JP2016207631A - 亜鉛空気電池及びその組み立て方法 - Google Patents

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賢信 鬼頭
直仁 山田
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直仁 山田
賢司 河村
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賢司 河村
裕一 権田
Yuichi Gonda
裕一 権田
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Abstract

【課題】空気極側と負極側をセパレータ構造体で確実に仕切りながら、シーケンシャル且つ効率的に所望の層数の亜鉛空気電池を組み立てることができる方法の提供。【解決手段】枠体と該枠体で区画された領域内に配置される空気極板との組合せと、枠体と該枠体で区画された領域内に配置される負極板との組合せとを、空気極板と負極板とをセパレータ構造体で互いに隔離し且つ隣接する枠体間でセパレータ構造体の外縁を挟持させながら、1回又は交互に複数回積層させる工程を含む、電池の組み立て方法。セパレータ構造体は、セパレータが水酸化物イオン伝導性を有するが透水性及び通気性を有しないセパレータを含む。両端に位置する枠体の各々は、枠体で区画された領域を塞ぐ端面板を予め備えてなるか、又は予め配置された端面板上に枠体で区画された領域が該端面板で塞がれるように配置されるか、又は積層後に枠体で区画された領域が端面板で塞がれる。【選択図】図1

Description

本発明は、亜鉛空気電池及びその組み立て方法に関する。
革新電池候補の一つとして金属空気電池が挙げられる。金属空気電池は、電池反応に関与する酸素が空気中から供給されるため、電池容器内のスペースを負極活物質の充填に最大限利用することができ、それにより原理的に高いエネルギー密度を実現することができる。
現在提案されている金属空気電池の多くはリチウム空気電池である。しかし、リチウム空気電池には、空気極上での望ましくない反応生成物の析出、二酸化炭素の混入、リチウムデンドライト(樹枝状結晶)の形成による正負極間の短絡等、多くの技術的課題が存在している。
一方、亜鉛を負極活物質として用いる亜鉛空気電池も従来から知られている。特に、亜鉛空気一次電池は既に量産化され、補聴器等の電源として広く利用されている。亜鉛空気電池においては、電解液として水酸化カリウム等のアルカリ水溶液が用いられ、正負極間の短絡を防止するためにセパレータ(隔壁)が用いられる。放電時には、以下の反応式に示されるように、空気極(正極)側でOが還元されてOHが生成する一方、負極で亜鉛が酸化されてZnOが生成する。
空気極: O+2HO+4e→4OH
負極: 2Zn+4OH→2ZnO+2HO+4e
この亜鉛空気電池を二次電池として使う試みもなされたが、充電時に負極でZnOが還元されて金属亜鉛が樹枝状に析出してデンドライトを形成してしまい、このデンドライトがセパレータを貫通して空気極と短絡を起こしてしまうという問題があり、亜鉛空気電池の二次電池としての実用化を大きく妨げていた。その上、空気極側では、空気中の二酸化炭素が空気極を通り抜けて電解液に溶解し、アルカリ炭酸塩を析出して電池性能を低下させるという問題もあった。亜鉛空気電池は、リチウム空気電池と比べて、反応に伴う問題は大きくないことから、亜鉛デンドライトによる正負極間の短絡及び二酸化炭素の混入に伴う問題が解決すれば高容量二次電池としての実現性が高いものと言われている。したがって、亜鉛空気二次電池において、亜鉛デンドライトによる短絡及び二酸化炭素の混入の両方を防止する技術が強く望まれている。
そのような問題ないし要望に対処する技術として、特許文献1(国際公開第2013/073292号)には、セパレータとして水酸化物イオン伝導性の無機固体電解質体を用い、かつ、無機固体電解質体を空気極の一面側に密着させて設けることにより、充電時における亜鉛デンドライトによる正負極間の短絡と、二酸化炭素の電解液への混入との両方を防止する試みが提案されている。また、この文献には、無機固体電解質体が、一般式:M2+ 1−x3+ (OH)n− x/n・mHO(式中、M2+は2価の陽イオンであり、M3+は3価の陽イオンであり、An−はn価の陰イオンであり、nは1以上の整数、xは0.1〜0.4である)の基本組成を有する層状複水酸化物からなるものが好ましいことも記載されている。
一方、高電圧や大電流を得るために、複数の単位電池を組み合わせて作られた積層電池が広く知られている。積層電池は、単位電池を複数直列または並列に接続してなる積層体が一つの電池容器内に収納された構成を有してなる。
国際公開第2013/073292号
本出願人は、水酸化物イオン伝導性を有するが透水性及び通気性を有しない程に高度に緻密化されたセラミックスセパレータ(無機固体電解質セパレータ)の開発に先だって成功している。また、そのようなセラミックスセパレータを多孔質基材(例えばアルミナ多孔質基材)上に形成することにも成功している。このようなセパレータ(あるいは多孔質基材付きセパレータ)を用いて亜鉛空気二次電池を構成した場合、充電時に生成する亜鉛デンドライトによるセパレータの貫通を物理的に阻止して正負極間の短絡を防止し、かつ、空気中の二酸化炭素の侵入を阻止して電解液中での(二酸化炭素に起因する)アルカリ炭酸塩の析出を防止できる。そして、この効果を最大限に発揮させるためには、水酸化物イオン伝導性セラミックスセパレータで電池容器内を空気極側と負極側に確実に仕切ることが望まれる。特に、かかる構成を確保しながら、高電圧や大電流を得るために、複数の単位電池を組み合わせて積層電池を効率よく組み立てることができれば極めて好都合である。
本発明者らは、今般、1枚又は複数枚の空気極板、1枚又は複数枚の負極板、及び水酸化物イオン伝導性を有するが透水性及び通気性を有しない1枚又は複数枚のセパレータ構造体(空気極板と一体化されうる)を用いて、空気極側と負極側をセパレータ構造体で確実に仕切りながら、シーケンシャル且つ効率的に所望の層数の電池を組み立てることができるとの知見を得た。
したがって、本発明の目的は、空気極側と負極側をセパレータ構造体で確実に仕切りながら、シーケンシャル且つ効率的に所望の層数の亜鉛空気電池を組み立てることができる方法、及びそのような亜鉛空気電池を提供することにある。
本発明の一態様によれば、亜鉛空気電池の組み立て方法であって、
枠体と該枠体で区画された領域内に配置される空気極板との組合せと、枠体と該枠体で区画された領域内に配置される負極板との組合せとを、前記空気極板と前記負極板とをセパレータ構造体で互いに隔離し且つ隣接する前記枠体間で前記セパレータ構造体の外縁を挟持させながら、1回又は交互に複数回積層させる工程を含み、
前記負極板が亜鉛、亜鉛合金及び/又は亜鉛化合物を含んでなり、
前記セパレータ構造体がセパレータを含んでなり、前記セパレータが水酸化物イオン伝導性を有するが透水性及び通気性を有しないものであり、
両端に位置する前記枠体の各々は、前記枠体で区画された領域を塞ぐ端面板を予め備えてなるか、又は予め配置された端面板上に前記枠体で区画された領域が該端面板で塞がれるように配置されるか、又は積層後に前記枠体で区画された領域が端面板で塞がれ、それにより積層された前記枠体及び前記端面板が全体として1つの電池容器を構成する、方法が提供される。
本発明の他の一態様によれば、1枚又は複数枚の空気極板と、
前記空気極板と対向して及び/又は交互に設けられ、亜鉛、亜鉛合金及び/又は亜鉛化合物を含んでなる1枚又は複数枚の負極板と、
前記負極板が浸漬される、アルカリ金属水酸化物水溶液を含んでなる電解液と、
前記空気極板と前記負極板の間の各々の位置に前記空気極板と前記負極板を隔離するように設けられるセパレータ構造体であって、前記セパレータ構造体が水酸化物イオン伝導性を有するが透水性及び通気性を有しないセパレータを含んでなる、1枚又は複数枚のセパレータ構造体と、
前記空気極板、前記負極板、前記セパレータ構造体、及び前記電解液を収容する電池容器と、を備えた亜鉛空気電池であって、
前記電池容器が、2枚の端面板と、該2枚の端面板の間に液密性及び気密性を確保可能に連結される複数個の枠体とから構成され、
前記2枚の端面板の間に、前記空気極板及び前記負極板がその間に前記セパレータ構造体を介在させつつ配置されてなり、前記セパレータ構造体の外縁が隣り合う前記枠体の間に挟持されてなり、前記枠体で区画された領域内で、且つ、前記セパレータ構造体と前記端面板との間及び/又は隣り合う前記セパレータ構造体の間に、前記空気極板又は前記負極板が配置されてなる、亜鉛空気電池が提供される。
本発明の一態様による亜鉛空気電池の分解斜視図である。 図1に示される電池の組み立て直後の横型積層状態の斜視図である。 図2に示される電池を開口部が上を向くように90度回転させた縦型積層状態の斜視図である。 図1〜3に示される電池に用いられる、枠体と端面板が一体化された部材を示す斜視図である。 図1〜3に示される電池に用いられる枠体を示す斜視図である。 図1〜3に示される電池に用いられる空気極板を示す斜視図である。 図1〜3に示される電池に用いられるセパレータ構造体を示す斜視図である。 図1〜3に示される電池に用いられる負極板を示す斜視図である。 亜鉛空気二次電池の一例を模式的に示す概念図である。 図9に示される亜鉛空気二次電池の斜視図である。 多孔質基材付きセパレータの一態様を示す模式断面図である。 多孔質基材付きセパレータの他の一態様を示す模式断面図である。 層状複水酸化物(LDH)板状粒子を示す模式図である。 例1で作製したアルミナ製多孔質基材の表面のSEM画像である。 例1において試料の結晶相に対して得られたXRDプロファイルである。 例1において観察された膜試料の表面微構造を示すSEM画像である。 例1において観察された複合材料試料の研磨断面微構造のSEM画像である。 例1で使用された緻密性判別測定系の分解斜視図である。 例1で使用された緻密性判別測定系の模式断面図である。 例1の緻密性判定試験IIで使用された測定用密閉容器の分解斜視図である。 例1の緻密性判定試験IIで使用された測定系の模式断面図である。 例3及び4における、樹脂平板の溶剤接着により箱型容器を作製する手順を説明する工程図である。 例3において溶剤接着により作製されたABS樹脂製箱型容器の写真である。 例3において溶剤接着により作製されたPET樹脂製箱型容器の写真である。 図22Aにおいて白枠で囲まれた部分の拡大写真である。 例3において溶剤接着により作製された積層電池用ケースを上から撮影した写真である。 例3において溶剤接着により作製された積層電池用ケースを横から撮影した写真である。 例3において溶剤接着により作製された積層電池用ケースの接合部分の拡大写真である。
亜鉛空気電池及びその組み立て方法
本発明の亜鉛空気電池は、1枚又は複数枚の空気極板と、空気極板と対向して及び/又は交互に設けられる1枚又は複数枚の負極板と、アルカリ金属水酸化物水溶液を含んでなる電解液と、1枚又は複数枚のセパレータ構造体と、電池容器とを備えてなる。空気極板は空気極触媒を含んでなり、外気に接触されうる。負極板は亜鉛、亜鉛合金及び/又は亜鉛化合物を含んでなり、電解液に浸漬される。セパレータ構造体は水酸化物イオン伝導性を有するが透水性及び通気性を有しないセパレータを含んでなるものであり、そのようなセパレータの典型例としてはセラミックスセパレータ(無機固体電解質セパレータ)が挙げられる。セパレータ構造体は、空気極板と負極板の間の各々の位置に空気極板と負極板を隔離するように設けられる。セパレータ構造体の少なくとも幾つかは空気極板と一体化されていてもよい。電池容器は、空気極板、負極板、セパレータ構造体、及び電解液を収容する容器である。本発明の亜鉛空気電池は空気極板及び負極板の対を2つ以上、すなわち2つ以上の単位電池を備えた積層電池として構成されるのが好ましいが、空気極板及び負極板の対が1つの単位電池であってもよい。また、積層電池は直列型積層電池であってもよいし、並列型積層電池であってもよい。また、本発明の亜鉛空気電池は一次電池及び二次電池のいずれであってもよいが、二次電池であるのが好ましい。
図1に本発明の一態様による電池の分解斜視図が模式的に示される。また、図2には図1に示される電池の組み立て直後の横型積層状態の斜視図が模式的に示される一方、図3には図2に示される電池を開口部が上を向くように90度回転させた縦型積層状態の斜視図が模式的に示される。なお、図1〜3に示される空気亜鉛電池10は説明の便宜上、開口部36が存在しており且つ電解液が描かれていない状態で示されているが、最終製品形態としての電池は開口部36のうち少なくとも負極板22a,22b,22cを含む区画が蓋で閉じられており且つ電池容器30内には電解液が入っているべきことはいうまでもない。開口部36のうち空気極板12a,12b,12cを含む区画は外気が侵入可能に蓋で閉じられずに完全に開放されていてもよいし、又は外気が侵入可能な開放口を有する蓋、網等の部材で部分的に閉じられていてもよい。
図1〜3に示される亜鉛空気電池10は、複数枚の空気極板12a,12b,12cと、空気極板と交互に設けられる複数枚の負極板22a,22b,22cとを備える。空気極板12a,12b,12cと負極板22a,22b,22cの間の各々の位置には、空気極板12a,12b,12cと負極板22a,22b,22cを隔離するように複数枚のセパレータ構造体20a,20b,20c,20d,20eが設けられる。セパレータ構造体20a,20b,20c,20d,20eは水酸化物イオン伝導性を有するが透水性及び通気性を有しないセパレータを含んでなる、典型的には板状の部材である。空気極板12a,12b,12c、負極板22a,22b,22c、及びセパレータ構造体20a,20b,20c,20d,20eは電池容器30に収容される。電池容器30内の負極板22a,22b,22cを含む区画にはアルカリ金属水酸化物水溶液を含んでなる電解液(図示せず)が更に収容される。
電池容器30は、2枚の端面板30g,30hと、2枚の端面板30g,30hの間に液密性及び気密性を確保可能に連結される複数個の枠体30a,30b,30c,30d,30e,30fとから構成される。両端に位置する枠体30a,30fの各々は、この枠体30a,30fで区画された領域を塞ぐ端面板30g,30hを予め備えてなるものであってもよく、この場合、図4に示されるように、枠体30aと端面板30gが一体化された部材として構成され、且つ/又は枠体30fと端面板30hが一体化された部材として構成されるのが好ましい。勿論、枠体30aと端面板30g、及び/又は枠体30fと端面板30hが別体として形成されてもよい。一方、両端に位置しない枠体30b,30c,30d,30eは、両端に位置する枠体30a,30fの間に液密性及び気密性を確保可能に連結され、図5に示されるように両端に位置する枠体30a,30fと対応する形状(図示例では略コ字状)を有することが望ましい。本明細書において「略コ字状」とは角が直角ないし略直角のコ字状のみならず、角に丸みを帯びたコ字様形状(例えばU字状)も包含する意味である。このように電池容器30は複数の構成部品からなる組み立て体である。このような構成の電池容器30を採用することで、以下に述べる本発明の組み立て方法が実現可能となる。
電池容器30、すなわちそれを構成する枠体30a,30b,30c,30d,30e,30f及び端面板30g,30hは樹脂製であるのが好ましい。樹脂製容器を構成する樹脂は水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物に対する耐性を有する樹脂であるのが好ましく、より好ましくはポリオレフィン樹脂、ABS樹脂、又は変性ポリフェニレンエーテルであり、さらに好ましくはABS樹脂又は変性ポリフェニレンエーテルである。電池容器30は、特に開口部36が蓋で閉じられた形態において、液密性(好ましくは液密性及び気密性)を有する構造を有するのが好ましい。また、電池容器30は、負極板22a,22b,22cを含む区画に充放電時の負極反応に伴う水分量の減増を許容する容積の負極側余剰空間を有するのが好ましい。電池容器30内が透水性及び通気性を有しないセパレータ構造体20a,20b,20c,20d,20eによって空気極板12a,12b,12cを含む区画と、負極板22a,22b,22cを含む区画とが隔離されるため、空気亜鉛二次電池において充放電に伴い負極室における水分量の増減が生じる。この水分量の増減に負極側余剰空間で有効に対処することができ、電池容器30の液密性をより確実なものにすることができる。
本発明による電池の組み立て方法は、枠体30a,30c,30eとこの枠体で区画された領域内に配置される空気極板12a,12b,12cとの組合せ(すなわち枠体30a/空気極板12aの対、枠体30c/空気極板12bの対、及び枠体30e/空気極板12cの対)と、枠体30b,30d,30fとこの枠体で区画された領域内に配置される負極板22a,22b,22cとの組合せ(すなわち枠体30b/負極板22aの対、枠体30d/負極板22bの対、及び枠体30f/負極板22cの対)とを交互に複数回積層させる工程(以下、積層工程という)を含むものである。勿論、図示例と異なり、空気極板と負極板の1対で構成される単位電池の場合には、交互に積層できないため、1回の積層で足りる。積層工程は、空気極板12a,12b,12cと負極板22a,22b,22cとをセパレータ構造体20a,20b,20c,20d,20eで互いに隔離し且つ隣接する枠体30a,30b,30c,30d,30e,30f間でセパレータ構造体20a,20b,20c,20d,20eの外縁を挟持させながら行われる。この方法によれば、1枚又は複数枚の空気極板、1枚又は複数枚の負極板、及び水酸化物イオン伝導性を有するが透水性及び通気性を有しない1枚又は複数枚のセパレータ構造体(空気極板と一体化されうる)を用いて、空気極側と負極側をセパレータ構造体で確実に仕切りながら、シーケンシャル且つ効率的に所望の層数の亜鉛空気電池を組み立てることができる。
電池容器30の両端に位置する枠体30a,30fの各々は、(i)図4に示されるように枠体30a,30fで区画された領域を塞ぐ端面板30g,30hを予め備えてなるものであってもよいし、(ii)予め配置された端面板30g,30h上に枠体30a,30fで区画された領域が該端面板30g,30hで塞がれるように配置されてもよいし、或いは(iii)積層後に枠体30a,30fで区画された領域が端面板30g,30hで塞がれてもよい。いずれにしても、結果的に、積層された枠体30a,30b,30c,30d,30e,30f及び端面板30g,30hが全体として1つの電池容器を構成すればよい。
前述のとおり、積層工程では、枠体30a,30c,30eと空気極板12a,12b,12cとの組合せ(すなわち枠体30a/空気極板12aの対、枠体30c/空気極板12bの対、及び枠体30e/空気極板12cの対)と、枠体30b,30d,30fとこの枠体で区画された領域内に配置される負極板22a,22b,22cとの組合せ(すなわち枠体30b/負極板22aの対、枠体30d/負極板22bの対、及び枠体30f/負極板22cの対)とが交互に積層される。積層工程においては、最終的に一体化した形状(好ましくは筐体)として電池容器30を形成できるように、枠体30a,30b,30c,30d,30e,30fはそれらの外面が互いに連続した面を構成するように配置されるのが好ましい。
枠体30a,30c,30eと該枠体で区画された領域内に配置される空気極板12a,12b,12cとの組合せは、(i)枠体30a,30c,30eを配置した後又は配置すると同時に上記領域内に空気極板12a,12b,12cを配置することにより与えてもよいし、(ii)空気極板12a,12b,12cを配置した後に空気極板の周りに枠体30a,30c,30eを配置することにより与えてもよいし、或いは(iii)空気極板12a,12b,12cが上記領域内に予め組み込まれた枠体30a,30c,30eを配置することにより与えてもよい。同様に、枠体30b,30d,30fとこの枠体で区画された領域内に配置される負極板22a,22b,22cとの組合せは、(i)枠体30b,30d,30fを配置した後又は配置すると同時に上記領域内に負極板22a,22b,22cを配置することにより与えてもよいし、(ii)負極板22a,22b,22cを配置した後に負極板の周りに枠体30b,30d,30fを配置することにより与えてもよいし、或いは(iii)負極板22a,22b,22cが上記領域内に予め組み込まれた枠体30b,30d,30fを配置することにより与えてもよい。
空気極板12a,12b,12cと負極板22a,22b,22cとはセパレータ構造体20a,20b,20c,20d,20eで互いに隔離されるように積層される。これは、隣接する枠体30a,30b,30c,30d,30e,30f間でセパレータ構造体20a,20b,20c,20d,20eの外縁を挟持させながら積層を行うことで実現される。すなわち、積層の際、セパレータ構造体20a,20b,20c,20d,20eを、その外縁が枠体30a,30b,30c,30d,30e,30fに架かるように配置するのが好ましい。このとき、セパレータ構造体20a,20b,20c,20d,20eの端部が枠体30a,30b,30c,30d,30e,30fの最奥部(例えば段差部分34a,34b,34c,34d,34e,34fが存在する場合には当該段差部分)に達するように配置するのが好ましい。こうすることで、空気極側と負極側をセパレータ構造体20a,20b,20c,20d,20eでより一層確実に仕切ることができる。いずれにしても、セパレータ構造体20a,20b,20c,20d,20eの外縁と枠体30a,30b,30c,30d,30e,30fとの間に極力隙間が無いことがセパレータ機能を十分に発揮させる上で望ましい。
図1においては、下から順に、枠体30a/空気極板12aの対、枠体30b/負極板22aの対、枠体30c/空気極板12bの対、枠体30d/負極板22bの対、枠体30e/空気極板12cの対、及び枠体30f/負極板22cの対といったように、空気極板12a,12b,12cの方がそれぞれ対応する負極板22a,22b,22cよりも先に配置ないし積層されているが、その逆であってもよい。例えば、下から順に、枠体30a/負極板22aの対、枠体30b/空気極板12aの対、枠体30c/負極板22bの対、枠体30d/空気極板12bの対、枠体30e/負極板22cの対、及び枠体30f/空気極板12cの対といったように負極板22a,22b,22cの方がそれぞれ対応する空気極板12a,12b,12cよりも先に配置ないし積層されてもよい。したがって、以下、図1に示されるように空気極板12a,12b,12cがそれぞれ負極板22a,22b,22cよりも先に配置される構成に基づいて説明するが、図1に示される構成において空気極板12a,12b,12cと負極板22a,22b,22cを互いに置き換えた構成としてもよいことはいうまでもない。
本発明の好ましい態様によれば、枠体30a,30b,30c,30d,30e,30fは切欠部32a,32b,32c,32d,32e,32fを有しており、全ての枠体30a,30b,30c,30d,30e,30fの切欠部32a,32b,32c,32d,32e,32fが同じ側に位置するように枠体30a,30b,30c,30d,30e,30fが積層され、それにより切欠部32a,32b,32c,32d,32e,32fが繋がって電池容器に開口部36を形成させることができる。この場合、切欠部32a,32b,32c,32d,32e,32fを有する枠体30a,30b,30c,30d,30e,30fが略コ字の形状を有し、それにより電池容器30が開口部36を有する筐体状に構成されるのが好ましい。略コ字の形状を有することで枠体30a,30b,30c,30d,30e,30fに対して、空気極板12a,12b,12c、負極板22a,22b,22c及びセパレータ構造体20a,20b,20c,20d,20eを配置ないし挿入しやすくなるとともに、電池容器30への電解液の注入がしやすくなる。また、電池容器30が開口部36を有する筐体状に構成されることで安定性良く載置可能な電池を提供できる。電池容器30の完成後、開口部36のうち少なくとも負極板22a,22b,22cを含む区画を蓋(図示せず)で塞ぐのが好ましい。この蓋は液密性を確保できるように開口部36との接合部分を封止されるのが好ましい。
空気極板12a,12b,12c、負極板22a,22b,22c、セパレータ構造体20a,20b,20c,20d,20e、枠体30a,30b,30c,30d,30e,30f及び端面板30g,30hの各々(以下、各構成部材という)は横向き及び縦向きのいずれの向きに配置されてもよい。すなわち、図1及び2に示されるように、各構成部材が横向きに配置されて、それにより積層が縦方向に行われる構成としてもよい。この場合、積層後、電池容器30を回転して開口部36を上に向ける工程をさらに行うのが電解液の注入及び保持の観点から好ましい。あるいは、図3に示されるように、電池10の各構成部材が縦向きに配置され、それにより積層が横方向に行われる構成としてもよい。好ましくは、図1及び2に示されるように各構成部材は横向きに配置される。これにより積層される各構成部材の位置ずれが生じにくく組み立て作業をより安定的に行うことができる。
電池容器30内、具体的には電池容器30内の負極板22a,22b,22cを含む区画には電解液(図示せず)を注入する。電解液はアルカリ金属水酸化物水溶液を含んでなる。図1及び2に示されるように、各構成部材が横向きに配置されて、それにより積層が縦方向に行われる構成の場合には、完成後の電池容器30を回転して開口部36を上に向けるのが電解液の注入がしやすくなるので好ましい。前述のとおり、電池容器30の完成後、開口部36のうち少なくとも負極板22a,22b,22cを含む区画を蓋(図示せず)で塞ぐのが好ましいが、電解液の負極板22a,22b,22cを含む区画への注入は、開口部36を蓋で塞ぐ前に行ってもよいし、蓋で塞いだ後に蓋又はそれ以外の箇所に設けられた注入孔を介して行ってもよく、この注入口は電解液の注入後に任意の材料(例えば樹脂)で封止又は閉栓するのが好ましい。
本発明の好ましい態様によれば、図4及び5に示されるように、枠体30a,30b,30c,30d,30e,30fの各々がそれらの内縁に沿って少なくとも1段低くなる段差部分34a,34b,34c,34d,34e,34fを有しており、これらの段差部分34a,34b,34c,34d,34e,34fにセパレータ構造体20a,20b,20c,20d,20eの外縁が重なるようにセパレータ構造体20a,20b,20c,20d,20eが配置されうる。枠体には図5に示される枠体30b,30c,30d,30eのようにその内縁に沿って上側と下側に計2本の段差部分が形成されるのが望ましいが、図4に示される枠体30a,30fのように上側及び下側のいずれか一方にのみ段差部分が形成されてもよい。このような構成とすることで段差部分34a,34b,34c,34d,34e,34fを利用して液密性及び気密性を確保可能にセパレータ構造体20a,20b,20c,20d,20eの外縁を接着剤や熱融着等により接着しやすくなる。その結果、負極側の電解液に含まれるZnが空気極側に移動するのを有意に阻止することができ、それにより、負極板22a,22b,22cが亜鉛を含む場合に問題となる、Znの空気極側への移動による亜鉛デンドライトの成長を効果的に防止することができる。あるいは、段差部分34a,34b,34c,34d,34e,34fにセパレータ構造体20a,20b,20c,20d,20eを接着しない構成としてもよく、この場合であっても、亜鉛デンドライトの成長を段差部分34a,34b,34c,34d,34e,34fとセパレータ構造体20a,20b,20c,20d,20eとの間で不可避的に形成されうる微小隙間が迂回した形状となるため、仮にその微小隙間をZnが移動することがあったとしても、迂回した経路に起因してZn移動距離を極度に長く確保することができ、Znの空気極側への移動による亜鉛デンドライト成長を遅延ないし抑制することができる。
本発明の好ましい態様によれば、積層工程において、(i)隣接する枠体30a,30b,30c,30d,30e,30f同士を液密性及び気密性を確保可能に接着すること、及び/又は(ii)端面板30g,30hと枠体30a,30fとを液密性及び気密性を確保可能に接着すること、及び/又は(iii)枠体30a,30b,30c,30d,30e,30fとセパレータ構造体20a,20b,20c,20d,20eの外縁とを液密性及び気密性を確保可能に接着することが行われるのが好ましい。すなわち、この態様においては電池容器30を1層組み立てるごとに接着を行う手順となる。この態様においては、積層工程における接着が接着剤、熱融着及び溶剤接着からなる群から選択される少なくともいずれか1種により行われるのが好ましい。接着剤はエポキシ樹脂系接着剤が耐アルカリ性に特に優れる点で好ましい。ホットメルト接着剤を用いてもよい。積層工程における熱融着は、レーザー溶着、熱圧着、熱板溶着、超音波溶着、高周波溶着、その他加熱を用いた溶着(例えば加熱した型(例えば金型)内でプレスすることによる溶着、はんだごてで加熱することによる溶着等)であってよく、特に限定されないが、特に好ましくは確実な接着を高い生産性で行える点でレーザー溶着である。積層工程におけるレーザー溶着は、枠体30a,30b,30c,30d,30e,30fの被接着面(図示例では略コ字状端面)に対して略垂直方向(例えば図2及び3に示されるy方向)又は略平行方向(例えば図2及び3に示されるx方向)にレーザーを入射させて被接着部位を溶融させるように行われるのが好ましい。この場合、枠体30a,30b,30c,30d,30e,30f及び/又は端面板30g,30hは、レーザー光の照射により溶融可能な樹脂(例えば熱可塑性樹脂)で構成されるのが好ましい。特に、枠体30a,30b,30c,30d,30e,30fの被接着面(図示例では略コ字状端面)に対して略垂直方向(例えば図2及び3に示されるy方向)にレーザーを入射させて被接着部位を溶融させる場合には、枠体30a,30b,30c,30d,30e,30f及び/又は端面板30g,30hに(例えば図1及び2では上から)レーザーを透過させて接合界面まで局所的に加熱溶融を起こさせることが望まれる。いずれの樹脂にせよ、電解液を収容する電池容器30を構成する樹脂である以上、電解液に含まれる水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物に対する耐性を有する樹脂であるのが好ましいのはいうまでもない。また、樹脂同士を接着させる他の好ましい手法として、溶剤接着が挙げられる。溶剤接着は、有機溶剤を用いて被接着部材である樹脂自体を溶解させ、溶解させた樹脂の渾然一体化により接着を実現する手法である。溶剤接着において、溶剤は容易に揮発するため、数秒〜数十秒程度で乾燥し、残留物は無くなる。溶剤接着に用いる溶剤は接着されるべき樹脂の材質に応じて、樹脂の溶解性や溶剤の揮発性等を勘案して適宜決定すればよい。例えば、ABS樹脂同士の溶剤接着にはメチルエチルケトン(MEK)を用いるのが好ましく、PET樹脂同士の溶剤接着にはジクロロメタンを用いるのが好ましい。
本発明の別の好ましい態様によれば、積層工程後に、(i)隣接する枠体30a,30b,30c,30d,30e,30f同士を液密性及び気密性を確保可能に接着する工程、及び/又は(ii)枠体30a,30fと端面板30g,30hとを液密性及び気密性を確保可能に接着する工程、及び/又は(iii)枠体30a,30b,30c,30d,30e,30fとセパレータ構造体20a,20b,20c,20d,20eの外縁とを液密性及び気密性を確保可能に接着する工程を行ってもよい。この態様における接着は熱融着により行われるのが好ましい。熱融着は、レーザー溶着、熱圧着、熱板溶着、超音波溶着、高周波溶着、その他加熱を用いた溶着(例えば加熱した型(例えば金型)内でプレスすることによる溶着、はんだごてで加熱することによる溶着等)であってよく、特に限定されないが、特に好ましくは確実な接着を高い生産性で行える点でレーザー溶着である。積層工程後のレーザー溶着は、枠体30a,30b,30c,30d,30e,30fの被接合面(図示例では略コ字状端面)に対して略平行方向(例えば図2及び3に示されるx方向)及び/又は端面板30g,30hとこれに隣接する枠体30a,30fの被接合面にレーザーを入射させて被接着部位を溶融させるように行われるのが好ましい。この場合、枠体30a,30b,30c,30d,30e,30f及び/又は端面板30g,30hは、レーザー光の照射により溶融可能な樹脂(例えば熱可塑性樹脂)で構成されるのが好ましい。いずれの樹脂にせよ、電解液を収容する電池容器30を構成する樹脂である以上、電解液に含まれる水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物に対する耐性を有する樹脂であるのが好ましいのはいうまでもない。
熱融着により接着を行ういずれの態様においても、隣接する枠体30a,30b,30c,30d,30e,30f同士の間又はその接合部分の近傍、及び/又は端面板30g,30hとこれに隣接する枠体30a,30fの間又はその接合部分の近傍に、熱融着の際に軟化又は溶融する樹脂が配設され、該樹脂が熱融着の際に軟化又は溶融して接着を促進又は強化するのが好ましい。このような樹脂は熱融着の際に軟化又は溶融するものであれば特に限定されず、好ましくは熱可塑性樹脂である。特に、熱融着をレーザー溶着により行う場合には、レーザー光を吸収して熱に変換する効率の高い樹脂(例えば色材を含有した又は塗布した樹脂)を用いるのが好ましい。熱融着の際に軟化又は溶融する樹脂は、シート状、テープ状等の任意の形態で非接着部位又はその近傍に配設すればよい。例えばシート状又はテープ状の樹脂は接着させるべき部材間に挟持させやすい点で好ましい。あるいは接合部分の外周に沿って線状、シート状又はテープ状に樹脂を配設し、熱融着の際に接合部分に浸入させる構成としてもよい。
空気極板12a,12b,12cは、酸素を正極活物質として使用可能な空気極触媒を含むものであれば特に限定されないが、外気中の酸素及び水分を効率良く取り込めるように構成されるのが好ましい。例えば、図6に示されるように、空気極板12a,12b,12cが、外気が流入可能な内部空間を有する中空板状の空気極14a,14b,14cを備えてなるのが好ましい。また、空気極板12a,12b,12cは、空気極14a,14b,14cと該空気極14a,14b,14cが担持される空気極集電体16a,16b,16cとを備えてなるのが好ましく、空気極集電体16a,16b,16cは通気性を有するのが好ましい。したがって、空気極板12a,12b,12cは、上述した内部空間に、通気性を有する空気極集電体16a,16b,16cを備えてなるのが好ましい。この点、図示例の空気極集電体16a,16b,16cは開放口を有する中空の板形状に構成されているが、これに限らず、メッシュ状や発泡金属等の、内部空間を確保可能な種々の形態の集電体であってよい。あるいは、空気極集電体に加えて、又は空気極集電体の代わりに、通気性を有するスペーサを空気極板の内部又は外側に設けて外気を空気極に到達可能としてもよい。この場合のスペーサは空気極触媒の触媒機能を阻害しないかぎり、導電性の有無を問わずあらゆる材料で構成されてよく、例えば、絶縁体で構成されてもよいし、不織布や多孔質膜等により構成されてもよい。例えば、スペーサで内部空間を確保しながら、該スペーサの両側に空気極及び必要に応じて空気極集電体を設ける構成としてもよい。いずれにせよ、何らかの構造により空気極板12a,12b,12c、特に空気極14a,14b,14cには外気が到達可能とされるのが望ましい。
空気極板12a,12b,12cとこの空気極板の少なくとも片側のセパレータ構造体と20a,20c,20eは、予め一体化されたセパレータ/空気極複合材料の形態で用意され、それにより空気極板12a,12b,12cとセパレータ構造体20a,20c,20eが一緒に取り扱われるのが好ましい。また、空気極板がその両側でセパレータ構造体と一体化されていてもよく、例えば、空気極板12bはその両側のセパレータ構造体20b,20cと一体化され、且つ/又は空気極板12cはその両側のセパレータ構造体20d,20eと一体化されうる。特に、空気極14a,14b,14cは、セパレータ構造体20a,20c,20eと機械的に接触させるよりも、セパレータ構造体20a,20c,20e上に印刷積層等の手法により事前により予め一体的に接合されているのが、空気極及びセパレータ間で低い界面抵抗及び高い水酸化物イオン伝導性を実現できる点で望ましい。同様のことは空気極集電体16a,16b,16cにも当てはまる。したがって、上記セパレータ/空気極複合材料に空気極集電体16a,16b,16cが予め組み込まれた形態で用意されるのも好ましい。よって、本発明の特に好ましい態様によれば、セパレータ構造体20a,20c,20eに予め空気極板12a,12b,12c及び空気極集電体16a,16b,16cが組み込まれてセパレータ/空気極/集電体複合材料として一緒に取り扱われる。この場合には、例えば、この複合材料と枠体との組合せと、枠体と負極板との組合せと交互に積層して空気亜鉛電池10を組み立てればよい。
負極板22a,22b,22cは、亜鉛、亜鉛合金及び/又は亜鉛化合物を負極活物質として含んでなる。図8に示されるように、負極板22a,22b,22cは、負極活物質24a,24b,24cと該負極活物質24a,24b,24cが担持される負極集電体26a,26b,26cとを備えてなるのが好ましい。
空気極板12a,12b,12c及び負極板22a,22b,22cは、開口部36を上に向けた場合に、空気極板12a,12b,12c及び負極板22a,22b,22cの上端の高さが電池容器30の上端の高さよりも低くなるように構成されてなるのが好ましい。
空気極集電体16a,16b,16cが、開口部36から(又は開口部36を蓋で閉じた後においては蓋又はその近傍に設けられたスリット等から)電池容器30外に突出する空気極集電体延出部18a,18b,18cを有するのが好ましい。また、負極集電体26a,26b,26cが、開口部36から(又は開口部36を蓋で閉じた後においては蓋又はその近傍に設けられたスリット等から)電池容器30外に突出する負極集電体延出部28a,28b,28cを有してなるのが好ましい。空気極集電体延出部18a,18b,18cと負極集電体延出部28a,28b,28cをそれぞれ所望の位置に設けることで、電池10の端子形成がしやすくなる。例えば、図1〜3に示されるように、空気極集電体延出部18a,18b,18cがある位置で一列に並ぶ一方、負極集電体延出部28a,28b,28cが別の位置で一列に並ぶ構成とするのが端子形成上有利である。なお、負極集電体延出部28a,28b,28cが電池容器30外に突出するための蓋又はその近傍に設けられたスリット等は液密性を確保可能に樹脂等で封止されてなるのが好ましい。
セパレータ構造体20a,20b,20c,20d,20eは水酸化物イオン伝導性を有するが透水性及び通気性を有しないセパレータを含んでなるものであり、典型的には図7に示されるような板状の形態を有する。すなわち、セパレータ構造体20a,20b,20c,20d,20eの主要部分が水酸化物イオン伝導性を有するが透水性及び通気性を有しないセパレータで構成される。セパレータは、透水性及び通気性を有しない程に緻密化された板状、膜状又は層状の形態であり、水酸化物イオン伝導性を有する材料で構成される。なお、本明細書において「透水性を有しない」とは、後述する例1で採用される「緻密性判定試験I」又はそれに準ずる手法ないし構成で透水性を評価した場合に、測定対象物(例えばLDH膜及び/又は多孔質基材)の一面側に接触した水が他面側に透過しないことを意味する。そのようなセパレータの典型例としてはセラミックスセパレータ(無機固体電解質セパレータ)が挙げられる。セパレータ構造体20a,20b,20c,20d,20eは、空気極板と負極板の間の各々の位置に空気極板と負極板を隔離するように設けられる。
セパレータ構造体20a,20b,20c,20d,20eは空気極板12a,12b,12cと負極板22a,22b,22cを隔離するように設けられる。セパレータ構造体20a,20b,20c,20d,20eの主要部分を構成するセパレータは水酸化物イオン伝導性を有するが透水性及び通気性を有しないのが好ましい。すなわち、セパレータが透水性及び通気性を有しないということは、セパレータ構造体20a,20b,20c,20d,20eの主要部分を構成するセパレータが水及び気体を通さない程の高度な緻密性を有することを意味し、透水性や通気性を有する多孔性フィルムやその他の多孔質材料ではないことを意味する。このため、亜鉛空気二次電池を構成した場合、充電時に生成する亜鉛デンドライトによるセパレータの貫通を物理的に阻止して正負極間の短絡を防止し、かつ、空気中の二酸化炭素の侵入を阻止して電解液中での(二酸化炭素に起因する)アルカリ炭酸塩の析出を防止するのに極めて効果的な構成となっている。いずれにしても、セパレータは水酸化物イオン伝導性を有するため、空気極側と負極側との間で必要な水酸化物イオンの効率的な移動を可能として空気極及び負極における充放電反応を実現することができる。
セパレータ構造体20a,20b,20c,20d,20eはその外周に沿って外枠(図示せず)を備えていてもよく、これら外枠内及び/又は外枠上に1枚又はそれ以上のセパレータが嵌合又は接合されてなり、これら外枠が枠体30a,30b,30c,30d,30e,30fと係合されてなるのが好ましい。また、外枠の内側に桟が設けられ、外枠と桟で形成された複数の窓状の領域に複数のセパレータが個々に嵌合又は接合されてもよい。外枠及び(存在する場合には)桟は透水性及び通気性を有しない緻密質材料で構成されるのが好ましく、それによりセパレータ構造体20a,20b,20c,20d,20eが全体として透水性及び通気性を有しないものとすることができる。また、外枠及び(存在する場合には)桟とセパレータとの接合部分は接着剤等により液密性を確保できるように封止するのが好ましい。外枠及び(存在する場合には)桟を構成しうる緻密質材料はセラミックス製又は樹脂製であるのが好ましいが、より好ましくは電池容器30が樹脂製の場合に接着がしやすい点で樹脂製である。いずれにせよ、電解液に対する耐性として耐アルカリ性に優れた材料であることが望まれる。そのようなセラミックス材料の好ましい例としては、アルミナ、ジルコニア、チタニア、マグネシア、スピネル、カルシア、コージライト、ゼオライト、ムライト、フェライト、酸化亜鉛、炭化ケイ素、及びそれらの任意の組合せが挙げられ、より好ましくは、アルミナ、ジルコニア、チタニア、及びそれらの任意の組合せであり、特に好ましくはアルミナ、ジルコニア、及びその組合せが挙げられる。樹脂は水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物に対する耐性を有する樹脂であるのが好ましく、より好ましくはポリオレフィン樹脂、ABS樹脂、又は変性ポリフェニレンエーテルであり、さらに好ましくはABS樹脂又は変性ポリフェニレンエーテルである。例えば電池容器30が樹脂製の場合、電池容器30と同種の樹脂で外枠及び桟が構成されていてもよい。電池容器30が樹脂で構成され且つセパレータ構造体20a,20b,20c,20d,20eの外枠も同種又は異種(好ましくは同種)の樹脂で構成される場合、電池容器30、すなわちそれを構成する枠体30a,30b,30c,30d,30e,30fとの接着剤や熱融着(例えばレーザー溶着)による接着がしやすいとの利点がある。
セパレータは水酸化物イオン伝導性を有する無機固体電解質体からなるのが好ましく、この無機固体電解質体は板状、膜状又は層状の形態を有するのが好ましい。セパレータとして水酸化物イオン伝導性の無機固体電解質体を用いることで、正負極間の電解液を隔離するとともに水酸化物イオン伝導性を確保する。無機固体電解質体は透水性及び通気性を有しない程にまで緻密化されていることが望まれる。例えば、無機固体電解質体は、アルキメデス法で算出して、90%以上の相対密度を有するのが好ましく、より好ましくは92%以上、さらに好ましくは95%以上であるが、亜鉛デンドライトの貫通を防止する程度に緻密で硬いものであればこれに限定されない。このような緻密で硬い無機固体電解質体は水熱処理を経て製造することが可能である。したがって、水熱処理を経ていない単なる圧粉体は、緻密でなく、溶液中で脆いことから本発明の無機固体電解質体として好ましくない。もっとも、水熱処理を経たものでなくても、緻密で硬い無機固体電解質体が得られるかぎりにおいて、あらゆる製法が採用可能である。
セパレータないし無機固体電解質体は、水酸化物イオン伝導性を有する無機固体電解質を含んで構成される粒子群と、これら粒子群の緻密化や硬化を助ける補助成分との複合体であってもよい。あるいは、セパレータは、基材としての開気孔性の多孔質体と、この多孔質体の孔を埋めるように孔中に析出及び成長させた無機固体電解質(例えば層状複水酸化物)との複合体であってもよい。この多孔質体を構成する物質の例としては、アルミナ、ジルコニア等のセラミックスや、発泡樹脂又は繊維状物質からなる多孔性シート等の絶縁性の物質が挙げられる。
無機固体電解質体は、一般式:M2+ 1−x3+ (OH)n− x/n・mHO(式中、M2+は2価の陽イオンであり、M3+は3価の陽イオンであり、An−はn価の陰イオンであり、nは1以上の整数であり、xは0.1〜0.4であり、mは0以上である)の基本組成を有する層状複水酸化物(LDH)を含んでなるのが好ましく、より好ましくはそのようなLDHからなる。上記一般式において、M2+は任意の2価の陽イオンでありうるが、好ましい例としてはMg2+、Ca2+及びZn2+が挙げられ、より好ましくはMg2+である。M3+は任意の3価の陽イオンでありうるが、好ましい例としてはAl3+又はCr3+が挙げられ、より好ましくはAl3+である。An−は任意の陰イオンでありうるが、好ましい例としてはOH及びCO 2−が挙げられる。したがって、上記一般式において、M2+がMg2+を含み、M3+がAl3+を含み、An−がOH及び/又はCO 2−を含むのが好ましい。nは1以上の整数であるが、好ましくは1又は2である。xは0.1〜0.4であるが、好ましくは0.2〜0.35である。mは任意の実数である。また、上記一般式においてM3+の一部または全部を4価またはそれ以上の価数の陽イオンで置き換えてもよく、その場合は、上記一般式における陰イオンAn−の係数x/nは適宜変更されてよい。mは水のモル数を意味する任意の数であり、0以上、典型的には0を超える又は1以上の実数ないし整数である。
無機固体電解質体は水熱処理によって緻密化されたものであるのが好ましい。水熱処理は、層状複水酸化物、とりわけMg−Al型層状複水酸化物の一体緻密化に極めて有効である。水熱処理による緻密化は、例えば、特許文献1(国際公開第2013/118561号)に記載されるように、耐圧容器に純水と板状の圧粉体を入れ、120〜250℃、好ましくは180〜250℃の温度、2〜24時間、好ましくは3〜10時間で行うことができる。もっとも、水熱処理を用いたより好ましい製造方法については後述するものとする。
無機固体電解質体は、透水性及び通気性を有しない程に緻密化された膜状又は層状のいずれの形態であってもよく、膜状又は層状の無機固体電解質体が多孔質基材上又はその中に形成されたものであるのが好ましい。板状よりも厚さが薄い膜状又は層状の形態であると亜鉛デンドライトの貫通を阻止するための必要最低限の堅さを確保しながらセパレータの抵抗を有意に低減できるとの利点がある。膜状又は層状の形態の場合には、厚さが100μm以下であるのが好ましく、より好ましくは75μm以下、さらに好ましくは50μm以下、特に好ましくは25μm以下、最も好ましくは5μm以下である。このように薄いことでセパレータの低抵抗化を実現できる。厚さの下限値は用途に応じて異なるため特に限定されないが、セパレータ膜ないし層として望まれるある程度の堅さを確保するためには厚さ1μm以上であるのが好ましく、より好ましくは2μm以上である。
セパレータはその片面又は両面に多孔質基材をさらに備えてなるものであるのが好ましい。多孔質基材は透水性を有し、それ故電解液がセパレータに到達可能であることはいうまでもないが、多孔質基材があることでセパレータ上により安定に水酸化物イオンを保持することも可能となる。また、多孔質基材により強度を付与できるため、セパレータを薄くして低抵抗化を図ることもできる。また、多孔質基材上又はその中に無機固体電解質体(好ましくはLDH)の緻密膜ないし緻密層を形成することもできる。セパレータの片面に多孔質基材を設ける場合には、多孔質基材を用意して、この多孔質基材に無機固体電解質を成膜する手法が考えられる(この手法については後述する)。一方、セパレータの両面に多孔質基材を設ける場合には、2枚の多孔質基材の間に無機固体電解質の原料粉末を挟んで緻密化を行うことが考えられる。例えば、後述する図9において多孔質基材148はセパレータ120の片面の全面にわたって設けられているが、セパレータ120の片面の一部(例えば充放電反応に関与する領域)にのみ設ける構成としてもよい。例えば、多孔質基材上又はその中に無機固体電解質体を膜状又は層状に形成した場合、その製法に由来して、セパレータの片面の全面にわたって多孔質基材が設けられた構成になるのが典型的である。一方、無機固体電解質体を(基材を必要としない)自立した板状に形成した場合には、セパレータの片面の一部(例えば充放電反応に関与する領域)にのみ多孔質基材を後付けしてもよいし、片面の全面にわたって多孔質基材を後付けしてもよい。なお、多孔質基材の構成については多孔質基材付きLDHセパレータに関するセクションで後述するため、ここでの詳細な説明は省略する。
電解液はアルカリ金属水酸化物水溶液を含んでなる。アルカリ金属水酸化物の例としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等が挙げられるが、水酸化カリウムがより好ましい。亜鉛合金の自己溶解を抑制するために、電解液中に酸化亜鉛、水酸化亜鉛等の亜鉛化合物を添加してもよい。前述のとおり、アルカリ電解液は空気極及び/又は負極と混合させて空気極合材及び/又は負極合材の形態で存在させてもよい。また、電解液の漏洩を防止するために電解液をゲル化してもよい。ゲル化剤としては電解液の溶媒を吸収して膨潤するようなポリマーを用いるのが望ましく、ポリエチレンオキサイド,ポリビニルアルコール,ポリアクリルアミドなどのポリマーやデンプンが用いられる。
セパレータが層状複水酸化物(LDH)を含む場合、電解液にはAlを含む化合物が溶解されてなるのが好ましい。水酸化カリウム水溶液等のアルカリ金属水酸化物水溶液にLDHを接触させた場合、LDHの典型的な構成元素であるAlが水溶液中に溶出して緻密膜の劣化を招くことがあるが、Alを含む化合物を電解液に添加しておくことでそのようなAlの溶出及びそれによる緻密膜の劣化を防止することができる。このAlは、何らかの形態で電解液に溶解されていればよく、典型的には、金属イオン、水酸化物及び/又はヒドロキシ錯体の形態で電解液に溶解されうる。例えば、Alが溶解される形態としては、Al3+、Al(OH)2+、Al(OH) 、Al(OH) 、Al(OH) 、Al(OH) 2−等が挙げられる。Alを含む金属化合物の好ましい例としては、水酸化アルミニウム、γアルミナ、αアルミナ、ベーマイト、ダイアスポア、ハイドロタルサイト、及びそれらの任意の組合せが挙げられ、より好ましくは水酸化アルミニウム及び/又はγアルミナであり、最も好ましくは水酸化アルミニウムである。Alを含む化合物は電解液におけるAl濃度が0.001mol/L以上となるように添加するのが好ましく、より好ましくは0.01mol/L以上、さらに好ましくは0.1mol/L以上、特に好ましくは1.0mol/L以上、最も好ましくは2.0mol/L以上、3.0mol/L超、又は3.3mol/L以上である。電解液におけるAlの濃度の上限値は特に限定されず、Al化合物の飽和溶解度に達していてもよいが、例えば20mol/L以下又は10mol/L以下である。
上記のようにして組み立てられた亜鉛空気電池10にあっては、2枚の端面板30g,30hの間に、空気極板12a,12b,12c及び負極板22a,22b,22cがその間にセパレータ構造体20a,20b,20c,20d,20eを介在させつつ配置されてなる。また、セパレータ構造体20a,20b,20c,20d,20eの外縁が隣り合う枠体30a,30b,30c,30d,30e,30fの間に挟持されてなる。さらに、枠体30a,30b,30c,30d,30e,30fで区画された領域内で、且つ、セパレータ構造体20a,20eと端面板30g,30hとの間及び/又は隣り合うセパレータ構造体20a,20b,20c,20d,20eの間に、空気極板12a,12b,12c又は負極板22a,22b,22cが配置されてなる。そして、セパレータ構造体20a,20b,20c,20d,20eの外縁が、枠体30a,30b,30c,30d,30e,30fに液密性及び気密性を確保可能に接着されてなるのが好ましい。
亜鉛空気二次電池
本発明の好ましい態様によれば、亜鉛空気二次電池が提供される。したがって、以下に亜鉛空気二次電池について説明するが、以下の説明は概念的理解の促進のために図1のような積層電池の構成ではなく、より簡略化された1対の空気極板/セパレータ/負極板を備えた単位電池に基づいて行うものとする。もっとも、以下に説明される内容は各構成要素の詳細については技術的整合性を損なわない範囲内で本発明の多層電池にも同様に当てはまるのはいうまでもない。図9及び10に、本態様による亜鉛空気二次電池の一例を模式的に示す。図9及び10に示されるように、本態様による亜鉛空気二次電池130は、空気極132、負極134、アルカリ電解液136、セラミックスセパレータ140、容器146、及び所望により第三電極138を備えてなる。空気極132は正極として機能する。負極134は亜鉛、亜鉛合金及び/又は亜鉛化合物を含んでなる。電解液136は、負極134が浸漬される水系電解液である。容器146は、開口部146aを有し、負極134、電解液136及び第三電極138を収容する。セパレータ140は開口部146aを電解液136と接触可能に塞いで容器146と負極側密閉空間を形成し、それにより空気極132と電解液136を水酸化物イオン伝導可能に隔離する。所望により、空気極集電体142が空気極132に接触して設けられてよい。また、所望により、負極集電体144が負極134に接触して設けられてよく、その場合、負極集電体144も容器146内に収容されうる。
セパレータ140は、前述したとおり、水酸化物イオン伝導性を有するが透水性及び通気性を有しない部材であるのが好ましく、典型的には板状、膜状又は層状の形態である。セパレータ140が開口部146aを電解液136と接触可能に塞いで容器146と負極側密閉空間を形成することで、空気極132と電解液136を水酸化物イオン伝導可能に隔離する。セパレータ140の片面又は両面、好ましくは片面(電解液側)に多孔質基材148を設けてもよい。また、負極134とセパレータ140の間に不織布等の吸水性樹脂又は保液性樹脂製の保水部材を配置して、電解液136が減少した場合であっても電解液136を負極134及びセパレータ140に常時接触可能に保持する構成としてもよい。この保水部材は前述した第三電極138用の保水部材を兼ねたものであってもよいし、セパレータ140用の保水部材を別途用いてもよい。保水部材として市販の電池用セパレータも使用可能である。吸水性樹脂又は保液性樹脂の好ましい例としては、ポリオレフィン系樹脂が挙げられる。
空気極132は、亜鉛空気電池等の金属空気電池に使用される公知の空気極であってよく特に限定されない。空気極132は、空気極触媒、電子伝導性材料、及び所望により水酸化物イオン伝導性材料を含んでなるのが典型的である。もっとも、電子伝導性材料としても機能する空気極触媒を用いる場合には、空気極132は、そのような電子伝導性材料兼空気極触媒、及び所望により水酸化物イオン伝導性材料を含んでなるものであってもよい。
空気極触媒は、金属空気電池における正極として機能するものであれば特に限定されず、酸素を正極活物質として利用可能な種々の空気極触媒が使用可能である。空気極触媒の好ましい例としては、黒鉛等の酸化還元触媒機能を有するカーボン系材料、白金、ニッケル等の酸化還元触媒機能を有する金属、ペロブスカイト型酸化物、二酸化マンガン、酸化ニッケル、酸化コバルト、スピネル酸化物等の酸化還元触媒機能を有する無機酸化物が挙げられる。空気極触媒の形状は特に限定されないが、粒子形状であるのが好ましい。空気極12における空気極触媒の含有量は特に限定されないが、空気極12の合計量に対して、5〜70体積%が好ましく、より好ましくは5〜60体積%、さらに好ましくは5〜50体積%である。
電子伝導性材料は、導電性を有し、空気極触媒とセパレータ140(又は該当する場合には後述する中間層)との間で電子伝導を可能とするものであれば特に限定されない。電子伝導性材料の好ましい例としては、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック等のカーボンブラック類、鱗片状黒鉛のような天然黒鉛、人造黒鉛、膨張黒鉛等のグラファイト類、炭素繊維、金属繊維等の導電性繊維類、銅、銀、ニッケル、アルミニウム等の金属粉末類、ポリフェニレン誘導体等の有機電子伝導性材料、及びこれらの任意の混合物が挙げられる。電子伝導性材料の形状は、粒子形状であってもよいし、その他の形状であってもよいが、空気極132において厚さ方向に連続した相(即ち電子伝導相)をもたらす形態で用いられるのが好ましい。例えば、電子伝導性材料は、多孔質材料であってもよい。また、電子伝導性材料は空気極触媒との混合物ないし複合体の形態(例えば白金担持カーボン)であってもよく、前述したように電子伝導性材料としても機能する空気極触媒(例えば遷移金属を含有するペロブスカイト型化合物)であってもよい。空気極132における電子伝導性材料の含有量は特に限定されないが、空気極132の合計量に対して、10〜80体積%が好ましく、より好ましくは15〜80体積%、さらに好ましくは20〜80体積%である。
空気極132は、水酸化物イオン伝導性材料を任意成分としてさらに含んでいてもよい。特にセパレータ140が緻密質セラミックスである水酸化物イオン伝導性無機固体電解質からなる場合、そのようなセパレータ140上に(所望により水酸化物イオン伝導性を有する中間層を介在させて)、従来から使用される空気極触媒及び電子伝導性材料のみならず、水酸化物イオン伝導性材料をも含有させた空気極132を形成することで、緻密質セラミックス製のセパレータ140による所望の特性を確保しながら、金属空気電池において空気極の反応抵抗を低減することが可能となる。すなわち、空気極触媒及び電子伝導性材料のみならず、水酸化物イオン伝導性材料をも空気極132中に含有させることで、電子伝導相(電子伝導性材料)と、気相(空気)とからなる三相界面がセパレータ140(又は該当する場合には中間層)と空気極132の界面のみならず空気極132中にも存在することになり、電池反応に寄与する水酸化物イオンの授受がより広い表面積で効果的に行われることになる結果、金属空気電池において空気極の反応抵抗が低減されるものと考えられる。水酸化物イオン伝導性材料は、水酸化物イオンを透過可能な材料であれば特に限定されず、無機材料及び有機材料を問わず、各種の材質及び形態の材料が使用可能であり、前述した基本組成の層状複水酸化物であってもよい。水酸化物イオン伝導性材料は、粒子形態に限らず、空気極触媒及び電子伝導性材料を部分的に又は概ね全体的に被覆するような塗布膜の形態であってもよい。もっとも、この塗布膜の形態においても、イオン伝導性材料は緻密質ではなく、開気孔を有しており、空気極132の外側表面からセパレータ140(又は該当する場合には中間層)との界面に向かって、OやHOが気孔中を拡散できるように構成されるのが望ましい。空気極132における水酸化物イオン伝導性材料の含有量は特に限定されないが、空気極132の合計量に対して、0〜95体積%が好ましく、より好ましくは5〜85体積%、さらに好ましくは10〜80体積%である。
空気極132の形成はあらゆる手法で行われてよく、特に限定されない。例えば、空気極触媒、電子伝導性材料、及び所望により水酸化物イオン伝導性材料をエタノール等の溶媒を用いて湿式混合して乾燥及び解砕した後、バインダーと混合してフィブリル化し、得られたフィブリル状混合物を集電体に圧着して空気極132を形成し、この空気極132/集電体の積層シートの空気極132側をセパレータ140(又は該当する場合には中間層)に圧着してもよい。あるいは、空気極触媒、電子伝導性材料、及び所望により水酸化物イオン伝導性材料をエタノール等の溶媒と共に湿式混合してスラリー化し、このスラリーを中間層に塗布して乾燥させて空気極132を形成してもよい。したがって、空気極132はバインダーを含んでいてもよい。バインダーは、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂であってよく特に限定されない。
空気極132は5〜200μmの厚さを有する層状の形態であるのが好ましく、より好ましくは5〜100μmであり、さらに好ましくは5〜50μm、特に好ましくは5〜30μmである。例えば、水酸化物イオン伝導性材料を含む場合、上記範囲内の厚さであると、ガス拡散抵抗の増大を抑えながら三相界面の面積を比較的大きく確保することができ、空気極の反応抵抗の低減をより好ましく実現することができる。
空気極132のセパレータ140と反対側に、通気性を有する空気極集電体142が設けられるのが好ましい。この場合、空気極集電体142は空気極132に空気が供給されるように通気性を有するのが好ましい。空気極集電体142の好ましい例としては、ステンレス鋼、銅、ニッケル等の金属板若しくは金属メッシュ、カーボンペーパー、カーボンクロス、及び電子伝導性酸化物等が挙げられ、耐食性及び通気性の点でステンレス金網が特に好ましい。
セパレータ140及び空気極132の間には中間層が設けられてもよい。中間層はセパレータ140と空気極132の密着性を向上し、かつ、水酸化物イオン伝導性を有するものであれば特に限定されず、有機材料及び無機材料を問わず、公知各種の組成及び構成の層であることができる。中間層は高分子材料及び/又はセラミックス材料を含んでなるのが好ましく、この場合、中間層に含まれる高分子材料及びセラミックス材料の少なくともいずれか一方が水酸化物イオン伝導性を有していればよい。中間層は複数設けられてもよく、これら複数の中間層は互いに同種の及び/又は異なる層であってよい。すなわち、中間層は単層構成であってもよいし、2層以上の構成であってもよい。中間層は1〜200μmの厚さを有するのが好ましく、より好ましくは1〜100μmであり、さらに好ましくは1〜50μm、特に好ましくは1〜30μmである。このような厚さであると、セパレータ140と空気極132の密着性を向上しやすく、亜鉛空気二次電池において電池抵抗(特に空気極及びセパレータ間の界面抵抗)をより効果的に低減することができる。
負極134は、負極活物質として機能する亜鉛、亜鉛合金及び/又は亜鉛化合物を含んでなる。負極134は、粒子状、板状、ゲル状等のいかなる形状又は形態であってもよいが、粒子状またはゲル状とするのが反応速度の点で好ましい。粒子状の負極としては、30〜350μmの粒径のものを好ましく用いることができる。ゲル状の負極としては、100〜300μmの粒径の無汞化亜鉛合金粉、アルカリ電解液及び増粘剤(ゲル化剤)を混合攪拌してゲル状に形成したものを好ましく用いることができる。亜鉛合金は、マグネシウム、アルミニウム、リチウム、ビスマス、インジウム、鉛等の汞化又は無汞化の合金であることができ、負極活物質として所望の性能を確保できる限り、その含有量は特に限定されない。好ましい亜鉛合金は、無水銀かつ鉛無添加の無汞化亜鉛合金であり、アルミニウム、ビスマス、インジウム又はこれらの組合せを含むものがより好ましい。さらに好ましくは、ビスマスを50〜1000ppm、インジウムを100〜1000ppmで、アルミニウム及び/又はカルシウムを10〜100ppm含む無汞化亜鉛合金であり、特に好ましくはビスマスを100〜500ppm、インジウムを300〜700ppm、アルミニウム及び/又はカルシウムを20〜50ppm含む。好ましい亜鉛化合物の例としては酸化亜鉛が挙げられる。
負極134に接触して負極集電体144が設けられるのが好ましい。負極集電体144は図9及び10に示されるように容器146を貫通してその外側にまで延在して負極端子をそれ自体で構成してもよいし、別途設けられた負極端子に容器146内又は外で接続される構成としてもよい。負極集電体の好ましい例としては、ステンレス鋼、銅(例えば銅パンチングメタル)、ニッケル等の金属板若しくは金属メッシュ、カーボンペーパー、及び酸化物導電体等が挙げられる。例えば、銅パンチングメタル上に、酸化亜鉛粉末及び/又は亜鉛粉末、並びに所望によりバインダー(例えばポリテトラフルオロエチレン粒子)を含んでなる混合物を塗布して負極134/負極集電体144からなる負極板を好ましく作製することができる。その際、乾燥後の負極板(すなわち負極134/負極集電体144)にプレス処理を施して、電極活物質の脱落防止や電極密度の向上を図ることも好ましい。
所望により、第三電極138が、電解液136と接触するが負極134と接触しないように設けられてもよく、この場合、外部回路を経て空気極132と接続される。かかる構成とすることで、負極134から副反応により発生しうる水素ガスを第三電極138に接触させて以下の反応:
第三電極: H+2OH→2HO+2e
空気極放電: O+2HO+4e→4OHにより水に戻すことができる。別の表現をすれば、負極134で発生した水素ガスが第三電極138で吸収され自己放電をすることになる。これにより、水素ガスの発生による負極側密閉空間における内圧の上昇及びそれに伴う不具合を抑制又は回避できるとともに、(放電反応に伴い上記反応式に従い減少することになる)水を発生させて負極側密閉空間内での水不足を抑制又は回避することができる。すなわち、負極から発生した水素ガスを負極側密閉空間内で水に戻して再利用することができる。その結果、亜鉛デンドライトによる短絡及び二酸化炭素の混入の両方を防止するのに極めて効果的な構成を有しながら、水素ガス発生の問題にも対処可能な、信頼性の高い亜鉛空気二次電池を提供することができる。
第三電極138は、外部回路を経て空気極132と接続されることで、上述したような反応により水素ガス(H)を水(HO)に変換可能な電極であれば特に限定されないが、空気極132よりも酸素過電圧が大きいことが望まれる。また、第三電極138は通常の充放電反応に関与しないことも望まれる。第三電極138は、白金及び/又は炭素材料を含んでなるのが好ましく、より好ましくは炭素材料を含んでなる。炭素材料の好ましい例としては、天然黒鉛、人造黒鉛、ハードカーボン、ソフトカーボン、炭素繊維、カーボンナノチューブ、グラフェン、活性炭、及びそれらの任意の組合せが挙げられる。第三電極138の形状は特に限定されないが、比表面積が大きくなるような形状(例えばメッシュ状や粒子状)とするのが好ましい。第三電極138(好ましくは比表面積の大きい形状の第三電極)は集電体上に塗工及び/又は配置されるのがより好ましい。第三電極138用の集電体はいかなる形状であってもよいが、好ましい例としては、線材(例えばワイヤ)、パンチングメタル、メッシュ、発泡金属、及びそれらの任意の組合せが挙げられる。第三電極138用集電体の材質としては第三電極138の材質と同様の材質であってもよいし、金属(例えばニッケル)、合金又はその他の導電性材料であってもよい。
第三電極138は電解液136と接触するが、通常の充放電反応と直接関係の無い場所に配置されることが望ましい。この場合、負極側密閉空間内に第三電極138と接触可能に不織布等の吸水性樹脂又は保液性樹脂製の保水部材を配置して、電解液が減少した場合であっても電解液136を第三電極138と常時接触可能に保持する構成とするのが好ましい。保水部材として市販の電池用セパレータも使用可能である。吸水性樹脂又は保液性樹脂の好ましい例としては、ポリオレフィン系樹脂が挙げられる。第三電極138は、必ずしも多量の電解液136で含浸されている必要はなく、少量ないし微量の電解液136で湿っている程度でも所望の機能を発揮することができるので、その程度の保水性能を保水部材が有していればよい。
多孔質基材付きLDHセパレータ
前述のとおり、本発明の二次電池に好ましく用いられる多孔質基材付きセパレータは、水酸化物イオン伝導性を有する無機固体電解質体からなるセパレータと、セパレータの少なくとも一方の面に設けられる多孔質基材とを備えたものである。無機固体電解質体は透水性及び通気性を有しない程に緻密化された膜状又は層状の形態である。特に好ましい多孔質基材付きセパレータは、多孔質基材と、この多孔質基材上及び/又は多孔質基材中に形成されるセパレータ層とを備えてなり、セパレータ層が前述したような層状複水酸化物(LDH)を含んでなるものである。セパレータ層は透水性及び通気性を有しないのが好ましい。すなわち、多孔質材料は孔の存在により透水性及び通気性を有しうるが、セパレータ層は透水性及び通気性を有しない程にまでLDHで緻密化されているのが好ましい。セパレータ層は多孔質基材上に形成されるのが好ましい。例えば、図11に示されるように、多孔質基材148上にセパレータ層140がLDH緻密膜として形成されるのが好ましい。この場合、多孔質基材148の性質上、図11に示されるように多孔質基材148の表面及びその近傍の孔内にもLDHが形成されてよいのはいうまでもない。あるいは、図12に示されるように、多孔質基材148中(例えば多孔質基材148の表面及びその近傍の孔内)にLDHが緻密に形成され、それにより多孔質基材148の少なくとも一部がセパレータ層140’を構成するものであってもよい。この点、図12に示される態様は図11に示される態様のセパレータ層140における膜相当部分を除去した構成となっているが、これに限定されず、多孔質基材148の表面と平行にセパレータ層が存在していればよい。いずれにしても、セパレータ層は透水性及び通気性を有しない程にまでLDHで緻密化されているため、水酸化物イオン伝導性を有するが透水性及び通気性を有しない(すなわち基本的に水酸化物イオンのみを通す)という特有の機能を有することができる。
多孔質基材は、その上及び/又は中にLDH含有セパレータ層を形成できるものが好ましく、その材質や多孔構造は特に限定されない。多孔質基材上及び/又は中にLDH含有セパレータ層を形成するのが典型的ではあるが、無孔質基材上にLDH含有セパレータ層を成膜し、その後公知の種々の手法により無孔質基材を多孔化してもよい。いずれにしても、多孔質基材は透水性を有する多孔構造を有するのが、電池用セパレータとして電池に組み込まれた場合に電解液をセパレータ層に到達可能に構成できる点で好ましい。
多孔質基材は、セラミックス材料、金属材料、及び高分子材料からなる群から選択される少なくとも1種で構成されるのが好ましい。多孔質基材は、セラミックス材料で構成されるのがより好ましい。この場合、セラミックス材料の好ましい例としては、アルミナ、ジルコニア、チタニア、マグネシア、スピネル、カルシア、コージライト、ゼオライト、ムライト、フェライト、酸化亜鉛、炭化ケイ素、及びそれらの任意の組合せが挙げられ、より好ましくは、アルミナ、ジルコニア、チタニア、及びそれらの任意の組合せであり、特に好ましくはアルミナ及びジルコニアであり、最も好ましくはアルミナである。これらの多孔質セラミックスを用いると緻密性に優れたLDH含有セパレータ層を形成しやすい。金属材料の好ましい例としては、アルミニウム及び亜鉛が挙げられる。高分子材料の好ましい例としては、ポリスチレン、ポリエーテルサルフォン、ポリプロピレン、エポキシ樹脂、ポリフェニレンサルファイド、親水化したフッ素樹脂(四フッ素化樹脂:PTFE等)、及びそれらの任意の組合せが挙げられる。上述した各種の好ましい材料から電池の電解液に対する耐性として耐アルカリ性に優れたものを適宜選択するのが更に好ましい。
多孔質基材は0.001〜1.5μmの平均気孔径を有するのが好ましく、より好ましくは0.001〜1.25μm、さらに好ましくは0.001〜1.0μm、特に好ましくは0.001〜0.75μm、最も好ましくは0.001〜0.5μmである。これらの範囲内とすることで多孔質基材に所望の透水性を確保しながら、透水性を有しない程に緻密なLDH含有セパレータ層を形成することができる。本発明において、平均気孔径の測定は多孔質基材の表面の電子顕微鏡(SEM)画像をもとに気孔の最長距離を測長することにより行うことができる。この測定に用いる電子顕微鏡(SEM)画像の倍率は20000倍であり、得られた全ての気孔径をサイズ順に並べて、その平均値から上位15点及び下位15点、合わせて1視野あたり30点で2視野分の平均値を算出して、平均気孔径を得ることができる。測長には、SEMのソフトウェアの測長機能や画像解析ソフト(例えば、Photoshop、Adobe社製)等を用いることができる。
多孔質基材の表面は、10〜60%の気孔率を有するのが好ましく、より好ましくは15〜55%、さらに好ましくは20〜50%である。これらの範囲内とすることで多孔質基材に所望の透水性を確保しながら、透水性を有しない程に緻密なLDH含有セパレータ層を形成することができる。ここで、多孔質基材の表面の気孔率を採用しているのは、以下に述べる画像処理を用いた気孔率の測定がしやすいことによるものであり、多孔質基材の表面の気孔率は多孔質基材内部の気孔率を概ね表しているといえるからである。すなわち、多孔質基材の表面が緻密であれば多孔質基材の内部もまた同様に緻密であるといえる。本発明において、多孔質基材の表面の気孔率は画像処理を用いた手法により以下のようにして測定することができる。すなわち、1)多孔質基材の表面の電子顕微鏡(SEM)画像(倍率10000倍以上)を取得し、2)Photoshop(Adobe社製)等の画像解析ソフトを用いてグレースケールのSEM画像を読み込み、3)[イメージ]→[色調補正]→[2階調化]の手順で白黒の2値画像を作成し、4)黒い部分が占めるピクセル数を画像の全ピクセル数で割った値を気孔率(%)とする。なお、この画像処理による気孔率の測定は多孔質基材表面の6μm×6μmの領域について行われるのが好ましく、より客観的な指標とするためには、任意に選択された3箇所の領域について得られた気孔率の平均値を採用するのがより好ましい。
セパレータ層は、多孔質基材上及び/又は多孔質基材中、好ましくは多孔質基材上に形成される。例えば、図11に示されるようにセパレータ層140が多孔質基材148上に形成される場合には、セパレータ層140はLDH緻密膜の形態であり、このLDH緻密膜は典型的にはLDHからなる。また、図12に示されるようにセパレータ層140’が多孔質基材148中に形成される場合には、多孔質基材148中(典型的には多孔質基材148の表面及びその近傍の孔内)にLDHが緻密に形成されることから、セパレータ層140’は典型的には多孔質基材148の少なくとも一部及びLDHからなる。図12に示されるセパレータ層140’は、図11に示されるセパレータ層140における膜相当部分を研磨、切削等の公知の手法により除去することにより得ることができる。
セパレータ層は透水性及び通気性を有しないのが好ましい。例えば、セパレータ層はその片面を25℃で1週間水と接触させても水を透過させず、また、その片面に0.5atmの内外差圧でヘリウムガスを加圧してもヘリウムガスを透過させない。すなわち、セパレータ層は透水性及び通気性を有しない程にまでLDHで緻密化されているのが好ましい。もっとも、局所的且つ/又は偶発的に透水性を有する欠陥が機能膜に存在する場合には、当該欠陥を適当な補修剤(例えばエポキシ樹脂等)で埋めて補修することで水不透性及び気体不透過性を確保してもよく、そのような補修剤は必ずしも水酸化物イオン伝導性を有する必要はない。いずれにしても、セパレータ層(典型的にはLDH緻密膜)の表面が20%以下の気孔率を有するのが好ましく、より好ましくは15%以下、さらに好ましくは10%以下、特に好ましくは7%以下である。セパレータ層の表面の気孔率が低ければ低いほど、セパレータ層(典型的にはLDH緻密膜)の緻密性が高いことを意味し、好ましいといえる。ここで、セパレータ層の表面の気孔率を採用しているのは、以下に述べる画像処理を用いた気孔率の測定がしやすいことによるものであり、セパレータ層の表面の気孔率はセパレータ層内部の気孔率を概ね表しているといえるからである。すなわち、セパレータ層の表面が緻密であればセパレータ層の内部もまた同様に緻密であるといえる。本発明において、セパレータ層の表面の気孔率は画像処理を用いた手法により以下のようにして測定することができる。すなわち、1)セパレータ層の表面の電子顕微鏡(SEM)画像(倍率10000倍以上)を取得し、2)Photoshop(Adobe社製)等の画像解析ソフトを用いてグレースケールのSEM画像を読み込み、3)[イメージ]→[色調補正]→[2階調化]の手順で白黒の2値画像を作成し、4)黒い部分が占めるピクセル数を画像の全ピクセル数で割った値を気孔率(%)とする。なお、この画像処理による気孔率の測定はセパレータ層表面の6μm×6μmの領域について行われるのが好ましく、より客観的な指標とするためには、任意に選択された3箇所の領域について得られた気孔率の平均値を採用するのがより好ましい。
層状複水酸化物は複数の板状粒子(すなわちLDH板状粒子)の集合体で構成され、当該複数の板状粒子がそれらの板面が多孔質基材の表面(基材面)と略垂直に又は斜めに交差するような向きに配向してなるのが好ましい。この態様は、図11に示されるように、多孔質基材148上にセパレータ層140がLDH緻密膜として形成される場合に特に好ましく実現可能な態様であるが、図12に示されるように、多孔質基材148中(典型的には多孔質基材148の表面及びその近傍の孔内)にLDHが緻密に形成され、それにより多孔質基材148の少なくとも一部がセパレータ層140’を構成する場合においても実現可能である。
すなわち、LDH結晶は図13に示されるような層状構造を持った板状粒子の形態を有することが知られているが、上記略垂直又は斜めの配向は、LDH含有セパレータ層(例えばLDH緻密膜)にとって極めて有利な特性である。というのも、配向されたLDH含有セパレータ層(例えば配向LDH緻密膜)には、LDH板状粒子が配向する方向(即ちLDHの層と平行方向)の水酸化物イオン伝導度が、これと垂直方向の伝導度よりも格段に高いという伝導度異方性があるためである。実際、本出願人は、LDHの配向バルク体において、配向方向における伝導度(S/cm)が配向方向と垂直な方向の伝導度(S/cm)と比べて1桁高いとの知見を得ている。すなわち、本態様のLDH含有セパレータ層における上記略垂直又は斜めの配向は、LDH配向体が持ちうる伝導度異方性を層厚方向(すなわちセパレータ層又は多孔質基材の表面に対して垂直方向)に最大限または有意に引き出すものであり、その結果、層厚方向への伝導度を最大限又は有意に高めることができる。その上、LDH含有セパレータ層は層形態を有するため、バルク形態のLDHよりも低抵抗を実現することができる。このような配向性を備えたLDH含有セパレータ層は、層厚方向に水酸化物イオンを伝導させやすくなる。その上、緻密化されているため、層厚方向への高い伝導度及び緻密性が望まれるセパレータに極めて適する。
特に好ましくは、LDH含有セパレータ層(典型的にはLDH緻密膜)においてLDH板状粒子が略垂直方向に高度に配向してなる。この高度な配向は、セパレータ層の表面をX線回折法により測定した場合に、(003)面のピークが実質的に検出されないか又は(012)面のピークよりも小さく検出されることで確認可能なものである(但し、(012)面に起因するピークと同位置に回折ピークが観察される多孔質基材を用いた場合には、LDH板状粒子に起因する(012)面のピークを特定できないことから、この限りでない)。この特徴的なピーク特性は、セパレータ層を構成するLDH板状粒子がセパレータ層に対して略垂直方向(すなわち垂直方向又はそれに類する斜め方向、好ましくは垂直方向)に配向していることを示す。すなわち、(003)面のピークは無配向のLDH粉末をX線回折した場合に観察される最も強いピークとして知られているが、配向LDH含有セパレータ層にあっては、LDH板状粒子がセパレータ層に対して略垂直方向に配向していることで(003)面のピークが実質的に検出されないか又は(012)面のピークよりも小さく検出される。これは、(003)面が属するc軸方向(00l)面(lは3及び6である)がLDH板状粒子の層状構造と平行な面であるため、このLDH板状粒子がセパレータ層に対して略垂直方向に配向しているとLDH層状構造も略垂直方向を向くこととなる結果、セパレータ層表面をX線回折法により測定した場合に(00l)面(lは3及び6である)のピークが現れないか又は現れにくくなるからである。特に(003)面のピークは、それが存在する場合、(006)面のピークよりも強く出る傾向があるから、(006)面のピークよりも略垂直方向の配向の有無を評価しやすいといえる。したがって、配向LDH含有セパレータ層は、(003)面のピークが実質的に検出されないか又は(012)面のピークよりも小さく検出されるのが、垂直方向への高度な配向を示唆することから好ましいといえる。
セパレータ層は100μm以下の厚さを有するのが好ましく、より好ましくは75μm以下、さらに好ましくは50μm以下、特に好ましくは25μm以下、最も好ましくは5μm以下である。このように薄いことでセパレータの低抵抗化を実現できる。セパレータ層が多孔質基材上にLDH緻密膜として形成されるのが好ましく、この場合、セパレータ層の厚さはLDH緻密膜の厚さに相当する。また、セパレータ層が多孔質基材中に形成される場合には、セパレータ層の厚さは多孔質基材の少なくとも一部及びLDHからなる複合層の厚さに相当し、セパレータ層が多孔質基材上及び中にまたがって形成される場合にはLDH緻密膜と上記複合層の合計厚さに相当する。いずれにしても、上記のような厚さであると、電池用途等への実用化に適した所望の低抵抗を実現することができる。LDH配向膜の厚さの下限値は用途に応じて異なるため特に限定されないが、セパレータ等の機能膜として望まれるある程度の堅さを確保するためには厚さ1μm以上であるのが好ましく、より好ましくは2μm以上である。
上述した多孔質基材付きLDHセパレータは、(1)多孔質基材を用意し、(2)マグネシウムイオン(Mg2+)及びアルミニウムイオン(Al3+)を0.20〜0.40mol/Lの合計濃度で含み、かつ、尿素を含んでなる原料水溶液に、多孔質基材を浸漬させ、(3)原料水溶液中で多孔質基材を水熱処理して、層状複水酸化物を含んでなるセパレータ層を多孔質基材上及び/又は多孔質基材中に形成させることにより製造することができる。
(1)多孔質基材の用意
多孔質基材は、前述したとおりであり、セラミックス材料、金属材料、及び高分子材料からなる群から選択される少なくとも1種で構成されるのが好ましい。多孔質基材は、セラミックス材料で構成されるのがより好ましい。この場合、セラミックス材料の好ましい例としては、アルミナ、ジルコニア、チタニア、マグネシア、スピネル、カルシア、コージライト、ゼオライト、ムライト、フェライト、酸化亜鉛、炭化ケイ素、及びそれらの任意の組合せが挙げられ、より好ましくは、アルミナ、ジルコニア、チタニア、及びそれらの任意の組合せであり、特に好ましくはアルミナ及びジルコニアであり、最も好ましくはアルミナである。これらの多孔質セラミックスを用いるとLDH含有セパレータ層の緻密性を向上しやすい傾向がある。セラミックス材料製の多孔質基材を用いる場合、超音波洗浄、イオン交換水での洗浄等を多孔質基材に施すのが好ましい。
(2)原料水溶液への浸漬
次に、多孔質基材を原料水溶液に所望の向きで(例えば水平又は垂直に)浸漬させる。多孔質基材を水平に保持する場合は、吊るす、浮かせる、容器の底に接するように多孔質基材を配置すればよく、例えば、容器の底から原料水溶液中に浮かせた状態で多孔質基材を固定としてもよい。多孔質基材を垂直に保持する場合は、容器の底に多孔質基材を垂直に設置できるような冶具を置けばよい。いずれにしても、多孔質基材にLDHを略垂直方向又はそれに近い方向(すなわちLDH板状粒子がそれらの板面が多孔質基材の表面(基材面)と略垂直に又は斜めに交差するような向きに)に成長させる構成ないし配置とするのが好ましい。原料水溶液は、マグネシウムイオン(Mg2+)及びアルミニウムイオン(Al3+)を所定の合計濃度で含み、かつ、尿素を含んでなる。尿素が存在することで尿素の加水分解を利用してアンモニアが溶液中に発生することによりpH値が上昇し、共存する金属イオンが水酸化物を形成することによりLDHを得ることができる。また、加水分解に二酸化炭素の発生を伴うため、陰イオンが炭酸イオン型のLDHを得ることができる。原料水溶液に含まれるマグネシウムイオン及びアルミニウムイオンの合計濃度(Mg2++Al3+)は0.20〜0.40mol/Lが好ましく、より好ましくは0.22〜0.38mol/Lであり、さらに好ましくは0.24〜0.36mol/L、特に好ましくは0.26〜0.34mol/Lである。このような範囲内の濃度であると核生成と結晶成長をバランスよく進行させることができ、配向性のみならず緻密性にも優れたLDH含有セパレータ層を得ることが可能となる。すなわち、マグネシウムイオン及びアルミニウムイオンの合計濃度が低いと核生成に比べて結晶成長が支配的となり、粒子数が減少して粒子サイズが増大する一方、この合計濃度が高いと結晶成長に比べて核生成が支配的となり、粒子数が増大して粒子サイズが減少するものと考えられる。
好ましくは、原料水溶液に硝酸マグネシウム及び硝酸アルミニウムが溶解されており、それにより原料水溶液がマグネシウムイオン及びアルミニウムイオンに加えて硝酸イオンを含んでなる。そして、この場合、原料水溶液における、尿素の硝酸イオン(NO )に対するモル比(尿素/NO )が、2〜6が好ましく、より好ましくは4〜5である。
(3)水熱処理によるLDH含有セパレータ層の形成
そして、原料水溶液中で多孔質基材を水熱処理して、LDHを含んでなるセパレータ層を多孔質基材上及び/又は多孔質基材中に形成させる。この水熱処理は密閉容器中、60〜150℃で行われるのが好ましく、より好ましくは65〜120℃であり、さらに好ましくは65〜100℃であり、特に好ましくは70〜90℃である。水熱処理の上限温度は多孔質基材(例えば高分子基材)が熱で変形しない程度の温度を選択すればよい。水熱処理時の昇温速度は特に限定されず、例えば10〜200℃/hであってよいが、好ましくは100〜200℃/hである、より好ましくは100〜150℃/hである。水熱処理の時間はLDH含有セパレータ層の目的とする密度と厚さに応じて適宜決定すればよい。
水熱処理後、密閉容器から多孔質基材を取り出し、イオン交換水で洗浄するのが好ましい。
上記のようにして製造されたLDH含有複合材料におけるLDH含有セパレータ層は、LDH板状粒子が高度に緻密化したものであり、しかも伝導に有利な略垂直方向に配向したものである。したがって、亜鉛デンドライト進展が実用化の大きな障壁となっている亜鉛空気二次電池に極めて好適といえる。
ところで、上記製造方法により得られるLDH含有セパレータ層は多孔質基材の両面に形成されうる。このため、LDH含有複合材料をセパレータとして好適に使用可能な形態とすべく、成膜後に多孔質基材の片面のLDH含有セパレータ層を機械的に削るか、あるいは成膜時に片面にはLDH含有セパレータ層が成膜できないような措置を講じてもよい。
本発明を以下の例によってさらに具体的に説明する。
例1:多孔質基材付きLDHセパレータの作製及び評価
(1)多孔質基材の作製
ベーマイト(サソール社製、DISPAL 18N4−80)、メチルセルロース、及びイオン交換水を、(ベーマイト):(メチルセルロース):(イオン交換水)の質量比が10:1:5となるように秤量した後、混練した。得られた混練物を、ハンドプレスを用いた押出成形に付し、5cm×8cmを十分に超える大きさで且つ厚さ0.5cmの板状に成形した。得られた成形体を80℃で12時間乾燥した後、1150℃で3時間焼成して、アルミナ製多孔質基材を得た。こうして得られた多孔質基材を5cm×8cmの大きさに切断加工した。
得られた多孔質基材について、画像処理を用いた手法により、多孔質基材表面の気孔率を測定したところ、24.6%であった。この気孔率の測定は、1)表面微構造を走査型電子顕微鏡(SEM、JSM−6610LV、JEOL社製)を用いて10〜20kVの加速電圧で観察して多孔質基材表面の電子顕微鏡(SEM)画像(倍率10000倍以上)を取得し、2)Photoshop(Adobe社製)等の画像解析ソフトを用いてグレースケールのSEM画像を読み込み、3)[イメージ]→[色調補正]→[2階調化]の手順で白黒の2値画像を作成し、4)黒い部分が占めるピクセル数を画像の全ピクセル数で割った値を気孔率(%)とすることにより行った。この気孔率の測定は多孔質基材表面の6μm×6μmの領域について行われた。なお、図14に多孔質基材表面のSEM画像を示す。
また、多孔質基材の平均気孔径を測定したところ約0.1μmであった。本発明において、平均気孔径の測定は多孔質基材の表面の電子顕微鏡(SEM)画像をもとに気孔の最長距離を測長することにより行った。この測定に用いた電子顕微鏡(SEM)画像の倍率は20000倍であり、得られた全ての気孔径をサイズ順に並べて、その平均値から上位15点及び下位15点、合わせて1視野あたり30点で2視野分の平均値を算出して、平均気孔径を得た。測長には、SEMのソフトウェアの測長機能を用いた。
(2)多孔質基材の洗浄
得られた多孔質基材をアセトン中で5分間超音波洗浄し、エタノール中で2分間超音波洗浄、その後、イオン交換水中で1分間超音波洗浄した。
(3)原料水溶液の作製
原料として、硝酸マグネシウム六水和物(Mg(NO・6HO、関東化学株式会社製)、硝酸アルミニウム九水和物(Al(NO・9HO、関東化学株式会社製)、及び尿素((NHCO、シグマアルドリッチ製)を用意した。カチオン比(Mg2+/Al3+)が2となり且つ全金属イオンモル濃度(Mg2++Al3+)が0.320mol/Lとなるように、硝酸マグネシウム六水和物と硝酸アルミニウム九水和物を秤量してビーカーに入れ、そこにイオン交換水を加えて全量を600mlとした。得られた溶液を攪拌した後、溶液中に尿素/NO =4の割合で秤量した尿素を加え、更に攪拌して原料水溶液を得た。
(4)水熱処理による成膜
テフロン(登録商標)製密閉容器(内容量800ml、外側がステンレス製ジャケット)に上記(3)で作製した原料水溶液と上記(2)で洗浄した多孔質基材を共に封入した。このとき、基材はテフロン(登録商標)製密閉容器の底から浮かせて固定し、基材両面に溶液が接するように水平に設置した。その後、水熱温度70℃で168時間(7日間)水熱処理を施すことにより基材表面に層状複水酸化物配向膜(セパレータ層)の形成を行った。所定時間の経過後、基材を密閉容器から取り出し、イオン交換水で洗浄し、70℃で10時間乾燥させて、層状複水酸化物(以下、LDHという)の緻密膜(以下、膜試料という)を基材上に得た。得られた膜試料の厚さは約1.5μmであった。こうして、層状複水酸化物含有複合材料試料(以下、複合材料試料という)を得た。なお、LDH膜は多孔質基材の両面に形成されていたが、セパレータとして形態を複合材料に付与するため、多孔質基材の片面のLDH膜を機械的に削り取った。
(5)各種評価
(5a)膜試料の同定
X線回折装置(リガク社製 RINT TTR III)にて、電圧:50kV、電流値:300mA、測定範囲:10〜70°の測定条件で、膜試料の結晶相を測定したところ、図15に示されるXRDプロファイルが得られた。得られたXRDプロファイルについて、JCPDSカードNO.35−0964に記載される層状複水酸化物(ハイドロタルサイト類化合物)の回折ピークを用いて同定した。その結果、膜試料は層状複水酸化物(LDH、ハイドロタルサイト類化合物)であることが確認された。なお、図15に示されるXRDプロファイルにおいては、膜試料が形成されている多孔質基材を構成するアルミナに起因するピーク(図中で○印が付されたピーク)も併せて観察されている。
(5b)微構造の観察
膜試料の表面微構造を走査型電子顕微鏡(SEM、JSM−6610LV、JEOL社製)を用いて10〜20kVの加速電圧で観察した。得られた膜試料の表面微構造のSEM画像(二次電子像)を図16に示す。
また、複合材料試料の断面をCP研磨によって研磨して研磨断面を形成し、この研磨断面の微構造を走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて10〜20kVの加速電圧で観察した。こうして得られた複合材料試料の研磨断面微構造のSEM画像を図17に示す。
(5c)気孔率の測定
膜試料について、画像処理を用いた手法により、膜の表面の気孔率を測定した。この気孔率の測定は、1)表面微構造を走査型電子顕微鏡(SEM、JSM−6610LV、JEOL社製)を用いて10〜20kVの加速電圧で観察して膜の表面の電子顕微鏡(SEM)画像(倍率10000倍以上)を取得し、2)Photoshop(Adobe社製)等の画像解析ソフトを用いてグレースケールのSEM画像を読み込み、3)[イメージ]→[色調補正]→[2階調化]の手順で白黒の2値画像を作成し、4)黒い部分が占めるピクセル数を画像の全ピクセル数で割った値を気孔率(%)とすることにより行った。この気孔率の測定は配向膜表面の6μm×6μmの領域について行われた。その結果、膜の表面の気孔率は19.0%であった。また、この膜表面の気孔率を用いて、膜表面から見たときの密度D(以下、表面膜密度という)をD=100%−(膜表面の気孔率)により算出したところ、81.0%であった。
また、膜試料について、研磨断面の気孔率についても測定した。この研磨断面の気孔率についても測定は、上記(5b)に示される手順に従い膜の厚み方向における断面研磨面の電子顕微鏡(SEM)画像(倍率10000倍以上)を取得したこと以外は、上述の膜表面の気孔率と同様にして行った。この気孔率の測定は配向膜断面の膜部分について行われた。こうして膜試料の断面研磨面から算出した気孔率は平均で3.5%(3箇所の断面研磨面の平均値)であり、多孔質基材上でありながら非常に高密度な膜が形成されていることが確認された。
(5d)緻密性判定試験I
膜試料が透水性を有しない程の緻密性を有することを確認すべく、緻密性判定試験を以下のとおり行った。まず、図18Aに示されるように、上記(1)において得られた複合材料試料220(1cm×1cm平方に切り出されたもの)の膜試料側に、中央に0.5cm×0.5cm平方の開口部222aを備えたシリコンゴム222を接着し、得られた積層物を2つのアクリル製容器224,226で挟んで接着した。シリコンゴム222側に配置されるアクリル製容器224は底が抜けており、それによりシリコンゴム222はその開口部222aが開放された状態でアクリル製容器224と接着される。一方、複合材料試料220の多孔質基材側に配置されるアクリル製容器226は底を有しており、その容器226内にはイオン交換水228が入っている。この時、イオン交換水にAl及び/又はMgを溶解させておいてもよい。すなわち、組み立て後に上下逆さにすることで、複合材料試料220の多孔質基材側にイオン交換水228が接するように各構成部材が配置されてなる。これらの構成部材等を組み立て後、総重量を測定した。これらの構成部材等を組み立て後、総重量を測定した。なお、容器226には閉栓された通気穴(図示せず)が形成されており、上下逆さにした後に開栓されることはいうまでもない。図18Bに示されるように組み立て体を上下逆さに配置して25℃で1週間保持した後、総重量を再度測定した。このとき、アクリル製容器224の内側側面に水滴が付着している場合には、その水滴を拭き取った。そして、試験前後の総重量の差を算出することにより緻密度を判定した。その結果、25℃で1週間保持した後においても、イオン交換水の重量に変化は見られなかった。このことから、膜試料(すなわち機能膜)は透水性を有しない程に高い緻密性を有することが確認された。
(5e)緻密性判定試験II
膜試料が通気性を有しない程の緻密性を有することを確認すべく、緻密性判定試験を以下のとおり行った。まず、図19A及び19Bに示されるように、蓋の無いアクリル容器230と、このアクリル容器230の蓋として機能しうる形状及びサイズのアルミナ治具232とを用意した。アクリル容器230にはその中にガスを供給するためのガス供給口230aが形成されている。また、アルミナ治具232には直径5mmの開口部232aが形成されており、この開口部232aの外周に沿って膜試料載置用の窪み232bが形成されてなる。アルミナ治具232の窪み232bにエポキシ接着剤234を塗布し、この窪み232bに複合材料試料236の膜試料236b側を載置してアルミナ治具232に気密かつ液密に接着させた。そして、複合材料試料236が接合されたアルミナ治具232を、アクリル容器230の開放部を完全に塞ぐようにシリコーン接着剤238を用いて気密かつ液密にアクリル容器230の上端に接着させて、測定用密閉容器240を得た。この測定用密閉容器240を水槽242に入れ、アクリル容器230のガス供給口230aを圧力計244及び流量計246に接続して、ヘリウムガスをアクリル容器230内に供給可能に構成した。水槽242に水243を入れて測定用密閉容器240を完全に水没させた。このとき、測定用密閉容器240の内部は気密性及び液密性が十分に確保されており、複合材料試料236の膜試料236b側が測定用密閉容器240の内部空間に露出する一方、複合材料試料236の多孔質基材236a側が水槽242内の水に接触している。水槽242内の水にはAl及び/又はMgを溶解させておいてもよい。この状態で、アクリル容器230内にガス供給口230aを介してヘリウムガスを測定用密閉容器240内に導入した。圧力計244及び流量計246を制御して膜試料236b内外の差圧が0.5atmとなる(すなわちヘリウムガスに接する側に加わる圧力が反対側に加わる水圧よりも0.5atm高くなる)ようにして、複合材料試料236から水中にヘリウムガスの泡が発生するか否かを観察した。その結果、ヘリウムガスに起因する泡の発生は観察されなかった。よって、膜試料236bは通気性を有しない程に高い緻密性を有することが確認された。
例2(参考):亜鉛空気二次電池の作製
本例は、1対の空気極板/セパレータ/負極板を備えた単位電池に基づく参考例である。
(1)多孔質基材付きセパレータの用意
例1と同様の手順により、多孔質基材付きセパレータ(以下、単にセパレータという)として、アルミナ基材上ハイドロタルサイト膜を用意した。
(2)空気極層の作製
空気極触媒としてのα−MnO粒子を次のようにして作製した。まず、Mn(SO)・5HO及びKMnOを5:13のモル比で脱イオン水に溶かして混合した。得られた混合液をテフロン(登録商標)が内貼りされたステンレス製密閉容器に入れ、140℃で水熱合成を2時間行う。水熱合成により得られた沈殿物をろ過し、蒸留水で洗浄した後、80℃で6時間乾燥した。こうしてα−MnOの粉末を得た。
水酸化物イオン伝導性材料としての層状複水酸化物粒子(以下、LDH粒子という)を次のようにして作製した。まず、Ni(NO・6HO及びFe(NO・9HOを脱イオン水にNi:Fe=3:1のモル比になるように溶かして混合した。得られた混合液を70℃で0.3MのNaCO溶液に撹拌しながら滴下した。この際、2MのNaOH溶液を加えながら混合液のpHを10に調整して、70℃で24時間保持する。混合液中に生成した沈殿物をろ過し、蒸留水で洗浄後、80℃で乾燥してLDHの粉末を得た。
先に得られたα−MnO粒子及びLDH粒子、並びに電子伝導性材料としてのカーボンブラック(Cabot社製、品番VXC72)を所定の配合比となるように秤量して、エタノール溶媒の共存下で湿式混合した。得られた混合物を70℃で乾燥した後、解砕する。得られた解砕粉をバインダー(PTFE、エレクトロケム社製、品番EC−TEF−500ML)及び水と混合してフィブリル化した。このとき、水の添加量は空気極に対して1質量%とした。こうして得られたフィブリル状混合物を厚さ50μmとなるように集電体(カーボンクロス(エレクトロケム社製、品番EC−CC1−060T))にシート状に圧着して空気極層/集電体の積層シートを得た。こうして得られた空気極層は、電子伝導相(カーボンブラック)を20体積%、触媒層(α−MnO粒子)を5体積%、水酸化物イオン伝導相(LDH粒子)を70体積%及びバインダー相(PTFE)を5体積%含むものであった。
(3)セパレータ付き空気極の作製
アニオン交換膜(アストム社、ネオセプタAHA)を1MのNaOH水溶液に一晩浸漬させた。このアニオン交換膜をセパレータのハイドロタルサイト膜上に中間層として積層して、セパレータ/中間層積層体を得る。中間層の厚さは30μmである。得られたセパレータ/中間層積層体に、先に作製した空気極層/集電体の積層シートを、空気極層側が中間層と接するように圧着して、セパレータ付き空気極試料を得る。
(4)負極板の作製
銅パンチングメタルからなる集電体上に、酸化亜鉛粉末80重量部、亜鉛粉末20重量部及びポリテトラフルオロエチレン粒子3重量部からなる混合物を塗布して、多孔度約50%で活物質部分が塗工された負極板を得る。
(5)第三電極の作製
ニッケルメッシュからなる集電体上に白金ペーストを塗布して、第三電極を得る。
(6)電池の組み立て
上記得られたセパレータ付き空気極、負極板、及び第三電極を用いて、図9に示されるような横型構造の亜鉛空気二次電池を以下のような手順で作製する。まず、ABS樹脂製で直方体形状を有する蓋の無い容器(以下、樹脂容器という)を用意する。この樹脂容器の底に負極板を、負極活物質が塗工された側が上を向くように載置する。このとき、負極集電体が樹脂容器の底部に接しており、負極集電体の端部が樹脂容器側面に貫通して設けられる外部端子と接続する。次に、樹脂容器内壁の負極板の上面よりも高い位置に(すなわち負極板と接触せず充放電反応に関与しない位置)に第三電極を設け、不織布セパレータを第三電極と接触するように配置する。樹脂容器の開口部をセパレータ付き空気極で空気極側が外側になるように塞ぎ、その際、開口部の外周部分にエポキシ樹脂系接着剤(セメダイン社製、EP008)を塗工して気密性及び液密性を与えるように封止して接着する。樹脂容器の上端近傍に設けられた小さな注入口を介して樹脂容器内に6mol/LのKOH水溶液を電解液として注入する。こうして、セパレータが電解液と接触するとともに、不織布セパレータの保液性により電解液の増減に関わらず電解液が第三電極に常時接触可能な状態とされる。このとき、注入する電解液の量は、放電末状態で電池を作製すべく、樹脂容器内で負極活物質塗工部分が十分に隠れるだけでなく、充電時に減少することが見込まれる水分量を考慮した過剰量とする。したがって、樹脂容器は上記過剰量の電解液を収容できるように設計されている。最後に、樹脂容器の注入口を封止する。こうして樹脂容器及びセパレータで区画された内部空間は気密且つ液密に密閉されている。最後に第三電極と空気極の集電層とを外部回路を介して接続する。こうして本発明の亜鉛空気二次電池を得る。
かかる構成によれば、セパレータが水及び気体を通さない程の高度な緻密性を有するため、充電時に生成する亜鉛デンドライトによるセパレータの貫通を物理的に阻止して正負極間の短絡を防止し、かつ、空気中の二酸化炭素の侵入を阻止して電解液中での(二酸化炭素に起因する)アルカリ炭酸塩の析出を防止することができる。その上、負極134から副反応により発生しうる水素ガスを第三電極138に接触させて前述した反応を経て水に戻すことができる。すなわち、亜鉛デンドライトによる短絡及び二酸化炭素の混入の両方を防止するのに好適な構成を有しながら、水素ガス発生の問題にも対処可能な、信頼性の高い亜鉛空気二次電池が提供される。
例3:ABS樹脂の溶剤接着
厚さ1mmのABS樹脂製の平板5枚を溶剤接着の手法により接着して、箱型容器を作製した。具体的には、図20に示されるように2枚の樹脂板302の端部同士が90度の角度で接するように治具304を用いて固定し、樹脂板302の接合部分306に溶剤としてのメチルエチルケトン(MEK)を刷毛308で塗布して、その隙間に溶剤を流し込んだ。このとき、接合部分306の隙間を小さくするように2枚の樹脂板302を密着させて固定した状態で溶剤を流し込むことで、溶剤は毛細管現象により隙間及びその周辺へ染み渡った。このような作業を繰り返して5枚の樹脂板302をそれぞれ溶剤接着して、図20に示されるような箱型容器300を形成した。最後に、接合部分306における接着不良による隙間の有無を確認し、そのような隙間が存在する場合には、刷毛308で溶剤を再度塗布して接着を補修した。こうして作製された箱型容器の写真を図21に示す。図21から分かるように、5枚の樹脂板は隙間の無く十分に封止された形態で極めて綺麗に接合されていた。
例4:PET樹脂の溶剤接着
ABS樹脂製の平板5枚の代わりに厚さ1mmのPET樹脂製の平板5枚を用いたこと、及びメチルエチルケトン(MEK)の代わりにジクロロメタンを用いたこと以外は例3と同様にして、溶剤接着の手法により箱型の電池容器を作製した。こうして作製された箱型容器の写真を図22Aに示す。また、図22Aにおいて白枠で囲まれた部分の拡大写真を図22Bに示す。図22A及び22Bから分かるように、5枚の樹脂板は隙間の無く十分に封止された形態で極めて綺麗に接合されていた。
例5:溶剤接着を用いた積層電池用ケースの作製
厚さ2.5mmABS樹脂製の4個のコ字状の枠体と、厚さ2.5mmABS樹脂製の2枚の端面板とからなる計6個の樹脂部品を溶剤接着の手法に従い接着して、積層電池用ケースを作製した。具体的には、1枚の端面板上に4個のコ字状の枠体を順次積層して接着していき、最後に残り1枚の端面板を先に接着した端面板と対向するように接着させた。樹脂部品の接着は、樹脂部品の接合部分に溶剤としてのメチルエチルケトン(MEK)を刷毛で塗布することにより行った。こうして作製された積層電池用ケースを上から撮影した写真を図23Aに、横から撮影した写真を図23Bに、接合部分の拡大写真を図23Cにそれぞれ示す。図23A〜23Cから分かるように、4個の樹脂製枠体と2枚の樹脂製端面板は隙間の無く十分に封止された形態で極めて綺麗に接合されていた。
10 亜鉛空気二次電池
12a,12b,12c 空気極板
14a,14b,14c 空気極
16a,16b,16c 空気極集電体
18a,18b,18c 空気極集電体延出部
20a,20b,20c,20d,20e セパレータ構造体
22a,22b,22c 負極板
24a,24b,24c 負極活物質
26a,26b,26c 負極集電体
28a,28b,28c 負極集電体延出部
30 電池容器
30a,30b,30c,30d,30e,30f 枠体
30g,30h 端面板
32a,32b,32c,32d,32e,32f 切欠部
34a,34b,34c,34d,34e,34f 段差部分
36 開口部
130 亜鉛空気二次電池
132 空気極
134 負極
136 電解液
138 第三電極
140 セラミックスセパレータ
142 空気極集電体
144 負極集電体
146 樹脂製容器
146a 開口部
148 多孔質基材

Claims (42)

  1. 亜鉛空気電池の組み立て方法であって、
    枠体と該枠体で区画された領域内に配置される空気極板との組合せと、枠体と該枠体で区画された領域内に配置される負極板との組合せとを、前記空気極板と前記負極板とをセパレータ構造体で互いに隔離し且つ隣接する前記枠体間で前記セパレータ構造体の外縁を挟持させながら、1回又は交互に複数回積層させる工程を含み、
    前記負極板が亜鉛、亜鉛合金及び/又は亜鉛化合物を含んでなり、
    前記セパレータ構造体がセパレータを含んでなり、前記セパレータが水酸化物イオン伝導性を有するが透水性及び通気性を有しないものであり、
    両端に位置する前記枠体の各々は、前記枠体で区画された領域を塞ぐ端面板を予め備えてなるか、又は予め配置された端面板上に前記枠体で区画された領域が該端面板で塞がれるように配置されるか、又は積層後に前記枠体で区画された領域が端面板で塞がれ、それにより積層された前記枠体及び前記端面板が全体として1つの電池容器を構成する、方法。
  2. 前記空気極板と該空気極板の少なくとも片側の前記セパレータ構造体とが、予め一体化されたセパレータ/空気極複合材料の形態で用意され、それにより前記空気極板と前記セパレータ構造体が一緒に取り扱われる、請求項1に記載の方法。
  3. 前記枠体と該枠体で区画された領域内に配置される空気極板との組合せは、前記枠体を配置した後又は配置すると同時に前記領域内に前記空気極板を配置すること、又は前記空気極板を配置した後に前記空気極板の周りに前記枠体を配置すること、又は前記空気極板が前記領域内に予め組み込まれた前記枠体を配置することにより与えられ、且つ、
    前記枠体と該枠体で区画された領域内に配置される負極板との組合せは、前記枠体を配置した後又は配置すると同時に前記領域内に前記負極板を配置すること、又は前記負極板を配置した後に前記負極板の周りに前記枠体を配置すること、又は前記負極板が前記領域内に予め組み込まれた前記枠体を配置することにより与えられる、請求項1又は2に記載の方法。
  4. 前記枠体が切欠部を有しており、全ての前記枠体の切欠部が同じ側に位置するように前記枠体が積層され、それにより前記切欠部が繋がって前記電池容器に開口部を形成させる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
  5. 前記切欠部を有する枠体が略コ字の形状を有し、それにより前記電池容器が前記開口部を有する筐体状に構成される、請求項4に記載の方法。
  6. 前記開口部のうち少なくとも前記負極板を含む区画を蓋で塞ぐ工程をさらに含む、請求項4又は5に記載の方法。
  7. 前記空気極板、前記負極板、前記セパレータ構造体、前記枠体及び前記端面板が横向きに配置されて、それにより前記積層が縦方向に行われる、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
  8. 前記積層後、前記電池容器を回転して前記開口部を上に向ける工程をさらに含む、請求項7に記載の方法。
  9. 前記空気極板、前記負極板、前記セパレータ構造体、前記枠体及び前記端面板が縦向きに配置され、それにより前記積層が横方向に行われる、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
  10. 前記電池容器内の前記負極板を含む区画にアルカリ金属水酸化物水溶液を含んでなる電解液を注入する工程をさらに含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
  11. 前記枠体の各々がそれらの内縁に沿って少なくとも1段低くなる段差部分を有しており、該段差部分に前記セパレータ構造体の外縁が重なるように前記セパレータ構造体が配置される、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
  12. 前記積層工程が、隣接する前記枠体同士を液密性及び気密性を確保可能に接着すること、及び/又は前記端面板と前記枠体とを液密性及び気密性を確保可能に接着すること、及び/又は前記枠体と前記セパレータ構造体の外縁とを液密性及び気密性を確保可能に接着することを含む、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
  13. 前記枠体及び前記端面板が樹脂製である、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
  14. 前記積層工程における前記接着が接着剤、熱融着及び溶剤接着からなる群から選択される少なくともいずれか1種により行われる、請求項12又は13に記載の方法。
  15. 前記積層工程における前記熱融着がレーザー溶着により行われる、請求項14に記載の方法。
  16. 前記積層工程における前記レーザー溶着が、前記枠体の被接着面に対して略垂直方向又は略平行方向にレーザーを入射させて被接着部位を溶融させるように行われる、請求項15に記載の方法。
  17. 前記積層工程後に、隣接する前記枠体同士を液密性及び気密性を確保可能に接着する工程、及び/又は前記枠体と前記端面板とを液密性及び気密性を確保可能に接着する工程、及び/又は前記枠体と前記セパレータ構造体の外縁とを液密性及び気密性を確保可能に接着する工程をさらに含む、請求項1〜16のいずれか一項に記載の方法。
  18. 前記積層工程後の前記接着が熱融着により行われる、請求項17に記載の方法。
  19. 前記積層工程後の前記熱融着がレーザー溶着により行われる、請求項18に記載の方法。
  20. 前記積層工程後の前記レーザー溶着が、前記枠体の被接合面に対して略平行方向にレーザーを入射させて被接着部位を溶融させるように行われる、請求項19に記載の方法。
  21. 前記セパレータ構造体がその外周に沿って外枠を備え、該外枠内及び/又は該外枠上に1枚又はそれ以上の前記セパレータが嵌合又は接合されてなり、該外枠が前記枠体と係合されてなる、請求項1〜20のいずれか一項に記載の方法。
  22. 前記外枠が樹脂製である、請求項21に記載の方法。
  23. 隣接する前記枠体同士の間又はその接合部分の近傍、及び/又は前記端面板とこれに隣接する前記枠体の間又はその接合部分の近傍に、前記熱融着の際に軟化又は溶融する樹脂が配設され、該樹脂が前記熱融着の際に軟化又は溶融して前記接着を促進又は強化する、請求項12〜22のいずれか一項に記載の方法。
  24. 前記開口部を上に向けた場合に、前記空気極板及び前記負極板の上端の高さが前記電池容器の上端の高さよりも低くなるように、前記空気極板及び前記負極板が構成されてなる、請求項8及び10〜23のいずれか一項に記載の方法。
  25. 前記電池容器は、前記負極板を含む区画に充放電時の負極反応に伴う水分量の減増を許容する容積の余剰空間を有する、請求項1〜24のいずれか一項に記載の方法。
  26. 前記セパレータが、水酸化物イオン伝導性を有する無機固体電解質体からなり、該無機固体電解質体が、板状、膜状又は層状の形態を有する、請求項1〜25のいずれか一項に記載の方法。
  27. 前記無機固体電解質体が90%以上の相対密度を有する、請求項26に記載の方法。
  28. 前記無機固体電解質体が、一般式:
    2+ 1−x3+ (OH)n− x/n・mH
    (式中、M2+は2価の陽イオンであり、M3+は3価の陽イオンであり、An−はn価の陰イオンであり、nは1以上の整数であり、xは0.1〜0.4であり、mは0以上である)の基本組成を有する層状複水酸化物からなる、請求項26又は27に記載の方法。
  29. 前記一般式において、M2+がMg2+を含み、M3+がAl3+を含み、An−がOH及び/又はCO 2−を含む、請求項28に記載の方法。
  30. 前記セパレータがその片面又は両面に多孔質基材をさらに備えてなる、請求項1〜29のいずれか一項に記載の方法。
  31. 前記無機固体電解質体が膜状又は層状の形態であり、該膜状又は層状の無機固体電解質体が前記多孔質基材上又はその中に形成されたものである、請求項30に記載の方法。
  32. 前記無機固体電解質体が水熱処理によって緻密化されたものである、請求項26〜31のいずれか一項に記載の方法。
  33. 前記層状複水酸化物が複数の板状粒子の集合体で構成され、該複数の板状粒子がそれらの板面が前記多孔質基材の表面と略垂直に又は斜めに交差するような向きに配向してなる、請求項30〜32のいずれか一項に記載の方法。
  34. 前記空気極板が、外気が流入可能な内部空間を有する中空板状の空気極を備えてなる、請求項1〜33のいずれか一項に記載の方法。
  35. 前記空気極板が前記内部空間に、通気性を有する空気極集電体を備えてなり、前記負極板が負極活物質と該負極活物質が担持される負極集電体とを備えてなる、請求項34に記載の方法。
  36. 前記空気極集電体が、前記電池容器外に突出する空気極集電体延出部を有し、かつ、前記負極集電体が、前記電池容器外に突出する負極集電体延出部を有してなる、請求項35に記載の方法。
  37. 前記空気極集電体が前記セパレータ/空気極複合材料に予め組み込まれた形態で用意される、請求項35又は36に記載の方法。
  38. 1枚又は複数枚の空気極板と、
    前記空気極板と対向して及び/又は交互に設けられ、亜鉛、亜鉛合金及び/又は亜鉛化合物を含んでなる1枚又は複数枚の負極板と、
    前記負極板が浸漬される、アルカリ金属水酸化物水溶液を含んでなる電解液と、
    前記空気極板と前記負極板の間の各々の位置に前記空気極板と前記負極板を隔離するように設けられるセパレータ構造体であって、前記セパレータ構造体が水酸化物イオン伝導性を有するが透水性及び通気性を有しないセパレータを含んでなる、1枚又は複数枚のセパレータ構造体と、
    前記空気極板、前記負極板、前記セパレータ構造体、及び前記電解液を収容する電池容器と、を備えた亜鉛空気電池であって、
    前記電池容器が、2枚の端面板と、該2枚の端面板の間に液密性及び気密性を確保可能に連結される複数個の枠体とから構成され、
    前記2枚の端面板の間に、前記空気極板及び前記負極板がその間に前記セパレータ構造体を介在させつつ配置されてなり、前記セパレータ構造体の外縁が隣り合う前記枠体の間に挟持されてなり、前記枠体で区画された領域内で、且つ、前記セパレータ構造体と前記端面板との間及び/又は隣り合う前記セパレータ構造体の間に、前記空気極板又は前記負極板が配置されてなる、亜鉛空気電池。
  39. 前記空気極板が、外気が流入可能な内部空間を有する中空板状の空気極を備えてなる、請求項38に記載の亜鉛空気電池。
  40. 前記空気極板が前記内部空間に、通気性を有する空気極集電体を備えてなり、前記負極板が負極活物質と該負極活物質が担持される負極集電体とを備えてなる、請求項39に記載の亜鉛空気電池。
  41. 前記空気極集電体が、前記電池容器外に突出する空気極集電体延出部を有し、かつ、前記負極集電体が、前記電池容器外に突出する負極集電体延出部を有してなる、請求項40に記載の亜鉛空気電池。
  42. 前記セパレータ構造体の前記外縁が、前記枠体に液密性及び気密性を確保可能に接着されてなる、請求項38〜41のいずれか一項に記載の亜鉛空気電池。
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