以下、図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。図1〜図27は本発明の一実施形態に係るアキシャルギャップ型の回転電機を説明する図である。
図1および図2において、回転電機100は、外形が概略円盤形状になるように形成されているステータ110と2つのロータ120、130とを備えており、後述するように、外部からロータ120、130に、スリップリングなどを用いた接触式でエネルギー入力する必要のない構造を有して、例えば、ハイブリッド自動車や電気自動車に搭載するのに好適な性能を有している。
この回転電機100は、ステータ110の両面にギャップGを介して対面して挟み込む形態になるように、軸心を貫通するシャフト(回転軸)101に2つのロータ120、130がそれぞれ取り付けられており、ステータ110がシャフト101を回転自在に支持して、ロータ120、130がそのシャフト101に固定されている。すなわち、回転電機100は、シャフト101の軸方向にステータ110を2つのロータ120、130で挟み込んで対面するアキシャルギャップのダブルロータ型モータに構築されている。
ステータ110は、図3に示すように、短尺な棒状で断面が概略台形となる複数のステータコア15(コア材)を備えており、そのステータコア15に3相の交流電源(例えば、不図示の車載バッテリなどの外部電源)が接続される電機子コイル11が、それぞれ巻き付けられてシャフト101の軸周りに位置するように配置されている。
ステータコア15は、高透磁率の磁性材料で作製されており、シャフト101と平行方向に延伸されて3相各相の電機子コイル11(11u、11v、11w)がそれぞれ6極ずつ隙間なく並列状態になるように集中巻きされている。
すなわち、電機子コイル11は、ステータコア15間の18箇所のステータスロット17を利用してシャフト101の延伸方向と平行な中心線を有する巻線コイルとして形成することにより、シャフト101周りに18極(磁極数18)が均等配置されている。要するに、電機子コイル11は、回転軸の軸方向と平行な方向を中心として巻線が巻かれており、その回転軸の周りにそれぞれ均等配置されている。
このステータコア15は、図2に示すように、ロータ120、130との間に介在するように挟み込まれている2枚の円盤形状の保持枠(保持板、枠部材)16に両端側が保持されており、保持枠16は、開口する保持穴16a内にステータコア15の端部15a(図3、図4を参照)を差し込んで端面15bを露出させる状態(所謂、オフセット状態)で保持するようになっている。なお、保持枠16は、磁気回路の形成を妨げないように非磁性体材料、例えば、後述のPPS樹脂で作製されており、中心部に取り付けられているベアリング108により、貫通するシャフト101を回転自在に支持している。
具体的に、ステータコア15は、図4に示すように、帯状の平角線11Lを、所謂、α巻きに巻き付けることにより電機子コイル11が形成されている。
ここで、平角線11Lのα巻きは、例えば、ステータコア15の断面台形における幅の狭い先端部(軸心側に近傍の箇所)15cに、平角線11Lの長さ方向における中心付近を密接させる状態にしつつ襷掛けにして巻き始める巻き方であり、平角線11Lの長さ方向の中心付近に対する一方側を、ステータコア15の一方の端部15a側の端面15b(例えば、図4の上面側)の平面方向に沿うように同一箇所を周回させて巻き付けるとともに、平角線11Lの長さ方向の中心付近に対する他方側を、ステータコア15の他方の端部15a側の端面15b(例えば、図4の下面側)の平面方向に沿うように同一箇所を周回させて巻き付ける巻き方である。すなわち、電機子コイル11は、回転軸の軸方向において2段となるように平角線11Lが巻き付けられており、平角線11Lの2段の端部は同じ側(ステータ110の外周側)に引き出されている。
これにより、ステータ110は、平角線11Lを巻線としてステータコア15にα巻きして電機子コイル11が形成されることによって、後述するロータコア25に鎖交させる磁束に直交する巻線の断面積を小さくすることができ、その巻線内で発生する渦電流損を低減することができる。
また、ステータ110は、ステータコア15の端面15bと電機子コイル11の周回端面(軸方向における端面)とはオフセット状態にあることから、ステータコア15の端面15b付近から直接電機子コイル11に鎖交する高調波磁束を低減することができる。このため、巻線コイルに発生する渦電流損(高調波銅損)を軽減して発熱分布の発生を制限することができ、巻線における温度分布の発生に起因する抵抗値の均一性低下により銅損が発生するなどの悪循環を抑制することができる。
さらに、ステータ110では、ステータコア15にα巻きする平角線11Lの長さ方向の中心付近に対する一方側の端部11Laと他方側の端部11Lbを周回面内で引き出すことができる。このため、電機子コイル11の平角線11Lの巻き付け量をできるだけ大きくすることができる。また、平角線11Lの端部11La、11Lbをステータコア15の端面15b側から引き出して保持枠16を設置する場合と比較して、本実施形態の回転電機100では、保持枠16の設置の邪魔になってしまうことを回避することができ、さらに、その保持枠16が振動などした場合でも保持枠16と平角線11Lやステータコア15などの部材とが互いに接触して損傷してしまうことを抑制することができる。なお、本実施形態では、平角線11Lの端部11La、11Lbを先端部15cの反対側、すなわちステータ110の外周側から引き出しているが、その先端部15c側から引き出しても良い。
また、ステータコア15は、両端部15aの台形の幅広となる外周側に切欠15k(凹部)が形成されており、この切欠15kに対応するよう保持枠16の保持穴16aの幅広側の外周縁には、突起16t(凸部、図5を参照)が形成されている。そして、保持穴16aの突起16tをステータコア15の切欠15kに嵌め込んで軸方向に位置決め保持するようになっている。ここで、保持枠16は、保持穴16a内にステータコア15の両端部15aを嵌め込む状態で内部に収容する空間を形成する短尺な有底の円筒形状に作製されており、外周側の肉厚部16dを突き合わせてネジ穴16hを利用してネジ止めすることにより、ステータコア15を位置決め保持するようになっている。
これによっても、ステータ110は、保持枠16が振動などにより平角線11Lに強く当たってしまうことを未然に防止することができ、損傷してしまうことを抑制することができる。
また、ステータ110は、図5に示すように、ステータコア15の電機子コイル11が3相のU相、V相、W相毎に並列接続されており、車載バッテリの直流電流をインバータにより変換した3相の交流電流が相毎の入力線19から通電されるようになっている。例えば、図6に示すように、その3相の電機子コイル11u、11v、11w毎の一方側の平角線11Lの端部11Laは、3相のU相、V相、W相毎に準備されている全体でリング形状となる円弧形状のバスバー12u、12v、12wがカシメクリップ13により作業性良く容易に締結されて並列に導通接続されている。また、その他方側の平角線11Lの端部の11Lbは、同様に、3相の中性点とするバスバー12aがカシメクリップ13により締結されて並列に導通接続されている。なお、本実施形態では、バスバー12u、12v、12w、12aをステータ110の外周側に配置するが、これに限らず、内周側に設置しても良い。
ここで、電機子コイル11の接続端部11La、11Lbは、図6および図7に示すように、ステータコア15に巻き付ける平角線11Lの周回面の外側に引き出されて、ステータ110の外周側に位置されるようにしている。このことから、板状のバスバー12(12u、12v、12w、12a)は、板状における平面が軸心と交差する方向と平行になるように設置しつつ外周側で上下2段になるようにして個々に接続するようになっており、軸方向および平面方向に厚くなることなくステータ110を構築することができる。
そして、ステータ110は、電機子コイル11(平角線11L)が巻き付けられてバスバー12u、12v、12w、12aにより導通接続されているステータコア15を保持枠16内に収容した状態とした後に、その保持枠16内に、例えば、放熱特性に優れるPPS(Polyphenylenesulfide)樹脂を射出充填(注入)して固定するようになっている。具体的には、図8に示すように、ステータ110は、ステータコア15などを保持枠16の内部に収容して肉厚部16dをネジ止めした後に、その肉厚部16dに開口して電機子コイル11の3相分の入力線19を引き出す引出口16eから内部にPPS樹脂(樹脂材料)を射出充填して固化させるようになっている。
これにより、ステータ110は、図9に示すように、保持枠16内の収容空間におけるステータスロット17などの部材間の隙間にPPS樹脂を注入することができ、射出充填用金型を準備することなく、そのステータコア15や電機子コイル11やバスバー12やカシメクリップ13の間の隙間にPPS樹脂を侵入させて固定した樹脂モールドMoSにすることができる。このため、各部材が樹脂モールドMoSに保持されることにより、遠心力や振動により移動することが制限されて、特性を安定化させることにより電磁振動等を抑制することができる。また、遠心力や振動、衝撃に対する堅牢性を確保することができる。また、樹脂モールドMoSとすることにより水分等の浸入を制限して耐久性も向上させることができる。
これにより、ステータコア15は、その端部15aの端面15bが、ロータ120、130の後述するロータコア(コア材)25の端部25aの端面25bにギャップGを介して対面するようにステータ110に配置されている。ステータ110は、電機子コイル11に交流電力を通電されることにより磁束を発生させ、その磁束をステータコア15の端面15bからロータ120、130のロータコア25の端面25bに鎖交させることができる。
このため、回転電機100では、ステータコア15の両側に位置するロータコア25に鎖交させる磁束を後述のヨーク26で迂回させることにより閉じた磁気回路を形成することができ、その磁気回路を形成する磁束の磁路を最短にしようとするリラクタンストルク(主回転力)により、ステータ110を挟み込む2つのロータ120、130をそれぞれ回転駆動させることができる。
このことから、回転電機100は、共通のシャフト101に固定されているロータ120、130を同等の回転力で一体回転させる必要があり、そのロータ120、130はステータ110の両面側で対称となる構造に構築されている。
この結果、回転電機100は、通電入力する電気的エネルギーを、ステータ110の両面側で回転駆動するロータ120、130と軸心を一致させつつ一体回転するシャフト101から機械的エネルギーとして出力することができる。
このとき、回転電機100では、ステータコア15からロータコア25に鎖交させる磁束に空間高調波成分が重畳している。このため、ロータ120、130側でも、ステータ110側から鎖交される磁束の空間高調波成分の磁束密度の変化を利用して、内蔵するコイルに誘導電流を発生させ電磁力を得ることができる。
詳細には、ステータ110の電機子コイル11が生成する磁束は、通電する交流電力の基本周波数で変動する主磁束に空間高調波成分が重畳して、ロータ120、130(ロータコア25)に鎖交するようになっている。
このため、ロータ120、130は、主磁束の基本周波数と異なる周期で時間的に変化する空間高調波磁束がロータコア25に鎖交することになり、ロータコア25にコイルを設置することにより、別途、車載バッテリなどの外部電源等に接続して電力を入力することなく、効率よく誘導電流を発生させることができる。この結果、鉄損の原因となる空間高調波磁束を自己励磁するためのエネルギーとして回収することができる。
回転電機100は、図10に示すように、シャフト101に固定するための円筒部23の周囲にロータコア25が均等配置されており、このロータコア25の隣接する側面間に形成される空間をロータスロット27として利用して、誘導コイル21と界磁コイル22とを配置している。この誘導コイル21と界磁コイル22は、ロータコア25の長さ方向(軸方向)に2段の巻線として、電機子コイル11の平角線11Lよりも幅の狭い平角線21L、22Lをそれぞれα巻きにして巻き付けられている。すなわち、誘導コイル21と界磁コイル22は、回転軸の軸方向において2段となるように平角線21L、22Lがそれぞれ巻き付けられており、平角線21L、22Lそれぞれの2段の端部は同じ側(ロータ120、130の外周側)に引き出されている。
これにより、ロータ120、130において、ステータコア15から鎖交する磁束に対して直交する巻線の断面積を小さくすることができ、その巻線内で発生する渦電流損を低減することができる。また、α巻きする平角線21L、22Lは、ロータコア25に幅広面を接触させているので、通電による発熱を効率よく伝熱して連続稼動させることができる。また、ロータコア25の端面25bと誘導コイル21の周回端面とがオフセット状態にあることから、誘導コイル21で発生する誘導電流が不安定になって界磁電流の脈動が大きくなることによるトルクリプルなどの特性劣化の発生を抑制することができる。
さらに、ロータ120、130において、平角線21L、22Lをα巻きすることにより誘導コイル21や界磁コイル22の巻き付け量を大きくすることができる。また、誘導コイル21や界磁コイル22から後述の第1、第2接続端部21p、21q、22p、22qを巻線から引き出す際に、ロータコア25周りでの部材の積み重ねや後述の保持盤41の取り付けに邪魔になってしまうことを回避することができる。これにより、保持盤41と平角線21L、22Lやロータコア25などの部材とが互いに接触して負荷を受けることにより損傷してしまうことを効果的に抑制することができる。
具体的に、ロータ120、130は、短尺な棒状で断面が概略台形となる複数のロータコア25をヨーク26の一面側に備えており、このロータコア25に誘導コイル21と界磁コイル22とが巻き付けられてシャフト101の軸周りに位置するように配置されている。
ロータコア25は、高透磁率の磁性材料で作製されており、シャフト101と平行方向に延伸されて、共通のコア材として上下2段になるように誘導コイル21と界磁コイル22とがそれぞれ隙間なく集中巻きされて並列されている。
すなわち、誘導コイル21と界磁コイル22は、ロータコア25間の12箇所のロータスロット27を利用してシャフト101と平行な中心線となる巻線コイルに形成することによりシャフト101周りに12極(スロット数12)が均等配置されている。要するに、誘導コイル21と界磁コイル22は、回転軸の軸方向と平行な方向を中心として巻線が巻かれており、その回転軸の周りにそれぞれ均等配置されている。
よって、回転電機100は、ロータ120、130側の誘導コイル21および界磁コイル22のスロット数S(12)とステータ110側の電機子コイル11の磁極数P(18)との構成比S/Pが2/3となるように形成されている。
また、ロータコア25は、ステータコア15の端面15bにギャップGを介して端面25bを対面させるように端部25aから離隔する側を円盤形状のヨーク26の一面側に一体形成されている。なお、ヨーク26は、中心部にシャフト101を貫通させて固定する円筒部23が一体になるように取り付けられている。
この構造により、ステータコア15の端面15b側からロータコア25の端面25bに鎖交する磁束は、その端面25bの背面側のヨーク26を迂回して別個のロータコア25を磁路とすることができ、そのロータコア25の端面25bに対面するステータコア15の端面15bに再度鎖交することにより閉じた磁気回路を形成することができる。
そして、誘導コイル21は、ロータコア25のヨーク26から離隔してステータコア15からの空間高調波磁束を効果的に鎖交させることのできる端部25a側に配置されており、界磁コイル22は、ロータコア25のヨーク26に近接する連接部25c側に配置されている。
これにより、回転電機100は、小さなギャップGを介してステータコア15の端面15bからロータコア25の端面25bに磁束を高密度に鎖交させることができ、その鎖交する磁束に含まれる空間高調波成分(基本波に対する磁束密度の変化)により誘導コイル21に誘導電流を発生させて界磁コイル22に供給することができる。
この界磁コイル22は、誘導コイル21から受け取った誘導電流を界磁電流として自己励磁することにより、磁束(電磁力)を発生することができ、その磁束をロータコア25の端面25bからステータコア15の端面15bに鎖交させることができる。
このため、回転電機100は、主回転力を発生する電機子コイル11の磁束とは別にマグネットトルク(補助回転力)を得ることができ、ロータ120、130の回転駆動を補助することができる。
このとき、回転電機100は、誘導コイル21で発生させる交流の誘導電流を直流の界磁電流にして界磁コイル22に供給することにより、ロータコア25を電磁石として機能させて電磁力を発生させることから、その交流の誘導電流を有効利用するために、図11に示す閉回路30内に誘導コイル21と界磁コイル22がそれぞれ組み込まれている。
これら誘導コイル21と界磁コイル22は、隣接位置のロータコア25とロータスロット27との2組を1セットとして、ダイオード(整流素子)29A、29Bと共に閉回路30を構成している。
閉回路30は、図11に示すように、直列接続されている2つの界磁コイル22の両端部が、並列接続されている2つの誘導コイル21の両端部にそれぞれダイオード29A、29Bを介して接続されている。
具体的に、閉回路30は、逆向きの周回方向に集中巻きされて直列接続されている2つの界磁コイル22の一方側の第1接続端部22pと、同一の周回方向に集中巻きされて並列接続されている2つの誘導コイル21の2つの第1接続端部21pとが1つの接続点で接続されている。また、直列接続されている2つの界磁コイル22の他方側の第2接続端部22qはダイオード29A、29Bの双方のカソード側の接続ピン(接続端子)29cに接続され、また、並列接続されている2つの誘導コイル21の2つの第2接続端部21qはダイオード29A、29Bのそれぞれのアノード側の接続ピン29cに接続されている。すなわち、ダイオード29A、29Bは、それぞれのカソード側同士を接続した接続ピン29cを外部に露出させ、アノード側の接続ピン29cのそれぞれをそのまま外部に露出させるカソードコモン型にパッケージ化されている。
このダイオード29A、29Bは、それぞれ180度位相差になるように結線して、一方の誘導電流を反転させて半波整流出力を合算する中性点クランプ型の全波整流回路に形成されている。
これにより、回転電機100では、隣接する誘導コイル21と界磁コイル22の2組ずつとダイオード29A、29Bとの1セットで閉回路30を構成するが、閉回路30における誘導コイル21は、同一の周回方向に巻かれる集中巻きにされて並列されているとともに、界磁コイル22は、ロータ120、130の全周方向において、巻かれる周回方向が交互になるように巻き付けられている。
このため、回転電機100では、自励により得られた直流電力(界磁電流)の通電によりロータコア25の界磁コイル22で発生する電磁石の磁化方向は、周方向において交互にされており、ステータ110のステータコア15に対してN極とS極とが交互に対面するようになっている。
そして、回転電機100は、図11に示す閉回路30の6セットが、ロータ120、130の周方向に並置されている。すなわち、図12に示すように、ダイオード29A、29Bを収納するダイオードケース32が、ヨーク26のロータコア25の背面側でロータ120、130の周方向に並列するように配置されている。
この回転電機100では、ロータ120、130において誘導コイル21と界磁コイル22を巻き付けるロータコア25の突極数Pと、ステータ110において電機子コイル11を設置するステータスロット17のスロット数Sとの構成比(コンビネーション)がP/S=2/3となる構造を採用することにより、それぞれの閉回路30の誘導コイル21に鎖交する高調波磁束の波形を共通にしている。
このため、位相差なく誘導コイル21で発生させる誘導電流は、ダイオード29A、29Bで整流した同程度の界磁電流として界磁コイル22に供給することができ、発生する電磁力を損失なく有効利用して、ロータ120、130を効率よくかつ高品質に回転駆動させることができる。
このような回路構成により、本実施形態の回転電機100では、閉回路30毎の6セットにセグメント化させているため、ロータ120、130の誘導コイル21および界磁コイル22の全てを2つのダイオード29A、29Bで整流して電磁石として機能させる直列回路とする場合よりも、巻線抵抗が積算されて高抵抗値になってしまうことを回避することができる。
このことから、例えば、車両を低速走行させるためにロータ120、130を低速回転させるような場合では、誘導コイル21に鎖交する磁束量の変化が小さくなって発生する誘導電流も小さくなる。しかしながら、回転電機100では、その誘導コイル21や界磁コイル22の巻線抵抗での浪費を少なくして(制限抵抗値を小さくして)、界磁コイル22を無駄な電力浪費なく励磁させることができる。これにより、効率よく電磁力を発生させることができ、ステータ110の電機子コイル11により発生される回転力を有効に補助させることができる。
このとき、誘導コイル21で発生させる誘導電圧や界磁コイル22で発生する界磁電圧も分散させて低電圧に抑えることができ、巻線に通電することにより発生する銅損も低減することができる。よって、電圧値が高くなり過ぎるために所望のトルクを得ることができなくなってしまうことを回避することができる。
ところで、誘導コイル21や界磁コイル22の低抵抗化や低電圧化は、その誘導コイル21と界磁コイル22の個々をそれぞれ並列接続することでも達成することができる。しかしながら、両端部が並列接続されている誘導コイル21と界磁コイル22のそれぞれでは、磁束の発生(変化)を打ち消す方向の誘起電圧が発生するので、誘導コイル21や界磁コイル22の並列回路内に循環電流が発生してしまい磁束(磁力)の発生を妨げてしまう。このため、回転電機100の整流回路としては、ロータ120、130に閉回路30をそれぞれ6セット配置するのが好適である。
具体的に、閉回路30は、ダイオードケース32内のダイオード29A、29Bの接続ピン29cと誘導コイル21および界磁コイル22とが複数の結線材33を介して接続されている。また、ダイオードケース32と結線材33は、図13に示すように、ヨーク26のロータコア25の背面側に設置されている樹脂製(例えば、PPS樹脂)の結線基盤35のホルダ穴36や結線材用溝37を利用して位置決め保持でき、容易に結線作業を行えるようになっている。
ここで、結線基盤35は、軸方向外面35a側で周方向に均等間隔になるように、ダイオードケース32をセットするホルダ穴36が形成されており、そのダイオードケース32は、ホルダ穴36内に締付ボルト39により取り付けるようになっている。この結線基盤35は、ダイオードケース32から外部に突出するダイオード29A、29Bの接続ピン29cが、軸心を中心とする径方向に延伸して外周側に向かうように設置されるようにホルダ穴36が配列されている。このように、結線基盤35は、ダイオード29A、29Bの接続ピン29cを周方向に沿うように配列する場合よりもコンパクトに設置されるように形成されている。
また、結線基盤35は、誘導コイル21や界磁コイル22のα巻きされている巻線(平角線21L、22L)から第1、第2接続端部21p、21q、22p、22qが引き出されて、それぞれが絶縁される所定の間隔を確保しつつ、結線基盤35の外周面35bに沿うように屈曲する形状に成形されて、外面35a側(背面側)に向かう方向に延長されている。
これに対して、結線基盤35には、結線材用溝37として、径方向溝37aと周方向溝37bとがそれぞれ複数形成されている。結線材用溝37の径方向溝37aは、誘導コイル21および界磁コイル22の第1、第2接続端部21p、21q、22p、22qとダイオードケース32(ダイオード29A、29B)外部の接続ピン29cの双方を収容可能に、幅広の窪み形状のまま外面35a側から外周面35b側まで径方向に向かって連続する形状に形成されている。結線材用溝37の周方向溝37bは、結線材33と同等程度の幅で径方向溝37aとの間を繋げるように、軸心からの離隔間隔の異なる3本が形成されている。
この結線材33は、図11および図12に示すように、結線材用溝37の径方向溝37a内に設置する複数本の径方向線材(第1の導体)33aと、結線材用溝37の周方向溝37b内に設置する複数本の周方向線材(第2の導体)33bと、が適宜溶接や半田付け等されることにより、誘導コイル21および界磁コイル22をダイオード29A、29Bに接続する結線経路R1〜R5を形成するようになっている。ここで、この結線材33は、結線材用溝37(37a、37b)の形状に合わせて成形しておくことにより容易に接続作業を行うことができ、また、帯状に形成することにより放熱特性も向上させることができる。
なお、詳細には、結線経路R1は、2つの界磁コイル22の一方側の第1接続端部22pと、2つの誘導コイル21の2つの第1接続端部21pとの間が導通接続されている。結線経路R2は、直列接続されている2つの界磁コイル22の間の第1、第2接続端部22p、22qの間が導通接続されている。結線経路R3、R4は、並列接続されている2つの誘導コイル21の2つの第2接続端部21qとダイオード29A、29Bのそれぞれのアノード側の接続ピン29cとの間がそれぞれ導通接続されている。結線経路R5は、直列接続されている2つの界磁コイル22の他方側の第2接続端部22qとダイオード29A、29Bの双方のカソード側の接続ピン29cとの間が導通接続されている。
そして、ロータ120、130は、図14に示すように、ステータ110との間に介在するように、言い換えると、保持枠16に対面するように結線基盤35の反対側に保持盤41が取り付けられている。保持盤41は、開口する保持穴41a内にロータコア25の端部25a側を嵌め込んで端面25bを露出させる状態で保持するようになっている。
保持盤41は、結線基盤35の外周面35bの径方向溝37a内における隙間に入り込ませるフック42が保持穴41a間の外周側の複数個所に一体形成されている。詳細には、フック42は、誘導コイル21の第1接続端部21pに隣接する隙間に入り込ませて、結線基盤35の外面35a側に引っ掛けるようになっている。
この保持盤41は、フック42を結線基盤35の外面35a側に引っ掛けることにより誘導コイル21や界磁コイル22をロータコア25に巻き付けた状態に保持しつつ、保持枠16の保持穴16aから露出するステータコア15の端面15bに、保持穴41aから露出する端面25bが近接対面する状態を維持するようになっている。なお、この保持盤41は、磁気回路の形成を妨げないように非磁性体材料で作製されており、例えば、フック42を容易に変形させて結線基盤35に取り付けることができるように樹脂材料(例えば、PPS樹脂)を成形して作製しても良い。
また、ロータ120、130は、結線基盤35の外面35a側から保持盤41までを有底で短尺な円筒形状に形成されているカバー45内に収容して保護するようになっており、カバー45は、非磁性金属板、例えば、真鍮板を成形することにより、稼動時における磁路の形成等に影響しないように作製されている。
このカバー45は、外周壁46の内周面側に、結線基盤35の外周面35bに設けられた径方向溝37aに嵌まり込ませる凸形状部46a(図15を参照)が形成されている。また、軸心の開口45c周りには、結線基盤35のホルダ穴36内にセットしたダイオードケース32を固定する締付ボルト39のネジ部を貫通させる貫通孔45dが形成されている。
これにより、カバー45は、外周壁46の凸形状部46aを結線基盤35の外周面35bの径方向溝37aに嵌まり込ませて周方向に位置決めして被せることができる。また、開口45c周りの貫通孔45dに、締付ボルト39を差し込んで結線基盤35のホルダ穴36内のダイオードケース32の一面側に密接する状態で取り付けることができる。これにより、カバー45は、ダイオード29A、29Bが整流動作する際に発生する熱を熱交換して外部に放出する放熱部材として機能することができる。また、結線基盤35から締付ボルト39を緩めて取り外すだけでダイオードケース32(ダイオード29A、29B)の交換作業を行うことができ、作業性を向上させることができる。
さらに、ロータ120、130は、隣接する保持穴41aの間において、複数個所に注入口41bが設けられている。そして、ロータ120、130は、カバー45を結線基盤35に取り付けた状態にして、カバー45の外周壁46および保持盤41の外周縁41cとの間に形成される隙間D1(図15を参照)と、ロータコア25の軸心側の円筒部23と保持盤41の内周縁41dとの間に形成される隙間D2(図15を参照)と、注入口41bとからPPS樹脂を射出(注入)できるようになっている。
このとき、ロータ120、130では、図15に示すように、結線基盤35の外面35a側までが埋まってしまわない程度にPPS樹脂の射出量が調整されており、カバー45と結線基盤35との間のロータスロット27内などにPPS樹脂を充填して固化させるようになっている。
これにより、ロータ120、130でも、ロータスロット27などの部材間の隙間にPPS樹脂を注入することができ、射出充填用金型を準備することなく、ロータコア25や誘導コイル21や界磁コイル22の間の隙間にPPS樹脂を侵入させて固定した樹脂モールドMoRにすることができる。このため、各部材が樹脂モールドMoRにより保持されることにより、遠心力や振動により移動することが制限されて、特性を安定化させることにより電磁振動等を抑制することができる。また、遠心力や振動、衝撃に対する堅牢性を確保することができる。また、樹脂モールドMoRとすることにより水分等の浸入を制限して耐久性も向上させることができる。
このとき、結線基盤35の外面35a側がPPS樹脂で埋まってしまうことがなく、カバー45を結線基盤35から外してダイオードケース32(ダイオード29A、29B)を交換する作業を不能にしてしまうことがない。
そして、回転電機100は、図1に示すように、ステータ110とロータ120、130とがモータケース150内に収容されている。この回転電機100は、モータケース150の軸方向両端側の端板152、153に設置するベアリング159によりシャフト101の両端側が回転自在に支持されている。そして、そのシャフト101をベアリング108により回転自在に支持するステータ110の外周縁側が、モータケース150の側板154に連結されて、その電機子コイル11に電力が供給されるようになっている。
この回転電機100は、ステータ110の電機子コイル11に電力供給してロータ120、130が回転駆動する際の回転トルクを、モータケース150の端板153の外部に露出(突出)するシャフト101の連結端部101a側に連結される負荷側に出力するようになっている。このシャフト101(ロータ120、130)の回転は、モータケース150の端板152から突出する回転端部101bに不図示のレゾルバなどの回転センサを取り付けて回転速度などを検出するようになっており、この回転端部101bは端板152の外部側に損傷防止用のガードケース156が設置されて保護されている。
シャフト101は、図16に示すように、ステータ110やロータ120、130を取り付ける設置箇所に径の異なる段差部102、103を形成してステータ110とロータ120、130を軸方向に位置決めして取り付けるようになっている。ステータ110は、段差部102を軸心側に位置させてシャフト101に取り付ける。ロータ120、130は、その段差部102の軸方向の両側の設置面101rを軸心側に位置させてシャフト101に取り付ける。
このロータ120、130は、ヨーク26の軸心側の円筒部23の内周面23aを嵌め込むシャフト101の設置面101rよりも大径に形成する段差部102の両端面102a、102b(ロータ位置決め部、第1、第2のロータ段差部)に、その円筒部23を突き当てた状態を基準にして締込リング105、106を両端側の不図示のネジ部に噛み合わせて接近方向に締め込むことにより軸方向に位置決めするようになっている。また、ロータ120、130は、回転方向には、図17に示すように、円筒部23の内周面23a側に形成されているキー溝24と、シャフト101の設置面101rの軸方向に連続するキー溝104と、にキー部材129を嵌め込んで位置決めするようになっている。
また、シャフト101は、図16に示すように、ロータ120、130を位置決めする段差部102の一端側に端面102bを共通にするように、より大径の段差部103が形成されており、その段差部103を基準にステータ110を位置きめして取り付けるようになっている。
このステータ110は、図1に示すように、保持枠16の内周縁側にベアリング受け107を設置してベアリング108を回転自在に支持させており、そのベアリング108の一端側端部を段差部103の共通の端面102bの反対側の端面103a(ステータ位置決め部、ステータ段差部)に突き当てた状態を基準にして軸方向に位置決めするようになっている。さらに、ステータ110は、回転方向には、保持枠16の肉厚部16dのネジ穴16hに差し込む固定ボルト119をモータケース150の側板154の内周面側に形成されているフランジ部155のネジ止め穴155aに締め込んで位置決めするようになっている。この構造により、ステータ110は、外周側がモータケース150の側板154に固定されることにより、軸方向のたわみ振動を低減することができる。
このように、回転電機100は、モータケース150の端板152、153側とステータ110の保持枠16側とに設置されているベアリング159、108に回転自在に支持されているシャフト101に、そのステータ110を挟み込むようにロータ120、130を固定して一体回転させる構造に構築されている。
この構造により、回転電機100は、図18に示すように、モータケース150側に固定するステータコア15の両端面15bとシャフト101側に固定するロータコア25の端面25bとをギャップGを介して近接対面させて、ロータ120、130を回転自在に支持することができる。また、この回転電機100では、ステータ110の電機子コイル11に車載バッテリから交流電流を通電して回転磁界を発生させることにより、ロータ120、130の誘導コイル21に高調波磁束を鎖交させて誘導電流を発生させることができ、その誘導電流を整流して界磁コイル22に界磁電流として供給することによって電磁石として機能させて回転トルクを得ることができる。
ここで、誘導コイル21および界磁コイル22は、ステータコア15の端面15bからロータコア25の端面25bに鎖交する3次の時間高調波磁束を有効利用するように、磁界解析を行って高調波磁路を確認した上で、効率よく誘導電流を発生させることができるように設置されている。具体的には、上述するように、ロータ120、130のスロット数Sとステータ110の磁極数Pとの構成比S/Pを2/3とすることにより、回転座標系における3f次の時間高調波磁束(f=1、2、3・・・)を効率よく利用可能な構造に形成されている。
詳細には、例えば、回転座標系における高次の時間高調波磁束では、ロータコア25の端面25bの表面付近でのみ振動する波形に過ぎないことから誘導コイル21に効率よく誘導電流を発生させることができない。これに対して、回転座標系における3次の時間高調波磁束を回収対象とすると、電機子コイル11に入力する基本周波数よりも周波数が高いために短周期で脈動して有効に誘導コイル21に誘導電流を発生させることができる。このため、基本周波数の磁束に重畳する空間高調波成分の損失エネルギーを効率よく回収して回転することができる。
加えて、上記と同様に磁束密度分布の磁界解析をすると分かるように、ロータティース突極数Pとステータスロット数Sの比に応じて、機械角360度内の周方向に磁束密度分布も分散化されるため、ステータ110に働く電磁力分布にも偏在が認められることになる。
このため、回転電機100では、ロータ120、130のスロット数Sとステータ110の磁極数Pとの構成比S/Pを2/3とする構造を採用することにより、機械角360度の全周に亘って均等な密度分布となる磁束を鎖交させることができ、ロータ120、130をステータ110に対面させつつ高品質に相対回転させることができる。
これにより、回転電機100では、空間高調波磁束を損失とすることなく有効利用して、損失エネルギーを効率よく回収することができ、電磁振動を大幅に低減して静寂性高く回転させることができる。
また、誘導コイル21や界磁コイル22は、集中巻構造を採用することにより、複数スロットに亘って周方向に巻線をする必要がなく、全体的に小型化することができる。また、誘導コイル21では、回転座標系における1次側での銅損損失を低減しつつ、低次である3次の時間高調波磁束の鎖交による誘導電流を効率よく発生させて、回収可能な損失エネルギーを増加させることができる。
さらに、誘導コイル21は、回転座標系における3次の時間高調波磁束を利用することにより、回転座標系における2次の時間高調波磁束を利用する場合よりも、効果的に誘導電流を発生させることができる。詳細には、誘導電流は2次よりも3次の時間高調波磁束を利用する方が磁束の時間変化を大きくして大電流にすることができ、効率よく回収することができる。
このように、回転電機100は、図19にモデル図として示すように、ステータ110の電機子コイル11を巻き付けるステータコア15の両端面15bにギャップGを介してロータ120、130のそれぞれのロータコア25の端面25bを対面させている。そして、それぞれのロータコア25の端部側25aに誘導コイル21を、また、それぞれのロータコア25のヨーク26(連接部25c)側に界磁コイル22を巻き付けている。
これによって、回転電機100は、図20に示すように、電機子コイル11に通電して発生させる磁束MFをステータコア15と両側のロータコア25との間を鎖交させてヨーク26を迂回させる磁気回路を形成することができ、ステータ110に対して2つのロータ120、130を相対回転させることができる。また、これに加えて、その磁束MFに重畳する空間高調波磁束HFもステータコア15から両側のロータコア25に鎖交させてそれぞれの端部側25aの誘導コイル21で効率よく回収させて誘導電流を発生させることができ、その誘導電流をダイオード29A、29Bで整流した界磁電流を界磁コイル22に供給することができる。このため、例えば、図21において、ステータコア15と両側の2つのロータコア25との間で鎖交させる3次の時間高調波磁束HFの磁束密度を磁束ベクトルVで示すように、回転電機100は、ステータコア15と両側の2つのロータコア25との間で空間高調波磁束HFを高磁束密度に鎖交させて大きなマグネットトルクでシャフト101を回転させることができる。
これに対して、例えば、径方向にステータとロータとをギャップを介して対面させるラジアルギャップ型の回転電機において、ステータを間に挟むように直径の異なるインナロータとアウタロータとを配置する構造の場合、ラジアル方向にステータと対面させる面積がインナロータとアウタロータとで大きく異なるため、回転トルクに大きな差異が生じてしまう。
このことから、ラジアルギャップ型の回転電機は、構造上、アキシャルギャップ型よりも空間高調波磁束の鎖交する面積を大きく確保することができず、電機子コイル11を集中巻きにして空間高調波磁束の発生量を多くしても効果的に鎖交させ
にくい特性がある。反対に、アキシャルギャップ型の回転電機100は、構造上、ラジアルギャップ型よりも漏れ磁束が多いが、その漏れを有効に回収可能な構造であるので、空間高調波磁束を効果的に鎖交させることができる。
例えば、1つのロータを用いるラジアルギャップ型の回転電機の場合には、図22に示すように、電機子コイル931を巻き付けるステータコア935の片側の端面935bに、ギャップGを介して1つのロータコア945の端面945bを対面させる構造になる。このような構造では、電機子コイル931に通電して発生させる磁束MFに重畳する空間高調波磁束HFを、アキシャルギャップ型よりも効率よく回収することができず、大きなマグネットトルクを発生させにくい。また、ヨーク946側での鉄損がアキシャルギャップダブルロータ型の回転電機100よりも増加してしまう。
また、図23に示すように、ラジアルギャップ型の回転電機でも、より多くの空間高調波磁束HFを回収するために、ロータコア945間のロータスロット947内に回収用の補極コア948を配置して誘導コイル949を巻き付けることも考えられる。しかしながら、このような構造でも、ステータコア935の片側に漏れる空間高調波磁束HFを回収できるだけであることから、得られるマグネットトルクは回転電機100よりも小さい。また、このような構造では、ロータコア945間に磁束を鎖交させる補極コア948を配置することから、ロータ側の突極比が小さくなってしまう。
さらに、回転電機100は、ステータ110やロータ120、130に、巻線コイルを集中巻きにした電機子コイル11、誘導コイル21および界磁コイル22をそれぞれ配置するが、集中巻きに代えて、分布巻きにすることもできる。しかしながら、ステータコア15の端面15bとロータコア25の端面25bとの間で鎖交する磁束密度は、電機子コイル11、誘導コイル21および界磁コイル22を集中巻きまたは分布巻きした場合で比較すると、図24に示すような磁束密度波形となる。この磁束密度波形を電磁界解析すると、図25に示すように、集中巻きの場合には静止座標系における2次の空間高調波磁束(回転座標系における3次の時間高調波磁束)を、分布巻きの場合よりも多く含んでいることが分かる。この結果、回転電機100では、集中巻きを採用することにより、分布巻きの場合よりもロータコア25の端面25bの深くに入り込む空間高調波磁束を多く誘導コイル21に鎖交させ、誘導電流を界磁電流として界磁コイル22に供給することができる。
このことから、図26にトルク波形で示すように、アキシャルギャップダブルロータ型の回転電機100は、ステータ110の電機子コイル11への交流電流の供給を開始すると、図中に実線で示すように高トルクでシャフト101を回転させることができる。これに対して、図26中に一点鎖線で示す図22のようなラジアルギャップ型で補極なしの構造や、図26中に二点鎖線で示す図23のようなラジアルギャップ型で補極ありの構造では、アキシャルギャップダブルロータ型の回転電機100のように大きなトルクを得ることができていない。また、図26中に点線で示すように、高トルクを得ることを目的として、永久磁石をロータ内に埋め込んでマグネットトルクを利用するIPMSM(Interior Permanent Magnet Synchronous Motor)の構造でも、アキシャルギャップダブルロータ型の回転電機100のように大きなトルクでシャフト101を回転駆動させることができていないことが分かる。
ところで、この回転電機100は、図27に示すように、カバー45の外面45a側の複数個所に冷却フィン61が形成されている。この冷却フィン61は、回転方向に向かう側を傾斜面61aとすることにより回転負荷となることを回避しつつモータケース150内の空気を対流させるようになっている。
これにより、回転電機100は、ロータ120、130の結線基盤35を内部に収容するカバー45本体が、ダイオード29A、29Bの整流動作時に伝達される発熱を、冷却フィン61を含むカバー45の表面を外気等に効率よく接触されて熱交換させることができる。これにより、効果的に放熱させることができ、温度上昇で回転効率が低下してしまうことを抑制することができる。なお、この回転電機100は、シャフト101の軸心を貫通する冷媒用流路109も備えている。
このように、本実施形態においては、シャフト101周りに巻き方向の平行な電機子コイル11、誘導コイル21および界磁コイル22を、アキシャルギャップ型のダブルロータ構造に構築されるステータ110およびロータ120、130のそれぞれに配置するので、電機子コイル11で発生させる主磁束に重畳する空間高調波磁束を、ステータ110の両側に設けられたロータ120、130の誘導コイル21に効果的に鎖交させることができる。そして、これにより誘導コイル21に発生した誘導電流を界磁電流として、界磁コイル22に効率よく供給することができる。
したがって、永久磁石を用いることなく(空間高調波磁束によって磁力の低下を生じさせてしまうことなく)、かつ、外部から電力を供給することなく、空間高調波磁束を効果的に利用することにより、リラクタンストルクと共にマグネットトルクをロータ120、130のそれぞれに作用させて大きな回転力で回転駆動させることができる。
また、誘導コイル21および界磁コイル22を接続するダイオード29A、29Bは、結線基盤35の外面35a側のホルダ穴36にセットするダイオードケース32内に収納され、その結線基盤35は、カバー45内に収容されるので、ダイオード29A、29Bや結線材33を含む結線基盤35の全体を保護することができる。これにより、ロータ120、130の回転時に、ダイオード29A、29Bや結線材33が外部の部材と接触して損傷してしまうことを防止することができる。また、このカバー45は、結線基盤35から外すことができ、ダイオードケース32の交換作業を容易に行うことができる。
また、このカバー45は、ダイオードケース32の一面側に接触させているので、回転電機100の稼動時に発生する熱を効果的に熱交換して放熱することができる。さらに、カバー45の外面45aには、冷却フィン61が複数配置されているので、効率よく熱交換させて効果的に放熱させることができ、温度上昇で回転電機100の稼働効率が低下してしまうことを回避することができる。
ここで、本実施形態の他の態様としては、ステータ110をロータ120、130で挟む形態のシングルステータ&ダブルロータに限らず、ロータをステータで挟み込む形態のダブルステータ&シングルロータのアキシャルギャップモータに構築しても同様の作用効果を得ることができる。
また、巻線コイルとしては、巻線に銅線を採用する場合に限らず、例えば、アルミ導体や、高周波電流用撚り線のリッツ線を採用してもよい。
また、回転電機100は、ロータ120、130に永久磁石を追加して配置するハイブリッドタイプに構築してもよく、マグネットトルクをハイブリッド界磁型で得られるようにしてもよい。
さらに、整流素子としては、ダイオード29A、29Bだけでなく、他のスイッチング素子などの半導体素子を採用してもよく、ダイオードケース32内に収納するタイプに限らず、ロータ120、130の内部に実装するようにしてもよい。
この回転電機100は、車載用に限定されるものではなく、例えば、風力発電や、工作機械などの駆動源として好適に採用することができる。
本発明の実施形態を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正及び等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。