JP2016189443A - 電極形成用組成物、電極、太陽電池素子及びその製造方法、並びに太陽電池 - Google Patents

電極形成用組成物、電極、太陽電池素子及びその製造方法、並びに太陽電池 Download PDF

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Abstract

【課題】抵抗率が低く、半導体基板との良好なオーミックコンタクトを有する銅含有電極を形成可能な電極形成用組成物を提供する。【解決手段】電極形成用組成物を、リン含有銅合金粒子、錫含有粒子及びニッケル含有粒子を含む金属粒子と、ガラス粒子と、を含有して構成し、金属粒子の含有率を100.0質量%としたときの銅含有率が60.0質量%〜95.0質量%である。【選択図】なし

Description

本発明は、電極形成用組成物、電極、太陽電池素子及びその製造方法、並びに太陽電池に関する。
一般に太陽電池の受光面及び裏面には電極が形成されている。光の入射により太陽電池内で変換された電気エネルギーを効率よく外部に取出すためには、電極の体積抵抗率(以下、単に「抵抗率」ともいう)が充分に低いことと、電極が半導体基板と良好なオーミックコンタクトを形成することが必要である。受光面の電極については、太陽光の入射量損失を最低限に抑える観点から、配線幅を小さくし、そして電極のアスペクト比を高くする傾向にある。
太陽電池としては、シリコン基板を用いたシリコン系太陽電池が一般的であり、シリコン系太陽電池の受光面の電極は、通常以下のようにして形成される。すなわち、p型シリコン基板の受光面側にテクスチャ(凹凸)を形成する。次いでリン等を高温で熱的にp型シリコン基板の表面に拡散させることにより形成されたn型拡散層上に、導電性組成物をスクリーン印刷等により付与し、これを大気中800℃〜900℃で熱処理(焼成)することで受光面の電極が形成される。また裏面の電極についても、受光面とは反対側の面に形成されること以外は、受光面の電極と同様に形成される。受光面の電極、及び裏面の電極を形成する導電性組成物には、導電性金属粒子、ガラス粒子、種々の添加剤等が含有される。
特に、受光面の電極及び裏面の電極のうち出力を取り出すための電極については、導電性金属粒子として、銀粒子が一般的に用いられている。この理由として、銀粒子の抵抗率が1.6×10−6Ω・cmと低いこと、上記熱処理(焼成)条件において銀粒子が自己還元して焼結すること、シリコン基板と良好なオーミックコンタクトを形成できること、及び銀粒子から形成された電極は、はんだ材料の濡れ性に優れ、太陽電池素子間を電気的に接続する配線材料(タブ線)を好適に接着可能であることが挙げられる。
上記に示すように、銀粒子を含む導電性組成物から形成された電極は、太陽電池の電極として優れた特性を発現する。一方で、銀は貴金属であって地金自体が高価であり、また資源の問題からも、銀に代わる導電材料が望まれている。銀に代わる有望な導電材料としては、半導体配線材料に適用されている銅が挙げられる。銅は資源的にも豊富で、地金の価格も銀の約100分の1と安価である。しかしながら、銅は大気中200℃以上で容易に酸化される材料であり、上記工程で電極を形成することは困難である。
銅が有する上記課題を解決するために、銅に種々の手法を用いて耐酸化性を付与し、高温の熱処理(焼成)でも酸化され難い銅粒子が報告されている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
特開2005−314755号公報 特開2004−217952号公報
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に記載の上記銅粒子でも、耐酸化性を有するのは高々300℃までで、800℃〜900℃の高温ではほとんど酸化されてしまうことから、銅粒子から形成される電極は、太陽電池用電極としては実用化に至っていない。更に耐酸化性を付与するために適用した添加剤等が熱処理(焼成)中の銅粒子の焼結を阻害し、結果として銀のような低抵抗率の電極が得られないという課題がある。
また銅の酸化を抑えて電極を得る別の手法として、導電性金属粒子として銅を用いた導電性組成物を、窒素等の雰囲気下で熱処理(焼成)するという特殊な製造工程を経る方法が挙げられる。しかしながら、上記手法を用いる場合、銅粒子の酸化を抑えるためには窒素等で充満させた雰囲気となるように密封した環境が必要となり、製造コストの面で太陽電池素子の量産には不向きである。
銅を太陽電池用電極に適用するためのもう一つの課題として、半導体基板とのオーミックコンタクト性が挙げられる。すなわち、銅含有電極を高温の熱処理(焼成)中に酸化せずに形成できたとしても、銅が半導体基板と接触することで、銅と半導体基板との間で相互拡散が生じ、電極と半導体基板との界面に、銅と半導体基板とによる反応物相が形成されることがある。例えば、シリコン基板を用いた場合には、銅がシリコン基板と接触することで、銅とシリコンとの相互拡散が生じ、電極とシリコン基板との界面に、銅とシリコンとによる反応物相であるCuSiが形成されることがある。
このようなCuSi等の反応物相の形成は半導体基板の界面から深さ数μmにまで及ぶことがあり、半導体基板に亀裂を生じさせる場合がある。また、反応物相は、半導体基板に予め形成されたn型拡散層を貫通し、太陽電池が持つ半導体性能(pn接合特性)を劣化させる場合がある。また形成された反応物相が銅含有電極を持ち上げる等して、電極と半導体基板との密着性を阻害し、電極の機械的強度の低下をもたらす恐れがある。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、抵抗率が低く、半導体基板との良好なオーミックコンタクトを有する銅含有電極を形成可能な電極形成用組成物、並びに、該電極形成用組成物を用いて形成された電極、該電極を有する太陽電池素子、太陽電池素子の製造方法及び太陽電池を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために鋭意研究した結果、本発明に至った。すなわち本発明は以下の通りである。
<1> リン含有銅合金粒子、錫含有粒子及びニッケル含有粒子を含む金属粒子と、ガラス粒子と、を含有し、前記金属粒子の含有率を100.0質量%としたときの銅含有率が60.0質量%〜95.0質量%である電極形成用組成物。
<2> 前記リン含有銅合金粒子のリン含有率が、6.0質量%〜8.0質量%である前記<1>に記載の電極形成用組成物。
<3> 前記錫含有粒子は、錫粒子及び錫含有率が1.0質量%以上である錫合金粒子からなる群より選択される少なくとも1種である前記<1>又は<2>に記載の電極形成用組成物。
<4> 前記ニッケル含有粒子は、ニッケル粒子及びニッケル含有率が1.0質量%以上であるニッケル合金粒子からなる群より選択される少なくとも1種である前記<1>〜<3>のいずれか1項に記載の電極形成用組成物。
<5> 前記ガラス粒子は、軟化点が650℃以下であり、結晶化開始温度が650℃を超える前記<1>〜<4>のいずれか1項に記載の電極形成用組成物。
<6> 前記金属粒子の含有率を100.0質量%としたときの前記錫含有粒子の含有率が、5.0質量%〜70.0質量%である前記<1>〜<5>のいずれか1項に記載の電極形成用組成物。
<7> 前記金属粒子の含有率を100.0質量%としたときの前記ニッケル含有粒子の含有率が、5.0質量%〜60.0質量%である前記<1>〜<6>のいずれか1項に記載の電極形成用組成物。
<8> 前記金属粒子が、銀粒子を更に含む前記<1>〜<7>のいずれか1項に記載の電極形成用組成物。
<9> 前記金属粒子の含有率を100.0質量%としたときの前記銀粒子の含有率が、0.1質量%〜10.0質量%である前記<8>に記載の電極形成用組成物。
<10> 前記金属粒子の含有率が、65.0質量%〜94.0質量%である前記<1>〜<9>のいずれか1項に記載の電極形成用組成物。
<11> 前記ガラス粒子の含有率が、0.1質量%〜10.0質量%である前記<1>〜<10>のいずれか1項に記載の電極形成用組成物。
<12> 更に、樹脂を含む前記<1>〜<11>のいずれか1項に記載の電極形成用組成物。
<13> 更に、溶剤を含む前記<1>〜<12>のいずれか1項に記載の電極形成用組成物。
<14> 更に、樹脂及び溶剤の少なくとも一方を含み、前記溶剤及び前記樹脂の総含有率が3.0質量%〜50.0質量%である前記<1>〜<11>のいずれか1項に記載の電極形成用組成物。
<15> 前記<1>〜<14>のいずれか1項に記載の電極形成用組成物の熱処理物である電極。
<16> 半導体基板と、前記半導体基板上に設けられる前記<1>〜<14>のいずれか1項に記載の電極形成用組成物の熱処理物である電極と、を有する太陽電池素子。
<17> 前記電極は、銅と錫とニッケルとを含有する合金相及び錫とリンと酸素とを含有するガラス相を含む前記<16>に記載の太陽電池素子。
<18> 前記錫とリンと酸素とを含有するガラス相の少なくとも一部は、前記銅と錫とニッケルとを含有する合金相と前記半導体基板との間に配置されている前記<17>に記載の太陽電池素子。
<19> 半導体基板上に前記<1>〜<14>のいずれか1項に記載の電極形成用組成物を付与する工程と、
前記電極形成用組成物を熱処理する工程と、
を有する太陽電池素子の製造方法。
<20> 前記<16>〜<18>のいずれか1項に記載の太陽電池素子と、前記太陽電池素子の電極上に配置される配線材料と、を有する太陽電池。
本発明によれば、抵抗率が低く、半導体基板との良好なオーミックコンタクトを有する銅含有電極を形成可能な電極形成用組成物、並びに、該電極形成用組成物を用いて形成される電極、該電極を有する太陽電池素子、太陽電池素子の製造方法及び太陽電池を提供することができる。
太陽電池素子の一例を示す概略断面図である。 太陽電池素子の受光面の一例を示す概略平面図である。 太陽電池素子の裏面の一例を示す概略平面図である。 バックコンタクト型太陽電池素子の裏面側電極構造の一例を示す概略平面図である。 バックコンタクト型太陽電池素子のAA断面構成の一例を示す概略斜視図である。 バックコンタクト型太陽電池素子のAA断面構成の他の一例を示す概略斜視図である。 バックコンタクト型太陽電池素子のAA断面構成の他の一例を示す概略斜視図である。
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の実施形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合、原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必須ではない。数値及びその範囲についても同様であり、本発明を制限するものではない。
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の目的が達成されれば、本用語に含まれる。また本明細書において「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。また、本明細書において組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計量を意味する。また、本明細書において組成物中の各成分の粒子径は、組成物中に各成分に該当する粒子が複数種存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の粒子の混合物についての値を意味する。また、本明細書において「層」との語は、平面図として観察したときに、全面に形成されている形状の構成に加え、一部に形成されている形状の構成も包含される。
<電極形成用組成物>
電極形成用組成物は、リン含有銅合金粒子の少なくとも1種、錫含有粒子の少なくとも1種、及びニッケル含有粒子の少なくとも1種を含む金属粒子と、ガラス粒子の少なくとも1種と、を含有し、前記金属粒子の含有率を100.0質量%としたときの銅含有率が60.0質量%〜95.0質量%である。電極形成用組成物がかかる構成であることにより、大気中での熱処理(焼成)における銅の酸化が抑制され、抵抗率の低い電極が形成される。更に、電極形成用組成物を半導体基板に付与して電極を形成する際、形成される電極と半導体基板とが良好なオーミックコンタクトを形成できる。これは例えば以下のように考えることができる。
電極形成用組成物を熱処理(焼成)すると、リン含有銅合金粒子と錫含有粒子との反応により、Cu−Sn合金相及びSn−P−Oガラス相を形成する。Cu−Sn合金相の形成により、低抵抗率の電極を形成することができる。ここで、Cu−Sn合金相は、500℃程度の比較的低温で生成するため、電極の低温での熱処理(焼成)が可能となり、プロセスコストを削減できるという効果が期待できる。
また、電極形成用組成物がニッケル含有粒子を含むことで、上記で形成されたCu−Sn合金相とニッケル含有粒子とが更に反応し、Cu−Sn−Ni合金相を形成すると考えられる。このCu−Sn−Ni合金相は、500℃以上の高温(例えば、800℃)でも形成されることがある。結果として、高温での熱処理(焼成)工程でも耐酸化性を保ったまま低抵抗率の電極を形成できると考えられる。
すなわち、前記電極形成用組成物を用いることで、電極の低温での熱処理(焼成)から高温での熱処理(焼成)までの種々の条件に対応することが可能となる。従って前記電極形成用組成物は、後述する様々な構造の太陽電池の電極材料として広範に使用することができる。
また、Cu−Sn−Ni合金相は、Cu−Sn−Ni合金相同士で、又は熱処理(焼成)条件等に応じて更に形成されるCu−Sn合金相と共に、電極内で緻密なバルク体を形成する。このバルク体が導電層として機能することで、電極の低抵抗率化が図られる。ここでいう緻密なバルク体とは、塊状のCu−Sn合金相及びCu−Sn−Ni合金相が互いに密に接触し、三次元的に連続している構造が形成されていることを意味する。このような構造が形成されていることは、電極を形成した基板について、電極形成面と垂直方向の任意の断面を、走査型電子顕微鏡(例えば、(株)日立ハイテクノロジーズ、TM−1000型走査型電子顕微鏡)を用いて、100倍〜10000倍の倍率で観察することによって確認することができる。ここで、観察用の断面は、リファインテック(株)のRCO−961型ダイヤモンドカッター等により切断したときの断面とする。尚、切断後の観察用の断面は、切断機による切削傷等が残っていることがあるので、研磨紙等を用いて研磨し、観察断面の表面凹凸を除去することが好ましく、その後バフ等を用いて鏡面研磨することがより好ましい。
また、本発明の電極形成用組成物を用いて半導体基板上に電極を形成する場合、半導体基板に対する密着性が高い電極を形成することができ、更に電極と半導体基板とのオーミックコンタクトが良好となる。これはシリコンを含む半導体基板(以下、単に「シリコン基板」ともいう)を例に以下のように考えることができる。
リン含有銅合金粒子と錫含有粒子とニッケル含有粒子とが、熱処理(焼成)工程で互いに反応して、Cu−Sn−Ni合金相と、Sn−P−Oガラス相と、熱処理(焼成)条件等に応じて形成されるCu−Sn合金相とを含む電極を形成する。Cu−Sn−Ni合金相及びCu−Sn合金相が緻密なバルク体であるために、Sn−P−Oガラス相は、電極内のCu−Sn−Ni合金相の三次元バルク体の間(空隙部)及びCu−Sn−Ni合金相とシリコン基板との間、又はCu−Sn−Ni合金相及びCu−Sn合金相とシリコン基板との間に存在する。Cu−Sn−Ni合金相又はCu−Sn合金相とSn−P−Oガラス相とは互いに三次元に連続しており、また熱処理(焼成)して形成された後も混和しないため、電極自身の強度は高く保たれる。また、シリコン基板と電極との界面にSn−P−Oガラス相が介在することで、電極とシリコン基板との密着性が向上すると考えることができる。
また、Sn−P−Oガラス相が、銅とシリコンとの間での相互拡散を防止するためのバリア層として機能することで、熱処理(焼成)して形成される電極とシリコン基板とのオーミックコンタクトが良好になると考えることができる。すなわち、本発明の電極形成用組成物を用いることで、銅とシリコンとの反応を抑えて反応物相(CuSi)の形成を抑制し、半導体性能(例えば、pn接合特性)を低下させることなく、形成された電極のシリコン基板に対する密着性を保ちながら、電極とシリコン基板との良好なオーミックコンタクトを発現することができると考えられる。
このような効果は、シリコンを含む基板上に本発明の電極形成用組成物を用いて電極を形成する場合であれば、一般的に発現するものであるが、その他の半導体基板であっても同様の効果を期待することができ、半導体基板の種類は特に制限されるものではない。半導体基板としては、シリコン基板、リン化ガリウム基板、窒化ガリウム基板、ダイヤモンド基板、窒化アルミニウム基板、窒化インジウム基板、ヒ化ガリウム基板、ゲルマニウム基板、セレン化亜鉛基板、テルル化亜鉛基板、テルル化カドミウム基板、硫化カドミウム基板、リン化インジウム基板、炭化ケイ素基板、ケイ化ゲルマニウム基板、銅インジウムセレン基板等が挙げられる。中でも、シリコン基板に好適に用いることができる。尚、太陽電池形成用の半導体基板に限定されるものではなく、本発明の電極形成用組成物は太陽電池以外の半導体デバイスの製造に用いる半導体基板等にも用いることができる。
すなわち本発明においては、電極形成用組成物中に、リン含有銅合金粒子、錫含有粒子及びニッケル含有粒子を含有することで、まず、リン含有銅合金粒子中のリン原子の銅酸化物に対する還元性を利用し、耐酸化性に優れ、抵抗率の低い電極が形成される。次いで、リン含有銅合金粒子と錫含有粒子及びニッケル含有粒子との反応により、得られる電極は抵抗率を低く保ったまま、Cu−Sn−Ni合金相及び熱処理(焼成)条件に応じて形成されるCu−Sn合金相を含む導電層とSn−P−Oガラス相とが電極中に形成される。そして例えば、Sn−P−Oガラス相が、銅とシリコンの相互拡散を防止するためのバリア層として機能することで、銅を含む電極とシリコン基板との間に良好なオーミックコンタクトが形成される。このような特徴的な機構を、熱処理(焼成)工程において実現できると考えることができる。
[金属粒子]
金属粒子は、リン含有銅合金粒子の少なくとも1種、錫含有粒子の少なくとも1種、及びニッケル含有粒子の少なくとも1種を含む。金属粒子は、銀粒子の少なくとも1種を更に含んでもよい。
電極形成用組成物中の金属粒子の含有率は、耐酸化性、電極の低抵抗率化、及びシリコン基板への塗布性の観点から、65.0質量%〜94.0質量%であることが好ましく、66.0質量%〜88.0質量%であることがより好ましい。
金属粒子の含有率が65.0質量%以上であることで、電極形成用組成物を半導体基板に付与する際に好適な粘度が容易に達成される傾向にある。また、金属粒子の含有率が94.0質量%以下であることで、電極形成用組成物を半導体基板に付与する際のかすれの発生が効果的に抑制される傾向にある。
(リン含有銅合金粒子)
電極形成用組成物は、リン含有銅合金粒子の少なくとも1種を含む。一般にリンを含む銅合金としては、リン銅ろう(リン濃度:7質量%程度以下)と呼ばれるろう付け材料が知られている。リン銅ろうは、銅と銅との接合剤としても用いられるものであるが、電極形成用組成物にリン含有銅合金粒子を用いることで、リンの銅酸化物に対する還元性を利用し、耐酸化性に優れ、抵抗率の低い電極を形成することができる。
本発明におけるリン含有銅合金粒子に含まれるリン含有率は、特に制限されない。耐酸化性の向上(電極の低抵抗率化)とSn−P−Oガラス相の形成能の観点から、例えば、リン含有率が6.0質量%〜8.0質量%であることが好ましく、6.3質量%〜7.8質量%であることがより好ましく、6.5質量%〜7.5質量%であることが更に好ましい。リン含有銅合金粒子に含まれるリン含有率が8.0質量%以下であることで、低い抵抗率を有する電極を得ることが可能であり、またリン含有銅合金粒子の生産性に優れる。また、リン含有銅合金粒子に含まれるリン含有率を6.0質量%以上とすることで、耐酸化性に優れ、また、Sn−P−Oガラス相を効果的に形成することができ、オーミックコンタクトに優れた電極を形成することができる傾向にある。
前記リン含有銅合金粒子は、銅とリンとを含む合金であるが、他の原子を更に含んでいてもよい。他の原子としては、Ag、Mn、Sb、Si、K、Na、Li、Ba、Sr、Ca、Mg、Be、Zn、Pb、Cd、Tl、V、Sn、Al、Zr、W、Mo、Ti、Co、Ni、Au等を挙げることができる。
リン含有銅合金粒子に含まれる他の原子の含有率は、例えば、リン含有銅合金粒子中に3.0質量%以下とすることができ、耐酸化性と電極の低抵抗率化の観点から、1.0質量%以下であることが好ましい。但し、他の原子としてSn又はNiを含む場合には、リン含有銅合金粒子中に含まれるSn又はNiの含有率はそれぞれ1.0質量%未満である。
尚、リン含有銅合金粒子を構成するリン含有銅合金における各元素の含有率は、誘導結合プラズマ質量分析(Inductively Coupled Plasma - Mass Spectrometry、ICP−MS)法の定量分析によって測定することができる。
また、リン含有銅合金粒子を構成するリン含有銅合金における各元素の含有率は、エネルギー分散型X線分光(Energy Dispersive X-ray Spectroscopy、EDX)法の定量分析によって測定することもできる。具体的には、リン含有銅合金粒子を樹脂に埋め込み、硬化させた後にダイヤモンドカッター等で切断し、必要に応じて耐水研磨紙、研磨液等を用いて研磨し、得られた断面にあるリン含有銅合金粒子の断面を分析することが好ましい。この理由は、例えば、以下のように考えることができる。
リン含有銅合金粒子はリンを含有しているため、取り扱う環境によっては、リン含有銅合金粒子の吸湿が生じ、その結果として、リン含有銅合金粒子の表面が酸化される可能性がある。この酸化によって生じた皮膜はごく表面に存在し、リン含有銅合金粒子の品質に影響をほとんど与えないと考えられる。しかし、リン含有銅合金粒子の表面における酸素の含有率の増加等によって、リン含有銅合金粒子の表面と内部とで各元素の含有率に差が生じてしまう可能性がある。従って、リン含有銅合金粒子中の各元素の含有率を測定する際は、粒子表面ではなく、粒子断面を測定することが好ましいと考えられる。
前記リン含有銅合金粒子の粒子径としては特に制限はない。粒度分布において小径側から積算した体積が50%の場合における粒子径(以下、「D50%」と略記することがある)が、例えば、0.4μm〜10μmであることが好ましく、1.0μm〜7μmであることがより好ましい。リン含有銅合金粒子のD50%を0.4μm以上とすることで、耐酸化性が効果的に向上する傾向がある。またリン含有銅合金粒子のD50%を10μm以下とすることで、電極中におけるリン含有銅合金粒子同士、後述する錫含有粒子及びニッケル含有粒子並びに必要に応じて含有される銀粒子との接触面積が大きくなり、電極の抵抗率が効果的に低下する傾向がある。
尚、リン含有銅合金粒子の粒子径は、レーザー回折式粒度分布計(例えば、ベックマン・コールター(株)、LS 13 320型レーザー散乱回折法粒度分布測定装置)によって測定される。具体的には、溶剤(テルピネオール)125gに、リン含有銅合金粒子を0.01質量%〜0.3質量%の範囲内で添加し、分散液を調製する。この分散液の約100ml程度をセルに注入して25℃で測定する。粒度分布は溶媒の屈折率を1.48として測定する。
リン含有銅合金の粒子径(D50%)と錫含有粒子の粒子径(D50%)との比は特に制限されない。高温での熱処理(焼成)条件下で形成される電極の低抵抗率化と半導体基板への密着性の観点から、リン含有銅合金粒子の粒子径(D50%)に対する錫含有粒子の粒子径(D50%)比(錫含有粒子径/リン含有銅合金粒子径)が、0.03〜30であることが好ましく、0.1〜10であることがより好ましい。
また、リン含有銅合金粒子の粒子径(D50%)とニッケル含有粒子の粒子径(D50%)との比は特に制限されない。高温での熱処理(焼成)条件下で形成される電極の低抵抗率化の観点から、リン含有銅合金粒子の粒子径(D50%)に対するニッケル含有粒子の粒子径(D50%)比(ニッケル含有粒子径/リン含有銅合金粒子径)が、0.02〜20であることが好ましく、0.1〜10であることがより好ましい。
リン含有銅合金粒子の形状としては特に制限はなく、略球状、扁平状、ブロック状、板状、鱗片状等のいずれであってもよい。耐酸化性と電極の低抵抗率の観点から、リン含有銅合金粒子の形状は、略球状、扁平状、又は板状であることが好ましい。
金属粒子の含有率を100.0質量%としたときの銅含有率は、電極の低抵抗率化とSn−P−Oガラス相の形成能の観点から、60.0質量%〜95.0質量%であり、例えば、60.0質量%〜92.0質量%であることが好ましく、60.0質量%〜90.0質量%であることがより好ましい。
上記銅含有率が95.0質量%以下であることで、Sn−P−Oガラス相を効果的に形成することができ、シリコン基板に対する密着性とオーミックコンタクトに優れた電極が形成される傾向にある。また、銅含有率が60.0質量%以上であることで、抵抗率が低くなる傾向にある。
リン含有銅合金粒子は、1種単独でも又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。本発明において「リン含有銅合金粒子の2種以上を組み合わせて用いる」とは、成分比率が異なるものの粒子径、粒度分布等の粒子形状が同じである2種以上のリン含有銅合金粒子を組み合わせて用いる場合、成分比率は同じであるものの粒子形状の異なる2種以上のリン含有銅合金粒子を組み合わせて用いる場合、成分比率及び粒子形状がともに異なる2種以上のリン含有銅合金粒子を組み合わせて用いる場合等が挙げられる。
また、金属粒子の含有率を100.0質量%としたときのリン含有銅合金粒子の含有率が、例えば、60.0質量%〜98.0質量%であることが好ましく、62.0質量%〜95.0質量%であることがより好ましく、64.0質量%〜92.0質量%であることが更に好ましい。
リン含有銅合金粒子の含有率を60.0質量%以上とすることで、電極内の空隙部を効果的に低減させ、電極を緻密化させることができる傾向にある。またリン含有銅合金粒子の含有率を98.0質量%以下とすることで、他の金属粒子を含有したことによる電極の低抵抗率化、シリコン基板への電極の密着力の向上等の効果を発現させることができる傾向にある。
また電極形成用組成物における、リン含有銅合金粒子と錫含有粒子及びニッケル含有粒子との含有比は特に制限されない。高温での熱処理(焼成)条件下で形成される電極の低抵抗率化と半導体基板への密着性の観点から、リン含有銅合金粒子に対する錫含有粒子とニッケル含有粒子の総量の質量比((ニッケル含有粒子+錫含有粒子)/リン含有銅合金粒子)が、0.1〜0.7であることが好ましく、0.2〜0.6であることがより好ましい。
電極形成用組成物におけるリン含有銅合金粒子の含有率は特に制限されない。低抵抗率の観点から、電極形成用組成物中に15.0質量%〜75.0質量%であることが好ましく、18.0質量%〜70.0質量%であることがより好ましく、20.0質量%〜65.0質量%であることが更に好ましい。
リン含有銅合金は、通常用いられる方法で製造することができる。また、リン含有銅合金粒子は、所望のリン含有率となるように調製したリン含有銅合金を用いて、金属粒子を調製する通常の方法を用いて調製することができ、例えば、水アトマイズ法を用いて定法により製造することができる。尚、水アトマイズ法の詳細については金属便覧(丸善(株)出版事業部)等の記載を参照することができる。
具体的には、リン含有銅合金を熔解し、これをノズル噴霧によって粒子化した後、得られた粒子を乾燥及び分級することで、所望のリン含有銅合金粒子を製造することができる。また、分級条件を適宜選択することで所望の粒子径を有するリン含有銅合金粒子を製造することができる。
(錫含有粒子)
電極形成用組成物は、錫含有粒子の少なくとも1種を含む。錫含有粒子を含むことにより、後述する熱処理(焼成)工程において、抵抗率の低い電極を形成できる。
錫含有粒子としては、錫を含む粒子であれば特に制限はない。中でも、錫粒子及び錫合金粒子からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、錫粒子及び錫含有率が1.0質量%以上である錫合金粒子からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
錫粒子における錫の純度は特に制限されない。例えば、錫粒子の純度は、95.0質量%以上とすることができ、97.0質量%以上であることが好ましく、99.0質量%以上であることがより好ましい。
また錫合金粒子は、錫を含む合金粒子であれば合金の種類は制限されない。中でも、錫合金粒子の融点、及び熱処理(焼成)時のリン含有銅合金粒子及びニッケル含有粒子との反応性の観点から、例えば、錫の含有率が1.0質量%以上の錫合金粒子であることが好ましく、錫の含有率が3.0質量%以上の錫合金粒子であることがより好ましく、錫の含有率が5.0質量%以上の錫合金粒子であることが更に好ましく、錫の含有率が10.0質量%以上の錫合金粒子であることが特に好ましい。
錫合金粒子を構成する合金としては、Sn−Ag合金、Sn−Cu合金、Sn−Ag−Cu合金、Sn−Ag−Sb合金、Sn−Ag−Sb−Zn合金、Sn−Ag−Cu−Zn合金、Sn−Ag−Cu−Sb合金、Sn−Ag−Bi合金、Sn−Bi合金、Sn−Ag−Cu−Bi合金、Sn−Ag−In−Bi合金、Sn−Sb合金、Sn−Bi−Cu合金、Sn−Bi−Cu−Zn合金、Sn−Bi−Zn合金、Sn−Bi−Sb−Zn合金、Sn−Zn合金、Sn−In合金、Sn−Zn−In合金、Sn−Pb合金等が挙げられる。
錫合金粒子を構成する合金のうち、特に、Sn−3.5Ag、Sn−0.7Cu、Sn−3.2Ag−0.5Cu、Sn−4Ag−0.5Cu、Sn−2.5Ag−0.8Cu−0.5Sb、Sn−2Ag−7.5Bi、Sn−3Ag−5Bi、Sn−58Bi、Sn−3.5Ag−3In−0.5Bi、Sn−3Bi−8Zn、Sn−9Zn、Sn−52In、Sn−40Pb等の錫合金は、その融点がSnの融点(232℃)と同じか、又はそれよりも低い。そのため、これら錫合金で構成される錫合金粒子は熱処理(焼成)の初期段階で溶融することで、リン含有銅合金粒子の表面を覆い、リン含有銅合金粒子と均一に反応することができるという点で、好適に用いることができる。尚、錫合金粒子における表記は、例えばSn−AX−BY−CZの場合は、錫合金粒子の中に、元素XがA質量%、元素YがB質量%、元素ZがC質量%含まれていることを示す。
本発明において、これらの錫含有粒子は1種単独で使用してもよく、又2種以上を組み合わせて使用することもできる。本発明において「錫含有粒子の2種以上を組み合わせて用いる」とは、成分比率が異なるものの粒子径、粒度分布等の粒子形状が同じである2種以上の錫含有粒子を組み合わせて用いる場合、成分比率は同じであるものの粒子形状の異なる2種以上の錫含有粒子を組み合わせて用いる場合、成分比率及び粒子形状がともに異なる2種以上の錫含有粒子を組み合わせて用いる場合等が挙げられる。
錫含有粒子は、不可避的に混入する他の原子を更に含んでいてもよい。不可避的に混入する他の原子としては、Ag、Mn、Sb、Si、K、Na、Li、Ba、Sr、Ca、Mg、Be、Zn、Pb、Cd、Tl、V、Al、Zr、W、Mo、Ti、Co、Ni、Au等を挙げることができる。
また、錫含有粒子に含まれる不可避的に混入する他の原子の含有率は、例えば、錫含有粒子中に3質量%以下とすることができ、融点及びリン含有銅合金粒子との反応性の観点から、1.0質量%以下であることが好ましい。但し、他の原子としてNiを含む場合には、錫含有粒子中に含まれるNiの含有率はそれぞれ1.0質量%未満である。
錫含有粒子の粒子径(D50%)としては特に制限はない。錫含有粒子のD50%は、例えば、0.5μm〜20μmであることが好ましく、1μm〜15μmであることがより好ましく、3μm〜15μmであることが更に好ましい。
錫含有粒子のD50%を0.5μm以上とすることで、錫含有粒子自身の耐酸化性が向上する傾向にある。また、錫含有粒子のD50%を20μm以下とすることで、電極中におけるリン含有銅合金粒子及びニッケル含有粒子並びに必要に応じて含有される銀粒子との接触面積が大きくなり、熱処理(焼成)中のリン含有銅合金粒子及び錫含有粒子並びに必要に応じて含有される銀粒子との反応が効果的に進む傾向にある。
尚、錫含有粒子の粒子径(D50%)の測定方法は、リン含有銅合金粒子の粒子径の測定方法と同様である。
また、錫含有粒子の形状としては特に制限はなく、略球状、扁平状、ブロック状、板状、鱗片状等のいずれであってもよい。耐酸化性と低抵抗率の観点から、錫含有粒子の形状は、略球状、扁平状又は板状であることが好ましい。
また、金属粒子の含有率を100.0質量%としたときの錫の含有率は、例えば、1.0質量%〜50.0質量%であることが好ましく、2.0質量%〜30.0質量%であることがより好ましく、3.0質量%〜25.0質量%であることが更に好ましい。
錫の含有率を1.0質量%以上とすることで、電極内の空隙部を効果的に低減させ、電極を緻密化させることができる傾向にある。また錫の含有率を50.0質量%以下とすることで、電極の低抵抗率化、シリコン基板への電極の密着力の向上等の効果を発現させることができる傾向にある。
また前記電極形成用組成物における錫含有粒子の含有率は特に制限されない。中でも、金属粒子の含有率を100.0質量%としたときの錫含有粒子の含有率が、例えば、5.0質量%〜70.0質量%であることが好ましく、6.0質量%〜65.0質量%であることがより好ましく、7.0質量%〜60.0質量%であることが更に好ましく、7.0質量%〜45.0質量%であることが特に好ましい。
錫含有粒子の含有率を5.0質量%以上とすることで、リン含有銅合金粒子及びニッケル含有粒子並びに必要に応じて含有される銀粒子との反応を均一に生じさせる傾向にある。また錫含有粒子を70.0質量%以下とすることで、充分な体積のCu−Sn合金相及びCu−Sn−Ni合金相を形成することができ、電極の抵抗率が低下する傾向にある。
(ニッケル含有粒子)
電極形成用組成物は、ニッケル含有粒子の少なくとも1種を含む。リン含有銅合金粒子及び錫含有粒子に加えて、ニッケル含有粒子を含むことで、熱処理(焼成)工程において、高温での耐酸化性を発現させることができる。
ニッケル含有粒子としては、ニッケルを含む粒子であれば特に制限はない。中でも、ニッケル粒子及びニッケル合金粒子からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、ニッケル粒子及びニッケル含有率が1.0質量%以上であるニッケル合金粒子からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
ニッケル粒子におけるニッケルの純度は特に制限されない。例えば、ニッケル粒子の純度は、95.0質量%以上とすることができ、97.0質量%以上であることが好ましく、99.0質量%以上であることがより好ましい。
またニッケル合金粒子は、ニッケルを含む合金粒子であれば合金の種類は制限されない。中でも、ニッケル合金粒子の融点、並びにリン含有銅合金粒子、錫含有粒子及びCu−Sn合金相との反応性の観点から、例えば、ニッケルの含有率が1.0質量%以上のニッケル合金粒子であることが好ましく、ニッケルの含有率が3.0質量%以上のニッケル合金粒子であることがより好ましく、ニッケルの含有率が5.0質量%以上のニッケル合金粒子であることが更に好ましく、ニッケルの含有率が10.0質量%以上のニッケル合金粒子であることが特に好ましい。
ニッケル合金粒子を構成する合金としては、Ni−Fe合金、Ni−Cu合金、Ni−Cu−Zn合金、Ni−Cr合金、Ni−Cr−Ag合金等が挙げられる。
特に、Ni−58Fe、Ni−75Cu、Ni−6Cu−20Zn等で構成されるニッケル合金粒子は、熱処理(焼成)時にリン含有銅合金粒子及び錫含有粒子と均一的に反応することができるという点で、好適に用いることができる。尚、ニッケル合金粒子における表記は、例えば、Ni−AX−BY−CZの場合は、ニッケル合金粒子の中に、元素XがA質量%、元素YがB質量%、元素ZがC質量%含まれていることを示す。
本発明において、これらのニッケル含有粒子は1種単独で使用してもよく、又2種類以上を組み合わせて使用することもできる。本発明において「ニッケル含有粒子の2種以上を組み合わせて用いる」とは、成分比率が異なるものの粒子径、粒度分布等の粒子形状が同じである2種以上のニッケル含有粒子を組み合わせて用いる場合、成分比率は同じであるものの粒子形状の異なる2種以上のニッケル含有粒子を組み合わせて用いる場合、成分比率及び粒子形状がともに異なる2種以上のニッケル含有粒子を組み合わせて用いる場合等が挙げられる。
ニッケル含有粒子は、不可避的に混入する他の原子を更に含んでいてもよい。不可避的に混入する他の原子としては、Ag、Mn、Sb、Si、K、Na、Li、Ba、Sr、Ca、Mg、Be、Zn、Pb、Cd、Tl、V、Al、Zr、W、Mo、Ti、Co、Sn、Au等を挙げることができる。
また、ニッケル含有粒子に含まれる不可避的に混入する他の原子の含有率は、例えば、ニッケル含有粒子中に3.0質量%以下とすることができ、融点及びリン含有銅合金粒子及び錫含有粒子との反応性の観点から、1.0質量%以下であることが好ましい。但し、他の原子としてSnを含む場合には、ニッケル含有粒子中に含まれるSnの含有率はそれぞれ1.0質量%未満である。
ニッケル含有粒子の粒子径としては特に制限はない。ニッケル含有粒子の粒子径は、D50%として、0.5μm〜20μmであることが好ましく、1μm〜15μmであることがより好ましく、2μm〜15μmであることが更に好ましい。
ニッケル含有粒子のD50%を0.5μm以上とすることで、ニッケル含有粒子自身の耐酸化性が向上する傾向にある。また、ニッケル含有粒子のD50%を20μm以下とすることで電極中におけるリン含有銅合金粒子及び錫含有粒子並びに必要に応じて含有される銀粒子との接触面積が大きくなり、熱処理(焼成)中のリン含有銅合金粒子及び錫含有粒子並びに必要に応じて含有される銀粒子との反応が効果的に進む。
尚、ニッケル含有粒子の粒子径(D50%)の測定方法は、リン含有銅合金粒子の粒子径の測定方法と同様である。
また、ニッケル含有粒子の形状としては特に制限はなく、略球状、扁平状、ブロック状、板状、鱗片状等のいずれであってもよい。耐酸化性と電極の低抵抗率化の観点から、ニッケル含有粒子の形状は、略球状、扁平状又は板状であることが好ましい。
また、金属粒子の含有率を100.0質量%としたときのニッケルの含有率は、例えば、1.0質量%〜50.0質量%であることが好ましく、2.0質量%〜30.0質量%であることがより好ましく、4.0質量%〜20.0質量%であることが更に好ましい。
ニッケルの含有率を1.0質量%以上とすることで、電極内の空隙部を効果的に低減させ、電極を緻密化させることができる傾向にある。またニッケルの含有率を50.0質量%以下とすることで、電極の低抵抗率化、シリコン基板への電極の密着力の向上等の効果を発現させることができる傾向にある。
電極形成用組成物におけるニッケル含有粒子の含有率は特に制限されない。中でも、金属粒子の含有率を100.0質量%としたときのニッケル含有粒子の含有率が、例えば、5.0質量%〜60.0質量%であることが好ましく、6.0質量%〜55.0質量%であることがより好ましく、7.0質量%〜50.0質量%であることが更に好ましく、7.0質量%〜35.0質量%であることが特に好ましい。
ニッケル含有粒子の含有率を5.0質量%以上とすることで、Cu−Sn−Ni合金相の形成を均一に生じさせる傾向にある。またニッケル含有粒子を60.0質量%以下とすることで、充分な体積のCu−Sn−Ni合金相を形成することができ、電極の抵抗率が低下する傾向にある。
電極形成用組成物における、錫含有粒子とニッケル含有粒子との含有比は特に制限されない。半導体基板への密着性の観点から、錫含有粒子に対するニッケル含有粒子の質量比(ニッケル含有粒子/錫含有粒子)が0.3〜4.0であることが好ましく、0.4〜3.0であることがより好ましい。
更に、電極形成用組成物における、錫含有粒子の粒子径(D50%)とニッケル含有粒子の粒子径(D50%)の比は特に制限されない。形成されるSn−P−Oガラス相の均一性と半導体基板への密着性の観点から、錫含有粒子の粒子径(D50%)に対するニッケル含有粒子の粒子径(D50%)の比(ニッケル含有粒子径/錫含有粒子径)が、0.05〜20であることが好ましく、0.5〜10であることがより好ましい。
(銀粒子)
金属粒子は、銀粒子を更に含んでもよい。銀粒子を含むことで耐酸化性が向上し、形成される電極の抵抗率が低下する傾向にある。また、リン含有銅合金粒子と錫含有粒子との反応によって生成したSn−P−Oガラス相の中にAg粒子が析出することで、電極層の中のCu−Sn−Ni合金相及びCu−Sn合金相と半導体基板とのオーミックコンタクト性が向上する傾向にある。更に、太陽電池モジュールとした場合のはんだ接続性が向上する傾向にある。
銀粒子は、不可避的に混入する他の原子を含んでいてもよい。不可避的に混入する他の原子としては、Mn、Sb、Si、K、Na、Li、Ba、Sr、Ca、Mg、Be、Zn、Pb、Cd、Tl、V、Sn、Al、Zr、W、Mo、Ti、Co、Ni、Au等を挙げることができる。
また、銀粒子に含まれる不可避的に混入する他の原子の含有率は、例えば、銀粒子中に3.0質量%以下とすることができ、融点及び電極の低抵抗率化の観点から、1.0質量%以下であることが好ましい。但し、他の原子としてSn又はNiを含む場合には、銀粒子中に含まれるSn又はNiの含有率はそれぞれ1.0質量%未満である。
本発明において、銀粒子は1種単独で使用してもよく、又2種類以上を組み合わせて使用することもできる。本発明において「銀粒子の2種以上を組み合わせて用いる」とは、成分比率が異なるものの粒子径、粒度分布等の粒子形状が同じである2種以上の銀粒子を組み合わせて用いる場合、成分比率は同じであるものの粒子形状の異なる2種以上の銀粒子を組み合わせて用いる場合、成分比率及び粒子形状がともに異なる2種以上の銀粒子を組み合わせて用いる場合等が挙げられる。
銀粒子の粒子径としては特に制限はない。銀粒子の粒子径は、D50%として、例えば、0.4μm〜10μmであることが好ましく、1μm〜7μmであることがより好ましい。銀粒子のD50%を0.4μm以上とすることで、効果的に耐酸化性が向上する傾向にある。また、銀粒子のD50%を10μm以下とすることで、電極中における銀粒子とリン含有銅合金粒子、錫含有粒子及びニッケル含有粒子との接触面積が大きくなり、電極の抵抗率が効果的に低下する傾向にある。尚、銀粒子の粒子径(D50%)の測定方法は、リン含有銅合金粒子の粒子径の測定方法と同様である。
また、銀粒子の形状としては特に制限はなく、略球状、扁平状、ブロック状、板状、鱗片状等のいずれであってもよい。耐酸化性と電極の低抵抗率化の観点から、銀粒子の形状は、略球状、扁平状、又は板状であることが好ましい。
また、電極形成用組成物が銀粒子を含む場合、銀粒子の含有率としては、金属粒子の含有率を100.0質量%としたときの銀粒子の含有率が、例えば、0.1質量%〜10質量%であることが好ましく、0.5質量%〜8質量%であることがより好ましい。
[ガラス粒子]
電極形成用組成物は、ガラス粒子の少なくとも1種を含む。電極形成用組成物がガラス粒子を含むことにより、熱処理(焼成)において、形成した電極と半導体基板との密着性が向上する。また、特に太陽電池の受光面側の電極形成において、熱処理(焼成)時にいわゆるファイアースルーによって反射防止層を構成する窒化ケイ素が取り除かれ、電極と半導体基板とのオーミックコンタクトが形成される。
ガラス粒子は、半導体基板との密着性の向上及び電極の低抵抗率化の観点から、軟化点が650℃以下であって、結晶化開始温度が650℃を超えることが好ましい。尚、軟化点は、熱機械分析装置(TMA)を用いて通常の方法によって測定され、結晶化開始温度は、示差熱−熱重量分析装置(TG−DTA)を用いて通常の方法によって測定される。
電極形成用組成物を太陽電池の受光面側の電極の形成に用いる場合、ガラス粒子は、電極形成温度で軟化又は溶融し、窒化ケイ素で構成される反射防止層に接触して窒化ケイ素を酸化して二酸化ケイ素を生成し、この二酸化ケイ素を取り込むことで、反射防止層を除去可能なものであれば、当該技術分野において通常用いられるガラス粒子を特に制限なく用いることができる。
一般に電極形成用組成物に含まれるガラス粒子は、二酸化ケイ素を効率よく取り込み可能になるという観点から、鉛を含むことが好ましい。このような鉛を含むガラスとしては、特許第3050064号公報等に記載のものを挙げることができ、本発明においてもこれらを好適に使用することができる。また、環境に対する影響を考慮すると、鉛を実質的に含まない鉛フリーガラスを用いることが好ましい。鉛フリーガラスとしては、特開2006−313744号公報の段落番号0024〜0025に記載の鉛フリーガラス、特開2009−188281号公報等に記載の鉛フリーガラス等を挙げることができ、これらの鉛フリーガラスから適宜選択して本発明に適用することもまた好ましい。
電極形成用組成物を太陽電池の受光面側の電極以外の電極、例えば、裏面出力取出電極、バックコンタクト型太陽電池素子におけるスルーホール電極及び裏面電極の形成に用いる場合には、ガラス粒子は、軟化点が650℃以下であって、結晶化開始温度が650℃を超えることが好ましい。このようなガラス粒子であれば、鉛のようなファイアースルーに適する成分を含まないガラス粒子を用いることができる。
ガラス粒子を構成するガラス成分としては、例えば、酸化ケイ素(SiO又はSiO)、酸化リン(P)、酸化アルミニウム(Al)、酸化ホウ素(B)、酸化バナジウム(V)、酸化カリウム(KO)、酸化ビスマス(Bi)、酸化ナトリウム(NaO)、酸化リチウム(LiO)、酸化バリウム(BaO)、酸化ストロンチウム(SrO)、酸化カルシウム(CaO)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化ベリリウム(BeO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化鉛(PbO)、酸化カドミウム(CdO)、酸化スズ(SnO)、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化タングステン(WO)、酸化モリブデン(MoO)、酸化ランタン(La)、酸化ニオブ(Nb)、酸化タンタル(Ta)、酸化イットリウム(Y)、酸化チタン(TiO)、酸化ゲルマニウム(GeO)、酸化テルル(TeO)、酸化ルテチウム(Lu)、酸化アンチモン(Sb)、酸化銅(CuO)、酸化鉄(FeO、Fe又はFe)、酸化銀(AgO又はAgO)及び酸化マンガン(MnO)が挙げられる。
中でも、SiO、P、Al、B、V、Bi、ZnO及びPbOからなる群より選択される少なくとも1種を含むガラス粒子を用いることが好ましい。例えば、ガラス成分として、SiO、PbO、B、Bi及びAlからなる群より選択される少なくとも1種を含むガラス粒子を用いることが好ましい。このようなガラス粒子の場合には、軟化点が効果的に低下する傾向にある。更にこのようなガラス粒子は、リン含有銅合金粒子、錫含有粒子、ニッケル含有粒子及び必要に応じて含まれる銀粒子との濡れ性が向上するため、熱処理(焼成)過程での粒子間の焼結が進み、より抵抗率の低い電極が形成される傾向にある。
他方、電極の接触抵抗率を低下させる観点からは、例えば、五酸化二リンを含むガラス粒子(リン酸ガラス、Pガラス粒子)であることが好ましく、五酸化二リンに加えて五酸化二バナジウムを更に含むガラス粒子(P−Vガラス粒子)であることがより好ましい。五酸化二バナジウムを更に含むことで、耐酸化性が向上し、電極の抵抗率が低下する傾向にある。これは、例えば、五酸化二バナジウムを更に含むことでガラスの軟化点が低下することに起因すると考えることができる。五酸化二リン−五酸化二バナジウムガラス粒子(P−Vガラス粒子)を用いる場合、五酸化二バナジウムの含有率としては、例えば、ガラス粒子の質量中に1.0質量%以上であることが好ましく、1.0質量%〜70.0質量%であることがより好ましい。
ガラス粒子の粒子径としては特に制限はない。ガラス粒子のD50%は、例えば、0.5μm〜10μmであることが好ましく、0.8μm〜8μmであることがより好ましい。ガラス粒子のD50%を0.5μm以上とすることで、電極形成用組成物の調製における作業性が向上する傾向にある。ガラス粒子のD50%を10μm以下とすることで、電極形成用組成物中にガラス粒子が均一に分散し、熱処理(焼成)工程で効率よくファイアースルーを生じることができ、更に、形成される電極の半導体基板との密着性も向上する傾向にある。
尚、ガラス粒子のD50%の測定方法は、リン含有銅合金粒子の粒子径の測定方法と同様である。
ガラス粒子の形状としては特に制限はなく、略球状、扁平状、ブロック状、板状、鱗片状等のいずれであってもよい。耐酸化性と電極の低抵抗率化の観点から、ガラス粒子の形状は、略球状、扁平状又は板状であることが好ましい。
ガラス粒子の含有率としては電極形成用組成物の全質量中に、例えば、0.1質量%〜10.0質量%であることが好ましく、0.5質量%〜10.0質量%であることがより好ましく、1.0質量%〜9.5質量%であることが更に好ましい。かかる範囲の含有率でガラス粒子を含むことで、効果的に耐酸化性、電極の低抵抗率化、及び低接触抵抗化が達成される傾向にある。更に、リン含有銅合金粒子、錫含有粒子及びニッケル含有粒子間の反応が促進される傾向にある。
金属粒子の総質量を100.0質量%としたときのガラス粒子の含有率が、例えば、1.0質量%〜20.0質量%であることが好ましく、3.0質量%〜15.0質量%であることがより好ましい。かかる範囲の含有率でガラス粒子を含むことで、効果的に耐酸化性、電極の低抵抗率化、及び低接触抵抗化が達成される傾向にある。更に、リン含有銅合金粒子、錫含有粒子及びニッケル含有粒子間の反応が促進される傾向にある。
更に、リン含有銅合金粒子の粒子径(D50%)に対するガラス粒子の粒子径(D50%)の比(ガラス粒子粒子径/リン含有銅合金粒子径)が、例えば、0.05〜100であることが好ましく、0.1〜20であることがより好ましい。かかる粒子径の比とすることで、効果的に耐酸化性、電極の低抵抗率化、及び低接触抵抗化が達成される傾向にある。更に、リン含有銅合金粒子、錫含有粒子及びニッケル含有粒子間の反応が促進される傾向にある。
[溶剤及び樹脂]
電極形成用組成物は、樹脂の少なくとも一種を含んでいてもよい。また、電極形成用組成物は、溶剤の少なくとも一種を含んでいてもよい。これにより電極形成用組成物の液物性(粘度、表面張力等)を、半導体基板等に付与する際の付与方法に適した範囲内に調整することができる。
溶剤としては特に制限はない。溶剤としては、ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン等の炭化水素溶剤;ジクロロエチレン、ジクロロエタン、ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素溶剤;テトラヒドロフラン、フラン、テトラヒドロピラン、ピラン、ジオキサン、1,3−ジオキソラン、トリオキサン等の環状エーテル溶剤;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド溶剤;ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド等のスルホキシド溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン溶剤;エタノール、2−プロパノール、1−ブタノール、ジアセトンアルコール等のアルコール溶剤;2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノアセテート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノプロピオネート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノブチレート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート、2,2,4−トリエチル−1,3−ペンタンジオールモノアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等の多価アルコールのエステル溶剤;ブチルセロソルブ、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル等の多価アルコールのエーテル溶剤;テルピネン、テルピネオール、ミルセン、アロオシメン、リモネン、ジペンテン、ピネン、カルボン、オシメン、フェランドレン等のテルペン溶剤などが挙げられる。溶剤は、1種単独で用いても、又は2種以上を併用してもよい。
溶剤としては、電極形成用組成物を半導体基板に付与する際の付与性(塗布性及び印刷性)の観点から、例えば、多価アルコールのエステル溶剤、テルペン溶剤及び多価アルコールのエーテル溶剤からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、多価アルコールのエステル溶剤及びテルペン溶剤からなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましい。
樹脂としては、熱処理(焼成)によって熱分解され得る樹脂であれば、当該技術分野において通常用いられる樹脂を特に制限なく用いることができ、天然高分子化合物であっても合成高分子化合物であってもよい。具体的には、樹脂としては、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ニトロセルロース等のセルロース樹脂;ポリビニルアルコール化合物;ポリビニルピロリドン化合物;ポリアクリル酸エチル等のアクリル樹脂;酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体;ポリビニルブチラール等のブチラール樹脂;フェノール変性アルキド樹脂、ひまし油脂肪酸変性アルキド樹脂等のアルキド樹脂;エポキシ樹脂;フェノール樹脂;ロジンエステル樹脂などを挙げることができる。樹脂は、1種単独で用いても、又は2種以上を組み合わせてもよい。
樹脂は、熱処理(焼成)における消失性の観点から、セルロース樹脂、及びアクリル樹脂からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
樹脂の重量平均分子量は特に制限されない。中でも樹脂の重量平均分子量は、例えば、5000〜500000が好ましく、10000〜300000であることがより好ましい。樹脂の重量平均分子量が5000以上であると、電極形成用組成物の粘度の増加が抑制される傾向にある。これは例えば、リン含有銅合金粒子、錫含有粒子及びニッケル含有粒子に樹脂を吸着させたときの立体的な反発作用が充分となり、これら樹脂同士の凝集が抑制されるためと考えることができる。一方、樹脂の重量平均分子量が500000以下であると、樹脂同士が溶剤中で凝集することが抑制され、電極形成用組成物の粘度の増加が抑制される傾向にある。また、樹脂の重量平均分子量が500000以下であると、樹脂の燃焼温度が高くなることが抑制され、電極形成用組成物を熱処理(焼成)する際に樹脂が燃焼されず異物として残存することが抑制され、低抵抗な電極を形成することができる傾向にある。
重量平均分子量はGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)を用いて測定される分子量分布から標準ポリスチレンの検量線を使用して換算して求められる。検量線は、標準ポリスチレンの5サンプルセット(PStQuick MP−H、PStQuick B、東ソー(株))を用いて3次元で近似する。GPCの測定条件は、以下の通りである。
・装置:(ポンプ:L−2130型[(株)日立ハイテクノロジーズ])、(検出器:L−2490型RI[(株)日立ハイテクノロジーズ])、(カラムオーブン:L−2350[(株)日立ハイテクノロジーズ])
・カラム:Gelpack GL−R440 + Gelpack GL−R450 + Gelpack GL−R400M(計3本)(日立化成(株))
・カラムサイズ:10.7mm×300mm(内径)
・溶離液:テトラヒドロフラン
・試料濃度:10mg/2mL
・注入量:200μL
・流量:2.05mL/分
・測定温度:25℃
電極形成用組成物が溶剤及び樹脂を含む場合、溶剤及び樹脂の含有率は、電極形成用組成物が所望の液物性となるように、使用する溶剤及び樹脂の種類に応じて適宜選択することができる。例えば、溶剤及び樹脂の総含有率が、電極形成用組成物の全質量中、3.0質量%〜50.0質量%であることが好ましく、5.0質量%〜45.0質量%であることがより好ましく、7.0質量%〜40.0質量%であることが更に好ましい。
溶剤と樹脂の総含有率が上記範囲内であることにより、電極形成用組成物を半導体基板に付与する際の付与適性が良好になり、所望の幅及び高さを有する電極を容易に形成することができる傾向にある。
[フラックス]
電極形成用組成物は、フラックスの少なくとも1種を更に含有してもよい。フラックスを含むことでリン含有銅合金粒子の表面に酸化膜が形成された場合に該酸化膜を除去し、熱処理(焼成)中のリン含有銅合金粒子の還元反応を促進させることができる。また、フラックスを含むことで、熱処理(焼成)中の錫含有粒子の溶融も進むためリン含有銅合金粒子との反応が進み、結果として耐酸化性が向上し、形成される電極の抵抗率がより低下する傾向にある。更に、フラックスを含むことで、電極と半導体基板の密着性が向上する傾向にある。
フラックスとしては、リン含有銅合金粒子の表面に形成される酸化膜を除去可能でれば特に制限はない。フラックスとしては、錫含有粒子の溶融を促進するものであることが好ましい。具体的には、脂肪酸、ホウ酸化合物、フッ化化合物、ホウフッ化化合物等を好ましいフラックスとして挙げることができる。フラックスは、1種単独で用いてもよく、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
フラックスとしてより具体的には、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ソルビン酸、ステアロール酸、プロピオン酸、酸化ホウ素、ホウ酸カリウム、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸リチウム、ホウフッ化カリウム、ホウフッ化ナトリウム、ホウフッ化リチウム、酸性フッ化カリウム、酸性フッ化ナトリウム、酸性フッ化リチウム、フッ化カリウム、フッ化ナトリウム、フッ化リチウム等が挙げられる。
中でも、熱処理(焼成)時の耐熱性(フラックスが熱処理(焼成)の低温時に揮発しない特性)及びリン含有銅合金粒子の耐酸化性の補完の観点から、ホウ酸カリウム及びホウフッ化カリウムがより好ましいフラックスとして挙げられる。
電極形成用組成物がフラックスを含有する場合、フラックスの含有率としては、金属粒子の耐酸化性を効果的に発現させる観点及び熱処理(焼成)によってフラックスが除去されることで形成される空隙率の低減の観点から、例えば、電極形成用組成物の全質量中に、0.1質量%〜5.0質量%であることが好ましく、0.3質量%〜4.0質量%であることがより好ましく、0.5質量%〜3.5質量%であることが更に好ましく、0.7〜3.0質量%であることが特に好ましく、1.0質量%〜2.5質量%であることが極めて好ましい。
[その他の成分]
電極形成用組成物は、上述の成分に加え、必要に応じて、当該技術分野で通常用いられるその他の成分を更に含むことができる。その他の成分としては、可塑剤、分散剤、界面活性剤、無機結合剤、金属酸化物、セラミック、有機金属化合物等を挙げることができる。
[電極形成用組成物]
電極形成用組成物は、耐酸化性と電極の低抵抗率化の観点から、例えば、金属粒子の含有率が65.0質量%〜94.0質量%であって、ガラス粒子の含有率が0.1質量%〜10.0質量%であって、溶剤及び樹脂の総含有率が3.0質量%〜50.0質量%であることが好ましく、金属粒子の含有率が66.0質量%〜88.0質量%であって、ガラス粒子の含有率が0.5質量〜10.0質量%であって、溶剤及び樹脂の総含有率が5.0質量%〜45.0質量%であることがより好ましく、金属粒子の含有率が66.0質量%〜88.0質量%であって、ガラス粒子の含有率が1.0質量%〜9.5質量%であって、溶剤及び樹脂の総含有率が7.0質量%〜40.0質量%であることが更に好ましい。
<電極形成用組成物の製造方法>
電極形成用組成物の製造方法としては特に制限はない。リン含有銅合金粒子、錫含有粒子、ニッケル含有粒子、ガラス粒子、及び必要に応じて含まれる銀粒子、溶剤、樹脂等のその他の成分を、通常用いられる分散方法及び混合方法を用いて、分散及び混合することで製造することができる。
分散方法及び混合方法は特に制限されず、通常用いられる分散方法及び混合方法から適宜選択して適用することができる。
<電極形成用組成物を用いた電極及びその製造方法>
本発明の電極は、本発明の電極形成用組成物の熱処理物である。本発明の電極は、本発明の電極形成用組成物を用いて製造される。電極形成用組成物を用いて電極を製造する方法としては、電極形成用組成物を、電極を形成する領域に付与し、必要に応じて乾燥した後に、熱処理(焼成)することで所望の領域に電極を形成する方法が挙げられる。本発明の電極形成用組成物を用いることで、酸素の存在下(例えば、大気中)で熱処理(焼成)を行っても、抵抗率の低い電極を形成することができる。
具体的には、例えば、本発明の電極形成用組成物を用いて電極を形成する場合、電極形成用組成物は半導体基板上に所望の形状となるように付与され、必要に応じて乾燥した後に、熱処理(焼成)されることで、抵抗率の低い電極を所望の形状に形成することができる。更に、本発明の電極形成用組成物を用いて半導体基板上に形成された電極は、半導体基板との密着性に優れ、良好なオーミックコンタクトを達成することができる。
電極形成用組成物を付与する方法としては、スクリーン印刷法、インクジェット法、ディスペンサー法等を挙げることができ、生産性の観点から、スクリーン印刷法が好ましい。
電極形成用組成物をスクリーン印刷法によって半導体基板等に付与する場合、電極形成用組成物は、ペースト状であることが好ましい。ペースト状の電極形成用組成物は、20Pa・s〜1000Pa・sの範囲の粘度を有することが好ましい。尚、電極形成用組成物の粘度は、ブルックフィールドHBT粘度計を用いて25℃で測定される。
電極形成用組成物の半導体基板への付与量は、形成する電極の大きさ等に応じて適宜選択することができる。例えば、電極形成用組成物の付与量としては、2g/m〜10g/mとすることができ、4g/m〜8g/mであることが好ましい。
また、電極形成用組成物を用いて電極を形成する際の熱処理(焼成)条件としては、当該技術分野で通常用いられる熱処理条件を適用することができる。
一般に、熱処理(焼成)温度としては800℃〜900℃であるが、本発明の電極形成用組成物を用いる場合には、より低温での熱処理条件から一般的な熱処理条件までの広範な範囲で用いることができる。例えば、450℃〜900℃の広範な熱処理温度で良好な特性を有する電極を形成することができる。
また、熱処理時間は、熱処理温度等に応じて適宜選択することができ、例えば、1秒〜20秒とすることができる。
熱処理装置としては、上記温度に加熱できるものであれば適宜採用することができ、赤外線加熱炉、トンネル炉等を挙げることができる。赤外線加熱炉は、電気エネルギーを電磁波の形で加熱材料に投入し熱エネルギーに変換されるため高効率であり、また、短時間での急速加熱が可能である。更に、燃焼による生成物が少なく、また非接触加熱であるため、生成する電極の汚染を抑えることが可能である。トンネル炉は、試料を自動で連続的に入り口から出口へ搬送し、熱処理(焼成)するため、炉体の区分けと搬送スピードの制御によって、均一に熱処理(焼成)することが可能である。太陽電池素子の発電性能の観点からは、トンネル炉により熱処理することが好適である。
<太陽電池素子及びその製造方法>
太陽電池素子は、半導体基板と、前記半導体基板上に設けられる本発明の電極形成用組成物の熱処理物(焼成物)である電極と、を少なくとも有する。これにより、良好な特性を有する太陽電池素子が得られ、該太陽電池素子の生産性に優れる。
尚、本明細書において太陽電池素子とは、pn接合が形成された半導体基板と、半導体基板上に形成された電極とを有するものを意味する。
また、太陽電池素子の製造方法は、半導体基板上に本発明の電極形成用組成物を付与する工程と、前記電極形成用組成物を熱処理する工程と、を有する。
以下、太陽電池素子の具体例を、図面を参照しながら説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。代表的な太陽電池素子の一例として、図1、図2及び図3に、それぞれ、概略断面図、受光面の概略平面図及び裏面の概略平面図を示す。
図1の概略断面図に示されるように、半導体基板1の一方の面の表面付近にはn型拡散層2が形成され、n型拡散層2上に受光面電極(受光面集電用電極及び出力取出電極)4及び反射防止層3が形成されている。また他方の面の表面付近にはp型拡散層7が形成され、p型拡散層7上に裏面出力取出電極6及び裏面集電用電極5が形成されている。通常、太陽電池素子の半導体基板1には、単結晶シリコン、多結晶シリコン等が使用される。この半導体基板1には、ホウ素等が含有され、p型半導体を構成している。受光面側は太陽光の反射を抑制するために、NaOHとIPA(イソプロピルアルコール)とを含有するエッチング溶液を用いて、凹凸(テクスチャともいう、図示せず)が形成されている。その受光面側にはリン等がドーピングされ、n型拡散層2がサブミクロンオーダーの厚さで形成され、p型バルク部分との境界にpn接合部が形成されている。更に受光面側には、n型拡散層2上に窒化ケイ素等の反射防止層3が、PECVD(プラズマ励起化学気相成長)等によって厚さ90nm前後で設けられている。
次に、図2に概略を示す受光面側に設けられた受光面電極4、並びに図3に概略を示す裏面に形成される裏面集電用電極5及び裏面出力取出電極6の形成方法について説明する。
受光面電極4及び裏面出力取出電極6は、本発明の電極形成用組成物から形成される。また裏面集電用電極5は、ガラス粒子を含むアルミニウム電極形成用組成物から形成されている。受光面電極4、裏面集電用電極5及び裏面出力取出電極6を形成する第一の方法として、本発明の電極形成用組成物及びアルミニウム電極形成用組成物をスクリーン印刷等にて所望のパターンに付与した後、大気中450℃〜900℃程度で一括して熱処理(焼成)する方法が挙げられる。本発明の電極形成用組成物を用いることで、比較的低温で熱処理(焼成)しても、抵抗率及び接触抵抗率に優れる受光面電極4及び裏面出力取出電極6を形成することができる。
熱処理(焼成)の際に、受光面側では、受光面電極4を形成する本発明の電極形成用組成物に含まれるガラス粒子と、反射防止層3とが反応(ファイアースルー)して、受光面電極4とn型拡散層2が電気的に接続(オーミックコンタクト)される。
本発明においては、本発明の電極形成用組成物を用いて受光面電極4が形成されることで、導電性金属として銅を含みながら、銅の酸化が抑制され、低抵抗率の受光面電極4が、良好な生産性で形成される。
更に本発明においては、形成される電極は、Cu−Sn−Ni合金相(銅と錫とニッケルとを含有する合金相、不図示)とSn−P−Oガラス相(錫とリンと酸素とを含有するガラス相、不図示)とを含んで構成されることが好ましく、Sn−P−Oガラス相が受光面電極4又は裏面出力取出電極6と半導体基板1との間に配置されることがより好ましい。これにより銅と半導体基板との反応が抑制され、低抵抗率で密着性に優れる電極を形成することができる。
また、裏面側では、熱処理(焼成)の際に、裏面集電用電極5を形成するアルミニウム電極形成用組成物中のアルミニウムが半導体基板1の裏面に拡散して、p型拡散層7を形成することによって、半導体基板1と裏面集電用電極5との間にオーミックコンタクトを得ることができる。
受光面電極4、裏面集電用電極5及び裏面出力取出電極6を形成する第二の方法として、裏面集電用電極5を形成するアルミニウム電極形成用組成物を先に印刷し、乾燥後に大気中750℃〜900℃程度で熱処理(焼成)して裏面集電用電極5を形成した後に、本発明の電極形成用組成物を受光面側及び裏面側に印刷し、乾燥後に大気中450℃〜650℃程度で熱処理(焼成)して、受光面電極4及び裏面出力取出電極6を形成する方法が挙げられる。
この方法は、例えば以下の場合に有効である。すなわち、裏面集電用電極5を形成するアルミニウム電極形成用組成物を熱処理(焼成)する際に、650℃以下の熱処理(焼成)温度では、アルミニウム電極形成用組成物の組成によっては、アルミニウム粒子の焼結及び半導体基板1へのアルミニウム拡散量が不足して、p型拡散層7を充分に形成できない場合がある。この状態では裏面における半導体基板1と裏面集電用電極5、裏面出力取出電極6との間にオーミックコンタクトが十分に形成できなくなり、太陽電池素子としての発電性能が低下する場合がある。そこで、アルミニウム電極形成用組成物に最適な焼成温度(例えば、750℃〜900℃)で裏面集電用電極5を形成した後、本発明の電極形成用組成物を印刷し、乾燥後に比較的低温(450℃〜650℃)で熱処理(焼成)して、受光面電極4と裏面出力取出電極6を形成することが好ましい。
また本発明の別の態様であるいわゆるバックコンタクト型太陽電池素子に共通する裏面側電極構造の概略平面図を図4に、それぞれ別の態様のバックコンタクト型太陽電池素子である太陽電池素子の概略構造を示す斜視図を図5、図6及び図7にそれぞれ示す。尚、図5は、図4におけるAA断面における斜視図である。
図5の斜視図に示す構造を有する太陽電池素子の半導体基板1には、レーザードリル、エッチング等によって、受光面側及び裏面側の両面を貫通したスルーホールが形成されている。また受光面側には光入射効率を向上させるテクスチャ(図示せず)が形成されている。更に、受光面側にはn型化拡散処理によるn型拡散層2と、n型拡散層2上に反射防止層(図示せず)が形成されている。これらは従来の太陽電池素子と同一の工程により製造される。尚、n型拡散層2は、スルーホールの表面及びスルーホールの裏面側開口部の周りにも形成される。
次に、先に形成されたスルーホール内部に、本発明の電極形成用組成物が印刷法、インクジェット法等により充填され、更に受光面側にも本発明の電極形成用組成物がグリッド状に付与され、スルーホール電極9及び受光面集電用電極8を形成する組成物層が形成される。
ここで、充填用と印刷用に用いる電極形成用組成物は、粘度等の物性など、それぞれのプロセスに最適な組成のものを使用することが好ましいが、同じ組成の電極形成用組成物で充填及び印刷を一括で行ってもよい。
一方、裏面側には、キャリア再結合を防止するためのn型拡散層2及びp型拡散層7が形成される。ここでp型拡散層7を形成する不純物元素として、ボロン(B)、アルミニウム(Al)等が用いられる。このp型拡散層7は、例えば、Bを拡散源とした熱拡散処理が、反射防止層の形成前の工程において実施されることで形成されてもよく、不純物元素としてAlを用いる場合には、電極形成用組成物の付与工程において、反対面側にアルミニウム電極形成用組成物を付与し、熱処理(焼成)して形成されてもよい。
裏面側には図4の平面図で示すように、本発明の電極形成用組成物をそれぞれn型拡散層2上及びp型拡散層7上にストライプ状に印刷することによって、裏面電極10及び裏面電極11が形成される。ここで、アルミニウム電極形成用組成物を用いてp型拡散層7を形成する場合は、n型拡散層2側にのみ本発明の電極形成用組成物を用い、裏面電極を形成すればよい。
その後乾燥して大気中450℃〜900℃程度で熱処理(焼成)して、受光面集電用電極8、スルーホール電極9、裏面電極10及び裏面電極11が形成される。また先述したように、裏面電極の一方にアルミニウム電極を用いる場合は、アルミニウムの焼結性と裏面電極とp型拡散層7とのオーミックコンタクト性の観点から、先にアルミニウム電極形成用組成物を付与し、熱処理(焼成)することによって裏面電極の一方を形成し、その後、前記電極形成用組成物を付与し、充填し、熱処理(焼成)することで受光面集電用電極8とスルーホール電極9、及び裏面電極の他方を形成してもよい。
また、図6の斜視図に示す構造を有する太陽電池素子は、受光面集電用電極8を形成しないこと以外は、図5の斜視図に示す構造を有する太陽電池素子と同様にして製造することができる。すなわち図6の斜視図に示す構造を有する太陽電池素子において、本発明の電極形成用組成物は、スルーホール電極9、裏面電極10及び裏面電極11の形成に用いることができる。
また、図7の斜視図に示す構造を有する太陽電池素子は、半導体基板にn型シリコン基板12を用いたことと、スルーホールを形成しないこと以外は、図5の斜視図に示す構造を有する太陽電池素子と同様にして製造することができる。すなわち図7の斜視図に示す構造を有する太陽電池素子において、本発明の電極形成用組成物は、裏面電極10及び裏面電極11の形成に用いることができる。
尚、本発明の電極形成用組成物は、上記の太陽電池用電極の用途に限定されるものではなく、プラズマディスプレイの電極配線、シールド配線、セラミックスコンデンサ、アンテナ回路、各種センサー回路、半導体デバイスの放熱材料等の用途にも好適に使用することができる。これらの中でも特にシリコンを含む基板上に電極を形成する場合に好適に用いることができる。
<太陽電池>
太陽電池は、太陽電池素子の少なくとも1つを含み、太陽電池素子の電極上にタブ線等の配線材料が配置されて構成される。太陽電池は更に必要に応じて、タブ線を介して複数の太陽電池素子が連結され、更に封止材で封止されて構成されていてもよい。
配線材料及び封止材としては特に制限されず、当業界で通常用いられているものから適宜選択することができる。
前記配線材料としては、例えば、太陽電池用のはんだ被覆された銅線(タブ線)を好適に用いることができる。はんだの組成は、Sn−Pb系、Sn−Pb−Ag系、Sn−Ag−Cu系等を挙げることができ、環境に対する影響を考慮すると、実質的に鉛を含まないSn−Ag−Cu系はんだを用いることが好ましい。
前記タブ線の銅線の厚さについては特に制限されず、加熱加圧処理時の太陽電池素子との熱膨脹係数差又は接続信頼性及びタブ線自身の抵抗率の観点から、0.05mm〜0.5mmとすることができ、0.1mm〜0.5mmとすることが好ましい。
また前記タブ線の断面形状は特に制限されず、断面形状が長方形(平タブ)及び楕円形(丸タブ)のいずれも適用でき、断面形状が長方形(平タブ)を用いることが好ましい。
また前記タブ線の総厚みは特に制限されず、0.1mm〜0.7mmとすることが好ましく、0.15mm〜0.5mmとすることがより好ましい。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、特に断りのない限り、「部」及び「%」は質量基準である。
<実施例1>
(a)電極形成用組成物の調製
7質量%のリンを含むリン含有銅合金を常法により調製し、これを溶解して水アトマイズ法により粒子化した後、乾燥し、分級した。尚、分級には、日清エンジニアリング(株)、強制渦式分級機(ターボクラシファイア、TC−15)を用いた。分級した粒子を不活性ガスとブレンドして、脱酸素及び脱水処理を行い、7質量%のリンを含むリン含有銅合金粒子を作製した。尚、リン含有銅合金粒子の粒子径(D50%)は5.0μmであり、その形状は略球状であった。
二酸化ケイ素(SiO)3部、酸化鉛(PbO)60部、酸化ホウ素(B)18部、酸化ビスマス(Bi)5部、酸化アルミニウム(Al)5部、及び酸化亜鉛(ZnO)9部からなるガラス(以下、「G01」と略記することがある)を調製した。得られたガラスG01の軟化点は420℃、結晶化温度は650℃を超えていた。
得られたガラスG01を用いて、粒子径(D50%)が2.5μmであるガラスG01粒子を得た。またその形状は略球状であった。
尚、リン含有銅合金粒子及びガラス粒子の形状は、(株)日立ハイテクノロジーズ製TM−1000型走査型電子顕微鏡を用いて観察して判定した。リン含有銅合金粒子及びガラスの平均粒子径はベックマン・コールター(株)製LS 13 320型レーザー散乱回折法粒度分布測定装置(測定波長:632nm)を用いて算出した。ガラスの軟化点及び結晶化温度は(株)島津製作所製DTG−60H型示差熱−熱重量同時測定装置を用いて、示差熱(DTA)曲線により求めた。具体的には、DTA曲線において、吸熱部から軟化点を、発熱部から結晶化開始温度を見積もることができる。
上記で得られたリン含有銅合金粒子を57.0部、錫粒子(Sn;粒子径(D50%)は5.0μm;純度99.9%)を5.0部、ニッケル粒子(Ni;粒子径(D50%)は5.0μm;純度99.9%)を5.0部、ガラスG01粒子を8.0部、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(BC)を20.0部、及びポリアクリル酸エチル(EPA)を5.0部混ぜ合わせ、自動乳鉢混練装置を用いて混合してペースト化し、電極形成用組成物1を調製した。
(b)太陽電池素子の作製
受光面にn型拡散層、テクスチャ及び反射防止層(窒化ケイ素膜)が形成された厚さ190μmのp型半導体基板を用意し、125mm×125mmの大きさに切り出した。その受光面上に、上記で得られた電極形成用組成物1を図2に示すような電極パターンとなるようにスクリーン印刷法を用いて印刷した。電極のパターンは150μm幅のフィンガーラインと1.5mm幅のバスバーで構成され、熱処理(焼成)後の厚さが20μmとなるよう、印刷条件(スクリーン版のメッシュ、印刷速度及び印圧)を適宜調整した。これを150℃に加熱したオーブンの中に15分間入れ、溶剤を蒸散により取り除いた。
続いて、受光面とは反対側の面(以下、「裏面」ともいう)上に、電極形成用組成物1とアルミニウム電極形成用組成物(PVG Solutions社、PVG−AD−02)を、上記と同様にスクリーン印刷で、図3に示すような電極パターンとなるように印刷した。
電極形成用組成物1を用いて形成された裏面出力取出電極6のパターンは、2本のラインで構成され、1本のラインの大きさが123mm×5mmとなるように印刷した。尚、熱処理(焼成)後の裏面出力取出電極6の厚さが15μmとなるよう、印刷条件(スクリーン版のメッシュ、印刷速度及び印圧)を適宜調整した。またアルミニウム電極形成用組成物を、裏面出力取出電極6以外の全面に印刷して裏面集電用電極5のパターンを形成した。また熱処理(焼成)後の裏面集電用電極5の厚さが30μmとなるように、アルミニウム電極形成用組成物の印刷条件を適宜調整した。これを150℃に加熱したオーブンの中に15分間いれ、溶剤を蒸散により取り除いた。
続いてトンネル炉((株)ノリタケカンパニーリミテド、1列搬送W/Bトンネル炉)を用いて大気雰囲気下、最高温度800℃で保持時間10秒の熱処理(焼成)を行って、所望の電極が形成された太陽電池素子1を作製した。
<実施例2>
実施例1において、電極形成時の熱処理(焼成)条件を最高温度800℃で10秒間から、最高温度850℃で8秒間に変更したこと以外は、実施例1と同様にして太陽電池素子2を作製した。
<実施例3>
実施例1において、リン含有銅合金粒子のリン含有量を7質量%から6質量%に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、電極形成用組成物3を調製し、太陽電池素子3を作製した。
<実施例4>
実施例1において、リン含有銅合金粒子のリン含有量を7質量%から8質量%に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、電極形成用組成物4を調製し、太陽電池素子4を作製した。
<実施例5>
実施例1において、リン含有銅合金粒子の粒子径(D50%)を5.0μmから1.5μmに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、電極形成用組成物5を調製し、太陽電池素子5を作製した。
<実施例6>
実施例1において、リン含有銅合金粒子、錫含有粒子及びニッケル含有粒子の含有量を変更して、リン含有銅合金粒子の含有量を50.2部、錫含有粒子の含有量を8.4部、ニッケル含有粒子を8.4部としたこと以外は、実施例1と同様にして、電極形成用組成物6を調製し、太陽電池素子6を作製した。
<実施例7>
実施例1において、リン含有銅合金粒子、錫含有粒子及びニッケル含有粒子の含有量を変更して、リン含有銅合金粒子の含有量を43.5部、錫含有粒子の含有量を12.1部、ニッケル含有粒子を11.4部としたこと以外は、実施例1と同様にして、電極形成用組成物7を調製し、太陽電池素子7を作製した。
<実施例8>
実施例1において、錫含有粒子として錫粒子(Sn)の代わりにSn−4Ag−0.5Cu(Snに4質量%のAgと0.5質量%のCuを含む合金)からなる錫合金粒子を用い、その粒子径(D50%)を8.0μmとしたこと以外は、実施例1と同様にして、電極形成用組成物8を調製し、太陽電池素子8を作製した。
<実施例9>
実施例7において、ニッケル含有粒子としてニッケル粒子(Ni)の代わりにNi−60Cu(Niに60質量%のCuを含む合金)からなるニッケル合金粒子を用い、その粒子径(D50%)を7.0μmとしたこと以外は、実施例1と同様にして、電極形成用組成物9を調製し、太陽電池素子9を作製した。
<実施例10>
実施例1において、ニッケル含有粒子(Ni)の粒子径(D50%)を5μmから10.0μmに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、電極形成用組成物10を調製し、太陽電池素子10を作製した。
<実施例11>
実施例1において、電極形成用組成物に銀粒子(Ag;粒子径(D50%)3.0μm;純度99.5%)を加えた。具体的には各成分の含有量を、リン含有銅合金粒子を51.2部、錫粒子を4.5部、ニッケル粒子を4.5部、銀粒子を6.7部、ガラスG01粒子を8.0部、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(BC)を20.0部、ポリアクリル酸エチル(EPA)を5.0部と変更したこと以外は、実施例1と同様にして、電極形成用組成物11を調製し、太陽電池素子11を作製した。
<実施例12>
実施例1において、ガラスG01粒子の含有量を変更した。具体的には各成分の含有量を、リン含有銅合金粒子を60.1部、錫粒子を5.3部、ニッケル粒子を5.3部、ガラスG01粒子を4.2部、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(BC)を20.0部、ポリアクリル酸エチル(EPA)を5.0部と変更したこと以外は、実施例1と同様にして、電極形成用組成物12を調製し、太陽電池素子12を作製した。
<実施例13>
実施例1において、ガラス粒子の組成をガラスG01から、以下に示すガラスG02に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、電極形成用組成物13を調製し、太陽電池素子13を作製した。
ガラスG02は、酸化バナジウム(V)45部、酸化リン(P)24.2部、酸化バリウム(BaO)20.8部、酸化アンチモン(Sb)5部、及び酸化タングステン(WO)5部からなるように調製し、これを粉砕して、粒子径(D50%)が2.5μmであるガラスG02粒子を得た。尚、ガラスG02の軟化点は492℃で、結晶化開始温度は650℃を超えていた。更にガラスG02粒子の形状は略球状であった。
<実施例14>
実施例1において、溶剤をジエチレングリコールモノブチルエーテルからテルピネオール(Ter)に、また樹脂をポリアクリル酸エチルからエチルセルロース(EC)にそれぞれ変更した。具体的には各成分の含有量を、リン含有銅合金粒子を65.3部、錫粒子を5.8部、ニッケル粒子を5.8部、ガラスG01粒子を9.2部、テルピネオール(Ter)を13.3部、エチルセルロース(EC)を0.7部と変更したこと以外は、実施例1と同様にして、電極形成用組成物14を調製し、太陽電池素子14を作製した。
<実施例15〜17>
実施例1において、リン含有銅合金粒子の銅含有率、リン含有量、粒子径(D50%)及びその含有量、錫含有粒子の組成、粒子径(D50%)及びその含有量、ニッケル含有粒子の組成、粒子径(D50%)及びその含有量、銀粒子の含有量、ガラス粒子の種類及びその含有量、溶剤の種類及びその含有量、樹脂の種類及びその含有量を表1及び表2に示したように変更したこと以外は、実施例1と同様にして電極形成用組成物15〜17をそれぞれ調製した。
次いで、得られた電極形成用組成物15〜17をそれぞれ用いるように変更したこと以外は、実施例1と同様にして所望の電極が形成された太陽電池素子15〜17をそれぞれ作製した。
<実施例18>
上記で得られた電極形成用組成物1を用いて、図5に示したような構造を有する太陽電池素子18を作製した。具体的な作製方法を以下に示す。まずp型シリコン基板について、レーザードリルによって、受光面側及び裏面側の両面を貫通した直径100μmのスルーホールを形成した。また受光面側にはテクスチャ、n型拡散層、及び反射防止層を順次形成した。尚、n型拡散層は、スルーホール内部、及び裏面の一部にもそれぞれ形成した。次に、先に形成されたスルーホール内部に電極形成用組成物1をインクジェット法により充填し、更に受光面側にもグリッド状に印刷した。
一方、裏面側には、電極形成用組成物1を用いて、図4に示すようなパターンでストライプ状に印刷し、スルーホールの下に電極形成用組成物層が印刷されるように形成した。またアルミニウム電極形成用組成物を電極形成用組成物層以外の領域に印刷してアルミニウム電極形成用組成物層を形成した。これをトンネル炉(ノリタケカンパニーリミテド、1列搬送W/Bトンネル炉)を用いて大気雰囲気下、最高温度800℃で保持時間10秒の熱処理(焼成)を行って、所望の電極が形成された太陽電池素子18を作製した。
このときアルミニウム電極形成用組成物層を形成した部分については、熱処理(焼成)によりp型シリコン基板内にアルミニウムが拡散することで、p型拡散層が形成されていた。
<実施例19>
実施例18において、電極形成用組成物1から上記で得られた電極形成用組成物8に変更して、受光面集電用電極、スルーホール電極、裏面電極を形成したこと以外は、実施例18と同様にして、太陽電池素子19を作製した。
<実施例20>
上記で得られた電極形成用組成物1を用いて、図6に示したような構造を有する太陽電池素子20を作製した。作製方法は、受光面電極を形成しないこと以外は、実施例18と同様にして、太陽電池素子20を作製した。尚、熱処理(焼成)条件は最高温度800℃で保持時間10秒とした。
<実施例21>
実施例20において、電極形成用組成物1から電極形成用組成物21に変更したこと以外は、実施例20と同様にして、太陽電池素子21を作製した。具体的には電極形成用組成物に含まれるガラス粒子をG01粒子からガラスG03粒子に変更した。
尚、ガラスG03は、二酸化ケイ素(SiO)13部、酸化ホウ素(B)58部、酸化亜鉛(ZnO)38部、酸化アルミニウム(Al)12部、及び酸化バリウム(BaO)12部からなるように調製し、これを粉砕して、粒子径(D50%)が2.5μmであるガラスG03粒子を得た。尚、ガラスG03の軟化点は、583℃、結晶化温度は650℃を超えていた。更にガラスG03粒子の形状は略球状であった。
<実施例22>
上記で得られた電極形成用組成物1を用いて、図7に示したような構造を有する太陽電池素子22を作製した。作製方法は、ベースとなる基板にn型シリコン基板を用いたことと、受光面電極、スルーホール及びスルーホール電極を形成しないこと以外は、実施例18と同様である。尚、熱処理(焼成)条件は最高温度800℃で保持時間10秒とした。
<実施例23>
実施例22において、ガラス粒子をガラスG01粒子からガラスG03粒子に変更したこと以外は、実施例22と同様にして、電極形成用組成物23を調製した。これを用いて実施例22と同様にして、図7に示したような構造を有する太陽電池素子23を作製した。
<比較例1>
実施例1における電極形成用組成物の調製において、リン含有銅合金粒子、錫含有粒子及びニッケル含有粒子を用いずに、表1に示した組成となるように各成分を変更したこと以外は、実施例1と同様にして電極形成用組成物C1を調製した。
リン含有銅合金粒子、錫含有粒子及びニッケル粒子を含まない電極形成用組成物C1を用いたこと以外は、実施例1と同様にして太陽電池素子C1を作製した。
<比較例2>
リン含有銅合金粒子の代わりに、銅粒子(純度99.5質量%)を用い、表1〜表2に示す組成の電極形成用組成物C2を調製した。
電極形成用組成物C2を用いたこと以外は、比較例1と同様にして、太陽電池素子C2を作製した。
<比較例3>
実施例1における電極形成用組成物の調製において、錫含有粒子及びニッケル粒子を用いずに、表1及び表2に示す組成の電極形成用組成物C3を調製した。
電極形成用組成物C3を用いたこと以外は、比較例1と同様にして太陽電池素子C3をそれぞれ作製した。
<比較例4>
実施例1における電極形成用組成物の調製において、リン含有銅合金粒子とニッケル含有粒子を用い、錫含有粒子を用いずに、表1及び表2に示す組成の電極形成用組成物C4を調製した。
電極形成用組成物C4を用いたこと以外は、比較例1と同様にして太陽電池素子C4を作製した。
<比較例5>
実施例1における電極形成用組成物の調製において、リン含有銅合金粒子と錫含有粒子と、ニッケル含有粒子の割合を表1及び表2に示すように配合し、電極形成用組成物C5を調製した。
電極形成用組成物C5を用いたこと以外は、比較例1と同様にして太陽電池素子C5を作製した。
<比較例6>
実施例18において、電極形成用組成物1の代わりに上記で得られた電極形成用組成物C1に変更して、受光面集電用電極、スルーホール電極、裏面電極を形成したこと以外は、実施例18と同様にして、太陽電池素子C6を作製した。
<比較例7>
実施例20において、電極形成用組成物1の代わりに上記で得られた電極形成用組成物C1に変更したこと以外は、実施例20と同様にして太陽電池素子C7を作製した。
<比較例8>
実施例22において、電極形成用組成物1の代わりに上記で得られた電極形成用組成物C1に変更したこと以外は、実施例22と同様にして太陽電池素子C8を作製した。
<評価>
作製した太陽電池素子の評価は、擬似太陽光として(株)ワコム電創、WXS−155S−10と、電流―電圧(I−V)評価測定器としてI−V CURVE TRACER MP−160(EKO INSTRUMENT社製の測定装置とを組み合わせて行った。太陽電池としての発電性能を示すJsc(短絡電流)、Voc(開放電圧)、F.F.(フィルファクター、形状因子)及びEff(変換効率)は、それぞれJIS−C−8912:2011、JIS−C−8913:2005及びJIS−C−8914:2005に準拠して測定を行うことで得られたものである。
両面電極構造の太陽電池素子において得られた各測定値は、比較例1(太陽電池素子C1)の測定値を100.0とした相対値に換算して表4に示した。尚、比較例2においては、形成された電極の抵抗率が大きくなり、評価不能であった。その理由は、銅粒子の酸化によるものと考えられる。
次に調製した電極形成用組成物を熱処理(焼成)して形成した裏面出力取出電極の断面を走査型電子顕微鏡Miniscope TM−1000((株)日立製作所製)を用いて、加速電圧15kVで観察し、電極内のCu−Sn合金相、Cu−Sn−Ni合金相、Sn−P−Oガラス相の有無及びSn−P−Oガラス相の形成部位を調査した。その結果も併せて表4に示した。なお、比較例1の電極についての電極内のCu−Sn−Ni合金相及びSn−P−Oガラス相の有無は、電極形成用組成物C1において金属粒子として銀粒子のみを用いたことから調査しなかった。

表4から、比較例3〜5においては、比較例1よりも発電性能が劣化したことが分かる。これは例えば以下のように考えられる。比較例3及び比較例4においては、錫含有粒子が含まれていないために、Sn−P−Oガラス相が形成せず、熱処理(焼成)中にシリコン基板と銅の相互拡散が起こり、基板内のpn接合特性が劣化したことが考えられる。また比較例5においては、金属粒子の含有率を100.0質量%としたときの銅含有率が低いために、熱処理(焼成)中に低抵抗の導電層が効果的に形成されずに、太陽電池素子としての性能が低下したものと考えられる。
一方、実施例1〜17で作製した太陽電池素子の発電性能は、比較例1の太陽電池素子の測定値と比べて、ほぼ同等であった。また組織観察の結果、受光面電極内にはCu−Sn−Ni合金相とSn−P−Oガラス相が存在し、Sn−P−Oガラス相がCu−Sn−Ni合金相とシリコン基板との間に形成されていた。
続いて、バックコンタクト型の太陽電池素子のうち、図5の構造を有するものについて、両面電極構造の太陽電池素子と同様の評価方法を実施し、得られた各測定値を、比較例6の測定値を100.0とした相対値に換算して表5に示した。更に裏面出力取出電極の断面を観察した結果も併せて表5に示した。
表5から、実施例18及び実施例19で作製した太陽電池素子は、比較例6の太陽電池素子とほぼ同等の発電性能を示したことが分かる。また組織観察の結果、受光面電極内にはCu−Sn−Ni合金相とSn−P−Oガラス相が存在し、Sn−P−Oガラス相がCu−Sn−Ni合金相とシリコン基板との間に形成されていた。尚、比較例6に係る電極についての電極内のCu−Sn−Ni合金相及びSn−P−Oガラス相の有無は、電極形成用組成物C1において金属粒子として銀粒子のみを用いたことから調査しなかった。
続いて、バックコンタクト型の太陽電池素子のうち、図6の構造を有するものについて、両面電極構造の太陽電池素子と同様の評価方法を実施し、得られた各測定値を、比較例7の測定値を100.0とした相対値に換算して表6に示した。更に裏面電極のうち、調製した電極形成用組成物を熱処理(焼成)して形成した電極の断面を観察した結果も併せて表6に示した。
表6から、実施例20及び実施例21で作製した太陽電池素子は、比較例7の太陽電池素子とほぼ同等の発電性能を示したことが分かる。また組織観察の結果、裏面電極のうち、作製した電極形成用組成物を熱処理(焼成)して形成した電極内にはCu−Sn−Ni合金相とSn−P−Oガラス相が存在し、Sn−P−Oガラス相がCu−Sn−Ni合金相とシリコン基板との間に形成されていた。
続いて、バックコンタクト型の太陽電池素子のうち、図7の構造を有するものについて、両面電極構造の太陽電池素子と同様の評価方法を実施し、得られた各測定値を、比較例8の測定値を100.0とした相対値に換算して表7に示した。更に裏面電極のうち、調製した電極形成用組成物を熱処理(焼成)して形成した電極の断面を観察した結果も併せて表7に示した。
表7から、実施例22及び実施例23で作製した太陽電池素子は、比較例8の太陽電池素子とほぼ同等の発電性能を示したことが分かる。また組織観察の結果、裏面電極のうち、作製した電極形成用組成物を熱処理(焼成)して形成した電極内にはCu−Sn−Ni合金相とSn−P−Oガラス相が存在し、Sn−P−Oガラス相がCu−Sn−Ni合金相とシリコン基板との間に形成されていた。尚、比較例8に係る電極についての電極内のCu−Sn−Ni合金相及びSn−P−Oガラス相の有無は、電極形成用組成物C1において金属粒子として銀粒子のみを用いたことから調査しなかった。
1 半導体基板
2 n型拡散層
3 反射防止層
4 受光面電極
5 裏面集電用電極
6 裏面出力取出電極
7 p型拡散層
8 受光面集電用電極
9 スルーホール電極
10 裏面電極
11 裏面電極
12 n型シリコン基板

Claims (20)

  1. リン含有銅合金粒子、錫含有粒子及びニッケル含有粒子を含む金属粒子と、ガラス粒子と、を含有し、前記金属粒子の含有率を100.0質量%としたときの銅含有率が60.0質量%〜95.0質量%である電極形成用組成物。
  2. 前記リン含有銅合金粒子のリン含有率が、6.0質量%〜8.0質量%である請求項1に記載の電極形成用組成物。
  3. 前記錫含有粒子は、錫粒子及び錫含有率が1.0質量%以上である錫合金粒子からなる群より選択される少なくとも1種である請求項1又は請求項2に記載の電極形成用組成物。
  4. 前記ニッケル含有粒子は、ニッケル粒子及びニッケル含有率が1.0質量%以上であるニッケル合金粒子からなる群より選択される少なくとも1種である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の電極形成用組成物。
  5. 前記ガラス粒子は、軟化点が650℃以下であり、結晶化開始温度が650℃を超える請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の電極形成用組成物。
  6. 前記金属粒子の含有率を100.0質量%としたときの前記錫含有粒子の含有率が、5.0質量%〜70.0質量%である請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の電極形成用組成物。
  7. 前記金属粒子の含有率を100.0質量%としたときの前記ニッケル含有粒子の含有率が、5.0質量%〜60.0質量%である請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の電極形成用組成物。
  8. 前記金属粒子が、銀粒子を更に含む請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の電極形成用組成物。
  9. 前記金属粒子の含有率を100.0質量%としたときの前記銀粒子の含有率が、0.1質量%〜10.0質量%である請求項8に記載の電極形成用組成物。
  10. 前記金属粒子の含有率が、65.0質量%〜94.0質量%である請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載の電極形成用組成物。
  11. 前記ガラス粒子の含有率が、0.1質量%〜10.0質量%である請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載の電極形成用組成物。
  12. 更に、樹脂を含む請求項1〜請求項11のいずれか1項に記載の電極形成用組成物。
  13. 更に、溶剤を含む請求項1〜請求項12のいずれか1項に記載の電極形成用組成物。
  14. 更に、樹脂及び溶剤の少なくとも一方を含み、前記溶剤及び前記樹脂の総含有率が3.0質量%〜50.0質量%である請求項1〜請求項11のいずれか1項に記載の電極形成用組成物。
  15. 請求項1〜請求項14のいずれか1項に記載の電極形成用組成物の熱処理物である電極。
  16. 半導体基板と、前記半導体基板上に設けられる請求項1〜請求項14のいずれか1項に記載の電極形成用組成物の熱処理物である電極と、を有する太陽電池素子。
  17. 前記電極は、銅と錫とニッケルとを含有する合金相及び錫とリンと酸素とを含有するガラス相を含む請求項16に記載の太陽電池素子。
  18. 前記錫とリンと酸素とを含有するガラス相の少なくとも一部は、前記銅と錫とニッケルとを含有する合金相と前記半導体基板との間に配置されている請求項17に記載の太陽電池素子。
  19. 半導体基板上に請求項1〜請求項14のいずれか1項に記載の電極形成用組成物を付与する工程と、
    前記電極形成用組成物を熱処理する工程と、
    を有する太陽電池素子の製造方法。
  20. 請求項16〜請求項18のいずれか1項に記載の太陽電池素子と、前記太陽電池素子の電極上に配置される配線材料と、を有する太陽電池。
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