実施の形態1
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1は、表示装置1の外観を示す斜視図である。表示装置1は、背面投射型のプロジェクタ(リアプロジェクタ)であり、筐体10の前面にパネル部30が設けられている。より具体的には、表示装置1は、反射型液晶表示素子であるLCOS(Liquid Crystal on Silicon)を用いて構成されたリアプロジェクタである。図2は、表示装置1の筐体10の内部構成の一例を示す構成図である。
図2に示されるように、表示装置1は、投射部20と、パネル部30と、スクリーン31と、ミラー40と、表示制御部50とを有する。ここで、本実施の形態では、パネル部30及びスクリーン31が一体に構成されている。ミラー40は、投射部20から射出された光をスクリーン31の方向へと反射させる。
投射部20は、パネル部30に映像を投射するため、映像信号に基づく投射光を生成する。より具体的には、投射部20は、三原色信号からなる後述する第1の映像信号に応じた直線偏光を射出する。ここで、投射部20は、光軸上においてパネル部30よりも投射部20から遠い所定の位置において合焦する光を射出する。以下、投射部20の構成について説明する。
投射部20は光源201を有する。光源201は、例えば、ランプである。光源201から発せられた光は、光源201が発する光を光軸に垂直な面内の照度分布を均一にして射出するインテグレータ202を介して、ダイクロイックミラー203に入射される。ダイクロイックミラー203は、入射された光を赤色帯域成分のR光及び緑色帯域成分のG光と、青色帯域成分のB光とに分離する。ダイクロイックミラー203により分離されたR光及びG光は、ミラー204に入射する。また、ダイクロイックミラー203により分離されたB光は、ミラー205に入射する。
ダイクロイックミラー203により分離されたR光及びG光は、ミラー204で反射され、ダイクロイックミラー206に入射する。ダイクロイックミラー206は、入射されたR光とG光とを分離する。ダイクロイックミラー206により分離されたR光は、R用フィールドレンズ207Rを経て、45°に傾斜されたR用偏光制御素子208Rに入射する。
R用偏光制御素子208Rは、例えばワイヤグリッド型偏光ビームスプリッタであり、P偏光を透過させ、S偏光を反射する。R用偏光制御素子208Rを透過したP偏光のR光は、R用表示素子209Rに入射する。R用表示素子209Rは、LCOSにより構成されており、後述する表示制御部50から出力される映像信号に基づいてR光を変調する。R用表示素子209Rに入射したR光は、R用表示素子209Rにより反射され、R用偏光制御素子208Rに戻る。このとき、R用表示素子209RによりS偏光に変調された成分は、R用偏光制御素子208Rによりダイクロイックプリズム210の方向へと反射される。ダイクロイックプリズム210の方向へと反射されたR光は、ダイクロイックプリズム210の第1の面に入射する。これに対し、R用表示素子209Rにより変調されなかった成分は、R用偏光制御素子208Rを透過し、R用フィールドレンズ207Rの方向へと戻る。
ダイクロイックミラー206により分離されたG光は、G用フィールドレンズ207Gを経て、45°に傾斜されたG用偏光制御素子208Gに入射する。G用偏光制御素子208Gは、例えばワイヤグリッド型偏光ビームスプリッタであり、P偏光を透過させ、S偏光を反射する。G用偏光制御素子208Gを透過したP偏光のG光は、G用表示素子209Gに入射する。G用表示素子209Gは、LCOSにより構成されており、表示制御部50から出力される映像信号に基づいてG光を変調する。G用表示素子209Gに入射したG光は、G用表示素子209Gにより反射され、G用偏光制御素子208Gに戻る。このとき、G用表示素子209GによりS偏光に変調された成分は、G用偏光制御素子208Gによりダイクロイックプリズム210の方向へと反射される。ダイクロイックプリズム210の方向へと反射されたG光は、ダイクロイックプリズム210の第2の面に入射する。これに対し、G用表示素子209Gにより変調されなかった成分は、G用偏光制御素子208Gを透過し、G用フィールドレンズ207Gの方向へと戻る。
ダイクロイックミラー203により分離されたB光は、ミラー205で反射され、B用フィールドレンズ207Bを経て、45°に傾斜されたB用偏光制御素子208Bに入射する。B用偏光制御素子208Bは、例えばワイヤグリッド型偏光ビームスプリッタであり、P偏光を透過させ、S偏光を反射する。B用偏光制御素子208Bを透過したP偏光のB光は、B用表示素子209Bに入射する。B用表示素子209Bは、LCOSにより構成されており、表示制御部50から出力される映像信号に基づいてB光を変調する。B用表示素子209Bに入射したB光は、B用表示素子209Bにより反射され、B用偏光制御素子208Bに戻る。このとき、B用表示素子209BによりS偏光に変調された成分は、B用偏光制御素子208Bによりダイクロイックプリズム210の方向へと反射される。ダイクロイックプリズム210の方向へと反射されたB光は、ダイクロイックプリズム210の第3の面に入射する。これに対し、B用表示素子209Bにより変調されなかった成分は、B用偏光制御素子208Bを透過し、B用フィールドレンズ207Bの方向へと戻る。なお、以下の説明において、R用表示素子209R、G用表示素子209G及びB用表示素子209Bの総称として表示素子209ということがある。
ダイクロイックプリズム210は、3方向から入射されたR光、G光及びB光の各S偏光成分を、投射レンズ212に向けて射出する。したがって、投射レンズ212には直線偏光が射出される。ダイクロイックプリズム210から射出された光は、位相差板211を介して投射レンズ212に入射する。位相差板211は、投射部20からの射出光の偏光方向を、パネル部30の入射光として要求される偏光方向にあわせる。なお、パネル部30の入射光として要求される偏光方向は、例えば、パネル部30の後述する偏光板302を透過する偏光方向を90°回転させた方向である。投射レンズ212は、入射された光を、ミラー40を介してスクリーン31に投射する。このように、投射部20から射出される光は、直線偏光である。なお、上述の通り、本実施の形態では、投射部20から射出される直線偏光は、位相差板211を介して、スクリーン31に入射する。しかし、位相差板211を用いなくても、投射部20からの射出光の偏光方向がパネル部30の入射光として要求される偏光方向に既になっている場合には、位相差板211は設けなくてもよい。例えば、位相差板211を省略し、投射部20を、投射部20から射出される光の進行方向を軸として回転させることにより偏光方向を任意に調整することで、投射部20からの射出光の偏光方向をパネル部30の入射光として要求される偏光方向としてもよい。
次に、スクリーン31及びパネル部30について説明する。スクリーン31は、入射した光の偏光を維持する特性を有するスクリーンである。偏光を維持する特性を有するスクリーンとしては、例えば、日東樹脂株式会社製のブルーオーシャンスクリーンを用いることができる。
図2に示されるように、パネル部30は、予め定められた解像度の透過型液晶パネル301と、透過型液晶パネル301の表示面の大きさに対応する大きさの偏光板302とを有する。
スクリーン31、透過型液晶パネル301、及び偏光板302は、投射部20から射出された光の進行方向の順で、スクリーン31、透過型液晶パネル301、偏光板302の順に並んで構成されている。また、上述の通り、本実施の形態では、これらが一体に構成されている。なお、実施形態では、スクリーン31の大きさは、透過型液晶パネル301の大きさに対応する大きさである。
ここで、図2に示されるように、透過型液晶パネル301における、投射部20からの光の入射側には、偏光板は必ずしも設ける必要がない。これは、上述の通り、投射部20から射出される光が直線偏光となっているため、透過型液晶パネル301に光が入射する前段で偏光面を一つの平面に揃える必要がないからである。
透過型液晶パネル301は、図示しない液晶層及びガラス基板を有し、三原色信号からなる後述する第2の映像信号に応じて、投射部20から射出されスクリーン31を透過した三原色の各光を変調し偏光方向を変更する。透過型液晶パネル301を介した光は、偏光板302に入射される。偏光板302は、所定の方向に偏光した光を透過させる。このような構成により、パネル部30は、第2の映像信号に基づいて、投射部20から入射されたR光、G光、B光のそれぞれの透過量を画素ごとに制御して、表示を行う。このような構成により、R用表示素子209Rにより変調されたR光、G用表示素子209Gにより変調されたG光、及びB用表示素子209Bにより変調されたB光のそれぞれは、第2の映像信号に従ってパネル部30においてそれぞれ変調される。
図3は、表示装置1による表示を説明する模式図である。なお、図3においては、理解を容易にするため、ミラー40による投射光の反射については図示を省略している。図3の破線に示されるように、投射部20は、投射部20から離れるにしたがって広がり、光軸上においてパネル部30よりも投射部20から遠い所定の位置(図中に示されるフォーカス面の位置)において合焦するような投射光を射出する。すなわち、投射部20が射出する光のフォーカス面は、パネル部30よりも視点側にずれた位置にある。図3に示されるように、投射部20から射出された光により、スクリーン31において映像が表示されるが、投射部20が射出する光のフォーカス面はスクリーン31とは一致しないため、スクリーン31上ではぼけた映像が表示されることとなる。ここで、パネル部30は、後述する通り、スクリーン31上でのぼけた画像の透過型液晶パネル301に対する影響をキャンセルするフィルタ処理が施された第2の映像信号に基づいて、透過型液晶パネル301においてスクリーン31を経て入射した光を変調する。このような構成により、パネル部30は、スクリーン31における表示のぼけの影響が解消された映像を表示することが可能となる。なお、透過型液晶パネル301は、スクリーン31における表示のぼけによる輝度変化が解消された映像を表示することが可能な程度の解像度を有していればよい。つまり、後述のフィルタ処理が施された映像信号に基づく表示を実現する解像度であればよい。このような構成の表示装置1において、ユーザは、透過型液晶パネル301の画素による映像を見ることとなる。
ここで、表示装置1における偏光状態について説明する。図4は、表示装置1における偏光状態を模式的に示す図である。また、図5は、比較例の構成における偏光状態を模式的に示す図である。ここでは、比較例として、投射部20の構成をDLP(Digital Light Processing)に置き換えた構成を想定する。すなわち、比較例にかかる構成では、投射部20における位相差板211よりも前段の構成がDLPにより実現されているものとする。なお、図4及び図5において、(a)は位相差板211に入射する光の偏光状態を示し、(b)は位相差板211から射出された光の偏光状態を示し、(c)はパネル部30から射出された光の偏光状態を示す。ただし、より具体的には、図5(b)は、位相差板211から射出された光が、追加された偏光板を透過した後の偏光状態を示している。
上述の通り、本実施の形態では、位相差板211に入射する光は直線偏光である(図4(a)参照)。また、本実施の形態では、位相差板211により偏光方向が調整される(図4(b))。これに対し、比較例にかかる構成の場合、位相差板211に入射する光は無偏光の状態である(図5(a)参照)。このため、比較例にかかる構成の場合、偏光板を透過型液晶パネル301の前段に設けることが必要となる。このように偏光板を透過型液晶パネル301の前段に設けることにより、透過型液晶パネル301の入射光に要求される偏光が実現される(図5(b)参照)。しかし、このように偏光板を透過型液晶パネル301の前段に設けた場合、偏光板により光量にロスが生じてしまう。また、透過型液晶パネル301の大きさに相当する偏光板を設けることによるコストの上昇を招く。なお、パネル部30から射出された光の偏光状態は、偏光板302が透過させる光の偏光方向の直線偏光となる。なお、比較例で示した構成において、位相差板211は省略されてもよい。
図6は、表示装置1の構成を示すブロック図である。図6に示されるように、表示制御部50は、信号処理部500と第1の同期部511と、第2の同期部512とを有する。なお、表示制御部50の各構成は、プログラムによるソフトウェアで実現されてもよいし、ハードウェア、ファームウェア、及びソフトウェアのうちのいずれかの組み合わせ等により実現されてもよい。プログラムにより実現される場合、例えば表示制御部50の図示しないメモリに格納されたプログラムを表示制御部50の図示しないCPU(Central Processing Unit)により、実行することにより実現される。
信号処理部500には、入力映像信号と同期信号が入力される。信号処理部500に入力される入力映像信号は、例えば他の装置から表示装置1に伝送されたものであってもよいし、表示装置1の図示しない記憶装置に記憶されたものであってもよい。同期信号は、例えば図示しない同期信号生成回路により生成された同期信号が信号処理部500に入力される。
入力映像信号は、RGBの三原色信号からなる映像信号である。入力映像信号は、例えば、映像信号として一般的である8ビットの映像信号よりも高ビットの映像信号である。すなわち、例えば、入力映像信号は、R色の16ビットの入力映像信号と、G色の16ビットの入力映像信号と、B色の16ビットの入力映像信号から構成される。また、入力映像信号は、所定のガンマ値のガンマ補正がかけられている映像信号である。一例として、入力映像信号のガンマ特性のガンマ値は、2.2である。
信号処理部500は、入力映像信号から、投射部20による表示制御を行うための第1の映像信号と、パネル部30による表示制御を行うための第2の映像信号とを生成する。つまり、信号処理部500は、入力映像信号から第1の映像信号と第2の映像信号とを生成し、第1の映像信号に基づいて投射部20を制御し、第2の映像信号に基づいて透過型液晶パネル301を制御する。なお、信号処理部500による第1の映像信号及び第2の映像信号の生成については、後述する。信号処理部500は、入力された同期信号に同期して処理を行う。
信号処理部500は、生成した第1の映像信号を第1の同期部511に出力する。また、信号処理部500は、生成した第2の映像信号を第2の同期部512に出力する。なお、第1の同期部511及び第2の同期部512には、同期信号も出力される。
第1の映像信号は、第1の同期部511を介して、投射部20のデバイス駆動部250に供給される。また、第2の映像信号は、第2の同期部512を介して、パネル部30のパネル駆動部350に供給される。
投射部20及び透過型液晶パネル301において映像信号が入力されてから出画されるまでには種々の信号処理(駆動等)が行われる。このため、出画までにある程度の時間がかかることになる。ここで、投射部20において出画に要する時間と、透過型液晶パネル301において出画に要する時間とが異なるため、両者の出画タイミングをそろえるために同期をとる必要がある。このため、第1の同期部511及び第2の同期部512では、第1の映像信号及び第2の映像信号にそれぞれ最適な遅延をつける遅延処理を行う。なお、第1の同期部511又は第2の同期部512のいずれか一方において遅延処理がなされてもよい。第1の同期部511及び第2の同期部512は、同期信号に基づいて遅延処理を行う。そして、第1の同期部511は、第1の映像信号を投射部20のデバイス駆動部250に出力する。また、第2の同期部512は、第2の映像信号をパネル部30のパネル駆動部350に出力する。
デバイス駆動部250は、第1の映像信号にしたがって、表示素子209を駆動するための駆動信号を生成し、駆動信号により表示素子209を駆動する。また、パネル駆動部350は、第2の映像信号にしたがって、透過型液晶パネル301を駆動するための駆動信号を生成し、駆動信号により透過型液晶パネル301を駆動する。
図7は、信号処理部500の構成を示すブロック図である。信号処理部500は、図7に示すように第1のLUT(Lookup table:ルックアップテーブル)部501と、第2のLUT部502と、フィルタ処理部503とを有している。第1のLUT部501及び第2のLUT部502は、例えば、表示制御部50の図示しないメモリなどの記憶装置により実現される。
第1のLUT部501は、ルックアップテーブルにより、入力された入力映像信号から投射部20を第1の出力特性に調整する第1の映像信号を生成する。また、第2のLUT部502は、ルックアップテーブルにより、入力された入力映像信号から透過型液晶パネル301を第2の出力特性に調整する信号を生成する。ただし、第1の出力特性におけるガンマ値と第2の出力特性におけるガンマ値との和は、入力映像信号のガンマ値に等しい。ここでは、入力映像信号のガンマ値が、2.2であるものとして説明する。この場合、出力特性のガンマ値が2.2であるときに、入力映像信号は正しく表示される。したがって、投射部20による出力及びパネル部30による出力の全体で、出力特性としてガンマ値が2.2である表示装置を実現する必要がある。このため、例えば、第1のLUT部501を、投射部20の出力特性がガンマ1.1となるように調整されたテーブルとして構成する。また、第2のLUT部502を、パネル部30の出力特性がガンマ1.1となるように調整されたテーブルとして構成する。このようなテーブルは、例えば、実際に投射部20又はパネル部30において出力を行い、その際の照度を照度計により測定することにより作成することができる。その結果、表示装置1としては、ガンマ値2.2(=1.1+1.1)の出力特性を有することができる。
フィルタ処理部503は、スクリーン31に照射された投射部20からの射出光による合焦されていない画像に合わせて透過型液晶パネル301に表示される画像の調整をおこなう二次元フィルタ処理を実施し、第2のLUT部502から入力された信号から第2の映像信号を生成する。なお、スクリーン31の位置における投射部20からの射出光により形成される画像は、合焦されていないため画像がぼけた状態となる。ぼけの度合いは、投射部20についてのMTF(Modulation Transfer Function)特性及び投射部20のフォーカス面からのスクリーン31の距離に応じて定まる。投射部20についてのMTF特性とは、より具体的には投射部20のレンズ構成等により定まるMTF特性をいう。上述の通り、投射部20が射出する光のフォーカス面は、パネル部30よりも視点側にずれた位置にある。このため、スクリーン31における画像はぼけており、1つの画素に対応する光が隣接する画素に影響を与えている。ここで、透過型液晶パネル301は、スクリーン31に形成された画像により照明される。しかしながら、本実施の形態にかかる表示装置1では、上述のとおりスクリーン31の画像は、スクリーン31上では合焦されていないためにぼけているため、スクリーン31上の画像と透過型液晶表示パネル301の画像が一致しない。そのため、スクリーン31上に形成された画像のぼけの状態が、透過型液晶パネル301に影響しないよう透過型晶パネル301の駆動信号の調整を行う。これにより、スクリーン31上に形成されるぼけた画像の影響を低減する第2の映像信号を第2のLUT部502とフィルタ処理部503により生成し、明瞭な映像をパネル部30において表示する。
図8は、フィルタ処理部503の構成の一例を示すブロック図である。図8に示されるように、フィルタ処理部503は、第1ガンマ補正部550と、ラインメモリ551と、画素バッファ552と、2次元フィルタ553と、ゲイン調整部554と、係数記憶部555と、合成部556と、第2ガンマ補正部557とを有する。
映像信号がフィルタ処理部503に入力されると、第1ガンマ補正部550に供給される。具体的には、第2のLUT部502の出力信号が、第1ガンマ補正部550に供給される。映像信号は、画像フレームの上端のラインから下端のラインに向けて、ライン毎に画像フレームの左端から右端に向けて、画素単位で順次、フィルタ処理部503に入力される。
なお、フィルタ処理部503は、映像信号に対する後述する各処理を、RGB各色の信号についてそれぞれ独立して行う。以下では、特に記載のない限り、映像信号は、RGB各色の映像信号であるものとする。
第1ガンマ補正部550は、供給された映像信号に対してガンマ補正処理を施し、当該映像信号の階調特性を線形な特性に変換する。これにより、後段における画像処理を容易とすることができる。
第1ガンマ補正部550から出力された映像信号は、ラインメモリ551に格納される。ラインメモリ551は、それぞれ1ライン分の画素信号を格納可能なN(Nは自然数)本のラインメモリを含み、N本のラインメモリ全体でFIFO(First In, First Out)により読み書きが行われる。また、例えば、ラインメモリ551は、書き込みポートと読み出しポートとをそれぞれ有し、書き込みと読み出しとを並列的に実行可能な、ディアルポートタイプのものが用いられる。
一例として、ラインメモリ551に含まれるN本の各ラインメモリに1ラインずつ映像信号が格納され、ラインメモリ551が満杯になっている状態で、次のラインの先頭の画素がラインメモリ551に供給された場合について考える。この場合、N本の各ラインメモリにおいて格納される各画素の位置が1画素分シフトされ当該画素が1番目のラインメモリの先頭に格納されると共に、各ラインメモリの末尾の画素がそれぞれ次のラインメモリの先頭に格納される。最後のラインメモリの末尾の画素は、ラインメモリから押し出されて例えば捨てられる。
フィルタ処理部503は、ラインメモリ551に格納される画素を所定のブロック単位で読み出して、画素バッファ552に格納させる。例えば、画素バッファ552は、少なくとも、画像の垂直方向にN画素、水平方向にM(Mは自然数)画素の、N×M画素を格納可能とされている。フィルタ処理部503は、ラインメモリ551から、Nライン(画素)×M画素からなるブロックで画素を読み出して画素バッファ552に格納する。
画素バッファ552にNライン×M画素のブロックで格納された画素は、2次元フィルタ553およびゲイン調整部554に読み出される。詳細は後述するが、2次元フィルタ553およびゲイン調整部554は、係数記憶部555に予め記憶される係数を用いて画素バッファ552に格納される画素に対して演算を行い、1の画素の画素値を算出する。
例えば、フィルタ処理部503は、2次元フィルタ553およびゲイン調整部554から1画素分の画素値が出力されると、ラインメモリ551から、Nライン×M画素のブロックをライン方向に1画素分ずらして読み出して、画素バッファ552に格納する。フィルタ処理部503は、1ライン分の画素について画素値が出力されると、次のラインについて同様の処理を行い、各画素の画素値を算出する。
次に、上述した2次元フィルタ553およびゲイン調整部554における処理について説明する。2次元フィルタ553およびゲイン調整部554には、上述の通りNライン×M画素のブロックが供給される。
以下では、スクリーン31の位置におけるMTFの値が低い状態、つまりボケによる注目画素からの光の分散が注目画素を中心とする同心円状に発生するものとし、Nライン×M画素のブロックの中央の画素を、注目画素として選択したものとして説明を行う。すなわち、以下では、注目画素についての分散光が、注目画素の光を中心として同心円状に発生するものとする。
ゲイン調整部554は、注目画素の周辺における注目画素からの分散光の光強度の第1の総和を推測する。そして、ゲイン調整部554は、推測された第1の総和を、注目画素の画素値に基づく光強度に加算して、注目画素の補正された光強度Pcを求める。
すなわち、注目画素からの分散光の分だけ、元の光の光強度が減衰しているので、ゲイン調整部554は、注目画素からの分散光の第1の総和を求めて元の光の光強度に加算することで、元の光の光強度の減衰を補う。
ここで、画素に基づく光強度、すなわち、光源201から射出された光が表示素子209で画素に基づき変調された光の光強度は、当該画素の画素値に対応すると考えられる。そこで、注目画素の画素値を注目画素に基づく光の光強度と見做して、ゲイン調整部554による処理を行う。
MTFの計算の結果を基にして、注目画素からの分散光の面内各位置における光強度Fを算出する。
ゲイン調整部554は、算出された各光強度Fの第1の総和Bs求める。
注目画素の光強度P0は、理想的な光強度Ppから分散光の各光強度Fの第1の総和Bsを減じた値である。したがって、ゲイン調整部554は、補正された光強度Pcを下記の式(1)に従い求める。
Pc=P0+Bs …(1)
なお、上述では、第1の総和Bsを、注目画素と各画素との画素間距離を用いて求めた光強度Fに基づき求めたが、これはこの例に限定されない。例えば、第1の総和Bsを、注目画素との距離を連続的にとった場合の光強度Fの積分値として求めることもできる。
次に、2次元フィルタ553における処理について説明する。2次元フィルタ553は、注目画素の周辺に位置する各周辺画素からの分散光の、注目画素の位置での光強度を推測し、推測された光強度の第2の総和を求める。この第2の総和を、注目画素の画素値に基づく光強度から減算することで、周辺画素の影響を排除した注目画素の光強度を求めることができる。
すなわち、注目画素の周辺の周辺画素によっても、注目画素と同様に分散光が発生しており、この周辺画素からの分散光が注目画素による光に重畳される。
そこで、2次元フィルタ553は、周辺画素からの分散光の、注目画素の位置での光強度の第2の総和を求める。そして、求めた第2の総和を、後段の合成部556において注目画素の光強度から減算することで、注目画素に対する周辺画素からの影響を排除する。
周辺画素の分散光の、注目画素の位置での光強度は、注目画素の位置を中心として求めた光強度の分布を用いて求めることができる。この光強度の分布を示すデータは、上述したように、予め計算され係数記憶部555に記憶されている。
より具体的には、2次元フィルタ553は、係数記憶部555に記憶される係数を用いて、ブロック内の、注目画素を除く全ての画素iについて、当該画素の分散光の注目画素の位置における光強度Piを求める。そして、2次元フィルタ553は、各画素iについて求めた光強度Piの第2の総和Bxを求める。
ゲイン調整部554は、上述した式(1)により算出した補正された光強度Pcを、合成部556の加算入力端に入力する。また、2次元フィルタ553は、算出した第2の総和Bxを、合成部556の減算入力端に入力する。合成部556は、補正された光強度Pcから総和Bxを減じて、注目画素による光の理想的な光強度Ppを算出する。
すなわち、注目画素による光の光強度P0は、注目画素による光の理想的な光強度Ppと、上述した第1の総和Bsおよび第2の総和Bxとを用いて、下記の式(2)によって表すことができる。
P0=Pp−Bs+Bx …(2)
したがって、注目画素の光による理想的な光強度Ppは、下記の式(3)により表される。
Pp=P0+Bs−Bx …(3)
ここで、上述の式(1)により、P0+Bs=Pcである。したがって、合成部556でゲイン調整部554から出力された補正された光強度Pcから、2次元フィルタ553から出力された総和Bxを減じることで、注目画素の光による理想的な光強度Ppを得ることができる。
合成部556は、上述したようにして得られた光強度Ppの光に対応する画素値の画素を出力する。合成部556から出力された画素は、第2ガンマ補正部557に供給される。第2ガンマ補正部557は、供給された画素に対して第1ガンマ補正部550における補正の逆補正を施して、階調特性を非線形の特性として出力する。第2ガンマ補正部557から出力された画素は、第2の映像信号としてフィルタ処理部503から出力される。
信号処理部500は、上記構成により、入力映像信号から次のような第1の映像信号及び第2の映像信号を生成する。すなわち、第1の映像信号は、入力映像信号に対する第1のLUT部501の出力信号である。また、第2の映像信号は、入力映像信号に対する第2のLUT部502の出力信号であり、かつ、フィルタ処理部503による二次元フィルタ処理が施された信号である。より具体的には、図7に示されるように、信号処理部500に入力した入力映像信号は、第1のLUT部501及び第2のLUT部502に送られる。そして、第1のLUT部501では、第1の映像信号を生成する。また、第2のLUT部502では、出力した映像信号をフィルタ処理部503に出力する。フィルタ処理部503では、フィルタ処理により第2の映像信号を生成する。なお、このとき、入力映像信号におけるRGBの各信号に対し、それぞれ第1の映像信号又は第2の映像信号が生成される。すなわち、Rの入力映像信号から、Rの第1の映像信号及びRの第2の映像信号が生成される。また、Gの入力映像信号から、Gの第1の映像信号及びGの第2の映像信号が生成される。さらに、Bの入力映像信号から、Bの第1の映像信号及びBの第2の映像信号が生成される。ここで、第1の映像信号及び第2の映像信号の生成では、上述のように、LUTによりRGBがそれぞれ独立して処理されればよく、第1の映像信号及び第2の映像信号のビット数は、任意のビット数が可能である。例えば、入力映像信号が16ビットである場合、第1の映像信号及び第2の映像信号が16ビットの映像信号であってもよいし、MSB(most significant bit)側の上位8ビットの信号を第1の映像信号として供給し、LSB(least significant bit)側の下位8ビットの信号を第2の映像信号として供給してもよい。
ここで、LUTにより実現されるガンマ値に関し、さらに説明する。本実施の形態では、上述の通り、入力映像信号のガンマ特性を2つに分割しているため、第1の出力特性及び第2の出力特性がリニアに近くなる。このため、暗部階調の再現性が向上する。例えば、入力映像信号のガンマ特性のガンマ値が2.2で規定されていた場合、上述のように単純に分割すると、第1の出力特性及び第2の出力特性は、1.1となる。8ビット入力における1の値は、ガンマ値が2.2の場合においては明るさでいうと、白(8ビット入力における255の値)に対し、約0.000005となる。このため、表示面におけるコントラストが2,000,000:1で表示可能でないと、理論上のガンマカーブにおける1(8ビット)という値が示す明るさを再現することができない。これに対し、ガンマ値が1.1である場合には、8ビット入力における1の値は、白(8ビット入力における255の値)に対し、約0.0023となり、表示面におけるコントラストが440:1で表示可能であればよい。よって、透過型液晶パネル301に要求されるコントラストの性能を抑制することが可能である。すなわち、比較的容易に入手可能な透過型液晶パネル301と、投射部20の組み合わせで、理想のガンマ特性とすることが可能となる。
また、上述の通り、入力映像信号から第1の映像信号及び第2の映像信号を生成する際、RGBが独立しているので、ガンマ調整の実現が容易である。例えば、特開2007−310045号公報に記載されているように、輝度を変調する場合、入力映像信号のRGBからY(輝度)信号を生成するため、RGBが混色された色における階調性を保つのが容易ではない。これは、Y信号を生成するために1次元増えることとなり、RGBの3次元からRGBYの4次元への変換が必要とされるためである。これに対し、本実施の形態では、入力映像信号のRGB信号を、第1の映像信号のRGB信号と、第2の映像信号のRGB信号に分割するため、それぞれの色が独立して処理され、階調性を保つことが容易となる。また、RGBの3次元からRGBの3次元への変換であるため、第1の映像信号及び第2の映像信号の生成が、比較的容易に実現される。
さらに、本実施の形態による表示装置1によれば、ガンマ特性として2.2乗以上の大きなガンマ値をとる入力映像信号を表示することが可能である。これは次のような理由による。例えばガンマ特性が2.2の場合は、入力映像信号に2.2乗した値が規定した輝度(明るさ)になる。例えば、8ビット信号の1という値は、1/255=0.003921…であるが、輝度(明るさ)としては、(1/255)^2.2=0.000005077….となる。そのため、ガンマ特性を2.2乗より大きな値にすることは、入力映像信号としては同じであっても輝度は2.2乗の場合よりも小さい値(つまり暗くなる)になる。このため、入力映像信号のガンマ特性が2.2乗よりも大きくなるに従い、従来のディスプレイでは規定した輝度の表示が困難な領域になっていく。これに対し、本実施の形態においては、投射部20と透過型液晶パネル301の出力値の掛け算が最終的な出力値であるため、比較的容易に実現できる。このように、表示装置1によれば、ガンマ特性として2.2乗以上の大きなガンマ値をとる入力映像信号を表示することが可能である。入力映像信号のガンマ特性のガンマ値が大きいほど暗部階調性が保たれることから、本実施の形態にかかる表示装置1によれば、画像データを量子化した際の誤差を浮動小数点フォーマットの画像データとすることで暗部階調の量子化誤差を低減することにも寄与する。
ところで、上記説明では、一例として、第1の出力特性のガンマ値(すなわち投射部20の出力特性のガンマ値)を1.1とし、第2の出力特性のガンマ値(すなわちパネル部30の出力特性のガンマ値)を1.1としているが、これらに限られない。すなわち、第1の出力特性におけるガンマ値と第2の出力特性におけるガンマ値との和が、入力映像信号のガンマ値に等しければよい。図9〜11は、本実施の形態の表示装置1において入力映像信号または映像信号である入力値と光出力との関係(ガンマ特性)の例を示すグラフである。なお、図9〜11において、(a)は入力映像信号のガンマ特性を示し、(b)は透過型液晶パネル301のガンマ特性を示し、(c)は投射部20のガンマ特性を示す。また、図9〜11において、横軸は入力映像信号または映像信号である入力値を示し、縦軸は光出力値を示す。つまり、図9〜11の(b)において、横軸は第2のLUT部502から出力される第2の映像信号である入力値を示し、縦軸は透過型液晶パネル301の光出力値を示す。また、図9〜11の(c)において、横軸は第1のLUT部501から出力される第1の映像信号である入力値を示し、縦軸は投射部20の光出力値を示す。
図9は、上記説明で挙げた、入力映像信号のガンマ特性のガンマ値が2.2で規定されていた場合において、第1の出力特性(投射部20の出力特性)及び第2の出力特性(透過型液晶パネル301の出力特性)のガンマ値を1.1とした例である。
図10は、入力映像信号のガンマ特性のガンマ値が3.2で規定されていた場合において、第1の出力特性(投射部20の出力特性)のガンマ値を2.2とし、第2の出力特性(透過型液晶パネル301の出力特性)のガンマ値を1とした例である。なお、ここでは、投射部20は、透過型液晶パネル301よりも高いコントラストであるとする。このように、投射部20と透過型液晶パネル301のうちより高いコントラストの方の出力特性におけるガンマ値が、投射部20と透過型液晶パネル301のうちより低いコントラストの方の出力特性におけるガンマ値より大きく調整されてもよい。これにより、表示装置1全体のコントラストを向上することが可能となる。
図11は、透過型液晶パネル301の変調を暗部側の所定範囲に限定した場合の一例を示している。図11に示した例では、入力映像信号のガンマ特性のガンマ値が2.2で規定されていた場合において、第1の出力特性(投射部20の出力特性)のガンマ値を2.2(ただし、入力が0.25以下の場合のガンマ値は1.2)とし、第2の出力特性(透過型液晶パネル301の出力特性)のガンマ値を1とした例である。また、第2の出力特性では、入力値が0.25以上の場合、光出力量が一律に最大となっている。このように、透過型液晶パネル301の出力特性は、入力値が予め定められた値以上である場合、出力が最大値に固定されてもよい。これにより、透過型液晶パネル301の全階調を入力値が0.25以下のガンマの領域に割り当てることができるようになり、暗部側の階調をより細かい階調で表現できるという利点がある。
以上、本実施の形態にかかる表示装置1について説明した。表示装置1では、上述の通り、投射部20によりRGBのそれぞれについて変調された光が出力され、投射部20から射出されたRGBの光のそれぞれは、さらに透過型液晶パネル301において変調される。これにより、漏れ光の影響を抑えることができ、コントラストを向上することができる。ここで、R色のみの表示を行う場合を例に、比較例を交えて説明する。例えば、比較例として、1つ目の変調がバックライトなどの制御により行われ、2つ目の変調がバックライトの光に対し行われる液晶ディスプレイを想定した場合、2つ目の変調デバイスにおけるG光及びB光の漏れ光により、コントラストの低下を招く。また、G光及びB光の漏れ光の影響により、本来の色からずれた色、すなわち色度図において白色方向の点にずれた色が表示されることとなる。また、例えば、比較例として、特開2007−310045号公報に記載されているように、2つ目の変調デバイスにより輝度を変調する場合も、上記液晶ディスプレイの比較例に比べると改善されるものの、同様の事態が生じる。これに対し、本実施の形態にかかる表示装置1では、R光、G光及びB光のそれぞれに対し2重で変調がかかるため、漏れ光を抑制することができる。このため、コントラストの低下及び色ずれを抑制することができ、特に有彩色においても、ダイナミックレンジの拡大が可能となる。
実施の形態2
次に、本発明の実施の形態2について説明する。実施の形態1では、スクリーン31及びパネル部30が一体に構成された表示装置について示したが、スクリーン31及びパネル部30は必ずしも一体に構成されていなくてもよい。実施の形態2では、スクリーン31とパネル部30とが離れて配置されている。図12は、実施の形態2にかかる表示装置2の構成の一例を示す模式図である。なお、図12においては、理解を容易にするため、ミラー40による投射光の反射については図示を省略している。
表示装置2は、スクリーン31とパネル部30の位置関係が異なるだけであり、他の構成については実施の形態1にかかる表示装置1と同様である。よって、スクリーン31、透過型液晶パネル301、及び偏光板302は、投射部20から射出された光の進行方向の順で、スクリーン31、透過型液晶パネル301、偏光板302の順に並んで構成されている。図12に示されるように、本実施の形態にかかる表示装置2においては、スクリーン31が、投射部20から射出された光の進行方向とは逆方向に、パネル部30と予め定められた距離だけ離れて配置されている。なお、表示装置2においてパネル部30が光軸方向に移動可能に構成されていてもよい。
このような構成の表示装置2においても、実施の形態1と同様、ダイナミックレンジを向上することができる。
実施の形態3
次に、本発明の実施の形態3について説明する。実施の形態2にかかる表示装置2のように、スクリーン31とパネル部30とが離れて配置されている場合、ユーザの視点の位置によっては、スクリーン31の表示領域とパネル部30の表示領域にずれが生じ、二重の像が見えてしまう恐れがある。そこで、本実施の形態では、投射部20は、視点の位置に応じた投射範囲の光を射出する。図13は、実施の形態3にかかる表示装置3の構成の一例を示す模式図である。なお、図13においては、理解を容易にするため、ミラー40による投射光の反射については図示を省略している。
図13に示されるように、本実施の形態にかかる表示装置3においては、実施の形態2にかかる表示装置2と同様、スクリーン31が、投射部20から射出された光の進行方向とは逆方向に、パネル部30と予め定められた距離だけ離れて配置されている。ここで、投射部20は、視点位置情報を取得し、視点位置(ユーザがパネル部30を見る位置)に応じた投射範囲を実現する。なお、視点位置情報は、任意の方法により取得されればよい。例えば、表示装置3にユーザからの操作指示により入力されてもよいし、他の装置から受信してもよい。具体的には、投射部20は、ユーザが視点位置情報で示される視点位置からパネル部30越しにスクリーン31を見た際のスクリーン31上の視野の範囲を、第1の映像信号に応じて変調された直線偏光の投射範囲として設定する。このため、スクリーン31の大きさについては、設定されうる視点位置のそれぞれに対応する投射範囲を網羅する大きさとなっている。なお、表示装置3の投射部20は視点位置により投射範囲が異なるが、各投射範囲は等倍の関係にある。また、設定された投射範囲の光を投射するために、投射部20は、例えば投射レンズ212又は図示しない光学機構を駆動して投射範囲を調整する。図13に示した例では、投射部20は、視点の位置が視点位置Aである場合に投射範囲60の光を投射し、視点の位置が視点位置Bである場合に投射範囲61の光を投射する。なお、図13に示される投射範囲60、61は、投射部20によるスクリーン31上の投射範囲を示す。
以上、実施の形態3について説明したが、実施の形態3にかかる表示装置3の他の構成については、上述の他の実施の形態と同様である。よって、スクリーン31、透過型液晶パネル301、及び偏光板302は、投射部20から射出された光の進行方向の順で、スクリーン31、透過型液晶パネル301、偏光板302の順に並んで構成されている。本実施の形態にかかる表示装置3によれば、パネル部30とスクリーン31とが離れて配置された構成である場合に、二重の像が見えてしまうことを抑制することができる。
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、上記実施の形態では、入力映像信号、第1の映像信号、及び第2の映像信号について、RGB信号として説明したが、他の色空間で表された信号であってもよい。例えば、YPbPr信号などのように輝度信号と2つの色差信号により表された信号が用いられてもよい。
また、上記実施の形態では、投射部20により直線偏光を射出する構成としたが、投射部20が、上述の第1の映像信号に応じて変調された、直線偏光以外の光を射出する投射部に置き換えられてもよい。すなわち、例えば、上述の第1の映像信号に応じて変調された円偏光を射出する投射部、又は上述の第1の映像信号に応じて変調された無偏光の光を射出する投射部が用いられてもよい。また、透過型液晶パネル301の駆動方式は、任意の方式が可能である。例えば、透過型液晶パネル301は、TN(Twisted Nematic)方式の液晶パネルであってもよいし、VA(Virtical Alignment)方式の液晶パネルであってもよいし、IPS(In-Place-Switching)方式の液晶パネルであってもよい。
ここで、液晶にかける電圧によって入射光の偏光方向を制御するTN方式、VA方式、及びIPS方式の各液晶パネルについて説明する。図14は、TN方式、VA方式、及びIPS方式の各液晶パネルの特徴をまとめた表である。ここで、TN方式については、液晶パネルにかかる電圧が最大の時に、光が遮断され画面は黒の表示となり、液晶パネルに電圧をかけていない時に、画面は白の表示となるタイプを一例として示す。これに対し、VA方式及びIPS方式については、液晶パネルに電圧をかけていない時に、光が遮断され画面は黒の表示となり、液晶パネルにかかる電圧が最大の時に、画面は白の表示となるタイプを一例として示す。
また、各方式のコントラストを比較すると、VA方式が最もコントラストが大きく、次にTN方式のコントラストが大きい。このため、IPS方式は、これら3つの方式で、最もコントラストの性能が劣っている。また、各方式の視野角を比較すると、IPS方式が最も視野角が大きく、次にVA方式の視野角が大きい。このため、TN方式は、これら3つの方式で、最も視野角の性能が劣っている。なお、図14において、コントラスト及び視野角の欄の数字は、値が小さいほど優れていることを示している。
以下、透過型液晶パネル301として上述した各方式の透過型液晶パネルを用いた場合の表示装置の構成例について具体的に説明する。
ここで、液晶パネルの光の出射側にある偏光板302の偏光方向、すなわち偏光板302の透過軸、を基準とする。ここで、液晶パネルに電圧をかけていない状態で、光の位相が1/2λ変化するタイプのTN方式の液晶パネルを用いる場合、液晶パネルを透過した光の偏光方向は、液晶パネルに入射する光の偏光方向に対して直交する。したがって、このタイプのTN方式の液晶パネルを使用する場合には、液晶パネルに入射する光の偏光方向が、基準に対して90°回転していることが求められる。
また、液晶パネルに最大電圧をかけた状態で、光の位相が1/2λ変化するタイプのVA方式及びIPS方式の場合、液晶パネルに入射する光の偏光方向が、基準に対して90°回転していることが求められる。一方、液晶パネルに電圧をかけていない状態では、偏光状態に変化はない。
したがって、上記のようなTN、VA及びIPSのうちいずれの方式の液晶パネルが用いられるとしても、投射部20が射出する光の偏光方向は、基準に対して直交した方向であればよい。
図15は、上記実施形態に示されるように、直線偏光を射出する投射部20により表示装置を構成する場合の構成例についてまとめた表である。上述の通り、液晶パネルに入射する光の偏光方向は、基準に対して90°回転していることが求められる。このため、図15の構成例1及び4に示すように、投射部20の射出光の偏光方向が基準と同じ方向の場合には、入射光の偏光面に対し遅相軸又は進相軸が90°の方位角に配置された位相差板である1/2λ板を、投射部20と透過型液晶パネル301との間に挿入して、偏光方向を基準に対して直交させる。上記位相差板211は、このような位相差板に相当する。なお、図15の構成例2及び3に示されるように、投射部20の射出光の偏光方向が基準と直交している場合には、投射部20の射出光の偏光方向を変更する必要がないため、位相差板の挿入は不要である。
図16は、円偏光を射出する投射部により表示装置を構成する場合の構成例についてまとめた表である。直線偏光を射出する投射部20の代わりに、射出光が円偏光である投射部を用いて上述の表示装置を構成する場合、図16の構成例5及び6に示されるように、基準に対し遅相軸又は進相軸が45度の方位角に配置された位相差板である1/4λ板を、投射部20と透過型液晶パネル301との間に挿入して、偏光方向を基準に対して直交させる。なお、図16において、構成例5は、偏光板の透過軸が垂直方向である場合に、投射部が左回り又は右回りの円偏光を射出するときの構成例を示している。また、構成例6は、偏光板の透過軸が水平方向である場合に、投射部が左回り又は右回りの円偏光を射出するときの構成例を示している。いずれの構成例においても、円偏光の回転方向に応じて位相差板の光学軸を回転させて調整することにより、液晶パネルに入射する光の偏光方向を基準に対して直交させることができる。
図17は、無偏光の光を射出する投射部により表示装置を構成する場合の構成例についてまとめた表である。直線偏光を射出する投射部20の代わりに、射出光が無偏光である投射部を用いて上述の表示装置を構成する場合、図17の構成例7及び8に示されるように、次のように表示装置を構成する。すなわち、この表示装置では、液晶パネルの光の出射側にある偏光板302の透過軸と直交する透過軸を有する偏光板を、投射部20と透過型液晶パネル301との間に挿入して、透過型液晶パネル301に入射する光の偏光方向を基準に対して直交させる。なお、この表示装置では、位相差板は必ずしも必要ではない。
以上説明した通り、投射部として、様々な種類のものが採用可能である。なお、図15から図17では、一例として、液晶パネルの光の出射側にある偏光板302の偏光方向が水平方向又は垂直方向である場合についてのみ示したが、これら以外の方向に回転していても、表示装置を適宜構成可能であることは言うまでもない。
また、以上説明した通り、透過型液晶パネルの方式は、TN方式、VA方式、及びIPS方式を含む様々な方式のパネルが採用可能である。なお、表示装置において映像を見る者、すなわちユーザが、見る対象が液晶パネルである場合、視野角がTN方式及びVA方式よりも優れているIPS方式を用いることが好ましい。したがって、上記実施の形態において、透過型液晶パネル301として、VA方式の液晶パネルが用いられることが好ましい。
また、液晶により偏光方向が90°回転した場合に光を透過する構成を備えた液晶パネルを例に説明したが、例えば、液晶により偏光方向が90°回転した場合に光を遮断する構成を備えた液晶パネルが用いられる場合には、投射部の射出光の偏光方向と上記基準とが一致していてもよい。このように、液晶パネルの入射光として要求される偏光方向を有する光が液晶パネルに入射するように表示装置が構成されていればよい。