I.概要
植物形質転換プロセスの最初の段階でダイズ生殖系列形質転換体をスクリーニングし、検出するための方法が、本明細書において開示される。開示された方法は、ダイズ生殖系列形質転換体の迅速同定および特性決定のために設計されている。手短には、シュート組織をメンブレンと接触させ、メンブレンをアッセイして植物材料内の導入遺伝子の位置を決定することによって、導入遺伝子を含む形質転換されたダイズ植物シュート組織の分析を完了する。ダイズ生殖系列形質転換体は、ダイズシュートのコア(L2およびL3)層内の導入遺伝子を発現するものとして同定される。発達中のダイズ分裂組織の概略図は、図4に示されている。同定されたダイズ生殖系列形質転換体を選択し、成熟ダイズ植物体に栽培する。その他のダイズ非生殖系列形質転換体を、早期段階で形質転換プロセスから選別除去する。そのようなものとして、ダイズ植物形質転換体は、分析され、スクリーニングされて、生殖系列組織内に挿入されたドナーDNAポリヌクレオチドを有する特定の形質転換体が同定および選択され得る。
開示された方法は、ダイズ生殖系列形質転換体を同定し、選択するために開発されてきた、他の既知方法を上回る大幅な改善である。米国特許第5,503,998号、同5,830,728号および同5,989,915号を参照のこと。これらのこれまでのスクリーニング法は、実際の茎の組織化学的アッセイを使用する微粒子銃形質転換および選択に適用可能であった。任意の既知形質転換プロトコールを使用して作製されたダイズ形質転換体のスクリーニングに利用され得る、形質転換されたダイズ組織を化学的染色に付す必要のない方法の開発は、その方法が形質転換プロセスの効率を改善し得るので高度に望ましい。このような方法が、本願において開示される。
II.用語
他に定義されない限り、本明細書において使用されるすべての技術用語および科学用語は、本開示が関連する技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同一の意味を有する。矛盾する場合には、定義を含む本願が支配する。文脈によって必要とされない限り、単数形の用語は、複数形を含むものとし、複数形の用語は、単数形を含む。
本開示をさらに明確にするために、以下の用語、略語および定義が提供される。
本明細書において、用語「含む(comprises)」、「含んでいる(comprising)」、「含む(includes)」、「含んでいる(including)」、「有する(has)」、「有している(having)」、「含有する(contains)」または「含有している(containing)」およびそれらの任意の他の変形は、非排他的である、または制約がないものとする。例えば、要素のリストを含む組成物、混合物、プロセス、方法、項目または装置は、必ずしもそれらの要素のみに限定されず、明確に列挙されていないか、またはこのような組成物、混合物、プロセス、方法、項目または装置に特有ではないその他の要素を含み得る。さらに、反対に明確に記載されない限り、「または」とは、包含的なまたはを指し、排他的なまたはを指さない。例えば、条件AまたはBは、以下のいずれによっても満たされる:Aが真であり(または存在し)、Bは偽である(または存在しない)、Aが偽であり(または存在しない)、Bは真である(または存在する)、ならびにAおよびBの両方とも真である(または存在する)。
また、本開示の実施形態の要素または成分に先行する不定冠詞「a(1つの)」および「an(1つの)」は、要素または成分の例(すなわち、出現)の数に関して非制限的であるものとする。したがって、「a(1つの)」または「an(1つの)」は、1つまたは少なくとも1つを含むと読み取られなくてはならず、要素または成分の単数形の語形はまた、数が単数形であると明白に意図されない限り複数形を含む。
用語「発明」または「本発明」は、本明細書において、非制限的用語であり、特定の発明のいずれか単一の実施形態を指すものではなく、本願において開示されるようなすべての可能性ある実施形態を包含する。
本明細書において使用される場合、用語「植物」は、全植物体および植物の任意の子孫、細胞、組織または一部を含む。用語「植物の部分」は、例えば、限定するものではないが:種子(成熟種子および未熟種子を含む);植物を切り取ったもの;植物細胞;植物細胞培養物;植物器官(例えば、花粉、胚、花、果実、シュート、葉、根、茎および外植片)を含めた植物の任意の部分(複数可)を含む。植物組織または植物器官は、種子、プロトプラスト、カルスまたは構造的もしくは機能的単位に組織されている植物細胞の任意のその他の群であり得る。植物細胞または組織培養物は、細胞または組織が得られた植物の生理学的および形態学的特徴を有する植物を再生できるもの、またその植物と実質的に同一の遺伝子型を有する植物を再生できるものであり得る。対照的に、一部の植物細胞は、植物体を生成するよう再生され得ない。植物細胞または組織培養物中の再生可能な細胞は、胚、プロトプラスト、成長点細胞、カルス、花粉、葉、葯、根、根端、トウモロコシの毛、花、穀粒、穂、トウモロコシの穂軸、外皮または柄であり得る。
植物の部分は、後代植物の増殖に有用な収穫可能な部分(単数または複数)を含む。増殖に有用な植物の部分として、例えば、限定するものではないが、種子、果実、切り取ったもの、実生、塊茎および台木が挙げられる。植物の収穫可能な部分は、例えば、限定するものではないが、花、花粉、実生、塊茎、葉、茎、果実、種子および根を含めた植物の任意の有用な部分であり得る。
植物細胞は、植物の構造的および生理学的単位であり、プロトプラストおよび細胞壁を含む。植物細胞は、単離された単細胞または細胞の凝集体(例えば、もろいカルスおよび培養細胞)の形態であり得、また、高度に組織化された単位(例えば、植物組織、植物器官および植物体)の一部であり得る。したがって、植物細胞は、全植物体に再生できるプロトプラスト、生殖体生成細胞、または細胞もしくは細胞の集合であり得る。そのようなものとして、複数の植物細胞を含み、全植物体に再生できる種子が、本明細書における実施形態において「植物細胞」と考えられる。
単離された:「単離された」生物学的成分(核酸またはポリペプチドなど)は、成分が天然に生じる生物の細胞中のその他の生物学的成分(すなわち、その他の染色体および染色体外DNAおよびRNAおよびタンパク質)と、成分において化学的または機能的変更を達成しながら、実質的に分離しているか、それから離れて製造されているか、またはそれから離れて精製されている(例えば、核酸は、核酸を染色体中の残りのDNAと接続している化学結合を破壊することによって、染色体から単離され得る)。「単離されている」核酸分子およびタンパク質として、標準精製方法によって精製された核酸分子およびタンパク質が挙げられる。この用語はまた、宿主細胞において組換え発現によって調製された核酸およびタンパクならびに化学的に合成された核酸分子、タンパク質およびペプチドを包含する。
核酸:用語「ポリヌクレオチド」、「核酸」および「核酸分子」は、本明細書において同義的に使用され、単数形の核酸、複数形の核酸、核酸断片、その変異体または誘導体および核酸構築物(例えば、メッセンジャーRNA(mRNA)およびプラスミドDNA(pDNA))を包含する。ポリヌクレオチドまたは核酸は、非翻訳5’および/または3’配列およびコード配列(複数可)を含む全長cDNA配列またはその断片のヌクレオチド配列を含有し得る。ポリヌクレオチドまたは核酸は、非修飾リボヌクレオチドもしくはデオキシリボヌクレオチドまたは修飾リボヌクレオチドもしくはデオキシリボヌクレオチドを含み得る、任意のポリリボヌクレオチドまたはポリデオキシリボヌクレオチドからなり得る。例えば、ポリヌクレオチドまたは核酸は、一本鎖および二本鎖DNA、一本鎖および二本鎖領域の混合物であるDNA、一本鎖および二本鎖RNA、一本鎖および二本鎖領域の混合物であるRNAからなり得る。DNAおよびRNAを含むハイブリッド分子は、一本鎖、二本鎖または一本鎖および二本鎖領域の混合物であり得る。前記の用語はまた、ポリヌクレオチドまたは核酸の、化学的に、酵素によって、または代謝によって修飾された形態も含む。
特定のDNAとは、配列が、デオキシリボヌクレオチド塩基対合のルールに従って決定されるその相補体も指すと理解される。
本明細書において使用される場合、用語「遺伝子」とは、機能的生成物(RNAまたはポリペプチド/タンパク質)をコードする核酸を指す。遺伝子は、機能的生成物をコードする配列に先行する調節配列(5’非コード配列)、および/またはそれに続く調節配列(3’非コード配列)を含み得る。
本明細書において使用される場合、用語「コード配列」とは、特定のアミノ酸配列をコードする核酸配列を指す。「調節配列」とは、関連するコード配列の転写、RNAプロセシングまたは安定性または翻訳に影響を及ぼす、コード配列の上流に(例えば、5’非コード配列)、その中に、または下流に(例えば、3’非コード配列)位置するヌクレオチド配列を指す。調節配列として、例えば、限定するものではないが、プロモーター、翻訳リーダー配列、イントロン、ポリアデニル化認識配列、RNAプロセシング部位、エフェクター結合部位およびステム−ループ構造が挙げられる。
ハイブリダイゼーション:ヌクレオチド配列のすべてまたは一部を含む核酸が、プローブ配列に対して相当な量の配列同一性を有する、クローニングされたゲノムDNA断片またはcDNA断片の集団(例えば、選択された生物から得られたゲノムまたはcDNAライブラリー)中に存在するヌクレオチド配列と選択的に「ハイブリダイズする」プローブとして使用され得る。ハイブリダイゼーションプローブは、ゲノムDNA断片、プラスミドDNA断片、cDNA断片、RNA断片、PCR増幅されたDNA断片、オリゴヌクレオチドまたはその他のポリヌクレオチドであり得、プローブは、検出可能な基(例えば、32P)または任意のその他の検出可能なマーカーで標識され得る。したがって、例えば、限定するものではないが、ハイブリダイゼーションのためのプローブは、本明細書における核酸(例えば、配列番号1に対して少なくとも約90%の同一性を有する核酸)と特異的にハイブリダイズする合成オリゴヌクレオチドを標識することによって作製され得る。ハイブリダイゼーションのプローブを調製する方法およびcDNAおよびゲノムライブラリーを構築する方法は、当技術分野で公知である。Sambrook et al. (1989) 、Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Second Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY。核酸のハイブリダイゼーションに対する広範なガイドが、Sambrook et al. (1989)、前掲;およびAusubel et al. (1997) 、Short Protocols in Molecular Biology, Third Edition, Wiley, NY, New York, pp. 2-40に見出される。
本明細書において使用される場合、用語「ポリペプチド」は、単数形のポリペプチド、複数形のポリペプチドおよびその断片を含む。この用語は、アミド結合(ペプチド結合としても知られる)によって直線的に連結しているモノマー(アミノ酸)からなる分子を指す。用語「ポリペプチド」とは、2個以上のアミノ酸の任意の鎖(単数または複数)を指すものであって、特定の長さまたは大きさの生成物を指すものではない。したがって、ペプチド、ジペプチド、トリペプチド、オリゴペプチド、タンパク質、アミノ酸鎖および2個以上のアミノ酸の鎖を指すために使用される任意のその他の用語が、「ポリペプチド」の定義内に含まれ、前記の用語は、本明細書において「ポリペプチド」と同義的に使用される。ポリペプチドは、天然の生物学的供給源から単離されても、組換え技術によって製造されてもよいが、特定のポリペプチドは、必ずしも特定の核酸から翻訳されない。ポリペプチドは、例えば、限定するものではないが、化学物質合成によって、任意の適した方法で作製され得る。
内因性および異種性:本明細書において使用される場合、用語「天然」とは、存在する場合には、その自身の調節配列とともに天然に見られるポリヌクレオチド、遺伝子またはポリペプチドの形態を指す。用語「内因性」とは、生物においてその天然の位置に、または生物のゲノム中にあるポリヌクレオチド、遺伝子またはポリペプチドの天然形態を指す。
対照的に、用語「異種性」とは、参照(宿主)生物においてその位置に普通は見られないポリヌクレオチド、遺伝子またはポリペプチドを指す。例えば、異種核酸は、異なるゲノム位置で参照生物において普通見られる核酸であり得る。さらなる例として、異種核酸は、参照生物において普通見られない核酸であり得る。異種ポリヌクレオチド、遺伝子またはポリペプチドを含む宿主生物は、異種ポリヌクレオチド、遺伝子またはポリペプチドを、宿主生物に導入することによって製造され得る。特定の例では、異種ポリヌクレオチドは、対応する天然ポリヌクレオチドとは異なる形態で、供給源生物中に再導入される天然コード配列またはその一部を含む。特定の例では、異種遺伝子は、対応する天然遺伝子とは異なる形態で供給源生物中に再導入される天然コード配列またはその一部を含む。例えば、異種遺伝子は、天然宿主中に再導入される非天然調節領域を含むキメラ遺伝子の一部である天然コード配列を含み得る。特定の例では、異種ポリペプチドは、対応する天然ポリペプチドとは異なる形態で供給源生物中に再導入される天然ポリペプチドである。
異種遺伝子またはポリペプチドは、キメラもしくは融合ポリペプチドまたはそれをコードする遺伝子を生成するよう、別の遺伝子もしくはポリペプチドと融合している、機能的ポリペプチドまたは機能的ポリペプチドをコードする核酸配列を含む遺伝子またはポリペプチドであり得る。特定の実施形態の遺伝子およびタンパク質は、具体的に例示された全長配列およびこれらの配列の部分、セグメント、断片(連続断片および全長分子と比較して内部および/または末端欠失を含む)、変異体、突然変異体、キメラおよび融合物を含む。
修飾:本明細書において使用される場合、用語「修飾」は、参照ポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドの低減された、実質的に排除された、または排除された活性をもたらす特定の参照ポリヌクレオチドにおける変化を指し得る。修飾はまた、参照ポリペプチドの低減された、実質的に排除された、または排除された活性をもたらす参照ポリペプチドにおける変化も指し得る。あるいは、用語「修飾」は、参照ポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドの増大または増強された活性をもたらす参照ポリヌクレオチドにおける変化ならびに参照ポリペプチドの増大または増強された活性をもたらす参照ポリペプチドにおける変化を指し得る。前記のものなどの変化は、例えば、限定するものではないが、参照分子の一部を欠失すること、参照分子を突然変異させること(例えば、自発性突然変異誘発によって、ランダム突然変異誘発によって、変異誘発遺伝子によって引き起こされる変異原性によって、トランスポゾン突然変異誘発によって)、参照分子の一部を置換すること、参照分子中に要素を挿入すること、参照分子の発現を下方制御すること、参照分子の細胞位置を変更すること、参照分子の状態を変更すること(例えば、参照ポリヌクレオチドのメチル化によって、および参照ポリペプチドのリン酸化またはユビキチン化によって)、参照分子の補因子を除去すること、参照分子をターゲッティングするアンチセンスRNA/DNAの導入、参照分子をターゲッティングする干渉RNA/DNAの導入、参照分子の化学物質修飾、参照分子の共有結合修飾、UV照射またはX線を用いる参照分子の照射、参照分子を変更する相同組換え、参照分子を変更する有糸分裂組換え、参照分子のプロモーターの置換および/または前記のいずれかの組み合わせを含めた、当技術分野で周知のいくつかの方法のいずれかによって行われ得る。
特定の例において、どのヌクレオチドまたはアミノ酸残基が修飾され得るかを決定することにおける指針は、参照ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの配列を、相同(例えば、相同酵母または細菌)ポリヌクレオチドまたはポリペプチドのものと比較することおよび高相同性の領域(保存された領域)またはコンセンサス配列において行われる修飾の数を最大化することによって見出され得る。
プロモーター:用語「プロモーター」とは、核酸コード配列または機能的RNAの発現を制御できるDNA配列を指す。複数の例では、制御されるコード配列は、プロモーター配列の3’に位置する。プロモーターは、全体として、天然遺伝子に由来し得るか、プロモーターは、天然に見られる異なるプロモーターに由来する異なる要素からなり得るかまたはプロモーターは、合成DNAセグメントをさらに含み得る。異なるプロモーターは、異なる組織または細胞種における、または異なる発達段階での、または異なる環境条件もしくは生理学的条件に応じた遺伝子の発現に向けることができるということは当業者によって理解される。前記のプロモーターのすべての例は、当技術分野で公知であり、異種核酸の発現を制御するために使用される。ほとんどの時点でのほとんどの細胞種における遺伝子の発現に向けるプロモーターは、一般に「構成的プロモーター」と呼ばれる。さらに、当業者は、調節配列の正確な境界を描写しようと試みており(多くの場合には、不成功に)、種々の長さのDNA断片が、同一のプロモーター活性を有し得るということが理解されるようになった。特定の核酸のプロモーター活性は、当業者に精通している技術を使用してアッセイされ得る。
作動可能に連結された:用語「作動可能に連結された」とは、一方の核酸配列の機能が別のものによって影響を受ける、単一の核酸での核酸配列の結合を指す。例えば、プロモーターは、プロモーターが、そのコード配列の発現を達成できる(例えば、コード配列が、プロモーターの転写制御下にある)場合に、コード配列と作動可能に連結される。コード配列は、センスまたはアンチセンス方向で調節配列と作動可能に連結され得る。
発現:用語「発現」は、本明細書において使用される場合、DNAに由来するセンス(mRNA)またはアンチセンスRNAの転写および安定な蓄積を指し得る。発現はまた、mRNAのポリペプチドへの翻訳も指し得る。本明細書において使用される場合、用語「過剰発現」とは、同一遺伝子または関連遺伝子の内因性発現よりも高い発現を指す。したがって、異種遺伝子は、その発現が、匹敵する内因性遺伝子のものよりも高い場合に「過剰発現」される。
形質転換:本明細書において使用される場合、用語「形質転換」とは、遺伝的に安定な継承をもたらす、宿主生物への核酸またはその断片転移および組込みを指す。形質転換核酸を含有する宿主生物は、「トランスジェニック」、「組換え」または「形質転換された」生物と呼ばれる。形質転換の既知方法として、例えば、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)またはA.リゾゲネス(A. rhizogenes)媒介性形質転換、リン酸カルシウム形質転換、ポリブレン形質転換、プロトプラスト融合、エレクトロポレーション、超音波法(例えば、ソノポレーション)、リポソーム形質転換、マイクロインジェクション、裸のDNAを用いる形質転換、プラスミドベクターを用いる形質転換、ウイルスベクターを用いる形質転換、微粒子銃形質転換(微粒子銃)、シリコンカーバイドWHISKERS媒介性形質転換、エアゾールビーミングおよびPEG媒介性形質転換が挙げられる。
導入された:本明細書において使用される場合、用語「導入された」(細胞へ核酸を導入することとの関連で)は、細胞の形質転換ならびに従来の植物育種技術を利用して実施され得るような、第2の植物が核酸を含有するよう、核酸を含む植物を、第2の植物を交配することを含む。このような育種技術は、当技術分野で公知である。植物育種技術の考察については、Poehlman (1995) 、Breeding Field Crops, 4thEdition, AVI Publication Co., Westport CTを参照のこと。
戻し交配法を使用して、植物に核酸を導入してもよい。この技術は、植物に形質を導入するために数十年使用されてきた。戻し交配(およびその他の植物育種方法論)の説明の一例は、例えば、Poelman (1995)、前掲;およびJensen (1988) 、Plamt Breeding Methodology, Wiley, New York, NYに見出すことができる。例示的戻し交雑プロトコールでは、対象とする元の植物(「反復親」)を、導入されるべき核酸を保持する第2の植物(「非反復親」)と交配する。この交配種から得られた後代を、次いで、反復親と再度交配し、変換された植物が得られるまでこのプロセスを反復し、これでは、非反復親から得られた核酸に加えて、反復親の所望の形態学的および生理学的特徴の本質的にすべてが、変換された植物中において回収される。
プラスミド/ベクター:用語「プラスミド」および「ベクター」とは、本明細書において、細胞の中央代謝の一部ではない1種または複数の遺伝子を保持し得る染色体外要素を指す。プラスミドおよびベクターは、通常、環状二本鎖DNA分子である。しかし、プラスミドおよびベクターは、一本鎖または二本鎖DNAまたはRNAの直鎖または環状核酸である場合もあり、任意の供給源に由来し得、これでは、いくつかのヌクレオチド配列が、任意の適当な3’非翻訳配列とともにプロモーター断片およびコーディングDNA配列を細胞に導入できる独特の構造に結合または組み換えられている。複数の例では、プラスミドおよびベクターは、自立複製配列、ゲノム組込み配列および/またはファージまたはヌクレオチド配列を含み得る。
ポリペプチドおよび「タンパク質」は、本明細書において同義的に使用され、ペプチド結合によって連結された2個以上のアミノ酸の分子鎖を含む。この用語は、特定の長さの生成物を指すものではない。したがって、「ペプチド」および「オリゴペプチド」は、ポリペプチドの定義内に含まれる。この用語は、ポリペプチドの翻訳後修飾、例えば、グリコシル化、アセチル化、リン酸化などを含む。さらに、タンパク質断片、類似体、突然変異したタンパク質または変異体タンパク質、融合タンパク質などが、ポリペプチドの意味内に含まれる。この用語はまた、既知タンパク質工学技術を使用して合成され得るか、または組換え発現され得るように1種もしくは複数のアミノ酸類似体または非標準または非天然アミノ酸が含まれる分子も含む。さらに、本発明の融合タンパク質は、周知の有機化学技術によって本明細書において記載されるように誘導され得る。
用語「融合タンパク質」は、タンパク質が、2種以上の親タンパク質またはポリペプチドに由来するポリペプチド成分を含むことを示す。通常、融合タンパク質は、1種のタンパク質に由来するポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列が、異なるタンパク質に由来するポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列と、任意選択で、リンカーによって分けられてインフレームで付加される融合遺伝子から発現される。次いで、融合遺伝子は、組換え宿主細胞によって、単一タンパク質として発現され得る。
III.ダイズ組織および部分
いくつかの実施形態では、導入遺伝子を含むダイズ植物組織が提供される。いくつかの実施形態は、シュートまたはシュートから転写された植物材料を含むダイズ植物組織を含む。さらなる実施形態では、ダイズ植物組織は、コアまたはマントル組織を含む。さらなる実施形態では、ダイズ植物組織は、成長点ダイズ植物組織、表層ダイズ植物組織、基本ダイズ植物組織および維管束ダイズ植物組織からなる群から選択される。
植物細胞、植物の一部および/または植物体は、当技術分野で公知のいくつかの形質転換法のうちいずれかによって、異種ポリペプチドおよび/または異種核酸を含むように導入遺伝子を用いて形質転換され得る。本明細書における特定の実施形態では、導入遺伝子は、例えば、制限するものではないが、形質転換および選択的育種(例えば、戻し交雑育種)から選択される方法によって、植物細胞、植物の一部および/または植物体中に導入される。
植物細胞は、成長点組織、表層組織、基本組織または維管束組織として分類され得る植物組織を形成する。一実施形態では、導入遺伝子を用いて形質転換されるダイズ植物組織は、成長点ダイズ植物組織、表層植物組織、基本植物組織または維管束ダイズ植物組織を含み得る。成長点および維管束植物組織を含むコア組織(L2およびL3層)の形質転換のための導入遺伝子の使用は、ダイズ生殖系列組織の形質転換をもたらす。基本および表層植物組織を含むマントル組織(L1層)の形質転換のための導入遺伝子の使用は、ダイズ非生殖系列組織の形質転換をもたらす。
成長点組織は、頂端分裂組織、一次分裂組織または側部分裂組織を含む。これらの未分化組織は、新規細胞の分裂を経て、これらは植物組織の成長または修復のために使用され、活発に分裂する細胞の領域として特性決定される。細胞分裂は成長点組織においてのみ起こる。茎頂に局在する頂端分裂組織は、シュート伸長に直接関与している。維管束分裂組織などの側部分裂組織は、内部成長に関与し、これらの細胞は確立された植物茎を取り囲み、それらを側面方向に成長させる。
維管束組織は、柔組織細胞、厚壁組織細胞、線維細胞および輸送に関与しているその他の細胞(すなわち、導管、仮導管、木部または師部)からなる分化した細胞の混合物である。これらの種類の細胞は、水および栄養素などの流体を植物細胞内で内部的に輸送する。
表層および基本組織は、柔組織細胞、厚壁組織細胞および厚角組織細胞で構成されている非成長点組織(非分裂組織)である。表層組織は、植物の葉、根、茎、果実または種子の最外細胞層を含む。基本組織は、柔組織細胞、厚壁組織細胞、緑色組織および厚角組織細胞で構成されている単純な非成長点組織である。これらの細胞型は、一般に、茎の髄および皮層を形成する。
一実施形態では、本開示は、導入遺伝子を含むダイズ生殖系列形質転換体を同定する方法を記載する。好ましい実施形態では、ダイズ植物組織は、修飾された半粒種子外植片のアグロバクテリウム媒介法(M. Paz, et al. (2005), Plant Cell Rep., 25: 206-213)によってまたは子葉節形質転換法(P. Zeng, et al. (2004), Plant Cell Rep., 22(7): 478-482)によって形質転換される。いずれかの方法を使用して、導入遺伝子は、外側マントル組織(L1層)を含むダイズ植物組織に送達されるか、またはコア組織(L2およびL3層)などの植物内深くに局在する下層組織に送達される。マントル組織(L1層)は分裂して、非生殖系列細胞を含む表皮および基本組織を形成する。コア組織は、分裂して、生殖系列細胞を含む成長点および維管束組織を形成する。形質転換された生殖系列細胞を有するトランスジェニック事象のみが、導入遺伝子を次の世代に継承できる。ダイズシュートのL1、L2およびL3層の組織を示すために、ダイズシュート頂端分裂組織の中央垂直切片が、図4として例示されている。
任意のダイズ植物細胞は、導入遺伝子を含むように遺伝子改変され得る。いくつかの実施形態では、そのように遺伝子改変される植物細胞は、植物体を生成するように再生できない(すなわち、非生殖系列形質転換体)。いくつかの実施形態では、本開示に従って遺伝子改変された植物は、トランスジェニック植物体を生成するように再生できる(すなわち、生殖系列形質転換体)。
ダイズ植物細胞中に導入された核酸は、ダイズに所望の農業形質を付与するように使用され得る。様々なダイズ植物および植物細胞系が、核酸および種々の形質転換法を使用して、本明細書に記載される所望の生理学的および農学的特徴のために操作され得る。本明細書における実施形態は、当技術分野で公知である植物の形質転換(および遺伝的に修飾された植物の製造)のために多数の方法のいずれかを使用し得る。双子葉植物および単子葉植物のための植物形質転換のために、生物学的および物理的形質転換プロトコールを含めた多数の方法が開発されている(例えば、Goto-Fumiyuki et al. (1999)、Nat. Biotechnol. 17:282-6;Miki et al. (1993)、Methods in Plant Molecular Biology and Biotechnology (B.R. Glick and J.E. Thompson、Eds.), CRC Press, Inc., Boca Raton, FL, pp. 67-88)。さらに、細胞および組織形質転換および植物体の再生のためのベクターおよびin vitro培養方法は、例えば、Gruber et al. (1993)、前掲中、pp.89-119に記載されている。
核酸を植物宿主細胞中に導入するために利用可能な植物形質転換方法として、例えば、限定するものではないが、形質転換剤としてアグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)またはA.リゾゲネス(rhizogenes)を使用する武装解除したT−DNAを用いる形質転換;リン酸カルシウムトランスフェクション;ポリブレン形質転換;プロトプラスト融合;エレクトロポレーション(D'Halluin et al. (1992)、Plant Cell 4:1495-505);超音波法(例えば、ソノポレーション);リポソーム形質転換;マイクロインジェクション;裸のDNAとの接触;プラスミドベクターとの接触;ウイルスベクターとの接触;微粒子銃(例えば、DNA粒子銃(例えば、Klein et al. (1987)、Nature 327:70-3)および微粒子銃(Sanford et al. (1987)、Part. Sci. Technol. 5:27; Sanford (1988)、Trends Biotech. 6:299、Sanford (1990)、Physiol. Plant 79:206;およびKlein et al. (1992)、Biotechnology 10:268);シリコンカーバイドWHISKERS(商標)媒介性形質転換(Kaeppler et al. (1990)、Plant Cell Rep. 9:415-8);ナノ粒子形質転換(例えば、米国特許公開US2009/0104700A1);エアゾールビーミング;およびポリエチレングリコール(PEG)媒介性取り込みが挙げられる。特定の実施例では、導入遺伝子は、これまでに記載された形質転換プロトコールのうち1種によってダイズ植物細胞のゲノムDNA中に直接的に導入され得る。
導入遺伝子を含む遺伝子発現カセットを、植物中に導入するために広く利用される方法は、アグロバクテリウムの天然の形質転換系に基づいている。Horsch et al. (1985), Science 227:1229。A.ツメファシエンス(tumefaciens)およびA.リゾゲネス(rhizogenes)は、植物細胞を遺伝的に形質転換するために有用であることがわかっている植物病原性土壌菌である。A.ツメファシエンス(A. tumefaciens)およびA.リゾゲネス(A. rhizogenes)のTiおよびRiプラスミドは、それぞれ、植物の遺伝子形質転換に関与する遺伝子を保持する。Kado (1991)、Crit. Rev. Plant. Sci. 10:1。アグロバクテリウムベクター系およびアグロバクテリウム媒介性遺伝子導入のための方法に関する詳細はまた、例えば、Gruber et al., 前掲、Miki et al., 前掲、Moloney et al. (1989)、Plant Cell Reports 8:238および米国特許第4,940,838号および同5,464,763号において入手可能である。
形質転換にアグロバクテリウムが使用される場合には、挿入されるべきDNAは、通常、特定のプラスミドに、中間体ベクターまたはバイナリーベクターのいずれかにクローニングされる。中間体ベクターは、アグロバクテリウム中では自身で複製できない。中間体ベクターは、ヘルパープラスミド(コンジュゲーション)によってA.ツメファシエンス(A.tumefaciens)中に転移され得る。日本たばこスーパーバイナリー系は、このような系の一例である(Komari et al. (2006)、Methods in Molecular Biology (K. Wang、ed.) No. 343; Agrobacterium Protocols, 2nd Edition, Vol. 1,Humana Press Inc., Totowa, NJ, pp.15-41;およびKomori et al. (2007)、Plant Physiol. 145:1155-60に総説されている)。バイナリーベクターは、大腸菌(e. coli)およびアグロバクテリウムの両方において自身を複製できる。バイナリーベクターは、右および左のT−DNA境界領域によって囲まれている、選択マーカー遺伝子およびリンカーまたはポリリンカーを含む。それらは、アグロバクテリウム中に直接、形質転換され得る(Holsters、1978)。アグロバクテリウムは、vir領域を保持するプラスミドを含む。TiまたはRiプラスミドはまた、T−DNAの転移に必要なvir領域を含む。vir領域は、T−DNAの、植物細胞への転移にとって必要である。さらなるT−DNAが含有される場合もある。
アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)宿主の病原性機能は、細胞が、バイナリーT DNAベクター(Bevan (1984)、Nuc. Acid Res. 12:8711-21)または同時培養手順(Horsch et al. (1985)、Science 227:1229-31)を使用して細菌に感染すると、遺伝子発現カセットおよび隣接するマーカーを含有するT−鎖の、植物細胞DNAへの挿入を指示する。一般に、アグロバクテリウム形質転換系は、双子葉植物を操作するために使用される。Bevan et al. (1982)、Ann. Rev. Genet. 16:357-84;Rogers et al. (1986)、Methods Enzymol. 118:627-41。アグロバクテリウム形質転換系はまた、単子葉植物および植物細胞を形質転換するため、ならびに単子葉植物および植物細胞に核酸を転移するために使用され得る。米国特許第5,591,616号;Hernalsteen et al. (1984)、EMBO J 3:3039-41;Hooykass-Van Slogteren et al. (1984)、Nature 311:763-4; Grimsley et al. (1987)、Nature 325:1677-9;Boulton et al. (1989)、Plant Mol. Biol. 12:31-40;およびGould et al. (1991)、Plant Physiol. 95:426-34を参照のこと。
本明細書における組換え宿主の遺伝子操作は、標準組換えDNA技術およびスクリーニングを使用して実施され得、遺伝子操作に適している任意の宿主細胞において実施され得る。いくつかの実施形態では、組換え宿主細胞は、遺伝子改変および/または組換え遺伝子発現に適した任意のダイズ植物または品種であり得る。いくつかの実施形態では、組換え宿主は、ダイズ生殖系列形質転換体植物であり得る。本明細書において使用される標準組換えDNAおよび分子クローニング技術は、当技術分野で周知であり、例えば、限定するものではないが、Sambrook et al. (1989)、前掲;Silhavy et al. (1984)、Experiments with Gene Fusions, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY;およびAusubel et al. (1987)、Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing Assoc. and Wiley-Interscience, New York, NYに記載されている。
形質転換法は、トランスジェニック植物をもたらす。本開示は、ダイズ生殖系列形質転換体、特に、コア組織(L2およびL3)に由来する形質転換体を含む特定のトランスジェニック植物を同定するために利用され得る。特に、本発明によって提供される形質転換法によって製造されるダイズ生殖系列形質転換体は、その後の世代に伝達され得る。
導入遺伝子のダイズ植物細胞への導入後に、植物細胞を成長させてもよく、シュートおよび根などの組織の分化が出現すると、成熟した植物が生成され得る。いくつかの実施形態では、複数のダイズ植物が生成され得る。植物を再生するための方法論は、当業者に公知であり、例えば、Plant Cell and Tissue Culture, 1994, Vasil and Thorpe Eds. Kluwer Academic Publishersにおいて、およびPlant Cell Culture Protocols (Methods in Molecular Biology 111, 1999 Hall Eds Humana Press)において見出すことができる。一般に、本明細書において記載される修飾されたダイズ植物は、発酵培地において培養し、土壌などの適した培地において成長させてもよい。いくつかの実施形態では、高等植物の適した成長培地は、それだけには限らないが、土壌、砂、根成長または水耕培養を支持する任意のその他の粒状培地(例えば、バーミキュライト、パーライトなど)ならびに高等植物の成長を促進する適した光、水および栄養補助物質を含めた、植物のための任意の成長培地であり得る。
上記の形質転換技術のいずれかによって製造される形質転換されたダイズ植物細胞を、培養して、形質転換された遺伝子型、ひいては、所望の表現型を有する成熟ダイズ植物体を再生できる。このような再生技術は、組織培養成長培地中の特定の植物ホルモンの操作に頼るものであり、通常、所望のヌクレオチド配列と一緒に導入されている殺生物剤および/または除草剤マーカーに頼る。培養されたプロトプラストからの植物再生は、Evans, et al., "Protoplast Isolation and Culture" in Handbook of Plant Cell Culture, pp. 124-176, Macmillian Publishing Company, New York, 1983;およびBinding, Regeneration of Plants, Plant Protoplasts, pp. 21-73, CRC Press, Boca Raton, 1985に記載されている。再生はまた、植物カルス、外植片、器官、花粉、胚またはその一部からも得られ得る。このような再生技術は、Klee et al. (1987) Ann. Rev. of Plant Phys. 38:467-486に全般的に記載されている。
その他の実施形態では、形質転換されるダイズ植物細胞は、成熟ダイズ植物体を生成するように再生できない。このような形質転換されたダイズ植物細胞は、非生殖系列ダイズ形質転換体である。
形質転換されたダイズ植物細胞、カルス、組織または植物は、操作された植物材料を、形質転換DNA上に存在するマーカー遺伝子によってコードされる形質について選択またはスクリーニングすることによって同定および単離され得る。例えば、選択は、形質転換遺伝子構築物がそれに対する抵抗性を付与する抗生物質または除草剤の阻害量を含有する培地で、操作された植物材料を成長させることによって実施され得る。さらに、形質転換された植物および植物細胞はまた、組換え核酸構築物上に存在し得る、任意の目に見えるマーカー遺伝子(例えば、ベータ−グルクロニダーゼ、ルシフェラーゼまたはgfp遺伝子)の活性についてスクリーニングすることによって同定され得る。このような選択およびスクリーニング方法論は、当業者には周知である。
本明細書における異種分子を含有するトランスジェニックダイズ植物は、選択育種によって、例えば、分子を含む第1の親植物および第2の親植物を、雌雄を掛け合わせ、それによって、複数の第1の後代植物を製造することによって製造され得る。次いで、選択マーカー(例えば、グリホサート、それに対する抵抗性は、本明細書における異種分子によって後代植物に付与され得る)に対して抵抗性である第1の後代植物が選択され得る。次いで、第1の後代植物は、自家受粉され、それによって、複数の第2の後代植物が製造され得る。次いで、選択マーカーに対して抵抗性である第2の後代植物が選択され得る。これらのステップは、第1の後代植物または第2の後代植物を、第2の親植物または第3の親植物物と戻し交雑することをさらに含み得る。
2種の異なるトランスジェニックダイズ植物も、2種の独立に分離する、付加された外因性遺伝子を含有する子孫を製造するために交配され得るということは理解されるべきである。適当な後代の自家受粉は、付加された、外因性遺伝子の両方についてホモ接合体である植物をもたらす。栄養繁殖と同様に、親植物に戻し交雑すること非トランスジェニック植物と外交配することも考慮される。異なる形質および作物のために一般に使用されるその他の育種方法は、当技術分野で公知である。戻し交雑育種は、単純に遺伝される、高度に遺伝性の形質について、反復親である望ましいホモ接合体栽培品種または近交系に遺伝子を転移させるために使用されてきた。得られた植物は、反復親(例えば、栽培品種)の特質およびドナー親から転移された望ましい形質を有すると予測される。最初の交配後、ドナー親の表現型を有する個体が、選択され、反復親に反復して交配される(戻し交雑)。得られた親は、反復親(例えば、栽培品種)の特質およびドナー親から転移された望ましい形質を有すると予測される。
導入遺伝子はまた、相同組換えによって、植物ゲノムの所定の領域中に導入され得る。相同組換えによって、植物細胞の特定の染色体部位内にポリヌクレオチド配列を安定に組み込むための方法は、当技術分野内で記載されている。例えば、米国特許出願公開番号第2009/0111188 A1号に記載されるような部位特異的組込みは、ドナーポリヌクレオチド配列の染色体標的への導入を媒介するための、リコンビナーゼまたはインテグラーゼの使用を含む。さらに、国際特許公開番号WO2008/021207には、1種または複数のドナーポリヌクレオチド配列をゲノムの特定の位置内に安定に組み込むためのジンクフィンガー媒介性相同組換えが記載されている。米国特許第6,720,475号に記載されるようなFLP/FRTまたは米国特許第5,658,772号に記載されるようなCRE/LOXなどのリコンビナーゼの使用が、ポリヌクレオチド配列を特定の染色体部位に安定に組み込むために利用され得る。最後に、ドナーポリヌクレオチドを特定の染色体位置へターゲッティングするためのメガヌクレアーゼの使用は、Puchta et al., (1996)、PNAS USA 93 pp. 5055-5060)に記載されている。
植物細胞内の部位特異的組込みのためのその他の種々の方法は、一般に、公知であり、適用可能である(Kumar et al., (2001)、Trends in Plant Sci. 6(4) pp. 155-159)。さらに、いくつかの原核生物および下等真核生物において同定されている部位特異的組換え系は、植物における使用に適用され得る。このような系の例として、それだけには限らないが、酵母ザイゴサッカロミセス・ルキシー(Zygosaccharomyces rouxii)のpSR1プラスミドに由来するR/RSリコンビナーゼ系(Araki et al. (1985)、J. Mol. Biol. 182: 191-203)およびファージMuのGin/gix系(Maeser and Kahlmann (1991)、Mol. Gen. Genet. 230: 170-176)が挙げられる。
IV.農業形質をコードする配列
本明細書におけるいくつかの実施形態は、遺伝子発現カセットを含むポリペプチドをコードする導入遺伝子を提供する。このような導入遺伝子は、トランスジェニックダイズ植物を製造するためのさまざまな適用のいずれかにおいて有用であり得る。遺伝子発現カセットを含む導入遺伝子の特定の例が、本明細書において例示目的で提供され、形質遺伝子、RNAi遺伝子または選択マーカー遺伝子を含む遺伝子発現が挙げられる。
ダイズ植物における発現のための遺伝子の操作では、予定される宿主植物(複数可)のコドンバイアスは、例えば、植物ゲノムまたは種々の植物遺伝子のタンパク質コーディング領域のコドン分布についての情報を見出すために公的に入手可能なDNA配列データベースの使用によって決定され得る。
植物発現のための核酸中のコーディング領域の設計では、植物によって好まれる主要な(「第一選択」)コドンが決定されなければならず、複数の選択が存在する場合には、好ましいコドンの第2、第3、第4などの選択が同様であり得る。次いで、同一ペプチドのアミノ酸配列をコードする新規DNA配列が設計され得るが、新規DNA配列は、元のDNA配列とは、アミノ酸配列内の各位置でアミノ酸を特定する植物の(第1に好ましい、第2に好ましい、第3に好ましい、または第4に好ましいなど)コドンの置換によって異なる。
次いで、新規配列は、修飾によって作製された可能性がある制限酵素部位について分析され得る。同定された部位は、コドンを、第1、第2、第3、第4選択の好ましいコドンと置換することによってさらに修飾され得る。対象とする遺伝子の転写または翻訳に影響を及ぼし得る、配列中のその他の部位として、ステム−ループ構造、エクソン:イントロン接合部(5’または3’)、ポリA付加シグナルおよびRNAポリメラーゼ終結シグナルがあり;これらの部位は、植物コドンの置換によって除去され得る。配列は、TAまたはCGの対を低減するよう、さらに分析および修飾され得る。これらの対に加えて、同一である約6個を超える残基を有するGまたはC配列ブロックは、配列の転写または翻訳に影響を及ぼし得る。したがって、これらのブロックは、第1または第2選択のコドンを、次に好ましい選択のコドンと置換することによって修飾され得る。
最適化された(例えば、植物に最適化された)DNA配列が、書類上で、またはコンピュータで設計されると、設計された配列と正確に配列において対応するよう、実際のDNA分子が実験室で合成され得る。このような合成核酸分子は、クローニングされてもよく、そうではなく、天然のまたは生来の供給源に由来するかのように正確に操作されてもよい。
本明細書における核酸は、複製および/または発現のための原核細胞または真核細胞への形質転換のためにベクター中にクローニングされ得る。ベクターは、原核生物ベクター、例えば、プラスミドまたはシャトルベクター、昆虫ベクターまたは真核生物ベクターであり得る。本明細書において核酸は、例えば、植物細胞への投与のために発現ベクター中にクローニングされ得る。特定の適用では、大腸菌(E. coli)において機能的であるベクターを有することが好ましいことであり得る(例えば、抗体を作製するためのタンパク質の製造、DNA配列分析、インサートの構築、核酸の量を獲得すること)。
一実施形態では、発現されるべき導入遺伝子は、対象適用において開示される。遺伝子発現カセットは、選択マーカー遺伝子、形質遺伝子またはRNAi遺伝子を含み得る。選択マーカー遺伝子、形質遺伝子およびRNAi遺伝子の例は、以下にさらに提供される。本願に開示される方法は、それらが、導入遺伝子のタンパク質産物の特定の機能またはその他の機能に左右されない生殖系列形質転換体を選択するための方法を提供する点で有利である。
有害生物または疾患に対して抵抗性を付与する導入遺伝子またはコード配列
(A)植物疾患抵抗性遺伝子。植物防御は、植物中の疾患抵抗性遺伝子(R)の生成物と、病原体中の対応する病原性(Avr)遺伝子の生成物間の特定の相互作用によって活性化されることが多い。ある植物の種類が、クローニングされた抵抗性遺伝子を用いて形質転換され、特定の病原体株に対して抵抗性である植物に操作できる。このような遺伝子の例として、クラドスポリウム・フルブム(Cladosporium fulvu)に対する抵抗性のための、トマトCf−9遺伝子(Jones et al., 1994 Science 266:789)、トマト斑葉細菌病に対する抵抗性のためのプロテインキナーゼをコードする、トマトPto遺伝子(Martin et al., 1993 Science 262:1432)およびシュードモナス・シリンゲ(Pseudomonas syringae)に対する抵抗性のための、アラビドプシス属(Arabidopsis)RSSP2遺伝子(Mindrinos et al.、1994 Cell 78:1089)が挙げられる。
(B)Bt δ−エンドトキシン遺伝子のヌクレオチド配列などの、バチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis)タンパク質、その誘導体またはそれをモデルにした合成ポリペプチド(Geiser et al., 1986 Gene 48:109)および栄養型殺虫性(VIP)遺伝子(例えば、Estruch et al. (1996)、Proc. Natl. Acad. Sci. 93:5389-94を参照のこと)。さらに、δ−エンドトキシン遺伝子をコードするDNA分子は、American Type Culture collection (Rockville、Md.)からATCC受託番号40098、67136、31995および31998の下で購入できる。
(C)いくつかのクンシラン(Clivia miniata)マンノース結合レクチン遺伝子のヌクレオチド配列などの、レクチン(Van Damme et al., 1994 Plant Molec. Biol. 24:825)。
(D)昆虫有害生物に対する殺うじ剤として有用であるアビジンおよびアビジン相同体などの、ビタミン結合タンパク質。米国特許第5,659,026号を参照のこと。
(E)酵素阻害剤、例えば、プロテアーゼ阻害剤またはアミラーゼ阻害剤。
このような遺伝子の例として、イネシステインプロテイナーゼ阻害剤(Abe et al., 1987 J. Biol. Chem. 262:16793)、タバコプロテイナーゼ阻害剤I(Huub et al., 1993 Plant Molec. Biol. 21:985)およびα−アミラーゼ阻害剤(Sumitani et al., 1993 Biosci. Biotech. Biochem. 57:1243)が挙げられる。
(F)昆虫特異的ホルモンまたはフェロモン、例えば、エクジステロイドおよび幼若ホルモンその変異体、それをベースとしたミメティックまたはそのアンタゴニストもしくはアゴニスト、例えば、クローニングされた幼若ホルモンエステラーゼのバキュロウイルス発現、幼若ホルモンの不活化(Hammock et al., 1990 Nature 344:458)。
(G)発現すると、影響を受ける有害生物の生理学を撹乱する、昆虫特異的ペプチドまたはニューロペプチド(J. Biol. Chem. 269:9)。このような遺伝子の例として、昆虫利尿ホルモン受容体(Regan, 1994)、ディプロプテラ・プンクタータ(Diploptera punctata)において同定されたアロスタチン(allostatin)(Pratt,1989)および昆虫特異的、麻痺性神経毒(米国特許第5,266,361号)が挙げられる。
(H)蛇、スズメバチなどによって天然に産生される昆虫特異的毒液、例えば、サソリ昆虫毒ペプチド(Pang, 1992 Gene 116:165)。
(I)モノテルペン、セスキテルペン、ステロイド、ヒドロキサム酸、フェニルプロパノイド誘導体または殺虫活性を有する別の非タンパク質分子の高度集積に関与している酵素
(J)生物学的に活性な分子の翻訳後修飾を含めた、修飾に関与している酵素、例えば、天然または合成にかかわらず、解糖酵素、タンパク質分解酵素、脂肪分解酵素、ヌクレアーゼ、シクラーゼ、トランスアミナーゼおよびエステラーゼ、ヒドロラーゼ、ホスファターゼ、キナーゼ、ホスホリラーゼ、ポリメラーゼ、エラスターゼ、キチナーゼおよびグルカナーゼ。このような遺伝子の例として、callas遺伝子(PCT公開出願WO93/02197)、キチナーゼをコードする配列(例えば、ATCCから受託番号3999637および67152の下で入手できる)、タバコ鉤虫キチナーゼ(Kramer et al., 1993 Insect Molec. Biol. 23:691)およびパセリubi4−2ポリユビキチン遺伝子(Kawalleck et al., 1993 Plant Molec. Biol. 21:673)が挙げられる。
(K)シグナル変換をシミュレートする分子。このような分子の例として、リョクトウカルモジュリンcDNAクローンのヌクレオチド配列(Botella et al., 1994 Plant Molec. Biol. 24:757)およびトウモロコシカルモジュリンcDNAクローンのヌクレオチド配列(Griess et al., 1994 Plant Physiol. 104:1467)が挙げられる。
(L)疎水性モーメントペプチド。米国特許第5,659,026号および同5,607,914号を参照のこと;後者は、疾患抵抗性を付与する合成抗菌ペプチドを教示している。
(M)膜透過酵素、チャネル形成剤またはチャネル遮断剤、例えば、トランスジェニックタバコ植物をシュードモナス・ソラナセアラム(Pseudomonas solanacearum)に対して抵抗性にする、セクロピン−ベータ溶菌性ペプチド類似体(Jaynes et al., 1993 Plant Sci. 89:43)。
(N)ウイルス侵襲性タンパク質またはそれに由来する複合毒素。例えば、形質転換植物細胞におけるウイルスコートタンパク質の蓄積は、ウイルス感染および/またはコートタンパク質遺伝子が由来するウイルスによって、ならびに関連ウイルスによって達成される疾患発生に対する抵抗性を与える。アルファルファモザイクウイルス、キュウリモザイクウイルス、タバコ条斑ウイルス、ジャガイモウイルスX、ジャガイモウイルスY、タバコエッチウイルス、タバコ茎えそウイルスおよびタバコモザイクウイルスに対して、コートタンパク質媒介性抵抗性が形質転換植物に付与されている。例えば、Beachy et al. (1990)、Ann. Rev. Phytopathol. 28:451を参照のこと。
(O)昆虫特異的抗体またはそれに由来する免疫毒素。したがって、昆虫腸において重大な代謝機能にターゲッティングされる抗体は、影響を受ける酵素を不活化し、昆虫を死滅させる。例えば、Taylor et al. (1994)、Abstract #497、Seventh Int'l. Symposium on Molecular Plant-Microbe Interactionsは、一本鎖抗体断片の製造によるトランスジェニックタバコにおける酵素性不活性化を示す。
(P)ウイルス特異的抗体。例えば、組換え抗体遺伝子を発現するトランスジェニック植物は、ウイルス攻撃から保護されるということを示すTavladoraki et al. (1993)、Nature 266:469を参照のこと。
(Q)病原体または寄生生物によって天然に生成される発達遅延性タンパク質。したがって、真菌エンドα−1,4−Dポリガラクツロナーゼは、植物細胞壁ホモ−α−1,4−D−ガラクツロナーゼを可溶化することによって、真菌コロニー形成および植物栄養放出を促進する(Lamb et al., (1992)、Biotechnology 10:1436)。マメエンドポリガラクツロナーゼ阻害性タンパク質をコードする遺伝子のクローニングおよび特性決定が、Toubart et al. (1992 Plant J. 2:367)に記載されている。
(R)植物によって天然に生成される発達遅延性タンパク質、例えば、真菌疾患に対する増大した抵抗性を提供するオオムギリボソーム不活化遺伝子(Longemann et al., (1992)、Biotechnology 10:3305)。
(S)RNA分子が、標的遺伝子の発現を阻害するために使用される、RNA干渉。一例では、RNA分子は、部分的または完全に二本鎖であり、サイレンシング反応を引き起こし、dsRNAの低分子干渉RNAへの切断をもたらし、次いで、これが、相同mRNAを破壊するターゲッティング複合体中に組み込まれる。例えば、Fire et al.、米国特許第6,506,559号;Graham et al. 米国特許第6,573,099号を参照のこと。
除草剤に対する抵抗性を付与する遺伝子
(A)成長点または分裂組織を阻害する除草剤、例えば、イミダゾリノン(imidazalinone)、スルホンアニリドまたはスルホニル尿素除草剤に対する抵抗性または耐性をコードする遺伝子。このカテゴリー中の例示的遺伝子は、突然変異体ALS酵素をコードし(Lee et al., 1988 EMBOJ. 7:1241)、これは、AHAS酵素としても知られている(Miki et al., 1990 Theor. Appl. Genet. 80:449)。
(B)突然変異体EPSPシンターゼおよびaroA遺伝子によって、またはGAT(グリホサートアセチルトランスフェラーゼ)もしくはGOX(グリホサートオキシダーゼ)などの遺伝子およびグルホシネート(patおよびbar遺伝子;DSM−2)などのその他のホスホノ化合物ならびにアリールオキシフェノキシプロピオン酸およびシクロヘキサンジオン(ACCアーゼ阻害剤をコードする遺伝子)による代謝不活性化によって与えられる、グリホサートに対する抵抗性または耐性をコードする1種または複数のさらなる遺伝子。例えば、グリホサート抵抗性を付与できるEPSPの形態のヌクレオチド配列を開示する米国特許第4,940,835号を参照のこと。突然変異体aroA遺伝子をコードするDNA分子は、ATCC受託番号39256の下で得ることができ、突然変異体遺伝子のヌクレオチド配列は、米国特許第4,769,061号に開示されている。欧州特許出願番号0333033および米国特許第4,975,374号には、L−ホスフィノトリシンなどの除草剤に対する抵抗性を付与するグルタミンシンセターゼ遺伝子のヌクレオチド配列が開示されている。ホスフィノトリシンアセチルトランスフェラーゼ遺伝子のヌクレオチド配列は、欧州特許出願0242246に提供されている。De Greef et al. (1989)、Biotechnology 7:61には、ホスフィノトリシンアセチルトランスフェラーゼ活性のためにキメラbar遺伝子コーディングを発現するトランスジェニック植物の製造が記載されている。アリールオキシフェノキシプロピオン酸およびセトキシジムおよびハロキシフォップなどのシクロヘキサンジオンに対する抵抗性を付与する遺伝子の例示的なものとして、Marshall et al. (1992)、Theor. Appl. Genet. 83:435に記載される、Accl−S1、Accl−S2およびAccl−S3遺伝子がある。
(C)光合成を阻害する除草剤、例えば、トリアジンに対する抵抗性または耐性をコードする遺伝子(psbAおよびgs+遺伝子)およびベンゾニトリル(ニトリラーゼ遺伝子)。Przibilla et al. (1991)、Plant Cell 3:169には、クラミドモナス(Chlamydomonas)を形質転換するための突然変異体psbA遺伝子をコードするプラスミドの使用が記載されている。ニトリラーゼ遺伝子のヌクレオチド配列は、米国特許第4,810,648号に開示されており、これらの遺伝子を含有するDNA分子は、ATCC受託番号53435、67441および67442の下で入手可能である。グルタチオンS−トランスフェラーゼのDNAコーディングのクローニングおよび発現は、Hayes et al. (1992)、Biochem. J. 285:173に記載されている。
(D)ヒドロキシフェニルピルビン酸ジオキシゲナーゼ(HPPD)、パラ−ヒドロキシフェニルピルビン酸(HPP)がホモゲンチジン酸に形質転換される反応を触媒する酵素と結合する除草剤に対する抵抗性または耐性をコードする遺伝子。これは、イソキサゾール(EP418175、EP470856、EP487352、EP527036、EP560482、EP682659、米国特許第5,424,276号)、特に、トウモロコシの選択的除草剤であるイソキサフルトール、ジケトニトリル(EP496630、EP496631)、特に、2−シアノ−3−シクロプロピル−1−(2−SO2CH3−4−CF3フェニル)プロパン−1,3−ジオンおよび2−シアノ−3−シクロプロピル−1−(2−SO2CH3−4−2,3Cl2フェニル)プロパン−1,3−ジオン、トリケトン(EP625505、EP625508、米国特許第5,506,195号)、特に、スルコトリオンおよびピラゾリネートなどの除草剤を含む。例えば、米国特許第6,268,549号および同6,245,968号および米国特許公開第20030066102号に記載される遺伝子を含めた、植物において過剰量のHPPDを生成する遺伝子は、このような除草剤に対する耐性または抵抗性を提供し得る。
(E)遺伝子。フェノキシオーキシン除草剤、例えば、2,4−ジクロロフェノキシ酢酸(2,4−D)に対する抵抗性または耐性をコードし、アリールオキシフェノキシプロピオネート(AOPP)除草剤に対する抵抗性または耐性も付与する遺伝子。このような遺伝子の例として、米国特許第7,838,733号に記載される、α−ケトグルタレート依存性ジオキシゲナーゼ酵素(aad−1)遺伝子が挙げられる。
(F)2,4−ジクロロフェノキシ酢酸(2,4−D)などのフェノキシオーキシン除草剤に対する抵抗性または耐性をコードし、フルロキシピルまたはトリクロピルなどのピリジルオキシオーキシン除草剤に対する抵抗性または耐性も付与し得る遺伝子。このような遺伝子の例として、WO2007/053482 A2に記載されるα−ケトグルタレート依存性ジオキシゲナーゼ酵素遺伝子(aad−12)が挙げられる。
(G)ジカンバに対する抵抗性または耐性をコードする遺伝子(例えば、米国特許公開第20030135879号を参照のこと)。
(H)プロトポルフィリノーゲンオキシダーゼ(PPO)を阻害する除草剤に対する抵抗性または耐性を提供する遺伝子(米国特許第5,767,373号を参照のこと)。
(I)光化学系II反応中心(PS II)のコアタンパク質と結合する、トリアジン除草剤(アトラジンなど)および尿素誘導体(ジウロンなど)除草剤に対する抵抗性または耐性を提供する遺伝子(Brussian et al. (1989)、EMBO J. 1989, 8(4): 1237-1245を参照のこと)。
価値が付加された形質を付与するか、またはそれに貢献する遺伝子
(A)植物のステアリン酸含量を増大させるために、例えば、アンチセンス遺伝子またはステアロイル−ACP不飽和化酵素を用いて、トウモロコシまたはアブラナ属(Brassica)を形質転換することによって修飾された脂肪酸代謝(Knultzon et al., (1992)、Proc. Nat. Acad. Sci. U.S.A. 89:2624)。
(B)減少したフィチン酸含量
(1)クロコウジカビ(Aspergillus niger)フィターゼ遺伝子などのフィターゼをコードする遺伝子の導入(Van Hartingsveldt et al., 1993 Gene 127:87)は、フィチン酸の分解を増強し、より多くの遊離リン酸を形質転換植物に付加する。
(2)フィチン酸含量を低下させる遺伝子は、導入され得る。トウモロコシでは、これは、例えば、クローニングすることおよび次いで、低レベルのフィチン酸を特徴とするトウモロコシ突然変異体と関連している単一の対立遺伝子と関連しているDNAを再導入することによって達成され得る(Raboy et al., 1990 Maydica 35:383)。
(C)例えば、植物を、デンプンの分岐パターンを変更する酵素の遺伝子コーディングを用いて形質転換することによって達成される修飾された炭水化物組成物。このような酵素の例として、ストレプトコッカス・ミューカス(Streptococcus mucus)フルクトース転移酵素遺伝子(Shiroza et al., (1988)、J. Bacteriol. 170:810)、バチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)レバンスクラーゼ遺伝子(Steinmetz et al., (1985)、Mol. Gen. Genel. 200:220)、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)α−アミラーゼ(Pen et al., (1992)、Biotechnology 10:292)、トマトインベルターゼ遺伝子(Elliot et al.、1993)、オオムギアミラーゼ遺伝子(Sogaard et al., (1993)、J. Biol. Chem. 268:22480)およびトウモロコシ胚乳デンプン分岐酵素II(Fisher et al., (1993)、Plant Physiol. 102:10450)が挙げられる。
ダイズ細胞において選択マーカー遺伝子、形質遺伝子またはRNAi遺伝子を発現するために、タンパク質をコードする核酸は、通常、転写を指示するようにプロモーターを含有する発現ベクター中にサブクローニングされる。適した細菌および真核細胞プロモーターは、当技術分野で周知であり、例えば、Sambrook et al., Molecular Cloning, A Laboratory Manual (2nd ed. 1989; 3rd ed., 2001);Kriegler, Gene Transfer and Expression:A Laboratory Manual (1990); and Current Protocols in Molecular Biology (Ausubel et al., 前掲)に記載されている。本明細書における核酸を発現させるための細菌発現系は、例えば、大腸菌(E. coli)、バチルス属種(Bacillus sp.)およびサルモネラ(salmonella)において入手可能である(Palva et al., Gene 22:229-235 (1983))。このような発現系のキットは、市販されている。哺乳類細胞、酵母および昆虫細胞のための真核生物発現系は、当業者には周知であり、同様に市販されている。
遺伝情報を細胞中に輸送するために使用される特定の発現ベクターは、意図される使用(例えば、植物、動物、細菌、真菌および原虫における発現)に関して選択される。標準細菌および動物発現ベクターは、当技術分野で公知であり、例えば、米国特許公開20050064474A1および国際特許公報WO05/084190、WO05/014791およびWO03/080809に詳細に記載されている。多量のタンパク質を発現する細菌細胞株を製造するために、標準トランスフェクション法が使用され得、次いで、それは、標準技術を使用して精製され得る。
本明細書における核酸の発現を指示するために使用されるプロモーターの選択は、個々の適用に応じて変わる。植物における遺伝子の発現を指示するいくつかのプロモーターは、本明細書における実施形態において使用され得る。このようなプロモーターは、構成的プロモーター、化学調節性プロモーター、誘導性プロモーター、組織特異的プロモーターおよび種子優先(seed-preferred)プロモーターから選択され得る。例えば、宿主細胞に適している強力な構成的プロモーターが、発現されたタンパク質の発現および精製のために使用され得る。植物プロモーターの限定されない例として、シロイヌナズナ(A.thaliana)ユビキチン−10(ubi-10)(Callis, et al., 1990, J. Biol. Chem., 265:12486-12493);A.ツメファシエンス(A.tumefaciens)マンノピンシンターゼ(Δmas)(Petolino et al.、米国特許第6,730,824号);および/またはキャッサバ葉脈モザイクウイルス(CsVMV)(Verdaguer et al., 1996, Plant Molecular Biology 31:1129-1139)に由来するプロモーター配列が挙げられる。
構成的プロモーターとして、例えば、コアカリフラワーモザイクウイルス35Sプロモーター(Odell et al. (1985)、Nature 313:810-812);イネアクチンプロモーター(McElroy et al. (1990)、Plant Cell 2:163-171);トウモロコシユビキチンプロモーター(米国特許第5,510,474号;Christensen et al. (1989)、Plant Mol. Biol. 12:619-632およびChristensen et al. (1992)、Plant Mol. Biol. 18:675-689);pEMUプロモーター(Last et al. (1991)、Theor. Appl. Genet. 81:581-588);ALSプロモーター(米国特許第5,659,026号);トウモロコシヒストンプロモーター(Chaboute et al. Plant Molecular Biology, 8:179-191 (1987))などが挙げられる。
利用可能な植物適合プロモーターの範囲は、組織特異的および誘導性プロモーターを含む。誘導性調節エレメントは、誘導物質に応じて1種または複数のDNA配列または遺伝子の転写を直接的または間接的に活性化できるものである。誘導物質の不在下で、DNA配列または遺伝子は転写されない。通常、誘導性調節エレメントと特異的に結合して転写を活性化するタンパク質因子は、不活性形態で存在し、これは、次いで、誘導物質によって、直接的または間接的に活性形態に変換される。誘導物質は、熱、冷温、塩または毒性要素によって直接的に、またはウイルスなどの病原体もしくは病因物質の作用によって間接的に課せられる、タンパク質、代謝生成物、成長調節物質、除草剤またはフェノール系化合物などの化学物質または生理学的ストレスであり得る。通常、誘導性調節エレメントと特異的に結合して、転写を活性化するタンパク質因子は、不活性形態で存在し、これは、次いで、誘導物質によって、直接的または間接的に活性形態に変換される。誘導性調節エレメントを含有する植物細胞は、噴霧、灌水、加熱または同様の方法によってなど、細胞または植物に誘導物質を外的に適用することによって誘導物質に曝露され得る。
本明細書における実施形態では、任意の誘導プロモーターが使用され得る。Ward et al. Plant Mol. Biol. 22: 361-366 (1993)を参照のこと。誘導プロモーターとして、例えば、限定するものではないが、エクジソン受容体プロモーター(米国特許第6,504,082号);銅に反応するACE1系に由来するプロモーター(Mett et al. PNAS 90: 4567-4571 (1993));ベンゼンスルホンアミド除草剤解毒剤に反応するトウモロコシ由来のIn2−1およびIn2−2遺伝子(米国特許第5,364,780号;Hershey et al., Mol. Gen. Genetics 227: 229-237 (1991);およびGatz et al., Mol. Gen. Genetics 243: 32-38 (1994));Tn10由来のTetレプレッサー(Gatz et al., Mol. Gen. Genet. 227: 229-237 (1991));転写活性が糖質コルチコステロイドホルモンによって誘導される、ステロイドホルモン遺伝子に由来するプロモーター、Schena et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 88: 10421 (1991);およびMcNellis et al. (1998)、Plant J. 14(2):247-257;発芽前除草剤として使用される疎水性求電子性化合物によって活性化されるトウモロコシGSTプロモーター(米国特許第5,965,387号および国際特許出願公開番号WO93/001294);およびサリチル酸によって活性化されるタバコPR−1aプロモーター(S. Ono, M. Kusama, R. Ogura, K. Hiratsuka, "Evaluation of the Use of the Tobacco PR-1a Promoter to Monitor Defense Gene Expression by the Luciferase Bioluminescence Reporter System", Biosci Biotechnol Biochem. 2011 Sep 23;75(9):1796-800)が挙げられる。その他の化学物質によって調節される対象とするプロモーターとして、テトラサイクリン誘導性およびテトラサイクリン抑制性プロモーター(例えば、Gatz et al., (1991)、Mol. Gen. Genet. 227:229-237および米国特許第5,814,618号および同5,789,156号を参照のこと)が挙げられる。
対象とするその他の調節可能なプロモーターとして、転写が、それぞれ、冷温または熱に対する曝露に応じて達成され得る、冷温反応性調節エレメントまたは熱ショック調節エレメント(Takahashi et al., Plant Physiol. 99:383-390, 1992);嫌気性条件によって誘導可能な、アルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子のプロモーター(Gerlach et al., PNAS USA 79:2981-2985 (1982);Walker et al., PNAS 84(19):6624-6628 (1987))、エンドウマメrbcS遺伝子またはエンドウマメpsaDb遺伝子に由来する光誘導性プロモーター(Yamamoto et al. (1997)、Plant J. 12(2):255-265);光誘導性調節エレメント(Feinbaum et al., Mol. Gen. Genet. 226:449, 1991;Lam and Chua, Science 248:471, 1990;Matsuoka et al. (1993)、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 90(20):9586-9590;Orozco et al. (1993)、Plant Mol. Bio. 23(6):1129-1138);植物ホルモン誘導性調節エレメント(Yamaguchi-Shinozaki et al., Plant Mol. Biol. 15:905, 1990; Kares et al., Plant Mol. Biol. 15:225, 1990)などが挙げられる。誘導性調節エレメントはまた、ベンゼンスルホンアミド除草剤解毒剤に応答するトウモロコシIn2−1またはIn2−2遺伝子のプロモーター(Hershey et al., Mol. Gen. Gene, 227:229-237, 1991; Gatz et al., Mol. Gen. Genet. 243:32-38, 1994)およびトランスポゾンTn10のTetレプレッサー(Gatz et al., Mol. Gen. Genet. 227:229-237, 1991)であり得る。
ストレス誘導性プロモーターとして、P5CSなどの塩/水ストレス誘導性プロモーター(Zang et al. (1997)、Plant Sciences 129:81-89);cor15aなどの冷温誘導性プロモーター(Hajela et al. (1990)、Plant Physiol. 93:1246-1252)、cor15b(Wilhelm et al. (1993)、Plant Mol Biol 23:1073-1077)、wsc120(Ouellet et al. (1998)、FEBS Lett. 423-324-328)、ci7(Kirch et al. (1997)、Plant Mol Biol. 33:897-909)およびci21A(Schneider et al. (1997)、Plant Physiol. 113:335-45);Trg−31(Chaudhary et al. (1996)、Plant Mol. Biol. 30:1247-57)およびrd29(Kasuga et al. (1999)、Nature Biotechnology 18:287-291)などの乾燥誘導性プロモーター;Rab17などの浸透圧誘導性プロモーター(Vilardell et al. (1991)、Plant Mol. Biol. 17:985-93)およびオスモチン(Raghothama et al. (1993)、Plant Mol Biol 23:1117-28);熱ショックタンパク質などの熱誘導性プロモーター(Barros et al. (1992) Plant Mol. 19:665-75;Marrs et al. (1993)、Dev. Genet. 14:27-41)、smHSP(Waters et al. (1996)、J. Experimental Botany 47:325-338);およびパセリユビキチンプロモーターに由来する熱ショック誘導性エレメント(WO03/102198)が挙げられる。その他のストレス誘導性プロモーターとして、rip2(米国特許第5,332,808号および米国特許公開第2003/0217393号)およびrd29a(Yamaguchi-Shinozaki et al. (1993)、Mol. Gen. Genetics 236:331-340)が挙げられる。アグロバクテリウムpMASプロモーター(Guevara-Garcia et al. (1993)、Plant J. 4(3):495-505)およびアグロバクテリウムORF13プロモーター(Hansen et al. (1997)、Mol. Gen. Genet. 254(3):337-343)を含めた特定のプロモーターは、創傷によって誘導可能である。
組織優先プロモーターは、特定の植物組織内での増強された転写および/または発現を標的とするために利用され得る。これらの種のプロモーターの例として、ファゼオリンプロモーターによって提供されるものなどの種子優先発現(Bustos et al. 1989, The Plant Cell Vol. 1, 839-853)およびトウモロコシグロブリン−1遺伝子、Belanger, et al. 1991 Genetics 129:863-972が挙げられる。双子葉植物について、種子優先プロモーターとして、それだけには限らないが、マメβ−ファゼオリン、ナピン(napin)、β−コングリシニン、ダイズレクチン、クルシフェリンなどが挙げられる。単子葉植物について、種子優先プロモーターとして、それだけには限らないが、トウモロコシ15kDaゼイン、22kDゼイン、27kDaゼイン、γ−ゼイン、ワキシー(waxy)、シュランケン(shrunken)1、シュランケン(shrunken)2、グロブリン1などが挙げられる。種子優先プロモーターとしてまた、例えば、γ−ゼインの胚乳優先プロモーターなどの種子内の特定の組織に遺伝子発現を主に向けるプロモーター、タバコ由来の隠れた(cryptic)プロモーター(Fobert et al. 1994, T-DNA tagging of a seed coat-specific cryptic promoter in tobacco, Plant J. 4: 567-577)、トウモロコシ由来のP遺伝子プロモーター(Chopra et al. 1996, Alleles of the maize P gene with distinct tissue specificities encode Myb-homologous proteinss with C-terminal replacements,Plant Cell 7:1149-1158, Erratum in Plant Cell,1997, 1:109)、トウモロコシ由来のグロブリン−1プロモーター(Belenger and Kriz,1991 , Molecular basis for Allelic Polymorphism of the maize Globulin-1 gene, Genetics 129: 863-972)および種子皮またはトウモロコシ穀粒の殻に発現を向けるプロモーター、例えば、果皮特異的グルタミンシンセターゼプロモーター(Muhitch et al., 2002, Isolation of a Promoter Sequence From the Glutamine Synthetase1-2 Gene Capable of Conferring Tissue-Specific Gene Expression in Transgenic Maize, Plant Science 163:865-872)が挙げられる。
プロモーターに加えて、発現ベクターは、通常、原核生物または真核生物いずれかの宿主細胞における核酸の発現に必要なさらなる要素のすべてを含有する転写単位または発現カセットを含有する。したがって、通常の発現カセットは、例えば、タンパク質をコードする核酸配列と作動可能に連結されたプロモーターおよび例えば、転写物の効率的なポリアデニル化、転写終結、リボソーム結合部位または翻訳終結に必要なシグナルを含有する。カセットのさらなる要素は、例えば、エンハンサーおよび異種スプライシングシグナルを含み得る。
ベクターのその他の成分はまた、遺伝子の意図される用途に応じて含まれ得る。例として、選択マーカー、ターゲッティングまたは調節配列、最適化された輸送ペプチド配列などの輸送ペプチド配列(米国特許第5,510,471号を参照のこと)RB7 MARなどの安定化配列(Thompson and Myatt (1997)、Plant Mol. Biol., 34: 687-692およびWO9727207を参照のこと)またはリーダー配列、イントロンなどが挙げられる。植物発現ベクターおよびリポーター遺伝子の一般的な説明および例は、Methods in Plant Molecular Biology and Biotechnology, Glick et al. eds; CRC Press pp. 89-119 (1993)中のGruber, et al., "Vectors for Plant Transformation"に見出すことができる。
適当な発現ベクターの選択は、宿主および発現ベクターを宿主に導入する方法に応じて変わる。発現カセットは、対象とする異種ヌクレオチド配列の3’末端に、植物において機能的である転写および翻訳終結領域を含み得る。終結領域は、対象とするDNA配列に関して天然である場合も、別の供給源に由来する場合もある。オクトピンシンターゼおよびノパリンシンターゼ(nos)終結領域などの好都合な終結領域は、A.ツメファシエンス(tumefaciens)のTiプラスミドから入手可能である(Depicker et al., Mol. and Appl. Genet. 1:561-573 (1982);およびShaw et al. (1984)、Nucleic Acids Research vol. 12, No. 20 pp. 7831-7846(nos));Guerineau et al., Mol. Gen. Genet. 262:141-144 (1991);Proudfoot, Cell 64:671-674 (1991);Sanfacon et al., Genes Dev. 5:141-149 (1991);Mogen et al.,Plant Cell 2:1261-1272 (1990);Munroe et al., Gene 91:151-158 (1990);Ballas et al., Nucleic Acids Res. 17:7891-7903 (1989); およびJoshi et al. Nucleic Acid Res. 15:9627-9639 (1987)も参照のこと。
発現カセットは、5’リーダー配列を含有し得る。このようなリーダー配列は、翻訳を増強するよう作用し得る。翻訳リーダーは、当技術分野で公知であり、例として、ピコルナウイルスリーダー、EMCVリーダー(脳心筋炎5’非コーディング領域)、Elroy-Stein et al., Proc. Nat. Acad. Sci. U.S.A. 86:6126-6130 (1989);ポティウイルスリーダー、例えば、TEVリーダー(タバコエッチウイルス)Carrington and Freed, Journal of Virology, 64:1590-1597 (1990)、MDMVリーダー(トウモロコシ萎縮モザイクウイルス)、Allison et al.、Virology 154:9-20 (1986);ヒト免疫グロブリン重鎖結合タンパク質(BiP)、Macejak et al, Nature 353:90-94 (1991);アルファルファモザイクウイルスのコートタンパク質mRNA由来の非翻訳リーダー(AMV RNA 4)、Jobling et al., Nature 325:622-625 (1987);タバコモザイクウイルスリーダー(TMV)、Gallie et al. (1989), Molecular Biology of RNA、237-256頁;およびトウモロコシ退緑斑紋ウイルスリーダー(Maize chlorotic mottle virus leader)(MCMV)Lommel et al., Virology 81:382-385 (1991)が挙げられる。Della-Cioppa et al., Plant Physiology 84:965-968 (1987)も参照のこと。
構築物はまた、イントロンなどの翻訳および/またはmRNA安定性を増強する配列を含有し得る。1種のこのようなイントロンの例として、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)のヒストンH3.III変異体の遺伝子IIの第1のイントロンがある。Chaubet et al., Journal of Molecular Biology, 225:569-574 (1992)。
特定のオルガネラ、特に、プラスチド、アミロプラストに、または小胞体に向けられるか、または細胞の表面もしくは細胞外に分泌される異種核酸配列の発現生成物を有することが望ましい場合には、発現カセットは、輸送ペプチドのコード配列をさらに含み得る。このような輸送ペプチドは、当技術分野で周知であり、それだけには限らないが、アシル担体タンパク質の輸送ペプチド、RUBISCO、植物EPSPシンターゼおよびヒマワリ(Helianthus annuus)の小サブユニット(Lebrun et al.,米国特許第5,510,417号)、トウモロコシBrittle−1葉緑体輸送ペプチド(Nelson et al., Plant Physiol. 117(4):1235-1252 (1998); Sullivan et al.,Plant Cell 3(12):1337-48; Sullivan et al., Planta (1995) 196(3):477-84; Sullivan et al., J. Biol. Chem. (1992)、267(26):18999-9004)などが挙げられる。さらに、最適化された輸送ペプチドなどのキメラ葉緑体輸送ペプチドは、当技術分野で公知である(米国特許第5,510,471号を参照のこと)。さらなる葉緑体輸送ペプチドが、米国特許第5,717,084号、同5,728,925号において、これまでに記載されている。当業者ならば、特定のオルガネラへ産物を発現させることにおいて利用可能な多数の選択肢を容易に理解する。例えば、オオムギアルファアミラーゼ配列は、発現を小胞体に向けるために使用されることが多い。Rogers, J. Biol. Chem. 260:3731-3738 (1985)。
当業者には、組換えDNA技術は、例えば、宿主細胞内の核酸分子のコピー数、核酸分子が転写される効率、得られた転写物が翻訳される効率および翻訳後修飾の効率を操作することによって、トランスフェクトされた核酸分子の発現の制御を改善し得るということは理解される。さらに、プロモーター配列は、天然プロモーターと比較して、発現のレベルを改善するよう遺伝子操作され得る。核酸分子の発現の制御に有用な組換え技術として、それだけには限らないが、1種または複数の宿主細胞染色体中への核酸分子の安定な組込み、プラスミドへのベクター安定性配列の付加、転写制御シグナル(例えば、プロモーター、オペレーター、エンハンサー)の置換または修飾、翻訳制御シグナル(例えば、リボソーム結合部位、シャイン・ダルガーノ配列またはコザック配列)の置換または修飾、宿主細胞のコドン使用に対応するための核酸分子の修飾および転写物を不安定化する配列の欠失が挙げられる。
形質転換された細胞または組織または植物部分または植物の選択のためのリポーターまたはマーカー遺伝子が、形質転換ベクター中に含まれ得る。選択マーカーの例として、除草剤または抗生物質などの代謝拮抗剤に対する抵抗性を付与するもの、例えば、メトトレキサートに対する抵抗性を付与するジヒドロ葉酸レダクターゼ(Reiss, Plant Physiol. (Life Sci. Adv.) 13:143-149, 1994;Herrera Estrella et al., Nature 303:209-213, 1983;Meijer et al., Plant Mol. Biol. 16:807-820, 1991);アミノグリコシドネオマイシン、カナマイシンおよびパロマイシン(paromycin)に対する抵抗性を付与するネオマイシンホスホトランスフェラーゼ(Herrera-Estrella, EMBO J. 2:987-995, 1983およびFraley et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 80:4803 (1983));ハイグロマイシンに対する抵抗性を付与するハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼ(Marsh, Gene 32:481-485, 1984;Waldron et al.. Plant Mol. Biol. 5:103-108, 1985;Zhijian et al., Plant Science 108:219-227, 1995も参照のこと);細胞がトリプトファンの代わりにインドールを利用することを可能にするtrpB;細胞がヒスチジの代わりにヒスチノールを利用することを可能にするhisD(Hartman, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 85:8047, 1988);細胞がマンノースを利用することを可能にするマンノース−6−ホスフェートイソメラーゼ(WO94/20627);オルニチンデカルボキシラーゼ阻害剤、2−(ジフルオロメチル)−DL−オルニチンに対する抵抗性を付与するオルニチンデカルボキシラーゼ(DFMO; McConlogue, 1987, In: Current Communications in Molecular Biology, Cold Spring Harbor Laboratory ed.);およびブラストサイジンSに対する抵抗性を付与する、アスペルギルス・テレウス(Aspergillus terreus)由来のデアミナーゼ(Tamura, Biosci. Biotechnol. Biochem. 59:2336-2338, 1995)が挙げられる。
さらなる選択マーカーとして、例えば、イミダゾリノンまたはスルホニル尿素抵抗性を付与する突然変異体アセト乳酸シンターゼ(Lee et al., EMBO J. 7:1241-1248, 1988)、アトラジンに対する抵抗性を付与する突然変異体psbA(Smeda et al., Plant Physiol. 103:911-917, 1993)または突然変異体プロトポルフィリノーゲンオキシダーゼ(米国特許第5,767,373号を参照のこと)またはグルホシネートなどの除草剤に対する抵抗性を付与するその他のマーカーが挙げられる。適した選択マーカー遺伝子の例として、それだけには限らないが、クロラムフェニコール(Herrera Estrella et al., EMBO J. 2:987-992, 1983);ストレプトマイシン(Jones et al., Mol. Gen. Genet. 210:86-91, 1987);スペクチノマイシン(Bretagne-Sagnard et al., Transgenic Res. 5:131-137, 1996);ブレオマイシン(Hille et al., Plant Mol. Biol. 7:171-176, 1990);スルホンアミド(Guerineau et al., Plant Mol. Biol. 15:127-136, 1990);ブロモキシニル(Stalker et al., Science 242:419-423, 1988);グリホサート(Shaw et al., Science 233:478-481, 1986);ホスフィノトリシン(DeBlock et al., EMBO J. 6:2513-2518, 1987)に対する抵抗性をコードする遺伝子などが挙げられる。
選択遺伝子の使用のための1つの選択肢は、グルホシネート抵抗性をコードするDNAであり、一実施形態では、キャッサバ葉脈モザイクウイルスプロモーターの制御下の、ホスフィノトリシンアセチルトランスフェラーゼ(pat)、トウモロコシ最適化pat遺伝子またはbar遺伝子である。これらの遺伝子は、ビアラホスに対する抵抗性を付与するWohlleben et al. (1988)、Gene 70: 25-37;Gordon-Kamm et al. (1990)、Plant Cell 2:603; Uchimiya et al. (1993)、Biotechnology 11:835;White et al. (1990)、 Nucl. Acids Res. 18:1062; Spencer et al. (1990)、Theor. Appl. Genet. 79:625-631;およびAnzai et al. (1990)、Mol. Gen. Gen. 219:492を参照のこと)を参照。pat遺伝子の1つのバージョンとして、トウモロコシ最適化pat遺伝子があり、米国特許第6,096,947号に記載されている。
さらに、ポリヌクレオチドをコードするマーカーを含有する植物細胞の同定を容易にするマーカーが使用され得る。配列の存在が、測定可能な産物をもたらし、植物細胞の破壊を伴わずに産物をもたらし得る場合には、スコア化可能なまたはスクリーニング可能なマーカーは有用である。例として、種々の発色基質が公知である酵素をコードするβ−グルクロニダーゼまたはuidA遺伝子(GUS)(例えば、米国特許第5,268,463号および同5,599,670号);クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(Jefferson et al., The EMBO Journal vol. 6 No. 13 pp. 3901-3907);およびアルカリホスファターゼが挙げられる。好ましい実施形態では、使用されるマーカーは、ベータ−カロテンまたはプロビタミンA(Ye et al., Science 287:303-305-(2000))である。この遺伝子は、イネの栄養を増強するために使用されてきたが、この例では、代わりに、スクリーニング可能なマーカーとしてとして使用され、対象とする遺伝子と連結している遺伝子の存在は、提供される金色によって検出される。遺伝子が、植物へのその栄養的な貢献のために使用される状況とは異なり、マーキング目的には、少量のタンパク質で十分である。その他のスクリーニング可能なマーカーとして、例えば、中でも、植物組織におけるアントシアニン色素(赤色)の製造を調節する生成物をコードする、R−遺伝子座遺伝子(Dellaporta et al., in Chromosome Structure and Function, Kluwer Academic Publishers, Appels and Gustafson eds., pp. 263-282 (1988));トウモロコシC1遺伝子(Kao et al., Plant Cell (1996) 8: 1171-1179;Scheffler et al., Mol. Gen. Genet. (1994) 242:40-48)およびトウモロコシC2(Wienand et al., Mol. Gen. Genet. (1986) 203:202-207)などのフラボノイド色素の生合成を制御する遺伝子;B遺伝子(Chandler et al., Plant Cell(1989) 1:1175-1183)、p1遺伝子(Grotewold et al., Proc. Natl. Acad. Sci U.S.A. (1991) 88:4587-4591;Grotewold et al., Cell (1994) 76:543-553;Sidorenko et al., Plant Mol. Biol. (1999)39:11-19);bronze遺伝子座遺伝子(Ralston et al., Genetics (1988) 119:185-197;Nash et al., Plant Cell (1990) 2(11): 1039-1049)を含めた、全般的に、アントシアニン/フラボノイド遺伝子が挙げられる(Taylor and Briggs, The Plant Cell (1990)2:115-127での考察を参照のこと)。
適したマーカーのさらなる例として、シアン蛍光タンパク質(CYP)遺伝子(Bolte et al. (2004)、J. Cell Science 117: 943-54およびKato et al. (2002)、Plant Physiol. 129: 913-42)、黄色蛍光タンパク質遺伝子(Evrogen製のPHIYFP(商標);Bolte et al. (2004)、J. Cell Science 117: 943-54を参照のこと);ルシフェラーゼをコードし、例えば、X線フィルム、シンチレーション計数、蛍光分光光度測定、微光ビデオカメラ、光子計数カメラまたはマルチウェルルミノメトリーを使用してその存在が検出され得る、lux遺伝子(Teeri et al. (1989)、EMBO J. 8:343);緑色蛍光タンパク質(GFP)遺伝子(Sheen et al., Plant J. (1995) 8(5):777-84);およびマーカー遺伝子で形質転換された植物細胞が、赤色であり、したがって、視覚的に選択可能である、DsRed2(Dietrich et al. (2002)、Biotechnologys 2(2):286-293)が挙げられる。さらなる例として、種々の発色基質(例えば、PADAC、発色性セファロスポリン)が公知である酵素をコードするβ−ラクタマーゼ遺伝子(Sutcliffe, Proc. Nat'l. Acad. Sci. U.S.A. (1978) 75:3737);発色性カテコールを変換できるカテコールジオキシゲナーゼをコードするxylE遺伝子(Zukowsky et al., Proc. Nat'l. Acad. Sci. U.S.A. (1983) 80:1101);α−アミラーゼ遺伝子(Ikuta et al., Biotech. (1990) 8:241)およびチロシンをDOPAおよびドーパキノンに酸化でき、順に、これが縮合して、容易に検出可能な化合物メラニンを形成する酵素をコードするチロシナーゼ遺伝子(Katz et al., J. Gen. Microbiol. (1983) 129:2703)が挙げられる。明確に、多数のこのようなマーカーが利用可能であり、当業者に公知である。
V.導入遺伝子または導入遺伝子の発現された産物の検出のアッセイ
種々のアッセイが、ダイズ茎切片内の形質転換された導入遺伝子の局在を同定するために使用され得る。以下の技術が、種々の状況で有用であり、一実施形態では、ダイズ植物茎における、導入遺伝子および/または導入遺伝子によってコードされるポリペプチドの存在の検出において有用である。例えば、ダイズ茎切片から得られた植物材料がメンブレン上にブロッティングされ、導入遺伝子の発現についてアッセイされ得る。一実施形態では、メンブレンに転写された植物材料は、導入遺伝子から発現されたタンパク質を検出するためにウエスタンブロットによってアッセイされ得る。別の実施形態では、メンブレンに転写された植物材料は、酵素的アッセイによって検出され得る。さらに、メンブレン上にブロッティングされ、導入遺伝子の発現についてアッセイされたダイズ茎切片由来の植物材料をアッセイするために、導入遺伝子の存在を検出し得る抗体が作製され、使用され得る。in situハイブリダイゼーション、酵素染色および免疫染色などのさらなる技術も、ダイズ茎切片由来の導入遺伝子の存在または発現を検出するために使用され得る。
ウエスタン解析では、ダイズ茎切片は、横方向に切断され、メンブレンに直接的にブロッティングされる。ダイズ植物中に形質転換された導入遺伝子から発現される対象のタンパク質は、ダイズ茎切片からメンブレン上に転写される。タンパク質は、抗体などの標識物質と接触する。例えば、Hood et al., "Commercial Production of Avidin from Transgenic Maize; Characterization of Transformants, Production, Processing, Extraction and Purification," Molecular Breeding 3:291-306 (1997);Towbin et al. (1979)、"Electrophoretic transfer of proteins from polyacrylamide gels to nitrocellulose sheets: procedure and some appliations," Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 76(9): 4350-4354; Renart et al. "Transfer of proteins from gels to diazobenzyloxymethyl-paper and detection with antisera: a method for studying antibody specificity and antigen structure," Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 76(7):3116-3120。
本明細書において、用語「メンブレン」とは、それだけには限らないが、セルロース、SEPHADEX(商標)などの多糖、ガラス、ポリアクリロイルモルホリド、シリカ、コントロールドポア(controlled pore)ガラス(CPG)、ポリスチレン、ポリスチレン/ラテックス、超高分子量ポリエチレン(UPE)などのポリエチレン、ポリアミド、ポリビニリジンフルオリド(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE;テフロン(登録商標))、カルボキシル修飾テフロン(登録商標)、ナイロン、ニトロセルロースならびに金、白金およびパラジウムなどの金属および合金を含めた、多孔性または非多孔性の水に不溶性の材料である固相を指す。メンブレンは、帯電しており、タンパク質などの有機材料と結合する。
メンブレンは、プロセスを定量的にすることによって、ウエスタンブロット転写を大幅に改善する。ダイズ茎切片がメンブレン上にインプリントされ、吸着性固相に転写されることを確実にすることによって、ダイズ茎切片のどの組織が形質転換された導入遺伝子を含むかを調べるための定量的研究を行うことが可能となる。
タンパク質を転写するための別の方法は、エレクトロブロッティングと呼ばれ、茎切片からメンブレン上にタンパク質を引き寄せるために電流を使用する。エレクトロブロッティングのための装置は、市販されている。タンパク質は、ゲル内で有していた組織を維持しながら、茎切片内からメンブレン上に移動する。この「ブロッティング」プロセスの結果として、タンパク質は、検出のために薄い表面層上に露出される。その非特異的タンパク質結合特性(すなわち、すべてのタンパク質と等しく十分に結合する)のために、第2の、吸収性両方のメンブレンが選択される。タンパク質結合は、メンブレンとタンパク質の間の疎水性相互作用ならびに帯電相互作用に基づいている。
ゲルからメンブレンへのタンパク質の転写の均一性および全体的な有効性は、メンブレンをクマシーまたはポンソーS色素またはその他の色素で染色することによって調べられ得る。ポンソーSの水溶解度が、メンブレンをその後脱染し、プロービングすることをより容易にするものの、2種のうち、クマシーのほうがより感度が高い。
メンブレンは、タンパク質と結合するその能力のために選択されており、抗体および標的は両方ともタンパク質であるので、標的タンパク質の検出のために使用されるメンブレンと抗体間の相互作用を防ぐためにステップが行われなければならない。非特異的結合のブロッキングは、メンブレンを、わずかなパーセンテージのTWEEN(登録商標)20などの界面活性剤を有する、タンパク質、通常、ウシ血清アルブミン(BSA)または脱脂粉乳の希釈溶液中に入れることによって達成される。希釈溶液中のタンパク質は、標的タンパク質が接着していなかったすべての場所でメンブレンと接着する。したがって、抗体が添加されると、メンブレン上に、それが、特異的標的タンパク質の結合部位上以外に接着する場所がない。これによって、ウエスタンブロットの最終生成物中の「ノイズ」が低減し、より明確な結果につながり、誤検出を排除する。
本明細書において、用語「標識」および「タグ」とは、検出可能なシグナルを付与し得る物質を指し、それだけには限らないが、アルカリホスファターゼ、グルコース−6リン酸デヒドロゲナーゼおよびセイヨウワサビペルオキシダーゼなどの酵素、リボザイム、QBレプリカーゼなどのレプリカーゼの基質、プロモーター、色素、フルオレセイン、イソチオシアネート(isothiocynate)、ローダミン化合物、フィコエリトリン、フィコシアニン、アロフィコシアニン、o−フタルデヒドおよびフルオレサミンなどの蛍光物質、イソルミノールなどの化学発光物質、増感剤、補酵素、酵素基質、放射標識、ラテックスまたは炭素粒子などの粒子、リポソーム、色素、触媒またはその他の検出可能な基でさらに標識され得る細胞などが挙げられる。
吸着性メンブレンに転写されたタンパク質は、種々の従来技術を使用して検出され得る。好ましい検出技術は、特定のポリペプチドに特異的な抗体を使用する。一次抗体は、いくつかの技術のうちいずれか1種を使用して検出され得る。特異的抗体−抗原相互作用を検出するための種々の方法が、当技術分野で公知であり、それだけには限らないが、標準免疫組織学的方法、免疫沈降、酵素イムノアッセイおよびラジオイムノアッセイを含めた方法において使用され得る。一般に、ポリペプチド特異的抗体は、直接的または間接的のいずれかで検出可能に標識される。直接標識として、放射性同位元素、その生成物が検出可能である酵素(例えば、ルシフェラーゼ、β−ガラクトシダーゼなど)、蛍光標識(例えば、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、フィコエリトリンなど)、EDTAなどの金属キレート基によって抗体に結合している蛍光発光金属、例えば、152Euまたはランタニドシリーズのその他のもの、化学発光化合物、例えば、ルミノール、イソルミノール、アクリジニウム塩など、生物発光化合物、例えば、ルシフェリンおよびエクオリン(緑色蛍光タンパク質)が挙げられる。
転写されたタンパク質を含有する吸着性メンブレンは、次いで、適したバッファーで洗浄され、続いて、検出可能に標識されたポリペプチド特異的抗体と接触される。検出方法は、当技術分野で公知であり、検出可能な標識によって発光されるシグナルに適当なように選択される。検出は、一般に、適した対照との、および適当な標準との比較で達成される。
一実施形態では、生殖系列および非生殖系列ダイズ形質転換体を同定するために、ダイズ茎切片の組織プリンティングのためにウエスタンブロッティングが利用され得る。生殖系列ダイズ形質転換体は、その他の標識の抗体を用いる検出後にメンブレン上にもたらされる「ドットパターン」によって同定され得る。ドットパターンは、固体で満たされた円としてメンブレン上に現れる。比較上、非生殖系列ダイズ形質転換体は、抗体またはその他の標識を用いる検出後にメンブレン上にもたらされる「リングパターン」によって同定され得る。リングパターンは、円形の線としてメンブレン上に現れる。リングパターンの中心は、抗体またはその他の標識からのシグナルを欠いている。
したがって、「ドットパターン」は、コア組織(L2およびL3層)において導入遺伝子を用いて形質転換され、生殖系列ダイズ形質転換体をもたらすダイズ植物茎を示す。比較上、「リングパターン」は、マントル組織(L1層)において導入遺伝子を用いて形質転換され、非生殖系列ダイズ形質転換体をもたらすダイズ植物茎を示す。
本発明の実施形態は、以下の実施例においてさらに定義される。これらの実施例は、単に例示目的で与えられるということは理解されなくてはならない。上記の考察およびこれらの実施例から、当業者ならば、本発明の本質的な特徴を確認でき、その趣旨および範囲から逸脱することなく、種々の使用および条件に適応させるために本発明の実施形態の種々の変法および修飾を行うことができる。したがって、本明細書において示され、記載されるものに加えて、本発明の実施形態の種々の修飾は、以下の記載から当業者に明らかとなる。このような修飾はまた、添付の特許請求の範囲の範囲内にあるものとする。以下は、例示として提供され、本発明の範囲を制限するものではない。
[実施例]
DNA構築物
pDAB9381(図1)と表示される単一のバイナリーベクターを、当技術分野で認識される手順を使用して構築した。pDAB9381は、2つの植物転写単位(PTU)を含有する。第1のPTU(配列番号1)は、ジャガイモ(Solanum tuberosum)、光特異的組織誘導性LS−1遺伝子(ST−LS1イントロン;Genbank受託番号X04753)から単離されたイントロンを含有し、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)オープンリーディングフレーム−23 3’非翻訳領域(AtuORF23 3’UTR; Gelvin SG (1987) TR-based sub-Ti plasmids、欧州特許第222493号)によって終結する、黄色蛍光タンパク質コード配列を駆動する(PhiYFP;Shagin, et al. (2004), GFP-like proteins as ubiquitous metazoan superfamily: evolution of functional features and structural complexity, Molecular Biology and Evolution 21(5):841-850)シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)ユビキチン10プロモーター(AtUbi10プロモーター;J. Callis, et al. (1990), Ubiquitin extension proteins of Arabidopsis thaliana. Structure, localization and expression of their promoters in transgenic tobacco. J. Biol. Chem. 265:12486−12493)からなる。第2のPTU(配列番号2)は、A.ツメファシエンス(tumefaciens)オープンリーディングフレーム−1 3’非翻訳領域(AtuORF1 3’UTR; M.L. Huang et al. (1990), A chromosomal Agrobacterium gene required for effective plant signal transduction, J. Bacteriol. 172:1814-1822)によって終結される、ホスフィノトリシンアセチルトランスフェラーゼコード配列(PAT; W. Wohlleben et al. (1988), Nucleotide seuence of the phosphinothricin N-acetyl-transferase gene from Streptomyces viridochromogenes Tu494 and its expression in Nicotiana tobacum, Gene 70:25-38)を駆動するために使用されるキャッサバ葉脈モザイクウイルスプロモーター(CsVMV プロモーター; B. Verdaguer, et al. (1996), Isolation and expression in transgenic tobacco and rice plants of the cassava vein mosaic (CVMV) promoter, Plant Mol. Biol. 31:1129−1139)からなるイソペンテニルトランスフェラーゼコード配列(ipt CDS;Genbank受託番号X00639.1)内にクローニングした。得られたバイナリーベクターは、視覚的リポーター遺伝子および抗生物質選択マーカー遺伝子を含有しており、続いて、ダイズの形質転換のために使用した。
ダイズの形質転換
ダイズのアグロバクテリウム媒介性形質転換のために2つの方法を使用した。これらの方法は、子葉節形質転換法および分割種子形質転換法を含む。両プロトコールを以下により詳細に記載する。
形質転換法1:アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)によって媒介されるダイズの子葉節形質転換
アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)株EHA105(E. Hood, G. Helmer, R. Fraley, M. Chilton (1986), J. Bacteriol. 168:1291-1301)を、バイナリーベクターpDAB9381を用いてエレクトロポレーションした。抗生物質スペクチノマイシンを含有するYEP培地上で増殖した単離されたコロニーを同定した。単一のコロニーを単離し、制限酵素消化によってpDAB9381バイナリーベクターの存在を確認した。P. Zeng et al. (2004), Plant Cell Rep. 22(7):478-482の改変手順によって、pDAB9381バイナリーベクターを使用して、ダイズ(グリシン・マックス(Glycine max))栽培品種マーベリック(Maverick))のアグロバクテリウム媒介性形質転換を実施した。プロトコールは、選択物質として除草剤グルホシネートを含むよう改変した。さらに、別の改変は、3g/LのPhytagel(Sigma−Aldrich, St. Louis, Mo.)を用いて固化したB5基本培地(Gamborg et al. (1968), Exp. Cell Res. Apr 50(1):151-8)での滅菌ダイズ種子の発芽を含んでいた。プロトコールへの最終改変は、5〜6日齢の実生から調製し、Zhang et al. (1999), The use of glufosinate as a selective agent in Agrobacterium-mediated transfomation of soybean, Plant Cell, Tissue, and Organ Culture 56:37-46によって記載されるようにアグロバクテリウムに感染させた子葉節外植片の使用を用いた。
Zeng et al. (2004)に記載されるように、同時培養を同時培養培地で5日間実施した。シュート開始、シュート伸長および発根培地は、50mg/Lセフォタキシム、50mg/Lチメンチン、50mg/Lバンコマイシンを補給し、3g/LのPhytagelを用いて固化した。次いで、選択されたシュートを発根培地に移した。
形質転換法2:アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)によって媒介されるダイズの分割種子形質転換
以下に記載される分割種子形質転換法は、2012年12月19日に出願された米国仮特許出願番号第61/739,349号により十分に記載されている。手短には、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)株EHA105(Hood et al., 1986)をバイナリーベクターpDAB9381を用いてエレクトロポレーションした。抗生物質スペクチノマイシンを含有するYEP培地で増殖した単離されたコロニーを同定した。単一のコロニーを単離し、制限酵素消化によってpDAB9381バイナリーベクターの存在を確認した。
M. Paz, et al. (2005), Plant Cell Rep. 25:206-213の改変手順によって、pDAB9381バイナリーベクターを使用して、ダイズ(グリシン・マックス((Glycine max))栽培品種マーベリック(Maverick))のアグロバクテリウム媒介性形質転換を実施した。簡単には、成熟したダイズ種子を、塩素ガスを用いて一晩滅菌し、滅菌H2Oを用いて24℃でブラックボックスを使用して暗所で16時間水分を吸収させ、その後、アグロバクテリウム媒介性植物形質転換した。種子をへそに沿って長軸方向切断によって半分に切断して、種子を分割し、種皮を除去した。胚軸を部分的に切除し、あらゆる軸のシュート/芽を子葉節から除去した。
滅菌種子を、pDAB9381バイナリーベクターを保有するアグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)株EHA105中に30分間播種した。次いで、外植片をアグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)株とともに、濾紙で覆った同時培養培地で5日間同時培養させた。5日間の同時培養後、外植片を、100mg/Lチメンチン、200mg/Lセフォタキシムおよび50mg/Lバンコマイシンを含有する液体シュート誘導(SI)培地で洗浄した。次いで、外植片を半固体シュート誘導1(SI−1)培地(SI培地にゲル化剤を添加することによって製造した)で培養し、これでは、ダイズ種子の平坦面を上にし、ダイズ子葉の節の末端を培地中に埋め込んだ。
SI−1培地上、24℃、18時間の明期(80〜90μmole m−2− sec−1の照明)で2週間培養した後、6mg/Lグルホシネートを補給することによってSI−1培地から処方したシュート誘導2(SI−2)培地に外植片を移した。SI−2培地での2週間後、外植片から子葉を除去し、基部に切り目を入れることによって、シュートが発達している外植片を切り出し、シュート伸長(SE)培地に移した。すべてのシュートが再生するまで、培養物を2週間ごとに新鮮SE培地に移した。移動の数は、12〜16週間の期間で6〜8移動で変わった。
上記のダイズ形質転換プロトコールは、生殖系列または非生殖系列形質転換体のいずれかであるトランスジェニックダイズ事象をもたらした。ほとんどの被子植物では、生殖細胞は、L2/L3層細胞から形成されるので、導入遺伝子が、シュート頂端分裂組織のL2/L3層細胞のゲノムDNA中に挿入される場合に、生殖系列ダイズ形質転換体は結果として生じる。生殖系列形質転換体は、導入遺伝子を後代植物(すなわち、T1、T2など)に継承でき、従来の商業的栽培に適している。導入遺伝子が、表層に対して垂直にのみ分裂し、植物の表皮細胞層を形成し得るシュート頂端分裂組織のL1層細胞のみのゲノムDNA中に挿入される場合に、非生殖系列ダイズ形質転換体が結果として生じる。非生殖系列形質転換体は、導入遺伝子を後代植物(すなわち、T1、T2など)に継承せず、そのため、望ましいものではない。次の実施例のセットは、生殖系列形質転換体を同定および進展させるために、また非生殖系列形質転換体を検出し、排除するために使用した新規スクリーニング方法を記載する。
組織プリンティング
2.5cmの長さに達したダイズシュートを、シュート伸長(SE)培地から選択した。きれいな水平方向の切断(横断茎切片)を行って、シュートの基部から茎切片を切り出した。シュートから、およそ0.1〜0.5mmの厚さのダイズ茎切片を切り出し、集めた。単離された茎切片の1つを、ニトロセルロースメンブレン(Bio−Rad, Hercules, CA)の小片上に押し付け、茎横断面の「組織プリント」を形成した。茎切片を、手袋をはめた指からの穏やかな圧力を使用してニトロセルロースメンブレンに対して15秒間押し付けた。このプロセスを、個々のダイズシュートから単離された各茎切片について反復した。ダイズシュートおよびニトロセルロースメンブレン上の対応する茎切片の位置を記録した。さらに、精製PhiYFPタンパク質の1ng/μL保存溶液5μLを、陽性対照としてニトロセルロースメンブレンの右下角に、ニトロセルロースメンブレン上に点を付けた。次いで、ニトロセルロースメンブレンを、室温で10分間風乾させた。最後に、ニトロセルロースメンブレンを脱イオン水中に5分間浸漬し、ウエスタンブロット手順によって分析した。
ウエスタンブロッティングは、ブロッキング溶液(0.05% TWEEN(登録商標)20を含有するリン酸緩衝生理食塩水[PBST]に懸濁した2%ミルク固体)中でニトロセルロースメンブレンを30分間ブロッキングすることによって完了した。次いで、ニトロセルロースメンブレンをPBST中で5分間、2回洗浄した。ニトロセルロースメンブレンを、PBSTに懸濁した2%ミルク固体の溶液中に浸漬し、一次抗体(1μg/mLのポリクローナルウサギ抗PhiYFP(Evrogen, Moscow, Russia)を添加し、混合物を穏やかに振盪しながら室温で60分間インキュベートした。次いで、ニトロセルロースメンブレンをPBST中で5分間、4回洗浄した。ニトロセルロースメンブレンを、PBSTに懸濁した2%ミルク固体の溶液中に浸漬し、二次抗体(PBST中のセイヨウワサビペルオキシダーゼがコンジュゲートしたヤギ抗ウサギIgG(Sigma, St. Louis, MO)を添加し、混合物を穏やかに振盪しながら30分間インキュベートした。次いで、ニトロセルロースメンブレンをPBST中で5分間、4回洗浄した。最後に、ニトロセルロースメンブレンをPBS中で2分間、3回洗浄した。
ペーパータオル上のメンブレンの角を軽くパッティングすることによってニトロセルロースメンブレンから過剰の水分を除去した。ECL Plus(商標)化学発光検出試薬(GE Healthcare, Waukesha, WI)を使用し、製造業者の説明書に従って、抗体結合を検出した。ニトロセルロースメンブレンに結合された抗体から生じた化学発光を、G:Box(商標)ゲルドキュメンテーションおよび解析システム(SynGene, Frederick, MD)を使用して可視化した。10分の曝露時間および「ビニングなし」が、ニトロセルロースメンブレンのG:Box(商標)ドキュメンテーションおよび解析のために使用したパラメータであった。イメージの「ビニングなし」の選択は、解像度を維持し、茎切片組織プリントからのシグナルパターンを正しく同定するために必須であった。
PhiYFP導入遺伝子の機能的に発現するコピーを含有していたダイズシュートは、2つの別個のイメージパターンを有する組織プリントをもたらした。これらのイメージパターンは、「リング」または「ドット」のいずれかとして分類した。図2は、2種の観察されたパターンの画像を示す。リングパターンは、茎切片組織プリントの中心内では化学発光シグナルを欠く、化学発光シグナルの円形の輪郭線からなる中空の円として特性決定される(図2、パネルa)。ドットパターンは、全茎切片組織プリント中の化学発光シグナルからなる中の詰まった円として特性決定される(図2、パネルb)。落射−白色光照明を使用してメンブレンのイメージを撮影し、ダイズ茎切片プリントの位置を、化学発光イメージから得られたパターンと比較した。落射−白色光照明イメージを、化学発光イメージと相関させることによって、茎切片プリントを作製するために使用した特定のダイズシュートが、同定され、リングまたはドットイメージパターンのいずれかとして分類され得る。(図2、パネルcおよびd)。
生殖系列形質転換体であったトランスジェニックダイズ事象は、ドットパターンを有する組織プリントをもたらした。比較上、非生殖系列形質転換体であったトランスジェニックダイズ事象は、リングパターンを有する組織プリントをもたらした。ドットパターンは、導入遺伝子の、L2およびL3層の細胞(分裂して、皮層、脈管構造および髄を形成する)のゲノムDNAへの挿入に起因していた。リングパターンは、導入遺伝子の、L1層細胞(分裂して、表皮細胞層を形成する)のゲノムDNAへの挿入に起因していた。この検出法は、生殖系列ダイズ形質転換体を、非生殖系列ダイズ形質転換体から区別するために使用され得る。生殖系列形質転換体の同定を可能にする方法は、導入遺伝子を後代植物に継承できるトランスジェニック事象が、形質転換プロセス内で早期に同定され、それによって、形質転換プロセスを通して進展されなければならないトランスジェニック事象の総数が低減されるので望ましいものである。生殖系列形質転換体(インプリントされたダイズ茎切片が「ドット」パターンをもたらす)の早期同定の結果、より効率的なダイズ形質転換パイプラインが得られる。
共焦点顕微鏡
共焦点顕微鏡を使用して、第2の切り出されたダイズ茎切片を撮像した。これらの茎切片をガラスカバーガラスにのせ、Leica SP5共焦点顕微鏡(Wetzlar, Germany)を用いて観察した。茎切片は、アルゴンイオンレーザーの514nmラインを用いて照射した。ダイズ茎切片サンプルにおいて発現されたPhiYFPタンパク質の発光データを、530〜540nmの間で集めた。
概して、ダイズ茎サンプルからのPhiYFPタンパク質発現の蛍光パターンは、3種のクラス:a)蛍光なし;b)分裂組織のL1層(表皮層)に由来する組織の蛍光およびc)分裂組織のL2/L3層(皮層、維管束組織および髄)に由来す蛍光組織のうち1種に分類された。ダイズ茎サンプルから得られた3種の蛍光パターンのクラスの例が、図3に示されている。生殖系列(L2/L3層)形質転換体であったトランスジェニックダイズ事象は、茎の皮層、維管束組織および髄における蛍光をもたらした。導入遺伝子の、L2/L3層の細胞のゲノムDNAへの挿入に起因する蛍光は、茎の皮層、維管束組織および髄内のPhiYFPタンパク質の発現を観察することによって同定され得る。比較上、非生殖系列(L1層)形質転換体であったトランスジェニックダイズ事象は、表皮細胞のみにおける蛍光をもたらした。導入遺伝子の、L1層の細胞のゲノムDNAへの挿入に起因する蛍光は、茎の表皮細胞内のPhiYFPタンパク質の発現を観察することによって同定され得る。この検出法は、非生殖系列ダイズ形質転換体から生殖系列ダイズ形質転換体を同定するために使用され得る。生殖系列形質転換体の同定は、導入遺伝子を後代植物に継承できるトランスジェニック事象が、形質転換プロセス内で早期に同定され、それによって、形質転換プロセスを通して進展されなければならないトランスジェニック事象の総数が低減されるので望ましいものである。生殖系列形質転換体の早期同定の結果、より効率的なダイズ形質転換パイプラインが得られる。
共焦点顕微鏡観察結果と組織プリンティング結果の相関
ドットイメージパターンをもたらした茎切片の組織プリンティングから得られた結果は、茎の皮層、維管束組織および髄内でPhiYFPを発現した茎切片の共焦点顕微鏡観察結果と相関するとわかった。共焦点顕微鏡観察結果において皮層発現を示すダイズシュートサンプルの85%(7のうち6)がまた、導入遺伝子がL2/L3層のゲノムDNAに挿入されたことを示すドットイメージパターンを示した。そのようなものとして、これらのダイズシュートサンプルは、生殖系列形質転換体と表示され、ダイズ形質転換プロセスを通して進展され得る。共焦点顕微鏡によって観察されるように、組織プリンティングについてリングイメージパターンをもたらした茎切片と比較して、表皮細胞層内にPhiYFPを発現した茎切片(L1層形質転換体)間には相関はあまりなかった(29%)。PhiYFPタンパク質が表皮細胞層内のみで発現していると共焦点顕微鏡結果が示したいくつかのダイズシュート(L1層形質転換体)について、組織プリンティング法がリングイメージパターンをもたらさなかったので、このパーセンテージは低い。しかし、組織プリンティング結果は、組織プリンティング手順において観察されたリングパターンが、共焦点顕微鏡によって表皮発現として確認されなかった1つの偽陰性結果を単に示しただけである。共焦点顕微鏡によって観察されるような表皮細胞層内でPhiYFPを発現した茎切片と比較した、組織プリンティングについてリングイメージパターンをもたらした茎切片間の相関は、組織プリンティング法を改変して、表皮細胞層内のPhiYFP検出の感度を改良することによって改善され得る。しかし、重要なことに、このデータセット中に、共焦点顕微鏡によって皮層発現と相関すると後に見出された組織プリンティング解析においてパターンを観察することに失敗した例はなかった。PhiYFPを発現した茎切片の組織プリンティング解析の結果および共焦点顕微鏡観察結果が、表1に示されている。
T0植物の作製およびT1種子製造
伸長したシュート(3〜5cm)を発根培地に移す前に、シュート節間部の切り出した末端を、1mg/Lインドール3−酪酸に、1〜3分間浸して、発根を促進する(Khan et al. (1994), Agrobacterium-Mediated transformation of Subterranean Clover (Trifolium subterraneum L.), Plant Physiol., May 105(1):81-88)。発根培地を含有する25×100mmガラス培養チューブ中で根を発生したダイズシュートを、開放Magentaボックス中の土壌混合物に移し、小植物の順化のためにConviron(商標)内に入れた。シュート開始および伸長の間の選択のために、グルホシネート、Liberty除草剤(Bayer Crop Science)の有効成分を使用した。発根した小植物を、開放Magentaボックス中で数週間順化させ、その後、それらを分子的にスクリーニングし、さらなる順化および確立のために温室に移した。得られたトランスジェニックダイズ植物を、温室中で栽培し、T1種子製造のために自家受精させた。
加水分解およびqPCRによる形質転換体の分子的特性決定
pDAB9381を用いて形質転換したダイズ形質転換体のゲノム内の導入遺伝子の存在を確認した。ダイズ形質転換体を、まず、TAQMAN(商標)に類似した加水分解プローブアッセイによってスクリーニングして、patおよびyfp導入遺伝子の存在を確認した。ダイズ形質転換体をスクリーニングして、植物染色体内の導入遺伝子の存在を確認し、コピー数を推定した。
加水分解プローブアッセイ
後述する加水分解プローブアッセイを用いて、T0とT1グリシン・マックス(Glycine max)植物体におけるコピー数を決定した。様々な数の導入遺伝子を有する植物を同定した。
穴あけ器を使用して組織サンプルを集め、96ウェルプレートに入れた。T0グリシン・マックス(Glycine max)植物体における形質転換キメラ化に対応するために、各植物の十分に広がった一番上の葉および十分に広がった一番下の葉から得た組織サンプルを選択して、別個に分析した。Agilent BioCel (Agilent, Santa Clara, CA)およびQiagen MagAttract DNA単離キット(商標)(Qiagen, Germantown, MD)を使用して、ハイスループット形式でゲノムDNAを単離した。加水分解プローブアッセイを実施し、PATv6の導入遺伝子コピー数およびYFPの有/無を、LIGHTCYCLER(登録商標)480システム(Roche Applied Science, Indianapolis, IN)を使用するリアルタイムPCRによる、内部参照遺伝子、GMS116との関連で調べた。
PATv6の増幅のために、LIGHTCYCLER(登録商標)480プローブマスターミックス(Roche Applied Science、Indianapolis、IN)は、PATv6用のそれぞれ0.4μMのプライマー、GMS116についてそれぞれ0.4μMのプライマーおよび0.2μMのそれぞれのプローブを含有する10μL体積の多重反応物において1×最終濃度で調製された(表2)。二段階増幅反応は、60℃にて60秒間の伸長を用いて行い、蛍光を得た。すべての試料を実施し、サイクル閾値(Ct)をそれぞれの試料の分析に使用した。リアルタイムPCRデータの分析は、相対的な定量モジュールを用いるLIGHTCYCLER(登録商標)ソフトウェアリリース1.5を使用して行い、ΔΔCt法に基づいている。このために、由来のゲノムDNAの試料と既知の4、2、1、0.5コピー数のチェックをそれぞれの実行に含めた。加水分解プローブスクリーニングのコピー数の結果は、T0およびT1トランスジェニックグリシン・マックス(Glycine max)植物体について決定された。
YFPの増幅のために、LIGHTCYCLER(登録商標)480プローブマスターミックス(Roche Applied Science, Indianapolis, IN)を、10μL容量の、 0.4μMのYFPの各プライマーおよび0.4μMのGMS116の各プライマーおよび0.2μMの各プローブ(表3)を含有するマルチプレックス反応物中、1×最終濃度で調製した。蛍光獲得を伴う60℃で60秒間の伸長を用いる2段階増幅反応を実施した。すべてのサンプルを実施し、各サンプルの解析のためにサイクル閾値(Ct)値を使用した。リアルタイムPCRデータの解析は、相対定量モジュール(relative quant module)を使用し、ΔΔCt法に基づくLIGHTCYCLER(登録商標)ソフトウェアリリース1.5を使用して実施した。このために、各実施において、既知陽性サンプル、プラスミド陽性対照、野生型ゲノムDNA陰性対照および水(増幅なし)対照のサンプルを使用した。加水分解プローブスクリーニングの有/無結果は、T0およびT1トランスジェニックグリシン・マックス(Glycine max)植物体について決定した。
T1分子解析は、T0共焦点顕微鏡および組織インプリンティングデータと相関する
T0シュート切片の共焦点および組織プリンティング結果は、生殖系列形質転換体を同定するために使用され得る。T0シュート切片の共焦点および組織プリンティング結果は、T1後代ダイズ植物体から得られた分子データと相関した。T0およびT1後代植物体からなる合計19のトランスジェニック事象が、表4にまとめられている。T0組織プリンティングデータとT1分子データの間に相関がある。共焦点顕微鏡および組織プリンティング法によってスクリーニングされたダイズ事象のうち、ダイズ事象のうち80%(5のうち4)が、組織プリンティング(事象はドットイメージパターンを有していた)および共焦点顕微鏡(タンパク質の蛍光は、皮層組織において観察された)は、ダイズシュートを発根培地に移す前に、どの事象が生殖系列形質転換体であったかを同定および予測するために植物形質転換プロセスにおいて早期に使用され得ることを実証した。同様に、共焦点顕微鏡および組織プリンティング法は、非生殖系列形質転換体を同定するために使用され得る。ダイズ事象の92%(12のうち11)が、組織プリンティング(事象は、リングまたはイメージなしパターンを有していた)および共焦点顕微鏡(タンパク質の蛍光は、表皮組織において観察された)は、どの事象が、非生殖系列形質転換体であったかを同定および予測するために、植物形質転換プロセスにおいて早期に使用され得ることを実証した。言い換えれば、組織プリンティング解析は、このデータセットにおいて偽陽性結果を返さず、1つの偽陰性結果のみを返した。非生殖系列形質転換体の早期同定は、これらの事象がダイズ形質転換プロセスから除去されることを可能にする。これらの非生殖系列形質転換体を除去することによって、より多くの資源が挿入された導入遺伝子を後代植物体に継承できる生殖系列ダイズ形質転換体に充てられ得る。
本発明の態様は、特定の実施形態において説明されてきたが、それらは、本開示の精神および範囲内でさらに変更されてもよい。したがって、本出願は、その一般原理を用いた本発明の実施形態の任意のバリエーション、用途、または適応をカバーすることを意図している。さらに、本出願は、これらの実施形態が関与し、添付の特許請求の範囲の限定に含まれる当該技術分野における公知または慣行に含まれるように本開示からのこのような逸脱をカバーすることを意図している。