“抽出すること”は、本明細書において用いられる際、抽出すべき植物材料中に含有されている化合物を可溶化するプロセスおよびそれに続く前記の材料からのそれらの化合物の遊離であることを意味する。その遊離した化合物は“抽出物”と呼ぶことができ、または例えば乾燥もしくは賦形剤の添加のようなそれに続く処理の後に得ることができる、もしくは得られる“抽出物”の基礎を形成することができる。植物材料を抽出するための方法は当該技術で周知であり、例えばGaedcke, Steinhoff, Herbal Medicinal Products, Medpharm Scientific Publishers, CRC Press 2003, ISBN: 0849310237において記載されている。抽出手順は目標とされる化合物に応じて例えば重量、大きさまたは可溶性/極性のような様々なパラメーターに基づくことができる。本発明に従う抽出は可溶性に基づく。可溶性は物質が溶媒中で溶解する能力を記述し、温度、圧力および極性の関数である。
本発明に従う“溶媒”は、本発明の組成物中に含まれるような抽出物を得るために抽出すべき植物材料中に含有されている化合物を溶解させる能力を有する物質である。換言すると、溶媒は基礎(substrate)植物材料中の所望の植物化合物(本明細書においてその抽出物を形成する薬物とも呼ばれる)を溶解させて後者を含有する溶液を形成することができる。前記の溶媒は好ましくは液体であるが、ガス性、例えばCO2、または固体であることもでき、ここで後者の場合、それは本明細書で記載されるような抽出プロセスにおいて用いるために液化させることができる。溶媒はそれらの極性に従って極性(親水性)から非極性(親油性)まで分類することができる。一般に、極性溶媒は極性化合物を最もよく溶解させると考えられ、一方で非極性溶媒は非極性化合物を最もよく溶解させるであろう。溶媒の比誘電率を溶媒の親水性、中程度の極性または親油性溶媒への分類のために用いることができるが、他の手段、例えばGrunwald Winstein mY尺度またはKosowerのZ尺度(Kosower, E.M., “An introduction to Physical Organic Chemistry”, Wiley: ニューヨーク, 1969, p. 293)も分類のために用いることができる。本発明に従って、親油性溶媒は5未満の比誘電率を有し、一方で中程度の極性の溶媒は5から20までの範囲の比誘電率を有し、親水性溶媒は20より大きい比誘電率を有する。
本発明に従う親水性溶媒は、例えば極性の分枝状または線状鎖炭化水素、極性および中程度の極性の有機化合物、その塩素化版、水またはそれらの混合物であることができる。好ましくは、前記の炭化水素は、例えばC1〜C10アルコール類(例えばn−ブタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、エタノールまたはメタノール)または酸類(例えばギ酸または酢酸)のように、C1〜C10の枠組みを有する。極性有機化合物は、アセトン、ジメチルホルムアミド(DMF)、アセトニトリル(MeCN)、ジメチルスルホキシド(DMSO)または炭酸プロピレンからなる群から選択される。
本発明に従う中程度の極性の溶媒は、例えば、例えば酢酸エチル、ジクロロメタンまたはテトラヒドロフランのような中程度の極性の有機化合物であることができる。
本発明に従う親油性溶媒は、例えば非極性の分枝状、芳香族または線状の炭化水素またはエーテル類(例えばジエチルエーテル、1,4−ジオキサン)であることができる。好ましくは、前記の炭化水素は、例えばクロロホルム、トルエン(トルオールとも呼ばれる)、ベンゼン、シクロヘキサン、ヘキサン、シクロペンタンまたはペンタンのようにC1〜C10の枠組みを有する。
別途明記しない限り、抽出法(下記参照)とは無関係に、ラファヌス属の植物の抽出のための溶媒として、好ましくは親油性または中程度の極性の溶媒、より好ましくは親油性溶媒が用いられるべきである。
その抽出が本明細書で記載される溶媒を用いた浸出、冷浸、煎出または温浸により達成されることも好ましい。
浸出の抽出手順は当該技術で周知であり、フィルターを用いて薬物、すなわち抽出すべき所望の植物化合物を溶媒を植物の部位の上に注いだ際に植物の部位から分離し、その薬物を含有する流出物を捕捉することにより植物を抽出するプロセスに関する。その抽出物の収率は、溶媒(濃度、極性、および量)、抽出時間、抽出の流れおよび抽出装置(そのバッチの体積、高さ)により影響される。ラファヌス属の植物、好ましくはラファヌス・サティウス(Raphanus sativus)種、またはラファヌス・サティウス種の植物を含むラファヌス属の植物の混合物の浸出による抽出は、好ましくは例えばエタノール/水混合物のような中程度の極性の溶媒を用いて実施される。テオブロマ属の植物、好ましくはテオブロマ・カカオ(Theobroma cacao)種、またはテオブロマ・カカオ種の植物を含むテオブロマ属の植物の混合物の浸出による抽出は、好ましくは例えば20%アセトン溶液、水、メタノールまたは水/メタノール混合物のような親水性溶媒を用いて実施される。
冷浸は、基礎植物材料を溶媒に例えば12〜24時間または2日以上のような所与の期間任意に(時々)振盪しながら浸して柔らかくして(macerating)、液体抽出物を抽出された植物材料から分離することを特徴とする抽出手順である。この手順において、生薬の抽出溶媒に対する比率は抽出の有効性に関する関連因子である。抽出可能な物質の量は、より多い量の抽出溶媒を用いた場合定常状態条件により遅く達するため、抽出溶媒の量(質量、体積)と共に増大する。従って、生薬の抽出溶媒に対する比率は抽出物の質に関する関連パラメーターであり、バッチごとの一致を確実にするように定められるべきである。ラファヌス属の植物、好ましくはラファヌス・サティウス種、またはラファヌス・サティウス種の植物を含むラファヌス属の植物の混合物の冷浸による抽出は、好ましくは例えばエタノール/水混合物のような中程度の極性の溶媒を用いて実施される。テオブロマ属の植物、好ましくはテオブロマ・カカオ種、またはテオブロマ・カカオ種の植物を含むテオブロマ属の植物の混合物の冷浸による抽出は、好ましくは例えば20%アセトン溶液、純水、メタノールまたは水/メタノール混合物のような比較的親水性の溶媒を用いて実施される。
煎出は基礎植物材料を溶媒と共にその混合物の沸点まで沸騰させることを特徴とする抽出手順である。その抽出プロセスは一般に他の抽出法、特に本明細書で記載される抽出法と比較して比較的長い時間がかかる。沸騰後、濾液を用いられた植物材料から分離する。抽出可能な物質の量は、量(質量、体積)と共に増大する。温度および抽出時間は、天然抽出物の量への影響を有し得る追加のパラメーターである。ラファヌス属の植物、好ましくはラファヌス・サティウス種、またはラファヌス・サティウス種の植物を含むラファヌス属の植物の混合物の煎出による抽出は、好ましくは例えばアルコール/水混合物のような中程度の極性の溶媒を用いて実施される。テオブロマ属の植物、好ましくはテオブロマ・カカオ種、またはテオブロマ・カカオ種の植物を含むテオブロマ属の植物の混合物の煎出による抽出は、好ましくは例えば水または低濃度のアルコール/水もしくはアセトン/水混合物のような親水性溶媒を用いて実施される。
温浸は、一定量(質量/体積)の抽出溶媒を抽出可能な物質が草本のマトリックスから溶媒へと完全に移動するまで用いることを特徴とする抽出手順である。従って、薬物抽出物の比率はバッチごとに一定の範囲内で異なり得る。それは生薬の特徴(抽出可能な物質の含有量、乾燥減量等)により影響される。浸出手順により製造された生薬製剤は、定められた範囲、例えば1:12(1:10〜1:14)を有する抽出溶媒の平均量(質量/体積)により記載される。次元(dimension)は質量/抽出溶媒の体積(m/v)または質量/質量(m/m)のどちらかである。ラファヌス属の植物、好ましくはラファヌス・サティウス種、またはラファヌス・サティウス種の植物を含むラファヌス属の植物の混合物の温浸による抽出は、好ましくは例えばアルコール/水混合物のような中程度の極性の溶媒を用いて実施される。テオブロマ属の植物、好ましくはテオブロマ・カカオ種、またはテオブロマ・カカオ種の植物を含むテオブロマ属の植物の混合物の温浸による抽出は、好ましくは例えば水または低濃度のアルコール/水もしくは低濃度の水/アセトン混合物のような親水性溶媒を用いて実施される。
抽出プロセスに関する基礎として用いられる植物材料は、新鮮な植物材料は水を含有し、それは天然化合物の加水分解を促進する可能性があり、組成物を不安定にする可能性があるため、好ましくは乾燥植物材料であるが、処理されていない、または異なる方法で処理された植物材料であることもできる。さらに、そして当該技術で既知であるように、植物基礎材料が押し潰されている、小さく切られている、または粉末化されている場合、抽出効率はより高く、ここで後者の植物材料の処理の程度はその植物基礎を抽出するための選択された方法に依存する。
ラファヌス属は植物の科であるアブラナ科(Brassicaceae)内の属である。現在、そして本発明に従って、その属は種ラファヌス・カウダツス(Raphanus caudatus)(時々様々なR.サティウスとも見なされる)、ラファヌス・ラファニストゥルム(Raphanus raphanistrum)およびラファヌス・サティウスを含み、それには例えばR.ラファニストゥルム亜種ランドラム(landram)、R.ラファニストゥルム亜種マリティムス(maritimus)、“エイプリル・クロス(April Cross)”、“バニー・テイル(Bunny Tail)”、“チェリー・ベル(Cherry Belle)”、“チャンピオン(Champion)”、“レッド・キング(Red King)”、“シシリー・ジャイアント(Sicily Giant)”、“スノー・ベル(Snow Belle)”、“ホワイト・アイスクル(White Icicle)”、“フレンチ・ブレックファスト(French Breakfast)”、“プラム・パープル(Plum Purple)”、“ブラック・スパニッシュ(Black Spanish)”、“ブラック・スパニッシュ・ラウンド(Black Spanish Round)”、または“大根”(R.サティウス変種ロンギピナトゥス(longipinnatus))のような様々な人工および天然の変種が含まれる。本発明に従って、少なくとも気根、種子および/または球根が抽出されることが好ましい。好ましくは、後者の植物の部位のみが抽出のための基礎植物材料として用いられ、さらなるラファヌスの植物の部位が用いられる場合、可能な限り多くの後者の植物の部位が抽出のための基礎植物材料として用いられる。好ましくは、さらなる植物の部位が用いられる場合、基礎植物材料中の気根、種子および/または球根の百分率は、抽出のために用いられる基礎植物材料の50%、60%、70%、80%、より好ましくは85%および90%または(それぞれの値に関して)より多く、そして最も好ましくは95%より多くを構成する。従って、追加の植物の部位、さらには全草を抽出することができることも予想される。好ましくは、基礎植物材料を得るために用いられるラファヌス属の植物は約6〜8月齢のものであり、および/または4月〜5月に収穫される。
テオブロマ属はアオイ科(Malvaceae)(アオギリ科(Sterculiaceae)とも呼ばれる)の中の植物の属である。現在、そして本発明に従って、その属は以下の種を含む:テオブロマ・アングスティフォリウム(Theobroma angustifolium)、テオブロマ・ビコロール(Theobroma bicolor)、テオブロマ・カカオ、テオブロマ・カヌマネンセ(Theobroma canumanense)、テオブロマ・グランディフローラム(Theobroma grandiflorum)、テオブロマ・マンモスム(Theobroma mammosum)、テオブロマ・ミクロカルプム(Theobroma microcarpum)、テオブロマ・オボバツム(Theobroma obovatum)、テオブロマ・シミアリウム(Theobroma simiarium)、テオブロマ・スペシオスム(Theobroma speciosum)、テオブロマ・スティプラツム(Theobroma stipulatum)、テオブロマ・サブインカヌム(Theobroma subincanum)、テオブロマ・シルベスタ(Theobroma sylvestre)、テオブロマ・ベルヌーイ(Theobroma bernoulli)、テオブロマ・ギレリ(Theobroma gileri)、テオブロマ・グラウクム(Theobroma glaucum)、テオブロマ・ヒラエウム(Theobroma hylaeum)、テオブロマ・シノウサム(Theobroma sinuosum)、テオブロマ・ベルチナム(Theobroma velutinum)。本発明に従って、人工および天然の変種も含まれる。本発明に従って、少なくとも果実が抽出されることが好ましい。果実は例えば種子を包含する。好ましくは、果実のみが抽出のための基礎植物材料として用いられ、またはさらなるテオブロマ属の植物の部位が用いられる場合、可能な限り多くの果実が抽出のための基礎植物材料として用いられる。好ましくは、さらなる植物の部位が用いられる場合、基礎植物材料中の果実の百分率は抽出のために用いられる基礎植物材料の50%、60%、70%、80%、より好ましくは85%および90%または(それぞれの値に関して)より多く、そして最も好ましくは95%より多くを構成する。従って、追加の植物の部位、例えば葉、樹皮、そしてさらに根を除く全草さえも抽出することができることも予想される。好ましくは、基礎植物材料を得るために用いられるテオブロマ属の植物は熱帯雨林地帯、例えば西アフリカまたは中米で成長した約10〜20歳のものであり、および/または4月〜5月に収穫される。
本明細書で定義された属の2以上の異なる種の植物の部位を抽出のための基礎植物材料として用いることも予想される。好ましくは、そしてラファヌス属の場合、ラファヌス・サティウス種またはラファヌス・サティウス種の植物を含むラファヌス属の植物の混合物が基礎植物材料として用いられ;テオブロマ属の場合、テオブロマ・カカオまたはテオブロマ・カカオ種の植物を含むテオブロマ属の植物の混合物が基礎植物材料として用いられる。
上記で言及したように、溶媒および溶解した植物化合物を含む抽出物は一般に、そしてまた本発明に従って、さらに、例えばその抽出された化合物を精製および濃縮するために処理することができる。その抽出された化合物の濃縮は、例えば溶媒(単数または複数)の量を、例えば溶媒を蒸発させることにより、沈殿または例えばGaedcke, Steinhoff, Herbal Medicinal Products, Medpharm Scientific Publishers, CRC Press 2003, ISBN: 0849310237において記載されているような他の方法により最小限にすることにより達成することができる。精製は例えば濾過法により達成することができ、それは好都合には溶媒の量を最小限にする前に用いられるが、必ずしもそうではない。その抽出物を濃縮するための方法である以外に、沈殿はその抽出物を精製するための手段として用いることもでき、ここでその沈殿物は所望の植物化合物(単数または複数)または望まれない不純物のどちらであることもでき、両方とも所望の化合物(単数または複数)を含む抽出物の一部の濃縮および精製をもたらす。好ましくは、所望の植物化合物(単数または複数)および溶媒(単数または複数)を含む溶液を濾過し、続いてその濾液を真空下で蒸発させて乾燥させる。前記の濾過および前記の溶媒蒸発が可能であるような抽出プロセスのパラメーターの選択(溶媒の選択等)は、標準的な手順を用いて達成することができる。
従って、好ましくは、そして総称において(in generic terms)、本発明に従う抽出物は、(好ましくは乾燥させた)基礎植物材料を本明細書で定義したような1種類以上の溶媒を用いて抽出し、続いてその後の濾過工程を行った後、その濾過された溶液を乾燥させて乾燥抽出物を得ることにより得ることができ、または得られる。
その乾燥抽出物を、意図される使用に応じて、例えば標準化の目的のために例えばマルトデキストリンおよび/またはシリカのような賦形剤を添加することによりさらに改変することができる。
ラファヌス属に属する植物の抽出物の場合、その抽出物は好ましくは1%〜5%の総フラボノイド類、例えば1.1%〜4.9%、1.2%〜4.8%、1.25%〜4.75%、1.5%〜4.5%、1.75%〜4.25%、より好ましくは2%〜3%または2.25%〜2.75%の総フラボノイド類を含有するように標準化される。例えば、前記の抽出物は、1%、1.25%、1.5%、3.25%、3.5%、3.75%、4%、4.5%、またはより好ましくは2%、3%、または最も好ましくは2.5%の総フラボノイド類を含有するように標準化することができる。テオブロマ属に属する植物の抽出物の場合、その抽出物は好ましくは3%〜20%の総プロシアニジン類、例えば4%〜19%、5%〜18%、6%〜17%または16%、より好ましくは6%〜14%または15%、最も好ましくは7%〜12%または13%、8%〜10%または11%の総プロシアニジン類を含有するように標準化される。例えば、前記の抽出物は3%、4%、5%、14%、15%、16%、17%、18%、より好ましくは6%、7%、11%または12%、最も好ましくは8%、9%、または10%の総プロシアニジン類を含有するように標準化することができる。当業者は抽出物を当該技術で既知の、および本明細書で記載される手段により、例えば賦形剤を添加することにより、および/または基礎植物材料を調節することにより上記で言及した値に対して標準化する立場にある。
本明細書で定義したような抽出物の組み合わせは、インビボ研究において副作用が観察されることなく十分に許容されることが示された。
本発明は、その抽出物の言及した組み合わせをオピオイドおよびアルコールの乱用ならびにオピオイドおよびアルコールの乱用の症状と戦うための医薬組成物として用いることができるという驚くべき発見に基づいている。具体的には、本発明者らは、オピオイドおよびアルコールの乱用の異なる作用を評価するのに適した動物モデルにおいて、本発明の組成物を用いて様々な試験を実施した。静脈内自己投与モデルにおける本発明に従う組成物の投与の際のラットの行動を評価することにより、モルヒネおよびヘロインの自己投与が有意に低減することを実証することができた(実施例1)。本発明の組成物は強化性の活性を有効に低減することができるというこの証拠は、前記の組成物がオピオイド類の乱用との戦いにおいて有用であることを示している。さらに、運動行動の能力も実施し、それは手の震えの出現、記憶能力、反応時間、手と眼の協調、正確性、バランス、視覚的探索、技能の応答、認識、運転、周期動作の回数(cycling times)および全体的な能力に関する所与の薬物の作用を分析するための科学的に受け入れられたモデルである(実施例2参照)。ヒトの対象において、アルコールの乱用と関係する症状を有意に減少させることができたため、アルコールの乱用を処置する有効性が実証された(実施例4参照)。まとめると、これらの結果は、本発明の組成物がアルコールまたはオピオイド類を投与するような衝動を低減させるのに、そしてアルコールおよびオピオイド類の禁断に付随する症状を最小限にするのに適していることを示している。いずれの植物単独でも以前にこの文脈において記載されていない。
ラファヌス属およびテオブロマ属の植物ならびにそれらの医学的シナリオにおける潜在的重要性に関する知識を以下で要約する。成分に関して、テオブロマ属の植物は高濃度のタンニン類およびフラバノイド類、例えばプロシアニジン類ならびに他のフェノール化合物、例えばフラボノイド類を含有することが知られている。テオブロマ・カカオにおいて、フラボノイド抗酸化剤はコレステロールが血管中で集合するのを妨げることによりコレステロールレベルを低下させることが示されている。加えて、その抗酸化剤は心機能を支えると考えられている。研究は、血管がその抗酸化剤によってより弛緩し、有効に血圧を低下させ、循環も増大させることを示している(Ding et al., Nutr Metab (Lond), 3:2 (2006); (Khawaja et a., Curr Atheroscler Rep., 13:447-452 (2011))。
テオブロマ・カカオは、筋肉の発達(build)を助け、運動後のより早い回復も促進するアミノ酸であるアルギニンも含有する。アルギニンのこのプロセスにおける利益は、より速い回復を可能にする。アルギニンは‘性欲促進’成分と呼ばれ、リラックスした感覚を与え、ストレスを低減する。テオブロマ・カカオならびに他のテオブロマ属の種は、例えばMAO阻害剤(モノアミンオキシダーゼ酵素阻害剤)、アナンダミド、チラミン、セロトニン、フェニルエチルアミン(PEA)のような気分への作用を有する様々なさらなる化合物を含む。これらの気分増進剤は、精力的および幸福な感覚ならびに運動および減量のような個人的向上において意欲を与えると考えられている。カフェインおよびテオブロミンのようなキサンチン誘導体もテオブロマ・カカオ中で見付かっている。これらはエネルギーを与え、それは人を神経過敏にし得る一時的な動揺(jolt)ではなく維持される。カフェインおよびテオブロミンはさらにその日全体を通して冴えおよび集中を提供する。加えて、強力な食欲抑制剤はダイエットを困難にする強い欲求を静める。チョコレートは脳中のフェニルエチルアミン、セロトニン、およびアナンダミドのような神経伝達物質のレベルを増大させることが知られている。セロトニンが含まれる様々な神経伝達物質における不均衡はCFS(慢性疲労症候群)を有する対象においても報告されてきた。慢性疲労症候群を有する対象におけるココアの作用は今までに研究されてこなかった。チョコレートは神経伝達物質を調節することによりCFSの症状の負担を低減し得るという仮説が立てられている(di Tomaso et al., Nature, 382, 677-678 (1996))。チョコレートおよび気分の間の関係は、精神薬理学的構成要素、その食物の栄養的および感覚的特徴が組み合わさっており非常に複雑である。チョコレート消費における個々の、および状況の差も気分に影響を及ぼす可能性があり、以前の研究における混合された結果はその関係の方向が不明なままであることを示している(Macht M. and Mueller J, J Nerv Ment Dis., 195(12):1024-6 (2007))。テオブロマ・カカオはマグネシウムの最高の食物源の1つとも考えられている。
ココアの摂取は特定のIgG2a、IgG2bおよびIgG2cの力価を減少させることができることが示されている。さらに、CIA(コラーゲン誘発関節炎)のラットにおけるココアの摂取はROS(活性酸素種)の産生、腹腔マクロファージからのTNFαおよびNO(一酸化炭素)の放出を低減し、ILN(鼠径リンパ節)におけるTh:細胞傷害性T細胞比を減少させた。CIAを有するLOUラットにおけるココアフラボノイドを富ませた飼料は後ろ足の腫脹への作用をもたらさなかったが、特異的抗体応答を調節することができた(Ramos-Romero S., et al., Br J Nutr, 107(3):378-87 (2012))。
PCE(ポリフェノールを富ませたココア抽出物)のマウスにおいてDSSにより誘導された急性UC(潰瘍性結腸炎)への抑制作用は、ココアから得られたPCEの経口投与により弱められた。この作用は主に腸細胞における転写因子STAT1およびSTAT3の阻害によるものであり、NF−κBの阻害も関係があることが示されている(Andujar et al., Oxidative Medicine and Cellular Longevity, Vol. 2012: 1-23 (2012))。また、カカオマスのLCC(液体カラムクロマトグラフィー)は抗HIV活性を有することが示されている(Sakagami H. et al., In Vivo, 25(2):229-36 (2011))。
ラファヌス属の植物の根および葉はアルカロイド類、タンパク質、多糖類、フラボノイド類、グリコシド類、およびフェノール化合物を含有することが当該技術で既知である。アブラナ科の野菜の生物学的活性は、グルコシノレート類と呼ばれるクラスの植物性化学物質の代謝産物によるものであるという仮説が立てられている。イソチオシアネート類が含まれるこれらの代謝産物の化学特性はこれらの化合物の生物学的活性を、従ってヒトの健康へのそれらの作用を決定する(Gutierrez R.M. and Perez R.L., ScientificWorldJournal, 4: 811-837 (2004))。R.サティウスの葉におけるポリフェノール類のHPLCによる同定は、葉および茎におけるカテキン、プロトカテク酸、シリンガ酸、バニリン酸、フェルラ酸、シナピン酸、o−クマル酸、ミリセチン、およびケルセチンの存在を示した(Beevi et al., Plant Foods Hum Nutr., 65(1):8-17 (2010); Beevi et al., Nat Prod Res., 26(6):557-63 (2012))。
異なる抽出溶媒の中で、葉および茎のメタノール抽出物は強力な還元能力を示し、リノール酸の過酸化を有意に阻害し、金属キレート活性を示した。さらに、それらはDPPHラジカルに関して31および42μg/ml、超酸化物ラジカルに関して23および52μg/ml、過酸化水素に関して67および197μg/ml、ならびに一酸化窒素に関して56および62μg/mlのIC50(半数阻害濃度)でフリーラジカルをそれぞれ有効に捕捉した。葉は茎と比較して最も強力な抗酸化およびラジカル捕捉活性を示し、それは高いポリフェノール含有量により説明され得る。このように、R.サティウスの葉および茎(しばしばこの野菜の十分に利用されていない部位である)はかなりの量のポリフェノール類を有していた。
異なる極性の溶媒を用いて抽出されたR.サティウスの異なる部位、例えば根、茎および葉の異なる部位の有効性が試験された(Beevi et al., Plant Foods Hum Nutr., 65(3):200-9 (2010))。ヒト癌細胞株において増殖停止およびアポトーシス性細胞死をもたらす分子機序が調べられた。R.サティウスはヘキサン抽出物による化学予防的な有意な増殖抑制作用を示した。R.サティウスから単離されたラファサチン(Raphasatin)は安定にトランスフェクションされたレポーター細胞株において抗酸化剤応答配列(ARE)を活性化したが、その分解産物は活性化しなかった。20%凍結乾燥ダイコンからなる飼料を2週間与えられたマウスは、栄養的に合わせた対照飼料を与えたマウスよりも有意に高い肝臓におけるシトクロムP450(CYP)1A1、1A2、キノンレダクターゼ、ミクロソームエポキシドヒドロラーゼ、およびグルタチオンS−トランスフェラーゼα2の発現を有していた(Scholl et al., J Food Sci., 76(3):C504-11 (2011))。
R.サティウスの樹皮の水性抽出物がその抗尿路結石および利尿活性に関して試験された(Vargas et al., Journal of Ethnopharmacology 68, pp. 335-338 (1999))。石の重量における対照群と比較して有意な減少が、水性抽出物を与えられた動物において処置の後に観察された。この抽出物は対照と比較した場合に24時間の尿量において増大を示した。
R.サティウスの抗糖尿病作用が追加で研究され、血糖値を低下させることができることを示すことができた(Shukla et al, Pharm Biol., 49(1):32-7 (2011))。
驚くべき発見は、ラファヌス属の抽出物の脳のドーパミン濃度を調節する能力である。科学界では、多くの乱用される薬物の報酬作用はある程度までは全て腹側被蓋野において生じて中隔側座核を神経支配する中脳辺縁系のドーパミン作動性経路により媒介されていることが前提とされている。異なる代謝によるが、オピオイド類、刺激物質、エタノールおよびニコチンは全て中隔側座核においてドーパミンの細胞外レベルを増大させる。本発明の組成物の作用に関して特定の科学的理論に限定されるわけではないが、一方で、本発明の前記の組成物の実証された抗嗜癖作用と一致して、中隔側座核におけるドーパミンの放出を減少させることができることを示すことができた(投与の最初の2時間以内でさえも;データは示していない)。一方で、下記の実施例5から明らかであるように、ラファヌス属の抽出物は結果として投与後30分以内にドーパミンの増大をもたらすことも実証することができた。ドーパミンレベルにおける増大はまた、本明細書において下記で定めるような薬物嗜癖の処置において、例えばオピオイド/アルコール嗜癖および/またはオピオイド/アルコール禁断と関係する抑鬱の面の処置において有益である。従って、脳のドーパミン濃度の調節は薬物嗜癖の処置において、および本明細書で下記で定めるような禁断の症状の処置において有益である。
本明細書において上記で概説したように、薬物乱用に関する現在可能性のある処置は特定の乱用される薬物または薬物のクラスを標的としている。しかし、本発明の組成物は薬物乱用、すなわちオピオイドおよびアルコールの乱用の多数の形態の処置において、ならびにオピオイドおよびアルコールの禁断の症状の処置において有効である。さらに、本発明の組成物はいくつかの受容体、例えばオピオイド受容体に作用し、全体で相乗作用を示すと信じられている。それらはまた、オピオイドおよび/またはアルコールの禁断の本質的に全ての、または少なくとも主な症状を低減し、鎮静および抗鬱活性を有する一方で副作用は少なかった。
本発明の組成物の好ましい態様において、前記のa)の溶媒は水、アルコール、水/アルコール混合物、ケトン、水/ケトン混合物、CO2、酢酸エチル、ヘキサンおよびそれらの塩素化形態からなる群から選択され;および/または前記のb)の溶媒は水、アルコール、水/アルコール混合物、ケトンおよび水/ケトン混合物からなる群から選択される。
この好ましい態様に従って用いることができるアルコール類は、好ましくはメタノール、エタノール、ブタノール、プロパノール、イソプロパノール、プロピレングリコール、グリセロールおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される。好ましくは、メタノールまたはエタノールが単独で、または例えば30%メタノールおよび70%エタノールの組み合わせでのどちらかで溶媒として用いられる。アルコール類、特に前記の群のアルコール類は、それぞれ水との混合において溶媒として用いることもでき、すなわちその溶媒は水/アルコール混合物である。好ましくは、対応する混合物中のアルコールの百分率は25%〜95%、例えば30%〜90%、40%〜80%、50%〜70%、30%、50%または70%であるが、より高い、およびより低いアルコールの百分率、例えば10%、15%、20%、80%または90%も予想される。好ましくは、30%〜90%、40%〜80%、50%〜70%、30%、50%もしくは70%エタノールを含むエタノール/水混合物、または30%〜90%、40%〜80%、50%〜70%、30%、50%もしくは70%のメタノールを含むメタノール/水混合物が溶媒として用いられる。
本発明に従って用いることができるケトン類は、好ましくはアセトンおよびブタノン(メチルエチルケトンとしても知られている)からなる群から選択される。好ましくは、アセトンが溶媒として用いられる。ケトン類、特に前記の群のケトン類は、それぞれ水との混合において溶媒として用いることもでき、すなわちその溶媒は水/ケトン混合物である。好ましくは、対応する混合物中のケトンの百分率は25%〜95%、例えば30%〜90%、40%〜80%、50%〜70%、30%、50%または70%であるが、より高い、およびより低いケトンの百分率、例えば10%、15%、20%、80%または90%も予想される。例えば、テオブロマ属の植物は10%または20%ケトンのケトン/水混合物により抽出することができる。好ましくは、30%〜90%、40%〜80%、50%〜70%、30%、50%または70%アセトンを含むアセトン/水混合物が用いられる。
酢酸エチルは本明細書で上記で与えた定義に従って中程度の極性の溶媒(当該技術において極性非プロトン性溶媒とも呼ばれる)である。好ましくは、酢酸エチルはセ氏40〜60℃の温度で、より好ましくは低圧との組み合わせで用いられる。
ヘキサンは本明細書で上記で与えた定義に従って非極性溶媒である。好ましくは、ヘキサンはセ氏40〜60℃の温度で、より好ましくは低圧との組み合わせで用いられる。
CO2は本明細書で上記で与えた定義に従って非極性溶媒であり、それがその臨界温度および臨界圧力で保たれている場合に流体状態であり、当該技術において超臨界CO2(scCO2とも呼ばれる)としても知られている。CO2抽出に関する温度および圧力の標準的な条件は、300〜400バールの圧力および非常に少量の液体溶媒において30〜50℃の温度である(例えばHe et al., Int J Mol Sci., 13(10):13065-78 (2012)参照)。
本発明の組成物のさらなる好ましい態様において、4〜7.5:1の薬物−抽出物比を有する前記のa)の抽出物および3〜8:1の薬物−抽出物比を有する前記のb)の抽出物が、その組成物中に約1.5〜約6.5部の前記のa)の抽出物および約3.5〜約7.5部の前記のb)の抽出物の比率で存在する。
“薬物−抽出物比”(DERと略されることもある)は当該技術で周知のパラメーターであり、植物抽出物の製造において用いられる基礎植物材料(抽出すべき所望の植物化合物を含む)の量および得られた乾燥植物抽出物の量の間の比率を指し、ここでその乾燥植物抽出物は例えば賦形剤等のようなさらなる物質と混合されているのではなく、内在性植物化合物の抽出物に関する(例えばMichael Heinrich, Joanne Barnes, Simon Gibbons, Elizabeth M. Williamsonによる“Fundamentals of Pharmacognosy and Phytotherapy”, Elsevier Science, 第1版, 2004, ISBN:-10: 0443071322, 第9章, P. 144-159を参照)。コロンの前に書かれた数は基礎植物材料の相対量であり、一方でコロンの後に書かれた数は得られた乾燥植物抽出物の相対量である。当業者は、例えば溶媒、温度、抽出法のような抽出プロセスの様々なパラメーターを、本明細書でそれぞれの植物抽出物に関して明記されるような薬物−抽出物の比率を達成するように、彼の/彼女の共通の一般的知識または標準的な実験を用いて調節する立場にある(例えば、上記のような“Fundamentals of Pharmacognosy and Phytotherapy”も参照)。例えば、4〜7.5:1の薬物−抽出物比を有するラファヌス属の抽出物、例えばラファヌス・サティウスの抽出物は、中程度の極性および/または親油性溶媒(例えば50%水/エタノール混合物)を用いることにより、および/または抽出法として冷浸を用いることにより得ることができ、または得ることが可能である。限定ではなく、3〜8:1の薬物−抽出物比を有するテオブロマ属の抽出物、例えばテオブロマ・カカオの抽出物は、親水性および/または中程度の極性の溶媒(例えば10%もしくは20%エタノール/水混合物または10%もしくは20%アセトン/水混合物または40〜60%エタノール/水もしくは40〜60%アセトン/水混合物のような溶媒)を用いることにより、および/または抽出法として冷浸を用いることにより、場合により例えば溶媒としてエタノールを用いる場合にセ氏40℃未満の温度を用いて得ることができ、または得ることが可能である。
用語“約”は、本明細書で数値に関して、特に様々な抽出物の本発明の組成物中に含まれる際の互いに対する比率の文脈で用いられる場合、最大+/−10%、好ましくは+/−5%、例えば+/−2.5%、+/−1.25%または+/−0.625%の平均偏差を指すことを意味する。同時に、その指定は用語“約”を有しない前記の数値、例えば言及された比率の値も指し、すなわちその指定は平均偏差を考慮しない前記の比率の値自体も指す。
抽出物a)およびb)の互いに対する相対量、すなわちそれらがその組成物中に存在する比率の文脈において、用語“部”は質量/質量(m/mと略される)または体積/体積(V/Vと略される)のどちらかを意味する。
より好ましくは、抽出物a)対抽出物b)の比率(a):b)の形式で書かれる)は、2〜6:4〜7(すなわち2〜6部の抽出物a):4〜7部の抽出物b))、3〜5:4〜6からなる群から選択される。さらにもっと好ましいのは4〜5:1の比率である。
本発明の組成物の別の好ましい態様において、その組成物はさらにc)パッシフローラ属に属する植物の抽出物、ここで前記の抽出物は少なくともその花を親水性、中程度の極性および/または親油性溶媒で抽出することにより得ることができ、もしくは得られる;および/またはd)クロッカス属に属する植物の抽出物、ここで前記の抽出物は少なくともその花を親水性、中程度の極性および/または親油性溶媒で抽出することにより得ることができ、もしくは得られる;を含む。
パッシフローラ属はトケイソウ科(family of Passifloraceae)中の属である。前記の属は500より多くの種を含む。本発明に従って、人工(園芸での交配種)および天然の変種も含まれる。本発明に従って、少なくとも花が抽出されることが好ましい。好ましくは、後者の植物の部位のみが抽出のための基礎植物材料として用いられ、またはさらなる植物の部位が用いられる予定である場合、可能な限り多くの後者の植物の部位が抽出のための基礎植物材料として用いられる。好ましくは、さらなる植物の部位が用いられる場合、基礎植物材料中の花の百分率は抽出のために用いられる基礎植物材料の50%、60%、70%、80%、より好ましくは85%および90%または(それぞれの値に関して)より多く、そして最も好ましくは95%より多くを構成する。従って、追加の植物の部位、さらには全草を抽出することができることも予想される。好ましくは、その植物の部位、特に花は、好ましくは少なくとも3歳の標本から春にパッシフローラ属の植物が蕾を形成した後に収穫されるべきである。ブラジルにおいて好ましくは水はけのよい土壌の上で栽培されたパッシフローラ属の植物が収穫されることも好ましい。
以下において、パッシフローラ属の植物の構成要素および特性に関する現在の知識の要約を提供する。多くの種はベータ−カルボリンハルマラアルカロイド類を含有することが分かっており、それは抗鬱特性を有するMAO阻害剤である。その花および果実は痕跡量のこれらの化学物質しか有しないが、葉および根はしばしばより強力であり、精神を変化させる薬物の作用を増強するために用いられてきた。これらのアルカロイド類で最も一般的なものはハルマン(1−メチル−9H−b−カルボリン)であるが、ハルマリン(4,9−ジヒドロ−7−メトキシ−1−メチル−3H−ピリド[3,4−b]インドール)、ハルマロール(1−メチル−2,3,4,9−テトラヒドロピリド[3,4−b]インドール−7−オン)、ハルミン(7−メトキシ−1−メチル−9H−ピリド[3,4−b]インドール)およびハルモールも同定されている。アピゲニン、ベンゾフラボン、ホモオリエンチン、7−イソオリエンチン、イソシャフトシド(isoshaftoside)、イソビテキシン(またはサポナレチン)、ケンペロール、ルセニン、ルテオリン、n−オリエンチン、パッシフローリン(passiflorine)(その属にちなんで名付けられた)、ケルセチン、ルチン、サポナリン、シャフトシド、ビセニンおよびビテキシンが含まれる多くのフラボノイド類およびそれらのグリコシド類がパッシフローラ属において見付かっている。メイポップ(Maypop)、ブルーパッションフラワー(Blue Passion Flower)(P.カエルレア(P.caerulea))、およびおそらく他のものは、確証された抗不安および抗炎症、推測されるアロマターゼ阻害剤特性を有するフラボンであるクリシンを含有する。やはり少なくとも一部のパッシフローラ属の種に大量に存在することが文書に記載されているのは、炭化水素ノナコサンおよびアントシアニジンペラルゴニジン−3−ジグリコシドである。有機酸に関して、その属はギ酸、酪酸、リノール酸、リノレン酸、リンゴ酸、ミリスチン酸、オレイン酸およびパルミチン酸ならびにフェノール化合物、ならびにアミノ酸α−アラニンに富む。酪酸エチル、カプロン酸エチル、酪酸n−ヘキシルおよびカプロン酸n−ヘキシルのようなエステルは、その果実にそれらの香味および美味しそうな匂いを与える。主に果実に含有される糖類は、最も重要であるのはD−フルクトース、D−グルコースおよびラフィノースである。酵素の中で、パッシフローラ属の種はカタラーゼ、ペクチンメチルエステラーゼおよびフェノラーゼに富むことが分かった。
パッシフローラ属の植物の様々な構成要素は、以下で書き留める(laid out)ような様々な療法的に有用な作用を有することが示されている。様々なパッシフローラ属の種の新鮮な花または乾燥させた花は茶を入れるために用いられ、それは不眠症、ヒステリー、およびてんかんを処置するために用いられ、その鎮痛特性に関しても高く評価されている。P.エドゥリス(P.edulis)(パッションフルーツ)および少数の他の種は中米および南米において類似の目的のために用いられている。一度乾燥させたら、その葉は喫煙することもできる。パッシフローラ属の非常に少数の種の医学的有用性しか科学的に研究されてこなかった。全般性不安障害の処置に関する最初の試験において、メイポップの抽出物はオキサゼパムと同じくらいよい性能を示したが、より少ない短期の副作用を有していた。長期試験により追跡調査することが推奨された(Akhondzadeh et al., Journal of Clinical Pharmacy and Therapeutics, vol. 26, issue 5, p. 363-367, (2001))。パッシフローラ・インカルナタ(Passiflora incarnata)は英国、米国、インド、フランス、ドイツ、スイスおよび他の国の薬局方に収録されている(Dhawan et al., J Ethnopharmacol.;78(2-3):165-70 (2001))。可能性のある医薬作用の原因である有効成分は決定的には定められていない(Carlini EA, Plants and the central nervous system. Pharmacology, Biochemistry and Behavior. 2003;75:501-512)。ほとんどの入手可能なデータは、フラボノイド類が可能性のある有効成分であることを示唆している(Speroni and Minghetti, Planta Med.;54(6):488-91 (1988); Dhawan et al., J Ethnopharmacol.;78(2-3):165-70 (2001); Dhawan et al., J Pharm Pharmaceut Sci., 6(2):215-222 (2003))。
動物モデルにおける研究は、パッシフローラ属の抽出物およびフラボノイド画分のペンチレンテトラゾール(PTZ)に誘導される発作に対する有効性を示している(Speroni and Minghetti, Planta Med., ;54(6):488-91 (1988); Speroni and Billi, Phytotherapy Research, 10:S92-S94 (1996); Nassiri-Asl et al., BMC Complement Altern Med., 8;7:26 (2007); Nassiri-Asl et al., Progess in Neuro-Psychopharmacology and Biological Psychiatry, 32:989-993 (2008))。3回の臨床試験において、パッシフローラ属の抽出物は抗不安有効性を示した。その試験の1つはパッシフローラ属をプラセボに対して比較し(Movafegh et al., Anesth Analg., 106(6):1728-32 (2008))、2つの他の試験はパッシフローラ属がベンゾジアゼピン類に類似した抗不安有効性を有することを示した(Mori et al., Rinsho Hyoka [Clinical evaluation for drugs], 21(3):383-440 (1993); Akhondzadeh et al., J Clin Pharm Ther., 26(5):363-7 (2001))。加えて、パッシフローラ属の抽出物は2つの臨床試験において鎮静作用を示した(Akhondzadeh et al., J Clin Pharm Ther., 26(5):369-73 (2001); Movafegh et al., Anesth Analg., 106(6):1728-32 (2008))。研究の結果(Singh et al., Journal of Ethnopharmacology, Volume 139, issue 1, p. 273-279 (2012))は、パッシフローラ・インカルナタの水エタノール(hydroethanolic)抽出物はPTZに誘発される発作を抑制し、標準的な抗てんかん薬であるジアゼパムでは悪化することが分かっているその関係する発作後の抑鬱を改善すると結論付けた。パッシフローラ・インカルナタの経口術前投与は脊髄麻酔前の不安の増大を精神運動機能試験の結果、鎮静レベル、または血行動態を変化させることなく抑制する。パッションフラワー中の有効アルカロイド類であるハルミンおよびハルマンは、ValiumおよびXanaxのようなベンゾジアゼピン系薬物により標的とされる神経伝達物質であるGABAのレベルに影響を及ぼす。最近、オピエートの禁断症状の処置におけるパッションフラワーの価値が明らかになってきた。国立衛生研究所によれば、オピエートの禁断の間のクロニジンと一緒でのパッションフラワーの使用は結果としてクロニジン単独の使用によるよりも優れた症状の軽減をもたらす。さらなる研究が必要であるが、本発明によれば、特にパッションフラワーのリラックスさせる特性はオピオイドおよびアルコール禁断の症状の緩和において有用であり得ると考えられる。
クロッカス属はアヤメ科(family Iridaceae)、クロッカス亜科(subfamily Crocoideae)中の属である。様々な種が存在し、当業者に周知である。これらの種はMathew(Brian Mathew, Crocus: A Revision of the Genus Crocus, Timber Press, 1983. ISBN 0-917304-23-3)に従ってi)系列ヴェルニ(Verni)、ベイトピ(Baytopi)、スカルジシ(Scardici)、バーシカラー(Versicolores)、ロンギフローリ(Longiflori)、カシュヤニ(Kotschyani)、クロッカス(Crocus)を含むクロッカス節;ならびにii)系列レティキュラティ(Reticulati)、ビフローリ(Biflori)、スペシオシ(Speciosi)、オリエンタレス(Orientales)、フラビ(Flavi)、アレピシ(Aleppici)、カルペタニ(Carpetani)、インターテキスティ(Intertexti)およびラエウィガータ(Laevigatae)を含むヌディスカプス(Nudiscapus)節に分類することができる。本発明に従って、少なくとも花が抽出されることが好ましい。好ましくは、後者の植物の部位のみが抽出のための基礎植物材料として用いられ、またはさらなる植物の部位が用いられる予定である場合、可能な限り多くの後者の植物の部位が抽出のための基礎植物材料として用いられる。好ましくは、さらなる植物の部位が用いられる場合、基礎植物材料中の花の百分率は抽出のために用いられる基礎植物材料の50%、60%、70%、80%、より好ましくは85%および90%または(それぞれの値に関して)より多く、そして最も好ましくは95%より多くを構成する。従って、追加の植物の部位、さらには全草を抽出することができることも予想される。その植物の部位、特に花は、好ましくはギリシャ、スペインおよびイランにおいて、ならびに年間降雨量が平均400〜1000mmである国において栽培された植物から収穫される。豊富な春雨およびより乾燥した夏が最適である。植栽は好ましくは6月に行われ、収穫は必要により速やかな仕事である:夜明け時の開花後、花は日が過ぎるにつれて急速にしぼむ。全ての植物が1または2週間の期間内に開花する。
以下において、クロッカス属の植物の構成要素および特性に関する現在の知識の要約を提供する:今日知られているその医学的使用の広い範囲を考慮して、クロッカス・サティウスに由来する周知の香辛料であるサフラン(例えばNegbi, M. (編者), Saffron: Crocus sativus L., CRC Press (1999), ISBN: 987-90-5702-394-1を参照)に対して広範囲にわたる植物化学的および生化学的研究が行われており、様々な生物学的に活性な成分が単離されてきた。サフランは150種類より多くの揮発性および芳香を生じる化合物を含有する。サフランの特徴的な構成要素はクロシン(色の原因である)、ピクロクロシン(苦味の原因である)、およびサフラナール(匂いおよび芳香の原因である)である。それは多くの非揮発性有効構成要素も有し、その多くがゼアキサンチン、リコペン、ならびに様々なα−およびβ−カロテン類が含まれるカロテノイド類である。非常に強い匂いを有する揮発性物質は34種類より多くの構成要素で構成されており、それは主にテルペン類、テルペンアルコール類、およびそれらのエステル類である。非揮発性物質には14種類のクロシン類が含まれ、それはカロテン類、クロセチン、苦味物質であるピクロクロシン(サフラナールのグリコシド前駆体)および柱頭の主な感覚刺激性原理であるサフラナールと一緒に柱頭の赤または赤褐色の原因である。しかし、サフランの山吹色〜橙色は主にα−クロシンによるものである。このクロシンはトランス−クロセチン ジ−(β−d−ゲンチオビオシル)エステルである。組織(IUPAC)名:8,8−ジアポ−8,8−カロテン酸。これは、サフランの芳香の基礎となるクロシンがカロテノイドクロセチンのジゲンチオビオースエステルであることを意味する。クロシン類自体は、クロセチンのモノグリコシルまたはジグリコシルポリエンエステルのどちらかである一連の親水性カロテノイド類である。クロセチンは、疎水性であり従って油溶性である共役ポリエンジカルボン酸である。クロセチンが2個の水溶性ゲンチオビオース(それは糖類である)とエステル化した際、それ自体水溶性である生成物が結果としてもたらされる。その得られたα−クロシンは、10%より多くの乾燥サフラン質量を含み得るカロテノイド色素である。
C.サティウスは当該技術において抗鬱作用を有することが示されており、2種類の有効抗鬱成分がクロシンおよびサフラナールである。予備的な植物化学の結果が示したように、花弁抽出物の抗侵害受容性および抗炎症作用はそれらのフラボノイド類、タンニン類、およびアントシアニン類の含有量により引き起こされている可能性があることが示唆されることができた。他の研究は、様々なフラボノイド類、例えばルチン、ケルセチン、ルテオリン、ヘスペリジン、およびバイオフラボノイド類が存在することを実証してきた(Srivastava et al., Pharmacogn Rev., 4(8):200-8 (2010))。
Fatehi他(J Ethnopharmacology, 84:199-203 (2003))はC.サティウスの花弁の抽出物の麻酔したラットにおける血圧への作用を調べ、そして電気フィールド刺激(EFS)により誘導される分離されたラットの輸精管およびモルモットの回腸の応答への作用も調べた。C.サティウスの花弁の水およびエタノール抽出物は、血圧を用量依存的様式で低減した。
その研究の1つにおいて、C.サティウスの柱頭の構成要素であるサフラナールおよびクロシンの抗痙攣活性がマウスにおけるペンチレンテトラゾール(PTZ)に誘導される痙攣を用いてマウスにおいて評価された。サフラナール(0.15および0.35ml/kg体重、i.p.)は発作の持続時間を低減し、強直性痙攣の開始を遅らせ、マウスを死から保護した。クロシン(22mg/kg体重、i.p.)は抗痙攣活性を示さなかった。
C.サティウスのエタノール抽出物およびサフラナールは咳の回数を低減することが示されている(Hosseinzadeh et al., Fitoterapia, 77:446-8 (2006))。
別の研究は、C.サティウスL.のクロシン類を用いた処置はラットにおいて抗不安様作用を誘導することを示している(Pitsikas et al., Phytomedicine, 15:1135-9 (2008))。
C.サティウスの弛緩作用の機序(単数または複数)を研究するため、この植物の水性−エタノール性抽出物およびその構成要素の1つであるサフラナールのモルモットの気管鎖におけるβ−アドレナリン受容体に対する刺激作用が調べられた。その結果はC.サティウスからの抽出物のβ2−アドレナリン受容体に対する比較的強力な刺激作用を示し、それは部分的にはその構成要素であるサフラナールによるものである。その植物のヒスタミン(H1)受容体に対する可能性のある阻害作用も当該技術において示唆された(Nemati et al., Phytomedicine, 15:1038-45 (2008))。
C.サティウスの花弁の有効性が、6週間の二重盲検式のプラセボを対照としたランダム化された試験において軽度〜中程度の鬱病の処置において評価された。この試験の結果は、軽度〜中程度の鬱病の処置におけるC.サティウスの花弁の有効性を示している。さらなる予備的研究において、サフランが薬物フルオキセチンに対して比較され;サフランは鬱病の処置においてその薬物と同じくらいよい性能を示すことが分かった(Moshiri et al., Phytomedicine, 13:607-11 (2006))。
別の研究において、サフランの抽出物およびその主な成分の2つであるクロシンおよびクロセチンはマウスおよびラットにおいてエタノールで誘導された学習行動障害において記憶および学習技能を向上させた。サフランの経口投与は、当該技術において神経変性障害および関連する記憶障害の処置において有用であるという仮説が立てられている。従って、当該技術においてこれらの物質の使用は認知障害の薬理学的軽減において有用であると主張された(Sigiura et al., Phytother Res., 9:100-4 (1995))。
さらなる研究は、サフランから単離されたクロシン類似体は網膜および脈絡膜において血流を有意に増大させ、網膜の機能回復を促進し、そしてそれを虚血型網膜症および/または加齢性黄斑変性を処置するために用いることができることを示した(Xuan B.,J Ocul Pharmacol Ther, 15:143-52 (1999))。
別の研究(Ghoshooni et al., Pak J Biol Sci., 14(20):939-44 (2011))は、サフランのエタノール抽出物およびその構成要素であるサフラナールに関するものであった。この研究は、雄のSwiss Websterマウス(20〜25g)におけるモルヒネに誘導される場所の好み(place preference)(CPP)の獲得および発現に関する調査であった。偏りのない場所の条件付け法をモルヒネの報酬特性の評価に適用した。サフランの抽出物およびサフラナールをモルヒネCPPの間(獲得)または誘導後(発現)に腹腔内(i.p.)投与した。パイロット試験において、その抽出物およびサフラナールをその動物に単独で投与し、それらが何らかの報酬特性を有するかどうか評価した。モルヒネ(4および8mg kg(−1))および抽出物(50mg kg(−1);i.p.)の皮下注射(s.c.)はCPPを誘導した。抽出物(10、50および100mg kg(−1);i.p.)はモルヒネCPPの獲得および発現を低減した。同じ結果がサフラナール(1、5および10mg kg(−1)、i.p.)を用いた際に得られた。エタノール性サフラン抽出物およびサフラナールは両方ともマウスにおいてモルヒネに誘導されるCPPの獲得および発現を阻害することができると結論付けることができる。
上記から明らかであるように、そして特定の理論に束縛されるわけではなく、特にクロッカス属の植物のCPPと関係する抗鬱作用、リラックスさせる作用および可能性のある作用は、ラファヌス属およびテオブロマ属および場合によりパッシフローラ属の抽出物を含む本発明に従う組成物の一部として用いられた場合に有益であると考えられる。
本明細書で上記で記載される溶媒の定義、組み合わせおよび具体的な例は、別途明記しない限り、パッシフローラ属およびクロッカス属の抽出に関するこの好ましい態様にも必要な変更を加えて適用される。従って、前記のc)およびd)の溶媒は、好ましくは水、アルコール、水/アルコール混合物、ケトン、水/ケトン混合物、CO2、酢酸エチル、ヘキサンおよびそれらの塩素化形態からなる群から選択される。パッシフローラ属の抽出に関する溶媒としてのエタノールの使用、およびクロッカス属の抽出に関する本明細書において上記で記載されたあらゆる水性溶媒、例えば水/エタノール混合物の使用がより好ましい。抽出が浸出または冷浸により実施されることも好ましい。
パッシフローラ属に属する植物の抽出物の場合、その抽出物は好ましくは読み出しとしてビテキシンを用いて1%〜5%の総フラボノイド類、例えば1.1%〜4.9%、1.2%〜4.8%、1.25%〜4.75%、1.5%〜4.5%、1.75%〜4.25%、より好ましくは1.5%〜3%または1.5%〜2.5%の総フラボノイド類を含有するように標準化される。例えば、前記の抽出物は1%、1.25%、1.5%、3.25%、3.5%、3.75%、4%、4.5%、またはより好ましくは1.75%、2.5%または最も好ましくは2%の総フラボノイド類を含有するように標準化することができる。
クロッカス属に属する植物の抽出物の場合、その抽出物は好ましくは1%〜5%のサフラナール、例えば1.1%〜4.9%、1.2%〜4.8%、1.25%〜4.75%、1.5%〜4.5%、1.75%〜4.25%、より好ましくは1.5%〜3%または1.5%〜2.5%のサフラナールを含有するように標準化される。例えば、前記の抽出物は1%、1.25%、1.5%、3.25%、3.5%、3.75%、4%、4.5%、またはより好ましくは1.75%、2.5%または最も好ましくは2%のサフラナールを含有するように標準化することができる。
本発明の組成物のより好ましい態様において、4〜7.5:1の薬物−抽出物比を有する前記のa)の抽出物、3〜8:1の薬物−抽出物比を有する前記のb)の抽出物および5〜7:1の薬物−抽出物比を有する前記のc)の抽出物が、その組成物中に約0.5〜約5部の前記のa)の抽出物、約2.75〜約4部の前記のb)の抽出物、および約2.5〜約5.5部の前記のc)の抽出物の比率で存在する。
本発明の組成物のさらにもっと好ましい態様において、4〜7.5:1の薬物−抽出物比を有する前記のa)の抽出物、3〜8:1の薬物−抽出物比を有する前記のb)の抽出物および0.5〜5:1の薬物−抽出物比を有する前記のd)の抽出物が、その組成物中に約1〜約4部の前記のa)の抽出物、約3〜約4部の前記のb)の抽出物、および約1〜約3.5部の前記のd)の抽出物の比率で存在する。
本発明の組成物の追加のより好ましい態様において、4〜7.5:1の薬物−抽出物比を有する前記のa)の抽出物、3〜8:1の薬物−抽出物比を有する前記のb)の抽出物、5〜7:1の薬物−抽出物比を有する前記のc)の抽出物および0.5〜5:1の薬物−抽出物比を有する前記のd)の抽出物が、その組成物中に約0.5〜約4部の前記のa)の抽出物、約2.5〜約3部の前記のb)の抽出物、約2.5〜約5.25部の前記のc)の抽出物、および約0.5〜約3.75部の前記のd)の抽出物の比率で存在する。
本発明の組成物のさらにもっと好ましい態様において、前記のa)の抽出物、前記のb)の抽出物、前記のc)の抽出物および前記のd)の抽出物は、その組成物中に約2.5部の前記のa)の抽出物、約3部の前記のb)の抽出物、約2.5部の前記のc)の抽出物および約1.5部の前記のd)の抽出物の比率で存在する。
実施例の節から明らかであるように、対応する組成物は特に優れた有効性を示した。
本発明の組成物のさらなる好ましい態様において、その組成物はさらにオリーブ油を含む。
オリーブ油のその組成物への添加は、それは優れたキャリヤーであり、それはその抽出物の可溶性を促進するため、好ましい。オリーブ油はオリーブから得られる脂肪であり、その生産のための様々な方法が何世紀も前から当該技術において周知である(例えばOlive oil production on bronze age Crete: nutritional properties, processing methods and storage life of Minoan olive oil. Riley, F.R.: Oxford Journal of Archaeology, Volume 21, Issue 1, 63-75ページ, 2002年2月を参照)。本発明によれば、バージンオリーブ油はポマス油、すなわち化学的に抽出されたオリーブ油よりも好ましい。冷浸されたオリーブ油、すなわち好ましくは27℃を超えない温度で抽出されたオリーブ油も好ましい。好ましくは、オリーブ油の生成のために用いられるオリーブの変種はオレア・ユーロピア(Olea europea)であり、それは好ましくは地中海の国で収穫されたものである。
オリーブ油の添加の結果得られた組成物中の添加されたオリーブ油の抽出物a)、b)、またはa)、b)およびc)、および/またはd)の全体に対する比率は、好ましくは質量において1部のオリーブ油対4部の抽出物である。
本発明の別の好ましい態様において、本発明の組成物は医薬組成物である。
用語“医薬組成物”は、本明細書で用いられる際、患者、好ましくはヒトの患者への投与のための組成物に関する。従って、本発明の医薬組成物は、本明細書において上記で定義されたような植物抽出物および場合によりオリーブ油からなるか、またはそれは例えば薬学的に許容可能なキャリヤー、賦形剤、希釈剤および/またはさらなる薬学的に有効な薬剤のようなさらなる薬剤を含むかのどちらかである。適切な医薬用キャリヤー、賦形剤および/または希釈剤の例は当該技術で周知であり、リン酸緩衝生理食塩水溶液、水、エマルジョン、例えば油/水エマルジョン、様々なタイプの湿潤剤、無菌溶液等が含まれる。そのようなキャリヤーを含む組成物は周知の一般的に用いられる方法により配合することができる。これらの医薬組成物は対象に適切な用量、例えば本明細書において下記で概説される用量で投与することができる。
その組成物は固体または好ましくは液体形態であることができ、特に粉末(単数または複数)、錠剤(単数または複数)、カプセル(単数または複数)または溶液(単数または複数)の形態であることができる。製造および投与の容易さのため、より好ましい剤形は本発明の組成物、好ましくはオリーブ油を含む本発明の組成物を含む軟質ゲルカプセルである。
適切な組成物の投与は異なる方法により、好ましくは非経口ではない方法により、例えば、好ましくは経口投与により達成することができる。投与計画は主治医および臨床要因により決定され得る。医学の技術分野において周知であるように、あらゆる1人の患者に関する投与量はその患者の大きさ、体表面積、年齢、投与すべき個々の化合物、性別、投与の時間および経路、全身の健康状態、ならびに同時に投与されている他の薬物が含まれる多くの要因に依存する。その組成物は1日あたり1mg〜100mg/kg体重の投与量で投与することができ、それは本発明の組成物内の植物抽出物の選択された力価にも依存する;しかし、特に前記の要因および薬学的に有効な物質、すなわち本発明の組成物の植物抽出物の選択された希釈度を考慮して、この典型的な範囲より下または上の用量が予想される。進行は定期評価により監視することができる。
経口投与用の製剤には、例えば(無菌の)水性または非水性の溶液、懸濁液、およびエマルジョンが含まれる。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油、および有機性エステル、例えばオレイン酸エチルである。水性キャリヤーには、水、生理食塩水および緩衝された媒体が含まれるアルコール性/水性の溶液、エマルジョンまたは懸濁液が含まれる。ビヒクルには塩化ナトリウム溶液、リンゲルのデキストロース、デキストロースおよび塩化ナトリウム、乳酸リンゲル、または不揮発油が含まれる。そのようなビヒクルには、流体および栄養補充剤(replenishers)、電解質補充剤(例えばリンゲルのデキストロースに基づく補充剤)等が含まれる。例えば抗微生物薬、抗酸化薬、キレート剤、および不活性ガス等のような保存剤および他の添加剤も存在していてよい。前記の医薬組成物は本明細書で言及した病気の処置、例えばそれと関係する病気または疾患の処置において有効であることが当該技術において既知のさらなる薬学的に有効な薬剤を含むことも予想される。従来の賦形剤には、結合剤、増量剤、潤滑剤および湿潤剤が含まれる。好ましくは、本発明の組成物は腸中で溶解する(そして本発明の組成物を放出する)ために適した軟ゼラチンカプセルの形態をとって経口投与される。当該技術において、この投与形態は摂取された化合物の急速な吸収を可能にすることが知られている。この場合、本明細書で上記で記載された添加されたオリーブ油を含む組成物を本明細書で定義されたようなさらなる薬剤と共に、またはそれらなしで利用することが好ましい。しかし、例えば亜麻種子油またはブラッククミン種子油のような別の植物油または追加の植物油の添加も予想される。
本発明の別の態様において、本発明の医薬組成物は、オピオイドの乱用、オピオイド依存、アルコールの乱用および/またはアルコール依存の処置における使用のための、および/またはオピオイドおよび/またはアルコールの禁断の症状の処置における使用のためのものである。
アルコールの乱用およびアルコール依存は、よくない結果にも関わらずアルコール飲料を繰り返し使用することを記述する当該技術で周知の病気である。それに従って人をアルコール依存およびアルコールの乱用を患っていると診断することができる様々な分類系が存在する。本発明によれば、全ての前記の分類系を患者の本明細書で記載されるような処置に的確であるとの診断のために用いることができる。具体的には、精神疾患の診断・統計の手引き(DSM)または世界保健機関に従う分類を用いることができる。最新版(DSM−IV)によれば、アルコール依存に関する基準には以下のことが含まれる:耐性;禁断症状または臨床的に定義されたアルコール禁断症候群;意図されるよりも大量または長期間の使用;アルコールの使用を減らすための持続的な願望または失敗した努力;アルコールを得るために、またはアルコール消費の作用から回復するために時間が費やされる;社会的、職業的および娯楽的追及(pursuits)がアルコールの使用のために断念された、または低減した;ならびにアルコールに関連する(身体的または生理的な)害の知識にもかかわらず使用が継続されている。少なくとも3つの基準が12ヶ月の期間で現れなければならない。例えば、いわゆるアルコール使用障害同定検査(AUDIT;Babor et al., AUDIT, The Alcohol Use Disorders Identification Test, Guidelines for Use in Primary Care, 第2版、世界保健機関精神衛生・物質依存部を参照)を可能性のあるアルコールの不正使用を同定するためのスクリーニングツールとして用いることができる。より明確にアルコール依存の診断に向けられた検査は、アルコール依存の重症度の質問表(SAD−Q)である。アルコール依存は耐性および禁断症状のような症状の存在によりアルコールの乱用と区別される。アルコールの乱用はアルコール依存につながり得る。現在、そしてDSMの次の発行(DSM−V)に関して、アルコールの乱用およびアルコール依存を組み合わせて1つの統合された障害、すなわちアルコール使用障害(AUD)にすることが予想されており、それにはアルコールの乱用および依存の間の差を説明する中程度から重度までの段階的な臨床的重症度が含まれるであろう。前記の分類に従って、本発明は上記で書き留めたようなアルコールの乱用およびアルコール依存の疾患が含まれる疾患の処置にも関する。
オピオイドの乱用およびオピオイド依存は、当該技術で同等に周知の病気である。やはりDSM−IVにおいて物質依存および物質の乱用に関する基準が定義されている。一度完全な患者の評価が実施されたら、オピオイドの依存または乱用のどちらかの正式な診断がなされるべきである。最新のDSM−IV診断スキームに従う物質の依存または乱用の診断は、特定の時間枠内に起こる行動および生理作用のクラスターに基づいている。依存の診断は常に乱用の診断よりも先に行われ、例えば乱用の診断は依存に関するDSM−IVの基準が一度も満たされていない場合のみ行われる。
依存は12ヶ月間の期間内の以下の基準の少なくとも3つの発生として定義されている:耐性(量における顕著な増大;作用における顕著な減少);特徴的な禁断症状;禁断症状を軽減するために物質が摂取される;意図されるよりも大量に、そして長期間物質が摂取される;止めるための持続的な願望または繰り返された失敗した試み;得る、使用する、回復するための多くの時間/活動;重要な社会的、職業的、または娯楽的活動が断念された、または低減した;ならびに有害な結果(例えば役割の義務を果たすことの失敗、身体的に危険である際の使用)の知識にもかかわらず使用が継続される。
乱用は12ヶ月間の期間内の以下の基準の少なくとも1つの発生として定義されている(基準は判定される物質のクラスに関する物質依存に関する基準を一度でも満たしていてはならない):結果として仕事、家庭または学校における主な役割の義務を満たすことの失敗をもたらす反復性の使用;身体的に危険な状況における反復性の使用;反復性の物質に関連する法的問題;および物質により引き起こされた、もしくは悪化した持続性または反復性の社会的または対人性の問題にも関わらず使用を継続すること。
DSM−IVの基準の使用において、臨床医は物質依存が生理的依存を伴う(すなわち、耐性または禁断症状の証拠が存在する)か、または生理的依存を伴わない(すなわち、耐性または禁断症状の証拠がない)かを特定するべきである。加えて、患者を現在乱用もしくは依存のパターンを明示していると、または緩解期(remission)にあると、様々に分類することができる。緩解期にある患者は、乱用または依存に関する基準のいずれかが満たされているかどうかおよび何の時間枠にわたるかに基づいて4つの亜型:完全、早期部分的、持続性、および持続性部分的に分けることができる。緩解期のカテゴリーは、アゴニスト療法(例えばメサドン維持)を受けている患者に関して、または制御された無薬物環境において生活している患者に関して用いることもできる。
用語“オピオイド”は当該技術においてオピオイド受容体を標的とする、例えばそれに結合する向精神化学物質に関することが知られており、従って本発明に関連して用いられる。これらの向精神化学物質は例えばケシの樹脂中にあるような天然アルカロイド類に限定されず、それは“オピエート類”と呼ばれる。換言すれば、用語“オピオイド”の下に含めることができる化学物質は、用語“オピエート”の下に含めることができる化学物質を含む。オピオイド類は、例えばi)天然オピエート類(例えばモルヒネ、コデイン、テバイン、オリパビン(oripavine)またはサルビノリンA)、ii)モルヒネオピエート類のエステル(例えばジアセチルモルヒネ(ヘロイン))、ニコモルヒネ、ジプロパノイルモルヒネ、デソモルヒネ、アセチルプロピオニルモルヒネ、ジベンゾイルモルヒネまたはジアセチルジヒドロモルヒネ);iii)天然オピエート類またはモルヒネエステルのどちらかから作製された半合成オピオイド類(例えばヒドロモルホン、ヒドロコドン、オキシコドン、オキシモルホン、エチルモルヒネまたはブプレノルフィン);iv)合成オピオイド類(例えばフェンタニール、ペチジン、レボルファノール、メサドン、トラマドールまたはデキストロプロポキシフェン);およびv)内在性オピオイド類(例えばエンドルフィン類、エンケファリン類、ダイノルフィン類、モルヒネおよびエンドモルフィン類)に分類することができる。従って、用語“オピオイド”は前記の用語に属する上記で参照した物質(複数または単数)のクラスのいずれかにより置き換えることができる。従って、対象における上記の物質(複数または単数)のクラスが関わる乱用行動および後者の禁断の間に起こる症状をここでうまく処置することができる。
本発明によれば、アルコールおよび/またはオピオイドの禁断の“症状の処置”は、アルコールおよび/またはオピオイドの禁断と関係する症状の改善または減弱、好ましくは消滅を指すことを意味する。前記の症状自体のほとんどは医学的な病気または疾患として分類することができるため、症状に関する用語“処置”が用いられる。従って、本発明はオピオイドおよび/またはアルコールの禁断の処置における使用のための本発明の医薬組成物にも関する。
アルコールの禁断の症状は当該技術で既知であり、長期の過度のアルコール摂取後のアルコール消費の低減または停止の際に誘発される。禁断症状は主として中枢神経系が過剰興奮性状態にある(CNS過剰興奮性;(Saitz et al., JAMA., 272(7):519-23 (1994))ためである。アルコール禁断症候群の重症度は、軽度の症状、例えば軽度の睡眠障害および軽度の不安から精神錯乱、特に重症例における幻視および痙攣(結果として死をもたらし得る)が含まれる非常に重症かつ生命を脅かすものまで様々であり得る。これらの症状は、睡眠の間の血中アルコール濃度の低下のため、覚醒の際に特徴的に現れる。アルコール禁断の重症度は、年齢、遺伝的性質、そして最も重要なことにはアルコール摂取の程度およびその人がアルコールを用いてきた時間の長さおよび以前の解毒の回数が含まれる様々な要因に依存する。症状には、例えば興奮、アルコール性幻覚症、食思不振、不安、パニック発作、緊張病、錯乱、振戦譫妄、離人症、抑鬱、現実感喪失、発汗、下痢、多幸感、恐怖、消化器不調、頭痛、高血圧、高体温、不眠、被刺激性、片頭痛、悪心および嘔吐、動悸、精神病、リバウンドレム睡眠(rebound REM sleep)、不穏状態、発作および死亡、発汗、多汗症、振戦、および/または衰弱が含まれる。これらの症状はアルコール依存の病気を患う対象がアルコールの摂取を妨げられた際に生じる。
オピオイドの禁断の症状は当該技術で既知である(例えばDansou et al., Rev Prat., 62(6):837-41 (2012)を参照)。身体的症状には、例えば振戦、痙攣、筋肉および骨の痛み、悪寒、発汗、持続勃起、頻脈、掻痒、不穏脚症候群、インフルエンザ様症状、鼻炎、欠伸、くしゃみ、嘔吐、下痢、衰弱および/または静座不能が含まれ;一方で心理的症状には例えば身体違和感、倦怠感、欲求、不安、パニック発作、妄想症、不眠、眩暈、悪心、および/または抑鬱が含まれ得る。
これらの症状は、オピオイド依存の病気を患う対象が彼または彼女自身にオピオイド類を投与することを妨げられた際に生じる。
本発明の使用に関する組成物の好ましい態様において、前記の組成物は1日あたり約18.5〜約77.5mg/kgの用量で投与されるべきである。
この態様において、特に本発明の組成物の好ましい態様、すなわち特定の抽出物の比率を提供する態様に関して定められるような投与されるべき用量は、特に臨床医および患者の両方に許容可能な方法で所望の処置の作用をもたらすことが示されている。従って、1日あたり約20〜75mg/kg、例えば1日あたり25〜70、30〜70、35〜70、40〜65、45〜60または50〜60mg/kgの投与量も予想される。1日あたり(それぞれの値に関して)約50、55、60または65mg/kgの用量がより好ましく、最も好ましくは1日あたり50mg/kgである。
本明細書で上記で言及したように、薬物の用量は一般に様々な要因に依存して主治医により調節される。従って、例えば投与の際の組成物の抽出物の選択される濃度に依存して、上記で言及した1日77.5mg/kgの範囲を2.5mgより多く、例えば5mg、7.5、10、15、20、25mgより多く(それぞれの値に関して)、または50mgより多く超える、より大きな量の本発明の組成物を投与することができる。投与に関する手引きとして、総1日量は5:1の平均薬物抽出物比を有し約20%の非活性添加剤を含む60mgの組成物を超えるべきではない。
本発明によれば、4〜7.5:1の薬物−抽出物比を有する前記のa)の抽出物、3〜8:1の薬物−抽出物比を有する前記のb)の抽出物、5〜7:1の薬物−抽出物比を有する前記のc)の抽出物および0.5〜5:1の薬物−抽出物比を有する前記のd)の抽出物がその組成物中に約0.5〜約4、好ましくは約2.5部の前記のa)の抽出物、約2.5〜約3、好ましくは約3部の前記のb)の抽出物、約2.5〜約5.25、好ましくは約2.5部の前記のc)の抽出物、および約0.5〜約3.75部の前記のd)の抽出物の比率で存在するものを含む本発明の組成物を、1日あたり20〜70、より好ましくは20〜60、さらにもっと好ましくは20〜40、最も好ましくは25〜30mg/kgの用量で投与する。1日あたり10〜20mg/kg、1日あたり10〜15mg/kgおよび1日あたり15〜20mg/kgの用量も予想される。
例えば、600mg(300mgのラファヌス属の抽出物(好ましくは3:1の薬物−抽出物比を有する)、180mgのテオブロマ属の抽出物(好ましくは5:1の薬物−抽出物比を有する)、60mgのパッシフローラ属の抽出物(好ましくは5:1の薬物−抽出物比を有する)、および60mgのクロッカス属の抽出物(好ましくは4:1の薬物−抽出物比を有する)の好ましい本発明の組成物を1日3回、好ましくは食後に、単独または本明細書で記載される添加剤のいずれかとの組み合わせで投与することができる。好ましくは、後者の用量の毎日の投与が4〜6週間継続する。
本発明の使用に関する組成物のより好ましい態様において、前記の用量は少なくとも2週間投与されるべきである。
この態様において、特に本発明の組成物の好ましい態様、すなわち特定の抽出物の比率を提供する態様に関して定められるような処置期間は、特に臨床医および患者の両方に許容可能な方法で所望の処置の作用をもたらすことが示されている。しかし、(それぞれの値に関して)少なくとも7、8、9、10、11、12、13日間または少なくとも17日間、3週間、4週間または少なくとも5週間またはより長い期間の処置期間も予想される。おそらく、本発明において上記で言及したように、薬物の用量ならびに処置期間は一般に主治医により様々な要因に依存して調節される。従って、例えば投与される際の組成物内の抽出物の選択された濃度に依存して、例えば低い抽出物濃度を用いる場合により長い処置期間が所望の処置作用を達成するための賢明かつ効率的な戦略であり得る。また、処置期間は知覚されるアルコールおよび/またはオピオイド類への依存またはそれらの乱用のレベルに基づいて異なることができ:一般に前記の知覚されるレベルがより低いほど投与期間がより短い。オピオイドおよび/またはアルコールの乱用または依存のほとんどの症例において、本明細書で上記で定めたような組成物の特に上記で言及した投与量での少なくとも2〜4週間の投与は処置に関して十分である。好ましくは、アルコールの乱用または依存は少なくとも約20日間、より好ましくは少なくとも25、例えば30日間の本発明の組成物の投与により処置される。
本発明によれば、好ましくは4〜7.5:1の薬物−抽出物比を有する前記のa)の抽出物、3〜8:1の薬物−抽出物比を有する前記のb)の抽出物、5〜7:1の薬物−抽出物比を有する前記のc)の抽出物および0.5〜5:1の薬物−抽出物比を有する前記のd)の抽出物が組成物中に約0.5〜約4、好ましくは約2.5部の前記のa)の抽出物、約2.5〜約3、好ましくは約3部の前記のb)の抽出物、約2.5〜約5.25、好ましくは約2.5部の前記のc)の抽出物、および約0.5〜約3.75部の前記のd)の抽出物の比率で存在するものを含み、1日あたり20〜70、より好ましくは20〜60、さらにもっと好ましくは20〜40、最も好ましくは25〜30mg/kgの用量で投与される本発明の組成物に関して、前記の投与は(それぞれの値に関して)少なくとも7、8、9、10、11、12、13、14日間または少なくとも17日間、3週間、4週間または少なくとも5週間維持される。
別の態様において、本発明は、ラファヌス属に属する植物の抽出物およびテオブロマ属に属する植物の抽出物を含む組成物を製造するための方法であって、以下の工程を含む方法に関する:a)ラファヌス属の植物の少なくとも気根、種子および/または球根を親水性、中程度の極性および/または親油性溶媒を用いて抽出し;b)テオブロマ属の植物の少なくとも果実を親水性および/または中程度の極性の溶媒を用いて抽出し;そしてc)工程a)の抽出物を工程b)の抽出物と組み合わせ、それによりラファヌス属に属する植物の抽出物およびテオブロマ属に属する植物の抽出物を含む前記の組成物を製造する。
本明細書で上記で言及された抽出に関する定義、組み合わせおよび特定のパラメーターは、必要な変更を加えてこの態様および本明細書において下記で言及するその好ましい改変にも適用される。
本発明の方法の好ましい態様において、その方法は、以下のさらなる工程:d)パッシフローラ属に属する植物の少なくとも花を親水性、中程度の極性および/または親油性溶媒を用いて抽出し;および/またはe)クロッカス属に属する植物の少なくとも花を親水性、中程度の極性および/または親油性溶媒を用いて抽出する;を工程c)の前に(その場合、工程d)の抽出物および/または工程e)の抽出物は前記の工程a)および工程b)の抽出物と組み合わせられる)、または工程c)の後に(その場合、工程d)の抽出物および/または工程e)の抽出物はさらなる工程f)において工程c)の組成物と組み合わせられる)含み、それによりラファヌス属の植物の抽出物、テオブロマ属の植物の抽出物、パッシフローラ属の植物の抽出物および/またはクロッカス属の植物の抽出物を含む組成物を製造する。
本明細書において上記で言及されたように、本発明の組成物、本発明の使用のための組成物または本発明の方法のさらなる好ましい態様において、ラファヌス属に属する植物はラファヌス・サティウス植物であり;および/またはテオブロマ属に属する植物はテオブロマ・カカオ植物である。
単一の抽出物ならびにその組み合わせ、例えば本明細書で上記で記載したような本発明の組成物を形成する単一の抽出物ならびにその組み合わせは、好ましくは密封された容器中で、好ましくは4〜8℃の温度で保管され、暗所における保管または光が前記の容器に入るのを遮断する容器中での保管のどちらかにより日光から保護される。好ましくは、その容器は気密かつ無酸素で密封される。その抽出物の組み合わせは好ましくはそれぞれの抽出物の乾燥状態で実施される。最小貯蔵寿命は流体(例えばアルコール性)抽出物に関して2年間および乾燥抽出物に関して少なくとも3年間であることが予想される。
上記でも言及したような本発明の組成物、本発明の使用のための組成物または本発明の方法の追加の好ましい態様において、パッシフローラ属に属する植物はパッシフローラ・インカルナタ植物であり;および/またはクロッカス属に属する植物はクロッカス・サティウス植物である。
ラファヌス・サティウス、テオブロマ・カカオ、パッシフローラ・インカルナタおよびクロッカス・サティウス種からの植物は、それから本発明の組成物を形成する抽出物を得ることができ、その抽出物が本明細書において下記で例示する組成物において用いられてきた特に好ましい植物である。
この明細書において、特に特許請求の範囲において特性付けられる態様に関して、従属請求項において言及されるそれぞれの態様は前記の従属請求項が従属するそれぞれの請求項(独立または従属)のそれぞれの態様と組み合わせられることが意図されている。例えば、3つの代替物A、B、Cを列挙する独立請求項1、3つの代替物D、EおよびFを列挙する従属請求項2ならびに請求項1および2に従属し3つの代替物G、HおよびIを列挙する請求項3の場合、本明細書は別途具体的に言及しない限りA、D、G;A、D、H;A、D、I;A、E、G;A、E、H;A、E、I;A、F、G;A、F、H;A、F、I;B、D、G;B、D、H;B、D、I;B、E、G;B、E、H;B、E、I;B、F、G;B、F、H;B、F、I;C、D、G;C、D、H;C、D、I;C、E、G;C、E、H;C、E、I;C、F、G;C、F、H;C、F、Iの組み合わせに対応する態様を明白に開示していることは理解されるべきである。
同様に、そして独立および/または従属請求項が代替物を列挙しない場合においても、従属請求項が複数の先行する請求項に戻って参照する(refer back to)場合、それによりカバーされる主題のあらゆる組み合わせが明確に開示されたと考えられることは理解されている。例えば、独立請求項1、請求項1に戻って参照する従属請求項2、ならびに請求項2および1の両方に戻って参照する従属請求項3の場合、請求項3および1の主題の組み合わせは請求項3、2および1の主題の組み合わせであるものとして明確かつ明白に開示されていることになる。請求項1〜3のいずれか1つを参照するさらなる従属請求項4が存在する場合、請求項4および1の、請求項4、2および1の、請求項4、3および1の、ならびに請求項4、3、2および1の主題の組み合わせは明確かつ明白に開示されていることになる。
上記の考察は必要な変更を加えて全ての添付された特許請求の範囲に適用される。
図は以下のことを示している:
図1:
ラットにおいて運動行動を再確立するための経口投与された抽出物組成物のモルヒネまたはヘロインの腹腔内投与への用量−反応作用。それぞれのデータの点は5匹のラットの平均(±SD)を表す。*ベースラインおよびそれぞれの処置の間の有意差 p<0.001;†その用量対そのより低い用量の間の有意差(p<0.001)。
図2:
抽出物組成物の経口投与後のモルヒネまたはヘロインに対する依存の低減の%。それぞれのデータの点は5匹のラットの平均(±SD)を表す。*ベースラインおよびそれぞれの処置の間の有意差 p<0.001;†その用量対そのより低い用量の間の有意差(p<0.001)。
図3:
72時間エタノールに曝露したマウスに関するHICスコア。マウスを1および4時間の時点で異なる用量の抽出物またはビヒクルで処置し、HICスコアを64時間の時間経過にわたって記録した。HICスコアは最初の12時間の間40または60mg/kg抽出物で処置した群において有意に低かった(p<0.001)。
図4:
短時間紡錘形エピソード(BSE)活動をエタノールへの慢性曝露後のマウスにおいて記録した。40および60mg/kgの抽出物組成物で処置したマウスは、エタノールの禁断後に2から72時間までビヒクルで処置したマウスよりも有意に少ないBSEを有する。40または60mg/kgの抽出物組成物で処置したマウスに関するBSE活性はビヒクルで処置したマウスよりも有意に低かった(p<0.001)。
実施例は本発明を説明する:
実施例1:自己投与モデル
1.1 材料および方法
1.1.1 抽出物組成物
実施例1および全ての他の実施例において用いられた抽出物組成物は以下のように構成されていた:
−2.5部のラファヌス・サティウス属抽出物、前記の抽出物は以下のような抽出により得られる:
・500mlの30%メタノール/水混合物をガラスビーカー中で90gの乾燥させ粉末にしたダイコンに添加する
・溶液を40〜50℃に30分間加熱する
・溶液を濾過し、濾液を真空下で蒸発乾固させる
・その乾燥した残留物を24時間凍結乾燥させる(得られた天然抽出物の量は36.3gの乾燥抽出物であった)
・標準化の目的のため、その抽出物が少なくとも1.5%の総フラボノイド類を含有するように標準化されるように40%の賦形剤(37部のマルトデキストリンおよび3部のシリカ)を添加する
−3部のテオブロマ・カカオ抽出物、前記の抽出物は以下のような抽出により得られる:
・1リットルの精製水をガラスビーカー中で200gの乾燥させ粉末にしたカカオ果実に添加する
・溶液を70〜80℃で45分間加熱する。
・溶液を濾過し、その濾液を100mLの体積まで蒸発させる
・凍結させ、24時間凍結乾燥させる。
・賦形剤を添加してその抽出物を最小濃度のプロシアニジン類を含有するように標準化する。
−2.5部のパッシフローラ・インカルナタ抽出物、前記の抽出物は以下のような抽出により得られる:
・750mLのメタノールをガラスビーカー中で175gの乾燥させ粉末にしたパッションフラワーに添加する
・溶液を40〜50℃で30分間加熱する。
・溶液を濾過し、蒸発乾固させる。
・残留物を24時間凍結乾燥させる。
・賦形剤を添加してその抽出物を最小濃度のフラボノイド類を含有するように標準化する。
−1.5部のクロッカス・サティウス抽出物、前記の抽出物は以下のような抽出により得られる:
・300mLのエタノールをガラスビーカー中で10gの乾燥させ粉末にしたサフランの花に添加する
・溶液を30〜45℃で30分間加熱する。
・溶液を濾過し、蒸発乾固させる。
・残留物を24時間凍結乾燥させる。
・賦形剤を添加してその抽出物を最小濃度のサフラナールを含有するように標準化する。
−その乾燥させた抽出物を水およびオリーブ油の混合物中で混合する。
1.1.2 静脈内自己投与装置
(それぞれのオペラント試験のケージの正面の壁上に15cm離れて設置された)2つのレバーのどちらかにおける反応を、Med Associatesのインターフェイスを有するIBMの互換性のあるコンピューター上で記録した。その静脈内自己投与システムは、Weeksの設計(1972)(Weeks JR. Long-term intravenous infusion. In: Myers RD, 編者. Methods in Psychobiology. Vol. 2. Academic Press; ニューヨーク: 1972. pp. 155-168)に従って構成されたポリエチレンシリコンカニューレ、Instechのハーネスおよびスイベル、ならびにHarvard Apparatusの注入ポンプで構成されていた。まず水のために棒を押すようにラットを訓練することにより棒押し反応の形成を成し遂げた。次いでカニューレをWeeks(1972)(上記参照)により記載された手順に従って外頚静脈中に埋め込んだ。自己投与試験は16時間の夜のセッションで始まり、続いて1日1時間のセッションを1週間に6日行った。レバー押し反応は10mlの薬物溶液(0.01mgの硫酸モルヒネ)の約0.2秒間での注入または50mlの薬物溶液の注入をもたらした。
1.1.3 十字路迷路手順
その装置は黒色のPlexiglasで作製され、中央において直角で交差する2つの走り道で構成されていた。それぞれの迷路の腕は40×10cm(長さ×幅)の寸法であった。互いに反対にある腕の2つは高さ40cmの寸法の壁を有し(閉じた腕)、一方でその他の2つの腕は壁を有していなかった(閉じた腕)。その迷路は床から52cm上に上げられていた。それは開いた腕のみが明るくなるように暗室に置かれ、それぞれそれ自身の40Wの白熱灯を有していた。動物をその迷路の中央に置き、それぞれのタイプの腕への侵入の数を計数し(4つの足全てが腕の中にあることを侵入と定義する)、それぞれのタイプの腕において費やされた時間も計数した。その試験は動物が中心に置かれた5分後に終了した。以下の尺度を計算した:腕への侵入の総数、開いた腕および閉じた腕への侵入、開いた腕および閉じた腕にいる時間、ならびに開いた腕において費やされた合計時間のパーセント。腕への侵入の総数における変化は一般的な活動の指標を反映し、一方でパーセント尺度における変化は不安の指標を構成する。開いた腕の時間のパーセントの増大は抗不安状態を反映しており、一方で開いた腕の時間のパーセントの減少は不安を惹起する状態を反映している。動物の動きは頭上のビデオカメラおよびVCRを用いることにより記録された。それらは続いて“盲検”の観察者により採点された。
1.1.4 微量透析試験
ペントバルビタール麻酔(50mg/kg ip)下で、そのラットに微量透析ガイドカニューレ(CMA:8309010;マサチューセッツ州アクトン)を側坐核の上に、両側のインジェクターガイドを脚間核の0.5mm上に(Paxinos and Watson, 1986, The rat brain in stereotaxic coordinates, 第2版. (Academic Press, ロンドン))定位的に埋め込んだ。動物を適切な回復に関して監視したが、他の点では手術後4日間乱さない(undisturbed)でおいた。インビボ微量透析実験前の午後、そのラットを立方体の微量透析チャンバー中に入れ、飼料および水を自由に入手できるようにした。ラットをBrevital(45mg/kg ip)で短時間麻酔し、透析プローブをガイドカニューレを通して挿入した。146mM NaCl、2.7mM KCl、1.2mM CaCl2、および1.0mM MgCl2を含有する人工脳脊髄液をHarvardシリンジポンプにより1ml/分の流速で継続的に送達した。灌流液の収集を次の日に開始した。20分画分を2.0mlの1.1M過塩素酸溶液(50mg/l EDTAおよび50mg/lメタ重亜硫酸ナトリウムを含有する)を含有するバイアル中に収集した。ベースライン収集の2時間後、18−MC(10mg)またはビヒクルを脚間核中に局所投与し、そのラットに1用量のモルヒネ(5mg/kg ip)または生理食塩水を与えた。次いで透析液試料の収集を3時間継続した。実験が完了したらラットをペントバルビタールの過剰用量により殺した。それぞれの脳を取り出し、凍結し、クリオスタット中で薄切した。プローブにより残された跡を同定し、PaxinosおよびWatsonの図解書(1986)(The rat brain in stereotaxic coordinates, 第2版. (Academic Press, ロンドン))への参照によりそれらの正確な位置を決定した。
透析液試料をドーパミン、ジヒドロキシフェニル酢酸(DOPAC)、およびホモバニリン酸(HVA)に関して高圧流体クロマトグラフィー(HPLC)により電気化学検出を用いてアッセイした。HPLCシステムはESAオートサンプラー、ESA溶媒送達システム、C18カラムで構成されていた。移動相は10%HPLCガイドアセトニトリル中0.075mMリン酸二水素ナトリウム一水和物、0.0017mMオクタンスルホン酸、および25mM EDTAをリン酸を用いてpH3.0に調節したもので構成されていた。流速は0.53ml/分に設定された。
1.1.5 微量注射試験
ラットにペントバルビタールナトリウム麻酔(50mg/kg)下で両側の計器のインジェクターガイド(Plastics One、米国バージニア州ロアノーク)を脚間核の0.5mm上(PaxinosおよびWatson、1986、上記参照)に埋め込んだ。栓塞子(Obturators)をインジェクターガイド中にねじ込んだ。そのインジェクターガイドをステンレス鋼のねじおよび頭蓋形成用セメントを用いて頭蓋骨に固定した。ラットを個々のケージに戻し、飼料および水を自由に提供した。ケージを加熱パッド上に一夜置いておき、次の日にラットをコロニー室(colony room)に戻した。ラットを少なくとも4〜5日間手術から回復させた後、微量注射試験において利用した。モルヒネおよび抽出物組成物(またはビヒクル)を注入ポンプ(Harvard Apparatus)を用いて脚間核中に局所投与し;全てのそのような処置はガイドカニューレを通る逆流を防ぐために1分間の注入の間に1mlの量で投与され;その注射カニューレは処置が施された後さらに1分間その位置に保たれた。
1.2 結果
その抽出物組成物はモルヒネの乱用の自己投与を低減し;40mg/kgにおいて、これらの作用は一般に18〜64時間続いた。その抽出物混合物(40mg/kg)は自己投与された薬物の単位注入用量反応曲線全体において左または右への変位一切なしで下方シフトをもたらすようであり、これは強化有効性が低減した(すなわち、モルヒネおよびニコチンのような他の乱用される薬物が抽出物組成物の存在下で強化性がより少なかった)ことを示している。抽出物混合物は自己投与の低減において強力であったことも特筆すべきである。抽出物混合物はオピウム受容体に対して非常に優れた活性を示した。
実施例2:運動行動試験
2.1 材料および方法
体重250g±10%のラットを実験において利用した。それぞれの群は5匹の動物で構成されていた。
ローターロッド性能試験は、本明細書においてモルヒネまたはヘロインへの依存の誘導後にラットの運動協調性を評価するために用いられた試験である。約0.2秒間で10mlの薬物溶液(0.01mgの硫酸モルヒネ)の注入または同じ濃度の50mlの薬物溶液(0.015mgの硫酸ヘロイン)の注入に従って、0.04mg/kgのモルヒネ、0.04mg/kgのヘロインの投与後にラットの反応が行われる。
実験処置の作用を評価するため、投与速度のベースラインがある日から次の5日間まで10%の変動の範囲内で安定化した際に実験を実施した。これは依存およびローターロッド性能試験を用いた一貫した運動性能を示すために20日間の試験を要した。モルヒネまたはヘロインの腹腔内用量をラットに毎日投与して行動を平衡化した。抽出物の経口投与後、モルヒネまたはヘロインの用量を“正常な”状態に類似した運動協調性を平衡化するように調節した。
運動行動の性能尺度を商業的に設計および構築された加速するローターロッド(Rotamex)を用いて実施した。運動協調性を加速する回転するロッド上の定位置に留まる動物の能力として定量化した。薬物投与前に、ラットをそれらに1日あたり6〜8回の3分間の訓練期間を与えることによりロッド上に留まるように徐々に訓練した。そのラットを3、6、9、12、および15rpmの増大するロッド速度で3分間の期間の間訓練した。動物がロッド上に留まるように動機付けるために電気ショック(2mA、AC)が装置の床の上に存在していた。動物が落ちた時間は光電セル検出により自動的に記録された。個々の動物は、それが15rpmでの2回の連続した試験でそれがロッド上に完全な3分間のセッションの間留まる基準に達した際に訓練されたとみなされた。2日間の訓練後にこの基準を満たしたラットのみをこれらの実験において用いた。全ての試験は最後の訓練試験の少なくとも2時間後に実施された。薬物を腹腔内注射により試験セッションの30分前に与えた。動物をロッドの上に、それを10rpmで回転させながら置いた。置いたらそのロッドの回転速度を8.3rpm/分の速度で上げた。可能な試験セッション期間の合計は3分間であった。落ちた時間および落ちた時点での毎分回転数をそれぞれの動物に関して記録した。
全てのデータをmg/Kgまたは%のどちらかとして平均±標準偏差(SS)として示し、多重比較に関して一元配置分散分析、続いてポストホック検定(テューキーの検定)(95%信頼度)を用いることにより評価した(SPSSバージョン17)。0.05未満(<0.05)のP値を統計的に有意とみなした。
2.2 結果および結論
抽出物組成物投与の用量の増大は、ローターロッド性能試験に従うラットの運動協調性を安定化するようにモルヒネおよびヘロインの用量を有意に(p<0.001)低減した(図1)。この後者の作用は用量依存性であり、モルヒネまたはヘロインの低減の百分率はより高い用量により有意に低減した(図2)。50%依存性低減値はヘロインおよびモルヒネに関してそれぞれ9.8および12.5mg/kgであった(図2)。その結果は、その抽出物がモルヒネおよびヘロインの依存を用量依存的様式で低減したが、用いたオピオイド麻薬のどちらかの優位性を示すことはなかったことを示している。
実施例3:エタノール依存のマウスモデルにおけるアルコール禁断と関係するCNSの過剰興奮性
3.1 材料および方法
動物
成体のオスのマウス(80〜90日齢)をこれらの実験において用いた。そのマウスの体重は実験の開始時に25〜30gであった。
抽出物の調製および投与
抽出物組成物を生理食塩水中で溶解させ、生理食塩水単独をビヒクルとして用いた。抽出物組成物を経口投与した。
エタノール曝露および測定
マウスをPlexiglasの吸入チャンバー(60×36×60cm3)中でエタノール蒸気に慢性的に曝露した。簡潔には、エタノール(95%)をエタノール中に沈めたエアストーンを通して空気を通すことにより揮発させた。そのエタノールの蒸気を新鮮な空気と混合し、そのチャンバーに10l/分の速度で送達し、それはそのチャンバー中のエタノール濃度を10〜13mg/L空気の範囲で維持した。エタノールチャンバー中に入れる前に、エタノール(1.6g/kg;8%w/v;ip.)の投与により中毒を開始し、血中エタノール濃度(BEC)をアルコールデヒドロゲナーゼ阻害剤であるピラゾール(1mmol/kg)の投与により安定化した。対照(空気)チャンバー中で維持されたマウスは生理食塩水およびピラゾールの注射を与えられた。吸入チャンバーにおける収容条件はコロニー室における収容条件と同一であった。マウスを吸入チャンバーから取り出した直後にBECの決定のために血液試料を採取した。チャンバーのエタノール濃度をチャンバーの壁にある出入口(port)を通して気密注射器により空気試料(2ml)を採取することにより毎日決定した。次いでその試料を、後の酵素的分光光度アッセイ手順を用いた分析のためにVenoject(商標)チューブに移した。チャンバー中のエタノール濃度はmg/L空気として表される。血液試料を後眼窩洞からヘパリン処理した毛細管を用いて採取した。その試料を相分離のために遠心分離し、5μlの血漿をAnalox Instrumentの分析器(マサチューセッツ州ルーネンバーグ)中に注入した。(mg/dlでの)BECをエタノールオキシダーゼによるエタノールのアセトアルデヒドおよび過酸化水素への酸化により生じる酸素の取り込みを測定することにより記録した。
取り扱いに誘発される(Handling−induced)痙攣(HIC)
マウスをエタノール処置条件にランダムに割り当て、次いでいくつかの群(対照および濃度依存群)に分けた。マウスを吸入チャンバー中で72時間エタノール蒸気に継続的に曝露した。吸入チャンバーから取り出した際に血中エタノール濃度(BEC)を決定するために血液試料を採取した。エタノール禁断後1および4時間の時点で、マウスに抽出物組成物(0、20、40または60mg/kg)の経口投与を与えた。アルコールの禁断後に誘発された痙攣を取り扱いに誘発される痙攣(HIC)反応として記録した。HIC反応はエタノール禁断と関係するCNSの過剰興奮性の高感度かつ信頼できる指標であることが証明されている。
脳波(Electroencephalographic)活動
別個の群のマウスを用いてエタノール禁断の電気記録尺度を評価した。マウスに前に記載したように長期留置電極を定位的に埋め込んだ。簡潔には、単極のステンレス鋼のセミミクロ電極(120mm)を海馬(AP:−1.65mm;L:1.5mm;V:−2.25mm)、扁桃体(AP:−0.7mm;L:−2.25mm;V:−5.25mm)、および視覚皮質(AP:−3.0mm;L:−2.0mm)中に、参照電極としての使用のための鼻領域(AP:+4.0mm;L:+0.5mm)中のステンレス鋼のねじと共に埋め込んだ。ブレグマと比較して座標を得た。電極を4ピンMicroTechプラグに接続し、歯科用アクリルおよび光硬化樹脂の複合材を用いて頭蓋骨に固定した。手術の3〜5日後、ベースライン脳波(EEG)活動を自由に動いているマウスから8時間の期間にわたって2時間ごとに記録した。次の日に、マウスを吸入チャンバー中に入れ、エタノール蒸気への72時間の連続曝露を与えた。エタノール禁断後1および4時間の時点で、マウスに抽出物組成物(0、40または60mg/kg)を経口で与えた。禁断の間にEEGデータを収集し、追加のサンプルを禁断後24、32、48、および72時間の時点で記録した。記録セッションは電気的に遮蔽されたチャンバー中で実施され、電極ケーブルはGrass増幅器に接続された。自発EEGデータをCEDアナログ−デジタル変換器によりデジタル化し、短時間紡錘形エピソード(BSE)として知られる高電圧脳波活動の連続(trains)をコンピュータープログラム(Spike2)により同定した。簡潔には、自動化された分析はEEG活動のバーストを7および9Hzの周波数ならびに少なくとも1秒間の期間で同定および分類を伴った。データをパーセントBSE活動(すなわちそれぞれの記録セッションの期間全体と比較した全てのBSE事象の累積期間)として示した。
データ分析
データをHICスコアまたはBSE活動として示し、群間のデータを分散分析(ANOVA)、続いてポストホック検定により分析した。P<0.05を有意とみなした。
3.2 結果
抽出物組成物をエタノール禁断後1および4時間の時点で投与した。40および60mg/kgの用量における抽出物はHICスコアをビヒクルで処置したマウスと比較して有意に(p<0.001)低減した(図3)。この低減は禁断後の最初の12時間の間に観察された。20mg/kgの抽出物用量はHICスコアにおいてあるパターンの低減を示した;しかし、それらは有意ではなかった。さらに、40および60mg/kg処置群の間にHICスコアにおける差はなかった(図3)。同様に、40または60mg/kgの抽出物組成物はBSE活性を時間依存的様式で有意に低減した(図4)。BSE活性における最大低減はアルコール禁断後の最初の36時間の間に観察された。しかし、36時間後、ビヒクルで処置した群におけるBSE活性は低下し始めた。最後に、繰り返される禁断症状の抽出物組成物による処置はビヒクルで処置されたマウスにおいて観察された禁断症状の感作の発現を遮断するのに有効であった。
実施例4:鬱病性障害を有する患者におけるアルコール依存の処置
その抽出物組成物はセロトニン再取り込み阻害因子を有する。従って、合併性大鬱病性障害を有するアルコール依存の患者を比較した。
4.1 方法
自治体のアルコール診療所における大鬱病性障害を合併した4人のアルコール依存の患者に、小規模パイロット試験において抽出物組成物(40mg/kg)を与えた。6週間の試験期間の間、患者は診療所においてそれらのルーチン的処置を継続した。禁酒は要求されなかったが、推奨された。患者は最初の2週間の間毎週、次いで4および6週目に通院した。結果尺度はアルコール使用障害特定テスト(AUDIT)、執拗・強迫的飲酒尺度(OCDS)および飲酒日誌であった。
4.2 試験の参加者
2つのヨルダンの自治体のアルコール診療所においてアルコール問題に関する外来での処置を自発的に求めていた年齢31〜47歳の3人の男性および1人の女性。少なくとも5年間の重度の飲酒(男性に関して1日平均4回以上の飲酒および女性に関して1日平均3回以上の飲酒)の履歴、Beck鬱病調査表IIにより定義される重大な抑鬱(BDI−II>16)を有し、自発的にその試験に参加することに興味がある患者が、彼らの診療所の医師により試験医師によりスクリーニングされることを勧められた。その患者は試験医師(精神科医LM)により構造化(Structured)を適用して問診された。最後の前の入院での解毒以来の時間は少なくとも4週間でなければならなかった。加えて、その適格な患者は現在2週間より長く続いている鬱病エピソード中になければならなかった。排除基準には、尿検査によりスクリーニングされた他の物質使用依存(アンフェタミン、ベンゾジアゼピン類、コカイン、テトラヒドロカンナビノールおよびオピエート類)、統合失調症または他の精神障害、ならびに双極性I型およびII型障害、自殺の深刻な危険性、妊娠もしくは授乳、重症の未処置の身体的問題、または肝臓の重篤な機能不全および精神障害が含まれていた。参加者の医師により処方された他の薬物療法は、他の抗鬱薬を除いて許可された。全ての患者はヨルダン人であった。現在の鬱病期間の平均の長さは22ヶ月であった。インフォームドコンセントを試験に参加する全ての患者から得た。
4.3 試験設計
まず4人の患者をスクリーニングした。MDDおよびアルコール依存の診断を確証するためにスクリーニング問診(SCID)を実施した。患者は執拗・強迫的飲酒尺度(OCDS;Anton RF: Obsessive compulsive aspects of craving: development of the Obsessive Compulsive Drinking Scale, Addiction 2000, 95: (211-217))およびアルコール使用障害特定検査(AUDIT;Saunders JB et al., 1993, Development of the alcohol Use disorders identification test (AUDIT): WHO collaborative project on early detection of persons with harmful alcohol consumtion II, Addition 1993, 88(6):791-804)が含まれる質問表を完了し、AUDIT−QF(Aalto M et al., 2006, Alcohol Clin Exp. Res., effectiveness of structured questionnaires for screening heavy drinking in middle aged women, 30(11): 1884-1888)、およびAUDIT−3(Gual A et al., 2002, Alcohol (37(6):591-596, Audit-3 and Audit-4: effectiveness of two short forms of the alcohol)を詳細な飲酒分析のために用いた。アルコール使用障害特定検査の6週間の処置期間の間の消費の記録は、全ての日に関して個人の飲酒日誌を用いて行われた。
適格な患者に40mg/日の抽出物組成物を経口で与えた。患者に試験薬物を朝摂取するように指導した。患者は試験医師に何時でも電話することを許可された。患者が予定された訪問に現れなかった場合、新しい予約を提案した。
6週間の処置期間の間に、患者は2、4±2、および6±2週目にデータ収集のためならびに薬物のチェックおよび分配のために試験サイトに戻った。それぞれの訪問において、前の訪問以来の飲酒日誌および試験薬物の摂取を薬物療法日誌から記録した。試験薬物療法を返却された使用済ボトルからの丸剤の計数により確実にした。結果を特定の週において記録した:OCDS(0、2、4および6週目);AUDIT(0、2および6週目)。臨床実験室検査(MCV、AST、ALT、CDT、およびGGT)を試験の開始時に行い、薬物療法の安全性を確実にするために2、4、および6週目に繰り返した。アルコールに関する呼気または血液検査は実施しなかったが、患者が明らかに酔っていた場合、新しい予約を提案した。
統計分析
全ての一次および二次的な結果の統計分析は独立した源により実施された。
4.4 結果
ベースラインAUDITおよびアルコール使用履歴は、抽出物組成物群(40mg/kg)において27.6±6.3から12.47±7.9へとベースラインから低下したAUDITスコアにおいて類似している。全体の低減は高度に有意であった(p<.0001)。
AUDIT QF(量−頻度)スコアにより測定されるアルコール消費は有意に低減した:抽出物組成物(40mg/kg)は6.1±1.4から3.7±2.3へ、そして6.0±1.5から4.1±2.1へと低減した(p<.0001)。時間による処置(treatment by time)の相互作用は有意ではなかった。AUDIT−3スコアにより測定された重度の飲酒の日数も有意に減少した:40mg抽出物混合物/kgに関して2.7±0.9から1.6±1.1へ、そして3.0±0.8から2.2±1.1へと減少した(p>.0001)。時間による処置の相互作用は有意ではなかった。
4.5 結果の要約
AUDIT QF(量−頻度)スコアにより測定されるアルコール消費は抽出物組成物を与えた人々に関して有意に低減していた。
実施例5:ラファヌス属の抽出物はラットにおいて脳のドーパミン濃度を増大させた。
材料および方法
2.1.実験動物
オスのウィスターラット(250〜300g、アンマン−ヨルダン)を試験全体を通して用いた(それぞれの実験に関して8匹のラット)。動物を4匹/ケージの群で12/12時間の光サイクル(午前07.00時に点灯)で、飼料および水を自由に入手可能にして収容した。動物をその実験の異なる群にランダムに割り当てた。全ての実験は標準的な倫理ガイドラインに従って実施され、地元の倫理委員会により承認された(医科大学動物実験委員会、81/021、2011年7月10日(ペトラ大学、ヨルダン、アンマン))。
2.2.薬物
フルオキセチン塩酸塩[N−メチル−3−[(4−トリフルオロメチル)フェノキシ]−3−フェニルプロピルアミン塩酸塩]およびデシプラミン塩酸塩[10−11−ジヒドロ−N−メチル−5H−ジベンズ(Z)[b,f]アゼピン−5−プロパンアミン塩酸塩](TOCRIS Bioscience,英国)を滅菌生理食塩水中で溶解させ、1ml/kgの濃度で腹腔内投与し;その抽出物は使用直前に調製した。対照群には生理食塩水を投与した。
2.3.植物材料
用いたファヌス・サティウス属の抽出物はヨルダンで調製された。その抽出物を調製するため、100gの乾燥し製粉された柱頭を1000mlの蒸留水を用いて冷浸により抽出した。その抽出物を35℃〜40℃で乾燥させ、抽出の収量は100mgの乾燥柱頭あたり23mgの凍結乾燥粉末であった。その抽出物を通常の生理食塩水中で溶解させ、すぐに動物に投与した。
2.4.脳の調製
薬物および/または抽出物の注射の30分後、動物をCO2箱中で殺し、ギロチンにより首を切り、専門家がそれらの脳を1分未満で取り出した。脳を10mlの冷(0℃)滅菌生理食塩水を含有するFalconチューブ中でホモジナイズし、4℃において3000rpm/分で5分間遠心分離した。上清をその後のELISAによる神経伝達物質の検出のために用いた。以前の研究に基づいて、30分間の間隔時間が選択された;この時間は抽出物の作用に十分であると考えられた。
2.5.統計分析
データを神経伝達物質濃度の平均±平均の標準誤差(SEM)として表す。一元配置分散分析(一元配置ANOVA)3。
結果
3.1 ラファヌス属の抽出物の脳のセロトニン濃度への作用
ラファヌス属の抽出物の異なる用量(2、8、32、64、128および256mg/kg、i.p.)の脳のセロトニンへの作用を試験した。動物に生理食塩水(1ml/kg、i.p.)、またはフルオキセチン(10mg/kg、i.p.)、デシプラミン(50mg/kg、i.p.)、ラファヌス属の抽出物(異なる濃度)のいずれかを与え、30分後に屠殺した。一元配置ANOVAは、フルオキセチンは脳のセロトニンレベルを有意に増大させることができるがデシプラミンもラファヌス属の抽出物も脳のセロトニンレベルを増大させることができないことを示した。
3.2 ラファヌス属の抽出物の脳のドーパミン濃度への作用
我々の結果は、フルオキセチン(10mg/kg、i.p.)およびデシプラミン(50mg/kg、i.p.)は脳中のドーパミン濃度を増大させることができることを示した。
興味深いことに、ラファヌス属の抽出物は脳中のドーパミン濃度を用量依存的様式で増大させることができ、256mg/kg、i.p.の抽出物用量がこの試験において最も強力である。
3.3 ラファヌス属の抽出物の脳のグルタメート濃度への作用
実験の最後の部分において、ラファヌス属の抽出物の脳のグルタメート濃度への作用を調べた。結果は、抽出物の用量からの依存において脳のグルタメートレベルにおいて変動が存在することを示した。その抽出物は、例えば264mg/kg、i.p.の用量を用いて、脳中のグルタメート濃度を有意に増大させた。