JP2016500160A - 光学波面の位相制御のための装置 - Google Patents

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Abstract

本発明の一態様によれば、本発明は、所定の使用スペクトルバンドの波長の入射光学波面の位相を制御する装置(20、50)に関し、本発明は、該スペクトルバンドにおいて少なくとも部分的に透過性を有する基板(21)と、基板の表面に略垂直に配置される帯状部(22i、23i、24i)一式と、を備え、サブ波長幅(wi)を有する並置状態の金属/多層誘電体/金属(MmultiDM)構造体(Si)を形成するように、帯状部一式は、並置された帯状部の交互配置を備え、帯状部は、それぞれ、金属材料からなる帯状部(22i)、第1の誘電材料からなる帯状部(23i)、第1の誘電材料とは異なる少なくとも1つの第2の誘電材料からなる帯状部(24i)であって、各構造体は1つまたは複数の伝播モード有するキャビティを形成しており、また、第1の誘電材料からなる帯状部と、第2の誘電材料からなる帯状部のそれぞれの厚さは、MmultiDM構造体の各々において調節されて波面の位相の局所的シフト(ΔΦi)を誘発し、該局所的位相シフトは、キャビティにおいて伝播することができるモードの実効屈折率に依存する。

Description

本発明は、光学波面の位相を制御するための装置、及び該装置の製造方法に関する。
技術的に実現可能で直接的産業用用途を提供する特定の光学関数を生成するために、一般的に400nm〜100μmの波長のサブ波長スケールへ光学系を小型化することが、現今、産業的課題になっている。それにより、特に、光学系の一層優れた統合、より強固な堅牢性、および光学と電子との間の直接結合の実現性が可能になる。
P.Lalanneらによる論文(「構造的カットオフよりも小さいサンプリング周期を用いたブレーズドバイナリ回折素子の設計と製作(Design and fabrication of blazed binary diffractive elements with sampling periods smaller than the structural cutoff)」JOSA A、16巻、5号、1999年)には、誘電材料の層状エッチング(lamellar etching)を用いたレンズとプリズムの最初の製造技術が提示されている。ゾーンの光学指数は、使用される誘電体の指数によって課された最大値と空気の指数である最小値との間で変化する。誘電材料の量と空気の量との間の比率が、ゾーンの光学指数を定義する。同様の装置が、米国特許出願第2009/0020690号に提示されている。このような技術により、制御された技術的方法を使用しつつ、強固な指数変調を生成することが可能になる。しかし、平均実効指数を波長スケールへ誘導する構造化操作があっても、光学波面の位相のサブ波長スケールへの変調は、誘電材料をナノメートルスケールに構造化するだけでは得ることができない。この最後の点は、波面の位相のサブ波長スケールへの制御に対する主要な物理的制限を構成している。
H.Shiらによる論文(「可変幅を有する金属ナノスリットによるビーム操作(Beam manipulating by metallic nano−slits with variant widths)」、Optics Express、13巻、18号、2005年)または国際特許出願WO2011/100070号に記載の別の技術により、波長より小さいスケールへの波面の位相変調が可能になる。この技術によれば、ブレード形状の厚い金属層からなるナノ構造によって入射光の波面の変調が可能になる。具体的には、得られた各スリットが、他の導波路から独立した、結合プラズモンモードが伝播される導波路のように動作する。適切に製造された導波路内で伝播するモードによって観察される実効屈折率neffは、特定の条件下で以下の式(1)により近似可能な関数にしたがって、スリットの幅wに依存することが実証されている(Collinらによる(「ナノスケール金属アパーチャにおける導波性」(waveguiding in nanoscale metallic apertures)、Optics Express、15巻、7号、2007年)。
Figure 2016500160
ここで、nは、スリットを充填する誘電材料の屈折率であり、δは、金属の光学膜厚を表している。図1は、したがって、1μmの厚さhを有する層の650nmの波長のスリット幅の関数としての実効屈折率の傾向を表している。この例では、スリットには空気が充填され、壁は25nm程度の光学膜厚の金で作られている。図1は、上述された技術のおかげで、12.5nm(δ/2)〜250nm(10δ)のガイド幅値wに対してn〜nの3倍の範囲の実効屈折率帯域をカバーする可能性を明らかにしており、このように、スリットの幅wの選択のおかげで、あるスリットから別のスリットへの強力な位相変化が可能になる。ただし、大きな屈折率変調(Δn>0.5)は、金属の膜厚の2倍未満のスリット幅(w<2δ)に対してのみ可能であり、つまり、一般的には、光学および赤外線(IR)の波長50nm未満でのみ可能であり、これは強い技術的制約となる。さらに、図1は、スリット幅の変化ひいては製造の不正確さに対する非常に強い実効屈折率感度を示している。5nm≦w≦40nmなどの幅の範囲内では、スリットの幅の1nmの変化は、Δneff/neff≧0.13の実効屈折率の誤差につながる。
本発明は、波面の位相をサブ波長スケールに制御するための装置であって、該装置の構造変化の関数としての感度が低い装置を提案することを目的とする。
第1の態様によれば、本発明は、所定の使用スペクトルバンドの波長を有する入射光学波面の位相を制御する装置に関し、該装置は、該スペクトルバンドにおいて少なくとも部分的に透過性を有する基板と、基板の表面に略直角に配置されるブレード一式と、を備え、
−サブ波長幅を有する並置状態の金属−多層誘電体−金属(MmultiDM)構造体を形成するように、該ブレード一式は、並置されたブレードの交互配置を備え、ブレードは、それぞれ、金属材料からなるブレード、第1の誘電材料からなるブレード、第1の誘電材料とは異なる少なくとも1つの第2の誘電材料からなるブレードであって、各構造体は1つまたは複数の伝播モードを示すキャビティを形成しており、
−第1の誘電材料からなるブレードと、第2の誘電材料からなるブレードのそれぞれの厚さは、各MmultiDM構造体において調節されて波面の位相の局所的シフトを導入し、誘発された局所的位相シフトは、該キャビティにおいて伝播可能な1つまたは複数のモードの実効屈折率に依存する、装置である。
出願人は、このような装置が、特に、従来技術に記載の位相制御装置を上回る利点を提供することを実証しているが、それは、この装置が、一般的に金属材料の光学膜厚の10倍超の幅の構造体で動作することができ、したがって、技術的制約を緩和しながら、波面の位相のサブ波長スケールへの制御を維持することが可能であることを実証している。また、構造的欠陥に対して、特に、ブレードの厚さまたはキャビティ幅の変動に対して、低減された感度をもつ局所的位相シフト値を得ることができる。したがって、誘電材料からなるブレードのそれぞれの厚さを調整して、所定の使用スペクトルバンドの光学部品の製造のために求められる光学関数に基づいて計算された位相シフトを局所的に得るが、光学関数は装置のMMultiDM構造体の数でサンプリングされることができる。
変形例によれば、各MmultiDM構造体の幅は、実質的に等しくなるように選択され、誘電材料からなる各ブレードのそれぞれの厚さだけが、局所的位相シフトを制御するために構造体ごとに異なる。これによって、同等の結果では、各キャビティ幅が、同一また金属の光学膜厚に比べて十分に大きい幅で動作することが可能になり、したがって、装置の製造が容易になる。
赤外線で装置を作動するためには、MmultiDM構造体の幅は、金属材料の光学的膜厚の10倍以上となるように選択すると都合が良い。
変形例によれば、MmultiDM構造体の幅は、さらに、λmin/2n以下であり、ここでλminは、使用スペクトルバンドの最小波長であって、nは、最大屈折率を有する誘電材料の屈折率である。このMmultiDM構造体の幅の選択により、シングルモードキャビティを製造することが可能になり、出願人は、縦モードの良好な閉じ込めにより非常に良好な透過効果を各構造体が示すことを実証した。
構造体を形成するのに2つの異なるタイプの誘電材料を選択すると都合が良く、したがって各構造体は、第1の誘電材料からなる第1のブレードと、第1の誘電材料とは異なる第2の誘電材料からなる第2のブレードとを備え、金属−誘電体−誘電体−金属(MDDM)構造体を形成する。出願人は、MDDM構造体が、追求される結果と技術的制約との間に優良なトレードオフを示すことを実証した。
各ブレードは、実質的に同一の所定の高さを有していると都合が良い。各ブレードの高さが、入射波面の位相に適用することができる局所的位相シフトの最大値を決定する。高さhは、2πの最大局所的位相シフト値を得るために選択されると都合が良く、2πはあらゆる光学関数を生成するのに十分であり、またブレードの最小高さを維持し、結果として低アスペクト比(高さと幅の比)を有するキャビティを形成することを可能にする。
変形例によれば、各ブレードは略直線状であり、MmultiDM構造体は主方向に配置される。この構成により、例えば、光学プリズム型、シリンドリカル光学レンズ型、また一般的には、対称レンズ型または任意の一次元光学関数の光学部品を製造することが可能になる。これらの部品は、偏光に対して感度が高くなり、偏光分離素子を形成することも可能になる。
別の変形例によれば、各ブレードは略直線状であるが、MmultiDM構造体は少なくとも2つの主方向に配置され、これらの主方向は略直角であると都合が良い。この構成により、前述のように、シリンドリカル光学レンズまたは光学プリズム型の光学関数を生成することが可能になる。装置は、生成された光学関数のプロファイルが両方向で同一であるように設計されることが可能となり、装置を偏光に対して鈍感にすることができる。あるいは、2方向における異なるプロファイルにより、偏光にしたがって特定の特性を生成することが可能になる。したがってランダム偏光入射波のTE成分およびTM成分を分離する装置を設計することが可能であり、例えば、偏光のTE成分に対しては第1の焦点距離を有し、偏光のTM成分に対しては第1の焦点距離と異なる第2の焦点距離を有するレンズなどである。
別の変形例によれば、各ブレードは曲線状であり、各MmultiDM構造体は、変形例によれば、軸対象により配置することができる。この構成により、例えば、球状光学レンズ、収束または発散、または他の任意の対称光学関数などの回転対称性をもつ光学部品を製造することが可能になる。前述のように、軸対称性をもつ光学関数によって偏光に対して鈍感な装置を製造することが可能になるが、非対称性光学関数の製造によって入射波の偏光の成分を分離させることが可能になる。
変形例によれば、基板は、誘電材料からなり、基板を形成する誘電材料は、ブレードを形成する誘電材料のうちの1つと同一である。特に、構造体のブレードの1つと同じ材料を基板に使用することによって、製造方法を簡単にすることができる。
変形例によれば、誘電材料のうちの1つは空気である。製造方法において、ブレードの位置でスリットをエッチングして、空気によって形成されたとして十分である。
第2の態様によれば、本発明は、第1の態様により入射波面の位相を制御する装置と、検出器とを備える検出システムに関し、装置のMmultiDM構造体は、波面の位相の局所的シフトを導入するような寸法をもち、各局所的位相シフトは、収束レンズの光学関数に対応する光学関数をサンプリングすることによって決定される。
第3の態様によれば、本発明は、第1の態様による装置を用いて光学波面の位相を制御する方法に関し、該方法は、
−装置の全部のブレードを覆う入射波面を形成するように波面を空間成形するステップと、
−入射波面の一部の各MMultiDM構造体による透過ステップであって、波面上に局所的位相シフトを導入することを可能にするステップと、を含む。
第4の態様によれば、本発明は、第1の態様により入射波面の位相を制御する装置を製造する方法に関し、該方法は、
−金属材料からなるブレードの代わりに第1のスリット一式を形成するために第1の誘電材料の層をエッチングするステップと、
−スリットのかわりに金属を堆積させるステップと、
−第2の誘電材料からなるブレードの代わりに第2のスリット一式を形成するために層をエッチングするステップと、を含む。
変形例によれば、該方法は、第2のスリット一式のスリットの代わりに、誘電材料からなる第2の材料を堆積させるステップを含む。
変形例によれば、第1の誘電材料からなる層が、基板を形成する。あるいは、該方法は、基板上に第1の誘電材料からなる層を堆積させる予備ステップを含むことができる。
第5の態様によれば、本発明は、第1の態様により入射波面の位相を制御する装置を製造するための方法に関し、該方法は、
−ブレード一式を形成するために金属材料からなる層と誘電材料とからなる層とを積層するステップと、
−生成された積層を切断して研磨するステップと、各層の平面に対して略直角に基板に固定するステップと、
−基板とは反対の面を研磨するステップと、を含む。
本発明の他の利点および特徴は、以下の図面によって示された記載を読めば明らかになるであろう。
従来技術による波面の位相を制御するための装置において、スリットの幅wの関数としてスリットの実効屈折率neffの傾向を示す、上述された曲線である。 本発明による、装置における例示的MDDM構造体の原理を示す図である。 構造体の異なる幅wに対してガリウムヒ素(GaAs)での充填率(f)の関数として、空気およびガリウムヒ素を充填したMDDMタイプの構造体における屈折率および位相の変化のデジタルシミュレーションを示す曲線である。 収束光学レンズタイプの装置の製造に適用する場合に求められる位相関数と、得られたサンプル関数とを示す曲線である。 図4に示した光学関数のタイプの関数を生成するための、本発明による装置の一実施形態を示す図である。 図5の実施形態のタイプの装置に入射する波面の位相変調後に算出された光強度の写像である。 ブレードがそれぞれ直線形状である装置を上から見た図である。 ブレードがそれぞれ直線形状である装置を上から見た図である。 ブレードがそれぞれ曲線形状である装置を上から見た図である。
図2は、本発明による例示的な位相制御装置20における例示的な金属−多層誘電体−金属(MmultiDM)構造体の原理を示す図である。装置20は、装置の使用する所定のスペクトルバンドでの波長を示す波面の位相を制御するように構成されている。スペクトルバンドは、400nm〜100nmの間であってよい。装置20は、使用スペクトルバンドにおいて透明または部分的に透明な基板21と、基板の表面に対して略直角に配置された、高さhを有するブレード一式(図2の22、23、24、22、23、24、22など参照)とを備える。並置状態の金属−多層誘電体−金属(MmultiDM)構造体Sを形成するように、金属材料(22)からなるブレード、第1の誘電材料からなるブレード(23)、第1の誘電材料とは異なる少なくとも1つの第2の誘電材料からなるブレード(24)、その後再び、金属材料からなるブレード(22)、第1の誘電材料からなるブレード(23)、第2の誘電材料からなるブレード(24)などのようにして並置ブレードを交互に形成する方法で各ブレードが配置される。図2の例では、各構造体Sは、異なる誘電材料からなるブレードは2つしか備えていないが、各構造体において、金属材料からなる2つのブレード(22,22)の間で、異なる誘電材料からなる3つ以上のブレードの交互配置を備える装置を形成することを想定することも可能である。
各金属−多層誘電体−金属構造体Sは、(2つの金属ブレード22,22の間に画定される)サブ波長幅Wを有し、つまり、これは、装置の使用スペクトルバンドの最小波長λmin未満であって、幅Wは使用スペクトルバンドにおける1つまたは複数の伝播モードを示すキャビティを形成するように選択される。波長λの光波が装置20に入射すると、構造体によって形成されたキャビティ内でのモードの伝播により、以下の式にしたがって、各構造体Sの高さで局所的に位相シフトΔΦを受ける。
Figure 2016500160
ここで、neffは、キャビティ内で伝播するモードの実効屈折率であり、nは、「低」屈折率、つまり、最低屈折率をもつ誘電材料の屈折率である。上記式(2)では、入射波面が厚さhおよび屈折率nを有するブレードを通過するときに、入射波面が受ける位相シフトによってここで定義される、基準位相シフトと比較して位相シフトΔΦが測定される。具体的には、構造体中に存在する誘電材料の性質が、伝播されるモードの実効屈折率を修正する。各構造体Sにおいて、誘電材料からなる各ブレードの厚さを選択することによって、形成されたキャビティ内を伝播するモードの実効屈折率を修正することができるので位相シフトが局所的に導入される。
実際には、低いブレード高さで有効な局所的位相シフトを生成するためには、有効な屈折率差を示す誘電材料を選択することが可能である。以下の説明では、「高」屈折率nは、最も高い屈折率を示す誘電材料の屈折率を示すために使用され、「低」屈折率nは、最も低い屈折率を示す誘電材料の屈折率を示すために使用される。最も高い屈折率の誘電材料としては、例えば、装置の使用スペクトルバンドにおいて透明であってこのスペクトルバンドで高光学指数を示す誘電材料を選択することが可能である。例えば、バンドIIおよびIIIにおける位相制御装置の作動については、非限定的な方法で、屈折率が3.3であるガリウムヒ素(GaAs)、屈折率が約4であるゲルマニウム(Ge)、屈折率が3.7に等しいアモルファスシリコン(Si a)、5μm未満の波長に対して屈折率が1.5に等しいシリカ(SiO)、屈折率が2.2に等しい硫化亜鉛(ZnS)を選択することが可能である。可視帯域および赤外線帯域における位相制御装置の作動については、非限定的な方法で、屈折率が2.2である、セレン化亜鉛(ZnSe)または硫化亜鉛(ZnS)を選択することが可能である。最も低い屈折率の誘電材料については、空気を選択して、高および低屈折率の差を最大にすることを可能とするのが都合がよい。
最大位相シフトは、ブレードの高さhによって与えられる。したがって、ブレードの最小高さhは、以下の式で与えられる最大位相シフトΔΦmaxを確保するように決定することが可能である。
Figure 2016500160
ここで、λmaxは、使用スペクトルバンドの最大波長であり、nおよびnは、それぞれ高および低屈折率である。例えば、ブレードの高さhは、位相の最大位相シフトΔΦmaxが2πとなるように選択可能であり、2πは、全ての光学関数を定義するのに十分であり、また構造体の全高を制限することを可能にする。一般的には、例えば3〜5μmなどの赤外線での使用帯域の場合には、高および低屈折率それぞれに対して、GaAs(n=3.3)および空気(n=1)を選択することにより、ブレード高さh=2.2μmが、最大局所的位相シフト2πを達成するのに十分となる。
金属壁またはブレード22は、使用金属の膜厚よりも大きい厚さLであって、例えば、金属の光学膜厚の2倍程度を有するのが都合よく、このようにして、構造体Sによって形成されたキャビティ内の伝播モードが、隣接する構造体によって形成されたキャビティによって妨害されないことを確実にする。したがって、金属材料として金を用いた場合には、MMultiDM構造体における金属材料からなるブレードは、50nm程度とすることができる。処理方法が完全に制御されるために、金の使用が好ましい。しかし、例えば、銅、アルミニウム、銀など他の金属材料は、装置の各構造体を製造するための優れた候補となりうる。形成されたキャビティがシングルモードとなるように構造体Sの幅Wが選択されると都合がよく、これにより、構造体によって形成されたキャビティ内で伝播可能な縦モードの閉じ込め効果と、各構造体の限定幅との間の良好なトレードオフを得ることができる。例えば、各構造体において、シングルモードキャビティの状況を確認するためには、以下を実証するような方法で幅wを選択することができる。
Figure 2016500160
ここで、λminは、装置のために選択された使用バンドの最小波長であり、nは、高屈折率である。したがって、一般的に、λ/10程度の幅のWを選択することが可能となる。また、赤外線での使用の場合には、特に技術的な理由のために、金属の光学的膜厚の10倍以上のキャビティ幅を選択することができると都合が良い。
図2の例は、金属−誘電体1−誘電体2−金属(MDDM)構造体を使用した特定の位相制御装置、つまり、各S構造体において、異なる誘電材料からなる2つのブレード23、24を備える構造体を示している。以下に示すように、この変形例では、波面の位相の制御の精度と、実装が簡単な製造方法の追求との間に非常に良好なトレードオフを得ることが可能になる。この例では、各構造体Sは、実質的に等しい幅Wをそれぞれ有する。各構造体Sは、2つの金属ブレード22、22の間に、異なる誘電材料1、2からなる2つの金属ブレード23、24iを備えるが、誘電材料1および2の性質は、各構造体において同一である。実際には、2つの誘電材料のそれぞれの比率は、各構造体において変えられる。したがって、例えば、構造体S内の誘電材料2の充填率fを定義することができる。誘電材料2からなるブレード24の厚さは、構造体Sに対する積fと等しく、誘電材料1からなるブレード23の厚さは、積(1−f)wと等しい。モードの実効屈折率は、各構造体内で伝播されるため、局所的位相シフトは充填率fに依存する。
図3は、したがって、構造体の幅wの種々の値に対して、図2に図示されたタイプの装置における充填率の関数として計算された実効屈折率を示す曲線を示す図である。(式(2)によって与えられ)得られた(2πとして)位相シフトも示されている。具体的には、各曲線は、ブレードの高さh=1μm、金属壁の厚さL=50nm、入射媒体(空気)の波長λ=5μmを用いて計算される。曲線31、32、33は、それぞれw=δ(25nm)、w=2δ(50nm)、w=20δ(500nm)に対して得られたものであり、ここでは、δは金などの使用金属の膜厚である。検討された誘電材料は、誘電材料1(n=1)には空気、誘電材料2(n=3.3)にはガリウムヒ素(GaAs)である。モード法などによって、キャビティにおける基本モードの伝搬をモデル化することによって、周知のように、モードの実効屈折率が計算される。誘電材料における伝播、金属壁との界面での反射および2つの誘電材料間の界面における反射および透過が考慮される。例えば、(PythonやMATLAB(登録商標)などを使用した)行列計算ソフトウエアが、伝播のモデル化および充填率fの関数としての実効屈折率の計算に使用される。
図3は、伝播モードの実効屈折率をどのように変化させることが可能か、その結果、構造体によって形成されたキャビティの幅wではなく充填率fを調節することによって入射波面に適用された局所的位相シフトをどのように変化させることが可能かについて示している。図3に表わされるように、位相シフトの変化は、装置の製造に対する技術的な制約を緩和することができる20δ(曲線33)などの大きなキャビティ幅についても、充填率の関数として求めることができるので、低キャビティ幅wで動作するために強力な位相シフトを取得する必要がない。さらに、図3は、実効モード屈折率の安定性、ひいては、キャビティ幅wおよび充填率fの関数として入射波面に適用される局所的位相シフトの安定性を明らかにしている。キャビティ幅w=500nm(すなわちλ/10)を選択することによって、幅wの10nmの変化は伝播モードの実効屈折率にほとんど影響を与えず(<1%)、2%の充填率の変化に対応する誘電材料2からなるブレードの幅における10nmの変化が、実効屈折率Δn/n=0.03の変化につながることを出願人は特に実証している。H.Shiらに記載の従来技術のシステムと比較すると、例えば、伝播モードの実効屈折率の安定性が大幅に強化され、装置の信頼性を一層高めることが可能になり、また装置を製造するために実施される技術の正確さに対する依存を低減させることが可能になる。
図2の例で説明したように、複数の構造体Sを並置させることによって、また各々について、誘電材料のうち1つの充填率を調整することによって、MmultiDM構造体の幅に依存するピッチを用いた波面の空間サンプリングを実施することで、また所望の光学関数を生成するように選択された所与の位相シフトを局所的に適用することで、入射波面を変調することが可能になることが容易に理解されるであろう。波面は、全部の構造体を覆うようにあらかじめ空間的に拡張可能である。
図4は、したがって、収束レンズを製造するために必要なサンプリングを示している。具体的には、曲線41は、λ=5μmおよび高さh=2.2μmで焦点距離6μmを有する直径11.5μmのレンズの位相プロファイルを表し、曲線42は、21個の構造体に対して実施される空間サンプリングを表している。位相プロファイルは、以下のように表現される。
Figure 2016500160
ここで、Fは製造されるレンズの焦点距離であり、θは入射角(図4の例ではθ=0)であり、xは構造体Sを形成する各ブレードの平面に垂直な方向において測定した距離であって、その基準(x=0)は、装置の中央の構造体の高さで取得される。
図5は、図4の曲線42に示すように位相プロファイルを生成するための例示的な装置50を示している。図2に示されるように、装置は、MDDM型の21個の構造体を備える。各構造体は、幅w=500nm、高さh=2.2μm、金属ブレードの厚さL=50nmを有する。装置は3つのゾーン、つまり、それぞれ空気とガリウムヒ素とによって形成された上部ゾーン53と下部ゾーン51、および21個のMDDM構造体を備える中間ゾーン52を備える。各構造体Sのブレード23および24を形成する誘電材料は、空気およびガリウムヒ素によってそれぞれ形成されている。したがって高および低屈折率はそれぞれn=3.3およびn=1である。具体的には、図5の例では、MDDM構造体が、空気に対するガリウムヒ素の充填率f、89%、97%、17%、65%、80%、90%、94%、97%、99%、99%、100%、99%、99%、97%、94%、90%、80%、65%、17%、97%、89%を示し、各構造体に対して求めた位相シフトを達成することを可能にする。このような装置は、光検出器54の上流に配置して、装置を透過し位相変調された入射光のエネルギーをそこに集中させる。
図6は、図5に示された装置50のゾーン51〜53の各々で計算された光強度のマッピングを示している。光エネルギーの収束が、ゾーン60にはっきりと確かめられ、サブ波長スケールに縮小した収束レンズの製造が確認される。
図4〜6の例では、装置は、主方向に配向された、略直線状のブレードを備えることが想定され、位相シフトは、ブレードのこの配向方向に垂直な軸xに沿って計算される。したがって得られた光学的収束レンズ関数は、シリンドリカルレンズ関数である。あるいは、各ブレードは、光球面収束レンズ関数を生成するために、2つの主方向に配向された直線状としてもよいし、あるいは回転対称性を示すように並置された、例えば、略円形などの曲線状に配向してもよい。
図7A〜図7Cは、したがって図5に示された装置の平面図をそれぞれ示し、直線状の2つの略垂直方向に配置されたブレードを有する装置(図7B)と、円形のブレードを有する装置(図7C)である。
図7Bの平面図に示された装置60は、略矩形を有し、第1の方向(x)に配置された並置構造体Sと、第1の方向と略直角の第2の方向(y)に配置された並置構造体S’とを備える。図5または図7の例のように、各構造体SまたはS’は、金属材料からなるブレード(22)、第1の誘電材料からなるブレード(23)、第2の誘電材料からなるブレード(24)、金属材料からなるブレード(22)の交互配置になっている。先に説明したように、このような装置上の入射波面は、各構造体上で局所的に局所的位相シフトを受け、この位相シフトの値は第1および第2の誘電材料からなるブレードの相対的な厚さに繋がる。したがって、例えば、収束光レンズ関数などの二次元光学関数を生成することが可能である。図7Bの例では、軸xおよびyの一方または他方に導入された位相シフトのプロファイルは、同一である。その後、装置は入射波の偏光に対して鈍感である。あるいは、偏光のTE成分またはTM成分の関数として反応が異なる位相制御装置を形成するように、軸xおよびy上の配置が変化する構造体を形成することが可能である。したがって、例えば、ランダム偏光入射波のTE成分およびTM成分を分離することが可能となる。例えば、収束光学レンズ関数を得ることができるようになり、その関数の焦点距離は、偏光によって変化する。
図7Cの平面図に示される装置70は、軸対称に配置された、略円形の曲線状のブレードを備える。前述の例のように、装置上の入射波面が、各構造体上で局所的に局所的位相シフトを受け、この位相シフトの値が第1および第2の誘電材料からなるブレードの相対的な厚さに関係するように、各構造体Sは、金属材料からなるブレード(22)、第1の誘電材料からなるブレード(23)、第2の誘電材料からなるブレード(24)、金属材料からなるブレード(22)の交互配置を備える。軸対称性のために、装置70は偏光に対して鈍感である。例えば、各構造体は、所定の焦点距離の収束光学レンズ関数を生成するように構成されている。あるいは、非対称光学関数を得るようにブレードを配置することができる。例えば、各ブレードを曲線状だが円形ではない楕円形などにすることができ、入射波の偏光のTE成分およびTM成分を分離することが可能になる。
こうして、波長に比べて変動が小さい急峻なプロファイルを含む任意のプロファイルを備える位相関数を利用することが可能になる。
本発明による波面の位相を制御するための装置の製造には多くの方法が考えられる。
図5に示す装置50の例では、基板は、各構造体のブレードのうちの1つに使用される材料と同一の誘電材料から形成される。このような装置を製造する方法は、金属材料からなるブレード22の代わりに第1のスリット一式を形成するために、例えば、ガリウムヒ素からなる基板などである基板51(図5)をエッチングするステップと、その後、スリットの位置で金などの金属を成長させるステップとを含むことができる。基板は、その後、エッチングされ、第1の誘電材料からなるブレード23の代わりに第2のスリット一式を形成する。次に、図5に示された装置が得られ、第1および第2の誘電材料は、それぞれ空気とガリウムヒ素から形成される。
変形例によれば、第1の誘電材料が空気以外の場合、誘電材料からなる第2の材料の第2のスリット一式の位置で堆積を行うことができる。また、第2の誘電材料が基板を構成する材料以外の場合、基板上に第2の誘電材料の層の堆積を行う予備ステップを行うことができ、その後、先に説明したのと同じステップが実行される。
あるいは、並置直線状ブレードを備える波面制御装置の場合、例えば図5または図7Aに示されたタイプの装置の場合は、装置の製造が、並置状態のMmultiDM構造体のアセンブリを形成することになるブ各レードの交互配置を形成するために、それぞれ金属材料と誘電材料とからなる層を積層するステップと、次に、生成された積層を切断して研磨するステップと、積層の研磨面を積層の基板に各層の平面に略直角になるように載せて固定するステップとを含む。その後、基板とは反対の積層の面を研磨することができる。
いくつかの詳細な実施形態を通じて説明したが、波面の位相を制御する装置およびそのような装置を製造する方法は、種々の変形、修正、および改良を含み、これらの種々の変形、修正、および改良が特許請求の範囲によって定義されるように本発明の範囲の一部を形成する場合、当業者にとっては自明であろう。

Claims (18)

  1. 所定の使用スペクトルバンドの波長を有する入射光学波面の位相を制御する装置(20、50)であって、前記装置は、前記スペクトルバンドにおいて少なくとも部分的に透過性を有する基板(21)と、前記基板の表面に略直角に配置されるブレード(22、23、24)一式と、を備え、
    サブ波長幅(w)を有する並置状態の金属−多層誘電体−金属(MmultiDM)構造体(S)を形成するように、前記ブレード一式は、並置されたブレードの交互配置を備え、前記ブレードは、それぞれ、金属材料からなるブレード(22)、第1の誘電材料からなるブレード(23)、前記第1の誘電材料とは異なる少なくとも1つの第2の誘電材料からなるブレード(24)であって、各構造体は1つまたは複数の伝播モードを示すキャビティを形成しており、
    第1の誘電材料からなる前記ブレードと、第2の誘電材料からなる前記ブレードのそれぞれの厚さは、各前記MmultiDM構造体において調節されて波面の位相の局所的シフト(ΔΦ)を誘発し、前記局所的位相シフトは、前記キャビティにおいて伝播可能な1つまたは複数のモードの実効屈折率に依存する、装置。
  2. 各構造体は、第1の誘電材料からなる第1のブレードと、前記第1の誘電材料とは異なる第2の誘電材料からなる第2のブレードとを備え、金属−誘電体−誘電体−金属(MDDM)構造体を形成する、請求項1に記載の装置。
  3. 前記各MmultiDM構造体(S)の幅(W)は、実質的に等しい、請求項1または2に記載の装置。
  4. 各MmultiDM構造体(S)の幅は、前記金属材料の光学的膜厚の10倍超である、赤外線での使用に適した、請求項1〜3のいずれか1項に記載の装置。
  5. 各MmultiDM構造体(S)の幅は、λmin/2n未満であり、ここでλminは、前記スペクトルバンドの最小波長であって、nは、最大屈折率を有する前記誘電材料の屈折率である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の装置。
  6. 前記ブレードは、前記局所的位相シフトの最大値が2πとなるように決定された所定の高さ(h)を有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の装置。
  7. 前記基板(21)は、誘電材料からなり、前記基板を形成するこの誘電材料は、複数の前記誘電材料のうちの1つと同一である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の装置。
  8. 複数の前記誘電材料のうちの1つは空気である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の装置。
  9. 前記ブレードは略直線状であり、前記MmultiDM構造体は主方向に配置される、請求項1〜8のいずれか1項に記載の装置。
  10. 前記ブレードは略直線状であり、前記MmultiDM構造体は少なくとも2つの主方向に配置される、請求項1〜8のいずれか1項に記載の装置。
  11. 前記ブレードは曲線状であり、前記MmultiDM構造体は軸対象にしたがって配置される、請求項1〜8のいずれか1項に記載の装置。
  12. 誘電材料からなる前記ブレードのそれぞれの厚さを調整して、所定の使用スペクトルバンドの光学部品の製造のために求められる光学関数に基づいて計算された位相シフトを局所的に得て、前記光学関数は前記装置のMMultiDM構造体の数でサンプリングされる、請求項1〜11のいずれか1項に記載の装置。
  13. 請求項1〜12のいずれか1項に記載の入射波面の位相を制御する装置と、検出器とを備える検出システムであって、前記装置の前記MmultiDM構造体(S)は、前記波面の前記位相の局所シフトを導入するような寸法をもち、各局所的位相シフトは、収束レンズの光学関数に対応する光学関数をサンプリングすることによって決定される、検出システム。
  14. 請求項1〜12のいずれか1項に記載の装置を用いて光学波面の位相を制御する方法であって、
    前記装置の全部の前記ブレードを覆う入射波面を形成するように前記波面を空間成形するステップと、
    前記入射波面の一部の各前記MMultiDM構造体よる透過ステップであって、前記波面上に局所的位相シフトを導入することを可能にするステップと、を含む方法。
  15. 請求項1〜12のいずれか1項に記載の入射波面の位相を制御する装置を製造する方法であって、
    金属材料からなる前記ブレードの代わりに第1のスリット一式を形成するために第1の誘電材料の層をエッチングするステップと、
    前記スリットのかわりに前記金属を堆積させるステップと、
    第2の誘電材料からなる前記ブレードの代わりに第2のスリット一式を形成するために前記層をエッチングするステップと、を含む方法。
  16. 前記第2のスリット一式の前記スリットの代わりに、誘電材料からなる第2の材料を堆積させるステップを含む、請求項15に記載の製造方法。
  17. 基板上に第1の誘電材料からなる前記層を堆積させる予備ステップを含む、請求項15または16のいずれか1項に記載の製造方法。
  18. 請求項1〜12のいずれか1項に記載の入射波面の位相を制御する装置を製造する方法であって、
    前記ブレード一式を形成するために金属材料からなる層と誘電材料とからなる層とを積層するステップと、
    前記生成された積層を切断して研磨するステップと、各層の平面に対して略直角に基板に固定するステップと、
    前記基板とは反対の面を研磨するステップと、を含む方法。
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