)のためのポリマー剤型は、臨床試験で使用されている。(Kozarich and Rich,Chemical Biology,2:548−552(1998)を参照されたい)。
ポリマーミクロスフェア持続放出剤型の例は、PCT国際公開第99/15154号(Tracyら)、米国特許第5,674,534号及び同第5,716,644号(共にZaleら)、PCT国際公開第96/40073号(Zaleら)、及びPCT国際公開第00/38651号(Shahら)に記載されている。米国特許第5,674,534号及び同第5,716,644号、ならびにPCT国際公開第96/40073号は、塩によって凝集に対して安定化されるエリスロポエチンの粒子を含有するポリマーマトリックスを説明している。
いくつかの実施形態では、治療化合物は、移植及びマイクロカプセル化送達システムを含む制御放出剤型などの治療化合物を身体からの急速な排除に対して保護する担体と共に調製する。エチレン酢酸ビニル、ポリ酸無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、及びポリラセテック酸などの生分解性生体適合性ポリマーを使用することができる。かかる剤型は、既知の技法を使用して調製することができる。物質は、例えば、Alza Corporation及びNova Pharmaceuticals,Incから商業的に入手することもできる。リポソーム懸濁液(細胞特異的抗原に対するモノクローナル抗体を有する特定の細胞を標的化したリポソームを含む)も、薬学的に許容される担体として使用することができる。これらは、例えば、米国特許第4,522,811号に記載されているものなどの、当業者に既知の方法に従って調製することができる。
細胞内送達を強化するために治療化合物を調合することもできる。例えば、リポソーム送達システムが当該技術分野で既知であり、例えば、Chonn and Cullis,“Recent Advances in Liposome Drug Delivery Systems,”Current Opinion in Biotechnology 6:698−708(1995)、Weiner,“Liposomes for Protein Delivery:Selecting Manufacture and Development Processes,”Immunomethods,4(3):201−9(1994)、及びGregoriadis,“Engineering Liposomes for Drug Delivery:Progress and Problems,”Trends Biotechnol.,13(12):527−37(1995)を参照されたい。Mizguchi et al.,Cancer Lett.,100:63−69(1996)は、タンパク質をインビボとインビトロとの両方で細胞に送達するための融合性リポソームの使用を説明している。
治療薬の用量、毒性、及び治療有効性は、例えば、LD50(集団の50%に対して致死的である用量)及びED50(集団の50%において治療的に有効な用量)を決定するための、細胞培養または実験動物における標準的な製薬手順によって決定することができる。毒性効果と治療効果との用量比は、治療指数であり、LD50/ED50の比として表すことができる。高い治療指数を呈する化合物が好ましい。毒性副作用を呈する化合物を使用してもよいが、非罹患細胞への可能性のある損傷を最小限に抑え、それにより副作用を減少させるために、かかる化合物を標的化する罹患組織の部位への送達システムの設計には注意を払うべきである。
細胞培養アッセイ及び動物研究から得られたデータは、ヒトにおける使用に対する用量範囲の調合に使用することができる。かかる化合物の用量は、毒性がほとんどまたは全くないED50を含む血中濃度の範囲内であることが好ましい。用量は、用いる製剤及び利用する投与経路に応じて、この範囲内で異なり得る。本方法で使用するいずれの化合物についても、治療有効用量は、細胞培養アッセイから推定することができる。用量は、細胞培養で決定されるIC50(即ち、症状の最大半量の阻害を達成する試験化合物の濃度)を含む血中血漿濃度範囲を達成するように、動物モデルにおいて調合し得る。かかる情報を使用して、ヒトにおける有用な用量をより正確に決定することができる。血漿中のレベルは、例えば、高速液体クロマトグラフィーによって測定してもよい。
典型的には、治療または予防効果を達成するのに十分な芳香族カチオン性ペプチドの有効量は、体重1キログラム当たり1日約0.000001mg〜体重1キログラム当たり1日約10,000mgの範囲である。好適には、用量範囲は、体重1キログラム当たり1日約0.0001mg〜体重1キログラム当たり1日約100mgである。例えば、用量は、毎日、隔日、もしくは3日ごとに、体重当たり1mg/kgもしくは体重あたり10mg/kg、または毎週、隔週、もしくは3週間ごとに、1〜10mg/kgであり得る。一実施形態では、ペプチドの単回用量は、体重1キログラム当たり0.1〜10,000マイクログラムの範囲である。一実施形態では、担体における芳香族カチオン性ペプチド濃度は、送達される1ミリリットル当たり0.2〜2000マイクログラムの範囲である。例示的な治療は、1日1回または1週間に1回の投与を伴う。治療用途では、比較的短い間隔での比較的高い用量が、疾患の進行が減少するかまたは終止するまで、及び好ましくは、対象が疾患の症状の部分的または完全な改善を示すまで、求められる場合がある。その後、患者は、予防レジメンを施され得る。
いくつかの実施形態では、治療有効量の芳香族カチオン性ペプチドは、10-12〜10-6モル、例えば、約10-7モルの標的組織でのペプチドの濃度として定義し得る。この濃度は、0.01〜100mg/kgまたは体表面積による等価用量の全身投薬で送達され得る。投薬のスケジュールは、標的組織での治療濃度を維持するように最適化し、これは、単回の毎日または週間投与によることが最も好ましいが、連続投与(例えば、非経口注入または経皮適用)も含む。
いくつかの実施形態では、芳香族カチオン性ペプチドの用量は、約0.001〜約0.5mg/kg/h、好適には約0.01〜約0.1mg/kg/hで提供する。一実施形態では、芳香族カチオン性ペプチドの用量は、約0.1〜約1.0mg/kg/h、好適には約0.1〜約0.5mg/kg/hで提供する。一実施形態では、用量は、約0.5〜約10mg/kg/h、好適には約0.5〜約2mg/kg/hで提供する。
当業者であれば、疾患または障害の重症度、過去の治療、対象の全般的な健康及び/または年齢、ならびに存在する他の疾患を含むがこれらに限定されない、ある特定の因子が、対象を効果的に治療するのに必要な用量及びタイミングに影響し得ることを理解するであろう。更に、治療有効量の本明細書に記載の治療組成物による対象の治療は、単回治療または一連の治療を含み得る。
本方法に従って治療される哺乳動物は、例えば、ヒツジ、ブタ、ウシ、及びウマなどの家畜;イヌ及びネコなどの愛玩動物;ラット、マウス、及びウサギなどの実験動物を含む、いずれの哺乳動物であってもよい。一実施形態では、哺乳動物はヒトである。
併用療法
いくつかの実施形態では、芳香族カチオン性ペプチドは、医学的疾患または状態の予防、改善、または治療のために、1つ以上の更なる治療薬と併用してもよい。例としてであって限定的ではなく、ミトコンドリア疾患または障害の治療は、典型的には、ビタミン及び補因子を摂取することを伴う。加えて、非限定的な例として、抗生物質、ホルモン、抗新生物剤、ステロイド、免疫調節剤、皮膚病薬、抗血栓剤、抗貧血剤、Aβ特異的抗体、及び心血管作動薬(例えば、スタチン)も投与し得る。
一実施形態では、芳香族カチオン性ペプチドは、1つ以上の補因子、ビタミン、鉄キレート剤、抗酸化剤、フラタキシンレベル修飾剤、ACE阻害剤、及びβ−遮断薬と併用される。例としてであって限定的ではなく、かかる化合物は、CoQ10、レボカルニチン、リボフラビン、アセチル−L−カルニチン、チアミン、ニコチンアミド、ビタミンE、ビタミンC、リポ酸、セレン、βカロテン、ビオチン、葉酸、カルシウム、マグネシウム、リン、コハク酸塩、セレン、クレアチン、ウリジン、シトラテズムプレドニゾン(citratesm prednisone)、ビタミンK、デフェロキサミン、デフェリプロン、イデベノン、エリスロポエチン、17βエストラジオール、メチレンブルー、ならびにBML−210及び化合物106などのヒストンデアセチラーゼのうちの1つ以上を含んでもよい。
一実施形態では、芳香族カチオン性ペプチドは、1つ以上のコリンエステラーゼ阻害剤、NMDA拮抗薬、抗鬱剤、抗不安薬、抗精神病薬、三環系抗鬱剤、ベンゾジアゼピン、及び睡眠障害に関する薬品と併用される。例としてであって限定的ではなく、かかる化合物は、ドネペジル(Aricept(登録商標))、リバスティグミン(Exelon(登録商標))、ガランタミン(Razadyne(登録商標))、タクリン(Cognex(登録商標))、メマンチン(Namenda(登録商標))、シタロプラム(Celexa(登録商標))、フルオキセチン(Prozac(登録商標))、パロキセイン(Paxil(登録商標))、セルトラリン(Zoloft(登録商標))、トラゾドン(Desyrel(登録商標))、ロラゼパム(Ativan(登録商標))、オキサゼパム(Serax(登録商標))、テマゼパム、アリピプラゾール(Abilify(登録商標))、クロザピン(Clozaril(登録商標))、ハロペリドール(Haldol(登録商標))、オランザピン(Zyprexa(登録商標))、クエチアピン(Seroquel(登録商標))、リスペリドン(Risperdal(登録商標))、ジプラシドン(Geodon(登録商標))、カルバマゼピン(Tegretol(登録商標))、ノルトリプチリン、トラゾドン、ゾルピデム、ザレプロン、抱水クロラール、リスペリドン、オンランザピン、クエチアピン、及びハロペリドールのうちの1つ以上を含んでもよい。
一実施形態では、更なる治療薬を芳香族カチオン性ペプチドと組み合わせて対象に投与することで、相乗的治療効果を生み出すようにする。「相乗的治療効果」は、少なくとも2つの治療薬の組み合わせによって生み出され、かつ少なくとも2つの治療薬の単独投与から別途生じるものを超過する、相加を上回る治療効果を指す。1つの利点としては、医学的疾患または障害の治療における低用量の1以上の治療薬が、増加した治療有効性及び減少した副作用をもたらすことが挙げられるが、これらに限定されない。
複数の治療薬(芳香族カチオン性ペプチドを含む)は、任意の順序で、または更には同時に投与してもよい。同時の場合には、複数の治療薬は、単回の統合形態で、また複数の形態で適用し得る(例示目的のみで、単個の丸剤または2個の別個の丸剤のいずれかとして)。治療薬のうちの1個を複数投薬で与えてもよく、あるいは両方を複数投薬として与えてもよい。同時でない場合には、複数投薬間のタイミングは、0週間超から4週間未満までで異なり得る。加えて、組み合わせ方法、組成物、及び剤型は、2個の薬剤の使用に限定されない。
本技術を以下の実施例によって更に例解するが、これらは、いかようにも限定的であると解釈されるべきでなはい。
一般的方法
試薬D−Arg−2′,6′−Dmt−Lys−Phe−NH2(SS−31)は、Stealth Peptides Inc.,Newton Centre,MAによって提供された。D−Arg−2′,6′−Dmt−Lys−Ald−NH2([ald]SS−31)は、標準的な固相ペプチド合成を使用して合成した(Dalton Pharma Services,Toronto,Ontario,Canada)。D−Arg−2′,6′−Dmt−Lys−Phe−NH2(SS−31)及びD−Arg−2′,6′−Dmt−Lys−Ald−NH2([ald]SS−31)の水性原液を調製した。1−パルミトイル−2−オレオイル−sn−グリセロ−3−リン酸塩(POPA)、1−パルミトイル−2−オレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(POPC)、1−パルミトイル−2−オレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホ−L−セリン(POPS)、テトラミリストイルカルジオリピン(TMCL)、テトラオレオイルカルジオリピン(TOCL)、及びテトラリノレオイルカルジオリピン(TLCL)を、Avanti Polar Lipids Inc.(Alabaster,AL)から入手した。主にTLCLからなる牛心カルジオリピンは、Sigma(St.Louis,MO)から購入した。無水硝酸銅(II)水和物、無水塩化鉄(III)、及び無水塩化亜鉛もSigmaから入手した。無水塩化銅(II)は、Avantor Performance Materials(Center Valley,PA)から入手した。ヒト配列に対応するAβ1-42ペプチドは、Life Technologies(Carlsbad,CA)から入手した。
Aβ1-42ペプチドのオリゴマー形成:Aβ1-42ペプチドを、1.5mLの1:1の水/アセトニトリル溶液中に溶解させた。500μLのアリコートを、メタノール/ドライアイス浴中で凍らせた後、凍結乾燥した。凍結乾燥後、各アリコートを20μLのDMSO中に溶解させた。その後、アリコートをボルテックスし、遠心分離させ、室温の水槽中で超音波処理した。200μLの濾過した1倍PBS及び20μLの2%SDSを続けて添加した。Aβ1-42ペプチド溶液を、6時間37℃でインキュベートした。続いて580μLの水をAβ1-42ペプチド溶液に添加し、次いで37℃で16時間インキュベーションした後、4℃で貯蔵した。
Aβ1-42−カルジオリピン−Cu2+複合体オキシゲナーゼ活性の測定:Aβ1-42−カルジオリピン−Cu2+オキシゲナーゼ活性を、Amplex Redキットを使用して測定した。Amplex Redは、1:1の化学量論比でH22と反応して、レゾルフィンと呼ばれる高度に蛍光性の誘導体(λex/λem=570/585nm)を産生する染色剤である。H22を欠いているAmplex反応におけるペルオキシダーゼ活性の存在が、Amplex Red試薬と溶液中の酸素との間の反応に起因するオキシゲナーゼ活性を示す。全ての実験は、H22が不在の中で実施した。反応に添加した最後の試薬であるAmplex Redのインキュベーション直後に測定値をとった。反応を更に10分間進行させた。この10分にわたる連続経時変化データを、マイクロプレート分光蛍光光度計(Molecular Devices,Sunnyvale,CA)を使用して得た。
芳香族カチオン性ペプチドのAβ1-42オリゴマーとの相互作用:D−Arg−2′,6′−Dmt−Lys−Ald−NH2([ald]SS−31)は、D−Arg−2′,6′−Dmt−Lys−Phe−NH2(SS−31)の誘導体を含有するアラダン(ald)である。Birk et al.,J Am Soc Nephrol.24(8):1250−1261(2013)を参照されたい。極性感受性の蛍光アミノ酸であるAldは、その環境の極性が減少し、その発光最大値(λmax)がブルーシフトを受けるにつれて、発光強度の増加を呈する。故に、D−Arg−2′,6′−Dmt−Lys−Ald−NH2([ald]SS−31)とリン脂質との間の相互作用は、ペプチドの蛍光スペクトルの観察可能な移行を引き起こす。Birk et al.,J Am Soc Nephrol.24(8):1250−1261(2013)を参照されたい。D−Arg−2′,6′−Dmt−Lys−Ald−NH2([ald]SS−31)の蛍光スペクトルを分析して(Hitachi F−4500蛍光分光光度計)、ペプチドとAβ1-42オリゴマーとの間の相互作用を評価した。発蛍光団のアラダンを対照として使用した。全ての実験は、生理学的pHの環境を再現するために、20mMのHepes(pH7.4)中で実施した。
Aβ1-42オリゴマーと複合体化させた芳香族カチオン性ペプチドの濁度測定:芳香族カチオン性ペプチド及び/またはAβ1-42オリゴマーを含有する溶液の濁度を、λ=633nmでの直角散乱によって測定した(Hitachi F−4500蛍光分光光度計)。全ての実験は、Hepes(pH7.4)中で実施し、即座にスキャンした。
透過電子顕微鏡法(TEM):TEMを行って、Aβ1-42オリゴマーをD−Arg−2′,6′−Dmt−Lys−Ald−NH2([ald]SS−31)と接触させたときに産生された構造を視覚化した。サンプルを染色の約1時間前に調製した。サンプルは、Aβ1-42及びD−Arg−2′,6′−Dmt−Lys−Ald−NH2([ald]SS−31)を、最終濃度30μMのAβ1-42及び30μMのD−Arg−2′,6′−Dmt−Lys−Ald−NH2([ald]SS−31)になるまで50μLのHepes(pH7.4)に添加することによって調製した。その後、サンプルを7分間10,000rpmで遠心分離させた。続いて上清を除去し、ペレットを20μLのHepes(pH7.4)中で再懸濁させた。再懸濁後、サンプルを室温の水中で10分間超音波処理した。次に、10μLの各サンプル溶液を、ホルムバールで被膜した400メッシュのコッパーグリッド(Electron Microscopy Sciences,Hatfield,PA)上に置いた。サンプルを1.5%の酢酸ウラニル(水性)で染色した。酢酸ウラニルを1分間インキュベートした後、Whatman No.1(定性)濾紙によって吸い取った。この染色手順を2回繰り返した後、デジタル電子顕微鏡(JEOL USA JEM−1400)を使用して標本を検査した。
実施例1:Aβオリゴマーは、Cu2+イオンの存在下でカルジオリピンと相互作用して、Aβ1-42媒介性オキシゲナーゼ活性を刺激する。
Aβ1-42オリゴマー、カルジオリピン、及びシトクロムcでのAmplex Redアッセイは、オキシゲナーゼ活性を呈さなかった。同様に、Aβ1-42オリゴマー、カルジオリピン、シトクロムc、及び塩化第一銅(CuCl2)を用いたAmplex Redアッセイも、オキシゲナーゼ活性を示さなかった。しかしながら、図1に示すように、CuCl2の存在でのカルジオリピン及びAβ1-42オリゴマーのインキュベーションは、Aβ1-42媒介性オキシゲナーゼ活性を促進する。
銅、亜鉛、及び鉄レベルは、老化にあるヒトの脳中で上昇する。故に、FeCl3、ZnCl2、及びCuCl2をAβ1-42及びカルジオリピンとインキュベートして、これらの金属のうちのどれがAβ1-42媒介性オキシゲナーゼ活性を刺激する能力があるのかを決定した。図1Aによって示すように、CuCl2は、Aβ1-42媒介性オキシゲナーゼ活性を盛んに刺激した。例えば、カルジオリピン及びAβ1-42オリゴマーの10μMのCuCl2とのインキュベーションは、金属処理していない対照と比較して500%を上回るAβ1-42媒介性オキシゲナーゼ活性の増加をもたらした。図1Aを参照されたい。
同様のレベルのAβ1-42媒介性オキシゲナーゼ活性がCu(NO32でも観察された。図1Bによると、カルジオリピン及びAβ1-42オリゴマーの10μMのCu(NO32とのインキュベーションも、金属処理していない対照と比較して500%のAβ1-42媒介性オキシゲナーゼ活性の増加をもたらした。これは、Cu2+イオン(Cu(NO32及びCuCl2など)が、Aβ1-42媒介性オキシゲナーゼ活性の刺激に不可欠であることを示す。したがって、図1Cは、Cu2+イオンが、用量依存的様式でAβ1-42媒介性オキシゲナーゼ活性を刺激することを示す。
これらの結果は、Aβオリゴマーが、Cu2+イオンの存在下でカルジオリピンと相互作用して、Aβ1-42媒介性オキシゲナーゼ活性を刺激することを示す。
実施例2:カルジオリピンアイソフォーム1,1’,2,2’−テトラリノレオイルカルジオリピン(TLCL)は、Aβ1-42媒介性オキシゲナーゼ活性のCu2+依存性の刺激に必要とされる。
Aβオリゴマーを、Amplex Red、30μMのCuCl2、及びPOPA、POPC、POPS、またはTLCLの4つの異なる型のリン脂質のうちの1つとインキュベートした。図2Bに示すように、TLCL以外のリン脂質は、Cu2+イオンの存在下でAβ1-42媒介性オキシゲナーゼ活性を刺激することができない。この結果は、Aβ1-42媒介性オキシゲナーゼ反応が、単にTLCLリン脂質のアニオン電荷によって推進されないことを示す。
カルジオリピンは3つの構造型で存在し、TLCLが最も不飽和である。図2Aを参照されたい。Aβオリゴマーを、Amplex Red、30μMのCuCl2、ならびにTLCL、TOCL、及びTMCLの3つのカルジオリピンアイソフォームのうちの1つとインキュベートした。図2Cは、TLCLが、Cu2+イオンの存在下でAβ1-42媒介性オキシゲナーゼ活性を刺激することができる唯一のカルジオリピンアイソフォームであることを示す。更に、図3Aは、TLCLが、用量依存的様式でAβ1-42媒介性オキシゲナーゼ活性を増加させることを示す。同様に、図3Bは、Aβオリゴマーの濃度が、Aβ1-42媒介性オキシゲナーゼ活性のレベルと直接的に相関することを示す。
これらの結果は、TLCLとAβオリゴマーとの両方が、Aβ1-42媒介性オキシゲナーゼ活性のCu2+依存性の刺激に不可欠であることを示す。
実施例3:芳香族カチオン性ペプチドは、用量依存的様式でAβ1-42媒介性オキシゲナーゼ活性を阻害する。
Amplex Red、30μMのCuCl2、及びTLCLとインキュベートしたAβオリゴマーを、異なる濃度のD−Arg−2′,6′−Dmt−Lys−Phe−NH2(SS−31)及びD−Arg−2′,6′−Dmt−Lys−Ald−NH2([ald]SS−31)に曝露した。図4Bに示すように、芳香族カチオン性ペプチドは、用量依存的様式でAβ1-42媒介性オキシゲナーゼ活性を阻害した。10μMのD−Arg−2′,6′−Dmt−Lys−Phe−NH2(SS−31)または10μMのD−Arg−2′,6′−Dmt−Lys−Ald−NH2([ald]SS−31)による処理は、未処理の対照と比較して90%のAβ1-42媒介性オキシゲナーゼ活性の減少を示した。更に、100μMのD−Arg−2′,6′−Dmt−Lys−Phe−NH2(SS−31)または100μMのD−Arg−2′,6′−Dmt−Lys−Ald−NH2([ald]SS−31)への曝露は、未処理の対照と比較してAβ1-42媒介性オキシゲナーゼ活性の完全阻害をもたらした。
これらの結果は、血液脳関門を渡ることができるD−Arg−2′,6′−Dmt−Lys−Phe−NH2(SS−31)及びD−Arg−2′,6′−Dmt−Lys−Ald−NH2([ald]SS−31)などの芳香族カチオン性ペプチドが、毒性のAβ1-42媒介性オキシゲナーゼ活性を阻害し得ることを示す。このように、これらの結果は、本技術の芳香族カチオン性ペプチドは、ベータアミロイドペプチド(Aβ)毒性と関連する疾患を患う対象において、Aβ1-42媒介性オキシゲナーゼ活性を減少させ、神経細胞アポトーシスまたはミトコンドリア機能不全を予防するための方法において有用であることを示す。
実施例4:芳香族カチオン性ペプチドとAβオリゴマーとの間の相互作用。
芳香族カチオン性ペプチドD−Arg−2′,6′−Dmt−Lys−Ald−NH2([ald]SS−31)とAβオリゴマーとの間の相互作用を、Birk et al.,2013に記載の発光スペクトル技法を使用して調査した。アラダン(Ald)を陰性対照として使用した。図5に示すように、D−Arg−2′,6′−Dmt−Lys−Ald−NH2([ald]SS−31)は、1μMのAβオリゴマーに遭遇したときにブルーシフトを呈し、これは即ち、λmaxが535nmから465nmに移行したということである。このブルーシフト及び増加した蛍光強度は、ペプチドのアラダン部分が、Aβオリゴマーの疎水性環境に埋め込まれていることを示す。一方、Aldは、1μMのAβオリゴマーに接触したときに移行を呈さず、これは即ち、λmaxが535nmに留まったということである。
これらの結果は、D−Arg−2′,6′−Dmt−Lys−Ald−NH2([ald]SS−31)が、Aβオリゴマーと特異的に相互作用し、かつAld残基のアーチファクトではないことを示す。
実施例5:芳香族カチオン性ペプチドは、原線維形成に対するAβ均衡を推進する。
実施例4に記載の相互作用の生物学的関連性を更に調査するために、濁度試験を行って、Aβオリゴマーの全体構造に与えるD−Arg−2′,6′−Dmt−Lys−Ald−NH2([ald]SS−31)の影響を決定した。図6に示すように、D−Arg−2′,6′−Dmt−Lys−Ald−NH2([ald]SS−31)のAβ1-42オリゴマーへの添加は、Aβ1-42オリゴマー対照サンプル中で観察されたものと比較して6倍の光散乱の増加をもたらした。この濁度の観察可能な増加は、Aβオリゴマーの凝集の変化を表す。しかしながら、D−Arg−2′,6′−Dmt−Lys−Phe−NH2(SS−31)またはAldのAβ1-42オリゴマーへの添加は、濁度の変化を引き起こさず、Aβ1-42オリゴマー対照サンプル中で観察された光散乱、即ち、約180RFUに似ていた。
Aβオリゴマーの凝集パターンを電子顕微鏡を使用して分析した。Aβオリゴマー及びAβ原線維を対照として使用した。それぞれ図7A及び図7Dを参照されたい。図7Bは、D−Arg−2′,6′−Dmt−Lys−Ald−NH2([ald]SS−31)誘発性Aβ原線維化の進行を示す。図7Bの上部では、一領域におけるAβオリゴマーの密度の増加がある。かかるオリゴマー凝集は、原線維形成のための前提条件である。加えて、前原線維が図7Bの右下の部分に存在する。前原線維は、AβオリゴマーとAβ原線維との間の中間段階を表す。最後に、前原線維のより密度の高い区画が図7Bの左下の部分に存在し、これは、これらの構造の図7Cに示す原線維段階に進行する能力を表す。
また更に、AβオリゴマーのD−Arg−2′,6′−Dmt−Lys−Ald−NH2([ald]SS−31)とのインキュベーションは、原線維化プロセスの動態を改変した。具体的には、通常、Aβオリゴマーが自然の原線維化を受けるのには少なくとも7日かかる。AβオリゴマーのD−Arg−2′,6′−Dmt−Lys−Ald−NH2([ald]SS−31)との25分間のインキュベーションは、Aβ原線維の形成をもたらし、これは、原線維対照サンプル中で見られたものと同一であった。それぞれ図7C及び図7Dを参照されたい。故に、D−Arg−2′,6′−Dmt−Lys−Ald−NH2([ald]SS−31)による処理は、原線維形成の速度を400倍増加させた。
これらの結果は、本技術の芳香族カチオン性ペプチドが、非毒性Aβ原線維の形成を刺激することによって、毒性Aβオリゴマーの細胞外濃度を減少させ得ることを示す。このように、これらの結果は、本技術の芳香族カチオン性ペプチドが、毒性Aβオリゴマーの細胞への進入を予防し、ベータアミロイドペプチド(Aβ)毒性と関連する疾患を患う対象における既存のAβオリゴマー濃度を減少させるための方法において有用であることを示す。
均等物
本技術は、本技術の個別の態様の単個の例示として意図される本出願に記載の特定の実施形態に関して限定されない。本技術の多くの修正及び変形が、当業者には明らかとなるように、その趣旨及び範囲から逸脱することなく行われ得る。本明細書に列挙するものに加えて、本技術の範囲内の機能的に均等である方法及び装置が、前述の説明から当業者には明らかとなるであろう。かかる修正及び変形は、添付の特許請求の範囲内であると意図される。本技術は、添付の特許請求の範囲の条項、及びかかる特許請求の範囲が権利を有する均等物の全範囲によってのみ限定される。本技術が、当然異なり得る、特定の方法、試薬、化合物、組成物、または生体系に限定されないことを理解されたい。また、本明細書で使用される用語が、特定の実施形態を説明することのみを目的とし、限定的であるとは意図されないことを理解されたい。
加えて、本開示の特徴または態様がマーカッシュ群に関して説明される場合、当業者は、本開示も、それにより、マーカッシュ群の任意の個別の要素または要素の下位群に関して説明されることを認識するであろう。
当業者によって理解されるであろう通り、あらゆる目的で、特に書面での説明を提供することに関して、本明細書に記載される全ての範囲は、あらゆる可能性のあるそれらの下位範囲及び下位範囲の組み合わせも包含する。記載するいずれの範囲も、同じ範囲が、少なくとも等しく2分、3分、4分、5分、10分などに分割されることを十分に説明しそれを可能にするものであると簡単に認識され得る。非限定的な例として、本明細書で考察される各範囲は、下部3分の1、中部3分の1、及び上部3分の1などに容易に分割され得る。また当業者によって理解されるであろう通り、「最大」、「少なくとも」、「超」、「未満」などの全ての語は、引用される数を含み、上で考察した通り、続いて下位範囲に分割され得る範囲を指す。最後に、当業者によって理解されるであろう通り、範囲は各個々の要素を含む。故に、例えば、1〜3個の細胞を有する群は、1、2、または3個の細胞を有する群を指す。同様に、1〜5個の細胞を有する群は、1、2、3、4、または5個の細胞を有する群を指す(以降同様)。
本明細書で言及または引用する全ての特許、特許出願、仮出願、及び出版物は、それらが本明細書の明白な教示に反しない限度において、全ての図面及び表を含むそれらの全体が参照により組み込まれる。
他の実施形態は、以下の特許請求の範囲内に示される。

Claims (16)

  1. 治療有効量の芳香族カチオン性ペプチドまたはその薬学的に許容される塩を対象に投与することを含む、Aβ毒性を伴う疾患を患う対象におけるベータアミロイド(Aβ)誘発性オキシゲナーゼ活性を減少させるための方法。
  2. 前記芳香族カチオン性ペプチドが、2′,6′−Dmt−D−Arg−Phe−Lys−NH2(SS−02)、Phe−D−Arg−Phe−Lys−NH2(SS−20)、D−Arg−2′,6′−Dmt−Lys−Phe−NH2(SS−31)、及びD−Arg−2′,6′−Dmt−Lys−Ald−NH2([ald]SS−31)からなる群から選択される1つ以上のペプチドを含む、請求項1に記載の方法。
  3. 前記塩が、酢酸塩、酒石酸塩、またはトリフルオロ酢酸塩である、請求項1に記載の方法。
  4. 前記芳香族カチオン性ペプチドが、経口、非経口、静脈内、皮下、経皮、局所、または吸入投与される、請求項1に記載の方法。
  5. 前記疾患が、アルツハイマー病、レビー小体型認知症、封入体筋炎、及び脳アミロイド血管症からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
  6. 治療が、記憶喪失、興奮、気分変動、判断力の低下、認知症、抽象的思考が困難になる、慣れた作業が困難になる、認知的困難、見当識障害、コミュニケーション能力の減退、反復的な発話または動作、視覚または空間関係に関する困難、引きこもり、抑鬱、認知喪失、運動能力及び触覚の喪失、妄想、被害妄想、言葉または身体的攻撃性、ならびに睡眠障害からなる群から選択される、アルツハイマー病の1つ以上の症状を減少させるか、または改善することを含む、請求項5に記載の方法。
  7. Aβ毒性を伴う疾患を患う対象における細胞外ベータアミロイド(Aβ)オリゴマーを減少させるための方法であって、治療有効量の芳香族カチオン性ペプチドまたはその薬学的に許容される塩を前記対象に投与することを含む、前記方法。
  8. 前記芳香族カチオン性ペプチドが、2′,6′−Dmt−D−Arg−Phe−Lys−NH2(SS−02)、Phe−D−Arg−Phe−Lys−NH2(SS−20)、及びD−Arg−2′,6′−Dmt−Lys−Ald−NH2([ald]SS−31)からなる群から選択される1つ以上のペプチドを含む、請求項7に記載の方法。
  9. 前記塩が、酢酸塩、酒石酸塩、またはトリフルオロ酢酸塩である、請求項7に記載の前記方法。
  10. 前記芳香族カチオン性ペプチドが、経口、非経口、静脈内、皮下、経皮、局所、または吸入投与される、請求項7に記載の方法。
  11. 前記疾患が、アルツハイマー病、レビー小体型認知症、封入体筋炎、及び脳アミロイド血管症からなる群から選択される、請求項7に記載の方法。
  12. 治療が、記憶喪失、興奮、気分変動、判断力の低下、認知症、抽象的思考が困難になる、慣れた作業が困難になる、認知的困難、見当識障害、コミュニケーション能力の減退、反復的な発話または動作、視覚または空間関係に関する困難、引きこもり、抑鬱、認知喪失、運動能力及び触覚の喪失、妄想、被害妄想、言葉または身体的攻撃性、ならびに睡眠障害からなる群から選択される、アルツハイマー病の1つ以上の症状を減少させるか、または改善することを含む、請求項11に記載の方法。
  13. それを必要とする対象におけるアルツハイマー病を治療するための方法であって、治療有効量のD−Arg−2′,6′−Dmt−Lys−Ald−NH2([ald]SS−31)またはその薬学的に許容される塩を投与することを含む、前記方法。
  14. 治療が、記憶喪失、興奮、気分変動、判断力の低下、認知症、抽象的思考が困難になる、慣れた作業が困難になる、認知的困難、見当識障害、コミュニケーション能力の減退、反復的な発話または動作、視覚または空間関係に関する困難、引きこもり、抑鬱、認知喪失、運動能力及び触覚の喪失、妄想、被害妄想、言葉または身体的攻撃性、ならびに睡眠障害からなる群から選択される、アルツハイマー病の1つ以上の症状を減少させるか、または改善することを含む、請求項13に記載の方法。
  15. D−Arg−2′,6′−Dmt−Lys−Ald−NH2([ald]SS−31)が、経口、非経口、静脈内、皮下、経皮、局所、または吸入投与される、請求項13に記載の方法。
  16. 前記塩が、酢酸塩、酒石酸塩、またはトリフルオロ酢酸塩である、請求項13に記載の方法。
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