工程(1):
本発明の製造方法は、ハードコート積層フィルムの製造方法であって、(1)透明樹脂フィルムの上に、活性エネルギー線硬化性樹脂を含む塗料(α)からなるウェット塗膜を形成する工程;を含む。
上記塗料(α)としては、活性エネルギー線硬化性樹脂を含むこと以外は特に制限されず、任意の塗料を用いることができる。好ましい上記塗料(α)については後述する。
上記工程(1)において、上記塗料(α)からなるウェット塗膜を形成する方法は、特に制限されず、公知のウェブ塗布方法を使用することができる。具体的には、ロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、エアナイフコート、及びダイコートなどの方法をあげることができる。
工程(2):
本発明の製造方法は、(2)上記塗料(α)からなるウェット塗膜に、活性エネルギー線を積算光量が1〜230mJ/cm2、好ましくは5〜200mJ/cm2、より好ましくは10〜160mJ/cm2、更に好ましくは20〜120mJ/cm2、最も好ましくは30〜100mJ/cm2 となるように照射し、上記塗料(α)からなるウェット塗膜を、指触乾燥状態の塗膜にする工程;を含む。
上記工程(1)において形成された上記塗料(α)からなるウェット塗膜は、上記工程(2)において指触乾燥状態、ないしはタック性のない状態になり、ウェブ装置に直接触れても貼り付いたりするなどのハンドリング上の問題を起こすことはなくなる。そのため、次の上記工程(3)において、上記塗料(α)からなる指触乾燥状態の塗膜の上に、上記塗料(β)からなるウェット塗膜を形成することができるようになる。
なお本明細書において、「塗膜が指触乾燥状態(タック性のない状態)にある」とは、塗膜がウェブ装置に直接触れてもハンドリング上の問題はない状態にあるという意味である。
上記工程(2)における活性エネルギー線の照射は、塗膜を確実に指触乾燥状態にする観点から、上記塗料(α)の特性にもよるが、積算光量が1J/cm2以上、好ましくは5mJ/cm2以上、より好ましくは10mJ/cm2以上、更に好ましくは20mJ/cm2以上、最も好ましくは30mJ/cm2以上となるように行う。一方、上記塗料(α)と上記塗料(β)の特性が大きく異なる場合であっても、良好な層間密着強度を得る観点から、積算光量が230mJ/cm2以下、好ましくは200mJ/cm2以下、より好ましくは160mJ/cm2以下、更に好ましくは120mJ/cm2以下、最も好ましくは100mJ/cm2以下となるように行う。
上記工程(2)において活性エネルギー線を照射する前に、上記塗料(α)からなるウェット塗膜を予備乾燥することは好ましい。上記予備乾燥は、例えば、ウェブを温度23〜150℃程度、好ましくは温度50〜120℃に設定された乾燥炉内を、入口から出口までパスするのに要する時間が0.5〜10分程度、好ましくは1〜5分となるようなライン速度でパスさせることにより行うことができる。
上記工程(2)において活性エネルギー線を照射する際に、上記塗料(α)からなるウェット塗膜を温度40〜120℃、好ましくは温度70〜100℃に予熱してもよい。塗膜を確実に指触乾燥状態にすることができる。上記予熱の方法は、特に制限されず、任意の方法で行うことができる。具体的方法の例については、下記工程(4)の説明において後述する。
工程(3)
本発明の製造方法は、(3)上記塗料(α)からなる指触乾燥状態の塗膜の上に、活性エネルギー線硬化性樹脂を含む塗料(β)からなるウェット塗膜を形成する工程;を含む。
上記塗料(β)としては、活性エネルギー線硬化性樹脂を含むこと以外は特に制限されず、任意の塗料を用いることができる。好ましい上記塗料(β)については後述する。
上記工程(3)において、上記塗料(β)からなるウェット塗膜を形成する方法は、特に制限されず、公知のウェブ塗布方法を使用することができる。具体的には、ロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、エアナイフコート、及びダイコートなどの方法をあげることができる。
工程(4):
本発明の製造方法は、(4)上記塗料(β)からなるウェット塗膜を温度30〜100℃、好ましくは温度40〜85℃、より好ましくは温度50〜75℃に予熱し、活性エネルギー線を積算光量が240〜10000mJ/cm2、好ましくは320〜5000mJ/cm2、より好ましくは360〜2000mJ/cm2 となるように照射する工程;を含む。
上記工程(3)において形成された上記塗料(β)からなるウェット塗膜は、上記工程(4)において完全に硬化される。同時に上記塗料(α)からなる塗膜も完全に硬化される。
理論に拘束される意図はないが、上記方法により、上記塗料(α)と上記塗料(β)の特性が大きく異なる場合であっても、良好な層間密着強度を得ることができるのは、活性エネルギー線の照射を、上記工程(2)では塗膜を指触乾燥状態にするには十分であるが、完全硬化するには不十分な積算光量に抑制し、上記工程(4)において初めて塗膜を完全硬化するのに十分な積算光量で行うことにより、両ハードコートの完全硬化が同時に達成されるためと推測される。
上記工程(4)における活性エネルギー線の照射は、塗膜を完全硬化させる観点、及び上記塗料(α)と上記塗料(β)の特性が大きく異なる場合であっても良好な層間密着強度を得る観点から、積算光量が240mJ/cm2以上、好ましくは320mJ/cm2以上、より好ましくは360mJ/cm2 以上となるように行う。一方、得られるハードコート積層フィルムが黄変したものにならないようにする観点、及びコストの観点から、積算光量が10000mJ/cm2以下、好ましくは5000mJ/cm2以下、より好ましくは2000mJ/cm2以下となるように行う。
上記工程(4)において活性エネルギー線を照射する前に、上記塗料(β)からなるウェット塗膜を予備乾燥することは好ましい。上記予備乾燥は、例えば、ウェブを温度23〜150℃程度、好ましくは温度50〜120℃に設定された乾燥炉内を、入口から出口までパスするのに要する時間が0.5〜10分程度、好ましくは1〜5分となるようなライン速度でパスさせることにより行うことができる。
上記工程(4)において活性エネルギー線を照射する際には、上記塗料(β)からなるウェット塗膜は、上記塗料(α)と上記塗料(β)の特性が大きく異なる場合であっても良好な層間密着強度を得る観点から、温度30〜100℃、好ましくは温度40〜85℃、より好ましくは温度50〜75℃に予熱されている。上記予熱の方法については、特に制限されず、任意の方法で行うことができる。例えば、図1のように活性エネルギー線照射装置と対置したロールにウェブを抱かせて、ロールの表面温度を所定温度に制御する方法;活性エネルギー線照射装置周辺を照射炉として囲い、照射炉内の温度を所定温度に制御する方法;及びこれらの組み合わせなどをあげることができる。
上記工程(4)の後、エージング処理を行ってもよい。ハードコート積層フィルムの特性を安定化することができる。
塗料(α):
上記塗料(α)は活性エネルギー線硬化性樹脂を含み、紫外線や電子線等の活性エネルギー線により重合・硬化して、ハードコートを形成することが可能なものである。
上記活性エネルギー線硬化性樹脂としては、例えば、ポリウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリアクリル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールポリ(メタ)アクリレート、及び、ポリエーテル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリロイル基含有プレポリマー又はオリゴマー;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニロキシエチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、フェニルセロソルブ(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−アクリロイルオキシエチルハイドロゲンフタレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、及び、トリメチルシロキシエチルメタクリレート等の(メタ)アクリロイル基含有単官能反応性モノマー;N−ビニルピロリドン、スチレン等の単官能反応性モノマー;ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2,2‘−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシポリエチレンオキシフェニル)プロパン、及び、2,2’−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシポリプロピレンオキシフェニル)プロパン等の(メタ)アクリロイル基含有2官能反応性モノマー;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、及びトリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリロイル基含有3官能反応性モノマー;ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリロイル基含有4官能反応性モノマー;及び、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等の(メタ)アクリロイル基含有6官能反応性モノマーなどから選択される1種以上を、あるいは上記1種以上を構成モノマーとする樹脂をあげることができる。上記活性エネルギー線硬化性樹脂としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。なお本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートの意味である。
本発明の製造方法により得られるハードコート積層フィルムを、画像表示装置の部材、特にタッチパネル機能を有する画像表示装置のディスプレイ面板として用いる場合には、透明性、色調、耐擦傷性、表面硬度、耐曲げ性、及び表面外観の観点から、上記塗料(α)としては、(A)多官能(メタ)アクリレート 100質量部;及び(D)平均粒子径 1〜300nmの無機微粒子 50〜300質量部;を含む塗料が好ましい。
(A)多官能(メタ)アクリレート:
上記成分(A)は、1分子中に2以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートであり、1分子中に2以上の(メタ)アクリロイル基を有するため、紫外線や電子線等の活性エネルギー線により重合・硬化して、ハードコートを形成する働きをする。
上記多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2,2‘−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシポリエチレンオキシフェニル)プロパン、及び、2,2’−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシポリプロピレンオキシフェニル)プロパン等の(メタ)アクリロイル基含有2官能反応性モノマー;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、及びペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリロイル基含有3官能反応性モノマー;ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリロイル基含有4官能反応性モノマー;ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等の(メタ)アクリロイル基含有6官能反応性モノマー;及びこれらの1種以上を構成モノマーとする重合体(オリゴマーやプレポリマー)をあげることができる。上記成分(A)としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
(D)平均粒子径 1〜300nmの無機微粒子:
上記成分(D)は、本発明の製造方法により得られるハードコート積層フィルムの硬度を飛躍的に高める働きをする。
無機微粒子としては、例えば、シリカ(二酸化珪素);酸化アルミニウム、ジルコニア、チタニア、酸化亜鉛、酸化ゲルマニウム、酸化インジウム、酸化スズ、インジウムスズ酸化物、酸化アンチモン、及び酸化セリウム等の金属酸化物微粒子;弗化マグネシウム、及び弗化ナトリウム等の金属弗化物微粒子;金属硫化物微粒子;金属窒化物微粒子;及び金属微粒子;などをあげることができる。
これらの中でより表面硬度の高いハードコートを得るためにシリカや酸化アルミニウムの微粒子が好ましく、シリカの微粒子がより好ましい。シリカ微粒子の市販品としては、日産化学工業株式会社のスノーテックス(商品名)、扶桑化学工業株式会社のクォートロン(商品名)などをあげることができる。
無機微粒子の塗料中での分散性を高めたり、得られるハードコートの表面硬度を高めたりする目的で、当該無機微粒子の表面をビニルシラン、アミノシラン等のシラン系カップリング剤;チタネート系カップリング剤;アルミネート系カップリング剤;(メタ)アクリロイル基、ビニル基、及びアリル基等のエチレン性不飽和結合基やエポキシ基などの反応性官能基を有する有機化合物;及び脂肪酸、脂肪酸金属塩等の表面処理剤などにより処理したものを用いることは好ましい。
上記成分(D)の平均粒子径は、ハードコートの透明性を保持する観点、及び硬度改良効果を確実に得る観点から、好ましくは300nm以下、より好ましくは200nm以下、更に好ましくは120nm以下である。一方、平均粒子径の下限は特にないが、通常入手可能な無機微粒子は細かくてもせいぜい1nm程度である。
なお本明細書において、無機微粒子の平均粒子径は、日機装株式会社のレーザー回折・散乱式粒度分析計「MT3200II(商品名)」を使用して測定した粒子径分布曲線において、粒子の小さい方からの累積が50質量%となる粒子径である。
上記成分(D)の配合量は、上記成分(A)100質量部に対して、表面硬度の観点から、好ましくは50質量部以上、より好ましくは80質量部以上である。一方、透明性の観点から、好ましくは300質量部以下、より好ましくは200質量部以下、更に好ましくは160質量部以下である。
(E)レベリング剤:
上記塗料(α)には、上記塗料(α)からなる指触乾燥状態の塗膜の表面を平滑なものにし、上記塗料(β)からなるハードコートを形成し易くする観点から、更に(E)レベリング剤を含ませることがより好ましい。
上記レベリング剤としては、例えば、アクリル系レベリング剤、シリコン系レベリング剤、弗素系レベリング剤、シリコン・アクリル共重合体系レベリング剤、弗素変性アクリル系レベリング剤、弗素変性シリコン系レベリング剤、及びこれらに官能基(例えば、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、アシルオキシ基、ハロゲン基、アミノ基、ビニル基、エポキシ基、メタクリロキシ基、アクリロキシ基、及びイソシアネート基など。)を導入したレベリング剤などをあげることができる。これらの中で、上記成分(E)としては、シリコン・アクリル共重合体系レベリング剤が好ましい。上記成分(E)としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
上記成分(E)の配合量は、上記成分(A)100質量部に対して、上記塗料(α)からなる塗膜の表面を平滑なものにし、上記塗料(β)からなる塗膜を形成し易くする観点から、通常0.01質量部以上、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.2質量部以上である。一方、上記塗料(α)からなる塗膜の上に、上記塗料(β)が弾かれることなく良好に塗工できるようにする観点から、通常1質量部以下、好ましくは0.6質量部以下、より好ましくは0.4質量部以下であってよい。
上記塗料(α)には、活性エネルギー線による硬化性を良好にする観点から、1分子中に2以上のイソシアネート基(−N=C=O)を有する化合物及び/又は光重合開始剤を更に含ませることが好ましい。
上記1分子中に2以上のイソシアネート基を有する化合物としては、例えば、メチレンビス−4−シクロヘキシルイソシアネート;トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、イソホロンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、トリレンジイソシアネートのイソシアヌレート体、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体、イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート体、ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット体等のポリイソシアネート;及び、上記ポリイソシアネートのブロック型イソシアネート等のウレタン架橋剤などをあげることができる。上記1分子中に2以上のイソシアネート基を有する化合物としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。また、架橋の際には、必要に応じてジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジエチルヘキソエートなどの触媒を添加してもよい。
上記光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、メチル−o−ベンゾイルベンゾエート、4−メチルベンゾフェノン、4、4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4′−メチルジフェニルサルファイド、3,3’,4,4’−テトラ(tert−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンジルメチルケタール等のベンゾイン系化合物;アセトフェノン、2、2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等のアセトフェノン系化合物;メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−アミルアントラキノン等のアントラキノン系化合物;チオキサントン、2、4−ジエチルチオキサントン、2、4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン系化合物;アセトフェノンジメチルケタール等のアルキルフェノン系化合物;トリアジン系化合物;ビイミダゾール化合物;アシルフォスフィンオキサイド系化合物;チタノセン系化合物;オキシムエステル系化合物;オキシムフェニル酢酸エステル系化合物;ヒドロキシケトン系化合物;及び、アミノベンゾエート系化合物などをあげることができる。上記光重合開始剤としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
上記塗料(α)には、所望に応じて、帯電防止剤、界面活性剤、チクソ性付与剤、汚染防止剤、印刷性改良剤、酸化防止剤、耐候性安定剤、耐光性安定剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、着色剤、及び有機微粒子などの添加剤を1種又は2種以上含ませることができる。
上記塗料(α)は、塗工し易い濃度に希釈するため、所望に応じて溶剤を含んでいてもよい。溶剤は上記成分(A)、上記成分(D)、及びその他の任意成分と反応したり、これらの成分の自己反応(劣化反応を含む)を触媒(促進)したりしないものであれば、特に制限されない。上記溶剤としては、1−メトキシ−2−プロパノール、酢酸エチル、酢酸nブチル、トルエン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ダイアセトンアルコール、及びアセトンなどをあげることができる。これらの中で、1−メトキシ−2−プロパノールが好ましい。上記溶剤としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
上記塗料(α)は、これらの成分を混合、攪拌することにより得ることができる。
上記塗料(α)からなるハードコートの厚みは、特に制限されないが、硬度の観点から、好ましくは10μm以上、より好ましくは15μm以上、更に好ましくは18μm以上であってよい。一方、耐カール性、及び耐曲げ性の観点から、好ましくは30μm以下、より好ましくは27μm以下、更に好ましくは25μm以下であってよい。
塗料(β):
上記塗料(β)は活性エネルギー線硬化性樹脂を含み、紫外線や電子線等の活性エネルギー線により重合・硬化して、ハードコートを形成することが可能なものである。上記活性エネルギー線硬化性樹脂については上記塗料(α)の説明において上述した。上記活性エネルギー線硬化性樹脂としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
本発明の製造方法により得られるハードコート積層フィルムを、画像表示装置の部材、特にタッチパネル機能を有する画像表示装置のディスプレイ面板として用いる場合には、上記塗料(β)としては、(A)多官能(メタ)アクリレート 100質量部;(B)撥水剤 0.01〜7質量部;及び(C)シランカップリング剤 0.01〜10質量部;を含み、かつ無機粒子を含まない塗料が好ましい。
本発明の製造方法により得られるハードコート積層フィルムがタッチパネル機能を有する画像表示装置のディスプレイ面板として用いられる場合には、上記塗料(β)からなるハードコートはタッチ面を形成する。このとき上記塗料(β)が上記構成であると、良好な耐擦傷性を発現し、ハンカチなどで繰返し拭かれたとしても指すべり性などの表面特性を維持することができる。
無機粒子(例えば、シリカ(二酸化珪素);酸化アルミニウム、ジルコニア、チタニア、酸化亜鉛、酸化ゲルマニウム、酸化インジウム、酸化スズ、インジウムスズ酸化物、酸化アンチモン、及び酸化セリウム等の金属酸化物粒子;弗化マグネシウム、弗化ナトリウム等の金属弗化物粒子;金属硫化物粒子;金属窒化物粒子;及び金属粒子;など。)は、ハードコートの硬度を高めるのに効果が大きい。一方、上記成分(A)などの樹脂成分との相互作用は弱く、耐擦傷性を不十分なものにする原因となっていた。そこで最表面を形成する上記塗料(β)からなるハードコートには無機粒子を含まないようにして耐擦傷性を保持し、一方、上記塗料(α)からなるハードコートには多量の特定の無機微粒子を含ませて硬度を高めることにより、この問題を解決したものである。
ここで無機粒子を「含まない」とは、有意な量の無機粒子を含んではいないという意味である。ハードコート形成用塗料の分野において、無機粒子の有意な量は、上記成分(A)100質量部に対して、通常1質量部程度以上である。従って、無機粒子を「含まない」とは、上記成分(A)100質量部に対して、無機粒子の量が通常1質量部未満、好ましくは0.1質量部以下、より好ましくは0.01質量部以下と言い換えることもできる。
上記(A)多官能(メタ)アクリレートについては、上記塗料(α)の説明において上述した。上記成分(A)としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
(B)撥水剤:
上記成分(B)は、指すべり性、汚れの付着防止性、及び汚れの拭取り性を高める働きをする。
上記撥水剤としては、例えば、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、及びアクリル・エチレン共重合体ワックス等のワックス系撥水剤;シリコンオイル、シリコン樹脂、ポリジメチルシロキサン、及びアルキルアルコキシシラン等のシリコン系撥水剤;フルオロポリエーテル系撥水剤、及びフルオロポリアルキル系撥水剤等の含弗素系撥水剤;などをあげることができる。上記成分(B)としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
これらの中で、上記成分(B)としては、撥水性能の観点から、フルオロポリエーテル系撥水剤が好ましい。上記成分(A)と上記成分(B)とが化学結合ないしは強く相互作用し、上記成分(B)がブリードアウトするなどのトラブルを防止する観点から、上記成分(B)としては、分子内に(メタ)アクリロイル基とフルオロポリエーテル基とを含有する化合物を含む撥水剤(以下、(メタ)アクリロイル基含有フルオロポリエーテル系撥水剤と略す。)がより好ましい。上記成分(B)として更に好ましいのは、上記成分(A)と上記成分(B)との化学結合ないしは相互作用を適宜調節し、透明性を高く保ちつつ良好な撥水性を発現させる観点から、アクリロイル基含有フルオロポリエーテル系撥水剤とメタアクリロイル基含有フルオロポリエーテル系撥水剤との混和物である。
上記成分(B)の配合量は、上記成分(A)100質量部に対して、上記成分(B)がブリードアウトするなどのトラブルを防止する観点から、通常7質量部以下、好ましくは4質量部以下、より好ましくは2質量部以下である。一方、成分(B)の使用効果を得るという観点から、通常0.01質量部以上、好ましくは0.05質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上である。
(C)シランカップリング剤:
上記成分(C)は、上記塗料(α)からなるハードコートと上記塗料(β)からなるハードコートとの密着性を向上させる働きをする。
シランカップリング剤は、加水分解性基(例えば、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;アセトキシ基等のアシルオキシ基;クロロ基等のハロゲン基;など)、及び有機官能基(例えば、アミノ基、メルカプト基、ビニル基、エポキシ基、メタクリロキシ基、アクリロキシ基、及びイソシアネート基など)の少なくとも2種類の異なる反応性基を有するシラン化合物である。これらの中で上記成分(C)としては、密着性の観点から、アミノ基を有するシランカップリング剤(アミノ基と加水分解性基を有するシラン化合物)、及びメルカプト基を有するシランカップリング剤(メルカプト基と加水分解性基を有するシラン化合物)が好ましい。密着性及び臭気の観点から、アミノ基を有するシランカップリング剤がより好ましい。
アミノ基を有するシランカップリング剤としては、例えば、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシランなどをあげることができる。
メルカプト基を有するシランカップリング剤としては、例えば、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、及び3−メルカプトプロピルトリメトキシシランなどをあげることができる。
上記成分(C)としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
上記成分(C)の配合量は、上記成分(A)100質量部に対して、密着性向上効果を確実に得る観点から、通常0.01質量部以上、好ましくは0.05質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上である。一方、塗料のポットライフの観点から、通常10質量部以下、好ましくは5質量部以下、より好ましくは1質量部以下であってよい。
上記塗料(β)には、活性エネルギー線による硬化性を良好にする観点から、1分子中に2以上のイソシアネート基(−N=C=O)を有する化合物及び/又は光重合開始剤を更に含ませることが好ましい。
上記1分子中に2以上のイソシアネート基(−N=C=O)を有する化合物については、上記塗料(α)の説明において上述した。上記1分子中に2以上のイソシアネート基を有する化合物としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
上記光重合開始剤については、上記塗料(α)の説明において上述した。上記光重合開始剤としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
上記塗料(β)には、所望に応じて、帯電防止剤、界面活性剤、レベリング剤、チクソ性付与剤、汚染防止剤、印刷性改良剤、酸化防止剤、耐候性安定剤、耐光性安定剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、着色剤、無機微粒子、及び有機微粒子などの添加剤を1種又は2種以上含ませることができる。
上記塗料(β)は、塗工し易い濃度に希釈するため、所望に応じて溶剤を含んでいてもよい。溶剤は上記成分(A)〜(C)、及びその他の任意成分と反応したり、これらの成分の自己反応(劣化反応を含む)を触媒(促進)したりしないものであれば、特に制限されない。上記溶剤としては、1−メトキシ−2−プロパノール、酢酸エチル、酢酸nブチル、トルエン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ダイアセトンアルコール、及びアセトンなどをあげることができる。上記溶剤としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
上記塗料(β)は、これらの成分を混合、攪拌することにより得ることができる。
上記塗料(β)からなるハードコートの厚みは、耐擦傷性及び硬度の観点から、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上である。一方、硬度及び上記塗料(α)からなるハードコートとの密着性の観点から、好ましくは5μm以下、より好ましくは4μm以下、更に好ましくは3μm以下である。
透明樹脂フィルム:
上記透明樹脂フィルムは、上記塗料(α)からなるハードコート、及び上記塗料(β)からなるハードコートを、その上に形成するための透明フィルム基材となる層である。上記透明樹脂フィルムとしては、高い透明性を有し、かつ着色のないものであること以外は制限されず、任意の透明樹脂フィルムを用いることができる。例えば、トリアセチルセルロース等のセルロースエステル系樹脂;ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂;エチレンノルボルネン共重合体等の環状炭化水素系樹脂;ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル等のアクリル系樹脂;ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂;芳香族ポリカーボネート系樹脂;ポリプロピレン、4−メチル−ペンテン−1等のポリオレフィン系樹脂;ポリアミド系樹脂;ポリアリレート系樹脂;ポリマー型ウレタンアクリレート系樹脂;及びポリイミド系樹脂;などのフィルムをあげることができる。これらのフィルムは無延伸フィルム、一軸延伸フィルム、及び二軸延伸フィルムを包含する。またこれらのフィルムは、これらの1種又は2種以上を2層以上積層した積層フィルムを包含する。
上記透明樹脂フィルムの厚みは、特に制限されず、所望により任意の厚みにすることができる。本発明の製造方法により得られるハードコート積層フィルムの取扱性の観点からは、通常20μm以上、好ましくは50μm以上であってよい。本発明の製造方法により得られるハードコート積層フィルムを高い剛性を必要としない用途に用いる場合には、経済性の観点から、通常250μm以下、好ましくは150μm以下であってよい。本発明の製造方法により得られるハードコート積層フィルムをタッチパネルのディスプレイ面板として用いる場合には、剛性を保持する観点から、通常100μm以上、好ましくは200μm以上、より好ましくは300μm以上であってよい。またタッチパネルの薄型化の要求に応える観点から、通常1500μm以下、好ましくは1200μm以下、より好ましくは1000μm以下であってよい。
上記透明樹脂フィルムは、好ましくは、ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂フィルムである。表面硬度、耐擦傷性、透明性、表面平滑性、外観、剛性、耐熱性、及び寸法安定性に優れたハードコート積層フィルムとなり、タッチパネルのディスプレイ面板や透明導電性基板として好適に用いることができる。
上記ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂は、アクリル系樹脂の高透明性、高表面硬度、高剛性という特徴はそのままにポリイミド系樹脂の耐熱性や寸法安定性に優れるという特徴を導入し、淡黄色から赤褐色に着色するという欠点を改良した熱可塑性樹脂であり、例えば、特表2011−519999号公報に開示されている。なお本明細書において、ポリ(メタ)アクリルイミドとは、ポリアクリルイミド又はポリメタクリルイミドの意味である。
上記ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂としては、ハードコート積層フィルムをタッチパネルなどの光学物品に用いる目的から、高い透明性を有し、かつ着色のないものであること以外は制限されず、任意のポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂を用いることができる。
上記ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂の好ましいものとしては、黄色度指数(JIS K 7105:1981に従い、株式会社島津製作所の色度計「SolidSpec−3700(商品名)」を用いて測定。)が、3以下のものをあげることができる。黄色度指数は、より好ましくは2以下であり、更に好ましくは1以下である。また押出負荷や溶融フィルムの安定性の観点から、好ましいものとしてメルトマスフローレート(ISO1133に従い、260℃、98.07Nの条件で測定。)が0.1〜20g/10分のものをあげることができる。メルトマスフローレートは0.5〜10g/10分がより好ましい。更にポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂のガラス転移温度は、耐熱性の観点から、150℃以上のものが好ましい。より好ましくは170℃以上である。
また上記ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂には、本発明の目的に反しない限度において、所望により、ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂以外の熱可塑性樹脂;顔料、無機フィラー、有機フィラー、樹脂フィラー;滑剤、酸化防止剤、耐候性安定剤、熱安定剤、離型剤、帯電防止剤、及び界面活性剤等の添加剤;などを更に含ませることができる。これらの任意成分の配合量は、通常、ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂を100質量部としたとき、0.01〜10質量部程度である。
上記ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂の市販例としては、エボニック社の「PLEXIMID TT50(商品名)」、及び「PLEXIMID TT70(商品名)」などをあげることができる。
上記ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂フィルムは、好ましくは、第一ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂層(P1);芳香族ポリカーボネート系樹脂層(Q);第二ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂層(P2);が、この順に直接積層された透明多層フィルムである。なお本明細書においては、上記P1層側にタッチ面が形成されるものとして本発明を説明する。
ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂は耐熱性や表面硬度には優れているが、切削加工性が不十分になり易いのに対し、芳香族ポリカーボネート系樹脂は切削加工性には優れているが、耐熱性や表面硬度が不十分になり易い。そのため上記の層構成の透明多層フィルムを用いることにより、両者の弱点を補い合い、耐熱性、表面硬度、及び切削加工性の何れにも優れたハードコート積層フィルムを容易に得ることができるようになる。
上記P1層の層厚みは、特に制限されないが、本発明の製造方法により得られるハードコート積層フィルムの耐熱性や表面硬度の観点から、通常20μm以上、好ましくは40μm以上、より好ましくは60μm以上、更に好ましくは80μm以上であってよい。
上記P2層の層厚みは、特に制限されないが、本発明の製造方法により得られるハードコート積層フィルムの耐カール性の観点から、上記P1層と同じ層厚みであることが好ましい。
なおここで「同じ層厚み」とは、物理化学的に厳密な意味で同じ層厚みと解釈されるべきではない。工業的に通常行われる工程・品質管理の振れ幅の範囲内において同じ層厚みと解釈されるべきである。工業的に通常行われる工程・品質管理の振れ幅の範囲内において同じ層厚みであれば、多層フィルムの耐カール性を良好に保つことができるからである。Tダイ共押出法による無延伸多層フィルムの場合には、通常−5〜+5μm程度の幅で工程・品質管理されるものであるから、層厚み65μmと同75μmとは同一と解釈されるべきである。
上記Q層の層厚みは、特に制限されないが、本発明の製造方法により得られるハードコート積層フィルムの耐切削性の観点から、通常20μm以上、好ましくは80μm以上であってよい。
上記P1層及び上記P2層に用いるポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂については、上述した。
なお上記P1層に用いるポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂と、上記P2層に用いるポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂とは、異なる樹脂特性のもの、例えばメルトマスフローレートやガラス転移温度の異なるポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂を用いても良いが、本発明の製造方法により得られるハードコート積層フィルムの耐カール性の観点から、同じ樹脂特性のものを用いることが好ましい。例えば、同一グレードの同一ロットを用いるのは、好ましい実施態様の一つである。
上記Q層に用いる芳香族ポリカーボネート系樹脂としては、例えば、ビスフェノールA、ジメチルビスフェノールA、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンなどの芳香族ジヒドロキシ化合物とホスゲンとの界面重合法によって得られる重合体;ビスフェノールA、ジメチルビスフェノールA、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンなどの芳香族ジヒドロキシ化合物とジフェニルカーボネートなどの炭酸ジエステルとのエステル交換反応により得られる重合体;などの芳香族ポリカーボネート系樹脂の1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
上記芳香族ポリカーボネート系樹脂に含み得る好ましい任意成分としては、コアシェルゴムをあげることができる。芳香族ポリカーボネート系樹脂とコアシェルゴムとの合計を100質量部としたとき、コアシェルゴムを0〜30質量部(芳香族ポリカーボネート系樹脂100〜70質量部)、好ましくは0〜10質量部(芳香族ポリカーボネート系樹脂100〜90質量部)の量で用いることにより、耐切削加工性や耐衝撃性をより高めることができる。
上記コアシェルゴムとしては、例えば、メタクリル酸エステル・スチレン/ブタジエンゴムグラフト共重合体、アクリロニトリル・スチレン/ブタジエンゴムグラフト共重合体、アクリロニトリル・スチレン/エチレン・プロピレンゴムグラフト共重合体、アクリロニトリル・スチレン/アクリル酸エステルグラフト共重合体、メタクリル酸エステル/アクリル酸エステルゴムグラフト共重合体、メタクリル酸エステル・アクリロニトリル/アクリル酸エステルゴムグラフト共重合体などのコアシェルゴムをあげることができ、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
また上記芳香族ポリカーボネート系樹脂には、本発明の目的に反しない限度において、所望により、芳香族ポリカーボネート系樹脂やコアシェルゴム以外の熱可塑性樹脂;顔料、無機フィラー、有機フィラー、樹脂フィラー;滑剤、酸化防止剤、耐候性安定剤、熱安定剤、離型剤、帯電防止剤、及び界面活性剤等の添加剤;などを更に含ませることができる。これらの任意成分の配合量は、通常、芳香族ポリカーボネート系樹脂とコアシェルゴムとの合計を100質量部としたとき、0.01〜10質量部程度である。
上記ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂フィルム(該フィルムが上記透明多層フィルムである場合を含む。)の製造方法は特に制限されない。好ましい製造方法としては、特開2015−033844号公報や特開2015−034285号公報に記載された方法をあげることができる。
また上記塗料(α)からなるハードコートを形成するに際し、上記ポリ(メタ)アクリルイミド系樹脂フィルム又は上記透明多層フィルムのハードコート形成面又は両面に、上記塗料(α)からなるハードコートとの接着強度を高めるため、事前にコロナ放電処理やアンカーコート形成などの易接着処理を施してもよい。
本発明の製造方法では、上記透明樹脂フィルムの上記塗料(α)塗工面とは反対側の面に、更に第3のハードコートを形成してもよい。耐カール性を良好にすることができる。
また近年、画像表示装置の軽量化を目的に、ディスプレイ面板の裏側にタッチ・センサが直接形成された2層構造のタッチパネル(所謂ワン・ガラス・ソリューション)が提案されている。また更なる軽量化のため、所謂ワン・ガラス・ソリューションを代替するワン・プラスチック・ソリューションも提案されている。本発明の製造方法により得られるハードコート積層フィルムを、所謂ワン・ガラス・ソリューションを代替するワン・プラスチック・ソリューションに用いる場合には、上記第3のハードコートを形成することにより、印刷面として好適な特性を付与することが容易になる。
本発明の製造方法では、所望により、上記塗料(β)からなるハードコート、上記塗料(α)からなるハードコート、上記透明樹脂フィルムの層、及び上記第3のハードコート以外の任意の層を形成してもよい。任意の層としては、例えば、上述した3種類のハードコート以外のハードコート、アンカーコート、粘着剤層、透明導電層、高屈折率層、低屈折率層、及び反射防止機能層などをあげることができる。
本発明の製造方法により得られるハードコート積層フィルムは、全光線透過率(JIS K 7361−1:1997に従い、日本電色工業株式会社の濁度計「NDH2000(商品名)」を用いて測定。)が好ましくは85%以上、より好ましくは88%以上、更に好ましくは90%以上である。全光線透過率が85%以上であることにより、本発明の製造方法により得られるハードコート積層フィルムは、画像表示装置部材として好適に用いることができる。全光線透過率は高いほど好ましい。
本発明の製造方法により得られるハードコート積層フィルムは、ヘーズ(JIS K 7136:2000に従い、日本電色工業株式会社の濁度計「NDH2000(商品名)」を用いて測定。)が好ましくは2.0%以下、より好ましくは1.5%以下、更に好ましくは1.0%以下、最も好ましくは0.5%以下である。ヘーズが2.0%以下であることにより、本発明の製造方法により得られるハードコート積層フィルムは、画像表示装置部材として好適に用いることができる。ヘーズは低いほど好ましい。
本発明の製造方法により得られるハードコート積層フィルムは、上記塗料(β)からなるハードコートの表面の鉛筆硬度(JIS K 5600−5−4に従い、750g荷重の条件で、三菱鉛筆株式会社の鉛筆「ユニ(商品名)」を用いて測定。)が好ましくは5H以上、より好ましくは6H以上、更に好ましくは7H以上である。鉛筆硬度が5H以上であることにより、本発明の製造方法により得られるハードコート積層フィルムは、画像表示装置部材として好適に用いることができる。鉛筆硬度は高いほど好ましい。
本発明の製造方法により得られるハードコート積層フィルムは、最小曲げ半径が好ましくは40mm以下、より好ましくは35mm以下、更に好ましくは30mm以下である。最小曲げ半径が好ましくは40mm以下であることにより、本発明の製造方法により得られるハードコート積層フィルムは、フィルムロールとして容易に扱うことができるようになり、製造効率などの点で有利になる。最小曲げ半径は小さいほど好ましい。ここで最小曲げ半径は、下記実施例の試験(ヌ)に従い測定した値である。
なお最小曲げ半径は、ハードコート積層フィルムを折り曲げたとき、曲げ部の表面にクラックが発生する直前の曲げ半径であり、曲げの限界を示す指標である。曲げ半径は、曲率半径と同様に定義される。
曲率半径は、以下のように定義される。曲線のM点からN点までの長さをΔS;M点における接線の傾きと、N点における接線の傾きとの差をΔα;M点における接線と垂直であり、かつM点で交わる直線と、N点における接線と垂直であり、かつN点で交わる直線との交点をO;としたとき、ΔSが十分に小さいときは、M点からN点までの曲線は円弧に近似することができる(図3)。このときの半径が曲率半径と定義される。また曲率半径をRとすると、∠MON=Δαであり、ΔSが十分に小さいときは、Δαも十分に小さいから、ΔS=RΔαが成り立ち、R=ΔS/Δαである。
本発明の製造方法により得られるハードコート積層フィルムは、上記塗料(β)からなるハードコートの表面の水接触角が好ましくは100度以上、より好ましくは105度以上である。本発明の製造方法により得られるハードコート積層フィルムをタッチパネルのディスプレイ面板として用いる場合、上記塗料(β)からなるハードコートはタッチ面を形成することになる。上記塗料(β)からなるハードコート表面の水接触角が100度以上であることにより、タッチ面上において、指やペンを思い通りに滑らし、タッチパネルを操作することができるようになる。指やペンを思い通りに滑らせるという観点からは、水接触角は高い方が好ましく、水接触角の上限は特にないが、指すべり性の観点からは、通常120度程度で十分である。ここで水接触角は、下記実施例の試験(ニ)に従い測定した値である。
本発明の製造方法により得られるハードコート積層フィルムは、好ましくは上記塗料(β)からなるハードコートの表面の往復2万回綿拭後の水接触角が100度以上である。より好ましくは往復2万5千回綿拭後の水接触角が100度以上である。往復2万回綿拭後の水接触角が100度以上であることにより、ハンカチなどで繰返し拭かれたとしても指すべり性などの表面特性を維持することができる。水接触角100度以上を維持できる綿拭回数は多いほど好ましい。ここで綿拭後の水接触角は、下記実施例の試験(ホ)に従い測定した値である。
本発明の製造方法により得られるハードコート積層フィルムの黄色度指数(JIS K 7105:1981に従い、株式会社島津製作所の色度計「SolidSpec−3700(商品名)」を用いて測定。)は、好ましくは3以下、より好ましくは2以下、更に好ましくは1以下である。黄色度指数は低いほど好ましい。画像表示装置部材として好適に用いることができる。
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
測定方法
(イ)全光線透過率:
JIS K 7361−1:1997に従い、日本電色工業株式会社の濁度計「NDH2000(商品名)」を用いて測定した。
(ロ)ヘーズ;
JIS K 7136:2000に従い、日本電色工業株式会社の濁度計「NDH2000(商品名)」を用いて測定した。
(ハ)黄色度指数;
JIS K 7105:1981に従い、島津製作所社製の色度計「SolidSpec−3700(商品名)」を用いて測定した。
(ニ)水接触角:
ハードコート積層フィルムの上記塗料(β)からなるハードコート面について、KRUSS社の自動接触角計「DSA20(商品名)」を使用し、水滴の幅と高さとから算出する方法(JIS R 3257:1999を参照。)で測定した。
(ホ)耐擦傷性1(綿拭後の水接触角):
縦150mm、横50mmの大きさで、ハードコート積層フィルムのマシン方向が試験片の縦方向となるように採取した試験片を、ハードコート積層フィルムの上記塗料(β)からなるハードコートが表面になるようにJIS L 0849の学振試験機に置き、学振試験機の摩擦端子に、4枚重ねのガーゼ(川本産業株式会社の医療用タイプ1ガーゼ)で覆ったステンレス板(縦10mm、横10mm、厚み1mm)を取付け、該ステンレス板の縦横面が試験片と接触するようにセットし、350g荷重を載せ、試験片の上記塗料(β)からなるハードコート面を、摩擦端子の移動距離60mm、速度1往復/秒の条件で往復1万回擦った後、上記(ニ)の方法に従い、当該綿拭箇所の水接触角を測定した。水接触角が100度以上であるときは、更に往復5千回擦った後、上記(ニ)の方法に従い、当該綿拭箇所の水接触角を測定する作業を繰り返し、以下の基準で評価した。
A:往復2万5千回後でも水接触角100度以上。
B:往復2万回後では水接触角100度以上だが、2万5千回後は100度未満。
C:往復1万5千回後では水接触角100度以上だが、2万回後は100度未満。
D:往復1万回後では水接触角100度以上だが、1万5千回後は100度未満。
E:往復1万回後で水接触角100度未満。
(ヘ)耐擦傷性2(耐スチールウール性)
ハードコート積層フィルムを、上記塗料(β)からなるハードコートが表面になるようにJIS L 0849の学振試験機に置いた。続いて、学振試験機の摩擦端子に#0000のスチールウールを取り付けた後、500g荷重を載せ、試験片の表面を往復100回擦った後、当該摩擦箇所を目視観察した。傷が認められない場合には、更に往復100回擦った後、当該摩擦箇所を目視観察する作業を繰り返し、以下の基準で評価した。
A:往復500回後でも傷は認められない。
B:往復400回後では傷は認められないが、往復500回後には傷を認めることができる。
C:往復300回後では傷は認められないが、往復400回後には傷を認めることができる。
D:往復200回後では傷は認められないが、往復300回後には傷を認めることができる。
E:往復100回後では傷は認められないが、往復200回後には傷を認めることができる。
F:往復100回後で傷を認めることができる。
(ト)鉛筆硬度:
JIS K 5600−5−4に従い、750g荷重の条件で、三菱鉛筆株式会社の鉛筆「ユニ(商品名)」を用い、ハードコート積層フィルムの上記塗料(β)からなるハードコート面について測定した。
(チ)表面平滑性(表面外観):
ハードコート積層フィルムの表面(両方の面)を、蛍光灯の光の入射角をいろいろと変えて当てながら目視観察し、以下の基準で評価した。
◎:表面にうねりや傷がない。間近に光を透かし見ても、曇感がない。
○:間近に光を透かし見ると、僅かな曇感のある箇所がある。
△:間近に見ると、表面にうねりや傷を僅かに認める。また曇感がある。
×:表面にうねりや傷を多数認めることができる。また明らかな曇感がある。
(リ)碁盤目試験(密着性):
JIS K 5600−5−6:1999に従い、ハードコート積層フィルムの上記塗料(β)からなるハードコート面側から碁盤目の切れ込みを100マス(1マス=1mm×1mm)入れた後、密着試験用テープを碁盤目へ貼り付けて指でしごいた後、剥がした。評価基準はJISの上記規格の表1に従った。
分類0:カットの縁が完全に滑らかで、どの格子の目にも剥れがない。
分類1:カットの交差点における塗膜の小さな剥れ。クロスカット部分で影響を受けるのは、明確に5%を上回ることはない。
分類2:塗膜がカットの縁に沿って、及び/又は交差点において剥れている。クロスカット部分で影響を受けるのは、明確に5%を超えるが15%を上回ることはない。
分類3:塗膜がカットの縁に沿って、部分的又は全面的に大剥れを生じており、及び/又は目のいろいろな部分が、部分的又は全面的に剥れている。クロスカット部分で影響を受けるのは、明確に15%を超えるが35%を上回ることはない。
分類4:塗膜がカットの縁に沿って、部分的又は全面的に大剥れを生じており、及び/又は数箇所の目が、部分的又は全面的に剥れている。クロスカット部分で影響を受けるのは、明確に35%を超えるが65%を上回ることはない。
分類5:剥れの程度が分類4を超える場合。
(ヌ)最小曲げ半径:
JIS−K6902:2007の曲げ成形性(B法)を参考とし、温度23℃±2℃、相対湿度50±5%にて24時間状態調節した試験片について、曲げ温度23℃±2℃、折り曲げ線はハードコート積層フィルムのマシン方向と直角となる方向とし、ハードコート積層フィルムの上記塗料(β)からなるハードコートが外側となるように折り曲げて曲面が形成されるようにして行った。クラックが発生しなかった成形ジグのうち正面部分の半径の最も小さいものの正面部分の半径を最小曲げ半径とした。この「正面部分」は、JIS K6902:2007の18.2項に規定されたB法における成形ジグに関する同用語を意味する。
(ル)切削加工性(曲線状切削加工線の状態):
コンピュータにより自動制御を行うルーター加工機を使用し、ハードコート積層フィルムに、直径2mmの真円形の切削孔と直径0.5mmの真円形の切削孔を設けた。このとき使用したミルは刃先の先端形状が円筒丸型の超硬合金製4枚刃、ニック付きのものであり、刃径は加工箇所に合わせて適宜選択した。続いて直径2mmの切削孔について、その切削端面を目視又は顕微鏡(100倍)観察し、以下の基準で評価した。同様に直径0.5mmの切削孔について、その切削端面を目視又は顕微鏡(100倍)観察し、以下の基準で評価した。表には前者の結果−後者の結果の順に記載した。
◎:顕微鏡観察でもクラック、ヒゲは認められない
○:顕微鏡観察でもクラックは認められない。しかしヒゲは認められる。
△:目視でクラックは認められない。しかし顕微鏡観察ではクラックが認められる。
×:目視でもクラックが認められる。
(ヲ)収縮開始温度(耐熱寸法安定性):
JIS K 7197:1991に従い測定した温度−試験片長さ曲線から、20℃〜原料樹脂のガラス転移温度の範囲の最も低い温度側において、試験片長さが増加(膨張)から減少(収縮)に転じる変曲点(試験片長さが極大となる温度)を収縮開始温度として算出した。測定には、セイコーインスツル株式会社の熱機械的分析装置(TMA)「EXSTAR6100(商品名)」を用いた。試験片は縦20mm、横10mmの大きさで、フィルムのマシン方向(MD)が試験片の縦方向となるように採取した。試験片の状態調節は、温度23℃±2℃、相対湿度50±5%で24時間とし、フィルムの物性値としての寸法安定性を測定する目的から、測定最高温度における状態調節は行わなかった。チャック間距離は10mm、引張荷重は4.0mN/mm2 とした。温度プログラムは、温度20℃で3分間保持した後、昇温速度5℃/分で温度300℃まで昇温するプログラムとした。
使用した原材料
(A)多官能(メタ)アクリレート:
(A−1)ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート。6官能。
(A−2)ペンタエリスリトールトリアクリレート。3官能。
(B)撥水剤:
(B−1)信越化学工業株式会社のアクリロイル基含有フルオロポリエーテル系撥水剤「KY−1203(商品名)」。固形分20質量%。
(B−2)ソルベイ(Solvay)社のメタクリロイル基含有フルオロポリエーテル系撥水剤「FOMBLIN MT70(商品名)」。固形分70質量%。
(C)シランカップリング剤:
(C−1)信越化学工業株式会社のN−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン「KBM−602(商品名)」。
(C−2)信越化学工業株式会社のN−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン「KBM−603(商品名)」。
(C−3)信越化学工業株式会社の3−アミノプロピルトリメトキシシラン「KBM−903(商品名)」。
(C−4)信越化学工業株式会社の3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン「KBM−802(商品名)」。
(C−5)信越化学工業株式会社の3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン「KBM−403(商品名)」。
(D)平均粒子径 1〜300nmの無機微粒子:
(D−1)ビニル基を有するシランカップリング剤で表面処理された平均粒子径20nmのシリカ微粒子。
(E)レベリング剤:
(E−1)楠本化成株式会社のシリコン・アクリル共重合体系レベリング剤「ディスパロンNSH−8430HF(商品名)」。固形分10質量%。
(E−2)ビックケミー・ジャパン株式会社のシリコン・アクリル共重合体系レベリング剤「BYK−3550(商品名)」。固形分52質量%。
(E−3)ビックケミー・ジャパン株式会社のアクリル重合体系レベリング剤「BYK−399(商品名)」。固形分100質量%。
(E−4)楠本化成株式会社のシリコン系レベリング剤「ディスパロンLS−480(商品名)」。固形分100質量%。
(F)任意成分:
(F−1)双邦實業股分有限公司のフェニルケトン系光重合開始剤(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)「SB−PI714(商品名)」。
(F−2)1−メトキシ−2−プロパノール。
(Hα)上記塗料(α):
(Hα−1)上記(A−2)100質量部、上記(D−1)140質量部、上記(E−1)2質量部(固形分換算0.2質量部)、上記(F−1)17質量部、及び上記(F−2)200質量部を混合攪拌して得た塗料。表1に配合表を示す。なお上記(E−1)については、表に固形分換算の値を記載している。
(Hα−2〜14)配合を表1又は表2に示すように変更したこと以外は、上記(H2−1)と同様にして塗料を得た。
(Hβ)上記塗料(β):
(Hβ−1)上記(A−1)100質量部、上記(B−1)2質量部(固形分換算0.40質量部)、上記(B−2)0.06質量部(固形分換算0.042質量部)、上記(C−1)0.5質量部、上記(F−1)4質量部、及び上記(F−2)100質量部を混合攪拌して得た塗料。表3に配合表を示す。なお上記(B−1)と上記成分(B−2)については、表に固形分換算の値を記載している。
(Hβ−2〜16)配合を表3又は表4に示すように変更したこと以外は、上記(Hβ−1)と同様にして塗料を得た。
(P)透明樹脂フィルム:
(P−1)2種3層マルチマニホールド方式の共押出Tダイ、及び鏡面ロールと鏡面ベルトとで溶融フィルムを押圧する機構を備えた引巻取機を備えた装置を使用し、2種3層多層樹脂フィルムの両外層(P1層とP2層)としてエボニック社のポリ(メタ)アクリルイミド「PLEXIMID TT50(商品名)」を、中間層(Q層)として住化スタイロンポリカーボネート株式会社の芳香族ポリカーボネート「カリバー301−4(商品名)」を、共押出Tダイから連続的に共押出し、P1層が鏡面ロール側になるように、回転する鏡面ロールと鏡面ロールの外周面に沿って循環する鏡面ベルトとの間に供給投入し、押圧して、全厚み250μm、P1層の層厚み80μm、Q層の層厚み90μm、P2層の層厚み80μmの透明樹脂フィルムを得た。このとき設定条件は、Tダイの設定温度300℃、鏡面ロールの設定温度130℃;鏡面ベルトの設定温度120℃、引取速度6.5m/分であった。
(P−2)層比をP1層の層厚み60μm、Q層の層厚み130μm、P2層の層厚み60μmに変更したこと以外は、上記(P−1)と同様にして透明樹脂フィルムを得た。
(P−3)層比をP1層の層厚み40μm、Q層の層厚み170μm、P2層の層厚み40μmに変更したこと以外は、上記(P−1)と同様にして透明樹脂フィルムを得た。
(P−4)三菱樹脂株式会社の二軸延伸ポリエチレンテレフタレート系フィルム「ダイヤホイル(商品名)」、厚み250μm。
(P−5)住友化学株式会社のアクリル系樹脂フィルム「テクノロイS001G(商品名)」、厚み250μm。
(P−6)単層Tダイ、及び鏡面ロールと鏡面ベルトとで溶融フィルムを押圧する機構を備えた引巻取機を備えた装置を使用し、住化スタイロンポリカーボネート株式会社の芳香族ポリカーボネート「カリバー301−4(商品名)」をTダイから連続的に押出し、回転する鏡面ロールと鏡面ロールの外周面に沿って循環する鏡面ベルトとの間に供給投入し、押圧して、全厚み250μmの透明樹脂フィルムを得た。このとき設定条件は、Tダイの設定温度320℃、鏡面ロールの設定温度140℃;鏡面ベルトの設定温度120℃、引取速度5.6m/分であった。
例1
上記(P−1)の両面にコロナ放電処理を行った。両面とも濡れ指数は64mN/mであった。
次にα1層側の面の上に、ダイ方式の塗工装置を使用して、上記(Hα−1)をウェット厚み40μm(硬化後厚み22μm)となるように塗布した「工程(1)」。
次に炉内温度90℃に設定した乾燥炉を、入口から出口までパスするのに要する時間が1分間となるライン速度でパスさせた。
次に高圧水銀灯タイプの紫外線照射装置と直径25.4cmの鏡面金属ロールとを対置した硬化装置を使用し(図1参照)、鏡面金属ロールの温度90℃、積算光量80mJ/cm2の条件で処理した。上記(Hα−1)のウェット塗膜は、指触乾燥状態の塗膜になった「工程(2)」。
次に上記(Hα−1)の指触乾燥状態の塗膜の上にダイ方式の塗工装置を使用して、上記(Hβ−1)をウェット厚み4μm(硬化後厚み2μm)となるように塗布した「工程(3)」。
次に炉内温度80℃に設定した乾燥炉を、入口から出口までパスするのに要する時間が1分間となるライン速度でパスさせた。
次に高圧水銀灯タイプの紫外線照射装置と直径25.4cmの鏡面金属ロールとを対置した硬化装置を使用し(図1参照)、鏡面金属ロールの温度60℃、積算光量480mJ/cm2の条件で処理した「工程(4)」。
続いて、α2層側の面の上に第3のハードコートを、工程(1)で用いたのと同じ塗料(例1では上記(Hα2−1))を用い、ダイ方式の塗工装置を使用して、硬化後厚み22μmとなるように形成し、ハードコート積層フィルムを得た。上記試験(イ)〜(ヲ)を行った。結果を表5に結果を示す。
例2、3
上記工程(4)の鏡面金属ロールの温度を表5に記載の条件に変更したこと以外は、全て例1と同様に行った。結果を表5に示す。
例4、5
上記工程(2)の積算光量を120mJ/cm2に、上記工程(4)の鏡面金属ロールの温度を表5に記載の条件に変更したこと以外は、全て例1と同様に行った。結果を表5に示す。
例6、7、例1C、2C
上記工程(2)の積算光量を160mJ/cm2に、上記工程(4)の鏡面金属ロールの温度を表5又は表6に記載の条件に変更したこと以外は、全て例1と同様に行った。結果を表5又は表6に示す。
例8、9
上記工程(2)の積算光量を230mJ/cm2に、上記工程(4)の鏡面金属ロールの温度を表6に記載の条件に変更したこと以外は、全て例1と同様に行った。結果を表6に示す。
例10〜13、例3C
上記工程(2)の積算光量を表6又は表7に記載の条件に変更したこと以外は、全て例1と同様に行った。結果を表6又は表7に示す。
例14〜17
上記塗料(α)からなるハードコートの硬化後厚みを、表7又は表8に示すように変更し、第3のハードコートの硬化後厚みを上記塗料(α)からなるハードコートの硬化後厚みと同じに変更したこと以外は、全て例1と同様に行った。結果を表7又は表8に示す。
例18〜21
上記塗料(β)からなるハードコートの硬化後厚みを、表8に示すように変更したこと以外は、全て例1と同様に行った。結果を表8に示す。
例22〜54
用いる塗料(α)、塗料(β)、及び透明樹脂フィルムの少なくとも何れか1を、表9〜13の何れか1に示すように変更したこと以外は、全て例1と同様に行った。結果を表9〜13の何れか1に示す。
本発明の製造方法により得られたハードコート積層フィルムは、層間密着性が良好であり、透明性、色調、耐擦傷性、表面硬度、及び表面外観に優れる。そのためタッチパネル機能を有する画像表示装置のディスプレイ面板として好適に用いることができる。