JP6273167B2 - ノッキング検出装置およびノッキング検出方法 - Google Patents

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Description

本発明は、エンジンのノッキングを検出するノッキング検出装置およびノッキング検出方法に関する。
従来より、エンジンの点火タイミング調整試験等において、ノッキングが発生しない範囲内で最直な点火タイミング等を探るために、エンジンのノッキングの検出が行われている。
このような目的のためのノッキング検出方法として、従来、エンジンの筒内圧の時間変化を計測し、その筒内圧変化に基づいてノッキングが検出されている(例えば、特許文献1参照)。
しかしながらエンジンの筒内圧を計測するにはエンジンを加工してエンジンの内部にセンサを取り付ける必要があり、計測のための準備が大変である。また、エンジンを加工したり、そのエンジンの中にセンサを取り付けたりすることによって、エンジンの特性が変化し、点火タイミング調整等の精度が低下するおそれがある。また、テスト用のエンジンを用いた試験で点火タイミングの調整等を行なった後、実車試験が行われるが、実車のエンジンにそのような筒内圧を計測するセンサを取り付ける訳にはいかず、実車におけるノッキングの発生の有無は熟練者が自分の聴覚で聴き分けているのが現状であり、最終的には熟練者の聴覚によりノッキング判定をしている。また、テスト用のエンジンを用いた試験でもノッキングの発生の有無は熟練者がノッキング判定しているが、エンジンの特性が変化し、テスト用のエンジンの場合ではノッキングしていない条件でも、実車試験ではノッキングが発生してしまい、ノッキング条件にずれがあることも指摘されている。
エンジンを加工せずに済む、エンジンのノッキング検出用のセンサとして、いわゆるノックセンサと呼ばれるセンサが知られている(例えば、特許文献2〜5参照)。このノックセンサは、エンジンの外表面に取り付ければよく、筒内圧の計測と比べ、センサの取付けは容易である。しかしながら、このノックセンサは、エンジンが破損するかも知れないような強いノッキングを検出するものであって、点火タイミングを少しずつ調整しながらノッキングが発生し始めたか否かを検出するといった微妙なノッキング検出は難しい。
また、エンジン燃焼に伴う音や振動をピックアップしてその信号に基づいてエンジンのノッキングを検出する試みがなされている(例えば、特許文献6〜9参照)。エンジン燃焼に伴う音や振動からノッキングを十分な精度で検出することができれば、エンジンの加工は不要であり、熟練者の聴覚によるノッキング判定との間のずれも解消することが期待される。
しかしながら、エンジン燃焼に伴う音や振動に基づいて十分な精度のノッキング検出が可能なのは、低い回転速度領域のみであって、エンジン試験 において必要となる高い回転速度をカバーするには到底及ばない。
このように、音や振動に基づくノッキングの検出は、回転速度がエンジン試験において必要となる回転速度全域に及ばないことから、音や振動に基づくノッキング検出は、試みられているものの十分には実用化されていないのが現状である。
特開2003−314349号公報 特開平4−339157号公報 特開平5−26721号公報 特開2005−83314号公報 特開2005−188297号公報 特開平4−152239号公報 WO2010/013663号公報 特開2012−103157号公報 特開2014−29121号公報
本発明は、上記事情に鑑み、エンジン燃焼に伴う振動に起因する、例えば音や振動自体といった物理量に基づいて、エンジン試験で必要となる回転速度全域のノッキングを、エンジン試験で必要とする十分な精度で検出することのできるノッキング検出装置およびノッキング検出方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成する本発明のノッキング検出装置は、
エンジン燃焼に伴う振動に起因する物理量をピックアップしてその物理量の時間変化を表わす原信号を生成するセンサで生成された原信号を取得する原信号取得部と、
エンジンの回転角度の、少なくとも原点位置情報を含む角度情報を取得する角度情報取得部と、
角度情報取得部で取得した角度情報に基づいて、上記原信号から、切出し角度範囲内の信号を切り出す信号切出部と、
信号切出部で切り出された信号に基づいてバイコヒーレンスS(f1,f2)(但し、f1,f2はいずれも周波数を表わす)を算出するバイコヒーレンス算出部と、
バイコヒーレンス算出部で算出されたバイコヒーレンスS(f1,f2)のうちのf1=f2近傍の値から、2次の調和成分が含まれているレベルを表わす特徴量を算出し、前記エンジンの、少なくとも1つの振動モードにおける固有振動数近傍の周波数帯域内の前記特徴量のうちの代表値を算出して、その代表値由来の値を、エンジンのノッキングの指標となる指標値する指標値算出部と、
指標値算出部で算出された指標値に由来する情報を提示する情報提示部とを備えたことを特徴とする。
本発明は、ノッキングの原因や現象を探り、ノッキングの検出に適合すると思われる様々な演算手法を試みた結果、本発明の完成に到達したのである。本発明は、バイコヒーレンスを算出し、ノッキングの指標となる指標値をバイコヒーレンスに基づいて算出しているため、エンジン試験に必要な広範な回転速度域内にわたるノッキングをエンジン試験に必要な十分な精度をもって検出することができる。
ここで、ノッキングはエンジン燃焼の異常で各気筒の固有振動数(共振周波数)での振動が増幅され、衝撃波が発生する現象である。この衝撃波は、各気筒の固有振動数(共振周波数)の2倍の振動数(周波数)での振動を伴っている。分析対象としている物理量にある周波数成分とその2倍の周波数成分とからなる2次の調和成分が含まれていた場合、その2次の調和成分はバイコヒーレンスのf1=f2のライン上の値としてあらわれる一方、ノイズ成分は、f1=f2のラインから外れた位置にあらわれる。ただし、演算には誤差を伴うことから、その誤差分を含め、f1=f2近傍の値から特徴量を算出する。ここで、エンジンの固有振動数(共振周波数)は、計算や観察等によりあらかじめ知ることができるが、エンジン燃焼に伴う発熱により変化する。このため、特徴量を算出した後、固有振動数(共振周波数)の変動範囲を含む周波数帯域内の特徴量に基づいて代表値を算出する。本発明によれば、このようにして算出された代表値由来の値を上記指標値とすることにより、高精度なノッキング検出を行なうことができる。
ここで、本発明のノッキング検出装置において、上記センサが、エンジン燃焼に伴う振動に起因する、上記物理量としての音をピックアップするセンサであることが好ましい。
エンジンの音をピックアップしてそれを原信号として用いると、エンジンに一切触れることなく、テスト用エンジンと実車とで同一のノッキング検出を行なうことができる。また、音をベースとすることで熟練者の聴覚によるノッキングの判定に最も適合した判定を行なうことが可能となる。
あるいは、本発明のノッキング検出装置において、上記センサが、エンジン燃焼に伴う振動自体を前記物理量としてピックアップするセンサであってもよい。
本発明のノッキング検出装置は、音に限らず、振動や、その他エンジン燃焼に伴う振動に起因しノッキングの周波数に追随して変化する物理量であれば、その物理量に基づいてノッキングを検出することができる。
また、上記目的を達成する本発明の、ノッキング検出方法は、コンピュータに、
エンジン燃焼に伴う振動に起因する物理量の時間変化を表わす原信号を取得するとともに、エンジンの回転角度の、少なくとも原点位置情報を含む角度情報を取得し、
取得した角度情報に基づいて、上記原信号から、切出し角度範囲内の信号を切り出し、
切り出された信号に基づいてバイコヒーレンスS(f1,f2)(但し、f1,f2はいずれも周波数を表わす)を算出し、
算出されたバイコヒーレンスS(f1,f2)のうちのf1=f2近傍の値から、2次の調和成分が含まれているレベルを表わす特徴量を算出し、エンジンの、少なくとも1つの振動モードにおける固有振動数近傍の周波数帯域内の特徴量のうちの代表値を算出し、
その代表値由来の値を、エンジンのノッキングの指標となる指標値して、その指標値に由来する情報を提示する処理を実行させることを特徴とする。

以上の本発明によれば、エンジン燃焼に伴う振動に起因する、例えば音や振動自体といった物理量に基づいて、エンジン試験で必要となる広範な回転速度域内のノッキングを検出することができる。
本発明の一実施形態としてのノッキング検出装置を採用した、テスト用のエンジンを試験対象としたときのエンジン試験システムの概要を示した図である。 本発明の一実施形態としてのノッキング検出装置を採用した、実車を試験対象としたときのエンジン試験システムの概要を示した図である。 図1に示すノートPCにおける演算内容を示すブロック図である。 信号切出しの説明図である。 図3に示す信号切出部から指標値算出部に至る処理の流れを示した図である。 バイコヒーレンスの算出結果の一例を示した図である。 特徴量算出処理をモデル化して示した図である。 図3における指標値算出部で実行される、図5(F)の指標値算出処理をモデル化して示した図である。 エンジンの各気筒の固有振動数(共振周波数)の説明図である。 これまで説明してきた演算の流れを示すフローチャートである。
以下、本発明の実施の形態を説明する。
図1,図2は、本発明の一実施形態としてのノッキング検出装置を採用したエンジン試験システムの概要を示した図である。
図1ではテスト用のエンジンを試験対象としたエンジンベンチ試験を示しており、図2では実車を試験対象とした実車試験を示している。
図1に示すテスト用エンジン1は、ダイナモ2に連結されており、様々な負荷条件下でのエンジンの試験が行なわれる。図2に示す自動車3は、図1に示すテスト用エンジンと同型のエンジンが搭載された自動車である。この自動車3は、試験運転用の試験台4の上に載せられており、試験台4では様々な負荷条件が再現されて、それら様々な負荷条件下での運転試験が行なわれる。
例えば点火タイミングの調整試験は、図1に示すテスト用エンジンで行なわれ、最適と考えられる点火タイミングが決まると、自動車3はその調整された条件下で運転されてその調整の良否の確認が行なわれる。
ここでは、図1に示すエンジンベンチ試験の場合も図2に示す実車試験の場合も共通に、エンジン1の近くにセンサ5が配置される。本実施形態におけるセンサ5は、エンジン1の燃焼に伴う振動に起因する物理量としての音をピックアップして音圧信号を生成するセンサである。
このセンサ5でピックアップされた音圧信号は、ノッキング検出装置10に入力される。
また、エンジン1の回転を制御するECU(Engine Control Unit)からはエンジン1の回転角度を表わす角度信号が取り出される。
本実施形態では、この角度信号には、エンジン1回転につき1パルスの、回転角度の原点を表わす回転パルスと、エンジン1回転につき720パルスのクランク角度パルスとが含まれている。尚、図2において、ECU6が自動車2とは別に示されているが、これは分かり易さのために別々に示したのであって、図2におけるECU6は自動車3に内蔵されている要素である。
図1および図2のいずれの場合も、センサ5でのエンジン音のピックアップにより得られた音圧信号およびECUからの角度信号は、ノッキング検出装置10に入力される。このように、本実施形態のノッキング検出装置10は、エンジンベンチ試験の場合(図1の場合)も実車試験の場合(図2の場合)も共通に使用される。
このノッキング検出装置10は、データ収集装置20とノート型パーソナルコンピュータ(以下、単に「ノートPC」と略記する)30とで構成されている。データ収集装置20は、センサ5からの音圧信号をA/D変換し、角度信号とともにその内部に一旦蓄えた後、それらのデータをノートPC30に渡す。ノートPC30は、データ収集装置20からデータを受け取り、ノッキングの検出に関する後述する演算を実行して、その演算結果をデータ収集装置20に送る。データ収集装置20はノートPCからその演算結果を受け取って操作盤40に送る。
操作盤40は図1に示すエンジンベンチ試験の際にオペレータ50によって操作され、点火時期やその他エンジン1の様々なパラメータの調整を行なう操作盤である。この操作盤40のモニタ画面40a上には、エンジン1の、調整しようとしているパラメータに応じて、様々な情報が表示される。エンジン1の点火タイミングの調整にあたっては、ノッキング検出装置10から送られてきたノッキングに関する演算結果がモニタ画面40a上に表示される。オペレータはその表示を見ながら点火タイミングを調整する。
また、ノートPC30での演算結果は、ノートPC30自体の表示画面30a上に表示することもできる。
操作盤40では、図2に示す実車試験の際は、基本的には点火タイミング調整等のエンジンの調整は行なわれない。操作盤40では、実車試験の際は、モニタ画面40a上への様々な情報の表示と、エンジンの様々な状態やその変化のデータの収集が行なわれている。
図3は、図1に示すノートPCにおける演算内容を示すブロック図である。
音圧信号取得部31は、図1,図2に示すセンサ5でピックアップされてデータ収集装置20でA/D変換された音圧信号を取得する役割りを担っている。この音圧信号取得部31は、ノートPCのハードウエア上は、データ入力ポートおよび入力インタフェース回路が担当する。
また、角度信号取得部32は、図1,図2に示すECU6から取り出されてデータ収集装置20を経由してきた角度信号を取得する役割りを担っている。この角度信号取得部32も、ハードウエア上はデータ入力ポートおよび入力インタフェースが担当している。
ここで、これら音圧信号取得部31および角度信号取得部32は、本発明にいう、原信号取得部および角度情報取得部の各一例に相当する。また、音圧信号取得部31で取得される音圧信号は本発明にいう原信号の一例に相当する。
信号切出部33は、角度信号取得部32で取得された角度信号を参照して、音圧信号取得部31で取得された音圧信号の中から特定の角度範囲内の信号を切り出す。
図4は、信号切出しの説明図である。
この図4には、エンジンの筒内圧力変化カーブ(図4(A))、音圧信号(図4(B))、1回転720パルスのクランク角度パルス、および1回転1パルスの回転速度パルス(図4(D))が示されている。図4(E)は、図4(A)〜(D)の一部区間を時間的に引き延ばして示した拡大図である。これらのうちの図4(A)に示すエンジンの筒内圧力変化カーブは、参考のために示したのであって、ここで説明しているノッキング検出装置10には不要の情報である。
ここでは、図4(D)に示す回転パルスの発生を契機にして図4(C)に示すクランク角度パルスを計数し、その計数値に基づいてノッキングが発生し得る角度範囲を決定し、図4(B)に示す音圧信号のうちのその決定された角度範囲(切出し角度範囲)内の音圧信号が切り出される。具体的には、ここでは、点火位置やTDC(Top Dead Center)付近から約90度の角度範囲内の音圧信号が切り出される。
ここで、本実施形態では、点火タイミングが変更されても切出し角度範囲は固定されたままである。ただし、点火タイミングの変更に応じて切出しの角度範囲を変更してもよい。
また、本実施形態では、1回転720パルスのクランク角度パルスを計数することで切出し角度範囲を決定しているが、1回転1パルスの回転パルス(図4(D))のみに基づいて、隣接する回転パルスの間隔からエンジン回転速度(1回転に要する時間)を求め、その1回転に要する時間の中の特定の時間領域を切出し角度範囲としてもよい。あるいは回転パルス(図4(D))などによる角度の原点情報と、クランク角度パルスよりも分解能の低い角度信号とに基づいて、切出し角度範囲を決定してもよい。
図3に戻って説明を続ける。
信号切出部33で切り出された音圧信号は、バイコヒーレンス算出部34に入力され、バイコヒーレンスが算出される。
図5は、図3に示す信号切出部から指標値算出部に至る処理の流れを示した図である。ここで、図5(A)は、信号切出部33による信号切出し処理を示している。縦軸は、音圧、横軸はクランク角度であり、上述の通り、特定の切出し角度範囲内の音圧信号が切り出される。図5(B)のFFT処理、図5(C)のバイスペクトル算出処理、および図5(D)のバイコヒーレンス算出処理は、図3に示すバイコヒーレンス算出部34が担当している。このバイコヒーレンス算出部34は、信号切出部33で切り出された音圧信号にFFT処理を施し、そのFFT処理結果からバイスペクトルを算出し、さらにその算出されたバイスペクトルからバイコヒーレンスを算出する。
ここでは、信号切出部33で切り出された音圧信号を、
Figure 0006273167
で表わす。ただし、tは時刻を表わしている。
この音圧信号x(t)にFFT処理が施され、周波数fを変数とする周波数データ
Figure 0006273167
が算出される。
次にこの周波数データX(f)に基づいて、バイスペクトル
Figure 0006273167
が算出される。ここで、f,fは周波数、*は複素共役を表わしている。
次に、上記のようにして算出したバイスペクトルB(f,f)から、バイコヒーレンス
Figure 0006273167
ただし、P(f)は、周波数fにおけるパワーであって、
Figure 0006273167
で表わされる。
式(4)に示すバイコヒーレンスS(f,f)は、バイスペクトルB(f,f)をパワースペクトルで正規化したものであり、全周波数範囲内において0〜1の範囲内の値を持つ関数である。
信号切出部33では、エンジンの各1回転ごとの同一の切出し角度範囲内の音圧信号が順次切り出され、バイコヒーレンス算出部34では、それに伴って、順次切り出された音圧信号に順次FFT処理を施して順次バイスペクトルB(f,f)を算出し、T回繰り返して、バイスペクトルの平均値とパワースペクトルの平均値からバイコヒーレンスS(f,f)を算出する。
図6は、バイコヒーレンスの算出結果の一例を示した図である。
ここでは、1kHzの正弦波信号と2kHzの正弦波信号を重畳した信号に対して、上記の演算により算出されたバイコヒーレンスS(f,f)を表わしている。横軸も縦軸も周波数であって、例えば横軸がf,縦軸がfである。
この図6には、f=fの対角線上であって、f,f=1kHzの位置に大きな値aが表われている。このように、バイコヒーレンスS(f,f)は、分析対象としている信号に、ある周波数成分(ここではfとする)とその2倍の周波数成分(2f)からなる2次の調和成分が含まれていたときに、f=fの対角線上の、f=f=fの位置に大きな値が表われるという性質がある。
ノッキングは、エンジンの一種の共振現象であり、ノッキングが発生すると気筒内に衝撃波が発生し、エンジンの振動や音には、そのエンジンの、ある1つの固有振動数(共振周波数)の成分とその高調波成分(特に2倍の周波数成分)が含まれる。ここでは、この点に着目し、バイコヒーレンスをノッキングの検出に採用して成功したものである。
図3におけるバイコヒーレンス算出部34で算出されたバイコヒーレンスS(f,f)は、指標値算出部35に入力される。
この指標値算出部35では、図5(E)に示す特徴量算出処理と、図5(F)に指標値算出処理が行なわれる。すなわち、この指標値算出部35では、特徴量が算出され、その算出された特徴量に基づいて指標値が算出される。ここで、特徴量は、各周波数における2次の調和成分の大きさを表わし、指標値は、ノッキングの指標となる値を表わしている。
図7は、特徴量算出処理をモデル化して示した図である。
上述の通り、バイコヒーレンスS(f,f)を算出すると、その分析対象の信号に2次の調和成分(周波数fと2f)が含まれていたときに、対角線上のf=f=fの位置に大きな値が表われる。
そこで図7(A)に示す例では、バイコヒーレンスS(f,f)の対角線f=f上のデータが抽出され、その抽出されたデータがf=f=fにおける特徴量とされている。
また、図7(B)は、対角線f=f上の点を中心とする3×3の領域内のデータの平均値が算出され、その平均値がf=f=fにおける特徴量とされる。
ここで、3×3の領域とはいっても、バイコヒーレンスS(f,f)の性質上f=fの対角線を対称軸とするf>fの領域とf<fの領域とで同一のデータがあらわれる。そこでここでは、3×3の領域のうちf≧fの領域の6つのデータの平均値が算出され、その平均値がその周波数f=f=fの特徴量とされる。
これは、理論上はf=fの対角線上に2次の調和成分の大きさを表わす数値が表われるものの、演算の誤差等により少しずれた位置に表われることも考えられる。そこで、図7(B)の例では、3×3の領域内のデータの平均値を特徴量として採用しているのである。尚、ここでは平均値を採用しているが、その3×3の領域内の最大値を、その領域の中心の周波数f=f=fにおける特徴量としてもよい。その他、2次の調和成分が含まれているレベルを表わす量であれば特徴量として採用し得る。
ここまでの演算処理の説明では、エンジンのサイクル数(行程)には言及しなかったが、以上の音圧信号の切出しから特徴量の算出までの一連の処理は、エンジンの単位時間あたりの各サイクル数(行程)ごとに繰り返し実行される。「単位時間あたりの」という言葉については、以下、省略する。
図8は、図3における指標値算出部で実行される、図5(F)の指標値算出処理をモデル化して示した図である。
図8(A)には、多数のサイクル数にわたる、各サイクル数ごとの多数のバイコヒーレンスの算出結果が概念的に示されている。
図3におけるバイコヒーレンス算出部34では、あらかじめ定めておいた所要のサイクル数範囲内について、各サイクル数ごとにバイコヒーレンスS(f,f)が算出され、指標値算出部35では、それら各サイクル数ごとに特徴量が算出される。各サイクル数ごとの特徴量は周波数fの関数である。
図8(B)は、各サイクル数ごとの特徴量を周波数とサイクル数を変数とした2次元平面上に並べて表現した図である。縦軸は、特徴量である、
周波数方向に延びる複数の矩形は、その矩形内の一列の特徴量が、1つのサイクル数について算出された、周波数fの関数としての特徴量であることを表わしている。
図8(C)は、図8(B)と同一の特徴量分布を表わした図である。ただし、この図8(C)には、いくつかの周波数についてサイクル数方向に延びる楕円が示されている。すなわち、ここでは、いくつかの特定の周波数における、サイクル数を変数とした特徴量に着目する。これらいくつかの特定の周波数は、エンジンの固有振動数(共振周波数)に対応している。
図9は、エンジンの固有振動数(共振周波数)の説明図である。
エンジンの固有振動数(共振周波数)fm,nは、
Figure 0006273167
ただし、Cは音速
Bは、ボア径
m,nは、振動モード
Ρm,nは、振動モード(m,n)における定数
を表わしている。
図9に示すように、例えば振動モードが(1,0)モードのときは、定数Ρ1,0=1.841であり、ボア径Bが87mmのときの固有振動数(共振周波数)は、f1,0=6712Hzである。他の振動モード(m,n)のときも同様である。「気筒内振動モード」の図は、ボア内の気体の振動の様子を図解したものである。
ここには、固有振動数(共振周波数)fm,nの低い順に(3,0)モードまで示されている。解析学的にはさらに高次の振動モードも存在するが、エンジン試験で実用上重要なのは、ここに示した範囲内の振動モードである。
図8に戻って説明を続ける。
図8(C)に示す長楕円は、各振動モードにおける、サイクル数を変数とした特徴量を囲っている。エンジンの固有振動数(共振周波数)は、式(6)で表わされるが、エンジンのその時々の運転状況によってエンジン内の温度が変化し、これにより音速Cが変化する。また、演算誤差等、様々な誤差要因もある。
そこでここでは、各振動モードごとにサーチの周波数帯域を定め、各サイクル数ごとにその周波数帯域内の特徴量の最大値を探索し、探索された最大値を、その振動モードの、そのサイクル数の指標値とする。ただし、最大値を指標値とするのではなく、その周波数帯域内の特徴量の複数のピーク値の平均値を算出するなど、そのサイクル数においてその振動モードのノッキングが発生しているか否かの指標となる指標値を算出すればよい。
図8(D)は、各振動モード(m,n)における、サイクル数を変数とする指標値を示している。この指標値は、0〜1の範囲内の値であり、1に近いほど強いノッキングが発生していることを表わしている。
図3における指標値算出部35では、以上のようにして各振動モードごとの、サイクル数を変数とした指標値が算出される。
図3の情報提示部36では、指標値算出部35で算出された指標値に由来する情報、例えば図8(D)に示すようなグラフ等が提示される。具体的には、例えば図8(D)に示すようなグラフを表わす画像情報が作成されて図1,図2に示す操作盤40に送る。操作盤40では、送られてきた画像情報に基づく画像がモニタ画面40a上に表示されオペレータ50の観察に供される。あるいは、この情報提示部36は、必要に応じて、ノートPC30の表示画面30a上にも画像を表示する。
尚、情報提示部36による指標値由来の情報は、上記のようなグラフに限られるものではなく、オペレータ50によるノッキングの発生やノッキングの程度の評価に資する情報であればよい。また、情報提示方法は表示に限るものでもない。例えば、0〜1の指標値を、閾値処理により、ノッキングなし、弱いノッキング有り、中程度のノッキング有り、強いノッキング有り等の複数の段階に区分けして、そのノッキングの現在の段階を表示し、あるいは音で知らせてもよい。
図10は、これまで説明してきた演算の流れを示すフローチャートである。
ここでは、エンジンの負荷条件を一定に保ち、その一定の負荷条件の下でこの図10に示す処理が実行される。
エンジンをある1つのサイクル数(行程)で動作させておいて、音圧信号(図4(B))や角度信号(クランク角度パルス(図4(C))および回転パルス(図4(D))を取得して(ステップS01)、切出し角度範囲内の音圧信号を切り出す(ステップS02)。
次に、その切り出した音圧信号をFFT処理し(ステップS03)、バイスペクトル(式(3)参照)を算出し(ステップS04)、ここでは、ステップS01〜S04がT回繰り返されて(ステップS05)、得られたバイスペクトルとパワースペクトルの平均化処理が行なわれる(ステップS06)。さらにバイコヒーレンス(式(4)参照)を算出する(ステップS07)。
次に、特徴量の算出(図6参照)を行なう(ステップ S08)。次にそれらの特徴量を基に指標値の算出(図8参照)を行ない(ステップS09)、算出した指標値由来の情報が提示される(ステップS10)。
この図10に示す処理が、エンジンの負荷条件を変更しながら、各負荷条件ごとに行なわれる。
本実施形態では、上記の通り、音圧信号に含まれる2次の調和成分を抽出することでノッキングを検出しており、従来の手法では様々な雑音でほとんど掻き消されてしまって検出が不可能であった微弱なノッキングやエンジンの高回転速度領域のノッキングでも検出することを可能としている。
尚、ここでは、エンジン燃焼に伴う振動に起因する音をピックアップして音圧信号を得、その音圧信号に基づいてノッキングを検出する例について説明したが、本発明のノッキング検出装置およびノッキング検出方法は、音圧信号に基づいてノッキングを検出するのではなく、エンジンの振動を捉えるセンサでピックアップされた信号など、エンジン燃焼に伴う振動に起因する、ノッキングの周波数に追随する物理量であればその物理量に基づいてノッキングを検出することができる。
1 エンジン
2 ダイナモ
3 自動車
4 試験台
5 センサ
6 ECU
10 ノッキング検出装置
20 データ収集装置
30 ノート型パーソナルコンピュータ
30a 表示画面
31 音圧信号取得部
32 角度信号取得部
33 信号切出部
34 バイコヒーレンス算出部
35 指標値算出部
36 情報提示部
40 操作盤
40a モニタ画面
50 オペレータ

Claims (4)

  1. エンジン燃焼に伴う振動に起因する物理量をピックアップして該物理量の時間変化を表わす原信号を生成するセンサで生成された該原信号を取得する原信号取得部と、
    前記エンジンの回転角度の、少なくとも原点位置情報を含む角度情報を取得する角度情報取得部と、
    前記角度情報取得部で取得した角度情報に基づいて、前記原信号から、切出し角度範囲内の信号を切り出す信号切出部と、
    前記信号切出部で切り出された信号に基づいてバイコヒーレンスS(f1,f2)(但し、f1,f2はいずれも周波数を表わす)を算出するバイコヒーレンス算出部と、
    前記バイコヒーレンス算出部で算出されたバイコヒーレンスS(f1,f2)のうちのf1=f2近傍の値から、2次の調和成分が含まれているレベルを表わす特徴量を算出し、前記エンジンの、少なくとも1つの振動モードにおける固有振動数近傍の周波数帯域内の前記特徴量のうちの代表値を算出して、該代表値由来の値を、前記エンジンのノッキングの指標となる指標値する指標値算出部と、
    前記指標値算出部で算出された指標値に由来する情報を提示する情報提示部とを備えたことを特徴とするノッキング検出装置。
  2. 前記センサが、前記エンジン燃焼に伴う振動に起因する、前記物理量としての音をピックアップするセンサであることを特徴とする請求項1記載のノッキング検出装置。
  3. 前記センサが、前記エンジン燃焼に伴う振動自体を前記物理量としてピックアップするセンサであることを特徴とする請求項1記載のノッキング検出装置。
  4. コンピュータに、
    エンジン燃焼に伴う振動に起因する物理量の時間変化を表わす原信号を取得するとともに、該エンジンの回転角度の、少なくとも原点位置情報を含む角度情報を取得し、
    取得した角度情報に基づいて、前記原信号から、切出し角度範囲内の信号を切り出し、
    切り出された信号に基づいてバイコヒーレンスS(f1,f2)(但し、f1,f2はいずれも周波数を表わす)を算出し、
    算出されたバイコヒーレンスS(f1,f2)のうちのf1=f2近傍の値から、2次の調和成分が含まれているレベルを表わす特徴量を算出し、前記エンジンの、少なくとも1つの振動モードにおける固有振動数近傍の周波数帯域内の前記特徴量のうちの代表値を算出し、
    前記代表値由来の値を、前記エンジンのノッキングの指標となる指標値として、該指標値に由来する情報を提示する処理を実行させることを特徴とするノッキング検出方法。
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