JP2016167993A - コーヒー生豆の選別方法 - Google Patents
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Abstract
Description
(1)コーヒー生豆の選別方法であって、
コーヒー生豆中のトリプトファン含有量を測定する工程;および
コーヒー生豆から、トリプトファンの含有量が0.3mg/g未満であると判断されたコーヒー生豆を分離する工程;
を含む、上記方法。
(2)近赤外線法によりトリプトファンの含有量を測定する、(1)に記載の方法。
(3)コーヒー焙煎豆の選別方法であって、
コーヒー焙煎豆中の3−メチルインドールの含有量を測定する工程;および
コーヒー焙煎豆から、3−メチルインドールの含有量が0.00035mg/g未満であると判断されたコーヒー焙煎豆を分離する工程;
を含む、上記方法。
(4)近赤外線法により3−メチルインドールの含有量を測定する、(3)に記載の方法。
(5)コーヒー焙煎豆の選別方法であって、
コーヒー焙煎豆中のインドールの含有量を測定する工程;および
コーヒー焙煎豆から、インドールの含有量が0.0015mg/g未満であると判断されたコーヒー焙煎豆を分離する工程;
を含む、上記方法。
(6)近赤外線法によりインドールの含有量を測定する、(5)に記載の方法。
(7)コーヒー抽出液の選別方法であって、
コーヒー抽出液中の3−メチルインドールの含有量を測定する工程;および
コーヒー抽出液の3―メチルインドールの含有量が0.008ppm未満であると判断されたコーヒー抽出液を分離する工程;
を含む、上記方法。
(8)コーヒー抽出液の選別方法であって、
コーヒー抽出液中のメチルインドールの含有量を測定する工程;および
コーヒー抽出液のインドールの含有量が0.1ppm未満であると判断されたコーヒー抽出液を分離する工程;
を含む、上記方法。
本発明の一態様であるコーヒー生豆の選別方法は、以下の工程を含む。
コーヒー生豆から、トリプトファンの含有量が0.3mg/g未満であると判断されたコーヒー生豆を分離する工程
当該分離されたコーヒー生豆が、好ましい品質を備えるコーヒー豆である。
「トリプトファン」とはアミノ酸の一種であり、2−アミノ−3−(インドリル)プロピオン酸、Trp、Wとも記載されることがある。トリプトファンの熱による分解反応については先行文献に記載があるが、その反応は複雑で、熱反応条件により熱生成物が異なる。そこで、本発明では、焙煎をモデル化した条件下での熱反応を行い、トリプトファンは3−メチルインドール及びインドールに熱分解することが判明した。
先行文献
・Chiavari, G.; Pyrolysis-gas chromatography/mass spectrometry of amino acid. J. of Analytical and Applied Pyrolysis, 1992, 24, 123-127.
・Bryan, A. M.; Plfasson, P. G. Analysis of thermal decomposition patterns of aromatic and heteroaromatic amino asids. Analytical letters, 1969, 2(10), 505-513.
トリプトファン含有量の測定は、例えば、コーヒー生豆の抽出液を得る工程、および抽出液中のトリプトファン含有量を測定する工程により行われるが、測定方法によってはコーヒー生豆の抽出液を得る工程を省略することができる。コーヒー生豆の抽出液を得る工程は、コーヒー生豆を粉砕後、粉砕した生豆を溶媒で抽出することにより行うことができる。粉砕条件・抽出条件は、トリプトファンを抽出できる条件であれば特に限定されない。抽出溶媒は、例えば、水溶液又は有機溶媒、より具体的には緩衝液、アルコール等であり、これらは単独または2種以上を混合して用いることができる。アルコールとしては、例えば低級アルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール等)、液状多価アルコール(1,3−ブチレンアルコール、プロピレングリコール、グリセリン等)が挙げられる。好ましい溶媒の例は、メタノールやメタノール水溶液、特に70%メタノール水溶液である。
前記の分離は、直接的な分離、例えば、トリプトファンの含有量が0.3mg/g未満であると判断されたコーヒー生豆を取り出す工程であってよく、或いは、間接的な分離、例えば、トリプトファンの含有量が0.3mg/g以上であると判断されたコーヒー生豆をコーヒー生豆から排除する工程であってよい。
本発明の一態様は、上記トリプトファンの含有量の測定工程およびコーヒー生豆の分離工程に加えて、コーヒー生豆中のイソ吉草酸配糖体(3−メチルブタノイル−シュークロシドおよび/または3−メチルブタノイル−β−ゲンチオビオシド)の含有量を測定する工程、およびコーヒー生豆からイソ吉草酸配糖体の含有量が所定量であると判断されたコーヒー生豆を分離する工程をさらに備えていてもよい。イソ吉草酸配糖体含有量の測定工程およびコーヒー生豆の分離工程は、トリプトファンの含有量の測定工程およびコーヒー生豆の分離工程の前後のいずれであってもよい。
本発明の別の態様としては、3−メチルインドールの含有量を指標としたコーヒー焙煎豆の選別方法が挙げられ、本方法は以下の工程を含む。
コーヒー焙煎豆中の3−メチルインドールの含有量を測定する工程、及び
コーヒー焙煎豆から、3−メチルインドールの含有量が0.00035mg/g未満であると判断されたコーヒー焙煎豆を分離する工程
本発明のさらに別の態様としては、インドールの含有量を指標としたコーヒー焙煎豆の選別方法が挙げられ、本方法は以下の工程により行われる。
コーヒー焙煎豆中のインドールの含有量を測定する工程、および
コーヒー焙煎豆から、インドールの含有量が0.0015mg/g未満であると判断されたコーヒー焙煎豆を分離する工程
当該分離されたコーヒー焙煎豆が、好ましい品質を備えるコーヒー豆である。
コーヒー生豆の焙煎工程は、公知の一般的な方法により行うことができ特に限定されないが、例えば、L値が約22から約23になるように焙煎する。
「3−メチルインドール」(スカトールとも呼ばれる)および「インドール」は、高濃度時には不快な糞臭を有する一方で、低濃度の場合は花のような香りがあり、香水や香料に使われている。
本態様における「分離工程」は、トリプトファン含有量が所定範囲であるコーヒー生豆の分離に関して上記した方法に準じて行えばよく、それには、直接的な分離と間接的な分離が含まれる。
本発明の一態様において、上記コーヒー焙煎豆の選別方法は、さらに、コーヒー生豆中のイソ吉草酸配糖体(3−メチルブタノイル−シュークロシドおよび/または3−メチルブタノイル−β−ゲンチオビオシド)の含有量を測定する工程、およびコーヒー生豆からイソ吉草酸配糖体の含有量が所定量であると判断されたコーヒー生豆を分離する工程をさらに備えていてもよい。
本発明の別の態様としては、3−メチルインドールの含有量を指標としたコーヒー抽出液の選別方法が挙げられ、本方法は以下の工程を含む。
コーヒー抽出液の3―メチルインドールの含有量が0.008ppm未満であると判断されたコーヒー抽出液を分離する工程
本発明のさらに別の態様としては、インドールの含有量を指標としたコーヒー抽出液の選別方法が挙げられ、本方法は以下の工程により行われる。
コーヒー抽出液のインドールの含有量が0.1ppm未満であると判断されたコーヒー抽出液を分離する工程
当該分離されたコーヒー抽出液が、好ましい品質を備えるコーヒー抽出液である。
本発明においてコーヒー抽出液は、コーヒー焙煎豆の粉砕物を水で抽出して得られるものであり、公知の一般的な方法により行うことができ、焙煎方法、粉砕方法、抽出方法は特に限定されない。また、上記コーヒー生豆の選別方法やコーヒー焙煎豆の選別方法の原料として用いた選別前のコーヒー生豆・焙煎豆を用いることができるが、選別方法により選別された品質の高いコーヒー生豆・焙煎豆を用いてもよい。
本態様における「分離工程」は、トリプトファン含有量が所定範囲であるコーヒー生豆の分離に関して上記した方法に準じて行えばよく、それには、直接的な分離と間接的な分離が含まれる。
本発明の一態様において、上記コーヒー抽出液の選別方法は、さらに、コーヒー抽出液の原料であるコーヒー生豆中のイソ吉草酸配糖体(3−メチルブタノイル−シュークロシドおよび/または3−メチルブタノイル−β−ゲンチオビオシド)の含有量を測定する工程、およびコーヒー生豆からイソ吉草酸配糖体の含有量が所定量であると判断されたコーヒー生豆を分離する工程をさらに備えていてもよい。
コーヒーの香味品質の異なる豆を用いて、コーヒー液の香味スコアと生豆中の成分情報の相関解析を行うことで、コーヒー液の香味スコアにネガティブに相関するマーカーとしてトリプトファンを見出した。
グアテマラ産のコーヒー生豆36種を準備し、それぞれの一部を焙煎した後(L値22−23)、SCAA(Specialty Coffee Associate of America)のプロトコールに準じてコーヒー液の香味スコアをつけた。そして、それぞれの残りの生豆を液体窒素で凍結、ビースショッカーで粉砕し、粉砕物50mgを1.5mLの70%メタノール水溶液を用いて抽出し、得られた抽出液をLC−MSで測定した。LC−MSで検出された面積値をトータルイオン合算値で標準化し、トリプトファンの標準化された面積値とコーヒー液の香味スコアとの相関を評価した。コーヒー生豆の粉砕は、Multi-Beads Shocker(Bio Medical Science, Japan社製)を用いて、1100rpmで約7分間、2回行った。LC−MSの測定は、以下の測定機器および測定条件でN=3で行った。
装置:LC−IT−TOF (Shimadzu)
カラム:Luna C18(1.0x250 mm, 5μm), 40℃
移動相条件:0.1mL/min,
A(0.1%HCO2H/H2O),B(0.1%HCO2H/CH3CN)
0-2 min(5%B)→7.5min(55%B)→17−23min(100%B)→24min(5%B)→30min(5%B)
イオン化:ESI,positive(+4.5kV),negative(−3.5kV)
MS scan range:m/z 80−800,CDL temp.:250℃
Nebulizer gas flow:1.5L/min
Heat block temp.:250℃
<評価結果>
図1に示すように、生豆中のトリプトファンの含有量とコーヒー液の香味に相関があることが判明し、トリプトファンがコーヒー液の香味スコアにネガティブに相関するマーカーであることを見出した。
生豆中に含まれる香味前駆体は、焙煎により香味成分となり、コーヒーの香りや味をつくる。そこで、焙煎条件を模したモデル条件下、実施例1で見出されたトリプトファンの熱による化学変化を評価した。
トリプトファンの熱分解を、熱分解装置(Double-shot PY-2020D)を用いて、230℃、10分間の条件下で行った。得られた熱分解生成物を、ガスクロマトグラフィ/質量分析(GC−MS)装置を用いて検出した。熱分解生成物の識別は、NISTライブラリーによるデータベース検索、さらに検索された標準物質(インドール、3−メチルインドール)の試薬を同じ条件でGC−MS分析することにより行った。
装置:Frontier Lab製 Doble−shot Pyrolyzer(Pyolyzer)、Agilent製 7890A(GC)、5975C(MS)
熱分解条件:230℃、10分
カラム:GESTEL社製 DB−WAXetr(60m×0.32mm×0.25μm)
カラム温度:40℃(2min)−40℃/min−250℃(5min)
キャリアガス:He
トランスファーライン:250℃
イオン源温度:230℃
Scan Parameter:m/z=33〜450
スプリット比:10:1
<評価結果>
図2に示すように、トリプトファンの熱分解によりインドールおよび3−メチルインドールが生成することが確認された。この結果から、トリプトファン含有量の低いコーヒー生豆を焙煎することにより、インドールおよび3−メチルインドール含有量の低いコーヒー焙煎豆が得られることが推測される。
コーヒー豆サンプルを用いて、「生豆中のトリプトファン含有量」と「コーヒー焙煎豆中の熱分解生成物である3−メチルインドールおよびインドール含有量」の相関、および「生豆中のトリプトファン含有量」と「コーヒー液中の3−メチルインドールおよびインドール含有量」の相関を検討した。
(1)生豆中のトリプトファン含有量の測定
コーヒー果実の色により未熟から完熟までの4段階の成熟度[G(Green(緑色))、P(Pink(ピンク色))、R(Red(赤色))、DR(DarkRed(暗赤色))]に分類して用意した、4種のコーヒー生豆を評価に用いた。用いたコーヒー豆の品種は、RedCatuai(2010年収穫)であった。これらのコーヒー生豆(50mg)を凍結粉砕し、70%メタノール水溶液(1.5ml)を用いて80℃で抽出して試験サンプルを調製した。この試験サンプルの分析により、コーヒー豆中のトリプトファンの含有量を求めることができる。各試験サンプル中に含まれるトリプトファン含有量を液体クロマトグラフ/質量分析計(LC−MS)を用いて測定した。コーヒー生豆の粉砕は、Multi-Beads Shocker(Bio Medical Science, Japan社製)を用いて、1100rpmで約7分間、2回行った。LC−MSの測定は、以下の測定機器および測定条件により行った。
カラム:KINETEX C18(2.1x250mm,1.7μm),40℃
移動相条件:0.2 mL/min,A(0.1% HCO2H/H2O),B(0.1%HCO2H/CH3CN)
0−2min(5%B)→7.5min(55%B)→17−23min(100%B)→24−32min(5%B)
MS scan range:m/z80−1200
イオン化:ESI,positive(3.5kV),negative(−3.5kV)
Capillary voltage:49V
(2)焙煎豆中の3−メチルインドールおよびインドール含有量の測定
(1)の実験で用いた同じロットの生豆を焙煎して得られたコーヒー焙煎豆(4g)を粉砕し、ペンタン−エーテル(1:2)10mlを用いて22−24℃で抽出(終夜)して試験サンプルを調製した。この試験サンプルの分析により、コーヒー豆中の各成分の含有量を求めることができる。各試験サンプル中に含まれる3−メチルインドールおよびインドール含有量をGC−MSを用いて測定した。焙煎後のL値は22〜23であった。コーヒー焙煎豆の粉砕は、Coffee Cutter BM570(BONMAC製)を用いた。
装置:Agilent製 7890A(GC)、5975C(MS)
カラム:GESTEL社製 DB−WAXetr(60m×0.32mm×0.25μm)
カラム温度:40℃(2min)−40℃/min−250℃(5min)
キャリアガス:He
トランスファーライン:250℃
イオン源温度:230℃
Scan Parameter:m/z=33〜450
スプリット:なし
(3)コーヒー液中の3−メチルインドールおよびインドール含有量の測定
(2)の実験で用いた同じロットのコーヒー焙煎豆10gを、97℃の水100mlで抽出しコーヒー液を得た。この試験サンプルの分析により、飲用に供されるコーヒー抽出液中の各成分の含有量を求めることができる。各試験サンプル中に含まれる3−メチルインドールおよびインドール含有量をGC−MSを用いて測定した。焙煎後のL値は22〜23であった。コーヒー焙煎豆の粉砕は、コーヒーグラインダーKG364J(Coffee Cutter BM570(BONMAC製)を用いた。
装置:Agilent製 7890A(GC)、5975C(MS)、Gester製 MultiPurpose Sampler(auto−sampler)
吸着樹脂:TENAX
インキュベーション温度:80℃
窒素ガスパージ量:3L
窒素ガスパージ流量:100mL/min
カラム:GESTEL社製 DB−WAXetr(60m*0.32mm*0.25μm)
カラム温度:40℃(2min)−40℃/min−250℃(5min)
キャリアガス:He
トランスファーライン:250℃
イオン源温度:230℃
Scan Parameter:m/z=33〜450
スプリット:なし
<評価結果>
図3に示すように、「生豆中のトリプトファン含有量」と「コーヒー焙煎豆中の3−メチルインドール含有量」(図3左上)、「生豆中のトリプトファン含有量」と「コーヒー焙煎豆中のインドール含有量」(図3右上)、「生豆中のトリプトファン含有量」と「コーヒー液中の3−メチルインドール含有量」(図3左下)、および「生豆中のトリプトファン含有量」と「コーヒー液中のインドール含有量」(図3右下)に高い相関性があることが判明した。
3−メチルインドールおよびインドールのコーヒー豆の品質への影響を評価するため、所定量の3−メチルインドールおよびインドール量をコーヒー液に添加し、各液の品質を官能評価で評価した。
グアテマラ産の中程度の品質の焙煎粉砕豆30gを300mLの水(97℃)で抽出したコントロールのコーヒー液に、10ppbの3−メチルインドール(Sigma-Aldrich社製、食品添加用)、100ppbのインドール(Sigma-Aldrich社製、食品添加用社製)をそれぞれ添加して試験サンプルを調製した。6名の経験豊富な専門パネラーにより、以下の評価基準で各サンプルの香味スコア(クリーンさ:コーヒーの香味評価で重要な因子のひとつ)を5点満点で評価した。
4点:基準よりややクリーンである
3点:基準点
2点:基準よりクリーンさに欠ける(不快な臭・味をやや強く感じる)
1点:基準よりクリーンさが非常に欠ける(不快な臭・味を強く感じる)
<評価結果>
図4に示すように、3−メチルインドールおよびインドールを添加したサンプルは、香味スコアがコントロールと比較して顕著に低いことが判明した。特に、3−メチルインドールおよびインドールの添加により、漢方様の臭い、薬品臭、カビ臭が付与されることが判明した。つまり、焙煎豆中の3−メチルインドールおよびインドール含有量が多いほどコーヒー液の香味にネガティブに機能することが確認された。
コーヒー液の品質を決める因子に、品種、成熟度、栽培条件、精選条件などが挙げられる。なかでも、成熟度はコーヒー品質に大きく影響する。そこで、コーヒー生豆中に含まれるトリプトファン含有量と生豆の成熟度との関係を調べるため、成熟度の異なる生豆から抽出した抽出液を用いて、トリプトファン含有量を測定した。
コーヒー果実の色により未熟から完熟までの4段階の成熟度[G(Green(緑色))、P(Pink(ピンク色))、R(Red(赤色))、DR(DarkRed(暗赤色))]に分類して用意した、4種のコーヒー生豆を評価に用いた。用いたコーヒー豆の品種は、RedCatuai(2010年収穫)であった。これらのコーヒー生豆(50mg)を凍結粉砕し、70%メタノール水溶液(1.5ml)を用いて80℃で抽出して試験サンプルを調製した。各試験サンプル中に含まれるトリプトファン含有量を液体クロマトグラフ/質量分析計(LC−MS)を用いて測定した。コーヒー生豆の粉砕は、Multi-Beads Shocker(Bio Medical Science, Japan社製)を用いて、1100rpmで約7分間、2回行った。LC−MSの測定は、以下の測定機器および測定条件により行った。
カラム:KINETEX C18(2.1x250mm,1.7μm),40℃
移動相条件:0.2mL/min,A(0.1%HCO2H/H2O),B(0.1%HCO2H/CH3CN)
0−2min(5%B)→7.5min(55%B)→17−23min(100%B)→24−32min(5%B)
MS scan range:m/z80−1200
イオン化:ESI,positive(3.5kV),negative(−3.5kV)
Capillary voltage:49V
<評価結果>
各成熟度の生豆中のトリプトファンの含有量を図5に示す。コーヒー生豆がG(緑色)からDR(暗赤色)まで成熟するにつれて、トリプトファン含有量が低減することが判明した。したがって、一般的にコーヒー果実の成熟度が高いほど品質の高いコーヒー液が得られるため、トリプトファン含有量の低いコーヒー生豆を選別して用いることにより品質の高いコーヒーを製造することが可能になることが明らかとなった。
コーヒー焙煎豆中に含まれる3−メチルインドールおよびインドール含有量と生豆の成熟度との関係を調べるため、成熟度の異なる生豆を焙煎して得られる焙煎豆から抽出した抽出液を用いて、3−メチルインドールおよびインドール含有量を測定した。
コーヒー果実の色により成熟度を分類して用意した、G(緑色)、P(ピンク色)、R(赤色)、DR(暗赤色)の4種のコーヒー生豆を焙煎し評価に用いた。用いたコーヒー豆の品種は、RedCatuai(2010年収穫)であった。得られたコーヒー焙煎豆(4g)を粉砕し、ペンタン−エーテル(1:2)10mlを用いて22−24℃で抽出(終夜)して試験サンプルを調製した。この試験サンプルの分析により、コーヒー豆中の各成分の含有量を求めることができる。各試験サンプル中に含まれる3−メチルインドールおよびインドール含有量をGC−MSを用いて測定した。焙煎後のL値は22〜23であった。コーヒー焙煎豆の粉砕は、Coffee Cutter BM570(BONMAC製)を用いた。
装置:Agilent製 7890A(GC)、5975C(MS)
カラム:GESTEL社製 DB−WAXetr(60m×0.32mm×0.25μm)
カラム温度:40℃(2min)−40℃/min−250℃(5min)
キャリアガス:He
トランスファーライン:250℃
イオン源温度:230℃
Scan Parameter:m/z=33〜450
スプリット:なし
<評価結果>
各成熟度の生豆からつくられた焙煎豆中の3−メチルインドールおよびインドールの含有量を図6に示す。コーヒー生豆がG(緑色)からDR(暗赤色)まで成熟するにつれて、焙煎豆中の3−メチルインドールおよびインドール含有量が低減することが判明した。したがって、一般的にコーヒー果実の成熟度が高いほど品質の高いコーヒー液が得られるため、3−メチルインドールおよびインドール含有量の低いコーヒー焙煎豆を選別して用いることにより、品質の高いコーヒー豆を製造することが可能になることが明らかとなった。
コーヒー液中に含まれる3−メチルインドールおよびインドール含有量と生豆の成熟度との関係を調べるため、成熟度の異なる生豆を焙煎して得られる焙煎豆から水で抽出したコーヒー液を用いて、3−メチルインドールおよびインドール含有量を測定した。
コーヒー果実の色により成熟度を分類して用意した、G(緑色)、P(ピンク色)、R(赤色)、DR(暗赤色)の4種のコーヒー生豆を焙煎し評価に用いた。用いたコーヒー豆の品種は、RedCatuai(2010年収穫)であった。得られたコーヒー焙煎豆10gを、97℃の水100mlで抽出しコーヒー液を得た。この試験サンプルの分析により、飲用に供されるコーヒー抽出液中の各成分の含有量を求めることができる。各試験サンプル中に含まれる3−メチルインドールおよびインドール含有量をGC−MSを用いて測定した。焙煎後のL値は22〜23であった。コーヒー焙煎豆の粉砕は、コーヒーグラインダーKG364J(Coffee Cutter BM570(BONMAC製)を用いた。
装置:Agilent製 7890A(GC)、5975C(MS)、Gester製 MultiPurpose Sampler(auto−sampler)
吸着樹脂:TENAX
インキュベーション温度:80℃
窒素ガスパージ量:3L
窒素ガスパージ流量:100mL/min
カラム:GESTEL社製 DB−WAXetr(60m*0.32mm*0.25μm)
カラム温度:40℃(2min)−40℃/min−250℃(5min)
キャリアガス:He
トランスファーライン:250℃
イオン源温度:230℃
Scan Parameter:m/z=33〜450
スプリット:なし
<評価結果>
各成熟度の生豆からつくられたコーヒー液中の3−メチルインドールおよびインドールの含有量を図7に示す。コーヒー生豆がG(緑色)からDR(暗赤色)まで成熟するにつれて、コーヒー液中の3−メチルインドールおよびインドール含有量が低減することが判明した。すなわち、飲用に供されるコーヒー液中の3−メチルインドールおよびインドール含有量と、コーヒー豆の成熟度にも相関関係があった。
実施例5において、成熟度と生豆中のトリプトファン含有量との関係を見出した(図5)。また、実施例6において、成熟度と焙煎豆中の3−メチルインドール及びインドールの含有量との関係を見出し(図6)、実施例7において、成熟度とコーヒー液中の3−メチルインドール及びインドールの含有量との関係を見出した(図7)。
<評価方法>
実施例5で使用したG(緑色)、P(ピンク色)、R(赤色)、DR(暗赤色)の4段階の成熟度の果実の生豆から得られた焙煎豆を、実施例6と同様にして粉砕し、得られた粉砕豆10gを97℃の水(150ml)で抽出して試験サンプルを調製した。焙煎後のL値は22〜23であった。各試験サンプルを、実施例6と同様の官能評価に付した。
コーヒーの香味品質の異なる豆を用いて、香味スコアと生豆中の成分情報の相関解析を行うことで、コーヒー液の香味スコアにポジティブに相関するマーカーとして3−メチルブタノイル−シュークロシドおよび3−メチルブタノイル−β−ゲンチオビオシドを見出している(PCT/JP2004/076522)。コーヒー液の香味スコアにネガティブに相関するトリプトファンの含有量とポジティブに相関するマーカーである3−メチルブタノイル−シュークロシドの含有量および3−メチルブタノイル−β−ゲンチオビオシドの含有量を組み合わせることで、生豆からコーヒー液の香味スコアをより精度高く予測し、生豆の選別の精度を向上できるかを検討した。
生豆中の3−メチルブタノイル−シュークロシドおよび3−メチルブタノイル−β−ゲンチオビオシドの測定は実施例1に従って行った。すなわち、グアテマラ産のコーヒー生豆36種を準備し、それぞれの一部を焙煎した後(L値22−23)、SCAA(Specialty Coffee Associate of America)のプロトコールに準じてコーヒー液の香味スコアをつけた。そして、それぞれの残りの生豆を液体窒素で凍結、ビースショッカーで粉砕し、粉砕物50mgを1.5mLの70%メタノール水溶液を用いて抽出し、得られた抽出液をLC−MSで測定した。LC−MSで検出された面積値をトータルイオン合算値で標準化し、トリプトファンの標準化された面積値とコーヒー液の香味スコアとの相関を評価した。コーヒー生豆の粉砕は、Multi-Beads Shocker(Bio Medical Science, Japan社製)を用いて、1100rpmで約7分間、2回行った。LC−MSの測定は、以下の測定機器および測定条件でN=3で行った。
装置:LC−IT−TOF(Shimadzu)
カラム:Luna C18(1.0x250mm,5μm),40℃
移動相条件:0.1mL/min,
A(0.1%HCO2H/H2O),B(0.1%HCO2H/CH3CN)
0-2min(5%B)→7.5min(55%B)→17−23min(100%B)→24min(5%B)→30min(5%B)
イオン化:ESI,positive(+4.5kV),negative(−3.5kV)
MS scan range:m/z 80−800,CDL temp.:250℃
Nebulizer gas flow:1.5L/min
Heat block temp.:250℃
さらに、実施例1で得られたトリプトファンのLC−MSの面積値(トータルイオン合算値で標準化された値)と本実施例で得られた3−メチルブタノイル−シュークロシドおよび3−メチルブタノイル−β−ゲンチオビオシドの面積値(トータルイオン合算値で標準化された値)を用いて回帰分析を行い香味スコアとの相関性を調べた。
図9に示すように、生豆中の3−メチルブタノイル−シュークロシドおよび3−メチルブタノイル−β−ゲンチオビオシドの含有量とコーヒー液の香味に相関があることが判明した(図9の内の、左の2つの図)。図1に示した、ネガティブに相関するマーカーであるトリプトファン含有量の測定と、ポジティブに相関するマーカーであるイソ吉草酸配糖体2種の含有量の測定値とを組み合わせることで、より精度高く、焙煎・抽出後の香味スコア(香味品質)を予測することができることが明らかになった(図9の最も右側の図)。実際、マーカーを3成分としたときの相関関係は0.75という高い値となった。すなわち、マーカー3成分を組み合わせた基準を用いることで、より精度よく生豆を選別することが可能である。
Claims (8)
- コーヒー生豆の選別方法であって、
コーヒー生豆中のトリプトファン含有量を測定する工程;および
コーヒー生豆から、トリプトファンの含有量が0.3mg/g未満であると判断されたコーヒー生豆を分離する工程;
を含む、上記方法。 - 近赤外線法によりトリプトファンの含有量を測定する、請求項1に記載の方法。
- コーヒー焙煎豆の選別方法であって、
コーヒー焙煎豆中の3−メチルインドールの含有量を測定する工程;および
コーヒー焙煎豆から、3−メチルインドールの含有量が0.00035mg/g未満であると判断されたコーヒー焙煎豆を分離する工程;
を含む、上記方法。 - 近赤外線法により3−メチルインドールの含有量を測定する、請求項3に記載の方法。
- コーヒー焙煎豆の選別方法であって、
コーヒー焙煎豆中のインドールの含有量を測定する工程;および
コーヒー焙煎豆から、インドールの含有量が0.0015mg/g未満であると判断されたコーヒー焙煎豆を分離する工程;
を含む、上記方法。 - 近赤外線法によりインドールの含有量を測定する、請求項5に記載の方法。
- コーヒー抽出液の選別方法であって、
コーヒー抽出液中の3−メチルインドールの含有量を測定する工程;および
コーヒー抽出液の3―メチルインドールの含有量が0.008ppm未満であると判断されたコーヒー抽出液を分離する工程;
を含む、上記方法。 - コーヒー抽出液の選別方法であって、
コーヒー抽出液中のメチルインドールの含有量を測定する工程;および
コーヒー抽出液のインドールの含有量が0.1ppm未満であると判断されたコーヒー抽出液を分離する工程;
を含む、上記方法。
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WO2023243608A1 (ja) * | 2022-06-15 | 2023-12-21 | アサヒグループホールディングス株式会社 | コーヒー焙煎豆中の不快臭成分の低減方法 |
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- 2015-03-11 JP JP2015048898A patent/JP2016167993A/ja active Pending
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