JP2016508742A - 構成的プロモーター - Google Patents

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Abstract

本発明は、配列番号1のpCS1の核酸配列を含むPichia pastorisの天然配列、あるいは配列番号1のサイズ変異体、突然変異体、もしくはハイブリッド体、またはこれらの組合せであるその機能的に活性な変異体であるプロモーターを含む単離核酸配列、プロモーターを含む発現構築物および組換え宿主細胞、ならびにプロモーターの制御下で対象のタンパク質を作製する方法に関する。本発明は、真核細胞に由来する構成的プロモーターを同定する方法、およびプロモーターを含む単離核酸配列であって、対象のタンパク質をコードするヌクレオチド配列に作動的に連結されると、大小の増殖速度において、天然pGAPプロモーターの制御下より高い発現レベルで、宿主細胞内のその発現を方向付けるプロモーターを含む単離核酸配列にさらに関する。【選択図】 なし

Description

本発明は、強力な構成的プロモーターを含む単離核酸配列、および真核細胞培養物中、このようなプロモーターの制御下で、対象のタンパク質を作製する方法に関する。
背景
組換えタンパク質の作製の成功は、真核生物宿主と共に達成されている。最も顕著な例は、酵母、たとえば、Saccharomyces cerevisiae、Pichia pastorisもしくはHansenula polymorpha、糸状菌、たとえば、Aspergillus awamoriもしくはTrichoderma reesei、または哺乳動物細胞、たとえば、CHO細胞である。いくつかのタンパク質の作製は、高率でたやすく達成されるが、他の多くのタンパク質は、比較的低いレベルで得られるに過ぎない。
宿主生物内の遺伝子の異種発現は通例、宿主生物の安定的形質転換を可能とするベクターを要請する。ベクターによれば、遺伝子に、コード配列の5’端に隣接する機能的プロモーターがもたらされるであろう。こうして、このプロモーター配列により、転写が調節され、開始される。現在使用される大半のプロモーターは、通例細胞内に高濃度で存在するタンパク質をコードする遺伝子から導出されている。
EP0103409A2は、解糖経路内の特異的酵素の発現と関連した酵母プロモーター、すなわち、ピルビン酸キナーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、グルコースリン酸イソメラーゼ、ホスホグリセリン酸ムターゼ、ヘキソキナーゼ1および2、グルコキナーゼ、ホスホフルクトースキナーゼ、アルドラーゼ、ならびに解糖調節遺伝子の発現に関与するプロモーターの使用について開示している。
WO97/44470は、翻訳伸長因子1(TEF1:translation elongation factor 1)タンパク質およびリボソームタンパク質S7のための、Yarrowia lipolyticaに由来する酵母プロモーターであって、酵母内のタンパク質の異種発現に適する酵母プロモーターについて記載しており、EP1951877A1は、異種タンパク質を作製するための、P.pastoris TEF1プロモーターの使用について記載している。
WO2005003310は、油性酵母であるYarrowia lipolyticaに由来する、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼまたはホスホグリセリン酸ムターゼのプロモーターを使用して、酵母内の対象のコード配列を発現させるための方法を提示している。
US4808537およびUS4855231(アルコールオキシダーゼである、AOX1、AOX2)ならびにUS6730499B1(ホルムアルデヒドデヒドロゲナーゼであるFLD1)では、Pichia pastorisのメタノール代謝経路に関与する遺伝子に由来するプロモーター配列が開示されている。US20080153126A1は、AOX1プロモーターに基づく突然変異体のプロモーター配列を含む。
AOX1プロモーターは、メタノールに応答する場合に限り誘導され、他の炭素供給源、たとえば、グルコースまたはエタノールによって抑制される。メタノールは、その毒性および可燃性のために潜在的に危険であるので、それがある種の生成物の作製における使用に適さないという欠点を有する。したがって、AOX1プロモーターの代替物が求められている。
Vassilevaら(J.Biotechnol.(2001)88:21〜35)は、マルチコピー発現カセットを、AOX1プロモーターの代替物として使用して、P.pastoris内でHBsAgを発現させる、GAPプロモーターの使用について記載している。細胞を指数増殖期の中期に維持することを可能とする連続培養のための、構成的系が提起された。
Pichia pastoris内で使用されるプロモーターは、特異的基質、たとえば、メタノールにより活性となるように緊密に調節されて(たとえば、pAOXまたはpFLD)いるか、または多くの異なる条件、培地、および基質において構成的に活性であるかの何れかである。構成的プロモーターの中で、とりわけ、GAPおよびTEFプロモーターは、強力であり、組換えタンパク質を作製するのに有用であることが記載されている。
しかし、何れの構成的プロモーターの活性も、流加作製プロセスにおいて常に強力であるとは限らないことが示された。とりわけ、プロセスの後期において、細胞の増殖速度が緩徐である場合はまた、プロモーターの活性も低下し、このため、対象の遺伝子(GOI:gene of interest)の発現レベルおよび作製収率も制限される(Stadlmayrら、2010、J Biotechnol.、150:519〜529)。
極めて夥多な解糖酵素、たとえば、エノラーゼ(ENO)、トリオースリン酸イソメラーゼ(TPI)またはグルコース−6−リン酸イソメラーゼ(PGI)でもなお、pGAPおよびpTEFと同程度に強力なプロモーターを有さない(Stadlmayrら、2010、J Biotechnol.、150:519〜529;Gasserら、2010、Metabolic Engineering、12:573〜580)ので、適切なプロモーターの選択は、直感的でも合理的でもない。
Qinら(Applied and Environmental Microbiology(2011)3600〜3608)は、GAPプロモーターライブラリーおよび活性を変化させる多様な突然変異体について記載している。
WO2007/015178A2は、組換えタンパク質の分泌による作製を誘導することが可能な翻訳融合パートナー、およびP.pastorisのcDNAライブラリーについて記載している。
CN102180954Aは、P.pastorisの細胞壁タンパク質であるGCW14をアンカータンパク質として使用する、細胞表面提示系について記載している。
高収率で単離されうる発酵産物を産生する、改善された組換え真核細胞系を提供することが所望されている。したがって、簡単で効率的な組換え作製法に適する、代替的な調節エレメントを提供することが本発明の目的である。
発明の概要
この目的は、特許請求される主題により達成される。
本発明によれば、配列番号1のpCS1の核酸配列を含むかまたはこれからなるPichia pastorisの天然配列、あるいは配列番号1のサイズ変異体、突然変異体、もしくはハイブリッド体、またはこれらの組合せである機能的に活性な変異体であるプロモーターを含む単離核酸配列が提供される。
具体的な側面によれば、配列番号1のpCS1の核酸配列を含むかまたはこれからなるPichia pastorisの天然配列、あるいは配列番号1のサイズ変異体、突然変異体、もしくはハイブリッド体、またはこれらの組合せであるその機能的に活性な変異体であって、pCS1、具体的に、配列番号1のpCS1の核酸配列と実質的に同じ活性を呈示する、機能的に活性な変異体であるプロモーターを含む単離核酸配列が提供される。
具体的に、pCS1のヌクレオチド配列は、配列番号1の配列と同一である。
好ましくは、本発明の核酸配列は、WO2007/015178A2において列挙されている配列番号87(すなわち、本出願の配列番号24)の核酸と同一ではない。
具体的に、機能的に活性な変異体は、
a)配列番号1のpCS1のサイズ変異体であって、好ましくは、配列番号2、3、4、5、6、7、および8からなる群から選択される核酸配列からなるかもしくはこれを含む、サイズ変異体、
b)配列番号1のpCS1の突然変異体、もしくはa)のサイズ変異体の突然変異体であって、配列番号1の配列もしくはサイズ変異体と少なくとも60%の相同性を有する突然変異体、
c)ハイブリッド体であって、
・配列番号1のpCS1、a)のサイズ変異体、およびb)の突然変異体からなる群から選択される配列、ならびに
・配列番号1のpCS1、a)のサイズ変異体、b)の突然変異体、および異種配列からなる群から選択される、少なくとも1つのさらなる配列
を含むハイブリッド体、または
d)a)もしくはb)のサイズ変異体もしくは突然変異体の核酸配列のうちの何れかと厳密な条件下でハイブリダイズする配列
である。
好ましくは、配列番号1のpCS1のサイズ変異体は、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、または配列番号6のうちの何れかからなる。
具体的な態様によれば、機能的に活性な変異体は、
i)少なくとも約60%のヌクレオチド配列同一性を有する相同体、
ii)配列内または配列の遠位端の一方もしくは両方における、1つ以上のヌクレオチドの挿入、欠失、または置換を介して、配列番号1のpCS1またはそのサイズ変異体のヌクレオチド配列を改変することにより得られる相同体であって、好ましくは80bp〜1500bp、または200bp〜1500bp、より好ましくは、少なくとも200bpのヌクレオチド配列を有する相同体、および
iii)Pichia pastoris以外の種に由来する類似体
からなる群から選択される。
具体的に、本発明の機能的に活性な変異体は、pCS1と実質的に同じプロモーター活性を有する。
具体的な態様によれば、核酸配列は、対象のタンパク質(POI:protein of interest)をコードするヌクレオチド配列に作動可能に連結されており、この核酸は、POIをコードするヌクレオチド配列と天然では会合しない。
具体的な側面によれば、核酸配列は、POIの分泌を可能とするシグナルペプチド遺伝子であって、好ましくは、POIをコードするヌクレオチド配列の5’端に隣接して配置される、シグナルペプチド遺伝子をさらに含む。
したがって、本発明は、POIの分泌を可能とするシグナルペプチドをコードする核酸配列をさらに含み、好ましくは、シグナルペプチドをコードする核酸配列が、POIをコードするヌクレオチド配列の5’端に隣接して配置される、核酸配列に具体的に関する。
本発明はさらに、本発明の核酸配列を含む発現構築物、好ましくは、自己複製型ベクターもしくはプラスミド、または宿主細胞の染色体DNAに組み込まれるベクターもしくはプラスミドも提供する。
本発明はさらに、本発明の核酸配列または本発明の発現構築物を含む組換え宿主細胞、好ましくは、真核細胞、より好ましくは、酵母または糸状菌細胞、より好ましくは、Saccharomyces属またはPichia属の酵母細胞も提供する。
具体的な側面によれば、組換え宿主細胞は、核酸配列の複数コピー、および/または発現構築物の複数コピーを含む。たとえば、組換え細胞は、2コピー、3コピー、4コピー以上(遺伝子コピー数:GCN(gene copy number))を含む。
具体的に、組換え宿主細胞は、哺乳動物、昆虫、酵母、糸状菌、および植物細胞からなる群から選択され、好ましくは、酵母、好ましくは、P.pastorisのCBS 704、CBS 2612、CBS 7435、CBS 9173〜9189、DSMZ 70877、X−33、GS115、KM71、およびSMD1168株のうちの何れかである。いくつかの態様では、組換え宿主細胞は、X−33以外のP.pastoris株である。
本発明はさらに、複数の、本発明の細胞の、安定的培養物も提供する。
本発明はさらに、本発明の核酸配列もしくはプロモーター、または本発明の発現構築物、および前記プロモーターの転写制御下でPOIをコードする核酸を含む組換え宿主細胞系を培養することにより、POIを作製する方法であって、
a)前記POIを発現させる条件下で、細胞系を培養する工程と、
b)POIを回収する工程と
を含む方法も提供する。
具体的に、たとえば、最大増殖速度未満、典型的に、細胞の最大増殖速度の90%未満、好ましくは80%未満、70%未満、60%未満、50%未満、40%未満、30%未満、20%未満、10%未満、5%未満、3%未満、2%未満、1%未満、0.5%未満、0.4%未満、0.3%未満、または0.2%未満の増殖速度で細胞系を培養することにより、POIを、増殖制限条件下で発現させる。典型的に、最大増殖速度は、具体的な宿主細胞に応じて個別に決定する。
具体的な態様によれば、細胞系を、回分、流加、もしくは連続培養条件下で、かつ/または制限炭素基質を含有する培地中で培養する。
具体的に、培養は、回分期で始め、流加期または連続培養期を後続させて、バイオリアクター内で実施する。
具体的に、宿主細胞は、高増殖速度期(たとえば、少なくとも50%、もしくは少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または最大増殖速度まで)において、炭素供給源に富む培地中で増殖させ、POIは、低増殖速度期(たとえば、最大増殖速度の90%未満、好ましくは80%未満、70%未満、60%未満、50%未満、または40%未満、30%未満、20%未満、10%未満、5%未満、3%未満、2%未満、1%未満、0.5%未満、0.4%未満、0.3%未満、または0.2%未満)において、好ましくは、限定最小培地フィーディングにより、たとえば、炭素供給源を制限しながら、作製する。具体的に、限定最小培地は、転写を誘導する炭素供給源を含まない。
POIは具体的に、好ましくは、抗体もしくはその断片、酵素およびペプチド、タンパク質抗生剤、毒素融合タンパク質、炭水化物−タンパク質コンジュゲート、構造タンパク質、調節タンパク質、ワクチンおよびワクチン様タンパク質もしくは粒子、プロセシング酵素(process enzyme)、増殖因子、ホルモン、ならびにサイトカイン、またはPOIの代謝物を含む、具体的に、本発明のプロモーターの転写制御下で対象の遺伝子を発現させる組換え細胞培養物の細胞代謝物を含む、治療用タンパク質から選択される異種タンパク質である。
本発明はさらに、真核細胞に由来する構成的プロモーターを同定する方法であって、
a)真核細胞を大きな増殖速度で培養する工程と、
b)細胞を小さな増殖速度でさらに培養する工程と、
c)工程a)およびb)の細胞培養物の試料を用意する工程と、
d)前記試料中で転写解析を実施し、転写物レベルを、細胞の天然pGAPプロモーターの転写物レベルと比較する工程と、
f)好ましくは、天然pGAPプロモーターと比較して、少なくとも1.1倍、好ましくは、少なくとも1.2倍、好ましくは、少なくとも1.3倍、好ましくは、少なくとも1.4倍、好ましくは、少なくとも1.5倍、好ましくは、少なくとも1.6倍、好ましくは、少なくとも1.7倍、好ましくは、少なくとも1.8倍、好ましくは、少なくとも1.9倍、好ましくは、少なくとも2倍、好ましくは、少なくとも3倍、好ましくは、少なくとも4倍、好ましくは、少なくとも5倍、好ましくは、少なくとも10倍、または少なくとも15倍である、同定された構成的プロモーターの転写物レベルを決定することにより、大小の増殖速度で、天然pGAPプロモーターと比較して、転写強度の大きな構成的プロモーターを選択する工程と
を含む方法も提供する。
具体的に、転写物レベルは、0.01〜0.2h-1の範囲内の、好ましくは0.015〜0.15h-1の範囲内の大きな増殖速度および小さな増殖速度で、たとえば、細胞培養物の少なくとも2つの試料であって、たとえば、0.15h-1の増殖速度で、大きな増殖速度、たとえば、少なくとも0.05h-1、好ましくは、少なくとも0.06h-1、または少なくとも0.07h-1、少なくとも0.08h-1、少なくとも0.09h-1、少なくとも0.1h-1を表す第1の試料と、たとえば、0.015h-1の増殖速度で、小さな増殖速度、たとえば、第1の試料未満、たとえば、0.05h-1未満、好ましくは0.04h-1未満、0.03h-1未満、または0.02h-1未満を表す第2の試料である、少なくとも2つの試料を検討することにより決定する。転写レベルは、たとえば、下記の例11に従い、DNAマイクロアレイを使用して、遺伝子発現パターンを解析することにより、具体的に決定する。
本発明はさらに、POIをコードするヌクレオチド配列に作動的に連結されると、大小の増殖速度において、天然pGAPプロモーターの制御下より高い発現レベルで、宿主細胞内のその発現を方向付けるプロモーターを含むかまたはこれからなる単離核酸配列の使用であって、好ましくは、回分期で始め、流加期または連続培養期を後続させて、バイオリアクター内で実施される、核酸配列で形質転換された宿主細胞の培養によってPOIを作製する方法における使用も提供する。
具体的に、発現レベルは、0.01〜0.2h-1の範囲内の、好ましくは0.015〜0.15h-1の範囲内の大きな増殖速度および小さな増殖速度で、たとえば、細胞培養物の少なくとも2つの試料であって、たとえば、0.15h-1の増殖速度で、大きな増殖速度、たとえば、少なくとも0.05h-1、好ましくは、少なくとも0.06h-1、または少なくとも0.07h-1、少なくとも0.08h-1、少なくとも0.09h-1、少なくとも0.1h-1を表す第1の試料と、たとえば、0.015h-1の増殖速度で、小さな増殖速度、たとえば、第1の試料未満、たとえば、0.05h-1未満、好ましくは0.04h-1未満、0.03h-1未満、または0.02h-1未満を表す第2の試料である、少なくとも2つの試料を検討することにより決定する。発現レベルは、増殖制限条件下で、具体的に決定する。大小の増殖速度で、増殖制限条件下、たとえば、グルコース制限ケモスタット培養における、発現強度の決定の例を、下記の例10に提示する。
具体的に、発現レベルは、pGAPプロモーターと比較して、少なくとも1.1倍、好ましくは、少なくとも1.2倍、好ましくは、少なくとも1.3倍、好ましくは、少なくとも1.4倍、好ましくは、少なくとも1.5倍、好ましくは、少なくとも1.6倍、好ましくは、少なくとも1.7倍、好ましくは、少なくとも1.8倍、好ましくは、少なくとも1.9倍、好ましくは、少なくとも2倍、好ましくは、少なくとも3倍、好ましくは、少なくとも4倍、好ましくは、少なくとも5倍、好ましくは、少なくとも10倍、または少なくとも15倍である。
具体的な側面によれば、本発明の単離核酸配列または本発明の発現構築物を、核酸配列および/または発現構築物で形質転換された宿主細胞を培養することにより、POIを作製する方法であって、好ましくは、培養を、回分期で始め、流加期または連続培養期を後続させて、バイオリアクター内で実施する方法において使用する。
P.pastorisの核酸配列であるpCS1(985bp、配列番号1)と、pCS1および5’端におけるさらなるヌクレオチドを含むDNA配列またはpCS1断片であるプロモーター配列であって、P.pastoris内のCS1の発現を促進し、1488bp(配列番号2)、767bp(配列番号3)、500bp(配列番号4)、344bp(配列番号5)、234bp(配列番号6)、138bp(配列番号7)、および85bp(配列番号8)を含むプロモーター配列。 P.pastorisの核酸配列であるpCS1(985bp、配列番号1)と、pCS1および5’端におけるさらなるヌクレオチドを含むDNA配列またはpCS1断片であるプロモーター配列であって、P.pastoris内のCS1の発現を促進し、1488bp(配列番号2)、767bp(配列番号3)、500bp(配列番号4)、344bp(配列番号5)、234bp(配列番号6)、138bp(配列番号7)、および85bp(配列番号8)を含むプロモーター配列。 CS1をコードするヌクレオチド配列およびアミノ酸配列のうちの、 i)GS115、CBS7435、およびCBS2612(PAS_chr1−4_0586)株の配列であって、コード配列(配列番号9)、翻訳された配列(XM_002490678.1、配列番号10)である配列と、 ii)DSMZ70382(PIPA02805)株の配列であって、コード配列(配列番号11)、翻訳された配列(配列番号12)である配列。 P.pastorisの天然pGAPプロモーター配列(GS115)(配列番号13)。
発明の詳細な説明
本明細書を通して使用される特殊な用語は、以下の意味を有する。
ここで使用される「炭素供給源」または「炭素基質」という用語は、発酵可能な炭素基質、典型的に、微生物のためのエネルギー供給源として適する炭水化物の供給源、たとえば、宿主生物または産生細胞系による代謝が可能な供給源、特に、単糖、オリゴ糖、多糖、グリセロールを含むアルコールからなる群から選択される供給源であって、精製形態における供給源、最小培地中の供給源、または原料、たとえば、複合栄養物材料により供給される供給源を意味するものとする。炭素供給源は、本発明に従い、単一の炭素供給源として使用してもよく、異なる炭素供給源の混合物として使用してもよい。
ここで使用される「炭素基質に富む条件」という用語は、細胞の増殖に適する炭素基質、たとえば、真核細胞のための栄養物の種類および量を具体的に指す。炭素供給源は、培地、たとえば、基本培地または複合培地により供給してもよいが、また、精製された炭素供給源を含有する(化学的)規定培地により供給してもよい。細胞培養プロセスの増殖期における使用のための炭素供給源は、ここではまた、「基本炭素供給源」とも呼ばれ、典型的に、細胞の増殖をもたらす量、たとえば、1L当たりの細胞乾燥質量少なくとも5g、好ましくは1L当たりの細胞乾燥質量少なくとも10g、または1L当たりの細胞乾燥質量少なくとも15gの細胞密度を得る量、たとえば、標準的な継代培養プロセスにおいて、90%より大きい生存可能性、好ましくは95%より大きい生存可能性を呈示する量で供給される。
増殖期において、炭素供給源は典型的に、たとえば、大きな比増殖速度による細胞系の培養時において、バイオマスを増大させるエネルギーをもたらす過剰として理解される、過剰または剰余量で使用する。
この剰余量は特に、増殖制限条件下で使用される、炭素供給源の制限量を超えて、発酵培養液中の残留濃度であって、測定可能であり、典型的に、細胞培養物に、制限炭素基質を含有する培地をフィードするときの少なくとも10倍、好ましくは、少なくとも50倍、または少なくとも100倍である残留濃度を達成する。
ここではまた、たとえば、本発明に従い使用される通り、「補充炭素供給源」とも称する、「炭素基質制限条件」または「制限炭素供給源」という用語は、ここでは、特に、最大増殖速度未満の、制御された増殖速度による培養プロセスにおいて、産生細胞系による発酵産物の産生を容易とする、炭素基質の種類および量を具体的に指すと理解される。産生期は具体的に、たとえば、回分、流加および連続培養プロセスにおいて、増殖期に後続する。
一般に、細胞培養プロセスは、回分培養、連続培養、および流加培養に分類される。回分培養とは、少量の種培養溶液を、培地に添加し、培養時において、さらなる培地を添加したり、培養溶液を排出したりせずに、細胞を増殖させる培養プロセスである。連続培養とは、培養時において、培地を連続的に添加および排出する培養プロセスである。連続培養はまた、潅流培養も含む。回分培養と連続培養の中間であり、また、半回分培養とも称する流加培養はとは、培養時において、培地を連続的または逐次的に添加するが、連続培養と異なり、培養溶液を連続的には排出しない培養プロセスである。
具体的に、増殖制限栄養物基質の、培養物へのフィーディングに基づく、流加プロセスが好ましい。単回流加または反復流加発酵を含む流加戦略は典型的に、バイオインダストリープロセスにおいて、バイオリアクター内の高細胞密度に到達するように使用する。炭素基質の制御された添加は、培養物の増殖速度に直接影響を及ぼし、オーバーフロー代謝または望ましくない代謝副産物の形成を回避する一助となる。炭素供給源制限条件下では、炭素供給源は具体的に、流加プロセスのフィード中に含有されていてもよい。これにより、炭素基質を、制限量で供給する。
ここで記載されるケモスタットまたは連続培養ではまた、増殖速度も、緊密に制御することができる。
炭素供給源の「制限量」とは、ここでは、産生細胞系を、増殖制限条件下、たとえば、産生期または産生方式に保つのに必要な炭素供給源の量として理解される。このような制限量を、炭素供給源がフィード培地中に含有され、持続的なエネルギー送達のための小さなフィード速度で培養物に供給される、流加プロセスにおいて援用して、たとえば、バイオマスを、小さな比増殖速度に保ちながら、POIを作製してもよい。フィード培地は典型的に、細胞培養物の産生期において、発酵培養液に添加する。
炭素供給源の制限量は、たとえば、所定の閾値を下回るか、なおまたは標準的な(炭水化物)アッセイにおいて測定される検出限界を下回る、細胞培養液内の炭素供給源の残留量により決定してもよい。残留量は典型的に、発酵産物を回収するときに、発酵培養液中で決定されるであろう。
炭素供給源の制限量はまた、炭素供給源の、発酵槽への、培養時間当たりの平均フィード速度であって、たとえば、時間当たりで計算される平均量を決定するように、全培養プロセス、たとえば、流加期にわたり添加される量により決定される、平均フィード速度を規定することにより決定してもよい。この平均フィード速度は、細胞培養物による補充炭素供給源の完全な使用を確認するように、小さく、たとえば、0.6g L-1-1(時間1h当たりに初期発酵容量1L当たりの炭素供給源g)〜25g L-1-1、好ましくは1.6g L-1-1〜20g L-1-1に保つ。
炭素供給源の制限量はまた、比増殖速度を測定することにより決定してもよく、この比増殖速度は、産生期において、小さく、たとえば、最大比増殖速度より小さく、たとえば、所定の範囲内、たとえば、0.001h-1〜0.20h-1、または0.02h-1〜0.20h-1、好ましくは0.02h-1〜0.15h-1の範囲内に保つ。
真核細胞培養物のために使用するのに適切である任意の種類の有機炭素を使用してもよい。具体的な態様によれば、炭素供給源は、ヘキソース、たとえば、グルコース、果糖、ガラクトース、もしくはマンノース、二糖、たとえば、サッカロース、アルコール、たとえば、グリセロールもしくはエタノール、またはこれらの混合物である。
具体的に好ましい態様によれば、基本炭素供給源は、グルコース、グリセロール、エタノール、またはこれらの混合物、および複合栄養物材料からなる群から選択される。好ましい態様によれば、基本炭素供給源は、グリセロールである。
さらなる具体的な態様によれば、補充炭素供給源は、ヘキソース、たとえば、グルコース、果糖、ガラクトースおよびマンノース、二糖、たとえば、サッカロース、アルコール、たとえば、グリセロールもしくはエタノール、またはこれらの混合物である。好ましい態様によれば、補充炭素供給源は、グルコースである。
具体的に、方法は、グリセロールを基本炭素供給源として援用し、グルコースを補充炭素供給源として援用してもよい。
具体的に、ここで使用されるフィード培地は、化学的に規定され、メタノールを含まない。
細胞培養培地、たとえば、最小培地または流加プロセスにおけるフィード培地に関する「化学的に規定された」または「規定された」という用語は、in vitroにおける産生細胞系の細胞培養に適する培養培地であって、化学的成分および(ポリ)ペプチドの全てが公知の培養培地を意味するものとする。典型的に、化学的規定培地は、動物に由来する成分を全く含まず、純粋で一貫した細胞培養環境を表す。
ここで使用される「細胞系」という用語は、長期にわたり増殖する能力を獲得した、特定の細胞型の確立されたクローンを指す。「宿主細胞系」という用語は、内因性もしくは組換え遺伝子または代謝経路の産物を発現させて、ポリペプチドまたはこのようなポリペプチドにより媒介される細胞代謝物を作製するために使用される細胞系を指す。「産生宿主細胞系」または「産生細胞系」とは、産生過程の産物、たとえば、POIを得るバイオリアクター内の培養のために使用しやすい細胞系であると一般に理解される。「真核生物宿主」または「真核細胞系」という用語は、POIまたは宿主細胞代謝物を作製するのに培養してもよい、任意の真核細胞または生物を意味するものとする。用語はヒトを含まないことがよく理解される。
本発明の具体的に好ましい真核宿主細胞によれば、細胞または細胞系は、哺乳動物、昆虫、酵母、糸状菌、および植物細胞系からなる群から選択され、好ましくは、酵母である。
具体的に、酵母は、Pichia属、Candida属、Torulopsis属、Arxula属、Hensenula属、Yarrowia属、Kluyveromyces属、Saccharomyces属、Komagataella属からなる群から選択され、好ましくは、メチロトロープ酵母である。
具体的に好ましい酵母は、Pichia pastoris、Komagataella pastoris、K.phaffii、またはK.pseudopastorisである。
宿主細胞系に関して、「発酵」ともまた称する、「細胞培養物」または「培養」という用語は、人工的な、たとえば、in vitroの環境における、活動または休眠状態にある細胞の増殖、分化、または生存力の持続に好適な条件下における、具体的に、業界で公知の方法に従う制御されたバイオリアクター内の細胞の維持を意味する。
本発明の培養培地を使用して、細胞培養物を培養する場合は、細胞培養物を、細胞培養物の培養を支援するのに適する条件下で、培養槽内の培地または基質と接触させる。ある種の態様では、ここで記載される培養培地を、当技術分野で周知の標準的な細胞培養法に従い、細胞を培養するのに使用する。本発明の多様な側面では、真核細胞、具体的に、酵母または糸状菌を増殖させるために使用されうる培養培地が提供される。
細胞培養培地は、細胞を維持し、制御された人工的なin vitro環境で増殖させるのに必要な栄養物を供給する。細胞培養培地の特徴および組成は、特定の細胞要件に応じて変化する。重要なパラメータは、浸透圧、pH、および栄養物処方を含む。栄養物のフィーディングは、当技術分野で公知の方法に従い、連続方式で施してもよく、非連続方式で施してもよい。本発明に従い使用される培養培地は、組換えタンパク質を作製するのに特に有用である。
回分プロセスが、発酵時においてさらなる栄養物のさらなる供給を伴わずに、細胞を培養するために必要な全ての栄養物が、初期培養培地中に含有された培養方式であるのに対し、回分期の後の流加プロセスでは、フィーディングにより、1つ以上の栄養物を培養物に供給するフィーディング期が施される。栄養物フィーディングの目的は、バイオマスの量を増大させて、組換えタンパク質の量もまた増大させることである。大半の培養プロセスでは、フィーディングの方式は、肝要かつ重要であるが、本発明のプロモーターを援用する本発明は、何らかの培養方式に関して制約を受けない。
ある種の態様では、本発明の方法は、流加プロセスである。具体的に、所望の組換えPOIをコードする核酸構築物で形質転換された宿主細胞を、増殖期培地中で培養し、産生期培地に移して、所望の組換えPOIを作製する。
フィード培地は、液体形態で、あるいは他の代替的形態、たとえば、固体、たとえば、錠剤もしくは他の持続的放出手段として、または気体、たとえば、二酸化炭素により、培養培地に添加してもよい。しかし、好ましい態様によれば、細胞培養培地に添加される補充炭素供給源の制限量はなお、ゼロでもよい。好ましくは、制限炭素基質の条件下で、培養培地中の補充炭素供給源の濃度は、0〜1g/L、好ましくは0.6g/L未満、より好ましくは0.3g/L未満、より好ましくは0.1g/L未満、好ましくは1〜50mg/L、より好ましくは1〜10mg/L、具体的に好ましくは1mg/Lであるか、なおまたはこれを下回り、たとえば、適切な標準的なアッセイにおいて測定される、たとえば、増殖しつつある細胞培養物による消費時に、培養培地中の残留濃度として決定される検出限界を下回る。
好ましい方法では、炭素供給源の制限量は、産生期の終点において、または発酵プロセスの出力において、好ましくは、発酵産物の回収時において、発酵培養液中で決定される検出限界を下回る、細胞培養物中の残留量をもたらす。
好ましくは、補充炭素供給源の制限量は、比増殖速度を、最大比増殖速度より小さく、たとえば、0.001h-1〜0.20h-1、または0.02h-1〜0.20h-1、好ましくは0.02h-1〜0.15h-1の範囲内に保つ増殖制限量である。
別の態様では、本発明の宿主細胞を、連続方式で、たとえば、ケモスタットにより培養する。連続発酵プロセスは、新鮮な培養培地の、バイオリアクターへの、規定の一定で連続的なフィーディング速度により特徴づけられ、同じ規定の一定で連続的な除去速度で、培養液を、バイオリアクターから同時に除去する。培養培地、フィーディング速度、および除去速度を、同じ一定のレベルで保つことにより、バイオリアクター内の培養パラメータおよび条件は、一定を維持する。
ここで記載される安定的細胞培養物とは、遺伝特性を維持する、具体的に、POI産生レベルを高く、たとえば、約20世代、好ましくは、少なくとも30世代、より好ましくは、少なくとも40世代、最も好ましくは少なくとも50世代にわたる培養の後でもなお、少なくともμgレベルに保つ細胞培養物を指すと具体的に理解される。具体的に、産業スケールの作製のために使用される場合に大きな利点と考えられる、安定的組換え宿主細胞系が提供される。
本発明の細胞培養物は、たとえば、栄養物のフィーディング、特に、流加もしくは回分プロセス、または連続もしくは半連続プロセス(たとえば、ケモスタット)に基づく培養方式と組み合わせた、容量と技法システムの両方に関して、産業的生産スケールでの方法に特に有利である。
「発現」または「発現系」または「発現カセット」という用語は、これらの配列で形質転換またはトランスフェクトされた宿主が、コードされるタンパク質または宿主細胞代謝物を産生することが可能であるように、所望のコード配列および制御配列を、作動的連結内に含有する核酸分子を指す。形質転換を実行するために、発現系をベクター内に組み入れてもよいが、また、関与性のDNAを、宿主染色体に組み込んでもよい。発現は、ポリペプチドまたは代謝物を含む、分泌発現産物を指してもよく、非分泌発現産物を指してもよい。
ここで使用される「発現構築物」または「ベクター」または「プラスミド」は、適切な宿主生物における、クローニングされた組換えヌクレオチド配列、すなわち、組換え遺伝子の転写、およびそれらのmRNAの翻訳に要請されるDNA配列と定義される。発現ベクターまたはプラスミドは通例、宿主細胞内の自律的複製のための起点、選択マーカー(たとえば、アミノ酸合成遺伝子または抗生剤、たとえば、ゼオシン、カナマイシン、G418、もしくはハイグロマイシンに対する耐性を付与する遺伝子)、多数の制限酵素切断部位、適切なプロモーター配列、および転写ターミネーターを含み、これらの成分は、併せて作動可能に連結される。ここで使用される「プラスミド」および「ベクター」という用語は、自己複製型ヌクレオチド配列のほか、ゲノム組込み型ヌクレオチド配列も含む。
本発明の発現構築物は、本発明のプロモーターであって、前記プロモーターの転写制御下で、POIをコードするヌクレオチド配列に作動可能に連結されたプロモーターを具体的に含み、このプロモーターは、POIのコード配列と天然では会合しない。
ヌクレオチドまたはアミノ酸配列またはタンパク質に関してここで使用される「異種」という用語は、所与の宿主細胞に対して外来である、すなわち、「外因性」である、たとえば、天然で見出されない化合物、または所与の宿主細胞内に天然で見出される、たとえば、「内因性」であるが、異種構築物の文脈において、たとえば、異種核酸を援用する化合物の何れかを指す。内因的に見出される異種ヌクレオチド配列はまた、非天然の、たとえば、細胞内で予測される量より大きい量、または細胞内に天然で見出される量より大きい量で作製してもよい。異種ヌクレオチド配列または異種ヌクレオチド配列を含む核酸はおそらく、内因性ヌクレオチド配列と配列が異なるが、内因的に見出される同じタンパク質をコードする。具体的に、異種ヌクレオチド配列とは、天然で宿主細胞と同じ関係では見出されないヌクレオチド配列である。任意の組換えまたは人工ヌクレオチド配列は、異種であると理解される。異種ポリヌクレオチドの例は、本発明に従うプロモーターと天然では会合しないヌクレオチド配列、たとえば、ここで記載される通り、ハイブリッド体のプロモーターを得るヌクレオチド配列、またはコード配列に作動可能に連結されたヌクレオチド配列である。結果として、ハイブリッド体またはキメラ体のポリヌクレオチドを得てもよい。異種化合物のさらなる例は、内因性で自然発生のPOIコード配列が通常は、作動可能に連結されない、転写制御エレメント、たとえば、本発明のプロモーターに作動可能に連結された、POIをコードするポリヌクレオチドである。
本発明の文脈においてここで使用される「変異体」という用語は、親配列から、たとえば、サイズの変化、たとえば、伸長もしくは断片化、突然変異、ハイブリダイゼーション(配列の組合せを含む)を介して、または特異的な程度の相同性もしくは類似性を伴って導出された、任意の配列を具体的に指すものとする。
本発明は、たとえば、P.pastorisの野生型のプロモーターであるプロモーター、または機能的に活性な、たとえば、野生型もしくは組換えの真核細胞内の特異的な遺伝子の転写を制御することが可能な、その変異体を具体的に提供する。
本発明の文脈においてここで使用される「天然」という用語は、天然でその環境と会合した、生物の個別の構造または成分を具体的に指すものとする。しかし、天然の構造または成分は、天然で会合する環境から単離し、単離された天然の構造または成分としてもたらしてもよいことがよく理解される。このような単離された天然の構造または成分はまた、人工または合成の由来であってもよく、天然の由来である構造または成分と同じ特徴をやはり有する。
本発明のいくつかの態様は、たとえば、単離形態にある、天然の構造または成分に言及するが、たとえば、具体的に、単離核酸配列、アミノ酸配列、発現構築物、形質転換された宿主細胞、および組換えタンパク質に言及する、本発明の材料、方法、および使用は、「人為により作製された」ものであり、したがって、「自然の法則」の結果としては考えられないことがよく理解される。
機能的に活性な変異体プロモーターは、たとえば、プロモーター配列であるpCS1(配列番号1)から、突然変異誘発により、したがって、pCS1配列を「親」配列として援用して、組換え細胞系内のプロモーターとしての使用に適する配列を作製することにより導出してもよい。このような変異体プロモーターは、所定の特性を有するライブラリーメンバーを選択することにより、突然変異体配列の(pCS1)ライブラリーから得てもよい。変異体プロモーターは、同じであるかなおまたは改善された、たとえば、POIの産生を支援するプロモーター強度が改善された特性を有しうるが、やはり、大小の増殖速度で、具体的に、ここでは、「増殖速度非依存性機能」として理解される、実質的に同じプロモーター機能および強度を伴う。
変異体プロモーターはまた、たとえば、Pichia pastoris以外の真核生物種、またはPichia属以外の属、たとえば、K.lactis、Z.rouxii、P.stipitis、H.polymorphaに由来する、類似する配列から導出してもよい。具体的に、対応するP.pastoris遺伝子と類似する遺伝子と天然で会合する、類似するプロモーター配列をそれ自体または親配列として使用して、その機能的に活性な変異体を作製してもよい。具体的に、pCS1と類似するプロモーターは、それが、CS1と類似する遺伝子と天然で会合することにおいて特徴づけられる(配列番号9または11のアミノ酸配列を参照されたい)。このような類似するプロモーター配列またはその機能的に活性な変異体の特性は、標準的な技法を使用して決定してもよい。
ここで使用されるヌクレオチドまたはプロモーター配列の「機能的に活性な」変異体とは、たとえば、配列内または配列の遠位端の一方もしくは両方における、1つ以上のヌクレオチドの挿入、欠失、または置換による親配列の改変であって、この配列の活性に影響を及ぼさない(特に、損なわない)改変から得られる突然変異体配列を具体的に意味する。
具体的に、本発明に従うプロモーター配列の機能的に活性な変異体は、
・少なくとも約60%のヌクレオチド配列同一性、好ましくは、親配列に対して、少なくとも70%、少なくとも80%、もしくは少なくとも90%の程度の相同性または配列同一性を有する相同体、および/または
・親ヌクレオチド配列、たとえば、pCS1配列または鋳型として使用されるサイズ変異体の配列を改変して、たとえば、配列内または配列の遠位端の一方もしくは両方における、1つ以上のヌクレオチドの挿入、欠失、または置換による突然変異をもたらすことにより得られる相同体であって、好ましくは、80bp〜1500bp、または200bp〜1500bp、または234bp〜1488bp、好ましくは、少なくとも100bp、少なくとも200bp、好ましくは、少なくとも300bp、より好ましくは、少なくとも400bp、少なくとも500bp、少なくとも600bp、少なくとも700bp、少なくとも800bp、少なくとも900bp、または少なくとも1000bpのヌクレオチド配列を有する(すなわち、これらを含むかまたはこれらからなる)相同体、ならびに
・Pichia pastoris以外の種に由来する類似体
からなる群から選択される。
具体的に好ましい機能的に活性な変異体は、本発明に従うプロモーターから、プロモーター配列の改変、伸長、および/または断片化により導出される変異体であって、少なくとも80bp、好ましくは、少なくとも100bp、好ましくは、少なくとも200bp、好ましくは、少なくとも250bp、好ましくは、少なくとも300bp、より好ましくは、少なくとも400bp、少なくとも500bp、少なくとも600bp、少なくとも700bp、少なくとも800bp、少なくとも900bp、または少なくとも1000bp、好ましくは、最大で1500bpのヌクレオチド配列を有する(すなわち、これらを含むかまたはこれらからなる)変異体である。
ここで記載される親プロモーター配列の機能的に活性な変異体は具体的に、突然変異誘発法を介して得てもよい。本発明の文脈において使用される「突然変異誘発」という用語は、たとえば、1つ以上のヌクレオチドの挿入、欠失、および/または置換により、ヌクレオチド配列の突然変異体をもたらして、非コードまたはコード領域内に少なくとも1か所の変化を伴う、その変異体を得る方法を指すものとする。突然変異誘発は、ランダム突然変異、半ランダム突然変異、または部位指向突然変異を介してもよい。典型的に、大規模なランダム化遺伝子ライブラリーは、遺伝子多様性を大きくして作製するが、これは具体的に所望される遺伝子型または表現型に従い選択してもよい。
本発明に従うプロモーターの、好ましい、機能的に活性な変異体のうちのいくつかは、pCS1のサイズ変異体、または具体的に、断片、好ましくは、3’端から、変化する5’端までのある範囲である、たとえば、少なくとも80bp、好ましくは、少なくとも100bp、好ましくは、少なくとも200bp、好ましくは、少なくとも250bp、好ましくは、少なくとも300bp、より好ましくは、少なくとも400bp、少なくとも500bp、少なくとも600bp、少なくとも700bp、少なくとも800bp、少なくとも900bp、または少なくとも1000bpのヌクレオチド配列の長さを有する特異的な長さを得るように、プロモーターヌクレオチド配列、たとえば、特異的な長さの5’末端領域および5’末端領域の挿入または欠失、たとえば、5’端におけるヌクレオチド配列の伸長または切断を有するプロモーターヌクレオチド配列のうちの1つに由来するヌクレオチド配列の3’端を含むサイズ変異体である。
本発明の伸長サイズ変異体は、好ましくは、pCS1配列の5’端に、さらなる1つ以上のヌクレオチド、たとえば、由来する細胞内で、野生型pCS1配列と天然で会合するヌクレオチドを含む。
たとえば、pCS1の機能的に活性な変異体は、pCS1a(配列番号2)、pCS1b(配列番号3)、pCS1c(配列番号4)、pCS1d(配列番号5)、pCS1e(配列番号6)、pCS1f(配列番号7)、およびpCS1g(配列番号8)からなる群から選択されるヌクレオチド配列、したがって、80〜1500bpの範囲内のヌクレオチド配列を含んでもよく、これらのヌクレオチド配列からなってもよい。好ましくは、pCS1の機能的に活性な変異体は、pCS1a(配列番号2)、pCS1b(配列番号3)、pCS1c(配列番号4)、pCS1d(配列番号5)およびpCS1e(配列番号6)からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含むか、またはこれらからなる。
本発明のプロモーターの機能的に活性な変異体はまた、たとえば、pCS1またはその機能的に活性な変異体とみなされる配列のうちの何れかのうちの1つ以上を有する組合せ、たとえば、このような親配列のうちの少なくとも2つ、配列のうちの少なくとも3つ、少なくとも4つ、または少なくとも5つ、たとえば、pCS1a、pCS1b、pCS1c、pCS1d、pCS1e、pCS1f、およびpCS1gからなる群から選択され、好ましくは、pCS1a、pCS1b、pCS1c、pCS1d、およびpCS1eからなる群から選択される、pCS1の伸長配列または断片のうちの2つ以上の組合せから得られる、pCS1のハイブリッド体、またはその機能的に活性な変異体のうちの何れか、特に、親のサイズ変異体または断片配列のうちの何れかを包含することも理解される。別の態様では、ハイブリッド体は、pCS1、またはその機能的に活性な変異体のうちの何れか、特に、サイズ変異体または断片配列のうちの何れか、およびたとえば、P.pastoris内でpCS1配列と天然では会合しない異種配列から選択される、配列のうちの少なくとも1つから構成される。
本発明のプロモーターの機能的に活性な変異体は、pCS1プロモーター、あるいは機能的に活性なサイズ変異体もしくは断片、それらの突然変異体またはハイブリッド体の核酸配列のうちの何れかと厳密な条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列を包含することもさらに理解される。
本発明で使用される「ハイブリダイゼーション」または「ハイブリダイズすること」という用語は、2つの核酸配列が、適切な条件下で、互いと、安定的で特異的な水素結合でアニールして、二本鎖を形成するプロセスを意味することを意図する。2つの相補的な配列または十分に相補的な配列の間のハイブリダイゼーションは、使用される操作条件に依存し、特に、厳密性に依存する。厳密性は、相同性の程度を描示すると理解してもよく、厳密性が高度であるほど、配列の間の相同性パーセントも大きくなる。厳密性は特に、2つの核酸配列の塩基組成により定義してもよく、かつ/またはこれらの2つの核酸配列の間のミスマッチングの程度により定義してもよい。条件、たとえば、塩濃度および温度を変化させることにより、所与の核酸配列を、その正確な相補体だけとハイブリダイズさせてもよく(高度な厳密性)、任意の何らかの類縁配列とハイブリダイズさせてもよい(低度な厳密性)。温度の上昇または塩濃度の低下は、ハイブリダイゼーション反応の選択性を増大させる傾向がありうる。
本発明で使用される「厳密なハイブリダイズ条件下でハイブリダイズすること」という語句は、好ましくは、ある種の厳密性の条件下でハイブリダイズすることを指すと理解される。好ましい態様では、「厳密なハイブリダイズ条件」とは、2つの核酸配列の相同性が、少なくとも70%、好ましくは、少なくとも80%、好ましくは、少なくとも90%である条件、すなわち、このハイブリダイゼーションにおいて得られる二本鎖が、好ましくは、少なくとも70%、好ましくは、少なくとも80%、好ましくは、少なくとも90%のA−T結合およびC−G結合を含む場合に限り、ハイブリダイゼーションが可能となる条件である。
厳密性は、反応パラメータ、たとえば、ハイブリダイゼーション溶液中に存在するイオン性分子種の濃度および種類、変性剤の性質および濃度、ならびに/またはハイブリダイゼーション温度に依存してよい。当業者は、たとえば、Sambrookら(Molecular Cloning:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor、1989)において記載されている通りに、適切な条件を決定することができる。
本発明の機能的に活性な変異体は、pCS1と実質的に同じ活性を呈示することにより具体的に特徴づけられる。
ここで使用される「実質的に同じ活性」という用語は、実質的に同じであるかまたは改善されたプロモーター強度、具体的に、プロモーターの発現または転写強度により指し示される活性を具体的に指し、プロモーター強度に関する、その実質的に同じであるかまたは改善された特徴は具体的に、宿主細胞の増殖速度に対して非依存的に決定され、たとえば、発現または転写強度は、pCS1と実質的に同じ、たとえば、±20%、もしくは±10%であり、かつ/または宿主細胞の天然pGAPプロモーターより大きい、たとえば、pGAPプロモーター強度に照らして、少なくとも1.1倍の増大、もしくは少なくとも1.2倍の増大、好ましくは、少なくとも1.3倍、好ましくは、少なくとも1.4倍、好ましくは、少なくとも1.5倍、好ましくは、少なくとも1.6倍、好ましくは、少なくとも1.7倍、好ましくは、少なくとも1.8倍、好ましくは、少なくとも1.9倍、好ましくは、少なくとも2倍の増大であるか、なおまたはこれより大きい、たとえば、同じ宿主細胞の種類、同じ培養条件、および発現産物、たとえば、POIをコードする同じ核酸を援用する適切な試験系において決定される活性の、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍、もしくは少なくとも最大で15倍である。
「相同性」という用語は、2つ以上のヌクレオチド配列が、対応する位置において、ある程度、最大で100%に近い程度同じであるかまたは保存的な塩基対を有することを指し示す。本発明の相同な配列は、典型的に、少なくとも約60%のヌクレオチド配列同一性、好ましくは、少なくとも約70%の同一性、より好ましくは、少なくとも約80%の同一性、より好ましくは、少なくとも約90%の同一性、より好ましくは、少なくとも約95%の同一性、より好ましくは、少なくとも約98%、または99%の同一性を有する。
本発明に従う相同なプロモーター配列は、好ましくは、P.pastorisのpCS1、pCS1a、pCS1b、pCS1c、pCS1d、pCS1e、pCS1f、およびpCS1gプロモーターヌクレオチド配列のうちの何れかに対して、たとえば、それぞれのプロモーターヌクレオチド配列の3’側領域を含む、ヌクレオチド配列の少なくとも特異的な部分、好ましくは、それぞれのプロモーターヌクレオチド配列の3’端までの特異的な長さを有する部分、たとえば、80bp〜1500bp、好ましくは、200bp〜1500bp、より好ましくは、234〜1488bp;好ましくは、少なくとも100bp、好ましくは、少なくとも200bp、好ましくは、少なくとも300bp、より好ましくは、少なくとも400bp、少なくとも500bp、少なくとも600bp、少なくとも700bp、少なくとも800bp、少なくとも900bp、または少なくとも1000bpの長さを有する部分において、ある種の相同性を有する。具体的に、少なくともこれらの部分は、好ましくは、それぞれのプロモーターヌクレオチド配列の3’末端配列を含む、300〜1000bpの範囲内で相同である。
類似する配列は、典型的に、他の種または株から導出される。Pichia pastoris以外の種から導出される、本発明の類似するプロモーター配列のうちの何れかは、相同な配列、すなわち、ここで記載されるある種の相同性を有する配列を含んでもよいことが明確に理解される。したがって、「相同な」という用語はまた、類似する配列を含んでもよい。他方、本発明はまた、ある種の相同性を含む、その類似する配列および相同体にも関することが理解される。
遺伝子のヌクレオチド配列に関する「同一性パーセント(%)」とは、配列決定し、必要な場合、ギャップを導入して、最大の配列同一性パーセントを達成し、任意の保存的置換は配列同一性の部分と考えずにおいた後で、DNA配列内のヌクレオチドと同一である、候補DNA配列内のヌクレオチドの百分率と定義される。ヌクレオチド配列同一性パーセントの決定を目的とするアライメントは、当技術分野の範囲内にある多様な態様で、たとえば、市販のコンピュータソフトウェアを使用して達成することができる。当業者は、比較される配列の全長にわたり最大のアライメントを達成するのに必要とされる任意のアルゴリズムを含む、アライメントを測定するのに適するパラメータを決定することができる。
核酸、POI、または他の化合物に関してここで使用される「単離された」または「単離」という用語は、「実質的に純粋な」形態で存在するように、天然で会合する環境から十分に分離された化合物を指すものとする。「単離された」とは、他の化合物もしくは材料との人工もしくは合成の混合物、または根本的な活性に干渉しない不純物、たとえば、不完全な精製に起因して存在しうる不純物の存在の除外を必ずしも意味しない。特に、本発明の単離核酸分子はまた、化学合成された核酸分子を含むことも意味する。本発明の核酸に関しては、場合によって、「単離核酸」または「単離核酸配列」という用語を使用する。DNAに適用される場合のこの用語は、それが由来する生物の自然発生のゲノム内でじかに隣接する配列から分離されたDNA分子を指す。たとえば、「単離核酸」は、ベクター、たとえば、プラスミドまたはウイルスベクターに挿入されたDNA分子、あるいは原核もしくは真核細胞または宿主生物のゲノムDNAに組み込まれたDNA分子を含んでもよい。具体的に、本発明に従う「単離核酸」という用語は、pCS1配列が、CS1タンパク質をコードする核酸に連結されることを除外する。「単離核酸」(DNAまたはRNAの何れか)はさらに、生物学的または合成手段により直接作製され、その作製時において存在する他の成分から分離された分子を表してもよい。
ここで使用される「作動可能に連結された」という用語は、単一の核酸分子、たとえば、ベクター上における、ヌクレオチド配列の、1つ以上のヌクレオチド配列の機能が、前記核酸分子上に存在する、少なくとも1つの他のヌクレオチド配列の影響を受けるような態様での会合を指す。たとえば、プロモーターは、そのコード配列の発現を実行することが可能な場合、組換え遺伝子のコード配列と作動可能に連結されている。さらなる例として、シグナルペプチドをコードする核酸は、それが、タンパク質、たとえば、成熟タンパク質の前駆形態または成熟タンパク質を、分泌形態で発現させることが可能な場合、POIをコードする核酸配列に作動可能に連結されている。具体的に、互いに作動可能に連結されるこのような核酸は、じかに、すなわち、シグナルペプチドをコードする核酸とPOIをコードする核酸配列の間にさらなるエレメントまたは核酸配列を伴わずに連結してもよい。
ここで使用される「プロモーター」という用語は、コード配列または機能的なRNAの発現を制御することが可能なDNA配列を指す。プロモーター活性は、その転写効率により評価してもよい。これは、プロモーターによるmRNAの転写量を、たとえば、ノーザンブロット法を介して測定することにより直接的に決定してもよく、プロモーターにより発現した遺伝子産物の量を測定することにより間接的に決定してもよい。
本発明のプロモーターは具体的に、コードDNAの発現を誘発するか、調節するか、または他の方法で媒介もしくは制御する。プロモーターDNAとコードDNAは、同じ遺伝子に由来してもよく、異なる遺伝子に由来してもよく、同じ生物に由来してもよく、異なる生物に由来してもよい。
本発明のプロモーターは、構成的プロモーター、すなわち、誘導または抑制の可能性に対する必要を伴わずに、発現を制御するプロモーターとして具体的に理解される。したがって、あるレベルで、連続的かつ安定的な発現がなされる。全ての増殖期または宿主細胞の増殖速度においてプロモーター強度が大きいという固有の機能のために、本発明の構成的プロモーターは、宿主細胞系の流加培養において、特に有用である。先行技術による構成的プロモーターは、増殖制限条件における、たとえば、流加プロセスにおける強度が小さい欠点を有するか、または宿主細胞を、大きな増殖速度に、たとえば、指数増殖期の中期に維持する態様で使用された。
本発明のプロモーターの強度は、そのプロモーターにおいて高頻度または低頻度で生じる転写誘発の効率により表される、その転写強度に具体的に関する。転写強度が大きいほど、そのプロモーターにおいて生じる転写頻度は大きくなる。プロモーター強度は、それにより、どのくらいの頻度で所与のmRNA配列が転写されるのかが決定され、いくつかの遺伝子に対して、他の遺伝子を上回る大きな転写の優先性が効果的に与えられ、大きな転写物濃度がもたらされるために重要である。大量に要請されるタンパク質をコードする遺伝子は、たとえば、典型的に、比較的強力なプロモーターを有する。RNAポリメラーゼに実施しうる転写タスクは、一度に1つだけなので、その仕事が効率的となるように優先されなければならない。プロモーター強度の差違は、この優先を可能とするように選択される。本発明に従うプロモーターは、宿主細胞の代謝または増殖速度に対して非依存的に、たとえば、細胞培養物の高低増殖速度期の何れにおいても、かつ、具体的に、炭素供給源に非依存的に比較的強力であり、ほぼ最大活性状態を、具体的に、ほぼ一定のレベルで呈示する。
相対強度は一般に、宿主細胞として使用される細胞の標準的なプロモーター、たとえば、それぞれのpGAPプロモーターに関して決定される。転写頻度は一般に、たとえば、適切なアッセイ、たとえば、RT−PCRまたはノーザンブロット法における転写物の量により決定される転写速度として理解される。対象の遺伝子を発現させるプロモーターの強度は一般に、発現強度または高発現レベル/速度を支援する能力として理解される。たとえば、本発明のプロモーターの発現および/または転写強度は、P.pastorisである宿主細胞内で決定され、P.pastorisの天然pGAPプロモーターと比較される。
転写速度は、マイクロアレイ上の転写強度により決定してもよく、定量的リアルタイムPCR(qRT−PCR)で決定してもよく、この場合、マイクロアレイまたはqRT−PCRデータにより、増殖速度の大きな条件と増殖速度の小さな条件の間、または異なる培地組成を援用する条件の間の発現レベルの差違、および天然pGAPプロモーターと比較して大きなシグナル強度が示される。適切な試験系については、下記の例11において具体的に記載する。
本発明のプロモーターは、宿主細胞内の、場合によって、「相同なpGAPプロモーター」と呼ばれる天然pGAPプロモーターと比較して、少なくとも110%の転写速度または転写強度により反映される、比較的大きな転写強度をもたらす。好ましくは、転写速度または強度は、たとえば、POIを作製するための宿主細胞として選択された真核細胞内で決定された、たとえば、炭素基質に富む条件、たとえば、回分培養下で、または炭素基質制限条件、たとえば、ケモスタットもしくは流加培養下で決定された天然pGAPプロモーターと比較して、少なくとも110%、好ましくは、少なくとも120%、または少なくとも130%、具体的に好ましい場合には、少なくとも140%、少なくとも150%、少なくとも160%、少なくとも170%、少なくとも180%、少なくとも190%、少なくとも200%、少なくとも約3倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、もしくは少なくとも約15倍であるか、なおまたはこれより大きい。
好ましくは、転写解析は、定量的または半定量的であり、好ましくは、qRT−PCR、DNAマイクロアレイ、RNAシークエンシング、およびトランスクリプトーム解析を援用する。
発現速度は、たとえば、下記の実施例節で記載する通り、たとえば、レポーター遺伝子、たとえば、eGFPの発現量により決定してもよく、試験系については具体的に、例10において記載する。pCS1プロモーターは、溶液中でクローンを培養するとき、天然pGAPプロモーターと比較して、少なくとも110%の比較的大きな転写速度を有することを示すことができた。
本発明のプロモーターは、宿主細胞内の、場合によって、「相同なpGAPプロモーター」と呼ばれる天然pGAPプロモーターと比較して、少なくとも110%である、対象の遺伝子の発現レベルにより反映される、比較的大きな発現強度をもたらす。好ましくは、発現強度は、たとえば、POIを作製するための宿主細胞として選択された真核細胞内で決定された、たとえば、炭素基質に富む条件、たとえば、回分培養下で、または炭素基質制限条件、たとえば、ケモスタットもしくは流加培養下で決定された天然pGAPプロモーターと比較して、少なくとも110%、好ましくは、少なくとも120%、または少なくとも130%、具体的に好ましい場合には、少なくとも140%、少なくとも150%、少なくとも160%、少なくとも170%、少なくとも180%、少なくとも190%、少なくとも200%、少なくとも約3倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、もしくは少なくとも約15倍、なおまたはこれより大きい。
天然pGAPプロモーターは、大半の生物中に存在する構成的プロモーターである、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH:glyceraldehyde-3-phosphate dehydrogenase)をコードする、gap遺伝子の発現を誘発する。解糖および糖新生の鍵となる酵素である、GAPDH(EC 1\2\1\12)は、異化および同化による炭水化物代謝において、死活的な役割を果たす。したがって、pGAPプロモーターは、構成的(たとえば、特異的な炭素供給源をフィードすることにより非誘導的)プロモーターであると理解されているが、増殖速度の増大と共にプロモーター強度の増大をもたらす、代謝プロモーターである。したがって、pGAPプロモーターは、小さな増殖速度により特徴づけられる相における宿主細胞系の培養時の効率的な作製プロセスにほとんど適さない。
これに対し、本発明のプロモーターは驚くべきことに、宿主細胞培養の全ての増殖期において、その大きなプロモーター強度を、常に高い転写物レベルで(本質的に)維持する。
天然pGAPプロモーターは具体的に、組換え真核細胞においても、同じ種または株の天然真核細胞(修飾されていない(非組換え)または組換え真核細胞を含む)の中と同じ態様で活性である。このような天然pGAPプロモーターは一般に、内因性プロモーターであり、したがって、真核細胞と同種であると理解されており、比較を目的とする基準(standardまたはreference)プロモーターとして用いられている。
たとえば、P.pastorisの天然pGAPプロモーターは、P.pastoris内でGAPDHの発現を制御するのに使用される通り、たとえば、図3に示される配列:P.pastorisの天然pGAPプロモーター配列(GS115)(配列番号13)を有する、P.pastoris内の、改変されていない内因性のプロモーター配列である。P.pastorisを、本発明に従いPOIを作製するための宿主として使用する場合、本発明に従うプロモーターの転写強度または速度を、このようなP.pastorisの天然pGAPプロモーターと比較する。
別の例として、S.cerevisiaeの天然pGAPプロモーターは、S.cerevisiae内でGAPDHの発現を制御するのに使用される通り、S.cerevisiae内の、改変されていない内因性のプロモーター配列である。S.cerevisiaeを、本発明に従いPOIを作製するための宿主として使用する場合、本発明に従うプロモーターの転写強度または速度を、このようなS.cerevisiaeの天然pGAPプロモーターと比較する。
したがって、本発明に従うプロモーターの相対発現または転写強度は通例、POIを作製するための宿主として使用される同じ種または株の細胞の、天然pGAPプロモーターと比較する。
本発明のプロモーターは、好ましくは、代謝プロモーター、たとえば、天然で夥多な解糖酵素または糖新生酵素、リボソームタンパク質または酵素、たとえば、細胞内プロテアーゼもしくは宿主細胞から分泌されるプロテアーゼをコードする遺伝子に作動可能に連結されたプロモーターではないことが具体的に理解される。
具体的に、少なくともpCS1の発現強度または転写強度を有する、本発明のプロモーターが好ましい。pGAPプロモーターを基準として援用する比較プロモーター強度は、標準的な手段、たとえば、発現産物の量もしくは転写物の量を測定することにより、たとえば、マイクロアレイ、ノーザンブロット、RNAシークエンシングもしくはqRT−PCRを援用することにより決定してもよく、あるいは、細胞培養物中で、たとえば、組換え細胞内のそれぞれの遺伝子発現産物の量を測定することにより決定してもよい。例示的な試験については、実施例節において例示する。
ここで使用される「対象のタンパク質(POI:protein of interest)」という用語は、宿主細胞内の組換え技術により作製される、ポリペプチドまたはタンパク質を指す。より具体的に、タンパク質は、宿主細胞内で自然発生でないポリペプチド、すなわち、異種タンパク質であってもよく、あるいは、宿主細胞にとって天然のポリペプチド、すなわち、宿主細胞と同種のタンパク質であってもよいが、たとえば、POIをコードする核酸配列を含有する自己複製型ベクターによる形質転換により、または組込み時における、POIをコードする核酸配列の1コピー以上の、宿主細胞のゲノムへの組換え法により、またはPOIをコードする遺伝子の発現を制御する1つ以上の調節配列、たとえば、プロモーター配列の組換えによる改変により作製される。場合によって、ここで使用されるPOIという用語はまた、組換え発現タンパク質により媒介される、宿主細胞による任意の代謝の産物にも関する。
具体的な態様によれば、POIという用語は、特に、本発明のプロモーターが、このようなCS1タンパク質をコードする核酸配列のうちの何れかと天然で会合する場合、たとえば、図2のアミノ酸配列のうちの何れかにより特徴づけられる、Pichia pastorisのCS1タンパク質を除外するであろう。
具体的に、ここで記載されるPOIとは、真核生物タンパク質、好ましくは、哺乳動物タンパク質、具体的に、宿主細胞と異種のタンパク質である。
本発明に従い作製されるPOIは、多量体タンパク質、好ましくは、二量体または四量体であってもよい。
本発明の一側面によれば、POIは、好ましくは、抗体もしくはその断片、酵素およびペプチド、タンパク質抗生剤、毒素融合タンパク質、炭水化物−タンパク質コンジュゲート、構造タンパク質、調節タンパク質、ワクチンおよびワクチン様タンパク質もしくは粒子、プロセシング酵素、増殖因子、ホルモン、ならびにサイトカイン、またはPOIの代謝物を含む治療用タンパク質から選択される、組換えまたは異種タンパク質である。
具体的なPOIは、抗原結合性分子、たとえば、抗体またはその断片である。具体的なPOIには、抗体、たとえば、モノクローナル抗体(mAb)、免疫グロブリン(Ig:immunoglobulin)または免疫グロブリンクラスG(IgG:immunoglobulin class G)、重鎖抗体(HcAb)、あるいはこれらの断片、たとえば、抗原結合性(Fab:fragment-antigen binding)、Fd、単鎖可変断片(scFv)、あるいは操作されたその変異体、たとえば、Fv二量体(ダイアボディー)、Fv三量体(トリアボディー)、Fv四量体、またはミニボディー、および単一ドメイン抗体、たとえば、VHまたはVHHもしくはV−NARがある。
具体的な態様によれば、発酵産物は、POI、その代謝物、または誘導体を使用して生産される。
POIは具体的に、精製形態における、たとえば、実質的に純粋な、細胞培養物から回収してもよい。
ここで使用される「実質的に純粋な」または「精製された」という用語は、少なくとも50%(w/w)、好ましくは、少なくとも60%、70%、80%、90%、または95%の化合物、たとえば、核酸分子またはPOIを含む調製物を指すものとする。純度は、化合物に適する方法(たとえば、クロマトグラフィー法、ポリアクリルアミドゲル電気泳動、HPLC解析など)により測定する。
ここで使用される「組換え」という用語は、「遺伝子操作により調製されることまたはこの結果」を意味するものとする。したがって、「組換え微生物」は、少なくとも1つの「組換え核酸」を含む。組換え微生物は具体的に、発現ベクターもしくはクローニングベクターを含むか、または組換え核酸配列を含有するように遺伝子操作されている。「組換えタンパク質」は、それぞれの組換え核酸を、宿主において発現させることにより作製する。「組換えプロモーター」とは、ここで記載される、機能的に活性なプロモーターとしてのその使用に適する、遺伝子操作された非コードヌクレオチド配列である。
こうして、固有の機能的特性を有する、新規のプロモーターが同定された。予測外のことに、作製プロセス条件における転写強度を解析することにより、PAS_chr1−4(ここでは、CS1遺伝子と呼ばれる、配列番号9)が、P.pastoris内で転写される最も強力な遺伝子として同定された。コードされたCS1タンパク質(配列番号10)は、解糖酵素またはタンパク質ではなく、GPIアンカーを介して細胞表面上に位置すると予測された。US20110021378A1では、P.pastorisのGS115株の、9.43Mbpのゲノム配列が、決定および開示されているが、個々の配列、たとえば、プロモーター配列の特性は、詳細には探索されていない。
このようなプロモーターが、本発明に従い効果的に使用されうることは、驚くべきことであった。たとえば、産業スケールでのPOIの産生において使用された、先行技術によるPichia属のプロモーターは主に、メタノール代謝経路から導出され、POIの産生を誘導するのに、メタノールの添加を必要としたが、これは、所望されないことが多い。本発明に従うプロモーターおよび方法は、発現の増強により産生の増大をもたらしうる利点を有し、特に、メタノールを含まない化学的規定培地を使用する場合に、特異的プロモーターの調節により、夾雑の危険性を低減している。
本発明に従うプロモーターであれば、主に、適切な炭素基質量および具体的な培養培地に対して非依存的に、その改善された活性を及ぼすことが判明した。例として、P.pastorisを、産業的な作製プロセス条件下で、成功裏に培養することができた。まず、基本炭素供給源、たとえば、グリセロールによる回分培養を援用した後、補充炭素供給源、たとえば、グルコースの制限されたフィードを伴う流加培養を施した。最初の回分期の終点近くと、たとえば、制限量の補充炭素供給源を使用する、制限された増殖条件において、試料を採取した。DNAマイクロアレイを伴うトランスクリプトーム解析は、補充炭素供給源により、かつ、剰余炭素、すなわち、過剰量の基本炭素供給源の存在下において強力に活性となる、特異的な遺伝子を明らかにした。pCS1プロモーター配列が、大小の増殖速度において、驚くほど強力なプロモーターとして同定された。先行技術による同等なpGAPプロモーターは、著明に脆弱であった。
基本炭素供給源による強力な組換え遺伝子発現および制限された補充炭素供給源による強力な発現の特色を、発酵プロセスにおいて検証することができた。
本発明に従う構成的プロモーター配列として使用されうるヌクレオチド配列であれば、組換えタンパク質の作製の改善をもたらすであろうし、様々な供給源から得ることができる。本発明に従うプロモーターの由来は、好ましくは、酵母細胞であり、最も好ましくは、メチロトロープ酵母、たとえば、Pichia属またはP.pastoris種であり、次いで、このプロモーターを、親配列として使用して、適切な変異体、たとえば、突然変異体または類似体を作製してもよい。
特に、Pichia属株の、一連の酵母細胞は、異なる種における、それぞれのプロモーター配列またはそれぞれの類似体を得るのに適しうることが想定される。
同定されたP.pastorisプロモーターの変異体であって、機能的に活性な変異体、たとえば、相同体および類似体を含む変異体は、標準的な技法を援用して作製してもよい。たとえば、プロモーターを改変して、発現レベルおよび調節特性を変化させたプロモーター変異体を作り出してもよい。
たとえば、プロモーターライブラリーは、本発明に従うプロモーター配列の突然変異誘発により調製してもよく、これを親分子として使用して、たとえば、異なる発酵戦略下におけるそれらの発現について変異体を解析し、適切な変異体を選択することにより、真核細胞内の遺伝子発現を微調整してもよい。変異体の合成ライブラリーを使用して、たとえば、選択されたPOIを作製するための要件に合致するプロモーターを選択してもよい。このような変異体は、真核宿主細胞内の発現効率を増大させ、炭素供給源に富む条件下およびこれを制限する条件下で高度な発現を示しうる。
示差的な発酵戦略によれば、増殖期と産生期が識別されるであろう。増殖および/または作製は、回分方式、流加方式、または連続方式において適切に施すことができる。回分、流加、連続、攪拌タンク型リアクター、またはエアリフトリアクターを含む、任意の適切なバイオリアクターを使用することができる。
発酵プロセスは、パイロットまたは産業スケールでもたらすと有利である。産業プロセススケールであれば、好ましくは、少なくとも10L、具体的に、少なくとも50L、好ましくは、少なくとも1m3、好ましくは、少なくとも10m3、最も好ましくは、少なくとも100m3の容量を援用するであろう。
たとえば、数日間の典型的なプロセス時間を援用する、100L〜10m3以上のリアクター容量による流加培養、または約50〜1000L以上の発酵槽容量中で、約0.02〜0.15h-1の希釈速度を伴う連続プロセスを指す、産業スケールでの作製条件が好ましい。
適切な培養法は、回分期で始め、大きな比増殖速度における短い指数的流加期を後続させ、小さな比増殖速度における流加期をさらに後続させた、バイオリアクター内の培養を包含してもよい。別の適切な培養法は、回分期に続いて、小さな希釈速度における連続培養相を包含してもよい。
本発明の好ましい態様は、バイオマスをもたらす回分培養に後続させて、高収率のPOI産生のための流加培養を含む。
本発明に従う宿主細胞系を、増殖条件下のバイオリアクター内で培養して、1L当たり少なくとも1gの細胞乾燥重量、より好ましくは、1L当たり少なくとも10gの細胞乾燥重量、好ましくは、1L当たり少なくとも20gの細胞乾燥重量の細胞密度を得ることが好ましい。バイオマス作製のこのような収率を、パイロットまたは産業スケールでもたらすと有利である。
バイオマスの蓄積を可能とする増殖培地、具体的に、基本増殖培地は、典型的に、炭素供給源、窒素供給源、硫黄のための供給源、およびリン酸のための供給源を含む。典型的に、このような培地はさらに、微量元素およびビタミンを含み、アミノ酸、ペプトン、または酵母抽出物をさらに含んでもよい。
好ましい窒素供給源は、NH42PO4、またはNH3もしくは(NH4)2SO4を含む。
好ましい硫黄供給源は、MgSO4、または(NH4)2SO4もしくはK2SO4を含む。
好ましいリン酸供給源は、NH42PO4、またはH3PO4もしくはNaH2PO4、KH2PO4、Na2HPO4もしくはK2HPO4を含む。
さらなる典型的な培地成分は、KCl、CaCl2、および微量元素、たとえば、Fe、Co、Cu、Ni、Zn、Mo、Mn、I、Bを含む。
好ましくは、培地に、ビタミンB7を補充する。
P.pastorisのための典型的な増殖培地は、グリセロール、ソルビトール、またはグルコース、NH42PO4、MgSO4、KCl、CaCl2、ビオチン、および微量元素を含む。
産生期において、産生培地は具体的に、制限量の補充炭素供給源だけを伴って使用する。
好ましくは、宿主細胞系を、適切な炭素供給源を伴う無機培地中で培養し、これにより、単離プロセスをさらに著明に単純化する。好ましい無機培地の例は、活用可能な炭素供給源(たとえば、グルコース、グリセロール、ソルビトール、またはメタノール)、多量元素を含有する塩(カリウム、マグネシウム、カルシウム、アンモニウム、塩化物、硫酸、リン酸)、および微量元素を含有する塩(銅、ヨウ化物、マンガン、モリブデン酸、コバルト、亜鉛、および鉄塩、およびホウ酸)、ならびに、任意に、たとえば、栄養要求性を補完するビタミンまたはアミノ酸を含有する無機培地である。
細胞は、発現系および発現させるタンパク質の性質、たとえば、タンパク質をシグナルペプチドに融合させているのかどうか、およびタンパク質が可溶性であるのか、膜結合型であるのかに応じて、細胞または培養培地から精製されうる所望のPOIの発現を実行するのに適する条件下で培養する。当業者により理解される通り、培養条件は、宿主細胞の種類および援用される特定の発現ベクターを含む因子に従い変化するであろう。
本発明に従う適切なプロモーター配列を、任意にさらなる好ましい調節配列と組み合わせて選択することにより、同等な条件下で、たとえば、流加プロセスにおける増殖制限条件下で、産生細胞と同種のGAPプロモーターである天然pGAPまたはP.pastorisから単離されたGAPプロモーターに照らして、プロモーター活性もしくは転写強度により表されるか、またはプロモーター強度により調節されるように、少なくとも同じであるか、または少なくとも約1.1倍、もしくは少なくとも約1.2倍、少なくとも約1.5倍、少なくとも約2倍、少なくとも約3倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、もしくは少なくとも最大で約15倍の活性をもたらすことが可能である。
典型的な産生培地は、補充炭素供給源、ならびにさらなるNH42PO4、MgSO4、KCl、CaCl2、ビオチン、および微量元素を含む。
たとえば、発酵物に添加される補充炭素供給源のフィードは、最大で50重量%の活用可能な糖を伴う炭素供給源を含んでもよい。補充培地のフィード速度が小さければ、産物または副産物による、細胞の増殖に対する阻害効果が制限され、したがって、基質の供給に基づく高産物収率が可能となるであろう。
発酵は、好ましくは、3〜7.5の範囲のpHで実行する。
典型的な発酵時間は、温度を20℃〜35℃、好ましくは22〜30℃の範囲内として、約24〜120時間である。
一般に、ここで言及される組換え核酸または生物は、当業者に周知の組換え法により作製してもよい。本発明によれば、当技術分野の範囲内にある、従来の分子生物学、微生物学、および組換えDNAの技法を援用してもよい。このような技法は、文献において十分に説明されている。たとえば、Maniatis、Fritsch、およびSambrook、「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」、Cold Spring Harbor(1982)を参照されたい。
本発明の好ましい態様によれば、プロモーターおよび関与性の遺伝子を、ベクターまたは発現構築物にライゲーションすることにより、組換え構築物を得る。これらの遺伝子は、このようなベクターまたは発現構築物を使用して、宿主細胞を形質転換することにより、宿主細胞ゲノムに安定的に組み込むことができる。
発現ベクターは、クローニングベクター、改変されたクローニングベクター、および、具体的に、デザインされたプラスミドを含んでもよいがこれらに限定されない。本発明で使用される好ましい発現ベクターは、宿主細胞内の組換え遺伝子の発現に適する任意の発現ベクターであってもよく、宿主生物に応じて選択される。組換え発現ベクターは、宿主ベクターともまた呼ばれる、宿主生物のゲノム内で複製するかまたはこれに組み込むことが可能な任意のベクターであってもよい。
適切な発現ベクターは典型的に、真核宿主細胞内で、POIをコードするDNAを発現させるのに適するさらなる調節配列を含む。調節配列の例は、オペレーター、エンハンサー、リボソーム結合性部位、ならびに転写および翻訳の開始および終結を制御する配列を含む。調節配列は、DNA配列に作動可能に連結して、発現させてもよい。
宿主細胞内の組換えヌクレオチド配列の発現を可能とするために、発現ベクターは、本発明に従うプロモーターを、コード配列の5’端に隣接して、たとえば、GOIまたはPOIの分泌を可能とするシグナルペプチド遺伝子の上流にもたらしてもよい。こうして、転写は、このプロモーター配列により、調節され、開始される。
シグナルペプチドは、異種シグナルペプチドであってもよく、天然シグナルペプチドと異種シグナルペプチドのハイブリッド体であってもよく、具体的に、タンパク質を産生する宿主生物と異種であってもよく、同種であってもよい。シグナルペプチドの機能は、POIが分泌されて、小胞体に入ることを可能とすることである。シグナルペプチドは通例、タンパク質の、細胞膜の外への輸送を方向付け、これにより、異種タンパク質を分離および精製することを容易とする、短い(3〜60アミノ酸長)ペプチド鎖である。いくつかのシグナルペプチドは、タンパク質が輸送された後で、シグナルペプチダーゼにより、タンパク質から切断される。
例示的なシグナルペプチドは、S.cerevisiaeアルファ−接合因子プレプロペプチドに由来するシグナル配列、およびP.pastoris酸性ホスファターゼ遺伝子(PHO1)に由来するシグナルペプチドである。
プロモーターが、コード配列の転写を制御する場合、プロモーター配列は、コード配列に作動可能に連結されていると理解される。プロモーター配列が、コード配列と天然では会合しない場合、その転写は、天然(野生型)細胞内では、プロモーターにより制御されないか、または配列が、異なる連続する配列で組み換えられている。
関与性の配列の機能を実証するため、調節エレメントのうちの1つ以上を含む発現ベクターを構築して、POIの発現を駆動し、発現収率を、従来の調節エレメントを有する構築物と比較してもよい。実験手順についての詳細な説明は、下記の例において見出すことができる。多様な異なるPOIを高レベルで作製するために、同定された遺伝子は、特異的なヌクレオチドプライマーを使用するPCRにより、P.pastorisから増幅し、発現ベクターにクローニングし、たとえば、酵母ベクターおよびP.pastorisの株を使用して、真核細胞系に形質転換してもよい。本発明に従うプロモーターの、このようにして作製される組換えPOIの量に対する効果を推定するために、真核細胞系を、それぞれの細胞内に、従来の構成的プロモーター、たとえば、増殖依存性プロモーター、たとえば、標準的なpGAPプロモーターを含む株と比較した、振とうフラスコ実験および流加またはケモスタット発酵により培養してもよい。特に、プロモーターの選択は、組換えタンパク質の産生に対して大きな影響を及ぼす。
POIは、形質転換体を培養することにより、組換え宿主細胞系を使用して作製し、これにより、発現させた産物または代謝物を培養物から単離し、任意に、適切な方法により精製して、適切な培地中で得ることができる。
本発明に従う形質転換体は、このようなベクターDNA、たとえば、プラスミドDNAを、宿主に導入し、POIまたは宿主細胞代謝物を高収率で発現させる形質転換体を選択することにより得ることができる。宿主細胞を処理して、真核細胞を形質転換するために従来使用された方法、たとえば、電気パルス法、プロトプラスト法、酢酸リチウム法、およびこれらの変法により、それらが、外来DNAを組み込むことを可能とする。P.pastorisは、好ましくは、電気穿孔により形質転換する。微生物による組換えDNA断片の取込みのための好ましい形質転換法は、化学的形質転換、電気穿孔、またはプロトプラスト化による形質転換を含む。本発明に従う形質転換体は、このようなベクターDNA、たとえば、プラスミドDNAを、宿主に導入し、関与性のタンパク質または宿主細胞代謝物を高収率で発現させる形質転換体を選択することにより得ることができる。
本発明の方法に従う、POIを作製するための複数の異なる手法が好ましい。物質は、真核宿主細胞を、関与性のタンパク質および上記で記載した調節エレメントのうちの少なくとも1つをコードする組換えDNAを保有する発現ベクターで形質転換し、形質転換された細胞の培養物を調製し、培養物を増殖させ、転写およびPOIの産生を誘導し、発酵プロセスの産物を回収することにより、発現させ、加工し、任意に、分泌させる。
本発明に従う宿主細胞は、好ましくは、その発現能または収率について、以下の試験:ELISA、活性アッセイ、HPLC、または他の適切な試験により調べる。
POIは、好ましくは、少なくとも1mg/L、好ましくは、少なくとも10mg/L、好ましくは、少なくとも100mg/L、最も好ましくは、少なくとも1g/Lの収率をもたらす条件を援用して発現させる。
ここで開示される方法は、POIの発現を、好ましくは、分泌形態で、あるいは、細胞内産物として可能とする条件下で、前記組換え宿主細胞を培養することをさらに含んでもよいことが理解される。次いで、組換えにより作製されたPOIまたは宿主細胞代謝物は、細胞培養培地から単離し、当業者に周知の技法によりさらに精製することができる。
本発明に従い作製されたPOIは、典型的に、所望のPOIの濃度の上昇および/または少なくとも1つの不純物の濃度の低下を含む、最新の技法を使用して単離および精製することができる。
POIが、細胞から分泌される場合、POIは、最新の技法を使用して、培養培地から単離および精製することができる。組換え発現産物の、宿主細胞からの分泌は一般に、産物を、酵母細胞を破壊して、細胞内タンパク質を放出させる結果として生じるタンパク質の複雑な混合物からではなく、培養物上清から回収するので、精製プロセスを容易とすることを含む理由で有利である。
所望のPOIを含有する細胞抽出物であって、POIがそこから単離および精製される細胞抽出物を得るのにはまた、培養された形質転換細胞を、超音波により破断させてもよく、機械的、酵素的、または化学的に破断させてもよい。
組換えポリペプチドまたはタンパク質産物を得るための単離および精製法として、方法、たとえば、可溶性の差違を活用する方法、たとえば、塩析および溶媒沈殿、分子量の差違を活用する方法、たとえば、限外濾過およびゲル電気泳動、電荷の差違を活用する方法、たとえば、イオン交換クロマトグラフィー、特異的アフィニティーを活用する方法、たとえば、アフィニティークロマトグラフィー、疎水性の差違を活用する方法、たとえば、逆相高速液体クロマトグラフィー、ならびに等電点の差違を活用する方法、たとえば、等電点電気泳動を使用してもよい。
高度に精製された産物は、夾雑タンパク質を本質的に含まず、好ましくは、少なくとも90%、より好ましくは、少なくとも95%、なおまたは、少なくとも98%、最大で100%の純度を有する。精製産物は、細胞培養物上清の精製により得てもよく、あるいは、細胞破砕物から得てもよい。
単離および精製法としては、以下の標準的な方法:細胞破壊(POIが細胞内で得られる場合)、精密濾過または接線流濾過(TFF)または遠心分離による細胞(破砕物)の分離および洗浄、沈殿または加熱処理によるPOIの精製、酵素的消化によるPOIの活性化、クロマトグラフィーによるPOIの精製、たとえば、イオン交換(IEX)、疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)、アフィニティークロマトグラフィー、サイズ除外(SEC)またはHPLCクロマトグラフィー、限外濾過プロセスを介する濃縮および洗浄によるPOIの沈殿が好ましい。
単離および精製されたPOIは、従来の方法、たとえば、ウェスタンブロット、HPLC、活性アッセイ、またはELISAにより同定することができる。
POIは、任意の真核生物、原核生物、または合成ポリペプチドでありうる。POIは、分泌タンパク質の場合もあり、細胞内タンパク質の場合もある。本発明はまた、自然発生のタンパク質の機能的な相同体、機能的な同等変異体、誘導体、および生物学的に活性な断片の組換えによる作製も提供する。機能的な相同体は、好ましくは、配列の機能的な特徴と同一であるか、またはこれに対応し、これを有する。
ここで言及されるPOIは、好ましくは、治療的、予防的、診断的、解析的、または産業的使用のための、真核宿主細胞と同種の産物であってもよく、異種の産物であってもよい。
POIは、好ましくは、真核細胞、好ましくは、酵母細胞内で、好ましくは、分泌タンパク質として産生される、異種組換えポリペプチドまたはタンパク質である。好ましく作製されたタンパク質の例は、免疫グロブリン、免疫グロブリン断片、アプロチニン、組織因子経路阻害剤、もしくは他のプロテアーゼ阻害剤、およびインスリンもしくはインスリン前駆体、インスリン類似体、成長ホルモン、インターロイキン、組織プラスミノーゲン活性化因子、形質転換増殖因子aもしくはb、グルカゴン、グルカゴン様ペプチド1(GLP−1)、グルカゴン様ペプチド2(GLP−2)、GRPP、因子VII、因子VIII、因子XIII、血小板由来増殖因子1、血清アルブミン、酵素、たとえば、リパーゼもしくはプロテアーゼ、または天然タンパク質と同様の機能を有する、機能的な相同体、機能的な同等変異体、誘導体、および生物学的に活性な断片である。POIは、天然タンパク質と構造的に同様であってもよく、天然タンパク質のCおよびN末端の一方もしくは両方または側鎖への、1つ以上のアミノ酸の付加、天然アミノ酸配列内の1つもしくは多数の異なる部位における、1つ以上のアミノ酸の置換、天然タンパク質の一端もしくは両端、またはアミノ酸配列内の1つもしくは複数の部位における、1つ以上のアミノ酸の欠失、あるいは天然アミノ酸配列内の1つ以上の部位における、1つ以上のアミノ酸の挿入により、天然タンパク質から導出してもよい。このような改変は、上述されたタンパク質のうちの複数について周知である。
POIはまた、宿主細胞内の生化学反応をもたらす、基質、酵素、阻害剤、または共因子からも選択することができ、これは、前記生化学反応または複数の反応のカスケードの生成物を得ること、たとえば、宿主細胞の代謝物を得ることを目的とする。例示的な生成物は、本発明に従う組換えタンパク質またはPOIの発現の後で、収率を増大させて得ることができる、ビタミン、たとえば、リボフラビン、有機酸、およびアルコールでありうる。
一般に、組換え産物を発現させる宿主細胞は、組換えによるPOIの発現に適する、任意の真核細胞でありうる。
好ましい哺乳動物細胞の例は、BHK、CHO(CHO−DG44、CHO−DUXB11、CHO−DUKX、CHO−K1、CHOK1SV、CHO−S)、HeLa、HEK293、MDCK、NIH3T3、NS0、PER.C6、SP2/0、およびVERO細胞である。
本発明に従い宿主細胞として使用される、好ましい酵母細胞の例は、Saccharomyces属(たとえば、Saccharomyces cerevisiae)、Pichia属(たとえば、P.pastoris、またはP.methanolica)、Komagataella属(K.pastoris、K.pseudopastoris、またはK.phaffii)、Hansenula polymorpha、またはKluyveromyces lactisを含むがこれらに限定されない。
最近の文献では、Pichia pastorisを、Komagataella pastoris、Komagataella phaffii、およびKomagataella pseudopastorisに分け、命名し直している。ここでは、Pichia pastorisを、Komagataella pastoris、Komagataella phaffii、およびKomagataella pseudopastorisの全てについて、同義に使用する。
好ましい酵母宿主細胞は、メチロトロープ酵母、たとえば、Pichia属またはKomagataella属、たとえば、Pichia pastoris、またはKomagataella pastoris、もしくはK.phaffii、もしくはK.pseudopastorisから導出される。宿主の例は、酵母、たとえば、P.pastorisを含む。P.pastoris株の例は、CBS 704(=NRRL Y−1603=DSMZ 70382)、CBS 2612(=NRRL Y−7556)、CBS 7435(=NRRL Y−11430)、CBS 9173〜9189(CBS株:CBS−KNAW Fungal Biodiversity Centre、Centraalbureau voor Schimmelcultures、Utrecht、The Netherlands)、およびDSMZ 70877(German Collection of Microorganisms and Cell Cultures)を含むが、また、Invitrogen製の株、たとえば、X−33、GS115、KM71、およびSMD1168も含む。S.cerevisiae株の例は、W303、CEN.PK、およびBYシリーズ(EUROSCARF collection)を含む。上記で記載した株の全ては、使用されて、形質転換体を作製し、異種遺伝子を発現させることに成功している。
本発明に従う、好ましい酵母宿主細胞、たとえば、P.pastorisまたはS.cerevisiaeによる宿主細胞は、産生宿主と異なるP.pastorisまたはS.cerevisiae株から導出してもよい、異種または組換えプロモーター配列を含有する。別の具体的な態様では、本発明に従う宿主細胞は、宿主細胞としての同じ属、種、または株に由来するプロモーターを含む、本発明に従う組換え発現構築物を含む。
本発明のプロモーターは、好ましくは、宿主細胞と同種のタンパク質をコードする遺伝子から導出される。
たとえば、本発明に従うプロモーターは、酵母、たとえば、S.cerevisiae株から導出し、酵母内でPOIを発現させるのに使用してもよい。具体的に好ましい態様は、P.pastorisに由来する、本発明に従うプロモーターであって、P.pastorisによる産生宿主細胞系内で組換えPOIを作製する方法における使用のためのプロモーターに関する。ヌクレオチド配列の由来が同種であることにより、同じ属または種の宿主細胞へのその組込みが容易となり、したがって、おそらく産業的生産プロセスにおける収率を増大させた、POIの安定的作製が可能となる。また、他の適切な酵母、または他の真菌、または他の生物、たとえば、脊椎動物もしくは植物に由来するプロモーターの機能的に活性な変異体も、使用することができる。
POIが、宿主細胞と同種のタンパク質、すなわち、宿主細胞内で自然発生のタンパク質である場合、宿主細胞内のPOIの発現は、その天然プロモーター配列の、本発明に従うプロモーター配列との交換によりモジュレートしてもよい。
この目的は、たとえば、宿主細胞を、部位特異的組換えを可能とする標的遺伝子の相同な配列、プロモーター配列、および宿主細胞に適する選択マーカーを含む組換えDNA分子で形質転換することにより達成してもよい。部位特異的組換えは、プロモーター配列を、POIをコードするヌクレオチド配列と作動可能に連結するために施すものとする。これは、天然プロモーター配列の代わりに、本発明に従うプロモーター配列によるPOIの発現を結果としてもたらす。
本発明の具体的に好ましい態様では、プロモーター配列は、プロモーター活性を、POIの天然プロモーター配列に照らして増大させている。
本発明によれば、POIをコードするヌクレオチド配列に作動可能に連結された、本発明に従うプロモーター配列を含む、P.pastorisによる宿主細胞系をもたらすことが好ましい。
本発明によれば、また、本発明に従うプロモーターを含み、POIをコードする対象の遺伝子を組み込む準備ができている、本発明に従うワイルドカードベクターまたは宿主細胞をもたらすことも可能である。したがって、ワイルドカード細胞系とは、あらかじめ形成された宿主細胞系であって、その発現能について特徴づけられた宿主細胞系である。これは、たとえば、部位特異的リコンビナーゼ媒介型カセット交換を使用してPOIを作製するための産生細胞系を作り出すための、革新的な「ワイルドカード」プラットフォーム戦略に従う。このような新規の宿主細胞は、高度に効率的な産生細胞系を繁殖可能とするために、対象の遺伝子(GOI)の、たとえば、所定のゲノム発現ホットスポットへの、数日以内のクローニングを容易とする。
好ましい態様によれば、本発明に従う方法では、宿主細胞のゲノムへの組込みに適するプラスミドにより、細胞1個当たり単一コピーまたは複数コピーでもたらされる、POIをコードする組換えヌクレオチド配列を援用する。POIをコードする組換えヌクレオチド配列はまた、自己複製型プラスミドによっても、細胞1個当たり単一コピーまたは複数コピーでもたらされる。
本発明に従う好ましい方法は、真核生物発現ベクター、好ましくは、酵母発現ベクターであるプラスミドを援用する。発現ベクターは、クローニングベクター、改変されたクローニングベクター、および、具体的に、デザインされたプラスミドを含んでもよいがこれらに限定されない。本発明で使用される好ましい発現ベクターは、宿主細胞内の組換え遺伝子の発現に適する任意の発現ベクターであってもよく、宿主生物に応じて選択される。組換え発現ベクターは、宿主ベクターともまた呼ばれる、宿主生物のゲノム内で複製するかまたはこれに組み込むことが可能な任意のベクター、たとえば、本発明に従うDNA構築物を保有する酵母ベクターであってもよい。好ましい酵母発現ベクターは、Hansenula属、Pichia属、Candida属、およびTorulopsis属により代表されるメチロトロープ酵母からなる群から選択される酵母内の発現のための発現ベクターである。
本発明では、pPICZ、pGAPZ、pPIC9、pPICZアルファ、pGAPZアルファ、pPIC9K、pGAPHis、またはpPUZZLEから導出されたプラスミドを、ベクターとして使用することが好ましい。
本発明の好ましい態様によれば、関与性の遺伝子を、ベクターにライゲーションすることにより、組換え構築物を得る。このようなベクターを使用して、宿主細胞を形質転換することにより、これらの遺伝子を、宿主細胞ゲノムに安定的に組み込むことができる。遺伝子によりコードされるポリペプチドは、形質転換体を培養することにより、組換え宿主細胞系を使用して作製し、これにより、発現させたPOIを培養物から単離し、発現させた産物に適する方法、特に、POIを夾雑タンパク質から分離する方法により精製して、適切な培地中で得ることができる。
発現ベクターは、1つ以上の表現型選択マーカー、たとえば、抗生剤耐性を付与するか、または独立栄養要件を課するタンパク質をコードする遺伝子を含んでもよい。酵母ベクターは一般に、酵母プラスミドに由来する複製起点、自己複製型配列(ARS)、あるいは、宿主ゲノムへの組込みのために使用される配列、プロモーター領域、ポリアデニル化のための配列、転写終結のための配列、および選択マーカーを含有する。
たとえば、前駆配列および/またはPOIをコードするDNA配列、プロモーターおよびターミネーターのそれぞれをライゲーションし、それらを、組込みまたは宿主の複製に必要な情報を含有する適切なベクターに挿入するのに使用される手順は、当業者に周知であり、たとえば、J.Sambrookら(A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor、1989)により記載されている。
本発明に従う調節エレメント、および/またはPOIを、組込み標的として使用するベクターは、調節エレメントおよび/またはPOIをコードするDNA配列の全体を含有するDNA構築物をまず調製し、次いで、この断片を、適切な発現ベクターに挿入することにより構築してもよく、個々のエレメントについての遺伝子情報を含有するDNA断片を逐次的に挿入した後でライゲーションすることにより構築してもよいことが理解されるであろう。
また、マルチクローニング部位を有するベクターであり、所望の異種遺伝子を、マルチクローニング部位に組み込んで、発現ベクターをもたらしうる、マルチクローニングベクターも、本発明に従い使用することができる。発現ベクター内で、プロモーターは、POIの遺伝子の上流に配置され、遺伝子の発現を調節する。マルチクローニングベクターの場合、POIの遺伝子を、マルチクローニング部位に導入するため、プロモーターは、マルチクローニング部位の上流に配置される。
本発明に従う組換え宿主細胞を得るために準備されるDNA構築物は、確立された標準的な方法、たとえば、ホスホルアミダイト法を介して、合成により調製してもよい。DNA構築物はまた、たとえば、ゲノムまたはcDNAライブラリーを調製し、標準的な技法(Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor、1989)に従い、合成のオリゴヌクレオチドプローブを使用する、ハイブリダイゼーションにより、本発明のポリペプチドの全部または一部をコードするDNA配列についてスクリーニングすることにより得られた、ゲノム由来のDNA構築物であってもよく、cDNA由来のDNA構築物であってもよい。最後に、DNA構築物は、必要に応じて、合成由来の断片、ゲノム由来の断片、またはcDNA由来の断片であって、DNA構築物の全体の多様な部分に対応する断片を、標準的な技法に従いアニールすることにより調製された、合成由来のDNA構築物とゲノム由来のDNA構築物を混合したDNA構築物であってもよく、合成由来のDNA構築物とcDNA由来のDNA構築物を混合したDNA構築物であってもよく、ゲノム由来のDNA構築物とcDNA由来のDNA構築物を混合したDNA構築物であってもよい。
別の好ましい態様では、酵母発現ベクターは、たとえば、相同組換えにより、酵母ゲノム内に安定的に組み込むことが可能である。
細胞を、本発明に従う調節エレメントおよび/またはPOI遺伝子で形質転換することにより得られる、本発明に従う形質転換宿主細胞は、好ましくは、まず、多数の細胞を効率的に増殖させる条件で培養してもよい。POIを発現させるために細胞系を調製する場合は、培養法を、発現産物を作製するように選択する。
具体例は、レポータータンパク質を産生する、組換え産生P.pastoris細胞系の流加発酵であって、グリセロール回分培地およびグルコース流加培地を援用する流加発酵に関する。比較プロモーター活性研究により、本発明に従うプロモーターは、組換えタンパク質の作製のために、成功裏に使用されうることが実証されている。
さらなる例によれば、ヒト血清アルブミン(HSA:human serum albumin)を、POIとして、グルコース制限条件下で作製し、HSA収率および遺伝子コピー数を決定した。
別の例によれば、本発明に従うプロモーターの制御下で、HSAを発現させるP.pastoris株の流加培養を実施した。
さらなる例は、pCS1プロモーターの転写制御下で、モデルタンパク質としての、ブタカルボキシペプチダーゼBを発現させることに言及する。
しかし、さらなる例は、pCS1の転写制御下における、抗体断片の発現に言及する。
さらなる例は、本発明に従うプロモーターのサイズまたは長さ変異体、たとえば、pCS1配列と5’端における伸長を含む、伸長pCS1配列であるpCS1a(配列番号2)、または長さを約80bp〜800bpの範囲内とするpCS1の断片に言及する。
前出の記載は、以下の例を参照することにより、より完全に理解されるであろう。しかし、このような例は、本発明の1つ以上の態様を実施する方法を表すだけのものであり、本発明の範囲を限定するものとして読まれるべきではない。
[実施例]
下記の例は、新規のプロモーターを同定し、Pichia pastoris内のその発現特性を解析するのに使用される材料および方法を例示する。
例1
P.pastoris内で強力に発現する遺伝子の同定
強力な遺伝子およびそのそれぞれのP.pastorisのプロモーターを同定するために、DNAマイクロアレイを使用して、遺伝子発現パターンの解析を行った。グリセロール回分およびグルコース制限(ケモスタット)中で増殖させたP.pastoris細胞について解析した。
a)株
補充物質を伴わずに最小培地により増殖しうる、野生型P.pastoris株(CBS2612:CBS−KNAW Fungal Biodiversity Centre、Centraalbureau voor Schimmelcultures、Utrecht、The Netherlands)を使用した。
b)P.pastorisの培養
発酵は、最終作業容量を2.5Lとして、Miniforsリアクター(Infors−HT、Switzerland)により実施した。
以下の培地を使用した。
PTM1微量元素塩(trace salt)原液は、1リットル当たり、
6.0gのCuSO4・5H2O、0.08gのNaI、3.36gのMnSO4・H2O、0.2gのNa2MoO4・2H2O、0.02gのH3BO3、0.82gのCoCl2、20.0gのZnCl2、65.0gのFeSO4・7H2O、0.2gのビオチン、および5.0mlのH2SO4(95%〜98%)
を含有した。
グリセロール回分培地は、1リットル当たり、
2gのクエン酸一水和物(C687・H2O)、39.2gのグリセロール、20.8gのNH42PO4、0.5gのMgSO4・7H2O、1.6gのKCl、0.022gのCaCl2・2H2O、0.8mgのビオチン、および4.6mlのPTM1微量元素塩原液
を含有した。HClを添加して、pHを5とした。
グリセロール流加培地は、1リットル当たり、
632gのグリセロール、8gのMgSO4・7H2O、22gのKCl、および0.058gのCaCl2・2H2
を含有した。
ケモスタット培地は、1リットル当たり、
2gのクエン酸一水和物(C687・H2O)、99.42gのグルコース一水和物、22gのNH42PO4、1.3gのMgSO4・7H2O、3.4gのKCl、0.02gのCaCl2・2H2O、0.4mgのビオチン、および3.2mlのPTM1微量元素塩原液
を含有した。HClを添加して、pHを5とした。
溶存酸素は、攪拌器速度を500〜1250rpmとして、DO=20%に制御した。曝気速度は、空気60L h-1とし、温度は、25℃に制御し、pH設定点である5は、NH4OH(25%)を添加することにより制御した。
発酵を開始するために、1.5Lの回分培地を、発酵槽に滅菌濾過し、P.pastoris(YPG中、180rpm、28℃の一晩にわたる前培養による)を、出発光学濃度(OD600)を1として接種した。約25時間の回分期により、約20g/Lの乾燥バイオマス濃度に到達させた後、グルコース培地を伴う10時間にわたる指数的流加により、約50g/Lの乾燥バイオマス濃度をもたらした。次いで、容量を1.5Lに低減し、フィード/回収速度を0.15L h-1として、ケモスタット培養を開始し、一定の増殖速度であるμ=0.1を結果としてもたらした。発酵は、ケモスタットを開始した50時間後に停止させた。
この発酵を3回実施して、信頼できるマイクロアレイ解析に必要な生物学的複製物を得た。
ケモスタットにおける炭素制限条件(検出可能な残留グルコースを伴わない)は、培養物上清のHPLC解析により検証した。
c)サンプリング
グリセロール回分期の終点と、グルコースケモスタットの定常状態条件において試料を採取した。光学濃度または酵母の乾燥質量の決定、定性的顕微鏡観察、および細胞生存解析としての日常的なサンプリングを、各発酵時に並行して行った。マイクロアレイ解析のために、試料を採取し、以下の通りに処理した。最適なクェンチングのために、9mLの細胞培養液を、5%の氷冷フェノール(Sigma)溶液(無水エタノール中)4.5mLと速やかに混合し、アリコート分割した。2mLずつを、あらかじめ冷却した回収試験管(GE healthcare、NJ)内で遠心分離し(13200rpmで1分間にわたり)、上清を完全に除去し、試験管を、RNA精製まで−80℃で保管した。
d)マイクロアレイハイブリダイゼーションのためのRNA精製および試料調製
RNAは、供給元の指示書(Ambion、US)に従い、TRI試薬を使用して単離した。細胞ペレットを、TRI試薬中に再懸濁させ、FastPrep24(M.P.Biomedicals、CA)を、5m s-1で、40秒間にわたり使用して、ガラスビーズによりホモジナイズした。クロロホルムを添加した後、試料を遠心分離し、イソプロパノールを添加することにより、全RNAを水性相から沈殿させた。ペレットを、70%のエタノールで洗浄し、乾燥させ、RNアーゼ非含有水中に再懸濁させた。RNA濃度は、Nanodrop1000分光光度計(NanoDrop製、DE)を使用してOD260を測定することにより決定した。試料に由来する残りのDNAは、DNA free Kit(Ambion、CA)を使用して除去した。10μgのRNAと同等な試料容量を、RNアーゼ非含有水中で50μLまで希釈し、次いで、DNアーゼ緩衝液IおよびrDNアーゼIを添加し、37℃で30分間にわたりインキュベートした。DNアーゼ不活化試薬の添加後、試料を遠心分離し、上清を、未使用の試験管に移した。RNA濃度を、上記で記載した通りに再度決定した。加えて、RNAナノチップ(Agilent)を使用して、RNAの完全性を解析した。試料の増幅および標識付け〜ハイブリダイゼーションにわたるマイクロアレイワークフローをモニタリングするため、Spike In Kit(Agilent、製品番号:5188−5279)を、陽性対照として使用した。Spike In Kitは、アデノウイルスに由来する10の異なるポリアデニル化転写物を含有し、これを、固有のRNA試料と併せて増幅し、標識付けし、共ハイブリダイズする。試料は、Quick Amp Labelling Kit(Agilent、製品番号:5190−0444)を使用して、Cy3およびCy5により標識付けした。そこで、500ngの精製試料RNAを8.3μLのRNアーゼ非含有水中で希釈し、2μLのSpike AまたはB、および1.2μLのT7プロモータープライマーを添加した。混合物を、65℃で10分間にわたり変性させ、氷上で5分間にわたり保った。次いで、8.5μLのcDNAマスターミックス(試料1例当たり:4μLの5倍濃度のfirst strand緩衝液、2μLの0.1MのDTT、1μLの10mMのdNTPミックス、1μLのMMLV−RT、0.5μLのRNAse out)を添加し、40℃で2時間にわたりインキュベートし、次いで、15分間にわたり65℃に移行させ、5分間にわたり氷上に置いた。転写マスターミックス(試料1例当たり:15.3μLのヌクレアーゼ非含有水、20μLの転写緩衝液、6μLの0.1MのDTT、6.4μLの50%のPEG、0.5μLのRNアーゼ阻害剤、0.6μLの無機ホスファターゼ、0.8μLのT7 RNAポリメラーゼ、2.4μLのシアニン3またはシアニン5)を調製し、各試験管に添加し、40℃で2時間にわたりインキュベートした。得られた、標識付けされたcRNAを精製するために、RNeasy Mini Kit(Qiagen、型番74104)を使用した。試料は、−80℃で保管した。cRNA濃度および標識付け効率の定量化を、Nanodrop分光光度計で行った。
e)マイクロアレイ解析
Gene Expression Hybridisation Kit(Agilent、型番5188−5242)を、標識付けされた試料cRNAのハイブリダイゼーションのために使用した。ハイブリダイゼーション試料を調製するために、300ngずつのcRNA(Cy3およびCy5)および6μLの10倍濃度のブロッキング剤を、ヌクレアーゼ非含有水で、24μLの最終容量まで希釈した。1μLの25倍濃度の断片化緩衝液の添加後、混合物を、60℃で30分間にわたりインキュベートした。次いで、25μLのGEx Hybridisation Buffer HI−RPMを添加して、反応を停止させた。13,200rpmで1分間にわたる遠心分離の後、試料を氷上で冷やし、速やかにハイブリダイゼーションのために使用した。社内でデザインされたP.pastoris特異的オリゴヌクレオチドアレイ(AMAD−ID:026594、8×15Kカスタムアレイ、Agilent)を使用した。Microarray Hybridisation Chamber User Guide(Agilent G2534A)に従い、マイクロアレイハイブリダイゼーションを行った。まず、ガスケットスライドのカバーを取り外し、Agilentラベルを上向きにしてチャンバー基部上に置いた。試料(アレイ1つ当たり40μL)を、8つの四角の各々の中央部にロードした。次いで、マイクロアレイスライドを、ガスケットスライド上に注意深く置き(Agilentラベルを下向きにして)、チャンバーカバーをかけ、クランプで固定した。ハイブリダイゼーションは、ハイブリダイゼーションオーブン内、65℃で17時間にわたり行った。走査する前に、マイクロアレイチップを洗浄した。そこで、チャンバーを取り外し、洗浄緩衝液1中に浸漬しながら、サンドイッチスライドを互いから引き離した。マイクロアレイを、洗浄緩衝液1を伴う別のディッシュに直接移し、1分間にわたり洗浄し、洗浄緩衝液2(温度を少なくとも30℃とする)に移し、さらに1分間にわたり洗浄した。スライドの縁辺部をティッシュペーパーと接触させることによりマイクロアレイスライドを乾燥させた後、スライドを、スライドホルダーに入れた(Agilentラベルを上向きにして)。スライドホルダーをカルーセルに入れ、走査を開始した。
f)マイクロアレイデータのデータ収集および統計学的査定
画像は、G2565AA Microarrayスキャナー(Agilent)により、50nmの分解能で走査し、Agilent Feature Extraction9.5ソフトウェアにインポートした。Agilent Feature Extraction9.5は、スポット強度の定量化のために使用した。次いで、さらなる標準化およびデータ解析のために、生の平均スポット強度データを、オープンソースのソフトウェアRにインポートした。
データを前処理および標準化するため、Rパッケージ limma、vsn、およびmarrayを使用した。強度データは、バックグラウンド補正せず、VSNにより標準化した。
強力に発現する構成的遺伝子を同定するために、マイクロアレイデータを、両方の状態においてシグナル強度が大きなエントリーについてブラウズした。最も強力に転写された遺伝子を、両方の状態におけるシグナル強度と共に、表1に示す。pGAPおよびpTEFのデータを、基準として付加する。平均で、pCS1は、何れの条件(グリセロール回分およびグルコース制限ケモスタット培養)でも、pGAPをおよそ30%上回ったのに対し、pTEFは、pGAPより約12%脆弱である。
Figure 2016508742
例2
eGFPを、細胞内で発現させるレポーター遺伝子として使用する、新規に同定されたプロモーターであるpCS1についての、P.pastoris内の比較プロモーター活性研究
新規に同定されたプロモーターの特性を解析するために、振とうフラスコスクリーニングを、以下の通りに実施した。グリセロールを炭素供給源として含有する富栄養培地により、24時間にわたる前培養(プロセスの回分期をシミュレートする)を行った後、最小培地およびグルコースフィードビーズによる主培養(プロセスのグルコース制限流加期をシミュレートする)を行った。緑色蛍光タンパク質(eGFP)を、プロモーター活性についての細胞内レポータータンパク質として使用した。
a)株および発現ベクター
P.pastorisの野生型株(CBS2612:CBS−KNAW Fungal Biodiversity Centre、Centraalbureau voor Schimmelcultures、Utrecht、The Netherlands)を、宿主株として使用した。株の形質転換は、E.coliのための複製起点(pUC19)、E.coliおよび酵母内の選択のための抗生剤耐性カセット(Zeocinに対する耐性を付与するSh ble遺伝子)、複数のクローニング部位、およびS.cerevisiaeのCYC1転写ターミネーター、およびP.pastorisのゲノム(3’側のAOX1領域)への組込みのための遺伝子座からなる、対象の遺伝子(GOI)のための発現カセットを含む、pPUZZLEと名付けられた自社製のベクター(Stadlmayrら、J.Biotechnol、2010、150(4):519〜29)により実行した。
b)新規に同定されたプロモーターであるpCS1の増幅およびeGFPをGOIとして含有するpPUZZLE発現ベクターへのクローニング
pCS1プロモーター(配列番号)は、開始コドンATGまでの985bpにわたる、CS1遺伝子(例1を参照されたい)の5’側非コード領域を含み、PCR(Phusion Polymerase、New England Biolabs)により、表2に示すプライマーを使用して、P.pastorisのゲノムDNAから増幅した。配列は、pPUZZLE発現ベクターであるpPM1aZ10_eGFPにクローニングし、ApaIおよびSbfIで切断する結果として、pPM1aZ10_pCS1_eGFPをもたらした。加えて、一般に使用されるプロモーターであるグリセルアルデヒド3−リン酸デヒドロゲナーゼのプロモーター(P.pastorisのpGAP、ここでは、配列番号13)を含有するベクターであるpPM1aZ10_pGAP_eGFPを、基準として使用した。ApaIおよびSbfI制限部位を使用して、プロモーターを、eGFP遺伝子の開始コドンの上流に挿入した(表2および3を参照されたい)。プロモーター配列の正確さは、サンガーシークエンシングにより検証した。
Figure 2016508742
Figure 2016508742
c)プロモーター活性を解析するための、P.pastoris内のeGFPの発現
エレクトロコンピテントのP.pastorisへの電気穿孔(2kV、4ミリ秒、GenePulser、BioRad)の前に、全てのプラスミドを、3’側のAOXゲノム組込み領域内で、AscIにより直鎖化した。
陽性の形質転換体を、25μg/mLのZeocin(Invivogen、CA)を含有するYPDプレート(1リットル当たり:10gの酵母抽出物、20gのペプトン、20gのグルコース、20gの寒天)の上で選択した。コロニーPCRを使用して、形質転換されたプラスミドの存在を確認した。そこで、P.pastorisのコロニーを、5分間ずつにわたり、加熱および冷却することにより、ゲノムDNAを得、適切なプライマーによるPCRに直接適用した。発現をスクリーニングするために、単一のコロニーを、前培養物として、液体YPG−Zeo培地(1リットル当たり:20gのペプトン、10gの酵母抽出物、12.6gのグリセロール、および25mgのZeocin)に接種した。約24時間後、前培養物を使用して、2mLの合成スクリーニング培地(1リットル当たり:22gのグルコース一水和物、22gのクエン酸、3.15gの(NH42HPO4、0.027gのCaCl2・2H2O、0.9gのKCl、0.5gのMgSO4・7H2O、500倍濃度のビオチン2mL、および1.47mLの微量元素塩原液[1リットル当たり:6gのCuSO4・5H2O、0.08gのNaI、3gのMnSO4・H2O、0.2gのNa2MoO4・2H2O、0.02gのH3BO3、0.5gのCoCl2、20gのZnCl2、5gのFeSO4・7H2O、および5mLのH2SO4];5MのKOHによりpHを5とし;濾過により滅菌された)および2クォーターのグルコースフィードビーズ(24時間後に第2のフィードビーズを添加する;Kuhner、CH)中のOD600を0.1として、主培養物に接種した。グルコース制限増殖条件は、以下の式:(グルコース)=1.63×t0.74[ディスク1枚当たりのmg]により記載される、これらのフィードビーズの緩徐なグルコース放出動態により達成した。試料は、前培養の終点、ならびに主培養物への接種の24および48時間後において採取した。細胞密度は、OD600を測定することにより決定し、eGFPの発現は、Stadlmayrら(J.Biotechnology、2010年12月、150(4):519〜29)において記載されている通りに、フローサイトメトリーにより解析した。各試料当たり10,000個ずつの細胞について解析した。P.pastorisの自己蛍光は、形質転換されていないP.pastorisの野生型細胞を使用して測定し、シグナルから差し引いた。eGFPの相対発現レベル(細胞サイズに照らした蛍光強度)は、構成的pGAPプロモーターの制御下で、eGFPを発現させるクローンによる、eGFP発現レベルの百分率として示す。
結果を、表4に示す。pCS1プロモーターの制御下で発現させるクローンは、前培養(回分)終点において、pGAPを38%上回り、主培養(流加)終点におけるGFPの発現レベルは4倍であった。
Figure 2016508742
d)例2cのP.pastorisクローンによるeGFP遺伝子コピー数(GCN)の決定
GCNとは、P.pastorisのゲノムに組み込まれる、レポータータンパク質発現カセットの数を表す。pCS1またはpGAPの制御下でeGFPを発現させるクローンのGCNは、下記の例5でさらに記載される通りに決定した。eGFPの発現レベルは、例2cにおける通りに解析した。例示的に、各プロモーター1つずつのクローンについての結果を、表5に示す。新規のpCS1プロモーターの制御下においてeGFPを発現させるクローンは、スクリーニング培養物中に同じGCNを伴う、pGAPプロモーター下において発現させるクローンと比較して、2倍量のeGFPを産生した。
Figure 2016508742
e)流加発酵における、pCS1プロモーター強度の解析
作製プロセス様条件におけるpCS1プロモーター活性を評価するため、各々が1コピーずつのeGFPの発現カセット(例2dを参照されたい)を保有する、1つのpCS1クローン(pCS1_eGFP#4)および1つのpGAPクローン(pGAP_eGFP#2)の流加培養を実施した。
流加発酵は、最終作業容量を1.0Lとして、DASGIPリアクター内で実施した。
以下の培地を使用した。
PTM1微量元素塩原液は、1リットル当たり、
6.0gのCuSO4・5H2O、0.08gのNaI、3.36gのMnSO4・H2O、0.2gのNa2MoO4・2H2O、0.02gのH3BO3、0.82gのCoCl2、20.0gのZnCl2、65.0gのFeSO4・7H2O、0.2gのビオチン、および5.0mlのH2SO4(95%〜98%)
を含有した。
グリセロール回分培地は、1リットル当たり、
2gのクエン酸一水和物(C687・H2O)、39.2gのグリセロール、12.6gのNH42PO4、0.5gのMgSO4・7H2O、0.9gのKCl、0.022gのCaCl2・2H2O、0.4mgのビオチン、および4.6mlのPTM1微量元素塩原液
を含有した。HClを添加して、pHを5とした。
グルコース流加培地は、1リットル当たり、
464gのグルコース一水和物、5.2gのMgSO4・7H2O、8.4gのKCl、0.28gのCaCl2・2H2O、0.34mgのビオチン、および10.1mLのPTM1微量元素塩原液
を含有した。
溶存酸素は、攪拌器速度を400〜1200rpmとして、DO=20%に制御した。曝気速度は、空気24L h-1とし、温度は、25℃に制御し、pH設定点である5は、NH4OH(25%)を添加することにより制御した。
発酵を開始するために、400mLの回分培地を、発酵槽に滅菌濾過し、P.pastorisのクローンであるpCS1_eGFP#1を、出発光学濃度(OD600)を1として接種した(前培養物から)。約25時間の回分期(約20g/Lの乾燥バイオマス濃度に到達する)の後、7時間にわたる指数的フィードで始め、15g/Lの一定のフィード速度で13時間にわたる、グルコース制限流加を施し、最終的な約110g/Lの乾燥バイオマス濃度をもたらした。試料は、回分および流加期において採取し、プレートリーダー(Infinite 200、Tecan、CH)を使用して、eGFPの発現について解析した。そこで、試料を光学濃度(OD600)5まで希釈した。発酵は、二連で実施した。結果を、表6に、バイオリアクター1槽当たりの相対蛍光(FL/r:relative fluorescence per bioreactor)として示す。pCS1プロモーターの制御下で発現させるクローンによるeGFPの発現は、pGAPと比較して、全発酵プロセスにおいて平均で4.2倍であった。
Figure 2016508742
f)異なる増殖条件および基質におけるpCS1プロモーターの活性
異なる培地組成および増殖条件によるpCS1プロモーターの活性について、より多くの情報を得るために、pCS1_eGFP#4株を、異なる炭素供給源を含有するYP培地中、異なるpH値、合成最小培地中で培養した。試料は、主培養物への接種の24および48時間後に採取し、例2cで記載した通りに、フローサイトメトリーにより解析した。
pCS1−eGFP#4または基準としてのpGAP−eGFP#2の単一のコロニーを、前培養物として、液体YPG−Zeo培地(1リットル当たり:20gのペプトン、10gの酵母抽出物、12.6gのグリセロール、および25mgのZeocin)に接種した。約24時間後、前培養物を使用して、2mLの主培養培地中のOD600を0.1として、主培養物に接種した。主培養培地は、以下の通り:YP 1リットル当たり:20gのペプトン、10gの酵母抽出物、pH7.0〜7.5;YPD:YP+2%のグルコース、YPG:YP+2%のグリセロール;YPM:YP+1%のメタノール;YPE:YP+1%のエタノール;YPフィードビーズ:YP+1グルコースフィードビーズ(Kuhner、CH、直径6mm);ph4.5のYPD:HClによりpH4.5としたYPD;SCD:合成スクリーニング培地(1リットル当たり:22gのグルコース一水和物、22gのクエン酸、3.15gの(NH42HPO4、0.027gのCaCl2・2H2O、0.9gのKCl、0.5gのMgSO4・7H2O、500倍濃度のビオチン2mL、および1.47mLの微量元素塩原液[1リットル当たり:6gのCuSO4・5H2O、0.08gのNaI、3gのMnSO4・H2O、0.2gのNa2MoO4・2H2O、0.02gのH3BO3、0.5gのCoCl2、20gのZnCl2、5gのFeSO4・7H2O、および5mLのH2SO4];5MのKOHによりpHを5とし;濾過により滅菌された)であった。19時間後および43時間後に、フィードビーズを伴う培養物を除く全ての培養物に、0.5%のそれぞれの炭素供給源をフィードした。細胞サイズ当たりのeGFP蛍光の結果を、表7に示す。
YPDでは、pCS1による発現レベルが、24時間後および48時間後において、pGAPによる発現レベルを2倍上回ったのに対し、YPGでは、pCS1による発現レベルは、24時間後および48時間後において、3.9倍であった。新規のpCS1プロモーターの制御下における発現レベルは、メタノールもしくはエタノールを炭素供給源として使用するか、またはpH4.5で培養した場合、さらに上昇した(表7)。
Figure 2016508742
例3
ヒト血清アルブミン(HSA)を、細胞外発現レポーター遺伝子として使用する、新規に同定されたプロモーターであるpCS1についての、P.pastoris内の比較プロモーター活性研究
分泌型レポータータンパク質であるHSAの発現についての、新規に同定されたプロモーターの特性を解析するために、振とうフラスコスクリーニングを、以下の通りに実施した。グリセロールを炭素供給源として含有する富栄養培地中で、24時間にわたる前培養(プロセスの回分期をシミュレートする)を行った後、緩衝処理された富栄養培地(2%のグルコース)中で、主培養を行った。主培養物には、0.5%のグルコースを、12時間ごとにフィードした。
a)株および発現ベクター
P.pastorisの野生型株(CBS2612:CBS−KNAW Fungal Biodiversity Centre、Centraalbureau voor Schimmelcultures、Utrecht、The Netherlands)を、宿主株として使用した。株の形質転換は、pPUZZLEと名付けられた自社製のベクター(Stadlmayrら、J.Biotechnol、2010年12月、150(4):519〜29)により実行し、陽性の形質転換体の選択は、Zeocin耐性に基づいた。ヒト血清アルブミン(HSA)の分泌性発現のために、その天然の分泌リーダー配列を使用した。
b)新規に同定されたプロモーターであるpCS1の増幅および自社製発現ベクターへのクローニング
例2bで増幅したプロモーターを、pPUZZLE発現ベクターであるpPM1aZ10_HSAにクローニングする結果として、pPM1aZ10_pCS1_HSAをもたらした。加えて、一般に使用されるグリセルアルデヒド3−リン酸デヒドロゲナーゼのプロモーター(pGAP)を含有するベクターであるpPM1aZ10_pGAP_HSAを、基準として使用した。ApaIおよびSbfI制限部位を使用して、プロモーターを、HSA遺伝子の開始コドンの上流に挿入した(表3を参照されたい)。プロモーター配列の正確さは、サンガーシークエンシングにより検証した。
c)新規に同定されたプロモーターであるpCS1の制御下における、P.pastoris内のHSAの発現
P.pastorisへの電気穿孔(P.pastorisのための標準的な形質転換プロトコールを使用する)の前に、AscI制限酵素を使用して、全てのプラスミドを直鎖化した。陽性の形質転換体の選択は、25μg/mLのZeocinを含有するYPD(1リットル当たり:10gの酵母抽出物、20gのペプトン、20gのグルコース、20gの寒天)プレート上で実施した。例2cで記載した通りに、コロニーPCRを使用して、形質転換されたプラスミドの存在を確認した。
HSAの発現をスクリーニングするために、単一のコロニーを、前培養物として、液体YPG−Zeo培地(1リットル当たり:20gのペプトン、10gの酵母抽出物、12.6gのグリセロール、および25mgのZeocin)に接種した。約24時間後、前培養物を使用して、BM培地(1リットル当たり:20gのペプトン、10gの酵母抽出物、20gのグルコース、13.4gの硫酸アンモニウムを伴う酵母窒素塩基、0.4mgのビオチン、および100mMのリン酸カリウム緩衝液、pH6.0)中のOD600を0.1として、主培養物に接種した。主培養物には、0.5%のグルコースを、12時間ごとにフィードした。試料は、主培養の終点において採取した。バイオマス濃度は、OD600または湿細胞重量を測定することにより決定した。培養物上清中のHSA濃度は、供給元の指示マニュアルに従い、Human Albumin ELISA Qauntitation Set(型番E80−129、Bethyl Laboratories、TX、USA)により定量化した。HSA基準物質は、400ng mL-1の出発濃度で使用した。試料は、試料希釈液(50mMのトリス−HCl、140mMのNaCl、1%(w/v)BSA、0.05%(v/v)Tween20、pH8.0)中で相応に希釈した。pGAPの制御下でHSA(1HSA遺伝子コピー)を発現させるクローン、およびpCS1の制御下でeGFPを発現させる9つのクローンのスクリーニングによるHSA力価を、表8に示す。全てのpCS1制御クローンは、1遺伝子コピーを伴うpGAP制御クローンの2倍量のHSAを分泌する。HSAのGCNは、例5において記載される通りに決定した。pCS1の制御下にある、全ての解析されたクローンは、1コピーの発現カセット(1GCN)を保有した。したがって、新規のpCS1プロモーターの制御下にある全てのクローンのHSA分泌収率(バイオマス1g当たりの分泌HSA mg)は、スクリーニング培養物中に同じGCNを伴うpGAPクローンの2倍であった。
Figure 2016508742
例4
pCS1プロモーターの制御下でHSAを発現させるP.pastoris株の流加培養
作製プロセス様条件におけるHSAの発現を駆動するpCS1の能力について解析するため、1コピーのHSA発現カセット(例3を参照されたい)を保有する、1つのpCS1クローン(pCS1_HSA#1)の流加培養を実施した。
発酵は、最終作業容量を1.0Lとして、DASGIPバイオリアクター内で実施した。pGAPの制御下でHSAを発現させる2つの異なるP.pastoris株(Prielhoferら、2013、Microb.Cell.Fact.、12:5において記載されている、1HSA遺伝子コピーを有するpGAP_HSA#3、および2HSA遺伝子コピーを有するpGAP_HSA#4)を、基準として培養した。
以下の培地を使用した。
PTM1微量元素塩原液は、1リットル当たり、
6.0gのCuSO4・5H2O、0.08gのNaI、3.36gのMnSO4・H2O、0.2gのNa2MoO4・2H2O、0.02gのH3BO3、0.82gのCoCl2、20.0gのZnCl2、65.0gのFeSO4・7H2O、0.2gのビオチン、および5.0mlのH2SO4(95%〜98%)
を含有した。
グリセロール回分培地は、1リットル当たり、
39.2gのグリセロール、27.9gのH3PO4(85%)、7.8gのMgSO4・7H2O、2.6gのKOH、9.5gのK2SO4、0.6gのCaSO4・2H2O、0.4mgのビオチン、および4.6mLのPTM1微量元素塩原液
を含有した。pHは、発酵槽への滅菌濾過後において、5.85に調整した。
グルコース流加培地は、1リットル当たり、
550gのグルコース一水和物、6.5gのMgSO4・7H2O、10gのKCl、0.35gのCaCl2・2H2O、0.4mgのビオチン、および12mLのPTM1微量元素塩原液
を含有した。
溶存酸素は、攪拌器速度を400〜1200rpmとして、DO=20%に制御した。曝気速度は、空気24L h-1とし、温度は、25℃に制御し、pH設定点である5.85は、NH4OH(25%)を添加することにより制御した。
発酵を開始するために、400mLの回分培地を、発酵槽に滅菌濾過し、P.pastorisを、出発光学濃度(OD600)を1として接種した(前培養物から)。約25時間の回分期により、約20g/Lの乾燥バイオマス濃度に到達させ、その後、グルコース培地の一定のフィード(2g L-1-1)を伴う流加を100時間にわたり施し、約100g/Lの乾燥バイオマス濃度をもたらした。pHは、回分時において5.85とし、発酵を通して5.85に保った。試料は、回分期および流加期において採取した。HSA濃度は、例3cで記載した通りに、Human Albumin ELISA Qauntitation Set(Bethyl、型番E80−129)により定量化した。
既に示されている通り、2HSAコピーを有するpGAPクローンは、1コピーを有するpGAPクローンの2倍を分泌した(Prielhoferら、2013、Microb.Cell.Fact.、12:5)。pCS1の制御下でHSAを分泌する2つのクローンは、回分および流加終点において、単一コピーのpGAPクローンと比較して、4倍より大きいHSA力価に到達した(結果を表9に示す)。バイオマスおよびGCNと相関する、pCS1クローンは、遺伝子コピー数が同じpGAPクローンによる分泌HSAの390%を産生した。
Figure 2016508742
例5
選択されたクローンの遺伝子コピー数(GCN)の決定
発現強度は、P.pastorisのゲノムに組み込まれた発現カセットの数と相関することが多い。したがって、選択されたクローンの遺伝子コピー数を決定した。ゲノムDNAは、DNeasy Blood&Tissue Kit(Quiagen、型番69504)を使用して単離した。遺伝子コピー数は、定量的PCRを使用して決定した。そこで、SensiMix SYBR Kit(Bioline、QT605−05)を使用した。Sensi Mix SYBRは、それぞれのプライマー(Prielhoferら、2013、Microb.Cell.Fact.、12:5において与えられている)および試料と混合し、リアルタイムPCRサイクラー(Rotor Gene、Qiagen)内のリアルタイム解析に適用した。全ての試料は、三連または四連で解析した。Rotor Geneソフトウェアは、データ解析のために使用した。
例6
ブタカルボキシペプチダーゼB(CpB:carboxypeptidase B)を、細胞外発現レポーター遺伝子として使用する、新規に同定されたプロモーターであるpCS1についての、P.pastoris内の比較プロモーター活性研究
新規に同定されたプロモーターの特性を解析するために、振とうフラスコスクリーニングを、以下の通りに実施する。グリセロールを炭素供給源として含有する富栄養培地中で、24時間にわたる前培養を行った後、富栄養培地による主培養を行う。
a)株および発現ベクター
P.pastorisの野生型株(CBS2612:CBS−KNAW Fungal Biodiversity Centre、Centraalbureau voor Schimmelcultures、Utrecht、The Netherlands)を、宿主株として使用する。株の形質転換は、pPUZZLEと名付けられた自社製のベクター(Stadlmayrら、J.Biotechnol、2010年12月、150(4):519〜29)により実行し、陽性の形質転換体の選択は、Zeocin耐性に基づく。ブタカルボキシペプチダーゼB(CpB)の分泌性発現のために、酵母アルファ接合因子リーダー配列を使用する。
b)新規に同定されたプロモーターであるpCS1の増幅および自社製発現ベクターへのクローニング
例2bで増幅したプロモーターを、pPUZZLE発現ベクターであるpPM1aZ30_aMF_CpBにクローニングする結果として、pPM1aZ30_pCS1_aMF_CpBをもたらす。加えて、一般に使用されるグリセルアルデヒド3−リン酸デヒドロゲナーゼのプロモーター(pGAP)を含有するベクターであるpPM1dZ30_pGAP_CpBを、基準として使用する。ApaIおよびSbfI制限部位を使用して、プロモーターを、CpB遺伝子の開始コドンの上流に挿入する。プロモーター配列の正確さは、サンガーシークエンシングにより検証する。
c)新規に同定されたグルコース制限誘導プロモーターの制御下における、P.pastoris内の、CpBの発現
P.pastorisへの電気穿孔(P.pastorisのための標準的な形質転換プロトコールを使用する)の前に、AscI制限酵素を使用して、プラスミドを直鎖化する。陽性の形質転換体の選択は、25μg/mLのZeocinを含有するYPD(1リットル当たり:10gの酵母抽出物、20gのペプトン、20gのグルコース、20gの寒天)プレート上で実施する。例2cで記載した通りに、コロニーPCRを使用して、形質転換されたプラスミドの存在を確認する。
CpBの発現をスクリーニングするために、単一のコロニーを、前培養物として、液体YPG−Zeo培地(1リットル当たり:20gのペプトン、10gの酵母抽出物、12.6gのグリセロール、および25mgのZeocin)に接種する。約24時間後、前培養物を使用して、YPD培地(1リットル当たり:20gのペプトン、10gの酵母抽出物、20gのグルコース)中のOD600を1として、主培養物に接種する。主培養物には、0.5%のグルコースを、12時間ごとにフィードする。試料は、前培養の終点、ならびに主培養物への接種の24および48時間後において採取する。バイオマス濃度は、OD600または湿細胞重量を測定することにより決定する。培養物上清中のCpB濃度は、CpBを介する、ヒプリル−L−アルギニンの馬尿酸への転換に基づく、酵素アッセイにより定量化する。反応動態は、反応を開始するときに、Hitachi U−2910分光光度計を使用して、25℃、254nmにおける吸光度をモニタリングすることにより測定する。試料および基準物質は、アッセイ緩衝液(25mMのトリス、100mMのHCl、pH7.65)で緩衝処理し、活性化緩衝液(0.01mg L-1のトリプシン、300mMのトリス、1μMのZnCl2、pH7.65)を使用して活性化させる。トリプシンを伴わない活性化緩衝液を、試料の代わりに、陰性対照として使用する。反応は、基質溶液(アッセイ緩衝液中1mMのヒプリル−L−アルギニン)を添加することにより開始する。
d)pCS1プロモーターの制御下でCpBを発現させるP.pastoris株の流加培養
流加発酵は、例2dで記載した培地を使用して、例4で記載した通りに行う。
例7
ヒト血清アルブミン(HSA)を、細胞外発現レポーター遺伝子として使用する、新規に同定されたプロモーターであるpCS1についての、P.pastorisのマルチコピークローン内の比較プロモーター活性研究
GCNにより、HSA産生がさらに増強されうるのかどうかについて探索するため、Marxら(2009)により記載されている通りに、HSAを発現させるPCS1クローンを、形質転換後ベクター増幅法により増幅した。相同組換えによりrDNA遺伝子座に組み込まれるベクターを作り出した。増幅は、抗生剤濃度の段階的な増大に基づく選択により行った。
a)株および発現ベクター
P.pastorisの野生型株(CBS2612:CBS−KNAW Fungal Biodiversity Centre、Centraalbureau voor Schimmelcultures、Utrecht、The Netherlands)を、宿主株として使用した。株の形質転換は、リボソームDNA遺伝子座のNTS領域を組込み部位として含有する、ベクターpPUZZLEの変異体により実行し(Marxら、2009、FEMS Yeast Res.、9(8):1260〜70)、陽性の形質転換体の選択は、Zeocin耐性に基づいた。ヒト血清アルブミン(HSA)の分泌性発現のために、その天然の分泌リーダー配列を使用した。
例2bで増幅したpCS1プロモーターを、pPUZZLE発現ベクターであるpPM1nZ30_HSAにクローニングする結果として、pPM1nZ30_pCS1_HSAをもたらした。
ApaIおよびSbfI制限部位を使用して、プロモーターを、HSA遺伝子の開始コドンの上流に挿入した。プロモーター配列の正確さは、サンガーシークエンシングにより検証した。
b)新規に同定されたプロモーターであるpCS1の制御下における、P.pastoris内のHSAの、形質転換後ベクター増幅および発現
P.pastorisへの電気穿孔(P.pastorisのための標準的な形質転換プロトコールを使用する)の前に、SpeI制限酵素を使用して、プラスミドを直鎖化した。陽性の形質転換体の初期選択は、25μg/mLのZeocinを含有するYPD(1リットル当たり:10gの酵母抽出物、20gのペプトン、20gのグルコース、20gの寒天)プレート上で実施した。例2cで記載した通りに、コロニーPCRを使用して、形質転換されたプラスミドの存在を確認した。Marxら(FEMS Yeast Res.、2009年12月、9(8):1260〜70)において記載されている通り、高Zeocin濃度(50、100、および500μg/mLのZeocin)を含有するYPD寒天プレート上におけるクローンの反復画線培養により、遺伝子コピー数の増幅を行った。
HSA ELISAによるHSA発現のスクリーニングおよび産物の定量化は、例3cで記載した通りに実施した。HSAの分泌レベルが最高であるクローンのうちのいくつかについて、例5で記載した通りに、GCNを決定した。GCN増幅PCS1クローン、ならびに対照としての、GCNが公知(1または2)のPGAPおよびPCS1クローンを、BM培地中で48時間にわたり培養した。
また、HSA GCNを増大させることにより、HSAの分泌レベルも増大させることができた(表10に示す)。pCS1の制御下でHSAを発現させるマルチコピークローンであって、3HSA遺伝子コピーを有するマルチコピークローンは、単一コピークローンと比較して、単位WCW当たり2〜3倍量のHSAを産生した。また、マルチコピーpCS1クローンによる、生産性の同様の増大も、例4で示した通り、流加バイオリアクター培養において予測することができた。
Figure 2016508742
例8
抗体断片(Fab)を、細胞外発現レポーター遺伝子として使用する、新規に同定されたプロモーターであるpCS1についての、P.pastoris内の比較プロモーター活性研究
新規に同定されたプロモーターの特性を解析するために、振とうフラスコスクリーニングを、以下の通りに実施した。グリセロールを炭素供給源として含有する富栄養培地により、24時間にわたる前培養を行った後、富栄養培地による主培養を行った。
a)株および発現ベクター
P.pastorisの野生型株(CBS2612:CBS−KNAW Fungal Biodiversity Centre、Centraalbureau voor Schimmelcultures、Utrecht、The Netherlands)を、宿主株として使用した。例2bで増幅したpCS1プロモーターを、HyHEL抗体のLCまたはFab−HCをGOIとして含有するpPUZZLE発現ベクターにクローニングした。ApaIおよびSbfI制限部位を使用して、プロモーターを、Fab遺伝子の開始コドンの上流に挿入した。配列を検証した後、両立可能な制限酵素であるMreIおよびAgeIを使用することにより、両方の鎖のための発現カセットを、1つのベクターに組み合わせた。
b)新規に同定されたプロモーターであるpCS1の制御下における、P.pastoris内の、Fabの発現
P.pastorisへの電気穿孔(P.pastorisのための標準的な形質転換プロトコールを使用する)の前に、AscI制限酵素を使用して、プラスミドを直鎖化した。陽性の形質転換体の選択は、25μg/mLのZeocinを含有するYPD(1リットル当たり:10gの酵母抽出物、20gのペプトン、20gのグルコース、20gの寒天)プレート上で実施した。例2cで記載した通りに、コロニーPCRを使用して、形質転換されたプラスミドの存在を確認した。
例3cで記載したHSAの発現スクリーニングと同様の、Fabの発現スクリーニングを実施した。無傷Fabの定量化を、抗ヒトIgG抗体(Abcam ab7497)を、コーティング抗体(1:1,000)として使用し、ヤギ抗ヒトカッパ軽鎖(結合型および遊離型)−アルカリホスファターゼコンジュゲート抗体(Sigma A3813)を検出抗体(1:1,000)として使用するELISAにより行った。Human Fab/Kappa,IgG fragment(Bethyl P80−115)を、50ng/mLの出発濃度で、基準物質として使用した。上清試料は、相応に希釈する。検出は、pNPP基質(Sigma S0942)により行った。コーティング緩衝液、希釈緩衝液、および洗浄緩衝液は、PBS(2mMのKH2PO4、10mMのNa2HPO4・2H2O、2.7mMのKCl、8mMのNaCl、pH7.4)に基づき、BSA(1%(w/v))および/またはTween20(0.1%(v/v))を相応に補充した。
選択されたクローンに由来するゲノムDNAを単離し、重鎖(HC)および軽鎖(LC)のGCNを、例5で記載した通りに決定した。GCNは、HCおよびLC GCNを1とする、クローンPCS1#5に照らした。Fabの発現収率(WCW 1g当たりのFab μg)、相対GCNおよび1GCN当たりのFab収率を、表11に示す。他のモデルタンパク質と同様、pCS1の制御下で発現させるクローンについて、pGAPの制御下で発現させるクローンと比較して約2倍の1GCN当たりのFab収率(WCW 1g当たり平均で35.4μgのFab)が得られた。
Figure 2016508742
c)pCS1プロモーターの制御下でFabを発現させるP.pastoris株の流加培養
流加発酵は、例2dで記載した培地を使用して、例4で記載した通りに同様に行った。
バイオリアクターによる培養において、pCS1の制御下におけるFab発現は、pGAPと比較して3.0倍より大きい、1GCN当たりの比生産性(qP)を結果としてもたらした(表12を参照されたい)。
Figure 2016508742
例9
pCS1の変異体の比較
pCS1プロモーターの長さ変異体を、例2aで記載した通りにクローニングし、例2cで記載した通りに同様にスクリーニングする。pCS1(基準の長さ)およびpGAPの制御下で発現させるクローンを、対照として使用した。pCS1およびその変異体のフォワードプライマーおよび長さを、表13に列挙する。
Figure 2016508742
pGAPまたはpCS1の制御下でeGFPを発現させるクローンのスクリーニングは、最適な活性のために、pCS1が、最小で約500bpの長さを要請することを明らかにした。短鎖pCS1変異体は、長さが短くなるとと共に活性を失う(表14を参照されたい)。
Figure 2016508742
例10
前記プロモーターの制御下でeGFPを発現させるクローン内の、プロモーターの発現強度の、増殖制限条件下、大小の増殖速度における検証
a)株
「対象のプロモーター」の制御下でeGFPを発現させる宿主株(たとえば、Pichia pastoris)と、pGAPの制御下でeGFPを発現させる株を使用して、発現レベルを比較する。
b)プロモーターの比較のための、eGFPを発現させる株の培養
これらの株を、最終作業容量を1.0Lとする、DASGIPバイオリアクターを使用して、ケモスタット内、2つの一定の比増殖速度(希釈速度を設定することによる、1つの小さな比増殖速度と1つの大きな比増殖速度)で培養する。
以下の培地を使用する。
PTM1微量元素塩原液は、1リットル当たり、
6.0gのCuSO4・5H2O、0.08gのNaI、3.36gのMnSO4・H2O、0.2gのNa2MoO4・2H2O、
0.02gのH3BO3、0.82gのCoCl2、20.0gのZnCl2、65.0gのFeSO4・7H2O、0.2gのビオチン、および5.0mlのH2SO4(95%〜98%)
を含有する。
グリセロール回分培地は、1リットル当たり、
2gのクエン酸一水和物(C687・H2O)、39.2gのグリセロール、12.6gのNH42PO4
0.5gのMgSO4・7H2O、0.9gのKCl、0.022gのCaCl2・2H2O、0.4mgのビオチン、および4.6mlのPTM1微量元素塩原液
を含有する。HClを添加して、pHを5とする。
ケモスタット培地は、1リットル当たり、
2.5gのクエン酸一水和物(C687・H2O)、55.0gのグルコース一水和物、21.75gの(NH42HPO4、1.0gのMgSO4・7H2O、2.5gのKCl、0.04gのCaCl2・2H2O、0.4mgのビオチン、および2.43mLのPTM1微量元素塩原液
を含有する。HClを添加して、pHを5とする。
溶存酸素は、攪拌器速度を400〜1200rpmとして、DO=20%に制御する。曝気速度は、空気24L h-1とし、温度は、25℃に制御し、pH設定点である5は、NH4OH(25%)を添加することにより制御する。発酵を開始するために、400mLの回分培地を、発酵槽に滅菌濾過し、P.pastorisのクローンを、出発光学濃度(OD600)を1として接種する(前培養物から)。約25時間の回分期(約20g L-1の乾燥バイオマス濃度に到達する)の後、グルコース制限ケモスタット培養を施す。ケモスタット培地のフィード速度および回収速度を使用して、所望される一定の比増殖速度を保つ。この培養中では、培養液容量を一定に保ち、細胞乾燥重量を決定して、一定の増殖速度を確認する。細胞は、それぞれ、0.15および0.015h-1の大小の増殖速度で培養する。したがって、フィード/回収速度を、それぞれ、150mL h-1-1(1時間当たりに培養液1リットル当たりのケモスタット培地mL)および15mL h-1-1に制御する。
c)サンプリング
試料は、定常状態条件(少なくとも5容量の交換後)において採取し、プレートリーダー(Infinite200、Tecan、CH)を使用して、eGFPの発現について解析する。そこで、試料を光学濃度(OD600)5まで希釈する。発酵は、二連で実施する。発現データは、例2d)で記載した通りに、バイオリアクター1槽当たりの相対蛍光を計算することにより比較する。
例11
大小の比増殖速度で高度な転写を可能とするP.pastorisプロモーターの同定
大小の増殖速度で高度な転写を可能とするプロモーターを同定するために、DNAマイクロアレイを使用して、遺伝子発現パターンの解析を行った。大小の増殖速度で大きな転写強度を表す遺伝子を、トランスクリプトミクスデータから選択した。そこで、P.pastoris細胞を、例10b)で記載した通りに、ケモスタット培養により、それぞれ、0.15および0.015h-1の大小の比増殖速度で増殖させた。マイクロアレイハイブリダイゼーション、マイクロアレイ解析、データ収集および統計学的査定のためのサンプリング、RNA精製、試料調製は、例1c)、1d)、1e)、および1f)で記載した通りに行う。マイクロアレイデータを、大小の増殖速度条件の両方においてシグナル強度が大きな遺伝子についてブラウズすることにより、大小の増殖速度で転写強度の大きな遺伝子およびそれぞれのプロモーターを同定した。第2の基準として、シグナル強度は、両方の条件において、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ(GAP、GAPDHおよびTDH3と同義)遺伝子のシグナル強度より大きいものとする。プロモーターを単離するために、それぞれの遺伝子の開始コドンであるATGの約1000bp上流の核酸断片を増幅した。
例11
大小の比増殖速度で高度な転写を可能とするP.pastorisプロモーターの同定
大小の増殖速度で高度な転写を可能とするプロモーターを同定するために、DNAマイクロアレイを使用して、遺伝子発現パターンの解析を行った。大小の増殖速度で大きな転写強度を表す遺伝子を、トランスクリプトミクスデータから選択した。そこで、P.pastoris細胞を、例10b)で記載した通りに、ケモスタット培養により、それぞれ、0.15および0.015h-1の大小の比増殖速度で増殖させた。マイクロアレイハイブリダイゼーション、マイクロアレイ解析、データ収集および統計学的査定のためのサンプリング、RNA精製、試料調製は、例1c)、1d)、1e)、および1f)で記載した通りに行う。マイクロアレイデータを、大小の増殖速度条件の両方においてシグナル強度が大きな遺伝子についてブラウズすることにより、大小の増殖速度で転写強度の大きな遺伝子およびそれぞれのプロモーターを同定した。第2の基準として、シグナル強度は、両方の条件において、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ(GAP、GAPDHおよびTDH3と同義)遺伝子のシグナル強度より大きいものとする。プロモーターを単離するために、それぞれの遺伝子の開始コドンであるATGの約1000bp上流の核酸断片を増幅した。
以下に、当初の特許請求の範囲に記載していた発明を付記する。
[1]
配列番号1のpCS1核酸配列を含むPichia pastorisの天然配列、あるいは配列番号1のサイズ変異体、突然変異体、もしくはハイブリッド体、またはこれらの組合せであるその機能的に活性な変異体であるプロモーターを含む単離核酸配列。
[2]
前記プロモーターが、配列番号1のpCS1の核酸配列、あるいは配列番号1のサイズ変異体、突然変異体、もしくはハイブリッド体、またはこれらの組合せである、その機能的に活性な変異体からなる、[1]に記載の核酸配列。
[3]
前記機能的に活性な変異体が、配列番号1のpCS1の核酸配列と実質的に同じ活性を呈示する、[1]または[2]に記載の核酸。
[4]
前記機能的に活性な変異体が、
a)配列番号1のpCS1のサイズ変異体であって、好ましくは配列番号2、3、4、5、6、7、および8からなる群から選択される核酸配列、最も好ましくは配列番号2、3、4、5、もしくは6からなる核酸配列、を含むかもしくはこれからなる、サイズ変異体、
b)配列番号1のpCS1の突然変異体、もしくはa)のサイズ変異体の突然変異体であって、配列番号1の前記配列もしくは前記サイズ変異体と少なくとも60%の相同性を有する突然変異体、
c)ハイブリッド体であって、
・配列番号1のpCS1、a)のサイズ変異体、およびb)の突然変異体からなる群から選択される配列、ならびに
・配列番号1のpCS1、a)のサイズ変異体、b)の突然変異体、および異種配列からなる群から選択される、少なくとも1つのさらなる配列
を含む、ハイブリッド体、または
d)a)もしくはb)のサイズ変異体もしくは突然変異体の核酸配列のうちの何れかと厳密な条件下でハイブリダイズする配列
である、[1]または[2]に記載の核酸配列。
[5]
前記機能的に活性な変異体が、
i)少なくとも約60%のヌクレオチド配列同一性を有する相同体、
ii)前記配列内または前記配列の遠位端の一方もしくは両方における、1つ以上のヌクレオチドの挿入、欠失、または置換を介して、配列番号1のpCS1またはそのサイズ変異体のヌクレオチド配列を改変することにより得られる相同体であって、好ましくは80bp〜1500bp、より好ましくは、少なくとも200bpのヌクレオチド配列を有する相同体、および
iii)Pichia pastoris以外の種に由来する類似体
からなる群から選択される、[1]〜[4]の何れか一に記載の核酸配列。
[6]
対象のタンパク質(POI:protein of interest)をコードするヌクレオチド配列に作動可能に連結されており、この核酸が、前記POIをコードする前記ヌクレオチド配列と天然では会合しない、[1]〜[5]の何れか一に記載の核酸配列。
[7]
前記POIの分泌を可能とするシグナルペプチドをコードする核酸配列をさらに含み、好ましくは、前記シグナルペプチドをコードする核酸配列が、前記POIをコードする前記ヌクレオチド配列の5’端に隣接して配置される、[6]に記載の核酸配列。
[8]
[1]〜[7]の何れか一に記載の核酸配列を含む発現構築物であって、好ましくは、自己複製型ベクターもしくはプラスミド、または宿主細胞の染色体DNAに組み込まれるベクターもしくはプラスミドである発現構築物。
[9]
[1]〜[7]の何れか一に記載の核酸配列、または[8]に記載の発現構築物を含む組換え宿主細胞であって、好ましくは、真核細胞、より好ましくは、酵母または糸状菌細胞、より好ましくは、Saccharomyces属またはPichia属の酵母細胞である宿主細胞。
[10]
前記核酸配列の複数コピー、および/または前記発現構築物の複数コピーを含む、[9]に記載の組換え宿主細胞。
[11]
哺乳動物、昆虫、酵母、糸状菌、および植物細胞からなる群から選択され、好ましくは、酵母、好ましくは、P.pastorisのCBS 704、CBS 2612、CBS 7435、CBS 9173〜9189、DSMZ 70877、X−33、GS115、KM71、およびSMD1168株のうちの何れかである、[9]または[10]に記載の組換え宿主細胞。
[12]
[9]、[10]、または[11]の何れか一に記載の複数の細胞の、安定的培養物。
[13]
[1]〜[7]の何れか一に記載のプロモーター、もしくは[8]に記載の発現構築物、および前記プロモーターの転写制御下でPOIをコードする核酸を含む組換え宿主細胞系、または[9]〜[11]の何れか一に記載の組換え宿主細胞を培養することにより、POIを作製する方法であって、
a)前記POIを発現させる条件下で、前記細胞系を培養する工程と、
b)前記POIを回収する工程と
を含む方法。
[14]
前記POIを、増殖制限条件下で発現させる、[13]に記載の方法。
[15]
前記細胞系を、回分、流加、もしくは連続培養条件下で、かつ/または制限炭素基質を含有する培地中で培養する、[13]または[14]に記載の方法。
[16]
前記培養を、回分期で始め、流加期または連続培養期を後続させて、バイオリアクター内で実施する、[15]に記載の方法。
[17]
前記POIが、好ましくは、抗体もしくはその断片、酵素およびペプチド、タンパク質抗生剤、毒素融合タンパク質、炭水化物−タンパク質コンジュゲート、構造タンパク質、調節タンパク質、ワクチンおよびワクチン様タンパク質もしくは粒子、プロセシング酵素、増殖因子、ホルモン、ならびにサイトカイン、またはPOIの代謝物を含む治療用タンパク質から選択される異種タンパク質である、[13]〜[16]の何れか一に記載の方法。
[18]
真核細胞に由来する構成的プロモーターを同定する方法であって、
a)真核細胞を大きな増殖速度で培養する工程と、
b)前記細胞を小さな増殖速度でさらに培養する工程と、
c)工程a)およびb)の細胞培養物の試料を用意する工程と、
d)前記試料中で転写解析を実施し、転写物レベルを、前記細胞の天然pGAPプロモーターの転写物レベルと比較する工程と、
f)好ましくは、前記天然pGAPプロモーターと比較して、少なくとも1.1倍である、同定された構成的プロモーターの転写物レベルを決定することにより、大小の増殖速度で、前記天然pGAPプロモーターと比較して、転写強度の大きな構成的プロモーターを選択する工程と
を含む方法。
[19]
対象のタンパク質(POI:protein of interest)をコードするヌクレオチド配列に作動的に連結されると、大小の増殖速度において、天然pGAPプロモーターの制御下より高い発現レベルで、宿主細胞内のその発現を方向付けるプロモーターを含む単離核酸配列の使用であって、好ましくは、回分期で始め、続いては流加期または連続培養期にバイオリアクター内で実施される、前記核酸配列で形質転換された宿主細胞の培養によって前記POIを作製する方法における使用。
[20]
前記発現レベルを、0.015〜0.15h -1 の範囲内の大きな増殖速度および小さな増殖速度で決定する、[19]に記載の使用。
[21]
前記発現レベルが、前記pGAPプロモーターと比較して、少なくとも1.1倍である、[19]または[20]に記載の使用。
[22]
[1]〜[7]の何れか一に記載の単離核酸配列または[8]に記載の発現構築物の使用であって、好ましくは、回分期で始め、続いて流加期または連続培養期にバイオリアクター内で実施される、前記核酸配列および/または前記発現構築物で形質転換された宿主細胞の培養によってPOIを作製する方法における使用。

Claims (22)

  1. 配列番号1のpCS1核酸配列を含むPichia pastorisの天然配列、あるいは配列番号1のサイズ変異体、突然変異体、もしくはハイブリッド体、またはこれらの組合せであるその機能的に活性な変異体であるプロモーターを含む単離核酸配列。
  2. 前記プロモーターが、配列番号1のpCS1の核酸配列、あるいは配列番号1のサイズ変異体、突然変異体、もしくはハイブリッド体、またはこれらの組合せである、その機能的に活性な変異体からなる、請求項1に記載の核酸配列。
  3. 前記機能的に活性な変異体が、配列番号1のpCS1の核酸配列と実質的に同じ活性を呈示する、請求項1または2に記載の核酸。
  4. 前記機能的に活性な変異体が、
    a)配列番号1のpCS1のサイズ変異体であって、好ましくは配列番号2、3、4、5、6、7、および8からなる群から選択される核酸配列、最も好ましくは配列番号2、3、4、5、もしくは6からなる核酸配列、を含むかもしくはこれからなる、サイズ変異体、
    b)配列番号1のpCS1の突然変異体、もしくはa)のサイズ変異体の突然変異体であって、配列番号1の前記配列もしくは前記サイズ変異体と少なくとも60%の相同性を有する突然変異体、
    c)ハイブリッド体であって、
    ・配列番号1のpCS1、a)のサイズ変異体、およびb)の突然変異体からなる群から選択される配列、ならびに
    ・配列番号1のpCS1、a)のサイズ変異体、b)の突然変異体、および異種配列からなる群から選択される、少なくとも1つのさらなる配列
    を含む、ハイブリッド体、または
    d)a)もしくはb)のサイズ変異体もしくは突然変異体の核酸配列のうちの何れかと厳密な条件下でハイブリダイズする配列
    である、請求項1または2に記載の核酸配列。
  5. 前記機能的に活性な変異体が、
    i)少なくとも約60%のヌクレオチド配列同一性を有する相同体、
    ii)前記配列内または前記配列の遠位端の一方もしくは両方における、1つ以上のヌクレオチドの挿入、欠失、または置換を介して、配列番号1のpCS1またはそのサイズ変異体のヌクレオチド配列を改変することにより得られる相同体であって、好ましくは80bp〜1500bp、より好ましくは、少なくとも200bpのヌクレオチド配列を有する相同体、および
    iii)Pichia pastoris以外の種に由来する類似体
    からなる群から選択される、請求項1〜4の何れか一項に記載の核酸配列。
  6. 対象のタンパク質(POI:protein of interest)をコードするヌクレオチド配列に作動可能に連結されており、この核酸が、前記POIをコードする前記ヌクレオチド配列と天然では会合しない、請求項1〜5の何れか一項に記載の核酸配列。
  7. 前記POIの分泌を可能とするシグナルペプチドをコードする核酸配列をさらに含み、好ましくは、前記シグナルペプチドをコードする核酸配列が、前記POIをコードする前記ヌクレオチド配列の5’端に隣接して配置される、請求項6に記載の核酸配列。
  8. 請求項1〜7の何れか一項に記載の核酸配列を含む発現構築物であって、好ましくは、自己複製型ベクターもしくはプラスミド、または宿主細胞の染色体DNAに組み込まれるベクターもしくはプラスミドである発現構築物。
  9. 請求項1〜7の何れか一項に記載の核酸配列、または請求項8に記載の発現構築物を含む組換え宿主細胞であって、好ましくは、真核細胞、より好ましくは、酵母または糸状菌細胞、より好ましくは、Saccharomyces属またはPichia属の酵母細胞である宿主細胞。
  10. 前記核酸配列の複数コピー、および/または前記発現構築物の複数コピーを含む、請求項9に記載の組換え宿主細胞。
  11. 哺乳動物、昆虫、酵母、糸状菌、および植物細胞からなる群から選択され、好ましくは、酵母、好ましくは、P.pastorisのCBS 704、CBS 2612、CBS 7435、CBS 9173〜9189、DSMZ 70877、X−33、GS115、KM71、およびSMD1168株のうちの何れかである、請求項9または10に記載の組換え宿主細胞。
  12. 請求項9、10、または11の何れか一項に記載の複数の細胞の、安定的培養物。
  13. 請求項1〜7の何れか一項に記載のプロモーター、もしくは請求項8に記載の発現構築物、および前記プロモーターの転写制御下でPOIをコードする核酸を含む組換え宿主細胞系、または請求項9〜11の何れか一項に記載の組換え宿主細胞を培養することにより、POIを作製する方法であって、
    a)前記POIを発現させる条件下で、前記細胞系を培養する工程と、
    b)前記POIを回収する工程と
    を含む方法。
  14. 前記POIを、増殖制限条件下で発現させる、請求項13に記載の方法。
  15. 前記細胞系を、回分、流加、もしくは連続培養条件下で、かつ/または制限炭素基質を含有する培地中で培養する、請求項13または14に記載の方法。
  16. 前記培養を、回分期で始め、流加期または連続培養期を後続させて、バイオリアクター内で実施する、請求項15に記載の方法。
  17. 前記POIが、好ましくは、抗体もしくはその断片、酵素およびペプチド、タンパク質抗生剤、毒素融合タンパク質、炭水化物−タンパク質コンジュゲート、構造タンパク質、調節タンパク質、ワクチンおよびワクチン様タンパク質もしくは粒子、プロセシング酵素、増殖因子、ホルモン、ならびにサイトカイン、またはPOIの代謝物を含む治療用タンパク質から選択される異種タンパク質である、請求項13〜16の何れか一項に記載の方法。
  18. 真核細胞に由来する構成的プロモーターを同定する方法であって、
    a)真核細胞を大きな増殖速度で培養する工程と、
    b)前記細胞を小さな増殖速度でさらに培養する工程と、
    c)工程a)およびb)の細胞培養物の試料を用意する工程と、
    d)前記試料中で転写解析を実施し、転写物レベルを、前記細胞の天然pGAPプロモーターの転写物レベルと比較する工程と、
    f)好ましくは、前記天然pGAPプロモーターと比較して、少なくとも1.1倍である、同定された構成的プロモーターの転写物レベルを決定することにより、大小の増殖速度で、前記天然pGAPプロモーターと比較して、転写強度の大きな構成的プロモーターを選択する工程と
    を含む方法。
  19. 対象のタンパク質(POI:protein of interest)をコードするヌクレオチド配列に作動的に連結されると、大小の増殖速度において、天然pGAPプロモーターの制御下より高い発現レベルで、宿主細胞内のその発現を方向付けるプロモーターを含む単離核酸配列の使用であって、好ましくは、回分期で始め、続いては流加期または連続培養期にバイオリアクター内で実施される、前記核酸配列で形質転換された宿主細胞の培養によって前記POIを作製する方法における使用。
  20. 前記発現レベルを、0.015〜0.15h-1の範囲内の大きな増殖速度および小さな増殖速度で決定する、請求項19に記載の使用。
  21. 前記発現レベルが、前記pGAPプロモーターと比較して、少なくとも1.1倍である、請求項19または20に記載の使用。
  22. 請求項1〜7の何れか一項に記載の単離核酸配列または請求項8に記載の発現構築物の使用であって、好ましくは、回分期で始め、続いて流加期または連続培養期にバイオリアクター内で実施される、前記核酸配列および/または前記発現構築物で形質転換された宿主細胞の培養によってPOIを作製する方法における使用。
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