JP2016161546A - マイクロ流路チップ - Google Patents

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Abstract

【課題】マイクロ流路チップの流路内の検体に励起光を照射して流路内の検体から発生する蛍光を観察する際に、励起光が受光素子までの経路に入射することにより、蛍光の観察を阻害するのを防止する。
【解決手段】励起光を検体に照射することで生じる蛍光を観察する分析に供するマイクロ流路チップにおいて、マイクロ流路チップが有する各界面における励起光の反射の合成波の強度が小さくなるように、流路の励起光入射面に垂直な方向の深さおよびマイクロ流路チップを構成する部材の励起光入射面に垂直な方向の厚さを適切な値とする。
【選択図】 図1

Description

本発明は、流路内の検体へ励起光を照射することにより流路内の検体から発せられる蛍光の観察に用いられるマイクロ流路チップに関する。
少量の試料を微小な流路(マイクロ流路)内で反応させることにより、短時間で分析等を行う試みが近年多くなされている。その一形態として、検体に蛍光試料を注入し、その発光の状態から流路内の検体を分析するものがある。具体的な例として、検体中に含まれるDNAの融解温度測定が挙げられる。DNAは、室温に於いて二重螺旋の構造をとり、この時には蛍光標識は蛍光を発し、高い温度では一本鎖となり、蛍光は消失する。一本鎖となる温度は、DNA配列に依存しており、蛍光が消失する温度からその配列が推定される。
検体中の蛍光物質に励起光を照射し、生じた蛍光を観察するためのマイクロ流路を有するチップ(以下「マイクロ流路チップ」という)には、例えば特許文献1で開示されているものがある。このマイクロ流路チップは、ビーズ担体を用いた酵素免疫測定法により、検体中の物質の定量を行うものである。マイクロ流路チップはPDMS(ジメチルポリシロキサン)を用いて形成され、検量線を用いた特性評価においては、蛍光顕微鏡により、波長が546nmの励起光を検体に照射して、590nmの波長の蛍光画像を取得している。
一方、特許文献2では、支持基板上に検体を乗せて蛍光観察する観察方法において、レンズ等の光学部品やディスプレイに適用される反射防止膜を蛍光観察用の支持基板上に適用することで、垂直に入射した励起光の反射光の強度を低減する技術が開示されている。
特許第4253695号公報 特許第4844318号公報
特許文献1に記載されたマイクロ流路チップを用いて蛍光を観察する場合においても、励起光が受光素子に入射しないように、多くの場合、受光素子に入射する光の経路に励起光の波長の光を遮光するフィルタが挿入される。しかし、これらのフィルタは、励起光の波長の光を完全に遮光することはできず、特に、蛍光の発光強度が極めて弱い場合には、励起光が蛍光の検出を阻害する要因となってしまうという課題が有った。
一方、特許文献2に記載された反射防止膜は、支持基板とは構造が異なるマイクロ流路チップには適用できないため、マイクロ流路チップにおいては、励起光が蛍光の検出を阻害する要因になるという課題が解決されていなかった。
本発明は、励起光を検体に照射することで生じる蛍光を観察する分析に供するマイクロ流路チップにおいて、反射光の強度が小さくなる様に、励起光入射面内における流路の励起光入射面に垂直な方向の深さ(以下の説明においては単に「流路の深さ」と呼ぶ)およびマイクロ流路チップを構成する部材の励起光入射面に垂直な方向の厚さ(以下の説明においては単に「部材の厚さ」と呼ぶ)を適切な値とすることを特徴とする。
本発明の第1の形態によれば、励起光および蛍光に対して透過性が高い(実質的に透明である)第1の板状部材と、励起光に対して透過性が高い(実質的に透明である)第2の板状部材との間に、流路が形成された構造を有するマイクロ流路チップであって、前記第1の板状部材の側から前記流路に向けて照射された励起光の前記マイクロ流路チップによる反射を該第1の板状部材の側から観察したときの該励起光の反射率をRとして下記式1で表したときに、前記第1の板状部材の厚さ、前記第2の板状部材の厚さおよび前記流路の深さが、該式1に従って計算されるRを0.3未満とするような値であることを特徴とするマイクロ流路チップが提供される。
Figure 2016161546
(ただし、式1において、rs12は式2で与えられ、rs23は式3で与えられ、rs34は式4で与えられ、rs45は式5で与えられ、rp12は式6で与えられ、rp23は式7で与えられ、rp34は式8で与えられ、rp45は式9で与えられ、Δ1は式10で与えられ、Δ2は式11で与えられ、Δ3は式12で与えられる。)
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(ただし、式2〜式9において、n1は励起光光源と第1の板状部材の間の領域の屈折率、n2は第1の板状部材の屈折率、n3は検体の屈折率、n4は第2の板状部材の屈折率、n5は流路に接している第2の板状部材の面とは反対側の面に接する空間の屈折率であり、θ1は励起光の入射角度であり、θ2は式13で与えられ、θ3は式14で与えられ、θ4は式15で与えられ、θ5は式16で与えられる。)
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(ただし、式10〜式12において、λは励起光の波長、d2は第1の板状部材の厚さ、d3は流路の深さ、d4は第2の板状部材の厚さである。)
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また、本発明の第2の形態によれば、励起光および蛍光に対して透過性が高い(実質的に透明である)第1の板状部材と、励起光に対して透過性が低い(実質的に不透明である)第2の部材との間に、流路が形成された構造を有するマイクロ流路チップであって、前記第1の板状部材の側から前記流路に向けて照射された励起光の前記マイクロ流路チップによる反射を該第1の板状部材の側から観察したときの該励起光の反射率をRIIとして下記式17で表したときに、前記第1の板状部材の厚さおよび前記流路の深さが、該式17に従って計算されるRIIを0.3未満とするような値であることを特徴とするマイクロ流路チップが提供される。
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(ただし、式17において、rs12は式2で与えられ、rs23は式3で与えられ、rs34は式4で与えられ、rp12は式6で与えられ、rp23は式7で与えられ、rp34は式8で与えられ、Δ1は式10で与えられ、Δ2は式11で与えられる。)
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(ただし、式2〜式4及び式6〜式8において、n1は励起光光源と第1の部材の間の領域の屈折率、n2は第1の部材の屈折率、n3は検体の屈折率、n4は第2の部材の屈折率であり、θ1は励起光の入射角度であり、θ2は式13で与えられ、θ3は式14で与えられ、θ4は式15で与えられる。)
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(ただし、式10〜式11において、λは励起光の波長、d2は第1の部材の厚さ、d3は流路の深さである。)
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本発明によれば、励起光の影響を低減し、発光強度の小さな蛍光の観察が可能なマイクロ流路チップを提供することができる。
本発明のマイクロ流路チップの第1の形態を説明するための模式図である。 本発明のマイクロ流路チップの第2の形態を説明するための模式図である。 本発明のマイクロ流路チップの第2の形態であって、図2で示したマイクロ流路チップと異なる構造のマイクロ流路チップを説明するための模式図である。 励起光とチップ内の各層間の界面とのなす角度、チップ内の各層の厚さ、流路の深さ、および各層の屈折率が、どの部分についての値であるかを示す概念図である。 マイクロ流路チップの流路が基板の表面に形成されている様子を説明するための模式図である。 励起光がマイクロ流路チップに垂直に入射し、その反射光がハーフミラーを透過して受光素子に入射する様子を説明するための模式図である。 実施例1のマイクロ流路チップにおいて、流路の深さと励起光の反射率の関係を示したグラフである。 実施例1のマイクロ流路チップの構造を説明するための模式図である。 実施例2のマイクロ流路チップの構造を説明するための模式図である。 実施例2のマイクロ流路チップにおいて、流路の深さと励起光の反射率の関係を示したグラフである。 実施例3のマイクロ流路チップにおいて、基板の厚さと励起光の反射率の関係を示したグラフである。 実施例4のマイクロ流路チップにおいて、基板の厚さと励起光の反射率の関係を示したグラフである。 実施例5のマイクロ流路チップにおいて、流路の深さと励起光の反射率の関係を示したグラフである。 実施例6のマイクロ流路チップにおいて、流路の深さと励起光の反射率の関係を示したグラフである。 実施例7のマイクロ流路チップにおいて、流路の深さと励起光の反射率の関係を示したグラフである。 実施例8および実施例9のマイクロ流路チップの構造を説明するための模式図である。 実施例8のマイクロ流路チップにおいて、流路の深さと励起光の反射率の関係を示したグラフである。 実施例9のマイクロ流路チップにおいて、流路の深さと励起光の反射率の関係を示したグラフである。 実施例10のマイクロ流路チップの構造を説明するための模式図である。 実施例11のマイクロ流路チップの構造を説明するための模式図である。 実施例12のマイクロ流路チップの構造を説明するための模式図である。
本発明は、流路が少なくとも2つの部材で挟まれた構造を有するマイクロ流路チップに関するものであり、該少なくとも2つの部材のうち少なくとも一方の部材が板状でかつ光透過性の材料からなり、該一方の部材側から照射された励起光がその光透過性の板状部材を透過して流路に入射し、流路に入射した励起光によって流路内の検体から発生した蛍光がその光透過性の板状部材を透過して該一方の部材側に出射し、それが例えば受光素子により検出されるように構成される。
本発明のマイクロ流路チップは、2つの形態に大別される。その一つは、図1に示す様に、流路102を挟む部材101,103が、共に板状であって励起光108に対して透過性が高い材料から構成される形態(第1の形態)である。他の一つは、図2に示す様に、流路202に対して励起光208の入射側に位置する第1の部材201は励起光208に対して透過性が高い材料から構成されるが、流路202に対して励起光208の入射側とは反対側に位置する第2の部材203は励起光208に対して透過性が低い材料から構成される形態(第2の形態)である。この場合、第2の部材203の流路202に接する面とは反対側の面からの励起光208の反射は無いか、あるいは無視できるほど小さい。第2の形態においては、第1の部材201は板状でなくてはならないが、第2の部材203は必ずしも板状でなくてもよい。なお、本願において第1又は第2の部材が「板状」であるとは、当該部材が互いに平行な2つの表面に挟まれた形状を有することをいう。
図1に示す第1の形態のマイクロ流路チップにおいては、励起光108が反射する界面が4つ存在する。すなわち、第2の部材103内に入射した励起光108は、その部材が流路102と接している側の面とは反対側の面においても反射が生じ、その反射光(すなわち部材103に入射した励起光108の一部)が、再び流路102内に戻ってくる構造となっている。この場合、マイクロ流路の表面および各界面からの反射光の合成波109が、受光素子110に入射することから、それらの各反射光の位相を調整することで、合成波109の強度を小さくし、結果として、蛍光観察に対する励起光の反射光109の影響を低減することが可能である。位相の調整は、第1の部材101の厚さ、流路102の深さおよび第2の部材103の厚さを調整することにより可能である。
第1の形態のマイクロ流路チップにおける励起光の総括反射率(マイクロ流路チップに照射された励起光のうち入射側に戻ってくる反射光の割合)Rは、式1で記述される。
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上記式1において、rs12は式2で与えられ、rs23は式3で与えられ、rs34は式4で与えられ、rs45は式5で与えられ、rp12は式6で与えられ、rp23は式7で与えられ、rp34は式8で与えられ、rp45は式9で与えられ、Δ1は式10で与えられ、Δ2は式11で与えられ、Δ3は式12で与えられる。
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(ただし、式2〜式9において、n1は励起光光源と第1の板状部材の間の領域の屈折率、n2は第1の板状部材の屈折率、n3は検体の屈折率、n4は第2の板状部材の屈折率、n5は流路に接している第2の板状部材の面とは反対側の面に接する空間の屈折率であり、θ1は励起光の入射角度であり、θ2は式13で与えられ、θ3は式14で与えられ、θ4は式15で与えられ、θ5は式16で与えられる。)
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(ただし、式10〜式12において、λは励起光の波長、d2は第1の板状部材の厚さ、d3は流路の深さ、d4は第2の板状部材の厚さである。)
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第1の形態において、励起光の反射率を所望の上限値Rよりも小さく(例えば0.3未満に)するためには、式1で記述されるRがRより小さく(例えば0.3未満に)なるように、第1の部材101の厚さd2と、流路102の深さd3と、第2の部材103の厚さd3を決定し、その決定に基づいてマイクロ流路チップを作製すれば良い。
なお、上限値Rは必ずしも0.3(30%)である必要はなく、任意の上限値を定めることが可能である。0.3以外の上限値としては、例えば0.1、0.07、0.05、0.03などを採用することができる。
一方、図2に示す第2の形態のマイクロ流路チップにおいては、励起光208が反射する界面が3つ存在する。すなわち、第2の部材203は実質的に不透明であって入射した励起光208は、再び流路202内に戻らない構造である。この場合、各反射光の位相の調整は、第1の部材201の厚さと励起光入射面内の流路202の深さを調整することにより可能である。
第2の形態のマイクロ流路チップにおける励起光の総括反射率RIIは、式17で記述される。第2の形態においては、第2の部材203の流路202と反対側の面からの励起光の反射は無視することができるので、式17は式1からその無視できる反射光の寄与に関する項、すなわちrs45を含む項とrp45を含む項を削除したものとなっている。
Figure 2016161546
上記式17におけるrs12、rs23、rs34、rp12、rp23、rp34、Δ1、およびΔ2の定義は、式1におけるものと同様である。
第2の形態において、励起光の反射率を所望の上限値Rよりも小さく(例えば0.3未満に)するためには、式17で記述されるRIIがRより小さく(例えば0.3未満に)なるように、第1の部材201の厚さd2と、流路202の深さd3を決定し、その決定に基づいてマイクロ流路チップを作製すれば良い。
この場合も、上限値Rは必ずしも0.3(30%)である必要はなく、任意の上限値を定めることが可能である。0.3以外の上限値としては、例えば0.1、0.07、0.05、0.03などを採用することができる。
なお、第1の形態は、図3に示す形態のマイクロ流路チップも含む。すなわち、図1で示す構造のマイクロ流路チップの第2の部材103の流路102と接する面とは反対側の面に、励起光108を透過しない部材111が形成されている場合である。
図4に、励起光とチップ界面とのなす角度θ1、θ2、θ3、θ4、θ5、厚さd2、d4、流路深さd3、および各屈折率n1、n2、n3、n4、n5が、どの部分の値であるかを、第1の形態のマイクロ流路チップに則して示す。
さらに、励起光の照射領域内にあるひとつの流路内に、部材の厚さや流路の深さが異なる領域が複数存在するように形成することにより、励起光波長等、測定条件が異なる場合においても、本発明のマイクロ流路チップが、広く使用できるようにすることが可能である。
あるいは部材の厚さや流路の深さが各領域内で均一な領域を複数設けるのではなく、部材の厚さや流路の深さの少なくとも一つが、徐々に変わる流路を形成したマイクロ流路チップとしても良い。
部材の厚さや流路の深さが異なる領域を形成する方法として、部材表面の所望の領域にマスクを形成した後に、種々の成膜方法により所望の厚さの膜を形成したり、あるいは、所望の深さをエッチング等で除去するという工程を繰り返す方法が挙げられる。または、ドライエッチングや成膜において、マスクを部材表面に形成するのではなく、部材表面近傍に金属板等で形成されたマスクを置き、成膜やエッチングを繰り返しても良い。マスクを部材表面近傍に置く場合、マスクを部材表面と概略平行に徐々に移動させることにより、部材の厚さや流路の深さを徐々に変えることが可能である。
一般に、励起光は、可視光領域の波長を持つものが利用され、その光源には、水銀ランプ、発光ダイオード、レーザー等様々なものが用いられる。
一方、受光素子には、種々のイメージセンサが一般的に用いられる。もっとも、受光側には、受光素子は必須ではなく、例えば、目視による蛍光の観察を行う場合には、蛍光が見える様になっていれば良い。
可視光領域で光透過性が高い材料には、石英ガラスや硼珪酸ガラス等の種々のガラスや、PDMS(ジメチルポリシロキサン)、ポリカーボネート、PMMA(ポリメチルメタクリレート)、ポリスチレン、ポリエチレン、COP(環状ポリオレフィン)等の樹脂が挙げられる。したがって、これらの材料が、部材101、部材201あるいは部材103の材料として好適に用いられる。
図1では、注入口104や排出口105を部材103を貫通する孔としているが、これらの孔は、必ずしもこの構造でなくても良く、例えば、部材101を貫通するように形成しても良いし、流路102を形成する部材106に形成しても良い。
図2における部材203は、励起光208を実質的に透過しない材料であればどの様なものでも使用可能である。つまり、励起光208の反射や吸収が著しい材料や構造を有するものが用いられる。そのようなものとしては、金属や単層カーボンナノチューブや微細孔が高密度に形成された材料が挙げられる。
流路は、図5にその一例を示す様に、流路に接する部材のどちらか一方の表面を加工して形成しても良いし、あるいはその両方に形成しても良い。あるいは、図1に示す様に部材106の両面を貫通するように形成しても良い。部材106は、所望の深さの流路が形成できれば、どの様なものでも使用可能である。
さらに、本発明のマイクロ流路チップは、蛍光観察領域と励起光照射領域から外れた場所に、フィルタやポンプ等の機構を有していても構わないし、励起光入射面内に重ならない様に、複数の流路を形成しても、分岐した形状の流路を形成しても構わない。
流路を挟む部材の厚さを所望の値になる様に加工するには、部材を薄くする方法を用いても、厚くする方法を用いてもどちらでも構わない。薄くする方法としては、CMP法(化学機械研磨法)やエッチング技術が挙げられる。エッチング技術は、ドライエッチングとウェットエッチングのどちらも使用可能である。厚くする方法としては、基板と同じ材料を成膜する方法が挙げられる。
流路深さは、流路形成時に所望の深さとなる様に加工するか、あるいは図1に示す様に、所望の厚さを有する部材106を用いれば良い。
部材を薄くしたり、流路を形成する場合に精度の良い加工を行うには、どちらに於いてもエッチングが好適に用いられる。エッチングにおける加工速度は、それに用いるガスや薬液の組成や濃度を適切に選択することで調整可能である。
さらに、部材の材料によっては、所望の寸法を有する型を用いた、射出成型、モールディングあるいはインプリントを用いることが可能である。そのような材料として、樹脂が挙げられる。
本実施例では、蛍光顕微鏡を用いて流路内の検体の蛍光を観察する場合に使用する本発明のマイクロ流路チップの例を示す。用いるマイクロ流路チップは、流路が厚さ0.95mmの石英基板と厚さ1.0mmの石英基板で挟まれた構造である。石英基板の屈折率は1.53、測定環境は空気中で、空気の屈折率は1.00である。励起光の波長は486nmである。励起光の光源に水銀ランプを用いる。一般的な蛍光顕微鏡では、図6に示す様に、マイクロ流路チップ300の基板面に対して垂直に、すなわち入射角度0°で光源301からの励起光304が入射され、反射光305はハーフミラー302を直進して受光素子303に入射される。本実施例に於いても同様の蛍光顕微鏡を用いる。
上記の条件から、λを486nm、θ1を0°、n1およびn5を1.00、n2およびn4を1.53、d2を0.95mm、d4を1.0mmとして式1から求められる反射率を算出する。
図7は、主として水からなり、屈折率が1.33である検体からの蛍光を観察する場合についての計算結果である。流路の深さが30μm±0.2μmの範囲内において計算を行った。
この結果によれば、反射率は、0%から23%程度の範囲で周期的に変化している。流路の深さ30μm付近では、29.995μmの流路深さにすると、励起光の反射率を最も低減させることが可能である。あるいは、励起光の反射率が例えば0.05未満(5%未満)であって、流路の深さを30μm程度とする場合は、流路の深さを29.971μmから30.019μmの間とすれば良い。
このマイクロ流路の作製例を以下に示す。
図8は、本実施例のマイクロ流路チップの構造を示す模式図である。厚さ1.0mmの石英基板401の表面に、流路402を形成するためのレジストパターニングを施す。次に、四フッ化炭素雰囲気中で反応性イオンエッチングを行い、深さ29.995μmの深さの流路を形成する。この時のエッチングレートは、18nm/minで、エッチング時間は秒単位で設定可能である。つまり流路の深さを精度よくコントロール可能である。流路形成後に、レジスト剥離液に浸漬し、レジストパターンを除去する。
所望の深さの流路402を形成した後に、流路形成面とは逆の面全面を、流路402の加工底面からの厚さが0.95mmになる様に反応性イオンエッチングでエッチングする。
貼り合せた時に流路402の両端面に、注入口404と排出口405が形成される様に、レーザー加工装置を用いて、他方の石英基板403に貫通孔を形成する。
プラズマアッシング装置により、石英基板401の流路形成面と石英基板403の貼り合せ面をアッシングし、その後直ちに加圧して接合し、マイクロ流路チップとする。
図9に示した様に、本実施例では流路502と基板503の間に二酸化シリコン膜506とタングステン膜507が形成されたマイクロ流路チップの例を示す。実施例1と同様に、石英基板501の厚さは、流路502に接している領域では0.95mmである。基板503は、表面に酸化シリコン膜が形成されたシリコンウエハである。基板503上に流路502の幅と同じ幅で厚さ300nmのタングステン線507を形成し、その上に厚さ2μmの二酸化シリコン膜506が形成されている。タングステンの屈折率は2.76、二酸化シリコンの屈折率は1.47である。励起光の波長は、実施例1と同様で486nmである。励起光は、マイクロ流路の基板面に対して垂直に入射する。測定は、大気中で行う。
上記の条件から、λを486nm、θ1を0°、n1および1.00、n2を1.53、n4を1.47、n5を2.76、d2を0.95mm、d4を2μmとして式1から求められる反射率を算出する。
図10は、主として水からなり、屈折率が1.33である検体からの蛍光を観察する場合についての計算結果である。流路の深さが30μm±0.2μmの範囲内において計算を行った。
この結果によれば、反射率は、およそ1%から32%の範囲で周期的に変化している。流路の深さ30μm付近では、29.951μmの流路深さにすると、励起光の反射率を最も低減することが可能である。あるいは、励起光の反射率が例えば0.05未満(5%未満)であって、流路の深さを30μm程度とする場合は、流路の深さを29.933μmから29.969μmの間とすれば良い。
タングステン膜の形成は、CVDにより行う。シランとアンモニアの混合ガス雰囲気中でシリコンウエハ上にCVDにより窒化シリコン膜を形成する。タングステン膜を形成する場所が開口しているレジストマスクを形成し、六フッ化硫黄と酸素の混合ガス雰囲気中で窒化シリコンをドライエッチングで除去する。この状態で、シリコンイオンを注入する。その後、80℃に加温したりん酸液中に浸漬し、窒化シリコン膜を除去する。六フッ化タングステンガス雰囲気中でCVDによりタングステン膜を形成する。このときタングステン膜はシリコンイオンを注入した場所にのみ堆積する。シランと一酸化二窒素ガス雰囲気中で、CVDによりタングステン膜を形成したシリコンウエハ全面に、4μmの膜厚の二酸化シリコン膜を形成する。二酸化シリコン膜表面を平たんにするために、CMP法により研磨する。
流路502の形成と基板501と二酸化シリコン膜506の貼り合せは、実施例1と同様の方法で形成する。
実施例1で用いたマイクロ流路チップと同様の構造のチップにおいて、図8に示す基板401の基板の厚さを調整することにより、励起光の反射率を低減させる例について示す。
基板403は石英基板で、屈折率は1.53、厚さは1.0mmで実施例1と同じである。また、励起光の波長、励起光の入射角度、検体の屈折率も実施例1と同じである。
初期の厚さが1.0mmの石英基板に、深さ30μmの流路402を形成する。
λを486nm、θ1を0°、n1およびn5を1.00、n2およびn4を1.53、d3を30μm、d4を1.0mmとして式1から求められる反射率を算出する。図11は、得られた計算結果である。
この結果によれば、反射率は、およそ1%から16%の範囲で周期的に変化している。基板401の厚さを0.95mm程度とするには、0.949978mmの厚さにすると、励起光の反射率を最も低減することが可能である。あるいは、励起光の反射率が例えば0.05未満(5%未満)であって、基板401の厚さを0.95mm程度とする場合は、0.949956mmから0.950028mmの間とすれば良い。
ガラス基板の厚さを所望の値にする方法として、本実施例に於いては研磨を用い、CMP法とドライエッチングを併用する。すなわちCMP法により所望の厚さ近くまで短時間で研磨し、精密な研磨はドライエッチングで行う。ドライエッチングは、六フッ化硫黄ガス雰囲気中で行う。
流路402の形成と、基板401と基板403との貼り合せ方法は、実施例1と同様である。
図8に示すマイクロ流路チップで、厚さが0.95mmの基板401と、厚さが1.0mm程度の基板403で、深さ30μmの流路402が挟まれた構造で、基板403の厚さを二酸化シリコン膜を形成して調整するマイクロ流路チップを示す。基板401は石英からなり、その屈折率は1.53、基板403は初期の厚さが1.0mmの硼珪酸ガラスからなり、屈折率は1.47である。基板403の厚さを調整するために形成する二酸化シリコン膜の屈折率も1.47である。測定環境は空気中で、空気の屈折率は1.00、検体の屈折率は1.33である。励起光の波長は486nmである。
上記の条件から、λを486nm、θ1を0°、n1およびn5を1.00、n2を1.53、n4を1.47、n3を1.33、d2を0.95mm、d3を30μmとして式1から求められる反射率を算出する。計算結果を図12に示す。計算範囲は、基板403の厚さが1.0mm±0.4μmの範囲である。
この結果によれば、反射率は、およそ0%から18%の範囲で周期的に変化している。基板403の厚さを149nm厚くすることで、励起光の反射率を最も低減することが可能である。あるいは、励起光の反射率を例えば0.07未満(7%未満)とするには、118nmから180nmの範囲で基板403の厚さを厚くすれば良い。
本実施例では、基板403の厚さを二酸化シリコン膜の成膜により調整する。基板403と二酸化シリコン膜は屈折率が同じ値であるため、光学的には一つの構造体としてみなすことが可能である。
本実施例では、基板403の表面で、流路402と接する方に、CVDを用いて二酸化シリコン膜を形成する。このとき用いるガスは、テトラエトキシシランガスである。なお、二酸化シリコン膜を形成する面は、本実施例と逆の面でも構わない。
流路402の形成と、基板401と基板403との貼り合せ方法は、実施例1と同様である。
さらに、本実施例では、実施例1において励起光の入射角が30°である場合について示す。すなわち、λを486nm、θ1を30°、n1およびn5を1.00、n2およびn4を1.53、n3を1.33、d2を0.95mm、d4を1.0mmとして式1から求められる反射率を算出する。
図13にその計算結果を示す。この結果によれば、反射率は、およそ1%から15%の範囲で周期的に変化している。流路の深さ30μm付近では、30.036μmの流路深さにすると、励起光の反射率を最も低減することが可能である。あるいは、励起光の反射率が例えば0.1未満(10%未満)であって、流路の深さを30μm程度とする場合は、流路の深さを29.980μmから30.092μmの間とすれば良い。
本実施例のマイクロ流路チップの作製は、実施例1と同様にすれば良い。
さらに、本実施例では、実施例1において励起光の波長が650nmである場合について示す。すなわち、λを650nm、θ1を0°、n1およびn5を1.00、n2およびn4を1.53、n3を1.33、d2を0.95mm、d4を1.0mmとして式1から求められる反射率を算出する。
図14にその計算結果を示す。この結果によれば、反射率は、およそ0%から21%の範囲で周期的に変化している。流路の深さ30μm付近では、30.056μmの流路深さにすると、励起光の反射率を最も低減することが可能である。あるいは、励起光の反射率が例えば0.03未満(3%未満)であって、流路の深さを30μm程度とする場合は、流路の深さを30.030μmから30.083μmの間とすれば良い。
本実施例のマイクロ流路チップの作製は、実施例1と同様にすれば良い。
さらに、本実施例では、実施例1において、検体が主に酢酸からなり、その屈折率が1.37である場合について示す。すなわち、λを486nm、θ1を0°、n1およびn5を1.00、n2およびn4を1.53、n3を1.37、d2を0.95mm、d4を1.0mmとして式1から求められる反射率を算出する。
図15にその計算結果を示す。この結果によれば、反射率は、0%から22%程度の範囲で周期的に変化している。流路の深さ30μm付近では、30.008μmの流路深さにすると、励起光の反射率を最も低減することが可能である。あるいは、励起光の反射率が例えば0.05未満(5%未満)であって、流路の深さを30μm程度とする場合は、流路の深さを29.983μmから30.033μmの間とすれば良い。
本実施例のマイクロ流路チップの作製は、実施例1と同様にすれば良い。
図16に示す構造であって、基板601は硼珪酸ガラスからなり、基板603はプラチナからなるマイクロ流路の例について示す。基板601の屈折率は1.48で、基板603の屈折率は2.95である。検体は、5%砂糖水を主体とし、その屈折率は1.34である。基板601の厚さは0.65mmである。励起光の波長は720nmで、励起光の入射角は15°である。また、マイクロ流路チップは大気中にあり、空気の屈折率は1.00である。
λを720nm、θ1を15°、n1を1.00、n2を1.48、n3を1.34、n4を2.95、d2を0.65mm、として式17から求められる反射率を算出する。
計算結果を図17に示す。この結果によれば、反射率は、およそ4%から32%の範囲で周期的に変化している。流路の深さ30μm付近では、30.056μmの流路深さにすると、励起光の反射率を最も低減することが可能である。あるいは、励起光の反射率が例えば0.1未満(10%未満)であって、流路の深さを30μm程度とする場合は、流路の深さを30.036μmから30.076μmの間とすれば良い。
流路602の形成は、実施例1と同様である。また、本実施例のマイクロ流路チップの基板601と基板603は接合が困難であるので、蛍光観察を行う際には、基板601と基板603を挟む力を外部から加えて使用する。したがって、基板601と基板603の分離は容易であり、基板603を再利用することが可能である。
図16に示す構造であって、基板601は硼珪酸ガラスからなり、基板603は金からなるマイクロ流路チップの例について示す。本実施例に於いては、流路の深さは30μmで基板601の厚さを調整する。基板601の屈折率は1.48で、基板603の屈折率は0.34である。検体は主に水からなり、その屈折率は1.33である。励起光の波長は720nmで、励起光の入射角は0°である。また、マイクロ流路チップは大気中にあり、空気の屈折率は1.00である。
λを720nm、θ1を0°、n1を1.00、n2を1.48、n3を1.33、n4を0.34、d3を30μm、として式17から求められる反射率を算出する。
計算結果を図18に示す。この結果によれば、反射率は、およそ22%から52%の範囲で周期的に変化している。基板601の厚さが0.65mm付近では、0.649739mmの厚さにすると、励起光の反射率を最も低減することが可能である。あるいは、励起光の反射率が例えば0.3未満(30%未満)であって、基板601の厚さを0.65mm程度とする場合は、その厚さを0.649706mmから0.649772mmの間とすれば良い。
流路602の形成は、実施例1と同様である。また、本実施例のマイクロ流路チップの基板601と基板603は接合が困難であるので、蛍光観察を行う際には、基板601と基板603を挟む力を外部から加えて使用する。したがって、基板601と基板603の分離は容易であり、基板603を再利用することが可能である。
さらに、本発明は、励起光を照射し蛍光観察をする領域において、流路の深さ、上基板の厚さおよび下基板の厚さの3つの項目の内、少なくとも1つが異なる複数の領域を有するマイクロ流路チップを含むものである。本実施例は、この形態のマイクロ流路チップの一例であり、流路の深さと上基板の厚さが異なるマイクロ流路チップに関する。
図19に本実施例のマイクロ流路チップの構造を示す。本実施例で用いるマイクロ流路チップは、基板701と基板703が石英からなり、基板703の厚さが1.0mmである。石英基板の屈折率は1.53である。流路702の深さ並びに基板701の厚さが異なる領域は5つあり、各領域を領域A、領域B、領域C、領域D、領域Eとする。流路702の深さと基板701の厚さの合計値はいずれの領域においても1.0mmで一定とした。領域Aにおける流路深さは20.0μm、領域Bにおける流路深さは20.1μm、領域Cにおける流路深さは20.8μm、領域Dにおける流路深さは21.0μm、領域Eにおける流路深さは21.1μmである。測定環境は空気中で、空気の屈折率は1.00である。屈折率がそれぞれ1.33、1.34、1.35、1.36、1.37の5種類の検体を本実施例のマイクロ流路チップを用いて観察する時の励起光の反射率の値について表1に示す。ただし、この時の励起光の波長λは486nmで、入射角は0°である。表1から分かる様に、例えば、屈折率が1.33である検体を観察する場合には、領域Aにおいて蛍光観察をすれば、励起光の反射率が低く抑えられ、良好な蛍光観察が可能である。あるいは、屈折率が1.37である検体を観察する場合には、領域Cにおいて蛍光観察をすれば良い。
また、表2に波長λが800nmの励起光に対する各領域の反射率を示す。この場合においても、適当な領域を選択することで、励起光の反射を小さくすることが可能であることが分かる。
さらに異なる屈折率を持つ検体や、異なる蛍光波長の観察において、本実施例のマイクロ流路チップでは、励起光の反射を十分に小さくすることができない場合には、さらに異なる流路深さ、基板701の厚さあるいは基板703の厚さを有する領域を形成すれば良い。
流路702の形成は、レジストパターニングとエッチングを繰り返して行う。まず最初に最も深くする流路の領域だけ開口したレジストマスクを形成する。二番目に深い領域との差分だけエッチングを行った後に、レジストマスクを除去する。次いで最も深い領域と、二番目に深い領域の両領域が開校したレジストマスクを形成した後に、三番目に深い領域と二番目に深い領域との差分だけエッチングを行う。以上の工程を繰り返し行うことで、深さの異なる領域を複数有する流路702が形成される。基板701と基板703の貼り合わせは、実施例1と同様である。
Figure 2016161546
Figure 2016161546
実施例10では、一つの流路内に複数の領域を設けた例を挙げたが、本発明のマイクロ流路は、これに限らず、流路深さや基板の厚さが異なる流路を複数形成したものでも良い。
図20は、本実施例のマイクロ流路チップの流路幅方向の断面図である。基板801の表面を加工し、深さが等しい流路を5つ形成している。基板802は、各流路の直下の厚さが異なる様に形成されている。基板801は硼珪酸ガラスを用い、流路が形成されている箇所の厚さは0.95mmである。流路の深さは何れの流路も25μmである。基板802は、ポリカーボネートからなり、その厚さは、流路803の直下で0.59990mm、流路804直下で0.59985mm、流路805の直下で0.59980mm、流路806の直下で0.59975mm、流路807の直下で0.59970mmとする。硼珪酸ガラスの屈折率は1.48で、ポリカーボネートの屈折率は1.59である。
励起光の波長λは723nmで、入射角0°で入射する。屈折率がそれぞれ1.33、1.34、1.35、1.36、1.37の5種類の検体を本実施例のマイクロ流路チップを用いて観察する時の励起光の反射率の値について表3に示す。表3から分かる様に、例えば、屈折率が1.33である検体を観察する場合には、流路807に検体を注入して蛍光観察をすれば、励起光の反射率が低く抑えられ、良好な蛍光観察が可能である。あるいは、屈折率が1.36である検体を観察する場合には、流路803において蛍光観察をすれば良い。
厚さが異なる領域を複数有する基板802を作製する方法として、メタルマスクを用いる。クロムからなる板形状のマスクを基板802の一方の表面に重ね、このマスクの上からフッ酸ガス中でドライエッチングを行う。ドライエッチングの初期に於いては、最も厚さを薄くする領域だけマスクが重ならない様に置き、2番目に薄い領域の厚さとの差分だけエッチングを進める。次に、最も厚さの薄い領域と、2番目に薄い領域の両領域が重ならない様にメタルマスクをずらし、エッチングを進める。この工程を繰り返すことにより、厚さが異なる領域を複数有する基板802が作製される。基板801と基板802の接合は、プラズマアッシングにより、基板801の接合面と、基板802の接合面をアッシングした後に、直ちに重ね合わせ、加圧および加熱をして接合する。
Figure 2016161546
実施例10および実施例11では、各領域あるいは流路内での基板の厚さや流路の深さは一定であるが、本発明のマイクロ流路チップは、この形態に限らず、流路の深さや基板の厚さが徐々に変わっているものであっても良い。
図21は、本実施例のマイクロ流路チップの流路長さ方向の断面を示す模式図である。流路902が基板901に形成され、流路902の深さが注入口904から排出口905に向かって徐々に浅くなっている。また、流路902の深さと基板901の厚さを合わせた値は一定である。基板901は、流路902の深さを含めた厚さが0.7mmの石英ガラスであり、基板903は厚さが0.4mmのポリメチルメタクリレートからなる。石英ガラスの屈折率は1.53、ポリメチルメタクリレートの屈折率は1.60である。
流路902の深さの変化量をどの程度にすれば良いかは、主として反射率を小さくしようとする励起光の波長λに依存する。先に示した実施例でもわかる様に、励起光の反射率は、周期的に変化し、波長λに比例する。したがって、広い波長範囲で使用可能なマイクロ流路チップとするには、使用する最も長い波長の励起光において反射率を調整可能とすれば良い。本実施例では、流路902の深さの最も浅い箇所で19μmとし、最も深い箇所で21μmとする。屈折率がそれぞれ1.33、1.34、1.35、1.36、1.37の5種類の検体について、励起光の反射率が最も小さくなる流路深さを表4に示す。ただし、励起光波長は、360nm、600nm、830nmについて示す。表4から分かる様に、いずれの検体においても、本実施例のマイクロ流路チップで反射率を小さくすることが可能な場所が存在することが分かる。
流路の深さが徐々に変化する流路の形成は、次の工程により行う。基板901の流路902を形成する面の表面に流路部が開口したレジストパターンを形成する。このレジスト面に、実施例11でも用いたクロムからなるメタルマスクを重ねる。フッ酸ガス雰囲気中に於いてドライエッチングを行いながら、基板901面と平行にメタルマスクを一定の速度でずらしていく、流路内におけるエッチング時間が、実質線形的に変化することから流路深さが徐々に変化する流路902が形成される。
基板901と基板903の接合は、実施例11と同様に行う。
Figure 2016161546
本発明は、微量な検体を蛍光により分析するマイクロ流路に関するものであり、化学反応の試験や、遺伝子解析、臨床検体解析、環境試験等に供することができる。
101、201 励起光および蛍光を透過する部材
103、203 流路に対して励起光入射側とは反対側に位置する部材
401、403、501、503、601、603、701、703、801、802、901、903 基板
102、202、402、502、602、702、803、804、805、806、807、902 流路
104、204、404、504、604、704、904 注入口
105、205、405、505、605、705、905 排出口
106、206 流路形成基板
107、207、301 光源
108、208、304 励起光
109、209 反射光の合成波
110、210、303 受光素子
111 励起光を透過しない部材
300 マイクロ流路チップ
302 ハーフミラー
305 蛍光
506 二酸化シリコン膜
507 タングステン膜

Claims (15)

  1. 励起光および蛍光に対して透過性が高い第1の板状部材と、励起光に対して透過性が高い第2の板状部材との間に、流路が形成された構造を有するマイクロ流路チップであって、
    前記第1の板状部材の側から前記流路に向けて照射された励起光の前記マイクロ流路チップによる反射を該第1の板状部材の側から観察したときの該励起光の反射率をRIとして下記式1で表したときに、前記第1の板状部材の厚さ、前記第2の板状部材の厚さおよび前記流路の深さが、該式1に従って計算されるRIを0.3未満とするような値であることを特徴とするマイクロ流路チップ。
    Figure 2016161546
    (ただし、式1において、rs12は式2で与えられ、rs23は式3で与えられ、rs34は式4で与えられ、rs45は式5で与えられ、rp12は式6で与えられ、rp23は式7で与えられ、rp34は式8で与えられ、rp45は式9で与えられ、Δ1は式10で与えられ、Δ2は式11で与えられ、Δ3は式12で与えられる。)
    Figure 2016161546
    Figure 2016161546
    Figure 2016161546
    Figure 2016161546
    Figure 2016161546
    Figure 2016161546
    Figure 2016161546
    Figure 2016161546
    (ただし、式2〜式9において、n1は励起光光源と第1の板状部材の間の領域の屈折率、n2は第1の板状部材の屈折率、n3は検体の屈折率、n4は第2の板状部材の屈折率、n5は流路に接している第2の板状部材の面とは反対側の面に接する空間の屈折率であり、θ1は励起光の入射角度であり、θ2は式13で与えられ、θ3は式14で与えられ、θ4は式15で与えられ、θ5は式16で与えられる。)
    Figure 2016161546
    Figure 2016161546
    Figure 2016161546

    (ただし、式10〜式12において、λは励起光の波長、d2は第1の板状部材の厚さ、d3は流路の深さ、d4は第2の板状部材の厚さである。)
    Figure 2016161546
    Figure 2016161546
    Figure 2016161546
    Figure 2016161546
  2. 前記第1の板状部材の厚さ、前記第2の板状部材の厚さおよび前記流路の深さが、該式1に従って計算されるRIを0.1未満とするような値であることを特徴とする請求項1に記載のマイクロ流路チップ。
  3. 前記第1の板状部材の厚さ、前記第2の板状部材の厚さおよび前記流路の深さが、該式1に従って計算されるRIを0.07未満とするような値であることを特徴とする請求項1に記載のマイクロ流路チップ。
  4. 前記第1の板状部材の厚さ、前記第2の板状部材の厚さおよび前記流路の深さが、該式1に従って計算されるRIを0.05未満とするような値であることを特徴とする請求項1に記載のマイクロ流路チップ。
  5. 前記第1の板状部材の厚さ、前記第2の板状部材の厚さおよび前記流路の深さが、該式1に従って計算されるRIを0.03未満とするような値であることを特徴とする請求項1に記載のマイクロ流路チップ。
  6. 励起光および蛍光に対して透過性がある第1の板状部材と、励起光に対して不透明である第2の部材との間に、流路が形成された構造を有するマイクロ流路チップであって、
    前記第1の板状部材の側から前記流路に向けて照射された励起光の前記マイクロ流路チップによる反射を該第1の板状部材の側から観察したときの該励起光の反射率をRIIとして下記式17で表したときに、前記第1の板状部材の厚さおよび前記流路の深さが、該式17に従って計算されるRIIを0.3未満とするような値であることを特徴とするマイクロ流路チップ。
    Figure 2016161546
    (ただし、式17において、rs12は式2で与えられ、rs23は式3で与えられ、rs34は式4で与えられ、rp12は式6で与えられ、rp23は式7で与えられ、rp34は式8で与えられ、Δ1は式10で与えられ、Δ2は式11で与えられる。)
    Figure 2016161546
    Figure 2016161546
    Figure 2016161546
    Figure 2016161546
    Figure 2016161546
    Figure 2016161546
    (ただし、式2〜式4及び式6〜式8において、n1は励起光光源と第1の板状部材の間の領域の屈折率、n2は第1の板状部材の屈折率、n3は検体の屈折率、n4は第2の部材の屈折率であり、θ1は励起光の入射角度であり、θ2は式13で与えられ、θ3は式14で与えられ、θ4は式15で与えられる。)
    Figure 2016161546
    Figure 2016161546
    (ただし、式10〜式11において、λは励起光の波長、d2は第1の板状部材の厚さ、d3は流路の深さである。)
    Figure 2016161546
    Figure 2016161546
    Figure 2016161546
  7. 前記第1の板状部材の厚さ、前記第2の部材の厚さおよび前記流路の深さが、該式17に従って計算されるRIIを0.1未満とするような値であることを特徴とする請求項6に記載のマイクロ流路チップ。
  8. 前記第1の板状部材の厚さ、前記第2の部材の厚さおよび前記流路の深さが、該式17に従って計算されるRIIを0.07未満とするような値であることを特徴とする請求項6に記載のマイクロ流路チップ。
  9. 前記第1の板状部材の厚さ、前記第2の部材の厚さおよび前記流路の深さが、該式17に従って計算されるRIIを0.05未満とするような値であることを特徴とする請求項6に記載のマイクロ流路チップ。
  10. 前記第1の板状部材の厚さ、前記第2の部材の厚さおよび前記流路の深さが、該式17に従って計算されるRIIを0.03未満とするような値であることを特徴とする請求項6に記載のマイクロ流路チップ。
  11. 励起光の照射領域内に、前記流路の深さが異なる領域が複数存在することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のマイクロ流路チップ。
  12. 励起光の照射領域内に、前記流路の深さが異なる領域が複数存在することを特徴とする請求項6〜10のいずれか一項に記載のマイクロ流路チップ。
  13. 励起光の照射領域内に、前記第1の板状部材の厚さが異なる領域が複数存在することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のマイクロ流路チップ。
  14. 励起光の照射領域内に、前記第1の板状部材の厚さが異なる領域が複数存在することを特徴とする請求項6〜10のいずれか一項に記載のマイクロ流路チップ。
  15. 励起光の照射領域内に、前記第2の板状部材の厚さが異なる領域が複数存在することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のマイクロ流路チップ。
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