JP2016223349A - 油圧機械の診断方法及び診断装置、並びに再生エネルギー型発電装置及びその診断方法 - Google Patents
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Abstract
Description
また、特許文献2のように油圧ポンプの吐出圧を検出する圧力センサの出力信号に基づいて異常診断を行う場合においては、シリンダユニットの部品の不具合に起因した異常の他にも圧力変動を引き起こす要因が存在するため、シリンダユニットの部品の不具合に起因した異常を適正に診断することは難しい。
回転シャフトと、高圧ラインと、低圧ラインと、複数のシリンダと、前記複数のシリンダによってそれぞれ案内されるように構成された複数のピストンと、前記回転シャフトの回転に関連付けて前記複数のピストンを往復動させるように構成されたカムと、前記シリンダ及び前記ピストンによって形成される複数の作動室に対してそれぞれ設けられ、各々の前記作動室と前記高圧ラインとの連通状態を切り替えるための複数の高圧弁と、各々の前記作動室と前記低圧ラインとの連通状態を切り替えるための複数の低圧弁と、を備える油圧機械の診断方法であって、
前記回転シャフトのトルク変動、前記高圧ラインにおける圧力変動もしくは前記油圧機械の出力変動のうち前記回転シャフトの回転数ωと前記カムのカム山数mとで定まる特定周波数の変動成分、または、前記油圧機械の無負荷状態における前記回転シャフトのトルクの標準偏差の少なくとも一方に基づいて、前記高圧弁の開状態でのスティック、前記低圧弁の閉状態でのスティック又は前記ピストンのスティックの少なくとも一つを含む前記油圧機械の異常を検出するステップを備えることを特徴とする。
前記特定周波数の変動成分の大きさが閾値を超えた場合、前記高圧弁の開状態でのスティック、前記低圧弁の閉状態でのスティック又は前記ピストンのスティックの少なくとも一つが発生したと判断する。
上記(2)の方法によれば、特定周波数の変動成分の大きさが閾値を超えた場合に異常と判断するようにしたので、高圧弁の開状態でのスティック、低圧弁の閉状態でのスティック又はピストンのスティックの少なくとも一つを含む、油圧機械の異常を容易に判断することができる。
前記油圧機械は、圧油を生成するための油圧ポンプを含み、
前記油圧ポンプの前記カムは、前記回転シャフトの周方向に配列された複数のカム山を有し、
前記回転シャフトのトルク変動、前記高圧ラインにおける圧力変動もしくは前記油圧機械の出力変動のうちω×m(但し、mは2以上の整数)の前記特定周波数の変動成分の大きさに基づいて、前記油圧ポンプの異常を検出する。
前記油圧機械の異常を検出するステップでは、前記油圧機械の運転中において前記特定周波数の変動成分の大きさが閾値を超えるか否かを監視し、
前記周波数成分が前記閾値を超えた場合、前記油圧機械の運転を停止する。
上記(4)の方法によれば、周波数成分が閾値を超えた場合、油圧機械に異常が発生したものとして油圧機械の運転を停止するようにしたので、運転を続行することによる油圧機械の深刻な故障の発生を未然に防ぐことができる。
前記無負荷状態における前記トルクの標準偏差が閾値を超えた場合、前記高圧弁の開状態でのスティック又は前記ピストンのスティックの少なくとも一つが発生したと判断する。
例えば、複数のシリンダユニットのうち何れかのシリンダユニットにのみ高圧弁のスティック異常が発生した場合、油圧機械の無負荷状態では、他のピストンは作動していないので他の要因に起因した影響は殆ど現れず、スティック異常が発生したシリンダユニットからの影響のみが回転シャフトのトルクに顕著に現れる。そのため、上記(5)方法によれば、他の要因に起因した影響を排除し、高圧弁の開状態でのスティックを適正に検出することができる。同様の理由から、低圧弁の閉状態でのスティック又はピストンのスティックも適正に検出することができる。
前記油圧機械は、圧油を生成するための油圧ポンプを含み、
前記油圧機械の異常を検出するステップでは、前記油圧ポンプによるポンピングが行われていないときの前記油圧ポンプの前記回転シャフトのトルクの標準偏差に基づき、前記油圧ポンプの異常を検出する。
上記(6)の方法では、油圧ポンプによるポンピングが行われていないときの回転シャフトのトルクの標準偏差に基づき、油圧ポンプの異常を検出するようにしている。そのため、無負荷状態を確実に維持することができ、トルクの標準偏差を用いた適正な異常診断が可能となる。
前記油圧機械は、発電機を駆動するための油圧モータを含み、
前記油圧機械の異常を検出するステップでは、前記発電機をグリッドに連系した直後の前記油圧モータの無負荷回転時における前記回転シャフトのトルクの標準偏差に基づいて、前記油圧モータの異常を検出する。
分散型電源として油圧モータが用いられる場合、通常、発電機の併入に際して発電機をグリッドに連系した直後(あるいは連系直前から直後までの一定時間を含んでもよい)、無負荷回転を行うことがある。そのため、この無負荷回転を利用して、回転シャフトのトルクの標準偏差に基づく油圧モータの異常検出を行うようにすれば、通常の運用を妨げることなく異常診断を行うことができる。
前記発電機が定格回転数に到達するまで前記油圧モータの回転数を上昇させるステップをさらに備え、
前記油圧機械の異常を検出するステップでは、前記発電機が定格回転数に到達し、且つ、前記油圧モータが無負荷状態にあるときの前記回転シャフトのトルクの標準偏差に基づいて、前記油圧モータの異常を検出する。
上記(8)の構成によれば、発電機が定格回転数に到達し、且つ、油圧モータが無負荷状態にあるとき異常検出を行うようにしているので、シリンダユニットの不具合に起因した影響がトルクに顕著に反映される。そのため、高圧弁の開状態でのスティック、低圧弁の閉状態でのスティック又はピストンのスティックの少なくとも一つを含む、油圧モータの異常をより一層適正に診断することができる。
再生エネルギーによって回転されるように構成されたロータと、前記ロータによって駆動される油圧ポンプと、前記油圧ポンプで生成される圧油によって駆動されるように構成された油圧モータと、前記油圧モータによって駆動されるように構成された発電機と、を備える再生エネルギー型発電装置の診断方法であって、
上記(1)乃至(8)に記載の診断方法によって、前記油圧ポンプ又は前記油圧モータの少なくとも一方の異常を検出することを特徴とする。
上記(9)の方法によれば、シリンダユニットの不具合に起因した異常とは別の要因により発生した異常の影響を受けにくい異常診断が可能となり、高圧弁の開状態でのスティック、低圧弁の閉状態でのスティック又はピストンのスティックの少なくとも一つを含む、再生エネルギー型発電装置の異常を適正に診断することができる。また、複数のシリンダユニットのそれぞれに筒内圧センサ等の検出部を設ける必要がないため、簡易な構成とすることができ、低コスト化も図れる。
回転シャフトと、高圧ラインと、低圧ラインと、複数のシリンダと、前記複数のシリンダによってそれぞれ案内されるように構成された複数のピストンと、前記回転シャフトの回転に関連付けて前記複数のピストンを往復動させるように構成されたカムと、前記シリンダ及び前記ピストンによって形成される複数の作動室に対してそれぞれ設けられ、各々の前記作動室と前記高圧ラインとの連通状態を切り替えるための複数の高圧弁と、各々の前記作動室と前記低圧ラインとの連通状態を切り替えるための複数の低圧弁と、を備える油圧機械のための診断装置であって、
前記回転シャフトのトルク、前記高圧ラインにおける圧力もしくは前記油圧機械の出力の少なくとも一つを取得するためのセンサと、
前記センサの計測結果から得られる前記トルク、前記圧力又は前記出力の変動成分のうち前記回転シャフトの回転数ωと前記カムのカム山数mとで定まる特定周波数の変動成分、または、前記油圧機械の無負荷状態において前記センサの計測結果から得られる前記トルクの標準偏差の少なくとも一方に基づいて、前記高圧弁の開状態でのスティック、前記低圧弁の閉状態でのスティック又は前記ピストンのスティックの少なくとも一つを含む前記油圧機械の異常を検出する異常検出部と、を備えることを特徴とする。
前記油圧機械は、圧油を生成するための油圧ポンプを含み、
前記油圧ポンプの前記カムは、前記回転シャフトの周方向に配列された複数のカム山を有し、
前記異常検出部は、前記回転シャフトのトルク変動、前記高圧ラインにおける圧力変動もしくは前記油圧機械の出力変動のうちω×m又はω2×m(但し、mは2以上の整数)の前記特定周波数の変動成分の大きさに基づいて、前記油圧ポンプの異常を検出するように構成される。
複数のシリンダユニットのうち何れかのシリンダユニットにのみ異常が発生した場合、ピストンはカム山に対応して周期的にシリンダ内を往復動するので、異常が発生したシリンダユニットの影響は、回転シャフトの回転数ωとカムのカム山数mとで定まるω×m又はω2×m(但し、mは2以上の整数)の特定周波数の変動成分として顕著に現れる。そのため、上記(11)の構成によれば、他の要因に起因した影響を排除し、高圧弁の開状態でのスティック、低圧弁の閉状態でのスティック又はピストンのスティックの少なくとも一つを含む、油圧機械の異常を適正に検出することができる。
前記異常検出部は、
前記油圧機械の運転中において前記周波数成分が閾値を超えるか否かを監視し、
前記周波数成分が前記閾値を超えた場合、前記油圧機械の運転停止指令を前記油圧機械に対して出力するように構成される。
上記(12)の構成によれば、特定周波数の変動成分の大きさが閾値を超えた場合に異常と判断するようにしたので、高圧弁の開状態でのスティック、低圧弁の閉状態でのスティック又はピストンのスティックの少なくとも一つを含む、油圧機械の異常を容易に判断することができる。
前記油圧機械は、圧油を生成するための油圧ポンプを含み、
前記異常検出部は、前記油圧ポンプによるポンピングが行われていないときの前記油圧ポンプの前記回転シャフトのトルクの標準偏差に基づき、前記油圧ポンプの異常を検出するように構成される。
上記(13)の構成では、油圧ポンプによるポンピングが行われていないときの回転シャフトのトルクの標準偏差に基づき、油圧ポンプの異常を検出するようにしている。そのため、無負荷状態を確実に維持することができ、トルクの標準偏差を用いた適正な異常診断が可能となる。
前記油圧機械は、発電機を駆動するための油圧モータを含み、
前記異常検出部は、
前記発電機をグリッドに連系した直後の前記油圧モータの無負荷回転時における前記回転シャフトのトルクの標準偏差に基づいて、前記油圧モータの異常を検出するように構成される。
上記(14)の構成によれば、発電機の併入に際して発電機をグリッドに連系した直後(あるいは連系直前から直後までの一定時間を含んでもよい)の無負荷回転を利用して、回転シャフトのトルクの標準偏差に基づく油圧モータの異常検出を行うようにしたので、通常の運用を妨げることなく異常診断を行うことができる。
再生エネルギーによって回転されるように構成されたロータと、
前記ロータによって駆動される油圧ポンプと、
前記油圧ポンプで生成される圧油によって駆動されるように構成された油圧モータと、
前記油圧モータによって駆動されるように構成された発電機と、
上記(10)乃至(14)の何れか一に記載の診断装置と、を備え、
前記診断装置は、前記油圧ポンプ又は前記油圧モータの少なくとも一方の異常を検出するように構成されたことを特徴とする。
上記(15)の構成によれば、シリンダユニットの不具合に起因した異常とは別の要因により発生した異常の影響を受けにくい異常診断が可能となり、高圧弁の開状態でのスティック、低圧弁の閉状態でのスティック又はピストンのスティックの少なくとも一つを含む、再生エネルギー型発電装置の異常を適正に診断することができる。また、複数のシリンダユニットのそれぞれに筒内圧センサ等の検出部を設ける必要がないため、簡易な構成とすることができ、低コスト化も図れる。
油圧ポンプ10は、回転シャフト5に入力される機械的な回転エネルギーによって駆動されるように構成される。
油圧モータ20は、油圧ポンプ10からの圧油によって駆動されるように構成される。油圧モータ20の出力軸(回転シャフト)7には、グリッド9に連系された発電機8が連結されている。
高圧ライン30は、油圧ポンプ10の吐出口と油圧モータ20の吸入口との間に設けられ、油圧ポンプ10で生成した圧油(高圧油)を油圧モータ20に導くように構成されている。
低圧ライン31は、油圧モータ20の吐出口と油圧ポンプ10の吸入口との間に設けられ、油圧モータ20から吐出された作動油(低圧油)を油圧ポンプ10に導くように構成されている。
油圧ポンプ10では、高圧弁15および低圧弁16の開閉によって、各作動室13をアクティブ状態又は非アクティブ状態に切替えることができる。作動室13がアクティブ状態である場合、吸入工程において高圧弁15を閉じ低圧弁16を開くことで低圧ライン31から作動室13内に作動油を流入させるとともに、ポンプ工程において高圧弁15を開き低圧弁16を閉じることで作動室13から高圧ライン30に圧縮された作動油を送り出す。一方、作動室13が非アクティブ状態である場合、吸入工程およびポンプ工程の両方において、高圧弁15が閉じて低圧弁16が開いた状態を維持して、作動室13と低圧ライン31との間で作動油を往復させる(すなわち、高圧ライン30には作動油を送り出さない)。これにより、油圧ポンプ10は、アクティブ状態にある作動室13の個数の全作動室数に対する割合を変化させることで、全体としての押しのけ容積を調節することができる。
油圧モータ20では、高圧弁25および低圧弁26の開閉によって、各作動室23をアクティブ状態又は非アクティブ状態に切替えることができる。作動室23がアクティブ状態である場合、モータ工程において高圧弁25を開き低圧弁26を閉じることで高圧ライン30から作動室23内に圧油を流入させるとともに、排出工程において高圧弁25を閉じ低圧弁26を開くことで作動室23内で仕事をした圧油を低圧ライン31に送り出す。一方、作動室23が非アクティブ状態である場合、モータ工程及び排出工程の両方において、高圧弁25が閉じて低圧弁26が開いた状態を維持して、作動室23と低圧ライン31との間で圧油を往復させる(すなわち、高圧ライン30からの高圧油を作動室23に受け入れない)。これにより、油圧モータ20は、油圧ポンプ10と同様に、アクティブ状態にある作動室23の個数の全作動室数に対する割合を変化させることで、全体としての押しのけ容積を調節することができる。
異常検出部46は、センサ41,42,43,44の計測結果から得られる回転シャフト5,7のトルク、高圧ライン30の圧力又は油圧機械の出力の変動成分のうち、回転シャフト5,7の回転数ωとカム14のカム山数mとで定まる特定周波数の変動成分、または、油圧機械の無負荷状態においてセンサ41,43の計測結果から得られるトルクの標準偏差の少なくとも一方に基づいて、高圧弁15,25の開状態でのスティック、低圧弁16,26の閉状態でのスティック又はピストン12,22のスティックの少なくとも一つを含む、油圧機械の異常を検出するように構成される。
なお、図3に示す油圧モータ20は偏心カム24を備える構成について例示したが、上記実施形態は、油圧モータ20がカム山を有するマルチローブカム(図2参照)を有している場合に適用される。
異常検出部46には、異常診断に用いられるパラメータ(回転シャフト5,7のトルク、高圧ライン30における圧力もしくは油圧機械の出力のうち少なくとも一つ)を検出するためのセンサ41,42,43,44から検出信号が入力される。異常検出部46は、検出信号に基づいて、異常診断に用いられるパラメータの特定周波数の変動成分を抽出する。このとき、パラメータの検出信号から、例えばFFTによる周波数解析によってパラメータの特定周波数の変動成分を抽出するようにしてもよい。そして、異常検出部46では、特定周波数の変動成分と記憶部47に記憶された閾値とを比較し、特定周波数の変動成分の大きさが閾値を超えた場合、高圧弁15,25の開状態でのスティック、低圧弁16,26の閉状態でのスティック又はピストン12,22のスティックの少なくとも一つが発生したと判断する。
異常検出部46には、トルクセンサ41,43から検出信号が入力される。異常検出部46は、トルクセンサ41,43の計測結果から取得された無負荷状態におけるトルクの標準偏差と、記憶部47に記憶された閾値とを比較し、無負荷状態におけるトルクの標準偏差が閾値を超えた場合、高圧弁15,25の開状態でのスティック又はピストン12,22のスティックの少なくとも一つが発生したと判断する。
図4は、一実施形態に係る異常診断方法を示すフローチャートである。なお、油圧ポンプ10の各部位については、図2の符号を用いている。
一実施形態に係る油圧ポンプ10の異常診断方法では、ステップS1において、異常検出部46は、回転シャフト5のトルク変動を検出するためのトルクセンサ41の計測結果、又は、高圧ライン30における圧力センサ42の計測結果の少なくとも一つに基づいて、回転シャフト5のトルク変動又は高圧ライン30における圧力変動の少なくとも一つを取得する。次いで、ステップS2において、異常検出部46は、回転シャフト5のトルク変動又は高圧ライン30における圧力変動の少なくとも一つの周波数解析を行い、特定周波数の変動成分を抽出する。ここで、特定周波数とは、回転シャフト5の回転数ωとカム14のカム山数mとで定まる周波数であり、具体的には、ω×m(但し、mは2以上の整数)で得られる周波数である。あるいは、特定周波数は、ω2×m(但し、mは2以上の整数)であってもよい。
なお、図5は、油圧ポンプの高圧圧力スペクトルを示すグラフである。図6(a)〜(d)は、それぞれ、油圧ポンプの回転数、アクティブ頻度指令値Fd、回転シャフトのトルク、シリンダ内圧力(筒内圧)の経時変化を示すグラフである。図7(a)及び(b)は、回転シャフトのトルク及び高圧ラインの圧力の周波数分析結果を示す図である。なお、アクティブ頻度指令値Fdとは、アクティブ状態のシリンダの全シリンダに対する割合を表す。
ケース1において、高圧ライン30の圧力は、正常時には周波数に関わらず概ね一定の値を示している。一方、異常時には、特定の周波数F1において高圧ライン30の圧力が突出して上昇している。この特定の周波数F1は、回転シャフト5の回転数ωとカムのカム山数mとで定まるω×mに対応している。
同様に、ケース2において、高圧ライン30の圧力は、正常時には周波数に関わらず概ね一定の値を示しているが、異常時には、特定の周波数F2において高圧ライン30の圧力が突出して上昇している。ケース2においても、この特定の周波数F2は、回転シャフト5の回転数ωとカムのカム山数mとで定まるω×mに対応している。
これらの図から明らかなように、高圧弁15のスティック異常が発生した時、高圧ライン30の圧力変動は、回転シャフト5の回転数ωとカムのカム山数mとで定まるω×mの特定周波数の変動成分として顕著に現れることがわかる。すなわち、高圧弁15のスティック異常と、回転シャフト5の回転数ωとカムのカム山数mとで定まるω×mの特定周波数の変動成分との間に密接な関係があることが明らかである。
高圧弁のスティック異常が発生した時、(a)に示すように回転数は一定の状態を維持しているが、(b)及び(c)に示すように、スティック異常の発生時点からアクティブ頻度指令値Fdの変動及び回転シャフト5のトルク変動が大きくなる。また、(d)に示すように、スティック異常の発生時点から筒内圧も上昇する。
これらの結果から、油圧ポンプ10に異常が発生したことは判断できるが、これのみではシリンダユニットにおける異常か他の要因による異常かを判定することは難しい。
そこで、図7(a)に示す回転シャフト5のトルクの周波数分析結果を見ると、異常発生時から特定周波数F1におけるトルク変動が顕著に現れている。あるいは、図7(b)に示す高圧ライン30の圧力の周波数分析結果を見ると、異常発生時から特定周波数F1におけるトルク変動が顕著に現れている。そのため、この異常は、高圧弁15の開状態でのスティックであると特定することができる。なお、ここでは高圧弁15の開状態でのスティック異常を検出する場合を例示したが、低圧弁16の閉状態でのスティック異常又はピストン12のスティック異常も同様にして特定することができる。
なお、上述したように、特定周波数の変動成分を用いた異常診断は、油圧モータ20等の他の油圧機械にも適用できる。
一方、図10に示す異常時においては、(a−1)及び(a−2)に示すように回転数が設定以上であるとき、(d−1)及び(d−2)に示すように無負荷期間Tにおいて回転シャフト5の標準偏差は大きくなる。
このように、ピストン12のスティック異常が発生した場合、油圧ポンプ10が無負荷状態である無負荷期間Tにおいて、標準偏差は大きくなる。そのため、油圧ポンプ10が無負荷状態であるときの回転シャフト5の標準偏差を監視することで、異常を適正に検出することが可能である。なお、高圧弁15のスティック異常に対しても、同様にして異常を検出することができる。
また、分散型電源として油圧モータ20が用いられる場合、通常、発電機8の併入に際して発電機8をグリッド9に連系した直後(あるいは連系直前から直後までの一定時間を含んでもよい)、無負荷回転を行うことがある。そのため、この無負荷回転を利用して、回転シャフト7のトルクの標準偏差に基づく油圧モータ20の異常検出を行うようにすれば、通常の運用を妨げることなく異常診断を行うことができる。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
2 ブレード
3 ハブ
4 ロータ
5 回転シャフト
6 油圧トランスミッション
7 出力軸(回転シャフト)
8 発電機
9 グリッド
10 油圧ポンプ
11,21 シリンダ
12,22 ピストン
13,23 作動室
14 カム(マルチローブカム)
15,25 高圧弁
16,26 低圧弁
20 油圧モータ
24 カム(偏心カム)
30 高圧ライン
31 低圧ライン
40 異常診断装置
41,43 トルクセンサ
42 圧力センサ
43 トルクセンサ
44 出力センサ
45 コントローラ
46 異常検出部
47 記憶部
また、特許文献2のように油圧ポンプの吐出圧を検出する圧力センサの出力信号に基づいて異常診断を行う場合においては、シリンダユニットの部品の不具合に起因した異常の他にも圧力変動を引き起こす要因が存在するため、シリンダユニットの部品の不具合に起因した異常を適正に診断することは難しい。
回転シャフトと、高圧ラインと、低圧ラインと、複数のシリンダと、前記複数のシリンダによってそれぞれ案内されるように構成された複数のピストンと、前記回転シャフトの回転に関連付けて前記複数のピストンを往復動させるように構成されたカムと、前記シリンダ及び前記ピストンによって形成される複数の作動室に対してそれぞれ設けられ、各々の前記作動室と前記高圧ラインとの連通状態を切り替えるための複数の高圧弁と、各々の前記作動室と前記低圧ラインとの連通状態を切り替えるための複数の低圧弁と、を備える油圧機械の診断方法であって、
前記回転シャフトのトルク変動、前記高圧ラインにおける圧力変動もしくは前記油圧機械の出力変動のうち前記回転シャフトの回転数ωと前記カムのカム山数mとで定まる特定周波数の変動成分、または、前記油圧機械の無負荷状態における前記回転シャフトのトルクの標準偏差の少なくとも一方に基づいて、前記高圧弁の開状態でのスティック、前記低圧弁の閉状態でのスティック又は前記ピストンのスティックの少なくとも一つを含む前記油圧機械の異常を検出するステップを備えることを特徴とする。
前記特定周波数の変動成分の大きさが閾値を超えた場合、前記高圧弁の開状態でのスティック、前記低圧弁の閉状態でのスティック又は前記ピストンのスティックの少なくとも一つが発生したと判断する。
上記(2)の方法によれば、特定周波数の変動成分の大きさが閾値を超えた場合に異常と判断するようにしたので、高圧弁の開状態でのスティック、低圧弁の閉状態でのスティック又はピストンのスティックの少なくとも一つを含む、油圧機械の異常を容易に判断することができる。
前記油圧機械は、圧油を生成するための油圧ポンプを含み、
前記油圧ポンプの前記カムは、前記回転シャフトの周方向に配列された複数のカム山を有し、
前記回転シャフトのトルク変動、前記高圧ラインにおける圧力変動もしくは前記油圧機械の出力変動のうちω×m(但し、mは2以上の整数)の前記特定周波数の変動成分の大きさに基づいて、前記油圧ポンプの異常を検出する。
前記油圧機械の異常を検出するステップでは、前記油圧機械の運転中において前記特定周波数の変動成分の大きさが閾値を超えるか否かを監視し、
前記変動成分が前記閾値を超えた場合、前記油圧機械の運転を停止する。
上記(4)の方法によれば、変動成分が閾値を超えた場合、油圧機械に異常が発生したものとして油圧機械の運転を停止するようにしたので、運転を続行することによる油圧機械の深刻な故障の発生を未然に防ぐことができる。
前記無負荷状態における前記トルクの標準偏差が閾値を超えた場合、前記高圧弁の開状態でのスティック又は前記ピストンのスティックの少なくとも一つが発生したと判断する。
例えば、複数のシリンダユニットのうち何れかのシリンダユニットにのみ高圧弁のスティック異常が発生した場合、油圧機械の無負荷状態では、他のピストンは作動していないので他の要因に起因した影響は殆ど現れず、スティック異常が発生したシリンダユニットからの影響のみが回転シャフトのトルクに顕著に現れる。そのため、上記(5)方法によれば、他の要因に起因した影響を排除し、高圧弁の開状態でのスティックを適正に検出することができる。同様の理由から、低圧弁の閉状態でのスティック又はピストンのスティックも適正に検出することができる。
前記油圧機械は、圧油を生成するための油圧ポンプを含み、
前記油圧機械の異常を検出するステップでは、前記油圧ポンプによるポンピングが行われていないときの前記油圧ポンプの前記回転シャフトのトルクの標準偏差に基づき、前記油圧ポンプの異常を検出する。
上記(6)の方法では、油圧ポンプによるポンピングが行われていないときの回転シャフトのトルクの標準偏差に基づき、油圧ポンプの異常を検出するようにしている。そのため、無負荷状態を確実に維持することができ、トルクの標準偏差を用いた適正な異常診断が可能となる。
前記油圧機械は、発電機を駆動するための油圧モータを含み、
前記油圧機械の異常を検出するステップでは、前記発電機をグリッドに連系した直後の前記油圧モータの無負荷回転時における前記回転シャフトのトルクの標準偏差に基づいて、前記油圧モータの異常を検出する。
分散型電源として油圧モータが用いられる場合、通常、発電機の併入に際して発電機をグリッドに連系した直後(あるいは連系直前から直後までの一定時間を含んでもよい)、無負荷回転を行うことがある。そのため、この無負荷回転を利用して、回転シャフトのトルクの標準偏差に基づく油圧モータの異常検出を行うようにすれば、通常の運用を妨げることなく異常診断を行うことができる。
前記発電機が定格回転数に到達するまで前記油圧モータの回転数を上昇させるステップをさらに備え、
前記油圧機械の異常を検出するステップでは、前記発電機が定格回転数に到達し、且つ、前記油圧モータが無負荷状態にあるときの前記回転シャフトのトルクの標準偏差に基づいて、前記油圧モータの異常を検出する。
上記(8)の構成によれば、発電機が定格回転数に到達し、且つ、油圧モータが無負荷状態にあるとき異常検出を行うようにしているので、シリンダユニットの不具合に起因した影響がトルクに顕著に反映される。そのため、高圧弁の開状態でのスティック、低圧弁の閉状態でのスティック又はピストンのスティックの少なくとも一つを含む、油圧モータの異常をより一層適正に診断することができる。
再生エネルギーによって回転されるように構成されたロータと、前記ロータによって駆動される油圧ポンプと、前記油圧ポンプで生成される圧油によって駆動されるように構成された油圧モータと、前記油圧モータによって駆動されるように構成された発電機と、を備える再生エネルギー型発電装置の診断方法であって、
上記(1)乃至(8)に記載の診断方法によって、前記油圧ポンプ又は前記油圧モータの少なくとも一方の異常を検出することを特徴とする。
上記(9)の方法によれば、シリンダユニットの不具合に起因した異常とは別の要因により発生した異常の影響を受けにくい異常診断が可能となり、高圧弁の開状態でのスティック、低圧弁の閉状態でのスティック又はピストンのスティックの少なくとも一つを含む、再生エネルギー型発電装置の異常を適正に診断することができる。また、複数のシリンダユニットのそれぞれに筒内圧センサ等の検出部を設ける必要がないため、簡易な構成とすることができ、低コスト化も図れる。
回転シャフトと、高圧ラインと、低圧ラインと、複数のシリンダと、前記複数のシリンダによってそれぞれ案内されるように構成された複数のピストンと、前記回転シャフトの回転に関連付けて前記複数のピストンを往復動させるように構成されたカムと、前記シリンダ及び前記ピストンによって形成される複数の作動室に対してそれぞれ設けられ、各々の前記作動室と前記高圧ラインとの連通状態を切り替えるための複数の高圧弁と、各々の前記作動室と前記低圧ラインとの連通状態を切り替えるための複数の低圧弁と、を備える油圧機械のための診断装置であって、
前記回転シャフトのトルク、前記高圧ラインにおける圧力もしくは前記油圧機械の出力の少なくとも一つを取得するためのセンサと、
前記センサの計測結果から得られる前記トルク、前記圧力又は前記出力の変動成分のうち前記回転シャフトの回転数ωと前記カムのカム山数mとで定まる特定周波数の変動成分、または、前記油圧機械の無負荷状態において前記センサの計測結果から得られる前記トルクの標準偏差の少なくとも一方に基づいて、前記高圧弁の開状態でのスティック、前記低圧弁の閉状態でのスティック又は前記ピストンのスティックの少なくとも一つを含む前記油圧機械の異常を検出する異常検出部と、を備えることを特徴とする。
前記油圧機械は、圧油を生成するための油圧ポンプを含み、
前記油圧ポンプの前記カムは、前記回転シャフトの周方向に配列された複数のカム山を有し、
前記異常検出部は、前記回転シャフトのトルク変動、前記高圧ラインにおける圧力変動もしくは前記油圧機械の出力変動のうちω×m又はω2×m(但し、mは2以上の整数)の前記特定周波数の変動成分の大きさに基づいて、前記油圧ポンプの異常を検出するように構成される。
複数のシリンダユニットのうち何れかのシリンダユニットにのみ異常が発生した場合、ピストンはカム山に対応して周期的にシリンダ内を往復動するので、異常が発生したシリンダユニットの影響は、回転シャフトの回転数ωとカムのカム山数mとで定まるω×m又はω2×m(但し、mは2以上の整数)の特定周波数の変動成分として顕著に現れる。そのため、上記(11)の構成によれば、他の要因に起因した影響を排除し、高圧弁の開状態でのスティック、低圧弁の閉状態でのスティック又はピストンのスティックの少なくとも一つを含む、油圧機械の異常を適正に検出することができる。
前記異常検出部は、
前記油圧機械の運転中において前記変動成分が閾値を超えるか否かを監視し、
前記変動成分が前記閾値を超えた場合、前記油圧機械の運転停止指令を前記油圧機械に対して出力するように構成される。
上記(12)の構成によれば、特定周波数の変動成分の大きさが閾値を超えた場合に異常と判断するようにしたので、高圧弁の開状態でのスティック、低圧弁の閉状態でのスティック又はピストンのスティックの少なくとも一つを含む、油圧機械の異常を容易に判断することができる。
前記油圧機械は、圧油を生成するための油圧ポンプを含み、
前記異常検出部は、前記油圧ポンプによるポンピングが行われていないときの前記油圧ポンプの前記回転シャフトのトルクの標準偏差に基づき、前記油圧ポンプの異常を検出するように構成される。
上記(13)の構成では、油圧ポンプによるポンピングが行われていないときの回転シャフトのトルクの標準偏差に基づき、油圧ポンプの異常を検出するようにしている。そのため、無負荷状態を確実に維持することができ、トルクの標準偏差を用いた適正な異常診断が可能となる。
前記油圧機械は、発電機を駆動するための油圧モータを含み、
前記異常検出部は、
前記発電機をグリッドに連系した直後の前記油圧モータの無負荷回転時における前記回転シャフトのトルクの標準偏差に基づいて、前記油圧モータの異常を検出するように構成される。
上記(14)の構成によれば、発電機の併入に際して発電機をグリッドに連系した直後(あるいは連系直前から直後までの一定時間を含んでもよい)の無負荷回転を利用して、回転シャフトのトルクの標準偏差に基づく油圧モータの異常検出を行うようにしたので、通常の運用を妨げることなく異常診断を行うことができる。
再生エネルギーによって回転されるように構成されたロータと、
前記ロータによって駆動される油圧ポンプと、
前記油圧ポンプで生成される圧油によって駆動されるように構成された油圧モータと、
前記油圧モータによって駆動されるように構成された発電機と、
上記(10)乃至(14)の何れか一に記載の診断装置と、を備え、
前記診断装置は、前記油圧ポンプ又は前記油圧モータの少なくとも一方の異常を検出するように構成されたことを特徴とする。
上記(15)の構成によれば、シリンダユニットの不具合に起因した異常とは別の要因により発生した異常の影響を受けにくい異常診断が可能となり、高圧弁の開状態でのスティック、低圧弁の閉状態でのスティック又はピストンのスティックの少なくとも一つを含む、再生エネルギー型発電装置の異常を適正に診断することができる。また、複数のシリンダユニットのそれぞれに筒内圧センサ等の検出部を設ける必要がないため、簡易な構成とすることができ、低コスト化も図れる。
油圧ポンプ10は、回転シャフト5に入力される機械的な回転エネルギーによって駆動されるように構成される。
油圧モータ20は、油圧ポンプ10からの圧油によって駆動されるように構成される。油圧モータ20の出力軸(回転シャフト)7には、グリッド9に連系された発電機8が連結されている。
高圧ライン30は、油圧ポンプ10の吐出口と油圧モータ20の吸入口との間に設けられ、油圧ポンプ10で生成した圧油(高圧油)を油圧モータ20に導くように構成されている。
低圧ライン31は、油圧モータ20の吐出口と油圧ポンプ10の吸入口との間に設けられ、油圧モータ20から吐出された作動油(低圧油)を油圧ポンプ10に導くように構成されている。
油圧ポンプ10では、高圧弁15および低圧弁16の開閉によって、各作動室13をアクティブ状態又は非アクティブ状態に切替えることができる。作動室13がアクティブ状態である場合、吸入工程において高圧弁15を閉じ低圧弁16を開くことで低圧ライン31から作動室13内に作動油を流入させるとともに、ポンプ工程において高圧弁15を開き低圧弁16を閉じることで作動室13から高圧ライン30に圧縮された作動油を送り出す。一方、作動室13が非アクティブ状態である場合、吸入工程およびポンプ工程の両方において、高圧弁15が閉じて低圧弁16が開いた状態を維持して、作動室13と低圧ライン31との間で作動油を往復させる(すなわち、高圧ライン30には作動油を送り出さない)。これにより、油圧ポンプ10は、アクティブ状態にある作動室13の個数の全作動室数に対する割合を変化させることで、全体としての押しのけ容積を調節することができる。
油圧モータ20では、高圧弁25および低圧弁26の開閉によって、各作動室23をアクティブ状態又は非アクティブ状態に切替えることができる。作動室23がアクティブ状態である場合、モータ工程において高圧弁25を開き低圧弁26を閉じることで高圧ライン30から作動室23内に圧油を流入させるとともに、排出工程において高圧弁25を閉じ低圧弁26を開くことで作動室23内で仕事をした圧油を低圧ライン31に送り出す。一方、作動室23が非アクティブ状態である場合、モータ工程及び排出工程の両方において、高圧弁25が閉じて低圧弁26が開いた状態を維持して、作動室23と低圧ライン31との間で圧油を往復させる(すなわち、高圧ライン30からの高圧油を作動室23に受け入れない)。これにより、油圧モータ20は、油圧ポンプ10と同様に、アクティブ状態にある作動室23の個数の全作動室数に対する割合を変化させることで、全体としての押しのけ容積を調節することができる。
異常検出部46は、センサ41,42,43,44の計測結果から得られる回転シャフト5,7のトルク、高圧ライン30の圧力又は油圧機械の出力の変動成分のうち、回転シャフト5,7の回転数ωとカム14のカム山数mとで定まる特定周波数の変動成分、または、油圧機械の無負荷状態においてセンサ41,43の計測結果から得られるトルクの標準偏差の少なくとも一方に基づいて、高圧弁15,25の開状態でのスティック、低圧弁16,26の閉状態でのスティック又はピストン12,22のスティックの少なくとも一つを含む、油圧機械の異常を検出するように構成される。
なお、図3に示す油圧モータ20は偏心カム24を備える構成について例示したが、上記実施形態は、油圧モータ20がカム山を有するマルチローブカム(図2参照)を有している場合に適用される。
異常検出部46には、異常診断に用いられるパラメータ(回転シャフト5,7のトルク、高圧ライン30における圧力もしくは油圧機械の出力のうち少なくとも一つ)を検出するためのセンサ41,42,43,44から検出信号が入力される。異常検出部46は、検出信号に基づいて、異常診断に用いられるパラメータの特定周波数の変動成分を抽出する。このとき、パラメータの検出信号から、例えばFFTによる周波数解析によってパラメータの特定周波数の変動成分を抽出するようにしてもよい。そして、異常検出部46では、特定周波数の変動成分と記憶部47に記憶された閾値とを比較し、特定周波数の変動成分の大きさが閾値を超えた場合、高圧弁15,25の開状態でのスティック、低圧弁16,26の閉状態でのスティック又はピストン12,22のスティックの少なくとも一つが発生したと判断する。
異常検出部46には、トルクセンサ41,43から検出信号が入力される。異常検出部46は、トルクセンサ41,43の計測結果から取得された無負荷状態におけるトルクの標準偏差と、記憶部47に記憶された閾値とを比較し、無負荷状態におけるトルクの標準偏差が閾値を超えた場合、高圧弁15,25の開状態でのスティック又はピストン12,22のスティックの少なくとも一つが発生したと判断する。
図4は、一実施形態に係る異常診断方法を示すフローチャートである。なお、油圧ポンプ10の各部位については、図2の符号を用いている。
一実施形態に係る油圧ポンプ10の異常診断方法では、ステップS1において、異常検出部46は、回転シャフト5のトルク変動を検出するためのトルクセンサ41の計測結果、又は、高圧ライン30における圧力センサ42の計測結果の少なくとも一つに基づいて、回転シャフト5のトルク変動又は高圧ライン30における圧力変動の少なくとも一つを取得する。次いで、ステップS2において、異常検出部46は、回転シャフト5のトルク変動又は高圧ライン30における圧力変動の少なくとも一つの周波数解析を行い、特定周波数の変動成分を抽出する。ここで、特定周波数とは、回転シャフト5の回転数ωとカム14のカム山数mとで定まる周波数であり、具体的には、ω×m(但し、mは2以上の整数)で得られる周波数である。あるいは、特定周波数は、ω2×m(但し、mは2以上の整数)であってもよい。
なお、図5は、油圧ポンプの高圧圧力スペクトルを示すグラフである。図6(a)〜(d)は、それぞれ、油圧ポンプの回転数、アクティブ頻度指令値Fd、回転シャフトのトルク、シリンダ内圧力(筒内圧)の経時変化を示すグラフである。図7(a)及び(b)は、回転シャフトのトルク及び高圧ラインの圧力の周波数分析結果を示す図である。なお、アクティブ頻度指令値Fdとは、アクティブ状態のシリンダの全シリンダに対する割合を表す。
ケース1において、高圧ライン30の圧力は、正常時には周波数に関わらず概ね一定の値を示している。一方、異常時には、特定の周波数F1において高圧ライン30の圧力が突出して上昇している。この特定の周波数F1は、回転シャフト5の回転数ωとカムのカム山数mとで定まるω×mに対応している。
同様に、ケース2において、高圧ライン30の圧力は、正常時には周波数に関わらず概ね一定の値を示しているが、異常時には、特定の周波数F2において高圧ライン30の圧力が突出して上昇している。ケース2においても、この特定の周波数F2は、回転シャフト5の回転数ωとカムのカム山数mとで定まるω×mに対応している。
これらの図から明らかなように、高圧弁15のスティック異常が発生した時、高圧ライン30の圧力変動は、回転シャフト5の回転数ωとカムのカム山数mとで定まるω×mの特定周波数の変動成分として顕著に現れることがわかる。すなわち、高圧弁15のスティック異常と、回転シャフト5の回転数ωとカムのカム山数mとで定まるω×mの特定周波数の変動成分との間に密接な関係があることが明らかである。
高圧弁のスティック異常が発生した時、(a)に示すように回転数は一定の状態を維持しているが、(b)及び(c)に示すように、スティック異常の発生時点からアクティブ頻度指令値Fdの変動及び回転シャフト5のトルク変動が大きくなる。また、(d)に示すように、スティック異常の発生時点から筒内圧も上昇する。
これらの結果から、油圧ポンプ10に異常が発生したことは判断できるが、これのみではシリンダユニットにおける異常か他の要因による異常かを判定することは難しい。
そこで、図7(a)に示す回転シャフト5のトルクの周波数分析結果を見ると、異常発生時から特定周波数F1におけるトルク変動が顕著に現れている。あるいは、図7(b)に示す高圧ライン30の圧力の周波数分析結果を見ると、異常発生時から特定周波数F1におけるトルク変動が顕著に現れている。そのため、この異常は、高圧弁15の開状態でのスティックであると特定することができる。なお、ここでは高圧弁15の開状態でのスティック異常を検出する場合を例示したが、低圧弁16の閉状態でのスティック異常又はピストン12のスティック異常も同様にして特定することができる。
なお、上述したように、特定周波数の変動成分を用いた異常診断は、油圧モータ20等の他の油圧機械にも適用できる。
一方、図10に示す異常時においては、(a−1)及び(a−2)に示すように回転数が設定以上であるとき、(d−1)及び(d−2)に示すように無負荷期間Tにおいて回転シャフト5の標準偏差は大きくなる。
このように、ピストン12のスティック異常が発生した場合、油圧ポンプ10が無負荷状態である無負荷期間Tにおいて、標準偏差は大きくなる。そのため、油圧ポンプ10が無負荷状態であるときの回転シャフト5の標準偏差を監視することで、異常を適正に検出することが可能である。なお、高圧弁15のスティック異常に対しても、同様にして異常を検出することができる。
また、分散型電源として油圧モータ20が用いられる場合、通常、発電機8の併入に際して発電機8をグリッド9に連系した直後(あるいは連系直前から直後までの一定時間を含んでもよい)、無負荷回転を行うことがある。そのため、この無負荷回転を利用して、回転シャフト7のトルクの標準偏差に基づく油圧モータ20の異常検出を行うようにすれば、通常の運用を妨げることなく異常診断を行うことができる。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
2 ブレード
3 ハブ
4 ロータ
5 回転シャフト
6 油圧トランスミッション
7 出力軸(回転シャフト)
8 発電機
9 グリッド
10 油圧ポンプ
11,21 シリンダ
12,22 ピストン
13,23 作動室
14 カム(マルチローブカム)
15,25 高圧弁
16,26 低圧弁
20 油圧モータ
24 カム(偏心カム)
30 高圧ライン
31 低圧ライン
40 異常診断装置
41,43 トルクセンサ
42 圧力センサ
43 トルクセンサ
44 出力センサ
45 コントローラ
46 異常検出部
47 記憶部
Claims (15)
- 回転シャフトと、高圧ラインと、低圧ラインと、複数のシリンダと、前記複数のシリンダによってそれぞれ案内されるように構成された複数のピストンと、前記回転シャフトの回転に関連付けて前記複数のピストンを往復動させるように構成されたカムと、前記シリンダ及び前記ピストンによって形成される複数の作動室に対してそれぞれ設けられ、各々の前記作動室と前記高圧ラインとの連通状態を切り替えるための複数の高圧弁と、各々の前記作動室と前記低圧ラインとの連通状態を切り替えるための複数の低圧弁と、を備える油圧機械の診断方法であって、
前記回転シャフトのトルク変動、前記高圧ラインにおける圧力変動もしくは前記油圧機械の出力変動のうち前記回転シャフトの回転数ωと前記カムのカム山数mとで定まる特定周波数の変動成分、または、前記油圧機械の無負荷状態における前記回転シャフトのトルクの標準偏差の少なくとも一方に基づいて、前記高圧弁の開状態でのスティック、前記低圧弁の閉状態でのスティック又は前記ピストンのスティックの少なくとも一つを含む前記油圧機械の異常を検出するステップを備えることを特徴とする油圧機械の診断方法。 - 前記特定周波数の変動成分の大きさが閾値を超えた場合、前記高圧弁の開状態でのスティック、前記低圧弁の閉状態でのスティック又は前記ピストンのスティックの少なくとも一つが発生したと判断することを特徴とする請求項1に記載の油圧機械の診断方法。
- 前記油圧機械は、圧油を生成するための油圧ポンプを含み、
前記油圧ポンプの前記カムは、前記回転シャフトの周方向に配列された複数のカム山を有し、
前記回転シャフトのトルク変動、前記高圧ラインにおける圧力変動もしくは前記油圧機械の出力変動のうちω×m又はω2×m(但し、mは2以上の整数)の前記特定周波数の変動成分の大きさに基づいて、前記油圧ポンプの異常を検出することを特徴とする請求項1又は2に記載の油圧機械の診断方法。 - 前記油圧機械の異常を検出するステップでは、前記油圧機械の運転中において前記特定周波数の変動成分の大きさが閾値を超えるか否かを監視し、
前記周波数成分が前記閾値を超えた場合、前記油圧機械の運転を停止することを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の油圧機械の診断方法。 - 前記無負荷状態における前記トルクの標準偏差が閾値を超えた場合、前記高圧弁の開状態でのスティック又は前記ピストンのスティックの少なくとも一つが発生したと判断することを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の油圧機械の診断方法。
- 前記油圧機械は、圧油を生成するための油圧ポンプを含み、
前記油圧機械の異常を検出するステップでは、前記油圧ポンプによるポンピングが行われていないときの前記油圧ポンプの前記回転シャフトのトルクの標準偏差に基づき、前記油圧ポンプの異常を検出することを特徴とする請求項5に記載の油圧機械の診断方法。 - 前記油圧機械は、発電機を駆動するための油圧モータを含み、
前記油圧機械の異常を検出するステップでは、前記発電機をグリッドに連系した直後の前記油圧モータの無負荷回転時における前記回転シャフトのトルクの標準偏差に基づいて、前記油圧モータの異常を検出することを特徴とする請求項5又は6に記載の油圧機械の診断方法。 - 前記発電機が定格回転数に到達するまで前記油圧モータの回転数を上昇させるステップをさらに備え、
前記油圧機械の異常を検出するステップでは、前記発電機が定格回転数に到達し、且つ、前記油圧モータが無負荷状態にあるときの前記回転シャフトのトルクの標準偏差に基づいて、前記油圧モータの異常を検出することを特徴とする請求項7に記載の油圧機械の診断方法。 - 再生エネルギーによって回転されるように構成されたロータと、前記ロータによって駆動される油圧ポンプと、前記油圧ポンプで生成される圧油によって駆動されるように構成された油圧モータと、前記油圧モータによって駆動されるように構成された発電機と、を備える再生エネルギー型発電装置の診断方法であって、
請求項1乃至8に記載の診断方法によって、前記油圧ポンプ又は前記油圧モータの少なくとも一方の異常を検出する
ことを特徴とする再生エネルギー型発電装置の診断方法。 - 回転シャフトと、高圧ラインと、低圧ラインと、複数のシリンダと、前記複数のシリンダによってそれぞれ案内されるように構成された複数のピストンと、前記回転シャフトの回転に関連付けて前記複数のピストンを往復動させるように構成されたカムと、前記シリンダ及び前記ピストンによって形成される複数の作動室に対してそれぞれ設けられ、各々の前記作動室と前記高圧ラインとの連通状態を切り替えるための複数の高圧弁と、各々の前記作動室と前記低圧ラインとの連通状態を切り替えるための複数の低圧弁と、を備える油圧機械のための診断装置であって、
前記回転シャフトのトルク、前記高圧ラインにおける圧力もしくは前記油圧機械の出力の少なくとも一つを取得するためのセンサと、
前記センサの計測結果から得られる前記トルク、前記圧力又は前記出力の変動成分のうち前記回転シャフトの回転数ωと前記カムのカム山数mとで定まる特定周波数の変動成分、または、前記油圧機械の無負荷状態において前記センサの計測結果から得られる前記トルクの標準偏差の少なくとも一方に基づいて、前記高圧弁の開状態でのスティック、前記低圧弁の閉状態でのスティック又は前記ピストンのスティックの少なくとも一つを含む前記油圧機械の異常を検出する異常検出部と、
を備えることを特徴とする油圧機械用の診断装置。 - 前記油圧機械は、圧油を生成するための油圧ポンプを含み、
前記油圧ポンプの前記カムは、前記回転シャフトの周方向に配列された複数のカム山を有し、
前記異常検出部は、前記回転シャフトのトルク変動、前記高圧ラインにおける圧力変動もしくは前記油圧機械の出力変動のうちω×m又はω2×m(但し、mは2以上の整数)の前記特定周波数の変動成分の大きさに基づいて、前記油圧ポンプの異常を検出するように構成されたことを特徴とする請求項10に記載の油圧機械用の診断装置。 - 前記異常検出部は、
前記油圧機械の運転中において前記周波数成分が閾値を超えるか否かを監視し、
前記周波数成分が前記閾値を超えた場合、前記油圧機械の運転停止指令を前記油圧機械に対して出力するように構成された
ことを特徴とする請求項10又は11に記載の油圧機械用の診断装置。 - 前記油圧機械は、圧油を生成するための油圧ポンプを含み、
前記異常検出部は、前記油圧ポンプによるポンピングが行われていないときの前記油圧ポンプの前記回転シャフトのトルクの標準偏差に基づき、前記油圧ポンプの異常を検出するように構成されたことを特徴とする請求項10乃至12の何れか一項に記載の油圧機械用の診断装置。 - 前記油圧機械は、発電機を駆動するための油圧モータを含み、
前記異常検出部は、
前記発電機をグリッドに連系した直後の前記油圧モータの無負荷回転時における前記回転シャフトのトルクの標準偏差に基づいて、前記油圧モータの異常を検出するように構成された
ことを特徴とする請求項10乃至13の何れか一項に記載の油圧機械用の診断装置。 - 再生エネルギーによって回転されるように構成されたロータと、
前記ロータによって駆動される油圧ポンプと、
前記油圧ポンプで生成される圧油によって駆動されるように構成された油圧モータと、
前記油圧モータによって駆動されるように構成された発電機と、
請求項10乃至14の何れか一項に記載の診断装置と、を備え、
前記診断装置は、前記油圧ポンプ又は前記油圧モータの少なくとも一方の異常を検出するように構成された
ことを特徴とする再生エネルギー型発電装置。
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