本発明により、切断ドメインと3’または5’ブロッキング基とを有する新規な核酸化合物を提供する。このような化合物により、核酸増幅、検出、ライゲーション、シークエンシングおよび合成のための既存の方法に対する改善がもたらされる。また、このような新規な核酸化合物の使用を含む新しいアッセイ形式も提供する。
用語「核酸」および「オリゴヌクレオチド」は、本明細書で用いる場合、ポリデオキシリボヌクレオチド(2−デオキシ−D−リボースを含むもの)、ポリリボヌクレオチド(D−リボースを含むもの)、およびプリンまたはピリミジン塩基のNグリコシドである任意の他の型のポリヌクレオチドをいう。用語「核酸」、「オリゴヌクレオチド」および「ポリヌクレオチド」間に意図する長さの区別はなく、これらの用語は互換的に用いている。これらの用語は分子の一次構造のみに言及している。従って、これらの用語は、二本鎖および一本鎖のDNAならびに二本鎖および一本鎖のRNAを包含している。また、本発明における使用では、オリゴヌクレオチドは、塩基、糖鎖またはリン酸基主鎖が修飾されているヌクレオチドアナログならびに非プリンまたは非ピリミジンヌクレオチドアナログを含むものであってもよい。
オリゴヌクレオチドは任意の適切な方法によって、例えば、Narang et al.,1979,Meth.Enzymol.68:90−99のホスホトリエステル法;Brown et al.,1979,Meth.Enzymol.68:109−151のホスホジエステル法;Beaucage et al.,1981,Tetrahedron Lett.22:1859−1862のジエチルホスホルアミダイト法;および米国特許第4,458,066号明細書の固相支持体法(各々は参照により本明細書に組み込まれる。)などの方法による直接化学合成によって調製され得る。オリゴヌクレオチドと修飾ヌクレオチドのコンジュゲートの合成方法の総説はGoodchild,1990,Bioconjugate Chemistry 1(3):165−187(参照により本明細書に組み込まれる)に示されている。
用語「プライマー」は、本明細書で用いる場合、適切な条件下でDNA合成の開始点としての機能を果たすことができるオリゴヌクレオチドをいう。かかる条件としては、核酸鎖に相補的なプライマー伸長産物の合成が4種類の異なるヌクレオシド三リン酸および伸長のための薬剤(例えば、DNAポリメラーゼまたは逆転写酵素)の存在下、適切なバッファー中で適切な温度にて誘導されるものが挙げられる。また、プライマー伸長をヌクレオチド三リン酸の1種類以上の非存在下で行ってもよく、この場合、限定的な長さの伸長産物が生成する。本明細書で用いる場合、用語「プライマー」は、第1のオリゴヌクレオチドが、隣接している位置でハイブリダイズする第2のオリゴヌクレオチドとのライゲーションによって「伸長」されるライゲーション媒介性反応に使用されるオリゴヌクレオチドを包含していることを意図する。従って、用語「プライマー伸長」は、本明細書で用いる場合、DNA合成の開始点としてプライマーが使用される個々のヌクレオシド三リン酸の重合と、2種類のオリゴヌクレオチドのライゲーションによる伸長産物の形成の両方をいう。
プライマーは、好ましくは一本鎖DNAである。プライマーの適切な長さはプライマーの意図される用途に依存するが、典型的には6から50ヌクレオチド、好ましくは15から35ヌクレオチドの範囲である。短鎖プライマー分子は、一般的に、鋳型との充分に安定なハイブリッド複合体を形成するために低温が必要とされる。プライマーは鋳型核酸の厳密な配列を反映している必要はないが、鋳型とハイブリダイズするように充分に相補的でなければならない。所与の標的配列の増幅のための適切なプライマーの設計は当該技術分野でよく知られており、本明細書で挙げた文献に記載されている。
プライマーに、プライマーの検出または固定化を可能にするが、DNA合成の開始点としての機能を果たすというプライマーの基本的特性を改変しないさらなる特長を組み込んでもよい。例えば、プライマーの5’末端に、標的核酸にハイブリダイズしないが増幅産物のクローニングまたは検出を容易にするさらなる核酸配列を含有させ得る。ハイブリダイズする鋳型に充分に相補的なプライマー領域を、本明細書においてハイブリダイズ領域と称する。
用語「標的、「標的配列」、「標的領域」および「標的核酸」は、本明細書で用いる場合、同義的であり、核酸の増幅対象、シークエンシング対象または検出対象の領域または配列をいう。
用語「ハイブリダイゼーション」は、本明細書で用いる場合、2本の一本鎖核酸の相補的塩基対合による二本鎖構造の形成をいう。ハイブリダイゼーションは、充分に相補的な核酸鎖間または含まれるミスマッチ領域が微量である「実質的に相補的な」核酸鎖間で起こり得る。充分に相補的な核酸鎖のハイブリダイゼーションが強く好まれる条件は「ストリンジェントハイブリダイゼーション条件」または「配列特異的ハイブリダイゼーション条件」と称される。実質的に相補的な配列の安定な二本鎖は、低ストリンジェントハイブリダイゼーション条件下で得られる場合もあり得;許容されるミスマッチの度合いは、ハイブリダイゼーション条件の適切な調整によって制御され得る。核酸技術分野の当業者は二本鎖の安定性を、幾つかの可変量、例えば、オリゴヌクレオチドの長さおよび塩基対組成、イオン強度、ならびにミスマッチ塩基対の発生率などを考慮し、当該技術分野で手引き(例えば、Sambrook et al.,1989,Molecular Cloning−A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,New York;Wetmur,1991,Critical Review in Biochem.and Mol.Biol.26(3/4):227−259;およびOwczarzy et al.,2008,Biochemistry,47:5336−5353(これらは参照により本明細書に組み込まれる。)参照)に従って経験的に判定することができよう。
用語「増幅反応」は、鋳型核酸配列コピーの増大がもたらされる、または鋳型核酸の転写がもたらされる任意の化学反応、例えば酵素反応をいう。増幅反応としては、逆転写、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、例えば、リアルタイムPCR(米国特許第4,683,195号明細書および同第4,683,202号明細書;PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications(Innis et al.eds,1990)参照)ならびにリガーゼ連鎖反応(LCR)(Barany et al.,米国特許第5,494,810号明細書参照)が挙げられる。例示的な「増幅反応条件」または「増幅条件」は、典型的には2工程サイクルまたは3工程サイクルのいずれかを含むものである。2工程サイクルは、高温変性工程、続いてハイブリダイゼーション/伸長(またはライゲーション)工程を有する。3工程サイクルは、変性工程、続いてハイブリダイゼーション工程、続いて別途の伸長またはライゲーション工程を含む。
本明細書で用いる場合、「ポリメラーゼ」は、ヌクレオチドの重合を触媒する酵素をいう。一般的に、該酵素は合成を、核酸鋳型配列にアニーリングしたプライマーの3’末端から開始させる。「DNAポリメラーゼ」はデオキシリボヌクレオチドの重合を触媒する。既知のDNAポリメラーゼとしては、例えば、ピロコッカス・フリオサス(Pyrococcus furiosus)(Pfu)DNAポリメラーゼ(Lundberg et al.,1991,Gene,108:1)、大腸菌DNAポリメラーゼ I(Lecomte and Doubleday,1983,Nucleic Acids Res.11:7505)、T7 DNAポリメラーゼ(Nordstrom et al.,1981,J.Biol.Chem.256:3112)、サーマス・サーモフィルス(Thermus thermophilus)(Tth)DNAポリメラーゼ(Myers and Gelfand 1991,Biochemistry 30:7661)、バチルス・ステアロテルモフィルス(Bacillus stearothermophilus)DNAポリメラーゼ(Stenesh and McGowan,1977,Biochim Biophys Acta 475:32)、サーモコッカス・リトラリス(Thermococcus litoralis)(Tli)DNAポリメラーゼ(Vent DNAポリメラーゼとも称される、Cariello et al.,1991,Nucleic Acids Res,19:4193)、サーモトガ・マリティマ(Thermotoga maritima)(Tma)DNAポリメラーゼ(Diaz and Sabino,1998 Braz J.Med.Res,31:1239)、テルムス・アクウァーティクス(Thermus aquaticus)(Taq)DNAポリメラーゼ(Chien et al.,1976,J.Bacteoriol,127:1550)、ピロコッカス・コダカラエンシス(Pyrococcus kodakaraensis)KOD DNAポリメラーゼ(Takagi et al.,1997,Appl.Environ.Microbiol.63:4504)、JDF−3 DNAポリメラーゼ(国際公開第0132887号パンフレット)、およびピロコッカス属GB−D(PGB−D)DNAポリメラーゼ(Juncosa−Ginesta et al.,1994,Biotechniques,16:820)が挙げられる。上記の任意の酵素のポリメラーゼ活性は当該技術分野でよく知られた手段によって測定され得る。
本明細書で用いる場合、プライマーは、増幅反応において充分にストリンジェントな条件下で使用したとき、該プライマーが主として標的核酸にハイブリダイズする場合、標的配列に「特異的」である。典型的には、プライマーは、該プライマー−標的間の二本鎖の安定性が試料においてみられる該プライマーと任意の他の配列間で形成される二本鎖の安定性よりも大きい場合、標的配列に特異的である。当業者には、種々の要素、例えば、塩条件ならびにプライマーの塩基組成およびミスマッチの位置がプライマーの特異性に影響を及ぼすこと、および多くの場合で常套的な実験によるプライマーの特異性の確認が必要となることが認識されよう。プライマーが標的配列とのみ安定な二本鎖を形成し得るハイブリダイゼーション条件が選択され得る。従って、適切にストリンジェントな増幅条件での標的特異的プライマーの使用により、標的プライマー結合部位を含む標的配列の選択的な増幅が可能になる。
用語「非特異的増幅」は、本明細書で用いる場合、標的配列以外の核酸配列の増幅をいい、これは、プライマーが標的配列以外の配列にハイブリダイズし、次いでプライマー伸長の基質としての機能を果たすことにより起こる。プライマーの非標的配列とのハイブリダイゼーションは「非特異的ハイブリダイゼーション」と称され、特に、低温、低ストリンジェンシー、予備増幅条件の際、または試料中に一ヌクレオチド多型(SNP)の場合のような真の標的と非常に密接に関連している配列を有するバリアント対立遺伝子が存在する状況で起こりやすい。
用語「3’−ミスマッチ識別」は、充分に相補的な配列をミスマッチ含有(ほぼ相補的な)配列と識別するDNAポリメラーゼの特性をいい、この場合、伸長される核酸(例えば、プライマーまたは他のオリゴヌクレオチド)は、該核酸がハイブリダイズする鋳型と比較すると該核酸の3’末端にミスマッチを有する。一部の実施形態では、伸長される核酸は、充分に相補的な配列と比べて3’末端にミスマッチを含む。
用語「3’−ミスマッチ識別アッセイ」は、それぞれの3’末端またはこの付近に異なる塩基組成を有する1つまたはこれ以上の(one of more)ヌクレオチド残基が存在すること以外は実質的に同一の配列を有する2種類のプライマーを用いて標的DNA配列をインテロゲーションしたとき、標的DNA配列の増幅の特異性の改善の存在(present)を見分けるためのアッセイをいう。例えば、標的DNA配列と完璧な相補性を有する3’末端配列を有する第1のプライマーは3’−マッチプライマーとみなし、標的DNA配列に非相補性の少なくとも1つのヌクレオチド塩基を有する3’末端配列を有する第2のプライマーは3’−ミスマッチプライマーとみなす。3’−ミスマッチ識別アッセイの一例を本実施例の多くに、例えばとりわけ実施例36および37に示している。
用語「プライマーダイマー」は、本明細書で用いる場合、鋳型非依存性の非特異的増幅産物をいい、これは、別のプライマーが鋳型としての機能を果たすプライマー伸長により生じると考えられる。プライマーダイマーは、多くの場合、2つのプライマーのコンカテマー、即ちダイマーであると思われるが、2つより多くのプライマーのコンカテマーも存在する。用語「プライマーダイマー」は、本明細書において一般的に鋳型非依存性の非特異的増幅産物を包含するために用いている。
用語「反応混合物」は、本明細書で用いる場合、所与の反応を行うのに必要な試薬を含む溶液をいう。「増幅反応混合物」は、増幅反応を行うのに必要な試薬を含む溶液をいい、典型的には、オリゴヌクレオチドプライマーとDNAポリメラーゼまたはリガーゼを適切なバッファー中に含むものである。「PCR反応混合物」は、典型的には、オリゴヌクレオチドプライマー、DNAポリメラーゼ(最も典型的には、耐熱性DNAポリメラーゼ)、dNTPおよび二価の金属カチオンを適切なバッファー中に含むものである。反応混合物は、反応が可能であるのに必要なすべての試薬が含まれている場合は完全と称され、必要な試薬の一部しか含まれていない場合は不完全と称される。当業者には、簡便性、保存安定性の理由のため、または成分濃度の用途依存的調整を可能にするために、反応成分は、各々が全成分の一部を含むものである別個の溶液として常套的に保存されること、および反応成分を反応前に合わせて完全な反応混合物となることが理解されよう。さらに、当業者には、反応成分は商品化のために別個にパッケージングされること、および有用な市販のキットは、本発明のブロック型プライマーを含む反応成分の任意の一部を含むものであってもよいことが理解されよう。
本発明の解釈上、用語「非活性化型」または「不活化(される)」は、本明細書で用いる場合、プライマーまたは他のオリゴヌクレオチドが、DNAポリメラーゼまたはDNAリガーゼのいずれかが意図する目的のために該オリゴヌクレオチドと相互作用することができないため、プライマー伸長反応またはライゲーション反応に関与できないことをいう。オリゴヌクレオチドがプライマーである一部の実施形態では、非活性化型状態は、プライマー伸長が抑制されるように該プライマーが3’末端またはこの付近でブロックされるため起こる。特定の基をプライマーの3’末端またはこの付近に結合させた場合、DNAポリメラーゼはプライマーに結合することができず、伸長は起こり得ない。しかしながら、非活性化型プライマーは、実質的に相補的なヌクレオチド配列にハイブリダイズできる。
本発明の解釈上、用語「活性化(される)」は、本明細書で用いる場合、プライマーまたは他のオリゴヌクレオチドがDNAポリメラーゼまたはDNAリガーゼとの反応に関与することができることをいう。プライマーまたは他のオリゴヌクレオチドは、実質的に相補核酸配列にハイブリダイズし、DNAポリメラーゼまたはDNAリガーゼと相互作用することができるように切断されて機能性の3’末端または5’末端が生じた後、活性化状態になる。例えば、オリゴヌクレオチドがプライマーである場合、プライマーは鋳型にハイブリダイズし、3’−ブロッキング基は該プライマーから例えば切断酵素によって除去され得、この結果、DNAポリメラーゼがプライマーの3’末端に結合してプライマー伸長を促進させることができるようになる。
用語「切断ドメイン」または「切断性ドメイン」は、本明細書で用いる場合、同義的であり、プライマーまたは他のオリゴヌクレオチドの5’末端と3’末端間に存在し、該プライマーまたは他のオリゴヌクレオチドを切断する切断化合物、例えば切断酵素によって認識される領域をいう。本発明の解釈上、切断ドメインは、プライマーまたは他のオリゴヌクレオチドが相補核酸配列にハイブリダイズした場合のみ切断されるが一本鎖である場合は切断されないように設計される。切断ドメインまたはこれにフランキングする配列は、a)ポリメラーゼもしくはリガーゼによるプライマーもしくは他のオリゴヌクレオチドの伸長もしくはライゲーションを妨げる、もしくは阻害する、b)バリアント対立遺伝子を検出するための識別を向上させる、またはc)所望のものでない切断反応を抑制する部分を含むものであり得る。1つ以上のかかる部分を切断ドメインまたはこれにフランキングする配列に含めてもよい。
用語「RNase H切断ドメイン」は、本明細書で用いる場合、1つ以上のリボ核酸残基またはRNase Hに対する基質を供給する代替的なアナログを含む型の切断ドメインである。RNase H切断ドメインは、プライマーまたはオリゴヌクレオチド内のどこに位置してもよく、好ましくは、該分子の3’末端もしくは5’末端またはこの付近に位置する。
「RNase H1切断ドメイン」は、一般的に少なくとも3つの残基を含むものである。「RNase H2切断ドメイン」は、1つのRNA残基、連続的に連結しているRNA残基の配列またはDNA残基もしくは他の化学基によって分離されたRNA残基の配列を含むものであり得る。一実施形態において、RNase H2切断ドメインは2’−フルオロヌクレオシド残基である。より好ましい一実施形態では、RNase H2切断性ドメインは隣接している2つの2’−フルオロ残基である。
用語「切断化合物」または「切断剤」は、本明細書で用いる場合、プライマーまたは他のオリゴヌクレオチド内の切断ドメインを認識し、該切断ドメインの存在に基づいて該オリゴヌクレオチドを選択的に切断することができる任意の化合物をいう。本発明に使用される切断化合物は、実質的に相補核酸配列にハイブリダイズした場合は切断ドメインを含むプライマーまたは他のオリゴヌクレオチドのみを選択的に切断するが、プライマーまたは他のオリゴヌクレオチドが一本鎖である場合は切断しないものである。切断化合物は、プライマーまたは他のオリゴヌクレオチドを、切断ドメイン内で、または切断ドメインに隣接して切断する。用語「隣接して」は、本明細書で用いる場合、切断化合物がプライマーまたは他のオリゴヌクレオチドを切断ドメインの5’末端または3’末端のいずれかで切断することを意味する。本発明において好ましい切断反応では、5’−リン酸基と3’−OH基がもたらされる。
好ましい一実施形態では、切断化合物は「切断酵素」である。切断酵素は、プライマーまたは他のヌクレオチドが実質的に相補核酸配列にハイブリダイズすると切断性ドメインを認識し得るが、相補核酸配列を切断しない(即ち、二本鎖において単一の鎖の破壊をもたらす)タンパク質またはリボザイムである。また、切断酵素は、切断ドメインを含むプライマーまたは他のオリゴヌクレオチドが一本鎖である場合も、これを切断しない。切断酵素の例はRNase H酵素および他のニッキング酵素である。
用語「ニッキング」は、本明細書で用いる場合、完全にまたは一部が二本鎖の核酸の二本鎖部分の一方の鎖のみの切断をいう。核酸がニックされる位置は「ニッキング部位」(NS)と称される。「ニッキング剤」(NA)は、一部または完全に二本鎖の核酸をニックする薬剤である。これは、酵素または任意の他の化学物質の化合物もしくは組成物であり得る。一部の特定の実施形態では、ニッキング剤は、完全にまたは一部が二本鎖の核酸の特定のヌクレオチド配列を認識し、該完全にまたは一部が二本鎖の核酸の一方の鎖のみを、認識配列の位置に対して特定の位置(即ち、NS)で切断するものであり得る。かかるニッキング剤(「配列特異的ニッキング剤」と称される。)としては、限定されないが、ニッキングエンドヌクレアーゼ(例えば、N.BstNB)が挙げられる。
「ニッキングエンドヌクレアーゼ」(NE)は、本明細書で用いる場合、従って、完全にまたは一部が二本鎖の核酸分子のヌクレオチド配列を認識し、該核酸分子の一方の鎖のみを認識配列に対して特定の位置で切断するエンドヌクレアーゼをいう。かかる場合では、認識部位から切断点までの配列全体が「切断ドメイン」を構成する。
用語「ブロッキング基」は、本明細書で用いる場合、プライマーまたは他のオリゴヌクレオチドに増幅反応が起こらないように結合される化学部分をいう。例えば、プライマー伸長および/またはDNAライゲーションが起こらない。ブロッキング基がプライマーまたは他のオリゴヌクレオチドから除去されたら、該オリゴヌクレオチドは、設計されたアッセイ(PCR、ライゲーション、シークエンシングなど)に関与することができる。従って、「ブロッキング基」は、ポリメラーゼまたはDNAリガーゼによる認識を阻害する任意の化学部分であり得る。ブロッキング基は切断ドメイン内に組み込んでもよいが、一般的には切断ドメインの5’側または3’側のいずれかに位置する。ブロッキング基は1つより多くの化学部分で構成されていてもよい。本発明において、「ブロッキング基」は典型的には、オリゴヌクレオチドがこの標的配列にハイブリダイゼーションした後に除去される。
用語「蛍光発生プローブ」は、a)フルオロフォアおよびクエンチャーが結合されており、場合により、副溝結合部が結合されているオリゴヌクレオチド、またはb)DNA結合試薬、例えばSYBR(R)Green色素のいずれかをいう。
用語「蛍光標識」または「フルオロフォア」は、約350から900nmの最大蛍光放射を有する化合物をいう。多種多様なフルオロフォアが使用され得、限定されないが:5−FAM(5−カルボキシフルオレセインとも称される;スピロ(イソベンゾフラン−1(3H)、9’−(9H)キサンテン)−5−カルボン酸、3’,6’−ジヒドロキシ−3−オキソ−6−カルボキシフルオレセインとも称される。);5−ヘキサクロロ−フルオレセイン;([4,7,2’,4’,5’,7’−ヘキサクロロ−(3’,6’−ジピバロイル−フルオレセイニル)−6−カルボン酸]);6−ヘキサクロロ−フルオレセイン;([4,7,2’,4’,5’,7’−ヘキサクロロ−(3’,6’−ジピバロイルフルオレセイニル)−5−カルボン酸]);5−テトラクロロ−フルオレセイン;([4,7,2’,7’−テトラ−クロロ−(3’,6’−ジピバロイルフルオレセイニル)−5−カルボン酸]);6−テトラクロロ−フルオレセイン;([4,7,2’,7’−テトラクロロ−(3’,6’−ジピバロイルフルオレセイニル)−6−カルボン酸]);5−TAMRA(5−カルボキシテトラメチルローダミン);キサンチリウム、9−(2,4−ジカルボキシフェニル)−3,6−ビス(ジメチル−アミノ);6−TAMRA(6−カルボキシテトラメチルローダミン);9−(2,5−ジカルボキシフェニル)−3,6−ビス(ジメチルアミノ);EDANS(5−((2−アミノエチル)アミノ)ナフタレン−1−スルホン酸);1,5−IAEDANS(5−((((2−ヨードアセチル)アミノ)エチル)アミノ)ナフタレン−1−スルホン酸);Cy5(インドジカルボシアニン−5);Cy3(インド−ジカルボシアニン−3);およびBODIPY FL(2,6−ジブロモ−4,4−ジフルオロ−5,7−ジメチル−4−ボラ−3a,4a−ジアザ−s−インダセン−3−プロピオン酸);Quasar(R)−670色素(Biosearch Technologies);Cal Fluor(R)Orange色素(Biosearch Technologies);Rox色素;Max色素(Integrated DNA Technologies)、ならびにこの適切な誘導体が挙げられる。
本明細書で用いる場合、用語「クエンチャー」は、蛍光ドナーに結合または近接すると該ドナーからの放射を低減させ得る分子または化合物の一部分をいう。クエンチングは、幾つかの任意の機構によって、例えば、蛍光共鳴エネルギー移動、光誘導型電子移動、項間交差の常磁性促進、デクスター交換結合、および励起子結合、例えば暗複合体(dark complex)の形成によって行われ得る。蛍光は、フルオロフォアによって放射された蛍光がクエンチャーの非存在下での蛍光と比べて少なくとも10%、例えば、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%、99%、99.9%またはそれ以上低減されている場合、「クエンチ」されている。幾つかの市販のクエンチャーが当該技術分野で知られており、限定されないが、DABCYL、Black Hole(商標)クエンチャー(BHQ−1、BHQ−2およびBHQ−3)、Iowa Black(R)FQおよびIowa Black(R)RQが挙げられる。これらはいわゆるダーククエンチャーである。これらは内在性の蛍光を有しておらず、事実上、内因的に蛍光性である他のクエンチャー(TAMRAなど)で見られるバックグラウンドの問題が解消される。
用語「ライゲーション」は、本明細書で用いる場合、2つのポリヌクレオチド末端の共有結合をいう。種々の実施形態において、ライゲーションは、第1のポリヌクレオチド(アクセプター)の3’末端と第2のポリヌクレオチド(ドナー)の5’末端との共有結合を伴う。ライゲーションにより、ポリヌクレオチド末端間にホスホジエステル結合の形成がもたらされる。種々の実施形態において、ライゲーションは、ポリヌクレオチド末端同士の共有結合をもたらす任意の酵素、化学物質または工程によって媒介され得る。一部の特定の実施形態では、ライゲーションはリガーゼ酵素によって媒介される。
本明細書で用いる場合、「リガーゼ」は、第1のポリヌクレオチドの3’ヒドロキシル基を第2のポリヌクレオチドの5’リン酸基に共有結合させ得る酵素をいう。リガーゼの例としては、大腸菌DNAリガーゼ、T4 DNAリガーゼなどが挙げられる。
ライゲーション反応はDNA増幅法において、例えば「リガーゼ連鎖反応」(LCR)(「リガーゼ 増幅反応」(LAR)とも称される、Barany,Proc.Natl.Acad.Sci.,88:189(1991);およびWu and Wallace,Genomics 4:560(1989)(参照により本明細書に組み込まれる。)参照)において使用され得る。LCRでは、隣接している2種類のオリゴヌクレオチド(これは、独自に標的DNAの一方の鎖にハイブリダイズする。)と相補的な一組の隣接しているオリゴヌクレオチド(これは、反対側の鎖にハイブリダイズする。)の4種類のオリゴヌクレオチドを混合し、DNAリガーゼをこの混合物に添加する。標的配列の存在下では、DNAリガーゼは、ハイブリダイズした分子の組の各々を共有結合させる。重要なことに、LCRでは、2種類のオリゴヌクレオチドはギャップがない配列と塩基対合した場合のみ互いにライゲーションされる。変性、ハイブリダイゼーションおよびライゲーションの反復サイクルによりDNAの短鎖セグメントが増幅される。隣接しているオリゴヌクレオチド間の連結部におけるミスマッチはライゲーションを阻害する。他のオリゴヌクレオチドライゲーションアッセイと同様、この特性により、LCRを、SNPなどのバリアント対立遺伝子間の識別に使用することが可能になる。また、LCRは、一塩基変化の検出の向上を得るためにPCRと併用して使用されている。Segev、国際公開第9001069号パンフレット(1990)参照。
伸長を抑制するためにオリゴヌクレオチド(例えば、プライマー)の3’末端またはこの付近に位置し得る幾つかのブロッキング基が当該技術分野で知られている。プライマーまたは他のオリゴヌクレオチドは、DNA合成の開始を抑制または阻害するために3’末端ヌクレオチドが、例えば、3’デオキシリボヌクレオチド残基(例えば、コルジセピン)、2’,3’−ジデオキシリボヌクレオチド残基、非ヌクレオチド結合またはアルカン−ジオール修飾(米国特許第5,554,516号明細書)の付加によって修飾され得る。また、プライマー伸長を阻害またはブロックするために使用され得るアルカンジオール修飾は、Wilk et al.,(1990,Nucleic Acids Res.,18(8):2065)およびArnold et al.,(米国特許第6,031,091号明細書)にも記載されている。適切なブロッキング基のさらなる例としては、3’ヒドロキシル置換(例えば、3’−リン酸、3’−三リン酸または3’−リン酸ジエステルのアルコール、例えば3−ヒドロキシプロピルでの)、末端RNA塩基の2’3’環状リン酸、2’ヒドロキシル置換(例えば、リン酸または立体的にバルキーな基、例えばトリイソプロピルシリル(TIPS)またはtert−ブチルジメチルシリル(TBDMS))が挙げられる。オリゴヌクレオチドの3’末端の2’−アルキルシリル基、例えばTIPSおよびTBDMSでの置換は、Laikhter et al.、米国特許出願第11/686,894号明細書(これは参照により本明細書に組み込まれる。)に記載されている。また、バルキー置換基をオリゴヌクレオチドの3’末端残基の塩基に組み込み、プライマー伸長をブロックしてもよい。
また、プライマー伸長を阻害するためのブロッキング基を上流に、即ち3’末端残基の5’側に位置してもよい。ポリメラーゼによる結合を障害する立体的にバルキーな置換基は、3’末端の上流の残基の塩基、糖鎖またはリン酸基に組み込まれ得る。かかる置換基としては、バルキーアルキル基(t−ブチル、トリイソプロピルなど)ならびにポリ芳香族化合物(例えば、フルオロフォアおよびクエンチャー)が挙げられ、3’末端から1から約10残基に位置し得る。あるいは、C3スペーサーなどの無塩基残基がこのような位置に、プライマー伸長をブロックするために組み込まれ得る。かかる一実施形態では、隣接している2つのC3スペーサーが使用されている(実施例27および28参照)。
PCRの場合、3’末端残基の上流のブロック部分は、2つの機能を果たし得る:1)プライマー伸長を阻害し得る、および2)伸長産物がリバースプライマーからの合成によってコピーされる場合、プライマーがDNA合成の鋳型としての機能を果たすことをブロックし得る。後者は、プライマー伸長が起こり得る場合であってもPCRがブロックされるのに充分なものである。3’末端残基の上流に位置するC3スペーサーはこの様式で機能を果たし得る(実施例26および27参照)。
オリゴヌクレオチドは、さらに、プライマー伸長を阻害するために使用されるブロッキング基の上流に位置する切断ドメインを含む。RNase H切断ドメインが好ましい。単一のRNA残基または1つ以上の代替的なヌクレオシドでのRNA塩基の置換えを含むRNase H2切断ドメインが最も好ましい。
一実施形態において、RNase H2は、単一の2’−フルオロ残基を含む二本鎖を切断するために使用され得る。切断は、2’−フルオロ残基の5’側で起こる。好ましい一実施形態では、隣接している2つの2’−フルオロ残基を含むRNase H2切断ドメインが使用される(実施例6参照)。連続する2つの2’−フルオロ修飾が存在する場合、活性が向上する。この実施形態では、切断は、2’−フルオロ残基間で優先的に起こる。未修飾のRNA残基を含むオリゴヌクレオチドとは異なり、2’−フルオロ基を有するオリゴヌクレオチドは一本鎖リボヌクレアーゼによって切断されず、水触媒性切断に抵抗性であり、高温で完全に安定である。また、切断の向上は、2’−フルオロ修飾RNA残基を2’LNA 修飾RNA残基とともに使用した場合にも観察されている。2’−フルオロ含有オリゴヌクレオチドは特定の用途において、RNA含有オリゴヌクレオチドと比べ、オリゴヌクレオチドと標的配列間のミスマッチに関してより大きな識別をもたらすことにおいてさらに好都合であることがわかった。
切断がan RNase H酵素によって媒介される本発明において使用され得るRNA残基の代替物としては、限定されないが、2’−O−アルキルRNAヌクレオシド、好ましくは、2’−O−メチルRNAヌクレオシド、2’−フルオロヌクレオシド、ロックド核酸(LNA)、2’−ENA残基(エチレン核酸)、2’−アルキルヌクレオシド、2’−アミノヌクレオシドおよび2’−チオヌクレオシドが挙げられる。RNase H切断ドメインは、このような修飾残基の1つ以上を単独で含むものであってもRNA塩基との組合せで含むものであってもよい。また、より大きな性能を得るためにDNA塩基および無塩基残基(C3スペーサーなど)を含めてもよい。
切断剤がRNase H1 酵素である場合、少なくとも3つのRNA残基の連続配列が好ましい。一般的に4つのRNA残基の連続配列で最大活性がもたらされる。切断剤がRNase H2酵素である場合、単一のRNA残基または2つの隣接している2’−フルオロ残基が好ましい。
修飾残基をRNase H切断ドメイン内に組み込むことの目的の1つは、水触媒性加水分解または一本鎖リボヌクレアーゼによる切断に起因するプライマーまたはプローブのバックグラウンド切断を抑制することである。2’−ヒドロキシル基を、RNA残基の隣接しているリン酸基が攻撃され得ない置換基で置き換えることによってこの目的が達成される。このアプローチの例としては、上記の2’置換ヌクレオシド、例えば2’−フルオロおよび2’−O−メチルヌクレオシドの使用が挙げられる。これは、切断がRNase H2によって媒介され、切断ドメイン内に単一のRNA残基が存在する場合、特に好都合である。図3に示すように、この場合、一本鎖リボヌクレアーゼによる切断または水触媒性加水分解はRNase H2による切断と異なる位置で起こる。
RNA残基の一本鎖リボヌクレアーゼによる切断および水触媒性加水分解を抑制するために使用され得る修飾の他の例としては、隣接している該残基(RNA塩基の3’側)の5’酸素原子のアミノ基、チオール基またはメチレン基(ホスホネート結合)での置換が挙げられる。あるいは、隣接している該残基の5’炭素上の水素原子の一方または両方がメチル基などのよりバルキーな置換基で、リボヌクレオチド残基のバックグラウンド切断を抑制するために置き換えられ得る。別のかかる実施形態では、RNA残基の3’側のリン酸基がホスホロチオエート、ホスホロジチオエートまたはボロネート結合で置き換えられ得る。ホスホロチオエートの場合、S立体異性体が好ましい。また、このような種々の修飾の組合せも使用され得る。
一本鎖リボヌクレアーゼまたは水触媒性加水分解によるRNA残基でのバックグラウンド切断によりブロックされた3’末端(図3参照)がもたらされ、これはDNA合成のためのプライマーとして機能を果たすことができないことに注意されたい。これにより、かかる切断が起こったとしても偽陽性結果の発生が緩和される。
切断ドメイン内にブロッキング基を含めてもよいが、切断がブロッキング基の5’側で起こり、遊離の3’−OHが生成するものとする。しかしながら一般的には、切断ドメインとブロッキング基は1から約15塩基離す。切断が起こった後、切断部位の3’側のブロッキング基を含むプライマー部分が鋳型から解離し、機能性の3’−ヒドロキシル基が露出し、ポリメラーゼ酵素による作用を受けることができる。切断部位とブロッキング基間の最適な距離は切断剤およびブロッキング基の性質に依存する。オリゴヌクレオチドの切断が単一のRNA残基においてRNase H2によって媒介される場合、切断部位とブロッキング基間は3から約8塩基の距離が好ましい。ブロッキング基が立体的に小さい場合、例えば、下記の構造
好ましい一実施形態では、好熱菌由来RNase H2酵素がオリゴヌクレオチドの切断に使用される。なおより好ましい一実施形態では、室温では高温よりも活性が低い好熱菌由来RNase H2酵素が使用される。これにより、ホットスタート型の反応を、PCRおよび他のプライマー伸長アッセイにおいて本発明のブロック型プライマーを用いて、実際にホットスタート、即ち可逆的に不活化されるDNAポリメラーゼを必要とすることなく行うことが可能になる。標準的なあまり高価でないTaqポリメラーゼなどのDNAポリメラーゼポリメラーゼを、ずっとより高価なホットスタートバージョンの酵素の代わりに使用することができる。さらに、種々の用途では、代替的なDNAポリメラーゼが好ましい場合があり得る。RNase Hをアッセイのホットスタート成分として使用すると、異なる各DNAポリメラーゼの可逆的に不活化される新たなアナログを開発する必要性がなくなる。
該酵素のホットスタート特性はPyrococcus abysii RNase H2の場合のようにタンパク質に内因性であってもよい(実施例4参照)。あるいは、該酵素は、例えば、マレイン酸無水物の類似体(無水シトラコン(citroconic)酸など)を用いた化学修飾によって可逆的に不活化されるものであってもよい。このような化合物は、タンパク質のアミノ基と反応し、高温で放出され、活性が回復する。また別の実施形態では、RNase Hに対する抗体が使用され得、該抗体は該酵素をブロックするものであり、高温で変性される。
また別の実施形態では、本発明のオリゴヌクレオチドは、ニッキング剤、例えばニッキング酵素に特異的な配列によって認識されて切断される切断ドメインを有する。また、ニッキング剤は、オリゴヌクレオチド(例えば、プライマー)を修飾核酸または修飾核酸群において切断するように設計され得る。この実施形態では、オリゴヌクレオチドは、標的核酸とハイブリダイゼーションするとニッキング剤によって認識されるように設計されており、オリゴヌクレオチド/標的二本鎖のニッキングは、ブロッキング基を除去し、オリゴヌクレオチドの伸長を可能にするために使用され得る。ニッキング部位(NS)は、好ましくは、オリゴヌクレオチドの3’末端またはこの付近に、具体的にはオリゴヌクレオチドの3’末端から1から約15塩基に位置する。
例示的なニッキング剤としては、限定されないが、特定の配列を認識する一本鎖ニッキング制限エンドヌクレアーゼ、例えばN.BstNBI;または修復酵素、例えばMut H、MutY(APエンドヌクレアーゼとの併用で)、またはウラシル−N−グリコシラーゼ(AP LyaseおよびAPエンドヌクレアーゼとの併用で);ならびにバクテリオファージfl遺伝子IIタンパク質が挙げられる。
本発明のブロック型プライマーでは、標的とのハイブリダイゼーションの後、プライマー伸長の前に切断を要することにより非特異的な反応が最小限になる。プライマーが関連配列に誤ってハイブリダイズした場合、特に、切断部位またはこの付近に存在するミスマッチがある場合、プライマーの切断が阻害される。これにより、かかる位置における偽プライミングの頻度が低下し、これにより反応の特異性が増大する。ピロコッカス・アビシ(Pyrococcus abysii)II型RNase Hおよび本発明に使用される他のRNase H酵素では、一部の切断は、切断部位にミスマッチがある場合であっても起こることに注意されたい。反応条件、特に、RNase Hの濃度ならびに各サイクルにおけるハイブリダイゼーションおよび伸長に許容される時間は、プライマーが真の標的にハイブリダイズした場合とミスマッチがある場合での切断効率の差が最大限になるように最適化され得る。これにより、本発明の方法をSNPを含むバリアント対立遺伝子間の識別のために非常に有効に使用することが可能になる(実施例12から14、22から25参照)。
上記のように、RNA残基をオリゴヌクレオチドに組み込んだ場合、切断されたプライマーの3’末端に形成される2’,3’環状リン酸基(または2’もしくは3’リン酸基)によってプライマー伸長がブロックされるため、プライマーのバックグラウンド切断によって偽陽性プライミングはもたらされない。DNAポリメラーゼの基質の形成のためには、自由に到達可能な3’OH基が必要とされる。また、PCRで起こる一般的な副反応であるプライマーダイマーの形成も本発明の3’ブロック型プライマーを用いて阻害することができる。これにより、PCRにおけるより大きな度合いでの多重化(例えば、DNA検出/増幅アッセイの場合の多種類の標的配列の検出)が可能になる。
なんら理論に拘束されないが、ミスマッチがある場合、おそらくRNase H2によって触媒された非定型の切断が低頻度でRNA残基の3’側で起こり、遊離3’−OHが生成してプライマー伸長がもたらされ得ることが観察されている。これは、反応の特異性の低下をもたらし得る。この効果を緩和するため、ヌクレアーゼ抵抗性残基がプライマー内のRNA残基の3’側に組み込まれ得る(実施例22、25および28参照)。かかる基としては、限定されないが、1つ以上のホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、メチルホスホネートおよび無塩基残基、例えばC3スペーサーが挙げられる。
また、RNA残基の5’側および3’側の両方において、本発明の方法でのバリアント対立遺伝子の識別および検出を向上させるために他の置換を使用してもよい。かかる置換としては、限定されないが、2’−O−メチルRNAおよび二次ミスマッチが挙げられる(実施例23参照)。
プライマー伸長を抑制するブロッキング基の性質はあまり重要でない。これは、3’末端残基またはこの上流に位置し得る。標識基をブロッキング基に組み込んでもよく、オリゴヌクレオチドプライマーの3’セグメント上の他の位置に結合してもよく、これは、切断が起こった後、鋳型から解離する。かかる標識基としては、限定されないが、フルオロフォア、クエンチャー、ビオチン、ハプテン、例えばジゴキシゲニン、タンパク質、例えば酵素および抗体、質量タグ(これは、切断断片の質量を質量分析による検出のために改変させるものである。)、ならびに放射性標識、例えば14C、3H、35S、32Pおよび33Pが挙げられる。また、このような標識基をプライマーの切断部位の5’側に結合してもよく、この場合、標識基は伸長産物内に組み込まれる。
一実施形態において、オリゴヌクレオチドの3’末端またはこの付近のブロッキング基は蛍光性部分であり得る。この場合、蛍光分子の放出がプライマー伸長反応の進行のモニタリングに使用され得る。これは、オリゴヌクレオチドが切断部位の5’側にクエンチャー部分も含有している場合、助長される。反応中のオリゴヌクレオチドの切断によってフルオロフォアがクエンチャーから分離し、蛍光の増大がもたらされる。また、クエンチャー自体がフルオロフォアである場合(Tamraなど)、蛍光の減少が観察され得る。
またさらなる一実施形態では、オリゴヌクレオチドは切断ドメインの5’側において蛍光分子で標識され、該分子の3’末端またはこの付近に位置するブロッキング基は、数例挙げるとIowa Black(R)、Black Hole(商標)またはTamraなどのクエンチャーである。この場合も、オリゴヌクレオチド(例えば、プライマー)からのクエンチャー切断によって蛍光の増大がもたらされ、これが、オリゴヌクレオチドの伸長反応の進行のモニタリングに使用され得る。さらに、この場合、プライマー伸長産物は蛍光標識されている。
またさらなる一実施形態では、本発明のブロック型プライマーは核酸シークエンシングに使用される。DNA増幅反応の場合と同様、本発明のオリゴヌクレオチドを使用した場合、DNAシークエンシングに対するプライマー伸長の特異性も増大する。シークエンシングの一実施形態では、蛍光標識され、連鎖停止剤として使用される2’,3’ジデオキシヌクレオチド三リン酸と反応時に生じるネステッド断片は電気泳動によって、好ましくはキャピラリー電気泳動によって分離される。
また別の実施形態では、本発明のオリゴヌクレオチドプライマーが蛍光性基で標識され、3’ジデオキシヌクレオチド三リン酸連鎖停止剤は標識されない。この実施形態では、ブロッキング基がクエンチャーであり得、この場合、プライマー自体が蛍光性でないためバックグラウンド蛍光が低減される。伸長産物のみが蛍光性となる。
慣用的なPCRでは、「ホットスタート」ポリメラーゼは、多くの場合、プライマーダイマーを低減させるため、および非特異的増幅を減少させるために使用される。RNase Hによる切断を必要とする本発明のブロック型プライマーは同じ利点をもたらし得るものである。低温で活性をほとんどまたは全くもたない好熱菌由来RNase H酵素が好ましい。プライマーの活性化は、標的配列とのハイブリダイゼーションおよび高温での切断の後でのみ起こる。ホットスタートである可逆的に不活化されるDNAポリメラーゼの使用と比べたときのこのアプローチの利点は上記に記載している。もちろん、所望によりホットスタートRNase H酵素とホットスタートDNAポリメラーゼを併用してもよい。
3つの型のホットスタートRNase H酵素(表1、2および3参照):1)ピロコッカス・アビシ(Pyrococcus abysii)RNase H2の場合のように低温で内因性活性をほとんどまたは全くもたない耐熱性RNase H酵素;2)化学修飾によって可逆的に不活化される耐熱性RNase H;および3)ブロック抗体によって可逆的に不活化される耐熱性RNase Hを本明細書において記載する。また、ランダム変異誘発などの当該技術分野でよく知られた手段により、本発明のアッセイにおいて望ましいRNase Hの形質がさらに改善され得るRNase Hの変異型バージョンが合成され得る。あるいは、本発明に望ましい特徴を共有する他の酵素の変異型株が使用され得る。
一実施形態において、プライマー内の切断ドメインはRNase Hによって切断性である。またさらなる一実施形態では、RNase H切断ドメインが単一のRNA残基からなるものであり、プライマーの切断はII型RNase H酵素によって、好ましくは好熱菌由来II型RNase H酵素、さらにより好ましくは、室温では高温よりも活性が低い好熱菌由来II型RNase H酵素によって媒介される。またさらなる一実施形態では、RNase H2切断ドメインが隣接している2つの2’−フルオロヌクレオシド残基からなるものである。切断ドメインが隣接している2つの2’−フルオロヌクレオシド残基からなる本発明のなおより好ましい一実施形態では、PCRは、Mg2+に加えて代替的な2価のカチオン、例えば限定されないがMn2+、Ni2+またはCo2+を含むバッファー中で行われる。さらなる一実施形態では、切断ドメインを含む本発明の新規な3’−ブロック型プライマーは、好熱菌由来ニッキング酵素が使用され、切断ドメインがニッキング部位であるホットスタートPCRのバリエーションにおいて使用され得る。
あるいは、ホットスタート特徴をもたない切断酵素を本発明において、従来のホットスタート法を用いて、例えば、高温での酵素添加、必要な試薬または酵素のワックス中への封入、またはホットスタートの可逆的に不活化されるDNAポリメラーゼを用いて使用してもよい。
本発明の特異性の増大は、増幅反応に使用した場合、リアルタイムPCR適用で、標準的なDNAプライマーを用いる慣用的なリアルタイムPCRと比べてより特異的な結果を得ることが可能になる。例えば、二本鎖DNA結合色素アッセイ、例えばSYBR(R)Greenアッセイは、PCRによって生じる二本鎖産物(例えば、プライマーダイマー)(あれば)に色素が結合するとシグナルが生成し、これにより偽陽性結果がもたらされ得るという点において不都合点を有する。しかし、本発明のプライマーを使用した場合、非特異的増幅およびプライマーダイマー形成は低減され、二本鎖DNA結合色素のシグナルの強度は所望の標的の増幅のみを反映する(実施例17参照)。
試薬濃度およびアッセイの反応条件は、この有用性が最大限となるように変更され得る。本発明のブロック型プライマーを用いたPCRの相対効率は、ブロック解除酵素の濃度とアニーリング/伸長反応温度での滞留時間(このときブロック解除が進行している。)に関係する。酵素の量が少なく、滞留時間が短い状態では、切断は不完全であり得、ブロック型プライマーを用いた反応は、非ブロック型プライマーを用いる反応よりも効率が低い。酵素濃度または滞留時間のいずれかが増大するにつれて、ブロック型プライマーでの反応効率は増大し、非ブロック型プライマーのものと同一になる。さらにより多くの酵素またはより長い滞留時間を使用するとアッセイの特異性が低下することがあり得、切断部位またはこの周辺配列内のミスマッチを識別する系の能力が低下し得る(実施例4参照)。これは、ミスマッチ配列にハイブリダイズした場合、プライマーの切断効率が増大するために生じる。真の標的部位における切断は、各サイクルで既に100%であるためさらには増大し得ない。従って、本アッセイは、より高い特異性が必要とされるSNPアッセイに対して、または必要とされる特異性が低いmRNAの発現レベルの定量に対して微調整され得る。また、特異性は、反応バッファーの組成を変えることによっても調整され得る。例えば、3mMのMg++イオン濃度は非常にロバストで高効率のアッセイを支持し得る;Mg++イオン濃度を2.5mM、2.0mMまたはこれより下まで低下させると、SNP識別の特異性が増大され得るが、また反応効率が若干低くなり得る(実施例36および37参照)。一部の特定のDNAポリメラーゼ酵素には、高いMg++イオン濃度の使用が必要とされ得る。従って、Mg++イオン濃度の最適化は、アッセイが特定の必要性に適合するように性能を調整するために使用され得、この工程は全当業者が熟知している。一部のDNAポリメラーゼ酵素は、少量の界面活性剤をバッファー中に存在させた場合、より良好な性能を示す。ピロコッカス・アビシ(Pyrococcus abyssi)RNase H2、およびおそらく他のRNase H2酵素も同様に、少量の界面活性剤をバッファー中に存在させた場合、より高い反応速度を有する。界面活性剤の含有量は広い範囲で調整され得るが、なおPCR増幅と適合性であり得、非イオン性界面活性剤(例えば、Triton−X−100、Brij−58など)または選択されたイオン性界面活性剤(例えば、CTAB)が使用される(実施例18および38参照)。
別の実施形態では、1つのブロック型プライマーと1つの非ブロック型プライマーを有するプライマーペアが使用され得る。別の実施形態では、配列特異性が低く、種々の配列を切断し得る酵素が選択され得る。また別の実施形態では、バリアント対立遺伝子の識別能を増大させるために、切断部位にフランキングしているさらなるミスマッチが付加され得る。また、特異性を増大させるために、2’−O−メチルヌクレオシドなどの修飾塩基をプライマー内の切断部位のいずれか側に導入してもよい(実施例23参照)。
本明細書に記載の種々のアッセイの反応は、数例挙げると、蛍光の検出、質量タグによる検出、酵素的検出を用いて、ならびにプローブまたはプライマーをさまざまな他の基で、例えばビオチン、ハプテン、放射性ヌクレオチドおよび抗体で標識することによってモニタリングされ得る。一実施形態では、本発明の修飾プライマーを用いたPCRの進行はリアルタイムで、例えばSYBR(R)Greenを用いる色素インターカレートアッセイを使用してモニタリングされる。またさらなる一実施形態では、本発明の修飾プライマーを用いたPCRの進行は、フルオロフォアおよびクエンチャー(分子ビーコンなど)で標識したプローブを用いて、または、プローブの切断が行われる5’ヌクレアーゼアッセイの場合のようにしてモニタリングされる。あるいは、RNase H2によって切断性である二重標識プローブを使用してもよい。後者の場合、ハイブリダイズしたプライマーおよびプローブの切断はどちらも同じ酵素によって媒介され得る。プローブ内のRNase H切断ドメインはRNA残基のみを含むものであり得る。一般に、本発明のブロック型プライマーの切断ドメインにおいて有用な残基のあらゆる組合せが該プローブ内の切断ドメインとして使用され得る。特に、RNase H2を切断酵素として使用する場合、単一のRNA残基または隣接している2つの2’−F残基がプローブ内の切断ドメインとして好ましい。かかる修飾オリゴヌクレオチドプローブはリアルタイムPCRにおいて特に有用であり、標準的なDNAプライマーまたは本発明のブロック型プライマーとともに使用され得る。かかるリアルタイムPCRアッセイでは、好熱菌由来バージョンのRNase H2、特に、低温での活性が低い好熱菌由来RNase H2酵素が好ましい。本明細書に示す実施例では、幾つかの好熱菌由来RNase H2酵素を単離し、サーモサイクリング条件下で安定であり、PCRにおいて有用であることを示している。本発明のブロック型プライマーとともに使用した場合、特定のホットスタートDNAポリメラーゼの必要性がなくなり得る。これによりアッセイコストの有意な削減がもたらされる。
別の実施形態では、本発明のブロック型プライマーは、米国特許出願公開第2009/0068643号明細書に記載のPCRのためのプライマー−プローブアッセイ形式において使用され得る。この場合、プライマーはまた、オリゴヌクレオチドの5’末端に、標的核酸に相補的であってもそうでなくてもよい標識ドメインも含有している。プライマーの伸長によって生成する産物は、次のPCRサイクルにおけるリバースプライマーによる合成のための鋳型としての機能を果たす。これにより標識ドメインが二本鎖構造に変換される。かかる一実施形態では、フルオロフォアおよびクエンチャーが標識ドメインに結合され、二本鎖形態内でのフルオロフォアとクエンチャー間の距離が一本鎖状態と比べて増大することによって生じる蛍光の増大によって反応がモニタリングされる。また別のかかる実施形態では、標識ドメインは、フルオロフォアとクエンチャー間に位置する切断ドメインを含有している。切断は、切断ドメインが二本鎖である場合にのみ起こる。この場合も反応は蛍光の増大によってモニタリングされる。この場合、切断剤は、プライマーとこの相補鎖の両方の鎖を切断するもの、例えば制限酵素であり得る。あるいは、切断剤は、プライマーのみを切断するニッキング剤、好ましくはRNase H酵素、さらにより好ましくは耐熱性RNase H2酵素であり得る。このアッセイ形式ではプライマー内に2つの切断ドメイン:切断が起こってプライマーが活性化されて伸長が可能になるブロッキング基の5’側の第1のものと、標識ドメイン内の第2のものが存在する。どちらの部位の切断も同じ切断剤によって媒介され得る。また、標識ドメインに他の標識基を、例えば限定されないが数例挙げるとビオチン、ハプテンおよび酵素を含有させてもよい。あるいは、標識ドメイン内の切断によって放出される5’断片を、質量分析による検出のための質量タグとして使用してもよい。
また別の実施形態では、本発明のブロック型プライマーは、米国特許出願公開第2009/0068643号明細書に記載のPCRのための鋳型−プローブアッセイ形式において使用され得る。
本発明の別の実施形態では、RNase H2切断性ブロック型オリゴヌクレオチドは、亜硫酸水素ナトリウムで処理した核酸、例えば限定されないが、DNAおよびRNAの5−メチルシトシン残基をPCR解析によって検出するために使用される。先の研究では、核酸鋳型をバイサルファイトで処理すると、塩基の5’炭素上のメチル化されていないシトシンが速やかに脱アミノ化されることが確立されている。この脱アミノ化反応によって非メチル化シトシンがウラシルに変換され、核酸配列内に機能性のC→Tトランジション変異がもたらされる。また、5−メチルシトシンはこの脱アミノ化に対して高度に抵抗性であり、チミンへの変換ではなく5−メチルシトシンヌクレオチドのシトシンとしての保存がもたらされることも知られている。バイサルファイト変換手法後の5’シトシンメチル化修飾の検出のためには数多くの方法が使用されている。例としては、限定されないが、標準的なミスマッチ特異的定量的および非定量的PCR法、ならびに生成した亜硫酸水素ナトリウム反応生成物のサブクローニングおよびシークエンシングが挙げられる。
本発明において、鋳型は、当業者によく知られた方法によってバイサルファイト処理される。出発鋳型がRNAであった場合、相補的なcDNA鎖がよく知られた任意の逆転写法によって作成される。標的鋳型シトシン(ここではウラシルに変換される)または5−メチルシトシンとマッチしているかまたは識別されるかのいずれかであるブロック型切断性オリゴヌクレオチドが、RNase H2酵素とバイサルファイト処理鋳型を含むPCR反応に添加される。鋳型を含むミスマッチ(変換シトシン>ウラシルまたは未変換5−メチルシトシン>5−メチルシトシン)塩基の増幅は、RNase H2切断反応のミスマッチ識別のため、マッチ塩基鋳型と比べて大きく低減される。亜硫酸水素ナトリウム変換手法で常に懸念されるシトシンのウラシルへの不完全なバイサルファイト変換は、バイサルファイト変換鋳型内の既知の非5’−メチル化シトシンを標的化するブロック型切断性オリゴヌクレオチドを設計することにより検出され得る。未変換シトシンのこのようなプライマーでのPCR増幅では、標準的な非ブロック型プライマーと比べて大きな識別が示されるはずである。本発明では、メチル化シトシンと非メチル化シトシンの識別が有意に増大することが期待される。
一塩基ミスマッチの検出は、診断の際および特定の疾患を具体的な遺伝子配列または変異と相関させる際に極めて重要なツールである。AS−PCRは生物学の技術分野で10年以上もの間、知られているが(Bottema et al.,1993,Methods Enzymol.,218,pp.388−402)、依然として、特定のミスマッチと充分に相補的な配列をより正確に識別するツールが必要とされている。本発明は、この必要性の対処するものである。
AS−PCRでは、バリアント遺伝子座とオーバーラップしているプライマーが使用される。一般的に、プライマーは、3’末端ヌクレオチドが変異部位上に位置するように設計される。あるいは、変異部位は、場合によっては3’末端から1塩基または2塩基超えて存在する。ミスマッチが3’末端またはこの付近に存在する場合、プライマー伸長、従ってPCRが阻害される。プライマーと厳密にマッチしている場合と1つ以上のミスマッチが存在する対立遺伝子バリアントの場合での増幅の効率の違いは、一部の場合ではエンドポイントPCRによって測定され得、この場合、最終増幅産物は、例えばゲル電気泳動によって解析される。より一般的には、リアルタイムPCRは増幅効率を調べるために使用される。リアルタイムでのアンプリコンの蛍光系検出方法、例えば、DNA色素結合アッセイまたは二重標識プローブアッセイが最も多くの場合で使用される。バックグラウンドレベルより上の蛍光が最初に検出可能な(Cpまたはクロス点)PCRサイクルにより増幅効率の尺度がもたらされる。プライマーと標的DNA間にミスマッチがある場合、増幅効率は低下し、Cpは遅延される。一般的に、SNPの識別には4から5サイクルのCpの増大で充分である。
本発明のAS−PCRの一実施形態では、プライマーが単一のRNA残基を含むものであり、ミスマッチがプライマーのRNA残基上に直接的にアラインメントされ得る。切断の違いと相関するパーフェクトマッチとミスマッチ間のクロス点(Cp)値の差はすぐにわかる(実施例13参照)。一部の場合では、ミスマッチ一塩基をRNA残基の5’側または3’側のいずれかにアラインメントするとCp値の差が大きくなる。ミスマッチをRNA残基の5’側に位置すると、その後のRNase H2切断によって、ミスマッチは切断されたプライマーの3’末端の最後の塩基となり得る。驚くべきことに、ミスマッチをRNA残基上に直接有するようにすることは、ほとんどの場合で、ミスマッチをRNA残基の5’側に位置するよりも有効である。
別の実施形態では、プライマーは多数のRNA残基または隣接している2つの2’−フルオロ残基を含むものであり、ミスマッチの検出は、1つのRNA残基を含むプライマーの場合と同じ原理に従う;ミスマッチは、好ましくは予測される切断点付近または該切断点上に位置する。
別の実施形態では、アッセイの感度を上げるために第2のミスマッチが使用される。またさらなる一実施形態では、第2のミスマッチは、SNP部位上に直接的なミスマッチの3’側に位置する。またさらなる一実施形態では、第2のミスマッチは、SNP部位上に直接的なミスマッチから1塩基または2塩基に位置する(実施例23参照)。
また別の実施形態では、修飾残基は、プライマー内の変異部位上に位置する塩基の5’側または3’側に組み込まれる。本発明のかかる一実施形態では、2’−O−メチルリボヌクレオシドがプライマー内のRNA塩基のすぐ5’側に位置する(実施例22参照)。
また、アッセイの感度はヌクレアーゼ抵抗性アナログをプライマー内に、変異部位上の塩基の3’側に組み込むことによっても上げることができる。かかるヌクレアーゼ抵抗性アナログとしては、限定されないが、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、メチルホスホネートおよび無塩基残基、例えばC3スペーサーが挙げられる。本発明のかかる一実施形態では、ホスホロチオエートヌクレオチド間結合が、変異部位上のRNA塩基からプライマーの3’末端までの各位置に組み込まれる。また別のかかる実施形態では、ホスホロチオエート結合またはホスホロジチオエート(ditioate)が、RNA残基の3’側の塩基からプライマーの3’末端までのすべての位置に組み込まれる。また別のかかる実施形態では、単一のホスホロチオエートまたはホスホロジチオエートがプライマー内のRNA塩基のすぐ下流の残基の3’側に導入される。一実施形態では、ホスホロチオエート結合がSNP部位上に直接的なRNAモノマーの3’側の各モノマー間、ならびにRNAモノマーとRNA塩基の3’側の塩基間に位置する(実施例25参照)。
また、アッセイの感度は、3’ブロッキング基(1つまたは複数)の位置を最適化することによっても改善され得る。一実施形態において、ブロッキング基は、オリゴヌクレオチドの3’末端に対して内部に位置する。さらなる一実施形態では、1つより多くの(more than on)ブロッキング基が3’末端に対して内部に位置する。またさらなる一実施形態では、RNAモノマーはSNP部位上に直接的に置かれ、該RNAモノマーの3’側にDNAモノマー、続いて2つのC3スペーサー、続いて最後に3’末端の塩基を伴う(実施例28参照)。また、アッセイの感度および特異性は、反応バッファー中のマグネシウムイオン濃度の最適化によっても改善され得(be)、ここで、低マグネシウムレベル(例えば、1.5mMまたは2.0もしくは2.5mMなど)では高い特異性が得られ得、高マグネシウムレベル(例えば、3.0mM、3.5mMなど)では低い特異性が得られ得るが増幅効率は高くなり得る(実施例36および37参照)。
標的DNA配列の増幅中の特異性の改善の簡便な定量的測定の一例は、マッチプライマーおよびミスマッチプライマー(対比)を用いた標的DNA配列の増幅でのCp値(ΔCp)の変化の実測値である。少なくとも約5またはこれより大きい好ましいΔCpまたは少なくとも約50%以上のΔCpの相対的増大は、マグネシウムイオン濃度の最適化による特異性の改善を示す。しかしながら、より典型的には、本実施例によって明らかになったように、好ましいΔCpはよりずっと大きいもの、例えば、少なくとも約10から20もしくはこれより大きいΔCp値または少なくとも約100%以上のΔCpの相対的増大であり得る。マグネシウムイオン濃度の最適化による特異性の改善を示すΔCpの実測値は、プライマーの設計およびインテロゲーションされる具体的な標的DNA配列に依存し得る。
対立遺伝子特異的PCRの一実施形態では、プライマーは、1つより多くのミスマッチが検出されるように設計され得る。例えば、フォワードプライマーは第1のミスマッチを検出し得るものであり、リバースプライマーは第2のミスマッチを検出し得るものである。この実施形態では、アッセイは、2つのミスマッチが解析対象の同じ遺伝子または染色体上に存在するかどうかを示すために使用され得る。このアッセイは、対象の細菌が病原性および抗生物質抵抗性の両方であるかどうかを調べるなどの用途に有用であり得る。
別の実施形態では、フォワードおよびリバースプライマーがどちらもブロック型であり、ミスマッチにおいてオーバーラップしている。さらなる一実施形態では、ブロッキング基はオリゴヌクレオチドの3’末端に対して内部である。またさらなる一実施形態では、フォワードおよびリバースプライマーの一方または両方で、RNAモノマーはSNP部位上に直接的に置かれ、該RNAモノマーの3’側にDNAモノマー、続いて2つのC3スペーサー、続いて最後に3’末端の塩基を伴う。
あるいは、逆転写とPCRを単一の密閉チューブでの反応で行ってもよい。かかる一実施形態では、逆転写用の1種類とPCR用の2種類の3種類のプライマーが使用される。逆転写用のプライマーはPCRアンプリコンの位置に対して3’側のmRNAに結合する。必須ではないが、逆転写プライマーは、RNA残基または修飾アナログ(2’−O−メチルRNA塩基など)(これは、mRNAにハイブリダイズしたとき、RNase Hの基質を形成しない。)を含むものであってもよい。好ましくは、低温で低い活性を有するRNase H2酵素が切断剤として使用される。
3種類のプライマーのRT−PCRアッセイでは、RT−プライマーがPCR反応に関与しないように阻害することが望ましい。これは、PCRプライマーよりも低いTmを有し、このためPCR条件ではハイブリダイズしないRT−プライマーを用いることにより行われ得る。あるいは、例えば隣接している2つのC3スペーサーを組み込んだ非複製可能プライマーがRT−プライマーとして使用され得る(多項式増幅の場合と同様、米国特許第7,112,406号明細書参照)。この場合、cDNAがフォワードPCRプライマーの伸長によってコピーされるときはRT−プライマーに対する結合部位が含まれていない。
一実施形態では、リバースPCRプライマーのみが本発明の組成物および方法を用いてブロック型となっている。また別の実施形態では、フォワードPCRプライマーとリバースPCRプライマーの両方がブロック型である。リバースPCRプライマーは、3プライマーRT−PCRアッセイでは、逆転写に使用されることを妨げるためにブロック型である。所望の場合、2’−O−メチルRNA残基などの修飾塩基をリバースPCRプライマーに組み込んでもよいが、かかる修飾(あれば)はプライマー配列がDNA合成の鋳型としての機能を果たし、コピーされるものでなければならない。
本発明の2プライマーRT−PCRアッセイでは、フォワードPCRのみがブロック型である。リバースPCRプライマーはRT−プライマーとしての機能も果たし、従ってブロック型にはされ得ない。
包括的ではないが、表1に、ブロッキング基、標識基、切断部位の実施形態、オリゴヌクレオチドの切断部位または他の領域に対する修飾、バッファー条件および酵素のどのようなバリエーションによって、アッセイ形式をこの具体的な適用に応じてさらに最適化することができるかを示す。アッセイ形式および適用の例としては、PCR;二本鎖DNA結合色素(SYBR(R)Greenなど)、5’ヌクレアーゼアッセイ(Taqman(商標)アッセイ)または分子ビーコンを用いるリアルタイムPCR;プライマー−プローブおよび鋳型−プローブアッセイ(米国特許出願公開第2009/0068643号明細書参照);多項式または連結線形(linked linear)増幅アッセイ;PCRによる遺伝子の構築または断片合成;対立遺伝子特異的PCRならびに一ヌクレオチド多型および他のバリアント対立遺伝子を検出するために使用される他の方法;核酸シークエンシングアッセイ;ならびに鎖置換増幅が挙げられる。このような種々のアッセイにおいて、本発明のプライマー切断が、具体的な反応の特異性を向上させるために使用され得る。
表2は、サイクリングプローブ反応に基づいたアッセイを改善するための本発明の考えられ得る要素の非包括的な組を示す。本発明の新しい特長としては、1)ホットスタートRNase H酵素の使用;2)RNase H酵素による新規な配列の切断(例えば、II型RNase Hによる2’−フルオロヌクレオシドを含む基質の切断);および3)特異性を向上させるため、および/または非特異的切断反応を抑制するためのRNase H切断ドメインにフランキングしている修飾および二次ミスマッチの導入が挙げられる。かかる修飾および二次ミスマッチは、切断がII型RNase Hによって媒介され、切断ドメインが単一のRNA残基または隣接している2つの2’−フルオロ残基である場合に特に有用である。
また、立体的にバルキーな基がオリゴヌクレオチドの5’末端またはこの付近に位置してライゲーション反応をブロックしてもよい。5’−リン酸基は、これがDNAリガーゼの天然基質であるため5’−OHをブロックするために使用することができない。標的DNA配列にハイブリダイゼーションして初めて、ブロッキング基が例えばRNase H切断性ドメインでの切断によって除去され、ライゲーションが起こることが可能になる。好ましくは、切断は、RNase H II型酵素、さらにより好ましくは好熱菌由来II型RNase H酵素によって媒介される。より好ましくは、室温では高温よりも活性が低い好熱菌由来II型RNase H酵素が、切断の媒介およびこれによるアクセプターおよび/またはドナーオリゴヌクレオチドの活性化に使用される。あるいは、配列特異的ニッキング酵素、例えば制限酵素が、ドナーおよび/またはアクセプターオリゴヌクレオチドの切断を媒介するために使用され得る。
さらなる一実施形態では、切断反応がまず高温で行われ、このとき、2種類のオリゴヌクレオチドのうちの一方のみが標的配列にハイブリダイズする。次いで温度を下げると、第2のオリゴヌクレオチドが標的にハイブリダイズし、次いでライゲーション反応が起こる。
ドナーオリゴヌクレオチド内に位置する切断ドメインが存在するまたさらなる一実施形態では、このオリゴヌクレオチドは、5’末端またはこの付近でブロックされておらず、単に遊離の5’−OHを有する。このオリゴヌクレオチドは、ライゲーション反応におけるドナーとしての機能を果たすことができない;この機能を果たすためには5’−リン酸基が必要である。従って、5’末端が機能的にブロックされている。RNase Hによる切断によって5’−リン酸基が生成し、ドナーオリゴヌクレオチドがライゲーション反応に関与することが可能になる。
本発明の重要な利点の1つは、変異部位の二重のインテロゲーションが可能であり、従って標準的なライゲーションアッセイよりも特異性が大きいことである。切断工程とライゲーション工程の両方にバリアント対立遺伝子を識別する機会が存在する。
一実施形態において、本発明は「次世代」シークエンシングプラットフォームにおいて使用される。一例の型の次世代シークエンシングは「合成によるシークエンシング」であり、この場合、ゲノムDNAを剪断し、アダプターオリゴヌクレオチドを用いてライゲーションするか、または遺伝子特異的プライマーによって増幅し、次いで、これを、PCRのためにガラススライド上にコートしてあるか、またはエマルジョン中に入れてあるかのいずれかである相補的なオリゴヌクレオチドにハイブリダイズさせる。続くシークエンシング反応では、色素標識ヌクレオチド三リン酸の組み込み、または伸長反応で放出されるピロリン酸部とATPスルフリラーゼとの反応によってATPが生成し、次いで、ルシフェラーゼとこの基質ルシフェリンのATP触媒性反応によってオキシルシフェリンと光が発生することによる化学発光による検出のいずれかを行う。
第2の型の次世代シークエンシングは「ライゲーションによるシークエンシング」であり、この場合、4種類の塩基の各々を表す4種類のオリゴヌクレオチドの組を使用する。各組において、約7から11塩基フルオロフォア標識オリゴヌクレオチドが使用され、ここで、一塩基は指定されており、残りはユニバーサル塩基または縮重塩基のいずれかである。例えば、3つのユニバーサル塩基(イノシンなど)と4つの縮重位置を含む8塩基オリゴヌクレオチドを使用する場合、各々が1つの位置に指定の塩基(A、T、CまたはG)と、分子の5’末端もしくは3’末端またはライゲーションに干渉しない内部位置のいずれかに結合させた蛍光標識とを有する各組に、44即ち256種類の異なるオリゴヌクレオチドが存在し得る。各々が4種類の塩基のうちの1種類に特異的な4種類の異なる標識が使用される。この4種類のオリゴヌクレオチドの組の混合物を、増幅させた試料DNAにハイブリダイズさせる。DNAリガーゼの存在下では、標的にハイブリダイズしたオリゴヌクレオチドが、アクセプターDNA分子にライゲーションされた状態になる。結合された標識の検出により、オリゴヌクレオチド内の指定の塩基に相補的な位置における試料DNA中の対応する塩基を決定することが可能になる。
本発明の一実施形態において、約7から11塩基のドナーオリゴヌクレオチドは、指定の塩基をオリゴヌクレオチドの5’末端に含む。残りの塩基は縮重塩基またはユニバーサル塩基であり、指定の塩基に特異的な標識が指定の塩基の3’側に組み込まれる。プローブの3’末端は、ドナーオリゴヌクレオチドがアクセプターとしても機能を果たさないように不可逆的にブロックされている。一部の場合では、これは標識基によって行われ得る。オリゴヌクレオチドの5’末端から2番目の塩基、即ち、指定の塩基の隣の残基は、4種類のRNA塩基の縮重混合物である。あるいは、RNase H2によって認識される任意のアナログ、例えば2’−フルオロヌクレオシドがこの位置で置換され得る。また、ユニバーサル塩基、例えばリボイノシンまたはリボ−5−ニトロインドールをこの位置に組み込んでもよい。プローブは、標準的なライゲーションによるシークエンシング反応の場合と同様に、まず標的配列にハイブリダイズし、アクセプターDNA断片にライゲーションされた状態になる。指定の塩基の検出後、プローブをRNA残基の5’側で切断するRNase H2を添加すると、指定の塩基がアクセプター断片の3’末端に結合された状態になる。最終結果は、アクセプター断片が一塩基伸長され、次に配列内の次の塩基を決定することが可能な状態になっている。サイクルは何度も何度も反復され、各場合において、ドナーオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションの位置が標的配列の3’方向に一塩基ずつ移動する。指定の塩基が常にライゲーション反応の接合部に位置しているため、特異性が従来のライゲーションによるシークエンシングと比べて増大する。
ドナーオリゴヌクレオチドプローブに、場合によりユニバーサル塩基、例えば限定されないが、5−ニトロインドール、リボ−5’−ニトロインドール、2’−O−メチル−5−ニトロインドール、イノシン、リボイノシン、2’−O−メチルリボイノシンおよび3−ニトロピロールを含めてもよい。これにより、アッセイに必要とされる各組における異なるオリゴヌクレオチドの数が、ユニバーサル塩基で置換されたプローブ上の縮重位置ごとに4つ減る。また、該方法に、ライゲーション反応とRNase H2切断工程の間にキャッピング工程を含めてもよい。キャッピング反応は、DNAポリメラーゼと連鎖停止剤を導入し、これにより、先の工程でドナーオリゴヌクレオチドプローブとライゲーションされなかったアクセプター断片分子(あれば)をキャッピングすることにより行われ得る。
上記の例では、ライゲーション反応、従ってシークエンシング読出しは5’から3’の方向に1回に一塩基ずつ進行する。あるいは、ドナーオリゴヌクレオチドを、各サイクルで2つの塩基が決定されるように設計してもよい。この場合、ドナーオリゴヌクレオチドの5’末端の最初の2つの塩基を指定する(例えば、pA−C−R−N−N−N−I−I−X、ここで、R=全4種類のRNA塩基の縮重混合物、N=縮重DNA塩基、I=イノシン、およびXはフルオロフォアである。)。すべての場合で、ドナーオリゴヌクレオチドとアクセプターとのライゲーションを可能にする5’−リン酸基(p)が存在する。16のかかるオリゴヌクレオチドの組が必要とされ、各々は、考えられ得る16種類のジヌクレオチドのものである。16種類の各々は異なるフルオロフォアで標識され得る。あるいは、ライゲーション反応を、各々が4種類のかかるオリゴヌクレオチドの組を有する4つの別個のプールを用いて行ってもよい。この場合、必要とされる異なるフルオロフォアは4種類だけである。
5’から3’の方向のシークエンシングのための別の実施形態では、下記の型:pA−N−R−N−N−N−I−I−X(ここで、p、N、R、IおよびXは先の例で規定した通りである。)のドナーオリゴヌクレオチドが使用され得る。各サイクルで一塩基が決定されるが、1、3、5などの交互の位置である。これは、参照データベースと比較すると配列の同定には充分となり得る。所望の場合、残りの塩基(2、4、6位など)は、シークエンシング反応を同じ鋳型で、最初のアクセプターオリゴヌクレオチドを用いて、上流または下流に一塩基ずつシフトさせて反復することにより決定され得る。関連する一例では、下記の型:p−A−F−FN−N−N−I−I−X(ここで、p、N、IおよびXは上記に規定した通りであり、Fは、全4種類の2’−フルオロヌクレオシドの縮重混合物である。)のドナーオリゴヌクレオチドが使用され得る。ライゲーション後、RNase H2による切断により、アクセプターの3’末端に2つの塩基(即ち、AF)の付加がもたらされる。次のライゲーション反応後、アクセプターの3’末端の配列は、…A−F−S−F−F−N−N−N−I−I−Xとなり得、ここで、Sは3位の指定の塩基であり、Xは、指定の塩基がAでなかった場合、先のサイクルと異なるフルオロフォアであり得る。次に、RNase H2での切断が2つの2’−フルオロ残基間で行われる。単独の2’−フルオロ残基でのRNase H2による切断の方がずっとゆっくり起こり、RNase H2濃度と反応時間を調整することにより回避することができる。
シークエンシングを3’から5’の方向に進行させる上記の方法の変形法を行ってもよい。この場合、以下のような構造:X−I−I−N−N−N−F−F−S−OH(ここで、指定の塩基(S)はオリゴヌクレオチドの3’末端に存在させる。)のアクセプターオリゴヌクレオチドを各サイクルで添加する。5’末端は、オリゴヌクレオチドがドナーとしての機能を果たさないようにブロックされる。RNase H2による切断によって、ドナー断片の5’末端が配列pF−Sとなり、これを次のシークエンシングサイクルのために調製する。アクセプターとのライゲーションが起こらなかった場合にドナーオリゴヌクレオチドの5’−リン酸基を除去するためのホスファターゼを使用するキャッピング工程を、サイクルの切断反応の前に含めてもよい。
さらなる一実施形態では、本発明により、リボ三リン酸(またはRNase H2に対する基質を供給する代替的なアナログ、例えば2’−フルオロヌクレオシド三リン酸)を蛍光標識プライマーとともに使用してDNAシークエンシングの改善をもたらす。当該技術分野で知られた従来のシークエンシング法と同様、三リン酸残基はDNAポリメラーゼによって組み込まれ得る。リボ三リン酸またはRNase H2に対する基質を供給する代替的なアナログの濃度は、ポリメラーゼによって生成される各伸長産物中に平均1つのかかる塩基がランダムに組み込まれるような濃度に調整される。プライマーに由来する断片のネステッドファミリーがRNase H2での切断によって生成し、次いで、標準的なDNAシークエンシング法の場合のように電気泳動によって分離される。あるいは、多数のRNA残基または修飾ヌクレオシド、例えば2’−フルオロヌクレオシドを伸長産物に組み込んでもよく、その後のRNase H2での消化は、平均、各鎖が1回だけ切断されるように制限する。4つの別個の反応を実施し、各々で、塩基の1つが異なるリボ三リン酸(A、C、TもしくはG)または他のRNase H2切断性アナログで置換される。このアッセイでは、高価な蛍光標識ジデオキシ三リン酸連鎖停止剤の使用が不要になる。
上記の配列決定法と同様、ドナーオリゴヌクレオチドを用いて、各サイクルでアクセプターの3’末端オリゴヌクレオチドに2つの塩基を付加してもよい。この場合、RNase H2切断性残基はドナーの5’末端の3’側に位置し得る。この酵素的合成法は長鎖DNA分子の合成に特に好都合である。各塩基に対応するヘアピン試薬は、さらなるサイクルまたはさらなる合成での再利用のために収集され得る。系に有機溶媒が使用されないため、廃棄物処理が簡素化される。
場合により、キットには、本発明のキットを、本発明の新規なプライマーおよび/または他の新規なオリゴヌクレオチドの存在下で核酸を増幅またはライゲーションするためにどのようにして使用するかに関する情報を提供する使用説明小冊子が内包され得る。一部の特定の実施形態では、情報は、アッセイに使用されるRNase H、ニッキング剤、DNAポリメラーゼ、DNAリガーゼおよびオリゴヌクレオチドをどのようにして使用および/または保存するかに関する1つ以上の説明ならびにニッキング剤またはRNase HおよびDNAポリメラーゼまたはDNAリガーゼ用のバッファー(1種類または複数種)、適切な反応温度(1つまたは複数)および反応時間(1つまたは複数)などの説明を含む。
さらなる一実施形態では、核酸の選択的増幅のためのキットに、3’末端と5’末端を有し、RNase H切断性ドメイン、フルオロフォアおよびクエンチャーを含み、該切断性ドメインが該フルオロフォアと該クエンチャー間に位置するオリゴヌクレオチドプローブであって、増幅対象の核酸またはこの相補鎖の一部分に相補的であるオリゴヌクレオチドプローブを含める。
また別の実施形態では、本発明は、標的核酸配列の存在下でのアクセプターオリゴヌクレオチドとドナーオリゴヌクレオチドのライゲーションのためのキットに関する。該キットは
(a)ドナーオリゴヌクレオチドとアクセプターオリゴヌクレオチド、ここで、該オリゴヌクレオチドの一方または両方は、RNase H切断性ドメインおよびライゲーションを抑制するブロッキング基を含むものである;
(b)RNase H酵素;ならびに
(c)該アクセプターおよび該ドナーオリゴヌクレオチドを標的核酸配列の存在下でライゲーションするための使用説明マニュアル
を備えている。
ライゲーション用キットのさらなる一実施形態では、ドナーオリゴヌクレオチドは、RNase H切断ドメインを含んでいるが5’末端またはこの付近にブロッキング基がなく、代わりに遊離の5’−OHを有するものである。
本発明を、以下の実施例を参照することによってさらに説明する。しかしながら、本実施例は、上記の実施形態と同様、例示的であり、可能な本発明の範囲をなんら限定するものと解釈されるべきでないことに注意されたい。
[実施例1]好熱菌由来の生物体由来のコドン最適化RNase H2酵素のクローニング
この実施例では、好熱菌由来の生物体由来のコドン最適化RNase H2酵素のクローニングを記載する。
潜在的に新しい有用な活性を有する機能性の新規なRNase H2酵素を探索するため、候補遺伝子を、公衆ヌクレオチド配列リポジトリのゲノム配列がこれまでに決定されている古細菌の超好熱菌から同定した。RNase H2酵素はいくらかのアミノ酸相同性を共有しており、幾つかの高度に保存され残基の存在を有するが、同定された候補遺伝子間の実際の相同性は低く、これらが機能性のRNase H2酵素を表すのか、未知の機能の遺伝子であるのか、非機能性のRNase H2遺伝子であるのかは不確かであった。表4に示すように、RNase H2遺伝子が特性評価されていない2種類の生物体と、RNase H2遺伝子(rnhb)と機能性タンパク質が同定されており、機能性酵素であることがわかっている陽性対照として使用するための3種類の生物体を含む5つの遺伝子を試験に選択した。特性不明の2つの予測rnhb遺伝子をこの最初の試験に選択したが、多くのさらなる古細菌種はこのゲノム配列が決定されているがこのrnhb遺伝子が特性不明であるものも同様に試験され得る。
参考文献1から6:1)Haruki,M.,Hayashi,K.,Kochi,T.,Muroya,A.,Koga,Y.,Morikawa,M.,Imanaka,T.and Kanaya,S.(1998)超好熱菌の古細菌由来の組換えRNase HIIの遺伝子クローニングおよび特性評価。J Bacteriol,180,6207−6214;2)Haruki,M.,Tsunaka,Y.,Morikawa,M.and Kanaya,S.(2002)単一のリボヌクレオチドを含むDNA−RNA−DNA/DNAキメラ基質のDNA−RNA接合部における原核生物RNases HIIでの切断。FEBS Lett,531,204−208;3)Mukaiyama,A.,Takano,K.,Haruki,M.,Morikawa,M.and Kanaya,S.(2004)超耐熱性細菌由来の速度論的にロバストな単量体タンパク質。Biochemistry,43,13859−13866 4)Sato,A.,Kanai,A.,Itaya,M.and Tomita,M.(2003)超好熱菌の古細菌ピロコッカス・フリオサス(Pyrococcus furiosus)から精製したRNase HIIおよびFEN−1による岡崎断片プロセッシングのための協同的調節。Biochem Biophys Res Commun,309,247−252;5)Lai,B.,Li,Y.,Cao,A.and Lai,L.(2003)メタノコックス・ヤンナスキイ(Methanococcus jannaschii)RNase HIIの金属イオン結合および酵素的機構。Biochemistry,42,785−791;および6)Lai,L.,Yokota,H.,Hung,L.W.,Kim,R.and Kim,S.H.(2000)古細菌RNase HII:ヒト主要RNase Hのホモログの結晶構造。Structure,8,897−904.
上記に示したrnhb遺伝子にコードされたタンパク質の予測される物性を表5に示す(Pace,C.N.et al.,(1995)Protein Sci.,4,p.2411)。
この5つの配列の組内での異なる古細菌種に由来するRNase H2酵素(または候補酵素)間のアミノ酸類似性は34%から65%の範囲である。アミノ酸同一性のマトリックスを以下の表6に示す。
天然遺伝子配列のコドンを、標準的なコドン使用頻度表を用いて大腸菌での発現に対して最適化した。以下の配列を、標準的な方法を用いて合成オリゴヌクレオチドから作製した人工遺伝子としてアセンブリングし、プラスミド内にクローニングした。DNA配列同一性を両鎖において検証した。人工DNA構築物の配列を以下に示す。小文字は、5’末端にBam HI部位および3’末端にHind III部位を含むリンカー配列を表す。大文字はコード配列を表し、ATG開始コドンに下線を付している。
配列番号1 −ピロコッカス・コダカラエンシス(Pyrococcus kodakaraensis)由来のコドン最適化rnhb遺伝子
配列番号2 −ピロコッカス・フリオサス(Pyrococcus furiosus)由来のコドン最適化rnhb遺伝子
配列番号3 −メタノカルドコックス・ヤンナスキイ(Methanocaldococcus jannaschii)由来のコドン最適化rnhb遺伝子
配列番号4 −ピロコッカス・アビシ(Pyrococcus abysii)由来のコドン最適化rnhb遺伝子
配列番号5 −スルホロブス・ソルファタリカス(Sulfolobus solfataricus)由来のコドン最適化rnhb遺伝子
[実施例2]組換えRNase H2ペプチドの発現
以下の実施例は、組換えRNase H2ペプチドの発現を示す。
実施例1の5つの合成遺伝子配列を、特有のBam HIおよびHind III制限部位を用いて細菌発現ベクターpET−27b(+)(Novagen,EMD Biosciences,La Jolla,CA)内にサブクローニングした。このベクターには、発現されたペプチドのカルボキシ末端に(終止コドンに続いて)6つのヒスチジン残基(これが一緒になって「His−タグ」を構成する。)(配列番号313)が位置している。「His−タグ」により、当業者によく知られた方法であるNiアフィニティクロマトグラフィーを使用する組換えタンパク質の迅速で簡単な精製の使用が可能になる。あるいは、合成遺伝子を、His−タグなしの天然形態内で発現させ、サイズ排除クロマトグラフィー、アニオン交換クロマトグラフィーまたは同様に当業者によく知られた他のかかる方法を用いて精製させ得る。
BL21(DE3)コンピテント細胞(Novagen)を各プラスミドで形質転換し、0.5mMのイソプロピル−β−D−チオ−ガラクトシド(IPTG)を用いて25℃で4.5時間誘導した。すべてのクローンについて、5mLのIPTG誘導培養物を、Bugbuster(R)Protein Extraction ReagentおよびBenzonase(R)Nuclease(Novagen)で製造業者の使用説明書に従って処理して可溶性タンパク質を放出させ、核酸を分解させた。回収したタンパク質を、製造業者によって示されたプロトコルに従ってNiアフィニティカラム(Novagen)に通し、1Mイミダゾール含有バッファーで溶出した。
溶菌液の「全」画分と「可溶性」画分の両方を、SDS10%ポリアクリルアミドゲル電気泳動を用いて調べた。タンパク質をクマシーブルー染色で可視化した。IPTG誘導後、大量の組換えタンパク質が5つのすべての古細菌の RNase H2合成遺伝子から生成した。この精製方法を使用し、可溶性画分のタンパク質が4種類の酵素ピロコッカス・コダカラエンシス(Pyrococcus kodakaraensis)、ピロコッカス・フリオサス(Pyrococcus furiosus)、メタノカルドコックス・ヤンナスキイ(Methanocaldococcus jannaschii)およびピロコッカス・アビシ(Pyrococcus abyssi)から回収された。スルホロブス・ソルファタリカス(Sulfolobus solfataricus)RNase H2では、この溶解手順を用いて可溶性タンパク質が回収されなかった。誘導されたRNase H2タンパク質の例を図4Aおよび4Bに示す。
組換えタンパク質を作製および精製し、特性評価のために小規模量の該タンパク質を得るための改善された方法を以下のようにして開発した。各クローンで得られる可溶性タンパク質の量を最大限にするため、37℃の誘導温度を6時間使用する。ピロコッカス・コダカラエンシス(Pyrococcus kodakaraensis)、メタノカルドコックス・ヤンナスキイ(Methanocaldococcus jannaschii)およびスルホロブス・ソルファタリカス(Sulfolobus solfataricus)では、CelLytic(商標)B 10×溶解試薬(Sigma−Aldrich,St.Louis,MO)を溶解に使用する。500mM NaCl、20mM TrisHCl、5mMイミダゾール、pH7.9中の10倍希釈液を作製し、誘導培養物由来のペレット化細菌ペースト0.5gあたり10mLを使用する。ピロコッカス・フリオサス(Pyrococcus furiosus)およびピロコッカス・アビシ(Pyrococcus abyssi)では、誘導培養物100mLあたり5mLのBugbuster(R)Protein Extraction Reagent(Novagen)を細胞溶解に使用する。また、全クローンで誘導培養物100mLあたり、5KUのrLysozyme(商標)(Novagen)および250UのDNase I(Roche Diagnostics,Indianapolis,IN)を、菌体溶解を向上させるため、および溶液の粘度を下げるために使用する。遠心分離で細胞残屑を除去した後、ライセートを75℃で15分間加熱し、存在するDNase Iおよび他の細胞内ヌクレアーゼ(あれば)を失活させる。次いでライセートを16,000×gで20分間スピンし、加熱処理後に変性したタンパク質を沈降させる。遠心分離工程単独で、組換え耐熱性酵素の高度な機能精製がもたらされる。
得られた可溶性上清みを、His・Bind(R)Resin(Novagen)を含有するNiアフィニティカラムに通し、200mMのイミダゾールを含有する溶出バッファーで溶出する。精製されたタンパク質を次いで、70%硫酸アンモニウムの存在下で沈殿させ、保存バッファー(10mM Tris pH8.0、1mM EDTA、100mM NaCl、0.1%Triton X−100、50%グリセロール)中に再縣濁させ、タンパク質を長期保存のために濃縮して安定化させる。濃縮したタンパク質は同じ保存バッファーに対して2×2時間(各々×250容量)透析して残留塩を除去する。最終の精製タンパク質を−20℃で保存する。このようなプロトコルを使用し、ピロコッカス・アビシ(Pyrococcus abysii)では、200mLのIPTG誘導培養物から約2mgの可溶性タンパク質が得られる。Niカラムに通した後、約0.7mgの純粋なタンパク質が回収される。機能使用のため、濃縮酵素ストックを保存バッファー中で希釈し、試験したすべての酵素反応において1:10で添加した。従って、すべての反応バッファーは0.01%のTriton X−100および5%のグリセロールを含有している。
上記に概要を示したクローニングRNase H2酵素の各々について組換えタンパク質を作製し、精製した。ピロコッカス・コダカラエンシス(Pyrococcus kodakaraensis)、ピロコッカス・フリオサス(Pyrococcus furiosus)、ピロコッカス・アビシ(Pyrococcus abyssi)およびスルホロブス・ソルファタリカス(Sulfolobus solfataricus)由来の試料を、SDS10%ポリアクリルアミドゲル電気泳動を用いて調べた。タンパク質はクマシーブルー染色で可視化した。結果を図5に示す。発現および精製の方法が予測どおりに機能した場合、これらのタンパク質にはすべて、6×ヒスチジンタグ(配列番号313)が含まれているはずであり、これは、抗His抗体を用いてウエスタンブロットによって検出され得る。図5に示すゲルはナイロン膜に転写されたエレクトロブロットであり、ウエスタンブロットは抗His抗体を用いて行った。結果を図6に示す。組換えタンパク質はすべて抗His抗体によって認識され、所望の組換えタンパク質種が作製および精製されたことが示された。
組換えタンパク質の大規模調製物は、当業者によく知られた微生物発酵手順を用いてより良好に発現させることができる。熱処理の後、遠心分離して変性タンパク質を沈降させると相当な精製がもたらされ、最終の精製は、His−タグの必要またはNi−アフィニティクロマトグラフィーの使用なしで、サイズ排除またはアニオン交換クロマトグラフィーを用いて行われ得る。
[実施例3]組換えペプチドのRNase H2活性
以下の実施例は、組換えペプチドのRNase H2活性を示す。
RNase H酵素はRNA/DNAヘテロ二本鎖内のRNA残基を切断する。少なくとも4つの連続するRNA残基が存在する場合、RNase H酵素はすべて、この種の基質を切断し得る。RNase H1酵素は、キメラRNA/DNA種のRNA「域」を4残基未満に短くすると急速に活性を失う。他方、RNase H2酵素は、単一のRNA残基のみを含むRNA/DNAヘテロ二本鎖を切断することができる。すべての場合において、切断生成物は3’−ヒドロキシルと5’−リン酸基を含むものである(図1参照)。多数のRNA残基が存在する場合、切断はRNA塩基間で起こり、RNA−リン酸間結合が切断される。単一のRNA残基しか存在しない場合、切断はII型RNase H酵素でしか起こらない。この場合、切断はRNA塩基の5’側のDNA−リン酸結合において起こる(図3参照)。RNase H酵素は二価の金属イオン補因子の存在を必要とする。典型的には、RNase H1酵素はMg++イオンの存在を必要とするが、RNase H2酵素は任意の幾つかの2価のカチオン、例えば限定されないがMg++、Mn++、Co++およびNi++を伴って機能を果たすことができる。
実施例2に記載の組換えRNase H2タンパク質を両方の型のRNase H活性について試験し、上記に示した特徴について調べた。
多数のRNA塩基を有する基質の切断。以下の合成30bp基質を使用し、これらの酵素の長いRNAドメインの切断に対する活性を試験した。基質は、一方の鎖に11個のDNA塩基、8個のRNA塩基および11個のDNA塩基と他方の鎖としてパーフェクトマッチDNA相補鎖を有する「11−8−11」設計である。使用したオリゴヌクレオチドを以下に示し、ここで、大文字はDNA塩基を表し、小文字はRNA塩基を表す。
アニーリングさせると、これらの一本鎖(ss)オリゴヌクレオチドは以下の「11−8−11」二本鎖(ds)基質を形成する:
各組換えタンパク質生成物のアリコートを一本鎖または二本鎖オリゴヌクレオチド基質とともに、80μl反応容量で、バッファー50mM NaCl、10mM MgCl2および10mM Tris pH8.0中にて45℃または70℃で20分間インキュベートした。反応を、ゲル負荷バッファー(ホルムアミド/EDTA)の添加によって停止させ、変性7M尿素、15%ポリアクリルアミドゲル上で分離した。ゲルを、GelStar(商標)(Lonza,Rockland,ME)を用いて染色し、UV励起によって可視化した。5種類の組換えペプチドすべてで、RNA/DNAヘテロ二本鎖(11−8−11)基質内の8塩基RNA配列の切断能が示された。重要なことに、組換えタンパク質は一本鎖RNA含有オリゴヌクレオチド(配列番号6)を分解せず、二本鎖基質が必要とされることが示された。さらに、dsDNA基質は切断されなかった。
2価のカチオンの非存在下では切断は観察されなかった(例えば、Mg++が反応バッファー中に存在しない場合、活性は観察されなかった。)。Mg++滴定を行い、高い酵素活性が2から8mMのMgCl2で観察された。最適な活性が3から6mMのMgCl2で観察された。また、切断活性を他の2価のカチオン、例えばMn++およびCo++を用いて検出した。MnCl2では、良好な活性が0.3mMから10mMの2価カチオン濃度で見られた。酵素活性は300nMから1mMの範囲で最適であった。CoCl2では、活性は0.3mMから2mMの範囲で見られ、最適な活性は0.5から1mMの範囲であった。従って、単離したこれらの酵素は、RNase H活性およびRNase H2クラスに特徴的な2価のカチオン要件を示すものである。
ピロコッカス・コダカラエンシス(Pyrococcus kodakaraensis)、ピロコッカス・フリオサス(Pyrococcus furiosus)およびピロコッカス・アビシ(Pyrococcus abyssi)由来の組換えRNase H2酵素による11−8−11基質の消化を図7に示す。
RNase H酵素による基質切断により、3’−OHと5’−リン酸基を有する生成物がもたらされることが予測される。これらの新しい組換えRNase H2タンパク質による反応生成物の実体を質量分析によって調べた。エレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI−MS)は、このサイズの核酸断片のほぼ単一のドルトンの分解度を有する(+/−0.02%の精度)。オリゴヌクレオチド11−8−11基質(配列番号6および7)をESI−MSによって、消化の前と後の両方で、3種類のピロコッカス属の種のRNase H酵素を用いて調べた。主な質量の実測値を表7に、質量の実測値と整合する核酸種の同定とともに報告する。
同定された主な種を示す。DNA塩基を大文字で示し、RNA塩基小文字で示し、リン酸部=「P」である。分子量は丸めを行って最近似値のドルトンにしている。他に表示がない場合、核酸鎖は5’−ヒドロキシルまたは3’−ヒドロキシルで終結している。
すべての場合において、DNA相補鎖がインタクトな状態(分解なし)で観察された。RNA含有鎖は効率的に切断され、反応生成物の質量の実測値は、生成した主要断片である以下の種:1)未消化DNA残基と単一の3’−RNA残基を含み、3’−ヒドロキシル基を有するものであった種(配列番号8)、および2)5’−リン酸基、単一の5’−RNA残基および未消化DNA残基を有する種(配列番号9)と整合する。観察された反応生成物は、RNase H1およびRNase H2の両酵素の既知の切断特性と整合する。
単一のRNA塩基を有する基質の切断.RNase H2酵素は単一のRNA残基を含む基質を特徴的に切断するが、RNase H1酵素は切断することができない。以下の合成30bp基質を使用し、これらの酵素の単一のRNA残基での切断に対する活性を試験した。基質は、一方の鎖に14個のDNA塩基、1個のRNA塩基および15個のDNA塩基と他方の鎖としてパーフェクトマッチDNA相補鎖を有する「14−1−15」設計である。4種類の異なる基質を4つのRNA塩基:C、G、AおよびUの各々を含む8成分一本鎖オリゴヌクレオチドから作製した。使用したオリゴヌクレオチドを以下に示し、ここで、大文字はDNA塩基を表し、小文字はRNA塩基を表す。
rCについて:
アニーリングさせると、これらの一本鎖(ss)オリゴヌクレオチドは、以下の「14−1−15 rC」二本鎖(ds)基質を形成する:
rGについて:
アニーリングさせると、これらの一本鎖(ss)オリゴヌクレオチドは、以下の「14−1−15 rG」二本鎖(ds)基質を形成する:
アニーリングさせると、これらの一本鎖(ss)オリゴヌクレオチドは、以下の「14−1−15 rA」二本鎖(ds)基質を形成する:
rUについて:
アニーリングさせると、これらの一本鎖(ss)オリゴヌクレオチドは、以下の「14−1−15 rU」二本鎖(ds)基質を形成する:
各組換えタンパク質生成物のアリコートを上記に示した一本鎖および二本鎖オリゴヌクレオチド基質とともに、80μl反応容量で、バッファー50mM NaCl、10mM MgCl2および10mM Tris pH8.0中にて70℃で20分間インキュベートした。反応を、ゲル負荷バッファー(ホルムアミド/EDTA)の添加によって停止させ、変性7M尿素、15%ポリアクリルアミドゲル上で分離した。ゲルを、GelStar(商標)(Lonza,Rockland,ME)を用いて染色し、UV励起によって可視化した。5種類の組換えペプチドすべてで、RNA/DNAヘテロ二本鎖(14−1−15)内の単一のRNA塩基の切断能が示された。4つのRNA塩基の各々は、これらの酵素による切断性基質としての機能を果たした。重要なことに、これらの組換えタンパク質は一本鎖RNA含有オリゴヌクレオチド(配列番号10、12、14、16)を分解せず、二本鎖基質が必要とされることが示された。従って、単離したこれらの酵素はRNase H2活性を示すものである。2価のカチオンの滴定を試験し、結果は、8−11−8基質を用いて先で得られたものと同一であった。
ピロコッカス・アビシ(Pyrococcus abyssi)、ピロコッカス・フリオサス(Pyrococcus furiosus)およびメタノカルドコックス・ヤンナスキイ(Methanocaldococcus jannaschii)由来の組換えRNase H2酵素による4種類の14−1−15基質(配列番号10〜11、12〜13、14〜15および16〜17)ならびに11−8−11基質(配列番号6および7)の消化を図8Aに、ピロコッカス・コダカラエンシス(Pyrococcus kodakaraensis)については図8Bに示す。
RNase H酵素による基質切断により、3’−OHと5’−リン酸基を有する生成物がもたらされることが予測される。さらに、単一のリボヌクレオチドを含む基質のRNase H2酵素による切断は、RNA残基の5’側のDNA結合において特徴的に起こる。単一のリボヌクレオチド基質を用いたこれらの新しい組換えRNase H2タンパク質による反応生成物の実体を質量分析によって調べた。オリゴヌクレオチド14−1−15 rC基質(配列番号10および11)をESI−MSによって、消化の前と後の両方で、3種類のピロコッカス属の種のRNase H2酵素およびメタノカルドコックス・ヤンナスキイ(Methanocaldococcus jannaschii)酵素を用いて調べた。主な質量の実測値を表8に、質量の実測値と整合する核酸種の同定とともに報告する。
同定された主な種を示す。DNA塩基を大文字で示し、RNA塩基小文字で示し、リン酸部=「P」である。分子量は丸めを行って最近似値のドルトンにしている。他に表示がない場合、核酸鎖は5’−ヒドロキシルまたは3’−ヒドロキシルで終結している。
すべての場合において、DNA相補鎖がインタクトな状態(分解なし)で観察された。RNA含有鎖は効率的に切断され、反応生成物の質量の実測値は、生成した主要断片である以下の種:1)未消化DNA残基を含み、3’−ヒドロキシルを有するものであった種(配列番号18)、および2)5’−リン酸基、単一の5’−RNA残基および未消化DNA残基を有する種(配列番号19)と整合する。観察された反応生成物は、RNase H2クラス酵素の既知の切断特性と整合する。
要約すると、5種類の古細菌種に由来するRNase H2酵素をコードしていると予測されたクローニングしたコドン最適化rnhb遺伝子ですべて、RNase H2ファミリーの構成員で予測されるものと整合する酵素活性を示す組換えタンパク質生成物が生成した。1)酵素は機能を果たすのに2価のカチオンを必要とした(ここに示した実験はMg++を用いて行った。)。また、Mn++またはCo++イオンの使用でも活性が存在する;2)一本鎖核酸は分解されない;3)二本鎖ヘテロ二本鎖核酸は、一方の鎖が1つ以上のRNA塩基を含む基質である;4)2つ以上の連続するRNA塩基を含む基質では、切断はDNA−RNA−DNAキメラ内のRNA間結合において起こる;単一のRNA塩基を含む基質では、切断はDNA−RNA−DNA内のRNA塩基のすぐ5’側のDNA結合において起こる;および6)反応生成物は3−ヒドロキシルと5’−リン酸基を有する。
[実施例4]ピロコッカス・アビシ(Pyrococcus abyssi)RNase H2の反応温度の最適化および熱安定性
この実施例およびその後のすべての作業では、酵素の使用量は、以下の単位の定義に基づいて標準化した。ここで:
1単位は、4mMのMg2+を含むpH8.0のバッファー中、70℃で1分間に、単一のrC残基を含むヘテロ二本鎖基質が1ナノモル切断される酵素の量と定義する。
基質配列番号10および11を、単位濃度を正規化する目的のためのRNase H2酵素調製物の特性評価に使用した。特に記載のない限り、以下の標準化バッファーを使用した。「Mg切断バッファー」:4mM MgCl2、10mM Tris pH8.0、50mM NaCl、10μg/ml BSA(ウシ血清アルブミン)、および300nMオリゴ−dT(20mer poly−dT オリゴヌクレオチド)。BSAおよびオリゴ−dTは、プラスチックチューブで非特異的結合部位を飽和させ、実施されるアッセイの定量性を改善するために使用する。
精製組換えピロコッカス・アビシ(Pyrococcus abyssi)RNase H2酵素を熱安定性について試験した。酵素のアリコートを95℃で種々の期間インキュベートし、次いで、単一のrCを含有する基質(配列番号10および11)を切断するために使用した。基質のRNA鎖を、6000Ci/mmolのγ−32P−ATPおよび酵素T4 Polynucleotide Kinase(Optikinase,US Biochemical)を用いて32Pで放射性標識した。追跡標識を反応混合物に添加した(1:50)。反応を、100nMの基質を100マイクロ単位(μU)の酵素とともにMg切断バッファー中で用いて行った。反応液を70℃で20分間インキュベートした。反応生成物を、変性7M尿素、15%ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)を用いて分離し、Packard Cyclone(商標)Storage Phosphor System(ホスフォイメージャー)を用いて可視化した。各バンドの相対強度を、製造業者の画像解析ソフトウェアを用いて定量し、結果を、切断された全基質に対する割合としてプロットした。結果を図9に示す。酵素は95℃において30分間を超えて充分な活性を保持していた。活性は、45分間のインキュベーション後50%まで、85分間のインキュベーション後10%まで低下した。
このような結果は、ピロコッカス・アビシ(Pyrococcus abyssi)RNase H2酵素が、95℃での長時間インキュベーションに耐えるのに充分に耐熱性であり、従って、PCR反応で典型的に使用される条件に耐え得ることを示す。
次に、ピロコッカス・アビシ(Pyrococcus abyssi)RNase H2酵素の活性の温度依存性を特性評価した。活性は30℃から70℃までの40℃の温度範囲にわたって試験した。rC基質(配列番号10および11)のRNA鎖を上記のようにして放射性標識した。反応を、100nMの基質を200マイクロ単位(μU)の酵素とともにMg切断バッファー中で用いて行った。反応液を、30℃、40℃、50℃、60℃または70℃で10分間インキュベートした。反応を、冷EDTA含有ホルムアミドゲル負荷バッファーの添加によって停止させた。次いで反応生成物を、変性7M尿素、15%ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)を用いて分離し、Packard Cyclone(商標)Storage Phosphor System(ホスフォイメージャー)を用いて可視化した。得られたゲル画像を図10に示す。各バンドの相対強度を、製造業者の画像解析ソフトウェアを用いて定量し、結果を、切断された全基質に対する割合としてプロットした(図11参照)。酵素は、30℃において約0.1%しか活性を示さず、約50から60℃まで認識可能な活性は得られない。
従って、実際上、該酵素は室温で機能的に不活性である。従って、この酵素を用いた反応は氷上で、またはさらには室温であってもセットアップされ得、温度が上昇するまで反応は進行しない。ピロコッカス・アビシ(Pyrococcus abyssi)RNase H2切断をPCR反応と関連させた場合、本明細書において示された温度依存性活性は有効に機能し、修飾DNAポリメラーゼの非存在下における「ホットスタート」反応形式がもたらされ得よう。
[実施例5]RNase H2による非標準塩基の切断
RNase H1およびRNase H2の天然の生物学的基質は、1つ以上のRNA残基を含む二本鎖DNA配列である。2’位にヒドロキシル(RNA)以外の置換を含む修飾塩基は、これらの酵素の基質であることが観察されなかった。以下の実施例は、ピロコッカス・アビシ(Pyrococcus abyssi)RNase H2酵素がRNA含有修飾基質に対して活性を有することを示す。
修飾塩基を含む以下の14−1−15基質を試験し、RNase H2が単一の非RNA 2’修飾塩基を切断のための部位として認識し得るかどうかを調べた。修飾は塩基の2’位置に位置し、ロックド核酸(LNA)、2’−O−メチル(2’OMe)および2’−フルオロ(2’F)を含める;単一のリボ−C含有基質を陽性対照として使用した。以下、本明細書において、LNA塩基は「+」接頭辞を伴って表示し(+N)、2’OMe塩基は「m」接頭辞を伴って表示し(mN)、2’F塩基は「f」接頭辞を伴って(fN)、2’−アミノ塩基は「a」接頭辞を伴って(aN)表示する。
リボ−C基質
配列番号10および11はそれぞれ、出現順に
LNA−C基質
2’OMe−C基質
配列番号21および274はそれぞれ、出現順に
2’F−C基質
配列番号22および274はそれぞれ、出現順に
上記の4種類の基質を、80μl反応容量で、種々のバッファー中にて70℃で20分間、組換えピロコッカス・アビシ(Pyrococcus abyssi)RNase H2酵素とともにインキュベートした。試験したバッファーは、50mM NaCl、10mM Tris pH8.0を含み、10mM MgCl2、10mM CoCl2または10mM MnCl2のいずれかを有するものであった。反応を、ゲル負荷バッファー(ホルムアミド/EDTA)の添加によって停止させ、変性7M尿素、15%ポリアクリルアミドゲル上で分離した。ゲルを、GelStar(商標)(Lonza,Rockland,ME)を用いて染色し、UV励起によって可視化した。結果を図12に示す。単一のリボ−C残基を有する対照基質は100%切断された。単一のLNA−Cまたは単一の2’OMe−C残基を含む基質は切断されなかった。しかしながら、単一の2’−F−C残基を含む基質はわずかな程度、切断された。この切断はマンガン含有バッファー中でのみ起こり、コバルトバッファー中またはマグネシウムバッファー中のいずれかでは見られなかった。
2’−F−C塩基における切断は予想外であった。2’−フルオロ塩基の切断を、以下の基質を用いてさらに調べた。
リボ−C基質
2’F−C基質
配列番号22および274はそれぞれ、出現順に
2’F−U基質
配列番号23および275はそれぞれ、出現順に
2’F−C+2’FU(fCfU)基質
配列番号24および276はそれぞれ、出現順に
上記の4種類の基質を、80μl反応容量で、50mM NaCl、10mM Tris pH8.0および10mM MnCl2を含むバッファー中にて70℃で20分間、組換えピロコッカス・アビシ(Pyrococcus abyssi)RNase H2酵素または組換えピロコッカス・フリオサス(Pyrococcus furiosus)RNase H2酵素のいずれかとともにインキュベートした。反応を、ゲル負荷バッファー(ホルムアミド/EDTA)の添加によって停止させ、変性7M尿素、15%ポリアクリルアミドゲル上で分離した。ゲルを、GelStar(商標)(Lonza,Rockland,ME)を用いて染色し、UV励起によって可視化した。結果を図13に示す。単一のリボ−C残基を有する対照基質は100%切断された。単一の2’−F−Cまたは単一の2’−F−U残基を含む基質はわずかな程度、切断された。隣接している2’−F−Cおよび2’−F−U残基(fCfU)を含むジ−フルオロ基質はほぼ100%切断された。さらに、ピロコッカス・アビシ(Pyrococcus abyssi)およびピロコッカス・フリオサス(Pyrococcus furiosus)RNase H2酵素はどちらも、修飾基質を同一の様式で切断した。この実施例は、fC基の予想外の切断がfCに限定されず、fUでも起こったことを示す。より重要なことには、2つの連続する2’−フルオロ修飾塩基の組合せはRNase H2のさらに良好な基質であった。この新規な切断特性は、P.アビシ(abyssi)酵素およびP.フリオサス(furiosus)酵素の両方で見られた。かかる非定型の基質の切断は、すべての古細菌RNase H2酵素に共通する特性であり得る。
ジ−フルオロfCfU基質の切断生成物の実体を質量分析を用いて、実施例3に記載の方法を使用して試験した。従来のリボヌクレオチド基質を使用すると、RNase H酵素による切断により、3’−OHと5’−リン酸基を有する生成物がもたらされる。fCfU基質(配列番号24および276)を消化の前と後の両方でESI−MSにより、組換えピロコッカス・アビシ(Pyrococcus abyssi)RNase H2酵素によって調べた。主な質量の実測値を表9に、質量の実測値と整合する核酸種の同定とともに報告する。
同定された主な種を示す。DNA塩基を大文字で示し、2’−F塩基をfCまたはfUとして示し、リン酸部=「P」である。分子量は丸めを行って最近似値のドルトンにしている。他に表示がない場合、核酸鎖は5’−ヒドロキシルまたは3’−ヒドロキシルで終結している。
質量分析データは、ジ−フルオロ基質、例えば上記で試験したfCfU二本鎖のRNase H2による消化により、2つのフルオロ塩基間の切断がもたらされることを示す。さらに、反応生成物は、RNA含有基質の消化で得られる生成物と同様、3’−ヒドロキシルと5’−リン酸基を含むものである。
修飾塩基の切断は2価のカチオンの非存在下では観察されなかった。滴定を行い、酵素活性が0.25から10mMのMnCl2および0.25から1.5mMのCoCl2で観察された。酵素活性はMnCl2およびCoCl2の両方で、0.5mMから1mMの範囲で最適であった。以下、本明細書において、0.6mMのMnCl2または0.5mMのCoCl2を反応において使用した。Mgバッファーの使用では、修飾基質の切断に対する活性の低下が観察された。全体的に、Mnバッファーの使用はジ−フルオロ(fNfN)基質の切断に対して最適な活性が観察されたが、リボヌクレオチド(rN)基質の切断に対してはMgバッファーの方が卓越していた。
RNase H2酵素が単一または2つの2’−F塩基において切断できる能力は予想外であった。次に、ピロコッカス・アビシ(Pyrococcus abyssi)RNase H2酵素を、さらにさまざまな修飾基質を切断する能力について、上記と同じ方法を用いてこの実施例で試験した。基質の修飾鎖を上記のようにして放射性標識した。反応を、100nMの基質と480から1000mUの組換え酵素をMn切断バッファー(10mM Tris pH8.0、50mM NaCl、0.6mM MnCl2、10μg/ml BSA)中で用いて行った。反応液を70℃で20分間インキュベートした。反応生成物を、変性7M尿素、15%ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)を用いて分離し、Packard Cyclone(商標)Storage Phosphor System(ホスフォイメージャー)を用いて可視化した。各バンドの相対強度を、製造業者の画像解析ソフトウェアを用いて定量し、切断された全基質に対する割合としてプロットした結果を表10に示す。
上記の結果から、これまで認識されていなかった多くの異なる2’修飾がRNase H2酵素によって切断され得ることが明らかである。2’修飾基質のうち、ジ−フルオロ化合物(2つの連続する2’−フルオロ塩基を有するもの)が最も活性であった。3つまたは4つの連続する2’−フルオロ塩基を有する幾つかのものなどのさらなる基質を試験した。2’−フルオロ含有量を2残基より多くに増大させると、活性の増大は見られなかった。
同様の一連の実験を、より少ない量の酵素を用いて行った。以下の実験を、先で使用した480mUの代わりに148μUの組換えピロコッカス・アビシ(Pyrococcus abyssi)RNase H2を使用し(3000倍少ない酵素)、バッファーは2価のカチオンの混合物(3mM MgCl2+0.6mM MnCl2)を含むものにしたこと以外は同一のプロトコルを用いて実施した。この条件下では、単一のリボヌクレオチド残基を含む基質は完全に切断されるが、修飾基質は切断されない。結果を表11に示す。RNase H2は、RNA塩基を含む基質の切断において2’修飾塩基の切断よりも活性である。
従って、ピロコッカス・アビシ(Pyrococcus abyssi)RNase H2は、RNA塩基は全く含まないが代わりに2’修飾塩基を含む基質を切断するために使用され得る。試験した化合物のうち、ジ−フルオロ(fNfN)含有基質の性能が最良であった。修飾基質の使用は一般的に、酵素の増量を必要とするが、該酵素は触媒的に非常に強力であり、ジ−フルオロ基質の100%切断を得るのに充分な酵素を使用することに困難性は示されない。
この実施例に記載した2’修飾基質は、典型的なRNase酵素による切断を受けにくい。このため、この基質は、切断事象がRNase H2によって媒介され、他のRNase酵素、特に一本鎖リボヌクレアーゼによる切断に完全に抵抗性の基質が使用される新規なアッセイ形式において使用され得る。
[実施例6]ジ−フルオロfNfN基質の切断に対する塩基の優先性
以下の実施例は、考えられ得る16種類すべての2’−フルオロジヌクレオチドがRNase H2によって切断され得ることを示す。相違する塩基の優先性を観察する。
各基質の修飾鎖を上記のようにして放射性標識した。反応を、100nMの基質を25mUの組換え酵素とともにMn切断バッファー(10mM Tris pH8.0、50mM NaCl、0.6mM MnCl2、10μg/ml BSA)中で用いて行った。反応液を70℃で20分間インキュベートした。反応生成物を、変性7M尿素、15%ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)を用いて分離し、Packard Cyclone(商標)Storage Phosphor System(ホスフォイメージャー)を用いて可視化した。各バンドの相対強度を定量し、切断された全基質に対する割合としてプロットした結果を図14に示す。酵素量を、低活性の基質に対する相対切断効率の正確な評価が行われ得るように最も活性な基質が、過剰な酵素を存在させることなく90から95%で切断されるように滴定した。
16種類のすべてのジヌクレオチドfNfNペアがRNase H2によって切断されたが、明白な基質優先性が観察された。一般に、配列fNfUを有する基質の性能は低く、ジヌクレオチドペアの3’位におけるfU塩基の位置は不利であることが示された。最も低活性の基質はfUfUであり、fAfCまたはfAfG基質の>90%切断がもたらされた条件下で示された切断は10%であった。
より多くの量の酵素を使用すると、基質間の切断効率の相対差は軽微であり、ここで試験したすべての基質で100%の切断が容易に得られ得る。
[実施例7]rNおよびfNfN基質の切断のための3’塩基および5’塩基の長さの最適化
以下の実施例は、プライマーまたはプローブ配列の3’末端および5’末端に対する切断性ドメインの位置の最適化を示す。先の実施例では、基質はすべて、切断性ドメインにフランキングしている5’側および3’側の両方に14または15個のDNA塩基を有するものであった。切断性プローブおよびプライマーの設計における使用のためには、場合によっては、このようなフランキング配列をできる限り短く作製することが、Tm(ハイブリダイゼーション温度)を制御するため、またはプライミング反応の特異性を改善するために有益であり得る。従って、効率的な酵素的切断が得られるのに必要な二本鎖の最低限の長さを規定することが重要である。
この実験では、単一のrC切断性塩基、リボヌクレオチドに5’−フランキングしている25個のDNA塩基の固定ドメインおよび3’側にさまざまな数の塩基を有する、表13に示す合成基質二本鎖を作製した。
各基質の修飾鎖を上記のようにして放射性標識した。反応を、100nMの基質を100μUの組換え酵素とともに、Mg切断バッファー(10mM Tris pH8.0、50mM NaCl、4mM MgCl2、10μg/ml BSA)中で用いて行った。反応液を70℃で20分間インキュベートした。反応生成物を、変性7M尿素、15%ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)を用いて分離し、Packard Cyclone(商標)Storage Phosphor System(ホスフォイメージャー)を用いて可視化した。各バンドの相対強度を定量し、切断された全基質に対する割合としてプロットした結果を図15に示す。最大の切断は、3’側のリボヌクレオチドにフランキングしている4から5個のDNA塩基の場合に起こった。
次の実験では、単一のrU切断性塩基を有し、3’側のリボヌクレオチドにフランキングしている25塩基対の固定ドメインおよび5’側に2から14塩基対を有する、表14に示す合成基質二本鎖を作製した。最低5つの非対合塩基(ダングリングエンド)を未修飾相補鎖上に残し、長鎖核酸試料に対するハイブリダイゼーションをシミュレーションした。
各基質の修飾鎖を前述のようにして放射性標識した。反応を、100nMの基質を123μUの組換え酵素とともに、MgカチオンとMnカチオンの両方を含む混合バッファー(10mM Tris pH8.0、50mM NaCl、0.6mM MnCl2、3mM MgCl2、10μg/ml BSA)中で用いて行った。反応液を70℃で20分間インキュベートした。反応生成物を、変性7M尿素、15%ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)を用いて分離し、Packard Cyclone(商標)Storage Phosphor System(ホスフォイメージャー)を用いて可視化した。各バンドの相対強度を定量し、結果を、切断された全基質に対する割合として図16にプロットした。短鎖の基質では、切断はほとんど見られなかった。活性は、5’−DNAドメインの長さに伴って、5’側のrU塩基にフランキングしている約10から12塩基の二本鎖で最大の切断が得られるまで増大した。
同様の実験の実験を行い、ジ−フルオロ(fNfN)基質の切断に必要とされる3’−DNAドメインの最適な長さを調べた。表15に示す二本鎖を合成し、試験し、fUfCジ−フルオロ基質の3’末端に必要とされるDNA塩基の長さを機能的に規定した。22塩基対の固定ドメインを5’末端に位置させ、3’−ドメインを2から14塩基でさまざまにした。
各基質の修飾鎖を上記のようにして放射性標識した。反応を、100nMの基質を37mUの組換え酵素とともに、MgカチオンとMnカチオンの両方を含む混合バッファー(10mM Tris pH8.0、50mM NaCl、0.6mM MnCl2、3mM MgCl2、10μg/ml BSA)中で用いて行った。反応液を70℃で20分間インキュベートした。反応生成物を、変性7M尿素、15%ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)を用いて分離し、Packard Cyclone(商標)Storage Phosphor System(ホスフォイメージャー)を用いて可視化した。各バンドの相対強度を定量し、結果を、切断された全基質に対する割合として図17にプロットした。切断性ドメインの3’側に2つのDNA塩基を有する基質では、切断は見られなかった。4つのDNA塩基では切断が見られ、8から10個のDNA塩基がfUfC切断ドメインの3’側に存在する場合で最大の切断が得られるまで着実に増大した。興味深いことに、切断ドメインの3’側のDNA塩基の最適な長さは、ジ−フルオロ基質の場合(8から10塩基)の方が単一のリボヌクレオチド基質の場合(4から5塩基)と比べて長い。
要約すると、リボヌクレオチド含有基質では、最大の切断活性は、少なくとも4から5個のDNA残基が3’側に位置し、10から12個のDNA残基が切断性ドメインの5’側に位置した場合に見られる。ジ−フルオロ基質では、最大の切断活性は、少なくとも8から10個のDNA残基が切断性ドメインの3’側に位置した場合に見られる;先の実施例から、14から15個のDNA残基が切断性ドメインの5’側に位置した場合に活性が高いことが明白である。
[実施例8]DNAプライマーに対する適用:プライマー伸長アッセイ形式およびDNAシークエンシングにおける潜在的有用性
上記の実施例では、耐熱性RNase H2酵素が二本鎖核酸を、単一の内部リボヌクレオチドまたは2’−フルオロジヌクレオチドにおいて切断する能力を特性評価した。実施例7では、この切断反応に有効な基質となる短鎖オリゴヌクレオチドを設計するためのパラメータが確立されている。このような特長を組み合わせると、プライマー伸長アッセイ、例えばDNAシークエンシングまたはPCRにおいて機能する切断性プライマーが作製され得る。一本鎖オリゴヌクレオチドは切断反応の基質ではなく、このため修飾オリゴヌクレオチドプライマーは、標的配列にハイブリダイズするまで機能的に「不活性」である。切断性ドメインを、本来は未修飾であるオリゴヌクレオチドに組み込んだ場合、このオリゴヌクレオチドはPCRをプライミングする機能を果たし得、プライマードメインのかなりの部分が最終PCR産物から切断されて反応が不能となった最終生成物がもたらされ得る(プライミング部位がなく、生成物は、もはや最初のプライマーセットを用いたPCRのための鋳型でなくなる。)。切断性ドメインを、3’末端がブロックされているオリゴヌクレオチドに組み込んだ場合、このプライマーは、PCRにおいて切断が起こるまで活性にならない。切断によって、ブロック型プライマーは「活性化」される。このため、この形式では、切断事象の前ではDNA合成が起こり得ないため、PCR反応に対して「ホットスタート」がもたらされ得る。実施例4では、この切断事象は、ピロコッカス・アビシ(Pyrococcus abysii)RNase H2で、高温に達するまで非常に不充分であることが示された。さらに、切断反応とプライマー伸長間の関連によりアッセイに対して特異性が高まる。これは、プライマーが鋳型にハイブリダイズしたとき、どちらの工程も、形成された二本鎖の酵素による認識が必要とされるためである。この反応の概略を図18に示す。この図解は、単純なプライマー伸長反応ならびにPCRの両方にあてはまることに注意のこと。また、他の種類の酵素的アッセイ、例えばライゲーション反応においても利用することができる。
以下の実施例は、DNAシークエンシングのためのRNase H2切断性プライマーの使用を示す。現在使用されているDNAシークエンシングの最も一般的な方法は、ジデオキシターミネーターヌクレオチドの存在下で行われる連続DNA合成反応(プライマー伸長反応)を伴うものである。反応は、多数回サイクルのプライマー伸長が行われ、産物が線形様式で蓄積される熱サイクリング形式で行われる。
DNAシークエンシングは、Big Dye(商標)Terminator V3.1 Cycle Sequencing Kit(Applied Biosystems,Foster City,CA)を用いて行った。以下のプライマーを使用した:
M13(−27)
先のように、DNA塩基を大文字で示し、RNA塩基を小文字で示し、SpC3は、オリゴヌクレオチドの3’末端に位置したスペーサーC3ブロッキング基である。ブロック型切断性プライマーは、リボヌクレオチドの5’側に17個のDNA塩基およびリボヌクレオチドの3’側に4個のDNA塩基を含むものであり(17−1−4設計)、このため、実施例7で確立した最適化設計規則に適合する。
シークエンシング反応を、0.75X ABI Reactionバッファー、160nMのプライマー、0.5X Big Dye Terminatorおよび230ng プラスミドDNA鋳型を含む20μl容量で、セットアップした。場合により、4mMのさらなるMgCl2を反応液に、14、1.4または0.14mUの組換えピロコッカス・アビシ(Pyrococcus abyssi)RNase H2とともに、またはなしで補給した。以下のサイクルシークエンスプログラムを使用した:96℃で30秒間、続いて、25サイクルの[96℃で5秒間、50℃で10秒間、55℃で4分間]。DNAシークエンシング反応は、Applied Biosystems型番3130xl Genetic Analyzerで実施した。得られたシークエンシングトレースを、品質およびリード長について調べた。結果を以下の表16にまとめる。
未修飾プライマーを用いた対照反応では高品質のDNA配列トレースが得られ、使用可能なリード長はわずかに800塩基を超えていた。これらの反応液へのRNase H2酵素の添加は反応液の品質を障害しなかった。シークエンシングキットに備えられたバッファーのカチオン含有量は製造業者(Applied Biosystems)によって開示されておらず、このため、実際の反応条件は確かでない。反応液に対するさらなる4mM MgCl2の補給の効果はなかった。rCブロック型切断性プライマーは、RNase H2の添加なしではDNAシークエンシングを補助しなかった。RNase H2を添加すると、20μlの反応液中14mUの酵素の使用で高品質シークエンシング反応が得られた。より少ない量の酵素の使用では、反応の質が低下するか、または機能性の反応が全くなかった。反応バッファーのマグネシウム含有量の補給は、ブロック型プライマーを用いる切断およびプライマー伸長反応を得るために必要であった。ここで使用した酵素の量は、最適な条件下(70℃、20分間のインキュベーション)でrN基質の100%切断を得るために必要とされる量より100倍多い。本明細書において実施したサイクルシークエンス反応では、プライマーのアニーリングを50℃で実施し、伸長反応を55℃でそれぞれ10秒間および4分間実施した。このような低温は、ピロコッカス・アビシ(Pyrococcus abyssi)RNase H2では最適下限である(上記の実施例4参照)。高温でのサイクルシークエンス反応の実施は、必要とされる酵素が少ないが、この必要はない。
この実施例は、RNase H2に対する内部切断部位を含むブロック型プライマーがプライマー伸長系シークエンシング法、例えばジデオキシ(Sanger)シークエンシングで使用され得、既存のハイスループット蛍光シークエンシングプロトコルの使用と適合性であることを示す。ブロック型プライマーおよび本発明の方法の使用によりシークエンシング反応の特異性が高まり得、従って、シークエンシングをより多くのサイクルで、および未修飾プライマーは充分に奏功しない非常に複雑な核酸試料に対して行うことが可能になる。
[実施例9]DNAプライマーへの適用:PCRおよび定量的リアルタイムPCRにおけるrNプライマー
実施例8では、RNase H2がブロック型プライマーを切断するために使用され得ること、ならびにこの系をDNA合成およびプライマー伸長反応、例えばDNAシークエンシングと関連させ得ることが示された。以下の実施例は、この方法のPCRにおける有用性を示す。第1の系は、エンドポイントPCR形式における使用を示し、第2の系は、定量的リアルタイムPCR形式における使用を示す。
合成エンドポイントPCRアッセイにおける使用のための表17に示すプライマーを作製した。Syn−ForおよびSyn−Revプライマーは、人工アンプリコン(合成オリゴヌクレオチド鋳型)に特異的な未修飾の対照プライマーである。Syn−Forプライマーは、未修飾の対照Syn−Revプライマーまたは異なる修飾Syn−Revプライマーと対合する。単一のrU(切断性)塩基に続いて2から6個のDNA塩基を含み、すべてジデオキシ−C残基(ddC)で終結している一組の修飾Syn−Revプライマーを作製した。ddC残基は、プライマー機能を抑制するブロッキング基としての機能を果たす。ddCブロッキング基は、RNase H2の作用によるrU塩基でのプライマーの切断によって除去される(ブロック解除工程、図18に示す。)。合成鋳型は、以下(配列番号75)に示すような103塩基長オリゴヌクレオチドである。プライマー結合部位に下線を付している。
合成鋳型
PCR反応を20μl容量で、200nMのプライマー、2ngの鋳型、200μMの各dNTP(合計800μM)、1単位のImmolase(耐熱性DNAポリメラーゼ、Bioline)、50mMのTris pH8.3、50mMのKClおよび3mMのMgCl2を用いて行った。反応を、100μUのピロコッカス・アビシ(Pyrococcus abyssi)RNase H2ありまたはなしのいずれかで行った。反応を95℃で5分間の浸漬から開始し、続いて、35サイクルの[95℃で10秒間、60℃で30秒間、および72℃で1秒間]を行った。反応生成物を10%非変性ポリアクリルアミドゲル上で分離し、GelStar染色を用いて可視化した。結果を図19に示す。未修飾対照プライマーでは正しいサイズの強いバンドが得られた。3’末端ブロック型rUプライマーでは、RNase H2の非存在下において産物は全く得られなかった。RNase H2の存在下では、ブロック型プライマーによりD4、D5およびD6プライマーの使用で、正しいサイズの強いバンドが得られた。D2またはD3プライマーの使用では、シグナルは見られなかった。この実施例は、ブロック型プライマーが、本発明の方法を用いたPCR反応に使用され得ることを示す。さらに、この実施例は、4から5つの3’−DNA塩基の存在がrN含有プライマーの切断に最適であることがわかった実施例7で予備形成二本鎖基質の切断を用いて得られた結果と整合する。
次に、上記のものと同じ合成PCRアンプリコンアッセイ系を、SYBR(R)Green検出を使用する定量的リアルタイムPCRアッセイにおいて試験した。反応を384ウェル形式にて、Roche Lightcycler(R)480プラットフォームを用いて行った。反応液は、1×BIO−RAD iQ(商標)SYBR(R)Green Supermix(BIO−RAD,Hercules,CA)、200nMの各プライマー(フォワード+リバース)、2×106コピーの合成鋳型オリゴヌクレオチド(配列番号75)および5mUのピロコッカス・アビシ(Pyrococcus abyssi)RNase H2を10μl容量中に含むものにした。熱サイクリングパラメータには95℃での最初の5分間の浸漬を含め、次いで、45サイクルの[95℃で10秒間+60℃で20秒間+72℃で30秒間]を行った。反応はすべて三連で実施し、反応には同じ未修飾フォワードプライマー(配列番号68)を使用した。リバースプライマーは、未修飾プライマーと2から6D修飾プライマー(配列番号69から74)とで変えた。これらの実験のCp値(陽性反応が最初に検出されるPCRサイクル数)を以下の表18に示す。Cpは、未修飾のFor+Revプライマーを用いて行った対照反応と、RNase H2の存在下でD4、D5またはD6ブロック型プライマーを用いて行ったカップリング型切断PCR反応とで本質的に同一であった。RNase H2の非存在下では、ブロック型プライマーの使用で陽性シグナルは検出されなかった。エンドポイントアッセイにおいて見られたように、短い3’−DNAドメイン(D2またはD3)を有するプライマーでは性能が低かった。
以下の実施例は、内在性ヒト遺伝子標的およびHeLa細胞cDNAを鋳型として使用した定量的リアルタイムPCRアッセイ形式におけるrNブロック型プライマー(ForとRevどちらも)を用いたRNase H2切断の使用を示す。ヒトHRAS遺伝子(NM_176795)に特異的な表19に示すプライマーを設計し、合成した。この場合、C3スペーサーをブロッキング基として使用した。
これらのプライマーは、以下に示すHRAS遺伝子内の340bpアンプリコンを定義する。プライマー結合部位に下線を付している。
HRASアッセイアンプリコン
反応を10l容量で、384ウェル形式にて、Roche Lightcycler(R)480プラットフォームを用いて行った。反応液に1×BIO−RAD iQ(商標)SYBR(R)Green Supermix(BIO−RAD,Hercules,CA)を含め、iTAQ DNAポリメラーゼ(25U/ml)、3mMのMgCl2、200nMの各プライマー(フォワード+リバース)、2ngのcDNA(HeLa細胞の全RNAから作製)を、5mUのピロコッカス・アビシ(Pyrococcus abyssi)RNase H2とともに、またはなしで使用した。熱サイクリングパラメータには95℃での最初の5分間の浸漬を含め、次いで、50サイクルの[95℃で10秒間+60℃で20秒間+72℃で30秒間]を行った。反応はすべて三連で実施した。未修飾プライマーを使用すると、クロス点(Cp)は27サイクル目であった。RNase H2の非存在下では、ブロック型プライマーを用いて行った反応によってPCRは補助されず、50サイクルの反応の間、蛍光シグナルは検出されなかった。RNase H2の存在下では、ブロック型プライマーを用いて行った反応で、27.4サイクル目に、対照の非ブロック型プライマーと本質的に同一の検出可能なシグナルが得られた。リアルタイムPCR蛍光プロットを図20に示す。
以下の実施例は、別の内在性ヒト遺伝子標的およびHeLa細胞cDNAを鋳型として用いた定量的リアルタイムPCRアッセイ形式におけるrNブロック型プライマーを用いたRNase H2切断の使用を示す。ヒトETS2遺伝子(NM_005239)に特異的な表20に示すプライマーを設計し、合成した。
これらのプライマーは、以下に示すETS2遺伝子内の184bpアンプリコンを定義する。プライマー結合部位に下線を付している。
ETS2アッセイアンプリコン
反応を10μl容量で、384ウェル形式にて、Roche Lightcycler(R)480プラットフォームを用いて行った。反応液に1×BIO−RAD iQ(商標)SYBR(R)Green Supermix(BIO−RAD,Hercules,CA)を含め、iTAQ DNAポリメラーゼ(25U/ml)、3mMのMgCl2、200nMの各プライマー(フォワード+リバース)、2ngのcDNA(HeLa細胞の全RNAから作製)を、5mUのピロコッカス・アビシ(Pyrococcus abyssi)RNase H2とともに、またはなしで使用した。熱サイクリングパラメータには95℃での最初の5分間の浸漬を含め、次いで、50サイクルの[95℃で10秒間+60℃で20秒間+72℃で30秒間]を行った。反応はすべて三連で実施した。非ブロック型プライマーを使用すると、Cpは25.7サイクル目であった。RNase H2の非存在下では、ブロック型プライマーを用いて行った反応によってPCRは補助されず、50サイクルを超えても蛍光シグナルは検出されなかった。RNase H2の存在下では、ブロック型プライマーを用いて行った反応で、未修飾の対照プライマーより6サイクル遅い31.7サイクル目に検出可能なシグナルが得られた。1種類のブロック型プライマー(未修飾For+ブロック型Revまたはブロック型For+未修飾Rev)を用いて行った反応では中間のCp値が示された。リアルタイムPCR蛍光プロットを図21に示す。
本発明の反応条件を使用すると、HRASアッセイは、未修飾プライマーの使用とブロック型プライマーの使用の対比で同一の性能であった。しかしながら、ETS2アッセイでは、未修飾プライマーとブロック型プライマーとの対比で遅れが示された。急速な熱サイクリングが行われるPCR反応の状況では、プライマーのハイブリダイゼーションと切断速度論が、ブロック型プライマーを使用する反応の反応全体の効率に大きな役割を果たしている。DNA合成はブロック解除事象と関連しており、ブロック解除は、プライマーが活性化状態になってDNA合成をプライミングし得る前にハイブリダイゼーション、RNase H2の結合および基質の切断を必要とする。存在させるRNase H2酵素の量を増やすこと、または反応のアニーリング時間を増やすことのいずれかによって各サイクルで生じる切断プライマーの量を増大させることが可能なはずである。DNA合成は、上記の実施例で使用したアニーリング温度(60℃)とほぼ同時に伸長温度(72℃)で起こる。しかしながら、ブロック解除は、アニーリング工程期間中(60℃)でしか起こり得ず、伸長工程中(72℃)では起こり得ない。これは、RNase H2の二本鎖基質の形成をアニーリング工程中でのみ可能にするが72℃(このとき、プライマーは一本鎖形態でしか存在しない。)では可能にしない使用プライマーのTmのためである。
PCRサイクルパラメータを、60℃で行う単一事象としてのアニーリング/伸長を伴う2工程反応に変更し、アニーリング/伸長工程期間をさまざまにし、これらの反応パラメータの変更により、ブロック型ETS2プライマーが未修飾の対照プライマーと同様の効率を伴う性能を示すことが可能になり得るかどうかを調べた。反応を10μl容量で、384ウェル形式にて、Roche Lightcycler(R)480プラットフォームを用いて行った。反応液に1×BIO−RAD iQ(商標)SYBR(R)Green Supermix(BIO−RAD,Hercules,CA)を含め、iTAQ DNAポリメラーゼ(25U/ml)、3mMのMgCl2、200nMの各プライマー(フォワード+リバース)、2ngのcDNA(HeLa細胞の全RNAから作製)を、5mUのピロコッカス・アビシ(Pyrococcus abyssi)RNase H2とともに、またはなしで使用した。熱サイクリングパラメータには95℃での最初の5分間の浸漬を含め、次いで、45サイクルの[95℃で10秒間+60℃で20から120秒間]を行った。反応はすべて三連で実施した。ブロック型プライマーと未修飾の対照プライマーで得られたCp値の差(ΔCp)を以下の表21にまとめる。
サイクリングパラメータを微調整し、60℃でのアニーリング工程期間を20秒間から1から2分間に増大すると、ブロック型切断性プライマーと対照未修飾プライマー間で一様な性能がもたらされた。サイクリングパラメータを固定し、酵素を増大させて同様の実験を行った。予測どおり、より多くの量の酵素の使用でブロック型プライマーの性能を改善することが可能であった。酵素の使用量を10mU RNase Hに2倍にすると、60℃で30秒間のアニーリング工程を使用した場合、対照のブロックなしプライマーとブロック型切断性プライマーの差が最小限になった。
上記の実施例は、実施例7に教示された最適化設計の単一のリボヌクレオチド残基を含むブロック型プライマーが定量的リアルタイムPCRアッセイにおいてRNase H2とともに使用され得ることを示す。
[実施例10]DNAプライマーへの適用:PCRおよび定量的リアルタイムPCRにおけるfNfNプライマー
上記の実施例9では、エンドポイントPCRおよび定量的リアルタイムPCRアッセイにおけるrNブロック型プライマーの使用のためのRNase H2媒介性切断の有用性が示された。この実施例では、定量的リアルタイムPCRアッセイにおけるfNfNブロック型プライマーの使用の有用性を示す。
RNase H2によるジ−フルオロ基質の切断によって3’−OH末端を有する種がもたらされるため、単一の2’−F塩基(fN)を有するプライマーはDNA合成をプライミングし得ると仮定すると、この生成物もまた、実施例9に記載のものと同じ反応形式が使用されるPCR反応を補助し得るはずである。ジ−フルオロ基質の切断はマンガンカチオンの存在下で最良に進行するが、PCR反応は一般的にマグネシウムカチオンの存在下で行われる。未修飾プライマーを用いたPCR反応を、3mM MgCl2を含む標準的なqPCRバッファーおよび3mM MgCl2+0.6mM MnCl2を含む改良バッファーを用いて試験した。反応の遂行は同一であり、この少量のマンガンの存在は反応の定量性に有害な影響を及ぼさなかった。
末端3’−fNプライマーがPCRにおいて機能を果たす能力を、実施例9に記載の合成PCRアンプリコン系を用いて調べた。表22に示す以下のプライマーを試験した:
合成鋳型
反応を10μl容量で、384ウェル形式にて、Roche Lightcycler(R)480プラットフォームを用いて行った。反応液に1×BIO−RAD iQ(商標)SYBR(R)Green Supermix(BIO−RAD,Hercules,CA)を含め、iTAQ DNAポリメラーゼ(25U/ml)、3mMのMgCl2、0.6mMのMnCl2、200nMの各プライマー(フォワード+リバース)、2×106コピーの合成オリゴヌクレオチド標的を、1.75Uのピロコッカス・アビシ(Pyrococcus abyssi)RNase H2とともに、またはなしで使用した。熱サイクリングパラメータには95℃での最初の5分間の浸漬を含め、次いで、30サイクルの[95℃で10秒間+60℃で120秒間+72℃で120秒間]を行った。反応はすべて三連で実施した。結果を図22に示す。RNase H2の非存在下では、3’末端に2’−F塩基を有するプライマーはPCRを、未修飾プライマーと比べて同一の効率で補助した。しかしながら、RNase H2の存在下では、2’−F修飾プライマーでは未修飾プライマーと比べて3.5Cpの遅れが示された。これは、RNase H2によるDNA合成の阻害に起因するものではなく、RNase H2による増幅産物からのプライマーの切断レベルが低いことに起因するものである。DNA合成後、新たに形成されたDNA産物にfN含有プライマーが組み込まれるとRNase H2の潜在的基質が生じる(上記の実施例5参照)。2’−F塩基における切断によって、このアンプリコン鎖からプライミング部位が除去され、この産物が有効に安定化され、この結果、作製された産物はいずれもさらなるプライミング事象を行えなくなる。多項式増幅で起こるのがこの反応シーケンスである。単一の2’−F残基を含む基質の切断は比較的不充分であるが、このため、観察されるPCR反応効率の低下は軽度にすぎない。PCR後の72℃でのインキュベーションを長くすると増幅産物からのプライマーの全切断がもたらされ、さらに増幅を起こす能力が完全にブロックされ、これにより産物は不能になるはずである。これはPCR反応の相互汚染防除に有用なはずである。
単一の2’−F残基の切断が不充分であることを考慮すると、より少ない量での酵素の使用または72℃での伸長工程の排除によって、単一の2’フルオロ残基を含むプライマー伸長反応生成物を有意に切断することなく、RNase H2によるジフルオロブロック型プライマーの切断が可能になる。あるいは、末端2’−F残基と隣接しているDNA塩基との間へのホスホロチオエート修飾の選択的配置によって、この切断事象をブロックすることが可能なはずである。
ジ−フルオロブロック型プライマーがqPCRを補助できる能力が、表23に示すプライマーを用いて、上記の実施例9に記載の合成オリゴヌクレオチドアンプリコン系において示された。
合成鋳型
反応を10μl容量で、384ウェル形式にて、Roche Lightcycler(R)480プラットフォームを用いて行った。反応液に1×BIO−RAD iQ(商標)SYBR(R)Green Supermix(BIO−RAD,Hercules,CA)を含め、iTAQ DNAポリメラーゼ(25U/ml)、3mMのMgCl2、0.6mMのMnCl2、200nMの各プライマー(フォワード+リバース)、2×106コピーの合成オリゴヌクレオチド標的を、1.75Uのピロコッカス・アビシ(Pyrococcus abyssi)RNase H2とともに、またはなしで使用した。熱サイクリングパラメータには95℃での最初の5分間の浸漬を含め、次いで、45サイクルの[95℃で10秒間+60℃で120秒間+72℃で120秒間]を行った。反応はすべて三連で実施した。3’末端に単一の2’−フルオロ塩基を有する対照プライマー(これは、fNfNブロック型プライマーの切断生成物を模倣する。)を用いて実施した反応は20のCpを有した。また、ブロック型fUfCプライマーを用いて実施した反応も20のCpを有した。
次に、ジ−フルオロプライマー切断アッセイにおいて必要とされるRNase H2酵素の量をより詳細に試験した。反応を10μl容量で、384ウェル形式にて、Roche Lightcycler(R)480プラットフォームを用いて行った。反応液に1×BIO−RAD iQ(商標)SYBR(R)Green Supermix(BIO−RAD,Hercules,CA)を含め、iTAQ DNAポリメラーゼ(25U/ml)、3mMのMgCl2、0.6mMのMnCl2、200nMの各プライマー(フォワード+リバース)、2×106コピーの合成オリゴヌクレオチド標的を使用した。すべての反応で同じ未修飾のSyn−Forプライマーを使用した。反応あたり0から600mUまでの組換えピロコッカス・アビシ(Pyrococcus abyssi)RNase H2を添加した。熱サイクリングパラメータには95℃での最初の5分間の浸漬を含め、次いで、45サイクルの[95℃で10秒間+60℃で120秒間+72℃で120秒間]を行った。反応はすべて三連で実施した。各プライマーでのRNase H2の種々の量に対応するCp値を表24に示す。
RNase H2の最適な量は200mUである(太字と下線で示すCp=21.3)。より高濃度のRNase H2ではPCR反応の効率が下がり、3’フルオロUプライマーおよびブロック型ジフルオロプライマーの両方の場合と同程度になる。おそらく、これは、上記に論考したようにPCR産物内におけるfUセットでの切断レベルが低いことによるものである。
一般的に、約200mUのピロコッカス・アビシ(Pyrococcus abysii)RNase H2 per 10μlが、ブロック型プライマーが使用され、RNase H2切断ドメインが連続する2つの2’−フルオロヌクレオシドであるカップリング型RNase H2−PCRのための最適な酵素濃度である。標準的な未修飾DNAプライマーと比べて2から6サイクルのCpの増大が典型的に観察される。この小さな差はアッセイ性能に影響しない。これは、結果が常に、未知試料の試験に使用するものと同じプライマーを用いて生成した標的コピー数に対するCpの標準曲線と比較されるからである。
結論として、この実施例では、ブロック型fNfNプライマーが、本発明の方法によるRNase H2切断を用いたqPCR反応を補助し得ることが示され、使用すべきRNase H2の最適な量およびサイクリング条件が規定される。
[実施例11]PCR反応におけるrNブロック型プライマーの使用での特異性の改善。
理論的には、PCRではほぼ無限に増幅する可能性を有し、PCR反応は、反応ミックス中の試薬の消費によってのみ制限されるはずである。実際の実務では、PCR反応は、特異性の保持を補助するため典型的には40から45サイクルに制限される。PCRの増幅力は莫大であり、サイクル数が40から45を超えると、ミスプライミング事象が次第によく見られるようになり、所望のものでない産物の増幅および偽陽性シグナルが生じる。この実施例では、本発明の方法による切断性ブロック型プライマーをどのようにして使用して反応の特異性を改善し、より多くのPCRサイクル数の使用を可能にし、これによりPCRの潜在的感度を増大させるかを示す。
この実施例において、本発明者らは3つのヒト遺伝子に特異的なPCR反応を試験し、各組のプライマーペアの増幅における特異性を、ヒトおよびラットcDNAを鋳型として用いて比較した。従来の未修飾オリゴヌクレオチドを本発明の新たな切断性ブロック型プライマーと比較した。表25に示す以下のプライマーを使用した。DNA塩基を大文字で、RNA塩基を小文字で示す。使用した3’−ブロッキング基はC3スペーサー(SpC3)であった。試験した遺伝子標的は、ヒトETS2、NM_005239(ラットホモログNM_001107107)、ヒトHRAS、NM_176795(ラットホモログNM_001061671)、およびヒトACACA、NM_198834(ラットホモログNM_022193)であった。
PCR反応を384ウェル形式にて、Roche Lightcycler(R)480プラットフォームを用いて行った。反応液は、1×BIO−RAD iQ(商標)SYBR(R)Green Supermix(BIO−RAD,Hercules,CA)、200nMの各プライマー(フォワード+リバース)および1.3mUのピロコッカス・アビシ(Pyrococcus abyssi)RNase H2を10μl容量中に含むものにした。鋳型DNAは、2ngのヒトHeLa細胞cDNAまたは2ngのラット脊髄cDNAのいずれかにした。熱サイクリングパラメータには95℃での最初の5分間の浸漬を含め、次いで、60サイクルの[95℃で10秒間+60℃で90秒間]を行った。この条件下において、ヒトcDNAで観察されたCp値は真の陽性事象を表す。もし、ラットcDNAの使用でシグナルが検出された場合、これを偽陽性事象として記録した。これらの3つ遺伝子では、ヒトおよびラット配列はプライマー結合部位が相違している。従って、ヒト遺伝子特異的プライマーを用いたラットcDNAでのPCR産物の検出は、ミスプライミングに由来する所望のものでない偽陽性結果である。結果を以下の表26に示す。
未修飾プライマーを使用すると、ヒトcDNAでのヒト標的の検出は成功裡であり、23から26のCpが観察された。3つのPCRアッセイすべてで、サイクリングを継続した場合にヒト遺伝子特異的プライマーでラットcDNAにおける産物も検出され、35から56のCpが観察された。これらは、低レベルの真の陽性シグナルを検出するPCRアッセイの検出能を制限する所望のものでない偽陽性シグナルを表す。
修飾プライマーを使用すると、ヒトcDNAでの所望の産物の検出は成功裡であり、Cpはすべて、未修飾プライマーで得られた値の1以内であった。しかしながら、修飾プライマーとのラットcDNAの使用では、60サイクル目であっても偽陽性シグナルは見られなかった。RNase H2ブロック型切断性プライマーの使用により特異性の改善がもたらされ、偽プライミング事象の検出なく、より長時間でより感度のよいPCR反応(この場合、60サイクルまで)の使用が可能になる。これにより、大過剰の野生型配列の存在下におけるバリアント対立遺伝子検出能をずっと大きくすることが可能になる。
[実施例12]定常状態条件下におけるrC基質のミスマッチ識別
実施例11では、本発明の方法によって、バックグラウンドミスプライミング事象をものともせずにqPCR反応の特異性を改善できることが示された。この実施例では、一塩基の違い(SNP)に関するRNase H2切断反応の特異性を示す。ピロコッカス・アビシ(Pyrococcus abyssi)RNase H2酵素が単一のrC塩基を含む二本鎖基質内の塩基ミスマッチを識別する能力を定常状態条件下で試験した。以下の基質を32P−末端標識し、上記の実施例4に記載の「Mg切断バッファー」中でインキュベートした。反応液は、100nMの基質を100μUの酵素とともに20μL容量中に含むものにし、70℃で20分間インキュベートした。反応生成物を、変性7M尿素、15%ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)を用いて分離し、Packard Cyclone(商標)Storage Phosphor System(ホスフォイメージャー)を用いて可視化した。各バンドの相対強度を定量し、結果を、切断された全基質に対する割合としてプロットした。
パーフェクトマッチ(rC:G、配列番号10および11)ならびにrC塩基(3種類の二本鎖、配列番号10と100から102)、rCに対して+1位(3種類の二本鎖、配列番号10と103から105)およびrCに対して−1位(3種類の二本鎖、配列番号10と106から108)に可能な各塩基ミスマッチを含む10種類の二本鎖を試験した。結果をパーフェクトマッチ=100%に対して正規化し、以下の表27に示す。
Pyrococcus RNase H2は、この条件下で一塩基ミスマッチ同士を識別することができた。厳密な識別度合いは、ミスマッチにおいてどの塩基が対合しているかによって異なった。興味深いことに、−1位のミスマッチ(rC塩基の一塩基5’側)では比較的良好なミスマッチ識別が示されたが、+1位のミスマッチ(rC塩基の一塩基3’側)では一般的に有効性が低かった。選択性は比較的控えめのようであるが、PCRサイクルの反復に伴って大きく増幅される。
[実施例13]熱サイクリング中のrN基質のミスマッチ識別
ピロコッカス・アビシ(Pyrococcus abyssi)RNase H2酵素が定常状態条件下でrC基質の塩基ミスマッチを識別する能力を実施例12に記載した。この実施例では、この酵素が、熱サイクリング条件下において全rN含有基質の塩基ミスマッチを識別する能力を調べた。この条件では、切断性基質は、温度上昇によって二本鎖が破壊される前の短時間の該酵素によるプロセッシングにのみ利用可能である。ミスマッチ識別は、蛍光定量的リアルタイムPCRアッセイの状況において評価した。本発明者らは、このような速度論的に制限された条件下では、塩基ミスマッチ識別が定常状態条件下で観察されるものよりも大きく改善されることを見出した。
以下の核酸をこの実施例で使用した。オリゴヌクレオチドは、すべての最近傍のペアとミスマッチが包含されるように合成した。
未修飾フォワードプライマー:
ブロック型rN基質リバースプライマー(3’末端にC3スペーサーブロッキング基)を以下に示す。DNA塩基は大文字であり、RNA塩基は小文字である。差異領域を太字と下線で示す。単一のRNA残基を含む合計28種類のブロック型プライマーを合成した。
rAシリーズ:
rUシリーズ:
rGシリーズ:
使用したブロックなしの対照リバースプライマー(RNase H2による切断後のブロック型プライマーの反応生成物を模倣)は:
以下のパーフェクトマッチ合成鋳型およびミスマッチ合成鋳型を使用した。塩基を変えた位置を下線を伴うボールドフォントで示す。リボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドの一塩基5’側もしくは一塩基3’側において可能な各塩基変異に対する独自の鋳型を作製した。合計で、28種類の鋳型を合成し、試験した。
rA鋳型:
rU鋳型:
rG鋳型:
ともに、これらの核酸(配列番号68、291、116および69はそれぞれ、出現順に)は、表示の通りにPCRアッセイセットアップを構成する:
末端C3スペーサー基(「x」で表示)は、rU含有オリゴヌクレオチドがプライマーとして有用になることをブロックする。鋳型にハイブリダイズすると、この二本鎖がRNase H2に対する基質となり、切断がrU残基のすぐ5’側で起こり、図示した(←)機能性プライマーがもたらされる。
定量的リアルタイムPCR反応を、未修飾プライマー配列番号68、およびrN含有プライマー配列番号109から136と鋳型配列番号137から164のペアの組合せを用いて行った。反応を、384ウェル形式にて、Roche Lightcycler(R)480プラットフォームを用いて行った。反応液は、1×BIO−RAD iQ(商標)SYBR(R)Green Supermix(BIO−RAD,Hercules,CA)、200nMの各プライマー(フォワード+リバース)および1.3mUのピロコッカス・アビシ(Pyrococcus abyssi)RNase H2を10μl容量中に含むものにした。熱サイクリングパラメータには95℃での最初の5分間の浸漬を含め、次いで、45サイクルの[95℃で10秒間+60℃で20秒間+72℃で30秒間]を行った。この条件下では、For+Rev(未修飾)プライマーを用いて行った対照反応と、パーフェクトマッチFor(未修飾)+rN Rev(ブロック型)プライマーを用いて行った対照カップリング型RNase H2 切断−PCR反応とでCp値は同一であった。従って、使用した反応条件は、リアルタイム熱サイクリングの速度論的拘束内でパーフェクトマッチ種が切断されるのに充分なインキュベーション時間とRNase H2濃度を有するものであり、この点からの逸脱(あれば)は、ブロック型プライマーと種々の鋳型間に存在する塩基ミスマッチによって付与された反応効率の変化を表す。
プライマーと鋳型のペアの組合せを上記のようにして実験し、結果を以下に、ΔCp(これは、対照とミスマッチ反応間で観察されるサイクル閾値の差である。)を示してまとめる。各CpはPCR(これは、この条件下では指数関数的反応である。)のサイクルを表すため、ΔCpが10とは、実際には210の差、即ち1024倍の感度の変化を表す。対立遺伝子特異的PCRアッセイでは、4から5サイクルのΔCpで一般的にSNP間の識別が充分になされる。
rN塩基に対して中央の位置の塩基を変えて行った試験の結果を以下に表28に示す(配列番号292および293はそれぞれ、出現順に):
反応性効率の非常に大きな差が熱サイクリング条件下でのrN基質のRNase H2切断において見られ、およそ40倍の差(ΔCp 5.3)から30,000倍を超える差(ΔCp 14.9)に及ぶ。5サイクル未満のΔCpが示されたアッセイはなかった。従って、RNase H2のrN切断反応は、速度論的アッセイ(qPCR)の状況において定常状態条件下でよりもはるかに大きな特異性と、標準的なDNAプライマーを用いる対立遺伝子特異的PCRよりもずっと大きな選択性を示す。高い特異性は、発明の詳細な説明に記載し、以下の実施例に示すプライマーの設計によって付与され得る。
rN塩基に対して−1位の塩基を変えて行った試験の結果を以下に表29に示す(配列番号294および295はそれぞれ、出現順に):
rN塩基に対して+1位の塩基を変えて行った試験の結果を以下に表30に示す(配列番号296および297はそれぞれ、出現順に):
rN塩基に対して−1位および+1位について上記に示したすべての配列バリアントのrA、rCおよびrGプローブを含むペアの組合せについて同様に試験した。結果を以下の表31から36に示す。
表31:rA塩基に対して−1の位置の考えられ得るすべての塩基ミスマッチのΔCp
表32:rA塩基に対して+1の位置の考えられ得るすべての塩基ミスマッチのΔCp
表33:rC塩基に対して−1の位置の考えられ得るすべての塩基ミスマッチのΔCp
表34:rC塩基に対して+1の位置の考えられ得るすべての塩基ミスマッチのΔCp
表35:rG塩基に対して−1の位置の考えられ得るすべての塩基ミスマッチのΔCp
表36:rG塩基に対して+1の位置の考えられ得るすべての塩基ミスマッチのΔCp
一塩基ミスマッチの状況におけるピロコッカス・アビシ(Pyrococcus abyssi)RNase H2によるrN基質の切断の反応効率の相対変化は、対合塩基の実体、切断部位に対するミスマッチの相対位置および隣接塩基により異なる。この実施例で規定したミスマッチの表は、ミスマッチ遺伝子座とマッチ遺伝子座間の予測される差(ΔCp)を最大限にする最適なミスマッチ検出アッセイを設計するために使用され得、新たなアッセイ設計の最適化を自動化するためのアルゴリズムに構築され得る。
[実施例14]定常状態条件下でのfUfU基質のミスマッチ識別
ピロコッカス・アビシ(Pyrococcus abyssi)RNase H2酵素が、fUfUジヌクレオチドペアを含む二本鎖基質内の塩基ミスマッチを識別する能力を定常状態条件下で試験した。以下の基質を32P−末端標識し、上記の実施例5および6に記載の「Mn切断バッファー」中でインキュベートした。反応液は、100nMの基質を1Uの酵素とともに20μL容量中に含むものにし、70℃で20分間インキュベートした。反応生成物を、変性7M尿素、15%ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)を用いて分離し、Packard Cyclone(商標)Storage Phosphor System(ホスフォイメージャー)を用いて可視化した。各バンドの相対強度を定量し、結果を、切断された全基質に対する割合としてプロットした。
パーフェクトマッチ(配列番号42と183)、2’−フルオロジヌクレオチドペア内のミスマッチ(配列番号42と165から171)ならびに2’−フルオロジヌクレオチドペアに隣接しているミスマッチ(配列番号42と172から177)を含む表37に示す14種類の二本鎖を試験した。結果をパーフェクトマッチ=100%に対して正規化した。
ピロコッカス属のRNase H2は、この条件下で一塩基ミスマッチ同士を非常に効率的に識別することができた。厳密な識別度合いは、ミスマッチにおいてどの塩基が対合しているかによって異なった。興味深いことに、−1位および+1位(fUfUドメインに対して)のどちらのミスマッチも有効であった。fUfU基質の使用での切断に対する特異性は、定常状態アッセイ条件下においてrC基質(上記の実施例12)よりも有意に高かった。
上記の試験ではfUfUジヌクレオチドペアを使用し、これは、先に実施例6において、可能な16種類のジヌクレオチドペアの切断に対して最も効率性の低いジ−フルオロ基質であることが示された。これは、ミスマッチ結果に影響を及ぼし得る。同様の実験を、同じ相補鎖使用し、fUfCジ−フルオロ基質鎖に置き換えて実施した。fUfCではfUfU基質と比べて高い切断活性が見られたため、RNase H2は20mUに減らした。結果を以下の表38に示す。
この場合も、ピロコッカス・アビシ(Pyrococcus abyssi)RNase H2は一塩基ミスマッチ同士を非常に効率的に識別することができた。厳密な識別度合いは、ミスマッチにおいてどの塩基が対合しているかによって異なった。先のように、−1位および+1位(fUfCドメインに対して)のどちらのミスマッチも有効であった。fUfC基質の使用での切断に対する特異性は、定常状態アッセイ条件下においてrC基質(上記の実施例12)よりも有意に高く、また、fUfU基質よりもわずかに大きな特異性が示された。熱サイクリング中の速度論的アッセイ条件下では、ジ−フルオロ基質の使用でのミスマッチアッセイで、さらに大きな選択性が示され得る。
[実施例15]基質内へのホスホロチオエートヌクレオチド間修飾の選択的配置
ホスホロチオエートヌクレオシド間結合の組込みの効果を、幾つかの異なる基質で試験した。ホスホロチオエート(PS)結合は、典型的には比較的ヌクレアーゼ抵抗性とみなされており、ヌクレアーゼ含有溶液、例えば血清中におけるオリゴヌクレオチドの安定性を増大させるために一般的に使用されている。PS結合は2つの立体異性体RpとSpを形成し、これらは通常、異なるヌクレアーゼに対して異なる安定化レベルを示す。
2つの修飾塩基間にPS結合を有するジ−フルオロ基質を調べた。両ジアステレオマーの混合物を本試験に使用した。
未修飾fUfC基質:
PS修飾fU*fC基質(「*」=PS結合):
配列番号191および299はそれぞれ、出現順に
(注−配列内のギャップはアラインメント目的のためのものである。)
上記の基質を70℃で1時間、「Mn切断バッファー」中で、120μl容量中160ピコモルの基質(1.3μM)および4単位の組換えピロコッカス属RNase H2酵素を用いてインキュベートした。反応を、ゲル負荷バッファー(ホルムアミド/EDTA)の添加によって停止させ、変性7M尿素、15%ポリアクリルアミドゲル上で分離した。ゲルを、GelStar(商標)(Lonza,Rockland,ME)を用いて染色し、UV励起によって可視化した。未修飾基質はこの条件下で100%切断された;しかしながら、PS修飾基質は本質的に未切断であった。ホスホロチオエート修飾によってジ−フルオロ基質の切断が有効にブロックされ得る。
次に、単一のrC残基を含む基質を試験し、RNA塩基のいずれか側(表示した通りの5’側または3’側)におけるPS修飾の配置を試験した。両ジアステレオマーの混合物を本試験に使用した。
上記の基質を70℃で1時間、「Mg切断バッファー」中で、120μl容量中160ピコモルの基質(1.3μM)および4単位の組換えピロコッカス属RNase H2酵素を用いてインキュベートした。反応を、ゲル負荷バッファー(ホルムアミド/EDTA)の添加によって停止させ、変性7M尿素、15%ポリアクリルアミドゲル上で分離した。ゲルを、GelStar(商標)(Lonza,Rockland,ME)を用いて染色し、UV励起によって可視化した。未修飾基質はこの条件下で100%切断された。5’−*rCおよび3’−rC*のどちらのPS修飾基質もこの条件下でおよそ50%切断された。このような結果は、他方の異性体よりも切断に対して抵抗性である一方の立体異性体RpまたはSpと最も整合する。
3’−rC*基質をより詳細に試験した。RNase H2はこの基質をリボヌクレオチドの5’側で切断するが、他のRNase(例えば、RNase A、RNase 1など)はこの基質をリボヌクレオチドの3’側で切断するため、PS修飾を、基質を他のヌクレアーゼによる不要な分解から保護するがRNase H2基質として利用可能なままにする手段として使用することが可能であり得る。RNase Aおよび他の一本鎖リボヌクレアーゼによるRNA基質の切断は、Spホスホロチオエート異性体の方がRp異性体よりも大きな程度で阻害することはよく知られている。Sp異性体とRp異性体のRNase H2切断に対する相対効果は知られていない。従って、この2つの立体異性体を精製し、SpおよびRp異性体の3’−rC*基質の安定性に対する相対寄与を試験した。
ホスホロチオエート異性体がHPLC手法によって分離され得ること、およびこの分離は、オリゴヌクレオチド内にPS結合が1つしか存在しない場合、容易に行われることはよく知られている。従ってHPLCを用いて、3’−rC*基質、配列番号192(5’−CTCGTGAGGTGATTC(*)AGGAGATGGGAGGCG−3’;図23)の2つのPS異性体を精製した。質量7ナノモルの一本鎖の3’−rC*含有オリゴヌクレオチドを使用した。特性評価により、試験物質が9464ドルトン(計算値9465)(ESI−MSによる。)の分子量を有し、モル純度95%(キャピラリー電気泳動による。)を有することが示された。この物質を4.6mm×50mm Xbridge(商標)C18カラム(Waters)(2.5ミクロン粒径)にインジェクトした。開始時の移動相(バッファーA)は、5%アセトニトリルを含む100mM TEAA pH7.0にし、これに35℃で純粋なアセトニトリル(バッファーB)を混合した。使用したHPLC法で試料は明白に2つのピークに分割され、これらのピークを収集し、再度泳動させて純度を調べた。混合異性体試料および精製した被検物のHPLC図を図23に示す。「A」および「B」のピークはともに、9464ドルトン(ESI−MSによる。)の同一の質量を有した。最初の試料から、1.3ナノモルのピーク「A」と3.6ナノモルのピーク「B」が回収された。
質量またはHPLCデータに基づくと、どのピークがRpであり、どのピークがSp異性体であるのかを同定することは可能でなかった。RNase Aによる分解に対する相対抵抗性を使用し、異性体の実体を精製画分に帰属させた。Sp異性体は、RNase A分解に対してRp異性体よりも相対的に大きな抵抗性がもたらされることが知られている。精製生成物を一本鎖形態において試験した。基質を、6000Ci/mmolのγ−32P−ATPおよび酵素T4 Polynucleotide Kinase(Optikinase,US Biochemical)を用いて32Pで放射性標識した。追跡標識を反応混合物に添加した(1:50)。反応を、100nMの基質を20μl容量で、1pg(72アトモル)のRNase AとともにMg切断バッファー中で用いて行った。反応液を70℃で20分間インキュベートした。反応生成物を、変性7M尿素、15%ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)を用いて分離し、Packard Cyclone(商標)Storage Phosphor System(ホスフォイメージャー)を用いて可視化した。各バンドの相対強度を定量し、結果を、切断された全基質に対する割合としてプロットした。ピーク「A」の方がピーク「B」よりもRNase Aによって完全に分解された;従って、ピーク「A」をRp異性体の実体に帰属させ、ピーク「B」をSp異性体に帰属させた。
各立体異性体のRNase H2切断に対する相対感受性を試験した。基質のRNA含有鎖を、6000Ci/mmolのγ−32P−ATPおよび酵素T4 Polynucleotide Kinase(Optikinase,US Biochemical)を用いて32Pで放射性標識した。追跡標識を反応混合物に添加した(1:50)。反応を、100nMの基質を20μl容量で、100μUの組換えピロコッカス・アビシ(Pyrococcus abyssi)RNase H2とともにMg切断バッファー中で用いて行った。基質は一本鎖および二本鎖の両方の形態で使用した。反応液を70℃で20分間インキュベートした。反応生成物を、変性7M尿素、15%ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)を用いて分離し、Packard Cyclone(商標)Storage Phosphor System(ホスフォイメージャー)を用いて可視化した。各バンドの相対強度を定量し、結果を、切断された全基質に対する割合としてプロットした。予測どおり、一本鎖基質はRNase H2酵素によって切断されなかった。対照の未修飾rC二本鎖(配列番号10および11)は、使用した条件下で100%切断された。Sp異性体3’−rC*二本鎖基質(ピーク「B」)は約30%切断されたが、Rp異性体(ピーク「A」)はこの条件下で<10%切断された。従って、ラセミ体的に純粋なホスホロチオエート修飾基質のこの位置(リボヌクレオチドの3’側)での切断に対する相対感受性は、RNase H2とRNase Aで正反対である。Sp異性体の方がより容易にRNase H2によって切断されるが、RNase AにはRp異性体の方がより容易に切断される。従って、ラセミ体的に純粋なSp異性体ホスホロチオエート修飾をリボヌクレオチドの3’側に有する単一リボヌクレオチド含有基質が、この結合を、一本鎖ヌクレアーゼ(RNase Aなど)による不要な分解からは保護するがなおRNase H2による切断に対する機能性基質であるようにするために使用され得る。酵素切断とホスホロチオエート立体異性体との関係を図24にまとめる。
[実施例16]qPCRアッセイにおけるrN含有二重標識プローブの有用性
以下の実施例は、rU含有二重標識プローブを用いたリアルタイムPCRアッセイを示す。先に、本発明者らは、実施例9において、SYBR(R)Green検出形式を使用するqPCRにおけるrNブロック型プライマーの使用の実現可能性を示した。本発明の方法を用いたブロック型オリゴヌクレオチドの切断はまた、二重標識プローブアッセイ形式にも適用され得る。定温サイクリングプローブアッセイ形式において4RNA塩基切断ドメインを含む二重標識プローブを切断するためのRNase H1の使用は、Harvey,J.J.,et al.によって報告されている(Analytical Biochemistry,333:246−255,2004)。RNase Hを使用する別の二重標識プローブアッセイが報告されており、この場合、単一のリボヌクレオチド残基を含む分子ビーコンが、RNase H2を使用するエンドポイントPCR形式において多型を検出するために使用された(Hou,J.,et al.,Oligonucleotides,17:433−443,2007)。この実施例において、本発明者らは、プローブのRNase H2切断に依存するqPCRアッセイ形式における単一リボヌクレオチド含有二重標識プローブの使用を示す。
表39に示す以下のオリゴヌクレオチドをqPCRアッセイにおけるプローブおよびプライマーとして、二重標識蛍光クエンチプローブとともに使用した。標的は合成オリゴヌクレオチド鋳型であった。
合成鋳型(プライマーおよびプローブ結合部位に下線を付している。)。
定量的リアルタイムPCR反応を、未修飾プライマー配列番号68および69とプローブ配列番号193および194を用いて行った。反応を、384ウェル形式にて、Roche Lightcycler(R)480プラットフォームを用いて行った。反応液は、200nMの各プライマー(フォワード+リバース)および200nMプローブ、2×106コピーの合成鋳型ならびに5mUのピロコッカス・アビシ(Pyrococcus abyssi)RNase H2を10μl容量中に含むものにした。熱サイクリングパラメータには95℃での最初の10分間のインキュベーションを含め、次いで、45サイクルの[95℃で10秒間+60℃で30秒間+72℃で1秒間]を行った。使用するバッファーは使用するポリメラーゼに応じて変えた。
PCRを、5’−エキソヌクレアーゼ活性を有する耐熱性DNAポリメラーゼを用いて行った場合、ポリメラーゼによってプローブが分解される。この条件下では、DNAプローブはrN修飾プローブと同じ性能を示すはずである。この反応は陽性対照を構成する。5’−エキソヌクレアーゼ活性がないDNAポリメラーゼを使用した場合、いずれのプローブも分解されないはずである。この反応は陰性対照を構成する。しかしながら、エキソ陰性ポリメラーゼをRNase H2とともにを用いたPCR反応では、rN含有プローブは分解されるがDNAプローブは分解されず、本発明の機能が実証されるはずである。この試験では、以下の2種類の耐熱性ポリメラーゼ:Immolase(インタクトな5’ヌクレアーゼ活性、Bioline)およびVent Exo−(5’−エキソヌクレアーゼ陰性変異型、New England Biolabs)を使用した。使用したバッファーは、該DNAポリメラーゼに対して製造業者が推奨するバッファーにし、RNase H2活性に対して最適化しなかった。Immolaseでは、バッファーは16mMの(NH4)2SO4、67mMのTris pH8.3および3mMのMgCl2を含むものにした。Vent Exo−では、バッファーは10mMの(NH4)2SO4、20mMのTris pH8.8、10mM KClおよび3mMのMgSO4を含むものにした。
qPCR反応は記載の通りに実施し、結果を以下に表40に示す。
エキソヌクレアーゼ陽性ポリメラーゼを使用すると、どちらのプローブも同様の機能性能を示し、RNase H2ありまたはなしの両方で同様のCp値が得られた。しかしながら、エキソヌクレアーゼ欠損変異型ポリメラーゼを使用すると、DNAプローブは検出可能な蛍光シグナルを全く生成しなかった;rUプローブは、RNase H2の非存在下で蛍光シグナルを生成しなかったが、RNase H2の存在下では切断され、予測されるCp値でシグナルを生成した。ジ−フルオロ含有プローブの使用でも同様の結果が得られ得る。RNase H2切断ドメインが変異部位上に位置した場合、かかるプローブは、バリアント対立遺伝子を識別するために使用され得る。
また、RNase H切断性プローブは、増幅系アッセイ系の特異性をさらに増大させるために、本発明のブロック型プライマーの使用と関連させることもできる。
[実施例17]プライマーダイマー形成を抑制するためのrN含有ブロック型プライマーの有用性
プライマーダイマーまたは他の小型の標的非依存性アンプリコンの形成は、エンドポイントPCRおよびリアルタイムPCRの両方において大きな問題であり得る。このような生成物は、プライマーが良好に設計されているようである場合であっても生じ得る。さらに、場合によっては、特定の領域にハイブリダイズするプライマーの選択のための配列の制約のため、最適下限の設計を有するプライマーを使用することが必要である。例えば、特定のウイルスのPCRアッセイは、株間で可変的である領域のプライマーが選択される場合、亜型特異的または血清型特異的であり得る。逆に、PCR反応は、プライマーがウイルスゲノムの高度に保存された領域に位置する場合、すべてのウイルス株が広く増幅されるように設計され得る。従って、プライマーを選択するために利用可能な配列空間は非常に限定され得、プライマーダイマーが形成される可能性を有する「不良」プライマーを使用しなければならない場合があり得る。「ホットスタート」PCR法の使用は、このような問題が、すべてではないが一部解消され得る。
以下の実施例は、広範なウイルス血清型の検出を可能にする保存されたドメイン内の部位を使用するC型肝炎ウイルス(HCV)のPCR系核酸検出アッセイの開発においてプライマーダイマーが大きな問題であることがわかったという米国特許06001611に示された、かかる場合の一例に由来するものである。本発明者らは、ここに、切断性ブロック型プライマーにより、特に「ホットスタート」DNAポリメラーゼの非存在下で不要なプライマーダイマー形成が抑制され得ることを示す。
表41に示す以下のオリゴヌクレオチドを、PCRアッセイにおけるプライマーとして使用した。標的は、プラスミドから単離したクローン化合成アンプリコンであった。
クローン化合成標的(プライマー結合部位に下線を付している。)。
配列番号199
C型肝炎ウイルス亜型1bアンプリコン(242bp):
PCR反応を384ウェル形式にて、Roche Lightcycler(R)480プラットフォームを用いて行った。反応液は、1×New England Biolabs(Beverly,MA)DyNAmo反応ミックスを、DyNAmo DNAポリメラーゼ、200nMの各プライマー(フォワード+リバース)とともに、1.3mUのピロコッカス・アビシ(Pyrococcus abyssi)RNase H2ありまたはなしで10μl容量中に含むものにした。鋳型DNAは、2000コピーの線状化HCVプラスミドアンプリコンまたは非標的対照のいずれかであった。熱サイクリングパラメータには、95℃での最初の2分間の浸漬を含め、次いで、50サイクルの[95℃で15秒間+60℃で30秒間]を行った。試料を8%ポリアクリルアミド非変性ゲル上で分離し、GelStar染色を用いて可視化した。結果を図25に示す。ブロックなしの標準プライマーでは、55bpから90bpサイズの範囲のサイズを有する多数の産物が生成され、所望の完全長産物は見られなかった。RNase H2の非存在下では、ブロック型プライマーの使用で増幅産物は全くもたらされなかった。RNase H2がある場合、ブロック型プライマーによって予測サイズの単一の強いアンプリコンが生成し、所望のものでない小型種は見られなかった。
DyNAmoは非ホットスタートDNAポリメラーゼである。本発明のRNase H2ブロック型プライマーを、低温では低い活性を有するホットスタートRNase H2とともに使用すると、所望のものでないプライマーダイマーが反応から排除され、所望のアンプリコンの形成がもたらされたが標準的な非ブロック型プライマーではもたらされず、小型の所望のものでない種のみが生じた。
[実施例18]RNase H2アッセイバッファーにおける界面活性剤の使用
界面活性剤の存在は、ピロコッカス・アビシ(Pyrococcus abyssi)RNase H2酵素による切断に有益であることがわかった。反応条件を最適化するため、種々の界面活性剤を種々の濃度で試験した。
各組換えRNase H2酵素のアリコートを、上記に示した一本鎖および二本鎖オリゴヌクレオチド基質とともに80μl反応容量で、バッファー50mM NaCl、10mM MgCl2および10mM Tris pH8.0中で70℃にて20分間インキュベートした。反応を、ゲル負荷バッファー(ホルムアミド/EDTA)の添加によって停止させ、変性7M尿素、15%ポリアクリルアミドゲル上で分離した。配列番号10および11の基質のRNA鎖を32Pで放射性標識した。反応を、100nMの基質を100マイクロ単位(μU)の酵素とともにMg切断バッファー中で、種々の濃度の種々の界面活性剤とともに用いて行った。試験対象の界面活性剤には、Triton−X100、Tween−20、Tween−80、CTAB、およびN−ラウロイル(lauryol)サルコシルを含めた。ピロコッカス・アビシ(Pyrococcus absii)RNase H2での結果を図26に示す。さらなる実験を行い、CTAB界面活性剤濃度をより精密に滴定した。最大酵素活性を得るための界面活性剤の最適レベルは(vol:vol):Triton−X100では0.01%、Tween−20では0.01%およびCTABでは0.0013%であった。界面活性剤Tween−80およびN−ラウロイルサルコシルならびに試験したその他の界面活性剤は性能を示さなかった。従って、非イオン系(Triton、Tween)およびイオン系(CTAB)界面活性剤はどちらも、本発明の好熱菌由来RNase H2酵素を安定化させるために使用され得る。
[実施例19]qPCRにおける蛍光クエンチ(F/Q)切断性プライマーの使用
上記の実施例9では、切断性ブロック型プライマーがPCRにおいて機能し、さらに、SYBR green 検出が使用されるリアルタイム定量的PCR(qPCR)に使用され得ることが示された。この実施例では、本発明者らは、PCR反応過程においてプライマー自体が検出可能なシグナルを生成する蛍光クエンチ切断プライマーの使用を示す。
図18は、ブロック型切断性プライマーを用いてPCRを行うためのスキームを示す。図27は、蛍光クエンチ切断性プライマーを用いてPCRを行うためのスキームを示す。この場合、ペアの一方のプライマーは蛍光色素で検出可能に標識される。蛍光クエンチャーは、プライマーの3’末端またはこの付近に位置し、プローブがインタクトなときはプライミングおよびDNA合成を有効に抑制する。色素とクエンチャーの間に単一のリボヌクレオチド塩基が位置する。このリボヌクレオチドでのRNase H2による切断によってレポーターとクエンチャーが分離し、クエンチングが解消され、検出可能なシグナルがもたらされる。同時に、切断によってプライマーが活性化され、PCRが進行する。
表42に示す以下の合成オリゴヌクレオチドを使用し、合成鋳型を用いたこの反応を実証した。対照として、未修飾プライマーと標準的な蛍光クエンチプローブを用いて5’−ヌクレアーゼTaqman(R)アッセイを行った。RNA塩基の3’側に4、5または6つのDNA塩基を有する3種類の合成蛍光クエンチ切断性プライマーバリアントを比較した。先に、C3スペーサーまたはddC末端基を有するオリゴヌクレオチド基質の使用では、RNA塩基に対して3’側に4つのDNA塩基が最適であることが確立されていた。3’末端またはこの付近におけるバルキーな疎水性クエンチャー基の存在によりこのドメイン内に必要とされるDNA残基の最適な数が変わり得ることが考えられ得た。
PCR反応を10μl容量で、200nMのプライマー、200μMの各dNTP(合計800μM)、1単位のiTaq(BIO−RAD)、50mM Tris pH8.3、50mMのKClおよび3mMのMgCl2を用いて行った。反応を、種々の量のピロコッカス・アビシ(Pyrococcus abyssi)RNase H2ありまたはなしのいずれかで、Roche Lightcycler(R)480プラットフォームで、2×106コピーの合成鋳型/標的オリゴヌクレオチド(配列番号75)を用いて行った。反応を95℃で5分間の浸漬から開始し、続いて、45サイクルの[95℃で10秒間、60℃で30秒間、および72℃で1秒間]を行った。ForおよびRevプライマー(配列番号68および69)を内部配置型DLP(配列番号200)とともに使用した。あるいは、Forプライマー(配列番号68)をFQプライマー(個々に)(配列番号201から203)とともに使用した。
F/Q切断性プライマーの使用により、リアルタイムでPCR中に、5’−ヌクレアーゼアッセイ形式における従来の二重標識プローブ(DLP)(配列番号200)を用いて得られるものと同様の検出可能な蛍光シグナルがもたらされた。RNA塩基の3’側に4つのDNA残基を有するプライマー配列番号201では、未修飾プライマーと比べて遅い増幅が示された。RNA塩基の3’側に5つおよび6つのDNA塩基を有するプライマー配列番号202および203はより効率的であり、等しく良好な性能を示した。従って、このアッセイ形式では、3’−ブロッキング基が小型である場合は3から4つのDNA塩基設計が最適であるのとは反対に、RNA塩基の3’側に5つのDNA塩基を有するオリゴヌクレオチド設計を使用することが好ましい。SYBR Greenアッセイ形式を使用した先の実施例では、1.3mUのRNase H2により未修飾プライマーと同一のプライミング効率がもたらされた。このF/Qアッセイ形式では、1.3mUのRNase H2の使用により増幅の遅れがもたらされたが、2.6mUのRNase H2の使用で、未修飾プライマーと比べて同一の結果がもたらされた。従って、F/Qアッセイ形式ではRNase H2の量を増大させることが好ましい。増幅もシグナルの検出もどちらもRNase H2依存性であった。
qPCR反応のための増幅プロットの実施例を、5’−ヌクレアーゼアッセイのDLP(配列番号200)を用いて実施し、F/Q切断性5Dプライマー(配列番号202)を図28に示す。両方法は、蛍光が最初に検出されるCp値が同一(20.0)であるため増幅効率が同様であることが明白である。興味深いことに、ΔRf(検出された蛍光シグナルの大きさ)のピークは、FQプライマーよりもDLPの使用でわずかに高レベル側に存在した。最大蛍光シグナル放出の差について考えられ得る説明の1つは、FQプライマー上の蛍光色素が反応終了時に一部クエンチされたままであったということである。5’−ヌクレアーゼアッセイでは、プローブが分解されてレポーター色素が反応混合物中に放出され、一本鎖の短鎖核酸断片に結合される。FQプライマーアッセイ形式では、蛍光レポーター色素はPCRアンプリコンに結合されたままであり、二本鎖形式である。DNAによってフルオレセイン発光がクエンチされ得、このため、この構成が最終シグナルを低下させているのかもしれない。
従って、本発明者らは、プライマーにおける色素/クエンチャー構成を変えると蛍光シグナルが改変され得るかどうかを、同じプライマーのF/Q型とQ/F型を比較して試験した。上記で使用した合成アンプリコンアッセイでは、好ましい5−DNAプローブは3’末端に存在する「G」残基を有するものである。G残基はFAMをクエンチする傾向があるが、他の塩基はFAM蛍光に対してほとんど効果がない。従って、アンプリコンをこの塩基を交換して修飾した。表43の配列を合成し、蛍光リアルタイムPCRアッセイ形式で試験した。
PCR反応を10μl容量で、200nMのプライマー、200μMの各dNTP(合計800μM)、1単位のiTaq(BIO−RAD)、50mM Tris pH8.3、50mMのKClおよび3mMのMgCl2を用いて行った。反応は、2.6mUのピロコッカス・アビシ(Pyrococcus abyssi)RNase H2を用いて、Roche Lightcycler(R)480プラットフォームで、2×106コピーの合成鋳型/標的オリゴヌクレオチド(配列番号206)を用いて実施した。反応を95℃で5分間の浸漬から開始し、続いて、45サイクルの[95℃で10秒間、60℃で30秒間、および72℃で1秒間]を行った。Forプライマー(配列番号68)を、FQプライマー(配列番号204)またはQFプライマー(配列番号205)のいずれかとともに使用した。
F/QおよびQ/F切断性プライマーの使用では同一のCpがもたらされ、両プライマーは反応において等しい効率で性能を示すことが示された。予測どおり、Q/Fプライマーでは、F/Qプライマーと比べて大きいΔRfが示された。どちらの型のプライマーもアッセイにおいて等しく良好に奏功する。
[実施例20]マルチプレックスqPCRにおける蛍光クエンチ(F/Q)切断性プライマーの使用
マルチプレックスアッセイは、現在、実験を合理化してスループットを増大させるために一般的に使用されている。目的の実験的遺伝子に特異的なqPCRアッセイを、正規化目的のための内部参照対照遺伝子に特異的な第2のqPCRアッセイと併用することは特に一般的である。qPCRのためのSYBR Green検出の弱点の1つはマルチプレックス反応が可能でないことである。色素標識蛍光クエンチプローブまたはプライマーの使用では、かかるマルチプレックス反応を行うことが可能でない。現在、同じ反応チューブ内で2、3または4種類の異なるフルオロフォアの組合せが可能であるリアルタイムPCRサイクリング/検出装置が入手可能である。この実施例では、マルチプレックスqPCRにおける蛍光クエンチ(F/Q)切断性プライマーの有用性を示す。
表44に示す以下のオリゴヌクレオチド試薬を合成し、マルチプレックスqPCRを、5’−ヌクレアーゼアッセイでの二重標識プローブまたはF/Q切断性プライマーのいずれかを用いて行った。一方のアッセイはヒトMYC遺伝子(NM_002476)に特異的なものにし、第2のアッセイは、一般的に使用されている内部正規化対照遺伝子であるスプライシング因子のヒトSFRS9遺伝子(NM_003769)に特異的なものにした。
PCR反応を10μl容量で、200nMのプライマー(および、適宜プローブ)、200μMの各dNTP(合計800μM)、1単位のiTaq(BIO−RAD)、50mMのTris pH8.3、50mMのKClおよび3mMのMgCl2を用いて行った。反応は、10mUのピロコッカス・アビシ(Pyrococcus abyssi)RNase H2を用いて、Roche Lightcycler(R)480プラットフォームで、全HeLa細胞RNAから作製した2ngのcDNAを用いて行った。反応を95℃で5分間の浸漬から開始し、続いて、45サイクルの[95℃で10秒間、60℃で30秒間、および72℃で1秒間]を行った。
5’−ヌクレアーゼアッセイのためのマルチプレックス反応には、MYC ForとRevプライマー+MYCプローブ(配列番号207から209)およびSFRS9 ForとRevプライマー+SFRS9プローブ(配列番号212から214)を含めた。FQ切断性プライマーアッセイのためのマルチプレックス反応には、MYC−For−FQとMYC−Rev−Bブロック型プライマー(配列番号210および211)ならびにSFRS9−For−FQとSFRS9−Rev−Bブロック型プライマー(配列番号215および216)を含めた。また、アッセイはすべて、比較のためシングルプレックス形式で実施した。FAMプライマーおよびプローブはフルオレセイン色素チャネル内で検出されたが、MAXプライマーおよびプローブはHEX色素チャネル内で検出された。マルチプレックス型DLP 5’−ヌクレアーゼアッセイおよびマルチプレックス型FQ切断性プライマーアッセイはどちらも良好に奏功し、非常に同様のデータが得られ、これを以下の表45にまとめる。
RNase H濃度を滴定し、マルチプレックス形式では反応効率を維持するために高レベルの酵素が必要とされた。例えば、シングルプレックスSYBR Green検出形式でのブロック型プライマーには1.3mUの酵素が必要とされた。シングルプレックス形式でのブロック型FQプライマーには2.6mUの酵素が必要とされた。マルチプレックス形式でのブロック型FQプライマーには10mUの酵素が必要とされた。従って、切断性プライマーを異なるアッセイ形式で使用する場合、使用するRNase H2酵素の量を滴定することが重要である。
マルチプレックスプローブの使用が一般的な実務である別の適用は対立遺伝子識別SNPである。以下のアッセイを設計し、SMAD7遺伝子の結腸直腸癌の発症と関連していることがわかっている部位rs4939827におけるSNPペアを識別した。この部位におけるFQブロック型プライマーを、上記の実施例に教示された標準的な設計特長を用いて、この遺伝子の「C」および「T」対立遺伝子を識別するためのさらなる最適化をなんら行うことなく設計し、合成した。配列を以下に表46に示す。
上記のプライマーは、SMAD7遺伝子(NM_005904)以下の85bp領域を標的化する。プライマー結合部位に下線を付し、SNPの位置を太字のイタリック体で強調している。
rs4939827(SMAD7)C対立遺伝子(配列番号220)
rs4939827(SMAD7)T対立遺伝子(配列番号221)
PCR反応を10μl容量で、200nMのFQ−Forおよび未修飾のリバースプライマー、200μMの各dNTP(合計800μM)、1単位のiTaq(BIO−RAD)、50mMのTris pH8.3、50mMのKClおよび3mMのMgCl2を用いて行った。反応は、2.6mUのピロコッカス・アビシ(Pyrococcus abyssi)RNase H2を用いて、Roche Lightcycler(R)480プラットフォームで、2ngの標的DNAを用いて行った。標的DNAは、2つのSMAD7対立遺伝子(Coreill 18562および18537)にホモ接合型の細胞から作製したゲノムDNAであった。「C」および「T」対立遺伝子(配列番号220および221)を個々に(ホモ接合体)および一体で(ヘテロ接合体)試験した。反応を95℃で5分間の浸漬から開始し、続いて、45サイクルの[95℃で10秒間、60℃で30秒間、および72℃で1秒間]を行った。データ収集は、FAMチャネルおよびHEXチャネルを検出するマルチプレックスモードに設定した。
結果を図30に示す。FAM標識「C」プローブは「C」標的DNAの存在を検出したが「T」標的DNAは検出しなかったこと、およびHEX「T」プローブは「T」標的DNAの存在を検出したが「C」標的DNAは検出しなかったことが明白である。従って、FQ切断性プライマーはマルチプレックス形式においてSNPを識別するために使用され得る。
[実施例21]プライマー−プローブアッセイにおける蛍光クエンチ切断性プライマーの使用
本発明者らは以前に、相違するが関連している2つのエレメント、核酸分子の5’末端の方に位置するレポータードメインと、3’末端に位置するプライマードメインとを含む蛍光クエンチプライマーを用いて核酸試料を検出する方法を報告した(米国特許出願公開第2009/0068643号明細書)。プライマードメインは、標的核酸に相補的であり、PCRで使用する条件下で該標的核酸に結合する。これは、例えばPCRにおいて、相補的な標的を鋳型として用いてDNA合成をプライミングし得る。レポータードメインは、標的に相補的なものであり得る配列、または標的核酸に無関連で標的にハイブリダイズしないものであり得る配列を含むものである。さらに、レポータードメインには検出可能なエレメント、例えば蛍光レポーター色素およびクエンチャーが含まれる。レポーター色素とクエンチャーは、レポータードメインが一本鎖のランダムコイルコンホメーションである場合はレポーター色素からの蛍光シグナルがクエンチャーによって有効に抑制されるような適切な数のヌクレオチドによって隔離されている。PCR中、プライマードメインがDNA合成をプライミングし、これによりFQT合成オリゴヌクレオチドが産物核酸内に組み込まれ、これ自体が次のPCRサイクルの鋳型として使用され得る。次のPCRサイクル中のプライマー伸長時、FQTプローブ全体が、レポータードメインを含む二本鎖形態に変換される。剛直な二本鎖(double−stranded duplex)の形成によりフルオロフォアとクエンチャー間の物理的距離が増大し、蛍光放射の抑制が低減される(従って、蛍光強度が増大する。)。従って、PCR中のFQTプライマーの二本鎖形態への変換は検出可能な事象を構成する。レポーター色素とクエンチャー間の部位でのレポータードメインの切断によって、レポーター色素とクエンチャーが物理的に分離した状態になり、もはや同じ核酸分子上で共有結合状態でなくなると、蛍光シグナルのさらなる増大が得られ得る。この切断事象は二本鎖核酸配列の形成に依存性であり、このため、FQTプライマーが最初の一本鎖状態である場合は切断は起こり得ない。レポーターとクエンチャーを分離するための適切な方法としては、例えば、dsDNA内の特定の配列を切断する制限エンドヌクレアーゼの使用が挙げられる。あるいは、RNase H2切断ドメインがフルオロフォアとクエンチャー間に位置し得る。フルオロフォアとクエンチャー間への単一のリボヌクレオチド残基の位置により、FQTプライマーがPCR中、RNase H2の適切な基質となり得る。この反応のスキームを図31に示す。この実施例では、プライマー−プローブリアルタイムPCRアッセイにおいて蛍光クエンチプライマーの切断を媒介するための耐熱性RNase H2の使用を示す。
未修飾ForおよびRevプライマーを5’−ヌクレアーゼアッセイにおける使用に適切な内部位置二重標識プローブとともに含めたヒトDrosha遺伝子のためのqPCRアッセイを設計した。また、Forプライマーは、未修飾Forプライマーと同じプライマードメイン配列を使用し、レポータードメインを5’末端に付加したFQTフォワードプライマーとして合成し、該レポータードメインには、11塩基分隔離されたレポーター色素(フルオレセイン−dT)とダーククエンチャー(IBFQ)を含め、中央位置rU塩基(切断部位)を含めた。配列を以下に表47に示す。
上記のプライマーは、ヒトDrosha遺伝子(RNASEN,NM_013235)の以下の141bp領域を標的化する。プライマー結合部位に下線を付し、5’−ヌクレアーゼアッセイのための内部プローブ結合部位はボールドフォントである。
5’−ヌクレアーゼqPCR反応を10μl容量で、200nMの未修飾ForおよびRevプライマーを200nMのプローブ、200μMの各dNTP(合計800μM)、1単位のiTaq(BIO−RAD)、50mMのTris pH8.3、50mMのKClおよび3mMのMgCl2とともに用いて行った。FQT qPCR反応は10μl容量で、200nMのFQT−フォワードプライマーおよび200nMの未修飾のリバースプライマー、200μMの各dNTP(合計800μM)、1単位のiTaq(ホットスタート耐熱性DNAポリメラーゼ,BIO−RAD)、50mM Tris pH8.3、50mMのKClおよび3mMのMgCl2を用いて行った。反応は、2.6mUのピロコッカス・アビシ(Pyrococcus abyssi)RNase H2を用いて、またはなしで、Roche Lightcycler(R)480プラットフォームにおいて行った。反応は、全HeLa細胞RNAから作製した10ngのcDNAを用いて、またはなしで行った。反応を95℃で5分間の浸漬から開始し、続いて、45サイクルの[95℃で10秒間、60℃で30秒間、および72℃で1秒間]を行った。
5’−ヌクレアーゼqPCR反応の結果を図32Aに示す。陽性シグナルが26サイクル目に見られた。FQTプライマーqPCR反応の結果を図32Bに示す。陽性シグナルが、5’−ヌクレアーゼアッセイ結果とほぼ同一の27サイクル目に見られた。この場合、シグナルはRNase H2切断に依存性であった。従って、RNase H2による内部RNA残基での切断は、相違する蛍光クエンチレポータードメインを有するFQTプライマーからシグナルを生成させるために使用され得る。
[実施例22]ミスマッチ識別を改善するための切断性ブロック型プライマーにおける修飾塩基の使用
本発明者らは、実施例13でSYBR Greenアッセイ形式でのqPCRにおいて一塩基ミスマッチを識別するために、および実施例20で蛍光クエンチ(FQ)アッセイ形式においてブロック型切断性プライマーが使用され得ることを示した。厳密な塩基ミスマッチおよび配列状況にもよるが、ミスマッチ標的の検出可能なシグナルはパーフェクトマッチ標的の検出の5から15サイクル後に生じた。より大きなミスマッチ識別レベルが所望される状況があり得る(例えば、主に野生型細胞バックグラウンドにおけるレア変異型対立遺伝子の検出)。本発明者らは、この実施例において、切断性プライマー内への2’OMe RNA修飾残基の選択的配置によってミスマッチ識別が改善され得ることを示す。
上記の実施例5では、修飾塩基は、使用される修飾の型および切断部位との相対的な位置にもよるがRNase H2によるヘテロ二本鎖基質の切断と適合性であり得ることが示された。従って、本発明者らは、単一の未修飾のリボヌクレオチド塩基を有するブロック型プライマーにおける2’OMe修飾の使用をより詳細に示す。表48に以下に示す以下のプライマーを合成し、合成オリゴヌクレオチド鋳型を用いたSYBR Green形式でのqPCR反応に使用した。単一のrU残基を有するブロック型切断性プライマーを、さらなる修飾なしのもの(配列番号116)、またはrUの5’側に2’OMe塩基を有するもの(配列番号228)、またはrUの3’側に2’OMe塩基を有するもの(配列番号229)のいずれかで合成した。2’OMe残基をリボヌクレオチドの5’側に位置すると最終プライマー内に残留し、これはRNase H2による切断に起因する。従って、この反応生成物を模倣させるために3’末端に3’−2’OMe U残基を有する合成鋳型に特異的なSyn−Rev−mUプライマーを作製した(配列番号227)。
以下の合成オリゴヌクレオチドを鋳型として使用した。プライマー結合部位に下線を付している。
PCR反応を10μl容量で、200nMの未修飾フォワードプライマーを、Bio−Rad SYBR Greenマスターミックスで上記に示した種々のリバースプライマーの各々200nMとのペアを用いて行った。反応は、1.3から200mUのピロコッカス・アビシ(Pyrococcus abyssi)RNase H2を用いて、またはなしで、Roche Lightcycler(R)480プラットフォームにおいて、標的なし、または2×106コピーの合成オリゴヌクレオチド鋳型を用いて行った。反応を95℃で5分間の浸漬から開始し、続いて、45サイクルの[95℃で10秒間、60℃で20秒間、および72℃で30秒間]を行った。結果を表49にまとめる。
3’末端に2’OMe塩基を有する非ブロック型プライマー(配列番号227)では未修飾プライマー(配列番号69)と比べて2サイクルの遅れが示され、末端2’OMe塩基をプライミング効率をわずかに低下させるが、それでもなおPCRプライマーとして機能性であることが示された。単一のrU塩基を含むブロック型プライマー(配列番号116)は予測どおりの性能を示し(実施例13参照)、低濃度のRNase H2で良好に奏功した(データは示さず)。2’OMe RNA含有プライマーでは、より高濃度のRNase H2が必要とされた。リボヌクレオチドの5’側に2’OMe残基を有するプライマー(配列番号228)では、50mUのRNase H2で良好な活性が示され、100mU以上のRNase H2を使用した場合、ブロックなしの2’OMe対照プライマー(配列番号227)と同一の性能を示した。リボヌクレオチドの3’側に2’OMe残基を有するプライマー(配列番号229)は、試験したいずれのRNase H2レベルでも機能しなかった。次に、リボヌクレオチドの5’側に2’OMe残基を有するプライマー(配列番号228)をミスマッチ識別qPCRアッセイにおいて試験した。
標準的な構成のブロック型RNase H2切断性プライマー(配列番号116)を、この配列の5’−2’OMe型(配列番号228)と比較した。この2種類の「Rev」プライマーを未修飾「For」プライマー(配列番号68)とともに、3種類の異なる合成オリゴヌクレオチド鋳型(最初に実施例13においてミスマッチ識別の可能性の規定において使用)と一緒に使用した。これらの鋳型は、パーフェクトマッチ対照(鋳型配列番号144)、T/Uミスマッチ(鋳型配列番号137)またはG/Uミスマッチ(鋳型配列番号158)をもたらす。3種類の鋳型オリゴヌクレオチドを以下に、マッチとミスマッチ(対比)の領域を示すために真下にアラインメントした切断性ブロック型プライマー(配列番号116)とともに示す。
PCR反応を10μl容量で、200nMの未修飾フォワードプライマーを200nMの切断性ブロック型Revプライマー(配列番号116)または5’mU含有切断性ブロック型Revプライマー(配列番号228)とともにBio−Rad SYBR Greenマスターミックス中で用いて行った。反応は、1.3mU(プライマー配列番号116)または100mU(プライマー配列番号228)のピロコッカス・アビシ(Pyrococcus abyssi)RNase H2を用いて行った。反応を、Roche Lightcycler(R)480プラットフォームで、2×106コピーの異なる合成オリゴヌクレオチド鋳型(配列番号137、144または158)を用いて実施した。反応を95℃で5分間の浸漬から開始し、続いて、45サイクルの[95℃で10秒間、60℃で20秒間、および72℃で30秒間]を行った。結果を表50にまとめ、ΔCp(ΔCp=Cpミスマッチ−Cpマッチ)として示す。
試験した両方の場合で、2’OMe残基を切断性リボヌクレオチドのすぐ5’側に付加するとミスマッチ識別が有意に改善された。T/UミスマッチはΔCpで5.3から12.7に改善され、G/UミスマッチはΔCpで10.9から14.4に改善された。この新たなプライマー設計では、1.3mU(10ulアッセイにおいて)と比べて100mUのRNase H2の使用が必要とされたが、該酵素は安価であり、反応特異性におけるブーストは相当であった。本発明者らは、切断性プライマー内の選択した位置における化学修飾残基の使用によりアッセイのミスマッチ識別能が有意に改善され得ると結論づける。
[実施例23]ミスマッチ識別を改善するための切断性ブロック型プライマーにおけるダブルミスマッチ設計の使用
野生型(WT)配列に相補的な一部の核酸プローブは、パーフェクトマッチWT標的と一塩基ミスマッチを有する変異型標的の両方に充分な同様の親和性で結合し、これらの2つの配列(WTと変異型)は容易に識別されない。プローブと標的配列の間に導入された単一のミスマッチでは、野生型標的(これはプローブと1つのミスマッチを有する。)に対する結合は有意に破壊され得ないが、変異型標的(ここではこれはプローブと2つのミスマッチを有する。)に対する結合は破壊され得る。このストラテジーは、ハイブリダイゼーション系アッセイならびに核酸結合タンパク質との相互作用に依存性のアッセイの選択性を改善するために使用されている。この実施例では、本発明の切断性ブロック型プライマーの使用による塩基識別を改善するためのダブルミスマッチストラテジーの使用を示す。
この試験では、FQ形式の代わりにSYBR Green検出形式を使用したこと以外は実施例20に示したSMAD7 qPCR SNP識別アッセイをモデル系として使用した。塩基ミスマッチを切断性リボヌクレオチドに位置するブロック型切断性プライマーを合成した。このプローブ設計を使用すると、切断部位の5’側に位置するいずれのミスマッチ(RNA塩基)もプライマー伸長産物中に保持され、従ってPCR中に複製される。PCR中においてダブルミスマッチの存在を維持するためには、該ドメイン内に、切断除去されて娘産物中に保持されない新たなミスマッチが切断性RNA残基の3’側に位置しなければならない。内部付加される第2のミスマッチはパーフェクトマッチ標的とのプライマーの機能を破壊しないものであることが望ましい。実施例13において、「+1位」(即ち、RNA塩基のすぐ3’側)に存在するミスマッチは、切断および機能性プライマー効率に対して有意な影響を有し得ることが示された。従って、ダブルミスマッチをRNA塩基の3’側の「+2位」に位置させたが、この構成は単一のミスマッチとして破壊性であり得るものでなくダブルミスマッチとして破壊性であり得るものにした。
この部位におけるブロック型切断性プライマーを、SMAD7遺伝子(SNP遺伝子座rs4939827)内の「C」および「T」対立遺伝子間を識別するための標準的な設計特長を用いて設計し、合成した。すべてのアッセイで同じ未修飾のリバースプライマーを使用した(配列番号217)。パーフェクトマッチ「C」対立遺伝子プライマーは配列番号231であり、パーフェクトマッチ「T」対立遺伝子プライマーは配列番号235である。次に、リボヌクレオチドに対して+2の位置(RNA残基の2塩基3’側)に変異を有する一連のプライマーを作製した。塩基ミスマッチの実体により、この位置にミスマッチを有することによってアッセイに導入され得る相対摂動が改変され得ることが予測された。従って、パーフェクトマッチ(野生型)および考えられ得る3種類すべての塩基ミスマッチを合成し、試験した(配列番号232から234および236から238)。配列を以下に表51に示す。
上記のプライマーは、SMAD7遺伝子(NM_005904)の以下の85bp領域を標的化する。プライマー結合部位に下線を付し、SNPの位置を太字のイタリック体で強調している。SNP識別を改善するための「二重変異型」アプローチのスキームの説明を補助するため、図33にプライマーを標的とアラインメントしている。
rs4939827(SMAD7)C対立遺伝子(配列番号220)
rs4939827(SMAD7)T対立遺伝子(配列番号221)
PCR反応を10μl容量で、200nMの未修飾Revプライマー(配列番号217)および該一連の切断性ブロック型Forプライマー(配列番号231−238)をBio−Rad SYBR Greenマスターミックス中で用いて行った。反応は、2.6mUのピロコッカス・アビシ(Pyrococcus abyssi)RNase H2を用いて、Roche Lightcycler(R)480プラットフォームで、2ngの標的DNAを用いて行った。標的DNAは、2つのSMAD7対立遺伝子(Coreill 18562および18537)にホモ接合型の細胞から作製したゲノムDNAであった。「C」および「T」対立遺伝子(配列番号220および221)を個々に試験した。反応を95℃で5分間の浸漬から開始し、続いて、80サイクルの[95℃で10秒間、60℃で30秒間、および72℃で1秒間]を行った。結果を以下の表52に示す。
「C」対立遺伝子では、標準的な設計のパーフェクトマッチプローブ(配列番号231)で未修飾対照プライマーと同様の増幅効率が示され、「T」標的に対するミスマッチ識別は10.7サイクル(ΔCp=10.7)であった。ミスマッチプライマーでは、「C」対立遺伝子標的で検出効率の軽微な低下が示された(2.4サイクルまでのシフトが観察された。)が、SNP部位におけるミスマッチ識別は有意に増大し、rCAAプライマー(配列番号232)で18.8サイクルのΔCpが見られた。
「T」対立遺伝子でも、標準的な設計のパーフェクトマッチプローブ(配列番号235)で、未修飾対照プライマーと同様の増幅効率が示され、「C」標的に対するミスマッチ識別は13.4サイクル(ΔCp=13.4)であった。しかしながら「C」対立遺伝子とは異なり、「T」対立遺伝子に対するミスマッチプライマーでは、「T」対立遺伝子標的で検出効率の大きな低下が示された。20サイクルもの大きなシフトが観察された。それでもなお、相対的SNP識別は改善され、rUACプライマー(配列番号237)では24.2サイクルのΔCpが見られた。SMAD7遺伝子のこの領域では、「T」対立遺伝子によって切断性RNA塩基部位に「ATリッチ」鎖が作出され、この配列の熱安定性は低い。+2位におけるミスマッチの存在は、この領域内の該構造を、「T」対立遺伝子で、より安定性の高い「C」対立遺伝子よりもずっと大きく不安定化されるはずであり、これは、「T」標的に対する「T」対立遺伝子プローブでCpの増大が観察された説明となり得る。しかしながら、このCp値のシフトはアッセイの有用性を制限しない。ブロック型切断性プライマーの固有の特異性の増大を考慮すると(実施例11参照)、60から80またはこれ以上のサイクルまでの常套的に伸長反応に問題はないはずである。一部の特定の状況では、ダブルミスマッチ形式の識別力の増大は、低い全体反応効率を認識するのに充分な価値がある。「ATリッチ」領域でも、SMAD7「T」対立遺伝子と同様、ダブルミスマッチを+3位に位置させ、この破壊効果をさらに切断性リボヌクレオチドから除去することが有用であり得る。
[実施例24]切断性ブロック型プライマーを用いたSNP部位でのPCR増幅によって作製される反応生成物の実体
PCRまたは任意のプライマー伸長適用における使用のため、塩基ミスマッチ(SNP部位)をブロック型切断性プライマー内のリボヌクレオチド残基に直接位置させると、RNA塩基の5’側で起こる切断事象により、鋳型核酸内に塩基バリアントの存在をもたらすプライマー伸長産物がもたらされる。RNA塩基の3’側で起こる切断事象では、産物をプライマー内に存在するRNA塩基に変更し、後続のPCRサイクルで複製されるエラーを生じさせるプライマー伸長産物がもたらされる。従って、リボヌクレオチドの3’側での切断は所望のものでない事象である。PCRの莫大な増幅力を考慮すると、少量の3’−切断であっても配列エラーを含む産物がかなりの量で蓄積され得る。例えば、0.1%の割合での切断は、1000分子のうち1分子がRNA残基の部位「誤」塩基を有するものになり得、次いでこれは、後続のPCRサイクルで「パーフェクトマッチ」として検出可能となり得る。これは、qPCR反応において10サイクルシフト(ΔCp=10)と同等であり得る。実施例13において教示された設計パラメータを使用すると、SNP識別のサイクルシフトは5から15までで異なった。従って、少量の所望のものでない思いも寄らない3’−切断により、実施例13で見られたSNPインテロゲーション中の偽陽性シグナルの遅れが容易に説明され得る。
対立遺伝子特異的SNP識別反応における偽陽性シグナルは2つの原因で生じ得る。第1に、ミスマッチではなく、RNA塩基の5’側の「正常」RNase H2切断部位における不充分な切断の継続(図3参照)。この反応により出発標的と同一のプライマー伸長産物がもたらされる。第2に、対立遺伝子特異的SNP識別反応における偽陽性シグナルもRNA塩基の3’側のどこかの「異常」位置での不充分な切断によって生じ得る。この反応では、プライマーと同一のプライマー伸長産物が生成され得、次いでこれが、この同じプライマーを用いて高効率で増幅され得る。第1のシナリオが正しいならば、対立遺伝子「A」プライマーを対立遺伝子「B」標的とともに用いて行った反応による産物は、ほとんどが対立遺伝子「B」産物で得られるばずであり、これは、対立遺伝子「A」プライマーで非効率的に継続して増幅され得る。第2のシナリオが正しいとすれば、対立遺伝子「A」プライマーを対立遺伝子「B」標的とともに用いて行った反応による産物は、ほとんどが対立遺伝子「A」産物で得られるはずであり、これは、対立遺伝子「A」プライマーで効率的に増幅され得る。
これらの可能性を識別するため、1回目のPCR増幅を、SMAD7「T」対立遺伝子プライマーをSMAD7「T」対立遺伝子標的DNAまたはSMAD7「C」対立遺伝子標的DNAとともに用いて行う再増幅実験を行った。反応生成物を108倍に希釈し、「T」と「C」対立遺伝子プライマーを用いて再増幅を行い、反応生成物中に存在するSNP塩基の実体が1回目の増幅中に変化するかどうかを調べた。SMAD7 rs4939827対立遺伝子系を使用し、以下に表53に示す以下のプライマーおよび標的DNAを使用した。
上記のプライマーは、SMAD7遺伝子(NM_005904)の以下の85bp領域を標的化する。SMAD7系における純粋な標的としての使用のための合成オリゴヌクレオチドを合成し、以下に示す。プライマー結合部位に下線を付し、SNPの位置を太字のイタリック体で強調している。
rs4939827(SMAD7)C対立遺伝子(配列番号220)
rs4939827(SMAD7)T対立遺伝子(配列番号221)
PCR反応を10μl容量で、200nMの未修飾Revプライマー(配列番号217)および「T」対立遺伝子切断性ブロック型Forプライマー(配列番号235)をBio−Rad SYBR Greenマスターミックス中で用いて行った。反応は、2.6mUのピロコッカス・アビシ(Pyrococcus abyssi)RNase H2を用いて、Roche Lightcycler(R)480プラットフォームで、6.6×105コピーの合成オリゴヌクレオチド標的SMAD7「C」対立遺伝子(配列番号220)またはSMAD7「T」対立遺伝子(配列番号230)を用いて行った。反応を95℃で5分間の浸漬から開始し、続いて、80サイクルの[95℃で10秒間、60℃で30秒間、および72℃で1秒間]を行った。このSNP部位において行ったqPCR増幅の結果を以下の表54に示す。
「T」対立遺伝子プライマーは、マッチ「T」対立遺伝子標的DNAおよびミスマッチ「C」対立遺伝子標的DNAを用いて実施した反応間で13.6のΔCpが示された先の結果と同様の性能を示した。
この実験を、上記のPCR増幅の反応生成物の108希釈物を標的DNAとして用いて繰り返した。ミスマッチ部位での切断がリボヌクレオチドの5’側の予測される位置で起こったならば、反応生成物は「真」のままであるはずであり、「T」対立遺伝子産物はインプット「T」対立遺伝子鋳型から作製され得、「C」対立遺伝子産物はインプット「C」対立遺伝子鋳型に作製され得る。しかしながら、認識可能な切断(あれば)がリボヌクレオチドの3’側で起こったならば、反応生成物はSNP部位がプライマーの配列に変換されるはずである。この場合、「T」対立遺伝子産物は「C」対立遺伝子標的から作製され得る。
PCR反応を10μl容量で、200nMの未修飾Revプライマー(配列番号217)および「T」対立遺伝子切断性ブロック型Forプライマー(配列番号235)または「C」対立遺伝子切断性ブロック型Forプライマー(配列番号231)をBio−Rad SYBR Greenマスターミックス中で用いて行った。反応は、2.6mUのピロコッカス・アビシ(Pyrococcus abyssi)RNase H2を用いて、Roche Lightcycler(R)480プラットフォームにおいて行った。インプット標的DNAは、上記の表54に示した反応生成物の108希釈物であった。反応を95℃で5分間の浸漬から開始し、続いて、45サイクルの[95℃で10秒間、60℃で30秒間、および72℃で1秒間]を行った。このSNP部位において行ったqPCR増幅の結果を以下の表55に示す。
「T」対立遺伝子プライマーを「T」対立遺伝子標的および「C」対立遺伝子標的の両方とともに用いて先で作製した反応生成物(表54)は、ここでは「T」対立遺伝子プライマーの使用でほぼ同一の増幅効率を示すが、先では、この2種類の異なる出発標的DNA間で13.6のΔCpで観察された。これは、同様の配列を有する産物核酸と最も整合する、即ち、どちらもここでは主に「T」対立遺伝子である。この仮説と整合して、これらの試料はどちらもここでは、「C」対立遺伝子プライマーの使用で同様のCpの遅れを示す。従って、「C」対立遺伝子標的を用いた「T」対立遺伝子プライマー増幅による産物は大部分が「T」対立遺伝子に変換されたようであり、リボヌクレオチド塩基の3’側で起こったプライマー切断事象によって生じた該生成物と整合した。「T」対立遺伝子プライマー(表54)を用いた最初の増幅による反応生成物をサブクローニングし、DNA配列を決定した。同定されたクローンはすべて、出発鋳型が「T」対立遺伝子であろうと「C」対立遺伝子であろうと「T」対立遺伝子の存在を有するものであり、この結論に対してさらなる支持が追加される。
[実施例25]ミスマッチ識別を改善するための切断性ブロック型プライマーにおけるホスホロチオエート修飾ヌクレオチド間結合の使用
実施例24の結果は、ミスマッチプライマー/標的の組合せを用いて行ったPCRにより、標的ではなくプライマーとマッチした配列を有する産物が生成され得ることを示す。この種の産物がもたらされ得る最も起こり得るシナリオは、リボヌクレオチド残基の3’側の位置でのミスマッチプライマーの切断から始まる。プライマーのこのドメイン内の不要な切断を抑制する化学修飾の使用により、切断性ブロック型プライマーの性能が特にSNP識別において改善され得る。表示の通りにリボヌクレオチドの3’側の位置にヌクレアーゼ耐性ホスホロチオエート(PS)修飾ヌクレオチド間結合が位置する以下の表56に示す以下のプライマーを合成した。実施例15において、RNA塩基において直接3’結合にPS結合を位置すると切断効率が低下し得ることが確立された。従って、この修飾調査では、この部位のさらに3’側のDNA結合に着目した。実施例13において先で使用した合成アンプリコン系を使用した。
標準的な構成のブロック型RNase H2切断性プライマー(配列番号116)を、この配列のPS修飾型(配列番号301および239から241)と比較した。この「Rev」プライマーの組を未修飾「For」プライマー(配列番号68)とともに、2種類の異なる合成オリゴヌクレオチド鋳型(最初に実施例13においてミスマッチ識別の可能性の規定において使用)と一緒に使用した。これらの鋳型は、パーフェクトマッチ対照(鋳型配列番号144)とT/Uミスマッチ(鋳型配列番号137)をもたらす。この2種類の鋳型とオリゴヌクレオチドを以下に、マッチとミスマッチ(対比)の領域を示すために真下にアラインメントした切断性ブロック型プライマー(配列番号116)とともに示す。
PCR反応を10μl容量で、200nMの未修飾Forプライマー(配列番号68)および上記に示した異なる切断性ブロック型Revプライマー(配列番号116、301および239から241)をBio−Rad SYBR Greenマスターミックス中で用いて行った。反応は、1.3mUのピロコッカス・アビシ(Pyrococcus abyssi)RNase H2を用いて、Roche Lightcycler(R)480プラットフォームにおいて行った。インプット標的DNAは、上記に示した2×106コピーの合成標的配列(配列番号137および144)であった。反応を95℃で5分間のインキュベーションから開始した後、45サイクルの[95℃で10秒間、60℃で30秒間、および72℃で1秒間]を行った。このSNP部位において行ったqPCR増幅の結果を以下の表57に示す。
3’「+1」位へのPS修飾結合の配置(rUC*CCC)により、このアッセイでSNP識別においてほぼ5サイクルの改善がもたらされ(配列番号241対116)、リボヌクレオチドの3’側のドメイン内におけるヌクレアーゼの安定性の増大によってアッセイ性能が有意に改善され得ることが示された。リボヌクレオチドからさらに3’側の結合の修飾では影響は最小限であった。また、この領域内の結合のすべての修飾(rUC*C*C*C,配列番号241のヌクレオチド23から27)も有益であり、相対的SNP識別が3サイクル改善されることが示されたが、予想外なことに、3’+1結合における1つだけの修飾の使用よりも有益性が低いことが示された。これは、同様にPS修飾に起因する低結合親和性Tmと関連し得る。
従って、切断性リボヌクレオチドの3’側の結合におけるヌクレアーゼ抵抗性修飾の付加により、RNase H2媒介性切断性ブロック型プライマーPCRアッセイでのSNP識別が高まり得る。典型的には、PS結合の2つの立体異性体のうちの一方(RpまたはSp異性体)のみが有益性をもたらす。従って、活性の改善は、実施例15で示されたように、ここではキラル的に純粋なPS化合物の単離によって実現され得る。他のヌクレアーゼ抵抗性修飾、例えば数例挙げると、非キラルホスホロジチオエート結合、メチルホスホネート結合、ホスホルアミデート結合、ボラノホスフェート結合、および無塩基残基、例えばC3スペーサーがこの領域に適切であり得る。
[実施例26]qPCRアッセイにおけるブロックなしの3’−ヒドロキシルを有する切断性プライマーの使用
上記の実施例では、プライマー伸長がRNase H2切断の前に起こることを抑制するために、ブロッキング基をプライマーの3’末端位置させた。一部の特定のプライマー設計および適用では、3’−ブロッキング基を使用することは必要でない、またはさらには望ましい場合があり得る。本発明者らは、先に、鋳型機能はブロックされるがプライマー機能は保持される様式で化学修飾されたプライマーを使用する多項式増幅と称される核酸増幅方法を報告した。さまざまな基、例えば内部C3スペーサーおよび内部2’OMe RNA塩基がこの目的に使用され得る。ネステッドプライマーを使用すると、高い特異性が得られ、増幅力は、使用されるネステッドプライマーの数に依存性であり、増幅は、PCRで見られるような指数関数的増幅ではなく多項式拡大に従って起こる(米国特許第7,112,406号明細書ならびに係属中の米国特許出願公開第2005/0255486号明細書および同第2008/0038724号明細書参照)。多項式増幅プライマーエレメントを本発明のRNase H2切断性ドメインと併用することにより、ブロックなしの3’−ヒドロキシルを有し、プライマー伸長は補助し得るがPCRは補助することができない新規なプライマー設計がもたらされる。切断されると、鋳型ブロッキング基は除去され、PCRにおける使用のためのプライマー機能が回復する。この実施例では、3’−ヒドロキシルを有する切断性鋳型ブロック型プライマーのqPCRにおける使用を示す。
先の実施例で使用した人工合成アンプリコンとの使用のための以下に表58に示す以下のプライマーを合成した。
合成アンプリコンオリゴヌクレオチド鋳型(配列番号143)を以下に、上部にアラインメントして示した未修飾および種々の修飾切断性Forプライマーならびに下側にアラインメントした未修飾Revプライマーとともに示す。DNA塩基は大文字であり、RNA塩基は小文字であり、「x」はスペーサー−C3基を示す。
PCR反応を10μl容量で、200nMの個々のForプライマー(配列番号68、242から246)および未修飾Revプライマー(配列番号69)をBio−Rad SYBR Greenマスターミックス中で用いて行った。反応は1.3mUのピロコッカス・アビシ(Pyrococcus abyssi)RNase H2を用いて、またはなしで、Roche Lightcycler(R)480プラットフォームにおいて行った。インプット標的DNAは、上記に示した2×106コピーの合成標的であった(配列番号144)。反応を95℃で5分間のインキュベーションから開始した後、60サイクルの[95℃で10秒間、60℃で30秒間、および72℃で1秒間]を行った。qPCR増幅の結果を以下に表59に示す。
非ブロック型プライマーは、このアッセイ系においておよそ17サイクル目に検出可能なシグナルをもたらした。ブロックなしのRevプライマーを3’ブロック型Forプライマーとともに使用すると、シグナルは、RNase H2なしで実施した60サイクル以内のPCRで検出されなかったが、RNase H2ありでは、およそ17の同様のサイクル検出時間が見られた。遊離3’−ヒドロキシル基を有する内部ブロック型フォワードプライマーは3’修飾プライマーと同一の挙動を示した。ブロックなしの3’−ヒドロキシルにもかかわらず、PCRにおける機能にRNase H2でのプライマー切断が必要とされ、おそらく内部C3スペーサーによってもたらされる鋳型機能の喪失のためである。また、3’末端付近に位置するC3スペーサーにより、プライマー伸長もある程度阻害され得る。RNase H2の非存在下ではシグナルは検出されなかった;RNase H2ありでは、切断および増幅は正常に進行した。
この実施例は、切断性プライマーが、切断性プライマーPCRアッセイにおいて機能するために3’末端残基を修飾する必要がないこと、および鋳型機能を破壊する内部修飾を有するプライマーが等しく良好な性能を示し得ることを示す。プライマー設計に対するこの所見の重要性を考慮し、この結果が一般化され得ることが確実になるように、内在性ヒト遺伝子標的を使用し、ヒトゲノムDNAを用いて同様の実験を行った。
以下に表60に示す以下のプライマーを、先の実施例で使用したqヒトSMAD7遺伝子を基にして「C」対立遺伝子のみを用いて合成した。
SMAD7アンプリコン配列(配列番号220)を以下に、上部にアラインメントして示した未修飾および種々の修飾切断性Forプライマーとともに示す。DNA塩基は大文字であり、RNA塩基は小文字であり、「x」はスペーサー−C3基を示す。
PCR反応を10μl容量で、200nMの個々のForプライマー(配列番号230から231、247から250)および未修飾Revプライマー(配列番号217)をBio−Rad SYBR Greenマスターミックス中で用いて行った。反応は、2.6mUのピロコッカス・アビシ(Pyrococcus abyssi)RNase H2を用いて、またはなしで、Roche Lightcycler(R)480プラットフォームにおいて行った。インプット標的DNAは、ヒト細胞株由来の2ngのゲノムDNAであった(Coreill 18562,SMAD7「C」対立遺伝子)。反応を95℃で5分間のインキュベーションから開始した後、60サイクルの[95℃で10秒間、60℃で30秒間、および72℃で1秒間]を行った。qPCR増幅の結果を以下の表61に示す。
非ブロック型プライマーは、ヒトゲノムDNAを用いたこのアッセイ系において、およそ26サイクル目に検出可能なシグナルをもたらした。ブロックなしのRevプライマーを3’ブロック型Forプライマーとともに使用すると、シグナルは、RNase H2なしで実施した60サイクル以内のPCRで検出されなかったが、RNase H2ありでは、およそ26の同様のサイクル検出時間が見られた。遊離3’−ヒドロキシル基を有する内部ブロック型Forプライマーはすべて、3’修飾プライマーと同一の挙動を示した。RNase H2の非存在下ではシグナルは検出されなかった;RNase H2ありでは、切断および増幅は正常に進行し、検出はおよそ26サイクルでなされた。
この実施例は、さらに、切断性プライマーが、切断性プライマーqPCRアッセイにおいて機能するために3’末端を修飾する必要がないことを示す。鋳型機能を破壊する内部修飾を有するプライマーは依然として該アッセイにおいてプライマーとして機能するためにプライマー切断事象を必要とする。切断がRNase H2を用いて内部切断性残基において行われた場合、単一のRNA塩基と同様、増幅効率は、未修飾プライマーの使用で見られるものと同一である。この新規な型の鋳型ブロック型切断性プライマーは、ヒトゲノムDNAなどの複雑な核酸試料においてPCRを行うために使用され得る。
[実施例27]内部鋳型ブロッキング基および3’−ヒドロキシルを有する切断性プライマーはDNA合成をプライミングし得る
実施例26に開示した切断性鋳型ブロック型プライマーはブロックなしの3’−ヒドロキシル基を有し、この基は、オリゴヌクレオチドが線形プライマー伸長反応においてプライマーとして機能することを可能にするはずであるが、内部鋳型ブロッキング基は、プライマーのほとんどが複製され得ないためPCRにおける機能を抑制する。このため、娘産物中にプライマー結合部位は存在しない。RNase H2によるプライマーの切断によって鋳型ブロッキング基を含むドメインが除去され、正常なプライマー機能が回復する。この実施例では、このような組成物が、DNA合成をプライミングする機能を果たし得ることを示す。
以下に表62に示す以下のプライマーを使用し、先の実施例で使用した人工合成アンプリコン系を用いて線形プライマー伸長反応を行った。
上記のSyn−Forプライマーに相補的な新たに合成した103量体オリゴヌクレオチド鋳型を作製し(配列番号251)、これを以下に、上部にアラインメントした未修飾および種々の修飾切断性フォワードプライマーとともに示す。DNA塩基は大文字であり、RNA塩基は小文字であり、「x」はスペーサー−C3基を示す。
上記に示した6種類のForプライマーを32Pで上記のようにして放射性標識した。プライマー伸長反応を20μL容量で、0.8UのiTaqポリメラーゼ(Bio−Rad)、800μMのdNTP、3mMのMgCl2を1×iTaqバッファー(20mM Tris pH8.4、50mM KCl)中で、ならびに2nMのプライマーおよび鋳型(40fmolの各オリゴヌクレオチド,20μLの反応液中)を用いて行った。反応を95℃で5分間のインキュベーションから開始した後、35サイクルの[95℃で10秒間、60℃で30秒間、および72℃で1秒間]をMJ Research PTC−100サーマルサイクラーで行った。反応を、冷EDTA含有ホルムアミドゲル負荷バッファーの添加によって停止させた。反応生成物を、変性7M尿素、15%ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)を用いて分離し、Packard Cyclone(商標)Storage Phosphor System(ホスフォイメージャー)を用いて可視化した。各バンドの相対強度を上記のようにして定量し、結果を、プライマー伸長産物を表すバンド中に存在する全放射性物質に対する割合としてプロットした。結果を図34に示す。
この反応条件下では、対照の非ブロック型プライマー(配列番号68)の61%が高分子量プライマー伸長産物に変換された。予測どおり、3’末端ブロック型切断性プライマー(配列番号242)ではプライマー伸長産物は全く示されなかった。同様に、内部C3基と3’−ヒドロキシルを有するD1およびD2切断性プライマー(配列番号243から244)もプライマー伸長を補助しなかった。わずかにより長い末端DNAドメインを有する切断性プライマー(D4およびD5配列,配列番号245から246)はプライマー伸長を補助し、D4ではプライマーの伸長産物への47%変換が示され、D5では60%変換が示され、反応効率は未修飾対照プライマーと同一であった。従って、内部C3スペーサーが3’末端の非常に近くに位置している場合、プライミング機能と鋳型機能の両方が破壊される。3’末端から4残基より遠くに位置した場合、鋳型機能のみがブロックされる。
[実施例28]ミスマッチ識別を改善するための内部鋳型ブロッキング基と3’−ヒドロキシルを有する切断性プライマーの使用
実施例24では、RNA塩基の3’側でのRNase H2によるRNA含有プライマーの切断が、qPCR SNP識別アッセイにおける偽陽性シグナルの後期発生の一因となり得る所望のものでない事象であることが示された。実施例25では、このドメインに対してヌクレアーゼ抵抗性を付与する修飾によってSNP識別が改善され得ることが示された。実施例26および27に記載の新規な組成物には、RNase H2による切断によって除去されるドメイン内のプライマーの鋳型機能を破壊する切断性リボヌクレオチドの3’側に内部C3基が位置している。この実施例は、C3スペーサー基がRNA塩基の近くに位置することにより、プローブが「非ブロック型」のままで未修飾3’−ヒドロキシルを有する形式を用いたSNP識別における切断性プライマーの性能が改善されることを示す。
先の実施例と同様のヒトSMAD7遺伝子に対する以下に表63に示す以下のプライマーを合成した。「C」対立遺伝子に特異的なプライマーを作製し、「C」対立遺伝子および「T」対立遺伝子両方のゲノムDNA標的において試験した。
SMAD7アンプリコン配列(配列番号220、「C」標的)を以下に、上部にアラインメントした未修飾および2種類の修飾切断性Forプライマーとともに示す。DNA塩基は大文字であり、RNA塩基は小文字であり、「x」はスペーサー−C3基を示す。rs4939827 C/T SNPの部位を太字と下線で示している。
同じプライマーをミスマッチSMAD7アンプリコン配列(配列番号221,「T」標的)とアラインメントする。
PCR反応を10μl容量で、200nMの個々のForプライマー(配列番号230から231、247から250)および未修飾Revプライマー(配列番号217)をBio−Rad SYBR Greenマスターミックス中で用いて行った。反応は、2.6mUのピロコッカス・アビシ(Pyrococcus abyssi)RNase H2を用いて、またはなしで、Roche Lightcycler(R)480プラットフォームにおいて行った。インプット標的DNAは、SMAD7「C」および「T」対立遺伝子(Coreill 18562および18537)にホモ接合型のヒト細胞株由来の2ngのゲノムDNAであった。反応を95℃で5分間のインキュベーションから開始した後、75サイクルの[95℃で10秒間、60℃で30秒間、および72℃で1秒間]を行った。qPCR増幅の結果を以下の表64に示す。
未修飾プライマーは非識別的であるように設計され、両方の対立遺伝子を同様の効率で増幅し、およそ26から27サイクル目に検出可能なシグナルをもたらす。どちらの切断性プライマーも機能のためにはRNase H2に依存性であり、切断酵素の非存在下ではいずれの対立遺伝子でも検出可能なシグナルは全くもたらされなかった。少ない量のRNase H2(2.6から10mU)を使用すると、3’ブロック型切断性プライマー(配列番号231)は、マッチ「C」対立遺伝子ではおよそ27サイクルで検出可能なシグナルをもたらし、ミスマッチ「T」対立遺伝子では38から40サイクルのCpの遅れが示された(ΔCpは10から13)。より多くの量のRNase H2を使用すると、特異性は失われ、両方の対立遺伝子は同様の効率で増幅された。2つのC3スペーサーをリボヌクレオチドの3’側に有する切断性プライマー(配列番号252)では、より高レベルのRNase H2が効率的な切断/プライミングに必要とされ、パーフェクトマッチ「C」対立遺伝子であっても2.6および10mUの酵素の使用でCp値の遅れが示された。RNA切断性部位付近におけるこの種の修飾がより多くの量の酵素を必要とすることは驚くべきことではない。実施例22では、2’OMe修飾をリボヌクレオチドに隣接して位置すると、充分な活性を得るために100mUのRNase H2が必要とされることが示された。より多くの量の酵素を使用すると効率的な切断がもたらされ、50または200mUのRNase H2の使用で陽性シグナルが約27サイクル目に検出された。重要なことに、SNP識別は、このプライマー設計の使用で顕著に改善され、2.6から50mUの濃度範囲のRNase H2の使用で、「T」対立遺伝子でのΔCpはおよそ25サイクルであった。200mUの酵素を使用した場合、ミスマッチ識別は低下した;しかしながら、SNP識別は依然としてほぼ14サイクル目のΔCpであった。最適な酵素濃度は50mUであり、この時点のプライミング効率は未修飾プライマーと同様であり、SNP識別は25.7サイクル目のΔCpで示された。
従って、リボヌクレオチド付近に2つの内部C3スペーサー基とブロックなしの3’−ヒドロキシルを有するこの切断性プライマー設計「RDxxD」では、最初のプライマー設計「RDDDD−x」と比べて有意に改善されたミスマッチ識別が示された(ここで、R=RNA塩基、D=DNA塩基、およびx=C3スペーサー)。関連の設計、例えば「RDDxxD」または「RDxxDD」でも同様に改善された機能が示され得、目的のSNPの厳密な配列状況に応じた設計における少しの最適化は有益であり得る。鋳型機能を破壊するが3’−ヒドロキシルは未修飾のままにするC3スペーサーなどの化学修飾基の使用により、リボヌクレオチドにおけるRNase H2による切断の特異性が向上し得、SNP識別が改善され得る。
[実施例29]DNAシークエンシング法におけるRNase H2切断性ライゲーションプローブの使用
先の実施例では、切断性オリゴヌクレオチドがDNA合成反応をプライミングする場合のプライマーとしての適用のためのRNase H2切断性オリゴヌクレオチド組成物の使用を報告した。上記の実施例に開示した適用は、幾つかの異なる検出形式でのエンドポイントPCRおよびリアルタイムPCRの両方を含む。実施例8では、DNAポリメラーゼとジデオキシヌクレオチドターミネーターを用いるサンガーシークエンシング法を使用するDNAシークエンシング適用における切断性プライマーの使用を示した;この場合、RNase H2切断性オリゴヌクレオチドはプライマーとしても機能した。また、RNase H2切断性オリゴヌクレオチドは、ライゲーション形式アッセイにおいても同様に使用され得る。かかる適用の一例は、切断性ライゲーションプローブを用いたDNAシークエンシングである。この実施例では、DNAシークエンシングにおける使用に適切な形式でのRNase H2切断性ライゲーションプローブの使用を示す。
未知核酸配列内の塩基の実体を連続的にインテロゲーション(即ち、DNAシークエンシング)するためのライゲーションプローブの使用は報告されている(米国特許第5,750,341号明細書および同第6,306,597号明細書ならびに米国特許出願公開第2008/0003571号明細書参照)。5’から3’の方向のライゲーションによるシークエンシングのための基本スキームは、核酸アクセプター分子が未知核酸配列にハイブリダイズすることで始まる。この配列に、5’末端に固定の既知DNA塩基を有し、続いて未知配列の標的核酸に対するプローブの安定な核酸ハイブリダイゼーションを可能にするランダム塩基またはユニバーサル塩基を有する一連の塩基インテロゲーションプローブをハイブリダイズさせる。ハイブリダイゼーションおよび続くライゲーション反応は、ライゲーションプローブと標的間のパーフェクトまたはほぼパーフェクトマッチに依存性である;パーフェクトマッチはライゲーション部位に必要とされる。ライゲーションにより、ライゲーション部位に存在する具体的な塩基の同定を可能にする検出可能な事象がもたらされる。RNase H2切断性部位はライゲーションプローブ内に含める。ライゲーション後、プローブはRNase H2によって切断され、プローブの大部分を放出するが、新たに同定された塩基はアクセプター核酸配列にライゲーションされたままにし、このとき、これは、ライゲーションと切断のサイクルの結果、1残基伸長されている。この一連の酵素的および化学的事象が、ライゲーション、塩基同定および切断の多数回サイクルで反復され、これにより未知核酸配列が決定される。
上記に挙げた特許参考文献には、ライゲーションによるシークエンシングのための方法が教示されているが、切断を行ってライゲーションプローブを放出させ、多数回サイクルのライゲーション/検出を可能にするための該文献に提案されている方法は不充分であり、実施することが困難である。本発明の方法を用いたRNase H2切断性オリゴヌクレオチドでは既存の方法と比べて改善がもたらされ、コストが低く、DNAシークエンシングに切断性ライゲーションプローブを使用することがより容易な構築が可能である。RNase H2切断性ライゲーションプローブを用いたDNAシークエンシングのスキームの一例を図35に示す。
この方法におけるRNase H2切断性ライゲーションプローブは、5’末端に固定の既知DNA塩基(1つまたは複数)を含む。この固定の既知塩基(1つまたは複数)は、単一の最も5’側の塩基であってもよく、5’末端の方に2つまたは3つまたはこれ以上の塩基を含むものであってもよい。この実施例では、プローブの5’末端の単一のDNA塩基のみが固定された系を使用する。合成オリゴヌクレオチドは、DNAリガーゼを用いた酵素的ライゲーションを可能にする5’−リン酸基を有する。また、該プローブの活性型アデニル化形態を使用してもよい。記載のように、5’末端の最初の塩基を固定する(既知)。従って、DNAシークエンシングを行うためには、「A」プローブ、「C」プローブ、「T」プローブおよび「G」プローブの4種類の非依存性プローブが必要とされる。明らかに、固定塩基の数が1つより多い場合は、より多くのプローブが必要とされる(例えば、最初の2つの塩基を、考えられ得る各ジヌクレオチドペアの一方の固定の既知配列として使用する場合、16種類のライゲーションプローブが必要とされる。)。固定の既知DNA残基の後の最初の塩基(この場合、5’末端から2番目の塩基)は、RNase H2による切断性の残基である。この実施例ではRNA塩基を使用しているが、2’−F残基または他の切断性修飾塩基(例えば、先の実施例に記載のもの)も使用され得る。プローブ内の残りの塩基はランダム塩基(該4種類のDNA塩基の不均一系ミックス)および/またはユニバーサル塩基(例えば、イノシン、5−ニトロインドール、もしくは当業者によく知られた他のかかる基)である。プローブの全長は通常、およそ8から9塩基であるが、使用される具体的なリガーゼ酵素に応じて、より長いまたはより短いプローブ長も可能である。T4 DNAリガーゼを使用する場合、効率的なハイブリダイゼーションおよび酵素的ライゲーションを得るには8つの長さで充分である。また、より長鎖のプローブも使用され得る。
プローブ集団の複雑性は4Nに従って増大し、ここで、N=使用されているランダム塩基の数である。例えば、プローブ「pTnNNNNNN」は、5’末端に固定「T」塩基、単一の「n」RNA塩基および6つの「N」DNA塩基の合計7つのランダム残基を有するものである(p=リン酸基、n=RNA、N=DNA)。この場合、該集団において47分子(16,384)の複雑性が提示される。プローブの複雑性は、ランダムN塩基をユニバーサル塩基の基に置き換えることにより低減され得る。これは3’末端の方で特に有効である。例えば、3つのイノシン残基を使用すると、上記のプローブは「pTnNNNIII」に変換され得る(前述のように、I=イノシン)。このプローブの複雑性は44分子(256)である。複雑性256を有するプローブでは複雑性16,384を有するものよりも、100%ライゲーションを得るために必要とされるライゲーションプローブのインプット量が有意に少なくなる。1つ以上のユニバーサル塩基の使用が一般的に好ましい。最後に、ライゲーションプローブは3’末端またはこの付近に検出可能なシグナルをもたらすための色素分子を有し、該シグナルはライゲーション後に解像され得る。また、3’修飾基は、ライゲーションを3’末端においてブロックしてライゲーションプローブ自体がアクセプター核酸としての機能を果たし得ないようにする機能も果たす。
DNAシークエンシングにおけるこの設計のRNase H2切断性ライゲーションプローブの使用を図35に概略的に示す。ユニバーサルプライマーまたはアクセプター核酸が未知核酸にハイブリダイズする。アクセプター分子のハイブリダイゼーションを可能にするにはユニバーサルアダプター配列が未知配列の末端に結合することが必要とされ得、このストラテジーにより全反応で同じアクセプター核酸を使用することが可能になる。アクセプター核酸は、ライゲーションに利用可能な3’−ヒドロキシル基を有するものでなければならない。ライゲーションプローブミックスが反応液にモル過剰(上記の8量体イノシン含有プローブ設計では>256倍過剰)で導入され、酵素的ライゲーションを行うためにT4 DNAリガーゼが使用される。遊離プローブは洗浄によって除去され、保持された蛍光シグナルが測定される。保持された色素の色によって、ライゲーション反応中にどのプローブ(AとGとCとT)が結合したかが同定される。次いでプローブを切断するためにRNase H2が使用され、「N」塩基とユニバーサル塩基は除去されるが既知塩基はアクセプター核酸に結合されたままである。この様式で、鋳型内の対応する塩基の実体が決定され、アクセプター核酸は一塩基伸長されており、アクセス可能な3’−ヒドロキシルはもう一度ライゲーションに利用可能となり、該工程のサイクリングが可能になる。
以下に表65に示す以下のオリゴヌクレオチドを、本発明の方法を用いたRNA含有蛍光ライゲーションプローブのライゲーションおよび続く切断を示すための代表的な合成系として作製した。ここでは、ライゲーションプローブは9つの固定塩基配列(「N」塩基またはユニバーサル塩基修飾は全くなし)を有するものである。表示「CLP」は「切断性ライゲーションプローブ」を示す。表示「ANA」は「アクセプター核酸」を示し、これは、ライゲーション反応のための3’−ヒドロキシルアクセプター部位を提供する。「Targ−A」は、相補的な「T」ライゲーションプローブ(「CLP−T−Cy3」)が関与するライゲーション反応に指向される標的核酸である。「Targ−T」は、相補的な「A」ライゲーションプローブ(「CLP−A−FAM」)が関与するライゲーション反応に指向される標的核酸である。
図36は、上記に示す合成オリゴヌクレオチド配列を用いたライゲーション−切断反応サイクルで予測される結果を示す。「Targ−A」(配列番号258)は「CLP−T−Cy3」(配列番号256)のハイブリダイゼーションおよびライゲーションに指向されるが、「Targ−T」(配列番号259)は「CLP−A−FAM」(配列番号255)のハイブリダイゼーションおよびライゲーションに指向される。反応が高い特異性を有すると仮定すると、残りの2種類のライゲーションプローブはこの実験ではマッチ標的を有しておらず、このためライゲーション反応に関与しないはずである。ライゲーション後、新たに形成された「ANA」+「CLP」の融合産物がRNase H2に対する基質となる。RNase H2による切断によってライゲーションプローブ(RNA塩基および蛍光レポーター色素を含む。)の3’末端の放出がもたらされ、「ANA」分子が一塩基長くなる。
「T」標的核酸(配列番号259)または「A」標的核酸(配列番号258)と「ANA」アクセプター核酸(配列番号257)を1.75μMで混合し、4種類すべてのライゲーションプローブ(配列番号253から256)を、80μLの容量のT4 DNAリガーゼバッファー(50mM Tris−HCl pH7.5,10mM MgCl2,10mMジチオトレイトール,1mM ATP)中3.5μM(各々)の濃度まで添加し、70℃まで3分間加熱し、25℃までゆっくり冷却した。ライゲーション反応液を37℃で5分間、140単位のT4 DNAリガーゼとともに、またはなしでインキュベートした。65℃で10分間加熱することによって反応を停止させた。次いで、反応容量をRNase H2バッファー[Tris−HCl pH8.0(終濃度10mM)、NaCl(終濃度50mM)、MgCl2(終濃度4mM)]の添加によって200μLに調整し、20単位のRNase H2を各チューブに添加した。反応混合物を60℃で30分間インキュベートした後、Sephadex G25カラムで脱塩し、試料を凍結乾燥した。試料を70μLの水中で再水和し、10μLアリコートを、20%アクリルアミド,7M尿素,変性ゲル上で解析した後、GelStar染色(#50535 GelStar Nucleic Acid Gel Stain,Lonza)を用いて可視化した。反応液の残りはさらなる試験、例えば質量分析または必要に応じて他の方法のために−20℃で保存した。
ゲル画像を図37に示す。レーン1および5は、サイズマーカー(レーンM)に相対する移動を可視化するための酵素の非存在下での成分オリゴヌクレオチドを示す。レーン2および3は、Targ−A(配列番号258)を4種類の切断ライゲーションプローブ(配列番号253から256)とともにT4 DNAリガーゼの存在下でインキュベートした二連の反応である。アクセプター核酸(ANA,配列番号257)のサイズの上方シフトが明白に見られ、これはCLP−T−Cy3(配列番号256)とのライゲーションを表し、ライゲーション生成物であることが確認される。この他の3種類のプローブ(ミスマッチ塩基)ではなく正しいCLP−T−Cy3 プローブとの特異的ライゲーションが起こり、これを色素の色の目視検査によって検証し(これは、図37に示す白黒画像では認識することができない。)、質量分析によってさらに検証した。同様に、レーン7および8は、Targ−T(配列番号259)を4種類の切断ライゲーションプローブ(配列番号253から256)とともにT4 DNAリガーゼの存在下でインキュベートした二連の反応である。アクセプター核酸(ANA,配列番号257)のサイズの上方シフトが明白に見られ、これはCLP−A−FAM(配列番号255)とのライゲーションを表し、ライゲーション生成物であることが確認される。その他の3種類のプローブ(ミスマッチ塩基)ではなく正しいCLP−A−FAMプローブとの特異的ライゲーションが起こり、これを、この場合も色素の色の目視検査によって検証し、質量分析解析によって確認した。最後に、レーン4および8は、このようなライゲーション生成物はRNase H2で処理するとサイズが小さくなり、切断が起こったことを示すことを示す。得られたバンドは最初のANAバンドと比べてわずかに低下した移動度を示しており、この新たな種が出発材料よりも長いことを示していることに注意のこと。質量分析により、レーン4および8の反応生成物の実際の質量が出発ANA核酸の予測された1塩基伸長と整合していること、正しい塩基が挿入されていること、ならびに新たな「ANA+1」種が3’−ヒドロキシルを有することが確認された。この新たなANA+1種が次に、ライゲーション/切断の第2サイクルのために調製される。
従って、この実施例では、短鎖RNA含有短鎖プローブは相補的な標的核酸の存在下でアクセプター核酸に特異的にライゲーションされ得ることが示された。ライゲーションは、ライゲーションプローブの5’末端塩基にマッチしている鋳型塩基の同定に対して高感度であり、正しい相補プローブの特異的ライゲーションは、異なるプローブ配列の不均一系ミックス内から検出され得る。最後に、RNase H2はライゲーションプローブをRNA塩基の5’側で切断し、プローブの大部分を放出し、一塩基長伸長されたアクセプター核酸分子をもたらし得る。伸長されたアクセプター核酸は3’−ヒドロキシルを含み、ライゲーション/切断の反復サイクルに使用され得る。
[実施例30]RNase H2切断性ライゲーションプローブにおけるユニバーサル塩基の使用
上記の実施例29では、ユニバーサル塩基、例えば5’−ニトロインドールまたはイノシンが切断性ライゲーションプローブにおいて使用され得ることを提案した。この実施例では、プローブ配列が固定された(ランダムN塩基が含まれていない)モデル系におけるユニバーサル塩基5−ニトロインドールの使用を示す。以下に表66に示すオリゴヌクレオチドを、実施例29の合成プローブ/鋳型系を基にして合成した。切断ライゲーションプローブを、5’−リン酸基、5’末端に「A」塩基(「T」標的に対するライゲーションに指向)、単一のリボヌクレオチド、および2つまたは3つのさらなる固定DNA塩基を有する8量体として設計した。3つまたは4つの5−ニトロインドール塩基を3’末端の方に位置させた。FAM蛍光色素を3’末端に結合した。実施例29の場合と同じアクセプター核酸(ANA)およびT標的核酸を使用した。この実施例のオリゴヌクレオチド成分のアラインメントを示す反応スキームを図38に示す。
「T」標的核酸(配列番号259)と「ANA」アクセプター核酸(配列番号257)を2μMで、3Xまたは4Xの5’−ニトロインドール含有CLP(切断性ライゲーションプローブ,配列番号260から261)とT4 DNAリガーゼバッファー(50mM Tris−HCl pH7.5,10mM MgCl2,10mMジチオトレイトール,1mM ATP)中で混合した。反応液を70℃で5分間加熱し、25℃までゆっくり冷却した。T4 DNAリガーゼ(New England Biolabs)を7.5から120単位の範囲で添加し、ライゲーション反応液を25℃または37℃で5分間インキュベートした。50mMの終濃度までのEDTAの添加によって反応を終了させ、最終反応容量は50μLであった。等容量の90%ホルムアミド、1×TBE負荷バッファーを各試料に添加し、次いで、これを70℃で3分間熱変性させ、氷上で冷却した。試料を変性7M尿素,20%ポリアクリルアミドゲル上で分離した。ゲルを、GelStar(商標)染料を用いて染色し、UV励起によって可視化した。ゲル画像を図39に示す。
3つの5−ニトロインドールユニバーサル塩基を有する8量体切断性ライゲーションプローブ(配列番号260)は、高酵素量(60から120単位のT4 DNAリガーゼ)の使用で良好に奏功し、ほぼ100%のライゲーション効率が示された。対照的に、4つの5−ニトロインドールユニバーサル塩基を有する8量体切断性ライゲーションプローブ(配列番号261)では、いずれの酵素量の使用でもアクセプター核酸とライゲーションしなかった。25℃と37℃で同じ結果が見られ、反応性のこの差が2つのプローブのTmの差と関連するものでないことが示唆された。むしろ、この反応性の差はT4 DNAリガーゼ酵素の基質優先性と関連している可能性が高い。この実施例では、3つの5−ニトロインドール塩基が8量体ライゲーションプローブの3’末端に位置し得、良好な機能が保持される得ることを示す。この同じ実験を9量体ライゲーションプローブを用いて繰り返した。この場合、「6つのDNA+3つの5−ニトロインドール塩基」を有するプローブと「5つのDNA+4つの5−ニトロインドール塩基」を有するプローブはどちらもT4 DNAリガーゼの基質になったが、「4つのDNA塩基+5つの5−ニトロインドール塩基」を有するプローブはならず(データは示さず)、T4 DNAリガーゼは良好に機能するためにライゲーションプローブの5’末端の方に5つの固定DNA塩基を必要とするという見解、および5’−ニトロインドール塩基はこの要件がみたされてから導入され得るという見解と整合した。厳密な最適プローブ設計は種々のリガーゼ酵素により異なり得る。
この所見は、ライゲーションプローブの低複雑性プールの合成を可能にするため重要である。
[実施例31]RNase H2切断性ライゲーションプローブにおけるランダム塩基およびユニバーサル塩基の使用
実施例29および30では、プローブ配列の一部または全部が標的とパーフェクトマッチであるRNase H2切断性ライゲーションプローブの使用を示した。未知配列の核酸のシークエンシングでは、見られる任意の配列に対してプローブハイブリダイゼーションが起こり得るように主にランダム塩基を含むプローブを使用することが必要である。この実施例では、ランダム塩基(N量体)ドメイン、ユニバーサル塩基(5−ニトロインドール)ドメインおよび5’末端に固定DNA塩基を1つだけ有する8量体切断性ライゲーションプローブの使用を示す。表67に示す以下のオリゴヌクレオチドを使用した:
「T」標的核酸(配列番号259)と「ANA」アクセプター核酸(配列番号257)を一緒に各々0.4μMの終濃度で混合し、3種類の切断性ライゲーションプローブ(配列番号262から264)を個々に50μM(標的およびアクセプターに対して125倍過剰)の終濃度で、最終反応容量50μLのT4 DNAリガーゼバッファー中で添加した。反応液を70℃まで5分間加熱し、25℃までゆっくり冷却した。T4 DNAリガーゼを添加し(400U)、ライゲーション反応液を37℃で30分間インキュベートした。65℃で10分間の加熱によって反応を停止させた後、Sephadex G25カラムで脱塩し、その後、試料を凍結乾燥し、10μLの90%ホルムアミド,1×TBE負荷バッファーと混合した10μLの水中で再水和させた。試料を70℃で3分間熱変性させ、氷上で冷却した。反応生成物を20%アクリルアミド7M尿素変性ゲル上で分離した後、UV徹照を伴うGelStar染色(50535 GelStar Nucleic Acid Gel Stain,Lonza)を用いて可視化した。結果を図40に示す。
標的核酸は、ライゲーション点に相補的な部位に「T」塩基を含むものであった。この鋳型は「A−FAM」ライゲーションプローブ(配列番号262)のライゲーションに正しく指向されたが、ミスマッチ「T−Cy3」(配列番号263)または「G−Cy5」(配列番号264)ライゲーションプローブには指向されなかった。ライゲーション特異性は、ライゲーションプローブ(他の場合は、ランダム「N」塩基またはユニバーサル5−ニトロインドール塩基を含む。)の5’末端の単一の固定DNA塩基によって指向された。ライゲーションプローブはライゲーション反応に、標的およびアクセプター核酸に対して125倍モル過剰で添加した。ライゲーションプローブは4塩基「N」ドメインを含むものであり、このため核酸混合物の複雑性は44(256)であった。従って、理論的には反応液中に、インプットアクセプター核酸の約50%だけとライゲーションするのに充分なパーフェクトマッチプローブが含まれていた。図40の相対蛍光画像から、概算で半分のアクセプターは長鎖ライゲーション生成物種内に存在し、半分は未反応であったことが明白であり、反応が予測どおり進行したことを示す。ミスマッチ配列がアクセプターに任意の認識可能な効率でライゲーションした場合、125倍過剰のライゲーションプローブは>50%のアクセプター核酸分子と反応している可能性が高いが、これは観察されなかった。従って、この設計の切断性ライゲーションプローブを用いたライゲーション反応は効率的また特異的であった。
[実施例32]オリゴヌクレオチドライゲーションアッセイ(OLA)におけるRNase H2切断性プローブの使用
DNAシークエンシングにおける切断性ライゲーションプローブの使用は、この一般的な類型のアッセイのための可能な形式/適用の一例を表すにすぎない。シークエンシング適用は、標的核酸が未知配列であるという点で特殊である。より典型的には、オリゴヌクレオチドライゲーションアッセイは、対象の試料核酸中における既知核酸配列の有無を調べるために使用される。例えば、OLAは、ヒトDNAのバックグラウンドにおいて病原性生物体に特異的な核酸配列の存在を検出するために使用され得る。別の例は、特定の標的核酸遺伝子座における既知の規定された多型の有無を調べること(例えば、対立遺伝子識別アッセイまたはSNPアッセイ)であり得る。このようなすべての適用において、1つのライゲーションプローブは、最も3’側または最も5’側の塩基がSNP部位とアラインメントされ、第2のパーフェクトマッチ核酸が隣接して位置するるように配置され、この結果、プローブ配列がSNP塩基に対してマッチしている場合、ライゲーション事象が起こり得るようにする。プローブ配列がSNP塩基に対してミスマッチである場合、ライゲーションは阻害される。ライゲーション事象により、検出可能な種の形成がもたらされる。
対立遺伝子識別(SNP)アッセイをこの実施例において、本発明の新規なRNase H2切断性ライゲーションオリゴヌクレオチドプローブの有用性を示すためにに示す。ここに示す配列設計では、SNP部位がアクセプターライゲーションプローブの3’末端の方に位置している。
従来のOLAでは、3種類の合成オリゴヌクレオチドを用いて2つの対立遺伝子が識別される(図41A)。SNP部位に「C」対立遺伝子と「A」対立遺伝子が含まれている場合、「G」塩基(「C」対立遺伝子に対してマッチ)を有するものと「T」塩基(「A」対立遺伝子に対してマッチ)を有するものの2種類のアクセプターオリゴヌクレオチドが必要とされる。アクセプターオリゴヌクレオチドは遊離3’−ヒドロキシル基を有する。標的に対してこの5’末端がライゲーションプローブの3’末端に隣接して位置するようにハイブリダイズする第3のオリゴヌクレオチド(ドナー核酸)が使用される。アクセプター核酸は5’−リン酸基を有する;一般的に、ドナーオリゴヌクレオチドの3’末端は、ライゲーション反応に関与できないようにブロックされている。このように、標的上におけるアクセプタープローブとドナープローブの両方のパーフェクトマッチハイブリダイゼーションにより、この2種類のオリゴヌクレオチドが頭−尾様式で位置し、これによって、アクセプターの3’−ヒドロキシルとドナーの5’−リン酸基間のライゲーションが可能になる(図41B)。対照的に、SNP部位におけるミスマッチはこの構造を破壊し、ライゲーションを阻害する。従来のOLAでは、SNP塩基の実体はハイブリダイゼーション/ライゲーション時に1回インテロゲーションされ、特異性は、DNAリガーゼがミスマッチ種でなくパーフェクトマッチ種に対してライゲーションを行う能力に完全に依存性である。典型的には、3種類のオリゴヌクレオチド(2種類のライゲーションプローブとアクセプター)は同様のTmを有し、このため、これらは、同一の条件下で標的核酸と一緒に機能し得る。
本発明の新しいRNase H2 OLAでは、4種類の合成核酸を用いて2つの対立遺伝子を識別する(図42A)。SNP部位に「C」対立遺伝子と「A」対立遺伝子が含まれている場合、この実施形態には、「G」塩基(「C」対立遺伝子に対してマッチ)を有するものと「T」塩基(「A」対立遺伝子に対してマッチ)を有するものの2種類の切断性アクセプターライゲーションプローブが必要とされる。切断性アクセプターライゲーションプローブは、分子の3’末端の方に位置した単一のRNA塩基を有し、この塩基が、標的SNP部位の塩基と相補的である、またはそうでない(マッチとミスマッチ(対比))ようにアラインメントされる。さらなるDNA塩基がRNA塩基の3’側に位置し(好ましくは、すべて標的に相補的である4つのDNA塩基)、ライゲーションを抑制するためのブロッキング基が3’末端に位置する。切断性ライゲーションプローブの一般的な設計および機能は、qPCR形式のSNP識別アッセイにおける実施例13で示した切断性プライマーと同様である。また、切断性ライゲーションプローブは、上記の実施例に概要を示したRNase H2切断部位におけるSNP識別を改善するための種々の化学修飾塩基および無塩基残基を用いて設計され得る(実施例22、23、25および28参照)。好ましくは、切断性ライゲーションプローブは、切断性プローブと標的とのハイブリダイゼーションが酵素に最適な温度範囲で可能であるように60から70℃の範囲のTmを有する(RNase H2切断バッファー中で)ように設計される。
従来のOLA形式とは異なり、RNase H2 OLA形式のドナーオリゴヌクレオチドはSNPインテロゲーションプローブでもある。従って、「G」塩基(「C」対立遺伝子に対してマッチ)を有するものと「T」塩基(「A」対立遺伝子に対してマッチ)を有するものの2種類のドナープローブが必要とされる。どちらのドナープローブも、5’末端にライゲーションを可能にするリン酸基を有し、場合により3’末端はブロックされている(図42A)。この2種類のドナーライゲーションプローブは、RNase H2切断性ライゲーションプローブよりも低いTmを有するものであり得、このため、切断性ライゲーションプローブおよびドナーライゲーションプローブの標的核酸とのハイブリダイゼーションは、反応温度の制御によって示差的に調節され得る。このアッセイ形式でのこれらのドナープローブはRNase H2と相互作用しない。
RNase H2 OLAを行うためには、4種類すめてのOLAプローブを、標的核酸の存在下、RNase H2活性と適合性のバッファー中で混合する(上記の実施例参照)。好ましくは、これはおよそ60から70℃で行われる。RNase H2切断性アクセプターオリゴヌクレオチド(nulceotide)は標的核酸に相補的であり、この条件下でハイブリダイズする。アクセプタープローブのRNA塩基と標的SNP部位の塩基がマッチしている場合、RNase H2切断が起こり得る(図42B)。ドナーライゲーションプローブ(非切断性プローブ)は切断性プローブよりも低いTmを有することが好ましい。次いで、第1段階の反応(アクセプターオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションおよびRNase H2による切断)が、非切断性ドナープローブのTmよりも充分に上であり、標的にハイブリダイズしない温度で行われ得る。RNase H2によるアクセプタープローブの切断によってRNA塩基が除去されてSNP部位が現れ、非切断性ライゲーションプローブ(ドナーオリゴヌクレオチド)とのハイブリダイズに利用可能になる。
OLAのRNase H2切断相が終了したら、非切断性ライゲーションプローブと標的とのハイブリダイゼーションを可能にするために反応温度を下げる。DNAリガーゼの存在下では、ドナープローブの5’末端の塩基がSNP部位の塩基と対合した場合、非切断性プローブの5’末端が隣接している切断されたプローブの3’末端とライゲーションする(図42B)。従って、RNase H2 OLAアッセイでは、SNP部位の塩基の実体が、アクセプターオリゴヌクレオチドプローブのRNase H2媒介性切断中に1回、ライゲーション反応時に再度の2回インテロゲーションされる(図42C)。2つの異なる酵素的事象によるSNP塩基の実体の二重のインテロゲーションにより、従来のOLAを用いて得られ得るものよりも大きな特異性がもたらされる。
[実施例33]OLAにおけるRNase H2切断性プローブを用いたSNP識別
OLA生成物の検出を可能にするさまざまな方法が存在している。この実施例では、蛍光検出をビーズ捕捉アッセイ形式で行い、実施例32に概要を示したRNase H2 OLA対立遺伝子識別アッセイを行う。Luminex L100検出システムでの検出を伴うLuminex xMAP蛍光マイクロビーズシステム(Luminex,Austin,TX)での使用に適合性である配列を設計した。
「OLA−C−アンチタグ」および「OLA−T−アンチタグ」配列(配列番号265から266)を、カルボジイミドカップリング化学反応を用いたカルボキシレートxMAP蛍光ビーズとのコンジュゲーションを可能にするための5’−アミノモディファイアを用いて作製した。「OLA−T−Tag」および「OLA−C−Tag」配列(配列番号269から270)は、ライゲーション反応においてドナーオリゴヌクレオチドとしての機能を果たし、5’末端の方に、標的配列に相補的でありSNP部位(C/T塩基)が5’末端に位置する12塩基配列を有する。これらの12塩基ドメインのTmは50から53℃であると推定される(10mM Mg++含有バッファー中)。どちらの配列も、ライゲーションを可能にする5’−リン酸基を有する。これらの配列の3’末端は「タグ」配列であり、これは、「アンチタグ」配列に相補的であり、アンチタグを有するビーズにハイブリダイゼーションによって捕捉されることが可能である。「OLA−C」および「OLA−T」プローブ(配列番号267から268)は、アクセプター断片としての機能を果たし、標的に相補的であり、単一のリボヌクレオチド塩基(rCまたはrU)がSNP部位に位置している。切断性ライゲーションプローブのTmは約75℃であると推定される(10mM Mg++含有バッファー中)。どちらのオリゴヌクレオチドプローブも5’末端にビオチンを有し、これは、Luminex L100システムでの検出のためのレポーター色素ストレプトアビジン−フィコエリトリンの結合を可能にする。「C」対立遺伝子(標的内のG塩基,配列番号271)および「T」対立遺伝子(標的内のA塩基,配列番号272)に対応する合成の98量体オリゴヌクレオチド標的をこの実施例で使用した。配列番号265から272に対応する配列を以下に表68に示す。このアッセイの種々の工程における種々のプローブ、標的、タグおよびアンチタグの配列のアラインメントおよび相互作用を図43に示す。
アンチタグオリゴとxMAPミクロスフェアとのカップリング。5’アミノ基を含むアンチタグオリゴヌクレオチドを1.25×107個のxMAP Multi−Analyte COOH Microspheres(L100−C127−01およびL100−C138−01,Luminex,Austin,TX)と、3mg/mLのN−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミド塩酸塩(03449−1G,Sigma Aldritch)を用いて、0.1M MES,pH4.5バッファー(M−8250 Sigma−Aldritch)中で室温にて90分間、暗所で(製造業者のプロトコルを修正)カップリングさせた。カップリング後、ミクロスフェアを0.02%Tween20で1回、次いで0.1%SDSで1回洗浄した。ミクロスフェアを200μLのTE pH7.5中に再縣濁させた。ミクロスフェアの濃度を、光学顕微鏡(Nikon TMS,Freyer Company,Carpentersville,IL)下にて血球計算盤で計測することにより測定した。5’ビオチン修飾を含む25から250fmolの相補オリゴヌクレオチドをハイブリダイズさせ、ハイブリッドを2μg/mLのストレプトアビジンR−フィコエリトリンコンジュゲート(S866 1mg/mL,Invitrogen,Carlsbad,CA)を用いて検出することにより、成功裡のカップリングが測定された。平均蛍光強度は濃度依存性様式で増大しなければならなかった。2種類のアンチタグ配列間で交差ハイブリダイゼーションは観察されなかった。
OLAアッセイ。250nMの終濃度のrs4939827 OLA Cおよびrs4939827 OLA Tオリゴ(配列番号267から268)と、125nMのC、TまたはC/Tミックスいずれかの鋳型オリゴヌクレオチド(配列番号271から272)を20mM Tris−HCl(25℃でpH7.6)、25mM KAc、10mM MgAc、10mM DTT、1mM NADおよび0.1%Triton X−100バッファー(Taq DNAリガーゼバッファー,New England Biolabs,Ipswitch,MA)中に含むRNase H2消化混合物(10μL)を調製した。試料を、65℃で30分間、5mUのピロコッカス・アビシ(Pyrococcus abyssi)RNase H2とともに、またはなしでインキュベートした。各RNase H2消化反応では、容量を、2.5ピコモルのrs4939827 OLA 12Cタグおよび2.5ピコモルのrs4939827 OLA 12Tタグオリゴヌクレオチド(配列番号269から270)(各オリゴについて100nM終濃度)を、40UのTaq DNAリガーゼ(New England Biolabs,Ipswitch,MA)とともに、またはなしで添加することによって25μLに増大させ、20mM Tris−HCl(25℃でpH7.6)、25mM KAc、10mM MgAc、10mM DTT、1mM NADおよび0.1%Triton X−100の最終バッファー組成を維持した。ライゲーション反応液を45℃で30分間インキュベートした。
蛍光ビーズ上でのライゲーション生成物の捕捉およびシグナルの検出。10μLの各ライゲーション混合物を15μLのH2Oならびに各型で100ビーズ/μLの密度の25μLのxMAPビーズ混合物(Beadセット127および138)と合わせた。試料を70℃まで90秒間加熱した後、50℃で30分間加熱した。試料をMillipore Multiscreen濾過プレート(MABVN1250,Millipore,Bedford,MA)に移し、100μLの50℃の0.2 M NaCl,0.1 M Tris pH8.0,0.08%Triton X−100バッファーで2回洗浄した。ミクロスフェアを50℃で15分間、ストレプトアビジン−Rフィコエリトリン(S866 1mg/mL,Invitrogen,Carlsbad,CA)の75μLの2μg/mL溶液とともにインキュベートした。平均蛍光をLuminex L100検出システム(Luminex,Austin,TX)で測定した。
結果を図44に示す。「C」対立遺伝子アンチタグ配列を有する蛍光ビーズでは、「C」対立遺伝子標的または「C/T」ミックスの存在下で反応を行った場合のみ、陽性蛍光シグナルが示された。「T」対立遺伝子アンチタグ配列を有する蛍光ビーズでは、「T」対立遺伝子標的または「C/T」ミックスの存在下で反応を行った陽性蛍光シグナルが示された。シグナルはRNase H2の使用に依存性であり、標的DNAの非存在下では観察されなかった。従って、本発明のRNase H2切断性オリゴヌクレオチドライゲーションアッセイは、標的DNA内に存在するC/T SNPの存在の高度に特異的な様式での識別において有効であることが示された。
[実施例34]内部鋳型ブロッキング基を有するフォワードおよびリバースオーバーラップ切断性プライマーの使用によるミスマッチのデュアルインテロゲーション
実施例28では、内部鋳型ブロッキング基の有用性を示した。この実施例では、ミスマッチ識別を改善するために、内部鋳型ブロッキング基を有するオーバーラップしているフォワードおよびリバース切断性プライマーを併用することの有用性を示す。
先の実施例では、単一のブロック型切断性プライマーを使用し、PCRを用いてSNPインテロゲーションを行い、一方のブロック型切断性プライマーに、未修飾プライマーと対合するSNP部位に切断性RNA残基が位置する。ブロック型切断性プライマーは、二本鎖DNA標的の上または下の(センスまたはアンチセンス)鎖のいずれかに相補的に設計され得る。従って、この型の2つの異なるSNP識別アッセイがSNPごとに行われ得る。「For」方向の単一のブロック型切断性プライマーアプローチの概略を示す模式図を図45aに示し、「Rev」方向の場合を図45bに示す。代替的ななアプローチは2種類のブロック型切断性プライマーを使用することであり、これらはどちらもインテロゲーション下のSNPに特異的であり、一方は「フォワード」プライマーとしての機能を果たし、「リバース」プライマーとしての機能を果たす。この場合、2種類のプライマーの3’末端は、不活性なブロック状態のときは互いにオーバーラップしているが、RNase H2による切断後に活性化されると互いにオーバーラップしなくなる。二重ブロック型切断性プライマーアプローチの概略を示す模式図を図45cに示す。二重対立遺伝子特異的ブロック型切断性プライマーの使用により、SNP部位の塩基の実体に対するインテロゲーションが各PCRサイクルで2回もたらされることによって反応の特異性が増大する。
ヒトSMAD7遺伝子のための以下に表69に示す以下のプライマーを先の実施例と同様に合成した。プライマーは、非特異的であり、いずれの対立遺伝子も同様の効率で増幅し得るか、または「C」対立遺伝子もしくは「T」対立遺伝子のいずれかに特異的であるかのいずれかであった。プライマーセットを、「C−対立遺伝子」ゲノムDNA標的および「T−対立遺伝子」ゲノムDNA標的の両方で試験した。
85塩基対のSMAD7アンプリコン配列(配列番号280)を以下に示す。rs4939827 C/T SNP部位を括弧で示す。
ブロック型切断性プライマーを用いたPCRを使用する対立遺伝子識別アッセイの相対特異性を、上記に示したSMAD7アンプリコンの状況において試験した。アッセイは、「For」方向の単一のブロック型切断性プライマー、「Rev」方向の単一のブロック型切断性プライマー、または両方向の二重ブロック型切断性プライマーを用いて試験した。プライマー設計には、上記の実施例28において定義した「RDDDD−x」および「RDxxD」バリアントを含めた。また、対照として、対立遺伝子特異的でない未修飾プライマーも使用した。
使用した「For」方向プライマーを、以下にSMAD7標的とアラインメントする。
PCR反応をRoche Lightcycler(R)480プラットフォームで、10μl容量で、200nMの修飾または未修飾のForプライマー(配列番号230、231、235、252および273)を未修飾Revプライマー(配列番号217)とのペアで使用し、20ngのゲノムDNA(Coriell GM07048ホモ接合型C/C対立遺伝子またはGM18976ホモ接合型T/T対立遺伝子)を用いて行った。反応をBio−Rad SYBR Greenマスターミックス中で、「RDDDD−x」プライマー(配列番号231および235)では2.6mUのピロコッカス・アビシ(Pyrococcus abyssi)RNase H2、または「RDxxD」プライマー(配列番号252および273)では200mUのピロコッカス・アビシ(Pyrococcus abyssi)RNase H2を用いて実施した。反応を95℃で5分間の浸漬から開始し、続いて、45サイクルの[95℃で10秒間および60℃で30秒間]を行った。このSNP部位において行ったqPCR増幅の結果を以下の表70に示す。
DNA試料ホモ接合型C/CまたはT/Tは、「RDDDD−x」または「RDxxD」いずれかの設計のプライマーを用いて容易に識別され、「RDxxD」型の方がマッチとミスマッチ間の良好なシグナル分離を示した(ΔCp値がより大きい。)。
次に、対立遺伝子識別実験を「Rev」向きの反応を用いて行った。使用した「Rev」方向プライマーを以下にSMAD7標的とアラインメントする。
PCR反応をRoche Lightcycler(R)480プラットフォームで、10μl容量で、200nMの修飾または未修飾のRevプライマー(配列番号275、276、277、278および279)を未修飾Revプライマー(配列番号274)とのペアで使用し、20ngのゲノムDNA(Coriell GM07048ホモ接合型C/C対立遺伝子またはGM18976ホモ接合型T/T対立遺伝子)を用いて行った。反応をBio−Rad SYBR Greenマスターミックス中で、「RDDDD−x」プライマー(配列番号276および277)では2.6mUのピロコッカス・アビシ(Pyrococcus abyssi)RNase H2、または「RDxxD」プライマー(配列番号278および279)では50mUのピロコッカス・アビシ(Pyrococcus abyssi)RNase H2を用いて実施した。反応を95℃で5分間の浸漬から開始し、続いて、45サイクルの[95℃で10秒間および60℃で30秒間]を行った。このSNP部位において行ったqPCR増幅の結果を以下の表71に示す。
DNA試料ホモ接合型C/CまたはT/Tは、「RDDDD−x」または「RDxxD」いずれかのの設計のプライマーを用いて容易に識別され、「RDxxD」型の方がマッチとミスマッチ間の良好なシグナル分離を示した(ΔCp値がより大きい。)。
次に、実験を、新しいデュアルインテロゲーション「For+Rev」向きの反応法を用いて行った。使用したプライマーを以下にSMAD7標的とアラインメントする。
PCR反応をRoche Lightcycler(R)480プラットフォームで、10μl容量で、200nMの修飾または未修飾Forプライマー(配列番号230、231、235、252および273)を修飾または未修飾のRevプライマー(配列番号294、295、296、297および298)とのペアで使用し、20ngのゲノムDNA(Coriell GM07048ホモ接合型C/C対立遺伝子またはGM18976ホモ接合型T/T対立遺伝子)を用いて行った。反応をBio−Rad SYBR Greenマスターミックス中で、「RDDDD−x」プライマー(配列番号231、235、276および277)では2.6mUのピロコッカス・アビシ(Pyrococcus abyssi)RNase H2、「RDxxD」「C−対立遺伝子」プライマー(配列番号252および276)では50mUのピロコッカス・アビシ(Pyrococcus abyssi)RNase H2、または「RDxxD」「T−対立遺伝子」プライマー(配列番号273および279)では200mUのピロコッカス・アビシ(Pyrococcus abyssi)RNase H2を用いて実施した。反応を95℃で5分間の浸漬から開始し、続いて、45サイクル以上の[95℃で10秒間および60℃で30秒間]を行った。「RDDDD−x」プライマーを使用した反応は45サイクル実施した。「RDxxD」プライマーを使用した反応は75サイクル実施した。このSNP部位において行ったqPCR増幅の結果を以下の表72に示す。
「RDDDD−x」設計のブロック型切断性プライマーを使用した「デュアルインテロゲーション」アッセイ(表72)では、シングルインテロゲーションアッセイ形式(表70および71)と比べてミスマッチ識別の低下が示された。特異性がバックグラウンドによって制限され、これらのプライマーペアでは鋳型の非存在下で増幅が示された。「デュアルインテロゲーション」形式は、これまで、「加ピロリン酸分解活性化重合」(PAP)法を使用するPCR形式でのSNPインテロゲーションの特異性を増大させるために使用されており(Liu and Sommer,BioTechniques 36:156−166,2004参照)、これはバックグラウンドの問題を有しなかった。PAP形式では、ブロック型ForおよびRevプライマーは3’末端の単一の塩基のみがオーバーラップした。「RDDDD−x」プライマーは、以下のアラインメントに示すように9塩基がオーバーラップしている。
このオーバーラップの量は、明らかに、ブロック型切断性プライマーの一方または両方のRNase H2による切断が「プライマーダイマー事象」となることが可能であるのに充分である。ブロック型プライマーの1つの切断および活性化後、機能性のプライマーダイマー鋳型が形成され、これが、以下に示すようにPCRを補助し得る。
対照的に、「RDxxD」設計のブロック型切断性プライマーを使用した「デュアルインテロゲーション」アッセイ(表72)では、シングルインテロゲーションアッセイ形式(表70および71)と比べて有意に改善されたミスマッチ識別が示された。この形式では、「For」および「Rev」の両プライマーによるSNP識別による相加的効果が可能になる。このブロック型切断性プライマー設計形式を使用すると、「For」プライマーと「Rev」プライマー間に5つの不連続な塩基のオーバーラップしか存在せず、これは「プライマーダイマー事象」が起こることを可能にするには不充分である。
従って、リボヌクレオチド付近に2つの内部C3スペーサー基とブロックなしの3’−ヒドロキシルを有するこの二重切断性プライマー設計「RDxxD」では、単一フォワードブロック型プライマー設計と比べてなお一層さらなる改善が示された。この新しい形式は、要求の多い適用、例えばレアアレル検出アッセイにおいて特に有用性を有するはずである。
[実施例35]ブロック型切断性プライマーを用いた莫大に過剰な野生型DNAにおける変異型対立遺伝子の検出の改善
先の実施例では、切断性RNA残基におけるマッチ塩基対合とミスマッチ塩基対合を識別するためのブロック型切断性プライマーの有用性を示した。この実施例では、この方法を、莫大に過剰な野生型DNAの存在下でレア変異型対立遺伝子の存在を検出するため(レアアレル検出)に使用することの有用性を示す。
高バックグラウンドの野生型配列の存在下でのレアアレル(1つまたは複数)の検出能は、医学的診断および基礎研究の両方において重要性が高まっている。このような種は10−2から10−5またはこれより低いレベルで存在し得る。この型の標的核酸を使用すると、バイアス検出プローブ系と関連して存在するすべての対立遺伝子の無バイアス増幅により充分な感度がもたらされず、かかる方法では、典型的には、変異型対立遺伝子を野生型対立遺伝子と比べて10−1から10−2のレベルでしか検出することができない。目的の配列がわずか一塩基の違いであり得る関連配列と比べて選択的に増幅されるバイアス増幅方法では、このような結果が大きく改善され得る。本明細書に記載のようなRNase H2切断を伴うブロック型切断性プライマーではバイアス型の増幅がもたらされ、これは、この適用において有用であり、医学的診断適用における有用性に必要とされる充分な範囲内である10−4以下のレベルのレアアレル検出を可能にする。
反応をLightcycler(R)480を用いて、10μLで、0.4UのiTaq DNAポリメラーゼ、1×iTaq反応バッファー、0.01%Triton X−100、3mMのMgCl2、800μMのdNTPならびに200nMのフォワードおよびリバースプライマーを含めた384ウェル形式で行った。P.a.RNase H2を表示の通りに、プライマーの設計に応じて種々の濃度で添加した。検出は、5’−ヌクレアーゼアッセイを使用し、二重標識プローブ(配列番号283)を200nMの濃度で用いて行った。使用した種々のプライマーおよびプローブの配列を以下の表73に示す。デュアルインテロゲーション反応は、BIO−RAD iQ SYBR(商標)Green Master Mixを使用し、5’−ヌクレアーゼプローブオリゴヌクレオチドを使用しなかったこと以外は同一の条件下で実施した。標的核酸は、Coriell Institute for Medical Research Cell Repositoryから取得したヒトゲノムDNA(GM18562またはGM18537)であった。1つの遺伝子型のゲノムDNAをバックグラウンドとして0または200ng(約66,000コピー)のいずれかで使用し、これを、反応液あたり2ng(約600コピー)、0.2ng(約60コピー)、0.02ng(約6コピー)または0ngの第2の遺伝子型のゲノムDNAと混合した。熱サイクリングは、95℃での最初の5分間の浸漬、続いて95℃で10秒間および60℃で30秒間を50サイクル用いて行った。CpおよびΔCp値を先の実施例に記載のようにして計算した。
結果を表74に示す。標準的な未修飾対立遺伝子特異的プライマー(For配列番号281または282とRev配列番号217とのペア)の使用では、非特異的対照プライマー(For配列番号230とRev配列番号217)と本質的に同一のCp検出値が得られた。「RDDDDx」設計プライマー(For配列番号231または235とRev配列番号217とのペア)では、「T」対立遺伝子バックグラウンドにおける「C」対立遺伝子および「C」対立遺伝子バックグラウンドにおける「T」対立遺伝子の両方を1%レベルで、バックグラウンドより3サイクル上の検出閾値で検出することができた。「RDxxD」設計プライマー(For配列番号252または273とRev配列番号217とのペア)ではより優れた結果が得られ、「T」対立遺伝子バックグラウンドにおける「C」対立遺伝子および「C」対立遺伝子バックグラウンドにおける「T」対立遺伝子の両方の存在が0.1%レベルで、バックグラウンドより6サイクル上の検出閾値で検出された;レアアレルの0.01%レベルでの検出はバックグラウンドより3サイクル上の検出閾値で達成された。「RDxxD」設計プライマー(For配列番号252とRev配列番号278とのペアおよびFor配列番号273とRev配列番号279とのペア)を用いた両方向アッセイは、「T」対立遺伝子では同様のストリンジェンシーの性能であり、「C」対立遺伝子では有意に良好であった。特に、「C」対立遺伝子両方向アッセイ(For配列番号252とRev配列番号278とのペア)では、バックグラウンドより14サイクルより大きく上の検出閾値が示され、このため、おそらく、このアッセイは、さらに低いレアアレルレベル(0.001%以下)でも有効であり得る。
表74.レアアレル検出のためのブロック型切断性プライマーの使用。
SMAD7 rs4939827遺伝子座の増幅反応を、表示した(3’末端配列を示す。)種々のプライマーでの検出のための内部非識別的二重標識加水分解プローブを用いて50サイクル実施した。P.a.RNase H2は、10μLあたりの表示量で添加した。プライマーと比べてSNP部位がミスマッチであるヒトDNAは、反応液あたり0または200ng(66,000コピー)のいずれかで存在させた;プライマーと比べてSNP部位がマッチしているDNAは、反応液あたり2ng(666コピー)、0.2ng(66コピー)、0.02ng(6コピー)または0.0ngで存在させた。反応は三連で実施し、平均Cp値を示す。標的核酸と比較したプライマー内のミスマッチの位置に下線を付している。
当業者には、3’末端プライマー構築物の二重のインテロゲーションがさまざまであり得るが、依然としてフォワードおよびリバースプライマーの自己プライミングは抑制されるがなお充分なRNase H2切断部位が提供されるという重要な機能要件は維持されていることが認識され得よう。例えば、代替的なな構築物の一例は「RxDDDD」であり得、この場合、スペーサーはリボヌクレオチドの隣に位置しており、リボヌクレオチドが直接ミスマッチ部位上に存在する。別の実施形態では、フォワードおよびリバースプライマーが異なる構築物を有するものであり得る。例えば、フォワードプライマーは「RDxxD」構築物であり得るが、リバースプライマーは「RxDDDD」である。別の実施形態では、ミスマッチが、RNA塩基に隣接しているDNA塩基に存在し得る。例えば、プライマーは「RDxxD」構築物を含むものであり得る。この場合、ミスマッチは下線のDNA塩基に存在する。
[実施例36]マグネシウムカチオンレベルの最適化によりミスマッチ識別が改善され得る
この実施例では、RNase H2を伴うブロック型切断性プライマーを使用する対立遺伝子特異的PCRのミスマッチ識別が、バッファー中のMg++イオンの濃度を変えることにより改善され得ることを示す。
PCRバッファー中のマグネシウムレベルの変更は、ポリメラーゼおよびプライマー結合のTmに対する効果によって増幅反応の効率と特異性に影響を及ぼし得ることが認識されていた。しかしながら、rhPCRでは、SNP識別はRNase H2酵素によって媒介され、RNA塩基でのこの酵素によるマッチ切断とミスマッチ切断(対比)の特異性にマグネシウム濃度がどのように影響を及ぼすのかに関する情報は知られていない。ピロコッカス・アビシ(Pyrococcus abyssi)RNase H2は、2から10mMのMg++イオン濃度で酵素活性において広いピークを示し、遊離Mg++濃度が2mM未満に低下すると活性が劇的に低下する;該酵素は1mM Mg++で最大活性の50%である。rhPCRでは、dNTPを典型的には0.8mM濃度で存在させ、各dNTPは1分子のMg++に結合してこれを反応バッファー中での利用可能性から除去する。従って、3mM Mg++を0.8mM dNTPとともに含むバッファーは、実際には2.2mMの遊離Mg++を有する。この実施例では、rhPCRにおける種々のMg++イオン濃度の反応効率およびSNP識別の質に対する効果を調べる。
先の実施例では、ブロック型切断性プライマーを用いたPCR反応を、ロバストな反応を確実にするためにqPCRにおいて一般的に使用されている濃度である3mMのMgCl2を使用して行った。この実施例では、本発明者らは、マグネシウムレベルを下げると、SNPジェノタイピングアッセイにおけるマッチ反応とミスマッチ反応間のΔCpによって測定される増幅反応の特異性が増大し得ることを示す。PCRを行う場合、研究者らは典型的には、自家製バッファー を使用するか、または既製の市販のマスターミックスを購入するかのいずれかである。マグネシウム濃度を自家製バッファー中で高くまたは低くなるように調整するのは簡単である。既製のバッファー中におけるマグネシウム濃度を上げることは簡単であるが、バッファーにマグネシウムが既に混合物中に設定された濃度で添加されて装備されている場合、マグネシウムを下げることは困難であり得る。しかしながら、ヌクレオチド三リン酸(例えば、rNTP)を添加することにより、既製の混合物中のマグネシウムを下げることが可能である。rNTPは、各ヌクレオチド三リン酸に対して単一のマグネシウム分子とキレート形成し、バッファー中の遊離マグネシウムの濃度が有効に低減させる。この実施例では、本発明者らは、バッファーのマグネシウム含有量を直接調整することによる、またはrNTPを反応ミックスに添加することによってバッファーの遊離マグネシウム含有量を間接的に調整することによる、ブロック型切断性プライマーおよびRNase H2を用いたPCRの特異性の改善を示す。
方法:遊離マグネシウムとキレート形成するrNTPを用いた固定MgCl2濃度を有する既製のマスターミックス中のマグネシウムの低減。定量的リアルタイムPCR(qPCR)を、20ngのヒトゲノムDNA(GM18562またはGM18537,Coriell Institute for Medical Research,Camden,NJ,USA)を用いて、ヒトSMAD7遺伝子(rs4939827,NM_005904)内のSNP部位に特異的なプライマーを使用して行った。DNA試料GM18562は、この遺伝子座のC対立遺伝子に対してホモ接合型であり、DNA試料GM18537は、T対立遺伝子に対してホモ接合型である。反応には、1×iQ SYBR(商標)Green Supermix(Bio−Rad,Hercules,CA,USA)を使用し、これは、3mMのMgCl2を含む既製の市販のマスターミックスである。0、5、96または384fmolのいずれかのP.a.RNase H2(10μLの反応液中0、0.5、9.6または38.4nMの終濃度、これは、0、2.6、50または200mUの酵素と同等である。)。200nMの各プライマーを使用した。対照反応では、ブロックなしのフォワードおよびリバースプライマー、rs4939827 For(配列番号217)とrs4939827 Rev(配列番号230)を使用した。各対立遺伝子に特異的な2種類の異なる型のブロック型プライマー、RDDDDx設計(実施例13参照)またはRDxxD設計(実施例28参照)のいずれかを使用した。ブロック型切断性フォワードプライマーは、以下の通りの未修飾リバースプライマーとの組合せ:rs4939827 C−For RDDDDx(配列番号231)とrs4939827 Rev(配列番号230)、rs4939827 T−For RDDDDx(配列番号235)とrs4939827 Rev(配列番号230)、rs4939827 C−For RDxxD(配列番号252)とrs4939827 Rev(配列番号230)、rs4939827 T−For RDxxD(配列番号273)とrs4939827 Rev(配列番号230)で使用した。また、0.5mMまたは1mMいずれかのrATP(水で希釈)を一部の反応液に添加した。この実施例で使用したすべてのオリゴヌクレオチドを表75に示す。サイクリングはRoche LightCycler(R)480(Roche Applied Science,Indianapolis,IN,USA)で、以下の通りに行った:95℃で3分間、続いて75サイクルの95℃で10秒間および60℃で30秒間。反応はすべて三連で行った。サーモサイクリングの前に95℃での最初の3分間のインキュベーションから始めることにより、ホットスタートDNAポリメラーゼの再活性化が可能である。
結果を表76に示す。未修飾プライマーの使用では効率的な増幅反応がもたらされ、rATPを含む反応もしくは含まない反応間またはP.a.RNase H2酵素を伴う反応もしくは伴わない反応間に差は見られなかった。増幅をrATPの存在下で行った場合、ミスマッチ識別の増大が観察され(ΔCpの増大)、これは、RDxxD設計のプライマーでは反応液中に存在するrATPの濃度により異なったが、RDDDDx設計のプライマーでは異ならなかった。RNase H2を反応液に添加しなかった場合、ブロック型切断性プライマーの使用時に増幅は起こらなかった(示さず)。
方法:反応ミックス中のマグネシウム濃度を直接変える.定量的リアルタイムPCR(qPCR)を、20ngのヒトゲノムDNA(GM18562またはGM18537,Coriell Institute for Medical Research,Camden,NJ,USA)を用いて、ヒトSMAD7遺伝子(rs4939827,NM_005904)内のSNP部位に特異的なプライマーを使用して行った。DNA試料GM18562は、この遺伝子座のC対立遺伝子に対してホモ接合型であり、DNA試料GM18537は、T対立遺伝子に対してホモ接合型である。反応には、0.4UのホットスタートTaq DNAポリメラーゼ(iTaq(商標),Bio−Rad,Hercules,CA,USA)を使用した。反応液は、iTaq(商標)バッファーを3mM、2.5mM、2mMまたは1.5mMのMgCl2とともに含むものにした。また、3mM MgCl2+1mM rATPを含む反応液も試験した。これは、rNTPなしでの2mMのMgCl2の使用がシミュレーションされるはずである。また、反応には、200nMの各プライマー、200nMの5’−ヌクレアーゼアッセイ検出プローブ(配列番号283)および0または768fmolのP.a.RNase H2(10μL反応液中0もしくは76.8nMの終濃度、または0もしくは400mUの酵素)を含めた。対照反応では、ブロックなしのフォワードおよびリバースプライマー、rs4939827 For(配列番号217)とrs4939827 Rev(配列番号230)を使用した。RDxxD設計のブロック型切断性Forプライマーを未修飾Revプライマーとともに、以下の組合せ:rs4939827 C−For RDxxD(配列番号252)とrs4939827 Rev(配列番号230)、rs4939827 T−For RDxxD(配列番号273)とrs4939827 Rev(配列番号230)で使用した。この実験で使用したすべてのオリゴヌクレオチドを表77に示す。サイクリングはRoche LightCycler(R)480(Roche Applied Science,Indianapolis,IN,USA)で、以下の通りに行った:95℃で3分間、続いて85サイクルの95℃で10秒間および60℃で30秒間。反応はすべて三連で行った。サーモサイクリングの前に95℃での最初の3分間のインキュベーションから始めることにより、ホットスタートDNAポリメラーゼの再活性化が可能である。
結果を表78に示す。マグネシウムレベルを反応バッファーにおいて低下させた場合、ミスマッチ識別の増大が観察された。予測どおり、2mMのMg2+の使用でのミスマッチ識別の増大は、1mMのrATPを3mMのMg2+を含む反応液に添加した場合に観察された増大と同様であった。未修飾プライマーの使用では効率的な増幅反応がもたらされ、種々の量のMg2+またはrATPを含む反応間に差は見られなかった。RNase H2を反応に存在させなかった場合、ブロック型切断性プライマーの使用時に増幅は起こらなかった(示さず)。
従って、マグネシウム濃度は、ブロック型切断性プライマーをPCR系ジェノタイピングにおいて使用した場合、SNP識別に関して得られるΔCp値に実質的に影響を及ぼし得る。試験対象の種々の遺伝子座間で個々のプライマーペアの性能を最適化するためにマグネシウムレベルの滴定が必要とされる場合があり得、かかる実験は当業者によって容易に行われ得る。
[実施例37]マグネシウム最適化によりレアアレル検出が改善され得る.
この実施例では、ブロック型切断性プライマーを用いたPCRでの混合対立遺伝子DNA試料中における「レアアレル」の検出能が、反応バッファー中に存在するマグネシウム濃度を最適化することによって改善され得ることを示す。
実施例36では、対立遺伝子特異的PCRアッセイにおいてマッチブロック型切断性プライマーとミスマッチブロック型切断性プライマーとで得られる識別が、直接、または遊離マグネシウムレベルを低下させるrNTPの添加によって間接的にマグネシウムレベルを直接低下させることによって改善され得ることが示された。この実施例では、この方法を、RDxxD設計のプライマーを用いたレアアレル検出に拡張する(実施例28および35参照)。この場合、市販のSYBR−Greenマスターミックスを使用し、これは、マグネシウム濃度が3mMであった(製造業者によって提供);rNTPを反応ミックスに添加し、遊離マグネシウムレベルを低下させた。
ヒトSMAD7遺伝子(rs4939827,NM_005904)内の一ヌクレオチド多型(SNP)に特異的なブロック型切断性プライマーを各対立遺伝子に対して、RDxxD設計を用いて設計した。対照反応では、ブロックなしのフォワードおよびリバースプライマー、rs4939827 For(配列番号217)とrs4939827 Rev(配列番号230)を使用した。RDxxD設計のブロック型切断性Forプライマーを未修飾Revプライマーとともに、以下の組合せ:rs4939827 C−For RDxxD(配列番号252)とrs4939827 Rev(配列番号230)、rs4939827 T−For RDxxD(配列番号273)とrs4939827 Rev(配列番号230)で使用した。レアアレル検出実験をセットアップするため、第1の対立遺伝子に対するDNAは高量で添加し(野生型DNAをシミュレーションするため)、第2の対立遺伝子は少量で添加する(レア変異型DNAをシミュレーションするため)。このシナリオにおいて、「野生型」DNAはブロック型切断性Forプライマーに対してミスマッチであるが、「変異型」(レアアレル)DNAはブロック型切断性Forプライマーに対してマッチしている。定量的リアルタイムPCR(qPCR)を、反応にバックグラウンドとして含めた200ng(約66,000ゲノム当量コピー)または0ngの「野生型」ヒトゲノムDNA(GM18562またはGM18537のいずれか,Coriell Institute for Medical Research,Camden,NJ,USA)の存在下で行った。GM18562およびGM18537はrs4939827 SNP(CまたはT)の2つの対立遺伝子に対してホモ接合型である。GM18562は、rs4939827遺伝子座のC対立遺伝子に対してホモ接合型であり、GM18537はT対立遺伝子に対してホモ接合型である。バックグラウンドゲノム「野生型」DNAに加えて、バックグラウンドDNAの一方と反対のrs4937827 SNP(CまたはT)の対立遺伝子に由来する2、0.2、0.02または0ng(660、66、6または0ゲノム当量コピー)の「変異型」ヒトゲノムDNAを反応に加えた。また、反応には、1×iQ SYBRTM Green Supermix(Bio−Rad,Hercules,CA,USA)、および192(rC含有プライマーでは)fmolまたは768(rU含有(containg)プライマーでは)fmolいずれかのP.a.RNase H2(10μLの反応液中19.2または76.8nMの終濃度,これは、それぞれ100または400mUのRNase H2酵素に等価である。)も含めた。200nMの各プライマーを各反応に使用した。また、0または1mMいずれかのrATP(水で希釈)を各反応液に添加した。実施例37で使用したすべてのオリゴヌクレオチドを表79に示す。サイクリングはRoche LightCycler(R)480(Roche Applied Science,Indianapolis,IN,USA)で、以下の通りに行った:95℃で3分間、続いて65サイクルの95℃で10秒間および60℃で30秒間。反応はすべて三連で行った。サーモサイクリングの前に95℃での最初の3分間のインキュベーションから始めることにより、ホットスタートDNAポリメラーゼの再活性化が可能である。
DNA塩基は大文字であり、RNA塩基は小文字である;x=C3スペーサー(プロパンジオール)
結果を以下の表80、81、82および83に示す。1:10,000のレアアレル識別レベル(200ngの「野生型またはミスマッチ」鋳型と0.02ngの「変異型またはマッチ」鋳型)では、1mMのrATPの添加により、ΔCp(この場合、「変異型」T−対立遺伝子が存在しない反応バックグラウンドで1:10,000の試料中で測定されたCpと定義する。)は7.0サイクル(39.5−32.5=7.0,表80)から12.6サイクル(46.0−33.4,表81)に増大した。DNAを交換してC対立遺伝子をレア変異型として使用した場合、1mMのrATP添加により、ΔCpは1.8サイクル(36.7−34.9=1.8,表82)から18.4サイクル(53.6−35.2=18.4,表83)に増大した。重要なことに、反応効率は障害されず、陽性蛍光シグナルが最初に見られたときのCpは3mM Mg++の反応と3mM Mg+++1mM rATPの反応間で同様であった。
未修飾プライマーの使用により効率的な増幅反応がもたらされ、rATPを含めた反応間に有意差は見られなかった。RNase H2を反応に加えなかった場合、ブロック型切断性プライマーの使用時に増幅は起こらなかった(示さず)。
この実施例は、バッファー中のマグネシウム濃度を調整することにより、ブロック型切断性プライマーおよびRNase H2を使用するPCRレアアレル検出アッセイにおける識別および検出限界が改善され得ること、ならびに検出限界が信頼性を伴って1:10,000のレベルに達し得ることを示す。
[実施例38]ブロック型切断性プライマーおよびRNase H2を用いたPCRにおける非イオン性界面活性剤Brij(R)−58の使用
実施例18では、ブロック型切断性プライマーおよびピロコッカス・アビシ(Pyrococcus abyssi)(P.a.)RNase H2を使用してPCRを行う場合、反応ミックスに非イオン性界面活性剤を含めることの有益性が示された。この実施例では、界面活性剤Brij(R)−58(ポリエチレングリコールヘキサデシルエーテル、またはポリオキシエチレン(20)セチルエーテルのいずれかとしても知られている。)が他の非イオン性界面活性剤、例えばTriton X−100の代わりに、ブロック型切断性プライマーおよびピロコッカス・アビシ(Pyrococcus abyssi)(P.a.)RNase H2を使用するPCRにおいて代用され得ることを示す。
定量的リアルタイムPCR(qPCR)を10μL反応液中で、20ngのヒトゲノムDNA(GM18562またはGM18537,Coriell Institute for Medical Research,Camden,NJ,USA)を用いて、ヒトSMAD7遺伝子(rs4939827,NM_005904)内の部位に特異的なプライマーを使用して行った。DNA試料GM18562はC対立遺伝子に対してホモ接合型であり、GM18537はT対立遺伝子に対してホモ接合型である。反応には、0.5U(10.8ng/11.1nM/111fmol)いずれかの天然Taq DNAポリメラーゼを使用した。使用した最終反応バッファー条件は10mM Tris−HCL(25℃でpH8.4)、50mM KCLおよび3mM MgCl2であった。また、反応には、界面活性剤なしのRNase H2希釈バッファー(20mM Tris−HCL pH8.4,100mM KCL,0.1mM EDTAおよび10%グリセロール)中で希釈した1μLのP.a.RNase H2(5fmol;10μL反応液中0.5nMの終濃度または2.6mUの酵素)も使用した。1μLの水(界面活性剤なし)または1μLの0.001%、0.01%、0.1%のBrij(R)−58 または0.1%Triton X−100を各10μLの最終反応容量に添加した。また、200nMの各プライマーおよび5’ヌクレアーゼ検出プローブも各反応に使用した。対照反応では、ブロックなしのフォワードおよびリバースプライマー、rs4939827 For(配列番号217)とrs4939827 Rev(配列番号230)を使用した。RDDDDx設計のブロック型切断性フォワードプライマー(実施例13参照)を未修飾リバースプライマーとの以下の通り:rs4939827 C−For RDDDDx(配列番号231)とrs4939827 Rev(配列番号230)の組合せで使用した。SMAD7 5’−ヌクレアーゼ蛍光クエンチプローブを検出のために200nMで含めた(配列番号283)。この実施例で使用したオリゴヌクレオチドを表84に示す。サイクリングはRoche LightCycler(R)480(Roche Applied Science,Indianapolis,IN,USA)で、以下の通りに行った:95℃で3分間、続いて45サイクルの95℃で10秒間および60℃で30秒間。反応はすべて三連で行った。
結果を以下の表85に示す。CpおよびΔCp値は、界面活性剤なし、0.0001%、0.001%、0.01%終濃度のBrij(R)−58、または0.01%Triton X−100界面活性剤のいずれかを用いたPCRで得られたものである。界面活性剤なしまたは0.0001%Brij(R)−58の使用では、未修飾またはブロック型いずれのプライマー設計でも増幅はもたらされなかった。Brij(R)−58の濃度を0.001%以上の終濃度に増大させると、未修飾およびブロック型の両方のプライマー設計で効率的な増幅反応がもたらされた。0.001%より高いBrij(R)−58濃度では、0.01%の非イオン性界面活性剤Triton X−100を用いて行った反応と比べて、種々のBrij(R)−58濃度間で増幅効率に有意差は示されなかった。この結果は、Taq DNAポリメラーゼおよびP.a.RNase H2酵素はどちらもこの条件下で活性であることを示す。RNase H2を反応に加えなかった場合、ブロック型切断性プライマーの使用時に増幅は起こらなかった(示さず)。
このような結果は、Brij(R)−58が、ブロック型切断性プライマーおよびRNase H2を使用するPCRにおいて非イオン性界面活性剤として使用され得ることを示す。
[実施例39]:高忠実度3’−エキソヌクレアーゼDNAポリメラーゼを用いるPCRにおけるRNase H2とのブロック型切断性プライマーの使用
この実施例では、高忠実度プルーフリーディングDNAポリメラーゼとともに良好に機能するブロック型切断性プライマーの組成を示す。
テルムス・アクウァーティクス(Thermus aquaticus)から得られたもの(Taq DNAポリメラーゼ)などの多くのDNAポリメラーゼは5’−エキソヌクレアーゼ活性を有するが、3’−エキソヌクレアーゼ活性がない。このような酵素は多くの場合、ロバストであるが「プルーフリーディング」機能を持たず、一般的に「低忠実度」とみなされている。この類型のポリメラーゼは、常套的なPCR系配列検出アッセイに典型的に使用されており、上記の先のほどんどの実施例で使用した。ピロコッカス・フリオサス(Pyrococcus furiosus)から得られたもの(Pfu DNAポリメラーゼ)、サーモコッカス・コダカラエンシス(Thermococcus kodakarensis)から得られたもの(KOD DNAポリメラーゼ)などの他のポリメラーゼは5’−エキソヌクレアーゼ活性はないが、3’−エキソヌクレアーゼプルーフリーディング活性を有する。これらの酵素は「高忠実度」ポリメラーゼとみなされている。高忠実度ポリメラーゼは、多くの場合、DNAクローニングまたはポリメラーゼによって導入されたレア変異であっても有害となる次世代シークエンシング(NGS)適用において使用される。しかしながら、3’−エキソヌクレアーゼ活性を有するポリメラーゼは、プライマーの3’末端の末端塩基または末端ブロッキング基、例えばRDDDDxプライマー設計において末端ブロック部分として使用されるC3スペーサー基を除去し得る;ブロッキング基が除去されることにより、プライマーがRNase H2の切断の非存在下で機能することが可能になり、これにより、本明細書において教示したようなブロック型切断性プライマーの使用によって得られる多くの有益性が消去される。高忠実度増幅が所望される適用、例えばクローニング、遺伝子合成、NGSなどのためのブロック型切断性プライマーの使用を可能にする方法を有することが望ましい。
方法。定量的リアルタイムPCR(qPCR)を、2e3コピーの合成オリゴヌクレオチドDNA鋳型(配列番号144)を用いて、この鋳型に特異的なプライマーを使用して行った。反応には、1×Phusion(R)−HFバッファー(NEB,Ipswich,MA,USA)、および0、2.5、5、9.6,19.2,192、288、384または768fmolのP.a.RNase H2(それぞれ、10μLの反応液中、0、0.25、0.5、0.96、1.92,19.2、28.8、38.4もしくは76.8nMの終濃度、または0、1.3、2.6、5、10、100、150、200もしくは400mUの酵素)を使用した。800μMのデオキシヌクレオチドおよび200nMの各プライマーを各反応に含め、1.5mMのさらなるMgCl2を各反応液に加え、3mMのMgCl2の終濃度にした。0.2UのPhusion(R)DNAポリメラーゼ(NEB,Ipswich,MA,USA)を各増幅反応に使用した。Phusionは、3’−エキソヌクレアーゼ活性を有する高忠実度DNAポリメラーゼである。検出のため、SYBR(R)Green(Molecular Probes,Eugene,OR,USA)をストック試薬に対して30,000倍に希釈の終濃度まで添加した(希釈物はdH2Oで新鮮に作製した。)。対照反応では、未修飾プライマー(Syn−For,配列番号68およびSyn−Rev,配列番号69)を使用した。2種類の異なる型のブロック型切断性プライマーRDDDDx設計およびRDxxD設計を使用し、どちらも標的合成鋳型に対してパーフェクトマッチであった。この2種類のブロック型切断性リバースプライマーを未修飾フォワードプライマーとの組合せ(Syn Rev rU DDDDx,配列番号116とSyn−For,配列番号68;Syn Rev rU DxxD,配列番号284とSyn−For,配列番号68)で使用した。この実験で使用したオリゴヌクレオチドを表86に示す。PCRは、Bio−Rad(R)CFX384(商標)Real Time System(Bio−Rad,Hercules,CA,USA)で、以下の通りに行った:95℃で3分間、続いて40サイクルの95℃で10秒間および60℃で30秒間。反応はすべて三連で行った。
結果を以下の表87および88に示す。予測どおり、未修飾対照プライマーでは、高忠実度3’−エキソヌクレアーゼPhusion(R)DNAポリメラーゼとともに良好な性能を示し、RNase H2酵素の添加ありまたはなしで一様な増幅効率が示された。RDDDDx設計のブロック型切断性プライマー(配列番号116)では、RNase H2の非存在下で充分な効率の増幅が示され、RNase H2が存在する場合は増幅効率が低下した。Taq DNAポリメラーゼを使用すると、逆が見られる:RNase H2の非存在下では増幅は起こらず、少量のRNase H2の存在であっても効率的な増幅が起こる(通常、2.6mUの酵素で100%効率),実施例13)。この予想外の観察結果は、Phusion DNAポリメラーゼの3’−エキソヌクレアーゼ活性によってこのプライマーのC3末端ブロッキング基が除去され得、このためプライマー伸長およびPCRがRNase H2切断なしで進行することを示唆する。さらに、Phusion DNAポリメラーゼとRNase H2との間に有害な相互作用が存在するようであり、このため、両酵素がRDDDDx類型のブロック型切断性プライマーとともに存在する場合に増幅効率の低下が起こった(注:RNase H2を添加した場合では未修飾プライマーの使用で効率の低下は見られない。)。
このような結果とは対照的に、RDxxDブロック型切断性プライマーは、RNase H2の非存在下でPCRを補助しなかった。従って、この設計のプライマーは、Phusion DNAポリメラーゼの3’−エキソヌクレアーゼ活性によってブロック解除されない。RNase H2の存在下ではプライマー切断およびPCRが起こった。低用量のRNase H2(反応あたり100mU)の使用では低効率PCRが見られ、反応あたり400mUのRNase H2の使用ではブロックなしの対照プライマーとほぼ同等であった。
高忠実度3’−エキソヌクレアーゼDNAポリメラーゼ、例えばPhusionを使用する場合、RDxxD設計のブロック型切断性プライマーはRDDDDx設計よりも好ましいと本発明者らは結論づける。未修飾プライマーを用いて行われる反応と等しい反応効率またはTaq DNAポリメラーゼを用いて典型的に見られる反応効率を得るためには、高濃度のRNase H2が必要であり得る。
[実施例40]:RNase H2とともに高忠実度3’−エキソヌクレアーゼDNAポリメラーゼを使用するPCRにおける使用のためのブロック型切断性プライマーの設計の改善
この実施例では、「RDDDDxxD」と称するブロック型切断性プライマーの新しい設計の、3’エキソヌクレアーゼ活性を有する高忠実度DNAポリメラーゼとの組合せでのRNase H2依存性PCR(rhPCR)における有用性を示す。
先の実施例39では、RDxxD設計のブロック型切断性プライマーは、高忠実度3’−エキソヌクレアーゼDNAポリメラーゼの使用で良好に奏功するが、RDDDDx設計は同様の性能を示さないことが示された。一般に、RDxxDブロック型切断性プライマーは、PCRにおいてピーク増幅効率に達するため(即ち、未修飾プライマーを用いて行われるものと同等の反応を得るため)には高濃度のRNase H2を必要とするが、RDDDDx設計で必要とされるのは低濃度のRNase H2の使用である。場合によっては、RDDDDx型プライマーを低濃度のRNase H2とともに使用することが好都合であり得る。この実施例では、RDDDDxプライマーのバリアントである新しいRDDDDxxDプライマーの性能を示す。この新しいRDDDDxxDプライマーは、比較的低濃度のRNase H2が使用されるPCRにおいて高忠実度3’−エキソヌクレアーゼDNAポリメラーゼとともに良好に機能し得る。この設計のブロック型切断性プライマーの他の特性の説明については実施例26を参照のこと。
定量的リアルタイムPCR(qPCR)を、20ngのヒトゲノムDNA(GM18537,Coriell Institute for Medical Research,Camden,NJ,USA)を用いて、ヒトSMAD7遺伝子(rs4939827,NM_005904)内の部位に特異的なプライマーを使用して行った。GM18537 DNAはこの遺伝子座におけるホモ接合型T/Tである。Phire(R)DNAポリメラーゼ(Thermo Scientific,Pittsburgh,PA,USA)は高忠実度3’−エキソヌクレアーゼDNAポリメラーゼであり、この実施例で行った実験で使用した。反応には、1×Phire(R)バッファー(Thermo Scientific,Pittsburgh,PA,USA)、および0、2.5、9.6,19.2、96,192、384、768または1152fmolのP.a.RNase H2(それぞれ、10μLの反応液中、0、0.25、0.96、1.92、9.6,19.2、38.4 76.8もしくは115.2nMの終濃度または0、1.3、5、10、50、100、200、400もしくは600mUの酵素)を使用した。800μMのデオキシヌクレオチドおよび200nMの各プライマーを各反応に含めた。1.5mMの補給的MgCl2を各反応液に添加し、3mMのMgCl2の終濃度にした。0.1UのPhire(R)DNAポリメラーゼを各増幅反応に使用し、検出を可能にするためにSYBR(R)Green(Molecular Probes,Eugene,OR,USA)を(ストック色素から)30,000倍希釈の終濃度まで添加した。RDDDDx、RDxxDおよび新しいRDDDDxxDの設計を含む3種類の型のブロック型切断性プライマーを試験した。配列を以下の表89に示す。未修飾rs4939827 Forとrs4939827 Revプライマー(配列番号217および230)は対照反応として使用した。3種類の設計のブロック型切断性Forプライマーを個々に未修飾リバースプライマーとの組合せ、例えば、ペア:rs4939827 T−For RDDDDx(配列番号235)とrs4939827 Rev(配列番号217);rs4939827 T−For RDxxD(配列番号273)とrs4939827 Rev(配列番号217);およびrs4939827 T−For RDDDDxxD(配列番号285)とrs4939827 Rev(配列番号217)で試験した。PCRをBio−Rad(R)CFX384(商標)Real Time System(Bio−Rad,Hercules,CA,USA)で以下の通りに行った:98℃で3分間、続いて40サイクルの98℃で10秒間および60℃で30秒間。反応はすべて三連で行った。
結果を表90および91に示す。RDDDDxブロック型切断性プライマーは、RNase H2の非存在下で高忠実度3’−エキソヌクレアーゼPhire(R)DNAポリメラーゼとともにPCRを補助し、これは、3’−ブロックが高忠実度ポリメラーゼの3’−エキソヌクレアーゼプルーフリーディング活性によって除去され、このためPCRがRNase H2切断/活性化の必要性なく進行することを示唆する。同一の結果が、高忠実度DNAポリメラーゼPhusion(R)を用いた実施例39でも報告され、この類型のすべてのDNAポリメラーゼで同様の挙動が期待され得ることが示唆される。また、先の実施例での結果と同様、RNase H2増幅反応に加えた場合に増幅効率の低下が見られ、RDDDDx設計のプライマーでは、高忠実度DNAポリメラーゼとRNase H2酵素との間にいくらかの拮抗作用が生じていることが示唆された。RDxxDブロック型切断性プライマーはRNase H2の非存在下でPCRを補助しなかった。従って、この設計のプライマーは、Phire(R)DNAポリメラーゼの3’−エキソヌクレアーゼ活性によって容易にはブロック解除され得ない。RNase H2の存在下ではプライマー切断およびPCRが起こった。低用量のRNase H2(反応あたり100mU)の使用では低効率PCRが見られ、反応あたり400から600mUのRNase H2の使用で、ブロックなしの対照プライマーとほぼ同等であった。従って、RDDDDxおよびRDxxDのどちらのブロック型切断性プライマーの結果も、2つの異なる高忠実度DNAポリメラーゼ、Phusion(R)およびPhire(R)を使用した場合で同様であった。
新しい設計のRDDDDxxDプライマーではRNase H2の非存在下で増幅は示されず、高忠実度3’−エキソヌクレアーゼDNAポリメラーゼは、このプライマー設計に存在する3’−ブロック効果を除去できないことが示された。さらに、比較的低濃度のRNase H2の使用で良好な増幅効率が得られ、このプライマー設計では、ポリメラーゼとRNase H2酵素間の拮抗作用がないか、または最小限であることが示唆された。
高忠実度3’−エキソヌクレアーゼDNAポリメラーゼ酵素を使用した場合、RDDDDxxDおよびRDxxDのどちらのブロック型切断性プライマー設計もPCRを補助すると本発明者らは結論づける。RDDDDxxD設計では必要とされるインプットRNase H2濃度は低いが、RDxxDでは高いインプットRNase H2濃度が必要とされる。このアプローチにより、高忠実度DNA複製が必要とされる適用、例えばDNAクローニング、遺伝子合成またはNGSにおいてブロック型切断性プライマーストラテジーを使用することが可能である。
追加確認
本明細書において挙げた参考文献、例えば刊行物、特許出願および特許はすべて、参照により、あたかも各参考文献が具体的に個々に示されて参照により組み込まれ、この全体が本明細書に示されているのと同様に本明細書に組み込まれる。
本発明を説明する文脈において(特に、以下の特許請求の範囲の文脈において)、用語「a」および「an」および「the」および同様の指示対象物の使用は、本明細書において特に記載のない限り、または文脈と明らかに矛盾していない限り、単数形と複数形の両方を包含していると解釈されたい。用語「comprising(〜を含む)」、「having(〜を有する)」、「including(〜を含む)」および「containing(〜を含む)」は、特に記載のない限り、非限定の用語(即ち、「including,but not limited to(〜を含むが、限定されない)」を意味する。)と解釈されたい。本明細書における値の範囲の記載は、本明細書において特に記載のない限り、該範囲内に含まれる個別の各値に個々に言及する簡略表記法として供することを意図したものにすぎず、個別の各値は、あたかも本明細書に個々に記載されているかのごとく本明細書に組み込まれている。本明細書に記載の方法はすべて、本明細書において特に記載のない限り、または文脈と明らかに矛盾していない限り、任意の適切な順序で行われ得る。本明細書において示す例または例示の文言(例えば、「such as(例えば/など)」)の使用はいずれもすべて、本発明をよりよく説明することを意図したものにすぎず、特許請求の範囲を除いて本発明の範囲に限定を課すものではない。本明細書における文言は、本発明の実施に不可欠な特許請求の範囲に示されていない要素(あれば)を示していると解釈されるべきでない。
本発明らが認識している本発明を実施するための最良の形態を含む本発明の好ましい実施形態を本明細書において説明している。該好ましい実施形態の変形例は、当業者には前述の説明を読むと自明となり得よう。本発明者らは、当業者が適宜、かかる変形例を使用することを予測しており、本発明者らは、本発明が本明細書に具体的に記載したものと別の様式で実施されること意図している。従って、本発明は、添付の特許請求の範囲に記載の主題の準拠法によって許容されるあらゆる修正および均等物を包含している。さらに、本明細書において特に記載のない限り、または文脈と明らかに矛盾していない限り、考えられ得るすべての変形例における上記の要素の任意の組合せが本発明に包含される。