JP2016169258A - ポリチオフェン化合物の製造方法 - Google Patents

ポリチオフェン化合物の製造方法 Download PDF

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誠 針原
Makoto Harihara
誠 針原
真規子 内田
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真規子 内田
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Abstract

【課題】 工業的な規模の製造であっても、多分散度が小さく、かつ理論分子量に近い分子量のポリチオフェン化合物を得ることができるポリチオフェン化合物の効率的で歩留まり率の高い製造方法を提供する。
【解決手段】 (a)下記一般式[I]
Figure 2016169258

(式中、Xはハロゲン元素であり、Rは、アルキル基である)で表わされるチオフェン化合物とアルキルグリニャール試薬を反応させて、活性化モノマーを調製する工程、及び(b)前記活性化モノマーに金属錯体触媒を添加して自己重合反応を生じさせ、ポリチオフェン化合物を得る工程を含むポリチオフェン化合物の製造方法において、前記工程(b)が、マイクロリアクターを使用して実行される。また、前記工程(a)もマイクロリアクターを使用して実行されることが好ましい。
【選択図】図1

Description

本発明は、高い電荷移動度を有し、有機半導体ポリマー材料として有用であるポリチオフェン化合物の効率的な製造方法に関する。
ポリチオフェン化合物は、高い電荷移動度を有し、しかも有機半導体材料の中では比較的容易に合成が可能であることから、有機薄膜太陽電池や有機電界効果トランジスタ、有機EL、コンデンサー、帯電防止材などの様々な用途に用いられている。その中でも特に、有機薄膜太陽電池や有機電界効果トランジスタなどの電子材料用途に使用する場合、多分散度(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))の小さいポリチオフェン化合物が要求される。
ポリチオフェン化合物は、一般的に、GRIM(Grignard Metathesis)法によるカップリング重合によって合成される。このGRIM法の反応は、下記に示すように、(a)原料モノマーのチオフェン化合物をグリニャール試薬(例えば、RMgCl)で活性化して、活性化モノマーを調製する工程と、(b)調製された活性化モノマーを金属錯体触媒によって自己重合させてポリチオフェン化合物を得る工程の2段階で行なわれている。
Figure 2016169258
GRIM法に基づくポリチオフェン化合物の工業的な製造方法としては、従来、単一の反応容器に順次原材料を加えていき、内容物を撹拌することによって目的物を得るバッチ重合法が用いられていた(特許文献1、非特許文献1,2参照)。
GRIM法のようなカップリング重合は、触媒1分子につき1本のポリマーが成長するリビング重合であり、生成ポリマーの分子量(重量平均分子量(Mw))は、金属錯体触媒と活性化モノマーの混合比に依存して変化する。そのため、目的の分子量のポリマーを得るためには、反応開始時に活性化モノマーと金属錯体触媒の組成比が瞬間的に意図した比となることが望ましい。しかし、金属錯体触媒は各種溶媒に溶けにくいものが多く、しかもバッチ重合法では、これが粉末状で添加されることが多いため、その溶解時間を厳密に制御することが難しかった。従って、バッチ重合法では、反応初期の活性化モノマーと金属錯体触媒の混合比が変動しやすくなる問題があった。これに対して、大量の溶剤に金属錯体触媒を溶解させ、活性化モノマーの溶液に注入する方法もあるが、大量の溶液を短時間で反応容器に注入することは難しかった。そのため、バッチ重合法では、製造スケールを大きくすると生成ポリマーの分子量の制御が難しく、結果として、生成ポリマーの分子量が理論分子量から大きく乖離する問題や多分散度が増大する問題を生じていた。
従って、従来のGRIM法によるカップリング重合方法では、ポリチオフェン化合物を工業的な規模で効率的に安定して製造することができなかった。
特表2007−501300号公報
Journal of Physical Chemistry Lettets,2(12),1400−1404;2011 Macromolecules(Washington,DC,United States),44(8),2678−2684;2011
本発明は、かかる従来技術の現状に鑑みて創案されたものであり、その目的は、工業的な規模の製造であっても、多分散度が小さく、かつ理論分子量に近い分子量のポリチオフェン化合物を得ることができるポリチオフェン化合物の効率的で歩留まり率の高い製造方法を提供することにある。
本発明者は、かかる目的を達成するために、鋭意検討した結果、従来のようなバッチ重合法の代わりにマイクロリアクターを使用した連続的重合法でポリチオフェン化合物を製造することによって、工業的な大規模の製造であっても、理論分子量からの大きな乖離や多分散度の増大が効果的に抑制されることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明は、以下の(1)〜(7)の構成を有するものである。
(1)(a)下記一般式[I]
Figure 2016169258
(式中、Xはハロゲン元素であり、Rは、アルキル基である)で表わされるチオフェン化合物とアルキルグリニャール試薬を反応させて、活性化モノマーを調製する工程、及び
(b)前記活性化モノマーに金属錯体触媒を添加して自己重合反応を生じさせ、ポリチオフェン化合物を得る工程
を含むポリチオフェン化合物の製造方法において、前記工程(b)が、マイクロリアクターを使用して実行されることを特徴とする方法。
(2)前記工程(b)が、前記活性化モノマーの溶液と前記金属錯体触媒の溶液をマイクロリアクターのマイクロミキサーで混合し、それに続くマイクロ流路内で自己重合反応を生じさせることを含むことを特徴とする、(1)に記載の方法。
(3)前記工程(a)が、マイクロリアクターを使用して実行されることを特徴とする、(1)又は(2)に記載の方法。
(4)前記工程(a)が、前記チオフェン化合物の溶液と前記アルキルグリニャール試薬の溶液をマイクロリアクターのマイクロミキサーで混合し、それに続くマイクロ流路内で反応させることを含むことを特徴とする、(3)に記載の方法。
(5)前記一般式[I]中のXが、Br,Cl又はIであり、Rが、炭素数1〜12個の直鎖状又は分岐状のアルキル基であることを特徴とする、(1)〜(4)のいずれかに記載の方法。
(6)前記アルキルグリニャール試薬が、炭素数1〜8個のアルキルマグネシウムクロリド、又は炭素数1〜8個のアルキルマグネシウムブロマイドであることを特徴とする、(1)〜(5)のいずれかに記載の方法。
(7)前記金属錯体触媒が、ニッケル、パラジウム又はプラチナ錯体触媒であることを特徴とする、(1)〜(6)のいずれかに記載の方法。
本発明のポリチオフェン化合物の製造方法では、マイクロリアクターを使用した連続的重合法で活性化モノマーと金属錯体触媒を高速で均一に混合しながらポリチオフェン化合物を製造するため、製造規模を大きくしても、反応のコントロールが容易であり、理論分子量に近い分子量のポリチオフェン化合物を得ることができ、しかもその多分散度も小さくすることができる。さらに、本発明のポリチオフェン化合物の製造方法の収率は、従来のバッチ重合法での収率と同等であり、製造されたポリチオフェン化合物中のアルキル鎖の位置規則性も、従来のバッチ重合法でのアルキル鎖の位置規則性と同等である。従って、本発明のポリチオフェン化合物の製造方法によれば、従来のバッチ重合法の収率及びアルキル鎖の位置規則性を維持しながら、工業的な大規模の製造であっても、多分散度が小さく、かつ理論分子量に近い分子量のポリチオフェン化合物を得ることができる。
図1は、実施例1〜5で使用した反応装置の接続を示す模式図である。 図2は、実施例6で使用した反応装置の接続を示す模式図である。
以下、本発明のポリチオフェン化合物の製造方法について詳細に説明する。
本発明のポリチオフェン化合物の製造方法は、GRIM法に基づくものであり、以下の工程(a)及び(b)を含み、マイクロリアクターを使用した連続的重合法を採用したことに特徴がある。
(a)下記一般式[I]
Figure 2016169258
(式中、Xはハロゲン元素であり、Rは、アルキル基である)で表わされるチオフェン化合物とアルキルグリニャール試薬を反応させて、活性化モノマーを調製する工程、及び
(b)前記活性化モノマーに金属錯体触媒を添加して自己重合反応を生じさせ、ポリチオフェン化合物を得る工程。
工程(a)は、ポリチオフェン化合物の原料モノマーであるチオフェン化合物とアルキルグリニャール試薬を反応させてチオフェン化合物を活性化し、活性化モノマーを調製する工程である。
工程(a)で使用される原料モノマーは、下記一般式[I]
Figure 2016169258
(式中、Xはハロゲン元素であり、Rは、アルキル基である)で表わされるチオフェン化合物である。
Xのハロゲン元素としては、例えばBr,Cl又はIが挙げられる。好ましくは、これらの中でもBrが使用される。Rのアルキル基としては、例えば炭素数1〜12個の直鎖状又は分岐状のアルキル基が挙げられる。好ましくは、アルキル基の炭素数は4〜8個であり、より好ましくは6個である。
工程(a)で使用されるアルキルグリニャール試薬としては、例えば炭素数1〜8個のアルキルマグネシウムクロリド、又は炭素数1〜8個のアルキルマグネシウムブロマイドが挙げられる。好ましくは、アルキルグリニャール試薬は、炭素数2〜4個のアルキルマグネシウムクロリドであり、より好ましくは、2−プロピルマグネシウムクロリドである。
チオフェン化合物とアルキルグリニャール試薬の使用割合は、特に限定されないが、例えばチオフェン化合物1モルに対してアルキルグリニャール試薬を0.8〜1.2モル使用することが好ましく、より好ましくは1.0〜1.1モルである。
工程(a)の反応は、バッチ重合法を使用して実行される場合、20℃〜60℃で実施することが好ましく、より好ましくは20℃〜30℃で実施する。また、反応時間は、通常、1〜5時間、好ましくは1〜2時間である。マイクロリアクターを使用して実行される場合、20℃〜60℃で実施することが好ましく、より好ましくは40℃〜50℃で実施する。滞留時間(マイクロミキサーで混合された反応液が、マイクロ流路内を通過する時間)は、通常1〜20分、好ましくは5〜10分である。
工程(b)は、工程(a)で調製された活性化モノマーに金属錯体触媒を添加して自己重合反応を生じさせ、目的のポリチオフェン化合物を得る工程である。
工程(b)で使用される金属錯体触媒としては、例えばグリニャールカップリング反応に一般的に用いられるニッケル、パラジウム又はプラチナ錯体触媒が挙げられる。好ましくは、金属錯体触媒は、以下の構造式を有するNiCl(dppp)錯体触媒又はNiCl(dppe)錯体触媒であり、より好ましくはNiCl(dppp)錯体触媒である。
Figure 2016169258
活性化モノマーと金属錯体触媒の使用割合は、製造するポリチオフェン化合物の目標とする分子量に依存して適宜設定すればよく、例えば25000〜30000程度の分子量(有機薄膜太陽電池や有機電界効果トランジスタなどの電子材料用途で一般的に要求される分子量レベル)のポリチオフェン化合物を製造する場合は、活性化モノマー1モルに対して金属錯体触媒を0.6モル%程度使用すればよい。
工程(b)の反応は、マイクロリアクターを使用して実行される場合、20℃〜60℃で実施することが好ましく、より好ましくは40℃〜50℃で実施する。滞留時間は、通常1〜30分、好ましくは5〜15分である。
本発明の製造方法の反応は、適当な溶媒中で行なわれる。使用される溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、トルエンもしくはこれらの混合溶媒を挙げることができる。工程(a)で使用される溶媒と工程(b)で使用される溶媒は、一般的に同一であることができ、工程(a)で使用された溶媒を工程(b)においてそのまま、又は必要により濃度調整後に使用することができる。
溶媒の使用量は、反応工程に応じて設定され、特に限定されないが、例えば工程(a)においては、溶媒中のチオフェン化合物の濃度が1〜100g/Lになるように調整することが好ましく、より好ましくは10〜50g/Lになるように調整する。また、工程(b)においては、溶媒中の金属錯体触媒のモル数が活性化モノマーのモル数の0.1%〜10%になるように調整することが好ましく、より好ましくは0.2%〜2%になるように調整する。
本発明の製造方法の本質的な特徴は、工程(a)、(b)のうち、少なくとも工程(b)を、従来のようなバッチ重合法の代わりにマイクロリアクターを使用した連続的重合法で行なうことにある。マイクロリアクターを使用して活性化モノマーと金属錯体触媒を高速で均一に混合することにより、製造規模を大きくしても、反応のコントロールが容易であり、理論分子量に近い分子量のポリチオフェン化合物を得ることができ、しかもその多分散度も小さくすることができる。
マイクロリアクターとは、物質を混合する混合部(マイクロミキサー)とそれに続く物質を反応させる反応部(マイクロ流路)からなる微小流通型反応器であり、混合部および反応部の流路断面の最小長さは1μmから10000μm程度のものが一般的である。流路断面の最小長さおよびそれ以外の長さは所望により適宜変更することができる。マイクロリアクターの流路断面の形状は、特に制限されず、例えば、円形、矩形、半円形、三角形等で適宜変更することができる。また、液体の流路を内部で複数に分けることもできる。マイクロリアクターの反応流路の流れ方向の長さや形状は、特に制限されず、必要な反応時間等に合わせて適宜変更することができる。
マイクロリアクターは、市販品の中から適宜選択して使用することができる。あるいは、目的とする反応のために新規に設計したものを使用してもよい。マイクロリアクターの市販品としては、例えばワイエムシィ製Helix型ミキサー、Static型ミキサー、Y字型ミキサー、サイトス;IMM社製シングルミキサーおよびキャタピラーミキサー;ミクログラス社製ミクログラスリアクター;山武社製YM−1、YM−2型ミキサー;島津GLC社製PEEKミキシングティー;マイクロ化学技研社製マイクロ化学チップ;などが挙げられる。
マイクロリアクターを使用した反応における反応温度の制御は、マイクロリアクターの全体または一部を恒温槽中に設置する方法、及び流路の近くに冷媒または熱媒を流通させた別の流路を設置する方法、流路の近くに冷却または加熱装置を設置する方法などによって行なうことができる。
マイクロリアクターに供給される反応溶液の流速は、マイクロミキサーの混合方法、構造、及び流路の等価直径に依存して適宜設定すればよく、一般的には0.1μL/分〜1000mL/分であり、好適には0.1mL/分〜100mL/分である。マイクロリアクターへの反応液の供給は、プランジャーポンプやシリンジポンプなどの送液ポンプを使用して行なうことができる。
ポリチオフェン化合物の製造に従来から使用されるバッチ重合法は、一般的なスリ付きのフラスコを使用して行なわれるものであり、フラスコ中でチオフェン化合物とアルキルグリニャール試薬を溶媒と共に混合して活性化モノマー溶液を調製した後、フラスコの投入口から金属錯体触媒を粉末状態で投入して重合を行なうものである。この場合、製造規模が大きくなるにつれて、投入された金属錯体触媒が溶解し、完全に均一になるまでの時間が長くなり、重合開始初期の活性化モノマーと触媒のモル比が意図した値から乖離してしまう。そのため、従来のバッチ重合法では、生成されるポリチオフェン化合物の分子量が理論分子量から大きく乖離する問題や多分散度が増大する問題を生じていた。具体的には、10リットル程度の製造においても、バッチ重合法の場合、理論分子量より10倍も大きい分子量のポリチオフェン化合物が得られることもある。このような生成物は、製造現場では不良ロットとなり、その製造コストに対する影響が非常に大きくなる。これに対して、マイクロリアクターを使用する本発明の製造方法では、マイクロリアクターのマイクロミキサーで活性化モノマーと金属錯体触媒が高速で均一に混合されるため、製造規模を大きくしても、活性化モノマーと金属錯体触媒の意図されていた混合比を確実に達成することができ、分子量を厳密に制御して、多分散度が小さく、かつ理論分子量に近い分子量のポリチオフェン化合物を得ることができる。
本発明の製造方法では、マイクロリアクターは、工程(b)の活性化モノマーの重合のみならず、工程(a)の活性化モノマーの調製においても使用されることができる。工程(a)の活性化モノマーの調製においてマイクロリアクターを使用して原料モノマーのチオフェン化合物とアルキルグリニャール試薬を混合することによって、活性化モノマーの溶液の事前調製を省略することができ、製造工程を簡易にすることができる。
さらに、本発明の製造方法では、マイクロリアクターを使用することによって、反応装置の洗浄負荷を従来のバッチ重合法の場合と比較して大幅に低減することができる。その理由は以下の通りである。
一般的にバッチ重合法では、一度に多くの目的物を得られることが好ましく、量産効果により製造コストを削減することができる。そのため、反応装置もできるだけ大きなものを使用することが望ましい。このような大型の反応装置の洗浄は、実験用のフラスコのように研磨等で汚れを落とすことが難しいため、基本的に溶剤をかけて洗うか、又は反応装置内に溶剤を仕込んで加熱することで発生させた溶剤蒸気で生成物を除去する方法が採用される。しかし、一般的に高分子量のポリチオフェン類は、一般的な有機溶剤に対する溶解度が低く、塩素系溶剤などの環境負荷が高い限られた溶剤にしか溶けないことが多い。そのため、大型の反応装置の洗浄では、大量の溶剤を使用することによるコストの増大や、塩素系溶剤の排出による環境負荷の増大が問題となっていた。しかも、高度な脱水条件と脱酸素条件を必要とするポリチオフェンの製造には、簡易な装置は使用できず高額な装置が必要である。これに対して、本発明の製造方法で使用されるマイクロリアクターの場合は、その装置内壁の比表面積が小さく、しかも密閉系であるため、反応に使用するポンプから適切な溶剤を少量流すことによって容易にポリチオフェンを除去することができる。また、配管やマイクロ流路等の多くの部分は安価な汎用品であり、定期的に交換することも可能である。さらに、ポリチオフェンの結晶化工程では反応が完結しているため、高度に密閉する必要がなく、安価な小型の樹脂製装置等を専用化して使用することができる。このような専用装置を数台同時に用いることで、連続生産性を保ちつつ製品切り替えの厳重な設備洗浄の必要がなくなる。また、必要時には低コストでの入れ替えが可能であり、洗浄コスト及び環境負荷の低減を実現することができる。従って、マイクロリアクターを使用する本発明の製造方法では、得られるポリチオフェン化合物の品質の向上だけでなく、付帯設備の簡略化や洗浄負荷低減などの多くのメリットを享受することができる。
本発明のポリチオフェン化合物の製造方法によれば、上述の多数の利点を持ちながら、以下の実施例に示すように、従来のバッチ重合法での収率(60〜70%程度)と同等の収率を達成することができる。
一般的に、ポリチオフェン化合物は、そのアルキル鎖の位置規則性が正しいもの(以下の図の左側(RegioRegular)に示すように分子中の全てのチオフェンのアルキル鎖Rが同じ方向を向いているもの)が、そのアルキル鎖の位置規則性の乱れているもの(以下の図の右側(RegioRandom)に示すように分子中のチオフェンのアルキル鎖Rがランダムな方向を向いているもの)より高性能であるとみなされている。マイクロリアクターを使用する本発明の製造方法で製造されたポリチオフェン化合物中のアルキル鎖の位置規則性は、従来のバッチ重合法でのアルキル鎖の位置規則性と同等であり、以下の実施例に示すように、98%以上の高い位置選択性を維持している。
Figure 2016169258
従って、本発明の製造方法は、従来のバッチ重合法と同等の収率及びアルキル鎖の位置規則性を維持しながら、工業的な大規模の製造であっても、多分散度が小さく、かつ理論分子量に近い分子量のポリチオフェン化合物を得ることができるという効果を奏することができる。
以下、本発明を実施例により具体的に示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
なお、以下の実施例において、得られたポリチオフェン化合物の分子量(重合平均分子量(Mw換算値)及び数平均分子量(Mn換算値))は、東ソー製GPC(商品名:HLC−8220GPC)により、標準ポリスチレン換算の分子量として求めた。具体的にはポリチオフェン化合物を約0.5重量%の濃度となるようにクロロホルムに溶解させ、GPCに10μL注入した。GPCの移動相には、クロロホルムを使用し、測定温度40℃、0.6mL/分の流速で流した。カラムには、LF−G(Shodex製)とLF−604(Shodex製)を直列に繋げたものを使用した。検出器には、示差屈折率検出器を使用した。得られたポリマー中のnの値(式(b)中のnの値)は、ポリチオフェン化合物の分子量および原料モノマーの分子量に基づいて推定することができる。
また、ポリチオフェン化合物のアルキル鎖の位置規則性は、ポリチオフェン化合物のH−NMR測定を、BRUKER ULTRASHILD 400 PLUS、AVANCE III 400 NMRシステム(400MHz)を用いて行ない、総結合数に対する頭−尾結合数の百分率を計算することによって求めた。
比較例(従来のバッチ重合法を使用したポリチオフェン化合物の製造例)
比較例1
2,5−ジブロモ−3−ヘキシルチオフェン(DB3HT)41.5g(127mmol)を、乾燥した5Lの四つ口フラスコに仕込み、アルゴンガスを封入し、脱水テトラヒドロフラン(THF)3000mLを加えた。これに25±5℃で2−プロピルマグネシウムクロリドのTHF溶液137.4mL(137.4mmol含有)を滴下し、50℃に昇温して4時間反応した。次いで、NiCl(dppp)0.42g(0.77mmol、2,5−ジブロモ−3−ヘキシルチオフェンに対して0.6mol%、得られるポリチオフェン化合物の理論分子量=27700)を添加し、25±5℃で17時間反応した。反応終了後、反応液を1.4重量%の希塩酸3000mLに滴下し、析出物を濾過した。さらにアセトン400mLで洗浄し、40℃の温風で乾燥すると、目的とするポリチオフェン化合物約13.0gが得られた。得られたポリチオフェン化合物の物性を、以下の表1に示す。
比較例2〜4
DB3HTの仕込み量、及びNiCl(dppp)の添加量を表1のように変化させた以外は、比較例1と同様にして、ポリチオフェン化合物を得た。得られたポリチオフェン化合物の物性を、以下の表1に示す。
Figure 2016169258
表1からわかるように、従来のバッチ重合法の場合、小スケールの実験(比較例4)では、理論分子量に比較的近い分子量Mwのポリチオフェン化合物が得られるが、スケールを上げた合成例(比較例1〜3)では、得られたポリチオフェン化合物の分子量Mwが理論分子量から大きく乖離する場合があり、しかも多分散度(Mw/Mn)が大きい。これは、製造のスケールを上げるに従い、投入された金属錯体触媒が完全に溶解して均一な状態になるまでに要する時間が長くなることに起因する。更には、反応装置中の水分や酸素の残存量などの影響により、比較例3のように反応が十分に進行せず、分子量や収率の低下を引き起こすこともある。
実施例(本発明のマイクロリアクターを使用したポリチオフェン化合物の製造例)
実施例1
マイクロリアクターとして、以下の装置を使用した。
プランジャーポンプ:株式会社ワイエムシィ製デュアルプランジャーポンプYMCK−12−13−S、マイクロミキサー:株式会社ワイエムシィ製Helix型ミキサーKC−M−H−SUS、マイクロ流路:汎用SUS配管(容量約10mL)、温度調整装置:汎用送風オーブン。
乾燥した500mL四つ口フラスコにアルゴンガスを封入し、2,5−ジブロモ−3−ヘキシルチオフェン(DB3HT)30.0g(92.0mmol)、脱水テトラヒドロフラン(THF)340mLを仕込み、これに25±5℃で濃度1mol/Lの2−プロピルマグネシウムクロリドのTHF溶液95.7mL(95.7mmol含有、1.04eq.)を滴下し、25±5℃で1時間撹拌して、5−チエニルマグネシウム化合物溶液を得た。
乾燥した500mL四つ口フラスコにアルゴンガスを封入し、NiCl(dppp)錯体299mgと脱水THF465mLを仕込み、25±5℃で1時間撹拌後、NiCl(dppp)錯体が完全に溶解していることを確認して、NiCl(dppp)錯体溶液を得た。
2台のプランジャーポンプを用いて、5−チエニルマグネシウム化合物の溶液とNiCl(dppp)錯体溶液をそれぞれマイクロミキサーに送液した。NiCl(dppp)錯体の添加量は、2,5−ジブロモ−3−ヘキシルチオフェンに対して0.6mol%になるように調整した(得られるポリチオフェン化合物の理論分子量=27700)。マイクロミキサーの出口には約15mLのマイクロ流路を接続し、汎用送風オーブンで50℃に保温した(図1参照)。マイクロ流路から排出されたポリマー溶液を、1.4重量%の希塩酸2200mL中に撹拌しながら滴下し、ポリマーを析出させた。
回収液の析出物を濾過し、アセトン500mLで洗浄し、40℃の温風で乾燥し、目的とするポリチオフェン化合物約10.8gが得られた。得られたポリチオフェン化合物の物性を、以下の表2に示す。
なお、送液中はフラスコ内の反応液が水もしくは酸素に接触して失活することを避けるため、アルゴンガスをそれぞれ約10mL/分の速度で通じた。
実施例2〜5
DB3HTの仕込み量、及びNiCl(dppp)の添加量を表2のように変化させた以外は、実施例1と同様にして、ポリチオフェン化合物を得た。得られたポリチオフェン化合物の物性を、以下の表2に示す。
Figure 2016169258
表2から、本発明のマイクロリアクターを使用した製造方法の場合、小スケールの実験(実施例4,5)及びスケールを上げた合成例(実施例1〜3)のいずれにおいても、得られたポリチオフェン化合物の分子量Mwは理論分子量に近く、しかも多分散度(Mw/Mn)も、バッチ重合法で得られたポリチオフェン化合物と比較して小さい。また、収率及び位置規則性は、表1に示される従来のバッチ重合法のものと同等である。さらに詳細に検討すると、製造規模が大きくなるほど収率は増大し、多分散度(Mw/Mn)は小さくなっている。これは、マイクロリアクターの特性上、送液開始後に濃度や送液状態が安定するまで時間を要するためである。一方で、分子量(Mw)は、製造規模にかかわらずほぼ一定であり、従来のバッチ重合法と比較して歩留まりの向上が確認できる。
実施例6
実施例1〜5では、工程(b)の活性化モノマーの重合のみにマイクロリアクターを使用したが、実施例6では、工程(b)だけでなく、工程(a)の活性化モノマーの調製にもマイクロリアクターを使用した。具体的な製造手順は、以下の通りである。
密閉容器にDB3HT30.0g(92.0mmol)、脱水THF180mLを仕込んだ。
別の密閉容器に0.45mol/Lの濃度の2−プロピルマグネシウムクロリドのTHF溶液210mL(95.7mmol含有、1.04eq.)を仕込んだ。
2台のプランジャーポンプを用いて、DB3HT溶液と2−プロピルマグネシウムクロリドのTHF溶液をそれぞれ1台目のマイクロミキサーに送液した。マイクロミキサーの出口には約5mLのマイクロ流路を接続し、その先に2台目のマイクロミキサーを接続した。別のプランジャーポンプを用いて、実施例1と同様にして調製したNiCl(dppp)錯体溶液を2台目のマイクロミキサーに送液し、1台目のマイクロミキサーで混合した溶液とさらに混合した。マイクロミキサーの出口には約15mLのマイクロ流路を接続し、汎用送風オーブンで50℃に保温した(図2参照)。マイクロ流路から排出されたポリマー溶液を、1.4重量%の希塩酸2200mL中に撹拌しながら滴下し、ポリマーを析出させた。
実施例1と同様の方法で生成物の回収等を行ない、目的とするポリチオフェン化合物約10.0gが得られた(Mw=29000、Mw/Mn=1.43、収率65%、位置規則性>98%)。得られたポリチオフェン化合物の物性は、実施例1と同様であった。
本発明のポリチオフェン化合物の製造方法によれば、マイクロリアクターの使用により、従来のバッチ重合法の収率及びアルキル鎖の位置規則性を維持しながら、工業的な大規模の製造であっても、多分散度が小さく、かつ理論分子量に近い分子量のポリチオフェン化合物を得ることができる。従って、本発明は、有機薄膜太陽電池や有機電界効果トランジスタなどの電子材料用途の有機半導体ポリマー材料として有用であるポリチオフェン化合物を製造するのに極めて有用である。

Claims (7)

  1. (a)下記一般式[I]
    Figure 2016169258
    (式中、Xはハロゲン元素であり、Rは、アルキル基である)で表わされるチオフェン化合物とアルキルグリニャール試薬を反応させて、活性化モノマーを調製する工程、及び
    (b)前記活性化モノマーに金属錯体触媒を添加して自己重合反応を生じさせ、ポリチオフェン化合物を得る工程
    を含むポリチオフェン化合物の製造方法において、前記工程(b)が、マイクロリアクターを使用して実行されることを特徴とする方法。
  2. 前記工程(b)が、前記活性化モノマーの溶液と前記金属錯体触媒の溶液をマイクロリアクターのマイクロミキサーで混合し、それに続くマイクロ流路内で自己重合反応を生じさせることを含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
  3. 前記工程(a)が、マイクロリアクターを使用して実行されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
  4. 前記工程(a)が、前記チオフェン化合物の溶液と前記アルキルグリニャール試薬の溶液をマイクロリアクターのマイクロミキサーで混合し、それに続くマイクロ流路内で反応させることを含むことを特徴とする、請求項3に記載の方法。
  5. 前記一般式[I]中のXが、Br,Cl又はIであり、Rが、炭素数1〜12個の直鎖状又は分岐状のアルキル基であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
  6. 前記アルキルグリニャール試薬が、炭素数1〜8個のアルキルマグネシウムクロリド、又は炭素数1〜8個のアルキルマグネシウムブロマイドであることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
  7. 前記金属錯体触媒が、ニッケル、パラジウム又はプラチナ錯体触媒であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
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