JP2016158222A - 防水通音構造と、それを備える電子機器および電子機器用ケース - Google Patents

防水通音構造と、それを備える電子機器および電子機器用ケース Download PDF

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Abstract

【課題】従来の防水通音構造に比べて、より高いレベルで防水性および通音性を両立させた防水通音構造を提供する。【解決手段】2つの空間を隔てるとともに、当該2つの空間の間で音を伝達する通音口が設けられた壁と、通音口を塞ぐように配置された、上記2つの空間の間で音を伝達するとともに、水が存在しうる一方の空間から通音口を介して他方の空間に水が浸入することを防ぐ防水通音膜と、を備え、他方の空間は、一方の空間が水で満たされたときに、容積が300mm3以下の密閉空間となるように構成され、防水通音膜が、厚さ方向に貫通する複数の貫通孔が形成された非多孔質の樹脂フィルムと、樹脂フィルムの主面上に形成された、上記複数の貫通孔と対応する位置に開口を有する撥液層とを備え、貫通孔の径が5.0μm以上13.0μm以下の防水通音膜である、防水通音構造とする。【選択図】図1

Description

本発明は、防水性と通音性とを併せ持つ防水通音構造、ならびに当該構造を備える電子機器および電子機器ケースに関する。
近年、携帯電話、タブレットコンピュータ、デジタルカメラ、ゲーム機器といった電子機器が音声機能を備えることが一般的である。音声機能を備える電子機器の筐体内には、スピーカーおよび/またはマイクロフォンといった音響部品が音響部(より具体的には、発音部および/または受音部)として収容されている。電子機器の筐体におけるこれら音響部に対応する位置には、通常、通音口が設けられており、この通音口を介して、電子機器の外部と音響部との間で音が伝達される。
電子機器の性質上、筐体内への水の浸入は防がなければならないが、音を伝達するための上記通音口は、容易に水が浸入する経路となりうる。特に、携帯用電子機器では、雨や生活上の水に晒される機会が多いとともに、水を避けうる一定の方向(例えば、雨が吹き込みにくい下方向)に通音口の開口の方向を固定できないことから、水が浸入する危険が増す。このため、音を伝達するが水を透過しない防水通音膜を用いて上記通音口を塞ぎ、筐体に防水通音構造を形成することが行われている。防水通音構造によって、音響部と筐体の外部との間で音の伝達が確保されながら、上記通音口を介した外部から筐体内への水の浸入が防がれる。防水通音構造は、電子機器の筐体に限られず、通音口を介した通音性と、当該通音口における防水性との両立が求められる箇所に適用できる。
防水通音膜の一例は、厚さ方向に貫通する複数の貫通孔が形成された非多孔質の樹脂フィルムである(特許文献1を参照)。特許文献1の防水通音膜は、非多孔質の樹脂フィルムにイオンビームを照射した後、照射後のフィルムを化学エッチングすることにより形成される。
特開2012-195928号公報
本発明の目的の一つは、従来の防水通音構造に比べて、防水性および通音性をより高いレベルで両立させた防水通音構造と、当該構造を備える電子機器および電子機器用ケースの提供である。
本発明の防水通音構造は、2つの空間を隔てるとともに、当該2つの空間の間で音を伝達する通音口が設けられた壁と、前記通音口を塞ぐように配置された、前記2つの空間の間で音を伝達するとともに、水が存在しうる一方の前記空間から前記通音口を介して他方の前記空間に水が浸入することを防ぐ防水通音膜と、を備える防水通音構造であって、前記他方の空間は、前記一方の空間が水で満たされたときに、容積が300mm3以下の密閉空間となるように構成されている。前記防水通音膜は、厚さ方向に貫通する複数の貫通孔が形成された非多孔質の樹脂フィルムと、前記樹脂フィルムの主面上に形成された、前記複数の貫通孔と対応する位置に開口を有する撥液層とを備え、前記貫通孔の径が5.0μm以上13.0μm以下の防水通音膜である。
本発明の電子機器は、音響部を有する電子機器であって、上記本発明の防水通音構造を備える。前記防水通音構造において、前記壁は前記電子機器の筐体であり、前記一方の空間は、前記筐体の外部の空間であり、前記他方の空間は、前記筐体の内部における前記音響部を含む空間であり、前記通音口は、前記音響部からおよび/または前記音響部へと音を伝達する通音口である。
本発明の電子機器用ケースは、音響部を有する電子機器を収容する電子機器用ケースであって、上記本発明の防水通音構造を備える。前記防水通音構造において、前記壁は前記ケースの筐体であり、前記一方の空間は、前記筐体の外部の空間であり、前記他方の空間は、前記筐体の内部における前記電子機器が収容される空間であり、前記通音口は、前記ケースに収容された前記電子機器の音響部からおよび/または前記音響部へと音を伝達する通音口である。
本発明によれば、従来の防水通音構造に比べて、防水性および通音性をより高いレベルで両立させた防水通音構造と、当該構造を備える電子機器および電子機器用ケースが達成される。
本発明の防水通音構造の一例を模式的に示す断面図である。 図1に示す防水通音構造において、一方の空間に水が満たされたときの防水通音膜の状態を模式的に示す断面図である。 本発明の防水通音構造が備える防水通音膜の一例を模式的に示す断面図である。 本発明の防水通音構造が備える防水通音膜の別の一例を模式的に示す断面図である。 本発明の防水通音構造が備える防水通音膜において、貫通孔が延びる方向の当該貫通孔間の関係の一例を模式的に示す平面図である。 本発明の防水通音構造が備える防水通音膜において、貫通孔が延びる方向の当該貫通孔間の関係の別の一例を模式的に示す平面図である。 本発明の防水通音構造が備える防水通音膜において、貫通孔が延びる方向の当該貫通孔間の関係のまた別の一例を模式的に示す断面図である。 本発明の防水通音構造が備える防水通音膜のまた別の一例を模式的に示す断面図である。 本発明の防水通音構造が備える防水通音膜の上記とは別の一例を模式的に示す断面図である。 本発明の防水通音構造が備える防水通音膜を構成する樹脂フィルムを形成する方法であって、イオンビーム照射およびその後の化学エッチングを用いる方法における、イオンビーム照射の概略を説明するための模式図である。 本発明の防水通音構造が備える防水通音膜を構成する樹脂フィルムを形成する方法であって、イオンビーム照射およびその後の化学エッチングを用いる方法における、イオンビーム照射の一例を説明するための模式図である。 本発明の防水通音構造が備える防水通音膜(支持体を含む防水通音部材)の一例を模式的に示す斜視図である。 本発明の防水通音構造が備える防水通音膜(支持体を含む防水通音部材)の別の一例を模式的に示す平面図である。 本発明の電子機器の一例を模式的に示す斜視図である。 図14Aに示す電子機器における防水通音膜の配置の一例を模式的に示す断面図である。 本発明の電子機器の別の一例を模式的に示す斜視図である。 図15Aに示す電子機器における防水通音膜の配置の一例を模式的に示す断面図である。 本発明の電子機器用ケースの一例を模式的に示す斜視図である。 図16Aに示す電子機器用ケースにおける防水通音膜の配置の一例を模式的に示す断面図である。 実施例において防水通音膜の音圧損失(挿入損失)を評価するために用いた模擬筐体および当該筐体中のスピーカーの配置を模式的に示す断面図である。 実施例において防水通音膜の音圧損失(挿入損失)を評価するために作製した部材と、当該部材を模擬筐体に配置した状態を模式的に示す断面図である。 実施例で行った、防水通音構造の防水性の評価方法を説明するための図である。 実施例で行った、防水通音構造の防水性の評価方法を説明するための図である。
[防水通音構造]
図1に、本発明の防水通音構造の一例を示す。図1に示す防水通音構造1は、通音口11が設けられた壁2と、通音口11を塞ぐように配置された防水通音膜3とを備える。防水通音膜3は、音を伝達するが水の透過を防ぐ膜である。壁2は、2つの空間12および空間13を隔てており、通音口11は、この2つの空間の間で音を伝達する開口である。一方の空間12には水が存在しうる。他方の空間13には水が存在してもよいが、空間13は、典型的には、電子機器の筐体内部の空間など、水が存在しない空間または水の存在を避けるべき空間である。本明細書では、特に記載がない限り、「水」は液体の水を意味する。
壁2により、双方の空間12,13間の水の移動が防がれるとともに音の伝達が制限されるが、防水通音構造1では、壁2に設けられた通音口11および通音口11に配置された防水通音膜3を介して空間12,13間で音21,22を伝達できるとともに、防水通音膜3により、水の存在しうる一方の空間12から他方の空間13への水の浸入が防がれる。図1に示す例のように、音を発するおよび/または音を受ける音響部4が空間13にある場合(他方の空間13が、音響部4を含む空間である場合)、音21は、空間12から音響部4へと伝達される音であり、音22は、音響部4から発せられて空間12へと伝達される音である。
防水通音構造1において他方の空間13は、一方の空間12が水で満たされたときに、容積が300mm3以下の密閉空間となるように構成されている。ここで、空間12が水で満たされると、防水通音膜3に水圧31が加わることで当該膜3が他方の空間13側に変形、より具体的には撓むように変形する(図2参照)。すると、密閉空間となった他方の空間13の容積が膜3が変形した分だけ減少することで、空間13の内圧が上昇する。この内圧の上昇により、他方の空間13から一方の空間12への圧力32が防水通音膜3に加わり、水圧31の一部が圧力32によって相殺される。等しい水圧31が同じ膜3に加わった場合、すなわち水圧31による膜3の変形量が同じ場合、密閉空間の容積が小さいほど内圧の上昇が大きくなって水圧31が相殺される程度が増し、防水通音膜3に実質的に加わる水圧が小さくなる。防水通音膜3は、その構成に応じた当該膜固有の防水性(固有防水性)を有しているが、防水通音構造1では上述のように膜3に実質的に加わる水圧が小さくなるため、当該構造1に要求される防水性よりも低い固有防水性の防水通音膜3によっても、当該要求される防水性を達成した防水通音構造が実現する。ここで、防水通音膜の通音性(防水通音膜を伝達する音の特性)は、その固有防水性が高くなるほど低くなり、いわば防水通音膜3において防水性と通音性とはトレードオフの関係にある。このため、要求される防水性よりも低い固有防水性の防水通音膜によって当該要求される防水性を達成できる防水通音構造1では、従来の防水通音構造に比べて、防水性および通音性をより高いレベルで両立できる。
一方の空間12が水で満たされたときに密閉空間となる他方の空間13の容積、すなわち他方の空間13の密閉時の容積(密閉容積)は300mm3以下である。当該容積が300mm3を超えると、防水通音膜3において水圧31が相殺される程度が十分ではなく、防水性および通音性を従来よりも高いレベルで両立できなくなる。
そして、防水通音構造1が備える防水通音膜3は、厚さ方向に貫通する複数の貫通孔が形成された非多孔質の樹脂フィルムと、樹脂フィルムの主面上に形成された、上記複数の貫通孔と対応する位置に開口を有する撥液層とを備える。このような防水通音膜3は、貫通孔の径によって当該膜の防水性および通音性を制御でき、その制御の自由度が高い。このことは、防水通音構造1における高いレベルでの防水性および通音性の両立に寄与する。これに加えて防水通音膜3は、非多孔質の樹脂フィルムがベース(母材)になっていることから、強度などの機械的特性の均一性が高く、また、均一な貫通孔の径とすること、および/または貫通孔が均一に分布した防水通音膜とすることが可能である。このため、膜の不均一性を原因とする水の透過が抑制され、図2に示す水圧31を相殺する効果を十分に得ることができる。このことも、防水通音構造1における高いレベルでの防水性および通音性の両立に寄与する。そして、このような構造を有する防水通音膜3は、そもそもの通音性が高く、この通音性の高さは、とりわけ、防水通音構造として重要な周波数100Hz以上5kHz以下の音域における低い挿入損失に顕著に現れる。
ただし、防水通音膜3における貫通孔の径は5.0μm以上13.0μm以下である。貫通孔の径が13.0μmを超える場合、膜3自身が有する固有防水性が低く、防水通音構造1における高いレベルでの防水性および通音性の両立が難しい。一方、貫通孔の径が5μm未満の場合、膜3自身が有する固有防水性が非常に高いことから、密閉容積が所定の値以上になっても防水性は確保されるが、防水通音構造1の通音性が低下する傾向にある。
防水通音構造1として要求される防水性の程度によるが、他方の空間13の密閉容積は、200mm3以下、150mm3以下、100mm3以下の順に好ましい。他方の空間13の密閉容積が小さいほど、防水通音構造1として要求される防水性に比べてより低い固有防水性の防水通音膜3を使用できるため、防水通音構造1における防水性および通音性の両立のレベルをさらに高くできる。他方の空間13の密閉容積は、さらに小さい容積、例えば、50mm3以下、30mm3以下、10mm3以下、さらには5mm3以下とすることもできる。
他方の空間13の密閉容積は、当該空間における、防水通音膜3および通音口11に通じる空気が占める容積であり、当該空間内に存在する物品の容積を含まない。当該容積は、防水通音膜3の変形による圧力32の発生に寄与しないからである。また、他方の空間13の密閉容積は、一方の空間12に水が満たされていない状態(防水通音膜3が水圧31によって変形していない状態)での容積である。
防水性の典型的な指標は耐水圧である。防水通音構造1では、その耐水圧が、通音口11に配置された防水通音膜3自身の耐水圧(固有耐水圧)であって、JIS L1092の耐水度試験B法(高水圧法)の規定に準拠して測定した耐水圧を超えうる。
防水通音構造の防水性は、JIS C0920に規定されている水の浸入に対する保護等級により評価することもできる。ただし、この保護等級において、一方の空間12が水で満たされた状態を想定しているのは、基本的に保護等級7級(IPX7)である。防水通音構造1がIPX7を満たす場合、当該構造1の上記耐水度試験B法により測定した耐水圧は、防水構造を水深1mに水没させたときの水の浸入の有無を評価するIPX7の測定原理上、9.8kPa以上となる。
防水通音構造1は、JIS C0920に規定されている水の浸入に対する保護等級(IPX7)を満たしうる。IPX7を満たす防水通音構造1が形成された電子機器は、誤って水中に落とされた場合にも、所定の水深および時間内であれば、機器内部への浸水を避けることができる。
防水通音構造1では、他方の空間13の密閉容積と防水通音膜3の固有耐水圧との関係について、例えば、以下の関係を成立させうる。防水通音構造1がIPX7を満たす場合の関係の一つは、上記耐水度試験B法により測定した防水通音膜3の耐水圧が3.0kPa以上9.8kPa未満であり、他方の空間13の密閉容積が10mm3以下である。当該関係のもう一つは、上記耐水度試験B法により測定した防水通音膜3の耐水圧が2.0kPa以上3.0kPa未満であり、他方の空間13の密閉時の容積が5mm3以下である。これらの関係は、明らかに、防水通音構造の耐水圧が、当該構造の通音口に配置された防水通音膜の固有耐水圧を超える関係である。
他方の空間13の構成は、一方の空間12が水で満たされたときに密閉空間となる限り限定されない。なお、防水通音膜3は水を透過しないため、当該膜3に接している一方の空間12が水で満たされたときに、当該膜3が配置された通音口11では空間13の密閉が保たれる。一方の空間12が水で満たされたときとは、例えば、防水通音構造1の通音口11の全部が水没したときである。
他方の空間13は、例えば、通音口11以外の開口を有さない壁2により囲まれた空間である。他方の空間13は、例えば、通音口11以外にも開口を有する壁2により囲まれた空間であって、後者の開口にも当該開口を塞ぐように防水膜が配置され、一方の空間12が水で満たされたときに後者の開口においても密閉が保たれる空間である。後者の開口に配置する防水膜は、防水通音膜3でありうるし、その他の防水膜(防水通気膜、防水通音膜)でありうる。その他の防水膜に公知の膜を使用してもよい。
他方の空間13は、例えば、防水通音構造1が構築された電子機器の筐体の内部にある空間であり、当該筐体の内部空間そのものであってもよい。このとき一方の空間12は、空間13とは通音口11を挟んで壁2の反対側に位置する、電子機器の筐体外部の空間である。他方の空間13は、例えば、防水通音構造1が構築されたスピーカー、マイクロフォンまたはトランスデューサーといった音響部品において、当該部品のハウジングの内部にある空間であり、当該ハウジングの内部空間そのものであってもよい。このとき、一方の空間12は、空間13とは通音口11を挟んで壁2の反対側に位置する、音響部品のハウジング外部の空間である。
これらの例から理解できるように、防水通音構造1を形成する壁2は限定されない。防水通音構造1は、通音口11および当該通音口11を塞ぐ防水通音膜3の形成、配置スペースが確保できれば、空間12,13間で音を伝達しながらも空間12から空間13への水の透過を防ぐ任意の場所に適用可能である。このため、他方の空間13にある具体的な音響部4は様々である。前者の例では、音響部4は、例えば、電子機器の筐体の内部に収容されたスピーカー、マイクロフォンまたはトランスデューサーといった音響部品である。後者の例では、音響部4は、例えば、音響部品のハウジングの内部に収容された振動板といった音響素子である。上述のように、他方の空間13の密閉容積は、当該空間における、防水通音膜3および通音口11に通じる空気が占める容積であり、当該空間内に存在する物品の容積を含まない。このため、前者の例では、空間13内にある音響部品などの各部品の体積は密閉容積に含まれず、後者の例では、空間13内にある音響素子などの各部の体積は密閉容積に含まれない。
防水通音膜3を説明する。
図3に、防水通音膜3の一例を示す。図3に示す防水通音膜3は、樹脂フィルム51と、樹脂フィルム51の主面上に形成された撥液層52とを備える。樹脂フィルム51には、その厚さ方向に貫通する複数の貫通孔53が形成されている。貫通孔53は、樹脂フィルム51の一方の主面54aから他方の主面54bへと延びる。撥液層52は、樹脂フィルム51の貫通孔53に対応する位置に開口55を有する。樹脂フィルム51は、非多孔質の樹脂フィルムであり、その厚さ方向に通気可能となる経路を貫通孔53以外に有さない。樹脂フィルム51は、典型的には、貫通孔53を除いて無孔の(中実の)樹脂フィルムである。貫通孔53は、樹脂フィルム51の双方の主面に開口を有する。
貫通孔53は、当該貫通孔の中心軸(軸線)56が直線状に延びるストレート孔である。ストレート孔である貫通孔53は、例えば、樹脂フィルムの原フィルムへのイオンビーム照射およびその後の化学エッチングにより形成できる。イオンビーム照射およびエッチングでは、径(開口径)が揃った当該径の均一度が高い多数の貫通孔53を樹脂フィルム51に形成できる。樹脂フィルム51は、原フィルムへのイオンビーム照射およびエッチングにより得たフィルムでありうる。防水通音膜3において貫通孔53の径の均一度が高いことは、防水通音構造1において防水性および通音性をより高いレベルで両立できることに寄与する。なお、図3および防水通音膜の構造を示すこれ以降の図では、貫通孔の形状をわかりやすくするために、その径が誇張して描かれている。
図3に示す例において貫通孔53が延びる方向は、樹脂フィルム51の主面54a,54bに垂直な方向である。貫通孔53が樹脂フィルム51の厚さ方向に貫通している限り、貫通孔53が延びる方向は樹脂フィルム51の主面54a,54bに垂直な方向から傾いていてもよい。このとき、樹脂フィルム51に存在する全ての貫通孔53が延びる方向が同一であってもよいし(中心軸56の方向が揃っていてもよいし)、図4に示すように、樹脂フィルム51が当該フィルムの主面54a,54bに垂直な方向に対して傾いた方向に延びる貫通孔53(53a〜53g)を有しており、当該傾いて延びる方向が異なる貫通孔53a〜53gが樹脂フィルム51に混在していてもよい。図4に示す例では、貫通孔53が樹脂フィルム51の主面54a,54bに垂直な方向に対して傾いて延びており(樹脂フィルム51を貫通しており)、延びる方向が互いに異なる貫通孔53の組み合わせがある。このとき、樹脂フィルム51には、延びる方向が同一の貫通孔53の組み合わせがあってもよい(図4に示す例では、貫通孔53a,53d,53gの延びる方向が同一である)。樹脂フィルム51は、当該フィルムの主面54a,54bに垂直な方向に延びる貫通孔53と、当該方向に傾いた方向に延びる貫通孔53との双方を有していてもよい。以下、「組み合わせ」を単に「組」ともいう。「組」は、1の貫通孔と1の貫通孔との関係(ペア(対))に限られず、1または2以上の貫通孔同士の関係を意味する。同じ特徴を有する貫通孔の組があるということは、当該特徴を有する貫通孔が複数存在することを意味する。なお、図4では撥液層の図示を省略する(図7,8も同様である)。
図4に示すような、傾いて延びる方向が異なる貫通孔53が混在する樹脂フィルム51から構成される防水通音膜3では、その傾く程度、およびある方向に伸びる貫通孔53の割合を変化させることができるため、防水通音膜3としての通音性および防水性の制御の自由度がより高くなる。この自由度の高さは、防水通音構造1において防水性および通音性をより高いレベルで両立できることに寄与する。
図4に示す貫通孔53について、その傾いて延びる方向(中心軸56の延びる方向)D1が樹脂フィルム51の主面に垂直な方向D2に対して成す角度θ1は45°以下が好ましく、30°以下がより好ましい。角度θ1がこれらの範囲にあるときに、防水通音膜3としての通音性および防水性の制御の自由度がより高くなる。角度θ1の下限は特に限定されないが、例えば、10°以上であり、20°以上が好ましい。角度θ1が過度に大きくなると、防水通音膜1の機械的強度が弱くなる傾向がある。図4に示す貫通孔53では、角度θ1が互いに異なる組が存在している。
図4に示すような、傾いて延びる方向が異なる貫通孔53が混在する樹脂フィルム51から構成される防水通音膜3において、樹脂フィルム51の主面に垂直な方向から見たときに(貫通孔53が延びる方向を当該主面に投影したときに)、貫通孔53が延びる方向が互いに平行であってもよいが、当該延びる方向が互いに異なる組を樹脂フィルム51が有する(当該延びる方向が互いに異なる貫通孔53が樹脂フィルム51に存在する)ことが好ましい。後者の場合、防水通音膜3としての通音性および防水性の制御の自由度がより高くなる。
図5に、樹脂フィルム51の主面に垂直な方向から見たときに、貫通孔53が延びる方向が互いに平行である例を示す。図5に示す例では、3つの貫通孔53(53h,53i,53j)が見えているが、樹脂フィルム51の主面に垂直な方向から見たときに各貫通孔53が延びる方向(紙面手前側の主面における貫通孔53の開口58aから、反対側の主面における貫通孔53の開口58bに向かう方向)D3,D4,D5は互いに平行である(後述のθ2が0°である)。ただし、各貫通孔53h,53i,53jの角度θ1は互いに異なり、貫通孔53jの角度θ1が最も小さく、貫通孔53hの角度θ1が最も大きい。このため、各貫通孔53h,53i,53jが延びる方向は立体的に異なっている。
図6に、樹脂フィルム51の主面に垂直な方向から見たときに、貫通孔53が延びる方向が互いに異なっている例を示す。図6に示す例では、3つの貫通孔53(53k,53l,53m)が見えているが、樹脂フィルム51の主面に垂直な方向から見たときに各貫通孔53が延びる方向D6,D7,D8は互いに異なる。ここで、貫通孔53kと53lとは、樹脂フィルム51の主面に垂直な方向から見たときに90°未満の角度θ2を成して、当該主面から互いに異なる方向に延びている。一方、貫通孔53kと53mとは、樹脂フィルム51の主面に垂直な方向から見たときに90°以上の角度θ2を成して、当該主面から互いに異なる方向に延びている。樹脂フィルム51は、後者のように、当該フィルムの主面に垂直な方向から見たときに90°以上の角度θ2を成して当該主面から互いに異なる方向に延びる貫通孔53の組を有することが好ましい。換言すれば、樹脂フィルム51は、当該フィルムの主面に垂直な方向から見たときに、当該主面から一定の方向D6に延びる貫通孔53kと、当該一定の方向D6に対して90°以上の角度θ2を成す方向D8に当該主面から延びる貫通孔53mとの組を有することが好ましい。このとき、防水通音膜3としての通音性および防水性の制御の自由度がさらに高くなる。角度θ2は90°以上180°以下が好ましく、すなわち180°であってもよい。
図5に示すような、傾いて延びる方向が異なる貫通孔53が混在する樹脂フィルム51から構成される防水通音膜3において、2以上の貫通孔53が樹脂フィルム51内で互いに交差していてもよい。すなわち、樹脂フィルム51は、当該フィルム51内で互いに交差する貫通孔53の組を有していてもよい。このとき、防水通音膜3としての通音性および防水性の制御の自由度がより高くなる。このような例を図7に示す。図7に示す例では、貫通孔53pと53qとが樹脂フィルム51内で互いに交差している。
樹脂フィルム51における(防水通音膜3における)貫通孔53の延びる方向(貫通孔53の中心線56が延びる方向)は、例えば、当該フィルム51の主面および断面に対して走査型電子顕微鏡(SEM)による観察を行うことで確認できる。
樹脂フィルム51の主面54a,54bにおける貫通孔53の開口の形状は限定されないが、典型的には円形(中心線56の延びる方向が樹脂フィルム51の主面54a,54bに垂直な場合)または楕円形(中心線56の延びる方向が樹脂フィルム51の主面54a,54bに垂直な方向から傾いている場合)である。貫通孔53の開口の形状は厳密な円または楕円である必要はなく、例えば、後述の製造方法で実施するエッチングのムラに伴う多少の形状の乱れは許容しうる。貫通孔53の断面の形状についても同様である。
図3〜7に示す例では、貫通孔53の径は、樹脂フィルム51の一方の主面54aから他方の主面54bに至るまでほぼ変化していない。すなわち、貫通孔53の断面の形状は、主面54aから主面54bに至るまでほぼ変化していない。防水通音膜3が有する貫通孔53は、図8に示すように、中心線56が延びる方向に垂直な断面57の面積が樹脂フィルム51の一方の主面54aから他方の主面54bに向けて増加する形状を有していてもよい。このとき、防水通音膜3(防水通音構造1)の防水性および通音性をさらに高いレベルで両立できる。ここで、相対的に貫通孔53の径が小さい主面54aが、水が存在しうる一方の空間12に面し、相対的に貫通孔53の径が大きい主面54bが他方の空間13に面するように、防水通音膜3が壁2の通音口11に配置されることが好ましい。図8に示す貫通孔53は、中心線56が延びる方向に断面57の形状が変化する、防水通音膜3の膜厚方向に非対称な形状を有する貫通孔である。
中心線56の延びる方向に垂直な断面57の面積が樹脂フィルム51の一方の主面54aから他方の主面54bに向けて増加する形状を貫通孔53が有する場合、貫通孔53は、断面57の面積が主面54aから主面54bまで連続的に、かつほぼ一定または一定の増加率で増加するとともに、円または楕円である断面57の形状を有していてもよく、このとき貫通孔53の形状は、軸線56を中心線とする円錐もしくは楕円錐またはこれらの一部となる。イオンビーム照射およびエッチングを用いた後述の製造方法によれば、断面57の形状が円または楕円である貫通孔53を有する樹脂フィルム51を備えた防水通音膜3を形成できる。
中心線56の延びる方向に垂直な断面57の面積が樹脂フィルム51の一方の主面54aから他方の主面54bに向けて増加する形状を貫通孔53が有する場合、主面54aにおける相対的に小さな貫通孔53の径(径a)と、主面54bにおける相対的に大きな貫通孔の径(径b)との比a/bは、例えば80%以下であり、防水性および通音性の制御の自由度をより高くできることから、75%以下が好ましく、70%以下がより好ましい。比a/bの下限は特に限定されず、例えば10%である。
断面57の面積の増加は、主面54aから主面54bに向けて連続的であっても、段階的であっても(すなわち、断面57の面積が一定の領域が存在していても)よい。断面57の面積の増加は、図8に示す例のように、主面54aから主面54bに向けて連続的であることが好ましく、その増加率がほぼ一定または一定であることがより好ましい。イオンビーム照射およびエッチングを用いた後述の製造方法によれば、断面57の面積が主面54aから主面54bに向けて連続的に増加する貫通孔53を有する樹脂フィルム51を備えた防水通音膜3、および、さらに当該面積の増加率がほぼ一定または一定である防水通音膜3を形成できる。
防水通音膜3におけるこれらの貫通孔53の特徴は、任意に組み合わせうる。例えば、中心線56が延びる方向に垂直な断面57の面積が樹脂フィルム51の一方の主面54aから他方の主面54bに向けて増加する形状を有するとともに、当該方向が樹脂フィルム51の主面54a,54bに垂直な方向から傾いた貫通孔53でありうる。
貫通孔53の径は5.0μm以上13.0μm以下である。貫通孔53が、図8に示すように、中心線56が延びる方向に垂直な断面57の面積が樹脂フィルム51の一方の主面54aから他方の主面54bに向けて増加する形状を有する場合、相対的に小さな径(図7に示す例では、主面54aにおける貫通孔53の径)が5.0μm以上13.0μm以下である。
貫通孔53について、その開口の形状を円とみなしたときの当該円の直径、換言すれば、開口の断面積(開口面積)と同一の面積を有する円の直径を、貫通孔53の径(開口径)とする。貫通孔53の径は、例えば、防水通音膜3または樹脂フィルム51の表面を顕微鏡で観察した像を解析することによって求めうる。樹脂フィルム51における貫通孔53の径は、各主面について、当該主面に存在する全ての貫通孔53の開口で一致している必要はないが、樹脂フィルム51の有効部分(防水通音膜3として使用可能な部分)では実質的に同じ値とみなすことができる程度(例えば、標準偏差が平均値の10%以下)に一致していることが好ましい。イオンビーム照射およびエッチングを用いた後述の製造方法によれば、このような径が揃った防水通音膜3を形成できる。
なお、樹脂フィルム51の主面54a,54bに垂直な方向から傾いた方向に延びる貫通孔53の開口の形状は楕円となりうる。しかし、このような場合においても、フィルム51内における貫通孔53の断面57の形状は円とみなすことができ、この円の直径は、開口の形状である楕円の最小径と等しくなる。このため、上記傾いた方向に伸びる貫通孔53であって開口の形状が楕円であるものについては、当該最小径を貫通孔の開口径とすることができる。
防水通音膜3は、JIS L1096の規定に準拠して測定したフラジール数で示して、2.0cm3/(cm2・秒)以上120cm3/(cm2・秒)以下の通気度を厚さ方向に有することが好ましい。通気度がこの範囲にある場合、上述した貫通孔53の径の範囲と相まって、防水通音膜3および当該膜を備える防水通音構造1の通音性が向上し、これらの防水性および通音性をさらに高いレベルで両立できる。防水通音膜3の通気度は、フラジール数で示して、10.0cm3/(cm2・秒)以上120cm3/(cm2・秒)以下が好ましく、その下限は50.0cm3/(cm2・秒)以上、あるいは90cm3/(cm2・秒)以上とすることもできる。通気度がこれらの範囲にあるとき、貫通孔53の径は、上述した好ましい範囲にあることが好ましい。
図8に示すように、断面57の面積が一方の主面54aから他方の主面54bに向けて増加する貫通孔53を有する防水通音膜3の場合、相対的に貫通孔53の径が大きい他方の主面54bから、相対的に貫通孔53の径が小さい一方の主面54aへの当該膜3の通気度が、フラジール数で示して上記範囲にあることが好ましい。
撥液層52が防水通音膜3の通気度にほぼ影響を与えないことを考慮すると、樹脂フィルム51の通気度が、防水通音膜3の通気度に関する上記範囲であることが好ましいといえる。
防水通音膜3における(樹脂フィルム51における)貫通孔53の密度(孔密度)は特に限定されず、例えば、1×103個/cm2以上1×109個/cm2以下である。孔密度がこの範囲にあることによって、防水通音膜3として好ましい範囲で防水性および通音性が制御でき、双方の特性をさらに高いレベルで両立できる。孔密度は、1×105個/cm2以上1×108個/cm2以下がより好ましい。孔密度は、防水通音膜3の全体にわたって一定である必要はないが、その有効部分では、最大の孔密度が最小の孔密度の1.5倍以下となる程度に一定であることが好ましい。孔密度は、例えば、防水通音膜3または樹脂フィルム51の表面を顕微鏡で観察した像を解析することによって求めうる。
防水通音膜3の(樹脂フィルム51の)開口率(主面の面積に対する、当該主面における貫通孔53の開口面積の割合)は、50%以下が好ましく、10%以上45%以下が好ましく、20%以上40%以下がより好ましい。開口率がこれらの範囲にあることによって、防水通音膜3として好ましい範囲で防水性および通音性を制御でき、双方の特性をさらに高いレベルで両立できる。また、貫通孔53の径が上記範囲にあることも相まって、例えば、防水通音膜3の有効面積を減少させた場合にもより良好な通音性を確保できる。開口率は、例えば、防水通音膜3または樹脂フィルム51の表面を顕微鏡で観察した像を解析することによって求めうる。
図8に示すように、断面57の面積が一方の主面54aから他方の主面54bに向けて増加する貫通孔53を有する防水通音膜3の場合、相対的に貫通孔の径が小さい主面54aにおける開口率が、上記範囲にあることが好ましい。
防水通音膜3の(樹脂フィルム51の)気孔率は、25%以上45%以下が好ましく、30%以上40%以下がより好ましい。気孔率がこれらの範囲にあることによって、防水通音膜3として好ましい範囲で防水性および通音性を制御でき、双方の特性をさらに高いレベルで両立できる。また、貫通孔53の径が上記範囲にあることによって、そして防水通音膜3の通気度が上記範囲ある場合はさらに、例えば、防水通音膜3の有効面積を減少させた場合にもより良好な通音性を確保できる。なお、図3に示すように、断面57の面積が樹脂フィルム51内で一定である貫通孔53を有する防水通音膜3の場合、その開口率と気孔率とは同一である。図8に示すように、断面57の面積が一方の主面54aから他方の主面54bに向けて増加する貫通孔53を有する防水通音膜3の場合、例えば、双方の主面54a,54bにおける開口率と、防水通音膜3の(樹脂フィルム51の)断面を観察することにより把握した貫通孔53の形状とから計算により求めることができる。
上述のように、防水通音膜3の防水性は、例えば、耐水度試験B法により測定した当該膜3の耐水圧により評価できる。図8に示すように、断面57の面積が一方の主面54aから他方の主面54bに向けて増加する貫通孔53を有する防水通音膜3の場合、防水通音構造1に配置したときに一方の空間12側に面する主面における耐水圧を評価すればよい。なお、相対的に貫通孔53の径が小さい主面54aが水に接するときの膜3の耐水圧が、相対的に貫通孔53の径が大きい主面54bが水に接するときの膜3の耐水圧よりも大きいことを考慮すると、防水通音構造1に膜3を配置する際には、水の存在しうる一方の空間12側に主面54aが面するように膜3を配置しうる。
通音性に関して防水通音膜3では、例えば、周波数100Hz以上5kHz以下の音域における挿入損失を5dB以下、3dB以下、2dB以下、さらには1dB以下とすることができる。また、周波数100Hz以上3kHz以下の音域における挿入損失を5dB以下、3dB以下、2dB以下、さらには1dB以下とすることができる。100Hz以上5kHz以下の音域は、人間が通常の発声、会話に使用している音域であるとともに、音楽などの再生時にも最も敏感に感じとることができる音域に相当する。この音域における挿入損失が小さいことは、防水通音膜3を備える電子機器の市場における訴求力を向上させる。また、防水通音膜3では、例えば、人の音声域の中央値と考えられる周波数1kHzにおける挿入損失を5dB以下、3dB以下、さらには1dB以下とすることができる。
防水通音膜3は撥液層52を有する。撥液層52は、例えば、樹脂フィルム51を撥液処理して形成できる。図3に示す例では、撥液層52が樹脂フィルム51の双方の主面54a,54b上と貫通孔53の表面とに形成されている。撥液層52は、樹脂フィルム51の一方の主面上のみに形成されていてもよいし、一方の主面上と貫通孔53の表面とのみに形成されていてもよい。防水通音構造1に配置したときに、少なくとも、水が存在しうる一方の主面12に面する主面に撥液層52が形成されていることが好ましい。図8に示すように、断面57の面積が一方の主面54aから他方の主面54bに向けて増加する貫通孔53を有する防水通音膜3の場合、上述した各主面における耐水圧の相違から、貫通孔53の径が相対的に小さい主面54aに撥液層52が形成されていることが好ましい。
撥液層52は、撥水性を有する層であり、撥油性を併せて有することが好ましい。また、撥液層52は、樹脂フィルム51の貫通孔53と対応する位置に開口を有する。
撥液層52は、例えば、撥水剤または疎水性の撥油剤を希釈剤で希釈して調製した処理液を、樹脂フィルム51上に薄く塗布して乾燥させることにより形成できる。撥水剤および疎水性の撥油剤は、例えば、パーフルオロアルキルアクリレート、パーフルオロアルキルメタクリレートのようなフッ素化合物である。撥液層52の厚さは、貫通孔53の径の1/2未満が好ましい。
樹脂フィルム51上に処理液を薄く塗布して撥液層52を形成する場合、貫通孔53の径にもよるが、当該貫通孔の表面(内周面)も、樹脂フィルム51の主面上と連続して撥液層52により被覆することが可能である(図3に示す例では、このようになっている)。
樹脂フィルム51の厚さおよび防水通音膜3の厚さは、例えば、5μm以上100μm以下であり、15μm以上50μm以下が好ましい。
樹脂フィルム51を構成する材料は、例えば、後述の製造方法において、非多孔質の樹脂フィルムである原フィルムに貫通孔53を形成できる材料である。樹脂フィルム51は、例えば、アルカリ性溶液、酸性溶液、または酸化剤、有機溶剤および界面活性剤から選ばれる少なくとも1種を添加したアルカリ性溶液もしくは酸性溶液により分解する樹脂から構成される。この場合、後述の製造方法におけるイオンビーム照射および化学エッチングによる原フィルムへの貫通孔53の形成がより容易となる。なお、これらの溶液は、典型的なエッチング処理液である。別の側面から見ると、樹脂フィルム51は、例えば、加水分解または酸化分解によるエッチング可能な樹脂から構成される。原フィルムには、市販のフィルムを使用することができる。
樹脂フィルム51は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエチレンナフタレートおよびポリフッ化ビニリデンから選ばれる少なくとも1種の樹脂から構成される。
防水通音膜3は、2層以上の樹脂フィルム51を備えていてもよい。このような防水通音膜3は、例えば、2層以上の原フィルムを有する積層体にイオンビーム照射および化学エッチングして形成できる。
防水通音膜3は、必要に応じて、樹脂フィルム51および撥液層52以外の任意の部材および/または層を備えていてもよい。当該部材は、例えば、図9に示す通気性支持層59である。図9に示す防水通音膜3では、図8に示す防水通音膜3の樹脂フィルム51における主面54bに通気性支持層59が配置されている。通気性支持層59の配置により、防水通音膜3としての強度が向上し、また、取扱性も向上する。通気性支持層59は、樹脂フィルム51の主面54aに配置されていても、双方の主面54a,54bに配置されていてもよい。
通気性支持層59は、樹脂フィルム51に比べて、厚さ方向の通気度が高い層である。通気性支持層59には、例えば、織布、不織布、ネット、メッシュを用いることができる。通気性支持層59を構成する材料は、例えば、ポリエステル、ポリエチレン、アラミド樹脂である。通気性支持層59が配置される樹脂フィルム51の主面には、撥液層52が形成されていてもいなくてもよい。通気性支持層59の形状は、樹脂フィルム51の形状と同一であってもよいし、異なっていてもよい。例えば、樹脂フィルム51の周縁部のみに配置される形状を有する(具体的に、樹脂フィルムが円形である場合には、その周縁部のみに配置されるリング状の)通気性支持層59でありうる。通気性支持層59は、例えば、樹脂フィルム51との熱溶着、接着剤による接着などの手法により配置される。
防水通音膜3の面密度は、当該膜の強度、生産歩留まりおよび取付精度を含む取扱性、ならびに通音性の観点から、5〜100g/m2が好ましく、10〜50g/m2がより好ましい。
防水通音膜3には、着色処理が施されていてもよい。樹脂フィルム51を構成する材料の種類によるが、着色処理を施していない防水通音膜3の色は、例えば、透明または白色である。このような防水通音膜3が筐体の通音口を塞ぐように配置された場合、当該膜3が目立つことがある。目立つ膜はユーザーの好奇心を刺激し、針などによる突き刺しによって防水通音膜としての機能が損なわれることがある。防水通音膜3に着色処理が施されていると、例えば、筐体の色と同色または近似の色を有する膜3とすることにより、相対的にユーザーの注目を抑えることができる。また、電子機器などの筐体のデザイン上、着色された防水通音膜が求められることがあり、着色処理により、このようなデザインの要求に応えることができる。
着色処理は、例えば、樹脂フィルム51を染色処理したり、樹脂フィルム51に着色剤を含ませたりすることで実施できる。着色処理は、例えば、波長380nm以上500nm以下の波長域に含まれる光が吸収されるように実施してもよい。すなわち、防水通音膜3は、波長380nm以上500nm以下の波長域に含まれる光を吸収する着色処理が施されていてもよい。そのためには、例えば、樹脂フィルム51が、波長380nm以上500nm以下の波長域に含まれる光を吸収する能力を有する着色剤を含む、あるいは波長380nm以上500nm以下の波長域に含まれる光を吸収する能力を有する染料によって染色されている。この場合、防水通音膜3を、青色、灰色、茶色、桃色、緑色、黄色などに着色できる。防水通音膜3は、黒色、灰色、茶色または桃色に着色処理されていてもよい。
その着色の程度は、以下に示す白色度Wで示して10.0〜70.0の範囲にあることが好ましい。白色度Wは、防水通音膜3の主面の明度L、色相aおよび彩度bを、JIS L1015の規定(ハンター法)に準拠して色差計を用いて測定し、式W=100−sqr[(100−L)2+(a2+b2)]により求めることができる。白色度Wの値が小さいほど、防水通音膜3の色が黒色になる。
防水通音膜3の製造方法は特に限定されず、例えば、以下に説明する製造方法により製造できる。
(防水通音膜の製造方法)
以下の製造方法では、原フィルムに対するイオンビームの照射とその後のエッチング(化学エッチング)とにより、樹脂フィルム51を形成する。イオンビーム照射およびエッチングにより形成した樹脂フィルム51は、撥液層52を形成する工程、および必要に応じて着色処理あるいは通気性支持層59を積層する工程などのさらなる工程を経て防水通音膜3とすることができる。
イオンビーム照射およびその後のエッチングを用いる方法では、例えば、樹脂フィルム51の貫通孔53の径およびその均一度、ならびに中心線56の延びる方向、孔密度、開口率、気孔率といった特性の制御が容易であり、すなわち、防水通音膜3の防水性および通音性の制御が容易となる。
原フィルムは、イオンビーム照射およびエッチング後に防水通音膜3として使用する領域において、その厚さ方向に通気可能である経路を有さない非多孔質の樹脂フィルムである。原フィルムは、無孔のフィルムであってもよい。原フィルムが非多孔質の樹脂フィルムであることは、イオンビーム照射およびエッチングによって原フィルムに貫通孔53を形成し、樹脂フィルム51としたときに、当該フィルム51の均一性および表面の平滑性を、例えば、メッシュなどの織物構造あるいは不織布構造などに比べて高くできることを意味し、これは、防水通音膜3および防水通音構造1の防水性および通音性の向上に寄与する。
原フィルムにイオンビームを照射すると、当該フィルムにおけるイオンが通過した部分において、樹脂フィルムを構成するポリマー鎖にイオンとの衝突による損傷が生じる。損傷が生じたポリマー鎖は、イオンが衝突していない他の部分のポリマー鎖よりも化学エッチングされやすい。このため、イオンビームを照射した原フィルムを化学エッチングすることにより、イオンの衝突の軌跡に沿って延びる細孔(貫通孔)が形成された樹脂フィルムが得られる。すなわち、貫通孔53の中心線56の延びる方向は、イオンビーム照射時に原フィルムをイオンが通過した方向である。原フィルムにおけるイオンが通過していない部分には、通常、細孔は形成されない。
原フィルムから樹脂フィルム51を形成するこの方法は、イオンビームを原フィルムに照射する工程(I)と、イオンビーム照射後の原フィルムにおけるイオンが衝突した部分の少なくとも一部を化学エッチングして、イオンの衝突の軌跡(イオントラック)に沿って延びる貫通孔53を当該フィルムに形成する工程(II)と、を含みうる。この方法では、図3に示すような、断面(中心線56の延びる方向に垂直な断面)57の面積が一方の主面54aから他方の主面54bに向けて一定またはほぼ一定である貫通孔53を有する樹脂フィルム51も、当該面積が一方の主面54aから他方の主面54bに向けて増加する貫通孔53を有する樹脂フィルム51も形成できる。前者の樹脂フィルム51は、例えば、イオン照射後の原フィルムをそのまま化学エッチングして形成できる。原フィルムに形成されたイオントラックに相当する領域がエッチングにより除去されることから、化学エッチングの時間を十分にとることにより、断面57の面積が一定またはほぼ一定の貫通孔53が形成される。
後者の樹脂フィルム51は、例えば、工程(II)において、一方の主面からの上記部分のエッチングの程度が、他方の主面からの上記部分のエッチングの程度よりも大きい化学エッチングを実行して形成できる。より具体的な例として、イオン照射後の原フィルムにおける一方の主面にマスキング層を配置した状態で化学エッチングを実行して形成できる。この化学エッチングでは、マスキング層が配置された上記一方の主面からのエッチングに比べて、上記他方の主面からのエッチングの程度が大きくなる。このような非対称エッチング、より具体的には、イオン照射後の原フィルムにおける一方の主面からと他方の主面からとの間で進行速度が異なるエッチング、を実施することにより、中心線56が延びる方向に垂直な断面57の面積が樹脂フィルム51の一方の主面から他方の主面に向けて増加する形状を有する貫通孔53を形成できる。なお、マスキング層を配置しない前者の樹脂フィルム51を形成する際のエッチングでは、イオンビーム照射後の原フィルムに対して、当該原フィルムの双方の主面から均等なエッチングが進行する。
以下、工程(I)および(II)をより具体的に説明する。
[工程(I)]
工程(I)では、イオンビームを原フィルムに照射する。イオンビームは、加速されたイオンにより構成される。イオンビームの照射により、当該ビーム中のイオンが衝突した原フィルムが形成される。
イオンビームを原フィルムに照射すると、図10に示すように、ビーム中のイオン61が原フィルム62に衝突し、衝突したイオン61は当該フィルム62の内部に軌跡(イオントラック)63を残す。被照射物である原フィルム62のサイズスケールで見ると、通常、イオン61はほぼ直線状に原フィルム62と衝突するため、直線状に延びた軌跡63が当該フィルム62に形成される。イオン61は、通常、原フィルム62を貫通する。
原フィルム62にイオンビームを照射する方法は限定されない。例えば、原フィルム62をチャンバーに収容し、チャンバー内の圧力を低くした後(例えば、照射するイオン61のエネルギーの減衰を抑制するために高真空雰囲気とした後)、ビームラインからイオン61を原フィルム62に照射する。チャンバー内に特定の気体を加えてもよいし、原フィルム62をチャンバーに収容するが当該チャンバー内の圧力を減圧せず、例えば大気圧でイオンビームの照射を実施してもよい。
帯状の原フィルム62が巻回されたロールを準備し、当該ロールから原フィルム62を送り出しながら、連続的に原フィルム62にイオンビームを照射してもよい。これにより、樹脂フィルム51を効率的に形成できる。上述したチャンバー内に上記ロール(送出ロール)と、イオンビーム照射後の原フィルム62を巻き取る巻取ロールとを配置し、減圧、高真空などの任意の雰囲気としたチャンバー内において送出ロールから帯状の原フィルム62を送り出しながら連続的に当該フィルムにイオンビームを照射し、ビーム照射後の原フィルム62を巻取ロールに巻き取ってもよい。
原フィルム62を構成する樹脂は、樹脂フィルム51を構成する樹脂と同じであり、例えば、PET、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエチレンナフタレートおよびポリフッ化ビニリデンから選ばれる少なくとも1種である。これらの樹脂から構成される原フィルム62は、イオン61が衝突した部分の化学エッチングがスムーズに進行しながらも、その他の部分の化学エッチングが進行し難い特徴を有しており、原フィルム62における軌跡63に対応する部分の化学エッチングの制御が容易となる。このため、このような原フィルム62の使用により、例えば、樹脂フィルム51の貫通孔53の形状の制御がより容易となる。
原フィルム62は2種以上の樹脂から構成されていてもよく、工程(I)および(II)を経て樹脂フィルム51が形成される限り、樹脂以外の材料を含んでいてもよい。当該材料は、例えば、光安定剤、酸化防止剤などの添加剤、樹脂原料に由来するオリゴマー成分、金属酸化物(例えば白色顔料:アルミナ、酸化チタンなど)である。
原フィルム62の厚さは、例えば5〜100μmである。工程(I)でのイオンビーム照射の前後によって、通常、原フィルム62の厚さは変化しない。
イオンビームを照射する原フィルム62は、例えば、無孔のフィルムである。この場合、工程(I)および(II)以外に当該フィルムに孔を設けるさらなる工程を実施しない限り、工程(I)および(II)により形成された貫通孔53以外の部分が無孔である樹脂フィルム51を形成できる。当該さらなる工程を実施した場合、工程(I)および(II)により形成された貫通孔53と、当該さらなる工程により形成された孔とを有する樹脂フィルム51が形成される。
原フィルム62に照射、衝突させるイオン61の種類は限定されないが、原フィルム62を構成する樹脂との化学的な反応が抑制されることから、ネオンより質量数が大きいイオン、具体的にはアルゴンイオン、クリプトンイオンおよびキセノンイオンから選ばれる少なくとも1種のイオンが好ましい。
イオン61のエネルギー(加速エネルギー)は、典型的には100〜1000MeVである。厚さ5〜100μm程度のポリエステルフィルムを原フィルム62として使用する場合、イオン種がアルゴンイオンのときのイオン61のエネルギーは100〜600MeVが好ましい。原フィルム62に照射するイオン61のエネルギーは、イオン種および原フィルム62を構成する樹脂の種類に応じて調整しうる。
原フィルム62に照射するイオン61のイオン源は限定されない。イオン源から放出されたイオン61は、例えば、イオン加速器により加速された後にビームラインを経て原フィルム62に照射される。イオン加速器は、例えばサイクロトロン、より具体的な例はAVFサイクロトロンである。
イオン61の経路となるビームラインの圧力は、ビームラインにおけるイオン61のエネルギー減衰を抑制する観点から、10-5〜10-3Pa程度の高真空が好ましい。イオン61を照射する原フィルム62が収容されるチャンバーの圧力が高真空に達していない場合は、イオン61を透過する隔壁によって、ビームラインとチャンバーとの圧力差を保持してもよい。隔壁は、例えば、チタン膜あるいはアルミニウム膜から構成される。
イオン61は、例えば、原フィルム62の主面に垂直な方向から当該フィルムに照射される。図10に示す例では、このような照射が行われている。この場合、軌跡63が原フィルム62の主面に垂直に延びるため、後の化学エッチングにより、主面に垂直な方向に中心線56が延びる貫通孔53が形成された樹脂フィルム51が得られる。イオン61は、原フィルム62の主面に対して斜めの方向から当該フィルムに照射してもよい。この場合、後の化学エッチングにより、主面に垂直な方向から傾いた方向に中心線56が延びる貫通孔53が形成された樹脂フィルム51が得られる。原フィルム62に対してイオン61を照射する方向は、公知の手段により制御できる。図4の角度θ1は、例えば、原フィルム62に対するイオンビームの入射角により制御できる。
イオン61は、例えば、複数のイオン61の飛跡が互いに平行となるように原フィルム62に照射される。図10に示す例では、このような照射が行われている。この場合、後の化学エッチングにより、互いに平行に延びる複数の貫通孔53が形成された樹脂フィルム51が形成される。
イオン61は、複数のイオン61の飛跡が互いに非平行(例えば互いにランダム)となるように原フィルム62に照射してもよい。これにより、例えば、図4〜7に示すような樹脂フィルム51が形成される。より具体的には、図4〜7に示すような樹脂フィルム51を形成するために、例えば、イオンビームを原フィルム62の主面に垂直な方向から傾けて照射するとともに、連続的あるいは段階的に当該傾ける方向を変化させてもよい。なお、イオンビームは、複数のイオンが互いに平行に飛翔するビームであるため、同じ方向に延びる貫通孔53の組が樹脂フィルム51に通常存在する(同じ方向に延びる複数の貫通孔53が樹脂フィルム51に通常存在する)ことになる。
連続的または段階的に当該傾ける方向を変化させる方法の例を図11に示す。図11に示す例では、帯状の原フィルム62を送出ロール71から送り出して所定の曲率を有する照射ロール72を通過させ、当該ロール72を通過する間にイオンビーム64を照射し、照射後の原フィルム62を巻取ロール73に巻き取る。このとき、イオンビーム64中のイオン61は次々と互いに平行に飛翔してくるため、照射ロール72上を原フィルム62が移動するとともに原フィルム62の主面に対してイオンビームが衝突する角度(入射角θ1)が変化することになる。そして、イオンビーム64を連続的に照射すれば上記傾ける方向は連続的に変化し、イオンビーム64を断続的に照射すれば上記傾ける方向は段階的に変化する。これは、イオンビームの照射タイミングによる制御ともいえる。また、イオンビーム64の断面形状および原フィルム62の照射面に対するイオンビーム64のビームラインの断面積によっても、原フィルム62に形成される軌跡63の状態(例えば角度θ1)を制御できる。
樹脂フィルム51の孔密度は、原フィルム62へのイオンビームの照射条件(イオン種、イオンのエネルギー、イオンの衝突密度(照射密度)など)により制御できる。
イオン61は、2以上のビームラインから原フィルム62に照射してもよい。
工程(I)は、原フィルム62の主面、例えば上記一方の主面、にマスキング層が配置された状態で実施してもよい。この場合、例えば、当該マスキング層を工程(II)におけるマスキング層に利用できる。
[工程(II)]
工程(II)では、工程(I)においてイオンビームを照射した後の原フィルム62におけるイオン61が衝突した部分の少なくとも一部を化学エッチングして、イオン61の衝突の軌跡63に沿って延びる貫通孔53を当該フィルムに形成する。このようにして得た樹脂フィルム51における貫通孔53以外の部分は、フィルムの状態を変化させる工程をさらに実施しない限り、基本的に、イオンビーム照射前の原フィルム62と同じである。
具体的なエッチングの手法は公知の手法に従えばよい。例えば、エッチング処理液に、イオンビーム照射後の原フィルム62を所定の温度かつ所定の時間、浸漬すればよい。エッチング温度、エッチング時間、エッチング処理液の組成などのエッチング条件によって、例えば、貫通孔53の径を制御できる。
エッチングの温度は、例えば40〜150℃であり、エッチングの時間は、例えば10秒〜60分である。
化学エッチングに使用するエッチング処理液は特に限定されない。エッチング処理液は、例えば、アルカリ性溶液、酸性溶液、または酸化剤、有機溶剤および界面活性剤から選ばれる少なくとも1種を添加したアルカリ性溶液もしくは酸性溶液である。アルカリ性溶液は、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムのような塩基を含む溶液(典型的には水溶液)である。酸性溶液は、例えば、硝酸、硫酸のような酸を含む溶液(典型的には水溶液)である。酸化剤は、例えば、重クロム酸カリウム、過マンガン酸カリウム、次亜塩素酸ナトリウムである。有機溶剤は、例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノール、エチレングリコール、アミノアルコール、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミドである。界面活性剤は、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸塩である。
工程(II)では、イオンビーム照射後の原フィルム62の一方の主面にマスキング層を配置した状態で上記化学エッチングを実施してもよい。この化学エッチングでは、原フィルム62におけるイオン61が衝突した部分のエッチングについて、マスキング層を配置した上記一方の主面からのエッチングに比べて、他方の主面からのエッチングの程度が大きくなる。すなわち、原フィルム62におけるイオン61が衝突した部分のエッチングについて、当該フィルムの双方の主面からのエッチングが非対称的に進行する化学エッチング(非対称エッチング)が実施される。なお、「エッチングの程度が大きい」とは、より具体的には、例えば、上記部分について単位時間あたりのエッチング量が大きいこと、すなわち上記部分についてエッチング速度が大きいことを意味する。
工程(II)では、原フィルム62の一方の主面への、原フィルム62におけるイオン61が衝突した部分に比べて化学エッチングされ難いマスキング層の配置により、当該一方の主面からの上記部分のエッチングを抑止しながら、原フィルム62の他方の主面からの上記部分のエッチングを進行させる化学エッチングを実施してもよい。このようなエッチングは、例えば、マスキング層の種類および厚さの選択、マスキング層の配置、エッチング条件の選択などにより、実施できる。
マスキング層の種類は特に限定されないが、原フィルム62におけるイオン61が衝突した部分に比べて化学エッチングされ難い材料から構成される層であることが好ましい。「エッチングされ難い」とは、より具体的には、例えば、単位時間あたりにエッチングされる量が小さいこと、すなわち、被エッチング速度が小さいことを意味する。化学エッチングされ難いか否かは、工程(II)において実際に実施する非対称エッチングの条件(エッチング処理液の種類、エッチング温度、エッチング時間など)に基づいて判断できる。工程(II)において複数回の非対称エッチングを、マスキング層の種類および/または配置面を変えながら実施する場合、各エッチングの条件に基づいてそれぞれのエッチングについて判断すればよい。
マスキング層は、原フィルム62におけるイオン61が衝突していない部分との対比では、当該部分よりも化学エッチングされ易くても、され難くても、いずれでもよいが、され難いことが好ましい。され難い場合、例えば、非対称エッチングの実施に必要なマスキング層の厚さを薄くすることができる。
工程(I)において、マスキング層を配置した原フィルム62にイオンビームを照射した場合、当該マスキング層にもイオントラックが形成される。これを考慮すると、マスキング層を構成する材料は、イオンビームの照射によってもそのポリマー鎖が損傷を受け難い材料であることが好ましい。
マスキング層は、例えば、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコールおよび金属箔から選ばれる少なくとも1種から構成される。これらの材料は、化学エッチングされ難いとともに、イオンビームの照射によっても損傷を受け難い。
マスキング層を配置して非対称エッチングを実施する場合、当該エッチングを実施する領域に相当する、原フィルム62の一方の主面の少なくとも一部に配置すればよい。もちろん必要に応じて、原フィルム62の一方の主面の全体に配置できる。
原フィルム62の主面にマスキング層を配置する方法は、非対称エッチングを実施する間、マスキング層が当該主面から剥離しない限り限定されない。マスキング層は、例えば、粘着剤により原フィルム62の主面に配置される。すなわち工程(II)において、マスキング層が粘着剤によって上記一方の主面に貼り合わされた状態で、上記化学エッチングを(非対称エッチングを)実施してもよい。粘着剤によるマスキング層の配置は、比較的容易に行うことができる。また、粘着剤の種類を選択することにより、非対称エッチング後の原フィルム62からのマスキング層の剥離が容易となる。
工程(II)で非対称エッチングを実施する場合、当該エッチングを複数回実施してもよい。また、非対称エッチングとともに、原フィルム62の双方の主面から均等に軌跡63のエッチングを進行させる対称エッチングを併せて実施してもよい。例えば、エッチングの途中でマスキング層を原フィルム62から剥離することにより、非対称エッチングから対称エッチングの進行に切り替えてもよい。あるいは、対称エッチングを実施した後に原フィルム62にマスキング層を配置して、非対称エッチングを実施してもよい。
工程(II)でマスキング層を用いた非対称エッチングを実施する場合、当該エッチング後のマスキング層は、必要に応じてその一部または全部を樹脂フィルム51に残留させることができる。残留させたマスキング層は、例えば、樹脂フィルム51における上記一方の主面(マスキング層を配置した主面)と上記他方の主面とを区別する目印として用いることができる。
工程(II)において複数回のエッチングを実施する場合、各回のエッチングにおいてエッチング条件を変化させてもよい。
樹脂フィルム51の製造方法は、工程(I)、(II)以外の任意の工程を含んでいてもよい。
防水通音構造1において、壁2への防水通音膜3の配置方法は、壁2の通音口11を覆うように防水通音膜3が配置される限り、特に限定されない。壁2への防水通音膜3の配置には、両面テープを用いた貼付、熱溶着、高周波溶着、超音波溶着などの手法を採用でき、両面テープを用いた貼付が、当該両面テープを防水通音膜3の支持体にできること、防水通音膜3をより正確かつ確実に配置できること、などの理由から好ましい。
防水通音膜3の支持体とは、当該膜3を補強するとともに、その取扱性を向上させる部材であり、例えば、防水通音膜3の周縁部に配置される部材である。防水通音膜3が当該膜3の主面に垂直な方向から見て円形である場合、支持体は、例えば、当該膜3の周縁部に接合されたリング状のシートである。支持体は、防水通音膜3の壁2への取り付けしろとすることができ、これにより、壁2へのより正確かつ確実な配置が可能となる。
支持体の形状は限定されない。例えば、図12に示すように、主面に垂直な方向から見た形状が円形である防水通音膜3の周縁部に接合された、リング状のシートである支持体81であってもよいし、図13に示すように、主面に垂直な方向から見た形状が矩形である防水通音膜3の周縁部に接合された、額縁状のシートである支持体81であってもよい。
図12,13に示すように、支持体81の形状を防水通音膜3の周縁部の形状とすることによって、支持体81の配置による防水通音膜3の通音性の低下が抑制される。また、シート状の支持体81が、防水通音膜3の取扱性および配置性が向上する観点から好ましい。
支持体81を構成する材料は、例えば、樹脂、金属およびこれらの複合材料である。樹脂は、例えばポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン;PET、ポリカーボネートなどのポリエステル;ポリイミドあるいはこれらの複合材である。金属は、例えばステンレスやアルミニウムのような耐蝕性に優れる金属である。
支持体81の厚さは、例えば5〜500μmであり、25〜200μmが好ましい。また、取り付けしろとしての機能に着目すると、リング幅(額縁幅:外形と内径との差)は0.5〜2mm程度が適当である。支持体81には、上記樹脂からなる発泡体を使用してもよい。
防水通音膜3と支持体81との接合方法は特に限定されず、例えば、加熱溶着、超音波溶着、接着剤による接着、両面テープによる接着などの方法を採用できる。両面テープ自体を支持体にできることは、上述のとおりである。
図1に示す例では、壁2における他方の空間13側に防水通音膜3が配置されているが、防水通音構造1では一方の空間12側に防水通音膜3が配置されていてもよい。壁2は、例えば電子機器の筐体であり、このとき、他方の空間13は当該筐体の内部に位置する空間、一方の空間12は電子機器の外部の空間である。壁2は、例えば、電子機器用ケースの筐体であり、このとき、他方の空間13は電子機器を収容する当該ケース内の空間であり、一方の空間12は電子機器用ケースの外部の空間である。
壁2は、例えば、樹脂、金属、ガラスおよびこれらの複合材料により構成される。
防水通音構造1では、防水通音膜3における通音口11に対応する領域(図1に示す例では領域α)において、通気性支持層59が存在せず、樹脂フィルム51および/または撥液層52が露出していてもよい。このとき、樹脂フィルム51および/または撥液層52は、防水通音膜3における一方の主面のみにおいて露出していても、双方の主面において露出していてもよい。この場合、防水通音構造1の防水性および通音性をさらに高いレベルで両立できる。防水通音膜3における、通音口11に対応する領域以外の領域(図1に示す例では領域β)では、例えば、防水通音膜3が壁2に接合されている。壁2への接合は、支持体81を介していてもよく、支持体81の例は両面テープである。
防水通音構造1では、例えば、周波数100Hz以上5kHz以下の音域における挿入損失を5dB以下、3dB以下、さらには1dB以下とすることができる。また、周波数100Hz以上3kHz以下の音域における挿入損失を5dB以下、3dB以下、2dB以下、さらには1dB以下とすることができる。防水通音構造1では、例えば、人の音声域の中央値と考えられる周波数1kHzにおける挿入損失を5dB以下、3dB以下、さらには1dB以下とすることができる。
防水通音構造1では、例えば防水通音膜3の構成の選択、より具体的な例としては貫通孔53の径、形状などの選択、によって、防水通音膜3の有効面積を減少させた場合においても良好な通音性を確保しうる。例えば、防水通音構造1における防水通音膜3の有効面積が4.9mm2以下であってもよい。有効面積を小さくしうるという有利な特徴は、例えば、防水通音構造1の省スペース化、および当該構造を備える電子機器の小型化および/または薄型化などのデザインおよび設計の自由度の向上に寄与する。防水通音膜3の有効面積とは、筐体の通音口を塞ぐように当該膜が配置された際に、実際に音が当該膜に入力し、当該膜を伝わって当該膜から音が出力される部分(有効部分)の面積であり、例えば、防水通音膜3を配置するために当該膜の周縁部に配置、形成された支持体や接合部などの面積分を含まない。有効面積は、典型的には、当該膜が配置された通音口の面積、あるいは、防水通音膜の周縁部に支持体が配置された防水通音部材では、当該支持体の開口部の面積でありうる。
防水通音構造1では、例えば、当該構造1が備える防水通音膜3の有効面積が4.9mm2のとき(一例として、直径2.5mmの円形であるとき)にも、上述した挿入損失の値を満たすことができる。もちろん、防水通音膜3の有効面積が小さい場合だけではなく大きい場合においても、より高いレベルでの防水性および通音性の両立を達成できるが、防水通音膜3の有効面積が小さい場合、あるいは小さくせざるを得ない場合に、防水通音構造1は特に有利となる。
防水通音膜3が、図8に示すように、断面57の面積が一方の主面54aから他方の主面54bに向けて増加する貫通孔53を有する膜である場合、通常、貫通孔53の径が相対的に大きな他方の主面54b側からの通音性が、当該径が相対的に小さな一方の主面54a側からの通音性に比べて良好である。このとき、より良好である他方の主面54b側からの通音性が、挿入損失として上記範囲を満たしうる。
防水通音膜3が、図8に示すように、断面57の面積が一方の主面54aから他方の主面54bに向けて増加する貫通孔53を有する膜である場合、防水通音構造1における防水通音膜3の向きは限定されない。例えば、一方の空間12に樹脂フィルム51の主面54a(貫通孔53の径が相対的に小さな主面54a)が向くように防水通音膜3が配置されていてもよい。この場合、より高い防水性と、他方の空間13側からのより高い通音性とを実現できる。
防水通音構造1は、防水性と通音性とを両立すべき任意の壁2における任意の通音口11に形成できる。防水通音構造1を備える具体的な物品は限定されない。
防水通音構造12は、従来の防水通音構造と同様、様々な用途に適用可能である。
[電子機器]
本発明の電子機器の一例を図14Aに示す。図14Aに示す電子機器は、携帯電話の一種であるスマートフォンである。スマートフォン101の筐体102は、発音部および受音部の一種であるトランスデューサ―に近接して設けられた通音口103aと、受音部の一種であるマイクに近接して設けられた通音口103bと、発音部の一種であるスピーカーに近接して設けられた通音口103cとを有する。各通音口103a〜103cを介して、スマートフォン101の外部と、筐体102内に収容された音響部である音響部品(トランスデューサ―、マイクおよびスピーカー)との間で音が伝達される。図14Bに示すように、スマートフォン101では、これらの通音口103a〜103cを塞ぐように、防水通音膜3が支持体81を介して内側から筐体102に取り付けられており、各通音口において防水通音構造1が形成されている。これにより、スマートフォン101の外部と各音響部との間で音を伝達できるとともに、外部から各通音口を介して筐体102の内部104に水が浸入することを防ぐことができる。
図14A,Bに示す電子機器では、防水通音構造1において、壁2はスマートフォン101の筐体102であり、水が存在しうる一方の空間12はスマートフォン101の(筐体102の)外部の空間、例えばスマートフォン101の所持者が生活を送っている空間、であり、他方の空間13は、スマートフォン101の筐体102の内部104における音響部を含む空間であり、通音口11は、音響部である各音響部品から、および/または当該音響部品へと音を伝達する通音口103a〜103cである。図14A,Bに示す例において、音響部を含む空間は、スマートフォン101の筐体102の内部に位置する空間であり、他方の空間13である当該空間の密閉容積からは、音響部品をはじめとする当該空間に配置された各部品が占める体積が除かれる。
本発明の電子機器の別の一例を図15A,Bに示す。図15A,Bに示す電子機器は、図14A,Bに示す電子機器と同じくスマートフォン111である。図15A,Bに示すスマートフォン111は、筐体102の内部104に収容された音響部品112が、防水通音膜3を介して通音口103a〜103cと密着するように配置されている以外は、図14A,Bに示すスマートフォン101と同様の構造を有する。図15A,Bに示す電子機器では、防水通音構造1において、壁2はスマートフォン111の筐体102であり、水が存在しうる一方の空間12はスマートフォン111の(筐体102の)外部の空間であり、他方の空間13は、スマートフォン111の筐体102の内部104に収容された各音響部品112のハウジング113内の空間であり、通音口11は、音響部であるハウジング113内の音響素子から、および/または当該音響素子へと音を伝達する通音口103a〜103cである。図15A,Bに示す例において、音響部を含む空間は、各音響部品112のハウジング113内の空間であり、他方の空間13である当該空間の密閉容積からは、振動板といった当該空間に配置された各音響素子が占める体積が除かれる。
防水通音構造1により、通音口における防水性および通音性のより高いレベルでの両立が達成される。また、防水通音膜3の選択により、例えば、当該膜3の有効面積が小さい場合にも良好な通音性を確保でき、スマートフォンをはじめとする電子機器の小型化および/または薄型化といった設計およびデザインの自由度の向上を達成できる。
本発明の電子機器において、防水通音構造1を形成する場所は、電子機器内の音響部と電子機器の外部との間で音を伝達できる限り限定されない。
筐体102は、樹脂、金属、ガラスおよびこれらの複合材料により構成される。スマートフォンおよびタブレットコンピューターのように、電子機器の表示部(例えば、液晶表示部の表面ガラス層)が筐体102の一部を構成していてもよい。
本発明の電子機器は、スマートフォンに限られない。音響部を備え、外部と音響部との間で音を伝達する通音口が筐体に設けられ、当該通音口を介した水の内部への浸入を防ぐことが必要であり、防水通音膜3を当該通音口を塞ぐように配置して防水通音構造1を形成できる全ての種類の電子機器がこれに該当する。本発明の電子機器は、例えば、フィーチャーフォンおよびスマートフォンなどの携帯電話、タブレットコンピューター、ウェアラブルデバイス、PDA、ゲーム機器、ノート型コンピューターなどのモバイルコンピューター、電子手帳、デジタルカメラ、ビデオカメラ、電子ブックリーダーである。
[電子機器用ケース]
本発明の電子機器用ケースの一例を図16Aに示す。図16Aに示すケース201には、当該ケース201に収容する電子機器の音響部と、ケース201の外部との間で音を伝達する通音口202a〜202cが設けられている。図16Aに示すケース201は、図14Aに示すスマートフォン101とは異なるタイプのスマートフォンのケースであり、通音口202aはスマートフォンの受話部に音を伝達するために、通音口202bはスマートフォンの送話部に音を伝達するために、通音口202cはスマートフォンのスピーカーから音を外部に伝達するために、それぞれ設けられている。各通音口202a〜202cを介して、ケース201の外部と、ケース201内に収容されたスマートフォンの各音響部との間で音が伝達される。図16Bに示すように、ケース201では、これらの通音口202a〜202cを塞ぐように、防水通音膜3が支持体81を介して内側からケース201に取り付けられており、各通音口において防水通音構造1が形成されている。これにより、ケース201の外部と各音響部との間で音を伝達できるとともに、外部から各通音口を介してケース201の内部203、ひいてはケース201に収容した電子機器の内部に水が浸入することを防ぐことができる。
図16A,Bに示す電子機器用ケースでは、防水通音構造1において、壁2はケース201の筐体204であり、水が存在しうる一方の空間12はケース201の(筐体204の)外部の空間、例えばケース201の所持者が生活を送っている空間、であり、他方の空間13は、ケース201の(筐体204の)内部203における電子機器が収容される空間であり、通音口11は、ケース201に収容された電子機器の音響部から、および/または音響部へと音を伝達する通音口202a〜202cである。図16A,Bに示す例において、音響部を含む空間は、音響部を有する電子機器が収容される、ケース201の筐体204の内部203の空間であり、他方の空間13である当該空間の密閉容積からは、ケース201に収容した電子機器を含め、ケース201の内部に存在する物品の占める体積が除かれる。ただし、ケース201に収容した状態で、電子機器の外部と当該機器の筐体の内部との間で空気が透過可能であるときは、他方の空間13の密閉容積に、電子機器の筐体の内部の空間であって、ケース201内と連通可能な部分の容積が含まれることになる。他方の空間13の密閉容積は、防水通音膜3および通音口11に通じる空気が占める容積である。
防水通音構造1の形成により、通音口における防水性および通音性のより高いレベルでの両立が達成できる。また、防水通音膜3の選択により、例えば、当該膜3の有効面積が小さい場合にも良好な通音性を確保でき、小型化および/または薄型化などが達成された設計およびデザインの自由度が高い電子機器に対応した電子機器用ケース201とすることができる。また。開口202a(202b,202c)の面積が小さい電子機器用ケース201とすることもでき、ケース201自体の設計およびデザインの自由度を向上できる。
本発明の電子機器用ケースにおいて、防水通音構造1を形成する場所は、ケース内に収容された電子機器の音響部とケースの外部との間で音を伝達できる限り限定されない。
電子機器用ケース201は、樹脂、金属、ガラスおよびこれらの複合材料により構成される。電子機器用ケース201は、本発明の効果が得られる限り、任意の構成を有することができる。例えば、図16Aに示すケース201は、スマートフォン用のケースであり、内部に収容するスマートフォンのタッチパネルを外部から操作できるフィルム205を備える。
以下、実施例により、本発明をさらに具体的に説明する。本発明は、以下の実施例に限定されない。
最初に、実施例および比較例で作製した樹脂フィルム、防水通音膜および防水通音構造の評価方法を説明する。
[貫通孔の開口径]
樹脂フィルムの主面を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察し、得られたSEM像から任意に選択した10の貫通孔の開口径を当該像から求め、その平均値を樹脂フィルムにおける貫通孔の開口径とした。
[通気度]
防水通音膜の厚さ方向の通気度は、JIS L1096の規定(通気性測定A法:フラジール形法)に準拠して求めた。
[耐水圧]
防水通音膜の耐水圧は、JIS L1092の耐水度試験B法(高水圧法)の規定に準拠して求めた。ただし、この規定に示された試験片の面積では膜が著しく変形するため、ステンレスメッシュ(開口径2mm)を膜の加圧面の反対側に設置し、当該膜の変形をある程度抑制した状態で測定した。
[白色度]
防水通音膜の白色度Wは、その主面の明度L、色相aおよび彩度bを、JIS L1015の規定に準拠した色差計(日本電色工業製、分光色差計SE6000)により求め、得られた明度L、色相aおよび彩度bから、式W=100−sqr[(100−L)2+(a2+b2)]により求めた。
[音響特性]
作製した防水通音膜の通音性として、音響特性(音圧損失)を以下のように評価した。
最初に、図17Aに示すように、携帯電話の筐体を模した模擬筐体91(ポリスチレン製、外形60mm×50mm×28mm)を準備した。模擬筐体91には、スピーカーから出力した音を筐体の外部へと伝える通音口となるスピーカー取付穴92(径が2.5mmの円形)と、スピーカーケーブルの導通孔93とが各々1箇所設けられている以外は開口がない。次に、径が5mmの円形である通音口が形成されたウレタンスポンジ製の充填材94にスピーカー95(スター精密製、SCG-16A)を埋め込んで、筐体91の内部に収容した。スピーカー95のスピーカーケーブル96は導通孔93から筐体91の外部に導き出し、その後、導通孔93はパテで塞いだ。
次に、ポリエチレン系の発泡体からなる両面テープ97(日東電工製、No.57120B、厚さ0.2mm)、PETフィルム98(厚さ0.1mm)およびPETからなる両面テープ99(日東電工製、No.5603、厚さ0.03mm)を準備し、それぞれ、内径2.5mmおよび外径5.8mmのリング状に打ち抜き加工した。これとは別に、各実施例および比較例で作製した防水通音膜300を直径5.8mmの円形に打ち抜いた。次に、内径2.5mmのリング状の両面テープ97、円形の防水通音膜300、内径2.5mmのリング状の両面テープ99、および内径2.5mmのリング状のPETフィルム98を、この順に、外形を揃えて積層し、音響特性評価用の防水通音部材A(防水通音膜の有効面積が4.9mm2)を作製した(図17Bを参照)。
次に、作製した防水通音部材を、当該部材が備えるポリエチレン系発泡体の両面テープ97を用いて、模擬筐体91の外側に、通音口92を防水通音膜300が完全に覆うように取り付けて防水通音構造301を形成した。その際、防水通音膜300と両面テープ97との間、および両面テープ97と模擬筐体91との間に隙間ができないようにした。
次に、スピーカケーブル96とマイク(Knowles Acoustic製、Spm0405Hd4H-W8)とを音響評価装置(B&K製、Multi-analyzer System 3560-B-030)に接続し、模擬筐体91の通音口92から21mm離れた位置にマイクを配置した。次に、評価方式としてSSR分析(試験信号20Hz〜10kHz、sweep)を選択、実行し、防水通音膜300の音響特性(THD、音圧損失)を評価した。音圧損失は、音響評価装置からスピーカー95に入力した信号と、マイクロフォンを介して検出された信号とから、自動的に求められる。これとは別に、防水通音膜を配置しない状態で、同様にしてブランクの音圧損失を求めておき、防水通音膜を配置した際の音圧損失からブランクの音圧損失を引いたものを、当該防水通音膜の通音性である音圧損失(挿入損失)とした。挿入損失が小さいほど、防水通音膜を伝達される音の特性が確保されていると判断できる。これを、実施例および比較例で作製した防水通音膜について実施した。以下の表1には、周波数5kHzの挿入損失を示す。防水通音膜の挿入損失は、音域20Hz〜10kHzでは、通常、周波数が高くなるほど大きくなる。このため、周波数5kHzの挿入損失は、10Hz以上5kHz以下の音域における挿入損失の最大値に相当する。
[防水通音構造]
作製した防水通音膜を用いて防水通音構造を構築し、他の空間の密閉時の容積を変化させたときに当該構造が水に対する保護等級7級(IPX7)を満たすか否かを評価した。評価方法は、以下のとおりである。
(他方の空間の密閉容積が300mm3以上の場合)
図18Aに示すように、IPX7評価用の治具302,303に、実施例および比較例で作製した防水通音膜300を組み込んだ。具体的に、防水通音膜300は、径2.0mmの開口305が設けられたポリカーボネート製のプレート304に、当該開口を塞ぐようにリング状の両面テープ306で貼付された後、プレート304ごと、治具302,303およびOリング307により固定された。両面テープ306の開口径は2.5mmであり、すなわち、防水通音膜300の有効面積は4.9mm2であった。治具302、プレート304、Oリング307および防水通音膜300により囲まれた空間308が他の空間13に相当する。当該空間の容積を、高さhおよび幅wが異なる複数の治具302を用いることにより変化させて、同じ防水通音膜300に対して、空間308の密閉時の容積を変化させたときに当該膜300を用いた防水通音構造がIPX7を満たすか否かを、JIS C0920の規定に従い水深1mに30分間浸漬させて評価した。この浸漬により、空間308側に水の浸入がなければ防水通音構造はIPX7を満たす。なお、水深1mの浸漬であることから、評価中、防水通音膜300に加わる水圧は9.8kPaである。
(他方の空間の密閉容積が300mm3未満の場合)
図18Bに示すように、IPX7評価用の治具302,303に、実施例および比較例で作製した防水通音膜300を組み込んだ。ただし、他方の空間の密閉容積が300mm3以上の場合(図18Aの場合)とは異なり、防水通音膜300を、径2.0mmの開口305が設けられたポリカーボネート製のプレート304に当該開口を塞ぐようにリング状の両面テープ306で貼付した後、プレート304の防水通音膜300を貼付した面に、所定の凹部(典型的には溝部)を一方の主面に有するポリカーボネート製のプレート309を、当該凹部に防水通音膜300が収容されるように接合させた。そして、内部に防水通音膜300が収容された一対のプレート304,309を、治具302,303およびOリング307により固定した。両面テープ306の開口径は2.5mmであり、すなわち、防水通音膜300の有効面積は4.9mm2であった。プレート304,309および防水通音膜300により囲まれた空間308が他の空間13に相当する。当該空間の容積を、プレート309の凹部のサイズにより変化させて、同じ防水通音膜300に対して、空間308の密閉時の容積を変化させたときに当該膜300を用いた防水通音構造がIPX7を満たすか否かを、JIS C0920の規定に従い水深1mに30分間浸漬させて評価した。この浸漬により、空間308側に水の浸入がなければ防水通音構造はIPX7を満たす。
(実施例1)
厚さ方向に貫通する複数の貫通孔が形成された非多孔質の市販のPETフィルム(it4ip製、Track etched membrane、厚さ50μm)を準備した。当該フィルムの貫通孔の径は10.6μm、孔密度は3.0×105個/cm2であった。
次に、準備したPETフィルムを、80℃に保持したエッチング処理液(水酸化カリウム濃度20質量%の水溶液)に30分浸漬した。エッチング終了後、処理液からフィルムを取出し、RO水(逆浸透膜濾過水)に浸漬して洗浄した後、50℃の乾燥オーブンにて乾燥して、厚さ方向に貫通する複数の貫通孔が形成された非多孔質の樹脂フィルムを得た。得られた樹脂フィルムの貫通孔の径は13.0μmであり、その中心軸の延びる方向に垂直な断面の面積は、当該フィルムの厚さ方向に一定であった。孔密度は、エッチング前後で同一であった。
次に、作製した樹脂フィルムを撥液処理液に3秒浸漬した後、常温で30分間放置して乾燥させ、当該フィルムの表面および貫通孔の内周面に撥液層を形成して、防水通音膜を得た。撥液処理液は、撥液剤(信越化学製、X−70−029C)を濃度0.7重量%となるように希釈剤(信越化学製、FSシンナー)で希釈して調製した。
このようにして得た防水通音膜および当該膜を用いて形成した防水通音構造の特性を以下の表1に示す。
(実施例2)
準備したPETフィルムをエッチング処理液に浸漬する時間を20分に変更した以外は実施例1と同様にして防水通音膜を得た。エッチング処理液への浸漬時間を変更することにより、作製した樹脂フィルムが有する貫通孔の径が変化する。
このようにして得た防水通音膜および当該膜を用いて形成した防水通音構造の特性を以下の表1に示す。
(実施例3)
準備したPETフィルムをエッチング処理しなかった以外は実施例1と同様にして防水通音膜を得た。このようにして得た防水通音膜および当該膜を用いて形成した防水通音構造の特性を以下の表1に示す。
(実施例4)
厚さ方向に貫通する複数の貫通孔が形成された非多孔質の市販のPETフィルム(it4ip製、Track etched membrane、厚さ45μm)を準備した。当該フィルムの貫通孔の径は3.0μm、孔密度は2.0×106個/cm2であった。
次に、準備したPETフィルムを、80℃に保持したエッチング処理液(水酸化カリウム濃度20質量%の水溶液)に30分浸漬した。エッチング終了後、処理液からフィルムを取出し、RO水(逆浸透膜濾過水)に浸漬して洗浄した後、50℃の乾燥オーブンにて乾燥して、厚さ方向に貫通する複数の貫通孔が形成された非多孔質の樹脂フィルムを得た。得られた樹脂フィルムの貫通孔の径は5.9μmであり、その中心軸の延びる方向に垂直な断面の面積は、当該フィルムの厚さ方向に一定であった。孔密度は、エッチング前後で同一であった。
次に、乾燥後の樹脂フィルムを分散染料を用いて染色した。染色後のフィルムは、肉眼では黒色であった。
次に、作製した黒色フィルムを、実施例1で使用したものと同じ撥液処理液に3秒浸漬した後、常温で30分間放置して乾燥させ、当該フィルムの表面および貫通孔の内周面に撥液層を形成して、防水通音膜を得た。
このようにして得た防水通音膜および当該膜を用いて形成した防水通音構造の特性を以下の表1に示す。
(比較例1)
準備したPETフィルムをエッチング処理液に浸漬する時間を40分に変更した以外は実施例1と同様にして防水通音膜を得た。このようにして得た防水通音膜および当該膜を用いて形成した防水通音構造の特性を以下の表1に示す。
(比較例2)
準備したPETフィルムをエッチング処理液に浸漬する時間を20分に変更した以外は実施例4と同様にして防水通音膜を得た。このようにして得た防水通音膜および当該膜を用いて形成した防水通音構造の特性を以下の表1に示す。
(比較例3)
準備したPETフィルムをエッチング処理せず、分散染料による染色も行わなかった以外は実施例4と同様にして防水通音膜を得た。このようにして得た防水通音膜および当該膜を用いて形成した防水通音構造の特性を以下の表1に示す。
(比較例4)
準備したPETフィルムを、厚さ方向に貫通する複数の貫通孔が形成された非多孔質の市販のPETフィルム(it4ip製、Track etched membrane、厚さ30μm)とした以外は実施例2と同様にして防水通音膜を得た。このようにして得た防水通音膜および当該膜を用いて形成した防水通音構造の特性を以下の表1に示す。なお、準備したPETフィルムの貫通孔の径は1.0μm、孔密度は3.0×107個/cm2であった。
(比較例5)
準備したPETフィルムをエッチング処理しなかった以外は比較例4と同様にして防水通音膜を得た。このようにして得た防水通音膜および当該膜を用いて形成した防水通音構造の特性を以下の表1に示す。
(比較例6)
市販のメッシュフィルム(Nittoku製、Smartmesh-P 180/460−27、厚さ43μm)を準備した。当該フィルムの開口径は40μmであった。準備したメッシュに対して実施例1と同様に撥液処理を実施して防水通音膜とした。このようにして得た防水通音膜および当該膜を用いて形成した防水通音構造の特性を以下の表1に示す。
Figure 2016158222
表1に示すように、厚さ方向に貫通する複数の貫通孔が形成された非多孔質の樹脂フィルムから構成され、貫通孔の径が5.0μm以上13.0μm以下である防水通音膜を用いた実施例1〜4の防水通音構造では、当該構造に用いた防水通音膜の固有耐水圧が、IPX7の評価中に当該膜に加わる水圧である9.8kPaよりも低いにもかかわらず、他の空間(空間308)の容積が所定の値以下になることによりIPX7が実現した。その容積は、防水通音膜の固有耐水圧が2.4kPaの実施例1で5mm3以下、4.0kPaの実施例2で10mm3以下、6.5kPaの実施例3で200mm3以下、8.5kPaの実施例4で300mm3以下であった。
一方、厚さ方向に貫通する複数の貫通孔が形成された非多孔質の樹脂フィルムから構成されるが貫通孔の径が15.0μmである防水通音膜を用いた比較例1では、他の空間の容積を5mm3としたときもIPX7は実現しなかった。また、厚さ方向に貫通する複数の貫通孔が形成された非多孔質の樹脂フィルムから構成されるが貫通孔の径が5.0μm未満である防水通音膜を用いた比較例2〜5では、他の空間の容積にかかわらずIPX7が実現したが、そもそもこれらの防水通音膜の固有耐水圧は9.8kPaを超えていた。そして、比較例2〜5の防水通音膜では、実施例1〜4に比べて挿入損失が大きく増加した。また、メッシュ構造を有する防水通音膜を用いた比較例6では、挿入損失が17.8dBと非常に大きかった。
本発明の防水通音構造は、通音性を確保しながら水の透過を防ぐことが要求される任意の物品に使用できる。
1 防水通音構造
2 壁
3 防水通音膜
4 音響部
11 通音口
12 (水が存在しうる)一方の空間
13 (水が存在しない、または水の存在を避けるべき)他方の空間
21,22 音
31 水圧
32 圧力
51 樹脂フィルム
52 撥液層
53 貫通孔
54a,54b (樹脂フィルム51の)主面
55 開口
56 (貫通孔53の)中心軸
57 (貫通孔53の中心軸56が延びる方向に垂直な)断面
58a (主面54aにおける貫通孔53の)開口
58b (主面54bにおける貫通孔53の)開口
59 通気性支持層
61 イオン
62 原フィルム
63 軌跡(イオントラック)
64 イオンビーム
71 送出ロール
72 照射ロール
73 巻取ロール
81 支持体
101 電子機器(スマートフォン)
102 筐体
103a,103b,103c 通音口
104 (筐体102の)内部
111 電子機器(スマートフォン)
112 音響部品
113 ハウジング
201 電子機器用ケース
202a,202b,202c 通音口
203 (ケース201の)内部
204 (ケース201の)筐体
205 フィルム
91 模擬筐体
92 スピーカー取付穴
93 導通孔
94 充填材
95 スピーカー
96 スピーカーケーブル
97 両面テープ
98 PETフィルム
99 両面テープ
300 防水通音膜
301 防水通音構造
302 (IPX7評価用)治具
303 (IPX7評価用)治具
304 プレート
305 (プレート304の)開口
306 両面テープ
307 Oリング
308 空間
309 プレート

Claims (12)

  1. 2つの空間を隔てるとともに、当該2つの空間の間で音を伝達する通音口が設けられた壁と、
    前記通音口を塞ぐように配置された、前記2つの空間の間で音を伝達するとともに、水が存在しうる一方の前記空間から前記通音口を介して他方の前記空間に水が浸入することを防ぐ防水通音膜と、を備える防水通音構造であって、
    前記他方の空間は、前記一方の空間が水で満たされたときに、容積が300mm3以下の密閉空間となるように構成され、
    前記防水通音膜が、
    厚さ方向に貫通する複数の貫通孔が形成された、非多孔質の樹脂フィルムと、前記樹脂フィルムの主面上に形成された、前記複数の貫通孔と対応する位置に開口を有する撥液層と、を備え、
    前記貫通孔の径が5.0μm以上13.0μm以下の防水通音膜である、
    防水通音構造。
  2. 前記防水通音構造の耐水圧が、前記通音口に配置された前記防水通音膜の耐水圧であってJIS L1092の耐水度試験B法(高水圧法)の規定に準拠して測定した耐水圧を超える請求項1に記載の防水通音構造。
  3. JIS C0920に規定されている水の浸入に対する保護等級7級を満たす請求項1または2に記載の防水通音構造。
  4. 前記防水通音膜の前記耐水圧が3.0kPa以上9.8kPa未満であり、
    前記容積が10mm3以下である請求項3に記載の防水通音構造。
  5. 前記防水通音膜の前記耐水圧が2.0kPa以上3.0kPa未満であり、
    前記容積が5mm3以下である請求項3に記載の防水通音構造。
  6. 前記防水通音膜の有効面積が4.9mm2以下である請求項1〜5のいずれかに記載の防水通音構造。
  7. 前記防水通音膜が、JIS L1096の規定に準拠して測定したフラジール数で示して、2.0cm3/(cm2・秒)以上120cm3/(cm2・秒)以下の通気度を厚さ方向に有する請求項1〜6のいずれかに記載の防水通音構造。
  8. 100Hz以上5kHz以下の音域における前記防水通音構造の挿入損失が2dB以下である請求項1〜7のいずれかに記載の防水通音構造。
  9. 前記防水通音膜に、波長380nm以上500nm以下の波長域に含まれる光を吸収する着色処理が施されている請求項1〜8のいずれかに記載の防水通音構造。
  10. 前記防水通音膜が、黒色、灰色、茶色または桃色に着色されている請求項1〜8のいずれかに記載の防水通音構造。
  11. 音響部を有する電子機器であって、
    請求項1〜10のいずれかに記載の防水通音構造を備え、
    前記防水通音構造において、
    前記壁は、前記電子機器の筐体であり、
    前記一方の空間は、前記筐体の外部の空間であり、
    前記他方の空間は、前記筐体の内部における前記音響部を含む空間であり、
    前記通音口は、前記音響部からおよび/または前記音響部へと音を伝達する通音口である、電子機器。
  12. 音響部を有する電子機器を収容する電子機器用ケースであって、
    請求項1〜10のいずれかに記載の防水通音構造を備え、
    前記防水通音構造において、
    前記壁は、前記ケースの筐体であり、
    前記一方の空間は、前記筐体の外部の空間であり、
    前記他方の空間は、前記筐体の内部における前記電子機器が収容される空間であり、
    前記通音口は、前記ケースに収容された前記電子機器の音響部からおよび/または前記音響部へと音を伝達する通音口である、電子機器用ケース。
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