JP2016210237A - ステアリング装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】車両衝突時にエネルギー吸収部材を安定して変形させることができるステアリング装置を提供すること。
【解決手段】ステアリング装置1では、ロアージャケット19に対するアッパージャケット18の軸方向Xへの移動によって、コラムジャケット4が、ステアリングシャフトとともに軸方向Xに伸縮可能である。エネルギー吸収部材42は、ロアージャケット19に固定された固定部材40に固定された固定部50と、車両衝突時にアッパージャケット18とともに前側X2へ移動する移動部51とを含む。エネルギー吸収部材42は、車両衝突時に発生するエネルギーを吸収するために前側X2へ変形可能であるが、径方向外側R1から規制部材43によって覆われている。そのため、車両衝突時に径方向Rへのエネルギー吸収部材42の変形が径方向外側R1から規制される。
【選択図】図10C

Description

この発明は、ステアリング装置に関する。
下記特許文献1に記載のステアリングコラムは、ブラケットに固定されたロアージャケットと、一部がロアージャケットの内側に配置されたアッパージャケットとを含む。アッパージャケットは、アッパージャケットの軸方向に延びるエネルギー吸収部材を含む。エネルギー吸収部材は、複数の歯部が形成された上側部分と、アッパージャケットに固定された下側部分とを含む。ブラケットには、締付軸が挿通されており、締付軸には、複数の歯部が形成されたカムが配置されている。締付軸に取り付けられた調整レバーの回転によって締付軸が回転し、カムの歯部がエネルギー吸収部材のカムと噛み合う。車両衝突時にアッパージャケットがロアージャケットに対して移動することによってエネルギー吸収部材が変形する。これにより、エネルギー吸収部材は、車両衝突時に発生するエネルギーを吸収する。
米国特許出願公開第2012/0125139号明細書
特許文献1に記載のステアリングコラムのエネルギー吸収部材は、軸方向に延びているため撓みやすい。そのため、エネルギー吸収部材では、アッパージャケットに固定されていない上側部分が車両衝突時の衝撃によって浮き上がることがある。上側部分が浮き上がってしまうと、エネルギー吸収部材は、車両衝突時に安定して変形できないので、車両衝突時に発生するエネルギーを安定して吸収できない虞がある。
この発明は、かかる背景のもとでなされたものであり、車両衝突時にエネルギー吸収部材を安定して変形させることができるステアリング装置を提供することを目的とする。
請求項1に記載の発明は、一端(3A)に操舵部材(10)が連結可能であり、軸方向(X)に伸縮可能なステアリングシャフト(3)と、前記軸方向における前記操舵部材側(X1)で前記ステアリングシャフトを保持するアッパージャケット(18)と、前記軸方向における前記操舵部材側とは反対側(X2)で前記ステアリングシャフトを保持するロアージャケット(19)とを有し、前記ロアージャケットに対する前記アッパージャケットの前記軸方向への移動によって前記ステアリングシャフトとともに前記軸方向に伸縮可能なコラムジャケット(4)と、前記ロアージャケットを支持し、車体(2)に固定されるブラケット(6)と、前記ロアージャケットに固定された固定部材(40)と、前記固定部材に固定された固定部(50)と、車両衝突時に前記アッパージャケットとともに前記反対側へ移動する移動部(51)と、を含み、車両衝突時に発生するエネルギーを吸収するために前記移動部の移動に伴って前記反対側へ変形可能なエネルギー吸収部材(42)と、前記エネルギー吸収部材を前記ステアリングシャフトの径方向(R)の外側(R1)から覆い、車両衝突時に前記径方向への前記エネルギー吸収部材の変形を前記径方向の外側から規制する規制部材(43)と、を含むことを特徴とする、ステアリング装置(1)である。
請求項2記載の発明は、前記ロアージャケットに形成された前記軸方向に延びるスリット(25)の両側に配置され、前記ロアージャケットと一体的に設けられた一対の被締付部材(26)と、前記一対の被締付部材の間隔を狭めることにより前記アッパージャケットに前記ロアージャケットを締め付ける締付機構(7)と、を含み、前記規制部材の前記反対側の端部(43B)は、前記一対の被締付部材よりも前記反対側に配置された前記固定部材に固定されていることを特徴とする、請求項1記載のステアリング装置である。
請求項3記載の発明は、前記被締付部材に設けられ、前記エネルギー吸収部材に対して前記径方向の外側から前記規制部材の前記操舵部材側の端部(43A)を押圧する押圧部材(41)を含む、請求項2記載のステアリング装置である。
請求項4記載の発明は、前記規制部材の前記反対側の端部と、前記エネルギー吸収部材の前記固定部とを前記固定部材に共締めする締結部材(44)を含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のステアリング装置である。
なお、上記において、括弧内の数字等は、後述する実施形態における対応構成要素の参照符号を表すものであるが、これらの参照符号により特許請求の範囲を限定する趣旨ではない。
請求項1記載の発明によれば、ステアリング装置では、コラムジャケットが、軸方向における操舵部材側のアッパージャケットと、軸方向における操舵部材側とは反対側のロアージャケットとを有している。ロアージャケットは、車体に固定されるブラケットによって支持されている。
コラムジャケットがステアリングシャフトとともに伸縮する際、アッパージャケットが、ロアージャケットに対して軸方向へ移動する。そのため、車両衝突の際には、ステアリングシャフトに連結された操舵部材に運転者が衝突する二次衝突が発生し、ステアリングシャフトが収縮すると同時に、アッパージャケットが、ロアージャケットに対して反対側へ移動する。
その際、エネルギー吸収部材の移動部は、アッパージャケットとともに反対側へ移動する。一方、エネルギー吸収部材の固定部は、ロアージャケット側の固定部材に固定されている。そのため、エネルギー吸収部材は、車両衝突時には、移動部の移動に伴って反対側へ変形することによって車両衝突時のエネルギーを吸収する。エネルギー吸収部材は、ステアリングシャフトの径方向の外側から規制部材により覆われている。そのため、エネルギー吸収部材の径方向への変形が、規制部材によって規制される。
したがって、車両衝突時には、径方向へのエネルギー吸収部材の浮き上がりが抑制されるので、エネルギー吸収部材を安定して変形させることができる。
請求項2記載の発明によれば、規制部材の反対側の端部は、固定部材に固定されているので、規制部材のがたつきを抑制することができる。
また、固定部材が一対の被締付部材よりも反対側に配置されている。そのため、固定部材への規制部材の反対側の端部の固定が、締付機構による一対の被締付部材の間隔を狭めることを邪魔することを抑制できる。したがって、締付機構は、一対の被締付部材の間隔を円滑に狭めることによって、アッパージャケットにロアージャケットを強固に締め付けることができる。
請求項3記載の発明によれば、規制部材の操舵部材側の端部は、被締付部材に設けられた押圧部材によって、径方向の外側からエネルギー吸収部材に対して押圧されている。これにより、径方向における規制部材のがたつきを抑制することができる。
請求項4記載の発明によれば、規制部材の反対側の端部と、エネルギー吸収部材の固定部とは、締結部材によって固定部材に共締めされているので、エネルギー吸収部材および規制部材をロアージャケットに組み付ける際の工数を削減することができる。
図1は、本発明の一実施形態に係るステアリング装置の概略側面図である。 図2は、ステアリング装置の斜視図である。 図3は、図1のIII−III線に沿った断面図である。 図4は、エネルギー吸収機構の周辺の概略斜視図である。 図5は、エネルギー吸収部材および規制部材の周辺の分解斜視図である。 図6は、エネルギー吸収機構の周辺を上側から見た図である。 図7は、図6のVII−VII線に沿った断面図を模式的に示した図である。 図8は、ツースロック機構およびその周辺の分解斜視図である。 図9Aは、ツースロック機構の模式的側面図であって第2歯が第1歯と噛み合った状態を示した図である。 図9Bは、図9Aにおいて第2歯と第1歯との噛み合いが解除された状態を示した図である。 図10Aは、図6のX−X線に沿う断面図を模式的に示した図である。 図10Bは、図10Aにおいて二次衝突直後の状態を示した図である。 図10Cは、図10Bよりもさらに後の状態を示した図である。
以下では、本発明の実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るステアリング装置1の概略側面図である。図1において、紙面左側が、ステアリング装置1が取り付けられる車体2の前側であり、紙面右側が車体2の後側であり、紙面上側が車体2の上側であり、紙面下側が車体2の下側である。図2は、ステアリング装置1の斜視図である。
図1を参照して、ステアリング装置1は、ステアリングシャフト3と、コラムジャケット4と、ロアーブラケット5と、アッパーブラケット6(ブラケット)と、締付機構7と、エネルギー吸収機構8と、ツースロック機構9と、を主に含んでいる。
ステアリングシャフト3では、後端である一端3Aに操舵部材10が連結されている。ステアリングシャフト3において前端である他端3Bが、自在継手11、インターミディエイトシャフト12および自在継手13を順に介して、転舵機構14のピニオン軸15に連結されている。転舵機構14は、ラックアンドピニオン機構などで構成されている。転舵機構14は、ステアリングシャフト3の回転が伝達されたことに応じて、図示しないタイヤなどの転舵輪を転舵させる。
ステアリングシャフト3は、車体2の前後方向に延びている。以下では、ステアリングシャフト3が延びる方向を軸方向Xとする。軸方向Xは、他端3Bが一端3Aよりも低くなるように水平方向に対して傾斜している。軸方向Xにおいて操舵部材10側である後側には、符号「X1」を付し、軸方向Xにおいて操舵部材10とは反対側である前側には、符号「X2」を付す。
軸方向Xに対して直交する方向のうち、図1において紙面と垂直な方向を左右方向Yといい、図1において略上下に延びる方向を上下方向Zという。左右方向Yにおいて、図1の紙面の奥側は、右側Y1であり、紙面の手前側は、左側Y2である。上下方向Zにおいて、上側には、符号「Z1」を付し、下側には、符号「Z2」を付す。
なお、図1以外の各図において図1の軸方向X、後側X1、前側X2、左右方向Y、右側Y1、左側Y2、上下方向Z、上側Z1および下側Z2に対応する方向には、図1と同じ符号を付している。
ステアリングシャフト3は、少なくとも前側X2の一部が円筒状のアッパーシャフト16と、円柱状のロアーシャフト17とを有している。アッパーシャフト16は、ロアーシャフト17よりも後側X1で同軸状に配置されている。
アッパーシャフト16における後端16Aが、ステアリングシャフト3の一端3Aであり、アッパーシャフト16の後端16Aに操舵部材10が連結されている。
ロアーシャフト17における前端17Aが、ステアリングシャフト3の他端3Bである。ロアーシャフト17の後端は、アッパーシャフト16の前端16Bに前側X2から挿入されている。ロアーシャフト17は、スプライン嵌合やセレーション嵌合によってアッパーシャフト16に嵌合されることでアッパーシャフト16の前端16Bに連結されている。そのため、アッパーシャフト16とロアーシャフト17とは、一体回転可能であるとともに、軸方向Xに沿って相対移動可能である。ロアーシャフト17に対するアッパーシャフト16の軸方向Xへの移動によって、ステアリングシャフト3は、軸方向Xに伸縮可能である。
コラムジャケット4は、全体として、軸方向Xへ延びる中空体である。コラムジャケット4は、ステアリングシャフト3を収容している。コラムジャケット4は、軸方向Xに延びるアッパージャケット18およびロアージャケット19を有している。
アッパージャケット18は、ロアージャケット19よりも後側X1に位置している。アッパージャケット18は、ロアージャケット19に対して内嵌されている。詳しくは、アッパージャケット18の前端18Aがロアージャケット19の後端19Aに対して後側X1から挿入されている。この状態で、アッパージャケット18は、ロアージャケット19に対する軸方向Xへの移動が可能である。この移動によって、コラムジャケット4の全体は、軸方向Xに沿って伸縮可能である。
コラムジャケット4は、軸受20および軸受21によってステアリングシャフト3に連結されていることから、コラムジャケット4は、ステアリングシャフト3を回転自在に支持し、ステアリングシャフト3を保持している。
詳しくは、アッパージャケット18の後端は、軸受20によってアッパーシャフト16に連結されている。アッパージャケット18は、アッパーシャフト16を回転自在に支持し、アッパーシャフト16を後側X1で保持している。また、ロアージャケット19の前端は、軸受21によってロアーシャフト17に連結されている。ロアージャケット19は、ロアーシャフト17を回転自在に支持し、ロアーシャフト17を前側X2で保持している。そのため、アッパーシャフト16およびアッパージャケット18のまとまりは、ロアーシャフト17およびロアージャケット19のまとまりに対して、軸方向Xに移動可能である。これにより、コラムジャケット4は、ステアリングシャフト3とともに伸縮可能である。
ここでのステアリングシャフト3およびコラムジャケット4の伸縮を「テレスコ」と呼び、この伸縮調整、つまり、テレスコによる操舵部材10の軸方向Xでの位置調整をテレスコ調整と呼ぶ。
ロアーブラケット5は、ロアージャケット19の前側X2の部分を支持し、ステアリング装置1を車体2に連結している。
ロアーブラケット5は、ロアージャケット19に固定された一対の可動ブラケット5A(図2も参照)と、車体2に固定された固定ブラケット5Bと、左右方向Yに延びる中心軸5Cとを含んでいる。
可動ブラケット5Aは、固定ブラケット5Bによって、中心軸5Cを介して回動可能に支持されている。そのため、コラムジャケット4全体は、ステアリングシャフト3を伴って、中心軸5Cを中心に上下に回動することができる。ここでの回動を「チルト」と呼び、中心軸5Cを中心とした略上下方向をチルト方向と呼ぶ。また、チルトによる操舵部材10の向き調整をチルト調整と呼ぶ。
アッパーブラケット6は、ロアージャケット19の後側X1の部分を支持し、ステアリング装置1を車体2に連結している。
図2を参照して、アッパーブラケット6は、下向きに開放する溝形であり、軸方向Xから見て上下が逆になった略U字状をなすように、コラムジャケット4を挟んで左右対称に形成されている。詳述すると、アッパーブラケット6は、左右方向Yに薄くコラムジャケット4を挟んで対向する一対の側板22と、一対の側板22のそれぞれの上端部に連結された上下方向Zに薄い連結板23とを一体的に備えている。
一対の側板22において、左右方向Yから見て同じ位置には、チルト溝24が形成されている。チルト溝24は、上下方向Z、厳密には、中心軸5C(図1参照)を中心とした周方向であるチルト方向に延びている。連結板23は、たとえば一対の側板22よりも左右方向Yにおいて両外側へ延びた部分を有しており、当該部分に挿通される図示しないボルトなどによって、アッパーブラケット6全体が車体2(図1参照)に固定されている。
ロアージャケット19の上側Z1の部分には、軸方向Xに延びて上下方向Zにロアージャケット19を貫通するスリット25が形成されている。
ロアージャケット19の後端19Aには、左右方向Yにおいてスリット25の両側に配置された一対の被締付部材26が一体的に設けられている。被締付部材26は、上側Z1に延びており、軸方向Xおよび上下方向Zに広がる略直方体である。
図3は、図1のIII−III線に沿った断面図である。
図3を参照して、一対の被締付部材26のそれぞれには、左右方向Yに被締付部材26を貫通する軸挿通孔26Aが形成されている。一対の被締付部材26の軸挿通孔26Aは、左右方向Yから見て同じ位置にある。一対の被締付部材26の軸挿通孔26Aは、左右方向Yから見て、アッパーブラケット6の一対の側板22のチルト溝24の一部と重なっている。一対の被締付部材26のそれぞれは、左右方向Yに互いに対向する対向面26Bを有している。
ロアージャケット19には、軸方向Xに延びる案内溝27が形成されている。案内溝27には、アッパージャケット18に固定された被案内突起28が挿通されている。案内溝27は、被案内突起28を介してアッパージャケット18の軸方向移動を案内しつつ、ロアージャケット19に対するアッパージャケット18の回転を規制する。また、案内溝27の軸方向Xの端部(図示せず)が被案内突起28と当接することにより、ロアージャケット19からのアッパージャケット18の抜けが防止されている。
締付機構7は、操舵部材10(図1参照)のチルト調整およびテレスコ調整を可能にしたり、チルト調整やテレスコ調整を終えた操舵部材10の位置をロックしたりするための機構である。
締付機構7は、締付軸30と、操作部材31と、リング状のカム32およびカムフォロワ33と、ナット34と、リング状の介在部材35、針状ころ軸受36およびスラストワッシャ37とを含む。
締付軸30は、左右方向Yに延びる棒状であり、中心軸線C1を有する。締付軸30は、左右方向Yから見て軸挿通孔26Aとチルト溝24とが重なる部分に挿通される。締付軸30は、アッパーブラケット6の一対の側板22によって支持されている。締付軸30は、ステアリングシャフト3よりも上側Z1に位置している。
締付軸30の一端である左端部は、アッパーブラケット6の左側Y2の側板22よりも左側Y2に位置している。締付軸30の他端である右端部は、アッパーブラケット6の右側Y1の側板22よりも右側Y1に位置している。
締付軸30の左端部には、締付軸30の他の部分よりも大径な頭部30Aが設けられており、締付軸30の外周面の右端部には、ねじ溝30Bが設けられている。
操作部材31は、たとえば把持可能なレバーである。操作部材31は、締付軸30の頭部30A付近に取り付けられている。締付軸30は、操作部材31の操作に応じて回転する。
締付軸30の左端部は、カム32およびカムフォロワ33に挿通されている。操作部材31と左側Y2の側板22との間には、カム32およびカムフォロワ33が、左側Y2からこの順に並んでいる。
カム32は、締付軸30に対して一体回転可能であるのに対して、カムフォロワ33は、締付軸30に対して相対回転可能かつ左右方向Yに移動可能である。ただし、カムフォロワ33において左側Y2の側板22のチルト溝24に挿通される部分には、二面幅が形成されているので、カムフォロワ33の空転がチルト溝24によって防止されている。
締付軸30のねじ溝30Bには、ナット34が取り付けられている。ナット34と右側Y1の側板22との間には、介在部材35、針状ころ軸受36およびスラストワッシャ37が、左側Y2からこの順に並んでいる。締付軸30は、介在部材35、針状ころ軸受36およびスラストワッシャ37のそれぞれに対して挿通されている。
締付軸30は、アッパーブラケット6の各チルト溝24内で、前述したチルト方向に移動可能である。運転者がチルト調整のために操舵部材10(図1参照)をチルト方向に移動させると、コラムジャケット4全体が、アッパーブラケット6に対し相対的にチルトする。操舵部材10のチルト調整は、締付軸30がチルト溝24内で移動可能な範囲で行われる。
運転者がテレスコ調整やチルト調整をした後に、操作部材31を回動させると、カム32が回転し、カム32およびカムフォロワ33に形成されたカム突起38が互いに乗り上げる。これにより、カムフォロワ33は、締付軸30の軸方向に沿って右側Y1に移動し、左側Y2の側板22に押し付けられる。カムフォロワ33による押し付けによって、一対の側板22は、カムフォロワ33と介在部材35との間で左右方向Yの両側から締め付けられる。
これにより、一対の側板22が左右方向Yの両側からロアージャケット19の被締付部材26を挟持することで各側板22と被締付部材26との間に摩擦力が生じる。当該摩擦力によって、コラムジャケット4の位置がロックされ、操舵部材10(図1参照)がチルト調整後の位置でロックされてチルト方向に移動できなくなる。
また、ロアージャケット19の一対の被締付部材26が側板22によって挟持されることによって、一対の被締付部材26の間隔が狭まる。これにより、ロアージャケット19の内周部が狭くなって、ロアージャケット19が、ロアージャケット19内のアッパージャケット18に締め付けられる。このように、締付機構7は、一対の被締付部材26の間隔を狭めることによりロアージャケット19をアッパージャケット18に締め付ける。
その結果、アッパージャケット18とロアージャケット19との間に摩擦力が生じる。アッパージャケット18とロアージャケット19との間の摩擦によって、アッパージャケット18の位置がロックされ、操舵部材10(図1参照)がテレスコ調整後の位置でロックされて軸方向Xに移動できなくなる。
チルト方向および軸方向Xにおいて操舵部材10(図1参照)の位置が固定されているときのステアリング装置1の状態を「ロック状態」と呼ぶ。
ロック状態のステアリング装置1において、操作部材31を先程とは逆方向へ回動させると、カム32がカムフォロワ33に対して回転し、カムフォロワ33は、締付軸30の軸方向に沿って左側Y2に移動する。すると、カムフォロワ33と介在部材35との間における一対の側板22に対する締め付けが解除され、各側板22と被締付部材26との間の摩擦力や、ロアージャケット19とアッパージャケット18との間の摩擦力が無くなるので、操舵部材10(図1参照)が軸方向Xおよびチルト方向に移動できるようになる。これにより、操舵部材10のテレスコ調整やチルト調整が再び可能となる。
このように、チルト方向および軸方向Xにおいて操舵部材10の位置の固定が解除されているときのステアリング装置1の状態を「解除状態」と呼ぶ。
以下では、ステアリングシャフト3の中心軸線3Cを中心とする径方向には、符号「R」を付す。径方向Rのうち、ステアリングシャフト3から離れる方向を径方向外側R1とし、ステアリングシャフト3の中心軸線3Cへ向かう方向を径方向内側R2とする。
以下では、エネルギー吸収機構8の構成について詳細に説明する。
エネルギー吸収機構8の周辺の概略斜視図である図4を参照して、エネルギー吸収機構8は、一対の固定部材40と、一対の押圧部材41と、エネルギー吸収部材42と、規制部材43と、一対の締結部材44とを含む。なお、図4では、説明の便宜上、規制部材43を二点鎖線で図示し、図4において規制部材43よりも紙面の奥側に位置する各部材を実線で図示している。
図5は、エネルギー吸収部材42および規制部材43の周辺の分解斜視図である。
図5を参照して、各固定部材40は、ブロック状である。一対の固定部材40の下端部は、ロアージャケット19に固定されている。固定部材40は、ロアージャケット19と一体的に形成されていてもよいし、ロアージャケット19とは別体であって後からロアージャケット19に固定されてもよい。一対の固定部材40のそれぞれの上面40Aには、下側Z2に延びるねじ穴40Bが形成されている。
固定部材40は、左右方向Yにおいてスリット25の両側に配置されている。一対の固定部材40は、被締付部材26よりも前側X2に配置されている(図4参照)。詳しくは、一対の固定部材40は、スリット25の前端部25A付近に配置されている。一対の固定部材40は、スリット25よりも前側X2に配置されてもよい。
図4を参照して、一対の押圧部材41のそれぞれは、上下方向Zに薄い板状である。一対の押圧部材41のそれぞれは、各被締付部材26に設けられている。詳しくは、押圧部材41は、一対の被締付部材26のそれぞれの前側X2かつ上側Z1の部分に1つずつ固定されている。押圧部材41は、ロアージャケット19の外周面に上側Z1から対向している。上下方向Zに各押圧部材41と対向するロアージャケット19の外周面の部分のそれぞれには、符号「19B」を付す。
押圧部材41は、上側Z1(径方向外側R1でもある)に僅かに弾性変形可能である。なお、押圧部材41は、ロアージャケット19と一体的に形成されていてもよいし、ロアージャケット19とは別体であってもよい。
図5を参照して、エネルギー吸収部材42は、たとえば板状の金属をプレス加工したものである。エネルギー吸収部材42の全体は、均一な板厚T1を有している。エネルギー吸収部材42は、上下方向Zに薄い板状の一対の固定部50と、一対の固定部50よりも後側X1に配置され上下方向Zに薄い板状の移動部51と、一対の固定部50と移動部51との間に架設された変形部52とを一体的に含む。
一対の固定部50のそれぞれには、固定部50を上下方向Zに貫通する第1貫通孔50Aが形成されている。一対の固定部50の下面は、一対の固定部材40の上面40Aに接している(図4参照)。
一対の変形部52は、左右方向Yに互いに間隔を隔てて配置されている。一対の変形部52のそれぞれは、固定部50から軸方向Xの後側X1へ延びる第1板部55と、下側Z2から第1板部55の後端部に対向する第2板部56と、第1板部55の後端と第2板部56の後端とを連結し、後側X1に膨出する湾曲部57とを含む。
一対の第2板部56の前端部は、左右方向Yに長手の移動部51によって連結されている。
各変形部52の第1板部55および第2板部56によって上下方向Zから挟まれ、かつ、湾曲部57によって後側X1から区画された空間を支持孔58ということにする。支持孔58は、軸方向Xに長手の孔である。
図4を参照して、一対の変形部52の第1板部55の後端部は、上側Z1から見て、一対の押圧部材41と少なくとも部分的に重なっている。各変形部52の第2板部56の下面は、ロアージャケット19の外周面の部分19B(押圧部材41の真下の部分)に接している。
図5を参照して、規制部材43は、たとえば板状の金属をプレス加工したものであり、軸方向Xに長手である。規制部材43全体は、均一な板厚T2を有している。
図4と、エネルギー吸収機構8の周辺を上側Z1から見た図である図6とを参照して、規制部材43は、エネルギー吸収部材42を上側Z1(径方向外側R1でもある)から覆っている。なお、図6では、説明の便宜上、アッパーブラケット6(図2参照)の図示を省略している。
図5を参照して、規制部材43は、操舵部材10(図1参照)側の端部である後端部43Aと、操舵部材10側とは反対側の端部である前端部43Bとを有する。
規制部材43は、一対の第1部分60と、一対の拘束部61と、一対の傾斜部62と、第2部分63とを一体的に含む。
各第1部分60は、上下方向Zに薄い板状である。各第1部分60は、左右方向Yに互いに間隔を隔てて配置されている。一対の第1部分60のそれぞれの下面は、エネルギー吸収部材42の一対の変形部52のそれぞれの第1板部55の上面と接している(図4参照)。
各拘束部61は、上下方向Zに薄い板状である。一対の拘束部61は、規制部材43の前端部43Bに配置されている。各拘束部61は、一対の第1部分60の左右方向Yにおける両外側へ向けて一対の第1部分60のそれぞれから突出している。拘束部61のそれぞれには、拘束部61を上下方向Zに貫通する第2貫通孔61Aが形成されている。
図4を参照して、一対の拘束部61の下面は、一対の固定部50の上面に接している。一対の拘束部61の第2貫通孔61Aは、上側Z1から見て、一対の固定部50の第1貫通孔50Aと1つずつ重なっている。
図5を参照して、各傾斜部62は、一対の第1部分60の左右方向Yにおける両内側へ向けて一対の第1部分60のそれぞれから延びている。各傾斜部62は、左右方向Yに互いに近づくにつれて上側Z1へ向かうように第1部分60に対して傾斜している。
第2部分63は、上下方向Zに薄い板状である。第2部分63は、第1部分60よりも上側Z1に配置されている。第2部分63は、一対の傾斜部62の上端部を連結している。第2部分63は、上側Z1から見て、エネルギー吸収部材42の一対の変形部52の間に配置されている(図4参照)。
図4を参照して、規制部材43の後端部43A、詳しくは第1部分60の後端部の少なくとも一部は、上側Z1から見て、一対の押圧部材41の少なくとも一部と重なっている。また、第1部分60の後端部の少なくとも一部は、エネルギー吸収部材42の一対の変形部52の第1板部55の後端部の少なくとも一部と重なっている。
図6のVII−VII線に沿った断面図を模式的に示した図7に示すように、第1部分60の後端部の少なくとも一部は、押圧部材41と変形部52の第1板部55とによって上下方向Zに挟まれた隙間Sに圧入されている。これにより、隙間Sが上下方向Zに僅か拡げている。詳しくは、ロアージャケット19の外周面の部分19Bと規制部材43の第1部分60との間で、エネルギー吸収部材42の一対の変形部52が上下方向Zに僅かに弾性変形することによって隙間Sが拡げられている。なお、図7では、説明の便宜上、ツースロック機構9の図示を省略している。
このように、規制部材43の第1部分60の後端部を隙間Sに圧入するために、下記の条件を満たしていてもよい。すなわち、押圧部材41の下面と中心軸線3Cとの間の距離L1と、固定部材40の上面40Aと中心軸線3Cとの間の距離L2との差は、エネルギー吸収部材42の変形部52の第1板部55の板厚T1と規制部材43の第1部分60の板厚T2との和よりも小さい。つまり、(L1−L2)<(T1+T2)という関係が成立する。
規制部材43の第1部分60の後端部を隙間Sに圧入されることによって、押圧部材41は、エネルギー吸収部材42の変形部52の第1板部55に向けて、規制部材43の後端部43A(第1部分60の後端部)を上側Z1(径方向外側R1でもある)から押圧している。したがって、上下方向Z(径方向Rでもある)における規制部材43のがたつきを抑制することができ、がたつきによる異音の発生を抑制することもできる。
また、規制部材43の後端部43Aは、押圧部材41によって下側Z2に押圧されているものの、左右方向Yには固定されていない。そのため、押圧部材41がそれぞれ設けられた一対の被締付部材26は、左右方向Yへの移動することが可能である。したがって、締付機構7(図3参照)は、一対の被締付部材26の間隔を円滑に狭めることによって、アッパージャケット18にロアージャケット19を強固に締め付けることができる。
図5を参照して、締結部材44は、たとえばボルトである。締結部材44は、外周にねじ部65Aが形成され上下方向Zに延びる軸部65と、軸部65の上端に配置され軸部65よりも大径の頭部66とを一体的に含む。
図7を参照して、エネルギー吸収部材42の固定部50の第1貫通孔50Aと、規制部材43の拘束部61の第2貫通孔61Aとには、締結部材44の軸部65が挿通されている。ねじ部65Aが形成された軸部65の下端部は、固定部材40のねじ穴40Bに螺合されている。
この状態で、固定部50および拘束部61は、締結部材44の頭部66と固定部材40との間で上下方向Zに挟まれることによって、固定部材40に固定されている。言い換えると、固定部50および拘束部61は、締結部材44によって固定部材40に共締めされている。したがって、エネルギー吸収部材42および規制部材43をロアージャケット19に組み付ける際の工数を削減することができる。
また、規制部材43の前端部43B(厳密には拘束部61)は、固定部材40に固定されているので、規制部材43のがたつきを抑制することができる。
また、固定部材40は、左右方向Yにおいてスリット25の両側(2箇所)に配置されているので、規制部材43のがたつきを一層抑制することができる。
また、固定部材40が一対の被締付部材26よりも前側X2に配置されている。そのため、固定部材40への規制部材43の前端部43Bの固定が、締付機構7による一対の被締付部材26の間隔を狭めることを邪魔することを抑制できる。したがって、締付機構7は、一対の被締付部材26の間隔を円滑に狭めることによって、アッパージャケット18にロアージャケット19を強固に締め付けることができる。
以上のように、図6を参照して、後端部43Aおよび前端部43Bの両方において規制部材43のがたつきが効果的に抑制される。
また、異音の発生を抑制するための別部材を設けることなく、規制部材43のがたつきによる異音の発生を効果的に抑制することができる。
また、押圧部材41によって後端部43Aが押圧されているため、規制部材43をロアージャケット19に組み付けるための部材としては、一対の締結部材44を用いれば済む。そのため、規制部材43をボルトなどによって3箇所以上固定する場合と比較して規制部材43をロアージャケット19に組み付けるための部材のコストを削減することができる。
以下では、ツースロック機構9の構成について詳細に説明する。
ツースロック機構9の周辺の分解斜視図である図8を参照して、ツースロック機構9は、上下方向Zに歯筋が延びる第1歯71Aを有する第1歯形成部材71と、第1歯71Aと噛み合い可能な第2歯72Aを有する第2歯形成部材72とを含む。また、ツースロック機構9は、第2歯形成部材72を支持する支持機構73と、第2歯形成部材72の一部を上下方向Zに案内する案内機構74と、締付軸30の回転に第2歯形成部材72の運動を連動させる連動機構75とを含む。
図9Aは、ツースロック機構9の模式的側面図であって第2歯72Aが第1歯71Aと噛み合った状態を示した図である。図9Bは、図9Aにおいて第2歯72Aと第1歯71Aとの噛み合いが解除された状態を示した図である。
図8および図9Aを参照して、第1歯形成部材71は、軸方向Xに長手に延びる板材を用いて形成されている。
第1歯形成部材71の上面71Bには、軸方向Xに延びる凹溝71Cが形成されている。凹溝71Cを左右方向Yから挟む一対の内壁面は、軸方向Xに延びている。一対の内壁面のそれぞれには、軸方向Xに並ぶ複数の第1歯71Aによって構成される第1歯列71Lが形成されている。一対の第1歯列71Lの第1歯71Aの歯先同士が、左右方向Yに対向している。
第1歯形成部材71は、アッパージャケット18の外周面に溶接などによって固定されている。そのため、第1歯形成部材71は、アッパージャケット18と軸方向Xに一体移動可能である。第1歯形成部材71は、図示しないボルト等によってアッパージャケット18の外周面に固定されていてもよい。また、第1歯形成部材71は、アッパージャケット18と単一の材料で一体的に形成されていてもよい。
第2歯形成部材72は、ブロック状であり、被支持部80と、被支持部80の後側X1に隣接する歯形成部81とを一体的に含む。
被支持部80は、上側Z1から見て、一対の変形部52の間に配置されている。被支持部80は、エネルギー吸収部材42の移動部51の後端部に後側X1から対向する対向面80Aを有する。
歯形成部81は、第1歯形成部材71の凹溝71Cの底面よりも上側Z1で、かつ、締付軸30よりも前側X2に配置されている。歯形成部81の下端には、軸方向Xに並ぶ複数の第2歯72Aによって構成される一対の第2歯列72Lが形成されている。一対の第2歯列72Lは、互いの第2歯72Aの歯先を左右方向Yにおいて歯形成部81の両外側へ向けている。各第2歯列72Lの第2歯72Aは、各第1歯列71Lの第1歯71Aに対して上側Z1から噛み合い可能である。歯形成部81の後端には、後側X1へ向けて突出した係合突起81Aが設けられている。
第2歯72Aと第1歯71Aとが噛み合った状態で、被支持部80および歯形成部81の上端は、規制部材43の第2部分63よりも下側Z2に位置している。
支持機構73は、左右方向Yにおいて第2歯形成部材72の被支持部80の両外側へ突出する一対の支持軸82と、エネルギー吸収部材42の一対の変形部52の支持孔58とにより構成される。
一対の支持軸82のそれぞれは、左右方向Yに延びる略矩形状である。一対の支持軸82は、中心軸線C2を有している。一対の支持軸82は、被支持部80と一体的に設けられている。支持軸82では、対角位置にある一対の角部のそれぞれに凹部82Aが設けられている。
一対の支持軸82は、第2歯形成部材72と別体で設けられていてもよい。この場合、一対の支持軸82は、第2歯形成部材72を左右方向Yに貫通する図示しない孔に挿通されることによって第2歯形成部材72を支持するように構成される。
各支持軸82は、エネルギー吸収部材42の各支持孔58に挿通されており、エネルギー吸収部材42の各変形部52によって支持されている。具体的には、各支持軸82は、各変形部52の第1板部55と第2板部56との間で支持されている。各支持軸82は、各支持孔58内で軸方向Xにスライド可能である。第2歯形成部材72の被支持部80は、一対の支持軸82を介してエネルギー吸収部材42によって支持されている。
一対の支持軸82には、凹部82Aが設けられているので、一対の支持孔58内で傾くことができる(図9B参照)。そのため、支持軸82によって支持された第2歯形成部材72は、中心軸線C2を中心として回転可能である。
案内機構74に関連して、一対の被締付部材26のそれぞれの対向面26Bには、左右方向Yに深い丸孔である支持穴83が形成されている。なお、図8では、説明の便宜上、右側Y1の被締付部材26の支持穴83のみを図示している。
案内機構74は、左右方向Yに延びる棒状の案内軸84と、第2歯形成部材72の歯形成部81に設けられ、上下方向Zに長手の案内孔85とを含む。案内軸84の左右方向Yの両端部は、一対の被締付部材26の支持穴83に挿通されている。これにより、案内軸84は、一対の被締付部材26によって上下方向Zに移動不能に支持されている。
連動機構75は、第2歯72Aが第1歯71Aに噛合するように第2歯形成部材72を支持軸82の中心軸線C2回りに付勢する付勢部材86と、付勢部材86に抗して、第2歯72Aと第1歯71Aとの噛合が解除するように第2歯形成部材72を駆動する解除部材87とを含む。
連動機構75に関連して、右側Y1の被締付部材26の対向面26Bには、左右方向Yに深い係止穴88が形成されている。
付勢部材86は、たとえば、ねじりばねである。付勢部材86は、右側Y1の被締付部材26に設けられた係止穴88に係止された第1端部91と、第2歯形成部材72の歯形成部81を下側Z2に付勢する第2端部92と、第1端部91と第2端部92との間で締付軸30に巻き付けられたコイル部93とを含む。
解除部材87は、環状の本体94と、本体94の外周から突出する解除突起94Aとを含む。
本体94の内周面には、図示しない雌スプラインが形成されている。締付軸30の外周に形成された図示しない雄スプラインとスプライン嵌合している。これにより、解除部材87は、締付軸30と一体回転可能である。
解除突起94Aは、下側Z2から第2歯形成部材72の歯形成部81の係合突起81Aに対向している。
以下では、ツースロック機構9の動作について説明する。
図9Aを参照して、ステアリング装置1の状態がロック状態であるときは、第2歯形成部材72の歯形成部81が付勢部材86の第2端部92によって下側Z2に付勢されることによって、第2歯形成部材72の第2歯72Aと第1歯形成部材71の第1歯71Aとが噛み合っている。
ステアリング装置1がロック状態から解除状態に変化するように操作部材31を回転させると、解除部材87が締付軸30と一体回転し、解除部材87の解除突起94Aが上側Z1へ移動する。解除突起94Aは、上側Z1へ移動することによって、係合突起81Aと係合する。
操作部材31を先程と同じ方向にさらに回転させると、解除突起94Aが付勢部材86に抗して係合突起81Aを押し上げる。このとき、案内軸84が歯形成部81の案内孔85内で下側Z2に相対移動することによって、歯形成部81は、上側Z1に案内される。これにより、第2歯72Aが上側Z1へ移動し、第2歯72Aと第1歯71Aとの噛み合いが解除される(図9B参照)。
このように、解除状態では、ツースロック機構9によるロアージャケット19に対するアッパージャケット18の軸方向Xの位置の固定が解除される。
図9Bを参照して、逆に、解除状態からロック状態に変化するように操作部材31を回転させると、解除部材87が締付軸30と一体回転し、解除部材87の解除突起94Aが下側Z2へ移動する。係合突起81Aを有する第2歯形成部材72の歯形成部81は、付勢部材86によって付勢されているため、解除突起94Aの下側Z2への移動に伴って下側Z2へ移動する。このとき、案内軸84が歯形成部81の案内孔85内で上側Z1に相対移動することによって、歯形成部81は、下側Z2に案内される。これにより、第2歯72Aが下側Z2へ移動し、第2歯72Aと第1歯71Aとが噛み合う。
このように、ロック状態では、ツースロック機構9によるロアージャケット19に対するアッパージャケット18の軸方向Xの位置のロックが達成される(図9A参照)。
以下では、車両衝突時に運転者が操舵部材10(図1参照)に衝突することによって発生する二次衝突時のステアリング装置1の動作について説明する。
図10Aは、図6のX−X線に沿う断面図を模式的に示した図である。図10Bは、図10Aにおいて二次衝突直後の状態を示した図である。図10Cは、図10Bよりもさらに後の状態を示した図である。
図1を参照して、二次衝突が発生すると、二次衝突時の衝撃が操舵部材10およびステアリングシャフト3を介してアッパージャケット18に伝達される。そのため、ロアージャケット19に対してアッパージャケット18が前側X2へ移動しようとする。ここで、図10Aを参照して、ロック状態では、第1歯71Aと第2歯72Aとが噛み合っているので、アッパージャケット18に固定された第1歯71Aから第2歯72Aを介して歯形成部81に二次衝突の衝撃が伝達される。この衝撃が第2歯形成部材72に設けられた案内孔85に挿通された案内軸84に伝達されることによって、案内軸84が破断される。
案内軸84が破断されると、第2歯形成部材72は、第2歯72Aを第1歯形成部材71の第1歯71Aに噛合させた状態でロアージャケット19の一対の被締付部材26から離脱する。これにより、ステアリングシャフト3が収縮すると同時に、アッパージャケット18が、ロアージャケット19に対して前側X2へ移動する。
一対の被締付部材26から離脱した第2歯形成部材72は、アッパージャケット18とともに前側X2へ移動する。このとき、第2歯形成部材72は、一対の変形部52の間を通り、図10Bに示すように、エネルギー吸収部材42の移動部51と当接する。詳しくは、第2歯形成部材72の被支持部80の対向面80Aが、移動部51の後端面と当接する。
このように、第2歯形成部材72は、二次衝突時にアッパージャケット18とともに前側X2へ移動する移動部材でもある。なお、図10Bおよび図10Cでは、二次衝突により破断した案内軸84の図示を省略している。
被支持部80の対向面80Aと移動部51の後端面が当接した後、エネルギー吸収部材42が図10Bに示す状態から図10Cに示す状態に変化するように、エネルギー吸収部材42の移動部51は、前側X2に移動する。詳しくは、移動部51は、アッパージャケット18とともに移動する第2歯形成部材72によって押されて前側X2に移動する。
一方、エネルギー吸収部材42の固定部50は、ロアージャケット19に固定された固定部材40に固定されており、変形部52は、固定部50と移動部51との間に架設されている。そのため、エネルギー吸収部材42は、移動部51の移動に伴って前側X2へ変形する。詳しくは、一対の湾曲部57を前側X2へ移動させるように一対の変形部52が変形する。そのため、二次衝突時によって発生するエネルギーがエネルギー吸収部材42によって吸収される。
ここで、前述したように、エネルギー吸収部材42は、上側Z1(径方向外側R1でもある)から規制部材43により覆っている。そのため、二次衝突時に一対の変形部52が変形する際の一対の変形部52の第1板部55の変形が、規制部材43によって上側Z1(径方向外側R1でもある)から規制される。
したがって、二次衝突時に、上側Z1(径方向外側R1でもある)へのエネルギー吸収部材42の一対の変形部52の第1板部55の浮き上がりが抑制されるので、エネルギー吸収部材42の一対の変形部52を安定して変形させることができる。ひいては、二次衝突時のエネルギーを吸収するために発生させる荷重(衝撃吸収荷重)を安定させることができるので、運転者の保護を図ることができる。規制部材43は、エネルギー吸収部材42の第1板部55が軸方向Xに長尺であるほど、第1板部55の浮き上がりを効果的に抑制することができる。
また、エネルギー吸収部材42の形状の板厚T1や一対の変形部52の幅などを変更することで衝撃吸収荷重を調整することができる。
また、エネルギー吸収部材42は、規制部材43によって上側Z1から覆われているため、一対の変形部52は、変形するためのスペースが制限されている。そのため、衝撃吸収荷重が極端に低下したり極端に増加したりすることを防ぐことができる。
なお、前述したように、第2歯72Aと第1歯71Aとが噛み合った状態で、被支持部80および歯形成部81の上端は、規制部材43の第2部分63よりも下側Z2に位置している。また、第2部分63および被支持部80は、上側Z1から見て、エネルギー吸収部材42の一対の変形部52の間に配置されている。そのため、規制部材43は、二次衝突時に前側X2へ移動する部材(特に第2歯形成部材72)との衝突を避けることができる。
この発明は、以上に説明した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の範囲内において種々の変更が可能である。
たとえば、規制部材43の後端部43Aは、一対の被締付部材26よりも後側X1に配置されていてもよい。規制部材43が一対の被締付部材26と左右方向Yに間隔を隔てて配置されていれば、この場合であっても、締付機構7は、一対の被締付部材26の間を狭めることが可能である。
また、規制部材43と押圧部材41との間には、規制部材43をエネルギー吸収部材42に向けて付勢するバネ等の弾性部材が介在されていてもよい。
また、規制部材43は、必ずしも板状の金属をプレス加工したものでなくてもよく、少なくとも一対の第1部分60の後端部において押圧部材41によって押圧される部分が板厚T2に相当する厚みを有していればよい。
また、エネルギー吸収部材42および規制部材43は、溶接などによって固定部材40に固定されていてもよい。また、エネルギー吸収部材42および規制部材43は、リベットやかしめによって固定部材40に固定されていてもよい。
また、エネルギー吸収部材42は、固定部材40とは別の部材を介してロアージャケット19に固定されていてもよい。
また、第2歯形成部材72は、第2歯72Aと第1歯71Aとの噛み合いと、第2歯72Aと第1歯71Aとの噛み合いの解除とを達成し、かつ、二次衝突時に離脱可能に構成されていればよい。具体的には、各被締付部材26が、各支持軸82を中心軸線C2回りに回転可能に支持しており、第2歯形成部材72が、二次衝突時に支持軸82が破断されることによって一対の被締付部材26から離脱するように構成されていてもよい。
また、移動部51は、二次衝突前の状態で予め第2歯形成部材72と連結されていてもよい。
また、第2歯形成部材72の移動を阻害したり、変形部52の変形を不安定にさせたりすることがなければ、第1板部55間は適宜連結されていてもよい。
また、第1歯71Aおよび第2歯72Aは、上下方向Zに歯先を向け、左右方向Yに歯筋が延びる構成であってもよい。
また、ツースロック機構9を必ずしも設けなくてもよく、この場合、二次衝突時に移動部51をアッパージャケット18に同行させる構成を備えていればよい。
また、ステアリング装置1は、操作部材31が固定された締付軸30がアッパージャケット18よりも上側Z1に配置された、いわゆるレバー上置きタイプのステアリング装置であるが、操作部材31がアッパージャケット18よりも下側Z2に配置された、いわゆるレバー下置きタイプのステアリング装置にも本発明を適用することができる。
また、ステアリング装置1は、操舵部材10の操舵が補助されないマニュアルタイプのステアリング装置に限らず、電動モータの動力をステアリングシャフト3に与えて操舵部材10の操舵を補助するコラムアシストタイプの電動パワーステアリング装置(C−EPS)でもよい。
1…ステアリング装置、2…車体、3…ステアリングシャフト、3A…一端、4…コラムジャケット、6…アッパーブラケット、7…締付機構、10…操舵部材、18…アッパージャケット、19…ロアージャケット、25…スリット、26…被締付部材、40…固定部材、41…押圧部材、42…エネルギー吸収部材、43…規制部材、43A…後端部、43B…前端部、44…締結部材、50…固定部、51…移動部、X…軸方向、X1…後側、X2…前側、R…径方向、R1…外側

Claims (4)

  1. 一端に操舵部材が連結可能であり、軸方向に伸縮可能なステアリングシャフトと、
    前記軸方向における前記操舵部材側で前記ステアリングシャフトを保持するアッパージャケットと、前記軸方向における前記操舵部材側とは反対側で前記ステアリングシャフトを保持するロアージャケットとを有し、前記ロアージャケットに対する前記アッパージャケットの前記軸方向への移動によって前記ステアリングシャフトとともに前記軸方向に伸縮可能なコラムジャケットと、
    前記ロアージャケットを支持し、車体に固定されるブラケットと、
    前記ロアージャケットに固定された固定部材と、
    前記固定部材に固定された固定部と、車両衝突時に前記アッパージャケットとともに前記反対側へ移動する移動部と、を含み、車両衝突時に発生するエネルギーを吸収するために前記移動部の移動に伴って前記反対側へ変形可能なエネルギー吸収部材と、
    前記エネルギー吸収部材を前記ステアリングシャフトの径方向の外側から覆い、車両衝突時に前記径方向への前記エネルギー吸収部材の変形を前記径方向の外側から規制する規制部材と、を含むことを特徴とする、ステアリング装置。
  2. 前記ロアージャケットに形成された前記軸方向に延びるスリットの両側に配置され、前記ロアージャケットと一体的に設けられた一対の被締付部材と、
    前記一対の被締付部材の間隔を狭めることにより前記アッパージャケットに前記ロアージャケットを締め付ける締付機構と、を含み、
    前記規制部材の前記反対側の端部は、前記一対の被締付部材よりも前記反対側に配置された前記固定部材に固定されていることを特徴とする、請求項1記載のステアリング装置。
  3. 前記被締付部材に設けられ、前記エネルギー吸収部材に対して前記径方向の外側から前記規制部材の前記操舵部材側の端部を押圧する押圧部材を含む、請求項2記載のステアリング装置。
  4. 前記規制部材の前記反対側の端部と、前記エネルギー吸収部材の前記固定部とを前記固定部材に共締めする締結部材を含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のステアリング装置。
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