JP2016222650A - プロテアソーム阻害剤抵抗性癌の細胞増殖抑制剤及びプロテアソーム阻害剤抵抗性癌の治療剤 - Google Patents

プロテアソーム阻害剤抵抗性癌の細胞増殖抑制剤及びプロテアソーム阻害剤抵抗性癌の治療剤 Download PDF

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豪 長谷川
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豪 長谷川
基之 下仲
Motoyuki Shimonaka
基之 下仲
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Isamu Shiina
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Abstract

【課題】プロテアソーム阻害剤抵抗性癌に対する新規な細胞増殖抑制剤及び治療剤の提供。
【解決手段】下記式で例示される化合物又はその塩を含む細胞増殖抑制剤及び治療剤。

(R及びRはH又はアルキル基;いずれもアルキル基である場合、R及びRが結合するNとともに、又はNに加えて、O、S、及びNから選ばれる少なくとも1種の原子とともに、単環式複素環を形成してもよい;nは0以上の整数)
【選択図】なし

Description

本発明は、プロテアソーム阻害剤抵抗性癌の細胞増殖抑制剤及びプロテアソーム阻害剤抵抗性癌の治療剤に関する。
プロテアソームは、細胞内でタンパク質の分解を行う巨大な酵素複合体であり、ユビキチンにより標識されたタンパク質をATP依存的に分解する作用を有する。ユビキチンにより標識されたタンパク質をプロテアソームで分解する系は、ユビキチン−プロテアソームシステムと称され、細胞周期制御、シグナル伝達等の様々な生命活動に関与していることが明らかになっている。
近年、癌細胞内におけるプロテアソームの働きを阻害することにより、癌細胞内に異常タンパク質を蓄積させ、癌細胞を死滅させる抗癌剤の開発が行われている。既に、プロテアソーム阻害剤の一種であるボルテゾミブ(Bortezomib)は、難治性多発性骨髄腫の治療剤として臨床適用されている。また、ボルテゾミブ以外にも、種々のプロテアソーム阻害剤が提案されている。例えば、特許文献1には、タモキシフェン類縁体を有効成分として含有するプロテアソーム阻害剤が開示されている。
特開2008−94836号公報
ボルテゾミブ等のプロテアソーム阻害剤は、種々の癌に対して高い細胞増殖抑制作用を示すが、癌の中には、プロテアソーム阻害剤に対して抵抗性を示すプロテアソーム阻害剤抵抗性癌も存在する。また、多くの抗癌剤について、長期投与により癌細胞が抗癌剤に対する耐性(抵抗性)を獲得することが知られている。実際、ボルテゾミブを用いた臨床試験においても、不応例又は耐性例が報告されている。このため、プロテアソーム阻害剤抵抗性癌に対しても有効な薬剤の開発が望まれている。
そこで、本発明は、プロテアソーム阻害剤抵抗性癌に対する新規な細胞増殖抑制剤及び治療剤を提供することを課題とする。
上記課題を解決するための具体的な手段には、以下の実施態様が含まれる。
<1> 下記式(1)で表される化合物又はその塩を有効成分として含有する、プロテアソーム阻害剤抵抗性癌の細胞増殖抑制剤。

(式中、Rは、水素原子又はアルキル基を示し、Rは、水素原子又はアルキル基を示す。R及びRがいずれもアルキル基である場合、R及びRは、R及びRが結合する窒素原子とともに、又はR及びRが結合する窒素原子に加えて、酸素原子、硫黄原子、及び窒素原子から選ばれる少なくとも1種の原子とともに、単環式複素環を形成してもよい。nは0以上の整数を示す。実線及び破線で構成される2ヶ所の2重線は、いずれか一方が単結合を示し、他方が2重結合を示す。)
<2> 下記式(1)で表される化合物又はその塩を有効成分として含有する、プロテアソーム阻害剤抵抗性癌の治療剤。

(式中、Rは、水素原子又はアルキル基を示し、Rは、水素原子又はアルキル基を示す。R及びRがいずれもアルキル基である場合、R及びRは、R及びRが結合する窒素原子とともに、又はR及びRが結合する窒素原子に加えて、酸素原子、硫黄原子、及び窒素原子から選ばれる少なくとも1種の原子とともに、単環式複素環を形成してもよい。nは0以上の整数を示す。実線及び破線で構成される2ヶ所の2重線は、いずれか一方が単結合を示し、他方が2重結合を示す。)
本発明によれば、プロテアソーム阻害剤抵抗性癌に対する新規な細胞増殖抑制剤及び治療剤を提供することができる。
ヒト卵巣癌細胞株SK−OV−3に対して式(1)で表される化合物(RID−A、RID−B、RID−C、又はRID−E)を作用させた場合における細胞増殖抑制作用を示す図である。 ヒト卵巣癌細胞株SK−OV−3に対して式(1)で表される化合物(RID−F、RID−G、又はRID−H)を作用させた場合における細胞増殖抑制作用を示す図である。 ヒト卵巣癌細胞株SK−OV−3に対してプロテアソーム阻害剤(ALLN又はラクタシスチン)を作用させた場合における細胞増殖抑制作用を示す図である。 マウスの左右の背部皮下にヒト卵巣癌細胞株SK−OV−3を移植した後、9日目から68日目までの週2回、左背部に式(1)で表される化合物の塩(RID−Bクエン酸塩)を投与し、右背部に生理食塩水を投与した場合の、68日目におけるマウス背部の腫瘤の外観を示す図である。 4匹のマウスの左右の背部皮下にヒト卵巣癌細胞株SK−OV−3を移植した後、9日目から68日目までの週2回、左背部に式(1)で表される化合物の塩(RID−Bクエン酸塩)を投与し、右背部に生理食塩水を投与した場合における腫瘍体積の推移を、平均値±標準誤差で示した図である。 4匹のマウスの左右の背部皮下にヒト卵巣癌細胞株SK−OV−3を移植した後、9日目から68日目までの週2回、左背部に式(1)で表される化合物の塩(RID−Bクエン酸塩)を投与し、右背部に生理食塩水を投与した場合の、各マウスにおける腫瘍体積の推移を示した図である((A):左背部、(B):右背部)。 式(1)で表される化合物(RID−B又はRID−D)のDNA結合能を示す図である。 ヒト肝臓癌細胞株HuH−7に対して式(1)で表される化合物(RID−B)(同図(A))又はジメチルスルホキシド(同図(B))を作用させた場合におけるTUNEL陽性細胞を示す図である。
以下、本発明を適用したプロテアソーム阻害剤抵抗性癌の細胞増殖抑制剤及びプロテアソーム阻害剤抵抗性癌の治療剤の実施形態の一例について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
本明細書において「プロテアソーム阻害剤抵抗性癌」とは、プロテアソーム阻害剤に対して抵抗性を示す癌を意味し、抵抗性が内因性であるか獲得性であるかを問わない。「プロテアソーム阻害剤抵抗性癌」の細胞をプロテアソーム阻害剤であるALLN(N-acetyl-L-leucinyl-L-leucinyl-L-norleucinal)又はラクタシスチン(Lactacystin)の存在下で48時間培養し、WST−1試薬を添加して更に2時間培養した後、細胞の生存率を測定した場合、典型的な例では、細胞の生存率が50%となるときのALLN又はラクタシスチンの濃度(IC50)は3μMを超える。
「プロテアソーム阻害剤抵抗性癌」の癌種は特に限定されず、皮膚癌、食道癌、胃癌、大腸癌、肝臓癌、腎臓癌、膵臓癌、肺癌、乳癌、卵巣癌、子宮体及び頸部癌、前立腺癌、膀胱癌、脳腫瘍、白血病等が挙げられる。
本明細書において「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
<プロテアソーム阻害剤抵抗性癌の細胞増殖抑制剤>
プロテアソーム阻害剤抵抗性癌の細胞増殖抑制剤(以下、単に「細胞増殖抑制剤」ともいう。)は、下記式(1)で表される化合物又はその塩を有効成分として含有する。
式(1)中、Rは、水素原子又はアルキル基を示し、Rは、水素原子又はアルキル基を示す。
又はRがアルキル基である場合、アルキル基の炭素数は1〜30であることが好ましく、1〜10であることがより好ましく、1〜5であることが更に好ましい。アルキル基は、直鎖状及び分岐鎖状のいずれであってもよく、直鎖状であることが好ましい。アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基等が挙げられる。
式(1)において、R及びRがいずれもアルキル基である場合、R及びRは、R及びRが結合する窒素原子とともに、又はR及びRが結合する窒素原子に加えて、酸素原子、硫黄原子、及び窒素原子から選ばれる少なくとも1種の原子とともに、単環式複素環を形成してもよい。単環式複素環としては、5員環〜7員環が好ましい。単環式複素環の具体例としては、ピロリジン環、ピペリジン環、ピペラジン環、アザシクロヘプタン環、ジアザシクロヘキサン環、モルホリン環、チオモルホリン環等が挙げられる。
式(1)中、nは0以上の整数を示す。nは1〜30の整数であることが好ましく、1〜10の整数であることがより好ましく、1〜5の整数であることが更に好ましく、1又は2であることが特に好ましい。
式(1)中、実線及び破線で構成される2ヶ所の2重線は、いずれか一方が単結合を示し、他方が2重結合を示す。すなわち、式(1)で表される化合物には、下記式(1−1)で表される化合物(1,1−ビス置換フェニル−2−フェニル−1−ブテン化合物)と、下記式(1−2)で表される化合物(4,4−ビス置換フェニル−3−フェニル−1−ブテン化合物)とが含まれる。下記式(1−1)で表される化合物はリダイフェン(Ridaifen)とも称され、下記式(1−2)で表される化合物はプロリダイフェン(Proridaifen)とも称される。
上記式(1)で表される化合物の具体例を以下に挙げる。ただし、上記式(1)で表される化合物は、これらの具体例に限定されるものではない。
式(1)で表される化合物は、例えば、特開2008−94836号公報に記載の方法に従って製造することができる。式(1)で表される化合物は、幾何異性体が存在しないため異性体の分離操作が必要なく、効率的に製造することができる。
式(1)で表される化合物は、特開2008−94836号公報に記載のとおり、プロテアソーム阻害剤として公知の化合物であるが、プロテアソーム阻害剤抵抗性癌に対して、細胞増殖を効果的に抑制することができる。この細胞増殖抑制作用は、プロテアソームの阻害に起因するものではなく、2本鎖DNAへの結合及びそれに伴うDNAの断片化に起因するものと推測される。したがって、式(1)で表される化合物を用いることにより、プロテアソーム阻害剤抵抗性癌の細胞増殖抑制剤を製造することができる。細胞増殖抑制剤は、医薬用途に用いるものであってもよく、医薬以外の用途(研究用途等)に用いるものであってもよい。
細胞増殖抑制剤は、式(1)で表される化合物の塩であってもよい。塩としては、塩酸、臭化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸等の無機酸との塩;酢酸、フタル酸、フマル酸、シュウ酸、酒石酸、マレイン酸、クエン酸、コハク酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等の有機酸との塩などが挙げられる。
細胞増殖抑制剤は、使用態様に応じて、式(1)で表される化合物又はその塩以外の成分を含有していてもよい。例えば、細胞増殖抑制剤は、製剤素材として慣用の有機又は無機の担体を含有していてもよい。この担体は、固形製剤においては、賦形剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤等として、液状製剤においては、溶剤、溶解補助剤、懸濁化剤、等張化剤、緩衝剤等として配合される。また、細胞増殖抑制剤は、防腐剤、抗酸化剤、着色剤、甘味剤等の製剤添加物を含有していてもよい。
細胞増殖抑制剤を医薬用途に用いる場合、細胞増殖抑制剤の剤形は特に制限されない。細胞増殖抑制剤の剤形としては、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、トローチ剤、シロップ剤、乳剤、懸濁剤、フィルム剤等の経口剤;注射剤、外用剤、坐剤、ペレット、経鼻剤、経肺剤(吸入剤)、点眼剤等の非経口剤;などが挙げられる。
細胞増殖抑制剤を医薬用途に用いる場合、細胞増殖抑制剤の投与量は、投与対象、投与経路、症状等に応じて適宜決定される。
<プロテアソーム阻害剤抵抗性癌の治療剤>
プロテアソーム阻害剤抵抗性癌の治療剤(以下、単に「治療剤」ともいう。)は、式(1)で表される化合物又はその塩を有効成分として含有する。式(1)で表される化合物及びその塩は細胞増殖抑制剤の場合と同様であるため、詳細な説明を省略する。
前述したように、式(1)で表される化合物又はその塩は、プロテアソーム阻害剤抵抗性癌に対して、細胞増殖を効果的に抑制することができる。このため、式(1)で表される化合物又はその塩を用いることにより、プロテアソーム阻害剤抵抗性癌の治療剤を製造することができる。
なお、「治療」には、癌を消失又は縮小させることのほか、癌細胞の増殖を抑制すること、癌転移を防ぐこと等も含まれる。
治療剤は、式(1)で表される化合物又はその塩以外の成分を含有していてもよい。例えば、治療剤は、製剤素材として慣用の有機又は無機の担体を含有していてもよい。この担体は、固形製剤においては、賦形剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤等として、液状製剤においては、溶剤、溶解補助剤、懸濁化剤、等張化剤、緩衝剤等として配合される。また、治療剤は、防腐剤、抗酸化剤、着色剤、甘味剤等の製剤添加物を含有していてもよい。
治療剤の剤形は特に制限されない。治療剤の剤形としては、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、トローチ剤、シロップ剤、乳剤、懸濁剤、フィルム剤等の経口剤;注射剤、外用剤、坐剤、ペレット、経鼻剤、経肺剤(吸入剤)、点眼剤等の非経口剤;などが挙げられる。
治療剤の投与量は、投与対象、投与経路、症状等に応じて適宜決定される。
プロテアソーム阻害剤抵抗性癌の治療剤を投与対象者に投与することにより、プロテアソーム阻害剤抵抗性癌の治療方法が提供される。すなわち、式(1)で表される化合物又はその塩を有効成分として含む医薬組成物を投与することを含むプロテアソーム阻害剤抵抗性癌の治療方法が提供される。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
以下の実施例及び参考例では、式(1)で表される化合物として、下記のRID−A〜RID−Hの8種類の化合物を使用した。これらはいずれもリダイフェンと総称される化合物である。
なお、RID−Hを除く7種類の化合物は、特開2006−117648号公報の実施例2及び実施例3、並びに特開2008−94836号公報の実施例1〜実施例4に記載された方法に従って製造した。
また、RID−Hは、既報(Makoto Hasegawa et al., European Journal of Medicinal Chemistry, 71, 290-305 (2014))に従って製造した。RID−Hの物性データは以下のとおりである。
1,1-Bis{4-[3-(dipyrrolidin-1-yl)propoxy]phenyl}-2-phenyl-1-butene (RID-H);
Mp: 64-65 ℃;
IR (neat): 3034, 2957, 1605, 1507, 1173, 817 cm-1;
1H NMR (CDCl3): δ 7.17-7.07 (7H, m, Ar), 6.88-6.86 (2H, m, Ar), 6.76-6.73 (2H, m, Ar), 6.54-6.51 (2H, m, Ar), 4.04 (2H, t, J = 6.50 Hz, OCH2), 3.88 (2H, t, J = 6.50 Hz, OCH2), 2.63 (2H, t, J = 7.25 Hz, NCH2), 2.56-2.45 (12H, m, NCH2, 3-H and pyrrolidinyl 2-H), 2.02 (2H, tt, J = 7.25, 6.50 Hz, -CH2-), 1.92 (2H, tt, J = 7.25, 6.50 Hz, -CH2-), 1.81-1.75 (8H, m, pyrrolidinyl 3-H), 0.92 (3H, t, J = 7.50 Hz, 4-H);
13C NMR (CDCl3): δ 157.7, 156.8 (Ar), 142.7 (1-C), 140.8 (2-C), 137.9, 136.2, 135.7, 131.9, 130.5, 129.7, 127.8, 125.8, 113.9, 113.2 (Ar), 66.30, 66.07 (OCH2), 54.25, 54.20 (pyrrolidinyl 2-C), 53.22, 53.17 (NCH2), 29.0 (3-C), 28.95, 28.86 (-CH2-), 23.43, 23.40 (pyrrolidinyl 3-C), 13.6 (4-C);
HR MS (ESI): calcd for C36H47N2O2([M + H]+) 539.3638, found 539.3614.
[実施例1:式(1)で表される化合物の細胞増殖抑制作用の確認]
式(1)で表される化合物の細胞増殖抑制作用を確認するため、プロテアソーム阻害剤に対する抵抗性が知られているヒト卵巣癌細胞株SK−OV−3を準備した(S.L. Holbeck et al., Mol. Cancer Ther., 9(5), 1451-1460 (2010))。
15%のウシ胎児血清、10000ユニット/Lのペニシリン、10mg/Lのストレプトマイシン、25μg/LのアンホテリシンB、及び10mg/Lのゲンタマイシンを含有するマッコイ5A改変培地中、37℃、5%COの条件下でSK−OV−3細胞を培養した。次いで、SK−OV−3細胞を1000個/ウェルとなるように96ウェルプレートに播種した。24時間培養した後、式(1)で表される化合物(RID−A、RID−B、RID−C、RID−E、RID−F、RID−G、又はRID−H)を、終濃度が0μM、0.25μM、0.5μM、1μM、2μM、又は5μMとなるように各ウェルに添加した。比較のため、プロテアソーム阻害剤であるALLN又はラクタシスチンを、終濃度が0μM、0.25μM、0.5μM、1μM、2μM、5μM、又は10μMとなるように各ウェルに添加した。コントロールとしては、式(1)で表される化合物又はプロテアソーム阻害剤の代わりにジメチルスルホキシドを各ウェルに添加した。
その後、48時間培養し、WST−1試薬((株)同仁化学研究所)を1ウェル当たり10μL添加して更に2時間培養した。そして、波長415nmにおける吸光度を測定することで細胞数を計測し、生存率を求めた。
RID−A、RID−B、RID−C、又はRID−Eを添加した場合のSK−OV−3細胞の生存率を図1(A)〜(D)に示す。また、RID−F、RID−G、又はRID−Hを添加した場合のSK−OV−3細胞の生存率を図2(A)〜(C)に示す。また、ALLN又はラクタシスチンを添加した場合のSK−OV−3細胞の生存率を図3(A)、(B)に示す。図1〜図3の生存率は、いずれもコントロールにおける生存率を100%としたときの相対値である。
図1及び図2に示すとおり、式(1)で表される化合物(RID−A、RID−B、RID−C、RID−E、RID−F、RID−G、又はRID−H)を添加した場合には、5μM未満の濃度でSK−OV−3細胞の生存率が50%未満となった。一方、図3に示すとおり、プロテアソーム阻害剤であるALLNを添加した場合には、10μMの濃度でもSK−OV−3細胞の生存率は52.8%であり、ラクタシスチンを添加した場合には、10μMの濃度でもSK−OV−3細胞の生存率は54.2%であった。
この結果から分かるように、式(1)で表される化合物は、プロテアソーム阻害剤抵抗性癌に対しても、細胞増殖を効果的に抑制することができる。
[実施例2:式(1)で表される化合物のin vivoにおける細胞増殖抑制作用の確認]
実施例1と同様にヒト卵巣癌細胞株SK−OV−3を用いて、式(1)で表される化合物のin vivoにおける細胞増殖抑制作用を確認した。
4匹のヌードマウス(Balb/C nu/nu、5週齢)に標準的な飼料及び飲水を与えて7日間飼育した後、ヒト卵巣癌細胞株SK−OV−3を左右の背部皮下に移植した(1×10個/部位)。移植初日をDay1とし、Day9からDay68までの週2回、腫瘍体積を測定するとともに、生理食塩水に溶解したRID−Bクエン酸塩(2.5mg/mL、10μL〜20μL、左腫瘍)又は生理食塩水(10μL〜20μL、右腫瘍)を腫瘍内投与した。
Day68におけるマウス背部の腫瘤の外観を図4に示す。図4から分かるように、生理食塩水を投与した右背部では腫瘤が大きく増大していたのに対し、生理RID−Bクエン酸塩を投与した左背部では腫瘤が顕著に縮小していた。
左背部及び右背部の腫瘍体積の推移を図5及び図6に示す。
図5は、4匹のヌードマウスの左背部及び右背部の腫瘍体積の推移を、平均値±標準誤差で示したものである。図中の矢印は、腫瘍内投与の開始日を示す。測定データについては、反復測定2元配置分散分析(Two-factor repeated measures ANOVA)の後、テューキーの多重比較検定による統計解析を行った。図5から分かるように、RID−Bクエン酸塩を投与することで、腫瘍体積の増大が顕著に抑制された。特にDay61以降では、生理食塩水を投与した場合に比べて有意に腫瘍体積の増大が抑制された(p<0.05)。
図6(A)は、個々のヌードマウスの左背部の腫瘍体積の推移を示したものであり、図6(B)は、個々のヌードマウスの右背部の腫瘍体積の推移を示したものである。RID−Bクエン酸塩を投与した4個体のうち3個体では、腫瘍細胞が消失した。比較的大きな腫瘤を形成した1個体についても、RID−Bクエン酸塩の継続投与により、腫瘍体積の増大が抑制された。
[参考例1:式(1)で表される化合物のDNA結合能の確認]
センス鎖として、TTTTTTATATAT(配列番号1)の塩基配列からなり、5’末端をビオチン修飾した1本鎖DNAを準備した。また、アンチセンス鎖として、ATATATAAAAAA(配列番号2)の塩基配列からなる1本鎖DNAを準備した。そして、これらの1本鎖DNAを25.0℃で30分間反応させ、ビオチン化2本鎖DNAを作製した。
ビオチン化2本鎖DNA(2μM)とRID−B又はRID−D(いずれも10μM)とを、室温で1時間半、遮光下で反応させた。その後、ストレプトアビジン磁気ビーズ((株)アプロサイエンス)を添加して室温で更に1時間反応させ、ビオチン化2本鎖DNAとストレプトアビジン磁気ビーズとの複合体を形成させた。複合体を回収し、超純水で3回洗浄した後、100℃で5分間インキュベートすることにより、ビオチン化2本鎖DNAに結合したRID−B又はRID−Dを遊離させた。内標準物質であるベタインを終濃度が5μg/mLとなるように添加した後、ESI−TOF−MS(エレクトロスプレーイオン化法飛行時間型質量分析装置)によりRID−B又はRID−Dとベタインとを検出及び定量することで、式(1)で表される化合物(RID−B又はRID−D)と2本鎖DNAとの結合能を評価した。
RID−BのDNA結合率を図7(A)に示し、RID−DのDNA結合率を図7(B)に示す。図7中、「DNA(+)」はビオチン化2本鎖DNAを使用した実験群を示し、「DNA(−)」はビオチン化2本鎖DNAの代わりに超純水を使用した実験群を示す。また、図7(A)において「n.d.」は検出限界以下であることを示す。
図7から分かるように、RID−B及びRID−Dのいずれも2本鎖DNAへの結合能を示した。この結果から、式(1)で表される化合物の細胞増殖抑制作用には、2本鎖DNAへの結合能が関係することが示唆される。
[参考例2:式(1)で表される化合物によるDNAの断片化の確認]
ヒト肝臓癌細胞株HuH−7を8ウェルカルチャースライドに4×10個/ウェルとなるよう播種した後、37℃で24時間培養した。培養後、RID−Bを終濃度が1μMとなるように各ウェルに添加し、37℃で更に24時間培養した。コントロールとしては、RID−Bの代わりにジメチルスルホキシドを各ウェルに添加した。
培養後、HuH−7細胞をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄し、3.7%ホルムアルデヒドを含有するPBSで固定した。次いで、0.1%Triton X−100を含有する0.1%クエン酸ナトリウム水溶液を添加し、氷上で2分間インキュベートすることにより浸透化処理を行った。浸透化処理後のHuH−7細胞は、MEBSTAIN Apoptosis TUNEL Kit Direct((株)医学生物学研究所)を用いて染色し、共焦点レーザー顕微鏡(LSM710、カールツァイス社)によりTUNEL陽性細胞を検出した。
RID−Bを添加した場合のHuH−7細胞の顕微鏡像を図8(A)に示し、ジメチルスルホキシドを添加した場合のHuH−7細胞の顕微鏡像を図8(B)に示す。図8から分かるように、RID−Bを添加した場合にはTUNEL陽性細胞が多数検出されたのに対し、ジメチルスルホキシドを添加したコントロールではTUNEL陽性細胞は検出されなかった。この結果から、式(1)で表される化合物の細胞増殖抑制作用には、2本鎖DNAへの結合に伴うDNAの断片化が関係することが示唆される。

Claims (2)

  1. 下記式(1)で表される化合物又はその塩を有効成分として含有する、プロテアソーム阻害剤抵抗性癌の細胞増殖抑制剤。

    (式中、Rは、水素原子又はアルキル基を示し、Rは、水素原子又はアルキル基を示す。R及びRがいずれもアルキル基である場合、R及びRは、R及びRが結合する窒素原子とともに、又はR及びRが結合する窒素原子に加えて、酸素原子、硫黄原子、及び窒素原子から選ばれる少なくとも1種の原子とともに、単環式複素環を形成してもよい。nは0以上の整数を示す。実線及び破線で構成される2ヶ所の2重線は、いずれか一方が単結合を示し、他方が2重結合を示す。)
  2. 下記式(1)で表される化合物又はその塩を有効成分として含有する、プロテアソーム阻害剤抵抗性癌の治療剤。

    (式中、Rは、水素原子又はアルキル基を示し、Rは、水素原子又はアルキル基を示す。R及びRがいずれもアルキル基である場合、R及びRは、R及びRが結合する窒素原子とともに、又はR及びRが結合する窒素原子に加えて、酸素原子、硫黄原子、及び窒素原子から選ばれる少なくとも1種の原子とともに、単環式複素環を形成してもよい。nは0以上の整数を示す。実線及び破線で構成される2ヶ所の2重線は、いずれか一方が単結合を示し、他方が2重結合を示す。)
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