以下、適宜図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、以下に説明される実施形態は本発明が具体化された一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で実施形態を適宜変更できることは言うまでもない。
また、以下の説明では、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に挿入されて装着される方向が挿入方向51(第1方向の一例)と定義される。また、挿入方向51と反対方向であって、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110から脱抜される方向が脱抜方向52(第2方向の一例)と定義される。本実施形態において、挿入方向51及び脱抜方向52は水平方向であるが、挿入方向51及び脱抜方向52は水平方向でなくてもよい。
また、挿入方向51及び脱抜方向52に直交する方向が上方向54(第3方向の一例)と定義される。また、上方向54と反対方向が下方向53(第4方向の一例)と定義される。本実施形態において、第3方向としての上方向54が鉛直上方であり、第4方向としての下方向53が鉛直下方であるが、第3方向及び第4方向は鉛直方向でなくてもよい。
また、挿入方向51及び下方向53と直交する方向が、右方向55(第5方向の一例)及び左方向56(第6方向の一例)と定義される。より具体的には、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110の装着完了された状態、つまりインクカートリッジ30が装着姿勢(使用姿勢)にある状態において、インクカートリッジ30を挿入方向51に視た場合において、右に延びる方向が右方向55と定義され、左に延びる方向が左方向56と定義される。本実施形態において、第5方向としての右方向55及び第6方向としての左方向56は水平方向であるが、第5方向及び第6方向は水平方向でなくてもよい。
[プリンタ10の概要]
図1に示されるように、プリンタ10(システムの一例)は、インクジェット記録方式に基づいて、記録用紙に対してインク滴を選択的に吐出することにより画像を記録するものである。プリンタ10は、インク供給装置100を備えている。
インク供給装置100は、記録ヘッド21へインクを供給するものである。インク供給装置100は、カートリッジ装着部110(装着部の一例)と、インクカートリッジ30(消費材カートリッジの一例)と、記録ヘッド21(消費部の一例)と、プリンタ10の動作全般を制御する制御部1とを備えている。カートリッジ装着部110には、インクカートリッジ30が装着され得る。カートリッジ装着部110には、その一面に開口112が設けられている。インクカートリッジ30は、開口112を介してカートリッジ装着部110に挿入され、或いはカートリッジ装着部110から抜き出される。なお、図1においては、カートリッジ装着部110にインクカートリッジ30が装着された状態が示されている。
インクカートリッジ30には、プリンタ10で使用可能なインク(消費材の一例)が貯留されている。つまり、インクカートリッジ30は、インクを保持する。カートリッジ装着部110に装着された状態において、インクカートリッジ30と記録ヘッド21とがインクチューブ20で接続されている。記録ヘッド21にはサブタンク28が設けられている。サブタンク28は、インクカートリッジ30からインクチューブ20を通じて供給されるインクを一時的に貯留する。記録ヘッド21は、インクジェット記録方式によって、サブタンク28から供給されたインクをノズル29から選択的に吐出する。
プリンタ10は、給紙トレイ15と、給紙ローラ23と、搬送ローラ対25と、プラテン26と、排出ローラ対22と、排紙トレイ16とを備えている。給紙トレイ15から給紙ローラ23によって搬送路24へ給送された記録用紙は、搬送ローラ対25によってプラテン26上へ搬送される。記録ヘッド21は、プラテン26上を通過する記録用紙に対してインクを選択的に吐出する。これにより、画像が記録用紙に記録される。また、これにより、カートリッジ装着部110に装着完了されたインクカートリッジ30が保持するインクが、記録ヘッド21によって消費される。プラテン26を通過した記録用紙は、排出ローラ対22によって、搬送路24の最下流側に設けられた排紙トレイ16に排出される。
[インクカートリッジ30]
図2及び図3に示されるインクカートリッジ30はインクが貯留される容器である。インクカートリッジ30の内部に形成されている空間がインクを貯留するインク室36である。インク室36は、本体31の筐体によって形成されているが、例えば、インクカートリッジ30の外観を形成している本体31の筐体とは別の部材である内部フレームなどによって形成されていてもよい。
図2及び図3に示されるインクカートリッジ30の姿勢は、インクカートリッジ30が装着姿勢にあるときの姿勢である。すなわち、インクカートリッジ30は、後述するように、前壁91と、後壁42と、上壁39、92と、下壁41と、側壁37と、側壁38とを備えるが、図2及び図3に示されているインクカートリッジ30の姿勢は、後壁41から前壁91に向かう方向が挿入方向51に一致し前壁91から後壁42に向かう方向が脱抜方向52に一致し、上壁39、92から下壁41に向かう方向が下方向53に一致し、下壁41から上壁39、92に向かう方向が上方向54に一致し、側壁38から側壁37に向かう方向が右方向55に一致し、側壁37から側壁38に向かう方向が左方向56に一致する姿勢である。また、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に挿入、装着されるときに、前壁91の外表面は挿入方向51を向き、後壁42の外表面は脱抜方向を向き、下壁41の外表面は下方向53を向き、上壁39、92の外表面は上方向54を向き、側壁37の外表面は右方向55を向き、側壁38の外表面は左方向56を向く。
インクカートリッジ30は、平面又は曲面で構成される立体形状、例えば、略直方体形状の本体31及びカバー90(可動部材の一例)を有する。本体31にカバー90が組み付けられて、インクカートリッジ30の外形が構成されている。インクカートリッジ30は、全体として、右方向55及び左方向56に細く、上方向54及び下方向53と挿入方向51及び脱抜方向52とが右方向55及び左方向56よりも長い扁平形状である。
[本体31]
図2及び図3に示されるように、本体31は、前壁40、後壁42、側壁37、側壁38、上壁39、及び下壁41を備えている。
前壁40は、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110へ挿入、装着されるときに、挿入方向51を向く壁である。後壁42は、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110へ挿入、装着されるときに脱抜方向52を向く壁である。前壁40と後壁42とは、挿入方向51及び脱抜方向52において互いに隔てて配置されている。
側壁37は、前壁40及び後壁42の右端同士を接続する。側壁38は、前壁40及び後壁42の左端同士を接続する。上壁39は、前壁40及び後壁42の上端同士を接続する。下壁41は、前壁40及び後壁42の下端同士を接続する。
インク室36は、前壁40、後壁42、側壁37、側壁38、上壁39、及び下壁41によって区画されている。つまり、本体31は、インク室36にインクを保持する。
本体31の前壁40の下部に、インク供給部34が設けられている。インク供給部34は、円筒形状の外形をなしており、前壁40から挿入方向51へ突出している。インク供給部34の突出端にはインク供給口71が形成されている。インク供給部34のインク供給口71は、カバー90の開口97を通じて外部へ露出され得る。
インク供給部34の内部空間には、挿入方向51及び脱抜方向52に延びてインク供給口71とインク室36とをつなぐインク流路72が形成されている。インク流路72は、一端がインク供給口71において本体31の外部に開口され、インク供給口71から本体31の内部に渡って脱抜方向52に延設されている。インク供給口71は、コイルバネ73によってインク供給口71に付勢されたインク供給バルブ70によって開閉可能に構成されている。インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に装着されると、カートリッジ装着部110に設けられたインクニードル117(図4参照)がインク供給口71に挿入され、コイルバネ73の付勢力に抗してインク供給バルブ70をインク供給口71から離間させる。これにより、インク室36内のインクは、インク流路72を通じてカートリッジ装着部110に設けられたインクニードル117に流出する。
なお、インク供給口71は、必ずしもインク供給バルブ70によって開閉可能な構成に限定されず、例えば、インク供給口71がフィルムなどで閉塞されており、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に装着されると、インクニードル117がフィルムを突き破ることによりインク供給口71が開かれる構成であってもよい。また、本実施形態では示されていないが、本体31には、負圧に維持された状態のインク室36の気圧を外気圧とするための大気連通口が設けられていてもよい。
本体31の上壁39における挿入方向51及び脱抜方向52の中央付近から後壁42に渡って、係止部45が形成されている。係止部45は、上壁39において挿入方向51及び脱抜方向52に延びる溝を有する。係止部45は、溝の挿入方向51の端部において、インクカートリッジ30の脱抜方向52を向く係止面46を有している。係止面46には、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に装着された状態で、後述される係合部材145(図4参照、ロック部の一例)が係合する。係止面46は、インクカートリッジ30を脱抜方向52に押し出させる付勢力とは反対向きの外力、すなわち本実施形態では係合部材145からの力を受けるものである。溝の脱抜方向52の端部は、本体31の外部に開口している。
本体31の係止部45には、回動部材80が設けられている。回動部材80は、例えば、屈曲された平板形状をなしており、その長手方向が挿入方向51及び脱抜方向52に沿うように配置されている。回動部材80は、その屈曲された位置に軸83を有する。回動部材80は、軸83周りに回動可能である。回動部材80の先端部81は、軸83から挿入方向51に延出されている。回動部材80の後端部82は、軸83から脱抜方向52に延出されている。
先端部81が最も上方に位置するまで回動部材80が回動すると、先端部81は、本体31の上壁39よりも上方に突出する。回動部材80の先端部81が下方へ押し下げられることにより、回動部材80は、図3における時計回りへ回動する。回動部材80が最も時計回りに回動された状態において、先端部81は、係止面46の下端付近に位置する。なお、回動部材80は本体31と一体にされていてもよい。また、回動部材80は、コイルバネによって時計回りに付勢されていてもよいし、自重により時計回り、若しくは反時計回りに回動するものであってもよい。
[カバー90]
図2及び図3に示されるように、カバー90は、本体31を構成する外表面の少なくとも一部を覆う形状、例えば、本体31の前壁40と、側壁37、側壁38、上壁39、及び下壁41の一部を外から覆うことが可能な薄平な容器形状である。カバー90は、本体31の前壁40の全てを覆うことが可能な幅(右方向55及び左方向56の長さ)及び高さ(上方向54及び下方向53の長さ)と、側壁37、側壁38、上壁39及び下壁41の一部を覆うことが可能な奥行き(挿入方向51及び脱抜方向52の長さ)を有する。つまり、カバー90は、本体31の幅及び高さより大きい幅及び高さを有し、且つ本体31の奥行きより短い奥行きを有する箱形状である。また、カバー90は、挿入方向51及び脱抜方向52において前壁91と対向した開口を有する。当該開口を通じて、本体31がカバー90に挿入可能である。
各図には詳細に示されていないが、カバー90は、本体31に組み付けられた状態において、挿入方向51及び脱抜方向52へ本体31に対して相対移動可能である。このようなカバー90のスライドは、例えば、本体31及びカバー90の一方に係合爪を設けて、他方に挿入方向51及び脱抜方向52に延びる長孔を設けて、その長孔に係合爪を挿入することによって実現可能である。カバー90が本体31に対して移動して、係合爪が長孔の挿入方向51及び脱抜方向52端部に当接することにより、カバー90のそれ以上の移動が規制される。
図3に示されるように、本体31の前壁40とカバー90との間には、挿入方向51及び脱抜方向52に沿って弾性的に収縮可能なコイルバネ47(第2付勢部材の一例)が設けられている。
カバー90の前壁91は、コイルバネ47に付勢されており、外力が付与されていない状態においては、本体31の前壁40から挿入方向51に最も離れた遠離位置に位置する(図3参照)。カバー90が遠離位置に位置するとき、本体31の前壁40と対向するカバー90の前壁91は、インク供給部34の大部分より挿入方向51にずれた位置に位置する。したがって、インク供給部34の大部分は、カバー90内に没入される。
本体31又はカバー90に、両者を近接させる向きの外力が付与されると、コイルバネ47が弾性的に収縮して、カバー90は、カバー90の前壁19が本体31の前壁40に向かうようにスライド移動し、カバー90の前壁91が本体31の前壁40に最も近接する近接位置に位置する。カバー90が遠離位置以外に位置するとき、カバー90は、収縮したコイルバネ47によって、本体31から離れる挿入方向51に付勢されている。
このように、カバー90は、コイルバネ47の伸縮に応じて、本体31に対して挿入方向51及び脱抜方向52に相対移動可能である。
カバー90の前壁91の下部には、挿入方向51及び脱抜方向52へ貫通する開口97が形成されている。開口97は、カバー90が近接位置に移動すると、本体31のインク供給部34を外部へ露出させるための通路になる。したがって、開口97は、本体31のインク供給部34と対応する位置、寸法、及び形状に形成されている。
カバー90の前壁91の下端には、突起93が設けられている。突起93の幅は、前壁91の幅と同じである。突起93は、前壁91から挿入方向51へ突出されている。突起93は、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110へ挿入、装着されるときに、ケース101の被当接部94(図4参照)に当接する。突起93が被当接部94に当接した状態において本体31が更に挿入されることにより、カバー90が本体31に対して相対的に移動される。したがって、突起93の突出寸法は、カバー90の移動距離に対応して設定されている。
カバー90において本体31の上壁39と対向する上壁92の上面には、基板支持部84が設けられている。基板支持部84は、上壁92の上面に載置された概ね直方体形状の部材である。つまり、基板支持部84は、上壁92の上面から上方向54に突出されている。なお、基板支持部84は、上壁92とは別部材であってもよいし、上壁92と一体成形されていてもよい。また、基板支持部84は、直方体以外の形状であってもよい。
基板支持部84の上面には、IC基板85(ICチップ、基板の一例)が、接着等の公知の方法で取り付けられている。つまり、基板支持部84は、IC基板85を支持している。IC基板85の挿入方向51及び脱抜方向52の長さは、基板支持部84の挿入方向51及び脱抜方向52の長さ以下である。本実施形態では、IC基板85の挿入方向51及び脱抜方向52の長さは、基板支持部84の挿入方向51及び脱抜方向52の長さより短い。基板支持部84は、支持されたIC基板85よりも挿入方向51に延出された第1端部84A、及び支持されたIC基板85よりも脱抜方向52に延出された第2端部84Bを備えている。
IC基板85の上面、つまりIC基板85の上方向54を向く面には、4つの電極86、87、88、89(電気的インターフェースの一例)が形成されている。各電極86、87、88、89は、IC基板85の上面において挿入方向51及び脱抜方向52に延設されており、且つ右方向55及び左方向56に互いに離間して設けられている。電極86、87、88、89は、例えば、クロック用電極、データ用電極、電源電圧用電極及びグランド用電極等である。IC基板85には、各電極86、87、88、89に電気的に接続されたIC(不図示、集積回路の一例)が実装されている。ICは、半導体集積回路であり、インクカートリッジ30に関する情報(例えばロット番号や製造年月日などの情報)や、インクに関する情報(例えばインク色)を示すデータが読み出し可能に格納されている。なお、電極の数は、4つに限らない。
基板支持部84は、上壁92から突出した状態で配置されている。このため、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に装着完了した状態において、基板支持部84及びIC基板85の周囲には、インクカートリッジ30のカバー90とカートリッジ装着部110とによって区画される空間が形成される。以下に詳述する。
図2に示されるように、基板支持部84及びIC基板85より挿入方向51にずれた領域に第1空間161が形成される。図2においてカートリッジ装着部110は示されていないが、第1空間161は、上壁92、基板支持部84及びIC基板85の挿入方向51を向く面、カートリッジ装着部110の天面104、及び終面102(図4、図10参照)によって区画されている。第1空間161は、後述する接点ユニット125の前壁155よりも大きな空間である。これにより、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に装着完了した状態において、第1空間161には前壁155が配置される。つまり、第1空間161は、前壁155を受容する空間である。
基板支持部84及びIC基板85より脱抜方向52にずれた領域に第2空間162が形成される。図2においてカートリッジ装着部110は示されていないが、第2空間162は、上壁92、基板支持部84及びIC基板85の脱抜方向52を向く面、及びカートリッジ装着部110の天面104によって区画されている。第2空間162は、後述する接点ユニット125の移動壁127よりも大きな空間である。これにより、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に装着完了した状態において、第2空間162には移動壁127が配置される。つまり、第2空間162は、移動壁127を受容する空間である。
なお、第1空間161は、基板支持部84の一部及びIC基板85より挿入方向51にずれた領域に形成されればよい。ここで、基板支持部84の一部とは、基板支持部84のうち、挿入方向51に視て前壁155と重なる部分である。また、第2空間162は、基板支持部84の一部及びIC基板85より脱抜方向52にずれた領域に形成されればよい。ここで、基板支持部84の一部とは、基板支持部84のうち、挿入方向51に視て移動壁127と重なる部分である。
IC基板85の右方の領域(右方向55にずれた領域)に第3空間163が形成される。図2においてカートリッジ装着部110は示されていないが、第3空間163は、上壁92、基板支持部84及びIC基板85の右面、カートリッジ装着部110の天面104、及び右側面105(図4、図10参照)によって区画されている。第3空間163は、後述する接点ユニット125の右側壁156よりも大きな空間である。これにより、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に装着完了した状態において、第3空間163には右側壁156が配置される。つまり、第3空間163は、右側壁156を受容する空間である。
IC基板85の左方の領域(左方向56にずれた領域)に第4空間164が形成される。図2においてカートリッジ装着部110は示されていないが、第4空間164は、上壁92、基板支持部84及びIC基板85の左面、カートリッジ装着部110の天面104、及び左側面106(図4、図10参照)によって区画されている。第4空間164は、後述する接点ユニット125の左側壁157よりも大きな空間である。これにより、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に装着完了した状態において、第4空間164には左側壁157が配置される。つまり、第4空間164は、左側壁157を受容する空間である。
[カートリッジ装着部110]
図4、図10に示されるように、カートリッジ装着部110の筐体を構成するケース101は、開口112を有する。開口112を通じてケース101の内部がプリンタ10使用時にユーザが対面するプリンタ10の面に露出される。開口112を通じてケース101へインクカートリッジ30が挿抜される。ケース101には、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの各色に対応する4つのインクカートリッジ30が収容可能であるが、図4、図10においては、1つのインクカートリッジ30が収容可能なケース101の空間が示されている。ケース101の内部の空間は、挿入方向51及び脱抜方向52において開口112と対向する終面102と、天面104と、右側面105と、左側面106と、底面107とによって画定される。なお、以下に説明する、接続部103、被当接部94、係合部材145、及び、接点ユニット125は、4つのインクカートリッジの各々に対応して設けられている。つまり、本実施形態において、接続部103、被当接部94、係合部材145、及び、接点ユニット125は、それぞれ4つ設けられている。4つの接続部103、4つの被当接部94、4つの係合部材145、及び、4つの接点ユニット125は、それぞれ、右方向55及び左方向56に並んで配置されている。各接続部103、各被当接部94、各係合部材145、及び、各接点ユニット125の構成は同一である。そのため、以下では、1つの接続部103、被当接部94、係合部材145、及び、接点ユニット125の構成が説明され、残り3つの接続部103、被当接部94、係合部材145、及び、接点ユニット125の構成の説明は省略される。
終面102の下部には、接続部103が設けられている。接続部103は、終面102において、ケース101に装着された各インクカートリッジ30のインク供給部34に対応する位置に配置されている。
接続部103は、インクニードル117と、保持溝116とを有する。インクニードル117は、管状の樹脂針からなる。インクニードル117は、ケース101を貫通することによってケース101の内外に亘っている。インクニードル117のケース101の外の端部は、インクチューブ20に接続されている。インクニードル117と接続されたインクチューブ20は、プリンタ10の記録ヘッド21へインクを流通可能に延出されている。なお、図4においては、インクチューブ20は省略されている。
保持溝116は、終面102に形成された円筒状の溝である。保持溝116の中心にインクニードル117が配置されている。図9に示されるように、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に装着されると、インク供給部34が保持溝116に挿入される。このとき、円筒状のインク供給部34の外周面が保持溝116を構成する終面102の円筒状の内周面に接触する。インク供給部34が保持溝116へ挿入されると、インクニードル117がインク供給部34のインク供給口71に挿入される。これにより、インク室36に貯留されているインクが外部へ流出可能となる。インク室36から流出されたインクは、インクニードル117及びインクチューブ20を通じて、記録ヘッド21に供給される。
図4に示されるように、接続部103の下方には、被当接部94が設けられている。被当接部94は、脱抜方向52を向く面を有しており、当該面にカバー90の突起93が当接し得る。
係合部材145がケース101に設けられている。係合部材145は、カートリッジ装着部110に装着されたインクカートリッジ30を装着状態に保持するためのものである。係合部材145は、例えば、ケース101の開口112近傍に設けられた支軸147を中心に回動可能に形成されている。具体的には、係合部材145は、支軸147を中心に図4における時計回り及び反時計回りに回動可能に構成されている。挿入方向51及び脱抜方向52における係合部材145の支軸147と反対の端部には、係合端部146が配置される。係合端部146は、インクカートリッジ30の係止面46と係合可能である。係合端部146は、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に装着完了されてカバー90が近接位置に位置する状態において、係止面46と係合することによって、コイルバネ47、73の付勢力に抗して本体31の脱抜方向52への移動を規制する。これにより、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110内に保持される。
係合端部146と係止面46とが係合可能となる係合部材145の位置(図9参照)がロック位置と称され、係合端部146と係止部45とが係合しない係合部材145の位置(図6乃至図8参照)がアンロック位置と称される。係合部材145は、自重によって、下方向53へ回動する。回動部材80の先端部81が上方向54に移動することにより、係合部材145が先端部81に押される。これにより、係合部材145が支軸147を中心に上方向54へ回動し、ロック位置からアンロック位置へ移動する。
ケース101の天面104には、接点ユニット125が取り付けられている。接点ユニット125は、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に装着完了した状態において、少なくとも一部が基板支持部84及びIC基板85の上方において基板支持部84及びIC基板85と対向する位置に設けられている。
[接点ユニット125]
図4及び図5に示されるように、接点ユニット125は、概ね直方体形状の本体部126と、本体部126に支持された可撓部材128と、本体部126によって上方向54及び下方向53に移動可能に支持された移動壁127(第2壁の一例)とを備えている。
本体部126は、概ね直方体形状である。本体部126の上面151から後側面152を経て下面153に亘って、切り欠き154が形成されている。切り欠き154は、4つの電極86、87、88、89に対応して4つ形成されており、右方向55及び左方向56に並んで形成されている。
本体部126の右側面118及び左側面119には、上方向54及び下方向53に延びた凹部120が形成されている。凹部120の上方向54及び下方向53における中央部よりも上方の部分の右方向55及び左方向56における深さは、凹部120の上方向54及び下方向53における中央部よりも下方の部分の右方向55及び左方向56における深さよりも深い。これにより、凹部120の上方向54及び下方向53における中央部には、段差が形成されている。当該段差の箇所には、上方向54を向いた段差面120Aが形成されている。
可撓部材128は、4つの電極86、87、88、89に対応して4つ形成されている。各可撓部材128は、対応する切り欠き154に挿入されている。つまり、可撓部材128は、右方向55及び左方向56に並んで配置されている。
可撓部材128は、電気伝導体を細長く延ばした部材である。本実施形態において、可撓部材128は、銅で構成されており、表面にニッケルと金の鍍金が施されている。可撓部材128は、図4に示されるように、側面視において概ね横向きのU字形状であるバネ部130(第1付勢部材の一例)と、バネ部130の両端のうち下方の端に形成された第1接点131(接点の一例)と、バネ部130の両端のうち上方の端に形成された第2接点132と、バネ部130の湾曲部分及び第1接点131の間に形成されており後述する移動壁127に取り付けられる作用部133と、を備えている。バネ部130、第1接点131、第2接点132、及び作用部133は、一体に構成されている。
バネ部130の湾曲部分130Aよりも上方の部分は、本体部126の切り欠き154内に位置する上方向54を向く面154Aに支持且つ固定されている。一方、バネ部130の湾曲部分130Aよりも下方の部分は、本体部126に支持も固定もされていない。これにより、バネ部130の湾曲部分130Aよりも下方の部分に形成された第1接点131及び作用部133は、可撓部材128のバネ部130が弾性によって撓むことにより、上方向54及び下方向53に移動可能である。
各第1接点131の右方向55及び左方向56の位置は、カートリッジ装着部110に装着完了されたインクカートリッジ30の4つの電極86、87、88、89のうち対応する電極の右方向55及び左方向56の位置と同じである。
第1接点131は、図6に示される接触位置と、図7に示される非接触位置との間を移動可能である。図5(B)に示されるように、接触位置の第1接点131は、切り欠き154よりも下方に位置している。このとき、接触位置の第1接点131の下端は、カートリッジ装着部110に装着完了されたインクカートリッジ30の電極86、87、88、89の上端よりも下方に位置する。つまり、接触位置の第1接点131は、カートリッジ装着部110に装着完了されたインクカートリッジ30の電極86、87、88、89の位置と重なる。すなわち、接触位置の第1接点131は、電極86、87、88、89と接触可能である。
非接触位置は、接触位置よりも上方である。つまり、非接触位置は、接触位置から上方向54に離間している。非接触位置の第1接点131は、電極86、87、88、89の上端よりも上方に位置している。また、図5(C)に示されるように、非接触位置の第1接点131は、切り欠き154の内部に没入している。これにより、非接触位置の第1接点131は、電極86、87、88、89と接触不可能である。
図4に示される第2接点132は、カートリッジ装着部110の天面104から露出された接点(不図示)と接触している。当該接点は、ケーブルなどによってプリンタ10の制御部1と電気的に接続されている。なお、第2接点132は、FFC(フレキシブルフラットケーブル)などによって当該接点を介することなく、制御部1と電気的に接続されていてもよい。
IC基板85は、電極86、87、88、89と第1接点131とが接触することによって、可撓部材128を介して制御部1と電気的に接続される。これにより、制御部1は、第1接点131に接触された電極86、87、88、89を通じてIC基板85に設けられたICにアクセス可能となる。ここで、制御部1は、例えばCPU、ROM、RAMなどからなるものであり、プリンタ10の内部に制御基板として配置されている。
図4及び図5に示されるように、移動壁127は、第1接点131より脱抜方向52にずれて配置されている。
移動壁127は、図5(B)及び図6に示される第1位置と、図5(C)及び図7に示される第2位置との間を上方向54及び下方向53に移動可能である。
後述するように基板支持部84及びIC基板85と当接して移動壁127が第2位置に押し上げられているときに、移動壁127の右端は、IC基板85及び基板支持部84よりも右方に位置している。また、移動壁127の左端は、IC基板85及び基板支持部84よりも左方に位置している。
移動壁127は、その上面127Aにおいて可撓部材128の作用部133と接触している。なお、作用部133は、上面127Aに嵌め込まれていてもよい。また、移動壁127は、例えば接着剤などによって作用部133に取り付けられていてもよい。また、本実施形態では、作用部133は、湾曲形状をしているが湾曲形状以外の形状であってもよい。
また、移動壁127は、その上面127Aの右端及び左端から上方向54へ突出した一対の突出部121を備えている。各突出部121の突出先端部には、相手方の突出部121へ向けて突出した突部121Aが形成されている。
移動壁127は、可撓部材128が撓んでいない状態において、自重によって第1位置に位置する。このとき、突部121Aが上方から本体部126の段差面120Aに当接している。これにより、移動壁127が第1位置よりも下方に移動することが規制されている。
第1位置の移動壁127は、カートリッジ装着部110に対して挿抜されるインクカートリッジ30のIC基板85及び基板支持部84の一部の移動軌跡と重なる部分を有している。
なお、移動壁127の位置は、第1位置において上記重なる部分を有しているならば、上述したような位置に限らない。例えば、後述するように基板支持部84及びIC基板85と当接して移動壁127が第2位置に押し上げられているときに、移動壁127の右端がIC基板85及び基板支持部84よりも右方に位置し、且つ移動壁127の左端がIC基板85及び基板支持部84の右端と左端との間に位置していてもよい。また、移動壁127の左端がIC基板85及び基板支持部84よりも左方に位置し、且つ移動壁127の右端がIC基板85及び基板支持部84の右端と左端との間に位置していてもよい。また、移動壁127の右端及び左端の双方がIC基板85及び基板支持部84の右端と左端との間に位置していてもよい。なお、本実施形態において、「IC基板85及び基板支持部84の右端」は、IC基板85の右端及び基板支持部84の右端の意味であり、「IC基板85及び基板支持部84の左端」は、IC基板85の左端及び基板支持部84の左端の意味であり、「IC基板85及び基板支持部84の上端」は、IC基板85の上端及び基板支持部84の上端の意味であり、「IC基板85及び基板支持部84の下端」は、IC基板85の下端及び基板支持部84の下端の意味であり、「IC基板85及び基板支持部84の挿入方向51の端部」は、IC基板85の挿入方向51の端部及び基板支持部84の挿入方向51の端部の意味であり、「IC基板85及び基板支持部84の脱抜方向52の端部」は、IC基板85の脱抜方向52の端部及び基板支持部84の脱抜方向52の端部の意味である。
第1位置の移動壁127が上記のような位置であることにより、移動壁127の脱抜方向52を向く面127Bには、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に挿入される過程において、IC基板85及び基板支持部84の少なくとも一方が当接する。本実施形態では、基板支持部84の第1端部84Aが当接する。ここで、本実施形態において、面127Bの下端部には、挿入方向51に向かって下方向53に傾斜する傾斜面127Cが形成されており、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に挿入される過程において、IC基板85及び基板支持部84の少なくとも一方(本実施形態では第1端部84A)は、面127Bのうち傾斜面127Cに当接する。
また、移動壁127の挿入方向51を向く面127Dには、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110から脱抜される過程において、IC基板85及び基板支持部84の少なくとも一方が当接する。本実施形態では、基板支持部84の第2端部84Bが当接する。ここで、本実施形態において、面127Dの下端部には、脱抜方向52に向かって下方向53に傾斜する傾斜面127Eが形成されており、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110から脱抜される過程において、IC基板85及び基板支持部84の少なくとも一方(本実施形態では第2端部84B)は、面127Dのうち傾斜面127Eに当接する。
なお、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に挿入される過程において、IC基板85及び基板支持部84における面127B(本実施形態では傾斜面127C)と当接する部分、つまりIC基板85または基板支持部84の少なくとも一方における挿入方向51の端部の上端部(本実施形態では基板支持部84の第1端部84A(図3参照))に、挿入方向51に向かって下方向53に傾斜する傾斜面が形成されていてもよい。このとき、傾斜面127Cの形成の有無は任意である。また、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110から脱抜される過程において、IC基板85及び基板支持部84における面127D(本実施形態では傾斜面127E)と当接する部分、つまりIC基板85または基板支持部84の少なくとも一方における脱抜方向52の端部の上端部(本実施形態では基板支持部84の第2端部84B(図3参照))に、脱抜方向52に向かって下方向53に傾斜する傾斜面が形成されていてもよい。このとき、傾斜面127Eの形成の有無は任意である。
図6に示されるように、移動壁127が第1位置に位置し且つ可撓部材128が外部から力を付与されていないとき、可撓部材128の第1接点131は、接触位置に位置する。つまり、移動壁127が第1位置に位置するとき、第1接点131の接触位置への移動は許容される。
移動壁127は、後述するように基板支持部84及びIC基板85と当接して押されることによって、第1位置から第2位置に移動する。これにより、可撓部材128のバネ部130における湾曲部分130Aよりも下方の部分は、弾性によって上方向54に撓む。よって、移動壁127には、可撓部材128による下方向53への付勢力が作用している。つまり、可撓部材128は、移動壁127を下方向53に付勢している。
第2位置の移動壁127は、上記移動軌跡より上方向54にずれて配置されている。また、移動壁127の第1位置から第2位置への移動によって、可撓部材128のバネ部130における湾曲部分130Aよりも下方の部分が上方向54に撓むと、第1接点131が上方向54に移動する。これにより、移動壁127が第2位置に位置するとき、第1接点131は非接触位置に位置する。
図5に示されるように、本体部126は、前壁155(第1壁の一例)、右側壁156(第3壁の一例)、及び左側壁157(第4壁の一例)を備えている。
前壁155は、第1接点131より挿入方向51にずれて配置されている。前壁155の右端は、カートリッジ装着部110に装着完了された状態におけるインクカートリッジ30のIC基板85及び基板支持部84よりも右方に位置している。前壁155の左端は、カートリッジ装着部110に装着完了された状態におけるインクカートリッジ30のIC基板85及び基板支持部84よりも左方に位置している。
前壁155は、カートリッジ装着部110に装着完了されたインクカートリッジ30のIC基板85及び基板支持部84の上端より下方且つ下端より上方に位置する部分を有する。つまり、前壁155は、カートリッジ装着部110に装着完了されたインクカートリッジ30のIC基板85及び基板支持部84の一部と挿入方向51に視て重なる部分を有している。ここで、上記重なる部分は、前壁155のうち、IC基板85及び基板支持部84の上端及び下端の間に位置し、且つIC基板85及び基板支持部84の右端及び左端の間に位置する部分である。
なお、前壁155の位置は、上記重なる部分を有しているならば、上述したような位置に限らない。例えば、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に装着されているときに、前壁155の右端がIC基板85及び基板支持部84よりも右方に位置し、且つ前壁155の左端がIC基板85及び基板支持部84の右端と左端との間に位置していてもよい。また、前壁155の左端がIC基板85及び基板支持部84よりも左方に位置し、且つ前壁155の右端がIC基板85及び基板支持部84の右端と左端との間に位置していてもよい。また、前壁155の右端及び左端の双方がIC基板85及び基板支持部84の右端と左端との間に位置していてもよい。
右側壁156は、第1接点131の右方に配置されている。つまり、右側壁156は、第1接点131より右方向55にずれて配置されている。右側壁156の挿入方向51の端部は、カートリッジ装着部110に装着完了されたインクカートリッジ30のIC基板85よりも挿入方向51にずれた位置である。前壁155の挿入方向51の端部は、カートリッジ装着部110に装着完了されたインクカートリッジ30のIC基板85よりも脱抜方向52にずれた位置である。
右側壁156は、カートリッジ装着部110に装着完了されたインクカートリッジ30のIC基板85の上端よりも下方且つ下端よりも上方に位置する部分を有する。つまり、右側壁156は、カートリッジ装着部110に装着完了されたインクカートリッジ30のIC基板85と右方向55に視て重なる部分を有している。ここで、上記重なる部分は、右側壁156のうち、IC基板85の上端及び下端の間に位置し、且つIC基板85の挿入方向51及び脱抜方向52における両端の間に位置する部分である。
なお、右側壁156の位置は、上記重なる部分を有しているならば、上述したような位置に限らない。例えば、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に装着されているときに、右側壁156の挿入方向51の端部がIC基板85よりも挿入方向51にずれており、且つ右側壁156の脱抜方向52の端部がIC基板85の挿入方向51及び脱抜方向52における両端の間に位置していてもよい。また、右側壁156の脱抜方向52の端部がIC基板85よりも脱抜方向52にずれており、且つ、右側壁156の挿入方向51の端部がIC基板85の挿入方向51及び脱抜方向52における両端の間に位置していてもよい。また、右側壁156の挿入方向51及び脱抜方向52における両端の双方が、IC基板85の挿入方向51及び脱抜方向52における両端の間に位置していてもよい。
左側壁157は、第1接点131の左方に配置されている。つまり、右側壁156は、第1接点131より左方向56にずれて配置されている。左側壁157は、カートリッジ装着部110に装着完了されたインクカートリッジ30のIC基板85と左方向56に視て重なる部分を有している。ここで、上記重なる部分は、左側壁157のうち、IC基板85の上端よりも下方且つ下端よりも上方に位置し、且つIC基板85の挿入方向51及び脱抜方向52における両端の間に位置する部分である。左側壁157の位置及び構成は右側壁156と同様であるため、ここでは、これ以上の詳細な説明は省略される。
右方向55及び左方向56における右側壁156及び左側壁157の離間距離は、両側壁156、157の間に基板支持部84及びIC基板85が位置することができる長さである。つまり、当該離間距離は、基板支持部84の右方向55及び左方向56の長さよりも長い。すなわち、当該離間距離は、基板支持部84及びIC基板85のカバー90の上壁92からの突出端における右端及び左端の間の長さよりも長い。
[インクカートリッジ30の装着動作]
以下、図6〜図9が参照されつつ、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に装着される動作が説明される。
図6に示されるように、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に対して挿入方向51に挿入されると、カバー90の上壁92及び本体31の上壁39によって係合部材145が上方向54に回動されて、係合部材145がロック位置からアンロック位置に移動する。なお、このとき、移動壁127は第1位置に位置しており、第1接点131は接触位置に位置している。
インクカートリッジ30が更に挿入方向51に挿入されると、基板支持部84の第1端部84Aが、移動壁127の傾斜面127Cと当接する。移動壁127は、傾斜面127Cによって案内されて、基板支持部84及びIC基板85の上面に乗り上げる。つまり、移動壁127は、第1位置から第2位置(図7参照)へ上方向54に移動する。
移動壁127が第1位置から第2位置へ移動することによって、可撓部材128のバネ部130が弾性によって撓む。これにより、第1接点131は、接触位置から非接触位置(図7参照)へ上方向54に移動する。
図7に示される状態からインクカートリッジ30が更に挿入方向51に挿入されて、基板支持部84及びIC基板85が移動壁127から離間すると、図8に示されるように、移動壁127は、バネ部130の付勢力によって第2位置から第1位置へ下方向53に移動する。これにより、第1接点131は、非接触位置から接触位置へ下方向53に移動する。その結果、第1接点131が、上方からIC基板85上の電極86、87、88、89と当接した状態となる。また、このとき、前壁155は第1空間161に配置され、第1位置の移動壁127は第2空間162に配置され、右側壁156は第3空間163に配置され、左側壁157は第4空間164に配置される。これにより、基板支持部84及びIC基板85は、挿入方向51及び脱抜方向52において、第1位置の移動壁127及び前壁155の間に位置する状態となる。また、基板支持部84及びIC基板85は、右方向55及び左方向56において、右側壁156及び左側壁157の間に位置する状態となる。
上記状態において、カバー90の突起93が被当接部94に当接する。これにより、カバー90のこれ以上の挿入方向51への移動が不可能となる。よって、図8に示される状態からインクカートリッジ30が更に挿入方向51に挿入されると、カバー90は移動せずに、本体31のみがコイルバネ47の付勢力に抗して移動する。
図8に示される状態からインクカートリッジ30が更に挿入方向51に挿入されると、インク供給部34が保持溝116に当接する。これにより、図9に示されるように、インクニードル117は、インク供給部34のインク供給口71に挿入される。インクニードル117に押されたインク供給バルブ70は、コイルバネ73の付勢力に抗してインク供給口71から離間する。
また、本体31の係止部45に到達した係合部材145は、本体31の上壁39に支持されなくなって下方向53に回動し、ロック位置へ至る。そして、挿入方向51及び脱抜方向52において係合端部146と係止面46とが対向する。
この状態からインクカートリッジ30を挿入方向51に押す力が消失すると、インクカートリッジ30は、コイルバネ47、73の付勢力によって、係合端部146と係止面46とが接する位置まで脱抜方向52に後退する。これにより、係合部材145は、インクカートリッジ30を脱抜方向52に押す力(コイルバネ47、73の付勢力)に抗して、インクカートリッジ30をカートリッジ装着部110内に保持する。また、回動部材80の先端部81は、係合部材145の下方に位置する。また、回動部材80の後端部82は、係止部45の溝の底面から離間されて、本体31の上壁39より上方に位置している。以上により、カートリッジ装着部110へのインクカートリッジ30の装着が完了する。
図9に示される装着完了状態において、インクニードル117は、インク供給バルブ70をインク供給口71から離間させた状態にある。そのため、インクニードル117の先端に設けられたインク導入口(不図示)を通じて、インク室36からインクを流出させることができる。また、電極86、87、88、89と各第1接点131との接触により、IC基板85のICとプリンタ10の制御部1との電気的な接続が確立され、制御部1がICへアクセスすることが可能となる。
インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110から取り外されるときには、回動部材80の後端部82が、ユーザによって下方向53へ押し下げられる。これにより、回動部材80の先端部81が上方向54へ移動して、係止部45の底面から離間する。この先端部81の移動に伴って、係合部材145がロック位置からアンロック位置まで上方向54へ回動されて、係合部材145によるインクカートリッジ30の保持が解除される。
係合部材145がアンロック位置に移動されることにより、インクカートリッジ30は、コイルバネ47、73の付勢力によって脱抜方向52に移動する。また、インクカートリッジ30が脱抜方向52へ移動することによって、インクニードル117がインク供給部34から抜け出る。これにより、インク供給バルブ70がコイルバネ73の復元力によって押され、インク供給口71を閉塞する。
さらに、インクカートリッジ30が脱抜方向52へ移動すると、基板支持部84の第2端部84Bが、移動壁127の傾斜面127Eと当接する。移動壁127は、傾斜面127Eによって案内されて、基板支持部84及びIC基板85の上面に乗り上げる。つまり、移動壁127は、第1位置から第2位置へ上方向54に移動する。
移動壁127が第1位置から第2位置へ移動することによって、可撓部材128のバネ部130が弾性によって撓む。これにより、第1接点131は、接触位置から非接触位置へ上方向54に移動する。
インクカートリッジ30が更に脱抜方向52に移動されることによって、基板支持部84及びIC基板85が移動壁127よりも脱抜方向52にずれた位置となると、移動壁127は、バネ部130の付勢力によって第2位置から第1位置へ下方向53に移動し、第1接点131は、非接触位置から接触位置へ下方向53に移動する(図6参照)。このようにして、電極86、87、88、89と各第1接点131とが離間され、IC基板85のICとプリンタ10の制御部1との電気的な接続が解除される。
[本実施形態の作用効果]
本実施形態において、カートリッジ装着部110に対して挿入或いは脱抜されるインクカートリッジ30は、IC基板85の移動軌跡上の第1位置に位置する移動壁127を、バネ部130の付勢力に抗して第2位置に移動させる。また、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に装着完了されると、第1空間161に前壁155が受容され、第2空間162に第1位置の移動壁127が受容される。換言すれば、装着完了されたインクカートリッジ30のIC基板85は、挿入方向51及び脱抜方向52において、前壁155及び第1位置の移動壁127の間に配置される。これにより、IC基板85に実装された電極86、87、88、89は、第1位置の移動壁127によって接触位置へ移動された第1接点131に接触される。
一方、図11(A)に示されるように、基板支持部84に対してIC基板85が挿入方向51にずれて配置されると、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に装着完了されたときに、IC基板85が前壁155に接触し、基板支持部84が第2空間162にはみ出て、移動壁127の第1位置への移動を阻害する可能性がある。同様に、図11(B)に示されるように、基板支持部84に対してIC基板85が脱抜方向52にずれて配置されると、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に装着完了されたときに、IC基板85が第2空間162にはみ出て、移動壁127の第1位置への移動を阻害する可能性がある。これにより、第1位置に移動できない移動壁127が第1接点131の接触位置への移動を阻害するので、電極86、87、88、89と第1接点131とが接触できなくなる。このように、正しい位置で基板支持部84に支持されたIC基板85の電極86、87、88、89のみが第1接点131に接触可能となり、挿入方向51或いは脱抜方向52にずれて基板支持部84に支持されたIC基板85の電極86、87、88、89が第1接点131に接触できなくなる。その結果、電極86、87、88、89と第1接点131とを電気的に安定して接触させることができる。
なお、「インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に装着完了された」とは、例えば、インクカートリッジ30に保持されたインクを記録ヘッド21が消費可能な状態を指す。また、カートリッジ装着部110に対してインクカートリッジ30が挿抜される過程において、移動壁127に接触するのは、IC基板85であってもよいし、基板支持部84であってもよいし、インクカートリッジ30の他の構成要素であってもよい。
また、本実施形態によれば、カートリッジ装着部110に対してインクカートリッジ30が挿抜される過程において、傾斜面127C、127Eに沿って移動壁127が第2位置へスムーズに移動できる。すなわち、カートリッジ装着部110に対するインクカートリッジ30の挿抜をスムーズに行うことができる。
また、本実施形態によれば、基板支持部84に対して右方向55にずれて支持されたIC基板85は、右側壁156に接触して、カートリッジ装着部110に対するインクカートリッジ30の挿入を阻害する。同様に、基板支持部84に対して左方向56にずれて支持されたIC基板85は、左側壁157に接触して、カートリッジ装着部110に対するインクカートリッジ30の挿入を阻害する。これにより、正しい位置で基板支持部84に支持されたIC基板85の電極86、87、88、89のみが第1接点131に接触可能となり、右方向55或いは左方向56にずれて基板支持部84に支持されたIC基板85の電極86、87、88、89が第1接点131に接触できなくなる。その結果、電極86、87、88、89と第1接点131とを電気的に安定して接触させることができる。
また、本実施形態によれば、基板支持部84がIC基板85より挿入方向51及び脱抜方向52に延出されているため、例えば、カートリッジ装着部110に対してインクカートリッジ30が勢いよく挿抜された場合に、第1位置の移動壁127にIC基板85が衝突することが防止される。その結果、IC基板85が基板支持部84から剥離することが抑制される。なお、基板支持部84と移動壁127とが接触したことによってインクカートリッジ30の勢いが減殺されるので、その後にIC基板85と移動壁127とが接触してもよい。
また、本実施形態によれば、装着完了されたインクカートリッジ30のコイルバネ47によってカバー90が挿入方向51へ付勢されているので、IC基板85や基板支持部84が意図せず脱抜方向52に移動して、移動壁127を第2位置に移動させてしまうことがない。また、ケース101や、係合部材145や、支軸147の経年劣化等によって、係合部材145が係止面46に接触する位置が脱抜方向52にずれることにより、装着完了されたインクカートリッジ30の本体31が脱抜方向52に移動したとしても、コイルバネ47によって挿入方向51へ付勢されているカバー90の位置は変化しない。その結果、電極86、87、88、89と第1接点131とを電気的に安定して接触させることができる。
また、本実施形態に係る制御部1は、安定的に接触された電極86、87、88、89及び第1接点131を通じて、インクカートリッジ30のICにアクセスすることができる。なお、「アクセス」とは、例えば、ICから情報を読み出すこと、及びICに情報を書き込むことの一方或いは両方を含む。
[変形例]
上記実施形態では、第1接点131と移動壁127を付勢するバネ部130とは、一体に構成されていたが、両者は別部材として構成されていてもよい。この場合、例えば、接点ユニット125は、移動壁127の第1位置から第2位置への移動に連動して第1接点131を接触位置から非接触位置へ移動させ、移動壁127の第2位置から第1位置への移動に連動して第1接点131を非接触位置から接触位置へ移動させる連動機構を備えていてもよい。なお、第1接点131とバネ部130とが別部材として構成されている場合、第1接点131と第2接点132とはFFCなどによって電気的に接続されていることは言うまでもない。
また、上記実施形態では、基板支持部84が上壁92から突出した状態で配置されることによって、第1空間161乃至第4空間164が形成されたが、本発明はこれに限定されない。例えば、上壁92における基板支持部84の周囲に凹部が形成されることによって、第1空間161乃至第4空間164が形成されてもよい。
また、上記実施形態では、インクカートリッジ30は、本体31、カバー90、及びコイルバネ47を備えていたが、インクカートリッジ30は、カバー90及びコイルバネ47を備えていなくてもよい。この場合、基板支持部84は、本体31の上壁39の上面に配置される。
また、上記実施形態では、インクジェット記録方式で記録用紙に画像を記録するプリンタ10をシステムの一例として説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、プリンタ10が、電子写真方式などの他の方式で記録用紙に画像を記録するものであってもよいし、熱転写方式でラベルに画像を記録するラベルプリンタなどであってもよい。
また、上記実施形態では、インクを消費材の一例として説明したが、本発明はこれに限定されない。すなわち、インクなどの液体に代えて、トナーなどの粉体を消費材としてもよいし、ラベルプリンタなどに用いられるテープを消費材としてもよい。