JP2016209214A - 眼科用レーザ手術装置および眼科手術制御プログラム - Google Patents

眼科用レーザ手術装置および眼科手術制御プログラム Download PDF

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Abstract

【課題】患者眼に出射するレーザパルスの繰り返し周波数を適切に変更することが可能な眼科用レーザ手術装置および眼科手術制御プログラムを提供する。【解決手段】眼科用レーザ手術装置は、モードロックレーザ光源、増幅器、第1変調器、第2変調器、および制御部を備える。モードロックレーザ光源は、シードレーザパルスを繰り返し発生させる。増幅器は、モードロックレーザ光源が発生させたレーザパルスを増幅させる。第1変調器は、増幅器によって増幅されていないレーザパルスを変調させる。第2変調器は、増幅器によって増幅されたレーザパルスを変調させる。制御部は、組織に出射されるレーザパルスの繰り返し周波数を閾値未満の範囲内で変更する場合に、繰り返し周波数を第1変調器によって閾値以上の範囲内で変更しつつ、第2変調器によって閾値未満に減少させる。【選択図】図4

Description

本開示は、複数のレーザパルスを患者眼の組織内に集光させて患者眼を処置するために用いられる眼科用レーザ手術装置および眼科手術制御プログラムに関する。
従来、患者眼の組織における複数のターゲット位置の各々にレーザパルスを集光させて組織を処置する技術が知られている。また、患者眼に向けて出射されるレーザパルスの繰り返し周波数を、手術中に変更する技術も知られている。
例えば、特許文献1が開示するレーザ・エンジンは、発振器、増幅器、および偏光子を備える。発振器は、モード固定された動作によって、高い繰り返し周波数で種パルスを出力する。偏光子は、複数のパルスのうちの単一のパルスを増幅器内に捕捉する。捕捉された単一のパルスのみが増幅器によって増幅される。以上の構成によって、レーザ・エンジンから出射されるレーザパルスの繰り返し周波数が変更される。
特表2013−520846号公報
発振器が連続して発生させる複数のレーザパルスのうち、N番目毎にレーザパルスを増幅器で増幅させることで、繰り返し周波数はN分の1の割合に減少する。つまり、N個のレーザパルスを1周期とし、1周期毎に(N−1)個のレーザパルスを間引くことで、繰り返し周波数は、発振器が発生させるレーザパルスの繰り返し周波数のN分の1となる。1周期に含めるレーザパルスの数Nを多くする程(つまり、増幅させずに間引くレーザパルスの割合を多くする程)、繰り返し周波数が低下する。
多くのレーザパルスを間引いて繰り返し周波数を低下させる程、増幅される各々のレーザパルスのエネルギーが大きくなる。増幅されるレーザパルスのエネルギーが大きくなり過ぎると、増幅器に損傷が生じ得る。増幅器の損傷を防ぐために、繰り返し周波数を低下させつつ増幅の出力(つまり、励起パワー)を低下させると、増幅器における分散および熱影響等のバランスが変化する。その結果、レーザパルスの品質(例えば、ビームプロファイルおよびパルス幅等)が不安定になり易い。従って、増幅させずに間引くレーザパルスの割合を変更することで繰り返し周波数を変更する方法では、繰り返し周波数を十分に低下させることが困難な場合が多い。
増幅器によって増幅されたレーザパルスをさらに間引くことで、繰り返し周波数を十分に低下させることも考えられる。しかし、この場合、繰り返し周波数は、増幅器から出射されたレーザパルスの繰り返し周波数の約数に変更できるのみである。従って、この方法では、繰り返し周波数を細かく変更することは困難である。
本開示の典型的な目的は、患者眼に出射するレーザパルスの繰り返し周波数を適切に変更することが可能な眼科用レーザ手術装置および眼科手術制御プログラムを提供することである。
本開示における典型的な実施形態が提供する眼科用レーザ手術装置は、複数のレーザパルスを患者眼の組織内に集光させることで前記組織を処置する眼科用レーザ手術装置であって、シードレーザパルスを繰り返し発生させるモードロックレーザ光源と、前記モードロックレーザ光源が発生させたレーザパルスを増幅させる増幅器と、前記モードロックレーザ光源から出射され、且つ前記増幅器によって増幅されていないレーザパルスを変調させる第1変調器と、レーザパルスの光路のうち前記増幅器よりも下流側に設けられ、前記増幅器によって増幅されたレーザパルスを変調させる第2変調器と、前記眼科用レーザ手術装置の動作を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記組織に出射させるレーザパルスの繰り返し周波数である出射周波数を、閾値未満の範囲内の少なくとも一部で変更する場合に、前記増幅器によって増幅される前のレーザパルスの繰り返し周波数である増幅前周波数を前記第1変調器によって前記閾値以上の範囲内で変更しつつ、前記増幅器によって増幅された後のレーザパルスの繰り返し周波数である増幅後周波数を前記第2変調器によって前記閾値未満に減少させる。
本開示における典型的な実施形態が提供する眼科手術制御プログラムは、眼科用レーザ手術装置を制御するための眼科手術制御プログラムであって、前記眼科用レーザ手術装置は、シードレーザパルスを繰り返し発生させるモードロックレーザ光源と、前記モードロックレーザ光源が発生させたレーザパルスを増幅させる増幅器と、前記モードロックレーザ光源から出射され、且つ前記増幅器によって増幅されていないレーザパルスを変調させる第1変調器と、レーザパルスの光路のうち前記増幅器よりも下流側に設けられ、前記増幅器によって増幅されたレーザパルスを変調させる第2変調器と、を備え、前記眼科手術制御プログラムが前記眼科用レーザ手術装置のプロセッサによって実行されることで、前記組織に出射させるレーザパルスの繰り返し周波数である出射周波数を閾値未満の範囲内の少なくとも一部で変更する場合に、前記増幅器によって増幅される前のレーザパルスの繰り返し周波数である増幅前周波数を前記第1変調器によって前記閾値以上の範囲内で変更しつつ、前記増幅器によって増幅された後のレーザパルスの繰り返し周波数である増幅後周波数を前記第2変調器によって前記閾値未満に減少させる出射周波数変更ステップを前記眼科用レーザ手術装置に実行させる
本開示に係る眼科用レーザ手術装置および眼科手術制御プログラムによると、患者眼に出射するレーザパルスの繰り返し周波数が適切に変更される。
眼科用レーザ手術装置1の全体構成を示す図である。 レーザ装置2の構成を示す図である。 眼科用レーザ手術装置1が実行する照射制御処理のフローチャートである。 増幅前周波数、増幅後周波数、および出射周波数の関係の一例を示す図である。
以下、本開示における典型的な実施形態について説明する。本実施形態では、患者眼Eの組織(例えば、角膜および水晶体等)を処置することが可能な眼科用レーザ手術装置1を例示する。なお、「処置」とは、患者眼Eの組織の切断、破砕等を行うことを示す。
<全体構成>
図1を参照して、本実施形態の眼科用レーザ手術装置1の全体構成について、レーザ装置2側(つまり、レーザパルスの光路の上流側)から、患者眼E側(つまり、レーザパルスの光路の下流側)に順に説明する。
レーザ装置2は、レーザパルスを出射する。本実施形態では、レーザ装置2によって出射されたレーザパルスが患者眼Eの組織内で集光されると、集光位置(スポット)でプラズマが発生し、組織の切断、破砕等が行われる。以上の現象は、光破壊(photodisruption)と言われる場合もある。レーザ装置2には、例えば、フェムト秒からピコ秒オーダーのパルス幅のレーザパルスを出射するデバイスを使用することができる。以下では、レーザ装置2によって出射されるレーザパルスの光軸に沿う方向をZ方向とする。Z方向に交差(本実施形態では垂直に交差)する方向のうちの1つをX方向とする。Z方向およびX方向に共に交差(本実施形態では垂直に交差)する方向をY方向とする。レーザ装置2の詳細については、図2を参照して後述する。
第2変調器3は、レーザパルスを変調させる。第2変調器3の機能、配置位置等の詳細については、図2を参照して後述する。
エイミング光源5は、レーザパルスが照射される位置を示すエイミング光を出射する。本実施形態では、可視のレーザ光を出射する光源が、エイミング光源5として用いられる。なお、エイミング光源5は省略してもよい。
ダイクロイックミラー6は、レーザパルスの光路(以下、単に「光路」という場合もある)に設けられている。ダイクロイックミラー6は、レーザ装置2から出射されるレーザパルスと、エイミング光源5から出射されるエイミング光を合波する。
走査部8は、レーザ装置2から出射される各々のレーザパルスの集光位置を走査することで、対物レンズ10(詳細は後述する)によって集光されるレーザパルスの集光位置(スポット)を走査させる。本実施形態の走査部8は、XY走査部およびZ走査部(図示せず)を備える。XY走査部は、光軸に交差するXY方向にレーザパルスを走査する。例えば、XY走査部には、レーザパルスをX方向に走査するX偏向デバイスと、X偏向デバイスによって走査されたレーザパルスをさらにY方向に走査するY偏向デバイスを用いてもよい。この場合、X偏向デバイスおよびY偏向デバイスには、ガルバノミラー、ポリゴンミラー、音響光学変調器等のデバイスの少なくともいずれかを採用してもよい。Z走査部は、光軸に沿うZ方向にレーザパルスの集光位置を走査する。Z走査部は、例えば、光学部材を光軸に沿って移動させることで集光位置を走査してもよい。なお、Z走査部は、後述する対物レンズ10を光軸に沿って移動させることで、集光位置をZ方向に走査してもよい。
対物レンズ10は、走査部8よりも光路の下流側に設けられている。対物レンズ10を通過したレーザパルスは、眼球インターフェース11を経て患者眼Eの組織に集光される。
眼球インターフェース11は、患者眼Eに接続されることで患者眼Eを固定する。眼球インターフェース11の構成には種々の構成(例えば、液浸インターフェース、コンタクトレンズ等)を採用できる。なお、眼球インターフェース11を省略することも可能である。
ダイクロイックミラー13は、光路における走査部8と対物レンズ10の間に設けられている。本実施形態のダイクロイックミラー13は、レーザ装置2から出射されるレーザパルスの大部分、およびエイミング光源5から出射されるエイミング光の大部分を反射し、且つ、撮影部14(後述する)による撮影に用いられる光の大部分を透過する。
撮影部14は、患者眼Eを撮影する。撮影部14には、例えば、患者眼Eの正面画像を撮影する正面画像撮影部、患者眼Eの組織の断面画像を撮影する断面画像撮影部等の少なくともいずれかを採用してもよい。
手術装置制御部20は、CPU21、ROM22、RAM23、および不揮発性メモリ(図示せず)等を備える。CPU21は、眼科用レーザ手術装置1の各種制御(例えば、レーザ装置2、第2変調器3、エイミング光源5、走査部8、および撮影部14等の制御)を司る。ROM22には、眼科用レーザ手術装置1の動作を制御するための各種プログラム(例えば、後述する照射制御処理を実行するための眼科手術制御プログラム等)、および初期値等が記憶されている。RAM23は、各種情報を一時的に記憶する。不揮発性メモリは、電源の供給が遮断されても記憶内容を保持できる非一過性の記憶媒体であり、情報の記憶および消去を行うことが可能である。眼科手術制御プログラム等は、不揮発性メモリに記憶されていてもよい。
<レーザ装置の構成>
図2を参照して、レーザ装置2の概略構成について説明する。図2に示すように、本実施形態のレーザ装置2は、モードロックレーザ光源31、増幅部33、およびレーザ装置制御部40を備える。
モードロックレーザ光源31は、シードレーザパルス(種光)を繰り返し発生させる。詳細には、本実施形態のモードロックレーザ光源31は、モード同期(モードロック)法によってシードレーザパルスを発生させる。モード同期法とは、多モード発振しているレーザの縦モード間の位相を固定することによって、繰り返し周波数が一定のレーザパルス列を発生させる方法である。モード同期法によると、他の方式(例えば利得スイッチング法)によってレーザパルス列を発生させる場合に比べて、パルス幅が短いレーザパルスを容易に発生させることができる。ただし、モード同期法によって発生されたシードレーザパルスの繰り返し周波数は、共振器長によって定まる。従って、モードロックレーザ光源31は、発生させるシードレーザパルスの繰り返し周波数を変化させることは困難である。従って、本実施形態の眼科用レーザ手術装置1は、以下説明するように、第1変調器36および第2変調器3を用いて、患者眼Eの組織に出射させるレーザパルスの繰り返し周波数(以下、「出射周波数」という)を変化させる。
増幅部33は、モードロックレーザ光源31が発生させたレーザパルスを増幅させる。一例として、本実施形態では、短パルスのレーザを増幅させても損傷等が生じ難いチャープパルス増幅部(Chirped Pulse Amplification)が増幅部33に用いられている。ただし、他の方式の増幅器を使用することも可能である。本実施形態の増幅部33は、伸張器34、増幅器35、および圧縮器39を備える。
伸張器34は、モードロックレーザ光源31が発生させたシードレーザパルスのハルス幅を伸張させる。本実施形態の伸張器34は、スペクトル幅を有するレーザパルスに対して、周波数に応じて異なる分散を与えることによって、パルス幅を伸張させる。伸張器34には、回折格子、体積ブラッグ格子、チャープミラー等の少なくともいずれかが用いられてもよい。
増幅器35は、伸張器34によって伸張されたレーザパルスを増幅させる。増幅器35が増幅させるレーザパルスは伸張されているので、伸張されていない状態に比べてピークパワーが低い。従って、増幅されたレーザパルスによって増幅器35内の光学素子の損傷等が生じる可能性は、伸張されていないレーザパルスを増幅させる場合に比べて低くなる。本実施形態の増幅器35は再生増幅器であり、第1変調器36、増幅媒質37、およびポンピングデバイス38を備える。
第1変調器36は、モードロックレーザ光源31から出射されて未だ増幅器35によって増幅されていないレーザパルスを変調させる。詳細には、本実施形態の第1変調器36は、伸張器34によって伸張されたレーザパルスを、増幅媒質37によって増幅される前に変調させる。一般的に、レーザを変調する変調器は、レーザを偏向させる機能、および、レーザのエネルギーを調整する機能等を有する。本実施形態の第1変調器36は、モードロックレーザ光源31から繰り返し出射されるレーザパルス列を周期的に間引く(ピッキングする)ことで、増幅後の繰り返し周波数を、増幅前の繰り返し周波数から変更する。一例として、本実施形態のレーザ装置2は、モードロックレーザ光源31が連続して発生させるN個のレーザパルスを1周期とし、1周期毎に(N−1)個のレーザパルスを増幅媒質37とは異なる方向(例えば、図示しないビームダンプに向かう方向)に導く。その結果、1周期に含まれるN個のレーザパルスのうちの1つのみが増幅媒質37で増幅される。
増幅器35によって増幅される前のレーザパルスの繰り返し周波数(つまり、第1変調器36に入射するレーザパルスの繰り返し周波数)を、増幅前周波数と定義する。増幅器35によって増幅された後のレーザパルスの繰り返し周波数を、増幅後周波数と定義する。本実施形態では、N個のレーザパルスが到来する毎に1個のレーザパルスが増幅媒質37によって増幅されることで、増幅後周波数は、増幅前周波数の1/Nに減少する(つまり、「増幅後周波数=増幅前周波数/N」となる)。
変調器には複数の種類がある。一例として、本実施形態の第1変調器36は、電気光学変調器(ポッケルスセル)と薄膜偏光子を備える。電気光学変調器は、レーザパルスの偏光極性を変調させることで、レーザパルスの状態を、薄膜偏光子を透過する状態と、薄膜偏光子によって反射される状態とに切り換える。その結果、増幅されるレーザパルスと、増幅されないレーザパルスとが、第1変調器36によって選択される。また、本実施形態の第1変調器36は、増幅媒質37によるレーザパルスの増幅を終了させて、増幅済みのレーザパルスを圧縮器39に導く光スイッチとしての機能も有する。
なお、第1変調器36の構成および配置位置を変更することも可能である。例えば、伸張器34よりも光路の上流側(モードロックレーザ光源31と伸張器34の間)に第1変調器36が配置されてもよい。また、電気光学変調器以外の変調器(例えば、音響光学変調器(AOM)、MEMS、ガルバノミラー、ポリゴンミラー等)が第1変調器36として使用されてもよい。
増幅媒質37は、ポンピングデバイス(例えばポンピング光源)38からエネルギーを供給されると共に、供給されたエネルギーによってレーザパルスのエネルギーを増幅させる。本実施形態では、少なくとも2つの共振ミラー(図示せず)とポンピングデバイス38が、増幅器35の内部に設けられている。増幅媒質37は、複数の共振ミラーによって反射されるレーザパルスの光路上に設けられており、共振ミラー間を往復するレーザパルスの振幅を増加させる。
レーザ装置2は、ポンピングデバイス38に供給するエネルギー(電力)を設定することで、レーザパルスの増幅出力(励起パワー、増幅量)を設定する。なお、レーザ装置2は、ポンピングデバイス38に供給する電力を変更することで、レーザパルスの増幅出力を変更することも可能である。しかし、レーザパルスを繰り返し出射している間に増幅出力を変化させると、種々の影響(例えば、増幅器35における分散の変化、熱影響の変化等)が生じ得る。その結果、例えば、組織に照射されるレーザパルスの性質が不安定となり、レーザ手術の精度が低下する場合等が有りうる。よって、本実施形態では、複数のレーザパルスを用いて一連のレーザ手術が行われている間は、増幅出力は一定とされる(詳細は後述する)。
圧縮器39は、増幅器35によって増幅されたレーザパルスのパルス幅を圧縮させる。本実施形態では、伸張器34によって与えられた分散と逆の分散が周波数に応じて与えられることで、レーザパルスが圧縮される。圧縮器39には、回折格子、体積ブラッグ格子、チャープミラー、プリズムペア等の少なくともいずれかが用いられてもよい。
第2変調器3は、レーザパルスの光路のうち増幅器35よりも下流側に位置する。本実施形態では、第2変調器3は、レーザ装置2の外部に設けられている。しかし、第2変調器3がレーザ装置2の内部に組み込まれていてもよい。第2変調器3は、増幅器35によって増幅されたレーザパルスを変調する。詳細には、第2変調器3は、増幅器35によって増幅されたレーザパルス列を周期的に間引く(ピッキングする)ことで、増幅後周波数を減少させる。一例として、第2変調器3は、周期的に選択したレーザパルスをビームダンプ(図示せず)に導き、その他のレーザパルスを患者眼Eの組織に出射することで、増幅されたレーザパルスの繰り返し周波数を変更する。例えば、第2変調器3は、M個のレーザパルスが到来する毎に1個のレーザパルスを組織に出射させることで、組織に出射されるレーザパルスの周波数(出射周波数)を、増幅後周波数の1/Mに減少させることができる(つまり、「出射周波数=増幅後周波数/M」となる)。
また、第2変調器3は、増幅器35によって増幅されたレーザパルスを変調することで、レーザパルスのエネルギーを減衰させることもできる。つまり、本実施形態の第2変調器3は、レーザパルスのエネルギーを減衰させることが可能な減衰器も兼ねる。なお、第2変調器3とは別に減衰器を設けても良いことは言うまでもない。
第2変調器3にも、第1変調器36と同様に種々のデバイスを用いることができる。一例として、本実施形態の第2変調器3には、レーザパルスの偏向およびエネルギーの減衰が共に可能な音響光学変調器(AOM)が採用されている。しかし、前述したように、ポッケルスセル等の他の変調器が第2変調器3に採用されてもよい。
レーザ装置制御部40は、レーザ装置2によるレーザパルスの出射を制御する。詳細には、本実施形態のレーザ装置制御部40は、モードロックレーザ光源31、伸張器34、第1変調器36、ポンピングデバイス38、および圧縮器39に電気的に接続されると共に、眼科用レーザ手術装置1の手術装置制御部20と信号の送受信を行う。レーザ装置制御部40は、手術装置制御部20と協同して患者眼Eへのレーザパルスの出射を制御する。例えば、レーザ装置制御部40は、繰り返し周波数を指定する信号を手術装置制御部20から受信すると、信号によって指定された繰り返し周波数でレーザパルスをレーザ装置2から出射させる。また、レーザ装置制御部40は、レーザパルスのエネルギーを指定する信号を手術装置制御部20から受信すると、信号によって指定されたエネルギーのレーザパルスをレーザ装置2から出射するように、増幅部35等を制御する。
レーザ装置制御部40は、CPU41、ROM42、RAM43、および不揮発性メモリ(図示せず)等を備える。CPU41は、レーザ装置2の各種制御を司る。ROM42には、レーザ装置2の動作を制御するための各種プログラム、および初期値等が記憶されている。RAM43は、各種情報を一時的に記憶する。不揮発性メモリは、プログラム等の各種情報を記憶し、且つ消去することができる非一過性の記憶媒体である。
<照射制御処理>
図3および図4を参照して、本実施形態の眼科用レーザ手術装置1が実行する照射制御処理について説明する。本実施形態の眼科用レーザ手術装置1は、照射制御処理を実行することで、種々の条件に応じた適切な繰り返し周波数でレーザパルスを患者眼Eの組織に照射することができる。
集光位置(スポット)の走査速度は、走査部8の性能等の影響で変化する場合がある。例えば、走査方向を反転させる場合には、直線に沿って集光位置を走査させている場合に比べて走査速度は低下し得る。また、螺旋に沿って集光位置を走査させる場合、螺旋の中心部分における走査速度は、螺旋の外周部分における走査速度に比べて低くなり易い。走査速度が変化する前後でレーザパルスの出射周波数が同一であると、隣接する集光位置間の間隔が一定とならなくなり、処置の品質が低下する可能性がある。本実施形態の眼科用レーザ手術装置1は、組織における集光位置の走査速度に応じてレーザパルスの出射周波数を変更する。その結果、隣接する集光位置同士の間隔が均一になり易くなり、処置の品質低下が抑制される。
詳細は後述するが、本実施形態の眼科用レーザ手術装置1は、走査速度のリニアな変化に対し、レーザパルスの出射周波数を細かく変更することが可能である。従って、眼科用レーザ手術装置1は、出射周波数を段階的に荒く変更する場合(例えば、第2変調器3のみによって出射周波数を変更する場合等)に比べて、容易且つ適切に患者眼Eを処置することができる。
また、レーザパルスを集光させる組織の部位等に応じて、1つの集光位置において破砕される組織の大きさ(換言すると、集光位置で発生するバブルの大きさ)が変化する可能性もある。詳細な説明は省略するが、眼科用レーザ手術装置1は、破砕される組織の大きさの変化に応じて出射周波数を変化させることで、処置の品質低下を抑制することも可能である。
図3に示す照射制御処理は、レーザパルスによる患者眼Eの処置を開始する指示が入力された場合に、手術装置制御部20のCPU(プロセッサ)21によって実行される。CPU21は、メモリに記憶された眼科手術制御プログラムに従って、図3に示す照射制御処理を実行する。なお、詳細は後述するが、図3に例示するステップの少なくとも一部が他のプロセッサ(例えば、レーザ装置制御部40のCPU41)によって実行されてもよい。
まず、CPU21は、予め作成された駆動データに従って、走査部8の駆動を開始する(S1)。CPU21は、集光位置の走査速度を取得する(S2)。本実施形態では、集光位置の走査速度は、患者眼Eの組織における三次元上の集光位置の走査速度(移動速度)である。次いで、CPU21は、S2で取得した走査速度に比例するように、レーザ装置2に出射させるレーザパルスの出射周波数を決定する(S3)。本実施形態のレーザ装置2は、出射周波数を細かく変更することができる。よって、CPU21は、走査速度の変化に応じて出射周波数を細かく変更することで、より適切に複数の集光位置を配置することができる。次いで、CPU21は、S3で決定した出射周波数でレーザパルスをレーザ装置2に出射させるための増幅前周波数および増幅後周波数を決定する(S4)。
図4を参照して、増幅前周波数および増幅後周波数を決定する方法の一例について説明する。本実施形態では、出射周波数毎に、第1変調器36によって変更する増幅前周波数の値、および、第2変調器3によって減少させる増幅後周波数の減少割合が、テーブル(図4参照)によって予め定められている。CPU21は、集光位置の走査速度に基づいて出射周波数を決定すると、決定した出射周波数に対してテーブルによって予め対応付けられている増幅前周波数の値および増幅後周波数の減少割合を取得する。しかし、CPU21は、予め作成されたプログラム(アルゴリズム)に従って増幅前周波数および増幅後周波数を決定してもよい。
図4に示すように、本実施形態のCPU21は、出射周波数を閾値(一例として、本実施形態では200kHz)未満の範囲内で変更する場合に、増幅前周波数を第1変調器36によって閾値以上の範囲内で変更しつつ、増幅後周波数を第2変調器3によって閾値未満に減少させる。例えば、出射周波数を閾値未満である199kHzとする場合、CPU21は、増幅前周波数を閾値以上の範囲内である398kHzに第1変調器36によって変更しつつ、増幅後周波数を1/2に減少させて、出射周波数を199kHzとする。また、出射周波数を67kHzとする場合、CPU21は、増幅前周波数を閾値以上の範囲内である201kHzに第1変調器36によって変更しつつ、増幅後周波数を1/3に減少させて、出射周波数を67kHzとする。
本実施形態によると、増幅器35によって増幅されるレーザパルスの繰り返し周波数が閾値未満に低下することが防止される。従って、出射周波数を高い値から低い値に変更する場合等でも、増幅器35によって増幅されるレーザパルスのエネルギーが過度に大きくなることが抑制され、増幅器35の損傷が抑制される。さらに、本実施形態の眼科用レーザ手術装置1は、第1変調器36と第2変調器3を連動させて出射周波数を変更することで、第2変調器3による増幅後周波数の変更のみを行う場合に比べて、出射周波数を閾値未満の範囲内で細かく変更することができる。
閾値について説明する。閾値は、第1変調器36によって増幅前周波数を変更する範囲の下限値(つまり、増幅器35によって増幅されるレーザパルスの繰り返し周波数の下限値)となる。前述したように、増幅出力を一定とする場合、増幅器35によって増幅されるレーザパルスの繰り返し周波数が低くなる程、増幅器35における各々のレーザパルスのエネルギーは高くなる。本実施形態では、増幅器35によって増幅されるレーザパルスのエネルギーが、増幅器35に損傷が生じるエネルギーとなる繰り返し周波数よりも高い値に設定される。
増幅器35に損傷が生じるエネルギーとなる繰り返し周波数は、種々の条件(例えば、モードロックレーザ光源31の出力、増幅出力、組織の処置に必要なレーザパルスのエネルギー、増幅器35の構成等)によって変化する。具体的には、増幅器35から連続して出射される増幅後のレーザパルス(本実施形態では、第2変調器3に到達するレーザパルス)の平均出力A(W)は、レーザ装置2の種類によって定まる。また、各々のレーザパルスのエネルギーE(μJ)、増幅器35から出射される増幅後のレーザパルスの繰り返し周波数(これは増幅前周波数に一致する)K(kHz)、および増幅後のレーザパルスの平均出力A(W)には、「A=E×K・・・(1)」の関係が成り立つ。増幅器35の損傷を無視すると、第1変調器36は、式(1)の関係を満たした状態で増幅前周波数Kを自由に変更できる。
しかし、増幅前周波数Kを極度に低下させると、各々のレーザパルスのエネルギーE(μJ)が過度に増加し、増幅器35に損傷が生じ得る。増幅器35に損傷が生じない範囲で増幅することが可能な各々のレーザパルスの最大エネルギーをEmax(μJ)とすると、第1変調器36によって変更できる最小の繰り返し周波数Kminは、「Kmin=A/Emax」となる。従って、閾値をKmin以上に設定することで、増幅器35の損傷を抑制できる。一例として、本実施形態では、閾値は200kHzに設定されている。
第1変調器36によって増幅前周波数を変更する範囲について説明する。増幅前周波数を高くしすぎると、各々のレーザパルスのエネルギーを、増幅器35によって眼科手術に必要なエネルギー以上に増幅させることが困難となる。具体的には、1つのスポットに1発のレーザパルスを集光させて処置を行う場合には、増幅前周波数が5MHzよりも大きいと、各々のレーザパルスのエネルギーを増幅器35によって確保することが難しい。また、一般的な変調器は、5MHzよりも大きい範囲で繰り返し周波数を変更することは困難な場合が多い。従って、第1変調器36によって増幅前周波数を変更する範囲の上限値は5MHz以下とすることが望ましく、2MHz以下とすることがさらに望ましい。一例として、本実施形態では、第1変調器36によって増幅前周波数を変更する範囲の上限値は1MHz以下に設定されている。
本実施形態の眼科用レーザ手術装置1が出射周波数を変更する場合の具体的な変更方法について説明する。本実施形態のCPU21は、閾値未満の範囲内で出射周波数を変更する場合、第2変調器3による増幅後周波数の減少割合を1/n(nは2以上の整数)に固定した状態で、第1変調器36によって増幅前周波数を閾値以上の範囲内で変更する。その結果、nに対応する変更範囲内で出射周波数が変更される。また、CPU21は、第2変調器3による増幅後周波数の減少割合を変更することで、出射周波数の変更範囲を他の変更範囲に切り換える。
上記の変更方法の一例について、図4を参照して詳細に説明する。図4に示す例では、nの値に対応する出射周波数の変更範囲が予め定められている。例えば、「n=1」に対応する変更範囲は、200kHz以上1000kHz以下である。「n=2」に対応する変更範囲は、100kHz以上200kHz未満である。「n=3」に対応する変更範囲は、67kHz以上100kHz未満である。「n=4」に対応する変更範囲は、50kHz以上67kHz未満である。同様に、n≧5に対応する繰り返し周波数の変更範囲も定められている。
例えば、本実施形態のCPU21は、「n=2」に対応する100kHz以上200kHz未満の変更範囲内で出射周波数を変更する場合、増幅後周波数の減少割合を1/2に固定した状態で、200kHz以上400kHz未満の範囲内で増幅前周波数を変更する。この場合、CPU21は、「n=2」に対応する変更範囲内で出射周波数を変更する間、第2変調器3による増幅後周波数の減少割合を変更する必要が無い。従って、処理が簡素化される。同様に、CPU21は、「n=3」に対応する67kHz以上100kHz未満の変更範囲内で出射周波数を変更する場合、増幅後周波数の減少割合を1/3に固定した状態で、200kHz以上300kHz未満の範囲内で増幅前周波数を変更する。
以上のように、本実施形態では、nの値に応じて閾値未満の範囲が複数の変更範囲に分割される。同一の変更範囲内で出射周波数が変更される場合には、増幅後周波数の減少割合は固定される。よって、第1変調器36および第2変調器3の制御が簡素化される。さらに、本実施形態では、nに対応する変更範囲は、(n−1)に対応する変更範囲よりも必ず小さい範囲となっている。従って、例えば、出射周波数を徐々に減少させ続ける場合には、CPU21は、変更範囲が切り換わる毎に、増幅後周波数の減少割合を段階的に増加(つまり、1/nの値を段階的に減少)させればよく、増幅後周波数の減少割合を途中で減少させる必要が無い。よって、第1変調器36および第2変調器3の制御がさらに簡素化される。例えば、変更範囲を切り換える際には、増幅前周波数を大幅に変更させる場合が生じ得る。しかし、本実施形態によると、変更範囲を切り換える頻度が低下するので、増幅前周波数を大幅に変更させる頻度も低下する。
換言すると、本実施形態のCPU21は、nに対応する変更範囲内から、この変更範囲内よりも小さい他の変更範囲内に出射周波数を変更する場合に、第2変調器3による増幅後周波数の減少割合を1/nから1/(n+α)(αは自然数)に変更しつつ、第1変調器36によって増幅前周波数を変更する。例えば、「n=2」に対応する変更範囲に含まれる100kHzから、「n=3」に対応する変更範囲に含まれる99kHzに出射周波数を変更する場合を仮定する。この場合、CPU21は、第2変調器3による増幅後周波数の減少割合を1/2から1/3に変更しつつ、第1変調器36によって、増幅前周波数を200kHzから297kHzに変更する。従って、本実施形態の眼科用レーザ手術装置1は、出射周波数の変更範囲を切り換える場合でも、簡易な制御で適切に、閾値未満の範囲内で出射周波数を変更することができる。
なお、図4で例示した方法は一例に過ぎない。従って、出射周波数を変更するための具体的な方法は適宜変更できる。例えば、前述したように、閾値は200kHzに限定されない。また、上記実施形態のCPU21は、出射周波数を閾値以上の範囲内で変更する場合には、第2変調器3による増幅後周波数の減少処理を実行しない。しかし、CPU21は、出射周波数を閾値以上の範囲内で変更する場合でも、第2変調器3による増幅後周波数の減少処理を行ってもよい。
図3の説明に戻る。CPU21は、増幅前周波数および増幅後周波数をS4で決定すると、増幅器35における増幅出力を一定としたまま、決定した増幅前周波数および増幅後周波数に調整する(S5)。つまり、CPU21は、第1変調器36によって、増幅前周波数を、S4で決定した増幅前周波数に調整する。また、CPU21は、第2変調器3によって、増幅後周波数を、S4で決定した増幅後周波数に調整する。その結果、患者眼Eの組織に出射されるレーザパルスの繰り返し周波数は、S3で決定された繰り返し周波数となる。
なお、「調整」とは、出射周波数を変更する場合には、増幅前出力および増幅後出力の少なくともいずれかを変更することを意味する。また、本実施形態では、増幅器35における増幅出力が一定とされたまま、増幅前周波数が変更される。その結果、増幅出力を変化させることによる影響が抑制される。
また、CPU21は、患者眼Eの組織に連続して出射する複数のレーザパルスの各々のエネルギーを、減衰器(本実施形態では第2変調器3)によって許容範囲内に調整する(S6)。その結果、組織に出射されるレーザパルスのエネルギーの変動が抑制される。特に、本実施形態では、増幅器35における増幅出力が一定である。この場合、増幅器35によって増幅されるレーザパルスの繰り返し周波数が変更されると、増幅器35によって1つ1つのレーザパルスに加えられるエネルギーが変動する。その結果、増幅器35から出射された直後のレーザパルスのエネルギーが変動する。しかし、本実施形態では、増幅器35から出射されたレーザパルスのエネルギーが、レーザパルスが組織に到達する前に、許容範囲内に調整される。よって、本実施形態の眼科用レーザ手術装置1は、出射周波数を適切に変更しつつ、組織に出射させる各々のレーザパルスのエネルギーが変動することを抑制することができる。
次いで、CPU21は、駆動データによって定められた一連の処置が終了したか否かを判断する(S8)。終了していない場合(S8:NO)、処理はS2へ戻り、S2〜S6の処理が繰り返される。一連の処置が終了すると(S8:YES)、走査部8およびレーザ装置2の駆動が停止されて(S9)、照射制御処理は終了する。
以上説明したように、本実施形態の眼科用レーザ手術装置1は、増幅前のレーザパルスの繰り返し周波数(増幅前周波数)を第1変調器36によって閾値以上の範囲内で変更しつつ、増幅後のレーザパルスの繰り返し周波数(増幅後周波数)を第2変調器3によって閾値未満に減少させることができる。この場合、出射周波数を高い値から低い値に変更したとしても、増幅器35によって増幅されるレーザパルスの繰り返し周波数が過度に低下することが防止される。従って、増幅器35によって増幅される各々のレーザパルスのエネルギーが過度に大きくなることが抑制される。よって、増幅器35の損傷等が抑制される。さらに、眼科用レーザ手術装置1は、第1変調器36によって繰り返し周波数を変更しつつ、第2変調器3によって繰り返し周波数をさらに減少させることで、出射周波数を閾値以下の範囲内で変更する。従って、第1変調器36による増幅前周波数の変更を行わずに、第2変調器3によって増幅後周波数を変更する場合に比べて、出射周波数が閾値以下の範囲内で細かく変更される。以上のように、本実施形態の眼科用レーザ手術装置1は、閾値以下の範囲内で出射周波数を変更する場合に、第1変調器36と第2変調器3を連動させる。従って、眼科用レーザ手術装置1は、増幅器35およびレーザ品質等に悪影響が生じることを抑制しつつ、出射周波数を細かく変更することができる。
本実施形態の眼科用レーザ手術装置1は、増幅後周波数の減少割合を固定した状態で増幅前周波数を変更することで、特定の変更範囲内で出射周波数を変更する。また、増幅後周波数の減少割合を変更することで、出射周波数の変更範囲を切り換える。従って、本実施形態の眼科用レーザ手術装置1は、第2変調器3による増幅後周波数の減少割合の変更する頻度を極力低下させつつ、出射周波数を細かく変更することができる。その結果、第1変調器36および第2変調器3の制御が単純になる。また、第2変調器3による増幅後周波数の減少割合を変更することで生じ得る不具合の影響が抑制される。
本実施形態の眼科用レーザ手術装置1は、第2変調器3による増幅後周波数の減少割合(つまり、増幅後のレーザパルスを間引く割合)を1/nに固定しつつ、第1変調器36によって増幅前周波数を変更することで、nに対応する変更範囲内で出射周波数を変更する。また、本実施形態の眼科用レーザ手術装置1は、出射周波数を、現時点の変更範囲よりも小さい他の変更範囲内に変更する場合に、増幅後周波数の減少割合を1/(n+α)に変更しつつ、増幅後周波数の減少割合に応じて増幅前周波数を適宜調整する。従って、本実施形態の眼科用レーザ手術装置1は、より単純な制御で第1変調器36および第2変調器3を駆動させつつ、閾値未満の範囲内で適切に出射周波数を変更することができる。
本実施形態における繰り返し周波数の閾値は、増幅器35によって増幅されるレーザパルスのエネルギーが、増幅器35に損傷が生じるエネルギーとなる繰り返し周波数よりも高い値に設定される。従って、本実施形態の眼科用レーザ手術装置1は、増幅器35が損傷することを抑制しつつ、出射周波数を適切に変更することができる。
本実施形態の眼科用レーザ手術装置1は、一連のレーザ手術を行う間、増幅器35によるレーザパルスの増幅出力を一定とした状態で、第1変調器36によってレーザパルスの繰り返し周波数を変更する。この場合、レーザパルスを繰り返し出射させながら増幅出力を変化させることによる影響(例えば、増幅器35における分散の変化、熱影響の変化等)が生じることが抑制される。従って、眼科用レーザ手術装置1は、増幅出力の変化の影響でレーザパルスの品質が不安定になることを抑制しつつ、レーザパルスの繰り返し周波数を変更することができる。なお、「増幅出力を一定にする」とは、増幅出力(例えば、ポンピングデバイスに供給する電力)を厳密に一定とすることを示す意味ではない。例えば、レーザパルスの品質に与えられる影響が事実上無視できる程度に増幅出力を変化させる場合、および、一定になるように制御した増幅出力が意図せずに変動してしまう場合等も、「増幅出力を一定にする」に含まれる。
増幅される前のレーザパルスの繰り返し周波数が変更されると、増幅後のレーザパルスのエネルギーが変動し得る。本実施形態の眼科用レーザ手術装置1は、増幅器35から出射される増幅後のレーザパルスの各々のエネルギーを、減衰器によって許容範囲内に調整することができる。従って、眼科用レーザ手術装置1は、出射周波数を適切に変更しつつ、組織に出射させる各々のレーザパルスのエネルギーが変動することを抑制することができる。詳細には、本実施形態では第2変調器3が減衰器を兼ねる。従って、装置構成が簡素化され、且つ、レーザパルスが適切に患者眼Eの組織に照射される。
本実施形態における繰り返し周波数の閾値は、「増幅器から繰り返し出射されるレーザパルスの平均出力A(W)/増幅可能な1つのレーザパルスの最大エネルギーE(μJ)」で算出される繰り返し周波数K(kHz)以上に設定される。この場合、眼科用レーザ手術装置1は、増幅器35の損傷、およびパルス幅の過度な変動等の悪影響を適切に抑制しつつ、出射周波数を変更することができる。また、本実施形態の眼科用レーザ手術装置1は、増幅前周波数を、第1変調器36によって閾値以上5MHz以下の範囲内で変更する。この場合、眼科用レーザ手術装置1は、組織に出射させるレーザパルスのエネルギーを確保しつつ、適切にレーザパルスの繰り返し周波数を変更することができる。
上記実施形態で開示された技術は一例に過ぎない。従って、上記実施形態で例示された技術を変更することも可能である。例えば、上記実施形態のCPU21は、出射周波数を閾値未満の範囲内で変更する場合の全てにおいて、第1変調器36と第2変調器3を連動させる。しかし、眼科用レーザ手術装置1は、閾値未満の範囲内の一部で出射周波数を変更する場合にのみ、第1変調器36と第2変調器3を連動させてもよい。また、眼科用レーザ手術装置1は、閾値以上の範囲内で出射周波数を変更する場合にも、第1変調器36と第2変調器3を連動させてもよい。
眼科用レーザ手術装置1は、出射周波数を変更する範囲が閾値未満であるか否かに関わらず、第1変調器36と第2変調器3を連動させて出射周波数を変更してもよい。この場合、眼科用レーザ手術装置1は以下のように表現することもできる。複数のレーザパルスを患者眼の組織内に集光させることで前記組織を処置する眼科用レーザ手術装置であって、シードレーザパルスを繰り返し発生させるモードロックレーザ光源と、前記モードロックレーザ光源が発生させたレーザパルスを増幅させる増幅器と、前記モードロックレーザ光源から出射され、且つ前記増幅器によって増幅されていないレーザパルスを変調させる第1変調器と、レーザパルスの光路のうち前記増幅器よりも下流側に設けられ、前記増幅器によって増幅されたレーザパルスを変調させる第2変調器と、前記眼科用レーザ手術装置の動作を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記増幅器によって増幅される前のレーザパルスの繰り返し周波数である増幅前周波数を前記第1変調器によって変更しつつ、前記増幅器によって増幅された後のレーザパルスの繰り返し周波数である増幅後周波数を前記第2変調器によって減少させることで、前記組織に出射させるレーザパルスの繰り返し周波数である出射周波数を変更する。この場合、眼科用レーザ手術装置1は、繰り返し周波数の変更の自由度を容易に確保することができる。
上記実施形態で例示した照射制御処理(図3参照)は、手術装置制御部20のCPU21によって実行される。しかし、照射制御処理に含まれる各ステップは、手術装置制御部20のCPU21以外のプロセッサによって実行されてもよい。例えば、手術装置制御部20のCPU21は、図3に示すS3で決定した出射周波数を、レーザ装置制御部40のCPU41に通知してもよい。この場合、レーザ装置制御部40のCPU41は、通知された出射周波数に基づいて、S4〜S6の処理を実行してもよい。つまり、図3で例示した照射制御処理は、複数のプロセッサによって実行されてもよい。また、眼科用レーザ手術装置1およびレーザ装置2以外の他のデバイス(例えば、PC等)のCPUが、照射制御処理の少なくとも一部を実行してもよい。
上記実施形態の眼科用レーザ手術装置1は、増幅器35によるレーザパルスの増幅出力を一定とした状態で、第1変調器36によって増幅前周波数を変更する。しかし、眼科用レーザ手術装置1は、レーザパルスの増幅出力を変更してもよい。例えば、眼科用レーザ手術装置1は、レーザパルスの品質が不安定にならない範囲内で、増幅前周波数に応じて増幅出力を変更してもよい。
1 眼科用レーザ手術装置
2 レーザ装置
3 第2変調器
20 手術装置制御部
21 CPU
31 モードロックレーザ光源
33 増幅部
35 増幅器
36 第1変調器
37 増幅媒質
38 ポンピングデバイス
40 レーザ装置制御部
41 CPU

Claims (10)

  1. 複数のレーザパルスを患者眼の組織内に集光させることで前記組織を処置する眼科用レーザ手術装置であって、
    シードレーザパルスを繰り返し発生させるモードロックレーザ光源と、
    前記モードロックレーザ光源が発生させたレーザパルスを増幅させる増幅器と、
    前記モードロックレーザ光源から出射され、且つ前記増幅器によって増幅されていないレーザパルスを変調させる第1変調器と、
    レーザパルスの光路のうち前記増幅器よりも下流側に設けられ、前記増幅器によって増幅されたレーザパルスを変調させる第2変調器と、
    前記眼科用レーザ手術装置の動作を制御する制御部と、
    を備え、
    前記制御部は、
    前記組織に出射させるレーザパルスの繰り返し周波数である出射周波数を、閾値未満の範囲内の少なくとも一部で変更する場合に、前記増幅器によって増幅される前のレーザパルスの繰り返し周波数である増幅前周波数を前記第1変調器によって前記閾値以上の範囲内で変更しつつ、前記増幅器によって増幅された後のレーザパルスの繰り返し周波数である増幅後周波数を前記第2変調器によって前記閾値未満に減少させることを特徴とする眼科用レーザ手術装置。
  2. 請求項1に記載の眼科用レーザ手術装置であって、
    前記制御部は、前記閾値未満の範囲内の少なくとも一部で出射周波数を変更する場合に、
    前記第2変調器による増幅後周波数の減少割合を1/n(nは2以上の自然数)に固定した状態で、前記第1変調器によって増幅前周波数を変更することで、特定の変更範囲内で出射周波数を変更すると共に、
    前記第2変調器による増幅後周波数の減少割合を変更することで、出射周波数を変更する変更範囲を切り換えることを特徴とする眼科用レーザ手術装置。
  3. 請求項1に記載の眼科用レーザ手術装置であって、
    前記制御部は、前記閾値未満の範囲内の少なくとも一部で出射周波数を変更する場合に、
    前記第2変調器による増幅後周波数の減少割合を1/n(nは2以上の自然数)に固定した状態で、前記第1変調器によって増幅前周波数を変更することで、nに対応する変更範囲内で出射周波数を変更し、
    出射周波数を、前記変更範囲内から前記変更範囲よりも小さい他の変更範囲内に変更する場合に、前記第2変調器による増幅後周波数の減少割合を1/(n+α)(αは自然数)に変更しつつ、前記第1変調器によって増幅前周波数を調整することを特徴とする眼科用レーザ手術装置。
  4. 請求項1から3のいずれかに記載の眼科用レーザ手術装置であって、
    前記閾値は、前記増幅器によって増幅されるレーザパルスのエネルギーが、前記増幅器に損傷が生じるエネルギーとなる繰り返し周波数よりも高い値に設定されることを特徴とする眼科用レーザ手術装置。
  5. 請求項1から4のいずれかに記載の眼科用レーザ手術装置であって、
    前記制御部は、
    前記増幅器によるレーザパルスの増幅出力を一定とした状態で、前記第1変調器によってレーザパルスの繰り返し周波数を変更することを特徴とする眼科用レーザ手術装置。
  6. 請求項1から5のいずれかに記載の眼科用レーザ手術装置であって、
    レーザパルスの光路のうち前記増幅器よりも下流側に設けられ、レーザパルスのエネルギーを減衰させることが可能な減衰器をさらに備え、
    前記制御部は、
    前記増幅器から出射される複数のレーザパルスの各々のエネルギーを、前記減衰器によって許容範囲内に調整することを特徴とする眼科用レーザ手術装置。
  7. 請求項6に記載の眼科用レーザ手術装置であって、
    前記第2変調器は、レーザパルスのエネルギーを減衰させることが可能であり、前記減衰器を兼ねることを特徴とする眼科用レーザ手術装置。
  8. 請求項1から7のいずれかに記載の眼科用レーザ手術装置であって、
    前記閾値は、
    前記増幅器によって増幅されて前記増幅器から出射される複数のレーザパルスの平均出力を、前記増幅器に損傷が生じない範囲で増幅することが可能な1つのレーザパルスの最大エネルギーで割ることで算出される繰り返し周波数以上に設定されることを特徴とする眼科用レーザ手術装置。
  9. 請求項1から8のいずれかに記載の眼科用レーザ手術装置であって、
    前記制御部は、
    増幅前周波数を、前記第1変調器によって前記閾値以上5MHz以下の範囲内で変更することを特徴とする眼科用レーザ手術装置。
  10. 眼科用レーザ手術装置を制御するための眼科手術制御プログラムであって、
    前記眼科用レーザ手術装置は、
    シードレーザパルスを繰り返し発生させるモードロックレーザ光源と、
    前記モードロックレーザ光源が発生させたレーザパルスを増幅させる増幅器と、
    前記モードロックレーザ光源から出射され、且つ前記増幅器によって増幅されていないレーザパルスを変調させる第1変調器と、
    レーザパルスの光路のうち前記増幅器よりも下流側に設けられ、前記増幅器によって増幅されたレーザパルスを変調させる第2変調器と、
    を備え、
    前記眼科手術制御プログラムが前記眼科用レーザ手術装置のプロセッサによって実行されることで、
    前記組織に出射させるレーザパルスの繰り返し周波数である出射周波数を閾値未満の範囲内の少なくとも一部で変更する場合に、前記増幅器によって増幅される前のレーザパルスの繰り返し周波数である増幅前周波数を前記第1変調器によって前記閾値以上の範囲内で変更しつつ、前記増幅器によって増幅された後のレーザパルスの繰り返し周波数である増幅後周波数を前記第2変調器によって前記閾値未満に減少させる出射周波数変更ステップ
    を前記眼科用レーザ手術装置に実行させることを特徴とする眼科手術制御プログラム。
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