JP2016161453A - 信号解析装置およびノッキング検出装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、振動音をピックアップして得た音信号に基づいて、例えばノッキング検出を行なうことなどの動作解析を行なう信号解析装置に関し、対象物の動作解析をより高精度に行なう。
【解決手段】周期的な動作を行なう対象物の動作に伴う振動に起因して発せられた音をピックアップする音センサによりピックアップされた音を表わす原信号を取得するとともに、対象物の周期的な動作の角度情報を取得し、取得した角度情報に基づくとともに、対象物の動作に伴う振動発生源と音センサとの間の距離に応じた音の伝播遅延時間を考慮して、原信号から切出し角度範囲内の信号を切り出し、切り出した信号に基づいて、対象物の動作解析を行なう。
【選択図】図7

Description

本発明は、周期的な動作を行なう対象物の動作に伴う振動に起因して発せられた音をピックアップして得た音信号から、切出し角度範囲内の信号を切り出して対象物の動作解析を行なう信号解析装置、および本発明の信号解析装置の一例としての、エンジンのノッキングを検出するノッキング検出装置に関する。
従来より、エンジンの点火タイミング調整試験等において、ノッキングが発生しない範囲内で最適な点火タイミング等を探るために、エンジンのノッキングの検出が行われている。
このような目的のためのノッキング検出方法として、従来、時間に対するエンジンの筒内圧の変化を計測し、その筒内圧変化に基づいてノッキングが検出されている(例えば、特許文献1参照)。
しかしながらエンジンの筒内圧を計測するにはエンジンを加工してエンジンの内部にセンサを取り付ける必要があり、計測のための準備が大変である。また、エンジンを加工したり、そのエンジンの中にセンサを取り付けたりすることによって、エンジンの特性が変化し、点火タイミング調整等の精度が低下するおそれがある。また、テスト用のエンジンを用いた試験で点火タイミングの調整等を行なった後、実車試験が行われるが、実車のエンジンにそのような筒内圧を計測するセンサを取り付ける訳にはいかず、実車におけるノッキングの発生の有無は熟練者が自分の聴覚で聴き分けているのが現状であり、最終的には熟練者の聴覚によりノッキング判定をしている。また、テスト用のエンジンを用いた試験でもノッキングの発生の有無は熟練者がノッキング判定しているが、エンジンの特性が変化し、テスト用のエンジンの場合ではノッキングしていない条件でも、実車試験ではノッキングが発生してしまい、ノッキング条件にずれがあることも指摘されている。
エンジンを加工せずに済む、エンジンのノッキング検出用のセンサとして、いわゆるノックセンサと呼ばれるセンサが知られている(例えば、特許文献2〜5参照)。このノックセンサは、エンジンの外表面に取り付ければよく、筒内圧の計測と比べ、センサの取付けは容易である。しかしながら、このノックセンサは、エンジンが破損するかも知れないような強いノッキングを検出するものであって、点火タイミングを少しずつ調整しながらノッキングが発生し始めたか否かを検出するといった微妙なノッキング検出は難しい。
また、エンジン燃焼に伴う音をピックアップして、その信号に基づいてエンジンのノッキングを検出する試みがなされている(例えば、特許文献6〜9参照)。エンジン燃焼に伴う音からノッキングを十分な精度で検出することができれば、エンジンの加工は不要であり、熟練者の聴覚によるノッキング判定との間のずれも解消することが期待される。
しかしながら、エンジン燃焼に伴う音に基づいて十分な精度のノッキング検出が可能なのは、低い回転速度領域のみであって、エンジン試験において必要となる高い回転速度をカバーするには到底及ばない。
このように、音に基づくノッキングの検出が試みられているものの、回転速度がエンジン試験において必要となる回転速度全域に及ばないことから、十分には実用化されていないのが現状である。
また、エンジンのノッキング検出に限らず、周期的な動作を行なう対象物の動作に起因して発せられた音をピックアップして、切出し角度範囲内の信号を切り出し、その切り出された信号に基づいて対象物の動作解析を行なう場合の広い分野において、より高精度な動作解析を行なうことが望まれている。
特開2003−314349号公報 特開平4−339157号公報 特開平5−26721号公報 特開2005−83314号公報 特開2005−188297号公報 特開平4−152239号公報 WO2010/013663号公報 特開2012−103157号公報 特開2014−29121号公報
本発明は、上記事情に鑑み、音信号に基づいて、対象物の動作解析を高精度に行なうことができる信号解析装置、およびエンジン試験で必要となる回転速度全域のノッキングを、音信号に基づいて、エンジン試験で必要となる広い回転速度領域にわたって十分な精度で検出することのできるノッキング検出装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成する本発明の信号解析装置は、
周期的な動作を行なう対象物の動作に伴う振動に起因して発せられた音をピックアップする音センサによりピックアップされた音を表わす原信号を取得する原信号取得部と、
対象物の周期的な動作角度の少なくとも原点を表わす原点情報を含む角度情報を取得する角度情報取得部と、
角度情報取得部で取得した角度情報に基づいて、原信号から、切出し角度範囲内の信号を切り出す信号切出部と、
信号切出部で切り出された信号に基づいて、対象物の動作解析を行なう動作解析部とを備え、
上記信号切出部が、対象物の動作に伴う振動発生源と音センサとの間の距離に応じた音の伝播遅延時間を考慮して、原信号から切出し角度範囲内の信号を切り出すものであることを特徴とする。
音信号に基づいて高精度な解析を行なおうとする場合は、対象物の特徴的な動作に起因する特徴的な振動を音信号として正しく捉える必要がある。このためには、正確に狙った切出し範囲内の音信号を切り出す必要がある。
また、こういった解析には、切り出した信号に、その切出し範囲内の中央では大きな重み、切出し範囲内の両側では小さな重みとなる窓関数を掛けて解析するのが通常である。したがって音信号のあらわれた特徴的な波形部分が切出し範囲内に入ってさえいればよいというものではなく、その切出し範囲内のできるだけ中央寄りに入っている必要がある。
本発明の信号解析装置によれば、原信号から、対象物の動作に伴う振動発生源と音センサとの間の距離に応じた音の伝播遅延時間を考慮して、切出し角度範囲内の信号を切り出すため、音の伝播遅延時間を考慮しない場合と比べ、一層高精度な解析が可能となる。
ここで、本発明の信号解析装置において、
上記対象物が、互いに位相を異にしてそれぞれが周期的な動作を行なうことによりそれぞれが振動に起因する音を発生させる複数の振動発生源を有する対象物である場合に、
上記信号切出部が、角度情報と、音センサと複数の振動発生源の各々との間の各距離に応じた音の各伝播遅延時間とに基づいて、複数の振動発生源について互いに同一の位相領域からなる切出し角度範囲内の信号を切り出すものであることが好ましい。
ここで、上記の複数の振動発生源を有する対象物が、複数の気筒を備え、複数の気筒を複数の振動発生源とするエンジンであってもよい。
このように、例えば複数の気筒等、複数の振動発生源を有するエンジン等の対象物に関しては、各々の振動発生源と音センサとの各距離に応じた音の音伝播遅延時間を考慮して互いに同一の位相領域の信号を切り出すことで、複数の振動発生源相互の、一層の高精度な比較など、さらに高精度の解析が可能となる。
また、上記目的を達成する本発明のノッキング検出装置は、
エンジン燃焼に伴う振動に起因して発せられた音をピックアップして、原信号を生成する音センサで生成された原信号を取得する原信号取得部と、
エンジンの回転角度の、少なくとも原点位置情報を含む角度情報を取得する角度情報取得部と、
角度情報取得部で取得した角度情報に基づくとともに、エンジン燃焼に伴う振動発生源と音センサとの間の距離に応じた音の伝播遅延時間を考慮して、上記原信号から、切出し角度範囲内の信号を、エンジン燃焼の複数の周期に亘って繰り返し切り出す信号切出部と、
信号切出部で繰り返し切り出された、ノッキングが発生していない第1の期間内の複数周期分の複数の第1の信号それぞれに基づいて、複数の第1のバイスペクトルを算出して、それら複数の第1のバイスペクトルの平均的な値を正規化した第1の正規化値を算出し、
信号切出部で切り出された、ノッキングの発生のおそれがある第2の期間内の1周期分の第2の信号に基づいて、第2のバイスペクトルを算出して、上記複数の第1のバイスペクトルと第2のバイスペクトルとを合わせた複数のバイスペクトルの平均的な値を正規化した第2の正規化値を算出し、
第2の正規化値と第1の正規化値との差分からなる差分正規化値を算出する差分正規化値算出部と、
差分正規化値算出部で算出された差分正規化値に基づいて、エンジンの指標となる指標値を算出する指標値算出部と、
指標値算出部で算出された指標値に由来する情報を提示する情報提示部とを備えたことを特徴とする。
ここで、上記エンジンが、複数の気筒を備え、それら複数の気筒を複数の振動発生源とするエンジンであって、
上記信号切出部が、角度情報と、音センサと複数の振動発生源の各々との間の各距離に応じた音の各伝播遅延時間とに基づいて、複数の振動発生源について互いに同一の位相領域からなる切出し角度範囲内の信号を切り出すものであることが好ましい。
本発明者は、ノッキングの原因や現象を探り、ノッキングの検出に適合すると思われる様々な演算手法を試みた結果、本発明の完成に到達したのである。本発明は、上記の差分正規化値を算出し、ノッキングの指標となる指標値を、その差分正規化値に基づいて算出しているため、エンジン試験に必要な広範な回転速度域内にわたるノッキングをエンジン試験に必要な十分な精度をもって検出することができる。
また、本発明のノッキング検出装置によれば、ノッキング検出用の演算に用いる音信号を原信号から切り出すにあたり、エンジン燃焼に伴う振動発生源と音センサとの間の距離に応じた音の伝播遅延時間を考慮して音信号を切り出しているため、ノッキングを一層高精度に検出することができる。
本発明のノッキング検出装置において、上記指標値算出部が、差分正規化値算出部で算出された差分正規化値b_sub(f1,f2)(但し、f1,f2はいずれも周波数を表わす)のうちのf1=f2近傍の値から、2次の調和成分が含まれているレベルを表わす特徴量を算出し、エンジンの、少なくとも1つの振動モードにおける固有振動数近傍の周波数帯域内の特徴量のうちの代表値を算出して、その代表値由来の値を指標値とするものであることが好ましい。
ノッキングは、エンジン燃焼の異常で各気筒の固有振動数(共振周波数)での振動が増幅され、衝撃波が発生する現象である。この衝撃波は、各気筒の固有振動数(共振周波数)の2倍の振動数(周波数)での振動を伴っている。分析対象としている音に、ある周波数成分と、その2倍の周波数成分とからなる2次の調和成分が含まれていた場合、その2次の調和成分はバイコヒーレンスのf1=f2のライン上の値としてあらわれる。一方、ノイズ成分は、f1=f2のラインから外れた位置にあらわれる。ただし、演算には誤差を伴うことから、その誤差分を含め、f1=f2近傍の値から特徴量を算出する。ここで、エンジンの固有振動数(共振周波数)は、計算や観察等によりあらかじめ知ることができるが、エンジン燃焼に伴う発熱により変化する。このため、特徴量を算出した後、固有振動数(共振周波数)の変動範囲を含む周波数帯域内の特徴量に基づいて代表値を算出する。このようにして算出された代表値由来の値を指標値とすることにより、さらに高精度なノッキング検出を行なうことができる。
さらに、本発明のノッキング検出装置において、上記代表値を算出して、その代表値由来の値を指標値とするにあたり、指標値算出部が、上記差分正規化算出部に、複数の第1のバイスペクトルのうちの少なくとも1つの第1のバイスペクトルを順次入れ替えながら第1の正規化値を複数算出させ、それら複数の第1の正規化値どうしの差分の平均値μと標準偏差σとを算出して、ノッキング有無の判定の閾値TRを、
TR=α×σ+μ
但し、αは、係数を表わす
に従って算出し、
代表値と閾値とを比較する比較演算を経て指標値を算出するものであることが好ましい。
上記の閾値は、統計的に意味のある確率を持ってノッキングが発生しているか否かを判定することのできる閾値である。したがって、代表値と上記の閾値と比較する比較演算を経ることにより、ノッキングが発生しているか否かを、統計的に意味のある確率を持つ指標値として算出することができる。
また、指標値算出部がさらに、上記比較演算を経て算出された指標値を使用して、指定サイクル数についてノッキングの発生の有無を判定し、その指定サイクル数の中でノッキングの発生有りと判定されたサイクル数の割合であるノッキング発生率を算出し、そのノッキング発生率と回転速度からの単位時間当たりのエンジン行程数の積から算出した、単位時間当たりの平均ノッキング回数の値を、新たな指標値とするものであることがさらに好ましい。
この新たな指標値は、聴感におけるノッキング指標と相関が高い指標値である。
以上の本発明によれば、音信号に基づいて、対象物の動作解析をより高精度に行なうことができる信号解析装置、およびエンジン試験で必要となる回転速度全域のノッキングを、エンジン試験で必要とする十分な精度で検出することのできるノッキング検出装置が実現する。
本発明の一実施形態としてのノッキング検出装置を採用した、テスト用のエンジンを試験対象としたときのエンジン試験システムの概要を示した図である。 本発明の一実施形態としてのノッキング検出装置を採用した、実車を試験対象としたときのエンジン試験システムの概要を示した図である。 図1に示すノートPCにおける演算内容を示すブロック図である。 信号切出しの説明図である。 4つの気筒と音センサとの間の距離の一例を示した図である。 音の伝播遅延時間算出に関するデータ一覧を示した図である。 各気筒ごとの筒内圧力変化カーブ(図7(A)〜(B))と、音センサでピックアップされた音圧信号(E)を示した図である。 遅延前後の切出し角度範囲を示した図である。 図3に示す差分バイコヒーレンス算出部における処理の流れを示した図である。 差分バイコヒーレンス算出部における差分バイコヒーレンス算出処理の概念図である。 図3に示す指標値算出部における演算処理内容を示したブロック図である。 差分バイコヒーレンスの算出結果の一例を示した図である。 特徴量算出処理をモデル化して示した図である。 図3における指標値算出部で実行される、代表値算出処理をモデル化して示した図である。 エンジンの固有振動数(共振周波数)の説明図である。 音の伝播遅延時間の考慮の有無による特徴量の変化を示した図である。 計測時の準備段階における演算の流れを示したフローチャートである。 計測時における演算の流れを示したフローチャートである。
以下、本発明の実施の形態を説明する。ここでは、本発明の信号解析装置の一例であるノッキング解析装置について説明する。
図1,図2は、本発明の一実施形態としてのノッキング検出装置を採用したエンジン試験システムの概要を示した図である。
図1ではテスト用のエンジンを試験対象としたエンジンベンチ試験を示しており、図2では実車を試験対象とした実車試験を示している。
図1に示すテスト用エンジン1は、ダイナモ2に連結されており、様々な運転条件下でのエンジンの試験が行なわれる。図2に示す自動車3は、図1に示すテスト用エンジンと同型のエンジンが搭載された自動車である。この自動車3は、試験運転用の試験台4の上に載せられており、試験台4では様々な運転条件が再現されて、それら様々な運転条件下での運転試験が行なわれる。
例えば点火タイミングの調整試験は、図1に示すテスト用エンジンで行なわれ、最適と考えられる点火タイミングが決まると、自動車3はその調整された条件下で運転されてその調整の良否の確認が行なわれる。
ここでは、図1に示すエンジンベンチ試験の場合も、図2に示す実車試験の場合も共通に、エンジン1の近くに音センサ5が配置される。この音センサ5は、エンジン1の燃焼に伴う振動に起因する音をピックアップして音圧信号を生成するセンサである。
この音センサ5でピックアップされた音圧信号は、ノッキング検出装置10に入力される。
また、エンジン1の回転を制御するECU(Engine Control Unit)からはエンジン1の回転角度を表わす角度信号が取り出される。
本実施形態では、この角度信号には、エンジン1回転につき1パルスの、回転角度の原点を表わす回転パルスと、エンジン1回転につき720パルスのクランク角度パルスとが含まれている。尚、図2において、ECU6が自動車2とは別に示されているが、これは分かり易さのために別々に示したのであって、図2におけるECU6は自動車3に内蔵されている要素である。
図1および図2のいずれの場合も、音センサ5により得られたエンジン音の音圧信号およびECUからの角度信号は、ノッキング検出装置10に入力される。このように、本実施形態のノッキング検出装置10は、エンジンベンチ試験の場合(図1の場合)も実車試験の場合(図2の場合)も共通に使用される。
このノッキング検出装置10は、データ収集装置20とノート型パーソナルコンピュータ(以下、単に「ノートPC」と略記する)30とで構成されている。データ収集装置20は、音センサ5からの音圧信号をA/D変換し、角度信号とともにその内部に一旦蓄えた後、それらのデータをノートPC30に渡す。ノートPC30は、データ収集装置20からデータを受け取り、ノッキングの検出に関する後述する演算を実行して、その演算結果をデータ収集装置20に送る。データ収集装置20はノートPCからその演算結果を受け取って操作盤40に送る。
操作盤40は図1に示すエンジンベンチ試験の際にオペレータ50によって操作され、点火時期やその他エンジン1の様々なパラメータの調整を行なう操作盤である。この操作盤40のモニタ画面40a上には、エンジン1の、調整しようとしているパラメータに応じて、様々な情報が表示される。エンジン1の点火タイミングの調整にあたっては、ノッキング検出装置10から送られてきたノッキングに関する演算結果がモニタ画面40a上に表示される。オペレータはその表示を見ながら点火タイミングを調整する。
また、ノートPC30での演算結果は、ノートPC30自体の表示画面30a上に表示することもできる。
操作盤40では、図2に示す実車試験の際は、基本的には点火タイミング調整等のエンジンの調整は行なわれない。操作盤40では、実車試験の際は、モニタ画面40a上への様々な情報の表示と、エンジンの様々な状態やその変化のデータの収集が行なわれている。
図3は、図1に示すノートPCにおける演算内容を示すブロック図である。
音圧信号取得部31は、図1,図2に示す音センサ5でピックアップされてデータ収集装置20でA/D変換された音圧信号を取得する役割りを担っている。この音圧信号取得部31は、ノートPCのハードウエア上は、データ入力ポートおよび入力インタフェース回路が担当する。
また、角度信号取得部32は、図1,図2に示すECU6から取り出されてデータ収集装置20を経由してきた角度信号を取得する役割りを担っている。この角度信号取得部32も、ハードウエア上はデータ入力ポートおよび入力インタフェースが担当している。
ここで、これら音圧信号取得部31および角度信号取得部32は、本発明にいう、原信号取得部および角度情報取得部の各一例に相当する。また、音圧信号取得部31で取得される音圧信号は本発明にいう原信号の一例に相当する。
信号切出部33は、角度信号取得部32で取得された角度信号を参照して、音圧信号取得部31で取得された音圧信号の中から特定の角度範囲内の信号を切り出す。
図4は、信号切出しの説明図である。
この図4には、エンジンの筒内圧力変化カーブ(図4(A))、音圧信号(図4(B))、1回転720パルスのクランク角度パルス(図4(C))、および1回転1パルスの回転速度パルス(図4(D))が示されている。図4(E)は、図4(A)〜(D)の一部区間を時間的に引き延ばして示した拡大図である。これらのうちの図4(A)に示すエンジンの筒内圧力変化カーブは、参考のために示したのであって、ここで説明しているノッキング検出装置10には不要の情報である。
ここでは、図4(D)に示す回転パルスの発生を契機にして図4(C)に示すクランク角度パルスを計数し、その計数値に基づいてノッキングが発生し得る角度範囲を決定し、図4(B)に示す音圧信号のうち、その決定された角度範囲(切出し角度範囲)内の音圧信号が切り出される。具体的には、ここでは、点火位置やTDC(Top Dead Center)を含む、点火位置やTDC付近から約90度の角度範囲内の音圧信号が切り出され、このとき後述する音発生源と音センサとの間の距離による伝搬遅延時間が考慮される。
ここで、本実施形態では、点火タイミングが変更されても切出し角度範囲は固定されたままである。ただし、点火タイミングの変更に応じて切出しの角度範囲を変更してもよい。
また、本実施形態では、1回転720パルスのクランク角度パルスを計数することで切出し角度範囲を決定しているが、1回転1パルスの回転パルス(図4(D))のみに基づいて、隣接する回転パルスの間隔からエンジン回転速度(1回転に要する時間)を求め、その1回転に要する時間の中の特定の時間領域を切出し角度範囲としてもよい。あるいは回転パルス(図4(D))などによる角度の原点情報と、クランク角度パルスよりも分解能の低い角度信号とに基づいて、切出し角度範囲を決定してもよい。
ここで、本実施形態では、4気筒エンジンをノッキング検出の対象としており、4つの各気筒それぞれが振動して音を発生させる。また、ノッキングは、4つの各気筒のいずれにおいても発生し得る。そこで、本実施形態では、4つの各気筒の全てについて音を切り出し、4つの各気筒のそれぞれについてノッキングの検出が行なわれる。
ここで、本実施形態では、音センサ5は、1つのみ使用し、その音センサ5で得られた原信号としての音圧信号から、4つの各気筒それぞれに対応する各切出し範囲内の音圧信号を切り出している。この各気筒ごとの音圧信号の切り出しにあたっては、各気筒と音センサ5との間の各距離に応じた、音の各伝播遅延時間を考慮し、各気筒の周期的な動作において同一の位相領域の音圧信号を切り出している。
図5は、4つの気筒と音センサとの間の距離の一例を示した図である。
ここでのノッキング検出対象としているエンジン1は4気筒エンジンであって、#1〜#4の4つの気筒1_1,1_2,1_3,1_4を備えている。これに対し、このエンジン1の振動に伴う音をピックアップする音センサ5は1つだけである。ここでは、この音センサ5は、各気筒1_1,1_2,1_3,1_4からそれぞれ、31cm,23cm,17cm,15cmの距離にある。各気筒1_1,1_2,1_3,1_4の直径は9cmである。ここでは、これらの各気筒1_1,1_2,1_3,1_4と音センサ5との間の各距離に応じた、音の各伝播遅延時間が考慮される。
図6は、音の伝播遅延時間算出に関するデータ一覧を示した図である。
音速Cは、
ただし、
Cは、音速(m/s)
κは、気体(ここでは空気)の比熱比
Rは、気体定数
Tは、気体温度(K)
Mは、気体の平均分子量(g/mol)
であらわされる。
ここでは、図6(A)に示すように、比熱比κ=1.403、分子量M=28.966(g/mol)、および気温は45(℃)、すなわち、絶対温度T=45+273.15=318.15(K)であり、これらの数値を式(1)にあてはめると、音速C=357.946(m/s)が算出される。
また、ここでは、音センサ5により得られたアナログの音圧信号が図6(B)に示すサンプリング周波数64000Hzで高速サンプリングされてデジタルの音圧信号に変換され、そのデジタルの音圧信号が解析に用いられる。
ここでは、このサンプリングで得られたデジタルの音圧信号1つずつを1点と数え、サンプリング点の数を点数と称する。
図5に示す#1〜#4の各気筒1_1,1_2,1_3,1_4で発せられた音が音センサ5に到達するには、時間遅延が発生する。ここでは、その遅延時間を、サンプリングの点数で表現する。この点数で表わした遅延時間delayは、
ここで、
delayは、遅延点数
dは、各気筒と音センサとの間の距離(m)
sは、サンプリング周波数(Hz)
Cは、音速(m/s)
である。
図6(C)は、各気筒についての、音センサとの間の距離(m)と、その間を伝播する音の遅延時間(ms)と、遅延点数とを示した図である。
図5に示す音センサ5の配置の場合、この図6(C)に示すように、各気筒ごとに異なる遅延点数となる。すなわち、ここでは、#1気筒1_1については、遅延点数は55点、#2気筒1_2については、遅延点数は41点、#3気筒1_3については、遅延点数は30点、#4気筒1_4については、遅延点数は27点となる。
図7は、各気筒ごとの筒内圧力変化カーブ(図7(A)〜(D))と、音センサでピックアップされた音圧信号(E)を示した図である。
図4を参照して説明した通り、図4(D)に示す回転パルスの発生を契機にして図4(C)に示すクランク角度パルスを計数し、その計数値に基づいてノッキングが発生し得る角度範囲を決定し、図4(B)に示す音圧信号のうちの、その決定された角度範囲(切出し角度範囲)内の音圧信号が切り出される。具体的には、点火位置やTDC(Top Dead Center)を含む、点火位置やTDC付近から約90度の角度範囲内の音圧信号が切り出される。ただし、この切り出しにあたっては、クランク角度パルスを計数して決定された各角度範囲から、各気筒ごとの各遅延点数だけ遅延させた範囲の信号が切り出される。これにより、#1〜#4の全ての気筒の動作について同一の位相領域の信号が切り出される。
図8は、遅延前後の切出し角度範囲を示した図である。
ここでは、#1気筒1_1について例示している。図8(A)は#1気筒の筒内圧力変化カーブ、図8(B)は音センサでピックアップされた音圧信号を示している。また、点線の矩形は、クランク角度パルスの計数により決定された遅延前の角度範囲、実線の矩形は、クランク角度パルスの計数により決定された角度範囲から#1気筒に関する遅延点数である55点(図6参照)だけ遅延させた角度範囲を示している。また、点線、実線の山形のカーブは、それぞれ遅延前、遅延後の信号に作用させる窓関数の一例を示している。
図8(B)の音圧信号には、楕円Rで囲った領域にノッキングの検出に有用な信号成分があらわれている。
この楕円Rの領域は、遅延前の角度範囲にもその大半が入っているが、その角度範囲の一方の端に寄った位置にあるため、窓関数を掛けると小さな信号となってしまい、この信号に基づいてはノッキング検出の精度が低下するおそれがある。
これに対し実線で示す、55点遅延させた角度範囲の場合、楕円Rの領域はその全域がその角度範囲内に入るとともにその角度範囲内の中央に寄っている。このため、遅延前と比べ窓関数を掛けてもその信号が大きく残り、高精度のノッキング検出が可能となる。
図3に示す信号切出部33では、以上のように、各気筒ごとに各気筒と音センサとの間の距離に応じた、音の伝播遅延時間を考慮して、あらかじめ定めた切出し角度範囲の音圧信号が正確に切り出される。
図3に戻って説明を続ける。
信号切出部33で切り出された音圧信号は、差分バイコヒーレンス算出部34に入力され、差分バイコヒーレンスが算出される。
図9は、図3に示す差分バイコヒーレンス算出部における処理の流れを示した図である。
この差分バイコヒーレンス算出部34における演算処理は、計測前の準備段階における演算処理と計測時の演算処理とに分けられる。図9の上段は計測前の準備段階における処理であり、下段は計測時の処理である。ここでは、計測前の準備段階における信号や算出値に、「第1の信号」、「第1の・・・」のように「第1」を付し、計測時における信号や算出値に、「第2の信号」、「第2の・・・」のように「第2」を付すことで互いを区別している。ただし、計測前の準備段階と計測時との双方に共通する内容については、例えば単に「信号」と称するように、「第1」も「第2」も付さずに表記する。
計測前の準備段階では、ノッキングが発生していない第1の期間内において、信号切出部33(図3参照)によりエンジン回転の各周期ごとに切り出された第1の信号が順次、この差分バイコヒーレンス算出部34に入力されて、FFT(Fast Fourier Transform)の算出341が行なわれる。
ここでは、信号切出部33で切り出された音圧信号を、
x(t)・・・(3)
で表わす。ここで、tは時刻を表わしている。
この音圧信号x(t)にFFT処理が施され、周波数データ
F(f)・・・(4)
が算出される。
そして、切り出された信号x(t)にFFT処理を施すことにより得られた周波数データF(f)に基づいてバイスペクトル
B(f1,f2)=F(f1)F(f2)F*(f1+f2)・・・(5)
の算出342が行なわれる。ここで、f1,f2は周波数、*は複素共役を表わしている。
計測前の準備段階では、(n−1)周期分にわたって各周期ごとに第1の信号x(t)の切出し、およびFFT算出341が行なわれて、各周期ごとの第1のバイスペクトルBi(f1,f2)、i=1,2,・・・,n−1の算出342が行なわれる。ここで、nは、正の整数であり、予備実験等によりあらかじめ適切な値(例えばn=30)が決定されている。あるいは、nを様々に変化させて、後述する差分バイコヒーレンスの統計値算出/評価344の演算により適切なnを定めてもよい。
(n−1)周期分の、すなわち(n−1)個の第1のバイスペクトルの算出342が行なわれると、次に、それら(n−1)個の第1のバイスペクトルを使って、第1のバイコヒーレンスの算出343が行なわれる。
ここで、この第1のバイコヒーレンスの算出にあたり、本来のバイコヒーレンス算出の式はバイスペクトルを正規化する式(6)の算出式
であるが、複素数の計算のため、条件によってはバイコヒーレンスの値が0から1に入らない場合が発生する。そこで、バイコヒーレンスの定義に基づき、値が0から1に入るように修正した式(7)の算出式
を用いる。ここでは、式(7)を用いて算出した値b(f1,f2)もバイコヒーレンスと称する。式(6)あるいは式(7)で算出されたバイコヒーレンスb(f1,f2)は、式(6)を採用した場合であっても、式(7)を採用した場合であっても、本発明にいう正規化値(第1の正規化値および第2の正規化値)の一例に相当する。
式(6)あるいは式(7)は、複数のバイスペクトルBi(f1,f2)を平均化するとともに正規化するものである。ここで、本実施形態において、式(7)を採用するのは、本来のバイコヒーレンスの式である式(6)に従うと、値b(f1,f2)が「1」を越えることがあり、これに対し式(7)を採用すると値b(f1,f2)は厳密に「0〜1」の範囲内の値となり、その後の演算上の取扱いが容易だからである。ただし、本発明における正規化値を算出する式として、式(6)を採用することを妨げるものではない。
更に、この準備段階では、(n−1)個の第1のバイスペクトルと、それらから算出される第1のバイコヒーレンスが算出された後も、新たな(n−1)個の第1のバイスペクトルが入力されるたびに、第1のバイコヒーレンスを算出する。そして得られた多数の第1のバイコヒーレンスの中から、バイコヒーレンスのf1=f2のライン上の成分が最も小さな第1のバイコヒーレンスと、その元となった(n−1)個の第1のバイスペクトルとを、基準のバイコヒーレンス・バイスペクトルとして保持し、計測時に、n−1個の第1のバイスペクトル、そのバイスペクトルから算出された第1のバイコヒーレンスとして演算に用いられる。また、基準に選ばれなかった複数バイコヒーレンスの元となったバイスペクトルを、次工程の統計処理で再利用するため、保持しておいてもよい。
次に、1周期から切り出された新たな第1の信号が入力されると、その新たな1周期における第1の信号についてもFFT算出341が行なわれ、第1のバイスペクトル算出342が行なわれる。そして、保持した(n−1)個の第1のバイスペクトルに、今回新たに算出された1個のバイスペクトルを加えた、合計(n)個のバイスペクトルに基づいて、新たな第1のバイコヒーレンスが算出される。
そしてさらに、この第1のバイコヒーレンスから、前段で選定しておいた基準のバイコヒーレンスを各周波数(f1,f2)ごとに減算することで第1の差分バイコヒーレンスの算出を行う。これが順次、新たな1周期から切り出された新たな第1の信号が入力されるたびに繰り返され、
多数個(ここではm個とする)の第1の差分バイコヒーレンスが算出される。
ここでは、1周期から切り出された新たな第1の信号を入力としたが、演算時間短縮のために、前段において基準に選ばれなかった複数のバイコヒーレンスの元となったバイスペクトルを入力として再利用し、m個の第1の差分バイコヒーレンスを算出しても良い。
その後、差分バイコヒーレンスの統計値算出/評価344の処理が行なわれる。
この差分バイコヒーレンスの統計値算出/評価344では、差分バイコヒーレンスを順次算出した後、それら複数の差分バイコヒーレンスそれぞれについて、かつ、エンジンの今回関心のある1つ又は複数の振動モードそれぞれについて、各振動モードの固有振動数近傍の周波数帯域における代表値が算出される。この代表値の算出は、計測時にも行なわれるアルゴリズムであり、代表値算出のアルゴリズムの説明は、後述する計測時の説明に委ねることとする。各差分バイコヒーレンスについて、各振動モードごとの代表値が算出されると、さらに、各振動モードごと、かつ各サイクル数ごとに代表値の平均値および標準偏差が算出される。これらの平均値や標準偏差は指標値算出部35に入力される。またここでは、代表値の平均値および標準偏差の算出に使用された差分コヒーレンスから算出された代表値どうしの差分値が算出され、その差分値があらかじめ定められた小さい値の範囲内に安定していることをもって、ノッキングが発生していない状態にあると評価される。この各差分バイコヒーレンスは、回転速度(r/min)毎に保持して利用することもできる。
なお、前述したnの値については、nの値を変更した様々な第1のバイコヒーレンスを算出して、それら様々な第1のバイコヒーレンスに基づいて上記と同様な評価を行ない、平均値や標準偏差が最も安定しているnの値を選択することで、nの値を決定してもよい。
次に差分バイコヒーレンス算出部34における計測時の演算処理について説明する。
以下の処理は、ノッキングが発生しているおそれがある第2の期間について行なわれる。
ここでも準備段階のときと同様、信号切出部33で切り出された音圧信号(ここでは計測時なので「第2の信号」と称する)にFFT算出345の処理が施されて第2の周波数データF(f)が算出される。次いで、この第2の周波数データF(f)に基づいて第2のバイスペクトル算出346が行なわれる。
さらに、今度は、準備段階において、ノッキングが発生していないことが分かっている第1の期間内に算出された(n−1)周期分の第1のバイスペクトルBi、i=1,2,・・・,n−1と、今回算出された1周期分の第2のバイスペクトルB_Tとを合わせた、合計n周期分のバイスペクトルに基づく第2のバイコヒーレンス算出347が行なわれる。そしてさらに、この第2のバイコヒーレンスから、準備段階で算出しておいた第1のバイコヒーレンスを各周波数(f1,f2)ごとに減算することで差分バイコヒーレンスの算出348が行なわれる。
ここでの差分バイコヒーレンスは、
ここで、b_sub(f1,f2)は、差分バイコヒーレンス
i,i=1,2,・・・,n−1は、準備段階で算出しておいた(n−1)周期分の第1のバイスペクトル
B_Tは、計測時において今回算出された第2のバイスペクトル
b(f1,f2)は、準備段階で算出しておいた第1のバイコヒーレンス
である。
ここで、この式(8)は、バイスペクトルの算出にあたって式(7)を用いた場合の式である。式(6)を用いて第1のバイコヒーレンスおよび第2のバイコヒーレンスを算出して、それらの差分バイコヒーレンスを算出してもよい。
この計測時においても、さらに新たな1周期から切り出された新たな第2の信号が入力されると、その新たな1周期における新たな第2の信号についてもFFT算出345が行なわれ、新たな第2のバイスペクトル算出346が行なわれる。そして、今度は、準備段階において算出された(n−1)周期分の第1のバイスペクトルはそのままにして、その(n−1)周期分の第1のバイスペクトルに、前回算出された第2のバイスペクトルに代えて今回新たに算出された第2のバイスペクトルを加えたn周期分のバイスペクトルに基づいて新たな第2のバイコヒーレンスの算出347が行なわれる。さらにその新たに算出された第2のバイコヒーレンスから、準備段階において算出された第1のバイコヒーレンスが減算されて新たな差分バイコヒーレンスの算出348が行なわれる。これが繰り返し実行され、順次新たな差分バイコヒーレンスが算出される。
図10は、差分バイコヒーレンス算出部における差分バイコヒーレンス算出処理の概念図である。
ここでは、図9を参照して説明した、図3に示す差分バイコヒーレンス算出部34における演算の中核となる差分バイコヒーレンス算出処理について説明する。
ここでは、計測前の準備段階において、(n−1)周期のそれぞれについて信号切出し、FFT処理、およびバイスペクトルの算出が行なわれ、(n−1)個のバイスペクトルが算出される(I)。そしてさらに、その(n−1)個のバイスペクトルから第1のバイコヒーレンスが算出される(II)。
ここで、バイコヒーレンスは、前述の式(6)あるいは式(7)で表わされる通り、2つの周波数f1,f2の変数で表現される関数である。そこで、この図10における(B)および後述する(D)では、横軸が周波数f1,縦軸が周波数f2で表わされている。このバイコヒーレンスは、f1=f2の対角線92に対して対称形であり、したがってここでは、f1≧f2の領域(ハッチングの領域)のみバイコヒーレンスの値が算出される。
さらに、今度は計測時において、1周期分の原信号の中から切出し範囲内の信号が切り出されて、FFT処理およびバイスペクトルの算出が行なわれ(III)、さらにその1周期のバイスペクトルと、計測前に算出しておいた(n−1)周期分の(n−1)個のバイスペクトルとを合わせた、合計n個のバイスペクトルに基づく第2のバイコヒーレンスの算出が行なわれる(IV)。そしてさらに、この第2のバイコヒーレンスから、準備段階で算出しておいた第1のバイコヒーレンスが減算されて、差分バイコヒーレンスが算出される(V)。
図11は、図3に示す指標値算出部における演算処理内容を示したブロック図である。
この指標値算出部35では、計測前の準備段階において閾値算出351が行なわれる。他の演算処理は計測時に行なわれる。
閾値算出351にあたっては、差分バイコヒーレンス算出部34から、エンジンの関心のある振動モードごとの代表値の平均値μと標準偏差σを受け取り、閾値TRが、
TRm=αm×σm+μm・・・(9)
ただし、
TRmは、振動モードmの閾値
αmは、振動モードmごとに設定された係数
σmは、ノッキングが発生していない状態における振動モードmの代表値の 標準偏差
μmは、ノッキングが発生していない状態における振動モードmの代表値の 平均値
に従って算出される。
また、この指標値算出部35では、計測時において、特徴量算出352と代表値算出353が行なわれる。
図12は、差分バイコヒーレンスの算出結果の一例を示した図である。
この図12は、1kHzの正弦波信号と2kHzの正弦波信号を重畳した信号に対して、上記の演算により算出された差分バイコヒーレンスb_sub(f1,f2)を表わしている。横軸も縦軸も周波数であって、例えば横軸がf1,縦軸がf2である。
この図12には、f1=f2の対角線上であって、f1,f2=1kHzの位置に大きな値aが表われている。このように、差分バイコヒーレンスb_sub(f1,f2)は、分析対象としている信号に、ある周波数成分(ここではfとする)とその2倍の周波数成分(2f)とからなる2次の調和成分に変化があったときに、f1=f2の対角線上の、f1=f2=fの位置に大きな値が表われるという性質がある。
ノッキングは、エンジンの一種の共振現象であり、ノッキングが発生すると気筒内に衝撃波が発生し、エンジンの振動や音に、そのエンジンの、ある1つの固有振動数(共振周波数)の成分とその高調波成分(特に2倍の周波数成分)が出現する。ここでは、この点に着目し、差分バイコヒーレンスをノッキングの検出に採用して成功したものである。
図3における差分バイコヒーレンス算出部34で算出された差分バイコヒーレンスb_sub(f1,f2)は、指標値算出部35に入力される。
この指標値算出部35では、特徴量算出352と、代表値算出353が行なわれる。ここで、特徴量は、各周波数における2次の調和成分の、準備段階と計測時との間での変化量を表わし、代表値は各振動モードごと、かつ各サイクル数ごとの特徴量の代表値を表わしている。
図13は、特徴量算出処理をモデル化して示した図である。
上述の通り、差分バイコヒーレンスb_sub(f1,f2)を算出すると、その分析対象の信号に2次の調和成分(周波数fと2f)に変化(ノッキングの発生のない第1の期間からの変化)があったときに、対角線上のf1=f2=fの位置に大きな値が表われる。
そこで図13(A)に示す例では、差分バイコヒーレンスb_sub(f1,f2)の対角線f1=f2上のデータが抽出され、その抽出されたデータがf1=f2=fにおける特徴量とされている。
また、図13(B)は、対角線f1=f2上の点を中心とする3×3の領域内のデータの平均値が算出され、その平均値がf1=f2=fにおける特徴量とされる。
ここで、3×3の領域とはいっても、バイコヒーレンスの性質上、差分バイコヒーレンスb_sub(f1,f2)のf1=f2の対角線を対称軸とするf1>f2の領域とf1<f2の領域とで同一のデータがあらわれる。そこでここでは、3×3の領域のうちf1≧f2の領域の6つのデータの平均値が算出され、その平均値がその周波数f1=f2=fの特徴量とされる。
これは、理論上はf1=f2の対角線上に2次の調和成分の大きさを表わす数値が表われるものの、演算の誤差等により少しずれた位置に表われることも考えられる。そこで、図13(B)の例では、3×3の領域内のデータの平均値を特徴量として採用している。なお、ここでは平均値を採用しているが、その3×3の領域内の最大値を、その領域の中心の周波数f1=f2=fにおける特徴量としてもよい。その他、2次の調和成分の変化のレベルを表わす量であれば特徴量として採用し得る。
ここで、以上の音圧信号の切出しから特徴量の算出までの一連の処理は、エンジンの各サイクル数ごとに繰り返し実行される。
図14は、図3における指標値算出部で実行される、代表値算出処理をモデル化して示した図である。
図14(A)には、多数のサイクル数にわたる、各サイクル数ごとの多数の差分バイコヒーレンスの算出結果が概念的に示されている。
図3における差分バイコヒーレンス算出部34では、あらかじめ定めておいた所要のサイクル数範囲内について、各サイクル数ごとに差分バイコヒーレンスb_sub(f1,f2)が算出され、指標値算出部35では、それら各サイクル数ごとに特徴量が算出される。各サイクル数ごとの特徴量は周波数fの関数である。
図14(B)は、各サイクル数ごとの特徴量を周波数とサイクル数を変数とした2次元平面上に並べて表現した図である。縦軸は、特徴量である、
周波数方向に延びる複数の矩形は、その矩形内の一列の特徴量が、1つのサイクル数について算出された、周波数fの関数としての特徴量であることを表わしている。
図14(C)は、図14(B)と同一の特徴量分布を表わした図である。ただし、この図14(C)には、いくつかの周波数についてサイクル数方向に延びる楕円が示されている。すなわち、ここでは、いくつかの特定の周波数における、サイクル数を変数とした特徴量に着目する。これらいくつかの特定の周波数は、エンジンの固有振動数(共振周波数)に対応している。
図15は、エンジンの固有振動数(共振周波数)の説明図である。
エンジンの固有振動数(共振周波数)fp,qは、
ただし、Cは音速
Brは、ボア径
p,qは、振動モード
Ρp,qは、振動モード(p,q)における定数
を表わしている。
図15に示すように、例えば振動モードが(1,0)モードのときは、定数Ρ1,0=1.841であり、ボア径Brが87mmのときの固有振動数(共振周波数)は、f1,0=6712Hzである。他の振動モード(p,q)のときも同様である。「気筒内振動モード」の図は、ボア内の気体の振動の様子を図解したものである。
ここには、固有振動数(共振周波数)fp,qの低い順に(3,0)モードまで示されている。解析学的にはさらに高次の振動モードも存在するが、エンジン試験で実用上重要なのは、ここに示した範囲内の振動モードである。
図14に戻って説明を続ける。
図14(C)に示す長楕円は、各振動モードにおける、サイクル数を変数とした特徴量を囲っている。エンジンの固有振動数(共振周波数)は、式(11)で表わされるが、エンジンのその時々の運転状況によってエンジン内の温度が変化し、これにより音速Cが変化する。また、演算誤差等、様々な誤差要因もある。
そこで、各振動モードごとにサーチの周波数帯域を定め、各サイクル数ごとにその周波数帯域内の特徴量の最大値を探索し、探索された最大値を、その振動モードの、そのサイクル数の代表値とする。ただし、最大値を代表値とするのではなく、その周波数帯域内の特徴量の複数のピーク値の平均値を算出するなど、そのサイクル数においてその振動モードのノッキングが発生しているか否かの指標となる指標値を算出する基になる値であればよい。
図14(D)は、各振動モード(p,q)における、サイクル数を変数とする代表値を示している。この代表値は、0〜1の範囲内の値であり、1に近いほど強いノッキングが発生していることを表わしている。
図3における指標値算出部35では、以上のようにしてサイクル数を変数とした代表値算出353が行なわれる。
指標値算出部35では、上記のようにして、各振動モードm=(p,q)ごと、かつ各サイクル数ごとの代表値が算出された後、比較演算354および指標値算出355が行なわれる。
比較演算354では、
CAs,m=b_subs,m−TRm・・・(11)

ただし、
CAs,mは、各振動モードmごと、かつ各サイクル数sごとの差分値、
b_subs,mは、各振動モードmごと、かつ各サイクル数sごとの代表値、
TRmは、各振動モードmごとのノッキングが発生していない状態における代表 値の平均値
である。
指標値算出355では、式(11)の差分値を使って、
が算出される。
ここで、
indexsは、各サイクル数sごとの指標値、
s,mは、CAs,mがプラスのときに‘1’、マイナスのときに‘0’の値となる 係数
である。
すなわち、ここでは、各サイクル数ごとに、2次の調和成分の大きさと複数の振動モードへの出現数とに応じた指標値が算出される。
また、算出された指標値を使用して、指定サイクル数中のノッキング発生有りの割合であるノッキング発生率と、回転速度からの単位時間当たりのエンジン行程数の積から算出した、単位時間当たりの平均ノッキング回数の値も指標値とすることができる。この指標値は聴感におけるノッキング指標と相関が高い。
このようにして算出された指標値は、図3の情報提示部36に入力される。
情報提示部36では、指標値算出部35で算出された指標値に由来する情報、例えば、指標値の大きさに応じた長さや色の棒グラフ等が提示される。具体的には、例えばそのような棒グラフ等を表わす画像情報が作成されて図1,図2に示す操作盤40に送られる。操作盤40では、送られてきた画像情報に基づく画像がモニタ画面40a上に表示されオペレータ50の観察に供される。あるいは、この情報提示部36は、必要に応じて、ノートPC30の表示画面30a上にも画像を表示する。
尚、情報提示部36による指標値由来の情報は、上記のようなグラフに限られるものではなく、オペレータ50によるノッキングの発生やノッキングの程度の評価に資する情報であればよい。また、情報提示方法は表示に限るものでもない。例えば、指標値を、閾値処理により、ノッキングなし、弱いノッキング有り、中程度のノッキング有り、強いノッキング有り等の複数の段階に区分けして、そのノッキングの現在の段階を表示し、あるいは音で知らせてもよい。さらには、指標値は、式(11)、式(12)により算出した値である必要はなく、代表値に基づいて算出される、ノッキングの指標となる値であればよい。
図16は、音の伝播遅延時間の考慮の有無による特徴量の変化を示した図である。ここでは、#1気筒1_1(図5参照)について、遅延させずに切り出した音圧信号(図8(B)参照)に基づいて算出した特徴量分布(図16(A))と、遅延させて切り出した音圧信号(図8(B)参照)に基づいて算出した特徴量分布(図16(B))を示した図である。図16(A)の領域R1と図16(B)の領域R2は、同一の周波数領域を囲っている。
図16(A)の領域R1と、図16(B)の領域R2とを比べると分かるように、図16(B)の方がこの周波数領域の特徴量が大きく観測されており、この特徴量に基づてノッキングが高精度に検出される。
図17,図18は、これまで説明してきた演算の流れを示すフローチャートである。
ここで、図17は、計測時の準備段階における演算の流れを示したフローチャート、図18は、計測時における演算の流れを示したフローチャートである。
ここでは、エンジンの運転条件を一定に保ち、その一定の運転条件の下で図17,図18に示す処理が実行される。
先ず、図17に示す計測前の準備段階における演算について説明する。
エンジンをある1つの回転速度で動作させておいて、ノッキングが発生していないと思われる第1の期間内において、音圧信号(図4(B))や角度信号(クランク角度パルス(図4(C))および回転パルス(図4(D))を取得して(ステップS101)、切出し角度範囲内の音圧信号を、音センサまでの音の伝播遅延時間を考慮して切り出す(ステップS102)。
次に、その切り出した音圧信号をFFT処理し(ステップS103)、第1のバイスペクトル(式(3)参照)を算出する(ステップS104)。ここでは、ステップS101〜S104が(n−1)回繰り返されて(ステップS105)、得られたバイスペクトルに基づいて第1のバイコヒーレンス(式(6)参照)を算出する(ステップS106)。
順次新たに切り出された第1の信号を使って第1のバイコヒーレンスの算出が順次m回行なわれ、ノッキングが発生していない状態にあるか否かが評価される(ステップS108)。ノッキングが発生していない旨、評価されると(ステップS109)、閾値TR(式(7)参照)が算出されて(ステップS110)、計測前の演算処理を終了する。
ステップS108における評価の結果、ノッキングが発生していない状態にあるとは断定できないときは(ステップS109)、ステップS101に戻り、ステップS101〜S108の処理が繰り返される。
次に、図18を参照して計測時における演算処理について説明する。
計測時においても、エンジンを計測前と同じある1つの回転速度で動作させておいて、計測前(図17)と同様に、音圧信号(図4(B))や角度信号(クランク角度パルス(図4(C)および回転パルス図4(D))を取得して(ステップS201)、切出し角度範囲内の音圧信号が切り出される(ステップS202)。この計測時における音圧信号の切り出しにあたっても、音センサまでの距離に応じた音の伝播遅延時間分だけ遅らせた信号範囲内の音圧信号が切り出される。
次に、その切り出した音圧信号をFFT処理し(ステップS203)、第2のバイスペクトル(式(3)参照)を算出する(ステップS204)。
次に、このステップS204で算出した1周期分の第2のバイスペクトルと、図17のステップS104で算出された(n−1)周期分の第1のバイスペクトルとを合わせた、合計n周期分のバイスペクトルを基に、第2のバイコヒーレンス(式(7)参照)が算出される(ステップS205)。さらに、このステップS205で算出された第2のバイコヒーレンスから、図17のステップS106で算出された第1のバイコヒーレンスが各周波数(f1,f2)ごとに減算されて差分バイコヒーレンス(式(8)参照)が算出される(ステップS206)。さらに、その算出された差分バイコヒーレンスと図17のステップS110で算出しておいた閾値を用いて指標値(式(11)参照)が算出され(ステップS207)、その指標値由来の情報が提示される(ステップS208)。
計測時においては、以上の処理が計測期間(第2の期間)中、繰り返し実行される。
ここでは、図17,図18に示す処理が、エンジンの運転条件を変更しながら、各運転条件ごとに行なわれる。
本実施形態では、上記の通り、音圧信号に含まれる2次の調和成分の変化を抽出することでノッキングを検出しており、従来の手法では様々な雑音でほとんど掻き消されてしまって検出が不可能であった微弱なノッキングやエンジンの高回転速度領域のノッキングでも検出することを可能としている。
なお、ここでは、本発明をノッキング検出装置に適用した例について説明したが、本発明の信号解析装置は、ノッキング検出装置に限られず、周期的な動作を行なう対象物の振動に起因して発せられた音をピックアップしてその対象物の動作解析を行なう場合に広く適用することができる。
1 エンジン
1_1,1_2,1_3,1_4 気筒
2 ダイナモ
3 自動車
4 試験台
5 音センサ
6 ECU
10 ノッキング検出装置
20 データ収集装置
30 ノート型パーソナルコンピュータ
30a 表示画面
31 音圧信号取得部
32 角度信号取得部
33 信号切出部
34 差分バイコヒーレンス算出部
35 指標値算出部
36 情報提示部
40 操作盤
40a モニタ画面
50 オペレータ

Claims (8)

  1. 周期的な動作を行なう対象物の動作に伴う振動に起因して発せられた音をピックアップする音センサによりピックアップされた音を表わす原信号を取得する原信号取得部と、
    前記対象物の周期的な動作角度の少なくとも原点を表わす原点情報を含む角度情報を取得する角度情報取得部と、
    前記角度情報取得部で取得した角度情報に基づいて、前記原信号から、切出し角度範囲内の信号を切り出す信号切出部と、
    前記信号切出部で切り出された信号に基づいて、前記対象物の動作解析を行なう動作解析部とを備え、
    前記信号切出部が、前記対象物の動作に伴う振動発生源と前記音センサとの間の距離に応じた音の伝播遅延時間を考慮して、前記原信号から切出し角度範囲内の信号を切り出すものであることを特徴とする信号解析装置。
  2. 前記対象物が、互いに位相を異にしてそれぞれが周期的な動作を行なうことによりそれぞれが振動に起因する音を発生させる複数の振動発生源を有し、
    前記信号切出部が、前記角度情報と、前記音センサと前記複数の振動発生源の各々との間の各距離に応じた音の各伝播遅延時間とに基づいて、該複数の振動発生源について互いに同一の位相領域からなる切出し角度範囲内の信号を切り出すものであることを特徴とする請求項1記載の信号解析装置。
  3. 前記対象物が、複数の気筒を備え、該複数の気筒を前記複数の振動発生源とするエンジンであることを特徴とする請求項2記載の信号解析装置。
  4. エンジン燃焼に伴う振動に起因して発せられた音をピックアップして原信号を生成する音センサで生成された該原信号を取得する原信号取得部と、
    前記エンジンの回転角度の、少なくとも原点位置情報を含む角度情報を取得する角度情報取得部と、
    前記角度情報取得部で取得した角度情報に基づくとともに、エンジン燃焼に伴う振動発生源と前記音センサとの間の距離に応じた音の伝播遅延時間を考慮して、前記原信号から、切出し角度範囲内の信号を、エンジン燃焼の複数の周期に亘って繰り返し切り出す信号切出部と、
    前記信号切出部で繰り返し切り出された、ノッキングが発生していない第1の期間内の複数周期分の複数の第1の信号それぞれに基づいて、複数の第1のバイスペクトルを算出して、該複数の第1のバイスペクトルの平均的な値を正規化した第1の正規化値を算出し、
    前記信号切出部で切り出された、ノッキングの発生のおそれがある第2の期間内の1周期分の第2の信号に基づいて、第2のバイスペクトルを算出して、前記複数の第1のバイスペクトルと該第2のバイスペクトルとを合わせた複数のバイスペクトルの平均的な値を正規化した第2の正規化値を算出し、
    前記第2の正規化値と前記第1の正規化値との差分からなる差分正規化値を算出する差分正規化値算出部と、
    前記差分正規化値算出部で算出された差分正規化値に基づいて前記エンジンの指標となる指標値を算出する指標値算出部と、
    前記指標値算出部で算出された指標値に由来する情報を提示する情報提示部とを備えたことを特徴とするノッキング検出装置。
  5. 前記エンジンが、複数の気筒を備え、該複数の気筒を前記複数の振動発生源とするエンジンであって、
    前記信号切出部が、前記角度情報と、前記音センサと前記複数の気筒の各々との間の各距離に応じた音の各伝播遅延時間とに基づいて、該複数の振動発生源について互いに同一の位相領域からなる切出し角度範囲内の信号を切り出すものであることを特徴とする請求項4記載のノッキング検出装置。
  6. 前記指標値算出部が、前記差分正規化値算出部で算出された差分正規化値b_sub(f1,f2)(但し、f1,f2はいずれも周波数を表わす)のうちのf1=f2近傍の値から、2次の調和成分が含まれているレベルを表わす特徴量を算出し、前記エンジンの、少なくとも1つの振動モードにおける固有振動数近傍の周波数帯域内の前記特徴量のうちの代表値を算出して、該代表値由来の値を前記指標値とするものであることを特徴とする請求項4又は5記載のノッキング検出装置。
  7. 前記指標値算出部が、前記差分正規化算出部に、前記複数の第1のバイスペクトルのうちの少なくとも1つの第1のバイスペクトルを順次入れ替えながら前記第1の正規化値を複数算出させ、該複数の第1の正規化値どうしの差分の平均値μと標準偏差σとを算出して、ノッキング有無の判定の閾値TRを、
    TR=α×σ+μ
    但し、αは、係数を表わす
    に従って算出し、
    前記代表値と前記閾値とを比較する比較演算を経て前記指標値を算出するものであることを特徴とする請求項6記載のノッキング検出装置。
  8. 前記指標値算出部がさらに、前記比較演算を経て算出された前記指標値を使用して、指定サイクル数についてノッキングの発生の有無を判定し該指定サイクル数の中でノッキングの発生有りと判定されたサイクル数の割合であるノッキング発生率を算出し、該ノッキング発生率と回転速度からの単位時間当たりのエンジン行程数の積から算出した、単位時間当たりの平均ノッキング回数の値を、新たな指標値とするものであることを特徴とする請求項7記載のノッキング検出装置。
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