以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、この実施形態に記載されている構成要素はあくまでも例示であり、本発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。また、図面においては、理解容易のため、必要に応じて各部の寸法や数が誇張または簡略化して図示されている場合がある。また、各図面には、XYZ直交座標系を適宜付している。Y方向は、鉛直方向(上下方向)に沿った方向であり、Z方向は旋回軸AX1に沿った水平方向に沿った方向であり、X方向は、Y方向及びZ方向の双方に直交する水平方向に沿った方向である。なお、これらの各方向は、各要素の位置関係を説明するために付したものであり、各要素の位置関係を限定する趣旨のものではない。
<1.第1実施形態>
第1実施形態に係る医療用X線撮影装置20について説明する。図1及び図2は、第1実施形態に係る医療用X線撮影装置20を示す斜視図である。なお、図1は医療用X線撮影装置20を支持部30側から見た様子を示す図であり、図2は医療用X線撮影装置20を基体100側から見た様子を示す図である。図3は、第1実施形態に係る医療用X線撮影装置20を模式的に示す断面図である。図4は、第1実施形態に係る支持部30を支持する構造部分を示す断面図である。図5は、第1実施形態に係る支持部30をXYZ方向に移動させる構造部分を示す斜視図である。
医療用X線撮影装置20は、トモシンセシス撮影、CT撮影の他、パノラマ撮影、単純X線撮影等の各種医療向けのX線撮影を実行可能に構成されている。
図1から図3において、医療用X線撮影装置20は、被写体Pとして患者の一部、例えば、歯顎を含む口腔領域や耳鼻咽喉科領域を含む頭部、頚椎、腕関節、手指、乳房、腰椎、股関節、膝、足等のX線撮影に好適な装置である。医療用X線撮影装置20は、X線発生器40、X線検出器45、支持部30及び基体100を備える。
X線発生器40は、X線コーンビームを発生可能に構成されている。X線検出器45は、X線発生器40から照射され、撮影対象である被写体Pを透過したX線を検出する部分である。
支持部30は、例えば炭素繊維強化プラスチックによって形成された外装部32を含み、外装部32によってX線発生器40とX線検出器45とを対向させた状態で支持するように構成されている。
基体100は、医療用X線撮影装置20を構成する各部が直接あるいは間接的に組付けられるベースとなる部分である。特に、基体100は、X線発生器40とX線検出器45とが旋回軸AX1周りに旋回するように、支持部30を旋回可能に支持している。なお、以下の説明では、便宜上、基体100に対して支持部30が設けられた側を前側、その反対側を後側という場合がある。
本実施形態では、基体100は、旋回軸AX1が水平方向に沿って配設されるように、上記支持部30を支持している。このため、支持部30によって支持されたX線発生器40とX線検出器45とは、鉛直方向に対して直交する水平方向に沿った旋回軸AX1を挟んで間隔をあけて対向配置され、旋回軸AX1周りに旋回する。
なお、旋回軸AX1は水平状に配置されるが、厳密に水平でなくてもよい。例えば、水平に広がる2次元平面をSzx(不図示)とし、旋回軸AX1の軸方向をDa(不図示)とし、軸方向Daと2次元平面Szxのなす最小角度をAa(不図示)とする。すると、角度Aaは好適にはゼロであるが、プラス20°からマイナス20°の範囲内のいずれかであってもよい。また、図示は略するが、旋回軸AX1を傾動可能な機械構成にしておいて、一時的に角度Aaをゼロにできるようにしてもよく、この場合も水平状の配置である。
この医療用X線撮影装置20では、次のようにして被写体PのX線撮影を行う。すなわち、被写体Pが、基体100の反対側から旋回軸AX1に沿ってX線発生器40とX線検出器45との間に配される。この状態で、支持部30が旋回軸AX1周りに回転することで、X線発生器40及びX線検出器45が前記旋回軸AX1周りに回転する。そして、X線検出器45から入射X線の強度に応じて出力される電気信号に基づき、被写体PのX線画像を再構成する演算処理等が行われ、被写体PのX線画像が生成される。
このため、医療用X線撮影装置20は、被写体Pを水平方向に沿って配設した状態でX線CT撮影するのに適した装置として構成されている。もっとも、支持部は、水平方向に対して傾斜する旋回軸、又は、鉛直方向に沿った旋回軸周りに旋回可能に支持されていてもよい。
<支持部30>
支持部30は、外装部32を含む。外装部32は、X線発生器40及びX線検出器45を対向させた状態で内蔵して支持する支持要素である。また、外装部32は、X線発生器40、X線検出器45及びそれらへの配線材や制御基盤等を覆ってそれらを保護する要素となり得る部分である。
外装部32は、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)によって形成されている。炭素繊維強化プラスチックは、鉄等の金属材料と比べて軽量であり、強度も優れる。かかる外装部32によってX線発生器40及びX線検出器45を内蔵して支持することで、当該外装部32を含む支持部30の軽量化を図ることができる。また、支持部30の軽量化を図ることができる結果、当該支持部30を回転可能に支持する構成部分(後述する)の軽量化が可能となる。これにより、医療用X線撮影装置20の全体を軽量化できる。
どのように炭素繊維強化プラスチックで外装部32を形成するかは、様々に考えうる。布状に織り上げた炭素繊維をプラスチックに接合して形成してもよいし、または炭素繊維を細片状としてプラスチックに一様に分散させて混入して形成してもよい。
また、X線発生器40とX線検出器45とを支持する構成部分を剛性に優れた炭素繊維強化プラスチックによって形成することと、当該構成部分を、外装部32をなす形状とし、その延在方向に対して直交する面における断面形状を環状形状(好ましくは箱形状)とすることとが相俟って、剛性に優れた構成とすることができる。このように、外装部32を含む支持部30の軽量化を図ると共にその高剛性化を図ることで、支持部30の旋回時において支持部30の撓み変形を少なくすることができる。結果、X線発生器40とX線検出器45との旋回移動を高精度に保つことができ、かつ、医療用X線撮影装置20の軽量化を図ることができる。特に、X線発生器40とX線検出器45とが、それらの支持構造部分等の撓み変形に起因してぶれることを抑制することで、X線発生器40とX線検出器45との旋回時に逐次得られる画像間において位置ずれを抑制できる。結果、高精度なX線CT画像を得ることができる。
具体的には、外装部32は、旋回軸AX1に沿って延在する一対のアーム部34、36と、アーム基部38とを含む。アーム部34は後述するX線発生器40と共に支持部30のX線発生部40Aを構成し、アーム部36は後述するX線検出器45と共に支持部30のX線検出部45Aを構成する。
一対のアーム部34、36は、先端部が塞がれた角筒状に形成されており、旋回軸AX1に沿って延在するように配設されている。
アーム基部38は、中間胴部38aと、その両端側の曲げ部38bとを含む。中間胴部38aは旋回軸AX1に対して直交する方向に延在する角筒状に形成されており、曲げ部38bは、中間胴部38aの端部において旋回軸AX1に直交する方向から旋回軸AX1に沿った方向に曲る角筒状に形成されている。中間胴部38aとその両端の曲げ部38bとは、全体として1つの角筒を形成するように連なっている。
一対のアーム部34、36は、アーム基部38の両端に連なっており、アーム基部38によって旋回軸AX1を挟んで対向する並行状態で支持されている。
そして、外装部32を全体として見ると、一対のアーム部34、36とアーム基部38とがU字状をなすように連続する筒形状(ここでは角筒形状)をなしている。外装部32内には、一方のアーム部34の端部からアーム基部38を経て他方のアーム部36の端部に至る空洞が形成されている。なお、外装部32の表面には塗装等が施されていてもよい。
<把持部341,342,361,362>
支持部30における一対のアーム部34,36の先端部の両側部分には、把持部341,342,361,362が設けられている。後述するように、支持部30は、図4に示す制動部178の電磁ブレーキが解除されることによって、旋回軸AX1周りに手動で旋回させることが可能となる。この手動操作の際に、オペレータは、把持部341,342または把持部361,362のいずれかを把持しつつ、アーム部34又はアーム部36を、引くあるいは押すことによって、支持部30を容易に旋回させることができる。
<X線発生器40、X線検出器45>
一方のアーム部34の先端部にX線発生器40が取付けられており、他方のアーム部36の先端部にX線検出器45が取付けられている。
X線発生器40は、X線発生本体部41と、X線規制部42とを含む。X線発生本体部41は、X線源となるX線管等を備えており、X線を発生させる部分として構成されている。X線規制部42は、X線発生本体部41によるX線の照射方向前方に設けられ、X線の照射領域を規制する部分である。X線規制部42は、X線の広がりを規制する開口を形成するX線遮蔽材料からなる板状部材からなり、コリメータと呼ばれることもある。開口形状は、X線CT撮影やトモシンセシス撮影を行う態様に応じて、所定の大きさの略方形開口形状に形成されている。X線撮影の態様によっては、開口形状をスリット状に形成して被写体を走査できるようにしてもよい。開口を形成するための板状部材としては、一枚のX線遮蔽板に一つまたは複数の開口が設けられたもの、二枚以上の板をずらして重ね合わせることで開口を形成するもの、さらには二枚以上の板を移動可能に配置して開口形状及び開口面積を変更可能としたもの等、目的とするX線撮影あるいはCT撮影の対象となる領域に応じた種々の構成が採用される。開口によってX線が例えばX線コーンビームとなるように規制される。
図3に示す例では、複数の遮蔽板421、422がX線の通過を許容する開口425を形成している。それぞれの遮蔽板421、422はX線発生本体部41に対してZ方向に独立変位する。複数の遮蔽板421、422は互いに近接することで開口425のZ方向の幅を小さくし、互いに離隔することで開口425のZ方向の幅を大きくすることができる。遮蔽板421、422が同じ方向に変位して照射するX線の方向をZ方向について変更することもでき、照射方向と幅の変更を兼ねる移動も可能である。遮蔽板421、422はモータ等のアクチュエータを備えた遮蔽板駆動機構で変位させるが、遮蔽板駆動機構の図示は省略する。
なお、複数の遮蔽板421、422が縦方向についてX線の通過を規制する部材であるとすれば、横方向についてX線の通過を規制する図示しない複数の横方向遮蔽板も備えられる。複数の横方向遮蔽板は、遮蔽板421、422のX線照射方向前方か後方に隣接して配置され、遮蔽板421、422の移動方向と交差する横方向にX線発生本体部41の出射口411から発生するX線を規制する。複数の横方向遮蔽板のX線発生本体部41に対するZ方向と交差する方向への独立変位は、遮蔽板421、422の変位と方向が異なるだけで同様であるので説明は省略する。
このX線発生器40は、他方のアーム部36の先端部に向けてX線コーンビームを照射可能な位置及び姿勢で、一方のアーム部34の先端部に取付けられている。
X線検出器45は、2次元的に広がった検知面を有するフラットパネルディテクタ(FPD)あるいはX線蛍光増倍管(I.I.=Image Intensifier)等により構成されている。
このX線検出器45は、X線発生器40からのX線が検知面に照射可能な姿勢で、他方のアーム部36の先端部内向き部分に取付けられている。
一対のアーム部34、36によって、X線発生器40及びX線検出器45が旋回軸AX1を挟んで対向状態で支持される。そして、X線発生本体部41より照射されたX線コーンビームがX線規制部42によってその広がりを規制されつつ、X線検出器45に向けて出射される。そして、このX線コーンビームが旋回軸AX1及びその周辺を通ってX線検出器45の検知面に達する。
なお、上記X線発生器40及びX線検出器45に対する配線は、外装部32内の空間を通って配設される。外装部32の適宜位置に、配線や制御基盤等を取付けるための作業用の開口、放熱のための開口等が形成されていてもよい。
なお、上記一方のアーム部34の先端部には、位置付用の光を照射する位置付用光照射部34aが設けられている。位置付用光照射部34aは、発光ダイオードあるいは電球等により構成され、可視光を発するように構成されている。この位置付用光照射部34aは、X線発生器40及びX線検出器45との間の空間に向けて光を照射可能な姿勢で、一方のアーム部34の先端部に取付けられている。また、スリットを形成した遮蔽板及びレンズ等により、位置付用光照射部34aから照射される可視光が、X線発生器40及びX線検出器45による撮影位置を示すように規制されている。ここで、位置付用光照射部34aから照射される可視光が前記撮影位置を示す態様としては、当該可視光が旋回軸AX1を狙って照射される場合、あるいは、撮影領域の境界を示す場合等が考えられ、また、可視光は線状に照射されても、点状に照射されても、面状に照射されてもよい。また、位置付用光照射部34aの取付位置は、一方のアーム部34の先端部に限られず、一方のアーム部34の他の部分、他方のアーム部36等であってもよい。
<旋回支持軸部50>
支持部30は、旋回軸AX1に沿って上記X線発生器40及びX線検出器45の反対側に延出するように設けられた旋回支持軸部50を含む。
図3に示すようにアーム基部38には、旋回軸AX1に沿った空洞部39が形成されている。ここでは、アーム基部38の延在方向中間部の前部及び後部に、旋回軸AX1周りで開口する開口38hが形成されている。そして、この開口38hに筒部材38eが嵌め込まれ、外装部32に対してネジ止等で固定されている。この筒部材38eの内周側に前記旋回軸AX1周りに拡がる円筒状空間を形成する空洞部39が形成されている。また、筒部材38eの内周部であって旋回軸AX1方向の中間部には、内周側に向けて突出する固定用鍔部38fが延出している。
旋回支持軸部50は、第1旋回支持軸部52と第2旋回支持軸部56とを備える。
図4に示すように、第1旋回支持軸部52は、中央が開口する円板状部53と、円板状部53の中央開口から円板状部53の一方主面側(後側)に延出する筒状部54とを備えている。第1旋回支持軸部52は、円板状部53の中央開口と筒状部54内の空間とが連続する中空形状に形成されている。
第2旋回支持軸部56は、筒状部57と、筒状部57の一端部(後側端部)から外周側に広がる固定用鍔部58とを備える。
筒状部57の他端部(前側端部)は、第1旋回支持軸部52の筒状部54の一端部(後側端部)に連結されている。ここでは、筒状部57の他端部が筒状部54の一端部に内嵌めされることで、それらが連結されている。固定用鍔部58は、後述する旋回駆動部180の中空回転軸部186に連結されている。
この旋回支持軸部50は、上記円板状部53を筒部材38eの固定用鍔部38fに重ね合せた状態でネジ止等することによって、外装部32に固定されている。この固定状態で、旋回支持軸部50は外装部32に対して旋回軸AX1に沿って一対のアーム部34、36の反対側に延出している。この旋回支持軸部50は、全体として、第1旋回支持軸部52の内部空間と第2旋回支持軸部56の内部空間とが連続する中空形状に形成されている。
そして、旋回支持軸部50が後述する第1軸受160及び第2軸受165で回転可能に支持されることによって、支持部30が片持ち状態で旋回軸AX1周りに回転可能に支持される。また、旋回支持軸部50の他端部が旋回駆動部180の中空回転軸部186に相対回転不能に連結され、当該旋回駆動部180によって回転駆動されることによって、支持部30が旋回軸AX1周りに回転駆動される。そして、支持部30が旋回軸AX1周りに回転することで、X線発生器40及びX線検出器45が旋回軸AX1周りに回転し、CT画像を再構成するために必要な複数方向から患部を撮影した複数のX線投影データを取得することができる。
また、空洞部39には、収容部60が設けられている。収容部60は、有底円筒状に形成されており、被写体Pの少なくとも一部を収容可能に構成されている。より具体的には、収容部60は、円板部61aの周囲に周壁部61bが形成された構成とされている。円板部61aの中央部は開口が形成されている。また、収容部60内には、円板部61aの開口を塞ぐように底板61cが取付けられている。なお、収容部60の少なくとも一部が空洞部39内に配設されていればよい。従って、収容部60の奥側部分又は前側部分が空洞部39から突出していてもよい。
そして、X線発生器40とX線検出器45との間に被写体P(詳細には、患者の一部で、X線撮影対象となる部分であり、例えば、上腕Pa)を配設した状態で、一部(例えば手先Pb)を収容部60に収容できるようになっている。
この収容部60は、空洞部39に収容されてはいるが、筒部材38eには固定されていない。ここでは、収容部60は、その中心軸を旋回軸AX1と一致させると共に、一対のアーム部34、36間の空間に向けて開口させた状態で、収容部支持部62によって回転不能に支持されている。
収容部支持部62は、取付部材63と、第1収容部支持軸部64と、第2収容部支持軸部65とを備える。
取付部材63は、中央が開口する円板状部63aと、円板状部63aの中央開口から円板状部63aの一方主面側(後側)に延出する筒状部63bとを備えている。
第1収容部支持軸部64は、円筒状に形成されている。第1収容部支持軸部64の一端部(前側端部)は、筒状部63bの端部に連結されている。ここでは、第1収容部支持軸部64の一端部(前側端部)は、後述する第2軸受165の内側環状部材167を介して筒状部63bの端部に連結されている。
また、第2収容部支持軸部65は、丸棒状に形成されている。第2収容部支持軸部65の一端部(前側端部)は、第1収容部支持軸部64の他端部(後側端部)に連結されている。ここでは、第2収容部支持軸部65の一端部(前側端部)が、第1収容部支持軸部64の他端部(後側端部)内に挿入された状態で連結されている。
そして、収容部支持部62の一端部(前側端部)が収容部60の円板部61aの外向き面に固定されることで、収容部支持部62は、収容部60に対してその開口とは反対側に向けて旋回軸AX1に沿って延出する姿勢で延出するように支持される。この収容部支持部62は、上記旋回支持軸部50の内部空間及び旋回駆動部180の中空回転軸部186の内部空間を通って当該旋回支持軸部50に対して相対回転可能に配設される。そして、収容部支持部62の他端部(後側端部)が中空回転軸部186から外方に突出して後述する旋回支持基部150に固定されることで、収容部60が上記空洞部39内において回転不能かつ一定位置及び姿勢で支持される。
空洞部39は、外装部32による支持機能を保てる範囲で可能な限り大きな開口形状であることが好ましい。また、収容部60の開口は、収容部60を空洞部39内に収容可能な範囲内で可能な限り大きく形成されていることが好ましい。
なお、ここでは、収容部60は回転不能に支持されているが、回転可能に支持されていてもよい。もっとも、この場合であっても、収容部は、支持部に対して相対回転可能に支持され、支持部が回転しても、収容部は支持部の回転に従動しない、つまり、回転しない状態を保てることが好ましい。
<発光部67>
収容部60のうち、空洞部39の外側に突出した部分は、旋回軸AX1の周りを囲む円環状に形成されたリング部66を構成する。このリング部66の前面(+Z側の表面)には、発光部67が設けられている。発光部67は、旋回軸AX1周りの仮想ループ線670上に沿って配置されている。本実施形態では、発光部67はリング部66の周縁部に沿って略円環状に配されている。
仮想ループ線670は、発光部67の発光要素が配置される、旋回軸AX1周りに想定される線である。仮想ループ線670は、発光部67の発光要素を、後述する支持部30の角度等を示すように配置する際の目安となる線であって、旋回軸AX1周りに設計上定まる線である。このため、仮想ループ線670が、医療用X線撮影装置20において、必ずしも実際の線として引かれているわけではない。この意味において、「仮想」という用語を用いている。仮想ループ線上に配置される発光要素は、後述の中心方向の発光表示や旋回範囲の発光表示の機能が果たせるものであればよい。このため、必ずしも仮想ループ線上を全て隙間無く占める必要はなく、間欠箇所が介在しても構わない。
発光部67は、互いに分離された位置で発光する2つの円弧状の発光要素671,672で構成されている。発光要素671,672は、例えば多数のカラーLEDで構成されており、後述する発光部制御部715によって、各カラーLEDの発光が制御される。ただし、発光要素671,672は、単色の可視光を発するLEDあるいは電球で構成されていてもよい。また、発光部67は液晶を利用して構成されてもよく、好適にはカラーの液晶で構成されていてもよい。
発光要素671、672は2つの円弧状の発光要素であるが、例えば発光要素671、672のそれぞれがLEDなどの集合体であれば、各LEDなどは細分化された発光要素であると考えることもできる。同じく、発光要素671、672のそれぞれが液晶から成る場合は、液晶の各画素がさらに細分化された発光要素であると考えることもできる。
図示の実施例では、仮想ループ線670上、発光部67の発光要素は円弧状に並ぶ向かって左(+X)の発光要素671と右(−X)の発光要素672に分けられ、両者間に僅かに発光要素が存しない箇所が上下に1つずつある。しかし、仮想ループ線670上の全てに隙間無く並べられた図示しない発光要素671Aを配置してもよい。いずれにしても、発光部67は閉円形状を成す。
発光要素671、672、671Aを複数色のLEDで構成する場合、例えば、1の箇所に赤、青、緑の各LEDを寄せ合って配置し、一定の間隔を明けて次の箇所に同様に赤、青、緑の各LEDを寄せ合って配置し、というように連続して構成してもよいし、赤、青、緑、赤、青、緑、…というように等間隔で同じ配列パターンを繰り返すようにしてもよい。
本実施形態では、各発光要素671,672は、リング部66の前面から外周面にかけての角部を構成している。このため、図1に示すように、発光部67の発光状態は、旋回軸AX1に沿う方向から視認可能であり、かつ、旋回軸AX1に直交する径方向からも視認可能とされている。このため、オペレータは、基体100の側方の位置、または、支持部30側の位置等から、発光部67の発光状況を容易に視認できる。後述するように、発光部制御部715は支持部30の旋回に関連づけて発光要素671,672を制御する。このため、発光要素671,672を容易に視認できるように設けることによって、医療用X線撮影装置20の動作状態を容易に確認できる。
発光要素671、672、671Aを、リング部66の前面に埋め込むことによって、旋回軸AX1に沿う方向からは視認できるが、旋回軸AX1に直交する径方向からは視認できないようにしてもよい。発光要素671,672,671Aを、リング部66の外周面に埋め込むことによって、旋回軸AX1に直交する径方向からは視認できるが、旋回軸AX1に沿う方向からは視認できないようにしてもよい。
旋回軸AX1を囲む仮想ループ線670上に配した発光部67で、旋回に関連付けた発光表示が行われるため、旋回に関する情報を外部に分かりやすく表示できる。また、旋回軸AX1を中心とする円の周上に発光部67を配することで、支持部30の旋回に関する情報を直感的に分かりやすく発光表示できる。
<可視光ビーム出射部681,682>
リング部66の前面(+Z側の表面)には、位置付け用の可視光ビーム出射部681、682が設けられている。図1等に示すように、リング部66における、+X側の部分及び−X側の部分に可視光ビーム出射部681が1つずつ設けられており、+Y側の部分に可視光ビーム出射部682が設けられている。また、可視光ビーム出射部681,682は、発光部67の内側に設けられている。
可視光ビーム出射部681,682は、発光ダイオードあるいは電球等により構成され、可視光ビームを出射するように構成されている。可視光ビーム出射部681,682から出射される可視光ビームが、被写体Pの照射されることによって、被写体Pの支持部30に対する相対的な位置が表示される。このため、被写体P上における、X線が照射される位置を表示することができる。したがって、X線の照射位置を容易に確認できるため、被写体Pの位置付けを正確に行うことができる。
可視光ビーム出射部681,682から出射されるビームの形状は、特に限定される物ではない。例えば、ビーム形状は、線状、点状または面状でもよい。
本実施形態における支持部30は、アーム基部38にZ方向に延びる旋回支持軸部50が連結され、アーム部34、アーム部36がアーム基部38から旋回支持軸部50とは反対のZ方向に伸延し、その配置によってアーム部34、アーム部36の間に被写体Pを位置付ける空間ができる構成になっている。
支持部30を簡易、軽量にするため、支持部30の全体形状はU字状となっている。U字状は、厳密にUの字の形状でなくともよく、C字状、アーム基部の両端部に対して一対のアーム部が直角姿勢で並行状に延出する形状でもよい。つまり、アーム基部38、アーム部34、アーム部36からなり、アーム基部38は直線形状でも湾曲形状でもよいが、Z方向に直交する方向に概ね伸延しており、アーム部34、アーム部36は直線形状でも湾曲形状でもよいが、Y方向に沿った方向に概ね伸延しており、アーム基部38とアーム部34、アーム部36との接合部分も湾曲して滑らかに接合されても、明白な角度をつけて接合されてもよく、このように形成されたアーム基部38、アーム部34、アーム部36の成す形状をU字状と総称するものとする。
<基体100>
図1〜図5に示すように、基体100は、支持部30及び収容部60等を支持する部分である。基体100は、台座102と、XYZ方向移動機構部110と、旋回支持基部150とを備える。
台座102は、医療用X線撮影装置20の下方に配設されるベース(基部)となる部分である。台座102は、平面視において医療用X線撮影装置20を傾かないように一定姿勢で支持できる程度の広がりを有している。台座102は、複数のフレームが組合わされた構造であってもよいし、板状の構造であってもよい。
台座102の下方には、床上を転がり可能な転動体として、車輪109が設けられている。ここでは、台座102の下部4角に車輪109が設けられている。そして、オペレータが医療用X線撮影装置20を押すことで、当該医療用X線撮影装置20が床面等の上を走行移動できるようになっている。
このように、車輪109を設けることで、医療用X線撮影装置20を容易に移動できる。支持部30等を軽量化できることと相俟って、医療用X線撮影装置20をより容易に移動できる。
なお、各車輪の少なくとも一部に車輪の回り止めを行う周知のロック機構を設けて、医療用X線撮影装置20の停止状態が維持できるようにしてもよい。
XYZ方向移動機構部110は、上記台座102に設けられ、旋回支持基部150及び当該旋回支持基部150によって直接又は間接的に支持された各部(支持部30等を含む)を、台座102に対して、旋回軸AX1と平行なZ方向、Z方向に対して水平面内において直交するX方向、Z方向及びX方向との双方に直交する鉛直方向であるY方向に移動させるように構成されている。
また、旋回支持基部150は、上記XYZ方向移動機構部110によってXYZ方向に移動可能に支持されている。この旋回支持基部150は、上記旋回支持軸部50及び収容部支持部62等を支持可能に構成されている。
そして、支持部30が旋回支持基部150に支持されることで、当該支持部30が旋回支持基部150と共にXYZ方向に移動可能に支持される。また、上記収容部60等も直接又は間接的に旋回支持基部150に支持されており、支持部30と共にXYZ方向に移動可能に支持される。
なお、上記基体100は、上記各部を覆うカバー104を備える。カバー104は、樹脂又は金属等によって形成されており、このカバー104によって上記各部が外部に露出しないように保護されている。
ここでは、カバー104は、カバー本体104aと、前面カバー104bとを含む。カバー本体104aは、XYZ方向移動機構部110の周囲及び上方を覆っており、台座102に対して一定位置に固定されている。カバー本体104aのうち支持部30の部分には、開口が形成されており、当該開口を塞ぐように前面カバー104bが配設されている。前面カバー104bは、図示しないが、XYZ方向移動機構部110の中のZ方向に移動するZ方向移動プレートに固定されており、Z方向移動プレートと共にZ方向にのみ移動しつつ、カバー本体104aの上記開口を塞ぐ。
なお、前面カバー104bには、旋回支持軸部50が挿通される開口が形成されている。旋回支持軸部50のうち前面カバー104bを通過する部分の周りに軸カバー104cが取付けられている。この軸カバー104cは、ベース板152に固定されている。軸カバー104cの中央には開口が形成され、旋回支持軸部50が当該開口を貫通している。軸カバー104cは旋回支持軸部50とは機械的には分離されているので、旋回支持軸部50に従動して回転するようなことはない。以上の固定関係より、軸カバー104cは前面カバー104bとともにZ方向に移動し、前面カバー104bに対してX方向とY方向に移動しつつ前面カバー104bに形成された開口を塞ぐことができる。
また、基体100の上側部分の両側部分には、表示操作パネル106、107が設けられている。表示操作パネル106、107は、タッチパネル等によって構成されており、X線撮影に係る諸情報を表示する表示装置及びX線撮影に係る諸指示を入力するための入力装置として用いられる。勿論、表示装置と入力装置とは別々に組込まれていてもよい。表示操作パネル106,107が、基体100(支持部保持部)の両側部分に1台ずつ設けられていることによって、基体100のどちらの側からでも医療用X線撮影装置20を操作できる。このため、医療用X線撮影装置20の配置自由度を向上できる。
基体100の上側後部には、画像表示用モニター108が設けられている。画像表示用モニター108には、可視光カメラ301で撮影された画像や、画像処理部75が生成したX線画像等が表示される。詳細には、画像表示用モニター108は、基端部が基体100に左右に回動可能に自在に接続されたアーム108aの先端部に取り付けられている。このため、画像表示用モニター108は、アーム108aの基端部を中心として、左右に回動可能とされている。画像表示用モニター108における画像表示は、後述する表示制御部710によって制御される。
また、基体100の内部には、制御部71、記憶部73及び画像処理部75が設けられている。これらの構成及び機能については後述する。
<支持部30及び収容部60の支持構成>
上記したように旋回支持基部150は、XYZ方向移動機構部110によって移動可能に支持されている。旋回支持基部150は、ベース板152と、後部支持部154と、軸受支持部156とを備える。
ベース板152は、XYZ方向移動機構部110の上方位置に水平姿勢で支持された板状部分である。
後部支持部154は、全体として板状に形成された部分である。後部支持部154は、1枚の板状部材で構成されていてもよいし、複数の板状部材で構成されていてもよい。図4では、後部支持部154は、中央に孔が形成された板状部材の背面側に前記孔を閉じるように別の板状部材が取付けられた構成として描かれ、図3の模式図では、後部支持部154は1つの板状部材として簡略化して描かれている。
後部支持部154は、ベース板152の後部に、旋回軸AX1に対して直交する姿勢で固定されている。後部支持部154は、別のブラケット等を介してベース板152に固定されていてもよいし、ベース板152に直接固定されていてもよい。
軸受支持部156は、後部支持部154よりも旋回軸AX1方向に沿って支持部30側(つまり、前側)に離れた位置で、上記ベース板152に対して一定位置及び姿勢で固定されている。軸受支持部156は、旋回軸AX1を囲む環状形状に形成されている。軸受支持部156は、ベース板152又は後部支持部154に直接固定されていてもよいし、別途ブラケット等を介してそれらに固定されていてもよい。
軸受支持部156の内周部には、第1軸受160が支持されている。第1軸受160は、外側環状部材161と内側環状部材162とが円柱体又は球体等の転動体を介して相対回転可能に連結された構成とされている。外側環状部材161は、上記軸受支持部156の内部に相対回転不能に固定されており、内側環状部材162は、旋回支持軸部50の外周部に相対回転不能に固定されている。ここでは、内側環状部材162は、旋回支持軸部50のうち筒状部54の端部の外周周りに固定されている。
そして、本第1軸受160によって、旋回支持軸部50が、旋回軸AX1に沿って旋回駆動部180から離れた位置で、回転可能に支持される。
また、第1軸受160から旋回軸AX1に沿って支持部30側(つまり前側)に離れた位置に第2軸受165が設けられている。第2軸受165は、外側環状部材166と内側環状部材167とが円柱体又は球体等の転動体を介して相対回転可能に連結された構成とされている。外側環状部材166は、旋回支持軸部50に相対回転不能に固定されている。ここでは、外側環状部材166は、旋回支持軸部50のうち第1旋回支持軸部52の前側、さらに具体的には、円板状部53の前側の主面にその内周側に突出する状態で固定されている。また、内側環状部材167は、収容部支持部62に相対回転不能に固定されている。つまり、収容部支持部62は、第2軸受165を支持することで、旋回支持軸部50を回転可能に支持しており、この点において、旋回支持基部150の一要素としても用いられる。
第2軸受165によって、旋回支持軸部50が、旋回軸AX1に沿って旋回駆動部180から離れ、かつ、第1軸受160から離れた位置で、回転可能に支持されている。
このように、旋回支持基部150の第1軸受160及び第2軸受165によって、台座102の上方で、旋回支持軸部50が回転可能に支持され、これにより、旋回支持基部150が支持部30を片持ち状態で回転可能に支持する。
このように、第1軸受160及び第2軸受165によって旋回支持軸部50を回転可能に支持することで、旋回軸AX1に沿って配設された旋回支持軸部50が生むモーメント荷重が直接旋回駆動部180に作用することを抑制し、旋回支持軸部50の実際の回転軸のブレを防ぐことができる。
旋回支持軸部50を回転可能に支持する構成としては種々の態様を想定することができる。例えば、軸受としては、すべり軸受であってもよいし、転がり軸受であってもよく、さらに、転がり軸受の場合、玉軸受であってもよいし、コロ軸受であってもよい。軸受としては、ラジアル荷重、アキシアル荷重等各種方向からの荷重に強いクロスローラベアリングを用いることが好ましい。これにより、支持部30をより精度よく回転可能に支持することができる。
また、収容部60の収容部支持部62は、旋回支持軸部50及び旋回駆動部180を通って後部支持部154に達し、当該後部支持部154に相対回転不能に固定されている。これにより、収容部支持部62及び収容部60が基体(支持部保持部)100に固定的に支持されることになり、収容部60は空洞部39内で回転不能に支持される。当構造によって、発光部67は基体(支持部保持部)100に対して固定される。
なお、ここでは、旋回支持基部150には、旋回支持軸部50の周囲に位置して角度検出部170及び駆動切換部175が設けられている。
角度検出部170は、支持部30の基体(支持部保持部)100に対する旋回軸AX1回りにおけるある基準角度から角度を検出するように構成されている。特に、角度検出部170は、支持部30の旋回軸AX1周りにおける基準角度から中心方向となる角度を検出するように構成されている。より詳細には、角度検出部170は、ギア等の回転伝達機構171を介して旋回支持軸部50に連結され、当該旋回支持軸部50と同期して回転可能な回転検出用軸部172と、当該回転検出用軸部172の回転角度を検出するエンコーダ等の検出部173とを含む。角度検出部170による角度検出は、電動駆動の際も手動駆動の際も実行可能とされている。なお、支持部30の角度については、後述するX方向、Y方向、Z方向の説明とともに述べる。
駆動切換部175は、ギア等の回転伝達機構176を介して旋回支持軸部50に連結され、当該旋回支持軸部50と同期して回転可能な制動用軸部177と、当該制動用軸部177の回転を規制可能な、ベース板152に固定された制動部178とを含む。例えば、旋回支持軸部50に固定された伝達部材50aと制動用軸部177に固定された伝達部材176aが接触し、または噛み合い、制動用軸部177が制動部178で制動されるようにできる。伝達部材50a、176aとしては、ローラーやギアなどが考えられる。制動部178としては、電磁ブレーキ等を用いることができる。制動部178によるブレーキが解除されると、支持部30が、手動で回転可能な状態となる。
また、角度検出部170によって支持部30の基準角度からの回転角度を検出し、支持部30が所定量以上回転したと判断された場合に、駆動切換部175によって制動用軸部177の回転を停止させ、もって、支持部30の回転を停止させる。これにより、例えば、支持部30が利用者により手動回転された場合において、支持部30の過回転を抑制することができる。
<支持部30の回転駆動構成>
図3及び図4に示すように、上記支持部30及び旋回支持軸部50は、中空モータ182によって構成される旋回駆動部180によって回転駆動される。旋回駆動部180は旋回機構の例である。
中空モータ182は、中空本体部184と、中空回転軸部186とを備える。中空本体部184は、環状に形成されている。中空回転軸部186は、環状形状に形成されており、中空本体部184内に回転可能に支持されている。そして、中空本体部184内に電機子及び界磁子の一方が組込まれ、中空回転軸部186に電機子及び界磁子の他方が組込まれている。これらの両方の電機子及び界磁子の作用によって、中空回転軸部186が中空本体部184に対して回転駆動される。また、中空モータ182は、サーボモータ等の回転角度を制御可能なモータとしても構成されており、上記処理制御ユニットの制御下、その回転角度(回転方向及び回転量)が制御される。
中空モータ182の中空本体部184は、旋回支持基部150に固定されている。ここでは、中空本体部184の後側の環状端面が後部支持部154にネジ止等で固定されることで、ベース板152に固定されている。中空本体部184は、別のブラケット等を介してベース板152に固定されていてもよい。また、中空モータとしては、ダイレクトドライブ型中空モータがより好ましく使用できる。
また、中空回転軸部186は、中空本体部184の一方側(前側)に突出しており、その端面に、上記旋回支持軸部50の後端部がネジ止等で相対回転不能に連結されている。
そして、旋回駆動部180の駆動によって中空回転軸部186を回転させることによって、旋回支持軸部50及び支持部30が、一体となってその回転方向及び回転量が制御されつつ、回転駆動されるようになっている。
<XYZ方向移動機構部110>
図5に示すXYZ方向移動機構部110は、Y方向移動機構部120と、ZX方向移動機構部130とを備える。なお、本XYZ方向移動機構部110の各移動方向における制御は、処理制御ユニットによってなされる。
Z方向を基にして説明すると、Z方向は旋回軸AX1の軸方向と同じ方向であり、図示の例では水平方向に設定されている。X方向とY方向は共にZ方向に直交する方向であり、Y方向は図示の例では鉛直方向に、X方向は水平方向に沿って設定されている。
上記Y方向移動機構部120は、旋回支持基部150をY方向に沿って昇降移動可能に構成されており、ZX方向移動機構部は、旋回支持基部150をY方向移動機構部120と共にZ方向及びX方向に沿って移動可能に構成されている。
より具体的には、台座102上にZX方向移動機構部130が配設されている。
ZX方向移動機構部130は、Z方向移動機構部132と、X方向移動機構部142とを備える。台座102上にZ方向移動機構部132が配設され、Z方向移動機構部132上にX方向移動機構部142が配設されている。
Z方向移動機構部132は、一対のZ方向ガイド部133と、Z方向駆動部134と、Z方向移動プレート135とを含む。
一対のZ方向ガイド部133は、リニアガイド等によって構成されており、台座102上に、Z方向に沿って並列姿勢で配設されている。そして、一対のZ方向ガイド部133によって、Z方向移動プレート135が台座102に対してZ方向に往復移動可能に支持されている。
Z方向駆動部134は、モータ及びボールネジを含む直線駆動機構、リニアモータ、流体シリンダ等によって構成されている。このZ方向駆動部134は、台座102とZ方向移動プレート135との間に設けられ、Z方向移動プレート135を台座102に対してZ方向に移動駆動するように構成されている。
Z方向への移動駆動は、例えば、Z方向移動プレートに固定された被ガイド部材をZ方向駆動部134のボールネジの回転で移動させることで行うようにすることができる。
X方向移動機構部142は、一対のX方向ガイド部143と、X方向駆動部144と、X方向移動プレート145とを含む。
一対のX方向ガイド部143は、リニアガイド等によって構成されており、Z方向移動プレート135上に、X方向に沿って並列姿勢で配設されている。そして、一対のX方向ガイド部143によって、X方向移動プレート145がZ方向移動プレート135に対してX方向に往復移動可能に支持されている。
X方向駆動部144は、モータ及びボールネジを含む直線駆動機構、リニアモータ、流体シリンダ等によって構成されている。このX方向駆動部144は、Z方向移動プレート135とX方向移動プレート145との間に設けられ、X方向移動プレート145を、Z方向移動プレート135に対してX方向に移動駆動するように構成されている。
X方向への移動駆動は、例えば、X方向移動プレートに固定された被ガイド部材をX方向駆動部144のボールネジの回転で移動させることで行うようにすることができる。
そして、上記Z方向移動機構部132及びX方向移動機構部142によって、X方向移動プレート145に配設されたY方向移動機構部120がZX二次元平面内で移動駆動可能に維持される。
Y方向移動機構部120は、ガイドロッド部121と、駆動ロッド部125と、昇降ガイド部122と、昇降駆動部126とを備える。
ガイドロッド部121及び駆動ロッド部125は、ベース板152に垂下状に設けられた長尺部材である。
昇降ガイド部122は、X方向移動プレート145上に配設されており、ガイドロッド部121を昇降移動可能に支持している。ここでは、昇降ガイド部122は、ガイドロッド部121を挿通可能な鉛直方向に沿った円柱状空間を有する部材として構成されており、X方向移動プレート145に鉛直姿勢で立設されている。また、昇降ガイド部122内には、ガイドローラ122a(図5参照)が回転可能に支持されている。そして、昇降ガイド部122内にガイドロッド部121が挿通されると、ガイドローラ122aがガイドロッド部121の外周面に押し当てられる。そして、ガイドローラ122aを従動回転させつつ、ガイドロッド部121が昇降ガイド部122内を昇降移動できるようになっている。
昇降駆動部126は、駆動ロッド部125を昇降駆動することで、ベース板152を含む旋回支持基部150を昇降駆動するように構成されている。
すなわち、昇降駆動部126は、モータ126aと、モータ126aの回転運動を直線運動に変換する伝達機構部126bとを含む。伝達機構部126bとしては、ラックギアとピニオンギアとを組合わせた機構、ボールネジ機構等各種構成を採用することができる。昇降駆動部としては、その他、流体シリンダ等を用いた構成を採用することもできる。
そして、ガイドロッド部121が昇降ガイド部122によって昇降可能にガイドされた状態で、昇降駆動部126によって駆動ロッド部125が昇降駆動されることで、旋回支持基部150、支持部30及び収容部60等が昇降駆動されることになる。
なお、XYZ方向移動機構部のX方向移動機構部、Y方向移動機構部、Z方向移動機構部の組合わせは上記例に限られず、どの移動機構部が基台側又は旋回支持基部側に設けられるかについては任意である。また、各方向の移動機構部のいずれか1つ又は2つが省略されてもよいし、全ての方向の移動機構部が省略されてもよい。
X方向移動機構部142とY方向移動機構部120とで構成されるXY方向の二次元移動機構を、図示しないXYテーブルXY1とする。当該XYテーブルXY1を用いて、X線撮影時におけるX線発生器40とX線検出器45の旋回中心(撮影上の旋回中心)を、機械的な旋回軸とは別の箇所に設定することも可能である。
すなわち、旋回支持軸部50をその軸周りに回転させると、X線発生器40とX線検出器45は旋回支持軸部50の軸中心を旋回中心として旋回するのであるから、旋回支持軸部50はX線発生器40とX線検出器45の機械的旋回軸と考えることができる。
図示の実施形態では、旋回支持軸部50の軸中心が旋回軸AX1の軸中心と一致しているが、例えば、CT撮影において、Z方向からX線発生器40とX線検出器45と図示しない撮影領域FOV1を見下ろしたとき、X線発生器40とX線検出器45の中心を結ぶ線上に撮影領域FOV1の中心が設定される。そして、XYテーブルXY1を用いて旋回支持軸部50の軸中心がX線発生器40とX線検出器45の中心を結ぶ線上の撮影領域FOV1の中心とは別の箇所に位置するように設定する。このような幾何学的条件下において、以下のように制御することで、撮影領域FOV1の中心の位置にX線発生器40とX線検出器45の撮影上の旋回の中心の位置を設定することが可能である。ここでは、当撮影上の旋回の中心を仮想旋回軸VXと称することとする。具体的には、支持部30を旋回支持軸部50の中心軸周りに旋回させるとともに、この旋回と同期して、支持部30の旋回角度と同じ角度分、XYテーブルXY1が、旋回支持軸部50を撮影領域FOV1の中心周りに回動させる。これによって、X線発生器40とX線検出器45が、撮影領域FOV1の中心を旋回中心にして、すなわち仮想旋回軸VX周りに旋回しつつ撮影領域FOV1にX線コーンビームBX1を照射するCT撮影が実行可能である。より好適にはX線発生器40とX線検出器45の旋回の中心は固定の旋回中心である。
このような撮影を実現する構成は、本願出願人の出願にかかる特許文献3(特開2007−29168号公報)に開示されており、本願においても適宜摘要可能である。仮想旋回軸VX周りの支持部30の旋回を行うことによって、特許文献3に開示される構成、すなわちノーマルスキャンによるCT撮影を行うことが可能である。ここで、ノーマルスキャンによるCT撮影とは、Z方向から見て、撮影領域FOV1に対してX線発生器40とX線検出器45の少なくとも一方をオフセットさせず、X線コーンビームBX1が常に撮影領域FOV1の全範囲を照射するようにして行うCT撮影である。
また、仮想旋回軸VX周りの支持部30の旋回を行うことによって、特許文献4(国際公開第2009/063974号)に開示されている構成、すなわちオフセットスキャンによるCT撮影は、本願においても適宜摘要可能である。オフセットスキャンによるCT撮影は、ノーマルスキャンによるCT撮影の領域よりも広い領域のCT撮影を可能とするものである。今、上述の撮影領域FOV1よりも広いCT撮影領域FOV2(不図示)をオフセットスキャンによりCT撮影するものとする。
オフセットスキャンによるCT撮影は、Z方向から見て、撮影領域FOV2に対してX線発生器40とX線検出器45の少なくとも一方をオフセットさせて、X線コーンビームBX1が撮影領域FOV2の一部を照射しつつ、結果的に撮影領域FOV2の全範囲のX線照射を行い、撮影領域FOV2の全範囲について180度以上の投影データを得るCT撮影である。
幾何学的には、X線発生器40とX線検出器45の少なくとも一方の上記オフセットによって、仮想旋回軸VXもFOV2の中心に対してオフセットされたことになり、支持部30を旋回支持軸部50の中心軸周りに旋回させるとともに、この旋回と同期して支持部30の旋回角度と同じ角度分、仮想旋回軸VXがX線発生器40とX線検出器45の瞬時旋回中心となりつつFOV2の中心を回動の中心として旋回するよう、旋回支持軸部50のXYテーブルXY1による回転が行われる。
結果的に、X線発生器40とX線検出器45は撮影領域FOV2の中心を撮影上の旋回中心として旋回する。この撮影上の旋回中心が新たな仮想旋回軸であると考えることもできる。
ここで、図1を参照しつつ、支持部30の角度について述べる。以下の説明では、旋回軸AX1をZ方向に延びるZ軸とし、Z軸上の特定の点をZ1とする。当該点Z1を中心としてX方向とY方向で規定される2次元方向に広がる平面を面XY1とし、面XY1上において、点Z1の位置にはない特定の1点を基準点SP1として定め、点Z1から点SP1を通って伸びる直線を基準線SL1とする。また、面XY1上に基準点SP1と別に点XP1を定義し、点Z1から点XP1を通って伸びる直線を線XL1とする。Z軸の軸方向から見て、基準線SL1と線XL1の間の角度は、線XL1が基準線SL1に対してなす角度θrである。
ここで、角度の数値を説明するために、基準線SL1上に点XP1があり、そこから点XP1の点Z1を中心とした時計回りの移動を始めた場合を考える。
点Z1から移動開始位置にある点XP1に向かう方向を0時の方向とする。すると、基準線SL1上に移動開始位置の点XP1がある場合は、線XL1が基準線SL1に対してなす角度(=θr)は0度である。この0時の方向、0度の角度を基準角度と考えることができる。
点XL1が3時の方向まで移動した場合は、線XL1が基準線SL1すなわち基準角度に対してなす角度は90度である。同様に、6時の方向まで進めば180度であり、9時の方向まで進めば270度であり、12時の方向まで進めば360度である。
これを支持部30の角度にあてはめ、基準線SL1に対して支持部30がなす角度を上述の支持部30の角度と考えることができる。この場合、支持部30上に特定の点XP1を演算上設定し、旋回軸AX1から当該特定の点XP1を通過する直線XL1を演算上設定し、直線XL1が基準線SL1に対してなす角度を支持部30の角度と考えることができる。特定の点XP1を設定する場所は任意である。一例として、図1のように点XP1をX線発生器40中のX線管の陽極にあるX線ビーム焦点の箇所に設定することが考えられる。この場合、直線XL1は、旋回軸AX1と上述のX線管の陽極のX線ビーム焦点を結ぶ直線であり、支持部30が旋回すると、直線XL1も旋回する。
<制御部71>
図6は、第1実施形態に係る制御部71とその他の要素との接続関係を示すブロック図である。制御部71は、CPU、ROM、RAM等を備えた一般的なコンピュータとして構成されている。制御部71は、表示操作パネル106,107、X線照射指令スイッチ82及び緊急停止・解除スイッチ83等を含む操作部8を介したオペレータからの入力に基づき、医療用X線撮影装置20の動作を制御するように構成されている。
図6に示す、表示制御部710、撮影モード設定部711、中心方向設定部712、角度選択受付部713、旋回制御部714、発光部制御部715、情報管理部716、X線発生器駆動制御部717、X線規制部駆動制御部718、フレームレート設定部719及び角度再現部720は、制御部71のCPUがプログラムにしたがって動作することによって実現される機能モジュールである。なお、これらの機能モジュールのうち、一部または全部を専用回路等で構成することによって、ハードウェア的に実現してもよい。
表示制御部710は、画像表示用モニター108における画像の表示を制御するように構成されている。画像表示用モニター108には、可視光カメラ301で撮影された画像の他、画像処理部75の画像処理によって生成された各種X線画像等が表示される。
撮影モード設定部711は、旋回制御部714が実行するX線撮影の撮影モードを、CT撮影モード、トモシンセシス撮影モード、パノラマ撮影モード及び単純X線撮影モードの間で切り換えるように構成されている。パノラマ撮影モードは、口内全体(または口内の一部)を歯列に沿って1枚の画像を取得するために実行される撮影モードである。単純X線撮影モードは、支持部30を所定の角度に固定して、被写体Pを撮影する撮影モードである。トモシンセシス撮影及びCT撮影については、図7及び図8を参照しつつ説明する。
図7は、トモシンセシス撮影を説明するための概念図である。また、図8は、CT撮影を説明するための概念図である。図7及び図8は、旋回軸AX1に沿って見た、X線発生器40及びX線検出器45の移動軌跡を示している。
トモシンセシス撮影では、図7に示すように、被写体Pにおける観察対象部位にX線コーンビームBX1が照射される。そして、X線コーンビームBX1の中心軸(X線軸BAX1)の旋回軸AX1周りの振り角θが30度以上180度未満となるように、X線発生器40及びX線検出器45を旋回させつつ、被写体PにX線コーンビームBX1を照射することで、所定のフレームレートでX線投影画像が収集される。
これに対して、CT撮影では、図8に示すように、X線コーンビームBX1のX線軸BAX1の振り角が180度以上(より好ましくは、360度以上)となるように、X線発生器40及びX線検出器45を旋回させつつ、被写体PにX線コーンビームBX1を照射することで、所定のフレームレートでX線投影画像が収集される。
CT撮影によると、X線コーンビームBX1が常に照射される円筒状の撮影領域R1については、視線方向(立体対象物を見る方向)をどのように設定しても、同程度の三次元情報量を持つ画像を再構成できる。一方、トモシンセシス撮影では、振り角θの中心を通る中心方向CD1(X線発生器40が、振り角θの半角(θ/2)回転したときの、X線軸BAX1の向き)を視線方向とする断層面PS1については、三次元情報量が十分な画像(トモシンセシス画像)を得られる。しかしながら、視線方向が、その中心方向CD1から離れるほど、撮影領域R1の十分な三次元情報が乏しくなるため、充分なトモシンセシス画像の再構成が困難となる。
トモシンセシス撮影は、CT撮影に比べて支持部30の振り角が小さいため、被写体の被曝線量が少なく、また、撮影時間が短く済む等のメリットがある。例えば、手術前、手術中あるいは手術後等において、患者の画像診断対象部位に対して設定される視線方向がある程度定まっている場合には、トモシンセシス撮影が好適である。
図6に戻って、中心方向設定部712は、X線発生器40からX線検出器45に向けてX線を出射するトモシンセシスX線撮影において、支持部30の振り角の中心を通る中心方向CD1(図7参照)を設定する。医療用X線撮影装置20では、オペレータが、支持部30を手動で回転させて、X線軸BAX1の軸方向が中心方向となる角度に配置し、操作部8で所定操作を行うと、その操作角度を角度検出部170が読み取る。そして、中心方向設定部712が、読み取られた操作角度に相当する角度範囲をベースにして、中心方向を設定するように構成されている。このように先に中心方向を決めて次に操作角度を決めてもよいし、中心方向のみ決めて振り角は、予め設定した幾つかの角度範囲から選択してもよい。上述したように、中心方向は、最も好適なトモシンセシス画像が得られる視線方向に相当する方向である。オペレータが支持部30を手動回転することで中心方向を設定することによって、オペレータが直感的に中心方向を所望の視線方向に合わせることができる。このため、画像診断に適したトモシンセシス画像を作成できる。中心方向は、予め決めた基準とした角度から任意に設定することができるものであって、図7に示すように必ずしも真上にある必要は無く、斜めの角度を中心方向として設定することができる。
中心方向設定部712は、画像表示用モニター108または表示操作パネル106,107に、可視光カメラ301によって撮影された画像が表示された状態で、中心方向を指定する命令を受け付けるように構成される。このため、オペレータが画像を確認しながら中心方向を設定できるため、中心方向を望ましい視線方向に容易に設定できる。
また、中心方向CD1が設定される際には、位置付け用の可視光ビーム出射部681,682から出射される可視光ビームが、被写体Pに照射される。これによって、支持部30と被写体Pの相対的な位置関係を正確に把握することができるため、中心方向CD1を適切に設定できる。また、中心方向CD1が設定される際に、位置付用光照射部34aからも可視光が照射される。これによっても、被写体Pに対してX線が照射される位置を特定できる。したがって、中心方向CD1を適切に設定できる。
なお、中心方向設定部712は、操作部8を介して入力された角度に基づいて、中心方向に設定可能である。一例として、X線発生器40(またはX線検出器45)の角度の指定を受け付け、その角度を通るX線軸BAX1の軸方向を中心方向に設定することが考えられる。
角度選択受付部713は、X線撮影において旋回する支持部30の振り角を、予め規定された複数の角度の中から選択する命令を受け付けるように構成されている。角度選択受付部713によって受け付けられた旋回角度に基づき、旋回制御部714が旋回駆動部180を制御し、支持部30を旋回させる。例えば、トモシンセシス撮影の場合、振り角が30度以上180度未満の範囲のうちの、複数の角度(例えば、60度及び90度)が予め規定される。また、CT撮影の場合は、180度以上の複数の角度(たとえば、180度及び360度)があらかじめ規定される。角度選択受付部713によると、振り角をあらかじめ用意された複数の角度の中から選択できるため、振り角を容易に設定できる。
なお、振り角は、任意に設定できるようにしてもよい。例えば、操作部8を介して、オペレータが振り角を直接入力して指定可能としてもよい。あるいは、オペレータが、所望の振り角に相当する角度分、支持部30を手動で回転させ、その旋回角度を角度検出部170で読み取ることによって、振り角が設定されるようにしてもよい。
旋回制御部714は、旋回駆動部180を含む支持部駆動部を制御することによって、支持部30の旋回を制御する。例えばトモシンセシス撮影では、旋回制御部714が旋回駆動部180を制御することによって、支持部30を、中心方向設定部712によって設定された中心方向を中心として、角度選択受付部713が受け付けた所要の振り角(もしくは、入力された振り角)で旋回するように旋回させる。
発光部制御部715は、支持部30の旋回に関する条件に応じて、発光部67を制御する。旋回に関する条件には、例えば、トモシンセシス撮影向けに、角度選択受付部713が受け付けた支持部30の振り角、中心方向設定部712によって設定された中心方向の向きが含まれる。すなわち、発光部制御部715は、発光部67の各発光要素671、672を点灯、消灯または点滅させることで、設定された振り角及び中心方向の向き表示する。
ここで、発光部67によって振り角θ及び中心方向CD1を表示する態様の一例について、図9,図10を参照しつつ説明する。
図9及び図10は、第1実施形態に係る支持部30及び発光部67を示す概略正面図である。なお、図9では、中心方向CD1が設定された時点での発光部67の発光状態を示している。図10では、中心方向CD1及び振り角θが設定された時点での発光状態を示している。
図9に示すように、トモシンセシス撮影向けの中心方向CD1が設定されると、発光部制御部715は、複数のLEDなどで構成された発光要素671,672のうち、中心方向CD1に平行なX線軸BAX1に沿って対向する部分6711,6721を発光するように制御がなされる。これによって、前記発光部制御部715は、中心方向CD1を示すように発光表示する。なお、「発光表示」とは、目的部分を他の部分とは発光態様(点灯、消灯または点滅を含む。)を異ならせることによって、目的部分を他の部分から区別できるように表示することをいう。オペレータは、部分6711,6721を仮想的に直線で結ぶことによって、トモシンセシス撮影向けに設定されている中心方向CD1を認識できる。なお、部分6711,6721のそれぞれを異なる色で発光させる等、部分6711,6721間で発光態様を変えることで、中心方向CD1の向き(すなわち、X線発生器40からX線検出器45へ向かう向き)を識別できるようにしてもよい。
また、発光部制御部715は、振り角θが設定されると、図10に示すように、発光要素671,672のうち、振り角θに対応する角度範囲の部分6712を発光させる。図示の例では、部分6712は、旋回軸AX1を中心とする円上に配置された発光部67のうち、X線軸BAX1の旋回範囲に相当する円弧部分となっている。このように、旋回範囲を発光表示することによって、オペレータは、X線撮影時における支持部30の振り角θの大きさ及び旋回範囲(ここでは、X線発生器40の旋回範囲)を視認できる。
ここで、中心方向の変更の操作がなされた場合、その変更に合わせて発光要素の発光表示も変更される。振り角も決まっている場合は、中心方向の変更に追随して振り角の位置も変更されるので、振り角の範囲を示す発光要素の発光表示の位置も変更される。また、別の振り角に変更した場合は、その変更に合わせて発光表示の範囲も変更される。
なお、旋回制御部714は、トモシンセシス撮影において、図10に示すように、中心方向CD1から振り角θの半角分(θ/2)ずれた第1角度L1で停止した状態の支持部30を、中心方向CD1を挟んで半角分(θ/2)ずれた第2角度L2まで旋回させる。
また、発光部制御部715は、医療用X線撮影装置20の他の動作状況に応じて、発光部67の発光を制御する。ここで、動作状況には、例えば、撮影条件が決まって支持部30の旋回準備が完了した状態、あるいは、旋回準備が未完了である状態(旋回準備状態)、支持部30の手動駆動及び電動駆動を切り換える電磁ブレーキ(制動部178)のオン・オフ状態(電磁ロックのオン・オフ状態)、緊急停止・解除スイッチ83が操作されて医療用X線撮影装置の動作が停止された状態(非常停止状態)、X線が出射されている状態(X線照射状態)、撮影用に設定された支持部30の旋回方向、X線照射方向、支持部30の旋回角度、旋回方向等が含まれ、それぞれについて、固有の発光表示が行われるようにしてもよい。
角度再現部720は、記憶部73で記憶した中心方向を示す角度を呼び出し操作部(不図示)の操作をすることで呼び出して角度再現を行うものである。角度再現部及び呼び出し操作部は、中心方向の角度の呼び出しや再現に留まらず、振り角の呼び出しやその再現も行えるものであってもよい。さらに、前記記憶部も前記中心角度の記憶に留まらず、振り角の記憶も行えるようにしてもよい。
角度再現部720は、中心方向設定部712で一旦設定した中心角度を記憶部73で記憶し、呼び出し操作部(不図示)の操作に基づいて、旋回アームを駆動して設定した角度になるように再現することができる。
図6に戻って、情報管理部716は、被検者の個人別に中心方向設定部712によって設定された中心方向CD1と、振り角θとを関連づけ、管理情報731として記憶部73に保存するとともに、読出命令に基づき、管理情報731を記憶部73から読み出す。このように、中心方向CD1と振り角θを後で読み出せるようにしておくことによって、トモシンセシス撮影後にその撮影条件を容易に把握できる。
上記の角度再現部720が情報管理部716の一部を構成してもよく、角度再現部720と情報管理部716とが個別に設けられて記憶部73の情報を共有するようにしてもよい。
また、情報管理部716は、中心方向CD1及び振り角θに加えて、X線発生器40のX線管に付与する管電流、管電圧及び患者情報を関連付け、これを管理情報731として記憶部73に保存する。したがって、管理情報731を読み出すことで、各患者に対して行ったトモシンセシス撮影を容易に再現できる。
また、発光部制御部715は、読み出された管理情報を参照して、中心方向CD1と振り角θを発光部67で発光表示することができる。これにより再現しようとするトモシンセシス撮影において、中心方向CD1と振り角θが適切であるか、事前に確認できる。
X線発生器駆動制御部717は、X線発生器40を制御するように構成されている。具体的には、X線発生器駆動制御部717が、X線発生器40に対して供給される管電流、管電圧を制御する。これによってX線発生器40からのX線の照射のON・OFF及びX線強度等が制御される。
X線規制部駆動制御部718は、X線規制部42を制御する。具体的には、X線規制部駆動制御部718は、X線規制部42の遮蔽板421、422(及び横方向遮蔽板)の移動を駆動させることによって、X線ビームをX線撮影モードに応じた形状(各種のX線コーンビーム等)に成形する。
フレームレート設定部719は、CT撮影またはトモシンセシス撮影において、X線検出器45が電気信号を出力する際のフレームレートを設定するように構成されている。フレームレートが密に設定された場合、空間解像度の高い三次元情報を得ることができるため、再構成の精度を高めることができる。ただし、支持部30の旋回速度を比較的遅くする必要がある場合には、撮影時間が長くなる。
フレームレート設定部719は、支持部30が振り角θ分旋回する間におけるフレームレートを、一定に設定するように構成されていてもよいし、可変に設定するように構成されていてもよい。例えば、フレームレート設定部719は、図7に示すトモシンセシス撮影において、X線軸BAX1が中心方向CD1から所定の角度の範囲内となる支持部30の旋回範囲では、フレームレートを比較的密にし、その他の旋回範囲ではフレームレートを比較的疎に設定してもよい。これによって、撮影時間の短縮を図りつつ、中心方向CD1を視線方向として再構成されるトモシンセシス画像の解像度を向上することができる。
また、フレームレート設定部719によって設定されたフレームレートの大きさに応じて、発光部制御部715が発光部67の発光状態を変えるようにしてもよい。例えば、フレームレートが高い時と低い時とで、発光部67の発色、明るさ又は発色部分の密度が異なるようにしてもよい。また、フレームレートが可変に設定される場合には、フレームレートが密の範囲と疎の範囲とで発色、明るさ又は発光密度(単位面積当たりの発光部分の面積)が異なるようにしてもよい。
発光部67は、CT撮影における支持部30の旋回範囲を発光表示するように構成されてもよい。例えば、前述のように、CT撮影は、X線コーンビームBX1すなわち支持部30が180度以上、好ましくは360度以上旋回して行われる。そこで、180度旋回の場合は、その旋回範囲が発光表示され、360度旋回の場合は、その旋回範囲すなわち全範囲が発光表示されるように構成することができる。
画像処理部75は、CPU、ROM及びRAM等を備える一般的なマイクロコンピュータ等によって構成された処理制御ユニットである。画像処理部75は、X線撮影によって、X線検出器45で得られた電気信号に基づくX線投影画像を処理して、CT画像、トモシンセシス画像、パノラマ画像等の各種X線画像を生成する演算処理を行う。生成されたX線画像は、画像表示用モニター108に表示される。X線画像の表示態様は、診断の目的等に応じて種々のものが考えられる。例えば、画像表示用モニター108にトモシンセシス画像を表示する際には、トモシンセシス画像の一部に、そのトモシンセシス画像を生成するために設定された視線方向に対応する方向から可視光カメラ301によって撮影した画像を重畳表示するようにしてもよい。これによって、被写体Pにおける診断対象部位に対応する、トモシンセシス画像の位置を容易に特定できる。
なお、画像処理部75によって生成されたX線画像は、画像表示用モニター108の他、表示操作パネル106、107に表示されてもよいし、有線あるいは無線の通信回路を通じて他の表示部に表示されてもよいし、磁気記録媒体、光学記録媒体、フラッシュメモリ等の記録媒体に記録されてもよい。
<操作部8>
操作部8を構成する表示操作パネル106,107は、撮影モード選択入力部810、駆動切換入力部811、角度選択入力部812、撮影対象部位選択入力部813、管電流・管電圧設定入力部814、照射野選択入力部815を構成する。
図11は、第1実施形態に係る表示操作パネル106,107に表示される画面の一例を示す図である。図11に示すように、表示操作パネル106,107には、入力部が複数のボタンで構成されており、各ボタンが押下されることによって選択される。これによって、各種ボタンに割り当てられた入力情報が制御部71に送信される。
撮影モード選択入力部810は、スカウト撮影、CT撮影、トモシンセシス撮影、単純撮影の中から撮影モードを選択するための入力部である。撮影モード設定部711は、撮影モード選択入力部81を介して選択された撮影モードを、旋回制御部714が実行するX線撮影の撮影モードに設定する。単純X線撮影モード及びCT撮影モードのうち少なくとも一方の撮影モードと、トモシンセシス撮影モードとの間で、撮影モードを切り替えるようにしてもよい。
駆動切換入力部811は、支持部30の旋回駆動を、旋回制御部714によって電動制御される電動モードと、手動で回転可能とされる手動モードとの間で切り換える操作を行うための入力部である。駆動切換入力部811が操作されることで、手動モードに設定されると、駆動切換部175が制動部178の電磁ブレーキを解除する。これによって、支持部30を手動回転可能な状態とされる。このように、電磁ブレーキのON/OFF操作によって、支持部30の旋回駆動モードが、電動モード及び手動モードとの間で切り換えられる。
電動モードにおいて、基本的には電磁ブレーキがONになっているようにし、支持部30を旋回駆動する間だけ電磁ブレーキをOFFするように構成しておき、駆動切換入力部811において電磁ブレーキのOFF操作がなされると、旋回駆動モードは手動モードになり、ON操作をすると電動モードとなるように構成してよい。
単に、中空モータ182を励磁するか否かで駆動切換をしてもよい。駆動切換入力部811に対して手動モードにする操作をすると、中空モータ182の励磁を解除する。励磁の解除により、旋回支持軸部50の回動すなわち支持部30の回動を制動する力はなくなり、支持部30の手動での回動が容易となる。励磁の解除と制動部178の電磁ブレーキの解除は共に行うように構成される。
駆動切換入力部811に対して電動モードにする操作をすると、中空モータ182の励磁を発生させる。励磁の発生により、支持部30の手動での回動は困難、または不可能となる。支持部30の駆動停止中は制動部178の電磁ブレーキによる制動を行い、支持部30の旋回駆動中は制動部178の電磁ブレーキによる制動を解除すると好適である。
中空モータ182から支持部30への回転力の伝達については、その間のいずれかの箇所に回転力の伝達の有効と無効を切り換える機械的要素を介在させるようにしてもよい。例えば、図示しないクラッチを中空モータ182と支持部30の旋回軸AX1の軸周りの箇所との間に介在させるようにしてもよい。介在箇所の例としては、旋回支持軸部50の後端と中空回転軸部186の間に介在させてもよいし、中空モータ182と中空回転軸部186の間に介在させてもよい。
角度選択入力部812は、オペレータが予め規定された複数の角度の中から所望の振り角θを選択する際に操作される入力部である。角度選択受付部713は、角度選択入力部812を介して選択された角度を、X線軸BAX1の振り角θに設定する。
撮影対象部位選択入力部813は、X線撮影を行う際の撮影対象部位を選択する際に操作される入力部である。撮影対象部位毎に適した撮影条件の選択肢が記憶部73等に予め記憶されており、撮影対象部位選択入力部813を介して選択された撮影対象部位に対応した撮影条件の選択肢が呼び出される。ここでの撮影条件の選択肢とは、例えば、角度選択入力部812が選択のために表示する複数の角度、あるいは、照射野選択入力部815が選択のために表示する複数の照射野の大きさ等である。つまり、選択された撮影対象部位に対応する撮影条件の選択肢が、表示操作パネル106,107に表示される。なお、画像表示用モニター108に上記の表示操作用の表示を行ってもよい。
管電流・管電圧設定入力部814は、X線発生器駆動制御部717がX線発生器40のX線管に供給される管電流及び管電圧を設定する際に操作される。照射野選択入力部815は、照射野の大きさを選択する際に操作される。X線コーンビームBX1の広がり等が照射野選択入力部815によって選択された照射の大きさに合致するように、X線規制部駆動制御部718がX線規制部42を駆動する。
図12は、第1実施形態に係るX線照射指令スイッチ82を示す斜視図である。X線照射指令スイッチ82は、X線照射を開始する際に操作者が押下操作を行うスイッチ821と、LED表示部822を備えている。LED表示部822は、放射LED8221、準備完了LED8222及び主電源LED8223を備えている。放射LED8221は、X線発生器40からX線が放射されている際に点灯する。準備完了LED8222は、支持部30が撮影を開始する角度に移動して、X線撮影の準備が完了した際に点灯する。主電源LED8223は、医療用X線撮影装置20主電源スイッチがオン状態の時に点灯する。なお、トモシンセシス撮影やCT撮影においては、X線照射指令スイッチ82の操作によって、支持部30の旋回とX線照射が同時に行われる。また、X線照射指令スイッチ82は、デッドマンスイッチで構成され、術者が指を離すと支持部30の旋回が停止すると共に、X線照射が停止される。
図1に示す緊急停止・解除スイッチ83は、医療用X線撮影装置20の動作、すなわち支持部30の旋回及びX線照射を停止させたり、あるいは支持部30の旋回及びX線照射停止を解除して再び動作させたりするために操作されるスイッチである。緊急停止・解除スイッチ83は、図1及び図2に示すように、表示操作パネル106,107の直下に設けられている。このため、オペレータは、X線撮影中に表示操作パネル106,107を操作している際に、即座に緊急停止・解除スイッチ83を操作できる。
なお、緊急停止・解除スイッチ83によって、医療用X線撮影装置20の動作が停止した際、発光部制御部715が、発光部76の全体または一部分を発光させるようにしてもよい。例えば、緊急停止の状態や、停止解除の状態を示す固有の色で、発光部76を発光させることが考えられる。
<動作説明>
次に、医療用X線撮影装置20の動作について説明する。図13及び図14は、第1実施形態に係る医療用X線撮影装置20の動作フローを示す図である。図13及び図14は、ともにトモシンセシス撮影の流れを示しているが、振り角θを設定する態様が相異なっている。具体的には、図14は、操作部8(角度選択入力部812)を介して振り角θを設定する態様であり、図13は、支持部30を手動で回転させて振り角θを設定する態様である。以下、それぞれの態様について説明する。
<支持部30を旋回させて振り角θを設定>
図13に示すように、撮影モード選択入力部810を介しての撮影モードの選択が受け付けられる(ステップS101)。ここでは、トモシンセシス撮影モードが選択されたものとする。
続いて、可視光カメラ301及び可視光ビーム出射部681,682の電源が入る(ステップS102)。可視光カメラ301による撮影が可能になるとともに、可視光ビームを用いて被写体Pの位置づけが可能となる。
続いて、駆動切換入力部811が操作されることによって、制動部178の電磁ブレーキが解除される(ステップS103)。これによって、支持部30を手動で回転させることが可能となる。なお、ステップS101にて、トモシンセシス撮影モードが選択された時点で、電磁ブレーキが自動的に解除されるようにしてもよい。
続いて、角度検出部170が支持部30の角度を検出する。そして、発光部67が、その角度に配された支持部30のX線軸BAX1の向き、すなわち中心方向(センタービームとしての中心方向)を発光表示する(ステップS104)。
続いて、図9において説明したように、オペレータが、支持部30を手動で回転させて、X線軸BAX1の向きを、被写体Pに対して望ましい視線方向に合わせる。このため、制御部71は支持部30の角度の変更があったかどうかを判定する(ステップS105)。変更があった場合には、回転操作後の支持部30の角度が、角度検出部170によって適宜読み取られ、RAMまたは記憶部73等に一時的に保存される。また、発光部67が、回転操作後のX線軸BAX1の向きを発光表示する(ステップS106、図9参照)。
続いて、制御部71が、中心方向CD1(トモシンセシス撮影の振り角の中心としての中心方向)を確定するかどうか判定する(ステップS107)。ステップS107の判定は、例えば、中心方向CD1を確定するための所定の操作入力の存否に基づいて実行される。中心方向CD1を確定しない場合は、制御部71は再びステップS105〜ステップS107の処理を実行する。中心方向CD1を確定する場合、制御部71はステップS108に進んで、振り角θの設定を行う。
図13に示すフローでは、支持部30を回転させることによって、振り角θが設定される。ステップS108では、角度検出部170によって、支持部30が回転操作されたか否かが判定される。ステップS108は、回転操作が検出されるまで繰り返し行われる。
図10で説明したように、オペレータが、支持部30を、X線照射を開始する照射開始位置まで支持部30が回転させると、中心方向CD1からその照射開始位置までの支持部30の回転角度αが、角度検出部170によって検出される。中心方向CD1は、振り角θの中心を通るため、当該回転角度αを2倍した倍角2αが、振り角θとなる。このようにして、振り角θが算出される。また、図10で説明したように、発光部67の発光要素671,672が、支持部30の旋回範囲に対応する部分を発光させることによって、旋回範囲と中心方向CD1を発光表示する(ステップS109)。
ステップS107からステップS108の間に、振り角θを設定するためにオペレータが支持部30を回転操作する際、先のステップS104で検出された中心方向CD1を表すX線軸BAX1の向きが発光部67によって発光表示されている。好ましくは、回動操作において、回動範囲の変更調整がなされる間、その回動量に合わせて支持部30の旋回範囲がリアルタイムに算出され、その旋回範囲が発光表示される。このため、オペレータは、回転操作している支持部30を中心方向CD1からどの程度回転させたか、を容易に把握できる。したがって、振り角θを好ましい角度に設定することができる。
上記の中心方向CD1を表すX線軸BAX1の向きがCD1Aであるとして、オペレータが支持部30に回転操作を加えることによって方向CD1Aに対してなす支持部30の現在の角度がαAであるとすると、発光部67において方向CD1Aを中心にしてその両側に角度αAの範囲がリアルタイムに発光表示されることになる。方向CD1Aを中心に考えて角度−αAから方向CD1Aの間の範囲と、方向CD1Aと角度+αAの間の範囲が異なる態様で発光表示されるようにしてもよい。
なお、検出された回転角度αの倍角2αがそのまま振り角θに設定されてもよいが、回転角度αを予め定められた既定角度に変更して、当該既定角度の倍角を振り角θに設定されてもよい。例えば、予め定められた複数の既定角度のうち、回転角度αに最も近い既定角度βが選択され、当該既定角度βの倍角2βが振り角θに設定されてもよい。
続いて、制御部71は振り角θを確定するかどうか判定する(ステップS110)。ステップS110の判定は、例えば、振り角θを確定するための所定の操作入力の存否に基づいて実行される。確定しない場合は、制御部71はステップS108に戻って、支持部30の回転操作の検出を行う。
ステップS110において、振り角θを確定する場合、制御部71はトモシンセシス撮影が実行可能か否かを判定する。例えば、術中撮影において、支持部の旋回で障害物と干渉するかどうかを確認する。
ステップS110において、制御部71が、トモシンセシス撮影の実行が不可能であると判定した場合は、表示操作パネル106,107または画像表示用モニター108を介して、撮影が不可能である旨を通知する。また、X線照射指令スイッチ82から、撮影開始の指示入力があったとしても、その操作入力は拒否される(ステップS112)。なお、撮影不可能である旨は、発光部67を介して通知されてもよい。例えば、発光部制御部715が、発光部67を撮影不可能である状態を示す固有の発光態様で点灯または消灯してもよい。
ステップS112に続いて、制御部71は、撮影中止の指令があったかどうかを判定する(ステップS113)。撮影中止の指令があった場合は、制御部71はトモシンセシス撮影を中止する。トモシンセシス撮影を継続する場合には、ステップS105に戻って、中心方向CD1の設定が改めて受け付けられる。
ステップS110において、制御部71が、トモシンセシス撮影の実行が可能と判定した場合は、表示操作パネル106,107または画像表示用モニター108を介して、撮影可能である旨を通知する(ステップS114)。なお、撮影可能である旨は、発光部67を介して通知されてもよい。例えば、発光部制御部715が、発光部67を撮影可能である状態を示す固有の発光態様で点灯または消灯してもよい。
続いて、制御部71は撮影を開始する指令があったかどうかを判定する(ステップS115)。ステップS115の判定は、X線照射指令スイッチ82からの入力の存否に基づいて行われる。撮影開始指令が無い場合は、制御部71は撮影中止の指令があったかどうかを判定する(ステップS116)。中止の指令があった場合は、制御部71はトモシンセシス撮影を中止する。中止の指令が無い場合は、制御部71は再びステップS115に戻る。
ステップS115において、トモシンセシス撮影の開始指令があった場合、制御部71は、可視光カメラ301による撮影、及び、可視光ビーム出射部681,682からの可視光ビームの出射を停止する(ステップS117)。
続いて、制御部71は制動部178の電磁ブレーキを作動させ、支持部30をロックする(ステップS117)。これによって、支持部30が、手動操作不能となり、電動駆動可能な状態となる。そして、制御部71はトモシンセシス撮影を実行する(ステップS118)。
このように、本実施形態では、中心方向CD1の設定及び振り角θの設定が、支持部30を回転操作することによって行われる。このため、トモシンセシス撮影の条件設定を直感的に行うことできる。
<操作部8を介して振り角θを設定>
引き続き図14のフローについて説明する。なお、図14の説明において、図13に示す工程と同様の工程については、同じ符号を付して説明を省略し、異なる点について説明する。
図13に示すフローでは、ステップS108〜ステップS110において、支持部30の回転操作を受け付けることによって、トモシンセシス撮影における振り角θが設定される。これに対して、図14に示すフローでは、制御部71は、ステップS103にて電磁ブレーキが解除された後、角度選択入力部812を介して、振り角θを選択する操作入力が受け付けられる(ステップS201)。オペレータが角度選択入力部812を操作して角度を選択すると、角度選択受付部713が当該選択された角度を振り角θに設定する。
また、角度検出部170が支持部30の角度を検出し、発光部67がX線軸BAX1の向きを発光表示する(ステップS104A)。このとき、発光部制御部715が、このX線軸BAX1の向きを仮の中心方向CD1に設定し、発光部67のうち当該仮の中心方向CD1を中心とする振り角θの旋回範囲に対応する部分を発光させてもよい。
また、ステップS105にて、中心方向CD1を設定するために支持部30の回転操作が検出されると、回転操作後の支持部30の角度が、角度検出部170によって適宜読み取られ、RAMまたは記憶部73等に一時的に保存される。また、発光部67が、回転操作後の支持部30のX線軸BAX1の向きを発光表示する(ステップS106A)。このとき、発光部制御部715が、このX線軸BAX1の向きを仮の中心方向CD1に設定し、発光部67のうち当該仮の中心方向CD1を中心とする振り角θの旋回範囲に対応する部分を発光させてもよい。
なお、制御部71は、ステップS201を、ステップS104A及びステップS105の後に、もしくは並行して実行するように構成されていてもよい。さらに詳細には、ステップS201をステップS106Aの後に実行するように構成されていてもよい。これらの場合、ステップS104A中の「旋回範囲を発光表示」は、ステップS201の実行後になされるように変更される。
ステップS106A以降の各工程(ステップS107〜ステップS118)は、図13に示すステップS106以降の各工程と略同一であるため、ここでは説明を省略する。
図14のフロー、すなわち、操作部8を介して振り角θを設定する場合、正確に振り角θを設定できる。また、予め規定された複数の角度の中から振り角θを選択できるため、トモシンセシス撮影の撮影条件を迅速に設定することができる。
<2.第2実施形態>
次に、第2実施形態について説明する。なお、以降の説明において、既に説明した要素と同様の機能を有する要素については、同じ符号またはアルファベットを追加した符号を付して、詳細な説明を省略する場合がある。
図15は、第2実施形態に係る医療用X線撮影装置20Aを示す概略正面図である。医療用X線撮影装置20Aは、発光部67Aが旋回軸AX1を囲む真円状の仮想ループ線670に沿って、一定の角度刻みで配置された複数の発光要素673で構成されている。各発光要素673は、1以上のカラーLEDで構成されている。ただし、各発光要素673は、単色LEDまたは電球等で構成されていてもよい。
図15に示すように、発光部67Aは、トモシンセシス撮影向けに設定された中心方向CD1を発光表示する場合、複数の発光要素のうち、当該中心方向CD1に沿って対向配置されている一対の発光要素6731,6732を発光させる。これによって、医療用X線撮影装置20Aにおいて設定されている中心方向CD1を容易に把握できる。また、トモシンセシス撮影向けに振り角θが設定された場合、全発光要素673(ただし、発光要素6731,6732を除く。)のうち、中心方向CD1を中心に左右に振り角θの半角分の範囲にある1または複数の発光要素673を発光させてもよい。これによって、支持部30の旋回範囲を容易に把握することができる。
<3.第3実施形態>
図16は、第3実施形態に係る発光部67Bを示す概略斜視図である。本実施形態に係る発光部67Bは、発光要素674、遮光部材675a及びアクチュエータ675bを示す図である。
発光要素674は、空洞部39に取り付けられる収容部60Aにおける、リング部66Aの周縁部に設けられている。発光要素674は、発光要素671等のように、部分毎に発光態様を変更できるように必ずしも構成されているはなく、全体が一律に発光するように構成されていてもよい。例えば、発光要素674は、LEDの他、蛍光灯あるいはネオン管等で構成することができる。
遮光部材675aは、アクチュエータ675bによって、旋回軸AX1周りに扇状に広がったり、閉じたりするように構成されている。具体的には、遮光部材675aは、軸方向に重ねられた複数の略三角形状の板状部材6751で構成されている。各板状部材6751は、旋回軸AX1に垂直な径方向に延びており、発光要素674の半径よりも長くなっている。このため、旋回軸AX1に沿って発光部67Bを見た場合、各板状部材6751は、発光要素674を遮光するように配されている。各板状部材6751は、周方向に移動可能とされているが、軸方向に隣り合う板状部材6751同士は、扇状に広がった際に、隙間ができないよう連結されている。
このような遮光部材675aを発光する発光要素674の前面に配置することによって、発光要素674の光を遮ることができる。つまり、発光部67Bは、外部から見たとき、旋回軸AX1周りの一部の角度範囲のみが発光しているように発光表示することができる。発光部67Bを採用した場合、遮光制御することによって、旋回範囲を発光表示することが可能である。
<4.第4実施形態>
図17は、第4実施形態に係る発光部67Cを示す概略正面図である。発光部67Cは、旋回軸AX1周りに隙間無く並べられた複数の扇状の発光要素676で構成された発光面を形成している。各発光要素676は、旋回軸AX1を囲む円環状の仮想ループ線670上に配されている。すなわち、面状の発光部67Cは、仮想ループ線上に配された発光部の一形態である。発光部制御部715は、各発光要素674を個別の発光態様で点灯または消灯するように構成される。
このような発光部67Cを採用した場合でも、例えばトモシンセシス撮影向けに設定された中心方向CD1上にある発光要素674を点灯または消灯することによって、中心方向CD1を発光表示できる。また、トモシンセシス撮影向けに設定された振り角θに対応する旋回範囲内の1以上の発光要素674を点灯または消灯することによって、支持部30の旋回範囲を発光表示できる。
<5.第5実施形態>
図18は、第5実施形態に係る支持部30Aを示す概略正面図である。第1実施形態に係るリング部66は、支持部30から分離されている。このため、リング部66に設けられた発光部67は、支持部30とともに回転しない形態となっている。しかしながら、発光部を、支持部に固定して支持部とともに回転する形態としてもよい。
図18に示すように、発光部67Dは、旋回軸AX1の周りを囲む円形状を成しており、支持部30A内側に固定されている。このため、支持部30Aの回転に追従して、支持部30Aも回転する。発光部67Dは、個別に発光に関する制御がなされる複数の発光セグメントを、円環状に連続して配列することによって構成されている。
本例の場合、支持部30Aが回転すると、発光部67Dが回転することになる。このため、例えば、トモシンセシス撮影モードにおいて、旋回に関する情報(中心方向CD1または振り角θ)を発光表示する場合、発光部67Dの回転に同期して、発光部分が変更される。すなわち、発光表示する1または2以上の発光セグメントが、支持部30Aの旋回に応じて、順次隣の発光セグメントに移動する。
また、上記実施形態では、トモシンセシス撮影モードにおいて、中心方向CD1と振り角θを設定することによって、支持部30Aの旋回範囲が設定されている。しかしながら、旋回範囲を直接設定するようにしてもよい。
例えば、図18に示すように、オペレータが、支持部30Aを手動で回転させて、トモシンセシス撮影のためにX線照射を開始する角度L51に移動させる。そして、オペレータが所定操作を行うことで、当該角度L51が記憶部73に保存される。続いて、オペレータは、支持部30Aを、X線照射を終了する角度L53まで移動させる。そして、オペレータが所定操作を行うことで、当該角度L53が記憶部73に保存される。このように、トモシンセシス撮影向けの支持部30Aの旋回範囲が、角度L51から角度L53までに設定されることとなる。なお、角度L51から角度L53までの振り角θの中心を通る方向が、中心方向CD1となる。したがって、中心方向CD1が所望の視線方向に一致するように、オペレータが角度L51,L53を設定することによって、良好なトモシンセシス画像を取得することができる。
また、発光部67Dの発光表示例として、図18に示すように、オペレータが支持部30Aを角度L51から旋回させると、発光部制御部715が、発光部67Dのうち支持部30Aとともに回転するX線軸BAX1と重なる部分が順次発光していくようにしてもよい。つまり、支持部30Aが角度L53まで回転するまで、X線軸BAX1と交差する発光部67Dの部分677aが順次発光する。なお、発光部67Dを構成する複数の発光セグメントは、支持部30Aとともに回転する。このため、支持部30Aが回転すると、旋回方向とは反対方向に隣接する発光セグメントが順次発光することとなる。このようにして、発光する部分677aが発光部67の円弧に沿って広がることとなる。また、角度L51,L53が確定されると、発光部制御部715は、中心方向CD1に沿って対向する部分677bを、例えば部分677aとは異なる色で発光させる。このようにして、発光部67Dによって、中心方向CD1を発光表示してもよい。
<6.第6実施形態>
図19は、第6実施形態に係る収容部60のリング部66に着脱可能に取り付けられる被写体保持部510を示す概略斜視図である。図20は、第6実施形態に係る連結分離部570及び被写体保持部510を示す下方からの概略斜視図である。
図19及び図20に示す被写体保持部510は、患者の体全体を保持する医療用ベッドとして構成されている。ただし、被写体保持部は、医療用ベッドに限定されるものではなく、患者の体の一部を保持する部材、例えば、腕を載置状に支持する支持台等であってもよい。
被写体保持部510は、ベッド本体部512と、中間台514を有する。ベッド本体部512は、両側部から幅方向中央部に向けて弧状に凹む長尺板状に形成されている。ベッド本体部512は、患者を寝転んだ状態で指示可能な程度の幅寸法及び長さ寸法に形成されている。また、ベッド本体部512の一端側部分513のうち、載置される患者の体軸に関する左右の一部は、略L字状に切欠かれており、ベッド本体部512の長手方向に沿って延びる第一辺部分513aと、その幅方向に沿って延びる第二辺部分513bとが形成された構成とされている。上記第二辺部分513bを収容部60の開口部分に当接させるようにして、一端側部分513が収容部60の内側に配設可能となっている。
ベッド本体部512は、中間台514によって、収容部60に対応する高さ位置で、略水平姿勢で支持されている。一端側部分513は、中間台514から張り出すようにして、中間台514に固定されている。
連結分離部570は、一対の挟込片572が間隔を有して対向配置された構成とされている。一対の挟込片572間には、リング部66を配設可能な間隔が設けられている。また、一方の挟込片572によりリング部66を挟み込むようにして、連結分離部570をリング部564の周方向の所望位置に配設した状態で、固定用ネジ部574を締め付けることで、固定用ネジ部574の先端部と他方の挟込片572との間でリング部66が挟持される。これによって、連結分離部570がリング部66の所望位置に固定される。
本例では、連結分離部570が2つ取り付けられている。2つの連結分離部570は、ベッド本体部512の一端側部分513を収容部60内に配設した状態で、第二辺部分513bに下方より当接可能な位置でリング部66に取り付け固定されている。ベッド本体部512の一端側部分513を収容部60内に配設し、第二辺部分513bの下面部分を連結分離部570に当接させることによって、収容部60にベッド本体部512が着脱可能に連結される。この状態では、水平姿勢に保持されたベッド本体部512の第二辺部分513bの下面が左右の連結分離部570,570に当接する。このため、収容部60の回転がより確実に規制されている。
ここで、収容部60と被写体保持部510とを連結するとは、被写体保持部510に対する収容部60の回転を規制した状態で、収容部60と被写体保持部510とが一体的に連なることをいう。収容部60と被写体保持部510とを分離するとは、被写体保持部510に対する収容部60の回転規制を解除した状態で、収容部60と被写体保持部510とを距離的に離すことをいう。
被写体保持部510のベッド本体部512は、透明部材で形成されていることが望ましい。このため、ベッド本体部512がオペレータと発光部67の間に配されたとしても、オペレータは、ベッド本体部512越しに発光部67の発光状態を視認できる。したがって、オペレータがトモシンセシス撮影向けの撮影条件の設定を容易にできる。
<7.第7実施形態>
図21は、第7実施形態に係る医療用X線撮影装置20Bを示す概略全体図である。また、図22は、第7実施形態に係る医療用X線撮影装置20Bを上方から見た図である。医療用X線撮影装置20Bは、X線発生器40及びX線検出器45を対向状態で支持する支持部30Bを備えている。そして、支持部30Bは、鉛直方向に延びる旋回軸AX1周りに旋回するように構成されている。
より詳細には、支持部30Bは、支柱950に取り付けられている上部フレーム941によって軸支されている。上部フレーム941または支持部30Bのうちどちらか一方には、旋回軸AX1に垂直な水平方向に移動させる駆動部(X方向駆動部、Y方向駆動部)及び上部フレーム941に対して旋回軸AX1周りに支持部30Bを相対的に旋回させる旋回駆動部が設けられている。
上部フレーム941及び下部フレーム942は、支柱950に取り付けられており、かつ、鉛直方向に沿って電動制御によって上下移動する上下移動機構を構成している。上部フレーム941及び下部フレーム942が上下に移動することによって、上部フレーム941に軸支された支持部30Bが上下移動する。
医療用X線撮影装置20Bでは、被写体Pである患者が支柱950に正対した状態で、頭部等の撮影対象部位がX線発生器40及びX線検出器45の間に配置される。そして、支持部30が被写体Pの周りを旋回することによって、トモシンセシス撮影、CT撮影が行われる。また、医療用X線撮影装置20Bでは、被写体Pの例えば歯列に沿ってX線撮影するパノラマ撮影、または、単純X線撮影を実施することも可能に構成される。
図示の例では、被写体Pが支柱950に正対した立位状態で所定位置に配されている。しかしながら、例えば、椅子等を設けて、被写体Pが当該椅子に着席した姿勢で配されてもよい。
また、医療用X線撮影装置20Bにおいても、旋回軸AX1の周りを囲む仮想ループ線670A上に、発光部67Eが設けられている。本例では、上部フレーム941の周縁部に沿って発光部67Eが設けられている。ただし、発光部67Eは他の位置に設けられていてもよく、例えば、支持部30Bよりも下方に配されている下部フレーム942に設けられていてもよい。
医療用X線撮影装置20Bのような形態でも、トモシンセシス撮影向けの中心方向CD1または振り角θが、支持部30Bを手動で回転させることによって、あるいは、操作部8A等を介して設定するように構成される。
また、制御部71の発光部制御部715は、支持部30Bの旋回に関連づけて、発光部67Eを発光させる。これによって、X線撮影向けの支持部30Bの旋回条件(例えば、トモシンセシス撮影における中心方向CD1、または、旋回範囲)を外部から容易に把握することが可能となる。
<8.変形例>
上記実施形態では、収容部60は、有底円筒状とされている。しかしながら、収容部は例えば、軸方向両端側に開口する形状であってもよく、また、多角筒状であってもよい。
この発明は詳細に説明されたが、上記の説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。また、上記各実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わせたり、省略したりすることができる。