JP2016225568A - 窒化物半導体発光素子 - Google Patents

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Abstract

【課題】従来の緑色系発光蛍光体/赤色系発光蛍光体との組合せでも色再現性や変換効率(明るさ)を向上させることが可能な窒化物半導体発光素子を提供する。
【解決手段】n型窒化物半導体層と、p型窒化物半導体層と、前記n型窒化物半導体層と前記p型窒化物半導体層との間に設けられた多重量子井戸発光層と、を備え、前記多重量子井戸発光層は、前記p型窒化物半導体層に近い側から、第2発光層と、中間の井戸層と、第1発光層とを備え、前記第1発光層は、複数の第1量子井戸層と、前記複数の第1量子井戸層の間に設けられた第1バリア層とを備え、前記第2発光層は、複数の第2量子井戸層と、前記複数の第2量子井戸層の間に設けられた第2バリア層とを備え、前記第2量子井戸層のバンドギャップエネルギーは、前記第1量子井戸層のバンドギャップエネルギーよりも大きい、窒化物半導体発光素子。
【選択図】図1

Description

本発明は、窒化物半導体発光素子に関する。
半導体発光素子と蛍光体とを組み合わせた発光装置は、低消費電力、小型化、高輝度、さらには広範囲な色再現性が期待される次世代の発光装置として注目され、活発に研究、開発が行われている。発光素子から発せられる一次光は、通常、長波長の紫外線から青色の範囲、すなわち380〜480nmのものが用いられる。そして、これらの発光素子と様々な蛍光体を用いた波長変換部とを組合せた発光装置が実現している。
特に、450nm前後に発光ピークを有する青色発光素子と蛍光体とを組合せた白色発光装置は、一般照明用途や液晶ディスプレイ(以下、LCD(Liquid Crystal Display))用バックライトなどに広く用いられている。
これらの白色LED発光装置には、より色再現性が良好でより変換効率(明るさ)の高いものや温度特性の良好なものが求められており、たとえば、EuSiAlなどのβ型SiAlONである2価のユーロピウム付活酸窒化物緑色系発光蛍光体と、(Ca,Eu)AlSiNなどの2価のユーロピウム付活窒化物赤色系発光蛍光体やK(Si,Mn)Fなどのマンガン付活フッ化物赤色系蛍光体とを組合せた白色発光装置を用いることにより、従来よりも色再現性が良好で変換効率(明るさ)が高く温度特性の良好な白色発光装置が実現されてきている(たとえば、特開2007−180483号公報(特許文献1)、国際公開第2009/110285号(特許文献2)など)。
一方、上記蛍光体と組み合わせる発光素子としては、窒素を含むIII−V族化合物半導体材料からなる窒化物半導体発光素子が一般的に用いられる。窒素を含むIII−V族化合物半導体材料(以下、「窒化物半導体材料」と呼ぶ)は、赤外領域から紫外領域の波長を有する光のエネルギーに相当するバンドギャップを有している。そのため、窒化物半導体材料は、赤外領域から紫外領域の波長を有する光を発光する発光素子の材料や、その領域の波長を有する光を受光する受光素子の材料などに有用である。
上記の特性を有する窒化物半導体材料を用いた窒化物半導体発光素子においては、発光層に量子井戸構造が採用されることが一般的である。発光層に量子井戸構造を採用した窒化物半導体発光素子に電圧が印加されると、発光層の量子井戸層において、電子とホールとが再結合されて光が発生する。量子井戸構造を有する発光層としては、単一量子井戸(Single Quantum Well:SQW)構造であってもよいが、量子井戸層とバリア層とが交互に積層された多重量子井戸(Multiple Quantum Well:MQW)構造とする場合が多い。
発光層に量子井戸構造を採用した窒化物半導体発光素子については、発光層のMQW構造を工夫することによって、所望の特性を得ようとする試みがいくつかなされている。たとえば、特開2007−142426号公報(特許文献3)には、互いに異なる波長光を放出する複数の活性層を有する窒化物半導体発光素子から発生される色分布のバラツキを活性層の配置と数で解決することを目的とした窒化物半導体発光素子が開示されている。特許文献3には、複数の活性層のうち短波長である活性層をp型窒化物層側に隣接するように配置し、さらにその量子井戸層数を長波長である活性層の数より少なくすることによって、互いに異なる波長光を有する複数の活性層の固有な発光が所望のレベルの分布を有することができ、モノリシック白色発光素子を実現可能であると記載されている。
特開2007−180483号公報 国際公開第2009/110285号 特開2007−142426号公報
従来の青色発光素子と緑色系発光蛍光体/赤色系発光蛍光体とを組合せた白色発光装置では、改善はされてきてはいるものの、さらなる色再現性や変換効率(明るさ)の向上が求められている。
上記の事情に鑑みて、本発明の目的は、従来の緑色系発光蛍光体/赤色系発光蛍光体との組合せでも色再現性や変換効率(明るさ)を向上させることが可能な窒化物半導体発光素子を提供することにある。
本発明者らは、上記青色発光素子と緑色系発光蛍光体/赤色系発光蛍光体との組合せに、さらに該青色発光素子よりも発光波長が短く、紫外光または青紫色光を放射する発光素子を使用することで、発光装置への入力エネルギーを高くしなくても高い変換効率(明るさ)が得られることを見出した。
本発明の窒化物半導体発光素子は、n型窒化物半導体層と、p型窒化物半導体層と、前記n型窒化物半導体層と前記p型窒化物半導体層との間に設けられた多重量子井戸発光層と、を備え、前記多重量子井戸発光層は、前記p型窒化物半導体層に近い側から、第2発光層と、中間の井戸層と、第1発光層とを備え、前記第1発光層は、複数の第1量子井戸層と、前記複数の第1量子井戸層の間に設けられた第1バリア層とを備え、前記第2発光層は、複数の第2量子井戸層と、前記複数の第2量子井戸層の間に設けられた第2バリア層とを備え、前記第2量子井戸層のバンドギャップエネルギーは、前記第1量子井戸層のバンドギャップエネルギーよりも大きいことを特徴とする。
本発明の窒化物半導体発光素子において、前記中間の井戸層のバンドギャップエネルギーは、前記第1量子井戸層のバンドギャップエネルギーと前記第2量子井戸層のバンドギャップエネルギーの間の値であることが好ましい。
本発明の窒化物半導体発光素子において、前記中間の井戸層の層厚は、前記第1量子井戸層または前記第2量子井戸層の層厚より大きいことが好ましい。
本発明の窒化物半導体発光素子において、前記第2量子井戸層の層数は前記第1量子井戸層の層数より少ない、または、前記第2量子井戸層の層数は前記第1量子井戸層の層数より多いことが好ましい。
本発明の窒化物半導体発光素子において、発光スペクトルは、前記第1量子井戸層から発光される波長からの発光ピークと、前記第2量子井戸層から発光される波長からの発光ピークとを有することが好ましい。
本発明の窒化物半導体発光素子において、前記第2量子井戸層の層厚は前記第1量子井戸層の層厚より小さいことが好ましい。
本発明は、青色光を放射する第1発光層と、(近)紫外光を放射する第2発光層をモノリシックに備えた窒化物半導体発光素子である。このような構成とすることにより、色再現性や変換効率(明るさ)を向上させることが可能な窒化物半導体発光素子を提供することができる。また、本発明によれば、青色光を放射する第1発光層と、(近)紫外光を放射する第2発光層の間に中間の井戸層を備えることで、大電流駆動領域での光出力の落ち込みを低減することが可能な窒化物半導体発光素子を提供することができる。
本発明の窒化物半導体発光素子の一例である実施の形態の窒化物半導体発光素子の模式的な断面図である。 本発明の窒化物半導体発光素子に好適に用いられる多重量子井戸発光層14のバンドギャップエネルギー図の一例である。 実施例1で作製された窒化物半導体発光素子のIF=20mA駆動時の発光スペクトルである。 実施例1で作製された窒化物半導体発光素子の外部量子効率と印加電流密度依存性を比較例1と比較して示すグラフである。 比較例2のサンプルにおける多重量子井戸発光層のバンドギャップエネルギー図である。 実施例1で作製された窒化物半導体発光素子の外部量子効率と印加電流密度依存性を比較例2と比較して示すグラフである。 実施例1で作製された窒化物半導体発光素子の電流密度13.4A/cmでの発光スペクトルである。 実施例2で作製された窒化物半導体発光素子における多重量子井戸構造を示すバンドギャップエネルギー図である。 実施例2で作製された窒化物半導体発光素子の発光スペクトルである。 実施例2で作製された窒化物半導体発光素子の外部量子効率と印加電流密度依存性を比較例2と比較して示すグラフである。 実施例3で作製された窒化物半導体発光素子における多重量子井戸構造を示すバンドギャップエネルギー図である。 実施例3で作製された窒化物半導体発光素子の外部量子効率と印加電流密度依存性を比較例2と比較して示すグラフである。 実施例3で作製された窒化物半導体発光素子の発光スペクトルである。
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、本発明の図面において、同一の参照符号は、同一部分または相当部分を表わすものとする。
また、本明細書中において、「バリア層」は量子井戸層に挟まれた層を指す。量子井戸層に挟まれていない層は「最初のバリア層」または「最後のバリア層」と表記し、量子井戸層に挟まれた層とは表記を変えている。
また、本明細書中において、「ドーパント濃度」という用語と、n型ドーパントまたはp型ドーパントのドープに伴い発生する電子およびホールの濃度である「キャリア濃度」という用語とを用いているが、その関係については後述する。
また、本明細書中において、「キャリアガス」とは、III族原料ガス、V族原料ガスおよびドーパント原料ガス以外のガスである。キャリアガスを構成する原子は窒化物半導体層などには取り込まれない。
また本明細書中において、「n型窒化物半導体層」は、その中に電子の流れを実用上妨げない程度の厚さの低キャリア濃度のn型窒化物半導体層あるいはアンドープ層を含んでいてもよい。
また、本明細書中において、「p型窒化物半導体層」についても、ホールの流れを実用上妨げない程度の厚さの低キャリア濃度のp型窒化物半導体層あるいはアンドープ層を含んでいてもよい。「実用上妨げない」とは窒化物半導体発光素子の動作電圧が実用的なレベルであることをいう。
[窒化物半導体発光素子の構成]
図1に、本発明の窒化物半導体発光素子の一例である実施の形態の窒化物半導体発光素子1の模式的な断面図を示す。図1に示す例の窒化物半導体発光素子1は、基板3と、基板3上に、順次設けられた、バッファ層5と、窒化物半導体下地層7と、n型コンタクト層8と、低温n型窒化物半導体層10(vピット発生層)と、窒化物半導体多層構造体120と、多重量子井戸発光層14と、3層のp型窒化物半導体層16,17,18とを備えている。
p型窒化物半導体層18上には透明電極層23が設けられており、透明電極層23上にはp電極25が設けられている。また、エッチングにより露出したn型コンタクト層8の上面にAuなどからなるn電極21が備わり、n電極21の表面の一部およびp電極25の表面の一部を露出させるように、窒化物半導体発光素子の表面は透明絶縁保護膜27で覆われている。
[基板]
基板3としては、たとえば、サファイアなどの絶縁性基板、またはGaN、SiC若しくはZnOなどの導電性基板を用いることができる。基板3の厚さは特に限定されないが、窒化物半導体層の成長時における基板の厚さは、900μm以上1200μmであることが好ましく、窒化物半導体発光素子の使用時の基板の厚さは、50μm以上300μm以下であることが好ましい。
基板3の上面には、凸部3aおよび凹部3bが形成されてもよい。凸部および凹部の形状は特に限定されないが、凸部は、平面視において、略正三角形の頂点に配された略円形であることが好ましく隣り合う凸部の頂点の間隔は1μm以上5μm以下であることが好ましい。また、凸部の断面形状は台形状であってもよく、台形の頂点部が丸みを帯びた形状であることがより好ましい。
なお、基板3は、基板上への窒化物半導体層の成長後に除去されることによって、本発明の窒化物半導体発光素子は、基板を有していない窒化物半導体発光素子としてもよい。
[バッファ層]
バッファ層5としては、たとえばAls0Gat0u01−u0(0≦s0≦1、0≦t0≦1、0≦u0<1、s0+t0=1)からなる式で表わされる窒化物半導体層を用いることが好ましく、AlN層またはAlON層であることがより好ましい。
ここで、バッファ層5を構成するAlON層としては、Nのごく一部(0.5原子%以上2原子%以下)が酸素に置き換えられていることが好ましい。この場合には、基板の成長面の法線方向に伸長するようにバッファ層が形成されるため、結晶粒の揃った柱状結晶の集合体からなるバッファ層5を得ることができる。
バッファ層5の厚さは、特に限定されないが、3nm以上100nm以下であることが好ましく、5nm以上50nm以下であることがより好ましい。
後述する窒化物半導体下地層は公知のスパッタ法により形成されたAlON層を用いることにより結晶性が向上する。窒化物半導体下地層の結晶性は、X線ロッキングカーブの半値幅で確認できる。
[窒化物半導体下地層]
窒化物半導体下地層7は、たとえば、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法により、バッファ層5の表面上に形成することができる。
窒化物半導体下地層7としては、たとえば、Alx0Gay0Inz0N(0≦x0≦1、0≦y0≦1、0≦z0≦1、x0+y0+z0=1)の式で表わされるIII族窒化物半導体からなる層を用いることができる。
窒化物半導体下地層7としては、柱状結晶の集合体からなるバッファ層中の転位などの結晶欠陥を引き継がないようにするために、III族元素としてGaを含む窒化物半導体層を用いることが好ましい。
窒化物半導体下地層7としては、たとえば、n型ドーパントが1×1017個/cm以上1×1019個/cm以下の範囲でドーピングされていてもよい。しかしながら、良好な結晶性を維持する観点からは、窒化物半導体下地層7はアンドープであることが好ましい。
窒化物半導体下地層7にドープされるn型ドーパントとしては、たとえば、Si、GeおよびSnからなる群から選択された少なくとも1種などを用いることができる。中でも、n型ドーパントとしては、Siを用いることが好ましい。窒化物半導体下地層にドープされるn型ドーパントにSiを用いた場合には、n型ドーピングガスとしては、シランまたはジシランを用いることが好ましい。
窒化物半導体下地層7の層厚をできるだけ大きくすることによって、窒化物半導体下地層中の欠陥は減少するが、窒化物半導体下地層7の層厚をある程度以上大きくしたとしても窒化物半導体下地層における欠陥減少効果が飽和する。これにより、窒化物半導体下地層7の層厚は、1μm以上8μm以下であることが好ましく、3μm以上5μm以下であることがより好ましい。
[n型コンタクト層]
n型コンタクト層8としては、たとえば、Alx1Gay1Inz1N(0≦x1≦1、0≦y1≦1、0≦z1≦1、x1+y1+z1=1)の式で表わされるIII族窒化物半導体からなる層にn型ドーパントがドープされた層を用いることができる。中でも、n型コンタクト層8としては、Alx2Ga1−x2N(0≦x2≦1、好ましくは0≦x2≦0.5、より好ましくは0≦x2≦0.1)層にn型ドーパントがドープされた層を用いることがより好ましい。
n型コンタクト層8にドープされるn型ドーパントは特に限定されないが、たとえば、Si、P、AsおよびSbからなる群から選択された少なくとも1種などを用いることができる。中でも、n型ドーパントとしては、Siを用いることが好ましい。同様のことが、後述する層にもいえる。n型コンタクト層のn型ドーパント濃度は、特に限定されないが、1×1019個/cm以下であることが好ましい。
n型コンタクト層8の層厚はできるだけ大きい方がn型コンタクト層の抵抗は減少する。一方、n型コンタクト層8の層厚を大きくした場合には窒化物半導体発光素子の製造コストの上昇を招く。両者の兼ね合いから、n型コンタクト層8の層厚は、1μm以上10μm以下であることが好ましいが、特に限定されない。
なお、後述する実施例では、n型GaN層の成長を一旦中断させてから、同一のn型GaN層を再び成長させるという2つの成長工程によって、n型コンタクト層8を形成している。しかしながら、n型コンタクト層の形成方法およびその構成はこれに限定されるものではない。
たとえば、n型コンタクト層8は、単層であってもよく、2層以上の複数層であってもよい。n型コンタクト層が複数層である場合には、それぞれの層が同一の組成からなっていてもよく、少なくとも1層が異なる組成であってもよい。n型コンタクト層が複数層である場合には、それぞれの層が同一の層厚であってもよく、少なくとも1層が異なる層厚であってもよい。
[低温n型窒化物半導体層(Vピット発生層)]
低温n型窒化物半導体層10としては、たとえば、一般式Alx2Gay2Inz2N(0≦x2≦1、0≦y2≦1、0≦z2≦1、x2+y2+z2=1)で表わされる窒化物半導体材料からなる層にn型ドーパントがドープされた層を用いることができる。好ましくは、一般式Alx2Ga1−x2N(0≦x2≦1、好ましくは0≦x2≦0.3、より好ましくは0≦x2≦0.1)で表される窒化物半導体材料からなる層または一般式Inz2Ga1−z2N(0≦z2≦1、好ましくは0≦z2≦0.3、より好ましくは0≦z2≦0.1)で表される窒化物半導体材料からなる層にn型ドーパントがドープされた層を用いる。
低温n型窒化物半導体層10のn型ドーパント濃度は、好ましくはn型コンタクト層のn型ドーパント濃度よりも低く、より好ましくは1×1019/cm以下である。なお、低温n型窒化物半導体層はアンドープ層であっても良い。
低温n型窒化物半導体層10の層厚は特に限定されないが、50nm以上500nm以下であることが好ましい。
低温n型窒化物半導体層10は積層構造を有していてもよく、この場合、低温n型窒化物半導体層10のn型ドーパント濃度は、低温n型窒化物半導体層を構成する層のそれぞれに含まれるn型ドーパント量の合計を低温n型窒化物半導体層の体積で除することにより求められる。
また、低温n型窒化物半導体層10はVピット構造の発生の開始点となる機能を有する。ここで「Vピット構造」とは、貫通転位に起因して発生し、低温n型窒化物半導体層の内部から発光層の上面(p型窒化物半導体層側に位置する発光層の面)へ向かって拡径する形状を有する結晶欠陥を意味する。このVピット構造は、低温n型窒化物半導体層と窒化物半導体多層構造体と、多重量子井戸層とに部分的に形成されている。
[窒化物半導体多層構造体]
窒化物半導体多層構造体120は、たとえば一般式Alx4Gay4Inz4N(0≦x4≦1、0≦y4≦1、0≦z4≦1、x4+y4+z4=1)とAlx5Gay5Inz5N(0≦x5≦1、0≦y5≦1、0≦z5≦1、x5+y5+z5=1)からなるバンドギャップエネルギーの異なる2つの層を繰り返し積層することで形成される。窒化物半導体多層構造の組成は多重量子井戸発光層14からの発光を吸収しない、つまり、多重量子井戸発光層14より高いバンドギャップエネルギーを取りうる材料ならいかなる組み合わせも許されるが、SiドープGaNからなるワイドバンドギャップ層とSiドープInGaNからなるナローバンドギャップ層を繰り返し積層した構造が多重量子井戸発光層14の結晶性が向上し、より好ましい。
[多重量子井戸発光層]
図2に、本発明の窒化物半導体発光素子に好適に用いられる多重量子井戸発光層14のバンドギャップエネルギー図の一例を示す。図2の横軸は積層方向の層厚を示しており、左方向がp型窒化物半導体層に近い側を意味している。また、図の縦軸はバンドギャップエネルギーの大きさを示しており、上方向にバンドギャップエネルギーが大きいことを意味している。
図2に示す例では、多重量子井戸発光層14は、p型窒化物半導体層に近い側から、第2波長の発光層(第2発光層)142と、中間の井戸層14Mと、第1波長の発光層(第1発光層)141とを備えている。
第1発光層141は、複数の第1量子井戸層14W(14W1,14W2,14W3,14W4)と、複数の第1バリア層14A(14A1,14A2,14A3,14A4)が交互に積層されている。
第2発光層142は、複数の第2量子井戸層14V(14V1,14V2,14V3)と、複数の第2バリア層14B(14B1,14B2,14B3)が交互に積層される。
図2に示す例において、中間の井戸層14Mは第1バリア層14A4と第2バリア層14B1の間に積層される。
窒化物半導体多層構造体120の直上、つまり第1量子井戸層14W1に接する層には、最初のバリア層14AZが設けられている。最もp型窒化物半導体層16側に位置する第2量子井戸層14V3の直上には最後のバリア層14B0が設けられている。
第1発光層141、第2発光層142、中間の井戸層14M、最初のバリア層14AZ、最後のバリア層14B0の材料は任意に設定できるが、たとえば、一般式AlGaInN(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦1、x+y+z=1)で示される窒化物半導体からなる。各層のバンドギャップエネルギーはx、y、zの値を変えることで調整が可能で、たとえばGaNに対しIn濃度を高くすることでバンドギャップエネルギーは小さくなり、GaNに対しAl濃度を高くすることでバンドギャップエネルギーは大きくなる。
第2量子井戸層14V(14V1,14V2,14V3)と第1量子井戸層14W(14W1,14W2,14W3,14W4)のバンドギャップエネルギーについては、第2量子井戸層14Vのバンドギャップエネルギーが第1量子井戸層14Wのバンドギャップエネルギーより大きいことを条件に任意に設定できる。本発明の窒化物半導体発光素子1は、第2量子井戸層14Vのバンドギャップエネルギーが第1量子井戸層14Wのバンドギャップエネルギーよりも大きいことによって、第1量子井戸層14Wの発光波長より第2量子井戸層14Vの発光波長が短波長となり、第1量子井戸層14Wからの発光のうち、チップ上面、すなわちp型窒化物半導体層側への発光が第2量子井戸層で吸収されにくくなり、発光効率が向上する。また、p型窒化物半導体層に近い第2量子井戸層のエネルギーバンドギャップが大きいため、ホールがトラップされにくく、発光効率が向上する。
本発明の窒化物半導体発光素子1において、中間の井戸層14Mのバンドギャップエネルギーについては任意に設定できるが、第2量子井戸層14Vのバンドギャップエネルギーと第1量子井戸層14Wのバンドギャップエネルギーとの間の値であることが好ましい。ここで、「間の値」とは、第2量子井戸層14Vと第1量子井戸層14Wのバンドギャップエネルギーの中間値であってもよいし、第2量子井戸層14V寄りの値であってもよいし、第1量子井戸層14Wの値であってもよい。本発明の窒化物半導体発光素子1においては、中間の井戸層14Mのバンドギャップエネルギーを第2量子井戸層14Vのバンドギャップエネルギーと第1量子井戸層14Wのバンドギャップエネルギー間の値とすることで、p型窒化物半導体層側から供給されるホールが第2量子井戸層14Vと第1量子井戸層14Wとの間にある中間の井戸層14Mでいったんトラップされ、このため中間の井戸層14Mからn型窒化物半導体層に近い側の井戸層に再びホールが拡散し易く、n型窒化物半導体層に近い側の井戸層での発光再結合が容易になり発光効率が向上する。
本発明の窒化物半導体発光素子1において、中間の井戸層14Mの層厚は任意に設定できるが、第2量子井戸層14Vの層厚(総厚み(各層の厚みの総計)ではなく、第2量子井戸層の各層の厚み)より大きいことがより好ましい。この場合、複数の第2量子井戸層14V同士で層厚が異なる場合には、中間の井戸層14Mの層厚は、第2量子井戸層14Vの層厚のうちの最大値よりも大きいことが好ましい。中間の井戸層14Mの層厚を第2量子井戸層14Vより大くすることで、p型窒化物半導体層側から供給されるホールが第2量子井戸層14Vと第1量子井戸層14Wとの間にある層厚の大きな中間の井戸層14Mでいったんトラップされ、このため中間の井戸層14Mからn型窒化物半導体層に近い側の井戸層に再びホールが拡散し易く、n型窒化物半導体層に近い側の井戸層での発光再結合が容易になり発光効率が向上する。
なお、図2に示す例では、第1量子井戸層14Wの層数を4つ(すなわち、第1量子井戸層14W1,14W2,14W3,14W4)、第2量子井戸層14Vの層数を3つ(すなわち、第2量子井戸層14V1,14V2,14V3)としているが、どちらの井戸層の層数も任意で設定でき、第1量子井戸層14Wの層数と第2量子井戸層14Vの層数とは同一であっても勿論よい。
第2量子井戸層14Vの層数が第1量子井戸層14Wの層数より少ない場合には、大電流駆動時において外部量子効率が向上するという利点がある。
一方、第2量子井戸層14Vの層数が第1量子井戸層14Wの層数より多い場合には、大電流駆動時において外部量子効率が期待できないが、第2波長の発光強度を向上できるという利点がある。
また、第1量子井戸層14Wおよび第2量子井戸層14Vの層厚は任意で設定できるが、第2量子井戸層14Vの層厚(総厚み(各層の厚みの総計)ではなく、第2量子井戸層14Wの各層の厚み)は第1量子井戸層14Wの層厚(総厚み(各層の厚みの総計)ではなく、第1量子井戸層14Wの各層の厚み)より小さいほうがより好ましい。この場合、複数の第1量子井戸層14W同士、複数の第2量子井戸層14V同士で層厚が異なる場合には、第2量子井戸層14Vの層厚のうちの最大値が、第1量子井戸層14Wの層厚のうちの最小値よりも小さいことが好ましい。第2量子井戸層14Vより第1量子井戸層14WはIn濃度が大きいため、非発光再結合であるオージェ再結合の割合が高いことから、第1量子井戸層14Wの層厚を大きくすることでホールの注入効率が上がり好ましい。対して第2量子井戸層14VはIn濃度が低いため、オージェ再結合の割合が低く、層厚は小さくてもよい。第2量子井戸層14Vの層厚をさらに小さくすることで、電子とホールの波動関数のオーバーラップが向上し、発光再結合レートを向上させる効果も有する。
中間の井戸層14Mでトラップされたホールは、主にn型窒化物半導体層に近い側の井戸層に再びホールが拡散し、第1発光層の第1量子井戸層で電子と発光再結合するため、本発明の窒化物半導体発光素子は、発光スペクトルが第1量子井戸層から発光される波長と、第2量子井戸層から発光される波長からの2つの発光ピークを有する。
また中間の井戸層14Mでトラップされたホールの一部は中間の井戸層14Mで電子と発光再結合に至る場合もあるが、主たる発光とはならず、発光スペクトルをよりブロードにするか、第1量子井戸層14Wまたは第2量子井戸層14Vのうちエネルギーバンドギャップの近いどちらか一方または両方の発光強度を強くするので、発光スペクトルは第1量子井戸層14Wから発光される波長と、第2量子井戸層14Vから発光される波長からの2つの発光ピークを有する。
[p型窒化物半導体層]
p型窒化物半導体層16,17,18としては、それぞれ独立に、たとえばAls4Gat4Inu4N(0≦s4≦1、0≦t4≦1、0≦u4≦1、s4+t4+u4=1)層にp型ドーパントがドープされた層を用いることが好ましく、Als4Ga(1−s4)N(0<s4≦0.4、好ましくは0.1≦s4≦0.3)層にp型ドーパントがドープされた層を用いることがより好ましい。
p型ドーパントとしては特に限定されないが、たとえばマグネシウムを用いることが好ましい。p型窒化物半導体層16,17,18におけるキャリア濃度は1×1017個/cm以上であることが好ましい。p型ドーパントの活性率は、0.01程度であることから、p型窒化物半導体層16,17,18におけるp型ドーパント濃度(キャリア濃度とは異なる)は1×1019個/cm以上であることが好ましい。ただし、p型窒化物半導体層16,17,18のうち、多重量子井戸発光層14側に位置するp型窒化物半導体層16におけるp型ドーパント濃度は1×1019個/cm未満であることが好ましい。
p型窒化物半導体層16,17,18全体の層厚(各層厚の総計)は、特に限定されないが、50nm以上300nm以下であることが好ましい。p型窒化物半導体層16,17,18全体の層厚を小さくすることにより、p型窒化物半導体層16,17,18の成長時における加熱時間を短くすることができる。これにより、p型窒化物半導体層16,17,18におけるp型ドーパントの拡散を抑制することができる。
[n電極、透明電極、p電極]
n電極21およびp電極25は、窒化物半導体発光素子に駆動電力を供給するための電極である。図に示すように、n電極21およびp電極25は、パッド電極部分のみで構成されているが、たとえば電流拡散を目的とする細長い突出部(枝電極)などがn電極21および/またはp電極25に接続されていてもよい。
また、p電極25よりも下に、電流がp電極25に注入されることを防止するための絶縁層が設けられていることが好ましい。これにより、p電極25に遮蔽される発光量が減少する。
n電極21は、たとえば、チタン層、アルミニウム層および金層がこの順序で積層されて構成されていることが好ましい。n電極21に、ワイヤボンディングを行なう場合を想定すると、n電極21の厚さは1μm以上であることが好ましい。
p電極25は、たとえば、ニッケル層、アルミニウム層、チタン層および金層がこの順序で積層されて構成されていることが好ましく、n電極21と同一の材料から構成されていてもよい。p電極25にワイヤボンディングを行なう場合を想定すると、p電極25の厚さは1μm以上であることが好ましい。
透明電極層23は、たとえば、ITO(Indium Tin Oxide)またはIZO(Indium Zinc Oxide)などの透明導電膜からなることが好ましく、20nm以上200nm以下の厚さを有していることが好ましい。
[キャリア濃度とドーパント濃度について]
キャリア濃度は電子またはホールの濃度を意味し、n型ドーパントの量またはp型ドーパントの量だけでは決定されない。このようなキャリア濃度は窒化物半導体発光素子の電圧対容量特性の結果に基づいて算出されるものであり、電流が注入されていない状態のキャリア濃度のことを指しており、イオン化した不純物、ドナー化した結晶欠陥およびアクセプター化した結晶欠陥から発生したキャリアの合計である。
しかしながら、n型キャリア濃度は、n型ドーパントであるSiなどの活性化率が高いことから、n型ドーパント濃度とほぼ同じと考えることができる。また、n型ドーパント濃度はSIMS(Secondary Ion Mass Spectroscopy:二次イオン質量分析計)にて深さ方向の濃度分布を測定することにより容易に求めることができる。さらに、ドーパント濃度の相対関係(比率)は、キャリア濃度の相対関係(比率)とほぼ同じである。これらのことから、本明細書中では、実際に測定の容易なドーパント濃度で定義している。そして、測定により得られたn型ドーパント濃度を厚さ方向に平均すれば、平均n型ドーパント濃度を得ることができる。
以下に実施例を挙げて、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<実施例1>
まず、凸部と凹部とからなる凹凸形状が上面に形成されたサファイア基板3(直径が150mm)を準備した。凸部は、図1に示す凸部3aの断面形状を有しており、高さが0.6μm程度の円錐形の先端部を有し(円錐形の底部における円の直径は1.2μm)、各凸部は平面視において略三角形の頂点となる位置に設けられ、隣り合う頂点間隔は2μmであった。また、凹部は、図1に示す凹部3bの断面形状を有していた。
凸部と凹部とが形成されたサファイア基板3の上面に対してRCA洗浄を行った。RCA洗浄後のサファイア基板3を、チャンバーに設置して加熱した。窒素を含むアルゴン雰囲気下でのAlターゲットを用いた反応性スパッタリング法により、基板の上面に、AlN結晶からなるバッファ層5(厚さが25nm)を形成した。
バッファ層5が形成されたサファイア基板3をMOCVD装置に入れ、サファイア基板3の温度を1000℃とした。MOCVD法により、バッファ層5の上面に、アンドープGaNからなる窒化物半導体下地層7を成長させ、その後、窒化物半導体下地層7の上面に、SiドープGaNからなるn型コンタクト層8を成長させた。窒化物半導体下地層7の層厚T1(図1参照、窒化物半導体下地層7の上面とサファイア基板3上面の凹部3b間の直線距離)は6μmであり、n型コンタクト層8の層厚T2(図1参照)は3μmであった。また、n型コンタクト層のn型ドーパント濃度は1×1019/cmであった。
サファイア基板の温度を801℃に下げた後、n型コンタクト層8の上面に、SiドープGaNからなる低温n型窒化物半導体層10(Vピット発生層)(厚さが30nm)を成長させた。低温n型窒化物半導体層10(Vピット発生層)のn型不純物の濃度は9×1019/cmであった。
サファイア基板の温度を801℃に保持した状態で、窒化物半導体多層構造体120を成長させた。具体的には、SiドープGaNからなるワイドバンドギャップ層(厚さが1.55nm)とSiドープInGaNからなるナローバンドギャップ層(厚さが1.55nm)とを交互に20組、成長させた。窒化物半導体多層構造体120を構成するいずれの層においてもn型不純物の濃度は7×1018/cmであった。ナローバンドギャップ層の組成はいずれにおいてもInGa1−yN(y=0.04)であった。
次に、サファイア基板の温度を769℃に下げ、図2に示したような構造を備える多重量子井戸発光層14を形成した。
具体的には、まず、アンドープのInGa(1−x)N(x=0.2)からなる井戸層(第1量子井戸層14W)を3.4nm積層し、アンドープのGaNからなるバリア層(第1バリア層14A)を4nm積層し、これを4回繰り返し積層することで、第1波長(450nm)の多重量子井戸構造(第1発光層141)とした。
次に、基板温度を781℃に上げ、アンドープのInGa(1−z)Nからなる中間の井戸層14Mを5nm積層した。中間の井戸層14MのIn組成zは、第1波長(450nm)の多重量子井戸のPL発光波長が448nmとなるようにTMIの流量を調整して設定した。
次に基板温度を794℃まで昇温し、アンドープのInGa(1−y)N(y=0.09)からなる井戸層(第2量子井戸層14V)を3.4nm積層し、アンドープのGaNからなるバリア層(第2バリア層14B)を4nm積層し、これを3回繰り返し積層することで、第2波長(405nm)の多重量子井戸構造(第2発光層142)とした。
次に、発光層の上面(具体的には最上層の井戸層の上面)に、アンドープGaNからなるバリア層(最後のバリア層14B0)(厚さ7nm)を成長させた。サファイア基板の温度を1000℃に上げた後、最後のバリア層14B0の上面に、p型Al0.18Ga0.82N層(p型窒化物半導体層)16、p型GaN層(p型窒化物半導体層)17およびp型コンタクト層(p型窒化物半導体層)18を順に成長させた。
n型コンタクト層の一部分が露出するように、p型コンタクト層18、p型GaN層17、p型Al0.18Ga0.82N層16、多重量子井戸発光層14、窒化物半導体多層構造体120、低温n型窒化物半導体層(Vピット発生層)10およびn型コンタクト層8をエッチングした。このエッチングにより露出したn型コンタクト層8の上面にAuなどからなるn電極21を形成した。また、p型コンタクト層18の上面に、ITOからなる透明電極層23とAuなどからなるp電極25とを順に形成した。透明電極層23と上記エッチングによって露出した各層の側面とを主に覆うように、SiOからなる透明絶縁保護膜27を形成した。
次に、基板を190μm×990μmサイズのチップに分割した。これにより、実施例1の窒化物半導体発光素子1が得られた。
(評価)
以上の方法により得られた窒化物半導体発光素子をTO−18型ステムにマウントし、樹脂による封止を行なうことなく窒化物半導体発光素子の発光スペクトルおよび光出力を測定した。図3に実施例1で作製された窒化物半導体発光素子のIF=20mA駆動時の発光スペクトルを示す。405nmと450nmの2波長での発光ピークが確認された。また、405nmと450nmのピーク強度比が16:84となった。
図4は、実施例1で作製された窒化物半導体発光素子の外部量子効率(External quantum efficiency:EQE)と印加電流密度依存性を、比較例1と比較して示すグラフであり、縦軸はEQE、横軸は電流密度J(A/cm)である。比較のため、第2波長を有しないアンドープのInGa(1−x)N(x=0.2)井戸層と、アンドープのGaNからなるバリア層を8回繰り返し積層した比較例1のサンプルも作製した。
その結果、比較例1のサンプルと比較して10A/cm未満におけるEQEは比較例1のサンプルより低くなるが、実用領域である10A/cm以上におけるEQEが高くなり、大電流駆動領域での発光強度の落ち込み、いわゆるドループ現象が改善された。その詳細な原因は不明であるが、従来構造である比較例1のサンプルは大電流駆動時にp型窒化物半導体層側から供給されるホールがp型窒化物半導体層に近い井戸層では電子と発光再結合するものの、n型窒化物半導体層に近い井戸層にはホールが拡散されず発光に至らなかったと考えられる。これに対し、実施例1で作製された窒化物半導体発光素子の構造は、p型窒化物半導体層に近い井戸層のエネルギーバンドギャップが大きいため、ホールがトラップされにくい。さらに、実施例1で作製された窒化物半導体発光素子では、p型窒化物半導体層側から供給されるホールが第2波長(405nm)の多重量子井戸構造と第1波長(450nm)の多重量子井戸構造の間にある層厚の大きな中間の井戸層でいったんトラップされる構造となっている。このため中間の井戸層からn型窒化物半導体層に近い側の井戸層に再びホールが拡散し易く、n型窒化物半導体層に近い側の井戸層での発光再結合が容易になり発光効率が向上すると考えられる。
また、多重量子井戸発光層を、p型窒化物半導体層に近い側から、第1量子井戸層(450nm)が1層、第2量子井戸層(405nm)が7回繰り返された井戸構造とし、その他は実施例1と同じ構造となる比較例2のサンプルを作製し(比較例2のサンプルにおける多重量子井戸発光層におけるバンドギャップエネルギー図は図5を参照)、同様に発光効率を確認した。図6は、実施例1で作製された窒化物半導体発光素子の外部量子効率と印加電流密度依存性を比較例2と比較して示すグラフであり、縦軸はEQE、横軸は電流密度J(A/cm)である。図6に示されるように、実施例1で作製された窒化物半導体発光素子において、比較例2のサンプルと比較して、低電流密度の領域および大電流密度の領域の両方でEQEの向上が確認できた。
また図7は、実施例1で作製された窒化物半導体発光素子の電流密度13.4A/cmでの発光スペクトルであり、縦軸は光出力(a.u.)、横軸は波長(nm)である。実施例1で作製された窒化物半導体発光素子では、電流密度=13.4A/cmにおいて、発光スペクトルを確認すると405nmと450nmのピーク強度比が3:7となり(近)紫外光の強度が強くなることで緑色系発光蛍光体/赤色系発光蛍光体との組合せても、さらに高い変換効率(明るさ)が得られることを確認した。
<実施例2>
図8は、実施例2で作製された窒化物半導体発光素子における多重量子井戸構造を示すバンドギャップエネルギー図である。実施例2では、第2波長(405nm)の多重量子井戸構造中の井戸層(第2量子井戸層)の層厚が2nmとなっている以外は実施例1と同様とした。
(評価)
実施例2で作製された窒化物半導体発光素子について、実施例1で行なったのと同様にして、発光スペクトルと光出力を評価した。図9は、実施例2で作製した窒化物半導体発光素子の発光スペクトルを示す図であり、縦軸は強度(a.u.)、横軸は波長(nm)である。結果、実施例1で作製した窒化物半導体発光素子と比較して、電流密度=13.4A/cmにおける405nmのピーク強度が増加し、405nmと450nmのピーク強度比が4:6となり、(近)紫外光の強度が強くなることで緑色系発光蛍光体/赤色系発光蛍光体との組合せても、さらに高い変換効率(明るさ)が得られることを確認した。また図10は、実施例2で作製した窒化物半導体発光素子の外部量子効率と印加電流密度依存性を比較例2と比較して示すグラフであり、縦軸はEQE、横軸は電流密度J(A/cm)である。実施例2で作製した窒化物半導体発光素子は、比較例2のサンプルと比較して、また、実施例1で作製した窒化物半導体発光素子と比較しても、全ての電流密度領域でEQEが改善された。
<実施例3>
図11は、実施例3で作製された窒化物半導体発光素子における多重量子井戸構造を示すバンドギャップエネルギー図である。実施例3では、第2波長(405nm)の多重量子井戸構造中の井戸層(第2量子井戸層)の層数を5層とし、第1波長(450nm)の多重量子井戸構造中の井戸層(第1量子井戸層)の層数を2層とした以外は実施例1と同様とした。
(評価)
実施例3で作製された窒化物半導体発光素子について、実施例1で行なったのと同様にして、発光スペクトルと光出力を評価した。図12は、実施例3で作製した窒化物半導体発光素子の外部量子効率と印加電流密度依存性を比較例2と比較して示すグラフであり、縦軸はEQE、横軸は電流密度J(A/cm)である。また図13は、実施例3で作製した窒化物半導体発光素子の発光スペクトルを示す図であり、縦軸は強度(a.u.)、横軸は波長(nm)である。実施例1において確認されたEQEの改善が得られなかったものの、電流密度=13.4A/cmにおける405nmのピーク強度が増加し、405nmと450nmのピーク強度比が3:7となり、第2量子井戸層の層数が第1量子井戸層の層数より多くても第2波長のピーク強度比が大きくなり、(近)紫外光の強度が強くなることで緑色系発光蛍光体/赤色系発光蛍光体との組合せても、さらに高い変換効率(明るさ)が得られることを確認できた。
1 窒化物半導体発光素子、3 基板、5 バッファ層、7 窒化物半導体下地層、8 n型コンタクト層、10 低温n型窒化物半導体層、14 多重量子井戸発光層、16 p型窒化物半導体層、17 p型窒化物半導体層、18 p型窒化物半導体層、23 透明電極層、25 p電極、27 透明絶縁保護膜、120 窒化物半導体多層構造体。

Claims (7)

  1. n型窒化物半導体層と、
    p型窒化物半導体層と、
    前記n型窒化物半導体層と前記p型窒化物半導体層との間に設けられた多重量子井戸発光層と、を備え、
    前記多重量子井戸発光層は、前記p型窒化物半導体層に近い側から、第2発光層と、中間の井戸層と、第1発光層とを備え、
    前記第1発光層は、複数の第1量子井戸層と、前記複数の第1量子井戸層の間に設けられた第1バリア層とを備え、
    前記第2発光層は、複数の第2量子井戸層と、前記複数の第2量子井戸層の間に設けられた第2バリア層とを備え、
    前記第2量子井戸層のバンドギャップエネルギーは、前記第1量子井戸層のバンドギャップエネルギーよりも大きい、窒化物半導体発光素子。
  2. 前記中間の井戸層のバンドギャップエネルギーは、前記第1量子井戸層のバンドギャップエネルギーと前記第2量子井戸層のバンドギャップエネルギーの間の値である、請求項1に記載の窒化物半導体発光素子。
  3. 前記中間の井戸層の層厚は、前記第1量子井戸層または前記第2量子井戸層の層厚より大きいことを特徴とする、請求項1または2に記載の窒化物半導体発光素子。
  4. 前記第2量子井戸層の層数は前記第1量子井戸層の層数より少ない、請求項1〜3のいずれか1項に記載の窒化物半導体発光素子。
  5. 前記第2量子井戸層の層数は前記第1量子井戸層の層数より多い、請求項1〜3のいずれか1項に記載の窒化物半導体発光素子。
  6. 発光スペクトルが、前記第1量子井戸層から発光される波長からの発光ピークと、前記第2量子井戸層から発光される波長からの発光ピークとを有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の窒化物半導体発光素子。
  7. 前記第2量子井戸層の層厚は前記第1量子井戸層の層厚より小さい、請求項1〜6のいずれか1項に記載の窒化物半導体発光素子。
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