〔第1の実施形態〕
以下、本発明の第1の実施形態に係る給電システムについて、図1から図6を参照しながら説明する。本実施形態では、本発明の給電システム1を、情報処理や情報通信などの処理を行うICT装置(負荷装置)25、および、空調装置35や照明機器45などのICT装置25に付随する周辺機器へ電力を供給するシステムである例に適用して説明する。
給電システム1は、図1に示すように、給電装置10と、電流分配装置15と、給電制御装置(サーバ)20と、ICT装置25と、ICT制御装置(サーバ)30と、空調装置35と、空調制御装置(サーバ)40と、照明機器45と、照明制御装置50と、統合制御装置(サーバ)60と、監視制御装置70と、から主に構成されている。
給電装置10は、ICT装置25に電力を供給するものであり、商用電力の供給を受けて直流電流(所定電流)を出力する複数の電源ユニット(給電機器)11が設けられたものである。電源ユニット11は、給電制御装置20から入力される指令(出力信号)に基づき、直流電流の出力/停止が制御されるように構成されている。また、給電装置10は、複数の電源ユニット11の運転情報を取得し、後述する給電制御装置20へ取得した情報を出力する機能を有している。
なお、電源ユニット11における商用電力を直流電流に変換する方式や、電源ユニット11における直流電流の出力/停止の具体的な制御方法や、給電装置10における複数の電源ユニット11の接続方法などについては、公知の方法を用いることができ特に限定するものではない。また、本実施形態では、電源ユニット11が交流電流である商用電力から、ICT装置25の動作に用いられる所望電圧の直流電流に変換する例に適用して説明するが、電力の供給先である負荷装置の特性に応じて直流電流の代わりに所望電圧の交流電流を供給してもよく、特に電流の態様を限定するものではない。
電流分配装置15は、給電装置10から供給された直流電流を、ICT装置25が格納される複数のICTラック26へ分配するものである。電流分配装置15には、給電制御装置20からの指令(切替え信号)に従い、ポスト毎に直流電流の供給/非供給制御(以下、「ON/OFF制御」とも表記する。)を行うスイッチ16が搭載されている。スイッチ16は、それぞれのポストに接続されたICTラック26に格納されたICT装置25における消費電力を測定する機能も設けられている。スイッチ16で測定された消費電力は、給電制御装置20に出力される。なお、スイッチ16の形式としては、公知の形式のものを用いることができ、特に限定するものではない。
さらに、電流分配装置15には、短絡事故などによる過電流を防止するためにポスト毎にヒューズやブレーカなどの保護素子(図示せず。)が搭載されている。この保護素子を搭載することにより、短絡事故が発生したICT装置25を含む系統(以下、「事故系」とも表記する。)の影響が、それ以外の通常の運転を継続するICT装置25を含む系統(以下、「健全系」とも表記する。)へ波及することを防止できる。
給電制御装置20は、統合制御装置60からの指令に基づき、電流分配装置15の1ポスト毎の給電ON/OFFを制御する指令、コンセントバー27のコンセント口毎の給電ON/OFFを制御する指令、給電装置10の電源ユニット11の運転/停止を制御する指令、給電装置10の運転/停止を制御する指令を出力するものである。
給電制御装置20は、CPU(中央演算処理ユニット)、ROM、RAM、ハードディスク、入出力インタフェース等を有するコンピュータシステムである。ROM等に記憶されている制御プログラムは、CPUを少なくとも演算処理部(制御部)21として機能させるものであり、入出力インタフェース等を少なくとも取得部22として機能させるものである。
演算処理部21は、給電装置10、並びに、電流分配装置15のスイッチ16およびコンセントバー27内部に設けられたスイッチ27Aの動作を制御する演算処理を行うと共に、当該動作を制御する指令を生成するものでもある。演算処理部21における演算処理等の詳細については後述する。
取得部22は、給電装置10から出力される複数の電源ユニット11の運転情報、および、電流分配装置15から出力される1ポスト毎の消費電力情報、および、コンセントバー27の1口毎の消費電力情報が入力されるインタフェースである。また、取得部22は、演算処理部21において生成された各種の指令を出力するインタフェースでもある。
ICT装置25は、演算等の情報処理や、情報の受信/送信などの通信処理等を行うものである。ICT装置25における処理などの動作は、ICT制御装置30から入力される指令に基づいて制御される。ICT装置25は、ICTラック26に1台以上が搭載され、ICTラック26に設けられたコンセントバー27から直流電流が給電されている。なお、上述の情報処理や通信処理などが特許請求の範囲における作業負荷に相当するものである。
コンセントバー27は、電流分配装置15にて分配された配線が接続されたものである。コンセントバー27内部のスイッチ27Aには、給電制御装置20から入力される指令に基づいて、コンセント口毎にICT装置25への給電のON/OFFを制御する機能が搭載されている。さらに、コンセント口毎に消費電流・電力を計測する機能が搭載され、計測された消費電流・電力の情報は、給電制御装置20へ出力されている。このように、コンセントバー27は、いわゆるインテリジェントコンセントとして機能するものを用いている。
図2に示すように、複数のICTラック26は、一列に配置されることにより架列28A,28B,28C,28D,28E,28Fのそれぞれを構成する。さらに、これら架列28A,28B,28C,28D,28E,28Fは並列に並んで配置される。
ICT制御装置30は、統合制御装置60からの指令に基づき、ICT装置25へ集約運転を指示する縮退指令、分散運転を指示する復元指令、ICT装置25の停止を指示する停止指令、ICT装置25の起動を指示する起動指令を出力するものである。
ICT制御装置30は、図1に示すように、CPU(中央演算処理ユニット)、ROM、RAM、ハードディスク、入出力インタフェース等を有するコンピュータシステムである。ROM等に記憶されている制御プログラムは、CPUを少なくとも演算処理部(制御部)31として機能させるものであり、入出力インタフェース等を少なくとも取得部32として機能させるものである。
演算処理部31は、ICT装置25の動作を制御する演算処理を行うと共に、当該動作を制御する指令を生成するものでもある。演算処理部31における演算処理等の詳細については後述する。
取得部32は、コンセントバー27から出力されるコンセント口毎の消費電流・電力情報、ICT装置25から出力される業務処理量や、装置内部温度や、消費電力などの運転情報が入力されるインタフェースである。また、取得部32は、演算処理部31において生成された各種の指令を出力するインタフェースでもある。
空調装置35は、図2に示すように、ICT装置25が配置されたサーバルームSRの室内空気を介してICT装置25を冷却するものである。つまり、ICT装置25において発生した熱は、ICT装置25の内部を通過するサーバルームSRの室内空気に放出され、サーバルームSRの室内空気の温度が上昇する。空調装置35は、この温度が上昇した室内空気を吸入して熱を奪い、所望の温度に冷却した後にサーバルームSR内に送り出すものである。室内空気から奪った熱は、サーバルームSRの外側に配置された室外機(図示せず。)において、外部へ放出される。この空調装置35における動作は、空調制御装置40から出力される指令(動作信号)に基づいて制御されている。
本実施形態では、中央に架列28A,28B,28C,28D,28E,28Fが並列に並んで配置されているサーバルームSRにおいて、架列28A,28B,28C,28D,28E,28Fの端部近傍に、空調装置35が並んで配置されている例に適用して説明する。また、空調装置35における室内空気を冷却する形式や、冷却した空気をサーバルームSR内へ送り出す形式としては、公知の形式を用いることができ、特に限定するものではない。
さらに、本実施形態では、サーバルームSR内に配置される複数の空調装置35に対して、屋外に配置され熱を外気に放出する手段である室外機等が一対一に対応して設けられる個別方式空調である例に適用して説明するが、複数の空調機35に対して、熱を外気に放出する手段である冷却塔等が一つ設けられた中央熱源方式空調であってもよく、特に限定するものではない。
空調制御装置40は、統合制御装置60からの指令に基づき、空調装置35の起動を制御する指令、空調装置35の停止を制御する指令、空調装置35の運転条件を制御する指令を出力するものである。
空調制御装置40は、図1に示すように、CPU(中央演算処理ユニット)、ROM、RAM、ハードディスク、入出力インタフェース等を有するコンピュータシステムである。ROM等に記憶されている制御プログラムは、CPUを少なくとも演算処理部(制御部)41として機能させるものであり、入出力インタフェース等を少なくとも取得部42として機能させるものである。
演算処理部41は、空調装置35の動作を制御する演算処理を行うと共に、当該動作を制御する指令を生成するものでもある。演算処理部41における演算処理等の詳細については後述する。取得部42は、空調装置35から出力される運転状況を示す運転情報が入力されるインタフェースである。
照明機器45は、ICT装置25などが配置されたサーバルームSR等における照明を行うものである。照明機器45には、人の存在を感知する人感センサ(図示せず。)が設けられている。サーバルームSRに人が立ち入った場合のように、人感センサが人を感知した際に照明機器45は照明を行う。また、空調装置35における照明/非照明の制御は、空調制御装置40から出力される指令(動作信号)に基づいても行われる。なお、照明機器45としては、公知の機器を用いることができ、特に限定するものではない。
照明制御装置50は、統合制御装置60からの指令に基づき、照明機器45における点灯・消灯を制御する指令、照明機器45の運転条件を制御する指令を出力するものである。
照明制御装置50は、CPU(中央演算処理ユニット)、ROM、RAM、ハードディスク、入出力インタフェース等を有するコンピュータシステムである。ROM等に記憶されている制御プログラムは、CPUを少なくとも演算処理部51として機能させるものであり、入出力インタフェース等を少なくとも取得部52として機能させるものである。
演算処理部51は、照明機器45の動作を制御する演算処理を行うと共に、当該動作を制御する指令を生成するものでもある。演算処理部51における演算処理等の詳細については後述する。取得部52は、照明機器45から出力される動作状況を示す運転情報が入力されるインタフェースであり、さらに、照明機器45に付随する人感センサの測定情報などが入力されるインタフェースでもある。
上述の給電制御装置20、ICT制御装置30、空調制御装置40、および照明制御装置50は、統合制御装置60との間の通信が途絶えて指令が入力されない場合や、統合制御装置60から出力された指令が異常値である場合には、統合制御装置60が故障したと判断し、それぞれの制御装置が自立した運転状態に遷移する。
統合制御装置60は、監視制御装置70から入力される故障情報や運転異常情報、BEMSやBASなどの外部EMS(エネルギ・マネジメント・システム)、DCIM(データセンタ・インフラストラクチャ・マネジメント)などから入力される情報や指令に基づいて、給電制御装置20、ICT制御装置30、空調制御装置40、および照明制御装置50に対する制御内容を判断する処理や、出力する指令を生成する処理を行うものである。
統合制御装置60は、CPU(中央演算処理ユニット)、ROM、RAM、ハードディスク、入出力インタフェース等を有するコンピュータシステムである。ROM等に記憶されている制御プログラムは、CPUを少なくとも演算処理部(処理部)61、学習処理部(処理部)62、および、予測処理部(処理部)63として機能させるものであり、入出力インタフェース等を少なくとも取得部64として機能させるものである。
取得部64は、入退管理装置65、社員位置情報が記憶された記憶部66、社員スケジュールが記憶された記憶部67、および、交通情報や気象情報などの市中情報が記憶された記憶部68からそれぞれの情報を取得するインタフェースである。
また取得部64は、給電制御装置20、ICT制御装置30、空調制御装置40、照明制御装置50、および、統合制御装置60から出力される情報、ICTラック26の配置位置およびICTラック26におけるICT装置の搭載位置の情報、並びに、外部から入力される指令情報を取得するインタフェースである。取得部64は、さらに、外部EMSシステム、DCIMなどへ情報や指令を出すことができる外部とのインタフェースでもある。
入退管理装置65は、ICT装置25を利用する社員(利用者)の入退管理を行い、社員の入退情報を取得するものである。入退情報は、ICT装置25に接続される端末が設置された部屋に対する入室および退室を表す情報であってもよいし、上述の端末が設置された建物に対する入館および退館を表す情報であってもよい。
また、社員の入退情報を取得する方法としては、出入口に設置されたセンサにより上述の社員の入室および退室等を検出して取得してもよいし、社員が所持する携帯端末から取得した社員の位置情報に基づいて推定してもよく、入退情報を取得する方法を特に限定するものではない。
記憶部66は、取得された社員の位置情報を記憶するものであり、統合制御装置60から入力される制御信号に基づいて、記憶している位置情報を統合制御装置60へ出力するものである。社員の位置情報は、位置情報取得部(図示せず。)により繰り返し取得されたものである。位置情報取得部としては、建物の中の各部屋に設置されたビーコンおよび社員が所持する携帯端末を利用したものや、携帯端末の位置検出機能を利用したものなど、公知の方法を用いることができる。なお、記憶部66には、社員の位置情報の他に、社員の座席位置情報が記憶されていてもよい。
記憶部67は、社員のスケジュール情報を記憶するものであり、統合制御装置60から入力される制御信号に基づいて、記憶しているスケジュール情報を統合制御装置60へ出力するものである。なお、記憶部67にはスケジュール情報の他に、平日、休日、祝祭日などの情報を含むカレンダ情報が記憶されていてもよい。
記憶部68は、市中情報を記憶するものであり、統合制御装置60から入力される制御信号に基づいて、記憶している市中情報を統合制御装置60へ出力するものである。市中情報は交通情報および気象情報を含むものであり、例えば、鉄道などの公共交通機関の運行情報や、気象庁から発表される特別警報を含む各種の警報を例示することができる。市中情報を収集する方法としては、公知の方法を用いることができ、特に限定するものではない。
ここで、入退管理装置65から取得される社員の入退情報、記憶部66に記憶されている社員の位置情報、記憶部67に記憶されている社員のスケジュール情報、並びに、記憶部68に記憶されている交通情報および気象情報は、特許請求の範囲におけるパラメータに相当する。
演算処理部61は、取得部64で取得した情報をROM等に蓄積する処理、蓄積した情報等の集計処理、および、集計処理した情報等の分析処理を行うものである。さらに演算処理部61は、分析処理の結果に基づき、外部へ出力する情報や指令を生成するものである。
予測処理部63は、ROM等に蓄積した情報等に基づいて、ICT装置25における演算等の情報処理量を予測するものである。予測処理部63における予測方法の詳細については後述する。
学習処理部62は、学習により予測処理部63により予測された演算等の情報処理量と、実際の演算等の情報処理量と差を縮小させる処理を行うものである。差を縮小させる処理としては、公知の処理を用いることができ、特に限定するものではない。
監視制御装置70は、CPU(中央演算処理ユニット)、ROM、RAM、ハードディスク、入出力インタフェース等を有するコンピュータシステムである。ROM等に記憶されている制御プログラムは、CPUを少なくとも演算処理部71として機能させるものであり、入出力インタフェース等を少なくとも取得部72として機能させるものである。
取得部72は、給電装置10、電流分配装置15、ICT装置25、および、空調制御装置40などの給電システム1を構成する機器から出力される故障状態や、運転異常に関する情報を取得するインタフェースである。演算処理部71は、取得部72により取得された故障状態や運転異常に関する情報に基づいて、給電システム1を構成する装置の故障状態・運転異常を監視するものである。
次に、上記の構成からなる給電システム1における制御について説明する。まず、社員の入退情報や、ICT装置25等の情報に基づく給電システム1の運用について説明する。
最初に、ICT装置25が分散運転されている通常の運用状態について、図2を参照しながら説明する。分散運転とは、給電システム1における全てのICT装置25、または、大半のICT装置25において情報処理などの演算処理が行われる状態のことである。
図2においてICT装置25(ICTラック26)に記載されたパーセントは、該当するICT装置の負荷率を示している。また、サーバルームSRにおけるハッチングは、サーバルームSRの室内空気の温度を示すものであり、ハッチングが濃くなるに伴い温度が高くなっていることを示している。
サーバルームSR内には、給電装置10、空調装置35およびICT装置25が配置されている。また、消費電力ベースに基づくICT装置25における構成の内訳は、サーバ系の機器が8割、スイッチ、ルータなどのネットワーク系機器が2割となる。本実施形態では、ICT装置25の最大消費電力の合計が300kWである例に適用して説明する。
次に、上記の構成からなる給電システム1に対して本発明に関する統合連係制御を実施した場合の説明を行う。本説明において統合制御装置60は、ICT装置25の端末が設置された建物に在館する社員数が所定の一定数よりも少ない場合に、ICT装置25における負荷を集約する縮退運転を行う指令を出力する。縮退運転を行っている最中にICT装置25の負荷が増加すると、統合制御装置60は事前に縮退運転を解放する指令を出力し、その後に通常の分散運転に戻す指令を出力する。
ここで、縮退運転を実行する際の制御処理について図3のフローチャートを参照しながら説明する。はじめに統合制御装置60の取得部64は、入退管理装置65から入退情報を取得する処理を実行する(S11:取得ステップ)。
入退情報が取得されると、統合制御装置60の演算処理部61は、ICT装置25の端末が設けられた建物に在館する社員数が、予め定められた所定の一定数未満であるか否かを判定する処理を行う(S12:優先処理ステップ)。具体的には、入退情報に基づき在館する社員数を求める演算処理と、統合制御装置60のハードディスク等に予め記憶された所定の一定数を取得する処理と、在館する社員数および所定の一定数を比較する処理を行う。
S12の判定処理において、在館する社員数が所定の一定数以上と判定された場合(NOの場合)には、演算処理部61は縮退運転の可否を判断する処理を中止する。
その一方で、在館する社員数が所定の一定数未満と判定された場合(YESの場合)には、統合制御装置60の取得部64はICTリソース情報を取得する処理を行う(S13:優先処理ステップ)。具体的には、取得処理を行う時点で最も新しいICT装置25および空調装置35の稼働に関する情報などを取得する処理を行う。
リソース情報を取得すると演算処理部61は制御の優先順位を判定する処理を行う(S14:優先処理ステップ)。本実施形態では、ICT装置25の稼働状況を制御して消費電力を削減させる制御(以下、「ICT装置25による削減制御」とも表記する。)と、空調装置35の稼働状況を制御して消費電力を削減させる制御(以下、「空調装置35による削減制御」とも表記する。)との間の優先順位を判定する処理が行われる。具体的には、ICT装置25による削減制御が、空調装置35による削減制御よりも優先されるか否かを判定する処理を行う。
予測処理部63は、在館する社員数および取得したリソース情報に基づいてICT装置25における演算等の情報処理量を推定する演算処理を行う。推定された演算等の情報処理量が増加する場合には、演算処理部61はICT装置25による削減制御を優先するとの判定を行う(YES)。その一方で、推定された演算等の情報処理量が増加しない場合には、空調装置35による削減制御を優先するとの判定を行う(NO)。
S14の判定においてICT装置25による削減制御を優先すると判定された場合(YESの場合)、演算処理部61は、ICT装置25等に障害が発生していないか否か、または運用に支障が出るか否かを判定する処理を行う(S15)。具体的には、監視制御装置70が、演算処理の移行元であるICT装置25(以後、「縮退元ICT装置25」と表記する。)および演算処理の移行先であるICT装置25(以後、「縮退先ICT装置25」と表記する。)や、空調装置35や、給電装置10において異常が発生したことを示す情報を受け取っているか否かに基づいて、上述の判定処理を行う。障害が発生している、あるいは運用に支障が出ると判定された場合(NOの場合)には、縮退運転の可否を判断する処理を中止する。なお、縮退元ICT装置25は、特許請求の範囲における移行元の負荷装置に相当し、縮退先ICT装置25は、特許請求の範囲における移行先の負荷装置に相当する。
障害が発生していないと判定された場合(YESの場合)、演算処理部61は、ICT装置25のリソースに余裕があるか否かを判定する処理を行う(S16)。つまり、演算処理部61は、縮退先ICT装置25のリソースに余裕があるか否かを判定する。より具体的には、縮退元ICT装置25の演算処理を縮退先ICT装置25に移行させても、縮退先ICT装置25におけるCPU使用率が所定値(例えば80%)未満であること、メモリの使用率が所定値(例えば80%)未満であること、ハードディスク(HDD)の使用率が所定値(例えば80%)未満であること、の全てを満たすか否かを判定する。リソースに余裕がないと判定された場合(NOの場合)には、縮退運転の可否を判断する処理を中止する。
リソースに余裕があると判定された場合(YESの場合)、演算処理部61は、給電装置10やスイッチ16やスイッチ27Aの容量に余裕があるか否かを判定する処理を行う(S17)。つまり、縮退先ICT装置25に直流電流を供給する給電装置10やスイッチ16やスイッチ27Aなどの容量に余裕があるか否かを判定する処理を行う。より具体的には、縮退元ICT装置25の演算処理を縮退先ICT装置25に移行させても、給電装置10の出力が定格容量の所定値(例えば80%)未満であること、スイッチ16およびやスイッチ27Aの電流が定格容量の所定値(80%)未満であること、の全てを満たすか否かを判定する。容量に余裕がないと判定された場合(NOの場合)には、縮退運転の可否を判断する処理を中止する。
容量に余裕があると判定された場合(YESの場合)、演算処理部61は、空調能力に余裕があるか否かを判定する処理を行う(S18)。つまり、縮退先ICT装置25の冷却を行う空調装置35の冷房能力に余裕があるか否かを判定する処理を行う。より具体的には、縮退元ICT装置25の演算処理を縮退先ICT装置25に移行させても、空調装置35の定格冷房能力の所定値(例えば80%)未満であることを満たすか否かを判定する。空調能力に余裕がないと判定された場合(NOの場合)には、縮退運転の可否を判断する処理を中止する。
空調能力に余裕があると判定された場合(YESの場合)、統合制御装置60は、ICT制御装置30へ集約処理を行う指令を出力する。ICT制御装置30は対象となるICT装置25へ縮退運転に移行するための集約処理を実行する指令を出力する(S21)。集約処理が仮想化による場合には、縮退元ICT装置25は、縮退先ICT装置25へのライブマイグレーションを実行する。移行が完了した後、縮退元ICT装置25は休止状態へ移行する。集約処理が余剰ICT装置25の運転休止である場合には対象装置を休止状態へ移行する。
本実施形態では、図5に示すように、架列28A,28B,28E,28Fに搭載されたICT装置25を縮退元ICT装置25とし、架列28C,28Dに搭載されたICT装置25を縮退先ICT装置25とした例に適用して説明する。
次いで、図3のフローチャートに戻り、ICTリソースの移動(Guestマシンの移動)が成功したか否かを判定する処理を行う(S22)。具体的には、次の5条件が満たされるか否かに基づいて判定が行われる。1つ目が、縮退先ICT装置25でハードウエア障害(以下「H/W障害」と表記する。)が発生していないこと。2つ目が、縮退元ICT装置25でH/W障害が発生していないこと。3つ目が、仮想化管理ソフト上で、縮退元の仮想Guestマシンが正常であること。4つ目が縮退元の仮想化ソフト上で、移動対象となる仮想Guestマシンが正常であること。5つ目が、縮退先のICTリソースに余裕があること。より具体的には、縮退元ICT装置25の演算処理を縮退先ICT装置25に移行させても、縮退先ICT装置25におけるCPU使用率が所定値(例えば80%)未満であること、メモリの使用率が所定値(例えば最大容量の80%)未満であること、ハードディスク(HDD)の使用率が所定値(例えば最大容量の80%)未満であることを満たすこと。
ICTリソースの移動が失敗したと判定された場合(NOの場合)には、縮退運転の可否を判断する処理を中止する。ICTリソースの移動が成功したと判定された場合(YESの場合)、統合制御装置60は、ICT制御装置30へ縮退元のICT装置25へ対して休止指示を出し、当該ICT装置25への休止処理が成功したか否かを判定する処理を行う(S23)。具体的には、次の4条件が満たされるか否かに基づいて判定が行われる。1つ目が、休止対象ICT装置25においてCPU使用率が所定値(例えば5%)以下であり、かつ、メモリ使用率が所定値(例えば5%)以下であること。2つ目が、仮想化管理ソフト上で、休止対象ICT装置25上に仮想Guestマシンが存在しないこと。3つ目が、休止対象ICT装置25の仮想化ソフト上で、仮想Guestマシンが存在しないこと。4つ目が、休止対象ICT装置25と接続しているスイッチ16およびスイッチ27Aのアウトレット(Outlet)の消費電流が所定値(例えば定格電流の3割)以下であること。
ICT装置25の休止が失敗したと判定された場合(NOの場合)には、縮退運転の可否を判断する処理を中止する。ICT装置25の休止が成功したと判定された場合(YESの場合)、統合制御装置60は、ICT制御装置30から出力されるICT装置25の休止状態情報を確認する。確認後に、ICT制御装置30に対して、休止済みのICT装置25に対して停止(シャットダウン)指令を出す。統合制御装置60はICT装置25の停止を確認した後、給電制御装置20に対し給電ルート上にあるコンセントバー27、または電流分配装置15のスイッチ16またはスイッチ27Aに対して給電OFFとする指令を出力する(S31)。
次いで、停止済みのICT装置25に対応するスイッチ16またはスイッチ27Aにおいて給電OFFされているか否かを判定する処理を行う(S32)。具体的には、次の2条件が満たされているか否かを判定する処理を行う。1つ目は、接続しているICT装置25が停止していること。より具体的に説明すると次の3つの内容が満たされていること。対象のICT装置25にピン(Ping)接続しても応答がないこと、対象のICT装置25の仮想化ソフトに接続できないこと、対象のICT装置25に管理用ネットワーク(NW)で接続し、電源がオフ(OFF)となっていること。2つ目は、対象のICT装置25に接続しているスイッチ16またはスイッチ27Aのアウトレット(Outlet)の消費電流値が所定値(例えば定格電流の1割)以下であること。
給電OFFされていないと判定された場合(NOの場合)には、縮退運転の可否を判断する処理を中止する。
次いで、給電OFFされていると判定された場合(YESの場合)、統合制御装置60は、停止済みのICT装置25の温度が低下する余裕をもって、停止済みのICT装置25に対応する空調装置35を停止させる指令を空調制御装置40に出力する(S41)。空調制御装置40は停止済みのICT装置25に対応する空調装置35を停止させる指令を当該空調装置35に出力する。
本実施形態では、図5に示すように、架列28A,28B,28E,28Fに対応する空調装置35が停止されている例に適用して説明する。図5では、対応する空調装置35に斜線を入れることにより、給電OFFを表している。
なお、停止済みのICT装置25に対応する空調装置35を停止したことにより、縮退先のICT装置25が属する空調ゾーンの温度が上昇した場合、空調制御装置40は、必要に応じて停止した空調装置35の運転を再開する指令を出力してもよい。
次いで、図3のフローチャートに戻り、休止済みのICT装置25に対応する空調装置35が停止しているか否かを判定する処理を行う(S42)。具体的には、次の4条件が満たされているか否かを判定する処理を行う。1つ目は、停止対象以外のICT装置25に対応する空調装置35が正常であること(言い換えると、障害が発生していないこと。)。2つ目は、停止対象以外のICT装置25に対応する空調装置35において冷房能力に余裕があり、定格能力の所定値(90%)未満であること。3つ目は、停止対象以外の空調装置35が管轄するICT装置25の吸込み部付近(または、架列の間の一部であるコールドアイル(Cold Aisle))の温度が所定温度以下であること。4つ目は、停止対象となる空調装置35が管轄するICT装置25は稼働していないこと。より具体的には、ICT装置25が停止していること、かつ、ICT装置25と接続しているスイッチ16またはスイッチ27AのアウトレットがOFFとなっていること。
空調装置35が停止していないと判定された場合(NOの場合)には、縮退運転の可否を判断する処理を中止する。
次いで、空調装置35が停止されていると判定された場合(YESの場合)、統合制御装置60は、停止済みのICT装置25に対応する電源ユニット11を停止させる指令を出力する(S51)。言い換えると、ICT装置25の停止に伴い給電装置10の運転負荷率が低下するため、余剰となった電源ユニット11を停止させる指令を給電制御装置20に出力する。
具体的には、給電装置10に搭載されている電源ユニット11の台数と、出力電流値とを比較し、以下の式で求められる台数の電源ユニット11を停止する指令を出力する。なお、停止する電源ユニット11の台数は、電源ユニット11の故障や負荷急増時の対応等を考慮して、必要な電源ユニット11の台数に冗長分を考慮した台数としてもよい。
[(給電装置10に搭載された電源ユニット11の台数)×(電源ユニット11単体の容量)−{(出力電流)+(電源ユニット11単体の容量)}]÷(電源ユニット11単体の容量)≧停止可能な電源ユニット11の台数
次いで、停止済みのICT装置25に対応する電源ユニット11が停止しているか否かを判定する処理を行う(S52)。電源ユニット11が停止していないと判定された場合(NOの場合)には、縮退運転の可否を判断する処理を中止する。
電源ユニット11が停止していると判定された場合(YESの場合)、統合制御装置60は、照明機器45を消灯する指令を出力する処理を行う(S61)。言い換えると、不要となった照明機器45を消灯するため、照明制御装置50へ消灯指令を出力する。照明制御装置50は、必要に応じて作業者の不在を確認した後、該当部分の消灯を実行する。
次いで、照明機器45が消灯されたか否かを判定する処理を行う(S62)。具体的には、次の3条件を満たすか否かを判定する処理を行う。1つ目は、ICT装置25が正常に停止したこと。2つ目は、対応するスイッチ16またはスイッチ27Aが全てOFFになっていること。3つ目は、対応する空調装置35が停止していること。
照明機器45が消灯されていないと判定された場合(NOの場合)には、縮退運転の可否を判断する処理を中止する。また、照明機器45が消灯されていると判定された場合(YESの場合)、縮退運転の可否を判断する処理を終了する。
なお、上述のように縮退運転への移行処理を実行するにあたり、必要に応じてSDN(software defined network)技術、NFV(Network Function Virtualization)技術やロードバランサーなどのネットワーク制御、負荷制御を行う場合もある。
S14の判定において空調装置35による削減制御を優先すると判定された場合(NOの場合)、図4のフローチャートに移動し、演算処理部61は、ICT装置25等に障害が発生していないか否か、または運用に支障が出るか否かを判定する処理を行う(S115)。障害が発生している、あるいは運用に支障が出ると判定された場合(NOの場合)には、縮退運転の可否を判断する処理を中止する。なお、この判定における具体的な処理内容は、S15における判定と同様であるため、その説明を省略する。
障害が発生していないと判定された場合(YESの場合)、演算処理部61は、ICT装置25のリソースに余裕があるか否かを判定する処理を行う(S116)。リソースに余裕がないと判定された場合(NOの場合)には、縮退運転の可否を判断する処理を中止する。なお、この判定における具体的な処理内容は、S16における判定と同様であるため、その説明を省略する。
リソースに余裕があると判定された場合(YESの場合)、演算処理部61は、給電装置10やスイッチ16やスイッチ27Aの容量に余裕があるか否かを判定する処理を行う(S117)。容量に余裕がないと判定された場合(NOの場合)には、縮退運転の可否を判断する処理を中止する。なお、この判定における具体的な処理内容は、S17における判定と同様であるため、その説明を省略する。
容量に余裕があると判定された場合(YESの場合)、演算処理部61は、空調能力に余裕があるか否かを判定する処理を行う(S118)。空調能力に余裕がないと判定された場合(NOの場合)には、縮退運転の可否を判断する処理を中止する。なお、この判定における具体的な処理内容は、S18における判定と同様であるため、その説明を省略する。
空調能力に余裕があると判定された場合(YESの場合)、統合制御装置60は、冷房能力が過剰になると推定される空調装置35を停止させる指令を空調制御装置40に出力する(S141)。なお、本実施形態では、冷房能力が過剰になると推定される空調装置35を停止させる例に適用して説明するが、停止に限定されず、空調装置35で消費される電力が削減される制御を行ってもよい。また、冷房能力が過剰になるとの推定方法としては、公知の方法を用いることができ、特に限定するものではない。
次いで、停止させる指令の対象になった空調装置35が停止しているか否かを判定する処理を行う(S142)。対象になった空調装置35が停止していないと判定された場合(NOの場合)には、縮退運転の可否を判断する処理を中止する。なお、この判定における具体的な処理内容は、S42における判定と同様であるため、その説明を省略する。
次いで、空調装置35が停止されていると判定された場合(YESの場合)、統合制御装置60は、ICT制御装置30へ集約処理を行う指令を出力する。ICT制御装置30は対象となるICT装置25へ縮退運転に移行するための集約処理を実行する指令を出力する(S121)。ここで、対象となるICT装置25としては、S141の処理において、停止させる指令の対象になった空調装置35による冷房ゾーンに配置されているICT装置25を例示することができる。なお、集約処理の内容についてはS21における処理内容と同様であるため、その説明を省略する。
次いで、統合制御装置60は、ICTリソースの移動(Guestマシンの移動)が成功したか否かを判定する処理を行う(S122)。ICTリソースの移動が失敗したと判定された場合(NOの場合)には、縮退運転の可否を判断する処理を中止する。なお、この判定における具体的な処理内容は、S22における判定と同様であるため、その説明を省略する。
ICTリソースの移動が成功したと判定された場合(YESの場合)、統合制御装置60は、ICT制御装置30へ縮退元のICT装置25へ対して休止指示を出し、当該ICT装置25への休止処理が成功したか否かを判定する処理を行う(S123)。ICT装置25の休止が失敗したと判定された場合(NOの場合)には、縮退運転の可否を判断する処理を中止する。なお、この判定における具体的な処理内容は、S23における判定と同様であるため、その説明を省略する。
ICT装置25の休止が成功したと判定された場合(YESの場合)、統合制御装置60は、ICT制御装置30から出力されるICT装置25の休止状態情報を確認する。確認後に、ICT制御装置30に対して、休止済みのICT装置25に対して停止(シャットダウン)指令を出す。統合制御装置60はICT装置25の停止を確認した後、給電制御装置20に対し給電ルート上にあるコンセントバー27、または電流分配装置15のスイッチ16またはスイッチ27Aに対して給電OFFとする指令を出力する(S31)。
次いで、停止済みのICT装置25に対応するスイッチ16またはスイッチ27Aにおいて給電OFFされているか否かを判定する処理を行う(S32)。給電OFFされていないと判定された場合(NOの場合)には、縮退運転の可否を判断する処理を中止する。
次いで、給電OFFされていると判定された場合(YESの場合)、統合制御装置60は、停止済みのICT装置25に対応する電源ユニット11を停止させる指令を出力する(S51)。
次いで、停止済みのICT装置25に対応する電源ユニット11が停止しているか否かを判定する処理を行う(S52)。電源ユニット11が停止していないと判定された場合(NOの場合)には、縮退運転の可否を判断する処理を中止する。
電源ユニット11が停止していると判定された場合(YESの場合)、統合制御装置60は、照明機器45を消灯する指令を出力する処理を行う(S61)。次いで、照明機器45が消灯されたか否かを判定する処理を行う(S62)。
照明機器45が消灯されていないと判定された場合(NOの場合)には、縮退運転の可否を判断する処理を中止する。また、照明機器45が消灯されていると判定された場合(YESの場合)、縮退運転の可否を判断する処理を終了する。
次いで、縮退運転から分散運転への復元を実行する際の制御処理について図6のフローチャートを参照しながら説明する。はじめに統合制御装置60の取得部64は、入退管理装置65から入退情報を取得する処理を実行する(S211)。
入退情報が取得されると、統合制御装置60の演算処理部61は、ICT装置25の端末が設けられた建物に在館する社員数が、予め定められた所定の一定数以上であるか否かを判定する処理を行う(S212)。S212の判定処理において、在館する社員数が所定の一定数未満と判定された場合(NOの場合)には、演算処理部61は分散運転の可否を判断する処理を中止する。なお、S212における判定の内容は、S12における処理内容と同様であるため、その説明を省略する。
その一方で、在館する社員数が所定の一定数以上と判定された場合(YESの場合)には、統合制御装置60は、ICT装置25等に障害が発生していないか否か、または運用に支障が出るか否かを判定する処理を行う(S213)。具体的には、監視制御装置70が、分散元ICT装置25および分散先ICT装置25や、空調装置35や、給電装置10において異常が発生したことを示す情報を受け取っているか否かに基づいて、上述の判定処理を行う。
障害が発生している、あるいは運用に支障がでると判定された場合(NOの場合)には、移行の可否を判断する処理を中止する。なお、分散元ICT装置25は上述の縮退先ICT装置25であり、分散先ICT装置25は上述の縮退元ICT装置25である。
障害が発生していないと判定された場合(YESの場合)、統合制御装置60は、起動対象に関する空調装置35を起動させる指令を出力する処理を行う(S221)。言い換えると、運転を再開するICT装置25の空調ゾーンの空調装置35を制御する空調制御装置40に対して、予冷のための運転を開始する指令を出力する。空調制御装置40は、該当する空調装置35に対して起動指令を出力する。
次いで、起動対象に関する空調装置35が起動したか否かを判定する処理を行う(S222)。起動対象に関する空調装置35が起動していないと判定された場合(NOの場合)には、移行の可否を判断する処理を中止する。
起動対象に関する空調装置35が起動したと判定された場合(YESの場合)には、統合制御装置60は、ICT装置25の周辺の温度が所定温度以下であるか否かを判定する処理を行う(S223)。ICT装置25の周辺の温度としては、例えば、ICT装置25の周辺の空気温度、または、空調装置35における吸込み空気温度を例示することができる。この判定では、具体的には次の2条件が満たされているか否かが判定される。1つ目は、起動した空調装置35に異常が発生していないこと。2つ目は、起動した空調装置35が管轄するICT装置25の吸込み部付近(または、架列の間の一部であるコールドアイル(Cold Aisle))の温度が、所定温度以下となっていること。
ICT装置25の周辺の温度が所定温度以下になっていないと判定された場合(NOの場合)には、再びS223の判定が行われる。ICT装置25の周辺の温度が所定温度以下になっていると判定された場合(YESの場合)、統合制御装置60は、運転を再開するICT装置25へ電力を供給する電源ユニット11を起動する指令を出力する処理を行う(S231)。具体的には、給電制御装置20へ電源ユニット11を起動する指令を出力する。給電制御装置20は、当該電源ユニット11を起動させる。
次いで、統合制御装置60は、電源ユニット11が起動したか否かを判定する処理を行う(S232)。判定は次の3条件を満たすか否かにより行われる。1つ目は、給電装置10に異常が発生していないこと。2つ目は、電源ユニット11が正常に起動していること。3つ目は、起動後も電源ユニット11に異常が発生していないこと。電源ユニット11が起動していないと判定された場合(NOの場合)には、アラートを出力する処理が行われる。
電源ユニット11が起動していると判定された場合(YESの場合)には、スイッチ16およびスイッチ27AをON状態にする指令を出力する処理が行われる(S241)。具体的には、給電制御装置20へ運転を再開するICT装置25への給電経路上に位置するスイッチ16およびスイッチ27Aに対して、OFF状態からON状態へ移行させる指令を出力する。
次いで、統合制御装置60は、スイッチ16およびスイッチ27AがON状態へ移行したか否かを判定する処理を行う(S242)。判定は次の3条件を満たしているか否かにより行われる。1つ目は、スイッチ16およびスイッチ27Aに異常が発生していないこと。2つ目は、スイッチ16およびスイッチ27Aのアウトレットが正常に電源ONになっていること。アウトレットがONになった後も異常が発生していないこと。スイッチ16またはスイッチ27AがOFF状態のままと判定された場合(NOの場合)には、アラートを出力する処理が行われる。
スイッチ16およびスイッチ27AがON状態へ移行したと判定された場合(YESの場合)、統合制御装置60は、ICT装置25への起動指令を出力する処理を行う(S251)。指令が入力されたICT制御装置30は、ICT装置25の仕様に合わせた起動手順を踏んでICT装置25を起動させる処理を行う。統合制御装置60は、引き続き、縮退運転から分散運転へ移行させるためにICT制御装置30に対して復元処理の開始指示を出力する。ICT制御装置30は、縮退運転から分散運転に必要な手順を踏んで分散運転状態へ移行させる処理を行う。
次いで、統合制御装置60は、ICT装置25(Hostマシン)が起動したか否かを判定する処理を行う(S252)。判定は次の3条件が満たされているか否かにより行われる。1つ目は、対象のICT装置25に管理用NWで接続でき、異常が発生していないこと。2つ目は、対象ICT装置25に管理用NWで接続でき、電源投入が行えること。3つ目は、電源がONされた後も異常が発生することなく起動すること。ICT装置25が起動していないと判定された場合(NOの場合)には、アラートを出力する処理が行われる。
ICT装置25が起動していると判定された場合(YESの場合)、統合制御装置60は、ICTリソースの移動(Guestマシンの移動)が行われたか否かを判定する処理を行う(S253)。判定は次の5条件を満たすか否かにより行われる。1つ目は、切替(移動)先のICT装置25である分散先ICT装置25でH/W障害が発生していないこと。2つ目は、切替(移動)元のICT装置25である分散元ICT装置25でH/W障害が発生していないこと。3つ目は、仮想化管理ソフト上で、分散元の仮想Guestマシンが正常であること。4つ目は、分散元の仮想化ソフト上で、移動対象となる仮想Guestマシンが正常であること。5つ目は、分散先のICTリソースに余裕があること。具体的には、CPU使用率が所定値(例えば80%)未満であること、メモリ使用率が所定値(例えば80%)未満であること、および、ハードディスク(HDD)の使用率が所定値(例えば80%)未満であること。
ICTリソースの移動が行われていないと判定された場合(NOの場合)には、アラートを出力する処理が行われる。ICTリソースの移動が行われていると判定された場合(YESの場合)、統合制御装置60は、照明機器45を点灯させる指令を出力する処理を行う(S261)。
次いで、統合制御装置60は、照明機器45が点灯されたか否かを判定する処理を行う(S262)。判定は、給電装置10、ICT装置25、および空調装置35が正常に起動し、異常が発生していないか否かにより行われる。
照明機器45が点灯されていないと判定された場合(NOの場合)には、アラートを出力する処理が行われる。照明機器45が点灯されていると判定された場合(YESの場合)、縮退運転から分散運転への復元を実行する処理は終了される。
なお、縮退運転から分散運転へ移行する復元処理においては、必要に応じてSDN(software defined network)技術、NFV(Network Function Virtualization)技術やロードバランサーなどのネットワーク制御、負荷制御を行う場合もある。また、移行プロセス途中において、不要な警報が発生する場合には、警報を一時的にマスクする措置を講ずることも可能である。
上記の構成の給電システム1によれば、取得した社員の入退情報や、ICT装置25等の情報に基づいてICT装置25における演算等の情報処理量を推定し、推定した演算等の情報処理量に応じてICT装置25による電力消費量の削減、および、空調装置35による電力消費量の削減の優先順位を定めて全体の消費電力の削減を図ることができる。そのため、例えば、ICT装置25による削減と、空調装置35による削減の優先順位を定めず、それぞれが連係を取らずに消費電力の削減を図る場合と比較して消費電力の削減量を確保しやすくなる。または、ICT装置25における演算等の情報処理に与える影響を抑制しつつ、消費電力の削減を図りやすくなる。
ICT装置25による削減の優先順位を空調装置35による削減よりも上位とすることにより、ICT装置25における演算等の情報処理に与える影響を抑制しつつ、消費電力の削減を図ることができる。一般的に、ICT装置25における消費電力量は、ICT装置25における演算等の情報処理との間に関連性が存在する。そこで、ICT装置25による削減を優先することにより、ICT装置25における演算等の情報処理に与える影響と、消費電力の削減との間のバランスを図り易くなる。
給電装置10における消費電力の削減を更に行うことにより、ICT装置25による削減、および、空調装置35による削減のみを行う場合と比較して、消費電力の削減量を増やしやすくなる。
さらに、空調装置35による削減およびICT装置25による削減の優先順位を、給電装置10における削減よりも上位とすることにより、消費電力の削減量を確保しやすくなる。つまり、情報通信設備の中でICT装置25に次いで消費電力が多い空調装置35に注目し、より効率的な運転による削減判断処理をICT装置25による削減判断より優先することにより、消費電力の削減量を確保しやすくなる。
パラメータに社員の入退情報やICT装置25の情報を含めることにより、ICT装置25における演算等の情報処理量を推定しやすくなる。例えば、社員がICT装置25の利用端末が配置された建物に入館している場合には、当該社員がICT装置25を利用する可能性が高いと考えられる。そのため、これら情報に基づくことにより、ICT装置25における演算等の情報処理量を推定しやすくなる。また、社員によるICT装置25の利用状況が同じであっても、ICT装置25の種類や他の演算等の情報処理量の状況に応じて、ICT装置25における演算等の情報処理量が異なると考えられる。そのため、これら情報に基づくことにより、ICT装置25における演算等の情報処理量を推定しやすくなる。
〔第2の実施形態〕
次に、本発明の第2の実施形態について図7を参照して説明する。本実施形態の給電システムの基本構成は、第1の実施形態と同様であるが、第1の実施形態とは、給電システムにおける制御が異なっている。よって、本実施形態においては、図7を用いて異なる制御について説明し、給電システムの構成等の説明を省略する。
本実施形態の給電システム1における制御について説明する。本実施形態では、社員の位置情報、社員のスケジュール情報、社員の座席情報およびICT装置25等の情報に基づく給電システム1の統合連係制御について説明する。
具体的には、縮退運転を実行する際の制御処理について図7のフローチャートを参照しながら説明する。はじめに統合制御装置60の取得部64は、記憶部66から社員の位置情報を取得する処理を実行する(S311:取得ステップ)。次いで、追加情報を取得する処理を実行する(S312:取得ステップ)。ここで、追加情報は、記憶部67に記憶された社員のスケジュール情報、社員の座席情報、および、ICTリソース情報を例示することができる。
これらの情報を取得すると、統合制御装置60は、縮退運転を実行した場合に消費電力の削減効果があるか否かを判定する処理を行う(S313)。消費電力の削減効果がないと判定された場合(NOの場合)には、演算処理部61は縮退運転の可否を判断する処理を中止する。
なお、消費電力の削減効果の判定には、上述の社員の位置情報、社員のスケジュール情報、社員の座席情報、および、ICTリソース情報に基づいて行われる。例えば、社員の位置情報および社員の座席情報に基づいて、社員が座席に着席しているか否かの推定が行われ、社員が着席している場合にはICT装置25において演算等の情報処理が要求される可能性が高いと推定することができる。
また、社員のスケジュール情報に基づくと、当該社員がその時間帯にICT装置25を利用するか否か、ICT装置25を利用する場合には演算等の情報処理量を推定することができる。これらの推定した演算等の情報処理量とICTリソース情報とに基づくことにより、ICT装置25の稼働率などを推定することもできる。このような推定に基づいて、縮退運転を実行した場合に消費電力の削減効果があるか否かを求めることができる。
消費電力の削減効果があると判定された場合(YESの場合)には、演算処理部61は制御の優先順位を判定する処理を行う(S314:優先処理ステップ)。本実施形態では、ICT装置25による削減制御と、空調装置35による削減制御との間の優先順位を判定する処理が行われる。具体的には、ICT装置25による削減制御が、空調装置35による削減制御よりも優先されるか否かを判定する処理を行う。
予測処理部63は、社員の位置情報、社員のスケジュール情報、社員の座席情報、および、ICTリソース情報に基づいてICT装置25における演算等の情報処理量を推定する演算処理を行う。推定された演算等の情報処理量が増加する場合には、演算処理部61はICT装置25による削減制御を優先するとの判定を行う(YES)。その一方で、推定された演算等の情報処理量が増加しない場合には、空調装置35による削減制御を優先するとの判定を行う(NO)。
S314の判定においてICT装置25による削減制御を優先すると判定された場合(YESの場合)、演算処理部61は、ICT装置25等に障害が発生していないか否か、または運用に支障が出るか否かを判定する処理を行う(S15)。以降の制御は第1の実施形態と同様であるため、図7のフローチャートに図示を行い、その説明を省略する。また、S314の判定において空調装置35による削減制御を優先するとの判定と判定された場合(NOの場合)におけるその後の制御についても、第1の実施形態と同様であるため、その説明を省略する。
上記の構成の給電システム1によれば、パラメータとしてスケジュール情報やカレンダ情報を含めることにより、ICT装置25における演算等の情報処理量を推定しやすくなる。例えば、ICT装置25の社員は、平日にICT装置25を利用し、休日や祭日にはICT装置25を利用しない傾向にある場合があり、さらに、社員が所属する組織のスケジュールに応じてICT装置25の利用頻度が変動する場合がある。このような事情に基づくことにより、ICT装置25における演算等の情報処理量を推定しやすくなる。
パラメータを社員の位置情報および座席位置情報とすることにより、ICT装置25における演算等の情報処理量を推定しやすくなる。例えば、社員の位置が、ICT装置25の利用端末が配置された座席位置の近傍である場合には、当該社員がICT装置25を利用する可能性が高いと考えられる。そのため、これら情報に基づくことにより、ICT装置25における作業負荷量を推定しやすくなる。
〔第3の実施形態〕
次に、本発明の第3の実施形態について図8を参照して説明する。本実施形態の給電システムの基本構成は、第1の実施形態と同様であるが、第1の実施形態とは、給電システムにおける制御が異なっている。よって、本実施形態においては、図8を用いて異なる制御について説明し、給電システムの構成等の説明を省略する。
本実施形態の給電システム1における制御について説明する。本実施形態では、交通情報、社員のスケジュール情報、入退情報およびICT装置25等の情報に基づく給電システム1の統合連係制御について説明する。
具体的には、縮退運転を実行する際の制御処理について図8のフローチャートを参照しながら説明する。はじめに統合制御装置60の取得部64は、記憶部68から交通情報を取得する処理を実行する(S411)。ここで取得する交通情報として鉄道会社やバス会社などの公共交通機関から発表される遅延情報を例示することができる。
次いで取得部64は、記憶部67から社員のスケジュール情報を取得する処理を実行する(S412)。さらに、入退管理装置65から社員の入退情報を取得する処理を実行し(S413)、ICTリソース情報を取得する処理を実行する(S414)。
これらの情報を取得すると、統合制御装置60の演算処理部61は、縮退運転を実行した場合に消費電力の削減効果があるか否かを判定する処理を行う(S415)。消費電力の削減効果がないと判定された場合(NOの場合)には、演算処理部61は縮退運転の可否を判断する処理を中止する。消費電力の削減効果があると判定された場合(YESの場合)には、演算処理部61は縮退運転を実行する制御処理を継続する(S416)。
なお、消費電力の削減効果の判定には、上述の交通情報(例えば遅延情報)、社員のスケジュール情報、入退情報およびICT装置25等の情報に基づいて行われる。例えば、遅延情報に基づいて、社員が始業時間に出勤しているか否かの推定が行われ、社員が始業時間に出勤している場合にはICT装置25において演算等の情報処理が要求される可能性が高いと推定することができる。また、社員のスケジュール情報に基づくと、当該社員の始業時間が不規則な場合であっても、ICT装置25において演算等の情報処理が要求される可能性の推定精度が悪化することが抑制できる。これらの推定した演算等の情報処理量とICTリソース情報とに基づくことにより、ICT装置25の稼働率などを推定することもできる。このような推定に基づいて、縮退運転を実行した場合に消費電力の削減効果があるか否かを求めることができる。
上記の構成の給電システム1によれば、パラメータを交通情報とすることにより、ICT装置25における演算等の情報処理量を推定しやすくなる。例えば、遅延などにより交通手段の確保が困難な場合などには、ICT装置25の利用者の出勤が困難であることが予想され、ICT装置25における演算等の情報処理量が減少することが推定される。
〔第4の実施形態〕
次に、本発明の第4の実施形態について図9を参照して説明する。本実施形態の給電システムの基本構成は、第1の実施形態と同様であるが、第1の実施形態とは、給電システムにおける制御が異なっている。よって、本実施形態においては、図9を用いて異なる制御について説明し、給電システムの構成等の説明を省略する。
本実施形態の給電システム1における制御について説明する。本実施形態では、気象情報およびICT装置25等の情報に基づく給電システム1の統合連係制御に関して、分散運転を継続するか否かの判断がさらに行われる。
具体的には、分散運転を継続するか否かの判断を行う際の制御処理について図9のフローチャートを参照しながら説明する。はじめに統合制御装置60の取得部64は、記憶部68から気象情報を取得する処理を実行する(S511)。ここで取得する気象情報としては、気象庁から発表される各種の特別警報を例示することができる。次いで、取得部64は、ICTリソース情報および警報情報を取得する処理を実行する(S512)。
これらの情報を取得すると、統合制御装置60の演算処理部61は、分散運転を継続した場合に問題がないか否かを判定する処理を行う(S513)。S513における判定の処理を行う際に用いられる演算等の情報処理量を推定する際に、取得した気象情報およびICT装置25等の情報が用いられる。なお、問題がないか否かの判定としては、例えば、第1の実施形態におけるS14からS18までの一連の判定などを挙げることができる。
S513における判定において問題があると判定された場合(NOの場合)には、演算処理部61は分散運転継続の可否を判断する処理を中止する。問題がないと判定された場合(YESの場合)には、演算処理部61は分散運転を継続する制御処理を継続する(S514)。
〔第5の実施形態〕
次に、本発明の第5の実施形態について図10を参照して説明する。本実施形態の給電システムの基本構成は、第1の実施形態と同様であるが、第1の実施形態とは、給電システムにおける制御が異なっている。よって、本実施形態においては、図10を用いて異なる制御について説明し、給電システムの構成等の説明を省略する。
本実施形態の給電システム1における制御について説明する。本実施形態では、気象情報、社員のスケジュール情報、入退情報およびICT装置25等の情報に基づく給電システム1の統合連係制御に関して、分散運転を継続するか否かの判断がさらに行われる。
具体的には、分散運転を継続するか否かの判断を行う際の制御処理について図10のフローチャートを参照しながら説明する。はじめに統合制御装置60の取得部64は、記憶部68から気象情報として大規模地震情報を取得する処理を実行する(S611)。
次いで取得部64は、記憶部67から社員のスケジュール情報を取得する処理を実行する(S612)。さらに、入退管理装置65から社員の入退情報を取得する処理を実行し(S613)、ICTリソース情報を取得する処理を実行する(S614)。
これらの情報を取得すると、統合制御装置60の演算処理部61は、分散運転を継続して問題がないか否かを判定する処理を行う(S615)。分散運転を継続して問題があると判定された場合(NOの場合)には、演算処理部61は分散運転の継続を判断する処理を中止する。分散運転を継続して問題がないと判定された場合(YESの場合)には、演算処理部61は縮退運転を実行する制御処理を継続する(S616)。
上記の構成の給電システム1によれば、パラメータとして気象情報を含めることにより、ICT装置25における演算等の情報処理量を推定しやすくなる。例えば、特別警報が発表されるような悪天候の場合などには、ICT装置25を利用する社員の出勤が困難であることが予想され、ICT装置25における演算等の情報処理量が減少することが推定される。
〔第6の実施形態〕
次に、本発明の第6の実施形態について図11を参照して説明する。本実施形態の給電システムの基本構成は、第1の実施形態と同様であるが、第1の実施形態とは、給電システムにおける制御が異なっている。よって、本実施形態においては、図11を用いて異なる制御について説明し、給電システムの構成等の説明を省略する。
本実施形態の給電システム1における制御について説明する。本実施形態では、気象情報、交通情報、社員のスケジュール情報、入退情報およびICT装置25等の情報に基づく給電システム1の統合連係制御に関して、縮退運転を継続するか否かの判断がさらに行われる。
具体的には、縮退運転を継続するか否かの判断を行う際の制御処理について図11のフローチャートを参照しながら説明する。はじめに統合制御装置60の取得部64は、記憶部68から気象情報を取得する処理を実行する(S711)。ここで取得する気象情報としては、気象庁から発表される各種の特別警報を例示することができる。
次いで、記憶部68から交通情報を取得する処理を実行する(S712)。ここで取得する交通情報として鉄道会社やバス会社などの公共交通機関から発表される遅延情報を例示することができる。
その後、取得部64は、記憶部67から社員のスケジュール情報を取得する処理を実行する(S713)。さらに、入退管理装置65から社員の入退情報を取得する処理を実行し(S714)、ICTリソース情報および警報情報を取得する処理を実行する(S715)。
これらの情報を取得すると、統合制御装置60の演算処理部61は、縮退運転を実行した場合に問題がないか否かを判定する処理を行う(S716)。S716における判定の処理を行う際に用いられる演算等の情報処理量を推定する際に、取得した気象情報、交通情報、社員のスケジュール情報、入退情報およびICT装置25等の情報が用いられる。なお、問題がないか否かの判定としては、例えば、第1の実施形態におけるS14からS18までの一連の判定などを挙げることができる。
S716における判定において問題があると判定された場合(NOの場合)には、演算処理部61は縮退運転の可否を判断する処理を中止する。問題がないと判定された場合(YESの場合)には、演算処理部61は縮退運転を実行する制御処理を継続する(S717)。
〔第7の実施形態〕
次に、本発明の第7の実施形態について図12から図14を参照して説明する。本実施形態の給電システムの基本構成は、第1の実施形態と同様であるが、第1の実施形態とは、給電システムにおける制御が異なっている。よって、本実施形態においては、図12および図13を用いて異なる制御について説明し、給電システムの構成等の説明を省略する。
ここでは、本実施形態の給電システム1の特徴である制御について説明する。本実施形態では、ICT装置優先モードおよび空調優先モードのいずれを優先するか優先順位を判定する処理がさらに行われることが上述の他の実施形態と異なっている。
まず、縮退運転を実行する際の制御処理について、図12を参照しながら説明する。制御処理が開始されると、統合制御装置60は制御優先順位を判定する処理を行う(S800)。具体的には、ICT装置25による削減制御を優先するICT装置優先モード、および、空調装置35による削減制御を優先する空調優先モードのいずれかを選択するか判定する図13に示すサブルーチンの処理が行わる。
制御優先順位を判定するサブルーチンの処理の詳細について、図13を参照しながら説明する。上記サブルーチンの処理が開始されると、統合制御装置60の取得部64は、情報を取得する処理を行う(S801)。ここで取得される情報は、ICT装置25の負荷率情報、電力消費情報および位置情報、並びに、空調装置35の運転情報などが挙げられる。
情報の取得が行われると、演算処理部61は空調ゾーンごとの負荷率を算出する処理を行う(S802)。空調ゾーンとは、空調装置35によって室温の調整が行われる領域のことである。空調ゾーンは、空調装置35やICT装置25の配置や、空調装置35から吹出される空気の風速、風量、向きなどに応じて変化するものである。本実施形態では、それぞれの空調装置35について測定を行い、空調ゾーンを予め把握している例に適用して説明する。
本実施形態では、負荷率を算出する方法を次に記載する例に適用して説明する。つまり、空調ゾーンごとの負荷率は、位置情報に基づいてICT装置25を空調ゾーン毎に紐付けし、それぞれの空調ゾーンに紐付けされたICT装置25の負荷率情報に基づいて算出される。空調ゾーンごとの負荷率は、空調ゾーンに紐付けされた複数のICT装置25の負荷率情報に基づく平均値であってもよいし、中央値、最頻値、最大値、最小値などの他の値であってもよく、特に限定するものではない。
空調ゾーンごとの負荷率が算出されると、演算処理部61は、低負荷ゾーンが存在するか否かを判定する処理を行う(S803)。本実施形態では、予め定められた負荷率の閾値と、空調ゾーンごとの負荷率とを比較することにより、低負荷ゾーンが存在するか否かが判定される例に適用して説明する。
S803の判定処理において低負荷ゾーンが存在しないと判定された場合(NOの場合)には、演算処理部61は、設定をICT装置優先モードとする処理を行う(S804)。その後、演算処理部61によるサブルーチンの処理が終了し、処理は図12のフローチャートに移行する。
S803の判定処理において低負荷ゾーンが存在すると判定された場合(YESの場合)には、演算処理部61は、低負荷ゾーンのICT装置25からその他のゾーンのICT装置25に負荷の処理の移行が可能か否かを判定する処理を行う(S805)。
ここで行う判定処理の具体的な内容は、第1の実施形態におけるS15のICT装置25等に障害が発生していないか否か、または運用に支障が出るか否かの判定処理、S16のICT装置25のリソースに余裕があるか否かの判定処理、S17の給電装置10やスイッチ16やスイッチ27Aの容量に余裕があるか否かの判定処理、S18の空調能力に余裕があるか否かの判定処理等と同様であるため、その説明を省略する。
S805の判定処理において、負荷の処理の移行が可能と判定された場合(YESの場合)には、演算処理部61は、この移行により消費電力が減少するか否かを判定する処理を行う(S806)。具体的には、低負荷ゾーンに位置するICT装置25で負荷の処理を続けた場合に消費される電力と、その他のゾーンに位置するICT装置25に負荷の処理を移行し、当該負荷の処理を行った場合に消費される電力と、をそれぞれ演算により求め、両電力の値を比較することにより判定が行われる。
S806の判定処理において、消費電力が減少すると判定された場合(YESの場合)には、演算処理部61は、設定を空調優先モードとする処理を行う(S807)。その後、演算処理部61によるサブルーチンの処理が終了し、処理は図12のフローチャートに移行する。
S805の判定処理において、負荷の処理の移行が不可能と判定された場合(NOの場合)、または、S806における判定処理において、消費電力が減少しないと判定された場合(NOの場合)には、演算処理部61は、上述の他のゾーンのICT装置25から低負荷ゾーンのICT装置25へ負荷の処理が移行可能か否かを判定する処理を行う(S808)。
S808の判定処理において負荷の移行が可能と判定された場合(YESの場合)には、演算処理部61は、移行後の消費電力が減少するか否かを判定する処理を行う(S809)。具体的には、他のゾーンに位置するICT装置25で負荷の処理を続けた場合に消費される電力と、低負荷ゾーンに位置するICT装置25に負荷の処理を移行し、当該負荷の処理を行った場合に消費される電力と、をそれぞれ演算により求め、両電力の値を比較することにより判定が行われる。
S809の判定処理において、移行後の消費電力が減少すると判定された場合(YESの場合)には、演算処理部61は、他のゾーンのICT装置25から低負荷ゾーンのICT装置25へ、負荷の処理を移行させる処理を行い(S810)、設定を空調優先モードとする処理を行う(S807)。その後、演算処理部61によるサブルーチンの処理が終了し、処理は図12のフローチャートに移行する。
S808における判定処理で、負荷の処理の移行が不可能と判定された場合(NOの場合)、または、S809における判定処理で、移行後の消費電力が減少しないと判定された場合(NOの場合)には、演算処理部61は、設定をICT装置優先モードとする処理を行う(S804)。その後、演算処理部61によるサブルーチンの処理が終了し、処理は図12のフローチャートに移行する。
サブルーチンの処理が終了して、処理が図12のフローチャートに戻ると、演算処理部61は、サブルーチンにおいて設定されたモードがICT装置優先モードであるか否かを判定する処理を行う(S821)。設定がICT装置優先モードであると判定された場合(YESの場合)には、演算処理部61における処理はS11の処理に移行し、その後、第1の実施形態と同様な処理を行う。
S821の判定処理において設定がICT装置優先モードでないと判定された場合(NOの場合)には、演算処理部61は、サブルーチンにおいて設定されたモードが空調優先モードであるか否かを判定する処理を行う(S822)。設定が空調優先モードであると判定された場合(YESの場合)には、演算処理部61の処理はS115の処理に移行し、その後、第1の実施形態と同様な処理を行う。
設定が空調優先モードでないと判定された場合(NOの場合)には、演算処理部61は、縮退運転の可否を判定する処理を中止する。
なお、上述の実施形態のように、制御処理が開始された後に制御優先順位を判定する処理(S800)を行ってもよいし、図14に示すように、入退情報を取得する処理(S11)を行い、社員数が予め定められた所定の一定数未満であると判定された(S12のYES)後に、制御優先順位を判定する処理(S800)を行ってもよい。この場合、S821の判定処理において設定がICT装置優先モードと判定された(YES)とき、演算処理部61における処理はS15の処理に移行し、その後、第1の実施形態と同様な処理を行う。
上記の構成の給電システム1によれば、ICT装置優先モードおよび空調優先モードのいずれを優先するかの判定結果に基づいて制御が行われるため、消費電力の削減を図り易くなる。例えば、ICT装置25の負荷率が低いICT装置25が存在する場合、空調装置35は低負荷状態で運転されたり、送風運転と冷房運転を繰り返したりすることとなり、消費電力の削減を行いにくい状況となる。この場合、空調優先モードを採用することにより、ICT装置優先モードを採用する場合と比較して、消費電力の削減を行いやすくなる。
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。例えば、上記の実施形態では、給電制御装置20と、ICT制御装置30と、空調制御装置40と、照明制御装置50と、統合制御装置60と、がそれぞれ設けられている例に適用して説明しているが、一部の制御装置が1つの制御装置(サーバ)にまとめられていてもよいし、全ての制御装置が1つの制御装置(サーバ)にまとめられていてもよく、特に限定するものではない。