JP2016169208A - Trem様転写物1(tlt−1)から誘導された阻害性ペプチドおよびその使用 - Google Patents
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Abstract
【課題】敗血症等の全身性感染に対する初期の適切な宿主応答が調節不全となった疾患を処置するための化合物等の提供。
【解決手段】自然免疫応答の増幅因子として作用するTREMファミリーに属するTREM様転写物1(TLT−1)由来のある特定のアミノ酸配列を持つペプチドまたは機能保存的変異体。該TLT−1由来ペプチドまたは機能保存的変異体を含む薬学的組成物。
【選択図】なし
【解決手段】自然免疫応答の増幅因子として作用するTREMファミリーに属するTREM様転写物1(TLT−1)由来のある特定のアミノ酸配列を持つペプチドまたは機能保存的変異体。該TLT−1由来ペプチドまたは機能保存的変異体を含む薬学的組成物。
【選択図】なし
Description
発明の分野: 本発明は、TLT−1タンパク質から誘導されたポリペプチドフラグメント、および炎症状態の処置のための、より具体的には敗血症の処置のためのその使用に関する。
発明の背景: 感染に対する有害で傷害性の宿主応答から生じる複雑な臨床症候群である敗血症ショックは、集中治療室における死亡の筆頭原因である。敗血症は、全身性感染に対する初期の適切な宿主応答が調節不全となり、そして炎症と凝固との間の密接なクロストークにより過増幅となった場合に発症する。自然免疫応答の増幅因子として作用する候補の中で、いくつかはTriggering Receptors Expressed on Myeloid cells (TREM)ファミリーに属する[Bouchon, A., et al., 2000; Bleharski, J.R. et al., 2003; Haselmayer, P., et al., 2007; Gibot, S. et al., 2007]。ヒトTREM遺伝子クラスターは染色体6p21.1に位置し、そして6つの異なるタンパク質、すなわちTREM1〜5およびTLT−1(TREM様転写物−1)をコードする。ヒトTREM−1(hTREM−1)は、194アミノ酸(aa)残基の細胞外領域、29aaの膜貫通領域、および5aaの短い細胞質側末端からなる。細胞外Ig様ドメインは、モチーフDxGxYxCを含み、これはV型Igドメインに対応する。Igドメインは、3つのN−グリコシル化部位を含む60aa部分によって膜貫通領域に接続されている。貫通領域はLys残基を含み、これはITAMを含むタンパク質DAP12の膜貫通ドメインのAsp残基と塩橋を形成し、これにより、TREM−1とそのアダプタータンパク質との間の会合が可能となる[Bouchon, A., et al., 2000; Kelker, M.S., et Al., 2004; Kelker, M.S. et al., 2004]。TREMの関与は、ZAP70およびSYKを含むシグナル伝達経路、および後に続くGRB2などのアダプター分子の動員およびチロシンリン酸化、PI3K、PLC−γ、ERK−1、−2、およびp38MAPKの活性化をトリガーする[Haselmayer, P. et al., 2009; Gibot, S, 2005]。最終的に転写因子NF−κBの活性化をもたらすこれらの経路の活性化は、CARD9−BCL10−MALT1によって調節される[Hara, H. et al., 2007]。特に、結晶解析は、抗体に等価な相補性決定領域(CDR)ループ(例えばTCRs、CD8およびCTLA−4)を使用することによってTREM−1の認識を予測することができるが、その天然リガンドは依然として決定されていない。
TREM−1融合タンパク質を使用して、またはTREM−1の細胞外ドメインのCDR3および「F」β鎖に対して設計されたペプチドを使用した遮断実験は、減退した炎症を実証し、これにより、内毒血症および多菌性敗血症のマウスモデルにおける生存率が改善した[Bouchon, A., et al., 2001; Gibot, S. et al., 2006]。
TREM−1シグナル伝達をモデュレーションする防御効果はまた、他の急性炎症モデル(虚血再灌流、膵炎、出血性ショック)または慢性炎症モデル(炎症性腸疾患、炎症性関節炎)においても明らかである。これら全ての研究は、感染性または無菌性炎症を増幅する上でのTREM−1の役割を示唆する。
TREM−1に加えて、TREM遺伝子クラスターは、TREM様転写物1(TLT−1)を含む。TLT−1は豊富であり、血小板および巨核球上に専ら発現されており、そして血小板α顆粒中に捕捉される。血小板の活性化時に、TLT−1は、血小板の表面へと移動する[Washington, A.V. et al., 2004]。TLT−1は、vセットでIgタイプの細胞外ドメイン、膜貫通領域、および細胞質側末端(イムノレセプターチロシンベース阻害性モチーフ(ITIM)およびポリプロリンリッチドメインを含む)を含む。他のTREMファミリーメンバーとは異なり、TLT−1は、DAP12活性化連鎖には共役しないが、ラット好塩基球性白血病(RBL)細胞においてCa++シグナル伝達を増強することが示され、TLT−1は共活性化レセプターであることを示唆する[Barrow, A.D. et al., 2004]。
血小板上におけるTLT−1の発現の特異性は、それが止血および/または血栓症において独特な役割を果たすであろうことを示唆した。実際に、TLT−1のモデュレーションは、血小板の機能をモデュレーションする上でいくつかの可能性を有し得、従って、炎症に関連した凝固亢進(直接的に炎症を予防しないが)または血小板に関連した疾患(例えば出血性または凝固性疾患)を予防することが示唆されている[Washington AV. et al., 2009]。このモデュレーションは、直接的に(TLT−1リガンドと干渉することによって)または間接的に(TLT−1細胞内経路をモデュレーションすることによって)媒介され得る。
本発明者らは、初めて本明細書において、TLT−1およびTLT−1から誘導されたペプチドが、TREM−1活性を特異的に阻害することによって抗炎症特性を示すことを報告する。このようなペプチドは、TREM−1シグナル伝達を抑制することができ、従って、天然に存在するTREM−1阻害剤として挙動する。本発明者らはさらに、同ペプチドがまた、TREM−1およびその細胞内経路の阻害の結果として、感染によってトリガーされた炎症誘発カスケードをin vivoにおいてモデュレーションし、従って、TREM−1に関連した応答性亢進および続いて起こる敗血症中の臓器損傷および死亡を抑制することを実証する。
発明の要約: 本発明は、TLT−1およびTLT−1から誘導されたペプチドがTREM−1を特異的に阻害することができるという発見に基づく。
本発明者らは初めて、ヒトTLT−1(hTLT−1)およびhTLT−1から誘導されたペプチドが、ヒトTREM−1リガンドを特異的に認識して結合することができることを示した。
本発明者らはまた、hTREM−1リガンドへの、hTLT−1およびhTLT−1から誘導されたペプチドの結合の結果として、hTLT−1およびhTLT−1から誘導されたペプチドは、in vitroおよびin vivoにおいてhTREM−1により誘導されるヒトTREM−1を発現する細胞の活性化を減少させることができ、これは、細胞内シグナル伝達(リン酸化経路)のモデュレーション、CARD9−MALT1−BCL10複合体形成、NF−κB活性化(核移行)、ROS産生(活性酸素種)並びにサイトカイン/ケモカイン発現(mRNA)および分泌(タンパク質)によって特徴付けられることを示した。
本発明者らはまた、TLT−1から誘導されたペプチドが、TREM−1に関連した疾患、すなわち、TREM−1活性化が、急性炎症疾患(敗血症、重度の敗血症または敗血症ショック、出血性ショック、虚血再灌流、膵炎)または慢性炎症疾患(炎症性腸疾患、リウマチ疾病、癌)のような、生理病理学的過程に役割を果たしている疾病を処置することができることを示した。
従って、本発明は、炎症状態の処置において使用するための、配列番号1のアミノ酸配列から選択された少なくとも6つ連続したアミノ酸を含むポリペプチドフラグメント、または機能保存的変異体に関する。
本発明のさらなる目的は、本明細書において定義したような少なくとも1つのポリペプチド、または代替的には、本発明のポリペプチドをコードする核酸を含むベクターを含む、薬学的組成物にある。
発明の詳細な説明:定義: 明細書全体を通して、いくつかの用語が使用され、そして以下の段落で定義されている。
本明細書において使用する「Triggering receptor expressed on myeloid cells 1」に対する「TREM−1」という用語は、ヒトおよびマウスの両方の多形核好中球および成熟単球上に同定されている細胞表面分子を示す。それは免疫グロブリンスーパーファミリーに属し、そしてDAP12と呼ばれるアダプタータンパク質の助けを借りて下流のシグナル伝達経路を活性化する。TREM−1の発現は、細胞培養液および感染に罹患した患者からの組織試料の両方において、Pseudomonas aeruginosaまたはStaphylococcus aureusなどの細菌の存在下で、好中球および単球上で大きくアップレギュレーションされている。著しく対照的には、TREM−1は、乾癬、潰瘍性大腸炎、または免疫複合体によって引き起こされる血管炎などの非感染性の炎症疾病に罹患した患者からの試料においてはアップレギュレーションされない。さらに、TREM−1がそのリガンドに結合すると、LPSの相乗効果およびTNFαなどの炎症誘発性サイトカインの増幅された合成が、IL−10の産生抑制と共に観察される。
本明細書において使用する「TREM様転写物1」に対する「TLT−1」という用語は、TREMファミリーのメンバーを示す。Mcvicarグループの初期の研究[Washington A.V. et al., 2004]は、TLT−1は豊富であり、血小板および巨核球の系統に特異的であり、そして血小板α顆粒中に捕捉されることを実証した。トロンビンまたはLPSを用いての血小板の活性化時に、TLT−1は、血小板の表面へと移動する。TLT−1は、vセットでIgタイプの細胞外ドメイン、膜貫通領域、および細胞質側末端(イムノレセプターチロシンベース阻害性モチーフ(ITIM)およびポリプロリンリッチドメインを含む)を含む。他のTREMファミリーメンバーとは異なり、TLT−1はDAP12活性化連鎖には共役しないが、ラット好塩基球性白血病(RBL)細胞においてCa++シグナル伝達を増強することが示され、TLT−1は共活性化レセプターであることを示唆する。TLT−1のアミノ酸配列は、配列番号1のアミノ酸配列として記載されている。
本発明のポリペプチドを、以下の表1に記載する。
本明細書において使用する「機能保存的変異体」という用語は、ポリペプチドの全体的なコンフォメーションおよび機能を変質させることなく、タンパク質または酵素中の所与のアミノ酸残基を変化させた、本発明のポリペプチドから誘導されたペプチドを示し、それらに限定されないが、アミノ酸の類似の特性(例えば、極性、水素結合能、酸性、塩基性、疎水性、芳香族性など)を有するアミノ酸を用いた置換を含む。保存されているとして示されているもの以外のアミノ酸はタンパク質中で異なっていてもよく、よって、類似の機能を有するいずれか2つのタンパク質間のタンパク質またはアミノ酸配列の類似率は異なり得、そして、例えば、クラスター法などによるアラインメント法に従って決定したところ70%〜99%であり得、類似性はMEGALIGNアルゴリズムに基づく。「機能保存的変異体」はまた、BLASTまたはFASTAアルゴリズムによって決定したところ、少なくとも20%、好ましくは40%、より好ましくは60%、好ましくは少なくとも75%、最も好ましくは少なくとも85%、さらにより好ましくは少なくとも90%のアミノ酸同一率を有し、そして比較する天然タンパク質または親タンパク質と同じまたは実質的に類似した特性または機能を有する、ポリペプチドを含む。
本明細書において使用する「誘導体」という用語は、その他の点で改変されている、本発明のポリペプチドまたはその機能保存的変異体の変異形を指し、すなわち、in vitroまたはin vivoにおけるポリペプチドのコンフォメーション、活性、特異性、効力または安定性を改変するために、ポリペプチドへの任意のタイプの分子の共有結合的付着によって、配列のいずれかのアミノ酸への化合物の付加によって改変されている。
本明細書において使用する「処置する」または「処置」という用語は、このような用語を適用する疾患もしくは状態またはこのような疾患もしくは状態の1つ以上の症状の進行を逆行させる、軽減する、阻害する、または前記を予防することを示す。
本発明による「薬学的に」または「薬学的に許容される」という用語は、適宜、哺乳動物、特にヒトに投与した場合に、有害な、アレルギ
ー性の、または他の望ましくない反応を生じない実体または組成物を示す。薬学的に許容される担体または賦形剤は、任意のタイプの無毒性固体、半固体または液体の充填剤、希釈剤、封入材料または製剤化補助剤を指す。
ー性の、または他の望ましくない反応を生じない実体または組成物を示す。薬学的に許容される担体または賦形剤は、任意のタイプの無毒性固体、半固体または液体の充填剤、希釈剤、封入材料または製剤化補助剤を指す。
本発明によると、処置しようとする「患者」または「個体」という用語は、炎症疾患に罹患または罹患する可能性のあるヒトまたは非ヒト哺乳動物(例えばげっ歯類(マウス、ラット)、ネコ、イヌ、または霊長類)を意味する。好ましくは、被験体はヒトである。
ポリペプチドおよびその使用 本発明の第1の局面は、配列番号1のアミノ酸配列から選択された少なくとも6つ連続したアミノ酸を含むポリペプチドおよび機能保存的変異体に関する。
好ましい態様において、本発明によるポリペプチドは、6〜20アミノ酸、または10〜20アミノ酸、または12〜18アミノ酸、または14〜16アミノ酸の長さを有する。
別の態様において、本発明によるポリペプチドは、配列番号6、配列番号7または配列番号8からなる群より選択された6つ連続したアミノ酸配列を含む。
別の好ましい態様において、本発明によるポリペプチドは、配列番号9に示されるアミノ酸配列を含む。
別の好ましい態様において、本発明によるポリペプチドは、配列番号4に示されるアミノ酸配列を含む。
別の好ましい態様において、前記ポリペプチドは、配列番号2または配列番号3のアミノ酸配列から選択されたアミノ酸配列を有する。
別の態様において、本発明によるポリペプチドは、DまたはL立体配置を有し得る。
別の態様において、本発明によるポリペプチドのアミノ末端のアミノ酸は、アセチル化末端アミノ基を有し、そしてカルボキシ末端のアミノ酸はアミド化末端カルボキシ基を有する。それ故、本発明はまた、アミノ末端がアセチル化されている、またはカルボキシ末端がアミド化されている、本発明のペプチドの誘導体を含む。
さらに、本発明によるポリペプチドは、そのバイオアベイラビリティ(安定性および脂肪溶解性を含む)および血液脳関門および上皮組織を通過するその能力を増加させるために、可逆的な化学的改変を受け得る。このような可逆的な化学的改変の例としては、グルタミン酸およびアスパラギン酸のアミノ酸のカルボキシ基をアルコールを用いてエステル化して、これによりアミノ酸の負の荷電を除去し、そしてその疎水性を増加させることが挙げられる。形成されたエステル結合は、それを加水分解する細胞内エステラーゼによって認識され、アスパラギン酸残基およびグルタミン酸残基に荷電を回復するので、このエステル化は可逆的である。内部移行し脱エステル化したポリペプチドは細胞膜を通過できないので、正味の効果は細胞内ポリペプチドの蓄積である。
このような可逆的な化学的改変の別の例としては、膜透過性の増加を可能とする、TATペプチドまたはペネトラチンペプチドなどのさらなるペプチド配列の付加が挙げられる(Charge-Dependent Translocation of the Trojan。A Molecular View on the Interaction of the Trojan Peptide Penetratin with the 15 Polar Interface of Lipid Bilayers. Biophysical Journal, Volume 87, Issue 1, 1 July 2004, Pages 332-343を参照)。
本発明によるポリペプチドを、Fmocおよび/またはBocに基づいた方法に従って、慣用的な固相化学ポリペプチド合成法を通して得ることができる(Pennington, M.W. and Dunn, B.N. (1994). Peptide synthesis protocols. Humana Press, Totowa参照)。
あるいは、本発明によるポリペプチドを、組換えDNA技術に基づいた慣用的な方法を通して、例えば、簡潔に言うと、本発明のポリペプチドをコードする核酸配列を適切なプラスミドまたはベクターに挿入し、前記プラスミドまたはベクターのためのコンピテント細胞を形質転換し、そして本発明のポリペプチドの発現を可能とする条件下で前記細胞を増殖させ、そして所望であれば、当業者に公知の慣用的な手段を通して本発明のポリペプチドを単離および(場合により)精製することを含む方法を通して得ることができる。本発明のポリペプチドをコードする核酸配列は、アミノ酸と、このようなアミノ酸をコードするヌクレオチドコドンとの間に存在する一致から容易に推定され得る。この場合、本発明のさらなる目的は、本発明のポリペプチドをコードする単離核酸配列である。1つの特定の態様において、前記核酸は、一本鎖DNA、二本鎖DNAおよびRNAから選択される。本発明のさらなる目的は、本発明のポリペプチドをコードする前記核酸配列を含むプラスミドおよび発現ベクター、並びに、本発明のポリペプチドを発現する原核細胞および真核細胞である。組換えDNA技術の原理のレビューは、例えば、「Principles of Gene Manipulation: An 5 Introduction to Genetic Engineering」 R.W. Old & S.B. Primrose, published by Blackwell Scientific Publications, 4th Edition (1989)と題されたテキストブックに見出され得る。
記載したように、本発明はまた、本発明のポリペプチドに対して機能的に等価であるポリペプチドまたは「機能保存的変異体」を含む。本明細書で使用される意味において、「機能的に等価」という表現は、問題のペプチドが、例えば、炎症を減少させる能力などの、本発明のペプチドの生物学的活性の少なくとも1つを有することを意味する。
本発明のポリペプチドの炎症を減少させる能力は、簡単な試験を実施してポリペプチドに因る炎症の減少を評価することによって当業者に明らかとなろう。例えば、5×105個の単離ヒト好中球を、100ng/mLのLPSおよび10μg/mLの抗TREM−1mAbの存在下、20μg/mLのポリペプチドの存在下または非存在下において37℃/5%CO2で24時間かけてインキュベーションする。その後、上清を回収し、そしてTNF−αおよびIL−6濃度をELISAによって測定する。試験したペプチドがTREM−1を阻害すれば、サイトカイン濃度は、ペプチドを含まないLPS+mAbと比較した場合、30%以上まで減少するはずである。
核酸、ベクターおよび組換え宿主細胞 本発明の第2の局面は、本発明によるポリペプチドをコードする核酸分子に関する。
好ましい態様において、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号6、配列番号7、配列番号8または配列番号9の配列を有するポリペプチドをコードする核酸分子。
「コード配列」またはRNA、ポリペプチド、タンパク質もしくは酵素などの発現産物を「コードする」配列は、発現すると、RNA、ポリペプチド、タンパク質または酵素の産生をもたらすヌクレオチド配列であり、すなわち、ヌクレオチド配列は、そのポリペプチド、タンパク質または酵素に対するアミノ酸配列をコードする。タンパク質に対するコード配列は開始コドン(通常ATG)および終止コドンを含み得る。
これらの核酸分子を、当業者に周知の慣用的な方法によって、特に天然タンパク質をコードする遺伝子の部位特異的突然変異誘発によって得ることができる。典型的には、前記核酸は、プラスミド、コスミド、エピソーム、人工染色体、ファージまたはウイルスベクターなどの適切なベクターに含まれ得る、DNAまたはRNA分子である。
よって、本発明のさらなる目的は、本発明の核酸分子が転写(特にプロモーター、エンハンサー、および場合によりターミネーター)および場合により翻訳を制御するための適切なエレメントと会合している、ベクターおよび発現カセット、並びにまた、本発明による核酸分子が挿入されている組換えベクターに関する。これらの組換えベクターは、例えばクローニングベクター、または発現ベクターであり得る。
「ベクター」、「クローニングベクター」および「発現ベクター」という用語は、ビヒクルを意味し、これにより、DNAまたはRNA配列(例えば外来遺伝子)が宿主細胞に導入され得、よって宿主を形質転換し、そして導入された配列の発現(例えば転写および翻訳)を促進し得る。
本発明のポリペプチドまたはキメラ誘導体をコードする遺伝子を挿入および発現できる限りにおいて、動物細胞のための任意の発現ベクターを使用し得る。適切なベクターの例としては、pAGE107、pAGE103、pHSG274、pKCR、pSG1βd2−4などが挙げられる。
プラスミドの他の例としては、複製起点を含む複製プラスミド、または組込みプラスミド、例えばpUC、pcDNA、pBRなどが挙げられる。
ウイルスベクターの他の例としては、アデノウイルスベクター、レトロウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクターおよびAAVベクターが挙げられる。このような組換えウイルスは、パッケージング細胞をトランスフェクションすることによって、またはヘルパープラスミドもしくは30ウイルスを用いての一過性トランスフェクションによってなどの、当技術分野において公知の技術によって産生され得る。ウイルスパッケージング細胞の典型的な例としては、PA317細胞、PsiCRIP細胞、GPenv+細胞、293細胞などが挙げられる。このような複製欠陥組換えウイルスを産生するための詳細なプロトコールは、例えば、WO 95/14785、WO 96/22378、US 5,882,877、US 6,013,516、US 4,861,719、US 5,278,056およびWO 94/19478に見出され得る。
動物細胞のための発現ベクターに使用されるプロモーターおよびエンハンサーの例としては、SV40の初期プロモーターおよびエンハンサー(Mizukami T. et al. 1987)、モロニーマウス白血病ウイルスのLTRプロモーターおよびエンハンサー(Kuwana Y et al. 1987)、免疫グロブリンH鎖のプロモーター(Mason JO et al. 1985)およびエンハンサー(Gillies SD et al. 1983)などが挙げられる。
本発明は、本発明の核酸分子を含む遺伝子送達システムも含み、これはin vivoまたはex vivoにおいて遺伝子療法に使用され得る。これは、例えば、遺伝子療法に慣用的に使用される、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レンチウイルスから誘導されたものなどのウイルス導入ベクターを含む。これはまた、本発明の核酸分子および非ウイルス性の遺伝子送達ビヒクルを含む、遺伝子送達システムを含む。非ウイルス性の遺伝子送達ビヒクルの例としては、リポソームおよびポリマー、例えばポリエチレンイミン、シクロデキストリン、ヒスチジン/リジン(HK)ポリマーなどを含む。
本発明の別の目的はまた、本発明による少なくとも1つの核酸分子を用いて遺伝子的に形質転換された原核または真核宿主細胞である。
「形質転換」という用語は、宿主細胞への「外来」(すなわち外因性または細胞外)遺伝子、DNA配列またはRNA配列の導入を意味し、よって宿主細胞は、導入された遺伝子または配列を発現して、所望の物質、典型的には導入された遺伝子または配列によってコードされるタンパク質または酵素を産生する。導入されたDNAまたはRNAを受け取りそして発現する宿主細胞は「形質転換」されている。
好ましくは、ポリペプチド、特に本発明によるポリペプチドを発現および産生するために、真核細胞、特に哺乳動物細胞、より具体的にはヒト細胞が選択される。
典型的には、誘導体の正しい翻訳後修飾へプロセスするその能力のために、CHO、BHK−21、COS−7、C127、PER.C6またはHEK293 25などの細胞株を使用し得る。
本発明による発現ベクターの構築、宿主細胞の形質転換を、慣用的な分子生物学技術を使用して実施することができる。本発明のV−ATPアーゼcサブユニット誘導体を、例えば、本発明に従って遺伝子的に形質転換された細胞を培養し、そして前記細胞によって発現される誘導体を培養液から回収することによって得ることができる。それらを、その後、必要であれば、当業者にそ
れ自体公知である慣用的な手順によって、例えば、分画沈降、特に硫酸アンモニウム沈降、電気泳動、ゲルろ過、アフィニティクロマトグラフィーなどによって精製し得る。
れ自体公知である慣用的な手順によって、例えば、分画沈降、特に硫酸アンモニウム沈降、電気泳動、ゲルろ過、アフィニティクロマトグラフィーなどによって精製し得る。
特に、組換えタンパク質を調製および精製するための慣用的な方法を、本発明によるタンパク質の産生のために使用し得る。
治療法、使用および薬学的組成物 本発明の第3の目的は、炎症状態の処置において使用するための本発明によるポリペプチドに関する。
アレルギー、喘息、筋障害、癌、炎症性関節炎、炎症性腸疾患、急性呼吸促迫症候群(ARDS)、トリインフルエンザ、天然痘、および全身性炎症反応症候群(SIRS)、重症急性呼吸器症候群(SARS)、虚血および再灌流症候群、出血性ショックを含むがそれらに限定されない、本発明による炎症状態。
敗血症、重症敗血症、敗血症ショック、出血性ショック、虚血再灌流または膵炎を含むがそれらに限定されない、本発明による炎症状態。
好ましい態様において、炎症状態は敗血症である。
本発明によるポリペプチドは、デコイレセプターのその特性を通して炎症状態を処置することができる。
「デコイレセプター」によって、本発明によるポリペプチドが、TREM−1リガンドを捕捉し、そしてTREM−1に対するその生理学的効果を防ぐことを意味する。
それ故、本発明によるポリペプチドは、敗血症をより効果的に止めるという目的で、複合した治療法(いくつかの治療標的を目的とした)の一部を形成し得る。
本発明のさらなる目的は、治療有効量の少なくとも1つの本発明によるポリペプチドを、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤と共に含む、薬学的組成物である。1つの特定の態様において、前記薬学的組成物はまた1つ以上の(COOH)ペプチドを含む。あるいは、本発明の薬学的組成物は、本発明のポリペプチドをコードする少なくとも1つの核酸配列を含む治療有効量のベクターを、少なくとも1つの補助剤および/または薬学的に許容される賦形剤と共に含み得る。前記ベクターは遺伝子療法に使用され得る。
「治療有効量」によって、任意の医学的処置に適用できる妥当なベネフィット/リスク比で炎症状態を処置するに十分な量の本発明のキメラ誘導体を意味する。
本発明の化合物および組成物の全1日量は、妥当な医学的判断の範囲内で担当の医師によって決定されると理解される。任意の特定の患者に対する具体的な治療有効量レベルは、処置される疾患および疾患の重度;使用される具体的な化合物の活性;使用される具体的な組成物;患者の年齢、体重、全般的な健康状態、性別および食事;使用される具体的な化合物の投与時刻、投与経路、および排泄速度;処置の期間;使用される具体的なポリペプチドと組み合わせてまたは同時に使用される薬物;並びに医学分野において周知の同様な因子を含む、多種多様な因子に依存する。例えば、所望の治療効果を達成するのに必要な用量よりも低いレベルで化合物の用量を開始し、そして所望の効果が達成されるまで次第に用量を増加させることは当技術分野の技能の十分に範囲内である。しかしながら、産物の1日量は、1成人あたり1日あたり0.01〜1,000mgまでの幅広い範囲にかけて変動し得る。好ましくは、前記組成物は、処置しようとする患者への症状による用量の調節のために、0.01、0.05、0.1、0.5、1.0、2.5、5.0、10.0、15.0、25.0、50.0、100、250および500mgの活性成分を含む。医薬は、典型的には、約0.01mg〜約500mgの活性成分、好ましくは1mg〜約100mgの活性成分を含む。薬物の有効量は、通常、0.0002mg/kg(体重)/日〜約20mg/kg(体重)/日、特に約0.001mg/kg(体重)/日〜7mg/kg(体重)/日までの用量レベルで供給される。
本発明の活性産物(ポリペプチドまたはベクター)は、例えば発赤、発熱、腫脹、疼痛、および機能低下によって顕現する、炎症状態の処置のために使用され得る。
投与すべき本発明の活性産物[ペプチドまたはベクター(構築物)]の治療有効量、並びに、本発明のペプチドおよび/または薬学的組成物を用いての病的状態の処置のための用量は、患者の年齢および状態、障害または疾患の重度、投与法および投与頻度、並びに使用しようとする特定のペプチドを含む、数多くの因子に依存する。
本発明のペプチドまたはベクター(構築物)を含む薬学的組成物の提示は、投与に適した任意の形状、例えば固体、液体、または半固体、例えばクリーム、軟膏、ゲル、または液剤であり得、そしてこれらの組成物は、任意の適切な手段によって、例えば経口、非経口、吸入、外用で投与され得、よって所望の投与形を作り上げるために必要な薬学的に許容される賦形剤を含む。医薬を投与するための種々の剤形およびそれを得るために必要とされる賦形剤のレビューを、例えば、「Tratado de Farmacia Gal nica」 (Treatise on Galenic Pharmacy), C. Faul i Trillo, 1993, Luz n 5, S.A. Ediciones, Madrid.に見出し得る。
経口、舌下、皮下、筋肉内、静脈内、経皮、局所、肺内または直腸投与のための本発明の薬学的組成物において、活性成分を単独でまたは別の活性成分と組み合わせて、単位投与形で、従来の薬学的支持体との混合物として動物およびヒトに投与することができる。適切な単位投与形は、経口経路形、例えば錠剤、ゲルカプセル剤、散剤、顆粒剤、および経口懸濁剤または液剤、舌下および頬側投与形、エアゾール、インプラント、皮下、経皮、外用、腹腔内、筋肉内、静脈内、皮下、経皮、くも膜下腔内、および鼻腔内投与形および直腸投与形を含む。
好ましくは、薬学的組成物は、注射することのできる製剤のための薬学的に許容されるビヒクルを含む。これらは特に等張性で無菌の食塩水溶液(リン酸一ナトリウムまたは二ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウムまたは塩化マグネシウムなど、またはこのような塩の混合物)、または、場合に応じて滅菌水または生理学的食塩水の添加時に、注射溶液の構築を可能とする乾燥した、特に凍結乾燥した組成物であり得る。
注射使用に適した剤形は、無菌水性液剤または分散剤;ゴマ油、ピーナッツ油または水性プロピレングリコールを含む製剤;および、無菌注射液剤または分散剤の即時調製のための無菌粉末を含む。全ての場合において、剤形は無菌でなければならず、そして容易にシリンジが扱える程度まで流動性でなければならない。それは製造および保存の条件下で安定でなければならず、そして細菌および真菌などの微生物の汚染作用に対して防御されていなければならない。
本発明の化合物を遊離塩基または薬理学的に許容される塩として含む液剤は、ヒドロキシプロピルセルロースなどの界面活性剤と適切に混合された水中で調製され得る。分散剤もまた、グリセロール、液体ポリエチレングリコールおよびその混合物中および油中で調製され得る。通常の保存および使用条件下で、これらの調製物は、微生物の増殖を防ぐための保存剤を含む。
本発明によるポリペプチドは、中性または塩形の組成物へと製剤化され得る。薬学的に許容される塩は、酸付加塩(タンパク質の遊離アミノ基と共に形成)を含み、そしてこれは、例えば塩酸またはリン酸などの無機酸、または酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸などのこのような有機酸と共に形成される。遊離カルボキシル基と共に形成される塩はまた、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム、または水酸化鉄などの無機塩基、およびイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジン、プロカインなどのこのような有機塩基から誘導され得る。
担体もまた、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)、その適切な混合物、および植物油を含む、溶媒または分散媒体であり得る。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティング剤の使用によって、分散剤の場合には必要な粒子サイズの維持によって、および界面活性剤の使用によって維持され得る。微生物の作用の防御は、種々の抗細菌剤および抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどによってもたらされ得る。多くの場合、等張化剤、例えば糖および塩化ナトリウムを含めることが好ましい。注射用組成物の延長された吸収は、例えばモノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンなどの吸収を遅延させる薬剤を組成物に使用することによってもたらされ得る。
無菌注射液剤は、必要量の活性ポリペプチドを、必要であれば前記に列挙した他の成分のいくつかと共に適切な溶媒中に取り込み、その後、滅菌濾過することによって調製される。一般的に、分散剤は、基本分散媒体および前記に列挙したものからの必要とされる他の成分を含む無菌ビヒクルに、種々の滅菌した活性成分を取り込むことによって調製される。無菌注射液剤の調製のための無菌粉末の場合、好ましい調製法は、活性成分と、以前に滅菌濾過したその溶液からの任意の追加的な所望の成分との粉末を生じる、真空乾燥または凍結乾燥技術である。
製剤化時に、液剤は、投与製剤に適合した様式で、治療的に有効な量で投与される。製剤は、前記した注射液のタイプなどの、多種多様な投与形で容易に投与されるが、薬物放出カプセルなども使用することができる。
水性液剤での非経口投与のために、例えば、液剤は必要であれば適切に緩衝化されるべきであり、そして液体希釈剤をまず十分な食塩水またはグルコースを用いて等張化すべきである。これらの特定の水性液剤は、特に、静脈内、筋肉内、皮下および腹腔内投与のために適している。これに関連して、使用することのできる無菌水性媒体は、本開示を鑑みて当業者には公知である。例えば、1用量を1mlの等張NaCl溶液に溶解し得、そして1000mlの皮下点滴療法用液体に加えるか、または提案された注入部位に注射し得る。用量のいくらかの変更は、処置する被験体の状態に応じて必然的になされる。投与責任者は、いずれにしても、個々の被験体のための適切な用量を決定する。
本発明のポリペプチドは、治療混合物として1用量あたり約0.0001〜1.0mg、または約0.001〜0.1mg、または約0.1〜1.0mg、またはさらには約10mgなどを含むように製剤化され得る。また、複数回の用量を投与してもよい。
静脈内または筋肉内注射などの非経口投与用に製剤化された本発明の化合物に加えて、他の薬学的に許容される剤形としては、例えば、経口投与用の錠剤または他の固体:リポソーム製剤;時間放出カプセル;および現在使用されている任意の他の剤形が挙げられる。
以前に記載したように、本発明によるペプチドは、より効果的に炎症を停止させる目的のための組合せ療法の一部を形成し得る。この場合、本発明は、本発明の少なくとも1つのペプチドを、別のまたは他の炎症抑制性化合物(群)、例えば非ステロイド抗炎症化合物と共に含む、薬学的組成物を提供する。
本発明のさらなる目的は、アレルギー、喘息、筋障害、癌、急性呼吸促迫症候群(ARDS)、敗血症、トリインフルエンザ、天然痘、および全身性炎症反応症候群(SIRS)、重症急性呼吸器症候群(SARS)を含むがそれらに限定されない炎症状態の処置のための、本発明のポリペプチドまたは本発明のポリペプチドをコードする少なくとも1つの配列を含むベクターに関する。
さらに、本発明は、哺乳動物における炎症状態の処置法を提供し、これは、前記の病理学的疾病に罹患した前記の哺乳動物に、治療有効量の本発明の少なくとも1つのポリペプチド、または本発明のポリペプチドをコードする少なくとも1つのDNA配列を含むベクターを、好ましくはそれを含む薬学的組成物の形態で投与することからなる。本発明の1つの特定の態様において、前記薬学的
組成物は、本発明のペプチドまたはペプチド群に加えて、1つ以上の(COOH)ペプチドを含む。
組成物は、本発明のペプチドまたはペプチド群に加えて、1つ以上の(COOH)ペプチドを含む。
スクリーニング法: 本発明の別の目的は、TREM−1タンパク質を無効にする化合物をスクリーニングするための方法に関する。
特に、本発明は、炎症状態の処置のためのTREM−1タンパク質の阻害剤をスクリーニングするための方法を提供する。
例えば、スクリーニング法は、候補化合物と直接的にまたは間接的に会合した標識を用いて、TREM−1タンパク質への、またはTREM−1タンパク質またはその融合タンパク質を有する細胞もしくは膜への、候補化合物の結合を測定し得る。あるいは、スクリーニング法は、標識された競合物質(例えばアンタゴニスト)との、レセプターへの候補化合物の結合の競合を、測定、または定性的にもしくは定量的に検出することを含み得る。
特定の態様において、本発明のスクリーニング法は、 a)TREM−1リガンドタンパク質を発現する多数の細胞およびTREM−1タンパク質を発現する細胞を提供すること; b)前記細胞を候補化合物と共にインキュベーションすること; c)前記候補化合物が、TREM−1リガンドタンパク質に結合するかどうかを決定すること;そして d)TREM−1/TREM−1リガンド相互作用を阻害する候補化合物を選択することからなる、工程を含む。
好中球は、LPS、抗TREM−1mAbまたは血小板(TREM−1リガンドを恒常的に発現する)の存在下で活性酸素種を産生し、これらの異なる誘導物質の相乗作用は、好中球の膜に結合したTREM−1によって媒介される。本発明者らは、好中球を、TREM−1/TREM−1リガンド相互作用を阻害するいくつかのペプチドの存在下でインキュベーションした場合に、ROS産生の減少を期待する。
ROS産生は、蛍光発生基質(DCFDA:5−(および−6)−カルボキシ−2’,7’−ジクロロジヒドロフルオレセインジアセテート(カルボキシ−H2DCFDA)*異性体混合物*)を使用することによって容易に定量され得る。例えば、2.5×105個の単離されたヒト好中球を、2時間、37℃/5%CO2で、5μMのDCFDAと共に、20μg/mLの抗TREM−1mAbの存在下、100ng/mLのLPSの存在下または非存在下においてインキュベーションする。従って、TREM−1活性化によるROSの産生およびポリペプチドによるそのモデュレーションは、フローサイトメトリーによって定量される:もし試験したペプチドがTREM−1を阻害するならば、平均蛍光強度(MFI)は、TREM−1mAbを含まない条件と比較して減少していなければならない。
この迅速なアッセイにより本発明者らは最善のTREM−1阻害性ペプチドを決定することができ、これによりそれらをNF−κB活性化、サイトカイン産生、タンパク質リン酸化などの他の実験においてさらに研究することができる。
一般に、このようなスクリーニング法は、その表面上にTREM−1タンパク質、そのオルソログおよびその誘導体を発現する適切な細胞を準備することを含む。特に、TREM−1タンパク質をコードする核酸を使用して、細胞をトランスフェクションし、これにより、TREM−1タンパク質を発現させ得る。このようなトランスフェクションは、当技術分野において周知の方法によって達成され得る。
特定の態様において、細胞は、単球/マクロファージおよび好中球を含むがそれらに限定されない、サイトカインおよび炎症メディエーターの遊離に関与する免疫細胞からなる群より選択される。
本発明のスクリーニング法は、このような細胞を、スクリーニングしようとする化合物と接触させ、そしてこのような化合物がTREM−1タンパク質を無効にするか否かを決定することによって、阻害剤を決定するために使用され得る。
本発明の1つの態様によると、候補化合物は、以前に合成された化合物のライブラリーから、または構造がデータベースで決定されている化合物のライブラリーから、または新規に合成された化合物または天然化合物のライブラリーから選択され得る。
候補化合物は、(a)タンパク質またはペプチド、(b)核酸、および(c)有機化合物(天然または非天然)の群から選択され得る。説明すると、予め選択された候補核酸のライブラリーを、US5,475,096およびUS5,270,163の文書に記載のようにSELEX法を実施することによって得ることができる。さらに説明すると、候補化合物は、PP1/GADD34複合体に対して向けられる抗体の群から選択され得る。
本発明は、以下の図面および実施例によってさらに説明されるだろう。しかしながら、これらの実施例および図面はいずれにしても本発明の範囲を制限するものとは解釈されるべきではない。
実施例:材料および方法 表面プラズモン共鳴。LPSにより刺激された好中球の上清におけるTREM−1リガンドの検出は、5μL/分の流速で25℃でBIAcoreX装置を用いてCM5センサーチップ上にコーティングされたTREM−1の組換え可溶形(rsTREM−1)への結合によって評価された。結合特異性は、可溶性rsTREM−1との競合を通して確認された。LR17によるTREM−1リガンド結合の阻害を評価した。
ペプチド。GenBank|EMBL|DDBJにおけるTLT−1およびTREM−1配列(アクセッションナンバーAY078502、AF534822、AF241219およびAF287008)に基づいて、その細胞外ドメインの種々の部分を模倣した、TLT−1ペプチドを設計した:TLT−1−CDR2(SAVDRRAPAGRR、配列番号2)、TLT−1−CDR3(CMVDGARGPQILHR、配列番号3)、およびTREM−1とTLT−1との間でよく保存された配列:TLT−1−LR17(LQEEDAGEYGCMVDGAR、配列番号4)、TLT−1−LR12(LQEEDAGEYGCM、配列番号9)、LR6−1(LQEEDA)、LR6−2(EDAGEY)およびLR6−3(GEYGCM)。それらは
in vitroおよびin vivoアッセイのためにCOOH末端アミド化ペプチドとして化学合成され(Pepscan Presto BV, Lelystad, The Netherland)、そしてフローサイトメトリー実験のためにFITC標識された。正しいペプチドが99%を超える収率で得られ、そして分取的精製後に均一であり、これは、質量分析および分析用逆相高速液体クロマトグラフィーによって確認された。これらのペプチドは内毒素を含まなかった。TLT−1−LR17と同じアミノ酸を含むが、完全に異なる配列順序で含む、スクランブルペプチドを合成し、そしてコントロールペプチドとして役立てた(TLT−1−LR17スクランブル:GAEREVCMDEYGALQDG、配列番号5)。
in vitroおよびin vivoアッセイのためにCOOH末端アミド化ペプチドとして化学合成され(Pepscan Presto BV, Lelystad, The Netherland)、そしてフローサイトメトリー実験のためにFITC標識された。正しいペプチドが99%を超える収率で得られ、そして分取的精製後に均一であり、これは、質量分析および分析用逆相高速液体クロマトグラフィーによって確認された。これらのペプチドは内毒素を含まなかった。TLT−1−LR17と同じアミノ酸を含むが、完全に異なる配列順序で含む、スクランブルペプチドを合成し、そしてコントロールペプチドとして役立てた(TLT−1−LR17スクランブル:GAEREVCMDEYGALQDG、配列番号5)。
ヒトPMNおよび単球の単離および刺激。ヒト末梢血試料を、研究スタッフを起源とする健康なボランティアドナーからEDTA上に回収した。
PMNを、ジアトリゾ酸ナトリウム13.8%/デキストラン500 8.0%密度勾配(polymorphprep, AbCys)によって単離した。単球を、Monocyte Isolation Kit II(Miltenyi)によってPBMNCのネガティブ細胞選別によって単離した。その後、細胞を2回PBS(BioMerieux)で洗浄し、そして完全培地(100UI/mLのペニシリン、100μg/mLのストレプトマイシン、0.25μg/mLのアムホテリシンBおよび10%FCSを含むRPMI1640、Eurobio)に再懸濁し、その後、刺激した。純度は、フローサイトメトリー(抗CD45抗体、抗CD14抗体および抗CD66b抗体、Beckman Coulter)によって評価した。
血小板の単離。クエン酸デキストロース血液試料を、遠心分離にかけ(100g、10分間)、血小板の豊富な血漿(Platelet-Rich Plasma)を得た。その後、PRPを、36%(wt/vol)BSA勾配にかけて遠心分離し(550g、10分間)、そして血小板を、中間相から回収し、その後、5mM EGTAの補充されたタイロード塩緩衝液(Sigma-Aldrich)中で洗浄した。活性化のために、血小板を、5U/mLのトロンビン(Sigma-Aldrich)または1μg/mLのE.coli LPS(0111:B4, Sigma-Aldrich)と共に37℃で30分間インキュベーションし、そして続いて、2%(wt/vol)パラホルムアルデヒド(PFA, Sigma-Aldrich)を用いて固定した。残留PFAを、タイロード緩衝液中における2回の追加の洗浄工程によって除去した。活性化を抗CD62P抗体(Beckman Coulter)によって評価した。
細胞の刺激。実験に依存して、細胞を、96ウェルプレート(Greiner Bio One)上の、100ng/mLのE.coli LPS(0111:B4, Sigma-Aldrich)、抗TREM−1mAb(R&Dsystems)およびTLT−1ペプチドの補充された完全培地中で種々の時間および濃度で刺激した。上清を、サイトカイン測定のために回収し、そして細胞を、フローサイトメトリーにかけるか、またはタンパク質リン酸化分析およびNFκB活性測定のために溶解した。
FACS分析。単離された細胞(好中球、単球または血小板)を氷上で1時間かけて、10%ヒトIg(Sigma-Aldrich)を用いて非特異的結合について遮断した。細胞を、組換え可溶性FITC標識TLT−1ペプチド、FITC標識LP17(または対応するFITC標識スクランブルペプチド)、PE標識抗TREM−1mAb(R&Dsystems)、CD62P−FITC、CD66b−PE、CD45−PE、CD14−FITC(全てBeckman Coulterから)と共にインキュベーションした。
サイトカイン濃度測定。刺激されたヒト細胞またはマウス血漿の上清中のサイトカインをELISA(ヒトおよびマウスQuantikine ELISA kits、R&Dsystems)およびサイトカインパネルアッセイ(Proteome Profiler Human Cytokine Array Kit、Panel AおよびProteome Profiler Mouse Cytokine Array Kit、Panel A、R&Dsystems)によって製造業者の推奨に従って測定した。
タンパク質リン酸化の分析。刺激されたPMNを、PhosphoSafe Extraction Reagent(Novagen)を用いて1、3、10、30および60分後に溶解し、そして16,000gで4℃で5分間遠心分離にかけて、上清を回収した。タンパク質濃度をブラッドフォード法(Pierce)に従って決定した。その後、溶解液を、ウェスタンブロット(Criterion XT Bis-トリスゲル、4〜12%、BioradおよびPVDF膜、Millipore)によって分析し、抗ホスホ−p38抗体および抗pERK1/2抗体並びにセイヨウワサビペルオキシダーゼにコンジュゲートした対応する二次抗体(Cell Signaling)並びにSuperSignal West Femto Substrate(Pierce)を用いて明らかとした。抗p38抗体および抗ERK1/2抗体を規準化のために使用した。あるいは、PMNを20分間の刺激後に複数のリン酸化タンパク質のパネルについてイムノブロット(Human Phospho−Kinase Array,R&Dsystems)によって分析した。取得および定量シグナル密度分析をLAS−4000イメージャーおよびMulti−Gaugeソフトウェア(富士フィルム)によって実施した。
免疫沈降。細胞を、CytoBuster Protein Extraction Reagent(Novagen)を用いて溶解した。試料を総タンパク質濃度によって規準化し、そして溶解液を、免疫沈降を実施する前にプレクリアした。その後、プレクリアした溶解液をウサギ抗Bcl10mAb(Cell Signaling)またはウサギ抗CARD9抗体(Antibodies Online)と共に4℃で一晩インキュベーションした。その後、抗ウサギIgビーズ(eBioscience)を室温で1時間かけて加えた。その後、ビーズを3回洗浄し、Laemli緩衝液中で95℃で5分間かけて変性させ、そして16,000gで1分間遠心分離にかけた。保持されたタンパク質を含む上清をウェスタンブロットによって分析し、そして抗Malt−1抗体およびHRPのコンジュゲートした対応する二次抗体(Cell Signaling)を用いて明らかとした。
NF−κB活性測定。刺激された細胞を回収し、核抽出物を核抽出キットによって得、そしてNFκB活性を、ヒトp50/p65combo転写因子アッセイキット(Cayman Chemical)を用いて製造業者の指示に従って測定した。
ROS産生の評価。好中球のファゴサイトーシスおよび酸化バーストの定量的決定を、フローサイトメトリーによって、PhagotestおよびBursttest(Orpegen Pharma, Heidelberg, Germany)を使用して製造業者の推奨に従って実施した。FITCで標識されたオプソニン化E.coliを使用して、全般的なファゴサイトーシス活性(1細胞あたり1つ以上の細菌の摂取)および個々の細胞のファゴサイトーシス活性(1細胞あたりの細菌数)を決定した。酸化バースト活性の評価のために、標識されていないオプソニン化E.coli、fMLP、PMA、LPS並びに活性化または非活性化血小板(30:1)を刺激剤として使用し、DCFDAを蛍光発生基質(Invitrogen)として製造業者の指示に従って使用した。
Trem−1ノックダウン単球の調製。TREM−1サイレンシングを、Human Monocyte Nucleofectorキット(Amaxa)を用いて、Qiagenから得られたsiRNA配列を使用して実施した。単離した単球を、siRNAを用いて電気穿孔し(陰性コントロールとしてsiRNAの非存在下およびsiRNAの存在下で電気穿孔を行なわない、および陽性コントロールについてはGFP−リポータープラスミドの存在下)、そしてHuman Monocyte Nucleofector Medium(Amaxa)中で24時間培養し、その後、刺激した。その後、TREM−1発現をトランスフェクションから24時間後に定量RT−PCRおよびフローサイトメトリーによって評価した。培地を交換し、そして単球を24時間かけてLPS、抗TREM−1mAbおよびTLT−1ペプチドで刺激した。それ故、培地をサイトカイン測定のために回収した。
マウスにおいてLPSにより誘導された内毒血症。地域倫理委員会による承認の後、雄Balb/cマウス(4〜6週令)を無作為にグループ分けし、そしてLPSチャレンジの1時間前または1時間後にLR17(250μLの通常の食塩水中)またはLR17−スクランブルと組み合わせてLPSを用いて腹腔内処置した。マウスの生存を、毎時間ごとに調べるか、またはマウスを、一定の間隔で殺滅した。血清試料を、心臓穿刺によって回収し、そしてサイトカインおよびsTREM−1レベルについてELISA(R&Dsystems)によってアッセイした。
盲腸結紮および穿刺(CLP)による多菌性敗血症モデル。雄Balb/cマウス(4〜6週令)を、イソフルランを用いて麻酔した。盲腸を、1.0cmの腹部正中切開を通して露出させ、そして遠位半分の結紮を行ない、その後、G21針を用いて1回穿刺を行なった。少量の便を穿刺から排出させて、開存性を確実にした。盲腸を腹腔に戻し、そして腹部切開を2つの層で閉じた。手術後、全てのマウスに体液蘇生のために0.5mLの0.9%NaClを皮下注射した。動物を無作為にグループ分けし、そして250μLの0.9%NaCl溶液中におけるLR17またはコントロールとしてのLR17−スクランブルで処理し、そして腹腔内投与した。種々の時点におけるLR17の種々の用量の効果を決定するために、マウスを手術から1時間後に50、100または200μgのLR17を用いて、またはCLPから2、6および24時間後に3回の100μgの注射を用いて、またはCLPから24時間後の1回の100μgの注射を用いて処置し、そしてその後、生存率についてモニタリングした。1群あたり5匹の追加の動物を、細菌数およびサイトカインレベルの決定のためにCLPから24時間後に麻酔下で死滅させた。腹腔洗浄液を、2mLのRPMI1640(EuroBio)を使用して得、そして血液を、心臓穿刺によって回収した。血漿中サイトカインの濃度をELISA(R&Dsystems)によって決定した。細菌数の評価のために、血液および粉砕した脾臓を、連続log希釈率で、5%ヒツジ血液の補充されたトリプチックソイ寒天プレート上に播種した。播種後、トリプチックソイ寒天プレートを37℃で好気的に24時間、そして嫌気的に48時間インキュベーションした。結果を、血液1mlあたりまたは脾臓1gあたりのCFUとして表現する。
結果LR17はTREM−1リガンドに特異的に結合する sTLT−1がTREM−1リガンドに特異的に結合し得、従って、TREM−1/TREM−1リガンド相互作用に干渉し得るかどうかを決定するために、本発明者らは、そのリガンドによるTREM−1の関与を模倣する、TREM−1に結合し活性化することが知られる特異的なTREM−1アゴニストを使用した。本発明者らは、コントロールとして、TREM−1それ自体はそのリガンド(アゴニスト)を認識することができたが、コントロールLR−17スクランブルペプチドを認識することはできず、そしてsTLT−1およびLR17もまたTREM−1リガンドに結合することができたことを観察した(図1A)。
ヒト血小板はTREM−1リガンドを恒常的に発現することが知られている。従って、本発明者らは、血小板上へのLR17の固定を研究する際に、sTLT−1とTREM−1リガンドとの相互作用を直接確認したかった。本発明者らは、FITCで標識されたLR17が休止血小板およびトロンビン活性化血小板の両方に結合することを観察した。この結合は、TREM−1リガンドに結合することが知られるTREM−1から誘導されたペプチドであるLP17との共インキュベーションによって減少した。逆も真実である:血小板へのFITCで標識されたLP17の結合は、rsTLT−1または
LR17との共インキュベーションによって減少したが、LR17スクランブルによっては減少しなかった。LR17は、TREM−1リガンドを発現しないことが知られている、好中球または単球には結合しなかった(図1B)。
LR17との共インキュベーションによって減少したが、LR17スクランブルによっては減少しなかった。LR17は、TREM−1リガンドを発現しないことが知られている、好中球または単球には結合しなかった(図1B)。
好中球は膜に結合したTREM−1リガンドを発現しないが、これらの細胞は、その可溶化形態を遊離し得る。表面プラズモン共鳴を使用して、本発明者らは、LPS活性化好中球が時間依存的にTREM−1リガンドを分泌することを観察した(図1C)。LR17は、固定されたTREM−1へのTREM−1リガンドの結合を遮断することができ(図1D)、このことはsTLT−1がTREM−1/TREM−1リガンド相互作用を干渉し得ることを示唆する。
まとめると、これらの結果は、LR17がTREM−1リガンドに特異的に結合および補足することができることを示唆し、このことは、それがデコイレセプターとして作用し得、そしてTREM−1リガンド/TREM−1相互作用を阻害し得ることを示唆する。
LR17は、TREM−1の活性化を阻害し、そしてTREM−1により媒介される好中球の活性化を減少させる。 骨髄細胞上におけるTREM−1の関与は、p38MAPKおよびERK1/2のリン酸化をもたらす。この作用は、LR17によって部分的に消失した(図2A)。リン酸化タンパク質アレイもまた、TREM−1シグナル伝達に関与するタンパク質のリン酸化(mTOR、Lyn、AKT、MSK1/2、MEK1/2、GSK3α/β、RSK、およびp53)もまた、LR17の存在下で減少したことを示した(データは示さず)。TREM−1は、ITAMを含むアダプタータンパク質であるDAP12との会合を通してシグナルを伝達する。CARD9−BCL10−MALT1の形成が、ITAM共役レセプターを下流のNF−κB活性化に連関させる上で必須であることが証明されたので、本発明者らは次にこの複合体アセンブリに対するLR17の効果を調べたかった。予期した通り、TREM−1の活性化は、増加したCARD9−MALT1−BCL10の複合体の形成を伴った。この作用はLR17によって逆行した(図2B)。
TREM−1シグナル伝達経路は、最終的にNF−κBの活性化に至る。ここでも、LR17は、抗TREM−1抗体により誘導されるNF−κB活性を減少させた(図2C)。TREM−1により誘導された細胞活性化のための解読値として、本発明者らはROS産生を選択した。TREM−1アゴニストおよび血小板(TREM−1リガンドを発現する)の両方が、好中球によるROS産生を増加させることが示された。本発明者らは、この産生がLR17の存在下で一部には防がれることを観察した(図2D)。最後に、LR17は、活性化好中球によるサイトカイン産生を、TNF−α(図2EおよびF)、IL−6およびIL−8について遺伝子およびタンパク質レベルの両方で減少させることができた(データは示さず)。それ故、これらの結果は、LR17が、天然に存在する、TREM−1の直接的な阻害剤であるという事実をさらに支持する。
LR17は、LPSによりまたはLPSおよびαTREM−1により誘導された細胞活性化を減少させることによって抗炎症特性を示す。 TREM−1のモデュレーションは、TLRにより媒介される好中球の活性化を減少させることが示された。LPSによる刺激時のTLR4の関与により、好中球によるNF−κB活性化およびROS産生に至る。実際に、LR17は、LPSに関連した(αTREM−1の存在下または非存在下)p38およびERK1/2のリン酸化(図3A)、CARD9−MALT1−BCL10複合体形成(図3B)、NF−κB移行(図3C)、および細胞内ROS産生(図3D)を減少させた。LR17はまた、E.coliによって媒介される好中球の酸化バーストも減少させた。これに対し、sTLT−1およびLR17は、好中球のファゴサイトーシス特性を変化させなかった(図3E)。
予期した通り、αTREM−1は、好中球によるTNF−α産生を誘導した。この作用は、LR17の添加によって消失した。抗TREM−1抗体もまた、サイトカイン産生についてLPSと相乗作用し、ここでも、この相乗作用はLR17によって遮断された。
最後に、好中球および単球によるLPSに関連したTNF−α分泌は、遺伝子およびタンパク質レベルの両方において、LR17の存在下で用量依存的に減少した。αTREM−1は、サイトカイン産生の誘導においてLPSと相乗作用し、ここでもこの作用はLR17の添加によって消失した(図3F、G、HおよびI)。IL−6およびIL−8についても同じことが当てはまる(示していない)。広範なサイトカインアレイを使用して、本発明者らは、LR17による、TNF−α、IL−6およびIL−8の減少した産生だけでなく、GRO−α、IL−1β、IL−16、MCP−1、MIP−1βおよびRANTESの減少した産生も確認した。これら全ての作用はまた、ヒト単球においてTLR2(Pam3SK4)(示していない)刺激時に起こると確認された。
sTLT−1がTREM−1を介してLPSにより誘導される炎症応答をモデュレーションすることを結論的に実証するために、Trem−1siRNAで処理された単球に対するLR17の効果を調べた。Trem−1サイレンシングは、RT−qPCRによって確認したところ、トランスフェクションから24〜96時間後に90%を超える効率で単球において達成された。サイレンスされた単球もまたLPS/抗TREM−1mAbを用いて刺激された:サイレンスされた単球はLPSに対して正常に応答したが、抗TREM−1mAbはTNF−α産生を誘導しなかった。同時に、LR17は、サイレンスされた単球によるTNF−α合成に対して全く効果を示さなかった(図3I)。これらの結果は、sTLT−1が天然に存在するTREM−1の阻害剤であるという仮説を支持する。
LR17は内毒血症マウスを死亡から防御する 本発明者らは次に、sTLT−1が敗血症中にいくらかの防御効果を有し得るかどうかを解明したかった。成体雄Balb/cマウスに、LPS投与(LD50、25mg/kg)の60分前に、1回量のLR17、LR17スクランブルまたはNaCl0.9%を腹腔内投与した。全てのLR17処置動物が生存した(図4a)。LR17処置を、LPS投与後まで遅延させることができるかどうかを調べるために、本発明者らは、LPS注射の1時間後にLR17の注射を開始した。この遅延した処置は有意な防御を与えた(図4a)。遅い死亡も10日間かけて全く起こらず、このことはLR17がLPSの致死性の開始を単に遅延させただけでなく、持続する防御を提供したことを示す。コントロールマウスは全て死亡前に傾眠、起毛および下痢を発症した。対照的に、LP処置マウスは毛並みもよく、活動的で、下痢も全くなく、元気であった。LR17がLPSの致死性からマウスを防御する機序を明瞭にするために、本発明者らは、2および4時間後に内毒血症マウスのTNF−α、IL−6、IL−10およびsTREM−1の血清レベルを決定した。コントロールと比較して、LR17による前処置および後処置はサイトカインを減少させた(図4b〜e)。より高用量のLR17(250μg)を使用しても、100μgの用量を上回る利点を与えなかった。
LR17は多菌性敗血症に対してマウスを防御する 敗血症ショックのより関連したモデルにおけるLR17の役割を調べるために、本発明者らは、CLP実験を実施した。コントロール群は、通常の食塩水またはコントロールペプチド(スクランブルLR17)を注射されたマウスを含んだ。本発明者らは、最初に手術から24時間後に血漿中のIL−6およびIL−10濃度を測定した。LR17(手術から2時間後に100μgを腹腔内に)処置動物においては、両方のサイトカイン濃度が減少した(図5a)。IL−6およびIL−10もまた、LR17処置後に気管支肺胞洗浄液において、並びに腹腔洗浄液において減少していた(図5a)。サイトカインアレイを使用した種々のサイトカインの血漿中レベルのスクリーニングは、いくつかの他の重要な炎症サイトカイン(C5a、IL−1ra、IL16、MCP−1、MIP−1α、MIP−2)の減少した濃度を示した。凝固活性化は、しばしば敗血症中に炎症応答の一部として起こる。D−ダイマーおよびTATcの血漿中および肺胞中濃度の両方が、CLPマウスにおいて顕著に上昇していた。これらの凝固異常は、LR17によって防止された(図5b)。
次に、本発明者らは、LR17が感染部位(腹膜)および遠位(肺胞空間)の両方における局所的細胞動員に影響を及ぼすかどうかを調べた。実際に、細胞浸潤は両部位においてLR17処置によって減少した(図5c)。組織学的研究は、敗血症マウスにおける、重度の肺損傷、すなわち肺胞内出血、タンパク質沈降、および肺胞への白血球浸潤、および血管周囲空間の浮腫性肥厚を明らかとした。これらの変化は、LR17処置動物においては減弱した(図5d)。それ故、LR17は、腹膜炎によって誘導される大量の細胞浸潤および組織学的傷害から防御する。本発明者らは最後に、細菌クリアランスに対するLR17の効果を研究した。予期された通り、本発明者らは、腹膜炎の発症から24時間後にCLPマウスの脾臓において非常に高い細菌数を観察した。さらに、全てのコントロール動物に菌血症が見られた。対照的に、LR17は細菌クリアランスを改善し、そしてほぼ完全に敗血症を防いだ(図5e)。
それ故、LR17による処置は、局所的および全身的の両方において敗血症により誘導される炎症応答をモデュレーションすることができ、そして細菌クリアランスを改善することができた。
LR17は、CLPにより誘導される死亡からマウスを防御する 本発明者らは、LR17によって付与される炎症応答のモデュレーションが、敗血症中の生存率の改善へと翻訳され得るかどうかを調べた。多菌性敗血症のこのCLPモデルにおいて、LR17は、敗血症の発症から24時間後という遅い時期に投与した場合でさえも、致死性に対して用量依存的で有意な防御を与えた。興味深いことに、LR17の複数回の注射は、1回量の投与よりも優れてはいなかった(図6)。
LR12に関連したTREM−1のモデュレーションは、多菌性敗血症に対してマウスを防御する。 LR12は、LR17のN末端の12アミノ酸からなる、LR17から誘導された12アミノ酸である。LR12が敗血症マウスに投与された場合、それは依然として、全身、気管支肺胞および臓器炎症(図7aおよびb)、凝固疾患(図7c)、臓器機能不全(図7d)、細菌クリアランス(図7eおよびf)に対して有意な防御を付与し、そして最後には生存率を改善した(図7g)。これらの結果は、LR12が、LR17と同じ防御効果および効力を保持することを示唆する。
6アミノ酸のペプチド(LR6−1、LR6−2およびLR6−3)は多菌性敗血症からマウスを防御する。 LR6−1、LR6−2およびLR6−3は、LR17から誘導された6アミノ酸である(表1)。前記ペプチドを、LR17およびLR12について記載したように敗血症マウスに投与する(上記参照)。全身、気管支肺胞および臓器炎症、凝固疾患、臓器機能不全、細菌クリアランスおよび生存率に対する防御を評価して、これらのペプチドがLR12およびLR17と同じ防御効果および効力を保持するかどうかを調べる。
参考文献: 本出願全体を通じて、種々の参考文献が、本発明が属する分野の最新の技術を記載する。これらの参考文献の開示は、本開示への参照により本明細書に組み入れられる。
Claims (9)
- 炎症状態の処置において使用するための、配列番号1のアミノ酸配列から選択された少なくとも6つ連続したアミノ酸を含むポリペプチドまたは機能保存的変異体。
- 炎症状態の処置において使用するための、配列番号6、配列番号7または配列番号8からなる群より選択された6つ連続したアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
- 炎症状態の処置において使用するための、配列番号9に示されるアミノ酸配列を含む請求項2に記載のポリペプチド。
- 炎症状態の処置において使用するための、配列番号4に示されるアミノ酸配列を含む請求項3に記載のポリペプチド。
- 請求項1〜4に記載のポリペプチドをコードする単離核酸配列。
- 請求項5に記載の核酸配列を含むプラスミド。
- 請求項5に記載の核酸配列を含む発現ベクター。
- 炎症状態が敗血症である、請求項1〜4に記載のポリペプチド。
- 治療有効量の請求項1〜4に記載の少なくとも1つのポリペプチド、または請求項5に記載の核酸、または請求項6に記載のプラスミド、または請求項7に記載の発現ベクターを、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤と共に含む、薬学的組成物。
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