[実施の形態]
以下、本発明のアンテナ装置の一態様としての周波数共用アンテナ装置の実施の形態を、図面を参照して説明する。この周波数共用アンテナ装置は、携帯電話機用の基地局アンテナとして用いられる。なお、以下の説明では、本実施の形態に係る周波数共用アンテナ装置を高周波信号の送信に用いる場合について説明するが、この周波数共用アンテナ装置を受信のために用いることも可能である。
(周波数共用アンテナ装置の機能構成)
図1(a)〜(d)は、本実施の形態に係る周波数共用アンテナ装置の機能構成を示す概略図である。この周波数共用アンテナ装置は、1.5〜2GHz帯の水平偏波及び垂直偏波、ならびに700〜800MHz帯の水平偏波及び垂直偏波の各高周波信号を送信することが可能である。以下、1.5〜2GHz帯を第1周波数帯とし、700〜800MHz帯を第2周波数帯とする。
図1(a)は第1周波数帯の水平偏波を送信することが可能な第1送信部1Aの構成例を示す概略構成図である。この第1送信部1Aは、図略の同軸ケーブルの芯線が接続される端子部10Aに入力された信号を複数(本実施の形態では14個)の第1水平偏波アンテナ素子15Aに分配するように構成されている。
具体的には、第1送信部1Aは、端子部10Aに入力された信号を分配する第1分配線路11Aと、第1分配線路11Aによって分配された信号をさらに分配する第2分配線路12Aと、第2分配線路12Aによって分配された信号をさらに分配する第3分配線路13Aと、第3分配線路13Aによって分配された信号をさらに分配する第4分配線路14Aとを備え、第4分配線路14Aの端末部が第1水平偏波アンテナ素子15Aに接続されている。
また、第1分配線路11Aと第2分配線路12Aとの間、及び第2分配線路12Aと第3分配線路13Aとの間には、それぞれ複数の移相器20が設けられている。この移相器20によって信号の位相を変化させることにより、複数の第1水平偏波アンテナ素子15Aから放射される電波の指向性を調節することが可能である。
またさらに、第2分配線路12A又は第3分配線路13Aと第4分配線路14Aとは、後述する接続部材としての接続ピン30によって接続されている。
図1(b)は、第1周波数帯の垂直偏波を送信することが可能な第2送信部1Bの構成例を示す概略構成図である。この第2送信部1Bは、第1送信部1Aと同様に構成されている。すなわち、第2送信部1Bは、図略の同軸ケーブルの芯線が接続される端子部10Bに入力された信号を複数(本実施の形態では14個)の第1垂直偏波アンテナ素子15Bに分配するように構成されている。
具体的には、第2送信部1Bは、端子部10Bに入力された信号を分配する第1分配線路11Bと、第1分配線路11Bによって分配された信号をさらに分配する第2分配線路12Bと、第2分配線路12Bによって分配された信号をさらに分配する第3分配線路13Bと、第3分配線路13Bによって分配された信号をさらに分配する第4分配線路14Bとを備え、第4分配線路14Bの端末部が第1垂直偏波アンテナ素子15Bに接続されている。
第1分配線路11Bと第2分配線路12Bとの間、及び第2分配線路12Bと第3分配線路13Bとの間には、それぞれ移相器20が設けられている。また、第2分配線路12B又は第3分配線路13Bと第4分配線路14Bとは、接続ピン30によって接続されている。
図1(c)は、第2周波数帯の水平偏波を送信することが可能な第3送信部1Cの構成例を示す概略構成図である。この第3送信部1Cは、図略の同軸ケーブルの芯線が接続される端子部10Cに入力された信号を複数(本実施の形態では10個)の第2水平偏波アンテナ素子15Cに分配するように構成されている。
具体的には、第3送信部1Cは、端子部10Cに入力された信号を分配する第1分配線路11Cと、第1分配線路11Cによって分配された信号をさらに分配する第2分配線路12Cと、第2分配線路12Cによって分配された信号をさらに分配する第3分配線路13Cと、第3分配線路13Cによって分配された信号をさらに分配する第4分配線路14Cとを備え、第4分配線路14Cの端末部が第2水平偏波アンテナ素子15Cに接続されている。
第1分配線路11Cと第2分配線路12Cとの間、及び第2分配線路12Cと第3分配線路13Cとの間には、それぞれ移相器20が設けられている。また、第2分配線路12C又は第3分配線路13Cと第4分配線路14Cとは、接続ピン30によって接続されている。
図1(d)は、第2周波数帯の垂直偏波を送信することが可能な第4送信部1Dの構成例を示す概略構成図である。この第4送信部1Dは、第3送信部1Cと同様に構成されている。すなわち、第4送信部1Dは、図略の同軸ケーブルの芯線が接続される端子部10Dに入力された信号を複数(本実施の形態では10個)の第2垂直偏波アンテナ素子15Dに分配するように構成されている。
具体的には、第3送信部1Dは、端子部10Dに入力された信号を分配する第1分配線路11Dと、第1分配線路11Dによって分配された信号をさらに分配する第2分配線路12Dと、第2分配線路12Dによって分配された信号をさらに分配する第3分配線路13Dと、第3分配線路13Dによって分配された信号をさらに分配する第4分配線路14Dとを備え、第4分配線路14Dの端末部が第2垂直偏波アンテナ素子15Dに接続されている。
第1分配線路11Dと第2分配線路12Dとの間、及び第2分配線路12Dと第3分配線路13Dとの間には、それぞれ移相器20が設けられている。また、第2分配線路12D又は第3分配線路13Dと第4分配線路14Dとは、接続ピン30によって接続されている。
以下、第1水平偏波アンテナ素子15A,第1垂直偏波アンテナ素子15B,第2水平偏波アンテナ素子15C,第2垂直偏波アンテナ素子15Dを総称して、アンテナ素子15という。
(周波数共用アンテナ装置の構成)
図2は、周波数共用アンテナ装置1の外観を示す外観斜視図である。図3は、周波数共用アンテナ装置1のレドーム10の内部を示す構成図である。
周波数共用アンテナ装置1は、高周波信号が伝搬する伝送線路100と、伝送線路100によって分配された高周波信号を送信可能な複数のアンテナ素子15と、移相器20の誘電体板20(後述)を移動させる移動機構6と、FRP(fiber reinforced plastics)等の絶縁性の樹脂からなるレドーム10とを備えている。
レドーム10は、両端がアンテナキャップ(不図示)によって閉塞される円筒状であり、その長手方向が鉛直方向となるように一対の取付金具10aによってアンテナ塔等に取り付けられる。伝送線路100、複数のアンテナ素子15、及び移動機構6は、レドーム10内に配置されている。
伝送線路100は、複数対の板状導体の間にそれぞれ中心導体を挟んでなるトリプレート構造を有している。本実施の形態では、伝送線路100が、電気的に接地された複数対の板状導体として第1乃至第3のグランド板41〜43を備え、第1乃至第3のグランド板41〜43のうち、対をなす第1のグランド板41と第2のグランド板42との間に第1の中心導体51が配置され、第2のグランド板42と第3のグランド板43との間に第2の中心導体52が配置されている。
第1乃至第3のグランド板41〜43は、互いに平行に配置され、第2のグランド板42が第1のグランド板41と第3のグランド板43との間に位置している。また、第1乃至第3のグランド板41〜43は、レドーム10の中心軸方向に長手方向を有する長板状である。なお、図3では、第1乃至第3のグランド板41〜43ならびに第1及び第2の中心導体51,52の間に配置された後述するスペーサ等の部材の図示を省略している。レドーム10の中心軸方向の長さは、例えば1〜2.7mである。
第1のグランド板41の長手方向の両端部には、第1のグランド板41をレドーム10に固定するための固定金具10bが固定されている。固定金具10bは、取付金具10aとの間にレドーム10を挟み、ボルト10cによってレドーム10に締結されている。
図4及び図5は、第3のグランド板43上に配置された複数のアンテナ素子15を示し、図4は全体図、図5は部分斜視図である。なお、第3のグランド板43は、周波数共用アンテナ装置1の使用状態において、図4の図面上方が鉛直方向上側になるように設置される。
複数のアンテナ素子15のうち、第1水平偏波アンテナ素子15Aと第1垂直偏波アンテナ素子15Bとは、十字状に交差して配置されている。第2水平偏波アンテナ素子15Cは、その基板面が水平方向となるように配置されている。第2垂直偏波アンテナ素子15Dは、水平方向に向かい合う一対のプリント基板によって構成されている。
複数のアンテナ素子15は、ボルト431及びナット432によって第3のグランド板43に固定されたL字状の取付金具433により、第3のグランド板43に対して垂直に固定されている。アンテナ素子15の具体的な接続構造については、後述する。
図6は、第1の中心導体51の一部を示す斜視図である。第1の中心導体51は、誘電体からなる平板状の第1の基板510の表面に配線パターンとして設けられた銅等の金属箔によって形成されている。第1〜第4送信部1A〜1D(図1参照)の第1分配線路11A,11B,11C,11D、第2分配線路12A,12B,12C,12D、及び第3分配線路13A,13B,13C,13Dは、第1の中心導体51によって構成されている。
図7は、第2の中心導体52の一部を示す斜視図である。第2の中心導体52も、第1の中心導体51と同様に、誘電体からなる平板状の第2の基板520の表面に配線パターンとして設けられた銅等の金属箔によって形成されている。第1〜第4送信部1A〜1Dの第4分配線路14A,14B,14C,14Dは、第2の中心導体52によって構成されている。第1の基板510及び第2の基板520は、例えばガラスエポキシ等の電気絶縁性を有する樹脂からなり、その厚みは例えば0.8mmである。
第1の中心導体51としての配線パターンは、第1の基板510の両面に設けられている。同様に、第2の中心導体52としての配線パターンは、第2の基板520の両面に設けられている。
(第1の基板及び第2の基板の支持構造)
図8(a)及び(b)は、伝送線路100における第1乃至第3のグランド板41〜43の固定構造及び第1乃至第2の基板510,520の支持構造を説明するための説明図である。図8(a)は伝送線路100の組み付け前の状態を示し、図8(b)は伝送線路100の組み付け後の状態を示している。
第1のグランド板41と第2のグランド板42との間、及び第2のグランド板42と第3のグランド板43との間には、それぞれ導電体からなる金属スペーサ50が配置されている。第1のグランド板41と第2のグランド板42との間に配置された金属スペーサ50は、第1の基板510に形成された挿通孔510aを挿通している。第2のグランド板42と第3のグランド板43との間に配置された金属スペーサ50は、第2の基板520に形成された挿通孔520aを挿通している。
金属スペーサ50は、導電性を有し、例えば銅メッキ又は錫メッキされた黄銅からなる。また、金属スペーサ50は、軸部501と雄ねじ部502とを一体に有し、軸部501には、ねじ穴500が形成されている。図8(a)及び(b)では、このねじ穴500を破線で示している。本実施の形態では、金属スペーサ50の軸部501が六角柱状であるが、軸部501は円柱状であってもよい。
第1のグランド板41と第2のグランド板42との間、ならびに第2のグランド板42と第3のグランド板43との間には、それぞれ金属スペーサ50の軸部501が介在し、この軸部501の長さに応じた空間が形成されている。軸部501の長さは、例えば5.0mmである。第1乃至第3のグランド板41〜43は、金属スペーサ50によって互いに電気的に接続されている。
第1のグランド板41と第2のグランド板42との間に配置される金属スペーサ50の雄ねじ部502には、ナット54が螺合する。第1のグランド板41と第2のグランド板42との間に配置される金属スペーサ50のねじ穴500には、第2のグランド板42と第3のグランド板43との間に配置される金属スペーサ50の雄ねじ部502が螺合する。また、第2のグランド板42と第3のグランド板43との間に配置される金属スペーサ50のねじ穴500には、ボルト55の雄ねじ部551が螺合する。
第1乃至第3のグランド板41〜43には、金属スペーサ50の雄ねじ部502又はボルト55の雄ねじ部551を挿通させる挿通孔41a,42a,43aがそれぞれ形成されている。
このように、伝送線路100は、2つの金属スペーサ50、1つのナット54、及び1つのボルト55が相互に固定されることにより、第1乃至第3のグランド板41〜43がそれぞれ所定の間隔を以って互いに平行に配置される。なお、2つの金属スペーサ50、1つのナット54、及び1つのボルト55からなる固定構造は、伝送線路100の複数箇所に設けられ、第1乃至第3のグランド板41〜43ならびに第1及び第2の基板510,520の間隔が一定に保たれている。
第1の基板510は、第1のグランド板41と第2のグランド板42との間に樹脂スペーサ56によって支持されている。第2の基板520は、第2のグランド板42と第3のグランド板43との間に樹脂スペーサ56によって支持されている。第1の基板510を支持する樹脂スペーサ56は、第1の基板510の両面に例えば接着によって固定されている。同様に、第2の基板520を支持する樹脂スペーサ56は、第2の基板520の両面に例えば接着によって固定されている。それぞれの樹脂スペーサ56の厚さは、例えば2.1mmである。
(第1の中心導体と第2の中心導体との接続構造)
図9は、第1の中心導体51と第2の中心導体52との接続構造を示す概略図である。図10は、図9のA−A線断面図である。
第2のグランド板42を挟んで配置された中心導体同士(第1の中心導体51と第2の中心導体52)は、図9に示す接続部3において、第2のグランド板42に形成された接続ピン挿通孔42bに挿通された接続部材としての接続ピン30によって電気的に接続されている。
接続ピン30は、例えば銅や黄銅等の良導電性の金属からなる軸状の部材である。本実施の形態では、接続ピン30が円柱状であるが、これに限らず、例えば四角柱状や六角柱状であってもよい。接続ピン30は、その両端部が第1の基板510に形成された挿通孔510b及び第2の基板520に形成された挿通孔520bにそれぞれ挿通され、第1の中心導体51及び第2の中心導体52に半田付けされている。また、接続ピン30は、その中心軸が第1の基板510,第2の基板520,及び第2のグランド板42に対して垂直となるように配置されている。
この接続ピン30を用いた接続構造により、第1送信部1Aの第3分配線路13Aと第4分配線路14A、第2送信部1Bの第3分配線路13Bと第4分配線路14B、第3送信部1Cの第3分配線路13Cと第4分配線路14C、及び第4送信部1Dの第3分配線路13Dと第4分配線路14Dがそれぞれ接続される。
接続ピン30の近傍には、第1のグランド板41と第2のグランド板42との間に配置された金属スペーサ50、及び第2のグランド板42と第3のグランド板43の間に配置された金属スペーサ50が配置されている。以下の説明では、第1のグランド板41と第2のグランド板42との間に配置された金属スペーサ50を「金属スペーサ50A」とし、第2のグランド板42と第3のグランド板43との間に配置された金属スペーサ50を「金属スペーサ50B」とする。金属スペーサ50A及び金属スペーサ50Bは、電気的に接地された本発明の接地導体の一態様である。
金属スペーサ50Aと金属スペーサ50Bとは、第2のグランド板42の挿通孔42aを介して連結されている。具体的には、金属スペーサ50Aのねじ穴500に金属スペーサ50Bの雄ねじ部502が螺合している。これにより、第2のグランド板42が金属スペーサ50A及び金属スペーサ50Bのそれぞれの軸部501の間に挟まれている。
図10に示すように、第2のグランド板42に平行な方向における接続ピン30と金属スペーサ50Bとの間隔をd1とすると、この間隔d1は2.5mm以下である。なお、この間隔d1は、第2のグランド板42に平行な方向において、接続ピン30の外周面30aと金属スペーサ50Bの外周面50aとの最短距離をいう。
また、本実施の形態のように金属スペーサ50が断面多角形状である場合には、金属スペーサ50がその中心軸を中心とする周方向にどのような角度(位相)で固定されたとしても、接続ピン30との間隔d1が2.5mm以下となるように、第2のグランド板42の挿通孔42a等の位置が設定されることが望ましい。すなわち、本実施の形態では、金属スペーサ50Bがその中心軸を中心とする周方向にどのような角度で固定されたとしても接続ピン30との間隔d1が2.5mm以下となる位置に、金属スペーサ50Bが固定される。なお、図示は省略しているが、接続ピン30と金属スペーサ50Aとの間隔についても、上記と同様に2.5mm以下となるように、金属スペーサ50Aが固定されている。
図11は、第1の中心導体51から第2の中心導体52に接続ピン30を介して2GHzの高周波信号を伝送する場合において、接続ピン30と金属スペーサ50A,50Bとの間隔d1と、接続ピン30による第1の中心導体51と第2の中心導体52との接続部3における伝送損失(通過特性を示すSパラメータのS21)との関係を示したグラフである。
このグラフに示すように、接続ピン30と金属スペーサ50A,50Bとの間隔d1を2.5mm以下とすれば、伝送損失を0.1dB以下に抑えることができる。すなわち、間隔d1が2.5mm以下であれば、接続部3において良好な伝送特性が得られる。なお、接続ピン30の近傍に金属スペーサ50A,50Bを配置することによって伝送損失が低減される理由としては、接続ピン30を流れる電流の電流経路と、複数の金属スペーサ50を流れる電流経路との経路長の差が縮まることが一因と考えられる。
なお、間隔d1は、第1の中心導体51又は第2の中心導体52と金属スペーサ50A,50Bとの短絡防止や第1の基板510及び第2の基板520の加工上の制約により、1.0mm以上確保されていることが望ましい。
図9,10に戻り、本実施の形態では、第1及び第2の中心導体51,52の少なくとも一方に、接続ピン30の近傍に形成され、基板510,520の両面の配線パターンを電気的に接続する第1スルーホール600を設けている。第1スルーホール600は、接続ピン30を挟んで金属スペーサ50と対向する位置の中心導体51,52に形成されている。
中心導体51,52として基板510,520の両面に形成された配線パターンを用いた場合、接続ピン30を介して中心導体51,52を接続した際に、表裏面の配線パターンで電流経路の経路長に差が生じ、この電流経路の経路長の差に起因して、通過特性を示すSパラメータのS21の特定の周波数帯における急激な低下、すなわち特定の周波数帯での伝送損失の増加が生じていると考えられる。
本実施の形態では、第1スルーホール600により基板510,520の表裏面の配線パターンを電気的に接続することで、この表裏面の配線パターンにおける電流経路の経路長の差による影響を抑制し、伝送損失の改善を図っている。
なお、上述のように、接続ピン30と金属スペーサ50A,50Bとの間隔d1を小さくするほど伝送損失を抑制することが可能であるが、短絡防止や加工上の制約により、接続ピン30と金属スペーサ50A,50Bとを近づけることには限界がある。本実施の形態のように、第1スルーホール600を設けることで、間隔d1がある程度大きく設定されている場合であっても、伝送損失を効果的に抑制することが可能になる。
電流経路の経路長の差による伝送損失への影響は接続ピン30の近傍で大きくなるため、第1スルーホール600は、できるだけ接続ピン30と近い位置に設けることが望ましい。具体的には、接続ピン30と第1スルーホール600との距離は、少なくとも10mm以内とすることが望ましい。
また、第1及び第2の中心導体51,52の両方に第1スルーホール600を設けることで、電流経路の経路長の差による影響をより抑え、さらなる伝送特性の改善が期待できる。よって、両中心導体51,52に第1スルーホール600を設けることが望ましい。なお、両中心導体51,52の第1スルーホール600を設ける位置は、対向位置(平面視で重なる位置)に限定されない。
本実施の形態では、さらに、第1スルーホール600の接続ピン30と反対側に、第1スルーホール600と離間して、基板510,520の両面の配線パターンを電気的に接続する1つ以上の第2スルーホール601を設けている。1つ以上の第2スルーホール601を設けること、すなわちスルーホール600,601を合計2つ以上設けることで、伝送損失のさらなる抑制が可能になる。この根拠については後述する。
第1及び第2スルーホールは、配線パターンの長手方向に沿って等間隔に設けられている。以下、スルーホール600,601の間隔をスルーホール間隔dsという。このスルーホール間隔dsは、25mm以下とすることが望ましい。この根拠についても後述する。
本実施の形態では、スルーホール600,601を直径1mmの円形状としたが、スルーホール600,601の直径や形状は特に限定するものではない。また、本実施の形態では、スルーホール600,601を配線パターンの幅方向における中央に整列して形成したが、スルーホール600,601を形成する位置は、配線パターンの幅方向における中央からずれた位置であってもよい。
また、本実施の形態では、配線パターンに貫通孔を形成し、その貫通孔の内周面に導電層を形成することで、当該導電層を介して表裏面の配線パターンを電気的に接続するようにスルーホール600,601を構成したが、これに限らず、例えば、貫通孔全体を埋めるように導電体を充填してもよい。また、貫通孔に金属棒(スルーホールピン等)を通し、当該金属棒を表裏面の配線パターンに半田付けする構成としても構わない。
以下、スルーホール600,601を設けることによる伝送損失の改善について、説明する。ここでは、第1のグランド板41と第1の中心導体51との距離、第1の中心導体51と第2のグランド板42との距離、第2のグランド板42と第2の中心導体52との距離、及び第2の中心導体52と第3のグランド板43との距離を2.1mmとした。また、第1〜3のグランド板41の厚さを1mm、導電率を2.09×107S/mとし、基板510,520の厚さを0.8mm、比誘電率を0.01とし、基板510,520の表裏面に形成される配線パターンをそれぞれ厚さ0.035mmの銅箔とした。また、金属スペーサ50の平面視における中心から第1スルーホール600の中心までの距離を8mmとした。
スルーホール600,601を形成しない場合のS21の周波数特性を図12に、第1スルーホール600のみを設けた場合のS21の周波数特性を図13に、第1スルーホール600と1つの第2スルーホール601を設けた場合のS21の周波数特性を図14に示す。
図12に示すように、スルーホール600,601を形成しない場合には、通過特性を示すSパラメータのS21は、特定の周波数帯で大きく減少する複数のピークが形成されている。図12の例では、携帯電話基地局用アンテナで使用される2GHz帯においてもピークが発生しており、改善が望まれる。
これに対して、図13に示すように、第1スルーホール600を設けた場合、図12と比較してS21のピークが大幅に減少し、伝送損失の改善が図られていることが分かる。図13では、周波数2GHzにて小さなピークが発生しているが、図14に示すように、さらに第2スルーホール601を形成することで、この小さなピークも除去することができる。なお、ここではスルーホール間隔dsを25mmとした。
さらに、第2スルーホール601を25mm間隔で2つ(合計のスルーホール数は3つ)形成した場合のS21の周波数特性を図15に、第2スルーホール601を25mm間隔で3つ(合計のスルーホール数は4つ)形成した場合のS21の周波数特性を図16に示す。また、図14〜16において、周波数0.5〜2.2GHzの範囲におけるS21の最悪値を図17にまとめて示す。なお、図17の横軸は、第1及び第2スルーホール600,601の合計数を表している。
図17に示すように、第2スルーホール601の数(合計のスルーホール数)が多くなるほど、S21の最悪値が改善し、低周波数帯におけるピークの発生を抑制することが可能になる。また、図17より、第2スルーホール601の数を1つ以上(合計のスルーホール数を2つ以上)とすることで、伝送損失を十分に改善できることが分かる。
次に、スルーホール間隔dsについて検討する。
第2スルーホール601の数を1つ(合計のスルーホール数を2つ)とし、スルーホール間隔dsを20mmとした場合のS21の周波数特性を図18に、スルーホール間隔dsを15mmとした場合のS21の周波数特性を図19に示す。また、図15,18,19におけるS21のピーク発生周波数(ピークが発生する最低周波数)をまとめて図20に示す。
図20に示すように、スルーホール間隔dsを短くするほど、ピーク発生周波数が高くなっていることが分かる。例えば、2GHz帯を使用する場合には、ピーク発生周波数を2.5GHz以上とすることが望ましく、この場合、スルーホール間隔dsを25mm以下とすることが望ましいといえる。換言すれば、スルーホール間隔dsを25mm以下とすることで、ピーク発生周波数を2.5GHz以上とし、携帯電話基地局用アンテナで一般に使用される2GHz帯の通信における伝送損失を抑制することが可能になる。なお、スルーホール間隔dsは、使用する周波数帯に応じて、適宜設定することができる。
また、両中心導体51,52に第2スルーホール601の数を1つ(合計のスルーホール数を2つ)形成し、かつ、第1の中心導体51におけるスルーホール間隔dsを20mm、第2の中心導体52におけるスルーホール間隔dsを25mmとした場合のS21の周波数特性を図21に示す。
図21に示すように、両中心導体51,52でスルーホール間隔dsを異ならせた場合であっても、伝送損失を改善することが可能である。
(アンテナ素子の接続構造)
図22は、アンテナ素子15と第2の中心導体52との接続構造を示す概略図であり、図23は、第3のグランド板43を透視した斜視図である。また、図24は図22のA−A線断面図、図25は、第2の中心導体の一部を示す平面図である。なお、図23,24では、第1の中心導体51(基板510)と第1のグランド板41の図示を省略している。
図22〜25に示すように、アンテナ素子15は、放射素子として機能する配線パターン150が誘電体からなる板状の素子基板151に形成されたプリント基板からなるプリントダイポールアンテナである。配線パターン150は、素子基板151の一方の面に形成されている。
アンテナ素子15は、第3のグランド板43に形成された開口430を挿通して第2の中心導体52と電気的に接続されている。開口430は、素子基板151を挿通する長方形状の挿通部430aと、挿通部430aの一方の長辺の中央部を凸状に切り欠いて形成された凸部430bとを一体に形成して構成され、全体として凸字状に形成されている。
凸部430bは、アンテナ素子15の配線パターン150が第3のグランド板43と接触することを抑制するためのものであり、アンテナ素子15は、挿通部430aに素子基板151を挿通させたときに、配線パターン150が凸部430bに臨むように構成されている。
素子基板151は、第3のグランド板43の外部(第2の中心導体52と反対側)に配置される放射部151aと、放射部151aの下端に一体に形成され、放射部151aよりも狭い幅に形成されたグランド挿通部151bと、グランド挿通部151bの下端に一体に形成され、グランド挿通部151bよりも狭い幅に形成された接続部151cと、を備えている。なお、ここでいう幅とは、アンテナ素子15の挿入方向と素子基板151の表面の法線方向(厚さ方向)に垂直な方向の長さをいう。接続部151cは、素子基板151の下端部に形成されている。
ここでは、放射部151aの幅を10mm、グランド挿通部151bの幅を6mm、接続部151cの幅を4mmとした。また、素子基板151としては、厚さ0.78mm、比誘電率4.1、誘電正接0.01のものを用い、配線パターン150としては、厚さ0.035mmの銅箔を用いた。素子基板151と配線パターン150とを合わせたアンテナ素子15全体の厚さは、0.815mmとなる。
放射部151aの幅は、第3のグランド板43に形成された開口430の挿通部430aの幅(長軸方向の幅)よりも大きく形成され、グランド挿通部151bの幅は、開口430の挿通部430aの幅よりも若干小さい幅に形成されている。アンテナ素子15は、グランド挿通部151bを挿通部430aに挿通させ、グランド挿通部151bと放射部151aとの間に形成される段差(放射部151aの下端面)を第3のグランド板43の表面に当接させることで、第3のグランド板43に係止されるように構成されている。開口430の挿通部430aの短軸方向の幅は、素子基板151の厚さよりも若干大きい幅に形成されている。
ここでは、挿通部430aの長軸方向の幅を9mmとし、グランド挿通部151bを挿通部430aに挿通させた際の長軸方向におけるクリアランスを3mmとした。また、挿通部430aの短軸方向の幅を1mmとし、グランド挿通部151bを挿通部430aに挿通させた際の短軸方向におけるクリアランスを0.185mmとした。
挿通部430aは素子基板151を保持する役割を果たすため、短軸方向におけるクリアランスは素子基板151の挿入が困難とならない程度に小さく設定されている。なお、配線パターン150は凸部430bに臨むように形成されているため、挿通部430aの短軸方向におけるクリアランスを小さくした場合であっても、素子基板151の挿入時に配線パターン150が損傷することはない。
また、凸部430bについては、挿通部430aの長軸方向に沿った幅を5mm、挿通部430aの短軸方向に沿った幅を2mmとした。なお、素子基板15が凸部430b側に脱落しないように、凸部430bの長軸方向に沿った幅は、グランド挿通部151bの幅よりも小さくする必要がある。
本実施の形態では、第2の中心導体52には、基板520を貫通し、かつ、その内壁(内周面)に基板520の両面に設けられた配線パターンを電気的に接続する導電層701が形成された素子接続用スルーホール700が形成されている。ここでは、第2の中心導体52の端部、すなわちアンテナ素子15が接続される部分を幅広に形成し、その幅広に形成された端部に、長方形状の素子接続用スルーホール700を形成した。素子接続用スルーホール700は、その短軸方向が第2の中心導体52の長手方向(延出方向)と一致するように形成される。ここでは、第2の中心導体52の幅を4.4mmとし、幅広に形成される端部の幅を6mm、当該端部の長さ(4.4mm幅となっている部分からの突出長)を2.4mmとした。
アンテナ素子15は、素子基板151のグランド挿通部151bを第3のグランド板43に形成された開口430の挿通部430aに挿通し、かつ、その下端部である接続部151cを素子接続用スルーホール700に挿入した状態で、ろう接により第2の中心導体52と電気的に接続される。ここでは、軟ろうを用いた半田付けにより、アンテナ素子15の配線パターン150と第2の中心導体52とを電気的に接続した。なお、これに限らず、硬ろうを用いたろう付けにより、アンテナ素子15の配線パターン150と第2の中心導体52とを電気的に接続しても構わない。
本実施の形態では、アンテナ素子15の下端部(接続部151c)を、内壁に導電層701が形成された素子接続用スルーホール700に挿入しているため、導電層701がアンテナ素子15の配線パターン150と近接して対向することになり、誘電体からなる基板520に半田がはじかれることなく、半田付け作業を確実に行うことが可能になる。
また、導電層701により基板520の両面の配線パターンが電気的に接続されているため、例えば、基板520の一方の面において半田付けが不十分となっている場合であっても、基板520の他方の面で半田付けが十分になされていれば、アンテナ素子15の配線パターン150と第2の中心導体42である基板520の両面の配線パターンとの電気的接続を確保することができ、アンテナ素子15と第2の中心導体42との電気的な接続を安定して確保することが可能になる。
つまり、本実施の形態によれば、アンテナ素子15の挿入を容易とすべくアンテナ素子15を挿入する穴(ここでは素子接続用スルーホール700)との間で十分なクリアランスを確保した場合であっても、アンテナ素子15と第2の中心導体42間の接触不良を抑制することが可能となり、半田付け作業も容易になる。
なお、本実施の形態では、素子接続用スルーホール700により基板520の両面の配線パターンが電気的に接続されているため、基板520の一方の面のみで半田付け作業を行えば、アンテナ素子15の配線パターン150と基板520の両面の配線パターンとが電気的に接続されることになり、半田付け作業の簡易化も可能になる。ただし、この場合、半田付け部分の機械的な強度が十分に得られないことも考えられるので、基板520の両面において、アンテナ素子15の配線パターン150と第2の中心導体52との半田付けを行うことがより望ましい。
また、本実施の形態では、素子接続用スルーホール700の内壁の全体に導電層701を形成したが、導電層701は、少なくとも、アンテナ素子15の下端部(接続部151c)を素子接続用スルーホール700に挿入した際に、配線パターン150が臨む位置の内壁に形成されていればよい。
アンテナ素子15のグランド挿通部151bの幅は、素子接続用スルーホール700の幅(長軸方向の幅)よりも大きく形成され、接続部151cの幅は、素子接続用スルーホール700の幅よりも若干小さい幅に形成されている。アンテナ素子15の接続部151cを素子接続用スルーホール700に挿入すると、接続部151cとグランド挿通部151bとの間に形成される段差(グランド挿通部151bの下端面)が素子接続用スルーホール700の周縁に当接され、これにより、アンテナ素子15が素子接続用スルーホール700の周縁に係止される。素子接続用スルーホール700の短軸方向の幅は、素子基板151の厚さよりも若干大きい幅に形成されている。
つまり、本実施の形態では、アンテナ素子15を取り付ける際に、グランド挿通部151bと放射部151aとの間に形成される段差と、接続部151cとグランド挿通部151bとの間に形成される段差とが、それぞれ第3のグランド板42と素子接続用スルーホール700の周縁に係止し、アンテナ素子15の位置決めと、アンテナ素子15の仮の固定がなされるようになっている。これにより、アンテナ素子15の配線パターン150を半田付けする際の作業がより容易となる。
ここでは、素子接続用スルーホール700の長軸方向の幅を5mmとし、接続部151cを素子接続用スルーホール700に挿入した際の長軸方向におけるクリアランスを2mmとした。また、素子接続用スルーホール700の短軸方向の幅を1.4mmとし、接続部151cを素子接続用スルーホール700に挿入した際の短軸方向におけるクリアランスを0.585mmとした。
なお、本実施の形態では、素子基板15の厚さ方向(開口430、素子接続用スルーホール700の短軸方向)におけるクリアランスについては、第3のグランド板43の開口430よりも、素子接続用スルーホール700の方が大きくなるように設定している。これは、素子基板151の素子接続用スルーホール700への挿入作業を容易とすること、および、素子基板151の素子接続用スルーホール700への挿入時に配線パターン150が損傷してしまうことを抑制すること、および、第3のグランド板43と第2の中心導体52(基板520)の取り付け位置の誤差により、素子基板151の取り付けが困難となることを抑制すること、を目的としている。
なお、素子基板151を素子接続用スルーホール700に挿入した際の短軸方向におけるクリアランスが大きすぎると、半田付け作業が困難となり接触不良等の不具合が発生するおそれがあるため、素子基板151を素子接続用スルーホール700に挿入した際の短軸方向におけるクリアランスは、1mm以下とすることが望ましい。
また、アンテナ素子15と第2の中心導体52との接続部(素子接続用スルーホール700)の近傍には、接地導体としての金属スペーサ50が配置されている。金属スペーサ50を設けることで、上述の中心導体51,52の接続部に金属スペーサ50を設けた場合と同様に、伝送損失を改善することが可能になる。
金属スペーサ50は、なるべく素子接続用スルーホール700と近い位置に形成されることが望ましく、金属スペーサ50と素子接続用スルーホール700との距離は、2.5mm以下とすることが望ましい。ここでは、金属スペーサ50の中心から素子接続用スルーホール700までの距離を5.2mmとした。なお、金属スペーサ50の中心から第2の中心導体52の先端までの距離は4.7mmとし、素子接続用スルーホール700の周縁の配線パターンの幅は0.5mmとした。
さらに、本実施の形態では、素子接続用スルーホール700の近傍で、かつ、金属スペーサ50と素子接続用スルーホール700を挟んで対向する位置の第2の中心導体52に、基板520の両面の配線パターンを電気的に接続する第3スルーホール602を設けている。第3スルーホール602を設けることで、上述の第1スルーホール600を設けた場合と同様の作用効果、すなわち、アンテナ素子15と第2の中心導体52との接続部における基板520の表裏面の配線パターンの電流経路の経路長の差による影響を抑制し、伝送損失のさらなる改善が可能になる、といった作用効果が得られる。
第3スルーホール602は、なるべく素子接続用スルーホール700と近い位置に形成されることが望ましく、第3スルーホール602と素子接続用スルーホール700との距離は、10mm以内とすることが望ましい。ここでは、素子接続用スルーホール700から第3スルーホール602の中心までの距離を1.4mmとした。なお、金属スペーサ50の中心から第3スルーホール602の中心までの距離は8mmとしている。第3スルーホール602の直径は1mmとした。
本実施の形態では、さらに、第3スルーホール602の素子接続用スルーホール700と反対側に、第3スルーホール602と離間して、基板520の両面の配線パターンを電気的に接続する1つ以上の副スルーホールとして第4スルーホール603を設けている。第4スルーホール603を設けることで、上述の第2スルーホール601を設けた場合と同様の作用効果、すなわち、S21の最悪値を改善し、低周波数帯における伝送損失のピークの発生を抑制することが可能になる。また、2GHz帯を使用する場合には、ピーク発生周波数を2.5GHz以上とすべく、第3及び第4スルーホール602,603の間隔を25mm以下とすることが望ましい。第4スルーホール603の直径は1mmとした。
以上の説明では、中心導体51,52の接続部(接続ピン30)の近傍に第1スルーホール600を設ける場合、および、アンテナ素子15と第2の中心導体52との接続部(素子接続用スルーホール700)の近傍に第3スルーホール602を設ける場合について説明したが、給電ケーブルと第1の中心導体51との接続部分にも同様な構造を適用することで、伝送損失のさらなる改善が可能である。
給電ケーブルは、第1のグランド板41に形成された開口を挿通して第1の中心導体51と電気的に接続されるので、この給電ケーブルと第1の中心導体51との接続部の近傍に金属スペーサ50を配置すると共に、当該接続部の近傍の第1の中心導体51に、基板510の両面の配線パターンを電気的に接続する第5スルーホールを設けるとよい。第5スルーホールを設けることで、伝送損失のさらなる改善が可能になる。
なお、本実施の形態では、六角柱状の軸部501を有する金属スペーサ50を用いる場合を説明したが、金属スペーサ50の形状はこれに限定されるものではない。例えば、図26,27に示すように、第1及び第2の中心導体51,52の端部を収容する切欠き701が形成された本体部702と、第1〜3のグランド板41〜43のいずれかに固定される板状の座金部703とを一体に有した金属スペーサ700を用いてもよい。
金属スペーサ700は、切欠き701内に接続ピン30を配置し、接続ピン30の周囲(中心導体51,52の延出方向を除く周囲)を接地された本体部702で覆うことになるため、電流の漏れを抑制し、伝送損失のさらなる改善が可能になる。
(実施の形態の作用及び効果)
以上説明したように、本実施の形態に係る周波数共用アンテナ装置1では、第2の中心導体52には、基板520を貫通し、かつ、その内壁に基板520の両面に設けられた配線パターンを電気的に接続する導電層701が形成された素子接続用スルーホール700が形成されており、アンテナ素子15は、第3のグランド板43に形成された開口430に挿通されると共に、その下端部が素子接続用スルーホール700に挿入され、ろう接により第2の中心導体52と電気的に接続されている。
このように構成することで、導電層701がアンテナ素子15の配線パターン150と近接し、ろう接の作業(半田付け作業)を確実に行うことが可能になり、アンテナ素子15と第2の中心導体52とを容易に接続することが可能になる。
また、本実施の形態では、導電層701により基板520の上下の配線パターンが電気的に接続されているため、アンテナ素子15の配線パターン150と第2の中心導体42である基板520の両面の配線パターンとの電気的接続を確実に確保することができ、アンテナ素子15と第2の中心導体42間の接触不良を抑制することが可能になる。
(実施の形態のまとめ)
次に、以上説明した実施の形態から把握される技術思想について、実施の形態における符号等を援用して記載する。ただし、以下の記載における各符号等は、特許請求の範囲における構成要素を実施の形態に具体的に示した部材等に限定するものではない。
[1]高周波信号が伝搬する伝送線路(100)、及び前記伝送線路(100)に接続された複数のアンテナ素子(15)を備え、前記伝送線路(100)は、電気的に接地された2つの板状導体(42,43)と、2つの板状導体(42,43)の間に配置され、誘電体からなる基板(520)の両面に設けられた配線パターンからなる中心導体(52)と、を備え、前記中心導体(52)には、前記基板(520)を貫通し、かつ、その内壁に前記基板(520)の両面に設けられた前記配線パターンを電気的に接続する導電層(701)が形成された素子接続用スルーホール(700)が形成されており、前記アンテナ素子(15)は、一方の前記板状導体(43)に形成された開口(430)に挿通されると共に、その下端部が前記素子接続用スルーホール(700)に挿入され、ろう接により前記中心導体(52)と電気的に接続されている、アンテナ装置(1)。
[2]前記アンテナ素子(15)と前記中心導体(52)との接続部の近傍に配置され、電気的に接地された接地導体(50)をさらに備える、[1]記載のアンテナ装置(1)。
[3]前記素子接続用スルーホール(700)の近傍で、かつ、前記接地導体(50)と前記素子接続用スルーホール(700)を挟んで対向する位置の前記中心導体(52)に、前記基板(520)の両面の前記配線パターンを電気的に接続するスルーホール(602)を設けた、[2]記載のアンテナ装置(1)。
[4]前記スルーホール(602)の前記素子接続用スルーホール(700)と反対側に、前記スルーホール(602)と離間して、前記基板(520)の両面の前記配線パターンを電気的に接続する1つ以上の副スルーホール(603)を設けた、[3]記載のアンテナ装置(1)。
[5]前記アンテナ素子(15)は、放射素子となる配線パターン(150)を誘電体からなる板状の素子基板(151)に形成して構成され、前記素子基板(151)は、前記板状導体(43)に形成された前記開口(430)に挿通されるグランド挿通部(151b)と、前記グランド挿通部(151b)の下端に一体に形成され、前記グランド挿通部(151b)よりも狭い幅に形成された接続部(151c)と、を備え、前記アンテナ素子(15)は、前記接続部(151c)を前記素子接続用スルーホール(700)に挿入した際に、前記接続部(151c)と前記グランド挿通部(151b)との間に形成される段差が前記素子接続用スルーホール(700)の周縁に当接され係止されるように構成されている、[1]乃至[4]の何れか1項に記載のアンテナ装置(1)。
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形して実施することが可能である。例えば、上記実施の形態では、金属スペーサ50Aと金属スペーサ50Bとが一体であってもよい。つまり、第1のグランド板41と第3のグランド板43との間に1つの導電体からなる金属スペーサが配置され、この金属スペーサが接続ピン30の近傍に配置されていてもよい。
また、アンテナ装置の用途も、携帯電話の基地局用に限定されない。