JP2016503012A - 化合物相互作用ドメインを含む製剤及びキャリアシステム - Google Patents
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Abstract
化合物のための製剤を作製する方法であって、前記化合物と相互作用する少なくとも1つの基を備えた化合物相互作用剤を決定する工程と、前記化合物と相互作用する前記少なくとも1つの基を備えた少なくとも1つの化合物相互作用ドメインを、少なくとも1つの親水性ドメインと共役させることによって、キャリア剤を作製する工程と、前記製剤を作製するように前記化合物と前記キャリア剤とを組み合わせる工程とを含む、方法。前記キャリア剤を作製する工程は、前記少なくとも1つの化合物相互作用ドメインが前記少なくとも1つの親水性ドメインと少なくとも1つの疎水性ドメインとの間に配置されるように、前記少なくとも1つの化合物相互作用ドメインを前記少なくとも1つの疎水性ドメインと共役させることをさらに含んでいてもよい。【選択図】図2
Description
関連出願の相互参照
本出願は、2012年12月12日出願の米国仮特許出願第61/736,100号の利益を主張し、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。
本出願は、2012年12月12日出願の米国仮特許出願第61/736,100号の利益を主張し、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。
政府の利益
本発明は、国立衛生研究所(National Institutes of Health)によって与えられた認可番号AI068021、GM067082、HL091828及びGM085043の下で、政府の支援によりなされたものである。政府は、本発明における一定の権利を有する。
本発明は、国立衛生研究所(National Institutes of Health)によって与えられた認可番号AI068021、GM067082、HL091828及びGM085043の下で、政府の支援によりなされたものである。政府は、本発明における一定の権利を有する。
以下の情報は、以下に開示される技術及びそのような技術が典型的に使用可能であり得る環境を理解するにあたって、読者の助けとなるように提供される。本願で使用される用語は、本文書中において特に明記しない限り、任意の特定の狭い解釈に限定されることを意図するものではない。本願に記載された参考文献は、技術やその背景の理解を容易し得るものである。本願に引用される全ての参考文献の開示は、参照により組み込まれる。
難水溶性は、薬物候補を臨床応用へと進展させるための主要なハードルの一つである。ほとんどの製薬会社は、経口的に送達可能な薬剤に注目している。しかしながら、全ての薬物が経口により生物学的に利用可能というわけではない。例えば、生物学的利用能は、投与量における、例えば体循環系に到達する未変化薬物の割合として規定され得る。いくつかの化合物/薬剤はおそらく消化管で分解され、いくつかはあまりに上皮内層にとってあまりに有害であり、多くの場合には、いったん吸収された血液中の遊離薬物の持続時間は非常に短い。薬物候補は、これらの問題の任意の1つまたは組み合わせによって、(製薬業界で一般的な慣行として)薬物開発を中止または停止されることがある。
そのため、化合物の分散及び/または可溶化は、経口、局所または全身経路のいずれを通じてであろうと体内に投与/吸収されることとなる多くの薬剤にとって不可欠な最初のステップである。両親媒性剤(親水性セグメントまたは頭部と疎水性セグメントまたは尾部を有する)は、例えば、界面活性剤や、ミセル、エマルジョン、クリーム、リポソーム、固体−脂質ナノ粒子のような様々な脂質ベースの製剤などであって、難溶性薬物の製剤システムにおいて頻繁に使用される。脂質ベースの製剤は、例えば、リポソーム、エマルジョン及びミセルなどであって、その優れた安全性プロファイルにより、生体内(in vivo)における用途において魅力的な薬物送達システムである。水溶性ポリマー、ポリマーベースのヒドロゲル及びポリマーナノ粒子もまた、経口、局所および全身用途に有用な薬物送達システムである。
現在、癌および感染性疾患の治療のための臨床の場において、様々な種類の脂質薬物製剤が使用されている。脂質製剤を決定するための現在のアプローチは、現存する既製成分から適切な出発物質を選択することによる試行錯誤プロセスを用いている。キャリアとしての合成分子に基づくより洗練された取り組みであっても、製剤は未だ経験的なものであり、メカニズムに基づくものではない。
一態様において、化合物のための製剤を作製する方法は、前記化合物と相互作用する少なくとも1つの基を備えた化合物相互作用剤を決定する工程と、前記化合物と相互作用する前記少なくとも1つの基を含んだ少なくとも1つの化合物相互作用ドメインを、少なくとも1つの親水性ドメインと(に)共役または結合させることによって、キャリア剤を作製する工程と、前記製剤を作製するように前記化合物と前記キャリア剤とを組み合わせる工程とを含んでいる。いくつかの実施形態では、前記キャリア剤を作製する工程は、前記少なくとも1つの化合物相互作用ドメインが前記少なくとも1つの親水性ドメインと少なくとも1つの疎水性ドメインとの間に配置されるように、前記少なくとも1つの化合物相互作用ドメインを前記少なくとも1つの疎水性ドメインと(に)共役または結合させることをさらに含んでいる。
前記少なくとも1つの親水性ドメインは、例えば、少なくとも1つの親水性オリゴマーまたは少なくとも1つの親水性ポリマーを含んでいてもよい。用語「ポリマー」は、一般的に、高い相対分子量を有し、低い相対分子量(モノマー)の分子に実際にまたは概念的に由来する繰り返し単位を含む構造を有する分子を示している。用語「オリゴマー」は、一般的に、中間的な相対分子量を有し、低い相対分子量(モノマー)の分子に実際にまたは概念的に由来する繰り返し単位を含む構造を有する分子を示している。一般的には、ポリマーは、1より多い繰り返し単位またはモノマー単位を有する化合物であり、より典型的には、10より多い繰り返し単位またはモノマー単位を有する化合物である。一方、オリゴマーは、1より多く20より少ない繰り返し単位またはモノマー単位を有する化合物であり、より典型的には、10より少ない繰り返し単位を繰り返し単位またはモノマー単位を有する化合物である。いくつかの実施形態では、前記親水性オリゴマーまたは前記親水性ポリマーは、ポリアルキレンオキシド、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリオキサゾリンまたはポリペプチドである。いくつかの実施形態では、前記ポリアルキレンオキシドは、ポリエチレングリコールである。前記少なくとも1つの親水性ドメインは、例えば、少なくとも1つのイオン性基を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、前記少なくとも1つの親水性ドメインは、少なくとも1つのカルボン酸基、少なくとも1つのアミン基、少なくとも1つの糖基または少なくとも1つの多糖基を含んでいる。
前記化合物相互作用ドメインは、例えば、少なくとも1つのアミノ酸基または少なくとも1つのペプチド基を含んでいてもよい。前記アミノ酸基または前記ペプチド基は、例えば、前記化合物に対する親和性を有する少なくとも1つのペンダント基を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、前期化合物相互作用ドメインが、フルオレニルメチルオキシカルボニル基、カルボベンジルオキシ基、イソブトキシカルバメート基、ナフチルアセチル基、カルバゾール基、キノロン基、イソキノロン基、もしくは、前記化合物、前記化合物の一部もしくは前記化合物の全部、(9H−フルオレン−9−イル)メタンアミン、(9H−フルオレン−9−イル)メタノール、9H−フルオレン−9−アミン、ナフタレン、1,1’−ビ−2−ナフトール(BINOL)、カンプトテシン、カンプトテシン類似体(例えば、ヒドロキシルカンプトテシン、イリノテカン、トポテカン及びホモカンプトセシン)、ペメトレキセド、ドセタキセル、パクリタキセル、エピルビシン、ドキソルビシン、ビンブラスチン、ビンデシン、エトポシド、ヒドロキシカンプトテシン、ミトキサントロン、タモキシフェン、トレチノイン、ビタミンA(例えば、レチノール、レチナール、レチノイン酸、及び、ベータカロテンなどのプロビタミンAカロテノイド)、ビタミンE(例えば、トコフェロール及びトコトリエノール)、ビタミンK(例えば、フィロキノンまたはメナキノン)、ビタミンD(例えば、コレカルシフェロールまたはエルゴカルシフェロールなどのセコステロイド)、クルクミン、イマチニブ、ゲフィチニブ、エルロチニブ、ソラフェニブ及びボルテゾミブから選択される分子の残基である基、またはそれらの誘導体のうち少なくとも1つを含んでいる。いくつかの実施形態では、前記化合物相互作用ドメインが、フルオレニルメチルオキシカルボニル基またはその誘導体のうち少なくとも1つを含んでいる。
前記化合物と相互作用する前記少なくとも1つの基は、例えば、前記化合物に対する親和性を有していてもよい。前記化合物と相互作用する前記少なくとも1つの基は、例えば、π−πスタッキング、疎水性相互作用または水素結合を介して前記化合物と相互作用してもよい。
前記製剤は、例えば、複合体を形成していてもよく、前記複合体は、例えば、ミセル、エマルジョン、クリーム、リポソーム、球晶、固体脂質ナノ粒子、ヒドロゲルまたは立方相リポゲルであってもよい。
前記少なくとも1つの疎水性ドメインは、例えば、少なくとも1つの脂質、少なくとも1つのトコフェロール(例えば、ビタミンE)、少なくとも1つの疎水性オリゴマーまたは少なくとも1つの疎水性ポリマーを含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、前記少なくとも1つの疎水性ドメインは、ポリメチルアクリル、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリイソブタン、ポリエステル、ポリペプチドまたはそれらの誘導体のうち少なくとも1つを含んでいる。いくつかの実施形態では、前記少なくとも1つの疎水性ドメインは、ファルネシルチオサリチレート(FTS)基を含んでいる。いくつかの実施形態では、前記少なくとも1つの疎水性ドメインは、少なくとも1つの脂質を含んでいる。
前記キャリアシステムは、例えば、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、さらには少なくとも40%の薬物ロード容量を提供してもよい。通常、前記キャリアシステムの前記薬物ロード容量は、前記化合物相互作用ドメインにより増加させられる。同様に、安定性もまた増加させられ得る。例えば、本願の両親媒性キャリアシステムは、本願の両親媒性キャリアシステムの疎水性ドメイン及び親水性ドメインのみを含む両親媒性分子よりも高いロード容量を有することとなる。
いくつかの実施形態では、前記少なくとも1つの親水性ドメインは、少なくとも1KDa(例えば、およそ1KDa〜10KDaの範囲)の分子量を有しており、前記少なくとも1つの化合物相互作用ドメインは、およそ300Da〜2KDaの範囲の分子量を有しており、前記少なくとも1つの疎水性ドメインは、少なくとも2KDa(例えば、およそ2KDa〜20KDaの範囲)の分子量を有している。いくつかの実施形態では、前記少なくとも1つの親水性ドメインは、およそ1KDa〜5KDaの範囲の分子量を有しており前記少なくとも1つの疎水性ドメインは、およそ2KDa〜5KDaの範囲の分子量を有している。これらのドメインは、例えば、単一または複数の鎖を含んでいてもよい。
いくつかの実施形態では、前記化合物は薬物である。薬物は、身体に効果(例えば、医薬または治療効果、中毒効果、機能増強効果または別の効果)を有する生物学的活性物質である。いくつかの実施形態では、前記化合物は、JP4−039、パクリタキセル、FK506、シクロスポリンA、プロトポルフィリン、GW4064、ローズベンガル、エピガロカテキンガレート、クルクミン、インドメタシン、タモキシフェンまたはドキソルビシンである。いくつかの実施形態では、前記化合物がパクリタキセルであり、前記親水性ドメインがポリエチレングリコールを含み、前記相互作用ドメインがフルオレニルメチルオキシカルボニル基またはその誘導体のうち少なくとも1つを含んでいる。
いくつかの実施形態では、前記キャリアの前記少なくとも1つの化合物相互作用ドメインは、前記少なくとも1つの親水性ドメインに共有結合されている。いくつかの実施形態では、キャリア剤の前記少なくとも1つの化合物相互作用ドメインは、前記少なくとも1つの親水性ドメインに共有結合されていると共に前記少なくとも1つの疎水性ドメインに共有結合されている。
別の態様では、化合物を患者に送達させるための製剤は、前記化合物と、少なくとも1つの化合物相互作用ドメインと共役させられた少なくとも1つの親水性ドメインを含んだキャリア剤とを含んでいる。前記化合物相互作用ドメインは、前記化合物と相互作用する前記少なくとも1つの基を含んでいる。いくつかの実施形態では、前記キャリア剤は、前記少なくとも1つの化合物相互作用ドメインが前記少なくとも1つの親水性ドメインと少なくとも1つの疎水性ドメインとの間に配置されるように、前記少なくとも1つの化合物相互作用ドメインと共役させられた前記少なくとも1つの疎水性ドメインをさらに備えている。
別の態様では、化合物を患者に送達させるための製剤を作製する方法は、少なくとも1つの化合物相互作用ドメインと共役させられた少なくとも1つの親水性ドメインを含んだキャリア剤を提供する工程であって、前記化合物相互作用ドメインが前記化合物と相互作用する前記少なくとも1つの基を含んでいる工程と、前記化合物と前記キャリア剤とを組み合わせる工程とを含んでいる。いくつかの実施形態では、前記キャリア剤は、前記少なくとも1つの化合物相互作用ドメインが前記少なくとも1つの親水性ドメインと少なくとも1つの疎水性ドメインとの間に配置されるように、前記少なくとも1つの化合物相互作用ドメインと共役させられた前記少なくとも1つの疎水性ドメインをさらに含んでいる。
別の態様では、物質の組成物は、フルオレニルメチルオキシカルボニル基、カルボベンジルオキシ基、イソブトキシカルバメート基、ナフチルアセチル基、カルバゾール基、キノロン基、イソキノロン基、及び、(9H−フルオレン−9−イル)メタンアミン、(9H−フルオレン−9−イル)メタノール、9H−フルオレン−9−アミン、ナフタレン、1,1’−ビ−2−ナフトール(BINOL)、カンプトテシン、カンプトテシン類似体、ペメトレキセド、ドセタキセル、パクリタキセル、エピルビシン、ドキソルビシン、ビンブラスチン、ビンデシン、エトポシド、ヒドロキシカンプトテシン、イリノテカン、ミトキサントロン、タモキシフェン、トレチノイン、ビタミンA、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンD、クルクミン、イマチニブ、ゲフィチニブ、エルロチニブ、ソラフェニブ及びボルテゾミブから選択される分子の残基である基、またはそれらの誘導体から選択される少なくとも1つの基に結合させられた、少なくとも1つの親水性ポリマーを含んでいる。前記親水性ポリマーは、例えば、ポリアルキレンオキシド、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリオキサゾリンまたはポリペプチドであってもよい。いくつかの実施形態では、前記親水性ポリマーはポリアルキレンオキシドである。前記親水性ポリマーは、例えば、ポリエチレングリコールであってもよい。前記ポリエチレングリコールは、例えば、少なくとも1KDaの分子量を有していてもよい。いくつかの実施形態では、前記ポリエチレングリコールは、およそ1KDa〜10KDaの範囲の分子量を有している。前記少なくとも1つの基は、例えば、少なくとも1つのアミノ酸基または少なくとも1つのペプチド基を介して、前記少なくとも1つの親水性ポリマーに結合されていてもよい。
いくつかの実施形態では、前記少なくとも1つの基が、フルオレニルメチルオキシカルボニル基、カルボベンジルオキシ基、イソブトキシカルバメート基、ナフチルアセチル基、カルバゾール基、キノロン基、イソキノロン基またはそれらの誘導体である。いくつかの実施形態では、前記少なくとも1つの基が、フルオレニルメチルオキシカルボニル基、カルボベンジルオキシ基、イソブトキシカルバメート基、ナフチルアセチル基、カルバゾール基またはそれらの誘導体である。いくつかの実施形態では、前記少なくとも1つの基が、フルオレニルメチルオキシカルボニル基、カルボベンジルオキシ基、イソブトキシカルバメート基、ナフチルアセチル基、カルバゾール基である。いくつかの実施形態では、前記少なくとも1つの基が、フルオレニルメチルオキシカルボニル基またはそれらの誘導体である。前記組成物は、例えば、ポリエチレングリコール−リシル−(α−Fmoc−ε−t−Boc−リシン)2であってもよい。
いくつかの実施形態では、前記組成物は、少なくとも1つの疎水性基をさらに含んでおり、前記少なくとも1つの基が前記疎水性基と前記少なくとも1つの親水性ポリマーとの間に配置されている。前記少なくとも1つの疎水性基は、例えば、脂質、ポリメチルアクリル、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリイソブタン、ポリエステル、ポリペプチドまたはそれらの誘導体のうち少なくとも1つを含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、前記少なくとも1つの疎水性基は、少なくとも1つの脂質基を備えている。前記少なくとも1つの疎水性基は、例えば、少なくとも1つのオレイル基を含んでいてもよい。
さらなる態様では、化合物と共に使用するためのキャリア剤は、前記化合物と相互作用する前記少なくとも1つの基を含んだ少なくとも1つの化合物相互作用ドメインと共役させられた少なくとも1つの親水性ドメインを含んでいる。いくつかの実施形態では、前記キャリア剤は、前記少なくとも1つの化合物相互作用ドメインが前記少なくとも1つの親水性ドメインと少なくとも1つの疎水性ドメインとの間に配置されるように、前記少なくとも1つの化合物相互作用ドメインと共役させられた前記少なくとも1つの疎水性ドメインをさらに含んでいる。
また、さらなる態様では、化合物により患者を処置する方法は、前記化合物と、前記化合物と相互作用する少なくとも1つの基を備えた少なくとも1つの化合物相互作用ドメインを含んだキャリア剤とを含んでいる製剤を患者に送達する工程を含んでいる。前記少なくとも1つの化合物相互作用基は、少なくとも1つの親水性ドメインと共役させられている。いくつかの実施形態では、前記キャリア剤は、前記少なくとも1つの化合物相互作用ドメインが前記少なくとも1つの親水性ドメインと少なくとも1つの疎水性ドメインとの間に配置されるように、前記少なくとも1つの化合物相互作用ドメインと共役させられた前記少なくとも1つの疎水性ドメインをさらに含んでいる。前記製剤は、上述の方法により形成されていてもよい。
本願のシステム、方法及び組成物は、それらの特性及び付随する利点と共に、添付の図面と併せて以下の詳細な説明を考慮することにより、最もよく認識及び理解されるであろう。
本発明を概略的表現にて説明するにあたり、以下に添付の図面を参照するが、これらの図面は必ずしも正確な縮尺ではない。
本願の図面に概ね記載及び図示される実施形態の構成要素は、記載された例示の実施形態に加えて、広く様々な異なる構成に配置及び設計されてもよいことが容易に理解されるものである。したがって、各図面に代表される例示の実施形態についての以下のより詳細な説明は、該実施形態の範囲を限定するものではなく、単に例示の実施形態を代表するのみである。
本明細書を通じて「一実施形態では」または「ある実施形態では」(または同様の記載)は、本実施形態に関して説明される特定の特徴、構造または特性が、少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書を通じて様々な箇所において現れる「一実施形態では」、「ある実施形態では」または同様の記載の句は、必ずしも全てが同一の実施形態を示すものではない。
さらに、記載される特徴、構造または特性は、1つ以上の実施形態において任意の適切な手段により組み合わせられてもよい。以下の説明では、実施形態が十分に理解されるために、多くの具体的な詳細が提供される。しかしながら、関連技術の当業者であれば、様々な前記実施形態は、1つ以上の上記具体的な詳細を用いずに、または他の方法、構成要素、材料などを用いて実施され得ることを理解するであろう。他の例では、公知の構造、材料または操作は、不明瞭になることを避けるため、詳細には図示または説明されない。
本願および添付の特許請求の範囲では、単数形("a"、"an"及び"the")は、他に文脈が明確に指定していない限り、複数に対する言及を含む。したがって、例えば、「相互作用セグメント」への言及は、複数のそのような相互作用セグメント及び当業者に知られたそれらの同等物を含み、他も同様である。また、「前記相互作用セグメント」への言及は、複数のそのような相互作用セグメント及び当業者に知られたそれらの同等物を含み、他も同様である。本願では、数値範囲の列挙は、単に、範囲内に入るそれぞれ別々の値を参照する簡略化表記方法として用いられることが意図されるのみである。本願において他に示されない限り、それぞれの個々の数値は、中間の範囲と同様に、本願に独立して記載されているかのように、本明細書に組み込まれる。本明細書に他に示されない限り、または文章に明確に否定的に示されない限り、本願に記載の全ての方法は、任意の適切な順序で行われ得る。
既存の脂質ベースの製剤は、親水性薬剤(例えば、リポソーム製剤)または疎水性薬剤(例えば、リポソーム、ミセル、エマルジョン製剤のため)のいずれに対しても、より好適に適用可能である。しかし、このような製剤は、典型的には、中程度の疎水性または中程度の親水性しかない多くの薬物には、あまり適していない。界面活性剤内及びエマルジョンの油コア内において、疎水性の低い薬剤と親油性の高い脂肪族鎖との混合が不十分だと、薬物負荷能力が低くなることや、製剤が不安定になることがある。最初に油コアと混合された薬物は、エマルジョン粒子の界面にゆっくりと移動する傾向があり、やがて粒子から解離させられる。また、中程度の疎水性または親水性を有する薬物は、リポソーム製剤から漏れる問題も有している。
市場で入手可能な製剤目的で使用される両親媒性または界面活性剤分子は、全てではなくともそのほとんどが、限定されたまたは非常に単純な界面構造のドメインを(わずかでも存在するならば)有している。ほとんどの場合、疎水性基は、界面または中間ドメインを用いずに親水性基に共有結合している。両親媒性または界面活性剤分子の例としては、Triton−X100、Tweens、PEG−アルキルエーテルまたはエステル、PEG−リン脂質共役体、SDS、オレイン酸または他の脂肪酸、モノ−、ジ−またはトリ−グリセリド、胆汁酸、リン脂質、コレステロール誘導体及びトコフェロール(ビタミンE)誘導体を含んでいる。一般的に、両親媒性界面活性剤の界面領域(すなわち、親水性の頭部と疎水性の尾部との間の領域)は、薬物製剤プロセスまたは手法において過小評価されている。しかしながら、該界面領域は、薬物製剤において、熱力学の原理に従いもっと重要とみなされるべきである。その点では、何らかのメカニズムに限定されることはないが、中程度の疎水性しか備えていない難水溶性薬物は、油コアにとっては親水性が高すぎると共に水相にとっては疎水性が高すぎるため、脂質ベースのシステムにおける安定性の問題があると考えられる。時間の経過により薬物が最初の油コアから界面に向かって移動することは、この相溶性が乏しいという問題により起こると考えられる。該難水溶性薬物は水相内には移動しないため、移動は該界面領域で停止することとなる。該界面領域における局所濃度が増加した結果、薬物の局所的な過飽和を引き起こすことになり、続いて活性医薬成分が結晶化/沈殿して、やがて製剤が残される。該界面領域において局所濃度が増加すると、製剤が不安定となる。このようなメカニズムは、従来の脂質ベースの製剤の多くにおいて、乏しい水溶性と中程度でしかない疎水性を呈する化合物/薬物にとってロード容量が低く不安定性であるという問題があることの理由を明らかにする。
本願のシステム、方法及び組成物は、従来の両親媒性の製剤に関する製剤の問題の困難性を低減または除去するための戦略を提供する。いくつかの実施例では、合理的に設計された本願の両親媒性または界面活性剤分子(キャリア剤)は、例えば、親水性セグメントまたはドメインと疎水性セグメントまたはドメインとの間に(すなわち、それらの間の界面領域に)、有効な化合物、薬物相互作用セグメントまたは薬物相互作用ドメインを有している。該相互作用またはドメインは、(例えば、化合物/薬剤に対する親和性を有する)化合物/薬物相互作用ドメインとして作用し、例えば、小分子化合物ライブラリからスクリーニングされてもよい。薬物相互作用性のモチーフ、化合物または基は、一度同定されると、両親媒性剤または両親媒性分子にモジュール方式で組み込まれ、それによって薬物相互作用ドメインを形成してもよい。例えば、そのようなドメインは、脂質または疎水性アンカーと、ポリアルキレンオキシド(例えば、ポリエチレングリコールもしくはPEG)または他の親水性基(例えば、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリオキサゾリン、もしくは荷電残基または親水性残基を備えたポリペプチド)との間に、導入されていてもよい。その全体的な構造は、水(親水性)と油(疎水性)相との界面に位置する薬物相互作用領域を備えた界面活性剤活性を有している。このような設計は、全ての疎水性または親水性化合物と共に使用するのに適切である可能性がある一方で、従来の製剤よりも優れている中程度の疎水性または親水性を備えた化合物を収容する。加えて、ペンダント基として薬物相互作用ドメインを十分な量含む分枝鎖または直鎖状の骨格構造を備えたポリマーは、同様に、薬物と複合体を形成し得る。本願の薬物/分子は、多様な構造を備えた薬物分子のための広範な用途を有している。本願のいくつかの実施例では、疎水性のセグメント、領域またはドメインは、本願の製剤のためのキャリア剤の中には存在しない。この点において、薬物相互作用ドメインは、一度同定されると、親水性基に組み込まれてもよく、親水性基に結合されてもよい。
キャリア−薬物相互作用及び時間依存性の分散処理を通じて、制御された薬物の放出は、例えば、リポソーム、ハイドロゲル、顆粒、ペレット及び他の物理的形態などの形態の薬物−キャリア投与方法により達成され得る。本願のキャリア剤は、主として薬物の代表的な例に関連して説明されるが、本願の該キャリア剤は、他の化合物または分子と関連して使用するのに適切であり得る。
いくつかの実施例では、両親媒性物質/分子の界面領域は、アミノ酸またはペプチドセグメント等の相互作用セグメントを挿入することによって修飾(例えば、拡大(enlarged)及び/または拡張(expanded))され得る。さらに、アミノ酸または他の残基上に、薬物相互作用能力を示すペンダント基が組み込まれてもよい。このようなペンダント基は、例えば、薬物製剤を安定化する方法として、キャリア−薬物相互作用を高めるためのπ−π疎水性/芳香族環スタッキングまたは水素結合相互作用が可能であってもよい。
(本願の両親媒性剤において使用される、または、薬物相互作用性のセグメント、領域またはドメインと親水性のセグメント、領域またはドメインとを含む本願の薬剤において使用される)化合物/薬剤相互作用性のセグメント、領域またはドメインは、例えば、高められた水溶性を有する保護されたアミノ酸または保護アミノ酸のPEG共役体のような個々のモチーフの溶解度試験を通じて、例えば、実験により決定されてもよい。検出の方式は、例えば、結晶形成の抑制/消滅のための(例えば、顕微鏡下における)視覚によるものであってもよく、そのような視覚による検出方式は、光学密度(OD)の読み取り、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)、または、水溶液中でナノ構造体を溶液にすることが容易な難水溶性遊離薬物の可溶性画分のための任意の他の適切な測定方法によるものであってもよい。本願の相互作用セグメント、領域またはドメインにおいて使用するのに適切な基の例は、以下に限定されるものではないが、十分に水溶性のアミノ酸誘導体のような小分子の一部として、フルオレニルメチルオキシカルボニル基(Fmoc)、カルボベンジルオキシ基(CbzまたはZ)及びイソブトキシカルバメート基を含んでいる。該相互作用セグメント、領域またはドメインが相互作用することとなる化合物または化合物の一部は、該相互作用セグメント、領域またはドメイン中においても使用され得る。例えば、該化合物またはその一部上の反応基(該化合物/一部の本来のもの、または、その上に修飾により作成されたもののいずれか)は、該化合物/一部の残基をキャリア剤中に結合するために用いられ得る。固相支持体上に固定化されたモチーフは、例えば、同定プロセスに対して有用であってもよく、該同定プロセスは、例えば、修飾されていない固相支持体と比較して試験される特定の薬剤を結合または吸着することによるものであってもよい。
上記モチーフは、例えば、追加的または代替的に、荷電特性、芳香環構造、水素結合能力などのような特定の薬剤の公知の構造的特徴に基づいて理論的に予測されてもよい。例えば、ナフチルアセチル基は、Fmoc基と同等の活性であることが予測され、実験により確認されている。
本願の薬剤中におけるFmoc基、その誘導体及び類する基(例えば、カルバゾール、キノロン、イソキノロン、(9H−フルオレン−9−イル)メタンアミン、(9H−フルオレン−9−イル)メタノール、9H−フルオレン−9−アミン、ナフタレン及びBinol)は、例えば、パクリタキセル(PTX)から、ステロイド、キサンテンベースおよびポルフィリンベースの光力学薬剤、そして疎水性ペプチドにまで及ぶ、一連の異種の薬物を製剤するにあたって有効であり、薬物ロード容量および薬物滞留性の両方が大幅に改善されることが見出されている。これらのデータは、「製剤の化学キャリア(chemophors)」として適格なFmocのような基が、様々な医薬剤との相互作用において強力な活性を示し、そのため、キャリア−薬剤相溶性を改良する特性を示すことを示唆している。あらゆる機構に制限されることなく、そのような相互作用の分子基盤は、Fmoc単位のコンパクト縮合芳香環構造と、例えば1つ以上の芳香環を有する薬物(または他の化合物)の分子との間の、通常はファンデルワールス相互作用よりも強いπ−πスタッキング相互作用の結果生じると考えられる。
薬物相互作用性のモチーフ、基または薬剤は、例えば、脂質ベースの界面活性剤に、(界面領域における)相互作用セグメント上のペンダント基(例えば、ペプチド側鎖またはペンダント基)として組み入れられ、それによって、以下の3つの異なるドメインを備えた両親媒性/界面活性剤デザイナー分子を形成してもよい:親水性の頭部基またはセグメント(例えば、PEG)、拡張中間セグメントまたは界面領域(相互作用セグメント)、及び疎水性のセグメント、尾部領域またはアンカー領域(例えば、脂質)。該界面領域でのモチーフ配列の構成は、例えば、連続または不連続であってもよく、直鎖状または分枝鎖状であってもよい。脂質鎖の数は、例えば、0〜4以上に変化させられてもよい。
したがって、本願のキャリア剤は、実験的アプローチ及び/または理論的な予測に基づいて選択された1つ以上の薬物相互作用モチーフを組み入れることによって、個別最適化された設計がされてもよい。また、疎水性鎖または脂質鎖を備えていない親水性セグメント−薬物相互作用モチーフ共役体であっても、モチーフ−モチーフ相互作用の性質に応じて、例えば、ミセル、可溶性複合体または薬物がロードされたヒドロゲルを形成し得るような用途を有していてもよい。ヒドロゲルは、例えば、遅い/遅延させられた放出機能を伴う局所適用として用いられてもよい。
上述のように、PEG鎖は、本願の親水性セグメントにおいて用いられてもよい。PEG鎖は、例えば、他の親水性基に置き換えられてもよく、該他の親水性基は、例えば、親水性能を有するカルボキシル基もしくはアミン基、または他の親水性のポリマー、糖などを含む。
本願のキャリア剤/分子は、例えば、薬剤とのミセルを包接複合体として形成するのに単独で用いてもよく、例えば、混合ミセルにおいて、共界面活性剤を添加して、薬物がロードされたミセル、エマルジョン、クリーム、リポソーム、球晶、固体脂質ナノ粒子、ヒドロゲル、立方相リポゲルなどを形成する他の脂質成分と共に用いられてもよい。概して、本願の両親媒性界面活性剤またはキャリア剤は、化合物/薬物のための界面安定化剤として作用し、製剤の安定性を向上させると共に薬物負荷能力を増加させる。
本願のキャリア剤は、薬物相互作用セグメント/モチーフを備え、共重合または化学修飾を通じて作製された(疎水性−親水性繰り返し単位または親水性繰り返し単位を含む)ポリマーであってもよい。薬物相互作用ドメインと結合または共役させられた親水性ドメイン及び疎水性ドメインを含むキャリア剤の場合には、薬物相互作用セグメント/モチーフは、疎水性セグメント内、または親水性と疎水性セグメントとの境界のいずれかにおいて組み入れられていてもよい。例えば、親水性セグメントは、以下に限定されるものではないが、PEG、または、親水性残基もしくは親水性誘導体に富むペプチド配列であってもよい。疎水性セグメントは、例えば、少なくとも1つのポリメチルアクリル基、少なくとも1つのポリエチレン基、少なくとも1つのポリスチレン基、少なくとも1つのポリイソブタン基、少なくとも1つのポリエステル基、少なくとも1つのポリペプチド基または任意のそれらの誘導体を含んでいてもよい。上述のように、薬物相互作用モチーフは、例えば、少なくとも1つのFmoc基(例えば、アミノ酸残基のペンダント基)であってもよい。
上記薬剤は、例えば、胃液もしくは腸液中における薬物吸収を増強するため、及び/または、残留時間を増加させるため、例えば、経口投与薬剤用の「薬物調剤(drug dispenser)」であってもよい。また、該薬剤は、例えば、局所適用または粘膜適用における透過速度を増加させるために用いられてもよい。さらに、該薬剤は、体内注射用のコロイド製剤として用いられてもよい。
細胞表面分子に特異的なリガンドは、細胞取り込みの速度または特異性を促進するために、例えば、末端位置において本願の親水性セグメント(例えば、PEG))内に組み入れられてもよい。
いくつかの実施形態では、本願のボトムアップアプローチは、例えば、相互作用ドメインを選択することから始まり、続いてキャリア剤(例えば、両親媒性剤、界面活性剤またはポリマー)を構築して、その後に、例えば、ミセル製剤、エマルジョン製剤、リポソーム製剤、ヒドロゲル製剤または特定の薬物のための別の製剤などの製剤を開発する。また、薬物/化合物の相互作用機能を含む天然または合成分子もまた使用されてもよく、例えば、親水性、相互作用性及び疎水性などの指向を備えた分子を生成するために、これらの分子が界面活性剤中に導入されてもよい。このようなモチーフは、特定の薬剤と結合/溶解/会合するように、疎水性ドメイン/セグメントと共に作用してもよい。本願の設計原理は、生体内薬物送達(in vivo drug delivery)の改善のために、例えば、脂質及びポリマーシステムなどを使用する多くの薬物に拡張されてもよい。この点において、本手法は、中程度に疎水性または中程度に親水性であって、従来の製剤によっては効果的に製剤化できない様々な種類の治療薬を製剤化するための広範な用途を提供する。
追加の疎水性剤及び親水性剤のための多鎖のPEG化されたミセルを形成する両親媒性剤または界面活性剤の用途は、以下の表1の代表的な例において示される。疎水性かつ嵩高い分子の例は、JP4−039、疎水性、ペプチド−TEMPO−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジニルオキシル−)ベースの安定ニトロキシドラジカル酸化防止剤;パクリタキセル(抗がん化学療法剤);タクロリムスまたはFK506(免疫抑制剤);シクロスポリンA(免疫抑制剤);エオシンY(光力学療法に用いられる、縮合芳香族環構造を備えた薬剤);ローズベンガル(光力学療法に用いられる、縮合芳香族環構造を備えた薬剤);プロトポルフィリンIX(光力学療法に用いられる、縮合芳香族環構造を備えた薬剤);及び、エピガロカテキンガレートまたはECGC(緑茶抽出物、強力な親水性の酸化防止剤かつ既知の化学療法増感剤)を含む。
追加の疎水性剤のための親水性/脂質鎖を備えていない単鎖のPEG化された脂質−オレイルアミド誘導体またはPEG−ペプチド共役体の用途は、以下の表2の代表的な例において示される。疎水性かつ嵩高い分子の例は、インドメタシン(非ステロイド性抗炎症薬)、タモキシフェン(ホルモン受容体陽性乳癌のための内分泌(抗エストロゲン)療法に使用される、エストロゲン受容体用のリガンド);クルクミン(抗腫瘍性、抗酸化性、抗関節炎性、抗アミロイド性、抗虚血性及び抗炎症性が示されている生薬化合物)を含む。メトキシ−PEG550−α−Fmoc−リシル−ε−オレイルアミドの場合には、薬物:界面活性剤の重量比を1:20として水和させることにより、ミセル溶液が薬物−界面活性剤混合物から容易に調製された。該薬物−界面活性剤混合物は、油、シロップまたはゲルとなるため、このような混合物は、ソフトもしくはハードカプセルとして、またはシロップとしてパッケージされ得る。メトキシ−PEG1000−α−Fmoc−リシル−ε−(α−Fmoc−ε−Bocリシン)では、薬物−キャリア混合物は、水和前に固体状態となる。インドメタシン−キャリア複合体が水和された際、それは粘性のリポゲル形態となり、完全に水和された状態に達するには30分〜1時間かかる。この遅い水和プロセスは、本薬剤の遅く時間を定められた放出に有用であり得る。タモキシフェン及びクルクミンにおける薬物−キャリア複合体は、水和により安定性が1時間以下の懸濁液を形成する。薬剤相互作用性のセグメント、領域またはドメインに共役された親水性のセグメント、領域またはドメインのみを含むキャリア剤上にロードされたパクリタキセルPTXについての追加の代表的な試験は、以下に示される。
ECGCを用いた試験では、ECGCがリン酸緩衝生理食塩水またはPBS中においてかなり水溶性の高い化合物であることにかかわらず、その多芳香環構造は、PEG−Fmoc4−リポペプチドとの相互作用を促進し、その結果、薬物とキャリアとの特定の比率の範囲内で溶解する複合体となるが、該薬物とPEG−Fmoc4−リポペプチドとの比率が臨界閾値を超えた際には溶液でなくなることが発見された。この結果は、2つの要素の間で複合体形成が起こったことを明確に示している。さらに、水溶液中の遊離ECGCは、空気に晒した際に容易に酸化され、溶液をPBS中において調製した後24時間の間に黄色の生成物となったが、ECGC−リポペプチド複合体は、1週間の期間保存した際、該酸化反応を予防または遅延させた。複合体形態におけるECGCの酸素に対する保護の正確なメカニズムは不明である。何らかの機構に限定するものではないが、より溶存酸素にアクセスしにくい比較的疎水性の環境における薬物を有していること、及び、UV吸収性のFmoc−基を含むリポペプチドによる遮蔽効果が、酸化プロセスの遅延に寄与している可能性があると考えられる。
ビタミンEのような疎水性剤は、PEG−Fmoc−リポペプチド含有物から調製されたミセルまたはエマルジョン中に容易に組み入れられ得る。この点において、これらのリポペプチドは、通常の界面活性剤として作用し、疎水性剤の可溶化及び製剤プロセスが促進された。
上述のように、本願の製剤の代表的な例のいくつかは、は、疎水性ニトロキシドラジカル抗酸化剤JP4−039のエマルジョンおよびミセル製剤を含む(例えば、図3Cを参照)。JP4−039の場合には、薬物相互作用ドメインは、一連の保護されたアミノ酸誘導体から同定された。この点において、JP4−039はある程度のペプチド特性を有しているため、本発明者らはJP4−039と相互作用する可能性がある構造要素をアミノ酸誘導体から探した。リシンは、後の共役操作を単純化し得る3つの直交保護された官能基を有しているため、代表的な試験では、リシンに対して特別な注意を払った。
JP4−039のアルコール溶液を生理食塩水で希釈することにより、制限された水溶性及び該化合物の高い結晶性の結果として、即座に結晶形成が誘発される。本発明者らは、水溶液中におけるJP4−039の結晶化を阻害することが可能な種々のN−保護基を用いて、いくつかの容易に入手可能なアミノ酸誘導体を同定した。顕微鏡による試験によれば、リジン誘導体のうち1つが、用量依存的な様式において生理食塩水中のJP4−039結晶の大きさ及び数を効果的に減らし、最終的には十分な量においてJP4−039結晶の形成を完全に排除することが示された。いくつかの試験では、本発明者らは、α−NH2の位置に様々な修飾基を有するε−BOC−リシン誘導体の群を比較した。様々なモル比における結晶阻害能力に基づいて、もっとも嵩高いFmocを備えたアミノ酸が最も強力であることが判明し、中型のイソブチルオキシカルボニルおよびベンジルオキシカルボニル(Cbz)基を備えたアミノ酸が続いて強力であり、小型のt−Boc及び最小のアセチル基を備えたアミノ酸は最も効果が小さかった(表3)。図1は、表3のJP4−039の溶解性試験において試験された様々なアミノ酸誘導体の構造を示す。本発明者らは、α−Fmoc−ε−Boc−リシルの遊離カルボキシル基をメトキシPEG1000により置換してエステルとし、それはまだ遊離酸誘導体の完全な能力を保っていることを見出した(図示せず)。表3には、以下の名称が使用されている:U−最初は可溶だが5分後には不安定;V−ベシクルを形成;I−不溶;S−可溶。
表3の代表的な試験における上記群において、本発明者らは、JP4−039用の最も強力な薬物相互作用基としてFmocアミン保護基を同定した。α−Fmoc−ε−tBoc保護されたリシンは、固相ペプチド合成に広く用いられている容易に入手可能なアミノ酸誘導体である。さらに、そのような基を備えたジペプチドが本質的に抗炎症活性を有していてもよいことが示されている。
図2に示すように、表面領域に様々な数のα−Fmocまたはα−Cbzリシン残基を備えた7つのPEG−リポペプチド及び対照のPEG−脂質共役体が合成された。単鎖PEG−リポアミノ酸誘導体1は、まずモノメトキシPEG−OHをα−Fmoc−ε−Boc−リシンとエステル化し、次にt−Boc基を脱保護し、その後塩化オレオイルにより末端キャップすることにより合成された。2つの連続したα−Fmoc−リシン残基との二重鎖リポペプチドは、モノメトキシPEG−α−Fmoc−リシル−α−Fmoc−ε−NH2−リシンを、エステル化し、ε−ジオレオイルリシンによりエンドキャップして、PEG−リポペプチド2を得ることにより作製した。PEG−リポペプチド3及び4は、1つまたは3つのリジン架橋を介して塩化オレオイルに結合した2つまたは4つのFmoc−α−リシル基を備えたモノメトキシPEG−リシン共役体を末端キャップすることにより調製された。該長鎖脂質の尾部により、これらのPEG誘導体が、ミセル内で互いに堅く会合できるように、または、追加の脂質成分によりエマルジョンまたはリポソーム製剤に固定されることができる。1〜3つの連続したα−Cbz−リシル基を含む追加の脂質単鎖メトキシ−PEG−リポペプチド(PEG−リポペプチド5〜7)は、同様に合成された。メトキシPEG2,000−カルバモイルーPOPE(8)は、公開されている方法論に従い、パルミトイルオレオイルホスファチジルエタノールアミンをホスゲンで活性化されたメトキシPEG2,000と反応させることにより合成された。
0.1M KHCO3中で調製されたα−Fmoc−ε−tBoc−リシンの動的光散乱による粒子サイズ測定により、粒子の大部分が直径2〜5nmを有していたことが明らかになり、このことは、これらがミセルであることを示している。全てのPEG脂質及びリポペプチド共役体は、水中において透明な分散液を容易に形成しており、該懸濁液はα−Fmoc−リシル単位を含むPEG−リポペプチドより作製され、それにより粘度が顕著に増加するが、このことは互いに自ら絡まり合った長尺なワーム状ミセル会合体(フィロミセル(filomicelle))の存在を示している。測定された臨界ミセル濃度(CMC)値は3.4〜6.8μΜであり、長い脂肪族鎖を備えた非イオン性界面活性剤について報告されたものに匹敵する範囲である(表4)。
様々な数のFmoc及びオレオイルを含むメトキシPEGリポペプチド誘導体は、生理食塩水中にて薬物:キャリアのモル比が1:1.5〜1:15でJP4−309を可溶化させる活性があった。可溶な混合ミセルを形成するのに必要となるキャリアと薬物との間の最小のモル比に基づくと、テトラ−α−Fmoc−リシル基(4)を備えた共役体が、2つのFmocリシル基を含む共役体2及び3よりも効率的であり、単一のFmocリシル基を含む共役体1により形成された混合ミセルは、長期的には不安定であった(表4)。
十分なキャリア−薬物の比が与えられると、PEG−リポペプチド4は、結晶形成の兆候が長期間(1月以上)見られず、該長期間にわたって安定な薬剤を保持するのに効果的であった。用量依存性の可溶化作用の関係は、リポペプチド4と一定量のJP4−039とにおいて確立され、キャリア:薬物の最小のモル比は、およそ1.6:1であった(図4参照)。これに対し、同等のPEG−α−Cbz−リシル脂質共役体をこれらの比にしても、JP4−039の結晶加速度を遅くすることのみはできたが、安定なJP4−039含有ミセル溶液を形成することはできない(図示しない)。リシルドメインのないPEG−脂質共役体を形成する対照のミセルであるメトキシPEG2,000−カルバモイル−POPE8は、同等のモル比では不活性であった(図示しない)。
Fmoc基は、それ自身を含めた他の芳香族部分との疎水性相互作用及びπ−πスタッキング相互作用を提供可能な、嵩高い縮合フルオレニルメチル環構造を含む。該環構造をリシンと連結させるカルバモイル結合は、水素結合能力を提供することも可能である。Fmocは、同じ基を有する個々の短鎖ペプチドの平行相互作用を促進し、これによりしばしば長いナノ会合体が形成される。例には、相互接続された管状構造を形成してヒドロゲルに変化するFmoc含有短鎖ペプチド、並びに、リポペプチド3(図示しない)及び4(図3A及び3B参照)が含まれる。何らかのメカニズムまたはモデルに限定されるものではないが、α−Fmoc−ε−Boc−リシン及びα−Fmoc−リシル含有リポペプチド共役体がJP4−039の可溶化に必要とされることは、複数のFmoc含有化合物に囲まれた1つのJP4−039を含み、該複数のFmoc含有化合物が薬物−キャリア及びキャリア同士の間の水素結合、親水性協同的相互作用及び疎水性協同的相互作用の組み合わせを通じて互いに保持されているモデルを示唆している(図3C参照)。界面に拘束された配された4つのFmoc−基を有し、高いFmoc基の局所濃度を有するリポペプチド4は、完全な可溶化を達成するために必要な薬物に対するキャリアのモル比が最も小さく(表4及び図を参照)、試験された群の中で最高の性能を提供する。図4の可溶化試験では、様々な量の4重鎖PEG5,000−リシル−[リシル−(α−Fmoc−ε−オレオイル−リシン)2]2をCHCl3中でJP4−039と混合し、続いて溶媒を蒸発させ、生理食塩水で水和して薬物がロードされたミセルを調製した。可溶化されたJP4−039の量は、上澄みからOD448測定により決定した。
上述のFmoc−JP4−039相互作用モデルは、本発明者らによる蛍光消光試験により裏付けられた。この点において、混合ミセル中において薬物及びキャリア分子が互いに物理的に会合させられていることを証明するために、本発明者らは、蛍光消光アッセイを用いて基−基相互作用を試験した。図5は、各リポペプチド4のFmoc基を源とする固有の蛍光の蛍光スペクトルを示す(励起波長300nmにおける)。各リポペプチド4としては、JP4−039を有さないリポペプチド4(−◆−)、JP4−039を有するリポペプチド4であって重量比100:2.5(−■−)及び100:5(−◆−)のものが挙げられる。大規模な消光効果は、薬物/キャリアのモル比が1:4〜5の所にJP4−039が加えられた際に記録された。電子豊富なニトロキシド基は、5−カルボキシテトラメチルローダミン(5−TAMRA)により標識された短鎖DNAと近い距離に配された際の、5−TAMRA用の強い蛍光消光剤として知られている。したがって、本発明者らによるデータは、JP4−039が、リポペプチド4ミセル中のFmoc基から近い距離にあることを示している。本発明者らはまた、FmocとJP4−039の間の相互作用をさらに確認するため、2次元核磁気共鳴(NMR)分光法を実施した。その結果によると、JP4−039は、それが分子の残りの部分よりも環構造に近い距離を有するミセル会合体内において、Fmoc基によって囲まれていることが示された。
Fmocは、JP4−039がロードされたミセルにおいてキャリア−薬物相互作用に関与する唯一の基でなくてもよい。クライオEM画像は、薬物がロードされたミセルは見える構造を通じて明らかな電子高密度領域を有していることを示し、一方、何もロードされていない管状ミセルでは、そのコア領域は電子が少ない。このことは、JP4−039が広範な再編成プロセスを通じて界面及び脂質部分の両方を含む領域に組み入れられてもよく、また、その代わりに、界面に位置するFmoc基に沿って分布するJP4−039によって作られる比較的密な外殻の該投射画像の単なる結果であり得ることを示唆している。
本発明者らはまた、PEG−脂質及びリポペプチド共役体から調製したプレーンミセルのラット赤血球上における溶血活性を調査し、その結果を、2つの広く用いられているエトキシル化非イオン性界面活性剤(Triton X−100及びTween 80)と比較した。図6の試験では、ラット赤血球(1%)を、示された濃度の界面活性剤と共に37℃で2時間培養した。このような培養の後、上澄みを慎重に取り出し、OD540nmで測定して、完全な溶血が発生した条件下におけるOD値に基づいて計算した。図6に示すように、Triton X−100が5mMで100%の溶血を示したが、Tween 80及び本試験で報告された全てのPEG−脂質共役体では、この濃度またはこの濃度未満では有意な溶血(<2%)は見られなかった。
いくつかの実施形態では、本願の薬物がロードされたエマルジョンを安定化するために、1つ以上の共界面活性剤が用いられてもよい。JP4−039のためのスタンドアロンのミセル製剤としてのα−Fmoc−リシル含有リポペプチドの優れた可溶化活性とは対照的に、1〜3つのα−Cbz−リシル基を線形の形態で含むリポペプチドは、JP4−039と安定な混合ミセルを形成できない(図示しない)。しかしながら、本発明者らは、それらが共界面活性剤として機能し、本発明者が以前にJP4−039の滞留性能に乏しいことを見出していた大豆ホスファチジルコリン−ゴマ油エマルジョン製剤を安定化することを見出した。薬物の約15〜30%は、製造から7日後に(PEG化されたまたはPEG化されていない)エマルジョンから分離された。大豆ホスファチジルコリンの20モル%が等量のα−Cbz−リシルを含むリポペプチドにより置換された際に、薬物滞留率が大幅に改善された。さらに、添加された共界面活性剤はまた、超音波処理によるエマルジョンの調製を高速化した。致死量の放射線に暴露した24時間後に腹腔内ルート経由の単回注射により動物に投与した際には、改善されたエマルジョン製剤により製剤されたJP4−039は、顕著な放射線防護効果を示し、動物の生存(生存時間及び全体的な生存率の両方において)が対照群よりも改善されていたことを示した(図8参照)。これにより、これらの製剤において製剤されたJP4−039は、生体内(in vivo)での薬理学的活性があることが確認された。図8は、マウスの全身放射線照射に対して生体内での放射線緩和活性を示す。図8の試験では、全てのマウスに0.8Gy/分の線量率で9.5Gyの全身線量を照射した。該マウスには、エマルジョン単独(黒丸)またはエマルジョン中で製剤されたJP4−039(白丸、20mg/kg、照射後24時間)を腹腔内注射した。マウスが体重の20%を失うか瀕死に見えるまで(その時点でマウスを安楽死させた)、マウスの経過を観察した。
上述のシステムは、非常に実用的である。この点において、アミノ酸誘導体及びPEGは、両方とも高純度で容易に入手可能である。Fmocおよびt−Boc保護/脱保護及びカップリングに関する化学は全て十分に研究されており、界面領域において選択されるモチーフを導入する際の柔軟性を有し得る。高効率のポリマー補助された液相合成方式は、クロマトグラフィー精製工程を使用せずにPEG化されたリポペプチドのグラム量を調製するために採用された。上記モジュール設計により、同様の一般的な構造及び自己会合特性を共有し、なお界面領域においてモチーフを変更するための柔軟性を備えた一連の化合物を生成することができる。さらに、上記段階的なプロセスは、薬物相互作用基の同定から、個別最適化された設計の界面活性剤の合成、ミセル、リポソームまたはエマルジョンベースの薬物製剤システムにまで、スムーズな移行を可能にする。JP4−039に関連して上述したプロセスは、JP4−039以外の治療剤の生体内送達を改善するための様々な種類の新しい脂質及びポリマーシステムの開発にまで容易に拡張され得る。
例えば、表5は、薬物相互作用ドメイン(Fmoc)が含まれることにより、パクリタキセルまたはPTXの負荷能力、及び、PEG5000−Fmoc−FTS2及びPEG5000−FTSミセルがロードされたPTXの安定性が顕著に改善されることを実証している。ここで、FTSはファルネシルチオサリチレート基を示す。
同様に、図9Aおよび図9Bは、PEG5k−Fmoc−FTS2ミセル中に製剤されたドキソルビシンまたはDOXの増強された抗腫瘍活性を示す。図9Aは、腫瘍の相対的な体積の変化を示し、図9Bは、投与後の体重の変化を示す。図9Aおよび9Bの試験では、同系マウスの乳癌モデル(4T1.2)を、種々のDOX製剤の治療効果を調べるために用いた。マウスを無作為に8つの群(n=5)に分けて、PBS(対照)、DOX(5mg DOX/kg)を、リポソーム/ DOX(5mg DOX/kg)、DOXがロードされたPEG5K−Fmoc−FTS2ミセル(5、10mg DOX/kg)及びDOXがロードされたPEG5K−FTS2(5mg DOX/kg)を、それぞれ1日目、4日目及び7日目にそれぞれ静脈内投与した。腫瘍のサイズを、デジタルノギスを用いて週3回測定した。種々の群における全てのマウスの体重を、3日毎に測定した。
表6のデータは、薬物相互作用ドメインのFmocを含むことによって、PEG−ビタミンEベースのミセルシステムにおけるDOXの負荷容量を顕著に向上させることを実証している。表6では、以下の記号が使用されている:PEG−VE2…PEG−ビタミンE2、PEG−FVE2…PEG−Fmoc−ビタミンE2、DLC…ロード容量、及び、DLE…ロード効率。
図10Aは、PEG5000−VE2(PEG−VE2)の合成を示し、図10Bは、PEG5000−Fmoc−VE2(PEG−FVE2)の合成を示し、これらは以下に記載される実験項においてさらに説明される。図11に示されるように、PEG−FVE2ミセル中に製剤されたDOXは、透析アッセイで検査されたところ、遅い放出動態を示した。図12は、PEG−FVE2ミセル中に製剤されたDOXは、マウスの乳癌モデル(4T1.2)に皮下投与された際において、遊離DOXまたはDOXILよりも優れた抗腫瘍活性を示すことを表している(P<0.01(10mg/kgでのPEG−VE2/DOXに対して);P<0.001(DOXILに対して))。
上述のように、いくつかの本願の実施形態では、どの疎水性のセグメント、領域またはドメインも、本願のキャリア剤の薬物または化合物相互作用ドメインとは共役させられていない。この点において、薬剤/化合物相互作用ドメインは、一度同定されると、親水性基に組み入れられてもよく、共役させられてもよく、結合させられてもよい。いくつかの代表的な試験では、単純で、明確に規定され、かつスケールアップが容易なキャリアであるPEG5K−リシル−(α−Fmoc−ε−t−Boc−リシン)2共役体(PEG−Fmoc2)は、パクリタキセルまたはPTXのための高いロード容量、優れた製剤安定性及び低い全身毒性を提供することが示された。いくつかの代表的な実施形態では、9−フルオレニルメトキシカルボニルまたはFmocは、上述のように、薬剤/化合物分子と相互作用する機能的な構成単位としてキャリア内に組み入れられた。PEG−Fmoc2は3ステップ合成経路により合成され、PTXと容易に相互作用して小さな粒子サイズ(25〜30nm)の混合ナノミセルを形成した。PTXのロード容量は、約36%であった。何らかのメカニズムに限定されるものではないが、得られるミセルシステムにおけるPTXの取り込みは、大部分がFmoc/PTXのπ−πスタッキング相互作用を介して達成されると考えられており、このことは蛍光消光研究及び13C−NMRにより立証された。PEG−Fmoc2ミセル中で製剤されたPTXは、持続的な放出動態を示し、近赤外蛍光(NIRF)イメージングによる生体内分布の試験は、Cy5.5により標識されたPTXが腫瘍部位へと効果的に送達されたことを示した。PTX/PEG−Fmoc2(MTD>120mg PTX/kg)のための最大耐量は、ほとんどの既報のPTX製剤の最大耐量より高いことが見出され、生体内での治療試験は、Bristol-Myers Squibb社から入手可能な臨床的に用いられているPTX製剤であるタキソール(登録商標)よりも顕著に改善された抗腫瘍活性を示した。
いくつかの試験では、Fmoc含有PEG−脂質共役体は、いくつかの疎水性剤を製剤する際において、脂質モチーフを備えていない同等物よりも効果的であることが見出された。脂質モチーフを備えていないFmoc−PEG共役体であるPEG5000−リシル−(α−Fmoc−ε−t−Boc−リシン)2(PEG−Fmoc2)は、PTXの可溶化に非常に有効であることが見出された。さらに、PEG−Fmoc2は、PTXを製剤する際において、疎水性/脂質セグメント、領域またはドメインであるPEG5000−リシル−(α−Fmoc−ε−オレイン酸−リシン)2(PEG−(Fmoc−OA)2)を備えた同等物よりも顕著に効果的であった。
PEG−Fmoc2は、図13に示される3ステップにより容易に合成された。PEG−Fmoc2は、水溶液中において小サイズ(25〜30nm)のミセルを容易に形成した。ネガティブ染色EMは、均一に分散された球状粒子を示した。これはEMにおいて管状形態を示したPEG−(Fmoc−OA2とは異なるものであり、繊維状のミセルが形成されたことを示している。PEG−OA2は、球状ミセルを形成することが知られている。まとめると、これらのデータは、Fmoc及び脂質モチーフの両方がPEG−(Fmoc−OA)2の特有の構造の形成に寄与していることを示唆している。
PEG−Fmoc2は、PTXを備えた混合ミセルを容易に形成し、PTXをロードしても、DLSにより測定される粒子のサイズに及ぼされた影響は最小限であった。粒子のサイズが小さいこと及び粒子が均一に分布していることは、ネガティブ染色TEMによってさらに確認された。1H−NMRスペクトル分析では、PEG−Fmoc2及びPTXがCDCl3中において混合された際に、PEG−Fmoc2及びPTXの両方からの信号が明確に検出されたことが示された。これに対し、Fmoc及びPTXにおける全てのプロトン信号は、重水中において抑制されており、このことは、水溶液中で自己会合した粒子のコア領域内のPTXが、完全にカプセル化されていることを示している。PEG−Fmoc共役体のCMC値はわずか5.244μΜであり、これは、血液区画に注射された時に著しく希釈されるにあたり満足のいく安定性を保持するのに十分な程度に小さい。
PEG−Fmoc−OAに比べて著しく増強されたキャリア/PTX相溶性は、PEG−Fmocにおいて達成された。表7において実証されたように、安定なPEG−Fmoc/PTX複合体が水溶液中において容易に形成され、そのロード容量は最大36%(w/w)であり、他の製剤に比べて目覚ましく高いPTX容量を示している。最大PTXロード容量が15%に達し、溶液中で数時間安定する脂質含有界面活性剤PEG−Fmoc−OAと比較すると、PEG−Fmocは、薬物ロード容量と製剤安定性の両方において目覚ましい改善を示した。
臨床試験における長期保存には一般的に凍結乾燥が必要であるため、PEG−Fmoc/PTX複合体の凍結及び凍結乾燥の影響を試験した。凍結乾燥後、得られたPEG−Fmoc/PTXの白色粉末は、凍結保護剤を何ら添加されることなく水に容易に溶解して、透明な溶液を再構成した。凍結乾燥及び再構成後において、サイズ分布の大きな変化は観察されなかった。
製剤の安定性の重要な指標として、PEG−Fmoc/PTXからのPTXの放出態様を透析法により評価し、比較用にTAXOLを試験した。PEG−Fmoc/PTX複合体は、pH7.4のPBS中37℃において、持続的放出プロファイルを示した。最初の24時間の後、PEG−Fmoc/PTXから放出されたのは捕捉されたPTXのわずか19.3%であり、一方で、TAXOL製剤からはPTXの40.4%が放出された。72時間後であっても、PEG−Fmoc/PTXから放出されたのはPTXのわずか23.5%であった。何らかのメカニズムに限定されるものではないが、強力なキャリア−薬物相互作用は、本願のPEG−Fmoc/PTXが生理的環境においてPTXの安定な製剤として機能することを可能とし、このことは、血流中における循環期間を長くすることや、受動的標的化を通じて腫瘍中に蓄積される機会が増強されること、及び、早期の漏洩に起因する細胞毒性薬物の早期放出を低減させることに寄与し得る。
PEG−Fmoc/PTXの生体内における運命をさらに調査するため、近赤外蛍光(MR)イメージングを利用して静脈内注射後のマウスにおけるPEG−Fmoc/PTXの生体内分布を追跡した。本試験では、Cy5.5の(近赤外蛍光プローブ)をPTXに共役させ、PEG−Fmocとの複合体を形成した。該複合体を、CL−1ヒト前立腺癌異種移植片を有するSCIDマウスに注射した。Cy5.5−PTXは、投与から24時間後では、大部分が腫瘍内に見られ、主要臓器内には明らかな蓄積はなかった。96時間後であっても、実質的な量の信号が主要部位に残っていた。96時間後の試験が終了した後、主要臓器及び腫瘍を摘出し、生体外(ex vivo)イメージングを行った。肺及び腎臓には軽度の蛍光信号のみが検出され、弱い信号が肝臓及び脾臓には検出され、細網内皮系(RES)を通じた複合体のクリアランスの低減が示されている。しかしながら、Cy5.5−PTXの強い蛍光信号は腫瘍部位内に記録されており、これは、クレモフォールEL/エタノールにより可溶化された遊離Cy5.5−PTXの運命とは顕著に異なっていた。該遊離Cy5.5−PTXでは、主な分布は肝臓内に観測されていた(このことは、速やかに排除されることが示唆されている)。何らかのメカニズムに限定されるものではないが、腫瘍組織でのPEG−Fmoc/PTX−Cy5.5の効率的かつ腫瘍選択的な蓄積は、その小さなサイズ(30nm未満)、増強された浸透性及び滞留性またはEPR効果の十全な活用、並びに、長期化された循環及び増強された受動的標的化の機会に貢献する優れた生体内安定性に起因し得る。
次に、PEG−Fmoc/PTXの最大耐量(MTD)を、その生体内の安全性プロファイルを評価するため、腫瘍を有さないマウスにおいて試験した。TAXOLは、市販の比較対照として利用した。PEG−Fmoc/PTXの5種の異なる用量及びTAXOLの3種の用量を、BALB/ cマウスにおいて静脈内注射により試験し、これらの動物の体重及び毒性の徴候を監視した。表8に示すように、TAXLは、最大用量20mg PTX/kgにおいて耐えられるものであり、いくつかの異常な活動(例えば、痙攣及び遅運動など)が注射直後のマウスのほとんどで観察されたものの、マウスの死亡は回避された。TAXOLと比較して、PEG−Fmoc/PTXは、改善された安全性プロファイルを示した。TAXOLの最大耐量よりも6倍高い120 mg PTX/kgもの高用量であっても、マウスの死亡及び著しい体重減少は、試験の全期間にわたって観察されなかった。このPEG−Fmoc/PTXの高いMTDは、最も報告されているPTXミセル製剤に匹敵し、上に示したような高い製剤安定性、遅い放出プロファイル、及び主要な器官に蓄積する傾向がより少ないことと一致している(これは、臨床の癌治療における治療効果を増強するための、PTXのより広範な用量範囲(dosage window)を提供し得る)。
また、PEG−Fmoc/PTXの腫瘍阻害効果を、試験管内(in vitro)及び生体内の両方で調査した。PEG−Fmoc/PTXの試験管内での細胞毒性を、マウス転移性乳癌細胞株4T1.2と、2つのヒト前立腺癌細胞株PC−3及びDU145とにより評価した。図14A〜14Cに示すように、すべての処理された癌細胞株において、PTX含有ナノ粒子はTAXOLよりも強力な細胞毒性を示したが、キャリア自体は試験された濃度では細胞に対して明らかな毒性を示さなかった。何らかのメカニズムに限定されるものではないが、増加したPEG−Fmoc/PTXの細胞毒性は、例えば、PTXの腫瘍細胞への進入が促進されたことに起因し得る。本試験では、該細胞株は、PEG−Fmoc/PTX、薬物を含まないPEG−Fmoc及びTAXOLにより72時間処理され、腫瘍細胞の阻害は、MTTアッセイにより測定された(*p<0.05または**p<0.01は、TAXOL及びPEG−Fmoc/PTX処理細胞の間におけるスチューデントのt検定によって測定された)。
PEG−Fmoc/PTXの生体内での治療効果を、同系マウス乳癌モデル(4T1.2)を有するマウスにより試験した。4T1.2は、転移性の高い癌細胞株として知られており、図15Aに実証されるように、急速な腫瘍成長が生理食塩水で処置したマウスの群において観察された。10mg PTX/kg体重の用量でタキソールを処置したマウスでは、腫瘍体積の増加が若干遅延された結果が得られた。TAXOLと比較して、PEG−Fmoc/PTXは、治療の際に、同じ用量でより強力な抗腫瘍活性を示した(p<0.02)。PEG−Fmoc/PTXの高いMTDが実証されたので、TAXOLで可能なものよりも高い用法容量が、より有効な治療のために提供される。したがって、20及び40mg/kgでの増加されたPTX用量もまた、該試験に組み入れられた。PTXの用量がPEG−Fmoc/PTX中で20及び40mg/kgに上昇した際に(p<0.001)、腫瘍阻害のさらなる増強が達成され、生理食塩水群と比べて60〜70%の腫瘍成長阻害率となった(図15B)。TAXOLを20〜25mg PTX/kgの用量で単回注射した後に、毒性および死亡の深刻な兆候が生じたことが実証されている。しかしながら、マウスの死亡は、TAXOLの最大耐量を大きく超えた高用量のPTXの6度の連続注射を含む16日間の処置後においても観察されなかった。体重減少は、20mg/kgの処置群においては観察されず、わずかな体重減少(7〜8%)が、試験最後における40mg/kg PTX(TAXOLのMTDよりも2倍高用量)の連続注射の後に認められた。PEG−Fmoc/PTXの顕著に増強された腫瘍抑制効果と安全性は、その生物物理学的特性及び腫瘍選択的な送達と明確に一致している。
本システム、方法および組成物は、化合物/薬物キャリア剤またはシステムの開発のための、メカニズムを基礎としたアプローチを提供する。上述のように、古典的な脂質ベースの薬物キャリアシステムは、既製の界面活性剤と油に依存しており、通常は正しい出発材料のための試行錯誤による選択プロセスを含む。多くの場合、オイルコアまたは脂質二重層内にうまく収まらない疎水性の低い薬物のために、ロード容量と製剤安定性は制限されている。本アプローチは、いくつかの点において、従来の脂質ベースの製剤のアプローチとは根本的に異なる。本アプローチは、活性成分と相互作用することが可能な単純な構造要素(モチーフまたはドメイン)を選択することにより開始するボトムアップアプローチである。この化合物/薬剤相互作用ドメインは、その後、親水性領域と、または、親水性ドメインと疎水性ドメインとの間(例えば、1つ以上の疎水性脂質鎖と親水性PEGブラシとの間など)に会合させられる。本願の両親媒性物質の場合には、薬剤相互作用セグメントは界面領域に配され、それにより、例えば、さほど疎水性の高くない薬物が、よりストリンジェントの低い疎水性環境下で組み入れられることが可能になる。
1.JP4−039の試験
1(a).材料及び方法
α−Fmoc−ε−Boc−リシン、ジ−Boc−リシン、DCC、NHS、TFA、TEAは、AAPPTEC社より入手した。無水THFは、ベルギー国ヘールのAcros Organic社より入手した。分子量1000、2000及び5000のモノメトキシPEG、エオシンY、DMAP、ニンヒドリン、塩化オレオイル、ゴマ油及び他の明示されない試薬の純粋な化学物質は、ミズーリ州セントルイスのSigma-Aldrich社より入手した。L−パルミトイル−2−オレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン及び大豆ホスファチジルコリン(95%)は、ノースカロライナ州モリスビルのAvanti Polar Lipids社より購入した。JP4−039は、既知の手順を用いてAsymchem社により合成した。
α−Fmoc−ε−Boc−リシン、ジ−Boc−リシン、DCC、NHS、TFA、TEAは、AAPPTEC社より入手した。無水THFは、ベルギー国ヘールのAcros Organic社より入手した。分子量1000、2000及び5000のモノメトキシPEG、エオシンY、DMAP、ニンヒドリン、塩化オレオイル、ゴマ油及び他の明示されない試薬の純粋な化学物質は、ミズーリ州セントルイスのSigma-Aldrich社より入手した。L−パルミトイル−2−オレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン及び大豆ホスファチジルコリン(95%)は、ノースカロライナ州モリスビルのAvanti Polar Lipids社より購入した。JP4−039は、既知の手順を用いてAsymchem社により合成した。
1(b).JP4−039の可溶化剤及び結晶化阻害剤としての保護されたアミノ酸誘導体のスクリーニング
飽和重炭酸ナトリウム溶液5mLに溶解させられたα−NH2−ε−Boc−リシン(1mmol)に、THF5mLに溶解させられた4倍過剰量の無水酢酸またはクロロギ酸イソブチルをそれぞれ5分かけて添加することによって、α−アセチル−ε−Boc−リシンまたはα−イソブトキシカルボニル−ε−Boc−リシンをそれぞれ合成した。THFを反応混合物から除去し、残った混合物を酢酸エチル50mLで希釈した。有機相を、20mLの飽和NaHCC、生理食塩水、クエン酸(0.5M)及び水を順に用いて洗浄した。有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を除去した。固体残渣を酢酸エチル/ヘキサン混合物より再結晶化した。これらの誘導体を、市販の一連のリシン、フェニルアラニン及びグリシンのアミン保護された誘導体と共に、0.1M Na2HPO4緩衝液中に、1〜100mMの溶液または懸濁液として調製した。その間に、メタノール5μLに溶解させられた0.447μgのJP4−039を、96ウェルのポリスチレンプレートの各ウェルに添加した。アミノ酸溶液/懸濁液100μLを該メタノール溶液に添加して、よく混合した。各ウェル中のサンプルの物理的状態を、褐色結晶が物理的に現れる間、2時間かけて定期的に目視検査した。20分後に、サンプルのいくつかを顕微鏡下で写真撮影した。
飽和重炭酸ナトリウム溶液5mLに溶解させられたα−NH2−ε−Boc−リシン(1mmol)に、THF5mLに溶解させられた4倍過剰量の無水酢酸またはクロロギ酸イソブチルをそれぞれ5分かけて添加することによって、α−アセチル−ε−Boc−リシンまたはα−イソブトキシカルボニル−ε−Boc−リシンをそれぞれ合成した。THFを反応混合物から除去し、残った混合物を酢酸エチル50mLで希釈した。有機相を、20mLの飽和NaHCC、生理食塩水、クエン酸(0.5M)及び水を順に用いて洗浄した。有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を除去した。固体残渣を酢酸エチル/ヘキサン混合物より再結晶化した。これらの誘導体を、市販の一連のリシン、フェニルアラニン及びグリシンのアミン保護された誘導体と共に、0.1M Na2HPO4緩衝液中に、1〜100mMの溶液または懸濁液として調製した。その間に、メタノール5μLに溶解させられた0.447μgのJP4−039を、96ウェルのポリスチレンプレートの各ウェルに添加した。アミノ酸溶液/懸濁液100μLを該メタノール溶液に添加して、よく混合した。各ウェル中のサンプルの物理的状態を、褐色結晶が物理的に現れる間、2時間かけて定期的に目視検査した。20分後に、サンプルのいくつかを顕微鏡下で写真撮影した。
1(c).PEG−アミノ酸または−ペプチド−脂質共役体の合成
モノメトキシPEG2,000−α−Fmoc−ε−オレオイルリシン(1):モノメトキシPEG2,000OH(1mmol)を、DCC(2.2mmol)及びDMAP(0.1mmol)を備えたα−Fmoc−ε−t−Boc−リシン(2mmol)と、CH2Cl2中にて室温で一晩エステル化させた。固体沈殿物を、濾過により除去した。該濾液を、蒸発により濃縮した。10倍容量の冷エチルエーテルを用いてPEG誘導体を沈殿させ、該PEG誘導体を同じ溶媒で3回洗浄した。DMAPを除去するために、冷エタノールを用いた追加の洗浄を行った。PEG−α−のFmoc−ε−t−BOCリシンエステルをCH2Cl24mLに溶解し、TFA4mLを加えて室温で20分間Boc基を脱保護させた。CH2Cl2の大半を除去した後、冷エーテルを用いてPEG−α−Fmoc−ε−NH2−リシンエステルを沈殿させ、同一の溶媒でさらに2回洗浄した。該PEG−α−Fmoc−ε−NH2−リシンエステルを、塩化オレオイル(2mmol)及びTEA(2mmol)により20分間末端キャップした。3度のエーテル沈殿及び2度のエタノール沈殿により、PEG−α−Fmoc−ε−オレオイルリシンエステル(1)を精製した。収率はPEG2,000に関して87%であった。1H NMR(400MHz) δ 7.69−7.19(m,8H),5.23−5.22(m,2H),5.08(s,2H),4.98−4.95(m,2H),4.12−4.10(m,1H),3.56−3.52(PEGピーク),3.26(s,3H),3.21−3.17(m,2H),2.09−1.88(m,6H),1.27−1.16(m,28H),0.77(t,3H)。
モノメトキシPEG2,000−α−Fmoc−ε−オレオイルリシン(1):モノメトキシPEG2,000OH(1mmol)を、DCC(2.2mmol)及びDMAP(0.1mmol)を備えたα−Fmoc−ε−t−Boc−リシン(2mmol)と、CH2Cl2中にて室温で一晩エステル化させた。固体沈殿物を、濾過により除去した。該濾液を、蒸発により濃縮した。10倍容量の冷エチルエーテルを用いてPEG誘導体を沈殿させ、該PEG誘導体を同じ溶媒で3回洗浄した。DMAPを除去するために、冷エタノールを用いた追加の洗浄を行った。PEG−α−のFmoc−ε−t−BOCリシンエステルをCH2Cl24mLに溶解し、TFA4mLを加えて室温で20分間Boc基を脱保護させた。CH2Cl2の大半を除去した後、冷エーテルを用いてPEG−α−Fmoc−ε−NH2−リシンエステルを沈殿させ、同一の溶媒でさらに2回洗浄した。該PEG−α−Fmoc−ε−NH2−リシンエステルを、塩化オレオイル(2mmol)及びTEA(2mmol)により20分間末端キャップした。3度のエーテル沈殿及び2度のエタノール沈殿により、PEG−α−Fmoc−ε−オレオイルリシンエステル(1)を精製した。収率はPEG2,000に関して87%であった。1H NMR(400MHz) δ 7.69−7.19(m,8H),5.23−5.22(m,2H),5.08(s,2H),4.98−4.95(m,2H),4.12−4.10(m,1H),3.56−3.52(PEGピーク),3.26(s,3H),3.21−3.17(m,2H),2.09−1.88(m,6H),1.27−1.16(m,28H),0.77(t,3H)。
モノメトキシPEG1,000−α−Fmoc−リシル−α−Fmoc−ε−(ジオレオイル−リシル)リシン(2):PEG−α−Fmoc−ε−NH2−リシンエステル(1mmol)を、TEA4mmol、α−Fmoc−ε−t−Boc−リシン(1.5mmol)、DCC(1.7mmol)及びNHS(1.5mmol)と、CH2Cl2:THF=1:1中0℃にて20分間反応させた後、室温で一晩反応させた。該反応は、ニンヒドリン試験において陰性の結果が出ることによって、完了したと決定された。モノメトキシPEG1,000−α−Fmoc−リシル−α−Fmoc−ε−t−Bocリシンエステルを、冷エーテル及びエタノール沈殿、TFA脱保護、続くエーテル沈殿及び洗浄により精製し、PEG1,000−α−Fmoc−リシル−α−Fmoc−ε−NH2リシンエステルを得た。このε−NH2末端を備えたPEG1,000誘導体を、TEA4mmol、DCC(1.7mmol)及びNHS(1.5mmol)により予め活性化されたN,N’−ジオレオイルリシン(1.5mmol)により一晩末端キャップした。得られた化合物2を、エーテル及びエタノール沈殿を用いて同様に精製した。メトキシPEG1,000を備えた化合物2の収率は、約75%である。1H NMR δ7.70−7.20(m,24H),5.35−5.34(m,2H),5.14−5.09(m,6H),4.27−4.22(m,2H),3.70−3.61(PEGピーク),3.39(s,3H),3.21−3.07(m,6H),2.01−1.97(m,6H),1.49−1.23(m,40H),0.89(t,3H)。
モノメトキシPEG2,000−リシル−(α−Fmoc−ε−オレオイルリシン)2(3):メトキシPEG2,000−OH(1mmol)を、ジ−t−Boc−リシン(2mmol)、DCC(2.2mmol)及びDMAP(0.1mmol)を用いて、CH2Cl2中にて一晩エステル化し、続いてエーテル及びエタノール沈殿工程を行い、PEG−ジ−Boc−リシンエステルを得た。TFA脱保護とエーテル沈殿及び洗浄とを行った後、該PEG−リシンエステルを、TEA4mmol、α−Fmoc−ε−t−Boc−リシン(3mmol)、DCC(3.5mmol)及びNHS(3mmol)と、CH2Cl2:THF=1:1中0℃にて20分間共役させた後、室温で一晩共役させた。該反応は、ニンヒドリン試験時の陰性により、完了したことが確認された。モノメトキシPEG−リシル−(α−Fmoc−ε−t−Boc−リシン)2を、冷エーテル及びエタノール沈殿により精製し、TFA脱保護し、続いてエーテル沈殿及び洗浄により、PEG−リシル−(α−Fmoc−ε−NH2−リシン)2を得た。このε−NH2−リシン末端を備えたPEG誘導体を、TEA4mmol及び塩化オレオイル4mmolにより20分間末端キャップした。慣例のエーテルおよびエタノール沈殿及び洗浄を行った後、精製された化合物3を72%の収率で得た。1H NMR δ 7.36−7.34(m,16H),5.35−5.30(m,4H),5.14−5.09(m,4H),4.27−4.22(m,6H),3.70−3.61(PEGピーク),3.41(s,3H),3.21−3.07(m,6H),2.01−1.97(m,6H),1.49−1.23(m,62H),0.89(t,6H)。
モノメトキシPEG5,000−リシル−[リシル−(α−Fmoc−ε−オレオイルリシン)2]2(4):PEG5,000に由来するPEG−リシンエステル(1mmol)を、DCC(3.5mmol)及びNHS(3mmol)を備えたジ−t−Boc−リシン(3mmol)、と、CH2Cl2:THF=1:1中0℃にて20分間共役させた後、室温で一晩共役させた。該反応は、ニンヒドリン試験時により、完了したことが確認された。モノメトキシPEG5,000−リシル−(ジ−t−Boc−リシン)2を、冷エーテル及びエタノール沈殿により精製した。TFA脱保護し、続いてエーテル沈殿及び洗浄により、PEG−リシル−(α−NH2−ε−NH2−リシン)2を得た。このテトラε−NH2末端を備えたPEG−リシン誘導体を、DCC(6mmol)及びNHS(5mmol)と、CH2Cl2:THF=1:1中0℃にて20分間共役させた後、室温で一晩共役させた。該反応は、ニンヒドリン試験時の陰性により、完了したことが確認された。モノメトキシPEG5,000−リシル−[リシル−(α−Fmoc−ε−t−Boc−リシン)2]2を、冷エーテル及びエタノール沈殿により精製し、TFA脱保護し、続いてエーテル沈殿及び洗浄により、PEG−リシル−[リシル−(α−Fmoc−ε−NH2−リシン)2]2を得た。その後、塩化オレオイル(8mmol)、TEA(10mmol)により20分間末端キャップし、続いてエーテル及びエタノール沈殿及び洗浄を行って、化合物4を79%の収率で得た。1H NMR δ 7.36−7.34(m,32H),5.35−5.27(m,8H),5.14−5.09(m,7H),4.27−4.22(m,6H),3.70−3.61(PEGピーク),3.41(s,3H),3.21−3.07(m,9H),2.01−1.97(m,9H),1.49−1.23(m,130H),0.89(t,6H)。
メトキシPEG2,000−α−Cbz−ε−オレオイル−リシン(5)、PEG2,000−α−Cbz−リシル−α−Cbz−ε−オレオイル−リシン(6)、メトキシPEG2,000−α−Cbz−リシル−α−Cbz−リシル−α−Cbz−リシル−ε−オレオイル−リシン(7)及びメトキシPEG2,000−カルバモイル−1−パルミトイル−2−オレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホチジルエタノールアミン(PEG−POPE))(8)。種々の数のα−Cbz−リシン残基及び単一のオレオイル鎖を備えた3種のPEG−リシル−脂質共役体を、1〜3回の繰り返しサイクルにおけるα−Fmoc−ε−Bocリシンの代わりにα−Cbz−ε−Bocリシン化合物を用いること以外は、化合物1と同様にして合成及び精製した。対照の界面活性剤であるオレイン酸PEG2,000を、メトキシPEG2,000を塩化オレオイルと反応させることにより調製した。PEG−リン脂質共役体は、ホスゲンにより活性化されたメトキシPEG2,000をPOPE及びTEAと反応させた後、エーテル沈殿を行うことにより合成した。
リポペプチド5の1H NMR:1H NMR δ 7.29−7.19(m,5H),5.23−5.22(m,2H),4.98−4.95(m,2H),4.12−4.10(m,1H),3.56−3.52(PEGピーク),3.26(s,3H),3.21−3.17(m,2H),2.09−1.88(m,6H),1.27−1.16(m,28H),0.77(t,3H)。
リポペプチド6の1H NMR:1H NMR δ 7.37−7.29(m,10H),5.37−5.35(m,2H),5.12−5.09(m,4H),4.25−4.22(m,2H),3.70−3.64(PEGピーク),3.40(s,3H),3.21−3.17(m,4H),2.03−1.89(m,6H),1.40−1.24(m,34H),0.90(t,3H)。
リポペプチド7の1H NMR:1H NMR δ 7.36−7.34(m,15H),5.35−5.34(m,2H),5.14−5.09(m,6H),4.27−4.22(m,2H),3.70−3.61(PEGピーク),3.39(s,3H),3.21−3.07(m,6H),2.01−1.97(m,6H),1.49−1.23(m,40H),0.89(t,3H)。
PEG−POPE化合物8の1H NMR:1H NMR δ 5.35−5.34(m,2H),3.69−3.64(PEGピーク),3.92−3.96(m,4H),3.57−3.55(m,2H),3.39(s,3H),2.29−2.28(m,2H),1.37−1.27(m,50H),0.89(t,3H)。
1(d).臨界ミセル濃度(CMC)
CMCは、より疎水性であるミセルのコアの微小環境に組み入れられた際のエオシンYにおける最大吸収のレッドシフトに基づいて決定された。蒸留水中で調製された一連の界面活性剤溶液に、エオシンY溶液を1mMの最終濃度となるまで添加して、室温で30分間培養した。OD542nmを測定して界面活性剤の濃度に対してプロットし、それによりCMC値を推定した。
CMCは、より疎水性であるミセルのコアの微小環境に組み入れられた際のエオシンYにおける最大吸収のレッドシフトに基づいて決定された。蒸留水中で調製された一連の界面活性剤溶液に、エオシンY溶液を1mMの最終濃度となるまで添加して、室温で30分間培養した。OD542nmを測定して界面活性剤の濃度に対してプロットし、それによりCMC値を推定した。
1(e).JP4−039を備えたミセル製剤またはJP4−039を備えないミセル製剤の調製
アミノ酸誘導体またはリポペプチドの乾燥薄膜を、一定の渦流を用いて透明な溶液が形成されるまで適当な水溶液と水和させることにより、典型的なミセルを調製した。その最終濃度は、約100〜200mg/mlである。まず、リポペプチド、アミノ酸誘導体またはニトロキシド化合物を、クロロホルムに溶解した。該溶液をガラス試験管に分注して、十分に混合し、その後、一定の窒素流を吹き付けて溶媒の大部分を除去した。高真空を2時間適用することにより、残留溶媒を除去した。ミセルに促進されたJP4−039の可溶化作用を測定するために、薬剤に対する界面活性剤の種々のモル比を適用し、それにより水中に界面活性剤−薬物混合物を作製した(JP4−039の最終濃度は5mg/mLであった)。少なくとも30分後には、該サンプルを13,000rpmで短時間遠心分離した。該上清の半分を回収し、等量のエタノールを添加して、それによりミセル薬物複合体を溶解/破壊した。OD448nmを使用して該サンプル中の薬物の量を定量した。
アミノ酸誘導体またはリポペプチドの乾燥薄膜を、一定の渦流を用いて透明な溶液が形成されるまで適当な水溶液と水和させることにより、典型的なミセルを調製した。その最終濃度は、約100〜200mg/mlである。まず、リポペプチド、アミノ酸誘導体またはニトロキシド化合物を、クロロホルムに溶解した。該溶液をガラス試験管に分注して、十分に混合し、その後、一定の窒素流を吹き付けて溶媒の大部分を除去した。高真空を2時間適用することにより、残留溶媒を除去した。ミセルに促進されたJP4−039の可溶化作用を測定するために、薬剤に対する界面活性剤の種々のモル比を適用し、それにより水中に界面活性剤−薬物混合物を作製した(JP4−039の最終濃度は5mg/mLであった)。少なくとも30分後には、該サンプルを13,000rpmで短時間遠心分離した。該上清の半分を回収し、等量のエタノールを添加して、それによりミセル薬物複合体を溶解/破壊した。OD448nmを使用して該サンプル中の薬物の量を定量した。
1(f).粒子サイズの測定
ミセル粒子の流体力学的サイズを推定するために、薬物を組み入れた界面活性剤または薬物を組み入れていない界面活性剤の溶液を、乾燥膜から蒸留水中に調製した。サンプルを蒸留水でさらに10倍に希釈し、粒径分析計を用いたレーザー動的光散乱(Zetasizer Nano ZS装置、英国ウスターシャー州のMalvern Instruments社より入手可能)によってサイズを測定した。エマルジョン粒子のサイズ測定は、生理食塩水で100倍希釈した後、Coulter N4粒径分析計を用いて行った。
ミセル粒子の流体力学的サイズを推定するために、薬物を組み入れた界面活性剤または薬物を組み入れていない界面活性剤の溶液を、乾燥膜から蒸留水中に調製した。サンプルを蒸留水でさらに10倍に希釈し、粒径分析計を用いたレーザー動的光散乱(Zetasizer Nano ZS装置、英国ウスターシャー州のMalvern Instruments社より入手可能)によってサイズを測定した。エマルジョン粒子のサイズ測定は、生理食塩水で100倍希釈した後、Coulter N4粒径分析計を用いて行った。
1(g).リポペプチド4のミセル及びリポペプチド4−JP4−039複合体のクライオEM
乾燥リポペプチド膜を蒸留水中に最終濃度100mg/mlで水和することによって、上記ミセルを調製した。調査されたサンプルは、リポペプチド4(A)単独、及び、モル比1.6:1で作製されたリポペプチド4−JP4−039複合体(B)1.6であった。サンプルのうち4つは、蒸留水で5倍に希釈し、直ちにQuantifoil社製孔開きグリッド(ドイツ国イエナのQuantifoil Micro Tools社より入手可能)上に塗布して、ろ紙によりブロットし、FEI VitrobotTM Mark III(オレゴン州ヒルズボロのFEI社から入手可能)を用いて液体エタン中でプランジ凍結した。低線量(10〜15e-/Å2)の投影画像を、29,000〜50,000倍の公称倍率及び1.0〜2.5μmの範囲のアンダーフォーカス値でFEI Tecnai TF20電子顕微鏡を用いて、4K×4KGatan社製CCDカメラ(ペンシルベニア州ウォーレンデールのGatan社より入手可能)で収集した。
乾燥リポペプチド膜を蒸留水中に最終濃度100mg/mlで水和することによって、上記ミセルを調製した。調査されたサンプルは、リポペプチド4(A)単独、及び、モル比1.6:1で作製されたリポペプチド4−JP4−039複合体(B)1.6であった。サンプルのうち4つは、蒸留水で5倍に希釈し、直ちにQuantifoil社製孔開きグリッド(ドイツ国イエナのQuantifoil Micro Tools社より入手可能)上に塗布して、ろ紙によりブロットし、FEI VitrobotTM Mark III(オレゴン州ヒルズボロのFEI社から入手可能)を用いて液体エタン中でプランジ凍結した。低線量(10〜15e-/Å2)の投影画像を、29,000〜50,000倍の公称倍率及び1.0〜2.5μmの範囲のアンダーフォーカス値でFEI Tecnai TF20電子顕微鏡を用いて、4K×4KGatan社製CCDカメラ(ペンシルベニア州ウォーレンデールのGatan社より入手可能)で収集した。
リポペプチド4の管状ミセルの直径(〜100カウント)及び棒状のJP4−039リポペプチド4混合ミセルの長さ(〜240カウント)を、Gatan Digital Micrographソフトウェア(ペンシルベニア州ウォーレンデールのGatan社より入手可能)の密度プロットツールを用いて測定した。
選択されたリポペプチドのクライオ電子顕微鏡(クライオEM)画像により、20mg/mLの化合物3(図示しない)及び4(図3A及び3B)に長い管状の自己会合構造が存在することが確認した。該管状構造は、厚さ2.8〜4.0nm(3.5±0.4nm,n=22)の電子光中心領域を有しており、該領域は脂質鎖で構成されているミセルのコアと推定され得る。該光コアは、電子密度の高い周壁に囲まれており、該周壁はFmoc−リシンを含む界面領域と推定され得る。該管状構造の平均直径は、該電子密度の高い壁の中間点同士の間の距離より測定され、〜5.6±0.4nmである。該電子密度の高い領域の厚さは、電子光中心領域の厚さの〜1/3〜1/2である。PEG鎖は、電子密度が十分に高くないため、クライオEMによっては見えない。リポソームの表面上に表示されている既報の脂質アンカーPEG5,000−PE共役体は、厚さ10〜15nmである。このパラメータがこれらの管状PEG−リポペプチドミセルに適用されると仮定すると、該PEG層を含む全体的な直径は、27〜40nmの範囲であると考えられる。
JP4−039がロードされたミセルは、著しく減少した粘度を示した。レーザー動的光散乱法により測定した該粒子サイズは、JP4−039がロードされたPEG−リポペプチド4にとって、空のミセルよりも小さかった(表4)。JP4−039が存在した際には、クライオEM画像は、多くの小さなドット(〜90%、n=388、図3B)と切り詰められた棒状構造(〜10%)との混合物を示した。該ドット及び棒の直径は、リポペプチド単独のサンプル中に観察された管状ミセルの直径よりもわずかに小さかった。該棒状構造は、長さが−30〜300nmの範囲でばらついており、長さの中央値は60nm未満であった。クライオEM上におけるJP4−039がロードされたミセルのサイズ分布は、レーザー動的光散乱法により得られた結果と一致する。遊離薬物の結晶の兆候はなかった(図3B参照)。
1(h).蛍光消光試験
JP4−039を備えたミセル製剤またはJP4−039を備えていないミセル製剤を、0,0.25または0.5mgのJP4−039を含んだ10mgのリポペプチド4を用いて、生理食塩水300μlを水和させる方法により調製した。上記蛍光強度は、300nmの励起波長及び350nm〜500nmの様々な発光波長を用いて、Synergy H1ハイブリッドリーダー(バーモント州ウィヌースキーのBioTek社より入手可能)に記録した。
JP4−039を備えたミセル製剤またはJP4−039を備えていないミセル製剤を、0,0.25または0.5mgのJP4−039を含んだ10mgのリポペプチド4を用いて、生理食塩水300μlを水和させる方法により調製した。上記蛍光強度は、300nmの励起波長及び350nm〜500nmの様々な発光波長を用いて、Synergy H1ハイブリッドリーダー(バーモント州ウィヌースキーのBioTek社より入手可能)に記録した。
1(i).ミセル製剤の1H NMRスペクトル分析
100mM NaCl(リポペプチド4用)または100mM KHCO3(α−Fmoc−ε−Boc−リシン用)を含むD2O中において、(JP4−039または4−アセトアミド−TEMPOを備えているまたは備えていない)α−Fmoc−ε−tBoc−リシンより、ミセルを調製した。Bruker社製400MHz NMR(マサチューセッツ州ビレリカのBruker社より入手可能)を用いて1H NMRスペクトルを記録し、正確なプロトン積分値を確保するためにリサイクルパルスの20秒の遅延を用いた。初期の試験では、d−DMSOを代替溶媒として用いた。
100mM NaCl(リポペプチド4用)または100mM KHCO3(α−Fmoc−ε−Boc−リシン用)を含むD2O中において、(JP4−039または4−アセトアミド−TEMPOを備えているまたは備えていない)α−Fmoc−ε−tBoc−リシンより、ミセルを調製した。Bruker社製400MHz NMR(マサチューセッツ州ビレリカのBruker社より入手可能)を用いて1H NMRスペクトルを記録し、正確なプロトン積分値を確保するためにリサイクルパルスの20秒の遅延を用いた。初期の試験では、d−DMSOを代替溶媒として用いた。
1(j).溶血アッセイ
新たに採取したラットの血液に、抗凝固剤を添加し、10容量の冷PBSを用いて(1500rpmで10分間)3度洗浄することにより、該ラットの血液からラット赤血球(RBC)を分離した。次に、赤血球を氷冷DPBSにより2%w/vまで希釈し、即座に溶血アッセイに利用した。1mLの希釈されたRBC懸濁液を、種々の濃度(0〜5mM)のPEG−リポペプチド、Tween 80及びTriton X−100でそれぞれ処理し、その後振とう培養機中にて37℃で2時間培養した。該サンプルを4℃で10分間、1500rpmで遠心分離し、そして各サンプルからの上澄み100μLを、96ウェルプレート内に移した。ヘモグロビンの放出は、マイクロプレートリーダーを用いて540nmでの吸光度によって測定した。Triton X−100及びDPBSで処理したRBCを、それぞれ、陽性対照および陰性対照とみなした。ヘモグロビン放出を、以下のように計算した:(ODサンプル−OD陰性対照)/(OD陽性対照−OD陰性対照)×100%
新たに採取したラットの血液に、抗凝固剤を添加し、10容量の冷PBSを用いて(1500rpmで10分間)3度洗浄することにより、該ラットの血液からラット赤血球(RBC)を分離した。次に、赤血球を氷冷DPBSにより2%w/vまで希釈し、即座に溶血アッセイに利用した。1mLの希釈されたRBC懸濁液を、種々の濃度(0〜5mM)のPEG−リポペプチド、Tween 80及びTriton X−100でそれぞれ処理し、その後振とう培養機中にて37℃で2時間培養した。該サンプルを4℃で10分間、1500rpmで遠心分離し、そして各サンプルからの上澄み100μLを、96ウェルプレート内に移した。ヘモグロビンの放出は、マイクロプレートリーダーを用いて540nmでの吸光度によって測定した。Triton X−100及びDPBSで処理したRBCを、それぞれ、陽性対照および陰性対照とみなした。ヘモグロビン放出を、以下のように計算した:(ODサンプル−OD陰性対照)/(OD陽性対照−OD陰性対照)×100%
1(k).JP4−039のエマルジョン製剤及び安定性
JP4−039(4mg)を、ゴマ油(100mg)及び大豆ホスファチジルコリン(50mg)により構成されるエマルジョンに製剤化した。または、JP4−039(4mg)を、ゴマ油(100mg/mL)、大豆ホスファチジルコリン(40mg)と、オレイン酸PEG2,000(29.6mg/mL、0.0128mmol)、PEG2,000−α−CBz−ε−オレオイル−リシン(32.5mg/mL、0.0128mmol)、PEG2,000−α−CBz−α−CBz−ε−オレオイル−リシン(35.9mg/mL、0.0128mmol)、またはPEG2,000−α−CBz−リシル−α−CBzでリシル−α−CBz−ε−オレオイル−リシン(39.3mg/mL、0.0128mmol)のいずれかの共界面活性剤と共に構成されるエマルジョンに製剤化した。全ての成分をクロロホルムに溶解して十分に混合し、次に溶媒をN2流の下で除去し、その後2時間真空乾燥した。油性残渣を生理食塩水に懸濁し、最大出力20mWのプローブ式超音波処理器を用いて、サイズが150〜250nmより小さくなるまで、N2流の下で60分間氷浴下において超音波処理した。初期粒径を、レーザー動的光散乱法(Coulter N4粒径分析計)によって推定した。該サンプル中の任意の沈殿物を除去するための低速遠心分離を行った後、新たに調製した製剤と4℃で7日間保存した製剤との薬物ロード率を測定した。有機成分を、渦流下において等量のクロロホルムを用いて3回抽出した。該有機相を併せて、溶媒を窒素気流下で除去した。該残渣を、クロロホルム1mlを用いて再溶解した。薬物含有量を、OD448nmの数値を用いて測定した。
JP4−039(4mg)を、ゴマ油(100mg)及び大豆ホスファチジルコリン(50mg)により構成されるエマルジョンに製剤化した。または、JP4−039(4mg)を、ゴマ油(100mg/mL)、大豆ホスファチジルコリン(40mg)と、オレイン酸PEG2,000(29.6mg/mL、0.0128mmol)、PEG2,000−α−CBz−ε−オレオイル−リシン(32.5mg/mL、0.0128mmol)、PEG2,000−α−CBz−α−CBz−ε−オレオイル−リシン(35.9mg/mL、0.0128mmol)、またはPEG2,000−α−CBz−リシル−α−CBzでリシル−α−CBz−ε−オレオイル−リシン(39.3mg/mL、0.0128mmol)のいずれかの共界面活性剤と共に構成されるエマルジョンに製剤化した。全ての成分をクロロホルムに溶解して十分に混合し、次に溶媒をN2流の下で除去し、その後2時間真空乾燥した。油性残渣を生理食塩水に懸濁し、最大出力20mWのプローブ式超音波処理器を用いて、サイズが150〜250nmより小さくなるまで、N2流の下で60分間氷浴下において超音波処理した。初期粒径を、レーザー動的光散乱法(Coulter N4粒径分析計)によって推定した。該サンプル中の任意の沈殿物を除去するための低速遠心分離を行った後、新たに調製した製剤と4℃で7日間保存した製剤との薬物ロード率を測定した。有機成分を、渦流下において等量のクロロホルムを用いて3回抽出した。該有機相を併せて、溶媒を窒素気流下で除去した。該残渣を、クロロホルム1mlを用いて再溶解した。薬物含有量を、OD448nmの数値を用いて測定した。
1(l).マウスにおける全身放射線照射に対する放射線緩和活性
すべてのマウスに、137Cs J.L. Shepherd Mark 1 照射器(カリフォルニア州サンフェルナンドのJ.L.Shepherd & Associatesより入手可能)により0.8Gyの/分の線量率で照射された全身線量9.5Gyを照射した。次に、該マウスを2つの群に分割した(各群あたりマウス10〜15匹)。これらのマウスに、放射線照射した24時間後、エマルジョン中に製剤したJP4−039または対照製剤単独を、腹腔内注射した。JP4−039の用量は、20mg/kgであった。マウスが体重の20%を失うか瀕死に見えるまで(その時点でマウスを安楽死させた)、マウスの経過を観察した。
すべてのマウスに、137Cs J.L. Shepherd Mark 1 照射器(カリフォルニア州サンフェルナンドのJ.L.Shepherd & Associatesより入手可能)により0.8Gyの/分の線量率で照射された全身線量9.5Gyを照射した。次に、該マウスを2つの群に分割した(各群あたりマウス10〜15匹)。これらのマウスに、放射線照射した24時間後、エマルジョン中に製剤したJP4−039または対照製剤単独を、腹腔内注射した。JP4−039の用量は、20mg/kgであった。マウスが体重の20%を失うか瀕死に見えるまで(その時点でマウスを安楽死させた)、マウスの経過を観察した。
2.パクリタキセルの試験
2(a).両親媒性剤中で製剤されたPTX
2(a)(i).材料
パクリタキセル(98%)は、AK Scientific社(カリフォルニア州ユニオンシティ)より購入した。コハク酸無水物、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(トリス)、9−フルオレニルカルボニルクロリド(Fmoc−Cl)、p−トルエンスルホン酸(TsOH)及びFmoc−Lys(Boc)−OHは、全てSigma-Aldrich社(ミズーリ州セントルイス)より購入した。N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)及びジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)は、Alfa Aesar社(マサチューセッツ州ワードヒル)より購入した。4−(ジメチルアミノ)ピリジン(DMAP)は、Calbiochem-Novabiochem社(カリフォルニア州サンディエゴ)より購入した。FTSは、公開された文献に従って合成及び精製した。
2(a)(i).材料
パクリタキセル(98%)は、AK Scientific社(カリフォルニア州ユニオンシティ)より購入した。コハク酸無水物、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(トリス)、9−フルオレニルカルボニルクロリド(Fmoc−Cl)、p−トルエンスルホン酸(TsOH)及びFmoc−Lys(Boc)−OHは、全てSigma-Aldrich社(ミズーリ州セントルイス)より購入した。N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)及びジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)は、Alfa Aesar社(マサチューセッツ州ワードヒル)より購入した。4−(ジメチルアミノ)ピリジン(DMAP)は、Calbiochem-Novabiochem社(カリフォルニア州サンディエゴ)より購入した。FTSは、公開された文献に従って合成及び精製した。
2(a)(ii).PEG5K−FTS2及びPEG5K−Fmoc−FTS2の合成
PEG5K−Fmoc−FTS2を、分子量5000DaのMeO−PEG−OHより、溶液縮合反応により合成した。コハク酸無水物(5当量)を、PEGのO末端上に、ジクロロメタン(CH2Cl2)中でDMAP(5当量)を用いて一晩かけてカップリングさせた。冷エーテルを添加することによりPEG化された分子を沈殿させ、該分子をエーテルで2度洗浄した。カップリング剤としてNHS(3当量)及びDCC(3当量)を用いて、トリスをCH2Cl2中で1日の間カップリングさせた。冷エーテルを添加することによりPEG化された分子を沈殿させ、該分子をエーテルで2度洗浄した。アセトニドは、TsOHをアセトン中で触媒として用いていた。Fmoc−Cl(2当量)及びNEt3(3当量)を用いて、Fmoc基をCH2Cl2中で一晩かけてOHとカップリングさせた。冷エーテルを添加することによりPEG化された分子を沈殿させ、該分子をエーテルで2度洗浄した。1%TsOH(CH2Cl2中)を用いて処理することにより、アセトニド基を除去した。カップリング剤としてDCC(4当量)及びDMAP(0.4当量)を用いて、FTS(4当量)をカップリングさせた。冷エーテルを添加することによりPEG化された分子を沈殿させ、該分子をエーテルで2度洗浄した。この分子を凍結乾燥することにより、白色粉末を得た。
PEG5K−Fmoc−FTS2を、分子量5000DaのMeO−PEG−OHより、溶液縮合反応により合成した。コハク酸無水物(5当量)を、PEGのO末端上に、ジクロロメタン(CH2Cl2)中でDMAP(5当量)を用いて一晩かけてカップリングさせた。冷エーテルを添加することによりPEG化された分子を沈殿させ、該分子をエーテルで2度洗浄した。カップリング剤としてNHS(3当量)及びDCC(3当量)を用いて、トリスをCH2Cl2中で1日の間カップリングさせた。冷エーテルを添加することによりPEG化された分子を沈殿させ、該分子をエーテルで2度洗浄した。アセトニドは、TsOHをアセトン中で触媒として用いていた。Fmoc−Cl(2当量)及びNEt3(3当量)を用いて、Fmoc基をCH2Cl2中で一晩かけてOHとカップリングさせた。冷エーテルを添加することによりPEG化された分子を沈殿させ、該分子をエーテルで2度洗浄した。1%TsOH(CH2Cl2中)を用いて処理することにより、アセトニド基を除去した。カップリング剤としてDCC(4当量)及びDMAP(0.4当量)を用いて、FTS(4当量)をカップリングさせた。冷エーテルを添加することによりPEG化された分子を沈殿させ、該分子をエーテルで2度洗浄した。この分子を凍結乾燥することにより、白色粉末を得た。
2(a)(iii).PTXがロードされたミセルの調製及びキャラクタリゼーション
PTX(クロロホルム中10mM)及びPEG5K−Fmoc−FTS2複合体(クロロホルム中10mM)を、様々なキャリア/薬物比で混合した。有機溶媒を窒素流により除去し、それによって薬物/キャリア混合物の薄膜を形成した。該膜を1時間真空乾燥して、残留溶媒を除去した。DPBSを添加して薄膜を水和させ、薬物がロードされたミセルを形成した。組み入れられなかったPTX(沈殿物)を、シリンジフィルター(細孔径220μm)を用いて濾過することにより除去した。薬物を含まないPTXが可溶化されたPEG5K−FTS2ミセルを、同様に上記のようにして調製した。
PTX(クロロホルム中10mM)及びPEG5K−Fmoc−FTS2複合体(クロロホルム中10mM)を、様々なキャリア/薬物比で混合した。有機溶媒を窒素流により除去し、それによって薬物/キャリア混合物の薄膜を形成した。該膜を1時間真空乾燥して、残留溶媒を除去した。DPBSを添加して薄膜を水和させ、薬物がロードされたミセルを形成した。組み入れられなかったPTX(沈殿物)を、シリンジフィルター(細孔径220μm)を用いて濾過することにより除去した。薬物を含まないPTXが可溶化されたPEG5K−FTS2ミセルを、同様に上記のようにして調製した。
該ミセルの粒子径を、Zetasizer(DLS)(Zetasizer Nano ZS装置、英国ウスターシャー州のMalvern社より入手可能)により測定した。該ミセル濃度を、1mg/mLに維持した。
薬物ロード効率を、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)(Alliance 2695-2998システム)により定量化した。逆相のLICHROSPHER(登録商標) 100 RP−18(5μm)カラム及びメタノール/水(80:20、v/v)により構成される移動相を用いた。LICHROSPHERは、ドイツ国ダームスタッドの移動相より入手可能なクロマトグラフィー用吸着材である。PTXがロードされたミセルをMeOHで希釈し(ミセル溶液/MeOH=1/9、v/v)、それによって薬剤がロードされたミセルを解離させた。流速を0.8ml/分に設定し、カラム溶出液を紫外/可視検出器を用いて227nmにて検出した。薬物ロード容量(DLC)及び薬物ロード効率(DLE)は、以下の式に従って計算した:
DLC(%)=[使用した薬物の重量/(ポリマーの重量+使用した薬物の重量)]×100%
DLE(%)=(使用した薬物の重量/導入した薬物の重量)×100%
DLC(%)=[使用した薬物の重量/(ポリマーの重量+使用した薬物の重量)]×100%
DLE(%)=(使用した薬物の重量/導入した薬物の重量)×100%
本発明者らは、遊離薬物及びPTXがロードされたミセルのサイズ変化を経過観察した。その安定性は、経過観察期間中に目立ったサイズ変化がなかったことを示していた。
2(b).親水性剤中で製剤されたPTX
2(b)(i).材料
パクリタキセル(98%)は、AK Scientific社(カリフォルニア州ユニオンシティ)より購入した。α−Fmoc−ε−Boc−リシン、ジ−Boc−リシン、N,N‘−ジシクロヘキシルカルボジイミドは(DCC)、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)、トリフルオロ酢酸(TFA)、トリエチルアミン(TEA)は、Acros Organic社(ベルギー国ヘール及び米国ニュージャージー州)より入手した。モノメトキシPEG5000、4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)、ニンヒドリン及び他の明示されない試薬の純粋な化学物質は、Sigma-Aldrich社(ニュージャージー州セントルイス)より購入した。ダルベッコのリン酸緩衝生理食塩水(DPBS)、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、ウシ胎児血清(FBS)、100Xペニシリン−ストレプトマイシン溶液は、全てInvitrogen社(ニューヨーク州グランドアイランド)より購入した。本試験に用いられた全ての溶媒は、HPLCグレードであった。
2(b)(i).材料
パクリタキセル(98%)は、AK Scientific社(カリフォルニア州ユニオンシティ)より購入した。α−Fmoc−ε−Boc−リシン、ジ−Boc−リシン、N,N‘−ジシクロヘキシルカルボジイミドは(DCC)、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)、トリフルオロ酢酸(TFA)、トリエチルアミン(TEA)は、Acros Organic社(ベルギー国ヘール及び米国ニュージャージー州)より入手した。モノメトキシPEG5000、4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)、ニンヒドリン及び他の明示されない試薬の純粋な化学物質は、Sigma-Aldrich社(ニュージャージー州セントルイス)より購入した。ダルベッコのリン酸緩衝生理食塩水(DPBS)、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、ウシ胎児血清(FBS)、100Xペニシリン−ストレプトマイシン溶液は、全てInvitrogen社(ニューヨーク州グランドアイランド)より購入した。本試験に用いられた全ての溶媒は、HPLCグレードであった。
2(b)(ii).細胞培養
4T1−2は、マウス転移性乳癌細胞株である。PC−3及びDU145は、二つのアンドロゲン非依存性ヒト前立腺癌細胞株である。それらを全て、10%FBS及び1%ペニシリン−ストレプトマイシンを含むDMEM中において、5%CO2を含む加湿環境下にて37℃で培養した。
4T1−2は、マウス転移性乳癌細胞株である。PC−3及びDU145は、二つのアンドロゲン非依存性ヒト前立腺癌細胞株である。それらを全て、10%FBS及び1%ペニシリン−ストレプトマイシンを含むDMEM中において、5%CO2を含む加湿環境下にて37℃で培養した。
2(b)(iii).PEG5K−リシル−(α−Fmoc−ε−t−Boc−リシン)2(PEG−Fmoc2)の合成
以下の本発明者らの公開された方法によって、PEG−Fmoc2を大規模に合成した。まず、1当量のモノエトキシPEG5000を、ジクロロメタン(DCM)中において、過剰量のジ−Boc−リシン及びDCCと共に、DMAPを添加して混合し、室温で48時間反応させた。該混合物を氷冷エーテル中で濾過及び沈殿させた後、冷エタノール及びエーテルで洗浄して、精製されたPEG5000−ジ−Boc−リシンを得た。次に、該PEG誘導体をDCM/TFA(1:1、v/v)により室温で2時間処理し、続いて溶媒を除去し、冷エーテル沈殿させて、冷エタノール及びエーテルにより洗浄した。その後、脱保護されたPEG5000−リシン−NH2を、NHS、DCCで予め活性化させた過剰量のα−Fmoc−ε−Boc−リシン及び少量のDMAPと、DCM中にて37℃で4時間混合した。ニンヒドリン試験が陰性になるまで(これは、遊離アミノ基が存在しないことを示す)、該反応を37℃で行った。該反応混合物を氷冷エーテル沈殿させた後、冷エタノール及びエーテルにより洗浄した。得られた材料を水に溶解して、220nmのろ紙で濾過し、続いて凍結乾燥を行うことにより、精製されたPEG5K−リシル−(α−Fmoc−ε−t−Boc−リシン)2を得た。
以下の本発明者らの公開された方法によって、PEG−Fmoc2を大規模に合成した。まず、1当量のモノエトキシPEG5000を、ジクロロメタン(DCM)中において、過剰量のジ−Boc−リシン及びDCCと共に、DMAPを添加して混合し、室温で48時間反応させた。該混合物を氷冷エーテル中で濾過及び沈殿させた後、冷エタノール及びエーテルで洗浄して、精製されたPEG5000−ジ−Boc−リシンを得た。次に、該PEG誘導体をDCM/TFA(1:1、v/v)により室温で2時間処理し、続いて溶媒を除去し、冷エーテル沈殿させて、冷エタノール及びエーテルにより洗浄した。その後、脱保護されたPEG5000−リシン−NH2を、NHS、DCCで予め活性化させた過剰量のα−Fmoc−ε−Boc−リシン及び少量のDMAPと、DCM中にて37℃で4時間混合した。ニンヒドリン試験が陰性になるまで(これは、遊離アミノ基が存在しないことを示す)、該反応を37℃で行った。該反応混合物を氷冷エーテル沈殿させた後、冷エタノール及びエーテルにより洗浄した。得られた材料を水に溶解して、220nmのろ紙で濾過し、続いて凍結乾燥を行うことにより、精製されたPEG5K−リシル−(α−Fmoc−ε−t−Boc−リシン)2を得た。
2(b)(iv).PTX/PEG−Fmoc2混合ミセルの調製及び生物物理学的キャラクタリゼーション
PTX/PEG−Fmoc2混合ナノミセルを調製するため、薄膜水和法を利用した。クロロホルム中のPEG−Fmoc2及びPTXを、ガラス管中において指定されたモル比でよく混合した。穏やかな窒素流による有機溶媒の除去を通じて、キャリア/薬物混合物の薄膜を、生成した。痕跡量の溶媒は、2時間の真空によりさらに除去した。その後、該膜を渦流によりDPBS中に水和及び懸濁し、それによってPTX/PEG−Fmoc2混合ナノミセルの透明な溶液を得た。取り込まれなかった任意の薬物を、220nmのPVDFシリンジフィルターを通して濾過することにより除去した。
PTX/PEG−Fmoc2混合ナノミセルを調製するため、薄膜水和法を利用した。クロロホルム中のPEG−Fmoc2及びPTXを、ガラス管中において指定されたモル比でよく混合した。穏やかな窒素流による有機溶媒の除去を通じて、キャリア/薬物混合物の薄膜を、生成した。痕跡量の溶媒は、2時間の真空によりさらに除去した。その後、該膜を渦流によりDPBS中に水和及び懸濁し、それによってPTX/PEG−Fmoc2混合ナノミセルの透明な溶液を得た。取り込まれなかった任意の薬物を、220nmのPVDFシリンジフィルターを通して濾過することにより除去した。
PTX/PEG−Fmoc2混合ナノミセルのサイズ分布を、Malvern Zeta Nanosizerを用いた動的光散乱(DLS)により調査し、ネガティブ染色後にその形態を透過型電子顕微鏡(TEM)により観察した。蛍光プローブとしてピレンを用いて、前に報告したようにCMCの測定を行った。ミセル内にPTXを定量化するため、PTXをメタノールにより抽出し、UV検出器を備えたWaters Alliance 2695-2998高速液体クロマトグラフィー(HPLC)システムにより、RP−18カラム(250mLミリメートル×4.6ミリメートル)を用いて、該PTXを室温で227nmにて検出した。0.8mL/分の流速における移動相として、メタノール/水(80:20、v/v)の混合物を用いた。薬物ロード容量(DLC)及び効率(DLE)を、上述のようにして計算した。
2(b)(v).粒子サイズにおける凍結乾燥/再溶解の影響
1mLのPTX/PEG−Fmoc2(DPBS中)を上述のようにして調製し、PTX濃度を1mg/mLに維持した。この透明な溶液を一晩かけて凍結及び凍結乾燥させて、白色粉末を得た。該粉末を蒸留水1mLにより再溶解して、透明な溶液を得た。PTXがロードされたミセルの凍結乾燥/再溶解の前後の粒子サイズを、Zetasizerを用いてDLSにより記録した。
1mLのPTX/PEG−Fmoc2(DPBS中)を上述のようにして調製し、PTX濃度を1mg/mLに維持した。この透明な溶液を一晩かけて凍結及び凍結乾燥させて、白色粉末を得た。該粉末を蒸留水1mLにより再溶解して、透明な溶液を得た。PTXがロードされたミセルの凍結乾燥/再溶解の前後の粒子サイズを、Zetasizerを用いてDLSにより記録した。
2(b)(vi).蛍光消光
様々な薬物/キャリアモル比のPTX/PEG−Fmoc2混合ミセルを、DPBS中において上述のようにして調製し、Chol/PEG−Fmoc2及びTAXOLを対照として利用した。全ての群において、PEG−Fmoc2の濃度を比較のために0.44μMに固定した。該サンプルを96ウェルプレート内に配し、Synergy H1 ハイブリッドマルチモードマイクロプレートリーダーを用いて、270nmの励起波長及び300nm〜460nmの発光波長にて該サンプルの蛍光強度を調査した。
様々な薬物/キャリアモル比のPTX/PEG−Fmoc2混合ミセルを、DPBS中において上述のようにして調製し、Chol/PEG−Fmoc2及びTAXOLを対照として利用した。全ての群において、PEG−Fmoc2の濃度を比較のために0.44μMに固定した。該サンプルを96ウェルプレート内に配し、Synergy H1 ハイブリッドマルチモードマイクロプレートリーダーを用いて、270nmの励起波長及び300nm〜460nmの発光波長にて該サンプルの蛍光強度を調査した。
2(b)(vii).試験管内での薬物放出動態
2mLのPTX/PEG−Fmoc2(DPBS中)(PH=7.4)(1mg PTX/mL)を調製して透析袋(MWCO 12kDa、Spectrum Laboratories社製)内に配し、該袋を、0.5%(w/v)のTween 80を含むDPBS200mLの入ったタンク内で、37℃で緩やかに振とうさせつつ培養した。予定された時点(0、1、2、4、8、24、48及び72時間)において、該透析袋内に残っていたPTXの濃度を、HPLCにより上述のようにして測定した。TAXOL製剤(6mg PTX/mL、Cremophor EL/エタノール(1:1、v/v)中)をDPBSにより希釈して1mg/mLの最終PTX濃度とし、対照として利用した。
2mLのPTX/PEG−Fmoc2(DPBS中)(PH=7.4)(1mg PTX/mL)を調製して透析袋(MWCO 12kDa、Spectrum Laboratories社製)内に配し、該袋を、0.5%(w/v)のTween 80を含むDPBS200mLの入ったタンク内で、37℃で緩やかに振とうさせつつ培養した。予定された時点(0、1、2、4、8、24、48及び72時間)において、該透析袋内に残っていたPTXの濃度を、HPLCにより上述のようにして測定した。TAXOL製剤(6mg PTX/mL、Cremophor EL/エタノール(1:1、v/v)中)をDPBSにより希釈して1mg/mLの最終PTX濃度とし、対照として利用した。
2(b)(viii).試験管内での細胞毒性
マウス転移性乳癌細胞株4T1.2と、2つのヒト前立腺癌細胞株PC−3及びDU145とを、PTX/PEG−Fmoc2の試験管内での細胞毒性を評価するために利用した。細胞は、ウェルあたり1000セル(4T1.2)、2000セル(DU145)及び3000セル(PC−3)で、96ウェルプレートに播種した。24時間後に、6.25〜200ng/mLの範囲のPTX濃度のPTX/PEG−Fmoc2またはTAXOLを用いて、細胞を処理した。72時間後に、3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド(MTT、5mg/ml)20μLを各ウェルに添加した。4時間培養した後、培地を除去し、DMSO150μLを各ウェルに添加して、ホルマザン結晶を可溶化した。各ウェルの吸光度を、マイクロプレートリーダーを用いて、基準波長630nmとして550nmにて検出し、細胞生存率を以下の式に基づいて計算した。未処理細胞は、対照として含めた。
%細胞毒性=[1−(OD処理−ODブランク)/(OD対照−ODブランク)]×100%
マウス転移性乳癌細胞株4T1.2と、2つのヒト前立腺癌細胞株PC−3及びDU145とを、PTX/PEG−Fmoc2の試験管内での細胞毒性を評価するために利用した。細胞は、ウェルあたり1000セル(4T1.2)、2000セル(DU145)及び3000セル(PC−3)で、96ウェルプレートに播種した。24時間後に、6.25〜200ng/mLの範囲のPTX濃度のPTX/PEG−Fmoc2またはTAXOLを用いて、細胞を処理した。72時間後に、3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド(MTT、5mg/ml)20μLを各ウェルに添加した。4時間培養した後、培地を除去し、DMSO150μLを各ウェルに添加して、ホルマザン結晶を可溶化した。各ウェルの吸光度を、マイクロプレートリーダーを用いて、基準波長630nmとして550nmにて検出し、細胞生存率を以下の式に基づいて計算した。未処理細胞は、対照として含めた。
%細胞毒性=[1−(OD処理−ODブランク)/(OD対照−ODブランク)]×100%
2(b)(ix).動物
雌のBALB/cマウス(6〜8週間)を、Charles River(カリフォルニア州デイビス)より購入し、AAALACガイドラインに従って病原体を含まない条件下で飼育した。全ての動物に関連した実験は、施設のガイドラインに完全に準拠して行われ、ピッツバーグ大学における動物使用及びケア管理諮問委員会(Animal Use and Care Administrative Advisory Committee)によって承認された。
雌のBALB/cマウス(6〜8週間)を、Charles River(カリフォルニア州デイビス)より購入し、AAALACガイドラインに従って病原体を含まない条件下で飼育した。全ての動物に関連した実験は、施設のガイドラインに完全に準拠して行われ、ピッツバーグ大学における動物使用及びケア管理諮問委員会(Animal Use and Care Administrative Advisory Committee)によって承認された。
2(b)(x).最大耐量(MTD)試験
BALB/cマウスを無作為に7群(N=4)に分割し、PTX/PEG−Fmoc2(30、50、75、100及び120mg PTX/kg)またはTAXOL(15、20及び25mg PTX/kg)を静脈内投与した。次に、マウスの生存及び体重変化について、経時観察を10日間行った。MTDは、動物が死ぬこと、一般的外見が著しく変化すること、全実験期間にわたる体重減少が15%を超えることのいずれも引き起こすことのないPTXの用量により決定した。
BALB/cマウスを無作為に7群(N=4)に分割し、PTX/PEG−Fmoc2(30、50、75、100及び120mg PTX/kg)またはTAXOL(15、20及び25mg PTX/kg)を静脈内投与した。次に、マウスの生存及び体重変化について、経時観察を10日間行った。MTDは、動物が死ぬこと、一般的外見が著しく変化すること、全実験期間にわたる体重減少が15%を超えることのいずれも引き起こすことのないPTXの用量により決定した。
2(b)(xi).蛍光光学イメージング
PTX/PEG−Fmoc2混合ナノミセルの生体内分布を調査するため、近赤外蛍光(NIRF)イメージングを近赤外蛍光色素Cy5.5で標識されたPTXを用いて行った。PTX−Cy5.5/PEG−Fmoc2混合ナノミセル(0.4 PTX−Cy5.5 mg/mL)200μLを、CL1異種移植片を有するSCIDマウスに静脈内注射した。予定された時刻に、マウスを麻酔して、630nmにおける励起及び700nmにおける発光による30秒の露光時間を用いて、Carestream Molecular ImagingのIn-Vivo Imaging FX Proによりスキャンした。イメージング研究の終了時に、すべてのマウスを殺処分し、生体外イメージングのために主要臓器及び腫瘍を切除した。
PTX/PEG−Fmoc2混合ナノミセルの生体内分布を調査するため、近赤外蛍光(NIRF)イメージングを近赤外蛍光色素Cy5.5で標識されたPTXを用いて行った。PTX−Cy5.5/PEG−Fmoc2混合ナノミセル(0.4 PTX−Cy5.5 mg/mL)200μLを、CL1異種移植片を有するSCIDマウスに静脈内注射した。予定された時刻に、マウスを麻酔して、630nmにおける励起及び700nmにおける発光による30秒の露光時間を用いて、Carestream Molecular ImagingのIn-Vivo Imaging FX Proによりスキャンした。イメージング研究の終了時に、すべてのマウスを殺処分し、生体外イメージングのために主要臓器及び腫瘍を切除した。
2(b)(xii).生体内治療効果
同系マウス乳癌モデル(4T1.2)を、雌のBALB/cマウスの右脇腹に2×105の4T1.2細胞を皮下接種することにより作成し、腫瘍の大きさが〜50mm3に達した際に処置を開始した。マウスを5つのグループ(n=5)に無作為に分割し、生理食塩水、TAXOL(10mg PTX/kg)及びPTX/PEG−Fmoc2(10,20及び40mg PTX/kg)をそれぞれ静脈内注射した。腫瘍体積をノギスで測定し、以下の式に基づいて計算した:(L×W2)/2、ここで、Lは最長の、Wは最短の腫瘍直径(mm)である。該データを、相対的な腫瘍体積(RTV、所与の時点での腫瘍容積を、最初の治療より前の腫瘍体積で割ったもの)として示した。腫瘍が潰瘍を発症したときに、マウスを殺処分した。製剤の潜在的毒性を評価するために、全てのマウスの体重変化は、治療の過程全体の間にも測定した。実験の終了時に腫瘍を採取して、腫瘍重量を測定した。腫瘍増殖阻害率(IR)は、以下のようにして計算した:1−(PTXを処置した群の腫瘍重量の平均/生理食塩水を処置した群の腫瘍重量の平均)×100%。
同系マウス乳癌モデル(4T1.2)を、雌のBALB/cマウスの右脇腹に2×105の4T1.2細胞を皮下接種することにより作成し、腫瘍の大きさが〜50mm3に達した際に処置を開始した。マウスを5つのグループ(n=5)に無作為に分割し、生理食塩水、TAXOL(10mg PTX/kg)及びPTX/PEG−Fmoc2(10,20及び40mg PTX/kg)をそれぞれ静脈内注射した。腫瘍体積をノギスで測定し、以下の式に基づいて計算した:(L×W2)/2、ここで、Lは最長の、Wは最短の腫瘍直径(mm)である。該データを、相対的な腫瘍体積(RTV、所与の時点での腫瘍容積を、最初の治療より前の腫瘍体積で割ったもの)として示した。腫瘍が潰瘍を発症したときに、マウスを殺処分した。製剤の潜在的毒性を評価するために、全てのマウスの体重変化は、治療の過程全体の間にも測定した。実験の終了時に腫瘍を採取して、腫瘍重量を測定した。腫瘍増殖阻害率(IR)は、以下のようにして計算した:1−(PTXを処置した群の腫瘍重量の平均/生理食塩水を処置した群の腫瘍重量の平均)×100%。
2(b)(xii).統計分析
2つのグループ間における両側スチューデントt検定を用いて統計分析を行い、p<0.05を統計的に有意とみなした。複数のグループ間における有意性を評価するために一方向ANOVAを行い、p<0.05の場合には、続いて両側スチューデントt検定を行った。
2つのグループ間における両側スチューデントt検定を用いて統計分析を行い、p<0.05を統計的に有意とみなした。複数のグループ間における有意性を評価するために一方向ANOVAを行い、p<0.05の場合には、続いて両側スチューデントt検定を行った。
3.ドキソルビシンの試験
3(a).材料
Fmoc−FTSシステムによる試験用のドキソルビシンまたはDOX(>99%)は、LC Laboratories(マサチューセッツ州ウーバン)より購入した。L−αーホスファチジルコリン(大豆PC)、硫酸アンモニウム((NH4)2SO4)及びDSPE−PEG(2000)−OCH3は、Avanti(登録商標) Polar Lipids社(アラバマ州アラバスター)より購入した。コレステロール(Chol)は、Sigma-Aldrich社(ミズーリ州セントルイス)より購入した。
Fmoc−FTSシステムによる試験用のドキソルビシンまたはDOX(>99%)は、LC Laboratories(マサチューセッツ州ウーバン)より購入した。L−αーホスファチジルコリン(大豆PC)、硫酸アンモニウム((NH4)2SO4)及びDSPE−PEG(2000)−OCH3は、Avanti(登録商標) Polar Lipids社(アラバマ州アラバスター)より購入した。コレステロール(Chol)は、Sigma-Aldrich社(ミズーリ州セントルイス)より購入した。
未修飾リポソームを、SPC:Chol:DSPE−PEG2000を7:3:0.5のモル比にて構成した。脂質成分のクロロホルム溶液を混合し、穏やかなN2流下で蒸発させた後、真空下において少なくとも4時間蒸発させた。乾燥した脂質膜を、硫酸アンモニウム(123mmol)を用いて4℃で一晩かけて水和した。短時間渦動させた後、続いて懸濁液を3ワットの電力で1時間プローブ超音波処理した。硫酸アンモニウムを含有するリポソームを、生理食塩水で予め平衡化させていたカラムに通過させた。リポソーム懸濁液は、その後DOX生理食塩溶液と混合した。最終的なリポソーム/DOXは、ゲルクロマトグラフィーを用いて生成され、それによりカプセル化されていないDOXを除去した。DOX生理食塩溶液を、クロロホルム(CHCl3)/メタノール(MeOH)(1:1、v/v)の混合液中において、トリエチルアミン(2当量)とともに攪拌して、DOX−HClから塩酸を除去した。薬物を含まないDOX可溶化ミセルを、PTXがロードされたミセルと同様にして調製した。
ビタミンE及びFmocのよる試験用のDOXは、AK Scientific社(カリフォルニア州ユニオンシティ)より購入した。メトキシ−PEG5,000−OH、コハク酸無水物、Boc−lys−(Boc)−OH及びFmoc−lys−(Boc)−OHは、全てSigma-Aldrich社(ミズーリ州セントルイス)より購入した。D−α−トコフェロール(ビタミンE)は、東京化成工業社(オレゴン州ポートランド)より購入した。DCCは、Alfa Aesar社(米国マサチューセッツ州)より購入した。DMAPは、Calbiochem-Novabiochem社(カリフォルニア州サンディエゴ)より購入した。本試験で用いた全ての溶媒は、HPLCグレードであった。
3(b).DOXがロードされたPEG5K−Fmoc−FTS2のための生体内における腫瘍治療試験
種々のDOX製剤の治療効果を調査するため、同系マウス乳癌モデル(4T1.2)を使用した。1×105の4T1.2細胞(PBS200μL中)を、雌のBALB/cマウスの右脇腹に皮下接種させた。マウスの腫瘍が〜50mm3の腫瘍体積に達したときに治療を開始し、その日を1日目とした。1日目に、これらのマウスを無作為に8群(n=5)に分割して、1日目、4日目、7日目にそれぞれ、PBS(対照)、DOX(5mg DOX/kg)を、リポソーム/DOX(5mg DOX/kg)を、DOXがロードされたPEG5K−Fmoc−FTS2ミセル(5、10mg DOX/kg)及びDOXがロードされたPEG5K−FTS2(5mg DOX/kg)を静脈内投与した。腫瘍のサイズをデジタルノギスで週に3度測定し、以下の式により計算した:(L×W2)/2、ここで、Lは最長の、Wは最短の腫瘍直径(mm)である。各群の間で比較するために、相対的な腫瘍体積(RTV)を、各測定時点において計算した(RTVは、所与の時点での腫瘍容積を最初の治療より前の腫瘍体積で割ったものに等しい)。腫瘍が2000mm3に達したとき、マウスを殺処分した。種々の群からの全てのマウスの体重を、3日毎に測定した。
種々のDOX製剤の治療効果を調査するため、同系マウス乳癌モデル(4T1.2)を使用した。1×105の4T1.2細胞(PBS200μL中)を、雌のBALB/cマウスの右脇腹に皮下接種させた。マウスの腫瘍が〜50mm3の腫瘍体積に達したときに治療を開始し、その日を1日目とした。1日目に、これらのマウスを無作為に8群(n=5)に分割して、1日目、4日目、7日目にそれぞれ、PBS(対照)、DOX(5mg DOX/kg)を、リポソーム/DOX(5mg DOX/kg)を、DOXがロードされたPEG5K−Fmoc−FTS2ミセル(5、10mg DOX/kg)及びDOXがロードされたPEG5K−FTS2(5mg DOX/kg)を静脈内投与した。腫瘍のサイズをデジタルノギスで週に3度測定し、以下の式により計算した:(L×W2)/2、ここで、Lは最長の、Wは最短の腫瘍直径(mm)である。各群の間で比較するために、相対的な腫瘍体積(RTV)を、各測定時点において計算した(RTVは、所与の時点での腫瘍容積を最初の治療より前の腫瘍体積で割ったものに等しい)。腫瘍が2000mm3に達したとき、マウスを殺処分した。種々の群からの全てのマウスの体重を、3日毎に測定した。
3(c).PEG5K−VE2(PEG−VE2)の合成
まず、(Boc)リシン(Boc)−OH(4当量)を、カップリング剤としてDCC(3当量)及びDMAP(0.1当量)を用いて、PEG5Kの−OH末端上にDCM中で一晩かけてカップリングさせた。冷エタノール及びエーテルをそれぞれ用いて、PEG−Lys−ジBocエステルを沈殿させて3回洗浄した。次に、DCM中にて50%トリフルオロ酢酸で処理することにより、Boc基を除去した。冷エタノール及びエーテルをそれぞれ用いて、得られた(PEG5K−リシンエステル)を沈殿させて3回洗浄した。続いて、ビタミンEコハク酸(6当量)を、リシンのアミノ基にカップリングさせて、PEG5K−VE2を得た。最終生成物を、冷エタノールおよびエーテルをそれぞれ用いて3回沈殿及び洗浄させた。最終生成物を凍結乾燥させて、白色粉末を得た。該合成経路を図10Aに示す。
まず、(Boc)リシン(Boc)−OH(4当量)を、カップリング剤としてDCC(3当量)及びDMAP(0.1当量)を用いて、PEG5Kの−OH末端上にDCM中で一晩かけてカップリングさせた。冷エタノール及びエーテルをそれぞれ用いて、PEG−Lys−ジBocエステルを沈殿させて3回洗浄した。次に、DCM中にて50%トリフルオロ酢酸で処理することにより、Boc基を除去した。冷エタノール及びエーテルをそれぞれ用いて、得られた(PEG5K−リシンエステル)を沈殿させて3回洗浄した。続いて、ビタミンEコハク酸(6当量)を、リシンのアミノ基にカップリングさせて、PEG5K−VE2を得た。最終生成物を、冷エタノールおよびエーテルをそれぞれ用いて3回沈殿及び洗浄させた。最終生成物を凍結乾燥させて、白色粉末を得た。該合成経路を図10Aに示す。
3(d).PEG5K−Fmoc−FVE2(PEG−FVE2)の合成
PEG−FVE2を、分子量5000DaのMeO−PEG−OHより、溶液相縮合反応により合成した。Fmoc−lys−(Boc)−OH(4当量)を、カップリング剤としてDCC(4当量)およびDMAP(0.2当量)を用いて、PEGの−OH末端上にDCM中で一晩かけてカップリングさせた。冷エタノール及びエーテルをそれぞれ用いて、Fmoc−lys−(Boc)PEGエステルを沈殿させて3回洗浄した。次に、DCM中にて50%トリフルオロ酢酸で処理することによりBoc基を除去し、冷エタノール及びエーテルをそれぞれ用いて、Fmoc−リシルPEGエステルを沈殿させて3回洗浄した。Boc−lys−(Boc)−OH(2当量)を、カップリング剤としてDCC(2当量)及びDMAP(0.1当量)を用いて、Fmoc−リシルPEGエステルのNH2末端にDCM中で一晩かけて結合させた。冷エタノール及びエーテルをそれぞれ用いて、ジ−BocPEGエステルを沈殿及び3回洗浄させた。その後、DCM中にて50%トリフルオロ酢酸で処理することによりBoc基を除去し、冷エタノール及びエーテルをそれぞれ用いて、ジNH2PEGエステルを沈殿させて3回洗浄した。得られた白色粉末の沈殿物を、真空下で乾燥させた。ビタミンEコハク酸(4当量)を、DCC(4当量)及びDMAP(0.2当量)の支援を受けて、リシンの脱保護されたアミノ基にカップリングさせた。冷エタノール及びエーテルをそれぞれ用いて得られたPEG−FVE2を沈殿させて3回洗浄した。最終生成物を連続して水に対する透析及び凍結乾燥させて、白色粉末を得た。該合成経路を図10Bに示す。
PEG−FVE2を、分子量5000DaのMeO−PEG−OHより、溶液相縮合反応により合成した。Fmoc−lys−(Boc)−OH(4当量)を、カップリング剤としてDCC(4当量)およびDMAP(0.2当量)を用いて、PEGの−OH末端上にDCM中で一晩かけてカップリングさせた。冷エタノール及びエーテルをそれぞれ用いて、Fmoc−lys−(Boc)PEGエステルを沈殿させて3回洗浄した。次に、DCM中にて50%トリフルオロ酢酸で処理することによりBoc基を除去し、冷エタノール及びエーテルをそれぞれ用いて、Fmoc−リシルPEGエステルを沈殿させて3回洗浄した。Boc−lys−(Boc)−OH(2当量)を、カップリング剤としてDCC(2当量)及びDMAP(0.1当量)を用いて、Fmoc−リシルPEGエステルのNH2末端にDCM中で一晩かけて結合させた。冷エタノール及びエーテルをそれぞれ用いて、ジ−BocPEGエステルを沈殿及び3回洗浄させた。その後、DCM中にて50%トリフルオロ酢酸で処理することによりBoc基を除去し、冷エタノール及びエーテルをそれぞれ用いて、ジNH2PEGエステルを沈殿させて3回洗浄した。得られた白色粉末の沈殿物を、真空下で乾燥させた。ビタミンEコハク酸(4当量)を、DCC(4当量)及びDMAP(0.2当量)の支援を受けて、リシンの脱保護されたアミノ基にカップリングさせた。冷エタノール及びエーテルをそれぞれ用いて得られたPEG−FVE2を沈殿させて3回洗浄した。最終生成物を連続して水に対する透析及び凍結乾燥させて、白色粉末を得た。該合成経路を図10Bに示す。
3(e).DOXがロードされたPEG−VE2及びPEG−FVE2ミセルの調製及び生物物理学的キャラクタリゼーション
まず、CHCl3/MeOH(1:1、v:v)中にて3モル当量のトリエチルアミンによりDOX・HClを中和し、それによって親化合物からHClを除去した。種々のキャリア/薬物モル比にて、DOX(10mM、CHCl3/MeOH中)をPEG−FVE2(クロロホルム中10mM)に加えた。まず、該有機溶媒を窒素流により除去し、それによって薬物/キャリア混合物の乾燥薄膜を形成した。該乾燥膜を高真空下で2時間乾燥させて、残留溶媒の全痕跡を除去した。該混合物膜は、その後、さらなる超音波処理をすることなく、生理食塩水中に再溶解した。同様にして、DOXがロードされたPEG−VE2を調製した。薬物製剤化ミセルの平均直径を、動的光散乱(DLS)によって評価した。ミセル内にロードされたDOX濃度を、検出器セットを備えたHPLCによって227nmにて調査した。薬物ロード容量(DLC)及び薬物ロード効率(DLE)を、上述のようにして計算した。
まず、CHCl3/MeOH(1:1、v:v)中にて3モル当量のトリエチルアミンによりDOX・HClを中和し、それによって親化合物からHClを除去した。種々のキャリア/薬物モル比にて、DOX(10mM、CHCl3/MeOH中)をPEG−FVE2(クロロホルム中10mM)に加えた。まず、該有機溶媒を窒素流により除去し、それによって薬物/キャリア混合物の乾燥薄膜を形成した。該乾燥膜を高真空下で2時間乾燥させて、残留溶媒の全痕跡を除去した。該混合物膜は、その後、さらなる超音波処理をすることなく、生理食塩水中に再溶解した。同様にして、DOXがロードされたPEG−VE2を調製した。薬物製剤化ミセルの平均直径を、動的光散乱(DLS)によって評価した。ミセル内にロードされたDOX濃度を、検出器セットを備えたHPLCによって227nmにて調査した。薬物ロード容量(DLC)及び薬物ロード効率(DLE)を、上述のようにして計算した。
3(f).試験管内での放出動態
放出媒体としての0.5%Tween 80(w/v)を含むDPBS(PH=7.4)を用いて、DOXの生体内放出動態を透析法により実行した。遊離DOXを、対照として使用した。2mLのDOXがロードされたPEG−VE2またはPEG−FVE2のナノ製剤(1mg DOX/mL)を、透析チューブ(MWCO=12kDa、Spectrum Laboratories社製)内に封止した。パラフィルムで覆われたビーカー内において、該透析チューブを放出媒体500mL中に浸漬した。該ビーカーを、振とう培養機中にて37℃で100rpmに維持した。種々の時点で、該透析チューブに保持されたDOXの濃度を、検出器セットを備えたHPLCによって227nmにて調査した。値は、3つのサンプルの平均値として報告した。
放出媒体としての0.5%Tween 80(w/v)を含むDPBS(PH=7.4)を用いて、DOXの生体内放出動態を透析法により実行した。遊離DOXを、対照として使用した。2mLのDOXがロードされたPEG−VE2またはPEG−FVE2のナノ製剤(1mg DOX/mL)を、透析チューブ(MWCO=12kDa、Spectrum Laboratories社製)内に封止した。パラフィルムで覆われたビーカー内において、該透析チューブを放出媒体500mL中に浸漬した。該ビーカーを、振とう培養機中にて37℃で100rpmに維持した。種々の時点で、該透析チューブに保持されたDOXの濃度を、検出器セットを備えたHPLCによって227nmにて調査した。値は、3つのサンプルの平均値として報告した。
3(g).生体内における抗腫瘍治療研究
種々のDOX製剤の治療効果を評価するため、同系マウス乳癌モデル(4T1.2)を用いた。まず、2×105の4T1.2細胞(生理食塩水200L中)を、雌のBALB/cマウスの右脇腹に皮下接種させた。マウスの腫瘍が50〜100mm3の体積に達した際に、これらのマウスを5つのマウス5匹からなる群に無作為に割当して、その日を1日目とした。マウスには、PBS(対照)、遊離DOX(10mg/kg)、DOXIL(10mg/kg)、DOXがロードされたPEG−VE2(10mg/kg)及びDOXがロードされたPEG−FVE2(10及び20mg/kg)を、静脈内に3回、3日間隔で、それぞれ1日目、4日目、7日目に投与した。1、4、7、10、12、15、18、21、25日目に、腫瘍のサイズをデジタルノギスで測定し、以下の式に従って計算した:(L×W2)/2、ここで、L及びWは、それぞれ各腫瘍の長さ及び幅である。各群の間でより優れた比較をするために、相対的な腫瘍体積(RTV)を、各測定時点において計算した(RTV=所与の時点での腫瘍容積/最初の治療より前の腫瘍体積)。腫瘍が2000mm3に達した際または重度の潰瘍に発達した際のいずれかが先に来た時点でマウスを殺処分して、該腫瘍を秤量した。
種々のDOX製剤の治療効果を評価するため、同系マウス乳癌モデル(4T1.2)を用いた。まず、2×105の4T1.2細胞(生理食塩水200L中)を、雌のBALB/cマウスの右脇腹に皮下接種させた。マウスの腫瘍が50〜100mm3の体積に達した際に、これらのマウスを5つのマウス5匹からなる群に無作為に割当して、その日を1日目とした。マウスには、PBS(対照)、遊離DOX(10mg/kg)、DOXIL(10mg/kg)、DOXがロードされたPEG−VE2(10mg/kg)及びDOXがロードされたPEG−FVE2(10及び20mg/kg)を、静脈内に3回、3日間隔で、それぞれ1日目、4日目、7日目に投与した。1、4、7、10、12、15、18、21、25日目に、腫瘍のサイズをデジタルノギスで測定し、以下の式に従って計算した:(L×W2)/2、ここで、L及びWは、それぞれ各腫瘍の長さ及び幅である。各群の間でより優れた比較をするために、相対的な腫瘍体積(RTV)を、各測定時点において計算した(RTV=所与の時点での腫瘍容積/最初の治療より前の腫瘍体積)。腫瘍が2000mm3に達した際または重度の潰瘍に発達した際のいずれかが先に来た時点でマウスを殺処分して、該腫瘍を秤量した。
前述の詳細な説明および添付の図面は、現時点での代表的ないくつかの実施形態を明らかにする。様々な修正、追加及び代替設計は、前述の詳細な説明ではなく以下の特許請求の範囲により示される本願の範囲から逸脱することなく、前述の教示に照らして当業者にとって当然に明らかになるであろう。特許請求の範囲の均等物の意図及び範囲内に入る全ての変更および変形は、該特許請求の範囲内に包含されることとなる。
Claims (74)
- 化合物のための製剤を作製する方法であって、
前記化合物と相互作用する少なくとも1つの基を備えた化合物相互作用剤を決定する工程と、
前記化合物と相互作用する前記少なくとも1つの基を備えた少なくとも1つの化合物相互作用ドメインを、少なくとも1つの親水性ドメインと共役させることによって、キャリア剤を作製する工程と、
前記製剤を作製するように前記化合物と前記キャリア剤とを組み合わせる工程とを備えている、方法。 - 前記キャリア剤を作製する工程が、前記少なくとも1つの化合物相互作用ドメインが前記少なくとも1つの親水性ドメインと少なくとも1つの疎水性ドメインとの間に配置されるように、前記少なくとも1つの化合物相互作用ドメインを前記少なくとも1つの疎水性ドメインと共役させることをさらに備えている、請求項2に記載の方法。
- 前記少なくとも1つの疎水性ドメインが、少なくとも1つの脂質を備えている、請求項2に記載の方法。
- 前記少なくとも1つの親水性ドメインが、少なくとも1つの親水性オリゴマーまたは少なくとも1つの親水性ポリマーを備えている、請求項1または2に記載の方法。
- 前記親水性オリゴマーまたは前記親水性ポリマーが、ポリアルキレンオキシド、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリオキサゾリンまたはポリペプチドである、請求項4に記載の方法。
- 前記ポリアルキレンオキシドがポリエチレングリコールである、請求項5に記載の方法。
- 前記少なくとも1つの親水性ドメインが、少なくとも1つのイオン性基を備えている、請求項1または2に記載の方法。
- 前記少なくとも1つの親水性ドメインが、少なくとも1つのカルボン酸基、少なくとも1つのアミン基、少なくとも1つの糖基または少なくとも1つの多糖基を備えている、請求項1または2に記載の方法。
- 前記化合物相互作用ドメインが、少なくとも1つのアミノ酸基または少なくとも1つのペプチド基を備えている、請求項1または2に記載の方法。
- 前期化合物相互作用ドメインが、フルオレニルメチルオキシカルボニル基、カルボベンジルオキシ基、イソブトキシカルバメート基、ナフチルアセチル基、カルバゾール基、キノロン基、イソキノロン基、もしくは、前記化合物、前記化合物の一部、(9H−フルオレン−9−イル)メタンアミン、(9H−フルオレン−9−イル)メタノール、9H−フルオレン−9−アミン、ナフタレン、1,1’−ビ−2−ナフトール(BINOL)、カンプトテシン、カンプトテシン類似体、ペメトレキセド、ドセタキセル、パクリタキセル、エピルビシン、ドキソルビシン、ビンブラスチン、ビンデシン、エトポシド、ヒドロキシカンプトテシン、イリノテカン、ミトキサントロン、タモキシフェン、トレチノイン、ビタミンA、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンD、クルクミン、イマチニブ、ゲフィチニブ、エルロチニブ、ソラフェニブ及びボルテゾミブから選択される分子の残基である基、またはそれらの誘導体のうち少なくとも1つを備えている、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
- 前記化合物相互作用ドメインが、フルオレニルメチルオキシカルボニル基またはその誘導体のうち少なくとも1つを備えている、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
- 前記製剤が複合体を形成している、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
- 前記複合体が、ミセル、エマルジョン、クリーム、リポソーム、球晶、固体脂質ナノ粒子、ヒドロゲルまたは立方相リポゲルである、請求項12に記載の方法。
- 前記化合物と相互作用する前記少なくとも1つの基が、前記化合物に対する親和性を有している、請求項1または2に記載の方法。
- 前記アミノ酸基または前記ペプチド基が、前記化合物に対する親和性を有する少なくとも1つのペンダント基を備えている、請求項9に記載の方法。
- 前記化合物と相互作用する前記少なくとも1つの基が、π−πスタッキング、疎水性相互作用または水素結合を介して前記化合物と相互作用する、請求項1〜15のいずれか1項に記載の方法。
- 前記少なくとも1つの疎水性ドメインが、少なくとも1つの脂質、少なくとも1つのトコフェロール、少なくとも1つの疎水性オリゴマーまたは少なくとも1つの疎水性ポリマーを備えている、請求項2〜16のいずれか1項に記載の方法。
- 前記少なくとも1つの疎水性ドメインが、ポリメチルアクリル、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリイソブタン、ポリエステル、ポリペプチドまたはそれらの誘導体のうち少なくとも1つを備えている、請求項2〜16のいずれか1項に記載の方法。
- 前記少なくとも1つの疎水性ドメインが、ファルネシルチオサリチレート基を備えている、請求項2〜18のいずれか1項に記載の方法。
- 前記キャリアシステムが、少なくとも10%の薬物ロード容量を提供する、請求項1〜19のいずれか1項に記載の方法。
- 前記キャリアシステムが、少なくとも20%の薬物ロード容量を提供する、請求項1〜19のいずれか1項に記載の方法。
- 前記キャリアシステムが、少なくとも30%の薬物ロード容量を提供する、請求項1〜19のいずれか1項に記載の方法。
- 前記化合物が、JP4−039、パクリタキセル、FK506、シクロスポリンA、プロトポルフィリン、GW4064、ローズベンガル、エピガロカテキンガレート、クルクミン、インドメタシン、タモキシフェンまたはドキソルビシンである、請求項1〜22のいずれか1項に記載の方法。
- 前記化合物がパクリタキセルであり、前記親水性ドメインがポリエチレングリコールであり、前記相互作用ドメインがフルオレニルメチルオキシカルボニル基またはその誘導体のうち少なくとも1つを備えている、請求項1〜22のいずれか1項に記載の方法。
- 前記キャリアの前記少なくとも1つの化合物相互作用ドメインが、前記少なくとも1つの親水性ドメインに共有結合されている、請求項1〜24のいずれか1項に記載の方法。
- キャリア剤の前記少なくとも1つの化合物相互作用ドメインが、前記少なくとも1つの親水性ドメインに共有結合されていると共に前記少なくとも1つの疎水性ドメインに共有結合されている、請求項2〜24のいずれか1項に記載の方法。
- 化合物を患者に送達させるための製剤であって、
前記化合物と、前記化合物と相互作用する前記少なくとも1つの基を備えた少なくとも1つの化合物相互作用ドメインと共役させられた少なくとも1つの親水性ドメインを備えたキャリア剤とを備えている、製剤。 - 前記少なくとも1つの化合物相互作用ドメインが前記少なくとも1つの親水性ドメインと少なくとも1つの疎水性ドメインとの間に配置されるように、前記キャリア剤が、前記少なくとも1つの化合物相互作用ドメインと共役させられた前記少なくとも1つの疎水性ドメインをさらに備えている、請求項27に記載の製剤。
- 化合物を患者に送達させるための製剤を作製する方法であって、
前記化合物と相互作用する前記少なくとも1つの基を備えた少なくとも1つの化合物相互作用ドメインと共役させられた少なくとも1つの親水性ドメインを備えたキャリア剤を提供する工程と、
前記化合物と前記キャリア剤とを組み合わせる工程とを備えている、方法。 - 前記少なくとも1つの化合物相互作用ドメインが前記少なくとも1つの親水性ドメインと少なくとも1つの疎水性ドメインとの間に配置されるように、前記キャリア剤が、前記少なくとも1つの化合物相互作用ドメインと共役させられた前記少なくとも1つの疎水性ドメインをさらに備えている、請求項29に記載の方法。
- 化合物と共に使用するためのキャリア剤であって、前記化合物と相互作用する少なくとも1つの基を備えた少なくとも1つの化合物相互作用ドメインと共役させられた少なくとも1つの親水性ドメインを備えている、キャリア剤。
- 前記少なくとも1つの化合物相互作用ドメインが前記少なくとも1つの親水性ドメインと少なくとも1つの疎水性ドメインとの間に配置されるように、前記少なくとも1つの化合物相互作用ドメインと共役させられた前記少なくとも1つの疎水性ドメインをさらに備えている、請求項31に記載のキャリア剤。
- 前記少なくとも1つの疎水性ドメインが、少なくとも1つの脂質を備えている、請求項32に記載のキャリア剤。
- 前記少なくとも1つの親水性ドメインが、少なくとも1つの親水性オリゴマーまたは少なくとも1つの親水性ポリマーを備えている、請求項31または32に記載のキャリア剤。
- 前記少なくとも1つの親水性オリゴマーまたは前記少なくとも1つの親水性ポリマーが、ポリアルキレンオキシド、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリオキサゾリンまたはポリペプチドである、請求項34に記載のキャリア剤。
- 前記ポリアルキレンオキシドがポリエチレングリコールである、請求項35に記載のキャリア剤。
- 前記少なくとも1つの親水性ドメインが、少なくとも1つのイオン性基を備えている、請求項31または32に記載のキャリア剤。
- 前記少なくとも1つの親水性ドメインが、少なくとも1つのカルボン酸基、少なくとも1つのアミン基、少なくとも1つの糖基または少なくとも1つの多糖基を備えている、請求項31または32に記載のキャリア剤。
- 前記化合物相互作用ドメインが、少なくとも1つのアミノ酸基または少なくとも1つのペプチド基を備えている、請求項31または32に記載のキャリア剤。
- 前期化合物相互作用ドメインが、フルオレニルメチルオキシカルボニル基、カルボベンジルオキシ基、イソブトキシカルバメート基、ナフチルアセチル基、カルバゾール基、キノロン基、イソキノロン基、もしくは、前記化合物、前記化合物の一部、(9H−フルオレン−9−イル)メタンアミン、(9H−フルオレン−9−イル)メタノール、9H−フルオレン−9−アミン、ナフタレン、1,1’−ビ−2−ナフトール(BINOL)、カンプトテシン、カンプトテシン類似体、ペメトレキセド、ドセタキセル、パクリタキセル、エピルビシン、ドキソルビシン、ビンブラスチン、ビンデシン、エトポシド、ヒドロキシカンプトテシン、イリノテカン、ミトキサントロン、タモキシフェン、トレチノイン、ビタミンA、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンD、クルクミン、イマチニブ、ゲフィチニブ、エルロチニブ、ソラフェニブ及びボルテゾミブから選択される分子の残基である基、またはそれらの誘導体のうち少なくとも1つを備えている、請求項31〜39のいずれか1項に記載のキャリア剤。
- 前記化合物相互作用ドメインが、フルオレニルメチルオキシカルボニル基またはその誘導体のうち少なくとも1つを備えている、請求項31〜39のいずれか1項に記載のキャリア剤。
- 前記製剤が複合体を形成している、請求項31〜41のいずれか1項に記載のキャリア剤。
- 前記複合体が、ミセル、エマルジョン、クリーム、リポソーム、球晶、固体脂質ナノ粒子、ヒドロゲルまたは立方相リポゲルである、請求項42に記載のキャリア剤。
- 前記化合物と相互作用する前記少なくとも1つの基が、前記化合物に対する親和性を有している、請求項31または32に記載のキャリア剤。
- 前記アミノ酸基または前記ペプチド基が、前記化合物に対する親和性を有する少なくとも1つのペンダント基を備えている、請求項39に記載のキャリア剤。
- 前記化合物と相互作用する前記少なくとも1つの基が、π−πスタッキング、疎水性相互作用または水素結合を介して前記化合物と相互作用する、請求項31〜45のいずれか1項に記載のキャリア剤。
- 前記少なくとも1つの疎水性ドメインが、少なくとも1つの脂質、少なくとも1つのトコフェロール、少なくとも1つの疎水性オリゴマーまたは少なくとも1つの疎水性ポリマーを備えている、請求項32〜46のいずれか1項に記載のキャリア剤。
- 前記少なくとも1つの疎水性ドメインが、ポリメチルアクリル、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリイソブタン、ポリエステル、ポリペプチドまたはそれらの誘導体のうち少なくとも1つを備えている、請求項32〜46のいずれか1項に記載のキャリア剤。
- 前記少なくとも1つの疎水性ドメインが、ファルネシルチオサリチレート基を備えている、請求項31〜48のいずれか1項に記載のキャリア剤。
- 前記キャリアシステムが、少なくとも10%の薬物ロード容量を提供する、請求項31〜49のいずれか1項に記載のキャリア剤。
- 前記キャリアシステムが、少なくとも20%の薬物ロード容量を提供する、請求項31〜49のいずれか1項に記載のキャリア剤。
- 前記キャリアシステムが、少なくとも30%の薬物ロード容量を提供する、請求項31〜49のいずれか1項に記載のキャリア剤。
- 前記化合物が、JP4−039、パクリタキセル、FK506、シクロスポリンA、プロトポルフィリン、GW4064、ローズベンガル、エピガロカテキンガレート、クルクミン、インドメタシン、タモキシフェンまたはドキソルビシンである、請求項31〜52のいずれか1項に記載のキャリア剤。
- 前記化合物がパクリタキセルであり、前記親水性ドメインがポリエチレングリコールであり、前記相互作用ドメインがフルオレニルメチルオキシカルボニル基またはその誘導体のうち少なくとも1つを備えている、請求項31〜52のいずれか1項に記載のキャリア剤。
- 前記キャリアの前記少なくとも1つの化合物相互作用ドメインが、前記少なくとも1つの親水性ドメインに共有結合されている、請求項31〜54のいずれか1項に記載のキャリア剤。
- キャリア剤の前記少なくとも1つの化合物相互作用ドメインが、前記少なくとも1つの親水性ドメインに共有結合されていると共に前記少なくとも1つの疎水性ドメインに共有結合されている、請求項32〜54のいずれか1項に記載のキャリア剤。
- 化合物により患者を処置する方法であって、
製剤を患者に送達する工程を備えており、
前記製剤が、前記化合物と、前記化合物と相互作用する少なくとも1つの基を備えた少なくとも1つの化合物相互作用ドメインを備えているキャリア剤とを備えており、
前記少なくとも1つの化合物相互作用基が、少なくとも1つの親水性ドメインと共役させられている、方法。 - 前記少なくとも1つの化合物相互作用ドメインが前記少なくとも1つの親水性ドメインと少なくとも1つの疎水性ドメインとの間に配置されるように、前記キャリア剤が、前記少なくとも1つの化合物相互作用ドメインと共役させられた前記少なくとも1つの疎水性ドメインをさらに備えている、請求項57に記載の方法。
- 前記製剤が、請求項1〜26のいずれか1項に記載の方法により形成されている、請求項57または58に記載の方法。
- フルオレニルメチルオキシカルボニル基、カルボベンジルオキシ基、イソブトキシカルバメート基、ナフチルアセチル基、カルバゾール基、キノロン基、イソキノロン基、及び、(9H−フルオレン−9−イル)メタンアミン、(9H−フルオレン−9−イル)メタノール、9H−フルオレン−9−アミン、ナフタレン、1,1’−ビ−2−ナフトール(BINOL)、カンプトテシン、カンプトテシン類似体、ペメトレキセド、ドセタキセル、パクリタキセル、エピルビシン、ドキソルビシン、ビンブラスチン、ビンデシン、エトポシド、ヒドロキシカンプトテシン、イリノテカン、ミトキサントロン、タモキシフェン、トレチノイン、ビタミンA、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンD、クルクミン、イマチニブ、ゲフィチニブ、エルロチニブ、ソラフェニブ及びボルテゾミブから選択される分子の残基である基、またはそれらの誘導体から選択される少なくとも1つの基に結合させられた、少なくとも1つの親水性ポリマーを備えている物質の組成物。
- 前記親水性ポリマーが、ポリアルキレンオキシド、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリオキサゾリンまたはポリペプチドである、請求項60に記載の組成物。
- 前記親水性ポリマーがポリアルキレンオキシドである、請求項61に記載の組成物。
- 前記親水性ポリマーがポリエチレングリコールである、請求項61に記載の組成物。
- 前記少なくとも1つの基が、フルオレニルメチルオキシカルボニル基、カルボベンジルオキシ基、イソブトキシカルバメート基、ナフチルアセチル基またはカルバゾール基である、請求項60〜63のいずれか1項に記載の組成物。
- 前記少なくとも1つの基がフルオレニルメチルオキシカルボニル基である、請求項60〜64のいずれか1項に記載の組成物。
- 前記少なくとも1つの基が、少なくとも1つのアミノ酸基または少なくとも1つのペプチド基を介して、前記少なくとも1つの親水性ポリマーに結合されている、請求項60〜65のいずれか1項に記載の組成物。
- 前記組成物が、ポリエチレングリコール−リシル−(α−Fmoc−ε−t−Boc−リシン)2である、請求項66に記載の組成物。
- 前記ポリエチレングリコールが、少なくとも1KDaの分子量を有している、請求項67に記載の組成物。
- 前記ポリエチレングリコールが、およそ1KDa〜10KDaの範囲の分子量を有している、請求項68に記載の組成物。
- 少なくとも1つの疎水性基をさらに備えており、前記少なくとも1つの基が前記疎水性基と前記少なくとも1つの親水性ポリマーとの間に配置されている、請求項60〜69のいずれか1項に記載の組成物。
- 前記少なくとも1つの疎水性基が、脂質、ポリメチルアクリル、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリイソブタン、ポリエステル、ポリペプチドまたはそれらの誘導体のうち少なくとも1つを備えている、請求項70に記載の組成物。
- 前記少なくとも1つの疎水性基が、少なくとも1つの脂質基を備えている、請求項71に記載の組成物。
- 前記少なくとも1つの疎水性基が、少なくとも1つのオレイル基を備えている、請求項72に記載の組成物。
- 前記組成物が、ミセル、エマルジョン、クリーム、リポソーム、球晶、固体脂質ナノ粒子、ヒドロゲルまたは立方相リポゲルを形成している、請求項60〜73のいずれか1項に記載の組成物。
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