その全体を本明細書の一部として援用するのは、本明細書に添付して同時に提出するコンピュータ読取可能な配列表であり次のように特定される:2014年3月25日作成の「配列表ST25.txt」と命名されたファイル(90,252バイトASCII(テキスト))。
バイオ医薬品、特にポリペプチド剤を利用する治療の成功には、被験者の免疫系がバイオ治療薬の活性を妨害または阻害しないことが必要とされる。抗薬物抗体(ADA)は、バイオ医薬品に関する重大な問題と認識されていて、しかも治療薬自体の免疫原性を最小化する対策が施された後も引き続き問題であった。この問題は、血液凝固障害を有する患者に提供されるバイオ医薬品の凝固因子にとって特に切迫したものであり得るが、そこでは損傷に続く血液失血を止めるためにバイオ医薬品が決定的であるからである。本明細書で記載するのは、凝固因子バイオ治療薬に対する抗原特異的寛容を誘導するための組成物および方法である。該組成物は、一または複数のシグレックリガンドに結合された、一または複数の凝固因子タンパク質またはその抗原性フラグメントもしくは変異体を含む。実施形態がどのように働くのかに関する理論に縛られるものではないが、寛容原性サーキットは、シグレックおよびB細胞受容体が凝固因子タンパク質およびシグレックリガンドを含む複合体と共に免疫シナプス中で並置されるときに、B細胞中で誘導される。
凝固第VIII因子(FVIII)に対する寛容が血友病マウスモデルにおいて誘導され、阻害抗体の形成を防止し、引き続く負荷の際の出血を防止するためのFVIIIの投与を可能とすることが本明細書において明らかにされる。同様に、B細胞受容体とCD22の強制ライゲーションがB細胞受容体シグナル伝達を停止し、マウスおよびヒトB細胞の双方においてアポトーシスを誘導することも本明細書において明らかにされる。同様に、寛容原性サーキットがナイーブおよびメモリーコンパートメントの双方内のヒト一次B細胞において操作的であるということも明らかにされ、それは、ポリペプチドT細胞依存性抗原に対する抗原特異的寛容を誘導するためにCD22およびB細胞受容体を会合するアプローチが、ヒトにおける既存欠陥を防止するだけでなく除去することにも適用できることを示唆する。
本明細書を説明する目的で、以下の定義が適用され、適当と認められる場合は、単数形で用いられる用語にはまた複数形が含まれるものとし、逆も同様である。以下に示すいずれかの定義が、参照することにより本明細書で援用されるいずれかの文書を含む、いずれかの他の文書におけるその語の使用法と矛盾する場合には、別段の意味が明確に意図れていない限り(例えば、用語が初めて用いられている文書中で)、以下に示す定義が常に本明細書およびその関連する請求項を説明する目的を統制する。「または(or)」の使用は、特に明記しない限り「および/または(and/or)」を意味する。本明細書での「一(a)」の使用は、特に明記しない限りまたは「一または複数」の使用が明らかに不適当でない限り、「一または複数(one or more)」を意味する。「含む(comprise)」、「含む(comprises)」、「含んでいる(comprising)」、「含む(include)」、「含む(includes)」および「含んでいる(including)」の使用は置き換え可能であり、制限的であることを意図しない。さらに一または複数の実施形態に関する記載が用語「含んでいる(comprising)」を使用するところでは、当業者は、いくつかの特定の場合には実施形態(embodiment or embodiments)が専門用語「から本質的に成る(consisting essentially of)」および/または「から成る(consisting of)」を使用して代わりに記載され得ることを理解するであろう。
別段の記載がない限り、本明細書で用いられる技術用語および科学用語は、これらの実施形態が関連する当業者によって通常に理解されるのと同じ意味を有する。以下の参考文献は、多数の使用される用語の一般的な定義に関する技術の一つを提供する:Academic Press Dictionary of Science and Technology(アカデミックプレス科学・技術辞典),Morris(Ed.(編)),Academic Press(1st ed.(初版),1992);Oxford Dictionary of Biochemistry and Molecular Biology(オクスフォード生化学・分子生物学辞典),Smith et al.(Eds.(編)),Oxford University Press(revised ed.(改訂版),2000);Encyclopaedic Dictionary of Chemistry(化学百科事典),Kumar(Ed.(編)),Anmol Publications Pvt.Ltd.(2002);Dictionary of Microbiology and Molecular Biology(微生物・分子生物学辞典),Singleton et al.(Eds.(編)),John Wiley & Sons(3rd ed.(第三版),2002);Dictionary of Chemistry(化学辞典),Hunt(Ed.(編)),Routledge(1st ed.(初版),1999);Dictonary of Pharmaceutical Medicine(医薬品辞典),Nahler(Ed.(編)),Springer‐Verlag Telos(1994);Dictionary of Organic Chemistry(有機化学辞典),Kumar and Anandand(Eds.(編)),Anmol Publications Pvt.Ltd.(2002);およびA Dictionary of Biology(生物学辞典)(Oxford Paperback Reference(オクスフォード・ペーパーバック図書)),Martin and Hine(Eds.(編)),Oxford University Press(4th ed.(第4版),2000)。特別に実施形態に適用するときのこれらの用語のいくつかのさらなる説明は、本明細書で提供する。
本実施形態は、望ましくない抗体免疫応答を防止または低減し、FVIII等の血液凝固因子タンパク質の免疫寛容を誘導するための組成物および方法を提供する。
いくつかの実施形態において提供されるのは、凝固因子の寛容を誘導するための複合体であり、ここで該複合体は凝固因子タンパク質またはその抗原性フラグメントもしくは変異体およびシグレックリガンドを含む。いくつかの実施形態において提供されるのは、被験者において寛容を誘導するために効果的な量の複合体を含む医薬組成物である。いくつかの実施形態において、被験者は血液凝固障害を有していて凝固因子補充療法を施されている。
いくつかの実施形態においてさらに提供されるのは、被験者において凝固因子タンパク質に対する寛容を誘導する方法であり、ここで該方法は、凝固因子タンパク質またはその抗原性フラグメントもしくは変異体およびシグレックリガンドを含む複合体の効果的な量を被験者に投与することを含む。
いくつかの実施形態において、被験者は出血性障害に罹患している。いくつかの実施形態において、被験者は凝固因子補充療法を受けている。いくつかの実施形態において出血性障害は、血友病A、血友病B、第X因子欠失病およびローゼンタール症候群(血友病Cとしても知られる)から成る群より選択される。
いくつかの実施形態において、複合体の凝固因子部分とシグレックリガンド部分を隔てている距離は、免疫シナプスにおけるシグレックおよびB細胞受容体の強制ライゲーションおよび並置をもたらす、B細胞への効果的な提示を可能にする。
本明細書で用いる場合、免疫寛容(または単に「寛容」)とは、それによって免疫系が抗原を攻撃しないプロセスである。それは三つの型で生じる:中枢性寛容、末梢性寛容および後天的寛容である。寛容は「自然」または「自己寛容」のいずれかであり得て、ここで身体は自己抗原に対する免疫応答を開始せず、すなわち「寛容を誘導し」、ここで抗原に対する寛容は免疫系を操作することによって作成され得る。寛容が誘導されるとき、身体は抗原に対する免疫応答を起こし得ない。
寛容および寛容誘導の機構は複雑であり良く理解されていない。当該技術分野において周知である通り(Basten et al.,30 Curr.Opinion Immunol.22:566‐574,2010を参照されたい)、寛容の発生おける既知の可変要素には、抗原が存在するときのB細胞の分化段階、抗原型、およびサイトカインおよび補因子の産生におけるT細胞および他の白血球の関与が含まれる。従ってB細胞活性化の抑制は、免疫寛容と同一視され得ない。例えば、B細胞活性化はBCRにCD22を架橋することによって阻害され得る一方で、B細胞の選択的サイレンシングは寛容の誘導を示さない。例えば、Nikolova et al.,Autoimmunity Rev.9:775‐779(2010);Mihaylova et al.,Mol.Immunol.47:123‐130(2009);およびCourtney et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.106:2500‐2505(2009)を参照されたい。
複合体
本明細書で用いる場合、用語「複合体(conjugate)」とは、一または複数のシグレックリガンドが一または複数の凝固因子タンパク質またはその抗原性フラグメントもしくは変異体に結合されている複合体を表す。凝固因子タンパク質とシグレックリガンドは、共有結合性または非共有結合性相互作用によって、直接的にまたは間接的に結合され得る。いくつかの実施形態においてシグレックリガンドは、適切な結合化学作用により凝固因子に直接的に結合される。
シグレックリガンドと凝固因子タンパク質の複合は、当該技術分野において周知の方法に従って実施され得る。例えば、Chemistry of protein conjugation and cross−linking(タンパク質複合と架橋の化学),Shan Wong,CRC Press(Boca Raton,FL,1991);およびBioconjugate techniques(バイオ複合技術),2nd ed.(第2版),Greg T.Hermanson,Academic Press(London,UK,2008)を参照されたい。いくつかの実施形態においてシグレックリガンドは、凝固因子タンパク質またはその抗原性フラグメントもしくは変異体に直接的に結合されている。いくつかの実施形態において、凝固因子タンパク質またはその抗原性フラグメントもしくは変異体は、凝固因子タンパク質またはその抗原性フラグメントもしくは変異体上での一または複数の既存の炭水化物への結合によって、シグレックリガンドに直接的に結合されている。
いくつかの実施形態において一または複数のシアル酸残基は、シグレックリガンドが結合される前に、凝固因子タンパク質またはその抗原性フラグメントもしくは変異体から除去される。いくつかの実施形態においてシグレックリガンドは、等モル比で凝固因子ポリペプチドまたはその抗原性フラグメントもしくは変異体に結合され得る。いくつかの実施形態において、凝固因子タンパク質またはその抗原性フラグメントもしくは変異体に対するシグレックリガンドの比は、1:1、2:1、5:1、10:1、15:1、25:1、35:1、50:1、75:1、100:1、200:1、250:1、500:1または1000:1である。一実施形態において、凝固因子タンパク質または抗原性フラグメントまたはその変異体に対するシグレックリガンドの比は50:1ないし100:1である。
いくつかの実施形態においてシグレックリガンドは、凝固因子タンパク質または抗原性フラグメントまたは変異体、例えばFVIIIのいずれかのドメイン上の、いずれかの利用可能なまたは操作されたシステインに直接結合される。
いくつかの実施形態において、凝固因子タンパク質またはその抗原性フラグメントもしくは変異体およびシグレッグリガンドは、生理学的に許容可能なリンカー分子よって結合される。生理学的許容可能なリンカー分子には、例えば、水溶性溶液または懸濁液に可溶であり、シグレックリガンド‐凝固因子タンパク質複合体の薬剤的に効果的な量での哺乳動物への投与に際して副作用等の悪い影響がないポリマーが含まれる。本実施形態により使用される生理学的に許容可能なリンカーに特別な制限はない。いくつかの実施形態においてリンカーは、1から約500の反復単位を有することによって典型的に特徴づけられる。このようなポリマーの例には、制限されるものではないが、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ(プロピレングリコール)(PPG)、エチレングリコールおよびプロピレングリコール等の共重合体、等のポリ(アルキレングリコール)、ポリ(オキシエチル化ポリオール)、ポリ(オレフィンアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリルアミド)、ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリレート)、ポリ(糖)、ポリ(ヒドロキシ酸)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリホスファゼン、ポリオキサゾリン、ポリ(N‐アクリロイルモルフォリン)および前記のいずれかの組み合せが含まれる。
生理学的に許容可能なリンカーは、特別の構造に制限されず、直線型(例えば、アルコキシPEGまたは二機能性PEG)、分岐型またはマルチアーム型(例えば、フォーク型PEGまたはポリオールコアに結合したPEG)、樹枝状または分解性結合を有するものであり得る。さらにリンカーの内部構造は、あらゆるパターンを用いて構築され得て、ホモポリマー、交互重合体、ランダム重合体、ブロック共重合体、交互三重合体、ランダム三重合体およびブロック三重合体から成る群より選択され得る。これらのリンカーにはまた、ポリ(アルキレンオキサイド)ポリマー、ポリ(マレイン酸)、ポリ(DL‐アラニン)、例えばカルボキシメチルセルロース、デキストラン、ヒアルロン酸およびキチン、およびポリ(メタ)クリレートも含まれる。
いくつかの実施形態においてシグレックリガンドは、生理学的に許容可能なリンカー、例えば、PEGおよび/または分岐型PEGに結合されていて、しかも生理学的に許容可能なリンカーは、それ自体が凝固因子タンパク質または抗原性フラグメントまたは変異体、例えばFVIIIに直接的に結合されている。いくつかの実施形態において生理学的に許容可能なリンカーは、いずれかのドメイン上の既存の一または複数の炭水化物に直接的に、凝固因子タンパク質または抗原性フラグメントまたは変異体に結合され得る。いくつかの実施形態において生理学的に許容可能なリンカーは、いずれかのドメイン上のいずれかの利用可能なまたは操作されたシステインに直接的に、凝固因子タンパク質または抗原性フラグメントまたは変異体に結合され得る。いくつかの実施形態において生理学的に許容可能なリンカーは、いずれかのドメイン上のいずれかのアミノ酸に直接的に、凝固因子タンパク質または抗原性フラグメントまたは変異体に結合され得る。
一実施形態において生理学的に許容可能なリンカーは、PEGおよびその誘導体である。PEGの側鎖は、直線型、分岐型、フォーク型であり得て、またはマルチアーム型から成り得る。本実施形態により使用されるPEGに特別の制限は存在しない。いくつかの実施形態においてPEGは、1,000〜20,000の範囲の分子量を有する。いくかの実施形態において有用なPEG分子は、例えば、WO 03/040211;米国特許第6,566,506号;米国特許第6,864,350号;および米国特許第6,455,639号に開示されており、それらは参照することにより本明細書で援用される。他の実施形態において生理学的に許容可能なリンカーは、ポリシアル酸(PSA)および/またはその誘導体である。PSAは、既知の方法と技術を使用して凝固因子タンパク質に結合され得る(例えば、米国特許第4,356,170号を参照されたいが、それは参照することにより本明細書で援用される)。
一の実施形態において生理学的に許容可能なリンカーは、天然に存在する多糖類、天然に存在する多糖類の誘導体、または天然に存在する多糖類の誘導体である。いくつかの実施形態において化合物の多糖類部分は、ポリマー鎖中に5個以上、典型的には少なくとも10個以上、および他の実施形態においては少なくとも20個ないし50個のシアル酸残基を有する。いくつかの実施形態において多糖類化合物は、合計で500個までの糖残基を有し得る。いくつかの実施形態において化合物中の糖残基のすべては、シアル酸残基である。糖単位は、他の官能基、例えば、アミノ基、ヒドロキシル基または硫酸基、またはその組み合せ等を含み得る。これらの官能基は天然に存在する糖化合物に存在し得えて、または誘導多糖類類化合物に導入し得る。
凝固因子タンパク質またはその抗原性フラグメントもしくは変異体は、当業者に既知の種々の技術のいずれかによって、多糖類化合物に共有結合的に結合され得る。例には、凝固因子タンパク質または多糖類のいずれかのカルボキシル基と他方のアミノ基の間のペプチド結合による結合、または一方のカルボキシル基と他方のヒドロキシル基の間のエステル結合が含まれる。代わりにシッフ塩基が、一方のアミノ基と他方のアルデヒド基の間で形成され得る。結合の他の機構は、当該技術分野の通常の技術の範囲内である。種々の例が米国特許第5,846,951号で特定されていて、それは参照することにより援用される。
本明細書で用いる場合、凝固因子タンパク質またはその抗原性フラグメントもしくは変異体が、一または複数の生理学的に許容可能なリンカー分子に結合されているという言及には、いずれかの適当な化学結合、例えば、共有結合またはイオン性、疎水性、親和性、生体親和性等の比共有結合等が含まれる。リンカーはまた、二機能性試薬の使用によっておよびスペーサ―アームによりタンパク質と共役され得る。さらにリンカー分子は、親和性相互作用によって凝固因子タンパク質に共役され得る。例えば、凝固因子タンパク質はビオチン標識され得て、ならびにアビジンまたはストレプアビジンが結合されたポリマーは、凝固因子タンパク質に結合され得る。
リンカーは、同様に、酵素的方法、例えば、米国特許第6,379,933号に教示されるポリグリコシルトランスフェラーゼによる糖類の転移、または米国特許公開第20040132640号A1に教示されるグリコPEG化等によって、凝固因子タンパク質またはその抗原性フラグメントもしくは変異体に結合され得て、その教示のすべては参照することにより本明細書で援用される。
一実施形態において生理学的に許容可能なリンカーは、PEGまたはPEG誘導体であり、それは当該技術分野において既知のいずれかの戦略および方法によって凝固因子タンパク質に共有結合されている。いくつかの実施形態において、修飾戦略は、リジン基のアミノ基による少なくとも一つのリンカー分子の結合、炭水化物側鎖による少なくとも一つのリンカー分子の結合、スルフヒドリル基による少なくとも一つのリンカー分子の結合、アスパラギン酸およびグルタミン酸のカルボキシル基による少なくとも一つのリンカー分子の結合、ならびにヒドロキシル基の少なくとも一つのリンカー分子の結合ならびにN‐末端の少なくとも一つのリンカー分子の結合である。
他の実施形態において凝固因子タンパク質またはその抗原性フラグメントもしくは変異体はまた、その炭水化物残基により少なくとも一つのリンカー分子に結合し得る。いくつかの実施形態においてこれは、例えば、NaIO4等による炭水化物側鎖の穏やかな酸化によって実施され得て、アルデヒド機能の形成およびその後のPEG‐ヒドラジド等のPEGへの結合を形成する。
他の実施形態は、スルフヒドリル基による凝固因子タンパク質またはその抗原性フラグメントもしくは変異体への、少なくとも一つのリンカー分子の結合を提供する。遊離SH基は、例えば、PEGマレイミドによって修飾され得て安定した硫化物を形成する。システイン残基のPEG化はまた、例えば、PEG‐ビニルスルホン、PEG‐ヨードアセトアミド、またはPEG‐オルソピリジルジスルフィドを使用して実施され得る。
いくつかの実施形態において、凝固因子タンパク質またはその抗原性フラグメントもしくは変異体のシステイン(システイン変異体を含む)の生理学的に許容可能なリンカー、例えばPEGまたはシグレックリガンドへの結合は、以下の通り実施されうる。例えば、FVIII分子は特定部位(例えば、残基1804)に導入されたシステインを有し得て、このFVIIIは、20mM MOPS/20mM CaCl2/100ppm Tween 80、pH7中で新たに調製される、120ulのTCEP原液(25mM)を12mLの第VIII因子(0.15mg/mL)に、0.25mMの終濃度をあたえるように添加することによって、TCEPにより還元される。試料を混合せずにRTで1時間インキュベートし、陽イオン交換クロマトグラフィーを使用してTCEPを除去する。複合化の前にFVIII試料を4℃で一晩インキュベートし、TCEPによって還元されていたタンパク質のジスルフィド結合の再構成を可能とする。リガンドのマレイミド活性型をFVIIIと混合し、4℃でロッカー上5時間インキュベートする(緩やかに混合)。複合化されたFVIIIを未反応のリガンドから精製する。例えば、カチオン交換クロマトグラフィーを使用して、そこでは複合体を、40%緩衝液E(20mM MOPS/10mM CaCl2/100ppm Tween80、pH7.0)と60%緩衝液F(緩衝液Eプラス600mM NaCl)のグラジエント、0.5mL/分の流速で溶出し得る。ショ糖血漿を溶出プールに溶解し1%の終濃度とし、タンパク質を−80℃に保存し得る。
いくつかの実施形態において、リンカー(PEG等)またはシグレックリガンドの凝固因子タンパク質またはその抗原性フラグメントもしくは変異体(FVIII等)への酵素的複合糖質化は、以下の通り実施され得る。シアル酸リガンド分子のFVIII等の糖タンパク質上の天然のN‐グリカンへの酵素的結合は、三段階のプロセスで実施され得る。最初に糖タンパク質を、緩衝液、10mM His、50mM NaCl、2mM CaCl2、pH6.0中でシアリダーゼとのインキュベーションによって脱シアル化する。それからCMP‐シアル酸‐Gly‐リガンドを、シアル酸リガンドの転移を触媒するために、反応に適した比でST3GalIIIと共に添加する。室温での18〜24時間のインキュベーション後に、残存するガラクトースをモル過剰のCMP‐シアル酸の添加によって、シアル酸によりキャッピングする。続いて複合糖質を、複合化レベルに従って未反応の反応物または画分から精製し得る(例えば、陰イオン交換クロマトグラフィーまたはアフィニティークロマトグラフィーまたはサイズ排除クロマトグラフィーによる)。適切な活性の複合体を含む画分をプールし、20mM MOPS/10mM CaCl2/100ppm Tween80、1% ショ糖 1%、pH7.0に緩衝液交換し、−80℃に保存し得る。
いくつかの実施形態において複合体は、小粒子、例えば、金属を含むナノ粒子、ポリマーのナノ粒子、脂質を含むナノ粒子、リポソームまたは固体脂質ナノ粒子等を含む。いくつかの実施形態において小粒子は、シグレックリガンドおよび凝固因子タンパク質を間接的に連結するのに役立ち、リンパ球B細胞上の免疫シナプスにおけるそれらの並置およびシグレックおよびB細胞受容体の結合を促進する。いくつかの実施形態において小粒子上にあるシグレックリガンドは、B細胞表面上に発現されるシグレックを特異的に認識する糖鎖リガンド(glyan ligand)である。いくつかの実施形態において、B細胞表面上で発現されるシグレックは、CD22および/またはシグレックG/10である。リポソーム等の小粒子への結合は、直接的または間接的であり得て、本質的に共役結合的または非共役結合的である。いくつかの実施形態において、シグレックリガンドおよび凝固因子タンパク質は、それらが小粒子の外表面上に提示されるように小粒子に結合されている。いくつかの実施形態においてシグレックリガンドおよび凝固因子タンパク質は、一つのリポソームの同じ分子に結合している。他の実施形態においてシグレックリガンドおよび凝固因子タンパク質は、一つのリポソーム上の異なる分子に結合している。
いくつかの実施形態において小粒子は、1ないし600nmの間の平均粒径を有する。いくつかの実施形態において小粒子は、1ないし500nmの間、1ないし400nmの間、1ないし300nmの間、1ないし200nm、1ないし150nmの間または10ないし100nmの間の平均粒径を有する。いくつかの実施形態において小粒子の約90%は、上記の範囲に入る粒径を有する。いくつかの実施形態において小粒子の約50%、約60%、約70%、約80%、約85%、約90%、約95%または約99%は、上記の範囲に入る粒径を有する。本明細書で用いる場合、「約」は±10%を意味する。
いくつかの実施形態においてリポソームは、典型的には親水性領域と疎水性領域を含む両親媒性分子の凝集によって得られる、水溶性粒子の多孔質構造である。リポソームの成分は、いずれかの両親媒性分子によって形成された閉じたミセルである一方、いくつかの実施形態において該成分は脂質を含み、二層構造を形成する。いくつかの実施形態においてリポソームの成分は、半流動性の、約10ないし約200ナノメーターの間の径の超微細な小胞である。リポソームの構造は特に制限されず、したがってユニラメラおよびマルチラメラ等のいずれかのリポソームであり得る。溶液がリポソームの内部に封入されるので、水に加えて緩衝液および生理的食塩水およびその他を使用することが可能である。
いくつかの実施形態においてリポソームは、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)およびポリエチレングリコール‐ジステアロイルホスホエタノールアミン(PEG‐DSPE)等のリン脂質を含む。ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジオレイルホスファチジルコリン(DOPC)およびジオレイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、スフィンゴ糖脂質およびグリセロ糖脂質を含む、他のリン脂質もまた、本実施形態のリポソームの調製において使用し得る。これらのリン脂質は、単独でまたは二以上の組み合せまたは脂質誘導体との組み合せでリポソームの作成に使用され得て、ここでコレステロール等の非極性物質またはポチエチレングリコール等の水溶性ポリマーが脂質に結合されている。
リポソームは、当該技術分野において周知の方法に従って調製され得る。例えば、リポソーム表面上へのシグレックリガンドおよび凝固因子の取り込みは、通常行われている手法のいずれかによって達成され得る。シグレックリガンドおよび凝固因子タンパク質を有するリポソームナノ粒子を産生する詳細な手法はまた、本明細書の実施例において例示される。いくつかの実施形態において複合体は、リポソームおよび組み込まれた糖鎖リガンド(例えば、BPANeuGc)および第VIII因子等の特異的な凝固因子タンパク質を含む。本明細書に例示する方法および手法に加えて、リポソームを調製するために当業者によって通常使用される種々の方法もまた、本実施形態において採用される。例えば、Chen et al.,Blood 115:4778‐86,2010:およびLiposome Technology(リポソーム技術),vol.1,2nd edition(第2版)(by Gregory Gregoriadis(CRC Press,Boca Raton,Ann Arbor,London,Tokyo),Chapter 4(第4章),pp67‐80,Chapter 10(第10章),pp167‐184およびChapter 17(第17章),pp261‐276(1993))に記載された方法が使用され得る。より具体的に適した方法には、制限されるものではないが、超音波法、エタノール注入法、フレンチプレス法、エーテル注入法、コール酸法、カルシウム融合法、凍結乾燥法および逆相蒸散法が含まれる。
凝固因子タンパク質
本明細書で用いる場合、「凝固因子タンパク質」とは、凝固カスケードに関与し、圧倒的に凝血促進活性を有するタンパク質を表す。凝固因子は当該技術分野において周知であり、制限するものではないが、凝固因子I、II、V、VI、VII,VIII、IX、X、XI、XIIおよびXIIIを含む。いくつかの実施形態において凝固因子は、血漿から濃縮され得て、または組換えで産生され得る。いくつかの実施形態において凝固因子は、天然の構成と異なるアミノ酸構成を有する。いくつかの実施形態において凝固因子は、補充療法のために投与されるならば治療的に有用であるような十分な凝血促進活性を有する。一実施形態において凝固因子は、制限するものではないが、血漿由来のFVIII濃縮物または組換えで産生されるFVIII等の機能性FVIIIポリペプチド、または第IX因子(FIX)である。
本明細書で用いる場合、用語「ポリペプチド」とは、ペプチド結合によって互いに直鎖状に結合した二以上のアミノ酸を含む、いずれかのペプチドまたはタンパク質を表す。この用語は、当該技術分野において通常には例えば、ペプチド、オリゴペプチドおよびオリゴマーとも呼ばれる単鎖、およびその中には多数の種類が存在する、当該技術分野において一般的にタンパク質と呼ばれるより長い鎖の双方を表す。タンパク質は一または複数のポリペプチド鎖を含み得る。ポリペプチドは、20個の通常天然型アミノ酸と称される20個のアミノ酸以外のアミノ酸を含み得ること、および末端アミノ酸を含む多数のアミノ酸は、プロセッシングおよび他の翻訳後修飾等のナチュラル・プロセスによっても、また当該技術分野で周知の化学修飾技術によっても所定のポリペプチド中で修飾され得ること、が理解されよう。修飾には例えば、アセチル化、アシル化、ADP‐リボシル化、アミド化、フラビンの共有結合、ヘム部分の共有結合、ヌクレオチドまたはヌクレオチド誘導体の共有結合、脂質または脂質誘導体の共有結合、ホスホチジルイノシトールの共有結合、架橋、環化、ジスルフィド結合形成、脱メチル化、共有結合性架橋形成、シスチン形成、ピログルタミン酸形成、ホルミル化、γ‐カルボキシル化、グリコシル化、GPIアンカー形成、ヒドロキシル化、ヨウ素化、メチル化、ミリストイル化、酸化、タンパク質プロセッシング、リン酸化、プレニル化、ラセミ化、セレノイル化、硫酸化、アルギニン化等のタンパク質への転移RNA媒介性アミノ酸付加およびユビキチン化が含まれ得る。このような修飾は、当業者に周知である。いくつかの特に一般的な修飾、例えば、グリコシル化、脂質付加、硫酸化、グルタミン酸残基のγ‐カルボキシル化、ヒドロキシル化およびADP‐リボシル化は、最も基本的な教科書、例えば、PROTEINS‐‐STRCTURE AND MOLECULAR PROTERTIES(タンパク質‐構造および分子的特性),2nd Ed.(第2版),T.E.Creighton,W.H.Freeman and Company,New York(1993)に記載されている。修飾は、ペプチド骨格、アミノ酸側鎖およびアミノまたはカルボキシル末端を含む、ポリペプチド中のどこでも生じ得る。実際に、共有結合修飾によるポリペプチドにおけるアミノ基またはカルボキシル基、または双方の封鎖は、天然型および合成ポリペプチドにおいて一般的であり、このような修飾は本実施形態のポリペプチドにも同様に存在し得る。ペプチドの翻訳後修飾の間に、NH2‐末端のメチオニン残基が除去され得る。従ってこれらの実施形態は、実施形態のタンパク質のメチオニンを含むおよびメチオニンを含まないアミノ末端変異体の使用を検討する。ポリペプチドにおいて生じる修飾は、しばしばポリペプチドの作り方の機能である。宿主におけるクローン化遺伝子の発現によって作成されたポリペプチドについては、例えば、修飾の性質と範囲は、宿主細胞の翻訳後修飾能およびポリペプチドのアミノ酸配列に存在する修飾シグナルによって大部分決定される。例えば、周知の通りグリコシル化は、例えば大腸菌等の細菌宿主においてはめったに生じない。従ってグリコシル化が望ましいときは、ポリペプチドはグリコシル化する宿主、一般的に真核細胞において発現すべきである。同じ型の修飾が、所定のポリペプチドにおけるいくつかの部位で同じ程度または様々な程度で存在し得ることが理解されよう。また所定のポリペプチドは、多数の種類の修飾を含み得る。一般的に、本明細書で用いる場合、用語・ポリペプチドは、このような全ての修飾、特に宿主細胞においてポリヌクレオチドを発現することによって合成されたポリペプチドに存在する修飾を含む。
いくつかの実施形態において凝固因子タンパク質は、組換えタンパク質、天然タンパク質または合成タンパク質であり得る。一定の実施形態において、それは組換えタンパク質である。いくつかの実施形態において被験者は、被験者における補充療法において使用される凝固因子タンパク質と同一のアミノ酸配列を有する、凝固因子タンパク質、変異体または抗原性フラグメントを含む複合体を投与される。
いくつかの実施形態において凝固因子は、哺乳動物起源である。いくつかの実施形態において凝固因子タンパク質は、ヒト、非ヒト霊長目動物、マウス、ラット、ブタ、ネコ、イヌ、ウシ、ウマ、ウサギおよびサルから成る群より選択される起源を有する。一実施形態において、凝固因子タンパク質はヒトタンパク質である。
一実施形態において凝固因子タンパク質は、ヒト組換え型FVIIIまたはその抗原性フラグメントもしくは変異体である。
他の実施形態において凝固因子タンパク質は、製品コージネイト(KOGENATE)のアミノ酸配列に基づく完全長組換え型FVIIIである。いくつかの実施形態において凝固因子タンパク質は、配列番号1、配列番号2およびその組み合せから成る群より選択される。
他の実施形態において凝固因子タンパク質は、Bドメイン欠失組換え型FVIIIである。いくつかの実施形態においてBドメイン欠失組換え型FVIIIは、配列番号5、配列番号6およびその組合せから成る群より選択される。
他の実施形態において凝固因子タンパク質は、自然界に見出されるいずれかのヒトFVIIIのアミノ酸配列に基づく完全長組換え型FVIIIである。
いくつかの実施形態において凝固因子タンパク質は、補充療法において使用されるいずれかのFVIII製品である。
他の実施形態において凝固因子タンパク質は、Bドメインが完全にまたは部分的に欠失しているいずれかのヒトFVIIIアミノ酸配列に基づく、B欠失組換え型FVIIIである。複合体はまた、凝固因子タンパク質の変異体も含み得る。本明細書で用いる場合、タンパク質に適用されるとき用語「変異体」は、基準タンパク質と異なるタンパク質である。この意味での変異体の例を以下に記載し、本開示の他の箇所でより詳細に記載する。一般的にタンパク質に関して相違の程度は、基準および変異体の配列が総合的に極めて類似し、多くの領域で同一であるように制限され得る。変異体および基準タンパク質は、いずれかの組み合せで存在し得る、一または複数の置換、付加、欠失、融合および切断により、アミノ酸配列において異なり得る。変異体はまた、基準配列と同一のアミノ酸配列を有し得るが、グリコシル化またはPEG化等の一または複数の翻訳後修飾に関する相違点を示すタンパク質を含み得る。
いくつかの実施形態において凝固因子タンパク質は、例えば、半減期または安定性を改善するために一または複数の生体適合性ポリマーによる連結によって修飾された変異体である。適した生体適合性ポリマーには、ポリアルキレンオキサイド、例えば、制限されるものではないがポリエチレングリコール(PEG)、デキストラン、コロミン酸または他の炭水化物に基づくポリマー等、アミノ酸のポリマー、ビオチン誘導体、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリカルボキシレート、ポリビニルピロリドン、ポリエチレン‐無水マレイン酸共重合体、ポリスチレン‐無水マレイン酸共重合体、ポリオキサゾリン、ポリアクリロイルモルホリン、ヘパリン、アルブミン、セルロース、キトサン加水分解物、ヒドロキシエチルデンプンおよびヒドロキシプロピルデンプン等のデンプン、グリコーゲン、アガロースおよびその誘導体、グアーガム、プルラン、イヌリン、キサンタンガム、カラギーナン、ペクチン、アルギン酸加水分解物、他のバイオポリマーおよびそのいずれかの等価物が含まれる。一実施形態においてポリマーは、ポリエチレングリコール(PEF)である。他の実施形態においてポリマーは、メトキシポリエチレングリコール(mPEG)である。他の有用なポリアルキレングリコール化合物は、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリブチレングリコール(PBG)、PEG‐グリシジルエーテル(Epox‐PEG)、PEG‐オキシカルボニルイミダゾール(CDI‐PEG)、分岐型ポリエチレングリコール、直線状ポリエチレングリコール、フォーク型ポリエチレングリコールおよびマルチアーム型または「超分岐型」ポリエチレングリコール(スターPEG)である。
本明細書で用いる場合、「PEG」および「ポリエチレングリコール」は置き換え可能であり、いずれかの水溶性のポリ(エチレンオキシド)を含む。典型的には、実施形態に従う使用のためのPEGは、次の「‐‐(OCH2CH2)n‐‐」の構造を含み、ここで(n)は2ないし4000である。本明細書で用いる場合、PEGにはまた、末端の酸素が置換されているかどうかに依存して、「‐‐CH2CH2‐‐O(CH2CH2O)n‐‐CH2CH2‐‐」および「‐‐(OCH2CH2)nO‐‐」も含まれる。明細書および請求項を通じて、用語「PEG」には、制限されるものではないが、ヒドロキシルまたはC1‐20アルコキシ基等の種々の末端基または「エンドキャッピング」基を有する構造が含まれることを忘れてはならない。用語「PEG」はまた、過半数のすなわち50%を超える‐‐OCH2CH2‐‐の反復サブユニットを含むポリマーを意味する。特定の形態に関しては、PEGはいずれかの数の種々の分子量、ならびに分岐型、直線状、フォーク型および多機能性等の構造または幾何学的配置を取り得る。PEG化とは、それによってポリエチレングリコール(PEG)がタンパク質等の分子に共有結合的に結合されるプロセスである。いくつかの実施形態においてPEG化は、投与後のタンパク質の半減期を増強する。いくつかの実施形態において凝固因子は、PEGに結合されている。一実施形態において、凝固因子はFVIIIであり、1)FVIIIのいずれかのドメイン上の一または複数の既存の炭水化物に直接的に;2)FVIIIのいずれかのドメイン上のいずれかの利用可能なまたは操作されたシステインに直接的に;3)FVIII上のいずれかの他のアミノ酸に;4)そのいずれかの組み合せにより、PEGに結合されている。
いくつかの実施形態において凝固因子タンパク質またはその変異体もしくは抗原性フラグメントは、所定部位で変異を受けることが出来、次にその部位で生体適合性ポリマーに共有結合的に連結され得る。凝固因子に生体適合性ポリマーを連結する方法は、例えば、米国出願公開第2006/0115876号に見出すことが出来、参照することにより本明細書でその全体が援用される。本実施形態の複合体において使用され得る生体適合性ポリマーは、上記のいずれかのポリマーであり得る。生体適合性ポリマーは、薬物動態学的における望ましい改善を提供するように選択され得る。例えば、いくつかの実施形態において、ポリマーの固有性、大きさおよび構造は、活性の許容不可能な減少することなく、ポリペプチドの循環半減期を改善するように、またはポリペプチドの抗原性を減少させるように選択される。いくつかの実施形態において、ポリマーはPEGを含み、いくつかの実施形態においてポリマーはその分子量の少なくとも50%をPEGとして有する。一実施形態においてポリマーは、ヒドロキシル、アルコキシ、置換アルコキシ、アルケノキシ、置換アルケノキシ、アルキノキシ、置換アルキノキシ、アリルオキシおよび置換アリルオキシ等のエンドキャッピング部分により末端をキャッピングされたポリエチレングリコールである。一実施形態においてポリマーは、メトキシポリエチレングリコールを含む。他の実施形態においてポリマーは、3kDから100kD、5kDから64kDまたは5kDから43kDの範囲の径を有するメトキシポリエチレングリコールを含む。
いくつかの実施形態において、生体適合性ポリマーは反応性部分を有する。例えば、一実施形態においてポリマーは、ポリペプチド上の遊離システインと反応し得るスルフヒドリル反応性部分を有し、共有結合を形成し得る。このようなスルフヒドリル反応性部分には、チオール、トリフレート、トシレート、アジリジン、オキシラン、S‐ピリジルまたはマレイミド部分が含まれる。いくつかの実施形態において反応性部分は、マレイミド部分である。一実施形態において、ポリマーは直線状であり、一方の末端にスルフヒドリル(メトキシ等)に対し反応性の強くない「キャップ」を、かつ他方の末端にはスルフヒドリル反応性部分を有する。一実施形態において複合体は、PEG‐マレイミドを含み、5kDから64kDの粒径範囲を有する。
凝固因子ポリペプチドまたはその抗原性フラグメントもしくは変異体をコードするヌクレオチド配列の部位特異的な突然変異は、当該技術分野において既知のいずれかの方法によって生じ得る。いくつかの方法には、ポリマーの共有結合のために選択される部位における、システインコドンを誘導するための突然変異誘発が含まれる。これは、市販の部位特異的突然変異誘発キット、例えば、Stratagene cQuickChange(登録商標)II部位特異的突然変異誘発キット、Clontech Transformer部位特異的突然変異誘発キットno.K1600‐1、Invitrogen GenTaylor部位特異的突然変異誘発システムno.12397014、Promega Aletered Sites IIインビトロ突然変異誘発システムキットno.Q6210またはTakara Mirus Bio LA PCR突然変異誘発キットno.TAK RR016等を使用して達成され得る。
いくつかの実施形態において生体適合性ポリマーを含む変異体は、最初にポリペプチドの表面上の一または複数のアミノ酸のコドンをシステインのコドンにより置換し、システイン変異体を組換え発現系において産生し、変異体をシステイン特異的ポリマー試薬と反応し、および変異体を精製することにより調製され得る。この系においてシステイン部位でのポリマーの付加は、ポリマー上でのマレイミドの活性機能により達成され得る。使用されるスルフヒドリル反応性ポリマーの量は、誘導体化されるべきシステインのモル量と少なくとも等モルであることが出来、もしくはいくつかの実施形態においては過剰である。いくつかの実施形態において、少なくとも5倍モル過剰のスルフヒドリル反応性ポリマーが使用され、または少なくとも10倍過剰のこのようなポリマーが使用される。共有結合にとって有用な他の条件は、当業者の範囲内である。
いくつかの実施形態において変異体は、一または複数のアミノ酸残基が保存アミノ酸残基または非保存アミノ酸残基により置換されているタンパク質を含み、ならびにこのように置換されたアミノ酸残基は遺伝コードによってコードされ得るかまたはコードされ得ないアミノ酸残基である。保存的置換とは、タンパク質中の所定のアミノ酸を似た特性の他のアミノ酸によって置換する置換である。いくつかの実施形態において変異体は、オリジナルな抗原に対し少なくとも約80%の同一性を有する保存的置換であり、ならびに抗原性変異体の配列とオリジナルな抗原の配列の間の置換は保存的アミノ酸置換である。以下の置換は保存的アミノ酸置換であると考えられている:バリン、イソロイシンまたはロイシンはアラニンに置換される;リジン、グルタミンまたはアスパラギンはアルギニンに置換される;グルタミン、ヒスチジン、リジンまたはアルギニンはアスパラギンに置換される;グルタミン酸はアスパラギン酸に置換される;セリンはシステインに置換される;アスパラギンはグルタミンに置換される;アスパラギン酸はグルタミン酸に置換される;プロリンまたはアラニンはグリシンに置換される;アスパラギン、グルタミン、リジンまたはアルギニンはヒスチジンに置換される;ロイシン、バリン、メチオニン、アラニン、フェニルアラニンまたはノルロイシンはイソロイシンに置換される;ノルロイシン、イソロイシン、バリン、メチオニン、アラニンまたはフェニルアラニンはロイシンに置換される;アルギニン、グルタミンまたはアスパラギンはリジンに置換される;ロイシン、フェニルアラニンまたはイソロイシンはメチオニンに置換される;ロイシン、バリン、イソロイシン、アラニンまたはチロシンはフェニルアラニンに置換される;アラニンはプロリンに置換される;スレオニンはセリンに置換される;セリンがはレオニンに置換される;チロシンまたはフェニルアラニンはトリプトファンに置換される;トリプトファン、フェニルアラニン、スレオニンまたはセリンはチロシンに置換される;トリプトファン、フェニルアラニン、スレオニンまたはセリンはチロシンに置換される;イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、アラニンまたはノルロイシンはバリンに置換される。いくつかの実施形態において変異体は、オリジナルな抗原に対し少なくとも約90%の同一性を有する保存的変異体である。
いくつかの実施形態において変異体は、一または複数のアミノ酸残基が置換基を含むタンパク質を含む。いくつかの実施形態において変異体は、一または複数の他の成分と融合したタンパク質を含む。いくつかの実施形態において変異体は、追加のアミノ酸が成熟タンパク質、例えば、リーダーまたは分泌配列または成熟タンパク質または成熟タンパク質配列の精製に用いられる配列、に融合されたタンパク質を含む。このような変異体は、本明細書の教示から当業者によって得られると考えられる。
いくつかの実施形態において変異体は、本来のタンパク質の少なくとも100%の活性を有する。いくつかの実施形態において変異体は、本来の凝固因子タンパク質の少なくとも50%の活性を有する。いくつかの実施形態において変異体は、本来の凝固因子タンパク質の少なくとも70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%以上の活性を有する。
いくつかの実施形態において1、2、3、4、5、6、7、8、9、10または0個のアミノ酸残基がいずれかの組み合わせで置換、欠失または付加される。いくつかの実施形態において凝固因子タンパク質は、サイレント置換、付加および欠失を含み、それらは凝固因子タンパク質の特性および活性を変化させない。
いくつかの実施形態において変異体は、一般的に基準配列に同一の少なくとも30個の連続したアミノ酸または少なくとも50〜100個の連続したアミノ酸を含む、基準配列の部分を含む。
いくつかの実施形態においてタンパク質は、単離された形態として提供され、ならびにいくつかの実施形態においては、タンパク質の単離および精製に関する既知の方法および技術を使用して実質的均一性まで精製される。
実施形態の複合体はまた、凝固因子タンパク質の抗原性フラグメントも含み得る。この点に関して抗原性フラグメントは、前記の基準ポリペプチドおよびその変異体のアミノ酸配列の全てではないが一部と、完全に同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドであり、それは抗体応答を発生することができる。凝固因子タンパク質の抗原性フラグメントは、該タンパク質由来の少なくとも一つのエピトープを含む。
抗原性フラグメントは、いずれかの長さであり得るが、最も典型的には少なくとも約6個のアミノ酸、少なくとも約9個のアミノ酸、少なくとも約12個のアミノ酸、少なくとも約20個のアミノ酸、少なくとも約30個のアミノ酸、少なくとも約50個のアミノ酸または少なくとも約100個のアミノ酸である。より大きな抗原性フラグメントもまた考えられる。
このような抗原性フラグメントは、「独立している」、すなわち他のアミノ酸またはポリペプチドの一部ではなくまたは融合しているかもしれず、またはそれらがその部分または領域を形成する、より大きなポリペプチド内部に含まれているかもしれない。より大きなポリペプチド内に含まれるとき、ここで論じるいくつかの実施形態におけるフラグメントは、単一の連続した領域を形成する。しかしながら、いくつかのフラグメントが単一のより大きなポリペプチド内に含まれ得る。例えば、いくつかの実施形態において本実施形態のポリペプチドの抗原性フラグメントは、宿主における発現のために設計され、抗原性フラグメントのアミノ末端に融合した異種性のプレおよび/またはプロポリペプチド領域および/またはフラグメントのカルボキシル末端に融合した追加の領域を有する、前駆体ポリペプチド内に含まれ得る。従って本明細書で意図する意味での一態様におけるフラグメントは、凝固因子タンパク質由来の融合ポリペプチドまたは融合タンパク質の部分または複数の部分を表す。
実施形態の抗原性ポリペプチドフラグメントの代表的な例には、例えば、約5〜15、10〜20、15〜40、30〜55、41〜75、41〜80、41〜90、50〜100、75〜100、90〜115、100〜125、および110〜140個のアミノ酸長を有する該フラグメントが含まれる。
いくつかの実施形態においてポリペプチドは、組換え核酸分子、発現カセット、または発現ベクターによりコードされた融合タンパク質の部分であり、該融合タンパク質のシグナルペプチドに対し異種性である。
いくつかの実施形態においてポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、宿主細胞における発現のためにコドン最適化される。いくつかの実施形態において抗原性フラグメントのアミノ酸配列は、オリジナルなタンパク質に対し少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または少なくとも約98%の同一性を有する。
第VII因子(FVII)
FVIIは、肝臓におて合成されるビタミンK依存性血漿タンパク質であり、53kDaの分子量を有する一本鎖糖タンパク質として血液中に分泌される(Broze & Majerus,J.Bio.Chem 1980;255:1242‐1247(1980)。FVIIチモーゲンは、単一サイト、R152‐I153におけるタンパク質切断によって活性型(FVIIa)に転換され、単一ジスルフィド架橋によって結合され二本鎖をもたらす。組織因子と複合したFVIIa(FVIIa複合体)は、第IX因子と第X因子の双方をその活性型に転換することが出来、その後迅速なトロンビン産生およびフィブリン形成をもたらす反応が続く(Osterud & Rapaport,Proc Natl Acad Sci USA 1977;74:5260‐5264(1977))。
ヒトFVII(hFVII)をコードする遺伝子は、第13番染色体の長腕34‐長腕末端9(q34〜qter9)にマッピングされた(de Grouchy et al.,Hum Genet 66:230‐233(1984))。該遺伝子は9のエクソンを含み12.8Kbに及んでいる(O´Hara et al.,Proc Natl Acad Sci USA 84:5158‐5162(1987))。FVIIの遺伝子構成およびタンパク質構造は、他のビタミンK依存性凝血促進タンパク質のそれらと類似していて、シグナル配列をコードするエクソン1aおよび1b;プロペプチドおよびGlaドメインをコードするエクソン2;短い疎水性領域をコードするエクソン3;上皮成長因子様ドメインをコードするエクソン4および5;およびセリンプロテアーゼ触媒ドメインをコードするエクソン6から8を有する、(Yoshitake et al.,Biochemistry 1985; 24: 3736‐3750)。組換えヒトFVIIaの市販製剤がNOVOSEVENとして販売されている。NOVOSEVENは、血友病AまたはB患者における出血の発症の治療に適応される。
本実施形態に有用なFVII分子には、完全長タンパク質、タンパク質の前駆体、タンパク質のサブユニットまたはフラグメント、およびその変異体および抗原性フラグメントが含まれる。FVIIへの言及は、このようなタンパク質の全ての可能な形態が含まれることを意味する。
いくつかの実施形態においてFVIIポリペプチドは、配列番号9を含むが、対立遺伝子変異体も可能である。第VII因子、変異体、フラグメントおよび/または同物を作成するうえで実施形態において有用である方法は、例えば、以下の米国特許出願公開および米国特許:20130084274; 20130017184; 20120321607; 20120263701; 20120208860; 20120178693; 20120171765;20120115204;20120087908; 20120064075; 20120004176; 20120003206; 20110250702; 20110097754; 20110064719; 20110059894; 20110059510; 20110046061; 20110045535; 20110040073; 20110003363; 20100330059; 20100303786; 20100294677; 20100260741; 20100197597; 20100166730; 20100166729; 20100158891; 20100145009; 20100124547; 20100120093; 20100113743; 20100056453; 20100015684; 20100009396; 20090311239; 20090305967; 20090291890; 20090281022; 20090264511; 20090263866; 20090239788; 20090227504; 20090221484; 20090181895; 20090162871; 20090130085: 20090104661; 20090098103; 20090093616; 20090093410; 20090087864; 20090075895; 20090055942; 20090047723; 20090043080; 20090042784; 20090041747; 20090023635; 20090017007; 20090011992; 20080318276; 20080312161; 20080286259; 20080274534; 20080268521; 20080227715; 20080206227; 20080206225; 20080175878; 20080145914; 20080102064; 20080076702; 20080075711; 20080075709; 20080069810; 20080058266; 20080058255; 20080057059; 20080039373; 20080010693; 20070243588; 20070219135; 20070207960; 20070207956; 20070190574; 20070142625; 20070142280; 20070129298; 20070122884; 20070099229; 20070049523; 20070037966; 20070027077; 20070021338; 20060293241; 20060276398; 20060276377; 20060270002; 20060270001; 20060270000; 20060258585; 20060252690; 20060252689; 20060252129; 20060252127; 20060252039; 20060240525; 20060240524; 20060234935; 20060228782; 20060211621; 20060205648; 20060205036; 20060183683; 20060166915; 20060166882; 20060111282; 20060063714; 20060052286; 20060045879; 20060030531; 20060025336; 20060019336; 20060013812; 20050267014; 20050266006; 20050204411; 20050204406; 20050202002; 20050113565; 20050075289; 20050032690; 20050032109; 20040258690; 20040248793; 20040197370; 20040192602; 20040186277; 20040117862; 20040087498; 20040063187; 20040043933; 20040037893; 20040009918; 20040009543; 20040006020; 20030215447; 20030203845; 20030170863; 20030152567; 20030130191; 20030125256; 20030124622; 20030124118; 20030119743; 20030119741; 20030119723; 20030118582; 20030118580; 20030118574; 20030109446; 20030104978; 20030100740; 20030100075; 20030096338; 20030077271; 20030044908; 20030040480; 20030003096; 20020151471; 20020142316; 20020137673; 20020110552; 20010007901; 8,334,273; 8,318,904; 8,299,029; 8,084,591; 8,053,410; 8,026,214; 8,022,031; 8,008,252; 7,951,910; 7,943,333; 7,892,842; 7,879,803; 7,871,985; 7,863,009; 7,829,095; 7,803,569; 7,790,852; 7,786,070; 7,754,682; 7,732,405; 7,700,733; 7,622,558; 7,598,056; 7,517,974; 7,511,024; 7,442,524; 7,442,514; 7,427,592; 7,419,803; 7,416,861; 7,416,860; 7,414,022; 7,371,543; 7,291,587; 7,235,638; 7,202,065; 7,176,288; 7,153,679; 7,125,846; 7,078,479; 7,052,868; 7,026,524; 6,960,657; 6,919,311; 6,911,334; 6,911,323; 6,905,683; 6,903,069; 6,835,817; 6,831,167; 6,806,063; 6,777,390; 6,677,440; 6,573,056; 6,528,299; 6,479,245; 6,329,176; 6,268,163; 6,183,743; 6,168,789; 6,039,944; 5,997,864; 5,968,759; 5,962,418; 5,948,759; 5,874,408; 5,861,374; 5,859,010; 5,833,982; 5,824,639; 5,817,788; 5,788,965; 5,750,358; 5,741,658; 5,700,914; 5,472,850; 5,344,918; 5,288,629; 5,190,919; 4,784,950; 4,456,591 および 3,962,427において記載されており、それらは第VII因子、変異体、フラグメントおよび/または同物を作成する方法に関する範囲で、参照することにより本明細書で援用される。
第VIII因子(FVIII)
血液凝固因子FVIIIは、肝臓によって合成され血流中に放出される糖タンパク質である。分泌タンパク質としてFVIIIは、翻訳過程の間にタンパク質分解切断されるシグナル配列を含む。19個のアミノ酸のシグナル配列の除去後、分泌されたFVIII産物の最初のアミノ酸はアラニンである。循環する血液中でFVIIIは、ヴォン・ヴィレブランド因子(vWF、同様に第VIII因子関連抗原として知られる)に結合し、安定した複合体を形成する。トロンビンによる活性化の際にFVIIIは複合体から解離し、凝固カスケードにおける他の凝固因子と相互作用し、それが最終的に血栓の形成をもたらす。
FVIIIそれ自体は凝固を引き起こさないが、凝固カスケードにおいて必須の役割を果たす。凝固におけるFVIIIの役割は、内因系FX活性化のための触媒補因子であるFVIIIaに活性化されることである(Thompson,Semin.Thromb.Hemost.29:11‐22(2003))。FVIIIは、トロンビンまたはFXaによってタンパク分解的に活性化され、それはFVIIIをヴォン・ヴィレブランド因子(vWf)から解離しおよびカスケードにおけるFVIIIの凝固促進機能を活性化する。活性型においてFVIIIaは、血液凝固の内因系経路中のFX活性化酵素複合体のための補因子として機能し、血友病Aの患者においてそれは減少するかまたは非機能的である。
いくつかの実施形態において本実施形態に有用なFVIIIには、完全長FVIIIおよびいずれかの誘導体の、凝固因子FIXの活性化において補因子として作用する能力、およびVWFと複合体を形成する能力、を含み生物学的に活性であるこれらの形態が含まれる。いくつかの実施形態において本実施形態に従って使用されるFVIIIは、血漿由来FVIII(pdFVIII)またはその組換え型FVIII(rFVIII)または生物学的に活性な誘導体であり得る。pdFVIIIおよびrFVIIIは、当該技術分野において既知のいずれかの方法によって産生され得る。pdFVIIIはいずれかの方法によって精製され得る。有用な一方法が米国特許第5,470,954号に記載されており、参照することにより本明細書で援用される。rFVIIIタンパク質はいずれかの適切な方法によって調製され得る。このようなrFVIIIの例には、Recombinate(登録商標)およびAdvate(登録商標)が含まれ、双方ともBaxter Healthcare Corporationにより製造および販売されている;ReFacto(登録商標)、FVIIIのBドメイン欠失型は、Wyeth Corporationにより製造および販売されている;およびKOGENATEは、Bayer Corporationにより製造および販売されている。方法およびrFVIIIの方法および例は、米国特許第4,757,006号;4,965,199号;および5,618,788号に記載されており、参照することによりその全ては本明細書で援用される。寛容を誘導するために使用され得るFVIIIの他の市販製剤には、Alphanate(登録商標)、Bioclate(登録商標)、Helixate(登録商標)FS、Hemofil(登録商標)M、Humate‐P(登録商標)、Hyate C(登録商標)、Koate(登録商標)‐DVI、Kogenate(登録商標)FS、Monarc‐M(商標)、Monarc‐M(商標)、Monarc‐M(登録商標)およびMonoclate‐P(登録商標)が含まれる。
いくつかの実施形態においてFVIIIポリペプチドには、それらがヒトFVIIIの機能的なセグメントおよび必須の、特徴的なヒトFVIIIの機能活性を含む限りは、FVIIIの誘導体をもたらず対立遺伝子変異体、グリコシル化バージョン、修飾体およびフラグメントが含まれる。
いくつかの実施形態においてFVIII分子には、完全長タンパク質、タンパク質の前駆体、タンパク質のサブユニットまたはフラグメント、およびその変異体および抗原性フラグメントが含まれる。FVIIIへの言及は、このようなタンパク質の全ての可能な形態を含むことを意味する。
いくつかの実施形態においてFVIIIポリペプチドは、完全長ヒトFVIIIを含む。いくつかの実施形態において完全長FVIIIは、配列番号1、配列番号2およびその組み合せから成る群より選択されるアミノ酸配列を含むが、対立遺伝子変異体も可能である。分泌されるタンパク質としてFVIIIは、翻訳過程の間にタンパク質分解的に切断される一本鎖配列を含む。19個のアミノ酸シグナル配列の除去後、分泌されるFVIII産物の最初のアミノ酸はアラニンである。
いくつかの実施形態においてヒトFVCIIIは、Bドメイン欠失FVIII(BDD)である。本明細書で用いる場合、BDDは、FVIIIのBドメインの14個のアミノ酸を除いてすべての欠失を含むアミノ酸配列を有することによって特徴づけられる。Bドメインの最初の4個のアミノ酸(配列番号3)は、Bドメインの最後の10個の残基(NPPVLKRHQR、配列番号4)に連結される。いくつかの実施形態においてBDD FVIIIは、配列番号5および配列番号6およびその組み合せから成る群より選択されるアミノ酸配列を含む。
第VIII因子、変異体フラグメント、および/または実施形態において同物を作成する上で有用な方法は、例えば、以下の米国特許出願公開および米国特許: 20130085110; 20130072434; 20130040889; 20130040888; 20130017997; 20130012442; 20130005656; 20130004462; 20120322737; 20120308641; 20120270266; 20120245289; 20120244597; 20120232252; 20120225819; 20120190623; 20120178692; 20120178691; 20120142594; 20120142593; 20120093840; 20120083446; 20120065136; 20120045819; 20120028900; 20110286988; 20110262424; 20110206651; 20110183907; 20110178019; 20110160435; 20110124565; 20110118188; 20110112028; 20110112027; 20110112026; 20110112025; 20110112024; 20110112023; 20110112022; 20110077203; 20110039302; 20100305305; 20100292440; 20100284971; 20100261872; 20100256062; 20100233119; 20100204452; 20100197578; 20100183556; 20100173831; 20100173830; 20100172891; 20100168391; 20100168018; 20100167392; 20100130427; 20100125049; 20100120689; 20100120094; 20100113365; 20100113364; 20100112641; 20100099113; 20100003254; 20090325881; 20090305349; 20090297503; 20090297498; 20090275141; 20090271163; 20090263380; 20090247459; 20090215070; 20090215025; 20090208512; 20090203077; 20090130094; 20090118185; 20090118184; 20090076237; 20090041714; 20080312143; 20080300174; 20080234193; 20080219983; 20080206254; 20080176791; 20080160015; 20080076702; 20080070275; 20080070251; 20080058504; 20080044430; 20070275880; 20070265199; 20070244301; 20070232789; 20070232788; 20070215475; 20070135342; 20070065425; 20060293505; 20060293238; 20060276398; 20060239998; 20060233786; 20060205661; 20060193829; 20060160994; 20060099685; 20060051367; 20060014683; 20050276787; 20050256304; 20050256038; 20050229261; 20050165221; 20050118684; 20050100990; 20050079584; 20050074836; 20050060775; 20050009148; 20040249134; 20040248785; 20040235734; 20040197875; 20040197390; 20040166150; 20040147436; 20040126774; 20040120951; 20040116345; 20040092442; 20040087776; 20040062752; 20040038396; 20030199444; 20030166536; 20030165822; 20030148953; 20030147900; 20030134778; 20030129174; 20030106798; 20030099618; 20030083257; 20030077752; 20030068785; 20020182684; 20020182670; 20020159977; 20020146729; 20020132306; 20020115832; 20020115152; 20020102730; 20020068303; 20010010815; 8,399,620; 8,372,800; 8,349,800; 8,338,571; 8,329,871; 8,309,086; 8,293,234; 8,282,923; 8,252,287; 8,247,536; 8,236,518; 8,198,421; 8,188,246; 8,183,345; 8,183,344; 8,173,597; 8,143,378; 8,133,977; 8,133,865; 8,110,190; 8,076,292; 8,071,728; 8,071,727; 8,071,726; 8,071,725; 8,071,724; 8,071,094; 8,067,543; 8,058,226; 8,058,017; 8,053,561; 8,038,993; 8,003,760; 7,985,839; 7,985,838; 7,982,010; 7,981,865; 7,960,182; 7,932,355; 7,884,075; 7,867,974; 7,863,421; 7,858,749; 7,855,274; 7,829,085; 7,820,796; 7,790,680; 7,785,594; 7,691,565; 7,683,158; 7,678,761; 7,645,860; 7,635,763; 7,615,622; 7,582,296; 7,560,107; 7,544,660; 7,507,540; 7,459,534; 7,459,525; 7,351,577; 7,247,707; 7,214,785; 7,211,559; 7,199,223; 7,157,277; 7,144,487; 7,122,634; 7,112,438; 7,087,723; 7,041,635; 7,033,791; 7,012,132; 6,967,239; 6,930,087; 6,887,852; 6,866,848; 6,838,437; 6,800,461; 6,780,614; 6,770,744; 6,759,216; 6,683,159; 6,599,724; 6,593,294; 6,586,573; 6,518,482; 6,517,830; 6,492,105; 6,458,563; 6,376,463; 6,358,703; 6,355,422; 6,346,513; 6,316,226; 6,307,032; 6,284,871; 6,271,025; 6,255,554; 6,251,632; 6,221,349; 6,200,560; 6,197,526; 6,191,256; 6,180,371; 6,171,825; 6,143,179; 6,057,164; 6,037,452; 6,005,082; 5,998,589; 5,994,310; 5,972,885; 5,962,650; 5,952,198; 5,925,739; 5,919,908; 5,919,766; 5,888,974; 5,880,327; 5,859,204; 5,831,026; 5,824,780; 5,804,420; 5,763,401; 5,747,337; 5,744,446; 5,733,873; 5,714,590; 5,707,832; 5,693,499; 5,681,746; 5,679,776; 5,679,549; 5,668,108; 5,663,060; 5,661,008; 5,659,017; 5,633,150; 5,618,789; 5,618,788; 5,610,278; 5,605,884; 5,597,711; 5,583,209; 5,576,291; 5,565,427; 5,543,502; 5,543,145; 5,506,112; 5,470,954; 5,424,401; 5,422,250; 5,410,022; 5,399,670; 5,371,195; 5,364,771; 5,362,854; 5,356,878; 5,328,694; 5,288,853; 5,260,274; 5,259,951; 5,214,033; 5,177,191; 5,171,844; 5,112,950; 5,110,907; 5,101,016; 5,091,363; 5,043,429; 5,043,428; 4,981,951; 4,970,300; 4,965,199; 4,886,876; 4,857,635; 4,845,074; 4,822,872; 4,814,435; 4,789,733; 4,769,336; 4,675,385; 4,657,894; 4,650,858; 4,649,132; 4,578,218; 4,556,558; RE32,011; 4,522,751; 4,456,590; 4,446,134; 4,406,886: 4,404,131; 4,387,092; 4,383,989; 4,370,264; 4,361,509; 4,359,463; 4,348,384; 4,348,315; 4,302,445; 4,289,691; 4,250,008; 4,235,881; 4,221,780; 4,203,891; 4,188,318; 4,093,608; 4,085,095; 4,069,216;および4,027,013において記載されており、それらは第VIII因子、変異体、フラグメントおよび/または同物を作成する方法に関する範囲で、参照することにより本明細書で援用される。
いくつかの実施形態においてFVIIIは、PEG等の生体適合性ポリマーにより修飾され得る。第VIII因子のPEG化された形態は、WO 2006/053299および米国特許出願公開第20060115857号において開示されていて、参照することにより本明細書で援用される。
FVIIIの以下に続く実施例においてFVIII突然変異タンパク質は、当該技術分野の従来法に従って命名される。本明細書で用いる場合、「突然変異タンパク質(mutein)」とは、タンパク質またはポリペプチドに実験室的に誘導された変異の結果として生じる遺伝子改変されたタンパク質である。変異体を命名するための慣習は、配列番号2に提供される、成熟した完全長第VIII因子のアミノ酸配列に基づいている。
慣習的であり本明細書で用いる通り、BDD FVIIIにおける変異アミノ酸に言及するとき、変異したアミノ酸は完全長FVIIIの配列における位置によって命名される。例えば、以下で述べるPEG6突然変異タンパク質は、リジン(K)を完全長配列における1808に類似する位置でシステイン(C)に変えるとの理由で、K1808Cと命名される。いくつかの実施形態において以下で述べる変異のために、システインが完全長FVIIIまたはBドメイン欠失FVIIIの指定された位置で天然アミノ酸を置換し、PEG等の生体適合性ポリマーがシステイン残基に結合される。
PEG等の生体適合ポリマーの共有結合のための所定の部位は、FVIII活性に関与しないまたはvWFへの結合等のインビボでのFVIIIを安定化する他の機構に関与する、ペプチドの表面に露出される部位から最良に選択される。このような部位はまた、FVIIIが不活性化されるまたは血中から排除される機構に関与することが知られている部位から最良に選択される。これらの部位の選択については、以下で詳細に述べる。いくつかの実施形態において部位には、(a)低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質、(b)ヘパリン硫酸プロテオグリカン、(c)低密度リポプロテイン受容体および/または(d)第VIII因子阻害抗体、のための結合部位内または近辺のアミノ酸が含まれる。「結合部位内または近辺の」によって、生体適合ポリマーの部位への共有結合が結合部位の立体障害をもたらすように、結合部位に十分近くにある残基を意味する。このような部位は、例えば、結合部位の20オングストローム以内にあると見られる。
一実施形態において生体適合性ポリマーは、(a)上記で定義された第VIII因子クリアランス受容体、(b)第VIII因子の分解が可能なプロテアーゼのための結合部位および/または(c)第VIII因子阻害抗体のための結合部位内または近辺のアミノ酸残基において機能性第VIII因子ポリペプチドに共有結合される。プロテアーゼは、活性化プロテインC(APC)であり得る。他の実施形態において生体適合性ポリマーは、低密度リポプロテイン受容体関連タンパク質の該ポリペプチドへの結合が、それが複合化されないときの該ポリペプチドへの結合よりも少なくなるように、ならびにいくつかの実施形態においては二倍以上少なくなるように、機能性第VIII因子ポリペプチド上の所定の部位に共有結合される。一実施形態において生体適合性ポリマーは、ヘパリン硫酸プロテオグリカンの該ポリペプチドへの結合が、それが複合化されないときの該ポリペプチドへの結合よりも少なくなるように、ならびにいくつかの実施形態においては二倍以上少なくなくなるように、機能性第VIII因子ポリペプチド上の所定の部位に共有結合される。さらなる実施形態において生体適合ポリマーは、第VIII因子阻害抗体の該ポリペプチドへの結合が、それが複合化されないときの該ポリペプチドへの結合よりも少ないように、いくつかの実施形態においては、それが複合化されないとき該ポリペプチドへの結合が二倍以上少ないように、機能性第VIII因子上の所定の部位に共有結合される。他の実施形態において生体適合ポリマーは、低密度リポプロテイン受容体の該ポリペチドへの結合が、それが複合化されないときの該ポリペプチドへの結合よりも少ないように、いくつかの実施形態においては二倍以上少なくなるように、機能性第VIII因子ポリペプチド上の所定の部位に共有結合される。他の実施形態において生体適合性ポリマーは、血漿プロテアーゼが、該ポリペプチドをそれが複合化されないときよりもより少なくしか分解しないように、機能性第VIII因子ポリペプチド上の所定の部位に共有結合される。さらなる実施形態において血漿プロテアーゼによる該ポリペプチドの分解は、同条件下で同期間にわたり測定されると、それが複合化されないときの分解よりも二倍以上少ない。
FVIIIに対するLRP、LDL受容体またはHSPGの結合親和性は、表面プラズモン共鳴技術(Biacore)を使用して定量し得る。例えば、FVIIIは、直接的にまたはFVIII抗体により間接的にBiacoreセンサーチップに被覆され得て、種々の濃度のLRPが相互作用のオン速度(on−rate)およびオフ速度(off−rate)の双方を測定するためにチップ上を通過され得る(Bovenschen N.et al.,2003,J.Biol.Chem.278(11),pp.9370‐7)。二つの速度の比が親和性の尺度を与える。いくつかの実施形態において、PEG化の際の親和性における2分の1、5分の1、10分の1たは30分の1の減少が望ましい。
プロテアーゼAPCによるFVIIIの分解は、当業者に既知のいずれの方法によって測定され得る。
一実施形態において生体適合性ポリマーは、FVIII(配列番号2)のアミノ酸位置81、129、377、378、468、487、491、504、556、570、711、1648、1795、1796、1803、1804、1808、1810、1864、1903、1911、2091、2118および2284の一または複数において該ポリペプチドに共有結合される。他の実施形態において生体適合ポリマーは、第VIII因子(配列番号2)のアミノ酸位置377、378、468、491、504、556、1795、1796、1803、1804、1808、1810、1864、1903、1911、および2284の一または複数において該ポリペプチドに共有結合され、しかも(1)複合体の低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質への結合は、非複合化ポリペプチドの低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質への結合よりも少ない;(2)複合体の低密度リポタンパク質受容体への結合は、非複合化ポリペプチドの低密度リポタンパク質受容体への結合よりも少ない;または(3)複合体の低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質および低密度リポタンパク質受容体の双方への結合は、非複合化ポリペプチドの低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質および低密度リポタンパク質受容体への結合よりも少ない。一実施形態においてBドメイン欠失FVIIIにおける残基1804は、システインに変異されてPEGに複合化される。
さらなる実施形態において生体適合性ポリマーは、FVIII(配列番号2)のアミノ酸位置377、378、468、491、504、556および711の一または複数において該ポリペプチドに共有結合され、しかも複合体のヘパリン硫酸プロテオグリカンへの結合は、非複合化ポリペプチドのヘパリン硫酸プロテオグリカンへの結合よりも少ない。さらなる実施形態において生体適合性ポリマーは、第VIII因子(配列番号2)のアミノ酸位置81、129、377、378、468、487、491、504、556、570、711、1648、1795、1796、1803、1804、1808、1810、1864、1903、1911、2091、2118および2284の一または複数において該ポリペプチドに共有結合されて、該複合体は非複合化ポリペプチドよりも少ない第VIII因子阻害抗体への結合性を有する。さらなる実施形態において生体適合性ポリマーは、第VIII因子(配列番号2)のアミノ酸位置81、129、377、378、468、487、491、504、556、570、711、1648、1795、1796、1803、1804、1808、1810、1864、1903、1911、2091、2118および2284の一または複数において、ならびにいくつかの実施形態においては、位置377、378、468、491、504、556および711の一または複数において該ポリペプチドに共有結合されていて、複合体は非複合化ポリペプチドよりも、第VIII分解が可能な血漿プロテアーゼによるより少ない分解を受ける。いくつかの実施形態において血漿プロテアーゼは、活性化タンパク質Cである。
さらなる実施形態において生体適合ポリマーは、アミノ酸位置129、491、1804および/または1808において、ならびにいくつかの実施形態においては491または1808において、Bドメイン欠失第VIII因子に共有結合される。さらなる実施形態において生体適合性ポリマーは、第VIII因子のアミノ酸位置1804において該ポリペプチドに結合され、ポリエチレングリコールを含む。いくつかの実施形態において生体適合性ポリマー結合のための一または複数の所定の部位は、部位特異的システイン変異によって制御される。
機能的第VIII因子ポリペプチド上の一または複数の部位、いくつかの実施形態においては一または二の部位が、ポリマー結合のための所定の部位であり得る。特別な実施形態において該ポリペプチドは、モノPEG化またはジPEG化される。
実施形態はまた、複合体の調製方法にも関し、該方法は、所定の部位においてシステイン残基をコードする配列に置換するために、機能性第VIII因子ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を変異させ;システインが増加した突然変異タンパク質を産生するために、変異ヌクレオチド配列を発現させ;突然変異タンパク質を精製し;複合体が形成されるように、実質的に還元されたシステイン残基のみにおいてポリペプチドと反応するように活性化されていた生体適合性ポリマーと突然変異タンパク質を反応させ;ならびに複合体を精製することを含む。他の実施形態は:(a)部位特異的第VIII因子突然変異タンパク質を発現し、ここで該突然変異タンパク質は、第VIII因子突然変異タンパク質の表面に露出されたアミノ酸残基のシステイン置換を有し、そのシステインはキャッピングされており;(b)システイン突然変異タンパク質を穏やかに還元し、およびキャップを遊離する条件下でシステイン突然変異タンパク質を還元剤と接触させ;(c)システイン突然変異タンパク質からキャップおよび還元剤を除去し;ならびに(d)還元剤の除去後の少なくとも約5分間、およびいくつかの実施形態においては少なくとも15分間、いくつかの実施形態においては少なくとも30分間、PEG化第VIII因子突然変異タンパク質が産生されるような条件下で、システイン突然変異タンパク質をスルフヒドリル結合部分を含むPEGにより処理すること、を含む第VIII因子突然変異タンパク質の部位特異的PEG化のための方法を提供する。PEGのスルフヒドリル結合部分は、チオール、トリフラート、トシラート、アジリジン、オキシラン、S‐ピリジルおよびマレイミド部分から成る群より選択され、いつくかの実施形態においてはマレイミドである。
一実施形態において当該方法は、一または複数のBDDの表面アミノ酸をシステインで置換し、哺乳動物の発現系においてシステイン突然変異タンパク質を産生し、増殖培地由来のシステインによって発現の間キャッピングされていたシステインを還元し、BDDジスルフィドが再編することができるように還元剤を除去し、ならびにPEGマレイミド等のシステイン特異的生体適合性ポリマー試薬と反応することを含む。このような試薬の例は、5、22または43kD等のPEGサイズを有するPEGマレイミドであり、それぞれカタログ番号、2D2M0H01 mPEG‐MAL MW 5,000 Da、2D2M0P01 mPEG‐MAL MW 20kD、2D3X0P01 mPEG2‐MAL MW 40 kDのもと、Nektar Therapeutics Oof San Carlos,Calif.から入手可能であり、または12または33 kDは、それぞれカタログ番号Sunbright ME‐120MAおよびSunbright ME‐300MAのもと、NOF Corporation,Tokyo,Japan(日油株式会社)から入手可能である。PEG化された産物は、未反応のPEGを除去するためにイオン交換クロマトグラフィーを使用して、ならびに未反応のBDDを除去するためにサイズ排除クロマトグラフィーを使用して精製される。この方法は、受容体介在性クリアランス、阻害抗体結合およびタンパク質分解性酵素による分解等のFVIIIとの好ましくない相互作用を同定し、選択的に除去するために使用し得る。NektarまたはNOFによって5 kDとして供給されたPEG試薬は出願人の実験室において6 kDと分析され、および同様に線状の20 kDとして供給されたPEG試薬は22kD、40kDとして供給されたものは43 kDと、ならびに60 kDとして供給されたものは出願人の実験室において64 kDと分析されたことが注目された。混乱を避けるために出願人は、本明細書での議論において、製造者が同定した通り5kDと報告する、5kDのPEGを除き出願人の実験室で分析された分子量を使用する。
BDDの位置491および1808におけるシステイン変異(上で開示)に加えて、位置487、496、504、468、1810、1812、1813、1815、1795、1796、1803および1804が、PEG化の際のLRP結合のブロックを潜在的に可能とするためにシステインに変異された。同様に、位置377、378および556が、PEG化の際のLRPおよびHSPG双方の結合のブロックを可能とするためにシステインに変異された。本来のグリコシル化部位(41、239および2118)およびLRP結合部位におけるPEG化と共にこれらの位置における大きなPEG(>40kD)による部位特異的PEG化が、BDDの表面を完全に被い、BDDに対する新規なクリアランス機構を確定するように、位置81、129、422、523、570、1864、1911、2091および2284が、BDD上で等間隔となるように選択された。
一実施形態において細胞培養培地は、ジスルフィド結合を形成することによって突然変異タンパク質上のシステイン残基を「キャッピングする」システインを含む。複合体の調製において組換え系中で産生されたシステイン突然変異タンパク質は、培地由来のシステインによりキャッピングされ、システイン特異的なポリマー試薬を添加する前にキャップを遊離する穏やかな還元によって、このキャップは除去される。FVIIIの部位特異的変異のための当該技術分野において既知の他の方法もまた、当業者に明らかな通り使用され得る。
第IX因子(FIX)
第IX因子は、血液凝固カスケードにおいて必須である。身体中における第IX因子の欠乏は、血友病の一種(B型)を特徴付ける。この疾患の治療は、通常第IX因子の濃縮物であるヒト血漿タンパク質の静脈注入に限られている。市販の組換え製品が、商標Benefix(登録商標)のもとに市販されている。
有用なFIX分子には、完全長タンパク質、タンパク質の前駆体、タンパク質のサブユニットまたはフラグメントおよびその変異体および抗原性フラグメントが含まれる。FIXへの言及は、このようなタンパク質の潜在的な形態のすべてを含む。
いくつかの実施形態においてヒトFIXの配列は、配列番号8を含むが、対立遺伝子変異体も可能である。第IX因子、変異体、フラグメントおよび/または同様にそれらの製作に有用な方法は、例えば、以下の米国特許出願公開および米国特許: 20130095555; 20120308540; 20120263703; 2012/0270300; 20120177625; 20120164130; 20110244550; 20110217284; 20110183906; 20110154516; 20110137011; 20110046060; 20100330060; 20100316625; 20100284971; 20100249033; 20100137511; 20100130684; 20100130428; 20100120982; 20100081791; 20100081712; 20090280550; 20090239797; 20090221492; 20090176708; 2009008188; 20080318850; 20080305991; 20080255026; 20080207897; 20080188414; 20080176287; 20080167219; 20080153156; 20080102115; 20080075711; 20070244036; 20060287228; 20060211621; 20060052302; 20060040856; 20050100982; 20040254106; 20040133930; 20040110675; 20040106779; 20030203845; 20020166130; 20020031799; 20010031721; 8,404,809; 8,399,632; 8,383,388; 8.198,421; 8,168,425; 8,030,065; 7,888,321; 7,888,067; 7,700,734; 7,579,444; 7,575,897; 7,419,948; 7,375,084; 7,179,617; 7,125,841; 6,670,176; 6,627,737; 6,531,298; 6,372,716; 6,344,596; 6,284,871; 6,280,729; 6,063,909; 6,046,380; 6,043,215; 6,037,452; 6,034,222; 5,969,040; 5,919.909; 5,919.908; 5,770,700; 5,714,583; 5,639,857; 5,621,039; 5,614,500; 5,521,070; 5,457,181; 5,409,990; 5,286,849; 5,281,661; 5,171,569; 5,061,789; 5,055,557; 4,786,726; 4,770,999;および4,081,432において記載されており、それらは第IX因子、変異体、フラグメントおよび/またはそれを作成する方法に関する範囲で、参照することにより本明細書で援用される。
第X因子(FX)
第X因子(FX)は、血液凝固において中心的役割を果たすビタミンK依存性の二本鎖糖タンパク質である。第X因子欠乏症は、人口500,000人中1人ないし1,000,000人中1人に影響を及ぼす稀な出血性障害である。それは、それぞれ血友病AおよびBにおいて第VIII因子欠乏および第IX因子欠乏によって起こされるものと類似した過剰な出血の傾向によって特徴づけられる。
有用なFX分子には、完全長タンパク質、タンパク質の前駆体、タンパク質のサブユニットまたはフラグメント、ならびにその変異体および抗原性フラグメントが含まれる。FXへの言及は、このようなタンパク質の潜在的な形態のすべてを含むことを意味する。
いくつかの実施形態においてFXポリペプチドは、配列番号10を含むが、対立遺伝子変異体も可能である。第X因子、変異体、フラグメントおよび/または同様に有用なその作成方法は、例えば、下記の米国特許出願公開および米国特許: 20120231523; 20120039863; 20110275666; 20100285568; 20100233149; 20090175828; 20090053185; 20070207953; 20070032424; 20060148038; 20050153882; 20030207796; 20030181381; 20030138914; 8,293,874; 8,173,777; 8,168,753; 7,72,371; 7,220,569; 7,179,890; 6,958,322; 6,905,846; 6,783,953; 6,573,071; 6,562,598; 6,117,836; 5,798,332;および4,501,731に記載されており、第X因子、変異体、フラグメントおよび/またはその作成方法に関するその開示の範囲において、参照することにより本明細書で援用される。
第XI因子(FXI)
ヒト第XI因子は、約160,000ダルトンの分子量を有する二本鎖の糖タンパク質である。二つの鎖は、約80、000ダルトンの分子量を有するジスルフィド結合した同一のポリペプチドである。第XI因子は、第XIIa因子によって第XIa因子に活性化される。ヒト第XI因子のアミノ酸配列が決定されており(例えば、Fujikawa et al.,Biochemistry 25:2417‐2424(1986)を参照されたい)、配列番号7として提供される。ヒトにおいてFXIの遺伝子は、第4染色体の先端部(4q35.2)に位置し、ゲノムDNAの約25kbにわたり広がった15のエクソンを含む(Asaki et al.,Biochemistry 26:7221‐7228(1987);Kato et al.Cytogenet.Cell Genet.52:77(1989))。いくつかの実施形態において、ヒトFXIの配列は配列番号7である(GenBank登録番号P03951)。
第XI因子の活性化の間に内部のペプチド結合が、二つの鎖の各々において第XIIa因子によって切断され、ジスルフィド結合により結合した二つの重鎖および二つの軽鎖から成るセリンプロテアーゼである活性化第XIa因子をもたらす。活性化第XI因子は、第IX因子を活性化することによって血液凝固の内因性経路の中期を引き起こす。本因子の欠損は、血液凝固異常であるローゼンタール症候群(血友病Cとしても知られる)を引き起こす。第XI因子タンパク質はF11遺伝子によりコードされている。FXIはまた、凝固第XI因子または血漿トロンボプラスチン前駆体としても知られている。
第XIIa因子による第XI因子の活性化のための切断部位は、各々のポリペプチド鎖におけるArg‐369とIle‐370の間の内部ペプチド結合である(Fujikawa et al.Biochemistry 25:2417‐2424(1986))。第XIa因子の各重鎖(369個のアミノ酸)は、四つのアップルドメイン(A1〜A4と命名される)と称される90〜91個のアミノ酸のタンデムリピートプラス短い架橋ペプチドを含む(Fujikawa et al.Biochemistry 25:2417‐2424(1986);;Sun eta al.,J.Biol.Chem.274:36373‐36378(1999))。第XIa因子の軽鎖(各238個のアミノ酸)は、セリンプロテアーゼのトリプシンファミリーに典型的である配列を有する酵素の触媒部分を含む(Fujikawa et al.Biochemistry 25:2417‐2424(1986))。XIaは、第XI因子A3ドメインを要求する相互作用において、その基質である第IX因子をタンパク質分解的に切断する(Sun,Y.,and Gailani,D.J.Biol.Chem.271,29023‐29028(1996))。
有用なFXI分子には、完全長タンパク質、タンパク質の前駆体、タンパク質のサブユニットまたはフラグメント、およびその変異体および抗原性フラグメントが含まれる。FXIへの言及には、このようなタンパク質のすべての可能な形態が含まれる。
いくつかの実施形態においてFXIポリペプチドは、配列番号7を含むが、対立遺伝子変異体も可能である。第XI因子、変異体、フラグメントおよび/または同様に有用なその製造方法は、例えば、以下の米国特許出願公開および米国特許: 20120083522; 20110159006; 20110020349; 20100144620; 20100062512; 20080058266; 20070027077; 20050181978; 20030040480および5,252,217に記載されており、第XI因子、変異体、フラグメントおよび/またはその製造方法に関する範囲において、参照することにより本明細書で援用される。
シグレッグリガンド
実施形態の通りに複合体は、シグレックリガンドを含む。シアル酸結合免疫グロブリン様レクチンの略であるシグレックは、細胞表面受容体であり、ならびに糖類を認識する免疫グロブリンスーパーファミリー(IgSF)のメンバ―である。免疫グロブリンドメインを使用して炭水化物を認識するその能力は、それらをI‐型(Ig‐型)レクチンの一群に配置する。シグレックは、シアル酸および種々の数のC2型Ig(IgC2)ドメインと結合するN末端V様免疫グロブリン(IgV)ドメインを含む、膜貫通型タンパク質である。最初に記載されたシグレックは、マクロファージ上のレクチン様接着分子であるシアロアドヘシン(リグレック‐1/CD169)である。他のシグレックは、CD22(シグレック‐2)およびシグレック‐G/10(すなわち、ヒトシグレック‐10およびマウスシグレック‐G)、これらは、B細胞上で発現され、その接着および活性化を制御するうえで重要な役割を有する、CD33(シグレック‐3)およびミエリン会合糖タンパク質(MAG/シグレック‐4)を含み、後にこのファミリーに追加された。いくつかの追加のシグレック(シグレック5〜12)がヒトにおいて同定されて、構造的にCD33に高度に類似しているので、その結果集合的に「CD33関連シグレック」と称されている。これらのシグレックは、ヒトNK細胞、B細胞および/または単球細胞上で発現される。CD33‐関連シグレックのすべては、その細胞質側末端に二つの保存的免疫受容抑制性チロシンモチーフ(ITIM)様モチーフを有し、細胞の活性化におけるその関与を示唆する。シグレックに関する詳細な記載は、参考文献、例えば、Crocker et al.,Nat.Rev.Immunol.7:255‐66,2007;Crocker et al.,Immunol.103:137‐45,2001;Angata et al.,Mol.Diversity 10:555‐566,2006;およびHoffman et al.,Nat.Immunol.8:695‐704,2007において提供される。
シグレックの糖鎖リガンドは、特に一または複数のシグレックを認識する化合物を表し、単糖残基のホモポリマーまたはヘテロポリマーを含む。糖鎖配列に加えてシグレック糖鎖リガンドはまた、リンカーにより糖鎖に連結されたPEG化脂質部分も含み得る。種々のシグレック糖鎖リガンドの例は、文献、例えば、米国特許第8,357,671号;およびBlixt et al.,J.Am.Chem.Soc.130:6680‐1(2008)等に報告されており、リガンドおよび合成方法に関する開示の範囲において参照することにより本明細書で援用される。
いくつかの実施形態においてシグレックリガンドは、抑制型シグレックに対するリガンドである。いくつかの実施形態においてシグレックリガンドは、シグレック‐1(CD169)、シグレック‐2(CD22)、シグレック‐3(CD33)、シグレック‐4(MAG)、シグレック‐5、シグレック‐6、シグレック‐7、シグレック‐8、シグレック‐9、シグレック‐G/10、シグレック‐11およびシグレック‐12から選択されるシグレックに結合する。いくつかの実施形態においてシグレックは、Bリンパ球の表面上で発現される。いくつかの実施形態においてシグレックリガンドは、シグレック‐G/10リガンドである。
いくつかの実施形態において適切なシグレックリガンドには、Bリンパ球上に見出されるシグレック‐2(CD22)に対するリガンドが含まれる。いくつかの実施形態においてリガンドは、糖鎖リガンドである。リガンドは、CD22(シグレック‐2)を認識する天然リガンドまたは合成リガンドであり得る。いくつかの種由来のCD22が当該技術分野で知られている。例えば、ヒトCD22に関するアミノ酸配列は、国立生物工学情報センター(NCBI)のデータベースにおける登録番号NP 001762(gi:4502651)で開示されており、同様にWO 2007/056525で入手可能である。マウスCD22もまた、当該技術分野、例えば、Torres et al.,J.Immunol. 149:2641‐9,1992;およびLaw et al.,J Immunol.155:3368‐76,1995において特性づけられている。CD22以外にシグレック‐G/10が、B細胞の表面上で発現されるもう一つのシグレックである。ヒトシグレック‐10およびその相同分子種(オルソログ)であるシグレック‐Gは、当該技術分野において双方とも周知であり良く特性づけられている。例えば、Munday et al.,Biochem.J.355:489‐497,2001;Whitney et al.,Eur.J.Biochem.268:6083‐96,2001;Hoffman et al.,Nat.Immunol.8:695‐704,2007;およびLiu et al.,Trends Immunol.30:557‐61,2009を参照されたい。
シグレックの種々のリガンドが知られており、本実施形態の実施のために適している。例えば、米国特許第8,357,671号;Chen et al.,Blood 115:4778‐86(2010);Blixt et al.,J.Am.Chern.Soc.130:6680‐1(2008);Kumari et al.,Virol.J.4:42(2007);およびKimura et al.,J.Biol.Chem.282:32200‐7(2007)を参照されたいが、これらはリガンドおよび合成方法の開示の範囲において参照することにより本明細書で援用される。
例えば、NeuAcα2‐6Galβ1‐4GlcNAc、またはNeuAcα2‐6Galβ1‐4(6‐スルホ)GlcNAc等のヒトCD22の天然リガンドは、ヒトB細胞に対する凝固因子タンパク質を標的とするために使用し得る。加えて改善された活性を有するいくつかの合成CD22リガンドもまた利用可能であり、例えば、9‐N‐ビフェニルカルボキシル‐NeuAcα2‐6Galβ1‐4GlcNAc(6´‐BPCNeuAc)および9‐N‐ビフェニルカルボキシル‐NeuAcα2‐3Galβ1‐4GlcNAc(3´‐BPCNeuAc)等である。ヒトCD22に対するより特異的な糖鎖リガンドが、当該技術分野、例えば、Blixt et al.,J.Am.Chern.Soc.130:6680‐1,2008;およびPaulson et al.,WO 2007/056525等に記載されている。同様にマウスCD22に対する多数の糖鎖リガンドが文献中に報告されている。例には、NeuGcα2‐6Galβ1‐4GlcNAc(NeuGc)、9‐N‐ビフェニルアセチル‐NeuGcα2‐6Galβ1‐4GlcNAc(BPANeuGc)およびNeuGcα2‐3Galβ1‐4GlcNAcが含まれる。これらのCD22リガンドのいくつかは、シグレック‐G/10に結合可能であることも知られている。本明細書で例示される天然および合成シグレックリガンド以外に、実施形態の実施において例示されるこれらのいずれの糖鎖リガンドの、誘導体またはアナログ化合物もまた用いることが可能である。
用語「アナログ」または「誘導体」は、既知のシグレックリガンドに構造的に類似するが、基準分子の特異的な置換基を代わりの置換基により置換することによって、標的化方式および制御方式で修飾されている分子を表すために本明細書で使用される。基準分子と比較してアナログには、当業者によって同様の、類似のまたは改善された有用性が予想されるであろう。改善された特色を有する既知の化合物の変異体を同定するためのアナログの合成およびスクリーニングは、薬化学において周知の研究方法である。
方法
本実施形態は、凝固因子に対する望ましくない免疫応答を抑制するための、および/または免疫寛容を誘導するための方法および治療目的の使用を提供する。本明細書記載の複合体は、望ましくない免疫応答または免疫活性化に関連するまたは介在される、種々の障害を治療または防止するために使用され得る。治療を必要とする被験者におけるB細胞に対する凝固因子タンパク質を標的とすることによって、複合体は寛容を誘導するために適している。
一実施形態において、凝固因子タンパク質またはその抗原性フラグメントもしくは変異体およびB細胞シグレックリガンドを含む複合体の有効量を被験者に投与することを含む、被験者において凝固因子タンパク質に対する寛容を誘導する方法が提供される。
いくつかの実施形態において複合体の組み合せが被験者に投与され得て、ここで該複合体は凝固因子タンパク質、その抗原性フラグメントもしくは変異体の混合物を含む。
一実施形態において該組み合せは、例えば、複数の異なる市販FVIII製品を含む、複数のFVIIIタンパク質を含む。
他の実施形態において該組み合わせは、一または複数の異なる市販のFVIII製品および一または複数のBDD FVIIIを含む。
他の実施形態において該複合体は、FVII、FVIII、FIX、FXおよびFXIの一または複数を含む。
複合体の投与経路に特別な制限はなく、一実施形態において複合体は、静脈注射、筋肉内注射または腹腔内注射等の注入によって投与され得る。
本明細書に記載の通り、凝固因子タンパク質に対する寛容を誘導する方法は、出血性障害を治療するために凝固因子タンパク質の有効量がバイオ治療として投与される、出血性障害を治療する方法の前、最中および/または後に実施され得る。いくつかの実施形態において治療される被験者は、インビボで短縮されたFVIIIの半減期、変更されたFVIIIの結合性、FVIIIの遺伝的欠陥および/または減少したFVIIIの発現を有する。一実施形態において出血性障害は血友病である。
本実施形態はまた、治療を必要とする被験者に1)本実施形態の有効量の複合体および2)有効量の凝固因子を投与する事を含む、血友病等の出血性障害を治療する方法も提供する。いくつかの実施形態において段階2)で使用されるのと同じ凝固因子が、段階1)において使用される複合体を作成するために使用され、その結果投与される凝固因子に対し寛容が特異的に作成される。
一実施形態において複合体は、投与されるときに凝固因子タンパク質に対する寛容を誘導し抗体の発生を防止するために、凝固因子タンパク質の前に患者に投与される。
いくつかの実施形態において複合体は、補充療法中の被験者における、凝固因子タンパク質に対する抗体の検出後に被験者に投与される。いくつかの実施形態において凝固因子タンパク質は、複合体を使用して寛容が達成された後に引き続き投与される。
いくつかの実施形態において複合体は、凝固因子タンパク質が投与される約30日前に投与される。いくつかの実施形態において複合体は、凝固因子タンパク質が投与される約25日、20日、15日、10日、9日、8日、7日、6日、5日、4日、3日、2日または1日前に投与される。いくつかの実施形態において複合体は、凝固因子タンパク質と同日に投与される。いくつかの実施形態において複合体は、凝固因子タンパク質が投与される約30日、25日、20日、15日、10日、9日、8日、7日、6日、5日、4日、3日、2日または1日後に投与される。用語「被験者(subject)」とは、例えば、ヒトおよび非ヒト哺乳動物等の哺乳動物として分類されるいずれかの動物を表す。非ヒト動物の例には、イヌ、ネコ、畜牛、ウマ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ウサギ、等が含まれる。特に断りの無い限り用語「患者」または「被験者」は、本明細書では同じ意味で使用される。いくつかの実施形態において被験者はヒトである。
治療または寛容誘導を必要とする被験者には、既に疾患または障害に掛かっている被験者ならびに出血性障害を発症するリスクにある被験者が含まれる。いくつかの実施形態において被験者は、バイオ治療の凝固因子タンパク質に対する陽性の抗体反応を示した。
本明細書記載の複合体は、単独でまたは医薬組成物の成分として投与され得る。本実施形態の医薬組成物は、少なくとも一つの薬剤的に許容可能な担体と製剤化された複合体の有効量を含む。本実施形態の医薬組成物は、薬学の技術分野において周知のいずれかの方法によって調製され投与され得る。例えば、Goodman & Gilman‘s The Pharmacological Bases of Therpeutics(グッドマン・ギルマン「治療の薬理学的基礎」),Hardman et al.,eds(編),McGraw‐Hill Professional(10th ed.(第10版),2001);Remington:The Science and Practice of Pharmacy(レミントン「薬学の科学と実践」),Gennaro,ed.(編),Lippincott Williams & Wilkins(20th ed.(第20版),2003);およびPharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems(医薬品の剤形およびドラッグデリバリーシステム),Ansel et al.(eds.(編)),Lippincott Williams & Wilkins(7th ed.(第7版),1999)等を参照されたい。加えて本実施形態の医薬組成物はまた、他の医療的に有用な薬剤または生物学的製剤を含むように製剤化され得る。
いくつかの実施形態において複合体は、インビボでの適応に使用される。これらの適応において本明細書記載の複合体は、当該技術分野において既に十分に確立されたプロトコルに従って、治療を必要とする被験者に投与され得る。複合体は、単独でまたは適切な医薬組成物中で担体と組み合わせて投与されうる。典型的には複合体の治療的有効量が、薬剤的に許容可能な担体と組み合わされる。薬剤的に許容可能な担体は、当該技術分野において既知のまたは確立されたいずれかの担体である。代表的な薬剤的に許容可能な担体には、パイロジェン除去滅菌水およびパイロジェン除去滅菌生理的食塩水が含まれる。本実施形態のために使用され得る薬剤的に許容可能な担体の他の形態には、結合剤、崩壊剤、界面活性剤、吸収剤、促進剤、保湿剤、吸収体、滑沢剤、充填剤、増量剤、水分付与剤、保存剤、安定剤、乳剤、可溶化剤、浸透圧を制御する塩、緩衝液等の希釈剤および製剤の使用形態に依存して通常使用される賦形剤が含まれる。これらは、もたらされる製剤の単位用量に依存して任意に選択され、使用される。
複合体の有効量は、被験者が患っている出血性障害、他の被験者の既知の因子、例えば、年齢、体重、等に依存して変動するので、各症例ごとに経験的に決定されなければならない。この経験的な決定は、日常的な実験によって成され得る。いくつかの実施形態においてリポソーム成分は、送達される抗原と比べて約200:1(w/w)、例えば、100〜300:1(w/w)の比で使用され得る。いくつかの実施形態においてリポソーム組成物の典型的な薬用量は、用量当たり約5〜100mg、例えば用量当たり10mgである。
インビボでの適応のために複合体は、例えば、経口、非経口または吸入等の通例の投与経路によって患者に投与され得る。以下の実施例において示す通り、抗原およびシグレックリガンドを同時に提示するリポソームは、静脈注射によって患者に投与され得る。いくつかの実施形態においてリポソーム複合体は、経脈管的に被験者に投与され得る。血管内投与に有用なリポソームは、小さなユニラメラ状リポソームであり得て、またはPEG‐2000を含むリポソームであり得る。組成物が非経口的に投与されるとき、薬剤の形態には、静脈注射、皮下注射、腹腔内注射、筋肉内注射および腹腔内注射に使用される注射用剤(液体剤、懸濁剤)、液剤、懸濁剤、乳剤および滴下剤が含まれる。
いくつかの他の実施形態において複合体は、経口的に被験者に投与される。これらの実施形態において薬剤形態には、固形剤、例えば、錠剤、被覆錠剤、粉剤、顆粒剤、カプセル剤および丸剤等、液体製剤、例えば、液剤(例えば、点眼液、点鼻薬)、懸濁剤、乳剤およびシロップ等、吸入剤、例えば、エアゾール剤等の吸入剤、アトマイザーおよびネブライザー、ならびにリポソーム含有製剤が含まれる。さらにいくつかの他の実施形態において複合体は、被験者の気管および/または肺を標的とするために患者の呼吸器に吸引によって投与される。これらの実施形態において市販のネブライザーが、リポソーム複合体の薬用量を送達するためにエアゾールの形態で使用され得る。
本実施形態は、本実施形態の方法を実行するための医薬配合物(例えば、キット)をさらに提供する。いくつかの実施形態においてキットは、FVII、FVIII、FVIX、FXおよびFXIを含む、本実施形態の一または複数の複合体を含む。いくつかの実施形態においてキットは、管理用抗体、抗体検出試薬および精製抗原を含む、FVII、FVIII,FVIX、FXおよびFXIの一または複数に対する被験者の抗体を検出するための試薬をさらに含む。いくつかの実施形態においてキットは、FVII,FVIII,FVIX、FXおよびFXIを含む、被験者に投与し得る一または複数のバイオ治療薬を含む。いくつかの実施形態において複合体は、医薬組成物中に含まれる。いくつかの実施形態においてキットは、薬剤の投与および/または被験者における抗体検出試験のための取扱い説明書を含む。いくつかの実施形態においてキット中の取扱い説明書は、一般的に所期の使用法に対する用量、投薬スケジュールおよび投与経路に関する情報を含む。キットの容器は、一回分の単位、バルク包装体(例えばマルチドーズ包装体)または一回分のサブ単位であり得る。本実施形態のキット中に供給される取り扱い説明書は、典型的にはラベルまたは能書き(例えば、キット中に含まれる紙)上の文書による指示書であるが、機械で読み取れる取扱い説明書(例えば、磁気記憶ディスクまたは光収納ディスク)もまた許容可能である。
いくつかの実施形態においてキットは、特異的な凝固因子ポリペプチドおよびシグレックリガンドを含む、複合体を産生するための材料を含む。一般的にこれらのキットは、それからリポソーム組成物または免疫複合体が作成され得る、一または複数の抗原および一または複数のシグレックリガンドの分離した容器を含む。組成物を作成するための追加の試薬、例えば、リポソームを作成するための試薬等もまたキット中に提供され得る。シグレックリガンドおよび抗原は、いくつかの実施形態において、供給されたシグレックリガンドおよび抗原と他の試薬との混合の際に、複合体の形成を可能とする形態で供給される。
本実施形態は、本明細書で特定の実施例および実施形態に関連して記載されているが、当業者は、すべての関連する特許法に準拠するために、種々の実施例および実施形態が結び付けられること(例えば、特定の実施例に記載の方法は、このようなことがそれへの言及において明示的に記載されていないとしても、実施形態の特定の態様およびその運用を記載するために使用され得る)を了解するであろう。
本教示の態様は、以下の実施例を考慮すればよりよく理解され得ようが、実施例は決して本教示の範囲を制限するものと解釈されるべきではない。
実施例1
シグレックリガンドを有する寛容原性リポソーム。
T細胞依存性抗原に対する寛容を誘導するために、CD22をB細胞上の免疫シナプスにリクルートすることの可能性を検討するために、多用途のプラットホームが必要とされた。タンパク質および糖鎖リガンドを脂質に共有結合するために存在し膜の中に組み込むための、その検証されたインビボでの使用および頑強な方法のゆえに、リポソームのナノ粒子を選択した(Chen,W.C.et al.Blood 115,4778‐4786(2010);Loughrey et al.J Immunol Methods 132,25‐35(1990);Shek et al.Immunology 50,101‐106(1983))。従って、抗原単独(免疫原)または抗原およびCD22リガンド(寛容原;図1a)のいずれかを提示するリポソームを構築した。初期段階の研究において高親和性シグレックリガンド、BPCNeuGc(BPANeuGcα2‐6Galβ1‐4GlcNAc;図1b)を使用したが、それはその天然リガンド(NeuGcα2‐6Galβ1‐4GlcNAc;図1b)よりも200倍高い親和性でマウスCD22に結合し、シグレック‐G15、19とわずかな交差反応性しか有さない。
このプラットホームを、ポリアクリルアミドポリマーにテザリングした同じ抗原にによる初期段階の研究に類似する実験において、T細胞非依存性抗原ニトロフェノール(NP)を使用して検証した。寛容原性リポソームを注射されたマウスは、抗NP応答における劇的な減少を示し(IgMおよびIgGアイソタイプの双方)、免疫原性リポソームによるその後の二つの負荷に対し応答することができなかった(図1c)。対照的に寛容原性リポソームにより処理されたCD22KOマウスは、その後の負荷の際にNPに対する免疫寛容化を示さなかった;従ってNPに対する寛容は、WTマウスにおいてCD22依存的に誘導された。
次にニワトリ卵白リゾチーム(HEL)を提示する寛容原性および免疫原性リポソームを、T細胞依存性抗原に対する寛容を誘導する能力を検討するために処方した。同じ実験計画を使用して寛容原性リポソームは、HELに対するC57BL/6Jマウスの頑強な寛容をCD22依存的に誘導した(図2d)。HELに対する寛容化実験を、種々の量のBPANeuGcまたはNeuGcのいずれかで処方したリポソームにより繰り返した。免疫原性リポソームによる15日および30日の二つの負荷を含む44日の実験の最後において、両リガンドに対する抗体産生に関する用量依存的効果が明らかであった(図2e)。二つのリガンドの間のEC50における二桁の差異は、CD2219に対するそれらの既知の親和性と一致する。HELに対する完全な寛容化は、発達させるために2週間を必要とし、4か月にわたってゆっくりと失われた(図2f)。寛容における喪失の動力学は、新規に生じたB細胞が抗HEL応答を再確立することを示唆する。
実施例2
寛容原性リポソームはアポトーシスを誘導する。
次に寛容誘導の機構を、MD4マウス20由来のHEL反応性(IgMHEL)遺伝子導入B細胞を使用して検討した。HELおよびBPANeuGcを提示するリポソームは、カルシウム流動、CD86アップレグレーションおよび増殖から判断して、HELのみを提示するリポソームと比較してインビトロでのIgMHEL B細胞の活性化を完全に抑制した(図2a‐c)。CD22KO遺伝子背景のIgMHELB細胞の使用は、B細胞活性化のすべての三つの読み取りにおいて、阻害が完全にCD22依存的であることを明らかにした(図2a)。リガンドまたは抗原のいずれかを単独で提示するリポソームの混合物は、阻害をもたらさなかったので、阻害は同一のリポソーム上でのリガンドおよび抗原の双方の提示を必要とした(図2a)。増殖アッセイにおいて(図2c)寛容原性リポソームで処理された細胞は、未刺激細胞と比較して数が減少していた。生細胞のパーセント(アネキシンV‐PI‐)を分析して、寛容原性リポソームが時間依存的に生細胞数の顕著な減少を引き起こすことを明らかにした(図2d)。T細胞ヘルプを模倣するための抗CD40を有する培養細胞は、細胞死を遅らせたが、阻止しなかった。CD22リガンドを単独で提示するリポソームは、寛容原性リポソームの効果を再現しなかったことが注目される。
次に同様の実験を、リポソームによる免疫化後に宿主マウスに養子導入されたIgMHEL B細胞の運命を検討するためにインビボで行った。免疫化4日後に、寛容原性リポソームにより免疫化されたマウス由来のIgMHEL B細胞は、ごくわずかしか増殖せず、対象と比較して数が減少していた(図2e)。12日後にIgMHEL細胞(Ly5a+IgMa+)は、裸のリポソームを受けたマウスと比較して95%以上枯渇していた(図2f)。これらのインビボでの効果もまたCD22依存的であった。
実施例3
BCRシグナル伝達に及ぼす寛容原性リポソームの影響
IgMHEL B細胞におけるBCRシグナル伝達を、リポソームによる刺激後の数時点においてウェスタンブロットにより分析した(図3a)。寛容原性リポソームは、分析された四つすべてのITIM上でのCD22の強いリン酸化を起こし、それは免疫シナプス内でのCD22およびBCRの物理的連結と一致する。逆に多数の近位(SykおよびCD19)および遠位の(p38、Erk、JNK、Akt、GSK3β、FoxO1、FoxO3a、BIM)BCR信号伝達成分のリン酸化は、免疫原性リポソームと比較して寛容原性リポソームによって3および30分の時点の双方において強く阻害された。著しく対照的に、シグナル伝達成分の同等の強いリン酸化が、CD22を欠くIgMHEL細胞において免疫原性および寛容原性リポソームにより認められた。
影響を受けたシグナル伝達成分の中で、寛容原性リポソームが未刺激(休止)B細胞と比較して、Akt生存経路中の成分の低リン酸化を誘導したことは驚くべきことである。AktがThr308およびSer473部位の双方において低リン酸化されたと同時に、Aktの下流標的、例えば、GSK3βおよびFoxO1/FoxO3a等もまた低リン酸化された。転写因子のフォークヘッドファミリーのAkt介在性リン酸化が細胞部位21を制御することを考えて、FoxO1およびFox3a双方の細胞染色を分析するために共焦点顕微鏡を使用した(図3b)。FoxO1およびFoxO3aの核染色が、休止IgMHEL B細胞または免疫原性リポソームにより活性化された細胞において明白に存在しない一方で、寛容原性リポソームにより処理された細胞の強い核染色が存在した。FoxO1およびFoxO3aは、B細胞21における細胞周期阻害およびアポトーシスに関与する遺伝子の転写を制御するので、これらの結果は寛容原性リポソームによるアポトーシスの誘導と一致する。
実施例4
強いT細胞依存性抗原に対する寛容
寛容原性リポソームが強いT細胞依存性抗原に対する寛容を誘導するために使用し得るかどうかを検討するために、タンパク質のいくつかの組み合せ、ならびに強いT細胞ヘルプを提供することが知られているマウス株を検討した。より高度の免疫原性系における寛容の研究のために、リポソーム製剤をCD22介在性寛容が最大化するように最適化した。これには、リポソーム上のHEL量を変化すること、および注入されるリポソーム量を滴定することが含まれた。最適化条件を使用し、初期の寛容化段階における1000分の1の抗原の使用に達することにより、リポソームHELによるその後の負荷に対する強固な寛容化がBalb/cマウスにおいて達成された(図4a)。特に、負荷の段階で免疫原性リポソームの代わりに可溶性抗原を使用したときも、寛容化は完全であった(図4b)。最適化条件の制御下に、OVA、ミエリンオリゴデンドロサイト、糖タンパク質(MOG)およびFVIIIに対する寛容化も同様に達成した(図4c‐e)。所期の抗原に向けての寛容化の特異性を評価するために、異なる抗原に対する寛容化マウスの応答を検討した。HELまたはOVAに対し寛容化されたマウスは、他の抗原に対し変わらぬ応答を有することが見出だされた(図4f)。寛容化されたマウス由来の養子導入された脾臓細胞は、宿主マウスにおけるその抗原に対する抗体応答を抑制しないので、寛容化はサプレッサー細胞の誘導に関与するようには思われない。
実施例5
血友病マウスにおける出血の保護。
マウスをヒトFVIII因子に対し寛容化するための条件を確立した後に、この寛容化方法をFVIII KOマウスにおいて適応したが、それは血友病Aのモデルとして役立った。免疫原性リポソームを0日および15日に与えられたFVIII KOマウスは、30日にrhVIIIにより再構成されなかったが(図5a)、その理由は、該マウスが尾部切断実験において、再構成されなかったFVIII KOマウスと同じ程度に出血したからである。これに反して免疫原性リポソームによる負荷に続いて寛容原性リポソームを与えられたマウスは、尾部切断実験において、再構成された対照マウスと統計的に区別できないレベルまでに出血を保護された。この研究のマウス中の抗FVIII抗体のレベルは、出血アッセイの結果と相関した;免疫原性リポソームによる負荷の前に寛容原性リポソームにより最初に処理されたマウスは、対照マウスと比較して統計的に優位な抗FVIII抗体の増加を生じなかった(図5b)。対照的に免疫原性リポソームを二度与えられたマウスは、高レベルの抗FVIII抗体を有した。従って抗体応答を抑制するためにCD22を関与させることは、バイオ製剤FVIIIに対する阻害抗体形成を抑制する効果的な方法であり、それは再構成療法の有効性を維持する。
実施例6
CD22介在性寛容原性サーキットはヒトナイーブ細胞およびヒトメモリー細胞において操作可能である。
CD22が本リポソームプラットホームを使用して、ヒトB細胞において寛容原性サーキットを誘導することが可能であるかどうかを検討するために、異なる抗原特異性を有するB細胞を刺激するための方法が必要であった。これを達成するために、ナイーブまたはメモリーB細胞それぞれを刺激するための代替抗原として作用するように、抗IgMまたは抗IgG Fabフラグメントをリポソームに結合した。さらに、マウスおよびヒトCD22は異なるリガンドの好みを有するので、異なるCD22リガンドが必要とされた。幸いにも、BPCNeuAC(BPANeuGcα2‐6Galβ1‐4GlcNAc;図6a)と称する、ヒトCD22の高親和性リガンドが開発された。抗IgMおよび抗IgGリポソームは、カルシウム流動により判断してナイーブ細胞(CD27−CD38low)およびメモリー(IgM‐IgD‐)B細胞コンパートメントそれぞれにおける、ヒト末梢血から単離された精製したB細胞の頑強なB細胞活性を誘導した(図6b)。対照的にこれらのリポソーム上でのヒトCD22リガンドの存在は、B細胞活性化を強く抑制した。同様にBCRシグナル伝達の強い抑制がまた、ウェスタンブロット分析(図6c)およびCD86アップレギュレーション(図6d)において観察された。寛容原性がまた一次ヒトB細胞の生存能力を減少させるかを判定するために、リポソームを細胞と共に24時間インキュベートし、細胞の生存能をアネキシンVおよびPI染色によって分析した。生細胞数(アネキシンV‐PI‐)は、抗CD40の存在下においてさえ、BPCNeuAcを提示する抗IgMおよび抗IgGリポソームそれぞれとインキュベートされたナイーブ細胞およびメモリーB細胞において減少した(図6e)。メモリーB細胞において観察されたより著名な効果は、B細胞活性化の他の読取において観察されるより強い抑制と一致しており(図6b〜d)、メモリー細胞はナイーブB細胞よりも中程度に低いレベルのCD22を発現するので特に興味深い(図6f)。
実施例7
実施例1から6記載の実験を行うために以下の材料および方法を使用した。
動物実験:ザ・スクリップス・リサーチ・インスティテュート(TSRI)動物実験委員会が、マウスが関与するすべての実験手順を承認した。C57BL/6JをバックグラウンドとするCD22KOおよびシグレック‐GKOマウスを、それぞれL.Nitchke(エルランゲン大学)およびY.Liu(ミシガン大学)から入手した。ダブルノックアウト(CD22KO/シグレック‐GKO;DKO)マウスを、発明者らの実験室で先立って作り出した。IgMHEL(遺伝子背景C57BL/6J)を発現するWT MD4トランスジェニックマウス20を、ジャクソン研究所から入手した。MD4マウスをシグレックKO株(CD22KO、シグレック‐GKOおよびCD22KO/シグレックGKO)と交雑し、その後C57BL/6J Ly5aマウスと交雑した。C57BL/6Jを遺伝的背景としmHEL(KLK4)43を発現するマウスをC.Xiao(ザ・スクリップ・リサーチ・インスティテュート)から入手し、ST6Gal1‐欠失マウス44と交雑した。C56BL/6Jを遺伝子背景としmOVA45を発現するマウスを、ジャクソン研究所から入手した。BalbCを遺伝子背景とするFVIII欠失マウスを、David Lillicrap(クイーンズ大学)から譲り受けた。WT C57BL/6JおよびBalb/cマウスを、TSRIのげっ歯類繁殖コロニー(the TSRI rodent breeding colony)から入手した。
ヒトB細胞の単離: ヒト被験者が関与する手順は、TSRI治験審査委員会の審査および承認を受けた。正常な血液は、TSRIの正常な献血サービス(TSRI‘s Blood Donor Service)から入手した。ヘパリン処理した血液から末梢血単核球(PBMC)を単離するために、該血液を最初にHBSSにより2倍に希釈した。希釈した血液(35mL)をficollpaque plus(GE healthcate)の上部で層にして400rcf(相対遠心力)で40分間遠心分離した。バフィ―コート(白血球膜)を単離しHBSSにより4倍に希釈して遠心した(300rcfで10分間)。B細胞をネガティブセレクション(Miltenyi)によって精製し、典型的には99%純粋であった(CD19+)。BCRシグナル伝達成分のウェスタンブロット分析のために、精製したB細胞をナイーブ(CD3‐CD27‐)またはアイソタイプスイッチ・メモリー(CD3‐IgM‐IgD‐)B細胞のいずれかにさらに分別した。
免疫化および採血: 全血(50μL)を、ヘパリン処理したキャピラリ―チューブ(Fisher)を使用してマウスの後眼窩出血から採血した。血清を収集するために、血液を遠心分離した(17,000rcf、1分間)。血清は、直ちにELISAに使用するかまたは−20℃に保存した。一回の凍結融解サイクルは、抗体価の定量に最小の影響しか与えないことが見出だされた。リポソームおよび細胞を、200μLの容量で側尾静脈経由で送達した。可溶性(非リポソーム)抗原による負荷が関与する研究については、マウスにHBSSに溶解した200μgのHELを注射し腹腔内に送達、または1μgのFVIIIを静脈内に送達した。
FVIII欠失マウスにおける出血アッセイ:マウスを尾切断(tail cut)の1時間前に、200μLのヒト組換えFVIII(rhFVIII;Kogenate、Bayer Healtcare))または生理的食塩水により再構成した。rhFVIIIを製造者の取扱い説明書に従い、滅菌生理的食塩水に溶解し希釈して、後眼窩静脈注射を使用して50U/Kgで投与した。一時間後にマウスに麻酔をかけ、尾の末梢部分を直径1.5mmに切断し、所定の容量の生理的食塩水に20分間浸漬した。この段階の間、生理的食塩溶液を37℃に維持した。生理的食塩溶液中のヘモグロビン濃度を、2%酢酸による赤血球溶血後に測定し、405nmでの吸収により定量化した。既知の標準に対するヘモグロビン濃度をマウス体重グラム当たりの失血を計算するために使用し、正常マウスに対するヘマトクリット値を46%と仮定してμL/gとして表した。200μLの生理的食塩水を注射したWT Balb/cマウスにおける失血を対照とした。マウスは、失血がWT Balb/cマウスにおいて観察された平均失血プラス三標準偏差未満であれば保護されたと考えられた。
フローサイトメトリー(流動細胞分析法): 二色フローサイトメトリーをFACS Caliburフローサイトメーター(BD)で行った。三色以上を使用するときは、LSRIIフローサイトメーター(BD)を使用した。フローサイトメトリーのための標識抗体をBiolegendから入手した。いずれの場合も、死細胞を1μg/mLのヨウ化プロピジウムによりゲートアウト(除外)した。
B細胞の精製: B細胞を、製造者のプロトコル(Miltenyi)に従って磁気ビーズを使用して、ネガティブ選択により精製した。単離細胞の純度は、通常≧99%であった。
B細胞の蛍光標識: 精製したIgMHEL B細胞(10×106細胞/ml)を、HBSS中のCFSE(6μM)またはCTV(1.5μM)(Invitrogen)のいずれかにより室温で7分間、2分ごとに混合して蛍光標識した。反応を、3%のFBSを含むHBSSの添加によって停止し遠心分離した(270rcf、7分間)。細胞を、適切な緩衝液に再懸濁し再び遠心分離し、その後細胞をアッセイ緩衝液中に適切な濃度で再懸濁した。
インビトロでのB細胞アッセイ: 精製したIgMHEL B細胞を、アッセイを始める前に培地(RPMI、3% FCS、Pen/Srep)中で1時間インキュベートした。細胞を(0.2×106)、U字形底の96ウェルカルチャープレート(Falcon)にまいた。リポソーム(脂質終濃度5μM)を添加し、細胞を37℃で種々の時間インキュベートした。細胞をフローサイトメトリーによって分析するために、細胞を最初に遠心分離し(270rcf、7分間)、その後FACS緩衝液(0.1% BSAおよび2mM EDTAを含むHBSS)の50μLにおける適切な抗体とのインキュベーションを行った。氷上での染色30〜60分間後に、細胞を220μLのFACS緩衝液で一回洗浄し、最終的にフローサイトメトリーにより分析する前に1μg/mLのヨウ化プロピジウムを含むFACS緩衝液中に再懸濁した。このプロトコルに対する一つの例外は、アネキシンV染色であったが、該染色については製造者(Biolegend)によって供給される緩衝液中で行った。
インビボでのB細胞増殖アッセイ: CFSE標識IgMHEL細胞を、HBSS中に10×106細胞/mLの濃度で再懸濁し、尾静脈経由で200μL(2×106細胞)を宿主マウスに注入した。翌日(24時間)、尾静脈経由でリポソームを注入した。4日後にLy5a+IgMa+B細胞のCFSE染色を分析するために、宿主マウスの脾臓を収集した。リポソームによる免疫化の12日後に宿主マウスに残存するIgMHEL B細胞数を分析するために、IgMHEL B細胞はCFSE標識しなかった。
カルシウム流動: 精製したB細胞を15×106細胞/mLで、1% FCS、10mM HEPES、1mM MgCl2、1mM EGTAおよび1μM Indo‐1(Invitrogen)を含むRPMI培地に再懸濁した。細胞を37℃のウォーターバス中で30分間インキュベートした。このインキュベーション期間に続いて、5倍量の同じ緩衝液(Indo‐1無添加)を添加し、細胞を遠心分離した(270rcf、7分間)。ヒトB細胞が関与する実験について、細胞を3% FCSを含むHBSS中、氷上で20分間染色した。ヒトナイーブB細胞を検討するうえで、いずれの汚染T細胞ならびに汚染メモリーB細胞をもゲートアウトするために、ヒトナイーブB細胞をCD3およびCD27により染色した。ヒトナメモリーB細胞を検討するうえで、いかなるT細胞汚染ならびにナイーブB細胞のコンタミネーションもゲートアウトするために、ヒトメモリーB細胞をCD3、IgMおよびIgDにより染色した。細胞を洗浄し、遠心しならびに2×106細胞/mLの濃度で、1% FSC、1mM MgCl2および1mM CaCl2を含むHBSSに再懸濁した。細胞を氷上で保存し、一定分量(0.5mL;1×106細胞)を、カルシウム流動を測定する前に37℃で5分間加温した。細胞をリポソーム(5〜50μMの範囲)で刺激し、Indo‐1の蛍光をフローサイトメトリー(500〜1000イベント数/秒)によって3〜6分間モニターした。バックグラウンドを確立するために10秒を確保した後は、常に刺激を行った。アッセイの間、チューブを37℃に保つためにウォータージャケットを使用した。データを、動態力学機能(kinetics function)を使用してFlowJoにより分析し、データをガウス平滑化による平均強度としてプロットする。
ELISA: Maxisorp plate(96ウェル;Thermo Fisher)を、PBS中10〜100μg/mLの濃度で関連するタンパク質の50μL/ウェルにより被覆し、4℃で一晩放置した。抗NP抗体を検査するために、PBS中のNP4‐7‐BSA(Biosearch Technologies)を使用した。翌日、プレートをTBS‐T(0.1% Tween20を含むトリス緩衝食塩水ブロック)中で2回洗浄し、100μLのアッセイ希釈液(1% BSA添加TBS‐T)によりRTで1時間ブロックした。プレートの洗浄を、プレート全体を洗浄緩衝液の深皿に適切な回数浸漬することによって行った。血清を最初に20〜10,000倍の間に希釈し、それからELISAプレート上で2〜3倍の段階希釈8回により希釈した。プレートを血清と共に(50μL/ウェル)37℃で1時間インキュベートし、その後プレートをTBS‐T中で4回洗浄した。HRP標識二次抗体(Santa Cruz Biotechnologies)をアッセイ希釈液中で2000倍に希釈し、50μLを各ウェルに添加した。37℃で1時間インキュベーション後、プレートをTBS‐T中で5回洗浄した。プレートを現像するために、75μL/ウェルのTMB基質(Thermo Fisher)を添加した。プレートをRTで15分間インキュベートし、それから反応を停止するために2N硫酸を添加した。プレートを、分光光度計(Molecular Devices)を使用して450nmで読み取った。力価は、エンドポイント力価として定義したが、それはバックグラウンドの2倍の吸光度を生じる血清の希釈倍数であった。
ウェスタンブロット: 精製IgMHEL B細胞(30×106/condition)を、細胞を刺激する前に37℃で1時間、培地中で(RPMI、3%FCS、Pen/Strep)インキュベートした。リポソーム(脂質終濃度5 μg/mLM)を細胞に添加し、37℃で3または30分間インキュベーション後に、細胞を短時間遠心し(13,000rcf、8秒)、1mlの冷PBS中で洗浄し、2度目の遠心をして氷上で30分間、280μLの溶解緩衝液中(20mM Tris、150 NaCl、1mM EDTA、1% Triton‐X100、10m NaF、2mM オルトバナジン酸ナトリウム、プロテアーゼインヒビター・カクテル(Roche)、pH7.5)で溶解した。細胞残差を遠心分離(13,000rcf、5分間、4℃)によって除去し、細胞溶解液のタンパク質濃度をBCAアッセイ(Pierce)によって標定した。100mM DTTを含むSDS‐PAGE添加緩衝液を溶解液に添加し、試料を75℃で15分間加熱した。試料を150Vで60〜90分間、4〜13%の勾配SDS‐PAGEゲル(Invitrogen)を泳動させ、ニトロセルロースに転写した(30V、2時間)。膜をTBS‐T(0.1% Tween‐20)に溶解した5% 脱脂粉乳中、RTで1時間ブロックし、1%BSAを含むTBS‐T中、4℃で一晩、一次抗体により探査した。一次抗を、Cellular Signaling Technologiesから入手し、1:1000の希釈倍率で使用した。リン酸化特異的CD22抗体はM.Fujimoto(東京大学)から譲り受けた。翌日、膜を4x5分間洗浄し、その後に1% BSAを含むTBS‐Tにより30分間のブロッキングを続けた。膜を、TBS‐T+1% BSAに溶解したHRP標識二次抗体(希釈倍率1:10,000;Santa Cruz Biotechnologies)と、RTで1時間インキュベートした。4回洗浄後にブロットを現像溶液(GE Healthcare)と2分間インキュベートし、フィルムに曝した。顕微鏡観察:精製したIgMHEL B細胞を、細胞を刺激する前に1時間、37℃で培地(RPMI、3% FCS、Pen/Stre添加)中でインキュベートした。細胞を、刺激を2時間行った以外は、ウェスタンブロット分析と同様に刺激した。リポソームによる刺激の後に、細胞を穏やかにペレット化し(0.5rcf、3分)、1mlの冷PBS中で洗浄し、再び穏やかに遠心した。細胞を固定するために、ペレットを1mLの冷4% パラホルムアルデヒド(PFA)に再懸濁し、4℃で10分間回転した。細胞を穏やかに遠心分離し、ペレットを200μLのPBSに再懸濁し、50μLの再懸濁細胞(約3×106細胞)をポリリジンスライド(Fisher)上に散布した。溶液を乾燥後に、過剰のPFAを除去するためにスライドをPBSでさらに三回洗浄した。細胞を5% Triton‐X 100によりRTで5分間透過処理し、その後5%正常ヤギ血清(NGS)によりRTで30分間ブロッキングした。スライドを、0.01% TX‐100を含む1% NGS溶液中、1:80の濃度で抗FoxO1または抗FoxO3a(Cellular Signaling Technologies)により、4℃で一晩探索した。翌日、スライドをPBSにより三回洗浄し、1% NGS中、Alex555標識ファロイジン(希釈倍数1:40;Invitrogen)と一緒にAlexa488標識ヤギ抗ウサギ(希釈倍数1:1000;Invitrogen)により探索した。PBSによる三回洗浄後にスライドをDAPI溶液と短時間インキュベートし、Prolong褪色防止用封入剤(Invitrogen)にマウントした。細胞の撮像は、Zeissの共焦点顕微鏡により行った。
タンパク質‐脂質の複合化: タンパク質を、他の人による記載と類似する手順でマレイミドの化学的性質を使用して、PEG化されたジステアロイルグリセロホスホエタノールアミン(PEG‐DSPE)に複合化した(Loughrey,H.C.,Choi,L.S.,Cullis,P.R.& Bally,M.B.Optimized Prcedures for the Coupling of Proteins to Liposomes(タンパク質をリポソームにカップリングするための最適化手順).J Immunol Methods 132,25‐35(1990))。最初に、リジン残基を修飾するヘテロ二官能性クロスリンカーであるN‐スクシイミジル3‐(2‐ピリジルジチオ)‐プロピオン酸エステル(SPDP;Pierce)を使用して、チオール基をタンパク質上に導入した。約5モル当量のSPDP(DMSOに新たに溶解)を、1〜20mg/mLの範囲のタンパク質溶液(PBS溶液)に添加した。反応液をRTで1時間穏やかに揺り動かし、それからいずれの沈殿物をも除去するために遠心分離した。未反応のSPDPを除去ために、タンパク質をセファデックスG‐50カラムで脱塩した。脱塩されたタンパク質を、2‐ピリジルジスルフィド基を脱保護しそれによって遊離のチオールを発生させるために、25mM DTT(RTで10分間)により処理した。反応の間に放出されるピリジン2‐チオール脱離基の量を、343nmでの吸光度(消衰計数7550M−1cm−1)を測定することによって定量し、該測定は、それをタンパク質の濃度と比較することで、リンカーによるタンパク質の修飾の範囲を計算するために使用することができた。タンパク質を、過剰のDTTを除去するためにセファデックスG‐50カラムで再び脱塩した。チオール誘導体化タンパク質(10〜50μMの範囲)を、マレイミド‐PEG2000‐DSPE(200μM;NOF America)と窒素下、RTで一晩直ちに反応させた。脂質‐修飾されたタンパク質はミセルであり、セファデックスG‐100カラムで未修飾タンパク質から容易に精製され得た。所望の脂質‐修飾されたタンパク質は、ボイドボリュームに溶出し、タンパク質濃度を280nmの吸光度(A280)によって定量し、それから4℃で保存した。タンパク質が脂質によって修飾されたことを検証するために、SDS‐PAGEを使用した。タンパク質の脂質‐修飾は、ゲル上の見かけのMWの増加によりすぐ明となった(図S2c)。この反応条件を使用して、タンパク質を1ないし3の脂質により修飾した。
糖‐脂質複合化: 高親和性マウスCD22リガンド(BPANeuGc)およびヒトCD22リガンド(BPCNeuAc)を、従前の記載の通り、9‐N‐ビフェニルアセチル‐NeuGcα2‐6Galβ1‐4GlcNAc‐β‐エチルアミンまたは9‐N‐ビフェニルカルボキシル‐NeuAcα2‐6Galβ1‐4GlcNAc‐β‐エチルアミンそれぞれをNHS‐PEG2000‐DSPE(NOF)にカップリングすることによってPEG‐DSPEに結合した(Chen et al.,Blood 115:4778‐4786(2010))。
NP‐PEG2000‐DSPEの合成: 4‐ヒドロキシ‐3‐ニトロフェニルアセチル‐O‐スクシンイミド(1.5mg、0.0050 mmol、2.8当量)およびアミン‐PEG2000‐DSPE(5.0mg、0.0018 mmol;NOF)を、10モル当量のN,N‐ジイソプロピルエチルアミン(3.1μL、0.018mmol、10当量)を含む0.5mlの乾燥ジクロロメタンに溶解した。RTで三時間後に、溶媒を減圧下で蒸発させ、残存する固形残差を、超音波の助けを借りてddH2O(脱イオン蒸留水)(2ml)に再懸濁した。懸濁液を、10kDaの分子量カットオフ値を有する透析カセット(Pierce)を使用して、ddH2Oに対して連続三回透析した。それから透析した試料をタールコーチングしたバイアル中で凍結乾燥し、ふわふわした軽い黄色バウダーを得た。DMSOにおける1H NMR分光法により、ニトロフェノール基由来の芳香族部分プロトンとステアロイル資質の末端メチル基それぞれの予想された比(1:2)を確認した。
リポソーム: すべてのリポソームは、60:35:5のモル比のジアステロイルホスファチジルコリン(DSPC;Avnti Polar Lipids)、コレステロール(Sigma)およびPEG化脂質から構成された。PEG化脂質の総モル%を、常に5%に保持した;この5%は、ポリエチレングリコール(PEG2000)‐ジステアロイルホスホエタノールアミン(PEG‐DSPE;Avanti Polar Lipids)、BPANeuGc‐PEG2000‐DSPE、BPCNeuAc‐PEG2000‐DSPE、NP‐PEG2000‐DSPEまたはタンパク質‐PEG2000‐DSPEの適切な組み合せから構成されていた。リポソームをアセンブルするために、新たに溶解されたDSPCおよびコレステロールの適切な量を窒素ガス気流下で蒸発させた。DMSOストック由来のBPANeuGc‐PEG2000‐DSPE、BPCNeuAc‐PEG2000‐DSPE、NP‐PEG2000‐DSPEの一定分量(aliquot)を乾燥した脂質に添加し、この混合物を凍結乾燥した。乾燥脂質をPBS中で水和して、超音波処理の各回の間に数分の猶予をもたせ、最小限30秒間五回、激しく超音波処理した。タンパク質‐PEG2000‐DSPEを水和の時に添加した。リポソーム上のタンパク質のモル%は、発明者らの検討において0.0033〜0.33%で変動した。リポソームの総濃度を、脂質のモル濃度によって定義し、リポソームを典型的には1〜10mMの範囲で水和した。リポソームを、携帯ミニ押出装置(Avanti Polar Lipids)を使用して、最小限20回、800nm、100nmおよび最後に100nmのフィルタに通した。押出は40〜45℃で行った。リポソームの直径をゼータサイザー(Malvern)で測定し、大体100〜130±30nmの範囲であることが見出だされた。タンパク質‐PEG2000‐DSPEのリポソームの中への混入は、リポソームの粒径に影響を与えなかった。
MOGのクローニング、発現および精製: ラットミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質を、以下のプライマー:5‘‐GCAGCACATATGGGACAGTTCATAGTGATAGGG‐3’(配列番号11)および5‘‐GCAGACCTCGAGGTAGAAGGGATCTTCTACTTTC‐3’(配列番号12)を使用してラット脳cDNAライブラリー(Zyagen)からクローン化したが、ここで下線を引いた文字はそれぞれNdeIおよびXhoI制限部位を表す。C末端His6(ヘキサヒスチジン)‐タグを有するタンパク質を発現するために、PCR産物をpET23aに連結した。タンパク質の発現および精製を、従前の記載通りに行った(Chan,J.W.et al.Monitoring dynamic protein expression in living E‐coli(生きている大腸菌における動力学的タンパク質発現のモニタリング).Bacterial Celts by lazer tweezers raman spectoscopy(レーザーピンセットラマン分光による微生物ケルト).Gytom Part A 71A,468‐474(2007))。
統計分析: 不対両側スチューデント検定を使用して、統計的有意差を決定した。
実施例8
第VIII因子‐PEG複合体の生成
FVIIIの構造活性関係分析。FVIIIおよびBDD FVIIIは、生物学的反応に関与する多くの異なる部位を有する、非常に大きな複合分子である。薬物動態特性を改善するためにそれらを共有結合的に修飾しようとする従前の試みは、雑多な結果であった。分子を特異的に突然変異し、それからポリマーを部位特異的に添加することは、驚くべきことであった。さらに改善された薬物動態特性および保持され活性の結果もまた、非特異的付加および低減した活性を生じる過去のポリマー複合体に関する問題を考えれば、驚くべきものであった。
一実施形態において、PEG‐マレイミド等のシステイン特異的リガンドを使用する部位特異的突然変異誘発が提供される。非変異BDDは、PEG‐マレイミドと反応するために利用可能ないかなるシステインも有さないので、変異したシステイン部位だけがPEG化の部位となる。より具体的には、BDD FVIIIは19個のシステインを有し、その中の16個はジスルフィドを形成し、その他の3個は遊離システインである(McMullen et al.,1995、Protein Sci.4,pp.740‐746)。BDDの構造モデルは、すべて3個の遊離システインは埋没していることを示唆する(Stoliova‐McPhie et al.,2002、Blood 99,pp.1215‐1223)。酸化されたシステインは、PEG‐マレイミドによってPEG化され得ないので、BDDにおいてジスルフィドを形成する16個のシステインは、最初に還元されることなしにはPEG化され得ない。BDDの構造モデルに基づけば、BDD中の3個の遊離のシステインは、これらのシステインをPEG試薬に露出するように、最初にタンパク質を変性することなしにはPEG化され得ない。従って、未変性のシステイン残基におけるPEG化によって、BDDの特異的なPEG化を達成することは、BDDの構造を劇的に変化させることなしには実行可能とは思われず、該変化はBDDの機能を破壊する可能性が最も高い。
完全長FVIIIのBドメイン内の4個のシステインの酸化還元状態は知られていない。Bドメイン内の4個のシステインのPEG化は、それらがジスルフィドを形成せず、表面に露出されていれば可能かもしれない。しかしながら、完全長FVIIIおよびBDDはインビボにおいて類似する薬物動態(PK)特性および類似する半減期を有するので(Gruppo et al.,2003,Haemophilia 9,pp.251‐260)、PEGが期せずしてまた非Bドメイン領域を保護するのでなければ、BドメインのPEG化は改善された血漿半減期をもたらしそうにもない。
第VIII因子活性を保持し薬物動態を改善するであろう、ポリマー結合のためのFVIII活性を有するポリペプチド上の所定の部位を決定するために、BDD FVIIIに基づいて下記の指針が提供される。修飾は、クリアランス、不活性化およびLRP、HSPG、APC等の免疫原性機構、および阻害抗体結合部位を標的とすべきである。Stoilova‐McPhie,S.et al.,2002,Blood 99(4),pp.1215‐23は、BDDの構造を示す。例えば半減期を延長するすために、単一のPEGを、A2の残基484‐509およびA3の残基1811‐1818のLRP結合部位、またはその近辺の特異的部位に導入し得る。これらの部位におけるサイズの大きなPEGの導入は、FVIIIのLRP結合能を破壊させ、FVIIIの循環からのクリアランスを減少させるにちがいない。同様に、活性に顕著な影響を与えることなしに半減期を延ばすために、PEGを残基1648において導入し得ると考えられており、それは完全長分子中のBドメインとA3ドメインの分岐点にあり、BDDのA2とA3ドメインの間の14‐アミノ酸リンカーIにある(and in the 14‐amino acid linker I the BDD between the A2 and A3 domains)。
PEG化の特異性は、PEGマレイミド等のシステイン特異的PEG試薬により、導入されたシステインの部位特異的PEG化を伴う、組換えDNA突然変異誘発技術を使用して、単一のシステイン残基をA2またはA3ドメインに操作することによって達成され得る。484‐509および1811‐1818におけるPEG化のもう一つの優位性は、これらの二つのエピトープが患者における抑制抗原部位の三主要クラスの二つを表すことである。改善された循環半減期および免疫原性応答の減少の最大効果を達成するために、A2およびA3の双方のLRP結合部を、ジPEG化産物をもたらすようにPEG化し得る。1811‐1818領域内でのPEG化は、この領域がまたFIX結合にも関与するので、活性の顕著なをもたらし得ることに留意されたい。558‐565内での部位特異的PEG化は、HSPG結合を消失させるであろうが、この領域はFIXにも結合するので、同様に活性を減少し得る。
FVIIIの新規なクリアランス機構を同定するために、追加の表面部位をPEG化し得る。A2ドメインのPEG化は、A2ドメインが活性化の際にFVIIIから解離し、そのより小さい粒径のために恐らくFVIII分子の残りよりも迅速に循環から除去されるという、追加の優位性を提供し得る。これに反してPEG化A2は、腎クリアランスを免れるのに十分なほど大きく、FVIIIの残りと匹敵する血漿半減期を有し、従ってインビボで活性化方FVIIIを再構成し得る。
A2およびA3領域におけるPEG化部位の同定。
推定上のA2 LRP結合領域におけるまたはその近辺における5個の位置(PEG1〜5位置に対応するY487、L491、K496、L504およびQ468)を、高い表面露出およびそれらのCβに対するCαの軌道の外向きの方向に基づいて、部位特異的PEG化の例として選択した。さらにこれらの残基は、分子の三次元構造において互いにほぼ等距離にあり、その結果、それらはまとまってこの全体の領域を表し得る。推定上のA3 LRP結合領域におけるまたはその近辺における8個の位置(PEG6〜14に対応する1808、1810、1812、1813、1815、1795、1796、1803、1804)を、部位特異的PEG化の例として選択した。PEG6(K1808)は、1811‐1818および1810において天然のN結合型グリコシル化部位に隣接している。位置1810におけるPEG化(PEG7)は、糖をPEGに置換する。PEG位置T1812における変異はまた、グリコシル化部位を破壊する。PEG9の位置(K1813)は内側を向いていると予測されたが、構造モデルが正しくない場合に備えて選択した。PEG10(Y1815)は、LRP結合ループ内のかさ高い疎水性アミノ酸であり、疎水性タンパク質が典型的にはタンパク質‐タンパク質相互作用の中心に見出されるので、重要な相互作用残基であり得る。1811‐1818領域はLRPおよびFIX結合の双方に関与すると報告されてきたので、このループ内でのPEG化は減少した活性をもたらすだろうと考えられた。このようにPEG11‐PEG14(1795、1796、1803、1804)は、1811‐1818の近辺にあるように設計されたが、異なるPEGサイズによりLRPおよびFIX結合を解離し得るように、ループ内にあるようには設計されなかった。
双方のLRP結合部位を同時にブロックするために、例えばPEG2およびPEG6位置における二重PEG化、を作成し得る。
558‐565領域は、HSPGおよびFIXの双方に結合することが示されているので、この領域内ではどの部位をも設計しなかった。代わりに、PEG15‐PEG17(377、378および556)を、結合したPEGがそれらの間の相互作用および破壊可能な相互作用の双方を妨げるように、A2 LRPおよびHSPG結合領域の間において設計した。表面が露出し外向きを指している追加の部位をまた、LRPおよびHPSG結合領域の内部または近辺で選択し得た。新規のクリアランス機構を同定するために、FVIIIを系統的にPEG化し得る。PEG1‐17に加えて、三つの他の天然のグリコシル化部位、すなわちPEG18‐20に対応するN41、N239およびN2118を、それらが表面を露出しているはずなので、PEG化のためのテザリング点(tethering point)として使用し得る。PEG2、PEG6のCβ原子から半径20オングストローム内の表面範囲、および4個のグリコシル化部位を、vWF、FIX、FX、リン脂質およびトロンビンのための機能的な相互作用部位に加えて、BDDモデル上にマッピングした。
次にY81、F129、K422、K523、K570N1864、T1911、Q2091およびQ2284に対応するPEG21‐29を、それらの各Cβ原子から20オングストロームの半径により残りのほとんど全体のBDD表面をカバーする能力に基づいて、選択した。これらの位置はまた、それらが完全に露出し、外側に向いていて、起こりうる間違ったジスルフィド形成を最小限にするように天然システインから遠くにあるという理由で選択した。20オングストロームの半径を選択したのは、64kDの分岐型PEG等の大きなPEGは、約20オングストロームの半径の範囲をカバーする潜在能力を有すると予想されるからである。PEG2およびPEG6およびグリコシル化部位PEG18、19および20と共にPEG21‐29のPEG化は、ほぼ全体のFVIIIの非機能的表面を保護するらしい。
改善されたPK特性、より優れた安定性または低減された免疫原性等の向上した特性をもたらすPEG化位置を、最大限に向上した特性を有するマルチPEG化産物を作成するために組み合せ得る。PEG30およびPEG31を、A2およびA3ドメインにおいてそれぞれ露出したジスルフィドを除去することによって設計した。PEG30、すなわちC630Aは、PEG化のためにそのジスルフィド・パートナーであるC711を遊離するはずである。同様に、PEG31、C1899AはC1903がPEG化されるのを可能にするはずである。
突然変異誘発。FVIIIの部位特異的PEG化のための基質を、PEG化のために選択した部位においてシステインコドンを導入することによって作成し得る。Stratagene cQuickChange II部位特異的突然変異誘発キットを、すべてのPEG変異体を作成するために使用した(Stratagene Corporation,La Jolla,Calif.のStragageneキット200523)。cQuickChange.TM部位特異的突然変異誘発法を、Pfu Turbo.RTM.DNAポリメラーゼおよび温度サイクラ―を使用して実施する。所望の変異を含む二つの相補性オリゴヌクレオチドプライマーを、プライマーを置換しないPfu Turboを使用して伸長する。野生型FVIII遺伝子を含むdsDNAを鋳型として使用する。複数の伸長サイクル後に産物を、メチル化DNAに特異的である、DpnIエンドヌクレアーゼにより消化する。変異を含む新たに合成されたDNAはメチル化されないが、一方で親の野生型DNAはメチル化される。次に消化したDNAを、XL‐1Blueスーパーコンピテンスセルを遺伝子導入するために使用する。
突然変異誘発の効率は、ほとんど80%である。突然変異誘発反応を、pSK207+BDD C2.6またはpSK207+BDDのいずれかにおいて実施した。成功した突然変異誘発をDNA配列決定によって確認し、変異を含む適切なフラグメントを、哺乳動物発現ベクターpSS207+BDD中のFVIII主鎖の中に転移した。転移後に、すべての変異を再び配列で確認した。A3突然変異タンパク質PEG6、7、8、9および10について、突然変異誘発をベクターpSK207+BDD C2.6において行った。配列決定によって確認した後に、変異体フラグメント、Kpnl/PmeをpSK207+BDDにサブクローニングした。次にBDD突然変異タンパク質を、pSS207+BDD発現ベクターにサブクローニングした。A3突然変異タンパク質PEG11、12、13、14について、突然変異誘発をベクターpSK207+BDDにおいて直接行い、次に配列を確認した変異体BDDをpSS207+BDDにおいてサブクローニングした。A2突然変異タンパク質のPEG1、2、3、4、5について、突然変異誘発をpSK207+BDD C2.6ベクターにおいて行った。配列を確認した変異体をpSK207+BDD、次にpSS207+BDDにおいてサブクローニングした。
突然変異誘発に使用したプライマー(センス鎖のみ)を各々の反応について収載する。
PEG1, Y487C: CATGTCCGTCCTTTGTGCTCAAGGAGATTACCA(配列番号13)
PEG2、 L491C: TTGTATTCAAGGAGATGCCCAAAAGGTGTAAAAC(配列番号14)
PEG3、 K496C: TTACCAAAAGGTGTATGCCATTTGAAGGATTTTC(配列番号15)
PEG4、 L504C: AAGGATTTTCCAATTTGCCCAGGAGAAATATTC(配列番号16)
PEG5、 Q468C; GATTATATTTAAGAATTGCGCAAGCAGACCATAT(配列番号17)
PEG6、 K1808C: TAGAAAAAACTTTGTCTGCCCTAATGAAACCAAAAC(配列番号18)
PEG7、 N1810C: AACTTTGTCAAGCCTTGCGAAACCAAAACTTAC(配列番号19)
PEG8、 T1812C: GTCAAGCCTAATGAATGCAAAACTTACTTTTGGA(配列番号20)
PEG9、 K1813C: CAAGCCTAATGAAACCTGCACTTACTTTTGGAAAG(配列番号21)
PEG10、 Y1815C: CTAATGAAACCAAAACTTGCTTTTGGAAAGTGCAAC(配列番号22)
PEG11、 D1795C: ATTTCTTATGAGGAATGCCAGAGGCAAGGAGCA(配列番号23)
PEG12、 Q1796C: TCTTATGAGGAAGATTGCAGGCAAGGAGCAGAA(配列番号24)
PEG13、 R1803C:CAAGGAGCAGAACCTTGCAAAAACTTTGTCAAGCCT(配列番号25)
PEG14、 K1804C: GGAGCAGAACCTAGATGCAACTTTGTCAAGCCT(配列番号26)
PEG15、 K377C: CGCTCAGTTGCCAAGTGTCATCCTAAAACTTGG(配列番号27)
PEG16、 H378C: TCAGTTGCCAAGAAGTGTCCTAAAACTTGGGTA(配列番号28)
PEG17、 K556C: CTCCTCATCTGCTACTGCGAATCTGTAGATCAA(配列番号29)
PEG18、 N41C: CAAAATCTTTTCCATTCTGCACCTCAGTCGTGTAC(配列番号30)
PEG19、 N239C: GTCAATGGTTATGTATGCAGGTCTCTGCCAGGT(配列番号31)
PEG20、 N2118C: CAGACTTATCGAGGATGTTCCACTGGAACCTTA(配列番号32)
PEG21、 Y81C: ATCCAGGCTGAGGTTTGTGATACAGTGGTCATT(配列番号33)
PEG22、 F129C: GAAGATGATAAAGTCTGTCCTGGTGGAAGCCAT(配列番号34)
PEG23、 K422C: CAGCGGATTGGTAGGTGTTACAAAAAAGTCCGA(配列番号35)
PEG24、 K523C: GAAGATGGGCCAACTTGCTCAGATCCTCGGTGC(配列番号36)
PEG25、 K570C: CAGATAATGTCAGACTGCAGGAATGTCATCCTG(配列番号37)
PEG26、 N1864C: CACACTAACACACTGTGTCCTGCTCATGGGAGA(配列番号38)
PEG27、 T1911C, CAGATGGAAGATCCCTGCTTTAAAGAGAATTAT(配列番号39)
PEG28、 Q2091C:ACCCAGGGTGCCCGTTGCAAGTTCTCCAGCCTC(配列番号40)
PEG29、 Q2284C: AAAGTAAAGGTTTTTTGCGGAAATCAAGACTCC(配列番号41)
PEG30、 C630A: TTGCAGTTGTCAGTTGCTTTGCATGAGGTGGCA(配列番号42)
PEG31、 C1899A: AATATGGAAAGAAACGCTAGGGCTCCCTGCAAT(配列番号43)
突然変異タンパク質の発現。ハイグロマイシンBに対する耐性を与えるベクターへの挿入の後に、PEG突然変異タンパク質を、製造者の取扱い説明書に従って293Fectinトランスフェクション試薬(Invitrogen Corp.Cat#12347‐019)と複合したHKB11細胞に遺伝子導入した(米国特許第6,136,599号)。遺伝子導入三日後におけるFVIIIの発現を、Coatest発色アッセイ(Chromogenix Corp. Cat#821033、実施例12の発色アッセイを参照されたい)によって評価した。次に遺伝子導入された細胞を、5%FBSにより補充した増殖培地中で50.quadrature.g/mlのHyg Bによる選択圧下に放置した。Hyg B耐性のコロニーが出現したとき、該コロニーを手作業で選び、Coatest発色アッセイによってFVIII発現に関してスクリーニングした。次にFVIIIを発現する安定な細胞を、HPPS補充を含む培地に順応させた。細胞を増殖し、1×106細胞/mlで新鮮な培地の入った振盪フラスコに接種した。3日後に収集した組織培養液(TCF)を、FVIII BDD突然変異タンパク質の精製に使用した。TCFのFVIII活性をCoatestにより測定した。
突然変異タンパク質の精製。分泌されたFVIII突然変異タンパク質を含む細胞培養上清を収集する際に、いかなる残余細胞をも除去するために、上清を0.2ミクロンの膜を通して濾過する。次に上清を、限外濾過または陰イオン交換のいずれかによって濃縮する。次に上清をイムノアフィニティーカラムに適用し、そこで細胞培養培地成分および大部分の宿主細胞タンパク質夾雑物を除去する。次にイムノアフィニティーカラム溶出液を、ショ糖を含む処方緩衝液(formulation buffer)へのダイアフィルトレーションによって緩衝液交換し、そして凍結する。モノクローナルFVIII抗体カラムに渡る(acrros)タンパク質の収量および回収を、発色アッセイによって評価した。クロマトグラフィー実行された(run)負荷物、素通り画分、種々の溶出画分、条片(strip)およびダイアフィルターされた溶出液の試料は、FVIII活性に関して分析した。
PEG化。未変性の完全長FVIIIまたはBDDを、100倍以上過剰なPEG:タンパク質比での還元および変性無しで、システイン特異的PEGによってPEG化することはできず(データ未記載)、すべての未変性のシステインがFVIII内でジスルフィドを形成しまたは埋没しているというBDD構造モデルに基づいた仮定を裏付けている。上記の標準的なプロトコルを使用して発現され精製されたFVIIIシステイン突然変異タンパク質を、システイン特異的PEGマレイミド試薬によりPEG化し得なかったのは、おそらく導入されたFVIIIシステインが細胞増殖培地に存在するシステインおよびβ‐メルカプトエタノール等のスフヒドリル基との反応によって「キャッピングされている」からである。この問題はもしかすると、培養培地からシステインおよびβ‐メルカプトエタノールを除去することによって解決され得るが、しかしこれはより低下したFVIII産生をもたらし、細胞により遊離されたスルフヒドリルの、導入されたFVIIIシステインのブロッキングを防止しないであろう。
他の態様において、FVIIIの部位特異的PEG化を可能とする三段階の方法を開発した。段階1において、約1μMの精製FVIIIシステイン突然変異タンパク質を、「キャップ」を放出するように、約0.7mMトリス(2‐カルボキシルエチル)ホスフィン(TCEP)または0.07mMジチオトレイトール(DTT)等の還元剤により4℃で30分間穏やかに還元する。第二段階において、導入したシステインを遊離し還元された状態にしながらFVIIIジスルフィドが再構成し得るように、スピンカラム(BioRad)を通して試料を移動させる等のサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって、還元剤を「キャップ」と共に除去する。段階3において、還元剤の除去から少なくとも30分後に、遊離型FVIIIシステイン突然変異タンパク質を、サイズが5〜64kD(Nektar TherapeuticsおよびN.O.F.Corporation)の範囲の、少なくとも10倍モル過剰のPEGマレイミドにより、4℃で少なくとも1時間処理する。この方法は、異なる個体により繰り返される多数の反応に対する極めて再現性のよいデータを有する、非常に一貫した産物特性をもたらす。
TCEPの除去に対するスピンカラム法は、測定可能でないのでゲル濾過脱塩クロマトグラフィーを選択した。しかしながら、TCEP添加試料を使用してこの方法を試験した際に、TCEPが測定可能なレベルでカラムのボイド容量に溶出し、その低分子量の分子から予測される塩画分には溶出しないことが明らかにされた。ウェスタンブロットアッセイは、おそらくはTCEPの不完全な除去による、意義深い背景のPEG化を示した。その一方で別の実験は、C7F7精製材料を、塩勾配と組み合わせた陰イオン交換クロマトグラフィー担体を使用して、他のタンパク質夾雑物から顕著にさらに精製し得ることを明らかにした。そこで上記の通りTCEPによりC7F7材料を還元し、次に材料を陰イオン交換カラムで処理することとした。電荷差のためにFVIIIタンパク質は保持されるが、一方でTCEPはカラムを素通りし保持されないであろう。同時に塩勾配溶出の間にFVIIIタンパク質は、大部分の残余するタンパク質夾雑物から離れて精製されるであろう。これは、後に生じるPEG化が、より純粋な出発材料により理論的により均一であるであろうことを意味した。しかしなが、TCEP添加試料の試験の際に、勾配においてFVIIIと共に溶出する、測定し得るレベルのTCEPが見出されることが明らかにされた。それ故に、これらの二つの段階が順に使用されるときに、TCEPの完全な除去および非特異的PEG化の排除をもたらすように、ゲル濾過脱塩クロマトグラフィーを陰イオン交換クロマトグラフィーの後に実行することを決定した。
SDS PAGEおよびウェスタンブロットによるPEG化分析。PEG化された産物を、6%トリスグリシン還元SDSポリアクリルアミドゲル(Invitrogen)での電気泳動によって分析し得る。電気泳動後にゲルを、すべてのタンパク質を同定するためにクーマシーブルーにより染色し得て、またはFVIIIの異なる領域上のPEG化パターンを同定するために標準的なウェスタンブロットプロトコルにかけ得る。それぞれFVIII重鎖のC末端領域またはVIII軽鎖のN末端領域に対し産生された、マウスモノクローナルR8B12またはC7F7抗体によるブロットの染色は、それぞれの鎖のPEG化を同定するはずである。FVIIIの484‐509領域に対する413抗体による染色は、PEG化がPEG1‐4等の突然変異タンパク質に対し本当に部位特異的であるか否かを決定し得る。同様に、FVIIIの1801‐1823領域を認識するCLB‐CAg A抗体による染色は、PEG化がPEG6‐10等の突然変異タンパク質に対し部位特的であるかどうかを決定し得る。
PEG2(L491C)PEG化は、軽鎖より重鎖に対し特に484‐509領域に対し選択的であることが明らかにされ、一方でPEG6(K1808C)は、重鎖より軽鎖に対し選択的であることが明にされた。
トロンビン切断およびウェスタンブロットによるPEG化分析。PEG化された産物を、トロンビン(40IU/μg FVIII)により37℃で30分間処理し得る。使用されるトロンビンはまた、夾雑物としてAPCも含む。トロンビン切断は、重鎖由来の50kDのA1および43kDのA2ドメインを生じ得るが、一方でAPC切断は、A2ドメインを21および22kDのフラグメントにさらに開裂し得る。重鎖のC末端を認識するR8B12抗体による染色は、無傷のA2ドメインおよび21kDのC末端フラグメント(FVIII 562‐740)だけを同定し得る。従って、PEG2のPEG化が位置491に特異的であるならば、43kDのA2ドメインはPEG化され、21kDのC末端フラグメントはPEG化されないはずである。このことは実際に、22kDのPEG化されたPEG2についてのウェスタンブロットにより裏付けられた。従って消去法によってPEG2のPEG化は、A2ドメインのN末端22kDのフラグメント(FVIII373‐561)に局在していた。PEGマレイミドは、pH6.8でシステインに対し完全に選択的であり、しかも373‐561内の未変性のFVIIIシステインだけが528と554の間の埋没したジスルフィド由来であるので、PEG2は位置491に導入されたシステイン上でPEG化される可能性が高い。FVIII重鎖N末端抗体による、トロンビン処理されたPEG化PEG2のウェスタン染色は、A1ドメインのPEG化を示さなかった(データ未掲載)。トロンビン切断法を使用したPEG2の選択的PEG化を、5、12、33および43kDのPEGについて確認した(データ未掲載)。PEG化された野生型完全長FVIIIのトロンビン切断は、BドメインだけがPEG化されることを示す。
ヨウ素染色によるPEG化分析。新たに作られたクーマシーブルーおよびウェスタン染色上のバンドが実際にPEG化されたバンドであることを確認するために、PEGに特異的であるヨウ化バリウム染色を使用した。PEG化されたPEG2を6%トリスグリシンゲル(Invitrogen)上で移動させ、R8B12重鎖抗体またはヨウ化バリウム溶液によって染色した(Lee et al,Pharm Dev Tchnol.1999 4:269‐275)。PEG化されたバンドは、それらの位置を調整するための分子量マーカーを使用することによって、二つの染色物の間で一致し、従ってFVIII重鎖のPEG化を裏付けた。
MALDI‐質量分析法によるPEG化分析。重鎖中のA2ドメインのPEG化を確認するために、rFVIII試料を、PEG化の前後にマトリックス支援レーザー脱離/イオン化(MALDI)質量分析法により分析した。試料を、30%アセトニトリル、0.1%TFA中のシナピン酸マトリックスを有するMALDIターゲットプレート上で混合し結晶化させた。次に試料を、Voyager DE‐PRO分光計においてポジティブ線形モードにより分析した。結果は、PEG2の軽鎖が83kDを中心とし、重鎖(HC)が89kDを中心とすることを示した。PEG化された試料のために取得したスペクトルは、HCピークの低下および111kDを中心とする新規なピークが形成することを示した。これは重鎖のPEG化を裏付ける。PEG化された軽鎖(105kDにおける)は、検出限界を超えては認められなかった。
次に試料を双方とも、トロンビン20単位/FVIII mgにおいて37℃で30分間トロンビン消化に供し、その後アミノ酸分析(Commonwealthe Biotechnologies,Inc)によってFVIII濃度を定量した。重鎖は46kD(A1)のN末端画分と43kD(A2)の画分に切断された。PEG化された試料に対し取得されたMALDIスペクトルは、PEG化A2ドメインに起因する、43kDのピークのおよび新規の65kDのピークの生成を示す。LCのPEG化は、検出限界を超えては再び認められない。これらの結果は、FVIIIのA2ドメインのPEG化を再び裏付ける。同じ分析をPEG化されたPEG6に適用して、軽鎖A3C1C2フラグメントのPEG化を確証した。
活性測定
凝固アッセイ。FVIII:C凝固試験法は、活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)に基づく一段階アッセイである。FVIIIは、第IXa因子、カルシウムおよびリン脂質の存在下に、第X因子の第Xa因子への酵素的変換において補因子として作用する。このアッセイにおいては、希釈された試験試料を、FVIII欠失血漿基質およびaPTT試薬の混合物と共に37℃でインキュベートする。塩化カルシウムをインキュベートした混合液に添加し、凝固を開始させる。血餅を形成するのに要する時間(秒)とFVIII:Cの濃度の対数の間には逆比例関係が存在する。未知の試料に対する活性レベルは、試験材料の種々の希釈液の凝固時間を、既知の活性の標準材料の一連の希釈液から構築される曲線と比較することによって内挿し、mL当たりの国際単位(IU/mL)で報告する。
発色アッセイ。発色アッセイ法は、色の強度がFVIII活性に比例する連続する二つの段階から構成される。第一段階において、第X因子は、至適量のカルシウムイオンおよびリン脂質の存在下において、その補因子であるFVIIIaを有するFIXaによってFXaに活性化される。第X因子の活性化速度がFVIIIの量にのみ依存するように、過剰量の第X因子が存在する。第二段階において、第Xa因子が発色基質を加水分解して発色団を産生し、色強度を405nmで側光的に読み取る。未知試料の力価を算出し、アッセイの妥当性を傾斜比統計法により検討する。活性をmL当たりの国際単位(IU/mL)で報告する。
1811‐1818ループはFIXへの結合に関与するが、しかしこのループ内部の個々の部位の重要性は特定されていない。PEG7‐10突然変異タンパク質は、本来のFVIIIに比較してほぼ同一の発色比活性を示す。
全抗原ELISA(TAE)。FVIIIポリクローナル抗体により被覆された、マイクロタイタープレートにFVIIIを捕捉する。結合したFVIIIを、ビオチン標識rFVIIIポリクローナル抗体およびストレプトアビジン・ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)複合体により検出する。ペルオキシダーゼ‐ストレプトアビジン複合体は、テトラメチルベンジジン(TMB)基質の添加の際に発色反応を生じる。4パラメータ適合モデルを使用して、試料濃度を標準曲線から内挿する。
vWF結合ELISA。FVIIIを、溶液中で重症の血友病血漿中のvWfに結合させる。次にFVIII‐vWf複合体を、vWf特異的モノクローナル抗体により被覆したマイクロタイタープレート上で捕捉する。vWfに結合したFVIIIを、FVIIIポリクローナル抗体およびホールラディッシュ・ペルオキシダーゼ抗ウサギ複合体により検出する。ペルオキダーゼ結合抗体複合体(peroxidase‐conjugated antibody complex)は、基質の添加の際に発色反応を生じる。試料濃度を、4パラメータ適合モデルを使用して標準曲線から内挿する。FVIII結合の結果を、μg/mLで報告する。PEG化の際に活性のいずれに関する顕著な影響も存在せず、それはBドメインにおけるPEG化と一致するであろう。
イオン交換クロマトグラフィーによるPEG化FVIIIの精製。PEG化されたFVIIIを陰イオン交換カラムまたは陽イオン交換カラムに適用し、ここでタンパク質はカラムに結合するが、一方でいかなる過剰の遊離PEG試薬も結合せず素通り画分中に除去される。次にPEG突然変異タンパク質を塩化ナトリウム勾配によりカラムから溶出する。ヨウ化バリウムで染色された、負荷物、素通り画分および勾配画分の4〜12%Bis‐Trisゲルを使用して、カラム溶出画分がPEG化突然変異タンパク質を有することを確証した。
サイズ排除クロマトグラフィーによるPEG化FVIIIの精製。PEG2突然変異タンパク質の大部分を含有する陰イオン交換画分をプールし、限外濾過により濃縮し、次にサイズ排除カラムに適用する。次に処方緩衝液を使用してカラムを溶出する。PEGがタンパク質に結合しているかどうかに依存するタンパク質のサイズおよび形態の差異の故に、このカラムはPEG化PEG2突然変異タンパク質をPEG化されていないいかなる残りのPEG2の突然変異タンパク質からも分離する。PEG化突然変異タンパク質FVIIIフラクションを、最大のFVIII活性を有することに基づきプールし、次にその後の動物実験および分子のキャラクタリゼーションのために凍結する。
低いPEG化効率、すなわち50%未満を示すPEG6等の突然変異タンパク質について、高純度のモノPEG化産物をもたらすための最も効果的な精製スキームは、陽イオン交換クロマトグラフィーとそれに続くサイズ排除クロマトグラフィーの組み合せを使用することである。例えばPEG6について、陽イオン交換クロマトグラフィーは、PEG化PEG6(より早い溶出画分)を未PEG化PEG6(より遅い溶出画分)の大部分から精製する。次にサイズ排除クロマトグラフィーは、PEG化タンパク質(より早い溶出画分)を未PEG化タンパク質(より遅い溶出画分)の残余物から精製する(polish)。
活性に及ぼすPEGサイズの影響。PEGサイズがPEG化の際のFVIIIの凝固および発色活性の双方に影響を有するかどうかを試験するために、精製した完全長FVIII、PEG2、PEG6およびPEG14をTCEPにより還元し、その後還元剤の除去および対照緩衝液または6kDないし64kDの範囲のPEGとの反応と続けた。過剰のPEGまたは未PEG化FVIIIの除去無しで、生じたPEG化FVIIIを直接アッセイした。対照実験は、過剰のPEGがFVIII活性に影響を有さないことを明らかにした。
BDDのPEG2、PEG6またはPEG14位置におけるA2またはA3ドメイン内でのPEG化は、PEGサイズが6kDを超えて増加するとき、凝固活性の劇的な喪失をもたらす。しかしながら、完全長FVIIIの本来のBドメインのシステインにおけるBドメイン内でのPEG化は、凝固活性に何ら影響を及ぼさなかった。興味深いことに発色活性は、すべてのPEG化構築物に関して影響されない。これはアッセイの差異によるのかもしれない。小さな発色性ペプチド基質は、凝固アッセイにおいて使用されるより大きなタンパク質基質よりもPEG化FVII/FIX/FX複合体により容易に近づくことが可能である。あるいはPEGは、突然変異タンパク質の活性に影響し得る。これは二段階の発色アッセイよりも一段階の凝固アッセイによってより容易に検出されるであろう。
PEG2、6および14の凝固活性へのPEGの影響の観測結果を確証するために、いくつかのPEG化構築物を過剰のPEGおよび未PEG化物から精製した。PEGは発色活性に関しいかなる影響もおよぼさないので、凝固活性に対する発色活性の比率は、凝固活性に関するPEGの相対的影響についての良好な評価値である。PEG2等の一定の位置におけるより大きなPEGおよびPEG2+6構築物の場合のような多数のPEGは、凝固活性のより大きな喪失を誘発する。
ウサギPK研究。FVIIIの薬物動態学(PK)に関するPEG化の影響を理解するために、いくつかの種においてPK研究を実施した。研究のためにNZW SPFウサギを使用した:雌10匹、群当たりウサギ5匹、2群(PEG2 FVIIIおよび22kDのPEG化PEG2)。試料を、100 IU/mL(発色単位)の終濃度で滅菌PBSに希釈した。各ウサギに耳介静脈(marginal ear vein)経由で、希釈試験物質の1 ml/kg(100 IU/kg)の用量または対照物質を投与した。注射後の種々の時間に、投与後の所定の時点において血液試料(1ml)を中央耳動脈から1mlの注射器(100μLの3.8%クエン酸ナトリウムを装填)に採取した。投与されたヒトFVIIIを特異的に捕捉するために、血漿試料を96ウェルプレート上に被覆されたR8B12重鎖抗体とインキュベートした。捕捉されたFVIIIの活性を発色アッセイによって測定した。またPEG化PEG2およびPEG化6をBDDと比較したが、PEG化突然変異タンパク質は、BDDと比較して血漿回収率における改善を示した。PEG化野生型完全長FVIIIは、多くの改善を示すように見えなかった。
マウスPK研究。二番目の種として、正常ICRマウスまたは血友病のFVIII欠失ICRマス(Taconic,Hudson,N.Y.)をPK研究において使用した。本研究のために、正常マウスを時点ごとに群当たり5匹使用した。試験材料を処方緩衝液中に、25IU/mLの目標最終濃度まで希釈した。各マウスに尾静脈経由で希釈した試験材料の4mL/kg(総容量約0.1mL)を投与し得る。血液試料(正常または血友病マウスの研究に対し、それぞれ0.45または0.3mL)を、指示時点において下大静脈から1mLの注射器(正常または血友病マウスの研究に対し、それぞれ3.8%クエン酸ナトリウムの50または30μLを装填)中に採取した(試料当たり動物一匹)。血漿試料を上記の発色アッセイを使用して、FVIII濃度についてアッセイする。PEG化PEG6は、BDDまたはPEG6と比較してより高い血漿回収率を示す。PEG化PEG2は、BDDと比較してより高い血漿回収率を示す。
血友病マウス(BDD)第VIII因子回収率。血友病マウス(BDD)第VIII因子回収率のヒストグラムは、血友病マウスアッセイにおけるBDD第VIII因子の二種の半減期の薬物動態学的(PK)評価を示す。このアッセイは、BDD第VIII因子およびBDD第VIII因子のPEG2+6二重PEG化変異体(および本明細書の他の箇所で、BDD第VIII因子のL491C、K1808C二重変異体として同定される)の双方の血漿濃度を、マウスモデルにおける静脈投与後の三時点において測定するように設計された。0.8および4時間の双方の時点におけるPK評価は同等であったが、16時間の評価は特に注目すべきである。16時間において、未PEG化分子と比較して約4倍(400%)の二重PEG化BDD第VIII因子変異体(PEG2+6)が、投与16時間後のマウス血漿中に残存した。
腎裂傷モデル。PEG化FVIII突然変異タンパク質が、血友病マウスにおける出血を止めるうえで有効であるかどうかを究明するために、腎裂傷モデルを用いた。血友病マウス(破壊FVIII遺伝子を有するC57/BL6)をイソフルラン下で麻酔にかけ、秤量した。下大静脈を露出し、生理的食塩水またはFVIIIのいずれかの100ulを、31ゲージ針を使用して注入した。注射針を注意深く抜き取り、出血を防ぐために30〜45秒間注射部位に圧力をかけた。二分後に右腎臓を露出し、鉗子の間で縦軸方向に保持した。#15の解剖用メスを使用して、腎臓を水平に3mmの深さまで切断した。均一な損傷の深さを保証するために、腎臓を中央部で軽く保持し鉗子の両側上に同等の組織を露出した。腎臓の露出した表面を鉗子の深さまで切断した。上記の通り血液喪失を定量した。異なる用量のFVIIIをマウスに試験し、腎臓出血に関するFVIIIの用量応答関係を特性化した。PEG化PEG2は、マウス腎損傷後の血液の喪失の減少においてBDDに匹敵する力価を示す。従ってPEG化PEG2の凝固活性はBDDの該活性よりも低いが、この腎裂傷モデルは、インビボでのPEG化PEG2の効力がBDDと比較して測定できるほどには減少しなかったことを示し、発色アッセイデータと一致した。
抗体阻害アッセイ。ポリエチレングリコール(PEG)等の高分子量ポリマーを特異的に位置491に付加することは(すなわちPEG2)、mAB 413への結合および感受性を減少させるはずであり、多数の患者が同じmAB 413エピトープに対する阻害抗体を発現するので、拡大解釈すると患者の阻害抗体の大部分に対する結合および感受性を減少させるはずである。これを試験するために、量を増加させたmAB 413をBDDまたは43kD PEG化PEG2の非飽和量(0.003 IU/mL)とインキュベートし、発色アッセイにおいて機能的活性の試験をした。非阻害抗体であるR8B12、およびC2ドメインを標的とする阻害酵素であるESH4を対照として使用した。PEG化PEG2は実際に、mAB 413阻害に対しBDDよりも抵抗性があり、位置491の近辺に結合しない対照抗体の存在下において類似の阻害パターンを示す。さらにmAB 413阻害に対するPEGの保護効果は、PEGサイズに依存し、より大きなPEGほどより強力な効果を有する。PEG化FVIIIが患者由来の阻害抗体に対しより抵抗性であるかどうかを試験するために、FVIIIに対する阻害物質を発現した血友病A患者由来の血漿のパネルの存在下で発色活性を測定した。試験した8人の患者血漿の中で、4人の患者血漿において43kD PEG化PEG2は、BDDよりも患者の血漿阻害に対し抵抗性であった。例えば、PEG化PEG2、PEG6またはPEG+6は、一人の患者血漿においてBDDよりも高い残存活性を示したが、他の血漿では示さなかった。ジPEG化PEG2+6は、モノPEG化PEG2またはPEG6よりも抵抗性であると思われる。これらの結果は、PEG化PEG突然変異タンパク質が、FVIIIに対する阻害物質を発現する患者を治療するうえでより効果的であり得ることを示唆する。
高処理PEG化スクリーニング。特定のPEG突然変異タンパク質のPEG化効率は予測不可能であり、それは特にBDDの直接的な構造情報がないからである。例えば、BDDの構造モデルに基づけば、PEG4およびPEG5のPEG化効率は、PEG2およびPEG15の該効率と類似して非常に高いはずだと予想されるであろうが、それはすべての三つの位置は構造によれば表面が露出し外に向かっているからである。従って系統的なPEG化により新規なクリアランス機構を探索するためにPEGを使用することは、多数の突然変異タンパク質をスクリーニングすることを必要とする。
多数のPEG突然変異タンパク質を迅速にスクリーニングするために、一過的に遺伝子導入された突然変異タンパク質由来のPEG化産物のPEG化効率および機能的活性を試験し得る、新規の高処理法が開発された。0.1〜0.2IU/mL位い低いFVIII発色値を有するわずか5〜10mLの一過的に発現されたPEG突然変異タンパク質を、Amicon‐centra Ultra device MWCO 30Kを使用して約50倍に濃縮し、その結果FVIIIの濃度は、抗体のFVIIIに対する相互作用の親和性範囲に近い1nMより上に達する。濃縮されたPEG突然変異タンパク質(約300uL)を約30uLのC7F7 FVIII抗体樹脂と4℃で一晩インキュベートし、洗浄し、溶出し、透析し並びに還元する。還元剤を除去し、還元されたPEG突然変異タンパク質をPEG化し、上記の通りウェスタン分析で移動させる。一過的に発現されたPEG突然変異タンパク質のPEG化相対効率は、精製されたPEG突然変異タンパク質の該効率と厳密に整合する。
この方法によって1ないし2か月内に、数十個のPEG突然変異タンパク質をスクリーニングし得る。例えば、PEG14(K1804C BDD)は、12kDのPEGによる少なくとも約80%の軽鎖のPEG化を有し、重鎖のPEG化は有さず(データ未掲載)、それは軽鎖上に位置するK1804C突然変異と一致した。K1804とK1808(PEG6位置)の間のC.quadrature.からC.quadrature.への距離は、BDD構造に基づくとたった8.4オングストロームであり、この位置における43kDのPEGの導入が、より高PEG化収率の優位性を有する、33kDのPEG化PEG6と類似するPKにおける改善を有することを示唆する。重鎖中にシステインを有するあらゆる突然変異タンパク質が重鎖上のみでPEG化され、一方で軽鎖中にシステインを有するあらゆる突然変異が軽鎖上でPEG化されるという点で、PEG化は、システイン突然変異が導入された特定のFVIII鎖に対して高度に選択的であった。突然変異タンパク質番号2ないし31は、収載された位置における本来のアミノ酸をシステインで置換するBDDのシステイン突然変異を表す。PEG2+6は、位置491および1808がシステインにより置換されたBDDの二重突然変異タンパク質である。A1およびA2、(および完全長FVIIIであるKG‐2に関してはBドメイン)は重鎖に属し、一方、A3、C1およびC2は軽鎖に属する。PEG化産物をSDS PAGE上で移動し、PEG化されたバンドを未PEG化バンドと比較することによってPEG化効率を評価した:+++PEG化収率>約80%、++収率約30〜70%、+収率約10〜30%および収率<約10%。
還元されたPEG突然変異タンパク質の質量分析。PEG突然変異タンパク質または完全長FVIIIの直接的PEG化を妨げる「キャップ」の正体を決定するために、PEG2+14を67uMないし670uMの範囲の濃度のTCEPにより還元した。PEG化の収率は、増加するTCEPの量に比例して増加した。同一の試料をまた、PEG化の前に質量分析法によって分析した。直接的に研究し得るタンパク質ドメインを得るために、試料を20単位/mg FVIIIの比率でトロンビンにより37℃で30分間消化した。トロンビン切断は、残基372ないし740を含み占有されたグリコシル化部位を含まないA2フラグメントを生じる。消化された試料をC4逆相液体クロマトグラフィー系に注入し、カラムからの溶出液をエレクトスプレイインタフェイスにより四重極飛行時間型質量分析装置に直接導入した。タンパク質の無傷の質量値を提供するために、A2ドメインに相当するクロマトグラフィーのピーク下の質量スペクトルを、畳み込みを解いて得た(deconvoluted)。還元の前に、PEG2+14のA2ドメインは、理論的に予測されるよりも118ダルトン大きな質量をもたらす。TCEP濃度が増加するにつれ、A2ドメインの予測された正確な質量を有する新規なピークが出現する。この新規なピークの割合は、TCEP濃度が増加するにつれ増加する。118ダルトンの差異は、シスチン(119Da)とのジスルフィド形成による残基Cys491におけるシステイン化および装置の精度によって説明され得る。従ってこれは、PEG突然変異タンパク質がシステインによってキャッピングされ、それが直接的なPEG化を妨げることを示す。
実施例9
各凝固因子分子に結合するリガンド数定量のためのプロトコル。タカラのDMB標識キットであるシアル酸蛍光標識キット(Cat#4400)を使用するシアル酸含量の定量は、シアロ糖複合体の定量的および高感度分析用である。1,2‐ジアミノ‐4,5‐メチレンオキシベンゼン(DMB)を使用するこのHPLCに基づくシアル酸蛍光標識技術は、簡便で高度に感度の高い定量法である。この方法において遊離シアル酸は、DMBによる標識後に逆相HPLC(ClycosepR、Glyko製、#1‐4727)によって分析される。
実験手順:
1.DBM標識:
試料5〜50μgをエッペンドルフチューブにピペットで取り、高速真空で完全に乾燥し、次にチューブに2M酢酸500ulを添加し、2時間80℃加熱遮断する。反応後に高速真空を使用して、酸処理した試料を完全に乾燥する。
DMB試薬の作成;各反応管はDMB200ulを必要とする。
試薬B 1部 80ul
試薬A 5部 400ul
水 4部 320ul
反応を以下の通り調整する:
酢酸 DMB試薬
試料 10ul 190ul
ブランク 10ul 190ul
標準(100uM) 10ul 10ul 180ul
(注:2M酢酸の作成:114ulをHPLC水中で最終1mlにする)
十分に混合し、2.5時間50℃加熱遮断する。
等量のHPLC用氷水(すなわちH2O 200ul)を添加して反応を停止させ、エッペンドルフチューブを氷上に置いて反応を終了させる。同日にHPLCを実施する。
2.HPLC分析:アイソクラティック
カラム:Glyko製GlycoSepR、Cat#1‐4727
溶媒:アセトニトリル/メタノール/水=9/7/84
流速:1ml/分
検出:蛍光検出器:Ex 310nm、Em 448nm
DMB標識シアル酸のピークは、通常6〜7分において現れる。シアル酸を定量するために、試料のピーク面積を標準のシアル酸のピーク面積と比較した。
本明細書で用いるセクションの表題は、構成の目的だけのためであり、決して記載事項を制限するものと解釈されてはならない。
本教示が種々の実施形態と共に記載されるとはいえ、本教示がこのような実施形態に制限されることを意図するものではない。対照的に本教示は、当業者によって了解される通り種々の代替物、改善物および同等物を包含する。