JP2016169187A - 脂質蓄積抑制効果を有する新規羅漢果抽出物組成物 - Google Patents

脂質蓄積抑制効果を有する新規羅漢果抽出物組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】日常的に一度に必要量を十分に摂取でき、かつ天然物で安全性の高い、脂肪蓄積予防を目的とした組成物を提供する【解決手段】モグロールを含有することを特徴とする組成物【選択図】なし

Description

本発明は、モグロール含有組成物およびその用途に関する。
肥満は、世界中で増加傾向にあり、深刻な現代病である。全世界で、肥満または過体重と推察される人口は、2013年で21億人であり1980年の調査の8.5億人から2.5倍と急激な勢いで増え続けている。現在、世界全体の成人男性の37%、成人女性の38%が肥満である。さらに未成年者や発展途上国でも肥満の増加が確認されている。
肥満の定義としては、Body Mass Index(BMI)という指標が用いられる。これは、体重(kg)を身長(m)の2乗の値で除した数値であり、世界保健機関ではBMIが25以上を過体重、30以上を肥満としている。
肥満は、体に脂肪が蓄積することによる体重増加に留まらず、運動機能の低下や様々な疾病の温床となることが知られている。脂質を蓄積し続けて過剰に肥大した脂肪細胞からは、炎症性の生理活性物質が分泌されることが知られており、血管を含めた全身の臓器に損傷を与える。同時に組織の修復機能を有する生理活性物質の分泌量が低下するため全身の回復力も低下し、悪循環に陥る。BMIが高値のグループは、心血管疾患、糖尿病、腎疾患、肝臓障害や前立腺がん、乳がん、子宮頚がんなど多くのがんなどの生活習慣病のリスクが高まることが知られている。
肥満と糖尿病との関係は密接であり、糖尿病患者の9割を占める2型糖尿病は、膵臓のβ細胞から分泌されるホルモンで血糖値を下げる働きを持つインスリンの分泌低下と肝臓や筋肉などの標的組織での感受性の低下によって発症するが、これは高カロリー・高脂肪食の摂取や運動不足などの要因によって内臓脂肪が蓄積した肥満状態が大きく関与すると考えられている。
肥満状態を改善するためには、食事療法、薬物療法、運動療法などを組み合わせて行うことが望ましく、特に肥満に至った原因である生活習慣を改善する必要がある。
近年、食品に肥満予防作用を持つ成分が含まれていることが報告されている。このような食品由来成分は、日常的にかつ長期に渡り食経験を有するものもあり、高い安全性を備えていることが多い。それらの食品由来成分の肥満予防作用は大きく2つタイプに分けられる。1つは、エネルギーとして摂取した糖や脂肪の体内への吸収を抑制するタイプであり、トウモロコシなどから作られる難消化性デキストリンなどが挙げられる(非特許文献1、非特許文献2)。もう1つは、身体に蓄積した脂肪細胞に作用し、分解・燃焼を促進するタイプであり、オリエンタルメロンやニガウリに含まれるククルビタシンなどが挙げられる(特許文献1)。
だが、それぞれのタイプの食品由来成分の肥満予防を目的とした利用法を考えると、前者は基本的に食事前に摂取する必要があり、タイミングが限られるため利用性が悪く、食事の質を低下させるおそれがある。一方で、後者は食事のタイミングに縛られることなく、任意のタイミングで複数回摂取してもよく、1回の摂取量も調整可能であり、利用性が良い。
羅漢果(学名:Momordicae Grosvenori)は、中国南部の広西チュワン族自治区が原産のウリ科の草本植物であり、秋には直径4〜6cm程の果実をつける。この羅漢果の果実からは、きわめて強い甘味を持ち、同時に深いコクのある独特の風味を呈する抽出物として、羅漢果エキスを得ることができる。この羅漢果エキスは、薬用の甘味料として知られている。中国では古来より、羅漢果の果実を乾燥させ、煎じて飲むと、咳止め、喉の炎症抑制、解熱などに効果があるとされ、民間療法薬として利用されてきた歴史がある。近年では創傷の治癒を促進する作用があることが知られている。(特許文献2)
羅漢果は一般的な果実に含まれる甘味成分である果糖とは異なる特別な甘味成分として、トリテルペン配糖体群であるモグロシド類を有する。モグロシド類は非糖質系でありながら甘味を有し、なかでも主甘味成分は、モグロシドVという物質であることが知られ、アグリコンのモグロールという甘味を示さない物質にグルコースが5つ結合した構造を有している。モグロシドVは、ショ糖に対して300倍以上の甘味度を示す物質である。その他の類似構造を持つモグロシド類も甘味を有する物質が複数ある。そのため、羅漢果エキスを甘味料として用いた場合、摂取するモグロシド類は極めて少なくて済むため、摂取エネルギーは事実上無視することができる。さらにモグロシド類を含有する羅漢果エキスには、血糖値と血清インスリン値を上昇させないことや腸管のマルターゼ阻害活性を示し、体内への単糖の取り込みを抑制することが知られている(非特許文献3、非特許文献4)。そのため、羅漢果は機能性甘味料として注目されている。前述の食品由来成分の肥満予防作用のタイプで考えた場合、摂食エネルギーの取り込みを抑制するタイプである。
また、一般的に配糖体として存在する物質の機能性の本質は、アグリコンである場合があるが、羅漢果から抽出されるモグロシド類のアグリコンとしてモグロールという物質が知られている。羅漢果中に含まれるモグロールは、弊社測定結果で0.0003%程度でしか含有されておらず、他の植物中でもニガウリ中に0.0003%含有されている程度であり、決して多量には含有されていない。また、モグロールはモグロシドVを摂取することで消化酵素や腸管内の腸内細菌叢によって糖鎖が切断されて、モグロールとして腸管から体内へ吸収されることが知られているが、モグロシドVからモグロールへの変換率も吸収量も十分ではない(非特許文献5)。さらにモグロールの機能に関する知見としては、肝がん細胞株に対して、がん細胞の生育抑制に働くタンパク質であるAMP活性化タンパク質キナーゼをリン酸化させ、活性化状態にすることが知られているのみである(非特許文献6)。そのため、羅漢果に含まれる成分であるモグロールが脂質蓄積抑制効果に関与して、肥満状態を改善し、肥満に起因する生活習慣病を予防できることはいずれの文献にも開示されていない。
特開2007−269757号 特許第5187935号
Eur. J. Nutr., 46(3), 133‐138(2007) J. Nutritional. Food., 5(2), 31‐39(2002) J. Agric. Food. Chem., .53(8), 2941−2946(2005) Br. J. Nutr., 97(4),770−775(2007) Biosci. Biotechnol. Biochem., 74(3),673−676(2010) Bioorg. Med. Chem., 19(19),5776‐5781(2011)
肥満を予防する作用として脂質蓄積抑制効果を示す食品成分には、効果を期待できる必要量が強い毒性を示すものが多く存在するため、安全性に欠け、長期的な日常摂取は困難である場合がある。
特にニガウリに含まれるククルビタシン化合物は、肥満を改善する作用を示すことが従来技術として報告されている(特許文献1)が、主成分であるククルビタシンBが毒性の高い物質であることには触れられていない。これは、脂質蓄積抑制効果を培養細胞レベルでしか評価しておらず、本来評価すべき個体レベルでの消化、吸収、代謝という過程を経て、全身組織へ及ぼす影響を評価できていないためである。事実、ククルビタシンBは、マウスに対する毒性が非常に強く、致死量が約1.0mg/kgであり、半数致死量からも毒物に分類される。これまでにヒトにおいても、ニガウリの他にもククルビタシン化合物を多く含むズッキーニやユウガオの過食を原因とする下痢や嘔吐などの食中毒が頻発している(非特許文献:沖縄県衛生環境研究所報 30号(1996))。ククルビタシン類を抽出した化合物を脂肪蓄積抑制効果が期待できる必要量摂取するためには、ヒトの標準体重(60kg)に対して、致死量の40%以上を摂取する必要があるため、事実上不可能であると推察できる(ククルビタシンBの有効濃度を血中濃度と同等と仮定)。
また、上で述べたように、モグロールは羅漢果果実中には0.0003%程度しか含有されておらず、モグロシドとして摂取した後に体内でモグロールに変換される効率も高くはない。モグロシドVを高濃度(40%以上)に含有するラカンカ抽出物は、甘味成分として入手可能であるが、この羅漢果抽出物を摂取して、体内でモグロシドから変換されるモグロールが抗肥満効果を期待できる量となるために必要な羅漢果抽出物の摂取量を計算した場合、羅漢果抽出物を約1.7kg(甘味度をショ糖換算した場合、ショ糖522kg分に相当)摂取する必要があり、物理的に不可能である。
以上の状況を鑑み、日常的に一度に必要量を十分に摂取でき、かつ天然物で安全性の高い、脂肪蓄積予防を目的とした組成物が求められている。
本発明者らは上記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、羅漢果から抽出される羅漢果エキス中に含まれるモグロシド類のアグリコンであるモグロールを従来法では摂取し得なかった量を摂取することにより生活習慣病の原因となる脂質の過蓄積を予防する脂質蓄積抑制効果と高い安全性を見出した。
本発明におけるモグロールを含有する組成物は、脂質の蓄積抑制に効果的な2つのメカニズムに相乗的に作用すると考えられる。肥満の過程は、脂肪細胞が細胞の一般的なライフサイクル中の一過性増殖を行い脂肪細胞が細胞数を倍増させる前期と、脂肪細胞が脂質を細胞内に蓄積して肥大化する中期に大別される。モグロールはこの両方の過程において作用して、肥満状態を改善・予防する。本発明は、前期には、未分化状態の前駆体細胞に対して、一過性増殖(クロナールエクスパンション)という細胞数を倍増させ、脂質蓄積に関連する遺伝子群の発現を誘導して脂質形成を抑制し、且つ分化中期の時期には、グリセロール‐3‐リン酸脱水素酵素活性というNADを補酵素としてジヒドロキシアセトンリン酸からグリセロール3−リン酸を生成する脂質形成に必要な酵素活性を抑制するという複合的作用によって、相乗的に且つ効果的に肥満の原因となる脂肪の形成と脂肪の蓄積という2つの因子を解決することができる。
羅漢果は、古来中国では民間薬として広く用いられ、長年の食経験が豊富であり、安全性は高い。羅漢果の熱水抽出によって得られる羅漢果エキスに関しても同様の食経験を有するため、安全性は高い。また羅漢果および羅漢果エキス中に存在するアグリコンであるモグロールも羅漢果植物体中で生合成の過程で糖が1〜5個結合して各モグロシド類が生成することが知られている。本発明においても、経口摂取や静脈注射などの様々な投与方法を用いても従来技術と比べてモグロールの高い安全性を見出している。
一方、モグロールは、羅漢果中に0.0003%しか含まれておらず、日常的に摂取できる量の羅漢果配糖体のモグロシドVを摂取しても、モグロールは体内でわずかな量しか産生・吸収されない。そのため、従来では脂質蓄積を抑制する効果を発揮するために十分な必要量を摂取できていなかったが、本発明により、それを可能にする組成物を提供できるようになった。すなわち、これまでになかった高濃度にモグロールを含む組成物を提供することにより、前述の様々な課題を達成することができる。
本発明の肥満予防に係る脂肪蓄積抑制作用を有する化合物は、モグロール:(24R)−ククルビタ−5−エン−3β,11α,24,25−テトラオールであり、下記に示す構造式に示される。
Figure 2016169187
本発明で使用するモグロシド類およびモグロールを含有する羅漢果エキスおよび単離されたモグロールは、羅漢果植物体中のいかなる部位から抽出、加工、精製してもよく、果実、茎、葉、球根、根茎、種子などの部位が挙げられるが、これらに限ったものではない。また、羅漢果以外のウリ科に属する他の植物体中のいかなる部位から抽出、加工、精製してもよい。
本発明で使用するモグロシド類およびモグロールを含有する羅漢果エキスおよび単離されたモグロールは、羅漢果中に存在する各種モグロシド類およびアグリコンとして、モグロシドV、モグロシドIV、モグロシドIII、モグロシドII、モグロシドI、モグロールなどが挙げられ、それらを1種類または2種類以上含む組成物である。また、羅漢果およびその他の植物から抽出、精製されるこれらモグロシド類及びこれらの誘導体を使用してもよく、これらの化合物として、11オキソモグロシドV、シアメノサイドI、11オキソモグロシドIII、11オキソモグロシドII、11オキソモグロシドI、11オキソモグロールなどが挙げられるが、これらに限ったものではない。
本発明で使用する羅漢果エキスに含まれるモグロシド類およびモグロールは、植物抽出物だけではなく、微生物、培養細胞、無細胞系、化学合成などのいずれの方法によって抽出、加工、精製されてもよい。
なお、モグロシド類およびモグロールは上記に示した抽出・精製物を得る方法として、これらに限定されるわけではなく、上記モグロシド類およびモグロールを含む天然物を全て利用できることは明らかであり、例えば羅漢果以外では、ニガウリ、マクワウリ、バッファーローカボチャ等が挙げられる。また、脂質蓄積抑制効果を示すなどの、抗肥満作用を有している限り、モグロールの吸収を高めるために上記の誘導体以外の形や添加物を利用することもできる。
本発明のモグロシド類およびモグロールを含有する羅漢果エキスおよび単離されたモグロールを含有する組成物は、その用途に応じて経口、経皮、経腸、経粘膜、局所注射、静脈注射、吸入などのいずれの投与経路を介してもよい。
本発明の形状として、例えば医薬品などでは、錠剤、顆粒剤、粉末剤、カプセル剤、シームレスカプセル剤、シロップ剤、軟膏剤、ローション剤、ドレッシング剤、点眼剤、点耳剤、点鼻剤、吸入剤、坐剤、貼付剤、注射剤が挙げられる。加えて、食品などでは、飴、ガム、チョコレート、飲料、ゼリー、アイスクリーム、クリーム、缶詰、携行食料、卓上甘味料が挙げられ、その他にもサプリメントや化粧品なども挙げられるが、それらに限定されたものではない。
本発明において、モグロールの使用量は特に制限はないが、含有する組成物に対して通常は0.001重量%以上、100重量%以下が望ましい。好ましくは0.01重量%以上、50重量%以下、さらに好ましくは0.1重量%以上、20重量%以下の範囲での使用で良好な作用が得られる。組成物にもよるが、0.001重量%未満では効果が低く、十分な効果が得られない場合がある。
本発明は、上記に示した用途、形態に限定されず、本発明を逸脱しない範囲において種々変更を加えることができる。
<製造例1:各種モグロシド類およびモグロールの調製・単離>
本発明において、羅漢果エキスに含まれるモグロシド類およびモグロールの脂質蓄積抑制効果について評価するために、羅漢果エキス(SG‐ex)および、羅漢果配糖体(SG‐gly)に関しては、同業者において公知の方法によって製造されるが、各モグロシド類の標準品に関しては、一般的に市販されておらず、入手困難であるため、本発明者らによって、下記に示すような分画・分取方法で各標準品を入手した。
すなわち、羅漢果の未乾燥果実をメタノールで抽出し、メタノールエキスを得た。メタノールエキスを水と混合し、N−ヘキサンで脱脂した。脱脂されたメタノールエキスを、多孔性樹脂(DIAION HP−20カラムクロマト、三菱化学製)にかけ、80%メタノール、100%メタノール、およびアセトンの順に溶出させ、粗配糖体画分である80%メタノール画分を得た(SG‐ex)。
得られた粗配糖体画分のうちの10gを10〜50mLのメタノールに十分に溶解させ、乳棒を用いて乳鉢中のシリカゲル(Silicagel60、70〜230mesh、MERCK製)50gと混ぜ合わせた。適量のメタノールを加えてよく混合した後、80〜90℃の条件下で撹拌しながら十分に乾燥させた。シリカゲル粒子が均一になるまで乳棒ですりつぶした後、300gのシリカゲルを充填したガラスカラム(Ф40×750mm、桐山化学)の上部開口部に、上記の乾燥させたシリカゲル粒子を追充填した。
次に、クロロホルム(片山化学、試薬特級)−メタノール−水を15:6:1の容積比で混合した分画溶媒を上記カラムに3L流して溶出させた後、クロロホルム−メタノール−水を15:9:2の容積比で混合した分画溶媒を5L流して溶出させた(SG‐gly)。
また上記の溶出液は、フラクションコレクターを用いて約13mL/8分の流速で、計約500本の試験管に回収し、約10本おきに溶出液の一部を順相系の薄層クロマトグラフィー(以下、TLCと称する)(Silicagel 60F254、MERCK製)にかけて分析することにより、羅漢果配糖体のスポットを確認することができる。この結果に基づいて、得られた約500本の試験管に含まれる溶出液を次に示したA〜Eの5フラクションにまとめ、分取した。
AフラクションはNo.001〜242、BフラクションはNo.243〜305、CフラクションはNo.306〜348、DフラクションはNo.349〜470、そしてEフラクションはNo.471〜LASTとした。
「モグロシドIV」を単離するためには、Bフラクションを、オクタデシルシリル(以下、ODSと称する)カラム(LiChroprep RP−18、40〜63μm、MERCK)を用いる逆相カラムクロマトグラフィーにより分取した。すなわち、BフラクションをODSカラムにかけ、メタノール−水を56:44の容積比で混合した分画溶媒を1.5L、およびメタノールを0.5L順次用いて溶出させ、溶出液を約13mLずつ約100本の試験管に回収した。約5本おきに溶出液の一部を順相系TLCにかけることにより羅漢果配糖体のスポットを確認し、さらに溶出液の一部について液体クロマトグラフィー(LC)分析を行うことにより、「モグロシドIV」が完全に単離されていることを確認し、その結果、上記の約100本の試験管に含まれる溶出液を次のB−1からB−9に示す9個のフラクションにまとめ、分取した。
9つのフラクションは、No.01〜21をフラクションB−1、No.22〜26をフラクションB−2、No.27〜30をフラクションB−3、No.31〜32をフラクションB−4、No.33〜39をフラクションB−5、No.40〜43をフラクションB−6、No.44〜45をフラクションB−7、No.46〜63をフラクションB−8、そしてNo.64〜LastをフラクションB−9とした。
「モグロシドIV」はフラクションB−8に含まれているので、このフラクションを再度カラムクロマトグラフィーにかけ、メタノール−水=54:46(1.5L)の溶媒で溶出させ、溶出液を約100本の試験管に回収し、上記と同様にTLCにかけてモグロシドIVのスポットを確認し、そしてLCにかけてモグロシドIVが単離されていることを確認した。この結果に基づいて約100本の試験管に含まれる溶出液を4つのフラクションに分けた。No.57〜68のフラクションにモグロシドIVが含まれており、このフラクションを乾燥することにより、高純度(純度95.5%)の「モグロシドIV」を単離した。
「モグロシドV」を単離するためには、DフラクションをODSカラムを用いる逆相カラムクロマトグラフィーにより分取した。すなわち、DフラクションをODSカラムにかけ、メタノール−水を54:46の容積比で混合した分画溶媒を1.5L、およびメタノールを0.5L順次用いて溶出させ、溶出液を約13mLずつ約100本の試験管に回収した。約5本おきに溶出液の一部を順相系TLCにかけることにより「モグロシドV」のスポットを確認し、さらに溶出液の一部についてLC分析を行うことによりモグロシドVが単離されていることを確認し、その結果、上記の約100本の試験管に含まれる溶出液を次のD−1からD−6に示す6個のフラクションにまとめ、分取した。6つのフラクションは、No.01〜16をフラクションD−1、No.17〜22をフラクションD−2、No.23〜26をフラクションD−3、No.27〜32をフラクションD−4、No.33〜45をフラクションD−5、そしてNo.46〜LastをフラクションD−6とした。
「モグロシドV」はフラクションD−5に含まれているので、このフラクションを再度逆相カラムクロマトグラフィーにかけ、メタノール−水=54:46(1.5L)の溶媒で溶出させ、溶出液を約100本の試験管に回収し、上記と同様に順相系TLCにかけてモグロシドVのスポットを確認し、そしてLCにかけてモグロシドVが単離されていることを確認した。この結果に基づいて約100本の試験管に含まれる溶出液を5つのフラクションに分けた。No.35〜45のフラクションにモグロシドVが含まれており、このフラクションを乾燥することにより、高純度(純度97.3%)の「モグロシドV」を単離した。
「モグロシドIII」は、上記のようにして得られた3gのモグロシドVを500mLの0.005M KHPO液(pH3.4)に溶解させ、3gのマルターゼ(Sigma社製)を加えて37℃で24時間攪拌した。得られた分解液をシリカゲルにまぶしてカラムに充填した。クロロホルム:メタノール=86:14で溶出した画分から、「モグロシドIII」50mgを得た。
「モグロシドII」は、上記のようにして得られた3gのモグロシドVを500mLの0.005M KHPO液(pH3.4)に溶解させ、3gのマルターゼ(Sigma社製)を加えて37℃で24時間攪拌した。得られた分解液をシリカゲルにまぶしてカラムに充填した。クロロホルム:メタノール=80:20で溶出した画分から、「モグロシドII」50mgを得た。
「モグロシドI」は、上記のようにして得られた3gのモグロシドVを500mLの0.005M KHPO液(pH3.4)に溶解させ、3gのマルターゼ(Sigma社製)を加えて37℃で72時間攪拌した。得られた加水分解油状物1.0gをシリカゲルにまぶしてカラムに充填した。クロロホルム:メタノール=96:4で溶出した画分から、粗結晶700mgを得た。これをメタノールで再結晶を行ったものとして550mgの「モグロシドI」を得た。
「モグロール」は、上記のようにして得られた400mgのモグロシドIを100mLの95%エタノールに溶解させ、300mLの0.005M KHPO液と、1gのセルラーゼ(Sigma社製)を加えて37℃で168時間攪拌した。または、95%エタノールに溶解させ10%塩酸となるように調整後、40分間加熱還流した。水酸化ナトリウム水溶液で中和後、減圧濃縮した。これらの方法で得られた加水分解油状物300mgをシリカゲルにまぶしてカラムに充填し、クロロホルム:アセトン=95:5で溶出した画分から、粗結晶250mgを得た。これをメタノールで再結晶を行ったものとして200mgの「モグロール」を得た。
その他の製造法として、モグロシドVや羅漢果エキスを用いても上記と同様の酵素処理または酸分解の方法によって混合物中においてモグロールを生成することができる。また、カラム精製は必ずしも行う必要はなく、酵素法であれば、煮沸処理で反応を停止させ、冷却後に10分間遠心分離(20,000G)した上清をフィルターろ過により、酵素成分を除去する方法、酸分解法であれば水酸化ナトリウム水溶液で中和する方法の後に、スプレードライ法や凍結乾燥法などの粉末化技術やロータリーエバポレータなどの濃縮技術により、固体または液体といった形態として混合物中にモグロールを多く含む組成物を得た。
各自単離したモグロシド類およびモグロールの構造は、H‐NMRと13C‐NMRスペクトルデータを解析することにより、構造を同定した。
<モグロシド類およびモグロールの脂質蓄積抑制効果の評価方法>
脂肪細胞のライフサイクルは、(1)間葉系幹細胞が前駆脂肪細胞へと決定する過程(初期)、(2)前駆脂肪細胞が脂肪細胞へと分化するために一過性の増殖をする過程(前期)、(3)脂肪細胞が成熟脂肪細胞へと分化するために肥大化する過程(中期)、(4)成熟脂肪細胞として生体機能を維持する過程(後期)、(5)機能を終えた脂肪細胞がアポトーシスを誘導する過程(終期)、の5段階に分けて考えることができる。
インビトロで脂質の蓄積抑制作用を検討する場合、培養細胞を用いた。マウス胚由来前駆脂肪細胞株3T3−L1細胞は、Dulbecco‘s Modified Eagle’s Medium(DMEM)に牛血清を10%含む培地で培養(37℃、5% CO存在下)し、70%コンフルエントで継代を行った。
脂肪細胞への分化誘導および脂質の蓄積を評価する際には、3T3−L1細胞を100%コンフルエントまで培養後、培地交換を行った。培地交換から24時間後を分化誘導開始0日目として、分化誘導試薬として終濃度でインスリン(10μg/ml)、デキサメサゾン(1μM)、3−イソブチル−1−メチルキサンチン(0.5mM)をそれぞれ添加することで分化誘導を促した。それ以降は2日ごとに培地交換とインスリン(10μg/ml)添加を繰り返し、分化を維持した。各サンプルの添加は培地交換の度に行い、8日目まで培養して評価した。
各サンプルとしては、羅漢果エキス(SG‐ex)、羅漢果配糖体(SG‐gly)と上記の製法によって単離したモグロシドV(M−V)、モグロシドIV(M−IV)、モグロシドIII(M−III)、モグロシドII(M−II)、モグロシドI(M−I)、モグロール(MgL)を用いた。培養終了後は、細胞表面に付着した培地成分を除くため、PBSで洗浄を2回行った。
脂質の蓄積量を視覚的に判断するためのOil Red O染色については、培養終了後の細胞をPBSで2回洗浄し、10% ホルマリン溶液で細胞を室温下で10分間静置した。さらにPBSで2回洗浄後、60% イソプロパノールで細胞を1分間置換し、あらかじめ作製しておいたOil Red O染色液(Oil Red Oをイソプロパノールに溶解し、60% に希釈したもの)で、室温下で10分間染色した。60% イソプロパノールで1回洗浄し、PBSで2回洗浄後、BIOREVO 蛍光顕微鏡BZ−9000(KEYENCE CORPORATION)で観察した。
脂肪細胞中に存在する一般的な脂質として、中性脂肪のトリグリセリドが存在する。モグロールによる脂質蓄積抑制効果を検討するために、トリグリセリド量を定量し、測定した。トリグリセリド量の測定については、培養終了後の細胞を回収し、培地を十分洗浄した後、セルスクレーパーを用いて細胞を回収し、遠心分離(250G、4℃、3分)により、上清を除いた。そこに、緩衝液(50mM Tris、150mM NaCl)を加えて懸濁し、5秒間超音波破砕を合計4回行い、メタノールを加えて懸濁して室温で30分間静置した。そこにクロロホルムを加えて懸濁して室温で10分間静置した。さらに蒸留水を加えて懸濁し、遠心分離(20,000G、10分)した。下層を回収し、上層にはクロロホルムを加えて懸濁して室温で10分間静置し、遠心分離(20,000G、10分)後の下層を回収し、先ほど回収した下層と合わせた。その後、クロロホルムを風乾させたものをトリグリセリド抽出物とした。
トリグリセリド抽出物はイソプロパノールを加えて、懸濁して 固乾物を再溶解させた。この細胞中に蓄えられたトリグリセリド測定には、LタイプワコーTG・M(和光純薬製)を使用し、595nmの吸光度を測定した。既知濃度のトリオレインを希釈して使用し、検量線から求めた。
脂肪細胞のライフサイクル(2):前駆脂肪細胞が脂肪細胞へと分化するために一過性の増殖をする過程(前期)を評価することで脂質蓄積抑制効果を判断できる。一過性細胞増殖(クローナルエクスパンション)とは、前駆脂肪細胞に対してインスリンなどの刺激により、脂肪細胞へ分化するための特異的な遺伝子発現のためにDNA量を増加させる現象である。
DNA量の測定については、同様に培養終了後の細胞を回収し、細胞をPBSで懸濁した。細胞懸濁液を96well plateに移し、20ng/μLのHoechst 33342を2μL/well添加した。遮光して室温で10min静置し、Fluoroskan Acent FL(Thermo Fisher Scientific社製)を用いて、励起355nm、吸収460nmで蛍光強度を測定した。既知濃度の牛胸腺由来デオキシリボ核酸を希釈して使用し、検量線から求めた。
脂肪細胞のライフサイクル(3):脂肪細胞が成熟脂肪細胞へと分化するために肥大化する過程(中期)を評価することで脂質蓄積抑制効果を判断できる。グリセロール‐3‐リン酸脱水素酵素(GPDH)というNADを補酵素としてジヒドロキシアセトンリン酸からグリセロール3−リン酸を生成する脂質蓄積に関わる重要な酵素である。
GPDH活性の測定については、同様に培養終了後の細胞を回収し、遠心分離(250G、4℃、3分)により、上清を除いた。そこに、緩衝液(50mM Tris、150 mM NaCl)中で加え、細胞を超音波破砕した。遠心分離により、得られた上清に1 mM 2−メルカプトエタノールを添加したものを酵素液とした。100mM Tris/HCl(pH 7.5)、2.5mM EDTA、 0.1mM 2−メルカプトエタノールを含む溶液に、20μLの酵素液と0.12mM NADHを添加し、0.2mM ジヒドロキシアセトンリン酸を基質として反応を開始した。その後、25℃における340 nmの吸光度の変化を分光光度計V−550(JASCO社製)で測定した。
[実施例1]
<試験例1:蓄積脂質のOil Red O染色>
3T3−L1細胞に対して分化誘導を行い、各サンプルを添加して培養した。2日ごとに培地交換と各サンプルの添加を繰り返し、分化誘導から8日後に細胞中の脂質をOil Red Oを用いて染色した。その後、顕微鏡観察を行い、培養細胞を観察した。
Figure 2016169187
表1の結果から、比較例1では3T3−L1細胞を脂肪細胞に分化誘導した際に特有の油滴の形成がみられた。比較例1の対照群(Cont)の右の写真は左の3T3−L1細胞を培養したプレートの写真を拡大したものであるが、Oil Red Oにより赤く染色された脂質が濃く染色されており、油滴の形成を視覚的に確認することができた。また、比較例2、3では、羅漢果エキス(SG−ex)、羅漢果配糖体(SG−gly)を使用した場合の脂質染色の写真であり、50μg/mLのSG−exやSG−glyでは、Contと比べて油滴形成の程度が同等であった。実施例1は、モグロール(MgL)を使用した場合の脂質染色の写真であり、4.8μg/mLのMgLにおいてContと比べて左の写真では培養面積に対してOil Red Oによる染色が少なく、油滴形成が抑制された。さらに、右の写真では油滴の形成数と油滴の大きさの両方がContと比べて抑制された。すなわち、0.00048重量%以上のMgLで脂肪蓄積抑制効果が得られた。
[実施例2]
<試験例2:モグロシド類およびモグロール添加時の3T3−L1細胞に対する脂質蓄積への影響>
3T3−L1細胞に対して分化誘導を行い、各サンプルを添加して培養した。2日ごとに培地交換と各サンプルの添加を繰り返し、分化誘導から8日後に細胞中のトリグリセリド量を測定した。その結果、得られたデータ(n=3)を平均±標準偏差(X±S.D.)で表わし、溶媒のみを添加したサンプル未添加を対照群の値を(100)としたときに、統計学的に有意な差(p<0.05)を求め、有意差があった場合には「○」なかった場合には「×」を示した。各サンプル添加におけるトリグリセリド量の測定結果を、表2に示す。
Figure 2016169187
表2の結果から、羅漢果エキス(モグロシド類)を使用した場合、特にモグロールを使用した場合において、対照群と比較して有意に脂質蓄積が抑制されるということが示された(有意水準5%)。
[実施例3、4]
<試験例3:モグロール添加量の3T3−L1細胞に対する脂質蓄積への影響>
3T3−L1細胞に対して分化誘導を行い、各サンプルを添加して培養した。2日ごとに培地交換と各サンプルの添加を繰り返し、分化誘導から8日後に細胞中のトリグリセリド量を測定した。その結果、得られたデータ(n=3)を平均±標準偏差(X±S.D.)で表わし、溶媒のみを添加したサンプル未添加を対照群の値を(100)としたときに、統計学的に有意な差(p<0.05)を求め、有意差があった場合には「○」なかった場合には「×」を示した。各サンプル添加におけるトリグリセリド量の測定結果を、表3に示す。
Figure 2016169187
表3の結果から、いずれの濃度のモグロール量を使用した場合でも、対照群と比較して有意に脂質蓄積が抑制されること、およびモグロール量は増加させるほど脂質蓄積抑制の効果が大きくなるということが示された(有意水準5%)。
[実施例5、6]
<試験例4:モグロール添加時期による3T3−L1細胞分化過程のDNA量への影響>
3T3−L1細胞に対して分化誘導を行い、サンプルを添加して培養した。2日ごとに培地交換とサンプルの添加を繰り返した。分化誘導から8日後までの全期間添加した場合、分化誘導から2日後(前期)まで添加した場合、分化誘導4日目から(中期)添加した場合の分化の時期に分けてサンプルを添加して細胞中のDNA量を測定した。その結果、得られたデータ(n=3)を平均±標準偏差(X±S.D.)で表わし、溶媒のみを添加したサンプル未添加を対照群の値を(100)としたときに、統計学的に有意な差(p<0.05)を求め、有意差があった場合には「○」なかった場合には「×」を示した。各サンプル添加におけるDNA量の測定結果を、表4に示す。
Figure 2016169187
表4の結果から、モグロールの使用した場合、対照群と比較して有意にDNA量が減少されること、それは脂肪細胞の分化過程の前期においてのみ効果を発揮するということが示された(有意水準5%)。
[実施例7、8]
<試験例5:モグロール添加時期による3T3−L1細胞分化過程のGPDH活性への影響>
3T3−L1細胞に対して分化誘導を行い、サンプルを添加して培養した。2日ごとに培地交換とサンプルの添加を繰り返した。分化誘導から8日後までの全期間添加した場合、分化誘導から2日後(前期)まで添加した場合、分化誘導4日目から(中期)添加した場合の分化の時期に分けてサンプルを添加して細胞中のGPDH活性を測定した。その結果、得られたデータ(n=3)を平均±標準偏差(X±S.D.)で表わし、溶媒のみを添加したサンプル未添加を対照群の値を(100)としたときに、統計学的に有意な差(p<0.05)を求め、有意差があった場合には「○」なかった場合には「×」を示した。各サンプル添加におけるGPDH活性の測定結果を、表5に示す。
Figure 2016169187
表5の結果から、モグロールの使用した場合、対照群と比較して有意にGPDH活性が低下されること、それは脂肪細胞の分化過程の中期においてのみ効果を発揮するということが示された(有意水準5%)。
[実施例9−11]
<試験例6:モグロール添加時期による3T3−L1細胞に対する脂質蓄積への影響>
3T3−L1細胞に対して分化誘導を行い、サンプルを添加して培養した。2日ごとに培地交換とサンプルの添加を繰り返した。分化誘導から8日後までの全期間添加した場合、分化誘導から2日後(前期)まで添加した場合、分化誘導4日目から(中期)添加した場合の分化の時期に分けてサンプルを添加して細胞中のトリグリセリド量を測定した。その結果、得られたデータ(n=3)を平均±標準偏差(X±S.D.)で表わし、溶媒のみを添加したサンプル未添加を対照群の値を(100)としたときに、統計学的に有意な差(p<0.05)を求め、有意差があった場合には「○」なかった場合には「×」を示した。各サンプル添加におけるトリグリセリド量の測定結果を、表6に示す。
Figure 2016169187
表6の結果から、モグロールを使用した場合、対照群と比較して有意に脂質蓄積が抑制されること、それは脂肪細胞の分化過程の前期と中期の両方の期間において効果を発揮するということが示された(有意水準5%)。
[実施例12−15]
<試験例7:モグロールを摂食させる動物実験>
9週齢のWister系雄性ラット(日本クレアより購入)を予備飼育から実験飼育の全期間を通じ、室温23±2℃、湿度60±10%、明暗サイクル12時間の条件で飼育した。水は自由摂食とさせた。予備飼育中の餌は標準固形飼料(CE−2)を摂食させた。1週間の予備飼育後、さらに3日飼育し、16時間絶食後に2.4mgのMgL(10%のアラビアゴム溶液1.5mLに懸濁)を経口投与し、1時間後に門脈血を採取し、最大24時間まで観察した。また16時間絶食後に、ラット1匹あたり0.48mgのMgL(10%DMSO溶液100μLに溶解)を静脈内投与した。1時間後に尾静脈血を採取し、最大24時間まで観察した。これらの採集した血液は、高速液体クロマトグラフ質量分析装置(LC−MS)分析のサンプルとした。血液サンプルをLC−MS分析する際には、血漿100μLあたりに100mM酢酸緩衝液(pH5.0)を100μL、33,340U/mLのβ―グルクロニダーゼを50μL、166U/mLのスルファターゼを50μL加え、37℃で17時間インキュベートし、150μLの0.83M酢酸/メタノールを加え、30秒間攪拌した。その後、30秒間超音波破砕処理を行った後に、遠心分離(12,500G、5分)を行い、0.45μmのメンブレンフィルターでろ過したものをLC−MS分析を行った結果を表7および表8に示す。
Figure 2016169187
Figure 2016169187
表7の結果から、モグロールを実験動物に様々な方法で投与した場合の血中濃度について、0.48mgのモグロールを100μLに溶解させて注射したところ、血中濃度で1.3μMを示し、2.4mgのモグロールを1.5mLに溶解させて経口摂食させたところ、血中濃度で4.5μMを示した。
すなわちモグロールを注射によって、0.48%含有する組成物として100μL分を1回摂取することで一定の血中濃度を示し、モグロールを経口によって0.16%含有する液状組成物を1.5mL分を1回摂取することで培養細胞の有効濃度とした値と同程度の血中濃度の値に達することを示した。
直接、血中に投与したモグロールを0.48%含有する組成物で血中濃度が1.3μMであり、経口で摂取したモグロールを0.16%含有する組成物で血中濃度が4.5μMであることから、モグロールの含有量が低くても摂取する組成物の形態と量によって絶対的な摂取量が変化し、血中濃度に影響することは明らかである。一度に高濃度のモグロールを含有する組成物を必要量摂取すれば、脂質蓄積抑制効果を示すことは明らかであるが、低濃度のモグロールを含有する組成物を複数回に分けて摂取しても、一度で無理なく摂取可能な形態であれば、総摂取量に応じて効果を示すことは明らかである。
これからの結果から、経口摂取の場合であれば、1回の摂取量を1日3回に分けて摂取とすると0.05重量%以上含む組成物であっても、総摂取量は同等であることは明らかである。
以上より、発明の形態によって効果が期待できる量を摂取できるのであれば、モグロールを0.001重量%以上含有する組成物を摂取する場合であっても同様である。
表8の結果から、従来技術として知られるククルビタシンBは、1.6mg/kg以上を投与することで致死率100%(LD100と表わした)であり、猛毒に分類される程の毒性を示す。しかしながら本発明であるモグロールは、ククルビタシンB以上の投与量でかつ、いかなる投与形態においても実験動物の死亡例は確認できなかった(LDと表わした)。モグロールは従来技術と比べて毒性は認められない安全性の高い物質であり、脂質蓄積の抑制効果を有することが示された。
一般的に脂肪細胞のライフサイクルは、(1)間葉系幹細胞が前駆脂肪細胞へと決定する過程(初期)、(2)前駆脂肪細胞が脂肪細胞へと分化するために一過性の増殖をする過程(前期)、(3)脂肪細胞が成熟脂肪細胞へと分化するために肥大化する過程(中期)、(4)成熟脂肪細胞として生体機能を維持する過程(後期)、(5)機能を終えた脂肪細胞がアポトーシスを誘導する過程(終期)、の5段階に分けて考えることができる。羅漢果抽出物に含まれるモグロールには、少なくとも(2)の前期と(3)の中期において効果を示し、結果として脂肪細胞の脂質蓄積を有意に抑制することができた。(2)は脂肪細胞の分化に必要な一過性の増殖を抑制することで、脂肪細胞特異的な遺伝子発現を抑制するものであり、また(3)は、脂質蓄積のためのマーカーである重要なタンパク質の酵素活性を抑制するものである。
すなわち、モグロールには新たな脂肪の分化(形成)抑制と脂肪の蓄積(肥大化)抑制という2つの機能により、脂肪蓄積を調節することが示された。
さらに、安全性に関してもモグロールは従来技術である脂肪蓄積予防作用のあるククルビタシンBと比べて、嘔吐、腹痛などの食中毒事例が報告されていない。また、実験動物を用いた毒性と比べても、ククルビタシンBが猛毒に分類される物質であるのに対して、それ以上を投与した場合でもモグロールには、毒性は認められていない。
[処方例]
本発明における医薬品および食品の製造例について以下に示す。
<製造例2>
表9に示す配合割合で十分に混合した粉末製剤をロータリー式打錠機を用いて500mgずつ打錠成形し、モグロール含有医薬品錠剤を作製した。
Figure 2016169187
(*1錠500mg×3=モグロール270mg)

<製造例3>
表10に示す配合割合で十分に混合した製剤をカプセル充填機を用いて500mgずつ充填し、モグロール含有医薬品カプセルを作製した。
Figure 2016169187
(*1錠500mg×2=モグロール400mg)

<製造例4>
表11に示す配合割合で香料以外の原料を全て混合して、均一化(150 kg/cm2)し、香料を加えて素早く攪拌した後、殺菌充填(90℃、10分間)し、モグロール含有酸乳飲料を作製した。
Figure 2016169187
(*1本500mL(g)=モグロール50mg)

<製造例5>
表12に示す配合割合で小麦粉、卵、植物油脂、エリスリトール、乳化剤、モグロールを、牛乳を加えながら混合し、生地を作る。まとまった生地を天板に1センチメートル程の厚みに広げて成形する。180℃のオーブンで15〜30分焼きあげ、モグロール含有栄養バーを作製した。
Figure 2016169187
(*1本20g=モグロール20mg)

単離したモグロールを用いた医薬品製造例、飲食品製造例の医薬品、食品を使用した結果、良好な脂質の蓄積抑制効果がみられ、抗肥満作用を示した。
本発明は、羅漢果から抽出されるモグロールが生活習慣病の主要因である肥満の原因となる脂肪細胞の未分化状態の前駆体に対して、特に前期の時期にクロナールエクスパンションを抑制し、且つ分化中期の時期にグリセロール‐3‐リン酸脱水素酵素活性を抑制するという複合的作用によって、相乗的に且つ効果的に肥満の原因となる脂肪の形成と脂肪の蓄積という2つの因子を解決することによって達成することができる。このように複数の異なる機能により、積極的に肥満状態を改善させるため、生体内の生理活性物質の調整や運動機能の改善効果に繋がり、結果として様々な生活習慣病の予防効果が得られる。加えて、従来技術と比べてモグロールの毒性は低く、効果の期待できる容量を摂取しても安全性が高いため、日常生活において不自由なく健康的な生活を営むことができるようになり、生活の質の向上に繋がる。且つ従来の医薬品、食品では解決できなかった重篤な副作用や嗜好性の悪さを有意に低減された安全性の高い組成物が提供することが可能となり、医薬品製造、食品製造業において、利用価値が高いと考えられる。



Claims (8)

  1. モグロールを含有することを特徴とする組成物。
  2. 脂肪細胞の一過性増殖抑制作用または、脂質の蓄積抑制作用を有し、抗肥満効果を特徴とする請求項1に記載の組成物。
  3. 経口投与または静脈内投与することにより摂取されることを特徴とする、請求項1または2に記載の組成物。
  4. 上記モグロールが(24R)−ククルビタ−5−エン−3β, 11α, 24, 25−テトラオールである、請求項1〜3のいずれかに記載の組成物。
  5. 医薬であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の組成物。
  6. 食品であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の組成物。
  7. サプリメントであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の組成物。
  8. 化粧品であるとこを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の組成物。

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