JP2016525580A - Qt延長症候群を処置するための化合物および方法 - Google Patents

Qt延長症候群を処置するための化合物および方法 Download PDF

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Abstract

有効量の強力かつ選択的な遅延ナトリウムイオンチャネル遮断剤の投与によりQT延長症候群を処置する方法を本明細書に記載する。本願は、QT間隔の延長がSCN5Aの遺伝子変異によって引き起こされるヒト患者におけるQT間隔の延長を低減させるための方法を提供する。本願はまた、QT延長症候群の処置に有用な4−(ピリミジン−2−イルメチル)−7−(4−(トリフルオロメチル)フェニル)−3,4−ジヒドロベンゾ[f][1,4]オキサゼピン−5(2H)−オン(化合物2)も提供する。

Description

関連出願の相互参照
本出願は、2013年8月1日に出願された米国仮特許出願第61/861,344号および2013年11月5日に出願された米国仮特許出願第61/900,235号の利益を米国特許法§119(e)の下、主張する。これらの米国仮特許出願の全体が参考として本明細書に援用される。
分野
本開示は、有効量の強力かつ選択的な遅延ナトリウムイオンチャネル遮断剤の投与によりQT延長症候群を処置する方法に関する。
背景
先天性QT延長症候群(LQTS)は、トルサード・ド・ポアンツ(TdP)として公知の独特な形態の多形性心室頻拍(VT)に起因する、心電図のQTc間隔の延長と失神、心停止および突然心臓死(SCD)の傾向増加とを特徴とする、遺伝性心臓チャネル病の臨床的に不均一な群である。
LQTSには現在13の推定サブタイプがある。最も一般的なサブタイプは、LQT1(約45%)、LQT2(約45%)およびLQT3(約7%)である。他の形態のLQTS(LQT4〜10)は非常に稀であり、全LQTSの3%未満を占める。LQT1およびLQT2は、遅延した整流K電流、IKsおよびIKrそれぞれの根底にある、カリウム(K)チャネルをコードする遺伝子の機能変異の欠損によって引き起こされる。LQT3は、心臓の電位開口型ナトリウム(Na)チャネルであるNa1.5をコードする遺伝子であり、遅延Na電流(INa)の増加をもたらす、SCN5Aの機能獲得型変異によって引き起こされる。
変異遺伝子に起因して異常チャネルが形成され、これらのチャネルは適正に機能しないので、心臓の電気的回復にかかる時間がより長くなり、このこと自体がQT間隔の延長として現れる。例えば、SCN5Aをコードする、心臓Naチャネルのアミノ酸残基1505〜1507(KPQ)の遺伝性欠失は、致死性心室性不整脈を伴う重篤な常染色体優性LQT3症候群の原因でなる。致死性不整脈は、睡眠または休息中のLQT3患者の64%に起こる。なぜなら、おそらく過剰な遅延Na電流は再分極を特に低心拍数時に異常に延長し、それにより、早期後脱分極(EAD)および異所性拍動の発現に有利に働くからである。心筋中央部(mid−myocardium)にて再分極が優先的に遅いことは、再分極の経壁分散をさらに増進し、一方向性遮断およびリエントリー性不整脈の原因となり得る。LQT3患者の別の16%では、致死性心臓事象が運動または情動によって誘発される。
これまでに、SCN5Aのおおよそ75の異なる変異がLQT3に関連付けられてきた。これらの変異の大部分で、ナトリウムチャネルの不完全なまたは遅い不活性化が持続性または「遅延」Na電流を誘導する。筋細胞レベルで、遅延Na電流の増加は、APDを延長し、悪性不整脈の細胞トリガーであるEADおよびDADの形成を促進する。これらの分子欠陥、およびナトリウムチャネルゲート開閉機序の動態改変は、器官レベルでのQTc間隔の延長を特徴とする。LQT3患者において、QTc延長は、遅延Na電流の増加に起因する心室再分極の延長の心電図の顕著な特徴を表す。最後に、全生物レベルで、QT間隔延長および心室筋細胞間の再分極時間の分散増加は、失神(一過性および自己収束性の場合)またはSCD(持続性およびVFに変性する場合)に至らしめ得る多形性VTのタイプである、TdPの開始の必須条件を提供する。
心血管、ニューロン性、感染性疾患または他の状態を処置するために現在使用されるいくつかの薬物は、生死に関わる心室頻拍、トルサード・ド・ポアンツ(TdP)の背景因子と考えられるQT間隔を延長させるリスクの増加を伴う。したがって、薬物誘発性QT間隔延長は、Tdpのリスク、すなわちSCDのリスクの増加の代用語として一般に用いられる。薬物誘発性QT間隔延長は、ヒト−ether−a−go−go(hERG)遺伝子によってコードされた、遅延された整流K電流の濃度依存的阻害に起因することが最も多い。QT間隔延長の原因となる薬物の例としては、抗不整脈薬、抗精神病薬、抗鬱薬、抗ウイルス剤、抗生物質および他の薬剤が挙げられるが、これらに限定されない。QT間隔を延長することが証明されている薬物のリストは、https://www.crediblemeds.org/everyone/composite−list−all−qtdrugs/で入手できる。
概要
4−(ピリミジン−2−イルメチル)−7−(4−(トリフルオロメトキシ)フェニル)−3,4−ジヒドロベンゾ[f][1,4]オキサゼピン−5(2H)−オン(化合物1)および4−(ピリミジン−2−イルメチル)−7−(4−(トリフルオロメチル)フェニル)−3,4−ジヒドロベンゾ[f][1,4]オキサゼピン−5(2H)−オン(化合物2)は、強力かつ選択的な心臓遅延ナトリウム電流(INa)の阻害剤である。驚くべきことに、4−(ピリミジン−2−イルメチル)−7−(4−(トリフルオロメトキシ)フェニル)−3,4−ジヒドロベンゾ[f][1,4]オキサゼピン−5(2H)−オンがヒトにおけるQT延長症候群、特にLQT3の処置に有効であることが見出されている。有利なことに、4−(ピリミジン−2−イルメチル)−7−(4−(トリフルオロメトキシ)フェニル)−3,4−ジヒドロベンゾ[f][1,4]オキサゼピン−5(2H)−オンは、QT延長を示さず(IKrチャネルを阻害せず)、シトクロムP450(CYP)酵素またはP−糖タンパク質を阻害しない。
本明細書において、ヒト患者におけるQT間隔の延長を低減させるための方法であって、上記方法は、上記患者に有効量の化合物1もしくは化合物2
Figure 2016525580
またはその医薬的に許容され得る塩を投与することを含み、QT間隔の延長がSCN5Aの遺伝子変異によって引き起こされる方法を提供する。
本明細書において、ヒト患者における心エコー図または磁気共鳴映像法によって評価されるQTc間隔を低減させるための方法であって、上記方法は、上記患者に有効量の化合物1もしくは化合物2
Figure 2016525580
またはその医薬的に許容され得る塩を投与することを含み、QTc間隔がSCN5Aの遺伝子変異によって引き起こされる方法も提供する。
本明細書において、ヒト患者におけるQT間隔の延長を低減させるための方法であって、上記方法は、上記患者に有効量の化合物1
Figure 2016525580
またはその医薬的に許容され得る塩を投与することを含み、QT間隔の延長がSCN5Aの遺伝子変異によって引き起こされる方法を提供する。
本明細書において、ヒト患者における心エコー図または磁気共鳴映像法によって評価されるQTc間隔を低減させるための方法であって、上記方法は、上記患者に有効量の化合物1
Figure 2016525580
またはその医薬的に許容され得る塩を投与することを含み、QTc間隔がSCN5Aの遺伝子変異によって引き起こされる方法も提供する。
本明細書において、ヒト患者におけるLQT症候群を処置するための方法であって、上記方法は、上記患者に有効量の化合物1もしくは2
Figure 2016525580
またはその医薬的に許容され得る塩を投与することを含む方法も提供する。
本明細書において、ヒト患者におけるLQT3症候群を処置するための方法であって、上記方法は、上記患者に有効量の化合物1
Figure 2016525580
またはその医薬的に許容され得る塩を投与することを含む方法も提供する。
本明細書において、ヒト患者におけるLQT1またはLQT2症候群を処置するための方法であって、上記方法は、上記患者に有効量の化合物1
Figure 2016525580
またはその医薬的に許容され得る塩を投与することを含む方法も提供する。
本明細書において、QT延長を低減させるための方法であって、治療有効量の4−(ピリミジン−2−イルメチル)−7−(4−(トリフルオロメトキシ)フェニル)−3,4−ジヒドロベンゾ[f][1,4]オキサゼピン−5(2H)−オンを、それを必要とするヒト患者に投与することを含む方法も提供する。
本明細書において、QT延長症候群の処置に有用な4−(ピリミジン−2−イルメチル)−7−(4−(トリフルオロメチル)フェニル)−3,4−ジヒドロベンゾ[f][1,4]オキサゼピン−5(2H)−オン(化合物2)も提供する。したがって、本明細書において、ヒト患者のLQT1、LQT2またはLQT3症候群を処置するための方法であって、上記方法は、上記患者に有効量の下記式の化合物
Figure 2016525580
またはその医薬的に許容され得る塩を投与することを含む方法も提供する。
LQT症候群を処置するための医薬の製造のための、化合物1もしくは化合物2
Figure 2016525580
またはその医薬的に許容され得る塩の使用も提供する。
ヒト患者におけるQT間隔の延長を低減させるための医薬の製造のための、化合物1もしくは化合物2
Figure 2016525580
またはその医薬的に許容され得る塩の使用も提供する。
また、ヒト患者における心エコー図または磁気共鳴映像法によって評価されるQTc間隔の低減に使用するための医薬の製造のための、化合物1もしくは化合物2
Figure 2016525580
またはその医薬的に許容され得る塩の使用。
図1は、LQT−3のモデルにおける活動電位持続時間(APD)の短縮を示す。 図2は、LQT3のモデルにおける拍動ごとの変動の低減を示す。 図3は、LQT−3患者における−1日目の投薬前ベースラインからのQTcの短縮を示す。 図4は、LQT−3患者における単回経口投薬後の化合物1のPKプロファイルを示す。これは、健常ボランティアにおける化合物1のPKプロファイルに似ている。 図5は、化合物を7日間(第1日目に20mg、第2日目に40mg、および第3〜7日目に1日6mg)を与えられたLQT−3患者におけるQTc短縮を示す。図5は、LQT−3患者における平均昼間QTcの平均変化を示す。QTc短縮に対する化合物(I)の効果は用量依存的であり、第1日目の20mgと比較して第2日目の40mgの後により大きいQTcの短縮であったことを示した。QTc短縮効果は、第3〜7日目の6mgの維持量の間中、持続された。 図6は、化合物を7日間(第1日目に20mg、第2日目に40mg、および第3〜7日目に1日6mg)を与えられたLQT−3患者におけるQTc短縮を示す。図6は、LQT−3患者の各々についての投薬前ベースライン値と比較した第2日目および第7日目の最大QTc変化を示す。この図は、QTc短縮がLQT−3患者の各々において投薬期間中、持続されることを示す。 図7は、LQT−2および薬物誘発性QT延長のモデルにおける化合物1の効果を示す。E−4031はIKrの阻害剤である。化合物1は、ウサギの単離心臓において、延長された単相性活動電位(MAP)を短縮し、60nMのE−4031によって誘発されたトルサード・ド・ポアンツ(TdP)心室頻拍を抑制する。灌流液のみ(対照、a)、E−4031(b)、ならびにE−4031の継続的存在下での100nM(c)および300nM(d)の化合物1への心臓の曝露中の左心室心外膜MAP(各パネルの上部の記録)および擬似心電図(各パネルの下部の記録)の代表的な連続記録。心臓を1Hzの速度に調整した。棒グラフは、E−4031への心臓の曝露中にTdPの発生率を低減させる化合物1についての濃度−応答関係を示す。 図8は、LQT−2および薬物誘発性QT延長の異なるモデルにおける化合物1の効果を示す。E−4031はIKrの阻害剤である。化合物1は、ウサギの単離ウェッジ標本において60nMのE−4031により延長される、延長された活動電位持続時間(APD)、QT間隔およびTピークからTエンド(TpTe)を短縮する。灌流液のみ(対照)、E−4031(60nM)、およびE−4031の継続的存在下での300nMの化合物1への心臓の曝露中の左心室心外膜(Epi)および心内膜(Endo)APの代表的なオリジナルトレーシング。棒グラフは、三つの異なるサイクル長(それぞれ500、1000および2000ミリ秒)でのAPD(パネルA)、QT間隔(パネルB)およびTpTe(パネルC)に対する、E−4031(灰色棒)の継続的存在下での化合物1(黒色棒)の効果を示す。
詳細な説明
1.定義
本明細書において用いる場合、下記の語および語句は、それらが用いられている文脈が別途指示する場合を除き、下に示すような意味を有することが一般に意図されている。
本明細書および本特許請求の範囲において用いる場合、単数形「一つ(a)」、「一つ(an)」および「その(the)」は、文脈が別途明確に指示していない場合に限り、複数の指示対象を含むことに留意されたい。したがって、例えば、組成物中の「医薬的に許容され得る担体(a pharmaceutically acceptable carrier)」は、2種または2種超の医薬的に許容され得る担体などを含む。
「含む」は、組成物および方法は列挙されている要素を含むが、他のものを除外しないことを意味することが意図される。「から本質的になる」は、組成物および方法を定義するために使用される場合、意図される使用のための組合せに対してあらゆる本質的な意義のある他の要素を除外することを意味するものとする。したがって、本明細書において定義されている要素から本質的になる組成物は、単離および精製方法からの微量の異物、ならびにリン酸緩衝生理食塩水および保存剤など医薬的に許容され得る担体を除外しない。「からなる」は、他の成分の微量より多い要素を除外すること、および本開示の組成物を投与するための本質的な方法の工程を意味するものとする。これらの移行用語の各々によって定義される実施形態は、本開示の範囲内である。
用語「有効量」は、下で定義するように処置を実施するのに十分である化合物の量であって、かかる処置を必要とする哺乳動物に投与するときの量を指す。有効量は、使用される治療剤の特異的活性、患者の疾患状態の重症度、ならびに患者の年齢、体調、他の疾患状態の存在および栄養状態に依存して変化する。加えて、患者に与えられている場合がある他の薬剤は、投与する治療剤の有効量の決定に影響を及ぼす。
用語「心機能不全」は、心臓機能の異常を特徴とする症状または疾患を指す。非限定的な例としては、心拍動後の心臓の再分極遅延があるQT延長症候群、および心室に起因する不規則な心拍動の形態であるトルサード・ド・ポアンツが挙げられる。
「QT遅延症候群」すなわち「LQTS」は、イオンチャネルと呼ばれる心臓細胞内のタンパク質構造の機能不全によって引き起こされる。これらのチャネルは、カリウム、ナトリウムおよびカルシウム分子のようなイオンの流れを制御する。細胞内外のこれらのイオンの流れが心臓の電気的活動を生じさせる。これらのチャネルの異常は、後天性である場合もあり、遺伝性である場合もある。後天型は、通常、処方薬剤によって引き起こされるが、遺伝型は、電気的再分極を制御するイオンチャネルの一つを生じさせるかまたは「コードする」いくつかの遺伝子のうちの一つに変異が発生した場合に起こる。変異遺伝子は、形成される異常チャネルを生じさせ、これらの異常チャネルは正常チャネルほど効率的でないことから、心臓の電気的回復に、より長い時間がかかる。これは、延長されたQT間隔によって心電図(ECG、EKG)に現れる。
「QT延長」、すなわち延長されたQT間隔は、心臓を、多形性心室頻拍に対して影響を受けやすいものにし、その多形性心臓頻拍の一種が、トルサード・ド・ポアンツとして公知の速くて異常な心臓リズムである。補正QT間隔(すなわち「QTc」)は、心拍数によって補正されるQT間隔を表す。QTcを算出するためのいくつかの方法、例えば、バゼット式(QT=QT/√RR)、フリデリシア式(QT=QT/√RR)、または回帰に基づくアプローチ(QTLC=QT+0.154(1−RR)があり、式中のRRは、一QRS群の開始から次のQRS群の開始までの間隔である。
先天性LQTSは、13の遺伝子の少なくとも一つの変異によって引き起こされる。
Figure 2016525580
KvLQT1の新規変異のホモ接合性キャリアは、ジェルベル・ラング・ニールセン症候群を有する。KvLQT1およびMinKが共集合してIKsチャネルを形成する。
遺伝型のLQTSは、電気的再分極を制御するイオンチャネルの一つを生じさせるかまたは「コードする」いくつかの遺伝子のうちの一つに変異が発生した場合に起こる。LQT1からLQT13として特徴付けられる、少なくとも13の異なる型の遺伝性LQTSがある。それらは、当初はEKGトレースの異なる形状によって特徴付けられ、後に特異的遺伝子変異と関連付けられている。LQT1型が最も頻度が高く、遺伝子型同定患者のおおよそ40〜45%を占める。LQT2は、約35〜40%で次位であり、SCN5A変異からのLQT3が約5〜10%を占める。二つの変異を有する患者は、全患者の1%未満を占めるようであるが、これは、より新しい遺伝子技術でより多くの患者を研究すると変わるかもしれない。
用語「処置」または「処置する」は、1)疾患もしくは状態を防止するかまたは疾患もしくは状態から保護すること、つまり、臨床症状が発生しないようにすること;2)疾患または状態を阻害すること、つまり、臨床症状の発生を阻止または抑制すること;または3)疾患または状態を軽減すること、つまり、臨床症状の後退を引き起こすことを目的とする、本明細書において開示する状態または疾患を有するかまたはそれに対する感受性がある被験体(例えばヒト)への本開示による化合物の任意の投与を意味する。いくつかの実施形態において、用語「処置」または「処置する」は、疾患または状態を軽減することを指し、すなわち、これは臨床症状の退行を生じさせることである。
本明細書において用いる場合、用語「防止する」は、それを必要とする患者の予防的処置を指す。予防的処置は、病気を患うリスクのある被験体に適切な用量の治療剤を提供し、それによってその病気の発症を実質的に防ぐことによって達成され得る。遺伝子変異の存在または変異を有することに対する素因は改変可能ではない場合がある。しかし、本明細書において用いる場合の予防的処置(防止)は、かかる遺伝子変異または素因によって生ずる疾患を有することの臨床的帰結または症状を回避/改善する可能性を有する。
ヒト医薬品において、最終誘発事象(単数または複数)が不明もしくは潜在的であり得るか、または患者が事象(単数または複数)の発生から相当に経過した後の時点までずっと確かめられていないことが理由で、「防止する」と「抑制する」とを区別することが常に可能ではないことは、当業者によって理解される。したがって、本明細書において用いる場合、用語「予防」は、本明細書において定義される「防止する」および「抑制する」の両方を包含する「処置」の一要素であることが意図される。用語「保護」は、本明細書において用いる場合、「予防」を含むことが意図される。
本明細書において用いる場合、語句「QTc間隔を低減させる」は、語句「QTcを短縮する」と同義である。
用語「患者」は、典型的には「哺乳動物」を指し、これには、ヒト、サル、ウサギ、マウス、家庭動物、例えばイヌおよびネコなど、農場動物、例えばウシ、ウマまたはブタなど、ならびに実験室動物が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、患者という用語は、明細書において定義される処置を必要とするヒトを指す。
「投与する」または「投与」は、患者への、一種またはそれより多くの種の治療剤の送達を指す。一実施形態において、投与は共投与であり、その結果、二種またはそれより多くの種の治療剤が1回で一緒に送達される。特定の実施形態において、二種またはそれより多くの種の治療剤は、単回剤形または「組合せ投薬単位」に共製剤化(coformulated)され得るか、または別々に製剤化され、引き続いて、典型的には静脈内投与または経口投与用の組合せ投薬単位に組み合わせられ得る。
「静脈内投与」は、静脈中に直接、すなわち「静脈内に」物質を投与することである。投与の他の経路と比較して、静脈内(IV)経路は、体の至る所に流体および薬剤を送達する最も速い方法である。注入ポンプは、送達される流量および総量に対して正確な制御を可能にすることができるが、流量における変化が重大な結果を有しない場合、またはポンプが利用可能でない場合には、点滴はしばしば、患者の高さより上にバッグを置くこと、および速度を調節するためのクランプを使用することによって、単純に流れる状態にされる。あるいは、患者が高流量を必要とし、IVアクセスデバイスが、それを収容するのに十分大きい直径を有するデバイスである場合には、急速注入器が使用され得る。これは、流体を患者に強制的に押し入れるために流体バッグの周囲に置かれた膨張可能なカフ、または注入される流体を加熱し得る同様の電気デバイスのいずれかである。患者が特定の回数だけ薬剤を必要とする場合、断続的注入が使用され、これは追加の流体を必要としない。それは、静脈内点滴(ポンプまたは重力点滴)と同じ技術を使用することができるが、医薬の全用量が与えられた後、管はIVアクセスデバイスから外される。いくつかの薬剤はIVプッシュまたはボーラスによっても与えられ、このことは、シリンジがIVアクセスデバイスに接続され、薬剤が直接注入される(それが静脈を刺激するかまたは急速すぎる効果を引き起こすならば、ゆっくりと)ことを意味する。医薬品がIV管の流体の流れに注入されたときに、管から患者への到達を確実にするいくつかの手段が存在しなければならない。通常これは、流体の流れが正常に流れ、それによって医薬品を血流中に輸送することを可能にすることによって達成される。しかし、上記注入に続いて、第2の流体注射「フラッシュ」が時々使用されることで、医薬品を血流中に、より迅速に押し入れる。
「経口投与」は、物質が口を通して摂取される投与経路であり、口腔、唇下および舌下投与を含み、ならびに、薬剤が口腔粘膜のいずれにも直接接触しないように例えば管を通して行われない場合には、腸内投与および呼吸器を通しての投与も含む。治療剤の経口投与のための典型的な形態としては、錠剤またはカプセルの使用が挙げられる。
「持続放出性製剤」は、治療剤を体内に長期間にわたってゆっくりと放出するように設計されている製剤であり、これに対して「即時放出性製剤」は、治療剤を体内に短縮された期間にわたって迅速に放出するように設計されている製剤である。いくつかの場合では、即時放出性製剤は、体内の所望の標的(例えば、胃)に達したらすぐに治療剤が放出されるのみであるようにコーティングしてもよい。
用語「化合物」はまた、化合物の非標識形態ならびに同位体標識形態を表すことが意図されている。同位体標識化合物は、1個またはそれより多くの原子が、選択された原子質量または質量数を有する原子によって置き換えられることを除いて、本明細書において与えられる式によって描写されている構造を有する。本開示の化合物に組み込むことができる同位体の例としては、限定されないが、H(重水素、D)、H(三重水素)、11C、13C、14C、15N、18F、31P、32P、35S、36Clおよび125Iなど、水素、炭素、窒素、酸素、リン、フッ素、および塩素の同位体が挙げられる。本開示の様々な同位体標識化合物は、例えば、H、13Cおよび14Cなどの放射性同位体が組み込まれているものである。かかる同位体標識化合物は、薬物もしくは基質組織分布アッセイを含む陽電子放出断層撮影法(PET)もしくは単一光子放射型コンピュータ断層撮影法(SPECT)など、代謝研究、反応動態研究、検出もしくは造影技術において、または患者の放射性処置において有用であり得る。
本開示の重水素標識または置換治療的化合物は、分布、代謝および排泄(ADME)に関係する、改善されたDMPK(薬物代謝および薬物動態)特性を有し得る。重水素などのより重い同位体での置換は、より高い代謝安定性、例えば、インビボ半減期の増加、投薬量要件の低減および/または治療指数の改善の結果生じる特定の治療的利点をもたらし得る。18F標識化合物はPETまたはSPECT研究に有用であり得る。本開示の同位体標識化合物およびそのプロドラッグは、一般に、非同位体標識試薬の代わりに容易に利用可能な同位体標識試薬を使用することにより、下に記載されているスキームまたは実施例および調製において開示されている手順を実施することによって調製され得る。この文脈における重水素は、化合物中の置換基としてみなされることは理解される。
かかるより重い同位体、特に重水素の濃度は、同位体濃縮因子によって定義され得る。本開示の化合物において、特定の同位体として具体的に指定されない任意の原子は、その原子のいずれかの安定した同位体を表すことが意図されている。別段の記述がない限り、ある位置を具体的に「H」または「水素」と指定する場合、その位置は、水素をその自然存在比の同位体組成で有すると理解される。したがって、本開示の化合物において、具体的に重水素(D)として指定される任意の原子は、重水素を表すことが意図されている。
多くの場合、本開示の化合物は、アミノ基および/もしくはカルボキシル基またはそれと同様の基が存在するので、酸および/または塩基の塩を形成することができる。
所与の化合物の「医薬的に許容され得る塩」という用語は、その所与の化合物の生物学的有効性および特性を保持する塩であって、生物学的にも他の点でも望ましくないものでない塩を指す。医薬的に許容され得る塩基付加塩を無機塩基および有機塩基から調製することができる。無機塩基から誘導される塩としては、単に例として、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、カルシウムおよびマグネシウム塩が挙げられる。有機塩基から誘導される塩としては、限定されないが、第一級、第二級および第三級アミンの塩、例えばアルキルアミン、ジアルキルアミン、トリアルキルアミン、置換アルキルアミン、ジ(置換アルキル)アミン、トリ(置換アルキル)アミン、アルケニルアミン、ジアルケニルアミン、トリアルケニルアミン、置換アルケニルアミン、ジ(置換アルケニル)アミン、トリ(置換アルケニル)アミン、シクロアルキルアミン、ジ(シクロアルキル)アミン、トリ(シクロアルキル)アミン、置換シクロアルキルアミン、二置換シクロアルキルアミン、三置換シクロアルキルアミン、シクロアルケニルアミン、ジ(シクロアルケニル)アミン、トリ(シクロアルケニル)アミン、置換シクロアルケニルアミン、二置換シクロアルケニルアミン、三置換シクロアルケニルアミン、アリールアミン、ジアリールアミン、トリアリールアミン、ヘテロアリールアミン、ジヘテロアリールアミン、トリヘテロアリールアミン、ヘテロ環式アミン、ジヘテロ環式アミン、トリヘテロ環式アミン、混合ジアミンおよび混合トリアミンなどが挙げられ、ここで、上記アミン上の置換基の少なくとも二つは異なり、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、およびヘテロ環式などからなる群から選択される。また、二つまたは三つの置換基が、アミノ窒素と一緒に、ヘテロ環式基またはヘテロアリール基を形成するアミンが挙げられる。アミンは、一般構造N(R30)(R31)(R32)のアミンであり、ここで、一置換アミンは、窒素上の三つの置換基(R30、R31およびR32)のうちの二つを水素として有し、二置換アミンは、窒素上の三つの置換基(R30、R31およびR32)のうちの一つを水素として有するのに対し、三置換アミンは、窒素上の三つの置換基(R30、R31およびR32)のいずれも水素として有さない。R30、R31およびR32は、様々な置換基、例えば水素、場合により置換されているアルキル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクリルなどから選択される。上述のアミンは、窒素上の一つ、二つまたは三つの置換基が上記名称の中に列挙されている通りである化合物を指す。例えば、用語「シクロアルケニルアミン」は、シクロアルケニル−NHを指し、ここで「シクロアルケニル」は本明細書において定義する通りである。用語「ジヘテロアリールアミン」は、NH(ヘテロアリール)を指し、ここで「ヘテロアリール」は本明細書において定義する通り、などである。
適するアミンの具体的な例としては、単に例として、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリ(イソプロピル)アミン、トリ(n−プロピル)アミン、エタノールアミン、2−ジメチルアミノエタノール、トロメタミン、リジン、アルギニン、ヒスチジン、カフェイン、プロカイン、ヒドラバミン、コリン、ベタイン、エチレンジアミン、グルコサミン、N−アルキルグルカミン、テオブロミン、プリン、ピペラジン、ピペリジン、モルホリン、N−エチルピペリジンなどが挙げられる。
医薬的に許容され得る酸付加塩は、無機酸および有機酸から調製され得る。無機酸から誘導される塩は、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などを含む。有機酸から誘導される塩は、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、シュウ酸、リンゴ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、サリチル酸などを含む。
本明細書において用いる場合、「医薬的に許容され得る担体」または「医薬的に許容され得る賦形剤」としては、すべての溶媒、分散媒、コーティング剤、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などが挙げられる。医薬活性物質のためのかかる媒体および剤の使用は当技術分野において周知である。任意の従来の媒体または剤が活性成分と不適合性である場合を除き、または本明細書において別段の指示がない限り、上記治療用組成物におけるその使用を企図している。補足活性成分を治療組成物に組み込むこともできる。
2.方法
一般に、本開示は、ヒト患者におけるQT間隔の延長を低減させるための方法であって、上記方法は、上記患者に有効量の化合物1もしくは化合物2
Figure 2016525580
またはその医薬的に許容され得る塩を投与することを含み、QT間隔の延長がSCN5Aの遺伝子変異によって引き起こされる方法に関する。
別の実施形態において、本開示は、ヒト患者におけるQT間隔の延長を低減させるための方法であって、上記方法は、上記患者に有効量の化合物1
Figure 2016525580
またはその医薬的に許容され得る塩を投与することを含み、QT間隔の延長がSCN5Aの遺伝子変異によって引き起こされる方法を提供する。
別の実施形態において、本開示は、QTcの短縮を、それを必要とする患者において行うための方法であって、上記患者に有効量の化合物1もしくは化合物2
Figure 2016525580
またはその医薬的に許容され得る塩を投与することを含む方法を提供する。
別の実施形態において、本開示は、ヒト患者における心エコー図または磁気共鳴映像法によって評価されるQTc間隔を低減させるための方法であって、上記方法は、上記患者に有効量の化合物1もしくは化合物2
Figure 2016525580
またはその医薬的に許容され得る塩を投与することを含み、QTc間隔がSCN5Aの遺伝子変異によって引き起こされる方法を提供する。
一実施形態において、本開示は、ヒト患者における心エコー図または磁気共鳴映像法によって評価されるQTc間隔を低減させるための方法であって、上記方法は、上記患者に有効量の化合物1
Figure 2016525580
またはその医薬的に許容され得る塩を投与することを含み、QTc間隔がSCN5Aの遺伝子変異によって引き起こされる方法を提供する。
一実施形態において、本開示は、ヒト患者における心機能不全を処置するための方法であって、上記方法は、上記患者に有効量の化合物1
Figure 2016525580
またはその医薬的に許容され得る塩を投与することを含み、心機能不全がSCN5Aの遺伝子変異によって引き起こされる方法を提供する。
一実施形態では、心機能不全を心エコー図または磁気共鳴映像法によって評価する。
一実施形態において、本開示は、ヒト患者におけるLQT症候群を処置するための方法であって、上記方法は、上記患者に有効量の化合物1もしくは2
Figure 2016525580
またはその医薬的に許容され得る塩を投与することを含む方法を提供する。
別の実施形態において、本開示は、ヒト患者におけるLQT3症候群の処置または防止であって、上記方法は、上記患者に有効量の化合物1もしくは2
Figure 2016525580
またはその医薬的に許容され得る塩を投与することを含む処置または防止を提供する。
別の実施形態において、本開示は、ヒト患者におけるLQT3症候群を処置するための方法であって、上記方法は、上記患者に有効量の化合物1
Figure 2016525580
またはその医薬的に許容され得る塩を投与することを含む方法を提供する。
一実施形態において、本開示は、ヒト患者における薬物誘発QT延長を処置する(低減させる)方法であって、治療有効量の化合物1もしくは化合物2またはその医薬的に許容され得る塩を投与することを含む方法に関する。例えば、ドフェチリド、メタドン、エリスロマイシン、シサプリド、モキシフロキサシンまたはジプラシドンの投与の結果生じるQT延長を、化合物1または化合物2の投与によって低減させ得る。
一実施形態において、本開示は、LQT3に罹患している哺乳動物における不整脈を防止する方法であって、有効量の化合物1
Figure 2016525580
またはその医薬的に許容され得る塩を投与することを含む方法に関する。
さらに別の実施形態において、本開示は、LQT1、LQT2またはLQT3症候群に罹患している哺乳動物における不整脈を処置または防止する方法であって、有効量の化合物1
Figure 2016525580
またはその医薬的に許容され得る塩を投与することを含む方法に関する。
3.化合物
本開示の実施形態は、4−(ピリミジン−2−イルメチル)−7−(4−(トリフルオロメトキシ)フェニル)−3,4−ジヒドロベンゾ[f][1,4]オキサゼピン−5(2H)−オンと命名された化合物1
Figure 2016525580
またはその医薬的に許容され得る塩を含む。
本開示の他の実施形態は、4−(ピリミジン−2−イルメチル)−7−(4−(トリフルオロメトキシ)フェニル)−3,4−ジヒドロベンゾ[f][1,4]オキサゼピン−5(2H)−オンと命名された化合物2
Figure 2016525580
またはその医薬的に許容され得る塩を含む。
化合物1および2は、下記の実施例1によって調製され得、米国特許出願公開第2013/0012492号に記載されており、この文献はあらゆる目的で、その全体が参考として本明細書に援用される。化合物1および2は、強力な遅延ナトリウムチャネル阻害剤である(米国特許公開第2013/0012492号を参照されたい)。
4.投与
化合物1または2を、単回用量または複数回用量のいずれかで、例えば参考として援用される特許および特許出願に記載されているような、類似の有用性を有する剤の許容される投与方式のいずれかによって患者に与えてもよい。投与方式としては、頬側投与、動脈内注射による投与、静脈内投与、腹腔内投与、非経口投与、筋肉内投与、皮下投与、経口投与、あるいは例えばステントなどの含浸もしくは被覆デバイス、または動脈挿入円筒形ポリマーによる投与が挙げられる。一実施形態では、化合物1を静脈内投与する。一実施形態では、化合物2を静脈内投与する。
一実施形態では、化合物1を例えば錠剤などで経口投与する。一実施形態では、化合物1を、それを必要とするヒト患者に、1日あたり約1mg〜約1gなどの有効量で投与する。一実施形態において、有効量は、1日あたり約0.1mg〜約200mgである。一実施形態において、有効量は、1日あたり約1mg〜約100mgである。他の実施形態において、有効量は、1日あたり約1mg、約3mg、約6mg、約9mg、約10mg、約12mg、約18mg、約20mg、約30mg、約40mg、約60mg、約80mgまたは約100mgである。他の実施形態において、有効量は、1日あたり約1mg、3mg、6mg、9mg、12mgまたは18mgである。特定の実施形態では、化合物1を1日1回投与する。さらに別の実施形態では、化合物1を処置の第1日目に(ならびに場合により第2日目、第3日目および/または第4日目に)約10mg〜約60mgの負荷投与量、その後、毎日1mg、2mg、3mg、5mg、6mgまたは10mgの維持量として投与する。別の実施形態では、資格を持つ治療奉仕者が患者の特定の要求に合うように用量レジメンを調整することができる。したがって、実際に投与される化合物の量が通常、処置される状態(単数または複数)、選択される投与経路、投与される実際の化合物(例えば、塩または遊離塩基)およびその相対活性、個々の患者の年齢、体重および応答、患者の症状の重症度などを含む、関連する状況を考慮して医師によって決定されることは理解される。
一実施形態では、化合物2を例えば錠剤などで経口投与する。一実施形態では、化合物2を、それを必要とするヒト患者に、例えば1日あたり約1mg〜約1gなどの有効量で投与する。一実施形態において、有効量は、1日あたり約0.1mg〜約200mgである。一実施形態において、有効量は、1日あたり約1mg〜約100mgである。他の実施形態において、有効量は、1日あたり約1mg、約3mg、約6mg、約9mg、約10mg、約12mg、約18mg、約20mg、約30mg、約40mg、約60mg、約80mgまたは約100mgである。他の実施形態において、有効量は、1日あたり約1mg、3mg、6mg、9mg、12mgまたは18mgである。特定の実施形態では、化合物2を1日1回投与する。さらに別の実施形態では、化合物2を処置の第1日目に(ならびに場合により第2日目、第3日目および/または第4日目に)約10mg〜約60mgの負荷投与量、その後、毎日1mg、2mg、3mg、5mg、6mgまたは10mgの維持量として投与する。別の実施形態では、資格を持つ治療奉仕者が患者の特定の要求に合うように用量レジメンを調整することができる。したがって、しかしながら、実際に投与される化合物の量が通常、処置される状態(単数または複数)、選択される投与経路、投与される実際の化合物(例えば、塩または遊離塩基)およびその相対活性、個々の患者の年齢、体重および応答、患者の症状の重症度などを含む、関連する状況を考慮して医師によって決定されることは理解される。
5.医薬製剤
化合物1または2を医薬製剤で投与してもよい。本開示によって企図される製剤はまた、注射による投与するための製剤でもあり得、ゴマ油、トウモロコシ油、綿実油または落花生油ならびにエリキシル、マンニトール、デキストロースまたは滅菌水溶液、および類似の医薬ビヒクルを用いる水性もしくは油性懸濁物またはエマルジョンを含み得る。食塩水水溶液も注射に従来使用されているが、本開示に関してはあまり好ましくない。エタノール、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコールなど(およびこれらの適する混合物)、シクロデキストリン誘導体および植物油も使用され得る。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティング剤の使用により、分散液の場合は必要とされる粒径の維持により、および界面活性剤の使用により維持することができる。微生物の作用の防止は、様々な抗菌および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどによって行うことができる。
滅菌注射液は、必要量の構成要素を、必要に応じて、上に列挙した様々な他の成分とともに、適切な溶媒に組み込み、その後、濾過滅菌することによって調製される。一般に、分散液は、塩基性分散媒と上に列挙したものからの他の必要成分とを含有する滅菌ビヒクルに様々な滅菌活性成分を組み込むことによって調製される。滅菌注射液の調製用の滅菌粉末の場合、好ましい調製方法は、活性成分と任意の追加の所望成分の粉末を、前もって滅菌濾過したそれらの溶液から生じさせる、真空乾燥技術および凍結乾燥技術である。
化合物1または2を含む医薬組成物を作製する場合、通常、活性成分を賦形剤もしくは担体によって希釈し、そして/またはカプセル、サシェ、紙もしくは他の容器の形態であり得るそのような担体の中に封入する。賦形剤が希釈剤としての役割を果たす場合、活性成分のためのビヒクル、担体または媒体として作用する、固体、半固体または液体材料(上記のとおり)であり得る。したがって、本組成物は、錠剤、ピル、粉末、ロゼンジ、サシェ、カシェ剤、エリキシル、懸濁物、エマルジョン、溶液、シロップ、エアロゾル(固体としてまたは液体媒体中)、軟膏(例えば10重量%までの活性化合物を含有するもの)、軟ゼラチンカプセルおよび硬ゼラチンカプセル、滅菌注射液ならびに滅菌包装粉末の形態であり得る。
適する賦形剤のいくつかの例としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アラビアゴム、リン酸カルシウム、アルギナート、トラガカント、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、滅菌水、シロップ、およびメチルセルロースが挙げられる。これらの製剤は、滑沢剤、例えばタルク、ステアリン酸マグネシウムおよび鉱油;湿潤剤;乳化剤および懸濁化剤;保存剤、例えばヒドロキシ安息香酸メチルおよびヒドロキシ安息香酸プロピル;甘味剤;ならびに矯味矯臭剤をさらに含むことができる。
本開示の組成物は、当技術分野において公知の手順を用いることにより、患者への投与後に活性成分の急速放出、持続性放出または遅延放出をもたらすように製剤化されてもよい。特定の実施形態では、持続放出性製剤を使用する。経口投与のための制御放出薬物送達システムは、ポリマー被覆リザーバまたは薬物ポリマーマトリックス製剤を含有する、浸透圧ポンプシステムおよび溶解システムを含む。制御放出システムの例は、米国特許第3,845,770号、同第4,326,525号、同第4,902,514号および同第5,616,345号に記載されている。
本組成物を好ましくは単位剤形で製剤化する。用語「単位剤形」または「複合投薬量単位」は、ヒト被験体および他の哺乳動物のための単位投薬量(unitary dosage)として適している物理的に別個の単位であって、各単位が、適する医薬賦形剤と関連して所望の治療効果を生じさせるように計算された所定量の活性材料を含有する単位(例えば、錠剤、カプセル、アンプル)を指す。本開示の活性剤は、広い投薬量範囲にわたって有効であり、一般に有効量で投与される。しかし、実際に投与される各活性剤の量が、処置される状態、選択される投与経路、投与される実際の化合物およびその相対活性、個々の患者の年齢、体重および応答、患者の症状の重症度などを含む、関連する状況を考慮して医師によって決定されることは理解される。
錠剤などの固体組成物を調製するために、主活性成分を医薬賦形剤と混合して、本開示の化合物の均質混合物を含有する固体予備製剤(preformulation)組成物を形成する。これらの予備製剤組成物を均質と言うとき、それは、活性成分がその組成物全体にわたって均一に分散しており、その結果、該組成物が同等に有効な単位剤形、例えば錠剤、ピルおよびカプセルに容易に細分され得ることを意味する。
本開示の化合物(I)を含む錠剤またはピルをコーティングするかまたは別の方法で配合して、長時間作用の利点を提供する剤形を提供するか、または胃の酸性状態から保護することができる。例えば、錠剤またはピルは、内部投薬量要素と外部投薬量要素とを含むことができ、該外部投薬量要素は該内部投薬量要素を覆う外被の形態である。化合物1または2と共投与される剤(単数または複数)とを腸溶層によって隔てることができ、この腸溶層は、胃内での崩壊に耐えて、内部要素が影響を受けずに十二指腸まで通り抜けることまたは内部要素の放出を遅延させることを可能にするのに役立つ。様々な材料をかかる腸溶層またはコーティングに使用することができ、かかる材料としては、多数のポリマー酸ならびにポリマー酸とシェラック、セチルアルコールおよび酢酸セルロースのような材料との混合物が挙げられる。
本明細書に記載する方法および当技術分野で周知の方法を用いて下記実施例において活性試験を行う。
本開示の好ましい実施形態を実証するために以下の実施例を含める。以下の実施例に開示する技術が、本開示の実施の際に十分に機能する、本発明者らが発見した技術を代表するものであり、したがって本発明の好ましい実施方式を構成すると考えることができるものであることは、当業者には理解されるはずである。しかし、本開示の趣旨および範囲から逸脱することなく、多くの変更が開示されている特定の実施形態になされて、同様のまたは類似の結果をなお達成することができることは、本開示を考慮して当業者には理解されるはずである。
全体にわたり、用いている略語は以下の意味を有する。
略語 意味
℃ 摂氏度
ACN アセトニトリル
ADME 吸収、分布、代謝および排泄
AP 活動電位
APD 活動電位持続時間
ATX II アネモニアスルカータ毒素
cm センチメートル
max 最大濃度
conc 濃縮された
CYP シトクロム酵素
d 二重線
DCM ジクロロメタン
dd 二重線の二重線
DMF ジメチルホルムアミド
DMSO/dmso ジメチルスルホキシド
dppf 1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン
EAD 早期後脱分極
ECG/EKG 心電図
ECHO 心エコー図
eq 当量
Et エチル
g グラム
h 時間
hERG ヒトether−a−go−go関連遺伝子
HPLC 高速液体クロマトグラフィー
Hz ヘルツ
IKr 心臓の急速遅延整流
INa 心臓の遅延ナトリウム電流
i.m. 筋肉内
i.v. 静脈内
iPr イソプロピル
J カップリング定数
Kg キログラム
LC 液体クロマトグラフィー
LQT/LQTS QT遅延症候群
M モル濃度
m 多重線
m/z 質量対電荷比
M+ 質量ピーク
M+H 質量ピークプラス水素
MAPD90 90%再分極での単相性活動電位持続時間
mg ミリグラム
MHz メガヘルツ
min/m 分
ml/mL ミリリットル
mM ミリモル濃度
mm ミリメートル
mmol ミリモル
Mol モル
MRI 磁気共鳴映像法
MS 質量分析
ms ミリ秒
mV ミリボルト
N 規定
nM ナノモル濃度
NMR 核磁気共鳴
PK 薬物動態
prep 分取
QT QT間隔
QTc 補正QT間隔
RT/rt 室温
s 秒
s 一重線
t 三重線
THF テトラヒドロフラン
δ 化学シフト
μA マイクロアンペア
μg マイクログラム
μL/μl マイクロリットル
μM マイクロモル濃度
VT 心室頻拍
実施例1:4−(ピリミジン−2−イルメチル)−7−(4−(トリフルオロメトキシ)フェニル)−3,4−ジヒドロベンゾ[f][1,4]オキサゼピン−5(2H)−オン(化合物1)
Figure 2016525580
化合物1−A(20g、0.083mol、1当量)および化合物1−B(25g、0.15mol、1.8当量)のDMF(150mL)溶液にNaOH溶液(20mL、10M、5当量)を室温でゆっくりと添加し(わずかに発熱を伴う)、室温で10分間撹拌し、その後、95℃で2時間加熱した。反応混合物を冷却した後、酢酸エチル(200mL)を添加し、有機層を分離した。有機物を水(20mL)、ブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮した。
残留物を1,4−ジオキサン(50mL)に溶解させ、これにジオキサン中4NのHCl(50mL)および濃HCl(2mL)を添加し、室温で4時間撹拌し、沈殿を濾過し、酢酸エチルで洗浄し、乾燥させた。化合物1−Cを明黄色固体として得た(30g)。
丸底フラスコの中の臭化物(15g、0.04mol、1当量)、ボロン酸(12.5g、0.06mol、1.5当量)および炭酸カリウム(22g、0.16mol、4当量)に、溶媒(150mL、トルエン/イソプロパノール/水:2/1/1)を添加し、窒素下で10分間撹拌した。上記溶液にパラジウム触媒(1g、0.012mol、0.02当量)を添加し、85℃で2時間加熱した。反応混合物を酢酸エチルで希釈し、有機層を分離し、有機層をセライトおよびシリカゲルのプラグに通して濾過し、濃縮した。酢酸エチル/ヘキサンを溶離剤として使用するシリカゲルでのカラム精製によって化合物1(13g)を得た。
化合物1(26g)の1,4−ジオキサン(25mL)溶液に4N HCl/ジオキサン(25mL)を添加し、続いて濃HCl(2mL)を添加し、室温で4時間撹拌した。溶媒を留去し、ジクロロメタンを添加し、留去し、その残留物に酢酸エチル(150mL)を添加し、室温で一晩撹拌し、沈殿を濾過し、酢酸エチル、ヘキサンで洗浄し、真空下で乾燥させた。得られた化合物1−HCl(24.8g)は白色固体であった。
H−NMR (CDCl) δ 8.72 (d, 2H, J = 5.2 Hz), 8.17 (d, 1H, J = 2.4 Hz), 7.59−7.63 (m, 3H), 7.26 (d, 2H, J = 3.2 Hz), 7.22 (t, 1H, J = 4.8 Hz), 7.10 (d, 1H, J = 8.4 Hz), 5.10 (s, 2H), 4.56 (t, 2H, J = 5.0 Hz), 3.77 (t, 2H, J = 5.0 Hz); MS m/z 416.1 (M+H).
実施例2:4−(ピリミジン−2−イルメチル)−7−(4−(トリフルオロメチル)フェニル)−3,4−ジヒドロベンゾ[f][1,4]オキサゼピン−5(2H)−オン(化合物2)
化合物2は、4−トリフルオロメチルフェニルボロン酸を4−トリフルオロメトキシフェニルボロン酸の代わりに用いることを除き、化合物1と同様の方法で調製する。
実施例3:生物学的データ
QT間隔を低減させることにおける有効性について化合物を試験するための方法は、当技術分野において公知である。
化合物1は、活動電位持続時間(APD)の短縮を示す(図1)。
化合物1は、QT延長症候群−3(LQT3)のモデルにおいて拍動ごとの変動の低減を示す(図2)。
化合物1は、ベースラインからのQTcの変化を示す(図3)。
化合物1は、LQT3患者におけるPKプロファイルが健常ボランティアにおけるPKプロファイルと同様であることを示す(図4)。
Figure 2016525580
10mgで、化合物1は、3名の遺伝性LQT3患者において予備的有効性(QTc短縮またはT波の形態)を示した。単回用量投与後、化合物1は、急速な吸収、二相性低下、低いクリアランスおよび長い半減期を有する。
LQT−3臨床研究において、10名の患者に化合物1の単回用量(10mg、20mg、30mgまたは60mg)を投薬した。QTcは、これらの被験体において20〜100ミリ秒の範囲で短縮された。化合物1は、これらの患者において十分認容されることが判明した。
実施例4:LQT3患者における化合物(I)の効果
進行中の第1相において、LQT3を有する被験体におけるQTc間隔に対する経口化合物(I)の効果を評価した。心臓ナトリウムチャネルの変異およびQTcが460ミリ秒を超えることが証明されているLQTS登録簿から特定されたLQT3を有する被験体が登録されることになる。四つの逐次的単回用量コホートおよび一つの複数回用量コホートが登録され、化合物(I)の単回用量(コホート1:10mg;コホート2:20mg;コホート3:30mg;コホート4:60mg)または化合物(I)の複数回用量(コホート5:第1日目−20mg、第2日目−40mg、第3〜7日目−1日1回6mg)が与えられた。
10名の被験体が登録された。これらの10名の被験体の中で、3名の被験体は化合物(I)の単回経口用量が与えられ、5名の被験体は二つの異なる投薬期間で化合物(I)が与えられ、2名の被験体は三つの異なる投薬期間で化合物(I)を与えられた。予備安全性評価は、化合物(I)がすべての被験体によって十分認容されたことを示す。ベースラインからのQTc間隔の変化(コホート1〜4については−1日目、コホート5については−2日目と−1日目の平均)を二つの異なる方法で分析した。1)投薬後12時間の間の平均昼間QTcの変化(QTc間隔 AUC0〜12/12)および2)投薬後12時間以内の最大同時刻QTc変化。QTcの短縮がすべての用量レベルで観察された。複数回用量コホート(図5〜6に示す)において、QTc短縮に対する化合物(I)の効果は用量依存的であり、第1日目の20mgと比較して第2日目の40mg後により大きなQTc短縮があった。より重要なこととして、QTc短縮は、第3〜7日目の6mgの維持量の間、持続された。
さらに、心機能に対する化合物(I)の効果をECHOによって評価した。単回用量コホートについては、心エコー検査(ECHO)をベースライン(−1日目)で、ならびに第1日目の化合物(I)の単回経口用量後3時間および6時間で行った。複数回用量コホート(コホート5)については、ECHOをベースライン(−1日目)で、第1日目の化合物(I)の単回経口用量後3時間および6時間で、ならびに第4日目および第7日目の用量後3時間で行った。化合物(I)は、ECHOによって評価した左心室(LV)機能に対して影響を及ぼさなかった。
結論として、今までに行った第一相研究に参加した被験体についての予備的データに基づき、化合物(I)は十分に認容され、ECHOによって測定した心機能に影響を及ぼさなかった。化合物(I)は、単回用量後にQTc間隔を短縮し、これは、複数回用量投与後、持続される。QTc短縮に対する化合物(I)の効果は、変異にもb遮断剤の同時使用にも無関係であるようである。
実施例5:ウサギ単離心臓実験
この研究におけるウサギ(ニュージーランドホワイト成体メス、2〜4kg;Western Oregon Rabbit Company、オレゴン州フィロマス)の使用は、「Guide for the Care and Use of Laboratory Animals」(NIH発行番号85−23、1996年改訂)に従い、Gilead Sciencesの動物実験委員会(Institutional Animal Care and Use Committees of Gilead Sciences)の承認を受けた。心臓を単離し、先に記載された(Wuら、2009)ランゲンドルフ法によって灌流した。簡単に言うと、房室結節領域を熱的に切除して心臓ブロックを作製し、心臓を1Hzの速度に調整した。左心室心外膜からの単相性活動電位(MAP)および擬似12リード心電図(ECG)を記録した。10〜20分の平衡期間後、心臓をビヒクル(変性クレブス・ヘンゼライト緩衝液)、E−4031に曝露し、その後、定常状態効果が達成されるまでE−4031の継続的存在下で化合物1の漸増濃度に曝露した。再分極が90%完全であるレベルでのMAPの持続時間(MAPD90)を測定した。結果を図7に示す。
実施例6:ウサギ単離左心室ウェッジ標本
ウサギ単離左心室ウェッジを先に記載した(Yanら、1996、2009)ように調製した。簡単に言うと、胸部を左開胸によって開き、心臓を切除し、20mmol/L[Kを含有する低温(4℃)タイロード溶液からなる心停止液に入れ、解剖トレーに移動させた。おおよそ1×1×0.8または0.8×0.8×0.4cmの寸法を有する経壁ウェッジを左心室から切断した。組織に、左前下行動脈または別の冠動脈の細い(直径、約100μm)枝を介してカニューレを挿入し、心停止液を灌流させた。心臓切除からカニューレ挿入および動脈灌流までの全期間は4分未満であった。未灌流組織をカミソリの刃で注意深く除去した。その後、標本を組織浴に入れ、95%O/5%CO(36±1℃)で緩衝した以下の組成(mmol/L)のタイロード溶液を動脈灌流させた:NaCl 129、KCl 4、NaHPO 0.9、NaHCO 20、CaCl 1.8、MgSO 0.5、グルコース 5.5、およびインスリン 1U/L。灌流液をローラーポンプ(Cole Parmer Instrument Co)によって動脈に送達した。灌流圧を圧力変換器(World Precision Instruments,Inc)でモニタリングし、灌流流速の調整により40mmHg〜50mmHgの間で維持した。標本を動脈灌流液に浸漬したままにし、それを組織表面(36±1℃)より2〜3mm上の高さに上昇させた。結果を図8に示す。
概要
4−(ピリミジン−2−イルメチル)−7−(4−(トリフルオロメトキシ)フェニル)−3,4−ジヒドロベンゾ[f][1,4]オキサゼピン−5(2H)−オン(化合物1)および4−(ピリミジン−2−イルメチル)−7−(4−(トリフルオロメチル)フェニル)−3,4−ジヒドロベンゾ[f][1,4]オキサゼピン−5(2H)−オン(化合物2)は、強力かつ選択的な心臓遅延ナトリウム電流(INa)の阻害剤である。驚くべきことに、4−(ピリミジン−2−イルメチル)−7−(4−(トリフルオロメトキシ)フェニル)−3,4−ジヒドロベンゾ[f][1,4]オキサゼピン−5(2H)−オンがヒトにおけるQT延長症候群、特にLQT3の処置に有効であることが見出されている。有利なことに、4−(ピリミジン−2−イルメチル)−7−(4−(トリフルオロメトキシ)フェニル)−3,4−ジヒドロベンゾ[f][1,4]オキサゼピン−5(2H)−オンは、QT延長を示さず(IKrチャネルを阻害せず)、シトクロムP450(CYP)酵素またはP−糖タンパク質を阻害しない。
本発明の実施形態において、例えば以下の項目が提供される。
(項目1)
ヒト患者におけるLQT症候群を処置するための方法であって、前記患者に有効量の化合物(1)もしくは(2)
Figure 2016525580
またはその医薬的に許容され得る塩を投与することを含む、方法。
(項目2)
ヒト患者において心エコー図または磁気共鳴映像法によって評価されるQTc間隔を低減させるための方法であって、前記方法は、前記患者に有効量の化合物1もしくは2
Figure 2016525580
またはその医薬的に許容され得る塩を投与することを含み、前記QTc間隔がSCN5Aの遺伝子変異によって引き起こされる、方法。
(項目3)
前記化合物が、
Figure 2016525580
またはその医薬的に許容され得る塩である、項目1に記載の方法。
(項目4)
前記化合物が、
Figure 2016525580
である、項目1に記載の方法。
(項目5)
前記化合物が、
Figure 2016525580
またはその医薬的に許容され得る塩である、項目1に記載の方法。
(項目6)
前記化合物が、
Figure 2016525580
である、項目1に記載の方法。
(項目7)
前記化合物が静脈内投与される、項目1または2に記載の方法。
(項目8)
前記化合物が経口投与される、項目1または2に記載の方法。
(項目9)
前記有効量が、1日あたり約0.1mg〜約100mgである、項目1または2に記載の方法。
(項目10)
前記有効量が、1日あたり約1mg、3mg、6mg、9mg、10mg、12mg、18mg、20mg、30mg、40mgまたは60mgである、項目1または2に記載の方法。
(項目11)
前記有効量が、1日あたり約1mg、3mg、6mg、9mg、12mgおよび18mgである、項目1または2に記載の方法。
(項目12)
前記化合物が1日1回投与される、項目7〜11のいずれか一項に記載の方法。
(項目13)
前記LQT症候群がLQT3である、項目1に記載の方法。
(項目14)
前記LQT症候群がLQT1またはLQT2である、項目1に記載の方法。
(項目15)
ヒト患者におけるQT間隔の延長を低減させるための医薬の製造における、化合物1もしくは2
Figure 2016525580
またはその医薬的に許容され得る塩の使用であって、前記QT間隔の延長がSCN5Aの遺伝子変異によって引き起こされる、使用。
(項目16)
LQT症候群を処置するための医薬の調製のための、化合物1もしくは2
Figure 2016525580
またはその医薬的に許容され得る塩の使用。
(項目17)
前記化合物が化合物1
Figure 2016525580
である、項目15または16に記載の使用。
(項目18)
前記化合物が化合物2
Figure 2016525580
である、項目15または16に記載の使用。
(項目19)
前記LQT症候群がLQT3である、項目16に記載の使用。
(項目20)
前記LQT症候群がLQT1またはLQT2である、項目16に記載の使用。

Claims (20)

  1. ヒト患者におけるLQT症候群を処置するための方法であって、前記患者に有効量の化合物(1)もしくは(2)
    Figure 2016525580
    またはその医薬的に許容され得る塩を投与することを含む、方法。
  2. ヒト患者において心エコー図または磁気共鳴映像法によって評価されるQTc間隔を低減させるための方法であって、前記方法は、前記患者に有効量の化合物1もしくは2
    Figure 2016525580
    またはその医薬的に許容され得る塩を投与することを含み、前記QTc間隔がSCN5Aの遺伝子変異によって引き起こされる、方法。
  3. 前記化合物が、
    Figure 2016525580
    またはその医薬的に許容され得る塩である、請求項1に記載の方法。
  4. 前記化合物が、
    Figure 2016525580
    である、請求項1に記載の方法。
  5. 前記化合物が、
    Figure 2016525580
    またはその医薬的に許容され得る塩である、請求項1に記載の方法。
  6. 前記化合物が、
    Figure 2016525580
    である、請求項1に記載の方法。
  7. 前記化合物が静脈内投与される、請求項1または2に記載の方法。
  8. 前記化合物が経口投与される、請求項1または2に記載の方法。
  9. 前記有効量が、1日あたり約0.1mg〜約100mgである、請求項1または2に記載の方法。
  10. 前記有効量が、1日あたり約1mg、3mg、6mg、9mg、10mg、12mg、18mg、20mg、30mg、40mgまたは60mgである、請求項1または2に記載の方法。
  11. 前記有効量が、1日あたり約1mg、3mg、6mg、9mg、12mgおよび18mgである、請求項1または2に記載の方法。
  12. 前記化合物が1日1回投与される、請求項7〜11のいずれか一項に記載の方法。
  13. 前記LQT症候群がLQT3である、請求項1に記載の方法。
  14. 前記LQT症候群がLQT1またはLQT2である、請求項1に記載の方法。
  15. ヒト患者におけるQT間隔の延長を低減させるための医薬の製造における、化合物1もしくは2
    Figure 2016525580
    またはその医薬的に許容され得る塩の使用であって、前記QT間隔の延長がSCN5Aの遺伝子変異によって引き起こされる、使用。
  16. LQT症候群を処置するための医薬の調製のための、化合物1もしくは2
    Figure 2016525580
    またはその医薬的に許容され得る塩の使用。
  17. 前記化合物が化合物1
    Figure 2016525580
    である、請求項15または16に記載の使用。
  18. 前記化合物が化合物2
    Figure 2016525580
    である、請求項15または16に記載の使用。
  19. 前記LQT症候群がLQT3である、請求項16に記載の使用。
  20. 前記LQT症候群がLQT1またはLQT2である、請求項16に記載の使用。
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