JP2016167051A - 静電櫛歯アクチュエータ、及びこれを用いた可変形状ミラー - Google Patents
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Abstract
【課題】櫛歯電極を含むアクチュエータやそれを用いる可変形状ミラーにおいて、可動量を大きくするために駆動電圧を大きくするときにもプルインが起こらない構造を提供する。
【解決手段】静電櫛歯アクチュエータ101は、支持部材105から延出する固定櫛歯電極108と、可動部材103と支持部材とを繋ぐ弾性部材104と、可動部材から固定櫛歯電極と略平行に延出しこれと間隙を隔てて噛み合う可動櫛歯電極106を有する。内側に位置する可動櫛歯電極と固定櫛歯電極とのギャップ(A)は最外の可動櫛歯電極と対向する支持部材とのギャップ(B)より小さく、最外の可動櫛歯電極の幅wや厚さtなどを用いて表される所定の関係式が満たされる。
【選択図】図1
【解決手段】静電櫛歯アクチュエータ101は、支持部材105から延出する固定櫛歯電極108と、可動部材103と支持部材とを繋ぐ弾性部材104と、可動部材から固定櫛歯電極と略平行に延出しこれと間隙を隔てて噛み合う可動櫛歯電極106を有する。内側に位置する可動櫛歯電極と固定櫛歯電極とのギャップ(A)は最外の可動櫛歯電極と対向する支持部材とのギャップ(B)より小さく、最外の可動櫛歯電極の幅wや厚さtなどを用いて表される所定の関係式が満たされる。
【選択図】図1
Description
本発明は、静電櫛歯アクチュエータ、該アクチュエータを用いた可変形状ミラー、該ミラーを用いた補償光学システムなどの装置に関するものである。
静電引力によって変位させるタイプの可動ミラーないし可変形状ミラーは、光を利用した様々な分野への応用が期待されている。例えば、眼底検査装置、天体望遠鏡などの補償光学用波面補正デバイスとして利用することができる。このように静電引力で反射面を変位させる可動ミラーの典型例として、2枚の平行平板電極を使って可動にする手法が挙げられるが、この平行平板型の欠点として可動量が小さいことが挙げられる。それに対して、より大きな可動量を得ることが出来る櫛歯電極を用いた可変形状ミラーが近年提案されている。その一例が特許文献1に開示されている。図6に示すように、この可変形状ミラー500では、可動側の櫛歯電極520を支持する支持部530と、固定側の櫛歯電極510を支持している支持部570が、紙面上ではそれぞれ垂直方向上下に位置している。可動櫛歯電極と固定櫛歯電極は、互いに対向し、かつ間隔を隔てて交互になるように配置されている。これにより、上記平行平板型よりも大きな電極重なり面積が生じるので、櫛歯電極間で発生する静電引力が大きくなり、可動量を大きくすることが出来る。
しかしながら、特許文献1に開示されている構造では、最外の櫛歯電極は、内側に隣接する櫛歯電極と外壁580に対向し、両者に対して異なるギャップで配置されている。したがって、可動量を大きくするために駆動電圧を高くすると、最外の櫛歯電極に作用する静電引力が左右(内側への方向と外側への方向)で対称でない。そのために、内側に隣接する櫛歯電極側に働く静電力が前記外壁側に働く静電力に比べて過大となって、最外の櫛歯電極が前記内側に隣接する櫛歯電極に衝突するプルイン(引き込み)という現象が起きることがある。よって、この構造では、より大きな可動量を得ることが容易ではない。
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものである。その目的は、櫛歯電極を含むアクチュエータやそれを用いる可変形状ミラーなどにおいて、可動量を大きくするために駆動電圧を大きくする場合にもプルインが起こり難い構造を提供することである。
本発明の静電櫛歯アクチュエータは以下の構成を有する。即ち、静電櫛歯アクチュエータは、支持部材と、前記支持部材に支持され、前記支持部材から延出する複数の固定櫛歯電極と、可動部材と、前記可動部材と前記支持部材とを繋ぐ弾性部材と、前記可動部材に設けられ、前記可動部材から前記固定櫛歯電極と略平行に延出し、かつ前記固定櫛歯電極と間隙を隔てて噛み合う複数の可動櫛歯電極と、を有し、前記可動部材の前記可動櫛歯電極が設けられた面と前記支持部材の前記固定櫛歯電極が設けられた面が、前記可動部材の可動方向と略平行に配置されている。そして、内側に位置する前記可動櫛歯電極と前記固定櫛歯電極とのギャップ(A)を、最外の前記可動櫛歯電極と対向する前記支持部材とのギャップ(B)より小さくし、前記最外の可動櫛歯電極の幅(Z方向(図1(a))紙面垂直方向の長さ):w、前記最外の可動櫛歯電極の厚さ(X方向の長さ):t、前記最外の可動櫛歯電極の長さ(Y方向の長さ):l、前記最外の可動櫛歯電極のヤング率:E、誘電率ε0、前記ギャップ(A):g1、前記ギャップ(B):g2、当該アクチュエータの駆動電圧:Vとするとき、次の関係式(1)が満たされる。
また、本発明の可変形状ミラーは、前記静電櫛歯アクチュエータと、一方の面が反射面であるミラー部材と、を有し、アクチュエータの可動部材は、ミラー部材の反射面とは反対側の面に接続されている。
本発明によれば、上記の如き櫛歯電極構造の静電櫛歯アクチュエータにおいて、高い駆動電圧で駆動したときにおいてもプルインの発生を抑制することができる技術を提供できる。
以下の実施形態では、少なくとも前記関係式(1)を満たすように最外の可動櫛歯電極を設計する。前記関係式(1)を満たす構造は、種々あり得る。例えば、最外の櫛歯電極の長さlを短くする、最外の櫛歯電極の厚さtを大きくする、最外の櫛歯電極のEを大きくする、など。しかし、他の条件(充分な駆動力を得るためや製造し易くするために、内側に位置する可動櫛歯電極、V、g1、g2などが満たすべき条件)もあるので、関係式(1)で規定される構造は限られることになる。例えば、製造し易くするために、内側に位置する可動櫛歯電極と固定櫛歯電極とのギャップ(A)を最外の可動櫛歯電極と対向する支持部材とのギャップ(B)より小さくし、他の部分を従来と同様に設計する。こうすると、最外の可動櫛歯電極は内側の櫛歯電極より剛性が高くなることが多い。ギャップ(A)をギャップ(B)より小さくすると、櫛歯電極から支持部材を経て弾性部材に至る構造の周辺を精確かつ確実に作製できる効果もある。
以下、より具体的な構造の実施形態を説明するが、勿論、本発明はこれらに限られるものではない。発明の要旨を逸脱しない範囲内において、様々に変形や変更が施されても良い。
(実施形態1)
図1、図2−1、図2−2、図3を参照して、本発明に係る実施形態1の静電櫛歯アクチュエータを備える可変形状ミラー100について説明する。図1は本実施形態の可変形状ミラー100の上面図である。図2−1と図2−2は作製方法の断面図である。図3は2つの異なる状態における本実施形態の可変形状ミラー100の静電櫛歯アクチュエータの櫛歯構造の電極対のA1−A2断面図である。
図1、図2−1、図2−2、図3を参照して、本発明に係る実施形態1の静電櫛歯アクチュエータを備える可変形状ミラー100について説明する。図1は本実施形態の可変形状ミラー100の上面図である。図2−1と図2−2は作製方法の断面図である。図3は2つの異なる状態における本実施形態の可変形状ミラー100の静電櫛歯アクチュエータの櫛歯構造の電極対のA1−A2断面図である。
アクチュエータ101は第一の基板102を加工して形成される。可動部材103は2本以上の弾性体(弾性部材)104により支持部材105に支持される。ここでは、板バネ形態の弾性体104が、断面形状が正方形などの回転対称形状の可動部材103の周りに等角度間隔(ここでは180°間隔)で設けられている。これにより、可動部材103の図1紙面に垂直な方向の上下移動が安定的に確保される。
複数の可動櫛歯電極106は、それぞれ、可動部材103から第一の基板102の面に平行な方向に延出する。弾性体104の外端が結合した支持部材105の部分に対して絶縁部107を介して絶縁された支持部材105の部分に固定された複数の固定櫛歯電極108は、支持部材105の上面に平行な方向に延出する。可動櫛歯電極106と固定櫛歯電極108は互いに向き合うように配置され、かつそれぞれの櫛歯が間隔を置いて交互に並ぶように配置されて、アクチュエータの櫛歯電極対を構成している。以上の如く、アクチュエータは、支持部材から延出する複数の固定櫛歯電極と、可動部材と支持部材とを繋ぐ弾性部材と、可動部材から固定櫛歯電極と略平行に延出し、かつ固定櫛歯電極と間隙を隔てて噛み合う複数の可動櫛歯電極と、を有する。そして、可動部材の可動櫛歯電極が設けられた面と支持部材の固定櫛歯電極が設けられた面が、可動部材の可動方向と略平行に配置されている。また、図1の電気配線で示すように、固定櫛歯電極108と最外の可動櫛歯電極に対向する支持部材105とを電気的に同電位とする構造となっている。
また、可動部材103は金バンプ126により、反射部材(ミラー部材)109と接合されており、可動部材103が移動するときにミラー100が変形する。
次に可変形状ミラーの作製方法について、説明する。初めに、図2−1(a)に示すように、第一の基板102を用意する(S101)。第一の基板102は、ハンドル層(Si)110、ボックス層(SiO2)111、活性層(Si)112で構成されたSOI基板である。
次に、図2−1(b)に示すように、第一の基板102の両面に絶縁層113のパターンを形成する(S102)。熱酸化による酸化シリコン(SiO2)を絶縁層113として形成した後に、レジストパターン(不図示)を形成する。該レジストパターンをマスクにして、絶縁層113をエッチングして絶縁層パターン113a、113bを形成する工程である。
次に、図2−1(c)に示すように、貫通電極114を形成する(S103)。第一の基板102の裏面にレジストパターン(不図示)を形成する。該レジストパターンをマスクにして、活性層(Si)112及びボックス層(SiO2)111をエッチングし、貫通孔を形成する。さらに、電極材料となるチタン(Ti)及び金(Au)を積層成膜した後、レジストパターン(不図示)を形成する。該レジストパターンをマスクにして、金(Au)及びチタン(Ti)をエッチングする。こうして貫通電極114を形成する。貫通電極114は、ハンドル層と活性層を導通するコンタクトホール(電極)である。
次に、図2−1(d)に示すように、バンプ接合用のパッド115を形成する(S104)。第一の基板102の表面に、パッド材料となるチタン(Ti)及び金(Au)を積層成膜した後、レジストパターン(不図示)を形成する。該レジストパターンをマスクにして、金(Au)及びチタン(Ti)をエッチングする。
次に、図2−1(e)に示すように、櫛歯形状を形成するときのマスクを形成する(S105)。第一の基板102の表面にレジストパターン116を形成し、第一の基板102表面の絶縁層113bをエッチングする。
次に、図2−1(f)に示すように、第一の基板102表面から、櫛歯電極領域123(可動櫛歯電極106と固定櫛歯電極108を含む領域)、及び弾性体開口領域122(弾性体104上の開口を含む領域)を形成する(S106)。S105で形成したレジストパターン116、及び絶縁層113bをマスクにして、ハンドル層110(Si)をエッチングする工程である。ハンドル層(Si)110をエッチングして、所望の櫛歯形状を形成するためには、断面垂直性の高いエッチングが可能なICP−RIE(:Inductive Coupled Plasma−Reactive Ion Etching)などを用いる。このとき、マスク開口面積の小さい櫛歯電極領域123と、マスク開口部面積の大きい弾性体開口領域122を同時にエッチングする。そして、固定領域である支持部材105、可動領域である最外の可動櫛歯電極106、及び可動部材103を分断する。こうした製造ステップを比較的容易かつ確実に行えるように、最外の可動櫛歯電極106と支持部材(外壁)間のギャップ(B)125を中央の櫛歯電極間ギャップ(A)124より広くする(図1を参照)。
次に、図2−1(g)に示すように、櫛歯の段差を形成する(S107)。固定櫛歯電極108の段差を形成するために、裏面の絶縁層(SiO2)113aをマスクにして、活性層(Si)112をエッチングする。さらに、活性層112をマスクにボックス層(SiO2)111をエッチングする。さらに、固定櫛歯電極108のシリコン(Si)を、エッチングする。また、可動櫛歯電極106側の段差を形成するために、表面のレジストパターン116と裏面のレジストパターン(不図示)を剥離した後に、表面の絶縁層(SiO2)113bをマスクに、可動櫛歯電極106のシリコン(Si)をエッチングする。
次に、図2−2(h)に示すように、ボックス層(SiO2)111をエッチングして、可動櫛歯電極106及び固定櫛歯電極108をリリースする(S108)。ボックス層(SiO2)111のエッチングは、0.5%フッ化水素酸(HF)によって、ボックス層(SiO2)111を選択的にウェットエッチングする。
次に、図2−2(i)に示すように、S108までで形成した第一の基板102と第二の基板117を接合する(S108)。第二の基板117は、ハンドル層(Si)118、ボックス層(SiO2)119、活性層(Si)120で構成されたSOI基板である。ここでは、第二の基板117のハンドル層118の表面に、熱酸化による酸化シリコンの絶縁層(不図示)を形成する。次に、レジストパターン(不図示)を形成し、ウェットエッチングすることにより、ハンドル層(Si)118の表面に絶縁層のパターニング(不図示)を形成する。また、第二の基板117の活性層120表面に、後述の金(Au)バンプを形成するパッド部121を形成する。そのために、チタン(Ti)及び金(Au)を積層・成膜した後、レジストパターン(不図示)を形成する。該レジストパターンをマスクにして、金(Au)及びチタン(Ti)をエッチングする。さらに、前記パッド部121上に、金(Au)バンプ126を形成する。そして次に、第一の基板102のパッド部115と第二の基板117の金(Au)バンプ126の正確な位置合わせを行い、バンプ接合する。接合する方法は、シリコン−シリコン(Si−Si)、酸化シリコン−酸化シリコン(SiO2−SiO2)、及びシリコン−酸化シリコン(Si−SiO2)などのフュージョン接合や接着剤などによる接合でも可能である。
次に、図2−2(i)〜(j)に示すように、第二の基板117のハンドル層(Si層)118とボックス層(SiO2)119を選択的にエッチングする(S110)。ハンドル層(Si)118を選択的にエッチングするためには、水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液(TMAH)や、水酸化カリウム(KOH)などの薬液であれば可能である。露出したボックス層(SiO2)119を選択的にウェットエッチングする。この工程により、活性層(Si)120が露出され、活性層(Si)120が反射部材となり、可変形状ミラー100が形成される。ここで、アクチュエータの可動部材103は、ミラー部材109の反射面とは反対側の面に接続されている。
図3を参照して、アクチュエータ101及び可変形状ミラー100の動作について説明する。可動櫛歯電極106と固定櫛歯電極108との間には、支持部材105の上面に垂直な方向の段差がある。即ち、可動及び固定の櫛歯電極同士は、支持部材105上面に垂直な方向において、重なり合わない部分を持つ。これは、本実施形態が、櫛歯電極同士が静電引力で引かれるときに、重なり合う方向に力が働き、変位する現象を利用した方式(可変重なり型)を採用するためである。この現象において櫛歯電極同士が全て重なりあった場合、それ以上変位しなくなるので、初期位置では、重なり合う部分を少なくし、電圧を印加したときに重なり合う部分を増大させることが必要ないし好適である。
図1で示すように、絶縁部107により可動櫛歯電極106と固定櫛歯電極108は電気的に分離されている。よって、可動櫛歯電極106と固定櫛歯電極108との間に電圧をかけることにより、両電極106、108の間隔が保たれたまま、可動部材103が支持部材105上面に垂直な方向に変位する。可動櫛歯電極106と固定櫛歯電極108に電位差を与えたときに働くZ方向の静電引力Fzは、以下の関係式2で表わされる。
Fz=[(ε0・N・S)/(2g)]・(Vm−Vf)2 (関係式2)
ここで、ε0:真空の誘電率、N:櫛歯電極間ギャップの数、S:可動櫛歯電極と固定櫛歯電極のオーバーラップ面積(静電力が発生する電極面積)、Vm:可動櫛歯電極の電位、Vf:固定櫛歯電極の電位、g:櫛歯電極間ギャップ幅である。
Fz=[(ε0・N・S)/(2g)]・(Vm−Vf)2 (関係式2)
ここで、ε0:真空の誘電率、N:櫛歯電極間ギャップの数、S:可動櫛歯電極と固定櫛歯電極のオーバーラップ面積(静電力が発生する電極面積)、Vm:可動櫛歯電極の電位、Vf:固定櫛歯電極の電位、g:櫛歯電極間ギャップ幅である。
まず、図3(a)に示した電圧印加直後の状態のように、可動櫛歯電極106と固定櫛歯電極108に電位差を与えることにより静電引力が発生し、櫛歯電極同士が互いに引き合う。これにより可動櫛歯電極106と固定櫛歯電極108とが引き付け合うが、櫛歯が対面する方向に関しては左右ほぼ均等に静電引力を受けるので、反射部材109に垂直なZ方向に変位することになる。
続いて、図3(b)に示すような釣り合い状態となる。即ち、弾性体104の復元力と可動部材103を変位させた静電引力とが釣り合う位置で、可動櫛歯電極106が停止する。そして可動櫛歯電極106と固定櫛歯電極108との電位差を0Vにすると、弾性体104の復元力により、可動櫛歯電極106は初期位置にまで戻る。
このような静電櫛歯アクチュエータを駆動させるとき、従来の静電櫛歯アクチュエータでは、発生力を増やすために、可動櫛歯電極106及び固定櫛歯電極108の厚さを薄く形成し櫛歯電極部を高密度化する。そうした場合、可動櫛歯電極106及び固定櫛歯電極108の厚さ方向(X方向)における剛性が低下する。さらに、作製方法のステップ(S106)で述べた様に、マスク開口面積の小さい櫛歯電極領域123とマスク開口面積の大きい弾性体開口領域122を同時にドライエッチングするとき、次の如き必要がある。即ち、ローディング効果によるパターン異常を抑制し、支持部材(固定領域)と最外の可動櫛歯電極(可動領域)を分断するために、最外の可動櫛歯電極と支持部材(外壁)間のギャップ(B)を中央の櫛歯電極間ギャップ(A)より広くする必要がある。これにより、最外の可動櫛歯電極106について、電極間ギャップ及び左右方向に発生する静電力が異なるため、駆動電圧Vが大きいほど、最外の可動櫛歯電極106が変形し、最終的には内側の固定櫛歯電極108に接触するプルインという現象が生じ易くなる。
上記ローディング効果について説明すると、弾性体開口部122とギャップ(A)とギャップ(B)が同じ開口面積であれば、エッチングレートが均一になってローディング効果が抑制される。しかしながら、上述した様に、発生力を大きくするためにギャップ(A)を狭くする必要があって、ギャップ(A)=ギャップ(B)とすると、弾性体開口部122の開口が大きいため、ここでのエッチングレートが速くなり、パターン異常が発生し易くなる。そのために本実施形態の如くAをBより小さくすれば、エッチングレートの勾配を小さくすることができるため、パターン異常を抑制することが出来る。
以上の事情に鑑みて、本実施形態では、上記プルイン現象が生じ易くなる点を解消するために、発生する静電力とプルインする電極間ギャップの関係から求めた関係式(1)を満たすように、最外の可動櫛歯電極106の剛性を内側の櫛歯電極より高くする。このことで、大きい駆動電圧でもプルインすることなく、安定した駆動を実現することができる。
次に関係式(1)の算出方法を示す。一般的に片持ちバネのバネ定数kは、関係式(3)で示される。Eは可動櫛歯電極106のヤング率、wは可動櫛歯電極106の幅、tは可動櫛歯電極106の厚さ、lは可動櫛歯電極106の長さを示している。
櫛歯電極間に働く静電力F1、F2は次の関係式(4)、(5)で示される。ここで、Vは、可動櫛歯電極と固定櫛歯電極との間の電位差、及び最外の可動櫛歯電極と支持部材との間の電位差である。xは櫛歯電極のX方向の変位量(内側方向をプラスとする)、g1は可動櫛歯電極と固定櫛歯電極間のギャップ、g2は櫛歯電極と支持部材(外壁)間のギャップである。また、誘電率ε0である。
最外の可動櫛歯電極106に加わる内側方向(プルインする方向)の静電力Fは、関係式(6)で示される。
プルインが発生しないためには、復元力であるkxと最外の可動櫛歯電極106に加わる静電力Fとの関係式(7)と、関係式(8)を満たす必要がある。
ここで、関係式(8)の右辺で1/3とする根拠は、これ以上、変位量xが大きくなるとプルインすることが一般的に認められていることに依る。
ここで、関係式(8)の右辺で1/3とする根拠は、これ以上、変位量xが大きくなるとプルインすることが一般的に認められていることに依る。
関係式(6)に関係式(7)と関係式(8)を代入すると、関係式(9)が得られる。
また、関係式(9)に関係式(3)、及びS=wlを代入すると、関係式(1)を得ることが出来る。
以上のように、関係式(1)を満たして、最外の可動櫛歯電極106の剛性(つまり、ヤング率Eや厚さtなど)を内側の櫛歯電極より剛性が高くすることで、大きい駆動電圧でもプルインすることなく、安定した駆動を実現することができる。従来と同じように設計する場合、櫛歯本数を増やすなどして発生力を大きくするために、櫛歯電極は、より剛性の弱い構造になりやすい。しかし、発生力を大きくしつつ最外の可動櫛歯電極をプルインさせないために、関係式(1)を満たすように最外の可動櫛歯電極106を設計するとき、最外の可動櫛歯電極は内側の櫛歯電極より剛性が高くなることが多い。
関係式(1)に、可動櫛歯電極106の構造パラメータ(g1、g2など)を入力し、櫛歯電極厚さt、駆動電圧V、及び内側の固定櫛歯電極108とのギャップ(A)124との関係を図4に示す。このときの入力パラメータは、次の通りである。支持部材と可動櫛歯電極とのギャップ(B)125:g2=12μm、可動櫛歯電極の長さ:l=500μm、可動櫛歯電極の幅:w=200μm、可動櫛歯電極のヤング率:E=130GPa、真空の誘電率:ε0=8.85×10−12F/mである。
また、ギャップ(A)124:g1、最外の櫛歯電極の厚さ:t、及び駆動電圧:Vは、必要な発生力で決まる。仮に、最大駆動電圧200Vで駆動したいときに(典型的には、駆動電圧は0V以上200V以下である)、関係式(1)を満たす領域は、図4に示す領域Aである。よって、g1=8μm(実線の曲線で示す)、t=8μmのときには、最外の可動櫛歯電極は関係式(1)を満たさないため、プルインすることとなる。従って、最外の可動櫛歯電極106の厚さtを11.4μm以上にし、最外の可動櫛歯電極106の剛性を内側の櫛歯電極より高くする。つまり、このとき、内側の櫛歯電極は従来の設計になっているので(例えば、内側の櫛歯電極の厚さが8μmである)、最外の可動櫛歯電極の剛性が内側の櫛歯電極より高くなる。これにより、大きい駆動電圧でもプルインすることなく、安定した駆動を実現できることとなる。
なお、図1では、連続した反射面を有する反射部材109に1個のアクチュエータが接続された構造を示しているが、これは一例である。反射部材に接続されるアクチュエータの個数を増やすことで、より複雑なミラー面形状を精度良く実現することが可能になる。また、複数のアクチュエータ101のそれぞれに接続部を介して1枚ずつ反射部材109を接続したタイプも可能である。これにより各反射部材109で反射する光の光路長を変化させることが出来るので、波面補正デバイスとして使用可能である。
本実施形態によれば、上記の如き櫛歯電極構造の静電櫛歯アクチュエータにおいて、構造の製造が比較的容易であり、高い駆動電圧で駆動したときにおいても、プルインの発生を抑制することができる。
(実施形態2:眼科装置)
以上説明した可変形状ミラーを、光学収差を補償する波面補償デバイスを用いた補償光学システムについて、走査型レーザ顕眼鏡(Scanning Laser Ophthalmoscope:以下SLO装置と記述する)を例にとって説明する。SLO装置とは、光を眼底に照射し、視細胞・網膜神経線維束・血球動態等の観察を可能にする眼科装置である。
以上説明した可変形状ミラーを、光学収差を補償する波面補償デバイスを用いた補償光学システムについて、走査型レーザ顕眼鏡(Scanning Laser Ophthalmoscope:以下SLO装置と記述する)を例にとって説明する。SLO装置とは、光を眼底に照射し、視細胞・網膜神経線維束・血球動態等の観察を可能にする眼科装置である。
本実施形態にかかるSLO装置の概略構成を図5に示す。光源301から出射した光は、単一モード光ファイバー302を伝播し、コリメータ303を通過して平行光線となる。平行光線は、測定光305として光分割手段であるビームスプリッタ304を透過し、補償光学システム320に導光される。例えばレーザ光を出射する光源301の波長は特に制限されるものではないが、特に眼底撮像用としては被験者の眩しさの軽減と分解能維持のために、800〜1500nm程度(例えば、850nm帯以下)が好適に用いられる。補償光学システム320は、光分割手段であるビームスプリッタ306、波面センサ(収差測定ユニット)315、反射型光変調素子をなす可変形状ミラー(波面補正デバイス)308、および、それらに導光するための反射ミラー307−1〜4を含む。各反射ミラー307は、少なくとも被検眼の瞳と波面センサ315、可変形状ミラー308とが光学的に共役関係になるように設置されている。
補償光学システム320を通過した光は、光走査部309によって、1次元もしくは2次元に走査される。光走査システム309で走査された測定光は、接眼レンズ310−1、310−2を通して被検眼311に照射される。接眼レンズ310−1、310−2の位置を調整することによって、被検眼311の視度に合わせて最適な照射を行うことが可能となる。ここでは接眼部にレンズを用いているが、球面ミラー等で構成しても良い。
被検眼311に照射された測定光は眼底(網膜)で反射もしくは散乱される。被検眼311の眼底で反射散乱された光は、入射したときと同様の経路を逆向きに進行し、ビームスプリッタ306によって一部が反射されて波面センサ315に入射し、光線の波面測定に用いられる。波面センサ315には、公知のシャックハルトマンセンサなどを用いることができる。ビームスプリッタ306を透過した反射散乱光は、ビームスプリッタ304によって一部が反射され、コリメータ312、光ファイバー313を通して光強度センサ314に導光される。光強度センサ314に入射した光は電気信号に変換され、画像処理手段325にて眼底画像へと加工される。
波面センサ315は、制御ユニットである補償光学制御器316に接続されており、受光した光線の波面を補償光学制御器316に伝える。補償光学制御器316は可変形状ミラー308に接続されており、ミラー308を補償光学制御器316から指示された形状に変形する。補償光学制御器316は、波面センサ315から取得した波面の測定結果を基に、収差のない波面へと補正するようなミラー形状を計算する。そして、可変形状ミラー308がその形状を再現するために必要な各櫛歯電極の印加電圧差を算出して、可変形状ミラー308へと送る。可変形状ミラー308は、補償光学制御器316から送られる電位差を可動櫛歯電極と固定櫛歯電極との間に印加し、所定の形状になるようにミラー面を変形させる。
このような波面センサ315による波面の測定と、その波面の補償光学制御器316への伝達と、補償光学制御器316による収差の補正の可変形状ミラー308への指示は、繰り返し処理されて常に最適な波面となるようにフィードバック制御が行われる。なお、反射型光変調素子をなす可変形状ミラーは、測定光および戻り光の少なくとも一方の波面収差を補正するように設けられればよい。
本実施形態にかかる補償光学システムは、静電櫛歯型アクチュエータがミラー面の垂直な方向においてプラス・マイナス2方向に変位可能であるため、従来と比較して略半分の可変形状ミラーの駆動量で補償光学処理を行うことが可能である。
100:可変形状ミラー、101:静電櫛歯アクチュエータ、103:可動部材、104:弾性部材、105:支持部材、106:可動櫛歯電極、108:固定櫛歯電極
Claims (8)
- 支持部材と、前記支持部材に支持され、前記支持部材から延出する複数の固定櫛歯電極と、可動部材と、前記可動部材と前記支持部材とを繋ぐ弾性部材と、前記可動部材に設けられ、前記可動部材から前記固定櫛歯電極と略平行に延出し、かつ前記固定櫛歯電極と間隙を隔てて噛み合う複数の可動櫛歯電極と、を有し、前記可動部材の前記可動櫛歯電極が設けられた面と前記支持部材の前記固定櫛歯電極が設けられた面が、前記可動部材の可動方向と略平行に配置されている静電櫛歯アクチュエータであって、
内側に位置する前記可動櫛歯電極と前記固定櫛歯電極とのギャップ(A)を、最外の前記可動櫛歯電極と対向する前記支持部材とのギャップ(B)より小さくし、
前記最外の可動櫛歯電極の幅:w、前記最外の可動櫛歯電極の厚さ:t、前記最外の可動櫛歯電極の長さ:l、前記最外の可動櫛歯電極のヤング率:E、誘電率ε0、前記ギャップ(A):g1、前記ギャップ(B):g2、当該静電櫛歯アクチュエータの駆動電圧:Vとするとき、関係式(1)が満たされることを特徴とする静電櫛歯アクチュエータ。
- 前記最外の可動櫛歯電極は、前記内側の可動櫛歯電極及び固定櫛歯電極より、剛性が高いことを特徴とする請求項1に記載の静電櫛歯アクチュエータ。
- 前記固定櫛歯電極と前記最外の可動櫛歯電極に対向する支持部材とは、電気的に同電位な構造を持つことを特徴とする請求項1または2に記載の静電櫛歯アクチュエータ。
- 前記駆動電圧は、0V以上200V以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の静電櫛歯アクチュエータ。
- 請求項1乃至4のいずれか1項に記載の静電櫛歯アクチュエータと、一方の面が反射面であるミラー部材と、を有し、
前記アクチュエータの可動部材は、前記ミラー部材の前記反射面とは反対側の面に接続されていることを特徴とする可変形状ミラー。 - 複数の前記アクチュエータが、複数の前記ミラー部材にそれぞれ接続されていることを特徴とする請求項5に記載の可変形状ミラー。
- 被検眼の画像を取得する眼科装置であって、
測定光及び戻り光の少なくとも一方の波面収差を補正する反射型光変調素子と、
前記被検眼にて発生する収差を測定する収差測定ユニットと、
前記収差測定ユニットの測定結果に基づいて前記反射型光変調素子を制御する制御ユニットと、を有し、
前記反射型光変調素子が請求項5または6に記載の可変形状ミラーを有していることを特徴とする眼科装置。 - 波面収差を補正する補償光学システムであって、
入射する光の波面収差を補正する反射型光変調素子と、
入射する光の波面収差を測定する収差測定ユニットと、
前記収差測定ユニットの測定結果に基づいて前記反射型光変調素子を制御する制御ユニットと、を有し、
前記反射型光変調素子が請求項5または6に記載の可変形状ミラーを有していることを特徴とする補償光学システム。
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