記載される実施形態の目的は、注射器針を保護するブーツが除去されるまで、発射することができない自動注射装置を提供することである。この目的は、発生する可能性がある浪費される薬と使用者の不満の問題を防ぐことである。実施形態は、自動インジェクター(auto−injector)に関する文中で記述される。自動インジェクターは、薬の注入を実行するだけでなく、患者の皮膚に針を押し込む1または2以上のバネを有するものである。そのような注射装置は自動インジェクターと呼ばれる。しかしながら当業者ならば、薬の送出を実行するだけで、皮膚に針を押し込まない自動注射装置にも、この方式を適用し得ることを認識するであろう。
図1〜3を参照して、第1の実施形態について述べる。これは、「ボタン収納式自動インジェクター」(enclosed button auto−injector)と称される。この実施形態、および、以下に述べるさらなる実施形態の理解を助けるため、自動インジェクターの「近位」端とは、使用中に患者の皮膚に最も近い端部であり、「遠位」端とは、患者の皮膚から最も遠くの端部であると定義するのは、有用である。
図1は、針(102)、注射器(103)、ブーツ・リムーバー(104)、ブーツ(111)、トリガー(105)、トリガーカバー(106)およびハウジング(107)を含む、ボタン収納式自動インジェクター(101)の断面図を示す。自動インジェクターは、近位端(112)と遠位端(113)を有する。ハウジング(107)は、ユーザーの皮膚を貫通するための針(102)と、薬を収容するための注射器(103)とを収納する。トリガー(105)の駆動は、発射機構(108)を起動させる。発射機構(108)は、針を皮膚に打ち込み、薬を、針を通して、ユーザーの体内へ押し入れる。詳細には記載しないが、注射装置はさらに、注射器(103)が内部に設けられるキャリッジ(114)およびキャリッジ復帰バネ(115)を含む。
ユーザーが誤ってトリガー(105)を駆動するのを防止するため、トリガー(105)をカバーするように、トリガーカバー(106)が、ハウジング(107)に取り外し可能に装着される。これは、ユーザーが誤ってトリガー(105)を駆動するのを防止する物理的障壁を提供する。トリガー・ロックのような、トリガー(105)の駆動を防ぐためのいずれの適当な機械的インターロックも、トリガーカバー(106)の代わりに使用することができる。ユーザーがボタン収納式自動インジェクター(101)を使用したい場合、彼または彼女は最初に、トリガー(105)を使用するため、トリガーカバー(106)を除去しなければならない。
トリガーカバー(106)は、任意の適切な結合方式によって、ハウジング(107)に固定されてもよい。例えば、図1および図2において、トリガーカバー(106)は、ハウジング(107)に形成された肩部(110)へ嵌め込むための隆起(109)を有している。
ブーツ(111)は、針(102)の汚染を防ぐように設けられる。ブーツ・リムーバー(104)は、ブーツに接続され、ブーツの除去を容易にする。ブーツ・リムーバー(104)は、ハウジング(107)の外面に伸びて、トリガーカバー(106)の隆起(109)を覆う。そうすることによって、ブーツ・リムーバー(104)は、隆起(109)のどのような側方変位も防ぎ、したがって、隆起(109)が肩部(110)から脱落するのを妨げ、トリガーカバー(106)がはずれるのを防ぐ。ブーツ・リムーバー(104)は、隆起(109)に支持を与えてもよく、肩部(110)内の適所にそれらを保持する。
図2は、ハウジング(107)から一部除去されたブーツ・リムーバー(104)を示し、隆起(109)が側方移動するのをもはや防止していない。隆起(109)は、あらかじめ圧縮され、ブーツ・リムーバー(104)を除去したときに、外側へ扇形に開いて、肩部(110)から外れる。別の実施形態では、隆起は、たとえばバネのような、分割されたバイアス装置によって、外側へ移動されてもよい。図3は、注射装置(101)から全体が除去されたブーツ・リムーバー(104)と、部分的に除去したトリガーカバー(106)とを示す。その結果、トリガー(105)が今は露出する。
この配置は、トリガー(105)を押す前に、ブーツ・リムーバー(104)を使用してブーツ(111)を除去するステップを行なうことを、ユーザーに強いる。そうすることによって、ブーツ(111)がまだ所定位置にある時に、ボタン収納式自動インジェクター(101)を誤って駆動することができなくなる。
この例は、ブーツ・リムーバー(104)が、トリガーカバー(106)の除去を防止し得る多くの方法の1つにすぎない。例えば、ボタンがトリガーカバー(106)の除去を容易にするために使用される場合、ブーツ・リムーバー(104)は、ボタンに対するインターロックとして機能してもよい。
図4〜7を参照して、第2の実施形態について述べる。これは、「ロッド埋設式自動インジェクター」(embedded rod auto−injector)と称される。
図4は、発射機構ハウジング(202)、注射器を収納する注射器ハウジング(203)、針およびブーツ(図示せず)、並びにブーツ・リムーバー(204)を含む、ピンまたはロッド埋設式自動インジェクター(201)を示す。最初に、発射機構ハウジング(202)は、注射器ハウジング(203)とは分離しており、したがって、発射機構ハウジング(202)内の発射機構の駆動は、注入を実行しない。ロッド埋設式自動インジェクター(201)の組立てにおいて、発射機構ハウジング(202)上のリップ(205)が、注射器ハウジング(203)内のチャネル(206)に存在するロッド(207)を移動させる。組み立ては、発射機構ハウジング(202)を注射器ハウジング(203)内にねじ込むことによって達成されてもよい。
図5は、注射器ハウジング(203)が完全に発射機構ハウジング(202)に係合した状態を示す。リップ(205)は、ロッド(207)を移動させ、次いでブーツ・リムーバー(204)を移動させ、それを注射器ハウジング(203)から除去する。その結果、自動インジェクター(201)が駆動される前に、ブーツが除去されるであろう。図6は、ブーツ・リムーバー(204)を移動させているロッド(207)を拡大して示すものである。
ブーツ・リムーバー(204)は、図7に示されるように、チャネル(206)へ突出してロッドと係合する、ペグ(208)を有してもよい。この構成は、注入を実行するときに障害となり得るような、ロッド(207)のその後の突出を招くことなく、ブーツ・リムーバー(204)が移動され取り外され得ることを保証する。図7はさらに、ブーツ・リムーバー(204)上に形成された隆起(図示せず)を受け入れて、ブーツ・リムーバー(204)の適切な方向性を保証するための、注射器ハウジング(203)の内表面に沿って延びるトラック(209)を示す。
ロッド埋設式自動インジェクター(201)は、ロッド(207)が分離時の突出位置から復帰することを保証するために、注射器ハウジング(203)内に設けられ、ロッド(207)を後方(発射機構ハウジング(202)の方向)へ押圧するように機能するバネを含んでもよい。これは、再使用可能な注射装置に、特に好適である。
図8〜13を参照して、第3の実施形態について述べる。これは、「螺旋結合式自動インジェクター」(helical linkage auto−injector)と称される。
図8は、ブーツ・リムーバー(302)、ブーツ(312)、ハウジング(303)、トリガー(304)およびトリガー・ロック(305)を含む、螺旋結合式自動インジェクター(301)の断面図を示す。ブーツ・リムーバー(302)は、放射状に突き出るペグ(306)およびキー(307)を有する。ハウジング(303)は、キー(307)を受け入れるための軸方向のトラック(図示せず)を有し、キー(307)が軸方向トラックと係合する間は、ブーツ・リムーバー(302)の回転が防止されるように構成される。螺旋結合式自動インジェクター(301)に装着される、ブーツ・リムーバー(302)の回転を防ぐために使用される方法は、いくらでもある。キー(307)および軸方向トラックの使用は、多数の可能な代替物のうちの1つにすぎない。
ハウジング(303)は、その円周方向に延びる螺旋形のトラック(310)(図8には示されない)を備えたロッド(308)を含んでいる。螺旋形のトラック(310)は、ペグ(306)を受け入れるように構成される。ペグ(306)が螺旋形のトラック(310)と係合しているときは、ペグ(306)と螺旋形のトラック(310)との間の結合は、ブーツ・リムーバー(302)の回転運動を防止するのに十分であり得ることに注意すべきである。その後、キー(307)および軸方向トラックは、必要とされなくてもよい。ロッド(308)の一方の端部に、トリガー(304)の発動を防ぐためのトリガー・ロック(305)が設けられる。トリガー・ロック(305)の特徴は、ロッド(308)およびトリガー・ロック(305)の1つの配置方向においては、トリガー(304)を駆動することができず、しかしロッドとトリガー・ロックとを180度回転させると、トリガー(304)が駆動可能になるように形成されていることである。この形状は、例えば階段状であってもよい。図9は、ブーツ・リムーバー(302)の斜視図を示すものであって、ペグ(306)およびキー(307)を示しており、一方、図10は、ロッド(308)上の螺旋形のトラック(310)と係合しているペグ(306)を示している。
図11は、トリガー(304)とトリガー・ロック(305)とを拡大して示すものである。トリガー(304)は、トリガー・ロック(305)に接し、トリガー(304)の下方への移動を防ぐリップ(311)を有する。ブーツ(312)が、ブーツ・リムーバー(302)を使用して、除去されるときに、ペグ(306)と螺旋形のトラック(310)の間の相互作用により、ペグ(306)の軸方向運動が、ロッド(308)の回転を引き起こす。ロッド(308)に接続されているトリガー・ロック(305)も、同様に回転する。
図12は、ブーツ・リムーバー(302)が除去された後の、トリガー(304)およびトリガー・ロック(305)を拡大して示すものである。トリガー・ロック(305)は、もはやリップ(311)の経路をブロックしておらず、トリガー(304)が、自由に下方へ押されて、自動インジェクターを駆動することを可能にしている。図13は、トリガー(304)の発動後を示すものである。
ブーツ・リムーバー(302)がまだ所定位置にある間、螺旋結合式自動インジェクター(301)は、発射不可能である。ブーツ・リムーバー(302)が、ブーツ(312)とともに、除去されると、トリガー・ロック(305)が解放される。その後、ユーザーは、トリガー(304)を押し、自動インジェクター(301)を駆動することができる。
図14〜17を参照して、第4の実施形態について述べる。これは、「バネ負荷型ロック式自動インジェクター」(spring loaded lock auto−injector)と称される。
図14は、ブーツ・リムーバー(402)、ブーツ(412)、ハウジング(403)、トリガー(404)およびトリガー・ロック(405)を含む、バネロック式自動インジェクター(401)の断面図を示す。ブーツ・リムーバー(402)は、ラッチ(406)と、1または2以上のキー(407)(図示せず)を有している。ハウジングは、キー(405)と係合するための、1または2以上の、直線状に軸方向に伸びるトラック(図示せず)を有する。この構成は、ブーツ・リムーバー(402)が除去される前に回転するのを制限する。バネロック式自動インジェクター(401)に取り付けられる、ブーツ・リムーバー(402)の回転を防止するために使用される手段はいくらでもある。
ハウジング(403)は、ラッチ(406)と係合するピン(409)を備えたロッド(408)を含んでいる。ハウジング(403)は、ロッド(408)に接続し、ロッドが所定の方向から回転して移動するときに、ロッド(408)にトルクを与えるねじりバネ(410)を、さらに含んでいる。ロッド(408)の一方の端部に、トリガー(404)の発動を防ぐためのトリガー・ロック(405)が設けられる。トリガー・ロック(405)は、1つの方向において、トリガー(404)を駆動することができないが、トリガー・ロック(405)を180度回転させると、トリガー(404)が駆動可能になるような形状を有している。これは、トリガー・ロック(405)に形成された階段状の形状によって容易に実現し得る。自動インジェクターの不発射状態において、ロッド(408)がラッチ(406)と係合するピン(409)によって所定位置に保持されている状態で、ねじりバネ(410)によってロッド(408)にトルクが付与されて、ロッドが回転方向に移動する。ラッチおよびピンの斜視図が、図15に示される。
図16は、不発射状態における、トリガー(404)およびトリガーロック(405)を拡大して示すものである。トリガー(404)は、トリガー・ロック(405)に接するリップ(411)を有し、トリガー(404)の下方への移動を防止している。
ブーツ・リムーバー(402)が除去されたとき、ピン(409)がラッチ(406)との係合を解除し、トルクバネ(410)によって付与されるトルクにより、ロッド(408)およびトリガー・ロック(405)が回転することが可能になる。ロッド(408)とトリガーロック(405)が、それらの最終位置に到達したとき、トリガーロック(405)は、もはやトリガー(404)が押されるのを妨げない。
図17は、発射可能状態のトリガー(404)およびトリガー・ロック(405)を拡大して示すものである。ロッド(408)の回転が、トリガー・ロック(405)を回転させて、リップ(411)の経路をもはやブロックせず、トリガー(404)が自由に下方へ押されることを可能にして、自動インジェクター(401)を駆動することは、明白だろう。
螺旋結合式自動インジェクター内およびバネ負荷型ロック式自動インジェクター内のトリガー・ロックは、トリガーに接して、トリガー(304;404)の軸方向移動を防止する、トリガー・ロック(305;405)を有しているものとして記載されている。他のトリガー防止機構が、代わりに使用し得ることが注目される。例えば、トリガー・ロックは、トリガーへのアクセスを防ぐカバーであって、ロッドの回転によって、トリガーへのアクセスを妨げない位置へ移動されるようなカバーであってもよい。
図18〜26を参照して第5の実施形態について述べる。これは、「ヒンジ式自動インジェクター」(hinged auto−injector)と称される。図18は、ブーツ・リムーバー(502)、ブーツ(514)、注射器ハウジング(503)、トリガー(504)、発射機構ハウジング(505)、ヒンジ(506)および針(507)を含む、そのようなヒンジ式自動インジェクター(501)の断面図を示す。折り畳まれた時、ヒンジ式自動インジェクター(501)は、不発射状態にあり、ブーツ・リムーバー(502)が、トリガー(504)および針(507)の両方をカバーする。ヒンジ式自動インジェクター(501)を使用するため、最初に、ブーツ・リムーバー(502)が除去されねばならない。次いで、ヒンジ式自動インジェクター(501)は、広げられて、発射可能位置にすることができる。
図19は、ブーツ・リムーバー(502)およびブーツ(513)が除去され、まだ折り畳まれた形態のヒンジ式自動インジェクター(501)を示す。図20は、広げられた状態のヒンジ式自動インジェクター(501)の断面図および平面図である。ラッチ(508)は、ヒンジ式自動インジェクター(501)を、広げた位置にロックするために使用されてもよい。
図21は、ラッチ(508)を拡大して示すものである。ラッチ(508)は、発射機構(505)またはハウジング(503)のいずれに付属させてもよいことに注意すべきである。
ヒンジ式自動インジェクター(501)を所定位置にロックするための他の適当な機構については、即座に明らかになる。ヒンジ式自動インジェクター(501)は、ヒンジ式自動インジェクター(501)が完全に広げられる前に、トリガー(504)が発動するのを防ぐ機構を、さらに含んでもよい。そのような機械的インターロックの一例は、図22に示されるような、長尺のプレート(509)を含むトリガー・ロックを含む。長尺プレート(509)は、トリガー(504)の下方への移動を防ぐためのボス(510)によって特徴づけられる。図22は、「ロック」位置を示す。自動インジェクターを広げるときに、長尺プレート(509)は、トリガー(504)の下方への移動が妨げられる位置から、トリガーの下方への移動が可能な位置へ、中央のピボット軸の回りに回転する。図23は、注射装置の展開後の解除位置にある長尺プレート(509)を示す。
長尺プレート(509)は、図24に、より詳細に示される。トリガー・ロックの前方端は、バネとして機能し、ロック位置に長尺プレート(509)を保持する、角度を有する表面(511)を特色とする。長尺プレート(509)は、中央のピボット軸(512)上に設けられる。図25に示されるように、ハウジング(503)上の第2のラッチ(513)との相互作用によって、角度を有する表面(511)が、発射機構ハウジング(505)内へ押し込まれる。この作用は、長尺プレート(509)をピボット軸(506)の回りに回転させ、ボス(510)を、トリガー(504)の経路から離れて移動させる。図26は、ロック位置にあるヒンジ式自動インジェクター(501)を示し、長尺プレート(509)が分離され、ラッチ(508)が係合している。
図27〜30を参照して、第6の実施形態について述べる。これは、「浮動式自動インジェクター」(floating auto−injector)と称される。図27は、ブーツ・リムーバー(602)、ハウジング(603)、ハウジング(603)に取り付けられたトリガー(604)を含む、そのような浮動式自動インジェクター(601)の断面図を示す。ハウジング(603)は、注射器、針(609)および発射機構を収納する。それらは図27では示されない。浮動式自動インジェクター(601)は、ハウジング(603)が内部に設置されるアウターケーシング(605)をさらに含む。ハウジング(603)は、アウターケーシング(605)に対し、軸方向に移動可能である。
アウターケーシング(605)は、近位端に位置する第1の開口部と、遠位端に位置する第2の開口部を有する。第1の開口部は、ハウジングの近位端を通過させることが可能な十分な大きさを有している。第2の開口部は、トリガーを通過させることが可能な十分の大きさを有している。ハウジング(603)とアウターケーシング(605)との間で作用するバネ(606)は、ハウジング(603)に、遠位方向へのバイアスを作用させる。
ブーツ・リムーバー(602)は、ブーツ(図示せず)を除去するように構成され、さらに、ハウジング(603)に取り付けられている場合、ブーツ・リムーバー(602)が、ハウジング(603)を第1の近位位置における前方に保持するように構成される。ハウジング(602)が、第1の位置で前方に保持されている間、トリガー(604)は、アウターケーシング(605)内に保持され、トリガー(604)へのアクセスが制限される。浮動式自動インジェクター(601)は、遠位側の開口部をカバーして、アウターケーシング(605)の内部へのアクセスを防止する、弾性膜(607)をさらに含んでもよい。
図28は、ブーツ・リムーバー(602)が一旦除去された浮動式自動インジェクター(601)を示す。ブーツ・リムーバー(602)がもはやハウジング(603)を所定位置に保持しない状態で、バネ(606)が、ハウジング(603)を遠位側の第2の位置へ押し込んで、トリガー(604)が遠位側の開口部を通って伸び、弾性膜(607)を伸長させ、トリガー(604)をユーザーにアクセス可能にする。
浮動式自動インジェクター(601)が、ユーザーの皮膚に対して押しつけられていない場合、トリガー(604)を押すと、ハウジングがアウターケーシング(605)内に押し込まれ、ハウジング(604)の近位端が、アウターケーシング(605)の近位端から出るようになる。ハウジング(604)は、トリガー(604)がもはやアクセス可能ではなくなるまで、第1の位置へ移動される。トリガー(604)をハウジング(603)と相対的に移動させるのに必要な力は、ハウジング(603)をアウターケーシング(605)に対し相対的に移動させるのに必要な力より大きい。したがって、トリガー(604)を押すことは、ハウジング(603)をアウターケーシング(605)を通って移動させ、浮動式自動インジェクター(601)を駆動しない。これは図29に示される。
図30は、アウターケーシング(605)が皮膚(608)に対して押しつけられるときの、浮動式自動インジェクター(601)を示す。トリガー(604)に、近位方向の圧力を作用させることによって、ハウジング(603)の近位端が皮膚(608)に対して押しつけられる。皮膚に対してハウジングおよびアウターケーシング(605)の両方を押しつけたままの状態では、この2つは互いに相対的に移動することができず、トリガー(604)に力を加えると、トリガー(604)がハウジング(603)に対し軸方向に相対移動し、浮動式自動インジェクター(601)を駆動する。
図31〜34は、第7の実施形態を示し、この第7の実施形態は、浮動式自動インジェクターの別態様の構成である。別態様の浮動式自動インジェクター(701)は、浮動式自動インジェクター(601)に構造上似ている。しかし、浮動式自動インジェクター(601)は、アウターケーシング(605)の遠位側へハウジング(603)を付勢するバネ(601)を有するのに対し、別態様の浮動式自動インジェクター(701)は、アウターケーシング(705)の近位側へハウジング(703)を付勢するバネ(706)を有する。バネ(706)によって前方へ付勢される場合、図31および32に示されるように、トリガー(704)へのアクセスが制限される。トリガー(704)にアクセスするためには、第6の実施形態のように、ハウジングがアウターケーシング(705)に対し相対的に後方へ移動するために、ハウジング(703)の近位端がユーザーの皮膚に対し押しつけられなくてはならない。ブーツ・リムーバー(702)が取り付けられている場合、ブーツ・リムーバー(702)は、ユーザーの皮膚に対してハウジング(703)を押しつけることができないように、アウターケーシング(705)の近位端をカバーする。したがって、注射装置(701)を駆動するためには、ユーザーは最初にブーツ・リムーバー(702)を除去して、ハウジング(703)の近位端を露出させ、次いで、ハウジング(703)の近位端を皮膚に押しつけ、トリガー(704)をアクセス可能にしなければならない。その後、注射装置は、トリガーを押すことにより、駆動され得る。
図35〜39を参照して、第8の実施形態について述べる。これは、「歯車式自動インジェクター」(toothed wheel auto−injector)と称される。図35は、ブーツ・リムーバー(802)、ハウジング(803)、トリガー(804)およびスキン・センサー(805)を含む、そのような歯車式自動インジェクター(801)の断面図を示す。ハウジングは、針を備える注射器および力付与手段(図示せず)を収納するように構成される。ブーツ・リムーバー(802)が注射装置(801)に取り付けられる場合、ブーツ・リムーバー(802)はトリガー(804)に接して、トリガー(804)がハウジング(803)に対し相対移動するのを防ぐ。図36は、ブーツ・リムーバー(802)が除去された後の歯車式自動インジェクター(801)を示す。
歯車式自動インジェクター(801)は、プランジャー(807)に接続される回転可能なシャフト(806)をさらに含む。トリガー(804)を押すことによって、プランジャーが注射器の口栓に押し込まれるように、プランジャー(807)はトリガー(804)に接続される。プランジャー(807)は、ドライブバネ(図示せず)、または、他のどのような手段によって、駆動されてもよい。
回転可能なシャフト(806)は、ストリングのような、可撓性部材(808)によって、プランジャー(807)に接続される。回転可能なシャフト(806)は、回転可能なシャフト(806)の外面の回りで周囲に向かって伸びる、2つの歯状部分(809、810)を有する。歯状部分(809、810)は、ロッキング・レバー(811、812)に係合するように構成され、シャフト(806)の回転を防止する。シャフト(806)が回転に対し固定される場合、プランジャー(807)は、可撓性部材(809)を介して接続されることにより、軸方向の移動が制限される。別態様では、可撓性部材(808)が、トリガー(804)に直接取り付けられてもよく、ロッキング・レバー(811、812)が係合するとき、トリガー(804)の軸方向移動が防止される。
スキン・センサー(805)は、ハウジング(803)の近位端を越えて伸びるように構成され、さらに、スキン・センサー(805)は、皮膚に対して押しつけられるときに、スキン・センサー(805)がハウジング(803)に押し込まれるように構成される。ハウジング(803)に押し込まれたとき、スキン・センサー(805)は、脚部(813、814)を介してロッキング・レバー(811、812)に作用し、シャフト(806)の歯状部分(809、810)からロッキング・レバー(811、812)を分離し、シャフト(806)を回転可能にする。ロッキング・レバー(811、812)は、ピボット先端部(814、815)によって、ハウジング(803)に軸回転可能に取り付けられる。ピボット先端部(815、816)は、スキン・センサーの脚部(813、814)が作用するレバーの一部分と、歯状部分(809、810)が係合するレバーの一部分との間に位置する。したがって、皮膚に対して押された時、スキン・センサー(805)が、ロッキングレバー(811,812)を回転させ、それらを歯状部分(809、810)から分離し、注射装置(801)が駆動されるのを可能にする。図37は、ハウジングに押し込まれたスキン・センサーを示し、ロッキング・レバー(811、812)が、ピボット先端部(815、816)の回りに回転し、シャフト(806)から分離される。図38は、ハウジングに押し込まれているトリガー(804)を示す。図39は、プランジャー(807)およびシャフト(806)の異なる図を示す。
図40〜45を参照して、第9の実施形態について述べる。これは、「歯状式自動インジェクター」(toothed element auto−injector)と称される。図40は、ブーツ・リムーバー(902)、ハウジング(903)、トリガー(904)およびアウターケーシング(905)を含む、そのような歯状式自動インジェクター(901)の断面図を示す。
ブーツ・リムーバー(902)は、ブーツ・リムーバー(902)が除去される前に、トリガー(904)に接する。これは、トリガー(904)が、アウターケーシング(905)に対し相対移動するのを防止し、および/または、アウターケーシング(905)が、注射装置(901)を駆動するのを防止する。図41は、ブーツ・リムーバー(902)が除去された状態を示す。
ハウジング(903)は、アウターケーシング(905)内に位置し、ハウジング(903)の一部は、アウターケーシング(905)の近位端から突出し、皮膚に対し押しつけられるものである。アウターケーシング(905)は、ハウジング(903)に含まれている注射器(908)の口栓またはプランジャーに作用する、ドライブバネ(906)およびプランジャー(907)を含む。トリガー(904)を押すことにより駆動用バネ(906)を駆動し、プランジャー(907)を駆動する。
注射装置(901)は、アウターケーシング(905)内に軸方向に固定された2つのロッキング要素(909、910)をさらに含む。ロッキング要素(909、910)は、プランジャー(907)の軸方向移動を防ぐ、プランジャー(907)上の連結歯と係合する、連結歯を有する。ロッキング要素(909、910)が係合する場合、注射装置(901)は駆動することができない(図42)。
ハウジング(903)は、アウターケーシング(905)に対し軸方向に相対移動可能であり、また、ユーザーの皮膚に対して押しつけられた時、ハウジング(903)は、アウターケーシング(905)内へ押し込まれる(図43)。
アウターケーシング(905)は、連結歯が噛み合うように、プランジャー(907)に逆らって、ロッキング要素(909、910)にバイアスを与えるバイアスバネ(911)を含む。連結歯が記載されているが、どのような連結機構でも使用可能なことは、当業者であれば理解されるだろう。
ハウジング(903)は、ハウジング(903)がアウターケーシング(905)内へ押しこまれるときに、ロッキング要素(909、910)上の2つの角度を有する表面(914)、(915)と相互に作用する、2つの角度を有する表面(912、913)を有している。これらの角度を有する表面は、ロッキング要素を放射状に移動させて、それらをプランジャー(907)から分離する(図43−45)。
したがって、ブーツ・リムーバーは最初に除去されねばならず、その後、トリガー(904)を押す前に注射装置(901)が皮膚に対して押しつけられ、注射装置(901)が駆動され、針(916)がユーザーの体内へ打ち込まれ、注射器(908)に収容されていた薬を投与する。
図46〜50を参照して、第10の実施形態について述べる。図46は、第10の実施形態の自動インジェクター(1001)の断面図を示す。自動インジェクター(1001)は、ブーツ(1002a)を除去するためのブーツ・リムーバー(1002)、ハウジング(1003)、トリガー(1004)およびスキン・センサー(1005)を含む。ハウジング(1003)は、薬を運ぶ注射器、針、針をユーザーの皮膚に打ち込んで、薬を投与するための発射機構(図示せず)を収容する。
スキン・センサー(1005)は、ハウジング(1002)から近位側へ伸び、ユーザーの皮膚に対して押しつけられるように構成される。ブーツ・リムーバー(1002)は、皮膚に対してスキン・センサー(1005)を押しつけることができないように、スキン・センサー(1005)をカバーする。ブーツ・リムーバー(1002)が除去されると(図47)、スキン・センサー(1005)は、皮膚に対して押しつけ可能になる。スキン・センサー(1005)は、細長い脚部(1006)を有し、トリガー(1004)上の対応する細長い脚部(1007)と接する。この接触は、トリガー(1004)が軸方向に移動するのを防止する。
スキン・センサー(1005)は、ハウジング(1003)の内表面上のボス(1009)と係合する、螺旋形のキー溝(1008)をさらに含む。スキン・センサー(1005)を皮膚に対して押しつけると、スキン・センサーは、ボス(1009)が螺旋形のキー溝(1008)(図48および図49)にしたがって動くことにより、ハウジング内へ回転する。これは、スキン・センサー(1005)の細長い脚部(1006)が、トリガー(1004)の細長い脚部(1007)から分離することを許容し、それによって、トリガーの移動を可能にする。
図51〜53を参照して、第11の実施形態について述べる。図51は、第11の実施形態の自動インジェクター(1010)の遠位端の断面図を示す。自動インジェクター(1010)は、ブーツを除去するためのブーツ・リムーバー(図示せず)、ハウジング(1102)、トリガー(1103)およびスキン・センサー(1104)を含む。第8の実施形態のように、スキン・センサー(1104)は、皮膚に対して押しつけられ、ハウジング(1102)内へ入るように構成される。ブーツ・リムーバーは、それが除去される前には、スキン・センサー(1104)の近位端をカバーし、それが皮膚に対して押しつけられ、ハウジング(1102)の内部へ入るのを防止するように構成される。トリガー(1103)は、トリガー(1103)と、ハウジング(1102)の内部に固定された可撓性を有する2つの脚部(1105、1106)との間の接触により、近位の方向へ軸方向移動するのが妨げられる。
ブーツ・リムーバーが除去されると、スキン・センサー(1104)は、皮膚に対して押しつけられ、ハウジング(1102)内へ向かって軸方向に移動する。スキン・センサー(1104)の遠位端は、可撓性を有する脚部(1105、1106)を押し、それらを変形させる(図52)。一旦変形されたならば、可撓性を有する脚部(1105、1106)はもはやトリガー(1103)に接することがなく、注射装置(1010)を駆動可能にする(図53)。
図54〜59を参照して、第12の実施形態について述べる。図55は、自動注射装置(図示せず)を駆動するためのトリガー(1201)を示す。トリガー(1201)は、トリガー(1201)から伸び、自動インジェクターのハウジング(1204)のスロット(1203)を通って突き出るように構成される3つのラッチ(1202)を有する(図56)。この係合は、トリガー(1201)の発動を防ぐ。
自動インジェクターは、3つの解除要素(1205)を有する(解除要素は、図54に、側面図および正面図が示される)。解除要素(1205)は、脱係合部位(1206)を有する。それは、トリガー(1201)のラッチ(1202)と係合するための、突起した角度を有する表面(1207)によって特徴づけられる。解除要素は、ハウジング(1204)の近位端を越えて伸び、自動インジェクターが皮膚に対して押されたとき、解除要素(1205)がハウジング(1204)内に押し込まれ、脱係合部位(1206)が、ラッチ(1205)に係合してスライド通過することで、ラッチをスロット(1203)通じて後方へ押し、トリガー(1201)を駆動可能にするように構成される(図57および図58)。
解除要素(1205)は、ハウジング(1204)に固定され、ハウジングへの取付部材と脱係合部位(1206)との間に、一体型のバネ要素(1207)を有している。バネ要素(1207)は、解除要素(1205)が皮膚に対して押しつけられた場合に圧縮するように構成される。解除要素は、いくつ使用されてもよい。解除要素(1205)は、ハウジング(1204)の軸方向に沿う中心を持つ円周面の回りに、均等に配置される。これは図55に見ることができ、3つのラッチ(1202)が、解除要素(1205)と係合し、均等に配置されている。
図59は、ブーツ(図示せず)を除去し、解除要素(1205)をカバーする、ブーツ・リムーバー(1208)を示す。ブーツ・リムーバー(1208)は、皮膚に対して解除要素(1205)を押しつけることが可能になる前に、除去されなければならない。
図60〜63を参照して、第13の実施形態について述べる。図60〜63は、第13の実施形態の自動インジェクターの上端断面図と、部分的に断面した側面図とを示す。第13の実施形態の自動インジェクター(1301)は、注射器と針、および、注射装置(1301)を駆動するための発射機構(図示せず)を収容するハウジング(1302);ハウジング(1302)に連結され、発射機構を始動するように構成されるトリガー(1303);ブーツを除去し、注射装置(1301)の近位端をカバーするためのブーツ・リムーバー(1304);ハウジング(1302)およびアウターケーシング(1306)を越えて近位側へ突出するスキン・センサー(1305);および、軸方向にハウジング(1302)に固定され、トリガー(1303)とハウジング(1302)との間に配置される楕円形の可撓性を有するカラー(1307)、を含む。
楕円形の可撓性を有するカラー(1307)は、トリガー(1303)の一部の周囲に設置され、第1の形態のときに、トリガー(1303)が完全に低下するのを防ぎ、かつ注射装置(1301)の駆動を防止するように構成される。第1の形態において、カラー(1307)は、トリガー(1309)の上部の直径より短い短軸(1308)を有する。これは、ハウジング(1302)内へトリガー(1303)が完全に低下するのを防ぐ(図60は、ブーツ・リムーバー(1304)が取り付けられた注射装置(1301)を示し、図61は、ブーツ・リムーバーが除去された注射装置を示す)。トリガーは直径を有し、カラーが楕円形であると記載したが、両者は、カラーが変形して、トリガーが通り抜けることが可能であるような任意の適当な形状であってもよい。
スキン・センサー(1305)は、その遠位端に、角度を有する表面(1310)を有している。スキン・センサー(1305)が皮膚に対して押されたとき(図62)、それは、アウターケーシング(1306)内へ移動し、角度を有する表面(1310)が、長軸を定義する頂点を押して、楕円の可撓性を有するカラー(1307)を変形させる。この変形は、トリガー(1303)がもはやカラー(1307)によってブロックされなくなるまで、短軸の長さを増加させる。この第2の形態では、その後、注射装置は駆動可能になる(図63)。ブーツ・リムーバー(1304)は、除去に先立って、スキン・センサー(1305)をカバーする。一旦除去されたならば、スキン・センサー(1305)は、皮膚に対して押しつけられてもよい。
図64〜68を参照して、第14の実施形態について述べる。図64〜68は、第13の実施形態の自動インジェクターの断面図を示す。自動インジェクター(1401)は、注射器、発射機構(図示せず)および針(1411)を収容するハウジング(1402);ハウジング(1402)が内部に配置されるアウターケーシング(1403);ブーツを除去し、注射装置(1401)の近位端をカバーするためのブーツ・リムーバー(1404);および、トリガー(1405)を含む。
ハウジング(1402)は、アウターケーシング(1403)内に含まれており、アウターケーシング(1403)内で軸方向に移動可能なように構成される。ハウジング(1402)内の発射機構は、2カ所で固定される可撓性部材(1406)に接続されることにより、注射装置(1401)の解除および駆動が防止されている。
自動インジェクター(1401)は、アウターケーシング(1403)とハウジング(1402)の間で機能し、ハウジング(1402)の一部が、アウターケーシング(1403)の近位端の開口部から突出するように、アウターケーシング(1403)の近位端へ向かって、ハウジング(1402)にバイアスをかけるバネ(1407)をさらに含む。バネ(1407)によって、この前方位置に保持された時、可撓性要素(1406)の一部は、ハウジング(1402)の外面とアウターケーシング(1403)の内面との間の第1の固定位置に保持される。ハウジング(1402)が皮膚に対して押される場合、ハウジング(1402)は、アウターケーシング(1403)内へ移動し、クランプ(1408)を解放する(図66)。
ブーツ・リムーバー(1404)は、ハウジング(1402)が、除去に先立って、皮膚に対して押されるのを防ぐ。
可撓性要素(1406)はさらに、ハウジング(1402)に連結されたバタフライバルブ(1409)によって、第2の固定位置に保持される。トリガー(1405)は、2つの解除用ペグ(1410)を有し、トリガー(1405)が移動したときに、バタフライバルブ(1409)と係合する。この係合は、バルブ(1409)を開き、第2の保持から可撓性要素(1406)を解放する(図67)。発射機構は、もはや可撓性部材によって解放されることを妨げられない。したがって、注射装置(1401)が駆動され、針をユーザーの皮膚に打ち込んで薬を投与する。
注射装置(1401)はさらに、ハウジング(1402)がバネ(1407)によって前方位置に保持されるとき、バタフライバルブ(1409)が、トリガー(1404)の解除用ペグ(1410)に近づき難い位置に保持されるように構成される。これは図65に示され、トリガー(1405)が、ハウジング内へ押されるが、バルブ(1410)には到達しない。図示しなかったが、トリガー(1405)は、アウターケーシング(1403)内の棚のような構造の停止部により、軸方向移動を制限する。
本発明の範囲から外れずに、様々な変更を、前述した実施形態になされる得ることは、当業者であれば、理解しうるであろう。さらに、いくつかの個別の実施形態を記載したが、当業者であれば、これらの実施形態のうちのいくつかを組み合わせ得ることを認めるであろう。