JP2016176146A - 被覆銅粒子 - Google Patents
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Abstract
Description
また、特許文献2、3に記載の技術では、ギ酸銅錯体を構成する脂肪族アミンは、金属微粒子の分散保護剤の役割を同時に果たす為、粒子成長が起こりにくく、20nmからサブミクロンの粒子径を有する銅粒子を製造することは困難である。
(1) 炭素数が5以上の脂肪族基を有する脂肪族カルボン酸で被覆された銅粒子を含み、SEM観察による平均一次粒子径DSEMが0.02μm以上0.2μm以下であり、粒度分布の変動係数(標準偏差SD/平均一次粒子径DSEM)の値が0.1以上0.5以下である被覆銅粒子である。
(2) 粉体X線解析から求まる結晶粒子径DXRDのSEM観察による平均一次粒子径DSEMに対する比DXRD/DSEMが0.25以上1.00以下である(1)に記載の被覆銅粒子である。
(3) 炭素数が5以上の脂肪族基を有する脂肪族カルボン酸で被覆され、粉体X線解析から求まる結晶粒子径DXRDのSEM観察による平均一次粒子径DSEMに対する比DXRD/DSEMが0.25以上1.00以下である被覆銅粒子である。
(4) 脂肪族カルボン酸が銅粒子の表面に物理吸着している(1)〜(3)のいずれかに記載の被覆銅粒子である。
(5) ギ酸銅、アミノアルコール、炭素数が5以上の脂肪族基を有する脂肪族カルボン酸及びアミノアルコールとのSP値の差が4.2以上である溶媒を含む反応液中に生成する錯化合物の熱分解物である(1)〜(4)のいずれかに記載の被覆銅粒子である。
(6) (1)〜(5)のいずれかに記載の被覆銅粒子と媒体とを含む導電性組成物である。
(7) (1)〜(5)のいずれかに記載の被覆銅粒子と媒体とを含むスクリーン印刷用の導電性組成物である。
(8) (1)〜(5)のいずれかに記載の被覆銅粒子と媒体とを含むインクジェット印刷用の導電性組成物である。
(9) 基材と、基材上に配置された(6)〜(8)のいずれかに記載の導電性組成物の熱処理物である配線パターンとを備える回路形成物である。
(10) (1)〜(5)のいずれかに記載の被覆銅粒子と、アミノアルコールと、溶媒とを含み、アミノアルコールと溶媒とのSP値の差であるΔSP値が4.2以上である組成物である。
本実施形態の被覆銅粒子の製造方法は、ギ酸銅、アミノアルコール、炭素数が5以上の脂肪族基を有する脂肪族カルボン及び溶媒を含む反応液を得ることと、反応液中に生成する錯化合物を熱分解処理して金属銅を生成することと、を含み、アミノアルコールと溶媒とのSP値の差であるΔSP値が4.2以上である、脂肪族カルボン酸で表面が被覆された被覆銅粒子の製造方法である。
更に液相中に脂肪族カルボン酸が存在することで、物理吸着により脂肪族カルボン酸が生成した還元銅粒子を高密度に被覆する。こうして製造される被覆銅粒子は、酸化膜がほとんどない還元銅粒子で構成され、その表面を物理吸着により脂肪族カルボン酸が被覆しているため、耐酸化性と焼結性のバランスに優れている。これにより、被覆銅粒子の焼成工程において、銅粒子を被覆している有機保護剤である脂肪族カルボン酸が400℃以下の温度で除去され、水素ガスなどの還元雰囲気を用いるまでもなく、窒素置換等の手段で達成し得る低酸素雰囲気において、被覆銅粒子同士の焼結を行うことができる。このため、焼結に還元性雰囲気を必要とする従来の銅粒子では、適用が困難であった部位、例えば、水素脆化や水素との反応による変質が問題となる部位にも効果的に使用することができる。また、窒素置換リフロー炉などの既存の設備を利用して焼結させることができて、経済性の点においても優れる。
ギ酸銅は2価の銅イオンと銅イオン1モルに対して2モルのギ酸イオンとから構成される。ギ酸銅は無水物であっても、水和物であってもよい。また、ギ酸銅は市販品を用いてもよく、新たに調製したものを用いてもよい。
ギ酸銅を熱分解して還元銅の微粒子を得る方法は、例えば、特公昭61−19682号公報などに開示されている。ギ酸は、通常のカルボン酸と異なり、還元性を有するので、ギ酸銅を熱分解すると2価の銅イオンを還元することができる。例えば、無水ギ酸銅は、不活性ガス中で加熱すると210℃〜250℃で熱分解して金属銅を生成することが知られている。
アミノアルコールは、少なくとも1つのアミノ基を有するアルコール化合物であって、ギ酸銅と錯化合物を形成可能であれば特に制限されない。反応液中にアミノアルコールが存在することで、ギ酸銅から錯化合物が生成し、溶媒に可溶化することができる。
アミノアルコールは、モノアミノモノアルコール化合物であることが好ましく、アミノ基が無置換のモノアミノモノアルコール化合物であることがより好ましい。またアミノアルコールは、単座配位性のモノアミノモノアルコール化合物であることもまた好ましい。
分子間結合エネルギーE1は蒸発潜熱から気体エネルギーを差し引いた値である。蒸発潜熱Hbは、試料の沸点Tbとして下式で与えられる。
Hb = 21×(273+Tb)
このHb値から25℃におけるモル蒸発潜熱H25が下式で求められる。
H25 = Hb×[1+0.175×(Tb−25)/100]
モル蒸発潜熱H25から分子間結合エネルギーEが下式より求められる。
E = H25−596
分子間結合エネルギーEから試料1mLあたりの分子間結合エネルギーE1が下式により求められる。
E1 = E×D/Mw
ここで、Dは試料の密度、Mwは試料の分子量であり、E1よりSP値が下式により求められる。
SP =(E1)1/2
なお、OH基を含む溶剤は、OH基1基につき+1の補正が必要である。
〔例えば、三菱石油技資、No.42,p3,p11(1989)参照〕
反応液におけるアミノアルコールの含有量は特に制限されず、目的等に応じて適宜選択することができる。アミノアルコールの含有量は、例えば、反応液中の銅イオンに対して1.5〜4.0倍モルの範囲が好ましく、1.5〜3.0倍モルの範囲がより好ましい。アミノアルコールの含有量が銅イオンに対して1.5倍モル以上であるとギ酸銅の溶解性が充分に得られ、反応に要する時間を短縮することができる。また4.0倍モル以下であると生成する被覆銅粒子の汚染を抑制することができる。
脂肪族カルボン酸は、脂肪族基の炭素数が5以上の長鎖の脂肪族カルボン酸であれば特に制限されない。脂肪族基は、直鎖状及び分岐鎖状のいずれであってもよく、また飽和脂肪族基及び不飽和脂肪族基のいずれであってもよい。脂肪族基の炭素数は5以上であるが、5以上17以下であることが好ましく、7以上17以下であることがより好ましい。脂肪族基の炭素数が5以上であると、粒度分布の指標となる変動率が小さくなる傾向がある。これは例えば、炭素鎖の長さが会合力を左右するファンデルワールス力の大きさと相関性が高いことで説明できる。すなわち、炭素鎖の長いカルボン酸は、会合力が強く、ミクロ反応場であるWater−in−oil Emulsion類似の相安定化に寄与することで粒子径の揃った銅粒子を効率よく製造できると考えられる。
反応液における脂肪族カルボン酸の含有量は特に制限されず、目的等に応じて適宜選択することができる。脂肪族カルボン酸の含有量は、例えば、反応液中の銅イオンに対して2.5〜25モル%の範囲が好ましく、5.0〜15モル%の範囲がより好ましい。脂肪族カルボン酸の含有量が銅イオンに対して25モル%以下であると反応系の粘度上昇を抑制できる傾向がある。また脂肪族カルボン酸の含有量が銅イオンに対して2.5モル%以上であると、充分な反応速度が得られ生産性が向上する傾向があり、粒度分布の指標となる変動率が小さくなる傾向がある。
反応液を構成する溶媒は、ギ酸による還元反応を過度に阻害せず、アミノアルコールとのSP値の差であるΔSP値が4.2以上となるように選択される限り特に制限はなく、通常用いられる有機溶剤から適宜選択することができる。
アミノアルコールのSP値と溶媒のSP値との差であるΔSP値が4.2以上であると、形成される被覆銅粒子の粒度分布の幅が狭い、粒子径の揃った被覆銅粒子が得られる。
溶媒のSP値は、ΔSP値が4.2以上となるように選択されるが、溶媒のSP値は、アミノアルコールよりも小さいことが好ましい。溶媒のSP値は11.0以下であることが好ましく、10.0以下であることがより好ましい。溶媒のSP値の下限は特に制限されず、例えば溶媒のSP値は、7.0以上であることが好ましい。
さらに溶媒は、水と共沸混合物を形成可能な有機溶剤であることもまた好ましい。水と共沸混合物を形成可能であると、熱分解処理によって反応液中に生成した水を容易に反応系から除去することができる。
溶媒は1種単独でも2種以上を組合せて用いてもよい。
補助溶剤の沸点の好ましい態様は、主溶剤と同様である。補助溶剤のSP値は主溶剤をよりも大きいことが好ましく、アミノアルコールと相溶する程度に大きいことがより好ましい。補助溶剤の具体例としては、EO系グリコールエーテル、PO系グリコールエーテル、ジアルキルグリコールエーテルなどのグリコールエーテルを挙げることができる。より具体的には、メチルジグリコール、イソプロピルグリコール、ブチルグリコール等のEO系グリコールエーテル;メチルプロピレンジグリコール、メチルプロピレントリグリコール、プロピルプロピレングリコール、ブチルプロピレングリコール等のPO系グリコールエーテル、ジメチルジグリコール等のジアルキルグリコールエーテルなどを挙げることができ、これらからなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。なお、これらの補助溶剤は、いずれも日本乳化剤(株)等より入手可能である。
δ3=〔V1×δ1+V2×δ2〕/(V1+V2)
δ3:混合溶媒の平均SP値、δ1:溶媒1のSP値、V1:溶媒1のモル容積、
δ2:溶媒2のSP値、V2:溶媒2のモル容積
ギ酸銅、アミノアルコール、長鎖脂肪族カルボン及び溶媒を含む反応液からは、ギ酸銅に由来する錯化合物が生成する。錯化合物の構造は特に限定されず、1種のみからなっていてもよく、2種以上を含んでいてもよい。また、錯化合物は、熱分解処理の進行に伴い、その構成が変化してもよい。すなわち、熱分解処理の初期において主として存在する錯化合物と、熱分解処理の後期において主として存在する錯化合物は互いに構成が異なるものであってもよい。
反応液中に生成する錯化合物として具体的には、1個の銅イオンに2分子のギ酸イオンと2分子のアミノアルコールとが配位した錯化合物、1個の銅イオンに1分子のギ酸イオンと1分子の脂肪族カルボン酸と2分子のアミノアルコールとが配位した錯化合物等が挙げられる。
水の除去方法は特に制限されず、通常用いられる水分除去方法から適宜選択することができる。例えば、溶媒として水と共沸混合物を形成し得る有機溶剤を用いて、共沸により生成する水を除去することが好ましい。
すなわち、ギ酸銅を反応溶媒に可溶化するための錯化剤としてのアミノアルコールと溶媒とのSP値の差であるΔSP値を4.2以上とすることで、ギ酸銅アミノアルコール錯体又はギ酸の1分子が脂肪族カルボン酸で置換されたギ酸銅アミノアルコール錯体の状態では、溶解しているが、錯体が熱分解されて錯化剤であるアミノアルコールが遊離すると、遊離したアミノアルコールは溶媒とは相溶できず、2相を形成し始める。そして、遊離されたアミノアルコールは、ギ酸銅やギ酸銅アミノアルコール錯体と親和性が高く、ギ酸銅の新たなる錯化剤又は溶剤として振る舞い、極性の高い内核(液滴)を形成し、外側を極性の低い溶媒が取り囲むWater in oil Emulsion類似の2相構造を取るようになり、これがマイクロ反応場として機能すると推定される。
さらに反応系中の水も脂肪族カルボン酸の置換で脱離したギ酸もこのマイクロ反応場に存在している。マイクロ反応場の中に金属核、その成長粒子及び金属核の発生源であるギ酸銅アミノアルコール錯体、ギ酸の1分子が脂肪族カルボン酸で置換されたギ酸銅アミノアルコール錯体、水及びギ酸が隔離されて反応が進行する。脂肪族カルボン酸が金属銅成長粒子の被覆材として固定化され、減少するにつれて反応初期ではギ酸銅錯体の熱分解機構が後述する反応式1〜3で進行していたものが、次第に反応式4の機構で進行するようになり、発生ガス成分が変化してくる。マイクロ反応場では、反応式5に示す水によるギ酸銅アミノアルコール錯体の加水分解でCuOが生成するが、反応式6又は反応式7を経由して再び還元されるため、亜酸化銅や酸化銅を含まない銅粒子が製造可能となっている。また、マイクロ反応場に含まれる銅原子数が限定されているため、銅粒子の粒子径は一定に制御される。
そして、マイクロ反応場に、表面に酸化銅が形成されていない銅粒子が生成するため、マイクロ反応場に存在する脂肪族カルボン酸が物理吸着しやすくなり、粒子径が揃い、耐酸化性と焼結性に優れる被覆銅粒子が効率的に得られると考えることができる。
本実施形態の被覆銅粒子は、既述の被覆銅粒子の製造方法で製造され、SEM観察による平均一次粒子径DSEMが0.02〜0.2μmであり、粒度分布の変動係数(標準偏差SD/平均一次粒子径DSEM)の値が0.1〜0.5である。
既述の被覆銅粒子の製造方法で製造されていることで、粒度分布の変動係数が小さく、粒子径の揃った状態となる。被覆銅粒子の粒度分布の変動係数が小さいことで、分散性に優れ、高濃度の分散物を作製できるという効果が得られる。
本実施形態の導電性組成物は、既述の被覆銅粒子の製造方法で得られる被覆銅粒子の少なくとも1種と、媒体とを含む。導電性組成物は、配線パターン形成に好適に用いることができ、低温で、導電性に優れる配線パターンを容易に形成することができる。
例えば、導電性組成物がスクリーン印刷用である場合、媒体としては、炭化水素系溶剤、高級アルコール系溶剤、セロソルブ、セロソルブアセテート系溶剤等を挙げることができる。
また、スクリーン印刷用の導電性組成物の固形分濃度は、例えば、40〜95質量%とすることができる。ここで導電性組成物の固形分とは不揮発性成分の総量を意味する。
インクジェット印刷用の導電性組成物の固形分濃度は、例えば、40〜90質量%とすることができる。
本実施形態の回路形成物は、基材と、基材上に配置される上記導電性組成物の熱処理物である配線パターンとを備える。配線パターンが上記導電性組成物から形成されることで、配線パターンの導電性に優れる。また低温で配線パターンを形成することができるため、基材の選択肢の自由度大きい。
すなわち、回路形成物は、例えば、基材を準備する工程と、基材上に導電性組成物を付与する工程と、導電性組成物を熱処理する工程とを含む製造方法で製造できる。
熱処理の時間は、例えば1〜120分間とすることができ、5〜60分間であることが好ましい。
熱処理の雰囲気は、低酸素雰囲気であることが好ましい。低酸素雰囲気としては、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気等を挙げることができる。また酸素濃度が1,000ppm以下であることが好ましい。
<平均一次粒子径及び変動率の計算>
測定装置:日本電子製FE−EPMA JXA−8510F
平均一次粒子径:サンプル20点の平均値
変動率:サンプル20点の標準偏差/平均値で計算される値
測定装置:日本電子製FE−EPMA JXA−8510F
測定条件:加速電圧 6KV又は15KV
観察倍率 ×10,000〜×75,000
測定器:島津製 XRD−6100
測定条件:ターゲット Cu
管電圧 40KV、管電流 30.0mA
測定器;ULVAC−PHI製 PHI TRIFT IV型
測定条件:1次イオン種 Au、加速電圧 30KV
測定装置:リガク製 TG8120
昇温速度:10℃/min
測定温度範囲:25℃〜600℃
測定雰囲気:窒素 100ml/min
測定装置:堀場製作所製 LA−960
測定溶媒:キョウワノールM
分散剤:ポリアクリル酸系分散剤
分散方法:超音波5分
測定装置:共和理研製 K−705RS
測定方法:四端子測定法
測定点数:n=5の平均値
導電膜厚:SEM断面観察により決定
測定装置:JEOL製JPS−9010MX
高速エッチングイオン銃:XP−HSIG3
DepthProfile分析条件
イオンビーム径:φ15mm、Arイオン加速電圧:500V(電流:8.6mA)
SiOエッチング速度で20〜25nm/min相当
(Data_0からData_6は、下から上へ)
Data_0:エッチングなし
Data_1:実行エッチング時間−0.9秒(累計:0.9秒)
Data_2:実行エッチング時間−3.0秒(累計:3.9秒)
Data_3:実行エッチング時間−3.0秒(累計:6.9秒)
Data_4:実行エッチング時間−3.0秒(累計:9.9秒)
Data_5:実行エッチング時間−3.0秒(累計:12.9秒)
Data_6:実行エッチング時間−3.0秒(累計:15.9秒)
本実施例で用いたギ酸銅、ギ酸銅無水物の製造事例を以下に示すが、ギ酸銅の製造方法は、複数の方法がすでに公知であり、他の方法で製造されたギ酸銅を使用してもよい。
塊があると未反応で残存しやすいため、28メッシュ程度の篩い処理を行った。
[合成手順]
5リットル4ツ口フラスコにギ酸0.96kg、イオン交換水1.44kgを加えて均一に攪拌しながら、塩基性炭酸銅を少しずつ加えた。炭酸ガスの発生に注意しながら全量を加えた。投入し終えたら、温度を60℃まで昇温させて0.5時間反応を継続した。炭酸ガスの流出(ドレインを水トラップに導き、確認する)がほとんどなくなったのを確認して、この時点では、ギ酸銅及び塩基性炭酸銅が一部未溶解で残っていた。イオン交換水1.60Kgを追加して60℃で1.0時間反応を継続した。反応液が濃青色透明液となったことを確認して反応を終了し、エバポレーターで減圧濃縮して、水を1.5リットル留去した。この時点ですでに結晶が析出して、スラリー状になっていた。
室温まで冷却して反応物をろ過して、アセトン1リットルで洗浄した。得られた結晶は、緑青色を示した。
次いで乾燥脱水を以下のようにして行った。乾燥温度は、真空0.5KPa(最終)にて80℃以下(粉体の温度)で実施した。乾燥脱水によりライトブルー色結晶となった。 ギ酸銅の熱分解温度:214.9℃(窒素中)、大気中では200℃付近
[品質確認]
TG−DTA測定で含有Cu%が理論値に近似していることを確認した。
ギ酸銅無水物の式量:153.84
含有Cu%=41.3%、減量%=58.5%程度
攪拌機、温度計、還流冷却管、75mLディーンスターク管、窒素導入管を備えた3000mLガラス製四ツ口フラスコをオイルバスに設置した。そこへ、ギ酸銅無水物484g(3.1モル)と、ラウリン酸(関東化学社製)68.1g(0.11当量/ギ酸銅無水物)と、反応溶媒としてトリプロピレングリコールモノメチルエーテル(東京化成社製)150g(0.23当量/ギ酸銅無水物)及びスワクリーン150(ゴードー社製)562g(1.42当量/ギ酸銅無水物)とを添加し、200rpmで攪拌しながら混合した。窒素雰囲気下、液温度が50℃になるまで200rpmで加温攪拌した。そこへ、3−アミノ−1−プロパノール(東京化成社製)712g(3.00当量/ギ酸銅無水物)ゆっくり滴下した。滴下終了後、液温度が120℃付近になるまで340rpmで加温攪拌した。ディーンスターク管によりトラップされた水層は適時除去し、反応系内に還流されないようにした。液温度が上昇するにつれて、反応溶液は濃青色から茶褐色に変化し始め、炭酸ガスの発泡が生じた。炭酸ガスの発泡が収まったところを反応終点として、オイルバス温調を停止し、室温まで冷却した。
室温まで冷却後、メタノール(関東化学社製)550gを添加し、混合させた。この混合溶液を30分以上静置して、上澄みをデカンテーションし、沈殿物を得た。この沈殿物にメタノール(関東化学社製)550g、アセトン(関東化学社製)300gを添加し、混合した。この混合溶液を30分以上静置して、上澄みをデカンテーションし、沈殿物を得て、この操作を更にもう一回繰り返した。この沈殿物にメタノール(関東化学社製)550gを用いて共洗いしながら500mLナスフラスコに移した。30分以上静置して、上澄みをデカンテーションし、得られた沈殿物を回転式エバポレーターに設置し、40℃、1kPa以下で真空乾燥した。真空乾燥終了後、室温まで冷却し窒素置換しながら減圧解除し、194gの茶褐色の被覆銅粒子を得た。
得られた被覆銅粒子のSEM観察画像を図7に示す。また拡大SEM観察画像を図20−1に、粒度分布を図20−2に示す。
3−アミノ−1−プロパノールをDL−1−アミノ−2−プロパノールに変えた以外は、実施例1と同様に被覆銅粒子を合成した。
得られた被覆銅粒子のSEM観察画像を図8に示す。
3−アミノ−1−プロパノールを5−アミノ−1−ペンタノール、反応溶媒をn−オクタンに変えた以外は、実施例1と同様に被覆銅粒子を合成した。
3−アミノ−1−プロパノールをDL−1−アミノ−2−プロパノール、反応溶媒をn−オクタンに変えた以外は、実施例1と同様に被覆銅粒子を合成した。
得られた被覆銅粒子のSEM観察画像を図9に示す。
3−アミノ−1−プロパノールを1−ヘキシルアミンに変えた以外は、実施例1と同様に被覆銅粒子を合成した。
得られた被覆銅粒子のSEM観察画像を図10に示す。
3−アミノ−1−プロパノールを2−ジエチルアミノエタノールに変えた以外は、実施例1と同様に被覆銅粒子を合成した。
得られた被覆銅粒子のSEM観察画像を図11に示す。
3−アミノ−1−プロパノールを2−ジメチルアミノエタノールに変えた以外は、実施例1と同様に被覆銅粒子を合成した。
得られた被覆銅粒子のSEM観察画像を図12に示す。
3−アミノ−1−プロパノールを5−アミノ−1−ペンタノールに変えた以外は、実施例1と同様に被覆銅粒子を合成した。
得られた被覆銅粒子のSEM観察画像を図13に示す。
反応溶媒をn−オクタノールに変えた以外は、実施例1と同様に被覆銅粒子を合成した。
得られた被覆銅粒子のSEM観察画像を図14に示す。
(実施例5)
ラウリン酸をオレイン酸68.16g、溶媒は補助溶媒を使用せず、スワクリーン#150を 712gに変えた以外は、実施例1と同様に被覆銅粒子を合成した。
得られた被覆銅粒子のSEM観察画像を図15に示す。
ラウリン酸48gを16gに変えた以外は、実施例1と同様に被覆銅粒子を合成した。
得られた被覆銅粒子のSEM観察画像を図16−1及び図16−2に示す。
ラウリン酸48gを144gに変えた以外は、実施例1と同様に被覆銅粒子を合成した
。
得られた被覆銅粒子のSEM観察画像を図17−1及び図17−2に示す。
反応溶媒としてスワクリーン#150を150g、メチルプロピレントリグリコールを562gに変えた以外は、実施例1と同様に被覆銅粒子を合成した。
得られた被覆銅粒子のSEM観察画像を図18−1及び図18−2に示す。
ラウリン酸をオクタン酸に変えた以外は、実施例1と同様に被覆銅粒子を合成した。
得られた被覆銅粒子のSEM観察画像を図19−1及び図19−2に示す。
特開2013−047365号公報の実施例1に記載の方法に準じて、被覆銅粒子を合成した。具体的には被覆材として酢酸を用いて、被覆銅粒子を合成した。
銅化合物として亜酸化銅(I)(古河ケミカルズ社製;粒子径:2〜4μ)を14.3g(0.1モル)、被覆材として酢酸3.0g(50mmol)、還元剤としてヒドラジン・一水和物(和光純薬工業製)5.0g(0.1モル)、溶媒としてイソプロパノールを100ml混合し、300mlの4ツ口フラスコに加えた。フラスコには、冷却器、温度計、窒素導入管及び攪拌装置を取り付けた。窒素を200ml/minを通気しながら、攪拌しつつ70℃まで昇温させ、1時間加熱・攪拌を継続して亜酸化銅(I)を還元させ、被覆銅粒子分散液を得た。
被覆銅粒子分散液を桐山濾紙No.5Bで減圧濾過して、粉体を濾別した。濾別した粉体をメタノール(関東化学工業製)で3回洗浄して40℃、1kPa以下で減圧乾燥させ、室温まで冷却後に窒素置換をして取り出し、12gの茶褐色粉体を得た。
粉体のXRDを測定したところ(図21に示す)、原料に由来すると思われる亜酸化銅(I)が若干検出された。
得られた被覆銅粒子のSEM観察画像を図23−1に示す。
比較例6をスケールアップし、反応時間を2倍にして被覆銅粒子を合成した。銅化合物として亜酸化銅(I)(古河ケミカルズ社製)を71.5g(0.5モル)、被覆材として酢酸15.0g(250mmol)、還元剤としてヒドラジン・一水和物(和光純薬工業製〕25.0g(0.5モル)、溶媒としてイソプロパノールを500ml混合し、1,000mlの4ツ口フラスコに加えた。フラスコには、冷却器、温度計、窒素導入管及び攪拌装置を取り付けた。窒素を200ml/minを通気しながら、攪拌しつつ70℃まで昇温させ、2時間加熱・攪拌を継続して亜酸化銅(I)を還元させ、被覆銅粒子分散液を得た。
被覆銅粒子分散液を桐山濾紙No.5Bで減圧濾過して、粉体を濾別した。濾別した粉体をメタノール(関東化学工業製)で3回洗浄して40℃、1kPa以下で減圧乾燥させ、室温まで冷却後に窒素置換をして取り出し、62gの茶褐色粉体を得た。
粉体のXRDを測定したところ(図22に示す)、原料の亜酸化銅(I)は定量的に還元銅に転化されていた。
得られた被覆銅粒子のSEM観察画像を図26−1に示す。
実施例1で製造された被覆銅粒子を用いて脂肪族カルボン酸で被覆された被覆銅粒子の組成をあきらかにするために、粉体X線分析、SEM観察、Tof−SIMS表面分析及びTG−DTA測定を実施した。
結晶粒子径を粉体X線の回折角度と半値幅からScherrerの式より算出した。Scherrerの式は式(1)で表される。
D=Kλ/(βcosθ)・・・(1)
ここで、Dは結晶粒子径、KはScherrer定数(球体と仮定し、K=1として代入)、λは測定X線の波長(CuKα:1.5418Å)、βは式(2)で表される。
β=b−B・・・(2)
ここで、bはピークの半値幅、Bは装置の補正係数(B=0.114)である。
Tof−SIMSの解析結果にしたがって、加熱減量成分の全量がラウリン酸と仮定すると、被覆銅粒子に含まれるラウリン酸の本数は式(3)で表される。
[ラウリン酸本数] = Macid/(MW/NA) ・・・(3)
ここで、Macidは加熱減量測定質量値(g)、MWはラウリン酸分子量(g/mol)、NAはアボガドロ定数(6.02×1023本/mol)である。
SEM観測により算出した一次粒子径はほぼすべて還元銅由来とし、その形状は球体と仮定すると、銅粒子1g中の粒子数は式(4)で表される。
[1g中の粒子数]=MCu/[(4πr3/3)×d×10−21]・・・(4)
ここで、MCuは加熱減量測定値より求められる質量計算値(g)、rはSEM観測により算出した一次粒子径の半径(nm)、dは密度である(銅の密度として代入した;d=8.94)。銅粒子1g中の粒子表面積は式(4)を用いて、式(5)で表される。
[1g中の銅粒子表面積(nm2)]=[1g中の粒子数]×4πr2・・・(5)
ラウリン酸による銅粒子の被覆密度(本/nm2)は、(3)式及び(5)式を用いて、式(6)で表される。
[被覆密度]=[ラウリン酸本数]/[1g中の銅粒子表面積]・・・(6)
『化学と教育 40巻2号(1992年)ステアリン酸分子の断面積を求める−実験値と計算値−』より、ステアリン酸分子のVan der waals半径から最小面積が算出されており、その計算値から換算される飽和被覆面積理論値は約5.00本/nm2である。この理論値から、本実施形態の被覆銅粒子は比較的高密度にラウリン酸が粒子表面に局在化していると推測される。この濃密な被覆効果が、ラウリン酸被覆が化学吸着よりも弱い物理吸着であるにも関わらず、耐酸化性に優れている理由として考えられる。
<ガス成分分析>
方法:ガスクロマトグラフ
測定器:GLサイエンス GL320
検出器:熱伝導度検出器(TCD)
カラム:ステンレスカラム φ3mm×2m
カラム充填剤(水素):Molecular Sieve 5A
カラム充填剤(二酸化炭素):Active Carbon
キャリヤーガス(水素):N2 20mL/min
キャリヤーガス(二酸化炭素):He 50mL/min
測定温度:43〜50℃
電流値:70〜120mA
方法:赤外分光法
測定器:パーキンエルマー Spectrum One
(反応式1)
(HCOO−)(HCOO−)Cu2+・(H2NC3H6OH)2+C11H23CO
OH
→(C11H23COO−)(HCOO−)Cu2+・(H2NC3H6OH)2+HC
OOH
一般的には、210〜250℃付近で熱分解性を示すギ酸銅は、ラウリン酸と3−アミノ−1−プロパノールとによる錯化合物を形成することで熱分解温度が低下すると考えられる。100〜130℃付近で錯化合物の熱分解反応により炭酸ガスを放出しながら、2価の銅イオンの還元反応が進行する(反応式2)。錯化合物の分解後に生成する還元銅にはラウリン酸が物理的に吸着されていることが考えられる。
(反応式2)
(C11H23COO−)(HCOO−)Cu2+・(H2NC3H6OH)2
→Cu:C11H23COOH+2H2NC3H6OH+CO2
この還元銅に吸着したラウリン酸は可逆的な平衡をとり(反応式3)、還元銅近傍でギ酸銅アルカノールアミン錯体と反応式1によりラウリン酸平衡交換反応が再び生じ、次々と還元金属核が発生すると考えられる。
(反応式3)
Cu:C11H23COOH
↑↓
Cu+C11H23COOH
(反応式4)。
(HCOO−)(HCOO−)Cu2+・(H2NC3H6OH)2
→Cu+2H2NC3H6OH+H2+2CO2
ギ酸銅との錯化合物形成の平衡交換反応よりも還元銅の粒子成長機構の被覆材としてラウリン酸が消費されるにつれて、反応式1だけではなく反応式4も同時に進行すると考えられる。
特開2011−032558号公報には、残留する水分子によって、ギ酸銅アミノアルコール錯体が加水分解を受け、酸化銅が生成されることが開示されており、本発明に適用すると下記反応により、酸化銅が生成することとなる。
(反応式5)
(HCOO−)(HCOO−)Cu2+・(H2NC3H6OH)2+H2O
→CuO+2H2NC3H6OH+2HCOOH
(反応式6)。
2CuO+2HCOOH→Cu2O+HCOOH+H2O+CO2
→2Cu+2H2O+2CO2
また、反応式7のように酸化銅とギ酸によりギ酸銅が再生し、還元反応が進行することも考えられる。
(反応式7)
CuO+2HCOOH
→(HCOO−)(HCOO−)Cu2++H2O
再生されたギ酸銅は反応式1を経て反応式2に従い、還元反応が進行する。これらの副反応により、水分子が生成し、蒸発留分として排出されたと考える。この副反応は反応系中にギ酸が存在するならば起こり得る反応であるため、予期せず酸化銅が生成しても、反応式6及び反応式7の還元反応機構により酸化膜がない被覆銅粒子の合成が可能となっていると推定される。
この還元反応機構が本実施形態の製造方法で起こりうるか検証するため、意図的に反応系に酸化銅を加えて反応を実施して確認した。その結果を参考例2で説明する。
攪拌機、温度計、還流冷却管、窒素導入管を備えた100mLガラス製四ツ口フラスコをオイルバスに設置した。そこへ、ギ酸銅無水物12.0g(0.08モル)、酸化銅(関東化学社製)2.0g(0.32当量/ギ酸銅無水物)ラウリン酸(関東化学社製試、試薬1級)2.0g(0.12当量/ギ酸銅無水物)、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル(東京化成社製)4.4g(0.27当量/ギ酸銅無水物)、スワクリーン150(ゴードー社製)16.6g(1.67当量/ギ酸銅無水物)添加し、200rpmで攪拌しながら混合させた。窒素雰囲気下、液温度が50℃になるまで200rpmで加温攪拌させた。そこへ、3−アミノ−1−プロパノール(東京化成社製)21.0g(3.50当量/ギ酸銅無水物)ゆっくり滴下した。滴下終了後、液温度が120℃付近になるまで340rpmで加温攪拌させた。液温度が上昇するにつれて、反応溶液は濃青色から茶褐色に変化し始め、炭酸ガスの発泡が生じる。炭酸ガスの発泡が収まったところを反応終点として、オイルバス温調を停止し、室温まで冷却した。室温まで冷却後、メタノール(関東化学社製)20.0gを添加し、混合させた。この混合溶液を30分以上静置させて、上澄みをデカンテーションし、沈殿物を得た。この沈殿物にメタノール(関東化学社製)20.0g、アセトン(関東化学社製)10.0gを添加し、混合させた。この混合溶液を30分以上静置させて、上澄みをデカンテーションし、沈殿物を得た。この操作を更にもう一回繰り返した。この沈殿物にメタノール(関東化学社製)20.0gを用いて共洗いしながら100mLナスフラスコに移した。30分以上静置させて、上澄みをデカンテーションし、得られた沈殿物を回転式エバポレーターに設置し、40℃、1kPa以下で真空乾燥した。真空乾燥終了後、室温まで冷却し窒素置換しながら減圧解除し、6.5gの茶褐色銅粉末を得た。
(反応式8)。
(R1COO−)(HCOO−)Cu2+:[(C2H5)2NC2H4OH]2
→Cu:[(C2H5)2NC2H4OH]2+R1COOH+CO2
また、特開2011−032558号公報においては、2座配位性のアミノアルコールに限定されるため、このようなギ酸銅錯体の熱分解温度は低いこと、脂肪族カルボン酸とギ酸銅アミノアルコール錯体の交換反応で脱離するギ酸は、系外に排出されることが記載されている。さらに低温下での反応条件となるため、反応系中に存在するギ酸による還元反応が進行しないと考えられる。
(反応式9)
(HCOO−)(HCOO−)Cu2+・(NH2R2)2
→Cu+2NH2R2+H2+2CO2
これに対して、本実施形態の反応機構においては、ギ酸銅錯体の熱分解反応により還元銅の生成と共に、反応式6及び反応式7により、副生する酸化銅を還元する反応機構も併せ持つため、合成される被覆銅粒子が酸化されにくい製造方法となっている。本実施形態の製造方法は、金属銅の酸化の原因として挙げられる水や酸素の厳密な製造管理は必要なく、より簡便な合成に適した製造方法である。
また、一次粒子に占める結晶粒子の大きさの割合、これを結晶化度と定義すると0.25以上となり、ほとんどの場合は、0.50程度となり、被覆銅粒子を大きな結晶子1個で構成しているようすが示されている。
反応溶媒における主溶剤と補助溶剤の比率を変えて、平均SP値が8.21から8.90と変動してもアミノアルコールとのΔSPが確保されておれば、得られる被覆銅粒子の特性に大きな差異が出ないことも確認された(実施例1及び実施例8の比較)。
実施例1の条件で製造された直後の粉体X線分析結果と25℃で4ヶ月貯蔵した後に同様に測定して酸化の進行の有無を確認した(図1−1及び図1−2)。4ヶ月後でも酸化成分は検出されず、本実施形態の製造方法で作製された被覆銅粒子は優れた耐酸化性を有することが確認された。
実施例1の条件で製造された被覆銅粒子を溶剤で分散して銅ペースト組成物を作製して、窒素雰囲気下で300℃及び350℃×1時間焼成して銅皮膜(銅ペースト焼結層)を作製してその皮膜の電気抵抗を測定した。被覆銅粒子と溶媒を以下の組成となるように乳鉢を用いて分散混練してペースト化して金属含有量が33体積%の銅ペースト組成物を調合した。
銅ペースト組成物A
実施例1の被覆銅粒子 10質量部
キョウワノールM(NHネオケム製) 2質量部
焼成後の銅の平均膜厚は、SEMによる断面観察で計測した。銅ペースト焼結層の膜厚は、2.4μmであった。
作製された被覆銅粒子と焼成銅皮膜のSEM観察像を図24−1及び図24−2に、測定に用いた評価用試料のSEM断面観察像を図25に、測定結果を表4に示す。
図25では、40μm厚のポリイミドフィルム層20の一方の面上に12μm厚の銅箔層30を有するポリイミドフィルムの銅箔層30とは反対側の面上に、銅ペースト組成物の焼成物である銅ペースト焼結層10が形成されている。
比較例7で製造された被覆銅粒子を用い、試験例2と同様にして銅ペースト組成物Bを作製して、窒素雰囲気下で350℃×1時間焼成して銅皮膜を作製してその皮膜の電気抵抗を測定した。
銅ペースト組成物B
比較例7の被覆銅粒子 10質量部
キョウワノールM(NHネオケム製) 2質量部
実施例1で製造された被覆銅粒子を市販の銅粉の焼結剤として添加して銅ペースト組成物を作製して、窒素雰囲気下で300℃及び350℃×1時間焼成して銅皮膜を作製してその皮膜の電気抵抗を測定した。各材料を下記の組成となるように三本ロールミルで分散混練して金属含有量が60体積%の銅ペースト組成物を調合した。
銅ペースト組成物C
実施例1の被覆銅粒子 100質量部
湿式銅粉2.0μm(三井金属製:1200N) 100質量部
湿式銅粉0.8μm(三井金属製:1050Y) 25質量部
ポリアクリル酸系分散剤 0.5質量部
キョーワノールM(NHネオケム製) 15質量部
焼成後の銅の平均膜厚をSEMによる断面観察で計測した。銅ペースト焼結層の膜厚は、4.2μmであった。
測定に用いた評価用試料のSEM断面観察像を図27に、測定結果を表4に示す。
図27では、40μm厚のポリイミドフィルム層20の一方の面上に12μm厚の銅箔層30を有するポリイミドフィルムの銅箔層30とは反対側の面上に、銅ペースト組成物の焼成物である銅ペースト焼結層10が形成されている。
実施例1で製造した被覆銅粒子を用いた銅ペースト組成物Aを試験例2で、市販の銅粉と混ぜて銅ペースト組成物Cを試験例4で、比較として特開2013−047365号公報の実施例1に準じて作製した比較例7で作製した被覆銅粒子を用いた銅ペースト組成物Bを試験例3でそれぞれ、電気特性及びXPSでの表面組成構造を評価した。
その結果、実施例1の被覆銅粒子で調製された銅ペースト組成物A及びCは、4〜6μΩ・cmと高い導電性能を示した。また、未処理のポリイミド面に高い密着性を示し、通常の折り曲げ試験では剥離しないことが確認された。銅ペースト組成物Bは同じ脂肪族カルボン酸で被覆された被覆銅粒子であるが、22μΩ・cmと銅バルクの体積固有抵抗値よりも1桁以上高い値を示した。
図28及び図29のNarrowScanで得られたデータには、銅ペースト組成物A及びBの焼結銅皮膜の最表面の組成情報が示されている。銅ペースト組成物Bの焼結銅皮膜の最表面は、銅ペースト組成物Aのそれと比較して、還元銅の割合が高く、酸化銅成分と有機物成分の割合が少ないことが分かる。銅ペースト組成物Aで作成された焼結銅皮膜の最表面は、ラウリン酸と推定される脂肪族カルボン酸で被覆されており、その分、有機物成分が多くなっている。しかし、酸化物成分があるものの還元銅が相当量露出しており、接触抵抗を損なうことはないと判断される。
その結果、銅ペースト組成物A及びBともに最表面から1〜2nmよりも深い領域は還元銅で構成されていることがわかった。ただ、銅ペースト組成物Bの方は、Aと比較して数nmより深い領域でも炭素分が減らないことから、焼結密度が低いことが予想される。
また、SEM観察の結果でも焼結密度に明らかな差異があり、これが電気特性の差となって現れたと考えられる。従って、被覆銅粒子の低温焼結性を発現する仕組みは、被覆銅粒子の被覆材が低温で除去されることではなく、銅粒子同士の接触、ネッキング及び銅原子の相互拡散が阻害されないように適度に除去されることが重要なことがわかった。
本発明の被覆銅粒子から得られる焼結銅皮膜においては、粒子間に存在していた被覆材の脂肪族カルボン酸が効率的に除去されつつ、粒子の接触、ネッキング、及び銅原子の相互拡散が達成され、銅バルクの抵抗値に近い特性が達成できている。また、結果的に、焼結銅皮膜の最表面は、被覆材の脂肪族カルボン酸で覆われており、酸素に対するバリア層として期待ができることもわかった。
Claims (10)
- 炭素数が5以上の脂肪族基を有する脂肪族カルボン酸で被覆された銅粒子を含み、SEM観察による平均一次粒子径DSEMが0.02μm以上0.2μm以下であり、粒度分布の変動係数(標準偏差SD/平均一次粒子径DSEM)の値が0.1以上0.5以下である被覆銅粒子。
- 粉体X線解析から求まる結晶粒子径DXRDのSEM観察による平均一次粒子径DSEMに対する比DXRD/DSEMが0.25以上1.00以下である請求項1に記載の被覆銅粒子。
- 炭素数が5以上の脂肪族基を有する脂肪族カルボン酸で被覆され、粉体X線解析から求まる結晶粒子径DXRDのSEM観察による平均一次粒子径DSEMに対する比DXRD/DSEMが0.25以上1.00以下である被覆銅粒子。
- 脂肪族カルボン酸が銅粒子の表面に物理吸着している請求項1〜3のいずれか1項に記載の被覆銅粒子。
- ギ酸銅、アミノアルコール、炭素数が5以上の脂肪族基を有する脂肪族カルボン酸及びアミノアルコールとのSP値の差が4.2以上である溶媒を含む反応液中に生成する錯化合物の熱分解物である請求項1〜4のいずれか1項に記載の被覆銅粒子。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載の被覆銅粒子と媒体とを含む導電性組成物。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載の被覆銅粒子と媒体とを含むスクリーン印刷用の導電性組成物。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載の被覆銅粒子と媒体とを含むインクジェット印刷用の導電性組成物。
- 基材と、基材上に配置された請求項6〜8のいずれか1項に記載の導電性組成物の熱処理物である配線パターンとを備える回路形成物。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載の被覆銅粒子と、アミノアルコールと、溶媒とを含み、アミノアルコールと溶媒とのSP値の差であるΔSP値が4.2以上である組成物。
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