JP2016519306A - スピン偏極の移動 - Google Patents

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Abstract

一部の態様において、スピン集団の偏極は、空洞ベースの技術を用いて増大することができる。試料は、第1のスピン集団と第2のスピン集団を閉じ込める。駆動場が、第1のスピン集団を空洞と結合し、この結合は、第1のスピン集団の偏極を増大する。偏極は、第1のスピン集団から第2のスピン集団に移動される。一部の例では、偏極は、試料内で溶媒又は大量の化学種から溶質又は低濃度の化学種に移動される。【選択図】図1D

Description

〔関連出願への相互参照〕
本出願は、2013年5月3日出願の米国特許仮出願第61/819,103号及び2014年1月31日出願の米国特許仮出願第61/934,205号に対する優先権を主張するものであり、両方の優先権文書の内容全体は、これにより引用によって組み込まれる。
本文書は、磁気共鳴環境においてスピン偏極を移動することに関する。
磁気共鳴システムにおいて、信号対ノイズ比(SNR)は、一般的に、スピン偏極と、環境との熱平衡に達するのに必要とされる時間とに依存する。エネルギ緩和時間T1によって特徴付けられる熱平衡に達するのに必要とされる時間は、多くの場合に、例えば低温では長くなる。量子系からエントロピーを除去するための従来技術は、取りわけ、動的核偏極(DNP)、アルゴリズム冷却、光ポンピング、レーザ冷却、及びマイクロ波冷却を含む。
様々な手法が、磁気共鳴用途において信号対ノイズ比(SNR)を高めるために使用されている。例えば、複数回の取得にわたる信号平均化は、SNRを高めるために多くの場合に使用される。別の手法は、例えば、複数の誘導コイルを重ねてフェーズドアレイ技術を使用することにより、誘導プローブ感度を高めることである。一部のシステムでは、誘導プローブは、誘導プローブ内の固有ノイズを低減するために寒剤に埋め込まれる。
一部の態様において、スピン集団の偏極は、空洞ベースの技術を用いて増大される。試料は、第1のスピン集団と第2のスピン集団を閉じ込める。駆動場が、第1のスピン集団を空洞と結合し、この結合は、第1のスピン集団の偏極を増大する。偏極は、第1のスピン集団から第2のスピン集団に移動される。一部の場合に、第1及び第2のスピン集団は、試料内の2つの異なる材料又は化学種である。
一部の実施では、液体試料は、溶媒材料に溶解した溶質材料を含み、又は固体試料は、低濃度の化学種と大量の化学種との組成物を含む。一部の事例では、溶媒又は大量のスピン化学種は、空洞ベースの技術によって偏極することができ、この偏極は、溶質又は低濃度のスピン化学種に移動することができる。偏極は、例えば、試料が液体である場合は核オーバーハウザー効果(NOE)、試料が固体である場合は交差偏極(CP)、又は時に他の技術を通じて溶質又は低濃度スピン化学種に移動することができる。
一部の実施では、スピン集団の偏極は、スピン集団に影響を及ぼすインコヒーレントな熱過程(例えば、熱スピン−格子緩和、自然放出等)よりも高速に増大する。一部の実施では、スピン集団は、その熱平衡偏極よりも強い偏極に到達する。スピン集団の偏極を増大することは、改善されたSNR又は一部の場合に他の利点をもたらす場合がある。
1つ又はそれよりも多くの実施の詳細を添付図面及び下記の説明に示している。他の特徴、目的、及び利点は、これらの説明及び図面、並びに特許請求の範囲から明らかであろう。
様々な図面内の類似の参照符号は類似の要素を示している。
例示的磁気共鳴システムの概略図である。 例示的制御システムの概略図である。 スピン集団の偏極を増大するための例示的技術の流れ図である。 例示的磁気共鳴システムの概略図である。 スピン集団の偏極を増大するための例示的技術の流れ図である。 例示的磁気共鳴システムにおけるスピン共鳴周波数、空洞共鳴周波数、及びラビ周波数を示すプロット図である。 2レベル空洞に結合されたスピンに関する2つの例示的エネルギレベル図である。 例示的空洞冷却スピン集団のディッケ部分空間に関する−<Jx(t)>/Jの正規化予想値の疑似推移を示すプロット図である。 空洞に結合された例示的スピン系のエネルギレベル図である。 例示的3スピンヒルベルト空間の図である。 例示的スピン集団に対して計算した有効冷却時間を示すプロット図である。 例示的空洞ベース冷却過程におけるエントロピー流れを示す概略図である。 図8Aに示す速度ΓSC及びΓCFの例示的値を示すプロット図である。 例示的磁気共鳴撮像システムの概略図である。
ここで、例えば、スピン集団を急速に偏極することによって磁気共鳴システム内の信号対ノイズ比(SNR)を高めるために使用することができる技術を説明する。説明する技術は、核磁気共鳴(NMR)分光測定、電子スピン共鳴(ESR)分光測定、核四重極共鳴(NQR)分光測定、核磁気共鳴撮像(MRI)、量子の技術及びデバイス、並びに他の用途を含む様々な状況でこれら及び他の利点を達成するために使用することができる。
磁気共鳴環境において集団スピン系に適用される空洞ベースの冷却技術を説明する。一部の実施では、集団スピン系の全ての結合角運動量部分空間をこの空洞のものに等しい純度を有する状態に空洞パラメータに関する時間尺度で能動的に駆動するために、低いモード体積及び高い品質係数を有する空洞が使用される。一部の事例では、空洞ベース冷却を角運動量部分空間の混合と交替させることにより、スピン集団は、スピンの特徴的熱緩和時間よりも有意に短いとすることができる時間尺度で空洞の純度に近づくことになる。一部の場合に、空洞ベースの冷却過程中の時間にわたるスピン集団の偏極の増強は、熱緩和速度(1/T1)よりも高速な有効偏極速度(1/T1,eff)を用いて、熱スピン格子緩和過程と同じくモデル化することができる。
一部の事例では、本明細書に説明する空洞ベースの冷却技術は、磁気共鳴用途において信号対ノイズ比(SNR)を高めるために使用することができる。例えば、空洞ベースの冷却技術は、磁気共鳴試料の偏極を増大することによって改善されたSNRを与えることができる。このSNRの改善は、例えば、スピンが発生させる信号が一般的に弱い核磁気共鳴撮像(MRI)及び液体状態磁気共鳴用途に使用することができる。偏極の増大及び対応するSNRの改善は、他の用途においても使用することができる。
従って、スピン集団から熱を除去する(スピン温度を低下させる)ために、又はスピン集団に熱を追加する(スピン温度を上昇させる)ためにこの空洞を使用することができ、それによってスピン偏極が増大される。スピン集団を加熱することにより、負のスピン温度に対応することができる逆偏極を生成することができる。
図1Aは、例示的磁気共鳴システム100の概略図である。図1Aに示す例示的磁気共鳴システム100は、主磁石システム102と、冷却システム120と、共鳴器及び空洞システム112と、スピン108を閉じ込める試料110と、制御システム118と、温度制御システム130と、勾配システム140とを含む。磁気共鳴システムは、追加の特徴又は異なる特徴を含むことができ、磁気共鳴システムの構成要素は、図1Aに示すように又は別の方式で配置することができる。
図1Aに示す例では、試料110は、試料温度(TS)に維持される。一部の実施では、試料温度(TS)は周囲温度である。温度制御システム130は、試料110を指定温度に維持する熱調整を提供することができる。一般的に試料110は、いかなる熱温度にも保持することができる。一部の例では、試料110は、液体材料又は液晶材料であり、試料温度(TS)は、試料110を液体状態に維持するのに適するレベルに保持される。一部の例では、試料110は、生体撮像対象(例えば、人体又は別のタイプの生体対象)であり、試料温度(TS)は、撮像対象にとって望ましい環境に維持するのに適するレベルに保持される。温度制御システム130は、能動的又は受動的な温度制御技術を使用することができる。例えば、温度制御システム130は、試料110の温度を制御するために、試料110の周りの制御された空気流、試料110の周りの加熱要素又は冷却要素110、試料110の周りの絶縁体要素、又はこれら及び他の特徴の組合せを使用することができる。
一部の実施では、温度制御システム130は、試料温度コントローラ(STC)ユニットを含む。STCユニットは、試料110の温度を能動的にモニタして温度調整を適用する温度調整器システムを含むことができる。試料110の温度は、例えば、試料温度を感知する熱電対を用いてモニタすることができる。モニタされた温度情報は、試料温度を調整するために、例えば、試料温度を指定定数値に保持するためにフィードバックシステムと共に使用することができる。一部の場合に、フィードバックシステムは、空気供給システムによって試料環境に供給される高温又は低温の空気を調節することができる。例えば、空気供給システムは、フィードバックシステムによって与えられる制御データに応答して試料環境内に加熱又は冷却した空気を連通させる送風機を含むことができる。
例示的な共鳴器及び空洞システム112は、以下により詳細に説明するように、スピン集団を制御するために使用することができる。一部の場合に、空洞及び共鳴器システム112は、スピン集団を加熱又は冷却することによってスピン集団の偏極を増大する。
冷却システム120は、共鳴器及び空洞システム112に対する熱環境を与える。一部の場合に、冷却システム120は、空洞の低温を維持するために空洞から熱を吸収することができる。図1Aに示す例では、冷却システム120は、共鳴器及び空洞システム112と熱接触状態にある。一部の場合に、冷却システム120は、共鳴器及び空洞システム112を液体ヘリウム温度(例えば、約4ケルビン)、液体窒素温度(例えば、約77ケルビン)、又は別の低温(例えば、100ケルビン未満)に維持する。一部の場合に、冷却システム120は、共鳴器及び空洞システム112をパルス管冷凍機温度(例えば、5〜11ケルビン)、ポンプドヘリウムクライオスタット温度(例えば、1.5ケルビン)、ヘリウム3冷凍機温度(例えば、300ミリケルビン)、希釈冷凍機温度(例えば、15ミリケルビン)、又は別の温度に維持する。一部の実施では、共鳴器及び空洞システム112の温度(TC)は、10ケルビン又はそれ未満又は100ケルビンに保持され、それに対して試料110は、試料内の材料に関する融点よりも高く(例えば、水性試料に対しては273ケルビンを超える温度に)保持される。
一部の場合に、共鳴器と空洞は、2つの別個の構造として実施され、これらの両方が、同じ低温に保持される。一部の場合に、共鳴器と空洞は、2つの別個の構造として実施され、空洞は低温に保持され、一方、共鳴器はより高い温度に保持される。一部の場合に、共鳴器/空洞統合システムが、低温に保持される。一般的に様々な冷却システムを使用することができ、冷却システム120の特徴を望ましい作動温度TC、共鳴器及び空洞システム112のパラメータ、又は磁気共鳴システム100の他の態様に対して適応させることができる。
一部の場合に、磁気共鳴システム100は、より低温のシステム構成要素(例えば、冷却システム120の構成要素、共鳴器及び空洞システム112の構成要素等)との熱相互作用から試料110を熱絶縁する1つ又はそれよりも多くの熱障壁を含む。例えば、熱障壁は、試料110と冷却システム120の間の直接接触を防ぎ、試料110と冷却システム120の間の熱伝達を低減するように適応させることができる。例えば、温度制御システム130は、試料110を冷却システム120との熱相互作用に対して絶縁する絶縁体を含むことができる。一部の実施では、試料110は、低い磁気感度を有するか又は他に磁気共鳴用途に適する熱絶縁材料で取り囲む(例えば、部分的又は完全に取り囲む)ことができる。例えば、ポリイミドベースのプラスチック材料(例えば、DUPONT(登録商標)によって製造されているVESPEL(登録商標))は、試料110とより低温の構成要素(例えば、冷却システム120、共鳴器及び空洞システム112等)との間の熱障壁として使用することができる。
一般的に様々な冷却システムを使用することができ、冷却システム120の特徴は、望ましい作動温度TCに対して、共鳴器及び空洞システム112のパラメータに対して、又は磁気共鳴システム100の他の態様に対して適応させることができる。図1Aに示す例では、冷却システム120は、共鳴器及び空洞システム112を封入し、その温度TCを試料110の温度TSよりも低く維持する。
一部の実施では、共鳴器及び空洞システム112は、室温(約300K)から液体ヘリウム温度(約4K)の範囲にある望ましい作動温度TCで作動し、冷却システム120は、望ましい作動温度TCを維持するために液流クライオスタットを使用する。冷却システム120は、中空クライオスタットを含むことができ、共鳴器及び空洞システム112は、クライオスタットの内側にある低温板上に装着することができる。共鳴器及び空洞システム112は、クライオスタットとの熱接触状態で装着することができ、熱輻射シールドで取り囲むことができる。冷却システム120は、液体寒剤を低温ヘッドに連続的に移送することができる移送管によって液体寒剤供給源(例えば、液体窒素デュワー又は液体ヘリウムデュワー)に接続することができる。流量及び使用する液体寒剤は、作動温度を制御することができる。通気孔を通してガスを排気することができる。
一部の場合に、冷却システム120は、共鳴器及び空洞システム112の望ましい作動温度TCを維持するために閉ループシステム(例えば、市販のGifford−McMahonパルス管低温冷却器)を使用する。閉ループシステム又はパルス管システムは、一部の事例では、高価な液体寒剤を連続的に移送する必要性を回避することができる。一部の閉ループ冷凍機では、クライオスタットは2つの段を有し、第1の段(例えば、40Kから80Kの範囲にわたる)は、第2の段に対する熱絶縁体として機能し、第2の段は、低温ヘッドと共鳴器及び空洞システム112とを包み込む。一部の例示的な閉ループシステムは、10ケルビンの安定した作動温度に達することができる。
一部の場合に、冷却システム120は、共鳴器及び空洞システム112の望ましい作動温度TCを維持するために液体ヘリウムクライオスタットを使用する。液体ヘリウムクライオスタットはそれ程複雑ではなく、一部の用途ではより安定したものとすることができる。液体ヘリウムクライオスタットが使用される場合に、共鳴器及び空洞システム112は、液体ヘリウム中に浸漬する(例えば、完全又は部分的に浸漬する)ことができる。システムは、液体窒素を含む外側デュワーと、液体ヘリウムを含む内側デュワーとを含むことができ、これらの2つのデュワーは、真空ジャケット又は別の熱絶縁体によって分離することができる。一般的に液体ヘリウムクライオスタットシステムは、約4ケルビンの安定した作動温度に達することができる。
一部の場合に、冷却システム120は、共鳴器及び空洞システム112の望ましい作動温度TCを維持するためにヘリウム−ガス−流れ(又はポンプドヘリウム)クライオスタットを使用する。一部の市販ヘリウム−ガス−流れ(又はポンプドヘリウム)クライオスタットは、1.5ケルビンの安定した作動温度に達することができる。そのような場合に、共鳴器及び空洞システム112は、クライオスタットの内側に装着することができ、ヘリウム−ガス−流れを共鳴器及び空洞システム112の面にわたって連通させることができる。一部の実施では、冷却システム120は、共鳴器及び空洞システム112を取り囲む真空ジャケットによって熱絶縁された液体ヘリウムデュワーを含み、弁(例えば、液体ヘリウムデュワー内で機械的に制御されるニードル弁)は、デュワーからのヘリウム流を制御することができる。弁は、ガス加熱器内に開くポートを液体ヘリウムが蒸発して共鳴器及び空洞システム112に流れるように制御することができる。弁及び加熱器は、望ましい温度調整を与えるように外部から制御することができる。
一部の例示的なヘリウム−ガス−流れクライオスタットは、その中のヘリウムガスの蒸気圧を下げることによって1ケルビンの作動温度に達することができる。この作動温度への到達は、容器の内側の小型入れ物(「1−Kポット」として公知)内のヘリウムに対してポンピングを行って蒸気圧を下げ、それによって液体ヘリウムの沸点を下げる(例えば、4.2ケルビンから1ケルビンに)ことによって達成することができる。一部のシステムは、更に冷却することができ、例えば、ヘリウム3同位体(一般的にヘリウム4同位体よりも高価である)を用いてミリケルビン温度に達することができる。ヘリウム3は、かなり低い蒸気圧までポンピングすることができ、それによって沸点は200ミリケルビン程度の低さまで下がる。漏出を回避し、ヘリウム3材料を保存するために閉ループシステムを使用することができる。
一部の場合に、冷却システム120は、共鳴器及び空洞システム112の望ましい作動温度TCを維持するために希釈冷凍機システムを使用する。一般的に希釈冷凍機システムは、上述のヘリウム−ガス−流れクライオスタットと類似のヘリウム3循環システムを使用する。希釈冷凍機システムは、1−Kポットに入る前にヘリウム3を予備冷却することができ、それによって2ミリケルビン程度の低さの作動温度が得られる。
図1Aに示す磁気共鳴システム100は、試料110内のスピン集団を偏極することができる。例えば、磁気共鳴システム100は、スピン集団を熱平衡状態又は別の状態(すなわち、熱平衡状態以外の熱平衡状態よりも強く又は弱く偏極されたものとすることができる状態)にスピン集団を冷却又はマッピングすることができる。一部の場合に、空洞ベースの冷却技術は、共鳴器及び空洞システム112の温度(TC)によって少なくとも部分的に決定される程度までスピン集団を偏極する。
図示の例では、試料110中のスピン108は、主磁石システム102、並びに共鳴器及び空洞システム112と個々に相互作用する。主磁石システム102は、スピン状態を量子化し、スピン集団のラーモア周波数を設定する。例えば、共鳴器が発生させる無線周波数磁場により、スピン磁化の回転をもたらすことができる。スピンは環境に弱く結合するが、空洞は環境(例えば、冷却システム120)に十分に結合し、従って、空洞が熱平衡に達するのに要する時間は、スピンが熱平衡に達するのに要する時間よりもかなり短い。共鳴器は、スピン集団が空洞に結合し、スピン系のディッケ状態及び他の角運動量部分空間が空洞との熱平衡に達するようにラビ振動を駆動することができる。
共鳴器及び空洞システム112は、空洞共鳴及びスピン共鳴の観点から説明することができる。スピン共鳴は、空洞共鳴からラビ周波数だけシフトしたものである。ラビ周波数(すなわち、ラビ振動の周波数)は、スピン共鳴周波数で印加される駆動場の強さの関数とすることができる。ラビ周波数は、スピンを空洞モードに結合するように設定することができる。例えば、駆動場の強さは、ラビ周波数が空洞共鳴とスピン共鳴の間の差に実質的に等しいように設定することができる。一部の場合に、システムは、Tavis−Cammingsハミルトン関数を通して空洞モードに結合されたスピン集団のディッケ状態と角運動量部分空間とのセット(すなわち、ディッケ部分空間及び角運動量部分空間における状態)としてモデル化することができる。
低いモード体積及び高い品質係数を有する空洞は、スピン集団に対して強いスピン空洞結合をもたらすことができる。一部の事例では、ディッケ状態と空洞の間の光子交換速度は、
(Nsは、スピン集団内のスピンの数)及びg(単一スピンに関するスピン空洞結合強度)としてスケーリングされる。一部の例では、スピン空洞結合強度は、モード体積の平方根に反比例し、アドミタンス(すなわち、空洞の品質係数)の平方根に正比例する。
一部の実施では、空洞は効率的かつ急速に冷却され、空洞の熱容量は、スピンの熱容量と比較して大きい。一部の事例では、スピン空洞相互作用によってもたらされる偏極速度は、熱T1緩和過程よりも有意に高速なものとすることができる。一部の場合に、スピン空洞相互作用によってもたらされる偏極速度は、自然放出、誘導放出、熱T1緩和、又はその他を含むスピン集団に影響を及ぼすいずれかの内部緩和過程よりも高速である。例えば、低モード体積及び高品質係数の空洞、効率的空洞冷却、効率的スピン空洞結合、角運動量部分空間の混合、又はこれら及び他の特徴の組合せの結果として、スピン集団を基底状態に向けて急速に冷却することができる。角運動量部分空間の混合は、例えば、空洞冷却過程を繰り返し、双極子結合、自然T2緩和、外部勾配場のような相互作用を用いて達成することができる。一部の態様において、この混合は、T1緩和過程の実質的な「短絡」を与えることができる。例えば、一部の事例においてより高速なスピン偏極を達成するために、図1Cに示す技術を使用することができる。一部の場合に、空洞のより低い温度(試料のより高い温度と比較して)の結果として、スピン集団はまた、熱平衡偏極を超える偏極に達する。従って、一部の場合に、空洞は、熱T1緩和過程よりも速い速度で偏極を増大することができ、かつ空洞は、熱T1緩和過程が生成するものよりも高い偏極度を生成することができる。
図1Cは、スピン集団の偏極を増大するための例示的過程195を示す流れ図である。例示的過程195は、例えば、図1Aに示す例示的磁気共鳴システム100又は別のタイプのシステムにおいて実施することができる。図1Cに示す例示的過程195は、追加の又は異なる作動を含むことができる。一部の場合に、個々の作動を複数の部分作動に分割することができ、又は作動のうちの2つ又はそれよりも多くを単一作動として組み合わせるか、又は同時に実施することができる。更に、作動の一部又は全ては、例えば望ましい状態又は偏極が得られるまで、又は終了条件に達するまで反復するか又は繰り返すことができる。
図1Cに示すように、196において、スピン集団の角運動量部分空間は、低エネルギ状態にマッピングされる。例えば、1つ又はそれよりも多くの角運動量部分空間をそのそれぞれの最も低い状態まで冷却することができる。一部の場合に、空洞とスピン集団の間のコヒーレント相互作用は、各角運動量部分空間をその最低エネルギ状態に駆動することができる。マッピングは、例えば、駆動場をスピン集団に印加することによって発生させることができる。197において、角運動量部分空間が接続される。角運動量部分空間を接続するのに、一部の異なる技術のうちの1つ又はそれよりも多くを使用することができる。一部の事例では、角運動量部分空間は、全体の空間の様々な部分空間を混合する過程によって接続される。例えば、角運動量部分空間を接続するのに、スピン間双極子相互作用、横断(T2)緩和、外部勾配場、類似の外部又は内部の脱位相相互作用、又はこれらのうちの1つ又はそれよりも多くの組合せを使用することができる。198において、より高い偏極状態が得られる。すなわち、スピン集団の状態は、スピン集団の角運動量部分空間がそのそれぞれの最低状態まで冷却され(196において)、かつ接続される(197において)前よりも強く偏極することができる。作動(196、197)は、例えば、望ましい偏極又は他の条件に達するまで1回又はそれよりも多く反復することができる。
一部の実施では、スピン集団の初期状態(196の前の)は、スピン集団の熱平衡状態よりも弱い偏極を有する。例えば、スピン集団の初期状態は、殆ど又は全く偏極を持たない高混合状態とすることができる。各反復回に対して生成される状態の偏極は、初期状態の偏極よりも強いとすることができる。一部の事例では、偏極は、各反復回において連続して増大される。例えば、作動(196、197)は、スピン集団が、熱平衡偏極又は他の指定された偏極レベル(例えば、スピン集団に印加される磁気共鳴シーケンスに対する入力偏極)に達するまで繰り返すことができる。
一部の実施では、オン・デマンドでスピン集団を偏極するために、過程195を使用することができる。例えば、過程195は、試料が磁気共鳴システムに配置されている間にいずれかの時点で開始することができる。一部の場合に、スピン集団は、撮像走査と走査の間、又は信号取得と取得の間に偏極される。一般的に、スピン集団は、過程195が開始される時にいずれかの状態(例えば、いずれかの完全混合状態又は部分混合状態)にある可能性がある。一部の場合に、過程195は、オン・デマンドで指定された時点、例えば、パルスシーケンス過程、分光測定過程、又は撮像過程、又は別の過程において、指定された量の時間にわたってラビ場を印加することによって開始される。
図1Aに示す例では、スピン集団は、磁気共鳴システム100の印加磁場と磁気的に相互作用する非ゼロスピンを有するいずれかの粒子集合とすることができる。例えば、スピン集団は、原子核スピン、電子スピン、又は原子核スピンと電子スピンとの組合せを含むことができる。原子核スピンの例は、水素原子核(1H)、炭素13原子核(13C)、及びその他を含む。一部の実施では、スピン集団は、同一のスピン1/2粒子の集合である。
例示的主磁石システム102は、図1Aにラベル付けして本明細書ではB0場104と記す均一な静磁場を発生させる。図1Aに示す例示的主磁石システム102は、超電導ソレノイド、電磁石、永久磁石、又は静磁場を発生させる別のタイプの磁石として実施することができる。図1Aでは、例示的B0場104は、試料110の体積にわたって均一であり、軸対称基準系106のz方向(本明細書では「軸線方向」とも記す)に沿って向けられる。
一部の事例では、勾配システム140は、1つ又はそれよりも多くの勾配場を発生させる。勾配場は、試料体積にわたって空間的に変化する磁場である。一部の場合に、勾配システム140は、試料110の異なる空間座標軸に沿って変化する勾配場を発生させることができる複数の独立した勾配コイルを含む。例えば、勾配システム140は、z軸、y軸、x軸、又は別の軸に沿って線形に変化する勾配場を発生させることができる。一部の場合に、勾配システム140は、勾配場を時間的に変化させる。例えば、制御システム118は、撮像アルゴリズム又はパルスプログラムに従って時間と空間にわたって変化する勾配場を生成するように勾配システム140を制御することができる。
図1Aに示す例示的システムでは、スピン108と主磁石システム102の間の相互作用は、Zeemanハミルトン関数H=−μ・Bを含み、式中のμはスピンの磁気モーメントを表し、Bは磁場を表している。スピン1/2粒子には、スピンがB0場104に位置合わせする状態、及びスピンがB0場104と逆位置合わせする状態という2つの状態が存在する。B0場104の向きがz軸に沿って定められる場合に、Zeemanハミルトン関数をH=−μz0と書くことができる。量子力学的にはμz=γσZであり、式中のγはスピン磁気回転比であり、σZは、角運動量固有状態|m>s及び固有値
を有するz方向スピン角運動量演算子であり、
はプランクの定数である。係数ωS=γB0は、ラーモア周波数としても公知のスピン共鳴周波数である。
図1Aに示す例では、B0場104に位置合わせ又は逆位置合わせのいずれかの状態にある集団の個々の構成要素の熱分布は、マクスウェル−ボルツマン統計によって決定され、熱平衡状態に対する密度行列は、次式によって与えられる。
式中の分母Zは分配関数であり、Hは、スピン集団のハミルトン関数である。分配関数は、Z=Σe-H/kTで表すことができ、式中の和は、全ての可能なスピン集団構成にわたるものである。定数kはボルツマン係数であり、Tは周囲温度である。従って、スピン集団の熱平衡状態(及びそれに関連付けられた熱平衡偏極)は、試料環境(磁場強度及び試料温度を含む)によって上式に従って少なくとも部分的に決定することができる。スピン集団の偏極は、例えば、スピン集団の状態を表す密度行列から計算することができる。一部の事例では、z方向のスピン偏極は、次式のようにz方向の磁化の予想値MZとして計算することができる。
式中の
は、合計スピン集団z角運動量であり、NSは集団スピンサイズである。
スピン集団がその環境と熱平衡化された状態で、熱平衡から離れるずれを引き起こすいずれの励起も、必然的に熱平衡化するのに時間(熱緩和速度T1によって特徴付けられる)を要することになる。熱緩和過程は、非熱状態から熱平衡状態に向けて1/T1に比例する指数関数的速度でスピン集団を推移させる。多くの磁気共鳴用途は、スピンを操作してこれらのスピンが発生させる誘導信号を取得する。信号対ノイズ比(SNR)を改善するために、通例的には信号平均化が使用される。しかし、熱緩和過程は時間を消費し、熱緩和過程によって生成される偏極は、試料環境(試料の熱温度及び主磁場強度を含む)によって制限される。図1Aに示す例では、スピン集団を熱平衡状態よりも強く偏極された状態にマップするために、共鳴器及び空洞システム112を使用することができ(例えば、図1Cに示す例示的過程195において又は別の方式で)、一部の場合に、共鳴器及び空洞システム112は、熱緩和過程よりも高速にスピン集団の偏極を増大する。
一部の事例では、共鳴器及び空洞システム112は、スピン集団を制御する共鳴器構成要素と、スピン集団を冷却する空洞構成要素とを含むことができる。共鳴器と空洞とは、別個の構造として実施することができ、又は共鳴器/空洞統合システムを使用することができる。一部の実施では、共鳴器は、試料110中のスピン108のうちの1つ又はそれよりも多くの共鳴周波数に同調される。例えば、共鳴器は、無線周波共鳴器、マイクロ波共鳴器、又は別のタイプの共鳴器とすることができる。
共鳴器及び空洞システム112は、マルチモード共鳴システムの例である。一部の例では、マルチモード共鳴システムは、1つ又はそれよりも多くの駆動周波数と、1つ又はそれよりも多くの空洞モードとを有し、時に他の共鳴周波数又はモードを有する。駆動周波数は、B0場104の強度と、スピン108の磁気回転比とによって決定されるスピンの共鳴周波数に同調することができ、空洞モードは、駆動周波数からシフトさせることができる。一部のマルチモード共鳴システムでは、駆動周波数と空洞モードとが単一統合構造によって与えられる。統合マルチモード共鳴器構造の例は、二重ループ共鳴器、鳥かご共鳴器、及び他のタイプの構造を含む。一部のマルチモード共鳴システムでは、駆動周波数と空洞モードとが別個の構造によって与えられる。一部の場合に、コイル及び空洞がスピン系には結合されるが、互いには結合しないように、低品質係数(低Q)コイルの幾何学形状を高Q空洞と統合することができる。本明細書に説明する技術は、コイルに印加される単一駆動周波数又は時に複数の駆動周波数を用いて作動させることができる。
図1Aに示す例では、空洞は、共鳴器の共鳴周波数とは異なる共鳴周波数ωcを有する。例示的共鳴器及び空洞システム112の空洞は、空洞の物理特性によって決定されるモードを有する電磁波に対応する。一般的に、空洞共鳴として基本モードが使用され、空洞の品質係数(Q)を散逸エネルギに対する空洞モード内の累積エネルギの比として定めることができる。周波数の単位を用いて、空洞の品質係数を次式で表すことができる。
式中のωcは、空洞共鳴周波数であり、Δωは、空洞共鳴の−3dBのバンド幅である。空洞共鳴が、ローレンツ関数である分布によって与えられる場合に、バンド幅は、空洞周波数応答の半値全幅(FWHM)によって与えられる。
一部の実施では、例示的共鳴器及び空洞システム112の空洞は、高い品質係数を有し(高Q空洞)、従って、空洞内の電磁場は、散逸する前に多数回反射されることになる。同等に、空洞内の光子は、ωが波の周波数である時に空洞散逸速度κ=(ω/Q)によって特徴付けられる長い寿命を有する。そのような空洞は、値が高い品質係数を達成するために、超電導材料で製造して低温に保つことができる。例えば、高Q空洞の品質係数は、103〜106の範囲又はそれよりも多い桁数を有することができる。これらの条件下では、空洞内の電磁場を量子力学的に量子調波振動子と同等であるものとして説明することができ、これは、空洞量子電磁力学又は空洞QEDとして公知の標準的な取り扱いである。空洞内の電磁場のこの取り扱いは、スピン自由度だけが量子力学的であり、それに対して磁場が依然として古典的であるZeeman相互作用と対照的である。
例示目的で、本明細書では、空洞モードの量子力学的説明を提供する。電磁波はマクスウェルの方程式を満たし、電場Eと磁場Bの両方をベクトルポテンシャルAを用いて次式のように説明することができる。

ベクトルポテンシャル自体は、以下の波動方程式を満たす。
式中のcは光速である。波動方程式は、次式の平面波のフーリエ数列の形式の形式解を有する。
式中の各フーリエ成分Ak(t)も波動方程式を満たす。これらの平面波は、空洞QEDの場合に空洞が対応するものであり、Ak(t)が
の形式の時間依存性を有すると仮定すると、電場及び磁場は次式によって与えられる。

式中の時間周波数及び空間周波数(それぞれωk及びk)は、ωk=ckによって関連付けられる。
従って、単一モードkのエネルギは次式によって与えられる。
式中の
及びμ0は、それぞれ、
であるような自由空間の誘電率及び透磁率であり、Vは、放射線場を含む空間又は空洞の体積である。実数部P及び虚数部Qを用いてベクトル係数を定めることにより、Akは次式として表される。
式中の
は、電磁波に対する偏極ベクトルである。Qk及びPkを使用すると、エネルギは次式によって与えられる。
この式は、単純な調波振動子のエネルギに関する形式にある。従って、電磁波のベクトルQk及びPkを調波振動子の位置ベクトル及び運動量ベクトルとして処理することができる。それによって単一量子(光子)に関する電磁場を調波振動子の標準的な正準量子化によって量子化することが可能になる。
次いで、空洞内の単一電磁モードの量子論的取り扱いを考察する。量子調波振動子に関するハミルトン関数は、正準P変数及び正準Q変数を用いて次式のように書くことができる。
次いで、それぞれ消滅演算子及び生成演算子と呼ぶ演算子a及びa+をベクトルP及びQを用いて次式のように定めることができる。

これらの演算子は、交換関係[a,a+]=1を満たす。従って、このハミルトン関数を生成演算子及び消滅演算子を用いて次式のように書くことができる。
2分の1という定数因数は、空洞モードの一定のエネルギシフトに対応し、従って、この一定の量だけエネルギを再調整する相互作用フレーム内に入ることによってこの因数を除去することができる。
このハミルトン関数のエネルギ固有状態は、空洞内の放射線の単一量子(光子)に対応するいわゆる数状態である。これらの数状態を|n>cとラベル付けし、n=[0,1,2,3,...]である。数状態に対する生成演算子及び消滅演算子の作用は、次式のように空洞に光子を生成するか又はそこから光子を除去することである。

従って、演算子N=a+a(数演算子)は、与えられた数状態に対する光子の合計数を次式として与える。
光子数状態|n>cは、エネルギ
を有する次式のハミルトン関数のエネルギ固有状態である。
次いで、例示的共鳴器及び空洞システム112の空洞が、スピン108を含むスピン集団に如何にして結合するかを説明する。支配的な相互作用は、ここでもまた、空洞電磁場へのスピン磁気双極子結合である。従って、次式が与えられ、ここで空洞の電磁場が量子力学的に取り扱われる。
調波振動子演算子を用いて、空洞内の磁場を次式のように書くことができる。
式中の
は伝播方向であり、μ0は自由空間透磁率定数であり、
はプランク定数であり、関数u(r,t)は、空間的及び時間的な波の挙動を表している。一部の例では、
とし、関数u(r,t)は、次式の形式を取る。
式中のu(y,z)は、空洞磁場空間分布を表している。この形式では、モード体積を次式のように表すことができる。
従って、モード体積は、空洞磁場の空間的分布に関連し、一般的に空洞磁場内のより高い空間均一性は、より低いモード体積をもたらす。この場合に、スピン空洞相互作用ハミルトン関数は次式になる。
式中の定数gは、各スピンと空洞の間の結合強度を表し、σxは、x成分スピン角運動量演算子である。一部の事例では、結合強度を次の表現式によって定めることができる。
上述の例示的な式では、スピン空洞結合強度は、モード体積の平方根に反比例する。
例示的共鳴器及び空洞システム112は、試料がB0場104に存在する間にスピン集団に印加されるラビ場を発生させることができる共鳴器を含む。例えば、ラビ場は、連続場又はパルススピン−ロッキング場とすることができる。スピン系の内部ハミルトン関数との組合せで、ラビ場は、スピン集団のユニバーサル制御を与えることができる。一部の実施では、このようにしていずれかの磁気共鳴実験又はパルスシーケンスを実施することができる。共鳴器は、例えば、制御システム118からの信号に基づいてラビ場を発生させることができ、磁場のパラメータ(例えば、位相、強さ、周波数、継続時間等)を制御システム118からの信号によって少なくとも部分的に決定することができる。
図2に示すプロット図200では、縦軸202が、共鳴器及び空洞の周波数応答を表し、横軸204が周波数範囲を表し、曲線206が、共鳴器及び空洞システム112の例示的実施に関する応答形状を示している。図示の例では、低い方の周波数応答(ωsとラベル付けしている)は共鳴器のものであり、高い方の周波数応答(ωcとラベル付けしている)は空洞のものである。空洞の品質係数(Q)は、共鳴器の品質係数(Q)よりも高く、共鳴周波数は、ラビ周波数(ΩRとラベル付けしている)だけ異なる。
例示的制御システム118は、図1Aに示す磁気共鳴システム100内の共鳴器及び空洞システム112、並びに勾配システム140を制御することができる。一部の場合に、制御システム118は、更に、磁気共鳴システム100の冷却システム120、温度制御システム130、又は他の構成要素の態様を制御することができる。制御システム118は、共鳴器及び空洞システム112に電気結合され、かつそれと通信するようになっている。例えば、制御システム118は、共鳴器、空洞、又はこれらの両方を駆動する電圧信号又は電流信号を供給するように適応させることができ、更に、共鳴器、空洞、又はこれらの両方から電圧信号又は電流信号を取得することができる。
試料110が撮像対象である場合に、制御システム118は、望ましい作動をスピンを操作する核磁気共鳴撮像パルスシーケンスを発生させる勾配波形と組み合わせることができる。パルスシーケンスは、受信磁気共鳴信号を処理して画像に再構成することができるようにスピン集団を空間的に符号化するために、例えば、共鳴器及び空洞システム112、並びに勾配システム140の作動を通して印加することができる。
図1Bは、例示的制御システム150の概略図である。図1Bに示す例示的制御システム150は、コントローラ152と、波形発生器154と、増幅器156と、送信機/受信機スイッチ158と、受信機160と、信号プロセッサ162と、勾配波形発生器164と、勾配電子機器166とを含む。制御システムは、追加の特徴又は異なる特徴を含むことができ、制御システムの特徴は、図1Bに示すように又は別の方式で作動するように構成することができる。
図1Bに示す例では、例示的制御システム150は、外部システム190と通信するようになっている。例えば、外部システム190は、共鳴器、空洞、又は磁気共鳴システムの別の構成要素とすることができる。制御システム150は、外部システム190又は別の外部供給源を含む1つ又はそれよりも多くの外部供給源によって供給される入力に基づいて作動させることができる。例えば、制御システムは、外部コンピュータ、操作者、又は別の供給源から入力を受け入ることができる。
図1Bに示す例示的制御システム150は、複数の作動モードで作動させることができる。第1の例示的作動モードでは、コントローラ152は、望ましい制御作動170を波形発生器154に供給する。望ましい制御作動170に基づいて、波形発生器154は波形172を発生させる。一部の場合に、波形発生器154は、更にシステムモデルデータ171を受け入れ、波形172を発生させる上でシステムモデルデータ171を使用する。波形172は、増幅器156によって受け取られる。増幅器156は、波形172に基づいて送信信号174を発生させる。この作動モードでは、送信機/受信機スイッチ158は、送信信号174を外部システム190に出力するように構成される。
第2の例示的作動モードでは、送信機/受信機スイッチ158は、外部システム190から信号を取得するように構成される。制御システム150は、取得信号を増幅、処理、分析、記憶、又は表示することができる。図1Bに示すように、送信機/受信機スイッチ158は、外部システム190から得られた信号に基づいて受信信号176を受信機160に供給する。受信機160は、受信信号176を調整して、調整された信号178を信号プロセッサ162に供給する。信号プロセッサ162は、調整された信号178を処理してデータ180を発生させる。データ180は、分析、表示、記憶、又は他の作業に向けてコントローラ152に供給される。
これら及び他の作動モードでは、コントローラ152は、勾配波形発生器164に望ましい制御作動182を与えることができる。望ましい制御作動182(望ましい制御作動170と同じとすることができ、又は関連する場合がある)に基づいて、波形発生器154は勾配波形184を発生させる。勾配電子機器166は、勾配波形184に基づいて勾配制御信号186を発生させ、勾配制御信号186は、外部システム190に供給される。一部の場合に、外部システム190内の勾配コイル又は別のデバイスが、勾配制御信号186に基づいて勾配場を発生させる。
一部の場合に、コントローラ152は、撮像対象内のスピン集団を空間的に符号化するために望ましい制御作動170及び182を指定するソフトウエアを含み、ソフトウエアは、受信信号176から導出したデータ180に基づいて撮像対象の画像を構成することができる。空間的符号化命令は、適切な磁気共鳴撮像技術(例えば、一般的にフーリエ変換アルゴリズムを含む)を使用することができ、対応する復号命令(例えば、一般的に逆フーリエ変換アルゴリズムを含む)によってデジタルデータから画像を構成することができる。
コントローラ152は、コンピュータ又はコンピュータシステム、デジタル電子コントローラ、マイクロプロセッサ、又は別のタイプのデータ処理装置とする(又は含む)ことができる。コントローラ152は、メモリ、プロセッサを含むことができ、汎用コンピュータとして作動させることができ、又は特定用途向けデバイスとして作動させることができる。
図1Dは、例示的磁気共鳴システム100’の概略図である。例示的磁気共鳴システム100’は、図1Aに示す磁気共鳴システム100と同様であり、類似の方式で作動させることができる。図1Dに示すように、試料110は、図1Aに示す第1のスピン群108と、第2のスピン群109とを含む。第2のスピン群109は、第1のスピン群108と同じか又は異なる化学種とすることができる。一部の場合に、各スピンセットは、異なる材料環境又は分子環境に存在する。例えば、試料110は、液体試料することができ、第2のスピン群109は、第1のスピン群108を含む溶媒に溶解した溶質の一部とすることができる。別の例として、試料110は、固体試料とすることができ、第2のスピン群109は、第1のスピン群108を含む大量の化学種の環境内の低濃度の化学種の一部とすることができる。一部の場合に、第1のスピン群108は、例えば図1Aに関して上述したように偏極することができ、第1のスピン群108の偏極は、第2のスピン群109に移動することができる。
例えば、空洞ベースの冷却を通じたスピン偏極移動は、磁気共鳴の実験、測定、又は撮像が実施される前に磁化の強化を与えるための準備段階として機能することができる。一部の実施では、この強化は、一部の従来技術を用いて達成することができる強化を超えることができる。偏極移動技術は、熱緩和時間T1よりも高速に磁化を強め、速度の利点を与えることができる。一部の場合に、偏極を必要に応じて移動することができるように、空洞ベースの冷却を必要に応じて作動させることができる。
一部の場合に、第1のスピン群108は、第2のスピン群109よりも有意に多数のスピンを含む。例えば、溶媒中のスピン数は、溶質中のスピン数よりも十分に大きいとすることができ(例えば、2倍よりも大きく、1桁大きい等)、大量の化学種内のスピン数は、低濃度の化学種内のスピン数よりも十分に大きいとすることができる(例えば、2倍よりも大きく、1桁大きい等)。一部の事例では、スピン集団が偏極される(例えば、空洞ベースの冷却技術により)速度は、集団内のスピン数に従って変化する。例えば、N個のスピンのスピン集団に関する冷却速度は、
に比例することができる。そのような冷却技術では、大きい方のスピン集団(例えば、溶媒又は大量の化学種)を小さい方のスピン集団(例えば、溶質又は低濃度の化学種)よりも高速に冷却することができる。更に、一部の事例では、溶媒から溶質への偏極の移動は、これらの両方がZeemanマニホルド内にあることで比較的高速である。従って、この場合に、少数のスピンを有する集団(緩慢に冷却されることになる)は、大小のスピン集団の双極子結合を通して移動された大きい集団の磁化を有することができる。全体的に、偏極及び移動の過程は、自然緩和(例えば、T1緩和)と小さい集団の直接冷却の両方よりもかなり高速なものとすることができる。
図1Eは、スピン偏極を移動するための例示的過程1000の流れ図である。例示的過程1000は、例えば、図1Dに示す例示的磁気共鳴システム100’又は別のタイプのシステムにおいて実施することができる。図1Eに示す例示的過程1000は、追加の又は異なる作動を含むことができる。一部の場合に、個々の作動は、複数の部分作動に分割することができ、又は作動のうちの2つ又はそれよりも多くは、単一作動として組み合わせるか、又は同時に実施することができる。更に、作動の一部又は全ては、望ましい状態又は偏極が得られるまで又は終了条件に達するまで反復又は繰り返すことができる。
図1Eに示す例では、1002において、溶媒及び溶質は熱平衡にある。一部の実施では、過程1000は、スピンが別の状態(すなわち、熱平衡状態以外の状態)にある時に開始することができる。1004において、溶媒が非熱偏極に偏極される。例えば、溶媒スピンは、図1Aに関して記述した例示的技術を使用することによって熱平衡偏極を上回って偏極することができる。
1006において、溶媒から溶質に偏極が移動される。例えば、偏極のうちの全て又は一部は、試料内の別のスピン化学種又は材料に移動することができる。一部の場合に、偏極は、パルスシーケンスを溶媒スピン、溶質スピン、又はこれらの両方に印加することによって移動される。例えば、パルスシーケンスは、溶媒スピンと溶質スピンの間の双極子相互作用からもたらされる偏極移動を促進することができる。偏極を移動するためのパルスシーケンスは、例えば、図1Dの磁気共鳴システム100’の共鳴器及び空洞システム112の共鳴器構成要素又は別の構成要素によって印加することができる。
一部の実施では、試料温度TSが空洞温度TCよりも高い状態で、溶媒と溶質の両方は、そのそれぞれの平衡偏極又は平衡磁化M0 A及びM0 Dを用いて温度TSにおいてこれらの環境と熱平衡になる。磁場104内では、試料スピンエネルギレベルは、大量のスピン化学種ではエネルギ差
及び低濃度のスピン化学種では
で分割され、ここでγA及びγDは、そのそれぞれの磁気回転比である。
図1Eに示す例では、溶媒(又は大量のスピン化学種)が偏極される前に両方のスピン化学種は最初に熱平衡にある。大量のスピン化学種を偏極した後に(例えば、図1Aに関して記述した空洞ベースの技術を用いて)、その磁化が強まり、スピン集団は非熱偏極状態にある。試料が液体である場合に、溶媒スピンの磁化は、例えば核オーバーハウザー効果(NOE)によって溶質スピンに移動することができる。例えば、核オーバーハウザー効果に基づいて偏極を移動するための従来技術を使用することができる。一部の事例では、溶媒スピンと溶質スピンの間の交差緩和が、溶媒磁化を溶質に移動することになり、この場合に、強化は、次式によって与えられる。
式中のMA 0,CCは、溶媒スピンの空洞冷却磁化であり、MD 0,PTは、溶媒スピンから溶質スピンへの偏極移動の後の溶質スピン磁化である。係数ηは、2つのスピン化学種の間の結合及び緩和効果、並びに溶質スピンとその環境との相互作用を特徴付けるものである。
試料が固体である場合に、交差偏極(CP)技術を使用することができる。例えば、交差偏極に基づいて偏極を移動するための従来技術を使用することができる。この場合に、大量のスピンの空洞冷却磁化MA 0,CCから始めて、この磁化を横断平面内に反転させる。その後に、それぞれのラビ駆動が等しいように(ハートマン−ハーン条件)、両方のスピン化学種にスピン固定駆動場を印加する。
式中のB1 A及びB1 Dは、各々がそれぞれのスピン化学種と共鳴状態にあり、大量のスピンから低濃度のスピンへの磁化の移動がもたらされる。強化は、次式の比に比例する。
次いで、試料110内のスピン集団(例えば、スピン108)を空洞に結合し、コヒーレントラビ駆動の下で冷却することができる例示的過程を示している。大きい静磁場(図1AにB0場104で表す)内で量子化され、共鳴器及び空洞システム112の高Q空洞に磁気結合される非相互作用スピン1/2粒子(図1Aにスピン108で表す)の誘導駆動集団を端緒とする。共鳴器及び空洞システム112の共鳴器によって与えられる駆動の存在下で、スピンは、コヒーレント放射過程を通して空洞と相互作用し、スピン空洞系を空洞に結合された単一集合磁気双極子として量子力学的に処理することができる。量子光学と同様に、スピン空洞動特性をTavis−Cammings(TC)ハミルトン関数が発生させるものとして説明する。制御場が、スピンのラーモア周波数で共鳴すると仮定すると、回転波近似(RWA)の下でのスピン空洞ハミルトン関数は、H=H0+HR(t)+HIによって与えられ、この場合に、次式が成り立つ。


ここでもまた、a(a)は、空洞を説明する生成(消滅)演算子であり、ΩRは、駆動場の強度(ラビ周波数)であり、ωcは、空洞の共鳴周波数であり、ωsは、スピンのラーモア共鳴周波数であり、gは、
を単位とする、集団内の単一スピンへの空洞の結合強度である。この場合に、次式が、Ns個のスピンから構成される集団に対する合計角運動量スピン演算子であるという表記法を用いた。
Ns個の同一のスピンから構成されるスピン集団の状態空間Vを結合された角運動量部分空間の直和として書くことができる。
上式においてNsが偶数(奇数)である場合に、j0=0(1/2)である。VJは、次元dJ=2J+1を有するスピンJ粒子の状態空間であり、同じ合計スピンJを有するnJ個の縮退部分空間が存在する。TCハミルトン関数は、大域的SU(2)対称性を有するので、この表現形式では部分空間の間で結合を行わないことになる。この表現形式において最も大きい部分空間をディッケ部分空間と呼ぶこの部分空間は、スピン集団の全ての全対称状態から構成される。ディッケ部分空間は、合計角運動量J=Ns/2を有する系に対応する。ディッケ部分空間に限定されたTCハミルトン関数はディッケモデルとして公知であり、量子光学に関して研究されている。
0の固有状態は、空洞に関する光子数状態と、Jz方向にある各合計スピン部分空間の集合的角運動量のスピン状態とのテンソル積|n>c|J,mzsである。この場合に、n=0,1,2,...、mz=−J,−J+1,...,J−1,Jであり、Jは、結合された角運動量部分空間VJをインデックス化する。合同系の集合的励起数は、Nex=aa+(Jz+J)によって与えられる。相互作用項HIはNexと可換であり、従って、系の合計励起数を保存する。この相互作用は、状態|n>c|J,mzsと状態|n+1>c|J,mz−1>s及び|n1>c|J,mz+1>sとの間でそれぞれ
及び
の速度での遷移を駆動することができる。
1=ωs(aa+Jz)によって定められる回転フレーム内に移った後に、スピン空洞ハミルトン関数は、次式に変換される。

式中のδω=ωc−ωsは、空洞共鳴周波数からの駆動の離調であり、ハミルトン関数内のいずれかの時間依存項を除去するために、標準の回転波近似(RWA)が行われる。
ここでH2=δωaa+ΩRx/2の相互作用フレーム内に移ると、ハミルトン関数は、次式に変換される。



式中のJ± (x)≡Jy±iJzは、x基底のスピン昇降演算子である。
δω>0に関する磁気共鳴交差緩和実験におけるハートマンハーン適合と同様に、Δ=δω−ΩRがδωと比較して小さいように、空洞離調を駆動のラビ周波数の近くに設定することができる。相互作用ハミルトン関数において2次の回転波近似を行うことにより、このハミルトン関数は、次式の空洞とスピンの間のx基底のH-ΩRフリップフロップ交換相互作用に還元される。
この回転波近似は、離調及びラビ駆動強度が、着目する時間尺度tcと比較して大きい領域(δω,ΩR≫1/tc)内で有効である。ここから、上付文字(x)を外すことにし、着目するスピン集団に対してJx固有ベースにおいて考察を進めることに注意しなければならない。
一部の実施では、スピン空洞交換相互作用を単離することにより、2つの系の間の効率的なエネルギ移送が可能になり、これらの2つの系が、制御場の相互作用フレーム内で合同平衡状態に緩和することが許される。集団スピン空洞結合のコヒーレントな強化は、角運動量部分空間VJにおけるスピン偏極を熱緩和速度を有意に超える速度で強化することができる。図3は、スピン空洞状態の結合エネルギレベルに関してこのコヒーレントな強化を示している。
図3は、2レベル空洞に結合されたスピンに関する2つの例示的エネルギレベル図302、304を示している。両方の図において、ケット|+0>は、スピン空洞系の基底状態を表し(この場合に、スピン及び空洞は、そのそれぞれの基底状態にある)、ケット|−1>は、スピン空洞系の励起状態を表し(この場合に、スピン及び空洞は、そのそれぞれの励起状態にある)、更にケット|+1>及び|−0>は中間状態を表している。図3では、直線矢印はコヒーレント振動を表し、曲線矢印は空洞散逸を表している。
図3は、空洞離調がラビ駆動強度に適合された時に、スピンとスピンを冷却する空洞の間のエネルギ交換遷移が促進されることを示している。左にあるエネルギレベル図302は、制御駆動によって与えられるコヒーレントな促進を伴わずにもたらされる遷移を示している。右にあるエネルギレベル図304は、Δ=δω−ΩRがδωと比較して小さい時に、制御駆動によって与えられるコヒーレントな促進を用いてもたらされる遷移を示している。左にあるエネルギレベル図302に示すように、制御駆動を伴わない場合に、全ての遷移経路が可能である。右にあるエネルギレベル図304は、ラビ駆動がオンにされ、かつ空洞離調がラビ周波数に適合された時に、スピンとスピンをそれらの基底状態に駆動する空洞との間のエネルギ交換遷移が促進されることを示している。
下記の説明では、スピン系の空洞誘起冷却をモデル化するために、空洞及びスピン集団の開放量子系説明を使用する。スピン空洞合同動特性は、スピン集団だけに対して作用する有効な散逸子の導出を可能にする時間畳み込みなし(TCL)のマスター方程式形式を用いてモデル化することができる。スピン部分空間VJはTCハミルトン関数によって結合されないので、状態空間ファクタ分解におけるJの全ての値に対して以下に続く導出が与えられる。
例示的スピン空洞系の推移は、次式のLindbladマスター方程式によって説明することができる。
式中のLIは、相互作用ハミルトン関数の下での推移を説明する超演算子LI(t)ρ=−i[HI(t),ρ]であり、Dcは、次式のように、空洞の品質係数を現象学的に光子振幅減衰チャネルとして説明する散逸子である。
この場合に、関数

は、環境の温度(例えば、冷却システム又は他の環境)を特徴付け、κは、空洞散逸速度(∝1/Q)である。数演算子の予想値は、環境の温度TCに次式によって関連付けられる。
式中のkBはボルツマン定数である。
散逸子の相互作用フレーム内のスピン集団の縮約動特性は、次式のTCLマスター方程式によって2次で与えられる。
式中のρs(t)=trc[ρ(t)]は、スピン集団の縮約状態であり、ρeqは、空洞の平衡状態である。
という条件下では、このマスター方程式は次式に還元される。
この場合に、次式は、空洞との結合に起因してスピン集団に対して作用する有効な散逸子及びハミルトン関数である。


という条件下では、次式の駆動スピン集団に対するマルコフマスター方程式を達成するために、上式内の積分の上限を無限大とすることができる。
この場合に、次式が成り立つ。
この場合に、Ωsは、有効ハミルトン関数の周波数であり、Γsは、スピン系の有効散逸速度である。
ここで、結合された角運動量ベースで対角であるスピン状態の推移
を考察することができる。この場合に、Jにわたる和は、部分空間VJにわたって和を取ったものであり、PJ,m(t)≦J,m│ρ(t)│J,m>は、状態ρJ,m=|J,m><J,m|内で時間tにおいてこの系を見出す確率である。この場合に、マルコフマスター方程式は、次式の占有率に対する速度方程式に還元される。
この場合に、次式が成り立つ。


ここで
を定めると、各部分空間VJに対して以下の行列微分方程式が得られる。
式中のMJは、次式の三重対角行列である。
初期占有率
によって指定される与えられた状態に対して、上述の微分方程式は、解
を有する。駆動スピン集団の各部分空間VJの平衡状態は、
を満たし、次式によって与えられる。
この場合に、次式が成り立つ。
スピン集団の平衡状態に対する合計スピン予想値は次式で与えられる。
の限界にある全対称ディッケ部分空間を考察すると、平衡における基底状態占有率は、
によって与えられ、最終予想値は、約
である。従って、ディッケ部分空間内の最終スピン偏極は、熱空洞偏極にほぼ同等である。
上述の例において離調δωが負であった場合に、ΩR=δωという一致の結果として、H+ΩR項が優勢になり、演算子J-とJ+とが入れ替えられたマスター方程式が誘導され、その動特性は、スピン集団を<Jx≧J状態に向けて駆動することになることに注意しなければならない。スピン系を高エントロピー熱混合状態に駆動することになるH-ΩR項とH+ΩR項の間の競合を防ぐために、離調を空洞線幅よりも大きくすることができる。
一部の実施では、離調δω=ωc−ωsが負の値であるように、空洞共鳴周波数(ωc)は、スピン共鳴周波数(ωs)よりも低く設定される。そのような場合に、本明細書に説明する技術を空洞ベースのスピン加熱を実施してスピン集団の偏極を増大するために使用することができる。そのような場合に、スピン集団のエネルギは、空洞とスピン集団の間の相互作用によって高められる。
速度行列の三重対角性は、
を多数のスピンに対して効率的にシミュレートすることを可能にする。簡略化のために、空洞がその基底状態
まで冷却され、スピン集団を最大に混合される(すなわち、m=−J,...,Jに対してPm(0)=1/(2J+1)である)ものと見なす理想的な場合のディッケ部分空間の冷却を考察する。
図4は、例示的空洞冷却スピン集団のディッケ部分空間に関する正規化予想値−(Jx(t)>/Jの疑似推移を示すプロット図400である。プロット図400では、縦軸402は、ディッケ部分空間に関する正規化予想値−(Jx(t)>/Jの値範囲を表しており、横軸404は、時間値範囲を表している。図4では、縦軸402によって表す予想値は、1という最大値を達成するためにJによって正規化され、横軸404によって表す時間変数は、スピン集団に関する有効散逸速度ΓSによって調整されている。
プロット図400は4つの曲線を含み、各曲線は、Ns=102からNs=105の範囲にわたる異なる合計スピン数Nsを有するスピン集団のディッケ部分空間に関するシミュレーション予想値<Jx(t)>を表している。曲線406aは、102個のスピンから構成されるスピン集団を表し、曲線406bは、103個のスピンから構成されるスピン集団を表し、曲線406cは、104個のスピンから構成されるスピン集団を表し、曲線406dは、105個のスピンから構成されるスピン集団を表している。
−<Jx(t)>/J=1という値において、スピン集団の全角運動量部分空間は、Jx基底固有状態|J,−J>に完全に偏極される。図4に示すように、各スピン集団の偏極は時間と共に強まり、この偏極は、大きいスピン集団ではより高速に増大される。図示の例では、3つの大きい方のスピン集団は、プロット図400に示す時間尺度の範囲で実質的に完全に偏極されている。
一部の場合に、熱スピン格子緩和時間T1と同様に、予想値<Jx(t)>対時間を有効冷却時定数T1,effを駆動する指数関数に当て嵌めることができる。次式によって与えられるモデルへの当て嵌めは、λ=2.0406及びγ=0.9981であるパラメータT1,eff=(λ(2J)γ)Γsをもたらす。
このモデルは、指数関数的速度(1/T1)を含む熱スピン格子緩和過程と同じく指数関数的速度(1/T1,eff)を含む。このモデルは、角運動量部分空間(例えば、ディッケ部分空間)又は完全ヒルベルト空間に対して使用することができる。一部の実施では、有効速度(1/T1,eff)は、熱速度(1/T1)よりも有意に速い。スピン部分空間VJに対する冷却時定数に関する、Jの関数としての近似表現式は次式で与えられる。
この有効冷却時定数内では、ラビ駆動強度が空洞離調に一致する時(すなわち、Δ=0)に冷却効率が最大になる。この場合に、冷却速度及び時定数は、それぞれΓs=g2/κ及びT1,eff=κ/g2Jに簡略化される。空洞が熱的に占有される場合に、最終スピン偏極は熱空洞偏極にほぼ等しく、
に対応する空洞温度では、有効冷却定数1/T1,effは、ゼロ温度値にほぼ等しい。
上述の有効冷却定数1/T1,effに対応する速度で試料を偏極する方式で、磁気共鳴システムを制御することができる。磁気共鳴システムは、スピン空洞交換項HI(t)を単離するのに使用される2つの回転波近似を厳守するパラメータに従って構成することができる。
である実施では、磁気共鳴システムは、
であるように構成することができる。
Xバンドパルス電子スピン共鳴(ESR)(
10GHz)を約Ns=106個からNs=1017個までのスピンを閉じ込める試料と共に使用する例示的実施では、磁気共鳴システムは、ΩR/2π=100MHz、Q=104(κ/2π=1MHz)、及びg/2π=1Hzであるように構成することができる。これらのパラメータでは、マルコフマスター方程式の有効性範囲はNs≪κ22=1012であり、約1011個の電子スピンを含む集団のディッケ部分空間を3.18μsの有効なT1で偏極することができる。この偏極時間は、数秒から数時間の範囲にわたる可能性がある、低温スピン集団に対する熱T1よりも有意に短い。
図5は、空洞に結合された例示的スピン系のエネルギレベル図500である。コヒーレント遷移を実線で表しており、空洞散逸速度を曲線で表している。各部分空間VJ内の状態を|n>c|−Jx+m>sでラベル付けし、この場合に、mはスピン励起数であり、nは空洞励起数である。各部分空間VJ内では、冷却動特性がマルコフ関数で表現されるようにするには、高空洞励起数の状態は、粗視化された時間尺度において有意な占有率を有してはならない。
本明細書に示す例では、スピン集団は、その偏極を増大する空洞とのコヒーレント相互作用によって冷却される。これらの空洞ベースの冷却技術は、スピン集団を通してコヒーレントな過程を含むので、例えば、熱T1緩和とは異なる。熱T1緩和は、T1が長い時に弱く結合される個々のスピンと環境との間でエネルギを交換する段階を有するインコヒーレント過程である。空洞ベースの冷却技術は、空洞をスピン集団と環境の間の接続体として使用することにより、熱環境へのスピンの結合の被制御強化を与えることができる。空洞は、スピン集団よりも環境に強く結合され、従って、エネルギが光子の形態でより急速に散逸する。空洞への個々のスピンの本質的に小さい結合に起因して、スピン集団をそれが空洞への非常に強い結合を有する単一双極子モーメントとして空洞と集合的に相互作用するように駆動することにより、空洞をスピン集団に効率良く結合することができる。一部の場合に、得られるスピン集団と環境の間の空洞にわたる接続は、空洞が不在の場合のスピン集団と環境の間の接続よりも有意に強く、その結果、この冷却アルゴリズム及び短い有効T1を使用する場合はスピン集団からのエネルギ散逸の高い効率がもたらされる。
上述の解説は、ディッケ部分空間及び他の部分空間が、空洞ベースの冷却技術によって如何にして偏極されるかを示している。次いで、全体の状態を如何にして冷却することができるかを説明する。大域的SU(2)対称性に起因して、スピン集団の状態空間は、スピンに対する結合角運動量部分空間にファクタ分解される。最も大きい次元の部分空間をディッケ部分空間(Nがスピン数である時に角運動量J=N/2に対応する)と呼ぶ。例えば、以下の通りである。
2個のスピン:
3個のスピン:
図6に示すように、3個のスピンの場合に、スピン3/2部分空間が最も大きい次元を有し、従って、ディッケ部分空間である。
図6は、3スピンヒルベルト空間として表した例示的状態空間の図600である。図600は、3スピンヒルベルト空間の行列表現である。行列は、対角に沿う各ブロックが特徴的な部分空間を表すブロック対角形式を有する。第1のブロックは、スピン3/2部分空間602を表し、第2及び第2のブロックはスピン1/2部分空間604a、604bを表している。図6では、スピン3/2部分空間602が、最も大きい次元の部分空間であることでディッケ部分空間である。空洞ベースの冷却は、各それぞれの部分空間をそのそれぞれの基底状態まで冷却することができる。特徴的な部分空間には、ヒルベルト空間のSU(2)対称性を破壊する相互作用が結合することができ、空洞ベースの冷却は、スピン系を全体のヒルベルト空間の真の基底状態まで冷却することができる。図6に示す例示的な3個のスピンの場合に、真の基底状態は、スピン3/2部分空間602に存在する。
空洞ベースの冷却は、各部分空間に対して個々に作用することができ、各部分空間を次式の有効緩和時間を有するそれぞれの基底状態に結合する。
式中のJは部分空間のスピンであり、Γsは、マルコフマスター方程式から導出された空洞冷却速度である。一部の例では、スピン集団の真の基底状態は、全てのスピンがB0磁場に位置合わせするか、又は逆位置合わせするかのいずれかの状態であり、この状態はディッケ部分空間である。一般的に熱平衡では、スピン集団は混合状態にあることになり、全て又は実質的に全ての部分空間内に占有率を有する状態の分布が存在することになる。
スピン集団の真の基底状態(又は一部の場合は別の状態)は、スピンJ部分空間の間の結合によって達することができる。この結合は、例えば、図1Cに関して上述したように、系のハミルトン関数の大域的SU(2)対称性を破壊する相互作用によって達成することができる。一部の例では、この対称性を破壊するには、スピン間の経時的な双極子双極子相互作用、T2緩和、外部勾配場、又は類似の外部又は内部の脱位相相互作用で十分である。
一部の実施では、この対称性を破壊する摂動の存在下で冷却アルゴリズムを適用することにより、真の基底状態への冷却が可能になる。双極子双極子相互作用場合に、ディッケ部分空間の冷却速度のほぼ
倍の比でスピンを真の基底状態まで冷却することができることをシミュレーションが示している。それによって次式の真の基底状態への有効な緩和時間が与えられる。
上述の他の例の場合と同様に、熱スピン格子緩和速度(1/T1)と同様の指数関数的速度(1/T1,双極子)を含むモデルを考察する。
図7は、例示的スピン集団に対して計算された有効冷却時間を示すプロット図700である。プロット図700は、冷却時間の範囲を秒の単位に示す対数尺度縦軸702と、スピン集団内のスピン数Nsに関する値範囲を示す対数尺度横軸704とを含む。プロット図700には3つの曲線が示されている。曲線708は、熱T1緩和過程の下での例示的スピン集団に関する冷却時間を表している。他の2つの曲線は、上述の非熱でコヒーレントな空洞ベースの冷却過程の下での同じ例示的スピン集団に関する冷却時間を表している。具体的には、曲線706aは、スピン集団が真の基底状態に達するための有効冷却時間を表しており、曲線706bは、ディッケ部分空間がその基底状態に達するための有効冷却時間を表している。
図7は、XバンドESRシステムにおける電子スピン集団のモデルに基づいて発生させたものである。これらの計算のための用いたモデルでは、共鳴器とスピン集団とは両方共に液体ヘリウム温度(4.2K)まで冷却される。この温度での典型的な熱T1は、照射石英の試料では3秒である。熱T1は、図7の曲線706aに示すように、試料内のスピン数には依存しない。
空洞ベースの冷却を受ける試料のディッケ部分空間に対する有効冷却時定数を示す図7の曲線706bを達成するために、10GHzのスピン共鳴周波数を有するスピン系に対してマルコフマスター方程式を解いた。計算に用いたモデルは、1Hzの空洞スピン結合、1MHzの空洞散逸速度、共鳴器のバンド幅を外れた空洞離調、及びこの離調に等しいラビ駆動強度を含むものであった。双極子相互作用を有する空洞ベースの冷却の下での完全スピン集団に対する有効冷却時定数を示す図7の曲線706aを達成するために、結果を少数のスピンに基づいて、より大きい個数に外挿したものとした。最初の究明結果は、次式が成り立つことを示唆している。
上述のように、指数関数的速度(1/T1)に従って推移する熱スピン格子緩和過程と同じく指数関数的速度(1/T1,eff)に従って推移するスピン偏極モデルを考察する。
図7に示す例では、最初に試料がディッケ部分空間に限定される場合に、空洞ベースの冷却は、105個よりも多いスピンから構成される試料に対して熱T1に優る時間短縮を与える。完全な混合状態にある試料を考察すると、スピン集団の空洞ベースの冷却を実施すると同時に双極子相互作用を含めることにより、1010個よりも多いスピンから構成される試料に対して熱T1に優る時間短縮が得られる。
上記に提供したスピン集団の空洞ベースの冷却に対するモデルでは、例示目的で一部の仮定が行われた。一部の事例では、これらの仮定のうちの1つ又はそれよりも多くが厳守されない系において、上述の結果及び利点を達成することができる。第1に、スピン集団が磁気的に希薄であり、従って、スピン間に結合が存在しないと仮定した。Tavis−Cammings(TC)ハミルトン関数の大域的SU(2)対称性を破壊するスピンスピン相互作用は、状態空間の結合角運動量の分解においてスピンJ部分空間を接続することになる。そのような相互作用は、完全集団ヒルベルト空間の完全な偏極を可能にしなければならない追加リソースとして使用することができる。第2に、スピン系の熱緩和効果を無視した。一部の事例では、スピン系に対する空洞の冷却効果はコヒーレントなスピン空洞情報交換を拠り所とするので、一般的にT1,ρと記すラビ駆動のフレーム内のスピン系の緩和時間は、空洞散逸速度の逆数1/κよりも有意に長いはずである。第3に、スピン空洞結合及びラビ駆動は、スピン集団にわたって空間的に均一であると仮定した。不均一性は、例えば、スピン空洞結合の範囲にわたって一定の強度の有効スピン固定ラビ駆動を実施する制御パルスと制御場の振幅とを数値的に最適化することによって補償することができる。
一部の実施では、スピン系からエネルギを除去する空洞の機能は、空洞を冷却するのに使用される冷却システムの冷却電力に少なくとも部分的に依存する。上記に提供した例示的シミュレーションでは、冷却システムの冷却電力を空洞の無限熱容量に対応して無限であると見なした。本明細書に説明する技術は、空洞が有限熱容量を有するためのシステムにおいて実施することができる。図8A及び図8Bに、例示的な空洞ベースの冷却過程におけるエントロピー及びエネルギの流れのモデルを提供する。
図8Aは、例示的な空洞ベースの冷却過程におけるエントロピーの流れを示す概略図800である。図800では、スピン802はスピン集団を表し、空洞804は、例えば、上述の条件下でスピン集団に結合される空洞を表し、冷凍機806は、空洞を冷却する冷凍機又は別のタイプの冷却システムを表している。スピン集団から除去されたエネルギは、空洞にΓSCの速度で流れ、エネルギは、冷凍機の(有限)冷却電力によって空洞からΓCFの速度で除去される。
図8Bは、散逸速度ΓSC及びΓCFの例示的な値を示すプロット図810である。プロット図810は、冷却電力に関する値範囲をマイクロワット(μW)の単位で表す縦軸812と、スピン集団内のスピン数Nsに関する値範囲を示す対数尺度横軸814とを含む。冷凍機806の冷却電力は、プロット図810内に表すシミュレーション内では一定に保持されるので、空洞から冷凍機へのエントロピー除去の速度ΓCFは、曲線816aに示すように一定に留まる。曲線816bによって表すスピン集団から空洞へのエントロピー除去の速度ΓSCは、スピン系を偏極するためにスピン系から除去される合計エネルギを本導出による冷却時間に基づいて計算したエネルギを除去するのにそのような時間で割算したものを決定することによって計算したものである。スピン系から除去される合計エネルギは、ωが2π10GHzであると見なして、
として計算したものである。図示の例では、スピン系は、完全混合状態で始まる電子スピン集団であり、従って、スピンの半分をその基底状態まで駆動しなければならない。
空洞内に滞積したエネルギは、冷凍機により、一部の例示的用途では一般的に数十マイクロワット程度である(図8Bに示すように)冷凍機の冷却電力に基づく速度で除去される。図8Bの曲線816bは、約1013個よりも多い電子スピンの集団では、一部の条件下で、より大きい集団に対して最短冷却時間を制限することになるエントロピー流れの障壁が存在する可能性があることを例証している。しかし、図示の例では、50μWの冷却電力を有する冷凍機を考えた場合に、1012個の電子スピンから構成される集団を約3.18マイクロ秒(μs)で冷却することができる。このサイズの集団は、強い電子スピン共鳴信号を達成するのに十分である。
最後に、上述のマルコフマスター方程式の導出は、冷却過程中に空洞とスピン系の間に相関関係が発生せず、従って、スピン系に対する空洞動特性の逆作用が存在しないと仮定している。この条件は、空洞散逸速度κが、最低励起マニホルド内のコヒーレントなスピン空洞交換速度を少なくとも1桁(すなわち、
)だけ超える場合に適用される。このマルコフ制限内では、スピン光子が空洞に追加される速度が、熱光子が追加される速度よりも有意に小さく、すなわち、熱空洞温度を維持するのに必要な冷凍機の冷却電力が、空洞の平均占有数を増大させることなくスピン光子を散逸させるのに十分である。上式から、より多くのスピンを追加してκを
に近づけることによって冷却効率を改善することができ、この関連において、冷凍機の冷却電力が、空洞からの逆作用を防ぐのに十分ではない場合があり、非マルコフ効果が冷却速度を有意に低下させることを見ることができる。
上述の技術は、磁気共鳴撮像(MRI)システム及び他の環境において実施することができる。図9は、例示的MRIシステム900の概略図である。例示的MRIシステム900は、スキャナ910と、コンピュータシステム930と、試料922を保持するための試料ホルダ920とを含む。試料ホルダ920は、試料922の温度を調整することができる温度制御システム924を含む。スキャナは、主磁石システム912と、勾配システム914と、冷却システム916と、共鳴器及び空洞システム918とを含む。MRIシステムは、追加の又は異なる特徴を含むことができ、MRIシステムの特徴は、図9に示すように又は別の方式で配置することができる。
例示的主磁石システム912は、実質的に一定の均一な外部磁場を与えるように設計される。例えば、主磁石システム912は、図1Aに示す主磁石システム102のように作動することができる。例示的勾配システム914は、磁場勾配(例えば、直交軸に沿う勾配)を与えるように設計された1つ又はそれよりも多くの勾配コイルを含む。例えば、勾配システム914は、図1Aに示す勾配システム140のように作動することができる。勾配場は、試料922の望ましいスライス又は領域の画像データを例えば位相符号化又はスライス選択場を発生させることによって取得するように構成することができる。
共鳴器及び空洞システム918は、試料922内のスピン集団を偏極して制御することができる。例えば、共鳴器及び空洞システム918は、図1Aに示す共鳴器及び空洞システム112のように作動することができる。共鳴器及び空洞システム918は、統合マルチモード共鳴器構造体又は複数の別個の構造体として実施することができる空洞と共鳴器とを含むことができる。共鳴器及び空洞システム918は、高周波パルスを送受信するように設計された無線周波数コイルを含むことができる。例えば、試料922から画像を取得するために、共鳴器及び空洞システム918は、勾配システム914によって実行される勾配シーケンスと協調して撮像パルスシーケンスを実行することができる。一部の事例では、共鳴器及び空洞システム918は、試料及び撮像用途に基づいて身体の特定の部位(例えば、頭、膝、手首等)の周りに配置するか又は撮像対象内に埋め込むことができる様々なタイプのコイルを含むことができる。一部の実施では、スピン集団を偏極する(例えば、図1Aに関して上述したように)ために使用される共鳴器及び空洞の構成要素は、試料922に撮像パルスシーケンスを印加するために使用することができる。一部の実施では、撮像パルスシーケンスを印加するのに、別個の無線周波数コイルが使用される。
例示的冷却システム916は、共鳴器及び空洞システム918の全て又は一部の温度を制御することができる。例えば、冷却システム916は、図1Aに示すように例示的冷却システム120として作動させることができる。一部の場合に、冷却システム916は、空洞と時に共鳴器及び空洞システム918の他の構成要素とを試料922の温度よりも低く維持する。例えば、冷却システム916は、一部の実施において極低温への冷却を提供することができる。
一部の事例では、温度制御システム924は、試料922の温度を調整する。例えば、温度制御システム924は、図1Aに示す例示的温度制御システム130のように作動することができる。一部の場合に、温度制御システム924は、試料922を室温又は撮像対象に適する別の温度に維持する。例えば、撮像対象は、液体温度に保持することができ、又は生体撮像対象(例えば、人体)は、適切な温度に保持することができる。
作動の一部の態様において、共鳴器及び空洞システム918は、試料922内のスピン集団(例えば、水素スピン)と相互作用し、撮像走査のためのスピン集団を与える。一部の実施では、共鳴器及び空洞システム918は、スピン集団の熱平衡状態よりも高い(すなわち、特定の温度及び磁場の環境において熱緩和によって生成される偏極よりも高い)偏極レベルまでスピン集団を持ってくる空洞ベースの冷却過程を実行する。一部の実施では、空洞ベースの冷却過程は、熱T1緩和速度よりも高い速度でスピン集団の偏極を増大する。得られるスピン集団の偏極状態は、撮像走査に対する初期状態として使用することができる。各撮像走査の後に、スピン集団は、更に別の走査に向けて再偏極することができる。一部の場合に、空洞ベースの冷却過程は、例えば、必要とされる撮像走査の回数を低減することによって撮像過程の所要時間を短縮する。一部の場合に、空洞ベースの冷却過程は、例えば、撮像走査の信号対ノイズ比を高めることにより、生成される画像の品質を改善する。
本明細書は多くの詳細内容を含むが、これらの内容は、主張することができる範囲に対する限定と解釈すべきではなく、特殊な例に特定の特徴の説明であると解釈しなければならない。本明細書に別個の実施の状況で記載しているある一定の特徴を組み合わせることができる。それとは逆に、単一実施の状況で記載している様々な特徴を複数の実施形態において分離して、又はあらゆる適切な部分結合に実施することができる。
いくつかの独立した一般概念の例示的実施を記述した。上述したものの1つの一般的態様において、静磁場内のスピン集団に駆動場が印加される。駆動場は、スピン集団のスピン状態を空洞の空洞モードと結合するようになっている。スピン集団の偏極は、スピン状態と空洞モードとの間の結合によって増大される。
上述したものの別の一般的態様において、空洞が、試料内のスピン集団と結合される。試料は、ある熱温度に保持して静磁場を掛けることができ、空洞とスピン集団の間の相互作用が発生する(例えば、駆動場を印加することにより)。相互作用は、スピン集団の偏極を試料に影響を及ぼす内部偏極過程よりも高速に強める。
上述したものの別の一般的な態様において、熱障壁は、試料と空洞の間を熱絶縁する。空洞は、第1の温度にあり、試料は、第2の異なる温度にある。試料は、静磁場内のスピン集団を閉じ込める。空洞とスピン集団の間に相互作用が発生する。この相互作用は、スピン集団の偏極を増大する。
上述したものの別の一般的な態様において、磁気共鳴撮像(MRI)システムは、静磁場内で試料内のスピン集団と相互作用するように構成された空洞を含む。試料は、撮像対象である。MRIシステムは、空洞とスピン集団の間にスピン集団の偏極を増大する相互作用を発生させるように構成された共鳴器を含む。MRIシステムは、撮像対象内の偏極スピン集団から磁気共鳴信号を取得することができ、この磁気共鳴信号に基づいて撮像対象の画像を発生させることができる。一部の場合に、撮像対象は、室温で、例えば、296ケルビン、300ケルビン、又は290ケルビンと310ケルビンの間の別の適切な温度で保持される。
上述したものの別の一般的な態様において、空洞と試料内の第1のスピン集団の間の相互作用が発生する。この相互作用は、第1のスピン集団のスピン状態と空洞の空洞モードとの間の結合に基づいて第1のスピン集団の偏極を増大する。偏極は、試料内の第1のスピン集団から第2のスピン集団に移動される。
上述の一般概念の一部の実施では、偏極は、第1のスピン集団から第2のスピン集団にそれぞれのスピン集団のスピン間の双極子相互作用によって移動される。試料は、溶媒と溶質とを閉じ込める液体とすることができ、溶媒は、第1のスピン集団とすることができ、溶質は、第2のスピン集団とすることができる。偏極は、溶媒から溶質に核オーバーハウザー効果によって移動することができる。試料は、大量の化学種と低濃度の化学種とを閉じ込める固体とすることができ、大量の化学種は、第1のスピン集団とすることができ、低濃度の化学種は、第2のスピン集団とすることができる。偏極は、大量の化学種から低濃度の化学種に交差偏極によって移動することができる。
上述の一般概念の一部の実施では、空洞の温度は、空洞に熱結合された冷却システムによって調整され、試料の温度は、試料温度制御システムによって調整される。空洞は、極低温に維持することができ、試料は、液体状態に維持することができる。空洞は、100ケルビンよりも低く維持することができ、試料は、273ケルビンよりも高く(例えば、室温又は別の温度に)維持することができる。一部の場合に、熱障壁は、試料と空洞の間の熱相互作用を抑制する。
上述の一般概念の一部の実施では、スピン集団の偏極は、スピン状態と空洞モードとの間の結合によってスピン集団の各角運動量部分空間に対して個々に影響を及ぼす空洞ベースの冷却と、角運動量部分空間を混合する混合過程とによって増大される。一部の事例では、上述の作動を反復的に適用することができる。角運動量部分空間は、例えば、双極子相互作用、横断(T2)緩和過程、勾配場の印加、又はこれら及び他の過程の組合せによって混合することができる。
上述の一般概念の一部の実施では、空洞は、低いモード体積と高い品質係数とを有する。モード体積、品質係数、又はこれら及び他の空洞パラメータの組合せは、スピン集団偏極過程を実質的に「短絡」するスピン集団と空洞の間の結合をもたらすように設計することができる。一部の例では、空洞は、
であるようなモード体積Vと品質係数Qとを有する。この場合に、Nsは、スピン集団内のスピン数を表し、κ=(ωc/Q)は、空洞の散逸速度を表し、ωcは、空洞の共鳴周波数を表し、gは、スピン集団内の個々のスピンへの空洞の結合強度を表している。一部の例では、散逸速度κは、
の2倍よりも大きい。一部の例では、散逸速度κは、
よりも1桁大きい。一部の例では、散逸速度κは、
よりも2桁又は3桁大きい。一部の事例では、スピン集団と空洞の間の結合は、スピン集団の偏極を熱スピン格子(T1)緩和過程よりも高速に強める。
上述の一般概念の一部の実施では、スピン集団はスピン共鳴周波数(ωs)を有し、駆動場は、スピン共鳴周波数(ωs)と共鳴する共鳴器が発生させる。駆動場は、時変(例えば、振動又は他の方式の時変)磁場とすることができる。一部の場合に、スピン集団は原子核スピン集団であり、駆動場は無線周波数場である。一部の場合に、スピン集団は電子スピン集団であり、駆動場はマイクロ波周波数場である。
上述の一般概念の一部の実施では、空洞モードは、空洞共鳴周波数(ωc)に対応し、空洞共鳴周波数(ωc)は、スピン共鳴周波数(ωs)から量δω=ωc−ωsだけ離調される。駆動場は、ラビ周波数(ΩR)におけるラビ振動を発生させる駆動場強度を有することができる。一部の場合に、離調δωは、ΩRに実質的に等しい。例えば、差Δ=δω−ΩRは、離調δωと比較して小さいとすることができる。一部の実施形態において、差Δは、離調δωの半分よりも小さい。一部の例では、差Δは、離調δωよりも1桁小さい。一部の例では、差Δは、離調δωよりも2桁又は3桁小さい。
上述の一般概念の一部の実施では、空洞とスピン集団の間の相互作用は、スピン集団の偏極を空洞のパラメータに関する偏極速度で強める。一部の事例では、偏極速度は、品質係数の値、モード体積の値、散逸速度の値、又は別の特性のような空洞の電磁特性に起因してより高いか又はより低いとすることができる。
上述の一般概念の一部の実施では、静磁場は、スピン集団に主磁石システムによって印加され、スピン集団にわたって実質的に均一である。駆動場は、静磁場に直交するように向けることができる。例えば、静磁場は、z軸に沿って向けることができ、駆動場は、xy平面(z軸に直交する)内に向けることができる。
上述の一般概念の一部の実施では、駆動場は、共鳴器が発生させる。一部の場合に、共鳴器と空洞とは、共通の構造又はサブシステムとして形成される。例えば、共鳴器と空洞とを共通のマルチモード共鳴器構造内に統合することができる。一部の場合に、共鳴器と空洞は、2つ又はそれよりも多くの別個の構造として形成される。例えば、共鳴器は、第1の共鳴周波数を有するコイル構造とすることができ、空洞は、第2の異なる共鳴周波数を有する別個の空洞構造とすることができる。共鳴器、空洞、又はこれらの両方は、超電導材料及び他の材料を含むことができる。
上述の一般概念の一部の実施では、スピン集団と空洞の間の結合は、スピン集団の状態を変化させる。例えば、この結合は、スピン集団を最初の(混合)状態から、それよりも強い偏極を有するその後の状態にマッピングすることができる。その後の状態は、混合状態又は純粋状態とすることができる。一部の場合に、その後の状態は、空洞の純度に等しい純度を有する。一部の事例では、結合は、スピン集団を最初の状態からスピン集団の熱平衡状態に又は熱平衡状態よりも強い偏極を有する別の状態に推移させることができる。一般的に、熱平衡状態は、試料環境(試料温度及び静磁場強度を含む)によって少なくとも部分的に定められる。一部の事例では、結合は、最初の状態から、熱平衡偏極よりも弱い、等しいか又は強い偏極を有する後続状態に推移させることができる。
上述の一般概念の一部の実施では、駆動場は、スピン集団のディッケ部分空間を空洞モードと結合するようになっている。スピン集団の一部の表現形式では、ディッケ部分空間は、それがスピン集団の全ての全対称状態を含むように最も大きい角運動量部分空間として定めることができる。一部の表現形式では、ディッケ部分空間は、Nsがスピン集団内のスピン数である時に、合計角運動量J=Ns/2を有する系に対応する。一部の場合に、スピン集団のディッケ部分空間及び複数の他の角運動量部分空間は、空洞モードと結合される。一部の場合に、スピン集団の全ての角運動量部分空間が空洞モードと結合される。
上述の一般概念の一部の実施では、空洞とスピン集団の間の相互作用は、スピン集団をして光子を空洞モードを通して熱環境に散逸させる。この相互作用は、空洞とスピン集団の間のコヒーレント放射相互作用を含むことができる。一部の場合に、コヒーレント放射相互作用は、スピン集団に影響を及ぼすいずれかのインコヒーレント熱過程(例えば、熱スピン格子緩和、自然放出等)よりも高速にスピン集団の偏極を増大することができる。一部の場合に、この相互作用は、スピン集団をそれが単一双極子モーメントとして集合的に空洞と相互作用するように駆動する。
いくつかの実施形態を記述した。それにも関わらず、様々な修正を加えることができることは理解されるであろう。従って、他の実施形態は、以下に続く特許請求の範囲内である。
100’ 磁気共鳴システム
104 静磁場
108 第1のスピン群
110 試料
112 共鳴器及び空洞システム

Claims (21)

  1. スピン集団を制御する方法であって、
    試料内の第1のスピン集団の偏極を該第1のスピン集団のスピン状態と空洞の空洞モードとの間を結合することによって増大させる段階と、
    前記試料内で前記第1のスピン集団から第2のスピン集団に偏極を移動する段階と、
    を含むことを特徴とする方法。
  2. 前記偏極は、前記第1のスピン集団から前記第2のスピン集団にそれぞれの該スピン集団のスピン間の双極子相互作用によって移動されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
  3. 前記試料は、前記第1のスピン集団を含む溶媒と前記第2のスピン集団を含む溶質とを含有する液体を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
  4. 偏極が、前記溶媒から前記溶質に核オーバーハウザー効果によって移動されることを特徴とする請求項3に記載の方法。
  5. 前記空洞が第1の温度にあり、前記試料が第2の異なる温度にある該試料及び該空洞の間を熱絶縁する段階を更に含むことを特徴とする請求項3に記載の方法。
  6. 前記試料は、前記第1のスピン集団を含む大量の化学種と前記第2のスピン集団を含む低濃度の化学種とを閉じ込める固体を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
  7. 偏極が、前記大量の化学種から前記低濃度の化学種に交差偏極によって移動されることを特徴とする請求項6に記載の方法。
  8. 反復的に、
    前記スピン集団と前記空洞の間の相互作用によって該スピン集団の角運動量部分空間に作用し、かつ
    前記角運動量部分空間を混合する、
    ことにより、前記第1のスピン集団の偏極を増大させる段階を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
  9. 前記角運動量部分空間は、双極子相互作用、横断(T2)緩和過程、又は勾配場の印加のうちの少なくとも1つによって混合されることを特徴とする請求項3に記載の方法。
  10. 前記空洞の温度を該空洞に熱結合された冷却システムの作動によって制御する段階を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
  11. 前記偏極を増大させる段階は、前記第1のスピン集団の前記スピン状態を前記空洞の前記空洞モードと結合するようになった駆動場を該第1のスピン集団に印加する段階を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
  12. 前記駆動場は、前記第1のスピン集団のスピン共鳴周波数(ωs)に同調され、前記空洞モードは、空洞共鳴周波数(ωc)に対応し、該空洞共鳴周波数(ωc)は、該スピン共鳴周波数(ωs)から量δω=ωc−ωsだけ離調されることを特徴とする請求項11に記載の方法。
  13. 前記第1のスピン集団は、前記第2のスピン集団よりも実質的に大きいスピン数を含むことを特徴とする請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の方法。
  14. 静磁場内で試料内の第1のスピン集団と相互作用するようになった空洞と、
    前記スピン集団の偏極を増大する前記空洞と該スピン集団の間の相互作用を制御し、かつ
    前記第1のスピン集団から第2のスピン集団に偏極を移動する前記試料内の該第1のスピン集団と該第2のスピン集団の間の相互作用を制御する、
    ようになった共鳴器と、
    を含むことを特徴とする磁気共鳴システム。
  15. 前記第1のスピン集団と前記第2のスピン集団の間の前記相互作用は、それぞれの該スピン集団のスピン間の双極子相互作用を含むことを特徴とする請求項14に記載のシステム。
  16. 請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の方法を実行するようになった空洞及び共鳴器システムを含むことを特徴とする請求項14に記載のシステム。
  17. 前記共鳴器と前記空洞は、別個の構造体であることを特徴とする請求項16に記載のシステム。
  18. 前記共鳴器と前記空洞とを含む統合マルチモード共鳴器構造体を含むことを特徴とする請求項16に記載のシステム。
  19. 前記静磁場を発生させるようになった主磁石システムと、
    前記第1のスピン集団が前記第2のスピン集団よりも実質的に大きいスピン数を含む該スピン集団を閉じ込める試料と、
    を更に含むことを特徴とする請求項14に記載のシステム。
  20. 前記空洞に熱結合され、かつ該空洞を冷却するようになった冷却システムを更に含むことを特徴とする請求項14に記載のシステム。
  21. 前記空洞と前記試料の間を熱絶縁するようになった熱障壁を更に含むことを特徴とする請求項14に記載のシステム。
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