JP2016192955A - バチルス属細菌の計数方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】疎水格子フィルターを利用し、下水に含まれる活性汚泥や、市販のバチルス製剤に含まれるバチルス属細菌の計数を安価でかつ容易に把握することができるバチルス属細菌の計数方法を提供する。【解決手段】バチルス属細菌を含む試料を保持させた疎水格子フィルターを寒天培地に載せて所定時間所定温度で培養させると発色変化したコロニーを形成し、疎水格子フィルターの格子区画内に形成されたコロニーの形態から、バチルス属細菌に基づく陽性区画数を計数する。【選択図】図15

Description

本発明は、バチルス属細菌の計数方法に関する。
し尿処理場では、し尿の高負荷処理が行われるとともに、し尿臭がない運転状況(所謂し尿の高負荷・無臭処理)を実現している。この処理場の活性汚泥を調査したところ、活性汚泥中にバチルス(Bacillus)属細菌の優先化が顕微鏡観察で認められ、バチルス優先化にはケイ酸やマグネシウム等のミネラル成分の関与が必要なことが知られている。
このような研究背景をもとに、汚水処理におけるバチルス属細菌の利用、すなわち、バチルス属細菌を活性汚泥中で優先化させて汚水処理を行う「バチルス優先化運動」が提案されている。例えば、新活性汚泥技術研究会(A society for study of New Activated Sludge Technology, NAST、事務局:大阪工業大学(株)エコソリューションネット内)などの
研究会では、バチルス属細菌利用による活性汚泥法の機能改善等に含むシンポジウムが毎年実施されている。この「バチルス優先化運動」のために、バチルス属細菌の分離株から作製した「バチルス製剤」やバチルス属細菌の発育促進剤である「ケイ酸やマグネシウムなどのミネラル剤などが販売されている。例えば、活性汚泥にバチルス製剤を添加した後、継続的にバチルス属細菌の発育促進剤を添加する。このようなバチルス優先化の活性汚泥法により、効率的な活性化汚泥発生量の低減ができるとしている。これはバチルス分離株を用いて実施したin vitro の分解試験によって、効率的にでんぷんやクックドミートが分解された結果から類推していると考えられる。しかし、有機物やたんぱく質を効率的に分解したというin vitro 試験結果だけでは、実際の活性汚泥中で有機物除去機構や汚泥計量化機構にバチルス属細菌がどのように関与しているかは不明である。
バチルス属細菌は平板寒天培地などで培養すると、バチルス固有の周囲に広がったコロニーを形成してコロニーカウントは困難であるし、バチルスコロニー内に他の細菌のコロニーが隠れて存在する可能性がある。そもそも、バチルス属細菌に共通の分離培地は存在しない、したがって、バチルス属細菌の「優先化」といった場合、(1)活性汚泥を顕微鏡観察してバチルス属細菌様の微生物が大量に存在することや、(2)活性汚泥を寒天培地で培養してバチルス固有コロニーが優先化している状況等を「優先化」と称しているのが現状である。
このように、バチルス属細菌の数量化データである正確な計数値が把握されていないにも関わらず、バチルス製剤の利用によってバチルス優先化運動が行われていることは、「し尿の高負荷・無臭処理施設においてバチルスが優先化している活性汚泥」という現象論やin vitro での分解試験結果等に基づいている。
尚、濁水の処理方法として、均一な孔を有する複数の平板状の濾過体がハウジング内に間隔をおいて互いに対向して配置、収容された濾過モジュールにより、水頭差を利用して、濾過体の間に中和されたセメントを含有する濁水を流して上水試験法による濁度減少率が所定値以上になるように濾過し、逆圧洗浄操作と共に沈殿物を含む濃縮液をハウジングの下部より引き抜くようにした処理方法が提案されている(特許文献1参照)。
また、標準寒天培地で培養される大腸菌群のような暗色コロニーを計数する方法として白色光散乱板を着脱してコントラストを強調することでコロニー数を計測する方法(特許文献2参照)や、培地に予め色素化合物(染色剤)を加えて培養し、蛍光顕微鏡で染色された菌数を数える方法(特許文献3参照)が提案されている。
特開2003−144816号公報 特開2000−270840号公報 特開平10−201496号公報
バチルス属細菌の汚水処理での評価や汚水処理機構に関するバチルスの関与を明らかにするため、すなわち、汚水処理におけるバチルス属細菌の適正な評価のためには、バチルス属細菌を用いた活性汚泥の動力学特性(BOD(Biochemical Oxygen Demand)除去速度、収率係数、自己分解係数)を把握する必要があり、収率係数や自己分解係数の把握とともに、活性汚泥中のバチルス属細菌を正確に定量して評価する必要がある。少なくとも、バチルス属製剤やミネラルを添加した活性汚泥においては、無添加系列に比べてバチルス属細菌が増加し、BOD除去速度が高く、収率係数が低下し、自己分解係数が高くなるような状況でないと、活性汚泥処理においてバチルス属細菌やバチルス製剤が有効であるとは主張できない。
バチルス属細菌の動力学的解析や活性汚泥中でのバチルス属細菌の定量については、ベンチスケールモデルでの動力学的定数算出試験とリアルタイムPCR(Polymerase Chain Reaction)によるバチルス属細菌の定量に関する研究があげられる。この研究は、合成下水を用いた室内実験によって動力学的定数を求めたもので、将来的には実際の処理場における動力学的解析も必要となる。また、バチルス定量に使用したリアルタイムPCRは、測定に熟練を要するとともに高価な機器や多額の分析費用も必要である。費用対効果の点から考えても、活性汚泥処理施設の日常的な維持管理業務での測定項目としては、実施は極めて困難である。
また、下水に含まれる活性汚泥中でのバチルス属細菌の計数については未だに有効な方法が発見されておらず、混釈法により滅菌シャーレに希釈化されたバチルス製剤を添加して平板状に成形した寒天培地を用いて培養した場合、培地に面状に広がってしまい、バチルス属細菌の計数が不可能な状態に陥る。
そこで、本願発明の目的は、高価な機器や分析試薬を使わずに、活性汚泥中のバチルス属細菌の優先度を定量するため、疎水格子フィルターを利用し、下水に含まれる活性汚泥や、市販のバチルス製剤に含まれるバチルス属細菌の計数を安価でかつ容易に把握することができるバチルス属細菌の計数方法を提供することにある。
本発明は上記目的を達成するため、次の構成を備える。
所定希釈倍率で希釈化されたバチルス属細菌を含む試料を、所定温度で加温して減菌処理する前処理工程と、前記前処理した試料を疎水格子フィルターで濾過して試料中の微生物を疎水格子の区画内に保持させる工程と、所定濃度の酸化還元指示薬を添加して混合することにより平板状に固めた平板状の寒天培地を用意する工程と、前記微生物を保持させた疎水格子フィルターを前記寒天培地に載せて所定時間所定温度で微生物を増殖させて発色変化したコロニーを形成させる培養工程と、前記疎水格子フィルターの格子区画内に形成されたコロニーの形態からバチルス属細菌に基づく陽性区画数を計数する工程と、前記陽性区画数から試料中に含まれるバチルス属細菌の推定含有量を算出する工程と、を含むことを特徴とする。
バチルス属細菌を含む試料を保持させた疎水格子フィルターを寒天培地に載せて所定時間所定温度で培養させると発色変化したコロニーを形成し、疎水格子フィルターの格子区画内に形成されたコロニーの形態から、バチルス属細菌に基づく陽性区画数を容易に計数することができる。
前記試料中に含まれるバチルス属細菌の推定含有量は、総区画数と陽性区画数を用いて試料1mL当たりの最確数MPN(Most Probable Number)法により算出することが好ましい。
これにより、試料中に含まれるバチルス属細菌の推定含有量が定量的に明らかにすることができる。
前記前処理工程では、試料を75℃以上95℃未満の範囲内で所定時間加温処理することにより減菌処理が行われることが望ましい。
これにより、試料中にバチルス属細菌とそれ以外の細菌とを分離してバチルス属細菌のみを生存させて計数し易くなる。
前記酸化還元指示薬はトリフェニルテトラゾリウムクロライド(Triphenyl Tetrasolium Chloride : TTC)であって、添加濃度が1.25mg/100ml以上5.00mg/100ml以下で添加されることが望ましい。
これにより、試料中のバチルス属細菌の培養の度合いを適度に遅らせつつ、バチルス属細菌をTTC指示薬により疎水格子の区画内において面状若しくは点状に発色させることで、存在確認がし易くなる。
前記疎水格子フィルターの格子区画内を満たす面状コロニーと格子区画内に点在する点状コロニーのうち、面状コロニーの数を陽性区画数として計数することにより、格子区画内で面状に増殖したものがバチルス属細菌に起因するもので、点状コロニーはそれ以外の細菌(例えばセレウス菌等)であると判定することができ、バチルス属細菌の計数が容易かつ正確に行える。
上述したバチルス属細菌の計数方法を用いれば、疎水格子フィルターを利用し、試料である下水に含まれる活性汚泥や、市販のバチルス製剤に含まれるバチルス属細菌の計数を安価でかつ容易に実行することができる。
疎水格子フィルターの一例を示す写真図である。 図1の疎水格子フィルターを細菌検査装置のホルダーに装着する工程を示す写真図である。 平板培地上のバチルス属細菌コロニーの広がりを示す写真図である。 指示薬を使用しないで区画内に増殖したコロニーを示す写真図である。 TTC(酸化還元指示薬)の赤変原理図である。 各種寒天培地へのTTC添加量を示す図表である。 バチルス製剤の計数値に及ぼすTTC濃度、培地種類、培養法の対比図である。 格子培養法と混釈培養法の比較結果を示す図表である。 バチルス製剤の希釈倍率の相違によるコロニー形成状況を示す写真図である。 グリセロールストックから調整したセレウス菌の計数結果を示す図表である。 バチルス製剤につきTTC無添加で混釈培養した標準寒天培地の写真図である。 バチルス製剤につきTTC無添加で格子F法培養したBHI寒天培地の写真図である。 前処理条件の影響を確認する格子F法培養をBHI寒天培地の写真図である。 培地にTTCを添加した格子F法培養及び混釈培養におけるバチルス属細菌の計数結果を示す図表である。 疎水格子区画内における微生物増殖状況の判定基準を示す写真説明図である。 TTC添加系における格子培養法と混釈培養の計数値の相違を示す図表である。 格子F法から求めたMPNに対する前処理温度の影響を示すグラフ図である。 格子F法における前処理温度と培地の種類に関する分散分析結果を示す図表である。 Kruskal-Wallisによる前処理温度の影響の評価を示すグラフ図である。 混釈法における前処理温度と培地の種類に関する分散分析結果を示す図表である。 格子F法の面状陽性区画数の割合に対する培地の種類の影響を示す図表である。 PCR法によるバチルス製剤中のセレウス菌の確認結果を示す写真図である。 活性汚泥に含まれるバチルス属細菌の検出結果を示す写真図である。 図23に続く活性汚泥に含まれるバチルス属細菌の検出結果を示す写真図である。 バチルス属細菌の簡易定量法の流れを示す説明図である。
以下、本発明の一実施形態に係るバチルス属細菌の計数方法について説明する。
先ず、上記計数方法に用いる設備について説明する
疎水格子フィルターは、例えば疎水格子枠1,600(40×40)区画を備えた孔径0.45μmのアイソグリッドメンブランフィルター(NEOGEN社製ISO-GRID)が用いられ、1枚ずつ無菌状に封印されている(図1参照)。吸引ポンプに連結されたマニホールドに設けられた専用のフィルターホルダーに、疎水格子フィルターをはさんでクランプした後に汚水等の水試料をフィルター上に供給して吸引ろ過すると、水試料中の微生物は疎水格子の囲まれた区画内に保持される。この疎水格子フィルターを平板寒天培地に載せて培養を行うと、微生物は区画内で増殖してコロニーを形成する(図2参照)。
なお、水試料中の微生物数が多くなると、一つの区画に二つ以上の細菌などが入る可能性が高くなるため、疎水格子フィルターを用いた計数法とは、コロニーが形成した陽性格子区画枠の区画数を数えて、下式からMPN(Most Probable Number)を算出する。
C(MPN/mL)=N・loge(N/(N-X)・1/V
C;試料1mL当たりの最確数(MPN/mL)
N;フィルターの総区画数(1,600)
X;コロニーが発育している区画数(陽性区画数)
V;検水量(ml)
したがって、疎水格子フィルターを用いた計数法の単位は、Colony Forming Unit (CFU ;コロニー形成単位)ではなく最確数(MPN ; Most Probable Number)となる。
本実施形態では、疎水格子フィルターを利用することによって、バチルス属細菌の増殖時の広がり(スウォーモング)(図3参照)を疎水格子によって防ぎ、混釈培養時のようなコロニーの広がりを防ぐ効果を期待した。
次にバチルス属細菌分離のための前処理について説明する。
バチルス属細菌やクロストリジウム属細菌は菌体内に芽胞を形成する。この芽胞は物理化学的処理に対する抵抗性が極めて強く、100℃の加熱にもかなりの時間耐えられる。このため、食品中の芽胞形成菌の検出法として、前処理条件として一定時間の加熱を行って芽胞形成菌以外の細菌を消滅させたのち、生残した芽胞形成菌を培養後検出する。芽胞形成菌であるバチルス属細菌やクロストリジウム属細菌の芽胞を死滅させる加温条件の事例をまとめると、以下のとおりとなる。
Bacillus属芽胞 70℃で30分間
75℃で15分間
80℃で10または30分間
沸騰水中(100℃)で5,10または20〜30分間
Clostridium属芽胞 62.5℃で30分間
75℃で5,10または15分間
70℃で20分間、80℃で5〜10分間
そこで、バチルスのような芽胞形成菌の芽胞は、適切な温度・加熱時間の前処理を行うことで、バチルスを含む芽胞形成菌を計数できると推察した。
次に疎水格子フィルターの区画内でのコロニー判別について説明する。
コロニーの色調が淡い場合、1,600区画を有するフィルターでの区画数の計数が困難な場合がある。実験当初にバチルス製剤を用いて試験的に疎水格子フィルターでの培養・計数を試みた際、淡い色調のコロニーが得られた(図4参照)。
活性汚泥の脱水素酵素活性の測定方法では、トリフェニルテトラゾリウムクロライド(Triphenyl Tetrasolium Chloride : TTC)という酸化還元指示薬として用い、これが水素受容体と結合すると無色のTTCが還元される赤色のTF(Triphenyl Formazone)が生じる反応を利用している(図5参照)。そこで、疎水格子フィルターの区画内における微生物発育の有無を明瞭に判定するため、培地に添加するTTCの最適量やその効果についても検討した。
次に培地の選定について説明する。環境系の微生物を測定する際には、高栄養の培地では生育しない場合がある。このため、上水試験法では、低栄養化で増殖をする環境系の水中微生物として、従属栄養細菌数(Heterotrophic Plate Counts;HPC)をR2A培地で測定している。また、高栄養を要求する微生物のための培地としては、Brain Heart Infusion(BHI)寒天培地も利用されている。
本実施形態では、培地の高栄養や低栄養などに関する栄養要求性が不明のため、高栄養の培地としてBHI培地(栄研化学)低栄養の培地としてR2A培地(栄研化学(株)製)、その中間の培地として標準寒天培地(栄研化学(株)製)を使用した。以上述べたとおり、疎水格子フィルターを用いたバチルス属細菌の基礎検討に関わる検討項目は以下のとおりとなる。
(1)疎水格子フィルター使用の効果
対照として、混釈培養との比較検討
(2)芽胞を形成した細菌測定のための加熱条件
対照として、室温温度条件との比較検討
(3)コロニーを赤変させるTTCの効果
対照として、TTC無添加条件との比較検討
(4)培地の栄養状態(高栄養、標準、低栄養)によるコロニー形成比較
以下、実験材料及び実験方法について説明する。
(A)供試微生物
(1)バチルス製剤
市販のバチルス製剤を使用した。このバチルス製剤を使用する際、以下の検討を行って適切な希釈倍率を把握した。尚、バチルス製剤に代えて下水処理場の活性汚泥を含む汚水であってもよい。
1)クリーンベンチ内でバチルス剤1mlを採取し、9mlの減菌希釈水に加え10倍希釈水を作成した(10倍希釈法)、このような10倍希釈段階操作を必要回数繰り返して106倍までの希釈バチルス製剤試料を作成した。
2)102倍〜106倍に希釈した希釈バチルス製剤試料各1mlを減菌シャーレに添加し、標準寒天培地を用いた混釈培養を行った。なお、この操作は、一つの希釈段階について3回実施した。
3)混釈培養を行った培地は、35℃で24時間培養し、各希釈段階のコロニー数を把握し、計数可能なバチルスコロニー(過度な広がりを持たないコロニー形成をしたもの)が得られた希釈倍率を求めた。
(2)バチルス標準株
し尿処理、下水処理、生活排水処理で検出されるバチルス属細菌は、主に以下の種であると報告されている)。
1) Bacillus cereus
2) Bacillus licheniformis
3) Bacillus megaterium
4) Bacillus pumilus
5) Bacillus subtilis
6) Bacillus thuringiensis
本実施形態では、Bacillus cereus(以下、セレウス菌と称す)IFO3466株を用いて、以下の手順でグリセロールストックを作り、必要に応じて使用した。
1)酵母エキス0.25g、カゼイン製ペプトン0.5g、ブドウ糖0.1gを含む液体培地100mlを作製し、中試験管に10mlずつ分注した後、121℃、20分のオートクレーブ減菌を行った。この液体培地は、標準寒天培地から寒天成分を除いた液体培地である。
2)セレウス菌IFO3466保存株を標準寒天培地に塗抹培養(35℃、24時間)して得られた単一コロニーを白金耳で採取し、これを液体培地に植種した後、再度35℃、24時間の培養を行った。
3)セレウス菌IFO3466が増殖した液体培地をボルテックス撹拌した後、減菌済み80%グリセリンと液体培養液を等量混合して、40%のグリセロールストック液を調整した。このグリセロールストック液は−80℃のディープフリーザーに保存した。
なお、セレウス菌溶液使用時の最適な希釈倍率は、バチルス製剤のときの手法に準じて行った。このときの菌液は、セレウス菌のコロニー3個を10mlの減菌希釈水に分散させて調整した。
(3)無芽胞形成菌
芽胞を形成しない細菌としては、ヒトから分離した大腸菌を使用した。大腸菌のグリセロールストックは、セレウス菌と同様な方法で作製した。また、グリセロールストックを用いて得られたコロニー3個を10mlの減菌希釈水に分解させて菌液を作製した。大腸菌の確認には、酵素基質培地であるコンパクトドライEC(大腸菌は青、大腸菌群は赤のコロニー、ニッスイ製)を使用した。
(B)培地について
高栄養培地としてはBHI寒天培地(パールコア(登録商標)ブレインハートインフュジョン寒天培地‘栄研’)を、標準栄養培地としては、標準寒天培地(パールコア(登録商標)標準寒天培地‘栄研’[E-MB65])を、低栄養培地としては、R2A寒天培地(R2A寒天培地‘栄研’[E-MB68])を使用した。それぞれの培地の調整方法は、メーカーの処方にしたがった。
(C)TTC溶液量の検討(予備試験)
培地に添加するTTCの量は、以下の予備試験を行って決定した。
(1)TTC溶液の作製
1)TTC(2.3.5Triphenyltetazolium Chloride)0.25gを電子天秤で量りとって試験管に入れ、精製水を10ml加えた後よく混合した。
2)クリーンベンチ内でTTCをビーカーに移し、それをシリンジで吸い取った後、ろ過減菌(0.22μm)を行い、15mlの減菌チューブに保存した。
(2)各種寒天培地へのTTC溶液の添加
平板に固めていないBHI寒天培地、標準寒天培地、R2A寒天培地について、下表の添加濃度(培地100mlあたりのTTC添加量(mg))となるように、前述のTTC溶液を各寒天培地(凝固前)に添加して静かに混合した。TTC添加量を図6の図表に示す。
(3)予備試験方法
1)疎水格子フィルターを用いた計数方法と混釈法による計数方法の違い2)TTC添加量の違い3)使用する培地の違い、を各々検討した。また、供試微生物と培養条件は、適度に希釈したバチルス製剤1mlとし、35℃で24時間培養した。疎水格子フィルターを用いたろ過培養(以下、「格子F法」という)と混釈法による具体的な培養方法は、以下のとおりとした。
[格子F法]
1)TTC添加条件を変えたBHI寒天培地、標準寒天培地、R2A寒天培地をあらかじめ作製した。
2)適度に希釈した希釈バチルス製剤を作製した。
3)フィルタレーションマニホールドに減菌済みのフィルタレーションユニットを取り付け、ピンセットで疎水格子フィルターをフィルタレーションユニットにセットした後、ユニット・クランプで固定した。
4)希釈バチルス製剤(105倍希釈)1mlを90mlの減菌希釈水に加えよく混合した後、フィルタレーションユニットに注ぎ、吸引ろ過を行った。これは、疎水格子フィルターの一部に微生物が固まるのを防ぐためである。
5)ピンセットで疎水フィルターを取り出し、あらかじめ作製した平板寒天培地上に密着させるように載せ、所定の温度と時間の培養を行った。
[混釈法]
必要事項を記入した減菌シャーレに、希釈バチルス製剤(105倍希釈)1ml添加したのち、適温まで冷めた寒天培地を20ml〜25mml程度加え、静かにかつ十分に混釈して平板状に固め、[格子F法]と同様な条件で培養した。
(D)バチルス製剤の計数試験(本試験:[格子F法]の検討)
適度に希釈したバチルス製剤を使用し、以下の条件の組み合わせによる本試験を実施した。この検討実験では、組み合わせ条件(前処理加温4条件×培地3条件×TTC有無2条件×培養方法2条件の組み合わせ)一つについて、3回の繰り返しを行い、計数が可能な場合には3回の幾何平均を求めた。なお、比較・対象試験として、セレウス菌(標準株)や大腸菌(無芽胞細菌)の計数試験を、バチルス製剤と同様な実験条件の組み合わせでおこなった。
1)前処理加温条件
室温条件をコントロールとし、75℃、85℃、95℃の加温条件を設定した。いずれの加温条件でも、加温時間は15分に統一した。尚、加温時間は、15分より長くても短くてもよい。
2)培地
BHI寒天培地、標準寒天培地、R2A寒天培地の3種類の培地を使用した。
3)TTCの有無
予備試験で設定した添加濃度のTTCを上記の各培地に加えた「添加系列」と、TTCを添加しない「無添加系列」の2条件を設定した。
4)培養方法
[格子F法]もしくは[混釈法]を用いて、35℃で24時間培養した。
なお、[格子F法]における小区画でのコロニー、の形成状況(小さなコロニー、区画内に面上に広がったコロニー、疎水格子を乗り越えたコロニー)や平板でのコロニー形成状況も観察した。
[格子F法]で得られた陽性区画数からはMPNを算出し、[混釈法]でのコロニーからはCFUを算出し、これらの値を必要に応じて常用対数に変換した後、統計処理を行った。
(E)統計処理
IBM(株)製の統計解析ソフトであるSPSS STATISTICS ver.22を使用した。
[実験結果及び考察]
(A)TTC添加濃度の決定
実験開始時には、活性汚泥の脱水素酵素活性測定(下水試験方法)では、活性汚泥の脱水素酵素活性を測定する際、TTCを以下のとおり添加するよう、定められている。
活性汚泥10mlあたりTTC(5mg/ml)を1ml添加
→活性汚泥10mlあたりTTC 5mg添加
上記の濃度を活性汚泥100mlあたりに換算するとTTC 50mgとなるため、実験開始当初は、この濃度に準拠してTTCの添加濃度設定をした。
しかし、このTTC添加濃度で、バチルス製剤の培養を行うと、コロニーが全く生育しない結果となったため、TTC濃度、培地の種類、培養法(混釈法もしくは格子F法)を変動要因として予備試験を行った。
この予備試験結果は、図7に示す表1に示すとおりであるが、バチルス製剤の希釈倍率:10の5乗倍、検水量:1ml、培養温度:35℃、培養時間:24時間とし、[格子F法]では、陽性の格子区画数をMPNに変換している。
TTCの添加濃度は、25mg/100mlを超えると、バチルス製剤中の微生物の成長を大きく阻害することがわかる。また、12.5mg/100mlでは、培養法や培地の種類によって、計数値(CFUやMPN)に影響を与える場合もあった。TTCを添加しない条件や、0.5mg/100mlの条件では、R2A培地において微生物数が計測できない状況となった。したがって、1.25mg/100ml〜5.00mg/100mlの3条件が数値に影響を与えない範囲と考えられた。本実験では、この範囲の数値の中間値である2.5mg/100mlを、今後の実験で使用するTTC添加条件とした。
格子F法と混釈培養における計数値の違いを、ノンパラメトリックス検定のFreidmanの分布比較で行ったところ、有意差が認められた(P=0.000)(図8参照)。したがって、格子F法と混釈培養での計数値には違いが生じる傾向が見られたが、これは、コロニー数を計数する混釈法と陽性格子の区画数からMPN換算を行って計数値を求めていること、すなわち、CFUとMPNという単位の違いに起因する可能性も否めない。
一方、計数値(CFU若しくはMPN)に及ぼす培地の種類の影響については、ノンパラメトリックス検定であるKruskal-Wallisの比較を行ったが、有意差は認められなかった(MPN:P値=0.958、CFU:P値=0.890)。したがって、バチルス製剤中の微生物数は(主にバチルス属細菌と推察される)を計数する場合、培地の栄養状態(高栄養、標準、低栄養)の違いによって計数値は変わらないと考えられた。ただし、本試験においても、培地の種類の要因については引き続き検討を行った。
(B)供試菌液の適切な希釈倍率の決定
(1)バチルス製剤
バチルス製剤は、周囲に広がるコロニーを形成するため、コロニーカウントが困難であることは既に述べたとおりである。しかし、コロニーカウントが困難ながらも、混釈時におおよそのコロニーカウントが可能な希釈倍率を検討したところ、以下の結果を得た(別紙写真図9参照)。
したがって、バチルス製剤を使用した本試験では、10の5乗倍の希釈を行って、実験に使用した。この数値は、予備試験のときと同じ値であるため、バチルス製剤中の微生物数は比較的安定して保持されているものと推察された。
(2)セレウス菌
グリセロールストックから培養したセレウス菌のコロニー3個を10mlの減菌希釈水に分解させたところ、以下の計数値となった(図10;表2参照)
したがって、セレウス菌の希釈倍率は10の5乗倍希釈を目安として100CFU前後の計数値が得られるように調整したセレウス菌液を目標とした。
(3)大腸菌(無芽胞細菌)
グリセロールストックから培養した大腸菌のコロニー3個を10mlの減菌希釈水に分解させコンパクトドライECでコロニー数を確認したところ、105倍希釈1mlの菌液で79CFU及び80CFUの計数値が得られた。したがって、この希釈倍率を本試験での希釈倍率とした。
(C)格子F法の計数値に及ぼす各種要因の検討
(1)バチルス製剤
1)TTCを培地に添加しない場合、混釈法ではバチルス様細菌が平板寒天培地全体に広がって、計数が不可能な状態となった。(図11参照)。
また、格子F法においても、TTCを添加しないと疎水格子を乗り越えてバチルス様細菌が増殖するため、計数が不可能となった(図12参照)
格子F法培養において前処理温度条件を変えて培養した事例について図13に示す。図13に示すように各温度条件において、コロニー数が10程度の計数値と類推されるが、このような現象が数百程度の計数状態で発生すると、1,600の区画数を持つ格子フィルター法の測定が、意味がないものとなることは容易に想像できる。また、図11及び図12のようなキャリーオーバ現象は、いずれの培地(BHI培地、標準寒天培地、R2A培地)でも観察された。
なお、このように計数は不可能であったが、前処理条件である75℃・15分、85℃・15分、95℃・15分のいずれの場合も、対象試験である室温条件と同様なバチルス様細菌の増殖が認められた。したがって、75℃〜95℃で15分の加熱条件に耐性があるバチルスの芽胞が、バチルス製剤には含有されていることが確認された。
2)TTC添加系列
一方、TTCを添加した場合、図14の表3に示すように、格子F法及び混釈培養法のいずれの場合でも、バチルス製剤中のバチルス属細菌の計数が可能となることがわかる。表3に、前処理温度条件、培養方法(混釈法・格子F法)培地の種類の組み合わせ条件下におけるバチルス属細菌の計数結果を対比して示す。ただし、本表においては、格子区画枠内にて平面状に増殖したものを面状コロニー(記号:面)、格子区画枠内にて点状に増殖したものを点状コロニー(記号:点)と称している。「面」もしくは「点」の区別を行う判定は、例えば図15の写真図に示す格子区画内で発色したコロニーの形態に準拠している。
また、図14の表3に示すデータから、格子F法と混釈培養における計数値の違いをノンパラメトリックス検定のFreidmanの分布比較で行ったところ、有意差が認められた(P=0.000)(図16参照)。
したがって、[格子F法]と[混釈法]とでは、培養での計数値には違いが生じる傾向があり、予備試験結果と同様な傾向が認められた。これは、[混釈法]と[格子F法]の違い以外にCFUとMPNという単位の違いに起因する可能性もあり、さらに検討を要する。
次に、[格子F法]で求めた全ての(点状+面状)陽性区画数から算出したMPN数の常用対数値について、繰り返しのない二元配置分散分析を行ったところ、以下の散布図(図17参照)と検定結果(図18;表4参照)が得られた。
これらの結果から、前処理温度95℃としたとき、格子F法から算出したMPN値は、室温、75℃、85℃の各条件よりも低下することがわかった。多重比較から、85℃と95℃の温度条件間の有意差のP値は0.041であった。
また、図19に示すKruskal-Wallisの検定による比較でも、95℃の前処理温度において、格子F法から算出したMPN値が低下することが確認された。(P=0.017)。
したがって、バチルス製剤中の微生物数(主にバチルス属細菌と推察される)を計数する場合、95℃の前処理条件は、他の前処理条件と異なることを十分に認識する必要がある。
しかし、図20の表5に示すように、混釈法におけるコロニー数の常用対数値について、前処理温度と培地の種類を要因とした二元配置分散分析を行ったところ、前処理温度と培地の種類のいずれについても有意差は認められなかった。
格子F法における面状陽性区画の割合を、図21に示すKruskal-Wallisで比較したところ、R2A培地において、その割合が低下する、すなわち、点状陽性区画数が増えることが分かった。(P=0.049)。
点状の陽性区画も培養時間を延長すれば、やがて面状陽性区画となる(データ示さず)。したがって、低栄養の培地であるR2A培地を用いると、バチルス製剤中のバチルス様細菌の成長が遅くなることがわかった。すなわち、面状陽性区画内での微生物の増殖速度を増加させて、読み取り易くするためには、標準寒天培地やBHI寒天を用いる必要がある。ただし、今回の実験では、バチルス製剤中のバチルス属細菌の正確な個数を測定していないため、正確度はわからない。読みやすいからといって正確であるという理屈はなりたたないため、今後はこの正確度の他、精密度を含めて検討を行い、より適切な培地を選択する必要がある。
(2)セレウス菌
75℃15分、85℃15分、95℃15分の前処理を行ったところ、加温によって、セレウス菌が死滅し、格子F法及び混釈法のいずれも、計数値が得られなかった。したがって、芽胞形成菌といえども平板培養によって栄養体となったものは、その後の熱処理によって死滅する。
検出対象と考えている環境試料には、芽胞の状態と栄養体の状態の両社のバチルス属細菌が存在するため、栄養体のバチルス属細菌の芽胞を形成させる前処理条件(例えば50℃程度で一定時間加熱する)を格子F法の前処理条件に加える(芽胞形成のための加温→無芽胞細菌の殺菌するための加温→測定)必要がある。
(3)大腸菌(無芽胞細菌)
無芽胞細菌が、75℃15分、85℃15分、95℃15分の前処理で殺減可能か否かを、大腸菌を用いて検討した。格子F法では、TTC添加系列及びTTC無添加系列のいずれでも、加温を行うことによって、3種の培地の上面に置いた疎水格子フィルターにおいて、試料に含まれる微生物の発育を阻害することができた。
1)格子F法
TTC添加系列 :3種類の培地とも加温条件下でコロニー不検出
無添加系列 :3種類の培地とも加温条件下でコロニー不検出
ただし、混釈培養の場合は、加温後でも、以下の事例数が極めて少数(1例あたり10個以下)の微小なコロニーが生残することがあった
2)混釈法
TTC添加系列
75℃ BHI寒天培地 3例中1例
標準寒天培地 不検出
R2A寒天培地 3例中1例
85℃ 3種類の培地とも不検出
95℃ BHI寒天培地 3例中2例
標準寒天培地 3例中3例
R2A寒天培地 3例中1例
無添加系列
75℃ 3種類の培地とも不検出
85℃ BHI寒天培地 3例中1例
標準寒天培地 不検出
R2A寒天培地 不検出
95℃ BHI寒天培地 3例中2例
標準寒天培地 3例中2例
R2A寒天培地 3例中1例
ただし、これらのコロニーが大腸菌ではなかったことを、コンパクトドライECを使って確認した。格子F法では、混釈法のような微小なコロニーが形成されることはないが、混釈法で95℃の前処理条件下で、TTC添加・無添加にかかわらず、微小なコロニーが形成されることを考えると、95℃の条件は使用しない方が、無芽胞細菌の検出確率を、より一層低下させることができると推察された。
(D)バチルス製剤中のセレウス菌の確認
本実験では、バチルス属細菌を構成するバチルス菌の一つの種としてセレウス菌の標準株(IFO3466)を用いた。実験方法では特に述べていないが、バチルス製剤中にセレウス菌が存在することをTaKaRa Bacillus cereus(CRSgene)PCR Detectionキットを用いて検出したところ、以下の結果が得られた(図22参照)。なお、PCR反応条件等はキットで述べられた条件とした。
図22からわかるとおり、バチルス製剤のバンドは、ネガティブコントロールと同じく、内部コントロールの起因するバンドのみであり、ポジティブコントロールと同じバンドは検出されなかった。したがって、バチルス製剤中には、セレウス菌は存在しないことが分かった。今後の検討では、バチルス製剤中に存在するバチルス属細菌について種までの特定が必要と考えられる。
(E)活性汚泥におけるバチルス属細菌の推定
疎水格子フィルターを用いた検出法はまだ確立されていないが、バチルス優先化運動を行っている活性汚泥処理施設(長野県長野市の知久平地区にある農業集落排水処理施設の第1系列・第2系列、以下、「知久平1系列処理」、「知久平2系列処理」と称す)の活性汚泥中のバチルス様細菌の検出を、バチルス優先化運動を行っていない活性汚泥処理施設(長野県長野市の細新地区にあたる農業集落は排水処理施設、以下、細新処理と略す)を対照として試みた(図23,図24参照)。
バチルス様細菌を検出するための前処理温度条件は85℃・15分とし、対象温度条件は室温とした。また、培地はBHI寒天培地を用い、活性汚泥中の微生物量をMLVSS(mg/L)で推定した。本来であれば、活性汚泥の粒子を分散させるため超音波破砕を行うが、超音波破砕の影響を検討していないため、活性汚泥試料を十分に混合し、それを104倍に希釈したものを1ml使用した。
1)バチルス優先化運転処理施設
知久平1系列処理(MLVSS : 4,660ml/L)
加温処理での陽性区画数:4→4MPN
対照処理での陽性区画数:16→16MPN
バチルス存在率=4/16=25%
バチルス量=4MPN×104/ml / 4.66mg/ml=8,600MPN/mg
知久平2系列処理(MLVSS:4500mg/L)
加温処理での陽性区画数:1→1MPN
対照処理での陽性区画数:27→27MPN
バチルス存在率=1/27=4%
バチルス量=1MPN×104/ml / 4.5mg/ml=2,200MPN/mg
2)通常の活性汚泥処理
細新処理(MLVSS : 5600mg/L)
加温処理での陽性区画数:2→2MPN
対照処理での陽性区画数:19→19MPN
バチルス存在率=2/19=11%
バチルス量=2MPN×104/ml / 5.6mg/ml=3,600MPN/mg
したがって、知久平1系列にて、通常の活性汚泥処理よりもバチルス属細菌が存在する可能性が示唆されたが、活性汚泥中のバチルス属細菌の量の適正な把握には、さらに検討が必要となる。
[まとめ]
疎水格子フィルターを用いて、市販のバチルス製剤中のバチルス属細菌の存在量を推定する基礎研究を行ったところ、バチルス属細菌の簡易定量の可能性が示された。この研究で得られた知見を要約すると、以下のとおりとなる。
(1)TTCを適量添加すると、疎水格子区画の赤色変化とともに、バチルス属細菌固有のコロニーの広がりを抑制する効果もあった。
(2)疎水格子フィルターを用いた計数法と混釈による計数法の間には、有意差が認められた。ただし、MPNとCFUの表示法の違いの可能性もある。
(3)95℃・15分の前処理温度条件は、他の温度条件よりも低い計数値を示す傾向があった。したがって、75℃・15分や85℃・15分の条件と95℃・15分の条件は分けて考える必要がある。
(4)R2A培地を用いた場合、疎水格子フィルターの区画内での細菌の増殖速度が普通の寒天培地やBHI寒天培地よりも遅くなる傾向であった。
(5)無芽胞細菌は、75℃・15分以上の前処理条件で殺滅することができると考えられる。しかし、混釈培養の95℃・15分の条件で、微小コロニーが形成したことから、加温条件は75℃〜85℃が適切と推察された。
(6)活性汚泥のバチルス属細菌を検出する際、活性汚泥の破砕分散条件を検討し、栄養体のバチルス属細菌の芽胞形成条件も検討する必要がある。
(7)芽胞形成菌を対象とした加温条件では、バチルス属細菌の他、クロストリジウムなども生残する。今後は、疎水格子フィルターの陽性区画内に存在する細菌がバチルスか否かの分離・同定に関わる研究が必要である。
ここで、図25を参照して、汚泥試料に含まれる全細胞数に対する芽胞細胞の割合を検出するバチルス属細菌の簡易定量法の一例について説明する。
まず、試料として氷冷した汚泥試料を二つ用意する。前処理工程として第1の試料は、氷冷したままとし、第2の試料は、85℃で15分間加温する(これにより無芽胞細胞(栄養細胞)が殺滅する)。前処理工程を経た第1,第2の試料を氷冷したまま各々段階希釈(例えば10の5乗倍希釈)し、疎水格子フィルターによる濾過を行って、試料中の微生物を疎水格子の区画内に保持させる。TTC試薬を添加した標準寒天培地を用意し、上述した第1,第2の試料を保持した疎水格子フィルターを載せて、例えば37℃で24時間培養して各々コロニーを形成させる。
上述した第1,第2の試料の疎水格子フィルターの格子区画内に形成されたコロニーの形態から陽性格子数を計数する。陽性格子数の計数は、最確数MPN(Most Probable Number)法による。前処理工程の相違(加温するか否か)から、第1の試料(加温せず)には、栄養細胞と芽胞細胞の双方を含む格子数(全細胞格子数)が検出される。また第2の試料(加温処理)には、芽胞細胞のみの格子数(芽胞細胞格子数)が検出される。この結果、芽胞細胞格子数を全細胞格子数で除算することで、全細胞に含まれる芽胞細胞の割合を簡易な定量法で算出することができる。
尚、汚泥に含まれるバチルス属細菌の強熱減量(VSS)を定量的に求める場合には、予め試料を有機性ろ過膜であるメンブレンフィルター(MF)でろ過し、メンブレンフィルター(MF)に捕捉された物質を所定温度で乾燥させ、質量を測定して浮遊物質量(SS)を求める。この浮遊物質量(SS)を求めた後、例えば600±25℃で30分間強熱し、残渣の質量を測定して強熱減量(VSS)を求めるという工程が必要になる。
以上説明したように、バチルス属細菌の計数方法を用いれば、疎水格子フィルターを利用し、下水に含まれる活性汚泥や、市販のバチルス製剤に含まれるバチルス属細菌の計数を安価でかつ容易に把握することができる。

Claims (5)

  1. 所定希釈倍率で希釈化されたバチルス属細菌を含む試料を、所定温度で加温して減菌処理する前処理工程と、
    前記前処理した試料を疎水格子フィルターで濾過して試料中の微生物を疎水格子の区画内に保持させる工程と、
    所定濃度の酸化還元指示薬を添加して混合することにより平板状に固めた平板状の寒天培地を用意する工程と、
    前記微生物を保持させた疎水格子フィルターを前記寒天培地に載せて所定時間所定温度で微生物を増殖させて発色変化したコロニーを形成させる培養工程と、
    前記疎水格子フィルターの格子区画内に形成されたコロニーの形態からバチルス属細菌に基づく陽性区画数を計数する工程と、
    前記陽性区画数から試料中に含まれるバチルス属細菌の推定含有量を算出する工程と、を含むことを特徴とするバチルス属細菌の計数方法。
  2. 前記試料中に含まれるバチルス属細菌の推定含有量は、総区画数と陽性区画数を用いて試料1mL当たりの最確数MPN(Most Probable Number)法により算出する請求項1記載のバチルス属細菌の計数方法。
  3. 前記前処理工程では、試料を75℃以上95℃未満の範囲内で所定時間加温処理することにより減菌処理が行われる請求項1記載のバチルス属細菌の計数方法。
  4. 前記酸化還元指示薬はトリフェニルテトラゾリウムクロライド(Triphenyl Tetrasolium Chloride : TTC)であって、添加濃度が1.25mg/100ml以上5.00mg/100ml以下で添加される請求項1記載のバチルス属細菌の計数方法。
  5. 前記疎水格子フィルターの格子区画内を満たす面状コロニーと格子区画内に点在する点状コロニーのうち、面状コロニーの数を陽性区画数として計数する請求項1記載のバチルス属細菌の計数方法。
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