図1ないし図3を参照して、この発明の一実施例である放射パネル10は、建物の天井または側壁に設けられ、放射によって冷房または暖房を行うためのものであり、不燃性内装板12、導管14、および断熱材16を備える。放射パネル10は、固定部材100を用いて、天井下地材または壁下地材などの建物の構造物に取り付けて使用される。固定部材100としては、たとえば、ドリルビスやタッピングビスなどのビスが用いられる。以下、この実施例では、天井に放射パネル10を設ける場合について説明する。
図4および図5を参照して、不燃性内装板12は、室内側(内側)に設けられて、内装材として使用される汎用の部材であり、長方形の板状に形成される。なお、本発明における「不燃性内装板12」とは、不燃性内装板および準不燃性内装板を含む概念であるものとし、たとえば、石膏ボード、ケイ酸カルシウム板、木毛セメント板、金属板などである。また、不燃性内装板12は、その表面に塗装、壁紙の貼付けなどの化粧加工を施すことが可能である。この実施例では、不燃性内装板12として、石膏ボードを用いるようにした。石膏ボードは、加工や取り付けが簡単であり、施工性が良い。不燃性内装板12の短辺方向の長さは、たとえば900mmであり、その長辺方向の長さは、たとえば1800mmである。また、不燃性内装板12の厚みは、たとえば12.5mmである。不燃性内装板12を設けることで、放射パネル10の耐火性能が確保され、火災時に有毒なガスが発生することが防止される。また、不燃性内装板12の裏面(室外側面)には、導管14が設けられる。
導管14は、内部に熱媒または冷媒(以下、「熱媒体」という)を通す管部材であって、ポリブテン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタンなどの樹脂によって形成される。この実施例では、ポリブテン、ポリエチレンなどの樹脂によって導管14を形成している。これによって、導管14の錆びを防止すると共に、放射パネル10の軽量化を図っている。ただし、導管14は、樹脂管に限定されず、アルミニウム、ステンレス、銅などによって形成される金属管でもよい。導管14の外径は、たとえば6mmであり、その厚み寸法は、たとえば1mmである。放射パネル10を用いて冷房または暖房を行う際には、この導管14内を循環する熱媒体からの熱交換によって、冷やされた、または暖められた不燃性内装板12の表面からの放射により、冷房または暖房が行われる。
また、導管14は、不燃性内装板12の短辺方向に沿って延びる複数の直管部と、隣り合う直管部の端部どうしを連結する複数の曲管部とを含み、全体として蛇行状に形成されて、不燃性内装板12の裏面に配置される。導管14の蛇行ピッチは、たとえば50−70mmである。導管14の両端部は、不燃性内装板12の短辺方向一方端から延出される。
また、この実施例では、1つの不燃性内装板12は3つのブロックに区分され、ブロック毎に所定の長さに分轄された導管14が配置される。各導管14の長さは、たとえば、10mである。仮に、導管14を分割せずに配管した場合、1つの放射パネル10に設けられる導管14の長さが長尺となってしまい、導管14の内部を熱媒体が循環するのに必要な時間が長くなる。それに伴って、ヒートロスが大きくなり、導管14の上流側と下流側とで温度むらが発生してしまう。このような問題を回避するため、導管14の長さは、たとえば30m以下に設定することが望ましい。また、導管14の上面には、伝熱シート18が設けられる。
伝熱シート18は、アルミテープなどであって、熱伝導性に優れる材料によって形成され、片面に粘着性を有する。伝熱シート18の幅方向の長さは、導管14の外径よりも大きく、たとえば50mmである。伝熱シート18は、蛇行状に形成される導管14の管路に沿って、導管14の上面全体を覆うように貼りつけられ、不燃性内装板12と導管14とを密着固定する。このような伝熱シート18を設けることによって、導管14から不燃性内装板12への熱伝導効率が向上し、不燃性内装板12の温度の均一性が向上する。ただし、伝熱シート18の形状や配置態様などは特に限定されない。伝熱シート18は、不燃性内装板12の裏面全体を覆うように設けてもよい。また、伝熱シート18は、必ずしも設けなくてもよい。また、不燃性内装板12の裏面には、導管14をさらに覆うように、断熱材16が設けられる。
断熱材16は、ロックウール、グラスウール、ウレタンフォーム、発泡プラスチックなどによって長方形の板状に形成される。この実施例では、変形・圧縮対策を施したロックウールで断熱材16を形成している。変形・圧縮対策を施しておくことによって、放射パネル10をビス止めした際に、断熱材16が変形することなく、放射パネル10の表面が平坦に維持される。断熱材16の短辺方向の長さは、たとえば600mmであり、長辺方向の長さは、たとえば900mmであり、その厚みは、たとえば40mmである。断熱材16は、不燃性内装板12のブロック毎に隙間なく配置され、全体として不燃性内装板12とほぼ同じ大きさの長方形状となって、不燃性内装板12の裏面全体を覆う。また、断熱材16と不燃性内装板12とは、接着剤などによって固着される。このように、不燃性内装板12の裏面(室外側面)に隙間なく断熱材16を設けることによって、導管14から外方(室外側)への熱の拡散が防止され、結果としてエネルギーの搬送効率が向上する。しかも、ロックウールは耐火性に優れるので、火災が発生した際などに、導管14に引火したり、導管14が溶け出したりすることが防止される。また、不燃性内装板12の裏面に断熱材16を予め設けておくことによって、放射パネル10の施工時に、別途断熱材を吹き付けたりする必要がなく、施工が容易となる。
一方、不燃性内装板12の短辺方向一方端から延出された導管14の両端部には、硬質ウレタンフォーム、ポリエチレンフォームなどによって形成される保温材28が設けられる。これによって、断熱材16がない部分の導管14の保温効果が確保される。
さらに、導管14の管端には、かしめ継手(プレス式継手)やワンタッチ継手などの接続継手30が設けられる。この接続継手30をメインパイプの管路に設けられた分岐継手(図示せず)などに接合することによって、各導管14の内部を熱媒体が循環する管路が形成される。
ここで、上述のように、導管14は不燃性内装板12の裏面(室外側面)に設けられている。つまり、放射パネル10を設置する際、作業者は、室内側から導管14を視認することはできない。そのため、導管14の配管位置に固定部材100を誤って使用してしまい、導管14を破損してしまうおそれがある。そこで、この実施例では、不燃性内装板12の表面(室内側面)に、導管14の配管位置を表示する配管位置表示22と、固定部材100の使用が推奨される位置を表示する固定推奨位置表示24とが設けられる。配管位置表示22および固定推奨位置表示24は、いずれも固定可能領域を認識させるための固定可能領域表示20として機能するものであり、固定可能領域表示20に包含される概念である。また、固定可能領域とは、固定部材100を使用できる領域のことであり、言い換えると、導管14の配管位置を除く領域のことである。
配管位置表示22は、不燃性内装板12の裏面に設けられる導管14の配管位置と符合する位置に形成されて、配管位置を表示する。具体的には、配管位置表示22は、導管14の外径と略同じ太さの線によって表され、不燃性内装板12の短辺方向に沿って延びる複数の直線部と、隣り合う直線部の端部どうしを連結する複数の曲線部とを含み、全体として、不燃性内装板12の裏面に設けられる導管14の管路に沿う蛇行状に形成される。このような配管位置表示22が設けられることによって、作業者は、不燃性内装板12の表面側(室内側)から、不燃性内装板12の裏面(室外側面)に設けられた導管14の配管位置を認識できるようになる。そして、その導管14の配管位置を除く領域として、固定可能領域を識別できる。
一方、固定推奨位置表示24は、放射パネル10を取付部に固定するための固定部材100の使用が推奨される位置を表示する。固定部材100の使用が推奨される位置とは、固定可能領域内であって、たとえば、天井下地材、壁下地材など、放射パネル10を取り付ける建物の構造物すなわち取付部と対応する位置のことである。固定推奨位置表示24は、不燃性内装板12の表面の縁部に設けられる第1固定推奨位置表示24aと、それよりも内側に設けられる第2固定推奨位置表示24bとを含み、いずれも後述する天井桟102が設けられる位置と対応する位置に形成される。
第1固定推奨位置表示24aは、固定部材100(ビス)の外径と同じかそれよりもやや大きい太さの線によって表され、導管14の両端部が延出する部分を除く不燃性内装板12の表面のほぼ全周に亘って、その縁部に沿う直線状に形成される。
第2固定推奨位置表示24bは、固定部材100の外径と同じがそれよりもやや大きい点によって表され、不燃性内装板12の短辺方向中央において、間隔を隔てて長辺方向に沿って並ぶ。具体的には、第2固定推奨位置表示24bは、配管位置表示22の直線部とぶつからないように、その間に2ピッチ毎に配置され、隣り合う第2固定推奨位置表示24bどうしの間の間隔は、たとえば120mmである。ただし、不燃性内装板12の各ブロックの境界に当たる部分、すなわち各断熱材16の境界部分には、第2固定推奨位置表示24bは配置されない。これは、断熱材16の境界部分にビスを打つと、その部分には断熱材16がないので、ビスが深く食い込み過ぎて、放射パネル10の表面に凹凸ができてしまう可能性があるからである。
このような固定推奨位置表示24が設けられることによって、作業者は、固定可能領域を認識できるだけでなく、固定部材100の使用が推奨される位置すなわち取付部の位置も認識できる。
放射パネル10を製造する際には、まず、不燃性内装板12の表面(室内側面)に、配管位置表示22と固定推奨位置表示24とを設ける。具体的には、配管位置表示22および固定推奨位置表示24は、多関節ロボット、レーザープリンタなどを用いて、不燃性内装板12の表面に目視可能な表示、たとえば、印刷、塗装、シールの貼付を施すことによって設けられる。あるいは、あらかじめ印刷、塗装、シールの貼付などを施した壁紙を不燃性内装板12の表面に貼り付けることによって設けられる。この実施例では、不燃性内装板12を用いるようにしたので、塗装、壁紙の貼付けなどの従来の化粧加工方式によって、簡単に、不燃性内装板12の表面に固定可能領域表示20を設けることができる。
続いて、不燃性内装板12の裏面(室外側面)に、導管14を配管する。導管14は、通常、多関節ロボットなどを用いて、あらかじめ設定された配管位置表示22と正確に符合するように、不燃性内装板12の裏面に蛇行状に配置する。その導管14の上面全体を覆うように伝熱シート18を貼り付ける。
導管14を配管し終えたら、導管14の両端部を保温材28で覆い、その管端に接続継手30を設ける。
それから、導管14を覆うように、不燃性内装板12の裏面(室外側面)に断熱材16を配置すると共に、接着剤などで固着することにより、放射パネル10の製造が完了する。
なお、以上では、不燃性内装板12の表面に配管位置表示22を設けた後、その裏面において配管位置表示22と対応する位置に導管14を配管するようにしたが、不燃性内装板12の裏面に導管14を配管してから、その表面に導管14の配管位置と対応する配管位置表示22を設けるようにしても構わない。この場合でも、導管14の取り付け位置のティーチングデータを利用することで、導管14の配管位置と正確に符合する配管位置表示22を形成することが可能である。
前述のように、従来の化粧加工方式によって、不燃性内装板12の表面に固定可能領域表示20、あるいは配管位置表示22および第1固定推奨位置表示24aならびに第2固定推奨第24bを表示するようにしたが、たとえば、図11の実施例では、不燃性内装板12の表面に、シールないしフィルム26を貼付する。すなわち、配管位置表示22、第1固定推奨位置表示24aおよび第2固定推奨第24bを予めたとえば印刷しているシールないしフィルム26を、不燃性内装板12の表面(室内側面)に貼付することによって、作業者に配管位置表示22、第1固定推奨位置表示24aおよび第2固定推奨位置24bを目視によって確認させることができる。
なお、このようなシールないしフィルム26は工場で不燃性内装板12の表面に貼付してもよいし、施工現場において、貼付するようにしてもよい。
さらに、不燃性内装板12の表面(室内側面)に配管位置表示22、第1固定推奨位置表示24aおよび第2固定推奨位置表示24bを印刷する場合、図12に示すようなステンシルプレート28を利用してもよい。つまり、ステンシルプレート28には配管位置表示22および第2固定推奨位置表示24bに相当する抜き型30および32を含み、このステンシルプレート28を不燃性内装板12の表面上の適正な位置に載せ、ステンシルプレート28の上からインクや塗料を噴霧して、先の実施例で示す配管位置表示22および第2固定推奨位置表示24bを不燃性内装板12の表面上に描く。
なお、この実施例では、第1固定推奨位置表示24aは描かない。理由は、ステンシルプレート28に第1固定推奨位置表示24aに相当する抜き型を形成することができないからである。第1固定推奨位置表示24aは不燃性内装板12の一辺全長に亘る場合があり、もしそのような抜き型を形成すると、ステンシルプレート28がその部分で分離してしまう。ただし、第1固定推奨位置表示24aを不連続のものとして表示する場合、不連続な抜き型を形成できるので、ステンシルプレート28を用いる場合であっても、第1固定推奨位置表示24aを形成することができる。
図12のステンシルプレート28を使用する場合、通常の見えるインク(CMYK)ではなく、ブラックライトインク(RGB)を用いて配管位置表示22および固定推奨位置表示24を印刷するようにしてもよい。ブラックライトインクは自然光や蛍光灯などの下では透明である(見えない)が、ブラックライトをあてると発色するインクであり、たとえば赤、緑、青の光の三原色に光る蛍光体を含んだ顔料を混ぜたインクで、ブラックライトを吸収して無色から蛍光色に発色する。
ブラックライトインクで配管位置表示22および固定推奨位置表示24を印刷すると、天井に貼る壁紙が薄くても、それらの配管位置表示22および固定推奨位置表示24が透けることがない。つまり、通常の見えるインクで配管位置表示22および固定推奨位置表示24を印刷すると、天井の壁紙を通してこれらのマーキングが透けて見えることがあるが、ブラックライトインクを使用すれば、そのような事態が回避できる。
なお、ブラックインクを使用する場合、必ずしもステンシルプレート28を用いる必要はなく、前述したロボットなどで塗装する場合などにおいても、ブラックインクを使用することができる。
続いて、図6および図7を参照して、このような放射パネル10を天井に設置する方法について説明する。
まず、施工現場に放射パネル10と固定部材100(ビス)とを用意する。ビスの長さは、放射パネル10の厚みよりも大きく、たとえば70mm以上のものが好ましい。
建物内の放射パネル10を設置する室内の上方には、既設の天井下地材として天井桟102が設けられている。天井桟102の桟間隔は、たとえば200−450mmである。上述したように、この実施例では、天井桟102が放射パネル10を取り付ける取付部となる。
放射パネル10を取り付ける際には、まず、図6に示すように、放射パネル10の表面を室内側に向けた状態で、放射パネル10の裏面の縁部を天井桟102の下面と当接させて位置決めする。この状態で、天井桟102と放射パネル10とを両面テープなどで仮止めする。
それから、作業者は、放射パネル10の表面に設けられた固定可能領域表示20に基づいて、固定可能領域すなわち固定部材100を使用できる領域を識別し、その固定可能領域内においてビス止めする。具体的には、作業者は、図7に示すように、不燃性内装板12の表面に形成された固定推奨位置表示24上において、ビス止め位置を決める。そして、放射パネル10の表面側から、固定部材100(ビス)を放射パネル10に貫通させ、そのまま天井桟102に対して打ち付ける。以上の作業を繰り返し、第1固定推奨位置表示24a上において所定のピッチ(たとえば120mmのピッチ)でビス止めすると共に、各第2固定推奨位置表示24b上においてビス止めする。これによって、図2および図3に示すように、天井桟102と放射パネル10とが固着される。このように、固定推奨位置表示24上でビス止めすることで、導管14の配管位置に固定部材100(ビス)を誤用してしまうおそれはない。しかも、放射パネル10を確実かつ効率的に天井桟102に固定できる。
なお、ビス止めの間隔などはこれに限定されず、適宜変更可能である。また、必ずしも、第2固定推奨位置表示24bのそれぞれにビス止めする必要はない。
以上の要領で、設置区間における天井に放射パネル10を敷設(並設)していく。このとき、導管14の管端が延出する放射パネル10の一方端と、他の放射パネル10との間には、隙間を形成しておく。そして、この隙間を利用して、導管14の管端に設けられた接続継手30を、メインパイプの管路にあらかじめ設けられた分岐継手などに対して接合する。その後、図1に示すように、放射パネル10の間の隙間とほぼ同じ大きさのブランクパネル104などを設けることによって、この隙間を塞ぐ。
以上のように、この実施例では、放射パネル10は、固定部材100を用いて既設の天井下地材(天井桟102)などの建物の構造物に固定することによって、天井に設けられ、従来の放射パネル10のように、既設の天井下地材の下方に間隔を隔てて放射パネル10が吊設される、いわゆる吊り天井構造とはならない。つまり、既設の天井下地材と放射パネル10との間に空間(デッドスペース)は設けられない。したがって、省スペース化が実現され、室内空間が狭くなることはない。
しかも、吊り天井構造のように、既設の天井下地材の下方に下地枠などの別途の構造物を設け、その下地枠に放射パネル10を固定するという大掛かりな作業を要しない。また、放射パネル10の落下防止対策として、放射パネル10と天井下地材などとの連結構造を設ける手間もなくなる。したがって、施工性に優れる。
さらに、放射パネル10は、大掛かりな工事をすることなく、既設の天井下地材にそのまま適用できるので、戸建て住宅、既存のビルなど、従来、放射パネル10の設置が難しかった一般的な建物にも放射空調を導入できるようになる。
そのうえ、汎用の内装材である不燃性内装板12で放射パネル10を構成するようにしたので、塗装、壁紙の貼付けなどの従来の化粧加工方式を用いて、簡単に、放射パネル10の意匠を変更できる。したがって、顧客は放射パネル10の意匠を選定できる。また、配管位置あるいは取付部などの位置に応じて、固定可能領域表示20を容易に変更できる。
また、この実施例では、放射パネル10の表面に固定可能領域表示20を設けたので、設置時に、作業者は固定可能領域を識別できる。これにより、誤って導管14の配管位置に固定部材100を使用してしまうことが防止される。したがって、固定部材100による導管14の破損を防止できる。
特に、この実施例では、配管位置表示22と固定推奨位置表示24とを併設したので、導管14の配管位置と固定可能領域とは明確に区別できる。これにより、導管の配管位置に固定部材100を誤用してしまうことをより確実に防止できる。
なお、上述の実施例では、放射パネル10の表面に固定推奨位置表示24と配管位置表示22とを併設するようにしたが、かならずしも固定推奨位置表示24と配管位置表示22との両方を設ける必要はない。たとえば、図8に示すように、固定推奨位置表示24を設けなくてもよい。以下、上述の実施例と同様の部分については、同じ参照番号を用い、その説明を省略或いは簡略化する。
図8に示す実施例では、不燃性内装板12の表面には、配管位置表示22が設けられる。配管位置表示22は、導管14の外径と略同じ太さの線で表され、複数の直線部と、隣り合う直線部の端部どうしを連結する複数の曲線部とを含み、導管14の管路に沿う蛇行状に延びる。不燃性内装板12の表面には、固定推奨位置表示24は設けられない。
放射パネル10を天井に設置する際には、放射パネル10の表面を室内側に向けた状態で、その裏面の縁部を天井桟102の下面と当接させる。そして、作業者は、放射パネル10の表面に設けられた配管位置表示22以外の領域、すなわち固定可能領域にビス止めする。具体的には、放射パネル10の表面側から、固定部材100(ビス)を放射パネル10に貫通させて天井桟102に対して打ち付けて固定する。たとえば、ビス止めは、放射パネル10の表面の縁部において、所定のピッチ(たとえば120mmのピッチ)で行うとよい。ただし、ビス止め位置は、固定可能領域内であれば特に限定されない。
図8に示す実施例においても、上述の実施例と同様に、作業者は、固定可能領域を識別できる。つまり、固定推奨位置表示24がなくても、配管位置表示22が設けられていることによって、導管14の配管位置を認識できるので、その導管14の配管位置を除く領域として、固定可能領域を識別できる。このため、導管14の配管位置に固定部材100を使用してしまうことは防止される。
また、たとえば、図9に示すように、放射パネル10の表面には、配管位置表示22を設けなくてもよい。図9に示す実施例では、第1固定推奨位置表示24aおよび第2固定推奨位置表示24bを含む固定推奨位置表示24が設けられる。第1固定推奨位置表示24aは、固定部材100(ビス)の外径と同じかそれよりもやや大きい太さの線であり、不燃性内装板12の表面の縁部のほぼ全周にわたって直線状に延びる。また、第2固定推奨位置表示24bは、固定部材100の外径と同じがそれよりもやや大きい点であり、不燃性内装板12の短辺方向中央において、所定の間隔を空けて長辺方向に並ぶように配置される。この実施例においても、図4に示す実施例と同様に、作業者は、固定推奨位置表示24によって固定可能領域を識別できる。このため、誤って、導管14の配管位置に固定部材100を使用してしまうことは防止される。それと共に、固定部材100の使用が推奨される位置すなわち取付部を識別できる。したがって、放射パネル10を確実かつ効率的に取付部に固定できる。
なお、図4および図9に示す実施例では、固定推奨位置表示24として、不燃性内装板12の縁部に形成される第1固定推奨位置表示24aと、不燃性内装板12の中央部分に形成される第2固定可能領域表示24bとを設けるようにしたが、これに限定される必要はなく、固定推奨位置表示24aは、不燃性内装板12の縁部のみに形成してもよいし、不燃性内装板12の中央部分のみに形成しても構わない。また、固定推奨位置表示24の数、形状、配置態様などは図4および図9に示すものに限定されず、配管位置あるいは取付部の位置などに応じて適宜変更可能である。要は、固定推奨位置表示24は、固定可能領域すなわち導管14の配管位置を除く領域内に設けられ、かつ固定部材100の使用が推奨される位置を表示しているのであればよい。
また、上述の各実施例では、天井桟102に放射パネル10を取り付けるようにしたが、放射パネル10は、天井板などの他の天井下地材に取り付けることもできるし、天井スラブに取り付けることもできる。さらに、放射パネル10が取り付けられる取付部は、木製、鋼製、コンクリート製であるとを問わない。
また、上述の各実施例では、いずれも放射パネル10を天井に設ける場合について説明したが、これに限定されない。たとえば、図10に示すように、放射パネル10は、建物内の側壁に設けることもできる。以下、上述の実施例と同様の部分については、同じ参照番号を用い、その説明を省略或いは簡略化する。
図10を参照して、放射パネル10は、不燃性内装板12、導管14、および断熱材16などを備え、不燃性内装板12の表面(室内側面)には、固定可能領域を認識させるための固定可能領域表示20が設けられる。この実施例では、固定可能領域表示20として、蛇行状の配管位置表示22が設けられ、固定推奨位置表示24は設けられない。
建物内の放射パネル10を設置する室内の側方には、壁下地材(図示せず)が設けられており、この壁下地材に放射パネル10が取り付けられる。
放射パネル10を側壁に設置する際には、放射パネル10の表面を室内側に向けた状態で位置決めする。それから、放射パネル10の表面に設けられた配管位置表示22以外の領域、すなわち固定可能領域にビス止めする。具体的には、固定部材100(ビス)を放射パネル10に貫通させ壁下地材に対して打ち付けて、放射パネル10を固定する。たとえば、ビス止めは、放射パネル10の表面の縁部において、所定のピッチ(たとえば120mmのピッチ)で行うとよい。
この実施例においても、上述の各実施例と同様に、放射パネル10は、固定部材100を用いて建物の構造物(壁下地材)に取り付けられ、壁下地材と放射パネル10との間に空間(デッドスペース)は設けられない。したがって、省スペース化が実現され、室内空間が狭くなることはない。しかも、大掛かりな工事は必要なく、施工性に優れる。さらに、放射パネル10は、既設の壁下地材にそのまま適用できるので、一般的な建物にも壁面を利用した放射空調を導入できる。
また、放射パネル10の表面に配管位置表示22を設けたので、設置時に、作業者は固定可能領域を識別できる。これにより、導管14の配管位置に固定部材100を誤用することが防止される。
さらに、この実施例では、配管位置表示22は、使用時に、壁掛け金具(図示せず)などを固定するための固定部材を使用できる領域として、固定可能領域を認識させることもできる。放射パネル10に壁掛け金具などを取り付ける際には、作業者は、放射パネル10の表面に設けられた配管位置表示22によって、配管位置を除く領域として固定可能領域を認識する。そして、その領域内において固定部材を打ち付けて壁掛け金具を取り付ける。これにより、使用時に、誤って放射パネル10の導管14を破損してしまうことも防止できる。
ただし、図10に示す実施例においても、配管位置表示22と固定推奨位置表示24との両方を設けるようにしてもよいし、固定推奨位置表示24のみを設けるようにしてもよい。
なお、図4、図8、および図10に示す実施例では、導管14の配管位置と符合する位置に印刷、塗装、シール貼付などを施すことによって、配管位置表示22を表すようにしたが、たとえば、配管位置以外の領域に塗装を施すことによって、白抜きの線として配管位置表示22を表すこともできる。
また、同様に、図4および図9に示す実施例において、固定部材100の使用が推奨される位置を除く領域に塗装を施すことによって、固定推奨位置表示24を白抜きの部位として表してもよい。
また、上述の各実施例では、印刷、塗装、シール貼付などによって配管位置表示22および固定推奨位置表示24を形成するようにしたが、たとえば、配管位置表示22および固定推奨位置表示24は、不燃性内装板12の表面に凹凸を形成することによって設けることもできる。固定推奨位置表示24を固定部材100(ビス)の頭部の高さとほぼ同じ深さの凹部で形成するようにすれば、ビス止めした際に、放射パネル10(不燃性内装板12)の表面とビスの頭部との間に段差ができ難くなる。しかしながら、このような凹凸表示は、配管位置表示22や固定推奨位置表示24を凸部で形成するようにしてもよいことは、もちろんである。
さらに、配管位置表示22および固定推奨位置表示24を不燃性内装板12の表面粗さで表示するようにしてもよい。つまり、配管位置表示22および固定推奨位置表示24を表示すべき不燃性内装板12の表面を粗面にし、その他の表面部分を平滑面とするか、その逆に、配管位置表示22および固定推奨位置表示24を表示すべき不燃性内装板12の表面を平滑面とし、その他の表面部分を粗面とする。ただし、前者の方が粗面加工すべき面積が小さくなるので好ましい。
また、放射パネル10(不燃性内装板12)の形状、大きさなどは、上述の各実施例に示すものに限定されない。たとえば、放射パネル10は正方形状に形成してもよい。また、放射パネル10は、施工現場において必要な大きさに切断加工して使用することもできる。この場合、固定可能領域表示20は、放射パネル10を切断可能な位置を認識させる役割を果たすこともできる。たとえば、図4に示す実施例では、放射パネル10(不燃性内装板12)は3つのブロックに区分けされ、ブロック毎に導管14が配管されている。作業者は、配管位置表示22によって、導管14の配管位置を認識できるので、各配管位置表示22の間で放射パネル10を切断するようにすれば、誤って導管14を切断してしまうことはない。
たとえば図11に示すようにフィルム26を貼付することによって配管位置表示22および固定推奨位置表示24を不燃性内装板12の表面に表示する実施例においても、フィルム26をブロック毎に準備して、3枚のフィルムを用いて前面に配管位置表示22および固定推奨位置表示24を表示するようにしてもよい。このようにすれば、長大なフィルムを扱う必要がなく、フィルムの取り扱いが容易である。ただし、この場合、各ブロックの配管位置表示22および固定推奨位置表示24が同じ形状や位置である(共通する)必要があり、その場合であれば、1種類の1ブロック分のフィルムを準備するだけでよい。
さらに、放射パネル10に設けられる導管14の数、形状、配置態様などは上述の各実施例に示すものに限定されない。たとえば、不燃性内装板12の裏面に所定の長さの導管14を1つだけ配置するようにしてもよいし、導管14の形状は、渦巻き状などであってもよい。この場合、その導管14の数、形状、配置態様に対応する配管位置表示22を不燃性内装板12の表面に設けるとよい。
さらにまた、導管14を覆う断熱材16の数、配置態様などは適宜変更可能である。
なお、上述の各実施例では、いずれも放射パネル10の表面に固定可能領域表示20を設けるようにしたが、本発明において固定可能領域表示20は必須のものではない。ただし、固定可能領域表示20を設けない場合には、作業者が誤って導管14の配管位置に固定部材100を使用しないように、施工説明書などに固定部材100を使用できる領域を記載しておく必要がある。
また、上述の各実施例では、固定部材100として、タッピングビスやドリルビスなどのビスを用いるようにしたが、固定部材100としては、釘、ねじ、ボルトおよびナットなどを用いることもできる。図示は省略するが、ボルトおよびナットを用いて取付部に放射パネル10を取り付けるには、取付部と放射パネル10との対応する位置にあらかじめ貫通孔を形成しておき、取付部の貫通孔にボルトの胴部を通し、放射パネル10の表面(室内側面)から、座金を介して、ボルトに螺合するナットを締め付けることによって、取付部と放射パネル10とを固定する。
また、固定部材100で放射パネル10を取付部に固定すると共に、クリップ留め、接着接合などを併用することにより、放射パネル10を設置するようにしてもよい。
上述の実施例では、配管位置表示22および固定推奨位置表示24を不燃性内装板12の表面に固定的に(恒久的に)表示したが、図13の実施例では、プロジェクタ(投影機)34を用いる。詳しくいうと、このプロジェクタ34に、たとえば図4などに示す配管位置表示22および固定推奨位置表示24a、24bを描いた静止画像を投影画像として設定しておき、施工現場において不燃性内装板12を天井桟102に固定する際に、プロジェクタ34から上記静止画像を投影して、不燃性内装板12の表面(室内側面)に、一時的に、配管位置表示22および固定推奨位置表示24a、24bを映出する。作業者はその投影された配管位置表示22および固定推奨位置表示24a、24bをみて、不燃性内装板12の取付作業をする。
この図13の実施例のように、プロジェクタ34で不燃性内装板12の表面に配管位置表示22および固定推奨位置表示24a、24bを映出するようにすれば、不燃性内装板12の表面に予め配管位置表示22および固定推奨位置表示24a、24bを表示する必要はないし、配管位置などが異なる仕様の施工現場でも上述の静止画像を変更するだけでよく、同じ不燃性内装板12を共通に使用することができる。
上述の実施例ではいずれも、工場出荷時または施工時において不燃性内装板12の表面に配管位置表示22および固定推奨位置表示24a、24bを表示するようにしたが、図14に示す実施例は、不燃性内装板12の表面にマトリクス36を表示または形成する。その方法は、上述した塗装、印刷、フィルム、凹凸など任意であるが、マトリクス36には、図14(B)に示すように、縦に「A」、「B」、「C」、…、横に「1」、「2」、「3」、…のようなマトリクス交点を識別するための識別符号が付されていて、たとえば指図書で『Aビル2階では、固定推奨位置は、「A‐4、H‐4、…」です。』のような情報(指図書)を作業者に伝達する。したがって、作業者はその指図書が指示する固定推奨位置(各実施例の固定推奨位置表示24a、24bが示す位置のこと)において固定することによって、確実に配管場所などを避けることができる。
ただし、そのような指図書は紙で作業者に提示してもよく、さらにはネットワーク(図示せず)を通して施工現場の作業者のコンピュータ(タブレットPC、スマートホンなどでも可)に送信することで作業者に提示することもできる。
さらに、図15の実施例では、施工時に、治具38を用いる。治具38は、たとえば木の板やアルミニウムの板で「T」字形状に形成され、横辺40は不燃性内装板12の横幅と等しくされ、それのほぼ中央に、横辺40に直交する縦辺42が形成される。縦辺42は、それの上辺42aが、不燃性内装板12の幅方向の上述の各実施例における固定推奨位置表示24bに対応するように、横辺40の中央寄りやや下方(図15では左方向)の位置に形成される。縦辺42の長さは、この実施例では、不燃性内装板12の縦長さのほぼ半分とされる。そして、縦辺42の表裏両面に、固定推奨位置表示24bに相当する位置に、標線(目印)44が形成される。この標線44が固定推奨位置を示すので、作業者は、横辺40を不燃性内装板12の長さ方向の一方端に沿わせながら、この標線44の位置においてビスなどの固定部材によって不燃内装板12を固定すればよい。
図15の実施例では「T」字状の治具38の縦辺42は不燃性内装板12の長さの半分の長さに設定しているので、残りの半分を固定する場合には、治具42の横辺40を、不燃性内装板12の長さ方向の他方端に沿わせて配置して、縦辺42の裏面の標線を目印にして固定部材を用いればよい。
さらに、上述のいずれの実施例でも、何らかの態様で固定推奨位置を可視的に表示することによって、作業員が誤って導管14を破損しないようにした。しかしながら、別の実施例では、磁石(図示せず)によって導管14の位置を検出することによって、その部分に固定部材を用いることを回避するようにする。たとえば、導管14に沿って磁気に反応する塗料(磁石または鉄粉等が含まれた塗料。磁性塗料)を塗布するなどして、導管14の位置を不燃性内装板12の表面(室内側面)から磁石で検知することによって、固定不可の領域すなわち固定可能位置を知ることができる。つまり、この場合の磁性塗料は、固定可能領域表示として機能する。したがって作業者が導管14を損傷することがない。
ただし、このような磁石によって導管14の位置を不燃性内装板12の表面から検出できるようにする、すなわち固定可能領域を磁性体で表示するためには、上述のように磁性塗料を導管14に沿って塗布する他、導管14に直接磁性塗料を塗布する方法、導管14に磁性体からなる線(たとえば、鉄線)を巻き付ける方法、導管14中にそのような磁性体線を通したりする方法が採用されてもよい。
さらに、図16の実施例におけるように、導管14と不燃性内装板12との間に磁性体(たとえば、鉄線や鉄板)からなる板材46を配置することもできる。この場合でも、磁石によって導管14の位置を不燃性内装板12の表面から検出できるので、導管14の位置を回避して固定部材によって不燃性内装板12を固定することができる。この場合の板材46も固定可能領域表示として機能する。
ただし、図16の実施例において、板材46として比較的幅広の(導管14の外径程度の幅の)鉄板を用いた場合、固定部材(ビス)100(図3)は鉄板を貫通することができないので、作業者が間違って導管14の位置にビスを打ち込んでも、そのビスの螺入は鉄板に阻止されて導管14にまで届かない。そのため、間違って導管位置14にビスを用いても、ビスによって導管14を損傷することはない。
なお、図16の実施例においては磁性体の板材46を用い、その板材46に、導管14の位置を磁石によって検出するための検出補助部材の機能と、ビスの螺入阻止部材の機能とを併有させた。しかしながら、検出補助部材としての機能が不要な場合、図16の実施例の板材46を非磁性体の板材に代えてもよい。
さらに、図16の実施例においては、板材46を不燃性内装板12の裏面(室外側)に配置したが、特に板材46にビスの螺入素子機能だけを付与する場合、図16において点線で示すように、不燃性内装板12の表面(室内側)に配置してもよい。
さらに、上述の実施例ではいずれも、導管14は不燃性内装板12の裏面に設けられ、断熱材16で覆われたが、導管14は必ずしも不燃性内装板12の裏面に設けられる必要はなく、不燃性内装板12の表面から露出しないように設けられればよい。たとえば、不燃性内装板12の厚み内に導管14を埋設することも可能である。このような場合でも、断熱材16は、導管14からの熱へ伝わる熱を遮断しまたは低減する作用を果たす。
なお、上述した寸法等の具体的数値は、いずれも単なる一例であり、製品の仕様などの必要に応じて適宜変更可能である。