JP2016156118A - ベルト式仮撚装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】ベルト式仮撚装置において、駆動プーリと従動プーリとを近づけて配置しつつも、ベルトの温度上昇による耐久性の低下を防止する。
【解決手段】ベルト延長用プーリ43は、従動プーリ42に対して、駆動プーリ41と反対側に配置されている。無端状のベルト44は、プーリ41〜43に巻き掛けられ、従動プーリ42で屈曲されている。ベルト延長用プーリ53は、従動プーリ52に対して、駆動プーリ51と反対側に配置されている。無端状のベルト54は、プーリ51〜53に巻き掛けられ、従動プーリ52で屈曲されている。ベルト44の駆動プーリ41と従動プーリ42との間の部分の中央部と、ベルト54の駆動プーリ51と従動プーリ52との間の部分の中央部とが交差している。糸Yは、ベルト44と54とが交差するクロスポイントCよりも糸道の下流側の部分において、駆動プーリ41とともに回転するエッジディスク45の外縁部と接触する。
【選択図】図2

Description

本発明は、交差する2本のベルトで糸条を挟んだ状態でベルトを走行させることで糸に仮撚加工を施すベルト式仮撚装置に関する。
特許文献1に記載のベルト式仮撚装置は、基準ベルトユニットと可動ベルトユニットの2つのベルトユニットを備えている。基準ベルトユニットは、無端状の基準ベルトと、基準ベルトが掛けられた駆動プーリ及び従動プーリとを有している。可動ベルトユニットは、無端状の可動ベルトと、可動ベルトが掛けられた駆動プーリ及び従動プーリとを有している。基準ベルトと可動ベルトとは、駆動プーリと従動プーリとの間部分の中央部において交差している。また、可動ベルトユニットは、基準ベルト及び可動ベルトの外周面の、互いに対向する部分と直交する方向に移動可能に構成されている。そして、特許文献1に記載のベルト式仮撚装置は、糸を基準ベルトと可動ベルトとで挟んだ状態で、基準ベルト及び可動ベルトを走行させることによって、糸に仮撚加工を施す。
また、特許文献1に記載のベルト式仮撚装置は、基準ベルトユニットの駆動プーリに、駆動プーリとともに回転する解撚ディスク(本発明の「解撚点固定部材」)が設けられている。糸は、基準ベルトと可動ベルトとが交差する交差部(クロスポイント)よりも糸道の下流側の部分において、解撚ディスクの外周縁に接触することで屈曲している。ここで、基準ベルトと可動ベルトとの間に糸を挟んだ状態で、これらのベルトを走行させると、糸は、交差部よりも糸道の上流側の部分において撚りが付与され、交差部よりも糸道の下流側の部分において解撚される。このとき、解撚の開始点が、交差部に位置していると、解撚された糸が基準ベルト及び可動ベルトと擦れ、糸に毛羽が発生してしまう。また、解撚の開始点が、交差部のうち、糸道の上流側の部分に位置しているほど、解撚された糸が基準ベルト及び可動ベルトと擦れる長さが長くなり、糸に毛羽が発生しやすくなる。特許文献1では、糸が、交差部よりも糸道の下流側の部分において解撚ディスクの外周縁と接触しているため、糸の解撚が、交差部と解撚ディスクとの間の部分において抑制され、解撚開始点が解撚ディスク上に固定される。その結果、解撚ディスクがない場合よりも、解撚の開始点を糸道の下流側に位置させることができる。これにより、糸に毛羽が発生してしまうのを防止することができる。
特開2010−65354号公報
ここで、特許文献1に記載のベルト式仮撚装置では、基準ベルトと可動ベルトとで糸を挟んだときに、基準ベルト及び可動ベルトが撓む。このとき、基準ベルト及び可動ベルトを均等に撓ませるために、基準ベルトの駆動プーリと従動プーリとの間の部分の中央部と、可動ベルトの駆動プーリと従動プーリとの間の部分の中央部とが交差するようにすることが好ましい。一方、特許文献1では、基準ベルトと可動ベルトとの交差部と解撚ディスクとの間において糸の解撚を十分に抑制して解撚開始点を解撚ディスク上に固定するためには、交差部と解撚ディスクとを近接させて配置することが好ましい。基準ベルトユニット及び可動ベルトユニットにおいて、それぞれ、駆動プーリと従動プーリとを近づけて配置すれば、これらの条件を満たすことができる。
しかしながら、特許文献1の基準ベルトユニット及び可動ベルトユニットにおいて、駆動プーリと従動プーリとを近づけて配置すると、基準ベルト及び可動ベルトの長さが短くなる。ここで、特許文献1では、基準ベルト及び可動ベルトは、交差部において糸と擦過し、このときの摩擦熱によって発熱する。このとき、基準ベルト及び可動ベルトの長さが短いと、基準ベルト及び可動ベルトのある部分が、交差部に到達した後、基準ベルト及び可動ベルトのこの部分が次に交差部に到達するまでの時間が短くなる。そのため、基準ベルト及び可動ベルトの各部分は、交差部に到達して糸との摩擦で発熱した後、十分に冷却される前に、再度交差部に到達して糸との摩擦で発熱することになる。その結果、基準ベルト及び可動ベルトは、全体の温度が高くなって耐久性が低下してしまう。また、このとき、糸の太さが太いほど、ベルトと糸との摩擦熱が大きくなるため、上述したような問題が生じる可能性は高くなる。また、ベルトは、プーリに掛けられた部分において屈曲されるが、ベルトの長さが短いと、ベルトの走行時に、ベルトの各部分がプーリに到達して屈曲される回数が増加する。その結果、ベルトの芯材の破断や剥離が生じやすくなってベルトの耐久性が低下する。
本発明の目的は、駆動プーリと従動プーリとを近づけて配置しつつも、ベルトの耐久性の低下を防止することが可能なベルト式仮撚装置を提供することである。
第1の発明に係るベルト式仮撚装置は、無端状のベルトと、前記ベルトが掛けられた駆動プーリ及び従動プーリと、をそれぞれ有する2つのベルトユニットを備え、2つの前記ベルトユニットの前記ベルト同士が、前記駆動プーリと前記従動プーリとの間の部分の中央部において交差するように配置され、2つの前記ベルトユニットの前記ベルトの互いに交差する部分において糸を挟んだ状態で、前記ベルトを走行させることによって、糸に仮撚加工を施すベルト式仮撚装置であって、前記2つのベルトユニットのうち片方のベルトユニットは、前記駆動プーリに設けられることで前記駆動プーリとともに回転し、糸の前記ベルトに挟まれる部分よりも糸道の下流側の部分と接触することで、糸の解撚を抑制して解撚開始点を固定する解撚点固定部材、をさらに有し、前記2つのベルトユニットは、それぞれ、前記従動プーリに対して前記駆動プーリと反対側に配置され、前記ベルトが掛けられたベルト延長用プーリ、をさらに有している。
本発明によると、糸は、2つのベルトユニットのベルト同士が交差する菱形の部分(以下「クロスポイント」とする)よりも糸道の上流側の部分において撚りが付与され、撚りが付与された糸は、クロスポイントよりも糸道の下流側の部分において解撚される。このとき、解撚の開始点がクロスポイント内に位置していると、解撚された糸とベルトとが擦れることで、糸に毛羽が発生する虞がある。さらに、解撚の開始点が、クロスポイントのうち、糸道の上流側に位置している場合ほど、解撚された糸とベルトとが擦れる長さが長くなり、糸に毛羽が発生しやすい。しかしながら、本発明では、クロスポイントを通過した糸が解撚点固定部材と接触しており、クロスポイントと解撚点固定部材との間において糸の解撚が抑えられ、解撚開始点が解撚点固定部材上に固定される。これにより、解撚点固定部材がない場合と比較して、解撚の開始点が糸道の下流側に位置させることができる。よって、糸に毛羽が発生するのを抑えることができる。
このとき、各ベルトユニットのベルトは、駆動プーリと従動プーリとの間の部分において撓むが、ベルトの撓みを均一にするためには、2つのベルトユニットのベルト同士が、駆動プーリと従動プーリとの間の部分の中央部において交差していることが好ましい。一方、クロスポイントと解撚点固定部材との間において糸の解撚を十分に抑制して解撚開始点を解撚点固定部材上に固定するためには、クロスポイントと解撚点固定部材とをできるだけ近づけて配置することが好ましい。各ベルトユニットにおいて、駆動プーリと従動プーリとを近づけて配置すれば、これらの条件を満たすことができる。
しかしながら、本発明とは異なり、ベルトが駆動プーリと従動プーリの2つのプーリにのみ掛けられたものである場合には、駆動プーリと従動プーリとを近づけて配置すると、ベルトの長さが短くなってしまう。ここで、2つのベルトユニットのベルトは、クロスポイントにおいて糸と擦過したときの摩擦熱によって発熱する。このとき、ベルトの長さが短いと、ベルトのある部分がクロスポイントに到達した後、ベルトのこの部分が次にクロスポイントに到達するまでの時間が短くなる。そのため、ベルトの各部分はクロスポイントに到達して糸との摩擦によって発熱した後、十分に冷却される前に、再度クロスポイントに到達して糸との摩擦によってさらに発熱することになる。その結果、各ベルトユニットのベルトは、全体の温度が高くなり耐久性が低下してしまう。また、このとき、糸の太さが太いほど、ベルトと糸との摩擦熱が大きくなるため、上述したような問題が生じる可能性は高くなる。また、ベルトは、プーリに掛けられた部分において屈曲されるが、ベルトの長さが短いと、ベルトの走行時に、ベルトの各部分がプーリに到達して屈曲される回数が増加する。その結果、ベルトの芯材の破断や剥離が生じやすくなってベルトの耐久性が低下する。
そこで、本発明では、各ベルトユニットに、従動プーリに対して駆動プーリと反対側に配置され、ベルトが掛けられたベルト延長用プーリを設けている。これにより、ベルト延長用プーリがない場合よりもベルトの長さを長くすることができる。ベルトの長さが長くなると、ベルトの各部分は、クロスポイントに到達して糸との摩擦によって発熱した後、十分に冷却されてから再度クロスポイントに到達して糸との摩擦によって発熱することになる。したがって、糸の太さによらず、ベルト全体の温度上昇を抑えてベルトの耐久性の低下を防止することができる。さらに、ベルトの長さが長くなると、ベルトの走行時に、ベルトの各部分がプーリに到達して屈曲される回数が少なくなる。これにより、ベルトの芯材の破断や剥離によるベルトの耐久性の低下を抑えることができる。
第2の発明に係るベルト式仮撚装置は、第1の発明に係るベルト式仮撚装置において前記2つのベルトユニットの前記ベルト同士を接触させた状態、及び、前記2つのベルトユニットの前記ベルト同士を接触させていない状態のうち、いずれの状態においても、前記従動プーリが、前記ベルトを屈曲させ、2つの前記ベルトユニットの前記ベルト同士が、前記駆動プーリと、前記従動プーリに屈曲された部分との間の部分の中央部において交差する。
本発明によると、ベルトが駆動プーリとベルト延長用プーリとの間に配置された従動プーリに密着するため、駆動プーリを駆動してベルトを走行させたときに、従動プーリを確実に連れ回りさせることができる。
第3の発明に係るベルト式仮撚装置は、第2の発明に係るベルト式仮撚装置において、前記2つのベルトユニットの前記ベルト同士が接触していない状態での、前記従動プーリによる前記ベルトの屈曲角度が0.5度以上である。
本発明によると、従動プーリによるベルトの屈曲角度を0.5度以上とすれば、駆動プーリを駆動してベルトを走行させたときに、従動プーリをより確実に連れ回りさせることができる。
第4の発明に係るベルト式仮撚装置は、第2又は第3の発明に係るベルト式仮撚装置において、前記駆動プーリの径が、従動プーリの径と同じである、又は、前記従動プーリの径よりも小さく、前記ベルト延長用プーリの径が、従動プーリの径よりも小さい。
本発明によると、駆動プーリの径を従動プーリの径以下とし、ベルト延長用プーリ径を従動プーリの径よりも小さくすれば、ベルトを従動プーリにおいて確実に屈曲させることができる。
第5の発明に係るベルト式仮撚り装置は、第4の発明に係るベルト式仮撚装置において、前記駆動プーリ、前記従動プーリ及び前記ベルト延長用プーリの軸と直交する方向から見て、前記従動プーリの軸が、前記駆動プーリの軸と前記延長用プーリの軸とを結ぶ直線から2つの前記ベルトユニットの前記ベルト同士が交差する側にずれて配置されている。
プーリ間の径の差が小さい場合などには、ベルトを従動プーリにおいて十分に屈曲させることができないことがある。本発明では、従動プーリの軸が、駆動プーリの軸と延長用プーリの軸とを結ぶ直線から2つのベルトユニットのベルト同士が交差する側にずれて配置されているため、ベルトを、従動プーリにおいてより確実に屈曲させることができる。
第6の発明に係るベルト式仮撚り装置は、第2又は第3の発明に係るベルト式仮撚装置において、前記駆動プーリの径と、前記従動プーリの径と、前記ベルト延長用プーリの径が同じであり、
前記駆動プーリ、前記従動プーリ及び前記ベルト延長用プーリの軸と直交する方向から見て、前記従動プーリの軸が、前記駆動プーリの軸と前記延長用プーリの軸とを結ぶ直線からずれて配置されている。
本発明によると、駆動プーリと従動プーリとベルト延長用プーリの径が同じ場合、プーリの軸と直交する方向から見て、駆動プーリの軸を、駆動プーリの軸とベルト延長用プーリの軸とを結ぶ直線からずらして配置すれば、ベルトを従動プーリにおいて屈曲させることができる。また、この場合には、駆動プーリと従動プーリと延長用プーリの径が同じであるので、駆動プーリと従動プーリと延長用プーリとで、部品を共通化することができる。
第7の発明に係るベルト式仮撚り装置は、第1〜第6のいずれかの発明に係るベルト式仮撚り装置において、前記2つのベルトユニットのうち少なくとも片方のベルトユニットにおいて、前記駆動プーリの軸と前記従動プーリの軸とが互いに固定され、前記ベルト延長用プーリの軸が、前記駆動プーリの軸及び前記従動プーリの軸に対して移動可能に構成され、前記ベルト延長用プーリの軸を、前記駆動プーリの軸及び前記従動プーリの軸に対して移動させる移動装置をさらに備えている。
本発明によると、ベルト延長用プーリの軸を、駆動プーリの軸及び従動プーリの軸に対して移動させることによりベルトの張力を調整することができる。これにより、2つのベルトユニットのベルトが互いに押し付けられる力を調整して、ベルトユニットから糸に付与される力(糸を送る力や糸に撚りを付与する力)を制御することができる。
ここで、上述の糸を送る力及び糸に撚りを付与する力を安定させるためには、2つのベルトユニットのベルトの、互いに接触する面同士を十分に密着させる必要がある。また2つのベルトユニットのベルトは、駆動プーリと従動プーリとの間に位置する部分において互いに接触する。これに対して、本発明と異なり、駆動プーリの軸又は従動プーリの軸のいずれかを移動させることによってベルトの張力を調整すると、プーリの軸を移動させたときに、移動させた軸が傾くなどして、ベルトの駆動プーリと従動プーリとの間に位置する部分に傾きが生じてしまう虞がある。そして、ベルトにこのような傾きが生じると、2つのベルトユニットのベルト同士の密着性が低下してしまう虞がある。
そこで、本発明では、ベルト延長用プーリを移動させることによって、ベルトの張力を調整している。これにより、ベルトの張力を調整する際に、ベルトの駆動プーリと従動プーリとの間に位置する部分に上述したような傾きが生じることがない。
また、2つのベルトユニットのベルト同士の密着性を確保するためには、駆動プーリの軸と従動プーリの軸とは、精度よく互いに平行とする必要がある。そして、そのためには、駆動プーリ及び従動プーリを支持するための構造に高い精度が要求される。これに対して、ベルト延長用プーリの軸については、駆動プーリの軸及び従動プーリの軸に対して多少傾いたとしても、それによって、ベルトの駆動プーリと従動プーリとの間に位置する部分が傾いてしまうことはない。したがって、ベルト延長用プーリの軸を支持するための構造や、ベルト延長用プーリを移動させるための構造は、それほど高い精度が要求されず、簡単なものとすることができる。
本発明によれば、クロスポイントと解撚点固定部材とを近づけて配置しつつも、ベルトの耐久性の低下を防止することができる。
本発明の実施の形態に係る仮撚加工機の概略構成図である。 図1のベルト式仮撚装置の概略構成図である。 (a)が図2を矢印Aの方向から見た図、(b)が図2を矢印Bの方向から見た図である。 ベルト式仮撚装置のベルト同士が離れている状態を示す図であり、(a)が図3(a)に対応する図、(b)が図3(b)に対応する図である。 (a)が固定ベルトユニットのプーリの軸方向から見た、固定ベルトユニットの3つのプーリの連結構造を示す図であり、(b)が(a)を矢印VBの方向から見た図である。 (a)が可動ベルトユニットのプーリの軸方向から見た、可動ベルトユニットの3つのプーリの連結構造を示す図であり、(b)が(a)を矢印VIBの方向から見た図である。 (a)が変形例1の図3(a)相当の図であり、(b)が変形例1の図3(b)相当の図である。 (a)が変形例2の図3(a)相当の図であり、(b)が変形例2の図3(b)相当の図である。 (a)が変形例3の図3(a)相当の図であり、(b)が変形例3の図3(b)相当の図である。 (a)が変形例4の図3(a)相当の図であり、(b)が変形例4の図3(b)相当の図である。 (a)が変形例5の図3(a)相当の図であり、(b)が変形例5の図3(b)相当の図である。 (a)が変形例6の図3(a)相当の図であり、(b)が変形例6の図3(b)相当の図である。 が変形例7の図3(b)相当の図である。
以下、本発明の好適な実施の形態について説明する。
図1に示すように、本実施の形態に係る仮撚加工機1は、後述する糸加工部12を構成する各装置(後述の一次フィードローラ20、一次加熱装置21、冷却装置23、ベルト式仮撚装置24、二次フィードローラ25、二次加熱装置26、三次フィードローラ27等)が、それぞれ、クリールスタンド11から糸加工部12を通って巻取部13に至る糸道が配置される糸の走行面(図1の紙面)と直交する、水平な機台長手方向(図1の紙面に垂直な方向)に複数配列された、機台長手方向に長尺の装置である。また、仮撚加工機1では、クリールスタンド11、糸加工部12及び巻取部13が、クリールスタンド11側が外側となるように、水平で且つ機台長手方向と直交する方向(図1の左右方向)に対称に配置されている。
クリールスタンド11は、複数のクリール11aを備えている。複数のクリール11aは、それぞれ給糸パッケージSを保持している。
糸加工部12は、糸道の上流側から順に、一次フィードローラ20、一次加熱装置21、冷却装置23、ベルト式仮撚装置24、二次フィードローラ25、二次加熱装置26、三次フィードローラ27を備えている。
一次フィードローラ20は、給糸パッケージSから供給された複数の糸Yを一次加熱装置21に向けて搬送する。一次加熱装置21は、一次フィードローラ20から送られてきた複数の糸Yを加熱する。また、糸Yの糸道の、一次加熱装置21のすぐ上流側には、撚止ガイド22が配置されている。撚止ガイド22は、後述するように、糸Yに撚りを付与する際に、撚止ガイド22よりも上流側に撚りが伝達されてしまわないようにするためのものである。
冷却装置23は、一次加熱装置21によって加熱された複数の糸Yを冷却する。ベルト式仮撚装置24は、糸Yに仮撚加工を施す。このとき、糸Yは、撚止ガイド22とベルト式仮撚装置24との間で撚りが付与され、ベルト式仮撚装置24と二次フィードローラ25との間で解撚される。また、このとき、糸Yは、一次加熱装置21によって加熱された状態で撚りが付与され、撚りが付与された状態で冷却装置23によって冷却されて熱固定される。したがって、糸Yは、解撚されたときに、各フィラメントが波状の形態をした仮撚りされた状態となる。ベルト式仮撚装置24の詳細な構成については後程詳細に説明する。
二次フィードローラ25は、ベルト式仮撚装置24によって仮撚加工が施された糸Yを二次加熱装置26に向けて搬送する。二次フィードローラ25による糸Yの搬送速度は、一次フィードローラ20による糸Yの搬送速度よりも速くなっており、糸Yは、一次フィードローラ20と二次フィードローラ25による搬送速度の差によって延伸される。二次加熱装置26は、延伸されるとともに仮撚加工が施された糸Yに、所定の弛緩熱処理を施す。
三次フィードローラ27は、弛緩熱処理が施された糸Yを、巻取部13に向けて搬送する。また、三次フィードローラ27は、水平で且つ機台長手方向と直交する方向(図1の左右方向)に二次加熱装置26と間隔をあけて配置されている。二次加熱装置26と三次フィードローラ27との間の空間には、図示しない作業台又は作業台車が設けられ、作業者が、この作業台又は作業台車の上で、糸掛けなどの作業を行うことができるようになっている。
巻取部13は、複数の巻取装置60を備えている。複数の巻取装置60は、機台長手方向及び鉛直方向に並んでいる。巻取装置60には、ボビンが、機台長手方向を軸方向と平行な向きに取り付けられており、巻取装置60は、三次フィードローラ27から送られてきた糸Yを、ボビンの軸方向(機台長手方向)に綾振りしつつボビンに巻き取ることによってパッケージPを形成する。
次に、ベルト式仮撚装置24の構成について詳細に説明する。
ベルト式仮撚装置24は、図2〜図4に示すように、固定ベルトユニット31と、可動ベルトユニット32とを備えている。固定ベルトユニット31は、駆動プーリ41と、従動プーリ42と、ベルト延長用プーリ43と、ベルト44と、エッジディスク45(本発明の「解撚点固定部材」)とを備えている。
駆動プーリ41及び従動プーリ42は、同じ径D1(例えば、40mm程度)のプーリである。ベルト延長用プーリ43は、プーリ41、42の径D1よりも小さい径D2(例えば、38.5mm程度)のプーリである。プーリ41〜43は、中心軸41a〜43aが直線L1上に位置するように配置され、駆動プーリ41とベルト延長用プーリ43との間に、従動プーリ42が配置されている。すなわち、ベルト延長用プーリ43が、従動プーリ42に対して駆動プーリ41と反対側に位置している。また、駆動プーリ41には、モータ46が接続されており、モータ46を駆動すると、駆動プーリ41が、図2、図3の矢印E1で示す方向に回転する。ここで、固定ベルトユニット31では、駆動プーリ41と従動プーリ42の径が同じD1となっている。これにより、固定ベルトユニット31を構成する駆動プーリ41と従動プーリ42とで部品を共通化することができる。
ベルト44はゴム材料などからなる無端状のベルトであり、プーリ41〜43に巻き掛けられている。これにより、モータ46を駆動して駆動プーリ41を回転させると、ベルト44が走行し、プーリ42、43が連れ回りする。このとき、上述したように、ベルト延長用プーリ43の径D2は、プーリ41、42の径D1よりも小さくなっているため、ベルト44は、従動プーリ42において屈曲する。これにより、ベルト44は、駆動プーリ41とベルト延長用プーリ43との間に配置された従動プーリ42に密着し、ベルト44を走行させたときに、従動プーリ42が確実に連れ回りする。ここで、ベルト44の従動プーリ42での屈曲角度θは、ベルト44が、後述のベルト54と接触していない状態で、0.5度以上(例えば0.89度程度)である。
エッジディスク45は、円板状の部材であり、駆動プーリ41に設けられ、駆動プーリ41とともに回転する。また、エッジディスク45の外縁部は、図3(b)に示すように、エッジディスク45の軸方向において駆動プーリ41に近い部分ほど、径方向の内側に位置するように、エッジディスク45の軸方向に対して傾斜している。エッジディスク45は、後述するように、糸Yの解撚を抑制して解撚開始点をエッジディスク45上に固定するためのものである。
可動ベルトユニット32は、駆動プーリ51と、従動プーリ52と、ベルト延長用プーリ53と、ベルト54とを備えている。駆動プーリ51及び従動プーリ52は、同じ径D1のプーリである。ベルト延長用プーリ53は、プーリ51、52の径D1よりも小さい径D2のプーリである。プーリ51〜53は中心軸が直線L1と交差する直線L2上に並ぶように配置され、駆動プーリ51とベルト延長用プーリ53との間に、従動プーリ52が配置されている。すなわち、ベルト延長用プーリ53が、従動プーリ52に対して駆動プーリ51と反対側に位置している。また、駆動プーリ51には、モータ55が接続されており、モータ55を駆動すると、駆動プーリ51が、図2、図3の矢印E2で示す方向に回転する。ここで、可動ベルトユニット32では、駆動プーリ51と従動プーリ52の径が同じD1となっている。したがって、可動ベルトユニット32を構成する駆動プーリ51と従動プーリ52とで部品を共通化することができる。
ベルト54はゴム材料などからなる無端状のベルトであり、プーリ51〜53に巻き掛けられている。これにより、モータ55を駆動して駆動プーリ51を回転させると、ベルト54が走行し、プーリ52、53が連れ回りする。このとき、上述したように、ベルト延長用プーリ53の径D2は、プーリ51、52の径D1よりも小さくなっているため、ベルト54は、従動プーリ52において屈曲する。これにより、ベルト54は、駆動プーリ51とベルト延長用プーリ53との間に配置された従動プーリ52に密着し、ベルト44を走行させたときに、従動プーリ52が確実に連れ回りする。ここで、ベルト54の従動プーリ52での屈曲角度θは、ベルト54が、ベルト44と接触していない状態で、0.5度以上(例えば0.89度程度)である。
次に、固定ベルトユニット31における3つのプーリ41〜43の連結構造、及び、可動ベルトユニット32における3つのプーリ51〜53の連結構造について説明する。
固定ベルトユニット31では、図5(a)、(b)に示すように、駆動プーリ41がモータ46のシャフト61に取り付けられている。また、モータ46は、フレーム64に固定されている。フレーム64には、従動プーリ42を回転自在に支持するシャフト62、及び、ベルト延長用プーリ43を回転自在に支持するシャフト63が設けられている。これにより、シャフト61〜63は互いの位置関係が固定される。すなわち、駆動プーリ41の中心軸41aと、従動プーリ42の中心軸42aと、ベルト延長用プーリ43の中心軸43aとは、互いの位置関係が固定される。
これに対して、可動ベルトユニット32では、図6(a)、(b)に示すように、駆動プーリ51がモータ55のシャフト71に取り付けられている。また、モータ55は、フレーム74に固定されている。フレーム74には、従動プーリ52を回転自在に支持するシャフト72が設けられている。これにより、シャフト71とシャフト72とは互いの位置関係が固定される。すなわち、駆動プーリ51の中心軸51aと、従動プーリ52の中心軸52aとは互いの位置関係が固定される。
また、フレーム74には、モータ55と反対側の端部に、スライド部材75が取り付けられている。スライド部材75は、フレーム74に対して、矢印Hで示すように、直線L2と平行に移動可能に支持されている。また、スライド部材75には、ベルト延長用プーリ53を回転自在に支持するシャフト73が設けられている。これにより、シャフト73は、シャフト71、72に対して移動可能となっている。すなわち、ベルト延長用プーリ53の中心軸53aは、駆動プーリ41の中心軸41a及び従動プーリ42の中心軸42aに対して移動可能となっている。スライド部材75は、シリンダ76(本発明の「移動装置」)によって移動される。スライド部材75が移動して、シャフト73がシャフト71、72に対して移動すると、ベルト54の張力が変化する。
次に、固定ベルトユニット31と可動ベルトユニット32との位置関係について説明する。固定ベルトユニット31と可動ベルトユニット32とは、ベルト44の駆動プーリ41と従動プーリ42との間の部分の中央部における外周面と、ベルト54の駆動プーリ51と従動プーリ52との間の部分の中央部における外周面とが交差するように配置されている。また、可動ベルトユニット32は、図3(a)、(b)に矢印Fで示すように、固定ベルトユニット31に対して、ベルト44、54の外周面の、互いに対向する部分と直交する方向に移動可能に構成されている。これにより、可動ベルトユニット32を固定ベルトユニット31から離れる方向に移動させると、ベルト54をベルト44から離すことができる。また、可動ベルトユニット32を固定ベルトユニット31に近づける方向に移動させると、ベルト54をベルト44に接触させることができる。なお、可動ベルトユニット32を移動させるための機構は、従来と同様(例えば、特開2010−65354号公報参照)であるので、ここでは、詳細な説明を省略する。
ベルト54をベルト44に接触させた状態では、ベルト44、54が撓む。このとき、上述したように、ベルト44の駆動プーリ41と従動プーリ42との間の部分の中央部と、ベルト54の駆動プーリ51と従動プーリ52との間の部分の中央部とが接触しているため、ベルト44は、駆動プーリ41と従動プーリ42との間の部分において均等に撓み、ベルト54は、駆動プーリ51と従動プーリ52との間の部分において均等に撓む。
また、本実施の形態では、上述したように、可動ベルトユニット32が、ベルト44、54の外周面の互いに対向する部分と直交する方向に移動することで、ベルト54をベルト44に接触させるため、ベルト44、54の幅方向における接圧を均一にすることができる。
ベルト式仮撚装置24では、可動ベルトユニット32を固定ベルトユニット31から離すことでベルト54をベルト44から離した状態で、糸加工部12への糸掛けを行うと、図4(a)、(b)に示すように、糸Yは、ベルト44とベルト54との間を通り、糸Yのベルト44とベルト54との間を通る部分のすぐ下流側に位置する部分がエッジディスク45の外縁部に接触した状態となる。この状態でモータ46、55を駆動させることによってベルト44、54を走行させてから、可動ベルトユニット32を固定ベルトユニット31に近づけることで、ベルト54をベルト44に接触させる。すると、図3(a)、(b)に示すように、糸Yがベルト44とベルト54とに挟まれ、この状態でベルト44、54が走行することとなる。これにより、糸Yは、ベルト44とベルト54とが交差する菱形の部分であるクロスポイントCと、撚止ガイド22との間の部分において撚りが付与される。また、糸Yは、クロスポイントCと二次フィードローラ25との間の部分において解撚される。このとき、糸Yの、クロスポイントCのすぐ下流側に位置する部分が、エッジディスク45の外縁部に接触しているため、糸Yは、クロスポイントCとエッジディスク45の間の部分において、解撚が抑制され、解撚開始点がエッジディスク45上に固定される。
ここで、糸Yの解撚開始点がクロスポイントC内にあると、解撚された糸Yとベルト44、54とが擦れることにより、糸Yに毛羽が発生する虞がある。また、このとき、糸Yの解撚開始点が、クロスポイントCの糸道における上流側の部分にある場合ほど、解撚された糸Yとベルト44、54とが擦れる長さが長くなり、糸Yに毛羽が発生しやすい。本実施の形態では、上述したように、糸Yの解撚が、クロスポイントCとエッジディスク45との間の部分において抑制され、糸Yの解撚開始点がエッジディスク45上に固定される。したがって、エッジディスク45がない場合と比較して、糸Yの解撚の開始点が、糸道の下流側にずれる。これにより、糸Yの解撚開始点を、クロスポイントCよりも糸道の下流側に位置させることができる。これにより、解撚された糸Yに毛羽が発生するのを抑制することができる。
ここで、上述したように、ベルト44を駆動プーリ41と従動プーリ42との間において均等に撓ませ、ベルト54を駆動プーリ51と従動プーリ52との間において均等に撓ませるために、上述したように、ベルト44の駆動プーリ41と従動プーリ42との間の部分の中央部と、ベルト54の駆動プーリ41と従動プーリ52との間の部分の中央部とを接触させることが好ましい。一方、クロスポイントCとエッジディスク45との間において、糸Yの解撚の十分に抑制して解撚開始点をエッジディスク45上に固定するためには、クロスポイントCとエッジディスク45とをできるだけ近づけることが好ましい。そして、本実施の形態では、駆動プーリ41と従動プーリ42、及び、駆動プーリ51と従動プーリ52とを、それぞれ、できるだけ近づけて配置することにより、これらの条件を満たしている。
このとき、本発明とは異なり、固定ベルトユニット31がベルト延長用プーリ43を有しておらず、ベルト44が2つのプーリ41、42にのみ巻き掛けられたものであるとすると、駆動プーリ41と従動プーリ42とを近づけて配置すると、ベルト44の長さが短くなってしまう。同様に、可動ベルトユニット32がベルト延長用プーリ53を有しておらず、ベルト54が2つのプーリ51、52にのみ巻き掛けられたものであるとすると、駆動プーリ51と従動プーリ52とを近づけて配置すると、ベルト54の長さが短くなってしまう。
ここで、ベルト44の長さが短いと、ベルト44のある部分がベルト54に接触した後、ベルト44のこの部分が次にベルト54に接触するまでの時間が短くなる。そのため、ベルト44の各部分は、クロスポイントCに到達して糸Yとの摩擦によって発熱した後、十分に冷却される前に、再度クロスポイントCに到達して糸Yとの摩擦によって発熱しることになる。その結果、ベルト44は、全体の温度が高くなり(例えば、100℃以上となり)、耐久性が低下してしまう。
同様に、ベルト54の長さが短いと、ベルト54のある部分がベルト44に接触した後、ベルト54のこの部分が次にベルト54に接触するまでの時間が短くなる。そのため、ベルト54の各部分は、クロスポイントCに到達して糸Yとの摩擦によって発熱した後、十分に冷却される前に、再度クロスポイントCに到達して糸Yとの摩擦によって発熱することになる。その結果、ベルト54は、全体の温度が高くなり(例えば、100℃以上となり)、耐久性が低下してしまう。
また、このとき、糸Yの太さが太いほど、糸Yとベルト44、54との摩擦熱が大きくなるため、上述したような問題が生じる可能性は高くなる。
また、ベルト44は、プーリ41〜43に掛けられた部分において屈曲するが、ベルト44の長さが短いと、ベルト44の走行時に、ベルト44の各部分がプーリ41〜43に到達して屈曲される回数が増加する。その結果、ベルト44の芯材の破断や剥離が生じやすくなってベルト44の耐久性が低下する。同様に、ベルト54は、プーリ51〜53に掛けられた部分において屈曲するが、ベルト54の長さが短いと、ベルト54の走行時に、ベルト54の各部分がプーリ51〜53に到達して屈曲される回数が増加する。その結果、ベルト54の芯材の破断や剥離が生じやすくなってベルト54の耐久性が低下する。
これに対して、本実施の形態では、固定ベルトユニット31が、駆動プーリ41及び従動プーリ42に加えて、従動プーリ42に対して駆動プーリ41と反対側に配置されたベルト延長用プーリ43を有し、プーリ41〜43にベルト44が巻き掛けられている。これにより、ベルト44が2つのプーリ41、42にのみ巻き掛けられている場合と比較して、ベルト44の長さを長くすることができる。同様に、本実施の形態では、可動ベルトユニット32が、駆動プーリ51及び従動プーリ52に加えて、従動プーリ52に対して駆動プーリ51と反対側に配置されたベルト延長用プーリ53を有し、プーリ51〜53にベルト54が巻き掛けられている。これにより、ベルト54が2つのプーリ51、52にのみ巻き掛けられている場合と比較して、ベルト54の長さを長くすることができる。そして、ベルト44、54の長さが長いと、ベルト44、54の各部分は、クロスポイントCに到達して糸Yとの摩擦によって発熱した後、十分に冷却されてから、再度クロスポイントCに到達して糸Yとの摩擦によって発熱することになる。したがって、糸Yの太さによらず、ベルト44、54全体の温度上昇が抑えられ、ベルト44、54の耐久性の低下を防止することができる。
また、ベルト44の長さが長くなると、ベルト44の走行時にベルト44の各部分がプーリ41〜43に到達して屈曲される回数が少なくなる。したがって、ベルト44の芯材の破断や剥離によるベルトの耐久性の低下を抑えることができる。同様に、ベルト54の長さが長くなると、ベルト54の走行時にベルト54の各部分がプーリ51〜53に到達して屈曲される回数が少なくなる。したがって、ベルト54の芯材の破断や剥離によるベルトの耐久性の低下を抑えることができる。
また、本実施の形態では、ベルト式仮撚装置24において、糸Yに撚りを付与しているときに、シャフト73(ベルト延長用プーリ53)を移動させてベルト54の張力を変化させると、ベルト44とベルト54とが互いに押し付けられる力が変わる。これにより、ベルト44、54によって糸Yを送る力、及び、糸Yに撚りを付与する力を、糸Yの張力などに応じて制御することができる。このとき、ベルト54の張力が大きくなるほど、ベルト44とベルト54とが互いに押し付けられる力が大きくなって、ベルト44、54によって糸を送る力、及び、糸に撚りを付与する力が大きくなる。
ここで、本発明と異なり、シャフト73(ベルト延長用プーリ53の中心軸53a)の代わりに、シャフト71(駆動プーリ51の中心軸51a)又はシャフト72(従動プーリ52の中心軸52a)を移動させることによって、ベルト54の張力を変化させることも考えられる。しかしながら、この場合には、シャフト71又は72を移動させたときに、ベルト54のベルト44との接触部分に傾きが生じてベルト44とベルト54との密着性が低下してしまう虞がある。
より詳細に説明すると、ベルト式仮撚装置24では、糸Yを、ベルト44とベルト54とで挟んだ状態で、ベルト44、54を走行させることにより、糸Yに力を加えて、糸Yを糸道の下流側に送りつつ、糸Yに撚りを付与する。このとき、糸Yに付与する力を安定させるためには、ベルト44、54の互いに接触する部分同士が十分に密着している必要がある。しかしながら、本発明と異なり、シャフト71又は72を移動させると、移動させたシャフトが傾いて、ベルト54のベルト44との接触部分に傾きが生じてしまう虞がある。そして、ベルト54にこのような傾きが生じると、ベルト44とベルト54との密着性が低下してしまう虞がある。
これに対して、本実施の形態では、シャフト73(ベルト延長用プーリ53)を移動させることによって、ベルト54の張力を調整しているため、ベルト54の張力を調整しても、シャフト71(駆動プーリ51)とシャフト72(従動プーリ52)との位置関係が維持される。したがって、ベルト54の張力を調整したときに、ベルト54のベルト44との接触部分が傾いてしまうことがない。
また、本実施の形態では、ベルト54のベルト44との接触部分に傾きが生じないようにするために、シャフト71、72については、軸方向が互いに平行である状態を精度よく維持する必要がある。これに対して、シャフト73が、シャフト71、72に対して多少傾く等しても、ベルト54のベルト44との接触部分が傾いてしまうということはない。したがって、シャフト73を支持するための構造や、シャフト73を移動させるための構造は、それほど高い精度が要求されず、簡単なものとすることができる。
次に、本実施の形態に種々の変更を加えた変形例について説明する。
上述の実施の形態では、駆動プーリ41と従動プーリ42とが同じ径D1を有するものであり、駆動プーリ51と従動プーリ52とが同じ径D1を有するものであったが、これには限られない。
変形例1では、図7(a)に示すように、固定ベルトユニット31において、駆動プーリ41の径が、ベルト延長用プーリ43の径と同じD2となっている。同様に、図7(b)に示すように可動ベルトユニット32において、駆動プーリ51の径が、ベルト延長用プーリ53の径と同じD2となっている。この場合でも、ベルト44は、従動プーリ42において屈曲されるため、従動プーリ42に密着する。また、ベルト54は、従動プーリ52において屈曲されるため、従動プーリ52に密着する。これにより、駆動プーリ41、51を回転させてベルト44、54を走行させたときに、従動プーリ42、52を確実に連れ回りさせることができる。また、変形例1の場合には、駆動プーリ41とベルト延長用プーリ43の径が同じD2であるため、固定ベルトユニット31において、駆動プーリ41とベルト延長用プーリ43とで、部品を共通化することができる。同様に、駆動プーリ51とベルト延長用プーリ53の径が同じD2であるため、可動ベルトユニット32において、駆動プーリ51とベルト延長用プーリ53とで、部品を共通化することができる。
また、変形例1では、駆動プーリ41、51の径が、ベルト延長用プーリ43、53の径と同じD2となっていたが、これには限られない。駆動プーリ41、51の径は、従動プーリ42、52の径D2よりも小さく、且つ、ベルト延長用プーリ43、53の径と異なっていてもよい。この場合でも、ベルト44、54は、従動プーリ42、52において屈曲されることにより、従動プーリ42、52に密着する。
また、上述の実施の形態では、ベルト延長用プーリ43の径が、プーリ41、42の径D1よりも小さいD2であり、ベルト延長用プーリ53の径が、プーリ51、52の径D1よりも小さいD2であったが、これには限られない。
変形例2では、図8(a)に示すように、固定ベルトユニット31において、駆動プーリ41の径が、従動プーリ42の径D1よりも小さいD2となっている。また、ベルト延長用プーリ43の径が、従動プーリ42の径と同じD1となっている。同様に、図8(b)に示すように、可動ベルトユニット32において、駆動プーリ51の径が、従動プーリ52の径D1よりも小さいD2となっている。また、ベルト延長用プーリ53の径が、従動プーリ52の径と同じD1となっている。この場合でも、ベルト44は、従動プーリ42において屈曲されるため、従動プーリ42に密着する。また、ベルト54は、従動プーリ52において屈曲されるため、従動プーリ52に密着する。これにより、駆動プーリ41、51を回転させてベルト44、54を走行させたときに、従動プーリ42、52を確実に連れ回りさせることができる。また、変形例2の場合には、従動プーリ42とベルト延長用プーリ43の径が同じD2であるため、固定ベルトユニット31において、従動プーリ42とベルト延長用プーリ43とで、部品を共通化することができる。同様に、従動プーリ52とベルト延長用プーリ53の径が同じD2であるため、可動ベルトユニット32において、従動プーリ52とベルト延長用プーリ53とで、部品を共通化することができる。
また、上述の実施の形態や変形例1、2では、固定ベルトユニット31において、駆動プーリ41及びベルト延長用プーリ43のうち、一方のプーリの径が従動プーリ42の径D1以下であり、他方のプーリの径が従動プーリ42の径D1よりも小さい。また、可動ベルトユニット32において、駆動プーリ51及びベルト延長用プーリ53のうち、一方のプーリの径が従動プーリ52の径D1以下であり、他方のプーリの径が従動プーリ52の径D1よりも小さい。しかしながら、これには限られない。ベルト44、54が従動プーリ42、52で屈曲される範囲であれば、例えば、上述の実施形態において、駆動プーリ41、51の径が、従動プーリ42、52の径D1よりも大きくてもよい。
また、上述の実施の形態や、変形例1では、ベルト44、54が、それぞれ2か所において従動プーリ42、52によって屈曲されていたが、これには限られない。変形例3では、図9(a)に示すように、固定ベルトユニット31において、プーリ41〜43の径が全て同じD1となっている。また、従動プーリ42の中心軸42aが、駆動プーリ41の中心軸41aとベルト延長用プーリ43の中心軸43aとを結ぶ直線L3に対して、可動ベルトユニット32側にずれて配置されている。また、図9(b)に示すように、可動ベルトユニット32において、プーリ51〜53の径が全て同じD1となっている。また、従動プーリ52の中心軸52aが、駆動プーリ51の中心軸51aとベルト延長用プーリ53の中心軸53aとを結ぶ直線L4に対して、固定ベルトユニット31側にずれて配置されている。
この場合には、ベルト44は、可動ベルトユニット32側においてのみ、従動プーリ42に屈曲されることによって、従動プーリ42に密着する。また、ベルト54は、固定ベルトユニット31側においてのみ、従動プーリ52に屈曲されることによって従動プーリ52に密着する。したがって、この場合でも、ベルト44、54が走行したときに、従動プーリ42、52が確実に連れ回りする。また、この場合には、ベルト44は、ベルト54の、駆動プーリ51と、従動プーリ52により屈曲された部分との間の部分に接触する。また、ベルト54は、ベルト44の、駆動プーリ41と、従動プーリ42により屈曲された部分との間の部分に接触する。
また、変形例3では、プーリ41〜43及びプーリ51〜53の径が全てD1であったがこれには限られない。
例えば、変形例4では、図10(a)、(b)に示すように、上述の実施の形態と同様、プーリ43の径D2が、プーリ41、42の径D1よりも小さくなっており、プーリ53の径D2が、プーリ51、52の径D1よりも小さくなっている。また、変形例5では、図11(a)、(b)に示すように、変形例1と同様、プーリ41、43の径D2が、プーリ42の径D1よりも小さくなっており、プーリ51、53の径D2が、プーリ52の径D1よりも小さくなっている。そして、変形例4、5では、変形例3と同様、従動プーリ42の中心軸42aが、駆動プーリ41の中心軸41aとベルト延長用プーリ43の中心軸43aとを結ぶ直線L3に対して、可動ベルトユニット32側にずれて配置されている。また、従動プーリ52の中心軸52aが、駆動プーリ51の中心軸51aとベルト延長用プーリ53の中心軸53aとを結ぶ直線L4に対して、固定ベルトユニット31側にずれて配置されている。
上述の実施の形態や変形例1では、プーリ41〜43を、中心軸41a〜43aが一直線L1上に位置するように配置し、プーリ41〜43の径の差(D1とD2との差)によって、ベルト44を従動プーリ42において屈曲させている。同様に、プーリ51〜53を、中心軸51a〜53aが一直線L2上に位置するように配置し、プーリ51〜53の径の差(D1とD2との差)によって、ベルト54を従動プーリ42において屈曲させている。この場合、プーリ41〜43間の径の差が小さいと、ベルト44が従動プーリ42において十分に屈曲されない虞がある。同様に、プーリ51〜53間の径の差が小さいと、ベルト54が従動プーリ52において十分に屈曲されない虞がある。
これに対して、変形例4、5では、上述したように、従動プーリ42の中心軸42aを、駆動プーリ41の中心軸41aとベルト延長用プーリ43の中心軸43aとを結ぶ直線L3に対してずらして配置している。また、従動プーリ52の中心軸52aを、駆動プーリ51の中心軸51aとベルト延長用プーリ53の中心軸53aとを結ぶ直線L4に対してずらして配置している。したがって、変形例4、5では、プーリ41〜43の径の差と、中心軸42aの直線L3に対するずれの両方によって、ベルト44が従動プーリ42において屈曲される。同様に、変形例4、5では、プーリ51〜53の径の差と、中心軸52aの直線L4に対するずれの両方によって、ベルト54が従動プーリ52において屈曲される。これにより、ベルト44、54を、確実に従動プーリ42、52において屈曲させることができる。
なお、変形例4、5では、ベルト44が、可動ベルトユニット32側及びこれと反対側の両方において、従動プーリ42に接触しているが、これには限られない。ベルト44は、可動ベルトユニット52側においてのみ、従動プーリ42に接触していてもよい。また、変形例4、5では、ベルト54が、固定ベルトユニット31側及びこれと反対側の両方において、従動プーリ52に接触しているが、これには限られない。ベルト54は、固定ベルトユニット31側においてのみ、従動プーリ52に接触していてもよい。
また、ベルト44が可動ベルトユニット32側において従動プーリ42に屈曲される範囲であれば、プーリ41〜43の径の大小関係は、変形例3〜5以外の関係にあってもよい。同様に、ベルト54が固定ベルトユニット31側において従動プーリ52に屈曲される範囲であれば、プーリ51〜53の径の大小関係は、変形例3〜5以外の関係にあってもよい。
また、上述の実施の形態では、ベルト44とベルト54とが接触しているか否かによらず、従動プーリ42、52によってベルト44、54が屈曲されていたが、これには限られない。
変形例6では、図12(a)に示すように、固定ベルトユニット31において、プーリ41〜43の径が全て同じD1となっており、プーリ41〜43の中心軸41a〜43aが同一直線L1上に位置している。同様に、図12(b)に示すように、可動ベルトユニット32において、プーリ51〜53の径が全て同じD1となっており、プーリ51〜53の中心軸51a〜53aが同一直線L2上に位置している。
この場合には、ベルト44とベルト54とが接触していない状態では、ベルト44、54は、従動プーリ42、52において屈曲されていない。そのため、ベルト44、54は、従動プーリ42、52と接触していない。したがって、ベルト44、54を走行させたときに、従動プーリ42、52が連れ回りしない虞がある。
しかしながら、この場合でも、ベルト44とベルト54とを接触させた状態で、ベルト44、54の接圧がある程度大きければ、ベルト44、54は、従動プーリ42、52において屈曲され、従動プーリ42、52に密着する。したがって、ベルト44、54を走行させたときに、従動プーリ42、52が連れ回りする。
また、上述の実施形態では、ベルト式仮撚装置24は、可動ベルトユニット32が、固定ベルトユニット31に対して、ベルト44、54の外周面の互いに対向する部分と直交する方向に移動することで、ベルト54をベルト44と接触した位置とベルト44から離れた位置との間で移動させることができるようになっていたが、これには限られない。変形例7では、可動ベルトユニット32が、図13矢印Gで示すように、駆動プーリ51の中心軸51aを中心に、ベルト54がベルト44に接触する位置(図13で実線で示した位置)と、ベルト54がベルト44から離れる位置(図13で一点鎖線で示した位置)との間で揺動可能となっている。なお、可動ベルトユニット32を揺動させるための機構は、例えば、従来と同様(例えば、特開平10−8335号公報参照)であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
ただし、変形例7では、上述の実施の形態の場合と比較して、ベルト44とベルト54との接圧に、ベルト44の幅方向のばらつきが生じる。具体的には、ベルト44の幅方向において中心軸51aに近い部分ほど、ベルト44とベルト54との接圧が大きくなる。
また、上述の実施の形態では、2つのベルトユニット31、32のベルト44とベルト54とが互いに接触していない状態での、従動プーリ42、53によるベルト44、54の屈曲角度θが0.5度以上であったがこれには限られない。従動プーリ42、53によるベルト44、54の屈曲角度θは、0.5度未満であってもよい。
また、上述の実施の形態では、固定ベルトユニット31の駆動プーリ41にエッジディスク45が設けられていたが、エッジディスク45は可動ベルトユニット32の駆動プーリ51に設けられていてもよい。
また、上述の実施の形態では、固定ベルトユニット31の駆動プーリ41と従動プーリ42とが、同じ径のプーリであったが、駆動プーリ41の径と従動プーリ42の径とが完全に同じであることには限られない。駆動プーリ41の径と従動プーリ42の径とに、これらのプーリの径が実質的に同じ径であるとみなせる程度の僅かな差(例えば、プーリ41、42のいずれか径の1%以下の差)があってもよい。また、上述の実施の形態の可動ベルトユニット32の駆動プーリ51と従動プーリ52や、上述の変形例における各ベルトユニットを構成する同じ径のプーリについても同様である。
また、上述の実施の形態では、固定ベルトユニット31において、シャフト61〜63の互いの位置関係が固定され、可動ベルトユニット32において、シャフト71、72の互いの位置関係が固定され、且つ、シャフト73が、シャフト71、72に対して、直線L2と平行な方向に移動可能となっていたが、これには限られない。
例えば、可動ベルトユニット32において、シャフト73を、シャフト71、72に対して、中心軸51aと中心軸52aとを結んだ直線に対して傾いた方向に移動させることができるようになっていてもよい。また、シャフト73を直線的に移動させることにも限られない。例えば、シャフト73を所定の揺動軸を中心に揺動させるようにシャフト73を移動させてもよいし、シャフト73をシャフト71、72に対して傾けるようにシャフト73を移動させてもよい。
また、可動ベルトユニット32において、シャフト73が、シャフト71、72に対して移動可能となっているのに加えて、固定ベルトユニット31においても、シャフト63が、シャフト62、63に対して移動可能に構成されていてもよい。
あるいは、上述の実施の形態とは逆に、固定ベルトユニット31において、シャフト61、62の互いの位置関係が固定され、且つ、シャフト63が、シャフト61、62に対して移動可能となっており、可動ベルトユニット32において、シャフト71〜73の互いの位置関係が固定されていてもよい。
さらには、固定ベルトユニット31において、シャフト61〜63の互いの位置関係が固定されているとともに、可動ベルトユニット32において、シャフト71〜73の互いの位置関係が固定されていてもよい。この場合には、例えば、ベルト式仮撚装置24で糸Yに撚りを付与する際に、可動ベルトユニット32を、ベルト44とベルト54とが接触する面と直交する方向に移動させることによって、ベルト44とベルト54とが互いに押し付けられる力を調整する。これにより、糸Yを送る力や糸Yに撚りを付与する力を制御することができる。
また、上述の実施の形態において、シャフト73を移動させてベルト54の張力を調整するのに加えて、可動ベルトユニット32を移動させることによって、糸Yを送る力や糸Yに撚りを付与する力を制御してもよい。この場合には、可動ベルトユニット32を移動させることによってのみ、糸Yを送る力や糸Yに撚りを付与する力を制御する場合と比較して、可動ベルトユニット32の移動量を小さくすることができる。
24 ベルト式仮撚装置
31 固定ベルトユニット
32 可動ベルトユニット
41、51 駆動プーリ
42、52 従動プーリ
43、53 ベルト延長用プーリ
41a、42a、43a、51a、52a、53a 中心軸
44、54 ベルト
45 エッジディスク
76 シリンダ
第4の発明に係るベルト式仮撚装置は、第2又は第3の発明に係るベルト式仮撚装置において、前記駆動プーリの径が、従動プーリの径と同じである、又は、前記従動プーリの径よりも小さく、前記ベルト延長用プーリの径が、前記従動プーリの径よりも小さい。
第5の発明に係るベルト式仮撚り装置は、第4の発明に係るベルト式仮撚装置において、前記駆動プーリ、前記従動プーリ及び前記ベルト延長用プーリの軸方向から見て、前記従動プーリの軸が、前記駆動プーリの軸と前記ベルト延長用プーリの軸とを結ぶ直線から2つの前記ベルトユニットの前記ベルト同士が交差する側にずれて配置されている。
第6の発明に係るベルト式仮撚り装置は、第2又は第3の発明に係るベルト式仮撚装置において、前記駆動プーリの径と、前記従動プーリの径と、前記ベルト延長用プーリの径が同じであり、
前記駆動プーリ、前記従動プーリ及び前記ベルト延長用プーリの軸方向から見て、前記従動プーリの軸が、前記駆動プーリの軸と前記延長用プーリの軸とを結ぶ直線からずれて配置されている。
本発明によると、駆動プーリと従動プーリとベルト延長用プーリの径が同じ場合、プーリの軸方向から見て、従動プーリの軸を、駆動プーリの軸とベルト延長用プーリの軸とを結ぶ直線からずらして配置すれば、ベルトを従動プーリにおいて屈曲させることができる。また、この場合には、駆動プーリと従動プーリと延長用プーリの径が同じであるので、駆動プーリと従動プーリと延長用プーリとで、部品を共通化することができる。
本発明によると、ベルト延長用プーリの軸を、駆動プーリの軸及び従動プーリの軸に対して移動させることによりベルトの張力を調整することができる。これにより、2つのベルトユニットのベルトの接圧を調整して、ベルトユニットから糸に付与される力(糸を送る力や糸に撚りを付与する力)を制御することができる。
ベルト54はゴム材料などからなる無端状のベルトであり、プーリ51〜53に巻き掛けられている。これにより、モータ55を駆動して駆動プーリ51を回転させると、ベルト54が走行し、プーリ52、53が連れ回りする。このとき、上述したように、ベルト延長用プーリ53の径D2は、プーリ51、52の径D1よりも小さくなっているため、ベルト54は、従動プーリ52において屈曲する。これにより、ベルト54は、駆動プーリ51とベルト延長用プーリ53との間に配置された従動プーリ52に密着し、ベルト54を走行させたときに、従動プーリ52が確実に連れ回りする。ここで、ベルト54の従動プーリ52での屈曲角度θは、ベルト54が、ベルト44と接触していない状態で、0.5度以上(例えば0.89度程度)である。
また、フレーム74には、モータ55と反対側の端部に、スライド部材75が取り付けられている。スライド部材75は、フレーム74に対して、矢印Hで示すように、直線L2と平行に移動可能に支持されている。また、スライド部材75には、ベルト延長用プーリ53を回転自在に支持するシャフト73が設けられている。これにより、シャフト73は、シャフト71、72に対して移動可能となっている。すなわち、ベルト延長用プーリ53の中心軸53aは、駆動プーリ51の中心軸51a及び従動プーリ52の中心軸52aに対して移動可能となっている。スライド部材75は、シリンダ76(本発明の「移動装置」)によって移動される。スライド部材75が移動して、シャフト73がシャフト71、72に対して移動すると、ベルト54の張力が変化する。
次に、固定ベルトユニット31と可動ベルトユニット32との位置関係について説明する。固定ベルトユニット31と可動ベルトユニット32とは、ベルト44の駆動プーリ41と従動プーリ42との間の部分の中央部と、ベルト54の駆動プーリ51と従動プーリ52との間の部分の中央部とが交差するように配置されている。また、可動ベルトユニット32は、図3(a)、(b)に矢印Fで示すように、固定ベルトユニット31に対して、ベルト44、54の外周面の、互いに対向する部分と直交する方向に移動可能に構成されている。これにより、可動ベルトユニット32を固定ベルトユニット31から離れる方向に移動させると、ベルト54をベルト44から離すことができる。また、可動ベルトユニット32を固定ベルトユニット31に近づける方向に移動させると、ベルト54をベルト44に接触させることができる。なお、可動ベルトユニット32を移動させるための機構は、従来と同様(例えば、特開2010−65354号公報参照)であるので、ここでは、詳細な説明を省略する。
同様に、ベルト54の長さが短いと、ベルト54のある部分がベルト44に接触した後、ベルト54のこの部分が次にベルト44に接触するまでの時間が短くなる。そのため、ベルト54の各部分は、クロスポイントCに到達して糸Yとの摩擦によって発熱した後、十分に冷却される前に、再度クロスポイントCに到達して糸Yとの摩擦によって発熱することになる。その結果、ベルト54は、全体の温度が高くなり(例えば、100℃以上となり)、耐久性が低下してしまう。
また、本実施の形態では、ベルト式仮撚装置24において、糸Yに撚りを付与しているときに、シャフト73(ベルト延長用プーリ53)を移動させてベルト54の張力を変化させると、ベルト44とベルト54との接圧が変わる。これにより、ベルト44、54によって糸Yを送る力、及び、糸Yに撚りを付与する力を、糸Yの張力などに応じて制御することができる。このとき、ベルト54の張力が大きくなるほど、ベルト44とベルト54との接圧が大きくなって、ベルト44、54によって糸を送る力、及び、糸に撚りを付与する力が大きくなる。
また、変形例1では、駆動プーリ41、51の径が、ベルト延長用プーリ43、53の径と同じD2となっていたが、これには限られない。駆動プーリ41、51の径は、従動プーリ42、52の径D1よりも小さく、且つ、ベルト延長用プーリ43、53の径D2と異なっていてもよい。この場合でも、ベルト44、54は、従動プーリ42、52において屈曲されることにより、従動プーリ42、52に密着する。
変形例2では、図8(a)に示すように、固定ベルトユニット31において、駆動プーリ41の径が、従動プーリ42の径D1よりも小さいD2となっている。また、ベルト延長用プーリ43の径が、従動プーリ42の径と同じD1となっている。同様に、図8(b)に示すように、可動ベルトユニット32において、駆動プーリ51の径が、従動プーリ52の径D1よりも小さいD2となっている。また、ベルト延長用プーリ53の径が、従動プーリ52の径と同じD1となっている。この場合でも、ベルト44は、従動プーリ42において屈曲されるため、従動プーリ42に密着する。また、ベルト54は、従動プーリ52において屈曲されるため、従動プーリ52に密着する。これにより、駆動プーリ41、51を回転させてベルト44、54を走行させたときに、従動プーリ42、52を確実に連れ回りさせることができる。また、変形例2の場合には、従動プーリ42とベルト延長用プーリ43の径が同じD1であるため、固定ベルトユニット31において、従動プーリ42とベルト延長用プーリ43とで、部品を共通化することができる。同様に、従動プーリ52とベルト延長用プーリ53の径が同じD1であるため、可動ベルトユニット32において、従動プーリ52とベルト延長用プーリ53とで、部品を共通化することができる。
上述の実施の形態や変形例1では、プーリ41〜43を、中心軸41a〜43aが一直線L1上に位置するように配置し、プーリ41〜43の径の差(D1とD2との差)によって、ベルト44を従動プーリ42において屈曲させている。同様に、プーリ51〜53を、中心軸51a〜53aが一直線L2上に位置するように配置し、プーリ51〜53の径の差(D1とD2との差)によって、ベルト54を従動プーリ52において屈曲させている。この場合、プーリ41〜43間の径の差が小さいと、ベルト44が従動プーリ42において十分に屈曲されない虞がある。同様に、プーリ51〜53間の径の差が小さいと、ベルト54が従動プーリ52において十分に屈曲されない虞がある。
なお、変形例4、5では、ベルト44が、可動ベルトユニット32側及びこれと反対側の両方において、従動プーリ42に接触しているが、これには限られない。ベルト44は、可動ベルトユニット32側においてのみ、従動プーリ42に接触していてもよい。また、変形例4、5では、ベルト54が、固定ベルトユニット31側及びこれと反対側の両方において、従動プーリ52に接触しているが、これには限られない。ベルト54は、固定ベルトユニット31側においてのみ、従動プーリ52に接触していてもよい。
この場合には、ベルト44とベルト54とが接触していない状態では、ベルト44、54は、従動プーリ42、52において屈曲されていない。そのため、ベルト44、54は、従動プーリ42、52と密着していない。したがって、ベルト44、54を走行させたときに、従動プーリ42、52が連れ回りしない虞がある。
また、上述の実施の形態では、2つのベルトユニット31、32のベルト44とベルト54とが互いに接触していない状態での、従動プーリ42、52によるベルト44、54の屈曲角度θが0.5度以上であったがこれには限られない。従動プーリ42、52によるベルト44、54の屈曲角度θは、0.5度未満であってもよい。
さらには、固定ベルトユニット31において、シャフト61〜63の互いの位置関係が固定されているとともに、可動ベルトユニット32において、シャフト71〜73の互いの位置関係が固定されていてもよい。この場合には、例えば、ベルト式仮撚装置24で糸Yに撚りを付与する際に、可動ベルトユニット32を、ベルト44とベルト54とが接触する面と直交する方向に移動させることによって、ベルト44とベルト54との接圧を調整する。これにより、糸Yを送る力や糸Yに撚りを付与する力を制御することができる。

Claims (7)

  1. 無端状のベルトと、前記ベルトが掛けられた駆動プーリ及び従動プーリと、をそれぞれ有する2つのベルトユニットを備え、
    2つの前記ベルトユニットの前記ベルト同士が、前記駆動プーリと前記従動プーリとの間の部分の中央部において交差するように配置され、
    2つの前記ベルトユニットの前記ベルトの互いに交差する部分において糸を挟んだ状態で、前記ベルトを走行させることによって、糸に仮撚加工を施すベルト式仮撚装置であって、
    前記2つのベルトユニットのうち片方のベルトユニットは、
    前記駆動プーリに設けられることで前記駆動プーリとともに回転し、糸の前記ベルトに挟まれる部分よりも糸道の下流側の部分と接触することで、糸の解撚を抑制して解撚開始点を固定する解撚点固定部材、をさらに有し、
    前記2つのベルトユニットは、それぞれ、
    前記従動プーリに対して前記駆動プーリと反対側に配置され、前記ベルトが掛けられたベルト延長用プーリ、をさらに有していることを特徴とするベルト式仮撚装置。
  2. 前記2つのベルトユニットの前記ベルト同士を接触させた状態、及び、前記2つのベルトユニットの前記ベルト同士を接触させていない状態のうち、いずれの状態においても、前記従動プーリが、前記ベルトを屈曲させ、
    2つの前記ベルトユニットの前記ベルト同士が、前記駆動プーリと、前記従動プーリに屈曲された部分との間の部分の中央部において交差することを特徴とする請求項1に記載のベルト式仮撚装置。
  3. 前記2つのベルトユニットの前記ベルト同士が接触していない状態での、前記従動プーリによる前記ベルトの屈曲角度が0.5度以上であることを特徴とする請求項2に記載のベルト式仮撚装置。
  4. 前記駆動プーリの径が、前記従動プーリの径と同じである、又は、前記従動プーリの径よりも小さく、
    前記ベルト延長用プーリの径が、従動プーリの径よりも小さいことを特徴とする請求項2又は3に記載のベルト式仮撚装置。
  5. 前記駆動プーリ、前記従動プーリ及び前記ベルト延長用プーリの軸と直交する方向から見て、前記従動プーリの軸が、前記駆動プーリの軸と前記延長用プーリの軸とを結ぶ直線から2つの前記ベルトユニットの前記ベルト同士が交差する側にずれて配置されていることを特徴とする請求項4に記載のベルト式仮撚装置。
  6. 前記駆動プーリの径と、前記従動プーリの径と、前記ベルト延長用プーリの径が同じであり、
    前記駆動プーリ、前記従動プーリ及び前記ベルト延長用プーリの軸と直交する方向から見て、前記従動プーリの軸が、前記駆動プーリの軸と前記延長用プーリの軸とを結ぶ直線からずれて配置されていることを特徴とする請求項2又は3に記載のベルト式仮撚装置。
  7. 前記2つのベルトユニットのうち少なくとも片方のベルトユニットにおいて、
    前記駆動プーリの軸と前記従動プーリの軸とが互いに固定され、
    前記ベルト延長用プーリの軸が、前記駆動プーリの軸及び前記従動プーリの軸に対して移動可能に構成され、
    前記ベルト延長用プーリの軸を、前記駆動プーリの軸及び前記従動プーリの軸に対して移動させる移動装置をさらに備えていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のベルト式仮撚装置。
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