JP2016205621A - Vベルト及びこれを用いた無段変速装置 - Google Patents

Vベルト及びこれを用いた無段変速装置 Download PDF

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Abstract

【課題】トルクの伝達効率の低下及びVベルトの耐久性の低下を共に抑制可能とする。
【解決手段】Vベルト1におけるベルト内周側1xの面には、ベルト長手方向に延在するスリット1sが形成されている。ベルト長手方向と直交する断面において、スリット1sは、ベルト厚み方向に沿って(本実施形態では、ベルト厚み方向と平行に)直線状に延在し、且つ、ベルト内周側1xの面における当該スリット1sの幅と同じ寸法を直径とする円弧形状の先端を有する。ベルト長手方向と直交する断面において、Vベルト1の断面積に対するスリット1sの断面積の比率は0.1〜5%である。スリット1sは、ベルト厚み方向において、圧縮ゴム層5の範囲内、且つ、複数のコグの範囲内に、形成されている。スリット1sは、Vベルト1におけるベルト幅方向の中心に関して、対称に形成されている。
【選択図】図3

Description

本発明は、Vベルト及びこれを用いた無段変速装置に関し、特に、高負荷環境下でも好適に使用可能なVベルト及びこれを用いた無段変速装置に関する。
Vベルトは、摩擦力を用いて動力の伝達を行う摩擦伝動ベルトとして広く知られている。具体的には、Vベルトは、駆動プーリと従動プーリとに張力をかけて巻回され、その両側面と各プーリのV字状の溝を画定する両側面とが接触した状態で、走行される。その過程において、くさび効果によりVベルトの両側面と各プーリの両側面との間に推力が生じ、両側面間の摩擦に伴うエネルギーにより、動力の伝達が行われる。
また、このような摩擦伝動を利用した装置の中でも、Vベルトに特に大きな負荷がかかる装置として、無段変速装置が知られている。例えば、図1(a),(b)に示す無段変速装置130は、それぞれVベルト100が嵌合されるV字状の溝31x,32xを有する駆動プーリ31及び従動プーリ32を含む。Vベルト100は、駆動プーリ31と従動プーリ32とに張力をかけて巻回され、且つ、Vベルト100の両側面100zと駆動プーリ31及び従動プーリ32それぞれの溝31x,32xを画定する両側面31z,32zとが接触した状態で、走行される。このときに生じる両側面間の摩擦力により、駆動プーリ31のトルクがVベルト100を介して従動プーリ32に伝達される。
駆動プーリ31及び従動プーリ32は、それぞれ、回転軸31t,32tを有する固定プーリ片31a,32aと、固定プーリ片31a,32aに対して回転軸31t,32tに沿った方向に移動可能に取り付けられた可動プーリ片31b,32bとを含む。可動プーリ片31b,32bが固定プーリ片31a,32aに対して回転軸31t,32tに沿った方向に移動することで、固定プーリ片31a,32aと可動プーリ片31b,32bとの間に形成された溝31x,32xの幅が変化する。このような溝31x,32xの幅の変化に応じて、溝31x,32xにおけるVベルト100の位置が変化する。例えば、図1(a)に示す状態から図1(b)に示す状態に(即ち、溝31xの幅を狭く且つ溝32xの幅を広く)すると、Vベルト100は、溝31xにおいては回転軸31tから離れる方向に、溝32xにおいては回転軸32tに近づく方向に移動する。これにより、駆動プーリ31及び従動プーリ32におけるVベルト100の巻回半径が変化する。無段変速装置130は、このように巻回半径を連続的に変化させることで、変速比を無段階で変化させるように構成されている。
ここで、Vベルト100における各溝31x,32xに嵌合した部分は、Vベルト100の屈曲やプーリ31,32からの側圧により、図2(a)に示すように、両側面31z,32zがなすV溝角度αよりも両側面100zがなすV角度βが小さくなる方向に弾性変形する傾向にある。この現象は、特に、図1(a)に示すVベルト100の走行の折り返し点Aにおいて、顕著に現れ得る。このように弾性変形すると、両側面100zのうちベルト内周側100xの部分だけが両側面31z,32zと接触してベルト外周側100yの部分は両側面31z,32zと接触しない、所謂「底当たり」が生じ得る。「底当たり」が生じると、両側面100zと両側面31z,32zとの接触面積が小さくなるためにトルクの伝達効率が低下する等の問題が生じてしまう。そこで、「底当たり」を防止するため、Vベルトの無張力時のV角度をV溝角度αよりも大きくするという技術が特許文献1に示されている。
特開2004−270708
しかしながら、特許文献1の技術では、特に図1(a)に示すVベルト100の溝31x,32xへの嵌合開始/終了点Bにおいて、図2(b)に示すように、V角度γがV溝角度αよりも大きい状態からV溝角度αと一致する状態へと変化するときに、両側面100zのうちベルト外周側100yの部分がプーリ31,32に当接する、所謂「上当たり」が生じ得る。「上当たり」が生じると、Vベルト100におけるベルト外周側100yの部分がプーリ31,32との当接により発熱して劣化(特にVベルト100を構成するゴムの物性が低下)し、ひいてはVベルト100の耐久性が低下する等の問題が生じてしまう。
本発明の目的は、トルクの伝達効率の低下及びVベルトの耐久性の低下を共に抑制可能なVベルト及び無段変速装置を提供することである。
本発明の第1観点によると、駆動プーリと従動プーリとに張力をかけて巻回され、その両側面と前記駆動プーリ及び前記従動プーリそれぞれのV字状の溝を画定する両側面とが接触した状態で走行されるVベルトにおいて、ベルト内周側の面に、ベルト長手方向に延在する1又は複数のスリットが形成されており、前記ベルト長手方向と直交する断面において、前記1又は複数のスリットは、それぞれ、ベルト厚み方向に沿って直線状に延在し、且つ、前記ベルト内周側の面における当該スリットの幅と同じ寸法を直径とする円弧形状の先端を有し、前記Vベルトの断面積に対する前記1又は複数のスリットの断面積の比率が0.1〜5%であることを特徴とする、Vベルトが提供される。
本発明の第2観点によると、第1観点に係るVベルトと、それぞれ前記Vベルトが嵌合されるV字状の溝を有し且つ前記Vベルトの巻回半径が可変な駆動プーリ及び従動プーリとを備え、前記Vベルトが前記駆動プーリと前記従動プーリとに巻回され且つ前記Vベルトの両側面と前記駆動プーリ及び前記従動プーリそれぞれの前記溝を画定する両側面とが接触した状態で前記Vベルトを走行させることで、前記両側面間の摩擦力により、前記駆動プーリのトルクを前記Vベルトを介して前記従動プーリに伝達するように構成され、且つ、前記駆動プーリ及び前記従動プーリにおける前記Vベルトの巻回半径を連続的に変化させることにより変速比を無段階で変化させるように構成された無段変速装置において、
前記Vベルトの走行中、前記Vベルトにおける前記駆動プーリ及び前記従動プーリそれぞれの前記溝に嵌合した部分において、前記駆動プーリ及び前記従動プーリそれぞれの前記溝を画定する両側面がなすV溝角度と前記Vベルトの両側面がなすV角度とが一致する状態が維持されるように構成されたことを特徴とする、無段変速装置が提供される。
上記第1及び第2観点によれば、Vベルトにおけるベルト内周側のスリットを画定する部分が、ベルト幅方向に変位可能となる。これにより、Vベルトにおけるプーリの各溝に嵌合した部分において、V溝角度よりもV角度が小さくなる方向に弾性変形することが抑制され、「底当たり」が防止される。また、スリットを設けたことで上記のように「底当たり」を防止できることから、Vベルトの無張力時のV角度をV溝角度よりも大きくする必要がないため、「上当たり」も防止される。即ち、本発明によれば、Vベルトの走行中、Vベルトにおけるプーリの各溝に嵌合した部分において、V溝角度とV角度とが一致する状態が維持され、「底当たり」「上当たり」が共に防止される。したがって、「底当たり」「上当たり」によるトルクの伝達効率の低下及びVベルトの耐久性の低下を共に抑制可能である。
また、スリットの特有の構成(ベルト厚み方向に沿って直線状に延在し、且つ、ベルト内周側の面における当該スリットの幅と同じ寸法を直径とする円弧形状の先端を有するという構成)により、スリット先端からの亀裂の発生を抑制でき、ひいてはVベルトの耐久性の低下を抑制可能である。具体的には、例えば、スリットが、幅が一定でなく、先端に向かうにつれて幅が狭くなるような三角形状であると、Vベルトが弾性変形するときにスリット先端に応力が集中し、スリット先端から亀裂が生じ易い。これに対し、本発明では、スリットを上記のような特有の構成としたことで、スリット先端への応力集中を緩和し、スリット先端からの亀裂の発生を抑制できる。
また、Vベルトの断面積に対するスリットの断面積の比率を0.1〜5%としたことで、当該比率が5%を上回る場合の、耐側圧性低下(プーリからの側圧による曲がり変形が生じ易くなるため、ゴム層間に剥離が生じ、ひいては耐久性が低下すること)、及び、当該比率が0.1%を下回る場合の、Vベルトにおけるベルト内周側のスリットを画定する部分が十分にベルト幅方向に変位できず、「底当たり」「上当たり」が生じ得る問題を、共に抑制できる。
しかも、摩擦等で生じた熱がスリットを介してVベルトの外部に排出され、Vベルトの温度上昇を抑制でき、Vベルトの耐久性の低下をさらに抑制可能である。
第1観点に係るVベルトは、前記ベルト長手方向に延在する心線と、前記心線よりも前記ベルト内周側に配置された第1ゴム層と、前記心線よりも前記ベルト外周側に配置され、前記ベルト厚み方向において前記第1ゴム層とで前記心線を挟む第2ゴム層とを備え、前記1又は複数のスリットは、前記ベルト厚み方向において前記第1ゴム層の範囲内に形成されてよい。
スリットが心線に達するような深さに形成されると、耐側圧性が低下し得るが、上記構成によれば、耐側圧性の低下をより確実に抑制することができる。
第1観点に係るVベルトは、前記ベルト内周側に、前記ベルト長手方向及び前記ベルト厚み方向の両方に直交するベルト幅方向にそれぞれ延在し、且つ、前記ベルト長手方向に互いに離隔して配置された、複数のコグが形成されており、前記1又は複数のスリットは、前記ベルト厚み方向において前記複数のコグの範囲内に形成されてよい。
スリットがコグを超えるような深さに形成されると、耐側圧性が低下し得るが、上記構成によれば、耐側圧性の低下をより確実に抑制することができる。
また、コグが形成されている場合に「底当たり」が生じると、Vベルトとプーリとの接触が断続的に繰り返されることで発生する異音(ピッチノイズ)が問題となるが、本発明によれば「底当たり」を防止できることから、上記異音の問題も抑制可能である。
前記1又は複数のスリットは、前記Vベルトにおける前記ベルト長手方向及び前記ベルト厚み方向の両方に直交するベルト幅方向の中心に関して、対称に形成されてよい。
上記構成によれば、Vベルトの両側面にプーリからの側圧がバランスよく作用するため、Vベルトの捩れが防止される。
第1観点に係るVベルトは、無段変速装置に用いられてよい。
上記構成によれば、無段変速装置に用いられるVベルトにおいて上記の問題(「底当たり」や「上当たり」に起因した、トルクの伝達効率の低下及びVベルトの耐久性の低下)が特に生じ易いことから、本発明に係る効果を特に顕著に得ることができる。
本発明によれば、Vベルトの走行中、Vベルトにおけるプーリの各溝に嵌合した部分において、V溝角度とV角度とが一致する状態が維持され、「底当たり」「上当たり」が共に防止される。したがって、「底当たり」「上当たり」によるトルクの伝達効率の低下及びVベルトの耐久性の低下を共に抑制可能である。
(a),(b)は、本発明の一実施形態に係る無段変速装置の駆動プーリ及び従動プーリに、参考例に係るVベルトが巻回された状態を示す、両プーリの回転軸を通る面に沿った断面図である。 (a)は、「底当たり」が生じている状態を示す、図1(a)の一点鎖線で囲んだ領域IIに対応する部分断面図である。(b)は、「上当たり」が生じている状態を示す、図2(a)と同様の部分断面図である。 本発明の一実施形態に係るVベルトにおいてベルト長手方向と直交する方向の断面を示す斜視断面図である。 本発明の一実施形態に係る無段変速装置を示す、駆動プーリ及び従動プーリの回転軸を通る面に沿った断面図である。 (a)は、本発明の一実施形態に係るVベルトのスリットの形成方法の一例を示す斜視図である。(b)は、スリット形成前のVベルトにおけるベルト長手方向と直交する方向に沿った断面図である。(c)は、スリット形成後のVベルトにおけるベルト長手方向と直交する方向に沿った断面図である。(d)は、図5(c)のVD−VD線に沿った部分断面図である。 (a)は、高負荷走行試験を説明するための概略図である。(b)は、高速走行試験を説明するための概略図である。(c)は、耐久走行試験を説明するための概略図である。
本発明の一実施形態に係るVベルト1は、図3に示すように、ベルト外周側1yからベルト内周側1xに向かって、補強布2、伸張ゴム層3、接着ゴム層4、圧縮ゴム層5及び補強布6が順次積層された構造を有している。接着ゴム層4内には、ベルト長手方向に延在する心線4aが埋設されている。
圧縮ゴム層5は、心線4aよりもベルト内周側1xに配置されている。伸張ゴム層3は、心線4aよりもベルト外周側1yに配置され、ベルト厚み方向において圧縮ゴム層5とで心線4aを挟んでいる。つまり、圧縮ゴム層5が本発明の「第1ゴム層」に該当し、伸張ゴム層3が本発明の「第2ゴム層」に該当する。
伸張ゴム層3、接着ゴム層4及び圧縮ゴム層5は、ゴム成分を含むゴム組成物で形成されている。さらに、伸張ゴム層3及び圧縮ゴム層5を構成するゴム組成物は、短繊維を含む。伸張ゴム層3の厚みは、例えば、0.2〜10.0mm、好ましくは0.3〜6.5mm、さらに好ましくは0.4〜5.4mm程度である。圧縮ゴム層5の厚みは、例えば、2.0〜25.0mm、好ましくは3.0〜16.0mm、さらに好ましくは4.0〜12.0mm程度である。接着ゴム層4の厚みは、例えば、0.4〜3.0mm、0.6〜2.6mm、さらに好ましくは0.8〜2.4mm程度である。
ゴム成分としては、加硫又は架橋可能なゴムを用いてよく、例えば、ジエン系ゴム(天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(ニトリルゴム)、水素化ニトリルゴム等)、エチレン−α−オレフィンエラストマー、クロロスルフォン化ポリエチレンゴム、アルキル化クロロスルフォン化ポリエチレンゴム、エピクロルヒドリンゴム、アクリル系ゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴム、のうちの1種又は2種以上を組み合わせたものを用いてよい。好ましいゴム成分は、エチレン−α−オレフィンエラストマー(エチレン−プロピレン共重合体(EPM)、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体(EPDM)等)、及び、クロロプレンゴムである。特に好ましいゴム成分は、クロロプレンゴムである。クロロプレンゴムは、硫黄変性タイプ及び非硫黄変性タイプのいずれでもよい。
ゴム組成物に、添加剤を追加してもよい。添加剤としては、例えば、加硫剤又は架橋剤(又は架橋剤系)(硫黄系加硫剤等)、共架橋剤(ビスマレイミド類等)、加硫助剤又は加硫促進剤(チウラム系促進剤等)、加硫遅延剤、金属酸化物(酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化鉄、酸化銅、酸化チタン、酸化アルミニウム等)、増強剤(例えば、カーボンブラックや、含水シリカ等の酸化ケイ素)、充填剤(クレー、炭酸カルシウム、タルク、マイカ等)、軟化剤(例えば、パラフィンオイルや、ナフテン系オイル等のオイル類)、加工剤又は加工助剤(ステアリン酸、ステアリン酸金属塩、ワックス、パラフィン、脂肪酸アマイド等)、老化防止剤(酸化防止剤、熱老化防止剤、屈曲き裂防止剤、オゾン劣化防止剤等)、着色剤、粘着付与剤、可塑剤、カップリング剤(シランカップリング剤等)、安定剤(紫外線吸収剤、熱安定剤等)、難燃剤、帯電防止剤、のうちの1種又は2種以上を組み合わせたものを用いてよい。なお、金属酸化物は架橋剤として作用してもよい。また、特に接着ゴム層4を構成するゴム組成物は、接着性改善剤(レゾルシン−ホルムアルデヒド共縮合物、アミノ樹脂等)を含んでよい。
短繊維としては、例えば、ポリオレフィン系繊維(ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維等)、ポリアミド繊維(ポリアミド6繊維、ポリアミド66繊維、ポリアミド46繊維、アラミド繊維等)、ポリアルキレンアリレート系繊維(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維、ポリエチレンナフタレート(PEN)繊維等の、C2-4アルキレンC6-14アリレート系繊維)、ビニロン繊維、ポリビニルアルコール系繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール(PBO)繊維等の合成繊維;綿、麻、羊毛等の天然繊維;炭素繊維等の無機繊維、のうちの1種又は2種以上を組み合わせたものを用いてよい。ゴム組成物中での分散性や接着性を向上させるため、短繊維に、慣用の接着処理(又は表面処理)を施してよく、例えば、レゾルシン−ホルマリン−ラテックス(RFL)液等で短繊維を処理してよい。
伸張ゴム層3、接着ゴム層4及び圧縮ゴム層5を構成するゴム組成物は、互いに同じであってもよいし、互いに異なってもよい。同様に、伸張ゴム層3及び圧縮ゴム層5に含まれる短繊維は、互いに同じであってもよいし、互いに異なってもよい。
接着ゴム層4内には、複数の心線4aが、ベルト長手方向にそれぞれ延在し、且つ、ベルト幅方向(ベルト長手方向及びベルト厚み方向の両方に直交する方向)に関して所定のピッチ(例えば、0.5〜3mm、好ましくは0.8〜1.5mm、さらに好ましくは1〜1.3mm程度)で互いに離隔して配置されている。
心線4aは、例えば、マルチフィラメント糸を使用した撚り(例えば、諸撚り、片撚り、ラング撚り)コードからなる。心線4aの平均線径(撚りコードの繊維径)は、例えば、0.5〜3mm、好ましくは0.6〜1.5mm、さらに好ましくは0.7〜1.2mm程度である。
心線4aを構成する繊維としては、短繊維として例示した繊維を用いてよい。短繊維として例示した繊維のうち、ポリエステル繊維、アラミド繊維等の合成繊維や、ガラス繊維、炭素繊維等の無機繊維が、心線4aを構成する繊維として汎用されている。ベルトスリップ率を低下できる点から、心線4aを構成する繊維として、特に、ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維やポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル繊維を用いるのが好ましい。ポリエステル繊維は、マルチフィラメント糸であってよい。マルチフィラメント糸で構成される心線4aの繊度は、例えば、2000〜10000デニール(特に4000〜8000デニール)程度であってもよい。心線4aに、短繊維と同様、慣用の接着処理(又は表面処理)を施してよい。
補強布2,6は、織布、広角度帆布、編布、不織布等(好ましくは織布)の布材からなる。補強布2,6は、例えば、布材に接着処理(例えば、RFL液で浸漬処理)を施し、接着ゴムを布材にすり込むフリクション加工を行い、又は、接着ゴムと布材とを積層した後に、圧縮ゴム層5又は伸張ゴム層3の表面に積層される。
Vベルト1におけるベルト長手方向と直交する断面は、ベルト外周側1yからベルト内周側1xに向かってベルト幅が小さくなる逆台形形状である。Vベルト1の無張力時における両側面1zがなすV角度は、本発明の一実施形態に係る無段変速装置30(図4参照)の駆動プーリ31及び従動プーリ32の溝31x,32xを画定する両側面31z,32zがなすV溝角度α(例えば28°)と同じである。
Vベルト1におけるベルト内周側1xには、複数のコグ1aが形成されている。複数のコグ1aは、ベルト幅方向にそれぞれ延在し、且つ、ベルト長手方向に互いに離隔して配置されている。各コグ1aにおけるベルト長手方向に沿った断面は、ベルト外周側1yからベルト内周側1xに向かってベルト幅が小さくなる逆台形形状である。各コグ1aの高さ(ベルト厚み方向の長さ)は、Vベルト1全体の厚みの50%以内であってよい。
さらに、Vベルト1におけるベルト内周側1xの面には、ベルト長手方向に延在するスリット1sが形成されている。ベルト長手方向と直交する断面において、スリット1sは、ベルト厚み方向に沿って(本実施形態では、ベルト厚み方向と平行に)直線状に延在し、且つ、ベルト内周側1xの面における当該スリット1sの幅と同じ寸法を直径とする円弧形状の先端を有する。ベルト長手方向と直交する断面において、Vベルト1の断面積に対するスリット1sの断面積の比率は0.1〜5%である。スリット1sは、ベルト厚み方向において、圧縮ゴム層5の範囲内、且つ、複数のコグ1aの範囲内に、形成されている。スリット1sは、Vベルト1におけるベルト幅方向の中心に関して、対称に形成されている。スリット1sの深さは、Vベルト1全体の厚みの25〜50%(例えば、0.5〜5mm程度)であってよい。スリット1sの幅は、Vベルト1におけるベルト内周側1xの幅の1〜25%(例えば、0.5〜3mm程度)であってよい。
本発明の一実施形態に係る無段変速装置30は、図4に示すように、図3のVベルト1と、図1(a),(b)の無段変速装置130に含まれる駆動プーリ31及び従動プーリ32とを含む。Vベルト1は、駆動プーリ31と従動プーリ32とに張力をかけて巻回され、且つ、Vベルト1の両側面1zと駆動プーリ31及び従動プーリ32それぞれの溝31x,32xを画定する両側面31z,32zとが接触した状態で、走行される。このときに生じる両側面間の摩擦力により、駆動プーリ31のトルクがVベルト1を介して従動プーリ32に伝達される。無段変速装置30は、Vベルト1の走行中、Vベルト1における駆動プーリ31及び従動プーリ32それぞれの溝31x,32xに嵌合した部分において、両側面31z,32zがなすV溝角度αとVベルト1の両側面1zがなすV角度とが一致する状態が維持されるように構成されている。
Vベルト1の製造方法は、特に限定されず、各層の積層工程(ベルトスリーブの製造方法)に関しては、慣用の方法を利用できる。
例えば、補強布6と圧縮ゴム層5となる未加硫ゴムシートとを積層した積層体を、補強布6を下にして歯部と溝部とを交互に配したコグ付き型に設置し、温度60〜100℃(特に70〜80℃)程度でプレス加圧することによって、コグ1aを型付けしたコグパッド(完全には加硫しておらず、半加硫状態にあるパッド)を作製した後、当該コグパッドの両端(コグ1aの頂部に沿った部分)をパッドの厚み方向に切断する。そして、円筒状の金型に歯部と溝部とが交互に設けられた内母型を被せ、コグ1aが溝部に係合するようにコグパッドを内母型に巻き付けて、コグパッドの両端をジョイントし、当該巻き付けたコグパッドの上に接着ゴム層4の第1層となる未加硫ゴムシートを積層する。その後、当該未加硫ゴムシート上に心線4aを螺旋状にスピニングし、この上に接着ゴム層4の第2層となる未加硫ゴムシート、伸張ゴム層3となる未加硫ゴムシート、補強布2を順次巻き付けて、成形体を作製する。その後、ジャケットを被せて金型を加硫缶に設置し、温度120〜200℃(特に150〜180℃)程度で成形体を加硫して、ベルトスリーブを作製した後、所定のV角度が得られるようにベルトスリーブの側面をカッター等で切断する。
スリット1sの形成方法は、特に限定されないが、例えば、図5(a)に示すように、上記のようにV角度が得られたベルトスリーブ1pを、ベルト内周側1xが外側になるように主軸51と従動軸52とに張力をかけて巻回する。そして、スリット1sの形状に合わせた砥石60を、ベルトスリーブ1pを挟んで主軸51と対向する位置に配置し、砥石60をベルトスリーブ1pの外周面(ベルト内周側1xの面)に押し付けた状態で、主軸51を駆動し、ベルトスリーブ1pを走行させる。このようにして、スリット1sを形成してよい(図5(b)〜(d)参照)。
なお、本実施形態に係るVベルト1は、無段変速装置30に用いられるものであって、一般のVベルトとは異なる特有の設計がなされ(剛性、形状、寸法等が一般のVベルトと大きく異なり)、製造の難易度が極めて高いものである。
以上に述べたように、本実施形態によれば、Vベルト1におけるベルト内周側1xのスリット1sを画定する部分が、ベルト幅方向に変位可能となる。これにより、Vベルト1におけるプーリ31,32の各溝31x,32xに嵌合した部分において、V溝角度αよりもV角度が小さくなる方向に弾性変形することが抑制され、「底当たり」が防止される。また、スリット1sを設けたことで上記のように「底当たり」を防止できることから、Vベルト1の無張力時のV角度をV溝角度αよりも大きくする必要がないため、「上当たり」も防止される。即ち、本実施形態によれば、Vベルト1の走行中、Vベルト1におけるプーリ31,32の各溝31x,32xに嵌合した部分において、V溝角度αとV角度とが一致する状態が維持され、「底当たり」「上当たり」が共に防止される。したがって、「底当たり」「上当たり」によるトルクの伝達効率の低下及びVベルト1の耐久性の低下を共に抑制可能である。
また、スリット1sの特有の構成(ベルト厚み方向に沿って直線状に延在し、且つ、ベルト内周側1xの面における当該スリット1sの幅と同じ寸法を直径とする円弧形状の先端を有するという構成)により、スリット1s先端からの亀裂の発生を抑制でき、ひいてはVベルト1の耐久性の低下を抑制可能である。具体的には、例えば、スリット1sが、幅が一定でなく、先端に向かうにつれて幅が狭くなるような三角形状であると、Vベルト1が弾性変形するときにスリット1s先端に応力が集中し、スリット1s先端から亀裂が生じ易い。これに対し、本実施形態では、スリット1sを上記のような特有の構成としたことで、スリット1s先端への応力集中を緩和し、スリット1s先端からの亀裂の発生を抑制できる。
また、Vベルト1の断面積に対するスリット1sの断面積の比率を0.1〜5%としたことで、当該比率が5%を上回る場合の、耐側圧性低下(プーリ31,32からの側圧による曲がり変形が生じ易くなるため、ゴム層3〜5間に剥離が生じ、ひいては耐久性が低下すること)、及び、当該比率が0.1%を下回る場合の、Vベルト1におけるベルト内周側1xのスリット1sを画定する部分が十分にベルト幅方向に変位できず、「底当たり」「上当たり」が生じ得る問題を、共に抑制できる。
しかも、摩擦等で生じた熱がスリット1sを介してVベルト1の外部に排出され、Vベルト1の温度上昇を抑制でき、Vベルト1の耐久性の低下をさらに抑制可能である。
スリット1sは、ベルト厚み方向において圧縮ゴム層5の範囲内に形成されている。スリット1sが心線4aや接着ゴム層4に達するような深さに形成されると、耐側圧性が低下し得るが、上記構成によれば、耐側圧性の低下をより確実に抑制することができる。
スリット1sは、ベルト厚み方向において複数のコグ1aの範囲内に形成されている。スリット1sがコグ1aを超えるような深さに形成されると、耐側圧性が低下し得るが、上記構成によれば、耐側圧性の低下をより確実に抑制することができる。
また、コグ1aが形成されている場合に「底当たり」が生じると、Vベルト1とプーリ31,32との接触が断続的に繰り返されることで発生する異音(ピッチノイズ)が問題となるが、本実施形態によれば「底当たり」を防止できることから、上記異音の問題も抑制可能である。
スリット1sは、ベルト幅方向の中心に関して、対称に形成されている。当該構成によれば、Vベルト1の両側面1zにプーリ31,32からの側圧がバランスよく作用するため、Vベルト1の捩れが防止される。
Vベルト1は、無段変速装置30に用いられるものである。当該構成によれば、無段変速装置30に用いられるVベルトにおいて上記の問題(「底当たり」や「上当たり」に起因した、トルクの伝達効率の低下及びVベルトの耐久性の低下)が特に生じ易いことから、本実施形態に係る効果を特に顕著に得ることができる。
本発明者等は、表1に示すように、実施例1〜6及び比較例1〜4に係るVベルトについて、高負荷走行試験及び高速走行試験を行ってトルクの伝達効率を評価し、耐久走行試験を行ってVベルトの耐久性を評価し、また、高速走行試験においてベルト走行時の異音の有無を聴覚により確認した。実施例1〜6及び比較例1〜4に係るVベルトは、スリットの有無やその構成が互いに異なり、それ以外は互いに同じ構成である。なお、表1の「形状」の欄に、実施例1〜6及び比較例3,4に係るVベルトに形成されたスリットの形状及び寸法を示すが、当該欄に示されているスリットの図は、スリットの形状及び寸法の概要を簡潔に示す観点から、縦横の比率が実際と異なるものもある。
Figure 2016205621
実施例1〜6及び比較例1〜4に係る各Vベルトにおいて、伸張ゴム層となる未加流ゴムシート及び圧縮ゴム層となる未加流ゴムシートは、共に、表2の材料を配合し、接着ゴム層の第1及び第2層となる未加流ゴムシートは、表3の材料を配合して、それぞれバンバリーミキサー等でゴム練りを行い、生成された練りゴムをカレンダーロールに通して圧延して、作製した。
Figure 2016205621
Figure 2016205621
表2及び表3に示す材料の詳細は、下記のとおりである。
アラミド短繊維:帝人テクノプロダクツ(株)製「コーネックス短繊維」、平均繊維長3mm、平均繊維径14μm
ナフテン系オイル:DIC(株)製「RS700」
カーボンブラック:東海カーボン(株)製「シースト3」
老化防止剤:精工化学(株)製「ノンフレックスOD3」
加硫促進剤:テトラメチルチウラム・ジスルフィド(TMTD)
シリカ:東ソー・シリカ(株)製「Nipsil VN3」
実施例1〜6及び比較例1〜4に係る各Vベルトにおいて、心線としては、1000デニールのポリエチレンテレフタレート(PET)繊維を2×3の撚り構成で、上撚り係数3.0、下撚り係数3.0で諸撚りしたトータルデニール6,000のコードに、接着処理を施したものを使用した。
実施例1〜6及び比較例1〜4に係る各Vベルトは、以下の方法により製造した。先ず、補強布と圧縮ゴム層となる未加硫ゴムシートとを積層した積層体を、補強布を下にして歯部と溝部とを交互に配したコグ付き型に設置し、温度75℃でプレス加圧することによって、コグを型付けしたコグパッド(完全には加硫しておらず、半加硫状態にあるパッド)を作製した後、当該コグパッドの両端(コグの頂部に沿った部分)をパッドの厚み方向に切断した。さらに、円筒状の金型に歯部と溝部とが交互に設けられた内母型を被せ、コグが溝部に係合するようにコグパッドを内母型に巻き付けて、コグパッドの両端をジョイントし、当該巻き付けたコグパッドの上に接着ゴム層の第1層となる未加硫ゴムシートを積層した。その後、当該未加硫ゴムシート上に心線を螺旋状にスピニングし、この上に接着ゴム層の第2層となる未加硫ゴムシート、伸張ゴム層となる未加硫ゴムシート、補強布を順次巻き付けて、成形体を作製した。その後、ジャケットを被せて金型を加硫缶に設置し、温度160℃で20分間成形体を加硫して、ベルトスリーブを作製した後、所定のV角度が得られるようにベルトスリーブの側面をカッター等で切断した。これにより、実施例1〜6及び比較例1〜4に係る各Vベルトとして、ベルト内周側に複数のコグ1を有する変速ベルトであるローエッジコグドVベルト(ベルト周長800mm、ベルト上幅(ベルト外周側の幅)20mm、ベルト下幅(ベルト内周側の幅)15.5mm、厚み9.0mm、コグ高さ4.0mm)を製造した。
V角度は、接触型形状測定器((株)ミツトヨ製「CBH−1」)を用いてベルトのV形状をトレースし、その形状データを基に解析ソフトを用いてベルトの両側面がなす角度を測定した。
さらに、実施例1〜6及び比較例3,4に係る各Vベルトについては、図5(a)を参照して上述した方法により、それぞれ表1に示す形状及び寸法のスリット1sを形成した。具体的には、ベルトスリーブ1pを、ベルト内周側1xが外側になるように主軸51と従動軸52とに張力をかけて巻回し、スリット1sの形状に合わせた砥石60を、ベルトスリーブ1pを挟んで主軸51と対向する位置に配置して、砥石60をベルトスリーブ1pの外周面(ベルト内周側1xの面)に押し付けた状態で、砥石60を10000rpmで回転させつつ、主軸51を駆動し、ベルトスリーブ1pを10mm/秒で走行させることで、スリット1sを形成した(図5(b)〜(d)参照)。
高負荷走行試験では、図6(a)に示すような、直径50mmの駆動プーリ71と、直径125mmの従動プーリ72とを含む2軸走行試験機を用いた。駆動プーリ71と従動プーリ72とに実施例1〜6及び比較例1〜4に係る各Vベルト(図6(a)では実施例1〜6に係るVベルト1を示す。)を巻回し、駆動プーリ71の回転数を3000rpmとし、従動プーリ72に3N・mの負荷を付与し、室温雰囲気下にて、Vベルトを走行させた。そして、走行後直ぐに従動プーリ72の回転数を検出器で読み取り、下記式によりトルクの伝達効率を求めた。表1では、比較例1の伝達効率を「1」とし、実施例1〜6及び比較例2〜4の伝達効率を比較例1の伝達効率に対する相対値で示しており、この値が1より大きければトルクの伝達効率が高いと判断した。
伝達効率(T2/T1)=(ρ2×Te×r2)/(ρ1×Te×r1)=(ρ2×r2)/(ρ1×r1
(ここで、T1=駆動プーリの回転トルク、T2=従動プーリの回転トルク、Te=張り側張力(Vベルトが駆動プーリに向かう側の張力)から緩み側張力(Vベルトが従動プーリに向かう側の張力)を差し引いた有効張力、ρ1=駆動プーリの回転数、r1=駆動プーリの半径、ρ2=従動プーリの回転数、r2=従動プーリの半径)
高速走行試験では、図6(b)に示すような、直径95mmの駆動プーリ81と、直径85mmの従動プーリ82とを含む2軸走行試験機を用いた。駆動プーリ81と従動プーリ82とに実施例1〜6及び比較例1〜4に係る各Vベルト(図6(b)では実施例1〜6に係るVベルト1を示す。)を巻回し、駆動プーリ81の回転数を5000rpmとし、従動プーリ82に3N・mの負荷を付与し、室温雰囲気下にて、Vベルトを走行させた。そして、走行後直ぐに従動プーリ82の回転数を検出器で読み取り、上記式によりトルクの伝達効率を求めた。表1では、比較例1の伝達効率を「1」とし、実施例1〜6及び比較例2〜4の伝達効率を比較例1の伝達効率に対する相対値で示しており、この値が1より大きければトルクの伝達効率が高いと判断した。
なお、高速走行試験では、Vベルトがプーリ81,82上をプーリ81,82の半径方向外側に摺動させた状態で走行したときの、トルクの伝達効率を評価した。駆動プーリ81の回転数が大きくなるほど、Vベルトに大きな遠心力が作用する。特に駆動プーリ81の緩み側(図6(b)参照)の位置では、Vベルトに作用する張力が低く、Vベルトが遠心力によりプーリ81の半径方向外側に飛び出そうとする。この飛び出しがスムーズに行なわれない場合(即ち、Vベルトの両側面とプーリにおけるV字状の溝を画定する両側面との間に摩擦力が強く作用すると)、その摩擦力により伝動ロスが生じ、伝達効率が低下する。
耐久走行試験では、図6(c)に示すような、直径50mmの駆動プーリ91と、直径125mmの従動プーリ92とを含む2軸走行試験機を用いた。駆動プーリ91と従動プーリ92とに実施例1〜6及び比較例1〜4に係る各Vベルト(図6(c)では実施例1〜6に係るVベルト1を示す。)を巻回し、駆動プーリ91の回転数を6000rpmとし、従動プーリ92に10N・mの負荷を付与し、雰囲気温度80℃にて、Vベルトを50時間走行させた。そして、Vベルトが切断等により停止することなく走行した時間を計測した。また、Vベルト走行後の、圧縮ゴム層と接着ゴム層との剥離(層間剥離)に伴う亀裂の有無、及び、スリット先端からの亀裂の有無を、それぞれ目視により観察した。さらに、層間剥離に伴う亀裂が有った場合には、その亀裂の長さ(ベルト幅方向への深さ)を計測した。
表1のとおり、比較例1に係るVベルト(V角度=V溝角度α、スリット無し)は、「底当たり」が生じたことで、トルクの伝達効率が低く、さらに異音も発生した。比較例2に係るVベルト(V角度>V溝角度α、スリット無し)は、「底当たり」が生じなかったため、トルクの伝達効率が高く、異音も発生しなかったが、「上当たり」が生じたことで、層間剥離が生じ、Vベルトの耐久性が低下した。比較例3に係るVベルト(V角度=V溝角度α、スリット有り、スリット先端=円弧形状、Vベルトの断面積に対するスリットの断面積の比率=6.9%)は、スリット先端が円弧形状であるため、トルクの伝達効率は高いが、実施例1〜6に係るVベルトに比べ、上記断面積の比率が大き過ぎるため、耐側圧性が低下して、側圧による曲がり変形の影響が生じ易くなるため、層間剥離が生じ、大きな亀裂が生じた。比較例4に係るVベルト(V角度=V溝角度α、スリット有り、スリット先端=三角形状、Vベルトの断面積に対するスリットの断面積の比率=0.38%)は、スリットを設けたことで、トルクの伝達効率は高いが、スリット先端が鋭利な三角形状であるため、スリット先端に亀裂が生じた。実施例1〜3,5,6に係るVベルト(それぞれ、V角度=V溝角度α、スリット有り、スリット先端=円弧形状、Vベルトの断面積に対するスリットの断面積の比率=0.75%,0.37%,3.2%,4.7%,3.6%)は、スリット先端が円弧形状であり、且つ、上記断面積の比率が0.1〜5%の範囲内にあるため、Vベルトの走行中、V角度がV溝角度αに追従し、異音もなく、トルクの伝達効率も高く、層間剥離も生じなかった。実施例4に係るVベルト(V角度=V溝角度α、スリット有り、スリット先端=円弧形状、Vベルトの断面積に対するスリットの断面積の比率=0.12%)は、Vベルトの走行中、トルクの伝達効率は比較例1に係るVベルト(スリット無し)と同等であったが、V角度がV溝角度αに追従し、異音もなく、層間剥離も生じなかった。
以上、本発明の好適な実施の形態及び実施例について説明したが、本発明は上述の実施形態及び実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な設計変更が可能なものである。
・本発明に係るVベルトは、例えば、一般産業機械、自動二輪車、スノーモービル、農業機械等における無段変速装置に適用可能であり、また、無段変速装置以外の装置にも適用可能である。
・スリットの数は、1に限定されず、2以上(複数)であってもよい。複数のスリットがある場合、Vベルトの断面積に対する各スリットの断面積の合計の比率が0.1〜5%であればよい。
・スリットの延在方向は、ベルト厚み方向と平行であることに限定されず、ベルト厚み方向に対して多少傾斜してもよい。
・スリットは、Vベルトにおけるベルト幅方向の中心に関して、対称に形成されなくてもよい。
・Vベルトの無張力時におけるV角度は、V溝角度と同じであることに限定されない。
・Vベルトにおけるベルト長手方向と直交する断面は、逆台形形状であることに限定されない。例えば、伸張ゴム層の側面が、ベルト厚み方向と平行であったり、ベルト外周側に向かうにつれてベルト幅が狭くなる方向に傾斜したりしてもよい。
・ベルト外周側に、複数のコグが形成されてもよい。また、ベルト内周側及び外周側のいずれにもコグが形成されなくてもよい。
・補強布を省略してもよい。
1 Vベルト
1a コグ
1s スリット
1x ベルト内周側
1y ベルト外周側
1z 側面
3 伸張ゴム層(第2ゴム層)
4a 心線
5 圧縮ゴム層(第1ゴム層)
30 無段変速装置
31 駆動プーリ
32 従動プーリ
31x,32x 溝
31z,32z 側面

Claims (6)

  1. 駆動プーリと従動プーリとに張力をかけて巻回され、その両側面と前記駆動プーリ及び前記従動プーリそれぞれのV字状の溝を画定する両側面とが接触した状態で走行されるVベルトにおいて、
    ベルト内周側の面に、ベルト長手方向に延在する1又は複数のスリットが形成されており、
    前記ベルト長手方向と直交する断面において、
    前記1又は複数のスリットは、それぞれ、ベルト厚み方向に沿って直線状に延在し、且つ、前記ベルト内周側の面における当該スリットの幅と同じ寸法を直径とする円弧形状の先端を有し、
    前記Vベルトの断面積に対する前記1又は複数のスリットの断面積の比率が0.1〜5%であることを特徴とする、Vベルト。
  2. 前記ベルト長手方向に延在する心線と、前記心線よりも前記ベルト内周側に配置された第1ゴム層と、前記心線よりも前記ベルト外周側に配置され、前記ベルト厚み方向において前記第1ゴム層とで前記心線を挟む第2ゴム層とを備え、
    前記1又は複数のスリットは、前記ベルト厚み方向において前記第1ゴム層の範囲内に形成されていることを特徴とする、請求項1に記載のVベルト。
  3. 前記ベルト内周側に、前記ベルト長手方向及び前記ベルト厚み方向の両方に直交するベルト幅方向にそれぞれ延在し、且つ、前記ベルト長手方向に互いに離隔して配置された、複数のコグが形成されており、
    前記1又は複数のスリットは、前記ベルト厚み方向において前記複数のコグの範囲内に形成されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載のVベルト。
  4. 前記1又は複数のスリットは、前記Vベルトにおける前記ベルト長手方向及び前記ベルト厚み方向の両方に直交するベルト幅方向の中心に関して、対称に形成されていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のVベルト。
  5. 無段変速装置に用いられることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載のVベルト。
  6. 請求項1〜4のいずれか1項に記載のVベルトと、
    それぞれ前記Vベルトが嵌合されるV字状の溝を有し且つ前記Vベルトの巻回半径が可変な駆動プーリ及び従動プーリとを備え、
    前記Vベルトが前記駆動プーリと前記従動プーリとに巻回され且つ前記Vベルトの両側面と前記駆動プーリ及び前記従動プーリそれぞれの前記溝を画定する両側面とが接触した状態で前記Vベルトを走行させることで、前記両側面間の摩擦力により、前記駆動プーリのトルクを前記Vベルトを介して前記従動プーリに伝達するように構成され、且つ、前記駆動プーリ及び前記従動プーリにおける前記Vベルトの巻回半径を連続的に変化させることにより変速比を無段階で変化させるように構成された無段変速装置において、
    前記Vベルトの走行中、前記Vベルトにおける前記駆動プーリ及び前記従動プーリそれぞれの前記溝に嵌合した部分において、前記駆動プーリ及び前記従動プーリそれぞれの前記溝を画定する両側面がなすV溝角度と前記Vベルトの両側面がなすV角度とが一致する状態が維持されるように構成されたことを特徴とする、無段変速装置。
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