JP2016532435A - 多能性幹細胞の有用性および安全性を特徴付けるための初期発生ゲノムアッセイ - Google Patents

多能性幹細胞の有用性および安全性を特徴付けるための初期発生ゲノムアッセイ Download PDF

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Abstract

本発明は、概して、幹細胞についての初期発生参照データのセットまたは「系列スコアカード」、ならびに、幹細胞株の機能性および適切性を予測するための系統スコアカードを生成するための方法、システム、およびキットに関する。一部の局面において、スコアカードを生成するための方法は、幹細胞株の多能性および分化能ならびに所望の使用のためのその機能性および/または適切性を予測するための、複数の初期発生遺伝子(多能性遺伝子、初期外胚葉遺伝子、初期中胚葉遺伝子、および初期内胚葉遺伝子など)の遺伝子発現を測定する段階を含む。一部の態様において、参照スコアカードは、幹細胞株の有用性を正確に予測し、かつ/または幹細胞株の特異的な特徴を同定する、例えば、下流の適用(例えば、治療的使用、薬物スクリーニング、毒性アッセイ、所望の系列への分化など)のためのその適切性を決定するために、テスト幹細胞株スコアカードと比較することができる。

Description

関連出願の相互参照
本願は、米国仮出願第61/833,092号(2013年6月10日出願)の恩典を米国特許法第119条の下で主張し、その各々の内容が、その全体において参照により本明細書に組み入れられる。
発明の分野
本発明は、さらなる使用のために多能性幹細胞株の選択を可能にするために、多能性幹細胞集団を特徴付けるためのアレイおよび方法に関する。
政府支援
本発明は、国立衛生研究所により授与された、エピゲノミクスに関するNIHロードマップイニシアティブ、助成金番号U01ES017155下で、部分的に、政府の支援で成された。米国政府は、本発明において一定の権利を有する。
配列表
本願は、ASCIIフォーマットで電子的に提出されており、かつ本明細書にその全体が参照により組み入れられる配列表を含む。前記ASCIIコピーは、2014年6月6日に作成され、002806-077891-PCT_SL.txtと名付けられ、436,312バイトのサイズである。
発明の背景
再生医療の1つの目標は、組織の修復および再生のために、多能性細胞を他の細胞型に変換することができることである。ヒト多能性細胞株は、初期胚に類似している、あるレベルの発達可塑性を示し、3つ全ての胚性胚葉へのインビトロ分化を可能にする(Rossant, 2008; Thomson et al., 1998)。同時に、未分化状態での多くの継代のために、これらの多能性細胞株を維持することが可能である(Adewumi et al., 2007)。これらのユニークな特徴によって、ヒト胚性幹(ES)細胞およびヒト誘導多能性幹(iPS)細胞は生物医学研究のための有望なツールとなる(Colman and Dreesen, 2009)。ES細胞株は既に、単一遺伝子ヒト疾患の細胞基盤を解剖するためのモデルシステムとして確立されている。
しかし、いくつかの最近の発展によって、多能性ヒト細胞株の挙動を予測することができるアッセイについての必要性が大きく増加している。まず、多くの研究室によるヒトES細胞株の継続的な誘導および米国における資金制限の解除によって、研究者が選択することができるES細胞株の数が実質的に増加している。加えて、全てのヒトES細胞株が、すべての目的のために等しく適しているわけではないことが明らかになっている(Osafune et al., 2008)。これは、任意の新たな研究プロジェクトが、目的の適用のための最も適格である細胞株の意図的で情報に基づく選択を含むべきであることを示唆している。
患者からの体細胞をiPS細胞に再プログラムする能力も、研究コミュニティに利用可能な、およびそれによって使用される多能性細胞株の数のさらなる増加につながっている。研究者が既存の細胞株を集める際、または目的の適用のために新たなものを誘導する際、使用のために最も適当である細胞株を選択する方法に関する情報またはガイダンスはほとんどない。
ヒト多能性幹細胞株の将来の適用は、人の遺伝子型およびそれらの環境の間での複雑な相互作用の結果として生じる一般的な疾患の試験を含む可能性が高い(Colman and Dreesen, 2009)。また、多能性細胞は、最終的には、移植医学のための細胞および組織の両方の再生可能な供給源として役立つ(Daley, 2010)。多能性幹細胞のためのこれらの提案された適用の両方で、確実に、再現性よく、効率的に、かつ安定的に疾患関連の細胞型に分化する細胞株の選択が要求される。しかし、異なるヒトES細胞株またはiPS細胞株が、3つの胚性胚葉の異なる誘導体に分化する効率において、有意な量の変動が報告されている(Di Giorgio et al., 2008; Osafune et al., 2008)。さらに、iPS細胞は、数百の遺伝子の発現(Chin et al., 2009)、および特定の系列を下方分化するそれらの能力(Hu et al., 2010)において、ES細胞とは全体として異なっていることが報告されている。一部のiPS細胞株は、ES細胞と同じ効率で分化することができるが(Boland et al., 2009; Miura et al., 2009; Zhao et al., 2009)、iPS細胞の公開された遺伝子発現シグネチャーは再現可能ではない(Stadtfeld et al., 2010)。ヒト多能性幹細胞の長期増殖能および分化能は、それらが、疾患モデル化および移植治療のために、大量の種々の細胞型を産生することができることを示唆する。しかし、胚性幹(ES)細胞または誘導多能性幹(iPS)細胞を、治療適用または疾患モデル化において、あるいは薬物スクリーニングまたは毒性アッセイにおいて、自信を持って使用することができるには、ヒト多能性細胞株の間での変動の程度を理解しなければならない。特に、細胞株から細胞株への変動を同定することができるベースラインを提供し、特定の使用のために最も良く適した特定の多能性幹細胞の体系的な選択を可能にするために、高質の多能性細胞株の間での通常の変動の基準を確立することが必要である。
従って、異常細胞(例えば、非多能性幹細胞、または所望の系列に沿って分化する可能性の低い細胞)の投与を減らすために、多能性幹細胞のモニタリングおよび検証を含め、細胞を特徴付け検証するための、ならびに、例えば、多能性幹細胞の質、および例えば特定の細胞系列に沿って分化するその傾向を、例えば、治療投与、疾患モデル化、薬物開発、およびスクリーニングおよび毒物アッセイなどにおけるその使用前に決定するための、新規な効果的で効率的な方法についての必要性が当技術分野にはある。
本発明は、細胞を特徴付けるために使用することができる、初期発生遺伝子バイオマーカーのセット、またはそのサブセットに関する。一態様において、これらのマーカーを使用して、多能性幹細胞集団の分化能を決定することができる。本発明の局面は、それらの一般的な質(例えば、多能性能力)および分化能について、多能性細胞を含む細胞を迅速かつ安価にスクリーニングするためのアレイ、アッセイ、システム、キット、および方法に関する。本明細書において開示する本発明は、従って、細胞の迅速な同定および選択、一部の例において、さらなる使用のために、または特定の有用性のために選ぶことができる細胞の自動選択を可能にするために、例えば、多能性幹細胞株を含む複数の幹細胞株における、初期発生遺伝子のセットの遺伝子発現シグネチャーのハイスループットスクリーニングを可能にする。したがって、一態様において、本発明は、初期発生遺伝子のセット、またはそれらのサブセットの遺伝子発現を測定することによる、誘導多能性幹細胞(iPSC)を含む多能性幹細胞の特徴付けの方法に関し、それによって、特定の細胞株が、方向付けられた分化レジメンおよびパラダイムにおいてどのように機能するかについて高度に予測的である。
多能性幹細胞株がどのように挙動するのか、あるいは、多能性幹細胞株を自然に分化させることなく、かつ/または種々の異なる細胞系列に沿って多能性幹細胞を分化させることなく、多能性幹細胞株が、いずれの細胞系列に分化するためのバイアスを有するのかを予測することは現在非常に困難である。多能性(例えば奇形腫形成など)を評価するための現在のシステムは、煩雑で時間がかかり、非常に高価であり、したがってこれらの方法が幹細胞の大規模な特徴付けにおいて有用になることが妨げられている。加えて、奇形腫形成は、細胞株がいずれの細胞系列に分化する可能性が高いのかを予測することができず、また、これらの方法は、最適以下の幹細胞株を同定することもできない。幹細胞株を特徴付けるための他の遺伝子発現解析システムは、多能性幹細胞を解析前の期間(例えば、約1週間)にわたり培養することを要し、あるいは多能性幹細胞を解析前の所定の期間にわたり、分化させる(例えば、方向付けられた分化)かまたは自然分化させることを要する。
本発明者らは、驚くべきことに、本明細書において記載する通り、発生の非常に早い段階において発現される遺伝子のサブセットの発現(本明細書において「初期発生遺伝子」と呼ぶ)が、幹細胞株が依然として多能性であるか否か、ならびに/あるいは幹細胞が、中胚葉、外胚葉、および/または内胚葉系列に沿って分化する傾向を有するか否かを、正確に予測することができることを発見した。例えば、本発明は、発生遺伝子の初期のセットの発現が、細胞の発生経路および分化経路に意味のある見通しを提供するという発見に基づく。
例えば、本明細書において開示する幹細胞株における初期発生遺伝子のセットの遺伝子発現を測定することにより、解析されている幹細胞株の分化効率および多能性を予見することができる。例えば、初期発生遺伝子のセットの発現レベルを測定することにより、本発明者らは、これらの遺伝子のレベルが、特定の系列(例えば、中胚葉、外胚葉、または内胚葉系列)に沿った多能性幹細胞株の分化の可能性の高い方向を決定するために高度に予測的であることを実証している。従って、本明細書において開示する本発明は広範な用途を有しており、所与の多能性幹細胞が、任意の所望の系列、例えば、造血系列、内胚葉系列、膵臓系列、神経系列(例えば運動神経系列など)などに沿ってどのように上手く分化するのかを見越して予測するために使用することができる。
したがって、解析される遺伝子は、発生の非常に初期の段階で発現されるため、本明細書において開示する本発明は、以前のアッセイにおけるものよりもずっと初期の時点で幹細胞集団の特徴付けを可能にするという点で、多能性幹細胞を特徴付けるために使用される他の遺伝子発現系を上回る有意な利点を有し、したがって、そのような特徴付けのための効率を増加させ、費用を低下させる。したがって、本明細書において開示する本発明は、多能性幹細胞株を特徴付けるための、迅速で安価な定量的アプローチを提供する。記載する方法は、従来の方法と比較し、細胞の分化能力を予測する際に高度に効率的であり、特定の目的または使用のために特に適切でありうる幹細胞株、あるいは特定の目的または使用のために不適切でありうる幹細胞株を同定することができる。追加的に、初期発生遺伝子のセットの発現の解析は、多能性幹細胞の系列の傾向を一度の解析で同定する際に高度に正確であり、したがって、反復の必要性を排除し、幹細胞集団を特徴付けるために要する費用および労力をさらに減少させる。
本明細書において実証する通り、多能性幹細胞株における初期発生遺伝子のセットの遺伝子発現解析は、胚2日目という初期に多能性幹細胞で実施することができ、それは、少なくとも5〜7日の胚年齢での、細胞で実施された解析から減少されている。EB形成条件におけるわずか2日間が、所与の幹細胞(例えば、ES細胞またはiPS細胞株)が所望の系列または表現型に分化する可能性の正確な予測を得るのに十分である。本明細書において記載するのは、EB形成条件におけるわずか2日後に分化能の正確な予測を可能にするマーカーのセットである。
したがって、遺伝子発現を測定する前の時間を短縮することは、それが「結果までの時間」を減少させ、また、インキュベータのスペースおよび培地交換についての必要性に関するロジスティカルな費用を最小限にする点で有利である。したがって、一部の態様において、初期発生遺伝子のセットの遺伝子発現の測定は、非常に初期の発生段階で、多能性幹細胞集団の分化能を決定することを可能にし、例えば、遺伝子発現解析は、少なくとも約2日、または少なくとも約3日、または少なくとも約4日、または少なくとも約5日の胚段階にある幹細胞集団で実施することができる。上で記載した通り、以前であれば研究者は、多能性幹細胞株が、胚段階7(胚様体7日;EB7)またはそれ以上(例えば、16日(EB16))に達するのを待つ、かつ/または、幹細胞株の分化能を決定するための解析を実施する前に、細胞を実際に分化させなくてはいけなかったであろう。
したがって、一部の態様において、中胚葉、内胚葉、および外胚葉系列のうちの少なくとも1つに分化する多能性細胞の能力が、胚様体(EB)形成条件または支持培地中での1日未満後、多能性幹細胞株において、表1および/または表2に列挙する初期発生遺伝子のセットの遺伝子発現を評価することにより決定される。一部の態様において、中胚葉、内胚葉、および外胚葉系列のうちの少なくとも1つに分化する多能性細胞の能力を、表1および/または表2に列挙する、少なくとも10個または少なくとも20個の初期発生遺伝子のセットの遺伝子発現を、EB形成条件もしくは支持培地中での0日の間、またはEB形成条件もしくは支持培地中での0〜14日間、例えば、EB形成条件もしくは支持培地中での少なくとも1日、または少なくとも2日、または少なくとも約3日、または少なくとも約4日、または少なくとも約5日、または少なくとも約6日、または少なくとも約7日、または約7日を上回り、例えば、EB形成条件もしくは支持培地中での5〜7日の間、またはEB形成条件もしくは支持培地中での約7〜10日の間、またはEB形成条件もしくは支持培地中での約10〜14日の間、またはEB形成条件もしくは支持培地中での14日間を上回り測定することにより決定する。
一部の態様において、中胚葉、内胚葉、および外胚葉系列の少なくとも1つへ分化する多能性細胞の能力を、HAND1、ESM1、HAND2、HOPX、BMP10、FCN3、およびGSCからなる群より選択される中胚葉初期発生遺伝子の群からの、少なくとも1つ、または少なくとも2つ、または少なくとも3つ、または少なくとも4つの遺伝子のセット、ならびに/あるいは、LEFTY1、EOMES、NODAL、およびFOXA2からなる群より選択される内胚葉初期発生遺伝子のセット、ならびに/あるいは、TRPM8、POU4F1、OLFM3、WNT1、LMX1A、およびCDH9からなる群より選択される外胚葉初期発生遺伝子のセット、ならびに/あるいは、IDO1、LCK、POU5F1、およびHESX1からなる群より選択される初期発生のセットの遺伝子発現を、EB形成条件もしくは支持培地中での0日の間、またはEB形成条件もしくは支持培地中での0〜14日間、例えば、EB形成条件もしくは支持培地中での少なくとも1日、または少なくとも2日、または少なくとも約3日、または少なくとも約4日、または少なくとも約5日、または少なくとも約6日、または少なくとも約7日、または約7日を上回り、例えば、EB形成条件もしくは支持培地中での5〜7日の間、またはEB形成条件もしくは支持培地中での約7〜10日の間、またはEB形成条件もしくは支持培地中での約10〜14日の間、またはEB形成条件もしくは支持培地中での14日間を上回り測定することにより決定する。
本明細書において開示する通り、幹細胞株における初期発生遺伝子のセットの発現の測定を、幹細胞株の多能性および/または分化能の単一指標として単独で実施することができる。実施例において実証する通り、本発明者らは、測定される初期発生遺伝子のセットを最適化しており、そのため、アレイまたはアッセイは、未分化の多能性細胞株から直接的に単離されたRNAを使用して幹細胞株の分化傾向および多能性を推定するために十分に高感度であり、例えば、アッセイおよびアレイによって、そうでなければ自己再生している培養培地または条件における低レベルの細胞分化を検出することができる。さらに、初期発生遺伝子のセットについての発現解析を、種々の異なるRNA調製方法、培養培地などを使用して実施することができる。本発明者らは、また、幹細胞株における初期発生遺伝子のセットの遺伝子発現を、マルチプレックスシステムにおいて、例えば、96または384ウェルプレートフォーマットにおいて解析することができることを実証しており、これは複数の幹細胞株を同時に解析することを可能にし、ハイスループットシステムにおいて実施されるこのアッセイの能力を実証している。
初期発生遺伝子のセットの発現を測定し、限定はしないが、多能性、複能性、単能性、または体性幹細胞(限定はしないが、前駆細胞、胚性幹(ES)細胞、体性幹細胞、癌幹細胞、前駆体細胞、誘導多能性幹(iPS)細胞、部分的誘導多能性(piPS)細胞、再プログラム細胞、直接再プログラム細胞などを含む)より選択される種々の異なる幹細胞の分化能を評価し、外胚葉、中胚葉、および内胚葉系列へ分化する幹細胞の傾向を決定し、かつ/あるいは、幹細胞株が、所望のおよび/または特定の発生経路に沿いかつ特定の細胞系列に分化する能力を有するか否かを予測することができる。
一部の態様において、本発明は、幹細胞が多能性であるか否かを決定するための、本明細書において開示するアレイ、アッセイ、および方法を使用することを企図すると同時に、任意の型の幹細胞を評価することができる。単純性のために、本明細書において多能性幹細胞に言及する場合、これは、多能性幹細胞および非多能性幹細胞の両方を包含する。一部の態様において、幹細胞は、多能性幹細胞である。
一部の態様において、初期発生遺伝子の定義されたセットの発現が、ハイスループット様式において解析され、例えば、複数の多能性幹細胞株における特定の幹細胞の特徴についてスクリーニングすることができる。初期発生遺伝子のセットは、本明細書において開示する通りの、表1からの初期発生遺伝子の任意の選択されたセットでありうる。一部の態様において、解析される初期発生遺伝子のセットは、表2において開示される群からの少なくとも3つの遺伝子を含む。一部の態様において、解析される初期発生遺伝子のセットは、表2からの少なくとも3つの遺伝子を含み、表1において開示される少なくとも10個または少なくとも20個の遺伝子の任意の組み合わせが、本明細書において開示する分化傾向アッセイにおいて評価されることができる。一部の態様において、解析される初期発生遺伝子のセットは、HAND1、ESM1、HAND2、HOPX、BMP10、FCN3、およびGSCからなる群より選択される中胚葉初期発生遺伝子の群からの、少なくとも1つ、または少なくとも2つ、または少なくとも3つ、または少なくとも4つまたはそれ以上の遺伝子、ならびに/あるいは、LEFTY1、EOMES、NODAL、およびFOXA2からなる群より選択される内胚葉初期発生遺伝子のセットからの、少なくとも1つ、または少なくとも2つ、または少なくとも3つ、または少なくとも4つまたはそれ以上の遺伝子、ならびに/あるいは、TRPM8、POU4F1、OLFM3、WNT1、LMX1A、およびCDH9からなる群より選択される外胚葉初期発生遺伝子のセットからの、少なくとも1つ、または少なくとも2つ、または少なくとも3つ、または少なくとも4つの遺伝子、ならびに/あるいは、IDO1、LCK、POU5F1、およびHESX1からなる群より選択される初期発生のセットからの、少なくとも1つ、または少なくとも2つ、または少なくとも3つ、または少なくとも4つの遺伝子を含む。
一部の態様において、初期発生遺伝子のセットの発現を測定し、所望の特徴(例えば、所望の系列に沿って分化する多能性および/または素因)を伴う適切な多能性幹細胞株またはクローンの自動選択を可能にすることができる。具体的には、本発明は、幹細胞株における初期発生遺伝子のセットの発現の測定に関し、初期発生遺伝子発現パターンの正常範囲から逸脱する幹細胞が除外されることが可能で、正常範囲に該当する細胞が、さらなる使用のために選択されることができるようにする。例えば、本明細書において開示する初期発生遺伝子のサブセットの発現についてスクリーニングする、または評価することができ、適当なマーカーセットを発現する多能性細胞についての事前に決定されたパラメータ内に適合しない場合、幹細胞は、廃棄され得る、つまりさらなる使用のために選択され得ない。統計解析方法を使用し、システムを自動化することができる。一部の態様において、表1に開示する初期発生遺伝子のセットの発現が、EB形成条件において、事前に定められた時点(例えば、少なくとも2日)であるが、EB形成条件(例えば、自己複製培養条件)においては5日未満、または7日未満の時点で、幹細胞株において解析される。
したがって、初期発生遺伝子のセットの発現を測定することにより、本発明者らは、その治療的な有用性および安全性プロファイルを予測するために(例えば、多能性幹細胞集団に、継続的な自己複製の素因があるか否か、および/または、多能性幹細胞が、治療的な使用のために移植される場合に重要である特定の系列に沿って分化するための、増加した効率を有するか否かを決定する)、幹細胞集団の分化傾向および多能性をモニターおよび検証するための、ならびに、また、いずれの系列および分化経路に、多能性幹細胞株が、効率的に分化するかを予測することを可能にする、効率的で効果的な方法を実証している。そのようなものとして、本明細書において開示する本発明によって、ユーザーが、所望の特徴を伴う幹細胞株を選択するかまたは選ぶことが可能となり、例えば、他の多能性幹細胞と類似の特徴を伴う幹細胞、または所望の細胞型に最適に分化するか特定の細胞系列に沿って最適に分化する素因を有する幹細胞についてポジティブ選択することが可能になる。あるいは、本発明によって、望ましくない特徴を伴う幹細胞、例えば、非多能性である、かつ/または、研究者により望まれない細胞型に分化する可能性が高い細胞をネガティブ選択する、例えば、同定する、かつ場合によっては廃棄することが可能になる。したがって、本発明によって、幹細胞株の可能性の高い分化の方向を決定することが可能になり、ひいては、下流の適用についてのその適切性、例えば、治療的な使用、薬物スクリーニングおよび毒性アッセイ、所望の細胞系列への分化などについてのその適切性などについて、特定の幹細胞集団を同定する、および/または選ぶことが可能になる。治療的適用および/または投与の前に、いずれの系列に幹細胞株が分化する可能性が高いのかを予測する能力によって、異常細胞の導入を回避することができる(例えば、非多能性幹細胞株および/または特定の所望の系列に沿って分化する可能性が低い細胞、または望ましくない系列に沿って分化する増加傾向を有する細胞の投与を回避することができる)。
したがって、本発明の一局面は、多能性幹細胞の分化能を特徴付けるためのアレイ組成に関し、核酸、例えば、オリゴヌクレオチドまたはプライマー(例えば、プライマー対)を含み、それによって、表1に列挙するものより選択される初期発生遺伝子の任意の組み合わせのmRNAが増幅される。一部の態様において、アレイは、核酸、例えば、オリゴヌクレオチドまたはプライマーを含み、それによって、表1または表2に列挙するものより選択される少なくとも3つの初期発生遺伝子のmRNAが増幅される。一部の態様において、増幅された発生遺伝子は、表1および/または表2に列挙されるものより選択される遺伝子をコードする核酸と少なくとも90%同一である、あるいはそれと特異的にハイブリダイズする。
一部の態様において、アレイは、少なくとも10、または少なくとも約20、または少なくとも約30、または30〜60、または60〜90、または90を上回る異なる核酸(例えば、オリゴヌクレオチド)、あるいは少なくとも10、または少なくとも約20、または少なくとも約30、または30〜60、または60〜90、または90を上回る核酸(例えば、プライマー)の対を含み、それによって、表1または表2に列挙されるものより選択される初期発生遺伝子の組み合わせのmRNAが増幅される。
一部の態様において、アレイは、表1よりおよび/または表2より選択される、少なくとも1つの多能性幹細胞遺伝子、少なくとも1つの初期中胚葉発生遺伝子、少なくとも1つの外胚葉発生遺伝子、および少なくとも1つの内胚葉発生遺伝子のmRNAを増幅する核酸(例えば、オリゴヌクレオチドまたはプライマー)を含む。一部の態様において、アレイは、表1より選択される、少なくとも4つの多能性幹細胞遺伝子、少なくとも4つの初期中胚葉発生遺伝子、少なくとも4つの外胚葉発生遺伝子、および少なくとも4つの内胚葉発生遺伝子のmRNAを増幅する核酸(例えば、オリゴヌクレオチドまたはプライマー)を含む。一部の態様において、アレイは、HAND1、ESM1、HAND2、HOPX、BMP10、FCN3、およびGSCからなる群より選択される中胚葉初期発生遺伝子の群からの、少なくとも1つ、または少なくとも2つ、または少なくとも3つ、または少なくとも4つの遺伝子もしくはそれ以上、ならびに/あるいは、LEFTY1、EOMES、NODAL、およびFOXA2からなる群より選択される内胚葉初期発生遺伝子のセットからの、少なくとも1つ、または少なくとも2つ、または少なくとも3つ、または少なくとも4つの遺伝子もしくはそれ以上、ならびに/あるいは、TRPM8、POU4F1、OLFM3、WNT1、LMX1A、およびCDH9からなる群より選択される外胚葉初期発生遺伝子のセットからの、少なくとも1つ、または少なくとも2つ、または少なくとも3つ、または少なくとも4つの遺伝子、ならびに/あるいは、IDO1、LCK、POU5F1、およびHESX1からなる群より選択される初期発生のセットからの、少なくとも1つ、または少なくとも2つ、または少なくとも3つ、または少なくとも4つの遺伝子を増幅する核酸(例えば、オリゴヌクレオチドまたはプライマー)を含む。
一部の態様において、アレイは、核酸、例えば、オリゴヌクレオチドまたはプライマーを含み、それによって、1〜10個の対照遺伝子(例えば、限定はしないが、ACTB、JARID2、CTCF、SMAD1、GAPDH、βアクチン、EIF2B、RPL37A、CDKN1B、ABL1、ELF1、POP4、PSMC4、RPL30、CASC3、PES1、RPS17、RPSL17L、CDKN1A、MRPL19、MT-ATP6、GADD45A、PUM1、YWHAZ、UBC、TFRC、TBP、RPLP0、PPIA、POLR2A、PGK1、IPO8、HMBS、GUSB、B2M、HPRT1、または18Sからなる群より選択される対照遺伝子など)に対応するmRNAが増幅される。
一部の態様において、アレイは、100以下、または90以下、または50以下の核酸(例えば、オリゴヌクレオチドまたはプライマー)を含む。一部の態様において、アレイ上に存在する核酸は、プライマーのセットである。一部の態様において、核酸(例えば、オリゴヌクレオチドまたはプライマー)は、固体支持体上または内で固定化される。限定はしないが、例として、核酸は、前記オリゴヌクレオチドの5'末端により、固体表面上に固定化することができる。一部の態様において、固体表面は、シリコン、金属、およびガラスを含む材料の群より選択される。一部の態様において、固体支持体は、xおよびy座標により定義される、割り当てられた位置でオリゴヌクレオチドを含む。
一部の態様において、アレイは、核酸、例えば、以下を含む方法により初期発生遺伝子のmRNAを増幅することができるプライマーを含む:ポリメラーゼ連鎖反応(PCR);鎖置換増幅(SDA);ループ媒介等温増幅(LAMP);ローリングサークル増幅(RCA);転写媒介増幅(TMA);自家持続配列複製(3SR);核酸配列ベースの増幅(NASBA);または逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)。一部の態様において、アレイは、初期発生遺伝子のリアルタイムPCR増幅、またはSYBRグリーンもしくはMNAzyme検出方法による検出を伴う、初期発生遺伝子のリアルタイムPCR増幅を可能にする。
一部の態様において、本明細書において開示するアレイは、例えば、OpenArray(登録商標)であって、それは、Life Technologiesから商業的に入手可能であり、ここで、オリゴヌクレオチドまたはプライマーは、OpenArray(登録商標)のウェル内に固定化される。一部の態様において、アレイは、ウェル中で乾燥された表1および/または表2より選択される初期発生遺伝子のセットに対するプライマーを含む96または384ウェルプレートとして設定され、そこでは、プレートの固体支持体のウェルの各々が、プライマーおよび反応混合物が各々の個々のウェル中に残ることを可能にする各々のウェルの疎水性の上面および底面ならびに親水性の内部壁を有する。一部の態様において、本発明における使用のために包含されるアレイは、表1および/または表より選択される初期発生遺伝子のセットに対するプライマーを含み、その全体が参照により本明細書に組み入れられる、米国特許第6,387,331号;第6,743,633号;第6,893,877号;第7,332,271号;および第7,547,556号において開示されるOpenArray(登録商標)として設置される。
本発明の別の局面は、幹細胞株に由来する核酸および本明細書において開示するアレイを使用したアレイ増幅を実施することを含む、多能性幹細胞の分化能を決定するための方法に関する。一部の態様において、アレイ増幅後、データを、ウェブベースの解析ツールを使用して解析し、それによって、中胚葉系列、外胚葉系列、および内胚葉系列より選択される異なる系列に沿って分化する多能性幹細胞の可能性ならびに/あるいは多能性幹細胞の多能性の指標を出力することができる。
本発明の別の局面は、表1および/または表2に列挙するいずれかより選択される初期発生遺伝子のセットの幹細胞株における発現を検出し、対照多能性幹細胞サンプルによる同じ遺伝子の発現と比較し、この比較に基づいて、テスト幹細胞株の分化能を決定することを含む、テスト幹細胞株の分化能を決定する方法に関する。一部の態様において、遺伝子発現がリアルタイム増幅によりアッセイされ、ここで検出は、SYBRグリーンベースのリアルタイムPCRを含む。
一部の態様において、初期発生遺伝子に加えて少なくとも1つの対照遺伝子の発現値(例えば、発現レベル)が幹細胞株において測定されてΔCtが各々の遺伝子について算出され、各々の初期発生遺伝子のΔCt値が、複数の参照多能性幹細胞からの参照ΔCt値を含むデータプールにおける各々の初期発生遺伝子のΔCt値と比較されて、ΔΔCt値が提供される。一部の態様において、初期発生遺伝子に加えて少なくとも1つの対照遺伝子の発現値(例えば、発現レベル)が、幹細胞株において測定されて、中胚葉、外胚葉、および内胚葉の初期発生遺伝子のサブグループの各々における遺伝子についての平均ΔCtが算出される。一部の態様において、中胚葉、外胚葉、および内胚葉の初期発生遺伝子のサブグループの各々における遺伝子の平均ΔCt値を、複数の参照多能性幹細胞からの中胚葉、外胚葉、および内胚葉の初期発生遺伝子のサブグループにおける同じ遺伝子についての参照平均ΔCt値を含むデータプールにおける、中胚葉、外胚葉、および内胚葉の初期発生遺伝子のサブグループの各々における同じ遺伝子の平均ΔCt値と比較することによって、ΔΔCt値が算出される。一部の態様において、t検定を使用し、データプールにおける複数の参照多能性幹細胞からの中胚葉、外胚葉、および内胚葉の初期発生遺伝子のサブグループの各々における遺伝子についての参照ΔCt値と比較した、中胚葉、外胚葉、および内胚葉の初期発生遺伝子のサブグループの各々における遺伝子の平均ΔCt値の比較から、統計的に有意なΔΔCt値を同定する。
一部の態様において、中胚葉、外胚葉、および内胚葉の初期発生遺伝子のセットの発現レベルにおいて統計的に有意な量だけ異なる幹細胞株(例えば、多能性幹細胞株)が、さらなる使用および/または研究のために選択され(例えば、選ばれ)、あるいは、場合によっては研究者の目的に依存して、初期発生遺伝子発現におけるそのような統計的に有意な差に基づいて廃棄される。
一部の態様において、方法は、表1に列挙するものより選択される、少なくとも10個、または少なくとも約20個、または少なくとも約30個、または30〜60個、または60〜90個、または90個を上回る初期発生遺伝子の発現レベルを検出および比較することを含む。
一部の態様において、方法は、表1よりおよび/または表2より選択される、少なくとも1つの多能性幹細胞遺伝子、少なくとも1つの初期中胚葉発生遺伝子、少なくとも1つの外胚葉発生遺伝子、および少なくとも1つの内胚葉発生遺伝子の発現レベルを検出および比較することを含む。一部の態様において、方法は、表1より選択される、少なくとも4つの多能性幹細胞遺伝子、少なくとも4つの初期中胚葉発生遺伝子、少なくとも4つの外胚葉発生遺伝子、および少なくとも4つの内胚葉発生遺伝子の発現レベルを検出および比較することを含む。
一部の態様において、本明細書において開示する方法は、中胚葉系列、外胚葉系列、および内胚葉系列より選択される異なる系列に沿った分化を方向付けるシグナルへの、多能性幹細胞株の応答の予測を可能にする。一部の態様において、本明細書において開示する方法は、多能性幹細胞株の多能性の評価を可能にする。
本発明の別の局面は、幹細胞株の分化能を特徴付けることにより、所望の使用のために幹細胞株(例えば、多能性幹細胞株)を選ぶためのアッセイに関し、アッセイは以下を含む:(a)表1に列挙される遺伝子より選択される幹細胞株において複数の初期発生遺伝子の発現のレベルを測定すること;および、測定された発現のレベルを、同じ複数の初期発生遺伝子についての参照遺伝子発現レベルと比較すること、ならびに(b)初期発生遺伝子についての参照遺伝子発現レベルと比較して、測定された初期発生遺伝子の遺伝子発現のレベルにおいて統計的な有意差がないことに基づいて幹細胞株を選ぶこと;または、初期発生遺伝子の参照発現レベルと比較して、少なくとも1つの所望の初期発生遺伝子における発現レベルにおいて統計的な有意差があることに基づいて幹細胞株を選ぶこと。
一部の態様において、アッセイでは、表1に列挙されるものより選択される、少なくとも10個、または少なくとも約20個、または少なくとも約30個、または30〜60個、または60〜90個、または90個を上回る初期発生遺伝子より選択される複数の初期発生遺伝子が測定される。一部の態様において、アッセイでは、表1からおよび/または表2から選択される、少なくとも1つの多能性幹細胞遺伝子、少なくとも1つの初期中胚葉発生遺伝子、少なくとも1つの外胚葉発生遺伝子、および少なくとも1つの内胚葉発生遺伝子より選択される複数の初期発生遺伝子が測定される。一部の態様において、アッセイでは、表1より選択される、少なくとも4つの多能性幹細胞遺伝子、少なくとも4つの初期中胚葉発生遺伝子、少なくとも4つの外胚葉発生遺伝子、および少なくとも4つの内胚葉発生遺伝子より選択される複数の初期発生遺伝子が測定される。
一部の態様において、アッセイでは、胚様体(EB)として少なくとも約2日間にわたり、または胚様体(EB)として少なくとも約3日間、または少なくとも約4日間、または少なくとも約5日間にわたり培養された多能性幹細胞株における複数の初期発生遺伝子が測定される。一部の態様において、アッセイでは、EBとして約2日間以下にわたり、またはEBとして約3日間もしくは約4日間以下にわたり、または自己複製培養条件において培養された多能性幹細胞における複数の初期発生遺伝子が測定される。
一部の態様において、アッセイでは、当業者により一般に公知である任意の方法、例えば、以下よりなる群より選択される方法を使用して、幹細胞における複数の初期発生遺伝子が測定される:ポリメラーゼ連鎖反応(PCR);鎖置換増幅(SDA);ループ媒介等温増幅(LAMP);ローリングサークル増幅(RCA);転写媒介増幅(TMA);自家持続配列複製(3SR);核酸配列ベースの増幅(NASBA);または逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)。
一部の態様において、アッセイでは、リアルタイムPCR増幅、またはSYBRグリーンもしくはMNAzyme検出方法による検出を伴うリアルタイムPCR増幅方法が使用され、複数の初期発生遺伝子の発現レベルを測定する。
一部の態様において、アッセイは、多能性幹細胞における少なくとも1つの対照遺伝子、例えば、ACTB、JARID2、CTCF、SMAD1、GAPDH、βアクチン、EIF2B、RPL37A、CDKN1B、ABL1、ELF1、POP4、PSMC4、RPL30、CASC3、PES1、RPS17、RPSL17L、CDKN1A、MRPL19、MT-ATP6、GADD45A、PUM1、YWHAZ、UBC、TFRC、TBP、RPLP0、PPIA、POLR2A、PGK1、IPO8、HMBS、GUSB、B2M、HPRT1、または18Sからなる群より選択される対照遺伝子の発現のレベルを測定することをさらに含む。
一部の態様において、テスト幹細胞株(例えば、多能性幹細胞株)における対照遺伝子の発現のレベルが、初期発生遺伝子の発現のレベルと比較され、テスト幹細胞株において測定された初期発生遺伝子の遺伝子発現のレベルのΔCtが提供される。一部の態様において、アッセイは、同じ複数の初期発生遺伝子の遺伝子発現のレベルを、同じ初期発生遺伝子の参照遺伝子発現レベルと比較すること、およびテスト幹細胞において測定された初期発生遺伝子の発現のΔCtを、複数の参照多能性幹細胞から測定された同じ初期発生遺伝子の遺伝子発現の平均ΔCtと比較することを含む。
一部の態様において、アッセイを使用して、中胚葉発生遺伝子、外胚葉発生遺伝子、または内胚葉発生遺伝子である初期発生遺伝子の発現レベルにおいて統計的に有意な量だけ異なる(例えば、t検定または他の適当な統計測定を使用した)幹細胞株を選択することにより、少なくとも1つの所望の初期発生遺伝子の発現レベルにおいて統計的に有意な量だけ異なる幹細胞株(例えば、多能性幹細胞株)を選ぶことができる。一部の態様において、統計的な差は、初期発生遺伝子についての参照遺伝子発現レベルからの、標準偏差の少なくとも1倍分の差、標準偏差の少なくとも2倍分の差、または標準偏差の少なくとも3倍分の差である。
一部の態様において、初期発生遺伝子についての参照遺伝子発現レベルは、複数の多能性幹細胞におけるその初期発生遺伝子の発現についての正常な変動の範囲を含む。一部の態様において、初期発生遺伝子についての参照遺伝子発現レベルは、その初期発生遺伝子についての発現レベルの平均値であって、ここで平均値は、複数の多能性幹細胞株におけるその初期発生遺伝子の発現レベルから算出される。一部の態様において、参照遺伝子発現レベルについての複数の多能性幹細胞株が、少なくとも5株またはそれ以上の多能性幹細胞株から得られる。
一部の態様において、本明細書において開示するアッセイを使用し、哺乳動物幹細胞株、例えば、多能性幹細胞、例えば、ヒト多能性幹細胞の分化能を特徴付けることができる。一部の態様において、多能性幹細胞は、体性幹細胞を、より初期の発生状態に再プログラミングすることにより産生されるES細胞、またはiPS細胞、または部分的iPS細胞(piPSC)、成体幹細胞、または幹細胞である。
本発明の別の局面は、本明細書において開示するアレイ、および初期発生遺伝子のmRNAの増幅を行うための試薬を含むキットに関する。
本発明の別の局面は、本明細書において開示するアッセイに従って、幹細胞株、例えば、多能性幹細胞の分化能を特徴付けるための、本明細書において開示するアレイの使用に関する。
一部の態様において、本明細書において開示する本発明は、表1および/または表2に列挙される群より選択される、少なくとも1つの初期発生遺伝子の発現レベルに対する効果について化合物をスクリーニングするために有用である。一部の態様において、そのようなスクリーニングは、(i)多能性幹細胞をテスト化合物と所定の時間にわたり接触させる段階;(ii)本明細書において開示するアッセイを実施する段階;および(iii)化合物の非存在と比較した、化合物の存在下での少なくとも1つの初期発生遺伝子の発現レベルに関する増加または減少を決定する段階を含む。一部の態様において、テスト化合物は、有機小分子、無機小分子、多糖類、ペプチド、タンパク質、核酸、生物学的材料(例えば細菌、植物、菌類、動物細胞、動物組織、またはそれらの任意の組み合わせなど)から作製された抽出物からなる群より選択することができる。一部の態様において、テスト化合物は、約0.01nM〜約1000mMの範囲における濃度でテストされる。一部の態様において、スクリーニング方法は、ハイスループットスクリーニング方法と適合するように設定される。
本発明者らは、また、初期発生遺伝子のセットの遺伝子発現の解析を使用し、任意の幹細胞株の分化傾向、多能性、および有用性を予測するために使用することができる「系列スコアカード」を提供することができることを実証している。特に、本発明者らは、複数の多能性幹細胞集団からの初期発生遺伝子のセットの遺伝子発現が、種々の異なる多能性細胞株の間での、初期発生遺伝子発現レベルの正常な変動についての参照レベルを提供し、それを使用し、テスト幹細胞株からの同じ初期発生遺伝子の遺伝子発現レベルを比較し、個々のテスト幹細胞集団の挙動(例えば、分化傾向および多能性)を予測することを可能にすることができる。そのような系列スコアカードは、従って、多能性幹細胞の異なるクラス(例えば、ES細胞対iPS細胞、またはiPS細胞対部分的誘導iPS細胞および他の多能性もしくは非多能性幹細胞株など)間での体系的な比較のためのプラットフォームも提供する。したがって、本発明者らは、データセット、または標準もしくは参照系列スコアカードおよびバイオインフォマティクスデータツールの使用によって、ヒト幹細胞株(例えば、多能性幹細胞株、例えばiPS細胞株および胚性細胞株など)の分化傾向および多能性のハイスループット特徴付けが可能になることを実証する。
したがって、本発明の別の局面は、参照データまたは参照系列スコアカードのセットに関し、それは、多数の異なる多能性幹細胞株からの初期発生遺伝子のセットの発現の平均データ、または、そうでなければ、集計データを指す。「系列スコアカード」を構成する参照データは、例えば、コンピュータアルゴリズムまたはソフトウェアを使用し、目的の幹細胞株を、正常で十分に機能する幹細胞または多能性幹細胞の公知のセットと比較するために、当業者により使用されることができる。参照「系列スコアカード」との比較を使用し、所与の適用、ならびに、目的の幹細胞株(例えば、ES細胞またはiPS細胞株など)の任意の特定の特徴(例えば、分化傾向および/または多能性)について、幹細胞株の有用性を効果的に、および正確に予測することができる。
一部の態様において、系列スコアカードは、外胚葉、中胚葉、および内胚葉系列に沿って分化する幹細胞株の分化傾向および多能性を決定するために、少なくとも5つの幹細胞集団からの様々な初期発生遺伝子(例えば、表1に列挙される遺伝子のサブセットまたは任意の組み合わせ)についての遺伝子発現のデータセットを含む。一部の態様において、初期発生遺伝子の発現のデータを、データ保存デバイス(例えば、コンピュータデバイス上に位置付けられたデータベースであるデータ保存デバイスなど)に接続する。
したがって、本発明の別の局面は、幹細胞株(例えば、多能性幹細胞株)の分化能および多能性の系列スコアカードに関連し、スコアカードは、複数の幹細胞株からの複数の初期発生遺伝子の発現レベルのデータセットを含む。
一部の態様において、系列スコアカードは、表1に列挙されるものより選択される、少なくとも10個、または少なくとも約20個、または少なくとも約30個、または30〜60個、または60〜90個、または90個を上回る初期発生遺伝子より選択される複数の初期発生遺伝子の発現レベルのデータセットを含む。一部の態様において、系列スコアカードは、表1よりおよび/または表2より選択される、少なくとも1つの多能性幹細胞遺伝子、少なくとも1つの初期中胚葉発生遺伝子、少なくとも1つの外胚葉発生遺伝子、および少なくとも1つの内胚葉発生遺伝子より選択される複数の初期発生遺伝子の発現レベルのデータセットを含む。一部の態様において、系列スコアカードは、表1より選択される、少なくとも4つの多能性幹細胞遺伝子、少なくとも4つの初期中胚葉発生遺伝子、少なくとも4つの外胚葉発生遺伝子、および少なくとも4つの内胚葉発生遺伝子より選択される複数の初期発生遺伝子の発現レベルのデータセットを含む。
一部の態様において、複数の初期発生遺伝子の発現レベルのデータセットが保存デバイスに接続されており、保存デバイスは、コンピュータ上に位置付けられたデータベースである。
一部の態様において、少なくとも5株、または少なくとも約10株、または少なくとも約15株の参照多能性幹細胞株を使用し、参照系列スコアカードについての初期発生遺伝子の発現データセットを生成する。一部の態様において、初期発生遺伝子の発現データセットが、以下の群:HUES64、HUES3、HUES8、HUES53、HUES28、HUES49、HUES9、HUES48、HUES45、HUES1、HUES44、HUES6、H1、HUES62、HUES65、H7、HUES13、HUES63、HUES66より選択される参照多能性幹細胞株の少なくとも5株もしくはそれ以上、または少なくとも6株、または少なくとも7株、または少なくとも8株、または少なくとも9株、または少なくとも10株、または少なくとも11株、または少なくとも12株、または少なくとも13株、または少なくとも14株、または少なくとも15株、または少なくとも16株、または少なくとも17株、または少なくとも18株、または19株全てから得られる。
一部の態様において、参照系列スコアカードのための初期発生遺伝子発現データセットを生成するために使用される多能性幹細胞集団は、哺乳動物の多能性幹細胞集団、例えばヒト多能性幹細胞集団、または誘導多能性幹(iPS)細胞集団、または胚性幹細胞集団、または成体幹細胞集団、または自己幹細胞集団、または胚性幹(ES)細胞集団などである。
一部の態様において、本明細書において開示する系列スコアカードを使用して、幹細胞株(例えば、多能性幹細胞集団)の挙動(例えば、分化傾向および/または多能性)を、特定の系列に沿った最適な分化および/または望ましくない特徴を有する傾向(例えば、研究者により望まれない系列に沿って発生する素因を有する幹細胞集団)を予測することにより、検証および/または予測することができる。従って、一部の態様において、系列スコアカードが、例えば、望ましい特徴(例えば、特定の系列に沿った高い分化能および/または多能性特徴)を伴う幹細胞集団のポジティブ選択、および/または、望ましくない特徴を伴う細胞、幹細胞株(例えば、研究者により望まれない系列に沿って発生する素因を伴う幹細胞、または非多能性幹細胞株)をネガティブ選択する(および、場合によっては廃棄する)ための方法において使用することができる。
一部の態様において、系列スコアカードレポートは、多能性幹細胞集団のための適切な使用または適用の指標を提供し、あるいは、代替の態様において、多能性幹細胞株が適切ではない使用または適用の指標を提供する。
本発明の別の局面は、複数の多能性幹細胞株における初期発生遺伝子のセットの遺伝子発現を測定することを含む系列スコアカードを生成するための方法に関する。一部の態様において、多能性幹細胞スコアカードを生成するための方法を使用し、複数の多能性幹細胞株、例えば、少なくとも5株、または少なくとも6株、または少なくとも7株、または少なくとも8株、または少なくとも9株、または少なくとも10株、または少なくとも15株、または少なくとも20株、または少なくとも30株、または少なくとも40株、または40株を上回る異なる多能性幹細胞集団からの初期発生遺伝子のセットの遺伝子発現のレベルの正常な変動の値を含むスコアカードを生成することができる。
本発明の別の局面は、幹細胞株(例えば、多能性幹細胞集団)を選択するかまたは選ぶための方法に関し、幹細胞集団において初期発生遺伝子のセットの遺伝子発現を測定すること、および初期発生遺伝子発現データを、初期発生遺伝子発現についての参照データと比較すること、ならびに発現される初期発生遺伝子の発現において、したがって、内胚葉、外胚葉、および中胚葉系列に沿って分化する幹細胞の能力において、参照分化能または参照多能性幹細胞株と比較して、統計的に有意な量だけ異なることがない幹細胞株を選択することを含む。一部の態様において、幹細胞株は、発現される初期発生遺伝子の発現に対して統計的に有意な量だけ異なる場合、したがって、参照多能性幹細胞株の参照分化能と比較して、内胚葉、外胚葉、および中胚葉系列に沿って分化するその能力において異なる場合には選択されない。一部の態様において、幹細胞株は、また、それが、発現される初期発生遺伝子の発現において統計的に有意な量だけ異なり、したがって、中胚葉、外胚葉、および内胚葉系列より選択される所望の細胞系列に沿って分化することが可能であるものとして幹細胞株が同定される場合に選択され、ユーザーにより望まれる特定の系列に沿って分化するその傾向に基づいて選択されることができる。
本発明の別の局面は、多能性幹細胞の系列スコアカードを生成するためのコンピュータシステムに関し、以下を含む;(a)(i)多能性幹細胞株における初期発生遺伝子のセットの遺伝子発現データを受け取ること、および、発現データを、初期発生遺伝子の同じセットの参照レベルと比較すること;(ii)同じ初期発生遺伝子の参照レベルと比較した、初期発生遺伝子の発現の比較に基づいて、系列スコアカードを生成することを含む、少なくとも1つのプログラムを含む、少なくとも1つのメモリ;ならびに(b)前記プログラムを実行するためのプロセッサー。
一部の態様において、システムは、さらに、テスト幹細胞株から得られた初期発生遺伝子発現データセットの発現に基づき、幹細胞系列スコアカードレポートを生成するためのアウトプットまたはレポート生成モジュールを含む。一部の態様において、システムはメモリを含み、そこでは、メモリはデータベースをさらに含む。一部の態様において、データベースは、初期発生遺伝子発現データセットを例えば階層様式で配置し、そこでは、データベースは、異なる系列中への目的の多能性幹細胞の分化の傾向を、階層様式で配置する。一部の態様において、システムのメモリは、ネットワーク、例えば、ワイドエリアネットワーク、またはワールドワイドネットワークを介して、第1のコンピュータに接続される。
本発明の別の局面は、テスト幹細胞株(例えば、多能性幹細胞株)の系列スコアカードを生成するための指示を含むコンピュータ可読媒体に関し、以下を含む:(i)テスト幹細胞株から初期発生遺伝子発現データセットを受理し、初期発生遺伝子発現データセットと、初期発生遺伝子の参照レベルとの比較を実施すること;(ii)初期発生遺伝子の参照レベルと比較した、初期発生遺伝子発現データセットの比較に基づいて、系列スコアカードを生成すること。
したがって、本発明の別の局面は、本明細書において開示する系列スコアカードを含む参照データベースに関する。本発明の別の局面は、本明細書において開示する参照データベースを含む、コンピュータ可読記憶媒体に関する。一部の態様において、コンピュータ可読記憶媒体は、有形の、非一時的記憶媒体、例えば、コンピュータによりアクセスすることができる任意の入手可能な、有形の、または物理的な媒体である。コンピュータ可読媒体は、シグナル(例えばキャリアシグナルなど)を包含しない。
本発明の別の局面は、測定された各々の初期発生遺伝子についてのΔCtを算出するためのコンピュータ実行可能な指示を含む、コンピュータ可読物理的メモリに関し、ここでは、各々の初期発生遺伝子のΔCt値が、複数の参照多能性幹細胞からの各々の初期発生遺伝子についての参照ΔCt値を含むデータプールからの各々の初期発生遺伝子についてのΔCt値と比較されて、ΔΔCt値が提供される。
一部の態様において、コンピュータ可読指示によって、中胚葉、外胚葉、および内胚葉の初期発生遺伝子のサブグループの各々における遺伝子についての平均ΔCtの算出が可能になり、中胚葉、外胚葉、および内胚葉の初期発生遺伝子のサブグループの各々における遺伝子の平均ΔCt値を、複数の参照多能性幹細胞からの中胚葉、外胚葉、および内胚葉の初期発生遺伝子のサブグループにおける同じ遺伝子についての参照平均ΔCt値を含むデータプールからの中胚葉、外胚葉、および内胚葉の初期発生遺伝子のサブグループの各々における同じ遺伝子の平均ΔCt値と比較して、平均ΔΔCt値を提供する。
一部の態様において、コンピュータ可読指示は、データプールにおける複数の参照多能性幹細胞からの中胚葉、外胚葉、および内胚葉の初期発生遺伝子のサブグループの各々における遺伝子についての平均ΔCt値と比較した、中胚葉、外胚葉、および内胚葉の初期発生遺伝子のサブグループの各々における遺伝子の平均ΔCt値の比較からの統計的に有意なΔΔCt値を同定するためのt検定を実施するための指示をさらに含む。
一部の態様において、初期発生遺伝子のセットの遺伝子発現が、RT-PCR、例えば、表1に列挙される遺伝子のセットまたは表2からの少なくとも3個の遺伝子について特異的なプライマーを含むRT-PCRアッセイを使用して測定される。一部の態様において、RT-PCRアッセイでは、表1からの初期発生遺伝子のセットのmRNAを増幅させるためにRT-PCRを実施するためのプライマーを含むアレイが使用され、場合により、表2からの少なくとも3個の初期発生遺伝子のmRNAを増幅させるためのプライマーを含むことができる。
一部の態様において、初期発生遺伝子のセットの遺伝子発現を、マイクロアレイアッセイを使用して測定する。一部の態様において、RT-PCRアレイまたはマイクロアレイは、表1に列挙する遺伝子の任意の組み合わせのサブセットより選択される、少なくとも約20個、または少なくとも30個、または少なくとも40個より選択される、解析のための初期発生遺伝子のセットを含む。一部の態様において、RT-PCRアレイまたはマイクロアレイは、表2に列挙する遺伝子の任意の組み合わせのサブセットからの少なくとも約3個またはそれ以上の遺伝子より選択される、解析のための初期発生遺伝子のセットを含む。一部の態様において、初期発生遺伝子のセットの遺伝子発現は、培養液中で約2日目(例えば、2日EB)に、多能性幹細胞株から、RT-PCRアレイまたはマイクロアレイを使用して決定される。
一部の態様において、本明細書において開示する分化アッセイは、複数の異なる多能性幹細胞をアッセイするため、例えば、複数の異なる誘導多能性幹細胞における初期発生遺伝子のセットの遺伝子発現のレベルを測定および評価することを可能にするためのハイスループットアッセイであって、ここで、幹細胞は、同じまたは異なる対象(例えば、哺乳動物対象またはヒト対象)から得られた体細胞を再プログラミングすることに由来する。
一部の態様において、本明細書において開示する幹細胞株における初期発生遺伝子のセットの遺伝子発現を測定することを使用し、幹細胞株が、特定の細胞型系列に沿って分化する効率を増加させることができる分化培地および/または分化因子を、同定および/または最適化および/または検証することができる。単に例示的な事例として、一部の態様において、本明細書において開示するアレイ、アッセイ、および方法を使用し、本明細書において開示する中胚葉の初期発生遺伝子が、中胚葉誘導培地中で培養された幹細胞株において発現されていることを確認することができる。あるいは、一部の態様において、本明細書において開示するアレイ、アッセイ、および方法を使用し、多能性幹細胞培地が、幹細胞株を多能性状態に維持し、特定の系列に沿って分化するように細胞株を誘導しないことを確認することができる。
初期発生遺伝子のセットの遺伝子発現の測定を、ハイスループット解析のために設定されたアレイまたはアッセイを使用し、例えば、数百または数千の多能性幹細胞株(例えば、ESおよび/またはiPS細胞株)の分化傾向の迅速な特徴付けのためのマルチプレックスqRT-PCRおよびハイスループットサンプルプロセシングを使用して実施することができる。例えば、そのようなハイスループットアレイは、ハイスループットセンターにおいて数百および数千もの幹細胞株を特徴付けることが望ましい場合、有用でありうる。例えば、これは、薬物スクリーニングにおける有用性について、および/または治療的使用について、幹細胞株を同定し、選ぶために有用でありうる。したがって、本明細書において開示する初期発生遺伝子のセットの発現の測定によって、従来のテラトーマおよび/または他の遺伝子発現系(それにより、幹細胞は、解析の前にある期間にわたって自然分化または方向付けられた分化を受けることが要求される)を使用すると非常に高価で非実用的であろう多数の幹細胞株の、迅速で安価な特徴付けが可能になる。あるいは、本明細書において開示する初期発生遺伝子のセットの発現の測定を個々の多能性幹細胞株に対して用いて、研究を加速させ、目的の研究の疑問に対処するために、研究において使用される所望の系列傾向を伴う株を選択することができる。例えば、本明細書において開示する初期発生遺伝子のセットの発現を、さらなる解析のための、または目的の研究の疑問に対処するための、最も適切な幹細胞株(例えば、所望の多能性および/または分化傾向を伴う)を直ぐに同定するために、EBにおいて2日という初期に、幹細胞株(例えば、多能性幹細胞株)において評価することができる。
本発明の別の局面は、複数の初期発生遺伝子、例えば、表1および/または表2に列挙される遺伝子の任意の組み合わせのサブセットの遺伝子発現レベルを測定するために必要な試薬(例えば、オリゴヌクレオチドプローブおよび/またはプライマーならびに他の試薬)を含む、初期発生遺伝子のセットの遺伝子発現を測定するためのキットに関する。一部の態様において、キットは、本明細書において開示する系列スコアカードをさらに含む。一部の態様において、キットは、使用のための指示をさらに含む。一部の態様において、キットは、テスト幹細胞株からの初期発生遺伝子の測定レベルを、同じ遺伝子の参照レベルと比較するためのコンピュータ上での指示を含むコンピュータ可読媒体を含む。一部の態様において、キットは、テスト幹細胞株(例えば、多能性幹細胞株)からの初期発生遺伝子の測定レベルを、参照多能性幹細胞株からの同じ遺伝子の参照レベルと比較するための、オンラインで(例えば、クラウドで)利用可能なソフトウェアプログラムにアクセスするための指示を含む。
本特許または出願ファイルは、カラーで実行される、少なくとも1つの図面を含む。カラーの図面を伴う、本特許または特許出願公開の複写は、申請および必要な料金の支払いをすれば、特許庁より提供されるであろう。
図1A〜Dは、WO2012/037456において開示される先行技術の方法を示し、その全体が、参照により本明細書に組み入れられ、ここでは、細胞株に特異的な分化傾向が、定量的EBアッセイにより測定されることができる。図1Aは、細胞株に特異的な分化傾向を定量化するための先行技術のアッセイの概要図を示す。細胞株は、系列マーカーを測定する前に、培養液中で少なくとも7〜14日間にわたり分化させる必要がある。さらに、系列マーカーは、初期発生遺伝子ではなかった。 低継代ヒトES細胞株のセットの細胞株に特異的な分化傾向を要約した先行技術の系列スコアカードを示す。数字は、線形スケールでの相対的な濃縮(正の値)または枯渇(負の値)を示す。それらは、所与のES細胞株についての全ての生物学的複製物を、ES細胞参照(全ての他のES細胞株についての生物学的複製物からなる)と比較する、モデレートt検定(moderated t-test)を実施することにより算出され、続いて目的の細胞系列または胚葉についての関連性を伴うマーカー遺伝子のセットについての遺伝子セット濃縮解析を行った。全てのカラムがゼロを中心にし、ES細胞株は、それが、アッセイを較正するために使用された全ての他のES細胞株の平均的なものとまさに同様に分化する場合、ゼロの分化傾向を示すようにする。値は、互いに対して解釈すべきであり、より高い数字はより高い分化傾向を示し、より低い数字はより低い分化傾向を示すが、絶対値は、測定単位を有さず直接的な生物学的な解釈を有さない。 先行技術である、ESおよびiPS細胞株、ES由来およびiPS由来EB、ならびに初代線維芽細胞株の転写類似性の、二次元での、多次元尺度構成法によるマップを示す。500個の系列マーカー遺伝子の遺伝子発現が、nCounterシステムを使用して測定され、正規化データが平面に投影され、互いの点の距離は、遺伝子発現レベルの500次元空間におけるそれらの距離を示す。各々の点は、単一の生物学的複製物に対応し、投影は、多次元尺度構成法を使用して実施された。2つのiPS細胞が、正常なEBを形成するその能力において有意に損なわれ(hiPS 15b、hiPS 29e、矢印により強調され、「損なわれたEB」として標識されている)、1つのiPS細胞株では正常なEBを形成することが全くできず(hiPS 27e、矢印により強調され、「失敗したEB」として標識されている)、16日間のEB分化後でさえ、多能性細胞を想起させる遺伝子発現プロファイルを維持していた。これらの3つの細胞株の全ての生物学的複製物が矢印により強調されており、全ての3つの細胞株はまた、系列スコアカードに従うと、有意に低下した分化傾向を示す(図1D)。 ヒトiPS細胞株のセットの細胞株に特異的な分化傾向を要約した先行技術の系列スコアカードを示す。スコアカードは、図1Bについて記載する通りに由来し、ES細胞の参照に対して正規化された。スコアは、各々の細胞株について入手可能である全ての生物学的複製物にわたり算出された。このスコアカードには、(i)培養液中で少なくとも7または14日間にわたり培養されるべき多能性幹細胞、(ii)特定の系列への下方のへ方向付けられた幹細胞の分化、(iii)約500個の系列マーカーの解析、および(iv)繰り返しで(例えば、二つ組または三つ組で)実施されるべき遺伝子発現解析が要求された。 図2Aは、MicroArrayデータのPluriTest解析が、7日目の分化細胞を未分化細胞から区別することができず、多能性評価だけに限定される(分化状態ではない)ことを示す。図2Bは、焦点の当てられた96遺伝子のセットの系列ScoreCard解析が、多能性遺伝子の明らかな下方制御および3つの胚葉に分類される分化遺伝子の上方制御を示し、したがって多能性ならびに三系列分化能の両方の評価を可能にすることを示す。 平均値の測定された初期発生遺伝子と参照レベル発現レベルとの比較である。各々のインプットサンプル(例えば、BJ線維芽細胞、H9 ESC、およびhNSC)について、および、初期発生遺伝子の6つのカテゴリー(対照、多能性、内胚葉、中内胚葉、中胚葉、外胚葉)の各々について、ソフトウェアは、t統計(有意性)の平均値(mu)および標準偏差ならびに遺伝子カテゴリーにわたる最小および最大p値を報告する。 初期発生遺伝子の各々のカテゴリーについての参照標準と比べた、初期発生遺伝子の各々のカテゴリーの発現レベルを示す。t値を指標として使用し、t値が0〜1の場合、その初期発生遺伝子カテゴリーにおける遺伝子発現の測定レベルが、同じカテゴリーにおける参照遺伝子発現レベルと同程度であることを示す。t値が>1の場合、多能性細胞株のその初期発生遺伝子カテゴリーにおける遺伝子発現の測定レベルが、同じカテゴリーにおける参照遺伝子発現レベルよりも高いことを示す。t値が<0の場合、多能性細胞株のその初期発生遺伝子カテゴリーにおける遺伝子発現の測定レベルが、同じカテゴリーにおける参照遺伝子発現レベルよりも低いことを示す。 2日目および4日目の培養された多能性幹細胞が、初期発生遺伝子の各々のカテゴリーの発現のレベルについて信頼できる結果を産生することを示す。 多能性幹細胞が胚様体(EB)浮遊中または単層中で培養された場合に、D4およびD7の初期発生遺伝子の発現が影響されないことを示す。 図7A〜Cは、分化アッセイによって、外れ値の多能性幹細胞、例えば、もはや多能性ではない細胞株、特定の細胞系列に沿って分化する増加効率を伴う幹細胞株、および/またはマウス(例えば、MEF)細胞で汚染された多能性幹細胞を同定することができることを示す。図7Aは、多能性幹細胞が、同じ時点で、同様の多能性幹細胞株と比較した場合、悪いクローンまたは培養物(例えば、BS4-iPS5 P8)を同定するための系列スコアカードの態様を示す。 特定の系列に沿って分化する素因を有する幹細胞株を同定するための系列スコアカードの態様を示し、hNSDup細胞株が、増加した外胚葉レベルを有し、細胞株が、外胚葉系列に沿って分化する素因を有することを示す。 多能性遺伝子における有意な減少を有する、もはや多能性ではない幹細胞株(例えば、BJ線維芽細胞およびHJF胎児細胞を参照のこと)を同定するための系列スコアカードの態様、および、幹細胞株のMEF混入が、初期発生遺伝子の発現レベルに対して効果を有さないことを示す。 目的の多能性幹細胞株について、本明細書において開示する系列スコアカードを産生するためのコンピュータプログラムについての指示の態様のフローチャートを示す。データは、プロセッサーおよび関連するメモリまたは記憶デバイス、ならびに遺伝子マッピングモジュール、参照比較モジュール、正規化モジュール、関連性フィルタモジュール、遺伝子セットモジュール、ならびに逸脱スコアカードを表示するスコアカード表示モジュールを含むコンピュータに入力される。 目的の多能性幹細胞株について、系列スコアカードを産生するためのコンピュータプログラムについての指示の一態様のフローチャートを示す。逸脱スコアカードの生成のために得られたデータは、目的の多能性幹細胞株についての初期発生遺伝子の遺伝子発現データである。データは、プロセッサーおよび関連するメモリおよび/または記憶デバイス、ならびにアッセイ正規化モジュール、サンプル正規化モジュール、参照比較モジュール、遺伝子セットモジュール、濃縮解析モジュール、および系列スコアカードを表示するためのスコアカード表示モジュールを含むコンピュータに入力される。 目的の多能性幹細胞の分化傾向を特徴付け、系列スコアカードを産生するためのハイスループットシステムに関する、本発明の態様の単純化ブロック図を示す。決定モジュールは、遺伝子発現を測定するための任意の装置またはマシンでありうる。 本発明の態様の単純化ブロック図を示す。データ遺伝子発現分化アッセイが任意の場所でコンピュータシステムによりプロセシングされるように構成されてユーザーインターフェイスを通じてアクセス可能になることを可能にし、ここでは、各々の多能性幹細胞についてのデータが、データベース中に保存される。
発明の詳細な説明
本発明は、初期発生遺伝子バイオマーカーのセット、またはそのサブセットに関し、それを使用し、幹細胞集団の多能性および/または分化能を特徴付け、決定することができる。本発明の局面は、幹細胞株を、その一般的な質(例えば、多能性能力)および分化能力について迅速かつ安価にスクリーニングするためのアレイ、アッセイ、システム、キット、および方法に関する。
実施例において、本明細書において開示する通り、本発明者らは、驚くべきことに、発生の非常に初期の段階で発現される遺伝子のサブセットの発現(本明細書において「初期発生遺伝子」として言及される)によって、幹細胞株が多能性であるか否か、ならびに/あるいは、幹細胞株が、中胚葉、外胚葉、および内胚葉系列に沿って分化する傾向を有するか否か、ならびに/あるいは、幹細胞株が沿って分化する良好な系列があるか否かを正確に予測することができることを発見した。従って、本明細書において開示する初期発生遺伝子のセットは、発生の非常に初期の段階で、例えば、EB培養条件において約2日目から、細胞の可能性の高い発生および分化経路について意味のある見通しを提供する。
例えば、本明細書において開示する幹細胞株(例えば、多能性幹細胞株)の初期発生遺伝子のセットの遺伝子発現を測定することにより、解析される幹細胞株の分化効率を予測することが可能である。例えば、本発明者らは、これらの遺伝子のレベルが、特定の系列(例えば、中胚葉、外胚葉、および内胚葉系列)に沿った幹細胞株の分化の可能性の高い方向を決定するために、高度に予測的であることを実証した。従って、本明細書において開示する本発明は、広範な有用性を有しており、所与の幹細胞が、任意の所望の系列、例えば、造血系列、内胚葉系列、膵臓系列、神経細胞系列(例えば運動ニューロン系列など)に沿ってどのくらい十分に分化するかを見越して予測するために使用することができる。
したがって、本発明は、概して、幹細胞株の分化能および/または多能性を予測するために、幹細胞株(例えば、多能性幹細胞株)の初期発生遺伝子のセットを測定するためのアレイ、アッセイ、方法、キット、およびシステムに関する。本発明は、また、幹細胞株についての「系列スコアカード」を産生するための初期発生遺伝子のセットの発現の参照データベースに関し、そこでは、そのような初期発生遺伝子のセットの遺伝子発現によって、所望の使用のための幹細胞株の機能性および適合性を予測することができ、幹細胞株が、特定の細胞系列に沿って分化する、または、特定の細胞系列、例えば、神経幹細胞、造血幹細胞、膵臓幹細胞、および他の系列などに沿って、増加した効率を伴い分化するか否かを予測することができる。一部の態様において、統計スコアカードは、さらに、目的の幹細胞株(例えば、多能性幹細胞)が、正常な多能性幹細胞の変動の正常なパラメータ内に該当するか否か、および/または、特定の系列に沿って分化する傾向を有するか否かを決定するためのガイドラインを提供する。そのようなガイドラインは、好ましくは、コンピュータ実行可能なフォーマットである。
一部の態様において、系列スコアカードは、望ましい特徴を伴う、複数の異なる多能性幹細胞、例えば、内胚葉系列、例えば膵臓系列など、または他の系列、例えば外胚葉または中胚葉系列などに分化する傾向を伴う多能性幹細胞からの初期発生遺伝子のセットの発現データからコンパイルされたスコアカードである。
本発明の別の局面は、所望の使用のための幹細胞株、例えば多能性幹細胞株の機能性および適合性を予測するための遺伝子発現アッセイを実施することを含む系列スコアカードを生成するための方法に関する。一部の態様において、系列スコアカードの参照データが、テスト幹細胞のデータと比較され、所与の適用のためのテスト幹細胞株の有用性を効果的かつ正確に予測し、ならびに、幹細胞株の特定の特徴を同定し、それらの下流での適用のためのそれらの適合性、例えば、治療的使用、薬物スクリーニングおよび毒性アッセイ、所望の細胞系列への分化などを決定することができる。
一部の態様において、本明細書において開示する方法、アレイ、アッセイ、キット、およびシステムにおいて測定された初期発生遺伝子のセットの遺伝子発現は、表1に列挙される遺伝子の任意の組み合わせより選択される、少なくとも10個または少なくとも20個の遺伝子を含む。一部の態様において、本明細書において開示する方法、アレイ、アッセイ、キット、およびシステムにおいて測定された初期発生遺伝子のセットは、表2に列挙される遺伝子の任意の組み合わせからの少なくとも3つの遺伝子を含む。
一部の態様において、本明細書において開示する分化アッセイ、方法、システム、およびキットを使用し、種々の幹細胞株、例えば、多能性幹細胞株(例えば、限定はしないが、胚性幹細胞、成体幹細胞、自己成体幹細胞、iPS細胞、および他の多能性幹細胞株、例えば再プログラミング細胞、直接再プログラミング細胞、または部分的再プログラミング細胞)の分化能を特徴付け、決定することができる。一部の態様において、幹細胞株はヒト幹細胞株である。一部の態様において、幹細胞株(例えば、多能性幹細胞株)は、遺伝的に改変された幹細胞株である。一部の態様において、幹細胞株(例えば、多能性幹細胞株)は、治療的使用のためである、または対象への移植である場合、幹細胞株は自己幹細胞株(例えば、幹細胞の集団が、戻し移植される対象に由来する)であり、代替の態様において、幹細胞株(例えば、多能性幹細胞株)は、同種の多能性幹細胞株である。
定義
便宜上、本明細書において、明細書、実施例、および特許請求の範囲において用いる特定の用語が、ここに集められる。他に明記しない、または文脈から暗示しない限り、以下の用語および語句は、以下に提供する意味を含む。他にはっきりと明記しない、または文脈から明らかでない限り、以下の用語および語句は、用語または語句が、それが関連する技術分野において取得した意味を除外しない。定義は、特定の態様を記載するのを補助するために提供され、請求された本発明を限定することを意図しない。なぜなら、本発明の範囲は、特許請求の範囲だけにより限定されるからである。他に定義しない限り、本明細書において使用する全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者により一般に理解されるのと同じ意味を有する。
本明細書において開示する用語「系列スコアカード」は、参照多能性幹細胞株と比較した、目的の1つまたは複数の多能性幹細胞株における各々のカテゴリーにおける複数の初期発生遺伝子(例えば、多能性遺伝子、初期内胚葉遺伝子、初期中胚葉遺伝子、初期外胚葉遺伝子)の遺伝子発現の差を要約したリストを指し、多能性幹細胞の予測される性能、例えば、分化能力および/または多能性能力の記録として機能する。スコアカードは、任意の形態で、例えば、データベース、書面、電子形態などで存在することができ、電子的またはデジタル的に記録され、注釈付けされたデータベース中に記憶させることができる。一部の態様において、スコアカードは、参照多能性細胞株または複数の株と比較した、多能性幹細胞の能力(例えば、分化能力、多能性など)の予測のグラフ表示でありうる。したがって、本明細書において開示するスコアカードは、多能性幹細胞株の特徴および可能性の指標またはリストとして機能し、特定の使用のための特定の多能性幹細胞株の迅速かつ効率的な選択において支援する、ならびに/あるいは、特定の目的に達するために使用することができる。
本明細書において使用する用語「核酸」または「核酸配列」は、2つまたはそれ以上のデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドから構成される分子として定義される。配列の正確な長さは、多くの因子に依存するが、それは、次に、配列の最終的な機能または使用に依存する。配列は、任意の様式(化学合成、DNA複製、逆転写、またはそれらの組み合わせを含む)で生成することができる。本発明の増幅特性に起因して、核酸配列内のデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチド塩基の数は、実質的に無制限であり得る。本明細書において使用する用語「オリゴヌクレオチド」は、用語「核酸配列」と互換的に同義である。
本明細書において使用する通り、本明細書において記載する遺伝子の1つまたは複数に相補的であるオリゴヌクレオチド配列は、前記遺伝子のヌクレオチド配列の少なくとも一部とストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることが可能であるオリゴヌクレオチドを指す。そのようなハイブリダイズ可能なオリゴヌクレオチドは、典型的には、前記遺伝子とヌクレオチドレベルで、少なくとも約75%の配列同一性、前記遺伝子と、好ましくは約80%または85%の配列同一性、あるいは、より好ましくは、約90%または95%もしくはそれ以上の配列同一性を示するであろう。
本明細書において使用する用語「プライマー」は、目的の標的初期発生遺伝子の部分に対して相補的なまたは実質的に相補的な核酸の配列を指す。典型的には、2つのプライマー(例えば、3'プライマーおよび5'プライマー)が、目的の標的初期発生遺伝子の異なる部分に相補的であり、初期発生遺伝子のmRNAの部分をRT-PCRにより増幅するために使用されることができる。
「実質的に結合する」は、プローブ核酸と標的核酸の間での相補的ハイブリダイゼーションを指し、標的ポリヌクレオチド配列の所望の検出を達成するために、ハイブリダイゼーション媒質のストリンジェンシーを低下させることにより順応することができる小さなミスマッチを包含する。
語句「特異的にハイブリダイズする」は、その配列が複雑な混合物(例えば、全細胞)DNAまたはRNA中に存在する場合、ストリンジェントな条件下での、特定のヌクレオチド配列または複数の配列との、実質的な、またはその配列だけに対する、分子の結合、二重化、またはハイブリダイズを指す。
用語「バイオマーカー」は、任意の遺伝子、タンパク質、またはその遺伝子に由来するESTを意味し、その発現またはレベルは、特定の条件間で変化する。遺伝子の発現が特定の条件と相関する場合、遺伝子は、その条件についてのバイオマーカーである。
「バイオマーカー由来ポリヌクレオチド」は、バイオマーカー遺伝子から転写されたRNA、そこから産生された任意のcDNAまたはcRNA、およびそれに由来する任意の核酸、例えば、バイオマーカー遺伝子に対応する遺伝子に由来する配列を有する合成核酸などを意味する。
本明細書において使用する通り、用語「遺伝子」は、当技術分野において理解される通りの意味を有する。しかし、用語「遺伝子」は、遺伝子調節配列(例えば、プロモーター、エンハンサーなど)および/またはイントロン配列を含むことができることが、当業者により理解されるであろう。さらに、遺伝子の定義は、タンパク質をコードしないが、むしろ、機能的RNA分子、例えばtRNAなどをコードする核酸への参照を含むことが理解されるであろう。明確さのために、用語、遺伝子は、一般的に、タンパク質をコードする核酸の部分を指す;この用語は、場合により、調節配列を包含することができる。この定義は、タンパク質をコードしない発現単位への、用語「遺伝子」の適用を除外することを意図しないが、むしろ、それを明確にするため、大半の場合において、本文書において使用する用語は、核酸をコードするタンパク質を指す。一部の場合において、遺伝子は、転写、またはメッセージ産生もしくは組成に関与する調節配列を含む。他の態様において、遺伝子は、タンパク質、ポリペプチド、またはペプチドをコードする転写配列を含む。本明細書において記載する用語に合わせて、「単離遺伝子」は、転写核酸、調節配列、コード配列などを含むことができ、他のそのような配列から実質的に離れて単離される(例えば、他の天然遺伝子、調節配列、ポリペプチドまたはペプチドをコードする配列など)。この点において、用語「遺伝子」は、転写されるヌクレオチド配列を含む核酸、およびその相補体を指すための単純化のために使用される。
本明細書において使用する用語「シグネチャー」は、差次的な発現パターンを指す。それは、その発現が、cRNA産物をマイクロアレイ解析において使用した場合に検出される、個々の固有のプローブの数として表現することもできる。それは、また、その発現が、リアルタイムRT-PCRを用いて検出される、個々の遺伝子の数として表現することもできる。シグネチャーは、バイオマーカーの特定のセットにより例示することができる。
用語「類似値」は、比較されている2つの物の間での類似性の程度を表す数である。例えば、類似値は、特定の表現型に関連するバイオマーカーを使用した細胞サンプル発現プロファイルとそのテンプレートに特異的な対照の間での全体的な類似性を示す数とすることができる。類似値は、類似性メトリック(例えば相関係数など)、または分類確率として表すことができる、あるいは、簡単に、細胞サンプル発現プロファイルとベースラインテンプレートの間での、発現レベルの差、または発現レベルの差の集計として表現することができる。
用語「発現」は、RNAおよびタンパク質の産生、適当な場合、タンパク質の分泌に関与する細胞プロセスを指し、適用可能な場合、限定はしないが、例えば、転写、翻訳、折りたたみ、修飾、およびプロセシングを含む。「発現産物」は、遺伝子から転写されたRNAおよび遺伝子から転写されたmRNAの翻訳により得られたポリペプチドを含む。
本明細書において使用する通り、用語「発現レベルを測定する」、「発現レベルを得る」、および「発現レベルを検出する」などは、遺伝子の遺伝子発現レベル、例えば、転写物、または遺伝子によりコードされるタンパク質を定量する方法、ならびに、目的の遺伝子がそもそも発現されるのか否かを決定する方法を含む。一部の態様において、アッセイは、多能性幹細胞が、特定の系列(例えば、中胚葉、外胚葉、または内胚葉系列)に沿って分化できるか否かの指標を提供する。一部の態様において、指標は数値である(例えば、本明細書において実施例において開示する通り、多能性幹細胞の参照セットにおける同じ遺伝子の参照ΔCtと比較した、多能性幹細胞における、測定された中胚葉、または外胚葉、または内胚葉の初期発生遺伝子の各々についての平均ΔCtの比較からのt検定からの値)。一部の態様において、アッセイは、必ずしも定量化を提供することなく、「有り」または「無し」の結果を提供することができ、多能性が、それぞれ、中胚葉、外胚葉、または内胚葉系列の各々に沿って分化することができるかまたはできないことを示し、あるいは、「有り」または「無し」は、テストされた幹細胞株が、それぞれ多能性であるかまたは多能性ではないことを示す。代わりに、測定されたまたは得られた発現レベルは、任意の定量値、例えば、対照遺伝子と比べた、または別のサンプル中の同じ遺伝子と比べた、発現の上下の倍数変化、あるいは発現の対数比、またはその任意の視覚的表現、例えば「ヒートマップ」(そこで、色の強度は、検出された遺伝子発現の量を代表する)として表現することができる。例えば一部の態様において、アッセイはヒートマップを提供することができ、多能性幹細胞が、特定の系列(例えば、中胚葉、外胚葉、または内胚葉系列の各々)に沿って分化する高い傾向または可能性を有することを伝えるための緑色指標、多能性幹細胞が、特定の系列に沿って分化する能力を有することを伝える黄色指標、および多能性幹細胞が、低い傾向を有する、または特定の系列に沿って分化することができないことを伝える赤色指標を伴う。一部の態様において、以下の各々についての指標がある:幹細胞の多能性、中胚葉系列に沿って分化する幹細胞の能力、外胚葉系列に沿って分化する幹細胞の能力、および内胚葉系列に沿って分化する幹細胞の能力。目的の多能性幹細胞株において差次的に発現されるとして同定された初期発生遺伝子を、所与のサンプル中の遺伝子または複数の遺伝子の発現レベルを検出または定量化するための種々の核酸またはタンパク質検出アッセイにおいて使用することができる。遺伝子の発現レベルを検出するための例示的な方法は、限定はしないが、ノーザンブロッティング、ドットまたはスロットブロット、レポーター遺伝子マトリックス(例えば、米国特許第5,569,588号を参照のこと)、ヌクレアーゼ保護、RT-PCR、マイクロアレイプロファイリング、ディファレンシャルディスプレイ、2Dゲル電気泳動、SELDI-TOF、ICAT、酵素アッセイ、抗体アッセイ、MNAzymeベースの検出方法(U.S. Ser. No. 61/470,919、US 2011/0143338;US 2007/0231810;WO/2008/122084;WO/2007/041774;およびMokany et al., J Am Chem Soc. 2010 Jan. 27; 132(3): 1051-1059を参照のこと。それらの各々が、その全体が、参照により組み入れられる)などを含む。場合により、発現レベルが検出されるべき遺伝子は、例えば、以下:ポリメラーゼ連鎖反応(PCR);鎖置換増幅(SDA);ループ媒介等温増幅(LAMP);ローリングサークル増幅(RCA);転写媒介増幅(TMA);自家持続配列複製(3SR);核酸配列ベースの増幅(NASBA);または逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)の1つまたは複数を含むことができる方法により増幅することができる。好ましい態様において、遺伝子発現は、RT-PCRにより、好ましくはSYBRグリーンを使用して検出されるだろう。
本明細書において使用する用語「遺伝子プロファイル」は、多能性幹細胞サンプル中の遺伝子、または遺伝子のセットの発現レベルを指すことが意図される。本発明の一態様において、用語「遺伝子プロファイル」は、表1に列挙する遺伝子または遺伝子のセットの発現レベルまたは状態、あるいは、明細書において記載する、表1の遺伝子の任意の選択のそれを指すことが意図される。
本発明の文脈における用語「差次的な発現」は、遺伝子が、多能性幹細胞における発現の通常の変動と比較して、上方制御または下方制御されていることを意味する。遺伝子の差次的な発現を算出するための統計的方法が、本明細書の他の箇所で考察される。
「表1の遺伝子」は、本明細書において「表1に列挙される遺伝子」と互換的に使用され、表1中の「初期発生遺伝子」の下に列挙される遺伝子の遺伝子産物を指す。「遺伝子産物」により、天然に産生されたかまたは人工の手段により産生されたかを問わず、遺伝子の転写または翻訳の任意の産物を意味する。本発明の一部の態様において、本明細書において言及される遺伝子は、表1に列挙される遺伝子である。同じことが、「表2の遺伝子」に適用される、表2中の初期発生遺伝子の下で列挙される遺伝子の遺伝子産物を指す。
本明細書において使用する用語「ハイブリダイゼーション」または「ハイブリダイズする」は、標的核酸(検出すべき配列)への相補的な配列のアニーリングを含む。互いを見出し、塩基対合相互作用を介してアニーリングするための相補的な配列を含む核酸の2つのポリマーの能力は、十分に認識された現象である。Marmur and Lane, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 46:453 (1960)およびDoty et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 46:461 (1960)による「ハイブリダイゼーション」プロセスの初期の観察ののち、現代生物学の必須ツールへと、このプロセスの改良が続いた。
本明細書において使用する用語「相補的」または「実質的に相補的」は、ヌクレオチドまたは核酸の間、例えば、二本鎖DNA分子の2本鎖の間、またはオリゴヌクレオチドプライマーと、配列決定または増幅される一本鎖核酸上のプライマー結合部位の間でのハイブリダイゼーションまたは塩基対合を指す。相補的なヌクレオチドは、一般的に、AおよびT(またはAおよびU)またはCおよびGである。2つの一本鎖RNAまたはDNA分子は、1つの鎖のヌクレオチドが、適当なヌクレオチド挿入または欠失を伴い最適に整列され、他の鎖のヌクレオチドの少なくとも約80%、通常は少なくとも約90%〜95%、より好ましくは約98〜100%と対合する場合、実質的に相補的であると言う。あるいは、RNAまたはDNA鎖が、選択的なハイブリダイゼーション条件下で、その相補体にハイブリダイズする場合、実質的な相補性が存在する。典型的には、選択的ハイブリダイゼーションは、少なくとも14〜25個のヌクレオチドのひと続きにわたり少なくとも約65%の相補性、好ましくは少なくとも約75%、より好ましくは少なくとも約90%の相補性がある場合に生じる。M. Kanehisa, Nucleic Acids Res., 12:203 (1984)を参照のこと(参照により本明細書に組み入れられる)。本明細書において使用する用語「の少なくとも一部分」は、環状DNAテンプレートと、少なくとも1つの塩基対のオリゴヌクレオチドプライマーの間の相補性を指す。
部分的に相補的な配列は、低ストリンジェンシー条件下でハイブリダイズする。これは、低ストリンジェンシーの条件によって、非特異的結合が可能になると言っているわけではない;低ストリンジェンシー条件によって、相互への2つの配列の結合が特異的な(即ち、選択的な)相互作用であることが要求される。非特異的な結合が存在しないことは、低度な相補性(例えば、約30%未満の同一性)さえ欠く第2の標的を使用することよってテストすることができる;非特異的な結合が存在しない場合、プローブは、第2の非相補的標的にハイブリダイズしないであろう。
用語「ストリンジェンシー」は、反応のために使用される特定の条件により、ハイブリダイゼーション反応に課される特異性の程度を指す。核酸ハイブリダイゼーションに関して使用される場合、ストリンジェンシーは、典型的には、約Tm-5℃(プローブのTmを5℃下回る)からTmを約20℃、25℃下回るまでの範囲において生じる。当業者により理解される通り、ストリンジェントなハイブリダイゼーションを使用し、同一のポリヌクレオチド配列を同定または検出することができる、あるいは、類似または関連ポリヌクレオチド配列を同定または検出することができる。「ストリンジェントな条件」下で、目的の核酸配列は、その正確な相補体および密接に関連する配列にハイブリダイズする。プライマーまたは短いプローブの核酸ハイブリダイゼーションのための、適切なストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、例えば、50℃での3×SSC、0.1% SDSを含む。
核酸ハイブリダイゼーションに関して使用される場合、当技術分野では、多数の同等な条件を用いて、低または高ストリンジェンシー条件のいずれかを含むことができることが周知である;因子、例えばプローブの長さおよび性質(DNA、RNA、塩基組成)および標的の性質(溶液中に存在する、または固定化されたDNA、RNA、塩基組成)ならびに塩および他の成分の濃度(例えば、ホルムアミド、硫酸デキストラン、ポリエチレングリコールの存在または非存在)が考慮され、ハイブリダイゼーション溶液を変動させ、上に列挙した条件と異なるが、同等である低または高ストリンジェンシーのハイブリダイゼーションのいずれかの条件を生成することができる。
本明細書において使用する用語「固体表面」は、剛性または半剛性の表面を有する材料を指す。そのような材料は、好ましくは、チップ、プレート(例えば、マイクロタイタープレート)、スライド、小さなビーズ、ペレット、ディスクの形態、または他の便利な形態を取るが、他の形態を使用することができる。一部の態様においては、固体表面の少なくとも1つの表面が、実質的に平らである。他の態様においては、ほぼ球形の形状が好ましい。
本明細書において使用する用語「再プログラミング」は、分化細胞(例えば、体細胞)の分化状態を変える、または逆転させるプロセスを指す。別の言い方をすると、再プログラミングは、細胞の、より未分化なまたはより原始的な型へと細胞の分化を逆に推進するプロセスを指す。完全な再プログラミングは、接合体が成体に発生する際、細胞分化の間に生じる、核酸修飾(例えば、メチル化)、クロマチン凝縮、エピジェネティック変化、ゲノムインプリンティングなどの遺伝パターンの少なくとも一部の完全な逆転を含む。再プログラミングは、既に多能性である細胞の既存の未分化状態を単に維持すること、または、既に複能性細胞である細胞(例えば、造血幹細胞)の既存の、完全に満たない分化状態を維持することからは区別される。再プログラミングは、また、既に多能性または複能性である細胞の自己複製または増殖を促すことから区別されている。
用語「誘導多能性幹細胞」または「iPSC」または「iPS細胞」は、分化細胞(例えば、体細胞)の分化状態の完全な復帰または再プログラミングに由来する細胞を指す。本明細書において使用する通り、iPSCは十分に再プログラミングされており、完全なエピジェネティック再プログラミングを受けた細胞である。本明細書において使用する通り、iPSCは、より未成熟な状態にさらに再プログラミングすることができない細胞である(例えば、iPSCは最終まで再プログラミングされている)。
本明細書において使用する用語「多能性」は、異なる条件下で、3つ全ての胚細胞層(内胚葉、中胚葉、および外胚葉)に特徴的な細胞型に分化する能力を伴う細胞を指す。多能性幹細胞は、典型的には、長期間にわたり(例えば、1年を超えて、または30継代を上回り)インビトロで分裂する能力を有する。
用語「分化細胞」は、その用語が本明細書において定義される通り、その天然の形態において多能性ではない任意の初代細胞を指す。用語「分化細胞」はまた、部分的に分化した細胞(例えば複能性細胞など)、または安定な非多能性の部分的に再プログラミングされた細胞である細胞を包含する。多くの初代細胞を培養液中に置くことで、完全に分化した特徴の一部の喪失を招きうることに注意すべきである。しかし、そのような細胞は、用語「分化細胞」に含まれており、完全に分化した特徴の喪失は、これらの細胞を非分化細胞(例えば、未分化細胞)または多能性細胞とするものではない。多能性への分化細胞の移行には、培養液中での分化した特徴の部分的な喪失を招く刺激を超えた再プログラミング刺激が要求される。再プログラミングされた細胞はまた、一般的に培養液中での限られた数だけの分裂のための能力を有する初代細胞の親と比べて、成長能の喪失を伴わず、延長した継代の能力の特徴を有する。一部の態様において、用語「分化細胞」はまた、それほど特殊ではない細胞型の細胞に(例えば、未分化細胞または再プログラミング細胞に)由来する、より特殊化した細胞型の細胞を指し、その場合、細胞は細胞分化プロセスを受けている。
本明細書において使用する通り、用語「成体細胞」は、胚発生後に体中に見出される細胞を指す。
細胞個体発生の文脈において、用語「分化する」または「分化している」は、「分化細胞」が、その前駆細胞よりも発生経路のさらに下方に進行した細胞であることを意味する相対的な用語である。このように、一部の態様において、再プログラミング細胞は、この用語が本明細書において定義される通り、系列が制限された前駆細胞(例えば中胚葉幹細胞など)に分化することができ、それは、次に、さらに経路の下方の他の型の前駆細胞に(例えば組織特異的な前駆体、例えば、心筋細胞前駆体)、次に、最終段階の分化細胞に分化することができ、それは、特定の組織型において特徴的な役割を果たし、さらに増殖する能力を保持することができる、あるいはできない。
用語「胚性幹細胞」は、胚盤胞の内部細胞塊の多能性幹細胞を指すために使用される(米国特許第5,843,780号、第6,200,806号を参照のこと。それらは、参照により本明細書に組み入れられる)。そのような細胞は、同様に、体細胞核移植に由来する胚盤胞の内部細胞塊から得ることができる(例えば、米国特許第5,945,577号、第5,994,619号、第6,235,970号を参照のこと。それらは、参照により本明細書に組み入れられる)。胚性幹細胞の顕著な特徴によって、胚性幹細胞の表現型が定義される。したがって、細胞が、胚性幹細胞の固有の特徴のうちの1つまたは複数を有することにより、その細胞が他の細胞から区別され得る場合、胚性幹細胞の表現型を有する。例示的な、顕著な胚性幹細胞の特徴は、限定されないが、遺伝子発現プロファイル、増殖能力、分化能力、核型、特定の培養条件に対する応答性などを含む。
用語「表現型」は、実際の遺伝子型に関わらず、環境条件および因子の特定のセットの下で細胞または生物を定義する、全体の生物学的特徴のうちの1つまたは多数を指す。
本明細書において言及する用語「細胞培養培地」(また、本明細書において「培養培地」または「培地」として言及される)は、細胞生存を維持し、増殖を支持する栄養分を含む、細胞を培養するための培地である。細胞培養培地は、以下のいずれかを適当な組み合わせで含むことができる:塩、緩衝剤、アミノ酸、グルコースまたは他の糖、抗生物質、血清または血清代替物、および他の成分(例えばペプチド成長因子など)。特定の細胞型のために普通に使用される細胞培養培地が、当業者に公知である。
用語「自己複製培地」または「自己複製培養条件」は、幹細胞株が未分化状態で増殖することを可能にする栄養分を含む、幹細胞を培養するための培地を指す。自己複製培養培地は、当業者に周知であり、胚様体(EB)としての幹細胞の維持のために普通に使用され、そこでは、幹細胞は、未分化状態で分裂し、複製する。
用語「細胞株」は、典型的には、単一の原細胞から、あるいは、定義された、および/または実質的に同一の原細胞の集団に由来した、大部分が同一の、つまり実質的に同一の細胞の集団を指す。細胞株は、長期間にわたり(例えば、数月、数年、無制限の期間)培養液中で維持されていることが可能であるか、または維持されることが可能であり得る。細胞株は、当技術分野において、そのようなものとして認識されるそれらの細胞株全てを含む。細胞が、変異、および、恐らくは、エピジェネティックな変化を経時的に獲得し、それにより細胞株の個々の細胞の少なくとも一部の特性が、互いに対して異なりうることが理解されるであろう。
本明細書において使用する用語「系列」は、共通の祖先を有する細胞または共通の発生運命を有する細胞を説明するものである。単に事例として、細胞が、内胚葉起源であるまたは「内胚葉系列」であると記述することは、その細胞が、内胚葉細胞に由来し、かつ内胚葉系列に制限された経路(最終的な内胚葉細胞を生じさせる1つまたは複数の発生系列経路など)に沿って分化することができることを意味し、それは、次に、肝臓細胞、胸腺、膵臓、肺、および腸に分化することができる。
用語「減少する」、「低下した」、「低下」、「減少する」、または「阻害する」は、全て、概して統計的に有意な量だけの減少を意味するために本明細書において使用される。しかし、誤解を避けるために、「低下した」、「低下」または「減少する」または「阻害する」は、参照レベルと比較した、少なくとも10%だけの減少、例えば、少なくとも約20%、または少なくとも約30%、または少なくとも約40%、または少なくとも約50%、または少なくとも約60%、または少なくとも約70%、または少なくとも約80%、または少なくとも約90%、または100%を含むそれ以下の減少(例えば、参照サンプルと比較した非存在レベル)、あるいは、参照レベルと比較した10〜100%の間の任意の減少を意味する。
用語「増加した」、「増加する」または「増強する」または「活性化する」は、全て、概して統計的に有意な量だけの増加を意味するために本明細書において使用される;誤解を避けるために、用語「増加した」、「増加する」または「増強する」または「活性化する」は、参照レベルと比較した、少なくとも10%の増加、例えば、少なくとも約20%、または少なくとも約30%、または少なくとも約40%、または少なくとも約50%、または少なくとも約60%、または少なくとも約70%、または少なくとも約80%、または少なくとも約90%、または100%を含むそれ以下の増加、あるいは、参照レベルと比較した10〜100%の間の任意の増加、あるいは、参照レベルと比較した、少なくとも約2倍、または少なくとも約3倍、または少なくとも約4倍、または少なくとも約5倍、または少なくとも約10倍の増加、または、2倍から10倍またはそれ以上の間の任意の増加を意味する。
用語「統計学的に有意な」または「有意に」は統計的有意性を指し、概して、マーカーの値における標準偏差の2倍(2SD)分、またはそれより大きな差を意味する。この用語は、差があるとの統計的証拠を指す。それは、帰無仮説が実際に真である場合、帰無仮説を棄却する決定を下す確率として定義される。統計的有意性は、t検定により、またはp値を使用して決定することができる。
本明細書において使用する通り、用語「DNA」は、デオキシリボ核酸として定義される。
本明細書において使用する用語「分化」は、原始段階から、より成熟した(即ち、それほど原始的ではない)細胞に向かう細胞の細胞発生を指す。
本明細書において使用する用語「方向付けられた分化」は、遺伝子および/または環境操作を介して、未分化(例えば、より原始的な細胞)から、より成熟した細胞型(即ち、それほど原始的ではない細胞)への細胞の分化を強制することを指す。一部の態様において、本明細書において開示する再プログラミング細胞は、特定の細胞型、例えば神経細胞型、筋細胞型などへの方向付けられた分化を受けることになる。
本明細書において使用する用語「疾患モデル化」は、ヒトの疾患または病気についての新たな情報を得るための実験細胞培養または動物研究の使用を指す。一部の態様において、本明細書において開示する方法により産生された再プログラミング細胞を、疾患モデル化実験において使用することができる。
本明細書において使用する用語「薬物スクリーニング」は、特定の機能を伴う薬物を同定するための、実験室における細胞および組織の使用を指す。一部の態様において、本発明は、化合物または薬物の非存在下と比較して、初期発生遺伝子のセットの発現のレベルを変化させる(例えば、増加または減少させる)化合物または薬物を同定するための薬物スクリーニングを提供する。
「バイオマーカー」と互換的に使用される用語「マーカー」は、細胞の特徴および/または表現型を説明するものである。マーカーは、目的の特徴を含む細胞の選択のために使用することができる。マーカーは、特定の細胞で変動する。マーカーは特徴であり、特定の細胞型の細胞の形態学的、機能的、または生化学的(酵素的)特徴、あるいは細胞型により発現される分子を問わない。好ましくは、そのようなマーカーは、遺伝子転写物またはその翻訳産物(例えば、タンパク質)である。しかし、マーカーは、限定はしないが、タンパク質(ペプチドおよびポリペプチド)、脂質、多糖類、核酸、およびステロイドを含む、細胞内で見出された任意の分子から成ることができる。形態学的特徴または形質の例は、限定はしないが、形状、大きさ、および核と細胞質の比率を含む。機能的特徴または形質の例は、限定はしないが、特定の基質に付着する能力、特定の色素を取り込む、または除去する能力、特定の条件下で移動する能力、および特定の系列に沿って分化する能力を含む。マーカーは、当業者に入手可能な任意の方法により検出することができる。マーカーは、また、形態学的特徴の非存在またはタンパク質、脂質などの非存在でありうる。マーカーは、ポリペプチドの存在および非存在の固有の特徴ならびに他の形態学的特徴のパネルの組み合わせでありうる。
用語「コンピュータ」は、構造化された入力を受け入れ、所定のルールに従って構造化された入力をプロセシングし、出力としてプロセシングの結果を産生することが可能な任意の非ヒト装置を指すことができる。コンピュータの例は、以下を含む:コンピュータ;汎用コンピュータ;スーパーコンピュータ;メインフレーム;スーパーミニコンピュータ;ミニコンピュータ;ワークステーション;マイクロコンピュータ;サーバー;双方向テレビ;コンピュータと双方向テレビのハイブリッド組み合わせ;ならびにコンピュータおよび/またはソフトウェアを模倣するためのアプリケーション固有のハードウェア。コンピュータは、単一のプロセッサーまたは複数のプロセッサーを有することができ、それは、並列および/または非並列で作動することができる。コンピュータは、また、コンピュータ間で情報を送信または受信するためのネットワークを介して互いに接続された2つまたはそれ以上のコンピュータを指す。そのようなコンピュータの例は、ネットワークにより連結されたコンピュータを介して情報をプロセシングするための分散型コンピュータシステムを含む。
用語「コンピュータ可読媒体」は、コンピュータによりアクセス可能なデータを保存するために使用される任意の記憶デバイス、ならびにコンピュータによるデータへのアクセスを提供するための任意の他の手段を指すことができる。記憶デバイスタイプのコンピュータ可読媒体の例は、限定はしないが、磁気ハードディスク;フロッピーディスク;光ディスク(例えばCD-ROMおよびDVDなど);DAT、USBドライブ、磁気テープ;メモリチップを含む。コンピュータ可読媒体は、有形媒体であり、シグナルではなく、搬送波またはデータ送信用の他の波形を含まない。
用語「ソフトウェア」は、本明細書において「プログラム」と互換的に使用され、コンピュータを操作するための規定のルールを指す。ソフトウェアの例は、ソフトウェア;コードセグメント;指示;コンピュータプログラム;およびプログラム化されたロジックを含む。
用語「コンピュータシステム」は、コンピュータを有するシステムを指すことができ、そこで、コンピュータは、コンピュータを操作するためのソフトウェアを具現化するコンピュータ可読媒体を含む。
語句「ディスプレイまたは出力する」あるいは初期発生遺伝子のセットの発現解析の結果または予測結果の「表示」を提供することは、遺伝子発現の結果を、任意の媒体(例えば口頭、書き込み、ビジュアルディスプレイなど)、コンピュータ可読媒体、またはコンピュータシステムを使用して、ユーザーに通信することを意味する。結果を出力することが、ユーザーまたは連結された外部部品(例えばコンピュータシステムまたはコンピュータメモリなど)に出力することに限定されず、代替的に、または追加的に、内部部品(例えば任意のコンピュータ可読媒体など)に出力することができることが、当業者には明らかであろう。本明細書において開示および主張する種々のサンプル分類方法が、必要ではないが、コンピュータ実行されることができ、例えば、ディスプレイ段階または出力段階が、例えば、ヒトに口頭でまたは文書で(例えば、手書きで)通信することにより行われ得ることが、当業者には明らかであろう。
本明細書において使用する通り、用語「含んでいる」または「含む」は、組成物、方法、およびそれらのそれぞれの成分に言及して使用され、それらは、本発明に必須であり、必須であるか否かを問わず、特定されていない要素の包含に関してなお排他的ではない。
本明細書において使用する通り、用語「本質的になる」が、所与の態様のために要求される要素を指す。この用語は、本発明のその態様の基本的で、新規または機能的な特徴に実質的に影響を与えない追加の要素の存在を許容する。
用語「からなる」は、本明細書において記載する組成物、方法、およびそれらのそれぞれの成分を指し、態様のその記載に列挙されない任意の要素は除かれる。
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用される通り、単数形「一つ(a)」、「一つ(an)」、および「その(the)」は、文脈が明らかにそうでないことを示さない限り、複数の言及を含む。従って、例えば、「方法(the method)」への言及は、1つまたは複数の方法、ならびに/あるいは、本明細書において記載する、および/または本開示などを読むと、当業者に明らかになるタイプの1つまたは複数の段階を含む。
操作例以外において、またはそうでないと示されている場合を除き、本明細書において記載する成分または反応条件の量を表現する全ての数が、全ての例において、用語「約」により修飾されるものとして理解されるべきである。用語「約」は、パーセンテージに関連して使用される場合、±1%を意味することができる。本発明は、さらに、実施例を含めて、以下により詳細に説明されるが、本発明の範囲は、それに限定されるべきではない。
詳細な説明および以下の実施例は単に例証的であり、本発明の範囲を限定するものとして解釈すべきではないことが理解される。開示する態様に対する種々の変更および改変が、当業者には明らかであろうが、本発明の主旨および範囲から逸脱することなく行うことができる。さらに、特定された全ての特許、特許出願、および刊行物が、例えば、本発明に関連して使用されうる、そのような刊行物において記載される方法論を記載および開示する目的のために、参照により、本明細書に明確に組み入れられる。これらの刊行物は、本願の出願日より前のそれらの開示のためだけに提供される。これらの文書の日付または内容に関する表現に関する全ての記述が、出願人が入手可能な情報に基づいており、これらの文書の日付または内容の正確さに関するいかなる承認も構成するものではない。
初期発生遺伝子
本発明の一局面は、幹細胞株(例えば、多能性幹細胞株)の分化能および/または多能性を決定するため、ならびに/あるいは、幹細胞株を特徴付ける、および/または比較するための系列スコアカードの産生のために、初期発生遺伝子のセットの遺伝子発現を測定することに関する。「系列スコアカード」は、幹細胞株(例えば、目的の多能性幹細胞)の分化能および多能性の定量化として有用であり、目的の幹細胞株が、あらかじめ確立された、または参照の多能性幹細胞株と比較して、いかに効率的に目的の特定の系列に分化するのかといった情報を提供する。
したがって、本発明のさらなる局面は、初期発生遺伝子および系列マーカー遺伝子のセットの遺伝子発現をモニタリングすることにより、幹細胞株(例えば、多能性幹細胞集団)を検証および/またはモニタリングするための方法を提供し、幹細胞株の系列スコアカードを生成することを含み、幹細胞株の特徴を同定する(いずれの幹細胞株が、所望の細胞系列に沿って分化する可能性が高いか、および/または、いずれの幹細胞株が多能性であり、非多能性であるのかを予測することを含む)。
一部の態様において、例えば、差次的に発現される初期発生遺伝子を測定することにより、所与の幹細胞株について分化傾向(または分化能)を決定し、続いて参照または「標準」多能性幹細胞株と比較した、初期発生標的遺伝子のセット(例えば、表1に列挙する遺伝子の一部または組み合わせ)の遺伝子発現レベルにおける変化を決定することができる。
(表1)培養液中(例えば、自己複製培養条件または培地中)での2日間という早期での、特定の系列に沿った幹細胞の分化を決定するための各々の分化カテゴリーにおける初期発生標的遺伝子(例えば、外胚葉初期発生遺伝子、内胚葉初期発生遺伝子、中胚葉初期発生遺伝子、多能性発生遺伝子)のリスト
Figure 2016532435
Figure 2016532435
Figure 2016532435
Figure 2016532435
Figure 2016532435
一部の態様において、本発明は、表2からの少なくとも3つの遺伝子より選択される初期発生遺伝子のセットの遺伝子発現を測定することを包含する。
(表2)培養液中での2日間という早期での、特定の系列に沿った幹細胞の分化を決定するための初期発生標的遺伝子のリスト
Figure 2016532435
一部の態様において、本発明は、HAND1、ESM1、HAND2、HOPX、BMP10、FCN3、およびGSCからなる群より選択される中胚葉初期発生遺伝子の群からの、少なくとも1つの遺伝子の遺伝子発現を測定することを包含する。一部の態様において、本発明は、LEFTY1、EOMES、NODAL、およびFOXA2からなる群より選択される内胚葉初期発生遺伝子の群からの、少なくとも1つの遺伝子の遺伝子発現を測定することを包含する。一部の態様において、本発明は、TRPM8、POU4F1、OLFM3、WNT1、LMX1A、およびCDH9からなる群より選択される外胚葉初期発生遺伝子の群からの、少なくとも1つの遺伝子の遺伝子発現を測定することを包含する。一部の態様において、本発明は、IDO1、LCK、POU5F1、およびHESX1からなる群より選択される多能性遺伝子の群からの、少なくとも1つの遺伝子の遺伝子発現を測定することを包含する。
一部の態様において、本発明は、HAND1、ESM1、HAND2、HOPX、BMP10、FCN3、およびGSCからなる群より選択される中胚葉初期発生遺伝子の群からの、少なくとも2つ、または少なくとも3つ、または少なくとも4つの遺伝子の遺伝子発現を測定することを包含する。一部の態様において、本発明は、LEFTY1、EOMES、NODAL、およびFOXA2からなる群より選択される内胚葉初期発生遺伝子の群からの、少なくとも2つ、または少なくとも3つ、または少なくとも4つの遺伝子の遺伝子発現を測定することを包含する。一部の態様において、本発明は、TRPM8、POU4F1、OLFM3、WNT1、LMX1A、およびCDH9からなる群より選択される外胚葉初期発生遺伝子の群からの、少なくとも2つ、または少なくとも3つ、または少なくとも4つの遺伝子の遺伝子発現を測定することを包含する。一部の態様において、本発明は、IDO1、LCK、POU5F1、およびHESX1からなる群より選択される多能性遺伝子の群からの、少なくとも2つ、または少なくとも3つ、または少なくとも4つの遺伝子の遺伝子発現を測定することを包含する。
一部の態様において、本発明はまた、細胞株(例えば、多能性幹細胞株)が、神経系列、膵臓系列、心臓血管系列、造血、および他の系列(例えば、骨、皮膚、肝臓、腎臓、血液、系列など)に沿って分化する能力を有するか否かを同定する、遺伝子の遺伝子発現を測定することを包含する。
一部の態様において、本発明はまた、PAX3、PAX6、MAP2、LMX1A、SOX1、SOX2、SNAI2、EOMES、EN1、およびNKX2-5からなる群より選択される初期発生神経遺伝子のセットからの、少なくとも1つの遺伝子、または少なくとも2つ、または少なくとも3つ、または少なくとも4つもしくはそれ以上の遺伝子の遺伝子発現を測定することを包含する。一部の態様において、本発明は、また、ZBTB16、T、およびCDH5からなる群より選択される初期発生造血遺伝子のセットからの、少なくとも1つの遺伝子、または少なくとも2つ、または少なくとも3の遺伝子の遺伝子発現を測定することを包含する。一部の態様において、本発明は、また、GATA4、HNF4A、HHEX、TBX3、AFP、HNF1B、およびFOXA2からなる群より選択される初期発生肝臓遺伝子のセットからの、少なくとも1つの遺伝子、または少なくとも2つ、または少なくとも3つ、または少なくとも4つもしくはそれ以上の遺伝子の遺伝子発現を測定することを包含する。一部の態様において、本発明は、また、ZBTB16、T、CDH5、GATA4、およびHAND1からなる群より選択される初期発生心臓または心臓血管遺伝子のセットからの、少なくとも1つの遺伝子、または少なくとも2つ、または少なくとも3つ、または少なくとも4もしくはそれ以上の遺伝子の遺伝子発現を測定することを包含する。一部の態様において、本発明は、また、SST、PAX6、HHEX、およびFOXA2からなる群より選択される初期発生膵臓遺伝子のセットからの、少なくとも1つの遺伝子、または少なくとも2つ、または少なくとも3つ、または少なくとも4つもしくはそれ以上の遺伝子の遺伝子発現を測定することを包含する。
遺伝子SRYはまた、性決定遺伝子として、および、細胞IDを同定するのを助けるために、本明細書において開示するアッセイ、方法、およびシステムにおいて使用することができる。一部の態様において、アッセイ、方法、およびシステムは、この遺伝子を解析するためのソフトウェアを含むことができる。一部の態様において、本明細書において開示するアッセイ、方法、およびシステムは、CytoTune由来iPSC中へのSendai希釈物を検出するために、SEVを含むことができる。一部の態様において、本明細書において開示するアッセイ、方法、およびシステムは、外因性対内因性再プログラミング因子(例えば、Sox2、Oct4、c-myc、Klf4)についての遺伝子、ならびに他の公知の再プログラミング遺伝子または当業者に公知の因子を含むことができる。
一部の態様において、対照遺伝子をアッセイする(例えば、表3に列挙される対照遺伝子の1つまたは複数)。一部の態様において、対照遺伝子は、ACTB、CTCF、SMAD1、またはEP300からの少なくとも1つより選択される。一部の態様において、表3における対照遺伝子を、別の対照遺伝子(例えば、ハウスキーピング遺伝子、例えばEP300、βアクチン、HSP90、GAPDHなど)と置換することができる。ハウスキーピング遺伝子は、基本的な細胞機能の維持のために必要な構成遺伝子であり、正常および病態生理学的条件下で、生物の全ての細胞において発現される。表3における対照遺伝子と置換することができる他の対照遺伝子の例は、限定はしないが、EP300、APDH、βアクチン、EIF2B、RPL37A、CDKN1B、ABL1、ELF1、POP4、PSMC4、RPL30、CASC3、PES1、RPS17、RPSL17L、CDKN1A、MRPL19、MT-ATP6、GADD45A、PUM1、YWHAZ、UBC、TFRC、TBP、RPLP0、PPIA、POLR2A、PGK1、IPO8、HMBS、GUSB、B2M、HPRT1、または18Sを含む。
一部の態様において、対照ACTB遺伝子を、評価されている特定の多能性幹細胞株についての種特異的バージョンで置換することができる(例えば、評価されているマウス多能性幹細胞株について、マウスACTB遺伝子を使用する)。一部の態様において、本明細書において開示するアッセイおよび方法において使用する対照遺伝子は、CD44(Mm01277167_m1またはMm01277164_m1)であり、それは、マウス特異的なハウスキーピング遺伝子であり、ゲノムDNAを増幅せず、残留MEF混入を検出するために理想的である。
(表3)本明細書において開示するアッセイ、方法、キット、およびシステムにおける使用のための対照遺伝子のリスト
Figure 2016532435
本明細書において開示する分化アッセイ、方法、システム、およびキットは、種々の型の多能性幹細胞および前駆細胞(例えば、ES細胞、体性幹細胞、造血幹細胞、白血病幹細胞、皮膚幹細胞、腸管幹細胞、性腺幹細胞、脳幹細胞、筋肉幹細胞(筋芽細胞など)、乳腺幹細胞、神経幹細胞(例えば、小脳顆粒ニューロン前駆体など)など)、ならびに、例えば、Sparmann & Lohuizen, Nature 6, 2006(Nature Reviews Cancer, November 2006)、参照により本明細書に組み入れられる)の表1に記載する幹細胞/前駆細胞、ならびにインビトロおよびインビボ由来の幹細胞、例えば誘導多能性幹細胞(iPSC)などについて質および有用性を決定するための実質的な有用性を有する。
アレイ
本発明の一局面は、表1に列挙するものより選択される初期発生遺伝子の任意の組み合わせのmRNAを増幅する核酸配列を含む、幹細胞株(例えば、多能性幹細胞)の分化能および/または多能性を特徴付けるためのアレイ組成に関する。一部の態様において、アレイは、表2に列挙されるものより選択される、少なくとも3つの初期発生遺伝子のmRNAを増幅する核酸配列(例えば、オリゴヌクレオチドまたはプライマー)を含む。一部の態様において、増幅された発生遺伝子は、表1および/または表2に列挙されるものより選択される遺伝子をコードする核酸と少なくとも90%同一である、または、それに特異的にハイブリダイズする。
一部の態様において、アレイは、表1および/または表2に列挙される遺伝子の任意の組み合わせより選択される初期発生遺伝子のセットにより発現されるmRNAに特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチド(例えば、プローブまたはプライマー)を含む。一部の態様において、アレイは、本明細書において開示するキットの一部として存在しうるが、ここで、キットは、PCRベースの方法(例えば、RT-PCR)により複数の初期発生遺伝子の発現レベルを測定するために使用することができるアレイに加えて、試薬を含む。一部の態様において、キットを、本明細書において開示する方法を行うために使用することができ、表1および/または表2に列挙される遺伝子の組み合わせより選択される初期発生遺伝子のセットの発現を測定するためのアレイおよび試薬を含む。
一部の態様において、初期発生遺伝子のセットの発現を測定するためのアレイおよび試薬を、HAND1、ESM1、HAND2、HOPX、BMP10、FCN3、およびGSCからなる群より選択される中胚葉初期発生遺伝子の群からの、少なくとも1つ、または少なくとも2つ、または少なくとも3つ、または少なくとも4つの遺伝子より選択することができる。一部の態様において、初期発生遺伝子のセットの発現を測定するためのアレイおよび試薬を、LEFTY1、EOMES、NODAL、およびFOXA2からなる群より選択される内胚葉初期発生遺伝子の群からの、少なくとも1つ、または少なくとも2つ、または少なくとも3つ、または少なくとも4つの遺伝子より選択することができる。一部の態様において、初期発生遺伝子のセットの発現を測定するためのアレイおよび試薬を、TRPM8、POU4F1、OLFM3、WNT1、LMX1A、およびCDH9からなる群より選択される外胚葉初期発生遺伝子の群からの、少なくとも1つ、または少なくとも2つ、または少なくとも3つ、または少なくとも4つの遺伝子より選択することができる。一部の態様において、初期発生遺伝子のセットの発現を測定するためのアレイおよび試薬を、IDO1、LCK、POU5F1、およびHESX1からなる群より選択される多能性遺伝子の群からの、少なくとも1つ、または少なくとも2つ、または少なくとも3つ、または少なくとも4つの遺伝子より選択することができる。
一部の態様において、アレイは、少なくとも10、または少なくとも約20、または少なくとも約30、または30〜60、または60〜90、または90を上回る核酸配列(例えば、オリゴヌクレオチド)、あるいは、少なくとも10、または少なくとも約20、または少なくとも約30、または30〜60、または60〜90、または90を上回る核酸配列(例えば、プライマー)の対を含み、それらによって、表1に列挙されるものより選択される10個の初期発生遺伝子の組み合わせのmRNAが増幅される。
一部の態様において、アレイは、表1よりおよび/または表2より選択される、少なくとも1つの多能性幹細胞遺伝子、少なくとも1つの初期中胚葉発生遺伝子、少なくとも1つの外胚葉発生遺伝子、および少なくとも1つの内胚葉発生遺伝子のmRNAを増幅する核酸配列を含む。一部の態様において、アレイは、表1より選択される、少なくとも4つの多能性幹細胞遺伝子、少なくとも4つの初期中胚葉発生遺伝子、少なくとも4つの外胚葉発生遺伝子、および少なくとも4つの内胚葉発生遺伝子のmRNAを増幅する核酸配列(例えば、オリゴヌクレオチドまたはプライマー)を含む。
一部の態様において、アレイは、少なくとも1個、または少なくとも約2個、または少なくとも約3個、または少なくとも約4個、または少なくとも約5個、または少なくとも約10個、または少なくとも約20個、または少なくとも約30個、または30個を超える多能性遺伝子のmRNAに特異的にハイブリダイズする核酸配列(例えば、オリゴヌクレオチドおよび/またはプライマー)、ならびに/あるいは、少なくとも1個、または少なくとも約2個、または少なくとも約3個、または少なくとも約4個、または少なくとも約5個、または少なくとも約10個、または少なくとも約20個、または少なくとも約30個、または30個を超える初期中胚葉遺伝子のためのプローブ、ならびに/あるいは、少なくとも1個、または少なくとも約2個、または少なくとも約3個、または少なくとも約4個、または少なくとも約5個、または少なくとも約10個、または少なくとも約20個、または少なくとも約30個、または30個を超える初期外胚葉遺伝子のためのプローブ、ならびに/あるいは、少なくとも1個、または少なくとも約2個、または少なくとも約3個、または少なくとも約4個、または少なくとも約5個、または少なくとも約10個、または少なくとも約20個、または少なくとも約30個、または30個を超える初期内胚葉遺伝子についてのプローブを含む。そのような初期外胚葉遺伝子、および/または初期内胚葉遺伝子、および/または初期中胚葉遺伝子、および/または多能性遺伝子は、表1にまたは表2に列挙される任意の組み合わせより選択することができる。あるいは、初期発生遺伝子は、表1に列挙されない他の遺伝子からでありうるが、しかし、少なくとも2日EBである細胞において発現され、細胞は、後の時点で、その特定の細胞系列に分化する能力を有する。
一部の態様において、アレイは、表2からの少なくとも1個、または少なくとも約2個、または少なくとも約3個、または少なくとも約4個、または少なくとも約5個の遺伝子のmRNAに特異的にハイブリダイズする核酸配列(例えば、オリゴヌクレオチドおよび/またはプライマー)を含む。一部の態様において、アレイは、表2に開示される各々の系列サブタイプ(例えば、外胚葉、中胚葉、および内胚葉サブタイプ)からの少なくとも1個、または少なくとも2個、または少なくとも3個の遺伝子のmRNAに特異的にハイブリダイズするプローブ(例えば、オリゴヌクレオチドおよび/またはプライマー)を含む。
一部の態様において、表1および/または表2に列挙する遺伝子のいずれかを、代替の初期発生遺伝子の代わりに使用することができる。例えば、一部の態様において、表1より選択される少なくとも10個または少なくとも20個の初期発生遺伝子のmRNAに特異的にハイブリダイズするプローブ(例えば、オリゴヌクレオチドおよび/またはプライマー)を含むことに加えて、アレイは、表1に列挙されない異なる初期発生遺伝子の発現を測定するために、他の初期発生遺伝子のmRNAに特異的にハイブリダイズする追加の試薬(例えば、プローブ、例えば、オリゴヌクレオチドおよび/またはプライマー)を含むことができる。そのような遺伝子は、当業者に公知であり、本明細書において開示するアッセイ、キット、方法、システムにおける使用のために想定される。一部の態様において、例えば、中胚葉遺伝子を、GSC(グースコイドホメオボックス)(アクセッション番号NM_173849.2に対応するヒトmRNA)の代わりに使用することができる。
例えば、一部の態様において、代替遺伝子は、限定はしないが、外胚葉胚細胞のためのマーカーを含むことができ、限定はしないが、NCAM1、EN1、FGFR2、GATA2、GATA3、HAND1、MNX1、NEFL、NES、NOG、OTX2、PAX3、PAX6、PAX7、SNAI2、SOX10、SOX9、TDGF1、APOE、PDGFRA、MCAM、FUT4、NGFR、ITGB1、CD44、ITGA4、ITGA6、ICAM1、THY1、FAS、ABCG2、CRABP2、MAP2、CDH2、NES、NEUROG3、NOG、NOTCH1、SOX2、SYP、MAPT、THを含む。一部の態様において、代替遺伝子は、限定はしないが、ヒト内胚葉胚細胞のためのマーカーを含むことができ、限定はしないが、APOE、CDX2、FOXA2、GATA4、GATA6、GCG、ISL1、NKX2-5、PAX6、PDX1、SLC2A2、SST、ITGB1、CD44、ITGA6、THY1、CDX2、GATA4、HNF1A、HNF1B、CDH2、NEUROG3、CTNNB1、SYPを含み、および、中胚葉胚細胞のためのマーカーは、限定はしないが、CD34、DLL1、HHEX、INHBA、LEF1、SRF、T、TWIST1、ADIPOQ、MME、KIT、ITGAL、ITGAM、ITGAX、TNFRSF1A、ANPEP、SDC1、CDH5、MCAM、FUT4、NGFR、ITGB1、PECAM1、CDH1、CDH2、CD36、CD4、CD44、ITGA4、ITGA6、ITGAV、ICAM1、NCAM1、ITGB3、CEACAM1、THY1、ABCG2、KDR、GATA3、GATA4、MYOD1、MYOG、NES、NOTCH1、SPI1、STAT3を含む。マウスにおいて、内胚葉胚細胞のマーカーは、Gata4、FoxA2、PDX1、Nodal、Sox7、およびSox17を含む。マウスにおいて、中胚葉胚細胞のマーカーは、Brachycury、GSC、LEF1、Mox1、およびTie1を含む。マウスにおいて、外胚葉胚細胞のマーカーは、cripto1、EN1、GFAP、Islet 1、LIM1、およびNestinを含む。したがって、特定の所望の、あるいは望ましくない特徴を同定するための、多能性幹細胞株の正確な特徴付けのための「カスタマイズされたアレイ」を開発するために、初期発生標的遺伝子(例えば、初期中胚葉遺伝子または初期内胚葉遺伝子または初期外胚葉遺伝子)の特定のセットを選択することができる。
一部の態様において、アレイ中の核酸配列は、プライマー、例えば、表1に開示する初期発生遺伝子のサブセットのmRNAに特異的にハイブリダイズするRT-PCRプライマーまたはハイブリダイゼーションプローブである。一部の態様において、核酸配列、例えば、プライマー(例えば、RT-PCRプライマー)を固体支持体上に固定化することができる。一部の態様において、アレイは、少なくとも1個、または少なくとも2個、または少なくとも3個、または少なくとも4個、または少なくとも5個の対照遺伝子のmRNAに特異的にハイブリダイズする核酸配列(例えば、オリゴヌクレオチドおよび/またはプライマー)を含む。対照遺伝子は、表3に列挙されるものを含むが、しかし、ACTB、JARID2、CTCF、SMAD1、βアクチン、GAPDHなどに限定されない。一部の態様において、対照遺伝子を増幅する核酸配列は、同じアレイ中の複数の位置に存在することができる。
一部の態様において、アレイは、核酸配列(例えば、オリゴヌクレオチドまたはプライマー)を含み、それによって、例えば、限定はしないが、ACTB、JARID2、CTCF、SMAD1、GAPDH、βアクチン、EIF2B、RPL37A、CDKN1B、ABL1、ELF1、POP4、PSMC4、RPL30、CASC3、PES1、RPS17、RPSL17L、CDKN1A、MRPL19、MT-ATP6、GADD45A、PUM1、YWHAZ、UBC、TFRC、TBP、RPLP0、PPIA、POLR2A、PGK1、IPO8、HMBS、GUSB、B2M、HPRT1、または18Sからなる群より選択される対照遺伝子などの1〜10個の対照遺伝子に少なくとも対応する配列のmRNAが増幅される。
一部の態様において、アレイは、100以下、または90以下、または50以下の核酸配列(例えば、オリゴヌクレオチドまたはプライマー)を含む。一部の態様において、アレイ上に存在する核酸配列は、プライマーのセットである。一部の態様において、核酸配列(例えば、オリゴヌクレオチドまたはプライマー)は、固体支持体上または内で固定化される。核酸配列は、前記オリゴヌクレオチドの5'末端により、固体支持体上に固定化することができる。一部の態様において、固体支持体は、シリコン、金属、およびガラスを含む材料の群より選択される。一部の態様において、固体支持体は、xおよびy座標により定義される、割り当てられた位置でオリゴヌクレオチドを含む。
一部の態様において、アレイは、核酸配列、例えば、以下を含む方法により初期発生遺伝子のmRNAを増幅することができるプライマーを含む:ポリメラーゼ連鎖反応(PCR);鎖置換増幅(SDA);ループ媒介等温増幅(LAMP);ローリングサークル増幅(RCA);転写媒介増幅(TMA);自家持続配列複製(3SR);核酸配列ベースの増幅(NASBA)または逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)。一部の態様において、アレイは、初期発生遺伝子のリアルタイムPCR増幅、またはSYBRグリーン方法もしくはMNAzyme検出方法による検出を伴う、初期発生遺伝子のリアルタイムPCR増幅を可能にする。
一部の態様において、本明細書において開示するアレイは、例えば、OpenArray(登録商標)であって、それは、Life Technologiesから商業的に入手可能であり、核酸配列(例えば、オリゴヌクレオチドまたはプライマー)は、OpenArray(登録商標)のウェル内に固定化される。一部の態様において、本発明における使用のために包含されるアレイは、表1および/または表より選択される初期発生遺伝子のセットに対するプライマーを含み、その全体が参照により本明細書に組み入れられる、米国特許第6,387,331号;第6,743,633号;第6,893,877号;第7,332,271号;および第7,547,556号において開示されるOpenArray(登録商標)として設置される。一部の態様において、アレイは、RT-PCR用のプライマーを使用したアレイである。一部の態様において、アレイは、ハイブリダイゼーションアレイ(例えばマイクロアレイなど)である。
したがって、本発明ではアレイを生成する方法が企図され、オリゴヌクレオチドのための複数の位置を含む固体支持体(その位置はxおよびy座標により定義される);複数の異なるオリゴヌクレオチド(またはプライマー対)(各々が、測定されている初期発生遺伝子の配列の少なくとも一部分と相補的である配列を含み、そこで、各々のオリゴヌクレオチド(またはプライマー)は、固体支持体上の公知の位置に置かれ、順序付けられたアレイが作製される)を提供することを含む。
本発明の一態様において、化学的連結により固体表面上に5'末端により固定化されたオリゴヌクレオチドが企図される。一部の態様において、オリゴヌクレオチドはプライマーであり、約17塩基長でありうるが、他の長さも企図される。
本発明の別の態様において、標的核酸フラグメントをハイブリダイズする方法が企図され、それは、表1および/または表2および/または表3中の配列を表す固定化オリゴヌクレオチドの順序付けられたアレイを提供すること、および、標的核酸の複数のフラグメントを提供すること;ならびに、フラグメントの少なくとも1つが、アレイ上の固定化オリゴヌクレオチドの1つにハイブリダイズするような条件下で、標的核酸のフラグメントをアレイと接触させることを含む。
本発明の別の態様において、標的初期発生遺伝子核酸のフラグメントにハイブリダイズすることが可能なアレイを生成する方法が企図され、オリゴヌクレオチドのための位置を含む固体支持体(その位置はxおよびy座標により定義される);複数のオリゴヌクレオチド(各々のオリゴヌクレオチドが、初期発生遺伝子標的核酸の異なる部分と相補的な配列を含む)を提供することを含む。
本明細書において開示するアレイは、幹細胞株、例えば、目的の多能性細胞株からの、本明細書において開示する初期発生遺伝子のセットのmRNAの増幅を可能にする。全およびポリ(A)+RNAを調製するための方法が周知であり、一般的に、Sambrook et al., MOLECULAR CLONING--A LABORATORY MANUAL (2ND ED.), Vols. 1-3, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, N.Y. (1989)およびAusubel et al., CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY, vol. 2, Current Protocols Publishing, New York (1994)に記載されている。
RNAは、細胞の溶解およびその中に含まれるタンパク質の変性を含む手順により、真核細胞から単離することができる。目的の幹細胞は、哺乳動物(ヒトを含む)からの多能性幹細胞(ES細胞、成体幹細胞、およびiPSC細胞を含むが、それらに限定されない)を含む。追加の段階を用いて、DNAを除去することができる。細胞溶解は、非イオン性界面活性剤を用いて達成し、続いて核および、故に、細胞DNAの大部分を除去するための微量遠心を行うことができる。一態様において、RNAは、グアニジンチオシアネート溶解を使用して、目的の種々の型の細胞から抽出され、続いてDNAからRNAを分離するためのCsCl遠心が行われる(Chirgwin et al., Biochemistry 18:5294-5299 (1979))。ポリ(A)+RNAを、オリゴdTセルロースを用いた選択により単離する(Sambrook et al, MOLECULAR CLONING--A LABORATORY MANUAL (2ND ED.), Vols. 1-3, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, N.Y. (1989)を参照のこと)。あるいは、DNAからのRNAの分離は、例えば、熱フェノールまたはフェノール/クロロホルム/イソアミルアルコールを用いた有機抽出により達成することができる。所望である場合、RNアーゼ阻害剤を溶解緩衝液に加えることができる。同様に、特定の細胞型について、タンパク質変性/消化段階をプロトコールに加えることが望ましいであろう。
核酸分子およびリボ核酸(RNA)分子は、当技術分野において周知である、多数の手順のいずれかを使用し、特定の生物学的サンプルから単離することができ、選ばれた特定の単離手順は、特定の生物学的サンプルのために適当である。例えば、凍結融解およびアルカリ溶解手順は、固体材料から核酸分子を得るために有用でありうる;熱およびアルカリ溶解手順は、尿から核酸分子を得るために有用でありうる;プロテイナーゼK抽出を使用して、血液から核酸を得ることができる(Roiff, A et al. PCR: Clinical Diagnostics and Research, Springer (1994))。
多くの適用のために、他の細胞RNA(例えばトランスファーRNA(tRNA)およびリボソームRNA(rRNA)など)に関して、優先的にmRNAを濃縮することが望ましい。大半のmRNAは、それらの3'末端にポリ(A)テールを含む。これによって、それらが、例えば、固体支持体(例えばセルロースまたはセファデックスなど)に共役されたオリゴ(dT)またはポリ(U)を使用して、アフィニティークロマトグラフィーにより濃縮することが可能になる(Ausubel et al., CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY, vol. 2, Current Protocols Publishing, New York (1994)を参照のこと)。一度結合すると、ポリ(A)+ mRNAは、2mM EDTA/0.1% SDSを使用してアフィニティーカラムから溶出される。
RNAのサンプルは、複数の異なるmRNA分子を含むことができ、各々の異なるmRNA分子は、異なるヌクレオチド配列を有する。特定の態様において、RNAサンプル中のmRNA分子は、少なくとも100の異なるヌクレオチド配列を含む。より好ましくは、RNAサンプルのmRNA分子は、初期発生バイオマーカー遺伝子の各々に対応するmRNA分子を含む。別の特定の態様において、RNAサンプルは哺乳動物RNAサンプルである。
特定の態様において、多能性幹細胞集団からの全RNAまたはmRNAが、本明細書において開示するアッセイおよび方法において使用される。RNAの供給源は、動物、ヒト、哺乳動物、霊長類、非ヒト動物、イヌ、ネコ、マウス、ラット、鳥などの多能性細胞または幹細胞でありうる。特定の態様において、本発明の方法が、1×106個またはそれ未満の細胞からのmRNAまたは全RNAを含むサンプルを用いて使用される。別の態様において、タンパク質は、タンパク質レベルでの発現解析における使用のための、当技術分野において公知の方法により、上記の供給源から単離することができる。
本明細書において開示する初期発生遺伝子バイオマーカー配列のホモログのためのプローブを用いることができ、好ましくは、ここで、非ヒト核酸がアッセイされている。
多能性幹細胞の分化能を決定するための方法
本発明の別の局面は、多能性幹細胞に由来する核酸および本明細書において開示するアレイを使用したアレイ増幅を実施することを含む、多能性幹細胞の分化能を決定するための方法に関する。一部の態様において、アレイ増幅後、データは、中胚葉系列、外胚葉系列、および内胚葉系列より選択される異なる系列に沿って分化する多能性幹細胞の分化能および/または多能性幹細胞の多能性を決定するために使用される指標を出力することができるウェブベースの解析ツールを使用して解析される。
本発明の別の局面は、表1および/または表2に列挙するものより選択される初期発生遺伝子のセットの多能性幹細胞株における発現を検出し、対照多能性幹細胞サンプルによる同じ遺伝子の発現と比較すること、および、この比較に基づいて、多能性幹細胞株の分化能を決定することを含む、多能性幹細胞株の分化能を決定する方法に関する。一部の態様において、遺伝子発現がリアルタイム増幅によりアッセイされ、または、検出が、SYBRグリーンベースのリアルタイムPCRを含む。
一部の態様において、初期発生遺伝子に加えて少なくとも1つの対照遺伝子の発現値(例えば、発現レベル)が多能性幹細胞株において測定されて各々の遺伝子についてΔCtが算出され、各々の初期発生遺伝子のΔCt値が、複数の参照多能性幹細胞からの参照ΔCt値を含むデータプールにおけるその初期発生遺伝子のΔCt値と比較されて、ΔΔCt値が提供される。一部の態様において、初期発生遺伝子に加えて少なくとも1つの対照遺伝子の発現値(例えば、発現レベル)が多能性幹細胞株において測定されて、中胚葉、外胚葉、および内胚葉の初期発生遺伝子のサブグループの各々における遺伝子についての平均ΔCtが算出される。サブグループの各々における遺伝子の平均ΔCt値を、複数の参照多能性幹細胞からの各々のサブグループにおける同じ遺伝子についての参照平均ΔCt値を含むデータプールにおける、サブグループの各々における同じ遺伝子の平均ΔCt値で引くことにより、ΔΔCt値が算出される。一部の態様において、t検定を使用し、データプールにおける複数の参照多能性幹細胞からの中胚葉、外胚葉、および内胚葉の初期発生遺伝子のサブグループの各々における遺伝子についての参照ΔCt値と比較した、中胚葉、外胚葉、および内胚葉の初期発生遺伝子のサブグループの各々における遺伝子の平均ΔCt値の比較から、統計的に有意なΔΔCt値を同定する。
一部の態様において、中胚葉、外胚葉、および内胚葉の初期発生遺伝子のセットの発現レベルにおいて統計的に有意な量だけ異なる多能性幹細胞株が、さらなる使用のために、初期発生遺伝子発現におけるそのような統計的に有意な差に基づいて選択される(例えば、選ばれる)、または廃棄される。
多能性幹細胞の分化能を決定するためのアッセイ
一部の態様において、本発明は、幹細胞株(例えば、多能性幹細胞株)を選択するための方法を提供し、表1および/または表2に列挙される遺伝子の組み合わせより選択される初期発生および系列マーカー遺伝子のセットの遺伝子発現のレベルを検出することにより、幹細胞株の分化能を測定すること;ならびに、初期発生遺伝子の遺伝子発現のレベルを、初期発生遺伝子の参照レベルと比較することを含む。初期発生遺伝子の遺伝子発現のレベルにおいて、統計的に有意な量(例えば、約2SD)だけ異なることがない幹細胞株が、中胚葉、外胚葉、および内胚葉系列に沿って分化する分化能および傾向が、初期発生遺伝子発現のそのパターンを有する参照多能性幹細胞株のものと同様でありうるものとして選択される、または選ばれることができる。この方法の下で、参照セットと比較して、初期発生遺伝子の発現のレベルにおける統計的に有意な量だけ異なる幹細胞株が、参照多能性幹細胞株と比べて、分化についての異なる能力を有する可能性が高いとして廃棄されることができる。代替の態様において、参照セットと比較して、初期発生遺伝子の発現のレベルにおける統計的に有意な量だけ異なる幹細胞株が、ユーザーにより望まれる特定の系列に沿って分化する増加した傾向を有するとして選択されることができる。
一部の態様において、初期発生遺伝子についての参照遺伝子発現レベルは、その初期発生標的遺伝子についての正常な変動の範囲であり、一部の態様において、参照レベルは、その初期発生標的遺伝子についての発現レベルの平均値であって、ここで平均値は、複数の多能性幹細胞株、例えば、少なくとも5株またはそれ以上の異なる多能性幹細胞株における、その初期発生標的遺伝子の発現レベルから算出される。
一部の態様において、初期発生遺伝子のセット(例えば、表1に列挙するもの、またはそのサブセット)の遺伝子発現レベルは、中胚葉、内胚葉、外胚葉、神経、造血系列、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される系列に分化する幹細胞の能力に関する情報を提供し、そこでは、初期発生遺伝子のセットの参照遺伝子発現レベルは、複数の多能性幹細胞株、例えば、少なくとも5株の異なる多能性幹細胞株から生成される。一部の態様において、テスト多能性幹細胞および/または参照多能性幹細胞からの初期発生遺伝子のセットの遺伝子発現レベルが、本明細書において開示する通りの、初期発生遺伝子のセット(例えば、表1に列挙するもの、またはそのサブセット)の遺伝子発現を測定することにより決定される。
一部の態様において、初期発生遺伝子のセットは、表1におけるリストからの任意の組み合わせからの約20個、または少なくとも約30個、または少なくとも約40個、または少なくとも約50個、または少なくとも約60個、または少なくとも約70個、または少なくとも約80個、または少なくとも約90個、または90個を上回る遺伝子のいずれかより選択され、多能性細胞株において測定され、同じセットの参照初期発生遺伝子レベルと比較される。一部の態様において、初期発生遺伝子のセットは、表2におけるリストからの任意の組み合わせからの約2個、または3個、または4個、または5個、または5個を上回る遺伝子より選択され、多能性細胞株において測定され、同じセットの参照初期発生遺伝子レベルと比較される。
したがって、本発明の別の局面は、幹細胞の分化能を特徴付けることにより、所望の使用のために幹細胞株(例えば、多能性幹細胞株)を選ぶためのアッセイに関し、アッセイは以下を含む:(a)表1に列挙される遺伝子より選択される多能性幹細胞株において複数の初期発生遺伝子の発現のレベルを測定すること;および、多能性幹細胞における複数の初期発生遺伝子の遺伝子発現のレベルを、同じ複数の初期発生遺伝子についての参照遺伝子発現レベルと比較すること、ならびに(b)初期発生遺伝子についての参照遺伝子発現レベルと比較した、測定された初期発生遺伝子の遺伝子発現のレベルにおいて統計的な有意差がないことに基づいて幹細胞株を選ぶこと;または、初期発生遺伝子の参照発現レベルと比較した、少なくとも1つの所望の初期発生遺伝子における発現レベルにおいて統計的な有意差があることに基づいて幹細胞株を選ぶこと。
一部の態様において、アッセイでは、自己複製培養条件において少なくとも約2日間にわたり培養された幹細胞株(例えば、多能性幹細胞株)において、例えば、EB形成条件下の胚様体(EB)として、あるいは少なくとも約3日、または少なくとも約4日、または少なくとも約5日、胚様体(EB)として、および/または、EB形成条件下で(例えば、自己複製培養培地中で)複数の初期発生遺伝子が測定される。一部の態様において、アッセイでは、EB形成条件において約2日間以下にわたり、またはEB形成条件において約3または約4日間以下にわたり培養された幹細胞株において複数の初期発生遺伝子が測定される。一部の態様において、アッセイは、幹細胞で実施され、少なくとも約0日間または少なくとも約1日間または少なくとも約2日間または少なくとも約3日間または3日間を上回るEBの培養である。本明細書において、実施例において開示される通り、分化アッセイは、2日間という初期のEBの培養で実施することができ、幹細胞株の分化能および/または多能性を予測する、ならびに/あるいは、幹細胞がもはや多能性ではないか否かを決定する際に意味のある結果を伴う。
一部の態様において、幹細胞株(例えば、多能性幹細胞)における対照遺伝子の発現のレベルが初期発生遺伝子の発現のレベルと比較され、幹細胞株において測定された、初期発生遺伝子の遺伝子発現のレベルのΔCtが提供される。一部の態様において、アッセイは、同じ複数の初期発生遺伝子の遺伝子発現のレベルを、同じ初期発生遺伝子の参照遺伝子発現レベルと比較することを含み、多能性幹細胞において測定された、初期発生遺伝子の遺伝子発現のレベルのΔCtを、複数の参照多能性幹細胞から測定された、同じ初期発生遺伝子の遺伝子発現のレベルの平均ΔCtと比較することを含む。
一部の態様において、アッセイを使用して、中胚葉発生遺伝子、外胚葉発生遺伝子、または内胚葉発生遺伝子である初期発生遺伝子の発現レベルにおいて統計的に有意な量だけ異なる(例えば、t検定または他の適当な統計測定を使用した)幹細胞株を選択することにより、少なくとも1つの所望の初期発生遺伝子の発現レベルにおいて統計的に有意な量だけ異なる幹細胞株(例えば、多能性幹細胞株)を選ぶことができる。一部の態様において、統計的な差は、初期発生遺伝子についての参照遺伝子発現レベルからの、標準偏差の少なくとも1倍分の差、標準偏差の少なくとも2倍分の差、または標準偏差の少なくとも3倍分の差である。
一部の態様において、初期発生遺伝子についての参照遺伝子発現レベルは、複数の多能性幹細胞におけるその初期発生遺伝子の発現についての正常な変動の範囲である。一部の態様において、初期発生遺伝子についての参照遺伝子発現レベルは、その初期発生遺伝子についての発現レベルの平均値であって、ここで平均値は、複数の多能性幹細胞株におけるその初期発生遺伝子の発現レベルから算出される。一部の態様において、参照遺伝子発現レベルのための複数の多能性幹細胞株が、少なくとも5株またはそれ以上の多能性幹細胞株から得られる。
一部の態様において、本明細書において開示するアッセイを使用し、哺乳動物の多能性幹細胞(例えば、ヒト多能性幹細胞)の分化能を特徴付けることができる。一部の態様において、多能性幹細胞は、ES細胞、またはiPS細胞、または部分的iPS細胞(piPSC)、または成体幹細胞である。
一部の態様において、幹細胞株において測定される、表1および/または表2より選択される、少なくとも1個、または少なくとも2個、または少なくとも3個、または3個を上回る初期発生遺伝子の発現のレベルが、同じ初期発生遺伝子の遺伝子発現の参照レベルと比較して、統計的に有意に異なる増加レベルで発現される場合、それは、幹細胞株が、特定の細胞系列まで下方に分化する、および/または多能性ではないことを示す。
一部の態様において、幹細胞株(例えば、多能性幹細胞株)は、哺乳動物多能性幹細胞株、例えばヒト多能性幹細胞株などである。
一部の態様において、アッセイは、複数の異なる幹細胞株をアッセイする、例えば、限定はしないが、同じまたは異なる対象(例えば、哺乳動物の対象またはヒト対象)から得られた体細胞を再プログラミングすることに由来する、複数の異なる誘導性多能性幹細胞を評価することを可能にするためのハイスループットアッセイである。一部の態様において、アッセイは、96ウェルフォーマットであり、一部の態様において、アッセイは、384ウェルフォーマットであり、複数の多能性幹細胞株が同時にアッセイされることを可能にする。一部の態様において、アッセイは、自動化フォーマットであり、96および/または384ウェルプレートのハイスループット解析を可能にする。
一部の態様において、本明細書において開示するアッセイを使用し、少なくとも1つ、または複数の幹細胞株からの、本明細書において開示する系列スコアカードを生成することができる。
一部の態様において、本明細書において開示する分化アッセイおよび方法において、初期発生遺伝子のセットにおける発現レベルが、幹細胞が分化培地中で培養される前に測定され、そこでは、初期発生遺伝子のセットの発現レベルの結果によって、幹細胞株の系列分化バイアスを予測することが可能になる。重要なことに、分化アッセイが、少なくとも約2日、または少なくとも3日、または少なくとも約4日、または4日を上回るほどの初期に、自己複製培養条件において、幹細胞株で実施されることができる。一部の態様において、初期発生遺伝子のレベルが、1日未満、または約1日間、または約2日間、または約3日間、または約4日間、または約5日間、または約6日間、または約7日間培養された幹細胞株で実施される分化アッセイにおいて測定されることができる。
代替の態様において、本明細書において開示する初期発生遺伝子のセットの発現レベルが、幹細胞株(例えば、多能性幹細胞株)が少なくとも2日間にわたり培養された後に測定され、そこでは、初期発生遺伝子のセットの発現レベルの結果によって、幹細胞株の多能性および/または系列分化バイアスを予測することが可能になる。一部の態様において、幹細胞株(例えば、多能性幹細胞株)は、自然分化することが許容されていなかった。事前に定められた期間の幹細胞株の培養後(例えば、少なくとも2日間、しかし、7日間以下)、細胞からの核酸材料を回収し、mRNAを、本明細書において開示する初期発生遺伝子の遺伝子発現解析のための出発材料として使用する。
代替の態様において、幹細胞株(例えば、多能性幹細胞株)が、事前に定められた期間にわたり自然に分化することが許容された。一部の態様において、初期発生遺伝子のセットの発現レベルが、特定の系列に沿って方向付けられた分化後、幹細胞株において測定される。例えば、分化アッセイは、事前に定められた期間にわたり、特定の系列(例えば、神経系列、膵臓系列、心臓系列など)に沿った直接的な分化を受けた幹細胞で実施されることができ、その後、分化した細胞からの核酸材料を回収し、初期発生遺伝子の遺伝子発現のための出発材料として使用する。一部の態様において、分化アッセイが、少なくとも0日間にわたる、または約1日間にわたる、または約2日間にわたる、または約3日間にわたる、または約4日間にわたる、または約5日間にわたる、または約6日間にわたる、または約7日間にわたる自然または直接的な分化後、幹細胞株で実施される。一部の態様において、幹細胞株は、1つまたは複数の異なる系列に沿って分化するように方向付けられる。一部の態様において、幹細胞株の分化は、本明細書において開示する分化アッセイにより評価されることができる。
追加の局面において、幹細胞株(例えば、多能性幹細胞)が、異なる条件下で、異なる培養培地中で培養され、初期発生遺伝子のそれらの発現について解析される。本明細書において、実施例において開示する通り、異なる培養培地、培養技術、およびRNA抽出方法は、初期発生遺伝子の遺伝子発現の結果に影響しない。例えば、最適以下の培養条件(例えば高密度までの培養など)における維持は、結果に影響しない。
上に記載する遺伝子発現の測定は大部分が、単一遺伝子の効果に焦点を当てており、一部の態様において、系列スコアカードで、初期発生標的遺伝子の組み合わせ(例えば、表1に列挙される遺伝子の任意の組み合わせ、および、一部の態様において、表1に列挙されない代替初期発生遺伝子)の遺伝子発現が測定され、細胞株の質(例えば、もはや多能性ではない)および有用性(例えば、目的の特定の系列に沿って分化する可能性が高い、またはそうではない)を予測する。一部の態様において、代替遺伝子は、限定はしないが、外胚葉胚細胞のためのマーカーを含むことができ、限定はしないが、NCAM1、EN1、FGFR2、GATA2、GATA3、HAND1、MNX1、NEFL、NES、NOG、OTX2、PAX3、PAX6、PAX7、SNAI2、SOX10、SOX9、TDGF1、APOE、PDGFRA、MCAM、FUT4、NGFR、ITGB1、CD44、ITGA4、ITGA6、ICAM1、THY1、FAS、ABCG2、CRABP2、MAP2、CDH2、NES、NEUROG3、NOG、NOTCH1、SOX2、SYP、MAPT、THを含む。一部の態様において、代替遺伝子は、限定はしないが、ヒト内胚葉胚細胞のためのマーカー(限定はしないが、APOE、CDX2、FOXA2、GATA4、GATA6、GCG、ISL1、NKX2-5、PAX6、PDX1、SLC2A2、SST、ITGB1、CD44、ITGA6、THY1、CDX2、GATA4、HNF1A、HNF1B、CDH2、NEUROG3、CTNNB1、SYPを含む)、および、中胚葉胚細胞のためのマーカー(限定はしないが、CD34、DLL1、HHEX、INHBA、LEF1、SRF、T、TWIST1、ADIPOQ、MME、KIT、ITGAL、ITGAM、ITGAX、TNFRSF1A、ANPEP、SDC1、CDH5、MCAM、FUT4、NGFR、ITGB1、PECAM1、CDH1、CDH2、CD36、CD4、CD44、ITGA4、ITGA6、ITGAV、ICAM1、NCAM1、ITGB3、CEACAM1、THY1、ABCG2、KDR、GATA3、GATA4、MYOD1、MYOG、NES、NOTCH1、SPI1、STAT3を含む)を含むことができる。マウスにおいて、内胚葉胚細胞のマーカーは、Gata4、FoxA2、PDX1、Nodal、Sox7、およびSox17を含む。マウスにおいて、中胚葉胚細胞のマーカーは、Brachycury、GSC、LEF1、Mox1、およびTie1を含む。マウスにおいて、外胚葉胚細胞のマーカーは、cripto1、EN1、GFAP、Islet 1、LIM1、およびNestinを含む。一部の態様において、部分的に再プログラミングした細胞は、未分化細胞である。したがって、特定の所望の、または望ましくない特徴を同定するための、多能性幹細胞株の高感度で正確な特徴付けのための「カスタマイズされたスコアカード」を開発するために、初期発生標的遺伝子(例えば、初期中胚葉遺伝子または初期内胚葉遺伝子または初期外胚葉遺伝子)の特定のセットを選択することができる。これは、特定の多能性幹細胞株の質および有用性を決定するために、本明細書において開示するスコアカードの使用の重要な利点の1つである。
一部の態様において、分化アッセイを、自動化するように(例えば、ロボットにより実行されるように)設定することができる。一部の態様において、ロボットは、また、マルチウェルプレート全体のRNA抽出を実施することができ、各々のウェルから、別々のqPCRプレート(例えば、96ウェルqPCRプレートを使用した場合)中に、またはプレートの1/4(例えば、384ウェルqPCRプレートを使用した場合)中にRNAをピペット分注する。例えば、1つの幹細胞株を解析すべき場合、幹細胞株からのRNAを、96ウェルプレートの各々のウェル、ならびに、異なる初期発生遺伝子および/または対照を測定するために使用される96ウェルプレートの各々のウェル中にピペット分注することができる。一部の態様において、複数の幹細胞株を解析すべき場合、各々の幹細胞株からのRNAを、384ウェルプレートの個々のウェルの1/4中に播くことができ、そこでは、384ウェルプレートを、4つの幹細胞株の同時解析のために、使用することができる。逆転写は同じプレート中で実施し、バーコード化されたCt表をコンピュータに移す。
本発明の別の局面は、幹細胞株(例えば、多能性幹細胞株)の使用に関し、それは、本明細書において開示する方法および系列スコアカードを使用して、対象に幹細胞集団を投与することによる対象の処置、例えば、哺乳動物の対象(例えば、マウスもしくは齧歯類動物モデルまたはヒト対象)の処置のために、例えば再生医療および細胞置換/増強治療などのために、検証および特徴付けされた。一部の態様において、対象は、癌、糖尿病、心不全、筋肉損傷、セリアック病、神経障害、神経変性障害、リソソーム蓄積症、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される疾患または状態を患う、またはそれと診断されている。一部の態様において、多能性幹細胞は、局所的に投与され、または、代わりに、投与は、対象への多能性幹細胞の移植である。
一部の態様において、幹細胞株(例えば、多能性幹細胞)は、幹細胞集団、またはその分化子孫を対象に投与する前に、分化しており、例えば、幹細胞集団は、中胚葉系列、内胚葉系列、外胚葉系列、神経系列、造血系列、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される系列に沿って分化することができる、あるいは、インスリン産生細胞(膵臓細胞、ベータ細胞など)、神経細胞、筋細胞、皮膚細胞、心筋細胞、肝細胞、血液細胞、適応免疫細胞、先天性免疫細胞などに分化することができる。
一部の態様において、分化アッセイは、対象(例えばヒトまたは他の哺乳動物対象など)からの複数の異なる幹細胞株(例えば、多能性幹細胞株)(複数の異なる誘導多能性幹細胞を含む)をアッセイするためのハイスループットアッセイである。
本発明の別の局面は、少なくとも1つまたは複数の幹細胞株(例えば、多能性幹細胞株)から系列スコアカードを生成するための、本明細書において開示するアッセイの使用に関する。
一部の態様において、本明細書において開示する方法、アッセイ、アレイ、およびシステムは、サービス提供者により実施されることができ、例えば、そこでは、研究者は、1つまたは複数のサンプル(例えば、サンプルのアレイ)を有することができ、各々のサンプルが、サービス提供者により運営される診断検査室における、本明細書において開示する方法、分化アッセイ、キット、およびシステムを使用した評価のための幹細胞株、または異なる幹細胞の集団を含む。そのような態様において、開示する本発明のアッセイを実施した後、サービス提供者は解析を実施し、研究者にレポート(例えば、解析された各々の幹細胞株の特徴の系列スコアカード)を提供する。代替の態様において、サービス提供者は、研究者に、アッセイの生データを提供し、解析が、研究者により実施されるように任せることができる。一部の態様において、レポートは、電子的な手段を介して、研究者に通信または送付される、例えば、安全なウェブサイト上にアップロードされる、またはeメールもしくは他の電子通信手段を介して送付される。一部の態様において、研究者は、任意の手段(例えば、郵便、速達便など)を介してサンプルをサービス提供者に送付することができる、または、あるいは、サービス提供者は、研究者からサンプルを回収し、それらを、サービス提供者の診断用実験室に輸送するためのサービスを提供することができる。一部の態様において、研究者は、サービス提供者の診断用実験室の場所で解析されるように、サンプルを預けることができる。代替の態様において、サービス提供者は、立ち寄りサービスを提供し、そこでは、サービス提供者は、研究者の実験室に人員を送り、また、研究者の実験室において、研究者の幹細胞株でアッセイを実施するためのキット、装置、および試薬を提供し、結果を解析し、解析された各々の幹細胞株、または解析された複数の幹細胞株の特徴のレポートを研究者に提供する。
系列スコアカード
本発明の一部の局面において、本発明は、初期発生遺伝子および系列マーカー遺伝子のセットの発現をモニタリングして、幹細胞株の特徴の同定を可能にし、かついずれの多能性幹細胞株が多能性である可能性が高い(または、多能性ではない可能性が高い)か、および/または細胞系列の範囲に沿って分化するかを正確かつ迅速に予測することによって、幹細胞株を検証およびモニタリングするため、ならびに、一般的な精度管理として役立てるための幹細胞株(例えば、多能性幹細胞株)の系列スコアカードを生成することに関する。
本発明の一局面は、幹細胞株(例えば、多能性幹細胞)の分化傾向の系列スコアカードに関し、スコアカードは、少なくとも5つの幹細胞集団からの複数の初期発生標的遺伝子についての遺伝子発現レベルを含むデータセットを含む。一部の態様において、複数の初期発生標的遺伝子が、表1に列挙される任意の組み合わせより選択される、少なくとも約20個、または少なくとも約30個、または少なくとも約40個、または少なくとも約50個、または少なくとも約60個、または少なくとも約70個、または少なくとも約80個、または少なくとも約90個、または90個を上回る初期発生遺伝子である。一部の態様において、表1に列挙する遺伝子の一部が、代替の初期発生遺伝子に置換されることができる。例えば、一部の態様において、複数の初期発生遺伝子は、表1より選択される、少なくとも約20個、または少なくとも約30個、または30個を上回る遺伝子を含み、表に列挙されない少なくとも1個、または少なくとも約5個、または少なくとも約10個、または少なくとも約20個、または20個を上回る異なる初期発生遺伝子を含むことができる。一部の態様において、複数の初期発生標的遺伝子は、少なくとも約10個、または少なくとも約20個、または少なくとも約30個、または30個を上回る多能性遺伝子、ならびに/あるいは、少なくとも約10、または少なくとも約20、または少なくとも約30、または30を上回る初期中胚葉遺伝子のためのプローブ、ならびに/あるいは、少なくとも約10、または少なくとも約20、または少なくとも約30、または30を上回る初期外胚葉遺伝子のためのプローブ、ならびに/あるいは、少なくとも約10、または少なくとも約20、または少なくとも約30、または30を上回る初期内胚葉遺伝子のためのプローブである。
一部の態様において、初期発生遺伝子のセットの発現のレベルのデータセットは、データ記憶デバイス(例えば、コンピュータデバイス上に位置付けられたデータベースを含むデータ記憶デバイスなど)に接続される、または送付されることができる。
一部の態様において、少なくとも15株の多能性幹細胞株を使用して、参照系列スコアカードのための、初期発生遺伝子の発現のデータセットを生成する。一部の態様において、初期発生遺伝子の発現のデータセットが、以下の、群:HUES64、HUES3、HUES8、HUES53、HUES28、HUES49、HUES9、HUES48、HUES45、HUES1、HUES44、HUES6、H1、HUES62、HUES65、H7、HUES13、HUES63、HUES66より選択される多能性幹細胞株の、少なくとも5株もしくはそれ以上、または少なくとも6株、または少なくとも7株、または少なくとも8株、または少なくとも9株、または少なくとも10株、または少なくとも11株、または少なくとも12株、または少なくとも13株、または少なくとも14株、または少なくとも15株、または少なくとも16株、または少なくとも17株、または少なくとも18株、または19株全てから得られる。
一部の態様において、参照系列スコアカードのためのデータセットを生成するために使用される多能性幹細胞集団は、哺乳動物の多能性幹細胞集団、例えばヒト多能性幹細胞集団、または誘導多能性幹(iPS)細胞集団、または胚性幹細胞集団、または成体幹細胞集団、または自己幹細胞集団、または胚性幹(ES)幹細胞集団などであることができる。
一部の態様において、本明細書において使用する系列スコアカードは、例えば、望ましい特徴(例えば、特定の系列に沿った高い分化能および/または多能性)を伴う幹細胞集団のポジティブ選択のために選択するための、および/または例えば、望ましくない特徴を伴う幹細胞株(例えば、もはや多能性ではない、および/または、所望の細胞系列に沿って分化しない細胞)をネガティブ選択する、例えば、同定および、場合によっては廃棄するための方法において使用することができる。
本発明の別の局面は、複数の幹細胞株における初期発生標的遺伝子のセットの遺伝子発現を測定することを含む、幹細胞系列スコアカードを生成するための方法に関する。一部の態様において、方法が繰り返し(例えば、二つ組、三つ組など)において行われる場合、方法は、測定された各々の初期発生標的遺伝子についての平均遺伝子発現レベルを算出することをさらに含む。一部の態様において、方法は十分に信頼でき、初期発生遺伝子の遺伝子発現のたった1回の(例えば、単一の)測定が、系列スコアカードを作成するために必要であり、従って、二つ組および三つ組の実験の時間および経費が排除され、かつ測定される各々の初期発生遺伝子についての平均遺伝子発現が算出されるようにする。
一部の態様において、初期発生遺伝子の測定された発現レベルのデータセットが、データ記憶デバイス、例えば、コンピュータデバイス上に位置付けられたデータベースであるデータ記憶デバイスに接続される。一部の態様において、データベースは、ネットワーク、例えば、ネットワーク(例えば、クラウド)または同様のウェブアクセス可能なネットワークなどを介してアクセス可能な遠隔ネットワーク上に位置付けられる。
一部の態様において、本明細書において開示する系列スコアカードを生成するための幹細胞株は、哺乳動物の多能性幹細胞株、例えば、ヒトの多能性幹細胞株(胚性幹細胞および/または誘導多能性幹(iPS)細胞株、および/または成体幹細胞、または体性幹細胞、または自己幹細胞を含む)である。
本発明の別の局面は、誘導多能性幹細胞を胚性幹細胞株から区別するための、本明細書において開示する系列スコアカードの使用に関する。一部の態様において、本明細書において開示する系列スコアカードが、多能性幹細胞株を非多能性幹細胞、またはその多能性を喪失した幹細胞株から区別することができる。一部の態様において、本明細書において開示する系列スコアカードを使用し、幹細胞株(例えば、多能性幹細胞株)(神経系列に沿って分化するための増加した効率を有する)または幹細胞株(例えば、多能性幹細胞株)(中胚葉系列、および/または外胚葉系列、および/または内胚葉系列に沿って分化するための増加した効率を有する)を区別することができる。
一部の態様において、初期発生遺伝子のサブグループ(例えば、中胚葉、外胚葉、内胚葉のサブグループおよび多能性初期発生遺伝子サブグループ)の遺伝子発現レベルについての平均ΔCtが、そのカテゴリーについての参照平均ΔCtと比べて統計的に有意に異なる(t検定により決定される)幹細胞が、外れ値の幹細胞株と考えられ、それは、参照多能性幹細胞株と同じ系列に沿って分化する可能性は低い。
上で考察した通り、各々の定義されたグループまたはカテゴリー(例えば、対照、多能性遺伝子、初期内胚葉発生遺伝子、初期中内胚葉発生遺伝子、初期中胚葉発生遺伝子、初期外胚葉発生遺伝子)において、ΔCtを平均化し、平均化されたΔCtを、t検定を使用して、そのカテゴリーについての参照ΔCtと比較し、t値を提供する。t値が0〜1の場合、その初期発生遺伝子カテゴリーにおける遺伝子発現の測定レベルが、同じカテゴリーにおける参照遺伝子発現レベルと同程度であることを示す。t値が>1の場合、多能性細胞株のその初期発生遺伝子カテゴリーにおける測定された遺伝子発現レベルが、同じカテゴリーにおける参照遺伝子発現レベルよりも高いことを示す。t値が<0の場合、多能性細胞株のその初期発生遺伝子カテゴリーにおける、測定された遺伝子発現レベルが、同じカテゴリーにおける参照遺伝子発現レベルよりも低いことを示す。したがって、t値を使用し、幹細胞株をネガティブ選択し(例えば、望ましくない特徴を伴う細胞、例えば、特定の系列に沿って分化する可能性が低いとして同定された細胞を単離し、場合によっては廃棄する)、および/または、特定の細胞系列に沿って分化する増加した効率もしくは能力を有すると同定されたものとして、幹細胞株についてポジティブ選択し、または、参照多能性幹細胞株とは統計的に異ならないことを示すt値を有する幹細胞株をポジティブ選択することができる。
一部の態様において、統計学的に有意に異なる(FDR<10%)および/または、参照多能性幹細胞株におけるその遺伝子についての遺伝子発現の正常な変動(例えば、正常な参照値)と比較した、遺伝子発現のレベルの1倍を超える変化の絶対差としての初期発生標的遺伝子の遺伝子発現レベルの幹細胞株は、遺伝子発現の外れ値と考えられるであろう。参照多能性幹細胞と比較した、多数の、例えば、少なくとも約5個、または少なくとも約6個、または少なくとも約7個、または少なくとも約8個、または少なくとも約5〜10個、または少なくとも約10〜15個、または少なくとも約10〜50個、または少なくとも約50〜100個もしくはそれ以上の合計の外れ値の遺伝子発現遺伝子(t検定により決定される)を有する幹細胞株は、外れ値幹細胞株と考えられる。一部の態様において、そのような幹細胞株は、特定の系列に沿って分化する増加傾向を有する幹細胞株として同定されるであろう。例えば、幹細胞株中で発現される少なくとも約2個、または少なくとも約3個もしくはそれ以上の初期中胚葉遺伝子の発現が、統計的に異なる、および/または、同じ初期発生遺伝子についての参照レベルと比較して、>1だけ確実に異なる場合、幹細胞株は、他の幹細胞株と比較して、中胚葉細胞系列に沿って分化する増加または減少傾向を有すると同定される。したがって、そのような幹細胞株は、幹細胞株の所望の使用または有用性に依存し、ポジティブ選択されるか、あるいは、ネガティブ選択される(例えば、望ましくない特徴を伴う幹細胞株として単離され、場合によっては廃棄される)かのいずれかができる。
一部の態様において、統計学的に有意に異なる(FDR<5%)初期発生遺伝子の遺伝子発現レベルを有し、および/または、参照多能性幹細胞株におけるその初期発生遺伝子についての遺伝子発現の正常な変動(例えば、正常な参照値)と比較して、初期発生遺伝子発現のレベルの>1Log-2倍変化の絶対差を有する幹細胞株は、分化外れ値遺伝子と考えられるであろう。参照多能性幹細胞株と比較して、多数の、例えば、少なくとも約5個、または少なくとも約6個、または少なくとも約7個、または少なくとも約8個、または少なくとも約5〜10個、または少なくとも約10〜15個、または少なくとも約10〜50個、または少なくとも約50〜100個またはそれ以上の合計の外れ値の系列遺伝子発現遺伝子を有する幹細胞は、外れ値の幹細胞株と考えられるであろうし、それは、参照多能性幹細胞株と同じ系列に沿って分化することができない、またはその可能性が低いとして同定されうる。したがって、そのような幹細胞株は、ネガティブ選択される(例えば、望ましくない特徴を伴う幹細胞、例えば、特定の系列に沿って分化する可能性が低い幹細胞を単離し、場合によっては廃棄する)、および/または、あるいは、特定の細胞系列に沿って分化する増加した効率または可能性を有することが示される幹細胞株としてポジティブ選択されることができる。
キット
本発明の別の局面は、幹細胞株(例えば、多能性細胞株)の分化能を特徴付けるためのキットに関し、本明細書において開示するアレイを含む。一部の態様において、キットは、本明細書において開示するアレイおよびRT-PCRによる複数の初期発生遺伝子の発現レベルを測定するための試薬を含む。キットは、さらに、使用のための指示を含むことができる。
一部の態様において、本明細書において開示する方法を行うためのキットは、表1に列挙されるものより選択される、少なくとも約20、または少なくとも約30、または少なくとも約40、または少なくとも約50、または少なくとも約60、または少なくとも約70、または少なくとも約80、または少なくとも約90、または90を上回る初期発生遺伝子のmRNAに特異的にハイブリダイズするプローブ(例えば、オリゴヌクレオチドおよび/またはプライマー)を含む。一部の態様において、キットは、表2より選択される少なくとも約3またはそれ以上の遺伝子のmRNAに特異的にハイブリダイズするプローブ(例えば、オリゴヌクレオチドおよび/またはプライマー)を含む。
本発明の別の局面は、本明細書において開示する方法およびアッセイを行うためのキットに関し、そこでは、キットは、表1に列挙される遺伝子からの少なくとも20個または少なくとも30個より選択される初期発生遺伝子のセットの発現を測定するための試薬を含む。一部の態様において、試薬は、プローブ、例えば、表1に列挙される遺伝子からの少なくとも20個のサブセットより選択される初期発生遺伝子のセットに特異的にハイブリダイズするRT-PCRプライマーまたはハイブリダイゼーションプローブである。一部の態様において、プローブ(例えば、RT-PCRプローブ)は、固体支持体上に固定化されることができる。一部の態様において、表1より選択される少なくとも20個の初期発生遺伝子のためのプローブを含むことに加えて、キットは、表1に列挙されない異なる初期発生遺伝子の発現を測定するための追加の試薬を含むことができる。一部の態様において、キットは、また、少なくとも1個、少なくとも2個、または少なくとも3個、または少なくとも4個、または少なくとも5個の対照遺伝子のためのプローブを含む。対照遺伝子は、限定はしないが、表3に列挙されるもの、および/または、以下の組み合わせからのいずれかを含む:ACTB、JARID2、CTCF、SMAD1、βアクチン、GAPDH、EIF2B、RPL37A、CDKN1B、ABL1、ELF1、POP4、PSMC4、RPL30、CASC3、PES1、RPS17、RPSL17L、CDKN1A、MRPL19、MT-ATP6、GADD45A、PUM1、YWHAZ、UBC、TFRC、TBP、RPLP0、PPIA、POLR2A、PGK1、IPO8、HMBS、GUSB、B2M、HPRT1、または18Sなど。一部の態様において、対照遺伝子についてのプローブは、同じアッセイまたはキット中に複数存在することができる。一部の態様において、本明細書において開示するキットおよび/またはアッセイは、少なくとも約10、または少なくとも約20、または少なくとも約30、または30を上回る多能性遺伝子のためのプローブ、ならびに/あるいは、少なくとも約10、または少なくとも約20、または少なくとも約30、または30を上回る初期中胚葉遺伝子についてのプローブ、ならびに/あるいは、少なくとも約10、または少なくとも約20、または少なくとも約30、または30を上回る初期外胚葉遺伝子のためのプローブ、ならびに/あるいは、少なくとも約10、または少なくとも約20、または少なくとも約30、または30を上回る初期内胚葉遺伝子のためのプローブを含む。
したがって、本発明は、幹細胞株の分化能を決定するためのキットに関し、複数の初期発生遺伝子(例えば表1に列挙される遺伝子の任意の組み合わせなど)の遺伝子発現レベルを測定するために必要な試薬(例えば、プローブおよび他の試薬)を含む。一部の態様において、キットは、さらに、本明細書において開示する系列スコアカードを含む。一部の態様において、キットは、さらに、使用のための指示を含む。一部の態様において、キットは、テスト幹細胞株において測定された初期発生遺伝子のレベルを、同じ初期発生遺伝子の参照レベルと比較するためにコンピュータでソフトウェアプログラムを実行するための、そこにコードされた指示を含む、コンピュータ可読媒体を含む。一部の態様において、キットは、テスト多能性幹細胞株からの初期発生遺伝子の測定レベルを、多能性幹細胞についての初期発生遺伝子の参照レベルと比較するための、オンラインで(例えば、クラウドで)利用可能なソフトウェアプログラムにアクセスするための指示を含む。
一部の態様において、キット試薬は、プローブ、例えば、表1に列挙される遺伝子からの少なくとも20個のサブセットより選択される初期発生遺伝子のセットに特異的にハイブリダイズするRT-PCRプライマーまたはハイブリダイゼーションプローブを含む。一部の態様において、プローブ(例えば、RT-PCRプローブ)は、固体支持体上に固定化されることができる。一部の態様において、本明細書において開示するキットおよび/またはアッセイは、少なくとも約10、または少なくとも約20、または少なくとも約30、または30を上回る多能性遺伝子のためのプローブ、ならびに/あるいは、少なくとも約10、または少なくとも約20、または少なくとも約30、または30を上回る初期中胚葉遺伝子のためのプローブ、ならびに/あるいは、少なくとも約10、または少なくとも約20、または少なくとも約30、または30を上回る初期外胚葉遺伝子のためのプローブ、ならびに/あるいは、少なくとも約10、または少なくとも約20、または少なくとも約30、または30を上回る初期内胚葉遺伝子のためのプローブを含む。
一部の態様において、キットは、96ウェルまたは384ウェルフォーマットであり、初期発生遺伝子のセット、例えば、表1に列挙されているもののサブセットまたは全てとハイブリダイズするプローブを含む。一部の態様において、キットは、自動化するように(例えば、ロボットにより実行されるように)設定することができる。例えば、サンプルが、ロボットなどを使用して、キットのアレイに加えられることができ、ロボットは、測定された初期発生遺伝子の発現のレベルのRT-PCRプロトコールおよび読み出しを実施することができる。
一部の態様において、キットは、さらに、体細胞または分化細胞を誘導多能性幹細胞(iPSC細胞)に再プログラミングするための試薬を含み、また、生成されたiPS細胞株の質を評価するための試薬を含む。体細胞を誘導多能性幹(iPS)細胞に再プログラミングするために使用される試薬の例は、当業者に周知であり、本明細書において考察するもの、例えば、限定はしないが、体細胞をiPS細胞またはpiPS細胞に再プログラミングするための方法および試薬を含み、国際特許出願;WO2007/069666;WO2008/118820;WO2008/124133;WO2008/151058;WO2009/006997;および米国特許出願US2010/0062533;US2009/0227032;US2009/0068742;US2009/0047263;US2010/0015705;US2009/0081784;US2008/0233610;US7615374;米国特許出願番号:12/595,041、EP2145000、CA2683056、AU8236629、12/602,184、EP2164951、CA2688539、US2010/0105100;US2009/0324559、US2009/0304646、US2009/0299763、US2009/0191159において開示される通りであり、その全体の内容が、参照により本明細書に組み入れられる。一部の態様において、キットは、再プログラミングされた細胞(例えば、iPS細胞)のウイルス誘導性または化学誘導性生成のための試薬を含み、EP1970446、US2009/0047263、US2009/0068742、および2009/0227032において開示されている通りであり、その全体が、参照により本明細書に組み入れられる。一部の態様において、iPS細胞は、US2012/0046346において開示される通り、修飾RNA(mod-RNA)を使用して再プログラムされることができ、その全体が、参照により本明細書に組み入れられる。
一部の態様において、本明細書において開示するキットは、また、多くの細胞株の間で、所望の幹細胞株(例えば、多能性幹細胞株)を選択するための少なくとも1つの試薬、例えば、幹細胞株の意図された使用のための1つまたは複数の適当な幹細胞株を選択するための試薬を含む。そのような試薬は、当技術分野において周知であり、限定されないが、細胞特異的な系列マーカーなどを選択するための標識抗体を含む。一部の態様において、標識抗体は、蛍光標識されており、または、磁気ビーズなどを用いて標識されている。一部の態様において、本明細書において開示するキットは、さらに、本明細書において開示する方法に従って、ハイスループットで既存のES細胞および/またはiPS細胞バンクをプロファイリングおよびアノテーションするための少なくとも1つまたは複数の試薬を含むことができる。
一局面において、本発明は、本発明の分化アッセイ、方法、またはシステムにより選択された多能性幹細胞を含むキットを提供する。上記の成分に加えて、キットは、また、情報資料を含むことができる。情報資料は、本明細書において記載する方法ならびに/あるいは本明細書において記載するアッセイ、方法、およびシステムのための成分の使用に関連する、記述的、指導的、マーケティング用、または他の資料でありうる。例えば、情報資料には、多能性幹細胞を選択するため、多能性細胞の複数の特性を特徴付ける、または本発明に従ったスコアカードを生成するための方法を記載することができる。限定されないが、キットが、対象に投与するための適切な材料を含む場合、キットは、場合により、送達デバイスを含むことができる。
初期発生遺伝子の遺伝子発現レベルを測定するための代替アッセイ
一部の態様において、アッセイ、システム、および方法は、RT-PCTおよび/またはマイクロアレイなどを介した、初期発生遺伝子のセットの定量的な遺伝子プロファイリングアッセイを含む。当業者に一般に公知である、遺伝子発現レベルを決定するための任意の方法が、本明細書において開示する方法、システム、およびアッセイにおける使用のために包含され、DNAまたは転写物発現を測定するためのAffymetrix遺伝子発現システム、マイクロアレイ方法、および他の方法を含む。一部の態様において、遺伝子発現が、cDNAおよびRNAシークエンシング、画像ベースの方法(例えばNanoStringなど)およびPCRならびにqPCRを使用する広範な方法を使用して測定される。これらの方法の正規化は、広く記載されてきた。一部の態様において、Affymetrixマイクロアレイデータを正規化するためのgcRMAアルゴリズムを使用することができる。一部の態様において、Life Technologies Inc.から入手可能な市販のアッセイを使用し、初期発生遺伝子のセットの遺伝子発現を測定することができる。
一部の態様において、遺伝子発現は、任意の遺伝子レベル、例えば、非コード遺伝子の発現、ならびに非コード転写物、例えば、天然アンチセンス転写物(NAT)、マイクロRNA(miRNA)遺伝子ならびに多能性細胞および分化細胞において正常または異常に存在する核酸および/またはRNA転写物の全ての他の型で決定される。
一部の態様において、測定された遺伝子発現のレベルは、遺伝子転写物のレベル、例えば、メッセンジャーRNA(mRNA)のレベルである。一部の態様において、検出では、核酸または核酸類似体、例えば、限定はしないが、核酸アナログ(DNA、RNA、PNA、擬似相補的DNA(pcDNA)、ロックド核酸ならびにその変異体および相同体を含む)が使用される。一部の態様において、遺伝子転写物の発現は、当業者に公知の方法により、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)または定量的RT-PCRにより評価することができる。
一般的に、PCR手順では、(i)核酸サンプルまたはライブラリー内の特定の遺伝子へのプライマーの配列特異的ハイブリダイゼーション、(ii)DNAポリメラーゼを使用した、複数のラウンドのアニーリング、伸長、および変性を含む、その後の増幅、ならびに(iii)正確なサイズのバンドについてのPCR産物のスクリーニングで構成される、遺伝子増幅の方法が記載される。使用されるプライマーは、重合の開始を提供するための十分な長さ、および適当な配列のオリゴヌクレオチドであり、即ち、各々のプライマーが、増幅されるべきゲノム遺伝子座の各々の鎖に相補的であるように特異的に設計されている。
代替の態様において、標的遺伝子の発現を、逆転写(RT)PCRにより、および定量的RT-PCR(QRT-PCR)またはリアルタイムPCR方法により測定することができる。RT-PCRおよびQRT-PCRの方法は、当技術分野において周知であり、以下により詳細に記載されている。
リアルタイムPCRは、mRNA発現のレベルを決定するために使用することができる増幅技術である(例えば、Gibson et al., Genome Research 6:995-1001, 1996;Heid et al., Genome Research 6:986-994, 1996を参照のこと)。リアルタイムPCRでは、増幅の間でのPCR産物の蓄積のレベルが評価される。この技術によって、複数のサンプルにおけるmRNAレベルの定量的評価が可能になる。mRNAレベルのために、mRNAは、生物学的サンプル(例えば、腫瘍および正常組織)から抽出され、cDNAは、標準的な技術を使用して調製される。リアルタイムPCRは、例えば、Perkin Elmer/Applied Biosystems(カリフォルニア州フォスターシティー)7700 Prism機器を使用して実施することができる。マッチするプライマーおよび蛍光プローブを、例えば、Perkin Elmer/Applied Biosystems(カリフォルニア州フォスターシティー)により提供されるプライマー発現プログラムを使用して、目的の遺伝子について設計することができる。プライマーおよびプローブの最適な濃度は、最初に、当業者により決定されることができ、対照(例えば、ベータ−アクチン)プライマーおよびプローブは、例えば、Perkin Elmer/Applied Biosystems(カリフォルニア州フォスターシティー)から商業的に得ることができる。サンプル中の目的の特定の核酸の量を定量するために、標準曲線を、対照を使用して生成する。標準曲線は、リアルタイムPCRにおいて決定されたCt値を使用して生成することができ、それは、アッセイにおいて使用される目的の核酸の初期濃度に関連する。目的の遺伝子の10〜106コピーの範囲の標準希釈が、一般的には十分である。また、標準曲線は、対照配列について生成される。これによって、比較目的用の対照の量に対する、組織サンプル中の目的の核酸の初期含量の正規化が可能になる。
TaqMan(登録商標)プローブを使用したリアルタイム定量的PCRの方法が、当技術分野において周知である。リアルタイム定量的PCRの詳細なプロトコールが、例えば、RNAについては、Gibson et al., 1996, A novel method for real time quantitative RT-PCR. Genome Res., 10: 995-1001において;DNAについては、Heid et al., 1996, Real time quantitative PCR. Genome Res., 10: 986-994において提供されている。
TaqManベースのアッセイでは、5'蛍光色素および3'消光剤を含む蛍光発生オリゴヌクレオチドプローブが使用される。プローブはPCR産物にハイブリダイズするが、それ自体は、3'末端で、遮断剤のため、伸長することができない。PCR産物が、その後のサイクルにおいて増幅される場合、ポリメラーゼ、例えば、AmpliTaq(登録商標)の5'ヌクレアーゼ活性は、TaqManプローブの切断をもたらす。この切断によって、5'蛍光色素および3'消光剤が分離され、それにより、増幅の関数として蛍光における増加がもたらされる(例えば、ワールドワイドウェブで:「perkin-elmer-dot-com」を参照のこと)。
別の態様において、RNA転写物の検出は、ノーザンブロッティングにより達成することができ、そこでは、RNAの調製は、変性アガロースゲルで実行され、適切な支持体、例えば活性化セルロース膜、ニトロセルロース膜、またはガラス膜もしくはナイロン膜などに移される。標識(例えば、放射性標識)cDNAまたはRNAは、次に、調製物にハイブリダイズされ、洗浄され、オートラジオグラフィーなどの方法により解析される。
RNA転写物の検出はさらに、公知の増幅方法を使用して達成することができる。例えば、mRNAをcDNAへ逆転写し、続いてポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)を行うこと;あるいは、両方の段階のために単一酵素を使用すること(米国特許第5,322,770号において記載されている)、または、mRNAをcDNAへ逆転写し、続いて対称ギャップリガーゼ連鎖反応(RT-AGLCR)(R. L. Marshall, et al., PCR Methods and Applications 4: 80-84 (1994)において記載されている)が行われることは、本発明の範囲内である。酵素mRNA転写物を検出するために適する一つの方法が参照としてPabic et. al. Hepatology, 37(5): 1056-1066, 2003,に記載されており、その全体が参照によって本明細書に組み入れられる。
本明細書において記載する方法において利用することができる他の公知の増幅方法は、限定はしないが、いわゆる、「NASBA」または「3SR」技術(PNAS USA 87: 1874-1878 (1990)において記載される、および、また、Nature 350 (No. 6313): 91-92 (1991)において記載されている);Qベータ増幅(公開された欧州特許出願(EPA)第4544610号において記載されている);鎖置換増幅(G. T. Walker et al., Clin. Chem. 42: 9-13 (1996)および欧州特許出願第684315号において記載されている);および標的媒介増幅(PCT公開WO 9322461により記載されている)を含む。
in situハイブリダイゼーションの可視化も用いることができ、ここでは、放射性標識アンチセンスRNAプローブを、生検サンプルの薄切片とハイブリダイズさせ、洗浄し、RNアーゼで切断し、オートラジオグラフィーのために感光乳剤に曝露する。サンプルは、ヘマトキシリンで染色し、サンプルの組織学的な組成を実証することができ、適切な光フィルタを用いた暗視野撮像は、現像された乳剤を示す。非放射性標識(例えばジゴキシゲニンなど)を使用することもできる。
あるいは、mRNA発現は、DNAアレイ、チップ、またはマイクロアレイ上で検出することができる。そのような態様において、プローブは、「遺伝子チップ」としての使用のために、表面に固定することができる。そのような遺伝子チップを使用し、当業者に公知の多くの技術により遺伝的変異を検出することができる。1つの技術において、オリゴヌクレオチドは、ハイブリダイゼーションアプローチによる配列決定により、DNA配列を決定するために遺伝子チップ上に整列される(例えば米国特許第6,025,136号および第6,018,041号に概説されるものなど)。プローブは、また、遺伝子配列の蛍光検出のために使用することができる。そのような技術は、例えば、米国特許第5,968,740号および第5,858,659号に記載されている。プローブは、また、Kayyem et al. 米国特許第5,952,172号により、およびKelley, S.O. et al. (1999) Nucleic Acids Res. 27:4830-4837により記載される通り、核酸配列の電気化学的検出のために、電極表面に固定することができる。
標的遺伝子に対応するオリゴヌクレオチドは、チップ上に固定化され、それは、次に、多能性幹細胞または推定多能性幹細胞から得られたテストサンプルの標識核酸とハイブリダイズされる。ポジティブなハイブリダイゼーションシグナルが、標的遺伝子のmRNA転写物を含むサンプルを用いて得られる。DNAアレイを調製する方法およびそれらの使用は、当技術分野において周知である(例えば、米国特許第6,618,6796号;第6,379,897号;第6,664,377号;第6,451,536号;第548,257号;U.S. 20030157485およびSchena et al. 1995 Science 20:467-470;Gerhold et al. 1999 Trends in Biochem. Sci. 24, 168-173;およびLennon et al. 2000 Drug discovery Today 5: 59-65を参照のこと。これらは、その全体が、参照により、本明細書に組み入れられる)。遺伝子発現の連続解析(SAGE)も実施することができる(例えば、米国特許出願20030215858を参照のこと)。
マイクロアレイ
一部の態様において、初期発生遺伝子のセットを測定するための本明細書において記載するアッセイおよびキットは、マイクロアレイの使用を含む。マイクロアレイは、プローブ、典型的には核酸、例えばオリゴ核酸ハイブリダイゼーションプローブなどが、別々の場所で配置され、それらは互いに離れており、典型的には約100/cm2〜1000/cm2の間の密度で整列されるが、より高い密度、例えば10000/cm2などで整列させることができる、アレイである。マイクロアレイ実験の原理は、所与の細胞株または組織からのmRNAを使用し、標識サンプル、典型的には標識cDNA(「標的」と呼ばれる)を生成し、それらは、順序付けられたアレイ中の固体表面上に固定化された多数の核酸配列、典型的にはDNA配列に同時にハイブリダイズされるというものである。
数万の転写物種を同時に検出し、定量することができる。多くの異なるマイクロアレイシステムが開発されているが、今日、最も一般に使用されるシステムは、整列された材料に従って2つのグループに分けることができる:相補的DNA(cDNA)およびオリゴヌクレオチドマイクロアレイ。整列された材料は、一般的にプローブと呼ばれてきた。なぜなら、それはノーザンブロット解析において使用されるプローブと同等であるためである。cDNAアレイ用のプローブは、通常、ベクター特異的プライマーまたは遺伝子特異的プライマーのいずれかを使用した、cDNAライブラリーまたはクローンコレクションから生成されたポリメラーゼ連鎖反応(PCR)の産物であり、定義された位置でスポットとしてガラススライドまたはナイロン膜上にプリントされる。スポットは、典型的には、サイズ10〜300μmであり、ほぼ同じ距離で離され間隔があけられている。この技術を使用して、30,000を上回るcDNAからなるアレイを、従来の顕微鏡スライドの表面上に適合させることができる。オリゴヌクレオチドアレイについて、短い20〜25merが、インサイチューで、シリコンウエハー上のフォトリソグラフィー(Affymetrixからの高密度オリゴヌクレオチドアレイ)によるか、またはインクジェット技術(Rosetta Inpharmaticsにより開発され、Agilent Technologiesにライセンス供与されている)によるかのいずれかで合成される。
あるいは、予め合成されたオリゴヌクレオチドを、ガラススライド上にプリントすることができる。合成オリゴヌクレオチドに基づく方法は、配列情報が、単独で、整列されるべきDNAを生成するために十分であるため、cDNA供給源の時間のかかる取り扱いが要求されないという利点を与える。また、プローブは、所与の転写物の最も固有の部分を代表するように設計することができ、密接に関連した遺伝子またはスプライス変異体の検出を可能にする。短いオリゴヌクレオチドは、それほど特異的ではないハイブリダイゼーションおよび低下した感度をもたらしうるが、予め合成されたより長いオリゴヌクレオチド(50〜100mer)の整列化が、これらの欠点に対処するために最近になって開発された。
そこで、多能性幹細胞における標的遺伝子の遺伝子発現のレベルを確認するためにマイクロアレイを実施する際、以下の段階を実施することができる:多能性幹細胞を含むサンプルからmRNAを得て、核酸標的を調製し、典型的には、マイクロアレイの製造者により提案される通りの条件下でアレイに接触させ(適切には、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件、例えば50℃で3×SSC、0.1% SDSなど)、アレイ上の対応するプローブに結合させ、必要な場合には、洗浄し、未結合の核酸標的を除去し、結果を解析する。
mRNAは、当技術分野において公知の方法(例えば、プライマー特異的cDNA合成など)により、目的の配列(例えば、本明細書において記載する遺伝子プロファイルに存在するものなど)について濃縮されることができることが理解されるであろう。集団は、例えば、PCR技術を使用して、さらに増幅することができる。標的またはプローブを標識し、マイクロアレイへの標的分子のハイブリダイゼーションの検出を可能にする。適切な標識は、プローブ中に組み入れることができる同位体標識または蛍光標識を含む。
Affymetrix HG-U133.Plus 2.0遺伝子チップは、標準的なAffymetrixプロトコールに従って使用し、ハイブリダイズし、洗浄し、スキャンすることができる。一部のRNAは、アレイ上で複製することができ、その後の解析のために利用可能なハイブリダイゼーションの総数を96にする。
mRNAレベルをモニターするために、例えば、mRNAが、テストされる多能性幹細胞を含むサンプルから抽出され、逆転写され、蛍光標識cDNAプローブが生成される。遺伝子発現標的cDNAにハイブリダイズすることが可能であるマイクロアレイを、次に、標識cDNAプローブを用いて探索し、スライドをスキャンし、蛍光強度を測定する。この強度は、ハイブリダイゼーション強度および発現レベルと相関する。
「定量的」増幅の方法は、当業者に周知である。例えば、定量的PCRへの1つのアプローチは、同じプライマーを使用して既知量の対照配列を同時に共増幅することを含む。これによって、PCR反応を較正するために使用することができる内部標準が提供される。定量的PCRのための詳細なプロトコールは、例えば、Innis et al. (1990) PCR Protocols, A Guide to Methods and Applications, Academic Press, Inc. N.Y.において提供されている。
Affymetrixにより記載される同じ手順およびハードウェアを、本発明との関連において用いることができるが、他の選択肢も利用可能である。多くの総説が執筆されており、マイクロアレイの作製のため、およびアッセイを行うための方法が詳述されている(例えば、Bowtell, Nature Genetics Suppl. 27:25-32 (1999); Constantine, et al, Life ScL News 7:11-13 (1998); Ramsay, Nature Biotechnol. 16:40-44 (1998)を参照のこと)。また、特許が発行されており、マイクロアレイプレート、スライド、および関連機器を産生するための(U.S. 6,902,702;U.S. 6,594,432;U.S. 5,622,826、その全体が、参照により本明細書に組み入れられる)、およびアッセイを行うための(U.S. 6,902,900;U.S. 6,759,197、その全体が、参照により本明細書に組み入れられる)技術が記載されている。プレートまたはスライドを作製するための2つの主要な技術は、ポリリソグラフィ方法(U.S. 5,445,934;U.S. 5,744,305を参照のこと。その全体が、参照により本明細書に組み入れられる)またはロボットスポッティング方法(U.S. 5,807,522、その全体が、参照により本明細書に組み入れられる)のいずれかを含む。他の手順は、インクジェットプリンティングまたはキャピラリースポッティングを含むことができる(例えば、WO 98/29736またはWO 00/01859を参照のこと。その全体が、参照により本明細書に組み入れられる)。
マイクロアレイプレートまたはスライドに使用される基板は、オリゴヌクレオチドに結合し、それを固定化することが可能な任意の材料(プラスチック、金属(例えば白金)およびガラスなどを含む)でありうる。好ましい基板は、オリゴヌクレオチド結合を促す材料(例えばポリリジンなど)でコーティングされたガラスである(Chena, et al, Science 270:467-470 (1995)を参照のこと)。オリゴヌクレオチドを共有結合的に付着させるための多くのスキームが記載されており(例えば、U.S. 6,594,432を参照のこと。その全体が、参照により本明細書に組み入れられる)、本発明との関連における使用のために適切である。固定化されたオリゴヌクレオチドは、最低でも20塩基の長さであるべきであり、ハイブリダイゼーションのために標的化された遺伝子中のセグメントに厳密に対応する配列を有するべきである。
コンピュータシステム
本発明の別の局面は、多能性幹細胞の系列スコアカードを生成するためのコンピュータシステムに関し、以下を含む;(i)(a)表1のリストからの少なくとも20個の組み合わせより選択される初期発生遺伝子のセットの遺伝子発現データを受理し、初期発生遺伝子の遺伝子発現レベルと、同じ標的遺伝子の参照遺伝子発現レベルとの比較を実施する段階;(b)初期発生遺伝子の同じセットについての参照遺伝子発現レベルと比較した、初期発生遺伝子の発現の比較に基づき系列スコアカードを生成する段階を含む、少なくとも1つのプログラムを含む、少なくとも1つのメモリ;ならびに(ii)前記プログラムを実行するためのプロセッサー。一部の態様において、システムは、さらに、テストされる多能性幹細胞株の分化傾向に基づいて系列スコアカードレポートを生成する、レポート生成モジュールを含む。一部の態様において、システムはメモリを含み、ここで、メモリはデータベースを含む。一部の態様において、データベースによって、初期発生遺伝子のセットの遺伝子発現が階層的な様式で配置され、例えば、初期発生遺伝子の発現のレベルが、グループに従ってクラスター化される(例えば、多能性遺伝子、初期中胚葉遺伝子、初期外胚葉遺伝子、または初期内胚葉遺伝子の発現レベル)。一部の態様において、メモリは、ネットワーク(例えば、ローカルネットワーク(LAN)またはワイドエリアネットワーク(例えばインターネットなど)を介して第1のコンピュータに接続され、そこで、ネットワークへのアクセスは、安全サイトを介するか、またはパスワードアクセスを介する。
一部の態様において、本明細書において開示するシステムは、テストされる多能性幹細胞株の適切な使用、有用性、または適用の表示を提供する、系列スコアカードを提供する。
本発明の別の局面は、多能性幹細胞株の系列スコアカードを生成するための指示を含むコンピュータ可読媒体に関し、以下を含む;(i)表1のリストからの少なくとも20個の組み合わせより選択される初期発生遺伝子のセットの遺伝子発現データを受理すること、および、初期発生遺伝子の遺伝子発現レベルと、同じ標的遺伝子の参照遺伝子発現レベルとの比較を実施すること、ならびに、(ii)初期発生遺伝子の同じセットについての参照遺伝子発現レベルと比較した、初期発生遺伝子の発現の比較に基づき系列スコアカードを生成すること。
本発明の一局面は、分化アッセイデータをプロセシングし、1つまたは複数の細胞系列に沿って分化する傾向としての多能性幹細胞の測定または格付けを生成し、および/または、本明細書において開示する系列スコアカードを生成するためのコンピュータシステムに関する。
一部の態様において、以下を含む多能性幹細胞の系列スコアカードを生成するためのコンピュータシステム;(i)(a)表1に列挙する遺伝子の任意の組み合わせからの少なくとも20個の組み合わせより選択される初期発生遺伝子のセットの遺伝子発現データを受理し、初期発生遺伝子の遺伝子発現レベルと、同じ標的遺伝子の参照遺伝子発現レベルとの比較を実施する段階;(b)初期発生遺伝子の同じセットについての参照遺伝子発現レベルと比較した、初期発生遺伝子の発現の比較に基づき系列スコアカードを生成する段階を含む、少なくとも1つのプログラムを含む、少なくとも1つのメモリ;ならびに(ii)前記プログラムを実行するためのプロセッサー。一部の態様において、システムは、さらに、テストされる多能性幹細胞株の分化傾向に基づいて系列スコアカードレポートを生成する、レポート生成モジュールを含む。一部の態様において、システムはメモリを含み、ここで、メモリはデータベースを含む。一部の態様において、データベースによって、初期発生遺伝子のセットの遺伝子発現が階層的な様式で配置され、例えば、初期発生遺伝子の発現のレベルが、グループに従ってクラスター化される(例えば、多能性遺伝子、初期中胚葉遺伝子、初期外胚葉遺伝子、または初期内胚葉遺伝子の発現レベル)。一部の態様において、メモリは、ネットワーク(例えば、ローカルネットワーク(LAN)またはワイドエリアネットワーク(例えばインターネットなど))を介して第1のコンピュータに接続され、そこで、ネットワークへのアクセスは、安全サイトを介する、またはパスワードアクセスを介する。
一部の態様において、本明細書において開示するシステムは、テストされる多能性幹細胞株の適切な使用、有用性、または適用の表示を提供する、系列スコアカードを提供する。
一部の態様において、コンピュータプログラムは、以下をさらに含む方法を実行するためのコンピュータシステムの動作を制御するように適合される:(i)目的の多能性幹細胞株において発現される初期発生遺伝子の遺伝子発現データ(例えば、遺伝子発現レベル)を受理し、遺伝子発現データ(例えば、遺伝子発現レベル)を参照初期発生遺伝子発現データ(例えば、対照多能性幹細胞株または複数の多能性幹細胞株における初期発生標的遺伝子の同じ第2のセットの遺伝子発現レベル)と比較すること;(ii)参照遺伝子発現データ(例えば、参照多能性幹細胞株における参照初期発生遺伝子発現レベル)と比較した遺伝子発現データ(例えば、初期発生遺伝子の遺伝子発現レベル)の比較に基づき系列スコアカードを生成すること。
本発明の別の局面は、多能性幹細胞株の系列スコアカードを生成するための指示を含むコンピュータ可読媒体に関し、以下を含む;(i)表1に列挙される遺伝子の任意の組み合わせからの少なくとも20個の組み合わせより選択される初期発生遺伝子のセットの遺伝子発現データを受理すること、および、初期発生遺伝子の遺伝子発現レベルと、同じ標的遺伝子の参照遺伝子発現レベルとの比較を実施すること、ならびに、(ii)初期発生遺伝子の同じセットについての参照遺伝子発現レベルと比較した、初期発生遺伝子の発現の比較に基づき系列スコアカードを生成すること。
コンピュータシステムは、1つまたは複数の汎用もしくは特殊目的プロセッサーおよび関連するメモリ(揮発性および不揮発性メモリデバイスを含む)を含むことができる。コンピュータ・システム・メモリは、本発明に従った特殊目的システムを作製する、または、本発明に従った方法を実施するためのシステムを実行するための、コンピュータシステムの動作を制御するためのソフトウェアまたはコンピュータプログラムを保存することができる。コンピュータシステムは、IntelまたはAMD×86ベースのシングルコアまたはマルチコアの中央処理装置(CPU)、データをプロセシングするためのARMプロセッサーまたは同様のコンピュータプロセッサを含むことができる。CPUまたはマイクロプロセッサは、任意の従来の汎用シングルチップまたはマルチチップのマイクロプロセッサ、例えばIntel Pentiumプロセッサー、Intel 8051プロセッサー、RISCもしくはMISSプロセッサー、Power PCプロセッサー、またはALPHA プロセッサーなどでありうる。また、マイクロプロセッサは、任意の従来の、または特殊目的のマイクロプロセッサ(例えばデジタルシグナルプロセッサまたはグラフィックプロセッサなどでありうる。マイクロプロセッサは、典型的には、従来のアドレスライン、従来のデータライン、および1つまたは複数の従来の制御ラインを有する。以下に記載する通り、本発明に従ったソフトウェアは、専用システムで、またはDOS、CPM、Windows、UNIX、Linix、または他のオペレーティングシステムを有する汎用コンピュータで実行することができる。システムは、不揮発性メモリ(例えばコンピュータプログラム、ソフトウェア、およびデータを保存するためのディスクメモリおよび固体メモリなど)および揮発性メモリ(例えばプログラムおよびソフトウェアを実行するための高速RAMなど)を含むことができる。
本発明の種々の態様において有用なコンピュータ可読の物理的な記憶媒体は、任意の物理的なコンピュータ可読記憶媒体、例えば、固体メモリ(例えばフラッシュメモリなど)、磁気および光学コンピュータ可読記憶媒体およびデバイス、ならびに、他の永続ストレージ技術を使用するメモリを含むことができる。一部の態様において、コンピュータ可読媒体は、コンピュータプログラムおよびデータが、コンピュータによりアクセスされることを可能にする任意の有形媒体でありうる。コンピュータ可読媒体は、情報(例えばコンピュータ可読指示、プログラムモジュール、プログラム、データ、データ構造、およびデータベース情報など)を保存することが可能な任意の方法または技術において実行される、揮発性および不揮発性の取り外し可能な、または取り外し不可能な有形の媒体を含むことができる。本発明の一部の態様において、コンピュータ可読媒体は、限定はしないが、RAM(ランダムアクセスメモリ)、ROM(読み出し専用メモリ)、EPROM(消去可能なプログラム可能読み出し専用メモリ)、EEPROM(電気的消去可能なプログラム可能読み出し専用メモリ)、フラッシュメモリまたは他のメモリ技術、CD-ROM(コンパクトディスク読み出し専用メモリ)、DVD(デジタル多用途ディスク)または他の光記憶媒体、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスク記憶媒体または他の磁気記憶媒体、揮発性および不揮発性メモリの他の型、および情報を保存するために使用することができる、および、上記の任意の適切な組み合わせを含むコンピュータにより読み出すことができる任意の他の有形媒体を含む。
コンピュータ可読である物理的な記憶媒体は、一般に、記憶デバイスとも呼ばれている。搬送波および他の信号ベースの記憶媒体または伝送媒体は、この用語により包含される記憶デバイスまたは物理的なコンピュータ可読記憶媒体の範囲に含まれず、本発明によれば、有用ではない。記憶装置は、複数の多能性幹細胞からの初期発生遺伝子の発現のレベルの参照データをそれに記録しておくために適応させる、または設定することができる(例えば、表1および/または表2の個々の初期発生遺伝子についてのΔCtレベル、ならびに、初期発生遺伝子のサブグループについての平均ΔCtレベルを含む)。そのような情報は、電子的に(例えば、インターネットを介して、ディスケットで、USB(ユニバーサルシリアルバス)を介して、または任意の他の適切な通信モードを介して)伝達し、読み出すことができるデジタル形態において提供されることができる。
本発明は、スタンドアロンのコンピュータで、またはネットワークコンピュータシステムの一部として実行することができる。スタンドアロンのコンピュータにおいて、全てのソフトウェアおよびデータは、ローカル・メモリ・デバイスに存在することができ、例えば、光ディスクまたはフラッシュメモリデバイスを使用し、本発明を実行するためのコンピュータソフトウェアならびにデータを保存することができる。代替の態様において、ソフトウェアもしくはデータまたはその両方が、遠隔デバイスへのネットワーク接続を介してアクセスすることができる。1つのネットワークコンピュータシステムの態様において、本発明は、公共ネットワーク、例えば、インターネットまたはプライベートネットワークなどを介する遠隔および/または中央に位置する場所に記憶されたデータおよびリソースに接続するために、クライアント−サーバー環境を使用する。この態様において、ウェブサーバーを含むサーバーは、本発明に従って提供される情報へのアクセス、オープンアクセス、プリペイド式または予約ベースのアクセスのいずれかを提供することができる。クライアントサーバー環境において、クライアントソフトウェアまたはプログラム(例えばウェブブラウザなど)を実行するクライアントコンピュータは、ネットワークを通じてサーバーに接続する。クライアントソフトウェアまたはウェブブラウザは、本発明のユーザーが、データと情報を入力し、データおよび情報へのアクセスを受理するためのユーザーインターフェイスを提供する。クライアントソフトウェアは、ローカルコンピュータディスプレイまたは他の出力デバイスに表示することができ、ユーザーが、例えば、コンピュータのキーボード、マウス、または他の入力デバイスを使用して、情報を入力することを可能にすることができる。サーバーによって、クライアントソフトウェアがデータを入力し、本発明に従ってデータをプロセシングし、ユーザーにデータを出力し、ならびにローカルおよび遠隔コンピュータリソースへのアクセスを提供することを可能にする1つまたは複数のコンピュータプログラムが実行される。例えば、ユーザーインターフェイスは、アッセイからのデータ(例えば、参照多能性幹細胞集団および/または目的の多能性幹細胞集団の標的遺伝子のDNAメチル化データレベルまたはDNA遺伝子発現レベル)の入力を可能にするアクセスエレメント(例えば、テキストボックスなど)、ならびに、スコアカードとの比較の結果、または、コンピュータ可読媒体上のコード化された指示の実行に続き、プロセッサーにより転送される、または利用可能にされるデータセットのグラフィカルな読み出しを提供することができるディスプレイエレメントを含むグラフィカルユーザーインターフェースを含むことができる。
本発明の態様は、また、本明細書において開示する方法に従った多能性幹細胞集団の質的保証を決定するための方法を実施するためのシステム(およびコンピュータシステムを起こすためのコンピュータ可読媒体)を提供する。
本発明の一部の態様において、コンピュータシステムソフトウェアは、1つまたは複数の機能的モジュールを含むことができ、それは、コンピュータ可読媒体に記録されたコンピュータ実行可能な指示により定義されることができ、コンピュータが、実行される際、本発明に従った方法を実施させる。モジュールは、明確さのために、機能毎に分離することができるが、モジュールは、コードの別々のブロックに対応する必要はなく、記載される機能が、種々の媒体に記憶された種々のソフトウェアコード部分の実行により行われ、種々の時間に実行されることができる。さらに、モジュールは、他の機能を実施することができ、したがってモジュールは、いかなる特定の機能又は機能のセットを有することにも限定されないというが認識されるべきである。一部の態様において、逸脱スコアカードを産生するための機能的モジュールは、例えば、限定はしないが、保存モジュール、遺伝子マッピングモジュール、参照比較モジュール、正規化モジュール、関連性フィルタモジュール、遺伝子セットモジュール、および逸脱スコアカードを表示するためのスコアカードディスプレイモジュールである。系列スコアカードを産生するための機能的モジュールは、例えば、限定はしないが、記憶デバイス、アッセイ正規化モジュール、サンプル正規化モジュール、参照比較モジュール、遺伝子セットモジュール、濃縮解析モジュール、および系列スコアカードを表示するためのスコアカードディスプレイモジュールである。機能的モジュールは、1つまたは複数のコンピュータを使用して、1つまたは複数のコンピュータネットワークを使用することにより実行することができる。
1つまたは複数のコンピュータ可読媒体上で具体化される情報は、データ、コンピュータソフトウェアまたはプログラム、およびプログラムの指示を含むことができ、それらは、コンピュータにより実行された結果として、コンピュータを特殊目的マシンに変換し、コンピュータは、本明細書において記載される機能の1つまたは複数を実施することができる。そのような指示は、初めから、複数のプログラミング言語(例えば、Java, J#、Visual Basic、C、C#、C++、Fortran、Pascal、Eiffel、Basic、COBOLアセンブリ言語など)のいずれか、または、それらの種々の組み合わせのいずれかで書くことができる。そのような指示が具体化されているコンピュータ可読媒体は、コンピュータシステムの成分の1つまたは複数、あるいは、本発明に従ったコンピュータシステムのネットワークに存在することができる。
一部の態様において、コンピュータ可読媒体は、それに記憶された指示が、任意のコンピュータリソースにロードされて、本明細書において考察する、本発明の局面を実行することができるように輸送可能であることができる。また、コンピュータ可読媒体に記憶された指示は、ホストコンピュータで実行される適用プログラムの一部分として具体化される指示に限定されないことが認識されるべきである。むしろ、指示は、コンピュータをプログラミングし、本発明の局面を実行するために用いることができるコンピュータコードの任意の型(例えば、オブジェクトコード、ソフトウェア、またはマイクロコード)として具体化することができる。コンピュータ実行可能な指示は、適切なコンピュータ言語またはいくつかの言語の組み合わせで書くことができる。基本的な計算生物学方法は、当業者に公知であり、例えば、Setubal and Meidanis et al., Introduction to Computational Biology Methods (PWS Publishing Company, Boston, 1997);Salzberg, Searles, Kasif, (Ed.), Computational Methods in Molecular Biology, (Elsevier, Amsterdam, 1998);Rashidi and Buehler, Bioinformatics Basics: Application in Biological Science and Medicine (CRC Press, London, 2000) and Ouelette and Bzevanis Bioinformatics: A Practical Guide for Analysis of Gene and Proteins (Wiley & Sons, Inc., 2nd ed., 2001)において記載されている。
一部の態様において、本明細書において開示するシステムは、自動化された遺伝子発現解析システム、例えば、限定はしないが、以下を含む質量解析システムを含む、自動化されたタンパク質発現解析から測定された発生遺伝子のセットの遺伝子発現レベルデータを受理することができる:MALDI-TOF、またはマトリックス支援レーザー脱離イオン化−飛行時間型システム;SELDI-TOF-MSプロテインチップアレイプロファイリングシステム、例えば、サイファージェンプロテインバイオロジーシステムII(商標)ソフトウェアを伴うマシン;遺伝子発現データを解析するためのシステム(例えば、US 2003/0194711を参照のこと);アレイベースの発現解析用のシステム、例えば、Affymetrix(サンタクララ、カリフォルニア州95051)から入手可能なHTアレイシステムおよびカートリッジアレイシステム、AutoLoader、Complete GeneChip(登録商標)機器システム、FluidicsStation450、ハイブリダイゼーションオーブン645、QCツールボックスソフトウェアキット、スキャナ3000 7G、スキャナ3000 7Gプラスターゲットジェノタイピングシステム、スキャナ3000 7G全ゲノム関連システム、GeneTitan(商標)機器、GeneChip(登録商標)アレイステーション、HTアレイ;自動ELISAシステム(例えば、DSX(登録商標)またはDS2(登録商標)フォームDynax、Chantilly、VAまたはENEASYSTEM III(登録商標)、Triturus(登録商標)、Mago(登録商標)プラス);デンシトメーター(例えば、X-Rite-508-Spectro Densitometer(登録商標)、HYRYS(商標)2デンシトメーター);自動蛍光インサイチューハイブリダイゼーションシステム(例えば、米国特許第6,136,540号を参照のこと)。2D画像化ソフトウェアと結合された2Dゲルイメージングシステム;マイクロプレートリーダー;蛍光活性化セルソーター(FACS)(例えば、フローサイトメーターFACSVantage SE、Becton Dickinson);放射性同位体解析装置(例えば、シンチレーションカウンター)。
本発明の一部の態様において、参照データは、電子的に、またはデジタル的に記録され、注釈付けされ、データベース(限定はしないが、GenBank(NCBI)タンパク質およびDNAデータベース、例えばゲノム、EST、SNPS、Traces、Celara、Ventor Reads、Watson reads、HGTSなど;Swiss Institute of Bioinformaticsデータベース、例えばENZYME、PROSITE、SWISS-2DPAGE、Swiss-Prot、およびTrEMBLデータベース;MelanieソフトウェアパッケージまたはExPASy WWWサーバーなど、SWISS-MODEL、Swiss-Shopおよび他のネットワークベースのコンピュータツール;Comprehensive Microbial Resourceデータベース(The institute of Genomic Research)を含む)から回収されることができる。結果として得られた情報は、ゲノム中およびその間での参照データまたは遺伝子またはタンパク質の間でのホモロジーを決定するために用いることができるリレーショナルデータベース中に記憶することができる。
一部の態様において、多能性幹細胞における初期発生標的遺伝子の遺伝子発現レベルが、メモリ、記憶デバイス、またはデータベースから回収されることができる。メモリ、記憶デバイス、またはデータベースは、データを回収するコンピュータシステムに直接的に接続する、または、有線または無線接続技術を通じてコンピュータに接続し、有線または無線接続を通じて遠隔デバイスまたはシステムから回収することができる。さらに、メモリ、記憶デバイス、またはデータベースは、それが回収されるコンピュータシステムから遠隔して位置付けられることができる。
本発明との使用のための適切な接続技術の例は、例えば、パラレルインターフェイス(例えば、PATA)、シリアルインターフェース(例えば、SATA、USB、Firewire)、ローカルエリアネットワーク(LAN)、ワイドエリアネットワーク(WAN)、インターネット、イントラネット、およびエクストラネット、無線(例えば、ブルートゥース、Zigbee、WiFi、WiMAX、3G、4G)通信技術を含む。
本明細書において使用する通り、「保存された」は、後に読み返すことができる記憶デバイスに情報(例えば、データ、プログラム、および指示)を記録するためのプロセスを指す。当業者は、参照スコアカードデータ(例えば、本明細書における方法に関して開示する、DNAメチル化のレベル、および/または遺伝子発現レベル、および/または多能性幹細胞の分化傾向データ)に寄与するために情報を公知の媒体上に記録するための現在公知の方法のいずれかを容易に採用することができる。
種々のソフトウェアプログラムおよびフォーマットを使用して、系列スコアカードデータおよび/または初期発生遺伝子の発現のレベルならびに記憶デバイス上に情報を保存することができる。任意の数のデータプロセッサー構造化フォーマット(例えば、テキストファイルまたはデータベース)を用いて、それに記録されたスコアカードを有する媒体を得る、または作成することができる。
一態様において、参照スコアカードデータは、電子的に、またはデジタル的に記録され、データベース[限定はしないが、当技術分野において一般に公知のタンパク質発現データベース(例えばYale Protein Expression Database(YPED)ならびにGenBank(NCBI)タンパク質など)およびDNAデータベース(例えばゲノム、EST、SNPS、Traces、Celara、Ventor Reads、Watson reads、HGTSなど;Swiss Institute of Bioinformaticsデータベース、例えばENZYME、PROSITE、SWISS-2DPAGE、Swiss-Prot、およびTrEMBLデータベース;MelanieソフトウェアパッケージまたはExPASy WWWサーバーなど;SWISS-MODEL、Swiss-Shop、および他のネットワークベースのコンピュータツール;Comprehensive Microbial Resourceデータベース(The Institute of Genomic Researchから利用可能)などを含む]から注釈付けされることができる。結果として得られるDNAメチル化のレベル、および/または遺伝子発現レベル、および/または多能性幹細胞株の分化傾向データの情報が、異なる多能性幹細胞集団と比較した、あるいは、異なる多能性幹細胞集団(例えば、ES細胞、iPS細胞、およびpiPS細胞)および体性幹細胞の間での、または個々の異なるゲノム、種および異なる集団からの同じ型の多能性幹細胞(例えば、iPS細胞)の間での参照DNAメチル化レベル、参照遺伝子発現レベル、および参照傾向差データと比較した、差を決定するために用いられるリレーショナルデータベース中に保存されることができる。
一部の態様において、システムは、1つまたは複数のプログラムを実行するためのプロセッサーを有し、例えば、そこでは、プログラムはオペレーティングシステム(例えば、UNIX、ウィンドウズ)、リレーショナルデータベース管理システム、応用プログラム、およびワールドワイドウェブサーバープログラムを含むことができる。応用プログラムは、データベース言語記述(例えば、構造化照会言語(SQL)記述)の生成のために必要な実行可能なコードを含むワールドワイドウェブアプリケーションでありうる。実行可能ファイルは、埋め込みSQLステートメントであることができる。また、ワールワイドウェブアプリケーションは、ワールワイドウェブサーバー機能を提供する種々のソフトウェア実体へのポインターおよびアドレスを含む構成ファイル、ならびにサーバーユーザーリクエストに対してアクセスすることができる種々の外部および内部データベースを含むことができる。構成ファイルは、また、サーバーリソースについてのリクエストを、適当なハードウェアデバイスに向けることができる(万一、サーバーが、2つまたはそれ以上の別々のコンピュータにわたり分布される場合に必要でありうる通り)。一部の態様において、ワールワイドウェブサーバーは、TCP/IPプロトコールを支持する。このようなローカルネットワークは、時折、「イントラネット」と呼ばれる。そのようなイントラネットの利点は、それらにより、ワールドワイドウェブ上に存在する公共ドメインデータベース(例えば、GenBankまたはSwiss Proワールドワイドウェブサイト)との簡単な通信が可能になることである。そこで、本発明の特定の好ましい態様において、ユーザーは、ウェブブラウザおよびウェブサーバーにより提供されるHTMLインターフェースを使用し、インターネットデータベース上に存在するデータ(例えば、Hypertextリンクを介して)に直接的にアクセスすることができる。本発明の他の態様において、他のインターフェース(例えばHTTP、FTP、SSH、およびVPNベースのインターフェースなど)を使用し、インターネットデータベースに接続することができる。
一部の態様において、本明細書において開示するシステムを使用し、遺伝子発現プロファイル(例えば、複数の初期発生標的遺伝子の遺伝子発現の遺伝子発現プロファイルまたはレベル)を比較することができる。例えば、システムは、そのメモリ上に、テスト多能性幹細胞株の遺伝子発現プロファイルまたはデータを受理し、それを、1つまたは複数の保存された遺伝子発現プロファイル(例えば、1つまたは複数の参照多能性幹細胞株における初期発生遺伝子発現の正常な変動)と比較する、または、より初期の時点で予め解析された多能性幹細胞株からの1つまたは複数の初期発生遺伝子発現プロファイルと比較することができる。一部の態様において、遺伝子発現プロファイルが、Affymetrix Microarray Suiteソフトウェアバージョン5.0(MAS 5.0)(Affymetrix, Santa Clara, Californiaから利用可能)を使用して得て、プローブセットからのシグナルの強度に基づいて、一遺伝子または複数の遺伝子の相対存在量を解析することができ、MAS 5.0データファイルをデータベース中に移し、Microsoft ExcelおよびGeneSpring 6.0ソフトウェア(Agilent Technologies, Santa Clara, Californiaから利用可能)を用いて解析することができる。一部の態様において、MAS 5.0ソフトウェアの比較アルゴリズムを使用し、どのくらい多くの転写物が所与のサンプル中で検出されるのかの包括的な概要を得ることができ、2つまたはそれ以上のマイクロアレイデータセットの比較解析が可能になる。一部の態様において、しかし、1つのデータセットだけが要求される(例えば、初期発生遺伝子のセットが、所与の多能性幹細胞株において1回だけ測定され、二つ組および三つ組のデータセットのために要する費用、時間、およびリソースが排除される)。
本発明のこの局面および全ての他の局面の一部の態様において、システムによって、決定モジュールにおいて決定される配列情報を参照データと比較するよう機能する比較のための種々の利用可能なソフトウェアプログラムおよびフォーマットを使用することができる「比較モジュール」においてデータを比較することができる。一部の態様において、比較モジュールを設定し、パターン認識技術を使用し、1つまたは複数の入力からの配列情報を、1つまたは複数の参照データパターンと比較する。比較モジュールを、パターンを比較するための、既存の商業的に利用可能なまたは無料で利用可能なソフトウェアを使用して設定することができ、行われる特定のデータ比較のために最適化することができる。比較モジュールは、また、例えば、サンプル中の配列の濃度(例えば、アミノ酸配列/タンパク質発現レベル、またはヌクレオチド(RNAまたはDNA)発現レベル)の決定、または遺伝子発現プロファイルの決定を含むことができる、配列情報に関連するコンピュータ可読情報を提供することができる。
一部の態様において、目的の多能性幹細胞についての初期発生遺伝子の遺伝子発現レベルデータが、本明細書において開示する、その初期発生遺伝子についての参照遺伝子発現レベルの外(例えば、複数の多能性幹細胞についての初期発生標的遺伝子についての遺伝子発現レベルの正常な変動の外)にあるか否かを決定するために使用される比較ソフトウェアを含む。例えば、目的発現の多能性幹細胞についての初期発生遺伝子の遺伝子発現レベルが、その初期発生遺伝子についての参照遺伝子発現レベルを上回る、統計的に有意な量だけ高い場合、それは、初期発生標的遺伝子の発現の可能性を示し、ソフトウェアが、その細胞系列に沿った最適な分化の可能性を伝える(または、そうでなければ、示す)ように設定されることができる。
コンピュータ可読形態において初期発生遺伝子の遺伝子発現レベルデータを提供することにより、多能性幹細胞についての遺伝子発現レベルデータを使用し、記憶デバイス内の他の多能性幹細胞の初期発生遺伝子の遺伝子発現レベルと比較することができる。例えば、検索プログラムを使用し、目的の多能性幹細胞についての同じ初期発生標的遺伝子の発現レベルと一致する関連参照データ(即ち、初期発生遺伝子の参照発現レベル)を同定することができる。コンピュータ可読形態においてなされる比較は、種々の手段によりプロセシングされることができるコンピュータ可読コンテンツを提供する。コンテンツは、比較モジュールから回収することができる(回収コンテンツ)。
一部の態様において、比較モジュールは、事前に定義された基準、またはユーザーにより定義された基準により、コンピュータ可読形態でプロセシングされることができるコンピュータ可読比較を提供し、ユーザーによりリクエストされた通りに、ディスプレイモジュールを使用して、保存および出力されることができる比較結果に部分的に基づくコンテンツを含むレポートを提供する。一部の態様において、ディスプレイモジュールによって、ユーザーのために、比較結果に部分的に基づくコンテンツのディスプレイが可能になり、ここで、コンテンツは、目的の多能性幹細胞とスコアカードとの比較の結果、あるいは、多能性幹細胞の有用性(例えば、特定の初期発生遺伝子、例えば、初期中胚葉遺伝子および/または初期外胚葉遺伝子、および/または初期内胚葉遺伝子の発現レベル)、ならびに多能性幹細胞の発現を示すレポートである。
一部の態様において、ディスプレイモジュールによって、エンドユーザーのための、比較結果に部分的に基づくレポートまたはコンテンツのディスプレイが可能になり、ここで、コンテンツは、目的の多能性幹細胞と系列スコアカードとの比較の結果、あるいは、多能性幹細胞の有用性(例えば、特定の初期発生遺伝子、例えば、初期中胚葉遺伝子および/または初期外胚葉遺伝子、および/または初期内胚葉遺伝子の発現レベル)、ならびに多能性幹細胞の発現を示すレポートである。
コンピュータの指示は、ソフトウェア、ファームウェア、またはハードウェアにおいて実行することができ、情報処理システムのモジュールにより行われるプログラムされた段階の任意の型を含む。コンピュータシステムは、ローカルエリアネットワーク(LAN)またはワイドエリアネットワーク(WAN)に接続することができる。ローカルエリアネットワークの1つの例は、企業のコンピューティングネットワーク(インターネットへのアクセスを含む)でありうるが、それに、データプロセッシングシステムを含むコンピュータおよびコンピューティングデバイスが接続される。一部の態様において、LANでは、通信のための業界標準の伝送制御プロトコール/インターネットプロトコル(TCP/IP)ネットワークプロトコルが使用される。伝送制御プロトコール(TCP)を、トランスポート層プロトコールとして使用し、コンピュータシステムの間に信頼できる接続指向トランスポート層連結を提供することができる。ネットワーク層は、トランスポート層にサービスを提供する。2方向ハンドシェイクスキームを使用し、TCPは、コンピュータシステムの間の論理接続を確立し、維持し、終了させるための機構を提供する。TCPトランスポート層では、そのネットワーク層プロトコールとしてIPを使用する。加えて、TCPは、プロトコールポートを提供し、各々のメッセージを伴う宛先および送信元ポート数を含むことにより、単一デバイス上で実行される複数のプログラムを区別する。TCPは、機能(例えばバイトストリームの伝送、データフローの定義、データの肯定応答、紛失または破損したデータの再伝送、および単一のネットワーク接続を介した複数の接続の多重化など)を実施する。最後に、TCPは、データグラム構造中に情報をカプセル化することに責任がある。代替の態様において、LANは、他のネットワーク規格(限定はしないが、International Standards OrganizationのOpen Systems Interconnection、IBMのSNA、NovellのNetware、およびBanyan VINESを含む)に従うことができる。
一部の態様において、本明細書において記載するコンピュータシステムは、例えば、以下のネットワークを含む、コンピュータの電子的に接続されたグループの任意の型を含むことができる:インターネット、イントラネット、ローカルエリアネットワーク(LAN)、またはワイドエリアネットワーク(WAN)。また、ネットワークへの接続性は、例えば、遠隔モデム、イーサネット(IEEE 802.3)、トークンリング(IEEE 802.5)、ファイバ分布データリンクインタフェース(FDDI)、または非同期転送モード(ATM)でありうる。コンピューティングデバイスは、デスクトップデバイス、サーバー、ポータブルコンピュータ、ハンドヘルドコンピューティングデバイス、スマートフォン、セットトップデバイス、または任意の他の所望の型または配置であることができる。本明細書において使用する通り、ネットワークは、以下、公共インターネット、プライベートインターネット、安全インターネット、プライベートネットワーク、公共ネットワーク、付加価値ネットワーク、イントラネット、エクストラネット、および前述の組み合わせを含むものの1つまたは複数を含む。
本発明の一態様において、コンピュータシステムは、パターン比較ソフトウェアを含むことができ、それは、目的の多能性幹細胞株における遺伝子発現レベルのパターンが、細胞株が外れ値であることを示し、参照多能性幹細胞株の正常な特徴の外で機能する幹細胞株を予測するか否か、あるいは、多能性幹細胞株が、目的の特定の細胞株に沿って分化する低い効率または増加した効率を有する、または多能性状態を喪失している可能性を決定するために使用することができる。この態様において、パターン比較ソフトウェアによって、目的の多能性幹細胞のデータ(例えば、初期発生遺伝子の遺伝子発現レベル)の少なくとも一部を、参照多能性幹細胞株の遺伝子発現レベル(初期発生標的遺伝子の遺伝子発現レベル)の事前に定義されたパターンと比較し、どのくらい密接にそれらが一致するかを決定することができる。一致は、パターンの全てまたは一部が一致する範囲を示す部分または程度において、評価および報告されることができる。
本発明のこの局面および全ての他の局面の一部の態様において、比較モジュールは、事前に定義された基準、またはユーザーにより定義された基準により、コンピュータ可読形態においてプロセシングされることができるコンピュータ可読データを提供し、ユーザーによりリクエストされた通りに、ディスプレイモジュールを使用して、記憶および出力されることができる、回収されたコンテンツを提供する。
ディスプレイモジュール
本発明の一部の態様に従い、コンピュータ化システムは、ディスプレイモジュール(例えばコンピュータモニター、タッチスクリーン、またはビデオディスプレイシステムなど)を含む、またはそれに動作可能に接続されることができる。このディスプレイモジュールによって、ユーザーの指示が、システムのユーザーに提示され、システムへの入力を見て、システムが、ユーザーインターフェイスの一部として、ユーザーに結果をディスプレイすることが可能になる。場合により、コンピュータ化システムは、システムにより出力された情報のプリントされたコピーを産生するためのプリンティングデバイスを含む、またはそれに動作可能に接続されることができる。一部の態様において、ディスプレイモジュールは、エンドユーザーの位置に存在するコンピュータスクリーンであり、それは、異なる位置に位置付けられた比較モジュールまたはコンピュータ上で(例えば、遠隔位置のサーバー上で)プロセシングされるシステムまたはコンピュータに接続され、それは、安全アクセスを使用し、インターネットまたはワールドワイドウェブなどを介して、ユーザーにアクセス可能である。
一部の態様において、結果は、ディスプレイモジュール上で表示され、レポート(例えば、目的の多能性幹細胞の有用性(例えば、多能性幹細胞における初期発生遺伝子の遺伝子発現のレベルからのデータに基づく、特定の細胞株系列に沿って分化する可能性に基づいた特定の治療的使用のための有用性)を示すための系列スコアカードレポート)においてプリントされることができる。
一部の態様において、スコアカードレポートは、プリンターからプリントされたハードコピーである。代替の態様において、コンピュータ化システムでは、スコアカードをレポートするために、例えば、目的の多能性幹細胞株の質および有用性を示すために、光または音を使用することができる。例えば、本発明の全ての局面において、本明細書において開示するキットに存在する方法、分化アッセイ、システムにより産生されるスコアカードは、1つまたは複数の参照多能性幹細胞株(例えば、本明細書においてテストされる、標準的なヒトES細胞株およびiPS細胞)と比較した、または、研究者らの選んだ別の「ゴールド」スタンダードの多能性幹細胞株と比較した、目的の多能性幹細胞の質を伝える、または示すようにカラーコードされるレポートを含むことができる。
例えば、赤色または他の事前に定められたシグナルは、多能性幹細胞株が、外れ値の多能性幹細胞株であり、1株または複数の参照多能性幹細胞株におけるレベルと比較して、統計的に有意な量だけ変動する、1つまたは複数の初期発生遺伝子を有することを示し、従って、多能性幹細胞株が、参照多能性幹細胞株とは異なる特徴を有し、例えば、特定の細胞系列に分化する、増加または減少した素因を有しうることを伝えることができる。別の態様において、黄色もしくはオレンジ色または他の事前に定義されたシグナルは、多能性幹細胞株が、1株または複数の参照多能性幹細胞株におけるレベルと比較して、統計的に有意な量だけ変動する1つの初期発生遺伝子を有することができることを示し、従って、多能性幹細胞株が、参照多能性幹細胞株に対してわずかに異なる特徴を有するが、差は機能に重要である可能性はなく(例えば、目的の多能性幹細胞株が、依然として、使用される特徴的な質のものである)、特定の細胞系列などに沿って分化する変化した素因を有さないことを伝えることができる。別の態様において、緑色または他の事前に定義されたシグナルは、多能性幹細胞株が高質であり、初期発生遺伝子のセットの大部分の発現のレベルが、1株または複数の参照多能性幹細胞株におけるレベルと比較して、統計的に有意な量だけ変動しないことを示し、従って、多能性幹細胞株が高質であり、参照多能性幹細胞株と同様の特徴を有する可能性が高いことを伝えることができる。代替の態様において、他のシグナルまたは色を使用し、多能性幹細胞が、特定の細胞系列(例えば、中胚葉系列、または外胚葉系列、または内胚葉系列)に沿って分化する増加傾向を有することを伝えることができる。異なるシグナルまたは色を使用し、各々の系列に沿った、可能性の高い分化を伝えることができる。
一部の態様において、「ヒートマップ」またはグラデーションカラースキームをレポート(例えば、多能性幹細胞株の質を伝えるためのスコアカードレポート)において使用することができ、例えば、そこでは、グラデーションが赤色から黄色へ、緑色へのグラデーションであり、ここで赤色シグナルは、劣ったおよび/または不良な質を伝え、黄色シグナルは良い質を示し、緑色シグナルは、1株または複数の参照多能性幹細胞株と比較して、目的とする高い質の多能性幹細胞株を示す。赤色と黄色および黄色と緑色の間の色は、赤色−黄色−緑色スケールに関して、多能性幹細胞株の特徴を伝える。レポート中の他のカラースキームおよびグラデーションスキームも包含される。
一部の態様において、レポートは、その初期発生遺伝子についての参照遺伝子発現レベルと比べた、複数の初期発生遺伝子の発現レベルについての複数のt値を示す。測定された初期発生遺伝子とその初期発生遺伝子についての参照発現レベルの間のt値が0〜1の場合、発現レベルが同程度であり、統計的に有意ではないことを示す。多能性幹細胞における測定された初期発生遺伝子とその初期発生遺伝子についての参照発現レベルの間のt値が>1の場合、初期発生遺伝子の発現レベルが、その遺伝子についての参照発現レベルと比較して、多能性幹細胞においてより高いことを示す。多能性幹細胞における測定された初期発生遺伝子とその初期発生遺伝子についての参照発現レベルの間のt値が<0の場合、初期発生遺伝子の発現レベルが、その遺伝子についての参照発現レベルと比較して、多能性幹細胞においてより低いことを示す。
一部の態様において、レポートは緑色シグナルまたは同様のシグナル(例えば、上向き矢印)を示し、そこで、初期発生遺伝子についてのt値は>1であり、多能性幹細胞における初期発生遺伝子のレベルが、その初期発生遺伝子についての参照レベルと比較して、より高いことを示す。一部の態様において、レポートは黄色シグナルまたは同様のシグナル(例えば、水平方向の矢印、45°上向きまたは下向き角度の付いた矢印)を示し、ここで、初期発生遺伝子についてのt値は0〜1の間であり、多能性幹細胞における初期発生遺伝子のレベルが、その初期発生遺伝子についての参照レベルと同程度であることを示す。一部の態様において、レポートは赤色シグナルまたは同様のシグナル(例えば、下向き矢印)を示し、ここで、初期発生遺伝子についてのt値は<0であり、多能性幹細胞における初期発生遺伝子のレベルが、その初期発生遺伝子についての参照レベルと比較して、より低いことを示す。一部の態様において、レポートは、t値、および/または分化アッセイにおいて測定された各々の初期発生遺伝子についてのシンボル(例えば、方向矢印)を示す。代替の実施局面において、レポートは、測定された多能性幹細胞についてのt値、例えば、各々のカテゴリー(例えば、多能性幹細胞遺伝子、初期中胚葉遺伝子、初期外胚葉遺伝子、初期内胚葉遺伝子など)における初期発生遺伝子についての中央値または平均t値の要約を示す。
t値を算出するための任意の方法またはt検定が、本明細書において開示する方法およびアッセイおよびシステムにおける使用のために包含される。一部の態様において、初期発生遺伝子のΔCtが、t検定において、同じ初期発生遺伝子についての参照ΔCtと比較される。多能性幹細胞株において発現される各々の初期発生遺伝子についてのΔCtが、多能性幹細胞株において測定された初期発生遺伝子のCtレベルを、同じ多能性幹細胞株において測定された対照遺伝子(例えば、ACTB)についてのCt値の中央値と比較することにより決定される。
一部の態様において、レポート(例えば、系列スコアカード)は、初期発生遺伝子発現の正常な変動と比較した、異なるレベルの遺伝子発現を有する初期発生遺伝子の合計割合(%)、および/または絶対合計数を表示することができる。単に例証的な事例として、スコアカードは、テスト多能性幹細胞が、正常な変動と比較して、異なるレベルで発現された、評価された遺伝子のうち21%の遺伝子を有することを示し、また、その正常な変動(例えば、複数の参照多能性幹細胞株において)を示すことができる。
一部の態様において、レポート(例えば、スコアカード)は、テスト多能性幹細胞株の正規化された値を表示することができ、それは、参照多能性幹細胞株(例えば、研究者の選んだ選択された「ゴールド」スタンダード株)または参照多能性幹細胞株における正常な変動に対して正規化される。したがって、スコアカードは、初期発生遺伝子発現レベルの正常な変動と比較して、差次的に発現される初期発生遺伝子の割合(%)の差および/または絶対数における変化を表示することができる。単に例証的な事例として、系列スコアカードは、テスト多能性幹細胞が、初期発生遺伝子の正常な変動と比較して、増加した遺伝子発現(例えば、t値が>1)を有する、評価された90個の初期発生遺伝子のうち合計20個(または22%)を有することを示すことができる。一部の態様において、これを分けることができ(例えば例示的な事例において)、増加した20個の遺伝子のうち12個が中胚葉初期発生遺伝子として特徴付けられ、4つが内胚葉初期発生遺伝子として特徴付けられ、4つが外胚葉初期発生遺伝子として特徴付けられる。
代替の態様において、レポート(例えば、系列スコアカード)は、特定の系列(例えば、神経、内胚葉、外胚葉、中胚葉、膵臓、心臓系列など)に沿って分化するための割合(%)または相対的な分化傾向を表示することができる。
一部の態様において、レポート(例えば、スコアカード)はまた、テキスト(口頭または書面のいずれか)を提示することができ、多能性幹細胞株の適用および/または有用性が適当である、ならびに/あるいは、多能性幹細胞株の適用および/または有用性が適当ではない、という提案事項を与える。
本発明のこの局面および全ての他の局面の一部の態様において、レポートデータ(例えば、比較モジュールからの系列スコアカード)は、プリントされたレポート(例えば、スコアカード)の1つまたは複数の頁として、コンピュータモニター上に表示されることができる。本発明の一態様において、回収されたコンテンツの頁は、プリント可能な媒体を通じて表示されることができる。このディスプレイモジュールは、ユーザーへのコンピュータ可読情報の表示のために適応された任意のデバイスまたはシステムでありうる。ディスプレイモジュールは、スピーカー、陰極線管(CRT)、プラズマディスプレイ、発光ダイオード(LED)ディスプレイ、液晶ディスプレイ(LCD)、プリンター、真空蛍光ディスプレイ(VFD)、表面伝導型電子放出素子ディスプレイ(SED)、電界放出ディスプレイ(FED)などを含むことができる。
本発明の一部の態様において、ワールドワイドウェブブラウザを使用し、ユーザーが、情報を入力するためのシステムと相互作用し、リクエストを構築し、回収されたコンテンツを表示することを可能にするユーザーインターフェイスを提供することができる。また、システムの種々の機能的モジュールが、ユーザーインターフェイスを提供するためのウェブブラウザを使用するために適応されることができる。ウェブブラウザを使用し、ユーザーは、データソース(例えばデータベースなど)からデータを回収するためのリクエストを構築し、比較モジュールと相互作用し、比較およびパターンマッチングを実施することができる。ユーザーは、従来、グラフィカルユーザーインターフェースにおいて用いられるユーザーインターフェイスエレメント(例えばボタン、プルダウンメニュー、スクロールバーなど)をポイントおよびクリックし、システムと相互作用し、システムが、本発明の方法を実施するようにすることができる。ユーザーのウェブブラウザで組み立てられるリクエストは、ネットワークを通じて、リクエストをプロセシングし、フォーマット化することができるウェブアプリケーションに伝送され、DNAメチル化レベルおよび遺伝子発現レベル、回収されたコンテンツに関連する関連情報を提供し、この情報をプロセシングし、結果(例えば、以下のいずれかの少なくとも1つ)を出力するために用いられることができる1つまたは複数のデータベースのクエリを産生することができる:(i)各々のカテゴリー(例えば、多能性幹細胞遺伝子、初期中胚葉遺伝子、初期外胚葉遺伝子、初期内胚葉遺伝子など)における初期発生遺伝子についてのt値の平均値または中央値の表示(および、場合により方向矢印);(ii)評価される各々の初期発生遺伝子についてのt値の表示(および、場合により、方向矢印);(iii)t値が>1である場合の初期発生遺伝子の数(割合(%)および/または絶対数)の表示(例えば、参照初期遺伝子発現レベルと比較した、より高い発現);(iv)t値が<0である場合の初期発生遺伝子の数(割合(%)および/または絶対数)の表示(例えば、参照初期遺伝子発現レベルと比較した、より低い発現);(v)t値が0〜1の間である場合の初期発生遺伝子の数(割合(%)および/または絶対数)の表示(例えば、参照初期遺伝子発現レベルと比較した、同程度の発現)。一部の態様において、1つまたは複数の参照多能性幹細胞株の初期発生遺伝子の遺伝子発現レベルも表示することができる。
逸脱または系列スコアカードを産生するためのハイスループットサンプルプロセシングのワークフロー例
例示的な事例として、限定はしないが、系列スコアカードワークフローが、以下のケーススタディにより例証される:個々の研究者または大企業(または基金)が、米国人口のX%についてHLAが一致するiPS細胞株を提供する幹細胞バンクを確立することを計画し、それは、10,000個のiPS細胞株を要する。全ての細胞株が、商業的に利用可能となるであろうが、リソースを研究者および企業に最も有益であるようにするために、各々の細胞株についてスコアカード特徴を公開することが計画されている。自動化を促進するために、全てのiPS細胞株を96ウェルプレートまたは384ウェルプレート中で増殖させる。大半のサンプルプロセシングがロボット化されており、全ての細胞株がバーコード化され、中央管理型LIMSにより追跡される。スコアカードの特徴付けは、以下の通りに実施される。
(1)逸脱スコアカード/多能性の確認:研究者は、液体取り扱いロボットに以下の通りにロードする:(i)1ウェル当たり1つのiPS細胞株を伴う1つの96ウェルまたは384ウェルプレート;(ii)96ウェルまたは384ウェルmRNA抽出キット、(iii)表1に列挙される少なくとも20個の遺伝子に特異的な事前にスポットされたプローブ(例えば、オリゴヌクレオチドおよび/またはプライマー)および少なくとも1つの対照遺伝子について特異的な少なくとも1つのオリゴヌクレオチド(またはプライマー対)を伴うカスタムqPCRプレート(96ウェルまたは384ウェル)。
(2)ロボットにより、プレート全体のRNA抽出が実施され、各々のウェルから、別々のqPCRプレート中に(96ウェルqPCRプレートを使用した場合)、またはプレートの1/4中に(384ウェルqPCRプレートを使用した場合)ピペット分注される。逆転写は、同じプレートにおいて実施し、バーコード化されたCt表をコンピュータ上のコンピュータ可読媒体に移す。
(3)系列スコアカード/分化能の定量化:例えば、1ウェル当たり1つのiPS細胞株を伴う96ウェルプレートから開始し、研究者は、各々のウェルから細胞を収集し、それらを新たな96ウェルプレート中に播く。
(4)定められた期間(例えば、n日)の多能性幹細胞の培養後、プレートが、液体取り扱いロボット内にロードされ、初期分化特異的なマーカー遺伝子を伴うカスタムqPCRプレートが使用されることだけを除き、段階1および2において記載される通りにqPCR解析が実施される。
(5)実験の終了時、研究者は、プロセシングされていないCt値をカスタム系列スコアカードソフトウェア中にロードする。このソフトウェアは、一般のqPCRマシンのいずれかからの出力データフォーマットをインポートし、多数のハウスキーピング遺伝子を使用した相対的な正規化を実施し、スコアカード予測を算出する。
(6)遺伝子セット選択。本明細書において開示する通り、系列スコアカードは、初期発生マーカーのセットの発現レベルの測定を要求する。一部の態様において、逸脱スコアカード用のデータの生成のためのアッセイは、所与の細胞株が多能性として分類されるか否かを決定するための最も関連する遺伝子を伴う単一の96ウェルqPCRプレート(または、一部の態様において、384ウェルqPCRプレート上の4つのサンプル)からなることができる。一部の態様において、系列スコアカード用のデータの生成のためのアッセイは、所与の細胞株の分化傾向を定量化するための最も関連する遺伝子を伴う2つの96ウェルプレート(または、一部の態様において、384ウェルqPCRプレート上の2つのサンプル)からなることができる。
一部の態様において、マルチプレックスqPCRアッセイを使用した、系列スコアカードについての初期発生遺伝子の最適な遺伝子選択が、さらに検証および最適化されることができる。複製物は本発明において必要ではなく、一部の態様において、複数のプレートが、各々の細胞株の分化アッセイのために使用され、それは、複製物中の目的の各々の生物学的な幹細胞株用のプレート、その多能性状態における幹細胞株用のプレート、およびそのEB状態における幹細胞株用の1つのプレートを含む。一部の態様において、そのような384ウェルqPCRプレート(「tech-devプレート」)中に含まれる遺伝子は、以下の遺伝子セットの選択を使用して選択することができる。
1.正規化:各々のプレートは、少なくとも1つの正規化用遺伝子を含む。これらは二つ組であることができ、陽性対照または陰性対照であることができる。使用することができる対照正規化用遺伝子は、例えば、ACTB、JARID2、CTCF、SMAD1、GAPDH、およびβアクチンより選択されることができる。一部の態様において、プレートは、少なくとも2つの対照遺伝子を含む。
2.支持される細胞型/系列:初期発生遺伝子が選択されることができ、それらは、多能性幹細胞の少なくとも2日後に培養液中で発現され(例えば、2D EB)、外胚葉、中胚葉、内胚葉の胚葉ならびに神経系列および造血系列中への多能性幹細胞のその後の分化を同定する。一部の態様において、これらの遺伝子は、表1に列挙されるものより選択され、場合により、表1にない追加の初期発生遺伝子を含むことができる。一部の態様において、評価される初期発生遺伝子のサブセットは、qPCRベースのスコアカード(外胚葉、中胚葉、内胚葉の胚葉ならびに神経系列および造血系列)用のNanoString nCounter Gene Expression Code Assay(NanoString Technologiesより利用可能)上のものと同じである。また、一部の態様において、初期発生遺伝子のリストは、限定はしないが、以下についての初期発生遺伝子を含む、初期発生遺伝子セットの追加のカテゴリーを含むことができる:多能性細胞のシグネチャー、表皮、間葉系幹細胞、骨、軟骨、脂肪、筋肉、血管、心臓、リンパ球、骨髄細胞、肝臓、膵臓、上皮、運動神経細胞、単球−マクロファージ。
検証:一部の態様において、系列スコアカード用のデータを産生するためのアッセイのためのqPCRプレートを検証することができる。検証は、3段階で実施することができる。初回の検証段階の間に、qPCRプレートを評価し、それが、NanoString nCounter Gene Expression Code Assay(NanoString Technologiesから入手可能)と同様の精度および予測能を提供するか否かを決定する。第2の生物学的検証段階を実施することができ、それによって、多くのより多能性の幹細胞株についてのqPCRベースの系列スコアカードの予測性および目的の種々の異なる系列に分化するための、評価された幹細胞傾向が評価および確認される。最終的なアッセイ検証が実施されることができ、それによって、全てのより初期のデータとの技術的な一貫性についてqPCRプレートが最適化される。より具体的には、一部の態様において、検証段階が、以下の通りに行われる。
1.技術的なqPCRアッセイ検証。NanoStringベースのスコアカードからの結果を、本明細書において開示する通りのqPCRベースの系列スコアカードと直接的に比較することができ、NanoStringとqPCRプラットフォームの間で、各々の遺伝子の精度、感度、およびロバスト性を比較する。さらに、qPCRベースの系列スコアカードによって、例えば、特定の系列(例えば、外胚葉、内胚葉、または中胚葉系列)での方向付けられた分化の効率における細胞株特異的な差を予測することができることも確認することができる。
2.生物学的qPCRアッセイ検証および範囲の拡大。本発明者らは、培養液中での少なくとも2日までの(例えば、2D EB)、3つ全ての生殖系列への多能性幹細胞の分化を予測するために、系列スコアカードを広範に検証してきた。したがって、いくつかの異なる培養培地、ならびにRNA調製物、培養条件などを使用して、系列スコアカードの予測性を検証し、種々の異なる系列への多能性幹細胞の分化能を予測する効率および一貫性を定量的に決定することができる。さらに、系列スコアカードを較正するために、例えば、限定はしないが、ヒト多能性細胞株、部分的再プログラミング細胞系、胚性癌細胞株などより選択される少なくとも約100またはそれ以上の多能性幹細胞株を使用したqPCR分化アッセイを検証することができる。そのような検証を使用し、大規模産生のために、qPCRベースの系列スコアカードアッセイを最適化および再設計し、例えば、それを、特定の幹細胞株または系列の優先度に合わせることができる。
3.技術的な検証。一部の態様において、さらなる検証が、qPCR分化アッセイのためにソフトウェアおよびアッセイ取り扱いを検証するために望まれうる。例えば、プレートの安定性、qPCRプレートからの出力を読み取る簡便さなどを最適化することができる。そのような検証および最適化のためのアプローチは、当業者に公知である。
多能性幹細胞株についてのスコアカードを産生するためのバイオインフォマティクス解析のアルゴリズムおよび方法
本明細書において記載する通り、本明細書において開示する系列スコアカードは、参照多能性細胞株における初期発生遺伝子のセットについての発現レベルの正常な変動と比較した、分化発現アッセイにおける複数の初期発生遺伝子の発現に関する(例えば、幹細胞株、例えば、多能性幹細胞株における差次的に調節される(例えば、無制御および/または下方制御される)初期発生遺伝子を同定すること)。
初期発生遺伝子発現の参照レベルと比較した、初期発生遺伝子の異なる遺伝子発現の範囲を決定するための多くの異なる方法が、本明細書において開示する方法およびシステムにおける使用のために包含される。したがって、多能性細胞株の質および有用性の実際に有用な指標を得るための異なるバイオインフォマティクス方法が包含される。
例えば、一部の態様において、分化アッセイを繰り返し行う必要はない。例えば、t検定を使用し、初期発生遺伝子の発現の参照レベルと比較した、多能性幹細胞における初期発現遺伝子の差次的な発現のt値を算出することができる。したがって、一部の態様において、初期発生遺伝子のΔCtが、t検定において、同じ初期発生遺伝子についての参照ΔCtと比較される。t値を算出するための任意の方法が、本明細書において開示する方法およびアッセイおよびシステムにおける使用のために包含される。他の統計テスト(例えば、フィッシャー直接率検定、ANOVA)も使用されることができる。多能性幹細胞株において測定された初期発生遺伝子のCtを、同じ多能性幹細胞株において測定された対照遺伝子(例えば、ACTB)についてのCt値の中央値と比較することにより、多能性幹細胞株において発現される各々の初期発生遺伝子についてのΔCtが決定される。
実施例において開示する通り、本明細書において開示するスコアカードでは、目的の1つまたは複数の幹細胞株(例えば、多能性幹細胞株)が、初期発生遺伝子の発現に関して、1つまたは複数の参照多能性幹細胞株から逸脱しているか否かが要約される。本明細書において使用する通り、参照多能性細胞株は、目的の任意の数のES細胞でありうる。代替の態様において、本明細書において実施例において使用される通り、多数のiPSCおよび/またはES細胞、例えば、少なくとも約10株または少なくとも約20株の低継代ES細胞株についての正常範囲に関する初期発生遺伝子の遺伝子発現レベルの基礎として、参照多能性細胞株が使用される。
系列スコアカードの算出
本明細書において開示する系列スコアカードによって、1つまたは複数の参照多能性幹細胞株(例えば、高質および/または低継代の多能性幹細胞株)、例えば、本明細書において、実施例において使用される19株の低継代ES細胞株についての参照値などと比べた、目的の幹細胞株の分化傾向および/または多能性が定量化される。系列スコアカードを算出するための1つのアルゴリズムでは、モデレートt検定(Smyth, 2004)およびtスコアで実施された遺伝子セット濃縮解析(Nam and Kim, 2008;Subramanian et al., 2005)の組み合わせが使用される。
系列特異的な分化傾向を定量化するための生物学的な基礎を提供するために、本発明者らは、3つの胚葉(外胚葉、中胚葉、内胚葉)の各々について、ならびに神経系列および造血系列についての初期発生遺伝子のいくつかのセットを作製した。一部の例において、Bioconductorのlimma(商標)パッケージを使用し、目的の細胞株について得られたEBにおける遺伝子発現を、ES細胞参照について得られたEBと比較するモデレートt検定を実施することができ、平均tスコアが、関連遺伝子セットに寄与する全ての遺伝子にわたり算出された。高い平均tスコア(例えば、>1)は、テストされたEBにおける遺伝子セットの遺伝子の増加発現を示し、対応する系列についての高い分化傾向を示すと考えられる。対照的に、低い平均tスコア(例えば、<0)は、関連遺伝子の減少した発現を示し、対応する系列についての低い分化傾向を示すと考えられる。解析のロバスト性を増加するために、平均tスコアが、所与の系列に割り当てられた全ての遺伝子セットにわたり平均化されることができる。系列スコアカードダイアグラム(図4〜7)には、細胞株特異的な分化傾向の定量的な指標として、これらの「遺伝子セットの平均tスコアの平均値」が列挙される。系列スコアカード解析および検証が、カスタムRスクリプト(「r-project.org/」でワールドワイドウェブを参照のこと)を使用して実施されることができる。
本明細書において、実施例のセクションにおいて実証する通り、初期発生遺伝子の発現が、特定の細胞系列への多能性幹細胞株の分化能を予測するための、信頼できるロバストなテストとして使用することができる。
系列スコアカードを算出するためのアルゴリズムは、以下の段階を含む。
(i)データインポート:(i)目的の多能性幹細胞の少なくとも2日目の胚様体(2D EB)、および(ii)参照多能性幹細胞株(例えば、高質な参照多能性幹細胞の対照細胞株として使用される多能性幹細胞株)からの同じ時点(例えば、2日目の胚様体(2D EB))での、少なくとも1つ、または少なくとも約5つ、または少なくとも約10もしくはそれ以上の胚様体からの、表1に列挙する遺伝子の任意の組み合わせより選択される少なくとも20個の初期発生遺伝子の遺伝子発現データをインポートする。一部の態様において、遺伝子発現データはマイクロアレイデータである。
(ii)アッセイ正規化の任意段階:陽性スパイクイン対照を使用し、アッセイ正規化因子を算出し、それに応じてデータを再スケーリングする。一部の態様において、スパイクイン正規化が、各々の実験または複製実験のために必要とされる。
(iii)サンプル正規化:全ての実験にわたり、分散安定化および正規化を実施する。一部の態様において、分散安定化および正規化は、当業者により容易に入手可能なソフトウェア(例えばBioconductorのVSNパッケージなど)により実施することができる。
(iv)参照比較:目的の各々の多能性幹細胞株からのEBの各々の初期発生遺伝子(例えば、表1に列挙される遺伝子の任意の組み合わせから)についての正規化された遺伝子発現を、同じ時点(例えば、EBにおける少なくとも2日;2D EB)での参照多能性幹細胞株のEBにおける同じ初期発生遺伝子についての正規化された遺伝子発現値と比較する。一部の態様において、統計解析が比較のために使用され、例えば、各々のマーカー遺伝子についてのモデレートt検定を使用し、目的の多能性幹細胞株における初期発生遺伝子の発現のレベルを、複数の参照高質EBから得られた初期発生遺伝子の値の同じセットの参照発現レベルと比較する。一部の態様において、統計パッケージ(例えばBioconductorのlimmaパッケージの使用など)が使用され得る。
(v)遺伝子セット:目的の特定の細胞系列または胚葉に沿って分化する多能性幹細胞の特徴でありかつそれを予測する関連遺伝子を含む初期発生遺伝子セットをロードする。
(vi)濃縮解析:各々の初期発生遺伝子セットについて、各々のセットに属する全てのマーカー遺伝子の平均tスコアを算出する。
(vii)系列スコアカードレポート:目的の各々の多能性幹細胞株について、全ての関連する初期発生遺伝子セット(例えば、初期中胚葉遺伝子、初期内胚葉遺伝子、初期外胚葉遺伝子)についてtスコアの平均を列挙し、多能性幹細胞が分化する系列についての系列スコアカード推定値を提供する(例えば、図4、5、6および7A〜7Cを参照のこと)。
バイオインフォマティクス解析およびデータアクセス
方法に特異的なデータ正規化およびスコアカードの算出(上に記載した)に加えて、データセットのバイオインフォマティクス解析を以下の通りに行うことができる。
(i)階層クラスタリング。階層クラスタリングが、本明細書において開示する通り、遺伝子発現レベルを使用して実施されることができる(例えば、マイクロアレイ上の全ての関連プローブにわたる平均化により、各々のEnsembl遺伝子について)。階層クラスタリングの前に、両方のデータセットに等しい加重を与えるために、別々に、2つのデータセットの各々をゼロ平均と単位分散に別々に正規化することができる。
(ii)アノテーションクラスタリングおよびプロモータの特徴。一般に利用可能なソフトウェアパッケージ、例えばDAVID(Huang et al., 2007)およびEpiGRAPH(Bock et al., 2009)などを使用し、デフォルトパラメータを用いて、Ensembl遺伝子アノテーションに基づき、最も変動する遺伝子の間での共通の特徴を同定することができる(プロモータは、転写開始部位を囲む−5kb〜+1kb配列ウィンドウとして定義される)。
(iii)ES細胞株対iPS細胞株の分類。所与のシグネチャーにおける初期発生遺伝子の平均発現レベルを使用し、ESおよびiPS遺伝子シグネチャーを簡単に検証することができる。ロジスティック回帰を使用して識別閾値を選択することができ、各々のシグネチャーの予測性を、一個抜き交差検証(leave-one-out cross-validation)により評価することができる。新たな分類子を導き出すために、サポートベクターマシンを、例えば、遺伝子発現データで訓練することができる。
(iv)エピジェネティックメモリの線形モデル。初期発生遺伝子発現レベルの線形モデルを生成することができる。例えば、本明細書において開示する通り、2つの代替の線形モデルが、遺伝子発現について構築されることができる。1つのモデルを使用し、ES細胞に特異的な平均遺伝子発現レベルで、各々の遺伝子のiPS細胞に特異的な平均遺伝子発現レベルを回帰推定させることができる。第2のモデルでは、ES細胞に特異的な、および線維芽細胞に特異的な平均遺伝子発現レベルで、各々の遺伝子のiPS細胞に特異的な平均遺伝子発現レベルを回帰推定させる。
遺伝子発現解析も多数の方法により実施することができる。典型的な例は、限定はしないが、遺伝子発現マイクロアレイ、cDNAおよびRNA配列決定、画像ベースの方法(例えばNanoStringなど)、およびPCR、ならびにqPCRを使用する広範囲の方法を含む。これらの方法についての正規化は、広く記載されている。一部の態様において、gcRMAアルゴリズムを、Affymetrixマイクロアレイデータを正規化するために使用することができる。一部の態様において、NanoStringデータまたは本明細書において開示するアレイからのデータを正規化するためにVSNアルゴリズムを使用することができる。
一部の態様において、遺伝子発現は、任意の遺伝子レベルで決定される(例えば、非コード遺伝子、マイクロRNA遺伝子、ならびに多能性細胞および分化細胞において正常に、または異常に存在する全ての他の型のRNA転写物の発現)。
一度、遺伝子発現データが正規化されたら、細胞株の質および有用性について関連する遺伝子が、サンプルおよび/またはサンプルのグループの間での異なる遺伝子発現を検出するための標準的な方法を使用して同定される。例は、t検定およびその変異形、t検定のノンパラメトリック代替物、およびANOVAを含む。一部の態様において、limmaパッケージが、本明細書において開示する方法およびシステムにおける使用のために包含され、それらによって、モデレートt統計が実行される。
上に記載された分化遺伝子発現アッセイでは、大半が、単一遺伝子の効果に焦点が当てられ、一部の態様において、系列スコアカードでは、複数の遺伝子についてのデータの組み合わせが使用され、細胞株の質および有用性が予測される。これは、系列スコアカードの作製のために最も重要であり、生物情報学的に複雑な段階である。
一部の態様において、複数の遺伝子からの情報は、現在、平均値および標準偏差の算出により統合される;しかし、統計的な学習方法(例えばサポートベクターマシン、線形およびロジスティック回帰、階層モデル、ベイジアンアルゴリズムなど)を使用することにより、統合の効果が低下される可能性がある。多能性細胞の質および有用性の局面を説明する数値またはカテゴリー値を産生するために、候補遺伝子発現の複数の測定値を考慮した任意の数学関数が、本明細書において開示するスコアカードの予測因子およびエレメントと考えられうる。
重要なことに、これらの数学関数は、多くの場合において、前の生物学的知識を考慮する。特に、本発明者らは、文献から、公的なデータベースから、および機能的ゲノミクスデータからの相当な数の初期発生遺伝子セットを精選し、これらの予測因子を通知してきた。系列スコアカードの一態様において、多能性幹細胞またはその分化子孫のいずれかからの遺伝子発現データを使用し、異なった発現スコアを各々の遺伝子に割り当て、次に、結果として得られたtスコアを使用し、3つの胚葉ならびに他の興味深い細胞型、細胞経路およびネットワーク、ならびに他の機能的に、または他の方法で定義された遺伝子のセットを表す初期発生遺伝子のセットについての(パラメトリックまたはノンパラメトリック)遺伝子セット濃縮解析を実施することができる。
上に記載されるバイオインフォマティクス方法は、本明細書における実施例において適用されたが、それらは、また、多能性細胞の初期発生遺伝子の遺伝子発現解析に直接的に適用されることができ、多能性細胞株の質および有用性の特定の局面がより明らかになるように分化するように多能性細胞株を誘導することも可能である。これは、単純な成長因子の取り除きおよび広範囲の化学的、ペプチドおよびタンパク質処理(しばしば、組み合わせにおいて)にわたる物理的操作(本明細書において使用されるように方向付けのない胚様体分化のため)から、専用表面上でのプレーティングおよび特定の遺伝子の誘導発現まで、広範囲の変動を使用して実施されることができる。
種々の方法を使用し、例えば、Harr et al., Nucleic acid research, 2006; 34(2): e8, "Comparison of algorithms for the analysis of Affymetrix microarray data as evaluated by co-expression of genes in known operons"および書籍タイトル"Methods in microarray normalization" Edited By Phillip Stafford, Drug Discovery Series/10, published by CRC Press(それらは、その全体が、参照により本明細書に組み入れられる)に開示される通りに、複数の初期発生遺伝子の遺伝子発現データを解析することができる。gcRMAアルゴリズム(GC [GC含量} ロバストマルチチップ解析(RMA))では、RMAアルゴリズムのクォンタイル正規化(quantile normalization)およびメディアンポリッシュ要約方法(medium polish summarization method)の両方が使用される。確率モデルを使用し、アレイ上の各々のプローブ対について観察されたPMおよびMMプローブシグナルを記載することができる。1つの特定のモデルは以下のとおりである。
PMμi = 0ni + Nlni + Sni
NMni = 0ni + N2ni
0niが光学的ノイズを表す場合、NIおよびN2は非特異的結合を表し、Snjはサンプル中のRNA発現と量的に比例する。また、モデルは、Oが正規分布N(μ0、σ2 0)に従うこと、および、log2(Nlni)およびlog2(N2ni)が、等分散σ2 Nおよび相関0.7で二変量正規分布に従い、プローブ対にわたり一定であることが仮定される。非特異的結合という用語について分布の平均値は、プローブ配列に依存している。光学的ノイズおよび非特異的結合という用語は、非依存的であることが仮定される。
gcRMAがプローブ配列に関する情報を含む方法は、位置依存的な塩基親和性の合計に基づく親和性を比較することである。特に、プローブの親和性は、以下により与えられる:
Figure 2016532435
式中、μb(k)が、自由度5を伴い、スプライン関数としてモデル化される。実際に、単一のマイクロアレイ(例えば、U113Aマイクロアレイチップ)についてのμb(k)が、実験において全てのチップについての観察データを使用し、または、gcRMAのクリエーターにより行われる特定のNSB実験からの一部のハードコード化推定値に基づき、推定される。これは、gcRMAモデルにおけるN1およびN2ランダム変数について、プローブ親和性の平滑関数hを使用してモデル化することを意味する。
光学的ノイズパラメータμo、σ2 oが、以下の通りに推定される:光学的ノイズに起因する変動が、非特異的結合に起因する変動よりもずっと小さく、従って事実上一定である。単純性のために、これは0に設定される。平均値が、アレイ上の最も低いPMまたはMMプローブ強度を使用して推定され、陰性を回避するための相関係数を伴う。次に、全てのプローブ強度が、この定数μoを引くことにより相関する。h(Ani)を推定するために、散布図へのLoess曲線適合を使用し、補正されたlog(MM)強度を全てのMMプローブ親和性に関連付ける。このLoessプロットからの陰性残差を使用し、σ2 Nを推定する。最後に、gcRMAについての背景調整手順は、観察されたPM、MM、およびモデルパラメータを仮定し、Sの予測値を計算することである。gcRMAでは、RMAのメディアンポリッシュ要約が使用されるが、質の評価を行いたい場合、PLM要約アプローチをその代わりに使用すべきではないが、この方法において生成された発現推定値は、他の点では満足できることに留意されたい。
一部の態様において、遺伝子発現の正規化のための他の方法、例えば、MAS5.0アルゴリズム(Microarray suite 5.0)またはRMAアルゴリズム(ロバストマルチチップ解析)も使用することができ、それは、Phillip Staffordにより編集された「Method for microarray normalization」において詳細に説明されている。
統計方法
同様の統計クラスタリングおよびソフトウェアに関する方法を、以下に記載する。例えば、初期発生遺伝子の差次的な発現を定量化する際に使用される1つのパラメータは、倍率変化であり、それは、2つの別々の実験条件の間で遺伝子のmRNA発現レベルを比較するためのメトリックである。その算術定義は、研究者間で異なる。しかし、倍率変化が大きくなるほど、関連遺伝子の差次的な発現が適切に分離される可能性がより高くなり、多能性幹細胞がいずれのカテゴリーに入るのかを決めることをより簡単にする。
上方制御された遺伝子についての倍率変化は、例えば、少なくとも1.4、少なくとも1.5、少なくとも1.6、少なくとも1.7、少なくとも1.8、少なくとも1.9、または少なくとも2.0もしくはそれ以上のlog-2変化でありうる。発現レベルがPCRを使用して測定される一態様において、倍率変化は少なくとも2.0である。
下方制御された遺伝子についての倍率変化が、0.6または0.6未満でありうる、例えば、それは、0.5または0.5未満、0.4または0.4未満、0.3または0.3未満、0.2または0.2未満でありうる、あるいは、0.1または0.1未満のlog-2変化でありうる。したがって、0.1の倍率変化は、遺伝子の発現が10倍下方制御されている。2.0の倍率変化は、遺伝子の発現が2倍上方制御されていることを示す。
例えば:多能性幹細胞における初期発生標的遺伝子の発現の倍率変化が=2.0である場合(その遺伝子の遺伝子発現の正常な変動と比較して)、それは、遺伝子が「外れ値」遺伝子であることを示す。同様に、多能性幹細胞における初期発生標的遺伝子の発現の倍率変化が=0.5である場合(その遺伝子の遺伝子発現の正常な変動と比較して)(遺伝子=0.5)、それは、遺伝子が外れ値遺伝子であることを示す。「外れ値」遺伝子である、テスト多能性幹細胞株における初期発生遺伝子のより高い数は、多能性幹細胞株が、特定の系列に沿って分化する特定の傾向を有しうることを示す。例えば、テスト多能性幹細胞が、少なくとも約10個の外れ値の初期発生遺伝子を有する場合、多能性幹細胞株は、外れ値の多能性幹細胞株であるとして同定され、特定の系列に沿って分化する際の増加した効率または低い効率を有しうる。
あるいは、多能性幹細胞における初期発生標的遺伝子の発現の倍率変化が、t値が0〜1を示す場合、その多能性幹細胞は、多能性幹細胞と同等である。t値が>1の場合は、測定された初期発生遺伝子の発現が、同じカテゴリーにおける同じ遺伝子または遺伝子のグループの参照遺伝子発現レベルよりも高いこと、および、多能性幹細胞は、参照多能性幹細胞株とは異なること(例えば、外れ値の多能性幹細胞である)を示す。そのような多能性幹細胞株は、初期発生遺伝子が属するカテゴリーの系列(例えば、内胚葉、外胚葉、または中胚葉系列)に沿って分化する可能性が高い。t値が<0の場合は、測定された初期発生遺伝子の発現が、同じカテゴリーにおける同じ遺伝子または遺伝子のグループの参照遺伝子発現レベルよりも低いこと、および、多能性幹細胞は、参照多能性幹細胞株とは異なる外れ値であることを示す。そのような多能性幹細胞株は、初期発生遺伝子が属するカテゴリーの系列(例えば、内胚葉、外胚葉、または中胚葉系列)に沿って分化しない可能性が高い。多能性幹細胞の特定の傾向が、厳密に、いずれの遺伝子または遺伝子のサブグループが外れ値であるのかに基づいて決定されることができる。
差次的な発現を定量化するためにも使用される別のパラメータは、「p」値である。p値が低いほど、その遺伝子はより差次的に発現される可能性が高いと考えられ、その遺伝子が、多能性幹細胞における遺伝子発現の正常な変動と比較して、外れ値遺伝子であることを示す。p値は、例えば、0.1またはそれ以下、例えば0.05またはそれ以下、特に、0.01またはそれ以下を含みうる。本明細書において使用するp値は、補正されたp値および/または、補正されていないp値をも含む。
スコアカードの使用
一部の態様において、本明細書において開示する方法、分化アッセイ、システム、キット、および系列スコアカードが、種々の方法で臨床的に、および研究適用において使用されることができる。例えば、本明細書において開示する方法、分化アッセイ、システム、キット、および系列スコアカードが、薬物に応答した、特定の系列に沿って分化する多能性幹細胞株の傾向を同定するため、または、複数の幹細胞株(例えば、薬物スクリーニングにおいて使用される同じ特性を有する多能性幹細胞株)を選択するために有用であり、それは、薬物スクリーニングの質を確実にし、任意の潜在的なヒットが、異なる幹細胞株における変動に起因するよりもむしろ、薬物の効果であることを確実にするために有用である。一部の態様において、本明細書において開示する局面は、幹細胞株、例えば、治療的使用(例えば、幹細胞治療または他の再生医療)のために適切でありうる多能性幹細胞株を同定および選択するために有用であり、幹細胞株が、所望の細胞系列に沿って分化し、所望しない細胞系列に沿って分化しない傾向を有することを確実にする。同様に、本明細書において開示する局面は、哺乳動物(例えば、ヒト)から生成されたiPSCを特徴付ける、および、検証するために有用であり、iPSCが、所望の質を持ち、他の多能性幹細胞と比較されることができることを確実にする。
一部の態様において、本明細書において開示する方法、分化アッセイ、システム、キット、および系列スコアカードが、クリニックにおいて使用されて、特定の多能性幹細胞株の臨床的な安全性および有用性を決定することができる。
一部の態様において、本明細書において開示する方法、分化アッセイ、システム、キット、および系列スコアカードが、精度管理用に使用されて、幹細胞株(例えば、多能性幹細胞株)の特徴を、複数の継代にわたり、ならびに/あるいは、凍結保存手順の前および後でモニターし、例えば、有意なエピジェネティックまたは機能的なゲノム変化が継時的に(例えば、継代にわたり、および凍結保存後)生じていないことを確実にすることができる。例えば、本明細書において開示する方法、システム、キット、およびスコアカードが使用され、幹細胞バンクにおける全ての幹細胞を特徴付け、バンクにおいて位置付けられる各々の幹細胞株を分類し、幹細胞が、それらが凍結保存前に有していたのと同じ特性を解凍後に有することを確実にすることができる。
一部の態様において、各々の幹細胞株についての生データ(例えば、初期発生遺伝子発現データ)および/または系列スコアカードデータが、集中データベースにおいて保存されることができ、そこでは、データおよび/またはスコアカードが使用され、特定の使用または有用性について多能性幹細胞株を選択することができる。したがって、本発明の一局面は、初期発生遺伝子発現データ、および複数の幹細胞株(例えば、多能性幹細胞株)についての系列スコアカードの少なくとも1つを含むデータベースに関し、一部の態様において、データベースは、初期発生遺伝子発現データ、および/または複数の幹細胞株(例えば、幹細胞バンク中の多能性幹細胞株)についての系列スコアカードを含む。
一部の態様において、本明細書において開示する方法、分化アッセイ、システム、キット、および系列スコアカードは、幹細胞株(例えば、多能性幹細胞株)が異なる系列に沿って分化する際の機能的なゲノム変化をモニターするための研究において使用されることができる。一部の態様において、本明細書において開示する局面は、特定の疾患を伴う対象からの幹細胞株の特徴をモニターおよび決定するために使用されることができ、例えば、遺伝的欠損もしくは特定の遺伝的多型を伴う、および/または特定の疾患を有する対象からの幹細胞株(例えば、多能性幹細胞株)をモニターすることができる。例えば、健康な対象(または非ALS対象)、例えば健康な兄弟姉妹からの正常iPSC細胞と比較した、神経変性疾患(例えばALSなど)を伴う対象に由来するiPSC細胞の間の機能的なゲノム上の差をモニターおよび決定することができる。同様に、iPS細胞は、ES細胞または他の多能性幹細胞と比較して、機能的ゲノミクスおよび/または分化傾向において同等であるか否かを決定することができる。加えて、本明細書において開示する局面は、テラトーマアッセイおよび/またはキメラマウスの生成についての必要を伴わず、幹細胞株の多能性を十分に特徴付けることができ、従って、多能性幹細胞株を特徴付けるハイスループット能力を有意に増加させる。
一部の態様において、系列スコアカードは、患者に特異的なiPS細胞株を作製および検証するための「全てが含まれる(all-included)」キット中に含まれることができる。例えば、そのような態様において、キットは、(i)サンプル回収デバイス(例えば、患者の体細胞または分化細胞を回収するために要求されるニードルまたはチューブ)、一部の態様においては、患者の同意書、(ii)患者の回収された体細胞または分化細胞をiPS細胞に再プログラミングするための試薬(例えば、そこで、キットは、再プログラミング因子(例えば、本明細書において記載するウイルス/DNA/RNA/タンパク質など、およびES細胞培地など)の任意の数または組み合わせを含む)、および(iii)本明細書において開示する系列スコアカードを生成するための分化アッセイ(例えば、複数の初期発生遺伝子の遺伝子発現を測定するための試薬)を含むことができる。一部の態様において、キットは、1つまたは複数の参照多能性幹細胞を含むことができ、それは、キット用の精度管理用に、陽性対照(または陰性対照、例えば、そこでは、多能性幹細胞株は、望ましくない特徴を伴い同定されている)として使用されることができる。一部の態様において、キットは、また、例えば、テストされている幹細胞株(例えば、評価されている患者iPS細胞株)との比較目的のために使用される1つまたは複数の参照多能性幹細胞株の参照系列スコアカードを含むことができる。一部の態様において、「全てが含まれる」キットは、精度管理の結果に基づいて、患者iPS細胞株の有用性の予測のために使用されることができる(例えば、本明細書において開示するバイオインフォマティクス決定により決定される通り)。一部の態様において、「全てが含まれる」キットは、また、追加的に、目的の特定の細胞型(例えば、心筋細胞、ベータ細胞、肝細胞、毛包幹細胞、軟骨、膵臓細胞(ベータ細胞を含む)、造血細胞など)への、新たに生成された患者iPS細胞株の方向付けられた分化のための材料、試薬、およびプロトコールを含むことができる。
一部の態様において、本明細書において開示する方法、分化アッセイ、システム、キット、および系列スコアカードを使用し、サービス、例えば「細胞対品質が保証された多能性幹細胞株(cell-to-quality assured pluripotent stem cell line)」サービスなどを提供することができ、それは、例えば、クリニックにおいて、もしくは臨床診断検査室において直接的に、または専門施設により行われる郵送サービスとして行われることができる。例えば、そのようなサービスが稼働し、ここで、研究者または患者が、多能性幹細胞を、あるいは、一部の態様において体細胞(例えば、分化細胞)をサービス提供者に送り、それによって、体細胞が送られる場合、サービス提供者は、本明細書において開示する一般に公知の方法を使用して、体細胞からiPS細胞株を生成する。サービス提供者は、研究者が提供する、または生成する多能性iPS細胞株で、本明細書において開示する方法、分化アッセイ、システム、キット、および系列スコアカードを実施し、例えば、サービス提供者は、(i)分化アッセイを実施し(例えば、複数の初期発生遺伝子の遺伝子発現を測定する)、続いて、解析を実施し、解析される各々の個々のiPS細胞について系列スコアカードを生成する。サービス提供者は、また、場合により、特定の使用のための1つまたは複数の選択されたiPS細胞株の適切性を示唆することができ、例えば、サービス提供者は、内胚葉分化経路に沿って分化する高い効率を有するとして同定された「iPS細胞株1」が、膵臓細胞への分化のために適切でありうることを示唆することができ、または、同様に、サービス提供者は、肝臓系列に沿って分化する高い効率を有するとして同定された「iPS細胞株2」が、肝細胞再生医療における使用のために、肝臓細胞への分化のために適切でありうることを示唆することができる。同様に、サービス提供者は、減少した多能性幹細胞遺伝子を有するとして同定された「iPS細胞株6」が、潜在的な癌形成のリスクのため、再生医療における治療的使用のために適切になることができないことを示唆することができる。一部の態様において、サービス提供者は、推奨しないが、むしろ、サービス提供者により生成および解析される各々のiPS細胞株についてのスコアカードのレポートを提供する。一部の態様において、サービス提供者は、レポートスコアカードのコピーと共にiPS細胞株を研究者または患者に返送する。
一部の態様において、本明細書において開示する方法、分化アッセイ、システム、キット、および系列スコアカードが、データベースを作成する際に使用されることができ、そこでは、そのようなデータベースは、多能性幹細胞レポジトリ、例えば、多数の精度管理された、有用性が予測された多能性細胞株を含む中央レポジトリ(例えば、組織および/または細胞バンク)を組織化または分類する際に有用でありうるが、バンク中の各々の多能性幹細胞株についての各々のスコアカードのデータを含むデータベースを使用し、研究者の意図する使用のための特定の多能性幹細胞株を具体的に選択することができるようにする。例えば、データベースのユーザーは、データベースにリンクされたウェブサイト上の「私の適用のための最善の細胞株を示唆する(suggest best cell line for my application)」ボタンをクリックし、研究者の特定の使用のための多数の有用な細胞株の情報および同一性を得ることができる。一部の態様において、そのようなデータベースの使用は、簡単に拡大することができ、ユーザーが、目的の特定の多能性幹細胞型について、本明細書において開示するアレイまたはアッセイからデータ(例えば、遺伝子発現データ)をアップロードすることができるようにする。このデータは、本明細書において開示するスコアカードアルゴリズムを通じて実行することができ、結果が、多能性幹細胞バンクについてのデータベーススコアカードの結果と比較される。単純な類似性において、データベースは、Googleの「同様のサイトを検索する(search for similar sites)」と同様に機能することもでき、それにより、データベースを効率的な方法として使用し、新規のおよび/または混合の細胞型について有用な細胞型を選択する、あるいは、所望の分化幹細胞株に沿って分化する潜在力を有することができる、細胞バンクにおける多能性幹細胞株を同定することができうる。
一部の態様において、本明細書において開示する方法、分化アッセイ、システム、キット、および系列スコアカードが、所望の幹細胞株(例えば、大量生産用の多能性幹細胞株)の同定および選択、例えば、大量に(例えば、大バッチ培養またはバイオリアクター中)十分に、および/または効率的に成長する幹細胞株の質を同定および特徴付けおよび検証するための、本明細書において開示する方法、アッセイ、およびスコアカードの使用、ならびに、バルク培養液中で、特定の細胞株に効率的に分化することができる幹細胞株の選択のために使用されることができる。
別の態様において、本明細書において開示する方法、分化アッセイ、システム、キット、および系列スコアカードが、多能性のロバスト性の特性に基づく、幹細胞株の選択のために使用されることができる。例えば、本明細書において開示する方法、分化アッセイ、システム、キット、および系列スコアカードが使用され、幹細胞株、例えば、インビトロで培養することが簡単である(例えば、注意をほとんど要しない、および/または容易に自然に分化しない、および/または多能性の特性を維持している)多能性幹細胞株を同定することができる。一部の態様において、幹細胞株が、方法、アッセイ、および系列スコアカードを使用して、培養前に、次に、培養中および/または培養後の異なる時点で、異なる培養条件および/または培地条件下で評価され、短期および/または長期培養条件においてそれらの初期の質を維持する、1つまたは複数の幹細胞株を同定することができる。
別の態様において、本明細書において開示する方法、分化アッセイ、システム、キット、および系列スコアカードが、薬物応答性について、幹細胞株、例えば多能性幹細胞株の選択のために使用されることができ、例えば、幹細胞株が、本明細書において開示する方法、アッセイ、およびスコアカードを使用し、薬物または他の薬剤もしくは刺激(例えば、心臓多能性前駆体についての電気刺激)との接触前、接触中、および接触後に評価され、幹細胞株の薬物代謝および/または薬理ゲノミクスシグネチャーを生成することができる。これを使用して、薬物スクリーニングおよび薬物発見(例えば、薬物毒性アッセイを含む)のために特に有用でありうる幹細胞株を同定することができる。
別の態様において、本明細書において開示する方法、分化アッセイ、システム、キット、および系列スコアカードを、その安全性プロファイルに基づき、幹細胞株(例えば、多能性幹細胞株)の選択のために使用することができる。例えば、幹細胞株は、本明細書において開示する方法、分化アッセイ、システム、キット、および系列スコアカードを使用して評価され、幹細胞が特定の細胞型に分化する、その可能性、または、脱分化する可能性を同定することができ、それは、臨床適用(例えば細胞置換治療および再生医療)における幹細胞株またはその分化した子孫の安全性を検証する際に非常に有用である。
別の態様において、本明細書において開示する方法、分化アッセイ、システム、キット、および系列スコアカードが、幹細胞株、例えば、有効性についての多能性幹細胞株の選択のために使用されることができる。例えば、幹細胞株に由来する分化細胞が、特定の所望の細胞系列に沿って分化し続けるか否か、および/または、それがどのくらい十分であるのか(例えば、どのくらい効率的であるのか)、ならびに/あるいは、それらが、一度、対象、例えば、ヒト患者中に、または動物モデル(例えば、ラットまたはマウス疾患モデルなど)において移植された場合に増殖するか否かを予測するために特定の多能性幹細胞株の系列スコアカード予測を使用することができる。より一般的には、一部の態様において、系列スコアカードを使用し、幹細胞株の挙動だけでなく、幹細胞株から直接的にまたは間接的に由来する分化細胞の挙動を予測することができる。
別の態様において、本明細書において開示する方法、分化アッセイ、システム、キット、および系列スコアカードが、幹細胞株、例えば、多能性幹細胞の同じまたは非常に類似の特徴をインビボで有する多能性幹細胞株の選択のために使用されることができる(例えば、インビボ環境において、細胞の真の代表である多能性幹細胞を選択するため)。例えば、幹細胞株が、本明細書において開示する方法、分化アッセイ、システム、キット、および系列スコアカードを使用して評価され、疾患モデル化のために適切な幹細胞株を同定することができる。なぜなら、インビボで、それらの対応する細胞に密接に似ている幹細胞株を使用することが重要であるからである。したがって、当業者は、本明細書において開示する系列スコアカードを使用し、いずれの幹細胞株が、例えば、いずれの多能性幹細胞株が、インビボで、それらの対応する細胞に最も良く似ているかを、例えば、幹細胞株と、対象(例えば、動物モデル、または疾患モデル、例えば齧歯類の疾患モデルなど)から採取された対応する細胞の、(スコアカードに記載された)特徴を比較することによって予測し、細胞がインビボでどのように挙動するかを比較した、幹細胞株からの逸脱を最小限にすることができる。
別の態様において、本明細書において開示する方法、分化アッセイ、システム、キット、および系列スコアカードが、異なる、または新たな多能性または複能性の状態にある幹細胞株の選択および/または精度管理、および/または検証のために使用され、例えば、いずれの幹細胞株が、インビボで細胞型を分化および作製するために有用であるが、ヒトES細胞株の通常の定義(例えば、ヒト基底状態ES細胞および部分的に再プログラムされた細胞株、例えば、部分的誘導多能性幹(piPS)細胞(多能性幹細胞にさらに再プログラムされることが可能である))に該当しないかに関する情報を提供することができる。
継続的なインビトロ培養および継代によって、iPS細胞株の質が改善されることが示されている(Polo et al., Nat Biotechnol. 2010 Aug; 28(8):848-55、およびNat Rev Mol Cell Biol. 2010 Sep; 11(9):601、およびNat Rev Genet. 2010 Sep;11(9):593を参照のこと)。他方で、継続的な継代は高価である。したがって、一部の態様において、本明細書において開示する方法、分化アッセイ、システム、キット、および系列スコアカードが、どのくらいの継代が、幹細胞株(例えば、多能性幹細胞株)の質を改善させるために十分であるかを測定するために使用されることができる。
さらなる態様において、本明細書において開示する方法、分化アッセイ、システム、キット、および系列スコアカードが、種々の異なる研究および臨床的な使用において使用され、幹細胞株(例えば、多能性幹細胞株)を特徴付ける、モニターする、および検証することができる。例えば、典型的な適用は、例えば、限定はしないが、以下の分野において含まれる:(i)疾患機構に興味のある研究室および/または企業(例えば、本明細書において開示するキットまたはサービスを使用し、iPS細胞株、ならびに疾患モデル化および小規模薬物スクリーニングのための分化細胞を生成する複雑度を低下させる)、(ii)所与の疾患標的についての小分子および/または生物学的製剤を同定しようと試みる研究室および/または企業(例えば、薬物スクリーニングのための多数の高度に正規化された細胞の産生を可能にするための、本明細書において開示するキットおよび/またはサービスを使用する)、(iii)精度管理のための臨床および前臨床研究グループならびに幹細胞株の検証(そこでは、彼らは、ヒトまたは動物中への移植のための細胞を産生することに興味がある)(例えば、規制当局の承認(例えば、FDAの承認)のために十分でありうる精度のレベルで精度管理を可能にするための、本明細書において開示するキットおよび/またはサービスの使用)、(iv)顧客に情報(幹細胞株(例えば、提供された多能性幹細胞株)の成績、質、および有用性に関するアドバイスおよびデータを含む)を与えることを望む組織バンク(例えば、安価なハイスループット様式で、多数の多能性細胞株の質および/または有用性のバイアスのない評価を提供するための、本明細書において開示するキットおよび/またはサービスの使用−アッセイが、千〜数十万株の多能性細胞株で究極的に実施され、細胞バンクにおいて保存される細胞株の全集団をカバーすることができることが企図される)、(v)例えば、将来の再生医療の目的のための健康保険加入のタイプとしての、分化した体細胞(それ自体がおよび/またはそれらの子もしくは他の子孫)より生成される、少なくとも1つまたは複数の幹細胞株(例えば、多能性幹細胞株、例えばiPS細胞株(またはpiPS細胞株))を生成する、場合により、バンクにおくことを望む個人の顧客。
初期発生遺伝子発現の解析のため、および参照系列スコアカードを生成するための幹細胞
本明細書において開示する通り、初期発生遺伝子のセットの遺伝子発現が、任意の種(例えば、哺乳動物種、例えばヒトなど)からの任意の幹細胞株を検証およびモニターするために使用することができる。一部の態様において、本発明は、幹細胞が多能性であるか否かを決定するために、本明細書において開示するアレイ、アッセイ、および方法を使用することが企図される。任意の型の幹細胞を評価することができる。簡単には、本明細書において多能性幹細胞の解析に言及する場合、これは、多能性および非多能性幹細胞の両方の解析を包含する。
一部の態様において、幹細胞は多能性幹細胞である。一般的に、本明細書において記載される方法に従って解析される多能性幹細胞は、任意の利用可能な供給源から得られる、またはそれに由来することができる。したがって、多能性細胞は、脊椎動物または無脊椎動物から得られる、またはそれに由来することができる。一部の態様において、多能性幹細胞は、哺乳動物の多能性幹細胞である。本明細書において開示する全ての局面において、本明細書において開示する通りの、方法、アッセイにおける使用のため、スコアカードを生成するため、または既存のスコアカードと比較するための多能性幹細胞は、任意の多能性幹細胞でありうる。
一部の態様において、多能性幹細胞は、霊長類または齧歯類の多能性幹細胞である。一部の態様において、多能性幹細胞は、チンパンジー、カニクイザル、クモザル、マカク(例えば、アカゲザル)、マウス、ラット、ウッドチャック、フェレット、ウサギ、ハムスター、ウシ、ウマ、ブタ、シカ、バイソン、バッファロー、ネコ(例えば、飼いネコ)、イヌ(例えば、犬、キツネ、およびオオカミ)、鳥(例えば、ニワトリ、エミュー、およびダチョウ)、および魚類(例えば、マス、ナマズ、およびサーモン)の多能性幹細胞からなる群より選択される。
一部の態様において、多能性幹細胞はヒト多能性幹細胞である。一部の態様において、多能性幹細胞は、当技術分野において公知のヒト幹細胞株である。一部の態様において、多能性幹細胞は、誘導多能性幹(iPS)細胞、または安定的に再プログラムされた細胞であり、それは、中間の多能性幹細胞であり、iPS細胞、例えば、部分的誘導多能性幹細胞(また、「piPS細胞」として言及される)にさらに再プログラムすることができる。一部の態様において、多能性幹細胞(iPSCまたはpiPSC)は、遺伝的に改変された多能性幹細胞である。
一部の態様において、本発明において使用する多能性幹細胞の多能性状態は、種々の方法により確認することができる。例えば、多能性幹細胞は、特徴的なES細胞マーカーの存在または非存在についてテストされることができる。ヒトES細胞の場合において、そのようなマーカーの例は、SSEA-4、SSEA-3、TRA-1-60、TRA-1-81、およびOCT4を含み、当技術分野において公知である。
本発明の方法は、多能性(またはその欠如)が、必要な場合、少なくとも2日間培養中である幹細胞の表1に列挙する初期多能性遺伝子のサブセットの発現のレベルを測定することにより評価されることを可能にし、幹細胞株の多能性は、また、細胞を適切な動物(例えば、SCIDマウス)に注射し、分化した細胞および組織の産生を観察することにより確認することができる。多能性を確認するさらに別の方法は、キメラ動物を生成するために対象の多能性細胞を使用し、異なる細胞型への導入細胞の寄与を観察することである。キメラ動物を産生するための方法は、当技術分野において周知であり、米国特許第6,642,433号に記載されており、それは、本明細書に参照により組み入れられる。
多能性を確認するさらに別の方法は、分化に有利な条件下(例えば、線維芽細胞フィーダー層の除去)で培養した場合、胚様体および他の分化細胞型へのES細胞分化を観察することである。この方法が利用されており、対象の多能性細胞が、組織培養において胚様体および異なる分化細胞型を生じることが確認されている。
この点において、一部のマウス胚性幹(ES)細胞が、他の細胞型と比較して、より高い効率で、一部の細胞型に分化する傾向を有することが公知である。同様に、ヒト多能性(ES)細胞は、選択的分化能を持つことができる。したがって、本発明を使用し、多能性幹細胞の所望の使用のための所望の特徴および分化傾向を伴う多能性幹細胞を同定および選択することができる。例えば、多能性細胞株が、本発明の方法に従ってスクリーニングされた場合、多能性幹細胞は、特定の細胞株に沿って分化するその増加した効率に起因して選択することができ、公知の方法に従って、所望の細胞型を得るために分化を誘導することができる。例えば、ヒト多能性幹細胞(例えば、ES細胞またはiPS細胞)は、当業者に公知の方法に従って、分化培地中で、および細胞分化を提供する条件下で、そのような細胞を培養することにより、造血幹細胞、筋細胞、心筋細胞、肝細胞、島細胞、網膜細胞、軟骨細胞、上皮細胞、尿路細胞などに分化するように誘導することができる。ES細胞の分化をもたらす培地および方法が、適切な培養条件であるように、当技術分野において公知である。
例えば、国際特許出願;WO2007/069666;WO2008/118820;WO2008/124133;WO2008/151058;WO2009/006997;および米国特許出願US2010/0062533;US2009/0227032;US2009/0068742;US2009/0047263;US2010/0015705;US2009/0081784;US2008/0233610;US7615374;米国特許出願第12/595,041号、EP2145000、CA2683056、AU8236629、12/602,184、EP2164951、CA2688539、US2010/0105100;US2009/0324559、US2009/0304646、US2009/0299763、US2009/0191159において開示される通り、体細胞をiPS細胞またはpiPS細胞に再プログラミングするための任意の方法を使用することができる(それらの内容は、その全体が、参照により本明細書に組み入れられる)。一部の態様において、本明細書において記載する方法における使用のためのiPS細胞が、細胞を再プログラミングするための、当技術分野において公知の任意の方法、例えば、再プログラミングされた細胞のウイルス誘導性または化学誘導性生成(EP1970446、US2009/0047263、US2009/0068742、および2009/0227032において開示される通りであり、その全体が、参照により本明細書に組み入れられる)により産生されることができる。一部の態様において、iPS細胞は、修飾されたRNA(mod-RNA)を使用して再プログラミングすることができる(US2012/0046346において開示される通りであり、その全体が、参照により本明細書に組み入れられる)。
一部の態様において、本明細書において開示する通りの、方法、分化アッセイにおける使用のための、および、系列スコアカードを生成するための、または、既存の系列スコアカードと比較するためのiPS細胞が、化学的な再プログラミングにより(例えば、WO2010/033906(その内容は、全体が、参照により本明細書に組み入れられる)において開示される方法により)体細胞の不完全な再プログラミングから産生されることができる。代替の態様において、本明細書において開示する安定な再プログラミング細胞が、非ウイルス手段により(例えば、WO2010/048567(その内容は、全体が、参照により本明細書に組み入れられる)において開示される方法により)体細胞の不完全な再プログラミングから産生されることができる。
本明細書において開示する方法における使用のための他の幹細胞は、当業者に公知の任意の幹細胞でありうる。例示的な幹細胞は、胚性幹細胞、成体幹細胞、多能性幹細胞、神経幹細胞、肝臓幹細胞、筋肉幹細胞、筋肉前駆幹細胞、内皮前駆細胞、骨髄幹細胞、軟骨形成幹細胞、リンパ系幹細胞、間葉系幹細胞、造血幹細胞、中枢神経系幹細胞、末梢神経系幹細胞などを含む。幹細胞の記載(それらを単離および培養するための方法を含む)が、とりわけ、Embryonic Stem Cells, Methods and Protocols, Turksen, ed., Humana Press, 2002;Weisman et al., Annu. Rev. Cell. Dev. Biol. 17:387 403;Pittinger et al., Science, 284:143 47, 1999;Animal Cell Culture, Masters, ed., OXford University Press, 2000;Jackson et al., PNAS 96(25):14482 86, 1999;Zuk et al., Tissue Engineering, 7:211 228, 2001 ("Zuk et al.");特にChapters 33 41;および米国特許第5,559,022号、第5,672,346号、および第5,827,735号において見出すことができる。間質細胞の記載(それらを単離するための方法を含む)が、とりわけ、Prockop, Science, 276:71 74, 1997;Theise et al., Hepatology, 31:235 40, 2000;Current Protocols in Cell Biology, Bonifacino et al., eds., John Wiley & Sons, 2000(2002年3月までの更新を含む);および米国特許第4,963,489号において見いだすことができる。
本明細書において開示する通りの、方法、分化アッセイにおける使用のための、および、系列スコアカードを生成するための、または、既存の系列スコアカードと比較するための追加の多能性幹細胞は、任意の種類の組織(例えば、胚組織、例えば胎児組織もしくは胎児前組織、または成体組織)に由来する任意の細胞でありうるが、それらの幹細胞は、適当な条件下で、3つの胚葉(内胚葉、中胚葉、および外胚葉)の全ての誘導体である、異なる細胞型の子孫を産生することが可能であるという特徴を有する。これらの細胞型は、確立された細胞株の形態で提供することができる、あるいは、それらは、一次胚組織から直接的に得られ、分化のために直ぐに使用することができる。含まれるのは、NIHヒト胚性幹細胞レジストリーに列挙されている細胞、例えば、hESBGN-01、hESBGN-02、hESBGN-03、hESBGN-04(BresaGen社);HES-1、HES-2、HES-3、HES-4、HES-5、HES-6(ESセル・インターナショナル);Miz-hES1(MizMedi病院、ソウル国立大学);HSF-1、HSF-6(カリフォルニア大学サンフランシスコ校);およびH1、H7、H9、H13、H14(ウィスコンシン大学研究基金同窓会(WiCell研究所))である。一部の態様において、胚は、本明細書において開示する通りの、方法、アッセイ、システムにおける使用のための、および、スコアカードを生成するための、または、既存のスコアカードと比較するための多能性幹細胞を得る際に破壊されていない。
別の態様において、幹細胞(例えば、成体または胚性幹細胞)は、固体組織を含む組織(固形組織に対する例外は、血液、血漿、および骨髄を含む全血)から単離することができ、それは、以前は、幹細胞の供給源としては、文献において未同定であった。一部の態様において、組織は、心臓または心臓組織である。他の態様において、組織は、例えば、臍帯血、胎盤、骨髄、または軟骨絨毛であるが、これらに限定されない。
本明細書において開示する通りの、方法、アッセイ、システムにおける使用のための、および、スコアカードを生成するための、または、既存のスコアカードと比較するための目的の幹細胞は、また、種々の型の胚細胞を含み、ヒト胚性幹(hES)細胞(Thomson et al. (1998) Science 282: 1145により記載される);他の霊長類からの胚性幹細胞、例えばアカゲザル幹細胞など(Thomson et al. (1995) Proc. Natl. Acad. Sci USA 92:7844);マーモセット幹細胞(Thomson et al. (1996) Biol. Reprod. 55:254);およびヒト胚性胚(hEG)細胞(Shambloft et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95: 13726, 1998)により例示される。また、興味深いのは、系列にコミットした幹細胞であり、例えば中胚葉幹細胞および他の初期心原性細胞などである(Reyes et al. (2001) Blood 98:2615-2625; Eisenberg & Bader (1996) Circ Res. 78(2):205-16などを参照のこと)。
治療的使用
種々の疾患および障害は、幹細胞治療のための潜在的な標的、例えば癌、糖尿病、心不全、筋損傷、セリアック病、神経障害、神経変性障害、およびリソソーム蓄積症など、ならびに、以下の疾患のいずれかとして示唆されてきた:ALS、パーキンソン、単一遺伝子疾患およびメンデル疾患、老化、人体の一般的な摩耗および断裂、関節リウマチおよび他の炎症性疾患、出生時欠損など。したがって、本発明のアッセイ、方法、システム、およびキットは、治療のため、または移植用の、完全にもしくは部分的に分化した細胞の発生のために対象に投与するための、幹細胞株、例えば、多能性幹細胞株を選択するために使用されることができる。
従って、一局面において、本発明は、対象における疾患もしくは障害の、処置、予防、または改善の方法を提供し、方法は、多能性幹細胞、または、多能性細胞に由来する、完全にもしくは部分的に分化した細胞、および再プログラミング(例えば、分化転換)を含む他の方法により得られた分化細胞を対象に投与することを含み、ここで、幹細胞は、本明細書において開示する初期発生遺伝子のセットの遺伝子発現を測定する方法およびアッセイにより選択される。限定されることなく、対象への投与前に、多能性幹細胞を特定の系列に沿った分化のために処理することができる。
本明細書において使用する通り、用語「処置する」および「処置」は、対象に、有効な量の組成物を投与することを指し、対象で、疾患の少なくとも1つの症状における低下または疾患における改善として、例えば、有益な、または所望の臨床結果が認められるようにする。本発明の目的のために、有益な、または所望の臨床結果は、限定はしないが、1つまたは複数の症状の軽減、疾患の範囲の縮小、疾患の安定化(例えば、悪化しない)状態、疾患進行の遅延または減速、疾患状態の回復または緩和、および寛解(部分的または全体的を問わず)を含むが、検出可能または検出不可能を問わない。一部の態様において、処置することは、処置を受けていない場合に予測される生存と比較して、生存を延長することを指しうる。当業者は、処置によって疾患状態を改善することができるが、疾患について完全治癒になることはできないことを理解する。本明細書において使用する通り、用語「処置」は予防を含む。あるいは、処置は、疾患の進行が低下または停止した場合に「効果的」である。一部の態様において、用語「処置」はまた、処置を受けていない場合に予測される生存と比較して、生存を延長することを意味することができる。処置を必要とする者は、疾患もしくは状態を伴うと既に診断された者、ならびに遺伝的感受性または疾患もしくは状態に寄与する他の因子に起因する疾患もしくは状態を発生する可能性がある者を含み、例えば、限定はしないが、例として、対象の体重、食事、および健康が、糖尿病を発生する可能性が高い対象に寄与しうる因子である。処置を必要とする者は、また、医学的または外科的な注意、ケア、または管理が必要な対象を含む。対象は、通常、病気である、または損傷している、あるいは、集団の平均的なメンバーと比べて、病気になるリスクが増加していて、そのような注意、ケア、または管理が必要である。
本発明の方法のための適切な投与経路は、局所および全身の両方の投与または移植を含む。一般的に、局所投与は、対象の体全体と比較して、細胞が特定の部位に送達されることをもたらすのに対し、全身投与は、対象の本質的に体全体への細胞の送達をもたらす。例示的な投与の様式は、注射、注入、点滴、および吸入を含むが、これらに限定されない。「注射」は、限定されないが、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、脳室内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、嚢下、くも膜下、脊髄内、脳内、脊髄内、ならびに胸骨内注射および注入を含む。
1つの好ましい投与の方法は、対象における、そのような多能性細胞、または多能性幹細胞に由来する分化した子孫の移植である。用語「移植」は、例えば、自家移植(患者の1つの部位から、同じ患者の同じまたは別の部位への細胞の除去および移入)、同種移植(同種のメンバー間での移植)、および異種移植(異なる種のメンバー間での移植)を含む。当業者は、種々の疾患の処置のための細胞の植え込みまたは移植のための方法を十分に知っており、それは、本発明に受け入れられる。
本明細書において使用する通り、用語「投与する」、「導入する」、および「移植する」は、再プログラミング細胞、またはそれらの分化した子孫の、所望の部位での少なくとも部分的な局在化をもたらす方法または経路によって、本明細書において開示する再プログラミング細胞、またはそれらの分化した子孫の、対象中への留置との関連において互換的に使用される。再プログラミング細胞、またはそれらの分化した子孫は、目的の組織に直接的に投与することができ、または、あるいは、任意の適当な経路により投与することができ、それは、対象において所望の部位への送達をもたらし、そこで、再プログラミング細胞または細胞のそれらの子孫もしくは成分の少なくとも一部が、生存可能なままである。対象への投与後の再プログラミング細胞の生存期間は、数時間(例えば、24時間)から数日間と短いものから、数年と長い可能性がある。
多能性幹細胞を投与する、の文脈において、用語「投与する」はまた、対象におけるそのような細胞の移植を含む。本明細書において使用する通り、用語「移植」は、少なくとも1つの細胞を対象に移植または移動させるプロセスを指す。用語「移植」は、例えば、自家移植(患者の1つの部位から、同じ患者の同じまたは別の部位への細胞の除去および移入)、同種移植(同種のメンバー間での移植)、および異種移植(異なる種のメンバー間での移植)を含む。
対象への投与のために、多能性幹細胞が、薬学的に許容される組成物中で提供されることができる。これらの薬学的に許容される組成物は、多能性細胞の1つまたは複数を含み、1つまたは複数の薬学的に許容される担体(添加剤)および/または希釈剤と一緒に製剤化される。
本明細書において使用する通り、用語「薬学的に許容される」は、健全な医学的な判断内で、過剰な毒性、刺激、アレルギー反応、または他の問題もしくは合併症を伴わず、合理的な利益/リスク比に応じた、ヒトおよび動物の組織との接触における使用のために適切である、それらの化合物、材料、組成物、および/または投与形態を指す。
本明細書において使用する通り、用語「薬学的に許容される担体」は、1つの臓器または体の一部から別の臓器または体の一部に幹細胞を運ぶ、または輸送する際に含まれる、薬学的に許容される材料、組成物、または賦形剤、例えば液体または固体増量剤、希釈剤、賦形剤、製造補助剤(潤滑剤、タルクマグネシウム、ステアリン酸カルシウムまたは亜鉛、またはステアリン酸)などを意味する。各々の担体は、製剤の他の成分と適合し、患者に有害ではないという意味において「許容され」ていなければならない。「賦形剤」、「担体」、「薬学的に許容される担体」などの用語は、本明細書において互換的に使用される。
多能性幹細胞、またはその分化した子孫が、対象に、薬学的に活性な薬剤との組み合わせにおいて投与されることができる。本明細書において使用する通り、用語「薬学的に活性な薬剤」は、インビボで放出された場合、所望の生物学的活性、例えば、治療的、診断的、および/または予防的な特性をインビボで持つ薬剤を指す。この用語は、安定化および/または持続放出の製剤化された薬学的に活性な薬剤を含むことが理解される。例示的な、薬学的に活性な薬剤は、限定はしないが、Harrison's Principles of Internal Medicine, 13th Edition, Eds. T.R. Harrison et al. McGraw-Hill N.Y., NY; Physicians Desk Reference, 50th Edition, 1997, Oradell New Jersey, Medical Economics Co.; Pharmacological Basis of Therapeutics, 8th Edition, Goodman and Gilman, 1990; United States Pharmacopeia, The National Formulary, USP XII NF XVII, 1990; current edition of Goodman and Oilman's The Pharmacological Basis of Therapeutics; and current edition of The Merck Indexにおいて見出されるものを含むが、それら全ての完全な内容全体が、本明細書に組み入れられる。
本明細書において使用する通り、「対象」は、ヒトまたは動物を意味する。対象は、幹細胞ベースの治療が有用でありうる疾患で特徴付けられた障害を患っている、または有すると以前に診断された、または同定された者でありうる。対象は、幹細胞ベースの治療を用いて現在処置されていない者でありうる。
本明細書において記載する局面の一部の態様において、方法は、幹細胞ベースの治療から利益を得うる疾患を伴う対象を選択することをさらに含む。
本明細書において使用する通り、用語「神経変性疾患または障害」は、特に神経細胞のレベルでの中枢神経系(CNS)変性または変化により特徴付けられる疾患または状態、例えばアルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、てんかん、および筋ジストロフィーなどを含む。神経炎症および脱髄状態または疾患、例えば白質脳症および白質萎縮症などをさらに含む。例示的な神経変性障害は、限定はしないが、エイズによる認知症、副腎白質ジストロフィー、アレキサンダー病、アルパース病、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症、毛細血管拡張性運動失調症、バッテン病、牛海綿状脳症、カナバン病、大脳皮質基底核変性症、クロイツフェルト・ヤコブ病、レビー小体を伴う認知症、致死性家族性不眠症、前頭側頭葉変性症、ハンチントン病、小児レフサム病、ケネディ病、クラッベ病、ライム病、マシャド・ジョセフ病、多発性硬化症、多系統萎縮症、神経有棘赤血球症、ニーマン・ピック病、パーキンソン病、ピック病、原発性側索硬化症、進行性核上麻痺、レフサム病、サンドホフ病、びまん性ミエリン分解硬化症、脊髄小脳失調症、脊髄の亜急性連合変性症、脊髄癆、テイ・サックス病、中毒性脳症、および伝達性海綿状脳症を含む。
薬物スクリーニングおよび他の使用
本明細書において開示する初期発生遺伝子のセットの遺伝子発現を測定することによる、複数の幹細胞株(例えば、多能性幹細胞株)の分化能の特徴付けを使用し、そのような特徴付けられた多能性幹細胞株に基づき、インビトロアッセイを開発することができる。薬物スクリーニング/テスト用の既存のアッセイおよび毒性試験は、いくつかの欠点を有する。なぜなら、それらは、特徴付けが不十分な多能性幹細胞、および/または、その分化能力および可能性に関して、異常であるかもしくは典型的な多能性幹細胞株から逸脱している多能性幹細胞株を含みうるからである。したがって、本明細書において開示する初期発生遺伝子のセットの遺伝子発現を測定することにより、疾患の表現型である系列に沿って分化することができる、アッセイにおける使用のために適切な幹細胞株を同定し、選び、および/または、検証することができる。加えて、あるいは、本明細書において開示する多能性幹細胞株における初期発生遺伝子のセットの遺伝子発現を測定することを使用し、器官、および/または組織系列、あるいは、その部分に分化することができるものとして、幹細胞株を同定および/または検証することができる。そのような同定された幹細胞を、次に、テスト化合物をスクリーニングするためのスクリーニングアッセイにおける、および/または、疾患モデル化アッセイにおける使用のために選ぶことができる。
さらに、ヒト疾患に関連する分子および細胞レベルで現在入手可能な相次ぐ新情報によって、病原的な相互関係に関する仮説を開発およびテストすることが重要になる。全ての発生段階からの、さらには、移植前診断に基づいて病理を有していると見なされる胚盤胞からの特定の細胞型への実験的なアクセスが、ヒト疾患の局面をモデル化および理解する際に有用でありうる。従って、そのような細胞株が、また、薬物のテストのために貴重でありうる。
したがって、本発明は、生物学的活性についてテスト化合物をスクリーニングするための方法およびアッセイを提供し、方法は、以下を含む:(a)幹細胞(例えば、多能性幹細胞)を得ること(ここで、幹細胞が、特定の系列に沿った分化について同定および検証される);(b)場合により、幹細胞が、所望の特定の系列に分化することを引き起こす、またはそれを可能にすること;(c)幹細胞をテスト化合物と接触させること;および(d)化合物の非存在下と比較して、幹細胞における初期発生遺伝子のセットの遺伝子発現のレベルに対する化合物の任意の効果を決定すること。幹細胞に対する効果は、レポーター分子の使用により、直接的または間接的に観察可能であるものとすることができる。
本明細書において使用する通り、用語「生物学的活性」または「生物活性」は、生物学的サンプルに影響するテスト化合物の能力を指す。生物学的活性は、限定はしないが、生物学的アッセイにおける刺激、阻害、調節、毒性、または致死応答の誘発を含みうる。例えば、生物学的活性は、酵素の効果を調節する、受容体を遮断する、受容体を刺激する、1つまたは複数の遺伝子の発現レベルを調節する、細胞増殖を調節する、細胞分裂を調節する、細胞形態を調節する、またはそれらの組み合わせである、化合物の能力を指しうる。一部の例において、生物学的活性は、生物学的サンプル中で毒性効果を産生する、テスト化合物の能力を指しうる。
上記の通り、特定の系列は、疾患の表現型および/または遺伝子型である系列でありうる。あるいは、特定の系列は、器官および/または組織あるいはその部分の表現型および/または遺伝子型である系列でありうる。
本明細書において使用する通り、用語「テスト化合物」は、細胞に対して効果を有するそれらの能力についてスクリーニングされる化合物のコレクションを指す。テスト化合物は、化学的化合物、化学的化合物の混合物(例えば、多糖類)、有機または無機低分子(例えば、2000ダルトン未満、1000ダルトン未満、1500ダルトン未満、1000ダルトン未満、または500ダルトン未満の分子量を有する分子)、生物学的巨大分子(例えば、ペプチド、タンパク質、ペプチド類似体、ならびにそれらの類似体および誘導体)、ペプチド模倣物、核酸、核酸類似体および誘導体、生物学的材料(細菌、植物、真菌、または動物細胞もしくは組織)から作製される抽出物、天然または合成組成物を含む、多種多様の異なる化合物を含むことができる。
実行される特定の態様に依存して、テスト化合物を溶液中で、遊離で提供することができる、または、担体、もしくは固体支持体(例えば、ビーズ)に付着させることができる。多数の適切な固体支持体が、テスト化合物の固定化のために使用されることができる。適切な固体支持体の例は、アガロース、セルロース、デキストラン(即ち、セファデックス、セファロースとして商業的に入手可能)、カルボキシメチルセルロース、ポリスチレン、ポリエチレングリコール(PEG)、ろ紙、ニトロセルロース、イオン交換樹脂、プラスチックフィルム、ポリアミンメチルビニルエーテルマレイン酸共重合体、ガラスビーズ、アミノ酸共重合体、エチレン−マレイン酸共重合体、ナイロン、絹などを含む。加えて、本明細書において記載する方法について、テスト化合物は、個々に、またはグループでスクリーニングされることができる。所与のグループについて1を上回る陽性結果が予測されないほど、効果的なテスト化合物についてのヒット率が低くなることが予測される場合、グループスクリーニングが特に有用である。
多数の小分子ライブラリーが、当技術分野において公知であり、商業的に入手可能である。化合物ライブラリーの包括的なリストは、http://www.broad.harvard.edu/chembio/platform/screening/compound_libraries/index.htmで見出すことができる。化学的ライブラリーまたは化合物ライブラリーは、通常、ハイスループットスクリーニングまたは工業的製造において最終的に使用される、保存された化学物質のコレクションである。化学ライブラリーは、簡単に表現すれば、一連の保存された化学物質からなることができる。各々の化学物質は、情報(例えば化合物の化学構造、純度、量、および物理化学的特徴など)を伴う、ある種のデータベース中に保存された関連情報を有する。
限定はしないが、化合物は、適当な期間にわたり、対照と比べ、細胞に対して効果を発揮することができる任意の濃度でテストすることができる。一部の態様において、化合物は、約0.01nMから約1000mM、約0.1nMから約500μM、約0.1μMから約20μM、約0.1μMから約10μM、または約0.1μMから約5μMの範囲中の濃度でテストされる。
化合物スクリーニングアッセイを、ハイスループットスクリーニングにおいて使用することができる。ハイスループットスクリーニングは、化合物のライブラリーが、所与の活性についてテストされているプロセスである。ハイスループットスクリーニングでは、多数の化合物を迅速かつ並行してスクリーニングすることが求められる。例えば、マイクロタイタープレートおよび自動アッセイ機器を使用して、製薬会社は、100,000アッセイ/日もの多くを並行して実施することができる。
スクリーニングアッセイには、さらに、同定されたテスト化合物が、意図される使用のために望ましい特性を有するか否かを同定するための、その後のアッセイが続き得る。例えば、スクリーニングアッセイには、生物学的利用能、毒性、または薬物動態のいずれかの測定からなる群より選択される第2のアッセイが続き得るが、これらの方法に限定されない。
分化培地および分化因子を最適化するための使用
一部の態様において、本明細書において開示する初期発生遺伝子のセットの遺伝子発現を測定することによる、複数の幹細胞株(例えば、多能性幹細胞株)の分化能の特徴付けを使用し、そのような特徴付けられた幹細胞株に基づいてインビトロアッセイを開発することができる。したがって、本明細書において開示する初期発生遺伝子のセットの遺伝子発現を測定することにより、特定の細胞型の系列に沿って分化する幹細胞株の効率を増加させる分化培地および/または分化因子を同定し、選ぶ、および/または検証する、および/または最適化することができる。単に例示的な事例として、一部の態様において、本明細書において開示するアレイ、アッセイ、および方法を使用し、本明細書において開示する中胚葉初期発生マーカーが、中胚葉誘導培地中で培養された幹細胞株において発現されていることを確認することができる。そのような同定された培地および/または分化因子は、次に、特定の系列に沿って幹細胞株を分化させるための分化プロトコールにおける使用のために選ばれることができる。あるいは、一部の態様において、本明細書において開示するアレイ、アッセイ、および方法を使用し、幹細胞培地(例えば、多能性幹細胞培地)によって、幹細胞が多能性状態に維持され、細胞株が、特定の系列に沿って分化することを誘導しないことを、例えば、本明細書において開示するテスト多能性培地中で培養された幹細胞株における初期遺伝子発現マーカーのセットを測定し、測定された初期発生マーカーのレベルが、測定された初期発生マーカーについての参照レベル、または、複数の参照多能性幹細胞株における測定された初期発生マーカーの平均レベルと比較して、統計的に有意な量だけ異なることがないことをチェックすることにより確認することができる。
本願を通じて、種々の刊行物が参照される。刊行物およびそれらの刊行物内で、それらの全体が引用される、それらの参考文献の全ての開示が、本発明が関連する技術分野の状態をより完全に説明するために、ここで、参照により本願中に組み入れられる。以下の実施例では、本発明の特許請求の範囲を限定することは意図されず、むしろ、特定の態様の例示であることが意図される。当業者が考えつく、例示の方法における任意の変動は、本発明の範囲内に入ることが意図される。
ヒト多能性幹細胞の発生能は、それらが、生物医学研究用の疾患関連細胞型、ならびに疾患に対処するための移植用の細胞を産生することができることを示唆する。しかし、相当な変動が、多能性細胞株の間で報告されており、それは、それらの有用性および臨床的安全性に影響しうる。胚性幹(ES)細胞または誘導多能性幹(iPS)細胞をトランスレーショナルリサーチにおいて自信を持って使用することができるには、そのような細胞株に特異的な差がよりよく理解される必要がある。この目標に向けて、本発明者らは、20株の予め誘導されたヒトES株および12株のヒトiPS細胞株についての発生遺伝子発現のゲノム規模での参照マップを確立しており、これらの細胞株のインビトロ分化傾向を測定してきた。この供給源によって、本発明者らは、ES細胞およびiPS細胞のエピジェネティックおよび転写的類似性を評価し、個々の細胞株の分化効率を予測することが可能になった。アッセイの組み合わせによって、多能性細胞株の迅速かつ包括的な特徴付けのためのスコアカードがもたらされる。
多能性細胞株は、疾患モデル化、薬物スクリーニング、および再生医療のための貴重なツールである。しかし、ヒト多能性細胞株の分化能の現在の検証アッセイは、面倒で、常に正確というわけではなく、長い時間がかかり、約7日の胚年齢よりも前に実施することができず、それらは研究を遅らせる傾向があり、ヒトiPS細胞の効力についていくらかの混乱に導いてきた。これらの問題に体系的に対処するために、本発明者らは、初期分化マーカー遺伝子のセットを確立し、発生の非常に初期段階で、幹細胞集団の分化能を同定してきた。そのような定量的な分化アッセイでは、EB形成条件における2日間という早期に(例えば、EBの2日目)、これらの細胞株の分化傾向が評価される。このデータセットを使用して、本発明者らは、ES細胞の参照からの、各々のES細胞株またはiPS細胞株の逸脱を定量化し、特に幹細胞株の分化能および幹細胞株が最も適用可能である系列に関する、細胞株の質および有用性のスコアカードをもたらした。本発明者らは、内胚葉、外胚葉、および中胚葉系列についての初期発生マーカーの発現における細胞株に特異的な差、ならびに、2日という早期の発生段階での多能性幹細胞マーカーにおける減少が正確に予測されることを示すことにより、このスコアカードを検証した。要約すると、本発明者らは、2日の発生段階という早期に、幹細胞株での初期発生マーカーの遺伝子発現を使用して、ヒト多能性細胞株の分化能の迅速で、費用効果の高い、ハイスループット特徴付けのための方法、システム、およびキットを開発した。
方法
ES細胞株およびiPSC細胞株ならびに培養条件
合計20株のヒトES細胞株、13株のヒトiPS細胞株、および6株の初代線維芽細胞株が、本試験中に含まれた。ES細胞株は、ハーバード幹細胞研究所のヒト胚性幹細胞施設から(17株のES細胞株)およびWiCellから(3株のES細胞株)入手した。iPS細胞株は、皮膚線維芽細胞におけるOCT4、SOX2、およびKLF4のレトロウイルス形質導入により由来した。線維芽細胞は、各々の各ドナーの前腕からの皮膚穿刺により誘導され、以前に記載された通りに増殖させた(Dimos et al., 2009)。全ての多能性細胞株が、従来の方法により特徴付けられており(Chen et al., 2009; Cowan et al., 2004, Boulting et al.、投稿中)、それらが、確立された基準に従って、多能性として適格であることが確認されている(Maherali and Hochedlinger, 2008)。多能性幹細胞は、KO-DMEM(Invitrogen)、10% KOSR(Invitrogen)、10%プラスマネート(Talecris)、1%グルタマックスまたはL-グルタミン、非必須アミノ酸、ペニシリン/ストレプトマイシン、0.1% 2-メルカプトエタノール、および10-20ng/ml bFGFからなるヒトES培地中で増殖させた。培養物を、照射されたCF1-MEF(GlobalStem)の単層上で成長させ、トリプシン(0.05%)またはディスパーゼ(Invitrogen)を使用して継代した。解析用のDNAおよびRNAの回収前に、ES細胞およびiPS細胞が、トリプシン(0.05%)またはディスパーゼ処理により単離され、一度継代するために、マトリゲル(BD Biosciences)上に播かれ、CF1-MEFで24時間にわたりヒトES条件培地が与えられた。
分化プロトコール
合計5つのES/iPS細胞分化プロトコールが、本試験において使用された。
(i)方向付けられていないEB分化。未分化細胞が、ディスパーゼもしくはトリプシンを使用して収集され、bFGFおよびプラスマネートを伴わないヒトES細胞培養培地の存在下、低付着プレートにおいて懸濁液で播かれた。細胞凝集体(EB)を、合計16日間にわたり成長させ、48時間毎に培地を新しくした。
(ii)単球/マクロファージ分化。未分化細胞は、造血分化についての公開プロトコールに従って、複数の組換えタンパク質を用いて処理した(Grigoriadis et al., 2010)。簡単には、フィーダー枯渇させた多能性細胞を、6ウェルの低付着プレート(Corning)において、ペニシリン/ストレプトマイシン、グルタミン(2mM)、モノチオグリセロール(0.0004M)、アスコルビン酸(50μg/ml)(Sigma-Aldrich)、およびBMP4(10ng/ml)(R&D Systems)を含むStemPro-34培地(Invitrogen)中で、小さな凝集体として、浮遊状態で24時間にわたり成長させた。原始線条/中胚葉形成を誘導するために、EBを洗浄し、ヒト組換えbFGF(5ng/ml)(Millipore)を添加したStemPro-34分化培地中で、さらに3日間にわたり、さらに培養した。4日目に、EBを再び収集し、追加的にhVEGF(10ng/ml)(PeproTech)、hbFGF(1ng/ml)、hIL-6(10ng/ml)(PeproTech)、hIL-3(40ng/mL)(PeproTech)、hIL-11(5ng/mL)(PeproTech)、およびヒト組換えSCF(100ng/mL)(PeproTech)を含む、上に記載する分化培地中でさらに4日間にわたり培養し、造血特異化を誘導した。8日目以降から、細胞を、hVEGF(10ng/ml)、ヒトエリスロポエチン(4U/ml)(Cell Sciences)、ヒトトロンボポエチン(50ng/ml)(Cell Sciences)、およびヒト幹細胞因子hIL-6、hIL-11、およびhIL-3を含む、StemPro-34培地中でさらに培養し、造血細胞の成熟および増殖を促した。
(iii)中胚葉分化。未分化細胞を、中胚葉分化を促進する公開プロトコール(Laflamme et al., 2007)に従って、アクチビンAおよびBMP4を用いて処理した。簡単には、細胞を、コラゲナーゼIV(Invitrogen)とインキュベートすることにより収集し、マトリゲルコーティングされた細胞培養皿上に播いた。中胚葉分化を誘導するために、細胞を、ヒト組換えアクチビンA(100ng/ml)(R&D Systems)を添加したRPMI-B27培地(Invitrogen)中で24時間培養した。ヒト組換えBMP4(10ng/ml)を培地に4日間にわたって加え、その後、細胞に、さらに、添加物不含RBMI-B27培地を与えた。
(iv)外胚葉分化。未分化細胞は、コラゲナーゼIV(Invitrogen)とインキュベートすることにより収集し、マトリゲルコーティングされた細胞培養皿上に播いた。細胞を、Noggin(500ng/ml)(R&D Systems)およびSB431542(10μM)(Tocris)を添加したノックアウト血清代替物(Invitrogen)を含む、KO-DMEM(Invitrogen)培地中で成長させた。
(v)運動ニューロン分化。未分化細胞は、公開プロトコール(DiGiorgio et al., 2008)に従い、Boulting et al.(投稿中)により詳細に記載される通りに分化させた。
遺伝子発現プロファイリング
表1中の遺伝子のセットの遺伝子発現は、RT-PCR解析により実施した。所与の細胞株で全てのヒトES細胞株サンプルの参照から逸脱している遺伝子を同定するために、本発明者らは、limmaパッケージ(Smyth, 2005)において実施される、モデレートt検定を実施し、目的の細胞株を、本試験に含まれる全てのヒトES細胞株(しかし、テストされている細胞株を除く)の参照と比較した。全ての統計解析が、R統計パッケージ(world-wide web at: r-project.org/)を使用して実施され、ソースコードは要求時に著者から入手可能である。
定量的RT-PCR解析
全RNAを、製造業者の推奨に従って、RNeasyキット(Qiagen)を使用して単離し、続いて標準的なプロトコールを使用したcDNA合成を行った。簡単には、スーパースクリプトII逆転写酵素(Invitrogen)およびランダムヘキサマー(Invitrogen)を使用して、500ngの全RNAインプットを用いてcDNAを合成した。SYBRグリーンPCRマスターミックス(Applied Biosystems)をqPCR解析のために使用し、それは、StepOnePlusリアルタイムPCRシステム(Applied Biosystems)で行われた。PCR条件は、以下の通りであった:94℃で5分間にわたる初期変性、94℃で15秒、60℃で15秒、72℃で30秒を40サイクル、および72℃で10分間。相対的な定量化は、比較閾値サイクル(ΔΔCT)方法を使用して算出した。
定量的胚様体アッセイおよび系列スコアカード
胚様体の分化のために、ES/iPS細胞は、ディスパーゼもしくはトリプシンで処理し、bFGFおよびプラスマネートを伴わないヒトES培養培地の存在下で、低付着プレート中に浮遊状態で播いた。細胞凝集体または胚様体は、少なくとも2日間にわたり成長させ、48時間毎に培地を新しくした。2日後、細胞を溶解し、全RNAを、トリゾール(Invitrogen)を使用して抽出し、その後RNeasyキット(Qiagen)を使用したカラム洗浄を行った。その後、300〜500ngのRNAが、製造業者の指示に従って、NanoString nCounterシステムでの解析のために使用された。初期発生段階で中胚葉、外胚葉、および内胚葉系列への細胞状態、多能性、および分化をモニターするための、その能力について選択された100個の遺伝子が選択された。データ解析が、TaqManアッセイを使用した、通常の定量的PCRが実施されるのとほとんど同じ方法で実施された。具体的には、本発明者らは、モデレートt検定を使用し、目的の細胞株についての胚様体における遺伝子発現を、本試験中に含まれる全てのES細胞由来の胚様体(しかし、テストされている細胞株を除く)の参照と比較した。遺伝子セットのテストを準備するために、本発明者らは、各々のサブグループ(例えば、外胚葉、内胚葉、および中胚葉系列のサブグループ)における初期発生遺伝子にわたるtスコアの平均値および標準偏差を算出した。次に、本発明者らは、先験的に定義された全ての遺伝子セットについて別々に平均tスコアを算出し、本発明者らは、以前に記載された通りに(Kim 2005)、全ての遺伝子にわたる平均値に対してパラメトリック検定を実施した。系列スコアカードの図については、本発明者らは、遺伝子テストの平均値と、有意性とは無関係のtスコアの全体的な平均値(全ての寄与遺伝子セットにわたり平均化)との間での符号付きの差をプロットした。
系列スコアカードの算出
系列スコアカードによって、19株の低継代ES細胞株(表4)により構成される参照と比べた、目的の細胞株の分化傾向が定量化される。系列スコアカードを算出するためのアルゴリズムでは、モデレートt検定(Smyth, 2004)およびt-スコアで実施された遺伝子セット濃縮解析(Nam and Kim, 2008;Subramanian et al., 2005)の組み合わせが使用される。系列特異的な分化傾向を定量化するための生物学的基礎を提供するために、3つの胚葉(外胚葉、中胚葉、内胚葉)の各々についての初期発生マーカー遺伝子のいくつかのセット。Bioconductorのlimmaパッケージは、また、目的の細胞株について得られたEBにおける遺伝子発現を、ES細胞の参照について得られたEBと比較するモデレートt検定を実施するために使用することができ、平均tスコアが、関連遺伝子セットに寄与する全ての遺伝子にわたり算出された。高い平均tスコア(例えば、>1)は、テストされたEBにおける遺伝子セットの遺伝子の増加発現を示し、対応する系列についての高い分化傾向を示すと考えられる。対照的に、低い平均tスコア(例えば、<0)は、関連遺伝子の減少発現を示し、対応する系列についての低い分化傾向を示すと考えられる。解析のロバスト性を増加させるために、平均tスコアが、所与の系列に割り当てられた全ての遺伝子セットにわたり平均化された。系列スコアカード図(図3〜7)は、細胞株特異的な分化傾向の定量的指標としてこれらの「遺伝子セットの平均tスコアの平均値」を列挙する。系列スコアカードの解析および検証が、カスタムRスクリプトを使用して実施された(ワールドワイドウェブから入手可能:r-project.org/)。
実施例1
hES細胞株の間での遺伝子発現における変動
その初期発生遺伝子発現プロファイルおよびその潜在的な分化に影響しうる、所与のES細胞系の多くの特性がある。これらは、細胞株の遺伝的背景、株が培養される方法、延長されたインビトロ成長により適用された選択圧、または未解明の確率的ノイズを含みうる。多能性幹細胞株の挙動における変動の潜在的な根本原因を試験することを試みることができるには、まず、株の実質的なコホート内に存在する変動の性質および範囲の両方を決定することが重大である。
(表4)ハイスループット実験において使用された細胞株の要約
* RRBS、マイクロアレイ、および/またはNanoStringデータにおけるchrYの存在/非存在およびX染色体不活化の証拠による検証
Figure 2016532435
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* RRBS、マイクロアレイ、および/またはNanoStringデータにおけるchrYの存在/非存在およびX染色体不活化の証拠による検証。
細胞株のポジティブ選択のための任意の適当な方法は、短時間で実施するのが簡単であり、安価であり、かつ可能な限り多くの異なる系列への下方分化における適用のために予測的であるべきである。本発明者らは、所与の細胞株の分化が比較的バイアスのない様式で開始された場合、その自然な分化傾向が、方向付けられた分化プロトコールにおけるその性能の予測になるであろうと評価した。換言すると、本発明者らは、外胚葉または神経系列の細胞を形成する自然な傾向を有する細胞株が、また、例えば、運動神経に向けられた分化において最適に機能しうるか否かを評価した。これを評価するために、本発明者らは、多能性細胞株の分化傾向についての簡単で、迅速で、安価なアッセイを設計した(図3〜7C)。
初期発生遺伝子を使用した簡単な転写アッセイによって、所与のES細胞株の再現性ある挙動を予測することができることが、本発明者らの初期の結果によって実証された。本発明者らは、この「系列スコアカード」を、iPS細胞の挙動を予測するために使用することができるか否かを評価した。この目的のために、本発明者らは、いくつかの十分に特徴付けられたiPS細胞株(Boulting et al.)を選択し、標準EB分化を実施し、RNAを回収し、表1に開示する初期発生遺伝子のアレイを使用してそれらを解析し、結果として得られるデータを、「参照」ES細胞由来のEBに対して正規化した。結果は、選択されたiPS細胞株の挙動についての系列「スコアカード」であった(図4)。
実施例2
多能性細胞の質および有用性のハイスループット評価に向けて
本発明者らは、任意の多能性細胞株の分化傾向を予測することができる「系列スコアカード」を設計するための、本明細書において開示する分化アッセイの使用を実証した。スコアカード出力は、細胞株の分化傾向の体系的な推定値を提供する。
ここで、本発明者らは、初期発生遺伝子のたった1つの分化遺伝子発現アッセイだけが、複数タイプのアッセイ、例えば、メチル化アッセイ、遺伝子発現アッセイ、および分化アッセイ、または分化もしくは自然分化した幹細胞での遺伝子発現を含む方法と比べて、スコアカードの正確性を損なうことなく、幹細胞を定量化および特徴付けるために必要であることを実証する。
本明細書において開示する通り、定量的な分化アッセイは、幹細胞株の分化能の単一の指標として単独で実施することもできる。加えて、本発明者らは、初期発生遺伝子の別々の範囲の発現を評価することにより、定量分化アッセイを実施するために要する合計時間の長さの有意な低下を実証する。実際、本発明者らは、初期遺伝子発現解析が2日胚の胚性幹細胞で実施され、少なくとも5日または7日の胚齢で実施された解析より減少させることができることを実証した。「n日胚」は、EB成形条件での培養中のn日を意味する。したがって、アッセイの所要時間を短縮することが有利である。なぜなら、それによって結果が出るまでの時間が減少し、また、インキュベータスペースおよび培地交換についての必要性に関して、ロジスティカルな費用を最小限にするからである。本発明者らは、定量的な分化アッセイを最適化した。これは、そうでなければ自己複製している培養物における低いレベルの細胞分化を多くの場合検出することにより、未分化多能性細胞株から直接的に単離されたRNAを使用して分化傾向を推定するのに十分に高感度である。加えて、本発明者らは、1回だけ実施された分化アッセイが、幹細胞株の分化傾向を決定するのに十分であることを実証しており、したがって、二つ組および三つ組のアッセイのために要する経費および時間が排除される。さらに、分化アッセイを、種々の異なるRNA調製方法、培養培地などを使用して実施することができる。本発明者らは、また、分化アッセイが、ハイスループット解析のために多重で、例えば、96および384ウェルプレート中で実施されることができ、複数の幹細胞株が同時に解析されることを可能にすることを実証した。
実施例3
本発明者らはまた、本発明者らが、いくつかの継代にわたり、独立した実験室間で同じ多能性幹細胞株を比較した場合、「スコアカード」からの結果が、どのくらいロバストであり再現性があるままなのかを研究した。DNAメチル化および転写を解析するための本発明者らの方法は、再現性があることが示されているため(Gu et al., 2010; Irizarry et al., 2005)、かつ本発明者らは、これらの措置が継代と共にどのように変化するかを既に研究しているため(データは示さない)、本発明者らは、定量的な分化アッセイの再現性に焦点を当てた。EBにおけるES細胞の分化は、物理的な取り扱い、培地更新、およびプラスチック容器などのパラメータにおける違いに高感度である可能性が高いため、本発明者らは、分化アッセイの結果が、別の実験室において、および別々の研究者で、細胞株の挙動についてどのくらい予測的であるのかを評価した。
iPS細胞株の挙動を予測するためのスコアカードのロバスト性および再現性をさらに確認するために、本発明者らは、異なる培養およびサンプル調製および遺伝子発現方法論を使用して、種々の精度管理用の実験を実施した。本発明者らは従って、2つの異なる細胞株(H9 ESCおよびBS3-C iPSC)が、2つの異なる実験室において2つの異なる研究者により評価され、別々に独立したEBアッセイを行うよう、体系的な比較を実施した。
焦点が当てられた表1に列挙する初期発生遺伝子のセットは、細胞状態の良好な指標である。従って、本明細書において開示するアッセイは、細胞状態毎に細胞株をクラスター化することができ、これは、他の方法、例えばTaqMan Open Arrayなどによっては達成可能ではない(データは示さない)。
他のアッセイとの直接比較において、本明細書において開示する系列スコアカードは、多能性幹細胞を同定する際に、他のアッセイ、例えばPluriTest(商標)(Franz-Josef Muller et al., A bioinformatic assay for pluripotency in human cells, Nature Methods, 2011, 8; 315-317)などよりも優れており、より正確であることが実証された。図2Aにおいて示す通り、Pluritest(商標)によって、幹細胞株が14日目に多能性ではないことが示されたが、幹細胞株は7日目には多能性であることが示された。対照的に、図2Bは、本明細書において使用されるアッセイが、より高感度であったことを示し、7日目に、多能性遺伝子の発現が下がり、分化遺伝子の発現が増加したことを示している。したがって、本明細書において開示するアッセイは、7日目またはそれより前の(例えば、5日目までの)培養中の幹細胞株の多能性(または多能性の欠如)を決定するために、より高感度である。
精度管理用の実験によって、ユーザーの違い、培養方法、RNA単離方法、およびPCRミックスとは無関係に、初期発生遺伝子の発現の測定レベルにおける一貫性が実証される
異なった実験室における異なるユーザーによって、本明細書において実証されるアッセイを使用して、多能性および分化能の予測性の高い正確性が実証される。例えば、異なるユーザーが、異なる培養方法および異なった幹細胞培養培地(例えば、条件培地、StemPro/Geltrexおよびessential8/ビトロネクチン)、ならびに異なった細胞およびRNA調製を使用した場合、同じ時点で、同じ細胞株におけるアッセイの初期発生遺伝子の発現のレベルにおいてほとんど変動は示されず(データは示さない)、アッセイの一貫性および正確性が実証された。加えて、RNAの質における有意差は、異なるRNA単離方法(例えば、トリゾールPureLink(商標)またはTrizol(商標))であっても観察されず、高いRNA純度とRNA収量における少ない変動がもたらされた(データは示さない)。さらに、初期発生遺伝子の発現のレベルは、分化アッセイにおける初期発生遺伝子の増幅のために使用される、異なるPCRマスターミックス(例えば、TaqMan(登録商標)Universalマスターミックス、TaqMan(登録商標)Gene Expression MiX、TaqMan(登録商標)Fast Advanced Master Mix、TaqMan(登録商標)Genotyping Master Mix)の影響を受けなかった(データは示さない)。
異なるロットのプレートが、多能性サンプル(例えば、EB中での同じ時点、例えば、3日または4日または5日まで培養された多能性細胞)について同程度で実施されたが、分化幹細胞株でのより低い一貫性およびより高い変動を伴う(データは示さない)。したがって、アッセイプレートはロット間で一貫しており、したがって、多能性幹細胞株は単回でアッセイされることができ、繰り返しアッセイされる必要はない。RT-PCR用の異なる機器(例えば、Viia7、QuantStudio、およびStepOne Plus)は、アッセイにおいて測定された初期発生遺伝子の発現のレベルにおける高い相関をもたらした。
したがって、TrizolおよびPureLinkにより単離されたRNAは、許容範囲内の質を有する。TaqMan遺伝子発現マスターミックスおよびユニバーサルマスターミックスIIの両方を、標準的なPCR条件下(高速ではない)でPCRマスターミックスとして使用することができる。異なる方法により回収された、未分化の多能性サンプルは、全て、ハウスキーピング遺伝子に対して正規化された場合、遺伝子発現における高いレベルの相関を示す。遺伝子発現パターンにおける明確な変化が、未分化と分化EBのサンプル間で観察され、多能性細胞から離れてクラスター化された。遺伝子アッセイの大部分が、多能性細胞および分化細胞における予測された発現を示す。
実施例4
アルゴリズムとデータ解析
各々の入力サンプルおよび遺伝子の6つのカテゴリー(対照、多能、内胚葉、中内胚葉、中胚葉、外胚葉)の各々について、ソフトウェアによって、t統計(有意性)の平均値(mu)および標準偏差ならびに遺伝子カテゴリーにわたる最小および最大p値が報告される。参照遺伝子は、以下の通りに算出される:ACTBにわたるCt値の中央値が、ΔCt値を算出するための基礎として使用される。参照サンプル値は、基礎ΔCtを提供し、以下の通りに算出される:T値およびp値が、サンプルのこのグループ(2人のユーザーにより、2つの異なる方法を使用して調製された1つのESC株および1つのiPSC株で構成されるPSC-データの6つの複製物)および各々の未知サンプルにより定義される分布の間で算出される。分化および未分化の両方である少なくとも約20細胞株における遺伝子発現レベルに基づく参照がある。
したがって、ΔCtは、多能性幹細胞において測定された全ての初期発生の遺伝子について決定される。各々の定義されたグループまたはカテゴリー(例えば、対照、多能性遺伝子、初期内胚葉発生遺伝子、初期中内胚葉発生遺伝子、初期中胚葉発生遺伝子、初期外胚葉発生遺伝子)において、ΔCtが平均化され、平均化されたΔCtは、t検定を使用して、そのカテゴリーについての参照ΔCtと比較される(図3)。指標としてt値を使用し(図3を参照のこと)、t値が0〜1の場合は、その初期発生遺伝子カテゴリーにおける遺伝子発現の測定レベルが、同じカテゴリーにおける参照遺伝子発現レベルと同程度であることを示す。t値が>1の場合、多能性細胞株の初期発生遺伝子カテゴリーにおける測定遺伝子発現レベルが、同じカテゴリーにおける参照遺伝子発現レベルよりも高いことを示す。t値が<0の場合は、多能性細胞株の初期発生遺伝子カテゴリーにおける測定遺伝子発現レベルが、同じカテゴリーにおける参照遺伝子発現レベルよりも低いことを示す。
実施例5
未分化および分化対の解析
初期発生遺伝子のレベルを測定した分化アッセイの結果が、多くの異なる方法において表示されることができる。図4において実証される通り、発生遺伝子の各々のカテゴリーのt値を表示することができる(例えば、各々のカテゴリーにおける全ての遺伝子について平均ΔCtのt値比較が、参照多能性幹細胞株における遺伝子の同じセットについての平均ΔCtと比較される)。t値が0〜1の間の場合、シグナル、例えば、黄色シグナルまたは矢印(例えば、水平または方向45°上向きまたは下向きの矢印)は、その初期発生遺伝子カテゴリーにおける遺伝子発現の測定レベルが、同じカテゴリーにおける参照遺伝子発現レベルと同程度であることを示す。t値が>1である場合、シグナル(例えば、緑色または上向き矢印)は、多能性幹細胞株のその初期発生遺伝子カテゴリーにおける測定された遺伝子発現レベルが、同じカテゴリーにおける参照遺伝子発現レベルよりも高いことを示す。t値が<0である場合、シグナル(例えば、赤色または下向き矢印)は、多能性幹細胞株のその初期発生遺伝子カテゴリーにおける測定された遺伝子発現レベルが、同じカテゴリーにおける参照遺伝子発現レベルよりも低いことを示す。図3に示す通り、多能性幹細胞の分化能は、多能性遺伝子および3つの生殖系列初期発生遺伝子(例えば、中胚葉、内胚葉、および外胚葉)を見ることにより決定することができる。例えば、BS3C細胞の解析は、BS3C iPSCが、参照標準と比較して、同等のレベルの多能性遺伝子、中胚葉遺伝子、内胚葉遺伝子、および外胚葉遺伝子を有することを示すのに対し、7Dおよび14D BS3C細胞は、中胚葉遺伝子、内胚葉遺伝子、および外胚葉遺伝子について減少した多能性幹細胞および増加した発現レベルを有し、これらの遺伝子が、もはや多能性ではなく、分化を開始したことを示す。
実施例6
分化時間および方法
本発明者らは、7日目の多能性幹細胞での実施から、少なくとも2日での細胞での実施まで、分化アッセイの所要時間を減少させうるか否かを評価した。この場合において、本発明者らは、代表的なiPS細胞株での各々のカテゴリー(例えば、多能性、中胚葉、外胚葉、および内胚葉)における初期発生遺伝子の発現間での優れた一致を実証し(図5)、その正確性を危うくすることなく、分化アッセイが実施される時間について所要時間を減少させることが可能であることを実証した。これは、多能性幹細胞株の分化能の特徴付けのより迅速な決定に関連付けられるコスト低下を可能にする驚くべき発見であった。
したがって、本明細書において、発明者らは、アッセイ、方法、およびシステムが、培養液中での2日という早期での(例えば、EB2日目)多能性幹細胞で実施されることができることを実証する。図5において実証する通り、2および4日目で、培養された多能性幹細胞が、初期発生遺伝子の発現のレベルについての信頼できる結果を産生する。さらに、アッセイ、方法、およびシステムが、EB浮遊液中または単層中の多能性幹細胞で実施されることができる(図6において実証する通り)。図7Aにおいて示す通り、本明細書において開示する分化アッセイ、方法、およびシステムを使用し、多能性幹細胞を同じ時点での同様の多能性幹細胞株と比較した場合、悪いクローンまたは培養物を同定することができる(例えば、BS4-iPS5 P8)。図7Bは、本明細書において開示する分化アッセイ、方法、およびシステムによって、また、特定の系列に沿って分化する素因を有する細胞株を同定することができることを示し、例えば図7Bにおいて、hNSDup細胞株は増加した外胚葉レベルを有し、その細胞株が、外胚葉系列に沿って分化する素因を有することを示す。さらに、本明細書において開示する分化アッセイ、方法、およびシステムは、もはや多能性ではない幹細胞株を同定するために有用であり、図7Cにおいて実証する通り、BJ線維芽細胞およびHJF胎児細胞が、多能性遺伝子における有意な減少を有することを示す。加えて、このアッセイによって、MEFの混入の効果を検出することもできる(図7Cを参照のこと)。
実施例7
最近まで、数株のヒト多能性細胞株だけが、生物医学的研究のために広く利用可能であった。この理由のため、研究者は、これらの容易にアクセス可能な、十分に特徴付けられた細胞株に、大半が依存してきた(Cowan et al., 2004; Mitalipova et al., 2003; Thomson et al., 1998)。米国におけるヒトES細胞研究に対して課された資金制限によって、利用可能な細胞株の選択がさらに限定された。結果として、研究者らは、彼らの目的の適用のために使用可能な任意の株を単に使用するだけであって、所与の細胞株が、所与のアッセイにおいてどのように十分に挙動するかを予測することもできる診断についての必要性はほとんどなかった。
しかし、多くの実験室によるヒトES細胞株の継続的な誘導(Chen et al., 2009)および米国での資金制限の解除によって、研究者らが選ぶことができるES細胞株の数はかなり増加してきた。加えて、全てのES細胞株が、すべての目的のために等しく適しているわけではないことが明らかになっている(Osafune et al., 2008)。これは、任意の新たな研究プロジェクトによって、目的とする適用のために最も適格である細胞株の、計画的で情報に基づいた選択が実施されるはずであることを示唆する。
患者からの体細胞をiPS細胞に再プログラミングする因子の発見は、研究コミュニティに入手可能な、かつ研究コミュニティに必要とされる多能性細胞株の数においてさらなる変化をもたらした。研究者らが既存の細胞株を集める際、または、目的とするそれらの適用のために新たなものを導き出す際、最も適当である細胞株をどのように選択するのかに関する情報またはガイダンスはほとんどない。本発明者らは本明細書において、研究者が、患者のサンプルから、十分に再プログラミングされたiPS細胞まで、疾患モデル化のための合理的なスケールで使用することができる、選択された管理可能な株のセットまで進むためにガイドする明確な経路を提供する。
ここで本発明者らは、ヒト多能性細胞株の分化傾向を正確に予測する方法を実証し、それによって、研究者らは、それらの所与の適用において最適に実施しうる株を選択することが可能になる。重要なことに、多能性幹細胞株の質および有用性について、本明細書において開示する「スコアカード」の使用は、任意の数の多能性幹細胞株(例えば、約5つという少数の多能性幹細胞株から数十および数百および数千株の多能性幹細胞株)の特徴付けのために、容易に調整することができる。
総合すると、本明細書において開示するスコアカードによって、研究者が、任意の特定の適用におけるその使用に、大切な時間および資源を投資する前に理解することを望みうる、所与の多能性細胞株の分化特徴および可能性の高い挙動が報告される。例えば、本明細書において開示するスコアカードは、多能性細胞株についての発生遺伝子発現プロファイルを組み入れているため、研究者らが選択する細胞株が、所望の細胞系列に分化する能力、または、さらにはその分化にあたり増加した効率を有し、非多能性幹細胞株ではない、ということに研究者らが自信を持つことを可能にする。
細胞治療を開発することに興味がある者にとって、臨床開発のために提案されている多能性細胞株が、調製から調製までの「標準的な」基準に適合し、3つ全ての生殖系列の系列に分化することができる、かつ/または、特定の基準において、選択された幹細胞株が、特定の細胞系列に沿って分化する増加した効率を有することを実証することが重要でありうる。したがって、本明細書において開示する「スコアカード」の本発明者らによる産生および使用が、治療的使用において、多能性幹細胞またはそれらの子孫を対象に投与する前における、これらの重要な安全対策のために有用である。
本明細書において開示する定量的な分化アッセイは、多数の、および/または特定の細胞系列に沿って分化する多能性細胞株の傾向(ならびに、幹細胞株がもはや多能性ではないかどうか)に関する情報を提供する。本明細書において開示する通り、この定量的な分化アッセイでは、各々の系列(例えば、中胚葉、外胚葉、および内胚葉)、ならびに特定の系列(例えば、神経系列、膵臓系列など)に沿って分化する幹細胞の分化能を定量的に実証するための手段として、特定の系列において発現される初期発生遺伝子のDNA発現プロファイルが使用される。
エピジェネティックおよび転写の差によって、平均的なES細胞株を平均的なiPS細胞株から区別することができるが、しかし、これらの差は、検討中の任意の単一ESまたはiPS細胞株の特徴に関する結論を導き出すためには不十分である。故に、分化アッセイを使用することにより、本発明者らは、一部の幹細胞株が、他のものより所与の適用のためにより適切であり、同じことが、iPS細胞に当てはまると判断した。
本発明者らはまた、全ての必要性および適用のための最適なES細胞株または完璧な再プログラミングプロトコルを見出すことを試みるよりも、必要性があると思われることは、適切な細胞株を所与の適用に適合させることができる迅速アッセイである。したがって、本明細書において開示する分化アッセイの方法、システム、およびキットは、ヒト多能性細胞株の傾向を決定および予測するために有用であり、所望の傾向を伴う適当な多能性幹細胞を、特定の下流適用における使用のために適合および選択することもできるようにする。
一部の態様において、分化アッセイを異なる方法で適応し、幹細胞クローンの分化に対するインビトロ培養の選択圧を評価することができる。したがって、このデータに基づき、ES細胞株は、また、細胞競合の波及効果および成長条件への適応を研究するためのモデルシステムを提供するために有用である。
現在では、本発明を用いずに、既存の多能性幹細胞株を得るかまたは新たな株を生成した後、研究者は、特定の抗原およびテラトーマ形成についての免疫染色を含む、大変時間のかかる、骨の折れる高価なアッセイを実施するであろう。これらのアッセイは、所与の細胞株が多能性であるとの、いくらかの自信を提供することができるが、それらによって、多能性細胞株が、所与の適用に十分に適切であるか否かを予測することはできない。対照的に、本明細書において開示する本発明の方法、キット、システム、分化アッセイ、および分化スコアカードは、迅速で、効率的で、効果的な様式で、多能性幹細胞の挙動を予測するために有用であり、それは、時間または労力集約的ではなく、比較的安価である。
したがって、本明細書において開示する方法、キット、システム、アッセイおよびスコアカードを使用すると、研究者は、例えば、外胚葉系列に沿って、次に神経に分化する細胞の疾患モデル化に関心をもち、神経変性疾患、例えば、筋萎縮性側索硬化症(ALS)の処置において使用することができる。一部の態様において、研究者は、目的のそれらの多能性幹細胞を解析し、本明細書において開示する定量的な分化アッセイおよびアレイを実施することもできる。研究者らは、外胚葉に(図7Bを参照のこと)、続いて神経系列に分化する、通常の分化傾向から高い分化傾向までを示すそれらの多能性幹細胞株を、さらなる試験のために選択することができる。したがって、本明細書において開示する方法、アッセイ、キットおよびシステム、ならびにスコアカードを使用して、研究者は、それらの特定の所望の適用における多能性幹細胞株の有用性を最も良く予測するであろうパラメータにおける変動について、細胞株を検証することができる(図7E)。
本明細書において開示する本発明者らの方法、アッセイ、スコアカード、およびキットによって、研究者らは、選択された多能性細胞株が、運動神経、または目的の他の細胞に、高い効率で分化する可能性が高いことを「スコアカード」によって予測された時だけ、特定の多能性幹細胞株で開始される、最も時間がかかり高価なアッセイであるテラトーマ形成を遅らせることが可能になる。経時的に、本明細書において開示する方法、アッセイ、スコアカード、およびキットの使用によって、本明細書において開示する方法、アッセイ、スコアカードが、テラトーマを形成する能力を伴う多能性幹細胞株を正確に予測するために使用される場合、テラトーマ生成アッセイを完全に排除することが可能になる。
結論として、ヒト多能性細胞の発見および選択された患者集団からのヒトiPS細胞を産生するための再プログラミング方法が、研究者らがヒト疾患の試験および処置をどのように考えるかについて、革命をもたらした。しかし、ヒト多能性幹細胞およびiPS細胞の使用が、研究ならびに細胞治療および患者の生命を改善させるための治療的使用において、効率的かつ効果的に使用されるものである場合、質の評価および検証方法、例えば本明細書において開示する方法、アッセイ、システム、および「スコアカード」などを確立し、試験のための、薬物開発および毒性アッセイのための、ならびに特定の治療的意味のための、または、所与の適応症もしくは疾患を処置するための、多能性細胞株の選択を合理化、正規化、および最適化することが不可避である。
参考文献
参考文献は、それらの全体が参照により、本明細書に組み入れられる。

Claims (105)

  1. 表1に列挙されるものより選択される初期発生遺伝子の任意の組み合わせのmRNAを増幅するオリゴヌクレオチドを含む、多能性幹細胞の分化能を特徴付けるためのアレイ組成物。
  2. 増幅された発生遺伝子が、表1に列挙されるものより選択される遺伝子をコードする核酸と少なくとも90%同一である、または、それに特異的にハイブリダイズする、請求項1記載のアレイ。
  3. 表1または表2に列挙されるものより選択される10個の初期発生遺伝子の組み合わせのmRNAを増幅する、少なくとも10個のオリゴヌクレオチド、または少なくとも10対のオリゴヌクレオチドを含む、請求項1記載のアレイ。
  4. 表1または表2に列挙されるものより選択される20個の初期発生遺伝子の組み合わせのmRNAを増幅する、少なくとも20個のオリゴヌクレオチド、または少なくとも20対のオリゴヌクレオチドを含む、請求項1記載のアレイ。
  5. 表1に列挙されるものより選択される30個の初期発生遺伝子の組み合わせのmRNAを増幅する、少なくとも30個のオリゴヌクレオチド、または少なくとも30対のオリゴヌクレオチドを含む、請求項1記載のアレイ。
  6. 表1に列挙されるものより選択される30〜60個の初期発生遺伝子の組み合わせのmRNAを増幅する、30〜60個のオリゴヌクレオチド、または30〜60対のオリゴヌクレオチドを含む、請求項1記載のアレイ。
  7. 表1に列挙されるものより選択される60〜90個の初期発生遺伝子の組み合わせのmRNAを増幅する、60〜90個のオリゴヌクレオチド、または60〜90対のオリゴヌクレオチドを含む、請求項1記載のアレイ。
  8. 表1に列挙されるものより選択される初期発生遺伝子の組み合わせが、表1または表2より選択される、少なくとも1つの多能性幹細胞遺伝子、少なくとも1つの初期中胚葉発生遺伝子、少なくとも1つの外胚葉発生遺伝子、および少なくとも1つの内胚葉発生遺伝子を含む、請求項1記載のアレイ。
  9. 表1に列挙されるものより選択される初期発生遺伝子の組み合わせが、表1または表2より選択される、少なくとも4つの多能性幹細胞遺伝子、少なくとも4つの初期中胚葉発生遺伝子、少なくとも4つの外胚葉発生遺伝子、および少なくとも4つの内胚葉発生遺伝子を含む、請求項1記載のアレイ。
  10. 初期発生遺伝子の組み合わせが、HAND1、ESM1、HAND2、HOPX、BMP10、FCN3、およびGSCからなる群より選択される少なくとも1つの中胚葉初期発生遺伝子、LEFTY1、EOMES、NODAL、およびFOXA2からなる群より選択される少なくとも1つの内胚葉初期発生遺伝子、TRPM8、POU4F1、OLFM3、WNT1、LMX1A、およびCDH9からなる群より選択される少なくとも1つの外胚葉初期発生遺伝子、ならびにIDO1、LCK、POU5F1、およびHESX1からなる群より選択される少なくとも1つの多能性初期発生遺伝子より選択される、請求項8または9記載のアレイ。
  11. 初期発生遺伝子の組み合わせが、HAND1、ESM1、HAND2、HOPX、BMP10、FCN3、およびGSCからなる群より選択される少なくとも4つの中胚葉初期発生遺伝子、LEFTY1、EOMES、NODAL、およびFOXA2からなる群より選択される少なくとも4つの内胚葉初期発生遺伝子、TRPM8、POU4F1、OLFM3、WNT1、LMX1A、およびCDH9からなる群より選択される少なくとも4つの外胚葉初期発生遺伝子、IDO1、LCK、POU5F1、およびHESX1からなる群より選択される少なくとも4つの多能性初期発生遺伝子より選択される、請求項9記載のアレイ。
  12. 1〜10個の対照遺伝子に対応する配列を増幅するオリゴヌクレオチドをさらに含む、請求項1〜11のいずれか一項に記載のアレイ。
  13. 対照遺伝子が、ACTB、JARID2、CTCF、SMAD1、GAPDH、βアクチン、EIF2B、RPL37A、CDKN1B、ABL1、ELF1、POP4、PSMC4、RPL30、CASC3、PES1、RPS17、RPSL17L、CDKN1A、MRPL19、MT-ATP6、GADD45A、PUM1、YWHAZ、UBC、TFRC、TBP、RPLP0、PPIA、POLR2A、PGK1、IPO8、HMBS、GUSB、B2M、HPRT1、または18Sからなる群より選択される、請求項12記載のアレイ。
  14. 100個以下のオリゴヌクレオチドを含む、請求項1〜13のいずれか一項に記載のアレイ。
  15. 90個以下のオリゴヌクレオチドを含む、請求項1〜14のいずれか一項に記載のアレイ。
  16. 50個以下のオリゴヌクレオチドを含む、請求項1〜15のいずれか一項に記載のアレイ。
  17. オリゴヌクレオチドがプライマーである、請求項1〜16のいずれか一項に記載のアレイ。
  18. オリゴヌクレオチドが、固体支持体上または内で固定化される、請求項1〜17のいずれか一項に記載のアレイ。
  19. オリゴヌクレオチドが、該オリゴヌクレオチドの5'末端により、固体表面上に固定化される、請求項1〜18のいずれか一項に記載のアレイ。
  20. 固体表面が、シリコン、金属、およびガラスを含む材料の群より選択される、請求項1〜19のいずれか一項に記載のアレイ。
  21. 固体支持体が、xおよびy座標により定義される、割り当てられた位置でオリゴヌクレオチドを含む、請求項1〜20のいずれか一項に記載のアレイ。
  22. オリゴヌクレオチドが、以下:
    ポリメラーゼ連鎖反応(PCR);鎖置換増幅(SDA);ループ媒介等温増幅(LAMP);ローリングサークル増幅(RCA);転写媒介増幅(TMA);自家持続配列複製(3SR);核酸配列ベースの増幅(NASBA);または逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)
    を含む方法により初期発生遺伝子のmRNAを増幅する、請求項1〜21のいずれか一項に記載のアレイ。
  23. PCRの方法が、リアルタイムPCR増幅法、またはSYBRグリーン方法もしくはMNAzyme検出方法による検出を伴うリアルタイムPCR増幅法である、請求項22記載のアレイ。
  24. OpenArray(登録商標)である、請求項1〜23のいずれか一項に記載のアレイ。
  25. 多能性幹細胞の分化能を決定するための方法であって、該多能性幹細胞に由来する核酸および請求項1記載のアレイを使用したアレイ増幅を実施する段階を含む、方法。
  26. アレイ増幅を実施する段階の後、データが、ウェブベースの解析ツールを使用して解析される、請求項25記載の方法。
  27. ツールが、中胚葉系列、外胚葉系列、および内胚葉系列より選択される異なる系列に沿って分化する多能性幹細胞の分化能を決定するために使用される指標を出力する、請求項25記載の方法。
  28. ツールが、多能性幹細胞の多能性を決定するために使用される指標を出力する、請求項25記載の方法。
  29. 表1に列挙するいずれかより選択される初期発生遺伝子のセットの多能性幹細胞株における発現を検出し、対照多能性幹細胞サンプルによる同じ遺伝子の発現と比較する段階、およびこの比較に基づいて、該多能性幹細胞株の分化能を決定する段階を含む、多能性幹細胞株の分化能を決定する方法。
  30. 遺伝子発現がリアルタイム増幅によりアッセイされる、または、検出が、SYBRグリーンベースのリアルタイムPCRを含む、請求項29記載の方法。
  31. 初期発生遺伝子に加えて少なくとも1つの対照遺伝子の発現値が多能性幹細胞株において測定されてΔCtが各々の遺伝子について算出され、各々の初期発生遺伝子のΔCt値が、複数の参照多能性幹細胞からの参照ΔCt値を含むデータプールにおける各々の初期発生遺伝子のΔCt値と比較されて、ΔΔCt値が提供される、請求項29記載の方法。
  32. 初期発生遺伝子に加えて少なくとも1つの対照遺伝子の発現値が多能性幹細胞株において測定されて、中胚葉、外胚葉、および内胚葉の初期発生遺伝子のサブグループの各々における遺伝子についての平均ΔCtが算出され、中胚葉、外胚葉、および内胚葉の初期発生遺伝子のサブグループの各々における遺伝子についての平均ΔCt値が、複数の参照多能性幹細胞からの中胚葉、外胚葉、および内胚葉の初期発生遺伝子のサブグループにおける同じ遺伝子についての参照平均ΔCt値を含むデータプールにおける中胚葉、外胚葉、および内胚葉の初期発生遺伝子のサブグループの各々における同じ遺伝子の平均ΔCt値と比較されて、ΔΔCt値が提供される、請求項29記載の方法。
  33. t検定を使用し、データプールにおける複数の参照多能性幹細胞からの中胚葉、外胚葉、および内胚葉の初期発生遺伝子のサブグループの各々における遺伝子についての参照ΔCt値と比較した、中胚葉、外胚葉、および内胚葉の初期発生遺伝子のサブグループの各々における遺伝子の平均ΔCt値の比較から、統計的に有意なΔΔCt値を同定する、請求項32記載の方法。
  34. 中胚葉、外胚葉、および内胚葉の初期発生遺伝子のセットの発現レベルにおいて統計的に有意な量だけ異なる多能性幹細胞株が、さらなる使用のために、初期発生遺伝子発現におけるそのような統計的に有意な差に基づいて選択または廃棄される、請求項33記載の方法。
  35. 表1または表2に列挙されるものより選択される、少なくとも10個の初期発生遺伝子の発現を検出し比較する段階を含む、請求項29記載の方法。
  36. 表1または表2に列挙されるものより選択される、少なくとも20個の初期発生遺伝子の発現を検出し比較する段階を含む、請求項29記載の方法。
  37. 表1に列挙されるものより選択される、少なくとも30個の初期発生遺伝子の発現を検出し比較する段階を含む、請求項29記載の方法。
  38. 表1に列挙されるものより選択される、30〜60個の初期発生遺伝子の発現を検出し比較する段階を含む、請求項29記載の方法。
  39. 表1に列挙されるものより選択される、60〜90個の初期発生遺伝子の発現を検出し比較する段階を含む、請求項29記載の方法。
  40. 表1または表2より選択される、少なくとも1つの多能性幹細胞遺伝子、少なくとも1つの初期中胚葉発生遺伝子、少なくとも1つの外胚葉発生遺伝子、および少なくとも1つの内胚葉発生遺伝子の発現を検出し比較する段階を含む、請求項29記載の方法。
  41. 表1または表2より選択される、少なくとも4つの多能性幹細胞遺伝子、少なくとも4つの初期中胚葉発生遺伝子、少なくとも4つの外胚葉発生遺伝子、および少なくとも4つの内胚葉発生遺伝子の発現を検出し比較する段階を含む、請求項29記載の方法。
  42. HAND1、ESM1、HAND2、HOPX、BMP10、FCN3、およびGSCからなる群より選択される少なくとも1つの中胚葉初期発生遺伝子、LEFTY1、EOMES、NODAL、およびFOXA2からなる群より選択される少なくとも1つの内胚葉初期発生遺伝子、TRPM8、POU4F1、OLFM3、WNT1、LMX1A、およびCDH9からなる群より選択される少なくとも1つの外胚葉初期発生遺伝子、ならびにIDO1、LCK、POU5F1、およびHESX1からなる群より選択される少なくとも1つの多能性初期発生遺伝子の発現を検出し比較する段階を含む、請求項40または41記載の方法。
  43. HAND1、ESM1、HAND2、HOPX、BMP10、FCN3、およびGSCからなる群より選択される少なくとも4つの中胚葉初期発生遺伝子、LEFTY1、EOMES、NODAL、およびFOXA2からなる群より選択される少なくとも4つの内胚葉初期発生遺伝子、TRPM8、POU4F1、OLFM3、WNT1、LMX1A、およびCDH9からなる群より選択される少なくとも4つの外胚葉初期発生遺伝子、ならびにIDO1、LCK、POU5F1、およびHESX1からなる群より選択される少なくとも4つの多能性初期発生遺伝子の発現を検出し比較する段階を含む、請求項41記載の方法。
  44. 中胚葉系列、外胚葉系列、および内胚葉系列より選択される異なる系列に沿って分化する多能性幹細胞の分化能の評価を可能にする、請求項29記載の方法。
  45. 中胚葉系列、外胚葉系列、および内胚葉系列より選択される異なる系列に沿った分化を方向付けるシグナルへの多能性幹細胞の応答の予測を可能にする、請求項29記載の方法。
  46. 多能性幹細胞の多能性の評価を可能にする、請求項29記載の方法。
  47. 多能性幹細胞の分化能を特徴付けることにより、所望の使用のために多能性幹細胞株を選ぶためのアッセイであって、以下を含む、アッセイ:
    a. 表1に列挙される遺伝子より選択される多能性幹細胞株において複数の初期発生遺伝子の発現のレベルを測定する段階;および、多能性幹細胞における複数の初期発生遺伝子の遺伝子発現のレベルを、同じ複数の初期発生遺伝子についての参照遺伝子発現レベルと比較する段階、ならびに
    b. 初期発生遺伝子についての参照遺伝子発現レベルと比較した、測定された初期発生遺伝子の遺伝子発現のレベルにおいて統計的な有意差がないことに基づいて多能性幹細胞株を選ぶ段階;または、初期発生遺伝子の参照発現レベルと比較した、少なくとも1つの所望の初期発生遺伝子における発現レベルにおいて統計的な有意差があることに基づいて多能性幹細胞株を選ぶ段階。
  48. 複数の初期発生遺伝子が、表1または表2に列挙される遺伝子より選択される少なくとも10個の初期発生遺伝子を含む、請求項47記載のアッセイ。
  49. 複数の初期発生遺伝子が、表1または表2に列挙される遺伝子より選択される少なくとも20個の初期発生遺伝子を含む、請求項47記載のアッセイ。
  50. 少なくとも10個の初期発生遺伝子が、少なくとも1つの多能性幹細胞遺伝子、少なくとも1つの初期中胚葉発生遺伝子、少なくとも1つの外胚葉発生遺伝子、および少なくとも1つの内胚葉発生遺伝子を含む、請求項48記載のアッセイ。
  51. 少なくとも10個の初期発生遺伝子が、少なくとも4つの多能性幹細胞遺伝子、少なくとも4つの初期中胚葉発生遺伝子、少なくとも4つの外胚葉発生遺伝子、および少なくとも4つの内胚葉発生遺伝子を含む、請求項48記載のアッセイ。
  52. 少なくとも10個の初期発生遺伝子が、HAND1、ESM1、HAND2、HOPX、BMP10、FCN3、およびGSCからなる群より選択される少なくとも1つの中胚葉初期発生遺伝子、LEFTY1、EOMES、NODAL、およびFOXA2からなる群より選択される少なくとも1つの内胚葉初期発生遺伝子、TRPM8、POU4F1、OLFM3、WNT1、LMX1A、およびCDH9からなる群より選択される少なくとも1つの外胚葉初期発生遺伝子、ならびにIDO1、LCK、POU5F1、およびHESX1からなる群より選択される少なくとも1つの多能性初期発生遺伝子、請求項50または51記載のアッセイ。
  53. 少なくとも10個の初期発生遺伝子が、HAND1、ESM1、HAND2、HOPX、BMP10、FCN3、およびGSCからなる群より選択される少なくとも4つの中胚葉初期発生遺伝子、LEFTY1、EOMES、NODAL、およびFOXA2からなる群より選択される少なくとも4つの内胚葉初期発生遺伝子、TRPM8、POU4F1、OLFM3、WNT1、LMX1A、およびCDH9からなる群より選択される少なくとも4つの外胚葉初期発生遺伝子、ならびにIDO1、LCK、POU5F1、およびHESX1からなる群より選択される少なくとも4つの多能性初期発生遺伝子、請求項51記載のアッセイ。
  54. 複数の初期発生遺伝子が、表1に列挙される遺伝子より選択される少なくとも30個の初期発生遺伝子を含む、請求項47〜53のいずれか一項に記載のアッセイ。
  55. 複数の初期発生遺伝子が、表1に列挙される遺伝子より選択される少なくとも30〜60個の初期発生遺伝子、請求項47〜54のいずれか一項に記載のアッセイ。
  56. 複数の初期発生遺伝子が、表1に列挙される遺伝子より選択され少なくとも30〜90個の初期発生遺伝子を含む、請求項47〜55のいずれか一項に記載のアッセイ。
  57. アレイによって、100個以下の初期発生遺伝子が測定される、請求項47〜56のいずれか一項に記載のアッセイ。
  58. アレイによって、90個以下の初期発生遺伝子が測定される、請求項47〜57のいずれか一項に記載のアッセイ。
  59. アレイによって、50個以下の初期発生遺伝子が測定される、請求項47〜58のいずれか一項に記載のアッセイ。
  60. 多能性幹細胞が、胚様体(EB)形成条件下で、EB状態で少なくとも約2日間にわたり培養されている、請求項47〜59のいずれか一項に記載のアッセイ。
  61. 多能性幹細胞が、EB状態で少なくとも約3日間にわたり培養されている、請求項47〜60のいずれか一項に記載のアッセイ。
  62. 多能性幹細胞が、EB状態で少なくとも約4日間にわたり培養されている、請求項47〜61のいずれか一項に記載のアッセイ。
  63. 多能性幹細胞が、EB状態で少なくとも約5日間にわたり培養されている、請求項47〜62のいずれか一項に記載のアッセイ。
  64. 多能性幹細胞が、EB状態で約2日間以下にわたり培養されている、請求項47〜63のいずれか一項に記載のアッセイ。
  65. 多能性幹細胞が、EB状態で約3日間以下にわたり培養されている、請求項47〜64のいずれか一項に記載のアッセイ。
  66. 多能性幹細胞が、EB状態で約4日間以下にわたり培養されている、請求項47〜65のいずれか一項に記載のアッセイ。
  67. 複数の初期発生遺伝子の発現のレベルが、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR);鎖置換増幅(SDA);ループ媒介等温増幅(LAMP);ローリングサークル増幅(RCA);転写媒介増幅(TMA);自家持続配列複製(3SR);核酸配列ベースの増幅(NASBA);または逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)からなる群より選択される方法により測定される、請求項47記載のアッセイ。
  68. ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)方法が、リアルタイムPCR増幅方法、または、SYBRグリーンによる検出を伴うかもしくはMNAzyme検出方法を使用するリアルタイムPCR増幅方法である、請求項67記載のアッセイ。
  69. 多能性幹細胞における少なくとも1つの対照遺伝子の発現のレベルを測定する段階をさらに含む、請求項47〜68のいずれか一項に記載のアッセイ。
  70. 対照遺伝子が、ACTB、JARID2、CTCF、SMAD1、GAPDH、βアクチン、EIF2B、RPL37A、CDKN1B、ABL1、ELF1、POP4、PSMC4、RPL30、CASC3、PES1、RPS17、RPSL17L、CDKN1A、MRPL19、MT-ATP6、GADD45A、PUM1、YWHAZ、UBC、TFRC、TBP、RPLP0、PPIA、POLR2A、PGK1、IPO8、HMBS、GUSB、B2M、HPRT1、EP300、または18Sからなる群より選択される、請求項69記載のアッセイ。
  71. 多能性幹細胞における対照遺伝子の発現のレベルが初期発生遺伝子の発現のレベルと比較され、多能性幹細胞において測定された初期発生遺伝子の遺伝子発現のレベルのΔCtが提供される、請求項47〜70のいずれか一項に記載のアッセイ。
  72. 同じ複数の初期発生遺伝子の遺伝子発現のレベルを同じ初期発生遺伝子の参照遺伝子発現レベルと比較する段階が、多能性幹細胞において測定された初期発生遺伝子の遺伝子発現のレベルのΔCtを、複数の参照多能性幹細胞から測定された同じ初期発生遺伝子の遺伝子発現のレベルの平均ΔCtと比較することを含む、請求項47〜72のいずれか一項に記載のアッセイ。
  73. 少なくとも1つの所望の初期発生遺伝子の発現レベルにおいて統計的に有意な量だけ異なる多能性幹細胞株を選ぶ段階が、中胚葉発生遺伝子、外胚葉発生遺伝子、または内胚葉発生遺伝子である初期発生遺伝子の発現レベルにおいて統計的に有意な量だけ異なる多能性幹細胞株を選択することを含む、請求項47〜73のいずれか一項に記載のアッセイ。
  74. 初期発生遺伝子についての参照遺伝子発現レベルが、複数の多能性幹細胞におけるその初期発生遺伝子の発現についての正常な変動の範囲である、請求項47記載のアッセイ。
  75. 初期発生遺伝子についての参照遺伝子発現レベルが、その初期発生遺伝子についての発現レベルの平均値であって、平均値が、複数の多能性幹細胞株におけるその初期発生遺伝子の発現レベルから算出される、請求項47記載のアッセイ。
  76. 複数の多能性幹細胞株が、少なくとも5株またはそれ以上の多能性幹細胞株である、請求項74または75記載のアッセイ。
  77. 統計的な差が、t検定により決定される差である、請求項47〜76のいずれか一項に記載のアッセイ。
  78. 統計的な差が、参照レベルからの、標準偏差の少なくとも1倍分の差、標準偏差の少なくとも2倍分の差、または標準偏差の少なくとも3倍分の差である、請求項47〜77のいずれか一項に記載のアッセイ。
  79. 多能性幹細胞が、哺乳動物の多能性幹細胞である、請求項47〜78のいずれか一項に記載のアッセイ。
  80. 多能性幹細胞が、ヒトの多能性幹細胞である、請求項47〜79のいずれか一項に記載のアッセイ。
  81. 以下を含むキット:
    a.請求項1〜28のいずれか一項に記載のアレイ;および
    b.初期発生遺伝子のmRNAの増幅を行うための試薬。
  82. 請求項47〜80のいずれか一項のアッセイに従った多能性幹細胞の分化能を特徴付けるための、請求項1〜28のいずれか一項に記載のアレイの使用。
  83. 表1に列挙される群より選択される少なくとも1つの初期発生遺伝子の発現レベルに対する効果について化合物をスクリーニングための、請求項1〜28のいずれか一項に記載のアレイの使用。
  84. スクリーニングが以下の段階を含む、請求項83記載の使用:
    (i)多能性幹細胞をテスト化合物と所定の時間にわたり接触させる段階;
    (ii)請求項47〜80のいずれか一項に記載のアッセイを実施する段階;および
    (iii)化合物の非存在と比較した、化合物の存在における少なくとも1つの初期発生遺伝子の発現レベルに関する増加または減少を決定する段階。
  85. テスト化合物が、有機小分子、無機小分子、多糖類、ペプチド、タンパク質、核酸、生物学的材料(例えば細菌、植物、菌類、動物細胞、動物組織、またはそれらの任意の組み合わせなど)から作製された抽出物からなる群より選択される、請求項83〜84のいずれか一項に記載の使用。
  86. テスト化合物が、約0.01nM〜約1000mMの範囲における濃度でテストされる、請求項83〜85のいずれか一項に記載の使用。
  87. 方法が、ハイスループットスクリーニング方法である、請求項83〜85のいずれか一項に記載の使用。
  88. 多能性幹細胞の分化能の系列スコアカードであって、複数の多能性幹細胞からの複数の初期発生遺伝子の発現レベルのデータセットを含む、系列スコアカード。
  89. 複数の初期発生遺伝子が、表1または表2に列挙される遺伝子より選択される少なくとも10個の初期発生遺伝子を含む、請求項88記載の系列スコアカード。
  90. 複数の初期発生遺伝子が、表1または表2に列挙される遺伝子より選択される少なくとも20個の初期発生遺伝子を含む、請求項88記載の系列スコアカード。
  91. 少なくとも10個の初期発生遺伝子が、少なくとも1つの多能性幹細胞遺伝子、少なくとも1つの初期中胚葉発生遺伝子、少なくとも1つの外胚葉発生遺伝子、および少なくとも1つの内胚葉発生遺伝子を含む、請求項88または89記載の系列スコアカード。
  92. 少なくとも10個の初期発生遺伝子が、少なくとも4つの多能性幹細胞遺伝子、少なくとも4つの初期中胚葉発生遺伝子、少なくとも4つの外胚葉発生遺伝子、および少なくとも4つの内胚葉発生遺伝子を含む、請求項88〜91のいずれか一項に記載の系列スコアカード。
  93. 少なくとも10個の初期発生遺伝子が、HAND1、ESM1、HAND2、HOPX、BMP10、FCN3、およびGSCからなる群より選択される少なくとも1つの中胚葉初期発生遺伝子、LEFTY1、EOMES、NODAL、およびFOXA2からなる群より選択される少なくとも1つの内胚葉初期発生遺伝子、TRPM8、POU4F1、OLFM3、WNT1、LMX1A、およびCDH9からなる群より選択される少なくとも1つの外胚葉初期発生遺伝子、ならびにIDO1、LCK、POU5F1、およびHESX1からなる群より選択される少なくとも1つの多能性初期発生遺伝子、請求項91または92記載の系列スコアカード。
  94. 少なくとも10個の初期発生遺伝子が、HAND1、ESM1、HAND2、HOPX、BMP10、FCN3、およびGSCからなる群より選択される少なくとも4つの中胚葉初期発生遺伝子、LEFTY1、EOMES、NODAL、およびFOXA2からなる群より選択される少なくとも4つの内胚葉初期発生遺伝子、TRPM8、POU4F1、OLFM3、WNT1、LMX1A、およびCDH9からなる群より選択される少なくとも4つの外胚葉初期発生遺伝子、ならびにIDO1、LCK、POU5F1、およびHESX1からなる群より選択される少なくとも4つの多能性初期発生遺伝子、請求項92記載の系列スコアカード。
  95. 複数の初期発生遺伝子が、表1に列挙される遺伝子より選択される少なくとも30個の初期発生遺伝子を含む、請求項88〜94のいずれか一項に記載の系列スコアカード。
  96. 複数の初期発生遺伝子が、表1に列挙される遺伝子より選択される30〜60個の初期発生遺伝子である、請求項88〜95のいずれか一項に記載の系列スコアカード。
  97. 複数の初期発生遺伝子が、表1に列挙される遺伝子より選択される60〜90個の初期発生遺伝子を含む、請求項88〜96のいずれか一項に記載の系列スコアカード。
  98. 複数の初期発生遺伝子の発現レベルのデータセットが記憶デバイスに接続されており、該記憶デバイスがコンピュータ上に位置付けられたデータベースである、請求項88〜97のいずれか一項に記載の系列スコアカード。
  99. 請求項88〜98のいずれか一項に記載の系列スコアカードを含む参照データベース。
  100. 請求項99記載の参照データベースを含むコンピュータ可読記憶媒体。
  101. 有形の、非一時的記憶媒体である、請求項100記載のコンピュータ可読記憶媒体。
  102. コンピュータによりアクセスすることができる、任意の利用可能な、有形の、または物理的な媒体である、請求項100記載のコンピュータ可読記憶媒体。
  103. コンピュータ実行可能な指示を含むコンピュータ可読物理的メモリであって、該指示が、測定された各々の初期発生遺伝子についてのΔCtを算出するためであり、各々の初期発生遺伝子のΔCt値が、複数の参照多能性幹細胞からの各々の初期発生遺伝子についての参照ΔCt値を含むデータプールからの各々の初期発生遺伝子についてのΔCt値と比較されて、ΔΔCt値が提供される、コンピュータ可読物理的メモリ。
  104. 中胚葉、外胚葉、および内胚葉の初期発生遺伝子のサブグループの各々における遺伝子についての平均ΔCtを算出し、中胚葉、外胚葉、および内胚葉の初期発生遺伝子のサブグループの各々における遺伝子の平均ΔCtを、複数の参照多能性幹細胞からの中胚葉、外胚葉、および内胚葉の初期発生遺伝子のサブグループにおける同じ遺伝子についての参照平均ΔCt値を含むデータプールからの、中胚葉、外胚葉、および内胚葉の初期発生遺伝子のサブグループの各々における同じ遺伝子の平均ΔCt値と比較して、平均ΔΔCt値を提供するための、請求項103記載のコンピュータ可読物理的メモリ。
  105. データプールにおける複数の参照多能性幹細胞からの中胚葉、外胚葉、および内胚葉の初期発生遺伝子のサブグループの各々における遺伝子についての平均参照ΔCt値と比較した、中胚葉、外胚葉、および内胚葉の初期発生遺伝子のサブグループの各々における遺伝子の平均ΔCt値の比較から、統計的に有意なΔΔCt値を同定するためのt検定を実施するための指示をさらに含む、請求項103記載のコンピュータ可読物理的メモリ。
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