JP2016503380A - ガラス製造に使用される撓み制限付き牽引ローラおよびこれを組み込んだガラス製造プロセス - Google Patents

ガラス製造に使用される撓み制限付き牽引ローラおよびこれを組み込んだガラス製造プロセス Download PDF

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Abstract

一実施形態において、ダウンドロープロセスにおいてガラスシートを延伸するための牽引ローラが、シャフト部材と、このシャフト部材上に位置付けられた軟質カバーアセンブリとを含む。この軟質カバーアセンブリは、シャフト部材上に位置付けられた少なくとも1つの牽引ディスクと少なくとも1つの撓み制限ディスクとを含む。この少なくとも1つの牽引ディスクが、環状ハブと、この環状ハブと一体的に形成されている複数のスプリング部材とを含む。この少なくとも1つの撓み制限ディスクが、各撓み制限ディスクに位置付けられた、少なくとも1つの撓み制限部材を含む。この少なくとも1つの撓み制限部材は、複数のスプリング部材が放射状内側へ所定量で撓んだ際に、少なくとも1つの牽引ディスクの少なくとも一部と係合し、それにより複数のスプリング部材の放射状内側への撓みを制限する。

Description

関連出願の相互参照
本願は、2012年11月13日に出願された米国特許出願第13/675,662号明細書の米国特許法第120条に基づく優先権を主張するものであり、本願は上記特許出願の内容に依存したものであり、また上記特許出願の内容は参照によりその全体が本明細書に援用される。
本明細書は、一般にガラスシートの製造に使用される牽引ローラに関し、より具体的には、ガラスシートに延伸力を加えるための、スプリング部材を備えた牽引ローラに関する。
牽引ローラは、個々の板ガラスを成形するためのガラスリボンまたはガラスウェブに引張力を加えるために、板ガラスの製造において使用される。特許文献1および特許文献2に記載されているオーバーフローダウンドローフュージョンプロセスや、または類似のガラス製造プロセスなどで、ガラスを溶融ガラスから延伸するときに、牽引ローラからガラスに加えられる引張力の量を利用してガラスの名目上の厚さが制御される。
米国特許第3,338,696号明細書 米国特許第3,682,609号明細書
牽引ローラは、一般に、ガラスウェブの外側縁端部、すなわち通常は、ガラスウェブの極縁端部に形成される肉厚のビードのすぐ内側のエリアで、ガラスウェブに接触するよう設計されている。牽引ローラはガラスウェブの表面と直接接触するため、牽引ローラ材料の摩耗特性により、ガラス表面に損傷が生じる可能性がある。たとえば、ガラス粒子が牽引ローラの表面に埋め込まれて、牽引ローラがガラスに接触したときにガラスに損傷をもたらすことがある。
同様に、牽引ローラの材料がガラス延伸プロセスの高温での使用で劣化した場合、牽引ローラが粒子状物質を落とす可能性がある。この粒子状物質が柔らかいガラスに埋め込まれることによって、ガラスに欠陥が形成され得る。さらに、ガラス延伸プロセスにより生成された粒子状物質(たとえば、破片、埃、ガラスのかけらなど)が牽引ローラの表面に埋め込まれて、ガラスウェブに繰返し欠陥を生じさせる可能性がある。こういった機構のいずれかで生じたガラスウェブの損傷で、ガラス延伸プロセス中に無制御および/または早期の破損が起こる可能性があり、これにより製造効率が低下しかつコストが増加する可能性がある。
さらに、ガラス延伸プロセスにより生成された粒子状物質は、牽引ローラをガラスシートから離脱させる可能性があり、ガラスシートだけでなく牽引ローラをも圧迫するような集中的な垂直力を生じ、牽引ローラ材料に永久変形を引き起こし得る。
したがって、ガラス製造プロセスにおいて使用するための牽引ローラに対し、別の設計が必要とされる。
本書において説明される実施形態は、牽引ローラを用いてガラスシートを延伸する際にガラスシートに早期および/または無制御の破損が発生するのを低減させる、ガラス延伸プロセスにおいて使用される牽引ローラに関する。さらに、ガラス延伸プロセス中のガラスシートの早期および/または無制御の破損を軽減する牽引ローラを利用した、ガラスシート成形方法を開示する。
一実施形態によれば、ガラスシートの早期および/または無制御の破損を低減させるための牽引ローラは、シャフト部材と、シャフト部材上に位置付けられた軟質カバーアセンブリとを含んでもよい。軟質カバーアセンブリは、シャフト部材上に位置付けられた少なくとも1つの牽引ディスクと少なくとも1つの撓み制限ディスクとを含んでもよい。この少なくとも1つの牽引ディスクは、環状ハブと、環状ハブと一体的に形成されている複数のスプリング部材とを含んでもよい。複数のスプリング部材は、複数のスプリング部材の各スプリング部材の先端が複数のスプリング部材の各スプリング部材の基端から放射状外側に位置するように、環状ハブから外側へと突出していてもよい。さらに、少なくとも1つの撓み制限ディスクは、撓み制限ディスクに位置付けられた、少なくとも1つの撓み制限部材を含み、少なくとも1つの撓み制限部材は、複数のスプリング部材が放射状内側へ所定量で撓んだ際に、牽引ディスクの少なくとも一部と係合することができ、それにより複数のスプリング部材の放射状内側への撓みを制限する。別の実施形態において、ガラスシートの早期および/または無制御の破損を低減させるための牽引ローラは、シャフト部材と、シャフト部材上に位置付けられた軟質カバーアセンブリとを含んでもよい。軟質カバーアセンブリは、シャフト部材上に位置付けられた複数の牽引ディスクと複数の撓み制限ディスクとを含んでもよい。この複数の牽引ディスクの各牽引ディスクは、隣接する牽引ディスクから回転方向にずれていてもよく、複数の牽引ディスクの各牽引ディスクは、環状ハブと、環状ハブと一体的に形成されている複数のスプリング部材とを含んでもよい。複数のスプリング部材は、複数のスプリング部材の各スプリング部材の先端が複数のスプリング部材の各スプリング部材の基端から放射状外側に位置するように、環状ハブから外側へと突出していてもよい。複数の撓み制限ディスクの各撓み制限ディスクは、各撓み制限ディスクに位置付けられた、少なくとも1つの撓み制限部材を含み、少なくとも1つの撓み制限部材は、複数のスプリング部材が放射状内側へ所定量で撓んだ際に、少なくとも1つの牽引ディスクの少なくとも一部と係合することができ、それにより複数のスプリング部材の放射状内側への撓みを制限する。
さらに別の実施形態において、ガラスシートの早期および/または無制御の破損を低減させるガラスシート成形方法は、ガラスバッチ材料を溶解して溶融ガラスを形成するステップと、溶融ガラスをガラスシートへと成形するステップとを含んでもよい。その後、ガラスシートの少なくとも第1表面を少なくとも1つの牽引ローラに接触させて、ガラスシートを下流方向に移動させてもよい。この少なくとも1つの牽引ローラは、シャフト部材と、シャフト部材上に位置付けられた軟質カバーアセンブリとを含んでもよい。軟質カバーアセンブリは、シャフト部材上に位置付けられた複数の牽引ディスクと複数の撓み制限ディスクとを含んでもよい。この複数の牽引ディスクの各々は、環状ハブから外側へと突出する複数のスプリング部材と一体的に形成されている環状ハブを含んでもよく、この複数のスプリング部材の各先端が複数のスプリング部材の各基端から放射状外側に位置する。複数の撓み制限ディスクの各撓み制限ディスクは、各撓み制限ディスクに位置付けられた、少なくとも1つの撓み制限部材を含み、少なくとも1つの撓み制限部材は、複数のスプリング部材が放射状内側へ所定量で撓んだ際に、少なくとも1つの牽引ディスクの少なくとも一部と係合することができ、それにより複数のスプリング部材の放射状内側への撓みを制限する。本開示のさらなる特徴および利点は以下の詳細な説明において明記され、ある程度は、その説明から当業者には容易に明らかになるであろうし、あるいは、以下の詳細な説明、請求項、さらに添付の図面を含め、本書において説明される実施形態を実施することにより認識されるであろう。
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は、種々の実施形態を説明したものであること、そして請求される主題の本質および特徴を理解するための概要または構成を提供するよう意図されているものであることを理解されたい。添付の図面は、種々の実施形態のさらなる理解を提供するために含まれ、本明細書に組み込まれかつその一部を構成する。図面は本書において説明される種々の実施形態を示し、そしてその説明とともに、請求される主題の原理および動作の説明に役立つ。
本書において図示および説明される1つまたは複数の実施形態による、ガラスシート成形用のガラス延伸装置を概略的に描いた図である。 ガラスシートの延伸に使用される一対の対向する牽引ローラを含む、延伸アセンブリを概略的に描いた断面図である。 本書において図示および説明される1つまたは複数の実施形態による、複数の牽引ディスクから形成された牽引ローラを概略的に描いた部分分解図である。 本書において図示および説明される1つまたは複数の実施形態による、図2の牽引ローラの牽引ディスクを概略的に描いた図である。 説明を目的として、図3の牽引ディスクの環状ハブと1つのスプリング部材とを概略的に描いた図である。 牽引ディスクのスプリング部材が複雑な曲率を有する、牽引ローラ用の牽引ディスクを概略的に描いた図である。 牽引ディスクのスプリング部材が接触足部を含む、牽引ローラ用の牽引ディスクを概略的に描いた図である。 牽引ディスクのスプリング部材が縁部で結合されている、牽引ローラ用の牽引ディスクを概略的に描いた図である。 撓み制限ディスクに軸方向で隣接している牽引ディスクを概略的に描いた図である。 牽引ディスクと撓み制限ディスクの放射状外側のエリアを概略的に描いた分解側面図である。 牽引ディスクと撓み制限ディスクの放射状外側のエリアを概略的に描いた正面図である。 牽引ディスクと撓み制限ディスクが軸方向で互い違いになるように組み立てられた、複数の牽引ディスクと撓み制限ディスクを概略的に描いた図である。 2つの撓み制限ディスク間で放射状に位置付けられた牽引ディスクの放射状外側のエリアを概略的に描いた分解側面図である。
ここで、ガラスシートの製造で使用される牽引ローラ、および、この牽引ローラを組み込んだガラス製造プロセスの、種々の実施形態を詳細に参照する。可能な限り、図面を通じて、同じまたは同様の部分の参照に同じ参照番号を使用する。ガラスシート材料は、一般に、ガラスバッチ材料を溶解して溶融ガラスを形成し、その後溶融ガラスをガラスシートに成形して形成され得る。例示的なプロセスとして、フロートガラスプロセス、スロットドロープロセス、およびフュージョンダウンドロープロセスが挙げられる。これらの各プロセスでは、ガラスシートに接触してガラスシートを下流方向に搬送するために、1つまたは複数の牽引ローラが使用され得る。
例として図1Aを参照すると、溶融ガラスからガラスシート材料を成形するための例示的なガラス製造装置100が概略的に描かれている。ここでは溶融ガラスをガラスシートに成形するために、フュージョンドロー装置を使用している。ガラス製造装置100は、溶解槽101、清澄槽103、混合槽104、送出槽108、およびフュージョンドロー装置(FDM)120を備えている。ガラスバッチ材料が矢印102で示されるように溶解槽101内に導入される。バッチ材料は溶解されて、溶融ガラス106が形成される。清澄槽103は溶解槽101から溶融ガラス106を受け入れる高温処理エリアを有し、この内部で溶融ガラス106から気泡が除去される。清澄槽103は接続管105を介して混合槽104に連結されている。すなわち、清澄槽103から混合槽104へと流れる溶融ガラスは接続管105を通って流れる。さらに混合槽104は、混合槽104から送出槽108へと流れる溶融ガラスが接続管107を通って流れるよう、接続管107を介して送出槽108に連結されている。
送出槽108は下降管109を介して溶融ガラス106をFDM120内に供給する。FDM120はエンクロージャ122を備え、エンクロージャ122内には注入口110、成形槽111、および少なくとも1つの延伸アセンブリ150が位置付けられている。図1Aに示されるように、下降管109からの溶融ガラス106は、成形槽111に繋がる注入口110内に流れ入る。成形槽111は開口112を含み、これが溶融ガラス106を受け入れると、この溶融ガラス106は、トラフ113内に流れ入った後に溢れ出て2つの合流側面114aおよび114bを流れ落ち、この2側面が結合する底部で融合し、次いで延伸アセンブリ150が溶融ガラス106に接触してこれを下流方向151に延伸して、連続したガラスシート148が成形される。
図1Bを参照すると、延伸アセンブリ150の断面が概略的に描かれている。図1Bに示されるように、延伸アセンブリ150は、一般に、ガラスシート148の対向する側面に接触する、一対の対向する牽引ローラ200a、200bを備えている。したがって、ガラスシート148は牽引ローラ200a、200b間に当接することを理解されたい。牽引ローラ200a、200bは、動力が供給される(すなわち、牽引ローラ200a、200bを能動的に回転させて、ガラスシート148を下流方向151に搬送する延伸力を加える)ものでもよいし、あるいは受動的な(すなわち、牽引ローラ200a、200bはガラスシート148に接触し、ガラスシートが他の牽引ローラで下流方向151に延伸されているときにガラスシートを安定させる)ものでもよい。
ここまで牽引ローラ200a、200bを、フュージョンドロー装置を利用してガラスシートを成形する装置と併せて使用されるものとして説明してきたが、この牽引ローラは、ガラスバッチ材料を溶解して溶融ガラスを形成し、さらに溶融ガラスをガラスシートに成形して牽引ローラで延伸する、同様のプロセスで使用され得ることを理解されたい。例として、限定するものではないが、本書において説明される牽引ローラを、アップドロープロセス、スロットドロープロセス、フロートドロープロセス、および他の類似のガラス延伸プロセスと併せて利用することもできる。牽引ローラはまたケインおよび管の延伸において使用されてもよい。
上で簡単に説明したように、前述のプロセスで使用される牽引ローラはガラスシートに直接接触し、したがって従来の牽引ローラの摩耗特性により、ガラス表面に損傷が生じる可能性がある。たとえば、ガラス粒子が従来の牽引ローラの表面に埋め込まれて、牽引ローラがガラスに接触したときに、ガラスに損傷をもたらすことがある。同様に、従来の牽引ローラが高温での長期使用で劣化して、粒子状物質を落とす可能性がある。この粒子状物質が柔らかいガラスに埋め込まれることによって、ガラスに欠陥が形成され得る。発生源に拘わらず、こういった欠陥および/または損傷はガラス延伸プロセスの際にガラスシートの早期および/または無制御の破損に繋がる可能性があり、これにより製造効率が低下しかつコストが増加する可能性がある。本書において説明される牽引ローラは、スプリング部材を利用してガラスシートに接触する。このスプリング部材は高温で安定している材料から形成され、そのためこの牽引ローラは、長期使用後に容易に劣化したり、あるいは粒子状物質を落としたりすることはない。さらに、牽引ローラはスプリング部材間に開口構造を備えて形成されているため、粒子状物質は牽引ローラの表面に埋め込まれるのではなく、牽引ローラの本体内に容易に包み込むことができる。
ここで図2を参照すると、ガラス製造プロセスで使用される例示的な牽引ローラ200が概略的に描かれている。牽引ローラ200は、一般に、シャフト部材202と、シャフト部材202上に位置付けられた軟質カバーアセンブリ208とを含む。軟質カバーアセンブリ208は、シャフト部材202上に位置付けられ、軟質カバーアセンブリの接触面209を形成する、複数の牽引ディスク210を備えている。図2に描かれている牽引ローラ200の実施形態は複数の牽引ディスクを含んでいるが、軟質カバーアセンブリ208は、1つの牽引ディスクから形成されたものでもよいことを理解されたい。
シャフト部材202は、一方の端部にねじ山224を含み得、また対向する端部には肩部222が形成されている。牽引ディスク210は肩部にぶつかるように位置付けられ、ナット、またはたとえばテーパピンなどの別の適切な締結具を用いて、シャフト部材に固定してもよい。肩部222は、牽引ローラ200を能動的に回転させるためのフレームまたは機構に牽引ローラ200を固定するのをさらに助けることもできる。本書において説明されるいくつかの実施形態において、シャフト部材202はキー225をさらに備え、このキー225は、図2に示されるように、軟質カバーアセンブリ208の牽引ディスク210内に形成された対応するキー溝250と係合するためものである。他の実施形態において、シャフト部材は、牽引ディスクに形成された対応するキーに係合するキー溝を備えて形成される(図示せず)。キーとキー溝との間の相互作用により、牽引ローラ200が回転しているときに牽引ディスク210がシャフト部材202上で回転するのを防ぐ。
ここで図3および図4を参照すると、牽引ローラ200の軟質カバーアセンブリ内で使用される、牽引ディスク210が概略的に描かれている。本書において説明される実施形態において、牽引ディスク210は、一般に、環状ハブ206と複数のスプリング部材204とを備えている。複数のスプリング部材204は、環状ハブ206と一体的に形成され、図3に描かれているように環状ハブ206から放射状外側へと突出している。図4に最も良く示されているが、各スプリング部材204は基端214と先端212との間で延在しているものである。具体的には、スプリング部材の先端212が、基端214および環状ハブ206から放射状外側に位置するように、各スプリング部材204は基端214の位置で環状ハブ206に一体的に取り付けられる。図3に描かれている牽引ディスク210の実施形態において、環状ハブ206および複数のスプリング部材204は、実質上同じ、同一平面上にある。
ガラスシートに延伸力を加えるよう牽引ローラを押してガラスシート表面に接触させたとき、各牽引ディスク210のスプリング部材204は環状ハブ206に対して弾性的に変位するように、スプリング部材204は環状ハブ206に対して弾性的に曲がるように設計されている。その結果、ガラスシートに延伸力を与えている間、スプリング部材204がガラスシートを損傷することはない。
より具体的には、各牽引ディスクのスプリング部材204の半径方向ばね定数(すなわち、環状ハブ206からの放射状の突出に沿ったばね定数)は、約2lbf/mm〜約2000lbf/mm(約8.9N/mm〜約8896.4N/mm)、またはさらに約5lbf/mm〜約1500lbf/mm(約22.2N/mm〜約6672.3N/mm)の範囲であり得る。ばね定数がこの範囲内であると、ガラスシートを損傷しないように十分に柔軟であると同時に、牽引ローラでガラスシートを延伸するのを助けるよう、ガラスシートの表面に対して適当な牽引力を与える得る程度の堅さを有する牽引ローラが生成される。
上述したように、ダウンドロープロセス中には、ガラスのかけらのような破片や他の粒子状物質が牽引ローラと接触する可能性がある。この破片が牽引ローラの軟質カバーアセンブリの接触面に埋め込まれ、それによりこの牽引ローラで延伸しているガラスシートを損傷することになるのを防ぐため、牽引ディスク210のスプリング部材204は軸方向および接線方向に十分に柔軟である。すなわち、破片が軟質カバーアセンブリの接触面の間に当たったときに、スプリング部材が接線方向および/または軸方向に変位することで破片をスプリング部材間に通し、この破片を完全に牽引ローラを通り抜けさせることによって、あるいは軟質カバーアセンブリ内に完全に包み込むことによって、破片を軟質カバーアセンブリの表面から離れさせることができ、それによりガラスシートの損傷を軽減させる。本書において説明される牽引ローラの実施形態において、スプリング部材204の軸方向ばね定数(すなわち、図3に描かれている座標軸の±z方向におけるばね定数)は一般に、ローラの傾斜角度(すなわち、水平に対するローラの長軸の角度)の設定を助けるよう十分に低いものである。たとえば、軸方向ばね定数は、約0.25lbf/mm〜約150lbf/mm(約1.1N/mm〜約667.2N/mm)でもよいし、またはさらに約5lbf/mm〜約75lbf/mm(約22.2N/mm〜約333.6N/mm)でもよい。接線方向ばね定数(すなわち、矢印240の方向におけるばね定数)は、スプリング部材の先端が過剰に撓んで一定のシート速度の維持を妨げ得ることがない程度に高いものとするべきである。本書において説明される実施形態において、接線方向ばね定数は、約2lbf/mm〜約75lbf/mm(約8.9N/mm〜約333.6N/mm)でもよいし、またはさらに約5lbf/mm〜約50lbf/mm(約22.2N/mm〜約222.4N/mm)でもよい。
ここで図2〜図4を参照すると、本書において説明される牽引ローラの実施形態において、牽引ディスク210のスプリング部材204は、隣接するスプリング部材204の基端間の円周方向における間隔Gが約0.01mm以上となるように環状ハブ上に形成される。この間隔は、軟質カバーアセンブリ208の接触面209に破片が埋め込まれることなく、この破片を円周方向に隣接しているスプリング部材204間に十分に通過させ得るものである。いくつかの実施形態において、間隔Gは約0.05mm以上でもよい。
スプリング部材204の円周方向における厚さTは、一般に、牽引ディスク210を形成している材料の種類や、スプリング部材の所望のばね定数に依存する。本書において説明される実施形態において、スプリング部材204の厚さTは、一般に、約0.25mm〜約3.00mmの範囲内である。いくつかの実施形態においては、スプリング部材の厚さTは、約0.25mm〜約1.5mmでもよい。ただし、スプリング部材204は、牽引ディスク210作製時の材料の種類、および/またはスプリング部材の所望のばね定数に応じて、他の厚さを有し得ることを理解されたい。さらに、スプリング部材204の厚さTは、図4に示されるように基端214と先端との間で不均一なものでもよいが、他の実施形態においては、スプリング部材204の厚さを基端214と先端212との間で均一なものとしてもよい(図示せず)。
図2〜図4をさらに参照すると、本書において説明される牽引ローラ200の実施形態において、牽引ディスク210の環状ハブ206の外径dは一般に約18mm〜約75mmの範囲内であり、一方牽引ディスクの外径Dは約60mm〜約200mmの範囲内である。したがって、牽引ローラ200の軟質カバーアセンブリの外径も同様に、約60mm〜約200mmの範囲内であることを理解されたい。
スプリング部材204の軸方向厚さt(すなわち、図3に描かれている座標軸の±z方向における厚さ)および環状ハブ206の厚さは、一般に、約0.50mm〜約105mmの範囲内である。さらに、所与の材料に対し、スプリング部材204の軸方向厚さtを、スプリング部材204の軸方向ばね定数を調節するために増加させてもよいし、あるいは減少させてもよい。いくつかの実施形態において、環状ハブ206の軸方向厚さは、スプリング部材204の軸方向厚さよりも厚くてもよい。これらの実施形態において、環状ハブ206は、牽引ディスク210がシャフト部材202上に固定されたときに、軸方向に隣接するスプリング部材204間の所望の間隔を得るのに利用される。したがって、牽引ディスク210は、軸方向に隣接するスプリング部材間で所望の間隔を得るために、様々な厚さを有する環状ハブを用いて形成し得ることを理解されたい。
本書において説明される牽引ローラ200の実施形態において、牽引ローラをガラス基板の平面表面に対して押し付けたときに所望の機械的応答(すなわち、所望の弾性変形および弾性応力)を得るために、スプリング部材204を特有の輪郭で形成してもよい。たとえば図2〜図4は、先端212と基端214との間で湾曲しているスプリング部材を有する牽引ディスク210から構成された、牽引ローラ200の一実施形態を描いたものであるが、スプリング部材の先端がガラスシートの平面表面と係合すると、スプリング部材は環状ハブの中心に向かって放射状内側へと弾性的に撓む。いくつかの実施形態において、スプリング部材204の曲率半径Rは先端212と基端214との間で一定である。これらの実施形態において、曲率半径Rは、約10mm〜約80mmでもよいし、またはさらに約10mm〜約40mmでもよい。これらの実施形態において、スプリング部材204は、一般に、スプリング部材204がガラスシートの表面と接触したときに容易に曲がるよう、牽引ローラの下方延伸用回転方向と反対の方向に湾曲している。たとえば、図1Bの牽引ローラ200aの下方延伸用回転方向は時計回りの方向であり、一方そのスプリング部材204は反時計回りの方向に湾曲している。
他の実施形態において、スプリング部材204は複雑な曲率を有するものでもよい。たとえば、いくつかの実施形態において、各スプリング部材の曲率半径は、スプリング部材204の基端214からスプリング部材204の先端212に向かって増加してもよい。他の実施形態において、各スプリング部材の曲率半径は、スプリング部材の基端214からスプリング部材204の先端212に向かって減少してもよい。さらに他の実施形態において、スプリング部材204は、スプリング部材の異なるセグメントが異なる半径を有しおよび/または異なる方向に湾曲するような、複雑な曲率を用いて形成してもよい。たとえば、図5は牽引ディスク234の一実施形態を描いたものであり、ここでスプリング部材は下方部分227(すなわち、環状ハブ206に最も近いスプリング部材の部分)と上方部分226とを有している。この実施形態において、各スプリング部材204の下方部分227は第1の曲率半径を有しかつ反時計回りの方向に湾曲しており、一方スプリング部材204の上方部分226は第2の異なる曲率半径を有しかつ時計回りの方向に湾曲している。これらの実施形態において、スプリング部材の上方部分226は、牽引ローラの下方延伸用の回転の方向と反対の方向に一般に湾曲する。したがって、図5に描かれている牽引ディスク234の実施形態において、牽引ローラの下方延伸用の方向は反時計回りの方向である。
ここで図6を参照すると、牽引ディスク230の別の実施形態が概略的に描かれている。この実施形態において、牽引ディスク230はスプリング部材204を備えて形成され、このスプリング部材204は、各スプリング部材204の先端212上に形成された接触足部216を含む。この接触足部216によって、スプリング部材204と、牽引ディスク230で延伸されるガラスシートの表面との間の接触面積が増加する。スプリング部材204とガラスシートの表面との間の接触面積が増加すると、牽引ディスクとガラスシートとの間の摩擦が増加して、シャフト部材からガラスシートに与えられるトルクをより増大させることが可能となる。それによりスプリング部材204の弾性を減少させることなくガラスシート上に加えられる下方延伸力を増加させることが可能となって、ダウンドロープロセス中にガラスシートを損傷する可能性を軽減することができる。
上記のように、牽引ディスクを形成する際には、牽引ディスクがシャフト部材上で回転するのを防止するキー溝を設けてもよい。図6に描かれている牽引ディスク230の実施形態において、キー溝250は環状ハブ206内に形成されたアパーチャである。キー溝250は、シャフト部材に付けられた対応するキー(図示せず)を受け入れるような形状であり、それにより牽引ディスク230がシャフト部材上で回転するのを防止する。
ここで図7を参照すると、牽引ディスク232の別の実施形態が概略的に描かれている。この実施形態において、牽引ディスク232は縁部218を含む。この縁部218は、複数のスプリング部材の各スプリング部材の先端を、同じ牽引ディスク上の隣接するスプリング部材の先端と結合させる。この実施形態において、スプリング部材と、牽引ディスク232で延伸されるガラスシートの表面との間の接触面積が、縁部218により増加する。スプリング部材204とガラスシートの表面との間の接触面積が縁部218により増加すると、牽引ディスクとガラスシートとの間の摩擦が増加して、シャフト部材がガラスシートに与えるトルクを増大させることが可能となり、それによりガラスシート上に加えられる下方延伸力が増加する。さらに、牽引ディスク232のスプリング部材204が湾曲しているため、縁部を環状ハブ206に対して変位させることができ、それによりダウンドロープロセス中にガラスシートを損傷する可能性が軽減する。
図3〜図7に描かれている牽引ディスクは、ガラスダウンドロープロセス中に直面する最大約900℃に達し得る高温で、その機械的特性を保持するような材料から形成し得る。適切な材料としては、限定するものではないが、金属、セラミック、金属マトリクス複合材料、および鉱物系材料が挙げられる。たとえば、牽引ディスクは、限定するものではないが、Rene41、Haynes282、Inconel718、または類似のニッケルベース合金などの、ニッケルベース合金から形成してもよい。適切なセラミックの材料の例としては、限定するものではないが、窒化ケイ素、炭化ケイ素、アルミナ、炭化ホウ素、サイアロン(SIALON)、または類似のセラミック材料が挙げられる。適切な鉱物材料としては、限定するものではないが、金雲母などのバルクの雲母材料が挙げられる。図3〜図9に描かれている牽引ディスクは、たとえば、放電加工(EDM)、レーザー金属焼結またはウォータジェット加工技術などの、従来の加工技術を用いて形成してもよい。
牽引ディスクが形成されたら、牽引ディスクの耐酸化性および耐摩耗性を向上させるような材料で、この牽引ディスクをコーティングしてもよい。たとえば、牽引ディスクの耐酸化性および/または耐摩耗性を向上させる、ステライト6(Stellite6)、ステライト12(Stellite12)、または他の類似のコーティング材料で、牽引ディスクをコーティングしてもよい。
牽引ディスクに加えて、本書において開示される牽引ローラは、シャフト部材に位置付けられた少なくとも1つの撓み制限ディスクをさらに含む。各撓み制限ディスクは、撓み制限ディスクに位置付けられた少なくとも1つの撓み制限部材を含み得る。少なくとも1つの撓み制限部材は、複数のスプリング部材が放射状内側へ所定量で撓んだ際に、牽引ディスクの少なくとも一部と係合することができ、それにより複数のスプリング部材の放射状内側への撓みを制限する。
複数のスプリング部材の放射状内側への撓みを制限することは、ガラス延伸プロセスから生じた粒子状物質が牽引ローラをガラスシートから離脱させ、ガラスシートだけでなく牽引ローラにも影響するような集中的な垂直力をもたらすようなとき、スプリング部材が恒久的に変形する可能性を最小限にするのを助ける。
図8は、撓み制限ディスク260に軸方向に隣接している牽引ディスク230の例示的な実施形態を図示する。牽引ディスク230は図6に示される実施形態と同様であり、スプリング部材は、各スプリング部材204の先端212に形成された接触足部216を含む。撓み制限ディスク260は複数のピン262を含み、これは撓み制限ディスク260の周囲に位置付けられ、撓み制限ディスク260の表面に対して軸方向外方に伸びる。ピン262は撓み制限部材として作用する。具体的には、ピン262は、各スプリング部材204が放射状内側へ所定量で撓んだ際に、接触足部216と係合して、それにより各スプリング部材204の放射状内側への撓みを制限する。
図9Aと図9Bは、牽引ディスク230と撓み制限ディスク260の放射状外側のエリアの、分解組立側面図と正面図をそれぞれ概略的に表し、牽引ディスク230のスプリング部材204が付勢されていないかまたは撓んでいない状態では、ピン262の放射状外側の表面と接触足部216の放射状内側の表面との間にギャップAが存在する。接触足部216に対して十分な力が加えられると、接触足部216の放射状内側の表面がピン262の放射状外側の表面と係合するまで、スプリング部材204は放射状内側へと撓み、ピンの先端でスプリング部材204の放射状内側への撓みは終結するが、これがなければ、実際に追加で力が加えられた場合、さらに、スプリング部材204は放射状内側へと撓み続ける。
図10は、複数の牽引ディスク230と、撓み制限ディスク270の他の例示的な実施形態を図示しており、牽引ディスク230と撓み制限ディスク270は、軸方向で互い違いになるように組み立てられ、複数の撓み制限ディスク270の各々が複数の牽引ディスク230のうちの2つの間で軸方向に位置付けられる。いかなる特定の数にも限定されないが、複数の撓み制限ディスクの各撓み制限ディスクと複数の牽引ディスクの各牽引ディスクとの間の軸方向間隔S(図10では図示せず)は、0.0mm≦S≦25mmであり得る。
図11は、2つの撓み制限ディスク270’間で放射状に位置付けられた牽引ディスクの放射状外側のエリアの分解組立側面図を表し、撓み制限ディスク270’は、図10に示されるものと同じだが、放射状外側に斜角をつけた表面272’を備えている。撓み制限ディスクは、接触足部216’まで伸びるスプリング部材204を含み、接触足部216’は図10に示されるものと同じだが、放射状外側に斜角をつけた表面266’を備えている。接触足部216’は、牽引ディスクの環状ハブの表面と、牽引ディスクに最も近い少なくとも1つの撓み制限ディスク270’の表面との間の、(長さCにより表わされた)軸方向の距離より大きい程度まで、(長さBにより表わされた)少なくとも1つの方向に軸方向に伸びる。接触足部216’に十分な力が加えられると、接触足部216’の放射状内側の対向面が、少なくとも1つの撓み制限ディスク270’の放射状外側の対向面と係合するまで、スプリング部材204は放射状内側へと撓み、それにより(長さDにより表わされた)所定量で各スプリング部材204の放射状内側への撓みを制限する。
図8〜図11は、複数のスプリング部材の各スプリング部材が各スプリング部材の先端と一体的に形成された接触足部を含む、実施形態を図示しており、また、図8〜図11で具体化された概念は、図7に示される実施形態に適用することができ、縁部は、複数のスプリング部材の各スプリング部材の先端を、一つの牽引ディスク上の隣接するスプリング部材の先端と結合させる。
たとえば、図8、図9Aおよび図9Bに図示された実施形態と類似した方法で、少なくとも1つの撓み制限部材は、少なくとも1つの撓み制限ディスクの表面に対して軸方向外方に伸びるピンを含むことができ、ピンは、各スプリング部材が放射状内側へ所定量で撓んだ際に縁部と係合して、それにより各スプリング部材の放射状内側への撓みを制限する。
あるいは、図10と図11に図示された実施形態と類似した方法で、縁部は、環状ハブの表面と少なくとも1つの撓み制限ディスクの表面との間の、軸方向の距離より大きい程度まで少なくとも1つの方向に軸方向に伸びることができる。次いで、各スプリング部材が放射状内側へ所定量で撓んだ際に、縁部の放射状内側の対向面は、少なくとも1つの撓み制限ディスクの放射状外側の対向面と係合することができ、それにより各スプリング部材の放射状内側への撓みを制限する。
(図8〜図11に示されるような)撓み制限ディスクを作成することができる材料としては、たとえば、金属、セラミック、金属マトリックス複合材料および鉱物系材料が挙げられる。たとえば、牽引ディスクは、限定するものではないが、Rene41、Haynes282、Inconel718、または類似のニッケルベース合金などの、ニッケルベース合金から形成してもよい。また、撓み制限ディスクは、たとえば、シリーズ300のステンレス鋼などの、スチールまたはスチールベース合金から形成されてもよい。適切なセラミックの材料の例としては、限定するものではないが、窒化ケイ素、炭化ケイ素、アルミナ、炭化ホウ素、サイアロン(SIALON)または類似のセラミック材料が挙げられる。適切な鉱物材料としては、限定するものではないが、金雲母などのバルクの雲母材料が挙げられる。
複数のスプリング部材の放射状内側への撓みの所定量は、多くの要因に依存し得、たとえば、スプリング部材を作成する材料、スプリング部材の幾何学形状または構造、および牽引ローラが典型的に作動されると予想される環境(例えば温度など)などが挙げられるが、これらに限定されない。概して言えば、この所定量は、スプリング部材の可塑的変形があまり起こらないように、スプリング部材の降伏点を越えてスプリング部材を引っ張らないように、スプリング部材の放射状内側への撓みを制限するように好ましくは選択されるべきである。
ある例示的な実施形態において、複数のスプリング部材の放射状内側への撓みの所定量は、スプリング部材の端部と基端との間の半径方向距離の1%〜25%の範囲で、たとえば、1%〜10%の範囲である。ある好ましい実施形態において、複数のスプリング部材の放射状内側への撓みの所定量は、たとえば0.1〜10ミリメートルの範囲で、0.25〜5ミリメートルなどの範囲であり得る。
再び図2と図10を参照すると、個々の牽引ディスク210は、各牽引ディスク210のキー溝250がシャフト部材202に形成されたキー225と係合するようにして、シャフト部材202上に組み立てられる。図2に描かれている牽引ローラ200の実施形態において、牽引ディスク210を肩部222に押し付けて位置付け、ナット(図示せず)をシャフト部材のねじ山224に通して牽引ディスクをシャフト部材202に固定し、それにより牽引ローラの軟質カバーアセンブリ208を形成する。いくつかの実施形態において、各牽引ディスクがシャフト部材上に位置付けられるときの、隣接する牽引ディスク間の軸方向の間隔S(すなわち、図2に示されている座標軸のz方向における間隔)は、約0.0mm超〜約25mmであり、またはさらに約0.0mm〜約25mmである。いくつかの実施形態において、隣接する牽引ディスク間の軸方向の間隔Sは、約0.75mm〜約6mmでもよい。1つの牽引ディスクにおけるスプリング部材間の間隔G(図3に図示)とともに、隣接する牽引ディスク間の軸方向の間隔Sにより、破片は、軟質カバーアセンブリ208の表面に埋め込まれるのではなく、軟質カバーアセンブリ内に入って軟質カバーアセンブリを通過することが可能となり、それによりダウンドロープロセス中にガラスシートを損傷するのを防ぐことができる。
図2に描かれている牽引ローラ200の実施形態において、牽引ディスク210をキー225上に位置付けるとき、各牽引ディスクが隣接する牽引ディスクから回転方向にずれるように個々の牽引ディスク210がキー固定され、したがって軸方向に隣接する牽引ディスクのスプリング部材は互いに位置合わせされていない。ただし、他の実施形態において、軸方向に隣接する牽引ディスクのスプリング部材が互いに位置合わせされるように、個々の牽引ディスク210を一致させてキー固定してもよい。
ここで図1Bおよび図11を参照すると、ダウンドローガラス成形プロセス中に延伸アセンブリ150の牽引ローラ200a、200bは、ガラスシート148にそれぞれ第1平面表面149および第2平面表面152で接触し、このときスプリング部材204の少なくとも先端212がガラスシートに接触する。各スプリング部材がガラスシートの表面に接触すると、スプリング部材は環状ハブ206の中心に向かって(すなわち、矢印350の方向に)放射状内側に撓み、シャフト部材からのトルクをガラスシート148に伝達して、それによりガラスシートを下流方向151に延伸する。たとえば図11に描かれているように、牽引ローラは反時計回りの方向153に回転している。スプリング部材204aおよび204cはガラスシート148の表面149と接触していないため、スプリング部材204aおよび204cは撓んでいない。しかしながら、スプリング部材204bがガラスシート148の表面149に接触するよう回転すると、このスプリング部材は環状ハブ206の中心に向かって放射状内側に撓み、同じく回転しているシャフト部材が牽引ローラを通じてガラスシートにトルクを加え、それによりガラスを下流方向151に延伸する。
さらに図11を参照すると、破片や、または粒子300などの他の粒子状物質がガラスシート148の表面149上に存在している場合、ガラスシート148が下流方向151に延伸されているときにスプリング部材204が粒子300と接触すると、このスプリング部材204は粒子300により放射状内側へと撓み、それによりガラスシート148の表面149に対する粒子300の点荷重が減少して、その結果ガラスシートへの損傷が軽減される。さらに、ガラスシート148の表面に対する粒子300の任意の点荷重は、粒子のサイズに応じて、単一のスプリング部材に対するものか、あるいはすぐ隣接したスプリング部材からなる局所的な群に対するものに限定される。そのため、残りのスプリング部材はガラスシートと接触した状態で維持され、ガラスシートに延伸力を与え続ける。
ここで、本書において説明される牽引ローラは、ガラス製造プロセスにおいてガラスシートを延伸および/または誘導するために使用し得ることを理解されたい。具体的には、牽引ディスクのスプリング部材は滑らかで弾力性のある接触面を呈するものであるため、ガラスシートの表面に損傷を与えることなく、この接触面でガラスシートに接触することができる。牽引ローラは高温での使用に適した材料から構成されているため、この牽引ローラは、高温での長期使用で容易に劣化することはないし、あるいはガラス延伸プロセスの品質を低下させる可能性のある粒子状物質および/または破片を落とすことがない。さらに、牽引ディスクのスプリング部材は、軸方向、半径方向、および接線方向に十分に弾力性があり、粒子状物質をスプリング部材間に包み込んで、ガラスシートへの損傷を低減するのを助ける。
本書において説明される牽引ローラのスプリング部材によれば、ローラの半径方向の柔軟性が高まるため、ガラスシートに対してより均一な延伸力を与えることができる。さらに、このスプリング部材は、ガラスシートに与える接触圧力およびせん断力を減少させながら、ローラ表面の接触面積を増加させることもできる。特に、このスプリング部材はガラスシートの表面上での粒子由来の点荷重を軽減または排除して、ガラスシートの亀裂および/または壊滅的な破損を減少させる。
請求される主題の精神および範囲から逸脱することなく、本書において説明される実施形態の種々の改変および変形が作製可能であることは当業者には明らかであろう。すなわち、本書において説明される種々の実施形態の改変および変形が、添付の請求項およびその同等物の範囲内であるならば、本書はこのような改変および変形を含むと意図されている。
148 ガラスシート
200、200a、200b 牽引ローラ
202 シャフト部材
204 スプリング部材
206 環状ハブ
208 軟質カバーアセンブリ
210 牽引ディスク
260 撓み制限ディスク

Claims (10)

  1. ダウンドロープロセスにおいてガラスシートを延伸するための牽引ローラにおいて、前記牽引ローラが、
    シャフト部材と、
    前記シャフト部材上に位置付けられた軟質カバーアセンブリであって、前記シャフト部材上に位置付けられた少なくとも1つの牽引ディスクと前記シャフト部材上に位置付けられた少なくとも1つの撓み制限ディスクとを含む軟質カバーアセンブリと、
    を備え、
    前記少なくとも1つの牽引ディスクが、
    環状ハブと、
    前記環状ハブと一体的に形成されている複数のスプリング部材であって、前記複数のスプリング部材の各スプリング部材の先端が前記複数のスプリング部材の各スプリング部材の基端から放射状外側に位置するように、前記環状ハブから外側へと突出している複数のスプリング部材と、
    を含み、
    前記少なくとも1つの撓み制限ディスクが、前記撓み制限ディスクに位置付けられた、少なくとも1つの撓み制限部材を含み、前記少なくとも1つの撓み制限部材は、前記複数のスプリング部材が放射状内側へ所定量で撓んだ際に、前記牽引ディスクの少なくとも一部と係合し、それにより前記複数のスプリング部材の放射状内側への撓みを制限する、牽引ローラ。
  2. ダウンドロープロセスにおいてガラスシートを延伸するための牽引ローラにおいて、前記牽引ローラが、
    シャフト部材と、
    前記シャフト部材上に位置付けられた軟質カバーアセンブリであって、前記シャフト部材上に位置付けられた複数の牽引ディスクと複数の撓み制限ディスクとを含む軟質カバーアセンブリと、
    を備え、
    前記複数の牽引ディスクの各牽引ディスクが、隣接する牽引ディスクから回転方向にずれており、前記複数の牽引ディスクの各牽引ディスクが、
    環状ハブと、
    前記環状ハブと一体的に形成されている複数のスプリング部材であって、前記複数のスプリング部材の各スプリング部材の先端が前記複数のスプリング部材の各スプリング部材の基端から放射状外側に位置するように、前記環状ハブから外側へと突出している複数のスプリング部材と、
    を含み
    前記複数の撓み制限ディスクの各撓み制限ディスクが、各撓み制限ディスクに位置付けられた、少なくとも1つの撓み制限部材を含み、前記少なくとも1つの撓み制限部材は、前記複数のスプリング部材が放射状内側へ所定量で撓んだ際に、少なくとも1つの牽引ディスクの少なくとも一部と係合し、それにより前記複数のスプリング部材の放射状内側への撓みを制限する、牽引ローラ。
  3. 前記複数のスプリング部材の各々の半径方向ばね定数が約2lbf/mm(約8.9N/mm)から約2000lbf/mm(約8896.4N/mm)の範囲内にあり、前記軟質カバーアセンブリが前記ガラスシートの平面表面と係合すると、前記複数のスプリング部材の少なくとも一部が前記環状ハブの中心に向かって放射状内側へと撓み、それにより前記ガラスシートの損傷を防止する、請求項1に記載の牽引ローラ。
  4. 前記複数のスプリング部材の各スプリング部材が、前記先端と前記基端との間で湾曲している、請求項1に記載の牽引ローラ。
  5. 前記複数のスプリング部材の各スプリング部材が、各スプリング部材の前記先端と一体的に形成された接触足部をさらに含む、請求項1に記載の牽引ローラ。
  6. 前記少なくとも1つの撓み制限部材が、前記少なくとも1つの撓み制限ディスクの表面に対して軸方向外方に伸びるピンを含み、前記ピンは、各スプリング部材が放射状内側へ所定量で撓んだ際に前記接触足部と係合して、それにより各スプリング部材の放射状内側への撓みを制限する、請求項5に記載の牽引ローラ。
  7. 1つの牽引ディスク上で、前記複数のスプリング部材の各スプリング部材の前記先端と、隣接するスプリング部材の前記先端とを結合させる縁部をさらに含む、請求項1に記載の牽引ローラ。
  8. 前記少なくとも1つの撓み制限部材が、前記少なくとも1つの撓み制限ディスクの表面に対して軸方向外方に伸びるピンを含み、前記ピンは、各スプリング部材が放射状内側へ所定量で撓んだ際に前記縁部と係合して、それにより各スプリング部材の放射状内側への撓みを制限する、請求項7に記載の牽引ローラ。
  9. 前記接触足部が、前記環状ハブの表面と前記少なくとも1つの撓み制限ディスクの表面との間の軸方向の距離より大きい程度まで、少なくとも1つの方向に軸方向に伸び、各スプリング部材が放射状内側へ所定量で撓んだ際に、前記接触足部の放射状内側の対向面が、前記少なくとも1つの撓み制限ディスクの放射状外側の対向面と係合し、それにより各スプリング部材の放射状内側への撓みを制限する、請求項5に記載の牽引ローラ。
  10. ガラスシートを成形する方法において、前記方法が、
    ガラスバッチ材料を溶解して溶融ガラスを形成するステップと、
    前記溶融ガラスを前記ガラスシートへと成形するステップと、
    前記ガラスシートの第1表面に少なくとも1つの牽引ローラで接触して前記ガラスシートを下流方向に移動させるステップと、
    を含み、前記少なくとも1つの牽引ローラが、
    シャフト部材と、
    前記シャフト部材上に位置付けられた軟質カバーアセンブリと、
    を含み、前記軟質カバーアセンブリが、
    前記シャフト部材上に位置付けられた複数の牽引ディスクと複数の撓み制限ディスクとを含み、前記複数の牽引ディスクの各々が、環状ハブから外側へと突出する複数のスプリング部材と一体的に形成されている前記環状ハブを含み、前記複数のスプリング部材の各々の先端が前記複数のスプリング部材の各々の基端から放射状外側に位置し、
    前記複数の撓み制限ディスクの各撓み制限ディスクが、各撓み制限ディスクに位置付けられた、少なくとも1つの撓み制限部材を含み、前記少なくとも1つの撓み制限部材は、前記複数のスプリング部材が放射状内側へ所定量で撓んだ際に、少なくとも1つの牽引ディスクの少なくとも一部と係合し、それにより前記複数のスプリング部材の放射状内側への撓みを制限する、ガラスシートを成形する方法。
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